封神武侠界――人界の都に悪鬼羅刹の魔影あり。
「おらおら! 誰に許可得てこんなところに店広げてんだ、あぁ!?」
「か、堪忍してください!」
市場に響く悲鳴、そして露店を取り囲む悪漢ども!
「堪忍だぁ? 勝手に軒を連ねて俺らに迷惑をかけてるのは手前のほうだろうが!」
うだつのあがらぬ悪漢どもの身体には、「風」と「雷」の文字が刻まれていた。
「そんな……! 都への届け出はたしかに済ませて……」
野菜を並べた露店を切り盛りしているのは、若くもやつれた様子の女性だ。
その身なりと色のなさからして、どこかの寂れた村から出稼ぎに来ているのだろう。
「官憲の連中なんざ関係ねぇ! ここは俺たち『風雷会』の縄張りよ!」
「それも知らずに店を出してやがったのか? いよいよ許せねえな」
悪漢ども……近頃幅を利かせている犯罪結社・風雷会の面々が、女性を取り囲む。
「だったら二度と忘れねえように、その身体にたぁっぷり刻みつけてやるよ」
「あ……ああ……!」
にたにたと残忍な笑みを浮かべ、悪漢がにじり寄る。
へたりこむ女性……だが市場の人々は見て見ぬ振りしか出来ない。
女性を侮蔑している? 否! 彼らの表情は一様にして沈痛そのもの。
風雷会はただならぬ内功を持つ強者どもの集まりであり、軍隊も手を出せぬ。
すでに何人もの犠牲者が、奴らの「教育」で煮え湯を飲まされているのだ。
(可哀想に……だが我々にはどうにも出来ぬ……!)
(ああ、どこかに仁と義に篤き英雄好漢はいらっしゃらぬのか!)
人々はただ身を小さくして、せめてその矛先がこちらに向かぬよう祈るしかない。
天さえもその所業に臆したか、空はにわかにかき曇り暗雲満ちていた……!
同刻、都某所!
「私の『雷霆竜』たちは、今日も甲斐甲斐しく働いてくれているようだ」
少年めいた相貌……しかして迫力は底知れぬ不気味さを醸し出している。
「我ら風雷会が天下を取るのもそう遠くはないかもしれないよ、総帥どの?」
「…………くだ、らぬ……」
御簾の向こうから響く声音は、聞くだけで底冷えしそうなほどである。
「……愚民、など……すべて、殺してしまえばよい……ものを……」
「そうもいくまい。温もりを嫌うあなたの気持ちはわかるがね」
「…………」
これなるふたりこそが、風雷会の重鎮にして強大なる達人なり。
立ち込める陰風は、骨をも凍りつかせるほどに冷めている……!
●グリモアベース:予知者、ムルヘルベル・アーキロギア
「……と、ここまでがワガハイの予知で垣間見えた映像だ」
ムルヘルベルは大きな本を手に、猟兵たちを見渡した。
「先ごろ見つかった新たな世界……その人界で蠢く犯罪結社の討伐を頼みたい。
このまま放っておけば、さらに勢力を拡大し取り返しがつかなくなるやもしれぬ」
武林にひしめく悪漢魔侠、枚挙に暇なし。
どこかにいるやもしれぬ達人を待っていたのでは、埒が明かないのだ。
猟兵たちは識った。都の影で蠢く、邪悪なる緑林白波の悪行を。
ならば動かぬ理由はなし。これは、只人ではなし得ぬ難行ゆえに!
「まずはじめに対処してほしいのは、都で幅を利かせるチンピラどもである。
こやつらは人の姿をしておるが、それは仮初。本性は人型ですらないようだ」
ムルヘルベルは、グリモアを通じて得た情報を猟兵たちに伝える。
「雷霆竜という、雷を操る東洋竜……それが、こやつらの正体である。
騒ぎになれば、あちこちに散っている連中が徒党を組んでくるであろう。
迷惑を被っているのは市場だけではない、手当たりしだいに蹴散らしてやれ」
そうして雑魚を倒していけば、いずれ幹部が出てくる、というわけだ。
「芋づる式にぶちのめし、大元であるオブリビオンを叩きのめす。
……ま、やることはシンプルであるな。所詮は小悪党の群れであるよ」
ムルヘルベルも相当憤っているのか、ふんっと生意気に鼻を鳴らした。
心あるものならば、無辜の人々を苦しめる悪逆非道に思うところあって当然だ。
「とはいえ相手は手練だ、決して油断せず、完膚なきなまでに叩き潰してほしい。
"義を見てせざるは勇なきなり"……まったくもって的確な言葉であろう?」
そう言って、ムルヘルベルは本を閉じた。
「オヌシらの健闘を祈る。派手にかましてこい!」
その言葉が、転移の合図となった!
唐揚げ
天津飯です。今回はめちゃシンプルな純戦シナリオとなります。
中華な都を舞台に、ド派手なカンフーアクションを楽しみましょう!
●プレイング受付期間
ひとまずの期限を【3/29 08:30前後】までとします。
が、あくまで目安です。システム的な締切はおそらくもう少しあとになります。
システム的に参加できる間は随時受付中ですので、お気軽にどうぞ!
第1章 集団戦
『雷霆竜』
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POW : 雷霆竜の嘶き
【激しい稲妻】を降らせる事で、戦場全体が【乱気流内】と同じ環境に変化する。[乱気流内]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD : 龍燐鋼
自身の【強靭な鱗を頼った戦法】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ : 大回転攻撃
【全身をしならせた大回転攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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アルトリウス・セレスタイト
骸の海で竜種の威厳も失ったか
戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
高速詠唱を無限加速し現着後即時展開
適当に多そうなあたりを狙って範囲内に
内から外へは干渉不能、逆は自由な理不尽の檻だ
対象外である現地民や味方の猟兵には影響皆無
精々憤れ
出口は自身に設定
『解放』を通じ全力の魔力を注いで強度と自壊速度を最大化
仮に辿り着くなら無限量の圧を乗せ打撃で始末
※アドリブ歓迎
●屠龍の拳
ざしゃあっ!! と、悪漢が地を転がる。
「な、なんだてめえっ!?」
酒場で狼藉を働く悪漢に割って入ったのは、アルトリウス・セレスタイトである。
その冷たい瞳が、ぎらりとうろたえる悪漢どもを睨んだ。
「さっさと正体を現したらどうだ、一般人はともかく俺に変装は通じないぞ」
「こ、こいつ、俺たちの正体を見破ってやがるのか」
「なめやがって……てめえなんざこのままで十分だあっ!!」
禿頭の悪漢が飛びかかる。武器は袖に仕込まれた暗器だ!
「そうか。ならば死ね」
アルトリウスは驚くほどの瞬発力で後の先を取り、悪漢の突き出した腕をそらす。
そして突き出された腕に肩を添わせるようにして間合いに踏み込むと、
がら空きの悪漢の顎を、掌底で破壊! 悪漢は間欠泉めいて上に吹っ飛んだ!
「ぶげっ!!」
「こいつ、出来る……!」
「言ったはずだ。その身体では一矢報いることすら出来んぞ」
「野郎
……!!」
悪漢どもの身体をバチバチと電光が纏い、その姿が竜身に変身した!
「きゃああああっ!! ば、化物!!」
町娘の叫び! 竜はお構いなしにその巨体で店を吹き飛ばそうとする!
「骸の海で竜種の威厳も失ったか、オブリビオン。そうはさせん」
アルトリウスは即座に『天楼』を展開、敵を捕縛する。
見えざる自壊迷宮が、大回転攻撃による市民への被害を食い止めた。
「ぐっ!? う、動けん……!」
「自壊を待つのも手間だ。このまま叩き潰す」
アルトリウスは敵の虚を突いて接近、逆鱗を看破するとそこへ拳の連打!
「つ、強い! 香主様、お許しを……グオオオオッ!!」
逆鱗から竜の身体の全身にひびが走り、稲妻と血を噴き出しながら爆散した!
アルトリウスは残心もそこそこに、次なる敵を討つため駆け出す……!
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
人に化けて悪事を働くか
音に聞こえし風雷会とやらは、どうやら自らの卑小さに堪えられぬ蛇畜生らしい
白き中華服の出で立ちで現れ、開口一番【挑発】を仕掛ける
視線を惹き付け(存在感・誘惑・おびき寄せ)、被害者が逃げ出す隙を作る
女に言い負かされましたと幇主に泣きつくなら今のうちですよ?
迫る不埒な手を紙一重で躱し(見切り)、関節を極めて(グラップル)、投げ飛ばす(投擲)
本性を現し蛇身を叩き付けてくれば、タイミングを合わせて【カウンター】を狙う
白き稲妻(属性攻撃)を纏った【天霆雷砕蹴】で蹴り弾き、【体勢を崩し】たところへ跳躍
頭部にかかと落としをお見舞いする
風雷会、他愛なし!
面子に泥を塗れば上も出てくるでしょう
●白き英傑、悪を討つ!
風雷会による狼藉は、市場だけでは終わらない。
都のそこかしこに魔手を伸ばし、力なき人々を虐げているのだ。
「よぉ兄ちゃん、悪いな! この娘っ子は戴いていくぜぇ」
「ま、待て! その人を離せぇっ!」
青年は恋人を取り戻そうと手を伸ばすが、別の悪漢がそこに割り込む。
そして青年の腹に蹴りを叩き込み、路地に突き飛ばしてしまった。
「ぐっ!」
「ああっ!」
恋人の娘は青年に駆け寄ろうとするが、手首を掴んだ悪漢がそれを許さない。
ふたりは大路を散歩していたところ、いきなり風雷会に絡まれたのである。
「おいおい、俺と遊ぼうぜぇ? ヒッヒヒヒ!」
「い、いや……っ!」
なんたる下卑た欲望。娘は必死に身を捩り、悪漢から逃れようとした。
そんな彼女を他の悪漢どもが取り囲み、逃げられないようにしてしまう……!
その時である。
「――人に化けて悪事を働くか。音に聞こえし風雷会とやら、三流以下だな」
「「「あぁん
!?」」」
怜悧な声による挑発に、悪党どもはぎらりと眼光鋭く振り返った。
そこに立つのは、白き中華服を見事に着こなした黄金瞳の乙女である。
「どうした? 図星を突かれて憤ったか? 取るに足らない蛇畜生ども。
貴様らがそうして人の姿に化けるのは、己の卑小さに耐えられないからだろう」
白き英傑――オリヴィア・ローゼンタールは、悪漢どもを睨み返す。
その眼光と迫力に、威圧的だった悪党どもは逆に気圧されたほどである。
「て、てめえ! 命が惜しくねえようだなあ!!」
「やる気ですか? 逃げておいたほうが身のためでしょうに」
「なんだとぉっ!?」
「女に言い負かされました、と幇主に泣きつくなら今のうちですよ?」
「こ、このアマ! やっちまえ!!」
悪漢どもは娘を突き飛ばし、オリヴィアに襲いかかった。数は3、徒手空拳。
オリヴィアは水のようななめらかな動きで繰り出される拳足を間一髪でかわし、
一人目の手首を掴んで関節を極め、肘をへし折りながら投げ飛ばす!
「「「ぐわあっ
!!」」」
二人目三人目も見事に巻き込まれ、悪漢どもは団子状態で地面を転がった!
「あ、あなたは!?」
「恋人さんを守ってさしあげてください。早く!」
誰何する青年をオリヴィアは言葉で突き動かす。
青年はわけもわからぬまま突き飛ばされた恋人に駆け寄り、急いで離れた。
「もう容赦してやらねえぞっ!!」
残る悪漢どもの身体がじわじわと歪み、竜の本性をさらけ出した。
その身体が稲光を纏う。オリヴィアはあえて身構え、掌を上向けて挑発!
「――はぁっ!!」
鞭めいて振るわれた竜の尾を、稲妻じみた速度の蹴り足で弾いた。
「グオオオッ!?」
飛び散る鱗が地面に落ちるよりも疾く、電光を纏いながら地を蹴り跳躍!
「風雷会、他愛なし! 地に伏せ詫びよ、外道ッ!」
ガァン!! と、雷鳴のごとき大音声が響き渡る。
竜身を飛び越えての踵落としが、悪党の眉間を叩き割ったのだ。
もんどり打った竜が倒れるのと同時に、オリヴィアは軽やかに着地した。
遠巻きに戦いを見守っていた人々は、感嘆のどよめきとともに手を叩く!
稲妻をも蹴り砕くその武功、まさしく英傑と呼ぶに足るものなり!
大成功
🔵🔵🔵
張・西嘉
まったく厄介な悪漢達だと思ったらオブリビオンと言うやつか。まぁ、そうでなくとも市での行いは見逃す事は出来んからな。
ある意味理由が出来て好都合とも言えよう。
『義を見てせざるは勇なきなり』などと言われてしまっては後には引けんしな。
さて、『風雷会』として働いた悪事そのツケを払ってもらおうか。
青龍偃月刀をメインに【なぎ払い】や【武器受け】をしつつ
UC【乱戦遊戯】で戦場の物品を使って攻撃。
●義を見てせざるは勇なきなり
「……まったく、厄介な悪漢かと思えばオブリビオンというやつとはな」
「「「誰だっ
!!」」」
市場にさっそうと現れたのは、猛禽の印象を与える長身の偉丈夫であった。
並の男ならば射竦められてしまいそうな悪党どもの眼光にも怯まない。
「風雷会、と言ったか? ずいぶんとあちこちでヤンチャをしているようだな。
名乗るほどの者ではないが、その蛮行見過ごせん。義によって討たせてもらう」
宿星武侠、張・西嘉は、鷹のように鋭い威圧感で悪党どもを威嚇した。
悪党どもは棍・短刀・はたまた飛刃といった武器を次々に取り出す!
「その威勢だけは褒めてやる」
「だが、喧嘩を売った相手が悪かったなあ!!」
悪漢どもが同時に襲いかかる! 武器を持つ上多勢に無勢とはなんたる卑劣!
しかし見よ。武侠は瞬きよりも疾く青龍偃月刀を取り出し、ぐるりと一回転。
「「「ぬうっ!」」」
三方から同時に襲いかかった悪党を、その長柄で牽制しイニシアチブを握る!
「どうした、いつまで人間のふりをしてる? さっさと本性を出したらどうだ!」
敵が距離を取った隙を逃さず一瞬で踏み込み、偃月刀で手首を刈る。
敵は短刀で撃ち込みを受けようとするが、西嘉の膂力は敵をはるかに勝った!
「ぐ、お、重い……ッ!?」
「そうらそらそらそらッ!」
怯んだ悪党にさらに二撃、三撃、痛烈な斬撃を叩き込んで圧倒!
四度目は強引に敵の守りをこじ開け、今度こそ偃月刀が胸部を貫いた!
「ぐは……ッ!?」
「本性を出し惜しみするからそうなるんだ。莫迦め」
「てめぇえええっ!!」
背後からの奇襲! 西嘉は振り返らず、石突を後ろに突き出し敵の胸部を打つ。
反撃を受けた敵が後退ると、身体を回転させながら半月を描くように薙ぎ払い。
死角を取ろうとしていた三人目の悪漢ごと、敵をまとめて吹き飛ばす!
「「「ぐわあっ
!!」」」
「落胆させるなよ風雷会、こんなものじゃ俺のほうが格好がつかないだろう?」
「や、野郎……ウオオオオッ!!」
業を煮やした悪党どもは、竜の本性をさらけ出した。
そして黄金の竜身に稲妻を纏い、すさまじい速度で体当たりを仕掛ける!
「そうこなくっちゃな!」
西嘉は青龍偃月刀を縦に突き立て、柄を敵の身体に添わせることで突進を回避。
続く二体目に前蹴りを叩き込んで怯ませると、突き立てた槍を支点に頭上を取る。
そして柄を支えにぐるりと一回転、烈風じみた襲撃で竜の頬を叩いた!
「こ、こいつ……出来るッ!!」
「これでふたつ!」
西嘉は怯んだ二体目の竜の逆鱗を偃月刀で貫き、地面に縫い止めた。
そこへ襲いかかる3体目! 偃月刀を引き抜いて反撃するには一瞬足りぬ。
「死ねぇえっ!!」
「ハ、小賢しいな!」
西嘉はなんと、足元に落ちていた棒切れを巧みな足技で蹴り上げた。
振るわれた爪を棒切れで弾いたのである。内功を流し込んで強化したのだ!
「ば、莫迦な……!」
「人間ごときと侮ったな。これがその報いだ――!」
棒きれは鋼のような硬度を得て、驚愕する竜の頭蓋に叩き込まれた。
どさりと悪党が倒れ伏す。げにも見事なる立ち回り……!
「――ま、このぐらいはできなきゃあな」
爽やかに笑う西嘉を称える声が、市場にこだました!
大成功
🔵🔵🔵
月凪・ハルマ
これまた非常に分かりやすい。自分たちが負けるなんて
一切頭にないような、テンプレみたいな悪党共だな
……なら、やられる側の気持ちってのを教えてやるよ
◆SPD
最初は敢えて姿を見せたまま行く
住民への被害を抑えるにはこちらに気を引いた方がいいだろう
一応、安産な場所に避難するように呼びかけもしておく
でもって今回は初っ端から【錬成カミヤドリ】
目に付く範囲にいる雷霆竜を複製宝珠で纏めて攻撃
(【範囲攻撃】)
自身は【忍び足】で常に敵の死角へ
そこから急所狙い(【暗殺】)の手裏剣【投擲】
連中、どうやら鱗が自慢らしい
天墜でぶち破ってやってもいいが……まぁ、
鱗に覆われていない箇所狙いで確実にいくか
※アドリブ・連携歓迎
●影より日向へ
……普段であれば、月凪・ハルマの取る戦術は隠密を前提とする。
怖いとか不得手という話ではない。そちらのほうが向いている、ということだ。
事実ハルマは、そうして敵の不意をつくことで幾度も勝利を収めてきた。
だが此度にあって、ハルマは身を隠すことなく、あえてその姿を晒したのである。
何が彼をそうさせたか……単なる有利不利の問題だけではない。
「よう、風雷会のチンピラども。またずいぶんわかりやすい連中だこったな」
「「「あぁ!? 誰だ、てめぇはっ
!!」」」
常人ならば震えて動けなくなるほどの眼光を浴びて、ハルマは平然。
むしろ退屈そうに首を鳴らして、無機質な瞳で悪漢どもを睨み返した。
「自分たちが負けるだなんて、一切頭にないんだろ? 絵に描いたような悪党だ。
けど、そういうやつは痛い目を見てから後悔するってのも、テンプレだよな」
「野郎……ガキの分際で吠えるじゃねえか」
「そのガキにやられる気持ちを、今から教えてやるよ」
ハルマは周囲に宝珠を複製し浮かび上がらせた。
そして自身は旋棍を構え、ボクサーめいてフットワークを刻む。
「全員でかかってきてもいいぜ。まとめてぶっちめたほうが楽だからさ」
「「「吠え面かくなよ、小僧っ
!!」」」
敵は四人。うちふたりが武装し、残るふたりは徒手空拳、ないし暗器使いだ。
ハルマは機先を制して間合いに踏み込み、まず武器使いの胴を殴りつけた。
「「ぐはっ!?」」
「遅すぎるよ。ヒトの姿に慣れてないんだろ?」
ハルマは冷たく言い、背後に回ろうとした悪漢ふたりを回し蹴りで文字通り一蹴!
「こ、こいつ、強い……!」
「この姿じゃ勝てねえってか? なら思い知らせてやる!」
ズムズムとその姿が竜の本性をあらわにする。そして、電光!
「ま、正体を現したって負けるつもりはないけどなっ!」
ハルマの意思に反応した宝珠が、電撃を弾く。
その影から別の宝珠が飛び出し、竜の逆鱗に激突、そして砕いた。
「グオオオッ!?」
「その鱗、自慢なんだろ? 叩いて砕いてやってもいいが――」
ハルマは一瞬にして敵の死角に回り込み、大きく身体を捻った。
「俺は、確実にやらせてもらう」
そして、全力で手裏剣を投擲! 四つの鋼鉄の星が砕かれた逆鱗に吸い込まれる!
一投で四人。急所を貫かれた雷霆竜は、断末魔の雄叫びを上げて絶命。
悪漢どもの跳梁跋扈を許さぬ、見事なまでの必殺である!
大成功
🔵🔵🔵
堆沙坑・娘娘
悪漢に払う敬意などありません。狼藉を働く痴れ者に有無を言わさずパイルバンカーで【貫通攻撃】。
近くに人々がいるようであれば急いで逃げるように警告。
UCで敵に有効な杭を召喚しパイルバンカーに装填します。後は使い方を理解するだけなのですが、パイルバンカーの杭の使い方なんて、敵に突き刺す以外にどう使えと言うのか。だから私は迷いません。
強靭な鱗と強大な身体能力頼りの戦法、竜にそれをやられると普通に厄介ですね。
しかし、それ故に隙がある。自分の鱗は決して貫かれることはないのだという驕りごとパイルバンカーで貫きます。
あなたたちは今まで誰の許可を得て生きていたのですか?
悪漢にはそもそも生きる資格がないのです。
●必殺、パイルバンカー神仙拳!
「う、うわあああ! 竜だ、竜が出たぞぉっ!!」
悲鳴を上げて逃げ出す都の人々。そして、屋根を突き破り出現する雷霆竜!
「ウオオオオーッ! 酒を寄越せぇええっ!!」
どうやら悪漢どもが、酒屋に乗り込んで勝手に宴会でも開いていたらしい。
竜が酒に弱いのは、どんな国の神話でも変わらないというわけだ。
そして気が大きくなった悪党どもは、竜の本性をあらわにして暴れだした!
「迷惑千万な連中ですね。酒に酔った竜の末路を知らないと見えます」
逃げ出す人々と反対に、雷霆竜へと近づく少女あり。
堆沙坑・娘娘は巨大なパイルバンカーを担ぎ、掌の中に召喚した杭を装填する。
「あいにく私は聖剣使いでもなければ竜殺しの英雄でもありませんが。
その代わり、私にはパイルバンカーがあります。その鱗、貫いてみせましょう」
「吠えたな小娘! そんな面妖な宝貝で俺様の鱗を貫けるとでも!?」
「出来ます。それが私の武道です」
雷霆竜は娘娘の自負をせせら笑い、雷を呼ぶ雄叫びを上げた。
屋根の穴から巨体がぬるりと這い出ると、稲妻を纏って体当たりを仕掛ける!
「ならば、死ねェッ!!」
(とはいえ、鱗の強靭さは折り紙付き。身体能力だけならば敵のほうが上――)
娘娘は冷静に思考する。突くべき隙は、その敵の油断にこそある。
小娘ひとり、尾と爪で引き裂けばそれで十分と思っているのだろう。
攻撃は大ぶりになるはず。ゆえに、ギリギリのところに踏み込み、一撃を狙うのだ。
危険な作戦ではある。しかし、その程度出来ずして悪根絶てるはずなし!
「悪漢にはそもそも、生きる資格がありません。ここで、死んでもらいます」
巨大な尾が横薙ぎに大地を払う! 娘娘は間一髪、跳躍回避!
そして尾を足場に一気に竜の身体を駆け上がり、逆鱗に狙いを定めた!
「――もらいました」
流星のように、パイルバンカーの鋒が逆鱗を深くえぐった。同時に、衝撃!
KRAAASH!! 轟音とともに杭が叩き込まれ、竜の身体を一撃で貫く!
「グ、オオオオ……!? ば、莫迦な
……!?」
「バカはあなたですよ。私の前に姿を見せたのが運の尽きでしたね」
断末魔の雄叫びをあげて力尽きる竜の身体から、娘娘はふわりと飛び降りた。
呆気にとられていた人々は、やがてその武功を称え歓声をあげる。
パイルバンカー神仙拳、その奇妙奇天烈な業前、ここにあり!
大成功
🔵🔵🔵
ルヴトー・シフトマン
堅気の女子供に手ェ出すとは、どういう了見だ
テメェらには誇りも無ければ、仁も義もありゃしねぇ
不愉快なモン見せられて、オレァ機嫌が悪ィ
教育し直してやるぜ……授業料は高ェぞ!!
周りの露店を破壊するのは不味い…まだ天狼には乗らない
キャバリアっつーのは、生身で戦う力が無いと思われやすいが…オレァ荒事屋集団の頭目
生身での戦いなら、訓練も実践も山ほどやってきた
周囲環境を利用して戦う
壊れた木の板を投げつけて目くらまし、建物を使って跳躍しながら接近して、眼に指を入れるように頭を殴りつける
怯んだところに十手を強引に突き刺して口を縫い付け、頭を狙ってハンドガンを連射
喧嘩にルールはいらねぇ…荒事屋舐めるんじゃねェぞ!
●狼よ、竜を屠れ
ガ、ガ、ガ――ガガガガガッ!!
「おらおらどうした、ガキィ! さっきの威勢のよさはハッタリかぁ!?」
露店の並ぶ市場のど真ん中、白昼堂々の大乱闘!
5人の悪漢を相手に攻め込まれるのはルヴトー・シフトマンただひとり。
多勢に無勢を揃えておいて斯様な台詞を吐くとは、まさに卑劣ここに極まれり。
しかし見よ、四方八方からの攻撃を受け流すルヴトーの燃える瞳を!
「テメェらこそどうした。それだけの数を揃えて、この程度が限界か!!
まあ道理だろうな。カタギの女子供に手ェ出すチンピラ風情じゃ仕方がねェ!」
「このガキ、吠えやがる!」
「余計いたぶりたくなってきたぜェ!」
敵は徒手空拳がふたり、ひとりは鎖分銅、残るふたりが蛮刀使いだ。
そもそもこの数を相手に立ち回れているだけでも、ルヴトーは見事なもの。
キャバリア乗りというと生身は不得手に思えるが、それは実のところ違う。
ルヴトーは荒くれ者どもを治める頭目であり、同時に最前線に立つ戦士でもある。
踏んだ場数は、悪党どものそれをはるかに超える生粋の荒事屋なのだ!
「テメェらのような誇りも仁義も知らねェチンピラどもは、いつもオレを苛つかせる!
こちとら不愉快なモン見せられて機嫌が悪ィんだ、泣いたって許してやらねェぞ!」
「ほざけ、ガキィーッ!」
鎖分銅使いが構えた! ルヴトーの足を刈って動きを止めるつもりだ。
ルヴトーは未来視でそれを察知すると、その場で短く跳躍する。
直後、足を絡め取ろうとした鎖分銅が虚しく地面スレスレを通過した!
「何ッ!? こっちの動きが見えてやがるのか!」
「ああそうだぜ――だが、テメェらの動きなんぞ見るまでもねェッ!」
ルヴトーは着地と同時に今度は高く跳び、主人の逃げ出した露店の屋根に着地。
蛮刀使いがそれを追って屋根の上に飛び乗ろうとした瞬間、逆に足を刈る!
