●
サクラミラージュは帝都桜學府。それはこの世界のオブリビオン、影朧を救済するための機関である。そしてその分所は世界各地の要所に置かれていた、それだけ先の大戦の傷跡が強く残り、それが元となり影朧が発生しやすいと言う事でもある。
「救済、か」
しかしそれを良く思わない者達もいた。彼らの名前は幻朧戦線。詳しい目的は明示されてはいないがこのサクラミラージュの大正の世を終わらせると嘯く組織だ。
「死者を救う理念、それは結構。……しかし、だ」
彼らの扱う兵器の中には先の戦争で使われた非人道兵器があった。その中の一つ、一度乗れば死ぬまで降りることのできない影朧甲冑の操縦席に座った青年将校は自嘲気味に笑う。
「果たしてそれは生者を、救われぬ者達を優先してやるべき事でもあるまい。女子供のような姿をした、小説に出くるような境遇の者達ばかりの影朧にばかり心を砕いている」
影朧甲冑の周りにはグラッジ弾の準備をした歩兵達も並んでいる。
「その影で生きながらに苦しむものから目を背けるこの大正の世なぞ不要だ。同じように救われるのなら死者も生者も平等でなければ道理とは言えん。我々はそのさきがけとなるために死ぬのだ。……前進せよ! 我々の命を使い、不正義なる大正を討つ一矢とならん!」
●
「人には居るべき場所がある。しかしそれを得られなかったら、命をかけてでもそれを作らなければならない。……ってね」
アラン・スミシー(パッセンジャー・f23395)は皮肉気に呟いた。
「幻朧戦線の全てがそうかは分からないが、少なくとも君達に対処してもらいたいのはそういう手合だ。彼らは自分達が影朧よりも人間扱いされていないと感じ、そして帝都桜學府の分所を攻め滅ぼそうとしている」
そして所属している学徒兵には対応できないという。
「何せ彼等には『邪心』が無い。なんなら革命者として自分達を認識している。所属するユーベルコヲド使いでは無理だろうね」
グラッジ弾を携える者も影朧甲冑乗りも等しく。恐らく彼等の心性はさほど普通の人間と変わらない。ただ黒い金輪を付けているだけだ。
「そう、倒すべきは普通の人間だ。彼等がどんな不遇な目にあったかは分からない。しかしそれでも倒さねばならない。恐らく生き残ったとしても極刑だろう。……引き金を引く覚悟はあるかい?」
救われない者達を救われないままに殺す仕事だ。アランは帽子の奥から猟兵達を見据えている。
「行くなら気をつけるといい。彼等はきっと『超弩級ユーベルコード使い』の猟兵こそを、力があっても自らを救わない最も強く憎むだろうから。……既に結末までの脚本は書き上がってるのさ」
西灰三
いつもお世話になっています。
西灰三です。
今回はサクラミラージュの幻朧戦線のシナリオをお送りします。
第一章では影朧甲冑に先じて分所に飛び込んだ歩兵達がグラッジ弾で襲撃してきます。これを現地の学徒兵と協力して無力化して下さい。
グラッジ弾は当たると通常のダメージに加えて周りから影朧を呼び寄せる武器です。
第二章、第三章では影朧甲冑との戦闘になります。第二章ではまず強力な影朧の姿をしており、第三章で本体との戦闘になります。どちらにせよ捨て身での戦闘になるので油断していると危険です。
救いようの無い話です。説得も意味がありません。それでもよろしければどうぞ。
それでは皆様のプレイングをお待ちしています。
第1章 冒険
『幻朧戦線の襲撃』
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POW : 襲い来る幻朧戦線の一般兵を肉壁となって阻止し、重要施設や一般人の安全を守ります
SPD : 混乱する戦場を駆けまわり、幻朧戦線の一般兵を各個撃破して無力化していきます
WIZ : 敵の襲撃計画を看破し、適切な避難計画をたてて一般人を誘導し安全を確保します
👑11
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秋津洲・瑞穂
下らない。
まぁ、影朧討伐を専らとする学徒兵は医師のようなもの。
おつむを患った者を殺すには不向きでしょう。
戦は戦びとに任せて、あなた方が為すべき事をして下さいな。
さて、そこな痴れ者ども。
誰を救おうが救う者の勝手。
お前たちを救う者がいないのはお前たちの不徳よ。
救われたければ自ら処しなさい。誰も止めはしない。
……が、もう遅い。
民草に刃を向けた以上は、賊徒として死んでいただくわ。
敵手の事情など、わたしの知ったことではない。
その行いによって敵となったお前たちの選んだこと。
死にたくなければ戦って勝ちなさい。
神獣刀を正眼に構え、長い吐息を一つ。
「新当流太刀術、秋津洲瑞穂。参ります」
●
(「下らない」)
学徒兵を背に庇い、幻朧戦線の兵達を前にした秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)は目の前の相手に対してそう内心で呟いた。
「あなた方は影朧討伐を専らとする学徒兵は医師のようなもの。おつむを患った者を殺すには不向きでしょう。戦は戦びとに任せて、あなた方が為すべき事をして下さいな」
「……分かりました、ご武運を」
