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大祓百鬼夜行⑯〜彼女(彼氏)いない歴○年は秘密です

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●テレビは所定の方法できちんと処分しませう
 UDCアースのとあるゴミ捨て場に、大きな箱のようなものが打ち捨てられていた。
 それは近づいてよくよく見れば、最近ではとんと見なくなったブラウン管テレビ。
 誰がこんな所にと眉をひそめて、あるいは興味本位でその箱を覗き込めば、電源が入るはずのないテレビにある映像が映し出されていることに気付くだろう。

 何故か男と女とがグループ分けされて、元は一組の存在であった骸魂二体のそれぞれがグループに付いて何やらやり取りをし、男女はしばし歓談し――。
 やがて尋常ならざる緊張感と共に決戦の刻を迎える男女。男は意中の女のもとへ進み出て思いの丈をぶちまけて手を差し出し、女がその手を取れば――。

「ちょーーーっと待ったーーー!」

 なお、告白を受けた女に思いを寄せる男が複数いた場合は、このように乱入できる。
 そんな、今はもう存在しないはずの『集団お見合いバラエティ』が放送されているこの状況を放置すれば、どうなるか?
 ――割と、害はないんじゃないかなという風にも思われた。

●思う所は多かれど
「男から告白することが大前提、っていう時点でもう古臭い気もするんだけど」
 六花のグリモアを掲げながら、ミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)は息を吐く。
 それに、件のテレビが現出したUDCアースでは、特に『誰が誰を好きになっても良い』世界。一方的な決めつけが蔓延っては困る人だって多かろう。
 不法投棄されちゃった哀れなブラウン管テレビが不気味に垂れ流す放送は、ミネルバが今まさに一部始終を動画で猟兵たちに見せた通りの『お見合いバラエティ』というジャンルの番組を届けているという。
 これはまさに妖怪のしわざであり、放置すれば現実世界がこの放送の世界に『切り替わって』しまうのだとミネルバは説明した。
「こういうのは自由意志でやるから楽しいんでしょうに、強制される世界になったらたまったもんじゃないでしょ? だからお願い、何とかしてきて頂戴」
 何とか、と申しましても。猟兵たちが困惑の表情を浮かべるのも無理はない。
 番組を放送している妖怪を、その、退治すれば良いのだろうか?
 問われたミネルバは、ふふっと悪戯っぽい笑みを浮かべて答えた。

「ううん、逆よ。みんなには、この番組に全力で乗っかってもらいたいの」
「「「えっ」」」
「戦わなくていいからね、カップルを成立させようとするっていう番組の主旨にさえ沿ってれば性別も手順も問わないから、とにかく好きなように楽しんできて欲しいの」

 つまり、こうだ。
 現在独り身の猟兵であるならば運命の相手を探しに来たていで妖怪に近付き、良縁を探すか、そのフリをしてもいい。その気がないなら最後に断ればいいのだから。
 既にカップルが成立している二人であるなら、関係が成立した当時を思い出すなどして改めて告白をし直してもいいだろう。
「いい? その気がなくて番組の企画に乗るつもりもないなら、無理に参加しなくてもいいからね。大事なのは妖怪の番組に全力で付き合ってあげることだから」
 猟兵たちがノリにノってやることこそが、妖怪に戦わずしてダメージを与える唯一の方法なのだからと、真顔で言いながら転移の準備に入るミネルバ。

「ああ――妖怪なんだけど、『足長手長』っていうつがいの妖怪なの。でも、色々あって足長は手長を見ることができない状況なんですって」
 相思相愛なのに、かわいそうよね。
 UDCアースへと転移する猟兵たちが、その呟きを聞いたかは定かではない。


かやぬま
●ごあいさつ
 はじめまして、あるいはお世話になっております、かやぬまです。
 これももう昭和レトロの領域になるのか……と顔を覆っています。

●何をすればいいの?
 必ずしも集団お見合いという形式に従わないといけない訳ではないので、以下のご案内を参考にして行動して頂ければ幸いです。

 ・お一人様の場合:かやぬまの方でプレイングを組み合わせて程良くそれっぽい展開にしつつも、確定ロールでカップル成立などという事態にはならないようにしますので、お見合いバラエティに自分が放り込まれたらどのように行動するかを教えて下さい。
 ・ペアやカップル様の場合:あらかじめご相談の上プレイングを書いていただくことをオススメします。原則プレイングでご指定いただいた展開にてカップル成立までを描きます。
 ・どちらの場合でも、PC様が乗り気でないプレイングは採用率が下がりますのでご注意下さい。
 ・HLBLGL全て対応可能ですが、過度のエログロ等は対応不可です。

●プレイング受付期間
 シナリオの内容が内容なので、戦争シナリオながら恐れ入りますが受付期間を設けさせて下さいませ。
 日時はMSページとタグでお知らせしますので、ご確認をお願い致します。

 それでは、妖怪退治? のために頑張りましょう! よろしくお願い致します!
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第1章 ボス戦 『黄泉の妻返し・足長手長』

POW   :    手長・黄泉返りの約定。または哀しき妻の羞恥。
自身の【隠した顔を敵に見られる事】を代償に、【顔を見た対象に骸魂化した黄泉の軍勢】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【生への飢えのまま死の雷を纏った武具】で戦う。
SPD   :    足長・黄泉返しの約定。または愚かな夫の矜持。
【妻である手長の守護する】事で【埒外の生物を殺害可能な存在又はそれその物】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    足長手長・果たされた約定。または憐れな比翼連理。
【二人が黄泉の力と埒外の力】に覚醒して【死生を超越した魂を共有した存在】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はブラミエ・トゥカーズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●お詫びとお知らせ
 マスターよりに記載すべき今回のプレイングボーナスを失念しておりました!

=============================
プレイングボーナス:番組の企画に全力で乗っかる(戦わずともダメージを与えられます)。
=============================

 こちらが今回のシナリオのプレイングボーナスです、よろしくお願い致します!
●いとしいあなた、さりゆくはずがない
 妖怪・足長は、愛しい手長を黄泉返らせたは良いが、代償として顔を見ることを禁じられてしまった。
 相思相愛にして、互いの想いを疑うこともなければ、もう二度と離れ離れになることもない。
 そんな二人は、他の妖怪――いっそもう範囲を広げて生きとし生けるものすべてが愛し合い、幸せになることを願い、お見合いバラエティに手を出してしまった。

 どうしてそんな結論に至ったんですか? というのはさて置き、骸魂の思惑を放置する訳にも行かないので、猟兵たちは問題のブラウン管テレビの前に立つ。
 すると、如何なることか。猟兵たちは画面の中に吸い込まれてしまったではないか。
 気がつけば、そこは映し出されていた画面の世界の中。
 眼前には、手長とそれを振り返ることを許されぬ足長の姿があった。

『ようこそおいで下さいました。今回のロケ地はすずめヶ丘公園の敷地内です』
『緑豊かな敷地に、噴水やベンチ……。如何にもなシチュエーションを用意しました』

 辺りを見回せば、確かにちょっと洒落た公園にいると、知れず心が高揚するような――何というか、心ときめく雰囲気にもなるというもの。
 このノリに付き合って、妖怪『足長手長』を満足させてやれば良さそうだ。
 演技でも本気でも、全力で。出演者、募集中である。
鳳凰院・ひりょ

お一人様参加

うん、素敵な出会いがあるかもしれない!という事で参加です
演技、演技、と思ってやると俺の場合は凄く分かりやすい(演技下手)なので、本気で楽しむつもりでいきます!(敬礼

ん~…こういうのはアピールポイントを提示した方がいいのかな?
天涯孤独の身ゆえに、1人暮らしが長いので家事等は一通り出来ます!これは一つ長所かも
あとは…、誰かを癒したり、支えたりするのは結構好きかな

お互いに支え合える存在が出来たら嬉しいな、って思ってます!
大切な人が出来たら憧れてるシチュエーションは膝枕してもらう事!とかかな

企画の中では大いに喜び大いに悲しみ、目一杯感情を表現して場を盛り上げます!


栗花落・深香


弟の自立までは恋愛する気になれないけど…
楽しそうだし参加しちゃおうかしら♪

桜色のシャツに薄水色のロングスカートを合わせ
髪はバレッタで留めておくわ
色味は控えたつもりよ
ふふ、いい風ね

【演技】でおしとやかさを前面に出し
話し好きな方には聞き役に、話下手な方には話し役に
仕事柄色んな立場の人と話す機会が多いから
どんな趣味にも合わせてみせるわ

仕事に無駄なものは無いもの
尊敬に値しない人なんていない
だから私は全ての人に敬意を持って接する
ただし猟兵としては話せない事もあるから
質問には真実の中にもほんの少しの嘘を混ぜて

お気持ちは嬉しいけれど…ごめんなさい
でもね、楽しかったわ
素敵な時間をありがとう

※UCは判定用に


怨燃・羅鬼

はい☆今週も始まりました『らきちゃん☆の集団お見合いテレビ』~
本日もアイドルのらきちゃん☆と足長手長さんの司会でお送りするネ!
先週も中々波乱万象な展開でしたが今週はどんな出会いが(ry


※しばらくお待ち下さい



『わたしは番組を乗っ取りました☆』のフリップボードを抱え正座☆
全力で乗っただけだから、らきちゃん悪く無いネ!というわけでゲストのらきちゃんだよ☆

アイドルなのにお見合いして大丈夫?炎上系だから平気平気!

