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宿願果せど空虚な余生

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #猟書家 #スナーク症候群 #強化人間


●忍び寄る喪失
 ガルガンドは目が覚めるとすぐにキッチンに立ち、コップ1杯の水を喉へ一気に流し込む。
 睡眠中に失われた水分を補うためだ。起き掛けの水は体によく染みた。
 今日も嫌な夢を見ていた気がする。内容はふやけた写真のように不鮮明で、それも日が完全に昇ってしまうまでには色褪せて消えてしまうだろう。
 だが彼が身に付けるパジャマは寝汗が染み込みベタベタで、睡眠時の苦悩を物語る。洗濯物の山にまた一つ、パジャマが上乗せされていた。
 着替えと朝食が済むと、ガルガンドはログチェアに腰掛け窓の外を見る。
 鳥は自由だ、とガルガンドは思う。鳥になって――自由になれたらどんなによかったことか。
 彼を縛るのは何か。それは正義とも悪とも取れぬ、不可解な影。
 人は言う。それは幻だ、と。しかし幻は日に日に鮮明になっていく。
「……っく、またか……」
 軽い頭痛は鈴の音だ。しゃらん、しゃらんと「そこ」に彼の者の存在を悟らせる。
 顔の無い不気味なヒトガタ。それはガルガンドが失った情熱のように虚ろだった。

●ヒーローズアース・7thラウンド
「ヒーローとは必ずしも輝ける存在ではない、ということですね……」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)が視たのは、病に伏した一人の強化人間のヒーローだった。かつての大戦において宿敵たるヴィランを倒した――まではよかったが、その先の景色は真っ白で、何もない。
「ガルガンドさん、という一人のヒーローのお話です。大戦が終わった後もヒーローとしての活動を続けてきた彼ですが、宿敵のヴィランを倒すことに情熱を注ぎ続けていたために、その後の復興や警邏活動といった『守る』戦いには味気無さや空虚を感じていたようですね。そしてその喪失感はやがて『スナーク症候群(シンドローム)』となって彼の体に現れてきます」
 倒すべき敵、掲げるべき正義を失った強化人間が患うとされる病。冒されてから彼は悪夢にうなされ、日中も奇妙な光景を度々見るようになったという。
「そして今、ガルガンドさんが見ている幻が、実際に具現化しているということがわかりました。ですから皆さんには、この具現化した怪物を倒していただきたいんです。ただ、私が見た悪夢ではその怪物が『在る』ということだけで、それが『何処に』いるかまでは掴めませんでした。ですのでまずはガルガンドさんに接触し、彼が見ている光景から居場所を突き止めてほしいんです」
 ガルガンドを励ましながら話を聞けば病の苦しみも少しは和らぎ、居場所を克明に猟兵達へと伝えてくれることだろう。
「ガルガンドさんには皆さんの支えが必要なんです。どうか、宜しくお願いします」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 最近ちょいちょい使ったことのないシナリオを運営しています。

●フラグメント詳細
 第1章:日常『具現化した病の居場所を探れ』
 強化人間のヒーロー、ガルガンドに話を聞いて、猟書家の居場所を探りましょう。
 ガルガンドはアパートに一人暮らしで、皆さんはそこを訪れることになります。

 ガルガンドは30代後半の男性です。
 未婚のままこれまで生きてきました。

 第2章:ボス戦『スナーク症候群(シンドローム)』
 判明した場所へ向かい、ボスとバトルです。
 道案内はガルガンドがしてくれるので、皆さんは安心してボスに立ち向かってください。

●MSのキャパシティ
 合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
 でも複数採用リプレイとかは気まぐれで書いたりするのでソロ希望の方は明記しておいてください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『具現化した病の居場所を探れ』

POW   :    強化人間を悩ませる幻影を打ち消すよう、力強く元気づける

SPD   :    強化人間の負担にならないよう、言葉巧みに話を聞き出す

WIZ   :    強化人間の過去を調べ、その話を聞く

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​
餅々・おもち(サポート)
俺はケットシーのおもち。ペットショップ育ちのケットシーだ。身長は24.6cmだが将来的にはもっと伸びる予定だ。

