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絶対絶望ユーフォリア~stardust dream

#キマイラフューチャー #猟書家の侵攻 #猟書家 #シュナイト・グリフォン #スカイダンサー

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●Overture
 聴こえるのは、あまい聲が奏でるうた。
『シュナイトさま、準備は整いました』
 けれどそう顔のない配下たちに告げられれば、彼はうたうのをふとやめて。
 美しき黄玉を細め、微笑んで返す。
『わざわざありがとう、ご苦労様』
 此処は、怪しく輝く秘密基地――『絶望遊園地』。
 煌めくメリーゴーラウンドや廻るティーカップ、楽しいジェットコースター。
 だが本来ならば、遊園地には数多の笑顔が溢れているはずなのに。
 此処にただ在るのは……そう、絶望。
 そして一旦途切れたうたが、再び宵空に響き始めれば。
 ミラーハウスから出て来たような顔のないそれらは、役になりきる。
 希望溢れる者達が、正しく絶望するために。
 その者がより絶望する人の手で無残な最期を与えるべく、顔を変えて演者となるのだ。

 星亡き宵に響く月のヴェールは、ひどく優しくてあまくて。
 うたう獣は今宵も微笑みを湛えながら、ばさりと大きな翼を広げる。
 けれどそれは、空を舞う為だけに在ったのではなかった。
 大切なものを全てから隠すための、木漏れ日の様な世界。
 けれどもう、大切なそれは何処にもないのだ。在るけれど、なくなってしまったから。
 刹那くるりと黒の回転木馬が廻れば、巡る小さな世界を彩る光たちが流れ星になって。
 柔く見つめる黄玉にも眩い輝きが散りばめられる。
 だが、数多煌めくその光はただ、黄玉を撫でて流れ落ちてゆくだけ。
 だって彼の見つめるせかいには、光なんてないのだから。
 あるのはそう……絶望だけ。
 だから彼――シュナイト・グリフォンは、今宵もあまくうたうのだ。
 希望なんて何処にもない。だから、光に縋ってわらわなくたっていいのに。
 絶望に身を委ねて、泣き喚いたっていいのに――。
 けどそれができないのなら……じゃあ俺が、正しく躍らせてあげよう。
 だからシュナイトは今宵も上げる。絶対絶望パレードの、その幕を。

●開幕への誘い
「オレも遊園地とかパレードは、わくわくするし大好きだけど……いくら華やかでも、それが死をもたらすものだったら、話は全然別だよなァ」
 千々波・漣音(漣明神・f28184)は集まってくれた皆に礼を告げた後、そうそっと苦笑しながらも。見えた予知を語り始める。
「今回皆に赴いて貰うのはキマイラフューチャーの世界だな。猟書家『シュナイト・グリフォン』が、スカイダンサーを狙って動き出すんだ」
 今回予知されたシュナイト・グリフォンも他の猟書家達と同様、キング・ブレインの目論む「悪の組織連合による世界征服」を実現すべく行動を始めたようであるが。
 彼は悪の組織『絶対絶望パレード』の首領となって、華やかに死をもたらす『パレード怪人』に配下を改造し、スカイダンサーを狙っているのだという。

「そんなシュナイトがいるのは、彼らの秘密基地『絶望遊園地』。沢山のパレード怪人と化した配下を、パフォーマンスしてるスカイダンサー達の元に差し向けて。観衆や生配信を見ている視聴者の前で惨殺して無残な死を与えることで、世界に絶望をもたらすって目論見みたいだなァ。それと同時に、新たな手駒を生み出そうともしている感じか」
 勿論、それを許すわけにはいかない。
 なので現場に急行し、シュナイトの絶対絶望パレードを阻止して欲しいと。
 今回は、そういう内容の案件である。
「オレが皆を送った先は、計画を実行しはじめた怪人たちの前になるから。まずは、何かキラキラした電飾つけたパレード怪人達を倒して、スカイダンサーたちを惨殺させないようお願いするな」
 赴いた先は、パレード怪人が暴れんとする寸前。
 そしてパレード怪人と化しているのは、顔のない群体型の怪人だという。
 まるでミラーハウスから出て来たかのようなそれらは、単体では無個性だが。
 被った鏡のような仮面に相手の心を映し出し、何にでもなりきる能力を持つという。
「絶望をより深く与えるために、パレード怪人達はターゲットの『好意的に思っている人』の姿をして、その人になりきった演技をしてくる。そして油断させてから殺すっていうやり方みたいだなァ」
 ……ホント悪趣味だよなァ、なんて。
 敵の能力に思わず苦笑した後、漣音は続ける。
「わらわらいるパレード怪人を見つけ次第ぶっ叩くのも勿論だけどな。スカイダンサーを襲わんとしている敵を中心に倒していくのも、いいんじゃねェかと」
 己がパレード怪人の前に立ち塞がり、正面から相対し倒すことは勿論。
 スカイダンサーへと意識が向いている、顔を変えた怪人の隙をつきつつ倒してまわるのも、また良いだろう。
 それに戦闘には直接は関わらないが、狙われたスカイダンサーたちはその場に留まり応援してくれるに違いない。何せ猟兵は、キマイラフューチャーの誰もが知るヒーローなのだから。

「遊園地ってのは、きゃっきゃ全力で楽しむトコだろ。そんな、本来ならいっぱい笑顔があるはずの場所には、絶望なんて似合わねェからな」
 それに電飾ぴかぴかとかオサレじゃねェし、なんて。
 漣音は紡いだ後、ふと一瞬だけ言葉を切る。
 予知で見たシュナイトのその姿を、思い返しながら。
 けれどすぐに皆へと視線を向けて、よろしく頼むな、って。
 藤色に竜のグリモアを咲かせ、猟兵達を導く。
 絶対絶望パレードが開幕する、夜空の下の絶望遊園地へと。


志稲愛海
 志稲愛海です。
 よろしくお願いいたします!

 ※ご連絡※ こちらは、2章で完結する猟書家幹部シナリオです。
 第1章の確実な受付期間は【4/22(木)朝8:31~4/24(土)23:59迄】です。
 この期間以外に送信されたものは流れる可能性があります。
 受付前日までに追加冒頭を掲載致します。

●プレイングボーナス(全章共通)
 スカイダンサーに応援される(華やかですが戦力はゼロです)

●シナリオ概要等
 第1章:模倣怪人ノッペロイド(集団戦)
 第2章:シュナイト・グリフォン(ボス戦)

 第1章は、パレード怪人と化した『模倣怪人ノッペロイド』との集団戦です。
 被った鏡のような仮面に相手の心を映し出し、何にでもなりきる能力があります。
 おおまかな戦法は主にふたつ。
 ひとつは自分の元に引き付けて倒す方法です。
 こちらの場合怪人は必ず、皆様の『好意的に思っている人』の姿となります。
 友達でも家族でも恋人でも、行為を持っている方であればOKです。
 その人になりきった演技をして襲ってきます。
 好意的に思っている人と、その人との関係やエピソード等を教えて頂けたらです。
 好意的な人に襲われて絶望を与えるのが敵の狙いです。
 もうひとつは、顔を変えスカイダンサーを狙う敵を倒して回る方法です。
 敵の意識がスカイダンサーへ向いているところを颯爽と倒していく感じです。
 ひとつめは心情寄り、ふたつめは華やかに派手に戦うという雰囲気になるかと。
 顔を変えたパレード怪人は他の人にもその姿に見えますので。
 同行者の心映した怪人の顔や演技を共に見たり対応したりもできますし。
 一人で対処し合流……なども可能です。ご自由に思いのまま行動頂ければです!

 第2章は、猟書家・シュナイト・グリフォンとの戦闘です。
 第2章の詳細は改めて追加OPを掲載します。

 公序良俗に反する事、他者への迷惑行為は厳禁です。
 各章、詳細を記載した断章を受付前に掲載します。
 第2章受付等のお知らせは、シナリオタグやMS個別ページやTwitterにて行います。

●お願い
 同行者がいる場合は【相手の名前(呼称推奨)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入をお忘れなくお願いします。

 グループ参加の人数制限はありません、何名様ででもお気軽にと。
 ですが、ご指定の同行者が参加していない場合は返金となる可能性もあります。

 ご参加お待ちしています!
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第1章 集団戦 『模倣怪人ノッペロイド』

POW   :    倒錯のマスク
自身の【なりきっている役柄にふさわしい振る舞い】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    対策のマスク
いま戦っている対象に有効な【役になりきれる絵柄の仮面】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    贋作のマスク
対象のユーベルコードを防御すると、それを【使い手の猟兵の顔が描かれた仮面に変換して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●On stage
 ――観てくれる人達を笑顔にしたい。
 まさにその世界に満ち溢れているのは、光。
 夜空に瞬く星たち、眩い電飾、華やかな衣装、巧みなパフォーマンス……何より、観客達の歓声や笑顔。
 その全てに宿るのは、光。
 ステージに上がればダンサーたちは皆、演者となる。
 此処でステップを踏んでいる間は、煌めく光だけをただ見ていればいい……それ以外のものなんて、気にしなくていい世界。

 そんな夢を彩る、ひとときの光に魅入られて。 
 スカイダンサーの少女は日々努力し、ダンサーとして舞台に立つ未来を選択した。
 そして今、まさにステージでパフォーマンスを披露しているのだけれど。
 夢の実現の為に失ったものも多く――そのひとつが、家族であった。
 ダンサーになることを反対され勘当されて以来、一度も会ってくれない両親。
 ――でも。
「……!」
 刹那、少女は思わず瞳を見開く。
 自分のパフォーマンスを楽しんでいる観客の中に、何年も会っていない父親の顔を見つけたから。

 スカイダンサーの少年には、憧れのダンサーがいる。
 まだ未熟な自分のことなんて、大人気な花形ダンサーのその人は知りもしないだろうけれど。
 いつかその人と同じステージで踊りたい――それが、彼の目標。
 ……でも。
「えっ!? な、何で……!」
 突如ステージに上がってきたダンサーの顔をふと見れば、驚きの余り声を上げてしまう少年。
 だってその顔は、此処にいるはずなんてない、憧れの人のものだったから。

 他にも、思い思いに知った顔を見つけては声を上げる、スカイダンサーたち。
「あれ? 今日は用事でステージ観に来られないんじゃなかったの?」
「来てくれたんだ! 嬉しいっ」
「一緒に踊れるなんて、夢みたい……!」
「え!? そ、そんな馬鹿な……」
 見つけたのは、大切な恋人の顔であったり、仲の良い友人の顔であったり。
 数年ぶりに会う幼馴染みの顔であったり、初めて会う憧れの人の顔であったり。
 スカイダンサーたちが好意を抱いている人たちの顔。
 中には……もう、この世にはいないはずの人の顔まであるのだ。

 けれど――これは、より絶望を深く濃くするための演出。
 主演登場までのお膳立て。
 だって、どうせ殺すなら……ドラマティックな方がいいでしょう?
 顔のない無個性な怪人たちはスカイダンサーの心を仮面に映しながらも、ケラケラと笑う。
 ……上手に演じてみせますから。
 殺された人が、観る人達が、より絶望を感じるように――って。

 だが、星空のステージに飛び入り参加するのは何も、パレード怪人だけではない。
 不躾で残忍なそれらを在るべき海に還すべく、乱入してくる者達。
 そう――今こそ、光溢れるステージに、猟兵達が躍り出る時。

●マスターより
 第1章は、パレード怪人と化したオブリビオンとの集団戦です。

 パレード怪人の前に立ち塞がって戦う場合は、貴方の【好意的に思っている人】へと敵が変化します。
 そしてまるで本人の様な言動をし、惑わして襲い掛かってきます。
 敵が顔を変える人は、恋人や家族や友達や憧れの人等々。
 皆様が好意的に思っている人であれば関係性は問いません。
 顔を変えたパレード怪人は他の人にもその姿に見えますので。
 同行者がいらっしゃる場合は、心映した怪人の顔や演技を共に見たり対応したりもできますし。
 一人で対処し合流、なども可能ですし。同行相手の顔に変化、などもありえます。
 どなたに変化するのかをプレイングで教えて頂ければです。

 また、スカイダンサーの心を映し顔を変化させて彼らを襲わんとしている怪人達を倒して回るという動き方も可能です。
 勿論プレイング次第ですが、此方の場合は基本、スカイダンサーに気を取られている敵を颯爽と倒していく立ち回りや描写になるかと。
 敵がご参加者様の心を映すことは、此方の場合は必須ではありません。