彼等を退避させた瑞穂は改めて幻朧戦線の兵に声をかける。
「さて、そこな痴れ者共。誰を救おうが救う者の勝手。お前たちを救う者がいないのはお前たちの不徳よ」
「そういうのならば影朧に徳があるのか? お前のような超弩級ユーベルコヲド使いならばあれらがどんな存在かは知っているだろう」
影朧はオブリビオンである、つまりは世界を終わりに導く存在であると相手は指摘する。
「明らかな世界の敵と、今ここに立つ前の我ら。一体本当に不徳なのはどちらだ、単に強者が救いたいと思ったものに勝手に徳を見出しているだけではないのか」
その言葉に瑞穂は答えない。代わりに剣の柄をなお強く握る。
「……民草に刃を向けた以上は、賊徒として死んでいただくわ。事情など、わたしの知ったことではない」
「そうだろうユーベルコヲド使い。所詮貴様等などそういう手合に過ぎん。大きな力を持つだけの我々と変わらぬ手前勝手な存在だ」
「この事件もその行いによって敵となったお前たちの選んだこと。死にたくなければ戦って勝ちなさい」
「まだ理解していないと見える。我々は生きるために来たのではない、死ぬために来たのだ」
彼等の持つ銃が互いに向けられている、その弾丸はグラッジ弾であり影朧を呼び出す力を持っている。……呼び出すだけなら敵でなくともいい。
「新当流太刀術、秋津洲瑞穂。参ります」
爆ぜる銃声、閃く剣閃。学府分所に血の花が咲く。
大成功
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ニコ・ベルクシュタイン
「影朧救済機関」を名乗りながら、同じ生者を蔑ろにしていると
……そうだな、一度そう「思い込んで」しまったならば
お前達にとっては其れが真実なのだろう
駄々をこねる幼子か? 構ってやらねば気が済まぬとはな
分所の學徒兵には塹壕かそれに近いものを作るよう言い
そこから身を潜めつつ援護射撃をして欲しいとだけ頼む
手を下すのは、超弩級戦力たる俺達の仕事にて
グラッジ弾を撃たせる間を極力与えぬための援護射撃
其れに乗じて【花冠の幻】発動と同時に大鎌を振るう
虹色の花弁は決して手加減や慈悲の証などではない、
其のまま風の属性攻撃で起こした竜巻に花弁を乗せた範囲攻撃で
一網打尽にしてやろうと思う
終始淡々と、ただ任務に忠実であろう
●
「学徒兵達は下がれ! 此処は俺がなんとかする!」
ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)が指示を出すと彼等は建物の影に隠れて援護射撃の姿勢を取る、それを見届けるとニコは迫ってくる幻朧戦線と相対す。
「超弩級ユーベルコヲド使いか」
吐き捨てるように分隊長と思わしき男がニコを見る。しかしニコはとりも直さずに返す。
「お前達は彼等が『影朧救済機関』を名乗りながら、同じ生者を蔑ろにしていると……そうだな?」
「その通りだ」
「一度そう『思い込んで』しまったならば、お前達にとっては其れが真実なのだろう」
挑発めいたニコの言葉に幻朧戦線の一般兵達はざわめくが、それを部隊長が制す。
「そうだ。我々にはそうやって憎むべき存在がいなければ今日此処まで生き残ることはできなかった」
「……駄々をこねる幼子か? 構ってやらねば気が済まぬとはな」
「無力な赤子にそれ以外の何ができたと? ……それと」
分隊長はニコに対して皮肉げな言葉を吐く。
「お前はこれから我々に行うような事を、幼子に施して喚きを止めるような輩なのだな」
「……っ!」
あからさまな挑発である、ニコの顔から表情が消えて機械的なそれとなる。
「おっと図星かな。仕方ないだろう、お前が我々に『思い込ませる』言葉を吐いたのだからな。お互い言葉に気をつけるとしよう、もっとも短い付き合いになるだろうがな」
分隊長が腕を上げると彼の背後に居る兵達が一斉に長銃を構える。無論、ニコもまたそれを撃たせるつもりはなく星花の付いた杖を虹色の花弁へと変えて辺り一面に撒き散らせる。それはその美しさとは裏腹に人の肉体を裂き、臓腑を飛び散らせ、それもまた赤い液体へと変えていく。対して花弁の方は無垢な七色のままだ。
「覚えておくがいい。貴様が己を常に正しい側に置き続ける限り、誰も救えず誰にも救われない。……我らと同じように」
その言葉も舞い散る花弁の中に散り消える。ニコの本体の時計は正しく機械仕掛けのように振り子が時間を刻んでいるだけだった。
大成功
🔵🔵🔵
卜一・アンリ
こういう世俗への不満を振り回す人ほど死んだらそのまま影朧として化けて出るのだろうし
他所の世界は生きながら苦しんで、死んでも救われない世界ばかりなのだけれど。
……井の中の蛙は大海を知る気もない、か。
UC【黄金の雨のアリス】の拳銃【クイックドロウ】【乱れ撃ち】で銃撃戦よ。
グラッジ弾に対しては【カウンター】射撃での【武器落とし】や、
【地形の利用】として壁や柱を盾にして凌ぐわ。
現地の学徒兵はバリケード作りを手伝ってちょうだい。
別に死んでしまっても仕方ないと思うけれど、なるべく急所を外して無力化に留めましょう。
政府のお裁きを受けさせてあげるわ。
影朧はして貰えない生きた人間の特権よ、嬉しいでしょう?