もし危険な目にあったら、【シャーク・トルネード】で派手に攻撃したり、
【ライオンライド】で柴犬程度のライオンを召喚する等、任意のUCを使って切り抜けるぞ。
人間の世界のことは勉強中なので、まだまだ世間の常識が分からない時もある。

アドリブ共闘OK、負傷を厭わず行動する。よろしくたのむ。



●二つに収まらない人間の世界
 餅々・おもち(ケットシーの鮫魔術士・f32236)は埃っぽい廊下でアパートのドアノブを見つめていた。自身の身長に比べれば随分と高い位置にある。人間用に備え付けられた物の為、仕方ないと言えば仕方ない。
 おもちはドアノブの下から反対側の壁へと飛び掛かると、壁を足場にして蹴飛ばしさらに跳躍を果たした。そしてぐいっと腕を伸ばし、ようやくドアノブに手が掛かる。
 下へ押し込んで開けるタイプのドアノブだったため、掴んだ後はおもちの体重でドアノブが捻られた。不用心にも鍵はかかっておらず、ゆっくりと開いていく。
「……ん? 誰だ?」
 今日は人と会う予定は無かった。ガルガンドが玄関に向かうと、ドアを開け切ったおもちが威風堂々と立っていた。
「俺は餅々おもち、猟兵だ。ガルガンド……お前の病に関して、少し話を聞きに来た」
「あぁ……そうかい、なら上がってくれ。大したものは出せないがね」
「邪魔をする」
 おもちが玄関に入ってくると、ガルガンドはおもちの背丈ではドアノブに手が届かないことを察してドアを閉めていた。

 おもちがソファーにつくと、ガルガンドはグラスにオレンジジュースを注いでおもちの前に置いた。
「さて、何から話すのがいいだろうか」
 おもちはオレンジジュースをちびっと飲むと、揺れる液面を見つめながら、
「……俺は人間の世界のことをまだよく知らない。ここまでの礼儀も……不躾であればすまない。だから、ガルガンド、お前の人生について聞かせてほしい。何を思い、どう生きてきたのかを」
 おもちは話の中身をガルガンドに委ねた。おもちが考える最善は、ガルガンドにとっても負担にならない程度に話をさせる、という最善になっていた。
「なるほど……では、俺と、俺の宿敵だったヴィランの話をしよう。彼はね、元は俺の友人だった……子供の頃の話だがね。その時は共にヒーローを目指していたが、ある日を境に彼はヴィランへ傾倒し……彼もまたヴィランとなってしまっていた」
 宿敵であるヴィランの男が、どうしてヴィランの道を歩むことになったのか――細かい話は、ガルガンドが宿敵ヴィランとの対決を重ねる中で解き明かされていった。その内容を思い出せる限り、そしてガルガンド自身の精神の負担にならない限り、詳らかにおもちに伝えていた。
 おもちは耳を傾けながら、オレンジジュースをちびちびと飲む。人間の世界の、善悪とは実に難しく複雑だ。どうやらヴィランとなってしまったガルガンドの友人は、ヒーローの道を歩み始めようとしていた矢先に、人間の裏の顔、醜悪さというものを知ってしまったようだった。
 世界とは、瞳に映るものばかりが真実ではない。そして、善とは、悪とは、時に同じものをただ違う視点で見ているだけ、ということもあるとおもちは知った。
 それを本当に理解したかはまだおもち自身判断がついていないが、この先の人生、きっと何か役に立つことがあるだろう。
「……それで、その宿敵との決着はつけたのだろう?」
「あぁ……嫌でも毎日思い出すよ、そのことは」
 ガルガンドは少し躊躇いながらも、ポツポツと話し出した。
 決着をつけたのは、スラム街よりもまだ荒れた、ビル街の廃墟だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

叢雲・凪
POW

「イヤッーーー!!」(登場するとともに盛大にカラテシャウトしながら幻影に【キツネ・トビゲリ】!)