 どのように行動するにしても、心情系やシリアス、派手だったり爽快な戦闘、ネタやカオス等々。
 ご自由にお好きなように、皆様らしく行動をかけて頂ければです!
 その他に関しましては、OPやOP公開時のマスターコメントをご確認ください。
梅桃・鈴猫
WIZ
霊糸で怪人を捕縛し立ち塞がります。
あなた方のお相手は私……

『鈴猫、痛いわ。やめて?』
あぁ、その声、そのお姿は。私が仕え、守護すべき主君……緋衣様。

…………。

もう〜♪なんて愛らしく素敵なお姿のでしょうか〜〜〜〜♪
この鈴猫、間近でその御身を拝見出来るなど恐悦至極、至福のひと時ですわ〜♪
黄味がかった橙の髪色は黄龍の地の名のごとく、天に舞う楓のよう!
その瞳は慈愛を纏った山吹の温かな眼差し!
なんと言ってもそのお姿は……(略

薙刀で斬られかけたり式神や霊符が飛んでくるものは、
受け流したり武器を捕縛して対処しつつ至近距離で照れまくりますの♪

では、そろそろ♪ UC発動。
花のように舞い散りましょうね♪



 今宵も最高のパフォーマンスを披露しよう。
 見つめる観客の瞳や笑顔に、キラキラ輝く光が宿るように。
 夜空に瞬く星たちも一緒に今宵もまた、夢を与えよう――。
 華やかな衣装を纏ったスカイダンサーたちは、軽快にステップを踏み始める。
 自分を推してくれるファンの子たちは勿論、自分のダンスを今日初めて見る子たちにも、喜んで貰いたくて。
 けれど――舞台に上がってきたのは、それに水を差す、無個性な顔のない群体型の怪人達。
 そしてパレード怪人と化した『模倣怪人ノッペロイド』はきょろりと周囲を見回す。
 ……さぁ、誰の心の中にある顔を模倣しようか――そう無粋に、人の心を覗き見せんと。
 けれど、怪人がターゲットを定めるその前に。
「あなた方のお相手は私……」
『……!』
 怪人を縛り捕らえたのは、霊力から編み出され紡がれた、目に見えぬ強固な糸。
 梅桃・鈴猫(天翔の桃花・f33163)は、敵を捕縛し颯爽とその前に立ち塞がって。
 顔のないのっぺりとした怪人を見遣るけれど。
 刹那……仄甘き赤を彩る山桃桜梅の瞳を、ふと一瞬見開く。
『鈴猫、痛いわ。やめて?』
 先程まではなかったはずの顔、そして耳に届くその声は――。
「あぁ、その声、そのお姿は。私が仕え、守護すべき主君……緋衣様」
 そう、主君のものであった。
「…………」
 鈴猫はじっと、眼前の主君のものと同じ顔を見つめてから。
 赤に生る瞳にその姿を映したまま、口を開く。
「もう〜♪ なんて愛らしく素敵なお姿のでしょうか〜〜〜〜♪」
『……!?』
「この鈴猫、間近でその御身を拝見出来るなど恐悦至極、至福のひと時ですわ〜♪」
 きゃあっとはしゃいだように声を上げる鈴猫。
 だって、それもそのはず。
「黄味がかった橙の髪色は黄龍の地の名のごとく、天に舞う楓のよう! その瞳は慈愛を纏った山吹の温かな眼差し! なんと言ってもそのお姿は……」
 彼女にとっての最推しは、誰でもない主君なのだから……!
 そう推しのことを熱く語る様子に、一瞬だけ驚いた様子をみせたものの。怪人はふと不敵な笑みを宿す。
 そんな推しに襲われて殺されるなんて、きっと絶望に違いないから。
 ……いや、それが一般人であれば、そうだったかもしれないが。
『! なっ……!?』
「ふふ、照れてしまいますわ~♪」
 閃かせた薙刀も、飛ばした式神や霊符も、全て受け流され捕縛された上に。
 至近距離で照れまくる鈴猫の様子は、絶望どころかむしろ嬉しそう。
 けれどいくら巧みに顔を映し取っていても、眼前の輩は本物の愛らしい主君ではないから。
「では、そろそろ♪」
 ――仙花の如く、舞い散りなさいませ!
 瞬間、偽物の主君に見舞うは発勁の衝撃。
 懐に潜り込むと同時に突き出された鈴猫の掌底が、強烈な衝撃を生み出して。
 愛らしい主君を模倣する怪人を容赦なく吹き飛ばす。
 絶望どころか、嬉々とした笑み咲かせ……花のように舞い散りましょうね♪ って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御子神・緋衣
WIZ
内緒でこっそり来てみたんだけど……くしゅっ!
誰か噂……いやいや、きっと気の所為よ。

さて、UC発動。
式神! 風を紡ぎなさい。
索敵して、結界術で敵の気を引くわ。
折角のステージを台無しにするなんて、とんだ災難よ。台無しにする覚悟、出来てるんでしょうね?

……私の大切な妹達。
盟約を交わしたその時から、私を姉と慕ってくれる二人。

ほんと、全く同じ……。

『あねさま』『姉様』

楓閃華を持つ手が、震える。
偽物と分かるのに、傷付けたくない。
いつも思うの……私、ちゃんとあなた達の姉になれているかしらって。
聞くのが、怖い。でも、いつかは聞きたい。
だから……今は。あなた達をなぎ払って、先に進ませてもらうわ。



 解放感溢れたステージを吹き抜ける夜風も、優しく柔い熱を纏っていて。
 野外のパフォーマンスにはうってつけの、あたたかな春の宵……である、はずだけれど。
 ――くしゅっ!
 ふと突然聞こえたのは、くしゃみひとつ。
 そしてそのくしゃみの主は、御子神・緋衣(緋黄彩の結わい・f32508)。
 いや、くしゃみをするほど寒くはないから。
(「内緒でこっそり来てみたんだけど……」)
 ――誰か噂……。
 なんて、きょろりと山吹のいろを周囲に巡らせてみるものの。
 右だけ結わえた黄の彩り纏う橙の髪を、ふるふると微か揺らす。
 ……いやいや、きっと気の所為よ、って。
 それからくしゃみの原因はともかく、気を取り直して。
 ――我が意のまま、紡ぎ、そして語りなさい。
 緋衣は、標的のスカイダンサーを探している怪人へ向けて、颯爽と躍らせる。
「式神! 風を紡ぎなさい」
 風を生み出し、敵の気を引く結界を成す小鳥たちを。
 そして自分へと意識を向けた2体の怪人へと、緋衣は言い放つ。
「折角のステージを台無しにするなんて、とんだ災難よ。台無しにする覚悟、出来てるんでしょうね?」
 けれど刹那、ふと不敵に怪人達が笑んだ瞬間。
『あねさま』
『姉様』
 いつの間にか、無個性だった怪人の顔が変化していた。
 盟約を交わしたその時から姉と慕ってくれる、二人のものに。
「ほんと、全く同じ……」
 ……私の大切な妹達。
 零れ落ちたその声も、青龍の地が縁の神器の薙刀握る手も、震えてしまって。
 ――偽物と分かるのに、傷付けたくない。
 だって、緋衣にとって彼女達は最愛の家族であり、心の拠り所で支えであるのだから。
 それに心に生じるのは、秘めたる気持ち。
(「いつも思うの……私、ちゃんとあなた達の姉になれているかしらって」)
 あねさま、姉様――そう自分を呼ぶ声を耳にしながらも、やはり思ってしまう。
 自分が彼女達の姉で在れているのか……聞くのが、怖い。
 でも、いつかは聞きたい、って。
 だから……今は。
 刹那、大きく地を蹴れば。ひらり夜空に靡くは、黄龍の地の名の如き、天に舞う楓のような橙のいろ。
 そして慈愛纏う温かな山吹を敵へと向け、緋衣は楓色の軌跡を煌めかせる。
「あなた達をなぎ払って、先に進ませてもらうわ」
 きちんといつの日か、妹達に聞くために――楓閃華の斬撃を、星空の舞台に咲かせながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
生前名:清石春光→馬舘景雅(10の時に養子。享年43)

引き付けて倒す
相手:『侵す者』の妻・陽織(ひおり)
身長154cm。5つ年下

あー…。馬舘の必須能力『魔断』を発現したために、わしに嫁ぐことになった元気娘な
初めて会った日…まあ、結婚式の時なんじゃが(戦国よくある話)
あれだけガチガチに緊張しておったのに。わしに相応しく有ろうと、いつの間にやら武を修めてなぁ
わしの二回攻撃は、妻のやつじゃし


だからこそ…一度目に突き、二度目に指定UC発動
本当の妻ならば、わしの今の姿に首傾げるぞ(生前194cmなキマイラ狼獣人)



 星が瞬く春の夜空の下、煌びやかな電飾に照らされたその顔を。
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――いや、『侵す者』馬舘景雅はよく知っている。
「あー……。馬舘の必須能力『魔断』を発現したために、わしに嫁ぐことになった元気娘な」
 あの頃は自分も勿論、まだ若かりし青年で。
 思えばもう、随分と昔の話になってしまっているが。
 それでも、元気娘な彼女……陽織のことは、忘れるわけがなかった。
「初めて会った日……まあ、結婚式の時なんじゃが」
 それは戦国の世においては、よくある話で。
 娶った彼女と初めて顔を合わせたのは、婚礼の義を執り行う日であった。
 眼前に在るのは、そう――『侵す者』の妻であった娘の顔。
 けれど彼は、今でも思い出しては瞳を細めてしまうのだ。
「あれだけガチガチに緊張しておったのに。わしに相応しく有ろうと、いつの間にやら武を修めてなぁ」
 ……わしの二回攻撃は、妻のやつじゃし、と。
 結婚式の時の大人しさは何処へやら、己も戦う術を身につけるほどの元気者で。
 小さな身体でお転婆に得物をふるう姿は、今でもはっきりと瞼の裏に浮かんでくる。
 そんなことを、思っていれば。
『私の為に、死んでくださいませんか?』
 ぐっと刃を握りしめ、そう微笑む眼前の陽織。
 けれど刹那、春の宵に揺れるは、黒髪を彩る橙色のひと房。
 そして同じいろをした炎が密かに駆けるなんの変哲もない黒いスピアで、武の天才『侵す者』は敢えて連撃を繰り出す。
 一度目に突き、二度目には四天境地・『狼』――妻に倣った、二回攻撃を。
『なっ!? う、ぐ……っ!』
 そんな躊躇無き黒燭炎の衝撃に、陽織を模した怪人は堪らず呻くけれど。
 彼女が偽物だと言う事は歴然なのだ。
「本当の妻ならば、わしの今の姿に首傾げるぞ」
 何故なら、彼女の知っている『侵す者』の姿は、もっと長身なキマイラ狼獣。
 今とは、全く違うものであるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
正面から引き付けて戦うのは柄じゃないわね。
スカイダンサーを狙ってよそ見をしている敵を確実に始末するようにしましょう。

遊園地なら観覧車とかタワーみたいな高所があると思うの。
そこに陣取って様子を見る。

敵が出てきたら集中してユーベルコード【千里眼射ち】
レベル二乗mなら十分射程内でしょう。
弓の【射貫き打ち抜く鋒矢】のスナイパーと誘導弾技能も使って他の人を誤射しないようにしつつノッぺロイドを射貫くわ。

気づかれる前に遠距離からの狙撃。
え、華やかさはどこへ行ったかって?