「うおっ!?」
「隙だらけだぜ、外道が!」
打ち下ろしの拳が胸部にヒット! 蛮刀使いは血を吐いてもんどり打った!
使い手がこぼれ落とした刀をキャッチし、ルヴトーはそれを鎖分銅使いへ擲つ。
鋼はヒュンヒュンと風を切って飛翔し――鎖分銅使いを斬首した!
「ぐえっ!?」
「し、しまった! こいつ強ぇ、変身を解除しねえと……!」
「させるか、ノロマッ!」
疾い! ルヴトーは敵が怯んだ瞬間、一瞬で間合いを詰め目潰しを叩き込む!
そして親指を眼窩に突っ込んだ状態で頭をつかみ、口を十手で強引に縫い付けた!
「ングーッ!?」
「おォオッ!!」
悶絶する悪漢を最後の敵に投げつけ、敵が怯んだ瞬間……BLAMN!!
「げがッ」
「荒事屋を嘗めンじゃねェ。出し惜しみするからそうなるのさ、バカが」
脳天に風穴の開いた悪漢は、白目を剥いて仰向けに倒れる。
喧嘩にルールは無用。ルヴトーは銃を懐にしまうと、次なる敵目指し駆け出した。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
竜の銘を冠していながら、やる事は下郎
元より不快な連中が、更なる愚行を重ねるなぞ見るに堪えん
早々に始末してくれる
通りを歩けば不埒者の姿は直ぐに見分けられよう
己が分も弁えられず、大きな顔をして日の下に出て来るとは
能々と頭の出来が目出度い様だ
ならば相応しい場へと送り返してやるのも務めか
攻撃は、視線に体捌き、得物の向きを図って見切り躱す
――破群猟域。逃しはせん
其の鱗が余程自慢の様だが――防ぎ切れるか、試してみるが良い
全身隈なく覆っている訳ではあるまい
目に口、腹……合わせ目に重なる隙間
防ぐものを弾き飛ばせば“通す”隙間は在ろう
開いたならば後は容易い――其処から粉砕してくれる
所詮は只の手下……疾く潰えろ
●悪鬼、覆滅
広大な都を騒がす外道の徒党、風雷会。
犬も歩けばなんとやら、その狼藉を見咎めるのにさして時間は必要なかった。
「おいおい、まさか俺たちから金を取ろうってのか、旦那!」
「この風雷会の強者どもが来てやったんだから、むしろ感謝しなくっちゃなあ!」
飯店から聞こえてくる悪辣な声に、鷲生・嵯泉は顔を顰めた。
門扉をくぐれば予想通り、代金を踏み倒そうとふんぞり返る悪党ども!
「あんたたちが誰であろうと、飯を食ったなら金を払ってもらう。それが決まりだ。
皇帝だろうが仙人だろうが妖怪だろうが、代金は支払ってもらわにゃ困るよ」
「ぷっ……ぎゃっはっは! 聞いたか野郎ども、旦那の文句を!」
悪漢どもは腰の曲がった老人を取り囲み、げらげらと嘲笑う。
「おいジジイ、思い上がるなよ。てめぇなんざ俺らにかかりゃ一捻りだぜ」
「いいから金を払っとくれ。飯を食ったなら金を払うのが当然だ」
「てめえ、このジジイ! 痛めつけねえとわからねえかっ!!」
「まあ待て……なあ爺さん、あんたの娘、きれいだよなあ?」
悪党の恫喝にも怯まなかった老店主だが、その言葉には血相を変える。
「ま、まさかあんたら! ウチの娘を……!」
「ひひひ! この時間は出前に出てんだっけかあ? 大変だよなあ!」
「貴様ら……!」
老人は歯噛みする。奴らは娘を人質に取るつもりなのだ!
救いはないのか。光明はないのか! 官憲さえも悪党どもを裁けないのか!?
……否!
「昼飯時にやかましい連中だ。己の分も弁えられず、日向に這い出て騒ぐとはな」
「「「あぁん
!?」」」
きぃ、きぃ……と、嵯泉の後ろで扉が軋んだ音を立てる。
「日陰に籠もっているぶん、虫のほうがお前たちよりもいくぶんマシらしい」
「てめえ、誰に口聞いてんのかわかってんのか、あぁっ!?」
「わかっているとも――風雷会、といったな」
嵯泉の隻眼が細まる。眼に浮かぶ感情の色は、侮蔑。
「頭の出来が目出度い連中の集まりの名前としては、ちょうどいい大袈裟さだ」
「てめえ
……!!」
悪漢どもは老店主を突き飛ばし、嵯泉ににじりよる。
「後悔するなよ、野郎ぉっ!!」
そして襲いかかった! 竜の身体になるまでもないというわけか。
嵯泉は心の中でその愚かさを軽蔑しながら、悪漢どもの攻撃を軽々と捌く。
そして腕を掴んで、攻撃の勢いを利用して全員店の外に投げ飛ばした!
「ぐえっ!」
「さっさと本性を現したらどうだ、竜の誇りも忘れた下郎ども」
「こ、こいつ……ぶち殺してやるっ!!」
悪漢どもはみるみるうちに膨れ上がり、正体を現した。
そして恐るべき尾と爪が振り下ろされる――しかし!
「あ、危ねえぞ兄ちゃんっ!」
店の外に駆けつけた老店主が叫ぶより先に、嵯泉はすでに動いていた。
大地を叩き割るほどの攻撃を、徒手空拳で捌いてみせたのである。
どぉん!! と、見当違いの方向を叩く竜の尾。嵯泉はおろか飯店も無傷!
「何っ!?」
「こちらの番だ。その自慢の鱗で防ぎきれるか、試してみるがいい」
嵯泉は鞭状に変化させた刃を振るい、竜どもの全身を切り刻む!
鱗の隙間を……いや、その強靭な鱗すらも、まるで豆腐か何かのように!
「「「があああああっ
!?」」」
「紙屑にも劣る。お前たちのようなものが竜を名乗るだけで不快だ、疾く潰えろ」
斬撃一閃。竜の身体はバラバラに四散し、路地に転がった。
「す、すげえ……あんた一体……!」
「……通りすがりだ。邪魔をしたな、店主」
あっけにとられる老店主を振り返り、嵯泉はそれだけ言うと歩き出した。
無骨で寡黙ながら、まったき仁と義をわきまえた偉丈夫ぶりである。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
まったく、どこの世界にもいるんですね。強大な存在をバックにしなければ粋がれないサンシタどもが(と、さりげなく【挑発】)。
(で、拱手しつつアイサツ)
「ドーモ、オブリビオンの皆さん、AliceCVです」
で、FPSの兵士キャラをレベル数召喚して攻撃させましょう(【先制攻撃・2回攻撃・一斉発射・制圧射撃】)。
敵が本気を出してきたなら、こちらも某戦略SLGめいて兵士を合体・強化していきましょう。
あと、私自身も隙を見て【援護射撃】とかしていきましょうか(【誘導弾・レーザー射撃】も加味)。
※アドリブ・連携歓迎
●バレット・ストーム
「あぁん……? おいそこのガキ、いつまでこっちを見てやがる?」
白昼堂々の狼藉を、多くの人々は見て見ぬ振りすることしかできなかった。
無関心なのではない……そうせねば、自分たちに矛先が向くからだ。
しかしただひとりだけ、風雷会の外道の狼藉を眼に映し続ける少女がいる。
「はい? なんであなたたちみたいなサンシタの言うことを聞かねば?」
その少女は、神をも恐れぬふてぶてしい声音でそう言った。
「このガキ! 痛い目を見てえのか、ああっ!?」
悪漢どもが殺気立つ。だが、少女はやはり退かない。
「強大な存在をバックにしなければいきがれないチンピラがよく言います」
なおも挑発を重ねつつ、少女は拱手した。
「ならばこう呼びましょう。ドーモ、オブリビオンの皆さん。AliceCVです」
「「「!!」」」
オブリビオン。
人に变化した風雷会の面々をそう呼ぶとは、つまりこの娘……!
「貴様、猟兵かあ!!」
「気づくのが遅すぎますよドラゴンども、その隙いただきました!」
AliceCV――シャルロッテ・ヴェイロンは、同時に術式を起動!
敵が竜の身体に変身した瞬間、召喚されたFPSの兵士たちが砲撃を開始した!
BRATATATATATATATATA! BRATATATATATATAT!!
「「「グオオオオッ
!?」」」
すさまじい弾幕だ! 人々は巻き添えを喰らわないようにすぐに逃げ出す。
もちろんシャルロッテも、流れ弾がいかないよう計算して狙いをつけている。
弾丸の多くは奴らの自慢の鱗で弾かれてしまうが、しかし。
「防御力が高いからって、うぬぼれているとひどい目に遭いますよ?
おかげでどこを狙えば良いのかはわかりました――弱点は、そこですね」
BLAMN!! と、シャルロッテのスナイプが竜の逆鱗を貫いた。
その勢いに乗り、合体した兵士たちによる猛烈なスナイプが続く!
「な、なんという精密な狙いだ……!」
「我らのこの鱗の隙間を貫くとは!?」
弱点を撃ち抜かれた竜どもは、断末魔をあげて雷のエネルギーとなり爆散!
雷の竜をも射殺す少女の慧眼は、相手が武術の達人であろうと健在だ!
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
さぁて、新世界での初仕事なワケだけど。…なんかもー見飽きるレベルで清々しくテンプレなのがわらわらと…
ま、ブッ飛ばすのに躊躇しなくていいから楽ではあるわねぇ。
とりあえず薙ぎ倒してけばいいんだし、やること自体はシンプルねぇ。
銃弾に刻むのはウル(突破)のルーン。わざわざ識別しやすく目印つけてくれてるんだもの、片っ端から○鎧無視攻撃の乱れ撃ちブッ放すわぁ。自分から不利になってくれるみたいだし、そのまま押し切っちゃいましょ。
強靭な鱗とやらが御自慢みたいだけれど――生憎、竜の類は一年くらい前に強烈なのを散々ブッ殺してるの。ただ頑丈な「程度」じゃ、いくらなんでも役者不足よぉ?
●突破・乱撃・竜殺
「まったく……見飽きるレベルで清清しいまでにテンプレねぇ、あなたたち」
「「「あぁ
!?」」」
ティオレンシア・シーディアが思わず天を仰ぐのも、無理からぬもの。
どうしてこう、オブリビオンというのは悪辣に振る舞わねばいられないのか。
もっと頭を働かせて、狡猾にそして秘密裏に動けばいいものを。
もちろん、そうやって猿知恵を働かせる小狡いタイプもたくさん見てきた。
しかしそれ以上に、この手の"わかりやすい"タイプは尽きないものだ。
残骸となって得た全能感が、奴らを斯様な絵に描いたような悪行に走らせるのか。
事実オブリビオンの力は強大で、猟兵でなければ太刀打ち出来ないのだから。
「ま、ぶっ飛ばすのに躊躇しなくていいから、楽ではあるわねぇ。
……自分たちが強者だと驕った連中を叩き潰すの、嫌いじゃないしぃ?」
ティオレンシアの表情は変わらない。だが、雰囲気はたしかに変質した。
緊迫の状況を遠巻きに見守っていた人々は、思わず息を呑む。
じろりとティオレンシアを睨みつけていた悪漢たちも、わずかに気圧されたほど。
しかし、その程度で奴らは怯まない。むしろ気圧されたことに激高した!
「何をごちゃごちゃと……俺たち風雷会に楯突くバカな女め!」
「誰が誰を叩き潰すって?」
「その大言壮語の報いを味わわせてやる! グオオオオ……ッ!!」
みるみるうちに、悪漢どもの姿が稲妻を纏う竜のそれへと変貌した。
人々は恐怖し路地を逃げ惑う。ティオレンシアは、逆に一歩前へ!
「わざわざ見分けやすく目印つけてくれて嬉しいわねぇ? じゃ、行くわよぉ」
手にしたのはリボルバー一丁――だが、彼女の仕事はそれで事足りる。
卓越したティオレンシアの早撃ちは、チンピラ風情の武功など目ではない。
見よ! 竜どもがその尾をもたげるより先に放たれる、魔弾の乱撃の嵐!
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!! 弾丸が、無敵不抜の鱗をたやすく砕いた!
「な、何ィッ!? 刃さえ通さぬ我らの鱗が
……!?」
「あいにく、竜のたぐいは一年くらい前に強烈なのをさんざんぶっ殺してるの」
ティオレンシアは一瞬でリロードを終えると、にたりと笑った。
「ただ頑丈な"程度"じゃ、いくらなんでも役者不足よぉ? 残念ねぇ」
「こ、この女ッ! ええい、引き裂いて殺してくれる!!」
「雷霆なんて銘を冠する割に、遅すぎねぇ?」
その爪が肌に触れる前に――BLAMN!! 弾丸が、竜の口蓋に叩き込まれた。
弾丸は稲妻のように体内で跳弾し、そして背中から飛び出していく。
全身を穴だらけにされた竜の群れは、まばゆい電光に変わり――消し飛んだ!
大成功
🔵🔵🔵
フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎
POW判定
・行動
人間体で悪さしているところをぶっ飛ばしてUCを発動
正体を表したら乱気流内を
「環境耐性」と磁力操作による「念動力」でやり過ごし
UCの磁力鎖で敵の動きをコントロールしながら怪力で引き寄せて
ぶん殴ります
・セリフ
(因縁を付けている所へ)
あの、こちらの方々がどうかなされたのでしょうか?
よろしければ事情をお聞かせ願えませんか
(話を聞いて)
ふーん、つまりアンタら『風雷会』とやらは
オレがぶっ飛ばすべき悪党ってわけだ!
おらぁっ!(殴る)
オレが一番好きなことはなぁ!
アンタらみたいな
力で相手を踏みにじろうってヤツに否(いな)と言ってやることだ!
どれ、オレが相手になってやる
かかってこいよ
●己の意思のままに
都のとある店の前。
怯える店主を取り囲み、風雷会の悪漢どもが店主を脅迫していた。
「だからよぉ、この店は今日から俺たち風雷会の強者のたまり場にしてやるってんだ。
用心棒とお得意様が同時に出来るんだぜぇ? 嬉しいよなぁ? えぇ?」
「か、勘弁してください、お客さんが居なくなっちまう……」
「てめえ! 俺たちのことをなんだと思ってやがる!?」
「あの……こちらの方々がどうされたのでしょうか?」
そこに口を挟んだのは、フローラ・ソイレントだ。
騒ぎを聞きつけ、見るに見かねて動いたらしい。
彼女が動かなければ、店主は袋叩きにされ、最悪死んでいただろう。
それほどまでに、悪漢どもの剣幕はすさまじいものだった。
「あぁん? なんだてめぇは? 引っ込んでな!」
「そう云わず……よろしければ事情をお聞かせ願えませんか」
「黙ってろ! 俺たち風雷会のやることにケチをつけるんじゃねえ!!」
悪漢はフローラの肩を押しのけ、対面の店の扉に突き飛ばそうとした。
しかしその手が肩に触れようとした瞬間、フローラの拳が悪漢を殴り飛ばした!
「ぐほぉっ!?」
「ふーん……下でに出てやりゃこのざまか。なるほどよくわかったぜ」
「な、何しやがるこの女っ!?」
ぎらりと、フローラは別人のような鋭い瞳で悪漢を睨み返した。
「つまりアンタら『風雷会』とやらは、オレがぶっ飛ばすべき悪党ってわけだ!」
「このアマぁ、調子に乗りやがって!」
別の悪漢が武器を振り上げ襲いかかる、しかし遅い。
フローラは後の先を制し、武器を捌くと同時に踏み込んで掌底を叩き込む!
「おらぁっ!!」
「こ、こいつ強ぇっ!!」
「まさか、武侠か!?」
「武侠だ? 違ぇよ。オレは磁極流活殺拳伝承者、フローラ様だッ!」
ズシンっ!! と、地面に踏み足がめり込むほどの重い踏み込み。
敵が竜の身体に戻るよりも疾く、磁気を帯びた拳がその四肢を砕く!
「「「ぐわぁっ
!!」」」
悪漢どもはなすすべもなく、放射状に吹き飛んだ!
「オレが一番好きなことはなぁ、アンタらみたいな力で相手を踏みにじろうってヤツに、"否"と言ってやることさ」
「なんだ、この騒ぎは!?」
「在らてか? いいぜ、かかってきな」
駆けつけた増援に振り返り、フローラは掌を上向けて挑発した。
「その身体じゃ足りねぇ、本性現して襲いかかってこい!」
「吠え面かくなよ、女ぁ!!」
竜身顕現! 同時に、乱気流が地面と平行に渦を巻き、襲いかかる!
「磁極流、陰陽縛鎖(パーシャ)ッ!」
だがフローラは磁力を操作し、乱気流を触れずして逸らしてしまった!
「何ぃ!?」
「今度はこっちの番だ。ただし――来るのは、アンタらのほうだぜ!」
見えない磁力の鎖が竜の身体をがんじがらめにし、ぐいっと引き寄せる。
銛で貫かれたカジキマグロの如く、引っ張られる雷霆竜!
「うおおおお!?」
「オレの拳を! 味わいなッ!!」
ガァン!! と、雷鳴のごとき大音声!
竜の鱗をも叩き砕く必殺の拳が、悪漢のプライドを頭蓋ごと粉々にした。
奴らは今日、知ることになる――悪を叩いて砕く、磁極流伝承者のその武名を!
大成功
🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
ひとを傷つけ苦しめるだけでなく、私の愛しき巫女の桜を毟りとったあげくに……身ぐるみまで剥ぎ売り払うだなどと!
赦せぬ、万死に値する
子々孫々まで厄に漬けてやりたい程だよ
大丈夫だよ、巫女よ
私がしっかりとサヨを守るからね
可哀想に……こんなに震えてとしがみつく巫女を抱きとめ撫でてあげる
頼られるのは嬉しい
ちょっといいところを見せたいな
美しい龍であるサヨを穢すことは許さぬよ
おや……なにか来たね
……?
私の衣が珍しいのかい
──厄神ノ微笑
……サヨの反応に少々嬉しさで笑み
彼らの可能性や幸い全てを奪い私の巫女への幸いへ転じよう
サヨを庇いながら切り込み、切断し
生を枯らす神罰を落とす
おいたをできないようにしないとね
誘名・櫻宵
🌸神櫻
カムイ……!ちんぴらなるもの達が居るのだって……私、怖いわ!
きっと捕まって、桜を根こそぎ毟られ無惨にも身ぐるみを剥がれ、売り払われてしまうのよ!
しかも、龍なのだって!
同じ龍として風評被害もいい所なのよう!
わっとカムイにしがみつく
かぁいい神様に甘やかされるのは心地いい故に
うふふ
もっと撫でて欲しいし守ると言ってほしいのよ神様
あ、なんか来たわ
は?
何勝手に私の神に触ってるわけ?
汚い手で触れないで
その腕ごともいでやるわ
怒りの衝撃波と共に斬り落とす
カムイに近寄らないで頂戴!
カムイの眸に映る龍は私だけでいいの
殴り斬って薙ぎ払って美しい桜に変えてあげる
カムイ
なんて頼もしいの
悪い奴はやっつけてしまって!
●盛られていく罪状、理不尽な怒り
「お、おいあんたたち。悪いことは云わない、別の通りを選んだほうがいいよ」
都の通りを行くふたりに、気弱そうな小太りの店主が声をかけた。
「あら、どうして? こっちのほうが人手があるし賑わっていそうじゃない」
誘名・櫻宵が小首をかしげると、店主はぶるぶると首を振る。
「だからだよ、綺麗なお方。あそこには最近、風雷会の連中がたむろしてるんだ」
「風雷会……なるほど。ならば問題ない、案ずるに及ばぬ」
その隣に立つ朱赫七・カムイが、穏やかな声音で言った。
「我らの目当ては、その風雷会とやらだ。むしろ好都合だな」
「なんだって? あんたたち、まさか連中とコトを構えようってのか!
冗談言っちゃいけない、奴らに歯向かった若者どもがどうなったことか……!」
「ふふふ、心配してくれるなんてありがとうね。けれど、だいじょうぶよ?」
櫻宵はにこりと美しい微笑を浮かべて、店主をなだめた。
「だって私には、とっても強くてかわいい神様がついてるんだもの」
「いかにも。私が居る限り、サヨには指一本触れさせぬさ」
ふたりはそう言うと、店主に別れを告げて大通りへと向かっていく。
「一体どうして、あんな自信に満ち溢れてるってんだ……?」
風雷会の悪行とその強さを知る店主は、ただ呆然と見送るしかなかった。
それからすぐあと、彼はもっと大きな驚きを見せることになる。
ふたりの戦いと騒ぎが、この店までも届いてきたからだ――。
……大通り!
「ご、ご勘弁ください! これは大事な売り物で……!」
「だからよぉ、商売なんていいから俺たちと遊ぼうぜぇ? 嬢ちゃんよぉ!」
うら若い乙女を取り囲み、悪漢どもがニタニタと下卑た笑みを浮かべていた。
人々はその狼藉に憤りながらも、奴らの武功を恐れるがあまり手出しできない。
「ま! 見てカムイ、怖いわ。あれが"ちんぴら"なるものなのね!」
しかし、櫻宵とカムイは違った。
櫻宵はわざとらしく大声をあげて、悪漢どもの諸行を皮肉ってみせる。
「私、怖いわ……! きっと捕まって、この桜を根こそぎむしられ身ぐるみを剥がされ、ヒト買いのところへ売り払われてしまうのよ……ああ、恐ろしいっ!」
「お、おい待て。別にお前にそこまでするたぁ……」
立て板に水を流すような嘘八百に、逆に悪漢どもがぽかんとしてしまった。
やるかやらないかでいえばむしろやるのだが、外から云われるのは予想外である。
「何……? 貴様ら、私の愛しき巫女の桜を毟り、身ぐるみを剥がして売るだと?
挙句の果てに、私の巫女をその汚らしい口で罵倒するというのか、下郎どもめ!」
「「「だから俺らは何も言ってねえ
!!」」」
しかし、完全に火がついてしまったカムイは何も聞いちゃいない。
櫻宵がひしと抱きつくと、彼を優しく受け止めつつ、悪漢どもを睨めつけた。
「私の巫女をこんなに震わせ怯えさせる外道ども、見逃してはおけぬ……!」
「だからちょっと待て! 勝手に盛り上がってるんじゃねえ!!」
「いきなりなんだ? てめぇらは! 俺たちをおちょくるつもりか!」
「この風雷会の証が目に入らねえらしいなぁ? このうらなり野郎が!」
悪漢どもは「風」と「雷」の入れ墨をこれみよがしに見せつける。
「やぁね、竜のくせに、あれじゃ虎の威を借る狐じゃない。見苦しいったらないわ!
そもそもね、その躾のなってない目で、私の神様をジロジロ見るんじゃないわよ!」
「どうやら痛めつける必要があるようだな。私のサヨに触れようとするとは」
「「「こ、こいつら、話を聞いてるようで聞いてねえ
……!」」」
唖然とする悪漢ども。しかし、いちゃもんをつけるとはそういうものである。
よもや自分たちが言いがかりをつけられるとは思っていなかったのか、
ふたりのあまりの剣幕に気圧されてしまったほどだ。
「だがそんな偉そうな態度は見過ごせねえ! やっちまえ、野郎ども!」
「「「うおおおおっ
!!」」」
しかして悪漢どもは竜の姿をさらけ出し、稲妻とともにふたりに襲いかかる!
「全員斬り捨てて、美しい桜に変えてあげるわ!」
「サヨを怯えさせたその報いを、味わわせてやろう」
ふたりは稲妻を纏う爪を剣で弾き、淀みない所作で竜の鱗を叩き切った。
たとえ鉄の刃さえもへし曲げる自慢の鱗とて、龍と神の剣には敵わないのだ!
「な、なんて切れ味だ!!」
「しかもこいつら、とんでもなく……つ、強いっ!!」
いまさら力量差を悟ったところで、もはやふたりは止まらない。
藪をつついて蛇を出すとはまさにこのこと。あるいは、飛んで火に入る夏の虫。
「カムイに近寄らないで頂戴!」
「サヨに手を出す愚か者ども、思い知るがいい!」
双剣風を切り裂き、ついには雷霆龍を膾斬りにしてしまった。
彼らの奔放な振る舞いは、その卓越した武功に拠って立つものだったのだ!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
オーイオイオイ…なんだなんだ?小汚い悪党どもが蔓延ってるってか?
ダメダメ…悪党ってのはスマートでなくっちゃなァ
女子供を威圧してどうこうなんざ、スマートからは程遠いぜ
粋がった雑魚には『教育』が必要だろう?
ナイフを二刀流化して、【ダッシュ】で斬り込む
眼と頭を狙いながら接近戦をしつつ、時折下がっては仕込みクロスボウで牽制射撃
間抜けにも口を開けたのなら、腕を突っ込んでショットガンをぶっ放してやる
おおっとぉ、その回転攻撃はダメだ
周りの店を壊しちゃナンセンスだろう?──『Dirty Edit』
全員を巻き込むらしいが…『味方だけを巻き込む』に書き換えた
悪いね、脚本に口を出したくなる性分なのさ
許せよ、雑魚ども
●スマートな悪事のやり方
「この、ガキがぁっ!!」
怒り狂った悪漢の振るう槍が、ヴィクティム・ウィンターミュートを付け狙う。
しかしヴィクティムは薄笑いを浮かべながら、これを肌一枚で回避する。
ギリギリで回避しているのは、彼が追い詰められているからではない。
わざとそのぐらいのギリギリまで攻撃を惹きつけている。つまり、挑発だ。
「オイオイオイ、悪事の仕方もチャチなら戦いのほうもノロマかよ?
悪党やろうってんなら、もっとスマートに華麗でなきゃ駄目だぜ?」
「この野郎
……!!」
「そもそもテメェらの戦いってのは、その姿じゃ三味線弾いてるようなモンだろ」
ヴィクティムは距離を取り、ちょいちょいと掌を上向けて手招きした。
「さっさと正体現してかかってきな、ウィズワーム気取りのトカゲども。
本当の悪党のスマートな戦い方ってのを、この俺が享受してやるよ」
「吠え面をかくなよ、猟兵ァアアッ!!」
悪漢どもは武器を放り捨て、バチバチと稲妻を全身に纏った。
みるみるうちにその姿が膨れ上がり、竜としての本性をあらわにする。
「周りの店ごと、薙ぎ払ってやる!!」
そして、巨体に任せた大回転攻撃がヴィクティムに襲いかかる――が!
「何? "周りの店ごと"だって? 残念だが、そいつは認められねえな」
SMAAAAAAASH!! 尾が地面を薙ぎ払い、盛大な土埃が巻き上がる。
だが見よ……吹き飛んだのは、店ではなく味方であるはずの別の竜だ!