「どうも ガルガント=サン ジンライ・フォックスです」(回転着地し彼に向き合うと姿勢を正して奥ゆかしいアイサツ【礼儀作法】)

「あなたと宿敵の間に何があったかは知らない… ただ 1つ言えるとすれば…」(幻影に決断的カラテチョップをしつつ)

「【『昨日の自分』を超える『明日の自分』を目指す】… 死んだお父さんと… 宿敵だった兄弟子さんの受け売りだ。」

「ボク達ヒーローに終わりはない。日々己を高め 弱者を救う。力を持つ者の責任だ」

「それに カッコイイ男はモテるよ?」(仮面の奥で楽しそうに笑う)



●ゲンエイスレイヤー
 この日はガルガンドにとって来客の多い日だった。尤も、普段が0というだけなのだが。
「イヤッーーー!!」
 アパートに奇声、何事か。ガルガンドが玄関を開けて廊下を見回すと、叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)が遠くの方から走ってきて跳び蹴りを放っていた。
「うおっ!?」
 思わず顔を腕で庇ったガルガンド。凪の飛び蹴りはガルガンドを狙ったものではなく、彼が目にする幻影を打ち消すために放たれたものだった。凪は回転しながらガルガンドの手前を跳び蹴りの着地点にすると、すっと姿勢を正して、
「どうも、ガルガント=サン。ジンライ・フォックスです」
 きっちり三十度、体を傾けてのお辞儀だった。
「はあ……どうも」
 猟兵は個別に行動しながらも複数人で作戦に当たることがほとんどと聞いていた。そのため、この突然現れた、男とも女とも取れないような風貌の人物をガルガンドは猟兵と判断した。

 ガルガンドは凪もまた部屋に招き入れ、先の猟兵と同じようにオレンジジュースを差し出した。見るからに手を付けなさそうではあったが、同じ扱いをしないというのも具合が悪かった。
 ガルガンドはそれまで触れていなかった、自身が見る幻影について少しだけ話に触れた。繰り返される映像はいつも、宿敵ヴィランを討ち取った場所であった。
「これのせいでいつも寝覚めが悪くてね……」
「ふむ……あなたと宿敵の間に何があったかは知らない……。ただ1つ言えるとすれば……」
 凪は立ち上がると、ガルガンドの目の前で垂直チョップを繰り返す。幻影を消滅させるぞ、という強い意思が感じられる決断的カラテチョップが虚空に炸裂していた。
「『昨日の自分』を超える『明日の自分』を目指す――死んだお父さんと……宿敵だった兄弟子さんの受け売りだ」
「昨日の自分を超える、明日の自分……か。はは……そんなこと、考えもしなかった。いつも、『今日』を生きるのに精一杯だった」
 明日を見つめることは、生きるという意思の表れだ。今日を生き抜いてこそ明日がある。明日のために、今日という日に希望を抱く。凪の言葉はガルガンドに生きる活力を与えていた。
「ボク達ヒーローに終わりはない。日々己を高め、弱者を救う。力を持つ者の責任だ」
「……ああ、君の言う通りだ。俺はヴィランとなってしまった彼に憤りを感じていたのだろう。だから、日々倒すことばかり考えていた。倒せば人々が救われるというのは事実だったが……手段を目的にしてはいけなかった」
 宿敵ヴィランを倒したことでガルガンドの心にできてしまった隙間はあまりにも大きすぎて、弱者を救い、守るという新たな目的では埋められなかった。
 しかし今、その穴に過ちの肯定、そして真のヒーローというものへの理解が少しずつ入り込んでいく。最後に残った小さな穴に、人を守るという使命がぴたりと収まる。
「それに、カッコイイ男はモテるよ?」
 凪が仮面の奥でケラケラ笑うと、ガルガンドは一つ間を置いたのち、失笑していた。
「ははっ、そうだと嬉しいよ」
 男の一人部屋はなんとも質素だった。これもまた、今後のガルガンドの行動次第で変わっていくのかもしれない。
 ガルガンドは深く息を吐き、立ち上がる。
「ありがとう。ようやく……自分の過去と未来に、立ち向かえる気がする。俺が見ている怪物のところへ行きたいのだろう? 案内しよう」
 凪はガルガンドに続いて部屋を後にする。全員が出た後、鍵はきっちりと掛けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『スナーク症候群(シンドローム)』