「私にはそういうのは徹底的に専門外だから、他の人を当たってちょうだい」



 キラキラと煌めく、輝かしい舞台。
 そして観客の目をひきつけるのは、ステージで踊る演者たち。
 けれど、ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)が在る場所は、そんな煌びやかなステージの上ではなく。
(「正面から引き付けて戦うのは柄じゃないわね」)
 スカイダンサーたちが踊るステージを見通せる、遊園地に聳えるタワーの上。
 そんな高所に陣取って、ステージの様子を窺いつつも。
 誰も登場を望んでいない不躾な怪人達が勝手に顔を変え、わらわらと舞台に上がってきたことを確認すれば。
 距離は十分、射程内――狙いを確りと定め、撃ち放つ。
 夢を抱き、人々に笑顔を与えるスカイダンサーたちの心を映し取って。
 彼ら彼女らが好意を抱く者の顔を模倣して。
 絶望を与えんと刃を剥く、無個性な怪人達を。
『……!?』
 刹那、スカイダンサーを襲わんとしていた仲間が射抜かれ、瞳を見開く怪人達。
 けれどいくらきょろきょろ探したって、ヴィオレッタのことを見つける事なんて、すぐにはできはしないから。
 スナイパーと誘導弾技能を駆使し、他の人を誤射しないように気を配りつつも。
 射貫き打ち抜く鋒矢をもって、ノッぺロイドを射貫いてゆく。
 敵に気づかれる前に、遠距離からの狙撃。
 いえ、それは極めて有効的な立ち位置や攻撃手段なのだけれど。
(「……え、華やかさはどこへ行ったかって?」)
 いいんです、煌びやかなステージの裏を支える、縁の下の力持ちの存在だって。
 華やかな舞台には実際に、必要不可欠なものなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

人の心を惑わす奴か。そういう奴は性質が悪いと決まってるが奏と同じスカイダンサーの子達が被害に遭ってるとなると看過出来ないね。

アタシに向かってくるのは最愛の夫の姿。剣と盾を器用に使い、攻守ともに優れていた夫。アタシが力任せの攻撃方法と槍を選んだのも不足しがちな攻撃力とリーチを補うためだったね。正直、真剣勝負をしてみたいのはアンタだった。

夫が相手だから、下手な隠密は効かないだろう。【オーラ防御】【見切り】【残像】で剣の攻撃をかわし、【カウンター】【気合い】【怪力】【重量攻撃】で強烈な正拳突きを。まあ、夫の姿と技を模倣しただけではアタシにはかなわない。身の程を知りな!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

ああっ!!同じスカイダンサーの同士が大変な目にあってます!!同じ夢を追う子達が絶望に沈む姿は見てられません!!今助けにいきます。

スカイダンサーの同士の心を映し出して顔を変化させて戦います。【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【ジャストガード】【受け流し】で防御を固めながら絢爛のスピリトーソで同士の心と共に踊りながら【属性攻撃】【二回攻撃】で攻撃します。踊りに夢を託す私達の、ダンスステージは邪魔させませんよ!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

奏と同じ夢を持つスカイダンサーの子達が危険に晒されてるとなれば。

僕の前に現れるのは見慣れた黒鎧。君なんだね。館野・敬輔さん。同じく故郷を滅ぼされ、同じく家族の仇を追う立場の。・・・正直、本気で戦ってみたいと思っていたのは君だった。君を支えるのに相応しい僕でありたいから。

敬輔さん、君は不意を取って戦うのが得意だ。その攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ごう。近接の距離で【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【武器落とし】を仕込んだ【結界術】を展開、追撃に裂帛の拳だ。これが僕の全力、僕が敬輔さんに並び立つものとなりたい思いを込めた一撃だ!!今度は幻でなく、実物の君の隣にいたい。



 星空の下のステージに溢れるのは、沢山の光。
 眩いライトに照らされて、目一杯舞台の上で踊るスカイダンサーたち。
 それをキラキラした瞳で見つめ、歓声を上げ、煌めく笑顔を宿す観客達。
 けれど……それを絶望のいろに塗り替えんと舞台に上がるのは、個性無きパレード怪人の群れ。
 その状況を見て、いち早く動いたのは、真宮・奏(絢爛の星・f03210)。
「ああっ!! 同じスカイダンサーの同士が大変な目にあってます!! 同じ夢を追う子達が絶望に沈む姿は見てられません!!」
 ……今助けにいきます、って。
 ダッと大きく地を蹴り、すかさず夜空のステージへ。
 そんな彼女に続いて、真宮・響(赫灼の炎・f00434)と神城・瞬(清光の月・f06558)も、傍迷惑でしかない飛び入り演者たちの前に立ちはだかる。
 目の前には、電飾を纏い仮面をかぶった怪人たち。
「人の心を惑わす奴か。そういう奴は性質が悪いと決まってるが、奏と同じスカイダンサーの子達が被害に遭ってるとなると看過出来ない」
「奏と同じ夢を持つスカイダンサーの子達が危険に晒されてるとなれば」
 ステージ上で元気に活き活きと踊るその姿は、同じスカイダンサーである奏と重なるし。
 何より、夢に向かって日々努力し、ステージで踊る彼ら彼女らに、絶望など与えさせなんてしない。
 そう、スカイダンサーと怪人の間に割って入った響だけれど。
 刹那、目の前の怪人の顔が、よく知ったものへと変わる。
 けれどそれは、予知で聞いていること。響は自分へと向かってくる『彼』を見据える。
(「剣と盾を器用に使い、攻守ともに優れていた夫」)
 そう――最愛の夫の顔を。
 それから、思い返す様にふと紡ぐ。
「アタシが力任せの攻撃方法と槍を選んだのも不足しがちな攻撃力とリーチを補うためだったね」
 ――正直、真剣勝負をしてみたいのはアンタだった、と。
 けれどだからこそ、相手がどう動いてくるのか、よく分かっているから。
 ……下手な隠密は効かないだろう。
 響は正面から、夫の顔をした相手を迎え撃つ。
 振り下ろされる剣撃を、守りの気を纏って見切り、残像を駆使して咄嗟に身を翻し躱して。
 ――とっておきの一撃だ!!存分に味わいな!!
 刹那叩き込むのは、気合いと怪力と重量を乗せた赤熱するカウンターの拳。
『……ぐ、ふっ!』
 繰り出された炎の拳が捻じ込まれ、堪らず大きく上体を揺らす怪人に。
 響は再び容赦なく強烈な正拳突きを見舞いながらも、言い放つ。
「まあ、夫の姿と技を模倣しただけではアタシにはかなわない」
 ――身の程を知りな!! って。
 下手な演技をやめさせるべく、敵を殴り倒していく。
 そして、瞬の眼前に現れたその顔は。
「……君なんだね」
 見慣れた黒鎧に、自分を見つめるオッドアイ。
 同じく故郷を滅ぼされ、同じく家族の仇を追う立場である彼。
 そんな彼の顔をした相手に、瞬はこう続ける。
「……正直、本気で戦ってみたいと思っていたのは君だった」
 ――君を支えるのに相応しい僕でありたいから、って。
 そしてそんな彼の戦い方を瞬は思い返す。
「君は不意を取って戦うのが得意だ」
 瞬間、振るわれた剣を、守りの気と第六感で凌いで。
 すかさず距離を詰め、黒鎧の守りをも無視するような痺れを伴う攻撃を仕込んだ結界術を展開し、目を狙い、その手に握る剣を落とさんと仕掛けて。
「これが僕の全力、僕が敬輔さんに並び立つものとなりたい思いを込めた一撃だ!!」
 一瞬できた隙を逃さずに力を込めて繰り出すは、追撃の裂帛の拳――超高速かつ大威力の一撃。
 けれど、簡単にぐらりと揺らぐ目の前の偽物などではなくて。
 瞬は改めて思うのだった――今度は幻でなく、実物の君の隣にいたい、って。
 そして奏も、煌めく星空のステージの上で颯爽と踊る。
 自分と同じスカイダンサーの皆の夢を守るために。
 絶望を与えんと、彼ら彼女らの心に在る顔を映し取った敵の目論見を打破するべく。
 ――張り切って踊っちゃいますよ~!!
 持てる技能を最大限に駆使し防御を固めながらも披露するのは、『絢爛のスピリトーソ』。
 その元気で生き生きとした、見続けていたいと思わせるようなダンスで。
 同士の心と共に踊り、奏はパレード怪人たちへと次々と、属性を宿した連撃を見舞っていく。
 だって、溢れるたくさんの煌めきを守りたいから。
 ――踊りに夢を託す私達の、ダンスステージは邪魔させませんよ!! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
はいはーい
ダンサーのミナサンは戦闘に巻き込まれない様
ひとつヨロシクー

スカイダンサーに声掛けた時点でそうくるよなァ……
ま、遊んでくれよ、贋者

対峙するのは一人しかいねぇだろな
俺の唯一、俺の刃、最愛の花簪
藍の髪、翠の瞳の侍

さて、どこまであの人を騙れる……?

甘やかな顔で、瞳細めて俺を呼ぶ
ガワは合格
台詞も……まぁ、合格としてやるよ
でもな……絶対に勝てないモノがある
そいつを教えてやる

拘束術使用
範囲内なのを確認したら
鎖での先制攻撃と同時に拘束
ダッシュで接近して衝撃波と吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して2回攻撃
この時、可能ならダンサー狙いの敵も巻き込む

そんな遅すぎる太刀筋で
俺の刃を真似たとか言うなよ



 やはり同じくらいの年頃の兄妹を見かけると、自然と目が向いてしまって。
 ……僕、大きくなったらダンサーになる!
 ……私もなりたい!
 そうステージを見上げ、キラキラした瞳でお父さんに告げる子たちの声が耳に聴こえれば。
 自然と細められるのは、柔く優しい琥珀のいろ。
 けれど、お呼びではない不躾な飛び入り演者がステージに乱入すれば。
 颯爽と舞台へと駆け上がり、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、突然のことに混乱しているスカイダンサーたちをさり気なく誘導する。
「はいはーい。ダンサーのミナサンは戦闘に巻き込まれない様、ひとつヨロシクー」
 その声に、今自分達がするべきことを認識し、慌てて舞台を降りてゆく人々。
 そして離れたところから応援を飛ばす彼ら彼女らに被害が及ばないよう位置取りながらも。
「スカイダンサーに声掛けた時点でそうくるよなァ……」
 倫太郎は、スカイダンサーの代わりに自分を標的に定めたらしき怪人へと目を向け、溜息と共にそう呟きを零してから。
 ――ま、遊んでくれよ、贋者。
 ぐっと握って構えるは、朱き焔が踊る黒の柄。
 眼前の敵は、無個性なのっぺらぼう。
 けれど、その仮面は映し出すのだという。ターゲットの心に宿る、好意を抱く者の顔を。
 スカイダンサーたちは自分の心に在るその顔に驚き、動揺していたが。
(「対峙するのは一人しかいねぇだろな」)
 でも、倫太郎には分かっているから。自分の相対する怪人が、一体誰を模倣するのかを。
 煌めく星空の舞台に流れるしなやかな藍の長い髪。美しい翡翠の瞳を持つ侍。
『倫太郎』
 そして甘やかな顔で、瞳を細めて自分の名を呼ぶのは。
 ――俺の唯一、俺の刃、最愛の花簪。
「さて、どこまであの人を騙れる……?」
 倫太郎はそう、彼へと視線を見遣って紡げば。
 刹那差し出されるのは、掌。
『倫太郎、どうかしましたか? 襲われている人達を助けに向かわなければ』
 ……私達で止めに行きましょう、と。
 聞き慣れた声で、彼は言うけれど。
「ガワは合格。台詞も……まぁ、合格としてやるよ」
 でも伸ばされたその手を、倫太郎が取る事はない。
 そしてふるりと首を横に振り、きっぱりと言い放つ。
「でもな……絶対に勝てないモノがある。そいつを教えてやる」
『! 倫太郎……!?』
 驚いた様に自分を見つめる翡翠のいろ。
 だが、倫太郎には分かっているから。
 それは所詮ただ彼を騙っただけの、見え透いた演技だということを。
 ――縛めをくれてやる。
『……!』
 偽物へと躊躇なく展開するは、災いを縛る見えない鎖。
 範囲内であることを冷静に確認し、怪人が動くよりも早く。成した鎖で攻撃と同時に拘束を試みて。
 大きく地を蹴り接敵すれば、薙ぐように振るうは美しい刃紋閃く薙刀の一撃。
 そんな衝撃波と吹き飛ばしを乗せた刃に敵が隙をみせれば、他の周囲の敵も巻き込むように、すかさず刃先返し連撃を繰り出す。
『く……!』
 もしも彼が本物であれば、もう幾度もすぐ近くで見ているはずの己の手の内に、対応できぬわけはないし。
 それに、何よりも。
 刹那返される刀の閃きを、倫太郎は咄嗟に見切って躱して。
『! う、ぐ……っ!』
 逆に、握る薙刀のひと薙ぎを、その身へと見舞ってやる。
 すぐ隣で、いつも見ているから。
 風の如く、嵐の如く……己の矜持と誇りを宿した、目にも止まらぬ閃きを。その洗練された美しさと鋭さを。
 だから倫太郎は、大きく首を横に振って否定する。
 ――そんな遅すぎる太刀筋で、俺の刃を真似たとか言うなよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