それじゃあ魂渇頑張っちゃうぞ☆
らきちゃんの好みは美味しそうな人だよ♪
歌【地形破壊・ブレス攻撃】とか終両離とか特技でも殺る?殺る?


というわけでこの番組は今日で最終回☆
次週はらきちゃん主役の番組を


尾守・夜野
あらぁお見合い?
素晴らしい企画ね!
素敵な殿方げっとを夢見、私(女性人格)が一人いかせて貰いましょう

…黄泉の約を違わぬ素晴らしい夫君なのね
互いを見る事が叶わぬから幸せなカップルをみたかったのかしら?

お膳立てから始まる戀もありましょうが全てが全てそうだとは限らない

故にとめさせて貰うわ
まぁそれはそれとて一時の逢瀬を楽しむのだけれど
別の私は普通に男だから付き合うとか出来ないから会話楽しむだけだけどね

なお、私肉体その物は男なのよね
番組趣旨でいうなら選ぶ側ね★
人数比が女性少ないならそちらでもいいけど

どちらにせよ思わせ振りにした上で振るわ
私苛め甲斐のある殿方のが好きなの
ごめんなさいね?



●祝・UDCアース地上波進出!
『ああ愛しの手長、そういえば番組のタイトルを決めていなかったね』
 女の子ならば誰もが憧れる(と思われる)ウェディングドレスも美しい――けれど其の姿を視界に入れることは許されない、花婿姿の容姿端麗な男妖怪が呟く。
『まあ足長ったら、番組のタイトルはとっても大事なものですのに』
 口調こそたしなめるようなものであれ、その名の通りとりわけ長い両の手を足長の首元にゆるりと絡める手長。うーん、ナチュラルに見せつけてくる。

「はい☆ 今週も始まりました『らきちゃん☆ の集団お見合いテレビ』~!!」
『『待って』』

 はよお前らもうちらみたいなラブラブカップルになれよと言わんばかりの絡みから始まった番組を、タイトルがふんわりしているという盲点を突いて初手からジャックしに来た怨燃・羅鬼(怒りの心を火に焚べろ・f29417)のごく自然なタイトルコールに、足長手長は絶妙に息を合わせて待ったをかけた。
 だが、ちょっと制止の声をかけられた程度でこのらきちゃん☆ の暴走が止まる訳がない。1カメさんの前にずずいと迫りながら、むしろ足長手長二人の手を同時に引く勢いでオープニングを堂々と務める!
「本日もアイドルのらきちゃん☆ と、足長手長さんの司会でお送りするネ!」
『ええ……』
『えええ……』
 まあ百歩譲って、らきちゃん☆ と名乗る闖入者もよく見れば同じ妖怪、恐らくは陰摩羅鬼であろう。
「先週も中々波瀾万丈な展開でしたが、今週はどんな出会いが――もごっ」
『よし、確保したぞ!』
『つまみ出せ!!』
 司会の足長手長としては、らきちゃん☆ の乱入はまあそれはそれで面白いかなと思い始めていたのだが、番組プロデューサーを始め真面目なスタッフがそれを是としなかった。
 今頃ブラウン管テレビの画面には『~しばらくお待ち下さい~』の文字が映し出されているに違いなかった。

 ――テイク2。
『はい、という訳で今週も始まりました『あしてな☆お見合いTV』!』
 何かそれっぽいタイトルをつけて再開された番組の顔は、やはり足長と手長。ほんのりらきちゃんテイストが混ざっているのはきっと気のせいではないだろう。
 その後ろには『わたしは番組を乗っ取りました☆』のフリップボードを抱えてちょーんと正座するらきちゃん☆ の姿がチラリ。アッやっぱり怒られたんだ。
(「全力で乗っただけだから、らきちゃん悪く無いネ!」)
 でも表情は全力でテヘペロしてるあたり、反省の色が皆無である。それでこそである。
『今夜のゲストは?』
「らきちゃんだよ☆」
 肝を冷やすスタッフたちの前で、当の出演者たちは案外ほのぼのとしていた。
『らきちゃん……は、自称アイドルなのにお見合いをしても大丈夫なのかしら?』
「自称じゃないよ、ホンモノのアイドルだよっ☆」
 ヴェール越しにらきちゃん☆ の身を案ずる優しい手長おねえさまに、らきちゃん☆ がフリップを上下させながら訴える。
「それに、アイドルはアイドルでも炎上系アイドルだから平気平気!」
『……そ、そうかい……』
 これには足長おにいさんも、苦笑いで返す他なかった。

●アイドルというかモデルさんですけれど
(「弟の自立までは恋愛する気になれないけど……」)
 その乙女を形容するなら――純白。
 お見合いバラエティなる戦場に舞い降りた文字通りの天使は、胸元にピンクのハート型をした名札をつけていた。
 書かれた名前は『深香』。本名、栗花落・深香(暴走おねーちゃん・f03474)。
『こんにちは、ええと――お名前の読みは『みか』でいいのかしら?』
「ええ、仕事は……モデルを少々』
『まあ!』
 アイドルにモデルと、今日の放送はひときわレベルが高いと暗に含めつつ手長が声を上げる。深香は少しはにかむような笑みで返すと、カメラにさりげない目線を送った。
「今日は楽しそうだし、参加しちゃおうかしらと思って♪」
 頬に軽く人差し指を添える仕草に、キラッキラのエフェクトがかかった瞬間だった。

『深香さんの今日のコーデはとっても春めいていて素敵ですわ、ご覧になって』
 手長がすらりとした両腕を広げて深香を紹介すれば、くるりと一回転して薄水色のロングスカートがふわり広がる。上に合わせた桜色のシャツも爽やかで美しい。
 花咲くウェーブヘアを留めるバレッタも愛らしく、全体的に控えめな色合いで統一されているのがまた奥ゆかしいではないか。
「――ふふ、いい風ね」
 うららかな天候に、美しい自然豊かな公園。
 これがオブリビオンの仕業でなければ、と思わずにはいられない。
 けれどもこれも立派な『お仕事』、深香はそっとハート型の名札に手を添えると、お見合いパーティーという名の戦場へと赴くのだった。

●本日の好青年枠です
 何やかやで足長おにいさんは名残惜しそうにしながらも手長おねえさまと離れて、男性参加者の方へとマイクを向けるべく、そのびっくりするほど長い足で歩いていく。
『やあやあ、本日はようこそ僕らの番組へご参加下さいました! 早速ですが、お名前から教えていただけますか?』
「はい、鳳凰院・ひりょです! 素敵な出会いがあるかもしれない! という事で参加ですっ」
 さっぱりとした短髪をはじめ、清潔感のある黒で統一されたコーデ。
 鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)、ズビシと敬礼しつつ、堂々の登場だ!
『気合い十分ですね、今日は良いご縁があることを僕からも祈っています』
 足長の言葉にこくこくと頷きながら、ひりょはうっすら掌に汗をかきながら拳を握る。
(「演技、演技と思ってやると、俺の場合は凄く分かりやすいだろうから」)
 ひりょは、己が演技が下手であるということを誰よりも理解していた。そんなに謙遜しなくても、とは思うものの、ご本人が言うのだからそうなのだろう。
(「だから――本気で楽しむつもりでやらせてもらいます!」)
 みなぎる気合い故の敬礼であったかと、気付いたものは果たして存在しただろうか?
 少なくとも眼前の足長は、微笑ましく見守るばかり。
『それではひりょさん、よろしければ今日の抱負や理想などを一言どうぞ!』
 ずいとマイクを向ける足長に、一瞬わあと目を丸くしつつも、ひりょは堂々と答えてみせた。

「お互いに支え合える存在が出来たら嬉しいな、って思ってます!」
『素晴らしい……!』
「大切な人が出来たら、憧れてるシチュエーションは……」

 ――膝枕してもらう事! とかかな?

 この一言を聞いた瞬間、足長おにいさんが文字通り卒倒した。
「わあああ!? あ、足長さん!?」
『……ひりょ君……尊い、尊いよ……』
 この時、足長の脳裏では己が手長に膝枕をしてもらうとしたら、という妄想が一瞬にして駆け抜けていったのだ。
 だが――その妄想(ゆめ)は、足長が手長の顔を見てはならぬという制約に縛られている以上は叶わないことでもある。
『君を……応援している……(がくっ)』
「足長さーーーん!?」
 何だか、一方的にクソデカ感情を押し付けられてしまったひりょ青年は。駆けつけたスタッフに足長を託して、いざ決戦の地へ――!