POW   :    ブーステッド・キリング
【バールのようなもの】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    クルーエル・スパインズ
【有刺鉄線】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【自己を形成する要素】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    スナーク・リアライズ
攻撃が命中した対象に【「スナークが実在するのでは?」という疑念】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【姿の見えない「怪物スナーク」】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
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●幻影の病魔
 ガルガンドの因縁の場所までは少々長い道のりだった。車で乗りつけられるのは街中の駐車場まで。そこから徒歩で移動して立ち入り禁止の柵を乗り越え、廃墟に進む必要があった。
「あれ……だろう。俺が見ていたものと……同じ、だな」
 スナーク症候群(シンドローム)。それが、顔の無い、おとぎ話の少女のような存在の名だった。
 ガルガンドは少し気分が優れなさそうだった。自分を悩ませてきた病の実体。幻影が脳裏に蘇る感覚も覚えたが、猟兵という味方の存在でどうにか平静を保っていた。
 声も発さぬ病魔の少女。手にする得物は姿には似つかわしくない程に凶悪だった。
ダスク・ドーン(サポート)

煮るなり焼くなり。
人数穴埋めから不採用まで幅広くお使いください。
キャラの扱いはアドリブでも何でもお好きにお願いします。
口調は適当なので細かいとこは気にしない。

ただし、
他の猟兵に迷惑をかける行為や公序良俗に反する行動はしません。


『また日が沈むな』
人間のフォースナイト × スカイダンサー
年齢 27歳 男
特徴 面倒見がいい くーる 女性が好き とんでもない甘党
口調 やわらか(自分、相手の名前+ちゃん、ぜ、だぜ、じゃん、じゃねぇの? )


戦闘ならいずれかのフォースブレイドを使用。
シンプルな正面勝負を好む。

冒険や日常は……、
うむ、メンドウだな。
(テンション低くても仕事はきちんとやります)


エダ・サルファー(サポート)
アックス&ウィザーズ出身の聖職者で冒険者です。
義侠心が強く直情的な傾向があります。
一方で、冒険者としての経験から割り切るのも切り替えるのも早いです。
自分の思想や信条、信仰を押し付けることはしません。
他人のそれも基本的に否定はしません。
聖職者っぽいことはたまにします。
難しいことを考えるのが苦手で、大抵のことは力と祈りで解決できると言って憚りません。
とはいえ、必要とあらば多少は頭を使う努力をします。
戦闘スタイルは格闘で、ユーベルコードは状況とノリで指定のものをどれでも使います。
ただ、ここぞでは必殺聖拳突きを使うことが多いです。