厳・範
半人半獣形態。
他世界を見て回るようになったお爺、ここにきた。

『桃源郷』とは別種の楽園みたいなものか、この世界は。
さて、『好意的に思ってる人物』な…。ああ、やはりお前か。

わしが瑞獣として守護していた親友の英傑。共に武侠として力を高めあった仲。
お前、酒飲み過ぎてリバースした翌朝。わしが説教したら…その後は酔って寝はすれども、リバースはしなくなったな。
寝たお前を背に乗せ、家に送り届けたりな。

そんなお前…電飾まみれか。似合わん。
それにな…親友は遠い昔、すでに亡くなっている。ここにいるはずがない。
蜂たちよ、あれを刺せ。わし自身も、焦熱鎗でなぎ払う。


「いやぁ、あの説教は怖かったから…」(鞍磨きした)



 生まれてからこの方、封神武侠界から出たことがなかったけれど。
 他の世界を見て回るようになったお爺……厳・範(老當益壮・f32809)は知ったのだ。
 桃源郷の外に在る様々な世界を。
 いや、まだ知り始めたばかり、と言った方が正しいか。
 ふと周囲へと視線巡らせてみても、封神武侠界の風景には当たり前にみられる峰々や泉などはなく。
 かわりに、これまで目にしたことのないような、色彩や光に溢れた景色。
 けれど、煌びやかなステージとやらで踊る者達を見ていた客は皆、笑顔であったから。
「『桃源郷』とは別種の楽園みたいなものか、この世界は」
 範はふと首を傾けながらも、そう紡ぐ。
 そして封神武侠界にも、楽園を脅かす不届きな輩がいるように。
 この世界にも、人々を絶望へと叩き落とさんとする存在がいるようだ。
 舞台で踊る若者たちへと刹那襲い掛からんとするのは、顔を変化させた怪人たち。
 その間に、颯爽と駆けて割り込んで。
「さて、『好意的に思ってる人物』な……」
 範は己の目の前で変わった相手の顔を見遣り、呟きを零す。
 ――ああ、やはりお前か、と。
 それは、瑞獣として守護していた親友の英傑の顔。
 共に武侠として力を高めあった仲。
 そして……色々な時を共に過ごして来た存在。
 そんな親友の顔を見ながらも、範は昔を思い返す様に口にする。
「お前、酒飲み過ぎてリバースした翌朝。わしが説教したら……その後は酔って寝はすれども、リバースはしなくなったな。寝たお前を背に乗せ、家に送り届けたりな」
『いやぁ、あの説教は怖かったから……』
 親友の声で返ってくる言の葉。
 そう……その時の説教の後、親友はせっせと鞍磨きをしていたのだった。
 けれどその言葉も声も、懐かしくはあるけれど。
 範の心に在る親友を、ただ映し取っただけの模倣にすぎない。
 それに、じいっとその姿を改めて見つめれば。
「そんなお前……電飾まみれか。似合わん」
 ピカピカ光る電飾は、全く持って親友に似合っていない。
 そんな滑稽でさえある姿に、もう一度瞳を細めてから。
 範は、こう続ける。
「それにな……親友は遠い昔、すでに亡くなっている。ここにいるはずがない」
 酒を共に飲んだことも、べろんべろんに酔った親友を背に乗せて送ったことも、説教いたことも……もう全て、昔のこと。
 だから、親友が好きだった世界を守るために。
 お爺は封神武侠界から外へと踏み出し、今、此処に在るのだ。
「蜂たちよ、あれを刺せ」
 ――来たりて力に。
 世界を脅かす輩を、在るべき海へと還すべく。
 猛毒を齎す数多のスズメバチたちを敵へと差し向けながら。
『! ……なっ!?』
 握る焦熱鎗を振るい、浄化の炎で薙ぎ払って燃やし尽くす。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミラ・ホワイト
彩あざやかな夢に満ちて
笑顔溢れる素敵な場所に
絶望なんて相応しくありません
舞台へ駆け上がりダンサーの前へ

見上げた先の、その姿は
綿飴のよに柔い白髪と夢色に染まる毛先
空の涯まで飛ん往けそうな翼
夜空に煌く星連れる一本角
――大好きで大切な、わたしのお友達

…どうして、あなたが刃を向けるの?
皆さまの夢を彩るあなたが、絶望に塗り替えようとするの?
その剣は、傷つける為のものではないはずでしょう
誰かを護る為に振るう、希望の光を宿すものでしょう

――違うわ、あなたはあの子じゃない
だって彼女はわたしを護ってくれた
繋いだ手から、ぬくもりと想いを伝えてくれた
その笑顔は、聲は、唯ひとりだけの物なの

偽物なんかに、惑わされないわ



 キラキラと数多の光が降り注ぎ、夢と希望が振り撒かれる夜。
 くるりと踊るダンサーたちも、歓声を上げる客たちも、ただ眩い光だけを見ていられる時間。
 けれど……そんなショータイムを壊すべく舞台へと上がるのは、顔も個性も無き怪人達。
 だが、今宵のショーに飛び入り参加するのは何も、そんな不躾な輩だけではない。
「彩あざやかな夢に満ちて、笑顔溢れる素敵な場所に、絶望なんて相応しくありません」
 颯爽と舞台へと駆け上がり、スカイダンサーの皆を守るべく彼ら彼女らの前へと躍り出るのは、ミラ・ホワイト(幸福の跫音・f27844)。
 沢山のいろを、夢を、光を……絶望になんて、変えさせなんてしない。
 けれど、そんなミラが見上げた先にある、その姿は。
『ボク、ミラちゃんのこと、だーいすき!』
 柔い白髪はまるで綿飴のようで、その毛先を彩る夢色。
 本人も大の自慢の大きな翼は星空の涯まで飛んで往けそうで、真っ直ぐな一本角は夜空に煌く星たちを連れている。
 耳に届く澄んだ音色は、いつだって元気をくれる声。
 それは――大好きで大切な、お友達のもの。
 けれど、ふるりとミラは大きく首を横に振って。
 彼女の顔をしたモノに、問う。
「……どうして、あなたが刃を向けるの? 皆さまの夢を彩るあなたが、絶望に塗り替えようとするの?」
 はじめてふたりで一緒に見上げた、夜空に煌めく月や星も確かに綺麗だったけれど。
 でも、それよりもずっと、とびきり綺麗なひかり。
 それは夢を彩り、みんなを笑顔にするもののはずなのに。
 彼女の顔をしたモノが今その手に握るのは、鋭く閃く刃。
「その剣は、傷つける為のものではないはずでしょう。誰かを護る為に振るう、希望の光を宿すものでしょう」
『ね、ミラちゃん。ボクといっしょに遊ぼう!』
 そんな言の葉と共に向けられるのは、やっぱり笑顔なのだけれど。
 でも、はっきりとミラにはわかる。
「――違うわ、あなたはあの子じゃない」
 眼前に在るのは、彼女とは似ても似つかないモノであることを。
「だって彼女はわたしを護ってくれた。繋いだ手から、ぬくもりと想いを伝えてくれた。その笑顔は、聲は、唯ひとりだけの物なの」
 そう……それは、大好きなお友達だけのものだから。
 ミラは夜空へと躍らせる。
 浄化と希望のいろを咲かせた、スノードロップの花吹雪を。
 ぬくもりも、想いも、聲も、笑顔も……本当の彼女のものは、何よりも綺麗なひかりに溢れているから。
 ――偽物なんかに、惑わされないわ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エール・ホーン
誰にも悲しい顔なんてしてほしくない
けれど時に現実は厳しく困難は誰もに降りかかる

ボクはそんなみんなの力になりたいと願う
その為の努力なら惜しまないし
みんなの望むものになりたいと思うけれど

分かってるんだ、本当は
ボクがなれるのは誰かの望むものなんかじゃない
それでも踊るのは、翔けるのは…

ひかりに心が侵されていく
無意識に無自覚に
そうして天馬は笑う

「ねえ、思い出して
それは本当に君の望むひと?」
夢にのまれそうになる手を引く

さあ、ほら
剣を守護者のように振るえば星が煌き
地を鳴らせば花弁が浮かぶ

攻撃されそうになればUCで受け止め
即座のカウンターを狙って剣で押し返すよ

「君が本当のひかりを掴む、お手伝いがしたいんだ」



 憧れたのは、鮮やかで優しくて、みんなが笑顔でいられる世界。
 だから、誰にも悲しい顔なんてしてほしくないって……そう、思うのだけれど。
 でも、エール・ホーン(ドリームキャスト・f01626)は知っている。
 時に現実は厳しくて。困難は、誰もに降りかかるものであると。
 けれど、いや……だからこそ、エールは思うのだ。
「ボクはそんなみんなの力になりたいと願う」
 ――その為の努力ならば惜しまないし、みんなの望むものになりたい、と。
 だから、王子様をお姫様のもとまで導く白馬にだってなっちゃうし。
 幸せな想いを結びつける、恋のキューピットにもなりたいし。
 空を翔け、笑顔を絶やさずに……大好きなみんなの笑顔の為に踊りたい。
 そう――エールは、みんなの夢を彩るキャストになりたいのだ。
 だから、光だけを、前だけを見て、うたっているのだけれど。
(「分かってるんだ、本当は」)
 ……ボクがなれるのは誰かの望むものなんかじゃない、って。
 でも、それでも踊るのは、翔けるのは――。
 刹那、エールの心をじわりと侵していくのは、ひかり。
 そうして天馬はやっぱり、笑うのだ。
 ……この世界は、とてもきれいなんだ、って。
 無意識に無自覚に……それが今の、エール・ホーンという存在なのだから。
 そして迷いなく引くのは、夢にのまれそうになる手。
「ねえ、思い出して。それは本当に君の望むひと?」
 エールの紡いだその声に、ハッと瞳を見開くスカイダンサーの少女。
 好きなのだけれど、でも此処にはいるはずのない人の顔。
 それが本物か偽物か……きっと、彼女にはわかるはずだと信じているから。
 ――さあ、ほら、って。
 エールは、そのお手伝いをするのだ。
 守護者のように夜空へと掲げた剣を振るって、キラキラとひかり纏う星を煌めかせて。
 大の自慢の立派な蹄でステップを踏むように地を鳴らせば、ひらり浮かぶ花弁たち。
『貴女は、私に会いたかったんでしょう?』
 スカイダンサーの少女へと、そう懲りずに声を掛けてくる怪人だけれど。
 でもそれは所詮、付け焼き刃の演技でしかないのだから。
 ふるりと首を振って拒絶の意を示す少女に、豹変したように襲い掛かってくるパレード怪人。
 けれど、その刃は彼女には決して届かない。届かせない。
 夢を彩る守護者がそんな攻撃なんて、剣で押し返しちゃうから。
 そしてやっぱり、エールは笑う。
「君が本当のひかりを掴む、お手伝いがしたいんだ」
 大丈夫、って――溢れるひかりに侵されながら。
 ただひたすら、前だけを見つめて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リグ・アシュリーズ
手の中には、星砂と真珠の入った小瓶。
きっと多くの人が、駆けつけてくれる。
私だって、あなたに励まされたうちの一人。
……戦う、っていうなら。放っておけるわけ、ないじゃない!

襲われているダンサーの元へ急行するわ!
絶対助けるって、笑顔のままで。
うまく化けたつもりでも、表情を見れば一目で分かるわ。
ショーが中断しても余裕の笑みなのは、悪い人だけだもの。

駆け抜けざま、黒剣で居合抜きをするように斬り払い。
マスクの魔法を解いて、叫ぶの。
怪人よ、だまされないで!
戦いながら、彼らのエンターテイナーとしての矜持に訴えかけるわ。
あなたたちは夢を見るんじゃなく見せる側。
ここは私たちが守るから。しっかり最後まで演じ切って!