●ほんのひととき、楽しみましょう
『えっ、と……『あなた』は、私の担当でいいのかしら』
 手長のおねえさまが一度確認をしたのは、尾守・夜野(墓守・f05352)を『どちら』かと判別しかねたからに他ならない。
 しかし元より来るもの拒まず、何人であっても絶対お見合いさせる番組の司会たるもの、すぐに気を取り直して夜野に迷わずマイクを向けた。
「あらぁ、お見合い? 素晴らしい企画ね!」
 白い肌に黒い髪、赤い瞳が映える端正な顔立ちで、夜野は今『私』たる女性人格を表に出していた。
「素敵な殿方げっとを夢見、私が一人いかせて貰いましょう」
『ふふ、そんなに乗り気だと私も嬉しいですわ――夜野さん』
 胸の名札を見て、黒と赤の美しいひとの名を呼ぶ手長に、夜野がふと声を掛ける。

「……黄泉の約を違わぬ、素晴らしい夫君なのね」
『!!?』

 突然愛しの旦那さまのことを褒められて、分かりやすく顔を真っ赤にする花嫁。
 口をぱくぱくとさせて、何とか言葉を紡ごうとするもなかなかそれが叶わない。
 そんな手長の様子を微笑ましく見守りながら、夜野は言葉には出さずただ思う。
(「互いを見る事が叶わぬから、幸せなカップルをみたかったのかしら?」)
 ふふ、と整った顔の口元に笑みを浮かべて、他の参加者たちが集まる広場へと向かう。

 ――お膳立てから始まる『戀』もありましょうが、全てがそうだとは限らない。

 故に、この企画ごと止めさせて貰うわね。
 まぁ、それはそれとして、一時の逢瀬を楽しむのだけれど。
 そんなことを思いながら他の参加者――猟兵以外の妖怪連中は恐らくサクラか、それとも純粋に公募に応じた一般妖怪か。その輪の中に入り込む夜野。
 なお、夜野の肉体には複数の人格が存在しており、別の『私』はごくごく普通に男なので、今の夜野にガチ恋をされてもお付き合いはごめんなさいなのだった。
 ならば何をしに来たかって? 会話とか雰囲気とかを楽しむためですよ!

●フリータイムというやつです
「それじゃあ『魂渇(こんかつ)』頑張っちゃうぞ☆」
「今何か変な漢字当たらなかったかな!?」
 らきちゃん☆ 必殺のパワーワードに、光の速さでツッコむひりょには才能があるのかも知れない。
「あっ、らきちゃんの好みは『美味しそうな人』だよ♪」
「えっ好み……!? 少なくとも俺は美味しそうではないんじゃないかなあ!!」
 本能的に身の危険を感じて、ターゲットから何とか逸れようと必死になるひりょお兄さん。がんばって!
(「ん~~~~、こういうのはアピールポイントを提示した方がいいのかな!?」)
 意を決したひりょが拳を握りしめながら、女性陣(広義)へとアピールを放つ。
「俺は天涯孤独の身の上で、だから……一人暮らしが長いので、家事等は一通り出来ます!」
「おおー! 奇遇だねっ☆ らきちゃんも終両離(おりょうり)が特技なんだ♪」
「ふふ、こんなところでファラリスの雄牛とご対面とは思わなかったわ」
「夜野さん、ご存じなの? 私、初めて見るのだけれど……」
 ごくごく普通の自己アピールをしたはずなのに、反応がカオスだった。どうしてお料理の話で拷問道具が普通に出てきて、それを懐かしげに眺めたりする人が出るんですか?
 そして一人知らんふりをした深香であったが、実はこの牛のカタチをしたモノの正体は把握済みであった。それを隠すことで会話の幅を広げ聞き上手に回る高等技術だ!
 あとは、ほら、トップモデルが拷問道具のことを知ってるっていうのは、キャラ的に……ね……?

(「仕事に無駄なものは無いもの」)
 得た知識に、貴賤もない。
(「尊敬に値しない人なんていない」)
 だから深香は、誰とでも等しく敬意をもって接することが出来る。
 ――猟兵としては口を閉ざさねばならぬこともあるが故に、猟兵同士ではない妖怪との会話にはほんの少しの嘘も巧みに混ぜて、いつしか深香は話題の中心になっていく。

「歌も得意だよ♪ 殺る? 殺る??」
「俺は誰かを癒したり、支えたりする方が好きだなあー!?」
 何故からきちゃん☆ の言葉に織り込まれた漢字の当てを完全に理解してしまったひりょは、半ば涙目になりながらも必至にとんでもねえ陰摩羅鬼との会話を成立させていた。
 そんな猟兵たちの様子を自然と一歩退いたところから眺めていた夜野は思う。
(「私、肉体その物は男なのよね」)
 それすなわち――番組趣旨で言えば『選ぶ側』ということだ!
 人数比的に、一般妖怪を除けば己が男性側に回った方がバランスは取れる。取れるが。
「あっ、あの……向こうのベンチで、少し二人でお話、しませんか……!」
「あらあら、まあまあ」
 何と、夜野にダイレクトアタックを仕掛けた河童の一般妖怪が現れたのだ!
 見れば、深香も別の唐傘お化けと二人で中睦まじく会話を弾ませている。
(「……ふぅん」)
 気付かれぬように悪戯っぽい笑みを浮かべ、夜野は河童の皿をついと撫でた。

「お誘いありがとうね、喜んで」

●告! 白! ターイム!
『フリータイムはお楽しみいただけたかしら? そろそろお待ちかね……』
『告白タイムを始めよう! 男子諸君、想いを伝える準備はいいかな!?』
 男女に分かれてずらり横並び、男が一人ずつ意中の女の前に立って一言叫び、答えを待つ。運命の時であった。
 一般妖怪が数組カップルになるさまは微笑ましくもあったが、彼らについてはこの番組を打ち切りにしてしまった後も縁が続けば良いとしか言えない。
 やがて、夜野の前に先程の勇敢な河童男子がやってきた。
「素敵な方だと一目惚れでした! よろしくお願いします!」
 ぺこりと頭を下げた河童の皿を、先程のように撫でる夜野。

「――私」
「……!」
「苛め甲斐のある殿方のが好きなの、ごめんなさいね?」
「うわあああああああああああああん!!!」

 思わせぶりにした上で振る、これもまたこの番組の醍醐味であったという。

 次は、深香の前に三名ほどの妖怪がちょっと待ったコールで集まった。モテモテだ!
 けれども、深香の答えは決まっていて――。
「お気持ちは嬉しいけれど……ごめんなさい」
「「「うわああああああああああああああああん!!!!!」」」
 三人揃って公園の端へとダッシュしていく妖怪の背中を見送りながら、深香は微笑む。
「でもね、楽しかったわ。素敵な時間をありがとう」
 それは、心からの感謝の言葉。
 いつか、本当の恋が深香の元に舞い降りるその日まで――。

「あれれ~? 猟兵側でカップルできないね! というわけでこの番組は今日で最終回☆」
「待って!? まだ他の猟兵さんも出番待ちしてるから!!」
「次はらきちゃんが主役の番! まーかせて♪」
「それだけは! それだけは!!」

 そんなどったんばったんを、足長手長の司会夫婦は呆然と眺めていた。
『何かしら……この、この……』
『僕たちを置いてけぼりで盛り上がってる感と、ものすごい敗北感は……?』
 そりゃあ君たち、冒頭でらきちゃん☆ に番組ジャックされた時点でもうアカンて。
 結局ひりょお兄さんが誰かに告白をしに行くつもりだったのかは、誰も知らないまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリスティアー・ツーハンドソード
アリスティアー・ツーハンドソード101歳僕を大切にしてくれる素敵なアリスを募集中です髪は金色のロングウェーブ瞳はブルー犬派活字に忌避感が無く小柄で大剣を持つ姿が(以下略)

と、「理想が高すぎてモテないやつ」をやってバラエティー味を持たせよう

勿論話してる好みに偽りはないし理想と合致してる人物が入れば仲良くはなりたいが…知っているその人は100年前に別れてしまってるからね、難しいだろう

だが道化を演じつつ恋に悩むものがいるなら100年の経験を活かし【援護射撃】しよう
王子として人を導くのは恋の道でも当然のこと
それに僕はアリス…「どんな状況でも自分で道を選べる人物」が好きでね、そうなるように応援するよ


臥待・夏報
確かに番組は悪趣味だと思うけど
お見合い自体は別に普通じゃない?
ちゃんと取り決めしたほうがいいだろうし、うちの親だってお見合いだし
恋愛結婚の人とか基本的に親族と縁切られるから実物見たことないよ……
(説明しよう!)
(こう見えて、エージェント臥待は日本海沿岸の限界クソ田舎出身者なのである!)

とりあえず企画は企画だから全力で真面目に取り組もう
年収とかはいいとして、みなさんどこの檀家かな?
…………
えっテレビじゃ宗教の話題はNG!?
なんでだよお見合いだろ一番重要なとこじゃないの!?

