孤独のイースター
「さー、卵を集めるよー!」
「探すっしょ。見つけるっしょ」
飛び跳ねんばかりの勢いで声を上げたネコキマイラに倣うように、ヒーローマスクも手を掲げる。それを見たライオンキマイラが、うむ、と頷く隣で。
「お、おー!」
テレビウムの少年、ソリ・テュードもおずおずと声と手を挙げていた。
楽しいイベント盛りだくさんのキマイラフューチャーで、今回開催されたのは『エッグハント』と呼ばれる宝探し。人口芝が広がる公園に隠されている、いろんな色や柄の卵を見つけて籠に集める、という単純なものだけれども。
「えっとねー、シンプルな柄が10点で、派手な柄のが20点。
それで、キラキラしてるレアなのが100点!」
「うむ。点数制なのだな。
して、コート。この真っ白な卵は何点か?」
「デインのは柄がないから1点っしょ。
ほら、こういう模様付きなのを探すっしょ!」
「あ、リディのはねー、小さい三角がカラフルにいっぱいだから20点ー」
ネコキマイラが持つ、ルールが書かれた紙を囲んでわいわい盛り上がる。
ちょっとゲーム要素を加えることで、競い合う楽しさも生まれていた。
「でも何で卵なんだろーねー?」
「うむ。誰かが大量にコンコンコンしすぎて困ったのではないかな」
「処分市っしょ。でも楽しいから、それでもいいっしょ」
身も蓋もない会話も弾ませながら、イベントに参加していく友人達を見て。
「イースター……」
ソリはぽつりと呟いていた。
そんな頃。イベント会場近くで。
「いいねー。イースター、いいねー。
この華やかな色! 可愛らしいデザイン! そして何よりモチーフのウサギ!
くぅっ。撮りがいがあるっ!」
パシャパシャとカメラのシャッターを押しまくっているカメラがいた。
というか、カメラの頭を持った『コスプレ撮影怪人アングラーロー』だった。
レンズが向いた先にあるのは、ハンガーにかけられた様々な衣装。
それらは、ウサギのもこもこ着ぐるみ風から、際どいバニーガールまで、様々なデザインではあるけれども、全てウサギモチーフの服だった。
恐らくは新作な衣装の数々を、コスプレ撮影怪人は一通りカメラに収めてから。
「おっといかん。私は、悪の組織『シャドウパラダイス』を継ぐ者。
志半ばで倒れたシャドウキマイラの代わりに、沢山のキマイラを集めて怪人に改造し、キング・ブレインの世界征服を助けなければ!」
思い出したかのように声を上げ、やっと思考をカメラから離した。
いや、離したように、見えた。
「世界征服……制服……ふふ、素晴らしい!」
そのまま、怪しい笑いを浮かべながら、カメラ頭の中央に輝くレンズを、きゅいい、とピントを変えるように不規則に動かして。
その場に控えていた、影のように真っ黒な配下へと、ばっ、と手をかざして叫ぶ。
「さあ、影法師怪人達よ!
この撮影スタジオ『シャドウパラダイス』にキマイラ達をおびき寄せるのだ!
そしてコスプレ写真を撮りまくるぞ!」
……こんなのが後任でいいんでしょうかね?
「キマイラフューチャーのエッグハントが狙われているよ」
集まった猟兵達を前に、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は困ったような苦笑で説明する。
猟書家『シャドウキマイラ』が倒されたと聞いたのも束の間、その意志を継ぐオブリビオンが現れたらしく。キング・ブレインの目論む『悪の組織連合による世界征服』を実現すために行動を始めたのだという。
目を付けたのが、エッグハントイベント。
一応、イースターのお祭りではあるのだけれども。参加者達はそんな由来を気にするどころかむしろ知りもせず、ちょっと変わった宝探しイベント、という感じになってしまってはいる模様。まあ楽しいならそれはそれで。
そんなイベントの一環のように装った悪の組織の拠点にキマイラ達を誘い込み、怪人に改造しようと企んでいる……はずなのだが。
「どうも改造の前に、衣装を着せたり、写真を撮ろうとしたり……余計なことをやりたがっているようなんだがね」
それでも、キマイラ達が攫われてしまうのは確かだし。
放っておけば、撮影の後に改造されてしまう危険が……それが本来の目的だと忘れていそうな気もするけれども、まあ、危険があることにしておいて。
「阻止、した方がいいんだろうからねぇ」
夏梅は苦笑を深めて肩を竦めた。
そして、ああ、と思い出したように手を打ち。
「もちろん彼も巻き込まれてるよ」
慣れた様子でいつものテレビウムの名を告げた。
佐和
こんにちは。サワです。
今年のイースターは4月4日ですね。
ソリ君は、ごく普通のテレビウムです。
何となく独りでいましたが、友達ができて一緒にいろいろわいわいやってる模様。
今回は、友達3人と一緒にエッグハントのイベントを楽しみに来ています。
ソリ君達について知りたい方は、タグを利用して過去の登場作をご確認ください。
尚、未読で全く問題ありません。
第1章は、一応、『食卓の友同盟』との集団戦です。
エッグハントに参加していると、影法師怪人となった面々が誘いをかけてきます。
ソリ君達は既に誘われ、拠点に連れて行かれているため関われませんが、他にもイベント参加のキマイラ達がいます。
楽しめば楽しむ程、怪人達のターゲットになり、キマイラ達を守れます。
というわけで、まずはエッグハントをお楽しみください。
誘われ、ある程度道案内させたところで倒せば、拠点の場所が分かります。
尚、エッグハント会場は、人工的な広い公園です。
第2章は、悪の組織『シャドウパラダイス』の拠点に乗り込んでの『コスプレ撮影怪人アングラーロー』とのボス戦です。
先に誘われたソリ君達もいます。
そして誰もが大体、コスプレ光線でコスプレさせられ、撮影されます。
衣装はイースターモチーフらしいです。希望はどしどしご指定ください。
絶対コスプレしたくない方は、その旨明記してください。
衣装もNGも指定がない場合は、コスプレ有無含めて全てお任せになります。
それでは、卵探しを、どうぞ。
第1章 集団戦
『食卓の友同盟』
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POW : マヨネーズ怪人・ウェポン
【マヨネーズ兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : コショウ怪人・ジェノサイド
【コショウ攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : しょうゆ怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【しょうゆ】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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「あー。星柄の卵はっけーん!」
「うむ、10点だな」
「デインはまた白っしょ。1点っしょ」
エッグハントを楽しむ友人達を、ソリも楽しそうに見ていた。
以前は遠目に見ているだけだったイベントに、こうやって一緒に参加して、わいわいできること自体が嬉しい。
「ソリはー? 卵、見つけたー?」
「あ、うん。これ……」
「うむ。赤色か。1点だな」
「でもこれ、鳥の巣みたいに見えて面白いっしょ」
「ホントだー。隠してあるっていうより飾ってあるみたーい」
「だから、みんなに見せてから取ろうかな、って……」
「うむ。確かに面白いな」
「ソリ、いいの見つけたっしょ。すごいっしょ」
「うんうん。見せてくれてありがとー」
ソリも赤い卵を籠に入れて、友人達と一緒にまた卵を探して。
(「楽しいな」)
テレビ画面な顔に、はにかんだ笑顔を浮かべていると。
「ねえ。楽しいよね」
「でももっと楽しいところがあるよ」
影法師を被ったような、真っ黒な誰かが話しかけてきた。
「探すだけじゃなくて、卵を楽しめる場所」
「せっかくの卵だもん。もっと楽しまないと」
「こっちに来るといいよ」
「こっちこっち。おいでよ楽しいよ」
何人もの真っ黒な誰かは、楽し気な笑い声と共にソリ達を誘う。
「へー。もっと楽しめるんだってー」
「うむ。興味はあるな」
「これは行くっしょ。行くしかないっしょ」
「う、うん……」
何の疑いもなく、むしろわくわくしている友達に、ソリもおずおずと頷いて。
「こっちだよ」
「早くおいでよ」
4人は誘われるがままに移動していく。
影法師がオブリビオン『食卓の友同盟』だと気付かぬまま。
向かう先が悪の組織『シャドウパラダイス』の本拠地だと知らぬままに。
「ところで、卵にはコショウだよね?」
乱獅子・梓
【不死蝶】
シャドウキマイラ、ついこの前倒されたばかりなのに
早速後釜が現れたのか
……しかし、相変わらずこの世界の猟書家たちって
侵攻の仕方がフリーダムだよな……
確か卵の柄によって点数が違うんだったか
点数制ということは、最高得点を取れば
何か豪華賞品が出るかもしれないな…!?
よーし、人海戦術ならぬ竜海戦術作戦だ
UCでミニドラゴンたちを召喚
さぁ、片っ端から卵を集めてこい!
あ、卵は食っちゃ駄目だからな?
これだけ積極的に卵を集めていれば
怪人たちの目にも留まることだろう
案の定来た来た
急にド定番の質問だな
俺は断然醤油だ
怪人たちが醤油以外を答えようものなら
ドラゴンたちが容赦なく吹っ飛ばす
(醤油党過激派
灰神楽・綾
【不死蝶】
一般人が集まりそうなイベントに潜り込んで攫う、
普通に人攫いするより効率的で賢い作戦だよねぇ
小さなドラゴンたちが一生懸命卵を拾う姿は可愛いなぁ
なんて眺めながら俺もしゃがみこんで卵を探す
これ全部卵に手描きしてるのかな?すごい
ゴッドペインターたちの為せる業かな?
まるでアートのような卵に感心しながらも
同時にちょっとお腹も空いてくる
今日の夕食は梓にオムレツ作ってもらおう
卵を楽しめる場所?
何だろう、いっぱい卵料理が食べられる場所かなー?
おとぼけながらのこのこと怪人についていく
ところで梓は目玉焼きには何かける派?
奇遇だね、俺も醤油派
ねぇ、君たちは?
怪人たちが醤油と答えたらUCで優しく倒してあげよう
イベント会場を訪れた乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は、グリモア猟兵からの説明を思い出しながら、サングラス越しの視線を少し遠くに流した。
「シャドウキマイラ……ついこの前倒されたばかりなのに、早速後釜が現れたのか」
「ああ、楽しかったよねぇ」
その隣に並んだ灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、赤レンズのサングラスの下で糸目をさらに細める。
思い出しているのは、先日のシャドウキマイラとの戦いか。
遊んで、と言うシャドウキマイラに綾達が仕掛けたのはトランプで。ババ抜きに七並べにと楽しい戦いを繰り広げたのだけれども……
強敵だった、と呟く梓をちらりと見て、綾は小さく笑った。
「しかし、相変わらずこの世界の猟書家たちって侵攻の仕方がフリーダムだよな」
その様子に気付かぬまま、梓は、ふぅ、と呆れたようなため息をついて。
綾もいつもの調子でにこにこと、何事もなかったかのように笑いかける。
「でも、一般人が集まりそうなイベントに潜り込んで攫う……
普通に人攫いするより効率的で賢い作戦だよねぇ」
すごいすごい、と軽く言いながら、ぐるりと会場を見回して。
ふと綾の目に入ったのは、パタパタとこちらに飛び戻ってくる炎の仔竜の足元。
「あ、焔。見つけた?」
そこにしっかり握られていたピンク色の卵に、よかったねぇ、と出迎えれば。
そっと梓が手を伸ばして受け取った。
そういえば、ともう1匹の仔竜、氷竜の零を探してみれば。何だかがさがさと、植木の間に顔を突っ込んでいる姿が見えて。綾は、あはは、と笑う。
「確か卵の柄によって点数が違うんだったか」
「そうそう。これは柄が大きいから10点かな?」
その間に梓は、焔から受け取った卵をまじまじと見つめ。
どんっと描かれた大きな花を、綾も覗き込んで説明した。
「これ全部卵に手描きしてるのかな?
すごい。ゴッドペインターたちの為せる業?」
これは大きな柄だけれども、細かな柄もあると聞く。
それに、ムラなく綺麗に塗られた卵はまるでアートのようで、感心する綾だけれども。
梓の思考は、点数制だという部分に向いていて。
(「最高得点を取れば、何か豪華賞品が出るかもしれないな!?」)
「よーし、人海戦術ならぬ竜海戦術作戦だ。
集え、そして思うが侭に舞……うよりも、片っ端から卵を集めてこい!」
梓はユーベルコード『竜飛鳳舞』でミニドラゴンを大量に召喚すると、辺り一帯に解き放った。
その様子に、焔も負けまいとまた卵探しに飛び立ち。零は焦ったかのようにわたわたと狭い所にまた頭を突っ込んでいく。
もちろん、ミニドラゴン達も、一生懸命卵を探し、拾ってくるから。
「可愛いなぁ」
その様子を眺めながら、綾は呟いた。
任せてばかりではいけないかと、綾自身もしゃがみ込んで卵を探し。
青色に波の絵が描かれたものを見つけて手に取ると、ちょっとお腹も空いてくる。
「あ、卵は食っちゃ駄目だからな?」
それを見越したかのように、梓がドラゴン達に声をかけていて。
くるりと綾にも振り向き、釘を刺す。
「綾もだぞ」
「んー……食べないから夕食はオムレツ作ってね」
青い卵を顔の横で揺らしながら笑いかければ、梓が、むう、と考えこんでいた。
そんなやり取りも楽しみながら、綾は卵を籠に入れて。
(「これだけ積極的に卵を集めていれば……」)
色とりどりの卵で埋まってきた梓の籠も見やり、囮としては充分、怪人達の目に留まることだろうと思ったところで、案の定。
「ねえ。楽しんでる?」
(「来た来た」)
かけられた声に綾はそっと笑う。
振り向くと、影法師を被ったように真っ黒な人影が誘いかけていた。
「でも、もっと卵を楽しめる場所があるよ」
「こっちに来るといいよ」
「何だろう? いっぱい卵料理が食べられる場所かなー?」
綾はおとぼけながら、ひょいひょいと誘う影法師怪人へと近寄って。
「梓も行こうよ」
「こっちこっち。おいでよ楽しいよ」
一緒になって誘えば、梓が、やれやれ、といった風に歩いてくる。
狙い通りの展開に、綾も梓もそうと気付かれないように影法師怪人の後につき。
「ほら、あそこだよ」
看板も何もない、倉庫のような印象の、地味な……といってもキマイラフューチャーなのでそれなりにポップでパンクですが、周囲に比べたら地味な建物が示された。
それを見た綾は、にっと笑う。
「ところで梓は目玉焼きには何かける派?」
「急にド定番の質問だな」
半ば呆れたように驚く梓だけれども。
「俺は断然醤油だ」
「奇遇だね、俺も醤油派」
それでもちゃんと答えてくれるところに。そしてお揃いの答えに。
綾は笑みを深めて、影法師怪人達にも問いかける。
「ねぇ、君たちは?」
「もちろんしょうゆだよ!」
喜び勇んで真っ先に声を上げたのは、どこかしょうゆさしのような、注ぎ口が出っ張った形の頭部をした影法師達。
「いやしかしマヨネーズの方が相性はいいかと」
「シンプルにコショウが一番!」
でもすぐに、マヨネーズの容器のような流線形の頭部をした影法師や、底の方が少し広くなったコショウ入れのような頭部の影法師が、違う意見を並べる。
「そうか……それなら仕方ないな」
梓は、そんな影法師怪人達に、サングラスを怪しく光らせながら振り返ると。
「行くぞ! 醤油以外は容赦なく吹っ飛ばせ!」
ミニドラゴンと共に、マヨネーズとコショウな影法師怪人に襲い掛かかった。
「あーあ。梓は醤油党過激派だからねぇ」
突然始まった乱闘を、綾はのんびりと眺め。
襲われていない影法師怪人達がおろおろしているのに笑いかけると。
「君は醤油でしょ? それなら……」
その周囲に、紅く光る蝶が舞う。
「優しく倒してあげよう」
眠るように死に至らしめる紅色の羽ばたきに、次いでしょうゆな怪人達もぱたぱたと倒れていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木霊・ウタ
ハント
折角のイベントだし
賑やかにギターを奏でながら探索
天気もいいし公園を散歩がてら
音の反響を利用
微妙に反響が違う場所にある筈
宝探し見たいでワクワクするぜ
ってなカンジでやってると
ご登場か
OKぜひ案内してくれよ
弦を爪弾きながらあとをついていくぜ
戦闘
拠点の見当がついたら
じゃかじゃんと曲調を変えて
案内ご苦労さんっと
ボスより先に海へ還してやるよ
熱き血潮ならぬ熱き炎が流れるこの身で爪弾けば
響き渡る音は文字通りとびっきりの熱さ
旋律が紅蓮の炎渦となり
マヨネーズを溶かし灰に
もちろん胡椒や醤油も
俺は卵には塩派なんだ
悪ぃな
事後
怪人らへの鎮魂曲を奏でながら拠点へ
待ってろよソリ
…いや今はコスプレ満喫中かもな
イベント会場である公園に、ギターの音が響く。
歩調に合わせたリズムを刻む、散歩をイメージした陽気で楽し気な曲に、周囲のキマイラ達の足取りも軽くなっていた。
「折角のイベントだしな」
奏でるのは木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)。
そう言って笑いながら、自身も弾む足取りで公園を歩き行く。
もちろん、ただ散歩しているだけではない。
ギターの音の反響を利用して周囲を探り、隠された卵をしっかり見つけて。
「宝探しみたいでワクワクするぜ」
円を重ねた太陽の周りに小さな星が細かく散りばめられた赤い卵を、演奏の合間に器用にひょいっと籠に入れながら、ウタは笑った。
そうして目立ちながら卵を集めていると。
「楽しい音楽だね」
「でも、もっと楽しい場所があるよ」
(「ご登場か」)
かけられた声に、ウタはにやりと笑いながら振り返る。
そこに居たのは、影法師を被ったかのように真っ黒な人影。
おびき出せたオブリビオンの姿に、だがウタは待っていたと悟られないようにしつつ。
「OK。ぜひ案内してくれよ」
誘いに乗って、その後をついていく。
「こっちだよ」
「こっちこっち」
影法師怪人達は先導しながら時折後ろを振り向いて、手を振りウタを招くから。
ウタは弦を爪弾きながら、そのリズムに合わせて進んでいき。
「ほら、あそこだよ」
指し示されたのは、キマイラフューチャーらしくポップな色合いの壁だけれども、看板も装飾もない、比較的地味な倉庫のような建物。
イベント会場だとは思えないそこを確認したウタは。
「案内ご苦労さん、っと」
じゃかじゃん、とギターで紡ぐ曲を変えた。
「ボスより先に海へ還してやるよ」
陽気なものから情熱的な曲調へ。
穏やかな散歩から、激しい戦いへ。
旋律の変化に合わせるように、ウタの身体から地獄の炎が放たれる。
とびっきり熱く響き渡った音は、紅蓮の炎渦となって影法師怪人に襲い掛かり。
マヨネーズを焼きあげたような美味しそうな香りが漂ったと思った刹那。
流線形の頭部をした影法師が、炎に包まれ灰になっていった。
「ああっ、マヨネーズ怪人がっ」
慌てる他の影法師怪人達にも、炎は猛々しい曲と共に燃え上がり。
「コショウが全部燃えていく……」
「しょうゆも……ダメなのか……」
次々と、紅蓮の中に影が消えていく。
「俺は卵には塩派なんだ。悪ぃな」
曲の最中に呟いたウタの声に、影法師怪人ががくっと崩れ落ちた。
そうして、案内してくれた影法師が全て消えたところで。
ウタはまた、奏でる曲を変える。
今度は、静かで寂し気な鎮魂曲。
焼きあげた調味料をそれで優しく送りながら。
「待ってろよ、ソリ」
倉庫のような建物を見据え、そこにいるであろうテレビウムの友の名を呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、あの、アヒルさん。
それも1点ですよ。
どうして、白い卵しか探さないのですか?
もっと模様があって綺麗な卵を選べばポイントも貯まるのに。
白じゃないと卵じゃないって頑固ですね。
ふぇ?アヒルさん、アヒルさん。
向こうに大きくて立派な真っ白な卵があるそうですよ。
行ってみませんか?
って、早すぎですよ、アヒルさん。
もう、おいていかないでくださ・・・。
ふええ、マヨネーズで汚れてしまいました。
お洗濯の魔法で汚れを・・・。
あれ?この展開、美白の魔法だったら汚れずにすみましたよね。
という事はあのテレビウムさんがここにいるのですか?
アヒルさん、見かけましたか?
影法師怪人の気を惹く囮となるべく、そして、やっぱりイベントだからと卵を探すフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)の目の前に、ずいっと白い卵が突き出された。
「ふええ。あの、アヒルさん。それも1点ですよ」
いつも一緒のアヒルちゃん型のガジェットにそう告げるけれども。ガジェットは、黄色いくちばしでぐいぐいと、白い卵をフリルに押し付けるのを止めない。
困り顔のまま、仕方なく白い卵を受け取ったフリルがそれを入れた籠の中には、やはり白い卵しか入っていなかった。
「どうして、白い卵しか探さないのですか?
もっと模様があって綺麗な卵を選べばポイントも貯まるのに」
模様があれば、特別な感じに綺麗ならば、というイベントのルールを思い出しながら、おずおずと告げるフリルだけれども。
ガジェットは胸を張るように堂々と、自信満々にガアと鳴くばかり。
「白じゃないと卵じゃない、ですか? 頑固ですね……」
フリルは諦めたようにため息を1つ吐くと。
「でも、白には『誕生』とか『祝福』って意味が込められてるんだよ」
「そうそう。悪い色じゃないよ」
「ふぇ?」
突然かけられた楽し気な声に振り向くと、そこには影法師怪人達がいた。
「ふえええ!?」
唐突な邂逅に、人見知りなフリルは反射的に大きな帽子の広いつばを引き寄せて、きゅっと身を縮ませるけれども。
「あとは、ピンクが『成功』でしょ。オレンジが『強さ』。
それから青が『健康』、緑が『繁栄』だよ」
「赤いのは『希望』や『幸福』って意味があるんだって」
「諸説あり、だけどね」
影法師怪人達は気にせずに、イベントを盛り上げようとしているかのように、次々とイースターエッグの豆知識を披露していく。
そして影法師の黒い手を広げると。
「いろんな色があるけど、白が好きなんだね」
「だったら、こっちにおいでよ。真っ白で立派な卵があったよ」
「そうそう。こーんな大きな白い卵」
「こっちこっち。こっちに来たらもっと楽しいよ」
フリルが興味を持つように工夫しながら、周囲に比べて地味な建物へと誘いかける。
その思惑通りに、フリルはぱあっと顔を輝かせて。
「アヒルさん、アヒルさん。行ってみませんか?」
ガジェットへ振り返るけれども。
「……って、早すぎですよ、アヒルさん」
ガジェットは既に、影法師怪人の1人の頭上に乗っかって、あっさりと建物の中へと入っていっていた。
「もう、おいていかないでくださ……」
慌てて後を追ったフリルも、看板も何もない建物の入り口をくぐりかけて。
そこに飛んできたのは、マヨネーズ攻撃。
「ふええ!?」
汚れてしまった服を見下ろし、困惑するフリルは。慌ててユーベルコード『身嗜みを整えるお洗濯の魔法』を発動させ、ぽんぽんっと軽く汚れを払うような仕草で、マヨネーズ汚れを落としていく。
元通り綺麗になった服に、フリルはほっと安堵の息を吐くけれども。
「あれ? この展開、美白の魔法だったら汚れずにすみましたよね」
汚れや攻撃を防ぐ別のユーベルコードに思い至ると。
キマイラフューチャーという場所も併せれば、連鎖的に思い出が蘇る。
「……という事はあのテレビウムさんがここにいるのですか?」
それは、よく事件に巻き込まれ、何度も助けたことで知人となった少年。
チョコレートにビームに洗脳光線にと、数々の『汚れ』や『有害な光』から守ったその姿を、また今回もなにかと思いながら脳裏に描き出し。
「アヒルさん、あのテレビウムさんを見かけましたか?」
尋ねようとガジェットをまた見れば。
足場にしていた影法師を、つついて撃退しているところで。
隣へ隣へと、黒い影を倒しながら、ガジェットは建物の奥へと進んでいく。
赤い瞳を瞬かせて、しばしその様子を見つめていたフリルは。
白い後姿が小さくなったところで、はっと気づいて駆け出した。
「待ってくださいよ、アヒルさん」
大成功
🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)とエッグハント
まつりん、たまごが沢山あるんだって
ふふ、わたしたちの家と一緒
たまこ(飼い鶏)のたまごは白だけど、ここには色んな柄があるみたい
茂みを探せば花柄のたまご、時計の下には数字の書かれたたまご
噴水には…あ、水の中に白たまご
まつりん、いくつ見つけた?
わたしはこれだけ
籠の中を見せ合い、写真をパチリ♪
ゆで卵も見つけたよ、一緒に食そう
…んむ?たまごにはこしょう?(怪人達に振り返り
…まあ良し。お誘いはお受けさせて頂く
たまごにマヨ、たまごにお醤油…
わかる。美味しい。でも、
わたしはゆで卵はお塩、生たまごには白ご飯
推しの違いには埋められない溝がある
残念ね
【鎌鼬】でさくっと倒す
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とー。
今日は、タマゴの日なんだってー!
小さいのから大きいのまで、色々あるみたいだね。
そういえば、ソリとフワちゃん(?)たちも来てるんだっけ。
どのあたりにいるかな、聞いてみよっと。
ねえねえ、そこの真っ黒な兄ちゃん。
テレビ子とマスク子とライオンさんと銀ネコさん、見なかった?
あっち? そっか、ありがとー♪
うーん、普通のしか見つからないなあ。
ヒョウ柄とか、ヒマワリ柄とか。
アンちゃん、ゆで卵見つけたの? スゴイじゃんー!
突然マヨネーズが飛んできた!
如意な棒に刺したゆで卵で受ける!
もぐもぐ。オイシイ!
白ごはん欲しいなー♪
調味料隊倒したら、主食隊出てこないかなっ♪(拳をどーんと)
「まつりん、たまごが沢山」
「今日は、タマゴの日なんだってー!」
静かな表情の中で黒瞳をキラキラと輝かせる木元・杏(メイド大戦・f16565)と、いつものお日さま笑顔でにぱっと笑う木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)。
イベントへの期待をそれぞれに表しながら、双子の兄妹は公園に足を踏み入れた。
人工芝が敷き詰められ、高低様々な形の木を偽物だったり植木鉢付きの本物だったり生やしながら、ポップでサイバーパンクな目立つ街灯やらベンチやらを置く中で。そこここにころんと転がって見える幾つもの卵。
そこを巡るキマイラ達の持つ籠の中にも、卵が詰まっていて。
「小さいのから大きいのまで、色々あるみたいだね」
それを見回した祭莉が、おおー、と感心する。
「ふふ、わたしたちの家と一緒」
杏が思い出しているのは、木元村で飼っている雌鶏・たまこ。
毎朝、美味しい卵かけご飯をくれる凶暴な存在に、ふわりと微笑んで。
「でも、たまこのたまごは白だけど、ここには色んな柄があるみたい」
近くの茂みにそっと手を入れれば、オレンジ色を背景に細かな白い花が散りばめられた美しい卵。籠に転がし、時計の下を覗き込めば、水色に青字で数字の書かれた卵。
どんどんカラフルになっていく籠の中に、ふふっと楽し気に笑いながら。
今度は何色だろうと覗き込んだ噴水の水の中には、白い卵が沈んでいた。
楽し気な杏の様子に、祭莉の笑顔もまた明るく弾けて。
「そういえば、ソリとフワちゃんたちも来てるんだっけ」
思い出したようにきょろきょろと辺りを見回す。
テレビウムの友人、ソリ・テュードはともかく、もう1つの名前に心当たりのなかった杏が、きょとんと首を傾げるけれども。
「どのあたりにいるかな? 聞いてみよっと」
気にせず祭莉は近くの人影に突撃していった。
「ねえねえ、そこの兄ちゃん。
テレビ子とマスク子とライオンさんと銀ネコさん、見なかった?」
尋ねる祭莉の言葉が示すのは、ソリとその友人達の特徴。
でも、友人達はあんな名前だったっけ? とまた杏は首を傾げるけれど。
賑やかな女友達を同じく賑やかな知人の名で表現して杏を混乱させた祭莉は、気にせずに真っ黒な影のような人影が指し示す比較的地味な建物を見て頷いた。
「あっち? そっか、ありがとー♪」
影法師を被ったような相手に、にぱっとお礼を言った祭莉は。
「アンちゃん、あっちだって。
タマゴ探しながら行こう」
言いながらずんずんと進み始めた。
とはいえ、提案通り、祭莉も杏も卵を探しつつの道行きだから。
その速度は決して早くはない。
でもその分、次々と卵を見つけられていたから。
「まつりん、いくつ見つけた?
わたしはこれだけ」
はにかみ笑顔で杏は籠を傾けて、見せた中には色とりどりの卵が詰まっていた。
「おいらはこれくらい。
うーん、普通のしか見つからないなあ」
そこに並べられた祭莉の籠にも、黄色に細かな黒い模様が散ったヒョウ柄とか、黄緑色背景に大きく咲いたヒマワリ柄とか、ポップで可愛い絵の描かれた卵が転がっていた。
……イースターエッグとしては普通じゃない柄だと思いますが……
隣合う2つの籠を、杏は写真にパチリ♪と収めて。
そういえば、と自分の籠の中から選び手に取ったのは、キリッとした彫りの深い顔が渋く描かれた白い卵。
「ゆで卵も見つけた。一緒に食そう」
「アンちゃん、スゴイじゃんー!」
ハードボイルドな卵に祭莉も大喜びで拍手喝采。
早速、杏は渋い顔をコンっと割って、殻をむき始めた。
そこに。
「卵にはコショウだよね?」
「……んむ?」
唐突にかけられた声に顔をあげると、そこに居たのは真っ黒な影法師。
そういえば周りでちらほらと、イベントを盛り上げるようにいたな、と思いながらも、杏はこくりと首を傾げてみせて。
「ああ、違う違う。お誘いに来たんだった」
はっと思い直したように、ぱたぱた手を振る影法師を、見た。
「そうそう。もっともっと楽しい事へのお誘い」
「こっちにあるんだよ」
「こっちにおいでよ」
誘いかける影法師怪人を杏はじっと見て。
振り向いて祭莉に頷くと。
「まつりん」
「うん、アンちゃん。行こう」
祭莉も短く応えて、誘われるのを待っていたと悟られないように、双子は案内されるままに歩き出した。
もちろん、剥いたばかりのゆで卵を、半分こして分け合いながら。
もぐもぐする杏の様子に、影法師怪人達がそわそわするのをちらりと見ながら。
杏と祭莉は、最初から向かっていた、周囲に比べると地味な建物に近付く。
そのうちに、痺れを切らしたかのように、影法師の1体がまた問いかけた。
「それで、卵にはコショウでしょ?」
「いやいや、マヨネーズだよ」
「断然、しょうゆだ。決まってるだろう?」
それに対抗するように、他の影法師怪人達も声を上げるから。
「わかる。美味しい」
深く深く杏は頷いて、肯定の意を見せた。
影法師を被って顔が見えないはずの怪人達が、一気に笑顔になった気がする中で。
「でも」
杏は、きっぱりと告げる。
「わたしはゆで卵はお塩、生たまごには白ご飯」
影法師怪人達に衝撃が走った。
愕然としている姿に、杏は、仕方ないこと、と首を横に振り。
「推しの違いには埋められない溝がある」
食べ終わったゆで卵の代わりに手にしたのは、うさ印の護身刀。
「残念ね」
ぽつりと呟いた杏は、それまでの大人し気でおっとり気味の動きから一転、素早く影法師怪人達の間を通り抜けて。すれ違いざまに刃を翻す。
まるで鎌鼬のように、切られたことすら気付かないまま、消えていく影を見ていると。
そこに突然、マヨネーズが飛んできた。
「それはこっちー」
杏との間に割り込んできたのは、祭莉。
如意な棒に刺したゆで卵を、程よくマヨネーズで味付けして杏を庇うと。
早速もぐもぐ。
「オイシイ!」
「だろう? やっぱり卵にはマヨネーズだ!」
影法師怪人のうち、流線形の頭部を持つものが、どーんと胸を張りました。
けれども祭莉は、それに賛同するでもなく否定するでもなく。
「白ごはん欲しいなー♪」
お代わりを要求しながら拳を振るい。
「調味料隊倒したら、主食隊出てこないかなっ♪」
わくわくした様子で、全身のバネを使った灰燼拳を繰り出していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『コスプレ撮影怪人アングラーロー』
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POW : ここがコスプレ会場だーーーーーーー!!
【コスプレ化光線とポーズ指定催眠音波 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : お前は最高のコスプレイヤーだ!(フラッシュ)
【強制コスプレ光線 】【ポーズ指定催眠音波】【撮影されると気持ちよくなる催眠】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 良い! 実に良いアングルだ!
【カメラのレンズ 】から【強制コスプレ光線】を放ち、【ポーズを取らせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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周囲に比べれば地味と評価される、充分にポップでパンクな建物の中は。
なんか変な盛り上がりを見せていた。
「いっちばーん。コート・シップだよー」
陽気な声を上げて、笑顔でライトで照らされた中に現れたのは、ふわふわした銀色の髪を揺らすネコキマイラな少女。
その姿は、もこもこでハイネックだけどノースリーブ、もこもこだけどお腹も見えてるホットパンツ、という暖かいのか涼しいのかよく分からない白色の服に。もこもこでぶ厚そうだけど丈は短い白い手袋と白いブーツ。
そして、楽しそうに揺れるネコ耳の間に立つのは、もこもこの白いウサギ耳。
色合いは髪色とかにも合っているけれども。
「……動物耳2種類ってどうなんだろう」
テレビウムのソリはぽつりとそう呟いていた。
「うむ。二番、デイン・ティだ」
続いてライトの中に進み出たのは、体格のいいホワイトライオンのキマイラ。
キリッとした獣顔は、いつもは白いたてがみに囲まれているけれども。今はビビッドなピンク色の、長めな丈のパーカーについたフードに隠されていた。
そのフードの両サイドについているのは、垂れたウサギ耳。
さらに、パーカーの中央には、どっかで見たようなピンク色でギザギザ口のウサギの顔が、どーんとプリントされている。
男にピンクという組み合わせながら、周囲のポップさに合ったカッコいいストリートファッションに仕上げられていたけれども。
「……ライオンらしさゼロ」
またソリはぽつりと呟く。
「3番っしょ。リディ・キュールっしょ」
最後に飛び出てきたのは、ヒーローマスクの少女。
白いエプロンが映える黒地のメイド服は、襟元に袖口に裾にと数多のフリルを揺らし。実際にこれでメイドをやったら邪魔じゃないだろうかというくらいのボリュームで飾られていたけれども、観賞用としてはとても可愛い。そして、これまでの流れから創造できた通り、ヘッドドレスにはウサギ耳が立っていて。つまりウサ耳メイドさん。
しかし、そもそもの少女の顔を全て覆っているマスクが、ジャングルの奥地で怪しい儀式でも行っていそうなデザインだったから。
「…………」
もはやソリは無言だった。
けれども、それらの服装を用意した者には大満足だったらしく。
「良い! 実に良い! どのウサギも素晴らしい!
それじゃあちょっとポーズ取ってみようか!」
大興奮でカメラを構えて……いや、カメラな頭部を向けて、早速カシャカシャとシャッター音を響かせ始めた。
それは、コスプレ撮影怪人『アングラーロー』。
ソリ達を、どう見ても撮影スタジオにしか見えない場所へ誘い込み、何だか悪い事を企んでいるらしいオブリビオンなのだけれども。されたことといえば、強制コスプレ光線とやらで抵抗する間もなく勝手にウサギな衣装に着替えさせられたことぐらいで。
友人達は楽し気に、指示通りにポーズを取ったり動いたりしているし。怪人も撮影に夢中になって、別に危害は加えてこないし。
「良い! 実に良い! イースター最高!」
「ねーねー、いーすたーって何だっけー?」
「うむ。何やら美味しそうな響きだな」
「きっと卵を食べるイベントっしょ。だから、卵がいっぱいだったっしょ」
「おっ。カラフルなイースターエッグ持ってるね。
それじゃ今度は、それをこっちに見せてみようか!」
撮影のために用意された多くの照明器具、そのうちの1つの陰でぽつんと佇んで、ソリは盛り上がる皆をぽかんと眺めていた。
「……僕、どうすればいいのかな」
そういえば、何故かソリだけはコスプレさせられてませんね。
木霊・ウタ
有無や衣装は全てお任せ
心情
…随分と楽しそうだけど
怪人に改造して世界征服なんて
させやしないぜ
ソリ
俺達は怪人を止めるけど
ソリが何をしたいのか
心のまま自由に、な
一緒に楽しんでもいいし
友達をコーディネートしてやってもいいし
もちろん止めたいならそれでも
自分の物差しで動いていいんだぜ
其が力強き祝福か
吹き荒ぶ破壊かは相手が決める事
迷わず吹き抜けろ!ってな(ぐっ
戦闘
敵攻撃を爆炎をスラスターのように使って回避
&高熱で空気を歪めて光線を捻じ曲げる
ワイルドウィンド奏で
メロディと共に
内から零れ出し膨れ上がる紅蓮が
衣装を焼却しカメラを灰に
事後
鎮魂曲を奏でる
楽しい撮影会だったろ?
思い出を胸に海で静かな眠りを
1人佇むソリの肩を、ぽんっと叩く力強い手があった。
振り向いた先でにっと笑っていたのは、木霊・ウタ(f03893)。
「ソリは何をしたいんだ?」
その問いかけに、ソリははっとする。
「俺達は怪人を止めるけど、そのために来たけど。
ソリはソリで、その心のまま自由に動いていいんだ」
快活に笑いながらも、どこか優しく見守るような瞳を見返して。
紡がれる言葉にソリは聞き入って。
「一緒に楽しんでもいいし、友達をコーディネートしてやってもいいし。
もちろん止めたいならそれでも」
そうだ、と思い出す。
待っているだけだったから、独りでいた自分を。
こうして声をかけてもらえるようになって、友達に誘われるようになったけれど。
待っているままではきっとまた、独りになってしまうと思った自分を。
思い出して。
変わらなければと決意した、その気持ちを改めて抱いて。
「自分の物差しで動いていいんだぜ」
ぐっと拳を握って見せるウタの頭で、ウサギ耳が揺れた。
既にコスプレ撮影怪人『アングラーロー』のコスプレ光線の影響をばっちり受けてしまっていたウタは、いつもの冒険者な服装ではなく。パステルカラーに彩られた、ふんわりフリルの春らしいワンピース。もちろん後ろにはウサギ尻尾。
仁王立ちする足も、水玉柄のタイツに覆われ。動きやすそうな丈の短いスカートは、フリルとレースでふんわり揺れ。短く闊達な髪を止めるヘアピンと、胸元を飾る大きなコサージュには、小さな卵が可愛らしく添えられている。
(「……僕、どうすればいいのかな」)
あっさり女装をさせられているウタに、それに気づいていないのではと思えるほど全く気にしていない姿に、ソリはまた同じことを思っていた。
その戸惑いにすら気付いているのかいないのか。
ウタはもう一度、ソリに笑いかけると。
「其が力強き祝福か、吹き荒ぶ破壊かは、相手が決める事。
迷わず吹き抜けろ! ってな」
言いながら、その身に地獄の炎を纏うと、ウタはアングラーローへと飛び出した。
「むむっ。これもなかなか。
男の娘もいいけれど、いかにも女装、っていうのもコスプレの醍醐味だよね」
迎撃の代わりに、勝手な賛辞とカメラな頭に光るレンズが向けられて。
シャッター音が響く中で、ウタは警戒して一度ひらりと身を躱す。
「良い! 実に良いアングルだ!」
その動きで揺れたひらふわなスカートに。ぴこんと跳ねたウサギ耳に。
アングラーローのテンションが上がり、レンズから放たれた光線が、ウタにさらなるポーズを取らせようと迫るけれども。
ギターをかき鳴らし、激しい旋律を奏でたウタは、そのメロディと共に内からあふれ出した紅蓮を膨れ上がらせ。高熱で歪められた空気が光線を捻じ曲げた。
「随分と楽しそうだけど、怪人に改造して世界征服なんてさせやしないぜ」
不敵に笑って見せながら、ウタがその決意を宣言するけれども。
「え? 改造? 世界征服? 制服?
……そうか! この世界を征服したならば、皆制服でコスプレで撮影し放題にできる、ということだな! 天才か君は!」
やっぱりどこかズレてるアングラーローは、ウタにぐっと親指を立てて見せ。
「それなら制服で世界征服しよう!」
さらにコスプレ光線を乱れ撃った。
ウタは、爆炎をスラスターのように利用して、その全てを軽やかに回避し。
避けながらもアングラーローとの距離を詰めていくと。
迫り来る新たなコスプレ衣装を燃やしながら、紅い蝶に、ウサギ耳ドラゴンに、メカな鶏に囲まれていたそこにも炎を放って。
「楽しい撮影会だったろ?」
そのカメラを灰にする勢いで包み込みながら、消えゆく姿を見送った。
「思い出を胸に、海で静かに眠りな」
大成功
🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】
わぁ、立派なコスプレスタジオ
いっそこっちを前面に押し出して人を集めればいいのに
うーわー(棒読みで光線食らい
着せられたのはまるでアリスラビリンスに居そうな
時計うさぎ風のお洒落な衣装
装飾品の懐中時計と黒いウサ耳
へぇ、普段こんな格好しないから新鮮
あっはははは、梓ってば可愛いー
着ぐるみを触ってもふもふを堪能してみたり
怪人と並んでスマホで写真に収めてみたり
これあとで待ち受けにしようっと
せっかくコスプレ写真を撮るならさ
こういうエフェクトもあった方がより絵になると思わない?
UC発動し、蝶の形の花弁をひらひらと飛ばし
怪人のご希望通りポーズ決めてあげる
その間に花弁が少しずつ怪人の命を奪っていくけどね
乱獅子・梓
【不死蝶】
突き止めた悪の組織の拠点に乗り込んでみれば…
なんだここ。なんだここ(2回)
強制的にコスプレさせてくる光線とは実に恐ろしいが
当たらなければどうということはな…ギャー!?
戦争の幹部かこいつは?というような容赦ない先制攻撃で
敢えなくコスプレ光線を喰らう
着せられたのは
真っ白もこもこウサギの着ぐるみ
目元にはしっかりサングラス
綾はやたら気合が入っているのに
何で俺だけこんな扱い!?
え?ポーズ?こうか?(片手を上げて
ハッ、身体が勝手に…!?
綾まで一緒に撮るんじゃない!
UCでドラゴンたちを召喚
お前たち!あいつを黙らせろ!
次々と怪人にタックルしていくドラゴン
何匹かは光線喰らってウサ耳生えていたが…
影法師に案内されて辿り着いた悪の組織の拠点は、撮影スタジオだった。
「なんだここ」
思いもよらなかった光景に、乱獅子・梓(f25851)はそれしか言えない。
数多の機材が並ぶ中、眩いライトが幾つも灯って。
照らし出されているのは、ふわもこウサギなネコキマイラに、ビビッドピンクなウサギフードパーカーのライオンキマイラ。ウサ耳メイドなヒーローマスクと、体操服でうさぎ跳びする大きな帽子の少女。
何とも評価し難い、とりあえずウサギというキーワードが同じ、でも統一感のない格好をした者達を目の当たりにした梓は、照明器具の側に隠れるように佇むテレビウムと同じように途方に暮れるけれども。
「良い! 実に良い! イースター最高!」
コスプレ撮影怪人『アングラーロー』は、嬉々としてシャッターを切り続けていた。
「なんだここ」
もはや他の言葉を失くしたかのように、力なく繰り返す梓。
「わぁ、立派なコスプレスタジオ」
その横からひょっこり覗き込んだ灰神楽・綾(f02235)は、いつもの糸目を楽し気に細めて、にこにことスタジオを見回す。
「いっそこっちを前面に押し出して人を集めればいいのに」
ねぇ? と同意を求められても、どうしろというのか、と梓は困惑するばかり。
固まった梓の両肩で、炎竜の焔と氷竜の零が、不思議そうに首を傾げていた。
そうこうするうちに、目の前で黒髪の少年がコスプレ光線に当たり姿を変える。
「強制的にコスプレさせるのか……」
ようやく、目の前の光景がどう出来上がったのか理解した梓は、その恐ろしさにゾッとしたように呟くけれども。
(「当たらなければどうということはない……」)
そう思った瞬間。
立ったフラグに即座に反応したかのように、アングラーローが振り返った。
「ここがコスプレ会場だー!」
「ギャー!?」
「うーわー」
放たれたコスプレ光線に包まれて、2人は悲鳴を上げる。
綾の方は、お約束だから言わないと、と言わんばかりの棒読み感がありますが。
そして恐る恐る目を開けた梓が見たのは。
「へぇ、普段こんな格好しないから新鮮」
アリスラビリンスに居そうな時計ウサギな恰好になった綾だった。
タイトな黒いスリムパンツに、裏地が紅いチェックの長めの燕尾服を揺らし。腰に、胸元に、さり気なく細かな銀の装飾品を散らし、手に持つのは金色の懐中時計。そしてもちろん頭には、髪色と同じ漆黒のウサギ耳が揺れている。
いつもと違うスタイルだけれども、いつものようにお洒落でカッコいい。かけたままの紅いサングラスも似合う、そんな姿に少しだけ梓は見惚れて。
はっと気づいて自身を見下ろす。
「あっはははは。梓ってば可愛いー」
楽しそうに笑う綾が指をさして示したのは、真っ白なウサギ着ぐるみだった。
手も足も身体も全てひとつなぎのもこもこに覆われて、フードのようにもこもこと銀色の髪を隠すように覆われた頭部には、当然、もこもこのウサギ耳。自分の後ろは見えないから梓は気付いていないけれども、ちゃんとお尻にもこもこウサギ尻尾もついている。
ここだけはいつも通りの黒いサングラスの下で、梓の瞳が見開かれて。
「何で俺だけこんな扱い!?
綾はやたら気合が入っているのに!」
「えー。梓も気合十分だよ?」
「その通り! 気合ばっちり! はい、ポーズ!」
「え? ポーズ? こうか?」
いつの間にやら間に乱入していたアングラーローの指示に、梓は片手を上げて頭の後ろへと折り曲げて、キリッと笑っていた。
「良い! 実に良い!」
「ハッ!? 身体が勝手に
……!?」
眩く瞬いたシャッターの光に、我に返る梓。
そこに、興味津々な綾が近づいて。
「わぁ、すごい。見た目以上にもふもふだよ梓」
「いや、確かにもふもふだがそう笑顔で堪能されると……
って、そんなとこ触るな綾!」
「おおっ、良いね! そういうのも私は好物だよ!
じゃあそのまま並んで撮ってみようか!」
「やったー。ほら、梓、笑って笑って」
「笑えるか!」
「折角だから、俺もスマホで撮りたいな。
ねえねえ、今度は君と梓で並んでよ」
「え? 私が撮られる側?
いや私カメラの怪人だし、撮る方がいいんだが……」
「はい、ポーズ」
「撮られたし!」
「ハッ!? また身体が勝手に!?
……って綾まで一緒に撮るんじゃない!」
「あっはははは。これあとで待ち受けにしようっと」
「するな!」
わちゃわちゃと状況が混乱していく。
あ、ちなみに綾が触っていたのは梓のウサギ耳でした。
どこだと思ったんですか? んん?
「あ、そうだ。せっかくコスプレ写真を撮るならさ、こういうエフェクトもあった方がより絵になると思わない?」
楽し気な騒ぎの中で提案した綾は、ユーベルコードで赤い蝶を飛ばす。
それはよく見ると花弁で出来ていて。
ひらひらと儚く美しく、時計ウサギの周囲を彩った。
「良いね! 良いね! そしたらこう、懐中時計を持ってみようか」
「ん? こうかな?」
「そう! そこだ! 素晴らしい!
次はちょっとこっちを見て笑ってみよう!」
「はいはーい」
無数の蝶が舞う中で、次々と瞬くシャッターの輝き。
指示通りにポーズを決めながら、綾はその蝶の羽ばたきで少しずつアングラーローの生命力を削り、気付かれぬままにその命を奪っていく。
このまま静かに終わりを迎えられればいいかな楽しいし、と思っていた綾だけど。
「お前たち! あいつを黙らせろ!」
ものすごい形相で梓がドラゴンを喚び出した。
そのまま次々とアングラーローへとタックルしていくドラゴンを、あーあ、と少し残念そうに眺める綾。
しかし、やられっ放しじゃないアングラーローのコスプレ光線で、何匹かのドラゴンにウサギ耳が付けられたのを見て、面白そうに笑った。
「ねえ、焔と零も突撃してウサ耳になってみない?」
「誘うな!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、今回は偶然が重なっただけだと思いましたが、やっぱりあのテレビウムさんがいました。
美白の魔法を用意していなかったから、こんな格好にさせられていますし。
というより、なんで私は体操服でうさぎ跳びをさせられているんですか?
しかも、私の分のうさ耳はアヒルさんが装着しているから、セルフうさ耳ってどういうことですか?
それにアヒルさんも怪人さんに、ウサギの気持ちが足りないからうさぎ跳びをさせようなんて告げ口してるし(これは私がうっかり翻訳してしまったのも悪いんですけど)。
こうなったら、ユーベルコードを封じて油断している二人に恋日記からの衝撃?的な出会いから始まる恋?物語でお返しです。
「ふええ、やっぱりあのテレビウムさんがいました。
今回は偶然が重なっただけだと思ってましたが……」
照明近くでおろおろしているソリを見つけたフリル・インレアン(f19557)は、納得したような困ったような、そんな複雑な表情で大きな帽子の広いつばを引き寄せた。
自然と俯き気味になった視界に映るのは、いつもの白いノースリーブのブラウスと、青いふんわりしたスカートではなく。
「……あのテレビウムさんの時は、美白の魔法を用意しないとダメですね」
吸汗性と伸縮性のある柔らかな生地で作られた半袖の白いTシャツに、前時代的な青いブルマという、賛否両論あれどとりあえず運動に適した服装。
それは、悪の組織の拠点であるはずの、どう見ても撮影スタジオなここに足を踏み入れた瞬間、先制攻撃かと思うようなタイミングで放たれた強制コスプレ光線の効果だった。
胸につけた大きなゼッケンに『ふりる』と書かれたその恰好は。
「でも、なんで私は体操服なんでしょう?」
ウサギらしさもイースターらしさも、欠片もないものだったから。
どういうことかと困り果てて、いつも一緒のアヒルちゃん型のガジェットに、答えを求めるような視線を向けると。
「……アヒルさん。それ、私のうさ耳だと思うんですが」
その頭にウサギ耳が生えていました。
どうやら、一緒に強制コスプレ光線を受けたフリルとガジェットに、ウサギコスプレな衣装が分かれてしまったようです。
……うさ耳体操服ってコスプレもどうかと思うところですが。ウサギ耳がなければ、ただのUDCアース辺りの学校の体育の時間でしかないわけで。
赤い瞳に非難の色を混ぜるフリルに、ガジェットは胸を張って一鳴きすると。
「セルフうさ耳? どういうことですか?」
その言葉を理解したフリルが復唱しつつ首を傾げる。
「つまり、こう、両手を頭の上に立てて、耳のようにするということだな」
「ああ、なるほど……って、ふえええ!?」
添えられた解説に頷きかけて、コスプレ撮影怪人『アングラーロー』が話しかけていたことにワンテンポ遅れて気付いたフリルは、慌てて距離を取りながら、また帽子を引き寄せて縮こまった。
おや? と不思議そうにフリルを眺めたアングラーローだが。
その足元に残されていたガジェットが、怪人に向かってがーがー鳴き出す。
「ん? 何か言っているようにも思えるが……」
「えっと、ウサギの気持ちが足りないからうさぎ跳びをさせよう、って言ってます」
「確かに! それもアリだな!」
「ふえええ!? うっかり翻訳しちゃいましたぁ」
慌てるフリルだが時すでに遅し。
嬉々としてアングラーローが放ったポーズ指定催眠音波によって、両足を揃えてしゃがんだフリルは、ぴょんぴょんとうさぎ跳びをさせられ始める。
もちろん両手は頭の上で、ぴこぴこセルフうさ耳です。
「良い! 実に良い!」
「ふえぇ……」
シャッターをきりながら、さらに、撮影されると気持ちよくなる催眠を放つアングラーローだけれども。
旧式トレーニングで必死なフリルはその影響を受けなかったから。
油断しているアングラーローを、フリルはぐっと頑張って可愛く睨んだ。
「こうなったら、恋日記でお返しです。
こ、恋はどんな障害だって乗り越えるんですから」
強化のユーベルコードを経て発動させるのは、衝撃?的な出会いから始まる恋?物語。
まるで食パンを咥えて曲がり角を飛び出す少女のように。
勢いよく跳び出したフリルは、アングラーローに出合い頭の突撃を食らわせて。
「恋が生まれる予感……!」
その瞬間すらシャッターをきりながら吹っ飛ばされていく怪人と共に。
衝撃でウサギ耳が取れたガジェットも、ぽーんと面白いくらいに飛んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
あのふわふわはコート
ソリは…、照明器具とお間違いされてる感…
ところでまつりん、こすぷれって何?
ご用意された服を着ればいい?
ん、ではわたしもこう、びしっと決まるこすぷれを行い撮影会に挑む
(びしっと)
うっすらピンクのうさぎ着ぐるみ、おしりのふわ丸のしっぽ、キュート
うさぎだからウサミミも致し方なし
手にはたまごを沢山盛って
ふふ、さあ撮影かもん
コスプレはする(した)
ポーズも決めた
撮影されると気持ちよく……、んん、ちょっと違う
だって、撮影される側だとわたしがまつりんのかわいいを堪能出来ない
わたしが撮影するから、カメラお貸しして?
【鎌鼬】ですぱんとカメラ斬り取る!
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とー。
あれ、ソリ。何してるの?
ソリも一緒にウサしようよー?(いそいそ)
前にドレスは着たよね……今回はどうするー?
アンちゃんみたいに、着ぐるみにしてみるー?
(うさぐるみ)(トリぐるみ)(ヒマぐるみ)(いろいろ取り出し)
とりあえず、ウサ耳してみない?
怪人さんー、コッチも撮影ヨロシクー!
だいじょぶだいじょぶ、カッコカワイイ!
おいらとアンちゃんも一緒に写るから! ねっ♪
や・ぶ・さ・か・ツインぷらすワン!(わんこのポーズ)
いえーい♪
ほらほら、友達とも一緒に撮ってもらうといいよー♪
おいらたちは撮影会で忙しいから、攻撃はメカたまこに任せよっと♪
後はヨロシクーっ♪(コケコケコケ)
撮影スタジオにしか見えない悪の組織『シャドウパラダイス』の拠点に乗り込んだ木元・杏(f16565)は、見覚えのある顔ぶれに目を瞬かせた。
「あのふわふわは、コート?」
ネコキマイラな少女の名を呼ぶその声に疑問符が付くのは、その頭に揺れているのが、ネコ耳だけではないから。
たてがみを隠されたライオンキマイラや、メイド服を着ているヒーローマスクの頭にも似たようなウサギ耳が揺れているのを順に見てから、ようやく、呼んだ名が合っていたのかと安堵し頷いた。
「ソリは……?」
そして、彼女らと友人であるテレビウムを探してきょろきょろすると。
「……照明器具とお間違いされてる感」
撮影用のライトのスタンド脇に立って、そのテレビな画面を煌々と光らせている姿を見つけて、ぽつりと呟く。
黒髪の少年に何やら話しかけられている様子に、木元・祭莉(f16554)も気が付いて。
「あれ、ソリ。何してるの?
ソリも一緒にウサしようよー?」
元気に駆けよると、戸惑うその手を取って、光の当たる場所へ引っ張り出した。
「前にドレスは着たよね?」
「うっ……」
「今回はどうするー?」
さらりとウェディングフェスでの話を持ち出す祭莉に、気まずく目を反らすソリだけれども、そんな様子を気にせずににこにこ笑いで問われて。
「ところでまつりん、こすぷれって何?」
そこにひょこんと杏が疑問を投げかける。
「ええとね、着ぐるみを着ること!」
「ん、わかった」
おひさま笑顔で答えながらウサギの着ぐるみを手渡せば、疑うことなく頷いた杏はそれを受け取って。
ふんわりとしたうっすらピンクに全身を包み込み、おしりのふわ丸しっぽもキュートな姿で再登場する。
「うさぎだからウサミミも致し方なし」
何かに納得したように、びしっと決めれば頭で揺れるふんわりウサ耳。
「おいらも!」
いつの間にか、髪色に近いうっすら赤茶なウサギ着ぐるみに、くるんと姿を変えた祭莉は。にこやかにソリに向き直ると。
「それで、ソリはどれにするー?
アンちゃんと同じうさぐるみの他にも、トリぐるみにヒマぐるみにいろいろあるよー」
何故そんなに持っているのかと聞きたくなる程に着ぐるみを並べていく。
「ええと……」
おどおどとそれらを見つめるソリに、先ほどかけられた声が蘇った。
『自分の物差しで動いていいんだぜ』
流されるままじゃなくて、自分から動いていかなきゃと。
そう思ったことを思い出して。
頑張らなきゃと決意して。
でも、いきなり着ぐるみ選びはさすがにハードルが高くて、またソリは戸惑う。
その困惑を感じ取ったのか、祭莉はにぱっと笑いかけて。
「とりあえず、ウサ耳してみない?」
そのテレビな頭に、ひょこんとウサギ耳を取り付けた。
一瞬状況が分からず固まってから、ソリはようやく変化に気づき。
「……ええええ!?」
「だいじょぶだいじょぶ、カッコカワイイ!」
あわあわするソリに、祭莉はぐっと手の親指を立ててまた笑った。
「ん。たまごを沢山持って」
そこに杏が、カラフルなイースターエッグをどっさり渡し。
「ふふ。さあ撮影かもん」
「怪人さんー、コッチも撮影ヨロシクー!」
うさぎ跳びをしている少女にレンズを向けていたコスプレ撮影怪人『アングラーロー』に声をかける。
「おお! 何だかコスプレ光線を放ってない相手のような気がするが、良い!」
嬉々としてこちらを向いた大きなレンズに、びくっとソリが怯えるけれど。
「おいらとアンちゃんも一緒に写るから! ねっ♪」
祭莉は安心させるようににぱっと笑い、逃がさないというようにその手を取って。
思いついてこしょこしょと小声で指示。
漏れた声を聞き取った杏も、こくりと頷いたのを見てから。
「よーし。いっくよー」
祭莉の掛け声に3人並んで。
「や・ぶ・さ・か・ツインぷらすワン! いえーい♪」
イースターエッグを抱えて、握った片手を顔の横に構えるわんこのポーズを揃えた。
「良い! 実に良い! お前は最高のコスプレイヤーだ!」
上機嫌にシャッターをきるアングラーローのユーベルコードで、他にもどんどんポーズを取ってどんどん気持ちよくなっていく。
「あー。ソリも写真撮ってるー」
「うむ。楽しそうだな」
そんなこちらに友人達も気付いたようで。
「ほらほら、友達とも一緒に撮ってもらうといいよー♪」
「やったっしょ! みんなで撮るっしょ!」
祭莉のススメもあって、倍人数のグループに増えると、わちゃわちゃし始めた。
杏や祭莉とやったポーズを、ネコキマイラとヒーローマスクとやってみたり。
ライオンキマイラの肩にちょこんと座らせてもらったり。
いろんな組み合わせで。いろんなポーズで。
次々と写真が撮られていく。
向こうにいる別の白い着ぐるみにも忙しくレンズを向けているアングラーローも、ものすっごく楽しそうに、充実した時間を過ごしていたけれども。
「そういえば、怪人倒さないといけないんだっけ?」
ようやく、祭莉はそれを思い出していた。
けれども。
「おいらたちは撮影会で忙しいから、攻撃は任せるね♪」
言って呼び出したのは、戦闘用のニワトリ型ロボの群れ。杏が捕まえてきて木元村にいる野生の雌鶏にとてもよく似たそのロボは、世界一凶暴な部分もモデルと同じで。
「後はヨロシクーっ♪」
祭莉の許可で解き放たれると、白い波のようにアングラーローに襲い掛かった。
そこに、体操服の少女が、出会い頭のハプニングを思わせる勢いでぶつかって、ニワトリではなくアヒルを宙に舞い上げると。
舞台演出のように燃え上がった炎が、アングラーローを炙り出す。
綺麗な紅い蝶がひらひら飛んでいるのも見た杏も、遅れてハッとして。
「撮影されていちゃ、駄目」
撮られる気持ちよさから抜け出して、戦いに来たことを思い出したかのように、キリッと表情を引き締めた。
「だって、撮影される側だとわたしがまつりんのかわいいを堪能出来ない」
……すいません。戦いに来たこと、忘れたままでした。
すらりとうさ印の護身刀を抜き放った杏は、一気にアングラーローに接近して。
「わたしが撮影するから、カメラお貸しして?」
素早い一撃で、すぱんっとカメラを斬り取った。
さらにそこに、ウサギ耳をつけたドラゴンの群れが襲い掛かって。
「コスプレよ永遠なれ……!」
怒涛の攻撃にアングラーローはその姿を消した。
「カメラ……」
残念そうにそれを見下ろす杏。
だがしかし。
「カメラならこっちにもあるよー?」
ネコキマイラの声に顔を上げ、示された先でずらっとカメラが並んでいるのを見ると、ぱあっと顔を輝かせた。
「うむ。衣装もそのままだな」
「他のコスプレもこっちにあるっしょ」
撮影スタジオも用意された機材も、コスプレ光線で着替えさせられた服もそれ以外のコスプレ服も、そこには残ったままだったから。
「それじゃ、撮影会再開ー!」
「ん。今度はわたしが撮る」
祭莉の声に杏がカメラを構えてキリッとして。
「それで、ソリはどれ着る?」
「まつりん、着ぐるみお揃い撮りたい」
「ほらほらソリー。こっちはウサミミドレスもあるよー?」
「うむ。バニーガールもあるな」
「メイドでお揃いやるのもいいっしょ。あ、コートもメイドするっしょ?」
「ソリ。心のまま自由に、な」
「ほら見て待ち受け設定」
「だから消せ!」
「ふええ。アヒルさん、元の服はどこですかぁ?」
スタジオ内の騒ぎは治まることはなく。
楽しいコスプレ撮影は、まだしばし続いていったという。
(「……僕、どうすればいいのかな」)
大成功
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