●
「あなたのような世俗への不満を振り回す人ほど死んだらそのまま影朧として化けて出るのだろうし、他所の世界は生きながら苦しんで、死んでも救われない世界ばかりなのだけれど」
卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)は自らを睨む敵兵の怒りが強まった事に気づけ無い。
「……井の中の蛙は大海を知る気もない、か」
彼女の放った弾丸が、敵兵の太腿を貫きその体が蹲る。その体は痛みに震えているのかと思えば、トーは予想外のものを見ることになる。
「ふふ……はははっ!」
「……何がおかしいの」
怪訝な表情を浮かべて問うトーにその男は嘲るように、あるいは叫ぶように声を上げる。
「これが笑わずに居られるか! お前こそはこの世界に相応しい打倒されるべき悪の象徴だからだ!」
「何を……」
「お前はさっき言ったな! 『他所の世界は生きながら苦しんで、死んでも救われない世界ばかりなのだ』と! それをお前は飢える乳飲み子の前で言えるのか! 力なく搾取され奪われるばかりの貧者の前で言えるのか!」
それは最早慟哭と言っていいものだ。そして恐らく彼等はそこかしこでそう言われて救われずに結果として此処に居る存在だ。
「お前は恵まれている。ユーベルコヲド使いにして、本当に飢えた経験も無いのだろう。そのお前が『お前はマシだ』だと! ふざけるな! お前こそが強者の傲慢さを体現している存在だ!」
そして男は自分の頭に銃を突きつける、それが何を意味するかをトーが悟った時には既に遅い。
「貴様らなんぞに俺の命を弄ばせはせん!」
乾いた音ともに血と脳漿が飛び散りそのいくらかは彼女にも降りかかる。そしてグラッジ弾に呼び寄せられた影朧たちが現れてトーを取り囲む
(「……別に死んでしまっても仕方ないとは思っていたけれど……」)
トーはそんな事を考えながら引き金を引き影朧達を撃ち抜くのであった。
大成功
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名張・辿
こんなはずじゃなかった、ってのは志で以て行動してりゃよくついて回る問題さ、体制側、そちら、俺、皆例外じゃないんだろうね
どんな正義にも好悪は脇にして、敬意は持つよ、せめて殺さない内に死んでくれ
「動物使い」としてアンカーラット(鼠)をこっそり四方に走らせて、【鼠回廊】で転移しながら敵兵を始末して回るよ
鼠達には敵兵の死角に付けば特定の動きをするように「動物と話す」しておき、それを目印に転移
「毒使い」として毒物を仕込んだ手裏剣「投擲」や短剣で攻撃し
すぐに転移と同時に出現した鼠のいずれかの下にまた短距離転移
転移先は「瞬間思考力」で判断、「残像」を伴う「早業」でこれを繰り返し、反撃を受けないようにしようか
●
戦場は、学府の分所は喧騒に包まれていた。怒号と銃声、舞い散る壁の破片、慌ただしく満ちる足音。……そしてその大きな動きの中、ある鼠の使者が静かに動いていた。
(「――こんなはずじゃなかった、ってのは志で以て行動してりゃよくついて回る問題さ」)
その名前は名張・辿(鼠遣われ・f04894)、この状況は余りにもよくある話である、と。
(「体制側、そちら、俺、皆例外じゃないんだろうね」)
鼠に使われる事になった彼もまた例外ではない、彼の場合は志というかも怪しい。一言の愚痴が彼の生き方を、あるいは有り様を変えてしまった。それ比べれば彼等の掲げる正義は最初から命懸けだ、好悪を抜きにして敬意の対象にはなる。
「始めるか」
彼は鼠の使者であり、同時に鼠が使者でもある。故に鼠が自分に集い、その逆もできる。――鼠回廊と名付けたその能力は道を経ずに鼠の元へと至る能力だ。そして移動した彼が見たのは学徒兵に銃を向けている幻朧戦線の兵だった。すぐに辿の腕は動き、毒が塗られた短剣を背後から突き立てる。
「悪い、驚かせちまったねえ」
銃を向けられていた学徒兵にそれだけ言い残すと、彼は別の鼠の元を辿り同じ事を繰り返す。
(「こんな敬意の払い方しかできないからねえ」)
殺していった相手の正義にできるのはそれくらいだろうと、正義に殉じる相手に死を与えるだけ。繰り返し鼠は死を辿る。
大成功
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政木・朱鞠
虐げられた怒りはわかるよ…でも、無辜の人達を襲ってドヤ顔されても困るんだよね。
英雄気取りの浅はかな行動が同じ境遇の人達を誤解させて、憎しみの矢面に立たされる切っ掛けを生むだけじゃん。
残酷かもしれないけど、貴方達の歪んだ志に対して法の裁きを受けて貰うため捕縛させて貰うよ。
戦闘【WIZ】
幻朧戦線が命を賭すなら、こちらも命削る覚悟で人々の盾にならないとね…『忍法・鋳薔薇姫』でほんの数秒だけど影朧甲冑の動きを封じて隙を作りたいね。
得物は『風狸ノ脛当』をチョイスして、【スライディング】技能を使いバランスを崩して、四肢を思いっきり【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】のキックでダメージを与えたいね。
アドリブ連帯歓迎
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「虐げられた怒りはわかるよ……、無辜の人達を襲ってドヤ顔されても困るんだよね」
「無辜? ハッ、我々の――救われない者達の存在を無視している者達に罪が無いとでも?」
政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は自分に放たれたグラッジ弾を回避しながら言葉を交わす。
「英雄気取りの浅はかな行動が同じ境遇の人達を誤解させて、憎しみの矢面に立たされる切っ掛けを生むだけじゃん」
「ならばそれでも構わない。たとえ憎まれ疎まれ恐れられても、苦しみが無いものとされる事よりは遥かにマシだ」
「それはずっと世界の敵になる宿命を押し付けることだよ」