そもそも夏報さんの身体たぶん子供産めないし
縁組の土俵に立てないような気が
えっそういう問題じゃない!?
令和のお見合い難しいな……


セツ・イサリビ
なに、心配ない。万事引き受けた
UDCアース・ショウワ時代の嗜みもあるんだ、この俺は

【実況と解説】
テレビの前の皆さん、恋してるかーい?(コールアンドレスポンス)
さあ、ついに始まりました『第1247回とびだせ! ラブラブお見合い大作戦』
実況は『恋、すなわち猫』セツ・イサリビ
解説は『まだ恋よりちゅうるなお年頃』黒猫のポウ(人間年齢13歳独身・オス)でお送りします

「さりげない気くばり、これは好感度アップが期待されるな」
「にゃー(解説)」
「時には強引な君も悪くない」
「にゃー?(解説)」

※いいノリでボケとツッコミの実況解説します
※猫(ツッコミ)はセツに容赦ありません
※盛り上げ役にお使いください


ミリアリア・アーデルハイム
これが噂に聞く合コンっていうものですね!よろしくお願いします

彼氏はいないですね。ずっと
普通にお話できて、一緒に楽しめれば嬉しいです。あとは、仕事に理解を頂ければ、使命があるのでとそっとケージを撫でます

嫌いなタイプは
薬品や術を使って身体や精神の自由を奪うとか、檻や籠や座敷牢に閉じ込めるとか、罠とか縄とか鎖とか猿轡とか拘束具を使うとかしてくる人でしょうか

あ、拳をギリギリ握ってました。ぐーぱー、ぐーぱー

手長足長さんが早く呪いから解放されますように

私にもいつか互いを束縛してもそれが幸せと笑い合えるような、そんな方が見つかるでしょうか。

慣れない事をして疲れました…ね(眠る)

共闘は種族性別年齢問わずOK



●この番組は乗っ取られる運命にあるのか
 先週の放送が本当に波瀾万丈だったのかは定かではないが、少なくとも先程生放送した猟兵参加型集団お見合いバラエティ番組、その名も『あしてな☆お見合いTV』はひとまず数組の一般妖怪カップルを誕生させて閉幕した。
 だが、これで収録が終わったと思ってもらっては困るな……!

『何だって? まだ参加を希望する声が止まない!?』
『まあ素敵、そういうことなら番組の枠をいくらでも拡大しましょう!』

 司会の足長手長がそう言ってすぐ実行に移されるのが流石である、多分この局はいくら番組を延長しようが前にも後にも他のプログラムは用意されていないのだろう。
 そして、また数名の猟兵たちが、舞台となるすずめヶ丘公園へと姿を見せる。
 いずれもこれまた猛者揃い、果たして真の勝者となるのはどちらか――!?

『どうもー! 引き続き『あしてな☆お見合いTV』、第二回戦を』
「テレビの前の皆さん、ラブしてるかーーーーーい?」
「「「Foooooooooooo!!!!!」」」
『『うっそ』』

 せっかく決まったばかりのタイトルコールは、無情にもびっくりするほどよく通るイケボから始まるコールアンドレスポンスによって遮られた。そら変な声も出ますわ。
 手長と、その顔を見ないように配慮しながら足長とが声の方を振り返れば、そこには方に愛らしい黒猫を乗せた青年――セツ・イサリビ(Chat noir・f16632)の姿が!
 その手にはいつの間にか番組収録に最適化された高性能マイクが握られていた。うーんこれ絶対その辺に落ちてた手頃なサイズの何かを変形させましたね?
 今日のセツは超常によって相棒・ポウとの連携もますます絶好調、常ならば飄々とした様子で物事を俯瞰するような立場から一転、ノリノリで司会の役をジャックである。
「さあ、ついに始まりました『第247回とびだせ! ラブラブお見合い大作戦』。実況は『恋、すなわち猫』セツ・イサリビ(外見年齢28歳・経歴はひみつ)、解説は『恋よりチュ~ルのお年頃』黒猫のポウ(人間年齢換算13歳独身・オス)でお送りします」
「にゃー(よろしく、よろしく)」
 エッこの番組そんなご長寿だった? エッ……などという足長手長の明後日の方向へ向かった疑問もさて置いて、新? 司会のセツと黒猫のポウがカメラの前にずずい。
 なお、ポウさんは基本的に「にゃー」としか鳴きませんが、画面上のテロップにはカクファン超技術で一瞬にして人語に翻訳されたテロップが出ます。すごい!

「――なに、心配ない。万事引き受けた」
「にゃー(うむ)」
『……えっ?』
 突然足長手長の方を振り返り、小声でフォローを欠かさないセツとポウ。
「UDCアース・ショウワ時代の嗜みもあるんだ、この俺は」
「にゃー(司会の役目、やり遂げてみせよう)」
 呆然と肩車の姿勢で立ち尽くす足長手長を残して、いよいよ戦場へと赴く一人と一匹。
『……司会、代わって欲しいなんて頼んでないのだけれど』
『……まあ、せっかくだから、今回はやってもらおうか?』
 生放送にはハプニングもつきものだし――という心地で、足長手長はその背を見送った。

●超がつくほど個性的な面々です
「これが噂に聞く『合コン』っていうものですね! よろしくお願いします!」
 ミリアリア・アーデルハイム(かけだし神姫・f32606)がカメラに向かってぺこりと一礼、新司会のセツ(withポウ)から早速マイクを向けられる。
「失礼、単刀直入に聞くが『彼氏いない歴』はいかほどかな?」
「彼氏は……いないですね、ずっと」
 番組の趣旨を理解しているもの同士、常ならば抵抗もあるような内容でもスムーズにやりとりが出来るのは幸いだった。
「今日は、どんなお相手と巡り会えたら良いとお考えだろうか」
「にゃー(できる限りサポートするぞ)」
 ポウがセツの肩の上で耳をぴぴんとさせながら相槌を打てば、ミリアリアはぱっちりとした琥珀の瞳をひとつまばたかせて、はきはきと答えた。
「普通にお話できて、一緒に楽しめれば嬉しいです。あとは……」
 そう言って、ミリアリアは一度言葉を切り、抱えていたケージをそっとひと撫で。
「仕事に、理解を頂ければ。使命があるので――」
 感慨深げに天を仰げば、どこまでも広がる晴天。よもやまさか、ここまで衛星追跡の手が伸びているなどということはあり得まいと信じよう。

 そう、普通に『お付き合い』が出来れば良いというのは、ミリアリアの本音だった。
 何せ子供は月に数回攫われるのが当たり前だという認識と、自身もその出自から攫われてからの保護されるのコンボを幾度となく繰り返した果てに『束縛を嫌う』という至極もっともな性格を得たのだから、ささやかな幸せこそが至上となるのだ。

「ありがとう、次は……あちらの藍色の君に話を聞こうか」
「にゃー(行ってみよう)」
 一度ミリアリアに会釈してその場を離れたセツとポウは、何やらぶつぶつと呟いているらしい灰と藍色の少女――女性と呼ぶべきであったろうが、その雰囲気は明らかに少女めいていた――臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)へと近づいていった。
(「確かに、番組は悪趣味だと思うけど」)
 夏報は、顎に手を添えてううむと唸っていた。割と真剣な顔をしていた。
(「お見合い自体は別に普通じゃない? ちゃんと取り決めしたほうがいいだろうし、うちの親だってお見合いだし」)
「こんにちは、早速だが本日の抱負などを――」
「恋愛結婚の人とか基本的に親族と縁切られるから、実物見たことないよ……」
「にゃー!(右の前脚を上げてにくきうを見せながら解説のポーズ!)」

 ――説明しよう!!
 こう見えて、エージェント臥待・夏報は日本海沿岸の限界クソ田舎出身者なのである!

「親族と……縁と切られる……?」
「にゃー(中々に壮絶である)」
「おっといけない、心の声がマジで音声になってしまったようだね」
 うっかり、てへ☆ とウインクをする夏報さん。
 とりあえず企画は企画だから、全力で真面目に取り組まんと一つ咳払い。
 そして――!?