「「「ぐわぁっ
!?」」」
「な、何!? どういうことだ! 巻き込まないように散開したはず……!」
「悪いね。俺の小細工だよ」
ヴィクティムはサイバーゴーグルを外し、にやりと笑った。
「テメェのその攻撃は、敵や周りの構造物だけじゃなく味方だけを巻き込む。
そういう風に"書き換え"させてもらった。エキストラを傷つけるのはナンセンスってもんだろ?」
「こ、こいつ!!」
「そして――雑魚がいつまでものさばってちゃ、ステージが冷えちまう」
ヴィクティムは尾のスウィープを軽やかにジャンプして回避すると、
敵の身体に着地し、強固な鱗をバターのように貫くナイフを突き立てた。
そしてナイフの柄をしっかりと握りしめ、竜の身体を切り裂くように疾走!
「グオオオオオッ!?」
「とどめをくれてやるよ、雑魚め」
BLAMN!! 口蓋に突っ込まれたショットガンが、竜の頭蓋をふっとばした!
「や、野郎……出来る!」
「おっと、テメェらも物欲しそうだな? 受け取っときな!」
斃れゆく竜の頭を蹴って跳躍したヴィクティムは、身体を捻りながらクロスボウを連射! ボルトが吸い込まれるように竜どもの眼窩を貫いた!
「がああああ!?」
「弾は無駄なく、動きは最小限に――しかし、見た目はなるべくハデに。
これが本当に悪事のやり方さ。骸の海まで覚えてられたらいいんだがね」
ヴィクティムが着地すると、人々はその腕前に拍手さえ起こした。
一流の悪党というものは、人を魅了してしまうカリスマを備えているものなのだ。
大成功
🔵🔵🔵
鳴宮・匡
悪漢相手に名乗る必要はないだろうし
――姿も見せなくていいなら高所から狙撃でいいな
他にも来ている猟兵はいるだろうし
そいつらの補助をする形で動くよ
地上で対応するやつらの目が届かないところや対処が難しい位置のやつ
もしくは死角から狙ってるやつ、とか
そのあたりを中心に対応するよ
こちらに気付かれても面倒だからな、位置取りには気を遣う
可能なら一定時間ごとに位置を変えるよ
どこにでもある、そういう話だ
ありふれた筋書きの悲劇
そういうものをもたらす側だった
今だってそうで
それを、今だって“悪い”なんて思わないのに
目の前のそれを放っておきたくないと思うのは
矛盾してるんだろうけど
……どうなりたいんだろうな、俺は
●何故、その悪を見過ごせないのか
はびこった悪党は、ゴキブリのようなものだ。
巨大な都市の隙間に根を張り、ひと目がないのをいいことに悪事を働く。
数を増やすとわざわざ表に出てくるあたりも、害虫によく似ている。
ならば、それを片付けるのも、害虫駆除と同じやり方が一番効率がいい。
闇雲に叩き潰すのではなく、その根をピンポイントに殲滅するのだ。
そういう仕事に、鳴宮・匡はよく慣れていた。
なにせ彼自身こそが、そうやって日陰で動くことを得意としているのだから。
「おい、どこから撃たれた!?」
「わからねえ、あっちの方角なのはたしかだが――ぐげっ!?」
パカン、と、悪漢の左目から後頭部が吹っ飛んだ。
ついさっきまで会話していた相手が一瞬で死んだことに、悪漢は震え上がる。
物陰に身を隠そうと踵を返した瞬間、今度はその男が頭を吹き飛ばされて死んだ。
竜の身体に戻る間もない、的確で迅速な、ぞっとするようなスナイプだ。
「……一撃で仕留めれば、変身させずに済むな。楽でいい」
高く聳える鐘楼に身を潜めた匡は、戦果を確認すると即座に飛び降りた。
カンのいい敵なら、いまの狙撃でこの場所を割り出すだろう。
スナイプに必要なのは、気配を隠すよりもすぐに移動する迅速さだ。
すでに、狙撃に向いたポイントはいくつかピックアップしてある。
(――……ありふれた悪党。ありふれた悲劇。どこの世界も変わらないな)
脳裏に描いた地図を参照しながら、匡は走る。
「いたぞ、あそこだ!」
案の定敵が追いついた。匡は走りながら振り返らずに後ろを拳銃で撃つ。
(俺も、そういうものをもたらす側だった。――今だってそうだろう)
近づかれると厄介ならば、そもそも近づかせなければいい。戦場の鉄則だ。
そう、こういうやり方はむしろ自分のほうが向いている。
人に怯えられ、人を怯えさせ、無慈悲に命や大事なものを奪う。
それが唯一の特技で、生きるためにそうして罪を重ねてきた。
いまさらその重さを嘆きはすまい。しかし疑問に思うのは、自分の行いについてだ。
(俺は、それを"悪い"と思えない。思うことも、多分、出来ない)
――なのに、こうして悪漢を見過ごせず身体が動いてしまうのは何故か。
矛盾を理解しておきながら、それでもなお戦いは諦めない。
何故――否、己はどこを、何を目指して、こんなことをしているのだろうか?
「どうなりたいんだろうな、俺は」
匡は呟いて、パルクールの要領で建物を駆け上がった。
撒かれた敵を頭上から狙撃し、仕留める。たやすいものだ。
あんなふうになるのはごめんだ。それだけは、間違いなかった。
大成功
🔵🔵🔵
九頭竜・聖
……見るに堪えない光景でございます
竜の姿と名を冠しながらもその行いはまるで野盗か悪漢そのもの
畏れのない下種な暴力そのもの……その名を冠することすら烏滸がましい
偉大なる龍神様もお怒りでございます
なれば、わたくしめの為すべきことは決まっております
御方の怒りをあの不埒共たちへと与えるために身を捧げます……
【祈り】と共に舞を捧げ、龍神様が降りてこられるその瞬間を待ちます
此度参られるは赤き龍神様
御方の焔は魂すら焼き尽くす紅蓮の劫火
たかが竜に似た程度の鱗如きで防げる道理はございませぬ
あの不遜にも竜を名乗る愚か者共に怒りと罰を……
龍神様の裁きが終わるその時までこの身を捧げ続けましょう……
※アドリブ連携歓迎
●その龍の力を見よ
竜とは荒ぶる力の化身、どんな世界でも畏れられ恐れられるモノ。
あらゆる生物の頂点に立つものであり、まつろわぬ存在であるべきモノ。
だが、あれなる竜もどきの浅ましさたるや、もはや筆舌に尽くしがたし。
竜の姿と名を冠しながら、やっていることはまるで――否、悪漢そのものである。
それが、龍神に身と魂を捧ぐる九頭竜・聖には我慢ならなかった。
義憤や使命感だとか、そういう綺麗事を吐こうというわけではない。
同じ怒りでも、これはもっと傲慢で、そして恐ろしい感情だ。
聖を支配する龍神たちもまた、その身に伝わるほどの怒りを煮やしていた。
「……偉大なる龍神様。そのお怒り、このわたくしめも肌で感じております」
聖は天を仰ぎ、訥々と語りかけた。
「なればこそ、わたくしめの為すべきことは、すでに決まっております。
あれなる不届き者どもに、御方のそのお怒りを知らしめ、そして裁くこと。
御身の憤怒を、どうか我が身を通じて顕わしませい。さあ、おいでませ――」
聖は祈りを捧げ、己のすべてを明け渡すことを宣言した。
すると空が一転にわかにかき曇り、青空を不穏な暗雲が包み込む。
「な、なんだありゃあ」
「まさかあれも、風雷会の連中の仕業か?」
「いや、違う……よくわからねえが、絶対に違う」
悪漢どもの諸行に怯えるほかない人々も、天を仰いで困惑した。
黒雲から生ずるは雷鳴か? はたまた稲妻か? ……どちらも否である。
雲間より生じたるは、おお……空を焦がし切り裂くほどの、赤。
すなわち龍神・燭陰の怒りを示す、天地万物をも焼却する破滅の炎である!
「な、何ぃ
……!?」
その恐ろしさを誰よりも思い知ったのは、他ならぬ悪漢どもであった。
腐っても竜のはしくれ、垣間見えた龍神の位階は人間よりもよほど理解できる。
理解、してしまう――自分たちが怒らせてしまったモノの恐ろしさを。
竜を名乗る不埒者どもは、悲鳴のような高い声をあげて物陰に隠れようとした。
だが、もはや遅い。頭を垂れて許しを請うたところで、龍神は赦すまい。
煮えたぎる紅蓮の炎は蛇の如くとぐろを巻き、広大なる都に降り注いだ。
しかしてその炎は、不思議と人やそれに連なる物品には一切被害をもたらさぬ。
怒りを以て焼き尽くすのは、竜を驕る愚か者どものみなのだから!
「ア、アアアアア――ッ!!」
断末魔が、都のあちこちで轟いた。
それさえもかき消すのは、天地にその威容をしろしめす龍神の雄叫び。
人々は思い知った……悪漢どもをさえ震え上がらせるおおいなる力の存在を。
「……偉大なる赤の龍神様。そのお怒りを以て、お清めくださりませ……」
その身を捧げし巫女が、ぐるぐると煮え立つ炎の中心で祈りを捧げ続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
馮・志廉
痛めつけられている者の前に、軽功で躍り出る。
拱手の礼が一般的と聞いたが、外道に対する礼儀など知らん。
無礼と思うなら、その“教育”とやら、俺が代わって受けてやろう。
被害者を守るために、その場から一歩も動きはしない。
風雷会をその気にさせるために、反撃も指一本触れぬと約束しよう。
しばしその場で僅かな動きで攻撃をかわす。鉄板橋(仰け反り)など。
焦れて複数集まってきたら、被害者の耳をふさぎ、内力で防護する。狙いは、『虎嘯功』による大喝一声。
指一本触れてはいないが、貴様等の内功で耐えられるか。
●硬骨漢、武を示す
ふわりと、乙女の織った絹が風に吹かれるような軽やかな動きだった。
男がひとり、重力を感じさせない動きで、空から降り立ったのである。
それも、悪漢どもがいたいけな乙女を囲んでいる、そのど真ん中にだ。
「「「……!!」」」
悪漢どもは竜である。だが同時に、ただならぬ武功を持つ腕利きだ。
ゆえに、即座に痛感した――この男の軽功、ただものではないと。
悪漢どもは即座に飛び退き、各々の武器を構えじとりと殺気を放つ。
「「「誰だ、てめえはっ
!!」」」
常人ならば、肌を突き刺すような殺気を浴びて怯えすくむだろう。
つまり、内功を練り上げた達人と常人とでは、その時点で差が生まれる。
しかしてその男――馮・志廉は、猛禽めいた鋭い瞳で悪漢どもを睨め返した。
両者の殺気と侠気とがぶつかりあい、中空がぐにゃりと飴めいて歪む。
「娘ひとりを取り囲み、痛めつけて悦に入る外道ども。もはや問答は無用だ。
貴様らには、拱手の礼すらも必要あるまい。風雷会なる下賤の者どもめ」
「てめえ……俺たちが誰かをわかってて歯向かうつもりだな?」
「それは否だ」
志廉は涼しい顔で言った。
「挑んでくるのはそちらであろう。さあ、参るがいい」
不遜! 割り込んでおきながら挑戦されるは己とうそぶくその大胆不敵!
しかして先の軽功から、それだけの武功があることを彼は示している。
悪漢どもはぐるぐると竜めいて喉から唸りを漏らし、武器を構えて飛びかかった!
「てめえなんざ、正体を見せるまでもねえっ!!」
「その驕慢、悔いることになるぞ」
志廉は言いつつも、足の裏を地面から離さず上体の動きで攻撃を躱す。
槍が突き出され刀が首を刈ろうと振るわれるも、それを回避してしまうのだ。
「す、すごい! あなたは一体……!」
後ろに守られる娘は、思わず恐怖を忘れて感嘆してしまうほどだった。
「俺のことはよい。それよりも耳を塞ぐのだ」
「? ……は、はい!」
娘は頭をかばうようにして、両手を耳朶に当てた。
完全に挑発的な志廉の態度にしびれをきらせた悪漢が、その身をふくらませる!
「てめえ、戦うつもりもねえのか!?」
「俺は指一本とて貴様らには触れん。だが、貴様らを片付けてみせよう」
「ほざけえっ!!」
竜どもが怒り狂い、ばちばちと雷霆をその身に纏う!
いよいよ本領発揮というその瞬間、志廉は大きく息を吸い込み――。
「――破ッッ!!!」
大喝一声! 内功を込めた大音声が、竜どもの鼓膜を、脳髄を吹き飛ばした!
「「「がはぁ
……!?」」」
「言ったはずだ。"指一本触れはしない"とな」
見事なり。まさしくこれこそ武功の差!
硬骨漢は、悪党どもに身の程を思い知らせ、そして声だけで打ち負かしてみせたのだ!
大成功
🔵🔵🔵
神酒坂・恭二郎
やれやれ、何処の世界も大変だねぇ
飯屋で麺をすすりながら、市場で暴れる連中の前に出よう
「小さい子もいるんだ。少し静かにしておくれよ」
丼を片手にゴロツキ竜達の前に出よう
やる事は大立ち回りだ
丼を片手に、あるいは頭の上や相手の体に乗せたりして、アースの香港映画よろしく中身を零さずに連中を叩き伏せよう
食堂にある長椅子や机、果物売り場の商品などを使って攻防したいね
【功夫、早業、見切り】
自信の強靭な鱗に対しては、十分に体勢を崩した上で透し打ちを行いたい。この世界の理合では、人体の大半は水で出来ていると言う概念だったかね
【体勢を崩す、衝撃波、鎧無視攻撃】
「ご馳走さん。美味しかったよ」
麺と果物の代金は忘れないよ
●その男、食事中につき
「おい、聞いたか? 第3班の奴らが、妙な武侠に蹴散らされたらしいぞ」
「第5と6班の奴らも、ショバ代の回収中にぶちのめされたって話だな」
どうやら、猟兵たちの活躍は風雷会の中でも噂になっているようだ。
しかしその口ぶりは、自分たちがやられているにしては妙に他人事だ。
「ハッ、くだらねぇ。どうせいまも、どこかで道草食ってるだけだろ」
倒されたオブリビオンは消滅して戻っていないのだから、さもありなん。
奴らが事態を把握する頃には、市井に情報が出回っているだろう。
いわば今の風雷会は、己らの立場も知らぬ哀れな井の中の蛙なのである。
さて、そのカエルどもの目的は、市場で因縁をつけ金をせびること。
連中がのこのこ市場に顔を出すと、そこで小さな少年がこう言ったのだ。
「あ! ひきょーものでやられっぱなしのふーらいかいのやつだ!」
「……なぁにぃ?」
「こ、こら! いけませんっ、なんてことを言うのっ!!」
幼子の母親が慌てて諌めようとするが、時既に遅し。
聞き捨てならぬ風評を耳にした悪漢どもが、親子を取り囲む。
「おいボウズ、今なんつった? 誰が、なんだって?」
「ふーらいかいは、ひきょーもので、いくじなしの"ちんぴら"だっていったんだ!」
必死に抱きかかえようとする母親を押しのけ、その子は悪漢どもを睨んだ。
「おまえたちなんか、こわくないぞ! ぶきょーさまが、やっつけてくれるんだから!」
「「「ハッハハハハハ
!!」」」
悪漢どもは大笑いし……そして、額に青筋を立てて、親子を恫喝した!
「どうやら躾がなってねえようだなァ!!」
「俺たちが特別にガキを教育してやる、感謝しろっ!!」
「あ、あああ……! ど、どうかこの子だけは、私はどうなってもいいですから!」
「黙れッ、俺たちを嘗めるとどうなるか思い知らせてやるッ!!」
母親は、気丈にも悪漢を睨み続ける我が子を必死に抱きしめた。
怒り狂う悪漢どもの魔の手が、親子を引き裂こうと伸ばされる――!
――ヒュンッ!
「ぐあああっ!?」
「「「!?」」」
幼子の襟首を掴もうとした悪漢は、伸ばした手を抑えてもんどり打った。
はたして何が起きたのか。仲間たちが、その男の様子を確かめ、驚愕する。
「て、手首に何かが刺さってやがる! これは……箸袋だとォ!?」
然り! 悪漢の手首を、一本の箸袋がまっすぐ貫いていたのである。
ただの紙が深々と手首を貫くなど、人間業ではない。なにせ、紙なのだ。
これは一体、いかなる芸当なのか……!?
「やれやれ、小さい子相手に大人げない。食事中は少し静かにしておくれよ」
向かいの店の暖簾をくぐって現れたのは、丼を片手に持ついなせな男。
神酒坂・恭二郎は麺をずるずるとすすって、親子を見やる。
「その子は正直なだけで、お母さんは我が子をかばっただけじゃないか。
怒り狂う理由がどこにある? ……ああ、図星を突かれたからかね?」
「「「て、てめええっ
!!」」」
悪漢どもは怒りの矛先を恭二郎に変え、同時に襲いかかった。
恭二郎はアクション映画のカンフースターめいて、その攻撃を軽やかに躱す。
もちろん、丼は持ったままだ。しかも、中身はスープ一滴こぼれていない!
「おいおいまだチャーシューを食べてないんだぞ、よしてくれよ……っと!」
SMASH!! 恭二郎は屋台の長椅子を蹴り上げ、悪漢の顔にヒット!
「ぐおっ!?」
「あんたたちの鱗で取ったダシは、旨くなさそうだしな!」
ひょいっと丼を真上に放り投げると、チェーンパンチを繰り出し敵を吹き飛ばす!
「「こ、こいつ……強いッ!!」」
「どうするね? その仮の姿でいつまで遊ぶ?」
挑発に業を煮やした悪漢どもは、雄叫びをあげて竜の身体に変身した。
恭二郎が放り投げた丼は、いまだ頭上。恭二郎はふっと上を見てそれを確認する。
「「「戦いの最中によそ見か、バカめえっ!!」
竜の爪が襲いかかる――だが見よ、恭二郎はそれを受け止めた!
一体いかなる武器を使ったのか。刀か? 盾か? その正体は!
「わ……わりばしでたたかってる1?」
幼子は驚愕した。恭二郎は、持っていた割り箸で爪を弾いていたのだ!
「内息も風桜子も、根本は同じだ。ようはテクニックの違いなのさ」
「こいつ……さっきの箸袋は、てめえが硬化させたものだったのか!」
「あいにくそれ以外に手持ちがなかったんでね。しかしまいったな……」
恭二郎は嘆息すると、嫌いな具材を避けるようにちょいと爪を押しのけた。
そして箸を持っていない方の掌を突き出し、鱗の上から透し打ちを叩き込む!
ドウンッ!! と大気のたわむ音! 風桜子が敵体内を浸透した証拠だ!
「ごぼっ!!」
竜は血を吐きながら吹き飛ばされ、仲間を巻き込んで派手に転がった。
ぴくぴくと痙攣する悪漢どもを見下ろしつつ、恭二郎は落ちてきた丼をキャッチ。
「こいつはばっちくてもう使えないな。店主さん、新しい箸をいただけるかい?
それと、そこの正直で勇気のある子と、優しいお母さんにも一杯出してあげてくれ」
恭二郎が三人分の代金をカウンターに乗せると、店主はぽかんとしながら頷いた。
「あ、ありがとうございます……あの」
「……ぶきょーさまだ! つよくてかっこいいぶきょーさまだー!!」
母親の言葉を遮りはしゃぐ子に、恭二郎はウィンクしてみせた。
「残念。俺は武侠じゃないのさ。人呼んでスペース剣豪、覚えておいてくれ」
人々の拍手が、市場を包み込んだ!
大成功
🔵🔵🔵
姚・陽天
もちろん人々を虐げ、外道働きをする、それを糺すに異論はないけれど
風と雷の名を掲げて大きな顔をしているのは、また更に許せない所ね
しかも竜! ううん、頭が痛くなってきた……。
…ねえ、これって私が出ていったら敵と間違われるんじゃないかしら…? 大丈夫…? まあ駄目なら謝りましょう!
こんにちは、問答無用よ! さっさと正体を表しなさい駄竜くん!
相手の雷も攻撃も、全て宝貝で受け流し、弾いていく
――うん、それが貴方たちの全力ね? ではこちらから参りましょう
遠きものは音に聞け、近きものは目にも見よ
唸り轟け双頭龍!
盛大に雷と風の嵐を巻き起こし、悪い風と雷を吹き飛ばすわ
あ、家とかは吹き飛ばさないようにね!
●風よ、雷よ
「よぉ~お嬢ちゃん、いい尻してるじゃねえか。俺たちと遊んでくれよぉ~」
「や、やめてください! 仕事中ですっ!」
とある飲み屋で、白昼堂々と給仕に悪絡みする酔客……否、風雷会の悪党ども。
「ああ、やっぱり始まった……これだから奴らを入れたくなかったんだ」
「おい店主、何か聞き捨てならねえ台詞が聞こえたぞ?」
「ひ、ひぃい! とんでもありやせん!!」
小太りの店主は震えきっており、給仕の娘をかばうことも期待できそうにない。
腰に手を回そうとする悪漢の手を、気丈そうな娘は咄嗟にはたいてしまう。
「や、やめて……! こ、ここはそういうお店じゃないし、私だってそうです!」
「おいおい……袖にされちまった。悲しいねぇ」
「お前の誘い方が下手すぎるんだよ。下手っぴめ」
悪漢どもは、震えながら反抗する娘を見てげらげらと笑いあった。
「俺が手本を見せてやるよ。よっこいせ、と」
別の悪漢が立ち上がると、不安げに見上げる娘を壁際にどんっ! と追い詰めた。
「きゃっ!?」
「そもそも、迂遠な誘いをかけるからいけねえんだ。そんな必要はねえんだよ」
「違いねえ! なにせ俺らは風雷会の強者だ、ほしいもんは奪いやいい!」
「う、嘘……! やだ、やめてっ!」
己の運命を悟った娘は、顔を青ざめさせて必死に懇願した。
「キヒヒヒ! いいねぇその顔、そそるぜぇ……!」
だが、悪漢はそんな懇願に耳を貸しさえしない。
怯える娘の服に手をかけ、勢い任せに破り捨てようとした――その時!!
「そこまでよ!!」
「「「……!」」」
店の扉がばぁん! と勢いよく開かれ、ひとりの女が姿を現した。
事態を見守るしかなかった店主や他の客はもちろん、悪漢どもでさえ、
その緑色の瞳と髪そして肢体に目を奪われ呆けてしまったのである。
女は、それほどの美貌であった。紛れもなく、国を傾かせかねないほどの。
「き、綺麗だ……」
と、思わず悪漢のひとりが呟いてしまうと、他の連中がそいつの頭をはたく。
「バカ言ってんじゃねぇ! ナメられてんだぞ、しゃんとしろ!」
「ナメてる? それは違うわよ、駄竜くんたち」
「「「!」」」
己らの本性を言い当てた女の言葉に、悪漢どもは殺気立った。
「"ナメてる"っていうのは、優れた実力を持つ者が不当な扱いをされたときに使う言い回しでしょう? 駄竜くんたちは、ただの外道働きをする三下だもの。
だから、私は正当な評価をしているだけ。言葉の使い方は間違えたら駄目よ?」
「こ、この女……!」
「きゃっ!」
娘を突き飛ばし、悪漢はずんずんと女に歩み寄った。
「顔がいいからってナメてんじゃねえぞ、痛い目を見てえのかっ!!」
そして再び腕が伸ばされる――だが女は、伸ばされた手首を掴み、一蹴!
「だから、言葉は正しく使いなさいっ!!」
「うおおおおっ!?」
一本背負いの要領で、悪漢を店の外に投げ飛ばしてしまった!
「「「何っ
!?」」」
「あなたたちも表に出なさい。全員ぶちのめしてあげるわ!」
女――姚・陽天は掌を上向け、ちょいちょいと手招きして挑発してみせた。
悪漢どもはがたりと椅子から立ち上がり、店の外へと飛び出す!
そして、店外。
「この女、ただじゃおかねえ!」
「俺たち風雷会に楯突いた愚かさを教えてやる!」
「そのあとはたっぷり楽しませてもらうぜ、ひひひひ!」
悪漢どもはみるみるうちに倍以上に巨大化し、竜の本性をあらわにした。
だが、陽天の笑みは不敵。なにせこの女、実は人ではないのだ。
「まったく、風と雷の名を掲げているうえに、竜でありながら外道働きとはね。
風評被害でこっちまで後ろ指を指されそうで、お姉さん困っちゃうわ。
……あ、もしかして風雷会の「風」って、風評被害から取ってるのかしら?」
「「「ほざけえっ
!!」」」
竜の尾と爪が襲いかかる! それが纏うは天を貫く恐るべき雷霆!
だが陽天は宝貝「咆嵐天衣」を掲げ、鋭く叫んだ!
「遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ! 唸り轟け、双頭龍ッ!!」
空は一転にわかにかき曇り、轟き落ちるは巨大な稲妻!
雷光は悪党どもを鞭のごとく打ち据え、渦巻く嵐がその巨体をさらう!
「こ、この宝貝、まさか!」
「三轟島の主――"龍撃公主"、なのかあっ!?」
嵐はたちまち龍の鱗を、爪を、尾を、ことごとくを引き裂き、吹き飛ばした。
「あら、ご存知だったのね? まあ、気付いたところで遅いけど」
たちまち嵐はかき消えて、残るは舞い上がった砂埃ばかり。
風の残滓に髪をなびかせて、恐るべき仙女はくすりと笑うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
豊水・晶
市中での乱暴狼藉に加え女性への暴力。だいたいのオブリビオンに慈悲は必要ありませんが、今回の件は特にいらない部類では?悪の組織の構成員として定番のような悪漢。ふふっ、腕が鳴りますねぇ。完膚なきまでに叩き潰してあげますよ。
まとめて相手してあげるのでかかってきなさい!
一応竜みたいですし、こうゆう敵って数のわりに頑丈でめんどくさいんですよねぇ。なので、指定UC発動。神罰を載せて、範囲攻撃 斬撃波で蹂躙します。
アドリブや絡みなどは自由にしていただいて大丈夫です。
●偽りの竜を討て
「都中での乱暴狼藉、それに加えて女性や子供への暴力……見下げ果てましたね」
そこらじゅうで暴れまわる悪漢どもの不埒な行為に、ついに竜神が立ち上がった。
豊水・晶は呆れと侮蔑が混ざりあった冷たい眼差しで、悪党どもを睨みつける。
「なんだぁ、この女は。俺たちのやることにケチつけるってのか?」
「ええ、そうです。群れないと悪事も出来ない臆病者を怖がるはずもありません」
「てめぇ……言うじゃねえか」
悪漢どもは殺気立ち、晶を取り囲む。
晶は髪をかきあげると、ふう、と嘆息した。
「だいたいのオブリビオンに慈悲は必要ありませんが、あなた達は特に不要ですね」
そして不敵な笑みを浮かべて、挑発的に目を細めた。
腕が鳴る、とでも言いたげな表情に、悪党どもはいよいよ怒髪天を衝く!
「吠え面をかくなよ、女ァアアアッ!!」
悪党どもの身体が二倍以上に膨れ上がり、竜としての本性を現した。
そして全身に黄金の稲妻を纏い、その爪や尾で晶を引き裂こうとする。
強靭な鱗を持つがゆえに、この形態の雷霆竜は防御を考える必要がないのだ!
「その鱗、自慢にするだけはあるようですが――」
晶は地面ごと両足を刈る尾の薙ぎ払いをジャンプして躱し、敵の頭上へ。
同時に襲ってきた竜の爪を,瑞玻璃剣を盾のように掲げることで受けた。
「人の姿を借りてせせこましい悪事を働く輩に、遅れを取るつもりはありません!」
晶は空中で身体を捻り、自由なほうの瑞玻璃剣で空中を切り裂いた。
すると斬撃が空間の裂け目に変わり、そこから膨大な量の水が溢れ出す。
「な、なんだこの水は!?」
「か、身体が押し流される
……!!」
「竜は降り川猛き悉くを流しゆく――この程度はまだ序の口ですよ?」
晶の言葉は嘘ではない。溢れ出る水は、大水下りの封印の一割にすら満たないのだ。
敵が水量に怯んだ瞬間、晶は両手の瑞玻璃剣に力を流し込み、舞うような斬撃を連続で繰り出した!
往時の力を失ったとはいえ、晶はれっきとした竜神。そして、歴戦の猟兵だ。
竜でありながら悪漢に身をやつす彼方とは、場数も地力も段違いである。
斬撃は水の力を宿す衝撃波となって荒れ狂い、強靭な鱗を断ち、砕いた!
「完膚なきなまでに叩き潰してあげましょう。神罰を受けなさいっ!!」
「「「グオオオオッ
!?」」」
大岩をも小石に変える大河の如き破壊が、雷霆竜の群れを罰した。
嵐となった斬撃は、それ以外の何をも傷つけることなく天へと昇っていく。
晶が残心を打って剣を収めると、空高く浮かんだ水と雷の魔力は四散した。
散った水の残滓が、都に降り注ぐ。綺麗な虹が、空に浮かび上がっていた。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
仁と義。猟兵として。
【勇気】と【覚悟】を胸に
派手に暴れてまいりましょうか
天性の【野生の勘】、培った【戦闘知識】で
相手に動きをしっかり見ていき
攻撃に【カウンター】での【功夫】の一撃で
吹っ飛ばして行きましょう
【怪力】を生かした拳技はいかがですか
【気合い】の入った叫びと共に叩き込むと
爽快感ありますかね
攻撃を避けられなくても、【オーラ防御】を
押し出すようにぶつけ、体勢を崩して重い一撃を入れる
常に激しく動き、後ろを取られないようにして
1体1体確実に倒していく
大体雑魚を片づけ、逃走を図る敵がいれば
【ダッシュ】で追いすがり、【ジャンプ】してからの
《トランスクラッシュ》で
闘気纏うヒップでの踏みつけで仕留めます
●仁と義を胸に
「せやぁっ!!」
裂帛の気合を込めた雄叫びとともに、ユーフィ・バウムの拳が悪漢を叩きのめす。
「がはっ!?」
大地を砕く拳の力は、人の姿を保ったままの雷霆竜では耐えられないほどだ。
力を温存していた愚かな悪漢は、その一撃で身体を砕かれ消滅した。
「このガキ、打撃の一発一発の威力がハンパじゃねえ!」
「だが、数はこちらのほうが上だ。構うこたあねえ、力を開放して叩き潰すぞ!」
「応!!」
その怪力に恐れをなした悪漢どもは、竜の本性を現し稲妻を発生させた。
直列接続の要領で電撃の威力を高め、ユーフィを吹き飛ばすつもりなのだ!
「馬脚を現しましたね、風雷会。ですが、その程度でわたしを倒せるとでも?
ドラゴン退治なら飽きるほどしてきました。降参したほうが身のためですよ」
「ほざけ……我ら風雷会の底意地、侮るなよッ!!」
敵はユーフィを取り囲み、お互いに稲妻の力を循環させて巨大な輪を生み出す。
輪の内部はすさまじい乱気流が荒れ狂う、人間には生存不可能な空間だ。
しかしユーフィは、ただの人間ではない――極限まで鍛え上げた蛮族である。
ミキサーのような乱気流の中で、しっかと足を踏みしめ荒廃に耐えていた。
「こ、こいつ……まだ耐えるのか!」
「ならば、直接雷撃をぶつけてやるまでだ!!」
雷霆竜のエネルギーがいよいよ頂点に達し、巨大なプラズマ球が生まれた。
さしものユーフィとて、あれを喰らえばひとたまりもあるまい。
ゆえに、ここが好機――ユーフィはプラズマ球が炸裂する一瞬前に動いた!
「その隙、もらいました。でやぁっ!!」
SMAAASH!! 練り上げた気を込めたストレートパンチが、竜の鱗を叩いて砕く!
「ごぼ……ッ!?」
「し、しまった! 電撃の流れが乱されて……!」
相互に循環して高められていたエネルギーが行き場を失い、迸った。
バァン!! という轟音とともにプラズマの熱量が飛散し、雷霆竜どもは怯む。
竜でさえ耐えかねるほどのエネルギーの渦を、ユーフィは凌いでいたのだ。
その時点で、勝負は決していた――もはやその拳、防ぎ切るすべなし!
「ウオオオオッ!!」
竜は咄嗟に爪を尾を振り回し、ユーフィを吹き飛ばそうとした。
ユーフィは大雑把な動きを見切り、小さな体を柔軟に使って懐に潜り込む。
「風雷会、何するものぞ。これで、終わりです!!」
オーラをまとった拳が、雷霆竜の逆鱗を貫いた。
「こ、小娘の分際で、なんという強さ……ァアアアアアッ!!?」
溢れる威力が竜の身体を内側からバラバラに引き裂き、そして吹き飛ばす!
己の威を誇示する堕落した竜どもでは、克己する蛮人の力には敵わないのだ!
大成功
🔵🔵🔵
グウェンドリン・グレンジャー
(唐代風ふわふわ仙女仕様のカラス娘、封神武侠界に降り立つ)
雷の、竜の、チンピラかぁ
(しゅたっと地上に降り立つ)
これでいこう
(掲げるは亡霊ラムプ、Glim of Anima。喚び出すのは逆位置の運命。9日間の女王、ジェーングレイ)
そうだなぁ……このお姫様……は、この世界風、言えば……県主くらいの、身分から、突然、女の皇帝になった……と思ったら、前の皇帝の、姉、に、廃され、死罪にされた
そ、物理乱気流には、運命の乱気流で、乗っかる
『彼女』が操る、虚数の薔薇、に、私の念動力、乗せて、攻撃力を、強化
虚数、形而……そう、この薔薇の、黒は、物質では、ないはずの、私の、心の影
私の、心も、乱気流
女心は、春一番
●女心は春一番
「雷の、竜の……チンピラ、かぁ」
ふわりと唐代風の衣装を纏ったグウェンドリン・グレンジャーが、地に降り立つ。
封神武侠界。新たなる世界――その香りは、やはりどこか違う。
新たな世界に挑むワクワク感と、竜でありながら狼藉を働く悪党への呆れ。
その両方が心の中にあった。どちらかというと、ワクワク感のほうが少し上だ。
であるからして、不埒な悪党どもはさっさと片付けるに限る。
グウェンドリンは亡霊ラムプ『Glim of anima』を掲げ、灯火を揺らす。
「なんだぁ? 女ひとりで俺たちに歯向かうつもりか!」
「小賢しいやつだ、囲んで叩きのめしちまえ!」
「どんな妖術を使うつもりか知らないが、風雷会に勝てると思うなよ!」
悪漢の姿をした雷霆竜どもは、グウェンドリンひとりを多数で取り囲んだ。
竜の姿など表さずとも、その武功で叩き潰せるとたかをくくっているのである。
グウェンドリンはそんな連中を、感情を覚えさせない瞳で一瞥した。
――そんな彼女の傍らに現出したのは、純白のドレスを着た姫君である。
「ジェーン・グレイ。おねがい」
首に赤いチョーカーを着け、目元を白い布で覆われた姫君が、こくりと頷く。
ジェーン・グレイ……またの名を、ナイン・デイ・クイーン。
わずか9日間で、様々な政治的な意図により斬首台の露と消えた悲劇の女王。
正しくは、その姫君のカタチを取る、グウェンドリン自身の心の影。
グウェンドリンの足元から、黒い薔薇が蔓延る。それも、ただの薔薇ではない。
本来この世界にあってはならないもの、虚数で作られた神秘の薔薇だ。
悪漢どもは薔薇を切り裂こうとした……しかし、武器が通らぬ!
「な、なんだこりゃあ! そこにあるはずなのに、手応えがねえ!」
「面妖な……しかたねえ、こうなりゃ本気で吹き飛ばすぞ!」
「応! 風雷会の所以を見せてやらあ!」
予想外の手応えに戸惑った悪漢どもは、本性を現し、稲妻を纏った。
円陣を組んだ雷霆竜は相互に電撃を循環させ、乱気流をさらに加速させる。
並の生命は存在を許されないほどの、嵐荒れ狂う空間が現出!
「――そっちが物理で、来るなら。私は、運命の乱気流で、乗っかる」
黒い薔薇が乱気流からグウェンドリンを守り、散っていく。
舞い散る薔薇の花びらは、嵐を切り裂いて雷霆竜の鱗を切り裂いた。
奴らの起こした乱気流の嵐が、そのまま奴らを切り裂く花びらの速度になる!
「な、なぜだあ!? これほどの嵐の中で、なぜ無事でいられる!?」
「だって――女心は、春一番、だから」
グウェンドリン、そこはかとないドヤ顔であった。
「こ……答えに! なってねぇえええええ!!!」
いまや渦巻く嵐はどす黒く、数え切れない花びらが逆に竜を飲み込んでいた。
「私の、心も、乱気流……風にも雷にも、負けないよ」
言葉の意味はともかく、とにかく黒い薔薇は虚数の力で竜を滅ぼした。
花吹雪めいて、舞い散った黒い薔薇の花びらが落ちてくる。
黒の中にきらりと輝く金の瞳は、まるで黒雲に煌めく黄金の稲妻のようだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『龍使い『劉累』』
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POW : 伝豢龍使令法
自身の【生命力】を代償に、1〜12体の【小型龍】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
SPD : 我要斬龍手
【剣による斬撃と】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【使役する龍】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ : 撃賊巨龍術式
【使役する龍のうち一体】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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「いやあ、参った参った。手間暇かけて集めた雷霆竜が全滅とは」
悪漢どもをぶちのめした猟兵たちの前に姿を表した、ひとりの青年。
一見すると優男めいているが、その余裕の表情の裏には確かな実力が宿る。
何よりもその鋭い眼光が、只者ではないことを知らしめていた。
「あなたがたのおかげで、風雷会(ウチ)の面子は丸潰れです、困ったなあ。
このままだと我らの幇主もお怒りになりそうだ。ゆえに――」
青年が指を鳴らすと、空から稲妻! 竜の群れである!
「この劉累が、お相手いたしましょう」
雷霆竜は、この男ひとりが使役する手下に過ぎなかったのだ。
数多の竜を使役するその武功、油断は禁物。
風雷会を完全に叩き潰すため、幹部・劉累を撃滅せよ!
●プレイング受付期間
04/06(火)08:30前後まで。
九頭竜・聖
……不遜
斯様な者共とはいえ、竜の名を冠した者を操り、あまつさえあのような振る舞いをさせるなど
龍とは畏敬すべき、偉大なる御方々
畜生にも劣る行いをさせるなど言語道断
……龍神様たちの怒りは到底まだ収まりませぬ
……此度は貴方様をおよびすればよろしいのでございますね
おいでませ、おいでませ……睚眦様
【祈り】の舞と共に御呼び致しますは風を従えし御方
空を翔ける大いなる翼
数を頼みとする輩など恐るるに足りませぬ
不遜なる行いの対価は荒れ狂う風の怒りによって払われることとなりましょう
※アドリブ、連携歓迎
●竜を使うもの、竜を崇めるもの
「――……不遜な」
劉累の振る舞いに、九頭竜・聖はその端正な顔立ちを不快そうに顰めた。
それは一見、己に対して無礼な振る舞いを働く愚か者を侮蔑するように見える。
しかし、聖の場合は少々事情が違う……なにせ彼女は「従う者」だ。
「不遜? 私の態度のどこがお気に召さなかったと?」 お嬢さん」
「いいえ、わたくしめに対してではございませぬ」
聖は首を振った。
「貴方様は"龍"という偉大なる御方々そのものを侮り、そして貶めました。
いかに斯様な者どもとは言え、"竜"の名を冠した者をあのように操るなど……。
まさしく、不遜。貴方様の畜生に劣る行いに、龍神様がたはお怒りでございます」
「へえ、龍"ごとき"に仕える者か。それはたしかに私とは水が合わないはずだ」
劉累はことさら皮肉めいて顔を歪めて笑った。
「ならば私に味わわせてみるといい。その龍神の怒りとやらを!」
劉累は杖を振るい、己の生命力を代償に6体の竜を召喚してみせた。
大きさは小型……とはいえ、それぞれ1メートル程度はあるサイズだ。
そして火や水あるいは土といった、様々な属性を宿す強力な竜の眷属である!
「――此度は、貴方様をお喚びすればよろしいのでございますね」
来襲する竜の群れには構わず、聖は何処かを見つめながら呟いた。
おいでませ、おいでませ。
此処ではない何処か、誰でもない何かに呼びかけ、そしてその身を捧ぐ。
その身は龍神のために在るもの。それ以外の何かが害していいものではない。
庇護とは絶対的支配を意味する――竜の眷属と使い手は、侵してはならぬ領域に踏み込んでしまったのだ。
「嘆願の舞い? 一体何を……いや、そもそもこの強力な神気は
……!?」
ごうごうと、聖を中心に強烈な暴風が吹き荒れた。
予想以上の霊圧を感じ、さしもの劉累も余裕を失って気色ばむ。
しかしもう遅い、とっくに龍神の堪忍袋の尾は切れてしまっているのだ。
かくて現れたる竜神"睚眦"が、暴風の渦の中から愚か者どもを睨めつけた!
「空を翔ける大いなる翼、御身の力あらば、数を頼みとする輩など恐るるに足りませぬ」
聖の言葉を示すように、睚眦の咆哮が烈風となって竜の眷属を吹き飛ばした。
荒れ狂う嵐の如き風圧が、劉累の全身を切り裂き、もてあそぶ。
「こ、これほどの龍を、どうやって使役して……ぐああああッ!!」
吹き飛ばされ壁にめり込んだ劉累を、聖は無感動に一瞥した。
「"使う"などと考えている時点で、貴方様には理解できないのでございましょう」
それは、決して救われぬ愚か者を憐れむ眼差しだった。
成功
🔵🔵🔴
月凪・ハルマ
てか、あんなごろつき連中使ってる時点で
面子も何もあったもんじゃないと思うけどな
◆SPD
さて……まずは龍との連携を崩したいな
【魔導機兵連隊】でゴーレムを召喚して
向こうの使役する龍の相手をしてもらおう
ただし無理に倒す必要は無い。足止め出来ればそれでよし
どうやら向こうは龍を覗けば近距離攻撃しか持ってなさそうだし
基本的には距離を保ちながらの手裏剣の【投擲】で攻めるとしよう
【残像】を残す程の速度で敵の周囲を駆けつつ、数を投げまくる
手裏剣にはよく使う爆破機能も付与(【武器改造】)
安易には近づけない様にしつつ、同時に周囲の龍にも
手裏剣を投げ数を減らしていこう
手が空いたゴーレムにはこちらを手伝ってもらえばいい
アルトリウス・セレスタイト
早速だが退場しろ
戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
破界で掃討
対象は召喚物含む戦域のオブリビオン
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
『煌皇』を以て高速詠唱を無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、斉射
それを間断なく無限回実行
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
何をやろうと構わんが逃す気はないと言っておく
口上や小細工は全て無視
どうせ建物や器物含めオブリビオン以外へは無害
少々眩しい手品程度のもの
一切を捻じ伏せれば良い
火力と物量で全て圧殺する
※アドリブ歓迎
豊水・晶
あらあら、あのような品のない連中を手下にしての謀、潰れるような面子がおありになったんですね。
ふふっ、数多の竜を使役する事は確かに凄い事ですが、竜が若すぎますね。
実は私も竜なのですよ。貴方より遥かに長い時を生きた竜神です。龍使いと自称するなら倒して配下に加えてみますか?最も倒せたら、の話ですが。
指定UC発動、切断 斬撃波 神罰を載せて攻撃します。
さあさあ、御してみなさい。挑戦する対価は貴方の命ですよ。
シャルロッテ・ヴェイロン
まあ、あの下っ端たちに比べて、少しはできそうですね、幹部だけに。
で、ドラゴン一匹巨大化したからといって何だというのです?
去年散々倒してきた帝竜たちに比べれば、大したことないように見えますけど?(と、さりげなく【挑発】)
で、ドラゴンの攻撃を【見切り】回避したり、【(各種)耐性・オーラ防御】でしのぎつつ、「竜殺し」の属性を付与した【指定UC】で攻撃していきましょう(【属性攻撃・2回攻撃・一斉発射・制圧射撃・誘導弾】)。
んで相手が油断してるところで本体に近づいて、光線銃を撃ち込んでやりましょうか(【零距離射撃・レーザー射撃】)。
※アドリブ・連携歓迎
●龍を猟(か)れ
三日月を思わせる白い円弧が奔る――それは、劉累の放った剣戟だ。
竜を使役する技術はもとより、劉累は本体がまず一流の闘者である。
その武功は伊達ではない。まともに喰らえば胴体両断必至の斬撃!
「あらあら、あのような品のない連中を手下にしていた割には、なかなか……」
二度、三度と繰り出される剣を弾き、いなしながら、豊水・晶が微笑んだ。
「けれど、あんな連中で謀をしておきながら、面子を気にするのは不思議な話。
そもそも潰れるような面子がおありになったんですね? 少々驚きました」
「ずいぶん言うじゃないか。まあ、彼らが下劣であることは否定しないさ」
剣戟の隙を突いて、晶が斬り込む。そこで立ちはだかるのは劉累の使役竜だ。
雷霆竜よりも強靭な鱗を盾とし、権勢の瑞玻璃剣を受け止め、弾いた。
晶は目を細める。竜の質も、先の連中に比べれば段違いということらしい。
「少しは歯ごたえがありそうですね。ですが、やはり竜が若すぎます」
「……なるほど。その物言い、そして底知れない神気の片鱗……あなたは竜神か」
竜使いとしての慧眼か、晶が竜神であることを劉累は即座に見抜いた。
閲した時は文字通りの桁違いだ。劉累は興味深げな様子で晶を観察した。
「私を配下にでも加えてみますか? もっとも、倒せたらの話、ですが」
「それも面白そうだ。となれば、私の下僕たちには精一杯働いてもらおう」
劉累はパチンと指を鳴らし、さらなる大量の従僕竜を召喚した。
その数は12。それぞれが、火や雷といった属性を宿す、強力な竜である。
劉累の生命力を代償に召喚された竜は、先の雷霆竜よりも凶暴で、貪欲だ。
「この程度で私を倒すつもりでは――」
「ないさ。だから、こうさせてもらう……!」
劉累はさらなる内功を注ぎ込み……従僕竜を巨大化させた!
本来であれば従僕竜のうち一体のみを巨大化させるところ、そのすべてをである。
「このくらいは無理をしなければ、立つ瀬がないだろうからね……」
劉累は額の汗を拭い、笑う。そして獰猛なる従僕竜が、咆哮を音叉させた!
「あの剣技と、竜の巨体か……連携をさせるのは、さすがに厄介そうだな」
敵の巨大化を見かねた月凪・ハルマは、合計99体の『魔導機兵連隊(レジメント・オブ・ゴーレム)』を召喚。
自身はその影に隠れつつ、数の差で従僕竜の相手をさせることにした。
「無理に倒す必要はない、足止めしてくれればそれで十分だ!」
魔道ゴーレムは各部から蒸気を噴き出し、ズシンズシンと勇ましく行進する。
炎あるいは雷、はたまた冷気を宿した従僕竜の爪が、鋼鉄の身体に振り下ろされる!
「そちらも手勢は召喚してみせるか。ユーベルコード使いならば当然だろうね!」
ゴーレムの隙間を縫うように駆け抜ける劉累は、次々に斬撃を放ちゴーレムを破壊。
追いすがる晶と激しい剣術合戦を繰り広げながらの、この立ち回りである。
ゴーレム連隊という囮がなければ、ハルマは即座に発見されていただろう。
「どうしました? 私を手下に加えるのでしょう、さあさあ倒してごらんなさい!」
「く……ッ! なかなか、自由にはさせてくれないか……!」
晶の剣戟は劉累をして、真正面から当たるのを躊躇させるほどのものだった。
12体の従僕竜はゴーレム連隊に足止めを喰らっており、連携がままならない。
ゆえに劉累としては、ゴーレム連隊をなんとしても取り除きたいところである。
晶はそれを見抜いた上で、そうはさせじと攻撃を続け、劉累を縫い止める!
「どうやらドラゴンのほうはフリーみたいですね。なら、今のうちに倒しましょう」
晶と高速の立ち回りを繰り広げる劉累を見、シャルロッテ・ヴェイロンは状況判断した。
先の群竜戦役で相手をしてきた帝竜に比べれば、この程度はなんてことはない。
しかし、戦いにおいて油断は禁物。連携というのは加算ではなく乗算されるもの。
敵が底力を発揮して竜を強化したからこそ、それを倒すのは大きな意味がある。
まずは敵の数を減らす――それは、対戦ゲームに於いては必須テクニックだ。
「攻撃プログラム展開、選択属性は"竜殺し"! これで決まりです!」
ユーベルコード『ATTACK COMMAND』で実体化させたのは、無数の弩である。
シャルロッテのこのユーベルコードの特色は、「攻撃属性を任意で設定出来る」というところにあるだろう。
火・水・雷・土といった基本的な魔術属性だけでなく、竜殺しや悪魔殺しといった概念に対する特効、はたまた毒や石化といった搦手にも切り替えられるのだ。
「さあ、ドラゴン殺しの始まりですよ!」
シャルロッテが掲げた手を振り下ろすと、弩が自動射撃を開始した。
従僕竜はゴーレム連隊との戦いにかかりきりで、矢の雨を避けられない。
そして命中した矢は、概念的な特効によりその強靭な鱗をたやすく貫通する!
「あのユーベルコード……困りますね、ああいうのは!」
劉累はシャルロッテの存在に脅威を感じ、本体を攻撃しようとした。
追いすがる晶。その対面に回るように、もうひとりの猟兵が立ちはだかる。
「残念だが、そうはいかん。お前は早々に退場してもらう」
アルトリウス・セレスタイトは冷たく言い、無数の魔弾を生成、撃ち出した。
ひとつひとつがあらゆる障害を無視し、根源から消し去る恐るべき蒼き光である。
その必滅威力を即座に看破した劉累は、鋭い斬撃を繰り出し魔弾を相殺!
「数は多いですが、ただの飛来物なら……ッ!?」
だが、劉累の表情は翳った。切り払ったはずの魔弾がさらに降ってきたのだ。
アルトリウスの『破界』は、その威力もさることながら物量こそが最大の特徴。
術式を循環・再現することで多重発動された魔弾は、雨どころか嵐と化す。
第一波を凌いだところで、それを超える第二波・第三波が襲いかかるのである!
「これほどの物量……ただのユーベルコードでは不可能なはず……!」
劉累はひたすらに魔弾を斬り続ける。だが、無限を相手にはかそけき努力だ。
なにより一時を凌げたとして、その背後には晶が迫っている……!
「無様ですね。私を相手に、そんな隙を晒しておいて無事でいられるとでも?」
「――!」
一瞬。それだけの隙があれば、晶にとっては十分だ。
すれ違いざまの斬撃が、劉累の胴体に真一文字の剣閃を刻んだ!
「がはっ!」
斬撃の鋭さもさることながら、剣から叩き込まれた神力が劉累を苦しめた。
内功によるオーラ的防御を紙屑のように切り裂く、まさに神罰の一撃!
「その痛みと苦しみは、竜をいたずらに弄んだあなたへの罰ですよ」
「ぐ……これほど、とは
……!!」
劉累は内息を乱し、無様に地面を転がるほかになかった。
視界の端では、竜殺しの弩を浴びた従僕竜が次々と倒れる光景。
「その身体じゃ、この数の攻撃は凌げないだろ!」
「油断が過ぎましたね。わたしたちは踏んだ場数が違うのですよ」
影に潜んだハルマの爆破手裏剣と、シャルロッテのレーザー射撃。
それが魔弾の雨に追撃する形で、劉累に襲いかかる。
「なるほど……これが、猟兵の力……ですか……ッ!!」
いかな達人とて、内息を乱せば武功を繰り出すこと能わず。
光をも切り裂く剣は空を切り、光と爆発が劉累を飲み込んだ!
そして同時に、12体の従僕竜もまた絶命し、断末魔をあげて滅んでいく。
竜使いの連携など、猟兵たちの連携に比べれば児戯にも等しいのである!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ルヴトー・シフトマン
どうやらテメェが幹部クラスのようだな
涼しい顔して、女子供を部下に嬲らせるその所業…許し難いぜ
その綺麗なツラ、人前に出られねえように『化粧』してやる
行くぜ天狼ォ!!思い知らせてやれ!
ほう、龍か…厄介そうな代物だ
だが相手が何であろうと関係ない
ここは俺の狩場、無粋な奴はそこで止まれ──『重圧』
動いてみろよ…即座に目が吹っ飛ぶことになるぜ
テメェもだ、刀使い
何かをするたびに、ツラのどこかが吹っ飛ぶぜ
まぁ、動かなければ助かるなんてこたぁ無いがな
<烈震砕牙>の柄を伸ばし、龍を細切れにするように振り回す
龍の血を奴にぶっかけ、本体に接近して薙ぎ払う
俺の怒りに触れた奴は、誰であろうと許さねえ
化粧はまだ終わらねえぞ
●怒りの代価
ルヴトー・シフトマンは若く、激情家である。
彼自身もそれを自覚しており、普段は強く自制して怒りを抑えてきた。
己は人を守り率いる立場にあるという自覚が、ルヴトーを繋ぎ止めているのだ。
そんな彼の自制心をもってしても、彼奴への怒りは抑えることは困難だった。
悪漢どもにあのような振る舞いをさせておきながら、涼し気な表情。
まるで自分は無関係といわんばかりの態度が、ルヴトーの逆鱗に触れたのだ。
「その綺麗なツラ、人前に出られねえように『化粧』してやるぜ……!」
キャバリア越しでも感じられる怒気を浴びて、劉累は不敵に笑った。
「ほう、一体どんな風に化粧をするというんです? その木偶などで!」
「言ってくれるじゃねェか。思い知らせてやるぜ、天狼ォッ!!」
愛機への侮辱が、ルヴトーの最後の導火線に火を付けた。
巨大化し雄叫びをあげる従僕竜の突進に、ルヴトーは真正面から応じる!
