「スペースシップワールドの世界で、宇宙船(スペースシップ)が銀河帝国に奪われるという事件が発生しました。皆様の力をお貸し下さい」
星々が輝く広大な宇宙空間と、灰色の宇宙船を背景に、化野・那由他(書物のヤドリガミ・f01201)が重厚な書物を手に集まった猟兵達に語り始める。
「奪われたのは宇宙船『サンニコラ』。物資輸送船としての役目を担っていた全長数百メートル程度の船です」
那由他は開いた本の上のメモに視線を落としながら、判明している範囲で輸送船の性能を説明していく。
「輸送のための船と言っても、物騒な世の中ですから……防衛機構がないわけではなく、船首と船尾、そして両側面に機銃を備えています。それでも帝国の戦力には敵わず、拿捕されてしまったようで……」
銀河帝国のことだ。何か目論見あっての暴挙であろうし、このままではどんな風に悪用されるかも知れない。既に船は完全に帝国の支配下にある。
「そこで、皆さんには小型宇宙船の乗り込んで頂き、輸送船サンニコラに突入、船を奪還して頂きたいと思います」
さらっと言ってのける那由他。微笑んで見せてから、はっと気づいたように、
「あ、その、小型宇宙船、操縦そんなに難しくないですからね! オートマの自動車みたいなものです。……という表現で通じます、でしょうか……?」
もちろん突入しようとすれば敵も迎撃してくる。
「帝国側は輸送船内に迎撃用の小型戦闘機を十数機以上格納しているようです。つまり、宇宙空間で戦闘機と機銃を避けながら、輸送船に突入しないといけないということです」
どうやら戦闘機の射出口まわりの調子が悪いようで、一度戦闘機が出撃するとハッチは十分程度、開いたままになるそうだ。ここに突入しても良いし、他の方法を考え出しても良い。
「輸送船の内部は帝国軍の兵士に支配されています。それを指揮する者も控えているでしょうから、どうか油断しないよう宜しくお願いしますね」
まずは船内への突入を成功させるのが肝要だ。
皆さんのご無事と無事故をお祈りします、など冗談ともつかぬことを言いながら那由他は猟兵達を送り出すのだった。
相馬燈
マスターの相馬・燈と申します。
スペースシップワールドの世界で、物資輸送船が銀河帝国に拿捕・占拠されるという事件が発生しました。警備を掻い潜って輸送船に侵入し、船内の帝国軍を撃破して船を取り戻すことが最終目標となります。
●第一章の目標
小型宇宙船で出撃し、宇宙戦闘機の迎撃をかいくぐり、輸送船の内部に侵入することとなります。輸送船には機銃も備わっているためご注意下さい。
●輸送船『サンニコラ』
全長数百メートル程度の輸送船。船首と船尾、そして両脇に機銃を備えている他、後方のハッチから帝国軍が搬入した十数機の小型宇宙戦闘機を射出、迎撃してきます。
ハッチは調子が悪いのか、一度開くと暫く開いたままになるので、ここから突入しても良いでしょう。
以上です。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『小型宇宙船で突入せよ』
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POW : 正面から力づくで突破する
SPD : 素早い移動や的確な回避で危機を切り抜ける
WIZ : 敵の警戒範囲を読んで隙をつく、電子機器をハッキングする
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椙野・霧亜
オートマ自動車の要領で操縦できるのなら何とかなるだろう。だが正面から突撃するのは危険が大きすぎる、小型輸送船で被弾覚悟で突撃しようものならあっさりと撃沈されてしまう。そこで小型で小回りが利くことを活かし、機銃の弾幕の切れ目を縫うように回避し、宇宙戦闘機による迎撃も連携攻撃のタイミングを見計らい潜り抜け後部ハッチへと回り込んだら突撃する。
「迎撃が優秀でも戸締りをしっかりしていないからこうなるのだ。」
さあ、奪還を始めよう。
ファランス・ゲヘナ
さて、オレも宇宙バイクで参戦するゼ。
小型宇宙船の合間を縫って宇宙バイクで接近していク。
【SPD】による回避重視ダ。これでも宇宙バイクの捌きにはちょい自信があるんでナ。
ユーベルコード:ゴットスピードライドで宇宙バイクを宇宙海賊風に変形させ加速すル。
敵の攻撃を回避しつつ、弾幕の途切れを狙って突入ダ。
獅子鳥・狼猿
小型宇宙船であるか。この世界の機械は奇怪でガジェットとはまた違う趣であるな。
初めて扱うが、まあどうとでもなるのであろう。‥これはなんだ(ポチ)
加速ボタンであるか。これは便利である。
さて、それでは真面目に突入とするのである。
【SPD】
先ほどの加速ボタンを回避行動時に押して加速しつつ、輸送船に接舷するのである。
機銃からの迎撃や迎撃用宇宙船の攻撃に対しては回避優先、ある程度は被弾してでも輸送船への到達を優先である。
ニア・スクニロトマ
速攻でみんなが突入できるように、あたいが戦闘機を引きつけてやる!
こう見えてもあたいは鎧装騎兵、つまり宇宙空間で戦うこともできるんだ。囮役にはぴったりだろ?
なに、着ぐるみを着込んだ子供にしか見えない?
失礼な!こいつは宇宙怪獣スペースゾゴン、かつて深宇宙に投棄された怪獣が宇宙線を吸収してパワーアップしたという設定で……なに、出撃まで時間がない?えーい、仕方ないね。
全身からエネルギー波を発射する必殺のスペクトルシャワー(ユーベルコードじょこと)は実戦で見せてやる!
とにかく、派手に暴れて引きつけてやるから、進入路の確保は任せたよ!
ハル・パイアー
「ふむ、意外と隙があるように見えるか……?電子戦を要請してみるか。」
小官は制圧された輸送船への揚陸作戦として、WIZによる防空機銃をハッキング、および防空機銃の敵戦闘機誤射作戦を提案します。
まず、機銃は"船首、船尾、両側面"とある事から、仮称上部および底面には機銃の無い死角が有ると推定。
味方部隊の行動で敵戦闘機の注意がそれた隙に、上部から[迷彩]による隠密高速接近を試みます。
そして、《サイバーナビ=サポートシステム》による輸送船への[ハッキング]。敵味方認識を狂わせ、敵戦闘機を優先するよう優先目標を書き換えます。
可能ならばハッチも開閉信号を途絶させ、そのまま外周から内部へ侵入をいたします。
ヴロス・ヴァルカー
「宇宙船の操縦はあまり得意ではないのですが…」
宇宙船は回避行動もとらず、サンニコラへと突き進んでいく。当然、敵の猛攻に耐えられず宇宙船は爆発、藻屑と消えた…
「まぁここまで近寄れたなら問題ないでしょう。これで撃墜したと思い込んでくれればよいのですが。」
爆発にあわせ宇宙船を飛び出したヴロスは、蒸気を触手から噴出、器用に宇宙空間を泳ぎ、そのままサンニコラの外壁へとしがみついた。
「何とか到着ですね…あとはこの船が言うことを聞いてくれれば…」
船の内部に向けて音を響かせるヴロス。この船に歌が届けば少し操ることが可能だ。
「もし言うことを聞かなかったら…誰かにハッチを開けてもらうしかありませんね。」
櫟・陽里
はは!事故なんて起こすもんか、だ
宇宙空間が遊び場の俺にうってつけの仕事だな!
集まったメンツと相談の上
小型宇宙船の操縦を担当するか
愛車で宇宙空間に出て敵小型戦闘機の陽動するかを決める
愛車でもオートマ船でも
マシンのクセを把握し周辺環境の影響を利用し…
まぁつまり走りながら情報収集・状況判断
最適解を見つけ出してその通りにマシンを動かすのが俺の特技
ヘルメットで通信できるから皆で協力しようぜ!
陽動なら愛車のライのヘッドライトを光らせて
流星みたいに派手に登場!
追ってくる奴等が俺のコーナリングについてこれるか
敵の攻撃の嵐をどうすり抜けて走るのか
考えるだけでワクワクするな!
えっ、武器?
悪ぃ、拳銃しか持ってねぇ!
栖夜・鞠亜
お空の上にはこんな世界が広がっていたのね。
オートマというのが何なのかよくわからないけれど、触れば動くのでしょう?簡単よ、任せなさい。
難しい操作はわからないし、サンニコラに一直線に進むわ。
敵の攻撃くらいはなんとか避けてみせるわよ。邪魔なようならこの船をぶつけてどかしてやるわ。サンニコラの扉が開いたら入ればいいのでしょう?