 あの夏の日、一緒に見上げた海底のそらにも。
 今みたいに、数えきれないくらい沢山の光が煌めいていて。
 リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)の手の中にあるのは、その時の星たちをぎゅっと閉じ込めた小瓶。
 そして星の砂と共に、瓶の中で淡い光と彩を湛えるのは、双子の真珠の片割れ――誓いの証。
(「きっと多くの人が、駆けつけてくれる。私だって、あなたに励まされたうちの一人」)
 けれど、リグはあの日、祈るのではなく誓ったから。
 ピンチになったら、いの一番で駆けつける、って。
 それに、彼女は果たしてくれた。
 自分が困っていたら、どんな時でも駆けつけるって……そう言ってくれた誓いを。
 だからリグは星空のステージへと、考えるよりも早く駆け上がっていた。
「……戦う、っていうなら。放っておけるわけ、ないじゃない!」
 そして、顔を変えたパレ―ド怪人に襲われているダンサーの元へと急行する。
 笑顔のままで――絶対助ける、って。
 だって、きっとリグだけでなく。
 それは、夢を彩るキャストになりたい彼女が、何よりも願うことだから。
 それにいくら上手に模倣したって。
「うまく化けたつもりでも、表情を見れば一目で分かるわ」
 リグはスカイダンサーたちへと笑顔を向け、続ける。
 ……ショーが中断しても余裕の笑みなのは、悪い人だけだもの、って。
 刹那、異様なくらい穏やかな声色と共に、スカイダンサーへと伸ばされる手。
『さぁ、わたしと踊りましょう?』
 その顔は確かに、スカイダンサーが好意を抱く人のものと瓜二つなのだろう。声も、仕草さえも。
 でも……リグの言う通り、ショーを中断されて平然と笑っていられるわけはない。
 キラキラ輝く夢を抱きステージに立つ、本物のダンサーならば。
 瞬間、強張った表情のスカイダンサーが数歩、後退ったのと入れ替わるように。
 駆け抜けざま、リグは叩きつけるように斬り払う。
 その手に握る鉄塊の如き黒剣で、絶望を彩るマスクの魔法を解くために。
 そして――遠くまで通るような真っ直ぐな声で、叫ぶ。
「怪人よ、だまされないで!」
 くろがねの剣を叩きつけ振るう、その手は決して止めぬままに。
 戦いながら訴えかけるリグ。
 スカイダンサーたちの、エンターテイナーとしての矜持に。
 そしてそれに応えるように、煌めく舞台の上で踊るように戦う猟兵達へと向けられるのは、大きな声援。
 けれどまだ、今宵のショーは終わってはいないから。
「あなたたちは夢を見るんじゃなく見せる側。ここは私たちが守るから」
 リグは顔を似せただけのパレード怪人へと重い斬撃を見舞いながら、そう告げる。
 スカイダンサーたちの夢や皆の笑顔を守るために。
 そして誓いを果たすべく……彼女を見つけたら、笑顔でぶんぶん大きく振って。
 今度は自分が、声を掛ける番――来たよっ、って。
 だって、自分達はひとりじゃないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『シュナイト・グリフォン』

POW   :    こっちにおいで。この世界はお前に似合わない
【この世の絶望】を籠めた【巨大な鎌】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【前向きな心、大切な記憶、思い出の品】のみを攻撃する。
SPD   :    ○○はいないのに、何故のうのうと生きてる?
対象への質問と共に、【対象の記憶】から【創造した大切な人の分身】を召喚する。満足な答えを得るまで、創造した大切な人の分身は対象を【精神的に追い詰めながら其々の方法】で攻撃する。
WIZ   :    さぁ、絶望しよう。俺と一緒に踊ろう
【ぬいぐるみ達を召喚し、共に絶望のパレード】を披露した指定の全対象に【一緒に踊りたい、そして自傷したいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エール・ホーンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Climax

 ――Lalala...Lalala...♪

 パレード怪人たちがいなくなったステージに……うたが、響く。
 どこか懐かしいような、でも記憶にはない、あまい聲。
 その声につられ空を見上げれば、ばさりと揺れる大きな夜空の翼。
 くるりと煌めくせかいにただひとり在ってうたうのは、鷲の翼と獅子の下半身を持つ獣であった。
 その獣、シュナイト・グリフォンは――やあ、と微笑みを讃え、猟兵達を迎え入れて。
 巡らせた黄玉を柔く細め、にこやかに紡ぐ。
「見せて貰ったよ、お前たちのステージを」
 ……とても素敵だった、希望という光が煌めいていて、と。
 シュナイトは、そう続けるけれど。
 だが刹那、露わにするのは、世界への悲しみと憎しみのいろ。
「でも、いくらうたおうと、いくら踊ろうと、戻れやしない。―――も、もういない」
 そして彼は、ふと首を傾ける。
 ……戻る? 何処に?
 それに、この広げた夜空で隠していたのは――。
 朧な記憶は、酷く曖昧にぽろぽろと抜け落ちていて、歪で。
 苦しくて……死んでしまいたい。何度でも、今すぐに。そう、あの時のように。
 そしてシュナイトは、流れ星の如き雫を零しながらも言い放つ。
「俺は絶望しているんだ。この世界に」
 だから――俺と共に踊ろう、歌おう!
 ありあまる絶望を振り撒いて!
 正しく絶望できるように、シュナイトは猟兵達へとあまい聲で投げ掛ける。
 ……この世界はお前に似合わない。
 ……何故のうのうと生きてる?
 ……さぁ、絶望しよう。
 死にたい、消えてなくなりたい、苦しい、心が痛い、後悔――。
 そんな嘆くように紡がれる絶望の言葉は力を纏い、刃となって。
 猟兵達にも降りかかってくるだろう。
 暗い海から浮かび上がってきても、彼は今日も此処で絶望しているから。
 正しく絶望できないのなら、俺と共にステップを踏んで歌を奏でればいい、と。
 閃く鎌で、前向きな心、大切な記憶、思い出の品を奪って。
 今度は、好意は好意でも、その人にとって大切な人の分身を創造して。
 喚んだぬいぐるみ達がパレードを披露すれば、ダンスと自傷への誘いを囁く。
 だって、さっき颯爽とパレード怪人を倒し、応援の声を向けられている猟兵達が、絶望に包まれ惨殺されれば。
 配信しているそれを見た者達は、正しく絶望するだろうから。
 
 ――La-lalalalalala...La-lalala...♪

 シュナイトは、再びうたう。
 役者は揃った。今こそ、絶対絶望パレードが最高潮の瞬間を迎える時――と。
馬県・義透
引き続き『侵す者』
出てくる分身:妻・陽織

なるほど、お主が此度の猟書家
そして、わしの怒りを買ったことを理解しておらぬようだの

記憶を見、おかしいと思わなんだか?
どうして今のわしが、記憶の中におる『とある男(疾き者。銀灰色の髪)』に似ておるのか、と

答えは…今のわしは死して後、三人の戦友と共に複合型悪霊となった者。だから、『のうのうと』は生きておらぬよ

配下といい、よくも妻・陽織を侮辱したな…?悪霊相手に二度目はない
【四悪霊・『解』】。そこに、炎属性攻撃を加えた黒燭炎でのなぎ払い、突きを行っていこう
防御できると思うな。お主の運は地に落ち、活力も低下する

※『侵す者』は超愛妻家。故郷壊滅時、目の前で亡くした



 耳に聴こえるのは、あまい聲で紡がれるうた。
 猟兵達を見回し微笑む獣――シュナイト・グリフォンは夜空の如き翼を広げ、戦場へと降り立つ。
 此処に在る全ての者達が、配信を見ている観客達が、他全ての者が……正しく絶望するために。
『さぁ、ショーの始まりだ。俺と共に踊ろう、歌おう!』
 俺はこの世界に、今日も此処で絶望しているのだから!
 ありあまる絶望を振り撒こう。夜空に散りばめられた星屑の様に!
 そううたうように告げるシュナイトを見遣るのは、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)。
「なるほど、お主が此度の猟書家」
 いや、今の彼は馬舘景雅――表に出ているのは『侵す者』。
 そんな『侵す者』へと、シュナイトは首を傾けて。
『最愛の妻はもういないのに、何故のうのうと生きてる? お前も正しく絶望しよう』
 質問を投げかけつつも、『侵す者』の記憶から召喚する。
 彼の大切な人の分身を――妻・陽織の姿を。
 そんなうたう獣と、彼が想像した陽織を前にして。
 『侵す者』は、シュナイトへとこう続ける。
 ……わしの怒りを買ったことを理解しておらぬようだの、と。
「記憶を見、おかしいと思わなんだか? どうして今のわしが、記憶の中におる『とある男』に似ておるのか、と」
 『とある男』とは――銀灰色の長い髪と目の男『疾き者』。
 逆に問われたシュナイトは、ただ瞳を細めて再び首を傾けるだけ。
 だから、『侵す者』は眼前の獣に教えてやるのだ。
「答えは……今のわしは死して後、三人の戦友と共に複合型悪霊となった者」
 ――だから、『のうのうと』は生きておらぬよ、と。
 問われた質問のこたえと共に。
『のうのうと生きてはいない? もう、お前の大切な人はいないのに?』
 『侵す者』の言の葉を聞いても、シュナイトはただそう微笑みを湛えるばかりで。
 彼の召喚した陽織が、ゆらりと動きを見せる。
 そんな絶望に染まった獣へと侵す者が向ける感情は、怒り。
「配下といい、よくも妻・陽織を侮辱したな……? 悪霊相手に二度目はない」
 そしてその怒りを己の手に握る。黒きスピア、黒燭炎を。
 刹那……悪霊なり、と。
 解放されるは、四悪霊が封じてきた呪詛――四悪霊・『解』。
 それは、運気や霊力、生命力を敵から奪い不幸を与え、術師にその総量に応じた幸運を降らせるもの。
『……!』
 シュナイトは咄嗟に夜色の翼をはばたかせ、向けられた呪詛から逃れんとするけれど。
 さらに炎纏いし黒燭炎で薙ぎ払い、鋭き突きを繰り出す『侵す者』。
「防御できると思うな。お主の運は地に落ち、活力も低下する」
 まるで、燃え盛る怒りをぶつけるかのように激しく。
 何故なら……故郷が壊滅のしたあの時、目の前で亡くした妻を。
 『侵す者』は今でも深く愛している、超愛妻家なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
[SPD]
そうねえ、大切な人。私にはそれがない。
関われば不幸をもたらすかもしれないから、と深く人とかかわることは避けてきたの。
それでもなにがしかは現れるのでしょう?

なぜのうのうと生きてる?
「あはははっ、ぜひその答えは私が聞きたいわ」

ユーベルコード【因果応報の鏡】を展開。
敵からの攻撃をコピーして送り返しつつ、
「ねえ、貴方なら何て答えるの?」

「教えて」
「教えてよ」

多分期待する答えはないでしょうから、1分半ほどコピーした攻撃を打ち込んであげるわ。

…なぜ、こんなに憂鬱になるのかしらね。



 星屑が散りばめられた様な煌びやかな遊園地は、まるで夢の世界みたいだけれど。 
 今、此処に居るのは、あまやかにうたう獣と猟兵達だけ。
 だって此処は、遊園地は遊園地でも――絶望遊園地なのだから。
 そして澄んだ声でうたう獣は満を持して始める。
『いくらうたおうと、いくら踊ろうとも変わらない』
 この世界は絶望に満ちているから、って……正しく人々が絶望できるように、絶対絶望パレードを。
 絶望、例えばそれは。
『お前の大切な人はもういないのに、何故のうのうと生きてる?』
 大切な人がいなくなった現実。
 けれど、シュナイトの問いに、ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)はふるりと首を横に振る。
「そうねえ、大切な人。私にはそれがない。関われば不幸をもたらすかもしれないから、と深く人とかかわることは避けてきたの」
 だって、彼女にはないのだから。元から、そう思える存在が。
 最初は自分のことを希望だと、大切にしてきた所有者たち。
 けれど……彼らが不幸な最期を迎えれば、人々のその態度は手のひら返すかのように豹変して。
 だからヴィオレッタには思い当たらないのだ。人との関わりを避けて来たから。
 ……けれど。
「それでもなにがしかは現れるのでしょう?」
 シュナイトが召喚したモノへと視線を向けてみれば。
 それは――靄がかかっているかのように、知っている誰かのようであるのに、肝心の顔が見えない。
『……そんな存在はいないのに、何故のうのうと生きてる?』
「なぜのうのうと生きてる?」
 刹那紡がれた再度のシュナイトの問いを、ヴィオレッタは反復した後。
 ふっと色の違うふたつの宝珠を細め、わらう。
「あはははっ、ぜひその答えは私が聞きたいわ」
 何故と聞かれても、それはむしろ自分が知りたいこと。
 どうして生きているのか。何で人の身を得たのか。証明するため、だろうか。
 証明したいもの――それは幸福か、それとも不幸か。
 けれど……次の瞬間。
 ――これは貴方の罪。
 長身の艶無き黒色の回転式拳銃『平和を作るモノ』が、精神的に追い詰めんと繰り出してくるシュナイトのユーベルコードを受け止めて。
『……!』
 展開された『因果応報の鏡』が、彼の心を映し出す。
 シュナイトの心にある、大切な人の分身を……星を連れた真っ直ぐな一本角と大きな翼、立派な蹄を持つ天馬の姿を。
 ……■■■はいないのに、何故のうのうと生きてる?
 そう問われた言の葉を、今度はヴィオレッタが逆に、彼へと問う。
「ねえ、貴方なら何て答えるの?」
『俺は……』
「教えて」
『俺は……だから』
「教えてよ」
 ヴィオレッタの問う声に、やはりうたうように紡ぐシュナイト。
『もう……あの子はいない。だから、今すぐ消えてなくなりたい。死んでしまいたい』
 朧に揺れるあの時のように。腹を抉って喉を掻き切って……何度でも、死にたいんだ、と。
 だから今日も此処でこの世界に絶望しているのだと。
 けれどそれは、何故のうのうと生きているかの答えにはならないから。
『……ッ、!』
 まるで鏡に跳ね返ったかの如く、シュナイトへと打ち込まれる衝撃。
 そしてヴィオレッタは、絶望に身を染めた眼前の獣を見遣りながらも。
 ぽつりとこうひとつ、呟きを落とす。
 ……なぜ、こんなに憂鬱になるのかしらね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