サイズ差は互角……否、単純な質量で見れば従僕竜のほうが上か。
パワーの面ではあちらに分がある。それをわかった上での正面対決だ。
「タッパがありゃ、天狼を圧倒できるとでも思ったか!?」
「何……!」
ズズンッ!! と、竜の一撃を受け止めた天狼の足元がひび割れた。
脚部が砕けた地面にめり込む。だが天狼本体は……無傷! いや、それどころか!
「いつもなら、力比べぐらいいくらでも相手をしてやるんだがな……!」
天狼はその両手で竜の爪を受け止め、土俵際の力士めいて竜を押し返している。
明らかに出力で劣るはずなのにも関わらず、竜が押し負けているのだ。
一体何故? 劉累は、刀を抜いて加勢しようとする……しかし。
「"テメェは、そこで止まれ"!」
「――!!」
ルヴトーの質量さえ備えていそうな怒りが、重圧となって劉累を縫い止めた。
これだ。この威圧感が、従僕竜を萎縮させてしまっているのだ。
そして、劉累さえも……達人たる竜使いをも射竦めるほどの怒気!
「この私を、威圧するだと……!? どうしてだ、なぜ動けない……!」
「ビビってるからだろうが、テメェが!!」
ルヴトーは従僕竜を突き飛ばし、烈震砕牙を引き抜いた。
柄を伸長させ、赤熱した刀身で鋼鉄じみた従僕竜の鱗を切り裂く。切り裂く!
「わ、私の竜が!」
八つ裂きにされた従僕竜の全身から、滝のような量の血が溢れた。
それは驚愕する劉累の顔を、化粧のように赤く染める……!
「こんなもんじゃねぇ、オレの怒りに触れた奴は誰であろうと許さねえッ!!」
「ぐ……うぉああッ!?」
横薙ぎの斬撃が、竜の身体を真っ二つに両断し、劉累を吹き飛ばす!
あまりの熱量に、地面に刻まれた円弧がじゅうじゅうと煮えているほどである。
これが、狼を激怒させる愚かさの報いなのだ……!
大成功
🔵🔵🔵
張・西嘉
なるほど、龍使いが配下に居たのか。
こいつを放っておけば次々と戦力の補充が出来る。なら、今のうちに倒しておくべきだな。
あまり数を呼ばれると捌き切れんが多く龍を呼んだ方が相手の代償も多いか…。
使役龍を【なぎ払い】【怪力】で捌きながら戦い適当な敵にUC【力で解決】を使用。
振り回して他の龍も巻き添えにしながら最後に龍を劉累に向かって投げる。
面子がどうのなど心配しなくていいぞ。
風雷会自体がなくなるからな。
●万事解決
「……ほう」
張・西嘉の姿を認めた劉累は、警戒の色を瞳に浮かべ、目を細めた。
「猟兵というのは、外の世界から来たものだけではないようですね。
そしてあなたは……なかなか、"出来る"ようだ。私としては実に困りものです」
「……どうした。さっさと来ないのか」
劉累の言葉を一蹴し、西嘉はコキコキと首を鳴らした。
「敵を褒めそやすのが風雷会の流儀か? その割に手下はずさんなものだったぞ」
「まさか。もちろん片付けさせてもらいますよ。私に相応しいやり方で!」
劉累は生命力を代償に、内功を迸らせ12体の従僕竜を一瞬で召喚した。
最初から全力である――つまり、西嘉をそれだけの脅威と認識したのだ!
(数が多いな。さすがに捌ききれるかどうか)
対する西嘉は冷静に敵の力量を測り、そして判断した。
劉累はただの達人ではない。竜を使役し、同時に一流の刀剣使いでもある。
西嘉ほどの武侠ともなれば、その腕前の一端はわずかな所作から察せるもの。
劉累が西嘉を脅威だと判断したように、西嘉もまた劉累を警戒していた。
ゆえに、油断はない。そこに襲いかかる12体の竜!
「……!」
西嘉は内息を調え、まず左右から襲いかかる二体の爪を掌でいなした。
交差した腕で、真正面からの3体目の竜の突進を受け止め、おおきく後退する。
踏みしめた地面に両足の痕が、鉄道のレールのように焼け焦げて刻まれた。
相応しい内功が伴っていなければ、クロスガードしたとしても身体が吹き飛んでいただろう。しかし、西嘉はほぼ無傷。威力を殺し、強引に竜を突き飛ばす。
背後、4体目と5体目の竜が回り込んでいる――垂直に跳躍し、尾の攻撃を回避。
空中に飛び出した6・7・8体目の竜の連撃を、拳の連打で相殺する。
「なかなかやりますね。やはり、見立て通りか……ならば!」
劉累が跳んだ。従僕竜に加勢し、追撃で西嘉を仕留めるつもりなのだ。
(来るか。ならば……こうするまでだ)
西嘉は……なんと、9体目の竜の攻撃をわざと受け止め、もう片手で尾を鷲掴み!
空中で強引に身を捻り、ハンマーのように竜を振り回した!
「な!?」
10、11、12体目の竜は、この強引すぎる攻撃に怯み、距離を取る。
西嘉は空いたもう片方の手で、そのうちの一体の身体を逃さずキャッチ。
9体目の竜を劉累めがけ放り投げ、着地の隙を殺したのである!
「なんと乱暴な……!」
「とりあえず掴んで振り回しときゃいい。竜だろうが、なんだろうがな!」
「!!」
疾い。西嘉は一瞬で間合いを詰め、もう片手に掴んだ竜を……叩きつける!
「ぐあ……ッ!!」
かろうじて刀で受け止めた劉累だが、踏みとどまれない衝撃が彼を吹き飛ばした。
西嘉はパンパンと両手をはたき、そして劉累に言い放つ。
「面子がどうのなど心配しなくていいぞ。風雷会自体が、なくなるからな」
「……戯言を……!」
立ち上がる劉累を、西嘉は猛禽類のような鋭い瞳で睨んだ。
その口元には、己の力量を疑わぬ自信に満ちた笑みが浮かんでいる――。
大成功
🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
おや龍だ
あの者が使役しているようだ
龍は好ましいからつい目で追ってしまう
サヨ?何を膨れているの
頬が美味しそうな大福のようだ
ヤキモチ妬いてくれるなんて嬉しいね
きみは本当に可愛い巫女だ
サヨがいっとうに美しい龍であるに決まっているだろう?
その美しい鱗も、絢爛の桜も
決して散らせはしない
私が守ってみせるよ
下郎たる者の主もまた下郎
私の愛しき龍を傷つけせはしないよ
桜龍となったサヨの上に乗り、結界を張り攻撃を防ぐよ
見切りかわしながら早業で駆け切り込み切断する
そなたらに厄災を贈ろう
『厄神ノ微笑』
一刀なぎ払い
撃ち落とす、雷のように降す神罰は根こそぎ奪い枯らす
朽ち堕ちる様に息をつく
私はやはり厄災にしかなれぬのか
誘名・櫻宵
🌸神櫻
龍ですって?!
愛し神が視線で追う私以外の龍に盛大に頬を膨らませ
私の方が美しい龍なんだから!
カムイの視界に私以外の龍が映ることすら嫌
…やきもちではないったら!
照れたのを隠して「龍華」
龍へ変じカムイを乗せて空へ
あんなのに使役されるなんて同情しちゃう
かぁいそだから、綺麗な桜にしてあげる
飛ぶのは心地いい
まとわりつく奴らがいなきゃね
食いちぎるのも良いけれど
カムイの前ではしたない真似はできないわ
カムイの事は汚させない
春嵐をなぎ払い、吹き荒ぶ桜花弁にいのちを喰らう
桜化の神罰が巡らせて
ほら、あなたも綺麗なひとつの桜
咲いた途端に、咲く前に
神の厄に触れ朽ちるそれに笑みを深める
あなたの災いは、いと美しきもの
●その瞳に映るべきは
龍に変じた誘名・櫻宵は、朱赫七・カムイを背中に乗せ空へと舞い上がる。
それを追う劉累は、従僕竜を召喚すると空中を蹴って差を縮めていく。
「おや、また新手の竜だ……」
カムイは、ちらりと後方――正しくは下方――の劉累と、従僕竜を見やった。
すると櫻宵は、不服そうに唸り声を漏らす。カムイはきょとんとした。
「サヨ? どうしたんだい、そんな不機嫌そうな声を出して」
きっと櫻宵が人間の姿をしていたら、頬が大福のように膨らんでいただろう。
その意味がわからず首をかしげるカムイ。櫻宵は、身をくねらせた。
「私のほうが美しい龍なのよ。なのに、カムイはあんな竜を見つめて……!」
「……ああ、なんだ。サヨはやきもちを妬いているのか。優しいね」
「……! ち、違うわよ! やきもちなんかじゃないったら!」
素直になれない櫻宵の言葉に、カムイはくすりと微笑む。
「安心してくれ、サヨ――きみがいっとう美しい龍であるのは当然だろう?」
「…………」
「その美しい鱗も、絢爛の桜も、決して散らせない。私が守ってみせるよ」
「ふ、ふん……! 別に、やきもちなんて妬いてないわっ」
カムイは苦笑を浮かべ、そして表情を引き締めた――敵が近い。
劉累は恐ろしい速度で距離を縮めている。空中を駆けるがごとき見事な内功だ。
優れた剣士であるカムイは、対手の力量の一端を察し、警戒を強めた。
「下郎たる者の主もまた下郎。サヨには、近づけさせない」
カムイは神力で結界を張り、従僕竜の攻撃を阻害する。
見えない壁に接触したかのように、従僕竜は空中で結界に激突し、もんどり打った。
「なんという密度の結界……ですがその程度、私の剣であれば!」
劉累の斬撃が、見えない結界を切り裂き強引に活路をこじ開ける。
すると櫻宵がぐるりと身を翻し、真下の劉累めがけて神罰の春嵐を吹き荒らした!
「カムイのことは汚させないわ。綺麗な桜になってしまいなさい!」
「チッ……!」
いのちを喰らう桜の花弁を、劉累は斬撃で切り払い、従僕竜を前に出す。
生命力を吸いつくされる前に、ミサイルめいて櫻宵にぶつけるつもりなのだ。
櫻宵からカムイを叩き落とすことができれば、劉累は大きく有利になる。
「――そなたらに、災厄を贈ろう」
そこへ、カムイの厄災が降り注いだ。
月影のように冴え冴えとした斬撃が、桜嵐に惑った従僕竜を打ち落とす。
櫻宵はさらに加速する――従僕竜の守りを失った劉累では、攻撃を防げない!
「疾い……!」
「残念ね、お馬鹿さん。でもあなたは幸運よ――こんな美しい災いを味わえるのだもの」
櫻宵の嗤笑と、カムイの剣戟が生んだ白い閃光が、劉累の網膜に刻まれた。
斬られ堕ちゆく敵を追って、桜嵐は渦を巻いて下へと吹いていく。
竜を使役する剣豪とて、災いを己がものとする神とその巫女には敵わない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
白き中華服のまま
なるほど、この世界においてもやはりドラゴンは力の象徴ですか
いいでしょう、ドラゴンを従える者として相対します
【神聖竜王の召喚】
我が友、白き竜王よ、魔教に堕ちた邪竜を討ちましょう!
竜王が鋭い爪牙で巨大化した龍に襲い掛かる(空中戦)
その間、術者同士としても戦闘を仕掛ける
四肢に稲妻を纏い(属性攻撃)、激しい蹴撃を叩き込む
回し蹴り(なぎ払い)、かかと落とし(重量攻撃・踏みつけ)、飛び膝蹴り(ジャンプ)
様々な蹴りを矢継ぎ早に繰り出し攻め立てる
巨竜が敵味方の区別をせずに暴れ出したら、劉累の胴を蹴り飛ばし(吹き飛ばし)同士討ちを誘発
さらに竜王の破壊のブレス(全力魔法)でダメ押しに畳みかける
●竜を従えるもの
オオオオオン――!!
「……なるほど、この世界においても、やはりドラゴンは力の象徴ですか」
空気震わす雄叫びをあげる巨竜を見上げ、オリヴィア・ローゼンタールは呟いた。
「いいでしょう。ならばドラゴンを従える者として、相対してさしあげます!
我が友、白き竜王よ……魔教に堕ちた邪竜を討ちましょう!!」
ドンッ!! と膨大な闘気が膨れ上がり、オリヴィアの背後に巨躯が出現した。
その威容は、劉累が巨大化させた従僕竜に負けず劣らず巨大である。
「ほう、あなたも竜を使役すると。これは面白い」
「貴様と一緒にするな、外道――!」
オリヴィアの怒りに突き動かされるように、竜王が鋭い爪を振り上げた。
劉累の背後にそびえる巨竜が、翼を盾のようにして竜王の爪を受け止める。
オオオオオン――!!
再びの咆哮。巨竜が竜王に掴みかかり、喉笛に牙を突き立てる。
竜王の鱗は巨竜の牙を拒絶する。もんどり打つように組み合う両雄!
「はああああッ!!」
その真下では、オリヴィアと劉累の術者対決が始まっていた。
稲妻を纏ったオリヴィアの拳足を、劉累は素早い動きで見切り、躱す。
「その隙、もらいました!」
そして回し蹴りを剣の鞘で受け止めると、一瞬のうちに抜刀し斬撃を放った!
「侮られては困ります。この程度の攻撃!」
オリヴィアは斬撃を読んでいた。蹴り足を戻しながら低く身を伏せる。
剣が頭上を通り過ぎた瞬間、両手を地面に突き、変則的な飛び膝蹴りを放つ!
「ぬうっ!」
劉累は片手と片足を身体に添わせ防御するが、ダメージが重い。
吹き飛ぶ劉累。頭上では、竜王の尾が巨竜を吹き飛ばしていた。
オリヴィアは間髪入れずに体勢を戻しながら吶喊、踵落としで追撃を仕掛ける!
「重い打撃ですね、しかし……!」
劉累は剣の鞘を逆手に持ったまま、手首を交差させることで踵落としを止めた。
問題は、吹き飛ばされた巨竜が狂乱し、暴れ始めたことだ。
強引な尾の薙ぎ払いは、敵味方を区別せず……つまり劉累にも襲いかかった!
「何!?」
劉累は跳躍し、尾を躱した――それこそがオリヴィアの狙っていた好機。
オリヴィアは劉累が己を弾いた力に逆らわず、くるくると空中回転し後退。
「その身で浴びよ、我が友の息吹を!!」
肺いっぱいに空気を吸い込んだ竜王が、破壊のブレスを吐き出した。
劉累はこれを避けきれない。巨竜もろとも、破壊のブレスをまともに食らう!
「わ、私の竜を超える連携など……ぐああああッ!!」
「言ったはずです。私たちを、あなたと一緒にするなと」
力による隷属ではなく、友として心を繋いだコンビネーション。
白き竜と白き乙女の連携が、竜使いの巧みな武功を上回ったのだ!
大成功
🔵🔵🔵
フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎
POW判定
・行動
召喚された竜の攻撃を引き付けて
ギリギリで躱しながら相手の秘孔に鍼を打ち込んでいく
(功夫、見切り、医術)
UCを発動させて竜同士が争うように仕向け
さらに無理に鍼が引き抜かれたら
籠められた電磁パルスが一気に噴出して
刺されていた箇所を爆破する
・セリフ
(丁寧に拱手で挨拶しながら)
どうも、貴方がこの人たちの親玉かしら?
私はこちら風に名乗るなら「磁極活殺」のフローラよ
(返答を聞いてから打って変わって)
それじゃあアンタが責任を取って大人しくブッ飛ばされな!
(同士討ちが始まってから)
オレの鍼に籠めた気がアイツらを狂わせてるのさ
だがムリに引き抜くのはお勧めしないぜ
(爆発音)
な?
●爆砕、電磁点穴!
「どうも――あなたがあの人たちの親玉かしら?」
フローラ・ソイレントは拱手をし、淑やかな表情で問いかけた。
「私はこちら風に名乗るなら、"磁極活殺"のフローラよ。
さあ、答えてもらえるかしら。彼らを従えているのはあなた?」
「ええ、そうですよ。私が風雷会の幹部です。それが何か?」
劉累は悪びれたふうもなく、薄笑いさえ浮かべて答えた。
フローラの表情が一変する。悪を打ち砕く、野卑な戦士のそれへと。
「そうかい。それじゃあアンタが、責任取っておとなしくブッ飛ばされな!!」
フローラは地を蹴り劉累に肉薄、胸部を狙い掌底を繰り出した。
劉累は納刀したままの剣の鞘で掌底を受け止め、ふわりと大きく後退する。
「おやおや、ずいぶん荒っぽい方ですね。私が相手をすると骨が折れそうだ」
「ああいくらでもへし折ってやるぜ、一本と言わず全身バラバラにしてやらぁ!」
「それは怖い――ので、私の竜たちに相手を任せるとしましょう!」
劉累は内功を使い従僕竜を召喚、己は後退し竜どもをフローラにけしかけた。
「チッ、ここに来ても配下任せか? 女々しい野郎が」
フローラは舌打ちし、四方から繰り出される竜の爪を打撃でいなした。
一体一体が雷霆竜を超える強力な従属竜の攻撃は、途切れることを知らない。
しかして一度でも守勢に回れば、たちまち数の差で圧倒されてしまうだろう。
フローラは優れた武功で攻撃を凌ぎながら、打開策を思案する。
(力任せに突破すりゃあ、あの野郎の斬撃が来る。それは間違いない)
劉累は見に回っているが、それは必殺のチャンスを伺うためだ。
彼奴の剣の腕前は、先の一撃を受け止めた時点でおおよそ察している。
劉累に攻撃のチャンスを与えないように警戒しながら、従属竜を押し返す。
そのためには……フローラは名案を思いつき、ニヤリと笑った。
(数で来るなら、そいつを利用させてもらうか!)
フローラは竜の爪牙をギリギリで躱しながら、合間合間に鍼を打ち込んでいく。
そして電磁パルスを流し込んだ瞬間……従属竜はびくりと痙攣し、混乱した!
「!?」
劉累は訝しんだ。己の従僕が、突然同士討ちを始めたのである。
おそらくはフローラによるなんらかの細工。ならば本体を叩くほかになし!
「一体何をしました
……!?」
「おっと!」
従僕竜を相手にしながらはともかく、来るとわかっている斬撃の回避はたやすい。
フローラは剣を躱すと、十分な距離を取った上で劉累に言った。
「オレの鍼に籠めた気が、アイツらを狂わせてるのさ」
「点穴を突いたか。だがそうと分かれば……!」
「おっと、だがムリに引き抜くのはおすすめしないぜ?」
「黙れ!」
フローラの忠告を無視し、劉累は従僕竜に刺さった鍼を引き抜く。
すると秘孔から噴出した電磁パルスが、ダイナマイトめいて炸裂したのだ!
「ぐわっ!?」
「――な? だから言っただろ」
これぞ磁極流、電磁点穴(エレクトロ・スタップ)!
秘孔を突いて敵を操り、鍼を除去してもその部位が爆破するという二段構えの技!
劉累は、まんまと罠にひっかかり、自業自得をかいたのである……!
大成功
🔵🔵🔵
堆沙坑・娘娘
表で活動していた手勢が全滅したのに、それらを再度集めることができる能力を持つ幹部まで出張って来ましたか。一度退いて組織を立て直す方が正しい選択だと思うのですが…やはり悪漢は愚か者ですね。面子を気にすると損得勘定もできなくなる。
という風に口は煽り全開でぺらぺら回っていますが、その間に敵の布陣を確認します。竜の力は強大。しかも今回は司令塔がついている…隙がない。
ならば、我がパイルバンカーで隙など関係なく全てを貫くまで。
竜が劉累を中心とした半径に範囲攻撃をするならば、竜と劉累が射線上で重なる瞬間が必ずあるはず。その瞬間を狙い【貫通攻撃】で主従纏めて殺します。
私が死体で作る砂山…その砂粒になるがいい。
●すべてを貫け
「理解に苦しみますね」
堆沙坑・娘娘はやおら挑発的な口調で言い放った。
「表で活動していた手勢が全滅したなら、あなたがそれを再度集めればいい。
にも関わらず、自ら表に出張ってくるとは……選択を誤りましたね、竜使い」
「これは手厳しい。ですがたしかにおっしゃる通り。それが"正しい選択"です」
劉累は涼しい顔で頷いてみせた。
「しかし言ったでしょう? これは面子の問題なのですよ」
「……やはり悪漢は愚かですね。損得勘定も出来なくなっているとは」
娘娘の口調は挑発的だが、その表情は変わらず、むしろ警戒の色を強めていた。
この程度の挑発では、やはり引っかかってくれないらしい。それも想定内だ。
しかし、問題は敵の布陣……あの従僕竜の群れは、雷霆竜よりも強い。
劉累自身が司令塔な上、携えた剣の腕前も無視できないレベルだろう。
(隙がないですね。表に出てくるだけはあるということですか)
娘娘は腰を落として身構え、パイルバンカーの鋒を劉累に向けた。
「――ならば、我がパイルバンカーですべてを貫くまで」
「噂は聞いたことがあります、妙な神仙拳とやらがあちこちで暴れているとか。
さて、私の竜どもとあなたのその妙な宝貝。どちらが上か比べてみましょう!」
従僕竜のうちの一体がみるみる巨大化し、娘娘を咆哮で威圧した。
その巨体が先陣を切り、続いて劉累と従僕竜の群れが娘娘に襲いかかる!
敵の攻撃戦術は、巨竜による大雑把な範囲攻撃とそれに続く劉累の追撃である。
巨竜の攻撃そのものは読みやすく、範囲は大きいが娘娘ならば回避容易だ。
しかし、防御は難しい……威力が大きく、隙が生まれてしまう。
その隙を突き、劉累が獲物を斬る……セオリーはそんなところだろう。
娘娘は巨竜の攻撃を難なく躱すが、問題はやはり劉累の追撃への対処であった。
攻撃回避から反撃に転じようとすると、そこに必ず斬撃が来る。
つまりは攻撃が途切れないのである。このままでは反撃に回れない!
「さあどうしました? その宝貝の力を私に見せてください!」
劉累の斬撃は鋭く、まともに喰らえば娘娘とて無事ではいられぬ。
ゆえに娘娘は辛抱強く攻撃を凌ぎながら、チャンスを待っていた。
巨竜の攻撃は大範囲……その起点は必ず劉累を中心としている。
尾の薙ぎ払い。鉤爪。噛みつき。翼のはためき。尾の薙ぎ払い――好機到来!
「見切りました……!」
「!」
娘娘が待っていた好機とは、巨竜と劉類が射線上で重なる一瞬であった。
娘娘のパイルバンカーは、近接攻撃だけでなく遠隔攻撃をも可能とする!
「――貫く!」
ドウン!! と、闘気で作られた杭が射出され、まっすぐに大気を貫いた。
劉累は巨竜の影にいる――しかし! 杭は竜の鱗を貫き、劉累に命中!
「バカな!? 私の竜を、一撃で貫くなど……ッ!?」
「私のパイルバンカーは、竜であろうが神であろうが、何もかもを貫きます」
倒れ伏した巨竜の上に、娘娘が着地した。
「私が死体で作る砂山……その砂粒になるのが、あなたにはお似合いです」
深手を負った劉累は、憎悪に満ちた表情で娘娘を睨みつける。
娘娘は涼しい顔だ。開幕とは、完全に立場が逆転していた――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
オーオー、さっきの口先だけのカスどもは違うみてえだな
武功だの何だのには縁が無い身分だが、強ェ奴の匂いってのは分るつもりだ
来いよ、ド素人が相手してやるぜ
弱いとは限らねえがな…
俺ァ何もしねえ
先手必勝、拙速は巧遅に勝るなんて言うが…達人を相手にそれは下策
斬撃なら視るべきは手元と刃、そして龍
僅かな予備動作を【見切り】、身体の力を抜く
鼻先の死を恐れずに、受け入れろ──そうすれば、俺が勝つ
いい一撃だった…貰ったぜ、何もかも
いやしかし皮肉だな…龍殺しをぶつける相手が、龍使いとはね
莫大な力の塊、腹に喰らってトんじまいな!
武功だの仙術だの…すげえ技術だが、それまでだ
勝てるかどうかはニューロンの出来次第ってね
●悪知恵は武よりも強し
(――弱い)
劉累が見たヴィクティム・ウィンターミュートは、その一語に尽きた。
相応の鍛錬は重ねているようだが、そんなものは基礎中の基礎に過ぎない。
義体化率から見て、ヴィクティムは功を練ることが出来ないのだ。
劉累はそれを一目で看破し、また彼の武術家としての力量も推察した。
弱い。単純な技術や腕力、内功の差で言えば、天と地ほどの差がある。
(しかし、だからこそ油断ならない……なにせ私の前に立つのだ)
だが、劉累はそれで油断するほど甘くはない。
武術の武の字も知らぬ素人だからこそ、そこには"何か"が隠れている。
飄々と構えるヴィクティムの裏を探ろうと、劉累はじっと目を細めた。
「オーオー、どうした達人殿。ド素人相手に二の足を踏んでるのか?」
ヴィクティムは薄笑いを浮かべ、挑発的に手招きした。
「かかってこいよ。俺の首をへし折るなんて、テメェにゃ朝飯前だろう?
ならやってみればいい……それともまさか、俺にビビってんのかい、え?」
「……いちいち耳に障ることを言いますね。講談師にでもなればいいものを」
劉累は嘆息し、内功を爆発的に膨れ上がらせ、深く腰を落とした。
「ならば、この一刀にてその首、叩き落としてさしあげましょう
……!!」
(――……来るか)
ヴィクティムは意識を集中させ、劉累と従僕竜の動きに全神経を注いだ。
奴が本気で剣を振るえば、ヴィクティムの首など一瞬で叩き落とせるだろう。
それが現実だ。だから、目の前の死を恐れずに、事実として受け入れる。
(ようは予備動作を読めばいい。読めさえすれば、俺の勝ちだ)
まるで西部劇の決闘めいて、静寂が流れ、空気が緊迫に張り詰めた。
ヴィクティムのこめかみから流れ落ちた汗が顎を伝い――ぽたり、と地面を濡らす。
劉累は風となった。
まさしく神速の斬撃。しかも、従僕竜が攻撃後の隙を埋める。
二段構えの攻撃は、仮にヴィクティムが回避に成功しても逃れることを許さない。
斬撃を避けようとすれば、従僕竜の鋭い爪が獲物を引き裂くというわけだ。
……しかし。
「何?」
劉累は、頬をかすめた膨大なエネルギーを感じた。
驚愕の表情のまま振り返れば、従僕竜が吹き飛ばされ絶命している。
「――いい一撃だったぜ」
「!」
なによりも、剣が。振り抜けていない。
ヴィクティムの胴体を両断するはずのそれは、脇腹に沿えられていた。
否、違う。斬撃のエネルギーそのものが、殺されている……!