全速力で突っ込むわね。
ジェシカ・ドゥ
アドリブ歓迎。おっとりタイプです。
前と後ろ、両脇に機銃って事は上下は機銃の死角になるのかしら?
だったら蛇行運転しつつ死角に入り込むようにして後方ハッチに近づいて様子をみるわね。
ハッチが開いて戦闘機が出払う隙に入り込んで…中はどのくらい広いのかしら。
小型宇宙船で暴れられるくらいなら、中で走り回ってちょっと混乱させてその隙に内部に入り込もうかな。
バウンドボディで物陰から物陰に隠れて中に入り込みたいわ。
紅葉・智華
「残念ながら傭兵と言えど歩兵の私は、戦闘機との交戦や機銃の回避はご免であります。射撃には自信はありますが、生身で宇宙空間にて撃つのは自殺行為でありましょう。よって、ハッキングでの敵戦力の無力化に尽力致します。これなら、皆さんも容易に突入できるようになる筈であります」
何にせよ、敵戦力である戦闘機と機銃がなければ皆さんにとっても突入が楽になるはずよね。電脳魔術士、プログラマーとして輸送船の機銃の火器管制システムの停止と敵小型宇宙戦闘機の無力化、戦力低下を狙うわ。
突入はあくまで前座。突入後にあらゆるリソースは残しておいた方が後が楽になる、ってものよね。
【行動指針:WIZ】
●出撃
「小官は制圧された輸送船への揚陸作戦として、防空機銃のハッキング、および当該機銃による敵戦闘機誤射作戦を遂行します」
小型宇宙船のコクピットに乗り込んだハル・パイアーは、僚機に作戦計画を伝達していた。
宇宙船の格納庫内は出撃準備に追われて慌ただしい。駆け回る整備兵は、猟兵達の乗る小型宇宙船の最終チェックの真っ最中だ。今が作戦の確認ができる最後のタイミングと言えた。
「残念ながら歩兵の私は、戦闘機との交戦や機銃の回避は御免であります。射撃に自信はありますが、宇宙空間にて生身で撃つのは自殺行為でありましょう……」
別のコクピット内で紅葉・智華が回線を通じて言った。傭兵と言えど、出来ないことはある。寧ろ、自らの得手不得手を熟知して行動するのが傭兵が戦場で生き残る要件だ。
「よって、私もハッキングでの敵戦力の無力化に尽力致します。成功すれば、皆さんも容易に突入できるようになる筈であります」
狙うは電脳魔術士とプログラマーの技術を組み合わせた電子戦。そこにハルを加え、二機が電子戦機の役割を果たすこととなる。
「ええっと、輸送船は前と後ろ、両脇に機銃って事は上下は死角になるのかしら?」
ブラックタールのジェシカ・ドゥが、おっとりとした口調で言いながら、モニターの先で思案げに体を揺らめかせた。
「仮称上部および底面には機銃のない死角があると推定されます」
ハルが肯定すると、櫟・陽里の元気な声が響いた。
「了解だ。まあ近づいてみないと分からんこともあるし、あとは現地で判断だな!」
スターライダーの陽里は、愛車である宇宙バイクのライに跨がり、出撃の時を今か今かと待っていた。
やがて整備兵が誘導し、ハッチがゆっくりと開く。
口を開けた先に広がるのは星々が輝く漆黒の宇宙だ。
信号が赤から青に変わり、猟兵達の小型宇宙船は宇宙空間へと飛び出していく。
●作戦開始
「小型宇宙船であるか。この世界の機械は奇怪でガジェットとはまた違う趣であるな」
ガジェッティアである狼猿にとって、乗り込んだ小型宇宙船の機巧は興味深いものだった。
極めて理論的であり、冷たささえ感じられるが、乗り心地は思いのほか快適で、乗り込む人員への細々とした配慮がなされているようでもある。
さて、意気揚々と乗り込んで宇宙空間に出たものの、
「初めて扱うが、まあどうとでもなるのであろう。……これはなんだ」
持ち前の直感で狼猿は操縦桿のボタンに力を込めた。ポチリと押すと、ブースターの出力が上昇。加速度がかかって狼猿は思わず「おおぅ」と驚きの声を口にした。
「なるほど加速ボタンであるか。これは便利である」
思っている間に小型宇宙船はぐんぐんと速度を上げていく。
「お空の上にはこんな世界が広がっていたのね」
一方、栖夜・鞠亜は透明なコクピット越しに広がる星海を、赤く透き通る瞳に映していた。
果てしなく広がる静けさに包まれた宇宙も、今や騒乱の巷だ。
鞠亜はコンソールと操縦桿に視線を落とした。
「オートマというのが何なのかよくわからないけれど、触れば動くのでしょう?」
幾つもの計器類や何に使うのかも分からないボタンがあるが、目的は一つだ。少なくとも、機体を前進させたり旋回させたりすることくらいは造作もないように思われた。
「簡単よ、任せなさい」
頷き、鞠亜は乗機を一気に加速させる。
「この操縦系統なら何とかなるだろう、が」
椙野・霧亜もコクピットのシートに背を預けながら、既に目視できる距離にある輸送船サンニコラの舷側に向けて速度を上げていた。レーダーと思われる表示には、輸送船とそれに向かう味方機が映し出されている。
「正面から突撃するのは危険が大きすぎるか。小型機ゆえの運動性を活かすしかないな」
小型宇宙船の装甲では、輸送船の機銃と言えど致命傷になりかねない。十数機という戦闘機の数も侮って良いものではないだろう。
思っている間に味方機のブースターが光を強めて加速し、敵の接近に気づいた帝国軍の戦闘機が立て続けに緊急発進(スクランブル)してくる。
「来たな」
霧亜はブースターの出力を一気に上げる。
その頭上を鎧装騎兵であるニア・スクニロトマがプラズマジェットの噴射で追い越し、露払いに打って出た。
「あたいが戦闘機を引きつけてやるよ!」
鎧装騎兵であるニアにとって宇宙空間における宙間戦闘行動は真骨頂だ。
無論、急速接近してくる鎧装騎兵を放置する帝国軍ではない。戦闘機が蜂の巣を突かれた蜂の如くニアを取り囲む。
輸送船も機銃の掃射を始めた。弾丸が漆黒の宇宙空間に尾を引いて飛ぶ。
「鎧装騎兵を甘く見ないことだね!」
機銃や戦闘機のビームマシンガンを苦もなく避けると、ニアは全身からエネルギー波を発射した。スペクトルシャワー。引きつけられた敵機が纏めてエネルギー波に呑み込まれて爆散する。
「派手に暴れて引きつけてやるから、進入路の確保は任せたよ!」
輸送船めがけて宇宙空間を駆けるのは、鎧装騎兵や小型宇宙船だけではなかった。とりわけ異彩を放っていたのは、ファランス・ゲヘナの駆る宇宙バイクである。
ゴッドスピードライド――ファランスの意志に応じて宇宙海賊風に変形した愛機は、味方機の間を縫って更に加速。
「宇宙海賊のお通りダ。当てられるもんなら当ててみナ」
突っ込んでくるその襲撃者に、帝国軍の戦闘機が群がる。
「これでも宇宙バイクの捌きにはちょい自信があるんでナ」
ゲヘナは右へ左へと舵を切って幾筋にもなって放たれるビームマシンガンを回避しながら複数機を軽々と翻弄、船首の方へと大きく旋回する。
宇宙バイクを駆るのはファランスだけではない。
「これは俺にうってつけの仕事だな!」
愛車であるライのヘッドライトを光らせて、流星のように戦場を駆け抜けながら、陽里は周囲に目を配り、戦況を瞬時に把握する。猛追してくる二機の小型戦闘機に背中を晒しながらもフルスロットルで輸送船の左舷から突っ込んだ。
「陽動は任せておきな!」
敢えて追われながらもフルスロットルでスピードを上げ、ウィリーさながらに輸送船の上方を飛び越える。
その真下を、船首の方角から突っ込んできたファランスが駆け抜け交差する。船上を走り抜けるその技量に、陽里がヘルメットの中で軽やかに口笛を吹いた。
陽里を追っていた小型戦闘機は急激な上昇が出来ず、輸送船の壁に激突して爆散する。
「はは! 事故を起こしたのは敵の方だったな!」
「なかなか激しい攻撃ね……」
ジェシカは同じく左舷から迫ると、蛇行運転して機銃を避けながら死角である船底に入り込もうとするが、そう容易くはいかず、戦闘機に背後を取られて回避行動に転じた。
ビームマシンガンがジェシカ機の左翼に穴を開け、火花の後に煙が溢れ出す。
「大変……!」
「無理はするな。こちらで引きつける」