朱鞠は積極的に近づいて命中精度を上げてこようとする相手になおも言葉をかける。明らかに格上の相手に命を賭けて攻めてくる相手は忍者でもなければ武士でもない。
「それが役割というのならそれでいい。なにもないよりかは」
「分かった。残酷かもしれないけど、貴方達の歪んだ志に対して法の裁きを受けて貰うため捕縛させて貰うよ」
相手が命を賭けての存在証明をするのなら、自分も応えなければならない。……他にもいくらでも無力化できる手段はあるけれども。
「忍法・鋳薔薇姫」
彼女の影から伸びた鎖が幻朧戦線の構成員達の腕を捉えていく。
「離せ! 我々は大正の法になど殺されるわけにはいかない!」
「そこの学徒兵のみんな! 今の内! ……ちょっとの間だけ、大人しくしていてくれるかな」
捕縛されていく彼等を見ながら、遠巻きに見える巨影に目をやる朱鞠。戦いは始まったばかりなのに既になんと言えぬ体の重さを感じるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『影竜』
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POW : 伏竜黒槍撃
【影竜の視線】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対象の足元の影から伸びる黒い槍】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 影竜分身
【もう1体の新たな影竜】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 影界侵食
自身からレベルm半径内の無機物を【生命を侵食する影】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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猟兵達が歩兵を相手している間にも影朧甲冑は分所へと近づいていてきていた。それは今まで存在を気づかせぬよう、存在を小さなものにしていた。……今はその姿を大きく広げている。
影朧甲冑が纏っていたのは影の竜だ。自らび満たされなかった想いを集め、それを身と力とし、大きくなりながら分所へと距離を詰めてくる。それほどの大きさが必要ということとは建物自体を破壊しようという事なのだろう。
「………!」
影の竜が嘶く。まるで此の世の全てを自身と同じものに塗り替えんが如く、殺されたものの無念さえ吸い込んで。救われざるものの死を以て破壊を齎すために。
比良坂・彷
※アドリブ負傷描写歓迎、煙草描写希望
ずっと喋ってられそうな相手だったのにざーんねん、来るの遅れちゃったわ
みんな殺して平等ってコト?それはいただけないなぁ
死に花散らすのに特別の意味を見いだしてる人もいるのに
とかご託を並べつつ的になり學徒兵を逃がす
敵の攻撃は運悪く当たらない、だって【賭け狂い】俺が運気を吸ってるから
「…ああうん、俺は學徒崩れの博徒だから此方側、心配ありがとね」
逃がしたとたんに攻撃喰らう
あくまで『運』だから確実性がないよね
結果が不安定だからこそ賭け事は愉しいんだけど!
潰れた瓦礫を踏み台に駆け上がり羽ばたいて
龍の眉間に向けて麻雀牌を射出
「ばぁん」
俺の運がよけりゃあ痛い目見せられるでしょ
●
「ずっと喋ってられそうな相手だったのにざーんねん、来るの遅れちゃったわ」
ゆらりと分所に現れたのは比良坂・彷(冥酊・f32708)。話し相手になってくれそうな幻朧戦線の面子は少数を残し殲滅され、残る者達も捕縛済みだ。残るは影龍の中にいる影朧甲冑の操縦者のみ、そちらならば話が通じるのかも知れないが嘶く影朧の体が言葉を遮っていそうだ。発音器官も見当たらない。その巨体が敷地内の建物に攻撃を仕掛け、しかも自らの身を分けて効率的に破壊しようとしている。
「みんな殺して平等ってコト? それはいただけないなぁ」
影龍に集まった無念の中には或いはそういうものが混じっているのかも知れない、ともかくもまずはあれを止めねばなるまい、一応學徒崩れの端くれでもあるし。
「とりあえず此処は俺達に任せて逃げて。……ああうん、俺は學徒崩れの博徒だから此方側、心配ありがとね」
影龍と逃げ遅れた學徒兵との間に立って彼は時間を稼ぐ事にする、あわよくば少しばかり命を減らしてくれるかも知れないという期待もある。
「さあてお相手しますか」
影龍の体から伸びた質量を持つ影が彼の頭を『運悪く』掠める。
「そりゃ当たらない……うおっと!」
彼が得意げに呟いた瞬間、衝撃で建物の瓦礫が『運悪く』彼の頭上へと落ちてくる。それは彼が想定していたのよりもずっと早いチョンボで。
「あー、元々運が無いクチ? こりゃ面白いねえ」
賭け狂いの場から運を食らう能力は裏を返せば無いものは食えないと言う話でもある。ここの幻朧戦線の面子やその無念を吸い込んだ影龍は、それこそ『運が無い』からこそ此処に至ってしまっている存在だった。
「そりゃ負け続けて降りられない博打とか楽しいとは言えないねえ……っと!」
結果が不安定な博打だからこそ愉しいのであって決まっているそれに見舞われた相手には御愁傷様としか言えないが、それはそれとして。
「ばぁん」
龍の眉間に麻雀牌を叩きつける彷。それが上手くいったのは彼の運がいいのではなく、敵の運が悪いが故だろう。
大成功
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秋津洲・瑞穂
わたしは今まで、この世界の仕事を請けたことがない。
今後も請けるつもりはない。
わたしは影朧を救わない。
先の痴れ者共と何も変わらない、ただの敵であるに過ぎない。
護るべき者を背後に置きながら敵の将来に斟酌するような
絶対の力など、わたしにはない。
こたびは、人間の賊徒が相手だというから防ぎに来たわ。
やりかけの始末だけはしていく。
[鎧無視攻撃/串刺し/2回攻撃]を乗せた狐火たちの半数をもって
