定め覆すは、エースの再誕
●未来
「君は生きろ。君だけは幸せになるべきだ」
その言葉は偽りのない言葉であった。緑色の瞳をした少年が私に言った。
正直な所、私にはその資格はないと思った。
だって、私は誰かの幸せを踏みにじることしかできないからだ。これまでもそうであったように。
そして、何もかも失ってしまった。
敗北は何も生み出さない。敗北は地位も名も喪わせる。自分にはもう何も無いのだと言った。
自分はもうキャバリアパイロットですらない。戦うためだけに存在していたのに、戦うことができないのであれば、それは存在している意味もないのではないか。
「そんなことはない。誰もが喪うばかりなんてことがあるわけない。喪ったかわりに手に入れたものがあるはずだ。それが分かる時まで君は生きるべきだ」
『クリノ・クロア』と名乗った緑色の瞳をした少年が私の肩を掴んで言った。
その深い緑色の瞳をまばたきもせずに私を真っ直ぐに見つめるのだ。
彼も私も生活していた国『フィアレーゲン』から『グリプ5』へと亡命するために、自分たちと同じように祖国を捨てることを決断した者たちとトレーラーでキャラバンを組んで荒野を横断しようとしている。
それは運命共同体だからこそ、私のキャバリアパイロットとしての技量を欲してるのかもしれないけれど。
それでも、どこか私は彼の言葉を否定したかったのだ。
「私はもうキャバリアには乗らない。だって、もうダメだもの」
恐怖にふるえる手を見せる。
戦いに際して身体が竦むのだ。どうしたって怖いと感じてしまうのだ。こんな者がキャバリアのパイロットとして戦場に出たとしても死ぬだけだ。
それもいいかもしれないと思った。死ぬだけ。そう、死ぬだけだ。
けれど、緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』が、『クロア』が言うのだ。
「わかった。じゃあ乗らなくていい。けれど約束してくれ。生きてくれ。どんなに挫けそうであっても、生きてくれ」
『クロア』は微笑んでいた。
誰もが私を責めたけれど、彼だけは私を責めなかった。
その約束はとても暖かくて、涙が出そうだった。
これはきっと歴史にも刻まれぬ言葉。けれど、それでいい。ただ、私の名を呼んでくれることが、私の生涯において最も価値あるものになって。
そして同時に私の、『ツェーン』の足を止めぬ理由になったのだ――。
●交錯
小国家『フィアレーゲン』の体制が一時的にでも崩壊したことは周辺の国々に影響を及ぼしていた。
クロムキャバリアにおいて戦乱の火種は尽きず。これ幸いにと『フィアレーゲン』は小国家『シーヴァスリー』の侵攻を許し、戦禍に包まれた。
しかし、『フィアレーゲン』より脱出し『グリプ5』へと亡命を希望する者たちがいた。彼らは物資とキャバリアを満載したトレーラーで荒野を進む。
「くそ……! もうすぐだっていうのに、キャバリアが……!」
彼らの運転するトレーラーのバックミラーに映るのは、『シーヴァスリー』のキャバリアの大群であった。
逆関節のアンダーフレームを持つキャバリア、MPC-JU156-NSI『スクンク』。
その威容は市街地戦を想定している。両腕の他砲身グレネードはトレーラーの装甲などものともしないだろう。
「救援信号は!」
「出しているよ! だけど、そう都合よく『グリプ5』が来てくれるかよ! ついこの間まで俺らと『グリプ5』は戦争をしていたんだぞ!」
キャラバンは『フィアレーゲン』から必死に逃げた。
もとよりキャバリアの操縦技術だけが『フィアレーゲン』における絶対的な価値であった。彼らは、そんな国に疑問を持ちながらも生きるためにそれらを飲み込んだ者たちだった。
けれど、今や『フィアレーゲン』は『シーヴァスリー』によって滅亡する。『グリプ5』ならば受け入れてくれるのではとキャラバンとして国を脱出したのだ。
けれど、『シーヴァスリー』のキャバリアは警告なしに発泡する。
「なにか、おかしい……! いくらなんでも容赦が無さすぎる……!」
そう、彼らは知らない。
彼らを追うキャバリアがオブリビオンマシンであることを。その場の誰もが理解できなかったことだろう。
だが、現実として彼らは砲火に晒されている。彼らに道は二つしか無い。足を止めて炎に焼かれるか。それとも足を止めずに、足掻くか。
「――そうだ。どんな時にだって希望は捨てられない。例え、全部を喪ったとしても、まだ希望だけがある」
緑色の瞳をした少年『クロア』が言う。
キャバリアが搭載されているのならば、と彼はキャバリアの搭載されたトレーラーへと走る。
そう、絶対に諦めたりなんかしない。国が滅びても、家を喪っても、それでも自分たちは決めたのだ。
ねだるのではなく、戦って勝ち取ると――。
●亡命
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア……以前『フィアレーゲン』という国での事件がありましたね。その『フィアレーゲン』は別の小国家に侵攻され、滅ぼされました。ですが、嘗ての国の思想とは異なる思いを持った『フィアレーゲン』の生き残りの皆さんがトレーラーでキャラバンを組んで『グリプ5』と呼ばれる小国家に亡命しようとしています」
だが、それを許すオブリビオンマシンではない。
『フィアレーゲン』を滅ぼした小国家『シーヴァスリー』のキャバリアの大群は全てオブリビオンマシンである。
彼らは亡命しようとするキャラバンを滅ぼさんと荒野から彼らに迫るのだ。
このままでは生き残りの人々も殺されてしまうだろう。それだけではなく、彼らを失えば『グリプ5』もまたオブリビオンマシンの脅威に晒されてしまう。
「『グリプ5』も、亡命キャラバンの方々も、どちらも事態は逼迫していることでしょう。ですが……」
どちらも救うことができるのならば、そこに手を伸ばすのが猟兵であろう。
ナイアルテの瞳が爛々と輝いていた。
例え不可能と言われようとも、それを打倒する者たちがいることを知っているからだ。
「『グリプ5』からも救援のキャバリアが……一機だけですが、出撃しているようです。言うまでもなく敵は大群。皆さんの協力なくば、彼らの全てを喪うことになるでしょう」
だからこそ、ナイアルテは頭を下げる。
『平和』は未だ遠い。
嘗ては敵同士であった者たちが、もしかしたのならば手を取り合うことができるかもしれない。
助けを求める者に手を差し伸べられずにはいられない者と、明日を望んで生きる者がいる。
「ならば、その手を繋ぐことこそがオブリビオンマシンが破壊しようとする『平和』への一歩」
先が見えない世界にも、光明は差し込む。
それがか細い光であったとしても守り、育むことこそがオブリビオンマシンの野望を打ち砕くのだから――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリアにおいて滅亡した小国家『フィアレーゲン』から小国家『グリプ5』へと亡命しようと荒野を行くキャラバンをオブリビオンマシンから守るシナリオとなっております。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
集団戦です。
亡命キャラバンのトレーラーは複数存在しています。そこにオブリビオンマシン、MPC-JU156-NSI『スクンク』の大群が群がります。
皆さんはトレーラーを守りながらオブリビオンマシンを打倒しなければなりません。
荒野故にトレーラーの速度は其処まで早くはありませんし、オブリビオンマシンの火力も高いです。
オブリビオンマシン化したキャバリアですが、パイロットは撃破されると自力で脱出し、安全に自国へと撤退するでしょう。
また『グリプ5』から一機、キャバリアが飛び出して救援に駆けつけています。この機体もまた皆さんの護衛対象になります。
●第二章
ボス戦です。
赤いオブリビオンマシンが亡命キャラバンのトレーラーから立ち上がり、周囲に破壊をもたらそうとします。
『アマランサス・ラピート』と呼ばれる赤いキャバリアですが、本来は『ツェーン』と呼ばれるパイロットのために用意されていた機体です。
いつの間にかオブリビオンマシンとすり替わっていました。
コクピットさえ壊さなければ、パイロットは無事に生還できます。
●第三章
日常です。
戦いを終えた後でも、皆さんのやれることはまだまだあるようです。
亡命キャラバンはすぐに難民キャンプへと変わることでしょう。戦乱の絶えぬ世界故に、彼らは戦いにあらゆるものを奪われたことでしょう。
国を、家を、家族を。
けれど、それでも生きていかねばなりません。
『グリプ5』からも遅れてでありますが、救援隊が到着しています。
そんな彼らを慰問するのも良いでしょうし、なにか他に助けになることができるかもしれません。
それでは戦乱続く世界、クロムキャバリアにおける皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『MPC-JU156-NSI『スクンク』』
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POW : RS-A 拠点破壊用多砲身グレネード砲
【建造物破壊に優れたグレネード弾の高速連射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : RS-B 対人行動用『鎮圧ガス』噴霧器
攻撃が命中した対象に【攻撃で用いた『制圧ガス』の特殊成分】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【曝露させた『制圧ガス』の様々な毒性】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ : EP 戦術統御用高速データリンクシステム
全身を【状況解析用の特殊センサー】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【攻撃や妨害行為の回数】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
イラスト:エンドウフジブチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
姉が自分を止めるのを『フュンフ・ラーズグリーズ』は理解していた。
自分が逆の立場であっても、きっと止めただろう。けれど、『フュンフ・ラーズグリーズ』は止まらなかった。
「ごめん、姉さん。けれど見捨てられないんだ」
「やめなさい、フュンフ! その機体は――! 整備も何もしていないし、もうずっと昔の機体なのですよ!」
『ツヴァイ・ラーズグリーズ』が古いキャバリアに乗り込んだフュンフを制止しようとしたが、もう何もかもが遅かった。ツインアイが輝き、その機体『熾盛』が動き出す。
もはや骨董品と言ってもいい。
ただ、国父である『フュンフ・エイル』の騎乗した機体であるから残されていただけに過ぎないキャバリアであったのだ。
武装の殆どは損失している。あるのはビームブレイドと機銃だけだ。それでも『グリプ5』においては貴重なキャバリアであることには違いはない。
現にフュンフが、機体を持ち出そうとしたのは、この機体が五体満足で残っているキャバリアであるからだ。
「ブースターは生きている……それに操縦系統も。なら、一人でも多くの生命を救う!」
その瞳に合ったのは、決死の覚悟だった。
今まさに喪われようとしている生命があるのだ。それに手を伸ばすことをしないで、自分の生命を守ることなんてできるわけがなかった。
ツヴァイもまた弟の思いを理解していた。だからこそ、彼を死なせてはならないと思ったのだ。
彼はもう『グリプ5』の『エース』だ。喪うことはできない。
「フュンフ! まだ間に合います! 救援部隊を編成しているのですから! だから」
だから行かないでくれと、願った言葉は『熾盛』のスラスターが噴出する勢いにかき消された。
驚きはなかった。
けれど、それでもツヴァイは何がなんでも彼を止めなければなかったのだ。弟を死地に追いやることなど、もう二度としてはならないと彼女は思っていたからだ。
それでもフュンフは疾走る。
「僕はもう二度と生命に手を伸ばすことを諦めたりはしない――!」
『熾盛』が飛ぶ。
凄まじい加速で荒野を征く。
機体整備は万全ではない。武装も十全ではない。だが、それでも生命を救わんとする願いだけが大地を滑空させ『フィアレーゲン』からの亡命キャラバンを救わんと飛ぶのだ。
しかし、小国家『シーヴァスリー』のキャバリア――いや、オブリビオンマシンの大群の数は凄まじいものであった。
亡命キャラバンに襲いかかるという言葉すらも生ぬるかった。これはただの虐殺だった。
トレーラーが燃えている。
生命が、生命であったものが燃えている。
「――……逃げているだけだろう! お前達に銃口を向けたわけじゃない! なんで!」
なんでこんなことができるとフュンフは咆哮する。
圧倒的な数の不利。
如何ともし難い数の暴力が亡命キャラバンと『熾盛』に襲いかかる――。
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声、敬語
オブリビオンマシンが複数か、キツい戦いだが守るだけだ
援護します、貴方方は振り向かずにグリプ5に向かってください
SPDで判定
キャラバンや救援のパイロットには敬語で話す
AIと一緒に【視力】【聞き耳】で【情報収集】
【大声】でキャラバンに逃げるように呼びかけながら
敵には指定UCで義眼の藍の災い:【圧壊】を付与した弾丸を【スナイパー】【範囲攻撃】で放ち【時間稼ぎ】
それからは同じように橙の災い:爆破【爆撃】を付与した弾丸をコックピット以外に撃ち込み敵を攻撃する
燃える荒野にキャバリアが疾駆する。
けれど、どうしたって間に合わないこともある。どれだけ懸命に生きたとしても、その生命が行き着く先は死でしかないというのならば、争いしか無い世界はなんと残酷なことであったことだろうか。
荒野の向こう側から列をなして群れるのは破壊の徒。
キャバリア、いや、オブリビオンマシン、MPC-JU156-NSI『スクンク』であった。
市街地を、市民を虐殺することに特化したキャバリアである『スクンク』は、次々と制圧ガスを充填した弾丸を亡命キャラバンに打ち込んでいく。
トレーラーが横転し、這い出てきた者たちをガスが襲う。
嘔吐し、倒れ伏す者たちが無数に存在する荒野はもはや地獄でしかなかった。
「ガス……こんな、こんなことをするために、お前達は!」
『グリプ5』から駆けつけた、たった一機のキャバリア『熾盛』を駆る『フュンフ・ラーズグリーズ』は叫んだ。
こんな暴挙が許されていいわけがない。
彼の瞳には怒りがあった。けれど、一機に対して敵は無数。
数の墓力ですり潰されてしまうだろう。降りしきるミサイルの雨を躱しながら、己に注意を惹かせようとする行いは健気であったが、愚かでもあった。
「援護します、貴方方は振り向かずに『グリプ5』へと向かってください」
だが、その愚かしさを尊いものだと思う者だっている。
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は『銀の銃兵』と共に戦場を駆ける。その瞳がユーベルコードに輝いていた。
生きる者の盾とならんとする彼にとって、今こそが自身の存在意義を試されているに違いなかった。
既に喪われた生命がある。
けれど、今も尚懸命に生きようとする生命があるのであれば、ルイスは己の力を持ってこれを助ける。盾となるべく戦場へと飛ぶのだ。
「銃を使わせて貰うぞ」
『銀の銃兵』が構える魔銃が輝く。
それはユーベルコードであり、ルイスの義眼のメガリスが付与した魔力によって彼が視認した全てに弾丸を打ち込むユーベルコードである。
属性付与(エンチャント)された弾丸が一瞬のうちの放たれる。
すでにAIから得た情報でロックオンは済んでいる。
己のトリガーを引く指が力となって、弾丸に込められたユーベルコードの輝きが戦場に闊歩する『スクンク』の機体を過たず撃ち抜く。
「時間稼ぎはする……だから、一人でも多くを!」
『熾盛』の機体は十全であるが、見た所かなりの旧式。
ならばこそ、戦いよりも亡命キャラバンの人々を救うことに注力してもらったほうが良いだろうとルイスは判断したのだ。
「わかりました! そちらもご武運を!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』が駆けていく。
その背中を頼もしいと感じる日が来るとは思わなかったかも知れない。けれど、それでいいのだ。
生命を助けるために己の生命を省みぬ者が、この争乱だけが支配する世界に在るという事実こそが、オブリビオンマシンの敗北を決定づけている。
「ああ、どれだけお前達が戦乱の種を蒔こうとも。必ず芽吹いた端から摘み取る」
橙色に輝く義眼のメガリスと共にルイスは『銀の銃兵』のユーベルコードを発言させる。
打ち込まれた弾丸が爆風を呼び、『スクンク』たちを一瞬の内に爆撃に晒されたかのように猛烈な銃撃で持って駆逐していく。
トレーラーは守る。
人の生命も守る。
そして、希望さえも護ってみせると、ルイスは戦場に弾丸の放たれる音をひびかせる。戦わなければ平和はもたらされない。
けれど、戦いを望まず、戦うことのできぬ者だっている。
「そういう者たちのためにこそ、俺のような『生者の盾』がいる――!」
それを誇らしいと思う心があればこそ、ルイスは呪われし秘宝であるメガリスだって使いこなして戦い続けるのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
えーグリプ5じゃん
なっつかしー
お土産持っていこ
グリモア煎餅に大熊猫クッキーバッグに詰めて
うわ詰めすぎた引くわー
こーんこん
こちらグリプ5行きのバスですかー?
救援に来ましたよー
あ、このバッグ持っておいて
お土産入ってるからちょっと置いてかせてね
私、後ろの処理してくるくら
んじゃ応援しくよろー!
●
《RE》Incarnationと空の記憶を抜刀
【断章・機神召喚】を起動
機械の腕を『念動力』で浮かす
今回はめんどいから…雑にぶっとばす!
左手の剣で敵に対して『斬撃波』を上部砲身に飛ばしてバランスを崩させて
右手で斬る!
まずは脚部そして砲身を斬る
怪奇!腕だけメカ登場ってね
腕だけだから高さも自由自在でやりずらいっしょ?
戦場となった荒野は爆煙が上がっていた。
『フィアレーゲン』から亡命を希望した者たちのトレーラーが燃えている。侵攻してきた小国家『シーヴァスリー』より放たれた猟犬の如き逆関節をもつキャバリア――いや、オブリビオンマシンであるMPC-JU156-NSI『スクンク』から放たれたグレネードが直撃したのだ。
あれではトレーラーに乗っていた者たちは助かるまい。
けれど、不思議なことに爆煙が上がるトレーラーからは遺骸は見つからなかった。
凄まじい速度で飛来した何者かが、彼らの生命を一瞬の内に救い出していたのだ。
「えー『グリプ5』じゃん。なっつかしー」
そんな戦場には不似合いな女性の声が響く。
黒髪に一房の青い毛束が風になびき、赤い瞳が世界を見つめる。
戦乱しかない世界にあって、彼女の言葉はあまりにも独特で、けれどとても清涼たる響きであったことだろう。
彼女が小脇に抱えたトレーラーの人員は気を失っていた。
けれど、破壊されたトレーラーを救わんとしていたキャバリア『熾盛』のパイロットである『フュンフ・ラーズグリーズ』は彼女のことをよく知っていた。
「あ、玲さん……!」
いつかもこうして助けてもらった。
それを忘れたことはなかった。そんな彼を尻目に月夜・玲(頂の探究者・f01605)は微笑んで、抱え込んだ人員を『熾盛』に預けた。
「お土産も用意してあるんだよ。グリモア煎餅でしょ、大熊猫クッキーでしょ。けっこう詰め込みすぎて引くわーってなるけど、引かないでよ、フュンフ少年」
玲は笑って軽く合図を送ってから戦場へと舞い戻る。
彼女の瞳にはすでに『スクンク』に襲われんとしているトレーラーの姿があった。
挨拶もそこそこであるが、それはいつものことだ。超常の人である玲とフュンフにはそれだけでよかったのだ。
「頼みます――!」
「任された! ってね!」
戦場を駆ける玲の瞳に『スクンク』があった。逆関節のアンダーフレームに、グレネードを高速で放つための砲身となった腕。
市街地専用に作り上げられたキャバリア。効率よく市街を破壊するためだけの装備であり、トレーラーに向けるにはあまりにも過剰な火力であった。
「こーんこん。こちら『グリプ5』行きのバスですかー? 救援に来ましたよー」
緊迫した状況でも玲の茶目っ気は忘れられない。
トレーラーに乗っていた一人の少女がビクリと玲を見た。
お、と玲はその姿を見て思い至る。ああ、とも思った。少女の瞳に合ったのは、若干の恐れと、そして憧れであった。
いつかの日に玲が言ったのだ。
目の前の少女は今、キャバリアパイロットではない。
「あな、た……」
「あ、このバッグ持っておいて。お土産入ってるからちょっと置かせてね。私、後ろの処理してくるから」
ぽいす、と玲は手にしたバッグを少女に手渡す。
彼女が何かをいいかけたが、今はいい。後で聞けばいいし、何よりこの局面を乗り切らなければどうしようもない。
玲の瞳がユーベルコードに輝く。
「んじゃ応援しくよろー!」
抜刀されるは二振りの模造神器。蒼き刀身が輝き、断章・機神召喚(フラグメント・マキナアーム)によって呼び出された機械で出来た右腕が唸りをあげる。
「偽書・焔神起動。断章・機神召喚の章の閲覧を許可。術式起動」
念動力によって浮かぶ機械腕。
トレーラーの荷台を蹴って、玲が飛ぶ。それはあまりにも人間離れした動きであった。
そもそも5m級戦術機動兵器であるキャバリアに生身で立ち向かうことこそが常識的ではないのだ。
けれど、玲ならば、それができる。トレーラーに居た少女は知っている。
あのデタラメさに己は敗れ、そして救われたのだ。
「めんどいから……雑にぶっ飛ばす!」
左腕の模造神器が振るわれ、斬撃が衝撃波となって『スクンク』のオーバーフレームである砲身をかちあげる。
グレネードをこれ以上打たせてはならない。
あのグレネードだけでもトレーラーには甚大なる被害が出てしまう。さらにバランスを崩した機体に一瞬で肉薄する。
機械腕である右腕が巨大化した模造神器を振るい、アンダーフレームを一瞬の内に膾切りにすのだ。
返す刃で砲身すらも切り裂き、その巨体が大地に沈む。
「怪奇! 腕だけメカ登場ってね」
その戦いぶりは凄まじいものであった。みるみる間にトレーラーを追う『スクンク』が両断されていく。
それは遠目に見れば腕だけが宙を舞い、斬撃を見舞うようであった。誰もが対応できない。
「ああ、あれが……」
少女は、『ツェーン』は呟いた。
その背中を見て憧れたのだ。あの人のようになりたいと。今の自分ではない、あの人のようにと。
爆風が玲の姿をかき消しても、『グリプ5』へと走り、離れていくトレーラーから見る彼女の背中が小さくなっても。
それでも憧れと共に彼女は、その背中を見つめ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ソナタ・アーティライエ
争いですらない、一方的な虐殺を目の当たりにして
後先を考える余裕もなく、助けなければという思いに駆られ
『アセナ』と共に戦場へと舞い降り
キャラバンを守るように、大群の進路に立ちはだかります
たとえ愚かと言われようと、コクピットより出て『アセナ』の手の上に立って
今すぐに攻撃を止めて欲しいと、声の限りに訴えずにはいられませんでした
そして溢れる思いと共に半ば無意識に発現するUCによる奇跡
それはほんの限られた間の事
けれど僅かでも時間を稼げるのなら、自らを惜しむ理由はありません
そして、どうかオブリビオンマシンに操られた人たちにも
この思いが届きますように……
キャバリア、MPC-JU156-NSI『スクンク』には状況解析用の特殊センサーが搭載されている。
それは戦場というゆらぎが介在する場所において、逐一情報を僚機と共有するための装備であり、戦術統御用高速データリンクシステムとして軍としての力を底上げするものであった。
それはオブリビオンマシンに変わってしまっても変わることのないものであった。
パイロットたちは皆思想を歪められ、狂気にかられている。
まさに狂気を伝播させていくだけのシステムへと成り代わったデータリンクシステムは、戦場となった荒野に突如として現れた闖入者である猟兵たちを即座に異物として排除しようとしていた。
すでに荒野にはいくつかのトレーラーが爆炎を上げている。
『グリプ5』へと亡命しようとするキャラバンであったものだ。逃げる途中であったのだろう。
彼らは命からがら逃げて、逃げて、逃げてきて、この結末に至った。
それを悲しいと思わないわけがない。
此処には争いすらない。あるのは一方的な虐殺でしかなかった。少なくとも、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)はそう感じていた。
神騎『アセナ』の純白と透き通るような青い装甲が優美に、されど急行する。
後先を考える余裕などなかった。
目の前で行われている虐殺を止めなければと言う想いが、声なき声をソナタに上げさせていた。
助けなければ。
それは『グリプ5』から単身飛び出したキャバリア『熾盛』を駆る『フュンフ・ラーズグリーズ』と思いを同じくしていただろう。
「キャバリア……! なんだ、あの機体は……!」
敵ではないと互いに理解していたとしても、フュンフは訝しんだ。こちらには武装らしい武装が用意できなかったという事情がある。
けれど、『アセナ』は違う。
その武装を使わずに、群れ為す『スクンク』と亡命キャラバンの間に立ち塞がるのだ。
だが、立ちふさがっただけであった。
打倒する気もなく、けれど一歩も引かぬという不退転の決意が機体からあふれるようであった。
「なんで……! その機体のパイロット! 危険だ! あいつらは!」
そう、『スクンク』のパイロットたちもまたオブリビオンマシンによって狂気に走らされている。
そんな者たちの前に立ち塞がるなど、的にしてくれというものである。
事実、『スクンク』の砲身となったオーバーフレームの腕がソナタと『アセナ』を狙う。
あのグレネードの炎に包まれてしまえば、神騎といえどひとたまりもない。フュンフは『熾盛』を『アセナ』の前に滑り込ませる。
目の前の生命を捨てさせはしない。その思いだけが彼を突き動かしていた。
「ありがとうございます。けれど、たとえ愚かと言われようと」
ソナタは『アセナ』のコクピットから掌の降り立つ。
馬鹿な、とフュンフが叫ぶ。
そんなことをしてしまえば、生命が亡くなってしまう。グレネードの炎は、それだけ人の肉を焼くのだ。
「攻撃をやめてください。貴方たちには、彼らを撃つ理由も、憎しみも、怒りもないはずです。引き金を引けば喪われるものしかないでしょう。その後に訪れるのは悲しみだけです。そんな連鎖に貴方たたちを繋ぐわけにはいかないのです」
それは慈愛の心であった。
あふれる思いは、言葉にできないものであった。どれだけの言葉を紡いだとしても、オブリビオンマシンに侵された者たちの呪縛は取り除けないだろう。
けれど、そのユーベルコードは無意識なるものであった。
万象賛歌『寵愛』(セカイハアイニミチテイル)――鼓動の囁き、葉擦れの奏で……黎明に色づく世界は愛を謳うように、ソナタの言葉と思いが戦乱だけの世界に響いていく。
誰もが気がついただろう。
世界はこんなにも簡単なのだと。どれだけ憎しみと悲しみが紡がれたとしても、その果てに在るものが必ず見えるのだと。
互いがあるからこそ摩擦が起こる。
傷つく。けれど、そこには熱があるのだ。生きたという証が残る。だからこそ、人は懸命に良く生きようとするのだ。
より良きを求めるために生まれてきたはずなのだと、ソナタは祝福の歌声でもって告げる。
「そんな……こんな、ことが……」
フュンフは呆然と見つめていた。
『スクンク』のコクピットハッチが開き、パイロットたちが涙を流しながら降りるのを。
そう、戦うだけしかない世界にあって、己の意志で武器を捨てることさえも選択できる。それが人であると知らしめるようにソナタは奇跡を起こす。
「オブリビオンマシンに操られた人達にも、この思いが届くのです……」
ソナタは溢れんばかりの涙をたたえた瞳で見据える。その微笑みは何よりも美しかったと思えた。
フュンフはそれを見ただろう。
奇跡すら実現するユーベルコード。己の生命を惜しまぬ誰かが、自分だけではないことを。
こうして、世界は少しづつより良くなっていくのだと、識ったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
敵は有人型オブリビオンマシンか。面倒ね。無人機なら紅水陣で解かして済む話なのに。
仕方が無い。正攻法でいきましょう。
「式神使い」で『GPD-331迦利』を遠隔操作。
『迦利』の「レーザー射撃」「弾幕」「一斉射撃」で敵機と膠着状態を作り出すわ。
その間に、落ちよ、雷! 九天応元雷声普化天尊玉秘宝経で一体ずつ、電子回路を焼いていくわ。
攻撃態勢に入ってる前面の機体から優先順位を付けて。
グリプ5から出てきたのは、フュンフか。その機体、ちょっと見覚えがあるわ。
「集団戦闘」で敵の動きを読み、キャラバンや熾盛に攻撃が向かわないよう「レーザー射撃」で牽制。
隊長機が特定できたら、『迦利』に「オーラ防御」をかけて特攻!
巨大な力を持つということは、力の加減を誤ることのできないという制約を受けるということでもあるだろう。
破壊だけが目的であるのならば、それを無視すればいい。
オブリビオンマシンがそうであるように、何もかも破壊することだけであるのならば、これほどに容易いことはなかっただろう。
けれど、オブリビオンマシンに乗るパイロットたちは猟兵にとって救うべき対象である。
オブリビオンマシンは人の心を歪める。
例えどれだけ清廉潔白なる精神の持ち主であったとしても、例外なく歪めていく。それがオブリビオンマシンの悪辣なる所である。
「敵は有人型オブリビオンマシンか。面倒ね」
無人機であるのならば、己のユーベルコードで溶かして済む話であるのにと、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は歯噛みした。
グレネードの高速連射が荒野に爆炎をあげる。
オブリビオンマシン、MPC-JU156-NSI『スクンク』のオーバーフレーム、両腕に装備された砲身が次々とグレネードを打ち込んでくる。
手早くオブリビオンマシンを無力化しなければ、亡命キャラバンの者たちが炎にまかれてしまう。
「仕方がない。正攻法でいきましょう」
掲げた手が空を指差す。
其処に在ったのは凄まじい速度で飛ぶ機甲式『GPD-331迦利(カーリー)』であった。
無人機であるが故の速度と軌道は『スクンク』の砲撃を物ともせず、けれど『殲禍炎剣』の影響を受けるギリギリの高度を飛ぶ。
放たれるレーザー射撃の弾幕がグレネードを切り裂き、空に火球を生みだす。
それは一瞬の膠着状態であった。
けれど、ゆかりにとって、それだけでよかった。
「九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
放たれるユーベルコードの輝きは、視界を明滅させるほどの一撃。激烈な落雷の一撃が『スクンク』の一体に落ちる。
雷撃に対する防御を備えていたのだとしても、激烈なる一撃は周辺の地形を破壊するほどの一撃である。
機体は保つことはあっても、電子回路そのものは焼き付くだろう。
「――……あれは、『熾盛』……!」
動きの止まった『スクンク』をビームブレイドの斬撃で切り裂く『熾盛』の姿をゆかりは、驚きとともに見やる
「助かりました! 敵の無力化は僕が」
「フュンフか。その機体、ちょっと見覚えがあるわ」
データの海の中で見た機体。
『熾盛』。尋常ならざる動きとすさまじい速度を持つ機体であることは承知している。けれど、データで見た機体とは微妙に外観が違う。
装甲の色や形が違うとわかるのは、それが年代を重ねてきたからだろう。
「まあ、いいわ。隊長機を仕留める。あぶり出して頂戴」
ゆかりと『フュンフ』は互いに連携し、亡命キャラバンに『スクンク』の攻撃が向かぬようにと立ち回る。
ゆかりはすでに『熾盛』の動きを知っている。
『フュンフ』が、データで見た『熾盛』とまったく同じ動きができるわけではないことはもうわかっている。
ならば、それをフォローするのが己の役目である。
ゆかりはユーベルコードを輝かせる。誰一人として犠牲にはさせない。
「――いた……! この部隊の隊長機です!」
「上出来! 迦利!」
ゆかりの雷撃がほとばしり、オーラの力を纏ったキャバリア迦利が飛ぶ。
それは一直線に矢のように放たれた一撃であった。
鋭角な機体の先端が呪を輝かせながら『スクンク』の隊長機を一撃のもとに粉砕する。
オーバーフレームの破片を撒き散らしながら、迦利は飛翔する。
誰かを助けたいと願う者と、明日を望む者がいるのであれば、それを救うことこそが戦乱続く世界に芽生えた希望である。
それを守るためにゆかりはあらん限りのユーベルコードの輝きを放つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
槐・白羅
おお、モルスよ
死が押し寄せているぞ
死が迫っているぞ
そして…その死の運命に抗う者がいるぞ
ならば俺は助けよう
死を齎す機体を躯の海に返すとしよう
UC即起動
10機
キャラバンの直接の護衛
10機
フュンフと同行護衛
残り全機と本体
【殺気】を放ちながら
【属性攻撃・弾幕】
プラズマライフルより超高熱熱線で敵機の手足を焼き切断
一気に突撃し【集団戦術】で取り囲み
死の運命で【重量攻撃・貫通攻撃】で破壊しつくす
敵の反撃は剣で【受け流し】
轟天
轟天よ…食してよいぞ
但し人はダメだからな?