霧亜が支援に回り、小回りを活かした機動で二機の敵機を引きつける。再びニアのスペクトルシャワーが放たれ、追尾してきたその二機も撃墜された。
「ありがとう、助かったわ」
二人に礼を言って何とか船底に入り込むジェシカ。
「さて、それでは真面目にやるとするのである」
輸送船の船尾に向けて翔ける狼猿機を、三機の敵戦闘機が連携して追い回すが、狼猿は先程の加速ボタンを活用して振り払う。
と、狼猿はそこで猛スピードで駆け抜ける宇宙船を目にした。
それこそはウォーマシンであるヴロス・ヴァルカーの操る機体だ。
「宇宙船の操縦はあまり得意ではないのですが……」
機体が軋みを上げるのにも構わず最大船速で突き進む。
その無鉄砲とも見える行動に、すわ特攻かと帝国軍も浮足立ったほどだった。
「……この辺りが頃合いでしょうか」
当然、戦闘機が迎撃に入り、輸送船の機銃の弾丸もヴロス機に殺到する。
実弾とビームマシンガンがヴロスの乗る宇宙船に無数の穴を穿ち、両翼を吹き飛ばした。
機体は風に吹かれる木の葉のように回転する。
そして木っ端微塵に爆散した。
●突入作戦の成否
「作戦、第二段階へ移行」
爆発が起こり、光条が駆け抜ける戦域で、ハル機は特殊迷彩を纏いながら輸送船サンニコラの上方からゆっくりと接近した。
「ノーマッド、情報処理支援を要請する」
サイバーナビ=サポートシステム(コール・ノーマッドエーアイ)は、呼び出しを受けるとハルの五感に要請の受諾を伝達。すぐさま行動を開始した。
召喚したのは、情報を媒体として自在に移動するナビAIだ。
輸送船の敵味方識別装置を撹乱し、操作系を司るコンピュータシステムにもアクセスをかけてハッチの開閉を停止させようとするが、
「……そう簡単には行きませんか」
サイバーナビ=サポートシステムは、輸送船のセキュリティウォールが予想外に堅固であることを伝えてきていた。
「少し時間がかかりそうですね。それでも不可能ではない」
迷彩を纏って隠密行動を取りながら、ハルは尚もハッキングを試みる。
「ん? 通信が混線しているのかい?」
ニアが突然のノイズに顔をしかめた。どうやら味方機のハッキングによる余波のようだ。ノイズ混じりに帝国兵らしき慌てた声が聞こえてくる。
『おい、なんだよあれは……!』
『着ぐるみを被った子供のようだが……』
帝国軍のパイロットであろう。自身の見た目に対する評価に、ニアは思わず激高した。
「失礼な! こいつは宇宙怪獣スペースゾゴン!」
かつて深宇宙に投棄された怪獣が宇宙線を吸収してパワーアップしたという設定……なのだが、説明している暇などありはしない。
『とにかく撃て、撃墜しろ!』
「一つのことに気を取られるのは命取りダ」
叫ぶ隊長機らしき機体めがけて、ファランスが宇宙海賊風に変形したバイクを突っ込ませた。それも複数の敵機の追尾を受けながらである。
ゲヘナは紙一重で上昇に転じ、敵機が敵機に激突して爆発を起こす。
「こっちも気付かれたようね」
速度を上げてサンニコラのハッチに近づく鞠亜が、上方に目を向けた。
一機の小型戦闘機が飛んでくる。
流石に一直線に突入すれば迎撃されるのは道理だが、鞠亜は飽くまで淡々と操縦桿に力を込めて、
「敵の攻撃くらいはなんとか避けてみせるわよ」
敵機のビームマシンガンが光を放つ。鞠亜は言葉通りに操縦桿を動かし、機体を左方向に急転させた。翼が上下を向く態勢だ。強引な動きながら光条が鞠亜機の腹をかすめて飛んでいく。
その頃、智華の機体は、輸送船の上方から見下ろす形で殆ど静止したままだった。
しかしコクピットの内部では今まさに激しい戦いが繰り広げられているのだ。
「セキュリティは想定した以上に堅固……それでも」
目にも留まらぬ動きでコンソールを操作し、次々に命令を送る。智華はここに来て活き活きしていた。如何に強固な防壁でも、必ず破って見せる――。
やがてハルがセキュリティホールを特定してこじ開け、智華も共に輸送船の命令系統に割り込みをかけることに成功。
「……何?」
構わずハッチに突っ込もうとした鞠亜の背後で、追尾してきた戦闘機が輸送船の機銃を受けて爆発した。どうやら仲間割れが起こっているらしい。
「紅葉・智華機より各機へ。敵戦力の一時無力化に成功。輸送船に突入されたし。繰り返す。敵戦力の一時無力化に成功――」
「やったな! これで一気に突入できるってわけだ!」
陽里が快哉を叫ぶ。
霧亜もコクピット内で頷き、
「迎撃が優秀でも、戸締りをしっかりしていないからこうなるのだ」
――さあ、奪還を始めよう。
そのまま船尾に向けて大きく旋回するとハッチの中に滑り込む。
時を同じくして、サンニコラの舷側から船尾へと向かう者がいた。
「どうやら上手く事が運んだようですね」
それこそは先程、機体と共に散ったかと思われたヴロスだった。
ウォーマシンである彼は、自機の爆発の直前に緊急脱出(ベイルアウト)。自身を構成する触手の先端から蒸気を噴出し、推力を確保するとサンニコラの側面にしがみついたのだ。
「何とか到着ですね……船を操るまでもありませんでしたか」
触手から伝わる異音からハッチの周辺に異常が起こっているのは間違いないと判断、ヴロスはそのまま船の側壁を伝い、開閉されたままになっているハッチを目指すのだった。
●輸送船の内部へ
「何とかなったみたいね……」
船底から船尾のハッチに宇宙船を走らせたジェシカは、通信を耳にすると、頃合いを見計らって、宇宙船のコクピットから外に出た。
ハッチの支柱に手を絡ませて掴まり、いち早く広い格納庫の中に入り込む。
格納庫はすべての戦闘機が出撃し、がらんとしていた。
「帝国兵が来るわ……あんなに大勢……!」
ハッチからの侵入者を迎撃しに来たのは間違いない。
ジェシカは自身の体をバウンドモードに変えると、強い伸縮性を得て伸び縮みし、巨大なコンテナの影に隠れた。
後方のハッチからは、続々と味方機が飛び込んでくる。
どうやら格納庫内で帝国兵達との戦いとなるのは、避けられない運命のようだった。
成功
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第2章 集団戦
『クローン騎兵』
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POW : ジェノサイダー
【自身の寿命】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【ジェノサイドモード】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : インペリアル・インテリジェンス
【銀河帝国式戦術ドローン】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : ブラスターレイン
【熱線銃(ブラスター)】を向けた対象に、【連続射撃】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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ハル・パイアー
「一騎当千という無謀な蛮勇を行える者は羨ましい。私は精々身軽に立ち回るさ」
小官はこれよりクローン騎兵との交戦に入ります。主な行動は敵群を分裂させる撹乱であります。
まずは正面から迎撃を受ける事は避け、囲まれない位置取りを行います。
第1案は小柄な体を生かして通気口から[忍び足]で移動し敵軍の後背を。不可能ならば第2案として狭い通路で敵数の制限を。
いずれかの行動を取りつつ隙があればSPD《クイックドロウ》を[早業]で体勢を整え[2回攻撃]で[戦闘知識]による急所を狙い敵の数を減らします。
攻撃の後はすぐさま離脱。追撃は[誘導弾]の牽制で撃ち払い、先に挙げた2案に基づき移動。これを敵の殲滅まで行います。
清水谷・柳牙
どうやら遅れてしまったようだが、クローン騎兵か。腕試しには丁度いい。新しく仕入れた武器の試し撃ちをさせてもらうぞ!