破れ障子の有り様にしてくれよう。
残りの半数には自分の周囲を囲ませて炎の城を構築し、
身を護りつつ影を迎え撃つ。生命ではない狐火は浸食もされない。
[継戦能力]が保つ間は何度でも。
保っても保たなくても、後始末は任せるわね。
●
破壊された瓦礫が命を喰らう影となり、未だ戦場から退避しきれない學徒兵に襲いかかる。
「そこ」
しかし秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)の放つ狐火が影を焼き、元の瓦礫へと姿を戻す。
「あなた達は逃げて。……こたびは人間の賊徒が相手だというから防ぎに来たわ。やりかけの始末だけはしていく」
存外に冷たい響きを持つ言葉で逃走を促す瑞穂の内面では何かが燻っていた。
(「わたしは今まで、この世界の仕事を請けたことがない。今後も請けるつもりはない」)
そういう意味で言えば最早この地を踏むことも無いだろう。先程の幻朧戦線の言が突き刺さったつもりもないが。
(「わたしは影朧を救わない。先の痴れ者共と何も変わらない、ただの敵であるに過ぎない」)
それが彼女の結論だ。たとえこの世界の者達が、それに賛同する猟兵が影朧を救おうと考えていても、それによって彼女の姿勢が変わることはない。
(「護るべき者を背後に置きながら敵の将来に斟酌するような絶対の力など、わたしにはない」)
さっきの學徒兵もそうだ、躊躇いがあったのなら助けられてはいない。そしてこれからこの世界の仕事を受けないとしても、仕事を途中で投げ出すほど無責任ではない。彼女は自分の周りに炎の城を築く。
「破れ障子の有り様にしてくれるわ」
辺りに広がる影に対して狐火の砲火を放ち炎を焼いていく。命ではないそれに影達は力を無くしていく。無論彼女も全く疲れないというわけではない、炎の中心に居るということは四方から炙られるという事でもある、しかし瑞穂は両の足で立ち続け炎を操り続ける。
(「後始末は任せるわね」)
影龍の巨影を見上げて彼女は他の猟兵にその役割を期待する。
大成功
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卜一・アンリ
本当に飢えた経験がない…ね。
ま、私の身の上話なんて語る意味もないか。
【指定UC】、牡丹の【重量攻撃】【踏みつけ】で敵UCの分身を【捕縛】。
私は本体相手に【逃げ足】での回避と拳銃の【クイックドロウ】で応戦よ。
で?何故この分所だったの?
此処を潰せば虐げられている人の何かが変わるとでも?
此処なら確実だった?
嘘。
分所なんて潰しても學徒兵が死ぬだけ。
猟兵を敵視する以上その脅威も無視できない。
ただ弱者としての憎しみをぶつけたい?
大嘘。
貴方達に『邪心(うらみ)』が無い以上それは成立しない。
なら…残るは只の自己陶酔ね?
私が悪。それを肯定しそのまま返すわ。
貴方達は己の存在証明に乳飲み子と貧者を利用する下衆よ。
●
(「本当に飢えた経験がない……ね」)
卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)は影龍の姿を見上げながら先程自殺した男の言葉を反芻している。無論、その間にも敵の攻撃は激しい。
(「ま、私の身の上話なんて語る意味もないか」)
彼女はそう嘯くものの、それは逆に言えば死んだ男も詳細に述べずに死んでいった。そういう意味で言えば彼女と男は同じ行動を行ったとも言える。
「牡丹」
彼女に呼ばれたキャバリアが分かたれた影龍の片方とがっぷり組む。そしてそちらを任せている間、彼女はもう片方の本体と思われる影龍に銃を向ける。
「で? 何故この分所だったの? 此処を潰せば虐げられている人の何かが変わるとでも?」
影龍は答えない、答える必要がないのではなく答える能力が無い故に。代わりにその巨体を動かして彼女もろともこの施設を破壊せんとする。
「此処なら確実だった? ……嘘」
なんとかその攻撃から身を躱して返事の無い仮定を繰り返すトー。
「分所なんて潰しても學徒兵が死ぬだけ。猟兵を敵視する以上その脅威も無視できない」
引き金を幾つか引くが弾丸はその影の体に飲み込まれるのみ。
「ただ弱者としての憎しみをぶつけたい? ……大嘘。貴方達に『邪心(うらみ)』が無い以上それは成立しない」
そう彼女は言うが邪心と恨みは必ずしも合致はしない、辞書を引けば辛うじて重なる表記がある程度だ。そういう意味で彼女自身が自分に嘘をついているとも言える。
「なら……残るは只の自己陶酔ね?」
その結論と共に更に弾丸を放つトー。
「私が悪、それでいいわ。貴方達は己の存在証明に乳飲み子と貧者を利用する下衆よ」
しかしそれこそが向き合う事もせず家を飛び出し、自らの責から逃げ偽名を使い、弱者と称す相手に攻撃を与える彼女自身の事でもあった。……嘘をついている点に置いて彼女の言葉はただの自己紹介に過ぎない。ここにある二つの存在は相似形であると言えた。
大成功
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政木・朱鞠
遺恨を晴らす出口のない争いがこのまま広がってしまったら、悲劇の連鎖に何も落ち度のない人々までが憎しみ合う世界に飲み込まれてしまうよね…。
貴方の悲しみや怒りに寄り添いたい所だけど、破壊行動でしか満たされる事を望まない今は相容れぬ存在同士。
悔しいけど、不安と厄災を撒き散らした敵として討たせて貰うよ。
戦闘【SPD】
動き回られるのも少し厄介だし、「咎力封じ」を使用して『影竜』の動きを拘束する攻撃していきたいね。
得物は急所への【貫通攻撃】を狙って刑場槍『葬栴檀』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】【生命力吸収】の合わせで間を置かずダメージを与えたいね。
アドリブ連帯歓迎