突如大地から姿を現し
破壊された機体の部品を存分に【捕食】
戦闘力を失った敵機もパイロット以外は食べ尽くしプラントの稼働を加速させる
槐・白羅(白雷・f30750)はクロムキャバリアの荒野を冥導神機『モルス』と共に見下ろしていた。
戦いの火種は尽きず。
けれど人々の心には平穏を求める思いがある。
「おお、モルスよ。死が押し寄せているぞ。死が迫っているぞ」
見える。
圧倒的な死の物量が。地平線より這い出るように次々とキャバリア、いやオブリビオンマシン、MPC-JU156-NSI『スクンク』が小国家『グリプ5』に亡命しようとする者達を抹殺せんと迫るのだ。
放たれた鎮圧ガスが人々を苦しめる。
嘔吐し、倒れ伏し、動かなくなる者たちがいる。それは生命を殺すためだけに存在している兵器でしかなかった。
どうしようもない世界であると言わざるをえなかった。
けれど、どんな世界にも己の明日を諦めぬ者たちがいる。
「そして……その死の運命に抗う者がいるぞ」
ならば、どうするのか。
冥導神機『モルス』が問うまでもない。すでに決まっている。己の心に在るのは唯一つの思いのみ。
「――ならば俺は助けよう。死をもたらす機体を骸の海に還すとしよう。モルスよ…今こそ死を振りまく時だ。その力を存分に示せ…!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
対軍戦術機構【死の行軍】(デスアーミー)たるユーベルコードの名を示す所以。それは、己の駆るキャバリアを複製する。
死の眠りを司る神機の一機がユーベルコードの力によって複製される。
複製されたとは言え、その機体は一体一体が白羅の念力によって個別に操作される。戦場となった荒野を駆け三つに別れた群れ。
10機は亡命キャラバンのトレーラーの護衛に。10機は『熾盛』の援護に。そして、残る全機は――。
「俺に続け。あれなるは死。されど、死の運命に抗う者がいるのならば」
迷うことはない。
問答無用である。死を体現する機体を駆る己こそが運命である。
プラズマライフルの超高熱熱戦が『スクンク』のアンダーフレームを焼き切る。
一気に突撃する白羅と『モルス』の後に続くのは複製された機体群である。統率の取れた乱れぬ隊列は『スクンク』を取り囲み、キャバリアソードの一撃が、その機体を切り裂き、かく座させていく。
「容易い。死の運命の前には抗えぬとしれ……轟天よ……食して良いぞ。但し、人はダメだからな?」
白羅の言葉と共に突如として大地から姿を現したのは、自律機動無人鮭型キャバリアであった。
大口を上げた中に飲み込まれていくかく座した機体。
パイロットは自力で脱出しているが、飲み込まれていくオブリビオンマシンが悲鳴をあげるようにひしゃげていく。
「よく食すがいい。プラントの稼働を加速させろ……そのために俺と『モルス』がいる」
幸いなことにまだまだ得物はいる。
轟天と呼ばれたキャバリアの胃は満足しきっていない。ならばこそ、まだまだ『死の運命』を振るわねばならない。
魔剣とも言うべきキャバリアソードの刀身が怪しく呪詛に輝く。
未だ行軍を続ける『モルス』の複製体と白羅は戦場を蹂躙していく。
亡命キャラバンの護衛も、『熾盛』の護衛も何もかも数という暴力で為せる。それは『スクンク』たちがそうであったように、けれど決定的に違っていたのは、一機それぞれが『モルス』と同格。変わらぬ性能のままに、『スクンク』を圧倒せしめるという事実だけであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
『亡命キャラバン』も『グリプ5』も、そしてもちろん『フュンフ』さんも、
どれひとつ失うわけにはいかないね!
地上付近を低空飛行する分には問題ないはずだから、
わたしは【ネルトリンゲン】で出撃しよう。
キャラバンは空母の大きさを生かして、トレーラーごと収容。保護するね。
フュンフさんも、見つけたら通信を入れて、一時空母に着艦してもらおう。
って、『熾盛』かぁ。電脳世界でだけど、この間見たね。
とはいえ、いまはまだ骨董品。
フュンフさんには、グリプ5が敵でないことを伝えて、
キャラバンの人たちを安心させて欲しいな。
【E.C.O.M.S】と榴弾モードの【M.P.M.S】で防御を固めて、
こっちには近づけさせないよー!
誰も、何一つ喪わせてはならぬと思う心を強欲と嗤う者がいるだろう。
それは偽善であるし、欺瞞であるとあざ笑う者がいるだろう。
けれど、何一つ気後れすることはないのだ。誰だって失いたくはない。人生が喪うことの連続であったとしても、傷つくことが当然であったのだとしても。
「誰も喪わせはしない――!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』が叫ぶ。
キャバリア『熾盛』を駆り、オブリビオンマシンであるMPC-JU156-NSI『スクンク』と競り合っている。
伝説の機体であったとしても、それは伝説であって超常の力が宿っているわけではない。
旧式であり、100年戦争当時は最新鋭であっても、今は骨董品と言ってもいい機体だった。それに武装の殆どが損失している状態での出撃。
どうあがいても『スクンク』と渡り合える状態ではなかったのだ。
けれど、それでもと生命を諦めぬ者がいることを知る者がいる。
己もまたそうであるとその瞳をユーベルコードに輝かせる者がいる。
「『亡命キャラバン』も『グリプ5』も、そしてもちろん『フュンフ』さんも、どれひとつ失うわけにはいかないね!」
空を見上げれば、其処に在るのは菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の乗艦であるミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』であった。
万能型戦闘空母は『殲禍炎剣』の砲撃を受けぬギリギリを飛ぶ。
「あれは――!」
『フュンフ』は見上げた先にあった空母に見覚えがあった。
そう、猟兵である理緒が、以前も助けてくれたのを覚えているのだ。彼女の乗艦『ネルトリンゲン』であれば『亡命キャラバン』の人員を保護してもらうことができるはずだ。
「フュンフさん、見つけた! こっちに一時着艦して……って」
通信を入れた理緒の顔が僅かにかげる。
彼女の表情には理由がある。
戦いの記憶が蘇るのだ。データ上、ゲームの中であったとしても忘れることのできない鮮烈なる戦いの記憶。
尋常ならざるデータとして残されていた『熾盛』の苛烈なる戦いぶりを思い出したのかも知れない。
「『熾盛』かぁ。電脳世界でだけど、この間見たのとは少し、形が違う……?」
あのデータが全盛期の頃の機体データであるのならば、戦いを経て装甲が変わることもあるだろう。
そうでなくても骨董品と同じなのだ。
「助かりました。でも、まだ『亡命キャラバン』の収容が追いつかない……僕もまた出ます」
「ありがとう。でも、お願いがあるんだ。『亡命キャラバン』の人達を安心させて欲しい。『グリプ5』が敵じゃないって。助けてくれるって伝えてほしいんだ。その言葉だけでも、人は安心するものだから」
理緒にとって、優先されるべきは人命であった。
確かに『ネルトリンゲン』は人の生命を救うことはできるだろう。トレーラー毎収容できるキャパシティはある。
けれど、それはあくまで物質的なものである。
亡命キャラバンの人々の心を救うことができるのは単身『グリプ5』から飛び出してきた『フュンフ』の言葉だけだ。
彼の言葉で、救える生命がある。だからこそ、理緒は彼に頼んだのだ。
「……わかりました。僕にできることがあるのならば、いくらでも。少しでいいんです。時間をどうか」
「はい、まかされたよー!」
理緒は『フュンフ』の言葉に笑顔でうなずく。
いつだってそうだ。
誰かのために戦うことを決意した者の瞳には力が宿る。それは意志の力であったり、ユーベルコードの力であったりするのだ。
理緒の瞳にユーベルコードが輝いた瞬間『ネルトリンゲン』の周囲に正八角形のユニットが無数に展開される。
それはE.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)と呼ばれるシステム。
多目的ミサイルランチャーとユニットが、オブリビオンマシンの接近を許さない。
鉄壁とも言える『ネルトリンゲン』の対地防御は完璧であった。
少しでも時間を稼ぐ。
そして、救える生命を救う。そのために理緒はこの世界にやってきたのだ。
「こっちには近づけさせないよー! 人の心を支える支柱に言葉がなるんなら、それができる人を守るのがわたしの役目だからねー!」
理緒のユーベルコードは『ネルトリンゲン』を通して、ユニットと榴弾モードの多目的ミサイルランチャーによって次々とオブリビオンマシンを撃破していく。
荒野に点在するトレーラーを回収しながら、モニタリングしている『フュンフ』の言葉が『亡命キャラバン』の人々の心に明かりを灯すように広がっていくのを理緒は見た。
誰かの言葉が、誰かの想う心が、そうやって世界に広がっていく。
それだけでいいのだ。
今は小さい篝火であったのだとしても、いつかきっと大きな明かりになる。それを希望と呼ぶのならば、理緒は戦うことを恐れないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【SPD】
※愛機『ナインス・ライン』に搭乗
※アドリブ絡み連携歓迎
あーあ、エゲツないモン作るからこーなる…
儲かりゃいいディストピア企業国家だからってさ
ん?そ、あの『スクンク』は実家原産の量産機
流石に「変質」は『N.S.I.』も想定外だろうけど
ってわけで先日実家からパクった『スクンク』
そのアタシ用カスタム機【ブラスト・ラビット】を
オペ34番【フィフス・デヴァステイター】で遠隔操作
ガス殺に特化した「スカンク」では出せない機動力、
「ウサギ」らしい跳躍力と原型機以上の火力で薙ぐよっ
『ナインス・ライン』はキャラバンの盾になりつつ
弾幕を張って『スクンク』を押し返すよ
魔改造までしたんだし機体特性は承知の上さっ
MPC-JU156-NSI『スクンク』――それはクロムキャバリア北方の地下重工業都市において現地支配企業『ノインシュテルネ・インドゥストリー』が開発したキャバリアである。
運用する小国家『シーヴァスリー』と如何なる繋がりがあるのかは不明であるが、オブマシン化している以上、その脅威は言うまでもない。
市街地の破壊を目的とした機体。
グレネードを高速連射するオーバーフレーム。逆関節のアンダーフレームは破壊された悪路であっても容易く踏破するだろう。
そして、内蔵された制圧ガスはキャバリアではなく、国の根幹を為す人民を抹殺するためだけに装備されたものである。
徹底した国の破壊を目的とした機体。
プラントを奪い合いのが小国家同士の争いであるのならば、プラントを破壊しない限り、効率的に国家へと打撃を与えることのできるキャバリアであると言わざるをえない。
それこそが小国家『フィアレーゲン』を滅ぼした要因の一つであった。
「あーあ、エゲツないモン作るからこーなる……」
リーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)は愛機である『ナインス・ライン』のコクピットの中で嘆息した。
重量級キャバリアの青い装甲は、『スクンク』の放つ制圧ガスを寄せ付けはしないだろう。
『スクンク』の残虐性を理解していたのは、彼女が他ならぬ現地支配企業『ノインシュテルネ・インドゥストリー』を出奔した令嬢であるからだ。
「儲かりゃいいディストピア企業国家だからってさ」
これはない、とリーゼロッテは『ナインス・ライン』と共に戦場となった荒野を駆ける。
すでに小国家『グリプ5』から単騎で駆けつけた『熾盛』は『スクンク』と交戦している。
けれど、碌な武装が備えられていない上に、あの期待状況を見るに骨董品レベルの旧式の機体である。
あれでは如何に対人、市街地用のキャバリアである『スクンク』を倒すことは難しいだろう。
むしろ、あの状態で無数のキャバリアを相手取って生存していること事態が驚くべきことだった。
「何故、そんなに貴方は……」
詳しいのだと、『熾盛』のパイロットであるフュンフが通信を入れてくる。それをわりかし面倒だなと感じながらもリーゼロッテはこともなげに返すのだ。
「ん? あの『スクンク』は実家原産の量産機」
驚くべき事実であったが、今は驚く暇もない。まあ、流石にオブリビオンマシンにすり替わっていたという事実は実家も想定外であろうけど、とリーゼロッテは言葉を飲み込んだ。
「とは言え、後始末はしないとね。てわけで先日実家からパクった……」
彼女のユーベルコードが瞳を輝かせる。
Op.TXIV:FIFTH DEVASTATOR(フィフス・デヴァステイター)、それは生体電脳と無人機AIの超高速データリンクによって『スクンク』をカスタムした『ブラスト・ラビット』を遠隔操作し、一気に戦場へと雪崩込むのだ。
そもそも超高速データリンク事態が、『スクンク』に備わっている機能である。
本来であれば、部隊での連携を円滑に行うための装備である。
それをリーゼロッテは己と無人機の遠隔操作に用いているのである。生体電脳にかかる負荷もあるだろう。
けれど、それを補助するのが情報統合解析システム『ジオ・アライアンス』である。
『ジオ・アライアンス、5番との戦況データリンクを開始します』
「ん。本機とFCSを統合、電脳に5番コンソールを投影してっ」
青い『ナインス・ライン』と『ブラスト・ラビット』が加速する。その機動力は本当に同一の機体であるのかと思うほどの速度であった。
重量級キャバリアである『ナインス・ライン』が逃げ遅れたトレーラーを庇うように盾となり、『ブラスト・ラビット』は『ウサギ』らしく跳躍と共に原型機を上回る火力で持って『スクンク』を一瞬のうちに薙ぎ払うのだ。
「魔改造までしたんだし、機体特性は承知の上さっ。ガス殺に特化した機体では、『ブラスト・ラビット』のような機動は出せないっ」
リーゼロッテは理解していた。
市街地、対人に対する殺傷能力こそが『スクンク』の真骨頂である。
ならばこそ、『ブラスト・ラビット』の機動力に翻弄され、火力でもって押し返されるのは必定である。
そこに『ナインス・ライン』の弾幕が加われば、そこは最早一つの砦のようでもあった。
「これ以上、此処を抜けるとは思わないことだねっ」
その言葉通りリーゼロッテは押し寄せる『スクンク』の波のような大群を押し留め、あまつさえは押し返すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アンネリース・メスナー
アドリブ歓迎
亡国の難民……
故国のズィガ帝国はいまや傀儡国家のズィガ共和国に成り下がっていますから、そこは少なからず共感は覚えますわ
まぁ彼らの国が滅んだのと違い、故国は敗戦による占領統治からの国体変更による属国化でしたが
わたくしは占領統治中に逃亡しましたので属国化した故国は見ていないですが
サイキックキャバリアを筆頭に古いから弱いとは限りませんが、あれは正真正銘旧式機ですわね。心意気は買いますがキャラバンの護衛だけしておきなさい!
それにしても、こんな限定用途特化とは趣味の悪い機体ですこと!
そんな対キャバリア戦を想定してるかどうか怪しい機体で、このアマランサス・ラピートに勝てると思わないことですわ!
国を喪った者たちが荒野を走るのは何故か。
己の生存圏を欲するからかもしれないし、それ以外のなにかであったのかもしれない。戦乱が続く世界、クロムキャバリアにおいて安寧は程遠いものである。
だからこそ、己たちの立ち位置をより良いものとしたいと願うのは当然のことだっただろう。
他よりも優れたるを望む。
当たり前のことだ。そのために他者を蹴落とすことなど造作も無いことだろう。
アンネリース・メスナー(元エリート親衛隊・f32593)は、滅びた小国家『フィアレーゲン』から小国家『グリプ5』へと亡命しようとするトレーラーと、それを追う猟犬の如きキャバリア、否、MPC-JU156-NSI『スクンク』の機影を見つめていた。
「亡国の難民……」
彼女の故国。ズィガ帝国もまた同じであろう。滅びてこそいない。ただ傀儡国家へと成り果てたズィガ共和国があるだけだ。
少なからず彼らに対しての共感はある。
ただ違いがあるのだとすれば、彼らの国は滅んだが、自分の国は占領統治からの国体変更による属国化であったことだろう。
アンネリースは逃げた。
生きるために逃げた。それ故に彼女は直接属国化した故国は見ていない。それが幸いであったのか、不幸であったのかはわからない。
けれど、優秀なエリートを自負する己にとって逃走とは即ちプライドを傷つけるものであったことだろう。
その血筋、その気質、その才能。
そのどれもが己に敗北を是としない。
「故に、未だ生きることを止めぬ者がいるのならば」
アンネリースのキャバリアがジェネレーターを咆哮させる。
かつての親衛隊隊長機であった名残であろうエングレービングを施された機体が、荒野に疾走する。
『アマランサス・ラピート』。その薄紫色の機体が戦場を駆けるのだ。
視界にはグレネードを打放ち続ける『スクンク』。
膨大な火力で持って亡命キャラバンのトレーラーを破壊せんとしている。しかし、それをさせぬと孤軍奮闘するキャバリアの姿があった。
単身『グリプ5』から飛び出したキャバリア、『熾盛』。それは見れば見るほどに旧式であった。
100年戦争の折に開発されたであろう何世代も前の機体構造。
けれど、その加速は未だ衰えず。武装もろくに積んでいないのに、それでも亡命キャラバンの人々を救わんとしているのだ。
「サイキックキャバリアを筆頭に古いから弱いとは限りませんが、あれは正真正銘旧式機ですわね」
心意気は買うが、とアンネリースは戦場を駆ける一条の閃光となって『スクンク』を一撃のもとに沈黙させる。
「――ッ!? どこから……いや、この動き!」
『熾盛』のパイロットである『フュンフ』が驚愕する。アンネリースの駆る『アマランサス・ラピート』の変幻なる機動は、『スクンク』の放つグレネードの間隙を縫うようであった。
爆風が吹き荒れる中を飛ぶ『アマランサス・ラピート』の姿はまるで踊るようでも在ったことだろう。
「心意気は買いますが、キャバンの護衛だけしておきなさい!」
アンネリースの言葉と共に次々と『スクンク』が撃墜されていく。
それは未来予知染みた超直感による行動予測。
彼女の瞳がユーベルコードに、サイキックセンスがもたらす超直感によって、あらゆる攻撃、あらゆる挙動を予測した超絶なるタイミングによって敵を駆逐していくのだ。
「それにしても、こんな限定用途特化とは趣味の悪い機体ですこと! そんな対キャバリア戦を想定してるかどうか怪しい機体で、この――」
戦場に紫色の閃光が走る。
それは稲妻のようであり、同時に捕らえられぬ者を体現するような機動でもって荒野を駆け抜けるのだ。
彼女が走った後に残るのはキャバリアの残骸のみ。
「アマランサス・ラピートに勝てるとは思わないことですわ!」
アンネリースの高らかな声が荒野に響き渡り、彼女の放つビームライフルの光条が次々と敵を、そして亡国の民を抹殺線とする悪意を貫いていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
フィアレーゲン、あの国は、亡くなったのか。
自分が彼等に聞かせた事は無駄だったのだろうか…
ディスポーザブル02で騎乗突撃
おびき寄せ、超高速でトレーラーを狙う物達へ機体を突っ込ませ迎撃させる
否、まだ、生きている。
なら、その為に、壊れるまで!『ディスポーザブル!』
技能レベル9以下をレベル×10に強化。
瞬間思考力・早業
02から飛び降りて、虚空から、ディスポーザブル01を呼び寄せ、操縦。
グレネード弾からトレーラーをかばう
戦えッ!!
継戦能力、パルスアトラクターで前面への電磁音波の衝撃波を放出
グレネード弾を吹き飛ばし迎撃、敵機へマヒ攻撃を行い時間稼ぎ
ホーミングレーザー、敵機武装をロックオン、弾幕を展開する!
どれだけの血が流れても。
どれだけの悲しみが海を作るのだとしても。それでも生きていかねばならぬのが人の生であるというのならば、なんと悲嘆に暮れた生き方であろうか。
辛く険しい戦いこそが、人の生存を勝ち取るために必要なものであるというのならば、これほどまでに人は罪在りきと言わざるを得ないのだろうか。
「『フィアレーゲン、あの国は、亡くなったのか」
自分が、彼等に聞かせた言葉は無駄だったのだろうか。
あの小国家に生きる者たちは教育という名の洗脳に寄って歪められていた。自分たちのより良い生活を守るために、飲み込んだものたちだっていただろう。
その結果がこれかと、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は涙することなく、息を吐き出した。
爆炎にトレーラーが燃えている。
安寧を求めて荒野を征くことを決意した者たちの末路がこれであるというのならば、救いがたいことである。
涙は枯れ果てている。
一粒だって溢れてはこない。
自身が駆る六本腕の異形のキャバリアが荒野を疾走する。MPC-JU156-NSI『スクンク』がグレネードを連射し、地平線を埋め尽くさんばかりの大群で押し寄せるのだ。
亡命キャラバンは為すすべも無いだろう。防衛することもできず、けれど行き場のない彼等はただ惑うのみだ。
「否、まだ生きている。なら、そのために、壊れるまで!『ディスポーザブル(タタカッテタタカッテタタカッテ)』!」
この生命が壊れ失せるまで。
その思いが小枝子の胸の中を覆い尽くしていく。
己のみを守ることはもうしない。この身体が在るのは誰かを守るためだ。戦うためだ。それだけが彼女の存在意義であるというのならば、己の生命は正しく使うと決めたのだ。
六本腕の異形のキャバリアから飛び出し、虚空から現れるのは堅牢なるキャバリア。重装甲の『ディスポーザブル01』がグレネードが降りしきる雨の中を庇うようにトレーラーに覆いかぶさる。
背面に爆ぜる爆炎すらも物ともせずに『ディスポーザブル01』が炎の中から立ち上がる。
「戦えッ!!」
恐れなど、悲しみなど、誰も求めては居ない。
かばったトレーラーの中から少女が這い出す。その少女は見ただろう。爆炎の中、煌めく生存ではない、己の存在意義を世界に問いかける鋼鉄の巨人の姿を。
「――……ッ」
彼女は恐ろしいと思った。
自分にはそれができない。見上げることしかできない。今まで自分がそうしてきたように、キャバリアに乗ることなどもう出来ない。
憧れがあった。
そして、喪ってしまったものがあった。けれど、緑色の瞳をした少年が言っていたのだ。
喪ってしまったとしても、まだ残るものがあると。
「戦えッ!!」
生きることをやめるなと。足を止めるなと小枝子の声が響き渡る。迫るグレネードの尽くをパルスアトラクターの電磁音波の衝撃波で叩き落とし『スクンク』の動きを止める。
凄まじい戦いぶりであった。
ホーミングレーザーが空を飛び、『スクンク』の大群を押し止める。
弾幕を張り巡らせ、己の力の全てを持って虐殺をもたらさんとするオブリビオンマシンを押し止めるのだ。
流血しながらも、戦い続ける小枝子。
その姿に少女は、嘗て『ツェーン』と呼ばれた少女は見上げることしかできなかった。
狂気を感じ、怖気走った戦いへの執着。
あのように己はなれない。けれど、こうなるなとさえ言われているような戦う背中を小枝子は守るために戦うのだ。
それこそが己の宿命。宿業であると言わしめるように、彼女の背後に累が及ぶことのないようにと、己の身を省みることなく、明日を望む者たちを守るために戦い続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
「ほほう、ここは……?」
旅先こそが棲家たる我が訪れしは、巨大ゴーレム(?)が闊歩する世界。
ふむ、巨大ゴーレムがいるということはA&Wかアルダワだな、ここ!
転移してきた我の目の前に広がるは燃え上がる機械の馬車(?)。
「ククク、ゴーレムにキャラバンが襲われているといったところか」
山賊っぽい輩に襲われてるキャラバンを助けたら、ご飯くれるというのがお約束展開!
ここは我の夕飯のためにも山賊(?)退治といこう。
魔法の箒の上に仁王立ちし、魔術の詠唱をおこなおう。
「我の大魔術、【極寒地獄】を受けるが良い!」
ゴーレムどもを凍りつかせつつ、戦場を包む炎を鎮火するとしよう。
……きゃばりあ?
美味しいのか、それ?
旅先こそが棲家であると漆黒の魔女は言った。
それは嘯いたと言うには、あまりにも真に迫った言葉であったことだろう。定住の地を持たず流浪の旅を続ける。如何なる理由であったとしても、それを続けることのできる者は多くはないだろう。
世界を渡る猟兵にとって、それはある意味で真実であったのかもしれない。
世界を見る。世界を見た。世界を知る。
ただ、それだけでも途方も無い時間がかかることだろう。
「ほほう、ここは……?」
フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は荒野に爆炎の上がる世界を見据え、彼女の知らぬ世界を見つめる。
鋼鉄の巨人が闊歩する荒野。
それは彼女の知識に照らし合わせれば巨大ゴーレムであった。即ち、此処はそう――。
「アックス&ウィザーズかアルダワだな、ここ!」
たっぷり間を取って、残念ハズレである。
ここは戦乱が続く世界。クロムキャバリアである。鋼鉄のゴーレムは、キャバリアと呼ばれる戦術兵器であり、今はオブリビオンマシンと化した存在だ。
グレネードが放たれ、爆炎が襲うのは小国家『フィアレーゲン』から小国家『グリプ5』へと亡命しようとするキャラバンである。
「ククク、ゴーレムにキャラバンが襲われているといったところか」
機械の馬車、即ちトレーラーは賊に襲われていることがフィアの目にも明らかであった。それを見て彼女はにんまりと笑っていた。
何故なら、山賊っぽい輩に襲われているキャラバンを助けたら、ご飯をくれるというのがお約束の展開であるからだ。
我知っているもの。
何度かこういう場面みたことあるし、我は詳しんだ。そう言わんばかりにフィアは魔法の箒で空に飛び上がり、仁王立ちする。
魔術の詠唱が奏でられるように紡がれていく。
編み込まれた魔力がフィアの詠唱とともに戦場へと染み込んでいく。
「我が魔力により、この世界に顕現せよ、極寒の地獄よ」
それは戦場全体に内部に居る者を徐々に凍りつかせる氷壁で出来た迷路を作り出す大魔術。
「我の大魔術、極寒地獄(コキュートス)を受けるが良い!」
開放された魔術が戦場に在りし、『スクンク』たちを飲み込んでいく。
それは次々と機体を凍りつかせ、扇状を包んでいたグレネードの炎を鎮火していく。炎すらも凍りつく大魔術は、クロムキャバリアに住まう人々にとっては奇跡そのものであったことだろう。
「ククク! どれだけ鋼鉄のゴーレムが頑強であろうと、我の大魔術の前には全てが無に等しいものよ!」
高笑いをしながら、フィアが箒と共に下りていく。
凍りついた『スクンク』を軽く小突けば、装甲が砕けていく。容易いものであることよ、フィアは今晩のご飯は決まったものであると、すでに皮算用を始めていた。
いいのかなー。
そんなもう今日は勝った! みたいな顔をしておいて。これはフラグというやつではないのかなーと突っ込む弟子も今日は隣にいないのである。
「す、すごい……これだけのキャバリアを一瞬で」
亡命キャラバンの者たちが驚いたようにフィアの姿を認め、鎮火したトレーラから這い出してくる。
それを聞いてフィアは小首をかしげる。
「……きゃばりあ?」
え。
互いに顔を見合わせる。
とても気まずい。どちらも事情がよくわかっていない顔だ。フィアはてっきりアックス&ウィザーズやアルダワのような生活様式の人々が襲われていると思っていたものだから、現れたクロムキャバリアの人々を見て面くらう。
「……美味しいのか、それ?」
なんだかんだでろくすっぽ食べていないフィアである。
なんでもかんでも食べ物に直結してしまう。ぐぅ、と締まらない音が戦場に響き渡り、亡命キャラバンの人々はいそいそとフィアに今後のために取っておいたレーションを手渡し、その腹の虫が収まるまで、待つしかないのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…さて、と……デビュー戦だよ、ツィルニトラ…
これに乗っていれば術式を機体規模まで出来るから…
…加速術式で機体を加速させて現場に急行…ちょっと間に合わなかったか…
フュンフ…お久…新機体で助けに来たよ…
…まずはオブリビオンマシンとトレーラーの間に割り込み…
【我が手に傅く万物の理】にて地面を隆起させて射線を塞ぐよ…
…これを妨害と認識して状況解析のためにセンサを稼働してくれるならこちらの思い通り…
…浸透破壊術式【ベルゼブブ】によりウィルスをスクンクに流し込んで強制的にこちらとの回線を強制開放…
…そのまま通信機能を介してスクンクの集団にハッキングを仕掛けて敵味方の識別を狂わせて同士討ちをさせよう…
試作型術式騎兵『ツィルニトラ』がクロムキャバリアの荒野に疾駆する。
術式を5m級戦術兵器の規模にまで拡張することを念頭に置いて建造されたガジェットの挙動は問題ないと言えるレベルであった。
順調な駆動。
己の術式を反映する反応の良さ、それらを感じながらメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は『ツィルニトラ』のコクピットの中で小さく呟いた。
「……さて、と……デビュー戦だよ、『ツィルニトラ』……」
加速術式で機体を加速させ、小国家『フィアレーゲン』から亡命するために荒野を往く者達を襲うオブリビオンマシン、MPC-JU156-NSI『スクンク』の群れへと飛び込んでいく。
すでに爆煙が上がっているのは、トレーラーがグレネードによって破壊されているからだ。
少し間に合わなかったと、メンカルは息をつく暇もなかった。
地平線を埋めるように大挙するオブリビオンマシンの群れは、感傷に浸る暇すら与えてはくれないのだ。
「フュンフ……お久……新機体で助けに来たよ……」
メンカルの視線の先にあったのは『熾盛』であった。
旧式のキャバリア。電脳空間で見た『熾盛』とは若干装甲や色が変わっているのが見て取れるであろう。
あのデータが全盛期の機体のものであったのだとするならば、今の『熾盛』は骨董品と言っていいレベルの機体状況であった。
武装もビームブレイドと機銃のみ。戦力に数えることも難しいものであったが、それでも『フュンフ』が生命を見捨てられずに飛び出してきたことをメンカルは知っている。
「あなたは……! その機体……! 助けてくれるんですか……!」
トレーラーとオブリビオンマシンの間に割り込んで、『ツィルニトラ』の掌がユーベルコードに輝く。
それは地面を一瞬で隆起させ、グレネードの射線を遮る。
「数多の元素よ、記せ、綴れ、汝は見識、汝は目録。魔女が望むは森羅万物全て操る百科の書」
我が手に傅く万物の理(マテリアル・コントロール)と『ツィルニトラ』が咆哮するようにユーベルコードによって変換された無機物である大地がグレネードの炎を遮るのだ。
「メンカルさん、ダメだ! あの機体には戦術統御用高速データリンクシステムが搭載されてる……! すぐに状況を分析してくる!」
フュンフが叫ぶ。
メンカルの扱うユーベルコードは確かに強力であった。しかし、状況を分析し周囲の僚機と情報を密にする『スクンク』にとっては時間稼ぎにしかならないのだ。
「大丈夫……これを妨害と認識して状況解析をするのであれば……」
こちらの思惑通りであるとメンカルは言う。
何をとフュンフは思ったことだろう。その疑問はすぐさま解決される。『スクンク』の動きがおかしい。
何が、と思った瞬間、彼等は認識を違えたように同士討ちを始めるのだ。
一体何が起こったのか理解ができなかったことだろう。
「……浸透破壊術式『ベルゼブブ』……ウィルスを流し込んで強制的にこちらとの回線を解放させた……」
これで周囲にあった『スクンク』の全てがメンカルのハッキングに寄って敵味方の識別が狂い、同士討ちを始めたのだ。
これこそが彼女の戦い方である。
キャバリアの機体の大きさにまで拡張された術式であるからこそ為せる技であった。
その鮮やかな手並みにフュンフは感嘆したことだろう。
「あとは、機体を破壊する……パイロットは、わかるね?」
「はい、誰も殺させはしません。敵であろうと味方であろうと……僕はもう生命が喪われずに済むように」
そうするために戦うのだとフュンフとメンカルは戦場を駆ける。
未だ救われぬ生命があるのならば、そこへと走る。どれだけ手を伸ばしたとしても届かぬものがあるのかもしれない。
けれど、手を伸ばすことを止めぬ限り、人は必ず見果てぬ戦乱の果て、『平和』へとたどり着くのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!(お約束
ちょっと拡声器使ってみました
注意くらいは引けたでしょうか?