世界に絶望するのは個人の勝手だが、それを他人に強要するのは許せないね。確かに世の中は辛いことばっかりだが、アンタが思うより、人は強い。

なるべく【残像】【見切り】で鎌の一撃は避けたいが、鎌を喰らって夫との思い出や子供達との日々が侵食する感覚とこいつに勝てるだろうか、という気持ちに歯を食いしばる。なるほど、これは厄介だ。

でも子供達が必死に戦っている姿に奮起する。そうだ、惑わされる訳にはいかない。子供達の為に強い母として踏みとどまらなければ。足を強く地に踏みしめて、【怪力】【気合い】【重量攻撃】を込めた炎の拳で攻撃する。

人の気持ちの強さを舐めんじゃないよ!!絶望ごっこは一人でしてな!


真宮・奏
【真宮家】で参加

まあ、世界に絶望しているのは分かりますが、その主張を他人に押し付けるのは間違ってると思いますよ?他人が貴方の思う通りに絶望するとは限りませんしね。

引き続き、絢爛のスピリトーソを踊って相手の絶望を齎すダンスに対抗します。勿論、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【ジャストガード】【受け流し】でいつでも相手の攻撃に対抗できるように。【属性攻撃】【二回攻撃】【範囲攻撃】で光をまき散らしながら戦います。軽やかなステップでぬいぐるみの攻撃をかわし、見事なターンで切り裂きます。

夢と希望は誰にだってあります。他人が簡単に奪っていいものじゃないんです。人生は人それぞれですしね。


神城・瞬
【真宮家】で参加

まあ、この世は理不尽な事ばかりですから絶望する事もあるんでしょう。でも絶望するのに仕向けるのは違うと思います。人の心の持ちようは人それぞれですからね。

向かってくるのは死んだ生みの両親。何故お前だけが生き残っている、ですか。父さんと母さんが庇ってくれたからこそ僕は生き残っています。理由を問うという事は所詮その父さんと母さんは偽物だって分かります。僕には大切な生みの両親に偽りを言わせた怒りがあります。

本当の父さんと母さんを返してください!!【オーラ防御】【第六感】で攻撃をかわし、【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】を仕込んだ風花の舞で攻撃します。



 見上げれば満天の星たち、ステージには煌びやかな電飾。
 夢の舞台で踊るスカイダンサーたちや、歓声をあげる客たち……そこには沢山の光が溢れているはずなのに。
『俺は、この世界に絶望しているんだ。今日も此処で、いくらこうして歌っても、踊っていても――あの日々は、もう戻らない』
 うたうように紡ぐ獣は、その只中で絶望していた。
 希望の光を散りばめたような、星屑を宿す夜の翼をばさりと広げながら。
 酷くあまい聲で、シュナイト・グリフォンは今日も絶望をうたい、ただひとり踊るのだ。
 もういないと……生前決して見せなかった涙を、流れ星の如く零して。
 そんな彼に一体何があったのか、分からないけれど。
「まあ、この世は理不尽な事ばかりですから絶望する事もあるんでしょう」
 神城・瞬(清光の月・f06558)は、この世界に絶望すること自体は否定はしないけれど。
 だが、それとこれはまた、別の話。
 絶望をうたい、正しく皆を絶望させんとするシュナイトへと続ける。
「でも絶望するのに仕向けるのは違うと思います。人の心の持ちようは人それぞれですからね」
「まあ、世界に絶望しているのは分かりますが、その主張を他人に押し付けるのは間違ってると思いますよ?」
 真宮・奏(絢爛の星・f03210)も、他者をも絶望させんとする彼の所業に物申す。
 シュナイトはこの世界に絶望しているかもしれない。
 躯の海から煌びやかなこの場所に舞い戻っては、あの時のように何度だって死にたいと、酷く朧で不自然な記憶の中を揺蕩っている。
 けれど、だからといって……希望を抱く人たちまで絶望させようとすることは、見過ごせない。
 夢を抱き踊るスカイダンサーのひとりとして、奏には決して今回の案件は放っておけなかったし。
「世界に絶望するのは個人の勝手だが、それを他人に強要するのは許せないね」
 娘と重なるスカイダンサーの子たちをを絶望に陥れんとする獣の目論見が許せないのは、真宮・響(赫灼の炎・f00434)だって同じ気持ちだ。
 それに、人がこの世界で絶望することは、確かにあるかもしれない。
 でも、だけど。
「他人が貴方の思う通りに絶望するとは限りませんしね」
「確かに世の中は辛いことばっかりだが、アンタが思うより、人は強い」
 それを乗り越え、痛みを抱え、人はこの世界に生きている。
 時に絶望に打ちひしがれながらも……希望という光を胸にまた立ち上がり、歯をくいしばって前へと進むのだ。
 だから、その道を塞がんとするのならば――やるべきことは、ひとつ。
『さぁ、今宵も始めよう。絶対絶望パレードを』
 ――俺と共に踊ろう、歌おう! ありあまる絶望を振り撒いて!
 鷲の翼をはばたかせ獅子の下半身でステップを踏む獣を、在るべき場所へと還すのみ。
 とはいえ、相手は猟書家の力を持つオブリビオン。
(「なるべく鎌の一撃は避けたい」)
 残像を駆使し、閃く巨大な鎌の軌道を見切らんと響は目を凝らし構えるも。
『こっちにおいで。この世界はお前に似合わない』
 刹那耳に届くのは、あまいあまい聲。
「……!」
 直撃こそ免れたものの、ザッと夜を裂くかの如き斬撃が、彼女の内にある大切なもの目掛け振り下ろされて。
 この世の絶望を籠めた一撃が、響の心をじわりと侵していく。
 それは、響にとってかけがえのないもの――夫との思い出や子供達との日々が、侵食する感覚。
 そして心を支配せんとする絶望。こいつに勝てるだろうか、という気持ち。
「なるほど、これは厄介だ」
 その感覚に、響はぐっと歯を食いしばる。
 けれど……彼女の瞳に映るのは、大切な子供たちの姿。
「絶望なんてしません。引き続き、張り切って踊っちゃいますよ~!!」
 星屑のステージで踊り続けるのは奏。披露するのは勿論、『絢爛のスピリトーソ』。
 配信を見ている人たちが、このダンスを見続けていたいと心を震わせ希望を抱くような……元気で生き生きとしたステップ。
『さぁ、絶望しよう。俺と一緒に踊ろう』
 シュナイトもぬいぐるみ達を喚んで、共に絶望のパレードを披露するけれど。
 一緒に踊りたい、そして自傷したいという気持ちにさせるそれらを、奏は軽やかなステップで躱して。
 持てる技能を目一杯駆使して、光をまき散らしながら戦場という舞台を縦横無尽に駆け巡って。
『……!』
 くるりと見事なターンを決め、絶望をうたい踊る獣を斬り裂かんと攻め込んでいく。
 けれどシュナイトは、それでも美しい顔に微笑みを絶やさずに。
 今度は、瞬へとこう問う。
『生みの親はもういないのに、何故のうのうと生きてる?』
 瞬間、星屑のステージに現れるのは……瞬の生みの両親の姿。
 それは彼の記憶から創造した、シュナイトが生み出した分身。
 精神的に追い詰め、そして正しく絶望させるために。
『何故お前だけが生き残っている』
 瞬へとそう言の葉を向ける、生みの両親の姿をしたモノ。
 その顔は声は、確かに彼の記憶の中にある生みの親のものではあるけれど。
 でも、だからこそ、瞬にははっきりと分かる。
「父さんと母さんが庇ってくれたからこそ僕は生き残っています」
 だから、何故生き残っているのか、なんて……そんな理由を問うという時点で、所詮この眼前の両親に似たモノは偽物なのだ。
 そして瞬は数多の魔法の杖を戦場へと成して、ステージに躍らせる。
「本当の父さんと母さんを返してください!!」
 ――少々乱暴な手段ですが、行きます!! 避けないでくださいね?
 大切な生みの両親に偽りを言わせた怒りと様々な技能を乗せた、風花の舞を。
 そんな、猟書家の与えんとする絶望にも負けず、必死に奮闘する子供達の姿を見て。
「……そうだ、惑わされる訳にはいかない」
 響は、ぐっと拳を強く握りなおす。
 足を強く地に踏みしめて、大切なものたちと一緒に。
 ――とっておきの一撃だ!! 存分に味わいな!!
 気合いを入れなおし、怪力を駆使した重い炎の拳をシュナイトへと叩き込む。
 子供達の為に強い母として踏みとどまらなければと、強い矜持で浸食せんとする絶望を振り払って。
『! なんで……正しく絶望しないなんて』
「人の気持ちの強さを舐めんじゃないよ!! 絶望ごっこは一人でしてな!」
 瞳を大きく見開くシュナイトへと、真っ直ぐに響は声を上げる。
「夢と希望は誰にだってあります。他人が簡単に奪っていいものじゃないんです。人生は人それぞれですしね」
 奏もステージを舞いながら、頼もしい母の声にその瞳を細める。
 この世界に絶望があるように、夢や希望だってあるのだ。
 それに何より……大切なものは、すぐ傍にあるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

梅桃・鈴猫
【天楓】
WIZ
まぁ! 緋衣様! どうしてこちらへ?
(侍女としての務めを果たす為、一歩引いた佇まいを。)
大丈夫です、一緒に叱られますわ。
(何せ叱られる緋衣様を間近に見られますので!)

さて、緋衣様はお下がり下さい。
私が相手です。
残念ながら、(緋衣様以外)一緒に踊る気はそう起きません。

(あれは、今はいらっしゃらないはずの黄龍様……?
主君を守るべく、身体が動いてしまいますわね。
黄龍様の一撃は、流石に、重い。ですが、二度と後悔のない行いをすると誓いましたの!)
緋衣様、お気を確かに。
妹様達や四神様が天楓で待っておいでですわ。
(鈴猫は、緋衣様の笑顔を何より好いております)
UC発動。……さぁ、帰りましょう。


御子神・緋衣
【天楓】
SPD
へ? なんで鈴猫が、いるのですか。
(危ない危ない、素が出るところだったわ……)
という事は、今頃こっそり来たのが青龍達に分かってしまいますね……。
……ありがとう、鈴猫。

えぇ、前は頼みました。

私の、父親代わりだった黄龍。
私のせいで、黄龍は命を懸けることになった。
成人になる前、天楓の外へ行きたいと願わなければ……それは今もずっと後悔してる。
鈴猫が代わりに攻撃を受けてる……でも、このままだと長く持たない。

どれだけ責められても、仕方がないわ。
でも、黄玉はここにある。お願い、本当の黄龍。力を貸して。
貴方との繋がりは、ここにある。
UC発動、降霊。天空。敵をその神力をもって動きを封じ、禁固せよ!



 煌めく星たちが瞬く空の下、幕が上がったステージの上で。
 先に見つけたのは勿論、梅桃・鈴猫(天翔の桃花・f33163)の方であった。
 だって、黄味がかった橙の髪色は黄龍の地の名のごとく、天に舞う楓のよう!
 その瞳は慈愛を纏った山吹の温かな眼差し!
 そんな愛らしくも素敵な主君をいつも見つめている山桃桜梅の瞳が、その姿を見逃すはずはなく。
「まぁ! 緋衣様! どうしてこちらへ?」
 嬉々と声は弾んでいるものの、侍女としての務めを果たす為、一歩引いた佇まいで。
 同じステージの上に在る御子神・緋衣(緋黄彩の結わい・f32508)へと声を掛ける。
 そんな聞き覚えのある声に名を呼ばれ、思わず山吹の瞳をぱちくり。
「へ? なんで鈴猫が、いるのですか」
 くるりと振り返って捉えた我が侍女の姿に、内心驚くけれど。
(「危ない危ない、素が出るところだったわ……」)
 何とか主君としての立ち振る舞いを見せながら、そっと苦笑する。
 だって今回此処に赴いたことは、完全にナイショのお忍び。
「という事は、今頃こっそり来たのが青龍達に分かってしまいますね……」
 きっと知れてしまえば、青龍達のお小言タイムが待っていることは容易に想像できるから。
 けれども、そう肩を微か竦める主君の姿を見つめて。
「大丈夫です、一緒に叱られますわ」
 お小言はきっと免れないだろうけれど、でも共に自分も叱られると微笑む鈴猫。
 その顔は、にこにこ何だか嬉し気……?
(「何せ叱られる緋衣様を間近に見られますので!」)
 叱られてしゅんとする主君も、絶対麗しくて愛らしいに違いないから!
 そんな侍女のわくわくした心は知らずに。
「……ありがとう、鈴猫」
 そう少しホッとした様に笑んで返す緋衣の姿もまた、鈴猫の心を掴んで離さないのであった。
 けれど、ふたり一緒に叱られるためには。
「さて、緋衣様はお下がり下さい」
 ……私が相手です、と。
 一対の円月輪であり雷撃纏う宝貝『春雷輪』を構え、前へと躍り出る鈴猫。
『お前たちの絆は素敵なもののようだ。だからこそ、きっと正しく絶望できる』
 そう微笑みを絶やず、うたうように言ったシュナイトはふたりを見遣ってから。
『さぁ、俺と共に踊ろう、歌おう!』
 シュナイトは歌い、ステップを踏む。
 この世界に、今日も此処で絶望しながらも。
 けれどそんな誘いを勿論、鈴猫はきっぱりと断る。
「残念ながら、一緒に踊る気はそう起きません」
 一緒に踊りたいと思うのは、主君である緋衣とだけだから。
 そして緋衣も、信頼を乗せた声を彼女へと向ける。
「えぇ、前は頼みました」
 だが刹那、シュナイトが視線を向けるのは、前に在る鈴猫ではなく緋衣。
 正しく深く皆がより絶望するためには、どちらをまず絶望に沈めればいいかを、理解しているから。
 うたうように、夜空の翼を持つ獣は紡ぐ。
『父親代わりだった彼はいないのに、何故のうのうと生きてる?』
 瞬間、星屑のステージに現れたモノの姿を見遣った鈴猫は、目を瞠る。
 その姿を、彼女も知っていたから。
(「あれは、今はいらっしゃらないはずの黄龍様……?」)
 緋衣の、父親代わりだった黄龍。
 緋衣は思わず微かにふるり、黄味がかった橙色の髪を揺らす。
 そう……自分のせいで、黄龍は命を懸けることになったのだ。
 そして、今もずっと緋衣は後悔している。
『あの時……成人になる前に、お前が天楓の外へ行きたいと願わなければ』 
「あの時……成人になる前に、私が天楓の外へ行きたいと願わなければ」
 記憶通りの姿や声が、精神的に追い詰めんとその心を映し出し言の葉を紡ぐ。
 けれど、考えるよりも早く本能的に。
『……!』
 主君を守るべく、身体が自然と動く鈴猫。
 緋衣に向けられた攻撃を、その身で肩代わりしながら。
 それは緋衣や鈴猫の記憶にある彼のものを映しているから。
(「黄龍様の一撃は、流石に、重い」)
(「鈴猫が代わりに攻撃を受けてる……でも、このままだと長く持たない」)
 その容赦ない攻撃は重く鋭く、あとどれくらい持ち堪えられるか分からないけれど。
 ……でも。
「緋衣様、お気を確かに。妹様達や四神様が天楓で待っておいでですわ」
 鈴猫は決して引かずに、主君へとそう声を掛ける。
 だって、揺るぎない強い想いが彼女にはあるのだから。
(「二度と後悔のない行いをすると誓いましたの!」)
 この身を挺してでも決して、守護する主君にその刃は届かせないと。
 あの時のことは今でも後悔しているし……どれだけ責められて仕方がない。
 けれど、緋衣はその顔を上げ、前を見据える。
「でも、黄玉はここにある。お願い、本当の黄龍。力を貸して」
 自分を追い詰めることなど、本当の黄龍はしない。
 だって……貴方との繋がりは、ここにある、って。
 ――我が霊力、我が神気をもって願い奉る。我が想い、我が願いを聞き届け給え。その威を示し、舞い降り給え!
 緋衣は己の膨大な霊力を代償に、黄玉を以って黄龍の力を借りる。
「降霊。天空。敵をその神力をもって動きを封じ、禁固せよ!」
 刹那、戦場へと召喚するは、敵の動きを封じる十二天将。
『! く……どうして、絶望にその身を委ねない? どんなに歌っても踊っても……何も、変わらないというのに』
 シュナイトは首を大きく振り、やはりこの世界への悲しみと憎しみを発露させるけれど。
「……さぁ、帰りましょう」
 ――仙花の如く、舞い散りなさいませ!
 鈴猫はそんな彼の懐へと入り掌底を向け、発勁による衝撃を叩き込む。
(「鈴猫は、緋衣様の笑顔を何より好いております」)
 自分も、そして他の皆も大好きな、華のような微笑み。
 だから絶望なんていろは、愛らしい我らが主君に似合うわけがないものだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
一族は滅んだのに何故生きてる、か……
ま、そいつは愚問じゃねぇの?

出現したのは再びの最愛

同じ時間を生きられないのならば
俺では無い違う誰かを選ぶ
同じ時間を生きられる相手を選ぶ

そう告げながら振るわれる刀

精神的に追い詰める手段としちゃありなんだろうなぁ
俺自身、割り切るのには時間掛かったもんな

それでも、許される限り一緒に居るし
一緒に居られる術を探す
のうのうと生きてるかを他者に判断されたくはねぇしな

災禍を狩るものを使用
代償には覚悟をもって、それぞれの耐性で対処
吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払いの先制攻撃
敵の攻撃はオーラ防御で凌ぐ

贋者に遅れを取る訳ねぇだろが!

世界に絶望するのは勝手だけどな
てめぇ独りで還りな



 煌めくステージで、うたいおどる獣が振り撒かんとするのは、ありあまる絶望。
 正しく絶望するできるようにと、酷く優しい聲と微笑みで、その獣――シュナイト・グリフォンはその心に在る姿を顕現させ、そして問う。
『一族は滅んだのに、何故のうのうと生きてる?』
 この世界にあるのは絶望、それをシュナイトは突き付けてくる。
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)の最愛を……唯一無二、愛しき花簪の分身を、夜空の下の舞台に喚びながら。
 けれど倫太郎は、シュナイトの問いにこう返す。
「一族は滅んだのに何故生きてる、か……ま、そいつは愚問じゃねぇの?」
 それから、再び自分の前に現れた彼の綺麗な顔を見つめて。
『私達は、同じ時間を生きられません。だから倫太郎、私は貴方では無い違う誰かを選びます。同じ時間を生きられる相手を』
 もう……待つのも待つ姿を見つめるだけの時間も、置いて逝かれるのも……御免ですから。
 そう告げる彼がスラリと抜き放つは、夜天に移す銀の月。
 以前の自分であったら、もしかしたら彼の顔でそう言われたら。
 偽物だと分かっていても、心が不安定に揺らいだかもしれない。
 でも、今の倫太郎は違う。
「精神的に追い詰める手段としちゃありなんだろうなぁ」
 ――俺自身、割り切るのには時間掛かったもんな、って。
 そう、冷静に向き合える。
 言われなくても分かっているのだ。自分達が永遠に同じ時間を生きられないことなんて。
 ……だけど。
「それでも、許される限り一緒に居るし。一緒に居られる術を探す」
 だから決めつけられたくなんてない。
「のうのうと生きてるかを他者に判断されたくはねぇしな」
 むしろ、のうのうと生きるなんて暇は、自分達にはないのだ。
 色々な世界を一緒に見て回りたいし、あれもこれもやりたいし、絶対に共に守りたい世界だってあるのだから。
 ――狩り、還すは災い。
 倫太郎は覚悟をもってその身に代償を受けながら、焔の、水の、風の神力を宿して。
 立ちはだかる災魔を祓い、喰らい、砕く力を得てふるう。
 夜色の柄に朱き焔舞い踊る、美しい刃紋映える薙刀を。
 シュナイトよりも、彼の分身よりも早く、吹き飛ばしを乗せた刃で薙ぎ払う。
『……そう。でも、俺は絶望しているんだ。この世界に』
 倫太郎から返ってきた問いの答えに、シュナイトはふるりと首を振りながらも。
 彼の分身を差し向ければ、閃くのは疾風の如き斬撃。
 けれど守りの気を纏い、それを凌ぎながらも。
「贋者に遅れを取る訳ねぇだろが!」
『……!』
 彼の姿や声をただ模倣しただけのそれを、返す刃で倫太郎は薙ぎ払って。
 この世界の絶望を嘆く獣へと、迷いなき声で言い放つ。
「世界に絶望するのは勝手だけどな」
 ――てめぇ独りで還りな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

厳・範
半人半獣形態のまま。
出たか、猟書家。…ずいぶんと悪趣味な。
世界が似合わぬのは百も承知。もとより、未だ見聞の最中よ。

配信機材?(お爺には、まだ未知の機械に等しい)とやらに気を付けつつ、指定UCを発動。
指定は猟書家と呼ばれたぬいぐるみだ。…感電しては、躍りも満足には踊れぬだろう?
そして、だ。わしは長き修行を経た仙人ぞ。躍りと自傷の誘惑に負けるものか。

親友との約束は未だ違えず。
そして、親友は、このわしを責めず。ただ、背を押すのみだ。
…元々、仙人になったのも、親友が背を押してくれたからだな。


「君、いくら瑞獣だからって、本当に私のこと気にかけすぎ。君は君の考えで行ってもいいのに」



 何とも面妖な、ピカピカ電飾で飾られた顔無き怪人達を、戦場という舞台から引き摺り下ろせば。
 更なる次の一幕を、あまやかにうたう獣――シュナイト・グリフォンは上げる。
 正しく皆が絶望するような、絶対絶望パレードの幕を、今此処に。
「出たか、猟書家。……ずいぶんと悪趣味な」
『この世界はお前に似合わない。それに、あの日々はもう戻らない。何も変わらない』
 だから――俺と共に踊ろう、歌おう! 正しく絶望するために!
 そう紡ぐシュナイトに、半人半獣の黒麒麟なお爺、厳・範(老當益壮・f32809)は、獣を見遣る瞳を細め紡ぎ返す。
「世界が似合わぬのは百も承知。もとより、未だ見聞の最中よ」
 何せ、桃源郷の世界の外へと出始めたのは最近のこと。
 絶望するほど、世界を知らない。未知を知るべく、そして護るべく、踏み出したばかりなのだから。
『希望に満ちたお前たちが絶望すれば、配信機材を通して応援している皆もきっと、正しく絶望できる』
「……配信機材?」
 何だかよく分からない機械だって、範にとっては見たこともない物。
 けれど、未知のものだからこそ、そうっとその配信機材とやらに気を付けつつも。
『さぁ、絶望しよう。俺と一緒に踊ろう』
 召喚したぬいぐるみたちと共に、美しくも哀しい獣はステップを踏んで。
 一緒に踊りたい、そして自傷したいという感情を与える、絶望のパレードを披露せんとする。
 だが、刹那ステージに轟くのは、眩き閃光と同時に降り注ぐ雷。
『――!』
「……感電しては、躍りも満足には踊れぬだろう?」
 配信機材とやらは上手に避け、狙うはパレードに興じる猟書家とぬいぐるみたち。
 奔る稲光に、踊るその足が思わず止まって。
 範は、心を揺さぶらんとうたい踊るシュナイトへと、教えてあげる。
「そして、だ。わしは長き修行を経た仙人ぞ。躍りと自傷の誘惑に負けるものか」
 武侠であった血は今でもたまにちょっぴり騒ぐこともあるけれど。
 修行の果てに仙術と不老不死を獲得し、天地揺るがす宝貝を得た仙人に、誘惑など易々と効きはしないし。
 絶望に嘆く獣と共に踊るなど、決してしない。
 それに範は、英傑を守護する為に生まれた聖なる幻獣。
 ――親友との約束は未だ違えず。
「そして、親友は、このわしを責めず。ただ、背を押すのみだ」
 それが範には、よく分かっているから。
 ……君、いくら瑞獣だからって、本当に私のこと気にかけすぎ。君は君の考えで行ってもいいのに、なんて。
 そんな声が聴こえてくるような気さえ、するくらいに。
 だからお爺は、様々な世界をこれから見て知って、そして猟兵として戦うのだ。
 親友が好きだった世界を守るために。
「……元々、仙人になったのも、親友が背を押してくれたからだな」
 黒麒麟は、戦場という名の舞台を駆ける。
 親友と過ごした日々を、その胸に大切に抱きながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リグ・アシュリーズ
夜色の翼、逞しい脚。姿に驚くけれど、覚悟を決めるわ。
あの子の傍には、心優しい友だちの姿。
なら私のすべきは、あなたたちの命を守ること。