まずは、閃光手榴弾を投擲。着弾前に声を出してこちらに注意を向けさせる。その間に閃光手榴弾が炸裂すれば完璧だ。
その隙にガトリングガンを取り出し、狙撃狙撃狙撃!数も多いだろうし、弾薬の出し惜しみは不要だ!
仮にガトリングガンを取り出す時間を作れなかった場合は、短機関銃を持って的を絞らせないようにジグザグに動きながら交戦しよう。弾がなくなったらリロードはせずに後方へ。リロードをして次に備えつつも、必要ならば誰かの突撃に合わせて狙撃でサポートできるように待機しておこう。
紅葉・智華
「戦場というのなら、この紅葉智華の弾丸の出番であります。私の【支配者の弾丸】は乱戦状態でも敵だけに必中致しますので」
傭兵というものは如何に初対面の仲間とも連携ができるか、で価値が決まります。その点、私の射撃であれば皆さんがどのような手段で帝国兵を攻撃しようともその邪魔にはなり得ません。
また、ダメージの有無はともかく、被弾すればそれなりの衝撃はあり、敵の硬直が期待できます。よって、乗っていた戦闘機などの陰に潜み、敵帝国兵を都度狙撃致します。特に友軍に対し攻勢に出る瞬間などを狙い、足止めする事で皆さんの攻撃が効果的になるかと愚考致します。
【使用ユーベルコード:WIZ】
櫟・陽里
格納庫広くて助かる
バイクから降りずに戦えそうだ!
サイバーアイで壁と障害物の位置を把握しつつ
華麗なターンで空間を縦横無尽
テクニカルコースの走り込みも楽しいもんさ
攻撃ターゲットは仲間から遠い位置にいる敵や狙撃手など
バイクの速度を活かして倒しに行くのが面倒だなって距離の敵を担当する
全体を見渡すから異変に気付きやすいかもな
仲間への声かけも積極的に
ゴッドスピードライド!
体当たりのヒット&アウェイだ
ピンチっぽい仲間が視界に入ったら
盾になりに走り込む
愛車に傷を付けるのは辛いが…ライは修理すればいいからな!
武器にかける金はねぇからそこは身体能力と補助AIで補う
拳銃の早撃ちもクローン騎兵程度なら負けないつもりだ
ニア・スクニロトマ
【ブラスターレイン】…熱線の一斉放射…!こんな絵になる場面を逃す手はないっ!
今のあたいは(着ぐるみを着ているので)宇宙怪獣スペースゾゴン!そして、こんなこともあろうかと、熱に強い強化パーツを用意しておいたんだ!
【デストロイング・サナダ・エフェクト】で機械に包まれたあたい、もとい怪獣が熱エネルギーを吸収!真っ赤に輝くこの姿、名付けて赤熱宇宙怪獣スペースゾゴンクリムゾン!
……ってことで、あたいが敵の的になってる間に、みんなは攻撃しておくれ!
ヴロス・ヴァルカーが援護してくれるらしいから、あたいが守ってあげよう。後ろに隠れておきな!(105cm)
ファランス・ゲヘナ
さて、突入成功っていうところカ。
敵もわんさかいるし、これは退屈しないで済みそうだゼ。
宇宙バイクで船内を駆け抜けル。これが噂の轢き逃げアタックっていう奴だナ。
銀河帝国のクローン兵士なら轢き殺しても全く良心が怯まないナ。
『ユーべルコード:バウンドボディ』
こいつでオレのボディから伸ばした触手ですれ違いざまに殴り攻撃ダ。
椙野・霧亜
「(数ではこちらが不利である事は明白だ、速やかに敵兵を排除し制圧する!)」
ゴッドスピードライドを発動し変形させた宇宙バイクに騎乗して、速度で敵兵を翻弄しつつジェノサイダーを一撃離脱攻撃で確実に仕留める。
御門・結華
ユウヤと一緒に船内に突入します。
「マスター、私たちの出番です。全力で行きましょう」
すでに戦っている猟兵の中に同じ旅団のニアさんとヴロスさんの姿を見つけ
「大丈夫ですか!?」
ニアさんが囮になっている姿を見て
「いま、私がすべきことは……圧倒的な火力で敵を殲滅すること」
結華の持つルビーが輝き【三精憑依】を使用。
「力を貸して、サラマンダー!」
攻撃力を重視した火の精霊を纏い、髪と瞳が真紅に染まり、ドレスに炎の模様が刻まれる。
灼熱を纏うフレイムソードを振るい【属性攻撃】を【怪力】も使って【なぎ払い】ます。
【2回攻撃】で斬り返し、敵を焼き払う。
敵の攻撃はフレイムソードを構えて【怪力】で【武器受け】します。
ユウヤ・シュバルツ
結華と一緒に船内に突入する
「そうだな、遅くなっちまった分もキッチリ働かねぇと」
急に走り出した結華を追いかける
「お、知り合いか?」
盾役をこなす猟兵の女性と気合を入れる結華を見ながら、二本のダガーを逆手で構える。
「なるほど、ならオレも全力で行かねぇとな」
敵の攻撃は【見切り】で避けつつ、二刀流のダガーで【2回攻撃】
「俺にスピード勝負で勝てるかよ!」
敵の隙を突いて【旋風刃】を使用。
敵兵は勿論、空中のドローンも回転斬りが巻き起こす魔力の竜巻で斬り刻む。
「おっと、悪いな。まだ終わらねぇよ!」
さらに【2回攻撃】で逆回転を起こし、斬る。
味方が危ない時は投擲用ダガーを敵の【目潰し】を狙い【投擲】し【援護射撃】
ヴロス・ヴァルカー
ニアさんと御門さんの援護にまわります。「まずは一曲…この程度なら可能なはず。」召喚された銀河帝国式戦術ドローンを演奏によって操りブラスター以外の武装を封じようとする。「せっかくの対ブラスター装甲、活かさない手はありませんよね。後は…」【シンフォニック・キュア】を奏で、ニアの着ぐるみと御門を修復しようと試みる。「誠に申し訳ありませんが…お二人にはもう少し頑張ってもらうとしましょう。後は他にも歌声が届いた方がいればいいのですが。機械以外への効きが悪いのは少し不便ですね…」
●格納庫内の戦い
「格納庫ニ侵入者アリ、直チニ排除セヨ。格納庫ニ侵入者アリ、直チニ排除セヨ」
異常を告げるアラームが鳴り響き、機械的な船内放送が同じ言葉を繰り返す。
輸送船サンニコラへの突入を成功させ、橋頭堡を確保した猟兵達は、格納庫の奥へと進撃を開始していた。
強化ガラスが嵌め込まれた隔壁が閉じていき、伴って前方の似たような隔壁が開かれ、それが何度か繰り返される。輸送船だけあって格納庫は広く、開閉可能な壁によって幾つかの区画に分けられているようだった。
『射程に入り次第、排除せよ。殺害許可は下りている』
白い戦闘スーツに身を包んだクローン騎兵の一人が告げる。
クローン騎兵の防衛部隊は十人単位の小隊を幾つも組んで分散、既にブラスターの射撃態勢に入っていた。
隔壁が開くのを見計らって一斉射撃を開始する。
宇宙バイクを先頭に、猟兵達は無数に放たれる熱線の中を突撃し始めた。
「この弾幕は少々厄介だな」
船内には重力場が形成されているらしく、地面に足をつけて走ることができる。
清水谷・柳牙はガトリングガンを抱え、身を低くした姿勢で隔壁を抜けると、まず左手の物資輸送用コンテナに身を隠した。そのまま壁沿いに移動して敵集団の側面をつき、
「こっちだ。侵入者はここにもいるぞ!」
目前の敵に気を取られていたクローン騎兵の集団が、辺りを見回す。そのうちの何人かが柳牙の姿を捕捉したが、時既に遅く、柳牙は頭の中でカウントを刻みながら投擲フォームを終えていた。
(「……2……1……」)
零を数えるのと同時、複数の小隊を巻き込む位置に閃光手榴弾が着弾した。爆音と閃光が猛威を振るい、うずくまるクローン騎兵達に、柳牙はガトリングガンを構えて容赦なくトリガーを引く。
「新しく仕入れた武器、試し撃ちをさせてもらう!」
弾薬の出し惜しみは不要と、銃身の加熱にも構わず撃ち続ける。狙いは正確で、敵兵がバタバタと倒れていく。
それはまた突入する猟兵達への的確なサポートにもなっていた。
●宇宙バイクの急襲
開閉する隔壁を次々に潜り抜けながら、三台の宇宙バイクも猛スピードでクローン騎兵の軍団に迫っていた。
その先頭を駆けるのは椙野・霧亜だ。
(「数ではこちらが不利」)
クローン騎兵とて戦闘のプロフェッショナルである。銀河帝国式戦術ドローンに自らを操らせた騎兵達は、特に冷酷無比な戦闘人形と化している。数で圧されれば猟兵とて窮地に陥る可能性もあった。故に、
(「速やかに敵兵を排除し制圧する!」)
ゴッドスピードライドを発動して宇宙バイクを高速戦闘形態に変形させた霧亜は、味方が投じた閃光手榴弾の炸裂で怯んだ敵集団に突撃をかけた。轢き殺し、また吹き飛ばし、速度を活かしてそのまま一撃離脱を試みる。背後からブラスターの熱線が迫るが、狙いは甘く、鋭いコーナーリングで回避する。