そんな隙に、いきますよー!
かもんっ!『ファントムシリカ』!
さてさて戦闘の相性は良くない相手ですが
今日も元気に突っ込みますよシリカ!
後ろを守る関係上今日は回避無しで
ミニシリカ、出力あげてー!
姿勢制御もよろしく!
セラフィナイトスピアで斥力フィールド展開!
【疾風怒濤】を攻撃回数重視で
敵の弾幕叩き落としますよ
接近さえ出来ればこっちのもの
「手数こそ正義!参ります!」
今度は機体を狙って【疾風怒濤】
さっくさくです!
※アドリブ連携OK
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!」
お約束の前口上が響き渡る。
荒野において、その声はあまりにも場違いであったし、グレネードの連射が起こす爆音にかき消されるものであったかもしれない。
けれど、そうはならなかった。
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の手にあったのは拡声器であった。キンキンとハウリングする音を響かせながら、その声はグレネードの爆音にも負けぬ力強い声となって荒野に響くのだ。
「ちょっとくらは注意は引けたでしょうか?」
てへぺろ。
茶目っ気たっぷりにサージェは一斉に自分を見つめるMPC-JU156-NSI『スクンク』のカメラアイを見つめる。
情熱的な視線……ではなく、単純になんだこいつは感が満載であるが、それでもサージェにとっては関係のないことであった。
「かもんっ! 『ファントムシリカ』!」
指を鳴らした瞬間に現れるのは淡い紫と白を基調とした女性型のサイキックキャバリアであった。
本来であれば相性のよくない相手であるがサージェは気にしてなんかいなかった。いつだってサーチアンドデストロイ。
見敵必殺。
全力で突っ込むのがサージェという猟兵である。
「さあ、今日も元気に突っ込みますよシリカ!」
白猫又の『シリカ』が嘆息する。突っ込むのはいいけど、壊さないで欲しいという切なる願いはいつになったら届くのだろうか。
そんな思いをよそにサージェは『ファントムシリカ』と共に戦場を駆け抜ける。
「ミニシリカ、出力あげてー! 姿勢制御もよろしく!」
構えたセラフィナイトスピアの穂先に斥力が発生し、疾風怒濤(クリティカルアサシン)の勢いでグレネードの爆風が荒ぶ荒野を走る『ファントムシリカ』。
亡命キャラバンを守るという関係上、今回は回避することはできない。
だからこそ、斥力の発生するバリアでグレネードを次々と落しながら、自分に注意を引きつけるのだ。
「手数こそ正義! 参ります!」
一瞬で接近した『ファントムシリカ』がセラフィナイトスピアを振るう。
その斬撃は一瞬の内に『スクンク』のオーバーフレームを切り裂き、グレネードを放ち続ける砲身を大地に落とすのだ。
「武装がオーバーフレームに集中しているのなら! さっくさくです!」
振るうセラフィナイトスピアの穂先が次々と『スクンク』の砲身を斬り刻んでいく。
どれだけ火力があろうとも、接近させしてしまえばサージェと『ファントムシリカ』を捉えることのできる者はいないのだ。
爆風が吹き荒ぶ中を華麗に舞うように駆け抜ける女性型サイキックキャバリアの姿は、亡命キャラバンの者たちにとって希望となりえたことだろう。
疾風怒濤の勢いで戦場を走るキャバリア。
その姿はきっと彼等の心に刻まれる。
少しパイロットであるサージェの露出が気になるなぁ、とかそんなことに気を回せるようになったのは、きっと余裕が出てきたからだろう。
「さっくさく! ほら、さっくさくですよー!」
サージェは笑いながら『スクンク』を撃破していく。戦いに在りてもどこか楽しげに。
けれど、全てを救わんと戦う姿は『シリカ』をしてもう少し自重しておけば、まともに見えるのになぁ、お姉ちゃんと言わしめたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
ここまでくりゃあ最早リンチっすねえ…亡命者とはいえ無抵抗の相手にここまでやりますか。
『アズライト』展開、グリプ5パイロット聞こえますか?
俺は<念動力>で動かす『ローレル』の<盾受け>で攻撃を防ぎます。
ただ…この数っす。キャラバンの方を優先して護衛することになるかと思うっす。
…ああ、犠牲になれと言うつもりは更々ねえっす。
盾を寄越せないぶん、<第六感>、<瞬間思考力>で攻撃予測を通信で伝える形で援護させてもらうっす。
やれますか?エース。
『カサンドラ』、範囲拡大。
【颪】。対象スクンク及び搭載装備。
動かす力が欠けたなら、高性能なマシンも鉄塊に成り下がる…シンプルな話っすね。
MPC-JU156-NSI『スクンク』の放つグレネードの雨が逃げ惑う『亡命キャラバン』のトレーラーを襲う。
その数は大群と言っていいほどであり、地平線の彼方より次々と現れるのだ。圧倒的な物量であり、キャバリアという防衛戦力を持たぬキャラバンにとって、それは死神というよりも絶対的な死の象徴であったことだろう。
爆煙が上がる。
どこを見ても破壊の痕しかない。
その光景を地獄と呼ぶのならば、まだ生ぬるいものであったのかもしれない。彼等は小国家『フィアレーゲン』から落ち延びてきた者たちだ。
侵攻を許した『フィアレーゲン』の国内は、此れ以上の惨劇が巻き起こされていることだろう。
これがクロムキャバリアの日常だ。
攻め込む者がいて、攻め込まれる者がいる。奪う者がいて、奪われる者がいる。両者を分かつのはいつだって力だ。
「ここまでくりゃあ最早リンチっすねえ……亡命者とは言え無抵抗の相手に此処までやりますか」
安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は地獄の如き荒野を見下ろし、ESP能力で構築した広域ネットワークである『アズライト』を展開した。
この状況において通信を悠長にしている時間もなければ、自分が味方であると説明する時間も惜しい。
「『グリプ5』のパイロット聞こえますか?」
穣の声が思念となって単身『グリプ5』から飛び出したキャバリアである『熾盛』のパイロットの脳内に直接響き渡る。
「――ッ、これは?! き、聞こえていますけど……!」
『熾盛』は単騎であり、旧式の機体である。
武装もほとんどが損失した状態での出撃であり、戦力には数えられないだろう。
けれど、それでも喪われようとしている生命を救わんと単身であっても駆け出した者だ。
それを穣は信じる。
「俺の機体『カサンドラ』に装備された盾型スラスターでグレネードを防ぎます。ただ……この数っす。キャラバンの方を優先して護衛することになるかと思うっす」
「わかっています。無論、そのつもりです」
その間髪入れぬ言葉に穣はうなずく。
思った通りの人物像であったことだろう。己の生命を厭わず誰かに手を伸ばすことのできる人間であると信じていた。
それは互いに同じアンサーヒューマンであるからであったかもしれない。
誤解なくわかりあうことができたのならば、こんなにも喜ばしいことはない。だから、信じられる。
「……ああ、犠牲になれって言うつもりはサラサラねえっす」
「理解できる。わかりますよ。貴方がやろうって思っていること。この思念でわかる」
互いに語り合わずともわかる。
『フュンフ・ラーズグリーズ』はそういう人間だ。
助けを求める声に応える。己を助けてくれる者と打算なく手を取り合うことができる。それ以上のことはもう必要ない。
互いの機体が走る。
カサンドラのカメラアイがユーベルコードに輝く。
それは意志の輝きである。
「やれますか?『エース』」
「――いきます!」
『熾盛』が戦場を撹乱するように駆け抜ける。
自身への注意をひきつけながら、穣から得られた第六感とも言うべき勘所の冴え渡る攻撃予測を受けて、『熾盛』が戦場に舞う。
凄まじい急加速と急制動によって、あらゆるグレネードの攻撃をひきつけてはギリギリの所で躱し続けるのだ。
想像以上の働きだった。
あれが100年戦争の折に開発された機体であるとは誰も思わないだろう。それほどまでにフュンフの操縦はここに来て急成長を見せていた。
それは穣とESP能力に寄って思念でつながっているからである。
互いの瞳が互いの認識を共有する。
互いの技量が互いに寄って高められていくのだ。そこにあって『熾盛』を捉えることのできる『スクンク』の砲撃はあろうはずもないのだ。
「ただ立つことがどれだけの力に支えられてるものなのか、案外皆知らないものっすね――颪(オロシ)」
輝くユーベルコードはサイキックエナジーと共に遮蔽物を貫通して届く振動波が『スクンク』の機体を撃つ。
それはエネルギー供給を止める一撃であった。
例え機体を傷つけることができなかったのだとしても、その機体を動かし維持するためのエネルギーが止まれば――。
「高性能なマシンも鉄塊に成り下がる……シンプルな話っすね」
穣の頭に清涼たる風が流れ込んできたようでもあった。
それは『フュンフ』と共に戦うことによって得られた感覚であったのかもしれない。同じアンサーヒューマンであることが影響したのかもしれない。
けれど、互いを信じて戦うことがこんなにも誇らしいことであるのだと『フュンフ』は感じていたのだろう。
その感情が穣に流れ込んでくる。
「なら、それに応えないとっすね」
かつて受け入れられなかった訴えがあった。予測した未来を回避するための訴え。もしも、あの時彼が傍にいたのならばと考えることはなかったかもしれない。
けれど、穣はもう出会ってしまったのだ。
変えられないと思っていた世界は変えられる。
虚空より現れた『カサンドラ』との出会いがすべてを変えた。変えられる。その手応えと共に穣は己の力を十全に発揮し、次々と暴虐を尽くすオブリビオンマシンを停止させていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
(一台のトレーラーの上に堂々と立つ一兵卒)
明けても暮れても、起こるのは争いばかり。
何処ぞの何某が『埃っぽい』と評するのも頷けてしまうな。
■闘
嘆いても仕方あるまい。今は敵を止めねば。
キャバリアには乗らず、生身で迎撃するぞ。
トレーラーに向かってくる敵に刀を抜かんとする姿を
見せつけ、【貫通攻撃】の効果を絡めた【無刃・意】を
放ち撃墜する。
攻撃が【範囲攻撃】になるよう、複数の敵に意識を向けるのだ。
自身や味方に攻撃が飛んできたら【軽業】の要領でトレーラーを
【ジャンプ】で行き来しつつ【早業】の抜刀から【衝撃波】を
生み出し砲弾や弾丸の軌道をずらそう。
直接被弾だけは全力で避けるのだ。
※アドリブ歓迎・不採用可
荒野を往く『亡命者キャラバン』のトレーラーがあった。
比較的先行していたおかげでオブリビオンマシンである『スクンク』の放つグレネードの砲撃の影響を受けずにいられた者達であった。
「ああ……! くそっ、もうすぐそこに『グリプ5』があるっていうのに……!」
爆煙が背後から上がっているのがわかったのだ。
それは即ち自分たちの仲間が燃えているということだ。
必死の思いで『フィアレーゲン』から逃げおおせたというのに、こんな所で死ぬなんてあんまりだった。
けれど、自分たちではどうしようもないのだ。
抵抗する力も、誰かを救うこともできない。歯がゆい気持ちが胸からこみ上げてくる。涙が溢れて止まらない。己の無力を噛み締めても、何も起こらない。
願わずには居られないのだ。奇跡が起こるのを。
その時、トレーラーの上に何かが降り立つ音がした。
「明けても暮れても、起こるのは争いばかり。何処ぞの何某が『埃っぽい』と評するのもうなずけてしまうな」
トレーラーの上に降り立ったのは、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)であった。
猛禽の翼を広げ、彼が見やるは爆煙である。
鋼鉄の巨人が人々を襲っている。
炎で焼き尽くし、その命の尽くを燃やし尽くさんとしている。
「嘆いても仕方あるまい。今は敵を止めねば」
頭を振って清綱は猛禽の翼を羽ばたかせ、飛翔する。それはまるで八艘飛びのように走るトレーラーの荷台の上を蹴って、次々と襲いかかる『スクンク』へと迫るのだ。
その光景はまるでリアリティのないものであったことだろう。
事実『スクンク』のパイロットたちは清綱のことを正しく認識できていなかった。
5m級の戦術兵器であるキャバリアに単身、それも生身で立ち向かってくる者がいるとは思ってもなかったからだ。
「――その驕りが、つけ入る隙になる」
その瞳がユーベルコードに輝く。
無刃・意(ムジン)。
それこそが清綱のユーベルコードである。攻撃の意識と刀に手をかける姿を向けた瞬間、放たれるのは無数の斬撃である。
見えることのない斬撃の軌跡は確かに『スクンク』の機体に走り、その砲身を、オーバーフレームを、アンダーフレームを瞬時に切り裂くのだ。
「これこそが我がユーベルコード。我が太刀に鉄を切り裂けぬ道理などない」
飛び跳ねるようにトレーラーの荷台を駆け、襲われようとしている者たちを救う。それこそが彼の使命である。
救える者は全て救う。
今まさに奪われようとしている生命を諦めることはない。
軽業のようにトレーラーの荷台を飛び跳ね、襲いくる大群を切り裂き続ける。
まさに奇跡のような光景であったことだろう。
「この猛禽の翼が羽ばたく度に己たちの味方が一機、また一機と喪われると知れ」
放たれるグレネードも目にも留まらぬ早業でもって切って捨てる。
斬撃が生みだす衝撃波でもって弾丸の軌道をそらし、すぐさま返す刃で機体を切り裂き、かく座させていく。
どれだけ戦っても終わることのない戦い。
けれど、清綱には見えている。
終わらぬ戦いなど無いのだ。いつだって争いは起こるものであるが、終わらぬことはない。
つかの間の安寧であったとしても、それを求める心が在る限り、清綱は奪われようとしている者たちのもとに駆けつけるだろう。
それこそが。
「そう、其れが俺の兵の道――」
振るう斬撃に迷いなどなく。
されど、その道行はまっすぐに『平和』へと続くと信じて、清綱は刀を奮い続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗 キャバリアサイズUC装着
……惨い真似を
フィアレーゲンではどれ程の惨事が…
……これ以上は騎士として断固阻ませて頂きます
UCで強化された●推力移動で飛翔
トレーラーをグレネードの砲火から盾でかばいつつ敵陣に切り込み
剣で攻撃を加えつつサブアームで背部コンテナの手榴弾●投擲目潰し
敵を攪乱しつつ離脱し熾盛と合流
その機体は…
いえ、お話は後ですね。フュンフ様、こちらを
(サブアームのライフルを譲渡し●継戦能力補給)
為すべきを為しましょう
煙が晴れると同時に飛翔
UCの照準レーザーを乱れ撃ちスナイパー射撃
ロックオンし敵部隊を重力波で圧壊、拘束
残敵の掃討を願います
小国家『フィアレーゲン』は確かに褒められた国ではなかった。
キャバリアパイロットしての技量だけが至上のものであると教育された市民たち。奪うことで自分たちの生活をより良くするということしか知らぬ者たち。
けれど、自分たちが奪われるという可能性は知らず。
そして、ついには滅びた国。
それを因果応報と呼ぶにはあまりにも。
「……惨い真似を」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそう思わずにはいられなかった。
滅びた国を思う。
かの国ではどれほどの惨事があったのだろうか。明らかにオブリビオンマシン『スクンク』は対人を想定された機体であった。
いや、市街地、対人だけを狙い撃ちにした悪辣なる装備ばかりであった。
ならばこそ、『フィアレーゲン』の惨状は容易に想像できるものであった。
「……これ以上は騎士として断固阻ませていただきます」
トリテレイアはキャバリア『ロシナンテⅣ』と共に荒野を飛ぶ。
戦機猟兵用重力制御兵装装備型強化ユニット(エクステンションパーツ・タイプ・グラビティ)を纏ったキャバリアは重力と慣性制御機構によって、クロムキャバリアの空を滑空する。
『殲禍炎剣』の影響で高度を取ることはできないが、高速で滑空することこそが、今回の戦いにおける最善手であったことだろう。
疾く駆けつけ、救える生命を救う。
それこそがトリテレイアの戦いの本分であった。
「……あの機体は」
瞬時にサブアームが煙幕を放つ手榴弾を投擲し、『スクンク』を撹乱する。
煙幕が広がり、周囲に互いを認識することが難しいほどの視界不良が引き起こされる。
そんなトリテレイアが降り立ったのはトレーラーに迫るグレネードを切り払うキャバリア『熾盛』の直ぐ側であった。
見たことの在る機体。
いや、実物を見るのは初めてであった。けれど、その機体を忘れるはずがない。
「援軍……! 騎士のキャバリア……!」
「いえ、お話は後ですね。フュンフ様、こちらを」
トリテレイアは『ロシナンテⅣ』のサブアームに懸架されていたライフルを『熾盛』に譲渡する。
その機体についての幾ばくか識りたいこともあったが、それは後にすべきだとトリテレイアは判断した。
積もる話は後でもいい。今は救うべきものがある。
「ありがたい……敵の数はまだ……!」
「ええ、為すべきを為しましょう」
互いに機体を動かす。一時も立ち止まってはいられない。未だ亡命キャラバンのトレーラーが襲われている。
それを一台でも、一人でも多くを救わなければならないのだ。
煙幕が晴れた瞬間に『ロシナンテⅣ』が飛翔する。
それはまるで大空を舞う鷲のようであり、絶えず放たれるレーザー照射と圧壊させる重力波を『スクンク』に放つのだ。
例え、破壊することができなくても、それをフォローしてくれる存在がいる。
「残敵の掃討を願います」
「わかりました! こちらは任せておいてください。これならば!」
『熾盛』が戦場を駆ける。
その姿は、いつか見た電脳世界での『熾盛』と重なるものがあった。装甲や色が一部違うところがあるが、それでも重なるのだ。
あの超絶なる操縦技術。
まさに生き写し、『エース』と呼ばれるにふさわしい成長を『フュンフ』が遂げたことをトリテレイアは誇っていい。
彼と猟兵達が護った未来が今、ここに芽吹いたのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『アマランサス・ラピート』
|
POW : BSロングビームライフル
【一瞬の隙も見逃さない正確な狙いの銃口】を向けた対象に、【高出力高収束のロングビームライフル】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD : BXビームソード
【スラスターを全開に吹かすこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【高速機動で間合いを詰めてビームソード】で攻撃する。
WIZ : RS-Sマイクロミサイルポッド
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【肩部マイクロミサイルポッド】から【正確にロックオンされたマイクロミサイル】を放つ。
イラスト:御崎ゆずるは
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ルイン・トゥーガン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
亡命キャラバンを襲った無数の『スクンク』たちは次々と猟兵達によって打倒されていく。
けれど、未だその数は完全に振り払えたとはいい難かった。トレーラーがグレネードの爆風で横転する。緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』は駆け出していた。
自分にできることをしなければならない。
『ツェーン』と呼ばれた少女が居た。
戦うことだけが自分の存在意義だったと言っていた。
けれど、今は戦うことが恐ろしいと震えていたのだ。別に、それを責めるつもりなんてなかった。
今まで彼女は国のトップに立って戦っていたのだ。
そうするようにと生み出されたのかもしれない。
「けれど、それでも。自分がどう生きるかを決めることを誰にも邪魔することなんてできないはずだ。そんなこと、誰にもできなやしない」
だから、生きてほしいと願ったのだ。
それを摘もうとする者たちがいる。横転したトレーラーには赤いキャバリアが搭載されていた。
自分にそれができるとは思わない。
「やらなきゃ、ならないって思ったんだ。自分のためじゃない。誰かのために」
奪うばかりを教えられた『フィアレーゲン』での日々。
それが間違いなのではないかと自分で気がついたのだ。だから、『ツェーン』だって自分と同じようになにか戦う以外の何かを見つけることができるはずだ。
『――そうだね。それができるのが人間だ。愚かだけれど、愛すべき者だ。だから進化しなければならないんだよ。摘み取られるかもしれないという可能性があるのならば、それを潰さなければならない』
わかるね、と甘やかな声が響いた。
それは何処にでも居るような声だった。隣にいるかもしれないし、背後にいるかもしれない。正面に立っているのかも知れない声であった。
『クリノ・クロア』はためらった。あまりにも甘やかな声であったからだ。
『何を恐れる必要があるんだい? 今君の目の前には力があって、君が大切に思うものを壊そうと迫る者たちがいる。それを振り払うことができるのは、君だけだ――』
「ダメよ、『クロア』! 其れに乗ってはダメ! そんな悪意が充満した機体に乗っては――!」
『ツェーン』の声が爆風の向こうから聞こえる。
けれど、と『クロア』はかぶりを振る。喪われてほしくない生命が在る。
甘やかな声の言うとおりだ。
奪わせてはならない。もう二度と。
「ごめん。『ツェーン』、俺は行くよ」
それが誤った選択であったとしても、君だけは幸せになるべきだと『クロア』は決意する。
赤き機体――『アマランサス・ラピート』がトレーラーより立ち上がる。
けれど、それは希望に溢れた起動ではなかった。
悪辣なる意志が、純然たる善意を操ろうとする輝く。赤きキャバリア――いや、オブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』が咆哮する。
それは無差別なる破壊をもたらす機神となって、凄まじい重圧をほとばしらせながら、『スクンク』も猟兵たちも、そして何よりも守るべきだと思った全てを奪われる前に破壊せんと凄まじい速度で駆けるのであった――。
村崎・ゆかり
キャラバン側にもオブリビオンマシンがいたの!?
キャラバンの中へ入り込んで、知った姿を探す。
ツェーン、無事? そうね、その子を助けなきゃ。
引き続き「式神使い」で機甲式『GPD-331迦利』を使役する。
あたしがここから攻撃するとキャラバンを巻き込むから、一旦離れないと。後でね、ツェーン。
機甲式からの「レーザー射撃」「弾幕」「一斉射撃」でオブリビオンマシンの足を止めて。
降りてきなさい、少年! 何のためにその機体に乗ったかも忘れ果てたの!?
「オーラ防御」を張った『迦利』をオブリビオンマシンの周囲を遊弋させて気を引きながら、不動明王火界咒を背面の主駆動器に叩き込む。
あなたの手が汚れる前に、終わらせるわ。
護るべき対象の中に討つべき対象が存在していたのならば、それは如何なる所業であったことだろうか。
悪意とは即ち、善意の皮を被った者であったことだろう。
人の善意の力を知るからこそ、その力を利用しようとする。純然たる思いこそが強烈なる光を生みだすのならば、その光がもたらす影もまた色濃くなるものである。
『いいな。やはりいい。人の営みはやはり争いによってのみ進化するものだ』
悪意の甘やかな声が赤いキャバリア――いや、オブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』のコクピットの中に響き渡る。
人の善意の象徴であろう『クリノ・クロア』の心を歪め、その意志の力でもって猟兵をねじ伏せる。
言ってしまえば、この少年は人質でありオブリビオンマシンを突き動かすための『エース』であった。
「奪わせない。奪わせないために、俺は――壊す!」
壊れてしまえば、奪われることはない。
壊せば価値がなくなる。価値がなくなれば、誰も奪わない。その歪んだ意志が発露するように『アマランサス・ラピート』が咆哮し、ロングビームライフルの銃口を『ツェーン』へと向ける。
「キャラバン側にもオブリビオンマシンがいたの!?」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はためらわず、『ツェーン』の身体を横から抱えるようにして銃口から逃がす。
一瞬の判断であったが、彼女がいなければ『ツェーン』はきっとビームの光に焼かれていたことだろう。
「ツェーン、無事?」
「わ、私は……」
無事であるということはわかる。けれど、彼女の二の句は違う。自分の身よりも、悪意に飲み込まれた『クリノ・クロア』のことをあんじていたのだ。
「そうね、あの子を助けなきゃ」
だから、今は離れなければならない。ゆかりは『ツェーン』を立たせると逃げるように促す。
躊躇うように、けれど駆け出す少女の背中を見送りながらゆかりは『アマランサス・ラピート』の巨体を見上げる。
「後でね、ツェーン。さあ、まずは――!」
このオブリビオンマシンをどうにかしなければならない。一瞬の隙すらも見逃さぬ『アマランサス・ラピート』の銃口がゆかりを狙った瞬間、機甲式『GPD-331迦利』が鋭角なる機体を横からぶつける。
よろける機体をよそに、空へと飛び上がる『迦利』がレーザーを撃ち放ち、牽制する。
「邪魔を――! するな――!」
咆哮に応えるように『アマランサス・ラピート』が戦場を走る。
その速度は高機動型であることを思い出させるような、凄まじい速度であった。赤い閃光となった『アマランサス・ラピート』がレーザー射撃の尽くを躱しながら、『迦利』と競り合うのだ。
「降りてきなさい、少年! 何のためにその機体に乗ったかも忘れ果てたの!?」
ゆかりの言葉は届かない。
すでにオブリビオンマシンによって歪められた心は、妄執にとらわれている。どうしようもない。
あのオブリビオンマシンを破壊しないことには、助けられるものも助けられない。
ゆかりは意を決する。
その瞳に輝くのユーベルコードの輝き。
結局の所、最期に物を言うのは人の心だ。
「あなたの手が汚れる前に、終わらせるわ」
しかし、『迦利』の無人機ならではの速度に対応する『アマランサス・ラピート』。その挙動はまさに『エース』と呼ぶにふさわしい動きであった。
今日初めてキャバリアを操縦したとは思えないほどの挙動。意志の力が此処まで人を突き動かすのかと思うほどの力を発露させる。
これを悪意は、オブリビオンマシンは狙っていたのだと理解できる。
「だからこそ、そうはさせないって言ってるんでしょう! ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
猛烈な速度で飛翔する『迦利』と『アマランサス・ラピート』の射撃が交錯する。射撃の射線が互いを掠めた瞬間、ゆかりのユーベルコードが炸裂する。
「不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)――!」
投げつけた白紙のトランプから噴出した炎が『アマランサス・ラピート』の背面ユニットへと打ち込まれる。
あの機動力を奪わなければならない。動きを止めなければ、緑色の瞳をした少年である『クリノ・クロア』も救えない。
「絡みつく不浄を焼く炎は、悪意だけを焼く! 人の心の善性を弄んだ報いを受けてもらうわ――!」
ゆかりの叫びと共に『アマランサス・ラピート』の背面が燃える。
その炎が悪意を焼き、人の心を弄ぶものを許さぬと天高く走るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
「この大馬鹿野郎!!守りたいものまでぶっ壊す気か、お前は!!」
叫ぶと同時に【試製電磁機関砲1型】で【制圧射撃】を叩き込むことで牽制。
【オーラ防御】の守りのオーラをまとい、オブリビオンマシンと避難民たちとの間に割り込むぜ。
「絶望を希望に変えて・・・ついでに大馬鹿野郎は…一発ぶん殴ってやる!!」
【特式機甲斬艦刀・業火】を抜き放ち、【フェイント】をかけつつ突撃。
【なぎ払い】と【鎧砕き】を【二回攻撃】で連続して放つ!!