「年収とかはいいとして、みなさんどこの檀家かな?」
「「「…………」」」

 ちょちょ、ちょちょちょい! とセツが額に変な汗をかきながら一旦夏報さんを一般参加者たちの輪から引っ張り出して別カメラの前に避難してきた。
「ここだけの話俺も神なので、いやだからこそ大きな声では言えないが……」
「にゃー」
「エッッッッ、テレビじゃ宗教の話はNG!!?」
 夏報が心底驚いた声を上げて、セツからどうどうと諫められる。
「なんでだよお見合いだろ一番重要なとこじゃないの!?」
「檀家の話は色々と繊細なのだ、お寺さんサイドで後から『何だあのお前の所の檀家は、そんなんだからお前の所は檀家が少ないんだよ』的に紛糾しても不毛だろう」
「まあ、お坊さんの事情もあるだろうけどさぁ~~~将来の話だぞ~~~?」
 さすがは古式ゆかしいお見合いの作法を引っさげて堂々入場しただけはある夏報さん、すっかり真剣そのものである。
 一般妖怪の皆さんに檀家制度が浸透しているのかどうかだけでも確認してみようかという話の流れになりつつあった、その時だった。

 ――わっ。
 一般妖怪の輪の中心で、司会抜きでも盛り上がる謎の人物……いや、剣の姿が!
「やあ、アリス。僕の言葉を聞いてくれるかな?」
 その名をアリスティアー・ツーハンドソード(王子気取りの両手剣・f19551)、正体はその名の通り両手で握るよう設計された両手剣の愉快な仲間だ! シャベッタァァ!
「僕の名前はアリスティアー・ツーハンドソード、101歳。この僕を大切にしてくれる素敵なアリスを募集中です。髪は金色のロングウェーブ、瞳はブルー。猫よりは犬派」
「にゃー(ゆ゛る゛さ゛ん゛)」
 アリスティアー・オン・ステージの途中で聞き捨てならない台詞が入り、ネコチャン代表のポウがフーと毛を逆立てるのをセツがどうどうとなだめる。
「活字に忌避感が無く、小柄で、大剣を持つ姿が凜々しくも愛らしく……」
 アリスティアーの自己アピールを聞く一般妖怪の皆さんは、そのほとんどが微笑ましいものを見る目で笑みをこぼしている。
 そして、それこそがアリスティアーの狙いでもあった。単に道化を演じている訳ではない、『理想が高すぎてモテないキャラ』を演じてバラエティ性を高めているのだ。

(「勿論、こうして話してる好みに偽りはないし、理想と合致している人物がいれば仲良くはなりたいが……」)
 公園の芝生の突き刺さり心地が絶妙に気持ちいいなどと思うのだろうか、定かではないがアリスティアーはすぐその考えを自ら否定する。
(「知っている『その人』は百年前に別れてしまっているからね、難しいだろう」)

 両手剣にさみしげな翳りが差したのは気のせいか、はたまたそれを感じ取ったのか、アリスティアーの剣の柄をまさに両手でグッと握り――芝生から思い切り引き抜いた者あり。ミリアリアだ!
「ちなみに、嫌いなタイプは『薬品や術を使って身体や精神の自由を奪う』とか『檻や籠や座敷牢に閉じ込める』とか、『罠とか縄とか鎖とか猿轡とか拘束具を使う』とかしてくる人、でしょうか」
 ぎりぎりぎりぎり。アリスティアー(の柄)を両手で握りしめるさまはまさに自らの足で道を切り拓く『アリス』! これは絵になるし実際カッコいい! でも痛そう!

「……あ、ついギリギリ握ってしまっていました」
「あっ……」

 思わず力いっぱい手近な両手剣を引き抜いて切っ先を天にかざして握りしめながら思いの丈をぶちまけてしまったと、ミリアリアはそっと剣――アリスティアーを芝生に刺し直して拳をぐーぱー、ぐーぱー。
 一方のアリスティアーは、ちょっと名残惜しそうな声を上げてしまう。
(「僕は『アリス』……『どんな状況でも自分で道を選べる人物』が好きでね……」)
 たとえ道化を演じていようと、恋に悩むものがいるなら百年を生きた経験を活かして、いくらでも恋の援護射撃をしようと思っていたアリスティアー。
 王子様として、人を導くのは恋の道でも当然のこと、という理屈であった。
 そんなアリスティアーの元に、そろそろいいかなという顔で司会のセツとポウ、そして夏報が近づいていく。
「そもそも夏報さんの身体、たぶん子供産めないし、縁組の土俵にも立てないような気が」
「案ずるな、現代のお見合いは世継ぎを求めるばかりではない」
「にゃー(そういう問題じゃない気がする)」
「えっそういう問題じゃない!?」
 いつの間にか、アリスティアーを中心にセツとポウ、夏報、そしてミリアリアに足長手長までもが集まっていた。
「君たち……」
 その外側を、おっかなびっくりながらも更に囲う一般妖怪の皆さん。
 ミリアリアが、ふと元司会こと足長と手長の方を見て微笑んだ。
「足長手長さんが、早く呪いから解放されますように」
『『……っ』』
 金の差し色に藍色の衣装が良く似合う乙女は、そうして再び青空を見る。
「私にも、いつか互いを束縛しても『それが幸せ』と笑い合えるような……そんな方が見つかるでしょうか」
「……君が、その足で歩みを止めなければ、きっと」
 両手剣から穏やかな、けれど力強い声が響けば、ミリアリアはふっと脱力した。

「慣れない事をして疲れました……ね……」

 ――すやぁ。
 脱力も極まると突然の睡眠に陥るのか、咄嗟にくずおれるミリアリアの身体をセツが司会らしく責任を持って抱きとめ、そっと芝生に横たわらせる。
 テレビの中の世界とは思えぬ、白々しいほどに清々しい青空を見上げて、夏報さんもまたぽそりと呟いた。

「……令和のお見合い、難しいな……」

 今回参加者の皆様にも、いつか素敵なご縁がありますよう!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

落浜・語
【狐扇】
お見合いバラエティ……?
あー…なんか見たことがあるような、ないような…?
半分ネタかと…いやこれ以上はやめとこ

うん?あぁ、覚えてるよ。遊郭に出る影朧を誘き寄せる為に、遊郭でそれらしく殺人事件起こしたときだよな。
そうだね、それいいな。何度巡り合ったって恋をする。そんな噺ならどこかで幸せになれることだってあるわけだしな。
悲恋も人を惹き付ける噺ではあるけれど、せっかくなんだ、幸せなオチに持っていこうか。
なにがあっても、俺は狐珀を選ぶよ


吉備・狐珀
【狐扇】

お見合いばらえてぃ…?
仲人さんがおらず、このように集団で行うお見合いもあるのですね(珍しそうにきょろきょろ)

語さん
サクラミラージュの遊郭で噺家と遊女の恋を演じたことを覚えていますか?
あの依頼は影朧をおびき出すために死んだふりをしなければいけなくて
遊郭にまで踏み込んできた語さんを慕う女性に二人共殺されてしまった、ということにしました
あの時「来世で」と願ったけれど
この幽世で二人は出会うことができた、というのはどうでしょう?
そういう不思議があっても良いかなって
しかも、ここは遊郭の縛りはありません
自由に恋ができるようになった遊女と噺家の恋を演じてみませんか?
悲恋を幸せな結末にしましょう?



●それは、夢のつづき
 ――それは、嵐のようなひと時であったという。
 番組の主導権を完っ全に奪われながらも、一視聴者として、一参加者として楽しんでしまうという事態に陥りながらも、足長手長はそれでも放送を続行する。
 そう、ここからはある意味心穏やかに番組を進行させられるとスタッフからの連絡を秘密裏に受けたとか何とか、多分スケブにマジックで書かれたものを見せられたのだろう。
 足長おにいさんが送り出すのは、落浜・語(ヤドリガミの天狗連・f03558)。
 手長おねえさまが送り出すのは、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)。
 百年愛されたもの同士が、巡り会って愛し合う奇跡を寿ぐべく、番組は再開される。

「お見合い、ばらえてぃ……?」
 狐珀は公園の景色をきょろきょろと見回す。目に入るのは一般参加の妖怪の皆さんが、思い思いに歓談している姿。
「お見合い、バラエティ……?」
 狐珀の言葉を復唱するような形となった語もまた、周囲の様子を見回してはううむと首を捻る。何この……何? 既視感?
「あー……なんか見たことがあるような、ないような……?」
「語さん、ご存じなのですか? お詳しいのですね」
 さすがです、という狐珀の眼差しが眩しい。語は思わず顔を覆ってしまう。
(「半分ネタかと……いや、これ以上はやめとこ」)
 けれどすぐに柔らかい笑みで、狐珀の期待を裏切らぬように言葉を選んだ。
「……悪い、気のせいだった」
 そうなのですか、と素直にその言葉を受け入れる狐珀もまた愛おしい――けれど、その想いをつまびらかにするにはもう少し我慢が必要だ。
「仲人さんがおらず、このように集団で行うお見合いもあるのですね」
 物珍しそうにきょろきょろとした末に、狐珀が視線を向けたのは――語の方だった。

『あらあら、早速いい雰囲気でツーショットになりました、語さんと狐珀さん』
『運命的な何かを感じますね、これはもはや告白をするまでもないのでは!?』
 手長がすかさず二人の様子を捉えれば、その顔を見ないように気をつけつつ足長も状況を確認して小声で盛り上げていく。