達人の練り上げた外気功がその身を鋼鉄に変え、いかなる打撃をも止めるように!
「もらったぜ、何もかも――竜殺しの力を、お返ししてやるよ!」
ヴィクティムはもう片方の腕を振り上げ、劉累の腹部に叩きつけた。
斬撃を無効化し増幅したエネルギーが、寸勁のように劉累に流し返される!
「――がはぁっ!!」
ワイヤーアクションめいて吹き飛び、劉累は喀血した。
「武功だの仙術だの、すげえ技術だがそれまでさ」
知恵と技術で秘奥を再現してみせたヴィクティムは、ニヤリと笑う。
「勝てるかどうかはニューロンの出来次第、なあんてな」
大成功
🔵🔵🔵
鳴宮・匡
潰れて困る面子なら、最初から自分で出てくるべきだったんじゃない?
まあ、どうでもいいけど
どっちにしたって結果は同じだろうしな
左には、いつもの自動式拳銃
右手には、【影装の牙】で形成した自動式拳銃
装甲を犠牲に攻撃回数を強化する
そのまま、龍の方から撃退していくよ
数が多いのは面倒だからな
龍の位置、敵の動き、戦場の状況
知覚機能を駆使して把握し、動きをよく見切って避けるよ
時間が経てば経つほど情報量も増える
相手の動きはしっかり視て、簡単に攻撃は掠らせない
それこそ、こんなのは“よくある話”なんだろう
こいつを倒したからって、ここがずっと安全になるわけでもない
わかってるけど
それを助けたいと思う俺は、確かに本当なんだ
●偽らざるもの
BLAM! BLAM! BLAM! BLAM!!
自動式拳銃が金切り声をあげて、従僕竜を次々に撃ち落とす。
雷霆竜より強靭な竜はそう簡単に死なないが、ならば死ぬまで撃つだけだ。
鳴宮・匡は二挺拳銃を機械的に撃ち続けながら、同時に劉累の動きを観察する。
従属竜に前衛を任せ、敵が対処に専念した瞬間その隙を突く。
劉累の連携は完璧である――だが匡の知覚能力は、その上を行っていた。
斬撃の予兆を読んで身を躱し、死角に回ろうとする従属竜を撃ち落とす。
二挺拳銃と影の力で強化された攻撃回数により、匡は鉄壁の守備を実現していた。
劉累は攻めきれない。そして、じわじわと従僕竜を撃ち落とされていく。
(私が全力で生成した従僕竜12体で、守りを抜けないとは……!)
忌々しいが、この敵の目と耳は並ではない。感嘆に舌を巻く。
音さえも超える劉累の斬撃を、わずかな動作から先読みして回避しているのだ。
1秒ごとに匡の動きは正確さを増す。
攻め込んでいるはずの自分が、徐々に追い詰められているという自覚がある。
(勝負を仕掛けるか? いや、そうすればおそらく私が返り討ちに遭う。しかし……!)
BLAM! BLAM! BLAM! BLAM!!
時を刻むような規則的な銃声が、劉累の焦燥を煽った。
何もかもが計算され尽くしたチェスの盤面のような、そんな戦いだ。
「なるほど、あなたの力量は本物のようだ。正直、おみそれしましたよ」
ゆえに劉累は、言葉で挑発し匡のペースを崩そうとした。
「ですが、我が長には敵わない。よしんば勝てたとして、それがなんだと?
我々が都を去ったら、雌伏している次の悪党が立ち上がるだけのことですよ。
あなたたちの戦いは無意味だ。都を真の意味で平和にすることなど出来ない……!」
――匡の冷たい目が、劉累を見返した。
「わかってるさ」
「!」
その瞳の奥、凪いだ海の光景を幻視し、劉累は圧倒された。
無機質な虚無とも、正義を嘲笑う悪性とも違う、不思議な威圧感がある。
懊悩を続けてきた男の気迫が、言葉でなくその眼光で悪漢を"わからせた"のだ。
「けどそれは、俺が戦わない理由にはならないんだ」
(しまった――!)
従僕竜はすでに事切れていた。匡の銃口が、劉累を狙う。
BLAM――斬撃が銃弾を落とす。しかし影の魔弾が、劉累を……!
「……いくら言葉を繰ったところで、俺はもう迷ったりしないよ」
匡は静かに言い放った。
「俺は、俺自身の"本当"を、もう知っているから」
小手先の細工に沈んだのは、劉累のほうだった。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
幾ら数を集めた処で此の程度では蜥蜴の群れと変わらん
竜と嘯くなら虚栄心ではなく、矜持を具える事だ
でなければ主の程度も知れるというものだぞ
面子が潰れたならば良い機会だ、其のまま自身も潰れてしまえ
視線に得物の向き、使役する竜の動きが雄弁に攻撃方向を教えてくれよう
斬撃は武器受けにて弾き、突進を見切り躱した隙を逃さず
――弩炮峩芥、逃げるも躱すもさせはせん
此の眼に映る限り、的でしかないと知るが良い
衝撃波でのフェイント誘導を絡めて脚を穿って機動を削ぎ
怪力乗せた斬撃を喰らわせてくれる
封神台とやらから解放されて浮かれている様だが
過去の残滓に出る幕なぞ無い
如何な抵抗も無駄というもの、早々に相応しい場へ帰る事だ
●刃と刃
ギ、ギ、ギギギギ――!!
耳朶を貫く鋭い金属音が大気を震わせ、地面の塵を巻き上げる。
それは、劉累と鷲生・嵯泉の双刃が幾度もぶつかり合う音だった。
剣の腕は嵯泉が上だ。対して、従僕竜のぶん数では劉累が有利である。
ゆえに攻防は互角。二段、三段構えの連続攻撃を、嵯泉は無表情で凌いでいた。
「なかなかやりますね。それほどの剣の腕、生半には鍛えられなかったでしょうに!」
劉累は純粋な感嘆を口にしながら、竜と連携し嵯泉を追い詰める。
斬撃だけに意識を払えば、その虚を突くように従僕竜の爪が襲いかかる。
さりとて竜を追い払おうと意識を反らせば、劉累の剣が臓腑を貫く。
両方を同時に意識に捉え、かつ両方を隙なく対処せねば立ち会うことは出来ない。
嵯泉にはそれが可能だ。彼の剣は、もはや人間業ではないのだから。
「ですが、いつまで私の竜たちを凌げますか
……!?」
「――竜などと、笑わせる」
嵯泉は無表情で呟いた。
「いくら数を集めたところで、この程度では蜥蜴の群れと何も変わらん。
竜と嘯くなら、虚栄心ではなく矜持を具えてみせろ。さもなくば程度が知れるぞ」
「辛辣な評価ですね。私の手下はお気に召していただけませんでしたか」
「――私が言っているのは、お前自身のことだ。"蜥蜴使い"」
嵯泉の隻眼が侮蔑を浮かべた。劉累は瞬間的な怒りに突き動かされる。
「その大言壮語、斬り捨ててさしあげる……ッ!!」
敵は勝負を仕掛けた。防御すれば吹き飛ばされるほどの強烈な一撃。
嵯泉はそれに付き合わず、威力を斜めにそらすようにして捌き、躱した。
「闇雲に突っ込むのは竜ではなく、猪武者と云うのだ」
「!」
攻撃後の僅かな隙。従僕竜でも殺せぬ刹那の中の刹那。
その一瞬を、嵯泉の刃が捉えた。すれ違い後に斃れたのは、劉累である!
「がはっ!!」
「面子が潰れたのならばいい機会だ。そのままお前も潰れてしまえ」
血反吐を吐いてもんどり打つ劉累を、嵯泉は冷たく見下ろす。
「過去の残滓に出る幕なぞない。身の程を教えてやる」
その声音には、静かな怒気が籠められていた。
彼が怒るのは悪漢の所業にか、あるいは――竜を、侮辱されたがゆえか。
大成功
🔵🔵🔵
神酒坂・恭二郎
「躾が悪いのは兄貴分の教育かねぇ」
銀河一文字を抜いて、緩く構える
龍に因縁のある連中らしい
幇主とやらも龍に因縁のあるものだろうか
まぁ、目の前の彼を倒せば分かる事だろう
方針は、緩く構えた一刀で奴の剣撃を【見切り、ジャストガード】で合せ、そして優しく【受け流し】だ
いかなる速度、そして龍達の勢いに対して、逆らわず受け流す極意だ
揺るがぬ【覚悟】が肝要だ
そして、やり過ごす一瞬で相手の【体勢を崩す】と、兄さんと龍達にはしっかりと斬を入れておきたい
刀は添えるだけ
力と速度は相手のそれを利用する【カウンター】で、【早業、切断】を試みよう
●竜を断つ
「躾が悪いのは、兄貴分の教育かねぇ……」
神酒坂・恭二郎は苦笑し、銀河一文字を鞘走らせた。
それだけで空気が張り詰め緊迫が増す。見えざる風桜子のなせる技だ。
恭二郎の構えは、剣豪のものとしてはひどく緩やかでリラックスしている。
だからこそ、あらゆる攻めに対応出来る。柔は剛を制するゆえに。
「……ほう」
その一挙一動を目の当たりにした劉累は、恭二郎の業前を感じ取り微笑んだ。
劉累もまた腰を深く落とし、己の愛剣の柄に手を添えて相手を睨む。
「一合。それで勝負をつけるとしましょう」
「いいね。手間がないのはお互い楽だ」
剣を抜けば、どちらかが死ぬ。どちらでもおかしくない、と恭二郎は思った。
勝算など、存在しない――勝てば生きる、負ければ死ぬ。それだけだ。
己の生死さえも刃に預け、ただ泰然自若と構える。スペース剣豪はそういう男である。
(龍に因縁のある連中か。幇主とやらもそうなのか、さて――)
などと益体もない考えを巡らせながら、半眼で相手を睨んだ。
劉累の姿が、消えた。
全身が霞むほどの速度の踏み込み。それに、従僕竜の群れが続く。
剣に意識を注げば、そのあとの竜が獲物の喉か心臓を抉る。
竜に注意を向ければ、その前に来る剣が対手の胴を真っ二つにする。
どちらかではいけない。どちらも対処しなければならない。難敵と言えた。
恭二郎は、力まない。ゆるゆると構えた剣を、滑りこむような斬撃に合わせる。
まるで恋人の抱擁めいて、刃は擦りあい、劉累のそれだけが斜めに跳ねた。
劉累は瞠目した。弾く剣であれば押し切る自信があった。
だが、これは――あまりにも優しすぎる剣である。害意が存在しない。
竜が来る。恭二郎は拒まず来襲を受け入れ、するりとその間を抜けていった。
斬撃が、入っていた。上質な魚を板前が捌くような太刀筋であった。
ひょう――と。虎鶫の鳴くような、不可思議な風切り音が響いた。
ゆるく、だが疾く、けれど妙に遅い……そういう、剣である。
「――……み、ごと」
どさりと、劉累が斃れた。眠るように死んでいる。
その上に竜の屍が重なり合い、天より堕ちた雷霆が屍を撃ち、灼いた。
「さて、あとひとつ。鬼が出るか、蛇が出るか」
恭二郎は振り返ることなく歩き出した。そよ風のように。
雷霆に焼かれた屍が、そよぐ風に乗って跡形もなく散っていった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『星鬼・魅陰』
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POW : 不断打打
【冷たい陰気を纏う体で、非常に強力な功夫】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : 凶拳凄凄
【相手に陰気を放ち寒さで動きを鈍らせること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【命中率の高い功夫】で攻撃する。
WIZ : 陰風陣陣
自身が装備する【羽衣、または自身の体】から【周囲の熱を奪う、強烈な冷たい陰気】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【寒さにより動きが鈍る『寒冷』】の状態異常を与える。
👑11
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都の地下、いつの間にこんな場所が築かれていたのか。
「風」と「雷」の文字を刻んだ幕が掲げられた、悪党の塒らしい塒である。
「……やは、り、配下、など……くだらぬ、な」
そこに、鬼が一匹。
広々とした地下空間は、極寒の北方もかくやに凍てつき、霜を張っていた。
ぱきぱきと凍りついた玉座に物憂げに腰掛ける、この鬼の存在がためである。
「よく、ぞ……参っ、た。くだらぬ、場所、だが、死合……には、よか、ろう」
ゆらりと、青ざめた肌の鬼が立ち上がる。
「――"星鬼"、魅、陰。お相手、いた、す」
斃れた配下のことなどこれっぽっちも感慨を抱くことなく、鬼が身構えた。
なにゆえに拳を握る? 支配者としての矜持もこがわりもないというのに。
……答えは、殺意だ。
温もりあるもの、鼓動を刻み生きるものへの、こびりついた獰猛な殺意。
鬼は命あるものすべてを憎んでいる。ゆえに、猟兵に拳を向ける。
風雷会などというくだらぬ集まりは、すべて劉累が企てた取り巻きに過ぎぬ。
すべての根幹はこの鬼にあり、そしてこの鬼があればそれでよい。
――それだけの武功を、鬼は有している。
●プレイング受付期間
04/11(日)12:59前後まで。
九頭竜・聖
どのような者が彼奴等を従えているのかと思っておりましたが
悪鬼の類でございましたか
なればこれ以上語ることもないでございましょう
わたくしめはただこの身を偉大なる方々へと捧げるのみ
舞と共に【祈り】で御呼び致しますは娑伽羅様
彼奴目の功夫がわたくしめをどれだけ傷つけようと構いはしません
この身はただの供物
四肢が動かなくなろうともただ祈りを以て龍神様へと身を捧げるのみなのですから
地獄から迷い出たのかと見紛うほど陰気
ですが、その冷たさもあの御方には届かぬでしょう
水底の冷たさ、そのものであるのですから
この場所ならば無辜の民のことを心配する必要もございません
存分にすべてを沈めてくださいまし……
※アドリブ、連携歓迎
●その身はただの供物ゆえに
九頭竜・聖の身体を、鬼の拳が、足が、陰なる気が抉り、削ぎ、折り、拉ぐ。
だが聖は意に介さない。痛みや苦しみなど、彼女を止める理由にはならない。
「おいでませ、おいでませ――」
鬼ではなくこの世でもなく、遠い何処かを見つめ、うわ言めいて呟く。
聖の意識は此処にあって此処になく、あるじたる龍神のもとへと飛んでいた。
「……龍の、神への、奉納……か。おのれの、身を、供物にする、とは」
鬼の手刀が袈裟懸けに奔り、聖の鎖骨をぼきりとへし折った。
片腕を動かせなくなるどころか、場合によっては致命傷になりかねない重傷だ。
当然のように、聖の身体は吹っ飛んだ。鬼は追撃を――しない。
「…………」
魅陰は注意深く身構え、聖の出方を見ていた。
聖に、魅陰と真正面から打ち合えるだけの武功は当然備わっていない。
彼女の戦い方は、龍神の力を借りる以外に何も出来ないからだ。
つまり、龍神を喚び出される前に、全力で息の根を止めるのが定石である。
では、なぜ魅陰は攻め込まないのか。
「……すで、に……十分な陰気を、浴びて、いよう、に」
それは、"もう本来なら聖は死んでいるはず"だからだ。
魅陰の拳は、一撃一撃が凶悪な陰気を流し込む致命的な打撃である。
連打をまともに受けたなら、どれほど屈強な人間でも影響は避けられない。
重い負傷と体内の気脈の乱れ、それぞれで聖は致命傷に至っている――はずだ。
「……偉大なる、青の龍神様」
――だが。
「この地を御身の権能にて、浄化し給え。無辜の民を心配する必要もございませぬ。
御身の権能を以て、陰気も何もかも、すべてを押し流し浄化してくださいませ」
魅陰は気づいた。そもそも聖は、只人の身ではない。
悪霊――すなわち、猟兵でありながら己と同じ陰に属する者だと。
ならば、死ぬはずもなし。物理的に肉体を砕くことはできようが……。
「……劉累、は、下手、を……踏んだ、な」
龍を使役するなどという行為は、彼女と彼女のあるじにとって逆鱗もいいところ。
そしれいま! 喚び出されし参の龍の憤怒が、大津波となって鬼を襲う!
「――この身はただの供物。地獄の陰気も、我が身には無為にございまする」
どれほど傷つけ凍てつかせたとて、聖は頓着しない。
むしろそのぶん、己の供物を傷つけられたことに龍神が怒るのだ。
鬼は唸った。襲いかかる波濤が、その愚行の代償を鬼に知らしめる……!
成功
🔵🔵🔴
ユーフィ・バウム
あなたが首領というわけですね
死合に臨むは【勇気】と【覚悟】を持って――
いざ参ります!
炎の【属性攻撃】を纏う拳で
【功夫】での肉弾戦で挑みますが、
相手の強力な功夫には及ばないでしょうか
それでも――打ち込まれる打撃に悲鳴は漏らしても、
【激痛耐性】【限界突破】して耐え抜いて
心は折れず反撃の機を待ちます。
【オーラ防御】で相手の打撃を弾くように防御し、
今だっ
連撃の切れ目に【グラップル】で捕まえますっ!
【怪力】を生かした持ち味……生かしますよっ!
めいっぱい【力溜め】た【鎧砕き】の打撃を
めり込ませ、動きを止めたらそこから
【暴力】の連撃、
とどめにはありったけのオーラを込めた拳にて
《麗掌破魂杭》を叩き込みますっ!
●暁光と暗冥
「あなたが首領……というわけですね」
全身が総毛立つほどの陰気のなか、ユーフィ・バウムは鬼と相対する。
魅陰の放つ気は、ユーフィの生命力に満ちたオーラとは何もかもが正反対だ。
相反するふたつの気がぶつかりあい、部屋の中央はゼラチンめいて凝っていた。
「……実に、忌々、しい。温もり、に……満ちた、陽気」
生者の温もりを憎悪する魅陰は、彫像めいた相貌を嫌悪に歪める。
同時にユーフィもまた、対手の力量を感じ取り、緊張を隠せずにいた。
「あなたがどれほど生者を憎んでいたとしても、この都は好きにはさせません。
ひとりの蛮族戦士として、この全身全霊を賭けて死合に臨みます……!」
「――なら、ば。打ち砕く、まで
……!!」
魅陰の全身からさらなる陰気が噴出し、その姿は数倍にも巨大に見えた。
ユーフィは勇気と覚悟を振り絞り、呼吸を整え……強敵に、戦いを挑む!
先手を仕掛けたのは魅陰だ。踏み込みの速度はユーフィの目でも捉えきれない。
青ざめた巨躯がブン、と霞んだ瞬間、ユーフィは咄嗟に後ろに跳んでいた。
次に魅陰が現れたのは、眼前。飛び退るのも読んだうえでの接敵!
「いざ」
「!」
魅陰の腕が6つに増えた――否、そう錯覚するほどの速度の連撃だ。
ユーフィは四肢に炎のオーラを纏い、手首足首を切るようにして打撃を弾く。
しかし、対処が追いつかない。二度の拳打がユーフィの腹部にめり込む!
「ぐ……ッ!」
オーラ防御をもってしてもこらえきれぬほどの重い一撃。
ユーフィの身体はくの字に折れ曲がり、地面と平行にふっ飛ばされる。
魅陰は床を砕くほどの踏み込みでそれを追い、正中線をなぞり打撃を繰り出す!
(なんて強力な功夫……私の付け焼き刃じゃ、及ばない……!)
総合的な戦闘能力はともかく、武人としての立ち会いでは敵が上か。
ユーフィは防御を続けるも、打撃は確実に小さな身体に叩き込まれていた。
そのたびにぞっとするような陰気が流し込まれ、ユーフィは苦悶する。
(けれど、必ず反撃のチャンスは来るはず……!)
彼女が鬼に勝る点があるとすれば、それはまず不屈の闘志。
身体の奥底を凍てつかせる陰気に抗い、ユーフィは好機を待ち続けた。
長い長い苦痛の時間が続く――そしてついに、ユーフィはチャンスを見出した!
(ここだ!)
わずかな套路の分け目……達人でも見切れぬ一瞬を、ユーフィは掴んだ。
突き出された腕を両手で抱え込み、素早く極めて片腕を破壊しようとする!
「ぬうっ」
鬼は関節破壊の憂き目を嫌い、ユーフィの身体を払わざるを得ない。
つまり、攻撃が中断される。コンマ数秒の隙を、ユーフィは生み出したのだ!
「今度はこちらの番ですっ!」
ユーフィはこれまでの防御の間も貯めていた怪力を解放し、乱撃を繰り出した。
攻守が逆転する。ユーフィの打撃は荒削りだが、しかし力強く、重い。
魅陰の防御が、強引にこじ開けられる……がら空きの胴!
「我は掲げる、闇を貫く蛮勇の拳――せやあッ!!」
裂帛の気合とともに繰り出された拳が、暁光を纏い腹部に叩き込まれた。
さきほどの返礼めいて、魅陰はくの字に折れ曲がり、思い切り吹き飛ぶ。
そして壁に背中を打ち付け……!
「がはっ!!」
喀血した。重いダメージ!
攻防は一進一退、いずれも譲らぬ実力伯仲である……!
成功
🔵🔵🔴
アルトリウス・セレスタイト
これで最後か。では手早く済ませよう
戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
魔眼・封絶で拘束
行動と能力発露を封じる魔眼故、捕らえればユーベルコードも霧散する
陰気も尽く消え失せ、仮に「中止できない」としても行動自体が不能なら止まらざるを得んだろう
魔眼で目標の行動の起こりを潰しつつ近接戦
纏う原理を無限に廻し、万象一切を終わらせる破壊の原理に無限量の圧を乗せ打撃
『煌皇』による無限速を以て全身くまなく打ち砕けば間違いはあるまい
潔く退場しろ
※アドリブ歓迎
●退場の時間
――疾い。
アルトリウス・セレスタイトの心眼をもってしてなお、その動き捉えがたし。
厳密には鬼の放つ陰気は、単純に気温を下げる冷気の類ではない。
それは熱……正しくは生命の持つエネルギーを"奪う"マイナスの力なのだ。
熱力学の法則により、この世界のエネルギー=熱は常に一定でなければならない。
何処かから熱が奪われたなら、その熱は別の何処かに移動しただけの話だ。
だが、陰気は違う。その力は生命のエネルギーそのものを消し去ってしまう。
完全なる無、何も生み出さない破滅。まさしくオブリビオンの力!
「なるほど、それがお前の鍛え上げた武、あるいは枷といったところか」
「……然、り……」
「だが、お前の暴虐を許すつもりはない。潔く退場しろ」
「……断……わ、る……」
ガ、ガ、ガガガガガッ!!
アルトリウスは鬼のスピードに追従し、打撃戦に付き合う。
時折繰り出される致命打を心眼で"見る"ことで、その可能性自体を潰す。
鬼はそれを超自然的な直感で察し、隙を潰してアルトリウスの攻撃を受ける。
人知を超えた達人同士の攻防は、余人が立ち入る隙を許さない。
――しかし。
「手早く済まさせてもらう」
「……!」
鬼の防御をこじ開けたのはアルトリウスのほうであった。
無限量の圧を乗せた打撃が、鬼の熱失われし陰気の身体を打つ!
「あいにく俺たちは、お前にかまっている暇などない」
力の内容がどうであれ、アルトリウスは生命に属するもの。
簒奪の力を否定する原理の光が、陰気を拒絶し鬼の核を捉えていた……!
成功
🔵🔵🔴
豊水・晶
何故生者を怨むのか。
意味もなく怨むのか、はたまたそれほどの仕打ちを受けたのかは知りません。
私達は猟兵。尊き命を見境なく奪うというのなら、己の存在を賭けて阻止します。
指定UC発動。神罰 切断 二回攻撃を乗せて攻撃します。
オブリビオンとして甦り世界の脅威となるのなら、温もりを、鼓動を、明日を護るために。
私はここで貴方を斬る。
明日を迎えられない。そんな運命もろともに。
●鼓動を背に受けて
「――何故、生者を怨むのか」
冷え切った大空洞で、鬼と豊水・晶が相対する。
「生前にそれだけの仕打ちを受けたのか、あるいは亡者ゆえの本能なのか。
意味があるのか、ないのか……そこは、私の与り知るところではないでしょう。
そしてそんな問答をしたところで、あなたが留まる理由にはならないはず」
オブリビオンとはそういうものだ。
たとえ生前その人がどんな存在であったとしても、例外はない。
その存在自体が世界に仇なし、負の熱量によって世界を停滞させる。
「……私たちは猟兵。あまねく命を見境なく奪うものを、拒絶するもの」
世界に肯定されしものと、世界を否定せしもの。
猟兵とオブリビオンの道が交わる可能性は、ありえない。
あるとすれば――それは必ず、闘争という悲劇を生む。
「あなたがそうするというのなら、私は己の存在を賭けて阻止します」
「…………なら、ば」
鬼がみしりと拳を握りしめた。
「その、鼓動、を……止め、る、のみ……ッ!!」
凄絶なる陰気が晶を打つ。そして、同時に魅陰の姿がかき消えた。
残像さえ捉えきれぬ速度で、凍れる鬼が竜に戦いを挑む!
晶が剣を滑らせたのは、理論よりも直感のほうが勝っていた。
"こう来るはず"という予測ではなく、もっと根源的な、戦士としての勘。
それは結果として当たり、魅陰の手刀を弾き、ぎん、と衝撃音を響かせた。
「私は、この温もりを否定しない」
晶が攻撃に転じる。返す刀で魅陰の胴体を貫きにかかった。
鬼は攻撃の二手・三手先を読み、掌底で刃をずらすとぎゃりりと剣を滑る。
剣をレールのように利用し、防御を潰した上で喉元狙いのショートパンチ。
晶はあえて一歩踏み込んだ。剣を握っていない方の腕で拳をいなす。……無傷。
「あなたが忌み嫌う生命を、鼓動を、明日を護るために……!」
両者は半歩だけ下がり、最適な間合いを保つとめくるめく連打を繰り出した。
拳が剣を弾き、剣が掌を拒絶し、そのたびに澄んだ撃音を地下に響かせる。
常人にはふたりの動きはまったく見えないだろう。まさしく、刹那の攻防だ。
「私、は……それ、を、否定、する」
「私は――ここで、あなたを斬るッ!」
晶が競り勝った。神の力を乗せた剣が、鬼の肉体をぞぶりと裂く。
魅陰は咄嗟に飛び退いて威力を殺していた……が、切断痕が光り輝き、爆ぜる。
「あなたは明日を迎えられない。私が迎えさせない」
鬼は傷口を抑え、晶のまっすぐとした眼差しを見返した。
「――明日を否定するあなたの意志と運命を、ここで斬り捨てます」
凛とした眼光は、鋭く、厳しく、だが同時に暖かだった。
成功
🔵🔵🔴
月凪・ハルマ
っと……どうやら今までの連中とは比較にならないな
◆SPD
まず【防具改造】で衣服一式に耐寒性能を付与
さらにガジェットを発熱させ続けることで寒さを凌ごう
狂気に塗れてはいるが、相手の武功は確かなもの
折角だし、一つ学ばせてもらおうか(【瞬身】発動)
身体能力を底上げした上で、敢えて正面からいく
ただし最初の内は無理に攻めず、防御重視で【情報収集】
身体の運び、内功の練り方、学べる事は幾らでもある
――何より、加減が一切無いのがいい
その殺意、俺の武功の礎にさせてもらう
ある程度動きが把握出来たら攻めに転じる
手裏剣に炎を宿し(【武器改造】【属性攻撃】)【投擲】で
敵の動きを阻害しつつ、隙を見て旋棍の打撃を打ち込みたい
●殺意さえも糧にして
忍びとしては遺憾なことだが、たまにこういう"本物"と出くわす。
そしてこういう輩は、えてして隠密不意打ちの類をただそこにいるだけで無効化してしまう。
特別な領域が展開されているとか、術式が付与されているとかではない。
もっとシンプルな話――簡単に言えば、気配を探られてしまうから通用しないのだ。
とはいえ、月凪・ハルマが正面から行った理由は、それだけではない。
「せっかくだし、1つ学ばせてもらうよ」
なんとハルマは、鬼との死合を通して己の武功を高めようというのだ。
これほどの達人を相手に、腕試しめいた物言い。不遜である。
「……面、白い……」
その不遜さが、逆に魅陰に遺された武人としての矜持を刺激したか。
鬼は揺らめく陽炎を背負い、ハルマの受けの構えに正直に勝負を挑んだ。
正面からくる――とわかっているから避けられるというのは、常識での話。
あまりに常識から隔絶した武技は、認識していてなお避けきれぬ一撃を生む。
「……っと……!」
かろうじて防御出来たのは、ハルマの戦闘者としてのセンスゆえか。
斬首もありえた一撃をギリギリでいなし、あえて踏み込むことで威力を殺す。
魅陰はわずかに下がるが、それは攻撃を諦めたがゆえの撤退ではない。
より最適な間合いを自分から生み出すための、いわば攻撃的な移動だ。
ハルマは選択を強いられる。自分も下がるか、ついていくか?
(――誘ってるな)
ハルマは前者を選んだ。そしてそれが、彼の命を救った。
彼が判断したのとほぼ同時に、魅陰は熊の爪めいた掌を放っていた。
向こう見ずに敵に追従していれば、掌はハルマの顎を消し飛ばしていただろう。
魅陰はにたりと笑いながら、繰り出した掌底に螺旋を加えてなお突き出す。
大気がかき混ぜられ、負の陰気を混ぜ合わせた竜巻じみてハルマを襲った。
触れずとも熱は奪える。見えないドリル、とでもいったところか。
ハルマは大きく身を伏せることで遠当てを躱し、牽制の打撃を繰り出した。
その悉くが潰され、魅陰の膝がハルマの脳天を襲う――!
一撃一撃が加減なく、またハルマの命を奪うという決意のもと放たれる。
それが逆にハルマにとっては有り難かった。油断せずに済むし、学びになる。
「俺の武功の礎になってもらうぜ、鬼よ……!」
ハルマが攻撃に転じた。一度大きく飛び退り、焔まとう手裏剣を放つ。
魅陰は踏み込み間合いを保ち、手裏剣を拳で払いながら追撃を仕掛ける。
先ほどのフェイントがまるきり逆になった形だ。つまり此度は、ハルマが罠を仕掛けた側である!
「――もらった!」
「!!」
手裏剣を弾いたことで生まれたわずかな隙に、ハルマの旋棍がねじ込まれた。
防御をこじ開け一打。続く二打三打が、がら空きの胸部と胴を蛇めいて撃つ!
「ぐ……かはっ!」
魅陰は穢れた血を吐き、床を転げ膝を突くことになった。
それでもなお反撃は放っている。ハルマは頬に刻まれた傷跡を親指でなぞる。
「さあ、まだまだ教えてくれよ、あんたの戦い方を……!」
口元に浮かんだ笑みは、まさしく修羅のそれであった。
大成功
🔵🔵🔵
張・西嘉
なるほど先程の龍使いなどとは比べ物にならぬ力を持っているようだな。
ならばきちんと礼を示すべきか。
(真面目に拱手したあとにっと笑って)
だがいくら力を持っていようともそのようにしか使えぬのなら無意味だ。
集団と言うのは頭がしっかりしていないといけない。貴殿にその意思がないなら風雷会は滅んで当然。それ以前に興味すらないときてる。
まぁ、細かいことはいい。
『武』で決着をつけようではないか。
UC【宿星天剣戟】
【功夫・なぎ払い・怪力・武器受け】など持てる力の全てを持って挑む。
●立ち会いの流儀
無辜の人々を苦しめた風雷会の首領。
当人が会の在り方に何の感慨も持っていなくとも、それは揺るぎない事実だ。
心ある人間ならば、そもそも劉累を好き放題させていないのだから。
そういう点で、相手はやはりオブリビオンということである。
しかし、張・西嘉は拱手をし、礼を示した。
外道なる悪鬼であれ――否、だからこそ仁・義・礼を尽くす。
まさしくそこに、西嘉が宿星武侠たる所以があるのだろう。
「……私、に……礼を、示す、か」
「それは当然だ。貴殿が外道であれ鬼であれ、その武功は紛れもない本物。
ならば仮にも武を志す者として、その鍛え上げた技には敬意を払わねばな」
西嘉は悪童めいてニッと笑い、言ってみせた。
「だが、いくら力を持っていようとも、そのようにしか使えぬのなら無意味だ。
ゆえに俺は、言葉でも憎悪でもなく、同じ武を以て、それを貴殿に示そう」
「……よか、ろう」
魅陰の陰気と西嘉の陽なる気がぶつかり合い、ぐにゃりと両者の間が歪む。
もはや問答は無用。払うべき敬意と礼は尽くされた。
此処より先は、その武功と意志だけが意味を持つ、達人の領域……!!
仕掛けたのはどちらが先か――おそらくはまったく同時なのだろう。
「噴ッッ!」
「――破、ッ!」
裂帛の気合とともに両者は消え、そして一足一刀の間合いで"出現"した。
繰り出された宿星剣と掌がぶつかり合い、バキン! と異質な破裂音を鳴らす。
両者はその勢いに逆らわず、ワイヤーアクションめいて大きく吹き飛んだ。
そして互いに壁を蹴り、気で練り上げた剣を放ちぶつけ合う!
「風雷会は滅んで当然か! これだけの武を持つ貴殿にその気がないのならばな!」
「……あのような、もの……不要で、ある。生者、は、滅する、のみ……!」
「させぬと言ったはずだぞ、鬼よ!」
だんっ!! と壁を蹴ったふたりが、ふたたび至近距離で相まみえる。
先手は西嘉。宿星剣が流星のような速度で斬撃を繰り出す。
鬼はそのことごとくを見切り、いなし、弾き、さらに至近へ一歩踏み込んだ。
徒手空拳、必殺の間合い。喉元を狙い繰り出される剣指!
「疾いな。だがやはり、俺のほうが上よ……!」
西嘉は……宿星剣持たぬ掌で喉をかばい、人差し指と中指を受け止めていた。
そして拳を握り砕かんほどの握力で掴み動きを封じる!
「命なき貴殿に、斯様な肉斬骨断は出来まい!」
「ぬうっ」
鬼は退こうとした。出来ぬ、片腕を握りしめられているからだ。
そこへ突き出された宿星剣が、鬼の脇腹を貫き、軽功を爆裂させた。
どぅんっ!! と衝撃音がほとばしり、鬼の身体を対面へと吹き飛ばす!
ふわりと西嘉は床に降り立ち、そして血を流す掌を握りしめ、構えた。
「俺はこんなところで足踏みはしていられぬ。その武、越えさせてもらうぞ」
両肩から立ち上る闘気は、陽炎めいて大気をどよもしていた……!
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
──本物だな
さっきの馬鹿と比べ物にならん
強いが故に、余計なものを抱えてない
侮りが無い強者ほど、厄介な奴はいないな
おーおー、寒い寒い
悪くないな…冬のように静かな空気でよ
でもまぁ、ちょいと物足りないな…もっと凍えさせてくれるかと思ったが
不合格だ、罰を与える──『Robbery』
俺のガラス片は触れたものから何もかもを奪い取る
それは当然、大気に満ちた凍える陰気にも及ぶ
さて、このガラス片…お前に殺到させる意味は何だと思う?
その身体にこれだけの陰気を注ぎ込んだら、どうなるんだろうな
おっと、それだけじゃない
お前の武功も奪い取ってやる
確かにお前は強いが…『強者』と『勝者』はイコールではない
だから俺が勝つんだよ
●冬のような厳さのなかで
ヴィクティム・ウィンターミュートは、生粋の卑怯者で、臆病者だ。
なにせ本人がそう自称するのだから、否定するべくもない。
それゆえに、ヴィクティムは"本物"を知り、そして見抜くことが出来る。
命がけで裏社会を生き抜いてきた経験が、そういう審美眼を彼に与えたのだ。
その勘が言っていた――目の前の敵は、まさしく"本物"だと。
概してそういう強者は、当然の自負として驕慢を宿してしまう。
そして相手を侮り……ヴィクティムはそこを突く。
だが、魅陰に侮りや油断はない。敵を、正しく敵として見ていた。
これほどやりづらい相手はない……だが同時に、やり甲斐はいつも以上だ。
「まったくゾッとするような寒気だ。けど悪くないな、ああ……悪くない」
常人では立っていられないほどの陰気を浴びて、ヴィクティムは笑う。
「冬のように静かでよ、厳かで心地が良い。俺みたいな奴にゃ似合いの場所さ。
とはいえ、ちょいと物足りないな……もう少し凍えさせてくれてもいいんだぜ」
「……ほざ、け」
魅陰は軽口に付き合わず、陰気を剣の形に凝縮しヴィクティムに放った。
ヴィクティムは回避しない。代わりに彼が繰り出したのは、無数のガラス片!
「だからお前は不合格だ、罰を与えてやる」
「――何?」
瞬間、この地下空間に満ちていた強烈な陰気がウソのように消えた。
否、消えたのではない。"奪われた"のだ。あの男のユーベルコードによって。
生者の熱を奪い無に帰する魅陰にとって、それは意趣返し以外の何者でもない。
そして次に何が起こるか……当然、奪われたものがこちらに牙を剥く!
「テメェで味わいな、その生者を否定する陰気ってやつをな!」
まるで先の返礼めいて、ガラス片は剣の形に凝縮し魅陰に放たれた。
四方八方から飛来する陰気の剣を、その源である魅陰が凌がねばならぬ矛盾。
魅陰とて達人である。ほとんどを被弾前に打ち落とし、ヴィクティムを狙う!
「そう、この程度の小細工じゃ通用しねえ。だから俺は二重三重に仕掛けるのさ」
ガラス片はあれだけではなかった。襲いかかった魅陰の身体を切り裂く簒奪の刃。
運動エネルギーを、鍛え上げた武功をも盗み取る、冬寂の技たるや!
「たしかにお前は強い。だが、強者と勝者はイコールではないのさ」
ヴィクティムの電磁ナイフが、恐るべき速度を伴って繰り出された。
武功の源を"奪われ"た魅陰では、それをいなすことも躱すことも出来ない。
胸部に刻み込まれたのは、嘲笑う道化師めいた歪んだ傷跡である。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
武に取り憑かれた者は、それでしか物事を測れなくなる
まるで、その手本のよう
白き中華服のまま
敵の凍気に対し、四肢に稲妻(属性攻撃)を纏う
拳打や掌底、肘打ちの牽制を織り交ぜた蹴撃を繰り出し、激しく打ち合う(見切り・受け流し)
恐ろしく練度の高い武技……! だが、負けられない!
身の凍る冷気に捕らわれ、動きが鈍る
必殺の凶拳が迫り、身動きできず直撃する――直前、全身から迸る煌めく閃光
万象を焼き融かす雷霆が轟き、殺意の氷を蒸発させる
その威力が牙を剥くのは、遣い手自身の肉体すらも例外ではない
己が技に喰い殺される前に、全身全霊(全力魔法・限界突破・気合い)
【天霆雷迅脚】で【蹂躙】する
●行き着いた果て
武を積み重ね、心身を鍛え、昨日の弱い自分自身を克己する。
それは素晴らしいことだ。オリヴィア・ローゼンタールもそうしてきた。
積み重ねた経験と武功は己を裏切ることなく、悪を討ち滅ぼす力の源泉となる。
より強い敵に勝利し、守るべきものを守るために、必要なことだ。
……だが、力というのは、時として精神を腐敗させる。
驕慢と油断は常に手ぐすねを引いて待っていて、堕落を誘う。
目の前の男――否、鬼こそがその証明。武に取り憑かれ、行き着いた果て。
克己に克己を重ねた末に、打ち克つべき己を見失った亡霊である。
ありえたかもしれない……ありえるかもしれない、オリヴィアのifとも言えた。
だからこそ、オリヴィアは逃げることなく真正面から立ち向かう。
「はあっ!!」
四肢に稲妻を纏い、主に拳や掌を使って牽制し、本命の蹴撃を繰り出す。
オリヴィアの武技は足技からなっており、上半身の動きはそのための予備だ。
対する魅陰はその逆。奴の掌法は、その名の通り拳を基本として構成されている。
オリヴィアの肘打ちを弾き、掌底が顎を刳り飛ばそうと斜め下から来る。
オリヴィアは掌底が到達するよりも先に、脇腹に膝を突き刺していた。
手応えが浅い。攻撃は読まれており、魅陰の掌が膝蹴りを受け止めている。
両者はわずかに離れ、ぶつかり合う猛禽のようにその空白を使って加速、激突。
互いに胸部めがけ繰り出した拳が正面からぶつかり合い、大気を震動させた。
拳を引き戻しながらの肘/膝。鋭利な刃のような鋭さが互いの頬と脇腹を裂く。
だが、決定打にはなりえない。そして問題は、魅陰の放つ陰気……!
(一撃ごとに身体が凍りついていくかのよう。熱が……奪われている……!)
魅陰の陰気は、氷属性の魔法とはわけが違うことをオリヴィアは痛感していた。
通常の冷気攻撃とは、極低温という「マイナスのエネルギー」を送り込むもの。
沸騰した湯のなかに冷水を注ぎ込めば、高熱と低温は相殺されるものである。
だが、魅陰の陰気は違う。これは、熱――エネルギーを"奪って"いるのだ。
奪われたエネルギーは、熱力学的な基本法則を無視して虚空へ消えてしまう。
まさしく世界を滅ぼすオブリビオンならではの力。何も生まぬ虚亡の武功……!
(身体の動きが、鈍く……! なのに相手は、どんどん練度が高まる、いや……)
これが奴の戦い方ということか。撃ち合うこと自体が不利なのだ。
オリヴィアの動きは精彩を欠き――ついに、直撃を受けた!
……と、打撃を繰り出した魅陰自身も確信するほどだった。
しかし打撃が到達するコンマ1秒前、オリヴィアの全身から閃光が煌めく!
「ぬ、うっ!?」
それは雷霆。すなわち、万象を灼き融かす生命のエネルギーそのもの。
熱を奪う陰気を拒絶し、否定し、負の力そのものを吹き飛ばしてしまう!
「あぁぁあああ……ッ!!」
己の身さえも焦がすほどの熱量を宿したオリヴィアの金瞳が、燃えた。
「この好機、逃しはしない――もらったッ!!」
全力を籠めた槍のような前蹴りが、魅陰の胴体を捉えた!
「がはッ」
魅陰の身体はくの字に折れ曲がり、吹き飛び、壁に突き刺さる!
好機とは生死の境にあり。死中に活を見出したオリヴィアの、見事なカウンターが敵を上回ったのだ!
大成功
🔵🔵🔵
ルヴトー・シフトマン
これが、真の武功を身に着けた者が放つプレッシャーか
こうして相対するだけで、凍り付きそうになる
それでも、やってやる…越えてみせる
取るに足らない若造でも、お前に勝てると行いで示すッ!
空気が変わったのを感じる
アレを喰らえば、続く功夫は必殺…捌くしかない
気を掴めるかどうか、試したことは無いが…サイキックや魔法に効いたのなら、出来るはず
信じるんだ、武功にも勝てるって
未来を視ろ、ただ合わせるだけでいい───『怒涛』
お前のその力、天狼が掴み取ったッ!!
返してやる、受け取りやがれッ!!
鈍くなったお前なら、負ける気はしない
気を練るのは丹田だったか…そこを撃ち抜いてやる
これが狼の狩りだ…その身に刻み、沈みやがれ
●その陰を踏み越えろ
真の武功を身に着けた者のみが発するプレッシャー。
己もまた術式に昇華されるほどの重圧を操る者だからこそ、正しく感じ取れる。
……この場合は、正しく感じ取って"しまう"と、言うべきかもしれない。
「……やってやる。越えてみせる」
ルヴトー・シフトマンのこめかみを冷や汗が伝い、彼は奥歯を噛み締めた。
「取るに足らない若造でも、お前に勝てると行いで示すッ!!」
若者は向こう見ずで、蛮勇を冒すことこそが仕事だと人の言う。
不利な戦いを承知で、ルヴトーは戦いを挑むのだ。
ただの捨て鉢? 断じて否。
ルヴトーが闘うのは、世界のためであり人々のためであり、己のため。
譲れない矜持を貫くためには、強敵との戦いは避けられぬ障害なのだから!
「――その増上慢、を、打ち砕く……!」
底冷えするほどの陰気が、魅陰の全身から噴出した……!
2秒後の未来視が、ルヴトーの死を告げる。
空気中の水分を極低温で凝固させるように、陰気そのものを凝らせて生み出した漆黒の気剣。
それがミサイルめいてルヴトーを襲い、そして貫く光景が見えた。
(これが、この世界の武術……気の力か)
現象としてはサイキックや魔法に似るが、根本の原理はまるで別だ。
魔力ともまた異なる内なる力を練り上げ力となす、それこそが気功である。
(試したことはないが、出来るはず――いいや、出来ると信じろ。俺なら出来ると!)
ルヴトーは未来視に従い、しかしそれを覆すために動いた。
ヴィジョンをなぞるように、陰気の剣が上下左右から歪曲して襲いかかる。
触れること自体が致命の気刃である。だが……!
「――掴んだッ!!」
「!!」
天狼は、触れてはならぬ陰気の力の根源を"掴んで"いた。
ルヴトーの意に従い、寸前で静止した気剣が、魅陰をめがけて反転する!
「我が気息を、逆に、利用する……とは」
魅陰は冷静に気剣を拳で撃ち落とす。そこに、間隙がある。
天狼が動いた。魅陰はあとに続く。両者の間合いが一瞬にして縮まった。
「これが狼の狩りだ。その丹田、撃ち抜いてやるッ!!」
先の先を得たのはルヴトー。天狼の拳が、魅陰の胴体を撃つ。
「ぬ、ぐ……ッ!!」
質量差ではない。これは歴然たる力量の話である。
魅陰は打撃の威力を殺しきれず吹き飛ばされ……穢れた血を吐き、苦悶した!
成功
🔵🔵🔴
堆沙坑・娘娘
この組織にも裏事情はありそうですが、どうでもいい話ですね。
そんなことより…いい殺意です。話が分かりやすい。
パイルバンカー神仙拳、堆沙坑・娘娘。いざ尋常に勝負。
ユーベルコードで敵に有効な杭を召喚。
燃え上がれ、我が闘気。『寒さ』を…貫く。
私の闘気の全てはパイルバンカーに集中されます。
しかし、私のドレスもまた、パイルバンカー。ドレスにも闘気は宿っています。
敵の攻撃を闘気を纏ったドレスで受け、歯を食いしばり耐えると同時に、敵が攻撃に使った部位を右手で捕らえ、燃え上がる闘気を纏った杭を左腕のパイルバンカーで打ち込む【貫通攻撃】。
素晴らしい腕前です。
しかし、あなたたちは許せる閾を越えました。
還りなさい。
●パイルバンカーVSアンデッド
「……いい殺意です」
この事件に関わってから初めて、堆沙坑・娘娘は肯定的な言葉を漏らした。
あのチンピラどもや、チンピラを従える竜使いよりは、よほど「いい」。
ただしそれは、対峙する敵としてのわかりやすさ、そして手応えの話である。
つまるところ娘娘は、目の前の鬼を全力を出すに値する存在として認めていた。
「……奇妙、な、宝貝、だ」
そして鬼もまた、この少女の姿をした人形を最大限に警戒していた。
見てくれは奇妙だが、立ち上る気配と鬼気迫る武功は並のものではない。
たかが木偶人形、と傲れば――劉累の二の舞となるだろう。
「……パイルバンカー神仙拳、堆沙坑・娘娘。いざ尋常に、勝負――ッ!」
ガシャン! と、パイルバンカーに装填された杭は、闘気の塊。
それは燃えるように輝く、陰気とまったく対極の生命力の凝縮体である。
凍えるような陰気を拒絶し、闘気の光が陽炎を揺らめかせる。
光と闇がまったく同じ速度で相手めがけ疾走し――激突!
「「……!!」」
杭と拳。
撃ち合った光と闇が拮抗し、炸裂し、反発力がふたりの全身を駆け抜けた。
骨身が軋むほどの衝撃を、娘娘は歯を食いしばり、全力で耐える。
「……面白、い」
対する鬼はにたりと不気味な笑みを浮かべ、さらなる追撃を繰り出した。
怒涛のような拳が娘娘の胴体から胸部にかけてをなぞり、衝撃が突き抜ける!
「ぐ……ッ!!」
それは単純な功夫としても強力であり、同時に纏う陰気こそが最大の敵だ。
魅陰の陰気は、厳密に言えば魔術に見られるような凍気とはまったく違う。
生命の持つ「熱」を奪い虚空へ消し去る、完全なマイナスのエネルギーなのだ。
耐えるには、ただ熱量を高めればいいというものではない。
生命力=闘気を奪われてなお、動くことが出来るだけのタフネスが重要となる。
娘娘の闘気を纏ったドレスは、そのための緩衝材としてよく働いた。
ぞっとするような脱力感が、娘娘を襲う。しかし……まだ、動く!
「素晴らしい、腕前です」
娘娘は苦悶に顔をしかめ、相手を称賛した。
「しかし、あなたたちは許せる閾を越えました」
左腕をぐぐっと大きく弓引き……!
「――還りなさい」
燃える闘気を凝縮した杭が、裂帛の気合とともに、死したる身体に叩き込まれる!
「お、オオ……!! 忌々、しい、温もり……ッ!!」
凍えた身体を駆け抜ける破滅的な生命エネルギーに、魅陰は吼えた。
死を拒絶した身体にとって、それはこの世でもっとも有害な毒である。
つまりは有効打だ。魅陰の全身にヒビが走り、穢れた血が噴き出した……!
成功
🔵🔵🔴
鷲生・嵯泉
……成る程、唯の戦狂いか
元より斃す為に足を運んだものではあるが
尚更の事、此れ以上の放置は出来んな
熱を奪い、動きを奪い、命を奪う
生憎と其れに付き合ってやる程暇では無い
――貪詞虚消、総て喰い尽くし欠片も残すな
影響が消えれば、残るは積んだ研鑽に因る競り合いのみ
捉え得る情報の全てを戦闘知識と第六感で図り用いて攻撃は見切り
些少の傷は激痛耐性と覚悟で捻じ伏せ
半歩たりも引かず攻撃に徹して呉れよう
使える時間は然程多くはないが構いはせん
刹那の隙さえ見極められれば十分――突き通し、穿ち砕く
魂をも凍り付かせる極獄の氣を識ればこそ
此の程度、怖れるには温過ぎる
此の身の内に呼び覚まされる斬禍の獄炎、消す事なぞ叶わんと知れ
●戦に狂う
戦場に立つ者にとって狂気とは、常に戦わなければならない厄介な存在だ。
生か死か――極限の状況に身を置くことは、精神をもすり減らす。
だから耐えられなくなった者は、狂気に屈して精神が破壊されてしまう。
その結果が戦場から逃げ出すだけならば、まだいいほうだ。
目の前の鬼のように戦に狂ってしまうのは、他にとって最悪の手合である。
戦場の狂気に抗う者から、戦場の狂気を振りまくモノへ変わってしまうのだから。
「……もとより斃すために足を運んだものではあるが」
鷲生・嵯泉は隻眼で敵を睨み、ずらりと愛刀を鞘走らせた。
「お前を放置すれば、あの三下どもがのさばるよりよほど都の害となろう。
戦狂いというものは、手加減を知らん――どれほどの血が流れるやら」
ゆえに、なんとしてもここで奴を滅ぼさねばならない。
都が人の住まわぬ死の街と化すのは、けして夢物語などではないのだ。
「来い。お前の尽くを斬り捨ててくれる」
嵯泉の刃めいた鋭い殺気が、生命を否定する陰気を拒絶し、ぶつかり合う。
極限まで空気が張り詰め……そして、魅陰の踏み込みがそれを破裂させた!
地に満ちる陰気は、呪術や魔法に見られる冷気属性とはわけが違う。
それは熱を「下げる」のではなく「奪う」――つまり消してしまう負の力だ。
物体の震動を低下させるどころか、運動量を虚無に飛ばす、禁忌の技。
これを放置すれば、世の理は乱れてしまう。そして生命にとっての大敵である。
「斬り捨てる、と、云ったな」
拳と剣がぶつかりあうなか、読経めいた魅陰の声が響く。
「なら、ば――貴様、は、貫かれ……果て、よ」
瞬間、魅陰から噴出した陰気がくろぐろとした闇の剣の形に凝縮した。
刃渡り50センチほどのそれらはひとりでに空中を滑り、嵯泉に襲いかかる。
これもまた気功の応用である。直撃すれば甚大な影響は必至。
さりとて守勢に回れば、魅陰の武功は二度と反撃をよしとはしない!
「あいにくと、お前の戯言に付き合ってやるほど暇ではない」
嵯泉は隻眼を細め、口訣を唱えた。
「欠片も遺すな。総べてを喰らい尽くせ、貪詞虚消――!」
すると彼の背後に召喚陣が現れ、四凶が一・饕餮がぞるりと出現した。
饕餮はがばりと大口を開き、飛来する陰気の剣を飲み込んでしまう!
この世のすべてを食らうとされた魔物ならば、陰気もまた食料になるか!
「饕餮、を、従える……とは。見事……なり」
魅陰は称賛とも苛立ちともつかぬ笑みを浮かべ、自ら戦いを挑んだ。
陰気の影響は、仮に放出したとしても饕餮が喰らってしまう。
かといって饕餮を排除しようとすれば、その隙を嵯泉は見逃さないだろう。
つまり陰気を放出し続け、饕餮を咀嚼に集中させねばならない。
残るは純粋な術理のみ。再び、拳と刃とがすさまじい速度で交錯する!