相手の攻撃は【武器受け】で受けるぜ
「お前の善意を…想いを・・操ろうとする悪意を許さねえぜ!!」
ユーベルコード【ドラゴニック・オーバーエンド】を発動、ぶん殴るぜ
背面ユニットを焼きながらオブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』が戦場を駆ける。
その行動は支離滅裂であった。
きっと同じオブリビオンマシンである『スクンク』ですら標的にして、縦横無尽に駆け抜ける姿は機神のごとく。
放たれるロングビームライフルの狙いは正確で、次々と『スクンク』を破壊するのだ。だが、それだけにはとどまらない。
『亡命キャラバン』のトレーラーすらも標的にしようとしているのだ。
『全てを破壊するんだ。そうすれば、再生が始まる。君が大切に思っていたものも、きっと再生するさ。破壊なくば再生はない。わかるだろう?』
甘やかな声が緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』に囁き続ける。
それが人の心を歪めるものであったことは疑いようがない。
こうやっていつだってオブリビオンマシンは人の心の善性すらも歪ませ、争いの火種を生み出してきたのだ。
「壊す、壊す……奪われる前に壊さないと――!」
『クリノ・クロア』は完全にオブリビオンマシンに飲み込まれていた。人の心の力を引き上げる善意を歪められ、そして秘めた資質であるキャバリアパイロットとしての素養を引き出され『アマランサス・ラピート』の性能を引き出していたのだ。
最早、彼は破壊をもたらすオブリビオンマシンの一パーツでしかなかったのだ。
けれど、そんな彼を止める者がいる。
「この大馬鹿野郎!! 守りたいものまでぶっ壊す気か、お前は!!」
その叫びと同時に打ち込まれたのは試作型パルスマシンガンの弾丸であった。
赤茶色の着流しを身に纏ったガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は迸る怒りと共に『アマランサス・ラピート』と『亡命キャラバン』の人々との間に割って入り込んでいた。
立ち上がるオーラは5m級戦術兵器であるオブリビオンマシンを前にしても一歩も引くことはなかった。
「どけ! 俺は壊さなけれならないんだよ! 価値ないものを人は奪わない。だから、価値を無くすために壊さなければ、奪われるだけなんだよ!」
『クリノ・クロア』の言葉はオブリビオンマシンによって歪められたものだ。
そうじゃないだろう、とガイはつぶやく。
そうであるはずがない。
何故、己が戦おうとしたのか。それさえも歪めるのがオブリビオンマシンであるのならば。
「絶望を希望に変えて……ついでに大馬鹿野郎は……一発ぶん殴ってやる!!」
言って聞かないのであれば、拳を打ち込むしかない。
抜き払われたのは妖刀の力を伝える特殊合金で鍛造された紅のキャバリア用日本刀を構えるクロムキャバリア『スターインパルス』であった。
互いに一切の隙のない挙動。
それは互いの技量が競っているからだ。けれど、互いは動く。動かねば互いを打倒できぬと知っているからだ。
フェイントをかけても、全て対応される。
これが『エース』の技量であると知らしめるように『アマランサス・ラピート』が機動する。
その速度と相まって翻弄されるガイであったが、彼が恐れるに値はしないと瞳にユーベルコードを輝かせるのだ。
「お前の善意を……想いを……操ろうとする悪意を許さねえぜ!!」
迸るのは、特式機甲斬艦刀・業火の一撃――いや、二撃であった。振り下ろした斬撃を躱す『アマランサス・ラピート』。
その加速は凄まじいものであったが、さらにそれを上回るのがガイの技量であった。
目にも留まらぬ斬撃ではなく、振り下ろした斬艦刀の峰をそのまま返すように『アマランサス・ラピート』の胴へと叩き込むのだ。
鎧を砕くように、けれど衝撃だけはコクピットへと届かせるように揺さぶる衝撃が『アマランサス・ラピート』の機体をよろめかせるのだ。
「燃えよ!灼熱の炎!猛れ!漆黒の雷!全てを…砕けぇ!!」
ガイのユーベルコードがほとばしり、『スターインパルス』の拳が『アマランサス・ラピート』の頭部を強かに打ち据える。
瞬間、紅蓮の炎と漆黒の雷纏いし二頭の竜が『アマランサス・ラピート』の機体を強かに打ち据え、荒野へと叩きつける。
「受けたかよ、俺の拳を! これが人の善意を歪めるお前……悪意を討つ力だ――!!」
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語
守りたいという願いを踏み躙るか、オブリビオン
守る物を奪われる前に壊させはしない、機体を砕き、貴方も守る
SPDで判定
AIに【情報収集】を任せる
魔銃は背負い、Dagger&Gunで戦闘
相手が攻撃してきたら、指輪の力で風の【結界術】を発動し身を守る
多少のダメージは【覚悟】を持って受ける
次は【結界術】を相手に発動して閉じ込め、攻撃までの【時間稼ぎ】と【逃亡阻止】を行う
そのまま武器をビームガンに変形させ【クイックドロウ】【レーザー射撃】【零距離射撃】を使用しコックピット以外を狙い【不意打ち】する
赤いオブリビオンマシン、『アマランサス・ラピート』の頭部のフェイスガードが猟兵の駆るキャバリアの拳に砕かれ、荒野に失墜する。
だが、地面に完全に叩きつけられる前に『アマランサス・ラピート』は体勢を整え、戦術軌道へと移行する。
抜き払われたビームソードと噴出するスラスターが加速を駆け、機体を制御したのだ。
「この、程度で――! 墜とされてたまるか――!」
悪意によって歪められた善性。
緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』が咆哮する。それは本来であれば、何かを護るために漲った決意であったことだろう。
けれど、それさえもオブリビオンマシンは歪めていく。
どうしようもないほどに歪められた思いは、いつのまにか護るべきものこそを破壊せんと刃を向けるのだ。
「守りたいという願いを踏みにじるか、オブリビオン」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は『銀の銃兵』と呼ばれるキャバリアと共に『アマランサス・ラピート』へと迫る。
速度では確実に負ける。
高機動型である『アマランサス・ラピート』はピーキーな操縦性であったが、それを乗りこなす者が現れた今、純然たる脅威として猟兵たちの前に立ちふさがっている。
最後のピースとも言うべき『エース』を手に入れたオブリビオンマシンは、戦いの喜びに歓喜するようにジェネレーターを唸らせるのだ。
振り下ろされるビームソードの斬撃の出力が大きい。片手剣で受け止めた『銀の銃兵』の腕部フレームがきしみ、歪むのをAIが告げる。
「……――ッ! 此処まで機体性能を引き出すのか」
しかし、ルイスも退くことはできない。
どれほどの性能差があろうとも、諦めることはできない。もうルイスは覚悟を決めていた。
「護る者を奪われる前に壊させはしない、機体を砕き、貴方も護る」
それが『生者の盾』たる己の役目であるとルイスが不好する。
メガリスである『風嵐の指輪』が風を操り、結界のようにビームソードを振るう『アマランサス・ラピート』をはじき飛ばす。
「砕く、壊す! 俺は、もう何も奪われない。奪わさせはしないんだ!」
風の力に守られても尚、振るわれるビームソードの斬撃の出力は凄まじいものであった。
だが、二撃目をふるおうとした『アマランサス・ラピート』のビームソードは不意に動きが止まる。
「――壁ッ!?」
「違う。それはメガリスの力だ!」
ルイスの義眼が輝く。ユーベルコード、メガリス・アクティブによって己のメガリスの力を増幅させ、風を操る指輪のメガリスによる結界を己を護るためではなく、『アマランサス・ラピート』を封じ込めるために使ったのだ。
「逃しはしない。その悪意を此処で絶たせてもらう!」
とはいえ、その結界も長くは持たないだろう。暴れる『アマランサス・ラピート』の拳が風の結界を砕いた瞬間こそが、ルイスの勝負所であった。
片手剣では決定打にならない。ならばどうするか。
手にした片手剣が一瞬で変形する。その『銀の銃兵』の手の内にあったのは、ビームガンであった。変形機構を備えた装備は早撃ちのように『アマランサス・ラピート』を捉える。
「零距離――ッ!」
「この距離ならば、躱すことなどできまい!」
本来であればコクピットを狙うことで勝負はついたことだろう。
けれど、それはできない。
猟兵達が為さねばならないことは、パイロットを殺すことではない。オブリビオンマシンを破壊することだ。
だからこそ、ルイスは零距離で、勝負が一瞬で突く間合いにおいて、あえて『アマランサス・ラピート』のコクピットを外す。
「情けを、俺に懸けるのか!」
いいや、違うとルイスはつぶやく。放たれたビームガンの一撃が『アマランサス・ラピート』の左肩を貫き、爆発を引き起こさせる。
失墜してく機体を見下ろし、ルイスはつぶやく。
これは同情でもなければ、情けでもない。手加減でもない。これが自分たち猟兵の戦いなのだ。
「歪められているのならば、それを正す。それがクロムキャバリアにおける俺たちの戦いだからだ。歪められても、それでもなお善性が輝く。俺は護ると決めたのだから――」
ルイスはこれでいいと思ったことだろう。
どれだけ強大な敵であったとしても後に続く者たちがいる。必ずオブリビオンマシンを破壊してくれるとルイスは信じ、フレーム軋む『銀の銃兵』と共に膝を突くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
槐・白羅
おお、モルスよ
機神がいるぞ
お前と同じ宿業を持つ者が
(あれと一緒にするなと抗議の声)
ではあの機神を冥府に送るとしようかモルスよ
【属性攻撃・弾幕】
プラズマライフルより超高熱熱線を乱射し動きを止め
UC発動
【殺気】を放ちながら
【空中戦・滑空】で高度に気を付けながら飛び回り接近戦を仕掛ける
【重量攻撃・貫通攻撃・呪詛】
死の運命で切り刻み呪いを機体自体に仕込み動きそのものを鈍らせるよう試みる
敵の攻撃は【受け流し】てダメージを抑
死の閃光で敵のエネルギーを強奪しつつ此方の回復に務
道を違えるな
お前の目的はなんだ?
破壊か?
悪意に飲まれてはいけない
お前は何故それを乗ったのだ?
轟天
【補食】継続
敵の破片とか残骸を食べ尽
「おお、モルスよ。機神がいるぞ。お前と同じ宿業を持つ者が」
その瞳に映る赤いキャバリア、オブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』が猟兵たちの攻撃を受けながら滑空する。
スラスターを全開にすることによってなんとか機体の姿勢を整え、未だ墜ちることなく戦場にあったのだ。
鬼気迫るプレッシャーは、果たして機体の性能故か。それともキャバリアパイロットの気迫か。
どちらにせよ猟兵である以上オブリビオンマシンは破壊しなければならない。
槐・白羅(白雷・f30750)は己の乗機である冥導神機『モルス』へと語りかける。
あれと一緒にするなと抗議の声が上がる。
それもそのはずだ。あれは『神機』ではない。ただの人の業が生み出した機神に迫るほどの力を持ったオブリビオンマシンにほかならない。
「だが、そのままにしてはおけまい。あの機神を冥府に送るとしようかモルスよ」
赤いオブリビオンマシンと死の眠りを司るオブリビオンマシンが交錯する。
超高熱熱戦を放つプラズマライフルが乱射される。しかし、その尽くを『アマランサス・ラピート』が躱す。
「弾幕を張るつもりの射撃など――!」
『アマランサス・ラピート』の中で緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』が叫ぶ。
白羅は殺気を放つ。その瞳がユーベルコードに輝く。
「モルスよ…今こそその権能を示せ…死の眠りを与えよ!」
そのユーベルコードの名は、対生物戦殲滅機構『死の眠りの神』(タナトスノユウワク)。
凄まじい速度で二機が飛翔し、激突する。
放たれるビームソードの斬撃とキャバリアソードがぶつかり、周囲に破壊の旋風をもたらす。光が明滅し、高速戦闘を続ける。
「これでキャバリアに乗ったのが初めてだとはな……どこにでも居るものだな」
天才というやつは! と白羅は息巻いた。
けれど、例えどれだけの天才が騎乗していようとも戦い経験則によって培った技量が、それを超えるのだ。
「パワーダウン……! なんで……!」
「ただ俺が接近戦を仕掛けただけだと思ったか」
そう、白羅のユーベルコードはエネルギーを奪う死の閃光。
それは激突する度に徐々に『アマランサス・ラピート』のエネルギーインゴットからエネルギーを奪っていくのだ。
しかし、それでも尚『アマランサス・ラピート』の猛攻は続く。
人の善性を悪意が操る。それがオブリビオンマシンのやり方の常である。ならばこそ、今も尚『モルス』と競り合う『アマランサス・ラピート』の力は正しくパイロットの力であろう。
「道を違えるな。お前の目的はなんだ? 破壊か?」
白羅は静かに告げる。
激突する度にアラートがコクピットに響く。
けれど、そんなこと気にしてはいられない。それよりも、もっと大切な戦いがある。
「悪意に飲まれてはいけない。お前は何故それに乗ったのだ?」
考えろと、白羅は言う。
何を思い、誰のために戦うのか。
そこには理由があったはずだと。破壊するだけではないなにか別の理由が自身を突き動かしたはずだと告げる。
『死の運命』と呼ばれたキャバリアソードが『アマランサス・ラピート』の振るうビームソードとぶつかり、競り勝つ。
いつだってそうだ。
「ヒトの善性を信じるのならば、必ず裏には悪意がある。それが火種を生む。善性は尊ぶべきものであるが、純粋であるが故に利用される」
それを呪縛と呼ぶのならば、それを断ち切るのもまたヒトの意志だ。
「俺は――! ただ、別の生き方を見つけてほしかっただけだ。だから、壊す――!」
最早、問答は無用であった。
オブリビオンマシンによって歪められた想いが強くなればなるほどに、オブリビオンマシンの呪縛もまた強くなる。
それまで織り込み済みなのだ。
だからこそ、白羅はユーベルコードに輝く瞳のままキャバリアソードを振るう。
受け止めたビームソードの出力が落ち、支えきれなくなった『モルス』の斬撃を受けて大地に今度こそ失墜させる。
それを見下ろし、白羅は言うのだ。
「思い出せ。その鎖は自分でなければ断ち切れない。他ならないお前だからこそ、己を縛る鎖を断ち切れる。思い出せ」
人はいつだって自分で自分を救うことができる。
自分たちはきっかけを与えるだけだと白羅は失墜した『アマランサス・ラピート』を見下ろすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
あの国亡んだのですか
「あの状況じゃねー…」(少し寂しげ鶏映像)
しかもあのツェーンもいますか
運命ですかね
まあいい
挑むのも悪くはない
【情報収集・視力・戦闘知識】
強化された視力で敵の動きと癖と機体構造を見定める
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で隠れつつ
立体映像でスクンクの幻影を無数に展開
UC発動
【空中戦・念動力・スナイパー】
飛び回りながら念動光弾を撃ち込み乱射
主にミサイルポットを狙う
【二回攻撃・切断・盗み・盗み攻撃】
ハルペーで連続斬撃で切り刻みながらその武装を強奪しつつ破壊狙
お前が望んでいるのはぶっ殺しですか?
それとも救いですか?
お前の手はお前が守ろうとした人の血で汚れそうですよ?
大地に失墜した『アマランサス・ラピート』が咆哮する。
それは喪ったエネルギーをパイロットから補充するようにジェネレーターを回す。唸る力が怨嗟の咆哮のごとく猟兵達に向けられるのだ。
雁字搦めに捕らえたパイロットの想いを食い物にするように、オブリビオンマシンはその悪意を振りまくのだ。
「壊す……壊さなければ、奪われないために壊さないと。価値がなくなれば、奪われない。奪われないんだ――」
だから、壊す、と緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』は吠える。
スラスターが凄まじい勢いで『アマランサス・ラピート』を飛翔させる。
圧倒的な速度であった。
それは赤い閃光となって戦場を駆け抜ける。目にも留まらぬ速度は、ほとんどのキャバリアが追いつくことができなかったことだろう。
だが、ここに例外が在る。
「あの国亡んだのですか」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は小国家『フィアレーゲン』が滅んだことを知る。
亡命キャラバンが小国家『グリプ5』へと向かっていることは、すでに『フィアレーゲン』が滅ぼされたからに他ならない。
「あの状況じゃねー……」
鶏のホログラムがコクピットの中で少し寂しげにしていたが、カシムは気を取り直した。
コクピットのモニターには『ツェーン』の姿もあった。数奇なるめぐり合わせであると言えるだろう。
「運命ですかね」
偶然であるかもしれないし、必然であるのかもしれない。
どちらにせよ、因果は此処に結果を生みだすのだ。
まあ、いいとカシムはうなずく。
「挑むのも悪くはない」
迫る赤いキャバリアのビームソードが界導神機『メルクリウス』へと迫る。
賢者の石で構成された機神とオブリビオンマシンへと変貌した『アマランサス・ラピート』と激突する。
受け止めたビームソードの出力が上がっている。
「加速装置起動…メルクリウス…お前の力を見せてみろ…!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
一瞬で、その場から『メルクリウス』が消える。
否、消えたのではない。猛スピードで飛翔したのだ。その速度は『アマランサス・ラピート』の速度を遥かに超える。
通常の三倍にまで速度を上げた超高速機動は、立体映像で『スクンク』の幻影を無数に展開しつつ、念動光弾を打ち込み乱射しながら『アマランサス・ラピート』へと迫るのだ。
「――武装を狙うか! ならさっ!」
『アマランサス・ラピート』もまた飛翔する。赤い閃光となった機体が『メルクリウス』に迫る。
圧倒的な速度は戦場に旋風を巻き起こす。
鎌剣『ハルペー』とビームソードが打ち合う剣戟が戦場に響き渡る。
「お前が望んでいるのはぶっ殺しですか? それとも救いですか?」
カシムは語りかける。
互いの機体が交錯する度に機体が軋む。それはお互いに機体性能と技量が競り合っているからであろう。
初めてキャバリアに乗った緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』は確かに天才的な才能を持っているのだろう。
これが『エース』の開花であると言われるのであれば、なるほどと頷けるものがある。
けれど、その開花は誰かのために思われての開花のはずだったのだ。
それをオブリビオンマシンが歪めた。それを知るからこそカシムは続ける。そのまま続けてしまえば、必ず彼の手は。
「お前の手はお前が守ろうとした人の血で汚れそうですよ?」
遠くない未来に訪れるであろう結果だ。
逃れようのない事実だ。
けれど、神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)は、それを阻む。
どれだけオブリビオンマシンが『クリノ・クロア』の心を歪め縛ろうとも、それをさせぬと最速で迫る者がいる。
それが己である。
振るう鎌剣の一撃がビームソードを躱し、『アマランサス・ラピート』に振るわれる。
その一撃は、ビームソードを跳ね飛ばし、宙に舞わす。返す刃が右腕を切り飛ばすように、赤い機体を吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【SPD】
※引き続き愛機搭乗
※アドリブ絡み歓迎
そっちも、か…
スクンク達とグルかは知らないけど
最初からキャラバンの有望株が狙いかな?
でも好きにはさせないし、パイロットも死なせないよ
『ブラスト・ラビット』はAI操縦で生存者防護
愛機は背部コンテナ内の21号【グリフィン】着装
両主腕を畳んで展開した両副腕で
『アーリー・バード(EB)』『プロキオン』保持
飛翔翼も合わさればヴァルキリー風♪
見た目通りの高速低高度滑空で包囲しつつ
射出したEBとビームに誘導弾の乱射で牽制
αへ光刃を通しビームランスを三叉に増幅
βでラピードに向けカタパルトを形成
γからの集束粒子を大盾と全身に纏ったら
機体丸ごと超音速射出、ブチ抜くよっ
オブリビオンマシンの狙い。
それは人々の虐殺などではなかったのかもしれない。小国家『シーヴァスリー』の思惑に乗るついでであったのかもしれない。
オブリビオンマシン『スクンク』とグルであったのかもしれないし、そうでなかったのかもしれない。
答えはでない。
けれど、今為すべきことを為さなければならない。
リーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)は即座に思考を切り替えた。
「そっちも、か……」
赤い機体『アマランサス・ラピート』が『亡命キャラバン』のトレーラーから立ち上がったのは、それが仕組まれたことであるからだろう。
『エース』と呼ばれる天才的なキャバリアパイロットとしての素養をオブリビオンマシンが欲していたのだ。
それを手に入れるために、これまでのことが計算づくであったのならば、それは悪辣なる手段であったことだろう。
「最初から、そっちが狙いか……でも、好きにはさせないし、パイロットも死なせないよ」
リーゼロッテは電脳で操作する『ブラスト・ラビット』をAI操縦でキャラバンの生存者の防護を務めさせる。
やるべきことは多い。
けれど、リーゼロッテならばやれないことはない。
「いくよ、『ナインス・ライン』!」
蒼い重装甲のキャバリアが己の周囲を翻弄するようにスラスターを全開にさせた『アマランサス・ラピート』へと迫る。
「重装甲の機体で、こちらの機動性を上回ろうたって!」
確かに重量級キャバリアである『ナインス・ライン』には、『アマランサス・ラピート』に迫ることはできないだろう。
だが、こちらにはユーベルコードがある。
「DA-21:GRIFFIN(グリフィン)――着装」
両腕を畳み込み、副腕でキャバリア用の大盾兼両刃剣と大型ビームランスを構える。それはいわば戦闘機に腕と足を取ってつけたようなフォルムであったことだろう。
重量級のキャバリアが空を飛ぶ。
慣性制御ビット群が飛び、反重力飛翔翼によって『ナインス・ライン』は飛行能力を得て、『アマランサス・ラピート』へと迫るのだ。
「何を――……まさかっ!」
『クリノ・クロア』が呻いた。
それは一瞬の出来事であった。彼が判断を誤ることがなければ、それは一瞬で勝負がついていたことだろう。
勝負が一撃で決まらなかったのは、リーゼロッテが劣っていたわけではない。
ましてや、オブリビオンマシンの性能差が運命を決定づけたわけでもない。そこにあったのは、『アマランサス・ラピート』のパイロットである『クリノ・クロア』の持つ運であったのかもしれない。
慣性制御ビットαがビームランスを通し、三叉に増幅させる。
それは巨大な光刃となって切っ先を『アマランサス・ラピート』に向ける。ビームソードでは受け止めることなどできはしないだろう。
けれど、それはスラスターを全開にした『アマランサス・ラピート』に躱すことができず、受け止めるしかないという選択肢を選ばせる。
「ビットβ! カタパルト形成! ビットγ、集束粒子展開!」
それは己自身を弾丸と為して打ち出すユーベルコード。
人の視界に音速で飛ぶ物体を捉えることはできないだろう。
空気の壁をぶち破る巨大な蒼き弾丸と化した『ナインス・ライン』が凄まじい速度で『射出』される。
それこそが彼女のユーベルコードにして必殺の一撃であった。
三叉の光刃と化した一撃が『アマランサス・ラピート』の右腕を吹き飛ばす。
「浅い……! けど、これで片腕は奪った!」
リーゼロッテは機体を制御し、ビット群と共に『アマランサス・ラピート』を追い詰める。
オブリビオンマシンが人の心を歪めるのならば、今こそが好機である。
畳み掛けるべく、リーゼロッテは『ナインス・ライン』と共に蒼き閃光となって戦場から『アマランサス・ラピート』を逃さぬように縦横無尽に飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
引き続きネルトリンゲンで行動。
別方向から高熱源体?
オブリビオンマシンか!
すっごい破壊への執念だね。離れてても伝わってくるよ。
でもパイロットはちょっと違うっぽい?
あれは、なにかを必死に守りたいような感じだね。
その気持ちを利用されちゃったかな。
それならパイロットさんも絶対助けないと!
その気持ちはきっと、一方通行ではないはずだもん。
【M.P.M.S】と【E,C,O,M,S】で移動を制限。
予測進路に【D.U.S.S】で衝撃波とメッセージをぶつけて、
機体の行動不能を狙おう。
「キャラバンは大丈夫だから機体から降りて。
あなたを待ってる人がいるでしょう!」
『フュンフ』さんにも説得、手伝ってもらえたら嬉しいな!
右腕を喪った赤いオブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』が肩部ミサイルポッドを展開する。
それは怒りに震えるようでも在り、全てを破壊せんとする意志を発露させるようであった。
「破壊しなければ、奪われないために! 俺は――!」
パイロットである『クリノ・クロア』は、その心の善性を利用されていた。
誰かを守りたいと願う心が、彼のキャバリアパイロットとしての天才的な才能を開花させたのだとしても、それを悪意が操る。
誰かをと願った心さえもオブリビオンマシンは歪めていく。
それがクロムキャバリアにおけるオブリビオンマシンのやり口だった。常に戦乱を。常に動乱を。
それを望む者がいる。
「別方向から高熱源体? オブリビオンマシンか!」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』の艦橋で反応を受けて、E.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)によって展開された八角形のユニットによってミサイルを防ぐ。
揺れる『ネルトリンゲン』。
ミサイルのロックオンが此れほどまでに正確無比であるとは思いもしなかった。
いくら『ネルトリンゲン』が堅牢なる装甲を持っていたとしても、高速で飛翔し飽和攻撃を加える『アマランサス・ラピート』は退けることはできないだろう。
「俺は、護るために……壊さないと、壊さないと、価値をなくしてしまわないと――!」
彼が守りたったものがなんであるか理緒は知らない。
けれど、その声を聞いて瞳をユーベルコードに輝かせる。破壊の執念は凄まじいものである。
けれど、それでもパイロットの言葉から違うものを彼女は感じ取っていた。
「離れていても伝わってくるよ……でも、パイロットはちょっと違うんだね」
誰かを守りたい。
誰かのために戦いたい。
その思いがわかるのだ。誰かのためにと願った力はいつだって、凄まじい力をもたらす。それをオブリビオンマシンに利用されているだけに過ぎないのだ。
「その気持ちを利用されたったんだね……それなら!」
なおさらのことである。
必ず助ける。助けて、その思いを正しい形で世界に示さなければならない。そうすることで戦乱しかない世界に『平和』という名の光をもたらすことができるのだから。
「どこにも行かせないよ! D.U.S.S、M.P.M.S……! こっちだって飽和攻撃はできるんだから!」
理緒の指示が飛び、『ネルトリンゲン』から放たれたミサイルランチャーの弾頭と指向性をもたせた超音波が衝撃波として放出される。
それらを『アマランサス・ラピート』が躱す。
衝撃波すらも見切って躱すのだ。けれど、理緒は諦めなかった。
「壊す……護る……! 俺はそのために、『コレ』に乗ったんだからっ! あの子だけは、幸せになるべきなんだ――!」
叫ぶ想いは、悲痛であった。
何がそこまで彼を突き動かすのだろうか。理緒はそれを知る。ああ、と息を吐き出すように理緒は胸に宿る思いを紡ぐ。
「その気持ちはきっと、一方通行ではないはずだもん。フュンフさん!」
その言葉と同時に地上から飛ぶ機体があった。
青い装甲。青き騎士がスラスターを噴かせ、赤いオブリビオンマシンに組み付く。
「これで――! ぐっ!」
しかし、オブリビオンマシンは片腕を損失していても尚、『熾盛』を振り払う。それほどまでの性能差なのだろう。
だが、『熾盛』は追いすがる。機体性能の差を埋めるのは、『エース』たる『フュンフ』の技量だった。
何かが違うと理緒は感じただろう。
つい先程までの『フュンフ』ではない。何かが弾けたように『フュンフ』は『熾盛』と共に『アマランサス・ラピート』へと追いすがるのだ。
「キャラバンは大丈夫だから機体から降りて!」
理緒が呼びかける。
声を紡ぐ。絶やしてはならないと感じたのだ。途絶えさせてはならない。『アマランサス・ラピート』を駆る『クリノ・クロア』の思いが正しいものから生まれたものであるのならば、その人の心の暖かさを断ち切ってはダメなのだ。
青と赤の二機が凄まじい空中戦を繰り広げる。
機体性能と技量を併せて互角。切り結ぶ光景は、一進一退であった。ならば、後は。後できることは、一つしかなかった。
そう、善性から発露した力を持つ者がいるのならば、悪意を持ってそれを操ろうとするものが居る。
それを断ち切ることができるのは人の想いだ。
「あなたを待っている人がいるでしょう!」
思い出してほしいと理緒は願った。
祈りであったかもしれない。きっと『クリノ・クロア』が胸に抱く者の顔があるだろう。
それに訴えるしかない。
理緒は信じる。人は一人では生きていけない。だからこそ、その胸に去来した誰かの元に還してあげたいと、紡いだ言葉が徐々に彼の心を縛り歪めるオブリビオンマシンの力を弱めていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎
De profundisに搭乗
しっかりしい!
あんたの覚悟は壊す為みたいな半端なもんやないやろ?!あんたが欲しいんは守るための力なんやろ?!
可能ならクリノに呼び掛け、彼自身の本来の意思を【鼓舞】
【結界術】で難民をカバー
【限界突破】で可及的速やかに【先制攻撃】、UC展開
敵UCを封じ、超重力で地に引きずり落としたら
【鎧無視】【マヒ攻撃】【フェイント】でコクピット以外を攻撃
立ち上がりかけたら【シールドバッシュ】で叩きつける
敵UC封じ切れないまたは敵攻撃には、ドローンとともに注意を惹きつけ【見切り】【盾受け】【武器受け】【オーラ防御】で対処
オブリビオン、あんたの好きには決してさせへん!
青き騎士のキャバリア『熾盛』と赤いオブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』は飛翔し、激突した。
まるで全盛を取り戻したかのような『熾盛』に叩き落された『アマランサス・ラピート』が立ち上がるが、すでに右腕は欠損している。
機体装甲のあちこちに傷跡が刻まれ、あちこちから火花を散らす。けれど、それでもオブリビオンマシンは咆哮をあげるようにジェネレーターを回すのだ。
「邪魔を、するな――! 俺は、あの子が生きる道を、作り上げるために」
作り上げるために何をするんだっけ、と『クリノ・クロア』は呆然とコクピットの中で呟いた。
何をしないといけなかったのだろう。わからない。違うよ、と甘やかな声が響いた。
壊さないといけないのだとささやく。
価値在るものを人は求める。それは力であったり知識であったり、モノであったりするだろう。
けれど、壊れて無価値になってしまえば、誰も奪わないだろう。だから、そう。
「壊さないと――」
その瞳に力が宿る。どうしようもないほどに歪められた心が、オブリビオンマシンのもたらす悪意によって操られていく。
飛翔しようとする『アマランサス・ラピート』に絡みつくのは超重力を纏う無数の鎖であった。
「しっかりしい!」
それは叱咤する声であった。
歪められた心を励ます言葉でもあったことだろう。ユーベルコードに瞳を輝かせた、クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)の言葉だった。
Gleipnir(グレイプニール)の虚空より湧き出た無数の鎖が『アマランサス・ラピート』の機体に絡みつき、動きを封じるのだ。
クルルは異形の銕の機神を駆る。
彼女の心には、悲嘆と怒り、恨みが充満していたことだろう。それはオブリビオンマシンに向ける感情ではなかった。
己の無力さに向ける感情であった。他ならぬ己自身に向けた感情に呼応する異形の銕の機神が唸りをあげ、大地を疾駆する。
機神が持つ鉾の如き大盾の一撃が『アマランサス・ラピート』の顔面に叩きつけられる。
凄まじい衝撃が『クリノ・クロア』を襲う。
けれど、意識は喪われない。拘束されているのに、絶妙な機体バランスでもって打ち込まれた打撃を逃したのだ。
「あんたの覚悟は壊すためみたいな半端なもんやないやろ?!」
クルルの叫びが迸る。
誰かのためにと願った力は、善性から発露したものであったことだろう。
オブリビオンマシンの持つ悪意に利用されていいものではない。いつだってそうだ。人の善性は悪意によって傷付けられてしまう。
それを防げなかった己への無力がクルルを戦いに駆り立てるのだ。
「壊すんだ! 壊さないと、奪われてしまうから――!」
機体フレームが軋むのも構わずに『アマランサス・ラピート』が拘束するユーベルコードの鎖を引きちぎり始める。
なんという力だろうか。
嘆くのならば、それが悪意によって翻弄されていることだろう。
だからこそ、クルルは湧き上がる激情と共に言葉を紡ぐのだ。
「あんたが欲しいんは守るための力なんやろ?!」
だから、そんなことは言ってはならないのだとクルルは渾身の力を込める。機神が応えるように唸る。
咆哮するように振り上げられた大盾の一撃が『アマランサス・ラピート』へと迫るが、それを機体をひねることに寄って躱す。
肩部のマイクロミサイルポッドが展開し、ミサイルが飛来するのを盾で受け止め、爆風に晒されながらもクルルは突き進む。
機体が軋む。
装甲が剥げ落ちる。
けれど、異形の銕の機神は止まらない。止まるつもりなどない。どれだけの傷を追うことになろうとも、関係ない。
パイロットの『クリノ・クロア』が壊そうとしているのは、きっと彼が守りたかったものだ。
それを壊すことによって完全にオブリビオンマシンのパーツにしようという目論見があるのだろう。
その悪辣を許せるわけがない。
「ああ、そうや! 許しておけるわけがあらへん!」
クルルは、真っ向から踏み込む。
ミサイルの爆風を物ともせずに、けれどまっすぐに『アマランサス・ラピート』へと迫る。大盾が砕けて喪われても尚、握りしめた拳がある。
「オブリビオン、あんたの好きには決してさせへん!」
裂帛の気合と共に完全に同調した異形の銕の機神とクルルの拳が『アマランサス・ラピート』へと叩きつけられ、その機体を盛大に吹き飛ばすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ソナタ・アーティライエ
誰も傷つけさせない、何物も壊させない
全てを守ってみせると、全力で示しながら訴え続けます
侵し歪めようとする悪しき意志の帳を貫いて、少年の心へ届くように
『アセナ』と同調し、更なる力を引き出して
悪しきものを閉じ込めるラビリンスをこの地に降ろします
いかに速度を誇ろうと、複雑に絡み合う迷路が行く手を阻み
刻々と入れ替わり続ける空間の繋がりが、標的を見失わせます
本来の願いを見失ってしまってしまっている貴方では
決して出口へたどり着くことは出来ません
どうか思い出してください……貴方が守りたいと願ったものを
そう訴えながら、同時に空間支配の権能の連続使用で
移動阻害と攻撃の封じ込めを全力で行い続けます
アドリブ歓迎です
叩きつけられた機神の拳の一撃が赤いオブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』の機体を吹き飛ばす。
すでに右腕を損失した機体は、それでも立ち上がる。
咆哮するように機体から唸り声をあげるのは、心歪められたパイロットである緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』のものであった。
「――邪魔を、邪魔を、邪魔ばかりする……! そんなにあの子が、憎いかよ。別の生き方を選んだっていいだろう! それができるんだ! なのに」
何故邪魔をする、と彼の瞳が狂気に染まっていく。
彼にとって、それだけが戦う理由だったのだろう。
戦うことしか知らなかった『ツェーン』が別の生き方を探すことこそが、彼の望みであったのだ。
もう十分に彼女は傷ついたはずだ。なのに、世界はこれ以上彼女が傷つかなければならないと、戦いを強いる。
「だから、この世界毎、壊すんだ!」
肩部マイクロミサイルポッドが展開し、無数に火線を引いてミサイルが乱舞する。
「誰も傷付けさせない、何物も壊させない。全てを護って見せます――!」
それは純然たる決意の発露であった。
ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は神騎『アセナ』と同調を果たし、さらなる力を引き出す。
「あなたの心は今、侵し歪めようとする悪しき意志の帳にとらわれている……それをわたしは貫きましょう。あなたの心に届くように」
彼女の瞳がユーベルコードに輝いていた。
マイクロミサイルポッドから放たれたミサイルが彼女に迫る。
けれど、それは突如として現れた天の回廊(ソウテンニサクイチリンノハナ)によって阻まれた。
戦場に生まれる迷路。
それは空間支配の権能による自在な物体の入れ替えと断絶をもたらすユーベルコードであった。
「迷える子羊、導く御手……如何に速度を誇ろうと、複雑に絡み合う迷路が行く手を阻みます……」
爆風が迷路の中に吹き荒れるが、それらがソナタに届くことはない。
次々と空間が入れ替わり、『アマランサス・ラピート』は戦うべき相手を見失うだろう。
「なんだ、これ……! 壊せ、ない……!」
『クリノ・クロア』は確かに天才的なキャバリアパイロットとしての才能を秘めていたのだろう。
それを開花させたのは、彼の善性であり、『ツェーン』を守りたいという願いであったのだ。けれど、それを利用しようとする悪意がある。
だからこそ、ソナタは決意を秘めた瞳をユーベルコードに輝かせるのだ。
「本来の願いを見失ってしまっている貴方では、決して出口へたどり着くことはできません」
ソナタは歌うように言葉を紡ぐ。
その想いの最初は温かいものであったはずだと。全てを壊すという黒い衝動ではなかったはずだと。
「どうか思い出してください……貴方が守りたいと願ったものを」
幾多の猟兵達が言葉を紡いだ。
ソナタも同じ気持ちだった。歪められた心が傷つくのを許せないと思う心があった。
その思いがソナタのユーベルコードの強度を増させるのだ。
彼女の全力が空間支配の権能を連続して行使させ、『アマランサス・ラピート』を封じ込め続ける。
「俺は――!」
「ええ、貴方は『クリノ・クロア』。誰かを守りたい、誰かの幸せを願うことのできる優しい人」
優しさ故に、付け入られたのだ。
人の善性はいつだって悪意に弱いものだ。
けれど、ソナタは。
けれど、と言い続ける。例え、悪意に傷ついたのだとしても。
「人の善性は脆く弱いものではないのです。貴方には、その力がある。ですから、どうか」
思い出して下さいと紡ぐ歌声が、『クリノ・クロア』の心を激しく揺さぶるだろう。
どこまで言ってもオブリビオンマシンの心を歪める力は強いだろう。
けれど、其れに負けない力がある。
信じる心だ。
ソナタは信じている。この戦場にいる猟兵達が願い、救うべき少年は、きっと己の足で再び大地を踏みしめて立つことができるであろうと――。
大成功
🔵🔵🔵
アンネリース・メスナー
アドリブ歓迎
防衛戦から掃討戦に移り変わろうというタイミングで、キャラバンから今更?