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(「遺恨を晴らす出口のない争いがこのまま広がってしまったら、悲劇の連鎖に何も落ち度のない人々までが憎しみ合う世界に飲み込まれてしまうよね……」)
政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)が危惧するのはそれであった。或いは今回の彼等の目的はそれなのかも知れない。分所を狙うのは手段であって目的ではない、と。
「貴方の悲しみや怒りに寄り添いたい所だけど、破壊行動でしか満たされる事を望まない今は相容れぬ存在同士。悔しいけど、不安と厄災を撒き散らした敵として討たせて貰うよ」
既に手遅れな部分もあるのかも知れない、しかし影龍の奥に居るであろう影朧甲冑まで止めるために彼女は力を使う。今は怒り猛る影龍とその分体を止めるのが先決だ。
「まずはそっちから!」
二体に別れて暴れる巨体の分体の方に向かって崩れた建物を辿って近づいていく朱鞠。まずはロープを手にして周囲を跳ね回るように動く。幸いにしてその注意は他の猟兵が惹きつけてくれている。
「……よし! 後は猿轡と手枷……手?」
とりあえず続けて敵の動きを止めていく。手枷はとりあえず翼にかけておいた、後は他の猟兵に任せても問題は無いだろう。ユーベルコードそのものの存在ならほぼ無力化されているはずだ。
「あとは……!」
葬栴檀を抜いて彼女は影龍の本体へと向かう。その中にはまだ溢れんばかりの無念が渦巻いていた。
大成功
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名張・辿
スミシーさんがそう言ってた以上、お前さんらは本当に居場所が得られなかったんだろうがな
時に愚問の答えが金言となるように、誰かがこれを良い事に繋げられる様、祈っとくよ、俺には無理そうだがね
引き続き「アンカーラット」で索敵、敵を見つけて撃破を目指すよ
【史書喰らい】を発動、オーラ「疫病概念」と一体化して鼠の形となってから移動、
途中でグラッジ弾跡だとか、遺体だとかから、影竜を大きくしているであろう影が出ていれば、それを散らしたり喰らったりしながら進んでいくよ
影竜との戦いでは激痛耐性を頼みに攻撃に耐えながら接近、概念化した疫病の毒素での逆浸食とオーラ化した体での噛み付き食いちぎりを図り、敵を削っていこうか
●
「スミシーさんがそう言ってた以上、お前さんらは本当に居場所が得られなかったんだろうがな」
哀れみを込めたような。それでいて乾いた声で名張・辿(鼠遣われ・f04894)は呟いた。外套付きの頭巾を持ち上げて見えるその巨体は、その無念の塊なんだろう。
「時に愚問の答えが金言となるように、誰かがこれを良い事に繋げられる様、祈っとくよ、俺には無理そうだがね」
辿はこの国の者でもなくただの鼠の使い走りにしか過ぎない。そうでなくともそれができる力があるかと問われれば首を傾げる。食い詰めた浪人が集まって碌でもない事をするのはどこも同じだろう。そして相手を動く準備をしていたら錨鼠から仕掛け場所の連絡が入る。
「……さて」
再び頭巾を被り辿が意識を集中すると、その姿が大鼠へと変じ瓦礫の山となった分所を走り回る。この鼠が齧るのは残飯でも油虫でもない。この場所にこびり付いた形のない、それでいて存在があるものだ。この場においてはグラッジ弾やそれを扱う者が残した怨念や無念さだ。
「………」
影龍の『餌』を横取りしながらその身を肥えらせていく大鼠。それらを食い尽くすといよいよその塊である影龍に狙いを定めて、背中から鋭い前歯を突き立てる。
「……ッ!」
叫ぶ影龍が身を捩り食らいついた大鼠を引き剥がそうとするが、大鼠特有の病素がその身にまたたく間に広がり勢いを削いでいく。挙げ句放たれた黒い槍ですらも大鼠の腹に収まり、影龍の巨体はみるみる内にやせ細って小さくなるのであった。
大成功
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第3章 ボス戦
『影朧甲冑』
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POW : 無影兜割
【刀による大上段からの振り下ろし】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 影朧飛翔弾
【甲冑の指先から、小型ミサイルの連射】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 影朧蒸気
全身を【燃料とされた影朧の呪いが宿るドス黒い蒸気】で覆い、自身が敵から受けた【影朧甲冑への攻撃回数】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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●
「……ここまでか」
影龍の姿が消えた時、残ったのは鉄の塊――影朧甲冑だった。そしてその中からは若い男の声が響く。
「礼を言うぞ超弩級ユーベルコヲド使い。これで我らの大方の目的は達成された」
影朧甲冑が金属音を立てて立ち上がり、手にした巨大刀の切っ先を猟兵達に向ける。
「學徒兵達に恐怖と疑問を与える事、お前達が容易に人を殺せるのを世に知らしめる事、そして救われなかった我々を死出の道に旅立たせる事」
無論、細かなものはいくらでもあるがな。と操縦者は呟く。
「私が最後だ。それでこの馬鹿騒ぎは終わる、しかし起きた事実は消えない」
装甲の奥で動力源の回転音が大きく鳴り響く。
「来い、返り血の英雄よ。これが最後の仕事だ」
秋津洲・瑞穂
いやー、傍観するはずだったわたしを引っ張り出すとは、
その底の抜けた馬鹿さ加減は実際大したものだわ。
学徒兵に恐怖は与えたでしょうね。
兵ならば毎度の事だろうとしても。
しかし疑問は与えられない。
あの穴だらけの世迷言を真面目に受け取るのは馬鹿だけよ。
少しは考えて喋れ。
でなに、わたし達が容易に人を殺せる?
今まで知られていなかったと?
どこの世界に人を殺せない武人がいるのか。ああ、ここか。
そしてもう一度言う。お前たちは救うに値しない。
お前たちは邪心に塗れている。
邪心の何たるかも解らぬか愚物。ネの国で己を見つめ直すがいい。
ダッシュ/野生の勘/見切り/残像/オーラ防御/
鎧無視攻撃/2回攻撃による剣刃一閃。
●人が人を殺す時
「いやー、傍観するはずだったわたしを引っ張り出すとは、その底の抜けた馬鹿さ加減は実際大したものだわ」
「見る阿呆に踊る阿呆というものだろう。まさか此処に居るのが全ての猟兵という訳でもあるまい。我々の馬鹿さ加減を見過ごせないのもまた馬鹿だとは思わないか?」
「思わないわ。……確かにあなた達は学徒兵に恐怖は与えたでしょうね。兵ならば毎度の事だろうとしても」
秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)と操縦者は剣を打ち合いながらも言葉を交わしている。
「しかし疑問は与えられない。あの穴だらけの世迷言を真面目に受け取るのは馬鹿だけよ。少しは考えて喋れ」
「成程、ではこの世界には馬鹿が多いのだな」
激しく刃同士が打ち合い火花も散る。
「そして問う、論理の穴というのならば何を指して言うのだ。それを指摘するのならば気に食わない相手の言葉を理由なく蔑んでいるそれこそ世迷言の類だろう」
「その言い回しが馬鹿だと言っているの。でなに、わたし達が容易に人を殺せる? 今まで知られていなかったと? どこの世界に人を殺せない武人がいるのか。ああ、ここか」
「ああそうだ。この表面上太平の世となって七百年。人は影朧を恐れても自身に向けられる人からの殺意には疎くなった」
二つの剣が弾かれあい双方が一旦離れ構えを取り始める。
「もう一度言う。お前たちは救うに値しない。お前たちは邪心に塗れている。邪心の何たるかも解らぬか愚物。ネの国で己を見つめ直すがいい」
「ならばこちらからも返そう。お前達は邪心が何たるかを決して語らない。何たるかを分かっているのならばそれを啓蒙すれば良いものを言葉や文字にすらしない」
そして双方が再び大きくぶつかり合う。
「お前達の考え方は逆だ。邪悪だから殺すのではなく、殺すからその相手が邪悪でなければならないという建前に過ぎん」
「巫山戯るな、その考えこそが邪悪と言うんだ」
二つの剣は交差しても二つの意思は平行したままだ。
大成功
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秋津洲・瑞穂
「良いでしょう、お勉強の時間よ」
大正の世に公私の機関が幾つある。
警察・消防・医院・農家等々、全て生者の良き生を護るもの。
広く見れば万職は人々の不足を満たし救うためにある。
些細とは言わさん。服の、家の、灯のない世は苦難だ。
桜學府とて死者を救うのではない。
影朧事件を解いて民草を救い、残った死者をも救うのだ。
「その大正の世に、平等がなんだって?」
徳不徳と敵味方とは何の関係もない。
影朧は影朧として振る舞い、分も則も越えぬ。己が立場に忠である。
世の裏切者たるお前たちなぞ比較にもならん。
「幾らでも続けられるわよ」
「邪心もわたしの専門内、あなたが憤死するほど語れるけど?」
その中空頭をぶん殴ってやるわ。
●善悪の彼岸
「良いでしょう、お勉強の時間よ」
「ほう、一応考えてはいたのか。言ってみるが良い」
鷹揚に話の続きを促された秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)はこの世界の社会構造について語り始める。
「大正の世に公私の機関が幾つある。警察・消防・医院・農家等々、全て生者の良き生を護るもの。広く見れば万職は人々の不足を満たし救うためにある。……些細とは言わさん。服の、家の、灯のない世は苦難だ」
「認めよう、それは確かだ」
「桜學府とて死者を救うのではない。影朧事件を解いて民草を救い、残った死者をも救うのだ」
ここまで言ってから彼女はっきりと口にする。
「その大正の世に、平等がなんだって?」
「不平等だと言ったのだ」
返す刃で相手は言葉を返す。彼女はその返しにもにべもせず言葉を続ける。
「徳不徳と敵味方とは何の関係もない。影朧は影朧として振る舞い、分も則も越えぬ。己が立場に忠である。世の裏切者たるお前たちなぞ比較にもならん」
彼女がそこまで言い更に言葉を続ける。
「それだけか?」
「幾らでも続けられるわよ。邪心もわたしの専門内、あなたが憤死するほど語れるけど?」
瑞穂がそこまで言い切ると甲冑からは疲れた声が漏れ出してくる。
「……その程度か」
「何?」
「確かにお前の言っている事はこの世界の体制の恩恵を受けていれば正しいのだろう。しかし我々は『受けられなかった』のだ」
「だから何、自分達のやっていることは正しいとでも?」
「そうだ。例え世界から悪の誹りを受けようとも。我々が、その正しさから救われなかった者達からすればその体制に弓を引くのは正しい。そうでなくば生き残る目もない。そしてそういった者達からすれば今の体制こそが圧制者であるからだ」
甲冑は改めて瑞穂に剣を向ける。
「所詮、正義や悪などどちらに力があるか程度の話でしか無い。にもかかわらず自らの正しさも疑いもせず、いともたやすく人を殺せるという貴様は我々とさして変わらないのだろうな。いや、我々よりも遥かに強い超弩級ユーベルコヲド使いならば最早怪物か」
「お前の頭をどんなに殴っても空のままってのはよく分かったわ」
「それはお互い様だろう。各々の正義を信じ続ける限り、相手の知性など認められはしないのだから」
そして再び刃は交差する。最早相容れない相手であることははっきりした故に。
大成功
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政木・朱鞠
私、凄く怒っているんだよ。
頭デッカチな御題目並べて…自分の命さえも粗末にして…それほどの覚悟があるならもっと違う方法を模索できないのかな?
今は…その純粋で歪な志を止める為、私も簡単に人を殺せる化け物となってでも貴方の咎をここで幕引きとさせて貰うよ…そして、オヤスミナサイ。
戦闘
手遅れかもしれないけど、彼の思いをもっと話して貰うために足止めのため攻撃するよ。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使って体に鎖を絡めて動きを封じたいね。
心情的な攻撃なのかもしれないけど…『忍法・咎狐落とし』で今まで罪を犯した魂に対して絞り出させる様にダメージを与えたいね。
アドリブ連帯歓迎
●罪を負う者
「私、凄く怒っているんだよ」
「そうだろうな。襲撃されている者とそれを守る者からすれば当然だろう」
「違うよ、そういうことじゃない」
相手の剣に鎖を絡めた政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)が目を背けず顎だけを横に振って言葉を続ける。
「頭デッカチな御題目並べて……自分の命さえも粗末にして……それほどの覚悟があるならもっと違う方法を模索できないのかな?」
「それはその方法を以て生き残った者にしか言えぬ言葉だ。我々の中にも同じ様な言葉を吐き失意の中で死んでいった者もいた。……今の我々と違う方法で生き残った者は組織を離れ、死んだ者には口がない。此処に来たのはそれらを見送ってきた者達だ」
「……!」
彼等もまた何もなく覚悟があるという訳ではない。少なくとも言葉だけでは止まりようが無いと思った朱鞠は手に持った鎖に力を注ぎ込む。
「今は……その純粋で歪な志を止める為、私も簡単に人を殺せる化け物となってでも貴方の咎をここで幕引きとさせて貰うよ」
「そうだ、貴様達はその為に来たのならその職責を果たすが良い」
鎖を伝い浄罪の炎が影朧甲冑の中にまで入り込み操縦者にまで届く。
「これは……」
操縦者が自らの心に入り込み咎が焼かれていく感覚に身じろぎする。
「……オヤスミナサイ」
「成程、確かに身を任せたくなる炎だ。……しかし」
操縦者は剣を走らせると自機と朱鞠を繋ぐ鎖を断つ。
「なんで!?」
「私の罪だけが此処で焼かれる訳にはいかないのだ。向こうで先に待っている仲間達の為にも。……或いはもっと早く貴様のような者と皆が出会えていたのならばこうはならなかったのだろうな」
「そこまでして通さなきゃいけない志なの」
「どちらかと言えば意地だ。背負った荷物を途中で投げ出す訳にはいかないというそれだけの。救われぬ果てへの血に塗れた道案内をした俺のケジメだ」
そう言って再び剣の構えを取る影朧甲冑。
「どうしてもそういう戦いを望むのね」
「ああ、楽に死ぬわけにはいかない。それはこれに乗った時から決めていた事だ」
大成功
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名張・辿
馬鹿騒ぎか、そう言いたくもなるがよ、殺した側としてお前だけはそう言わないでくれるかい
部下とは認識が同じかもしれないがよ
少なくとも、ここの人たちにとって最初に引き金を引いたのはそっちなんだからな
【遺物崩し】を発動、無数の鼠と化して襲い掛かる
敵の関節構造上届かない位置を中心に、荒廃させながら齧り削り、「部位破壊」や「武器落とし」による弱体化を図ろうか
そいつぁあまり持ち出すべきでない遺物だろう、食い潰させてもらうぜ
戦いの過程で鼠の口で話しかけてみようかね
學徒兵さんにゃあ聞こえないようにこっそりとな
何か言い残すことは?空っぽでもいいからどこそこに墓が欲しいとかさ、約束しないが言うだけいってみろよ
●救われざる者の歌
「馬鹿騒ぎか、そう言いたくもなるがよ、殺した側としてお前だけはそう言わないでくれるかい。部下とは認識が同じかもしれないがよ。……少なくとも、ここの人たちにとって最初に引き金を引いたのはそっちなんだからな」
「……そうだな。確かにこのままでは彼岸で何を言われるか溜まったものじゃない、訂正しておこう」
鼠の群れと化した名張・辿(鼠遣われ・f04894)に集れられながら、それを振り払うように影朧甲冑が動き回る。その巨体を動かして時には鼠を踏み潰し、噴出する蒸気で追い払おうとするが、何よりこのような相手をする事を想定していない。
「象は蟻に勝てないというが……」
「そいつぁあまり持ち出すべきでない遺物だろう、食い潰させてもらうぜ」
そして辿は無論その想定でこの姿となっている。今の彼にかかれば空の向こうに浮かんでいる島程の怪物ですら喰らい尽くせるだろう。
「……っ! 操縦系統がやられたか!」
席の上で手にした操縦桿からの抵抗が減ったのを感じ取った操縦者はなお足踏桿を踏み動力だけでも増やして抵抗しようとする。逆に言えばそれくらいの事しかできない。そんな中一匹の鼠が装甲を食い破って操縦者の前へと現れた。
「……いよいよ終わりか。好きにするといい」
「じゃあ一つだけこっそりと教えてくれよ」
「なんだ、大したことは知らないぞ」
鼠の口で辿が操縦者に問いかける。
「何か言い残すことは? 空っぽでもいいからどこそこに墓が欲しいとかさ、約束しないが言うだけいってみろよ」
「墓は我々には過ぎたものだな。……そうだな」
命を取る者と取られる者の間で交わされる最後のやり取り。奇妙な情景だが、二人は意に介していない。……操縦者は一冊の手帳を鼠の前に置く。
「辞世の句だ。必要なら持っていけ」
……そして影朧甲冑が喰らい尽くされた後、辿は手帳を開く。
不死桜 西行の如く 歌いしも
牡嵩は 伏せて咲き散る
大成功
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