以上を基本の傾向として、状況に応じて適当に動かしていただければ幸いです。



●全力出せば全壊ってことで
「あれがお前さんの体を苛むモンか。雰囲気だけなら可愛いモンだぜ……あんな血みどろの武器を持ってなきゃなぁ」
 ダスク・ドーン(人間のフォースナイト・f13904)は長髪をかき上げながら病魔の少女に難癖をつける。
 そうなのだ。病魔の少女が持つのは先端に刃物を取り付けて有刺鉄線でぐるぐる巻きにした鉄パイプのような武器だった。俗にバールのようなものと表現されるが、バールのようなものは往々にしてバールであるのに対し、病魔の少女のそれは明らかにバールではない。
 文字通り、バールのようなものなのであった。
「頭に輪があるね……あれは天使かい?」
「いや、どう見ても天使じゃないじゃん? あれは」
 エダ・サルファー(格闘聖職者・f05398)は聖職者として、この点だけは確かめておきたかった。ダスクに否定されるが、「やっぱりそうだよね……」とエダ自身もその意見に納得していた。
「……んじゃあ、バシッと倒してくるから。ガルガンドはどこか安全なところに隠れててよ」
「あぁ……迷惑をかける。宜しく頼むよ」
 ガルガンドが離れていくのをエダは横目に確認すると、今度は病魔の少女へ突き刺すような視線を向けた。
「さぁて、どうやってボコってやろうかぁ!!」
「お、おぅ……」
 態度を豹変させて病魔の少女へ重戦車のように突っ込んでいくエダ。その迫力に気圧されて、ダスクは若干出足を挫かれていた。デイブレイド片手にエダを追う。
 病魔の少女は得物を振り上げる。エダとダスクが仕掛ける攻撃に合わせてカウンターを狙うつもりなのか、足は動かさず待ち構えていた。
『見よ! 鍛練と祈りが生み出す力を!』
 出し惜しみはしない。エダは初撃から奥義解放。巨人式――真の姿を現した時と同質の力場を身に纏い、ジェットエンジンの如き加速力を得て宙を駆けた。
 病魔の少女に表情はない――が、エダの動きには驚嘆したに違いない。その証拠に、エダが飛び立つ背後でダスクが「おいおいやべぇな……」と漏らしていた。
 エダは病魔の少女の背後を取るように空中旋回。飛翔の軌跡を追うように病魔の少女が振り返ったころには、エダは祈りと共に右拳を振り上げていた。
 力場が覆った拳は見た目以上に巨大化し、破壊力を持った。病魔の少女が振り回した得物ごと殴りつけてピンボールのように弾き飛ばす。くの字に折れた体は地を失って真っ直ぐダスク目掛けて飛んでいく。
「っとぉ丁度いいぜ、色は選ばせてやる。いい夢見ろよ!」
 エダが惜しまないのならダスクも惜しむはずはない。デイブレイドだけと言わず、全てのフォースセイバーをがっちり纏めると、病魔の少女の動きを真似るように最上段に振り上げ、反った体を戻す勢いを乗せて全力で病魔の少女の背中に叩きつけた。
 インパクトは一瞬。これまた軽々と病魔の少女は宙へ吹っ飛ばされ、全てのフォースセイバーは周辺地形までも破壊する。隕石が落ちたかのように円形の亀裂が地面に広がっていた。
 凡そ内野の頭を超えるくらいには放物線を描いた病魔の少女は、風化して脆くなった廃ビルの壁に激突し、大穴を開けて瓦礫に呑み込まれていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

グンヒルド・メリーン(サポート)
 クリスタリアンの闇医者 × 悪魔召喚士、20歳の女です。
普段の口調は大人(私、~君、~嬢、だ、だね、だろう、だよね?)
時々 女性的(私、~君、~嬢、ね、よ、なの、なの?)です。



人命が最優先。カナズチ。 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


メイスン・ドットハック(サポート)
『めんどーじゃけど引き籠る為に』

アメジストのクリスタリアンで、熟練の電脳魔術師
攻撃手段は電脳魔術・もしくは電脳魔術や現代技術を使ったトラップ
電脳魔術はミサイルや機銃、大型兵器も精製可能
トラップは地雷、機雷、ワイヤートラップなど様々
またハッキング技術も長けており、機械コンピュータはもちろん、電脳魔術を応用することにより、空間に直接ハッキングを仕掛け、情報を収集することもできる
正々堂々よりかは、搦手で弱点を的確に攻撃するタイプ
心理誘導をしたり、囮を使ってなどもする
仲間との連携は歓迎