っ!あれはアマランサス・ラピートではないですか!
しかも、オブリビオンマシンですって!
故国製か敗戦時に流出した設計図からの複製機か知りませんが、馬鹿にするのも大概になさい!
このアンネリース・メスナーが、我が血と誇りにかけてその機体を破壊させていただきますわ!
同型機ですがわたくしの専用機はサイコセンサーの分、此方の方が反応性は上ですわ
そうでなくとも親衛隊仕様機をただラピートを飾り付けただけと思ってもらっては困りますわ!
狙いは正確でも、悪意と殺意に塗り潰されたその思念ではどこを狙っているか予告しているようなものですわ!
「っ! あれは『アマランサス・ラピートではないえすか!」
アンネリース・メスナー(元エリート親衛隊・f32593)は己の薄紫色の機体『アマランサス・ラピート』のコクピットの中に示されるモニターの表示に呻く。
高機動型エース専用機。
親衛隊所属のエングレービングが施されている己のキャバリアとは装備と装飾の違いはあれど、間違いなく己の帝国が誇るキャバリアであることは疑いようがない。
その性能の高さは言うまでもなく、その赤い『アマランサス・ラピート』を駆るパイロットの技量も凄まじいものであった。
「防衛戦から掃討戦に移り変わろうというタイミングでキャラバンから……しかも、オブリビオンマシンですって!」
数多の猟兵がオブリビオンマシンと化した『アマランサス・ラピート』を破壊しようと追いすがる。
けれど、ギリギリの所で逃げられてしまうのは猟兵たちが撃墜ではなくパイロットを救おうとしているからであろう。
それにパイロットの技量も凄まじいものであった。
「壊す……ダメだ、壊さなきゃあ、ダメなんだ……!」
今日はじめてキャバリアに乗ったであろう緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』は呻いていた。
猟兵たちの言葉に揺れ動く。それはオブリビオンマシンによって歪められた心が元に戻ろうとする有様であったのかもしれない。
アンネリースは一人憤慨していた。
己の祖国が敗戦した時に流出した設計図からの複製機かどうかはわからない。
けれど、己の愛した帝国が今オブリビオンマシンによって汚されていることだけ事実であった。
「馬鹿にするのも大概になさい! このアンネリース・メスナーが、我が血と埃にかけてその機体を破壊させていただきますわ!」
二機の『アマランサス・ラピート』が戦場を駆ける。
赤い『アマランサス・ラピート』は猟兵たちの猛攻に寄って、右腕を損失、装甲の所々にひしゃげた後や刻まれた痕が残っている。
頭部はフェイスガードがひしゃげているが、それでもな有り余る機動性と操縦技術によって十全なるアンネリースの『アマランサス・ラピート』と互角以上に競り合うのだ。
「同型機ですが、わたくしの専用機はサイコセンサーがありますわ!」
それは彼女のサイキックセンスを十全に引き出すための機構である。サイキッカーである彼女の超感覚や超直感でもって機体を補助する彼女の専用機たる所以である。
放たれるロングビームライフルの射線は完璧な狙いであった。
互いに互いの行動を予測する尋常ならざる駆け引きの中で、アンネリースは直感する。
「先読みするというのなら!」
「親衛隊仕様機を、ラピートを飾り付けただけだと思ってもらっては困りますわ!」
放たれたロングビームライフルの火線がシールドで防がれる。
押し込むように機体が肉薄し、ロングビームライフルの砲身を跳ね上げるように赤い『アマランサス・ラピート』のガードを上げさせるのだ。
「見えるっ、そこですわ!」
ガードをあげられた赤い『アマランサス・ラピート』は反転するように見せかけてアンダーフレームでの蹴撃を行うことはもうわかっていた。
未来予知染みた直感は、アンネリースの操縦技術でもって答えを導き出す。
「狙いは正確でも、悪意と殺意に塗りつぶされたその思念では何処を狙っているか予告しているようなものですわ!」
放たれたアンダーフレームの蹴撃をアンネリースは機体を横にロールするようにひねって躱す。
だが、この距離では攻撃ができないはず。
けれど、アンネリースは確信していた。シールドに内蔵されていたナイトソードを遠心力のままに引き抜き、剣の柄でもって赤い『アマランサス・ラピート』の頭部を斬り飛ばす。
それは帝国に背いた者を斬刑に処すように、痛烈なる一撃となってオブリビオンマシンへと加えられるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・ゴッドハンド
「よくわからないけどー、あのろぼっとさんと、ぷろれすごっこしてあそべばいいのかなー?わーい!しゃぅとあそぼー!」
【パワーフード】の蜂蜜をぺろぺろ大食いして、チカラモリモリ元気100倍の肉体改造!
【極めて強靭な体】をした妖精なのでビームライフルが直撃しても無傷でへっちゃらです!
【超怪力】で怪力を発揮してキャバリアを片手で掴み、妖精の羽で飛翔しながら周囲へ激しく叩きつけます!最後はジャイアントスイングでぐるぐる回して投げ飛ばし、一撃必殺の【超怪力】パンチで装甲を粉砕します!
「ひっさーつぅ!」
「しゃぅおっとぉ〜……!」
「ぱぁ〜んちっ!!」
そして勝利のぴーす!
「えっへん!しゃぅのかちだよーっ♪」
赤い『アマランサス・ラピート』の頭部がナイトソードの一撃に寄って宙を舞う。
それは人で言えば生命を失うことと同義であった。
けれど、5m級の戦術兵器であるキャバリア、オブリビオンマシンにとってはそうではない。メインカメラがやられただけに過ぎず、間髪入れずにサブカメラに切り替えた『クリノ・クロア』は叫ぶ。
「たかが、頭をやられたくらいで! このまま、やられるものかよ!」
そのプレッシャーは正しく『エース』そのものであった。
惜しむらくは、それが悪意に寄って心を歪められたものであることだろう。
誰かを守りたいと願う心をオブリビオンマシンは悪意でもって操る。
唆し、たぶらかし、己の傀儡へと為すためにオブリビオンマシンは人の心を歪め、世界に戦乱の火種を撒き散らすのだ。
「よくわからないけどー、あのろぼっとさんと、ぷろれすごっこしてあそべばいいのかなー? わーい! しゃぅとあそぼー!」
パワーフードの蜂蜜をたっぷりと手に持つようにして小さな口の中に押し込んだフェアリーのシャルロット・ゴッドハンド(全裸幼精の力持ち×力任せによるただの拳伝承者・f32042)は、その体躯故に誰にも気が付かれる事なく戦場に降り立っていた。
彼女の体躯は20cmにも満たない。
その彼女が5m級の戦術兵器に向かうのは、あまりにも現実的ではなかった。
けれど、彼女は猟兵である。
生命の埒外にある存在である。ならばこそ、彼女の肉体は物理を越えて、幻想そのものへと昇華するのだ。
オブリビオンマシンは理解していた。
どれだけ羽蟲のように小さい生命であっても、猟兵である以上己の脅威になると。だからこそ、赤い『アマランサス・ラピート』のコクピットのモニターに脅威として彼女の姿を望遠で示したのだ。
「人……いや、なんだ、あの小ささは……けど、撃てっていうのか、あれを……!」
心歪められた『クリノ・クロア』はロングビームライフルの銃口を向け、ためらいなくトリガーを引いた。
火線が放たれ、20cmの的に向かって長距離射撃を行う凄まじい技量は、他の誰にも真似できぬ超絶為る『エース』の技量であったことだろう。
けれど、ビームの火線がシャルロットに直撃しても彼女の姿は焦げ目一つついていなかった。
「しゃぅはぜんぜんへいきへっちゃらだよー!」
ぐるんぐるんと腕を回しながらシャルロットは空を舞う。
ふわりと触れる『アマランサス・ラピート』のロングビームライフルの砲身を掴んだ瞬間、『クリノ・クロア』は驚嘆した。
機体が動かないのだ。
コントロールの不調かと思ったが違う。アラートがコクピットの中に忙しなく明滅する。
それは何故か。
そう、シャルロットの理の外にあるほどの怪力でもって抑え込んでいるのだ。
「ひっさーつぅ!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
それは理を越えて世界に力を示すユーベルコード。
「しゃぅおっとぉ~……!」
舌足らずの声が響き渡る。
それはどうしようもないほどに場違いな声であったけれど、『クリノ・クロア』は戦慄した。機体が浮いているのだ。スラスターを吹かせたわけでもない。
だというのに機体が浮かぶ。
「違う、これは……持ち上げられている……!」
ジャイアントスイングするように持ち上げ、『アマランサス・ラピート』を背中から大地に叩きつける。
凄まじ衝撃が周囲に走り、その力の凄まじさを物語る。
けれど、シャルロットはそれでは終わらない。
「ぱぁ~んちっ!!」
大地に叩きつけられた『アマランサス・ラピート』へと叩きつけられる拳が赤い装甲を砕いて破片を飛び散らせる。
そのさなかにシャルロットは勝利のピースサインを突きつけるのだ。
あくまで彼女にとってこれは戦いではないのだろう。プロレスごっこでしかない。
けれど、オブリビオンマシンにとっては悪夢のように、彼女の小さき身体は誇らしげに笑顔のまま見下ろすのだ。
「えっへん! しゃぅのかちだよーっ♪」
彼女の勝利宣言は荒野に高らかに掲げられ、平和を象徴するピースサインをきらめかせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
オブリビオン、オブリビオン!!
また、そうやって歪める!
ディスポーザブル01をアマランサスへ向き直させ、電磁音波の範囲攻撃。
ホーミングレーザーを展開、敵機の機動を制限し、戦闘知識及び視力瞬間思考力で軌道を把握
その力は、価値を守る為の意志だ。壊す為のものじゃ、ない!
だから!『ディスポーザブル』!!
反応速度及びスピードを増大、早業で機体を操縦し、BXフォースサーベルで武器受け、怪力でビームソードを弾き
、体勢を崩させてカウンター、
闘争心によって限界突破した機動力、超反応でサーベルを斬り返し、
変形で刀身の尺を操作、目算を狂わせ、コックピットを避けて敵機を断つ。
オブリビオンを、壊せ…!
頭部を失い、右腕を損壊し、赤い装甲を砕かれても尚オブリビオンマシンは戦場を駆ける。
どれだけ破壊されたとしても、心歪められたパイロットに撤退の文字はない。
破壊しなければと願う心だけが彼の、緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』の心を占めていた。
それはどうしようもないほどに歪められていたことだろう。
どれだけ純然たる善性からの発露であったとしても、悪意がそれを許さないのだ。離さない。必ずや、この『エース』を己のものにすると雁字搦めにしてしまっているのだ。
「邪魔を、っ、じゃまをするな! 俺は壊して、壊して、彼女を――!」
戦うだけの世界から開放しなければならないのだと『クリノ・クロア』は咆哮する。
それはいっそ哀れであったことだろう。
けれど、それ以上に朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の胸には怒りがこみ上げていた。
「オブリビオン、オブリビオン!! また、そうやって歪める!」
重装甲ディスポーザブル01の炉心が燃える。
それは彼女の感情に呼応するようであり、目の前のオブリビオンマシンを決して許してはおけぬという憤怒からくる強大なる力の発露でもあったことだろう。
胸部が展開し、指向性を持つ電磁音波を炸裂させる。
キューブが回転し、凄まじい音波が『アマランサス・ラピート』を襲う。
見えぬはずの攻撃をスラスターを全開にすることに寄って効果範囲から逃れるのだ。
その技量は凄まじいものであった。
見えぬはずの攻撃すらも躱す『エース』の技量。それをオブリビオンマシンが欲する理由は一つしかない。
戦いをもたらすためだ。動乱を、戦乱を、混乱を。乱すことしか考えていないからこそ、人の心さえも簡単に歪めることができる。それがどうにも許せない。怒りが燃え尽きることはないのだ。
「その力は、価値を守るための意志だ。壊すためのものじゃ、ない!」
ホーミングレーザーを展開し、『アマランサス・ラピート』の機動を狭めていく。
例え、捕らえられなくても、行動の範囲を絞ることができるのならば、この『ディスポーザブル01』であっても、高機動型のキャバリアを捉えることは可能であった。
「いいや! 壊すんだ! この世界の理を、世界のルールを! そうしなければ、戦うことしかできないと言った彼女が、別の生き方を見つけられないじゃないか!」
吠える『クリノ・クロア』の声が小枝子の耳を打つ。
純然たる善意。
きっと誰かのためにと発現した圧倒的な才能なのだろう。けれど、それを操るものがいる。己のものにしようとする悪意がある。
「だから!『ディスポーザブル』!!」
小枝子は叫んだ。この生命を壊せと、恐怖心を打ち消し、コワレロコワレロコワレロと体の内側から叫ぶ衝動のままに戦場を猛スピードで駆け抜けるのだ。
それは重装甲のキャバリアとは思えぬ速度であった。
ビームソードを抜き払った『アマランサス・ラピート』が肉薄する。激突する『ディスポーザブル』のフォースサーベルとビームソードが力の奔流を周囲に撒き散らす。
「壊す! 壊す! 壊すのは――!」
自分だと小枝子は叫んだ。
だから『クリノ・クロア』には何一つ壊させはしないと。
とりかえしのつかないことにはさせはしないと。
自分のようには成り果てることのないようにと、願う心が破壊の心を上回るのだ。それは己の限界を超えた瞬間であった。押し込む機体が『アマランサス・ラピート』の体勢を突き崩す。
弾き飛ばした『アマランサス・ラピート』がよろめいた瞬間、フォースサーベルが振るわれる。
「その武装の間合いはわかって――!?」
そう、武装の間合いはわかっている。
けれど、小枝子は出力を上げたフォースサーベルの刀身を伸ばすことができるのだ。どれだけの超反応を持ってしても躱すことの出来ぬ、一撃。
それは『アマランサス・ラピート』のアンダーフレームの脚部を一閃する。
「オブリビオンを、壊せ……!」
一念のみが小枝子を支配していた。
壊すことは己がすることだ。だから、その後に生まれる再生を為すべき者達を守る。それが己の使命だと。それが己の為さしめるべき宿業だというように小枝子は限界を越えた一撃を、オブリビオンマシンへと叩き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
引き続きPシリカに乗って参加
おっとーまさかの強制闇落ちイベントとは!
こーゆーのは許しちゃいけないと思うんですよ
そー思いませんシリカ?
だからちょっとだけ無茶に付き合ってくださいね
遠距離型のアマランサスに近接型のPシリカは不利
でも懐まで踏み込めばこちらの有利
ファントムクォーツユニットを起動して幻影展開
そこから【VR忍術】影隠れの術で幻影の影に潜みます
狙いはロングビームライフル発射後です
幻影を囮にしてライフルを撃たせた後
その一瞬の隙にエンジェライトスラスター起動!
次弾装填までの間に
一気に懐まで踏み込んでかーらーのー!
「手数こそ正義!参ります!」
【疾風怒濤】で一気に削りますよ!
※アドリブ連携OK
赤い『アマランサス・ラピート』はすでに満身創痍であった。
頭部は破壊され、右腕部は損失。そして今、アンダーフレームの根幹である脚部をも喪っている。
けれど、スラスターを吹かせることで滞空しつづけ、足掻くように猟兵たちからの攻撃を躱し続ける姿は、あまりにも醜いものであった。
そうまでして『エース』足り得る才能を持つものを己のものにしたいのかと、オブリビオンマシンの底知れぬ悪意を猟兵たちは見ただろう。
「おっとーまさかの強制闇落ちイベントとは! こーゆーのは許しちゃいけないと思うんですよ。そー思いませんシリカ?」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の言葉に『ファントム・シリカ』のアバターである『シリカ』がうなずく。
人の善性を弄ぶ悪意を許しておいてはいけない。
クロムキャバリアにおいてオブリビオンマシンが齎す悪意はいつだって戦乱の火種だ。
それを撒き散らし、芽吹かせることこそがオブリビオンマシンの欲望そのものなのだ。兵器の必要ない世界など彼等は欲していない。
生命がどれだけ喪われようとも、続く動乱が必要なのだ。
「だから、ちょっとだけ無茶に付き合ってくださいね」
ロングビームライフルの火線が『ファントム・シリカ』に迫る。
それを加速した機体で躱しながら、サージェは無茶を敢行する。接近戦型の『ファントム・シリカ』では、この間合は不利そのものである。
けれど、その不利を覆すためには踏み込まなければならない。
ファントムクォーツユニットが展開され、幻影と共にサージェは駆ける。影隠れの術とでも言うべきであろうか。
幻影の影に紛れながら『ファントム・シリカ』の機体が戦場を駆け抜ける。
「デコイ……! それがなんだっていうんだ! 視えているぞ、俺には!」
『アマランサス・ラピート』のパイロットである『クリノ・クロア』が叫ぶ。
確かに彼の瞳にはサージェの駆る『ファントム・シリカ』の姿が視えているのだろう。正確無比なる射撃が徐々にサージェを追い詰めていく。
幻影の影に紛れていても、その幻影毎『ファントム・シリカ』へと火線を放つのだ。
「シリカ、エンジェライトスラスター軌道!」
『おねえちゃん、機体が保たない!』
『シリカ』が警告する。けれど、サージェはかぶりを振る。だって無茶をするっていったもの。
微笑むサージェに『シリカ』はもう苦笑いするしかない。止めたってやるつもりなのだ。
『ファントム・シリカ』の背面に一対の羽のように展開されたスラスター光。
それは一瞬天使の輪のように光帯を発生させ、その残影を残して『ファントム・シリカ』を異次元の加速へといざなうのだ。
「――ッ!? 消え、た!?」
「残念、こちらです。そして、一気に懐まで踏み込んでかーらーのー! 手数こそ正義! 参ります!」
構えたフローライトダガーの淡い緑色の粒子ビームの軌跡が疾風怒濤(クリティカルアサシン)の如く『アマランサス・ラピート』へと放たれる。
その残光は幾条もの軌跡を描き、『アマランサス・ラピート』を圧倒し、防ぐことのできぬ怒涛の連撃となって、その機体装甲を削り取るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗
あれは……ツェーン様
よくぞご無事で…
フュンフ様、残存トレーラーの護衛をお頼みします
私はあの機体を
盾で防御しつつ推力移動ダッシュで距離を詰め
お気を確かに
何を護る為にその機体に乗り込んだのか…見失ってはなりません!
『覚悟を捻じ曲げ人を操り弄び…その所業、鋼の同類として制裁させて頂きます』(←ハッキングでマシンに直接語り掛け)
限界迎えた盾捨てUC開始
●操縦技量で『隙』演出、無造作に見える駆動で攻撃を躱しやすく誘導
紙一重で連射を躱しながら近づきライフル蹴り飛ばし
その操り糸…断ち切らせて頂きましょう
剣の突きを装い盾を上段に構えさえ
サブアームの殴打で掬い上げ弾き飛ばし
本命の諸手の剣で追撃
「クロア! そんな風に自分を使ってはダメだよ!」
爆風が荒ぶ荒野に猟兵たちと赤いオブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』の激戦が繰り広げられる。
それはあまりにも熾烈な戦いであったことだろう。
『エース』としての技量を開花させた『クリノ・クロア』であるからこそ、頭部を失い右腕を損壊し、アンダーフレーム破壊されても尚飛ぶことができたのだ。
『ツェーン』と呼ばれた少女は突風を受けながらも叫ぶ。
その声が彼届くことがないとわかっていても、叫ばずにはいられなかったのだ。装甲の破片が飛び散り、あわや彼女に激突すると思った瞬間、彼女の眼前にキャバリアの大盾が大地に突き立てられ、その身を守るのだ。
「あれは……ツェーン様。よくぞご無事で……」
間一髪の所で彼女を救ったトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は『ロシナンテⅣ』と共に大地に降り立った『熾盛』に通信を送る。
「フュンフ様、残存トレーラーと彼女の護衛をお頼みします」
「わかりました。けれど、あの機体は……悪意に呑まれている。打ち合ってわかります。技量だけなら、僕よりも完全に上です」
「……ええ、私はあの機体を」
そう、あの機体を破壊しなければならない。
フュンフの言うこともわかる。油断の出来ぬ相手であることも。けれど、己の中の騎士道精神が言うのだ。炉心が燃え、あの善性を操る悪意を討てと叫ぶのだ。
「ならば、御伽の騎士のようにはできずとも。私の為すべきことを――!」
スラスターを噴かせ、構えた大盾で放たれるロングビームライフルの火線を防ぎながら、『ロシナンテⅣ』が飛ぶ。
距離を詰めるためにロングビームライフルの火線は受け止めなければならない。
「お気を確かに。何を護る為にその機体に乗り込んだのか……見失ってはなりません!」
大盾が保たない。
火線の威力は凄まじいのもあるが、『クリノ・クロア』の技量故であろうか。こちらを近づけさせぬ射撃は見事と言う他なかった。
けれど、その距離を詰めるのが猟兵としての技量である。
大盾が犠牲になっても構わず距離を詰め、『アマランサス・ラピート』と組み合う『ロシナンテⅣ』。
ビームソードを逆手に持った『アマランサス・ラピート』が突き立てるのもかまわず、トリテレイアはオブリビオンマシンにハッキングを仕掛ける。
「覚悟を捻じ曲げ、人を操り弄び……その所業、鋼の同類として制裁させて頂きます」
マシンに言葉が通じるのかわからない。
けれど、そこにある悪には言葉を届かせる。己がやらなければならないことが明確になっているからこそ、トリテレイアは迷わない。
スラスターの噴射に寄って回転した『アマランサス・ラピート』が『ロシナンテⅣ』を振り払う。
機体制御の差であろう。けれど、振り払われても尚、トリテレイアは『アマランサス・ラピート』へと肉薄する。
放たれる火線を超常の域にまで達した予測演算と戦闘技術の粋によって、躱し続けるのだ。
『そのつもりはないよ』
それは確かに聞こえた言葉であった。甘やかな言葉。ともすれば、己の背後から聞こえるようでも在り、目の前から放たれたような言葉でもあった。もしくは隣から囁かれたような言葉であった。
けれど、トリテレイアはそれを振り払う。
今は惑わされるつもりなどない。例え、己と同類の鋼鉄に宿る意志であったのだとしても、その悪意が出る幕ではないのだ。
「その操り糸……断ち切らせて頂きましょう」
一瞬の交錯。
それは『ロシナンテⅣ』とトリテレイアだからこそできる芸当であった。紙一重で射撃を躱しながら、振り抜かれる脚部の蹴撃がロングビームライフルの砲身を蹴り上げる。
「この、っ! 俺を……! 止めるかよ!」
「いいえ、止めることはありません。貴方の瞳に映る未来が、そんなものではないと知らしめるだけです」
剣を突き出す。
それはフェイントであり、誘いでもあったのだ。剣の一撃を躱し、振りかぶられたビームソードの一撃をトリテレイアは見切っていた。サブアームが伸び、放たれたビームソードを受け止める。
溶解したサブアームが爆発を起こした瞬間、構えた盾がビームソードをはじき飛ばす。
「貴方はまだ道程の最中。ならばこそ、今は悪意に目を曇らされているだけに過ぎません。貴方の『エース』たる輝きは、そんなものでは陰ることないと――!」
知らしめるのだとトリテレイアは本命の剣を『アマランサス・ラピート』に振るう。
斬撃は袈裟懸けに振るわれ、コクピットハッチすれすれに装甲を引き裂き、『アマランサス・ラピート』へと痛烈な打撃を与えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
弟子のルクスと
「ほほう、ここがクロムキャバリアという世界だったか」(レーションもぐもぐ
聞けばこのキャラバンの者たちは『フィアレーゲン』とかいう国の国民とのこと。
我の名前が入った国か。そうかー、我、その国の王女様だったかー。
む、なんだ、ルクス、そのツッコみたくてウズウズしてる感じの目は?
「我の名を冠する国の国民は、我の国民も同じ!」(違います
その国民たちに害をなそうという巨大ゴーレム・キャバリアは、許すわけにはいかんな!
「ゆけ、ルクス!
我が呪文でサポートしよう!」
我はルクスに向かって放たれる爆弾に向かって【ミゼリコルディア・スパーダ】の魔術を放つとしよう。
その程度、すべて相殺してくれるわ!
ルクス・アルブス
フィア師匠と
師匠みつけましたよー。もう逃がしませんからね!
それに、なんてもの食べてるんですか!
専属料理人たるわたしがきたからには、そんなものぽいです!
って、なんですかこの状況?
ゴーレムっぽいのがたくさん壊れてますけど、
これ、また師匠の仕業ですか?(ジト目)
え?王女?
そんな、オーバー(ピー)な王女とか……。
のじゃロリならなんでもいけるわけじゃないんですよ?
し、師匠が自分以外の人のために?
マジですか!明日は晴れ時々流星群ですか!?
あ、わたしがやるんですね。なら納得です、
魔法少女に変身してピアノを構えたら、
師匠のサポートを受けつつ、【カンパネラ】で一撃です!
地面の大穴に落っこちたら、追撃もありかな!