「語さん」
 ぽそりと、狐珀が呟いた。
「サクラミラージュの遊郭で、噺家と遊女の恋を演じたことを、覚えていますか?」
 公園の芝生の上で並び立つ二人は、かつて。
「うん? あぁ、覚えてるよ」
 こことは違うどこかで、華やかなりし遊郭で、影朧の思惑を阻止すべく。
「遊郭に出る影朧を誘き寄せる為に、それらしく殺人事件起こしたときだよな」
「――はい」
 二人で過ごした思い出は、何であれいつだってついぞ先程のことのように思い出せる。
 あの時の、芝居とはいえ静かに燃え上がり儚く散った恋のことだって。
 狐珀は言葉を紡ぐ。所在なさげに己の指と指を絡めて。
「あの依頼は、影朧をおびき出すために死んだふりをしなければいけなくて――」

 ――遊郭にまで踏み込んできた、語を慕う女に二人とも殺されてしまった。

「……と、いうことにしました」
 そう、あの時の筋書きはすべて影朧を謀るための『演技』。実際死んだ訳ではないからこそ、こうして今、二人並んでここにいる。
 覚えているだろうか? あの時『最期』に『せめて来世は』と願ったことを。
 まるで本当に殺されたかのような熱と幻視の果てに、最期に願ったことを。
「『この幽世で、二人は出会うことができた』――というのは、どうでしょう?」
 絡めていた指と指を離して、両手を広げ、くるりと語の方を向く狐珀。
 都合が良すぎるでしょうか? でも、そういう不思議があっても良いかな、って。
 頬染めてはにかむ狐珀を、今すぐにでも抱きしめて攫ってしまいたい衝動さえ湧き起こりそうになるのを堪えながら、語は首肯する。
「――そうだね、それいいな」
 本職の噺家をも唸らせる、最高のめでたしめでたしではないか。
「何度巡り合ったって、恋をする。そんな『噺』なら、どこかで幸せになれることだってあるわけだしな」
 お墨付きをもらってか、それとも他ならぬ語からの同意を得たからか、狐珀はぱああと笑顔をほころばせる。
「はい――しかも、ここは遊郭の縛りはありません」
 今の二人は、どこか懐かしい公園のただ中で、大いに恋せよと背を押されている。
「自由に恋ができるようになった『彼女』と『噺家』の恋を、演じてみませんか?」

 あの日、悲恋に終わった結末を――今こそ、幸せな結末にしましょう?

 ――さく、と。芝生を踏む音が響いた気がした。
 本来ならばそこまで大きな音ではないはずなのに、それは大いなる一歩のようで。
 語が、狐珀へと思い切り近づいたのだ。
「……!」
「悲恋も、人を惹き付ける噺ではあるけれど」
 三年かけて稼いだ金を、一夜で消えても構わぬと尽くしなお叶わぬ恋物語があった。
 それはそれでひとつの心揺さぶる物語であることは、間違いない。
「せっかくなんだ、幸せなオチに持っていこうか」

 ――ぎゅっ。

 告白も、答えも、最初から必要なかった。
 ただ、噺家と遊女はこの幽世で遂に誓いを果たすのだ。

「なにがあっても、俺は狐珀を選ぶよ」

 どこまでが物語で、どこからが現実か。
 番組の演出か、本気か、もう境目が分からない。分からなくてもいい。
 狐珀を強く抱きしめた語の言葉こそが、真実なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グラナト・ラガルティハ
マクベス(f15930)と
何かしら変わったことが起きるのが猟兵の戦争だと思ってはいたが。お見合い番組とはまた…まぁ、私もマクベスとデートができるのは嬉しいが

さて、番組の流れに沿ってお見合いデートと行こうか。マクベスに誘われて公園へ。
公園か…あまり二人では来たことのない場所だから新鮮だな。
(陽の下を楽しそうに歩くマクベスに目を細め)
マクベスは陽の下もよく似合うな…。
(自分に照らされた様だと照れたのか視線を逸らした先に花を見つけ)
さすがに花壇の花は取るわけにはいかんがこれならば良いだろう。
(言いながら野花をマクベスに渡して)
一目見た時から決めていた。どうか私の愛しの青になってくれないだろうか?


マクベス・メインクーン
グラナトさん(f16720)と
お見合い企画に参加すればいいとかどういう戦場なんだろうな
ま、グラナトさんとデート出来るのは嬉しいからいっか

「ずっと気になってて…俺なんか恋愛対象じゃないかもしれないけど」
って感じでお見合いデートにお誘いかな
……実際、年齢差に悩んだしな

グラナトさんと公園デートは初めてかも
いつも夜だったり室内だったり最近だと海の中だもんね
「ふふっ、グラナトさんに照らされてるみたいだね」
照れくさそうにする姿に笑って

野花を渡されながら告白されたら
「もちろん、ずっとグラナトさんの『愛しの青』でいるよ」
ね、俺の愛しい赤…



●もう一度、始めよう
(「『お見合い番組に参加すればいい』とか、どういう戦場なんだろうな」)
 マクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)の素朴な疑問は至極ごもっとも、普通ならば何言ってだこいつ案件である。
 けれども仕事にかこつけて、とまでは言わなくとも、合法的に好きな人とのデートが出来るというのは当然悪い話ではなく。
(「ま、グラナトさんとデート出来るのは嬉しいから、いっか」)
 そんな訳で、マクベスは抜けるような青空の下、番組撮影の舞台となる公園へと先んじて足を踏み入れたのだった。

(「何かしら変わったことが起きるのが猟兵の戦争だと思ってはいたが」)
 一方のグラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)はある程度心の準備が出来ていたというか、もう何度も経験したからというか、やれやれと肩を竦めるばかり。
「お見合い番組とはまた……」
 さすがの燃える戦神も、戦争勝利のためにバラエティ番組に出演しろと言われるとは思わなかったか、晴れ渡る青空を思わず見上げてしまう。
 ――まさか、今まさに愛しいひとと同じ空を見上げているとは露知らず。
(「……まぁ、私もマクベスとデートができるのは嬉しいが」)
 考えていることまで同じと知ったら、どんな顔をするだろうか。
 そう思わずにはいられぬほどに、二人の心はひとつであったのだ。

『『ずっと気になってて……俺なんかじゃ恋愛対象じゃないかもしれないけど』、こんなメッセージを託してお相手を呼び出したマクベスさん!』
 心なしか、司会の手長おねえさまのテンションがいつになく高い。
 顔を見られないので雰囲気で察するばかりではあるが、足長おにいさんはその鼻息の荒さにやや気圧されながら言葉を受ける。
『そうですね、ツッコミ系少年18歳が呼びだしたのはお堅い印象の42歳(外見年齢)ゴッド。確かに、保護者のように振る舞われてしまう展開も予想されますが……』
『年齢差ッッッ』
『落ち着いて!』
 マクベスとグラナトの立場を改めて確認したことで、手長の興奮が最高潮に!
 足長は、肩車の姿勢が崩れそうになり慌てて彼女を窘めたという。

 わあわあきゃあきゃあと盛り上がる司会の様子を知ってか知らずか、マクベスは公園を散策する小径のそばでグラナトの到着を今か今かと待っていた。
(「……実際、年齢差に悩んだしな」)
 司会に託したメッセージを思い返し、ついでに想いを交わす前のことを思い出し、懐かしげにマクベスは目を細める。
 乗り越えてしまえば忘れがちだけれど、乗り越える前はひどく高い壁のように思えた。
 苦しくもあり、甘くもあったその思い出が、ありありと蘇る中――そのひとは、来た。

(「さて、番組の流れに沿ってお見合いデートと行こう……か……?」)

 司会の足長手長を通じてマクベスからのお誘いメッセージを聞かされたグラナトが、待ち合わせ場所にて落ち合うという段取りに、何一つ間違いはない。
 だから、ここでグラナトがマクベスと出会うのは至極当然なことなのだが。
(「何だ、この……この、愛しの青の眩しさは……!?」)
 今日は何時にも増して魅力的、とかそういう月並みな言葉では言い表せない、こう、煌めきを纏うマクベスがそこにはいたのだ。
「あっ、グラナトさん!」
「……あ、ああ」
 声を掛けることさえ忘れて見惚れてしまっていたグラナトに、彼の事情を知るよしもないマクベスが無邪気に声を掛ける。
 動揺を隠すべく敢えて平静を繕って返事をしつつ、待たせてしまったかと問えば、ううんと首を振る青の少年。
「……来てくれて、ありがと」
「こちらこそ、嬉しい誘いに感謝する」
 常ならばいきなり手を取って仲良く歩き出すところかも知れないが、今は『これから結ばれる者同士』。敢えて肩を並べ、歩調を合わせるに留めて小径に踏み出した。

「公園か……あまり二人では来たことのない場所だから新鮮だな」
 グラナトの言葉に、そうだねとマクベスが笑う。
「グラナトさんと『公園デート』は初めてかも」
 思えば、二人きりで過ごす時間はいつも夜だったり、室内だったり、何なら最近は海の中だったりしたものだから、青空の下で……というのは、確かに初めてかも知れない。
 幽世の、しかも不思議なテレビ番組のロケ地というシチュエーションにも関わらず、まるで本物の太陽が照らしてくれているような心地がした。
「マクベスは、陽の下もよく似合うな……」
 ――やはり、眩しい。楽しそうに己の隣を歩くマクベスは、間違いなく輝いていて。
 そんなマクベスから、とんでもない台詞が飛び出した。

「ふふっ、グラナトさんに照らされてるみたいだね」
「……っ」

 目と目が合った瞬間そんな台詞をぶち込まれて、無事でいられる男が居ようか。
 居ねえ! 居てたまるか! グラナトさんは神様だから盛大に取り乱したりはしないで視線を背ける程度に留まりますが明らかにこれは照れています!
(「花が、愛らしい花が咲いている」)
 決してこれは現実逃避ではなく、想いの丈を如何にして表現しようかと考えたグラナト神が閃いたアイデア。
「……さすがに花壇の花は取るわけにはいかんが、これならば良いだろう」
 そっとしゃがみ込んで野花を優しく手折るグラナトを、ニコニコしながら見守るマクベス。次に目が合った時、グラナトの手には赤い花が握られていた。

 立ち上がり、向き直る。
 赤い野花を、そっとマクベスに差し出すグラナト。
「一目、見た時から決めていた」
「……」
 金の瞳が、青い瞳を射抜くように見つめる。
「どうか、私の愛しの青になってくれないだろうか?」
 赤は好き。炎も好き。ヒーローが大好き。
 そんな『好き』の権化のような、恋をしたあなたから、告白をされたなら。
「もちろん――ずっとグラナトさんの『愛しの青』でいるよ」
 赤い野花を受け取る代わりに、花を持つ手を両手で包み、マクベスは笑った。

 ――ね、俺の『愛しい赤』……。

 カップル成立を見届けた司会の足長手長が、猛然と二人の元へと駆け出してインタビューをしに行ったのは、その直後のことであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

炎獄・くゆり
【紫炎】


エントリーナンバーいちばん、くゆりちゃんです!
イケメン漁りに来ましたぁ
よろしくお願いしまぁす!

というワケであたし好みのまだ見ぬイケメンは何処?
きょろりと参加者を見渡せば
まだ見ぬどころかよぉく見知ったイケメン発見!
紫陽さ――エッ見知らぬ妖怪に告白されてる!
ちょっと待った待った~~~!
このイケメンはあたしの獲物なんですけどお!

こうなったら勝負ですねえ
鬼ごっこでも隠れんぼでも殴り合いでも、オンナ同士タイマン張りましょ!
とことんぶちのめすんで見ててくださいね、未来のダーリン
なんちゃってぇ!
ウフ、紫陽さんもノッてくれるの超アガる!
恋敵はサクッとボコしてカップル成立させて盛り上げちゃいましょ~~


空露・紫陽
【紫炎】


理論はよく解らんが面白いモンには乗っかる主義でね
この歳だから良縁探しと尤もな理由で悪びれもなく
自己紹介は軽めに、お互い知りたいのは其処じゃないだろ?
お前さん達の事を教えてくれと藍紫を細め甘く囁きを落とす

おや、いきなり告白とは積極的なお嬢さんだなと
声を掛けてきた妖怪に柔く笑み零せば
突っ込んでくるのは俺を獲物扱いする元気な姫さん
くっは、思わず笑っちまいそうだぜ
全く…くゆりはいつ見ても飽きねぇな

なら俺は観戦と行こうか
止めるなんて冗談
やるならとことん頼むぜ?とオーダーする辺り大概だ
宜しく頼むぜ、未来のハニー
どうせなら乗っかる方が面白ぇだろ?

さぁ、俺と成立するのは?
…なんて、聞くまでもねぇやな



●恋はバーリトゥード!
 番組放送が順調に……順調に? 進む中、司会の足長手長は炎獄・くゆり(不良品・f30662)に何やら確認を取っていた。
『本当に、一般参加の妖怪と一緒でもいいんですの?』
『二人きりで進行させることも可能ですが……構わないのですか?』
「おっけおっけ! どうせなら番組に思いっきり乗っかって楽しみたいし~~~」
 ね? と振り返るくゆりから同意を求められた空露・紫陽(Indulgence・f30642)は少し後方に位置取りながら薄く笑う。
「構わんよ、理論はよく解らんが面白いモンには乗っかる主義でね」
 この歳だから良縁探し――というもっともな理由で、悪びれもなく気ままな男は共犯者(ツレ)の乙女に同意する。
 今回の放送も、波瀾万丈になりそうだという予感を抱き、ならばと司会は二人を一応男女に分けたそれぞれのグループへと案内していく。
 ――乙女の右腕がちょっとガトリングガンになっている程度、妖怪集団に混ざってしまえばどうってことありませんって!

「エントリーナンバーいっちばん、くゆりちゃんです!」
 雪女、口裂け女、高女……超絶個性的な女性陣に負けじと元気良く一番に名乗りを上げて、くゆりはやや離れたところに陣取る男性陣を、掌をひさしにしながら見遣る。
「イケメン漁りに来ましたぁ、よろしくお願いしまぁす! ――というワケで、あたし好みのまだ見ぬイケメンは何処?」
 このくゆりのテンションが、一気に場の――いや、番組全体の空気を大きく変えた!
「なっ……この娘、気合十分じゃない!」
「負けてられないわ、食われる前に食うッ!!」
 何たることか、女性陣が男性陣よりも先に次々と名乗っては列を飛び出して、お目当ての妖怪男性陣へとわっちゃわっちゃとアタックしていくではないか。カオス!
 えらいこっちゃの大騒ぎに、司会の足長手長も為す術なく見守る他ない。ていうか下手に手とか足とか出したらそれこそ大惨事の放送事故であるからして。
「あっれー? 何かいきなりテンアゲなのウケるんですけど!」
 誰のせいですかねぇ……という声が聞こえなくもないけれど、置いておきましょう。
 どったんばったんの公園広間をもう一度見回せば、くゆりの金眼が獲物……じゃなかった、お目当ての殿方を違えることなく捉える!

 ――まだ見ぬどころか、よぉく見知ったイケメン発見!

 うーんこれはもう一点買いの全ツッパ、紫陽さんに賭けるしかない。
 という訳で早速声を掛けようとした、その時だった。
「紫陽さ――」
「一つ目の小町です、よろしくお願いしますっ! ちゃ、チャームポイントは……目力ですっ」
「は、成程目力。俺は空露・紫陽、ヤドリガミ……まぁ、付喪神と思ってくれりゃいい」
 自己紹介は軽めに、他にもわらわらやって来た女性妖怪たちをいなしつつ、紫陽はそれら全員に紫紺の瞳を向けて――。

「お互い、知りたいのは『其処』じゃないだろ? お前さん達の事を教えてくれ」

 甘いイケボの囁きで、身も心も落としに掛かった! ぎゃあこの色男!!
 遠くではくゆりが『何いきなり人の獲物に手ぇ出してるワケ?』という顔をしている。
 たまらないとばかりに、バッと握手を求める手が差し出された。告白の合図だ。
「第一印象から決めてましたけど確信しました! 好きです付き合って下さい!!」
(「エッ見知らぬ妖怪にもう告白されてる!」)
 くゆりさんが、無意識に一歩踏み込んでダッシュする構えを取った瞬間だった。
「おや、いきなり告白とは積極的なお嬢さんだな」
 私よ、いやわたしよと次々差し出される手をどうどうと制しながら、紫陽は視線を向けずとも気配だけで察していた――己を『獲物』扱いする元気な『姫さん』が来るのを。

「ちょっと待った待った~~~~~!!!!!」

 ――どーーーん!!! モブ妖怪ちゃんたちを蹴散らして、バッと紫陽さんの前に立ちはだかるくゆりさん!!!
「このイケメンはあたしの獲物なんですけどお! 百億年前からそう決まってるんですけどお!」
 そんなくゆりの様子に、紫陽はくっはと思わず笑ってしまいそうになる。
(「全く……くゆりはいつ見ても飽きねぇな」)
 それは如何なるニュアンスの親愛の情か、悟らせぬのがまた大人の男の貫禄である。
 一方、どしゃぁ! と派手な音を立てて次々と車田落ちをするモブ妖怪ちゃんたちも、しかしこの決戦の場に立つ以上は気迫で負けてはいない。
 不屈の精神で立ち上がると、イケメンゲットに向けて執念の炎を燃やす!
「何言ってるんですか、それを決めるのはこのイケメンさんですぅ!」
 ある種、正論であった。場のほぼ全員の視線が、紫陽に集まった。
 そして、紫陽は――。

「くゆり、どうする?」
「こうなったら勝負、勝負あるのみですねえ!」
「「「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」

 なら俺は観戦と行こうか、などと高みの見物を決める紫陽は今まさに間違いなく悪いオトナ。
 それを巡って、鬼ごっこでも隠れんぼでも殴り合いでも、オンナ同士タイマン(×複数)張りましょ! とくゆりは覇気をみなぎらせる。
 もはや司会というより勝負の審判役となった足長手長が、おずおずと紫陽のそばに近づいて尋ねる。
『と、止めなくて大丈夫なんですか?』
「は――冗談」
 紫煙の香りを微かに漂わせる男は、両腕を頭の上で組み、不敵に言い放つ。
「やるなら、とことん頼むぜ?」
「とことんぶちのめすんで見ててくださいね、未来のダーリン!」
 右腕のガトリングをサムズアップ代わりに高々と掲げれば、それはライバル妖怪たちを大いに怯ませて、紫陽をますます愉しませる。
 キャーッなんちゃってぇ! などとテンション最高潮、くゆりは頬に手を当て身をよじりながらも、チャームポイントのギザ歯を剥いてライバルたちと対峙する!

(「俺も大概だな、でも」)
 盛大に焚きつけるオーダーを告げつつも、紫陽は思うのだ。
「どうせなら、乗っかる方が面白ぇだろ?」
『ま、まぁ……番組的には放送事故一歩手前の盛り上がりです』
『ここを何とかしてみせるのも、司会の腕の見せ所ですから!』
 司会のお二人まで雰囲気に呑まれたか、セコンドよろしく戦いの舞台へと向かっていく。

「さぁ、俺とカップル成立するのは?」
「「「わたしよおおおおおおおおおお!!!!!!」」」
「ウフ、紫陽さんもノッてくれるの超アガる!!」

 さあ、始まりました仁義なき鬼ごっこ大会!!
 じゃんけんで鬼を決める時点でグーチョキパーよりガトリングが強いのは必定!!
「恋敵はサクッとボコしてカップル成立させて盛り上げちゃいましょ~~~っ」
 圧倒的有利で他の追随を許さず、見事紫陽さんのハートを射止めたのは――?

「……なんて、聞くまでもねぇやな」
 瞬間視聴率、最大値を記録した瞬間だったそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春日・釉乃
魅夜(f03522)と共に

あれから…もう二年経つんだっけ、魅夜
気がついたら恋人になってて……気がついたらパートナーになってた
そんなあたし達なんだけど、大丈夫かなぁ…この企画?

こういうのって、普通なら太陽と月とかで表現することも多いけど
輝星と宵闇で詩的に表現するのが…魅夜らしくて、好き
あたしは、魅夜に包まれながら…貴女の中で永遠に貴女を照らし続けていたいの

だから、その手を取って抱き寄せて━━誓うよ
あたしの唇に、想いを、乗せて……

愛しています、永遠に


黒城・魅夜
釉乃(f00006)と共に

ふふ、素敵な場所です
ティールナ・ヌォーグから満ち潮の夜に響く遠い音楽が聞こえるようですね
釉乃と私は永遠を誓いましたが
考えてみたらきちんとした告白をしたことはありませんでした
TVの企画とはいえ、いい思い出になりそうですね

私の番が来たら釉乃の前に進み出、その手を取って夜空を見上げましょう
釉乃、あなたは煌めく星で私は暗い闇
ですが星は夜に抱かれてこそ輝くもの
夜は星がなければ己の重さに潰れてしまうもの
星と夜は共にあってこそその美しさで世界を満たすのです
私とあなたも同じこと
二人だからこそ時間にも運命にも負けはしない
共に久遠の彼方まで歩み続けましょう

……愛しています



●さんざしのはかげに、いまもひびくそのあしおと
 春日・釉乃(蒼薔薇のPrince・f00006)と黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)とが、誰よりも何よりも深く結ばれたのは――はて、いつのことだったろう?

(「あれから……もう二年経つんだっけ、魅夜」)

 青空の下生中継されていたすったもんだのお祭り騒ぎ、妖怪『足長手長』によるお見合いバラエティ番組も、一般妖怪の皆様にもぼちぼちカップルが誕生していよいよ閉幕の時が近づいていた。何処から昇ったかも知れぬ太陽が傾きつつあるのが、その証だった。
 並び立つ魅夜の横顔をちらと見遣りつつ、釉乃がふと思う。
 気がついたら、恋人になっていた。
 気がついたら、パートナーになっていた。
 それはそれで、とても自然な美しい流れではあるけれど。
(「そんなあたし達なんだけど、大丈夫かなぁ……この企画?」)

 ――ふわり、手長おねえさまのヴェールが釉乃の顔近くで揺れた。
『不安そうですわね、でも大丈夫』
 足長おにいさんもまた、驚くほど長い足を折り芝生に膝をつきながら言う。
『番組のラストを、どうか美しく飾って下さい』
「……っ」
 司会の二人が、誰よりも理解していた。
 放送にはいつか、終了の時が訪れると。
 そして、それが、この二人によってもたらされるのだと。
『色々なハプニングもあったけれど、それも含めて、本当に楽しかったわ』
『いつの日か僕が、手長の顔を見ることが許されるようになったなら――』
 今度は、君たちが司会の番組に、僕たちをゲスト出演させて欲しいな。
 そう笑って、妖怪の新郎新婦は釉乃と魅夜を送り出した。

(「ふふ、素敵な場所です」)
 魅夜は黄昏迫る公園で、夕陽に照らされながらその景色をいとおしむ。
 ティールナ・ヌォーグ――それはまるで常若の国めいていて、これから日が落ちれば満ち潮の夜が訪れ、心ある者すべての魂を揺さぶらずにはいられぬ遠い音楽が響くよう。
 思うはやはり釉乃と同じく、自分たちの関係の『はじまり』。
 互いに『永遠』を誓い合った仲ではあるけれど――ええ、と?
(「考えてみたら、きちんとした告白をしたことはありませんでした」)
 宵闇を乙女にしたかのようだという表現こそが似合う魅夜は、その美しく長い髪をなびかせて、愛しいひとの方を向く。
「……魅、夜」
 改めて見ると、やはり美しい。
 そう思う釉乃こそ負けず劣らず美しい乙女なのだが、思わず呟いてしまう。
「テレビの企画とはいえ、いい思い出になりそうですね」
「……う、うん」
 あなたの前では、どぎまぎしてしまう。
 いつもなら、全然平気なのに――雰囲気に呑まれたか?
 頭の中はぐーるぐる、そんな釉乃の手を、魅夜がそっと取る。

 ――見上げた空は、もうすっかり暗く、星がまたたく夜空となっていた。

「釉乃、あなたは煌めく星で……私は暗い闇」
「……」
 詩的な表現がとても『らしい』なと思う一方、照れが先立ってしまい知れず頬が赤らむ。
 けれど釉乃は気付く、己の手を取る魅夜の手こそ、微かに震えていたことに。
「ですが、星は夜に抱かれてこそ輝くもの。夜は、星がなければ己の重さに潰れてしまうもの」
 ――あなたがいてくれて、よかった。
 互いが互いに抱く心からの想いを、喩えひとつに込めてみせる魅夜。
 あー、と少しだけ視線を逸らし、照れ隠しをしつつ、釉乃はそっと返す。
「こういうのって、普通なら『太陽と月』とかで表現することも多いけど……」
 言いつつ、視線を魅夜へとしっかり向けて、はにかみ笑いで。
「輝星と宵闇で詩的に表現するのが……魅夜らしくて、好き」
 きゅっと手を握ってみせれば、微かながら相手の動揺が伝わるようだった。
「星と夜は、共にあってこそ、その美しさで世界を満たすのです」
 それと同じ――私とあなたも、同じこと。

 ほほえむ魅夜が、いとおしい。
 はにかむ釉乃が、いとおしい。

「二人だからこそ、時間にも、運命にも、負けはしない」
 ――共に久遠の彼方まで。
「……あたしは」
 握った手にさらに力を込めて、その先の魅夜を静かに、しかし情熱的に抱き寄せる。
「魅夜に包まれながら……貴女の中で永遠に貴女を照らし続けていたいの」
 言葉を紡ぐ唇にも、自然と熱がこもる。
 気付けば、互いの唇がそっと近づいて。

「愛しています、永遠に」
「……愛しています」

 ほんの一瞬、けれど確かに互いの感触と想いとを感じる、刹那の至福。
 名残惜しげに唇を離した二人は、自然と同じ愛の言葉を交わしていた。

『僕たちは、こんな幸せな二人をこそ、見たかったのだろうね――手長』
 足長が呟く。
『そうね手長、いつか私たちもこんな風になりたいわ――私、待っているから』
 手長が笑う。

「いい区切り……ううん、いい思い出になったよ。ありがとう」
「素敵な番組をありがとうございます、今度は貴方達が主役になれますように」
 魅夜が、そして釉乃が、薄れゆく景色と消えゆく妖怪とに感謝の言葉を告げる。

 そうして、気がつけばそこはブラウン管テレビが打ち捨てられていたゴミ捨て場の前。
 ――誰がどれだけ眺めても、画面にはもう、何も映し出されることはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月15日


挿絵イラスト