偽りの聖人は人間牧場で不死の軍隊を作るのか
アポカリプルヘル。
オブリビオンストームと呼ばれる恐ろしい竜巻に飲み込まれたら最後、文明は全て破壊しつくされ、生物は死滅してオブリビオンとして蘇る。無機物もオブリビオンとなって復元され、世界で細々と生き延びる無抵抗な人々を理不尽に襲う。
そんな日々に、猟兵達は幾度となく介入し、遂に巨大な悪徳都市『ヴォーテックス・シティ』を支配する『ヴォーテックス一族』の存在を知ることになった。
その悪徳の都市の廃れた酒場の掲示板に、時々、奇妙な依頼が舞い込む。
それは、とあるヴォーテックス一族による、『対立している別のヴォーテックス一族の縄張りを荒らしてこい』という依頼であった……!
グリモアベースで、蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)は今回の任務の予知を頭上のグリモアから投影しながら、集まってくれた猟兵達へ説明を始めた。
「今回の任務は、数あるヴォーテックス一族のひとつ、『肉塊女帝』ブラッドルビー・ヴォーテックスの縄張りの村の焼き討ちだよ! そこには鉄条網と電磁柵に囲まれた『人間牧場』があって、奴隷達同士の繁殖や残虐な人体実験を行ってるよっ!」
村を焼くという物騒な内容の任務だが、要するにいつものオブリビオン退治と変わらない。ならば、やることは普段通り、困ってる人達を救出するべくオブリビオンを撃退するだけだ。
「まずみんなは、『肉塊女帝』ブラッドルビー・ヴォーテックスの手下を撃破してっ! この手下は、とある拠点(ベース)を襲って、そこに住む人達を拉致して奴隷にするつもりだから、絶対に阻止してねっ!」
この手下は、今回の目的地である『人間牧場』の村までのルートが記載された地図を持っている。酒場の依頼状にも、その旨が記載されているので間違いない。故に、撃破して地図を強奪しなくてはならない。
「地図を入手しても、そこからが肝心っ! 村へ潜入するためには、村の周りを囲う鉄条網と電磁柵を超えなきゃいけないんだよっ! そこで、みんなは奴隷のフリをしてもらって、敵の懐へ潜り込んでほしいなっ! あとは奴隷達の救出とオブリビオンの撃破を行ってもらえば任務達成だよっ!」
オブリビオンの撃破が完了したら、村全体に火を放ち、あとは奴隷達を連れて逃げ出せばいい。報酬は酒場に届くそうだ。
「予知によれば、この村の奴隷達は“聖人”によって洗脳されているっぽい……。だから、非道な人体実験や家畜同然の生活を強いられても、奴隷達は文句ひとつ言わずに従ってるんだってっ!」
グリモアから映し出される映像に、その“聖人”が映し出される。
「だからみんな、絶対に焼き討ちを成功してきてねっ!」
レモンの激励に、猟兵達は無言で頷いた。
「前任者が残した技術『アリスズ・ネットワーク』と、ワタシの『死ねない兵団』の研究成果……この2つさえあれば、新たな“不死の軍団”を生み出すことも出来るはずです……」
少女の言葉に、奴隷達は一斉に歓声を上げて喜んだ。
「ああ、聖人アリス様! どうか我らに不老不死をお与えくださいませ!」
「この生き地獄から開放されるための偉大なる技術、どうか私の身体で試して下さい!」
奴隷達はこぞって自ら被験者に志願したがる。
白衣と軍服風ワンピースを着込んだ金髪のフラスコチャイルド少女は、注射器に入った空気を抜くと、奴隷達へ柔らかく微笑んだ。
「なんと素晴らしい心掛けでしょうか。あなた達の犠牲は、必ずや未来の栄光の礎となるでしょう。この子たちも喜んでくれているはずですよ」
傍らには、同じ顔をした少女のスペアの肉体が、ずらりとカプセルに幾体も収められている。偽の“聖人”の言葉に、奴隷達は感涙にむせび泣いていた。
『ここには、自分の命を省みる者はいない。
だからこそ、村は、人間牧場は焼かねばならないのだ』
(依頼主のメッセージより抜粋)
七転 十五起
アポカリプルヘルでの一大勢力である『ヴォーテックス一族』。
どうやら、敵は一枚岩ではないようです。
なぎてんはねおきです。
今回は『人間牧場』の村の焼き討ちと、奴隷達の救出が任務内容です。
オープニングでレモンが言及している通り、まずは善良な拠点(ベース)を襲う手下オブリビオンの撃破をお願いします。こいつが焼き討ち対象の『人間牧場』へのルートが示された地図を持っています。ただし、紙の地図とは限らないので、あしからず。
第二章以降は、断章加筆時に情報を公開します。
全体的に、かなりシリアスな内容になります。
それを踏まえてのご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『クロノチタノ』
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POW : 歪められた反抗の剣
【寿命 】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【歪な剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 反抗者の骸
自身の【スカーフ 】から【今まで倒して来た反抗者達の骸】を放出し、戦場内全ての【戦う意志】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
WIZ : 弐の反抗竜「チタノラセン」
骸魂【チタノラセン 】と合体し、一時的にオブリビオン化する。強力だが毎秒自身の【体力と気力】を消費し、無くなると眠る。
👑11
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「反抗を……反抗をしてみせろ……」
ゴシックドレスを纏った『反抗者』が、善良な拠点(ベース)を襲撃している。
襲われる人々も迎撃するが、まるで歯が立たない。
このままでは死傷者が出る、そう危ぶまれたその時!
天から降り注いだ光が、猟兵達を連れてきた!
「……なんだ? 新たな反抗者か?」
オブリビオンは猟兵達の姿を見て警戒心をあらわにした。
猟兵達よ、邪悪な『反抗者』を撃破し、『人間牧場』へのルートが記された地図を奪還せよ!
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
これ以上、この拠点の人々をやらせはしないっ!
拠点の人々を守り抜く為、目の前の脅威と戦うと強く意識
絶対死守の誓い発動
相手にダメージ、自身を回復、両方を同時に行う
拠点の人々が攻撃されそうなら身を挺して【かばう】
相手はオブリビオン化して強力になるみたいだ
こっちも【オーラ防御】で守りも固めつつ、闇の波動でダメージを与える際にそのダメージを生命力として変換、【生命力吸収】する
【継戦能力】維持を心掛ける
さぁ、我慢比べと行こうか!
相手の限界が来ればこっちのもの
それまでも完全に守りに入るでなく攻撃出来る時には積極的に削りに行く
破魔刀で相手の防御を貫く【貫通攻撃】
地図の奪取も忘れないようにしないとな
アポカリプスヘルの善良な拠点(ベース)に火の手が上がる。
反抗者のオブリビオン『クロノチタノ』が拠点を襲撃しているのだ。
『肉塊女帝』ブラッドルビー・ヴォーテックスの手下として動いている彼女は、ヴォーテックス一族に反抗する者を鎮圧する暴力の権化であった。
だが、猟兵達を目の当たりにしたクロノチタノは、とっさに悟った。
「……そうか。陛下に反抗する真の敵は、お前達なのか」
「よく分からないけど、結果的にはそうなるかな!? だってこれからヴォーテックス一族の拠点のひとつを潰しに行くからね!」
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)が怒りを言葉ににじませながら、杖を握る。
「だからこれ以上、この拠点の人々をやらせはしないっ!」
鳳凰院の啖呵に、クロノチタノはニタリと口元を弧に歪める。
「ほう? いい反抗の目だ。拠点の人々を守り抜く為に、目の前の私と戦う覚悟が見て取れる」
「賞賛の言葉、どうも! お礼は俺のユーベルコードで返すよ!」
鳳凰院は精霊の護符を掲げると、周囲は黒白の二色に塗り替えられてゆく。
「光と闇の疑似精霊、力を貸してくれ! いくぞ、オブリビオン!」
鳳凰院が飛び出してゆくと、その後ろを小さな2つの球体――光の玉と闇の玉が追走してゆく。
彼が手にした杖の中から、びっしりと破魔の聖句が刻まれた刀身が引き抜かれた。
これは、仕込み杖の破魔刀だ!
「はあぁっ!」
最上段から振り下ろされた斬撃を、クロノチタノは赤黒い不気味な片刃剣の峰で受け止める。
けたたましい金属音と共に火花が散り、そのまま鍔迫り合いに発展。
「これで拠点の人を襲えないだろう!? そうだ、俺と勝負だ!」
「言ってくれるな、小僧?」
クロノチタノは全身から黒いモヤを発散させ始めると、次第にその肉体をヒトの形からドラゴンへと変えてゆくではないか!
「うわっ!」
剣ではなく前脚で後ろへ弾かれた鳳凰院は、変わり果てた反抗者の姿に思わず息を呑んだ。
「で、でかい……!」
体高5m以上はあるであろう、巨大なドラゴンが鳳凰院を見下ろしていたのだ。
『これぞ弐の反抗竜チタノラセンだ。小さく反抗者よ。そのまま踏み潰してやる!』
振り下ろされた前脚と、横薙ぎに振られる竜の首を、鳳凰院は地面転がるように後退して事なきを得た。
「更に強力なオブリビオンになってパワーアップしたのか! だったら、闇の疑似精霊、頼んだ!」
空中を舞う闇の疑似精霊が、ドラゴンの頭上で漆黒の闇の波動を放出し始めた。
これは敵性存在だけを認識してその生命力を吸い上げる恐ろしい効果を持つ。
一方、光の疑似精霊は、光り輝く魔法防壁を生成したり、鳳凰院のスタミナや傷を癒やしたりとサポートに徹する。
これにはクロノチタノも迂闊に手を出すことが出来す、戦況は次第に膠着状態に陥る。
「さぁ、我慢比べと行こうか!」
鳳凰院の受けたダメージは、光の疑似精霊の治癒魔法と闇の疑似精霊の敵生命力吸収による恒常的な回復で相殺されている。
どこまでこの不毛な一進一退が続くのかと両者が心を折れかけた、まさにその時だった。
「う、うぅ……なんてことだ……限界が……!」
急にクロノチタノの変身が解けてしまった!
これに鳳凰院がしたり顔で告げた。
「やっぱりだ! そのユーベルコードは代償が必要だで、それが尽きると逆らえないくらい強烈な眠気に襲われる! 俺が先頭を引き伸ばしたのは、これを待っていたからだ!」
「なん、だ、と……? うぐぅ……!」
体力と気力が尽きたクロノチタノは、その場で膝を付いてうつらうつらと船を漕ぎ始める。
こうなったら、後は躊躇わずに敵を切るだけだ。
「覚悟しろ! 『人間牧場』への地図は俺が奪う!」
意気込みとともに放たれた牙突のひと差しは、黒き反抗者の腹を深々と抉ってみせた。
だが、それでも意識を失わずに剣を突きつけてくるクロノチタノ。
「痛みのおかげで眠気が吹っ飛んだ。例を言おう。さて、仕切り直しとしよう」
クロノチタノはその場から飛び退くと、鳳凰院の目の前から姿を消した。
「くそっ! 逃げられたか! でも、他の猟兵達もこの拠点を抑えている。奴はここから逃げ出せない……!」
ひとまずは、クロノチタノへダメージを追わせることが出来たので、猟兵側にとっては幸先の良い初戦だったと言えよう。
成功
🔵🔵🔴
ニクロム・チタノ
反抗者なのに圧政者の手先になるなんて、チタノの加護を悪用するヤツは許さないよ!
キミも奴隷村のオブリビオンも絶対倒してやる!
嘆いて、逆さ獣(アイオン)
この反抗改人の姿はキミのようなヤツに反抗するための力だ
人間牧場への地図渡してもらうよ!
チタノ偽りの反抗者に誅滅を
反抗者の前に、半仮面を被った少女が立ち塞がった。
「……お前は、よもや?」
クロノチタノに驚愕と興味の表情が浮かぶ。
ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は、目の前の反抗者と同じ力を持つ存在だ。
「反抗者なのに圧政者の手先になるなんて、チタノの加護を悪用するヤツは許さないよ!」
彼女達は反抗の竜チタノに選ばれた存在であり、反抗の竜の加護を受けて闘う反抗者だ。
本来ならば、悪しき存在を打破するべき存在なのだが、クロノチタノはこの加護の力を悪用して外道に落ちた。
それをニクロムは許せなかった。
「キミも奴隷村のオブリビオンも、絶対倒してやる!」
「……青いな。それでいて若い」
クロノチタノは呆れていた。
「ヴォーテックス一族こそ、この世界の基準となるべき存在よ。ならば、それに反抗する存在こそ悪。私はその悪を駆逐する反抗者だ」
「黙れ! お前こそ、ボクが反抗すべき悪だ!」
ニクロムは半仮面を投げ捨てると、ユーベルコードを発現させた。
「嘆いて、逆さ獣(アイオン
)……!」
仮面が外れたことで封印が解け、ニクロムは反抗改人へと変身!
「この反抗改人の姿はキミのようなヤツに反抗するための力だ。行くよチタノ、偽りの反抗者に誅滅を!」
反抗の妖刀を片手に突撃するニクロム。
クロノチタノも、己の寿命を代償として武器の封印を解除し、歪な剣へと変えて身構える。
ニクロムが叫ぶ!
「人間牧場への地図、渡してもらうよ!」
最上段から妖刀を振り下ろしながら飛び掛かるニクロム!
だが次の瞬間、ニクロムは左から受けた凄まじい衝撃に突き飛ばされ、拠点の住居の壁に頭を減り込ませていた。
「……え?」
何が起きたのか理解できないニクロム。
そこへクロノチタノの舌打ちが聞こえた。
「チッ……咄嗟に首を庇ったか。ガラ空きの素っ首を削ぎ落とせるかと思ったのだが、反抗竜の加護は厄介なものよ」
クロノチタノの歪な剣が鞭のようにしなり、変則的な軌道を描いてニクロムに叩き付けられたのだ。
ニクロムの頭を掴んだクロノチタノが、耳元で囁く。
「……弱すぎる」
「――ッ!?」
頭に載せられた手をどけようと藻掻くも、ニクロムは身じろぎできない。
圧倒的実力差が、現実のものとしてニクロムにのしかかってくる。
「感情任せの攻撃など、タカが知れている。もっと頭を使え。作戦もなしに私を倒そうなど……」
クロノチタノは掴んだニクロムの頭を天に掲げ、そのまま地面に叩きつける。
「傲慢に等しい!」
「あガッ!?」
額を割られ、意識が朦朧となるニクロム。
全く手が出ない。
何故だ? 何故、反抗できない?
クロノチタノがせせら笑う。
「なるほど、貴様、偉大な竜の加護を活かしきれてないのか。道理で弱いわけだな?」
ニクロムは地力こそ歴戦の猟兵クラスまで急成長したが、武装の強化はまだまだこれからのようだった。
これが全て最大限まで強化できていれば、地面に伏していたのはクロノチタノであったはずだ。
更に、どう闘うかを綿密に詰めていなかったのも悪影響を及ぼした。
これでは勝てるものも勝てない……!