新たな世界を知ることは猟兵にとって、見聞を広めることになる。
旅先こそが己の棲家だというフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)にとって、この戦乱が渦巻く世界、クロムキャバリアはどのような世界に映っただろうか。
「ほほう、ここがクロムキャバリアという世界だったか」
亡命キャラバンから受け取ったレーションをもぐもぐと頬張りながら、戦いの光景を見つめる。
なんて脳天気なと思われるかもしれないが、腹が減っては戦はできぬという言葉もある。何より魔術を行使するとフィアはとてもお腹がすくのだ。
だから、レーションの味にも不平不満を言うことなく、ハイ次というように人々に手を伸ばすのだ。
え、まだ食べるの? と亡命キャラバンの人々は思ったが助けてくれたしなぁ、という想いの手前突っ込むことはできない。
聞けば彼等は『フィアレーゲン』と呼ばれる小国家からの亡命者であるという。自分の名前の響きが入った国名にフィアはとてもご満悦である。
「そっかー、我、その国の王女様じゃったかー」
そんな事実はない。
けれど、誰も突っ込めないのだ。いや、一人だけ居る。この場において突っ込む事のできる人材が。
「師匠みつけましたよー。もう逃しませんからね! それに、なんてもの食べてるんですか! 専属料理人たるわたしが来たからには、そんなものぽいえす!」
ルクス・アルブス(魔女に憧れる魔法少女・f32689)であった。
いつの間にか追いついて来ていたのだろう。
彼女はレーションボリボリしているフィアを目ざとく見つけ、今の状況をすっかり把握しきれていない。
ゴーレムっぽいのがたくさん壊れているなぁというくらいのものである。
彼女もまたクロムキャバリアという世界が初めてであったのだろう。もしかしなくても、これはまた師匠の仕業であろうとジト目でルクスはフィアを見つめる。
「馬鹿なことを言うな、ルクス。我、『フィアレーゲン』の王女じゃぞ。その突っ込みたくてウズウズしている感じの目は」
ばーん! とフィアは胸を張る。
その自信満々な態度はどこから来るのだろうか。どういう感情で言っているのだろう。ちょっと知りたい。
「我の名を冠する国の国民は、我の国民も同じ!」
「え? 王女? そんなオーバー(ピー)な王女とか……のじゃロリならなんでもいけるわけじゃないんですよ?」
「たわけ! そんなんじゃないわい!」
最早お約束なのかなと思うほどの師弟漫才。
けれど、戦いは続いている。猟兵が優勢出会ったとしても、油断はならないのだ。
「こやつらを護る。彼等に害をなそうという巨大ゴーレム・キャバリアは許すわけにはいかんのだ!」
そんなフィアの態度にルクスは緊迫感が走る。
今までの何よりもルクスは衝撃を受けていた。これまで感じたのことのないフィアの真剣な表情。
おふざけも冗談もないキリッとした顔。え、ほんとに? ほんとに本気なんです? とルクスはコレでは自分が空気読めないみたいじゃないかと思いつつ、よろめく。
「し、師匠が自分以外の人のために? マジですか! 明日は晴れ時々流星群ですか!?」
最早天変地異である。
「ゆけ、ルクス! 我が呪文でサポートしよう!」
此方へと放たれる『アマランサス・ラピート』の火線が二人を襲う。
サポートしようというか、あ、なるほどとルクスは得心がいく。なんだ自分がやるんだ、と。なら納得である。
いやな納得の仕方もあったものであるが、それがこの師弟の間があらなのだろう。
「ミゼリコルディア・スパーダ――! ミサイルのことは気にするな、我の魔術で全て相殺してくれるわ!」
フィアのユーベルコードによって生み出された魔法剣が飛翔し、ミサイルを次々と撃ち落とし、空に爆発の火球を生み出していく。
そこへ飛ぶのは、魔法少女の姿へと変身したルクスであった。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「重さは威力です!」
持ち上げたグランドピアノが、まさに鈍器となって5m級戦術兵器へと叩きつけられる。
それは、La Campanella(ラ・カンパネラ)と呼ばれるユーベルコードであったが、まさに理不尽の極みであった。
鋼鉄の巨人を打ち倒す魔法少女。
その概念がクロムキャバリアの人々に根付いているかどうかはともかくとして、超常なる存在、ルクスの打撃は『アマランサス・ラピート』を強かに打ち据え、満身創痍の機体をさらに築けさせ、大地に大穴を穿つ程の一撃で持って打ち倒すのだ。
「これで終わりじゃありませんよ! 珍しく師匠が人助けしてるんです! ここで――!」
追撃である。
再び打ち下ろされたグランドピアノの単純で重い一撃は『アマランサス・ラピート』を更に大地へとめり込ませるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(引き続きツィルニトラに搭乗)
…人の心の隙間を突くことだけは本当に上手いなあのマシン…
…そこに護る手段は存在しないよ…手荒になるけど引きずり下ろす…
マイクロミサイルか…ロックオンが正確なら…
…重奏強化術式【エコー】で強化した障壁で防げば良い…
その機体の性能は高いだろうが…ただそれだけだ…
【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…数百の剣の軌道を操って…
…残ったマイクロミサイルを切り裂きながらアマランサス・ラピートへと殺到させよう…
…逃げ道を塞ぐように軌道を変更…凍結を含めて四肢やスラスターを攻撃して行動不能に陥らせてからハッキングを開始…強制的にクロアを脱出させよう…
…後はマシンを破壊するだけだね…
大地へと叩き込まれた赤いオブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』がスラスターを吹かせながら、穿たれた大穴より飛び出す。
頭部は喪われ、右腕は損失している。さらにはアンダーフレームの脚部すらも喪っても尚、戦意を喪失しないのはパイロットである『クリノ・クロア』が心を歪められているからであろう。
善性から発露した誰かを助けたい、守りたいという願いはオブリビオンマシンによって歪められている。
『エース』たる天才的な技量すらも、オブリビオンマシンにとって一パーツに過ぎないのだ。『クリノ・クロア』というパーツを手に入れるためだけにオブリビオンマシンは一つの小国家を滅ぼした。
それはパイロットである彼の心に深い傷をつけることでもあり、同時につけ入る隙を生みだすための布石に過ぎなかったのだろう。
「……人の心の隙間を突くことだけは本当に上手いな、あのマシン……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は試作型術式騎兵『ツィルニトラ』を駆り、赤いオブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』を追う。
肩部マイクロミサイルポッドが展開され、無数のミサイルが『ツィルニトラ』へと弾幕を張る。
その全ての照準が狙いすましたものであり、メンカルは己と『ツィルニトラ』が誘い込まれていることを自覚していた。
「誘い込む射撃……何を狙っている……?」
「邪魔を、邪魔ばかりをする! 俺は護るっ、護るって決めた、から……だから、これに乗った……のに」
なのに何故壊したいと願うのだろうか。
『クリノ・クロア』は自問自答する。
今はもう歪められた心で考えることもできないだろう。
けれど、多くの猟兵達がそうしたように彼の心に語りかける言葉があった。
それは間違いだと。
善性から発した想いであっても、悪意はそれを手繰るのだ。操り、歪め、己のものとしようとする。それがオブリビオンマシンの思惑だと。
「――……そこに護る手段は存在しないよ……」
メンカルはつぶやく。
どれだけの善性を持っていたとしても、それを食い物にする悪意があることを彼女は知っている。
だからこそ、彼女は容赦をしない。
「手荒になるけど引きずり下ろす……」
狙いが正確なのならば、ミサイルの挙動を読み取ることだってできる。もしも、メンカルが『クリノ・クロア』であるのならば、機体の関節を狙うだろう。
あちらはこちらを撃破する必要などないのだ。逃げの一手を講じればいい。だからこそ、最小限の消耗でこの場を切り抜けようとするだろう。
重奏強化術式『エコー』で強化された障壁とマイクロミサイルが激突し、火球を空に生み出していく。
その爆風の中を真っ直ぐに『ツィルニトラ』が走る。
「……その機体性能は高いだろうが……ただそれだけだ。停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
メンカルにとって、それは恐れるべきものではない。
彼女が恐れるとすれば、『クリノ・クロア』の超絶為る操縦技術と、彼の善性が発露する想いの力だけであったことだろう。
思いがけぬ力を発揮するのが人であるのならば、そこに戦場のゆらぎだって介在するだろう。
だが、今は違う。
「空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)――数百の魔剣の軌跡を読み解く事もできるかも知れない。けれど――」
魔剣が飛翔し、マイクロミサイルを切り裂きながら『アマランサス・ラピート』へと殺到する。
あの機体状況で躱す、躱し続ける。けれど、徐々に逃げ道を塞ぐように魔剣が空を舞うのだ。
「こ、の――! 俺を、止めることなんて、するな! だって、壊さないと! 壊さないと、彼女が前に進めないんだ!」
「それは違う」
メンカルは『アマランサス・ラピート』の装甲に突き立てられた魔剣を介在し、ハッキングする。
コクピットブロックだけを強制排出させるつもりなのだ。機構が働き、ボトルが弾ける。
射出されようとするコクピットを『アマランサス・ラピート』が抑え込むようにして防ぐのだ。
「邪魔を……やはりマシンを破壊しないと、止まらないか……」
メンカルは歯噛みした。
そう、違うのだ。『クリノ・クロア』はもうわかっているはずだ。歪められた心の中で、叫びたがっている言葉があるはずなのだ。
「彼女に生きてほしいと願ったのならば、その隣で『クリノ・クロア』、君も一緒に歩まなければならない。『ツェーン』はそれを望んでいるって、もうわかっているはずだよ……」
メンカルは、人の心の輝きを信じる。
どれだけ歪められても、その心が求めるものは何時だって正しいことだ。
だから、メンカルは魔剣を操り、コクピットブロックの射出を止めた『アマランサス・ラピート』の腕部へと剣の一撃を見舞うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
良いじゃない良いじゃない
物語の始まりとしてはまあ、60点くらいかな
ここから先は加点式どんな物語になるかは彼等次第だね
だから無粋なその機体には退場願おうかな
ここから先は不条理の時間
通りすがりが、ちょっとだけ助けてあげよう
●
【断章・機神召喚〈極限熱量〉】を起動
引き続いて召喚した腕を『念動力』で飛ばし自分の動きをトレース
敵の射撃は私を狙うなら『オーラ防御』で軌道を逸らして回避
腕を狙うなら手に持つ剣で『武器受け』
私と腕で敵を挟むように陣取って私は左剣で『斬撃波』を放ち牽制しながら右手の攻撃チャンスを窺おう
チャンスが来たら斬撃を喰らわせ蒼炎で機体を燃やし尽くす!
パイロットの彼助けに行った方が良いのかな?
強制射出されそうになったコクピットブロックを抑え込んだオブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』は咆哮する。
これは己のものであると叫ぶようなジェネレーターの唸り声は、まるでそれが生物であるかのようにさえ思わせたことだろう。
心を歪め、パイロットの思想すらも捻じ曲げる。
破壊を求めさせ、平穏を望む心さえも闘争へと駆り立てるのだ。それはあまりにも悪辣なるやり口であると言わざるを得ないだろう。
「なんのために、俺は。だって、俺は」
ただ、あの子に笑ってほしかっただけなんだと『クリノ・クロア』は呟いた。
歪められても尚、その心にあったのは笑うことすらできなくなった『ツェーン』の笑顔を欲するものだけだった。
それは善性と呼ぶにふさわしいものであったことだろう。
「良いじゃない良いじゃない。物語の始まりとしてはまあ、60点くらいかな」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は咆哮する『アマランサス・ラピート』の前に立ちふさがり、呟いた。
そう、これは二人の物語だ。
『ツェーン』と『クリノ・クロア』。
二人の少年少女の物語。ボーイ・ミーツ・ガールなんて甘酸っぱいことを平気で言えるほど子供ではないけれど。
けれど、それでも彼等の物語は此処からだ。
「ここから先は加点式。どんな物語になるのかは彼等次第だね」
だから、と玲はその瞳をユーベルコードに輝かせる。
大人のおせっかいといわれたっていい。
だって、それが大人の役目だ。子供らの物語に大人はいつだって厄介な存在でしかない。けれど、彼等の物語を見届けたいと願う心がある。
「無粋なその機体には退場願おうかな。ここから先は不条理の時間」
「――ッ!!!!!」
オブリビオンマシンが吠えた。
それは目の前に立ち塞がる超常の存在に苛立つようでもあったし、怯えるようでもあった。
「偽書・焔神継続起動。断章・機神召喚の章、深層領域閲覧。システム起動」
此処に顕現するは、断章・機神召喚〈極限熱量〉(フラグメント・マキナアーム・インフェルノ)である。
己の2倍を超える機械腕が蒼炎を立ち上らせ、世界に示すのだ。
オブリビオンマシンという異物を。
ボーイ・ミーツ・ガールの物語を前に介入する大人げない存在を排除せよと蒼炎でもって照らすのだ。
「通りすがりが、ちょっとだけ助けてあげよう」
玲は己の念動力を発露させる。
ユーベルコードの輝きとともに、蒼炎が機械腕と共に世界に燃える。彼女の動きをトレースするフラグメント・マキナアームが宙に舞う。
火線が撃ち落とさんと放たれるも、玲の瞳はすでに『アマランサス・ラピート』の動きを見切っていた。
そう、本来の『クリノ・クロア』の技量ならば、絶対にしない動きだ。けれど、すでに彼の心は歪められても尚、誰かのためにと願う心を猟兵たちの言葉によって増幅されている。
だから、その力は十全ではない。
機体はすでに満身創痍。ならばこそ、玲は敵ではないとさえ感じていた。
抜き払った模造神器の斬撃波が『アマランサス・ラピート』を翻弄する。左右から挟み込むように玲の放つ一撃とフラグメント・マキナアームの放つ斬撃が『アマランサス・ラピート』を逃さないのだ。
「どうして、俺は、こんな、こんなに――壊したいのに、あの子の笑顔が」
見たいと願ってしまうのだとコクピットの中で叫ぶ『クリノ・クロア』がいる。
玲は言うまでもないと微笑んでいた。
それを言うのは野暮だと思っていたし、何故『クリノ・クロア』が潜在的に持っていたキャバリアのパイロットとしての技量を此処で開花させたのかも言うつもりはなかった。
けれど、言ったのだ。少しだけ助けてあげようって。
「――簡単なことだよ。君の心が叫びたがっているだけ。少し一歩前に意識を踏み出せば、簡単なことなんだよ。世界って、こんなにも単純なんだって、きっとわかっているはず」
放たれた蒼炎が『アマランサス・ラピート』の赤い装甲を巻き込んで溶かしていく。
玲が念動力によって飛翔し、上段からフラグメント・マキナアームと共に蒼き炎を噴出させながら斬撃の一撃を『アマランサス・ラピート』へと叩き込む。
その一撃は一直線にコクピットハッチを切り裂き、薄皮一枚でもって装甲を排するのだ。
「なら、後は一歩を踏み出すだけさ、少年」
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
承知した、クロア殿。なれば思う存分来るといい。
我々は力づくになろうとも貴方を止めるまでだ。
拙者、愛久山清綱……荒ぶる心を斬り祓わん!
■闘
戦う前に心を高め【光神】形態に突入。
周りに止められようとも、生身で真正面から斬りかかるぞ。
『空薙・剛』を構え、スラスターを吹かし向かってくる
敵機に対し、此方も全力の【ダッシュ】でぶつかっていく。
相手との距離を詰めたら剣の軌道を【見切り】つつ、
【残像】を伴う急加速で敵の一撃を躱しながら懐に入る。
接近に成功したら突起した脚部を利用して細くなっている
『胴体』まで【ジャンプ】で登り、鉄鋼をも断つ一瞬の
一太刀で其の身を横一線に【切断】するのだ!
※アドリブ歓迎・不採用可
赤いオブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』のコクピットハッチが切り裂かれ、そこに座す『クリノ・クロア』の姿が見える。
彼は涙していた。
もう何もわからないのだろう。歪められた心が、善性から発露した想いが、めちゃくちゃにかき混ぜられてしまっているのだ。
猟兵たちの言葉が、きっと彼の本来の心を歪みから引き上げるようにしたのだろう。
その結果だ。
だからこそ、此処までオブリビオンマシンを追い込むことができたのだ。
「俺は、だって……ただ、こわ、したい、んだ。世界を、この、理を、戦い続けないと行けない世界なんて間違っているって、壊して、示さないと――!」
その叫びは、世界に轟く。
理不尽ばかりの人生。
ただ、少女の笑顔すらも奪い去る世界を壊したいと願った心は、ただの祈りでしかなかったはずなのだ。
「承知した、クロア殿。なれば思う存分来るといい。我々は力づくになろうとも貴方を止めるまでだ」
愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は、その瞳をユーベルコードに輝かせながら、猛禽の翼を広げる。
そこにあったのは、純然たる戦意であった。
精神を極限まで研ぎ澄ますことによって光神形態へと変身する。それは光神(コウジン)と呼ぶに相応しき輝きであり、その踏み込みの速度は機動性で勝る『アマランサス・ラピート』をも上回るものであった。
一瞬で踏み込んだ先に見えるのは、半壊していると言っても過言ではないオブリビオンマシン。
頭部は喪われ、右腕は損壊している。
下半身は膝から下は両断され、スラスターの噴射で持って姿勢を保っている状態であろう。
けれど、それでもスラスターが生きている限りはウェイトを捨てた状態のように凄まじい加速で飛ぶのだ。
「どれだけまわりに止められようとも、己の信念を持つ者には、力が宿る。拙者、愛久山清綱……荒ぶる心を斬り祓わん!」
大太刀を構え、互いに一歩も譲らぬ速度で正面からぶつかる。
放たれたビームソードの光刃は巨大であり、人など容易く蒸発せしめるだろう。
けれど光神形態へと至った清綱を蒸発させる事はできない。
放たれたビームソードの軌跡を完全に見切り、残像伴う急加速で懐へと飛び込むのだ。
「なら、これを信念と呼ばずになんて呼べばいいんだ! 俺は、彼女が生きてくれればそれで――!」
「人はそれを妄執と呼ぶのでござろう。善性の発露を悪意が歪める。オブリビオンマシンに限ったことではござらんが」
オブリビオンマシンによって歪められた心。
ならばこそ、その歪みこそを己が断ち切らねばならぬ。
「高機動型と言ったか……ならばこそ、その胴をつなぐ鉄鋼こそ断ち切らねばならぬ。光の如く……」
放つ斬撃は大太刀の一撃。
それは光神形態に至った清綱の放つ裂帛の気合と共に振り下ろされ、一撃のもとに『アマランサス・ラピート』の胴を両断せしめるのだ。
まさに空を薙ぐが如く。
その剣閃の一撃を持って、清綱は戦いを制する。
例え、オブリビオンマシンがどれだけの心を歪めようとも、『クリノ・クロア』の心の中にある善性までも悪性に染めることはできないのだ。
己のためではなく他者のためにこそ力を振るうものには、何物触れ得ぬ美しさがある。
だからこそ、猟兵たちは彼を救わんとする。
その思いを受けて尚、歪めようとするのならば何度でも立ち塞がるだろう。
彼等の道行の先にこそ、『平和』が訪れることを信じるのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
キャラバンの一人が乗り込んだか…
本っ…当、何処にでも転がってるものっすね悪意ってのは…!
キャラバン及び救援人員、今から俺はあの赤いのと話をつけに行ってきます。
伝言も受け付けますが、直接伝えなきゃ伝わらねえ事もあるでしょう。話をしたい者がいれば応答どうぞ。『アズライト』の対象に加えるんで。
【サイキック・ロード】、竜巻でミサイルの妨害を行いつつ<推力移動>で敵機へ接近。
<ハッキング>で搭乗者の思考へ繋いで聞きましょう。
「帰る場所は何処だ」と。
…ああ、すんなりと応じてくれるとは思ってない。拒絶される可能性の方が高い。
でも他の誰でもないあんたの答えが聞けるまで繰り返してやる…!
胴を両断されたオブリビオンマシン『アマランサス・ラピート』が大地に失墜する。
頭部は喪われ、右腕部も喪った。残った肩部マイクロミサイルポッドが展開するも、ミサイルの残存数が少ないのだろう。
これまで放たれたミサイルとは比較にならぬほどに弱々しいものであったが、それでもなおオブリビオンマシンは抵抗を続ける。
「ああ……わからない。何もわからない。どうして、俺はこんなにも壊したいと思ったのか、それさえも、もう」
わからないと猟兵たちの言葉とオブリビオンマシンの心歪める力によって『クリノ・クロア』はうなだれる。
コクピットの中にはすでに甘やかにささやく声の気配もない。
あるのは歪められた善性だけだ。
心がねじれ、どうしようもない虚ろだけが彼の心を否定し続ける。何のために生きてきたのか。それさえもわからなくなってしまっていた。
けれど、戦うこと。破壊することだけが止められない。トリガーを引く指が虚しい音を立てるばかりであった。
「本っ……当、何処にでも転がってるものっすね。悪意ってのは……!」
安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は見た。
己の駆るキャバリア、『カサンドラ』が増幅するESP能力と情報処理能力を持つ脳が予測した未来を。
それは『クリノ・クロア』が喪われる未来。
彼の心は散り散りに砕け散ってしまうだろう。オブリビオンマシンの悪意は底知れないものだった。
彼の善性を引き金に顕在したキャバリアパイロットとしての天才的な才能は、悪意に寄って誘発されたものだ。
それをオブリビオンマシンはパーツとして欲していた。
手に入ればよし。
けれど、手に入らないのであれば壊してしまえばいい。猟兵たちには助けられなかったという傷跡が。
世界には争いを止めうる『エース』を損失したという事実だけが残る。
穣は歯噛みした。
己の見せる未来予測は、どうしようもない未来だ。
だからこそ、一度は諦めたのだ。どうしようもないと。
「けれど――!」
善性だって捨てたものではない。例えか細い光であったとしても。穣はもう諦めたりなんかしないのだ。
「キャラバン及び救援人員に通達」
カサンドラの持つ広域ネットワーク『アズライト』が展開する。
それは思念でのやり取りを共有する事が可能であるESP能力由来の機構であった。穣はその力を全開にする。
「今から俺はあの赤いのと話をつけに言ってきます。伝言も受け付けますが、直接伝えなきゃ伝わらねぇこともあるでしょう」
話したい者がいるのならば応答をと穣は告げて、カサンドラと共に『アマランサス・ラピート』へと走る。
その瞳がユーベルコードに輝き、サイキックの竜巻を放つ。
ミサイルなど、サイキックの竜巻の前には無意味でる。オブリビオンマシンなど、悪意などここから居なくなってしまえばいい。
此処に、そんな存在は必要ないのだと吹き荒れるサイキックの竜巻が『アマランサス・ラピート』に取り付く悪意を吹き飛ばし、サイキック・ロードを開く。
「邪魔をするな! お前みたいなやつは此処に居ちゃいけねぇんすよ!」
渾身のサイキックを込めて穣は悪意をサイキック・ロードの先へと吹き飛ばす。機体が『アマランサス・ラピート』を掴み、喪われた頭部から優先でハッキングを開始する。
それはコクピットに繋がる『クリノ・クロア』の思考へと己のESP能力で持って仲介するためであった。
「あんたの『帰る場所』は何処だ!」
機体と機体がぶつかってフレームが軋む。
抵抗するのはわかっていた。すんなりと応じてくれるなんて思っていない。拒絶されるであろうなんてことはわかっている。
硬く閉ざした過ちを侵した魂が、簡単に救えるなんて思っても居ない。
そして、同時に己が見た未来予測の世界だって変わることはない。それが容易なことではないことは穣が一番わかっている。
だからこそ、穣は信じなければならない。同じアンサーヒューマン同士が通じ合ったように、あの『フュンフ』と互いを一瞬の内に理解できたように。
「――多くを壊してしまったから。あの子が生きているだけでよかった。どうしたって、俺は……それだけが、いや……笑って居てほしかったんだ。戦い以外の生き方を、見つけるには難しいかもしれないって思ったから」
だから、世界の枠組みを壊そうとしていたのだろう。
世界を壊せば、理は崩れる。
ルールも、社会も、国も関係ない。一個の個人として生きていくしかなくなる。
そうすれば、もう彼女は誰にも縛られることはないのだと。
『そうだ。もう君はみんなの中には戻れない。君は破壊の化身。終わることのない闘争に身を投じようではないか』
甘やかな声を聞いた。
穣は、その声を聞いた瞬間叫んでいた。
「お前は黙ってろ――!」
再びユーベルコードが輝く。それはサイキック・ロードを再び開き、舞い戻った悪意を押し返す。
人の心の傷跡にずかずかと踏み込んでくる悪意を穣は吹き飛ばす。
「他の誰でもない。あんたの答えが聞けるまでくり返してやる……!」
声を聞け、今のあんたにはこんなにも多くの声が手を掴んで引き上げようとしているのだと、穣は叫ぶ。
それは声ならぬ声の集合体であったことだろう。
カサンドラの肩を掴むキャバリア『熾盛』の手があった。そこには少女の姿があった。『ツェーン』と呼ばれた少女の姿。
「私、わらっているよ。『クロア』。君が教えてくれたんだよ。違う生き方だってできるんだって、だから」
だから、戻ってこいと穣はサイキックの力を振り絞り、切り裂かれた『アマランサス・ラピート』のコクピットへ手をのばす。
そのマニュピレーターの上に『クリノ・クロア』が立った瞬間、オブリビオンマシンは敗北を悟ったように、拓かれたサイキック・ロードの向こう側へと消し飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『難民キャンプ慰問』
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POW : 運ばれた援助物資を配る。
SPD : 暖かい料理をふるまう。
WIZ : 歌や芸などを披露する。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オブリビオンマシンはサイキック・ロードの向こう側へと消え去っていった。
すでに完全に破壊されたことを示すように救い出された緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』は『ツェーン』と呼ばれた少女に支えられるようにして、猟兵達によって救われたのだ。
荒野に戦いの痕は残ったけれど、『フィアレーゲン』から亡命してきたキャラバンのものたちへの被害は最小限に食い止められたと言っても過言ではないだろう。
「……でも、これらかですね」
『熾盛』のパイロットであった『フュンフ・ラーズグリーズ』がつぶやく。
『グリプ5』からの救援部隊が遅れて到着していたが、『フィアレーゲン』からの亡命者たちを即座に『グリプ5』へと受け入れることはできない。
何故なら、つい先日まで小国家『グリプ5』と『フィアレーゲン』は対立していたのだから。
簡単に、そうですかと入国させることは難しいだろう。
例え、受け入れたとしても国民感情がそれを許さない。となれば、彼等の身の安全を保証できるように動かなければならないのだ。
「ひとまず、郊外に難民キャンプとして設営を許可しましょう。人の摩擦、軋轢、行き違い……そういったものを時間をかけてでもほぐしていかなければなりません」
救援部隊の『ツヴァイ・ラーズグリーズ』がうなずいた。
全てが丸く収まったわけではない。
けれど、当面の生活だけは保証できる。少なくとも『グリプ5』の郊外での生活だけはできる物資を提供できるはずだ。
そんな彼等のやり取りを受けて猟兵たちは『フィアレーゲン』からの亡命者たちに何ができるだろうか。
何もかもが思惑通りに進むことはない。
けれど、誰かを思うことのできる者が生きていくためには、為さねばならないことがあるのだ。
僅かな平穏であっても、それが仮初めであったとしても、今日という日を乗り越えていかねばならない。
人生という旅路は、これからも続くのだから――。
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
亡命者には敬語
テントの設営を手伝います
俺はまだまだ元気はあるので任せて下さい、皆さんはあんな事があった後ですしゆっくり休んでください
POWで判定
俺はテントの設営を手伝ったり、物資を運ぶ手伝いをする【怪力】【気配り】【優しさ】
キャバリアは無茶させすぎたから休ませる、扱いが下手なせいで申し訳ない
他にも疲れた人がいるなら作業を変わる
あれだけの事があったんだから今だけは休んでも罰は当たらないはずだ
戦いは終わった。
けれど、人々にとっての戦いはこれからである。
いつだってそうだけれど、人の営みは終わりは来ない。明日が続く限り、いつまででも連綿と紡がれていかなければならないものなのだ。
「テントの設営を手伝います。俺はまだまだ元気はあるので任せてください」
そういったのは、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)であった。
小国家『グリプ5』から亡命キャラバンを救援に来た部隊の指揮を取っていた『ツヴァイ・ラーズグリーズ』は、彼の申し出を受け入れ、礼を述べた。
「ありがとうございます。未だ彼等は『グリプ5』へと受け入れることはできませんが、郊外であれば難民キャンプとして機能することはできるでしょう。直に物資も届きます」
陣頭指揮を取っている彼女の姿は、かつてオブリビオンマシンに歪められた面影はない。
どちらかと言えば、今の彼女のほうが活き活きとしているようにも目に写ったことだろう。
自分たちも、と亡命キャラバンの者たちがルイスの後ろにやってくるがルイスは頭を振った。
「皆さんはあんな事があった後ですし、ゆっくり休んでください」
盾の決意(タテノケツイ)がルイスにはあった。
オブリビオンマシンという敵は猟兵である自分たちが打ち払うことができる。
けれど、これからの生活を支えていくのは、彼等自身だ。
「少しでも明日のために」
ルイスは生きる者を守りたいと願うデッドマンである。それが『生者の盾』たる己の役目であると胸に刻んでいる。
だからこそ、自分ができることを為そうとするのだ。
テントの設営をっつだったり、物資を運ぶ姿は難民キャンプにおいてはよく見かけられる光景であったことだろう。
今回の戦いもまた厳しいものだった。
キャバリアである『銀の銃兵』もまた無茶をさせすぎたようだった。少し休ませた方がよいだろうと思うと同時に、扱いが下手で申し訳ないという気持ちも生まれてくる。
それは仕方のないことだと、もしも『銀の銃兵』に意志が在ったのならば言うだろう。
何のために生まれてきたのかを知り、何を為さねばならぬかを知る者は幸運である。
何をして、何のために生きるのかを理解できぬ者には人生という旅路を進む指針がないのと同じだ。そういう意味では、死して尚、死を乗り越えたデッドマンであるルイスは幸運であると言えるのかも知れない。
「あれだけの事があったんだから、今だけは休んでも罰は当たらないはずだ。ゆっくり休んでくれ」
ルイスはあちこちでいろいろな人々の仕事を奪っていく。
例え、それが僅かな時間の平穏であったとしても。
今はただ休んでいて欲しい。
それがルイスの偽らざる思いであった。
「俺にできることは少ない。けれど、この一つ一つの積み重ねが、今を生きる人々の糧に、基礎になっていけば、それでいい」
ルイスは暮れてゆく太陽が荒野の地平線に沈む姿を見て、人の営みについて、思いを馳せる。
この時間こそがきっと、何時の日か当然の、変わらぬ日常として訪れることを願わずには居られなかったのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
オブリビオンマシンなら壊せばすむけど、人の心は難しいわね。
アヤメと羅睺を呼び出して。
アヤメ、物資の配給を手伝ってきて。
羅睺は、何か出来るかしら? かつてはメガリスを生み出していたというあなた。もしかしてプラントを作ったり出来る?
……さすがに、本気で言ったんじゃないわよ?
そうねぇ、給水場へ通じる配水設備を整備して、調理器具類を一式、各家庭に一つずつ。今できるのはそれくらいかしら。
後は、難民の代表者がいれば話がしやすいけれど――ツェーン、やれそう?
今度は過たず、人々を導く役目。
『エース』の肩書きがなくてもクリノ・クロアだっけ? 彼がいればやっていけるんじゃないかな?
羅睺、幸運を呼ぶアイテム作って。
破壊を齎す化身。
それがオブリビオンマシンである。彼等は人の心を歪め世界に戦乱の火種を撒き散らす。
戦禍はいつだって弱い者を食い散らかすように顎を広げる。
小国家『フィアレーゲン』が滅んだように、弱った者から飲み込んでいくのだ。それが自然の摂理であるというのならば、人の営みはそれに抗うものである。
「オブリビオンマシンなら壊せば済むけど、人の心は難しいわね」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はユーベルコードに寄って呼び出された式神に言葉を投げかけた。
彼等にとって、この世界はどのような世界に映っただろうか。
戦乱ばかりが続く世界に在って、人々の心は荒むばかりだ。これがオブリビオンマシンが為す人の心を歪める行いと何が違うのだろう。
「アヤメ、物資の配給を手伝ってきて」
式神アヤメに支持を出し、ゆかりは考える。羅?召喚(ラゴウショウカン)によって呼び出された式神は何ができるだろうか。嘗ては呪われし秘宝メガリスを生み出していたという式神ならば、もしかしたのならばプラントも作り出せるのではないかという淡い期待があった。
いや、期待していたわけではない。
「……流石に、本気で言ったんじゃないわよ?」
プラントは小国家にとって要である。プラントが半日停止するだけで、小国家のインフラは壊滅的な打撃を受ける。
嘗ての第二次憂国学徒兵がそうしたように、プラントとはクロムキャバリアにおいて人々の生命線であり、国力のバロメーターである。
それが生み出せるのであれば、争いも起きないだろう。無理であるとわかっているからこそ、それを求めてしまうのもまた人の性であろう。
「そうねぇ、給水場へ通じる配水設備を整備して、調理器具を一式。各家庭に一つずつ。今できるのはそれくらいかしら」
難しいことだ。
人々が何を求め、何をするかはこれからのことである。
けれど、それを全て先回りして揃えておくことなどできないだろう。問題はその都度解決していくしかない。
問題が起こってから解決策を打ち出す。
それは後手に回ることであったが、仕方のないことであった。
「後は……」
そう、難民キャンプの代表者がいれば話がしやすいけれど、とゆかりは思いつく。
ぱっと『フィアレーゲン』からの亡命者たちの中でまとめ役をできそうなのは、嘗て国のトップに立っていた『ツェーン』ぐらいだろう。
やれるだろうかと、ゆかりは考える。
けれど、ゆかりは考えるよりも先に信じたのだ。
あの子ならばできるだろうと。
「今度は過たず、人々を導く役目。『エース』の肩書がなくても、『クリノ・クロア』だっけ? 彼がいればやっていけるんじゃない?」
「……わたし、が」
『ツェーン』は未だ肩身狭いように指をすり合わせていた。
自信がないのだろうけれど、『クリノ・クロア』の名を出せば顔が明るくなるのは、条件反射のようなものなのだろう。
彼が彼女の隣にいれば、何も難しくないようにゆかりは思えたのだ。
だから、ゆかりは幸運のお守りを手渡す。式神に伝えて作ってもらっていた首飾りであった。
「これは? こんなもの、私」
もらえないと、『ツェーン』は手で制する。けれど、ゆかりは押し付けるようにして手渡して笑うのだ。
「いいのよ。まずは形から入ったって。誰も貴方に強要しない。できると思った時に、あなたが立てばいい。だってあなたの隣にはもういるでしょう?」
あなたが信じる人が。そして、あなたを信じる人がとゆかりは微笑む。
いつだってそうだ。
人は支え合って生きていく。
一人では生きていけない。だから、己ではない誰かを欲するのだ。それはいつだって、新しい何かを始める時、支えになる。
もうひとりでトップに立たなくていいのだと、告げるように幸運のお守りが荒野に煌めくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
難民キャンプから、か。そこはしかたのないことかな。
空母の物資や機材はできる限り提供していこう。
これは『フュンフ』さんたちに渡せばいいとして、まずは水かな。
地層をスキャンして、キャンプの近くの水脈から、
井戸を掘ったり水を引いたりして、清潔な水を引いてこよう。
それから【モーター・プリパラタ】を使って、
使えそうなもの、直せるものがあったら整えていくよ。
キャンプだけでなく『グリプ5』のものも、ね
特に『熾盛』は、『真のエース』になった『フュンフ』さんのために、
しっかりとオーバーホールしよう。
ゲームの『熾盛』に負けない性能にしてみせるよ!
いつかいっしょに暮らせるようになったとき、その象徴になるように、ね!