「どうやら急襲は成功したようだな」
再び敵小隊に突撃をかけながら、霧亜は戦況を冷静に分析していた。地の利を占めた味方の幾人かが、援護射撃で敵兵の数を減らし、暴れ回るバイクの支援をしているのだ。
「格納庫が広くて助かったぜ! 思いっきり駆け回れる!」
愛車のライに乗った櫟・陽里も、飛来するブラスターの熱線を蛇行して避けながら格納庫の右側を疾走してくる。
「体当たりのヒット&アウェイだ!」
巨大な金属の移動式階段を跳躍台代わりにしてジャンプ。ライの車体をブラスターの熱線がかすめるが、それは織り込み済みだった。あとで幾らでも修理はできる。
戦術ドローンに操作されたクローン騎兵の集団が悲鳴をあげることさえ許されずに踏み潰され、陽里は着地と同時にライに唸りをあげさせると、再び速度を上げて他の騎兵達を吹っ飛ばした。連射される弾丸を避けながら爆走する陽里を追うように、壁に赤熱する弾痕が穿たれていく。
「武器にかける金はねぇ。こいつでも喰らいな」
拳銃を抜いた陽里が片手で射撃するたび、弾丸を受けたクローン騎兵が倒れていった。
「支援に感謝だ!」
援護射撃を続ける猟兵に、陽里は拳銃を持った手を掲げる。
「突入成功っていうところカ。敵もわんさかいるし、これは退屈しないで済みそうだゼ」
ファランスもまた連射されるブラスターの熱線を恐れず、格納庫の真ん中を猛然と駆け抜ける。
「こいつらなら轢き殺しても全く良心が怯まないナ」
味方が敵を蹴散らしている間にハンドルから手を離し、バウンドモードに変えた両腕を伸展。
「これが噂の轢き逃げアタックっていう奴だナ」
騎兵達をバイクで轢きながら、運動エネルギーを威力に変えて、伸ばした腕を振り回す。奥の隔壁まで近づくと、ハンドルを握り直して火花を散らしながらドリフト。襲い来るブラスターの熱線を振りほどき、敵の背後から迫る軌道で再び加速した。
「このオレのボディに驚くがイイ」
伸長した拳が敵小隊を殴り飛ばし、もう片方の腕が鞭のようにしなると今度は別の小隊を吹っ飛ばす。目の前に密集した小隊に突っ込みながら、ラリアットさながらに伸ばした腕をぶつけて文字通り薙ぎ倒した。
バイクで突入するという派手な作戦を敢行できたのは、援護する者の活躍があったが故だ。
傭兵というものは初対面の仲間とも連携ができるか、で価値が決まる――格納庫に突っ込んだ宇宙船、そのコクピットから抜け出した紅葉・智華は、垂直尾翼の辺りに身を隠しながら、アサルトウェポンの銃口を敵に定めて先程から援護射撃に徹していた。
「戦場というのなら、この紅葉智華の弾丸の出番であります。私の『支配者の弾丸』は敵だけに必中致しますので」
小型宇宙船を用いての戦闘はさておき、戦場での撃ち合いは智華の最も得意とするところだ。誰にも負けないという自負がある。
「今……!」
ブラスターの射撃態勢に入った敵から優先して狙い、トリガーを引く。
支配者の弾丸(ドミナント・バレット)。
飛来する銃弾が、クローン騎兵の人体急所を貫通し、行動不能に陥らせる。暴れまわる宇宙バイクに撹乱されるクローン騎兵達を狙撃するのは、智華にとって造作もないことだった。ブラスターを連射しながら突撃しようとした者も、巧みな偏差射撃で一瞬のうちに無力化される。
無駄弾は一発もない。
まさに百発百中の狙撃だった。
●戦場に響く歌
「一騎当千という無謀を行える者は羨ましい。私は精々身軽に立ち回るさ」
火線を前にハル・パイアーは言うと、捕捉されないよう気配を消して移動を開始した。
左側面の通気口らしき穴のうち、これだと見当をつけたものに潜り込む。
広い格納庫の側面には似たような横穴が随所に確認でき、構造上、それぞれが繋がっている可能性が高いと判断したのだ。
「隔壁で区切られる構造であるなら……」
小柄な体を活かして、ハルは通気ダクトと思われる狭い通路の中を匍匐前進する。
一方その頃、装備武器の封印を解いた最前線のクローン騎兵達は、身悶えしながら体中から機械の腕を生やしていた。さながら機械仕掛けの蜘蛛となった騎兵達が、複数の腕に備えた銃口からブラスターの弾丸をばら撒き始める。
ジェノサイドモード。それは自らの命を削って全身の武装を展開する諸刃の機巧である。
「……熱線の一斉放射……! こんな絵になる場面を逃す手はないっ!」
格納庫を駆けてきたニアはその異形の兵団に武者震いを禁じ得なかった。
なぜなら、
「今のあたいは宇宙怪獣スペースゾゴン!」
余りにも目立つその着ぐるみ……否、鎧装を纏ったニアが猛射を前に胸を張る。
「こんなこともあろうかと、熱に強い強化パーツを用意しておいたんだ!」
お約束の台詞を口にして、ニアは強化メカニカルパーツを射出。身に纏ったのは、
「真っ赤に輝くこの姿、名付けて赤熱宇宙怪獣スペースゾゴンクリムゾン!」
ジェノサイドモードを発動した兵達も思わず後ずさるが、後ろに控えていたクローン騎兵がニアを指さして叫んだ。
『あのバケモノを狙えー!』
「怪獣っつってんだろ!」
ニアは集中砲火を受けながら仁王立ちして高笑いをあげる。
「ふはははは、そんな攻撃が効くものかい! ヴロスはあたいの後ろに隠れていな!」
さてこう書くとニアは大層、大柄な女性のように思われそうだが――彼女の身長は100cmである。
……いや、正確には105.5cmだ(現時点)。
「せっかくの対ブラスター装甲、活かさない手はありませんよね。後は……」
すぐ脇のコンテナに身を隠していたヴロス・ヴァルカーが言うと、自身は歌声を響かせ始めた。
(「まずは一曲……ブラスター以外の攻撃を無効化しましょう」)
ジェノサイドモードに移行した者はもとより、戦術ドローンの操作を受けて戦闘能力を増大させた騎兵もまた優先度の高い脅威だった。
歌によってドローンを操ろうと試みるヴロス。
「外部からの干渉を遮断する防御機構……そう容易くは行かないようですが」
暫くすると付近のドローンがふらつき始め、クローン騎兵にブラスターによる攻撃に専念しろと命令を出す。ドローンに操作された騎兵は、哀れにも単調な攻撃を続けることしかできなくなった。
そうしている間にもニアがブラスターの熱線を引き受け続けていたが、如何に熱に強い鎧装とは言え、長らく猛射に身を晒し続ければ無事でいられる筈もない。
「小官はこれよりクローン騎兵を急襲、味方部隊の支援に入ります」
そこに、通信を介してハルの声が聞こえてきた。
通気口らしきダクトを抜けて、見事に敵の背後を突いた彼は、ダクトの先のコンテナ上に着地。熱線銃の銃口を損傷程度の低い小隊に定め、不意を突いて射撃を開始したのだ。
ヴロスの歌の干渉を受けた戦術ドローンは、騎兵達に回避行動さえ取らせない。
ただひたすらブラスターによる反撃を行う敵集団を前に、ハルはコンテナを蹴って宙に身を躍らせ、空中で誘導弾を放った。
ブースターを点火させ突っ込んでくる誘導弾を前にしても、コントロールされた騎兵達はただ熱線銃を撃つだけだった。着弾と共にあえなく吹き飛ばされる。
「マスター、私たちの出番です。全力で行きましょう」
転移してきた時、既に格納庫内では激戦が繰り広げられていた。
御門・結華が言うと、主人であるユウヤ・シュバルツも頷いて、
「そうだな、遅くなっちまった分もキッチリ働かねぇと」
ユウヤが応えた直後、結華は耳慣れた音声を感知して戦場に駆け出していた。
「お、知り合いか?」
視線の先には、仁王立ちして集中砲火を受け続ける怪獣――ニアと、その脇のコンテナに隠れながら歌を奏でるウォーマシンのヴロスの姿があった。
ニアもヴロスも、結華と同じ旅団に所属する団員である。
「なるほど、ならオレも全力で行かねぇとな」
察したユウヤが疾駆しながら二振りのダガーを両手で抜き、尚も速度を上げる。
「大丈夫ですか!?」
「応とも!」
駆け寄った結華にニアが元気な声を返すが、見るからにダメージは蓄積していた。
「誠に申し訳ありませんが、敵兵の撃破をお願いします」
ヴロスの言葉に結華が頷いて、任せとけとユウヤも応じる。
二人に任せると、ヴロスは別の歌を唄い始めた。
「ああ、こいつはいいね!」
シンフォニック・キュア。ヴロスの奏でるユーベルコードが、ニアを始め、歌声に共感した全ての猟兵の損傷を塞いでいく。
「いま、私がすべきことは……圧倒的な火力で敵を殲滅すること」
攻撃に耐え続けるニアを前に、結華が手にしたルビーに想いを込める。
「力を貸して、サラマンダー!」
呼びかけと共に結華に変化が生じた。
火の精霊サラマンダーの力を宿したその髪と瞳が真紅に染まり、ドレスに炎の模様が刻まれる。
「――行きます!」
跳躍してコンテナを軽々と飛び越えると、機械腕を展開したジェノサイドモードのクローン騎兵に急襲をかけた。
結華が敵集団に突っ込むのを見て、ユウヤも同時に駆け出している。二刀のダガーを両手に猛進する彼にもブラスターの熱線が飛んでくるが、
「俺にスピード勝負で勝てるかよ!」
途中で斜めに跳んで射線から逃れると、床を蹴って更に跳躍、結華と共に騎兵の集団に突っ込んだ。
結華にブラスターを向けたクローン騎兵の顔面に、ユウヤの投げたダガーが突き刺さる。膝から崩れ落ちる騎兵の横を駆け抜けざまに短刀を引き抜き、密集する敵めがけて跳ぶ。
「おっと、悪いな。まだ終わらねぇよ!」
竜巻を生じさせるほどの魔力を纏った回転斬りを空中で放ち、着地した瞬間に今度は逆方向に体を捻る。暴れ独楽さながらに回転するユウヤの周囲に再び魔力の竜巻が生じ、クローン騎兵達を切り裂きながら吹き飛ばした。
結華も反対側から灼熱を纏ったフレイムソードを振るい、ドレスをなびかせてダンスを踊るように半円を描く。残る騎兵が纏めて薙ぎ払われ、二人の息の合った攻撃の前に付近の敵集団はあっという間に倒されていった。
成功
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第3章 ボス戦
『帝国騎士』
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POW : インペリアルブレイド
【念動力を宿した「飛ぶ斬撃」】が命中した対象を爆破し、更に互いを【念動力の鎖】で繋ぐ。
SPD : ダークフォースバリア
自身に【鮮血の如きオーラ】をまとい、高速移動と【赤黒い電撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : インペリアルフラッグ
【念動力で形成した帝国の旗】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を『帝国の領土』であると見る者に認識させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑17
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猟兵達を迎え撃ったクローン騎兵の防衛戦力は、時間が経つごとに損傷の度を増し、遂には全滅の憂き目に遭った。損耗率の数割どころの話ではない。文字通りの全滅である。
しかしその時、猟兵達の目の前で隔壁が音を立てて開き始める。
蒸気と共に左右に開かれる分厚い壁の向こうに、発光する剣を携えた帝国騎士が立っている――。
椙野・霧亜
「(防衛戦力を殲滅した直後に敵の真打ちか。消耗している状態で長期戦は避けたい)」
「帝国の騎士よ、悪いが力づくでも突破させてもらうぞ。これも仕事なんでな」
ヴァリアブル・ウェポン(命中重視)起動、腕か脚を狙い動きを止め少しでも味方の攻撃を当てやすいようにする。
ハル・パイアー
「ふむ囮、では無い。本命か」
周囲を確認後。小官は出現した帝国騎士の対処を開始します。
今回は第一に敵より早く機先を制する事。第ニに敵の死角から攻撃を浴びせる事を目的として行動したものであります。
初手、SPD《クイックドロウ》で即座に[2回攻撃]射撃を行い、数瞬の[時間稼ぎ]と敵戦力の威力偵察を敢行。
その後は一旦退避と移動を行います。他の味方が攻撃した際、それに合わせて[忍び足]で紛れ込み。そのまま敵の死角に回り込み射撃体勢に入ります。
本命は、[早業][クイックドロウ]で[2回攻撃]。左右に撃ち分け[誘導弾]で敵を挟み込む弾道を取るように射撃し、確実な命中を狙います。
ヴロス・ヴァルカー
ニアさん、御門さんと共闘します。二人が戦ってる間に、さっきの戦闘で使われたドローンに再度ハッキング、プログラムをしなおそうと試みる。「攻撃対象は帝国騎士のみ、戦闘地帯をこの場所に限定と…ニアさん、御門さん、準備が出来ました。もしもの時は、私の破壊をお願いします。」二人が離れたのを確認した後、誘い出した帝国騎士を横目に、呟く。「汝の炉を讃えよ。【最上なる鋼鉄(マキシムス)】」ヴロスの炉が燃え上がると触手が蠢き、膨らみ、巨大な腕を作り上げた。そして、巨腕に複数のドローンが取りついた。準備されたプログラム、そしてこの場所なら、仲間に被害を出さずその質量を帝国騎士にのみ叩きつけることができるだろう。
ニア・スクニロトマ
いよいよ大詰めだ。あたいはこれでも大人だからね、戦いが終わった後のことも考えて、みんなが戦いやすいところまであの騎士をおびき寄せてやるっ!
ユーベルコードで、さっきブラスターを浴びせられて蓄積したエネルギーを一気に解き放つ!広範囲攻撃だけど、狙いは騎士ただ一人。
注目をひいたらビームで牽制しながら、突入に使ったハッチのほうへおびき寄せていく。
ここなら広くて戦いやすいし、積み荷や内部機構にもダメージが及びにくいはず!
待ち構えてるはずのヴロス・ヴァルカー(f03932)の脚の間をスライディングでくぐって後ろへ。ヴロスの視界から出たら、あとはみんなに任せてあたいは着ぐるみでかいた汗を拭いておくよ。
ユウヤ・シュバルツ
結華から作戦を聞き
「よし、準備ができるまでオレが抑えるから任せとけ」
二本のダガーを逆手で抜き、【時間稼ぎ】のため近接戦闘を挑む。
「帝国の騎士様だっけ?悪いが相手をしてもらうぜ!」
敵がオーラを纏ったらこちらも【風精憑依】を使用する
「きたか……こっちもいくぞ、シルフ!」
敵の攻撃は【見切り】や【残像】で避け【2回攻撃】
「まだまだぁ!」
雷の放射には対抗して風の斬撃を放つ
「こっちにもそういうのあるぜ!」
敵が味方を狙ったら、ダガーを【投擲】
「どこ見てやがる!」
味方の準備が完了したら【逃げ足】【ダッシュ】で一度下がる。
「きたか」
ピンチの時は投げられたウィンドセイバーを掴み、一刀流で戦う。
「ありがとな、結華」
紅葉・智華
「相手が誰だろうと、私の弾丸からは逃げられないであります!」
私が所持する兵装を考えると、どうしても決め手には欠くように思えます。
そのため、障害物を盾に狙撃ポイントを変えながら、引き続き【支配者の弾丸(WIZ)】での後方支援に徹する事とします。
基本的には何か大技をしようとした瞬間を妨害する形で、敵の隙を作り出します。
御門・結華
サラマンダーを憑依した状態で戦闘を継続します。
ヴロスさんの近くで【火精の息吹】にて前衛のマスターやニアさんの援護攻撃を行う。
「私がサポートします」
ヴロスさんへ来る攻撃を【かばう】
「私が守ります。準備を続けて」
灼熱を纏う【属性攻撃】のフレイムソードを【怪力】で振るい敵の攻撃を【武器受け】する。【電撃耐性】もあります。
「ここから先へ、絶対に通さない」
ヴロスさんの準備が整い次第【全力魔法】【属性攻撃】の火球を放ちフラッグ攻撃を【おびき寄せ】る
「下がります」
敵がフラッグを投げてきたら【見切り】後ろへ【ジャンプ】し下がります。
ユウヤがピンチになればウィンドセイバーを彼に投げ渡す
「マスター、これを!」
ファランス・ゲヘナ
ここまで来たんだしナ。
この輸送船は開放してもらうゾ。
さすがに宇宙バイクで轢き逃げアタックじゃあこいつは相手にできないナ。
ここからは本気で相手にさせてもらうゾ。
へん…しん(ユーベルコード:ビルドロボを使用)さあ、始めようカ。
ここまで戦いで拾った宇宙船やお前たちの武器の残骸で作ったボディだゾ。
バラックスクラップのハンマーを振り回して、POWで帝国騎士に強烈な攻撃をお見舞いしてやル。
櫟・陽里
ここまで仲間に援護してもらった分は返さねぇと!
もし正面からパワーで押し切るメンバーが少なそうで
必要と判断したらその役目買って出るよ
正面からバイクで突撃
単純に力比べだ!
気を引いたり敵の片手でも塞げたら皆の役に立てるだろ
あえて念動力に捕まって綱引きするのもいいかもな
バイクの馬力、見せてやるぜ!
パワータイプの人数が足りてるなら中距離から拳銃の早撃ち
敵の高速移動先を予測して牽制したり
攻撃モーション時に腕を撃って狙いを外させたり
一撃の威力に乏しい自覚はあるから
頭使って工夫しないとな
で?輸送船の人達は皆無事だろうな?
何かしてたらただじゃおかねぇ!
●戦闘開始
帝国騎士が紅く発光する剣を不気味に唸らせる。
「……数の上ではこちらが有利だが」
ハル・パイアーは周囲の状況と味方の損傷度を素早く確認。機先を制してブラスターを構えてトリガーを引いた。クイックドロウ。数え切れないほどの熱線を、帝国騎士は回避と迎撃が一体となった剣技で次々に弾き落とす。
「ふむ囮、では無い。……本命か」
クローン騎兵とは比べ物にならない反射速度、そして特徴的な外套と発光する剣。それは正しく銀河帝国が誇る帝国騎士のものだ。
断定したハルは尚もブラスターの射撃を続けながら、味方が打って出る時間を稼ぐ。鮮血の如きオーラを纏った帝国騎士は鬱陶しいとばかりに赤黒い電撃を放ってくるが、ハルは横に転がって回避すると、猟兵達の攻撃に乗じて一時退避する。
(「防衛戦力を殲滅した直後に敵の真打ちか。消耗している状態での長期戦は避けたい」)
霧亜は眼球に装着した高度演算デバイスで敵の反応速度を確認。即座に予測命中率が弾き出され、霧亜は内蔵する火器を命中率重視の速射モードに移行。
「帝国の騎士よ、悪いが力づくでも突破させてもらうぞ。これも仕事なんでな」
帝国騎士が剣が振るうと、斬撃が紅色の波動となって霧亜に襲いかかる。
十字を切る剣の軌跡そのままに飛んでくる斬撃を霧亜は床を蹴って横へ回避。
同時、起動した内蔵兵装から連続して放たれた弾丸が帝国騎士に飛来した。
『……!』
帝国騎士は剣を縦横に振るってそれを撃ち落とすが、サイボーグである霧亜は弾道計算しながら戦場傭兵の勘と反射で帝国騎士の腕と脚に弾丸を命中させる。
構わずに突っ込んでくる帝国騎士。
横に一閃、弧を描いて飛んでくる斬撃を霧亜はスライディングで回避。
背後にあった移動式の階段が斬撃を受けて爆発を起こす。
ばらばらになったかと思われたその残骸が念動力で操られ、霧亜に迫った。
格納庫内を全力疾走しながら身を翻した霧亜は、内蔵する火器を一斉に開放して鉄杭さながらに迫る残骸をすべて迎撃、更に帝国騎士にまで弾丸を届かせるという離れ業をやってのけた。
それは全身の機能を駆使した、正確無比な射撃の賜物だ。
帝国騎士が腕や脚に弾丸を受けて呻き、外套をなびかせながら後ろへ跳躍して距離を取る。
寡黙な騎士は感心したように短く言葉を発した。
『……よく動く。何者だ』
「ただの傭兵だ。それ以上でもそれ以下でもない」
●帝国騎士の猛威
「被弾しても平然と反撃してくるとは……流石は帝国騎士でありますね」
智華は自らが突っ込ませた宇宙船の巨大な降着装置(ランディングギア)の陰に隠れながら、銃の照準を敵に合わせる。携行している兵装では、帝国騎士を仕留めきるには火力不足と思われた。そこで智華はスナイパーとして後方からの支援を続ける。
「相手が誰だろうと、私の弾丸からは逃げられないであります!」
標的が猟兵の攻撃を回避したその一瞬を見計らい、引き金を引く。
絶好のタイミングを捉えた狙撃だったが、次の瞬間、智華は小さく驚きの声を発していた。
「……嘘!?」
外れたのではない、弾かれたのだ。
智華の支配者の弾丸(ドミナント・バレット)は正確に帝国騎士の急所を狙い撃っていた。
それでも、到達する前に迎撃されては届かない。
「発見された!」
狙撃の失敗は、自らの居場所を敵に晒すことと同義。智華はすぐさま銃を抱えて宇宙船の陰から離脱した。その直後、飛んできた紅い斬撃の余波で宇宙船が両断され大爆発を起こす。
「くっ……うぅっ……」
智華は爆風に吹っ飛ばされて転がるが、
「ここまで仲間に援護してもらった分は返さねぇとな!」
その時、愛車のライを唸らせながら櫟・陽里が帝国騎士に突っ込んだ。
帝国騎士は接近に気付いて咄嗟に身を翻したが、陽里とてそれだけでは終わらない。
バトル・インテリジェンス――召喚したAI搭載型戦術ドローンに自らを操らせると、片手でハンドルを握りながらも、もう片方の手で拳銃の引き金を引いていた。
人間離れした早撃ち、恐るべき正確さで弾道を描いた銃弾は、回避しにくい死角から帝国騎士の脚と腕を穿った。
「流石に拳銃じゃ足りねぇか」
大口径の砲弾を喰らってもなお平然と立ち上がりそうな相手だ。
「ここからは本気で相手をさせてもらうゾ」
猟兵達に猛然と向かっていく帝国騎士を前に、ファランスはいまだ行使していなかった力の一つを解放。格納庫が不気味に震え出した。
間もなく、破壊された宇宙船の残骸やクローン騎兵の集団が落としたブラスター、更には格納庫を移動するために壁際に駐車してあった自動車までが音を立てて動き出し、空中で分解。バラバラになりながらファランスめがけて飛んでくる。
「へん……しん」
軽量且つ強固な宇宙船の装甲がファランスを覆って金属の鎧となり、兜と化した。腕部には宇宙船の機関砲。肩や腰部にはクローン騎兵の持っていたブラスターが取り込まれ、接続されて射撃体勢に。右腕にはスクラップを組み合わせたハンマーが握られている。
ユーベルコード――ビルドロボット。
実に三メートルを超える鉄の巨人がここに顕現する。
「さあ、始めようカ」
足底のローラーを急速回転させて帝国騎士に迫るファランス。飛んでくる斬撃を避けながら、機関砲とブラスターを乱射して高速戦闘を演じる。後方に回避しながら尚も斬撃を飛ばしてくる帝国騎士だが、多少の損傷や爆発は今のファランスにとって無視できるものだった。 一気に間合いを詰めると、スクラップのハンマーを振り回して帝国騎士の体を強かに殴りつけた。
●激戦の果てに
「攻撃対象は帝国騎士のみ、戦闘地帯をこの場所に限定と……」
ヴロスは敢えて攻撃には参加せず、小さく歌を響かせていた。目的は先の戦いでクローン騎兵が召喚したドローンの再ハッキングだ。
「帝国の騎士様だろうが……俺の早さについてこれるか!」
ユウヤ・シュバルツは二本のダガーを逆手で抜くと帝国騎士に接近戦を挑む。まともに打ち合うのではなく、軽やかな身のこなしで発光する敵の刃を弾いて味方が攻撃する時間を稼ぐ。帝国騎士は次々飛来する弾丸にも構わず、全身に禍々しい赤いオーラを纏わせた。
「きたか……こっちもいくぞ、シルフ!」
白く風が巻き起こり、ユウヤの体を包み込んだ。風精憑依――風の精霊を憑依させたユウヤは、ただでさえ疾かったその身のこなしを更に加速させる。
鮮血の如き闘気を滾らせた帝国騎士は、高速移動しながら掌から赤黒い電撃を放射した。今や風そのものと化したユウヤは軽やかに跳び、宙で体を捻って電撃を避け、更に床を蹴って一気に迫り、
「こっちにもそういうのあるぜ!」
距離を縮めながら風の斬撃を放った。
雷と風が空中で絡み合い、閃光と猛烈な風音が響き渡る。
「私がサポートします」
真紅を帯びた瞳で帝国騎士を見据え、紅色に移り変わった髪をなびかせながら言った結華が周囲に次々と炎を顕現させる。火の精霊――サラマンダーの憑依を継続した結華はドレスの刻印を輝かせながら十七個もの炎を呼び出すと、
「行って……!」
ユウヤに迫る帝国騎士めがけて一斉に解き放った。火精の力を宿した炎が結華の意のままに飛び、帝国騎士に襲いかかる。回避行動を取った帝国騎士は尚も追いすがってくる炎を剣を以て迎撃。しかし結華に操られた複数の炎はそれさえ避けながら円を描くように帝国騎士を取り巻き、四方八方から体当たりを喰らわせると騎士の外套を燃え上がらせた。
帝国騎士は結華の頭上に念動力で帝国の旗を形成。串刺しにせんとばかりに落下してきたそのフラッグを結華は後ろへ跳んで避ける。
ヴロスのハッキングを受けた無数のドローンが、小さな駆動音と共に動き始めたのは正にその時だった。
帝国騎士に凄まじい疾さで接近するユウヤは、残像を帯びているようにさえ見える。しかし敵の剣技も確かなもので、ユウヤは両手のダガーで斬撃を受け流すが、放たれた電撃に、たまらず吹っ飛ばされてしまう。
転がると同時、手から離れたダガーが床を滑る。
「しまった」
「援護するであります……!」
トドメを刺そうと迫る帝国騎士の脚を飛来した銃弾が穿ち、動きを止めさせる。
移動式階段を駆け上がり、コンテナの上に登った智華が、帝国騎士に向けて引き金を引いたのだ。支配者の弾丸は狙い過たず、遂に帝国騎士の脚に命中した。
「マスター、これを!」
流石に自らの武器を投げている余裕はなく、結華は転がってきたダガーを掴んでユウヤに投げていた。
「ありがとな、結華」
空中で巧みに柄を掴んで握り込んだダガーを手にしたユウヤは、その一刀を以て帝国騎士に向かっていく。
「さあ、いよいよ大詰めだ」
赤熱宇宙怪獣スペースゾゴンクリムゾン――その名の通りに熱線の猛射を受けて特徴的な鎧装を赤く輝かせたニアも帝国騎士の前に躍り出て攻撃を引き付ける。
「あたいはこれでも大人だからね」
周囲には十分な広さがあったが、下手に攻撃を集中させて格納庫の壁に大穴を開けでもしたら大変なことになる。よってニアは赤く発光する斬撃を空中で回避しながら、格納庫の真ん中を抜けていく。
斬撃とそれに伴う爆発を受けたニアに念動力の鎖が絡まり、帝国騎士が掴むような動作で引き寄せようと試みるが、その時、ニアの体がひときわ眩い光に包まれた。
マグマのように赤い紅蓮の光に、である。
「ははっ、もう遅いんだよ!」
ニアはブラスターの熱線を受けて蓄積したエネルギーを一斉放出。本来であれば広範囲の敵を一網打尽にする範囲攻撃だが、今や敵はただ一人。故に光条は帝国騎士だけをめがけて殺到した。その出力は未だ二十メートルに届かないが、輸送船に傷をつけないという点でも目的は達成されている。
帝国騎士は無数の光条を前に、敢えて突っ込んでくる。
と、拳銃を構えて銃撃しながら、目の前をバイクに跨った陽里が横切った。
邪魔だとばかりに帝国騎士が剣を振るい、斬撃がライの車体を深く抉ったが、陽里にとってはそれも計算の上だ。
「さあ、力比べと行こうか!」
念動力の鎖に絡みつかれたライが唸りをあげて疾走する。その車体が後ろに引っ張られるのを陽里は感じたが、アクセル全開で抗う。
「バイクの馬力、見せてやるぜ!」
この力比べは陽里とライに軍配が上がった。
帝国騎士は陽里への攻撃を断念。周囲のドローンが動き出すのを見て、いち早くヴロスに狙いを定めたのは流石に巧みな戦況判断だった。
「確かに戦闘力は高いが、この戦力差は覆せまいよ」
気配を殺して帝国騎士の背後に回り込んだハルがブラスターを連射する。帝国騎士は振り向いて迎撃しようとするが、その動作さえもハルが作り出した計算通りの隙だ。
恐るべき早撃ち技術を以てブラスターから熱線が放たれる。一直線ではなく、左右に撃ち分けた高速射撃に、壁の如き射線が作られ、帝国騎士の行動を制限する。
「私が守ります。準備を続けて。……絶対に通さない」
結華が持てる力の限界まで費やして火球を発生させた。飛来する火球が帝国騎士を取り巻き、翻弄して、
「ニアさん、御門さん、準備が出来ました。……もしもの時は、私の破壊をお願いします」
駆け寄ってくるニアの目の前で、巨体を屹立させたヴロスが言った。
ニアはヴロスの脚の間をスライディングで潜って後方へ。大きな背中に声をかける。
「あとは任せたよ」
「汝の炉を讃えよ。【最上なる鋼鉄(マキシムス)】」
告げると共に、ヴロスの炉が燃え上がった。
その巨躯の大部分を構成する無数の触手が蠢き、奇怪な音を響かせながら膨張し、絡まり合いながら巨大な腕を作り上げる。そしてその巨腕に、操ったドローンが次々と吸い付き、質量を更に増大させていく。
それは機械の触手と無人機の群れで構成された禍々しいまでの異形の腕。
発光する剣を構えて突撃する帝国騎士に、大質量の巨腕が耳を聾する金属音を響かせながら襲いかかる。
事前に走らせたドローンに対するプログラムが、暴走状態の腕を操作して味方への攻撃を抑制したのだろうか――轟音を響かせる機械の巨腕が、なぎ払いに吹き飛ばされた帝国騎士だけを狙って上から叩き潰した。
帝国騎士が倒されたことで、輸送船サンニコラの敵勢力は壊滅した。
全投入されたクローン騎兵と、それを指揮した帝国騎士さえも討ち取った猟兵達はここに勝利を収め、銀河帝国から船を取り戻すことに成功したのだ。
「ふぅ、終ったかい」
鎧装……いや、着ぐるみを纏っての戦闘でかいた汗を拭くニア。
「で? 輸送船の人達は皆無事だろうな? 何かしてたらただじゃおかねぇ!」
ライを駐車させた陽里は拳を握りしめて格納庫の先へと進んでいったが、そこで幾つかの船室に乗組員が監禁されているのを発見した。
「有難うございます……これで物資を送り届けられる……!」
解放されて、皆が猟兵達に謝意を口にする。
物資輸送は、宇宙船内での生活を送るこの世界の住人達にとって大きな意味を持つ。積荷もまだ降ろされていないことが確認され、乗員達はほっと胸を撫で下ろした。
ここに事件は解決し、猟兵達は帰途に就くこととなったが……去り際の僅かな時間に、この船の名前について雑談的に語る乗員がいた。
輸送船サンニコラ――その名はある人物に由来するのでは、と言うのだ。
冬のある夜、子供達に贈り物を届ける、白髭の老人に。
成功
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