「う、うぅあああぁぁッ!」
無力感に苛まれたニクロムは、動かせる2本の腕を振り回す。
妖刀の刃がクロノチタノの肩口へ僅かに食い込むが、それ以上は刃が通ってくれない。
やはり武器の手入れが不十分だったのだ。
「ほう? 流石は私と同じ反抗者。この状況でも諦めないのか」
「……たり、まえだ……! おま……に、は……こう、す……!」
「無駄だ」
クロノチタノはニクロムを空中へ放り投げると、歪な剣を振るい、空中のニクロムを刻んでしまった。
「うわあああぁぁぁっ!?」
全身傷だらけで墜落したニクロムは、その場で意識を手放してしまった。
「ふむ、まずは1匹……おや?」
ニクロムが付けた刀傷がズキリと痛みを主張する。
「……傷は浅い。ならば問題ないか……」
クロノチタノは深く考えず、他の猟兵達を探しに向かっていった……。
苦戦
🔵🔴🔴
花咲・翁
「・・・たまには、相手の土俵に付き合うも一興か・・・」
敵のUCで強化された剣による猛攻を棺桶【魔界の門】による【盾受け】で防ぐ。そうして、動きが単調になってきたところをUC【魂の嘆き】を発動し、膨大なソウルエナジーを込めた【魔界の門】による【シールドバッシュ】&【重量攻撃】で弾き飛ばし、すぐさま【大罪の縛鎖】で捕縛。その後、ゆっくり地図を探し出して奪います(トドメか自身の監獄への幽閉かはおまかせ)。
後、できればでいいのですが、捕縛の際に敵のスカーフに封じられた骸の魂の徴収をしたいです。
アドリブ及び連携は大歓迎です。
よろしくお願いします。
花咲・翁(魔天牢の看守長・f33065)は、別の猟兵が撃破された場面を目撃してしまった。
彼は看守長だ。その仕事は『罪人の収容』である。
「……たまには、相手の土俵に付き合うも一興か……」
物静かに呟いた翁は、革靴をコツコツと鳴らしながらクロノチタノへ近付く。
翁の接近に気が付いたクロノチタノは、鬱陶しそうに剣を振るう。
「また弱そうなのが来たな?」
不規則にうねる剣の軌道を、翁は大きな棺桶で弾き返した。
「……ほう?」
クロノチタノの目付きが変わる。
翁はただ静かに、敵を見詰め続けるのみ。
「……攻撃はそれだけか……?」
「ふん、これからが本番だ!」
クロノチタノは嵐のごとく刃を振るってゆく。
しかし、翁の鉄壁の防御を崩すことが出来ず、戦況は膠着状態に。
「何故だ? 何故、私の攻撃が届かない!?」
焦りからか、徐々に攻撃が力任せの単調な軌道に変わってゆくクロノチタノ。
それを翁は見逃さなかった。
「……魂の粛清だ……」
すかさず翁はユーベルコード『魂の嘆き(ソウル・バスター)』を発動させる。
天へ昇る数多の霊魂達は、かつて翁が徴収した囚人の魂だ。
それを代償として、棺桶……に偽装された異空間牢獄の入り口こと『魔天牢の門』に膨大なソウルエナジーを籠めてゆく。
刃の嵐を吹き飛ばし、そのまま翁はクロノチタノへ突進!
「……吹き飛べ……」
痛烈なシールドバッシュがクロノチタノの全身に叩き付けられた!
「ごハッ!?」
肋骨が折れ、口から血を吐きながら吹っ飛んでゆくクロノチタノ。
だが、その足に絡み付く鉄鎖と棘が、彼女をその場に留めた。
「……人間牧場とやらの地図を渡してもらおうか……」
「断るッ! 何故なら、私は貴様に反抗するからだ!」
クロノチタノは自らの左足首を切り落とし、鎖と棘の捕縛から逃れてみせた。
「チタノ! 反抗のチカラを!」
斬られた足首が徐々に再生してゆく……!
これに翁は溜息混じりに告げた。
「……脱獄は重罪だ……」
せめて、失った囚人の魂の穴埋めをと、再び翁はクロノチタノへ棺桶を叩き付けた。
足の再生中で回避できない彼女は、まともに重量攻撃を身体に浴びて吹っ飛んでゆく。
その際に飛び出た骸魂を、翁は密かに回収していったのだった。
成功
🔵🔵🔴
泡夢・雪那
拠点の防衛と地図の回収を優先して行動
反抗しなければらないのはあなたの方だと敵に思い知らせる。
標的を確認、敵UC『弐の反抗竜「チタノラセン」』に対し
こちらはキャバリアASM-C9「リリス」を起動
拠点との間に割って入って応戦する。
「EPキャバリアエンジン」の機動力を生かした一撃離脱を基本戦術とする。
有効射程外からの「BS-Sダークネスキャノン」の呪殺弾
及び至近距離からの「RX-Aダークネスクロー」の部位破壊により
移動力と攻撃力を削いでいく。
時間を稼いで消耗させ、敵を無力化
或いは交渉に応じざるを得ない状況に追い込む。
どんな時も落ち着いて行動し
此処一番の勝負にはUC『傾国』の影響でキャバリアが奮起。
ノインツィヒ・アリスズナンバー
【アリスズナンバー】
不死の兵隊……奴隷の奴らは考えることも出来やしないんだろうな。
思考力を奪って洗脳する。兵士を作るのに一番簡単な方法だよ。
まあ今は考えてもしゃあねえ。目の前の敵を潰すだけだ。向こうは知ってるか知らねえが、アリスズナンバーはそう作られたんだから。
向こうの剣が届く前に決着をつける。
ダンスとパフォーマンスを応用したステップで一気に切り込み、懐に飛び込んだらUC発動。その剣の柄を狙って叩き込む。剣が変形しても持ち手はそう変わらないはず。
攻撃がくる場合はカウンターと第六感でジャストガード。
地図はデータ化してイドラに転送しておく。
さて、いくかよ。博士の後継者に会いに。
アドリブ・絡み歓迎
アハト・アリスズナンバー
【アリスズナンバー】
……そういえば、私たちの技術はヴォーテックス一族が資金提供してたんですっけ。嫌なもんですね。
それに不死の軍団でしたか。興味深いですね。死ねるということがどれだけ救いのある事か知らないで、不死を求める姿に愚かさを覚えられずにはいられません。まあ、洗脳されてちゃ考えられないのもしゃあないですけど。
とりあえず私は後衛で突っ込むNo90の援護を。
竜に――怪物になってくれるようなのでUCを起動。超常を殺せヴォーパルソードよ。
破魔の力と誘導弾の性質で剣を縫い付けるようにぶっ刺していきます。
脚と翼を固定させて、向こうの体力と気力を奪っていきましょう。
アドリブ・絡み歓迎
三辻・蒜
人間牧場、か
私の製造元はこの世界らしいけど、色々大変なことになってるんだね
まずは手下が相手、だけど油断できないね
何か合体して強くなるみたいだけど【羨望の光】を全力で撃ち込むよ
拠点の被害が増えるのは嫌だし、敵の頭とかお腹とか弱点になりそうな所を狙ってみる
効果があれば良し、そうでなくても注意をこっちに引き付けられたら充分かな
弱点らしい所が見つかったら同じところを狙って撃ち続けてみようか
出来そうなら他の猟兵とも連携して、反撃の機会を与えないように攻撃を集中しちゃいたいね
地図って、どこかに隠し持ってるのかな
頼んだら出してくれそうな感じでもないし、とりあえず倒しちゃえば良いよね
カシム・ディーン
「この世界は何処かクロムキャバリアに似てるね☆」
更に荒廃してますがね
【情報収集・視力・戦闘知識・医術】
強化された視力で解析
肉体構造からその動きと癖と戦い方の方向性の把握
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を己とメルシーに付与
光学迷彩で存在を隠
UC起動
【空中戦】で共に超高速機動
「行こうご主人サマ!」
しくじるんじゃねーぞ!
【念動力・スナイパー】
超高速で飛びながらのカドゥケゥスからの連続念動光弾
敵の動きを固定
メルシー
【二回攻撃・切断・瞬間思考力】
弾幕の中距離を詰めての鎌剣での連続攻撃
敵の攻撃は【武器受け】で受け止め被害軽減
対SPD
共に目がギラリ
戦う意思から脱がす意志へ!
【盗み・盗み攻撃】の大惨事発生!(てへ
バーン・マーディ
反抗者…良い
我はバーン・マーディ
正義に叛逆する悪である(マーズより降り立ち
マーズよ
見届けよ
「御意」
【オーラ防御】展開
【戦闘知識】で反抗者の戦い方を分析
反抗者よ
世に抗いし者よ
貴様に応じよう
我が「叛逆」を以て
正面から彼女の猛攻に対しぶつかる
その苛烈なる攻撃は【武器受け】で受け止めダメージを軽減
【怪力・二回攻撃】
魔剣と車輪剣による連続斬撃
【生命力吸収・吸血】により此方の生命力を回復
並の攻撃では無意味と思わせる
対反抗の剣
反抗者よ
貴様のその剣に対し我は叛逆の拳(けん)を以て応じよう
殺傷力を増したその剣に対して
【カウンター・怪力】
UCを重ね…その殺傷力も乗せて叛逆の拳を叩き込む!!
受けるがいい
叛逆を!!!
猟兵達はクロノチタノを一気に抑え込むべく、6人掛かりで共同戦線を張る。
「任務内容を確認。標的『クロノチタノ』の撃滅。拠点の防衛と地図の回収を優先事項と捉え、他5名の猟兵と共闘を推奨」
怜悧かつ淡々と呟く泡夢・雪那(夢魔皇姫・f32415)。
彼女はクロムキャバリアの軍事企業『アスモデウス・エンタープライズ』社製クロムキャバリアASM-C9『リリス』のコクピット内にいる。
期待の外部スピーカーを介して、足元のクロノチタノへ泡夢は警告を発した。
「これが最後通牒です。大人しく『人間牧場』への地図を渡しなさい。さもなくば強行手段をもってして奪取を試みます」
「笑わせるな。それこそ、我が行動理念である反抗を見せ付けるまで!」
クロノチタノの拒絶に、泡夢は機械的に返答した。
「交渉決裂。ASM-C9『リリス』スタンバイ。……反抗しなければらないのはあなたの方だと、思い知ることでしょう」
機体を拠点との間に割り込ませる泡夢は、BS-Sダークネスキャノンの砲口をクロノチタノへ向けて狙い澄ます。
その左右を固めるのは、ノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)とアハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)が搭乗するキャバリア2機だ。
「よぉ、反抗者? その根性は見上げたもんだが……私ちゃん達を怒らせたら怖いんだぞ☆」
「No.90? 無理して取り付くわなくても良いのですよ?」
ノインツィヒが冷静さを欠くまいとアイドルモードで話し始めると、アハトがそれを宥める。
すると、含み笑いを漏らすノインツィヒの口調が“元通り”になった。
「今ので余計な肩の力が抜けたわ。はんっ……不死の兵隊なぁ……。同じ事を考える輩は、博士以外にもいやがったってことか」
ノインツィヒとアハト達はアリスズナンバーと呼称されるフラスコチャイルドの同系列シリーズである。
彼らこそが『不死の軍隊』の体現者であり、製作者である博士の復讐の道具であり、死んでしまった恋人の写し身であった。その博士はオブリビオンとして復活して暗躍していたのだが、先日、アハトの手で直にケジメを付けて殺したのだ。
「別人が博士と同じ思想を抱いていた事は興味深いですね。死ねるということがどれだけ救いのある事か知らないで、不死を求める姿に愚かさを覚えられずにはいられません」
感情の起伏がなかったアハトは、博士を討ち倒してから僅かだが表情に感情が現れ始めていた。アリスズナンバーの存在の皮肉さを思いながら、今、アハトは悔やむように唇を噛みしめているのがその証拠だ。
「まあ、洗脳されてちゃ考えられないのもしゃあないですけど」
「だな、アハト姉。思考力を奪って洗脳する。兵士を作るのに一番簡単な方法だよ。向こうは知ってるか知らねえが、アリスズナンバーはそう作られたんだから。……きっと、『人間牧場』に放り込まれた奴隷の奴らは考えることも出来やしないんだろうな」
ノインツィヒも言葉に怒りを滲ませる。
「まあ今は考えてもしゃあねえ。目の前の敵を潰すだけだ」
「ええ、今は敵の撃破を最優先に考えましょう」
3機のキャバリア以外にも、生身で闘う猟兵達も身構える。
「人間牧場、か。私の製造元はこの世界らしいけど、色々大変なことになってるんだね」
アポカリプスヘルから堕ちてきたグリードオーシャンの島の廃墟で発見された三辻・蒜(緑眼の獣・f32482)は、空の弾倉のままの旧型の護身拳銃を掲げて敵を睨みつける。
彼女もフラスコチャイルドであるがゆえに、人為的に不死の軍隊を生み出す人体実験に思うところがあるようだ。
更にカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)とその相棒のメルシーは、冷ややかに敵を見詰めていた。
「相手は容赦する必要がない外道ですね。メルシー、やれるか?」
「勿論☆ あと、この世界は何処かクロムキャバリアに似てるね☆」
「更に荒廃してますがね?」
すかさずツッコミを入れる辺り、カシムは手慣れたものだ。
その横で凄まじい殺気を放っているのは、漆黒の鎧に身を包んだバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)とそのキャバリアである破城神機『マーズ』だ。
「なるほど、貴様は反抗者か……良い」
バーンの身の丈2m弱をゆうに超える巨大な魔剣『Durandal MardyLord』を正眼に構えると、バーンは騎士らしく名乗りを上げた。
「我はバーン・マーディ。正義に叛逆する悪である。ふっ――!」
マーズから飛び降りたバーンは膝立てで着地。
「マーズよ、手出し無用だ。しかと見届けよ」
『御意』
自我を持つキャバリアは、主の言葉を聞き入れて後退。
そのまま拠点の防壁代わりになるべく、一般人達を背に庇うために身を屈めた。
バーンの神気により構成されるオーラの十字型障壁が展開される。
「反抗者よ。此世に抗いし者よ。貴様に応じよう、我が『叛逆』を以て」
そのまま魔剣を振り上げ、最上段から斬り掛かるべくクロノチタノへ飛びかかるバーン!
彼の突進が戦端を開いた。
すぐさまクロノチタノも剣の封印を解き、不規則な軌道でバーンを切り刻もうとするが……。
「無駄だ」
十字型のオーラ障壁が、クロノチタノの剣を弾き返してしまう。
「まずい……っ!」
慌てたクロノチタノは、すぐさま剣を手元に戻してバーンの剣撃を受け止めた。
その猛烈な闘牛が如き突進力に、クロノチタノは後退りしながら懸命に刃を押し止める。
「受け止めるか、反抗者。そうこうなくてはな?」
バーンの攻撃で、敵の身動きが一瞬鈍った。
そこへ殺到する猟兵達!
「剣が振るえないうちに決着を付けてやる!」
ノインツィヒはキャバリア『イドラ』の拳を敵の頭上から叩きつけようとするが、大振りな攻撃は敵に回避させられてしまった。
「だったら、生身で行くまでだ!」
キャバリアから飛び出したノインツィヒは、軽やかなステップを踏みながら、不規則な剣の軌道をひらりひらりと掻い潜り、体術で間合いを詰めてゆく。
蹴りや突きを織り交ぜ、徐々に距離を詰めるアハト。
「剣の刃が歪になっても、持ち手の形状は変えられねぇはずだよな?」
「それが何だというのだ?」
クロノチタノの問い掛けに呼応し、ノインツィヒは地面を力強く踏み込むと、敵の懐へ一気に飛び込んだ!