小国家『フィアレーゲン』からの亡命者たちが『グリプ5』へとたどり着くことができたのは、ひとえに猟兵たちの活躍があったからだ。
彼等の戦いがなければ、全ての生命が喪われていたことだろう。
それこそオブリビオンマシンの思惑通りに事が運んでいたのだ。
『クリノ・クロア』という『エース』がオブリビオンマシンの傀儡と成り果てる事態は、なんとしても避けなければならなかった。
けれど、彼等の道程はまだ遠いものであった。
「難民キャンプから、か。そこはしかたのないことかな」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』から物資や資材をできる限り提供しつつ、呟いた。
もともと『グリプ5』と『フィアレーゲン』は敵対していた小国家だ。
本来であれば、単騎と言えど救援が駆けつける事自体が特異なことなのだ。
けれど、これは大きな一歩だ。
いつかわだかまりが解ける日が来る。きっと、と理緒はそう信じるのだ。
「物資の提供、ありがとうございます。何度も助けて頂いた上に、こんなに……」
『フュンフ・ラーズグリーズ』が理緒の元にやってきて頭を下げる。
そんなにかしこまらなくたっていいのに、と理緒は微笑んでいたが、しっかりと頭を下げる彼には好感がもてたかもしれない。
「いいんだよ。まずは水が必要だからね。近くの地層をスキャンした感じ、キャンプの近くの水脈があるみたい」
だから、と理緒はフュンフにデータを提示する。
確かに『グリプ5』郊外の荒野に水脈が存在している。これならば、難民キャンプにも水道施設を配備することは難しくないかもしれない。
「やっぱり清潔な水は必要だからね。井戸を掘ったり引いたりする機材はこっちで提供するから……ああ、それから」
理緒は思い出したようにフュンフに告げる。
彼が『ネルトリンゲン』に顔を出してくれてよかった。事後承諾にならなくて済む身体。
何を、とフュンフは小首をかしげる。
そういうところは年相応の青年と少年の間の年頃だと、理緒は微笑ましかった。
「使えそうなもの、直せるものは整えて置かないとね。キャンプだけじゃなくって、『グリプ5』のものも、ね」
彼女は意味ありげに、フュンフの乗っていた『熾盛』を見やる。
キャバリア『熾盛』――それは100年戦争の折に伝説的なエースの乗機として知られている。理緒はある電脳空間での戦いで、そのデータで持って再現された『熾盛』と闘っている。
凄まじい戦闘であったことは言うまでもない。
だからこそ、今の『熾盛』が骨董品レベルであることを顧みて、整備を申し出たのだ。
「いま整えてあげるからね!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
モーター・プリパラタ。それは彼女のユーベルコードであり、整備に没頭している間、機材に対する修理や調整などの能力が通常の12倍にも膨れ上がるのだ。
即座に機体のログを開示し、データを精査していく。
現れたのは、100年戦争当初のデータから、今日に至るまでの戦闘データだ。
「これ、って……」
理緒は開示されたデータを展開する。
『熾盛』A(エンジェル)型、B(ブラスト)型、C(クリッパー)型、D(ディレクション)型、E(エミッション)型――そして、F(フォーミュラ)型。それが『熾盛』の辿った機体の変遷である。
彼女が見覚えのあった『熾盛』はE型であった。
今、目の前にある『熾盛』はF型。
最終的な形に至った型であることは伺い知れるが、装備の殆どが損失している状態なのだろう。だからこそ、ビームブレイドと機銃という標準的な装備しか搭載してなかったのだ。
ゲームの『熾盛』に負けない性能にしてみせる、と理緒は『熾盛』に蓄積されていたデータを総ざらいにしていく。
次々と機体の制御系に意図的に掛けられたリミッターをアンロック状態へと理緒は移行していく。
機体事態の整備はすぐに終わる。
「……思ったより、旧式では、ない? リミッターで旧式レベルに落とされてる?」
不可解であったことだろう。
何故そんなことをしていたのか。理由はわからない。けれど、理緒は確信していた。
そう、いつか『グリプ5』と『フィアレーゲン』の人々がわだかまりを捨てるにせよ、解くにせよ。
「いつか一緒に暮らせるようになった時、その象徴になって、ね!」
理緒は祈りを込めて、完全な機体状態へと戻った『熾盛』を見上げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ソナタ・アーティライエ
被害が皆無とはいかずとも、なんとか事態が落ち着いて
ようやく張りつめていた気を緩められました
助けてくれた事への感謝と労わりの後
虚空へと去る『アセナ』を見送ってからキャンプへと赴きます
救援物資の提供は受けられそうと聞いて安心する部分もありますけれど
かつては敵対していた国同士
今後の生活が決して楽なものでない事は容易に想像がつきます
何か助けになりたいと伸ばす、この小さな手の届く範囲は限られていて
もっと先へ、もっと多くをと望み願い届ける歌声に
癒しと一時の安らかな眠りを
アドリブ歓迎です
戦いの痕はいつだって人の心に、大地に傷跡を残すものである。
それを結果として受け止めることが出てきても、許容することができるのとでは別の問題である。
戦いの歴史が紡がれてきたのであれば、クロムキャバリアにおいて異なる小国家同士の衝突は絶えぬものであったことだろう。
小国家『グリプ5』と小国家『フィアレーゲン』が敵対していたように、生きる人々同士に直接の因果がなくとも己が属するコミュニティの名前によって人々は容易に憎悪を向けるものである。
誰かではなく、何が、が問題であることは言うまでもない。
「被害が皆無とはいかずとも、なんとか事態が落ち着いて、ようやく……」
張り詰めていた気を緩めることができたのは、神騎『アセナ』の掌から大地に降り立ったソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)であった。
虚空へと去っていく『アセナ』。
その姿を見送る。助けてくれたことへの感謝と労りを持ってソナタは、その機体の背中を見送る。
自分の想いに応えてくれる機体。
その力のおかげで救えることができた生命があることを今は喜ぶべきであったことだろう。
「……これから彼等はどうなるのでしょう」
ソナタの心配事はそれだけであった。
小国家『フィアレーゲン』から亡命してきた難民たち。
彼等の道行は容易なものではないだろう。それは理解できる。嘗ては敵対していた国同士である。
本来ならば、感情的な衝突が生まれることもあっただろう。
けれど、救援部隊を指揮していた『ツヴァイ・ラーズグリーズ』は違うようだった。彼女は一先ずの緩衝材として難民キャンプを『グリプ5』の郊外に設立することを提案してくれていた。
救援物資の提供を受けられるということを聞いてソナタは胸をなでおろしていた。
「……ですが、今後の生活が決して楽なものではない事は……」
簡単に想像できる。
慣れぬ荒野での生活。これまでとは違う環境。いつだってそうだけれど、人と人とのわだかまりは簡単に解けぬものである。
けれど、何か助けになりたいと伸ばす、ソナタの小さな手。
その手が届く範囲は限られている。
「もっと先へ、もっと多くをと望み願うことはやめられないのです」
自分に今何ができるだろうか。
自分は何をしたいだろうか。傷つき、心身ともに疲れ切った彼等に何がしてあげられるだろうか。
思い悩む瞳は揺れる。
戦乱だけが続く世界にあって、足りぬものはなんだろうか。
「ありがとう。優しいあなた。戦わずとも生命を救うことができるんですね」
ソナタに言葉が贈られた。
それは誰の言葉であったのかソナタには振り返ってみても、亡命者たちでごった返し難民キャンプの人混みに紛れて消えてわからなくなってしまったけれど。
十分な言葉であったことだろう。
だから、ソナタは歌うのだ。
『平和』知らぬ者たちに、『歌』という概念が薄れてしまっていたのだとしても、彼女の歌声に共感することはできるだろう。
教わるのではなく、感じること。
言葉は力ではない。
けれど、感じることが出来たのならば、それは明日を望む活力となるだろう。
ソナタは微笑みとともに、癒やしと一時の安らかな眠りを、と願い歌声を難民キャンプに響かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
UC常時起動
(銀髪銀眼の少女出現)
中々しんどそうな状況ですね
「そりゃ亡命だしねー」
【情報収集・医術】
取り合えず怪我人の有無を確認しましょうか
多少の応急処置とかはできますからね
なので治療
【料理】
この間いった世界で酢豚のレシピ教えて貰いましたので作って炊き出し
折角なのでツェーンに会いますか
よぅこんにちは
元気そうで何よりです
あー…(なんて言いつつどう声をかけるべきか悩みつつ
取り合えずあの後どうなったんですか
メルシー
「こんなかわいい子が乗ってたんだねー☆」(頬擦りしつつ髪の毛すんすんしようとする機神少女。一応炊き出しとか手伝ったりしているのであった
【念動力】で野営の材料とか運んだり手伝うよー
戦いが終わって、全てが元通りになることはない。
戦乱が続くクロムキャバリアの世界であれば尚更のことだろう。
次の戦いが亡命者たちには待っている。明日を生き抜くという戦いだ。彼等は確かに今回命からがら逃げおおせることができた。
けれど、これから続く戦いは、ともすれば戦うことよりも難しいことであったかもしれない。
「中々しんどそうな状況ですね」
そういったのは、銀髪銀瞳の少女であった。
それはユーベルコードに寄ってキャバリア『メルクリウス』が変身した姿である。彼女は、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)と共に難民キャンプへと降り立っていた。
「そりゃ亡命だしねー」
敵対していた小国家の人間がすぐに手を取り合うことなどできようはずもない。
それは理解できる。
けれど、それでもと思わずにはいられないのが人間である。感情が人と人とのつながりを拒むことがあるのならば、感情こそが理屈を超えるものでもあるからだ。
「とりあえず、怪我人の有無を確認しましょうか。多少の応急処置とかはできますからね」
後は炊き出しとかも必要だな、とカシムが思った瞬間、メルクリウスが変じた銀髪銀眼の少女が駆け出していく。
忙しないことでは在るが、そのアクティヴな行動力は見習うべきだろう。
以前訪れた世界で教えてもらった酢豚のレシピの出番だー! と軽快に駆け出していく姿は、戦いの後だというのに一抹の不安さえも吹き飛ばすような明るさであった。
救援物資が届けられているようであるし、食材は限られているだろうけれど、そこはうまくアレンジするだろう。
「それにしても……怪我人はやはり多いですね」
カシムは難民キャンプに次々と運ばれてくる亡命者たちの怪我の具合を見つつ、処置を続ける。
思った以上に多い。
けれど、生命が残っているだけ良いはずだ。猟兵達が戦わなければ、これよりもずっと多い生命が喪われていただろう。
処置を一通り済ませてカシムは息を吐き出す。
「せっかくなので『ツェーン』に会いますか」
先送りしていたことだ。
なんとも言えない感情が湧き上がってくる。どう声を懸けるべきだろうか。なんというべきだろうか。
心のなかに渦巻く感情に折り合いをつけて立ち上がった時、応急処置をしていた場所へと『ツェーン』が入ってくる。
「よぅこんにちは。元気そうで何よりです」
カシムはなんてことのないように告げる。
けれど、その胸中は外には漏れ出ることはない。なんと言葉を続けるべきか悩む素振りすらも見せたくはない。
それは戦った相手であるからかもしれないし、もしかしたのならば気まずいと自分が感じているからかも知れない。
「ええ、ありがとう。おかげさまで。おかげさまでって、言えることが私は嬉しいわ」
『ツェーン』の微笑みはぎこちないものであったけれど、年相応の少女の笑顔であった。
それをみれば、自分の悩みなど些細なことだ。
その笑顔を願った者がいた。ならば、それは護ることが出来たのは誇るべきことだろう。
あの後どうなったのか。そう訪ねようとしてやめた。
きっと苦難が待っていただろう。けれど、今はもう乗り越えている。ならば、それでいいのだ。
「こんな可愛い子が乗ってたんだねー☆」
そんな『ツェーン』の背後からメルクリウスの変じた少女が抱きついて頬ずりしたのには驚いたが、カシムにとってそれは平常運転であった。
まったく、とカシムは呆れながらも、けれど何処か救われたような気持ちになるのだ。
その明るさがいつだって人生においては必要なものであろう。
戸惑う『ツェーン』とメルクリウスの変じた少女のやり取りは、カシムにそうした明るさを齎すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
槐・白羅
UC起動
倒した敵群の残骸を須らく【捕食】させるぞ
さて…轟天達よ
プラントを稼働させよ
(無数に生産される人口鮭の切り身とイクラ
ではそれを皆に届けるとしよう
そのまま食べてもいいが米に乗せたり焼いたりムニエルにしても良いぞ
モルスよ
食したいならあのUCも使うが?(NO!という激しい意志が来る
はっはっはっ(自分は鮭イクラの親子丼にワサビ醬油を垂らし食
亡命者達にフィアレーゲンとプラントの状況について徹底的に聞く
ふむ…
ならばあそこには純然たるプラントが在ると言う事だな
往くぞモルスよ
(キャラバンから離れ『死の行軍』発動)
我が国を建てる為にもプラントは必須
ならば手に入れてみせよう!(フィアレーゲン跡に飛び立つ群
小国家『グリプ5』の郊外、荒野においてオブリビオンマシンの残骸を貪り食う自律戦闘用のサーモン・マシンが鮭達の晩餐会(サーモンスタンピード)の如くうごめいていた。
それは後始末をつけるという意味では、まっとうな光景であったのだろうが、彼の――槐・白羅(白雷・f30750)のユーベルコードであると知らぬ者にとっては、畏怖の対象であったことだろう。
「さて……轟天達よ。プラントを稼働させよ」
極小のプラントを有するとい自律機動無人鮭型キャバリアが貪り食ったオブリビオンマシンの残骸を残らず変換し、無数の人工鮭の切り身とイクラ。
何故、とは問うまい。
これで多少なりと食糧事情が逼迫することはないだろう。
それは『グリプ5』に亡命を希望していたとしても、先日まで敵対していた国の人間同士が抱える軋轢を解消するまで食いつなぐには十分な食料であった。
人は食料なしでは生きてはいけない。
食料が減れば、其処に争いは必ず起こる。
だからこそ、人間が生きているのならば、必ず生きる糧が何よりも最優先されるのだ。
「これを皆に届けるとしよう」
白羅は理解していた。これが慰めにしかならぬことを。
亡命者たちと『グリプ5』の間に横たわる深い溝が、解消したわけではないことを。
けれど、それでもいつか時間を、十分な時間さえあればわだかまりさえもほぐすことができるのもまた人である。
「モルスよ。食したいのならあのユーベルコードも使うが?」
何やら己の機体もまた生み出された食料を欲しているのだろうか。白羅は機体から伝わる拒否の意志の激しさに快活に笑って、自分は鮭イクラの親子丼にワサビ醤油を垂らして食す。
それは生きるという行為そのものであったことだろう。
難民キャンプという一先ず落ち着ける場所へと至った亡命者の彼等にとって、次に求めるのは食であった。
「慌てなくても良い。そのまま食べてもいいが米に乗せたり焼いたりムニエルにしても良いぞ」
十分は数はあると白羅は告げ、彼等が一息つくまでの間、給仕に回る。
彼等とて滅んだ国から僅かな食料を食いつないできたのだろう。お腹いっぱいに食べられるということが、こんなにもありがたいことだと涙する者だっていた。
彼等の国はもともとは侵略国家だ。
他者から奪うことを是とする方針と教育によって、それが当然であると思っていたのだ。
けれど、彼等は一度喪ったのだ。
全て。
だからこそ、今は違うだろう。与えられること。与えること。奪うこと以外の何かを彼等はきっと見つけることができた。
「……そのままでいいのだが、少しばかり聞きたいことがある」
「何か? 聞きたいこととは……」
白羅は救出された『クリノ・クロア』、緑色の瞳をした少年の元を訪れ、『フィアレーゲン』の現状を徹底的に聞き出す。
すでに小国家『シーヴァスリー』によって国は滅びた。
けれど、プラントはどうだろうか。未だ純然たるプラントが残っているのならば、白羅の求めるものが未だあるかもしれない。
その淡い期待があったが、『クリノ・クロア』の言葉は期待を裏切るものであったことだろう。
「残念だけど……小国家同士の争いは、いつだってプラントの奪い合いだから……多分、もう『フィアレーゲン』だった場所には『プラント』はないと思う」
けれど、可能性はゼロではない。
彼等が逃げてきたタイミングと時間の経過を考えるのならば、未だ『フィアレーゲン』からプラントを移送している時間はそうないはずだ。
「ならば往くぞ、モルスよ」
キャラバンから離れ、白羅はユーベルコードの輝きと共に荒野へと飛び立つ。
「我が国を建てる為にもプラントは必須。ならば手に入れてみせよう!」
己の願いのために。
可能性は限りなく低い。
けれど、そこに可能性がわずかでもあるのならば、それに賭けてみるのも良いだろう。
白羅は己の機体『モルス』と共に『フィアレーゲン』の国跡へと轟天の群れと荒野を往くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
※アドリブ絡み歓迎
※キャバリア降機
ああ、何もかもこれからさ
でも『先』へ進むには心身の基本的充足が必要
ってわけで、ココからは本業を頑張るとしようか♪
近隣に滞泊させてた『ファルマコン』を出動
難民キャンプの外縁に駐車させて医療支援を始めるよ
ナインス・ラインの母艦、非合法機動医療艇ファルマコン
この六両編成巨大ホバートレーラーがアタシのクリニック
2号車の横で医療用テントを広げて本気の医術開始っ
災害救助機能【プリミティブ・デザイア】も駆使して
希望者全員へ高速診断・一括治療・大量処方っ
電脳酷使は疲れるけど、恩を売るチャンスだしね♡
あ、炊き出しやる予定の人は居るかな?
『マゲイロス』の設備と食料も使っていいよー
一つの戦いが終わっても、また一つの戦いの始まりに過ぎないのかも知れない。
『フィアレーゲン』からの亡命者たちにとって、それは息つく暇もない戦いの連続への幕開けであった。
例え『グリプ5』へとたどり着けたのだとしても、国内には未だ入れない。
それは元は敵対国同士であったという事情がある。
けれど、郊外であれば難民キャンプを設営することを許可されたことは、彼等にとっての僥倖であった。
険しい道程であると言わざるを得ないことは確かであるが、それでも。
「ああ、何もかもこれからさ。でも『先』へ進むには心身の基本的充足が必要」
リーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)は難民キャンプの様子をみやり、そう呟いた。
彼女の本業は闇医者である。
ならばこそできることがあるのだ。『非合法機動医療艇ファルマコン』と呼ばれる6両編成、水陸両用の大型ホバートレーラーが難民キャンプに横付けする。
まずは医療支援からだ。
他の猟兵たちも応急処置を施すだけで事足りる亡命者たちも、深い傷を負った人々も、全部ひっくるめてリーゼロッテは面倒を見るつもりなのだ。
キャバリア『ナインス・ライン』の母艦であるホバートレーラーこそが、彼女のクリニックである。
2号車の横で医療用テントを広げての本気に医術が開始される。
「大丈夫大丈夫。コレ疲れるんだけど…ま、ちょっと生きるお手伝いをね」
彼女のユーベルコードが輝く限り、どれだけの重症を負った者でさえも彼女は救ってみせる。
災害救助用生体スキャンにかけ、毒性ガスにさえ侵された人々を次々と治療していく。
その手腕は凄まじいものであった。
希望者全員といわず、負傷している者たち全てを高速で診断し、一括治療と大量処方を可能にする。
彼女が言う通り、これは電脳に多大な負荷がかかるユーベルコードであったが、端的に言えばこれは恩を売るチャンスでもあるのだ。
にっこりと微笑みながら、ハートマークが浮かびそうなほどの声でリーゼロッテは治療を進めていく。
「あ、炊き出しが必要なら『マゲイロス』の設備と食料も使っていいよー」
身体が治れば、次は食料である。
どんなときだって人間腹が減るものだ。
ならばこそ、こういう時に物資の出し惜しみはなしだ。後で恩はどうにでも返してもらえるし、リーゼロッテにとって、物資が減ることは別段痛い出費であるとさえ思えなかった。
「ありがとうございます。こちらのプランとの状況を顧みても、難民キャンプへの物資は切り詰めなければなりませんでしたから」
『グリプ5』の救援部隊の指揮官であろう『ツヴァイ・ラーズグリーズ』が頭を下げて、リーゼロッテに感謝の意を示す。
「いいのいいの。アタシが困った時は助けてもらうし。そういうもんでしょ、人って」
そう言って笑って、リーゼロッテは作業を続ける。
持ちつ持たれつである。
いつだって人は一人では生きられない生命であるから。だからこそ、国が生まれる。コミュニティを作り上げ、より良い生き方をしようとする。
だから、これはただの貸し借りでしかないのだと、気にしなくていいのだとリーゼロッテは笑い、彼女の目の前で喪われるはずだった全ての生命を、彼女はすくい上げていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
継戦能力、興奮作用がまだ効いている
『マルチプル・キャバリア』ディスポーザブル01
を重機代わりに、瞬間思考力と遠隔操縦で物資を運びます
自分は先の戦いで出血していたので、機体を降りて止血
体調・思考に支障無し。
…医療物資は、あって困らない筈。
微量ながら、救急箱を医療テントへ持ち込みます
その後はどうしましょうか…?
考えてみると、あの少年やツェーン殿とは……直接顔を会わせた事は無い気がします。…探してみましょうか。
彼女は、見つける事ができたでしょうか。
あ、しかし……致し方なかったとはいえ、フィアレーゲンではツェーン殿を何度も殴ったり、怒鳴ったり……。
気まずい。やっぱり、ディスポーザブルへ戻りましょう。
戦いの余韻は未だ醒めやらず。
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、けれどキャバリア『ディスポーザブル01』を重機代わりというかのように、ユーベルコードによって脳波コントロールし物資を運び続けていた。
戦いの最中に出血してはいるのだが、それもまた止血は済んでいる。
体調や思考に問題はない。
だから、今は動いている方が都合がいいのだ。
「……医療物資は、あって困らないはず」
そう思って、すでに他の猟兵達が忙しなく働いている難民キャンプの医療テントへと救急箱を持ち込む。
僅かなものであったけれど、ないよりはマシである。
それに自分ができることは戦うことばかりだ。だからこそ、小枝子は少しばかり肩身が狭い思いをしていたかもしれない。
『グリプ5』からの救援物資はもう運び終えてしまった。
重量級キャバリアである『ディスポーザブル01』や他の猟兵たちの助けがあれば、あっという間であった。
だから、少し手持ち無沙汰になってしまうのだ。
ぼんやりと止血された血のにじむ包帯を抑えながら、考える。
今にして思えば、あの緑色の瞳をした少年『クリノ・クロア』や『ツェーン』とは直接顔を合わせたことはない。
戦いの最中であったこともあるし、その余裕もなかった。
なんとなしにそう思ってしまったのだ。
ふらり、と小枝子は足を踏み出す。顔を見てみたいとも思ったのだ。
彼等はどんな顔をしているのだろうか。
声は知っている。そして、彼等の境遇も。
「だから、知りたいと自分は思っているのだろうか」
不意にこぼれた言葉。
それは『ツェーン』があの戦いの後に如何なる軌跡を持って、此処に至ったのかを知りたいと思う心があったからだろう。
戦うばかりではない。その事実に気がつくことができただろうか。
「彼女は、見つける事ができたでしょうか」
戦う以外の何かを。
そんな生き方を。そんな風に小枝子は思うのだ。彼女の笑顔を見たいと願った少年がいて、望まれた少女がいる。
それはとても素晴らしいことのように思えたのだ。
だから、彼等の顔を見た時、一瞬でわかったのだ。彼等だと。
「――……」
けれど、小枝子はわずかにためらった。
致し方なかった事とは言え、『フィアレーゲン』では『ツェーン』を機体毎何度も殴ったり、怒鳴ったりと、自分の印象は最悪なのではないかと思い至ったのだ。
今更であるけれど、それは仕方のないことだ。
何も気に病む必要はないし、彼等もまた気にしてないだろう。
けれど、当の本人はそうはいかないものだ。
とてつもなく気まずくなって、影に隠れてしまった。それは眩しいほどの笑顔だった。こんな困難に、逆境に合っても尚、人はあんな笑顔を浮かべることができるのだと小枝子は知っただろう。
「……戻りましょう」
あれは、邪魔してはならない。
そんな風に小枝子は自然と思ったのだ。いつかまた、彼女たちと語らう機会もあるかもしれない。
その時は、きっと彼女たちの眩しい笑顔を正面から見ることができるようになっていたい。
そんな風に小枝子は思い、『ディスポーザブル』へと足早に戻っていったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
フィア師匠と
「これが『経験者は語る』というやつですね。
さすが師匠。いろいろな時代をご存じなだけあります」
え?いみ?
えっと……師匠、尊敬してます!(無駄なキラキラ目)
いや後ろ指はだいたい自業自得なんじゃ……。
という言葉は、熱いお茶で飲み込んで、
って、師匠、ソコジャナイ。
国名とか、美のじゃロリ国王とか、そういうことではないですから。
といっても聞いてくれそうにないので、こんなときは、
どや顔な師匠にそそーっと近づいて、こっそり耳打ち。
師匠師匠。国王とかになっちゃうと、
師匠の大嫌いな書類とか会議とか、てんこもりですよ?
わたしもずっと側にいられなくなっちゃいますし
こっちは、聞かれないように呟きますけどね!
フィア・シュヴァルツ
弟子のルクスと
「ふむ。敵国の人間程度も受け入れられんとは、いつの時代、どこの世界の為政者や国民どもも変わらぬといったところか。
なんだルクス、いろいろな時代を知ってるとはさすが師匠、とはどういう意味だ?」
こほん。まあいい。
愚かな為政者や国民たちの相手も慣れてるしな。
我、いろんな国で為政者や国民から後ろ指さされる旅暮らしゆえに。
「どうやら困っているようだな『フィアレーゲン』の民よ!
ここは天才美少女魔術師たる我が知恵を授けてくれよう!
それはズバリ!
お前たち全員『フィアレーゲン』の国民ではなく、我の新国家『フィア』の国民ということにすればいいのだ!」(えっへん
なんだ、ルクス、その可哀想な者を見る目は?
亡命キャラバンの人々はすぐに『グリプ5』に受け入れられるわけではなかった。
敵対国であった事実は消えず、互いの間には未だ溝が残っている。
それが戦乱の付けた傷であることは言うまでもない。全てが順調に事が進むことはない。いつだって人々は手探りの中、暗闇のような人生をいきていかねばならないのだ。
「ふむ。敵国の人間程度も受け入れられんとは、いつの時代、どこの世界の為政者や国民共も変わらぬと言ったところか」
フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は、『グリプ5』の郊外に設営された難民キャンプを見やってわずかに憤慨していた。
けれど、それは致し方のないことであるとも思っていたのだ。
「これが『経験者は語る』というやつですね。さすが師匠。いろいろな時代をご存知なだけあります」
彼女の弟子であるルクス・アルブス(魔女に憧れる魔法少女・f32689)は、何の気無しに同意したのだが、それがフィアの逆鱗まわりをこそっと撫でる行いであるとは思わなかったのだろう。
「なんだ、ルクス。いろいろな時代を知っているとは流石師匠とは、どういう意味だ?」
じとっとした湿度高めの視線がルクスに注がれる。
まさかそんな反応が返ってくるとはルクスも思わなかったのだろう、わずかにたじろいでしまう。
「え? いみ? えっと……師匠、尊敬してます!」
無駄なキラキラな瞳をフィアは向けられてしまえば、深読みすぎたかと嘆息する。
別に百歳超えているからとかそういう意味ではなかったようである。
咳払いをして、フィアはうなずく。
「まあいい。愚かな為政者や国民たちの相手も慣れてるしな。我、いろんな国で為政者や国民たちから後ろ指さされる旅暮らしゆえに」
ふふん、と胸を張るフィアにルクスは言葉を飲み込む。
そう、それはだいたい自業自得であるのだが、それを口に出した瞬間どうなるかなんてもう判りきっているのだ。
しかし、今後彼等はどうするのだろうか。
戻る国はない。
けれど、進むべき居場所は未だ拓かれず。郊外とは言え、ここは荒野だ。いつまでも此処で暮らすという選択肢はないだろう。
だからこそ、ルクスは彼等の道行を心配しているのあが、師匠であるフィアはそうではなかった。
無駄に尊大な態度で難民キャンプでうなだれる者たちを前にして、高らかに言う。
「どうらやら困っているようだな『フィアレーゲン』の民よ!」
なんだか『フィア』の部分を殊更にアクセントが加えられているような気がしないでもないが、それでも彼女は自信たっぷりに、それこそ尊大とも取れる表情のままに言い放つのだ。
「ここは天才魔術師たる我が知恵を授けてくれよう! それはズバリ! お前達全員『フィアレーゲン』の国民ではなく、我の新国家『フィア』の国民ということにすればいいのだ!」
えぇー!? とルクスが目をまんまるにして止めようとしたが遅かった。
師匠其処じゃないと。国名とか、美のじゃロリ国王とか、そういうことではないのだ。問題はそういう簡単な話ではないのだとルクスはフィアを止める。
というか、ここで言ってもきっとフィアは聞き入れてくれない。
だからこそ、ドヤ顔のフィアの耳元に近づいてこそこそささやくのだ。
「師匠師匠。国王とかになっちゃうと、師匠の大嫌いな書類とか会議とか、てんこもりですよ?」
え、と今度はフィアが目を丸くしてルクスに振り返る。
国王という肩書にはちょこっと引かれるものが在る。後、微妙に自分を可愛そうな者を見る目をしている弟子に対して言いたいことがあったが、それよりも面倒くさそうなことが山積している状況に自分が置かれるという事実のほうが勝る。
気ままな旅暮らし。
それが喪われてしまって、激務に晒される自分を想像してしまったのだ。
「わたしもずっと傍にいられなくなっちゃいますし」
ぽそぽそと周囲に気取られぬようにとフィアにささやくルクス。流石にこれは他の人に聞かれるのは恥ずかしい。
だから、照れ隠しのように囁いたのだ。
「う、うむ……確かに、それは困るやもしれんな!」
「けれど、そのアイデアは頂けそうですね」
そういったのは、話を近くでたまたま聞いていた救援部隊の指揮官であった『ツヴァイ・ラーズグリーズ』であった。
彼女は得心が言ったようにしきりにうなずいていた。
「国民的感情では、どうしようもない敵対国『フィアレーゲン』の難民受け入れ。時間がかかるでしょう。ですが、新国家『フィア』からの難民であれば」
それは時間がかからないかもしれない。
フィアの突拍子もない提案が、もしかしたのならば、難民全てをごっそり救う決定的な案になりえたかもしれない瞬間だった。
『ツヴァイ』の頷きに、ルクスもフィアも顔を見合わせる。
それは、この戦乱だけが渦巻くクロムキャバリアにおいて人々の軋轢を乗り越えるための新たな方策として、『フィアレーゲン』――いや、新国家『フィア』の難民を遠からず、『グリプ5』へと受け入れる要因となったのだ。
しばらく、ルクスに対してどうじゃ、師匠すごいじゃろっていう雰囲気がバンバン伝わってきて若干鬱陶しいなと感じることになるのだが、これはまた別のお話である――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アンネリース・メスナー
アドリブ歓迎
サイキック・ロードで飛ばされるとは、締まらない最後ですわね
あのラピートは何処に飛ばされたのか。故国ならば、まぁ民はともかく今の統治者達にはいい気味だけれど
さて、どうしようかしらね
襲撃を受けた後だし、ラピートで護衛することで安心感を与えることはできるでしょうけど、郊外とはいえ警戒態勢のキャバリアがいるのは流石にグリプ5がいい顔しないかしら?
土木作業は気が進まないけれど、ラピートで整地やキャンプ設営を手伝おうかしらね?