喋り口調は広島弁
「じゃけん→じゃけー」「じゃけえのう→じゃけーのー」と語尾を伸ばすのが特徴的



●病と闘う者達
 瓦礫に埋もれてなお、病魔の少女は動き続ける。隙間を見つけて這い出して、かくかくと痙攣する体で得物を瓦礫から引きずり出す。
 ネジを巻きすぎて切れた人形のようだった。
「病気の元凶……というか、病気そのものなのかな? 君は」
 暗い廃ビルの中で得物を引きずる病魔の少女へ、グンヒルド・メリーン(たけのこ医者・f12254)は好奇の視線を向ける。闇医者――闇と冠するとは言え、医学に通じる者としては興味深いサンプルだ。
「あんた、あれがそがいに面白いんかー?」
「面白いも何も、最高の実験体じゃないか。病気への特効薬を作る絶好の機会……あぁでも、スナーク症候群とやらは結局、あれを倒してしまえば治ってしまうのだったかな?」
「そうじゃよー。でもまあ、病気の痛みや苦しみを和らげる薬くらいはあってもええかもしれんねー」
 それはすぐ先の未来か、遥か先の未来か。メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)はまだ見えぬ光に思いを馳せる。
 しかし今は今として、この病魔の少女に立ち向かわなければならない。
 病魔の少女は頭の上に乗せた有刺鉄線の輪を解体し、伸ばしてグンヒルドとメイスン、二人に放ってきた。鞭のようにしなった有刺鉄線は瓦礫を粉砕し、地を割る勢いで波打ち飛んでくる。
「……!? 危ないのー!!」
 粉砕された瓦礫が有刺鉄線と共に飛んでくるのを両手で庇いながらメイスンは左に跳んでいた。すぐ目の前をビシィンと叩きつけていくが。
「……ぅぐっ」
 グンヒルドは有刺鉄線の直撃を受けていた。右肩に棘が食い込むのを引き抜こうとしているのか、左手で有刺鉄線に掴みかかる。
「あんた!?」
「気にするな! 私は私の戦いをしている……君は、君の戦いをするんだ!」
 グンヒルドの瞳は真剣だった。メイスンは口を引き結んで動揺を堪えると、着地地点でトラップの作成を始めた。
 付近にはコンクリート片がいくらでも転がっている。多少増えたってバレやしない。コンクリート片に偽装した起動型仕込みトラップは極めて精巧に作り上げられていく。
「さて……私はこれでも人命というものを大切にするほうでね」
 グンヒルドは有刺鉄線を胸の前まで引き下ろすと、そこから綱引きの要領でぐい、ぐいと有刺鉄線を引っ張っていく。病魔の少女の有刺鉄線の輪は浮いているようで体と繋がっているのか、抵抗するもよたよたと外に引きずり出されようとしていた。
 引きずられっぱなしでは――いや、むしろ好機と病魔の少女は得物を取る。そして自ら走り、グンヒルドへ得物を振り下ろした。
 グンヒルドは首を傾けて頭部への直撃は避けたが、左肩に殴打を受けて顔を苦悶に歪める。病魔の少女の攻撃を受け続けるグンヒルドだが、この行動には意味があった。
 右手を伸ばし、病魔の少女の細首に掴みかかる。凡そ女性の膂力とは思えぬ怪力が発揮され、病魔の少女は首を吊られて地面から浮き上がっていた。
「君を倒して病が治ると言うのなら……百万回でも倒してやろうじゃないか!」
 この病魔の少女を倒せば、少なくともガルガンドは救われる。そして同様の事件がまた発生するならば――何度だって戦場に立つ、とグンヒルドは決意して。
 患者を想う心が、グンヒルドに力を与えているのだ。グンヒルドはその場で一回転して遠心力をかけ、メイスンが仕込みトラップを作成した地点まで思い切りぶん投げた。
 伸びた有刺鉄線が吹き流しのように靡く。首をぐでんと折り曲げたままトラップへ一直線。接触すれば爆発する機雷が仕込まれた偽コンクリート片の山に放り込まれ、閃光と爆炎が炸裂して大地が揺れ風が轟いた。
 やかましい熱風だった。本物のコンクリート片も結構な数巻き込んで、砕けた破片がぱらぱらとメイスンの周りに転がってくる。
「引っかかったほうが間抜けという奴じゃけど、こればかりは仕方ないのー」
 メイスンは憐れみながら爆発跡地を見つめる。煙の中には黒焼きイモリのような病魔の少女が倒れていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

叢雲・凪
「どうも スナーク症候群=サン ジンライ・フォックスです」(【礼儀作法】を用いた奥ゆかしいアイサツ!)