「答えは、こういうことだ!」
力任せのユーベルコード『一撃必殺』が、クロノチタノの剣の柄を粉砕してみせた!
「なん、だとッ!?」
反抗竜の加護を受けた武器が容易く破壊されたことに、クロノチタノは驚愕してしまう。
「アハト姉! 今だ!」
「了解。此の距離ならば外しません」
アハトも機体の外に出て、高所からの狙撃を敢行。
レーザーライフル・アハトカスタムから放たれた電磁ビーム弾が、寸分狂わずクロノチタノの肩口を貫く。
途端、クロノチタノの顔が苦痛に歪んだ。
「うぐゥッ!? こ、これは……あの叩きのめした反抗者の猟兵が付けた刀傷!? まずい、加護が、薄れる……!」
「何だか知らねえけど、そこがあんたの弱点か! なら容赦しねえ!」
腰を深く落とし、神速の右ストレートをアハトが放つ。
その拳は破壊のユーベルコードとなって、アハトが撃ち抜いた敵の肩口を粉砕してみせた。
「ギャアアアッ!?」
左腕をだらんとぶら下げながら、クロノチタノは激痛に顔を歪めて後ろへ飛び退いた。
「くそっ! 剣での攻撃はもう出来ぬ! ならばこれでどうだ!」
クロノチタノは、その身に宿した反抗竜の骸魂チタノラセンと合体!
みるみるうちに、人型から巨大なドラゴンへと変身してみせた。
「はははははは! 形勢逆転だな!? そのまま踏み潰してくれるわ!」
「なんか合体して強くなったみたいだけど、私のやることは変わらない。いつもどおり、逃がさないし、許さない……!」
空砲のはずの愛銃をドラゴンへと向けた三辻。
そのままトリガーを引くと、なんと銃口から緑色のレーザーが発射されたではないか!
「羨ましい。そんな強靭な体になれるなんて羨ましい。だから此の光の名前は『羨望の光(レヴィアタン)』……遍く生命に対する、嫉妬の感情のユーベルコード!」
そのまま立て続けに、ドラゴンの腹や目や口の中を集中的に光線を撃ち込んでゆく三辻。
「拠点の被害が増えるのは嫌だし、早く倒れてくれないかな」
「ぐぬぅぅッ!? おのれ、小童がぁ!」
かなりのダメージを被ったドラゴンが激昂する!
だが、三辻を庇うように前へ飛び出してきたアハトの操縦するオブリビオンマシンに、振り下ろされたドラゴンの前脚を受け止められてしまう。
「竜に――怪物になってくれるのならば好都合。私の得意分野は“超常殺し”。No.90? 別に私が殺してしまっても構わないのですよね?」
「好きにしろ、アハト姉! やっちまえ!」
ぶっきらぼうに言葉を返す妹に、8番目の姉は愛おしそうに微笑んだ。
「ええ、では、好きにさせてもらいますね、ノインツィヒ?」
「うへぇ……! アハト姉が私の名前を呼ぶ時はマジでブチギレてるときだって、最近判ったからな? こりゃ退避しておくか……!」
巻き込まれないように、アハトは後方へ退いてゆく。
そして、キャバリアで竜の一撃を食い止めたアハトはコクピットの外へ飛び出すと、ユーベルコードの使用許可を本拠地にいる本体のマザー・アリスへ申請する。
「アリスコード送信。対象をジャバヴォックと認識。マザー、使用許可を」
『申請を確認、実行命令を下します。……遠慮はいらないわ、思いっきりぶっ放しなさい、私の“娘”!』
「了解。命令受諾、ヴォーパルソード、射出用意」
半径101m以内の空間に、突如として出現する超常殺しの魔法剣、その数は軽く1000本を超える!
「マザーの命令通り、手加減なしの全力でぶっ放します」
「や、やめ……っ!」
流石に危険を察知したクロノチタノだが、時既に遅し!
「超常を刺し殺せ、ヴォーパルソード。ジャバヴォックを惨殺せよ」
1000本以上もの魔法剣が一斉に幾何学模様を描きながら飛来すると、巨体を誇るドラゴンの全身へ次々と突き刺さってゆく!
「あッ!? ギ、ギャアアアァァーッ!?」
巨大化したのが仇となり、数秒で剣山めいた姿へ早変わりしてしまうクロノチタノ!
更に超常殺しの効果によって、クロノチタノの変身機能は阻害される。
人型に戻っても、なお全身を刺し貫かれ続ける羽目に遭うクロノチタノ。
「そのまま地面に貼り付けてあげましょう。どうです? 今なら昆虫標本の気分を味わえるのでは?」
「やっぱブチ切れたアハト姉、怖えぇ……!」
返り血を浴びながら微笑むアハトに、ノインツィヒはドン引きだ!
そこへ更に追い打ちをかけるのが泡夢のキャバリア『リリス』!
「ダークネスキャノン、発射」
人間の悪しき思念を凝縮して放つサイキック砲が反抗者を爆ぜさせた。
そのままダークネスクローを横薙ぎに振り抜けば、暗い色の炎の軌跡と共にクロノチタノが吹き飛んでいった!
「皆さんの攻撃のおかげで、当機はかなり助けられました。感謝の意を述べさせていただきます。あとはお任せを」
会社員としての礼儀を忘れない泡夢。
これはユーベルコード『傾国』の効果で圧倒的な魅惑のオーラの効果を最大限に引き出していたおかげでもある。これにより、猟兵達は友好的に泡夢を迎え入れ、吹っ飛ばされたクロノチタノも反抗の意を削がれてしまう。
「それじゃ、真打ち登場ですかね?」
「ご主人サマ! 頑張ろうね☆」
カシムとメルシーの姿が消える。
光学迷彩フィールドを纏った2人はすかさずユーベルコードを発動させた。
「いくぞメルシー! 魔力と思考をリンクさせろ!」
「ラジャったよご主人サマ♪」
メルクリウス少女形態ことメルシーとカシムの魔力回路が意識レベルで同調した時、2人は超人的戦闘力を発揮できるのだ。
「バーン! 今回も敵の注意を惹いてください!」
「心得た、カシムよ」
隠密行動のカシム達に攻撃が向かわないように、バーンは吹き飛んでいったクロノチタノを追走!
「反抗者よ、貴様の反抗の剣と意思を砕く、我が叛逆の拳(“けん”と“いし”)を刮目せよ……!」
踏み込んだ足元から上半身へ運動エネルギーを伝播させると、バーンは左拳を振り抜き、渾身のパワーに敵の攻撃力を上乗せしたアッパーカットを繰り出した!
「これこそが我がユーベルコード“大いなる叛逆”なり! 受けるがいい、叛逆を!! 貴様の咎を!!」
クロノチタノの顎にバーンの鉄拳がクリーンヒット!
顎関節が粉砕され、ミサイルのごとく天へと打ち上げられてゆくクロノチタノ!
だが、次の瞬間、戦場に異変が起きた。
「なんだ……? 戦う意志が失せてゆく……だと
……!?」
バーンだけではなく、猟兵達の戦闘意欲が急激に減退していっている!
地面に激突したクロノチタノがへらへら笑っている。
もはや喋ることが出来ない彼女だが、最後のとっておきであるユーベルコードで、戦場に存在する全ての者の戦う意志を無力化したのだ!
今までクロノチタノが倒して来た反抗者達の骸がスカーフから放出され、まるでゾンビ映画のクライマックスのような地獄めいた光景が広がってゆく。
しかし、このユーベルコードは代償が凄まじく、長時間の使用は死を招く。
(さっきの反抗者から受けた傷で、私とチタノの契約が破綻しかけている……! ならば、ギリギリまでこのユーベルコードを維持し、猟兵を骸共の餌にしてしまえば私の勝ちだ!)
苦し紛れに放たれたこの奥の手に、猟兵達は手も足も出ない。
……ただ一組を除いては!
「ヒャッホォゥゥウーッ! ゴスロリ地雷美女の脱衣シーンが見たいぃぃーッ!」
「メルシーもォォォォッ!」
目の色を変えてビーム弾を乱射するアホアホコンビことカシム&メルシー!
「戦う意志? そんなの僕らにはハナからねーですよ!」
「ご主人サマとメルシーはッ! そのけしからんゴスロリ服を剥くためにッ!」
「「ここに居るんだー!」」
「「駄目だこいつらーッ!?」」
猟兵達の心がひとつに重なった瞬間だ!
しかし、これは好機!
この馬鹿2人組にクロノチタノのユーベルコードは全く意味を成さない!
馬鹿 is 最強!
一見して攻撃と受け取れる行為も、彼らにとってはただのご褒美!
いや、本当に色々とふざけんなよコラと言いたいところだが、実際最善手なのだ。
今回は彼らの本能に救われた形になってしまった……!
「メルシー! そろそろフィニッシュだ!」
「オッケー☆ ヤッちゃうよー♪」
2人は一気にマッハ30まで加速すると、ビーム鎌剣の斬撃と風の魔力刃でクロノチタノを切り刻む!
「ぐわああーァァッ!? 馬鹿なーァ!?」
クロノチタノは服どころか肉体と骨はおろか、その魂まで刻まれてしまい、反抗者の猟兵の傷で弱まった反抗竜との契約までも粉々にみじん切りにしてしまった。そのまま肉体も消滅してゆき、クロノチタノは完全なる死を迎えたのだった。
もう訳分からないよ、こいつら……。
「いっけなーい☆ メルシー、勢い付けすぎちゃって、お洋服どころか、おねーさんの魂までぶった切っちゃった♥ さすがは不死者をも冥府に送る力を持つ鎌剣ハルペーの権能だね☆ 切れ味がレベチだゾ☆ テヘペロ♪」
「おいおい、お前……まさか地図までぶった切ってないだろうな?」
心配するカシム。
だがそれは杞憂に終わった。
「地図って、もしかしてこれかな?」
三辻が摘んでみせたのは、アハトが破壊した剣の柄だ。
そこには、小さく丸めて詰め込まれた紙片が!
「地図、武器に隠していたんだね。これじゃ倒してもなかなか見つからなかったかもしれないね?」
「No.90、お手柄ですよ。武器破壊が功を奏しましたね?」
「お、おう。あの濃い面子の後で褒められても微妙だけどな……」
神妙な面持ちで考え込んでしまうノインツィヒであった。
「って、これ、データ化してみんなに共有しておいたほうがよくね? イドラに読み込ませるか……」
「そういうことなら、弊社キャバリアのプロセッサーの出番ですね。ぜひ、アスモデウス社の技術力を試してみて下さい」
ここぞとばかりに広報活動を行う泡夢。
彼女は秘書広報課に所属し、新型キャバリアのプロモーション担当をしてるのだ。
「フッ……賑やかだな、マーズよ?」
『左様でございますな……』
その会話の輪の外で、バーンと神機マーズが揃って腕を組んで誇らしげに胸を張っていた。
「さて、いくかよ。博士の後継者に会いに」
ノインツィヒは、地図が指し示す方角を眺めながら呟くのだった……。
成功
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第2章 冒険
『偽りの聖人と木偶の村』
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POW : 人体実験の対象に選ばれる囮役としてオブリビオンにさりげなく肉体のアピールを行う
SPD : 人体実験されかけている村人がいれば救出を行い、人体実験の証拠を押収する
WIZ : 急にいなくなった村人についての情報収集を行い聖人のフリをしているオブリビオンの本性を暴く
👑7
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気を取り直して、猟兵達は地図を頼りに『人間牧場』のある村へと向かった。
そこは村の周囲を高圧電流が通った鉄条網と電磁柵で張り巡らされた、巨大な『檻』だった。
この中へ潜入するのは一苦労だ。
強行突破すれば、中にいる奴隷達のみに危険が及ぶかもしれない。
故に、ここは猟兵達も奴隷に扮して、村の中へ潜り込む他ないだろう。
奴隷役が難しいなら、悪徳奴隷商になりきってもいいだろう。
村の中に潜入したら、偽りの聖人が行う人体実験の証拠を集め、その恐ろしさや理不尽さを伝えることで奴隷達を説得してほしい。偽りの聖人の本性を探り、じゅうbンな証拠が集まった段階で奴隷達へ暴露するのも一興だ。
また、奴隷達を救うためには、自らが実験材料になるようなアピールをする必要があるだろう。
上手く気を引ければ、偽りの聖女の関係者達に連行されるのは猟兵達であり、その代わりに奴隷達の命は助かるのだ。
そんな作戦で動くかは、各々の猟兵の判断に任せる。
かくして、『人間牧場』村への潜入作戦が決行されるのだった……!
三辻・蒜
ここは大人しく奴隷に扮装して潜り込んでみようか
周囲に油断してもらえるように、なるべく弱々しい感じで行こう
奴隷は家畜扱いに慣らされちゃってるらしいけど、生きてる人間なんだよね
こっそり食べ物を分け合ったりして仲良くなれないかな
人体実験そのものは知らないだろうけど、被験体とか実験場に繋がる情報、会話しながら探ってみる
他にも潜入してる猟兵と情報交換できれば、証拠の在処を見つけるのも早く済みそう
奴隷のみんなに被験体の結末を見せちゃうのが良いかなと思ってる
惨酷な真実を知ってもらえれば、嫌でも目が覚めるんじゃないかな
【羨望の光】は撃たないと危ないときだけ使う
証拠の披露までは、我慢して行動しないとね
レパイア・グラスボトル
毎度おなじみのお医者様だ。
病人怪我人なんでもいいから持ってこい。
ここに来たのは初めてだけどな。
噂の聖人様ほどじゃあないけど、実験体は健康な方は色々便利だろ?
実験体の治療と称して家族と共に入り込む。
【SPD】
死にそうな人体実験に横やりを入れる。
誰であろうと死ぬような事態にはさせない。
止まらないヤツは死にかけにしても止めてから治す。
殺さない程度に痛めつけるのは家族も得意。
善悪強弱問わず治して情報収集。
医療技術は聖人と同系統
ワタシの前で死ねると思わない事だな。
実験された後の患者を診察し、その技術元を調査。
その治療に感動したふりをして聖人の下に案内してもらう。
嗤う。
聖人、ね。
瓶詰生まれが大層な事で。
ニクロム・チタノ
フゥ、なんとか復活したよ、反抗の加護はかくも偉大だ!
みんなのおかげでチタノの名誉も守れた、心からありがとう
ボクも怒りで目が曇ってたよ、先代も洗脳されてたのかもしれないね・・・
さて、ボクはこの身なりだし奴隷として・・・嗚呼前もこんなことあったね?
うーん、反抗の妖刀はここに置いて行こうかな?
向こうに反抗者がいたなら猟兵だってバレるよね
いや、記憶喪失の振りして近づくかな
向こう反抗者がいなくなって困っているなら記憶喪失の反抗者って戦力にしたいだろうし
もしかすると黒幕のところに連れて行かれるかも!
反抗者がいたならボクがニクロムナンバーの生き残りってことも知っているかな?
母さん、また会えるかな?
カシム・ディーン
UC起動
攻撃半減
装甲強化
銀髪美少女モード(完全人間擬態
さて…潜入作戦ですが奴隷商人で行きましょうか
「メルシーは奴隷だね!メルシーは元よりご主人サマの愛のエロ奴隷だよ♥」
おめーは何を言ってやがりますかぁ!?
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を己に付与して熱源と匂いを隠蔽しつつ光学迷彩状態
【情報収集・視力・戦闘知識】
人間牧場の構造と奴隷収容の位置
戦力から奴隷解放時の脱出経路を把握
後は人体実験の様子を記録
更に聖女の行為も
メルシー
奴隷達と楽しくお話
特にそれぞれ境遇を聞いたり楽しい話をして犠牲に対して恐れの感情を抱かせる
それこそ聖女側からすれば「邪魔」と判断し実験材料となる為に
僕が集めた証拠で奴隷達を説得
バーン・マーディ
我自身が奴隷を演じるとしよう
何…我も血肉にはそれなりに自信はある
マーズよ
貴様は次なる戦いに備えよ
「承知いたしました。いつでも私をお呼びください」(待機
本音を言えばあまり演ずるのは得意ではないが
鎧は今回は外しラフな格好
故に我が肉体がより目立つ
【オーラ防御】をさり気に展開
強い生命力を感じさせようと
死なぬ体か
我も死は恐ろしい
だからこそその実験に興味がある
永遠に我が身が朽ちる事は無いのであれば
我が身を是非とも使って頂きたい
【怪力】で力の強さもアピール
実験場に連れていかれるなら周囲の構造とどんなものがあるかも把握
(……我とて憧れる英雄はいる。その者は奴隷剣闘士でそれでも尚圧政に対する叛逆を続けたという。
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
気持ちの上では、目の前で誰かが犠牲になろうとしている状況は絶対避けたい所
だが、潜入するには奴隷として連行されて来た、とした方が潜入はしやすいんだろうな、奴隷商ってガラじゃないし(汗
そっと小獣の理を発動し小動物達と共に村の中へ侵入
小動物達には【目立たない】ように注意してもらいながら情報収集をしてもらおう
俺自身も奴隷役として周囲の奴隷達とこっそり話をし情報収集に努めるかな
【コミュ力】が活かせそうか
小動物達が収集してくれた情報を基に自分も【迷彩】施し、【目立たない】よう【忍び足】で有力な情報が得られそうな場所を捜索
捜索する際は敵に見つかる恐れもあるので【索敵】も忘れずに実施
アハト・アリスズナンバー
【アリスズナンバー】
……さて、面倒だからと言って強行突破は危険ですね。
此処は奴隷を作る側に回って、いざビジネスと参りましょうか。
時間を稼いでる間に、No.90や他の猟兵達が証拠を掴めればいいのですが。
UCを起動して、私は早着替えでこの地にやってきた奴隷商になります。
他のわたしたちも早着替えで奴隷になりきります。
この地の奴隷が欲しいと接触。わたしたちと交換する形で言いくるめて他の奴隷たちを救出しましょう。
更に内部の情報は、連れていかれたわたしたちにネットワークとドローンを経由して、情報収集を行います。
これにより奴隷達への証拠も提示出来ます。
実験させられそうになったらUC解除。
アドリブ・絡み歓迎
ノインツィヒ・アリスズナンバー
【アリスズナンバー】
いよいよ内部突入だね☆
どんな馬鹿があの人の実験継いでんだか確かめなきゃなんねえ。
じっくり見させてもらうよ。この目でな。
私ちゃんはアハトさんが連れていく奴隷に紛れて、奴隷として売られていくよ。
活きのいい奴隷っていうじゃん生意気な奴。挑発と言いくるめで価値ある奴隷として引き換えられる様にアハトさんのカバーをする。
無事に内部に連れていかれたらステージビットをドローンの要領で操り、実験の証拠を撮影する。
十分に証拠が集まったら外にいるアハトさんにデータを転送し、実験の被検体になる様に挑発。
向こうが実験しようとした隙にUC発動☆
相手をぶっ壊して、拘束も怪力で引きちぎり脱出よ☆
泡夢・雪那
※アレンジOK
被験者の末路について調査し、その結果をもって村人の説得を試みる。
その目的の為に、まずは「死せる奴隷」として村に潜入
死体袋を開いて覗き込んでくる者はUC『夢幻』に誘って「紛れもなく死体である」という暗示を仕掛け
死体の処理施設へと運ばれるように促す。
誰も居ない内に、被験者の遺体の状態や処理方法を調査
未だ息のある者がいれば救助を試み、人体実験について話を聞く。
関係者の前では何があっても微動だにせず、死体として処理されても抗わない。
しかしそれは現実ではなく、UC『夢幻』の力ですり替えられた白昼夢。
その上で「ここで行われてきた事を、村人達に全て告白しなければならない」という暗示を与える。
非人道的な人体実験が行われていると思しき『人間牧場』村が地平線の果てに見えてきた。
その道中、半仮面の少女ことニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は、傷を癒やしてくれたレパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)に感謝の意を伝えた。
「フゥ、なんとか復活したよ。反抗の加護は当然のこと、キミの治療の腕はかくも偉大だ!」
「なに、あれ程の怪我人を見たら自然と体が動き出していただけだ」
レパイアは浮き出た首筋に力を入れて自虐的に笑みを浮かべた。
彼女は『Tyep-Repair』のフラスコチャイルド、つまり凄腕の衛生兵といっても過言ではない。
21年前にレイダー集団によって発掘・起動させられた『命を紡ぐために作らえた』肉人形は、“Repair”をローマ字した発音で名前を与えられた。
プログラムされた人命救助術は、瀕死のレイダーを完膚なきまでに生還させる程のワザマエを誇った。
レパイア曰く、たとえバラバラの肉片からも完璧に蘇生させてみせる、と。
そのせいか、病人・怪我人がレパイアの視界に入ると、問答無用で治療を行い、そして生還させてしまう。
――故に『死なない兵団』。
この兵団の目的は“ぶっ殺す”ではなく“ぶっ生き返す”こと。
彼女達の同系統製品人形が文明崩壊初期には活躍していたが、オブリビオンストームに巻き込まれ、その一部が今回のように事件を引き起こしている。
「……やれやれ、職務に忠実すぎるのも考えものだな」
「なにか言ったかな?」
首を傾げるニクロムに、レパイアは黙って首を小さく横に振った。
「それはそうと……!」
ニクロムは同行する猟兵達に向かって頭を下げた。
「みんなのおかげでチタノの名誉も守れた、心からありがとう!」
同じ力の根源を保持する『反抗者』を猟兵達が討ち取ったことで、ニクロムの宿縁に決着が付いた。彼女自身は完全に打ち負かされてしまったが、その事を顧みながら言葉を紡ぐ。
「ボクも怒りで目が曇ってたよ、先代も洗脳されてたのかもしれないね……」
「頭を上げて? というか、あの戦いってなんか、最後はハチャメチャだったけど……」
三辻・蒜(緑眼の獣・f32482)はジト目でカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)と連れの銀髪少女メルシーを見遣っている。
その視線に気が付いたメルシーが照れくさそうにはにかむ。
「やだ~、そんなに見詰めないでよ~♪ メルシーの実力なら当然だけど☆」
「お前はもっと謙遜ってものを知りやがれ!」
カシムがメルシーの空っぽの頭をスパーンッと勢いよく叩く。
「……いや、カシム? 貴様も同罪ではなかろうか? あれはなんというか……」
訝しむバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)が呆れて腕を組む。
「う~ん、カシムさんってブレないですよね、色んな意味で……」
事の顛末を聞き及んでいる鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)も、これには思わず苦笑い。
「私は“あくま”でノーコメントです」
泡夢・雪那(夢魔皇姫・f32415)は興味なさげにそっぽを向く。
「No.90、少しいいですか? カシムさんの一連の暴走を鑑みたのですが、人間の情動性とは凄いですね。感情乏しい私も、多少は見習うべきでしょうか?」
「う~ん☆ アハトさんのキャラじゃないから却下☆ つーか止めてくれよマジで……!」
アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)が感化されかかっているのを、アイドルモードでぶりっ子中のノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)が全力で制止した。
と、ここでメルシーがノインツィヒの口調に反応する。
「……その口調、ぶりっ子キャラ、美少女……! もしかして、メルシーとキャラ被ってね?☆」
「ねーよ☆ ぜってーねーよ☆」
コンマ1秒でノインツィヒはツッコミを入れざるを得なかった。
すぐさまカシムがメルシーの首をスリーパーホールドを掛けて懲罰行為!
「すいません、うちのノータリンがご迷惑をかけて……」
「えーと、私ちゃんは気にしてないから☆」
ノインツィヒはカシムに親近感……苦労人属性をシンパシッてしまった。
その間にも、メルシー首はあらぬ方向へねじ曲がり、顔は徐々に鬱血してゆく。
「ご主人、サ……マ? ギブッ! ギブッッ!? 賢者の石で出来てるメルシーだけどッ! 痛みや苦しさは感じるから……ッ!」
「お? 頚椎骨折か? ワタシの目の前で怪我人を出すとか、アンタ、いい度胸してるな?」
片手にメス、もう片手に医療用ノコギリを構えるレパイアの目が鋭く輝く!
「アイエッ……!? ち、違います! こいつは人間じゃないんですよ! 神機っていうキャバリアが人間の姿に変身しててですね
……!?」
ビビったカシムがメルシーを解放すると、しどろもどろになっていた。
「えっと、大丈夫かな、この先……?」
キャラの濃い猟兵達を前に、三辻は不安に駆られてゆく。
三辻もそこそこ粗野な性格を自負していたが、アクの強すぎる面々では大人しくなってしまう。
鳳凰院は尻込みする三辻にフォローの言葉を投げかけた。
「色々と規格外ですけど、あの人達は間違いなく歴戦の猟兵ですよ。ああ見えて協調性もありますし、事前に打ち合わせした通りに動いてくれますよ」
そう語る鳳凰院は奥歯を噛み締め、近付きつつある『人間牧場』村を睨みつける。
「それに……此処にいる誰もが、目の前で誰かが犠牲になろうとしている状況は絶対避けたいと考えていますから。俺もそうですし、あの人達だって、きっと……」
「蒜。安心してください。必ずこの作戦は成功します。成功させてみせます。一緒に頑張りましょう」
泡夢の励ましもあり、三辻の表情にやる気が戻った。
「ところで、雪那? なんでズタ袋に入ろうとしているのかな?」
三辻の疑問の言葉に、泡夢は真顔で答えた。
「これが私の作戦です。私は死体役として村の中へ潜入を試みます。流石に死者へのマークは無いでしょうから、調査がしやすくなるはずです。他の猟兵がそのあたり、上手くことを進めてくれるそうですので」
これには三辻だけではなく、鳳凰院も驚愕していた。
その会話の後方で、バーンは相棒である破城神機『マーズ』を呼び止めた。
「マーズよ。貴様は次なる戦いに備えて待機せよ。我自身も奴隷を演じるとしよう。貴様に剣と鎧を預ける。頼んだぞ」
『承知いたしました。いつでも私をお呼びください』
マーズはバーンの黒鎧と魔剣を預かると、身を屈めて岩場に巨体を隠した。
鎧を脱いだバーンは、その屈強な筋肉を上にボロの麻布を巻き、みすぼらしさを演出する。
「……どこぞの街の奴隷剣闘士という設定でいくか。上手く我に興味を示してくれるといいのだが」
半裸になったバーンの姿に、他の猟兵はしばし、その肉体美に息を飲むのだった。
そして、潜入の時間が迫る。
予知の通り、『人間牧場』村は、高圧電流が通る電磁柵と鉄条網で厳重に囲われていた。
「……さて、面倒だからと言って強行突破は危険ですね。此処は奴隷を作る側に回って、いざビジネスと参りましょうか」
架空の商談を持ちかけている間に他の猟兵達が証拠集めを行うという算段は、ここに辿り着くまでの道中で話し合った作戦内容だ。
「私は大人しく奴隷に扮装して潜り込んでみようか。周囲に油断してもらえるように、なるべく弱々しい感じで行こう」
三辻の言葉に、他の猟兵も奴隷役を買って出る。
「ボクもこの身なりだし奴隷として……嗚呼、前もこんなことあったね?」
以前、経験した出来事を反芻するニクロム。
「あ、反抗の妖刀はここに置いて行こうかな? 向こうに反抗者がいたなら猟兵だってバレるよね? いや、記憶喪失の振りして近づくかな?」
「反抗者がどのようなものか分かりませんが、オブリビオンの反応はさほど多くないようですよ?」
カシムの言葉に、ニクロムが首を傾げた。
「なんで分かるの?」
「いや、こいつが魔力感知で判別できるらしいんですよ……」
そう言ってメルシーを指差すカシム。
メルシーはというと、奴隷役になりきるため、賢者の石で出来た己の身体からボロ装束を生成して纏っていた。
「ご主人サマが奴隷商で、メルシーが奴隷だねっ! メルシーは元より、ご主人サマの愛のエロど……」
「おめーは何を言ってやがりますかぁ!? 青少年の健全育成パンチ!」
「げふっ!?」
カシムは空気を読んだ!
シリアスな雰囲気を壊さぬためにも、アホキャバリアの化身の発言は規制せざるを得なかった。
「続けて、どうぞ」
腹パンを喰らって項垂れるメルシーを担いだカシムは、自身の顔を布で覆って正体を隠した。
バーンはさもありなんと言いたげに溜息を吐きつつ、剥き出しの筋肉を誇示してみせる。
「本音を言えばあまり演ずるのは得意ではないが……実験への貢献の意思をみせれば、恐らく敵の懐へ潜り込めるだろう」
「確かに、活きが良い被検体は喉から出るほど欲しいだろうな」
レパイアはシニカルに笑みを浮かべてみせた。
鳳凰院も奴隷役に志願した。
「俺も潜入するには奴隷として連行されて来た、とした方が潜入はしやすいんだろうな、奴隷商ってガラじゃないし……」
苦笑いを浮かべていると、泡夢がズタ袋から顔を出した。
「すみません。奴隷商役の猟兵の方で、私を担いでくださる方はいませんか?」
「では、私が」
アハトがタバコを吸い始める。
その衣装は、早着替えで見るからに成金風情のザ・悪徳奴隷商という紫色のスーツに着替えていた。
「上位権限グリムコード送信。総員、変装準備」
ユーベルコード『サモン・アリスズナンバー』を発動させると、本拠地の『工場』から102人のアハトのスペア肉体が転送される。
「2人は秘書役で、ズタ袋を担いでください」
本体の命令に、別個体のアハト達2人は黙って泡夢を担いでみせた。
「それじゃ、いよいよ内部突入だね☆」
ノインツィヒがきゃるるーん☆とぶりっ子口調をしたかと思えば、次の瞬間には素の口調に戻っていた。
「どんな馬鹿があの人の実験継いでんだか確かめなきゃなんねえ。じっくり見させてもらうよ。この目でな?」
ノインツィヒはアハトの“目玉商品”として売られる奴隷役だ。
と、ここで、レパイアは興味深げにアハトとノインツィヒを見比べる。
「ふむ、同じフラスコチャイルドでも、こうも違うか。そちらは“命の複製”が主体、つまり最初から死んでもいいように作られているわけか。記憶はおろか魂の復元まで完璧にこなすとは、そちらの技術者の才覚には恐れ入るな」
レパイアの合点ぶりに、アハトも言葉を返す。
「そちらは『死ねない兵団』でしたか。その治療の腕前、もはや人智を超越していますね。つい先程のニクロムさんへの措置は見事でした。……そういえば、そちらの関係者が今回の事件の主犯格だそうで?」
アハトの質問にレパイアは鼻で笑いながら答えた。
「ハッ……! 余計な事をしてくれたもんだ。だがな? “どんなに瀕死でも生還させる医療特化型肉人形”と、そちらの“死んでも複製される自分と同じ顔と魂を宿した肉人形”の技術はまるで対極だ。なんだってそんな相反したものを組み合わせたのだか?」
「それを私ちゃん達に言われてもね~?」
うぅん、と項垂れるノインツィヒ。
「でもでも~? 殺しても無尽蔵に復活する『アリスズナンバー』の複製技術に~、瞬間蘇生も可能な『死ねない兵団』の医療技術が加わったら、ガチでやべーのは確かだよね☆」
「ああ、そんなことを可能にされたら、この世界の命の価値がクソ以下まで崩壊しちまう。それだけは絶対に阻止するぞ」
レパイアはノインツィヒに向かってニタリと嗤う。
「なにせ、ワタシはお医者様だからな? ほら、行くぞ?」
レパイアはすかさずユーベルコードを発動させると、何処からともなくレパイアの仲間のヒャッハーな世紀末レイダー達が続々と集結し始める。
「みんな、今日はワタシのお医者様ごっこに付き合え! 上手く行ったら、あの村を焼いて略奪していいぞ!」
「マジかよ、レパイア!?」
「村一個まるごと焼くとか、極悪じゃねーか!」
「ヒャッハー! お楽しみのためなら何でもやるぜ、レパイア!」
色めき立つレイダー達をなだめ、作戦内容をレパイアは伝達する。
案外と聞き分けのいいレイダー達は、オラつきながら奴隷役の猟兵達を連行し始めるのだった。
村の入り口に駐在する守衛が、猟兵達の前を塞いだ。
「止まれ! お前達、何者だ?」
まずはレパイアが守衛に一礼してみせた。
「見ての通り、毎度おなじみのお医者様だ。ここに来たのは初めてだけどな。聖人様がこの村の住人の健康状態が良くないと嘆いてらっしゃったと聞いて、はるばる遠方から駆け付けてきたぞ?」
守衛は首を傾げた。
「そんな話は聞いてないが……。だが、この村の怪我人と病人は“不思議と絶えない”んだ。アンタも不健康そうだが、腕は立つのか?」
「無論だ。生きていれば四肢がバラバラでも元通りにして生き返られてみせよう」
「へぇ? 大した自信じゃないか。いいだろう、聖人様には私から連絡を入れておこう。村の健康状態を聖女様が気に掛けていたのは事実だからな」
守衛の言葉に、レパイアは今一度頭を下げて感謝の意を表した。
「そうだ、病人に怪我人、なんでもいいから持ってこい。噂の聖人様ほどじゃあないけど、“村人”は健康な方は色々便利だろ?」
含みのある言い方。
これに守衛は小さく息を呑んだ。
「……そういう事かい。『肉塊女帝』様の差し金か」
どうやら、この村を所有している『肉塊女帝』ブラッドルビー・ヴォーテックスの査察だと思われたようだ。
つまり守衛も、実情を把握した上で派遣されている子飼いの部下なのだろう。
「で? 後ろの奴らはなんだ?」
守衛の疑問にカシムとアハトが交互に口を開いた。
「僕達は奴隷商です。近くの拠点がレイダー達の襲撃で潰されましてね? 難民をひっ捕らえてきました」
「なかなか活きが良いですよ? どうです? そちらの村の住人とトレードをしませんか?」
2人の顔とレパイアの顔を交互に見遣った守衛。
取り巻きのレイダー達を眺めると、独り合点してニヤつく。
「なるほど? 『女帝』様の使者に取り入って、道中の拠点を潰して手土産にってことか。そんなにアンタ、点数稼ぎたいのかい?」
「ワタシはただ怪我人病人を治すだけだ」
「はは~ん? 己の欲求を満たすために、わざと拠点を襲わせたか。なるほどね~?」
レパイアの言葉に、下手の勘ぐりで勝手に妄想を膨らませてゆく守衛である。
「いやはや、悪い奴が入ってきたもんだ! なぁアンタ? 俺のこと、『女帝』様に色付けて報告しておいてくれよ! 俺も早くヴォーテックスシティに戻りてぇからさ! 頼むぜ!」
「ああ考えておくよ」
レパイアの虚言に気を良くした守衛は、猟兵達を村のゲートへ通してしまった。
「商談の話はあの屋敷で行おう。お医者様、診療所はあっちだぜ? んで奴隷共! お前達は家畜小屋だ! アンタたち、あの長屋へ連れてってくれ!」
ここで猟兵達は、それぞれの配役ごとに別行動を開始する。
……その前に。
「なぁ? このズタ袋、まさか死体か?」
村の関係者が、泡夢が入ったズタ袋を開封する。
瞬間、泡夢は目を見開いたまま身じろぎせず耐える。
村人が彼女の顔を覗き込んだ瞬間、互いの目止めがあった。
「――死んでるな。間違いないぜ?」
村人は泡夢のズタ袋を再び閉じた。
(よし、成功です……)
袋の中の泡夢は、強力な催眠効果を発揮するユーベルコード『夢幻(ユメマボロシ)』を発現させ、自身を死体だと認識させたのだ。
発動条件は、相手へ自身の魔眼の光を浴びせる必要があるが、死体の顔を覗き込めば誰もがほぼ間違いなく引っかかってくれるから問題ない。
「奴隷商から話を聞いてきた。そいつ、道中でくたばって処理に困ってたらしい」
「で、うちで始末しろと?」
「カネは払うって、ほら」
男の手には、それなりの金額の入った麻袋が握られていた。
文明が崩壊しても、カネはヴォーテックスシティには必要不可欠な代物だ。
「んじゃ、ビジネスならきっちり始末しないとだな? 墓穴は掘ってあるか?」
「昨日で20基分も掘ったからな? そのうちの適当な場所に埋めようぜ?」
泡夢はそのまま抵抗することなく、地中へ埋められてしまった……。
――かに思えた。
(今、あなた達が埋めたのは、野垂れ死にしていた犬の死骸です……)
幻覚で男達を惑わせた泡夢は、自分の入ってたズタ袋と犬の死骸を誤認させたのだ。
泡夢はそっと袋から抜け出して物陰に避難すると、犬の死体をせっせと埋める男たちの会話を盗み聞きする。
「しっかし、この辺りの墓の埋まり方、最近ペース早くねぇか?」
「だな? 実験は上手く行ってないみたいだぜ?」
「この墓の下は実験の失敗作がうじゃうじゃ眠ってやがるってわけだ」
「火葬のほうが楽なのにな?」
「土葬じゃないと、オブリビオンとして蘇った時に肉体が用意しやすいんだと」
「へぇー? って、そろそろいいか? んじゃ、奴隷達に餌やりに行こうぜ?」
「へへっ、清貧なるお恵みターイムだな? けけっ!」
部下達が遠ざかってゆく。
泡夢は周囲に人気がないことを確認すると、急いで周囲の墓を暴き始めた。
鳳凰院は絶句した。
連れて行かれた場所は、家畜の畜舎のそれだった。
『人間牧場』の名は伊達じゃなかった。
老若男女が入り乱れての“繁殖”を強いられる奴隷達の光景に、奴隷役を買って出た猟兵達は思わず目を背けてしまった。
「お前達は、これから聖人様のご期待に添うために、強い子孫を残さねばならない。これからは、これがお前達の仕事だ!」
つまり、実験用の動物を人間が人工繁殖させるように、ここでは『不死の軍隊』を作る材料になる人間を、オブリビオンが人工繁殖させているのだ!
何たる非道か!
(ウヒョ~! すごい光景だね、メルシーも混ざりたい!)
ただ、メルシーだけは鼻息を荒くなり、必死にそれを誤魔化し続けていた。
(この光景を目の当たりにしても、洗脳された村人達は受け入れているのか!)
鳳凰院は怒りで正気を失いそうになるのを必死に堪えていた。
(こうなったら……みんな、力を貸してくれ!)
鳳凰院はユーベルコード『小獣の理(チイサキモノノテダスケ)』を行使すると、猫や小鳥など様々な小動物104匹が畜舎へ呼び寄せた。
突然、わらわらと集まってきた小動物の群れに、『女帝』の部下は大慌ての大混乱!
「なんだなんだ!? こらあっちいけ!」
(みんな、ありがとう!)
鳳凰院はすかさず精霊のローブの加護を発動させ、その身を透明に変えて逃げ出した。
小動物達も解散させると、同様に光学迷彩を施して村中へ放った。
「ったく、なんだったんだ?」
鳳凰院が欠けたことを悟られないために、猟兵達は各々がカバーし合う。
「あの! 反抗者って知ってますか!?」
ニクロムの唐突な質問に、部下の男は訝しがる。
「あぁ、反抗者? そういや、ゴテゴテのドレスを着込んだ女が剣を振り回してるところを見たな? チタノの加護がどうとか?」
「それです! ボク、記憶が無いんですけど、ここに反抗者がいるって聞いて! この刀、その人のらしいんです!」
結局持ち込んだ反抗の妖刀を男に見せるニクロム。
即興で『記憶の手掛かりを追って此処まで来た奴隷』という設定をでっち上げてみせた。
男は腕を組んで対応に苦心している様子。
「参ったなぁ? そいつ、この間から出払ったっきり戻ってこねぇよ。だが、この村に入ったからにはお前も実験材料だ。余計なことを聞かれる前に処置を施そう」
「え、ちょっと?」
ニクロムは洗脳された村人達に両脇を拘束され、何処かへ連行されてゆく。
「さあ、聖人様の元へ参りましょう」
「貴方は運が良い! 施しを受けて、我々と一緒に聖人様に尽くしましょう!」
ズルズルと連行されるニクロムだが、内心は機体も入り混じっていた。
(ボク以外の反抗者が、黒幕の側にいるかも? ボクがニクロムナンバーの生き残りってことも知っているかな?)
淡い期待を胸に、ニクロムは奴隷らしく従順に連行されてゆく。
(……母さん、また会えるかな?)
ニクロムはこうして、黒幕のいる診療所へ連行されてゆく。
そこに待ったを掛ける者がいた。
「死なぬ体か。我も死は恐ろしい。だからこそ、その実験に興味がある」
バーンは薄っすらと筋肉映えするオーラを周囲に放ってアピールをする。
「永遠に我が身が朽ちる事は無いのであれば、我が身を是非とも使って頂きたい。実験が成功した暁には、我が強靭な肉体はさぞかしお役に立てるかと」
「……なるほど。良い心懸けだ。よし、こいつも連れて行け」
バーンも洗脳された村人に連行され、畜舎を後にする。
その背後に、光学迷彩で透明化したスライムがへばりついていた。
(メルシー、賢者の石で出来てるから姿形は自在に変身できるもんね♪ あの畜舎での光景はもっと眺めていたかったけど!)
どさくさに紛れて、メルシーも黒幕の元へ向かうのだった。
気が付けば、残されたのは三辻のみ。
そのまま畜舎の奥へ押し込まれた三辻は、同じく待機する奴隷達と面会することが出来た。
「……はい、これ。異世界の食べ物だから口に合うか分からないけど」
「た、食べて良いの?」
ぐったりしていた女性が、手渡された握り飯に齧り付く。
「美味しい!」
「よかった。で、さ? ……このままだと、酷い目に遭うけど、逃げ出そうとは思わないの?」
三辻の率直な意見に、女は首を横に振った。
「とんでもない! これはお役目よ? 聖人様に不死の軍隊を作ってもらって、この村を他のヴォーテックス一族から守ってもらうの。そのためにも、私はこの身体を差し出してでも頑張らなきゃ……!」
言葉では気丈に振る舞うが、その口元は恐怖でかすかに震えていた。
三辻は思い切って、その場にいる奴隷達へ告げた。
「みんな、ちょっといい? この村、その不死の軍隊を作るために人体実験をしてるって認識、持ってるの?」
奴隷達はぽかんと口を開けて顔を見合わせる。
どうやら洗脳で、今まで疑問にすら抱いたことがないらしい。
これは思っていたよりも重症だと三辻が頭を抱えていると、唐突に部屋の扉が開け放たれた。
(くそ! 時間切れか! 絶対に嫌だ!)
このまま自分も畜舎へ押し込まれるのか、と覚悟したその時だった。
ダンッと衝撃音が響くと、扉が吹き飛ばされる!
そして廊下から先程の男がボコボコにされて部屋の中に転がっていったのだ。
「遅くなって申し訳ありません。助けに来ました、蒜」
「雪那!」
泡夢が殺意を漲らせながら、転がした男の髪を引っ掴んで釣り上げた。
そして魔眼で暗示を上書きさせる。
「あなたは、この村の真実を彼らに告白しなくてはなりません。それが義務なのです」
「義務……! ああ、そうだ! お前達はただの実験材料だ! 聖人様とか言ってるが、あれはただのオブリビオンだ! 俺達はカネで雇われたただのレイダーだ!」
男の告白に、奴隷達は驚天動地の騒ぎだ。
「畜舎の皆さんは、合図があり次第、逃がす算段です。蒜、手伝ってくれますか?」
「……当然だよ!」
2人はガッチリと固く手を握り合うと、カシムからの合図を待つのだった。
そのカシムはというと?
「この美少女な奴隷達の何処が不満なのですか!」
「いやぁね? 全員が女の子だと“交配”が出来ないんでね?」
「エロい事をするなら女の子同士でも出来ますよ!?」
「そういうことじゃねぇ!」
アハトの用意した100人以上の奴隷と村人とのトレードが難航していた。
「少し、いいでしょうか?」
アハトが口を挟む。
「……少々下世話ですが、あなた達が彼女らの相手をするのは駄目なのですか? 要は種子さえ用意してもらえばいいだけの話では?」
この提案に、男達はハッと閃くように目を見開いた。
「お、俺達で、こいつらを……いや! で、ですが! それは上から禁じられてますので……」
「なに、バレなければいいのです。生まれてくる子供は50%の確率で男女が分かれますし」
「な、なるほど……」
一応の納得の態度を見せる男達。阿呆で助かった。
この話を傍らで聞いているノインツィヒは、ずっとイライラしていた。
(ったく、胸糞悪りぃ! 下心見え見えじゃねぇか! つか、アリスズナンバーに生殖機能って備わってたか? 知らねぇけど)
(さぁ? 私は経験ありませんが、博士とアインは夜な夜な耽っていたようですし、行為自体は可能なのでしょう)
(……しれっとネットワーク越しにモノローグへ割り込むの止めてもらえますか、アハトさん?)
げんなりするノインツィヒであった。
「おい、おっさん? 悪いけど、私ちゃんはお前らみたいな汚らしい下衆が好みじゃないんでね。もっとキラキラしたイケメン持ってこいよ?」
アハトの挑発に男達がムキになって怒鳴りだす。
「あぁんっ? 誰が汚ねぇおっさんだとコラ?」
「生意気なガキだな! ちょっと顔と身体が整ってるからって、調子乗ってんじゃねぇ!」
「ちょっと分からせてやるか! おい、こいつを聖人様の元へ連れてけ!」
ノインツィヒは洗脳された村人たちに羽交い締めされると、部屋から連れ出されてしまう。
「離せ! 離しやがれ! 何処連れてく気だチクショウ!」
「診療所さ! そこで聖人様がお待ちだ!」
「せいぜい、この村のルールを教わってこいよ? ヒヒヒ!」
アハトがノインツィヒに目配せする。
(あとは任せましたよ)
(了解☆ 期待しててねー?)
情報を引き出せたことをよしとしたアハトは、偽の商談の続きをして、男達をこの場に引き止めようと試みる。
と、ここでカシムがスタスタと部屋の外へ。
当然、男達はカシムを引き止める。
「何処へ行くんです?」
カシムは振り返ると、真剣な面持ちで答えた。
「うんこ漏れそうなので、トイレ貸してもらえませんか!?」
「……この廊下の突き当りを左に曲がったところです」
「ありがとうございます!」
カシムは内股で猛ダッシュしていった。
(まぁ、うんこは嘘なんですけどね? フェイクうんこエスケープです!)
すぐさまカシムは屋敷を抜け出し、召喚した万能魔術砲撃兵装『カドゥケウス』の銃口を電磁柵と鉄条網へ向ける。
「さあ、反撃の狼煙ですよ!」
魔力弾をぶっ放すと、爆音が『人間牧場』村全体に轟いた。
その音を聞き付け、奴隷達を率いる三辻と泡夢が猛ダッシュで向かってきた。
「早く早く! こっちですよ!」
カシムが手招きをして奴隷達を誘導!
「おい、何をしてやがる!」
だが、守衛が騒ぎを聞き付け集まってきた。
「うっせぇ、死ね!」
カシムは問答無用で守衛を撃ち抜き、奴隷達の退路確保に専念する。
「さあ、みんな! 早く外へ!」
三辻が叫ぶ!
「安全な場所まで案内しましょう。キャバリアASM-C9『リリス』、起動します」
退避させていたキャバリアを呼び寄せた泡夢は、三辻と奴隷達を運搬して安全圏まで退避していった。
「雪那! まだまだ奴隷の人達がたくさんいたから、もっと往復しないと!」
「同意です。当機は目的地へ引き返し、人命救助を優先します」
こうして、即興コンビの救出劇とカシムの奮戦が、奴隷達解放へ大きく貢献した。
爆発の知らせが届く直前まで時間は遡る。
「何をしている? 誰であろうと死ぬような事態にはさせない」
今まさに実験中という最中に乱入したレパイアは、奴隷を無理矢理に解放して応急処置を施す。
「よし、これで安心だ」
「何だ今の手際は? 聖人様よりもすごかったぞ!」
執刀医がレパイアの医療行為に驚愕していた。
これにレパイアはさも当然と言わんがごとくニタリと口角を釣り上げた。
「ワタシの前で死ねると思わない事だな。どれ、この実験動物にはどのような措置を施したのか?」
「あ、勝手に調べないでくださいよ……!」
執刀医が止めようとするが、レパイアの連れのレイダー達がそれを食い止める。
「ちょっとおとなしくしててもらおうか?」
「すぐ終わるからよ? ケケケッ!」
「ヒィィィ……!」
強面の男達に両サイドを挟まれ、執刀医は震えっぱなしだ!
「……なるほどな。特殊な薬物による中毒死を引き起こしてからの蘇生措置とみた。それで肉体を擬似的にオブリビオン化を目論むと。そうすれば骸の海から複製し放題という寸法か。なんだ、やることはオブリビオンストームの真似事じゃないか。ワタシと同等の医療技術をもってして、この体たらくとは。くだらないな」
一瞬で元ネタを理解してしまったレパイアの聡明な頭脳に、執刀医は唖然として言葉が出てこない。
そこへ連行されてくる奴隷役の猟兵達。
「遅かったな? もうネタは割れた。あとはこの牧場の奴隷達に真実を突き付けるだけだ」
「だったら、私ちゃんに任せて☆ カモーン! ステージビット! みんなに此処の映像を披露してあげてー☆」
ノインツィヒが召喚したドローンは、元々はライブ演出用のカメラを搭載したステージ装置だ。
だが、今は人体実験の生々しい痕跡を移す真実の眼となる。
「今ねー? この村のど真ん中で、此処の中継がホログラム映像で流れてるよ☆ わお、生配信だね!」
アリスズナンバーのネットワーク経由で、遠隔地のアハトへ情報が伝達される。
『No.90、上手くいきましたね。私のスペア達も今、奴隷達の救出に向かってます。彼らはみな、我に返って憤ってますよ』
「現場のアハトさん、リポートさんきゅでーす☆ ってことでー?」
ノインツィヒは執刀医を思いっきりぶん殴った!
「テメーはもうおしまいだ……!」
「ア、アイエェェ……!」
殴られた執刀医は絶望からか、その場で白目を剥いて失神してしまった!
「メルシーも奴隷のみんなを逃してあげたよ!」
「む? いつの間に我の背中に?」
バーンはメルシーの存在に今気が付いたようだ。
そのメルシーは何だか不満げだ。
「奴隷のみんなね? メルシーが話しかけると怖がって逃げて行っちゃったんだけど……なぜかな?」
「スライムだからじゃないかな?」
ニクロムのツッコミは適切だった。
カシムという魔力タンクから離れたメルシーは、人型を保てなくなっていたのだ。かろうじてキャバリアサイズに戻るまでには至らなかったが、喋るスライムがフレンドリーに近寄ってきたら、それは恐怖でしかないだろう。
そのニクロムは、生き残りがいないと知ると、少々落胆していた。
「母さんに会えると思ったんだけど……」
「生きていれば、いずれ母にあるだろう。故に、今はこの難局を共に乗り切るのだ」
バーンはニクロムを筋肉で励ます。
(……我とて憧れる英雄はいる。その者は奴隷剣闘士で、それでも尚、圧政に対する叛逆を続けたという。ならば我も叛逆しよう。今がその時ぞ!)
「むん! 我が筋肉で勇気を想い起こせ!」
ニクロムは躍動する筋肉をしばし凝視していた。
そこへ駆け込む鳳凰院と猫軍団!
「大変だ! 噂の聖人の居場所を特定した! 今、俺が呼び出した動物たちが奴を牽制しているから、早く来てくれ!」
この知らせに、猟兵達は慌てて外へ飛び出していった。
ただひとり、レパイアだけを残して。
「聖人、ね」
嗤う。その存在の在り方に。用いた技術の拙さに。
彼女は。
「瓶詰生まれが大層な事で」
青い瞳を爛々と輝かせ、歪に口元で弧を描いてみせた。
大成功
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第3章 集団戦
『死ねない兵団と正式量産医療器人リペア型』
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POW : ネグレクト・ライフ・オン・ザ・フロント・ライン
自身の【配備された兵団の兵士達の寿命】を代償に、【高速治療され戦線復帰した兵も含めた全火力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって配備された兵団の兵士達の寿命を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : サイクレイション・ファイアアームズ
【高速治療され戦線復帰を繰り返す兵達が攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : フラスコ・チャイルド『Type-Repair』
【人道も無視した緊急用医療薬を含む治療技術】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
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「聖人アリス様、大変です! この屋敷の周囲を、猫や鳥達が包囲してます!」
「あの、言ってる意味がよく分かりませんが……?」
聖人と呼ばれた正式量産医療器人リペア型フラスコチャイルドの少女が首を傾げる。
だが窓を覗くと、本当に大量の小動物が屋敷を監視するように睨み付けている。
「……まぁ、無視してなさい。実害はないでしょうから」
「で、ですが! 先程、奴隷達が反旗を翻しまして……!」
「それを早く言いなさい!」
血相を変える偽聖人は、側近に“反乱”の状況を伺った。
「それで、現状は!?」
「完全に人体実験のことが奴隷達にバレました……! 奴隷の中に猟兵が紛れてまして、そいつらが奴隷達へ我々の行いの証拠を提示しています!」
ある者は墓を暴き、その死体から得られた異変を提示した。
ある者は自ら実験台に名乗りを上げることで、現場に乗り込んで直接押さえた。
ある者は奴隷を説得し、監視役から真実を吐かせ、彼らの洗脳を解いた。
ある者は奴隷の闘争の手引きのために、内側から防壁を破壊した。
そしてある者は、その真実を配信することで村中の奴隷達へ拡散させた。
「そんな……!? これはどういう事なの? まさか、他のヴォーテックス一族の横槍……? 猟兵を仕向けてくるとか、頭がオカシイんじゃないかしら!?」
偽聖人の顔色がみるみるうちに悪くなる。
そこへ、乱暴に蹴破られた部屋の扉!
踏み込んできた猟兵達の姿を見て、偽成人の状況判断!
「ハッ――!」
なんと、窓を突き破って外へ!
だがここは3階! 当然、全身が傷だらけに!
「でも、問題ないわ!」
自らに驚異的な治療術を施し、たちまち傷を癒やしてしまった!
「予め言っておくわ。私のスペアの身体は十分にあるわよ。殺されても骸の海へゆかずに、別の肉体に乗り換えて復帰することが出来るわ。此れこそ、完全なる不死の軍隊! まだ量産に漕ぎ着けていないのが残念だけど、ここで失敗するわけにはいかないのよ!」
「アリス様! 我々も戦いますぞ!」
付き添うレイダー達は、彼女の手で蘇生される『死ねない兵団』の兵士達だ。
鉄の甲冑に身を包んだ兵士達が、偽聖人アリスを取り囲むように布陣を張る。
傷を負わせても瞬時に癒やされ、殺しても復活するデスレス・アーミーを前に、猟兵達は、厳しい消耗戦を強いられる。
果たして、打開策はあるのだろうか……!?
レパイア・グラスボトル
一応、ワタシの妹になるのか?
初めましてだけどな。
ワタシにもこんな頃があったなんて驚きだな。
【WIZ】
後方支援
自身の仕様から推測
死体は無視する為、瀕死に留める様に伝える。
呼び出した子供達
倒れた敵の武装を略奪する。下着は奪わない。
レパイアの医術補佐。
敵味方問わず治療。敵は死なない程度に留めて聖人の視界内且つ治療はできない位置に放置し、意識を散漫化させる。
未来は過去に囚われた連中の物じゃない。
だから、アンタもワタシも、踏み台になるのがお似合いなのさ。
スペア
骸の海成分を除去。この世の物だけでできた躰を渡す。
ほれ、これやるよ。
運が良ければまた同じ事できるだろ。
この世界、医者やってりゃ困る事はないさ。
三辻・蒜
諦めずに生きようとすることだけは、良いと思うんだけどね
絶対に許さないよ
スペアの身体があるって言ったけど、無限じゃないんでしょ?
カプセルに入ったまま動かないなら【羨望の光】で壊し易いね
まずは邪魔する兵士をある程度排除して、治療とかで隙が出来たらスペアを壊していく感じかな
追い詰める手段として正解だったら敵の本体も焦るだろうから、様子を窺いながら立ち回ろう
高速治療の能力も厄介だし、狙えそうなら腕とか足を撃って妨害してみようか
あまり長期戦なんてしたくないし、味方と火力を集中して一気に押し切りたいね
私の同型も、どこかにいるのかな
もしいるなら、こんな風にならずに生きていてくれたら良いな
カシム・ディーン
そ、そんな…
死なない軍なんて勝てるか!
うあああ!!
「ご主人サマ待ってー!?」
恐慌を来たし【空中戦】も使い全力で無様に惨めに村の外へ逃亡!
村を見下ろせる広い荒野まで逃げれば
…これでいいんだなメルシー?
「うん☆」
それじゃ…魔力を回すぞ
対軍技ってのを見せてみろ
UC発動
…な、ナニコレ…!?
幼女軍団
1師団はご主人サマの護衛☆
村の前に幼女がぽてぽて
敵陣が嘲笑った所で…
(ぶわっと軍団出現☆
全軍突撃
【念動力】で飛来しながら襲い掛かる☆
【属性攻撃・スナイパー・薙ぎ払い】
超高熱熱線で撃滅
【二回攻撃・盗み攻撃・浄化・盗み・捕食】
ハルペーで切り刻み浄化しつつ身包み剥いで捕食♥
アリスも兵団も等しく蹂躙の限りを尽くすぞ☆
ニクロム・チタノ
【機神搭乗】
同行
バーン・マーディ(f16527
罪のない人達をよくも・・・
ボクはあなたを絶対に許さないよ!
ミスターバーン、ボクはアナタの反逆の力を信じたいと思います!
ボクも真の名を明かし戦いましょう!
ボクの名、紅明日香の名を以て
チタノヤタテを降臨させる、先代のチタノラセンと共闘して戦う
チタノヤタテは八つの盾と八つの重力槍を持つ
盾を使って攻撃を防ぎながらチタノラセンの突撃に合わせて重力槍で攻撃する
反抗と反逆の力見せてあげる!
先代ボクはアナタを継ぐ立派な反抗者になれるでしょうか?
いいえ、きっとなって見せます
どうかボクの反抗に先代反抗者とチタノの加護と導きのあらんことお!
お休みなさい、クロノ・チタノ
アハト・アリスズナンバー
【アリスズナンバー】
初めまして。不死の軍隊を作った愚か者。
あの人の研究に手を出して、不老不死にでもなったつもりでしょうが……
その研究には穴がある。遠慮なくその弱点を突かせてもらいます。
対象の体の切り替えにはネットワークを経由する必要がある。
つまりネットワークを遮断すればいい。
ライフルでの制圧射撃をしつつ、ドローンでフラスコチャイルドなら必ず持つ生命維持装置経由でネットワークにハッキング。
UCを起動して、奴より強い回線を……全ネットワークから呼びかけ回線をパンクさせます。
システムをハックしたついでに治療技術は私に命中させます。
後は……私よりもやるべき人がいる。
任せますよ先生。
ノインツィヒ・アリスズナンバー
【アリスズナンバー】
なーるほど。噂には聞いてたよ。フラスコチャイルド『Tyep-Repair』。
どんな傷だろうが完全に治す医療特化型だったか?
それと命を量産するアリスズナンバーの技術を合わせられたら、まあ死なないわな。死んでも次がくるし。
が、それを作るのはナシだ。人の踏み込んでいい領域じゃない。
向こうが高速治療で復帰してくんのなら、その治療速度の上をいく速度でぶん殴り続けるだけだ!
UCを起動。アハトさんがハッキングするまで無差別攻撃と瞬間思考力で一撃で破壊できる箇所を殴りつつ、次々と乱打。
ついでに兵団達から殴った時にエネルギーを奪い取りエネルギー充填しておく。
とどめはやるべき人に任せておくさ。
バーン・マーディ
機神搭乗
同行
ニクロム(f32208
ニクロムよ
恐らく失敗する可能性が遥かに高い
だが…貴様という反抗者を触媒とするなら…
対wiz
【戦闘知識】
敵の陣形と戦い方を冷徹に分析
【オーラ防御】展開
【二回攻撃・怪力・カウンター・生命力吸収・鎧砕き・鎧無視攻撃】
軍神の剣を振るい薙ぎ払い切り裂き破壊しその生命もエネルギーとして奪い去り蹂躙
死体の山を作った所でUC発動!
兵団の兵士を此方の手駒に変え復活妨害!
そして…
「反抗者」よ…此処に貴様を継ぐ反抗者が在る
貴様が真に反抗者というなら…その「死」にも抗え!
クロノチタノ英霊化!
(台詞MS任
チタノラセン発動!
敵兵とアリスを蹂躙
戦闘後
クロノチタノとニクロムを二人にさせる
不死の軍隊と化した偽成人こと正式量産医療器人リペア型フラスコチャイルドは、周囲に取り巻きの死ねない兵団に守られながら猟兵達と対峙する。
アリスと呼ばれたフラスコチャイルドを、目を細めて見詰める女性がいた。
「一応、ワタシの妹になるのか? 初めましてだけどな」
レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)――『死ねない兵団』の製品仕様版フラスコチャイルドが、アリスを見定めるようにまじまじと足の爪先から頭のてっぺんまで眺める。
「オリジナルの製品仕様版正式量産医療器人リペア型フラスコチャイルド、レパイア・グラスボトルだ。外見は子供の頃のワタシの姿なのだな。ワタシにもこんな頃があったなんて驚きだな」
「あなたは私の姉様に当たるのね。猟兵になっていたなんて驚きよね?」
「そっちこそ、オブリビオンになってたとはな。しかもヴォーテックス一族の手駒になっていたなんて、此方も驚いた」
同型機のフラスコチャイルドだが、立場は真逆。
命運分かつ2人が対峙する。
剣呑な2人の雰囲気を、同じくフラスコチャイルドの三辻・蒜(緑眼の獣・f32482)が不機嫌さを顔に露わにしながら睨み付けていた。
「諦めずに生きようとすることだけは、良いと思うんだけどね。けど……」
三辻はここまで、外道と呼ぶに相応しい所業を目の当たりにしてきた。
「ここに収容されていたみんなへの仕打ち、絶対に許さないよ」
「あなたもフラスコチャイルドのようですが、その言葉をあなたが言うのね?」
「どういう意味……?」
怪訝な顔付きの三辻に、アリスは含み笑いで答えた。
「ふふ……。フラスコチャイルドの存在そのものが、人道を外れた外道の所業の産物なのよ? 自らが強いられたノウハウを活かして何が悪いのかしら?」
「罪のない人達をよくも……! ボクもあなたを絶対に許さないよ!」
ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)がアリスに噛み付く。
「あなたがどれだけ過酷で非道な実験を強いられたかなんてボクには分からない。けど、それを無関係の人達に施すのは間違ってる!」
「間違い? このオブリビオンストームが固定概念を作り変える新世界で、その言葉は果たして“正しい”の?」
「みんなを洗脳しておいて、よくもそんな事を……!」
反抗の妖刀の柄に手が掛かるニクロム。
だがそれをバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)が制止した。
「そう急くな、ニクロムよ。まずは相手の出方を窺うのだ。闇雲に突っ込めば、またクロノチタノのときの二の舞になるぞ……」
「……くっ、そうでした。冷静に、相手の動きを見極めます、ミスター・バーン……!」
妖刀に掛かる手はそのままだが、どうにかニクロムの足はその場で踏み止まった。
バーンが叛逆者として敵と戦う様を見て、ニクロムは反抗者として共感を覚え、この場で共闘することを選んだのだ。
「ニクロムよ、見よ。あの2人、敵を前に落ち着き払っている。あれを見習え。我々が狼狽すれば漬け入れられるのがオチだ」
「はい、ミスター・バーン!」
バーンとニクロムの視線の先には、アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)とノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)の2人……もうひとつの不死の軍隊『アリスズナンバー』の姉妹がいた。
「なーるほど。噂には聞いてたよ。フラスコチャイルド『Tyep-Repair』。どんな傷だろうが完全に治す医療特化型だったか?」
ノインツィヒが値踏みするようにアリスの顔をまじまじと見詰める。
「確かに、それと命を量産するアリスズナンバーの技術を合わせられたら、まあ死なないわな。死んでも次がくるし」
だが、とノインツィヒは拳をゴキゴキ鳴らしながら敵意をぶつけてきた。
「……が、それを作るのはナシだ。人の踏み込んでいい領域じゃない」
「ええ、その通りです。申し遅れました。初めまして。不死の軍隊を作った愚か者。私達はフラスコチャイルド『アリスズナンバー』。あなた達とは別のアプローチで不死の軍隊へと至った『アリスの子供達』です。私はその量産型個体8号。どうぞ、アハトと及び下さい」
アハトは敵に低頭して礼節を弁える。
道具として生み出されたフラスコチャイルドだからか、アハトはアリスに共感を抱いていた。
「元々私達は、ひとりのアリス適合者の女性のクローン集団だったのですが、同時に私達を生み出した博士の復讐の道具でもありました。成り行きでオブリビオン達の脅威から民衆を守り、人々を救っていたのは『死ねない兵団』に通じるものがあるかと」
「同業者の方々までやってくるなんて、今日は色々と狂ってるわね……やってられないわよ……」
アリスはうんざりだと言わんばかりに顔をしかめた。
これにアハトが反論する。
「やってられないのは私の方です。あの人の研究に手を出して、不老不死にでもなったつもりでしょうが……ご存じないのですか?」
「何をよ?」
アリスは小首を傾げる。
それにアハトとノインツィヒが肩を竦めて呆れていた。
「アハトさん、やっぱり完全には私達のネットワークは解析できてないみたいだ」
「そのようですね、No.90? アリスさん、残念ですが……この研究には穴がある。私達、アリスズナンバーの急所というべき、重大な欠点が」
「なんですってっ?」
アリスは愕然として驚いてしまう。
よもや無敵の技術にそのような弱点があるなんて、思いも寄らない事実だからだ。
「こちらは遠慮なくその弱点を突かせてもらいます。覚悟してくださいね?」
アハトの表情の変化は乏しいが、大切なあの人――博士が心血を注いで構築したアリスズネットワークを無断転用されることに苛立ちを覚えている様子。
それに気が付いたノインツィヒが、またヒリついた気迫を感じ取っていた。
(アハトさん、やっぱイラついてんな……ま、仕事はきっちりやる人だし、私は時間を稼ぐだけだ!)
ノインツィヒが拳を掲げ、全身に力を漲らせる。
いよいよ開戦か、そう思われた矢先、戦場に情けない声が轟いた。
「そ、そんな……! 殺しても死なない軍になんて勝てるか! 僕は逃げるぞッ、メルシーィィッ!」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の顔立ちが劇画調になると、クルリと背を向けて一目散に逃げ出してゆく!
「うわぁぁぁっ! 幼女怖いィィーッ!」
風の魔法で飛翔してゆくカシムは、ぐんぐんと『人間牧場』村から遠ざかってゆく。
「え、ちょっ? ま、待ってよ、ご主人サマーッ!?」
カシムの突然の逃亡に、相棒の銀髪少女メルシーが慌ててその背を猛ダッシュで追い掛けていった。
その2人を何もせずに見逃すアリス。
「実力の彼我を思い知って逃げ出すとか、かっこ悪いけど懸命だわ。システムに欠陥があったとしても、私は死なないし死ねない存在なのよ。猟兵に万が一の勝機はないわ!」
「本当に勝機がないとでも? だったら、教えてあげましょう、その欠陥を」
アハトのレーザーライフル・アハトカスタムの銃撃が、トランプ柄の盾を掲げる鎧甲冑の兵士を撃ち抜いた。
それが開戦の合図となり、両者が激突していく。
まず最初に動いたのはレパイアだ。
「猟兵達、アリスは怪我人を放置できないはずだ。ワタシの仕様と同じならな? 故に敵はなるべく殺さずに瀕死に留めてくれ」
アリスの行動パターンを猟兵達に伝えたレパイアは、ユーベルコードで子供のレイダー集団を呼び寄せた。
「容赦はいらないよ! ワタシらの教えたことをやってみな!!」
「「ひゃっはーっ!!」」
呼び出された子供達に戦闘力こそないが全部で87人、数は多い。
「この子らはワタシらの子供達、つまり家族さ。レイダー集団の中で育てたから、手癖の悪さは大人顔負けだ」
アポカリプスヘルという過酷な環境では、親を失った子供達が略奪者集団に身を寄せるなんて事は珍しくないのかもしれない。
生きる術を教えるために、子供達が悪へと染まることを誰も咎めることは出来ない。
その子供達の中で、風貌がアリスとよく似た少女が混じっていた。
「マム、アタシは何を奪ってくればいい?」
「――を見付けてきな。アンタは一番優秀なレイダーだ、期待してるぞ、ワタシの実の娘?」
「うん! 分かった! おいお前ら、行くぞ! お宝探しだ!」
金髪の少女は5名の手下を連れて、アリスが滞在していた建物の中へ飛び込んでいった。
……その後ろを、三辻がこっそり紛れて向かっていった。
残る80人の子供達はレパイアの指示があるまで、彼女とともに後方待機で息を潜める。
「……戦闘中に家探し? 随分と教育熱心ね?」
「皮肉のつもりか? アンタにそれを言われたくないな? というか、おしゃべりの余裕はないぞ?」
ほれ、と顎で前線を見ろと促すレパイア。
前線では、配備された兵団の兵士達が死力を尽くして猟兵と激突していた。
しかし、それは徐々に押されている。
「向こうが高速治療で復帰してくんのなら、その治療速度の上をいく速度でぶん殴り続けるだけだ!」
ノインツィヒが高速で拳を何度も唸らせ、兵士達を殴り倒していく!
「これが乙女のォ……百裂拳じゃああ!!」
己の寿命を削り、一瞬で9連撃を兵団に叩き込む!
あまりの早業に、ノインツィヒの拳が摩擦でバチバチと火花が散る。
「殴った際に、生体電流を吸い取らせてもらった! これで私の寿命の消費と相殺! まだまだ行くぞオラァッ!!」
「まずい……治療しないと!」
アリスは傷付いた兵士に高速治療を施して、次々と兵士を戦線復帰させてゆく。
だが、負傷者数が生還者数を徐々に上回ってゆくと、アリスも疲労の色が見え始める。
更に、レパイアの子供達が、倒れた兵士達をレパイアの元へ拉致してしまっていた。
「安心しろ、死なせやしないさ。ほら、アンタらも手伝いな!」
「「イエス、マムッ!」」
レパイアは戦線復帰できないギリギリの加減で兵士達を治療し、あえてアリスの視界の中に留めるような場所へ放置してゆく。
同時に、動けなくなった兵士達の鎧甲冑と武器は、子供達によって略奪されて無力化されてしまっていた。
「この鎧、いくらで売れるかな?」
「ばーか、食いモンと交換に決まってるだろ!」
戦利品がざくざく集まると、子供達に笑顔が溢れた。
これでは兵士達も戦線復帰できない!
「人道的かつ狡猾に。アンタらもトドメは刺さないでくれ。敵味方関係なく、まとめて治療してやるよ」
事実、ノインツィヒが怪我をすると、子供達が手際よく治療してくれていた。これで寿命の消費量もかなり軽減されているようだ。
「あの女……私が怪我人を治療したくなるようにプログラミングされているのを知ってて、敢えて完治させないつもりね
……!?」
アリスは視界の範囲内に移る自分の兵士の姿に、苛立ちと焦燥感に駆られていた。
これは全て、レパイアが己を知り尽くしているからこそ行える戦略であった。
「なるほど、確かに人道的かつ狡猾な遣り口ですね。敵の戦力を人質に取りつつ半死半生で放置するのは、ある意味では悪辣ではありますが」
レーザーライフルでアリス本人を狙撃しながら、アハトはその機会を待っていた。
「レパイア先生、申し訳ありませんが、アリスを殺させて下さい。アリスズナンバーのネットワークの脆弱性を叩くためにも必要なのです」
アハトの懇願は医者であるレパイアからしたら感心しない内容だ。
だが、レパイアも猟兵だ。
勝機を零すくらいなら、信念を引っ込めて決断する。
「……1回だけだ。それ以上は看過できない」
「感謝します、先生」
アハトはアリスの肩口をレーザー弾で撃ち抜いた。
「No.90? そのまま兵士達を抑え込んでて下さい」
「言われなくてもやってらぁ! いくらでも時間を稼いでやるよ!」
ノインツィヒは獅子奮迅の活躍で前線をひとりで押し留めている。
ここで、ようやくニクロムとバーンが動き出した。
先程まで、2人は何かを相談しあっていたのだ。
「ニクロムよ、恐らく失敗する可能性が遥かに高い。このユーベルコードは、高速治療とすこぶる相性が悪い。確率は3割強といったところか……だが……貴様という反抗者を触媒とするなら……或いは……」
「ミスター・バーン、ボクはアナタの反逆の力を信じたいと思います! ボクも真の名を明かし戦いましょう!」
ニクロムは半仮面を外し、その素顔の全容を晒す。
「ボクの名、紅明日香の名を以て、この身体に宿った反抗竜チタノヤタテを降臨させる!」
全身から炎のようなオーラがニクロム……明日香の身体から噴き上がったかと思えば、その身体から巨大な霊体が湧き上がってきたのだ。
「八つの盾と八つの重力槍を持つ反抗の竜、それがチタノヤマテだ!」
「此方も征くぞ。レパイア殿、その治療した兵士達を借りるぞ」
バーンは気絶している半死半生の兵士達にユーベルコードを施す。
「死は終焉ではない。その怒りを……慟哭を晴らしその魂を浄化せよ。“叛逆の英霊達”よ、此処にお前達の『叛逆』を赦そう!」
再起不能だったはずの兵士達は、バーンのユーベルコードによって復活!
「今より24時間、お前達は英霊化した。我が軍門に一時的とはいえ下ったのだ、その責務を果たせ!」
「「はっ! バーン様!」」
復活した兵士達は、かつての仲間に武器を振るい、盾で攻撃を防ぎ始めた。
「ちょっと、私の兵士達を洗脳しないで!」
アリスのクレームにバーンが鼻で笑う。
「ふんっ。民を洗脳した貴様がほざくな! それに、兵士達は自らの意思で戦っている。貴様は見限られたのだ!」
「悪いな、アリス様! 俺達は勝ち馬に乗り換えるぜ!」
「俺達をこき使った報いを受けな! 報酬をケチりやがって!」
どうやら、アリスの人望はさほど厚くなかったようだ。
寝返ったレイダー兵士達も加わり、アリスの兵団は総崩れの様相を見せ始める。
そこへ追い打ちを掛けたのが明日香とチタノヤマテの霊だ。
「殺すなっていうのが無理な相談だけど……ボクは全力で戦うだけだ!」
チタノヤマテから受け取った八つの重力槍のひとつを授かった明日香は、守護竜の盾の守りの隙間から兵士達を蹴散らし、アリスの身体を何度も突き刺してみせる。
「そこだ!」
「うぅッ!? 身体が……重いわッ!?」
重力の槍は突き刺した対象の重力を操作できる。
徐々に身体が重くなり、治療するスピードが堕ちてくるアリス。
そこへ、ダメ押しとばかりにバーンは本命をぶつけてきた。
「死せる『反抗者』よ……此処に貴様を継ぐ反抗者が此処に在る。貴様が真に反抗者というなら……その『死』にも抗え! そして顕現せよ、英霊として!」
バーンは軍神の剣を天高く掲げて魔力を放出する!
「いでよ、反抗の英霊……クロノチタノ!」
青天の霹靂がバーンを撃ち抜くと、軍神の剣に電撃を帯びさせたまま地面に深く突き刺した。
すると、激しい放電と共にオーブ状の霊魂が召喚された。
「やはり、此処までが限界か……」
バーンは明日香の願いを叶えるべく、ユーベルコードでオブリビオンとして斃された反抗者クロノチタノの英霊化を試みた。
だが不完全、不格好、ヒトの形すら留めていないという有様。
霊魂だけでも現世へ呼び戻せたのが奇跡であった。
「すまない、明日香……霊魂しか呼び戻せなかった……」
「諦めないで、ミスター・バーン! そんなときこそ叛逆と反抗のチカラだ!」
明日香はチタノヤマテの霊を、浮遊する霊魂にけしかけてみせた。
「ボクの力は反抗竜の力。先代反抗者だったクロノチタノの力も起源は同じ。だったら、チタノヤマテの力を直接、この霊魂に注ぎ込む!」
要はエネルギー充填の要領で、反抗の霊的パワーを霊魂に注ぎ、ヒトの形への顕現を促そうというのだ。
「しかし、そんな事をしたらお前のチタノヤマテは……」
「大丈夫。反抗に叛逆の力が加わった今なら、ボクのユーベルコードは砕けやしない。ボクは後悔したくないんだ! だから……姿を見せて! クロノチタノッ!」
チタノヤマテの姿が徐々に透明になっていく代わりに、召喚された霊魂は光りに包まれてヒトの形を取り戻していく!
そして……。
「……まさか、骸の海から引き上げられるとは、恐れ入ったよ」
反抗の英霊クロノチタノが復活した!
「先代……もう一度お会いできて、嬉しいです……!」
涙を流す明日香に、クロノチタノは状況判断、厳しい声を掛ける。
「反抗者は戦場で涙を流さない。その目は、怒りと使命感で敵を見据えるためにある。やはり、まだまだ未熟だな、お前は」
「……ごめんなさい」
「だが、この短期間でクロノチタノの権能を此処まで引き出せたのは、目覚ましい成長だ。褒めてやろう」
クロノチタノの言葉に、明日香はパッと笑顔に戻った。
そこへ、投げ込まれる巨大な軍神の剣。
クロノチタノはそれをキャッチ。
「……使え。今回は我よりもお前がそれを振るうに相応しい」
「ありがたく使わせてもらう。では、行くぞ、将来有望な後進よ」
「……はい! 反抗と叛逆の底力、見せてあげましょう!」
2人の反抗者が敵の兵団を掻き分け、一気にアリスの懐へ肉薄!
「「でえぇりゃああァァーッ!」」
反抗の狼煙となる槍と大剣の2連撃が、アリスの体に深手の傷を負わせた!
「これく……ら……治し……て、み……」
瀕死のアリスは自らを治療とするが、重力操作と甚大なダメージによって治療のペースが上がらない。
今こそ、アリスを殺す好機だ、とアハトはライフルの照準をアリスの眉間に定める。
しかし、その照準が前後左右に大きく揺れ始める。
「――地鳴り?」
「お、おい? こんな時に地震か?」
アハトとノインツィヒは、徐々に近付く振動に立っているのがやっとの状態だ。
それはレパイア達や反抗者2人、そしてバーンも同様だった。
次の瞬間、今度は目の前の建物が緑色のレーザーで焼き払われたではないか!
「今度は何だよ!?」
ノインツィヒが崩れる建物の中から飛び出してきた人影を見詰める。
緑の炎に包まれた建物の中から、レパイアの子供達と三辻が、人間ひとりが入っているカプセル1基を担いで飛び出してきた!
「スペアの身体があるって言ったけど、無限じゃないんでしょ? 人質代わりに1基だけ持ってきたよ。後は全部、私のユーベルコード“羨望の光(レヴィアタン)”で破壊させてもらったけどね?」
瀕死のアリスは眼を見張る。
それは紛うことなき己のスペアの肉体だった。
「なるほど、そちらを叩くという方法もありましたか」
感心するアハト。
三辻は肩を竦めてながら、この惨状を説明した。
「おチビちゃん達と捜索してたら、建物内に駐在していた兵士達に遭遇して、そいつらは全員射殺したんだけど、ひとりだけおチビちゃん達が治療してカプセルの場所を吐かせたんだ。んで、スペアの肉体を破壊したら、こうなって……って、この揺れは何? 地震?」
「む? あれは……?」
バーンが地平線から何かが迫りくるのを目視した。
それは……銀髪幼女の大軍勢と、軍用ジープボンのネットの上で仰け反って風を感じるカシムであった。
時間を少し戻そう。
逃げ果せたカシムは、最初からアリス打倒への秘策を講じていたのだ。
「ただ、この思い付いたユーベルコードを発動するには、広い場所が必要ですからね……」
「新規ユーベルコードのインストールが確認されました。試行……獲得、成功しました」
メルシーの機械的なアナウンスを聞き終えると、カシムは高台から『人間牧場』村を見下ろす。
「……これでいいんだなメルシー?」
「うん☆ ご主人サマ! 依り代お願い!」
「ああ、それじゃ……魔力を回すぞ。対軍技ってのを見せてみろ」
「メルシー☆春の幼女祭り、はっじまるよーっ☆」
「……は? ナニソレ?」
相棒のトチ狂ったセリフに、カシムは宇宙の真理を垣間見た猫のような顔付きになった。
途端、銀髪少女の体が巨大な白銀スライム……賢者の石に戻ると、今度は幾万へと細分化してそれぞれがヒトの形に変化してゆく!
結果……。
「「ヒャッハー! 幼女メルシー1050個師団、へいお待ち☆」」
戦場に無数の幼女達が押し寄せ、『人間牧場』村は秒速で更地になっていく真っ最中であった。
地響きの正体は、幼女の大軍がガンダッシュする足音だったのだ!
「いやぁ、もうコレもんスよ。ギンギンっすわマジで」
ボンネットの上で足を組んで、バラの花なんか嗅いじゃってるカシムの余裕っぷりよ。
カシム、お前の車の乗り方どうした?
少女革命のノリちゃうんやで?
てか幼女に軍用ジープ運転さすなや!
猟兵達とアリスのツッコミがシンクロした瞬間である。
「「あー! 悪い奴はっけーん! えいっ☆」」
「グワーッ!?」
アリスは死んだ。
幼女達に踏み殺されるという、なんかとても不甲斐ない死に様だった。
だがアリスは残された最後のスペアの肉体へ意識と魂を乗り換え、どうにか復活を果たした。
「なにこれ……悪夢だったら醒めてほしいんだけど……」
頭を抱えるアリス。
これにはアハトも苦笑い。
「アリスズナンバーはこの死の恐怖を何度も乗り越えてきました。今回のようなケースは特殊ですが……。そして、この時を待ってました」
予め、村の上空にネットワークの中継点であるドローンをアハトは対空させていた。
すかさずユーベルコード“ハートクイーンズ・ジャッジ”を発動!
「アリスコード送信。総員、決議します。採択を」
採択内容は、アハト自身の戦闘力強化。
復活したてのアリスがアリスズナンバーのネットワークを流用しているなら、その回線にオリジナル個体からのデータ通信を要請すれば……。
「な、なに……? 今、度は、な、にが……お、きて……?」
アリスの身体がたちまち硬直!
この様子に、アハトは静かに頷いた。
「やはり回線がパンクしましたか。フラスコチャイルドなら必ず持つ生命維持装置経由で、あなたの粗悪な模造ネットワークをハッキングさせていただきました。オリジナル回線から溢れた膨大な情報量の一部を横流ししてみましたが、案の定それすら耐えきれず、今、あなたの脳内の上方処理速度は上限いっぱい、肉体を操作する余裕がないのです。故に、今の貴方は肉体を指先ひとつ動かせません。私はネームド個体かつ量産型とはいえ『最初の10人(ドーターズ・オリジン)』ですので、この程度の情報量の処理くらい、欠伸が出るくらい些細なことですので」
「やった! 色々とカオスだが、狙い通りだ!」
ノインツィヒも作戦成功に安堵の表情だ。
「よく分からないけど、一応、抵抗できないように手足は撃ち抜いておこうかな?」
三辻はアリスの手足を最小限の射撃で撃ち抜き、無力化を図った。
アリスはその場に倒れ、ブツブツと何かを呟きながら微動だすらしない。
「決着、だな?」
レパイアが前線に出てくる。
それはすなわち、猟兵達の勝利を意味した。
「さて、私はお医者様だ。しかも敵味方関係なく、無差別に治療して絶対に死なせない、慈悲深いお医者様だ」
その場にいる猟兵達は、レパイアが目の前の因縁を断ち切るのだと息を呑む。
「ここは私よりもやるべき人がいる。あとは、任せますよ先生」
「だな? とどめはやるべき人に任せておくさ」
アハトとノインツィヒも、『死ねない兵団』の最期を見届けようと注視する。
レパイアは子供達を呼び寄せた。
「スペアの肉片と部位を掻き集めてきな! 40秒で戻ってこい!」
「「イエス、マムッ!」」
子供達は、木っ端微塵になった建物の中から、バラバラになったスペアの肉片や部位を集めさせた。
「ふむ……ちょうど無事なパーツが全部揃ってるな。血液は……まぁ、私ので代用するか。輸血の準備をしろ」
子供達に指示をするレパイア。
一体、何が始まるのだろうか?
「アリスズナンバーさんちのスペアの肉体、これは意識がなければただに死体に等しい。なら、死体を繋ぎ合わせた肉体に、魂と意識を入れ替えることだって不可能じゃないはずだ」
「え……それってデッドマンを今から作るってこと?」
三辻が怪訝な顔を浮かべるが、レパイアはそれを否定した。
「いいや、ワタシはひとりの人間を蘇らせるだけさ。正式量産医療器人リペア型フラスコチャイルドの正規製品版たる、このワタシの腕を甘く見ないでほしいな」
片手にメス、片手に針と糸を持ったレパイア。
刹那、光が瞬くが如く、その両手が超高速で繰り出されてゆくと、肉片と部位がみるみるうちに縫合されて再生してゆく!
まさに神業! 3Dパズルを組み上げるように、レパイアはバラバラの人体を組み上げてみせたのだ。
失われた血液は、自身の血液とアリスから補えば……。
「よし、これでオブリビオンではなく、100%人間由来の肉体の完成だ。生命維持装置? ああ、もう彼女には不要だろう?」
フラスコチャイルドは清浄な環境下では、生命維持装置がなければ生きていけない。
だが、レパイアが創造した肉体は人間のそれであり、アリスの体から生命維持装置を摘出してしまった。
……素手で頭蓋骨に手を突っ込んで、脳内から生命維持装置を引っ込むく姿は豪快過ぎたが。
「アハト、ネットワークのパンクを解消してやってくれ。できれば、この肉体へ乗り移るための手助けもしてくれないか?」
「……先生、貴女は……とんでもないお人好しですね。でも、私はそんな先生に敬意を表します」
アハトはネットワーク上のマザー・アリスへ信号を送ると、生命維持装置を失って死んでゆくアリスの魂をデータとして吸い上げてあげた。
そこから、新しい肉体へ記憶・意識・魂のデータをダウンロードさせていく。
「……マザー、感謝します。先生、完了しました」
「御協力、感謝する。さて、おいアリス。早く起きな!」
スパーンッとアリスの頭をひっぱたくレパイア。
その手荒な起こし方が功を奏したのか、アリスの目が開いた。
「……どうして、私、生きてるの?」
「ほれ、これやるよ、新しい人間としての肉体だ。もうオブリビオンじゃないからユーベルコードは使えないだろうが、なに、運が良ければまた同じ事できるだろ。アンタは正式量産医療器人リペア型フラスコチャイルドだったときの感覚がある。この世界、医者やってりゃ困る事はないさ」
レパイアのニヤつく笑顔に、アリスが困惑する。
「猟兵なのに、オブリビオンを治療するの? やっぱりどうかしてるわ……!」
「そりゃどーも。生憎、レイダーなんて頭のオカシイ奴らばかりでね? ただ……」
「ただ?」
レパイアはアリスの頭を愛おしそうに優しく撫でながら告げた。
「未来は過去に囚われた連中の物じゃない。だから、アンタもワタシも、踏み台になるのがお似合いなのさ。けど、ワタシらは自由だ。好き勝手に生きて、何が悪い?」
レイダー達の気まぐれで拾われ、レイダー達の中で育ち、レイダー達の価値観で行動したレパイアだからこそ、目の前のアリスに胸を張って言った。
「アンタは、自由に生きて、自由に苦しんで、自由に死ね。それが、人間ってもんさ」
「……姉様……ありがとう……」
「レパイア……! この子、俺達の拠点に連れて帰ろうぜ……!」
「暫くは行くアテなんて無いだろうし……」
「俺達、ちゃんと面倒見るからよォ……!」
「「おねがい、マム!」」
同伴していたレイダー達や子供達に懇願されたレパイアは……。
「ったく……今夜は宴会だ! お前ら、帰ったらすぐに準備しな!」
「「ヒューッ!!」」
こうして、アリスは暫くヒャッハー集団のアイドル的存在として、居候することになった。
その乱痴気騒ぎを、三辻は羨ましそうに眺めている。
「私の同型も、どこかにいるのかな。もしいるなら、こんな風にならずに生きていてくれたら良いな」
「大丈夫さ、きっとな?」
ノインツィヒが三辻に声をかける。
「スペアの破壊とか、その手があったかーってマジで目からウロコだわ。やるじゃん?」
「あはは……派手な働きは出来なかったかもだけど、戦況を引っ繰り返せたみたいだし、やったかいがあったよ」
三辻の照れる笑顔に、ノインツィヒの目が輝く。
「今の笑顔、とってもイイね☆ 実は私ちゃん、UDCアースでアイドル事務所の社長兼アイドルやっててね? 蒜ちゃんだっけ? いい素質持ってると思うんだけど……?」
「え、私が…!? アイドルっ!?」
驚く三辻に、ノインツィヒは小一時間ほどアイドルの魅力を語り尽くし、最後はアハトに引っ張られるまでそれは続いたのだった……。
一方、バーンは明日香とクロノチタノの2人きりにさせるべく、戦場から立ち去っていた。
『お早いお戻りで』
待機していた神機マーズが労いの言葉をかける。
「今戻った。……反抗者か、良き存在と出会えたぞ、マーズ」
『それは幸いでしたな』
ひとりと一機が、遠くの反抗者2人を優しく見守る。
そんな反抗者達……明日香とクロノチタノは互いの反抗者としての誇りを誓い合っていた。
「先代……ボクは、アナタを継ぐ立派な反抗者になれるでしょうか? いいえ、きっとなってみせます!」
「私に叩きのめされてから、よくぞ此処まで這い上がった。それでこそ反抗者だ。精進を欠かさぬようにな?」
「はい! どうかボクの反抗に、先代反抗者とチタノの加護と導きのあらんことを!」
「ふっ……よき後継者が現れ、私もようやく眠りに就ける……」
クロノチタノの身体が透明になっていく。
それは荒野の風に溶けるようで、どこか清々しい様だった。
「私はいつでも見守っているぞ……ニクロム・チタノ、いや、紅・明日香よ」
その言葉を最後に、クロノチタノは完全に消失していった。
「お休みなさい、クロノ・チタノ。ボクは、これからも反抗者として頑張るよ!」
頭上には、澄み渡る青空が広がっていた。
ヴォーテックス一族の拠点は、こうして猟兵達の手で壊滅した。
だが、まだまだこの世界には悪辣なヴォーテックス一族の支配が蔓延る拠点が跋扈している。
いずれ訪れるはずのこの世界の対戦で、どれだけ潰せるか……猟兵達の戦いは続く。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2021年05月05日
宿敵
『クロノチタノ』
を撃破!
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