「それ、だけ……の、術式。そう、長い時間、は、使えまい」
(やはり、読まれているか。さもありなん)
魅陰の指摘は誤りではない。魔物の召喚は嵯泉にとっても大技だ。
以て1分強……それを超えれば、嵯泉の命は饕餮に食らい尽くされてしまう。
さりとてそんなあっけない幕切れを待つほど、魅陰も嵯泉も無粋ではない。
高速のドッグファイトじみた攻防は、頂点を目指してなおも加速する。
魅陰は嵯泉の剣技を先読みし受け流しいなし、攻撃と防御を一体となす。
対する嵯泉は、拳を受け足を喰らっても意に介さず猛攻を続ける。
行き着く果ては、崖際のチキンレースのようなものだ。
どちらが膝を突くかの至極単純な戦い。タフネスはあちらが有利、しかし……!
「――貰っ、た」
鉤爪めいた魅陰の掌が、獣じみた裂傷を嵯泉の胸部に刻み込んだ。
常人ならば致命傷である。嵯泉の覚悟は、その激痛さえも抑え込む!
「それは……こちらの、台詞だ」
「!」
達人とて蹈鞴を踏む一撃を踏みとどまった嵯泉は、倒れ込むように斬りつけた。
一切の防御を捨てた捨て身の剣が、死した鬼の身体をばっくりと断つ。
「……莫迦、な……!」
「この身のうちに呼び覚まされる斬禍の獄炎、その程度の陰気で消すこと能わず」
ぎらりと、鋭い隻眼が魅陰を射竦めた。
「お前の謀など何一つ成就させはしない。我が剣はそのためにあると知れ
……!!」
虚無の陰気さえも退ける戦鬼の気迫に、凍てついた鬼が気圧される!
成功
🔵🔵🔴
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
何とも寒く陰気、穢れの気配を強く感じる
私の巫女への障りになったらどうするのだ
…そうならないよう、守るのが私の務め
纏う気配からも彼の実力がわかるよう
命をいのちとも思わぬような物言いも、部下の心も意に介さない姿に眉を潜めるも、最も気に入らない事は──私の巫女が興味を持っている事だ
サヨ、気をつけて
穢れに侵されないよう、私が守るよ
サヨと共に戦える幸いを忘れはしない
疾く駆けて先制攻撃、切り込み衝撃ごと切断し
第六感が告げる危機を巫女に報せ躱し、結界を張り防ぐ
再約ノ縁結
その厄は約されない
花冷えは与えない
─触れることは赦さない
見えぬ厄にて捕縛しサヨの太刀がより届くよう
きみの動きは凡て分かるから
共に往こう
誘名・櫻宵
🌸神櫻
健気な部下たちを切り捨てるなんて
良い性格をしているわ
鬼とは斯様な存在のことをいうのでしょう
悪くない
噫、この命が羨ましくて堪らぬのかしら
ピリとした殺意も殺す意図しかない眼差しも─噫、唆る
痛みは感じるの?恐怖は?血は出るのかしら?何も感じなさそうね
いいわ、楽しみましょう
私、強い方は大好きよ!
大丈夫よ、カムイ
私にはかぁいい神様がいてくれるから
花冷えは懲り懲り
生命無きものから命は吸えぬなら、別の根源を削るしかないかしら
あたたかな春風は浄化の祝
破魔の桜は陰気を祓う生命の呪─地下に桜綻ぶ快晴を齎す
─浄華
カムイと太刀筋を合わせなぎ払い
踏み込み衝撃派と共に斬り祓う
既に屍のあなたが本当に死ぬ迄殺しましょ
●羨望
龍とは気まぐれで、強欲だ。
そこに悪食を重ねたとなると、いよいよ手に負えないだろう。
誘名・櫻宵という男は、まさしくその「手に負えない」タイプの龍である。
(……気に入らないな)
朱赫七・カムイは魅陰を睨み、顔を顰めた。
部下のことをなんとも思わぬ物言いや、いのちを軽視……いや憎悪する在り方。
それも神として言語道断だが、なにより気に食わないのは、厳密には奴ではない。
奴に、巫女が――つまり櫻宵が、強い興味を覚えてしまっているということ。
「あんな健気な部下たちを斬り捨てるだなんて、いい性格してるわ。
鬼とはまさしく、あなたのような存在を云うのでしょうね。……うふふ」
櫻宵は魅惑的な唇に舌を這わせ、にっこりと微笑んでいた。
獲物を見つけた蛇が浮かべるような表情。櫻宵は"品定め"をしている。
どろりとした殺意。
殺すことしか考えていない眼差し。
そして……生命を否定する陰気。
噫、たまらなくそそる。どうしようもなく身体の熱を掻き立てられてしまう。
隣にいるカムイが、それを好ましく思っていないことも視線でわかった。
それがなお、櫻宵の性の悪い部分を刺激してやまない。
「……大丈夫よ、カムイ」
「サヨ」
「私には、かぁいい神様がいてくれるもの。ね?」
櫻宵がそう言って微笑めば、カムイは憮然とした表情で頷いた。
いじましさに頬が緩む。どちらも違って、どちらもそそられてしまう。
「だから、愉しみましょう。強い方は大好きだもの!」
「……きみがそのつもりならば、せめて私はあの穢れを祓おう」
カムイはそう言って、刃を構えた。
「花冷えなど与えさせるものか。サヨは、私の巫女なのだから」
同時にカムイの姿が消えた。機を掴むための、先制攻撃である。
間合いに踏み込んでみると、あの陰気の性質が肌でより鮮明に理解できた。
あれは冷気・凍気のたぐいとは、似ているようで実はかなり違う。
それは熱を奪い、生命力を奪い、どこでもない彼方へと消し去る負の力。
よほどの憎悪と諦観を、屍と成り果てたあれは抱えているのだろう。
世界というリソースそのものを削り取る在り方は、神にとって不快である。
この世界は美しい。ただあるがままにあるのが、一番好ましい。
ならば、ただ在るだけで世界を害する鬼は、斬らねばならぬ害悪に他ならぬ。
「その、神性。実、に――忌々しい」
魅陰は、カムイのうちから出でる神の力を、熱量を疎ましがった。
羽衣がひとりでに蠢き、ねじるような切り込みをふわりと受け流す。
剣戟の運動エネルギーそのものを、陰気が奪い取ってしまうのだ。
強引に身体の力を抜かさせられたような不快な違和感を、カムイは嫌った。
「穢らわしい……!」
カムイは剣を引き、身を沈めて昇り龍のような二手目を繰り出す。
魅陰はそれを読んでいた。身を躱し、さらに半歩踏み込むと同時に掌底!
「チッ――!」
カムイの纏う結界が、陰気を凝縮した掌底を受け止め、減衰させた。
緩衝によって得たわずかな時間に、カムイは飛び退ることで掌底を拒絶する。
「サヨ、気をつけろ。思った以上に"できる"」
「わかってるわ。そのほうが愉しいものね!」
入れ替わりに櫻宵が斬りかかる。羽衣が桜纏う剣を受け止めた。
破魔と収奪の陰気がぶつかりあい、斥力を生じさせて両者を後ろへ弾く。
櫻宵はしなやかな身体のバネを活かし、反発力を強引にねじ伏せて前へ。
刃が煌めく。秒に五の剣閃を、魅陰は丁寧になぞり、いなし、反撃を撃った!
「見切ったり」
「させぬ!」
再びカムイの結界が打撃を阻む。だが今度の一撃は重く、鋭い。
緩和しきれぬ威力が結界を突き抜け、受け太刀の上から櫻宵の身体を貫いた。
まともに喰らえば骨が砕けるどころではない打撃だ。櫻宵は地を滑る。
「サヨ!」
「心配ないわ。ありがとう、カムイ」
狂ったように渦巻く桜嵐の魔性が、陰気の収奪を拒絶し傷を癒やす。
入れ替わり立ち代わり、神と龍は鬼を討つ剣で果敢に攻め続けた。
「――埒が、明か、ぬ」
魅陰がしびれを切らせた。
これまで斬撃を弾くために防御に回していた陰気を、全身に漲らせる。
結界を完全に打ち貫くほどの全力の打撃で、櫻宵を狩るつもりだ。
「その厄は、約されない。触れることは許さない――!」
「!」
激昂したカムイの神威が、櫻宵の首を刎ねたであろう手刀を射止めた。
ぴたりと、打撃が空中で静止する。魅陰は咄嗟に身体をねじり、蹴りを放つ!
「ぐ……!」
カムイは脇腹を撃たれ苦悶する。しかし、その口元には笑み。
彼を飛び越えて櫻宵が斬りかかった。その口元もまた、笑み!
「私のかぁいい神様に手を出した罰は、たっぷり受けてもらうわよ」
兜割りが入る! 破魔の力は屍を内側から破壊し、荒れ狂った。
爆裂したエネルギーに魅陰はたたらを踏み、さらなる斬撃を許してしまう。
「痛みも恐怖も感じないなら、その屍をバラバラにして殺し続けましょう。
死したあなたがもう一度死ぬまで、何度も何度も何度でも斬ってあげるわ!」
「ぬう……ッ!!」
屍にとって生命力は毒だ。桜嵐の破魔を宿した剣が猛烈な勢いで吹き荒ぶ。
怒り悦ぶ龍の爪は、鬼をもってしても耐え難い!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鳴宮・匡
体ばかりは普通の人間だ
この酷寒で動ける時間はそう長くない
動き出しを見切り、それを潰すようにこちらの攻撃を叩き込む
一瞬が勝負だ、全知覚を研ぎ澄ませて相手の動きを捉える
欲を言うなら一撃で仕留めたいけど
次善として、こちらの動きが鈍っていたとしても
それで回避の隙くらいは生めるだろう
攻撃を繰り返して相手を削っていくよ
守るためでもなく、救うためでもなく
まして、生きるためでもない
ただ憎んで、殺すためにあるもの
“そういうもの”を二度と理解できないことを
少しだけ苦しく思うけど
――それでも
ああでなくてよかった、という思いもある
そういうものに囚われていたら見えなかったものがあって
今はそれを、手放したくないと思うから
●刹那を掴む
身体から熱が……いや、生命力そのものが失われていくのを感じる。
鳴宮・匡の優れた感覚器は、敵の放つ陰気の正体を看破していた。
あれはただの冷気ではない――正しくは生命のエネルギーを奪う負の力。
熱力学を否定する超常そのもの。"普通の人間"にはいささか酷である。
つまり、勝負は一瞬。
匡はすべての知覚力を総動員し、魅陰の動きを、視線を、意識を捉えた。
敵を一撃で仕留める……そんな気概をも持って「狙い定め」たのだ。
スナイパーは身を隠す。なぜなら、狙撃することに全霊を注ぐためである。
自分の姿を晒しておいて狙撃に入るなど、殺してくれと頼んでいるようなものだ。
ことユーベルコード使いの戦いは、そういう理不尽をせざるを得ないことがある。
匡の知覚力はその無茶を可能にする――敵の動きを、すべて読めるのだから。
その打撃は、"普通の人間"が避けるには疾すぎる。
その蹴りは、"普通の人間"が防ぐには鋭すぎる。
その陰気は、"普通の人間"が耐えるには冷たすぎる。
――だがそもそも、繰り出された攻撃をすべて先読みしていたとしたら?
どう来るか。
どう狙うか。
どう動くか。
何もかもが手の内にあるのだとすれば、あとはそれを避ければいいだけの話だ。
匡の身体は"ただの人間"である。
彼には仙人や武侠のような、限界を越えて引き出された内功など存在しない。
もちろん"普通の人間"に比すれば、その肉体は極限まで鍛えられている。
とはいえ達人との立ち会いは文字通り次元が違う。比べ物になどならない。
だが。
「何故、だ……!」
達人とて、届かぬものを掴むことは出来ぬ。
「何、故……!」
達人とて、触れられぬものは害せない。
「――何、故、我が拳……が、当たらぬ……!」
気剣を飛ばそうが、拳を振ろうが、足を繰り出そうが。
匡は何手もの先を"読み"、動き、すべてを躱し続けた。
「……俺は、お前みたいじゃなくてよかった、って思うよ」
銃声。放たれた弾丸は、魅陰の急所を貫いた。
「俺には、お前は理解できない。でも、そうでなくてよかったとは思う」
匡の瞳は、どこまでも凪いでいた。
「俺は、お前に理解できない大事なものを、もう手にしてるんだから」
けれどもその胸の奥には、燃えるような強い生命の輝きが滾っていた。
大成功
🔵🔵🔵
フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎
POW判定
・行動
真の姿を開放、体中に電磁覇気を充溢させて敵の陰気に対抗しつつ
連続攻撃を「功夫・見切り」でなんとか捌く。
その合間に一回でも完全に受け流したところへ
技を途中でやめられない欠点をついて体勢を崩させて
カウンターのUCを叩き込む
・セリフ
アンタの連撃は確かに強力な必殺技だ、だが技におぼれているね。
オレが見せてやるよ、一撃必殺というのは技が必殺なのではない、
必殺になる様に技を使うということだと!
・UC演出
(真の姿で体中から溢れた電磁覇気が自身の体や服を焦がし、
さらに肌の色が濃く変色していく)
因果を見切ったこの一撃の前には、全ては空(むな)しくなる
磁極流、色即是空(シューニャ)!
●「必ず殺す」という意味
色ある風が二陣、張り詰めた空気の中を切り裂き渦を巻く。
曲がり、交わり、弾かれ、そしてまた激突する。
軌跡は身をもたげた大蛇のようでもあり、ところどころは稲妻めいてもいる。
そしてひときわ大きな激突――色ある風は大きく反発し飛び離れた。
星鬼・魅陰とフローラ・ソイレント。それが、色ある風の正体だ。
ふたりの飛び抜けた武功は、常人には目視不可能の速度へと到達する。
両者は全力を出し、この地下空間を縦横無尽に飛び回っていたわけだが……。
「……チッ。この姿でも凌ぐのが精一杯とはな」
ダメージはフローラのほうが重い。彼女は真の姿を解放していた。
叩き込まれた打撃の数から考えれば、とうに動けなくなっているはずだが、
体中に充溢された電磁覇気がヴェールのように陰気を拒絶しているおかげだ。
体内に打ち込まれた陰気も、常に流動する覇気によって霧消し、無効化される。
それがなければ、フローラはバラバラになっているか死人に逆戻りである。
「……見事、な、ものだ。……我が、功を浴び、て、よくも、なお……」
「悪いがそう簡単に倒れるわけにゃいかねーんでな」
フローラは不敵な笑みを浮かべ、身構えた。
「アンタの連撃はたしかに強力な必殺技だ。だが、その欠点も見えてきた。
技に溺れたアンタの拳じゃ、オレをもう一度殺すことは出来やしないぜ」
「……同じ、死人……で、あり、ながら……なに、ゆえ、生命に、味方、する」
「さあな。知りたきゃオレを仕留めて確かめてみりゃいい」
――出来ないがな。
フローラがそう言うと、魅陰の放つ陰気が一段と濃くなり重みを増した。
まるで見えない魔神が、フローラの両肩にずしんと両手を乗せているようだ。
その強烈な圧迫感を意気でねじ伏せ、フローラは言い放つ。
「オレが見せてやるよ。一撃必殺ってのは、技が必殺なのではない。
必殺になるように技を使うということだと、この拳で刻み込んでやる!!」
バチ、バチバチバチ……!!
フローラの肉体から溢れる電磁覇気が、ついに彼女の身体をも焦がし始めた。
その熱の高まりを、魅陰は嫌う。あれは死人のようで死人ではない。
己と同じ死した存在でありながら熱を持つモノは、鬼にとって穢らわしかった。
「――死、ね!」
恐るべき速度で魅陰が迫る。フローラは不動!
(奴の功夫の弱点……それは、途中じゃ技を止められないってところだ)
フローラは瞬きさえせずに、魅陰の拳足を見切り、被弾を覚悟で防御し続けた。
通常であれば、この連続攻撃に防御一点の選択肢は悪手も悪手である。
なぜなら魅陰の功夫に、切れ目や陰りというものは存在しない。
一度でも受けに回れば、その防御を猛攻によって潰されてしまうのだ。
ならば、死中に活を見出し、自らの手で間隙を生むしかない!
電磁覇気はさらに熱量を高める。その肌がさらに色濃く変わっていく!
「――ここだ!!」
好機! フローラは胸部中央めがけた拳を両手で受け止め動きを止めた。
瞬間、爆発的に膨れ上がった生命の熱量が、魅陰にたたらを踏ませる!
「何……!」
「この世はすべて空なり、因果無くして色は存在せず!」
体勢を、立て直せない。そんな行動をこの套路は想定していない!
魅陰は死人特有の、肉体のリミッターを無視した筋力で強引に攻撃を繰り出そうとする。
実に歪な動きだ。対してフローラの動きは、水のようになめらかであり火のように烈しくもある!
「――磁極流」
苦しまぐれの手刀を弾き、電磁覇気が拳に収束していく。
「色即、是空(シューニャ)――ッ!!」
因果を見切りし拳が、音をも越えた速度で叩き込まれた。
――パァン!! と、緊迫した空気が爆ぜたかのような爽やかな破裂音!
「が、ァ……ッ!!」
砲弾じみた一撃を一切減衰出来ず構えも出来ず受けた魅陰は、苦悶!
亜音速の速度で吹っ飛んだ鬼が、ズシン!! と地下の壁にめり込む!
「これが、磁極流の極意さ」
フローラは、快哉たる笑みを浮かべた。
大成功
🔵🔵🔵
神酒坂・恭二郎
まぁ関係なかろうね
やりたい事のおまけに過ぎない連中の事なんてのは
が、孤高の拳を振うなら最初から一人でやれってもんだ
野暮は嫌いだ
スペース手拭いを抜き、布術の構えを取ってお相手しよう
身も凍る殺意
目にも止まらぬ超高速の功夫の密度と威力は凄まじい
無傷では耐えられぬ【覚悟】がいる
こちらも【功夫】で【受け流し】、防御の上から致命打を避けて隙を伺う
風桜子を纏った布越しに【オーラ防御】で受け、陰気の影響を最小にするのが凌ぐコツだ
あの連撃は脅威であり隙だ
受けの度に布を噛ませ、奴自身の速度でその動きを【捕縛】したい
扇風機に紐を巻き込む要領だ
出来た隙に必殺の掌打を狙おう
「制御出来ぬ殺意なら、死合じゃあ命取りさね」
●武の在り方
「まぁ、関係なかろうね――やりたいことのおまけに過ぎない連中のことなんざ」
神酒坂・恭二郎は、ゆるりと一歩を歩み出した。
「お前さんは敵も味方も関係なく、他者のことをこれっぽっちも考えちゃいない。
同じオブリビオンでさえ忌々しくて仕方ない……そう、顔に書いてあるぜ」
「……なら、ば、なんだ、と、云う?」
魅陰は否定しなかった。それが、事実上の肯定である。
オブリビオンに、本質的な意味での協調・連帯などどだい無理な話だ。
その根源が生者と自己への嫌悪。憎悪にあるのならばなおさらのこと。
「別に。それをどうこう云うつもりはねえさ」
恭二郎は手拭いを抜き、"布"術の構えを取った。
槍を番えるような、半身を傾けて利き足を前に出す独特な構えである。
「ただね、孤高の拳を振るうなら、ハナからひとりでやれってもんだぜ」
「…………」
「つまるところ、野暮が嫌いなのさ。俺は」
恭二郎は薄く笑っている――その双眸には嫌悪と殺意。
この亡者を許しておけぬという、義侠心。そして武の道を究める者としての怒り。
深く澄んだ海のように雄大で、雄々しく、苛烈な色であった。
空気が張り詰め、緊迫する。余人がいれば、息苦しさに気絶していたやもしれぬ。
つまりは――達人同士の死合が、すでに始まっていたのだ。
機先を制したのは、魅陰であった。
水銀めいた速度で間合いを詰め、陰気を纏った拳で顔面を破壊しにいく。
だがこれはフェイント。本命は、相手が上体を伏せたところで繰り出される膝だ。
しかしそれも套路のひとつに過ぎぬ。膝を防げば上の拳が脊椎を叩き割る。
いずれも速度は迅雷の如く。どれにかまけても、どれかで戦闘不能に陥る。
恭二郎は身を伏せながら自ら踏み込むことで、膝の勢いを殺し、二手を防いだ。
槌のように拳が降る――風桜子で鋼の如く硬質化した手拭いが受け止めた。
みしりと、両者の足まで伝搬した衝撃が床に蜘蛛の巣じみたヒビを走らせる。
両者、互いに後退。魅陰は陰気を剣の形に凝らせ、上下左右から飛ばす。
恭二郎は手拭いで螺旋を描き、気剣が窄まったところで一気に撃墜した。
防御に隙がない。魅陰はあえてまっすぐに突進し、両手掌打で押し切ろうとする。
恭二郎は螺旋形を維持。先端部に凝縮した風桜子と、掌の陰気が激突……破裂。
パァン! と乾いた破裂音。衝撃が両者を襲うが、どちらもこらえる。
再び超高速かつ至近距離の攻防が始まった。恭二郎は守勢に回らざるを得ない。
功夫の練度は敵が上である。剣を使おうにも、間合いが詰まりすぎていた。
もっとも恭二郎はここまで読んでいた。そのための布である。
一打一打を受けながら、布は手首足首に絡みつき風桜子を流し込んでいた。
風桜子は陰気を弾き、同時に布が絡まることで打撃の速度を削いでいく。
迅雷の如き速度ゆえに、魅陰は連続攻撃を中断することが出来ない。
「ぬう――」
防御が、空いた。まるで導くように、胴体への空洞が間口を拡げていた。
「制御できぬ殺意なら、死合じゃあ命取りさね」
武功は敵が上。されど、読み合いと搦手に関しては恭二郎が上。
我流にかまけた半端者だからこそ、小手先の小細工をも活かしてみせる。
皮肉にも、道を究めようとしたその在り方が差を決めたのである。
掌打が、入った。
「がはッッ!!」
魅陰は身体をくの字に曲げ、壁まで吹き飛び、盛大に瓦礫を巻き上げる。
恭二郎を中心に、数メートルだけ清廉な空気のドームが生まれていた。
生命を否定し消し去る陰気にとって、風桜子はまさしく水に油だったのである。
大成功
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馮・志廉
拳法で一手を交わす度に、経脈が凍てつくのではないかと言うほどの凄まじい寒冰の真気が伝わる。背筋までもが冷える思いだが、それはむしろかの鬼の純粋に高度な武功に対して感じるものか。
陽剛を旨とする馮家拳とは対称的な技に対し、こちらは手筋を見極めながら逆転の機を狙う。
狙うべきはその速さ。技と技の継ぎ目のように、如何に優れた武功にも必ず隙は生まれるもの。その虚を、実で打ち抜く『一字神拳』で勝負。速さ故に、こちらの渾身の一撃に対して急には手筋を変えられないと見る。
これ程の武功。生前に会いたかったものだ。
問われれば名乗り、拱手の礼をとろう。
●屠龍滅鬼伝
馮家拳の旨とは、陽剛にあり。
陰気による生命力収奪を主とする魅陰の拳とは、何もかもが対称的であった。
馮・志廉の剣は重く、鋭く、そして堅実だ。
鬼の拳は軽く、疾く、そしてなにより悪辣。
一撃一撃が、対手の命を刈り取ることただそれだけを狙っている。
武とは本来、暴力に対抗し、身を守るための技。
殺すための武技とはすなわち魔道であり、他はおろか己さえも破壊する。
まさしく破滅の道……死してなお憎悪に凝り固まった屍と成り果てるほどに。
(なんたる寒冰の真気。否、俺のこの悪寒はこの鬼の武功に対してか――)
志廉は戦慄と同時に、ある種の敬意・感服を覚えていた。
こと単純な武功として言えば、鬼のそれはまさしく絶人の域に達している。
猟兵とオブリビオン、武侠と悪漢……そんな立場を抜けば、純粋な感嘆を抱く。
志廉は背筋までも冷えるほどの思いを覚えつつ、同時に燃えてもいた。
その熱意、ひとりの武人としての意気が、超高速の連撃への対応を可能とする!
陽剛と寒冰。
何もかもが対極だからこそ、志廉には敵の手の内が読めていた。感じられた。
敵から見てどこを狙うのが最適なのかがわかれば、そこを守ればよい。
武技は加速する。撃ち合うごとに陰気が志廉の身体の生命力を奪おうとする。
その寒冰は、ただ冷たく凍てついた闘気などではない。
厳密には生命力を削り虚無へと奪い去る、まさしく負の力であった。
志廉は己の経脈に気を巡らし、陽剛なる力を引き出して拮抗し拒絶する。
彼が待つのはただひとつ――技と技の継ぎ目、套路にあって当然の間隙。
たとえどれだけ武を研ぎ澄まそうと埋められぬ、どうしようもない虚!
――はたして。
「捉えた」
必然を積み重ねた先に、岐路というものは存在する。
無限じみた套路の果て、志廉は至極当たり前のように"それ"を捉えた。
秒数で言えばコンマ1秒に満ちるかどうか。
まさしく刹那、達人でさえ全身全霊を注いでようやく見出だせる、亀裂。
「その虚、我が実を以て撃ち抜く――!」
小細工無用。志廉は練り上げたすべての気を指先に籠め、防御も回避も捨てた。
それで仕留め損なえばそれまでのこと。斯様な鬼相手ならば仕方あるまい。
さりとて志廉は死ぬつもりなどない。死中に活を求め――掴んだのだ!
「……み、ごと」
木の虚を風が吹き抜けるような、寂寂とした声だった。
槍のように突き出された指先は見事に、鬼の胸部を貫いていた。
ドォン――と陽気が波濤のように屍を伝搬し、鬼の内核を砕きせしめる。
「これほどの武功、生前に会いたかったものだ」
志廉はゆっくりと腕を引き抜き、厳かに残心を打った。
「…………名を、教えては……くれぬ、か」
「馮・志廉。馮家拳法伝承者であり――」
千里独行、陰気の残滓を溌剌を打ち払う。清廉な破裂音が響いた。
「ただの、鏢師だ」
「……く、ふ、は、はは……」
鬼は笑い、崩れ落ち、そしてその身がひび割れ砕けて砂と変じていく。
志廉は拱手の礼を取り、踵を返し、もはや振り返ることなく歩き出した。
鬼が跡形もなく無へと帰そうと、彼の中にはたしかに遺されたものがあった。
おおいなる武功、憎悪も殺意も何もかもひっくるめた武人としてのすべて。
志廉は、きっとそれを忘れまい。
なにせ彼は、硬骨漢なのだから――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2021年04月17日
宿敵
『星鬼・魅陰』
を撃破!
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