キャバリアは人型なのだから、こういう作業もこなせるわ
あぁ、それとあのアマランサス・ラピートの出処とか聞いておきたいわね
それが分かれば、機会があれば落とし前を付けにいけるわ
オブリビオンマシンである赤い『アマランサス・ラピート』は、猟兵たちの猛攻と最後に放たれたサイキック・ロードの彼方に吹き飛ばされて消えていった。
それを締まらない最後であったと呟いたのは、アンネリース・メスナー(元エリート親衛隊・f32593)であった。
彼女の駆る機体もまた『アマランサス・ラピート』である。
親衛隊機仕様では在るものの、エングレービングや装備を除けば、あのオブリビオンマシンはほとんど同型である。
だからこそ、あの機体が最後どこに飛ばされたのかをアンネリースはあんじていたのだ。
「もしも、故国に飛ばされたのであれば……まぁ民はともかく、今の統治者にはいい気味だけれど」
そんな風に思ってしまうのだ。
オブリビオンマシンはいつだって戦乱を呼び起こす。
それはどうしようもないことであり、傀儡国家へと成り果てた嘗てのズィガ帝国への思いもある。
けれど、今はそれを考えている暇はない。
『フィアレーゲン』からの亡命者たちは、即座に『グリプ5』へと受け入れられるわけではない。
それは当然であろう。
敵対国であった難民を、すんなりと国民の感情が受け入れられるとは考え難い。
郊外とは言え、国の傍に難民キャンプを設営することが、精一杯の譲歩であったのだろう。
「さて、どうしようかしらね……」
アンネリースは困っていたのだ。
キャバリアで周囲を護衛することは安心感を与えることができる。けれど、郊外とは言え、警戒態勢のキャバリアがいるのは『グリプ5』側から見れば、あまり気持ちの良いものではないだろう。
仕方のないこと、と割り切ることができても感情では反発が起こることは容易に想像できた。
ならば、と本来出れば帝国の親衛隊機がすることではないのだが、整地やキャンプ設営を手伝うことにしたのだ。
人型であるキャバリアであるからこそできることである。
様々な戦術を取れることが人型兵器の最大の利点であるが、こういった人の営みにもまた利することができるのだ。
「とは言え、親衛隊機がこんなことをしている姿を、故国の民には見せられませんわね……」
優美なる機体が、泥に塗れる姿は嘗ての栄華を汚すことであったかもしれない。
けれど、それでも今はいい。
少しでも国を喪った者達が健やかに生活できる場を整えられるのならば気に病むことですらないとアンネリースは作業を続けたのだ。
そして、最大の気がかりである『アマランサス・ラピート』の出どころを彼女は『ツェーン』にたずねていた。
作業が一段落してから、お茶を飲みがてらであったが、彼女はアンネリースの求める答えを与えてくれたのだ。
「あの機体は、他国から譲られた機体。でも、私が乗るというよりは、他の誰かに用意された機体であった、んです」
機体事態は他国から流れてきた。
そして、それをもたらした者がいる。
ならばこそ、それは己の故国に関係する者であったかもしれない。
アンネリースは腕を組み、考える。
「……キャバリアを横流しする者がいる……いや、齎す者がいる……?」
戦いの中に暗躍する影。
キャバリアを奪うにしろ、流すにしろ、それは容易なことではない。それができる者がいるという事実がアンネリースには重要だった。
「ならば、落とし前をつけさせて頂くとしますわ」
アンネリースはその瞳に決意を漲らせる。
喪った故国。けれど、未だ彼女の道行には、故国の影が、残滓が、未だ色濃く残るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…さて…むしろ大変なのはこれからだ…
…色々と問題が出来るかも知れないけど逐一私達が出張る訳にもいかないしやったら問題あるからね…
…今回の騒動で怪我を負った人も大勢居るだろうから…
…まずはその治療を手伝うとしようか…
…それに加えて今後のことを考えると病気に対する備えもしたいところだね…
…足ら無くなりそうな薬や包帯…その他医療品をリストアップして…
…亡命キャラバンに同情的なグリプ5側の業者を当たってどうにか交渉をして安定した購入ルートの確立はしておきたいところだね…
…単純に補給するだけなら提供すればいいけど…それじゃあ一時凌ぎにしかならないし…それにこう言ったことから交流が生まれて欲しいしね…
一つの戦いが終わり、日常が戻ってくる。
それは平和ではなく、平穏でもない。ただ、戦い方が変わっただけに過ぎないのだ。
亡命者達は『グリプ5』に即座に受け入れられることはなかった。
元は敵対国の難民である。受け入れることが人道的な対処であるのは言うまでもない。けれど、それは上っ面の話であった、人間の感情の話ではない。
無条件に受け入れれば、それは国民の反発的な感情を吹き荒れさせるだけに過ぎない。そうなった時、危険に晒されるのは、いつだって弱者だ。
それを避けるために郊外に難民キャンプの設営を行ったことは、『グリプ5』にとって苦肉の策であったことだろう。
「……さて……むしろ大変なのはこれからだ……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)がそう呟いたのも無理なからぬことであった。
いろいろな問題が出てくるはずだ。
それは自分たちが想定しないようなことばかりかも知れない。けれど、その問題に猟兵が逐一出張るわけにもいかない。
何よりも、猟兵たちはオブリビオンマシンの存在をグリモアによって感知しなければ動くことできない。
それに何でもかんでも猟兵である自分たちが解決することが最善であるとは言えない問題だってある。
いつだって、問題を解決するのは当事者でなければならない。
それが生きるとうことだ。
「ま、それはさておいても、まずは怪我を負った人も大勢いるからね……」
その治療を手伝うことにしたのだ。
オブリビオンマシンである『スクンク』が放った毒性のガスの犠牲になった者もいる。
重症化するまえに医療テントに運び込めたことが大きかったが、これは今後の課題であろう。
ガスだけではなく、荒野には様々な病気が潜んでいるかも知れない。
それが難民キャンプに襲いかかれば、備えのない彼らは死に絶えてしまうだろう。医療薬品もまたプラントで生産されるが、此処は荒野の難民キャンプだ。
『グリプ5』から十全に送られてくることは難しいかも知れない。
「足りなくなりそうな薬や包帯……その他の医療品をリストアップしておこう」
その上で、『グリプ5』にいるであろう亡命者たちに同情的な立場の業者をあたって交渉しておくことが、重要である。
「それ、僕がやっておきますよ」
そういってメンカルの傍にやってきていたのは『フュンフ・ラーズグリーズ」であった。
彼はメンカルからリストを受け取って笑う。いつまでもメンカルにばかり頼っていては申し訳ないと思ったのだろう。
真っ先に単身でも飛び出してきた彼ならば、メンカルも安心できるというものだ。
「じゃ、頼んだ。あ、安定した購入ルートは確立しておきたいから……」
「わかっています。製薬系の研究所があるので、そちらのツテを使ってみます。そこからならば、多分、難民キャンプに送ることができるはずですから」
そう言って、フュンフはメンカルから受け取ったリストを手に駆け出していく。
その背中を見送りながら、メンカルも何かを思ったかも知れない。
オブリビオンマシンに心を歪められてから、ここまで立ち上がることができたのは、彼自身の力だろう。
けれど、メンカルたち猟兵の助けがなければ、為し得なかったことだ。
「……ここからだ。今は一時しのぎにすぎないのだとしても……こういったところから交流が生まれて欲しいね……」
いつか、それは大きなうねりとなって。
きっと激動の時代へと飲み込まれて行ったのだとしても、きっと乗り越えられることだろう。
そんな力を彼等が得てくれれば嬉しい。
メンカルは共に成長していく喜びを胸に感じながら、まだまだ整理しなければならない事柄への多さに辟易することなく、理路整然とした書類さばきで小国家同士に必要なことを揃えていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
そういえば敵対してたんだっけ
国家間の蟠りは面倒臭いねー、完全に忘れてた
んで、郊外にキャンプの設営は許可と…ふむふむ
つまり…街作りシムって事じゃん!
【Code:M.S】起動
あんまり立派なの作っても後で面倒臭くなるかも…仮設住宅くらいが妥当かな
どうしよっかな、綺麗に升目状な住宅地の方が使い易い?
そんな感じでマシン達よろしくー
その間に私はバッグを回収して、お菓子配ってようかな
ツェーンちゃんありがとー
あ、一箱クッキー置いてくから皆で食べてね
あとさ、よく頑張ったね
出来ない事はちゃんと出来ない!って言う
気負うよりよっぽど偉い!
そうすればきっとお節介さんが助けてくれるよ
じゃ、私はお菓子配りに行って来ようかな
小国家同士の諍いは尽きないものである。
『殲禍炎剣』によって国家同士の交流がほぼ封じられたクロムキャバリアにおいて、小国家はコミュニティであるが、プラントをめぐる陣取りゲームの駒でしかないのだ。
だからこそ、小国家に亡命してくるというケースは稀であったことだろう。
『フィアレーゲン』と『グリプ5』。
嘗ては敵対国同士であったが、未だ軋轢は残したままにせよ、難民キャンプを郊外に設営する許可を取り付けたことは大きかった。
これが小さな一歩であるが、大きな前身であることは言うまでもない。
「そういえば敵対してたんだっけ」
国家間の蟠りは面倒臭いねーと月夜・玲(頂の探究者・f01605)は呟きながら、完全に忘れていたことを言葉として飲み込んだ。
しかし、郊外と言えど国のすぐ傍に難民キャンプを設営することを許可したのは玲にとっても大きかった。
つまるところ。
「街つくりシムって事じゃん!」
いや、そうではない。
え、そういう話? と猟兵たちは驚いたかもしれないが、あながち間違いではない。別に国の外に新しい国を作ろうというわけではない。
『グリプ5』の外縁として地区を一つ追加するだけだ。
これを提案したのが誰なのかはわからないが、恐らく玲と同じような立ち位置のものであり、考え方をするものであり、同じ研究者でもあった者なのかもしれない。
ならばこそ、玲は俄然やる気が出てくるのだ。
ユーベルコードに輝く瞳が物語っている。
「それじゃまあ、いっといで」
Code:M.S(コード・マシン・クラフト)によって召喚された多目的小型マシンが次々と『グリプ5』の郊外の難民キャンプへと飛び出していく。
今はテントなどでその日暮らし感が拭えない。
けれど、玲の呼び出した多目的小型マシンには、十分な時間さえあれば城や街すらも築くのだ。
「あんまり立派なの作っても後で面倒臭くなるかも……仮設住宅くらいが妥当かな」
しかし、あんまりにもしょぼいのを作るのもまた玲自身が、それを許さないだろう。
ここで折衷案である。
綺麗な升目状の住宅地ならばどうだろう。後で再利用もできるであろうし、『グリプ5』を必要以上に刺激もしないだろう。
じゃ、そんな感じよろしくーと玲はマシンたちに任せて、預けておいたバッグを回収しようと『ツェーン』を探す。
しかし、その手間は省けたようだった。
向こうから玲を探していたのか、『ツェーン』がバッグを抱えて走ってくる。
その表情を見て玲は一息付けそうだと思っただろう。
年相応の少女の顔だ。しかし、何故だかキラキラしているのは気のせいか。
「あの……っ!」
「ああ、ツェーンちゃんありがとー。おっと」
勢いよく走ってくるものだから、躓きそうに為るのを玲は支える。そんな玲をなんとなし憧れの瞳で見つめる『ツェーン』。
あ、これはもしかして、あれかな。以前に言っていたことを真に受けているのだろうか。
憧れるべきもの。
それを告げたからこそ、こそばゆい視線を彼女は玲に送っているのかもしれない。
「あ、一箱クッキー置いとくからみんなで食べてね」
「あ、はいっ。これ……預かっていたものですから。その、あの……」
口ごもる『ツェーン』に玲は小首をかしげる。
けれど、なんと言っていいか彼女にもわからないのだろう。何も告げられずに、もだもだする『ツェーン』の頭を軽く撫で、玲は言う。
「あとさ、よく頑張ったね。出来ないことはちゃんと出来ない! って言う。気負うよりよっぽど偉い! そうすればきっとおせっかいさんが助けてくれるよ」
何も今は言えなくてもいい。
言葉を紡ぐことが難しくたっていい。けれど、いつの日か自分の言葉で何かを伝えることができる日が来るはずだ。
「じゃ、私はお菓子配りに行って来ようかな」
玲はその日を楽しみにしながら、『ツェーン』と別れて、大熊猫印のクッキーをひとかじりし、ひらひらと手をふるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
ご無事で何よりでした、ツェーン様
実はご依頼がありまして…指令書にサイン願えますでしょうか?
(避難民の慰問に尽力せよの旨)
裏技のようなもので、手間が必要なのです(苦笑)
これから避難民の診断を行うのですが…見て行かれますか?
複数本ワイヤーアンカー先端のセンサーのサーチや触診で難民の健康状態確認や症状特定を高速で遂行
キャンプで対応不能な病人の特定に尽力
(医療、情報収集、瞬間思考力)
大事取ってクロア様の診断も開始
私の命題、人々を救う御伽の騎士に近づく為の手段の一つですが…
騎士らしくないでしょう?
戦い方…道は一つではありません(ツェーン宛)
肝要なのは志なのです
そう、あの時の貴方の勇気のように(クロア宛)
ぽり、とクッキーをかじる音が難民キャンプに響いた。
少し戸惑ったように甘い味が口の中に広がるのを『ツェーン』は感じただろう。手渡されたクッキーの箱。
見たこともない生物が手をふる印のついたクッキー。不思議な味がすると彼女はわずかに微笑んでいた。
「ご無事で何よりでした、ツェーン様……」
彼女の目の前にいつの間にか立っていたのは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)であった。
彼は一枚の紙を手に、ツェーンへと声を駆けていた。
トリテレイアのアイセンサーから伝わる情報を見ても、『ツェーン』の様子は落ち着いている。
一度オブリビオンマシンに心を歪められていたとしても、ここまで穏やかなバイタルに持ち直したのは喜ばしいことであった。
「あ、はい。ありがとうござい、ます……」
頭を下げ、はにかむような表情を浮かべるのは、年相応の少女らしいとさえトリテレイアは思ったことだろう。
「実はご依頼がありまして……司令書にサイン願えますでしょうか?」
「え……でも、それは……」
一人の少女でしか無い『ツェーン』。けれど、彼女は一度であっても『フィアレーゲン』のトップに立っていた少女だ。
この難民キャンプにおいては、彼女がトップなっていてもおかしくない。
現に代表者として立場に立ってほしいとも願われていた。
躊躇うようであったが、けれど、彼女はまっすぐにトリテレイアを見つめ、指令書を手に取る。
「はい。それでは、お願いします。ご尽力、感謝、いたします」
たどたどしい言葉であったが、トリテレイアは好感がもてたことだろう。そちらのほうがよほどいい。
「裏技のようなもので、手間が必要なのです。これから避難民の診断を行うのですが……見て行かれますか?」
代表者として、トリテレイアの前に立つ『ツェーン』はうなずいていた。
彼女の瞳には決意が滲んでいたし、彼女の意志でそれを行うと決めたのならば、トリテレイアはそれを護る義務がある。
銀河帝国量産型ウォーマシン・非常時越権機能行使(シークレットコマンド・ヒドゥンスキル)によってトリテレイアは電子頭脳内に凍結封印されている各種データを呼び起こし、『ツェーン』から託された慰問を全力で行うことを義務づけられた。
それは絶対に完遂しなければならないことであり、トリテレイアはそのために彼女のサインが必要だったのだ。
複数のワイヤーアンカーの先端がセンサーになり、『スクンク』の毒性ガスで重症を負った亡命者たちの診断を行っていく。
他の猟兵達が立ち上げた医療テントや設備と連携して、トリテレイアは次々と彼等に治療を施していく。
それは大いに役立てられたことであろうし、『クリノ・クロア』の身体のチェックも怠らぬということであった。
「大事を取って、とは思いましたが特に問題はないようですね」
トリテレイアは『クリノ・クロア』の健康状態を把握し、うなずく。
とてもではないが騎士らしからぬ仕事ぶりであった。どちらかというと医療メカニックといわれた方がしっくり来るかも知れない。
けれど、それでもトリテレイアは己の誇りが一切陰ることがないことを知っている。らしくないことであるとわかっていても、それさえも誇らしく感じるのだ。
「戦い方……道は一つではありません。肝要なのは志なのです」
トリテレイアは二人に告げる。
彼から見ても、彼等は若人だった。まだ年若い少年少女だった。けれど、戦乱の世界クロムキャバリアは、少年少女のままでいることを許さない。
どうあっても、彼等に人生という激流に身を投じる事を強いてくる。
けれど、トリテレイアは彼等の顔を見てもうわかっていた。
「今ならわかり、ます……」
「ええ。お二人ならば大丈夫です。きっとまた今日と同じことが起こったとしても、大丈夫。貴方たちには志がある」
トリテレイアはうなずいた。
心配することはないだろう。二人でどうしようもないことがあるのならば、己が駆けつける。
でも、それも必要ない時だってある。トリテレイアは知る。
「そう、あの時の貴方の勇気のように」
それが、きっと二人を助けてくれるのだと彼等の心に傷跡ではない何かを残すことができたのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
はー…終わった終わった。軽く数日ぶっ通しで寝てえ気分っすわー…
亡命者達的にはむしろこっからってとこなんでしょうけど…仕方ない、ひと休みしたらもう少し延長戦といきますか。
損傷のある人員や物資があればこっちに。
軽い処置程度なら【時雨】で回復できるかと。
とはいえ…本職ヒーラーじゃねえっすからね、被害の大きいものは状況記して救援部隊に引き継ぎっすねえ…
設備の揃った都心だったらもっとやれることもあったんでしょうけど。
まあ、よく分からねえものに人は警戒するものっす。
話も出来る同じ人間だって分かれば後は楽勝でしょ…絶対無理って思うもんを進言したりしねえっすよ俺。
「はー……終わった終わった。軽く数日ぶっ通しで寝てえ気分っすわー……」
安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)はサイキックキャバリア『カサンドラ』のコクピットの中で息を吐き出した。
激しい戦いだった。
穣自身も相当の消耗を強いられていたが、その疲労は心地の良いものであったかも知れない。
けれど亡命者たちにとっては、これからが本当の戦いだ。
かつての敵対国との軋轢を解消し、わだかまりを解きほぐしていかなければならない。すんなりと昨日の敵は今日の友とはいかない。
人々の感情を考えれば当然だ。
むしろ、難民キャンプを設立することを約束してもらえたことは大きな一歩だろう。
「……仕方ない。本当はこのまま寝倒したいところっすけど。一休みしたらもう少し延長戦といきますか」
穣は『カサンドラ』から降り立ち、難民キャンプへと歩き出す。
本職がヒーラーではないから、被害の大きなものや重傷者はどうしようもない。
けれど、彼のユーベルコード、時雨(シグレ)は構造解析と心身治療を行う診察プログラムによって、重傷者を眠らせ救援部隊への引き継ぎをスムーズに行うことに重きをおいたものだった。
「他の猟兵たちが医療テントや設備を整えてくれていたのはありがたいっすね。都心まで搬送できなくても、此処で処置が済ませることができるのは大きい……」
しかし、それ以上に国民感情がそれを許さないだろう。
どれだけ重傷者であっても、嘗ての敵国の人間を都心の病院に入れることはきっと反発を生む。
それが例え人道に悖るものであったとしても、きっと心の何処かに澱として溜まっていく。
きっと、それさえもオブリビオンマシンは利用するだろう。
そうやって人の心のなかに不和を生み出し、争いの火種として撒き散らす。小国家は、それを幾度もくり返して興しては滅びることを重ねてきたのだ。
「……まあ、よくわからねえものに人は警戒するものっす」
けれど、穣はもう知っている。
話もできる同じ人間だとお互いに理解できることを。
そうしたのならば、意思疎通は容易で、世界はこんなにも簡単なのだと理解ができる。相互に理解を得られたのであれば、きっとわだかまりも解けていくだろう。
自分がそうであったように。
「だけど、僕らは理解できた」
穣の隣に立つのは『フュンフ・ラーズグリーズ』であった。
サイキックの力で交信し、互いのことを理解したアンサーヒューマン同士。二人は視線を交わすまでもなくうなずく。
「あの時はありがとう。助かったよ、穣」
「こちらこそっすよ。まあ、でもこれからっすけどね。後は楽勝でしょって簡単に言えたらいいんすけど……」
けど、と言葉をつなぐ穣。
それを引き継ぐようにして『フュンフ』は笑って言うのだ。
「絶対無理って思うもんを進言したりしねえ、でしょう?」
なんて、と穣の言葉を真似するようにフュンフは笑って、肩を小突く。それは友人同士がそうするような気安いやり取りであったのかもしれない。
それをどう思うのかもまた穣次第である。
けれど、こんな風に互いのことを知ることができた。
今はそれでいい。
人の歴史を紐解けば、取るに足らない染みにもならない一点であったかもしれない。けれど、『フュンフ』にとっては得難い経験であったように、屈託なく笑う笑顔を穣はまぶしげに見上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
ふぅどうにか落ち着きましたね
まだ乗り越えるべき問題があるものの
キャンプは活気というか生気というか
そういうのが戻りつつあるみたいです
とっても良いことですね
そんな様子を見ながら
私は今、シリカ(猫)の前で正座をしています
シリカの無言の圧がめちゃくちゃ怖いです
何故でしょう?
頑張ったと思うのですが私?
ここはあれですね
かげぶんしんによる圧倒的な援助物資配達を
クノイチ的にやろうと思います
というわけでシリカ
私、いってきまー…にぎゃあああああああ!
機体壊してごめんなさいひっかかれると痛いですぅぅぅ!!
し、シリカ付き合ってくれるって言ったのに…(ぱたっ)
※アドリブ連携OK
「ふぅ、どうにか落ち着きましたね」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はクロムキャバリアの小国家『グリプ5』で息を吐き出した。
戦いの痕は色濃く荒野に刻まれている。
けれど、オブリビオンマシンを全て打倒できたことは喜ぶべきことであった。
『フィアレーゲン』からの亡命者たちにはまだ乗り越える問題が山積している。
けれど、猟兵達によって敷設された難民キャンプの活気というか、生気のようなものが戻りつつ在るのは喜ばしいことであるし、事実サージェにとっても良いことであるようにも思えたのだ。
うんうん、とにこやかにサージェは笑っている。
けれど、問題が一つあった。
そう、サージェの姿勢である。
彼女は今正座をしている。目の前には当然、白猫又の『シリカ』のアバターが鎮座している。
言うまでもない。
残念ながら、今回もお説教の時間なのである。
「あの~『シリカ』さ~ん?」
なんで無言? なんで? え、なんで? とサージェは首をかしげる。頑張ったと思うのだ。
今回は本当にがんばった。彼女がいなければ、オブリビオンマシンを打倒できてもパイロットである『クリノ・クロア』は救えなかったかもしれない。
「うぅ、めちゃくちゃ怖いです……あっ! そうだ、これはあれですね? かげぶんしんによる圧倒的な援助物資配達をクノイチ的にやれという無言の圧力ですね!」
それはものすごーく好意的解釈なのだが、サージェはそうであると納得した。いや、勝手に納得しても『シリカ』さんは許してはくれないだろうなぁって思うのだけれど、サージェは正座を崩して立ち上がる。
痺れていたけど、痺れたって言うと怒られそうだったので我慢して立ち上がったのだ。ちょっと涙目になった。
「というわけで、シリカ。私、いってきまー……にぎゃあああああああ!」
ばりぃ、と痺れた足に突き立てられる爪。
もう何がなんだかわからない痛みがサージェの身体を電流のように駆け巡る。そんなことよりも言うことがあるでしょう、というシリカの無言の圧を受けてサージェは涙目のままなんとか言葉を紡ぐ。
「……機体壊してごめんなさいひっかかれると痛いですぅぅぅ!!」
「そういうこと言ってるわけじゃないんですけど。お姉ちゃんはいつも無茶ばかりするから。機体だけじゃなくって、お姉ちゃんの身体のことも言っているんですけど」
でもでも、とサージェは食い下がる。
自分の体のことを心配してくれているのは嬉しいのだが、それならひっかくの止めてほしいなぁって思わないでもない。
でも言うと絶対また余計な一言になりそうだったので、ぐっと飲み込んだのだが、こらえきれなかった。
「し、シリカ付き合ってくれるって言ったのに……」
「それとこれとは別です」
ばりぃ、とまた音が響き、サージェの悲鳴が難民キャンプに響き渡る。
そんな様子を見ていた『クリノ・クロア』は、苦笑いしながら。
「……面白いコンビだなぁ」
なんて、他人事のようにサージェとシリカのやり取りを見送るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
■行
【POW】
俺も仕事を手伝おう。住居を設営し、物資を運び、
作業に手こずっている者がいればすぐさ駆けつける。
今、『必要なこと』をし続けるのだ。
作業が落ち着いたら視察に来た軍人に挨拶。
まずは敬礼……って俺が生身で戦ったことが知られている。
あれは人々を近くで護ろうと思った故に……
(戦いの件を釈明すると、雰囲気が変わる)
むむ、『お前は一見人のために戦っているが、本性は
見た目通りの悪魔』とな?
そうかもな。もし悪魔でなければこんな身勝手はしない故。
(別の小国でキャバリアを素手で振り回した記録を見せる)
だが、俺はやめぬよ。例え如何なる手を使おうとも、
俺は救える魂を救うことを諦めぬ。
※アドリブ歓迎・不採用可
愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は難民キャンプに打ち立てられた仮設住宅の設営や物資の運搬を手伝いながら、作業に手こずっている者がいないか常に気を配っていた。
戦いの後であっても、亡命者たちの明日はまだ遠い。
今日が終わっても、必ず明日が来るとは限らない。
彼等にとって、この難民キャンプでの生活はそういうものだ。いつ足元から崩れてもおかしくない綱渡りのような生活。
けれど、彼等は選んだのだ。
荒野を抜け、かつての敵対していた『グリプ5』へと助けを求めた。
『グリプ5』もまた、手を差し伸べることはできたが、全てを持って彼等に相対することはできない。
感情があるからこそ、人々は多種多様な行動を行い、発展していく。
けれど、全ての人間が『フュンフ・ラーズグリーズ』のようにはなれない。生命を全て見捨てないと疾走ることができるわけではないのだ。
敵対国であったという感情を捨てきるためには、未だ人間は幼い。
どうしようもないことなのかもしれない。
けれど、と清綱は思う。
「今、『必要なこと』をし続けるのだ」
それが今を生きる者たちにとって必要なことだ。それを弛みなく続けることこそが、人々の生活を明日につないでいくのだから。
作業が落ち着いた頃、救援部隊の指揮官である『ツヴァイ・ラーズグリーズ』と救援部隊の士官たちが難民キャンプの視察に訪れていた。
当然のことだ。
郊外とは言え、ここは『グリプ5』の外縁。
ならばこそ、視察という名目で亡命者たちの動向を知る必要がある。清綱は敬礼してやり過ごそうとしていた。
何故なら、彼は生身でキャバリアと闘っている。それを無謀と謗られるのはある意味当然であったのかもしれない。
「今後は止めていただきたい。身の安全を保証できず……けれど、貴方が人のために戦ってくれたことには敬意を評します。けれど、それでも喪われてしまうかも知れない生命の一つに、貴方がなってほしくない」
「あれは、人々を近くで護ろうと思った故に……」
清綱は釈明したつもりであった。
けれど、それは『ツヴァイ』にとっては許容し難いことであったのだろう。
「……本性はどうあれ。けれど、身勝手すぎます。貴方の生命だって、喪われるのを嫌うものだって居るのです」
自分だってその一人だと『ツヴァイ』は告げる。
清綱は確かに、と首肯する。
「けれど、俺は止めぬよ。例え如何なる手を使おうとも、俺は救える魂は救うことを諦めぬ」
互いに一歩も譲らぬ主張。
わかっていることだ。己の本性が見た目通りの悪魔なのかもしれぬと。
けれど、清綱は譲らない。
どれだけ謗られようとも、どれだけ身を案じられようとも、清綱が自身たらしめるものが胸に在る限り、それをやめようとはしない。
別の小国家でキャバリアを素手で振り回した記録を見せても、きっと『ツヴァイ』の思いは変わらないだろう。
平行線だ。
けれど、隣に立つことはできる。
交わらなくても、同じ方向を見つめることができる。
互いに救うことを第一に考えるのであればこそ、『ツヴァイ』と清綱の心は似た者同士であったのかもしれない。
「……ならば、示してください。他者の生命を救うだけではなく、己の生命をも護るという気概を」
彼女の言葉に清綱はどう応えただろうか。
彼にとって今『必要なこと』。それを為し、明日へとつなぐ。
そのために清綱は駆けるだろう。今も、そしてこれからも、清綱は、彼女の言葉に試され続けることだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
アドリブ歓迎
【POW】で判定
【怪力】で物資を運び、ついでに【武器改造】のスキルでキャバリアを整備しておくぜ
また【拠点防御】の応用で設営を手伝うぜ
時間があれば『クロア』に話しかける。
『悪意にゆがめられたとはいえ…お前はすげぇよ。護りたいって想いも善意も誇っていいものだ…それだけはわすれんな。』
もし、自分のしかけたこととか恐れてるようなら勇気づけるぜ
「お前はさ。誰かを…そのお嬢ちゃんを守れる男になれる!だからさ。今はゆっくり休んで、そのお嬢ちゃんと一緒に未来を紡いでいくためにな!!もしまた悪意が襲ってきたときは…そん時は…力を貸す!!だからゆっくり休んでこれからも生きて行けよ」
猟兵達が難民キャンプを慰問し、様々な医療施設や支援を行ったおかげで『グリプ5』の郊外とは言え、難民キャンプは充実した地区として確立しつつあった。
怪力で物資を運び、防衛用のキャバリアを整備していたガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は一段落が済んだことを確認して、軋む身体を伸ばして一息を入れた。
「ふぅ……これくらいでいいか」
小国家『グリプ5』の外縁とは言え、ここは荒野だ。
いつまたオブリビオンマシンや、それに類する存在が現れるかわからない。防衛する力があるのは歓迎すべきことであったが、『グリプ5』からすれば、過剰にキャバリアを強調するのも国民の感情を刺激するだけかも知れないという懸念はあった。
けれど、いざという時があるかもしれない。
そこをオブリビオンマシンに付け入られてはどうしようもない、ということだけは『グリプ5』にも納得してもらう他なかっただろう。
「仕方のない事とは言え、しかし、過剰に期待をされても困ります。故に、我々もまたキャバリアを共同で運用するように致しましょう」
本来であれば難民キャンプにキャバリアという戦力を用意することは認められないことであったことだろう。
けれど、『ツヴァイ・ラーズグリーズ』はあくまで『グリプ5』と難民キャンプでの共同で防衛に当たるという点で国家の上層部から許可を取り付けてきていた。
それはともすれば、彼女の進退をかけたものであったけれど、彼女はきっとそんなことを気にしないだろう。
そういう人物なのだ。
「とは言え、そうだな。ここでキャバリアを動かせるのは……」
心当たりがあるのは、オブリビオンマシンに心歪められた少年『クリノ・クロア』だけだ。
彼の操縦技術があるのならば、もしもまた何者かが襲ってきても防衛することができるだろう。
だから、ガイは『クロア』を探し、彼と話をする時間を設けることができたのだ。
「悪意に歪められたとは言え……お前はすげぇよ。護りたいって想いも、善意も誇っていいものだ……それだけは忘れんな」
「そんな……俺は迷惑を掛けただけだし……それに」
それにと、彼が恐れるものをガイは理解できていた。
自分がやろうとしていたこと。
例え、オブリビオンマシンに心歪められていたのだとしても、許されることではないだろう。
間違った選択をした。
これからも間違えないという保証は何処にもない。
そして、間違えた上で喪われる生命があるかもしれないという恐れを抱いてしまっている。
それをガイは否定しない。
否定したところで誰も待ってはくれない。オブリビオンマシンの悪意はなくならない。
ならば、どうすればいいのか。
簡単なことだ。
そう、『対決』だ。
「お前はさ。誰かを……」
ガイは見ただろう。自分と話をする『クロア』を心配そうな顔で遠巻きから見ている少女の、『ツェーン』の顔を。
なんだ、これでは自分が『クロア』をいじめているようにも見えるかも知れないとガイは思ったかも知れない。
だが、あえて笑っていうのだ。
『クロア』が抱える恐れも、何もかも大したことではないというように。
「その嬢ちゃんを護れる男になれる! だからさ。今はゆっくり休んで、あの嬢ちゃんと一緒に未来を紡いでいくためにな!!」
ばしん! といい音がしてガイの平手が『クロア』の背中に叩きつけられる。
じんじんと背中に痛みが疾走るのを涙目になりながら『クロア』はガイを見上げていた。
痛みはある。
けれど、何か熱いものが彼の中から湧き上がってくることだろう。
それをなんと呼ぶのか、彼はまだわからないかもしれない。
「もしまた悪意が襲ってきた時は……そん時は……力を貸す!! だからゆっくり休んでこれからも生きて行けよ」
ガイはそれだけ言うとバトンタッチするように『ツェーン』に後を任せる。
ボーイ・ミーツ・ガールなんて小洒落たことを言うつもりはないけれど。
けれど、そこには確かに定めを覆す、エースの再誕があったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