姿を隠し、遮蔽物の影から機関銃の銃撃をタイミングよく浴びせるわ。
誰かが狙われれば動きに被せ、牽制を。
物陰にいても物体を透かす鎌は避けきれないけど、耐えてみせる。

一瞬だけシュナイトに顔を見せて、笑い。
あなた、本当に絶望した事ある?
指の一本も動かないくらい、望みを奪われた事は?
たとえ歪んだモノでも、あなたは今望みに従い動いてる。
あの子の前で……絶望がどうこう、甘えてんじゃないわよ!

狙撃銃で見舞う一発目。
続く二発目は、あの子たちの為に。
道は、ひらくわ。さあ、駆けて……!



 バサリと広げられた夜色の翼は隠したいモノをすっぽりと包み込んでしまえるほど大きく、ステップを踏む獅子の脚は逞しくて。
 亜麻色の瞳に映るそんなシュナイトの姿に、リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)は驚くけれど。
 同時に決めるのは、覚悟。
 そしてリグは、自分がやるべきことを違えない。
(「なら私のすべきは、あなたたちの命を守ること」)
 だから位置取るのは、うたう獣とそしてあの子たちが上がっている煌めくステージではなく。
『……!』
 刹那、ぐっとリグは指を掛けた機関銃の引き金を引く。
 遮蔽物の影からタイミングをはかって狙い澄ました、銃撃を。
 そんな、姿を隠し狙撃して援護へと回るリグだけれど。
『こっちにおいで』
 瞬間耳に響くのは、星屑纏う大きな翼のはばたきと、うたう様に紡がれる酷くあまい聲。
 そしてシュナイトは、握る巨大な鎌を振り下ろす――この世界はお前に似合わない、って。
 この世の絶望を籠めた一撃を。
「……っ、!」
 例え物陰にいても、物体を透かす鎌の刃は避けきれないけれど。
 でも――耐えてみせる。
 ぐっと歯を食いしばり、地へと足を踏みしめて。
 一瞬だけリグはその顔をシュナイトへと向けて、笑ってみせる。
 そして、彼へと真っ直ぐに視線を向けて問う。
「……あなた、本当に絶望した事ある? 指の一本も動かないくらい、望みを奪われた事は?」
 その声に、シュナイトは小さく首を傾けて。
『俺は絶望しているんだ、この世界に。だって、確かこうして歌っていた、こうして踊っていたのに。それでも……いくらうたおうとも踊ろうとも、晴れずに変わらない』
 流星の如く雫を零し、続ける。
 ――あの時の日々は戻らない。そして俺は今日もまた、此処で絶望している! と。
 けれどリグは返る言の葉に、灰の髪をふるりと揺らし、首を横に振って。
 シュナイトへと、きっぱりと言い放つ。
「たとえ歪んだモノでも、あなたは今望みに従い動いてる」
 ――あの子の前で……絶望がどうこう、甘えてんじゃないわよ!
『!』
 向ける声と同時にお見舞いするのは、狙撃銃から放たれる一発。
 いや……それは、一発目。
 通常弾で、絶望で世界を覆わんとするその翼を撃ち抜いて。
 リグは再び引き金を引く。彼の動きを止める二発目を、あの子たちの為に。
 ……あなたたちの命は、私が守ってみせる。
 だから、ありったけの想いと希望を込めて。リグは引き金を引き、その声を上げるのだ。
 ――道は、ひらくわ。さあ、駆けて……! って。
 交わした誓いを、約束を今、果たすために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミラ・ホワイト
紡ぐ聲はあまやかなのに
耳うつのは哀しい響き
お歌も踊りも大好き…でも
破滅へと向かうステップは踏めないわ

ね、教えてくださいな
あなたが世界へ絶望を感じた理由を
憎しみと怒りに染まってしまった原因を

わたしもたくさんのお別れをしてきたの
二度と会えない「さようなら」を幾度も
共にゆきたいと思ったこともありました
けれど、ね
御主人さま達と過ごした日々を、憶えているから
御主人さま達が、わたしの中で生きているから
前を向いて歩けるのよ

過去は変えられないけれど
未来へ希望を抱いて
明るい世界にすることはできると
そう思うわ

誰も何も、傷つけたくはないの
もちろん、あなたのことも

願わくば煌めく光の中で
素敵な歌と踊りを魅せてくださいな



 煌めく夜空の舞台にうたい踊るその姿は、星を連れている様で。
 言の葉紡ぐその聲は、とてもあまやかなのに。
『さぁ、絶望しよう。俺と一緒に踊ろう』
 踊りへと誘う耳うつ響きが纏うのは、哀しい音色。
 ミラ・ホワイト(幸福の跫音・f27844)は、何も変わらないと、絶望を嘆きながらも。
 それでも、ステージの上でうたい踊る彼へと赤のいろを向けて。
「お歌も踊りも大好き……でも」
 ……破滅へと向かうステップは踏めないわ。
 そうシュナイトへと告げた後、彼へと訊ねてみる。
「ね、教えてくださいな。あなたが世界へ絶望を感じた理由を。憎しみと怒りに染まってしまった原因を」
『いくらうたおうと踊ろうとも、あの日々は戻らない。それに……生きているけれど、とうの昔に死んでしまったんだ』
 この世界に絶望しているという彼は、そう紡いで涙を流す。生前は決して見せなかっただろうそれを。
 取り戻せないことなんて、知っているのだ。
 けれどでも、それでも……この衝動に抑えが効かないから。
 自分は在るべきものではない。狂っていると、そう分かっていても。
 だから、あの時のように、何度でも死にたいと。彼は今日も此処で絶望するのだ。
 そんな彼を見つめて、ミラは紡ぐ。
「わたしもたくさんのお別れをしてきたの。二度と会えない「さようなら」を幾度も、共にゆきたいと思ったこともありました」
 ……けれど、ね、って。
 ミラは優しく、けれどはっきりとこう続ける。
「御主人さま達と過ごした日々を、憶えているから。御主人さま達が、わたしの中で生きているから。前を向いて歩けるのよ」
 それでも絶望に身を委ねない理由と。
「過去は変えられないけれど。未来へ希望を抱いて、明るい世界にすることはできると、そう思うわ」
 絶望なんかではない、未来への希望を。
 だって、思うから。
「誰も何も、傷つけたくはないの」
 ……もちろん、あなたのことも、って。
 それに知っているから。眼前の彼と良く似た、とびきり綺麗で大好きなひかりを。
 ――だから。
 美しくも哀しく微笑む彼に、ミラは向ける。
 抱く苦悩の如く、触れるとひいらぐ棘を。そして希望という名を冠する葉を。
 希望の中に絶望は確かにあるけれど、絶望の中にだって希望はきっとあるから。
 ミラは星屑のステージでうたい踊る彼へと、言の葉を贈る。
 ――願わくば煌めく光の中で、素敵な歌と踊りを魅せてくださいな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エール・ホーン
大切な人なら抱えきれないほどいる
でもそれは知っている誰でもなく
何故貴方なんだろう

重なる柔らかな青はとても綺麗で
何故か、どうしてか

ボクの名を紡ぐ聲に手を伸ばしていた

重なる指先はなく
覆う夜空の翼

知らない
懐かしい『だれかの世界』

重なったのは幻影と現実
自らを失おうとする貴方に
ボクは――

紡がれる真実をただ繰り返す

「…おにいちゃん」

大切な約束があるの
『護る』『いつだって駆けつける』
ボクはみんなの笑顔がみたいから
貴方がいなくても、生きていく

掛け違えた何かがあったとして
「ボクはあなたのことを知らないけれど」
いつか深い海の底で会えたなら

「――いっしょに…おどってくれますか?」

微笑う
零れるはずの涙はひかりの底へと



 星が瞬くそらへと広げられた夜のいろは、何故か不思議とあたたかい気もして。
 哀しい響きを纏っているけれど、でも、うたうその聲は優しい気がする。
 まるで、優しく夢へと誘ってくれる子守歌の様に。
 エール・ホーン(ドリームキャスト・f01626)にとって、大切な人なら抱えきれないほどいる。
 けれど……でも。
(「それは知っている誰でもなく、何故貴方なんだろう」)
 刹那重なるのは、ふと向けられた柔らかな青。そのいろは、とても綺麗で。
 そして――何故か、どうしてか。
『……ール、エール』
 エールは、その手を伸ばしていた。
 自分の名を紡ぐその聲に。
 けれど……まるでそれは、夜空に瞬く星の様に。
 触れたくても叶わなくて。重なる指先はなくて、伸ばしても届かなくて。
 煌めきをバサリと覆うのは、夜空の如き漆黒の翼。
 そしてそのいろを、エールは知らない。
 全てから覆い隠してくれるような、懐かしい『だれかの世界』を。
 でも、瞼の裏で重なるせかい。それは幻影と現実と。
「ボクは――」
 懐かしいだれかの世界では決してみせなかった涙に、自らを失おうとする彼に、エールがただ繰り返すのは。

「……おにいちゃん」

 零れ落ちる様に紡がれる真実。
『どうして……何故? もう、いない。なのに、正しく絶望しないなんて』
 そんなの……って。
 そう零れ落ちる聲と重なるいろに、エールはやっぱり微笑んで。
 シュナイトに――兄に、告げる。
 ……大切な約束があるの、って。
「――『護る』『いつだって駆けつける』、ボクはみんなの笑顔がみたいから」
 だから――大切な人なのだけど。
「貴方がいなくても、生きていく」
 掛け違えた何かがあったのかもしれない。
 でもそれが何なのかは分からないし、正しく掛けかえることは此処では叶わないし。 
「ボクはあなたのことを知らないけれど」 
 でもエールは、やっぱり笑って。大切な兄へと紡ぐ。
「――いっしょに……おどってくれますか?」
 ……いつか深い海の底で会えたなら、って。
 そして彼の夢を、その手で叶えてあげる。
 だってエールは、みんなの夢を彩るキャストになりたいから。
 みんなの、そして大切な人の夢も、彩れるような。
 エールは星空を翔け、夢を彩る剣を握り――そして、微笑う。
 この世界は、とてもきれいなんだ、って……ひかりに侵されながらも。
『   』
 少し掠れた艶のある声で紡がれた、最後に聞いた言の葉を耳に。
 柔らかくわらう、その顔に。
 零れるはずの涙は、懐かしい知らない世界は、また深く深く沈んでゆく。星屑のようなひかりの底へと。
 そしてエールは生きていく。ただ、ひかりだけを、前だけ見て。
 いつか一緒に――沈んだ深淵の底で。踊れる時が来る、その時まで。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月03日
宿敵 『シュナイト・グリフォン』 を撃破!


挿絵イラスト