「なるほど… ガルガンド=サンと何らかの縁があるか…」

(しかし 彼女の攻撃は全て【当たれば】発動するもの。ボクに【当てれる】かな?)

間髪入れず【夜天九尾】+ダッシュ+リミッター解除を用いた『光を超えた速度』の踏み込みで顔面にカラテキック(属性攻撃)!

「イヤッー!!」

そのまま畳みかけるが相手が弱った所を見て手を止めよう

「ガルガンド=サン ボクができるのはここまでだ。あなたは『自分の力』で克服しないといけない。」(少し間を開けて 腕組み待機)

トドメをさしたら

【仮面を外して】無言で笑顔を向ける



●明日を生きる為に
 消滅しない限りは動き続ける。まるで本能が暴走しているようだ。黒焦げの病魔の少女はぴくりと指先を動かすと肘からかくっと手先を立て、そのまま空を掴もうと前に伸ばしていく。それからぱたっと手を落としたかと思うと、腹からぐぅっと身を起こしていた。
「どうも、スナーク症候群=サン。ジンライ・フォックスです」
 凪の礼節は相手を選ばない。たとえ敵であっても、礼を失することはあってはならないのだ。
 体をしっかり曲げてのお辞儀だった。病魔の少女の顔は空洞で、何を思ったかはわからないが。
 頭の有刺鉄線は触手の如くうねうね動き出し、凪の元へ飛び出してくる。
 凪の礼儀は果たされた。後は「役目」を果たすのみ。
「黒神の化身!! 夜天九尾!!」
 黒雷外装【鳴雷】を解き、黒雷の九尾へと変化した凪は限界という枷を外し、一息で空間を跳躍する動きを編み出した。
 それは光を超えたからこそ為し得る超光速。有刺鉄線は空しく地面を叩き割るのみ。
 病魔の少女が持つ攻撃はどれも強力、凶悪だが、それは全て「当たればこそ」。今や光すら追いつかない凪には一瞬掠めることすら叶わず。
「イヤッー!!」
 我が光なり。光の踏み込み、輝くカラテキックが病魔の少女の虚ろな頭部に突き刺さった。頭に引きずられて体が宙に浮きあがり、数回不連続な回転をした後、頭から落下しぐるんぐるんと転げていく。
 積み重ねられたダメージは大きく、病魔の少女はもはや虫の息。しかし実体をまだ保っているところを見ると、もう一押し必要のようであった。
 凪はそこで手を止める。
「ガルガンド=サン。ボクができるのはここまでだ。あなたは『自分の力』で克服しないといけない」
 近くで身を隠しつつ戦いの成り行きを見守っていたガルガンドへ声を掛け、凪は病魔の少女から距離を取る。そして腕を組み、これ以上の手出しはしない意思を示した。
「……わかった」
 明日を生きるための、今日の一撃だ。ガルガンドは右の拳を握り締めると、左手の指をパチンと鳴らす。
 凪ほどではないが、強化人間ならではの高速移動で迫ったガルガンドは、倒れる病魔の少女の胸元へ拳を打ち下ろした。だが確かな感触はなく、手はずぼっと病魔の少女の体を貫通した。
 もう本当に、体を形作るのがやっとの状態だったようだ。胸に開いた空洞が侵食し、病魔の少女の体はさらさらと砂状になって消滅する。
 その様子を見守るガルガンドは、憑き物の落ちたような清々しい表情を見せる。
(……よく、頑張ったよ)
 ガルガンドが病に耐えてきた日々を思えば――しかし、凪は口には出さない。礼を重んじればこそ、年上には敬意を持って接するべきなのだ。
 その代わり、凪はガルガンドの前で初めて仮面を外す。揺らめく炎のような緋色の瞳は年相応の笑みを湛えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月21日


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#ヒーローズアース
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#猟書家の侵攻
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#猟書家
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#スナーク症候群
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#強化人間


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ネミ・ミミーニーズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト