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雨翔蝶々、四季の湯屋

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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 ――なぁ、知ってるかい?
 幽世の妖怪たちの中でも密かに話題の温泉郷のことを。
 数多の行灯の燈火に迎えられ、赤い太鼓橋をひとつ、ふたつと渡れば。
 まるでその先は、幽世の極楽なんだとか。
 其処には、色々なモノたちが日頃の疲れを癒しに訪れる、湯屋があるらしい。

 もくもく天へと煙立つ建物はノスタルジックで、でも多層に渡るほど豪華で。
 好きな柄の浴衣を纏い、数え切れないくらいある風呂が楽しめるようだよ。
 それに定番の瓶牛乳各種は勿論、湯あがりに頂ける料理も絶品で、酒も美味いらしい。
 特にウリにしている風呂は、それぞれの四季を感じられる眺めの良い4つの露天風呂。
 美肌作用や若返り、疲労回復にストレス解消、不老不死の効能のウワサもある温泉も?
 花が湯船いっぱいに浮かぶ花風呂、酒風呂、七色の温泉や他にも色々。
 幽世ならではなちょっぴり変わった風呂や各種サウナ、岩盤浴等。
 こりゃあ、湯あたりしないようにしないといけないねぇ。
 ゆっくりアイスなんか食べながら、休憩所や個室でのんびり過ごすのもまた極楽。
 冷えた体を良い湯であっためて、疲れを癒すにはもってこい。

 だって――どうせ此処にくる客は皆、びしょ濡れなんだから。

 ……ん? 何故かって?
 そりゃあアンタ、その湯屋に辿り着くには、必ずあの森を通らないといけないから。
 いつだって雨がしとしとと降っている、迷路のような森をね。
 その湯屋は、運良く森を抜けられたモノだけが味わえる、幽世の極楽ってわけさ。
 けれどもしも湯屋に行こうって思ってるなら、気を付けるんだよ?
 自分だけど自分ではない、雨の森の中にいる自分にな。

●雨翔蝶々
「沢山の風呂に、美味な料理や甘味に酒、ゆったりでも賑やかにでも過ごせて良いな」
 集まった皆に礼を言い、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)はそう雅やかに微笑んだ後。視た予知を語り始める。
「今回予知を視た世界は、カクリヨファンタズム。猟兵の皆が幾度にも渡り「幽世の滅亡」を救ったためか、ごく稀にではあるが、事前に「世界の崩壊するしるし」を感じ取れるようになった」
 そのしるしとは――幽世に舞う「幽世蝶」の群生。
 不思議な霊力を放つ幽世蝶が、グリモア猟兵の予知よりも早く、世界のほころびを感じ取れるようになったというのだ。
「なので皆には今回、群れて舞う幽世蝶たちを追い、発生しようとしている「世界の終わり」を事前に食い止めて貰いたい」

 それから清史郎は、幽世蝶が群生し向かう場所を皆に告げる。
「幽世蝶の群れは、常に雨がしとしとと降る迷路の如き森へと入っていくという。各色番傘の貸出はするし、自前のものがあるならばそれを使っても勿論構わない。そして……森の中に入ると、世界が崩壊へと向かっている影響か、森へと入った者を惑わす幻影がみえるという」
 それは、自分だけれど自分ではないモノ。
 幼い姿をした、自分なのだという。
「その幼き自分、であるが。過去の記憶であることもあれば、成せなかったもしもの自分、またはそう在りたかったという願望……見る人によって様々であるし。それにちなんだ別の誰かの姿も一緒に見えるかもしれないようだ。また、共に征くものがあれば、相手にも幼き自分の姿は見えるというし。別々のタイミングや場所で視ることは勿論、実際には有り得なくとも幼い幻影たちが共に何かをしていたりなども視えるかもしれない。俺の様なヤドリガミであれば、器物の時の姿であるかもしれないし、幼き身を成した姿かもしれないようだ」
 とにかく、視えるのは「幼い自分」「昔の姿の自分」という事は共通しているが。
 何をしていて誰といるのか、過去か願望か夢か幻か――それは人によって違うようだ。
 特にその幻影は何かをしてくるわけでもないし、此方から干渉できるわけでもない。
 ただ、傘を差していたり雨に打たれたりした己の幼き姿が、視えるという。
「森は迷路のように入り組んでいるが、幽世蝶を追えば迷うことはない。しとしとと降り続ける雨の中を歩きながら、幼き時の記憶を思い返したり、共に征く者があれば自らの思い出などを語ったりする時間は沢山ある。幻は気にせず進むのもまたいいだろう」

 そして長く深い雨の森の道を進み、抜ければ。
 そこにあるのは、幽世の妖怪たちの間でも密かに話題の温泉郷。
 煙立ち昇らせる多層に渡る巨大な建物――湯屋が、姿を現すという。
「幽世蝶の辿り着く先は、この湯屋のようだ。此処は妖怪たちや訪れるモノたちで活気に満ちていて、皆のことも問題なく受け入れてくれるだろう。その頃には雨にも濡れているかと思うので、あたたまって疲れを取ったり、腹拵えに美味い食事や甘味や酒に舌鼓を打つのも良いが。幽世蝶の群れが舞っているということは、オブリビオン化した妖怪が其処には在るということだ」
 どうやら最近、この湯屋ではボヤ騒ぎが頻繁に起こっているのだという。
 そしてそれはきっと、幽世蝶が群がっているオブリビオンの仕業に違いない。
 ただ、そのオブリビオンはまだバレていないと思っているようであるので。
 普通に湯屋を楽しみに訪れた客を装いつつ、少しづつ他の人達から遠ざけて。
 オブリビオン――元の妖怪を飲み込んだ骸魂をやっつけて、元の妖怪を救出できれば。
 事件も未然に防げて、めでたしめでたし……というわけだ。

「世界の崩壊を食い止めることは勿論だが。その為にも、雨に打たれて風邪を引かぬよう、来たる時までしっかり温まって疲れを癒してくれ」
 清史郎はそう皆へと微笑み、よろしく頼むと改めて頭を下げてから。
 満開桜を掌に咲かせ、雨の幽世の森へと皆を導く。


志稲愛海
 志稲愛海です。
 よろしくお願いします!

 ※ご連絡※ 第1章は、3/11(木)朝8:31より受付開始します。
 第1章の断章をOP公開後に掲載致します。

 今回の依頼内容は以下です。

 第1章:雨の中の永遠(冒険)
 第2章:幽世の秘湯(日常)
 第3章:??(ボス戦)

 第1章と2章はPOW/SPD/WIZは気にせずOKです。

 第1章は、幽世蝶を追い雨の森を征く冒険です。
 好きな色の番傘をお貸ししますし、自前の物を使用してもOK。
 傘を差さぬのも可能ですが、ずぶ濡れになります。
 雨は基本、しとしとと静かに延々と降っています。
 そして森では「幼い姿の自分」「昔の姿の自分」の幻を視ます。
 同行者がいる場合は、相手の幼い幻影も視えます。
 特に何かしてくるわけではありませんが、惑わされぬようにと。
 過去の記憶でも願望でも在りたかった光景でも、何でも構いません。
 どんな幼い自分を視たか、そして何を思ったか、誰と幻が居るか等記して頂ければ。
 幽世蝶を追えば迷う事はないですが、森を抜ける迄は時間があります。
 雨の中で幻を視つつ、思い巡らせたり、共に誰か在れば会話交わしたり。
 思い思いに蝶を追い雨の中を進み、森を抜けて下さい。

 第2章は、湯屋でのひとときです。
 詳細は断章にて案内致しますが、ノスタルジーで豪華な湯屋です。
 各種風呂、風呂上がりの食事や甘味や酒、休憩等々楽しめます。
 好きな柄の浴衣やお風呂セット一式も借してくれます。
 風呂は全て男女別、公序良俗に反する内容は不採用又はマスタリングしますが。
 沢山ある風呂を楽しんだり、休憩所や宴会所や個室等でのんびりお過ごし下さい。

 第3章は、戦闘です。
 幽世蝶が群がるオブリビオンを倒して下さい。
 詳細は第2章の結果を踏まえた断章にて。

 公序良俗に反する事、他人への迷惑行為、未成年の飲酒喫煙は厳禁です。
 各章、詳細を記載した断章を受付前に掲載します。
 締切等はMS個別ページやTwitterでお知らせします。

●お願い
 同行者がいる場合は【相手の名前(呼称推奨)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入をお忘れなくお願いします。

 グループ参加の人数制限はありません、お一人様~何人ででもどうぞ!
 ですが、ご指定の同行者が参加していない場合は返金となる可能性もあります。

 可能な限り皆様書かせて頂きたく思っています。
 お気軽にご参加ください!
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第1章 冒険 『雨の中の永遠』

POW   :    雨具など使わず駆け抜ける

SPD   :    雨具を使い抜ける

WIZ   :    廻り道して雨を避ける

イラスト:礎たちつ

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ひらりと蝶々が迷い込んだ森は、今日もしとしとと雨が降っていた。
 いや、今日に限った事ではない。一昨日も昨日も、そしてきっと明日も明後日も。
 やはり今と同じ様にしとしとぽつぽつ、雨が降る深くて昏い森。
 くるりと傘の花を咲かせれば、雨粒が奏でる音はやさしくて。
 濡れた葉や枝が時折悪戯っ子の如く、たわんでは大きな雫を降らせる。
 延々と雨が降る幽世の森。
 それ以上でもそれ以下でもない、ただそれだけの森であるはずなのだけれど。
 雨と戯れながら奥へと進めば、いつの間にか薄っすらと霧がかかって。
 その中に、貴方は見るだろう。
 幼き姿をした己の姿を。

 それは、在りし過去の記憶のままかもしれないし。
 はたまた、こう在って欲しかったという願望かもしれないし。
 こう在るべきであった姿なのかもしれない。
 幼き貴方の傍には誰かが居るかもしれないし、ひとりかもしれない。
 本来ならば共に在り得ない人といる光景かもしれない。
 声や音を聞くこともあるかもしれない。
 幼き頃を持たぬ者でも、それは同じ。
 モノや獣で在った、過去の己の姿かもしれないし。
 無いはずの、幼き人型をとっている姿かもしれない。
 幼き姿をした自分、昔の姿の自分――それ以外は何を視るのか、そのひと次第。

 そして互いに干渉もできず、ただ、その姿を雨の中で視るだけ。

 ひたすら、雨が降る森。
 迷路の如き広大なこの森を抜けるのは、本来は容易ではないけれど。
 幽世蝶たちの道案内通り進めば、雨はやがて晴れるだろう。
 でもそれまで、雨の森をゆく道は長いから。
 自分だけれど自分ではない、けれど自分かもしれないそれを視て。
 物思いに耽ってみたり、静かに思い返してみたり、思い出に浸ってみたり。
 共に視る者がいれば、己のことを話したり、相手の生い立ちを聞いてみたり。
 はたまた視えるモノには構わず、雨の森をただ征くだけでもいい。
 傘をさして散歩気分でも良いし、雨にはしゃいだって構わない。
 雨音を聞きながら、雨翔蝶々を追って――森を抜ければ、それでいい。
 さぁ、ひたすらしとしとと雨が降るひとときの、はじまりはじまり。
尾守・夜野
(雨は落ち着くから好きだ)
雨なら火は消えるから
だから俺は傘は差さねぇで歩くぞ

(…過去の俺が出る…か
会わねぇな
…覚えてるかは怪しいが)
村に行き着くまでの記憶はねぇし行き着いてからも
…あの出来事のせいで記憶は更にぐちゃぐちゃだから覚えてねぇ事のが多い

ふと視線をあげると少年が
完全に俺の姿とは似ても似つかんから迷子か客かという認識

「…坊主は迷子か?」
いつもを演じようとして失敗している面が
飄々と受け流そうとして出来てないのが誰かに被るが…

「…また傷つけるの?
ってなんだ?そりゃ」

どちらかというと傷を負ってるのは俺なんだが
滅茶苦茶責められてる気がする…
とりあえず流して迷子つれてったらいつの間にか消えてた



 昏くしとしとと天からひたすら落ち続ける雫。
 雨というもの自体は大抵の人にとっては、珍しくも何ともないことであるし。
 だから雨に思うことは、それこそ人それぞれであるのだけれど。
(「雨は落ち着くから好きだ」)
 尾守・夜野(墓守・f05352)は敢えて傘を差さずに歩く。
 ……雨なら火は消えるから、と。
 いや、炎だって、嫌いなわけではない気もするのだ。
 どうしても負の感情は抱く気にはならないというか……何故だかは、わからないけれど。
 それから雨に降られ、幽世蝶を追いながら。
 夜野はふと、聞いた予知のことを思いだして、ぐるりと昏い雨の森を見回してみる。
(「……過去の俺が出る……か」)
 この森で見ると言われたのは、幼い姿の自分だというけれど。
(「会わねぇな……覚えてるかは怪しいが」)
 記憶の糸を辿ろうとしても、正直、色々なものが綯い交ぜになっていて。
 夜野はもうそれ以上、自分の事を考えることを止めることにする。
(「村に行き着くまでの記憶はねぇし、行き着いてからも……あの出来事のせいで記憶は更にぐちゃぐちゃだから覚えてねぇ事のが多い」)
 何もなかったとされている、故郷と呼称している場所にどうやって辿り着いたのかも。
 その後のことも……とてもあやふやで、様々な視点や場所や記憶が混ざっているから。
 そして考える事を放棄するようにふと視線を上げれば、そこには――いつの間に現れたのか、ひとりの少年の姿が。
 自分の幼い姿が視えると聞いていたけれど。
(「完全に俺の姿とは似ても似つかんから迷子か客か」)
 じっと見つめてみても、自分とは全く違うその姿。
 だから、夜野は彼へと声を掛けてみる。
「……坊主は迷子か?」
 そして返ってきた反応や聞こえる気がするその声に、首を傾ける。
(「いつもを演じようとして失敗している面が、飄々と受け流そうとして出来てないのが誰かに被るが……」)
 そんなことを思いつつ、少年へと視線を向けてみれば。
 ふいに開いた口から漏れた言の葉に、ますます夜野は首を捻る。
「……また傷つけるの? ってなんだ? そりゃ」
 だが、何だかじいっと自分を見上げてくる少年。
 その視線に、夜野はこう思わずにいられない。
(「どちらかというと傷を負ってるのは俺なんだが」)
 ――滅茶苦茶責められてる気がする……って。
 けれど昏い雨の森の中、少年をひとり放ってゆくのも何だから。
 とりあえずよくわからないあれそれは流しつつ、迷子を連れ立って森の中を歩いて……いた、はずだったのだけれど。
「……あれ?」
 ふと気付けば――しとしとと雨降る森にはいつの間にか、夜野の姿ひとりしかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀
オトモに和傘を指してもらいながら幻視の森を抜けます。

蝶を追いながら見えるのは、座敷牢の中に鎖されてた頃の自分。今から数百年前ずいぶん古い頃の記憶だ。

牢の鍵を開ける音。
生気の無い瞳の給仕は、鍵を手にしたまま崩れ落ち、取り憑いていた黒い狐が出てくる。

他に憑く相手はあらかた食い尽くして、もう自分しか残っていないのでしょう?

鼻先を当てて扉を開き、四足の獣の金色の瞳が覗き込み、意識が流れコンでゆくコン。

混ざる意識の流れを逆に辿って掌握してやる。

気付くと、黒い狐の意識は消えて、自分の中に妖狐の力だけが残った。
(耳としっぽは、もふもふと変し少々目立つが)
自分は、人目を避けつつも外の世界を旅できるように成る。



 雨がひたすら静かに降る森に灯るのは、赤と青の可愛らしい見目の狐火。
 そんな『オトモ』にくるり、和傘を差して貰いながら。
 ひらり雨降る空を舞う蝶々たちを見失わないよう、森の奥へと歩みを進めるのは、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)。
 一見すると、ただ雨がしとしとと降っている森のようであるけれど。
 予知によれば、此処は幻視の森だという。
 そして、この森で視るのだという幻は――。
 不意に雲雀の目の前にいつの間にか現れたのは、ずいぶん古い頃の記憶の姿。
 あれは、今から数百年ほど前だろうか……幽世蝶を追いながら見えるのは、座敷牢の中に鎖されている少女。
 刹那、ガチャリと牢の鍵を開ける音がしたかと思えば。
 生気の無い瞳の給仕が鍵を手にしたまま、ぼろりと崩れ落ちる。
 その少女――鎖されている自分の前で。
 そしてかわりに出てきたのは、取り憑いていた黒い狐。
 そんな『それ』が何故此処に来て、出てきたのか……それは、想像に難くはなくて。
「他に憑く相手はあらかた食い尽くして、もう自分しか残っていないのでしょう?」
 紡いだ瞬間――コン、と意識が流れコンでゆくコン。
 鼻先を当てて扉をギイと軋ませ開き、四足の獣の金色の瞳が覗き込んで。
 けれど、憑かれ食い尽くされるなんて御免。
 ――混ざる意識の流れを逆に辿って掌握してやる。
 そう思ってから……次に気が付いたその時には、黒い狐の意識は消えていて。
 自分の中に残ったのは、妖狐の力。
 それから雲雀は、もふもふと変した耳や尻尾を、ぴこぴこゆらゆら。
 少々目立つとは思ったりしたけれど。
 ……でも。
 これから妖狐の力を宿した眼前の少女は、鎖されていた座敷牢から、歩み出すことになるのだ。
 人目を避けつつも――外の世界を旅できるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
「過去の自分」が見えるなら1人で振り返った方がいい。敢えて赤い番傘を差して1人で森を歩くよ。

雨が降りしきる森を歩いていると霧の向こうに幼い自分を見る。今と違って髪を伸ばしてリボンを付けて。綺麗なワンピース。アタシは元々名家の令嬢でねえ。音楽の教育を受けながら育てられた。パーティも良く出たねえ。歩くと見えてくるのは10代後半のお淑やかなドレスを着たアタシ。あの時は本気でプロの歌手を目指してた。

今はこんな生活しているが、昔があったから今のアタシがいる。赫灼のグロリアを口ずさみながら森の出口を目指すよ。まず、子供達と合流しないとね。



 しとしとと静かに雨が降る昏い森に、赤の番傘がひとつ。
 いつもならば、彼女の傍には家族の姿があることが多いのだけれど。
 ひらり眼前を翔ける幽世蝶を追う真宮・響(赫灼の炎・f00434)は、雨が降る中、今はただひとりだけ。
 ――「過去の自分」が見えるなら1人で振り返った方がいい。
 そう思ったから、そして家族もそれを分かってくれているから……敢えて響は、ひとりで雨の森を歩く。
 この森には響の他にも、彼女の家族は勿論、幾人もの猟兵が足を踏み入れているはずだけれど。
 赤い番傘に落ちる雨音が耳にはっきりと聞こえる程、森の中は静かで。
 ただ、しとしとと、激しくなることもなく、けれど止むことなく降り続けている雨。
 そんな静寂広がる世界を、ひとり歩いていた響であったが。
 薄っすらといつの間にか立ち込めていた霧の中に、人影を見る。
 それは、ひとりの少女のものであった。
 長い髪をリボンで飾って、綺麗なワンピースを着た令嬢――若かりし頃の、響の姿。
(「アタシは元々名家の令嬢でねえ。音楽の教育を受けながら育てられた」)
 ……パーティも良く出たねえ、なんて呟けば、お淑やかなドレスを着た10代後半の響は上品に誰かにお辞儀をしてみせる。
 きっと、自分の歌を聴いてくれる人たちに対してかもしれない。
 このくらいの年の自分は、本気でプロの歌手を目指していたから。
 それはちゃんと記憶の中に残ってはいるけれど、でも遥か遠い過去の様で。
 今、自分が選んだ道は、プロの歌手ではなく……猟兵として在ること。
 この足で立っている場所は、人々の前で歌う為の舞台ではなく、世界を渡り巡る戦場だ。
 けれど、そんな過去と今は、環境も状況も風景も大きく違ってはいるのだけれど。
 響がふと口遊むのは、赫灼のグロリア――先へ進む者達の栄光を願う歌。
(「今はこんな生活しているが、昔があったから今のアタシがいる」)
 それに今でも、響は昔と変わらず歌い続けているのだから。
 霧の中に見える自分が纏っているようなお淑やかなドレスも、眩いスポットライトもないけれど。
 今でも、戦場という舞台で。
 だから響は、降り続く雨の中、森の出口を目指してその歩みを止めない。
 決して、あの時のことや抱いた夢を忘れはしないけれど。
「まず、子供達と合流しないとね」
 ただ今は、真っ直ぐに、前へと。共に戦場を駆ける、家族の元へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・奏
瞬兄さん(f06558)と紺色の番傘を差して雨の森の中を歩きます。

母さんは1人で歩きたいようで、邪魔する訳にはいきませんしね。

瞬兄さんと並んで歩いていると物凄くミニマムサイズで大きな眼でぴょんぴょん跳ねながら歩いている「幼い頃の私」と同じくミニマムサイズでまだ髪が短い「幼い頃の兄さん」が手を繋いで仲良く歩いている姿が見えます。

ああ、懐かしいですね。小さい頃の私はお転婆が過ぎてどこかに行ってしまいそうな所を瞬兄さんにしっかり手を繋いで貰ってましたっけ。

え?今も小さい頃と変わらない?失礼ですね(でも笑う)さあ、手を繋いで森を抜けましょう。昔と同じ様に。


神城・瞬
義妹の奏(f03210)と共に黒い番傘を差して、雨の森の中を歩きましょう。

雨の道を行けば、霧の向こうに見えるのは今より物凄く背が低くて目が大きい「過去の自分」その隣にはお転婆そうな「過去の奏」がどこかに行ってしまわないようにしっかり2人は手を繋いで歩いています。

そうですね、幼い頃の奏は好奇心旺盛で目を離すとどこかに行ってしまいますからしっかり手を繋いでいましたね。・・・今も目を離すと遠くに行ってしまうのは変わらないと思いますが。今も昔もフォローが大変です。全く。

さあ、カクリヨファンタズムの森の中だから迷子にならないように今回も手を繋いで歩きましょう。早く母さんと合流しませんと。



 ひたすら止む気配のない雨が降り続ける森の中。
 くるりと咲くのは、紺と黒のふたつの番傘。
 いつもならばもうひとつ、傍に傘の花が咲いているはずだけれど。
(「母さんは1人で歩きたいようで、邪魔する訳にはいきませんしね」)
 どのみち、目的地は一緒であるし。見上げた雨空を舞う幽世蝶をきちんと追えば、母との合流も自然と果たせるだろうから。
 真宮・奏(絢爛の星・f03210)は母の気持ちを汲んで、神城・瞬(清光の月・f06558)とふたり、雨の森の中を歩く。
 雨の森は仄暗く、しとしとと降る雨音しか聞こえないけれど。
 こうやって瞬とふたり並んで歩くことは、奏にとって嬉しくもあるから。
 ぴしゃりとまた一歩進んでは、微か飛沫を上げる様子も、心なしか楽し気だ。
 そんな今の奏も楽しそうではあるのだけれど。
 雨の道をふたり行けば、漂う霧の向こう――小さな影が、ふたつ。
 ひとつはぴょんぴょんと跳ねていて、もうひとつは落ち着いた様子で歩いている。
 元気に跳ねるように進んでいるのは、物凄くミニマムサイズで大きな眼の女の子……そう、幼き日の奏で。
 同じくミニマムサイズでまだ髪が短くて、小さな奏の手を確りと繋いでいる男の子は……幼い頃の瞬。
 今は長身の瞬だけど、この頃は物凄く背も低くて。
 大きな目でお転婆そうな妹を見つめながら、逸れないように隣の小さな手を握っている。
 ……どこかに行ってしまわないように、って。
 そんな幼い頃の自分達の姿を目にしながら、ふたりは雨の中、言葉を交わし合う。
「ああ、懐かしいですね。小さい頃の私はお転婆が過ぎてどこかに行ってしまいそうな所を瞬兄さんにしっかり手を繋いで貰ってましたっけ」
「そうですね、幼い頃の奏は好奇心旺盛で目を離すとどこかに行ってしまいますからしっかり手を繋いでいましたね」
 それから瞬は、今は身長差のある妹をふと見下ろしながら、こう続ける。
「……今も目を離すと遠くに行ってしまうのは変わらないと思いますが」
 ――今も昔もフォローが大変です。全く……なんて、赤の瞳を細めながら。
 彼が冷静沈着で穏やかでフォロー体質になったのは、きっと、豪快で猪突猛進な母や妹を見て来たから。
 そんな瞬の言葉に、奏は一瞬、瞳をぱちりと瞬かせて。
「え? 今も小さい頃と変わらない? 失礼ですね」
 そうむうっとむくれたふりをしてみせようとするけれど、すぐに笑ってしまって。
「さあ、カクリヨファンタズムの森の中だから迷子にならないように今回も手を繋いで歩きましょう。早く母さんと合流しませんと」
 そう差し出された大きな瞬の掌を、嬉しそうに頷いて取ってから。
 ひらひら舞う幽世蝶を見逃さないように……小さな自分に負けずぴょこりと、奏は静かに降り続ける雨の中、傘をさして兄と歩き出す。
 ――さあ、手を繋いで森を抜けましょう。昔と同じ様に、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
※幼い主(弥彦)と共に、雨の庭で花見

折角の満開の桜が雨で散っていく
まだ人形だった自分は隣に座るだけだったけれど
もう少しで雨がやむからと、結局一晩中縁側にいた

弥彦は残念そうだったけれど、
来年こそはお花見をしようと約束してくれた
まだその頃はヤドリガミではなく、意識も曖昧だったが
いつもなら眠っている弥彦と一晩中いられた事や
来年もまた共にいると約束してくれた事が、おぼろげながらも嬉しかった、そんな風に思った気がする

そして翌年の春は約束通り桜を見た
そうやって……ずっと一緒に桜を見られると思っていた

けれど数年前からそれは叶わなくなり
今年も見れそうにない
……だけど、いつかはまた、共に。



 しとしととひたすら雨が降り続く、昏い森の中。
 ひらり舞う幽世蝶を追っていた桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)の青い瞳に刹那、はらり流れゆくのは桜の彩り。
 折角の満開の桜が、雨で儚くも美しく散っていくいろ。
 その彩と同じものを、カイは見たことがある。
(「まだ人形だった自分は隣に座るだけだったけれど」)
 そう、あの時……結局、一晩中縁側にいたのだ。
 もう少しで雨がやむからと、やっぱり今みたいに雨が降る桜空を、見上げながら。
 そして幼い主は残念そうだったけれど、でも、約束してくれた。
 ――来年こそはお花見をしよう、と。
 その時、カイは人形……『物』であって、まだその頃はヤドリガミではなくて。だから、意識も曖昧だったけれど。
 おぼろげながらも嬉しかった、そんな風に思った気がする。
 いつもなら眠っている弥彦と一晩中いられた事や、来年もまた共にいると約束してくれた事が。
 そして再び巡って来た次の春は、約束通り桜を見た。
 桜が散って季節が廻り、また桜が咲いて、やってくる春。
(「そうやって……ずっと一緒に桜を見られると思っていた」)
 けれど数年前から、それは叶わなくなって。
 今年も、見られそうにない。
 けれどカイは今だけ、止むことのない雨と散りゆく桜を幼い主と暫し眺める。
 これは、雨の森が視せる幻影。それは、わかっているのだけれど。
 でも――だけど。
 カイは幽世蝶を追って、歩き出す。
 ……だけど、いつかはまた、共に――そう、桜と雨がはらり儚く、静かに降る中を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鷹司・かれん
桐江さん(f22316)と
※メイン人格の花恋

番傘を借りて森の中へ

幼い自分が視えると聞きましたが…どの私でしょうね?
やがて4人の幼子が見え
1人は桐江さん?
私達は年齢も離れてるのに、幻は同い年くらいですね
問題は3人…三つ子の花恋と花音と花凛…ちょうどあの頃の

私達は三つ子でした
華族のお嬢様だった私達
ある時揃って誘拐され、男勝りな花凛と大人びた花音は、誘拐犯に対抗して暴れ…人質はひとりでいいと殺されて…
それを眼前で見た私の心は分裂し、死んだ2人の人格が生まれ

…などと身の上話をしてみたり
昔の話なので、そんなに泣かれても困りますよ
それより桐江さんの話も聞かせてくださいな?

…むしろ桐江さんの方が心配ですよ


光満・桐江
鷹司・かれんさん(f22762)と一緒に

2人で傘を差しながら森を歩いていると
小さな人影が……4人…?
しかも私のような子以外はみんな同じような見た目で…
かれんさんの小さい頃の姿、なのでしょうか?

と考えていた所に、かれんさんが小さなころのお話を聞かせてくれます

初めて聞いたその内容に、私は思わず泣いてしまって…
私が悪いわけじゃないのにいっぱい謝ってしまったりもして…

それに比べたら、私は実験好きな普通の子ですし…
…そういえば、その頃って、あんな姿でしたっけ…?

と、ゲームのNPCとして生まれた故の
「記憶はあるけど実際は経験していない」事からあやふやな気持ちになって
そこをかれんさんに心配されちゃうかも?



 しとしとと降り続ける雨の中、仲良くくるりと並んで咲くのは番傘の花。
 ぐるりと見回してみても、ただ雨が降り続いている、何の変哲もない静かな森。
 今は、互いがさしている番傘にぽつぽつと落ちる雨音を聴きながら、ふたりだけで歩いているのだけれど。
 鷹司・かれん(メイド探偵が見ています・f22762)はそっと銀髪を揺らし、微かに首を傾ける。
(「幼い自分が視えると聞きましたが……どの私でしょうね?」)
 今在る『私』であるのか、それとも『僕』なのか……はたまた、『俺』かもしれない。
 そんなことを思っていれば、隣を一緒に歩いていた光満・桐江(生徒会の魔女・f22316)の方が先に気が付く。
「小さな人影が……4人……?」
 いつの間にか薄っすらとかかった霧の中に見える人影が――4人。
 自分達の幼き姿が視えるとは、予知で聞いていたのだけれど。
 雨の森をゆくのは、自分とかれんのふたりだけのはずなのに、見える姿は4つ。
 そのうちのひとつは、自分のような子であるのだけれど。
(「しかも私のような子以外はみんな同じような見た目で……」)
 ひとりは、桐江の様な子。そして、あとの3人は……皆、同じに見えるほど似ていて。
 ふと桐江は、隣を歩くかれんへとそっと目を遣りつつも考える。
 ――かれんさんの小さい頃の姿、なのでしょうか? って。
 そしてかれんも、4人の幼子の姿を見つめてみる。
「1人は桐江さん? 私達は年齢も離れてるのに、幻は同い年くらいですね」
 自分の方が彼女よりも年上であるけれど、見える幼子たちは全員同じくらいちっちゃくて。
 それからかれんは、桐江に似た子以外の3人を見遣って思う。
(「問題は3人……三つ子の花恋と花音と花凛……」)
 ……ちょうどあの頃の、って。
 そう……眼前に現れたのは、小さい桐江と――そして、私と僕と俺、3人ともであったのだ。
 かれんはおもむろに、桐江へと告げ始める。
「私達は三つ子でした。華族のお嬢様だった私達」
 小さなころの、自分の話を。
 今は何故かひとり帝都で女給をやりながら探偵業を営んでいるかれんだけれど。
 華族の鷹司家の令嬢で……三つ子であった。
 けれど。 
「ある時揃って誘拐され、男勝りな花凛と大人びた花音は、誘拐犯に対抗して暴れ……人質はひとりでいいと殺されて……」
 脳裏に浮かぶのは、あの時のこと。
 3人だったのに、ひとりになってしまった過去。
 ……いや、正確に言えば、かれんがひとりではなくなった瞬間でもあったのだ。
 男勝りな花凛と大人びた花音はその時、誘拐犯に殺されたのだけれど。
「それを眼前で見た私の心は分裂し、死んだ2人の人格が生まれ……桐江さん?」
 ふとそう自分の身の上話をしていたかれんは刹那、金の瞳をぱちくりと瞬かせる。
「……すみません、かれんさん……そんな辛いお話、させてしまって……すみません……っ」
 何度もそう謝りながら、ぽろぽろと泣いてしまっている桐江の姿に。
 そんな、彼女が悪いわけではないのに、いっぱい、すみませんと泣きながら口にする桐江に。
「昔の話なので、そんなに泣かれても困りますよ」
 かれんはそう瞳細めてから、今度はこう逆に訊ねてみる。
「それより桐江さんの話も聞かせてくださいな?」
 ぐすんと泣いていた桐江は、その言葉に、ぐいっと涙を懸命に拭いながらも。
 ふと自分のことを思い返してみながら、問われた言の葉に返す。
「それに比べたら、私は実験好きな普通の子ですし……」
 けれどすぐに首を傾け、こてり。
 ……そういえば、その頃って、あんな姿でしたっけ……? って。
 そして桐江に生じるのは、何だかとってもあやふやな気持ち。
 だって彼女は、学園生活&ダンジョン攻略型MMORPG「スクール・オブ・レインボーカオス」で、生徒会長補佐を勤めるNPCとして生まれたのだから。
 覚束ない記憶やその朧げな心は、きっと――「記憶はあるけど実際は経験していない」から。
 そんなふわふわ不確かな感覚を抱く桐江を、かれんはじっと見つめる。
 雨の中見える4人の幼子を後目に、番傘を並んでさして歩きながら……むしろ桐江さんの方が心配ですよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

硲・葎
蒼くん(f04968)と。
こんな素敵な場所がカクリヨにあったんだね。
しとしと降る雨が幻想的……。
促されるまま一緒の傘に入って、
ゆっくり足元に気をつけて歩こう。
少し照れちゃうけど。顔赤いの気付かれてないよね!?
……あれは、小さい時のお兄ちゃん、と私?サムライエンパイアに居た時。私が剣道の稽古が嫌で。
うまく出来ずに怒られて、闇雲に飛び出して、危ないから戻ってきなさい、って言われても聞かずに、河原の秘密基地と呼んでた背の高い草むらの中で、1人で拗ねて泣いてたんだ。
「今なら言える。お兄ちゃん、心配かけてごめんね」
彼にに呼びかけられたら、頷いてついていく。
小さい頃の彼と今の彼を救いたいと思いながら。


戎崎・蒼
葎(f01013)と
雨が降ると聞いてはいたけれど、本当にずっと雨が止まずに降っているのだね
風邪をひくと悪いな
なるだけ濡れないように進もうか…ほら、葎も
自前の深張りの長傘を差して、葎も入るよう促す

アンティークの傘が雨を弾く中で見たものは幼い自分
…師の元に引き取られる前の、見窄らしい子供だった
生活するだけで大変だったのにも関わらず、僕はそれ以上に"家族"という存在を羨ましがった
葎の今は亡き兄との喧嘩も、僕にとっては微笑ましいもの

だからこそ、葎の掌から零れ落ちたその数々がとても哀しく感じた

…葎、行こう
何だか隣にいる彼女から少し寂し気な気配を感じて、声を掛ける
其処には確かに二人の幼い子供が、哭いていた



 激しい豪雨になるわけでもないけれど、でも、決して止む気配のない雨。
 昏く静かな森の中で耳を澄ましてみても、聞こえるのはただ雨の音だけ。
 けれど、ぽつぽつ葉を打つ音、ぴちゃんと地に弾ける音、風に揺れてざあっと鳴る音。
 そして傘をさしたなら、ぽたりぽたりと落ちる音。
 そんな数多の雨音を耳にしつつも、幽世蝶を追いながら。
「こんな素敵な場所がカクリヨにあったんだね」
 ――しとしと降る雨が幻想的……。
 そう雨の森へとぐるり視線を巡らせるのは、硲・葎(流星の旋律・f01013)。
「雨が降ると聞いてはいたけれど、本当にずっと雨が止まずに降っているのだね」
 戎崎・蒼(暗愚の戦場兵器・f04968)も葎の言葉にひとつ、頷くけれど。
 この雨の森を抜けるには、それなりに時間がかかるとも聞いているから。
 ……風邪をひくと悪いな、と雨が降り続ける森を見回した後。 
「なるだけ濡れないように進もうか……ほら、葎も」
 蒼は自前の深張りの長傘をさして彼女へと傾け、入るように促す。
 そして彼の声に、ぴしゃんと微か飛沫を上げて一緒の傘に入りながらも。
「ゆっくり足元に気をつけて歩こう」
 慎重にそろりとまた一歩踏み出しつつも、傘から少し出ている自分の肩に気付いて、少しだけ内側に身を寄せれば。
 傘を持ってくれている彼と距離が近くなったことにふと気付いて、ちょっぴりだけ照れてしまって。
 瞳をぱちり瞬かせた後、そうっと密かに頬を押さえる。
(「顔赤いの気付かれてないよね!?」)
 そんな葎が出来るだけ濡れないように傘をさしてあげながらも、蒼はいつの間にか在る、その存在に気付く。
 アンティークの傘が雨を弾く中で見たもの。それは――幼い自分。
 雨の森でその姿を目にするとは、予知で聞いてはいたけれど……師の元に引き取られる前の、見窄らしい子供であった。
 そしてふと、蒼は思い出す。
 生活するだけで大変だったのにも関わらず、羨ましがったものがあったことを。
 それは――。
「……あれは、小さい時のお兄ちゃん、と私?」
 刹那、そうぽつりと漏れるのは葎の声。
 また彼女も同じ様に、小さな自分の姿を雨の中に見ていた。
(「サムライエンパイアに居た時。私が剣道の稽古が嫌で」)
 だから、うまく出来ずに怒られて、闇雲に飛び出して。
(「河原の秘密基地と呼んでた背の高い草むらの中で、1人で拗ねて泣いてたんだ」)
 ……危ないから戻ってきなさい、って言われても聞かずに、って。
 あの時は剣道の稽古も、怒られたことも、嫌だったし。お兄ちゃんと喧嘩したことも、寂しくて嫌だった。
 でも、小さかった自分は、拗ねていなくなって泣くことしか、できなかったんだけれど。
 葎は背中を丸くしてひとり泣いている小さな自分を見つめつつも……今なら言えると、そう思う。
 ――お兄ちゃん、心配かけてごめんね、って。
 そして、見窄らしい子供であった頃の蒼が羨ましがったもの。
(「葎の今は亡き兄との喧嘩も、僕にとっては微笑ましいもの」)
 生きてゆくだけで大変だったはずなのに……蒼は、羨望を抱いていた。"家族"という存在に。
 けれど……いや、だからこそ、とても哀しく感じたのだ。
 葎の掌から零れ落ちた、その数々が。
 それから改めて、彼女が寒くならないように。
「……葎、行こう」
 握る傘を傾けつつ、蒼はそう声を掛ける。
 何だか隣にいる彼女から、少し寂し気な気配を感じて。
 葎は呼ばれた声に、こくりと頷いてから。
 まだまだ止む気配のない雨の中、彼に並んでついていく。
 小さい頃の彼と今の彼を救いたいと……そう思いながら。
 しとしとと、ただひたすら降り続ける雨。
 そしてふと一度だけ振り返った彼が、雨の森で視たもの。
 其処には確かに――二人の幼い子供が、哭いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サン・ダイヤモンド
【森】ブラッドと相合傘

色鮮やかな傘、楽しい柄の傘
確かにどれも素敵だったけれど
「僕はこれがいいの」
添うて、愛籠めた眼差しで微咲んで
「だってあなたと同じ色」

番傘の話には
「今の僕達にぴったりだね」
誓いを形にした僕達に
傘見上げて加護を願う


ひとりぼっちの小さな彼に胸が痛んで
大丈夫だよ、と思わず傍に寄ろうとしたら

『小さな僕』が僕の脇をすり抜けて
持っていた大きな葉っぱの傘を『小さな彼』へと差し出して
「大丈夫だよ」って笑ってた

その光景にホッとして
穏やかな彼の様子にもホッとする

「――愛しい人、僕の光
いつでも、僕の心はあなたの傍に」

揃いの指輪をつけた左手で傘を持った彼の手支え

ずっとずっと二人で征こう
きっと、大丈夫


ブラッド・ブラック
【森】サンが選んだ1本の大きな黒い番傘を手に森を征く

「もっと他に綺麗な傘もあっただろう?」
本当に此れで良かったのか、と

愛し子の咲みに心の中が温まる
「――番傘は末広がりで縁起が良いとされている
降り注ぐ困難から身を守り、一つ屋根の下幸せであるように、との意味もあるそうだ」

そうだな、と眼光和らげ

ふと聞こえた啜り泣き
見れば昏い木の影に、一際黒いヘドロの様な塊が
其れは桃色の瞳からポロポロと透明な雫を零していて
嗚呼、あれは幼き日の俺だ
誰にも愛される事無く、傷付き、孤独に震え泣いていた


小さなお前が過去の俺を慰める

「以前もこんな事があったな(幼稚園)
あの時、俺の幼心は確かにお前に救われたんだ

ありがとう、サン」



 昏い森に、しとしとと降り続ける雨。
 それは一見、激しいものではなく、大した雨ではないように思えるけれど。
 雨粒を溜めては零す森の木々の様に、気が付けばあっという間にずぶ濡れになってしまうだろう。
 止む気配のないそれを凌ぐ傘がなければ。
「もっと他に綺麗な傘もあっただろう?」
 ……本当に此れで良かったのか、と。
 すぐ隣をゆくサン・ダイヤモンド(黒陽・f01974)が決して濡れないようにと、握る番傘を傾けつつも。
 ブラッド・ブラック(LUKE・f01805)が、改めてそう訊ねれば。
「僕はこれがいいの」
 添うて返ってくるのは、迷いなき声と愛籠めた眼差しの微咲み。
「だってあなたと同じ色」
 色鮮やかな傘、楽しい柄の傘……確かにどれも素敵だったけれど。
 でもサンは、この番傘がいいのだ。ブラッドのいろをしているこの傘が。
 雨に咲くあなた色に守られ、包まれているようで。
 そんな愛し子の咲みを見れば、ブラッドの心の中も温まって。
 雨の肌寒ささえも感じないように、ぽかぽかしてしまう。
 それからふと、差している己と同じいろを見上げてから。
 ブラッドは傘に落ちる雨音と共に、こう紡ぐ。
「――番傘は末広がりで縁起が良いとされている。降り注ぐ困難から身を守り、一つ屋根の下幸せであるように、との意味もあるそうだ」
 降り注ぐ困難から守ってくれている、雨に咲かせた番傘。
 そしてそれは確かに、一つ屋根の下に在る幸せのようで。
「今の僕達にぴったりだね」
 ……誓いを形にした僕達に、って。
 そうサンも傘を見上げて加護を願う。
 冷たい雨から自分を守ってくれている彼のいろを、金の瞳に重ねて。
 だって、紡いでくれたから。絶対に独りにはしないって。
 大好きなあなたと永遠に、って……ふたり、誓い合ったから。
 そんなサンを、眼光和らげた薔薇色の瞳で見つめて。
 ブラッドもこくりと頷いて返す――そうだな、と。
 サンが濡れないように、確りと傘を握りしめながら。
 けれどふと、ブラッドは視線を雨の森へと向ける。
 雨音と共に聞こえて来たのは、誰かが啜り泣く声。
 そして雨の森の中、瞳凝らせば――昏い木の影に在ったのは、一際黒いヘドロの様な塊。
 それはまるで、この雨に延々と降る雨の様にポロポロと……桃色の瞳から、透明な雫を零していて。
 その黒い塊が何か、ブラッドはよく知っている。
「嗚呼、あれは幼き日の俺だ」
 誰にも愛される事無く、傷付き、孤独に震え泣いていた――幼き日の自分の姿。
 タールでありながら何にも変身する事ができなくて、ただ地を這うばかりで、爪弾きにされて……あんな風に、ひとりぼっちで泣いていた。
 そんな冷たい雨の中、ひとり泣いているその姿を見れば、ぎゅっとサンの胸は痛んで。
 大丈夫だよ、って思わず傍に寄ろうとしたけれど。
 泣いている彼を雨から守ったのは、大きなサンではなくて。
 スッと脇をすり抜け近寄った『小さなサン』が差し出した、大きな葉っぱの傘。
 そして『小さなサン』は笑って『小さなブラッド』へと紡ぐ――大丈夫だよ、って。
 そんな眼前の光景にホッとして。
「以前もこんな事があったな」
 隣でそれを見つめる彼を見上げれば、サンはもう一度ホッとする。
 彼の薔薇色の瞳が、穏やかないろを咲かせていたから。
 そしてブラッドは、過去の自分を慰める小さな天使を見つめた後。
「あの時、俺の幼心は確かにお前に救われたんだ」
 今度は、同じ傘の下……すぐ隣に在る愛し子の姿を瞳に映し、告げる。
 ――ありがとう、サン、って。
 そんな傘を持つ彼の手をそっと支えるのは、揃いの指輪をつけた左手。
「――愛しい人、僕の光。いつでも、僕の心はあなたの傍に」
 小さな自分たちもふたり笑い合っているから、もう大丈夫。
 そして自分達も同じ様に――きっと、大丈夫だから。
 サンは笑み咲かせ、誓いの円環を重ね合わせたまま。
 雨の森をブラッドとふたり、並んで歩き出す。
 ――ずっとずっと二人で征こう、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荻原・志桜
🌸🐺
雨の中歩くのも情緒溢れていいね
だけど不思議な力が漂ってる
お姉ちゃんも気を付けて

天色に桜が舞う番傘を借りて
姉と慕う彼女の隣を歩く

ひらり舞う幽世蝶
其処に居たのは隣の彼女を幼くしたような子供

あれは子供の頃のお姉ちゃん?
幻惑ということは
うん、わたしにも現れるよね

気配を感じて横を向けば黒髪の幼い少女
ぎゅっと握りしめた絵本はボロボロで
自分と同じ翡翠の眼からは悲しみを滲ませていた

辛くて悲しくて泣いてばかりだったね
イジメられて、魔法を否定されて苦しくて
でも諦めなかったよ
たくさんの人たちに助けられて

キミの、わたしの願いは叶えられたの
魔女になれたよ

うん、大丈夫
わたしたちはひとりじゃないから
行こ、お姉ちゃん


ディアナ・ロドクルーン
🌸🐺
素敵な温泉郷に行くまでの道のりが大変そうね…
でも、志桜と一緒ならあっという間についちゃうわ
雨に濡れて風邪をひいたら大変、傘を借りていきましょう

幽世蝶を見失わないように進みましょう

(昔の自分の姿。無表情でくすんだ瞳をしていた自分が訴えかけてくるようで)

『雨に濡れるのはキライ

躰の芯まで凍えてしまう だから キライ

血が 雨と一緒に 流れていく

…あの時とっても痛かった ね?』

ええ、ええ。そうね
でも今は、痛くない
寒くもない だから、もう大丈夫。

…志桜…貴方も見えた?大丈夫?


そうね、一人じゃない。
一人じゃないというだけでどんなに心強い事か。

行きましょう志桜。森を抜けたらお楽しみの湯屋よ



 しとしとと、ただひたすら止む気配なく降り続ける雨。
 この森を抜ければ、ほかほかあったかい温泉が楽しめる湯屋へと辿り着けという話だが。
「素敵な温泉郷に行くまでの道のりが大変そうね……」
 ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)は、しんなりとなった尻尾に耳をぺたりとさせ、そう溜息と共に零すけれど。
「でも、志桜と一緒ならあっという間についちゃうわ」
 雨に濡れて風邪をひいたら大変、そう借りた傘の花をくるりと雨空に咲かせて。
 荻原・志桜(春燈の魔女・f01141)も、天色に桜舞う番傘に落ちる雨音を聞きながら。
「雨の中歩くのも情緒溢れていいね」
 ぴちぴちちゃぷちゃぷ、姉と慕う彼女の隣を並んで歩く。
 そんな雨の森は、とても静かだけれど。
 志桜は昏い森の先へと翡翠の視線を向け、紡ぐ。
「だけど不思議な力が漂ってる。お姉ちゃんも気を付けて」
 ディアナもそんな彼女の声に、こくりと頷いてから。
 雨が落ち続ける天を仰ぎ、進んでゆく。
「幽世蝶を見失わないように進みましょう」
 雨翔ける蝶々たちがひらり舞う、その導きに従って。
 そんな幽世蝶たちを追って、雨の森の奥へと進みゆけば。
 志桜はふと一瞬だけ、足を止める。
 しとしとと降る雨の中に佇む、小さな人影を見つけて。
 そしてすぐに気付く。其処に居るのは、隣の彼女を幼くしたような子だということに。
『雨に濡れるのはキライ 躰の芯まで凍えてしまう だから キライ 血が 雨と一緒に 流れていく』
 無表情でくすんだ瞳。
 そんな昔の自分が、傘を打つ雨音のように……ぽつりぽつりと、訴えかけてくるようで。
『……あの時とっても痛かった ね?』
「ええ、ええ。そうね」
 ディアナは、紡がれる言葉を肯定してあげてから。
 小さな自分に、教えてあげる。
「でも今は、痛くない 寒くもない」
 ――だから、もう大丈夫、って。
「あれは子供の頃のお姉ちゃん?」
 ……幻惑ということは、と。
 そう小さな彼女を見つめ紡いだ刹那、志桜はふと視界の端に映ったもうひとつの小さな影に、そっと苦笑する。
 ……うん、わたしにも現れるよね、って。
 そして、気配を感じて横を向けば――黒髪の幼い少女の姿が。
 ぎゅっと握りしめている絵本は、何度も何度も読んでいたからボロボロで。
 自分と同じ翡翠の眼に滲ませているそのいろは、悲しみ。
「辛くて悲しくて泣いてばかりだったね。イジメられて、魔法を否定されて苦しくて」
 ぽろぽろと、天から落ちる雨の様に泣いていた幼い頃の自分。
 だけど、志桜はそんな悲しそうな自分に、今なら胸を張って言える。
「でも諦めなかったよ。たくさんの人たちに助けられて」
 小さな自分が、泣きながらも諦めずに頑張ったから。
 そして何より、いっぱい色々な人に助けて貰ったから……だから。
「キミの、わたしの願いは叶えられたの。魔女になれたよ」
 志桜も小さな自分に教えてあげる。
 桜色の魔法を咲かせる魔女に、ちゃんとなれたのだと。
 そして勿論。
「……志桜……貴方も見えた? 大丈夫?」
 声を掛けてくれた姉と慕う彼女も、いつだって自分を助けてくれる大切な人だから。
「うん、大丈夫」
 こくりと志桜は頷いて、ディアナに笑んで返す。
 ――わたしたちはひとりじゃないから、って。
「そうね、一人じゃない」
 どうしても濡れてしまう昏い雨の森をひとりでゆくのは、きっと辛かっただろうけれど。
(「一人じゃないというだけでどんなに心強い事か」)
 でも今は、あっという間に森を抜けて。
 雨だってそのうち上がるだろうって、そう思えるから。
「行こ、お姉ちゃん」
「行きましょう志桜。森を抜けたらお楽しみの湯屋よ」
 だからふたりは、幼い自分たちにわかれを告げて歩き出す。
 だって、わかっているから。あの子たちの未来は、ひとりじゃないってことが。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
手は濡れてしまいますが、倫太郎はいつも通り繋いでいたそうで
それはこれから何を見せられるのか分かっているからなのかもしれない
借りた傘を握るのとは別の手を繋いで歩く

遠くに見える姿は己の姿
ヤドリガミとして肉体を得た時から姿は変わっていない
それなのに見えた姿は何処か幼さを残していて

……そうだ、人と同じく年を重ねていけたのならと
まだ軽く結わえるしかない髪を結び、それも時を経て伸びていく
人と変わらず成長していけたのなら……違っていたのだろうか

考える内に手を強く握られて我に返る
隣を見遣れば何処か堪えているような姿
その表情から何か見せられたのだろうと気付いて名を呼ぶ

倫太郎、……もう、大丈夫ですよ


篝・倫太郎
【華禱】
繋いだ手は濡れるけど……
それでも夜彦とは手を繋いで
借りた傘をさし、幽世蝶に導かれ

そして、目の前を駆けていくのは
神隠しに遭う直前の、粗末な着物を着た幼い自分

あぁ、これは知ってる
往ったらだめだ

声にならない声
冒険と称して山の渓谷を辿って足を滑らせる自分
血に塗れて、沈む夕日を見上げてる
虚ろな、死にかけている子供

独りで死ぬのだと思ったけど
別に怖くはなかった、そんな情景……

ふっとそれが消えたのは
幼い俺が意識を失ったからか
今は、一人で死ぬのが堪らなく怖い

夜彦の視た幻
人と同じように老いたかった?
でも、だめだよ
そうだったなら、俺達は出会えなかったんだから

そう告げて、ゆっくりと蝶を追おう

うん、もう大丈夫



 ひたすら降り続ける雨は、決して激しいものではないけれど。
 それでもふたり手を繋いでゆけば、その手は濡れてしまう。
 でも、いつも通り繋いでいたそうだと……それが、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)には分かったから。
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)の手を迷わず取り、雨空に傘の花を咲かせて。
(「それはこれから何を見せられるのか分かっているからなのかもしれない」)
 そう思いながらも夜彦は、傘を握る反対の手を確りと彼と繋ぎ、雨の森を並んで歩く。
 そして、ひらり舞う幽世蝶を追って森の奥へと進んでいれば。
 ふと倫太郎の目の前を駆けていくのは、小さな子供。
 その姿を見遣り、倫太郎は思う。
(「あぁ、これは知ってる」)
 それは、粗末な着物を着た幼い自分――神隠しに遭う直前の。
 そして叫ぶのは、声にならない声。
 ――往ったらだめだ、と。
 あの時、小さな自分に宿ったのは冒険心であった。
 けれどその冒険の結末は……山の渓谷を辿って、足を滑らせて。
 ただ谷底で、沈む夕日を見上げることしかできなかった。流れ落ちる己の血に塗れながら。
 そう……目の前に在るのは、そんな虚ろな、死にかけている子供。
(「この時、独りで死ぬのだと思ったけど」)
 でも、別に怖くはなかった。
 そんな、あの時の情景……。
 そう見つめていたものが、ふっと突如消え失せる。
(「幼い俺が意識を失ったからか」)
 今と違って、言葉数も少なかった幼い頃の自分。
 ひとりで死ぬことに関しても、あの時は大して怖くはなかった……今と違って。
 だって、今は怖くて仕方がないから。
 ――今は、一人で死ぬのが堪らなく怖い。
 そんな倫太郎の隣で、夜彦も視界に入ってきた人影を見遣る。
 遠くに見える姿は己の姿だと、それは分かったけれど。
 ヤドリガミとして肉体を得た時から姿は変わっていないはずなのに……見えた姿は何処か幼さを残していて。
 まだ短い髪を揺らすその姿に、夜彦は思う。
(「……そうだ、人と同じく年を重ねていけたのならと」)
 まだ軽く結わえるしかない髪を結び、それも時を経て伸びていく。
 人として在れば、それは当然のことなのだけれど。
 実際に、自分はそれを経て今の姿と成ったわけではなくて。
「人と変わらず成長していけたのなら……違っていたのだろうか」
 思わずそう、零れ落ちる言の葉。
 その声を聞いて、倫太郎はぎゅっと彼の手を強く握り締め、問う。
「人と同じように老いたかった?」
 けれどこたえを聞く前に、ふるりと首を振る。
 ――でも、だめだよ、って。
「そうだったなら、俺達は出会えなかったんだから」
 そして握られた手の感触と温もりに、その声に。
 考えを巡らせていた夜彦は我に返って。
 隣を見れば……何処か堪えているような姿。
 だから、すぐに分かったのだ。その表情から、何か見せられたのだろうと。
 そう気付いたから――夜彦は、彼の名を呼ぶ。
「倫太郎、……もう、大丈夫ですよ」
 その声に、倫太郎もこくりと頷いて。
 いつも通り手を繋いだまま、並んで一緒に歩き出す。
 瞳に残る赤を塗り替えてくれた、翡翠のいろを見つめながら。
 ――うん、もう大丈夫、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

瑠璃色の傘を借りて森へ、見えた幻影は幼い時の自分、雨の中をはしゃいで駆けている。

幻影は何かに気づくと走ってそれの足元へ近づいた、何度も会っている無口の竜人の猟兵さんだ、でも私が彼と初めて会ったのは自分が猟兵になってからのはず、もしかして、もっと前に会っていた?

いつの間にか幻影がもう一人増えていた、私に似ている色合いの人派竜人の大人の女性、誰?あなた達は誰なの?私の何?

三人を追おうとしたけど止められた、本物の猟兵さんだ、あの幻影は彼にも見えているのだろうか?

『貴方は誰なの?』

彼は何も答えてくれなかったけど幻影がしていた様に私の手を握ってくれた。

アドリブ歓迎です。



 雨が降り続ける昏い森に咲くのは、瑠璃色の傘の花。
 しとしとと降る雨は止みそうもなくて。ひらり雨空に舞うのは、幽世蝶たち。
 そんな蝶々たちを追いながら、雨の森を歩いていたサフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)だけれど。
 ぴちゃりと楽しそうに雫を躍らせながら雨の中をはしゃいで駆けているのは、ひとりの小さな女の子。
 見えた幻影は、そう……幼い頃の自分の姿。
 いや、見えたのは、もうひとつ。
 幻影の自分はふと何かに気づくと、ぴちゃぴちゃと走って『それ』の足元へと近づく。
 そしてサフィリアも、その姿を知っていた。
(「何度も会っている無口の竜人の猟兵さんだ」)
 でも同時に、大きく首を傾けつつも思う。
(「でも私が彼と初めて会ったのは自分が猟兵になってからのはず」)
 それは、白い鱗を持つ初老の竜派竜人の男性の姿。
 自分の記憶では、彼とは猟兵になってから会ったと思っていたけれど。
 サフィリアは眼前の自分と彼を見つめながら、こうも思う。
 ――もしかして、もっと前に会っていた? と。
 そう思考を巡らせ、ふと顔を上げれば……いつの間にかもう一人増えている幻影。
 それは自分に似ている色合いの、人派竜人の大人の女性で。
 サフィリアの口から、問いが零れ落ちる。
「誰? あなた達は誰なの? 私の何?」
 そんな三人を追おうとしたけど、ふとそれを止めてくれたのは本物の猟兵さん。
(「……あの幻影は彼にも見えているのだろうか?」)
 サフィリアは、そして訊ねてみる――『貴方は誰なの?』って。
 それに彼は何も答えてくれなかったけれど。
 伸ばしたその手で、手を握ってくれたのだった。幻影がしていた様に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

風見・ケイ
夏報さん(f15753)と
薄紫の傘

鍵っ子でひとりの家に帰りたくなくて、暗くなるまでうろついていた
知らない路地裏を調査、野良猫を尾行、そんな小さな冒険
雨の日は歩きづらくて猫もいない
だからあまり好きじゃなくて
――あんな風に、つまらなそうに歩いてた

この頃は髪を伸ばしていたっけ
あの子が……でも、射るような視線がちょっとカッコいいかも
それはお互い様です……ほら、私(小)も俯いて、不貞腐れてるし

(工事現場や路地裏は必ず覗き込むし、知らないものがあれば気になって仕方ない)
(そんな私が彼女を見つけるのは必然で、その姿に数刻迷い――)

はい……森を抜ければ、湯屋が待ってます
(この先は私が見るものではない気がした)


臥待・夏報
風見くん(f14457)と
傘は装備品で

僕にも、こんな雨に降られた思い出があったかもしれない
下らないことで兄貴たちと殴り合いの喧嘩して
家を飛び出して、傘も持たずに、工事現場で隠れて遊んでた夜
うん、ちょうどあんな風に――

うわっ僕(小)めちゃくちゃ目付き悪っ
泥だらけだし傷だらけだし、不機嫌と無愛想の権化みたいな子供だな……
は、恥ずかしいからあんまり見ないでよお
フォローしなくていいってばあ

(何か言い返そうと目をやった、長い髪がきれいな彼女は)
(泥まみれの僕をしきりに気にしているように見えて)

――行こう、風見くん
幻に惑わされると、森に迷っちゃうって話でしょう

(その続きを見ようとは、あんまり思えなかった)



 静寂の昏い森にただ響くのは、咲かせた傘を打つ雨音。
 風見・ケイ(星屑の夢・f14457)がちらりと目を向けた先には、見覚えのある小さな夜空。
 月が浮かび、ひとすじの星が流れる藍色の夜。
 そんな臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)の差している傘に、ケイは目を遣るだけにしていたけれど。
 綺麗でしょう、なんてかわりに誇らしげに紡いだ彼女と共に、雨の中を歩く。
 雨に濡れないよう、薄紫の傘を差して。
 ひらり群れて舞う幽世蝶を追えば、迷うことはないというけれど。
 ひたすら降り続ける雨の森を通り抜ける道すがら、視るのだという。
 この場に在るはずのない、自分の幻を。
 ケイは降り続く雨の森をゆきながら、ふと思い返すように呟きを零す。
「雨の日は、あまり好きじゃなくて」
 ――あんな風に、つまらなそうに歩いてた、って。
 よく傘を忘れてずぶ濡れになることもあったけれど、くるり手持無沙汰なのを誤魔化すかのように雨に咲かせた傘を回して。
 きょろりと周囲を見回しては、ただ雨だけが降る風景を、やっぱりつまらなそうに歩く少女。
 慎ましくも穏やかな日常は嫌いではなく、むしろ好きだったけれど。
 でも家に帰ってもひとりなのは、分かっていたから。 
「鍵っ子でひとりの家に帰りたくなくて、暗くなるまでうろついていた」
 家でひとりでいるよりも、知らない路地裏を調査したり、野良猫を尾行したり……そんな小さな冒険が楽しかったあの頃。
 けれど、雨の日は歩きづらくて猫もいなくて。ひとりであることを、ふとした瞬間思い出してしまう。
 でもそれでも、何かないかと、視線を巡らせて歩いている……そんな、小さな自分の姿。
 そして――もうひとり。
「僕にも、こんな雨に降られた思い出があったかもしれない」
 そう紡いだ夏報の瞳に映ったのは、傘も持たずに駆ける小さな少女の姿。
 ぴしゃりと踏んだ水溜まりから飛沫が上がるのだって、全く気にかけることなく。
 その姿が吸い込まれていったのは、誰もいない夜の工事現場。
 どこにでもある海と雪の町は昔の自分にとってつまらない場所であったし。
 下らないことで兄貴たちと殴り合いの喧嘩をして家を飛び出した小さい自分は、行くところが他になかった。
 ……だから、そう。
「うん、ちょうどあんな風に――」
 そこまで言って、夏報は思わず瞳をぱちりと瞬かせてしまう。
「うわっ僕、めちゃくちゃ目付き悪っ」
 いや、愛想の良い子だったとは思ってはないし。
 激しい兄妹喧嘩を繰り広げた後ではあるとはいっても。
「泥だらけだし傷だらけだし、不機嫌と無愛想の権化みたいな子供だな……」
 思った以上に小さな自分はぶすくれていて、可愛げがあるとは言えない姿。
 ケイはそんな、すぐ傍に在る彼女を小さくしたような少女の姿を見遣って。
「あの子が……でも、射るような視線がちょっとカッコいいかも」
「は、恥ずかしいからあんまり見ないでよお」
「それはお互い様です……ほら、私も俯いて、不貞腐れてるし」
 依然として口をとがらせつつも歩いている、小さな自分に改めて目を向ける。
 ……この頃は髪を伸ばしていたっけ、と雨に濡れた長い髪を見つめながら。
 けれどそう言われてもやはり、無愛想にも程がある自分の姿は恥ずかしくて。
「フォローしなくていいってばあ」
 夏報が何か言い返そうと目をやった、その時。
 長い髪がきれいな彼女の足が、ふと一瞬立ち止まったことに気付く。
 そしてその視線の先には――泥まみれの自分。
 雨は好きではなかったけれど、でも冒険心は失われてはないから。
 工事現場や路地裏は必ず覗き込んでいたし、知らないものがあれば気になって仕方ない性分。そんな小さなケイが、工事現場で遊んでいた小さな夏報を見つける事は、思えば必然で。
 でもしきりに気にしているようであるけれど、その姿に数刻迷って、そして――。
「――行こう、風見くん」
 夏報はそう紡ぐと、降り止む気配のない雨の中、再び歩き出す。
 ……幻に惑わされると、森に迷っちゃうって話でしょう、って。
 その声にケイもこくりと頷いて、並んで森の奥へと進みゆく。
「はい……森を抜ければ、湯屋が待ってます」
 その続きを見ようとは、あんまり思えなかったし。
 この先は――自分たちが見るものでは、ない気がしたから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壱織・彩灯
【黒緋】

傘など要らぬ
濡鴉にでも成ってみせようか
下駄で雨雫を跳ねさせからころり
ほら、レンもおいで

雨の狭間に映った懐かしき者
斯様に幼姿を視るはいつ振りか
なんじゃ、不愛想なこと
周りは遜る同胞、重宝と畏怖に塗れて
随分とふてぶてしい 全く我ながら可愛くない
…だが、ほら、其処の傲慢な俺は
友達になってくれそうなわんこを見つけたようだ
俺と遊ぼう、と竜を供する彼へ手を差し伸べ

俺はきっとずうと昔から
対等な友人が欲しかった
願い乞うは本当は其れだけかもしれん
…なに、今となっては爺の戯言だが
ふ、はは、そうさな
黒に咲く緋色の華よ
とうにレンは友だぞ

鬼灯の鴉が鳴いて示す先に蝶が揺らめき
レン、征くぞ
未だ遊んでくれるんじゃろう?


飛砂・煉月
【黒緋】

オレもハクも傘はいーらない
濡れるならオレも一緒にってさ
彩灯が招くままに着いていく
雫の宴も偶には悪くないでしょ

見えた姿に見覚えがない、でも解る
アレは、オレ
小さい頃に自分の姿なんて見たこと無かった
でもあの黒は、緋色は、鎖は、オレの…
笑ってた事なんて無かったのに、楽しそうに笑ってる
…噫、そっか
其処のオレは鬼の友達を見つけたんだね
あっは、ハクの大きさはその侭だから
ハクが大きいみたい

…別に、遅くないんじゃないの?
隣に笑う、咲う
戯言なんかじゃなくて
種族も何もかも違うけど
同じ色を持つ友達、なれない?

白銀の竜も鴉と共に鳴いて舞う蝶が揺らり
うん、行こっか彩灯
もっちろん、遊ぼ
だって未だ未だ足りないでしょ?



 しとしとと天から落ちてくる雨は、一向に止みそうもない。
 いや、きっと延々と静かに降り続くのだろうと、わかっているけれど。
「濡鴉にでも成ってみせようか」
 ……傘など要らぬ、と。
 雨雫を跳ねさせ、からころり。下駄を鳴らしながら歩む壱織・彩灯(無燭メランコリィ・f28003)は、ふわり雨露纏った髪を微か躍らせて。
「ほら、レンもおいで」
 視線向けた彼を招くように声を掛ければ。
「オレもハクも傘はいーらない。濡れるならオレも一緒にってさ」
 ……雫の宴も偶には悪くないでしょ、なんて。
 そう笑う飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)とハクだって勿論一緒に、濡狼と濡竜になるに決まっている。
 そんなむしろはしゃぐかのように雨の森をゆき、幽世蝶を追うふたりとハクであったけれど。
 彩灯は雨の狭間に映ったその姿に、赤の彩を灯す瞳をふと細める。
「斯様に幼姿を視るはいつ振りか」
 それは、懐かしき者――幼き己であったのだけれど。
 周りは遜る同胞、重宝と畏怖に塗れて。
 眼前に視えるその姿をまじまじと見つめ、そして彩灯は続ける。
「なんじゃ、不愛想なこと」
 ……随分とふてぶてしい、全く我ながら可愛くない、と。
 逆に煉月は、いつの間にか現れた小さなその姿に、小さく首を傾ける。
 ……見えた姿に見覚えがない、と。
 でも、解るのだ。
「アレは、オレ」
 小さい頃に、自分の姿なんて見たこと無かったけれど。
「でもあの黒は、緋色は、鎖は、オレの……」
 目の前にいるのは、幼い頃の自分の姿。
 見たことはなくても、それが分かったのだけれど。
 煉月はもう一度、首を傾げる。
 だって、小さな自分は、笑っていたから。
「笑ってた事なんて無かったのに、楽しそうに笑ってる」
 けれども、その理由が煉月にはすぐにわかったのだ。
 この森が視せるのは、自分だけど自分ではない自分。
 過去の自分の姿であって、でも過去の自分ではないから。
「……だが、ほら、其処の傲慢な俺は、友達になってくれそうなわんこを見つけたようだ」
「……噫、そっか。其処のオレは鬼の友達を見つけたんだね」
 俺と遊ぼう、と竜を供する彼へ手を差し伸べて。
 そんな彼の言葉に頷き、嬉しそうに駆け寄る姿。
「あっは、ハクの大きさはその侭だから、ハクが大きいみたい」
 そう笑う煉月に笑み返し、そして彩灯は天から降る雨のように、ぽつりと言の葉を落とす。
「俺はきっとずうと昔から、対等な友人が欲しかった」
 幼子であったのに、子供で在れなかった自分が願い乞うたこと。
 ……本当は其れだけかもしれん、なんて。
 そう紡いでから、彩灯は瞳細める。
「……なに、今となっては爺の戯言だが」
「……別に、遅くないんじゃないの?」
 煉月は、見た目は到底爺なんて思えぬそんな彼を見つめ返し、再び首を傾けてから。
 隣の彼と一緒に……笑う、咲う。
「戯言なんかじゃなくて、種族も何もかも違うけど」
 ――同じ色を持つ友達、なれない? って。
 その言の葉に、彩灯は一瞬ぱちりと瞬いた後。
「ふ、はは、そうさな。黒に咲く緋色の華よ」
 友達になってくれたわんこへと、こう紡ぐ。
 ――とうにレンは友だぞ、って。
 そして鬼灯の鴉と白銀の竜が鳴いて示す先、幽世の蝶々が揺らめく天を仰いで。
「レン、征くぞ」
「うん、行こっか彩灯」
 ふたり並んで、ぴちぴちちゃぷり。雨の森を歩き出す。
「未だ遊んでくれるんじゃろう?」
「もっちろん、遊ぼ」
 童心に返ったかように……いや、大きくなった今の方が、きっと子供のようであるに違いない、なんて思いつつも。
 煉月は隣をゆく友とずぶ濡れになりながら、笑って返す。
 ――だって未だ未だ足りないでしょ? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
森の色に紛れる番傘をお借りして。
靴には滑り止めを施して。
外套には撥水も施してあるから、森を行くのは苦じゃない。
道のりは長いですし
…『アレ』見続けるの、億劫ではありますが!

本当の夢幻。
アレは、五つくらい?
その頃…僕はもう、戦場に居たのだから。

傍らには金髪の女性。
真新しい傘を手に、長靴でくるりと回る子供は笑顔で。
彼女も笑っていて。
少し離れた後ろを、やっぱり楽しげに歩いてる、
よく知る顔…
僕を、拾った男。

人非人と自覚してる僕ですけどねー。
同じ見るなら、まだ小間使いで死線を駆け回ってた現実の方が良かったなー。
何の意味があるかも解らない。
こんな…ありもしない、望みすらしない光景よりは。

あ。これ、精神攻撃?



 ただ、しとしとと雨が降り続けるその森は、戦場にはならないとは聞いてはいたのだが。
 どうしても性分からから、選んだ番傘は森に紛れるようないろ。
 雨の中を歩くことは、気が進まないと言う人も少なくはないだろう。
 だがクロト・ラトキエ(TTX・f00472)にとっては、何ら森を行くのは苦ではない。
 靴には滑り止めを、外套には撥水も施してあるから。
 そんな長い道のりをゆく、準備は万端であるのだけれど。
 彼にとって気乗りがしないこと、それは――。
 ふと眼前に現れた人影に、クロトは思わず苦笑する。
(「……『アレ』見続けるの、億劫ではありますが!」)
 それは、本当の夢幻。
「アレは、五つくらい?」
 眼前に在るのは、幼い姿の自分。
 けれど、小さい自分が在った場所は。
(「その頃……僕はもう、戦場に居たのだから」)
 すでに、戦場であった。
 そんな小さな自分の傍らにいるのは金髪の女性。
 真新しい傘を咲かせて、長靴でくるりと回る子供は笑顔で、彼女も笑っていて。
 ふと――人影が、もうひとつ。
 少し離れた後ろをやっぱり楽しげに歩いているそれは、よく知る顔……。
(「僕を、拾った男」)
 そんな姿を目にしながら、クロトは再び苦笑する。
「人非人と自覚してる僕ですけどねー。同じ見るなら、まだ小間使いで死線を駆け回ってた現実の方が良かったなー」
 そして眼前の夢幻に、ふるりと微か首を振る。
 ……何の意味があるかも解らない。
(「こんな……ありもしない、望みすらしない光景よりは」)
 それからふと顔を上げて、クロトは再び雨の中を進みながら、わらってみせる。
 ――あ。これ、精神攻撃? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイリ・タチバナ
番傘借りるか。色はお任せするぜ。
雨の中の散歩もいいだろ。

幼い自分ねぇ。俺様、人間の形を得たときからこうだから、実感がないんだよな。
どれどれ…あー、ちまいちまい。身の丈に合わねぇ銛(全身図で持ってるやつ。本体)持ってるけど、その重みに負けてんじゃねぇか。
で、それを支える大人(真の姿参照)…なんだぁ?見たことねぇ奴。

幼い俺様の口が『父上』って動いた。
はぁ?俺様に親父なんているはず…。その父上が持ってる煙管、『幻守神煙管』と同じだな。

ああ、島にあった古文書、それに載ってた『蒼く輝く鉱物のヤドリガミ』か、父上。
なるほどな…俺様や鏡と勾玉、それから作られたから。確かに父上だよな。しんみりする。



 幽世蝶を追って足を踏み入れた森に降る雨。
 その雨脚は決して強くはなく、ただ静かにしとしとと降っているだけだけれども。
 カイリ・タチバナ(銛に宿りし守神・f27462)は、借りた深海のようないろの番傘を雨空に咲かせる。
 そうでないと、きっと森を抜ける頃にはずぶ濡れになるだろうし。
(「雨の中の散歩もいいだろ」)
 雨の散歩のお供には、傘はつきものだから。
 けれど、その散歩は少し変わったものになるのだと聞いている。
 そのことをふと思い出し、首を捻るカイリ。
「幼い自分ねぇ。俺様、人間の形を得たときからこうだから、実感がないんだよな」
 雨の森の中、視えるというのは……そう、幼き自分の姿。
 そしてふと、目を凝らしてみれば。
「どれどれ……あー、ちまいちまい」
 立ち込める霧の中に在るのは、確かに小さな影。
 しかも、その影の主……小さな自分の姿を見て、思わず瞳を細めてしまう。
「身の丈に合わねぇ銛持ってるけど、その重みに負けてんじゃねぇか」
 頑張って持ってはいるけれど、振り回されるようによろりと体を揺らす様子に。
 けれど視えているのは……そんな小さな自分だけではなくて。
 もう一度、カイリは首を傾ける。
「……なんだぁ? 見たことねぇ奴」
 ちまい自分を支える大人の姿に。
 そして幼い自分の口が、こう動いたことに気付く――『父上』って。
「はぁ? 俺様に親父なんているはず……」
 そこまで言って、カイリはふと言葉を切る。
 瞳に飛び込んできた、その父上とやらが持っているものを、知っているから。
(「『幻守神煙管』と同じだな」)
 それから、納得した様に頷きつつ、思考を巡らせる。
(「ああ、島にあった古文書、それに載ってた『蒼く輝く鉱物のヤドリガミ』か、父上」)
 そしてくるり、深い青のいろをした傘を回しながら続ける。
「なるほどな……俺様や鏡と勾玉、それから作られたから。確かに父上だよな」
 ただひたすら降り続ける雨の森の静けさも相まって。
 カイリは雨の森を再び歩き出しながら、ぽつりとひとつ、呟きを落とす――しんみりする、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふ、ふえぇ、あの、アヒルさん、あれってアヒルさんですよね。
なんでアヒルさんの幼い頃の姿がアヒルさんボートなんですか。
たしかに、アヒルさんの由来はアヒルさんボートという話を聞いたことがありますが、どうしてここに現れるのですか?
ふつうは私の子供の頃の姿が現れるのではないんですか?
それにずっとついてきますし、どうしたらいいんですか。



 しとしとと降り続く雨の森は、とても静かで。
 傘に落ちる雨の音だけが、ぽつぽつと響いている……はずなのだけれど。
 そんな静寂の中、突如上がるのは、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)の声。
「ふ、ふえぇ、あの、アヒルさん、あれってアヒルさんですよね」
 幽世蝶を追って足を踏み入れたこの森の中で視ることになるとは、確かに予知で聞いていた。
 そう……幼かったり、昔の姿をした自分が視えるとは、聞いてはいたのだけれど。
 見開かれたフリルの瞳に映っているのは。
「なんでアヒルさんの幼い頃の姿がアヒルさんボートなんですか」
 幼い頃の、アヒルさんの姿……!?
 しかも今のアヒルさんではなく、何故かアヒルさんボート。
 むしろ昔の方が大きい。
 でもふと、フリルはこう思い返す。
「たしかに、アヒルさんの由来はアヒルさんボートという話を聞いたことがありますが」
 でも……だからといって。
 フリルは改めて眼前のアヒルさんボートをまじまじと見遣りつつ。
 こう、疑問に思わずにはいられない。
 ――どうしてここに現れるのですか? と。
 いや、確かに、昔の姿が現れるとは聞いてはいたけれど。
「ふつうは私の子供の頃の姿が現れるのではないんですか?」
 自分の幼い頃の姿を視るのかと思っていたフリルにとって、アヒルさんボートの出現はまさに予想斜め上で。
 ただでさえ、驚きと疑問を抱いてしまうものなのだけれど。
 今のアヒルさんと共に森の奥へと進みながら、フリルは再び瞳を見開いてしまう。
 だって、ふと振り返ればそこには……ずっと、アヒルさんボートの姿が。
 そして雨の中、フリルはそんなアヒルさんボートを見遣りつつ。
 ぽつりと、ちょっと困ったように言の葉を落とす。
 ――それにずっとついてきますし、どうしたらいいんですか、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

ヘルガと揃いの朱塗りの番傘を差し
雨の中に見ゆる幻は

両親のいない俺は、狼の群れに育てられた
人の学びも温もりも知らぬ当時の俺は野獣と見紛う姿

ある日群れが敵に襲われ
親狼は俺を含めた仔らを逃がすために立ち向かい
群れは皆散り散りになって、その後の行方は知れず

荒野を一人彷徨い
見様見真似で剣術を覚え
流れ流れて思春期を迎える頃には新米の傭兵となっていた

無骨な荒くれ者ばかりの傭兵集団
だが下手な干渉をされない分、却って気が楽だった
少なくとも、この狼耳を見て「化け物」と蔑むような
「平凡な民衆」に比べれば

幼き日の妻…白い鳥の少女が歌う
記憶に無い光景
俺とは無縁の優しい世界
なのに何故そんなにも哀しい瞳をしているんだ


ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

朱の番傘を借りて
ヴォルフと共に雨の中

ずっと小さい頃
淡い光と共に、天啓があった
背中に翼、髪に花
人々はそれを『奇跡』と呼んで称えた

祈りを込め紡ぐ言の葉、歌う旋律に癒しの力が宿ると知った
救いを求める縋る人々は引きも切らない

天使さま
聖者さま
どうか私たちに慈悲を

「わたくしのうたで、みんながしあわせになれるなら」
幼い声で祈り歌う
闇の中に差す安寧の光

だけど人々の瞳から悲哀が消えることはなかった
苦しみに果てがないことを
そしてわたくし自身がいずれ吸血鬼の花嫁……否、贄となる運命に気づいていたから

生きることが新たな絶望の始まりなら
わたくしはどうすればいいの……?

蒼き狼と出会い
運命が動き出すのは
まだ少し先の話



 激しくもないけれど、止む気配も全くない静かな雨。
 ただ静寂が広がる森を見回せば、何処までも薄っすらとした昏さを纏っているけれど。
 そんな雨の森を彩るのは、ひらり舞う幽世蝶達の群れとふたり並んで咲かせた揃いの朱塗りの番傘。
 そして共に在ると誓い合った夫婦が雨の中に視るのは――いつの間にか現れた小さな影たち。
 ひとつは、人の学びも温もりも知らぬ、野獣と見紛う姿。
「両親のいない俺は、狼の群れに育てられた」
 それは、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)の幼き時の姿。
 もうひとつは、背中に優美な翼を湛え、雪の如き白き髪には蒼いミスミソウの花。
「ずっと小さい頃、淡い光と共に、天啓があった」
 降り注ぐ淡き光……人々はそれを『奇跡』と呼んで称えた。
 そう、美しき小さな聖女――それは、在りし日のヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)の姿。
 そんな小さき姿を見れば、誰もが決して交わることのないふたりだと思うだろう。
 事実、ふたりは全く違う道を辿って来た。

 ――天使さま
 ――聖者さま
 ――どうか私たちに慈悲を

 常夜の世界で救いを求め縋る人々の声。
 それは引きも切らなくて。
(「祈りを込め紡ぐ言の葉、歌う旋律に癒しの力が宿ると知った」)
 だから幼い声でヘルガは祈り歌い続けた。
「わたくしのうたで、みんながしあわせになれるなら」
 奇跡の聖者のうたは、明けぬ夜の闇の中に差す安寧の光であっただろう。
 ……だけど。
(「人々の瞳から悲哀が消えることはなかった」)
 ヘルガは人々に光を与えながらも、だからこそ同時に感じてもいたのだ。
 いくら歌い続けても……苦しみに果てがないことを。
 ……そして。
(「わたくし自身がいずれ吸血鬼の花嫁……否、贄となる運命に気づいていたから」)
 けれどそれに抗えばどうなるかもわかっていたし。
 生きることが新たな絶望の始まりなら――わたくしはどうすればいいの……?
 ヘルガの中に生じていたのは、そんなひとりで抱えていた苦しみや問い。
 そして幼き獣であったヴォルフガングもまた、ひとりであった。
 群れが敵に襲われた、あの日。
(「親狼は俺を含めた仔らを逃がすために立ち向かい、群れは皆散り散りになって、その後の行方は知れず」)
 今みたいに止まぬ雨の中、ずぶ濡れになることなど日常的なことで。
 荒野を一人彷徨っていた彼は、生きてゆくための術を見様見真似で身につける。
 そして流れ流れて思春期を迎える頃には、覚えた剣術を武器に、新米の傭兵となっていた。
 傭兵集団は無骨な荒くれ者ばかりであったけれど。
(「だが下手な干渉をされない分、却って気が楽だった」)
 少なくとも、彼の狼耳を見て何かを言う者はいなかった。
 自分を「化け物」と蔑むような――「平凡な民衆」の様な言の葉を浴びせる者はいなかったから。
 傍から見れば、自分も無骨な荒くれ者のうちのひとりにすぎなかっただろう。
 それからヴォルフガングは在りし日の己の姿から、ふと視線を映す。
 耳に聞こえる歌声。それはよく知るものでもあり、知らない幼さを宿す響きを纏っているものでもあって。
 歌う白い鳥の少女――幼き日の妻の姿を映した瞳をそっと細める。
(「記憶に無い光景、俺とは無縁の優しい世界」)
 けれど、それは優しい世界であるはずなのに。
 ヴォルフガングは、皆の幸せを祈り歌い続ける小さき聖女を見つめて。
 ふるりと微かに首を横に振り、思う――なのに何故そんなにも哀しい瞳をしているんだ、と。
 そんな、眼前でうたう哀しい瞳をした無垢な雛鳥だけど。
 苦しみ、問い、哀しみを抱え、それでも歌い続けていたこの時は知る由もなかったし。
 もうだけ、少し先の話ではあるのだけれど。
 でも、今のヘルガは知っている。無垢な雛鳥が天翔ける白鳥となることを。
 蒼き狼と出会い――運命が動き出すことを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
千鶴くん(f00683)と

傘は持ってないし
千鶴くんのにひょっこり入れてもらう
相合傘だって喜びながら礼を

あれが小さい頃の千鶴くん?
とても可愛らしいけど
纏うくらいいろが見える
まるで帳が降りたような
子どもの頃はつまんなかったの?

その先にくろいいろの子ども
川を渡ろうとして
冷たさにびっくりして足を引っ込める
川の向こうに行きたいのかも
もう行けないのに
振り向いても小さな千鶴くんには――気付けない
気付ければ良かったのにね

うん、俺様の随分昔の姿
猫みたい?そうかな
そうだねきっと自由だった
首輪がなかったな、と思う

幻から眼を逸らしぱっと傘から飛び出して
千鶴くんも早くおいで、なんて
それこそ猫がするように
蝶を追って行くよ


宵鍔・千鶴
ロキ(f25190)と

自前の赫い番傘携え
駆け寄る君の元
お兄さん、傘が無いなら
俺と一緒しよう?って初めての相合傘

ぼやりと雨の視界に紛れ朧に揺蕩う
白着物の少年が其処に居る
俺は知ってる、あいつを
今より幼く髪の長い彼は虚んだ眸で此方を見遣る
…昔の俺、つまんない顔してる

―ねえ、あの子供は、ロキ?
仔猫みたい。見覚えが在るよ
川を見る子供の後ろで昔の俺が立ってるから
きっと、自由に外に行こうとする姿が
羨ましいんだろう

次に己と視線が重なったとき
きみは少し口元を動かし「お前は進め」と
ふわり紫蝶が飛んで行く

あ、ロキ…!
…もう、風邪引いちゃうよ
ふふ、まあ、いっか
じゃあ、俺もって傘を畳んで後を追いかけよう

蝶が導く其の先へ



 ――ぴっちぴち、ちゃぷちゃぷ。
 わぁっと声を上げるほど激しくはないのだけれど、でもきっとこのままではずぶ濡れ。
 それでも傘は持っていないから、特にいつもと変わらず飄々と雨の森を歩かんとするロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)であったけれど。
 昏い森に赫い花がくるりと咲けば、ぴちゃりとすかさず駆け寄って。
「お兄さん、傘が無いなら俺と一緒しよう?」
 宵鍔・千鶴(nyx・f00683)がそう自前の番傘傾ければ、ひょっこり。
「わぁい、ありがとう。入れてーっ」
 一緒に傘に入って、ロキは思わず笑み零す。
 だって、仲良くふたりで相合傘だから。
 そんな初めての相合傘は、本来ならば少々億劫なはずの雨の道を、嬉しいものに変えてくれて。
 傘はさしてはいるけれど、ぴしゃりとたまに濡れちゃう事だって楽しくなってしまう。
 けれど……薄っすらといつの間にか立ち込めた、雨煙る霧の中。
 ふたりはふと、小さな影たちを見つける。
 ぼやりと雨の視界に紛れ朧に揺蕩うのは、白着物の少年。
 其処に居る彼を見つめ、呟きを落とす様に紡いだのは、千鶴。
「俺は知ってる、あいつを」
 今より幼く髪の長い彼がふと此方を見遣る。虚んだ眸で。
 そして、そんな彼――幼い自分の姿を見て、ぽつり。
「……昔の俺、つまんない顔してる」
「あれが小さい頃の千鶴くん?」
 雨の森で幼い姿の自分を視る。それは事前に聞いていたことだし。
 やはり眼前の少年は、隣にいる彼を小さくしたような面影ある姿だけれど。
 ロキはじいっと小さい彼を見つめ、思う。
 ……纏うくらいいろが見える、と。
 そう――まるで帳が降りたような、そんなくらいいろ。
「子どもの頃はつまんなかったの?」
「つまんないとは、この時は思ってなかったつもりだったんだけど」
 遊びも全く識らなかったし、余り外には出れなくて。
 他を知らなかったから……つまんないとも、それにたのしいとも思わなかった。
 けれど目の前の自分はこうやってみてみると、つまんない顔をしていることに千鶴は気付いて。
 ふと視線を映せば……今度はその先に、くろいいろの子どもの姿が。
 流れる川を、渡ろうとしたのだろう。
 ざぶりと歩みを進めた彼は、刹那その冷たさにびっくりして足を引っ込めている。
「川の向こうに行きたいのかも」
 そしてロキは、蜜色の瞳をぱちくりさせているくろいいろの幼子を見つめながら続ける。
 ……もう行けないのに、って。
 けれど小さな彼は、川の向こうにばかり気を取られていて。
 いや……たとえそうでなくても。
(「振り向いても小さな千鶴くんには――気付けない」)
 ロキはただ小さな自分を見つめるしかできない。
 ……気付ければ良かったのにね、って。
「――ねえ、あの子供は、ロキ?」
「うん、俺様の随分昔の姿」
 そうこくりと頷いたロキに、千鶴は瞳を細めてから。
 小さな彼へと、もう一度視線を映す。
「仔猫みたい。見覚えが在るよ」
「猫みたい? そうかな」
 千鶴の言葉に首を傾けながらも、ロキも改めて昔の自分を見遣れば。
 そろーっと今度は慎重に川に入ろうとしているけれど、やはりぴやっと驚く姿は、確かにちょっと猫みたい。
 そして、川を見る小さなロキの後ろに立っているのは、小さな千鶴。
 そんな猫みたいなロキをじっと見ている自分の姿を瞳に映しながら、千鶴は紡ぐ。
「きっと、自由に外に行こうとする姿が羨ましいんだろう」
「そうだねきっと自由だった」
 ロキはそう返しつつも、もう一度小さく首を傾け、ふと思う――首輪がなかったな、と。
 それからふいにもう一度、幼い自分の眸が此方を向けば。
 少し動く口元が告げる――「お前は進め」と。
 そして静かな雨の中をふわり、飛んで行くのは紫蝶。
 けれどすぐに、千鶴が大きく瞬く。
 ぱっと傘から飛び出した、大きい猫の行動に。
「あ、ロキ……!」
「千鶴くんも早くおいで」
 ふふっと笑って招く姿は、それこそ猫のようで。
「……もう、風邪引いちゃうよ」
 でも――ふふ、まあ、いっか、なんて。
 雨に濡れるのも構わず、蝶を追って行く彼の姿に思わず笑み零してしまう。
 そして幽世蝶が導く其の先へと、ぴちゃり。千鶴も、彼の後を追いかけはじめる。
 ……俺も、って――雨空にさしていた赫い傘を、畳んでから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

君影・菫
ニーナ(f03448)と

しとしと雨の聲がする
薄紅の番傘をニーナと並べ咲かせて
ふふ、ほんま花みたいやねて咲う
ひらひら幽世の森を舞う蝶は何処へ行くんやろ

木陰に見たんはキミと、それと…
ニーナ、キミはきっと今も会いたいんやろね
声にはしない、音にはしない
そんなの隣で震える肩が教えてくれるもの
ゆうるり自分の傘へキミを招く
呼んでもええよって
泣いても雨に融けるからて
ふたりの秘密

傍らを見れば花魁の髪に飾られた昔の自分――簪
作られて間もなくの頃やったやろか
一緒に眺めてくれるならうちの小さい頃なんて
柔く咲ったらキミはなんて言うんやろ
誰かを着飾った日々
其れも悪くなかったなて思いながら
行こかって、キミの手をそっと引いて


ニーナ・アーベントロート
菫さん(f14101)と
ノイズみたいな雨音の中開く紅い番傘
菫さんのと並べて、綺麗だねって咲う
…ね、あの蝶々さんは何処へ行くのかな

木陰に見つけた姿は、紛れもなく
幼い頃のあたしと手を繋ぐ
白く長い髪を揺らす、優しい声で笑う
ーあぁ、
会いたかった

言葉は舌先でふつりと消えて
伸ばしかけた指先は虚空を撫でる
薄紅の傘の中へ招かれたなら
黙ってゆっくり頷いて
ひと粒、ふた粒落ちる熱い雫も
母を呼ぶ小さな声も
弱虫なあたしも、ふたりだけの秘密

傍らには、うまれたばかりの貴女
彼女の想い出の中にも、きっと
貴女の名前と同じその彩は
きらきら鮮やかに咲いてるんだろうなって
優しい記憶、見せてくれてありがと
引かれた手を握り返す時は、笑顔で



 激しく降りつけるわけでもなく、かといって止みそうなわけでもない。
 そんな、ひたすら天から数多落ち続ける雫の音を聞きながら。
 ノイズみたいな雨音だと、ニーナ・アーベントロート(赫の女王・f03448)が紅い番傘を雨空に咲かせれば。
 薄紅の番傘の花を並べ開きながら、彼女が聞いているもの同じはずの雨音に、君影・菫(ゆびさき・f14101)は思う。
 しとしと雨の聲がする――と。
 そしてニーナはそうっとくるり、傘を回してから。
 菫のものと並べて咲う――綺麗だね、って。
「ふふ、ほんま花みたいやね」
 一緒に小さくくるりと薄紅の番傘の花を回してみた後、菫もそう咲い返してから。
 雨に咲く花の上をひらり舞う、雨翔の翅を仰いでみる。
「ひらひら幽世の森を舞う蝶は何処へ行くんやろ」
「……ね、あの蝶々さんは何処へ行くのかな」
 けれどその羽ばたきが、雨の森の中の道標であることをふたりは知っているから。
 蝶々たちを追って、雨の森の奥へと歩みを進めてゆく。
 その道すがら――ニーナはふと一瞬だけ、足を止めてしまう。木陰に見つけた姿を目にして。
 だってそれは、紛れもなく。
(「幼い頃のあたしと手を繋ぐ、白く長い髪を揺らす、優しい声で笑う……」)
 そして紡がんと開かれる口元。
 ――あぁ、会いたかった、って。
 けれどその言葉は舌先でふつりと消えて。
 届きそうだと、届いて欲しいと、そう伸ばしかけた指先は雨落ちる虚空を撫でただけ。
(「木陰に見たんはキミと、それと……」)
 そしてその姿は、菫の瞳にも映っていて。
 ふと隣に在る彼女へと、菫は胸の内だけで紡ぐ。
 ――ニーナ、キミはきっと今も会いたいんやろね、って。
 声にはしない、音にはしない。だって、そんなの教えてくれるもの。
 隣で震える、雨粒に塗れたその肩が。
 そして菫はゆうるり自分の傘へとニーナを招く。
 これ以上、震える肩が濡れないように。
「呼んでもええよ。泣いても雨に融けるから」
 黙ってゆっくり頷き寄り添う彼女から、ひと粒、ふた粒と落ちる熱い雫が……そして、呼ぶ彼女の声が、そっと隠れるように。
 これは、ふたりの秘密だから。
(「母を呼ぶ小さな声も、弱虫なあたしも」)
 これは菫と自分の、ふたりだけの秘密。
 そんなひとつの傘に、ふたり身を寄せながらも。
 歩む傍らをふと見れば――ひとりの花魁の姿が。
 いや、ふたりが見つめるのは……花魁の髪に飾られた、菫色宿す紫と金の簪。
「作られて間もなくの頃やったやろか」
 それは昔の菫の姿。うまれたばかりの、美しい簪。
 そんな己の在りし日の姿を前に、菫は思う……キミはなんて言うんやろ、って。
「一緒に眺めてくれるなら、うちの小さい頃」
 そう、柔く咲ったなら。
 耳に届いたのは、こう返ってきたニーナの声。
「彼女の想い出の中にも、きっと。貴女の名前と同じその彩はきらきら鮮やかに咲いてるんだろうな」
 ――優しい記憶、見せてくれてありがと、って。
 とっておきの日、嬉しい日、お祝いの日、大切な日……それを沢山彩ってきた。
 そして大事にされたからこそ、時を経て今此処に自分があるのだということも、知っているから。
 花魁の髪を飾るそのいろを見つめ、菫は思う。
 ……誰かを着飾った日々、其れも悪くなかったな、なんて。
 それから――行こか、って。
 そっと引くのは、すぐ隣のキミの手。
 ニーナは引かれたその手を握り返して、菫へと向ける。雨の中、咲かせた笑顔を。
 くるりとひとつだけ咲く、薄紅の番傘の下で。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
【廻】

巫女から借りた桜の番傘を揺らせば雨と共に桜が降る

チオリ
雨降る森も楽しいね
雨雫がうたを奏でる

──ぁ、
木々の隙間
傘もささず雨に打たれたまま立ち尽くす黒
『神斬』
前の私
ただ虚ろに花のない木を見上げる
待っているのか
君の還りをずっと
約束というただ一つのいとに縋り

ハッとしてチオリを見やる
怖がらせてしまっただろうか?あれは
昔の私で…
怖くはない…
咄嗟の言い訳
嘗ての私は厄災であるから
ひとの子は厭うだろう

次に垣間見えた姿は
そなたに似てそれでも違う
噫、そなたの前の──
綺麗だね
優しくそのままを受け入れ綻ぶ
互いに見えたのは「前」の己
其れが何故だか嬉しくて

行こうチオリ
大丈夫だよと、手を差し伸べる
ひいらり
桜色の蝶を追う


橙樹・千織
【廻】

雨粒が跳ね
花零の鈴音が響く

カムイさんの傘
とても綺麗ですねぇ
たまには雨の日のお散歩もいいですね

あら…
音を零したの視線を追えば
以前対峙した黒き神の姿
桜の樹かしら

ふふ
大丈夫ですよ
慌てる彼に小さく笑んで

あの時の貴方も
彼らを大事に想う優しい方だと
ちゃあんと知っていますから
彼も貴方も怖くありません

…っ
前触れ無く変わった幻に
息を飲む

大樹の桜の下にいたのは
白に桜色混じる翼
金糸に薄紅の花を
肌に朱の八重桜を咲かせ
銀狼の娘と笑う前世の自分

今の…
見えました、よね

隣の彼が今どんな瞳をしているのか
どう思っているのか
怖くて見られず
傘の影に

ええ…
行きましょう

藍色に月光のような白い光を纏う蝶
あの子ではないそれが舞う



 しとしとと降っているその雨脚こそ強くはないけれど。
 止む気配は一向になく、ただひたすら昏い静寂の森に唯一の音を鳴らす。
 けれど、ぴちゃり、ぽつぽつ、しゃらり……打つその音色は耳を澄ませば様々で。
 雨粒が煌めきを纏って跳ねれば、鳴るように響く花零の鈴音。
 そして、降り続く雨から朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)の身を守ってくれているのは、雨空に咲かせた巫女のいろ。
 借りた桜の番傘をくるりと揺らせば、雨と共にぱらりと降る桜。
「カムイさんの傘、とても綺麗ですねぇ」
 そうふわふわ笑む橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)に、カムイは朱砂の彩を細めて返して。
「チオリ、雨降る森も楽しいね。雨雫がうたを奏でる」
「たまには雨の日のお散歩もいいですね」
 ふたり並んで暫し楽しむのは、雫がうたう雨の森のお散歩。
 けれど……いつの間にか雨煙り、霧が立ち込めていることにふと気付けば。
「――ぁ、」
 思わず声を零し、立ち止まってしまうカムイ。
 見つめる朱に映るそのいろは、黒。
 傘もささず、雨に打たれたまま立ち尽くす――『神斬』。
 ただ虚ろに花のない木を見上げるのは櫻喰いの厄神、そしてその姿は。
「――前の私。待っているのか」
 ……君の還りをずっと、と。
 約束というただ一つのいとに縋り、愛し櫻をただただ待つ……前の己の姿。
 そして音を零した彼の視線を追った千織も、そのいろを見つめる。
 以前対峙した、黒き神の姿を。
「あら……桜の樹かしら」
 そんな彼女の声に、カムイはハッとして。
 そろりと千織を見遣りながら、慌てたように紡ぐ。
「怖がらせてしまっただろうか? あれは」
 そこまで言って、一瞬言葉を切ってしまうけれど。
 ――昔の私で……。
 ――怖くはない……。
 言い訳するかのようにそう、そうっと紡ぐ。
 だって、嘗ての自分は厄災であるから。
(「ひとの子は厭うだろう」)
 そんなカムイの様子に、千織はいつも通りほわりと小さく笑んで。
「ふふ、大丈夫ですよ」
 雨に濡れないよう気を付けながらも、尻尾をゆうらり。
 ちょっぴり心配気に自分を見つめる彼へと、こう続ける。
「あの時の貴方も、彼らを大事に想う優しい方だと、ちゃあんと知っていますから」
 ――彼も貴方も怖くありません、って。
 そして、ふっと櫻待つ黒き神の姿が朧に揺らいだ瞬間。
「……っ」
 前触れ無く変わった幻に、息を飲む千織。
 先程は花のなかった木に咲いているのは、薄紅のいろ。
 いや、同じ桜の樹でも、先程のものとは全く別の桜。
 大樹の桜の下にいたのは、自分であるけれど、今の自分ではないその姿。
 白に桜色混じる翼、金糸に薄紅の花を、肌に朱の八重桜を咲かせた……前の、自分。
 そしてその傍らには、銀狼の娘が。
 彼女といる前の自分は、大樹に綻ぶ桜の様に笑み咲かせていて。
 楽しそうに笑い合うその幻を見つめたまま、千織は隣の彼へとそっと問う。
「今の……見えました、よね」
「噫、そなたの前の――」
 垣間見えた姿は、隣に在る彼女に似てそれでも違う姿。
 それからカムイは、思ったままの言の葉を口にする。
 ――綺麗だね、と。
 優しくそのままを受け入れ、綻んで。
 そして、こうも思う。
(「互いに見えたのは「前」の己」)
 其れが何故だか、嬉しいと。
 けれど、千織はそうっと雨空に咲かせた傘を、影を成すように傾ける。
 隣の彼が今どんな瞳をしているのか、どう思っているのか……怖くて見られずに。
 そんな彼女へとふいに差し伸べられたのは、大きな掌。
「行こうチオリ」
 大丈夫だよと、そう自分に彼女が言ってくれたように、言の葉を添えて。
 千織はその声に、こくりと頷いてから。
「ええ……行きましょう」
 大樹とその下に在るふたつの姿を振り返らずに。
 ひいらり、桜色の蝶を追う彼と共に雨の森を再び歩き出す。
 藍色に月光のような白い光を纏う蝶――あの子ではないそれが舞うそらの下を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尾宮・リオ
燕さん(f19377)と



待ちぼうけ、待ち惚け
いつだってぼくはまっていた

家の中、学校の宿題を済ませて
ご飯を作って待っていたのは
大好きな義兄、ただひとり
いつも、いつまでも、
彼の事だけを待っている

そんな状況を見てから
見知った後ろ姿に気付いた

手に取った赤い番傘を
雨の中、佇む彼へ傾けて
そうですか、と穏やかに笑う

先に見た幼い自分と重なる彼の姿
本当に似た者同士だ
なんて考えれば笑みは
切なげなものに変わって

ひとりぼっちだった幼い自分
今だって僕は、きっと迷っている

(──ああ、でも、それでも、)

そっと彼へ手を差し出し
燕さん、一緒に行きませんか

傘を取られて瞬きひとつ
有難う御座います、と笑い
視界に捉えた蝶を追い掛ける


金白・燕
リオ(f29616)と同行
アドリブ、アレンジは歓迎です

「フラミンゴが空を飛ばないから。ポットの中に眠りネズミがいなかったから。今日あの人は帰ってってこないのね」
雨の中静かに佇んでいるのは空を見つめる女性と女性を見つめる幼い私
帰らぬ父を待ち夢を見る母と私自身

おや、迷子のリオ
偶然ですね
ああ、見えました?
昔、昔のお話しですよ

彼の後ろに見える姿もまた
自身に良く似ていたように感じた
貴方も、私も、きっと迷子なのでしょう

……ええ
差し出された手を軽く引いて
ついでに彼の手からひょいと傘を取り上げて、彼に差しかけて

一緒にいきましょう、迷子さん



 しとしとと降り続ける雨の中でも、やっぱり待っていた。
 ――待ちぼうけ、待ち惚け。
 いつだってぼくはまっていた。
 いや……いつだってぼくは、私は――自分たちは、まっていたから。
 尾宮・リオ(凍て蝶・f29616)は待っていた。
 家の中、学校の宿題を済ませて、ご飯を作って待っていたのは。
(「大好きな義兄、ただひとり」)
 そしてリオは待っている。元気だよ、義兄さん、って。
 いつも、いつまでも――待っている。
 そんな光景を見つめていたリオはふと、気づく。
 見知ったその後ろ姿に。
 金白・燕(時間ユーフォリア・f19377)もまた、待っていた。
『フラミンゴが空を飛ばないから。ポットの中に眠りネズミがいなかったから。今日あの人は帰ってこないのね』
 フラミンゴが空を飛んだら。
 ポットの中に眠りネズミがいたら。
 そしたら……きっと、帰ってくるわ。
 そう帰らぬ父を待ち夢を見るのは、母と昔の自分の姿。
 雨の中静かに佇んでいるのは、空を見つめる女性と、母を見上げる幼い燕であった。
 そんな待ちぼうけな夢から、ふと赤の瞳を隣の彼へと向けて。
 いつも通り薄らと笑ってみせながら、燕は紡ぐ。
「おや、迷子のリオ。偶然ですね」
 その声に、リオは手に取った赤い番傘を傾ける。
 雨の中佇む、迷子の燕へと。
 そして燕は、朧に揺れる夢を見つめる彼に、こう続ける。
 ――ああ、見えました? って。
「昔、昔のお話しですよ」
「そうですか」
 リオはただそれだけ、穏やかに笑って返しながらも思う。
 先に見た幼い自分と重なる彼の姿。
(「本当に似た者同士だ」)
 いつだって、自分達は待っていて。
 いつまでも、待ち惚け。
 なんて考えれば、浮かべた笑みが纏うのは切なげないろ。
 ひとりぼっちだった幼い自分。
 いや、小さな自分だけでなくて。あの頃から、ずっと。
「今だって僕は、きっと迷っている」
 雨音に紛れる様に、ぽつりと零れ落ちた声。
 そして燕もまた、同じように。
 彼の後ろに見える姿もまた、自身に良く似ていたように感じて。
 だから、彼だけではない。
「貴方も、私も、きっと迷子なのでしょう」
 自分達は同じ、迷子同士であるのだ。
(「――ああ、でも、それでも、」)
 リオはおもむろに雨の中、そっとその手を伸ばして。
 彼へと差し出し、紡ぐ。
「燕さん、一緒に行きませんか」
 その言葉に……ええ、と頷いてから。
 燕は差し出されたリオの手を軽く引いて、そしてついでに。
「一緒にいきましょう、迷子さん」
 その手からひょいと傘を取り上げて、彼に差しかけてわらう。
 ええ、ご案内致しましょう、なんて……自分も迷子なのだけれど、そういつも通りに。
 そんな彼に傘を取られて、ぱちりとひとつ瞬いてから。
「有難う御座います」
 リオは笑い、彼と共に、視界に捉えた蝶たちを追いかけはじめる。
 あっちにこっちにと迷うのも……迷子同士、一緒だったら悪くはないかも、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

番傘は紺色で。どうしても無難な色になりますねー
幼い頃の…

『疾き者』銀灰色の長い髪と目
『静かなる者』短い白髪青目
『侵す者』キマイラ:狼。橙の毛と目
『不動なる者』長い黒髪黒目

ははは、まさかの全員ですよ
お互いの名を呼んでるんでしょうが、聞こえませんねー
あり得ない過去ですよ。当時は私の家と三家は交わらず、さらに私は最年長で忍ですし(一番近くて5歳差の『不動なる者』)
あと、幼い『不動なる者』…武士じゃなくて陰陽師になってません?

つまり、今の私たちの仲を反映しつつのIFですかねー?

※別家再興して陰陽師になる予定だった『不動なる者』



 静かにただ降り続ける昏い森に、鮮やかな傘でも咲かせれば、少しは彩を添えられたのかもしれないけれど。
「どうしても無難な色になりますねー」
 忍者の性分故か、雨の森のいろに溶けるかのような紺色の番傘を手にして。
 のんびりとした様子で歩くのは、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)。
 そしてふと、義透は聞いた予知を思い返しながらも首を傾ける。
 幽世蝶を追って足を踏み入れたこの場所は、一見何の変哲もない森であるように見えるけれど。
 森の奥へと進み行けば、視えるというのだ。幼い頃の己の姿が。
 となれば……一体、誰が視えるのか。
 今表に出ている『疾き者』か、それとも『静かなる者』か。『侵す者』はたまた『不動なる者』かもしれない。
 ……なんて、思っていれば。
 いつの間にか立ち込めた霧の中、視えたその姿に義透は一瞬瞳を瞬かせてから。
「ははは、まさかの全員ですよ」
 銀灰色の長い髪と同じ色の瞳、短い白髪の青目、橙の毛と目を持つ狼、長い黒髪黒目――元々は四人であったその全員の姿を暫く見遣って。
 何かを言い合っている様に、耳を澄ましてみるけれど。
「お互いの名を呼んでるんでしょうが、聞こえませんねー」
 すぐに、ふるりと首を横に振る。
 だって、眼前の光景は有り得ない過去だから。
「当時は私の家と三家は交わらず、さらに私は最年長で忍ですし」
 一番近くても5歳差の『不動なる者』。
 皆同じような年に見えること自体、事実と異なるし。
 ふと『疾き者』である今の義透は、その一番年が近いという黒髪黒目の幼子の姿を見て首を傾ける。
「あと、幼い『不動なる者』……武士じゃなくて陰陽師になってません?」
 そしてこう、思い至るのだった。
 武士ではなく陰陽師である『不動なる者』も、もしかしたら有り得た未来であったのだから。
 ――つまり、今の私たちの仲を反映しつつのIFですかねー? って。
 雨の森に紛れる紺の番傘でくるりと雨を凌ぎ、進みゆきながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴久名・紡
傘を借りて、のんびりと森を往こう

種族的な事もあってか……雨も水も嫌いじゃないから
濡れて往っても構わなかったけれど
そうしていたら
傘が受ける雨の音が優しい事も知らず仕舞いだったな
そんなことを想って進めば、不意に子供の声が聞こえる

おとうさん、おかあさん

そう呼ぶ声と姿に静かに息を吐く
幼い頃の俺の姿をした、幻――

両親が生きていたら、そう思ったことがない訳じゃない
そうであれば、色々と今とは異なっていただろうと思う

叔父によく似た気配の女性
全く異なる気配の男性
その顔も姿も朧げなのは、俺が覚えてないからか……

幻は幻だから……
今、ここにある現実に至る為に消えてしまった『可能性』

それを見送って、出会った蝶を追おうか



 天から落ちる雨は、激しくなるわけでも、雨脚が弱まるわけでもなく。
 ただずっと、ひたすらしとしとと降り続いている。
 そんな同じ雨でも、億劫だと思う者もいれば、心躍る者もいるだろう。
 そして、鈴久名・紡(境界・f27962)にとっての雨は。
(「種族的な事もあってか……雨も水も嫌いじゃないから。濡れて往っても構わなかったけれど」)
 竜神という種族柄、他の者たちに比べれば濡れる事に抵抗はないのだけれど。
 それでも、傘を借りてのんびりと森を往こうと、紡は思ったのだ。
 だって、傘をさしていなかったら。
(「そうしていたら、傘が受ける雨の音が優しい事も知らず仕舞いだったな」)
 ぽつぽつと弾ける様に響く雨の旋律がこんなに優しいなんてこと、きっと知らないままであったから。
 そんなことを想って進んでいれば、不意に聞こえてくる誰かの声。
 耳を澄ましてみればそれは、子供のもので。
 ――おとうさん、おかあさん。
 そう呼ぶ声と現れた姿に、紡は静かに息を吐く。
 その姿を、声を、知っているから。
 それは――。
(「幼い頃の俺の姿をした、幻――」)
 そして小さな自分をじいっと見つめながら、紡は思う。
(「両親が生きていたら、そう思ったことがない訳じゃない」)
 そうであれば……色々と、今とは異なっていただろうとも。
 いや、雨の中に見えるのは、幼い自分の姿だけではなく。
 叔父によく似た気配の女性と、全く異なる気配の男性のものもあるのだけれど。
 物心ついた時には既に居なかったその姿は、ゆうらり雨に煙る中、揺らめいていて。
(「その顔も姿も朧げなのは、俺が覚えてないからか……」)
 紡はそう思いつつも、呟きを落とす。
 ――幻は幻だから……って。
 そしてそれは、今、ここにある現実に至る為に消えてしまった『可能性』であるのかもしれないけれど。
 紡は幻を見送ってから、雨の森を再びのんびりと歩き出す。
 ひらり雨翔ける、幽世蝶を追って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
相棒犬のくろ丸と、以前買った星空柄の和傘を差して
大きい傘だし、くろ丸も濡れないよ

いい森だなあ
静かで、草と土の匂いがして、雨の音が優しい
あの蝶を追えば、極楽みたいな風呂があるんだって
楽しみだね

…ん?
くろ丸、何か小さくなって…あれ?
その奥に居るの…子供の僕?

でも、笑ってる…
長靴、レインコートで…仔犬のくろ丸とはしゃいでる

そんなはずない
あの頃の僕は…爺ちゃんを失って…
笑う事はおろか、暗い押入れの中で息だけしてる存在だった

幻ってこれか…
でも、ちょっと嬉しい
あの頃居た筈のない、楽しそうな自分がいる

あんな僕と過ごして来てくれたくろ丸を、そっと撫で
僕なんかで良かったの?と訊いてみるも…
…笑顔で走り回ってるし



 足を踏み入れた森は昏くて、降る雨は止みそうにはないけれど。
 青和・イチ(藍色夜灯・f05526)が雫落ちる天へとぱっと咲かせたのは、和傘に描かれた星空。
 そんな星空は、十分に広いから。
「大きい傘だし、くろ丸も濡れないよ」
 何だかぴちちゃぷ楽し気に進むくろ丸と一緒に入ったって、大丈夫。
 それからのんびりとふたり、雨の森のお散歩を。
「いい森だなあ」
 イチはそう呟きを落として、すうっと森の空気を吸い込んでみつつも耳を傾ける。
 ――静かで、草と土の匂いがして、雨の音が優しい、って。
 それに道のりも長いようであるし、やはり大きな傘をさしていても、全く雨に濡れないわけではないから。
 イチはくろ丸を見つめる藍色の瞳を細め、紡ぐ。
「あの蝶を追えば、極楽みたいな風呂があるんだって」
 ……楽しみだね、って一緒に、わくわくしながら。
 それからふと、顔を上げてみれば。
 瞳に映ったその姿に、こてりと首を傾けるイチ。
「……ん? くろ丸、何か小さくなって……あれ?」
 くろ丸も、何だかちっちゃくなっているし。
 その奥に居る少年は。
「……子供の僕?」
 自分をちんまくしたような、幼いこども。
 そんな幼い頃の自分の姿を見遣りながらも、もう一度イチは首を傾ける。
「でも、笑ってる……」
 長靴を履いて、レインコートを着て……仔犬のくろ丸とはしゃいでる姿。
 その姿に、イチは首を数度ふるりと降る。
 ――そんなはずない、と。
「あの頃の僕は……爺ちゃんを失って……」
 ……笑う事はおろか、暗い押入れの中で息だけしてる存在だった、と。
 だから、外であんなにくろ丸ときゃっきゃ笑っているわけはないのだけれど。
 イチは聞いた予知をふと思い出して納得する。
「幻ってこれか……」
 そして、じいっと小さな自分とくろ丸を見遣ってから。
 微か笑みを宿し、ぽつりと紡ぐ。
 ……でも、ちょっと嬉しい、って。
(「あの頃居た筈のない、楽しそうな自分がいる」)
 それから手を伸ばして、わしゃりと。くろ丸をそっと撫でてあげる。
 あんな自分と過ごして来てくれた、くろ丸を。
 そしてふとイチは彼女に訊いてみる。
「僕なんかで良かったの?」
 けれど、いつの間にか星空の下にはいなくて。
 顔はちょっぴり怖いけれど、懐こい女の子は尻尾をふりふり。
 ぴしゃんと雨雫を楽し気に飛沫かせているくろ丸を追いかけながら、イチは眼前の自分と同じ顔をして笑う。
 ……笑顔で走り回ってるし、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【奇縁】菊里とふらり

あ~、どーせ雨なら女の子としっとり相合傘とか…っ夢見るぐらい良いだろ!

(毎度の応酬を始めた矢先
視界の端に何かが過る

実際の俺は人の形を得た時点である程度の外見年齢だった
故に幼い姿は有り得ぬ夢幻
だが、嗚呼――

行く宛もなく木陰で震える己に
傘と手を差し伸べるあの人は
雨の中でも翳らぬ優しい笑顔で――
俺が普通の人の子だったなら
あの笑顔も穏やかに晴れたままだったんだろうか
なんて軽く物思いに耽りかけるも)

…ウン、何か来たな?
(狐の子見て)
んん…?菊里にしちゃ肌色も毛色も…

!?
はぁ!?何をどーしたらアレがアンタに!?

くっ
何で現実でまでアンタらとー!
(騒ぎつつも結局一緒に進む辺り
嗚呼全く――)


千家・菊里
【奇縁】傘差し伊織と

はいはい、現実見ましょうねぇ
――と、言った途端に幻を見るとは

(視界の端に縮こまる子伊織を捉えるも
特に何を言うでもなく
不必要に覗き込む様な事もなく
静かに周囲を見渡して)

おや?彼方から新手の幻が無邪気に駆けてきますねぇ
(子伊織に戯れる様に駆け寄る子をのほほんと眺め)
ええ、はい、これは俺じゃないですね――清宵です

奇遇ですねぇ
因みに俺の幻は彼方で尻尾が濡れてしょんぼりしていましたが、母におやつを貰ってすっかり晴れた顔になってます(懐かしいなと目を細め)

あ、俺の幻も巻き込まれた
現も幻も珍道中とは愉快な事で
(一緒に駆け出す幻達――
有り得ぬ筈の其等と同様に
自分達もまたわちゃわちゃと先へ)


佳月・清宵
【奇縁】雨音と番傘を供に、一人気儘に

(いつの間にかちょこまかと周囲にチラつく、警戒心の欠片もない幻に何とも言えぬ目を向け)
俺は此程落ち着きのねぇガキだったかね
…否、んなこたねぇ
こんだけ無邪気に在れりゃ楽だった、って話か

ったく、きょろきょろ何探してやがるんだか
(ガキの視線を辿れば、同時に何かの姿見つけ――
ぱっと笑顔で駆け寄る幻に続き、対照的な含み笑い浮かべ先行く二人の元へ)

よう、幻までこうなるたァとんだ奇縁だな?

ありゃ虚像だ
俺が本当にあんなガキな訳ねぇだろ
――玩具に目がねぇ辺りは流石だが
(子伊織やその恩師にちょっかいかけ
子菊里も巻き込み遊びに駆け出す姿に笑い)
ま、折角だ
現も仲良く連れ立ってやろう



 しとしと静かに降る雨に咲かせた、たったひとつの傘に。
 雨に濡れぬようになんて身を寄せて、そっと寄り添いながらも乙女と歩む、そんなひととき――。
「あ~、どーせ雨なら女の子としっとり相合傘とか……っ」
 そんな素敵な相合傘なんて、呉羽・伊織(翳・f03578)にはやはりなかった。
 そして隣に在るのは、勿論乙女ではなくて。
「はいはい、現実見ましょうねぇ」
「夢見るぐらい良いだろ!」
 いつものように、千家・菊里(隠逸花・f02716)の姿が。
 けれど、そんな毎度のことを言い合っていた途端に見るのは……幻。
 伊織の視界の端に何かが過る。
 それは乙女ではなくて、幼いこどもの姿であった。
 まるで、伊織を小さくしたみたいな。
 けれど彼はヤドリガミ、実際の彼は人の形を得た時点である程度の外見年齢であった。
 だから、この小さな伊織は有り得ぬ姿。夢幻であることは明らかなのだけれど。
 小さい自分の姿を捉えるも、特に何を言うでもなく、不必要に覗き込む様な事もない菊里の隣で。
(「だが、嗚呼――」)
 伊織は雨の中、その光景を暫し見つめる。
 行く宛もなく木陰で震える己。
 そんな自分に差し伸べられたのは、雨から守ってくれる傘とあの人の大きな手であった。
 雨の中でも翳らぬ優しい笑顔で――。
 そんなあの人の微笑みを瞳に宿しながら、伊織は思う。
(「俺が普通の人の子だったなら、あの笑顔も穏やかに晴れたままだったんだろうか」)
 そして軽く物思いに耽りかける伊織を後目に、菊里がふと静かに周囲を見渡せば。
「おや? 彼方から新手の幻が無邪気に駆けてきますねぇ」
「……ウン、何か来たな?」
 タタタッと駆けて来たのは、狐の子。
 狐といえば、菊里もそうであるのだが。
 伊織は子伊織に戯れる様に駆け寄る狐の子をじいっと見つめてみて。
「んん……? 菊里にしちゃ肌色も毛色も……」
 そう違和感を覚え、首を傾けるけれど。
 菊里はのほほんと子らの様子を眺めつつも、こう続ける。
「ええ、はい、これは俺じゃないですね――清宵です」
 そう……狐は狐でも、この狐の子は佳月・清宵(霞・f14015)の幼き姿であった。
 いや――ほんの少し前のこと。
「俺は此程落ち着きのねぇガキだったかね」
 ふたりの少し後に雨の森へと入った清宵は、何とも言えぬ目を向けていた。
 いつの間にかちょこまかと周囲にチラつく、警戒心の欠片もない幼い狐の幻に。
 それは、自分をそのまま小さくしたような見目の子狐。
 幼い頃はまさかの無邪気っ子であった清宵……。
「……否、んなこたねぇ」
 ……というわけでは、なくて。
 ぴょこぴょこ周囲をうろちょろしている、自分を小さくしたような子狐を改めて見遣りつつも。
 清宵は雨の中、歩みを止めず思う。
(「こんだけ無邪気に在れりゃ楽だった、って話か」)
 それから、落ち着きなく視線巡らせる様子に気付いて。
「ったく、きょろきょろ何探してやがるんだか」
 その視線を辿ってみれば、ふと同時に何かの姿見つけて。
 ぱっと笑顔でタタタッと『彼ら』に駆け寄る幻に続き、清宵も行く二人の元へ。幼い無邪気な幻の自分とは対照的な、含み笑い浮かべて。
 ということで。
「よう、幻までこうなるたァとんだ奇縁だな?」
「……!?」
 謎の狐っ子ときゃっきゃやっている幼い自分に、危うくほんわかしかけていた伊織は、ある意味衝撃的な事実を知って瞳を大きく見開く。
「はぁ!? 何をどーしたらアレがアンタに!?」
 だって、ぴょこぴょこめっちゃ無邪気。
 自分と小さい自分を交互に何度見もする伊織の様子に、清宵は愉快気に笑う。
「ありゃ虚像だ。俺が本当にあんなガキな訳ねぇだろ」
 そして早速、一直線に子伊織に絡むその姿に――玩具に目がねぇ辺りは流石だが、と。
「奇遇ですねぇ」
 現れた清宵にそう声を掛けた菊里はふと、目を細める。
 眼前の光景に……懐かしいな、と。
 何気に彼方で尻尾が濡れてしょんぼりしていた子菊里だけれど、母におやつを貰ってすっかりにこにこ晴れた顔。
 けれど、おやつをぺろりと御馳走様すれば。
「あ、俺の幻も巻き込まれた」
 子伊織やその恩師にちょっかいかけていた子清宵は、子菊里も巻き込んで。
 きゃっきゃ遊びに駆け出す姿を見遣りつつ、紡ぐ狐が二匹。
「ま、折角だ。現も仲良く連れ立ってやろう」
「現も幻も珍道中とは愉快な事で」
 そんな、現も幻も狐に囲まれながら、伊織はいつもの様に嘆くのだった。
「くっ、何で現実でまでアンタらとー!」
 目の前を駆けるのは、有り得ぬ筈の幼き自分達の姿なのだけれど。
 でも、そんな小さな自分達と同じ様に騒ぎつつも。
 何だかんだ結局一緒に、わちゃわちゃ狐たちと進みながら伊織はそっと瞳を細めて。
 雨が降る森の中、溜息と笑みと声を落とすのだった。
 ……嗚呼全く――って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
番傘さして、くぅるり回してみたり
雨の道行は楽しいものがある
が、しっぽがしんなりするのは勘弁
濡れぬように気をつけよう

蝶を追えば見えてくるのは幼き頃の己の姿
誰かのお下がりのぼろぼろの服を着て怪我してばかり
そいえば、言の葉教えてくれた狐の爺のそれが当たり前と真似するよにこのしゃべり方になっとったなぁ
俺、というのは収まりが悪く結局、戻してしもた

両の瞳のある頃のわしは、幼き頃のわしは自分以外のもんが嫌いじゃったし
いや、自分も嫌いじゃったかもな

そんなことも今は苦笑できる
今は、楽しき友もおるし日々に飽く事もなく
汝とともにあるからの、と右瞳を撫でて

それにしても生意気そうな顔しとる
わし、あんなじゃったじゃろか?



 しとしとと降る雨は、止む気配はないけれど。
 くぅるりくるり、雫落ちる天へと咲かせた番傘を回してみたり。
 ぽつぽつと傘に落ちる雨音を、ぴこり立たせた耳を澄まして聞いてみたり。
 ……雨の道行は楽しいものがある、なんて。
 ぴちぴちちゃぷちゃぷ、何だかんだと楽し気に森をゆくのは、終夜・嵐吾(灰青・f05366)。
 いや、でも楽しくても、ゆらゆら迂闊に尻尾を揺らしはしない。
(「しっぽがしんなりするのは勘弁。濡れぬように気をつけよう」)
 さっと灰青の自慢の毛並みの尻尾を、番傘の中に抜かりなくイン。
 しょぼくれた尻尾になってしまえば気持ちも萎えて、耳までぺたりとなってしまうから。
 そして雨翔ける蝶々を追って森の奥へと進み行けば……いつの間にか、霧が立ち込めて。
 見えてくるのは、小さな狐の子。幼き頃の、己の姿。
 誰かのお下がりのぼろぼろの服を着て、怪我してばかりであったあの頃の姿。
 それから、じゃろじゃろ紡ぐ幼子を見て思い出す。
「そいえば、言の葉教えてくれた狐の爺のそれが当たり前と真似するよに、このしゃべり方になっとったなぁ」
 ちょっぴり頑張って、わし、ではなく俺、なんて言ってみた事もあるけれど。
(「俺、というのは収まりが悪く結局、戻してしもた」)
 むしろ今、自分が俺、なんて言って、じゃろを封印なんてしたら、友たちがどんな顔をするか。
 それも面白いかもしれん、なんて思いつつも。
 灰青の子狐を改めて見遣る。まだ、右目に虚の主がいない自分を。
 そして、その頃の自分は。
(「両の瞳のある頃のわしは、幼き頃のわしは自分以外のもんが嫌いじゃったし」)
 そこまで思って、嵐吾はふるりと微か首を横に振る。
 ……いや、自分も嫌いじゃったかもな、って。
 けれど、色々あったりはしたものの。
 嵐吾は左瞳の琥珀をふっと細める――そんなことも今は苦笑できる、と。
(「今は、楽しき友もおるし日々に飽く事もなく……汝とともにあるからの」)
 そうそっと優しく、右瞳を撫でながら。
 それからもう一度じいっと、目の前にいる小さな自分を見つめて。
「それにしても生意気そうな顔しとる」
 イキっている感満載なその姿に首をこてりと傾けつつも、何だかちょっぴりだけ恥ずかしくもなる。
 ――わし、あんなじゃったじゃろか? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫

雨、あめ!ふふー、僕、雨大好き!
ご機嫌に歌い、ぴちり尾鰭で雨粒を弾く
ヨルもきゅっきゅと歌ってる
櫻とお揃いの月下美人の番傘が嬉しくてちょっと得意げに掲げてみせる
櫻、雨に散らされないでよね!

とまった櫻宵の視線の先
ひとりぼっちで泣いてる小さな君
哀しみで胸をいっぱいにして
蕾のひとつも無い桜の枝が寂しさを教える
駆け出した先にいるであろう神と、今君の傍に居る神をおもう
──嗚呼、よかった
君の心の支えが帰ってきてくれて

あ、あそこに僕がいる
白い稚魚の僕
短い鰭に、小さな角
じーっとどこかを見つめて……座長を待っている
水槽の中にいたあの頃のだよ
むう…(濡れた尾鰭で足元をぴちり

抱っこなら今の僕にしてよね!
約束!


誘名・櫻宵
🌸櫻沫

リルったら雨がほんに好きなのね
尾鰭が傘からはみ出して、びっしょり濡れているわ
ヨルはコロボックルみたいで愛らしい
歌う人魚に心を綻ばせながら、お揃いの月下美人の番傘ひらり、翻す

私の桜は雨なんかに散らされないわ
心配してくれるなんて優しい子

……あら、あの子……迷子?
いいえ
小さい頃の、私
短い桜枝角に短い髪
瞳一杯に涙を溜めて蹲っている
思えばいつも泣いていた
小さな私は立ち上がり何処かへかけていく
きっと、師匠の所
彼の元が唯一の居場所で逃げ場所

リルに恥ずかしいところをみせたわ…
あ!
あの小さい稚魚はリル?
かぁいい
ぴちぴちしてる!
抱っこした……ひゃっ

わかったわ
そのびしょ濡れを拭いたら今のリルを抱っこするわ!



 ……ふんふん、ふーん。
 ……きゅきゅ、きゅー。
 雨が降り続ける森の中に聞こえるのは、ご機嫌な鼻歌。
 ぴっちぴっち、ちゃぷちゃぷ、そしてまさにらんらんらん、と。
 尾鰭で雨粒をぴちり弾いて天に躍らせながら。
「雨、あめ! ふふー、僕、雨大好き!」
 うきうきとはしゃいだように森をゆくのは、リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)とペンギンのヨル。
「リルったら雨がほんに好きなのね」
 尾鰭が傘からはみ出して、びっしょり濡れているわ、なんて。
 誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)は雨に濡れる尾鰭へと目を遣るけれど。
 むしろ雨粒の煌めき纏う月光ベールは、より艶やかで美しくて。
 その傍で、きゅきゅっとこれまたご機嫌なヨルの愛らしさは、コロボックルみたい。
 そんな歌う人魚たちのめんこい姿にふふっと笑み咲かせ、心を綻ばせながらも。
 櫻宵がひらり翻すのは、雨空に咲かせたお揃いの月下美人の番傘。
 それに合わせて、くうるりくるり。
 ちょっと得意げに、並べて咲かせた花を掲げてみせるリル。
 だって、やっぱり嬉しいから。櫻宵とお揃いの、月下美人の番傘が。
 それからふと、リルは雨に咲くもうひとつの花を見遣って紡ぐ。
「櫻、雨に散らされないでよね!」
「私の桜は雨なんかに散らされないわ」
 そんな掛けられた声に、櫻宵は愛おし気に咲う。心配してくれるなんて優しい子、って。
 それから、ちゃぷちゃぷと雨の中をゆけば。
 薄らかかった霧の中に、櫻宵は見つける。
「……あら、あの子……迷子?」
 けれどすぐに、ふるりと首を横に振る。
 とまった花霞の視線の先に在るその姿を、櫻宵は知っていたから。
「いいえ。小さい頃の、私」
 短い桜枝角に、今とは違った短い髪。
 瞳一杯に涙を溜めて、小さな櫻宵は蹲っている。
 その姿を見遣り、櫻宵は思い返す……思えばいつも泣いていた、って。
(「ひとりぼっちで泣いてる小さな君」)
 リルもその姿を見つめ、思う。
 そんな小さな君は……哀しみで胸をいっぱいにしていて、寂しそうだと。
 だって、教えてくれているから。蕾のひとつも無い桜の枝が。
 けれど、ふいに立ち上がって駆けてゆく小さな櫻宵が何処に向かうのか。
 それもちゃんと、知っているから。
(「きっと、師匠の所。彼の元が唯一の居場所で逃げ場所」)
 そんな後姿を見送りながら、リルは薄花桜をそっと細める。
 駆け出した先にいるであろう神と、今君の傍に居る神をおもって――嗚呼、よかった、って。
(「君の心の支えが帰ってきてくれて」)
 同志である、やさしい朱のいろを浮かべながら。
 そんなリルが揺らしていた尾鰭が、ふいにピタリと止まって。
「あ、あそこに僕がいる」
 見つめる先には、短い鰭に小さな角。白い稚魚であったリルの姿が。
 そして、リルに恥ずかしいところをみせたわ……なんて。
 泣きべそをかいて蹲っていた幼い自分の姿に思っていた櫻宵も、見つける。
「あ! あの小さい稚魚はリル?」
 今よりも小さくて短い鰭をそわそわゆらり。
 小さな人魚は、じーっとどこかを見つめていて……。
「うん。水槽の中にいたあの頃の僕だよ」
 そしてリルはこう続ける。
 ……座長を待っている、って。
 そんなそわりと尾鰭を揺らす小さい子を見つめて。
「かぁいい、ぴちぴちしてる! 抱っこした……ひゃっ」
 刹那、濡れた尾鰭で足元をぴちりっ。
「抱っこなら今の僕にしてよね!」
 むう……とむくれるように雨粒を飛ばして言ったリルは、ずいっと櫻宵の目の前に小指を差し出す。
 ――約束! って。
 そんな細くて白い指に、小指をするりと絡めて。
 櫻宵は笑み咲かせ、こくりと頷く。わかったわ、って。
「そのびしょ濡れを拭いたら今のリルを抱っこするわ!」
 だから、かぁいい子を抱っこしてあげるためにも――ぴちぴち、ちゃぷり。
 雨の森を、さぁ抜けよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『幽世の秘湯』

POW   :    のんびりゆったり温泉に浸かる

SPD   :    温泉に浸かりながらちょいと一杯

WIZ   :    湯船が広いから泳げるかも?

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ひらりはらり天をゆく幽世蝶を追って、どれくらい雨の中を歩いただろうか。
 ぱっと視界が開け森を抜けた瞬間、あれだけ降っていた雨もぴたりと止んで。
 眼前に見えるのは、昏い森とはまるで対照的な――数多の眩い明かりが灯る、豪華な湯屋の姿が。
 行灯の燈火たちに迎えられ、赤い太鼓橋をひとつ、ふたつと渡れば。
『あらァ、いらっしゃい。此処は、幽世の極楽――「四季の湯屋」よ』
 ……うふふ、お客さんびしょ濡れじゃない。
 そうからからと笑って、手持ち提灯携えた美女……案内役のろくろ首は、にゅうっと首を伸ばして。
 もくもく煙立つノスタルジックで豪勢な極楽へと、新たな客人をご案内。

 まずは1階の受付で、好きな柄の浴衣やタオルを貸して貰えるようだ。
 四季の湯屋という名の通り、浴衣は望む季節の好みの花柄が選べるようであるし。
 柔らかい春色から爽やかな夏色、燃ゆる秋色に静かな冬色など、無地のものも用意されているという。
 中には、化け猫柄や唐傘お化け柄、河童柄などの、謎のゆるい妖怪柄のものもあるらしい……?
 石鹸等の染料各種も、春夏秋冬を思わせるものが備え付けてあるので、色々試したり好みのものを探しても良いだろうし。
 風呂を楽しむために必要なものは全て揃っているので、持参していなくても何も心配はいらない。

『それに四季の湯屋にはやっぱり、数え切れないくらいの風呂がいっぱいよ』
 そしてやはり、湯屋と謳うからには風呂が沢山あるようだ。
 この湯屋は全ての風呂が男女別となっている。
 1階で受付し脱衣所で準備を済ませれば、広大な湯屋の2階から4階に至るまで数多の温泉を楽しめるという。
 湯屋の自慢は、見晴らし良い4階にある、名前の由来にもなっている四季の湯。
 春夏秋冬、4つの風呂は露天風呂で、各々の四季の花で埋め尽くされた花風呂だ。
 また四季の景観も楽しめ、春の湯は桜舞う風景を、夏の湯は新緑や海が臨める景色を、秋の湯は紅葉舞う十五夜を、冬の湯はちらちらと雪が舞う中で、温泉が楽しめるという。
 2階と3階にある内風呂も、多種多彩。
 2階には、スタンダードな大浴場から、ぼこぼこ泡が気持ち良い所謂ジャグジー風呂、寝湯や打たせ湯や水風呂、サウナや岩盤浴など、他の世界の温泉施設などでも楽しめる馴染み深いものが大抵あるようだ。
 それ以外にも、少し変わり種の風呂も数えきれないくらい沢山。
 3階にずらり並ぶ色彩風呂は色とりどりカラフル。真っ黒でぬるっとした湯はスベスベお肌になる美肌の湯、芳醇な香りに包まれながら楽しめる赤いワイン風呂は美容ケアに最適な若返りの湯。たまご肌になれる湯の花が沈んだ乳白色のにごり湯に、中には神秘的なコバルトブルーをした美人の湯や、万病に効果があるらしい翡翠の湯、虹色に彩が変わってゆく摩訶不思議な湯の効能は不老不死との噂も……?
 他にも、透明な日本酒風呂は冷えや肩こりや血行の巡りを良くする健康促進の湯。サイダーの様にしゅわしゅわな炭酸の湯は入るだけでマッサージ効果が得られるし。妖怪大鯰の匙加減ひとつの電気風呂も、刺激的かも……!?
 風呂釜も、定番の桧風呂をはじめ、ピカピカ豪華な金箔のものから茶釜のようなカタチのもの、陶器製や桶風呂や五右衛門風呂等々、摩訶不思議なものも多い。湯加減などの調整は妖怪スタッフに言えばある程度は調整して貰えるようだが、彼らは大らかであったり気紛れでもあるらしい。

『ふふ、湯上がり後も、極楽がいっぱいなの』
 風呂を満喫し1階の脱衣所で浴衣に着替えたら、妖怪が案内する蛇腹扉のレトロな手動式エレベーターで5階へ。
 その窓の外は摩訶不思議、観る客が望む春夏秋冬の景色が見えるのだという。
 そんな景色が臨める食事処では、美味な食事や酒類やジュース等の飲物が頂ける。
 この世界には東方妖怪も西洋妖怪もいるのだから、食事のジャンルは実は多彩。
 目も舌も楽しめる和食膳や寿司、くるり回る円卓の中華、お洒落な西洋料理など、美食家も唸る料理は勿論。
 居酒屋の様に気楽に一品料理を摘まめるわいわい賑やかな畳敷きの大広間や、所謂フードコートの様にジャンル問わず色々なものが楽しめる屋台風の店が並ぶ祭りの様な雰囲気の飲食エリアも。中には、この世界ならではな、不思議な喋る料理も味わえる……みたい?
 勿論、風呂上りには欠かせないコーヒー牛乳やフルーツ牛乳などの牛乳各種や、乙女に人気の黒酢、しゅわりとしたサイダーなどの飲み物も頂けるし。成人していれば、ビールや日本酒などのアルコールも楽しめる。火照った体に嬉しいかき氷やアイスなどの冷たい甘い物だって用意されている。
 また、妖怪をダメにするとか何とか言われているふかふかソファーが並ぶ休憩所で、もふもふ毛布や各種妖怪さん抱き枕を借りて、のんびりすやぁとお昼寝するのも良いし。
 個室を借りて、のんびりだったりわいわい賑やかに、食事や飲み物を持ち込んで自由な時間も過ごせるのだという。

『あとはそうねぇ、最近湯屋に来た美しい三味線奏者の演奏も見事よぉ。5階の大広間で聴けるわ。でもさっきひと演奏終わったばかりだから、次は数時間後だけど』
 その演奏は、静かで繊細であったかと思えば、まるで炎の様に情熱的になったりと、聴く人を飽きさせず心を掴むような旋律であるというし。
 そして案内役のろくろ首は、こうも続けるのだった。
『神秘的な彼女に惚れた妖怪たちも沢山いるらしいわよ? その容姿や三味線は妖怪やひとだけでなく、蝶々も魅了されるって噂ね』
 天を見上げれば――ひらりひらり、煙上がる湯屋へと向かう幽世蝶たちの姿が。

 さぁ、まずは雨で濡れた身体を風呂であたためて。
 美味な食事で腹拵えしたり、暫し休憩など、思い思いに楽しもうか。
 蝶々たちが教えてくれる、来たるその時を待ちながら。 

●マスターより
 風呂や脱衣所は、全て男女別です。
 公序良俗に反する内容は不採用又は厳しめにマスタリングします。
 風呂では、湯浴み着や水着も借りることができますし、着なくても可能ですが。
 公序良俗に少しでも反する描写は一切致しません。未成年の飲酒も厳禁です。
 ですが、受付や食事処や大広間や休憩所等は、男女ご一緒で勿論OK。
 全年齢対象の範囲内で湯屋でできそうな事であれば、自由に楽しんで頂ければ!
 OPや断章にないものでも、湯屋や世界観的に違和感ないものは大抵あるかと。
 借りる浴衣の色柄や使用する石鹸やシャンプー等や、食事や酒や飲み物等も。
 お好みのものが用意できるかと思います。

 世界の崩壊の元凶の調査は、湯屋に居れば情報は最低限は得られるので。
 この章では、存分に湯屋を楽しんで頂ければ、それで大丈夫ですし。
 勿論、湯屋の妖怪に話を聞いたり等の調査やさり気ない誘導の行動も歓迎です。
 全年齢対象の範囲内や常識の範疇であれば、お好きに湯屋を楽しんでください!
カイリ・タチバナ
あー、しんみりしぱなっし、ってのは、俺様じゃないんだよなー!
温泉入ろう。

おお、至れり尽くせりってのは、こういうことだよな。
…いや、何かこう、落ち着かねぇ…(上げ膳据え膳が性に合わない人)
いやまて、捉え方を変えよう。これは、前払いだ。そう、この後の事件を解決するための。

そうと決まれば、温泉浸かろう。男女別って、すばらしい。
(ヤンキーヤドリガミ、異性の水着姿すら直視できないほどのウブ。故郷は海女さんスタイル)
借りた浴衣・タオルは紫陽花柄。
選んだのは冬の湯。いやな、故郷の島、滅多に雪が降らねぇから。
なら、そこで楽しめない景色を、ここで楽しんじまおうって思ってな!
あー、雪の中の温泉ってのもいいなーっ!



 どれだけ長いこと、しとしとと雨が降り続く昏い森を歩いただろうか。
 もうこの雨は止む事なんてないのではなんて、ちょっぴり心も引き摺られてしんみりしてしまったけれど。
 急にパッと視界が広がれば、見上げる空とともに気持ちも晴れるような気もして。
 大量の雫を落とす海色の傘をさっさと畳んだカイリ・タチバナ(銛に宿りし守神・f27462)は、湯屋に続く眼前の太鼓橋を足早に渡る。
「あー、しんみりしぱなっし、ってのは、俺様じゃないんだよなー!」
 気を取り直して――温泉入ろう、と。
 そして足を踏み入れた湯屋は、幽世の極楽と言われているのも納得。
「おお、至れり尽くせりってのは、こういうことだよな」
 そう、まさに上げ膳据え膳。
 手ぶらで訪れたって、何でも用意されているから問題ないし。
 やれ浴衣をどうぞ、お風呂セットも万全です、ヘチマたわしにアヒルちゃんの玩具もつけておきました! なんて。
 妖怪達のもてなしも甲斐甲斐しくて、まるで殿様かのような扱い。
 そんな歓待に、何だかそわそわ。
「……いや、何かこう、落ち着かねぇ……」
 昔祀られていた時のことを少し思い返しながらも、上げ膳据え膳がやっぱり性に合わないカイリであったが。
 ……いやまて、捉え方を変えよう、と。
 お兄さんこの浴衣なんてお似合いよぉっ、こっちもいいわね、なんて浴衣を勝手にいくつも宛がわれつつも、こう思い至る。
(「これは、前払いだ。そう、この後の事件を解決するための」)
 此処に来た目的は、猟兵としてのお仕事なのだ。
 ということで、そうと決まれば
 ――温泉浸かろう。
 身体も冷えたし、事件解決のために英気を養うことも大事。
 そして向かうは勿論、男湯。
(「男女別って、すばらしい」)
 何だかちょっと見た目はヤンキーっぽく見えるかもしれないヤドリガミだけれど。
 故郷は海女さんスタイルであったこともあって、異性の水着姿は慣れなくて……やはり何だか落ち着かないから。
 実は超ウブなヤンキーヤドリガミにとって、野郎しかいない風呂はむしろ有難い。
 なので借りた紫陽花咲く浴衣やタオルを手に、早速ゆったりと湯に浸かるべく。
 向かったのは、湯屋一番の自慢の、四季の露天風呂。
 春夏秋冬、その中でもカイリが選んだのは。
「いやな、故郷の島、滅多に雪が降らねぇから」
 雪がはらはらと舞い、煙と共に白い息がたちのぼる、冬の湯。
 ……なら、そこで楽しめない景色を、ここで楽しんじまおうって思ってな! って。
 新鮮な風景を眺めつつ湯に浸かれば、じんわり身体に染み入るあたたかさと、ちらちら降る雪景色に思わず漏れる溜息。
 ――あー、雪の中の温泉ってのもいいなーっ! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
「おわっ!?ととすまねぇ」
いきなり伸びた首に驚いた事を謝罪…喜ばれそうだがしつつ
風呂の案内をふんふん聞く

浴衣貸し出しあるんだ…
でもま白いの借りよう
寝間着でよく着てるから

スレイも色んな妖怪が入りに来てるなら入れるんじゃね?
許可取って入り方だけ伝え別れて自由行動
そも奴は雌だし

久方ぶりに黒纒着てない時間だ…めっちゃ体軽いわ
慣れないそれに浮き足だしつつ
熱いの得意じゃねぇからぬるめの温泉を主に巡っていくぞ
火傷と呪詛に効くのとか貧血に効くのとかピンポイントにあったりするのかな

一通り入ったら別の人格に変わり美白の湯だとか
四季の湯にもいってみる

体力はないから入る度に休憩してるが滅茶苦茶満喫してるぞ



 しとしととあれだけ降り続いていた雨も、いつの間にかピタリと止んで。
 蝶々の導きのまま辿り着いたのは、幽世の極楽――四季の湯屋。
 昏い森で見失った迷子のことも気にはなるものの、案内されるままに湯屋へと続く太鼓橋を渡っていれば。
「おわっ!? ととすまねぇ」
 急に声を上げてしまう、尾守・夜野(墓守・f05352)。
 いや、いきなり案内役の別嬪さんの首が伸びたから。
 けれどいきなり伸びた首に驚いた事を謝罪しつつも……喜ばれそうだが、なんて思って彼女を見遣れば。
 案の定、何だか得意気ににこにこ。
 そんなろくろ首の案内をふんふん聞きながら、やって来たのは湯屋の受付。
「浴衣貸し出しあるんだ……」
 並ぶ浴衣はまさに色とりどり、様々な四季の色柄が取り揃えてあるけれど。
(「でもま白いの借りよう。寝間着でよく着てるから」)
 やはり着慣れているものが一番。
 そうシンプルな白の浴衣を借りながらも、夜野はふと思う。
(「スレイも色んな妖怪が入りに来てるなら入れるんじゃね?」)
 そして一応許可を取ろうとすれば、それよりも先に。
 番頭妖怪の方から、お連れさんは雌ですかい? では男性は此方、女性はこちらです、なんて声が。
 そんな客商売に慣れ過ぎている感のある妖怪に案内されつつも。
 入り方だけスレイプニールに伝え別れた後は、それぞれ自由行動に。
(「久方ぶりに黒纒着てない時間だ……めっちゃ体軽いわ」)
 慣れないそれに浮き足立ちながらも、夜野はそっと指先を湯につけてみる。
 熱いのは得意じゃないから、ぬるめの温泉を主に巡るために。
「火傷と呪詛に効くのとか貧血に効くのとかピンポイントにあったりするのかな」
『それなら、この万病に効果がある翡翠の湯おすすめですよ、ダンナ! 』
 すかさず呟きを聞いて、お勧めしてくる妖怪たち。
 その言葉を素直に受け取って、ちゃぷり湯に浸かってみれば、成程確かに火傷や貧血に効きそう……かも?
 そして一通り入ったら、別の人格で美白の湯も堪能してみて。
 すべすべお肌になれば、名物の四季の湯にも。
 体力はないから、湯上りして倒れないように少しずつ、温度もそうっと抜かりなく確かめつつも。
 休憩しながらも――滅茶苦茶思いっきり、満喫し倒すつもりです!

大成功 🔵​🔵​🔵​

君影・菫
ニーナ(f03448)と一緒に

ふふ、選びっこやんね?
構わんよ、ニーナに似合うの見つけたいなぁ

はら、まあ
紺色は優しい夜の色
其処に薄紅から紫へ変わってく桜咲く浴衣
ふふ、夜桜似合うかな

あんね、うちは
深い緋に仄かに茜色差す空
静かな白椿が咲いて周りに柔い黄昏色の金木犀の天の川
ニーナのイメージは秋の夕方
綺麗で少し切なさ帯びる色やけど
天の川みたいな黄昏色が流れるから寂しゅうないんよ
…どやろか
選ぶの難しいねえと眉を下げて
手拭いはお揃いの満月に兎柄にしとこか

ほんま入る前から楽しいなあ
ふふ、ニーナは元々美人やから絶世の美女になってまいそ
去年の浴衣はお揃いやったから違う柄は新鮮やなあ
ふうわり咲ってお風呂行こて繋ぐ手


ニーナ・アーベントロート
菫さん(f14101)と一緒に
ね、去年のお揃いも楽しかったけど
今回はあたしが菫さんの浴衣、選んでいい?
代わりにあたしの見立ててほしいなーっておねだりして
突発的コーディネート大会の始まり
探し始めて、すぐにびびっときた
紺の帳を彩る花が、優しい薄紅から紫へ移ろう夜桜の柄
絶対似合うよって親指立てる

……わぁ、すっごく綺麗!
燃えてるみたいだけど優しい、秋の夕暮色だね
白椿と金木犀の天の川が華添えて
ひと目で気に入っちゃったよ、ありがとう

手拭いに並んだお月見うさぎも仲良さそう
あたし達と同じだね

お風呂の前から楽しいこといっぱいだね
此処には色んな美人の湯もあるんだって
全制覇したら、皆が驚く浴衣美人になっちゃうかな



 昏い雨の森も、くるりひとつ咲かせた花の中でふたり並んで歩けば、あっという間で。
 視界が開けた雨上がり、湯屋へと続く太鼓橋を渡りながら見上げた空には、空に架かる鮮やかなもうひとつの七彩の橋。
 閉じた薄紅から落ちる大量の雫を、ふるりと大きく払ってから。
 もくもく湯気が上がるお楽しみの湯屋へと足を運べば、乙女たちの心が躍らないわけがない。
 勿論、話に聞いている湯屋のお風呂も楽しみなのだけれど。
 雨に濡れたふたりをまず迎え入れてくれた受付に並ぶのは、まさに千紫万紅、様々な彩り。
 そんなたくさんのいろをぐるりと見回しつつも。
「ね、去年のお揃いも楽しかったけど、今回はあたしが菫さんの浴衣、選んでいい?」
 ニーナ・アーベントロート(赫の女王・f03448)に浮かんだのは、楽しい名案。
 去年合わせて誂えたのは、白地に爽やかないろの椿が咲き落つる夏らしくもしとやかな揃いの浴衣。
 だから、お揃いの次は。
「代わりにあたしのを、菫さんに見立ててほしいなー」
「ふふ、選びっこやんね? 構わんよ、ニーナに似合うの見つけたいなぁ」
 おねだりするニーナに笑み返す君影・菫(ゆびさき・f14101)の言うように、お互いの浴衣を選びっこ。
 ふたりどんなお揃いの浴衣を着るか考えるのも楽しかったけれど、相手に似合うものを探すのもまたドキドキわくわく。
 というわけで始まるのは、突発的コーディネート大会!
 とはいえ、かなりのいろや柄があるから、絶対に悩んでしまう……なんて、思っていたのだけれど。
 ぐるり並ぶ浴衣たちを見回し、探し始めてすぐに。びびっときたのは、ニーナ。
 ……絶対似合うよって、ぐっと親指立てたお墨付きは、静かな宵に咲く桜。
 夜は夜でも、柔く静かな紺の帳。そんな淑やかな宵を彩るのは、優しい薄紅から紫へと移ろう夜桜。
 夏に選んだものとはまた雰囲気が全く違う、春の夜。
 そんな一足早く選んだニーナの浴衣を目にして。はら、まあ、と一瞬ぱちくりと瞬いた菫色の瞳。
 けれどすぐに、零れ咲いてしまう笑み。
「ふふ、夜桜似合うかな」
 菫もそう笑んだ後、隣の彼女のいろを探して。
 やっぱり同じ様に、さほど迷うことなく、見つけたいろにするりとその手を伸ばす。
 ……あんね、うちは、と。
 菫が手にしたのは、すぐ傍で自分の姿を映している綺麗な眸と同じ、秋のいろ。
 深い緋に仄かに茜色差す空。1日のうちでも僅かな時間しか見られない、特別な夕焼けいろ。
 特に秋の空は、そのいろもより美しく、そして切ない深い赤を纏うから。
 そんな秋空に優しく寄り添いひらくのは、静かな白椿と、柔い黄昏を咲かせた金木犀の天の川。
「ニーナのイメージは秋の夕方。綺麗で少し切なさ帯びる色やけど、天の川みたいな黄昏色が流れるから寂しゅうないんよ」
 ……どやろか、そうちらりと菫が隣の彼女の顔を覗き込むように紡げば。
「……わぁ、すっごく綺麗!」
 ぱあっとキラキラ煌めき咲く、夕焼けいろ。
「燃えてるみたいだけど優しい、秋の夕暮色だね。白椿と金木犀の天の川が華添えて」
 そしてふたり、互いに手にした浴衣を交換こして。
「ひと目で気に入っちゃったよ、ありがとう」
「選ぶの難しいねえ」
 ふふっと顔を見合せれば、何処か擽ったいけれど。
 一緒に咲かせるのは、嬉し楽しい満開の笑顔。
 けれど、やっぱりどうせなら、欲張っちゃいたいから。
「手拭いはお揃いの満月に兎柄にしとこか」
「手拭いに並んだお月見うさぎも仲良さそう。あたし達と同じだね」
 選びっこだけでなく、仲良しうさぎのお揃いも。
「お風呂の前から楽しいこといっぱいだね」
「ほんま入る前から楽しいなあ」
 そして浴衣を選び終われば、いざ今度はおお待ちかねの風呂へ。
「此処には色んな美人の湯もあるんだって。全制覇したら、皆が驚く浴衣美人になっちゃうかな」
「ふふ、ニーナは元々美人やから絶世の美女になってまいそ。去年の浴衣はお揃いやったから違う柄は新鮮やなあ」
 ふたり並んで、お風呂へと向かうこの少しの時間だって、楽しくて。
 菫はもう一度、選んで貰ったいろをそっと見つめ、ふうわり咲ってから。
 雨で少し冷えたその手を取って、仲良く繋いで歩き出す――お風呂行こ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて。
浴衣は蓮の華柄がある。色お任せ。

…いえね、何故か内部の三人から、この浴衣勧められまして。
何でですかね?答えてくれないんですよ。

それはともかく。暖まったあとです。
これだけあると、食事迷いますよねー。
ここは、一品料理をいくつか、にしますか。ほら、私たち四人で、好みも違いますからー。ここは公平に。
誰かが気になったものを、少しずつ食べていきましょう。
ふふ、そして、最後のかき氷は…何故か皆で共通した好み『みぞれ』で。

※内部三人、『疾き者』の象徴の一つが蓮だと思ってる。
食べ物の味・食感は、不思議と共有される。



 ひらり雨翔ける蝶を追って、随分と雨が降り続ける森を歩き続けた気がするが。
 急に視界が開け、森を抜けた瞬間、あれほど降っていた雨がぴたりと止んで。
 かわりに現れたのは、ふたつの赤い太鼓橋の先――幽世の極楽、豪華で立派な四季の湯屋。
 そんなもくもくと煙を上げる館内へと、案内役の妖怪に導かれながら足を運んで。
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)が視線巡らせるのは、並べられた様々な四季の色柄の浴衣たち。
 それから義透……今表に出ている『疾き者』は、ふとひとつ首を傾けてから。
「……いえね、何故か内部の三人から、この浴衣勧められまして」
 そう呟きを落としながらも手に取ったのは、深い紺のいろに、白の蓮の華が静かに咲いた浴衣。
 帯は受付係の妖怪が見立てたシンプルな灰色のものを。
 そして『疾き者』は、受け取った浴衣の蓮の華へと改めて視線を落としつつ、もう一度首を傾げる。
 どうして内部の三人がこの浴衣を勧めたのか。
 ……何でですかね? 答えてくれないんですよ、って。
 彼らが、『疾き者』の象徴の一つが蓮だと、そう思っていることは知らずに。
 だがそれはともかく、雨に濡れた身体を流し、十分にあたたまった後。
「これだけあると、食事迷いますよねー」
 ほかほか風呂上りの楽しみは、美味しい食事。
 義透は沢山種類のあるメニューに一通り目を通した後。
「ここは、一品料理をいくつか、にしますか」
 そういくつか、一品料理を注文する。
 だって、それぞれ気になるものが違うから。
「ほら、私たち四人で、好みも違いますからー。ここは公平に」
 誰かが気になったものを、少しずつ食べていくことに。
 そんな食の好みは、四人それぞれだったりするのだけれど。
 でも最後にいただくかき氷は、全員一致でこれ。
 ふふ、と思わず笑み零しつつも義透が堪能するのは――何故か皆で共通した好みの、『みぞれ』味。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・奏
【真宮家】で参加

母さんと無事に合流しましたし、不思議な湯屋を楽しみましょう。雨で体が冷たいですし(夏の浴衣を借りて)では、瞬兄さんもゆっくりしてきてくださいね。母さん、行きましょう。

やっぱり年頃の乙女としては真っ先に入りたいのは美人の湯!!次は母さんと美肌の湯へ!!母さんは元々肌がすべすべかと思いますが、しっかりスキンケアしませんとね!!

温泉の後、やっぱり家族で定番のコーヒー牛乳。

休憩所で可愛い抱き枕とふかふかソファにもふもふ毛布の堪らない組み合わせに目をキラキラさせてソファーに寝転んで抱き枕を抱いたら雨道の疲れと温泉の後の気持ちよさもあって、十秒で寝息を立て始めます。


神城・瞬
【真宮家】で参加

良かった、無事に母さんと合流出来ました。雨ですっかり冷えましたし、湯屋で温まりましょう。(冬柄の浴衣を借りて)はい、また後で。母さんと奏もゆっくりしてきてくださいね。

僕は家族の為に健康でいなければいけないので入るのは健康促進の湯とマッサージの湯。本当に体に沁み渡りますね。

温泉から上がったら家族3人で温泉定番のコーヒー牛乳を飲みます。

その後に入った休憩所で妖怪さんの抱き枕に目を奪われます。一つ貸してもらってふかふかのソファーに座ったら雨道での疲れと温泉の気持ちよさに抱き枕を膝に乗せたまま座ったまま寝息を立て始めます。


真宮・響
【真宮家】で参加

へえ、カクリヨファンタズムにあるだけあって桃源郷のような所だ。雨が冷たかったし、温泉入るか。(秋の浴衣を借りて)瞬は後で待ち合わせだね。さあ、奏、行こうか。

真っ先に入るのは歳が気になるアタシの為にある若返りの湯。後は奏と親子水入らずで美肌の湯に入ろうか。お肌すべすべになりたいからねえ。

温泉の後、家族3人で温泉定番のコーヒー牛乳。休憩所にいったら奏が抱き枕抱えて寝転んで10秒で寝息を立てはじめたと思ったら、瞬までソファーに座ったまま寝てるよ。まあ、長い雨の道だったからねえ。折角なのでアタシもひと眠りするか。(瞬の隣に座って、目を閉じる)



 あれだけ止む気配がなかった雨があがった空に、かわりに立ち昇るのは、もくもくあったかそうな湯気。
 昏い森とはうって変わって、極彩色の明かりが灯る湯屋に続く赤の太鼓橋。
「へえ、カクリヨファンタズムにあるだけあって桃源郷のような所だ」
 森の出口で子供達を待ちながら、真宮・響(赫灼の炎・f00434)がそう思わず呟きを落としたように。
 蝶々たちが導く先にあるのは、幽世の極楽と言われているらしい豪華な湯屋であった。
 そして程なくして、仲良くふたり森を抜けてきたふたりに気付いて、軽く手を上げる響。
 そんな母に気付き駆け寄るのは、真宮・奏(絢爛の星・f03210)。
 神城・瞬(清光の月・f06558)も響の姿を見つけて、そっと瞳を細める。
(「良かった、無事に母さんと合流出来ました」)
 行き先は同じであるし、幽世蝶を追っていれば迷う事はないとは聞いていたし、何より信頼しているけれど。
 それでも雨の森を抜ける道のりは長かったから、合流できてホッとする瞬。
 奏も嬉しそうに母と並びながら、畳んだ傘に沢山ついた雫を振り落としながら。
「母さんと無事に合流しましたし、不思議な湯屋を楽しみましょう。雨で体が冷たいですし」
 見るからにあたたかそうな湯屋を見遣り、家族を促して。
「雨ですっかり冷えましたし、湯屋で温まりましょう」
「雨が冷たかったし、温泉入るか」
 瞬と響も勿論すぐに頷いて、湯屋の妖怪達に案内されるがまま、いざ館内へ。
 まず通された受付では、風呂を楽しむためのものを諸々貸してくれるらしい。
 タオル各種にお風呂セット、髪や身体の染料は風呂に、脱衣所には効果の高い良質なスキンケア用品も取り揃えてあるようだ。
 そして、館内着である浴衣も、湯屋の名の通り四季の彩りが折々。
 その中から奏が借りたのは、青い空に元気なひまわりが咲き誇る様な夏の浴衣。
 瞬は静かな雪の夜を思わせる、漆黒から白へといろが移ろうシックな冬柄の浴衣を。
 響も、落ち着いた紺地にはらり舞う紅葉柄の秋の浴衣を選んで。
 受付を済ませば、お待ちかねの四季の風呂。
「瞬は後で待ち合わせだね。さあ、奏、行こうか」
「では、瞬兄さんもゆっくりしてきてくださいね。母さん、行きましょう」
 そう女湯へと仲良く向かうふたりに、こくりと頷いて。
「はい、また後で。母さんと奏もゆっくりしてきてくださいね」
 瞬もゆったりと身体を温めるべく、男湯へと足を向ける。
 まずは冷えた身体に湯をかけて温めつつ、雨を確りと流し落として。
 うきうきと周囲を見回した奏が、早速一番に浸かってみる湯は勿論これ。
「やっぱり年頃の乙女としては真っ先に入りたいのは美人の湯!!」
 神秘的なコバルトブルーをした美人の湯。乙女ですから!
 そして響が入ってみるのは、一番気になっていたこの湯。
(「歳が気になるアタシの為にある若返りの湯」)
 ちょっぴり大人な芳醇な香り漂う赤いワイン風呂は、美容ケアに最適。
 それからふたり合流して、親子水入らずで浸かるのは、真っ黒でぬるっとした湯。
「お肌すべすべになりたいからねえ」
「母さんは元々肌がすべすべかと思いますが、しっかりスキンケアしませんとね!!」
 いくつになっても、すべすべお肌でありたいから。
 一緒に入って堪能するのはそう、美肌の湯。
 そんな女性陣が、つやつやすべすべ、ほこほこと温泉を楽しんでいる同じ頃。
 瞬も勿論、男湯で数え切れないほどある風呂を満喫中。
「本当に体に沁み渡りますね」
 冷えや肩こりや血行の巡りを良くするという健康促進の効能の、ふわり香り立つ日本酒風呂に浸かった後。
 しゅわしゅわした炭酸の湯でマッサージされているような心地を楽しむ瞬。
 家族の為に健康でいなければいけないからと、選んで入るのは身体に良さそうな風呂たち。
 そして存分に目的の湯や、他にも色々な風呂を楽しんで。
 身体もほかほか、雨もすっかり洗い流し、お肌もつるつる健康になれば。
 浴衣を纏って家族で再び合流した風呂上りといえば、やはりこれです。
 そう――温泉定番の、コーヒー牛乳。
 火照った身体に、冷たくて甘い飲み心地がまた美味しくて。
 3人で飲み干した後、次に向かうのは休憩所。
 そんな休憩所に足を踏み入れた瞬間、奏の目がキラキラ、瞬も思わず目を奪われてしまう。
 可愛い妖怪さん抱き枕や、ふかふかソファにもふもふ毛布の堪らない組み合わせに。
 そして早速、妖怪をダメにするらしいもふもふソファーに寝転んで、ゆるかわ猫又さん抱き枕をだきしめれば。
 ……すやぁ。
 雨道の疲れと温泉の後の気持ちよさもあって、十秒で幸せそうに寝息を立て始める奏。
 瞬も、ちょっぴり間抜けな顔が憎めない河童さんの抱き枕をひとつ貸して貰って。
 ふかふかのソファーにもふんと座れば、やはり奏と同じ様に、雨の森を歩いた疲れと風呂上りの気持ちよさにうとうと。
 もふもふな河童さんを膝に乗せ座ったまま、すうっと寝息を立て始める。
 そんな速攻で夢の世界に誘われた子供たちの様子を見遣って。
(「奏が抱き枕抱えて寝転んで10秒で寝息を立てはじめたと思ったら、瞬までソファーに座ったまま寝てるよ」)
 ふたりが風邪を引かないように、毛布をそっとかけて上げた後。
「まあ、長い雨の道だったからねえ」
 猟兵としての仕事の前に、休息を取って英気を養うことも大事だし。
 家族で過ごすこんな時間はやはり、ほのぼの幸せだから。
 響も瞬の隣にもっふり座って、そっと目を閉じる。
 ――折角なのでアタシもひと眠りするか、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふ、え、え、え、ビリビリしびれます。
アヒルさん、なんでこのお風呂にまず入ろうと思ったのですか?
ふええ!?アヒルさんの充電のためってアヒルさん電気で動いていたんですか?
それ、嘘ですよね。
どうせ、私がビリビリ痺れながらお風呂に入ってのを見て楽しんでいるんでしょ。
どうして、私もアヒルさんの意図に気付いているのにアヒルさんに付き合ってあげているのでしょうか?
まあ、慣れてくるとこのビリビリも気持ちいいですから、気にしないでおきましょう。



 しとしとと全く雨が止まない昏い森を、ひたすら歩いて。
 謎についてきていたアヒルさんボートも何とか無事に撒いてから。
 森を抜けた瞬間広がった雨上がりの空の下、足を運んだのは四季の湯屋。
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)もアヒルさんも、傘はさしていたけれど、すっかりびしょ濡れになってしまったから。
 案内されるまま受付を済ませ、いざ、あたたかいお風呂でのんびりゆったり……過ごす、はずであったのだけれど。
「ふ、え、え、え、ビリビリしびれます」
 アヒルさんに促されるまま、フリルがちゃぽんと使ったのは、電気風呂!?
 ゆっくり浸かるどころか、ビリビリ刺激的。
「アヒルさん、なんでこのお風呂にまず入ろうと思ったのですか?」
 よりによって、まず入る風呂が何故これなのかと。
 そうフリルが訊ねてみれば、しれっと返って来たのはこんな答え。
「ふええ!? アヒルさんの充電のためってアヒルさん電気で動いていたんですか?」
 アヒルさん、実は充電式だった!?
 そんな初めて聞いたことに一瞬びっくりして、瞳をぱちくりさせたフリルだったけれど。
 何だかちらちら自分を見ているアヒルさんの様子に、ふっと溜め息をつく。
 ……それ、嘘ですよね、って。
 アヒルさんとはずっと一緒にいるし、いつもツンツン突かれているから。
 フリルはピンときたのである。
「どうせ、私がビリビリ痺れながらお風呂に入ってのを見て楽しんでいるんでしょ」
 いや、それは分かっているのだ。
 現に、めっちゃ自分の様子をさり気にガン見しているアヒルさん。
 けれど、何故だろうか。
(「どうして、私もアヒルさんの意図に気付いているのにアヒルさんに付き合ってあげているのでしょうか?」)
 アヒルさんの思惑が分かっていながらも、促された電気風呂に入ってしまうのだ。
 もしかしたらその事を、アヒルさんに読まれているかもしれない。
 でも、電気を流している妖怪電気ナマズさんもご機嫌のようだし。
 フリルは刺激的な風呂に入ったまま、アヒルさんに付き合いつつも思うのだった。
 ――まあ、慣れてくるとこのビリビリも気持ちいいですから、気にしないでおきましょう、って。
 びりびり、ふえええと、電気風呂に浸かりながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
風見くん(f14457)と

三味線奏者、いったい何リビオンなんだ……
何とかなる気がしてきたし、目立たないようのんびり情報収集と行こう

雨水を軽く流して、ゆる妖怪の作務衣を借りて
ふたりで一緒にごろごろしようか
この世界にも岩盤浴ってあるんだな

身体が芯から温まると、要らない思考も余計な心配も心地よくぼやけて消えていく
……そう、これって意外と熱いんだよね
風見くんは初めて?

当番……警察時代の話だね
お客が少ない隙にお湯を入れ替えるのかな、そんな時間までお仕事なんて大変だったでしょ
でも、馴染みの銭湯があるってなんだか楽しそう

もうちょっと隣で話を聞いていたいな
その頃の話をするとき、君はとても幸せそうな顔をするもの


風見・ケイ
夏報さん(f15753)と

さっそく私達もお風呂――もとい情報収集と行きましょうか
すでに怪しい妖怪の話を聞いた気がするけど、気のせいかもしれませんからね

この作務衣、可愛いな……
ふたり並んで横になれば、身体の芯から熱が広がって
森の雨に冷えた体も、過去の幻に揺れた心も、みんな溶けていって
――いやほんとに溶けそう
結構熱いんですね……

うん、初めて
当番明けに行ってた銭湯には、岩盤浴なんてなかったし
いや、熱さではいい勝負かも
お昼頃に行くと、沸かしたばかりで凄いんです
大変だったけど、充実していました
……女将さん、どうしているかな

熱さも徐々に心地よくなってきて、隣には夏報さんがいて
またひとつ、想い出が増えたんだ



 どれくらい時間が経ったかは正確には分からないけれど。
 雨の中で視た小さな自分達ほどではないにせよ、傘をさしていても結構濡れてしまった様子を見れば、気付けば随分と歩いていたようだ。
 森を抜けると同時に、あれほど降っていた雨もすっかり止んで。
 薄紫の傘を閉じた風見・ケイ(星屑の夢・f14457)は、夜空の傘を大事そうに畳んで雫を落とす臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)を待ってから。
「さっそく私達もお風呂――もとい情報収集と行きましょうか」
 眼前に見える湯屋にちょっぴりわくわく……いや、猟兵としての仕事をするべく、いざ湯屋へ。
 そんなふたりを見つけて、やれこの風呂がお勧めだの、この料理が絶品だのと、案内をしながら饒舌に喋る妖怪であるが。
『よかったら風呂上りに、今湯屋でも噂の三味線奏者の演奏を聴いていきなさいな。妖怪やひとだけでなく、蝶々も魅了されるって噂だからね』
「三味線奏者、いったい何リビオンなんだ……」
 多分それって、オブリビなんちゃらな気しかしないけれど。
「何とかなる気がしてきたし、目立たないようのんびり情報収集と行こう」
「すでに怪しい妖怪の話を聞いた気がするけど、気のせいかもしれませんからね」
 夏報の言葉に、こくりと頷くケイ。
 話に聞けば、いかにもアレな三味線奏者の次の演奏までは、まだ随分と時間があるようだし。
 ひと仕事するその前に、雨で濡れた身体をあたためて少し休んでおきたいし。
 ふたりで過ごす湯屋も、密かにとても楽しみだから。
 受付を済ませ、必要なお風呂セットを受け取って、風呂で雨水を軽く流してから。
「この作務衣、可愛いな……」
 ふたりお揃いで纏うのは、河童に唐傘小僧に一つ目小僧などなど。ちょっぴり間抜けな顔をした、ゆるかわ妖怪大集合な柄の作務衣。
 それからしっかりと水を飲んだ後、いざ、楽しむのは。
「ふたりで一緒にごろごろしようか。この世界にも岩盤浴ってあるんだな」
 温められた天然鉱石の上にごろんと横になって身体を温める――所謂、岩盤浴である。
 早速ふたり並んで早速寝転んでみれば、ぽかぽかと身体の芯から熱が広がって。
 みんな、じわりと溶けていくような気がする。森の雨に冷えた体も、過去の幻に揺れた心も。
 そして身体が芯から温まってゆく心地よさが、ぼやかして消してくれるような気がする。要らない思考も余計な心配も。
 というか。
 ――いやほんとに溶けそう。
「結構熱いんですね……」
 吹き出る汗が心地良くはあるけれど、なかなか結構、熱かった。
 そんなケイの声に、夏報はうつ伏せのまま、ちらりと彼女を見て。
「……そう、これって意外と熱いんだよね。風見くんは初めて?」
「うん、初めて」
 そう溶ける様な感覚に身を委ねたまま答えたケイは、こう続ける。
「当番明けに行ってた銭湯には、岩盤浴なんてなかったし」
 けれど不思議と、この身体の芯からあたたまる様な感覚は初めてな気がしなくて。
 ……いや、熱さではいい勝負かも、と。
 あの頃のことを思い返せば、落ちるそんな呟き。
 夏報は紡がれる彼女の昔の話に耳を傾けつつも、ふたり会話を楽しむ。
「当番……警察時代の話だね」
「お昼頃に行くと、沸かしたばかりで凄いんです」
 警察であった頃、当番の職務を終えて浸かる熱々の風呂は、今みたいに色々なものを溶かしてくれて。
 熱すぎて、呑気に考え事なんかしていたら、ゆでだこみたいになりそうな程だったけれど。
 だから……かえってそれが、良かったのかもしれないし。
「お客が少ない隙にお湯を入れ替えるのかな、そんな時間までお仕事なんて大変だったでしょ」
「大変だったけど、充実していました」
 ……女将さん、どうしているかな、なんて。
 ちょっぴりだけ、あの頃が懐かしくなったりもする。
 そんなケイの様子に、夏報は藍色の瞳をそっと細めて。
「でも、馴染みの銭湯があるってなんだか楽しそう」
 風見くん、次は仰向けになるんだよ、と教えてあげる。
 そしてふたり一緒に手順通り、今度はころんと仰向けに寝転がってから。
 夏報はじわりあたたまりながらも、こう思うのだった。
(「もうちょっと隣で話を聞いていたいな」)
 だって、とても幸せそうな顔をするんだもの。
 その頃の話をするときの君は。
 そして夏報に倣い仰向けになってみたケイも、熱く感じていた感覚が徐々に心地よくなってきて。
 そうっと隣へと目を遣って瞳を細める。
 昔通っていた銭湯も、こんな風に身体に染み入るように気持ちよかったけれど。
 きっと同じような心地になった時、今度は今日のことをきっと思い出すだろう。
 だって今は、隣には夏報がいて。
 またひとつ、想い出が増えたんだ、って――そう思うから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
倫太郎、綺麗な浴衣ですね
竜胆ですか……ふふ、なるほど
私は紺色の、いつも通りのものにしました

温泉の楽しさは色々な湯に浸かれる所ですが
のぼせないように注意しなくてはなりませんね
その後は部屋でのんびり過ごしましょう

旦那様、ですか?
なんだかくすぐったいです

湯で温まった体、そして髪の手入れをして貰えば
心地良さに頭がぼんやりとしてくる
そうした中で指圧を提案されれば断る理由もなく

お願いします、倫太郎

敷かれた布団の上にうつ伏せになると
肩や背を程好い力で押される心地良さに目を瞑る

人も文明も異なる世界
新鮮で楽しくもありますが、緊張もあるのかもしれません
ですが……きっとなれますよ
貴方が生きてきた世界ですもの


篝・倫太郎
【華禱】
浴衣は秋色で裾に秋の花が少し咲いてるの
ほら、これとか竜胆だぜ?
そう夜彦に笑いかけて

温泉は四季の湯かな……
折角だからのぼせない程度に全部を堪能しようぜ?
そう、しっかり堪能したら個室でのんびり過ごそう

ほら、旦那様……楽にしててよ

夜彦の長くて綺麗な髪を
ゆっくりのんびり梳いて
丁寧に慎重に手入れして……たら
うとうとしてる

うとうとしてる夜彦可愛いなぁ

ついでだから、肩も揉みましょうか?
揉むっつか、指圧だけど……

了承貰えたら
肩から背中をゆっくりとぐいぐい
張ってるトコは丁寧にぐいぐいぐい

UDCアースでの生活って
ずっとずっと続けてくのは、少し疲れちゃうんだろ
そう告げれば、返される言葉に
蕩けるように笑って



 昏い雨の森を抜ければ、雨上がりの空がぱっと広がって。
 眼前に現れたのは、もくもくと休みなく煙をあげる豪勢な湯屋が。
 ふたり並んで太鼓橋をひとつふたつと渡り、案内されるまま中へと入れば。
 ずらりと並ぶのは、沢山の四季のいろたち。
 その中から、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が手にしたのは、秋の彩り。
 だって、秋のいろの中にそっと咲いているのを見つけたから。
「ほら、これとか竜胆だぜ?」
 そう嬉しそうに笑いかける倫太郎に、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)もつられて柔く瞳を細めてから。
 ……倫太郎、綺麗な浴衣ですね、と。
 裾に秋の花が少し咲いている彼の浴衣に笑み零す。
「竜胆ですか……ふふ、なるほど」
 彼が見つけてくれた、己の花を見つめて。
 そして夜彦も、自分の纏う浴衣を選ぶべく視線を巡らせて。
「私は紺色の、いつも通りのものにしました」
 手に取ったのは普段通りの落ち着いた紺の浴衣に、帯は翡翠色のものを。
 それからふたり、身体をあたためるべく風呂へ。
 湯屋には目移りするくらい沢山の風呂があるけれど。
 倫太郎は一通りぐるりと周囲を見回してから。
「温泉は四季の湯かな……折角だからのぼせない程度に全部を堪能しようぜ?」
「温泉の楽しさは色々な湯に浸かれる所ですが。のぼせないように注意しなくてはなりませんね」
 ふたりが順に楽しむべく向かったのは、春夏秋冬の景色が臨める、この湯屋自慢の四季の湯。
 これまで共に過ごしてきた季節をひとつずつ、やっぱり一緒に巡って楽しんで。
 思い出話から他愛のない話まで、いっぱい花を咲かせながらも身体の芯まで温まって、十分に堪能すれば。
 風呂上りは、お願いした個室でのんびりとしたひとときを。
 そして倫太郎は、部屋で寛ぐ夜彦にこう声を。
「ほら、旦那様……楽にしててよ」
「旦那様、ですか? なんだかくすぐったいです」
 それから、持参していた黄楊の櫛を取り出し、手にすれば。
 ゆっくりのんびりと梳きはじめる。これで梳きたいってそう思った、長くて綺麗な流れる様な藍のいろを。
 そう丁寧に慎重に湯上りの髪を手入れして……いたら。
 ふと軽く彼の顔をじいっと覗き込んでみた倫太郎は、琥珀の瞳を小さく瞬かせる。
 ……うとうとしてる、って。
 それからすぐに、思わず笑み零してしまう。
(「うとうとしてる夜彦可愛いなぁ」)
 いつもは生真面目できりっとしている印象の夜彦が、ちょっぴりふにゃりとなっていることに気付いて。
 そんな心地良さに頭がぼんやりしてしまう夜彦に掛けられるのは、こんな声。
「ついでだから、肩も揉みましょうか? 揉むっつか、指圧だけど……」
「お願いします、倫太郎」
 そう提案されれば、断る理由なんてないから。
 そしてこくりと頷いた夜彦の身体を、ぐいっと指で押し始める倫太郎。
 肩から背中をゆっくりとぐいぐい。
「ここ張ってるなー。どう? 夜彦」
「あ、ん……はい、そこ、とても気持ちいいです。倫太郎」
 張ってるトコは丁寧にぐいぐいぐい。
 敷かれた布団の上にうつ伏せになって。肩や背を程好い力でぐいぐい押されれば、目を瞑るほど心地よくて。
 そんなもっと気持ち良さそうにとろんとしている夜彦の様子に、倫太郎は笑いながらも。
 ふと、こう続ける。
「UDCアースでの生活って、ずっとずっと続けてくのは、少し疲れちゃうんだろ」
 元は夜彦は、サムライエンパイアにいて。
 今でも、その世界の事をとても大事に思っている。
 そんな世界と環境の違うUDCアースでの生活は、彼にとってきっと疲れるだろうと。
 そう倫太郎は、彼の張った部分をぐいぐい解しながらも思うけれど。
「人も文明も異なる世界。新鮮で楽しくもありますが、緊張もあるのかもしれません」
 夜彦はそれは否定せず、けれどもすぐに続ける。
「ですが……きっとなれますよ」
 ――貴方が生きてきた世界ですもの、って。
 そして告げた声に返されたそんな言葉に、今度は倫太郎がふにゃり。
 蕩けるように、笑って。
 旦那様がより心地よくなるようにと、丁寧にぐいぐい指圧してあげる。
 ……今はまだ、少しだけ疲れるかもしれないけれど。
 でも――共に家族と在る世界が、何より貴方の隣が。
 今の自分の一番の居場所だということを、夜彦はちゃんと知っているから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷹司・かれん
桐江さん(f22316)と
※メイン人格の花恋

幻で妙な雰囲気になりましたし、気分転換です
のんびりと景観も楽しめる露天風呂に行きましょう
湯浴み着とかはいりませんね?
女同士ですもの、恥ずかしがることはないでしょう?

湯船の端で身体を伸ばしてのんびり
ああ、いい光景ですね
癒されます
未成年の桐江さんが一緒でなければこのまま熱燗でもという所ですが…
って、のぼせましたか、真っ赤ですよ?

え、私に見惚れて…?
…私の貧相な身体に見惚れる要素なんか…
年下の桐江さんは立派なものをお持ちなのに、私の年ではもう成長は望めませんし…
(なだらかな自分の胸を見て遠い目
ええ、ええ、その立派なお餅、悪戯しても許されますよね?(わきわき


光満・桐江
かれんさん(f22762)と

かれんさんにあんな過去があったなんて…
で、でもいつまでも引きずってちゃいけないですし
今は温泉でリラックスしましょうっ

かれんさんと一緒に温泉…とってもドキドキ…
いえ、素敵な時間を過ごせそうですっ

というわけで、春の湯の夜桜の下で一緒に温泉を堪能しちゃいます

温泉のあったかさと桜舞う景色に心地よくしていたら
花びらが舞う中湯船に浸かるかれんさんの姿がとっても綺麗で
思わず見とれてしまいます…

そこにかれんさんに声をかけられてドキッとしちゃいますけどっ
って、女性の魅力はお胸の大きさだけでは決まりませんからー!

と、フォローしつつもわたわたしてたら
かれんさんにいたずらされちゃう事に!?



 幽世蝶がひらりと舞う空は、いつの間にか雨が止んでいて。
 森を抜け、びしょ濡れになった傘を畳みながらも、光満・桐江(生徒会の魔女・f22316)はそっと思う。
(「かれんさんにあんな過去があったなんて……」)
 そしてちらりと、すぐ隣にある鷹司・かれん(メイド探偵が見ています・f22762)を見つめるけれど。
 すぐにふるふると小さく首を横に振って。
(「で、でもいつまでも引きずってちゃいけないですし、今は温泉でリラックスしましょうっ」)
 気を取り直し、かれんと共に歩き出す。
 眼前に見えている、幽世の極楽――豪勢な四季の湯屋へと。
 傘はさしていたけれど、長いこと雨の森を歩いていたからふたりともびしょ濡れだし。
(「幻で妙な雰囲気になりましたし、気分転換です」)
 かれんも気分を変えて、今は桐江と温泉を楽しみたいから。
「のんびりと景観も楽しめる露天風呂に行きましょう」
 受付を済ませながらも提案するのは、やはりこの湯屋の一番の自慢だという四季の露天風呂。
「湯浴み着とかはいりませんね? 女同士ですもの、恥ずかしがることはないでしょう?」
 今回は混浴ではなく女の子同士だから湯浴み着は借りずに、ふたり脱衣所に向かいながらも。
 桐江はこくりと頷きつつも、ちょっぴり頬を仄かに赤らめてしまう。
(「かれんさんと一緒に温泉……とってもドキドキ……」)
 ……いえ、素敵な時間を過ごせそうですっ、って。
 というわけで、脱衣所で準備を済ませてから。
 ふたりが向かうのは、夜桜が満開に咲いた春の湯。
 夜のいろに映える桜花弁が舞う中、春の花が浮かぶ湯にちゃぷりと浸かって。
「ああ、いい光景ですね。癒されます」
 湯船の端で身体を伸ばしてのんびり、天を仰ぐかれん。
 桐江も一緒に、ほかほか温泉のあったかさと桜舞う景色に心地よくしていたのだけれど。
 ふと、目を遣れば……思わず見惚れてしまう。
 立ちのぼる湯気に、夜を彩る桜花弁が舞い降る中――湯船に浸かるかれんの姿が、とても綺麗で。
 そんな、暫しほうっとその姿を見つめていた桐江だけれど。
「未成年の桐江さんが一緒でなければこのまま熱燗でもという所ですが……って、のぼせましたか、真っ赤ですよ?」
「えっ、あ……かれんさんの姿がとっても綺麗で、見とれてしまって……」
 かれんに声をかけられて、思わずドキッ。
 ますますカアッと赤くなった頬を慌てて両手で押さえつつも、ちょっぴり慌ててしまう。
「え、私に見惚れて……?」
 かれんはそう返ってきた桐江の声に、瞳をぱちりと瞬かせた後。
「……私の貧相な身体に見惚れる要素なんか……年下の桐江さんは立派なものをお持ちなのに、私の年ではもう成長は望めませんし……」
 豊かな桐江のものに比べ、随分なだらかな自分の胸を見た後、思わず遠い目に。
「って、女性の魅力はお胸の大きさだけでは決まりませんからー!」
 そんなかれんの言葉に、わたわたフォローする桐江だけれど。
 ちゃぷり、ふいに伸ばされた彼女の掌の行方に、さらにおたおた顔を真っ赤にしてしまう。
「ええ、ええ、その立派なお餅、悪戯しても許されますよね?」
 ひらり桜舞う春の夜の温泉を楽しみながらも。
 わきわき、かれんにいたずらされちゃう展開に……!?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壱織・彩灯
【黒緋】

濡髪の雫をふるふると落とし
隣のわんこに微笑んで
温泉だと…冷えた身体に最高だ

レン、浴衣はどうする?
ふむ、白地に鶴が舞う縁起良いのはどうだ?
お前の緋色がよく映えよう
…成程、同意だ
揃いにしよう

さあて、愉しい風呂じゃ
四季の湯は趣が有るし
打たせ湯やさうなで
我慢比べ…なに、得意ならいざ勝負

レンは何処が好い?
俺は…日本酒風呂が気になるな
ほれ、以前はレンに選んで貰ったから今日は俺のお勧めを持参したぞ
どうじゃ?火照り酔うていかぬか?

浸かればふわり馨る芳醇な湯に
御機嫌酒呑は鼻歌鳴らし
れん、乾杯じゃ

ゆるりと微笑み凡てが酔いに染まって
傍らの友が今宵は肴に
爺とてはしゃぐというもの
噫、極楽と相成りました


飛砂・煉月
【黒緋】

わんこみたいに首を振れば飛び散る雫
おっと、彩灯
飛んでたらごめーん

おお、温泉イイね
白地に鶴が舞う浴衣とか最高センスじゃん彩灯
オレに映えるなら
キミも映えるよね?
お揃いしよー

楽しい風呂巡りの旅
四季の湯は風情があるねぇ
お、打たせ湯かサウナで我慢比べする?
ちょー得意だよって得意気

ほう奇遇…オレも日本酒風呂気になってたんだよね
酒って聞いて彩灯みたいってさ
彩灯のオススメなら間違い無いね!
温泉以外の火照りに行くー

あったかーなお湯の中で
隣と同じく上機嫌
あやひ、かんぱーい
酔う前からほわほわだー

ゆるくふわりと咲えば酔いに花咲かす
温泉のお酒も至高だねぇ
ともだちと一緒だからより極楽な心地
あっは、もっとはしゃご~



 森を抜けると同時に、ぱあっと広がる雨上がりの空。
 でも、もう雨は降ってはいないのだけれど。
 其処に在るのは、濡鴉に濡狼に濡竜。みんな揃って、ずぶ濡れな姿。
 けれどもそれもまた、楽しくて。
 ぷるぷるっと、飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)がわんこみたいに首を振れば。
 真似っこしたハクも一緒に、尻尾をぷるぷるっ。
「おっと、彩灯。飛んでたらごめーん」
 そんなきらきら雨雫を飛び散らせる、隣のわんこと白銀の竜の仔に微笑んで。
 漆黒の濡髪からぽたり落つる雫をふるふると落とした後。
 壱織・彩灯(無燭メランコリィ・f28003)の瞳も、散らせた雨雫の如く煌めく。
「温泉だと……冷えた身体に最高だ」
「おお、温泉イイね」
 ふたりの眼前に在るのは、もくもくと休みなく煙立ち昇らせる幽世の極楽――四季の湯屋。
 ぴちぴちちゃぷりと雨に打たれ歩くのも、童心に返ったようで愉しかったけれど。
 湯にゆったりと浸かって身体温める極楽もまた、心躍るから。
 数多の行灯が照らす鮮やかな赤の太鼓橋を、ひとつ、ふたつと逸る様に渡って。
「レン、浴衣はどうする?」
 湯屋に至れば、その名の通り、目の前に広げられた四季のいろに視線巡らせる彩灯。
 それからふと手を伸ばしたのは、隣の友に似合うと選んだいろ。
「ふむ、白地に鶴が舞う縁起良いのはどうだ? お前の緋色がよく映えよう」
「白地に鶴が舞う浴衣とか最高センスじゃん彩灯」
 煉月はそう彩灯に笑んでから。
「オレに映えるなら、キミも映えるよね?」
 にぱっと笑み深め続ける――お揃いしよー、って。
 お揃いの緋色を重ねて。
「……成程、同意だ。揃いにしよう」
 納得するようにそうこくりと頷いた彩灯は、同じものをもうひとつ。
 ふたり手にしたのはやっぱり、同じいろ。
「さあて、愉しい風呂じゃ」
「四季の湯は風情があるねぇ」
 まずは、湯屋の一番の自慢だと聞いた四季の露天風呂で、春夏秋冬の景色を楽しんで。
 のんびりほかほか、身体も温まれば。
「次は、打たせ湯やさうなで、我慢比べ……」
「お、打たせ湯かサウナで我慢比べする? ちょー得意だよ」
「……なに、得意ならいざ勝負」
 得意気にえっへん胸を張る煉月に、競争心もむくり。
 男の意地をかけて、いざ我慢比べ……!?
 そして互いに一歩も譲らず、いい汗をかきまくった後は。
「レンは何処が好い? 俺は……日本酒風呂が気になるな」
「ほう奇遇……オレも日本酒風呂気になってたんだよね。酒って聞いて彩灯みたいってさ」
 そんな煉月の期待に応えるかのように。
 笑みと共に彩灯は取り出す。
「ほれ、以前はレンに選んで貰ったから今日は俺のお勧めを持参したぞ」
 ――どうじゃ? 火照り酔うていかぬか? って。
 水分補給もとても大事ですから。
「彩灯のオススメなら間違い無いね! 温泉以外の火照りに行くー」
 勿論煉月も、そんな心躍る誘いを断るわけもなく。
 いざ、彩灯のお勧めを手に次に向かうは、日本酒風呂。
 ちゃぷりと浸かれば、ふわり馨る芳醇な湯。
「れん、乾杯じゃ」
 鼻歌鳴らす御機嫌酒呑は、そううきうきと早速杯を掲げて。
 あったかほかほかな湯の中で、ほくほく一緒に上機嫌に。
「あやひ、かんぱーい」
 ふにゃりと笑んで同じく杯を掲げる煉月。
 ……酔う前からほわほわだー、って。
 共に酌み交わすのも酒、のんびり浸かる湯も酒――何ともゆうらり、夢心地。
 ゆるりふわりと微笑み咲くのも至極当然。
 いや、酒三昧なことも勿論であるけれど、今宵の肴は一等特別。
 それは、酔いの花咲かせ染まる、傍らの友の楽しそうな姿。
「温泉のお酒も至高だねぇ」
「ふふ、爺とてはしゃぐというもの」
「あっは、もっとはしゃご~」
 其処には、愉快な心地にはしゃぐ酔っ払いがふたり。
 まさに、ほこほこぬくぬく、極楽極楽……噫、極楽と相成りました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戎崎・蒼
葎(f01013)と
雨晒しになって冷えた体を温泉で温めた後は、選んだ浴衣を着てフードコートへ
黒地の片滝縞の浴衣を選んだけれど、着方はこれで大丈夫なのか…?

いつもと雰囲気の違う彼女を見て、少し目を見張って
「…浴衣、とても似合っているね。髪も下ろしているといつにも増して綺麗だ」
手を繋いで誘導されたなら、何だか僕が年上だいうのに笑ってしまう
…ふふ、これでは僕が介護されているみたいだ。可笑しいな

暫く食べ歩きをしつつ、僕は葡萄のフルーツ飴を選ぼうか
本当に宝石のようだね…苺は僕も好きだな。もし良ければ僕のも食べてみるかい?
口許にそっと当てるように、飴を差し出す

こんな平和がずっと続けば…どれだけいい事か


硲・葎
蒼くん(f04968)と。
お風呂の後は浴衣を2人で選んでフードコートを歩いてみようかな。
私は黒地に向日葵の色浴衣を選んで。
髪の毛、乾き切る直前だからおろしておいて自然乾燥にしないと……。
蒼くんはどんなのかなあ……。
浴衣は初めてみたいだし、手を繋いで誘導してあげよう。
「蒼くん、何食べたい?焼きそばとかもあるみたいだけど」
キョロキョロと見回して、食べ歩きできそうなものを探そう。
あ、フルーツ飴!
キラキラ光ってて宝石みたい……!
好きなフルーツとかあるかな?私はやっぱり
苺のがいいかな。
彼とシェアしながら色々食べたりしたいな。
口許に当てられた飴をそっと舐めたらいつもより甘い気がするのは気のせいかなあ……。



 しとしととひたすら雨が降り続く昏い森とは、うってかわって。
 ほかほか雨上がりの空へと煙を立ち昇らせるのは、鮮やかな明かりが数多灯る四季の湯屋。
 傘は一緒にさしてはいたけれど、随分長い間、雨の中を歩いたから。
 雨晒しになって冷えた体を、温泉に浸かってほかほか十分温めて。
(「着方はこれで大丈夫なのか…?」)
 選んだ黒地に片滝縞落ちる浴衣を見様見真似で着てみた戎崎・蒼(暗愚の戦場兵器・f04968)は、フードコートへ。
 そして待ち合わせしている硲・葎(流星の旋律・f01013)の姿を、きょろりと探してみる。
(「髪の毛、乾き切る直前だからおろしておいて自然乾燥にしないと……」)
 そうおろしたままの緑のいろを微か躍らせながらも。
 蒼くんはどんなのかなあ……なんて。
 ちょっぴりそわりとする葎が纏うのは、黒地に向日葵のいろが咲いた浴衣。
 それから、先に来ていた彼の姿を見つけ、蒼くん、と彼の名を呼び駆け寄れば。
 葎に気付き視線を向けた蒼は、ちょっとだけ目を見張ってしまう。
 いつもと雰囲気の違う、彼女の姿に。
「……浴衣、とても似合っているね。髪も下ろしているといつにも増して綺麗だ」
 そんな彼の言葉に、ぱちくりと瞳を瞬かせた後。
 照れたように葎も笑んで返して。
「あ、ありがとう……蒼くんの浴衣も素敵だね! 蒼くんは浴衣は初めてだよね?」
 浴衣に慣れていないだろう彼と手を繋いで、誘導してあげる。
 そして導かれるまま手を引かれながら、蒼は思わず笑ってしまう。
 だって、何だか可笑しかったから。
(「……ふふ、これでは僕が介護されているみたいだ」)
 年上の自分がエスコートされているこの状況が可笑しく、微笑ましくて。
 そしてふたりで巡るのは、祭りの屋台のような店が並ぶフードコート。
「蒼くん、何食べたい?焼きそばとかもあるみたいだけど」
 そう、食べ歩きできそうなものを探してキョロキョロ。
 周囲を見回し、いくつか気になったものを互いに買ってシェアして食べていれば。
「あ、フルーツ飴! キラキラ光ってて宝石みたい……!」
 葎が見つけたのは、甘い飴を艶やかに纏った宝石のような果実たち。
「好きなフルーツとかあるかな? 私はやっぱり、苺のがいいかな」
「僕は葡萄にしようかな。本当に宝石のようだね……苺は僕も好きだな」
 蒼はそう言って、葎の苺と自分の葡萄を手に取ってから。
 苺飴を手渡した後、自分の葡萄飴を差し出してみる――もし良ければ僕のも食べてみるかい? って。
 艶やかな彼女の口許に当てるように、そっと。
 そんな甘いお裾分けに、葎はそうっと応じて。葡萄飴を舐めてみれば……ふわりと広がる甘い美味しさ。
 それから、仄かに火照った己の頬に無意識的に掌を添えつつ、思うのだった。
 ――いつもより甘い気がするのは気のせいかなあ……、なんて。
 そして、お裾分けした甘さに笑み咲かせる葎を見つめながら。
 ふと瞳を細め、蒼は密かにこう心に思う。
 ――こんな平和がずっと続けば……どれだけいい事か、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネロ・バロック
【nostalgia】

黒い服が多いからとバンリに言われたしたまには気分転換だ。
今日は生成りの白に縞を混ぜた浴衣だ。女子二人の浴衣姿はいつもと違う新鮮さ。
化け猫柄はファンシーだけどもコイツなら何でも可愛く着こなしやがる。
メノンは灰色の髪にブルーグリーンの生地が映えるよなァ。感想を述べるぜ(うんうん頷き)

コーヒー牛乳片手にゴロゴロ座談。
俺も花湯が印象的だった、シラユリの甘い香りとポカポカのお湯が身体に染みる。
セレブの気分ってやつを味わえたな。
そんでサウナで一汗流してから冬の湯で寒暖と景観を楽しんだりしたな。

話していたらリラックスした気持ちいい気分に段々なって。
眠りの世界に誘われるぜ…。


バンリ・ガリャンテ
【nostalgia】

淡灰の地に化け猫柄の大正レトロ浴衣を着込んだ俺。
いやぁメノンさんや最高のお風呂でしたね!ネロさんはどうだった?
休憩所にてお風呂の感想大会だ。乾杯でフルーツ牛乳を一気飲み。2本目に手を伸ばしちまう。
まずは四季風呂、春の湯。舞った桜の花弁が湯に浮かんでそいつを掬って。花の匂いも香っていたよね。乳白色のお風呂も湯の花っての?沈んだ白いもそもそにも効能があるってね。あとね、美人湯が澄んだ藍色で美しくって湖水宛らだったのさ。虹色の湯は…ぬふふ。さて不死も不老も授かれたもんだか。ねぇメノンさん。
ネロさんのお話しにもふぬふぬと相槌打って、…ああじっくり話し込んだら眠くなってきましたよ。


メノン・メルヴォルド
【nostalgia】

選んでもらったアイボリーの帯とブルーグリーンに薄紅の菊の浴衣を着て
バンリちゃんの化け猫柄の浴衣も可愛くてさすがなの
ネロくんは白の浴衣に浅黒い肌が映えてちょっとどきどきしちゃう、ね

ほかほかで喉が渇いちゃった
ワタシは由緒正しく牛乳で乾杯なのよ
腰に手を当てて作法に則りこくこく飲んじゃう
各々のお味が個性豊かで
そう思うと楽しくて微笑む

お風呂も、とっても気持ち良かったのよ
バンリちゃんと色々堪能できたのが嬉しくて
そう、コバルトブルーは鮮やかだったの!
同意して頷き
黒いぬるぬるも楽しかったね

ネロくんの白百合のお風呂もステキ
そういえば良い香りがするかも?

眠る2人に和みつつ
いつの間にかうとうと



 幽世の極楽と言われている、四季の湯屋。
 けれど自慢の春夏秋冬は、何も湯屋のメインである風呂だけではない。
 通された受付にずらりと並べられた浴衣の彩りや柄も、千紫万紅、四季折々。
 バンリ・ガリャンテ(Remember Me・f10655)は、ぐるりとそんな数多のいろたちを見回してから。
 ネロさんは黒い服が多いから、メノンさんも浴衣お召になるよね、とそわっそわ。
 自分のものは勿論、連れのふたりに似合う浴衣を絶賛吟味中。
 そんなバンリの言葉を聞いて、たまには気分転換だ、と。
 ネロ・バロック(餓狼・f02187)は、普段あまり着ないいろを手にして。
 メノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)も、選んで貰った浴衣を見つめ、ほわりと笑顔を咲かせる。
 けれど、それぞれ浴衣姿を披露するのは、湯屋の風呂を存分に満喫してから。
 まずは男女それぞれ分かれて、のんびり楽しいお風呂タイムを。
 それから、ほかほか風呂上り。
 女性陣を待つネロが着ているのは、黒を纏うことが多い彼には珍しい、生成りの白に縞を混ぜた浴衣。
 そして、お待たせ、とやって来たバンリとメノンを見て、うんうん頷いてしまう。
 女子二人の浴衣姿の、いつもと違う新鮮さに。
「メノンは灰色の髪にブルーグリーンの生地が映えるよなァ」
 メノンが纏うのは、薄紅の菊が咲く鮮やかな青緑の彩を湛えた浴衣。
 アイボリーの帯がまた、清楚な爽やかさと華やかさを添えていて。
 バンリも彼と一緒にこくこく頷いては、かわいい、ときゅん。
 そんなふたりの言葉に、照れた様に瞳を細めつつも。
「ネロくんは白の浴衣に浅黒い肌が映えてちょっとどきどきしちゃう、ね」
 メノンはそうネロへと、嬉し気に笑んで返してから。
 自分のものを選んでくれたバンリの纏う浴衣を見つめ、ほわほわ。
「バンリちゃんの化け猫柄の浴衣も可愛くてさすがなの」
「化け猫柄はファンシーだけども何でも可愛く着こなしやがる」
 バンリが纏うのは、ふたりとはまた雰囲気の違った、大正レトロ感溢れた浴衣。
 淡灰の地に、にゃあと今にも鳴きそう様なその柄はゆるかわな化け猫さん。
 そんなゆるかわ柄もばっちり着こなすバンリは、気持ち良かった温泉にほくほく。
「いやぁメノンさんや最高のお風呂でしたね! ネロさんはどうだった?」
 休憩所にてお風呂の感想大会……の、その前に。
 まずは、風呂上りの定番で乾杯を。
 颯爽と手に取るのは、そう――フルーツ牛乳!
「ほかほかで喉が渇いちゃった」
 メノンが選んだのは、由緒正しき牛乳。
 そしてネロの手には、コーヒー牛乳が。
 それから皆で、乾杯! と瓶をカチリ重ね合わせてから。
 ごくごくとフルーツ牛乳を豪快に一気飲みするバンリ。
 メノンも手にした牛乳を、ちゃんと作法に則って。腰に手を当てて、こくこく。
 一方ネロはコーヒー牛乳片手に、わんこ妖怪のもふもふクッションを抱えゴロゴロ。
 さらにバンリが手を伸ばすのは、2本目のフルーツ牛乳……!?
 そんな皆の様子を見回して、メノンは思わず笑み零してしまう。
 各々が選んだ味も、飲み方も、みんな違って個性豊かだから。
 それからはじまるのは、ごろりと楽しいお喋り大会。
 楽しんだ風呂を思い返しつつ、それぞれ感想を。
 バンリは浴衣とお揃いの化け猫クッションを見つけ、メノンとお揃いでもふもふしながらも。
「まずは四季風呂、春の湯。舞った桜の花弁が湯に浮かんでそいつを掬って。花の匂いも香っていたよね」
 やはり最初に語るのは、この湯屋自慢の露天風呂・四季の湯。
 湯に舞い降った彩を掬い取れば、ふわりと柔く漂う春の香り。
 そしてネロが堪能したのは、咲いては浮かぶ花たちが甘く香った夏の湯。
「俺も花湯が印象的だった、シラユリの甘い香りとポカポカのお湯が身体に染みる」
 ……セレブの気分ってやつを味わえたな、って。
 そうラグジュアリー感満載であった風呂を思い返しつつも。
 再びうんうん頷く彼に、メノンも笑む。
「ネロくんの白百合のお風呂もステキ」
 ……そういえば良い香りがするかも? って。
 そして美しく花咲いた湯も、心地よかったけれど。
「乳白色のお風呂も湯の花っての? 沈んだ白いもそもそにも効能があるってね。あとね、美人湯が澄んだ藍色で美しくって湖水宛らだったのさ」
「そう、コバルトブルーは鮮やかだったの! 白いもそもそも、黒いぬるぬるも楽しかったね」
「虹色の湯は……ぬふふ。さて不死も不老も授かれたもんだか。ねぇメノンさん」
 澄んだ青も、白いもそもそも、黒いぬるぬるも、謎の虹色も。どのいろも全部、楽しく堪能して。
 お肌もつるつる、ますます美人になったのは勿論……さらには、不老不死にもなっちゃったかも?
 そんなバンリとふたり顔を見合せ、笑いあって。
「お風呂、とっても気持ち良かったのよ」
 メノンはほわりと笑み咲かせる。一緒に色々堪能できたことが、嬉しくて。
 そして女子たちの話を聞きながら、ネロも自分が巡った風呂をふたりに語る。
「そんでサウナで一汗流してから、冬の湯で寒暖と景観を楽しんだりしたな」
 気持ち良く汗をかいてから、春とも夏ともまた雰囲気が違う、雪景色の露天風呂を楽しんだことを。
 バンリはそんなネロの話にふぬふぬと相槌打ちながらも、妖怪をダメにするクッションをもふもふ。
 風呂上がりのほんわかあたたかさと、ふわふわ化け猫さんに身を委ねていれば。
 ……ああじっくり話し込んだら眠くなってきましたよ、って。
 つい、こっくりうとうと。
 ネロもふたりとのんびり話していれば、段々とリラックスした気持ちいい気分に。
 そして妖怪わんこさんに顔をぽふり埋めて。すやぁと誘われるのは、眠りの世界。
 メノンは、そんなすやすやと眠ってしまったふたりの姿に、ほんわか和みつつも。
 バンリとお揃いの化け猫さんをぽふんと抱きしめて……やっぱり一緒に、うとうと夢の中へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サン・ダイヤモンド
【森】3階、美肌の湯
「温泉、久しぶりだね!」
笑顔で湯にはしゃぎ

うっとりと黒い湯を手に取って
「僕もブラッドと同じ色」
彼の応えにむぅ、と頬膨らませ
上手く言えないけれど、そうじゃないの

ふと窓の外を見れば
「見て見て、景色も綺麗だよ!……ブラッド?」
彼がいない?不安気に辺りを見回して
「ぴゃあ!」
驚いて足を滑らせ受け止められて
もう、と怒ってみせたのは一瞬

愛しいあなたの躰へ頬寄せて
「ブラッド、僕お肉が食べたい
甘いお菓子も、果物も

たくさん食べて、大きくなって
……もっともっと、美味しくなるからね」

「ううん、違うの
ブラッドも、もっともっとたくさん食べて
もっともっと大きく、強くなるの

僕は、あなたと生きていたいのよ」


ブラッド・ブラック
【森】
融合を解きタール姿で湯へ
「嗚呼、久しぶりだな」
以前は此の姿を人目に晒したくなくて個室に引き籠っていたが
今、少しだけ気が楽なのは
此処が妖怪の世界だからか、其れ共
俺自身が変わってきているのか

燥ぐサンを愛おしく見遣り
「俺は其の儘のお前が好いよ」

「其れにしても良い湯だな…温かくて、躰が溶けてしまいそうだ」
うとうと、とぷんと湯の中へ

僅かばかり燥いだ心
年甲斐も無くサンの背後へ回り込み
「わ、――おっと」
驚いて足を滑らせたサンを全身で抱き留める
済まん済まんと笑って

「嗚呼、何でもいいぞ

…苦労を掛ける」
サンはグールである俺が餓えて狂わぬ様
其の身を捧げてくれている

「…そうだな
…俺も
お前ともっと、生きていたい」



 雨がひたすら降っていた森を抜けるまで、どのくらい時間がかかったかは定かではないけれど。
 でも、ふたりで相合傘をして歩いていれば、あっという間で。
 雨上がりの空の下、一緒に訪れたのは――幽世の極楽、四季の湯屋。
「温泉、久しぶりだね!」
 そう、にぱっと満開の笑顔を咲かせて、はしゃいで。
 サン・ダイヤモンド(黒陽・f01974)は逸るかの様に、ブラッド・ブラック(LUKE・f01805)に手招きを。
 そんなサンに手招かれるまま、融合を解いたタール姿で。
「嗚呼、久しぶりだな」
 ブラッドも、サンと共に風呂を楽しむべく周囲を見回してみる。
 それからふと思い返すのは……以前は個室に引き籠っていた自分。此の姿を人目に晒したくなくて。
 けれど、今の気持ちは随分とその時とは違う。
(「今、少しだけ気が楽なのは、此処が妖怪の世界だからか、其れ共――」)
 刹那、ブラッド、と自分の名を呼ぶ声に、薔薇色の瞳を柔く細めてから。
 数多並ぶ中から迷うことなくひとつの風呂を選んだサンを見つめつつも、思うのだった。
 其れ共――俺自身が変わってきているのか、って。
 きっと自分を変えてくれた、愛しいその姿を見つめながら。
 そんなブラッドと一緒に、ちゃぷりとサンが浸かっているのは。
「僕もブラッドと同じ色」
 うっとりとその手で掬い取った、黒い湯。
 ぬるりと肌を撫で、優しく包み込んでくれる彼のいろ。
 じわりと身体があたたかくなれば、そのいろに染まっているかのようで嬉しくて。
 やっぱり、はしゃいでしまうサン。
 そんな無邪気な様子を愛おしく見遣りながらも。
「俺は其の儘のお前が好いよ」
 ブラッドは、そう紡ぐけれど。
 その声に、サンはぷくりと頬膨らませて、むぅ。
 ふるりと小さく首を横に振って、黒い湯をちゃぷちゃぷ。
 ……上手く言えないけれど、そうじゃないの、って。
 そんなちょっぴり拗ねた様なサンの言葉に、小さく首を傾げながらも。
「其れにしても良い湯だな……温かくて、躰が溶けてしまいそうだ」
 ブラッドはその心地良さにうとうと。湯の中へ、とぷん。
 そしてサンが、ふと窓の外へと視線を向ければ……僅かばかり燥いだ心のまま。
「見て見て、景色も綺麗だよ! ……ブラッド?」
 ……彼がいない? って。
 不安気にきょろり辺りを見回しているサンの背後へと、そうっと回り込んで。
「わ、――おっと」
「ぴゃあ!」
 年甲斐も無く驚かしてみれば、びっくりしたサンの足がつるりっ。
 そんな足を滑らせたサンを、ブラッドは咄嗟に全身で抱き留めて。
 済まん済まんと笑って詫びる彼に、もう、とサンが怒ってみせたのは一瞬。
 一緒に思わず、笑ってしまって。
 ふいに頬寄せるのは、愛しいあなたの躰。
 そしてサンは、彼へと囁く様に紡ぐ。
「ブラッド、僕お肉が食べたい。甘いお菓子も、果物もたくさん食べて、大きくなって」
 ……もっともっと、美味しくなるからね、って。
「嗚呼、何でもいいぞ」
 そんなサンに、こくりと頷きながらも。
 ブラッドは、こう続ける……苦労を掛ける、と。
 だって彼は、グールである自分が餓えて狂わぬ様にと、其の身を捧げてくれているから。
 けれどもサンは、その声にそっと首を横に振る。
「ううん、違うの。ブラッドも、もっともっとたくさん食べて。もっともっと大きく、強くなるの」
 そしてサンは、金の瞳に愛しいいろを映し、告げる。
 ――僕は、あなたと生きていたいのよ、って。
 ブラッドも薔薇色の瞳に、サンの姿だけを咲かせながら。
「……そうだな」
 迷わずにそう頷き返した後、その想いを言の葉に乗せて捧げる。
 ――俺も、お前ともっと、生きていたい、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助
クロト(f00472)が手にした
冬の浴衣を浚って自分用に。
彼には緋牡丹の浴衣を推す
きっと美しいのじゃ

彼が何処に向かうのかそわそわ
不老不死?
…彼の想いが、愛おしくて
うん。そなたも。ほら、肩まで浸かって
心配かけてごめん。ありがとうな。
湯の下、そっと手だけ繋ごうとしたら
次のお湯に引っ張られていく…っ
この男、真剣…!

なんかふわふわする…
酒?
私は少量の酒でも、酔う、のに
きゅう。

目を覚ませば彼の膝で
すまぬ、膝濡れておらぬ…?
あ、髪乾いてる。抜かりない
ん…此処がいい。湯上がりのいい匂い

温泉といえばアイスも欠かせぬ
頼んで、額に手拭とカップを乗せて
頭を冷やしながら彼と食べる
温泉にほぐれた身体で
膝枕に居ついて極楽


クロト・ラトキエ
千之助(f00454)と合流。

浴衣どれにします?
こういうの選ぶの苦手で…
適当に、冬色無地で良いかな…
なんてしてたら緋牡丹を推されて。
こっち?似合いますかね…?

着替えたら、衣服は小脇に…
傭兵の性といいますか…
流石に湯には持ち込みませんよ?

目的地は3階。
荷に盗難防止を仕掛けたら、
まずは…虹色の、不老不死とか噂の湯。
…眉唾。だけど藁にだって縋りたい。
君に、長生きして欲しいんだよ。

のぼせる前に、次は健康促進の湯に!
暫くして…
はて?
あれ。これ…日本酒風呂でした…
大丈夫ー!?

個室をお借りして一休み。膝枕。
…やっぱり名物や、景観の良い湯の方が良かった…?
公衆浴場なんてとんと無縁で。
君に楽しんで貰えた、かな…



 戦場や戦闘に関しての判断や選択は、迷いなくできるのだけれど。
「浴衣どれにします?」
 こういうの選ぶの苦手で……と。
 その名の通り、四季折々の色柄が並ぶ浴衣を見回してみるクロト・ラトキエ(TTX・f00472)だけれど。
(「適当に、冬色無地で良いかな……」)
 どうしても性分からか、無駄のないシンプルなものを手にしようとした、その時。
 ふいに浚われた冬の浴衣のかわりに、佐那・千之助(火輪・f00454)から手渡されたのは、緋牡丹咲く浴衣。
 そんなぐぐいっと緋牡丹を推す彼にふと首を傾けつつ、クロトは視線を向け訊ねてみる。
「こっち? 似合いますかね……?」
 そう問われた言葉に、即座に大きくこくりと頷く千之助。
「きっと美しいのじゃ」
 間違いなく絶対美しい。というか、すごく見たい。
 そんな千之助お墨付きの緋牡丹を手にした後。
 着替えたら、衣服は小脇に。
(「傭兵の性といいますか……流石に湯には持ち込みませんよ?」)
 ええ、持ち込みはしないけれど、荷には盗難防止を確りと仕掛けてから。
 クロトは千之助と共に、ほかほか湯気が立つ風呂へ。
 千之助は、何気にそんなクロトの姿を見つめつつ、そわそわ。
 彼が何処に向かうのか、と。
 そんな視線に気づいて、クロトは目的を口にする。
「まずは……虹色の、不老不死とか噂の湯」
「不老不死?」
 意外すぎるその選択に、思わずきょとりと聞き返す千之助。
 その様な類の話に、一番食いつかなそうなのにと。
 いや、クロトも本気で不老不死の効能を信じているわけではない。
 ない、のだけれど。
「……眉唾。だけど藁にだって縋りたい」
 ぽつりと呟きを落とすように言ってから。
 クロトはこう、言葉を続ける。
 ――君に、長生きして欲しいんだよ、って。
 そんな彼の声に、千之助は再び瞬いてから。
 湯に浸かった身体だけでなく、心にもじわりと広がる、あたたかさ。
 ……彼の想いが、愛おしくて。
「うん。そなたも。ほら、肩まで浸かって」
 顔を覆いつつも、虹色の湯にちゃんとクロトも肩までちゃぷり浸からせて。
 心配かけてごめん。ありがとうな――そう紡ぎながらも湯の下、そっと手だけ繋ごうとしたら。
「のぼせる前に、次は健康促進の湯に!」
 何気に10数え終わったクロトは、ざぶりといざ次の湯へ。
 そして、愛おしさの余韻を噛みしめる間もなく引っ張られていきながらも、千之助は呟く。
 この男、真剣……! と。
 長生きするには、健康第一ですから!
 それから早速、健康促進が効能であるという湯にちゃぽんと浸かれば。
 暫くすれば、体の芯からぽかぽかしてきて。
 これは効果が期待できそう……? なんて思っていれば。
「なんかふわふわする……」
 ぽかぽかだけでなく、何だかふわふわしてきました……?
 そんなへにゃりとなっている千之助の様子に、はて? と首を傾けつつも。
 クロトははたと気付くのだった。
「あれ。これ……日本酒風呂でした……」
「……酒? 私は少量の酒でも、酔う、のに」
 ――きゅう。
「大丈夫ー!?」
 クロトの声を空しく、酔った千之助はぱたり。
 それから――まだふわふわするけれど。
 ふと薄っすら瞳を開き、目を覚ませば……彼の膝で。
「すまぬ、膝濡れておらぬ……?」
 そう言った千之助は、さらりと揺れる己の髪の状態に気付く。
 ……あ、髪乾いてる。抜かりない、と。
 此処は、倒れた千之助を休ませるため、クロトが借りた個室。
 そこで一休みしながら、膝枕してあげつつも。
 まだ酔いが完全にさめていなさそうな彼へと、クロトは呟きを落とす。
「……やっぱり名物や、景観の良い湯の方が良かった……?」
 名物だったり、景観の良い湯も勿論素敵だろうけれど。
 でも千之助は、クロトが自分のために選んでくれた湯が嬉しかったし。
「ん……此処がいい」
 何て言ったって、此処は湯上がりのいい匂いがする、一等特別な特等席だから。
 そして、湯あたりというか酒に酔ってはしまったけれど。
「温泉といえばアイスも欠かせぬ」
 温泉を満喫しまくるために、千之助はアイスを頼んでから。
 額に手拭とカップをちょこりと乗せ、頭を冷やしながらもクロトにも手渡して。
 クロトはそれを受け取って一緒にはむりと食べつつ、ちらりと膝の上の彼を見つめ思う。
(「公衆浴場なんてとんと無縁で」)
 ――君に楽しんで貰えた、かな……、と。
 けれどそれは、彼の顔をみれば一目瞭然。
 うきうきとアイスを食べながら、温泉にほぐれた身体でころん。
 膝枕に居ついて、千之助は幸せそうに笑う――極楽、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫

わー!お風呂がたくさんだよ、櫻!
期待と感激に尾鰭をぴるる
熱いお湯は得意ではないけど温泉は別なんだから!

櫻が示す先、まるで虹をとじこめた万華鏡みたいなお風呂にキラッと瞳を煌めかせる
だってこんなに綺麗なお風呂!絶対素敵に決まってるんだから!
櫻、まずは白にしよ
その次は赫でしょ、そして青にも碧にも……あー!黒がある!

思わず一番に飛び込んでしまった
ぬるっとした湯質が面白い
みてみて、僕の尾鰭も黒だよ

極彩の温泉つぁ、だね
ふんふんご機嫌に鼻歌を歌う
次は虹色?いいよ!
君と巡る湯の旅はこんなにも楽しくて幸せた
これ以上、櫻が綺麗になったら困るなぁ、なんて

ん、熱くなったから
でもまだまだはいれるぞ!
れっつごー!


誘名・櫻宵
🌸櫻沫

リル、一緒に温泉よ!
色彩風呂ですって
すごいわね、ましろいあなたが絢爛の極彩に染まってしまいそう
まずはどこからにしましょうか
白の湯、赤の湯も勿論!
いい香りがするし、色んな湯を楽しめるのっていいわね
旅をしているようよ

噫!リルがいつの間にかぬるぬるの黒の湯に……!大胆な人魚だわ
ぷるぷるお肌が更にぷるぷるになっちゃうわね!
恐る恐る浸かれば、ほっと一息
私、次はあそこにはいりたいわ!
虹色の湯ー!

うふふ、リルの鼻歌が心地よくて眠くなっちゃう
ぽかぽか気持ちいいわねぇ
リルったら、もう出るの?
人魚の水浴びだわ

なんて笑みをかわして幸せを歌う
ねぇ次はあのピカピカした湯にしましょ!

温泉ツアーはまだ終わらないわ!



 ぴちぴちちゃぷり、雨の中も気持ちよくて楽しかったけれど。
「わー! お風呂がたくさんだよ、櫻!」
 期待と感激に、リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)の尾鰭がぴるるっ。
 熱いお湯は得意ではないのだけれど、温泉は館でも入っているし、また別です!
「リル、一緒に温泉よ!」
 そんなリルとともに、わくそわきゃっきゃ、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)が視線を向けた先は。
「色彩風呂ですって」
 まるで虹をとじこめた万華鏡みたいな、色とりどりのお風呂たち。
 そんな櫻宵が示す先、数多並ぶ湯船に、キラッと瞳を煌めかせるリル。
「だってこんなに綺麗なお風呂! 絶対素敵に決まってるんだから!」
「すごいわね、ましろいあなたが絢爛の極彩に染まってしまいそう」
 キラキラ輝く薄花桜の瞳やそわそわゆらり揺れる尾鰭に、くすりと櫻宵は笑み咲かせてから。
 ……まずはどこからにしましょうか、と。
 花霞にぐるりと、万色を映してみる。
 リルも一緒に、わくわく視線を巡らせて。
「櫻、まずは白にしよ。その次は赫でしょ、そして青にも碧にも……」
「白の湯、赤の湯も勿論! いい香りがするし、色んな湯を楽しめるのっていいわね」
 ……旅をしているようよ、なんて、櫻宵が紡いだ刹那。
「あー! 黒がある!」
 ――ちゃぷんっ。
「!? ……噫! リルがいつの間にかぬるぬるの黒の湯に……!」
 思わず真っ先に黒い湯の中に飛び込んでしまったリルに、櫻宵は瞳を見開いて声を上げるけれど。
「みてみて、僕の尾鰭も黒だよ」
 ぬるっとした湯質がまた面白くて。
 るんるん、黒に染まった尾鰭をぴちぴちさせるリル。
 そんな無邪気な姿に、大胆な人魚だわ、って紡いでから。
 そうっとそろーっと、櫻宵も漆黒の湯に足先をつけてみて。
「ぷるぷるお肌が更にぷるぷるになっちゃうわね!」
 恐る恐る浸かってみれば、ほっと一息。
 そして、すべすべ美肌効果があるというぬるぬるな湯を、お肌にちゃぷちゃぷ抜かりなくかけつつも。
「極彩の温泉つぁ、だね」
「私、次はあそこにはいりたいわ! 虹色の湯ー!」
 ふんふんご機嫌に鼻歌を歌うリルに櫻宵が次に提案するのは、一等キラキラした虹の湯。
 ぷるぷる美肌な上に、不老不死にもなっちゃいます……!?
「次は虹色? いいよ!」
 ……これ以上、櫻が綺麗になったら困るなぁ、なんて。
 そうリルは口にしながらも、ふふっと零れる笑み。
 だって、君と巡る湯の旅がこんなにも楽しくて幸せだから。
 だから、ふんふん~って、うたう鼻歌も絶好調。
「うふふ、リルの鼻歌が心地よくて眠くなっちゃう。ぽかぽか気持ちいいわねぇ」
 櫻宵は人魚のご機嫌な鼻歌を耳に、ゆったりのんびり、暫く湯に浸かていよう……かと、思ったのだけど。
 刹那ざぶりと、颯爽と湯から出るリル。
 そんな姿に、きょとりとして。
「リルったら、もう出るの?」
「ん、熱くなったから」
 訊ねた言葉に返って来た声に、くすり笑みながらも櫻宵は納得する。
 カラスの行水ならぬ……人魚の水浴びだわ、って。
 いや、楽しい極彩温泉ツアーはこれから。
「でもまだまだはいれるぞ!」
 色とりどりな色彩風呂は、白も赤も、青に碧だってあるのだから。
 そうちょっぴり休憩しつつも、ぐっと気合を入れるリルと笑みをかわして。
 櫻宵は愛し人魚と共に幸せを歌う。
「ねぇ次はあのピカピカした湯にしましょ!」
 目指すは色彩風呂全制覇の旅! お肌も心も、ぽかぽかのぷるんぷるん。
 そしてふたり、もう一度顔を見合せ、咲いあって。
 ――れっつごー!
 ――温泉ツアーはまだ終わらないわ!
 ふたりで仲良くきゃっきゃはしゃいで、次はピカピカな金箔風呂へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

ヴォルフとしばし別れ、それぞれに温泉を楽しみましょう
四季折々の露天風呂に、薬湯に花風呂
美しい景色と花の香、温かいお湯に身をゆだねていると
時間が経つのを忘れてしまいそう

湯上がり後は浴衣に身を包み
食事処でヴォルフと合流したら、お互いにあったことを話しましょう
本当にここには、四季の全ての楽しみがあるのね

……ねえ、あの雨の中で見た幻、覚えてる?

あの頃のわたくしは「世界には苦しむ人々がたくさんいるのに、自分はこんなに恵まれていていいのか」って思っていたわ
だけど今はこう思うの
「みんながこの幸せを心から楽しむことが出来る。そんな世の中を作ることが今の自分の願い」だって

愛してる
いつまでも傍にいてね


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

ヘルガとしばし別れ男湯へ
本当にいろんな風呂があるのだな
全部回り切れるだろうか
特に四季の花の露天風呂は彼女が好みそうだ
長湯をし過ぎてのぼせなければいいが

食事処で彼女と合流
その様子だと楽しんできたようだな。何よりだ
折角だから店主おすすめの食事と酒をもらおうか
彼女にも同じものを頼む

猟兵になって、広い世界を知って
変わったのは俺も同じだ
かつて化け物扱いされていた人狼の俺が
まさか別の世界で「狼のキマイラ?イケてる!」なんて
もてはやされる日が来るとは思わなかったからな

様々な価値観に触れて、幸せの形を知って
それを共に築き分かち合う
お前の理想が叶うその日まで、否、その後も
俺はお前の笑顔を守り続けよう



 雨粒を落とし、冷えた身体をあたためるには十分すぎるくらいに。
「本当にいろんな風呂があるのだな」
 暫し妻と別れ、男湯へと足を運んだヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)はぐるりと数多並ぶ風呂を見回して。
 これまでの疲れを癒し、これからの仕事の為の英気を養うべく、湯に浸かりつつも。
「特に四季の花の露天風呂は彼女が好みそうだ」
 ……長湯をし過ぎてのぼせなければいいが、なんて。
 やはり考えるのは、最愛の妻のこと。
 そして同じ様に、ちゃぷりと湯に浸かりながら。
 スッとヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)が掌で掬ってみるのは、美しく咲く季節の花。
 四季折々の露天風呂に、薬湯に花風呂。
 そんな花のように笑み咲かせながら、ヘルガはゆったりとこのひとときを楽しむ。
(「美しい景色と花の香、温かいお湯に身をゆだねていると、時間が経つのを忘れてしまいそう」)
 けれど湯あたりしてしまったら、彼にも心配かけてしまうから。
 白地にそうっと小花が咲き鳥が舞う浴衣に身を包んで、彼と待ち合わせしている食事処へ。
「その様子だと楽しんできたようだな。何よりだ」
 先に待っていたヴォルフガングは、ふわり仄か花の香纏う妻に笑みを向けつつ。
「折角だから店主おすすめの食事と酒をもらおうか」
『春の食材を使った、さくさくの天婦羅なんていかがですかい? 酒は優しい味わいの日本酒が合いますよ』
「彼女にも同じものを頼む」
 注文を取りに来た妖怪にヴォルフガングはそう告げた後。
「本当にここには、四季の全ての楽しみがあるのね」
「長湯してのぼせなかったか? 変わったものもあったし、いろんな風呂があったな」
 風呂上がりの乾杯をふたり交わしながら、互いにあったことなどを語り合う。
 そんな楽しい会話の最中、ヘルガはふとヴォルフガングを見つめて。
 こう、彼へと訊ねる。
 ……ねえ、あの雨の中で見た幻、覚えてる? って。
 そんな妻の問いに頷いてから。
「あの頃のわたくしは「世界には苦しむ人々がたくさんいるのに、自分はこんなに恵まれていていいのか」って思っていたわ」
 彼女が紡いでゆく言の葉に、真っ直ぐ視線を向けつつもじっと耳を傾けるヴォルフガング。
 そんな彼に、ヘルガは続ける……だけど今はこう思うの、って。
「「みんながこの幸せを心から楽しむことが出来る。そんな世の中を作ることが今の自分の願い」だって」
 そう今思えるのは、様々なことをヘルガは見て来たから。
 嬉しいことも悲しい事も辛い事も、そして、幸せな事も沢山。
 ヴォルフガングと一緒に。
 けれどそれは勿論、ヘルガだけではなくて。
「猟兵になって、広い世界を知って。変わったのは俺も同じだ」
 ヴォルフガングだって、同じ。
「かつて化け物扱いされていた人狼の俺が、まさか別の世界で「狼のキマイラ?イケてる!」なんて。もてはやされる日が来るとは思わなかったからな」
 互いに、元から在った世界にいただけでは、到底思いもしなかったこと。
 時には、心が締め付けられるようなことだって、あるけれど。
 でも……ひとりではないから。愛する人と一緒だから。
 そして、誓い合ったから。
 ヴォルフガングは、ヘルガへと紡ぐ。
「様々な価値観に触れて、幸せの形を知って。それを共に築き分かち合う。お前の理想が叶うその日まで、否、その後も」
 ――俺はお前の笑顔を守り続けよう、と。
 そんないつだって何度でも、守ってくれると、そう言ってくれる彼に。
 ヘルガは、ふわり咲かせた笑みと共に返す――愛してる、って。
 そして包んでくれるような優しい温もりに身を委ね、彼へと紡ぐ。
 ……いつまでも傍にいてね、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
千鶴くん(f00683)と

思いっ切り濡れたねえ
ねぇ浴衣借りれるんだって
その柄が気になるの?それにしよう

わーい温泉楽しみ
背中流し合いとかする?
泡々になるのが面白くて背中くすぐったくて
千鶴くん白くて肌つるってしてる
四季の湯から風景を楽しんで
俺様この中だと秋の湯が好きだな
月がとってもきれい
冬の雪景色も良いよね

3階の変わった温泉巡りしたい
赤ワイン風呂と美人の湯好きかも
千鶴くんももっと美人になるよ
一番気になってるのは日本酒風呂
酔っちゃうかな?
電気風呂も躊躇いなく入る
しびれるーおもしろい

浴衣は勿論化け猫柄で
ねぇどうやって着るのって聞いたりして
お揃い~ふふふ
締めには牛乳を腰に手を当てて飲むよ
ごくごくぷはーっ


宵鍔・千鶴
ロキ(f25190)と

ぺしょりと濡れた髪を摘んで
ふは、雨の中走ったの久し振り
…浴衣、どれにしようか?
化け猫柄だって(じっ)

温泉俺、だいすきー
あちこち行ってみようよ
流し合いっこは負けじとロキの背中を泡々に
ロキもつるすべだ
まんまる月に見守られて湯に浸かり一息
冬の湯の雪見風呂も好きだな

次は何処に行く…って
ロキはまだ美人になるの……?
日本酒風呂は俺も一番気になってた!
ちょっと酔った気分になれるかな?なんて
電気風呂は恐る恐る……あっ(しびびび)

ん、やっぱり化け猫柄かわいい
はーい、ロキ袖通してーってぴしっと
格好よく着付けちゃお、お揃い!(ご機嫌)
ロキ和服も似合うね

最後は湯上り憧れの
腰に手を当て牛乳ごくごく



 傘を持っているのに、全身ずぶ濡れな姿に。
 案内役のろくろ首も思わず、あらまぁ、なんてきょとり。
 そんなぺしょりと雨粒に濡れた髪を摘んで。
「ふは、雨の中走ったの久し振り」
「思いっ切り濡れたねえ」
 めちゃめちゃ濡れまくったことさえ、楽しくて可笑しくて。
 宵鍔・千鶴(nyx・f00683)とロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)は、愉快に笑い合いながらも、とりあえず渡されたタオルで髪を拭き拭き。
 それからロキはふと、目の前に並ぶさまざまないろを見遣りながら、千鶴の裾を軽くくいくい。
「ねぇ浴衣借りれるんだって」
「……浴衣、どれにしようか?」
 湯屋の名が冠するように、選べる浴衣も四季折々。
 目移りしてしまうほど、沢山の色や柄のものがあるのだけれど。
 ふと、千鶴がじっと見つめるのは。
「ロキ、化け猫柄だって」
 ちょっと不細工だけど、そこがゆる可愛い化け猫さんの柄の浴衣。
 ロキはそんな彼の視線を追ってから、ぶさかわ化け猫さんを一緒に見つめて。
「その柄が気になるの? それにしよう」
 借りる浴衣、決定です。
 そして浴衣とお風呂セット一式を受け取れば。
「わーい温泉楽しみ」
「温泉俺、だいすきー。あちこち行ってみようよ」
 きゃっきゃふたりで、温泉を満喫します!
 そんな、一緒にお風呂の醍醐味のひとつといえば。
「背中流し合いとかする?」
 そう、背中の流し合いっこ。
 ロキはアヒルさんスポンジを手に、千鶴の背中をごしごしあわあわ。
 いや、千鶴も負けじと、ロキの背中をもこもこに。
 そんな泡々だらけになるのが面白くて、擦られる背中がくすぐったくて。
「千鶴くん白くて肌つるってしてる」
「ロキもつるすべだ」
 ざばーっとせーので泡を流せば、つるんとした互いの肌も、もっとすべすべに。
 そして流しっこすれば、お楽しみの温泉に。
 まずは、湯屋の一番の自慢だという四季の湯を巡って。
「俺様この中だと秋の湯が好きだな」
 ……月がとってもきれい、って。
 ふと天を仰ぎ、蜜色の瞳に淡い光降らせる月の姿を映しながらも。
 秋の風景を楽しむロキと一緒に。
 千鶴もまんまるおつきさまに見守られつつ、ちゃぷりと湯に浸かってのんびり一息。
「冬の湯の雪見風呂も好きだな」
「冬の雪景色も良いよね」
 次は、雪がちらちらと舞う冬の湯へ。
 そして春夏秋冬、露天風呂を存分に満喫した後は。
「次は何処に行く……」
「3階の変わった温泉巡りしたい。赤ワイン風呂と美人の湯好きかも」
 千鶴が訊ね終わる前に、そうわくわく紡ぐロキに、千鶴はくすりと瞳細める。
「……って、ロキはまだ美人になるの……?」
「千鶴くんももっと美人になるよ」
 ということで、ふたりで美人になりにいざ、内湯巡り!
「一番気になってるのは日本酒風呂なんだよね」
 ……酔っちゃうかな? なんて。
 そう首を傾けるロキに、ぱっと瞳輝かせる千鶴。
「日本酒風呂は俺も一番気になってた! ちょっと酔った気分になれるかな? なんて」
 大人がお酒を飲んで酔っている姿が、ちょっぴり羨ましかったから。
 芳醇な香りのする湯に浸かってみれば……何だかほわんと、大人なほろ酔い気分に?
 それからロキが見つけ、躊躇いなくちゃぽんと入るのは。
「しびれるーおもしろい」
 健康にいいらしいけれど、ちょっぴりドキドキな電気風呂!
 わーっと楽しそうにしびれているロキをちらりと見つつも。
 恐る恐る、千鶴も続いて入ってみれば。
「……あっ」
 しびびびび、って刺激的。
 それから色々な面白い湯に、ふたり果敢に挑戦してみたりして。
 十分に満喫すれば、今度は湯上りのお楽しみが。
「ん、やっぱり化け猫柄かわいい」
「ねぇどうやって着るの」
「はーい、ロキ袖通してー」
 千鶴は首をこてりと傾けるロキを、ぴしっと格好よく着付けしてあげて。
 帯を締めて仕上げた後、ご機嫌にひとこと――お揃い! って。
「お揃い~ふふふ」
「ロキ和服も似合うね」
 お揃いの化け猫さんの浴衣を、一緒に得意気にくるり。
 そしてやはり、温泉の締めといえばこれ。
 湯上り憧れの瓶牛乳を、すちゃりと手にして。
 ふたり並んで、ごくごくぷはーっ。
 ちゃんと作法に倣い、腰にしゃきんと手を当てて一気飲みします!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荻原・志桜
🌸🐺
湯浴み着を借りて
何処も行ってみたいけど最初はにごり湯!

お姉ちゃん最近特に綺麗になった気がする……恋人できた?
にひひ。志桜の勘は当たるんですー
だって雰囲気が時々あまーくなる気がするんだもん
ねね、どんな人?好きになった切欠は?どこが好き?

かわいーっ
うんうん、優しくて包容力があるってことだよね
お姉ちゃんを守ってくれる騎士さま
結婚はいつするの…ってわたし?!

矢継ぎ早に質問を投げかけて
自分の近況を聞かれたらしどろもどろ

進展は、あったよ
えへへ。実は同棲するようになったの
おはようもおやすみも毎日言える幸せ

きっ?!それは、その…わ、わたしの話はお終い!
次は四季の湯に行こうっ
温泉で春夏秋冬を楽しむの!


ディアナ・ロドクルーン
🌸🐺

早速温まりに行きましょうと湯あみ着を借り妹と一緒に濁り湯へ

えっ、ええっ!?
(勘の冴える妹に慄く姉。素直に観念)
うん、で、…できました…
全然変わりないはずなのに、志桜の勘おそるべし…

そんな矢継ぎ早に…!
志桜、恋バナにそんなに食いつかなくても!(ぴぁぁ~

えっと…その…格好いいのはもとよりとても自信家で、私をリードしてくれる人…(もじもじ恥ずかしそうに)
それはそうと志桜の方はどうなのよ
何か進展あったの?キスくらいはもうしたの?
(仕返しとばかりにぐいぐい迫る)

あっ、逃げた。聞きたい事はまだあるのに
ふふ、そうね。まだまだ入ってみたい温泉もあるし、時間もある
行きましょう、四季の巡りを



 雨上がりの空を仰ぎながら、傘の花を畳んで。
 滴り落ちる雫を軽く払った後、足早に向かうのは――もくもく煙立ちのぼらせている、四季の湯屋。
 傘はさしてはいたのだけれど、随分長い間、雨の中を歩いていたから。
 少なからず濡れてしまったし、身体も冷え冷えに。
 そして湯屋の受付で、湯浴み着やお風呂セットを一通り借りてから。
「早速温まりに行きましょう」
 ふるりとまだしんなりなっている尻尾の雨露を小さく揺らしながら、ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)が早速向かうのは。
「何処も行ってみたいけど最初はにごり湯!」
 荻原・志桜(春燈の魔女・f01141)がわくわく視線を向ける、乳白色のにごり湯に。
 そしてちゃぷりとほかほか、湯の花が沈んだ美肌の湯に浸かりながら。
「お姉ちゃん最近特に綺麗になった気がする……恋人できた?」
 じいっと姉を見つめ、ずばりと訊ねる志桜。
 そんな妹の言葉に、何気に肌へと湯を沢山ちゃぷちゃぷさせていたディアナは、思わず大きく瞳を見開いて。
「えっ、ええっ!?」
 驚きの余り、つい声を上げてしまう。
 そして妹の冴えた勘に慄きつつも、素直に観念して。
「うん、で、……できました……」
 ……全然変わりないはずなのに、志桜の勘おそるべし……。
 そうぼそりと呟けば、姉のわかりやすい反応に、志桜はにこにこ。
「にひひ。志桜の勘は当たるんですー」
 ……だって雰囲気が時々あまーくなる気がするんだもん、って。
 そう姉を見つめる瞳を、嬉しそうに細めながら。
 そして始まるのはやはり、恋バナという名の質問攻め……!?
「ねね、どんな人? 好きになった切欠は? どこが好き?」
「そんな矢継ぎ早に……! 志桜、恋バナにそんなに食いつかなくても!」
 ぴぁぁ~っと完全にペースに飲まれつつも。
 耳をぴこぴこ、尻尾を落ち着きなくゆらゆらさせながら。
「えっと……その……格好いいのはもとよりとても自信家で、私をリードしてくれる人……」
 ちらっと志桜の様子を窺いつつも、いつも自信に満ちた彼のことを思い返しながら。
 もじもじ恥ずかしそうに答えるディアナ。
 そんな頬を染める乙女な姉に、かわいーっと、志桜は笑み咲かせて。
「うんうん、優しくて包容力があるってことだよね。お姉ちゃんを守ってくれる騎士さま、結婚はいつするの……」
 結婚、というワードに一瞬、ぴくりと耳が動いてしまうけれど。
「それはそうと志桜の方はどうなのよ。何か進展あったの?」
 すかさずそう、反撃にでるディアナ。
 そんな姉の問いに、今度は志桜がぱちくりと瞳を瞬かせてから。
「進展は、あったよ」
 自分の近況を聞かれれば、しどろもどろ。
 でも、幸せをいっぱい咲かせた笑みで、続ける。
「えへへ。実は同棲するようになったの」
 ……おはようもおやすみも毎日言える幸せ、って。
 そんな桜色に頬を染める妹に、仕返しとばかりに。
「キスくらいはもうしたの?」
 ぐいぐい迫って、そうずばっと訊いちゃう姉。
 その容赦ない追撃に思わず、ぴやっと飛び上がる様に。
「きっ!? それは、その……わ、わたしの話はお終い!」
 声を上げてしまう志桜だけど――それはひみつ、です!
「あっ、逃げた。聞きたい事はまだあるのに」
 そう、ふふっと笑むディアナから、視線をそっと外しながら。
 ざぶりと志桜はにごり湯から上がると、そそくさと歩き出す。 
「次は四季の湯に行こうっ。温泉で春夏秋冬を楽しむの!」
「ふふ、そうね。行きましょう、四季の巡りを」
 そんな妹と一緒にディアナも、湯屋一番の自慢だという四季の露天風呂へ。
 まだまだ入ってみたい温泉もあるし――時間もある、って。
 そう、ぱたぱた掌で顔を仰ぐ妹を微笑まし気に見つめて、笑み零しながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尾宮・リオ
燕さん(f19377)と



四季の湯ですか
燕さん、行きましょうか
濡れたままだと風邪引いてしまいますよ

湯に浸かりながら舞う雪を見上げる
手を伸ばしても届かなかったけど
声掛けには瞬きをひとつ
大丈夫ですよ、身体は丈夫なので
なんて、くすくすと笑った

傷や火傷だらけの身体を見ても
特に何も指摘はせず
ゆっくり温まりましょうか

休憩に行く彼の後ろをついて歩き
アルコールは飲めないので
コーヒー牛乳でも頂きましょうか
こういうのって本当に美味しいんですね

燕さん、そんなに忙しいんですか?
それなら今晩くらいは
ベッドで休んでくださいね
たまには羽を伸ばすのも
良いかも知れませんよ


金白・燕
リオ(f29616)と同行
アドリブ、アレンジは歓迎です

アリスラビリンスを巡る温泉ツアー……ふむ、悪くないですね
あぁ、すみません、行きましょう

傷だらけ、火傷だらけのこの体も、湯煙の中なら目立たないでしょうか
雪の中無邪気に手を伸ばす彼に
風邪をひかないように、と声を掛けて
はい、肩まで浸かりましょうね
どうしてでしょうね、私も手が届かない気がするんです

最近はシャワーで済ましてばかりだったので…
ああ、沁みるな

少し休憩をしましょうか
湯上がりに妖怪さんにアルコールを勧めて頂ければ、少し頂きましょう
そういえば……最近……いつベッドに入ったんでしたっけ……



 昏い森を抜けた瞬間、今まで降り続いていた雨が嘘の様に。
 ぱっと広がるのは、幽世蝶が舞う雨上がりの空。
 そしてその空にもくもくと煙を上げているのは、幽世の極楽といわれている場所。
「四季の湯ですか」
 赤い太鼓橋の向こうに建つ豪華なその佇まいを見遣る、尾宮・リオ(凍て蝶・f29616)の隣で。
「アリスラビリンスを巡る温泉ツアー……ふむ、悪くないですね」
 やはり社畜……いえ、仕事熱心な金白・燕(時間ユーフォリア・f19377)は、ついそう呟きを落とすけれど。
 そんな彼に、リオは声を掛ける。
「燕さん、行きましょうか」
 ……濡れたままだと風邪引いてしまいますよ、って。
 その声にふと燕は顔を上げて。
「あぁ、すみません、行きましょう」
 迷子にならないように、ふたり並んで歩き出す。
 そして案内された湯屋で、まずは身体を温めるべく。
 ふたりがちゃぷりと浸かってみたのは、湯屋自慢の四季の露天風呂のひとつ。
 ちらちらと雪が舞う風景に湯煙があがる、冬の湯。
 そんなひらり舞い降る雪を見上げて。
 リオはそうっと、手を伸ばしてみるけれど。
 やっぱり、その手は届かなくて。
 でも……届かなかったけれど。
「はい、肩まで浸かりましょうね」
 ……風邪をひかないように、と。
 そうふと掛けられた声に、リオはひとつ瞬いてぱちり。
「大丈夫ですよ、身体は丈夫なので」
 ちゃんと10数えましょう、なんて続ける燕にくすくすと笑ってしまう。
 そして燕は、言われた通り肩まで浸かって笑う彼の姿に、そっと瞳を細めてから。
 雪がひらり落ちてくる空を見上げ、ぽつりと呟きを零す。
 ……どうしてでしょうね、私も手が届かない気がするんです、って。
 自分達はやっぱり、いつだって迷子の、似た者同士だから。
 そして、そっと続ける。
「傷だらけ、火傷だらけのこの体も、湯煙の中なら目立たないでしょうか」
「ゆっくり温まりましょうか」
 リオは彼にそれだけ、言の葉と笑みを返してから。
 素直に10まで数え初めて。
「最近はシャワーで済ましてばかりだったので……」
 ……ああ、沁みるな、なんて一息つきながらも、燕はふと思う。
 こうやって湯船に浸かったのは、いつぶりでしょうかと。
 そして雨に濡れて冷えた身体も、すっかりぽかぽかあたたまれば。
「少し休憩をしましょうか」
 猟兵のお仕事のその前に、ちょっと一休み。
 そう休憩に行く燕の後ろをとことこ、リオもついて歩いて。
『湯上りに一杯、ビールは如何ですかい? 其方の彼には、牛乳各種もありますよ』
「では、アルコールも少し頂きましょう」
「僕はコーヒー牛乳でも頂きましょうか」
 ビールとコーヒー牛乳で、カチリと乾杯してから。
「こういうのって本当に美味しいんですね」
 風呂上がりの一杯を、共に堪能します!
 それからふと妖怪さんに勧められた、妖怪をダメにするクッションを手にすれば。
「そういえば……最近……いつベッドに入ったんでしたっけ……」
 きちんと寝たのがいつだったか、思い返してみる燕。
 そんな働き詰めにも程がある社畜発言に、リオはぱちくり再び瞳を瞬かせてから。
「燕さん、そんなに忙しいんですか? それなら今晩くらいは、ベッドで休んでくださいね」
 休憩所に並ぶ、ゆっくり快眠できそうなもふもふベッドへと燕を促す。
 ――たまには羽を伸ばすのも良いかも知れませんよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

橙樹・千織
【廻】

ふぅ…いいお湯でした
鬱々とした気分ごとお湯で流して切り替えて
美人の湯、不思議な色でした
カムイさんはゆっくりできました?
ワイン風呂良い香りでしたよねぇ
浴衣を纏い合流したカムイさんを見上げてほわり

あら、お風呂上がりの牛乳?
いいですねぇ
私はいちご牛乳にしようかしら

少しお腹もすきましたし、何か食べましょうか
本当にお祭りみたい
色々ありますねぇ
目移りしてしまいます、と笑み

ぁ、じゃがばたー…
匂いに釣られふらっと寄り道
猫舌ではふはふしながらもぐもぐ
あら、たこ焼きも美味しそう

か、カムイさんそれは一体…
ジッと彼が手にしている物を見やり
警戒からかふわりと尻尾が毛羽立つ

尻尾は気にしないでください
…美味しいです?


朱赫七・カムイ
【廻】

ふう
冷えた身体に暖かな湯が優しかったよ
特にあのワイン風呂なるもの、あればよかった
纏う浴衣にも心が踊るよう

其方の湯も楽しめたようだね
浴衣も良く似合うと綻んで牛乳を勧める
通は風呂上がりには牛乳を飲むのだと習ったよ
ひとの子は面白いね
私はフルーツ牛乳に

屋台風の店が並んでいるよ
祭りのようで楽しいな
たこ焼きにイカ焼き…悩む

チオリは何にする?

其れはジャガイモ?美味しそう
先ずはたこ焼きから
落とさないよう気をつけなが
チオリ、火傷をしないようにね

あちらで面白いものを見つけた
なんでも喋るお好み焼きだそうだ
皿の上で騒いでいるよ
楽しいねと箸を突刺す

チオリ?
しっぽが膨らんでいるよ?


賑やかで美味しいよ
そなたもどうぞ



 冷たく滴っていた雨粒も、鬱々とした気分も……纏めて全部。
 あたたかなお湯で流して、すっきりと切り替えてから。
「ふぅ……いいお湯でした」
 ……美人の湯、不思議な色でした、と。
 いつも通りふわふわ笑み宿し、橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は海の様な青が満ちた湯を思い返しつつも。
「カムイさんはゆっくりできました?」
 待ち合わせ場所で合流した、朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)に訊ねてみれば。
「ふう、冷えた身体に暖かな湯が優しかったよ。特にあのワイン風呂なるもの、あれはよかった」
「ワイン風呂良い香りでしたよねぇ」
 ふたり揃って気に入ったのは、芳香な香り漂うぽかぽかあったかワイン風呂。
 千織は、宵に咲く櫻の浴衣纏うカムイを見上げてほわり笑んで。
 纏う浴衣にも心が踊るよう、とカムイも笑み返してから。
「其方の湯も楽しめたようだね。浴衣も良く似合う」
 秋を思わせる夕焼け色に山吹と桜の花咲く浴衣姿の千織に綻びつつも。
「通は風呂上がりには牛乳を飲むのだと習ったよ」
 ……ひとの子は面白いね、と。
 温泉の定番である、牛乳を勧める。
「あら、お風呂上がりの牛乳? いいですねぇ」
 千織はうきうきと手を伸ばすカムイに続いて。
「私はフルーツ牛乳に」
「私はいちご牛乳にしようかしら」
 ふたり一緒に、湯上りの一杯を。
 そんな風呂上がりの醍醐味を堪能してから。
「少しお腹もすきましたし、何か食べましょうか」
 足を運んだのは、まるで祭りの屋台かのような店が並ぶフードコート。
「屋台風の店が並んでいるよ。祭りのようで楽しいな」
「本当にお祭りみたい。色々ありますねぇ」
 目移りしてしまいます、と笑む千織の横で悩むカムイ。
「たこ焼きにイカ焼き……悩む。チオリは何にする?」
 そんな彼の問いと同時に。
「ぁ、じゃがばたー……」
 匂いに釣られ、ふらっと寄り道を。
 カムイは、千織がゲットしたじゃがバターをじっと見つめて。
「其れはジャガイモ? 美味しそう」
「あら、たこ焼きも美味しそう」
「チオリ、火傷をしないようにね」
 猫舌ではふはふもぐもぐ口にする彼女に声を掛けた後、まずは落とさないよう気を付けつつも、たこ焼きをぱくり。
 そして。
「そうだ、チオリ。あちらで面白いものを見つけた」
「か、カムイさんそれは一体……」
 カムイが取り出したものを目にした千織は、思わず瞳を見開いてしまう。
「なんでも喋るお好み焼きだそうだ」
『くふふ、食べるなら一思いにぱくりと食べて下さいよ、ダンナ!』
「皿の上で騒いでいるよ」
 次の瞬間……楽しいね、と、ぷすり。
『ふぎゃあ!?』
「チオリ? しっぽが膨らんでいるよ?」
 箸を躊躇なく突き刺され、騒ぐお好み焼きを後目に。
 ジッとソレを見やり、警戒からかふわりと尻尾が毛羽立つ千織の様子に、カムイはきょとり。
「尻尾は気にしないでください」
 千織はそう言いつつも、はむりと騒ぐお好み焼きを口にしたカムイへと、そうっと訊ねてみる。
 ……美味しいです?
 そんな彼女に、にっこりと微笑んで。
「噫、賑やかで美味しいよ」
『ダ、ダンナ……なかなか大胆……ぎゃあ!?』
 喚くお好み焼きをぷすりともう一刺しして、千織へと差し出す。
 ――そなたもどうぞ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
おお…これが極楽の湯…
雨の森も良かったけど、また違ったときめきを感じる、ね

浴衣は…このゆる妖怪柄が良いな(泥田坊の柄を選ぶ謎センス
くろ丸もお揃いの手拭い

素敵な(?)浴衣でいざ温泉巡り
まずは四季の湯
桜に新緑、海に紅葉に雪見風呂…湯加減も最高…
目から耳から…もう全身が癒される…
くろ丸…僕今ここで死んでも良…えっ(次行くよ!とばかりに引っ張られ

わ、青い湯だ…何々…美人の湯?
それに美肌の湯に、不老不死…?(次々浸かるくろ丸
くろ丸、何の野望抱えてるの…

泡風呂でほっこりしたら上がり時

フルーツ牛乳→食事→昼寝…の極楽コース
幸せすぎる…良いのかな、こんな贅沢

さて…じゃ、三味線聴きに行こうか
お仕事の匂いがするよ



 しとしとと降り続く雨の森の散歩も、乙なものだったけれど。
「おお……これが極楽の湯……」
 ――雨の森も良かったけど、また違ったときめきを感じる、ね、と。
 ぷるぷる雨露を払うくろ丸を、青和・イチ(藍色夜灯・f05526)は貸して貰ったタオルでわしゃりと拭いてあげてから。
 並ぶ浴衣を見回して、目についた柄に手を伸ばす。
「浴衣は……このゆる妖怪柄が良いな」
 謎の素敵センスで選んだ、泥田坊の柄のものを。
 そしてくろ丸がご機嫌に頭に乗せた手ぬぐいも、泥田坊のオソロ。
 そんなある意味素敵な浴衣で、いざ温泉巡り!
 まずはやはり、湯屋の自慢の四季の湯から。
「桜に新緑、海に紅葉に雪見風呂……湯加減も最高……」
 ――目から耳から……もう全身が癒される……。
 なんて、のんびりゆったりと寛いでいれば。
「くろ丸……僕今ここで死んでも良……えっ」
 ぐいぐいっと、強制的にくろ丸に引っ張られるイチ。次行くよ! とばかりに。
 そして連れて来られたのは。
「わ、青い湯だ……何々……美人の湯? それに美肌の湯に、不老不死……?」
 ちょこんと泥田坊手ぬぐいはちゃんと頭に乗せて。次々と浸かるくろ丸。
 お肌もすべすべつるつる、さらには不老不死まで。
「くろ丸、何の野望抱えてるの……」
 思わずそう、イチは呟きを落とすけれど。
 くろ丸も女子ですから!
 そしてぼこぼこ泡風呂でほっこりしたら、そろそろ上がり時。
 でもまだまだ、楽しみは続きます!
 そう――フルーツ牛乳からの、美味しい食事からの、すやすやお昼寝……そんな極楽コース。
「幸せすぎる……良いのかな、こんな贅沢」
 妖怪をダメにするクッションにくろ丸と共に、ふにゃりと暫く身を預けてから。
 夢の国に誘われる前に、イチはくろ丸とこくり顔を見合せ頷きあう。
「さて……じゃ、三味線聴きに行こうか」
 ――お仕事の匂いがするよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀
体を温めるために冬の湯に入った後、受付で借りた『世にも不思議な、睡蓮の浮かぶ、水面の絵柄の浴衣』を着ます。
浴衣の水の絵柄を出入りする、宙を泳ぐ金魚を見ながら、湯冷めしない様に『オトモ』を連れて、足湯に向かいます。途中で杏仁豆腐とパンナコッタを受け取って、足湯をしながら、オトモ達と食べ比べをします。
自分には、2つの違いがわからないで居ると突然、手元の食べ物がしゃべり出して違いを説明してくれます。
素材が違う。方や豆から、方や牛から。
話を聞きながら食べます。
食器に成っても喋っていたので返却口に持っていった後、『妖怪をダメにするソファー』に身を委ねて、うたた寝をします。どんな夢を見るのでしょう?



 やはり降り続ける雨の森を歩いていれば、雨露に濡れてしまうし。
 身体も、ひんやり冷えてしまったから。
 受付で浴衣を選び、お風呂セットなどを一式借りて。
 天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)がちゃぷりと浸かったのは、湯屋自慢の四季の湯。
 その中でも、ちらちらと雪が舞い降る冬の湯。
 そんな雪景色を楽しみながらも、冬の湯で体を温めた後。
 纏うのは、受付で借りた『世にも不思議な、睡蓮の浮かぶ、水面の絵柄の浴衣』。
 そして雲雀は、湯冷めしない様に『オトモ』を連れて。
 浴衣の水の絵柄をぴしゃんっと跳ねてあ出入りする、宙を泳ぐ金魚を見ながら。
 向かうのは、ほかほかあたたかな足湯。
 それから、ちゃぷっと足を湯に浸しながら、途中で受け取った杏仁豆腐とパンナコッタをはむり。
 オトモ達と食べ比べをしてみるけれど。
 こてりと首を傾ける雲雀。そのふたつの違いが、よくわからなくて。
 そんな雲雀の様子に、突然喋り出したのは、手元の食べ物たち。
『素材が違う。方や豆から、方や牛から』
「……素材が違うんですね」
 雲雀は違いを説明してくれた杏仁豆腐とパンナコッタの話を聞きつつ、口に運ぶけれど。
 もう一度、首をこてりと傾ける。
 どっちが豆で、どっちが牛か、わからなくて。
 ぺろりと食べちゃった後も、食器に成っても喋っていたけれど。
 話が長くなりそうだったので敢えてどっちがどっちかは聞かず、喋る皿を返却口に持っていった後。
 オトモ達と一緒に、ぽふんと『妖怪をダメにするソファー』に身を委ねれば。
 ふわふわ、うとうと……うたた寝を。
 オトモたちと、何故か喋る食べ物たちも一緒に、温泉巡りをする夢を見ながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴久名・紡
明らかに最近来たという三味線奏者が
『そう』なんじゃないかと思うんだが……

まぁ、導いてくれた蝶達が教えてくれるだろうから
それまではのんびり過ごそう

自慢の湯で体を温めたら
食事……うん、甘いのがあれば良いな

藍色の浴衣に身を包んで
まずはフルーツ牛乳とやらを……
何々?腰に手を当ててぐいぐいごくごく行くのが作法?
通りがかった妖怪に作法を習っていざ!
(ごくごくごく)

うん?飲み終わったら『ぷはぁ!』と言うのが通……?
……なるほど、なるほど?

いや、俺は良いかな
通は目指していないから

ついでだから妖怪にオススメの甘味を聞いておく
それを頂きに食事処へ

…ほぅ
……ほうほぅ

……なるほど、自慢なだけあるな
※甘味の種類はお任せ



 雨の森を抜け、湯屋へと向かう太鼓橋を渡りながら。
『そうそう、もうすぐ三味線の演奏が始まるんだよ? 最近来た新入りさんだけど、人気なんだ』
 妖怪だけでなく蝶々も魅了する音色だよ、って。
 饒舌に聞く前から喋る案内役のろくろ首の話に、鈴久名・紡(境界・f27962)は思う。
(「明らかにその最近来たという三味線奏者が、『そう』なんじゃないかと思うんだが……」)
 多分、明らかに『そう』っぽい。
 けれど、まだ少し三味線の演奏時間まであるというし。
(「まぁ、導いてくれた蝶達が教えてくれるだろうから、それまではのんびり過ごそう」)
 ひらり、上の方の階へと飛んでゆく蝶々たちを見上げつつも、紡は温泉へ。
 自慢の四季の湯や数多並ぶ内風呂で冷えた体を温めたら。
「食事……うん、甘いのがあれば良いな」
 借りた藍色の浴衣に身を包んでから、きょろり。
「まずはフルーツ牛乳とやらを……」
 風呂上がりの定番だと聞いたフルーツ牛乳を手にしてみるけれども。
 ふと見れば、皆同じような格好をして飲んでいる。
 なので、通りかかった妖怪に聞いてみれば。
「何々? 腰に手を当ててぐいぐいごくごく行くのが作法?」
 いざ! 習った作法で、ごくごくごく。
 美味しく一気飲みしてみるけれど。
「うん? 飲み終わったら『ぷはぁ!』と言うのが通……?」
 ……なるほど、なるほど?
 そうこくこくと頷いてはみるものの。
「いや、俺は良いかな。通は目指していないから」
 そこまでは、まぁいいかと目指しません。
 そしてついでだからと、妖怪にオススメの甘味を聞けば。
『おにいさん! つるんと美味しいよ!』
 ……ほぅ。
 ……ほうほぅ。
「……なるほど、自慢なだけあるな」
 美味しそうなんだけど……あんみつに乗った喋る白玉と、じいっと暫しお見合いを。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

精霊竜様には超大型犬くらいの大きさになってもらって一緒に露天風呂へ、体を洗って精霊竜様も洗って湯船に入る(精霊竜様は入らず近くで待機)。

『精霊竜様、私達の仲間で白い竜人っていました?えっとですね、男性で、左側の角が折れてる人なんですけど』

精霊竜様は笑って首を傾げるだけ。

『じゃあ、私に似た竜人っていました?私よりも大人で……』

言い終わる前に顔にお湯がかかる、仕返しに何度かお湯をかけあうが「騒ぎ過ぎは迷惑になる」と窘められ大人しくお湯に浸かる。

『(……聞くのはまた今度でいっか)』

アドリブ歓迎です。



 雨の中、随分と長い間歩いていたから。
 森を抜けて雨が上がった後も、まだしっとり濡れていて。
 冷たい雫が落ちる身体は、やはり冷えてしまったから。
 受付を済ませ、浴衣やお風呂道具を受け取ったサフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)は、早速お風呂へ。
 そして向かうは、春夏秋冬の風景が楽しめる四季の露天風呂。
 超大型犬くらいの大きさになってもらった精霊竜様も一緒に、かぽーんと。
 しゃこしゃこ身体を洗って、綺麗に雨粒を洗い流してから。
 湯船の外で精霊竜様が待つ中、ちゃぽんと湯船に入るサフィリア。
 それから、ゆったりと身体をあたためつつ、四季の景観を楽しみながらも。
 精霊竜様へと、ふとこう訊ねてみる。
「精霊竜様、私達の仲間で白い竜人っていました? えっとですね、男性で、左側の角が折れてる人なんですけど」
 けれど、そんな問いにも、精霊竜様は笑って首を傾げるだけで。
 サフィリアは雨の森の中視た、もうひとりの人物のことを今度は聞いてみる。
「じゃあ、私に似た竜人っていました?私よりも大人で……」
 ――ぱしゃりっ。
 刹那、言い終わる前に、精霊竜様が飛ばしたお湯が顔にかかって。
 仕返しにと、何度かぱしゃぱしゃお湯をかけあうけれど。
 ……「騒ぎ過ぎは迷惑になる」と。
 そう窘められて、大人しく再びお湯にちゃぽん。
 そして、何事もなかったかのように澄ました顔をしている精霊竜様を見遣りながらも、サフィリアは思うのだった。
 ……聞くのはまた今度でいっか、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【奇縁】
(謎妖怪柄を宛がわれかけるも
何とかシックな春宵風情の浴衣を選び――
野郎と花風呂とか保養どころか毒にしかなんないからあっちいけとか
のぼせるからお先に失礼とか
度々撒こうとするも結局ずるずると)

うう…湯上がり美人どころか何でこんな狐三昧…
アンタらと温泉とか碌でもない記憶しかないんだが!
折角の極楽を地獄に変えるな!
(四季の湯で生き返ったのも束の間
温まってきた筈なのに悪夢が過りふるりと)

とりあえずオレは至って真面目に美女奏者の張込を…
いや何でだよ、てんでバラバラなんだから解散で良いだろもうー!
(またも回り込まれがくり)

オレは瓶牛乳だけで充分なんで!
後は駄目ソファで不貞寝して…いや魘されるから!?


千家・菊里
【奇縁】
(一見は飾気ない黒無地乍ら、良く見れば裾に薄ら夜桜と化狐が戯れる遊び心が隠れた浴衣を選んだり
伊織に珍妖怪浴衣を選んであげようとしたり
四季の湯の風情にお団子がほしくなるなぁとお腹を鳴らしたり
色々満喫してきてほくほくと)

ふふ、温泉三昧からの美食三昧
温泉に漂う湯気も良き風情ですが、食事から立ち上る湯気もまた魅力的で
正に極楽ですねぇ
おや伊織は湯冷めですか?(全く心当たりがないという顔)

では温かな御馳走で改めてほくほくしに行きましょう
(瓶飲料を供に浮き浮き目移りして)

おや伊織はお休みですか?
でははにわ(妖怪?)にします?こけし(妖怪??)にします?それとも――(ひよこ?風の妖怪枕を手ににこにこ)


佳月・清宵
【奇縁】
(馬鹿やる二人を尻目に、黒地に夜桜と満月が浮かぶ浴衣やら藤香る石鹸を見たり
美人女将の手を煩わせねぇよう容赦なく抜かりなく誰かのお目付け役を担いつつも、四季折々の湯と景色もきっちり楽しんだり
――と、一部ダイジェストでお送りしつつ極楽謳歌し)

良い湯の後は良い酒もほしくなるってもんだ
誂え向きな佳景の窓に、美味い肴(何かを含む――かは、さて?)まで揃うとなりゃ、こりゃまた愉しい湯煙旅情と相成りそうで(しれっと)

ああ、奏者の件なら聞き耳立てといてやるよ
どの道お出ましまで数時間だ
それまで自棄酒に付き合ってやるよ
(見事に意見揃わぬも気にも留めず無理矢理足並揃え)

もう全部で良いだろ
極楽で良かったなァ?



 雨の森を多分仲良く抜け、やって来たのは幽世の極楽。
 ウン、極楽って言われているのですけれど。
 受付で浴衣を選ぶところから、てんやわんや。
 千家・菊里(隠逸花・f02716)は、一見は飾気ない黒無地乍らも。良く見れば、裾に薄ら夜桜と化狐がひらり戯れる、遊び心が隠れた浴衣を己のものに選んでから。
 にこにこと呉羽・伊織(翳・f03578)へと宛がうのは――謎の珍妖怪浴衣!?
 けれどなんとか珍妖怪は回避して、シックな春宵風情の浴衣を手にした伊織。
 そしてそんな馬鹿やる相変わらずな二人を尻目に、佳月・清宵(霞・f14015)は黒地に夜桜と満月が浮かぶ浴衣を手にした後。
 ……野郎と花風呂とか保養どころか毒にしかなんないからあっちいけ、とか。
 ……のぼせるからお先に失礼、とか。
 何とか下手な理由をつけて離れようとするいつもの様子にも慣れたように。
 美人女将の手を煩わせないよう容赦なく抜かりなく、誰かのお目付け役を担いつつも。
 四季折々の湯と景色も、きっちり楽しんで。
「四季の湯の風情にお団子がほしくなるなぁ」
 菊里もほくほく色々な湯を満喫しつつも、おなかを鳴らして。湯上りの食に期待を。
 そして、身体もあったまって、湯上りを楽しむ……のですけれど。
「ふふ、温泉三昧からの美食三昧。温泉に漂う湯気も良き風情ですが、食事から立ち上る湯気もまた魅力的で。正に極楽ですねぇ」
「良い湯の後は良い酒もほしくなるってもんだ」
「うう…湯上がり美人どころか何でこんな狐三昧……アンタらと温泉とか碌でもない記憶しかないんだが! 折角の極楽を地獄に変えるな!」
 四季の湯で生き返ったのも束の間、温まってきた筈なのに悪夢が過りふるりと蘇る伊織に、菊里はきょとり。
「おや伊織は湯冷めですか?」
 全く心当たりがないという顔で。
 そんな肴……いや、伊織を見ながらも。
「誂え向きな佳景の窓に、美味い肴まで揃うとなりゃ、こりゃまた愉しい湯煙旅情と相成りそうで」
 しれっと言った清宵に、菊里も瓶飲料を供に浮き浮き目移りして。
「では温かな御馳走で改めてほくほくしに行きましょう」
「とりあえずオレは至って真面目に美女奏者の張込を……」
「ああ、奏者の件なら聞き耳立てといてやるよ。どの道お出ましまで数時間だ、それまで自棄酒に付き合ってやるよ」
「いや何でだよ、てんでバラバラなんだから解散で良いだろもうー!」
 すかさず狐達にまたも廻り込まれ、がくりと項垂れる伊織。
 そんな見事に意見揃わぬも、清宵は気にも留めず無理矢理足並揃えて。
「オレは瓶牛乳だけで充分なんで! 後は駄目ソファで不貞寝して……」
 そう腰に手を当ててごくごく牛乳を飲む伊織に、菊里はそっと差し出す。
「おや伊織はお休みですか? でははにわにします? こけしにします? それとも――ひよこ?」
 そんな妖怪さん抱き枕を伊織にチョイスしつつ、にこにこ。
「もう全部で良いだろ。極楽で良かったなァ?」
 妖怪さんに囲まれた伊織に、清宵も笑って。
 狐達へと伊織はこう叫ぶのだった――いや魘されるから!? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『鬼火の三味長老』

POW   :    べべべん!
【空気を震わす大音量の三味線の演奏 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    鬼火大放出
レベル×1個の【鬼火 】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ   :    終演
【三味線の演奏 】を披露した指定の全対象に【生きる気力を失う】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。

イラスト:遡及

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピオネルスカヤ・リャザノフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ほかほか湯に浸かって冷えた身体もあたたまって。
 おなかも満ち、ごろりもふりと休憩して英気も十分に養って……存分に四季の湯屋を堪能している猟兵達。
 けれど勿論、やるべき事は忘れてはいない。
 この湯屋の支配人だという天逆毎に声を掛けて、事情を話し交渉してみる。
 ――次の三味線奏者の公演を猟兵貸切にして欲しい、と。
 いかにも妖しい、最近この湯屋にきたばかりだという三味線奏者に、猟兵達の誰もが目をつけたから。
 それに何より、その姿こそまだ目にはしていないけれど。
 三味線奏者の演奏が行われるという5階の大広間には――幽世蝶の群れが、さっきから飛んでいるのだから。
『いやぁしかし、三味長老の演奏は人気ですからねぇ』
 最初こそ、そう支配人は渋ったものの。
 最近ボヤ騒ぎがあっているのでは、と予知で聞いたことを口にすれば。
 湯屋の信用にも関わるからか、ご内密にと口にしながらも、掌を返したように頷いてくれて。
 そそくさと手際良く、大広間を暫くの間、猟兵達だけの貸し切りに。
 大広間はとても広く、机なども片付けてくれたため、戦闘になっても支障はなさそうであるし。
 貸切中は妖怪従業員も近づかないようにしてくれるので、妖怪達の避難誘導の必要もない。
 湯屋は豪勢でどっしり丈夫な造りなので、積極的に破壊行動にでたりしなければ、建物に大きな影響もないだろうし。
 多少余波でちょっとくらい壊れても、きっと妖怪達が気にせず修繕するだろう。

 そして三味線の公演が始まるまでの間も、少し周囲の妖怪達に聞き込みをしてみれば。
『最近この湯屋に来た、三味長老? ああ、彼女の演奏は情熱的で激しくてねぇ。気付いたら何でだか本当に身体が燃えていて焦ったよ、ははは』
『そういえば、唐傘おばけが三味長老に惚れたらしいんだけど。振られた上に、何故か湯屋の裏庭で黒焦げ傘になってて全部張り替える羽目になったらしくて、踏んだり蹴ったりだなアイツ……なんて話してたんだ』
『この湯屋だけでなく、幽世の世界も燃やし尽くすような勢いで奏でられる、あの旋律……身も心も超熱いんだよなー』
 ……めちゃめちゃ怪しい。
 それでも気付かず呑気なところが、この世界の妖怪達らしくもあるが。
 とりあえず演奏が始まる時間までに、大広間へと足を向ける猟兵達。
 そして、時間ちょうどに広間に現れたのは――三味線を携えた女。
 女は百鬼夜行の絵が描かれた大きな屏風の前に座し、スッと手にしたバチを天へと振り上げて。
 べべべん! と力強い音を鳴らし始める。
 空気を震わせ、蒼き鬼火を成しながら――幽世蝶の群れがひらり、舞う中で。
尾守・夜野
風呂入ってる時もそれとなく探してたんだが
まさかさっきのガキ、猟兵の中の誰かだったのか?と見渡すも見つかるはずもなく
まぁ今ここにいねぇなら安全かと思考は切り替えよう

(だから炎は熱いのは苦手なんだってば!)
顔には出さないようにしてるがひきつってるだろうな
演奏聞いてて燃えるって何だよ…
相手の演奏にたいしては普通にきれーな音だなーひかれるなーとは思う
「別に元より生きようとして生きてる訳でもねぇけど」
等言葉を返し音と感想という会話を
そのうち相手も呑まれるかもしれんな?(アイテム:オーラ)【精神攻撃・貫通攻撃】

攻撃鈍ればこちらも反撃UC使用
相手の攻撃か自分の攻撃か分からなくして突貫



 普段ならば、湯上りのほんわかした雰囲気に包まれているだろう湯屋の大広間。
 実際、今はまだ、怪しまれぬよう三味線の演奏を待つ客を装っているが。
 大広間に足を運んでいる者たちは皆、猟兵である。
 そんな中、周囲をふと見回してみるのは、尾守・夜野(墓守・f05352)。
 いや、風呂を満喫している時も、風呂から上った後も、それとなく探していたのだが。
(「まさかさっきのガキ、猟兵の中の誰かだったのか?」)
 けれどやはり、雨の森でいつの間にか消えたあの小さな姿は見つからなくて。
 迷子なのか何なのか……何だか妙に何処かあの少年のことが、気にはなってはいるのだが。
 ……まぁ今ここにいねぇなら安全か、と。
 そう思考を切り替えた、その時――大広間にやって来たのは、三味線を抱えた女。
 ひらりひらりと、周囲に幽世蝶を群がらせた三味線奏者は、現れた時は寡黙であった。
 だが、ひとたびバチを構え、三味線へと振り下ろせば……その印象は、熾烈。
 べべんと激しく音を奏でるたびに、空気を震わせ、鬼火が燃え盛る。
 ――だから炎は熱いのは苦手なんだってば!
 折角、湯あたりしないよう、ぬるめの温泉を選んで入ったというのに。
 そう抗議のいろを含んだ視線で、三味線奏者――『鬼火の三味長老』を見遣る夜野だけど。
『アタシの演奏を聴いて、燃えちまいなァ!』
「演奏聞いてて燃えるって何だよ……」
 鬼火の骸魂の影響を受けてか好戦的になっているその言葉に、顔には出さないようにしているがひきつりながらも、思わずツッコまずにはいられない。
 とはいえ、人気の三味線奏者というだけあって、演奏自体は見事なものだ。
 普通に、きれーな音だなーひかれるなーと、そう夜野は思うものの。
「別に元より生きようとして生きてる訳でもねぇけど」
『それじゃアタシの鬼火で、その命も燃やして終演にしてあげようか』
「熱いのは苦手だから遠慮しとくわ」
 刹那、大広間に舞う炎と蝶が、その数を増やす。
 だが燃え盛るそれは、三味長老の放つ鬼火だけではない。
 むしろ夜野との会話でバチを振るう手が鈍った彼女へと舞うのは――現と幻想をさまよえるもの、死と再生の象徴、かの神に連なるモノ。
『……!』
 夜野が喚びて来たる炎の蝶の群れが、禍福をなすべく。
 幽世蝶と共に焔の如く舞い、火の粉の如く鱗粉を撒き散らしながら。
 この世界を崩壊に導かんとするモノを燃やさんと、激しく戦場に舞い遊ぶ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイリ・タチバナ
おっとりしてんなぁ、妖怪たち。カクリヨファンタズムらしいっちゃあらしいけれど。

さて、前払い分はきっちりやらねぇとな!
浴衣姿だけど、動きに支障はねぇ。焦がさないようにしねぇと。
借り物なんだし。借りたもんは、綺麗に返すもんだろ?(礼儀正しいヤンキーヤドリガミ)

【守神宿り】で増やすは『守神鏡』『守神霊符』『幻守神煙管』。鏡の裏に霊符張り付けた状態な。
鏡+霊符で結界はって炎を反射。煙管で相手に幻を見せて、惑わせる。
んで、わざと増やしてない勾玉を念動力で動かして、相手の背中に向かって、こつんと撃つ。
…うん、銛(俺様の本体)持った俺様、前にいるんだけどな!
そのまま、銛でなぎ払うってな!



 此処は、幽世の極楽と言われている、四季の湯屋。
 なので多少、気は緩んでいるのかもしれないけれど。
(「おっとりしてんなぁ、妖怪たち。カクリヨファンタズムらしいっちゃあらしいけれど」)
 燃えただのなんだの、普通は大慌てしてもいいようなことに対しても、のほほんとしている妖怪達。
 美人で演奏の腕も長けている三味長老はむしろ、疑われるどころか人気者であるらしいが。
 しかし、妖怪たちが燃えることは、本人たちが気にしないならまぁともかく。
 この幽世の世界を滅ぼさせるわけにはいかないから。
「さて、前払い分はきっちりやらねぇとな!」
 カイリ・タチバナ(銛に宿りし守神・f27462)は、三味線の音色と鬼火の舞う中、敵を見据え構える。
 至れり尽くせりな上げ膳据え膳は、どうにも落ち着かなかったけれど。
 その分、猟兵としての仕事を成せば、トントンだと。
 それに。
『そら、みんな燃えちまいなァ!』
「浴衣姿だけど、動きに支障はねぇ。焦がさないようにしねぇと」
 カイリは舞う鬼火に紫陽花柄の浴衣が燃えないよう、立ち回る。
 ……借り物なんだし。借りたもんは、綺麗に返すもんだろ? って。
 そんな、何気に礼儀正しい、律儀なヤンキーヤドリガミであるけれど。
 ――油断すんなよ!
 刹那、戦場と化した広間に増やすは、蒼く輝く神鏡『守神鏡』、達筆に綴られし強い呪力秘めた『守神霊符』、煙の如く幻燻らせる『幻守神煙管』。
『……な!?』
 鏡と霊符で張り巡らされた結界が、旋律と共に舞う炎を反射して。
 三味長老へと惑わせるは、煙の如く揺れる幻影。
 そして――こつんと。
 背中からの突然の衝撃に、三味長老が背後へと意識を向ければ。
 それは念動力で動かした、敢えて数を増やしてない蒼き守神勾玉。
「……うん、銛持った俺様、前にいるんだけどな!」
 小さかった自分は、大きな銛によろよろと振り回され気味であったけれど。
 カイリは一気に踏み込んで、難なく大きな得物をぶん回し――眼前の敵を、薙ぎ払う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』
武器:漆黒風

さてさてー、仕事の時間ですねー。
着流しと浴衣、似てますから動きに支障はないですねー。できる限り、汚さないように気を付けますがー。

防御の四天霊障による三重属性(氷雪、炎、重力)オーラ防御+結界術は、内部三人に任せましてー。

指定UCのついた漆黒風を投擲。最初は小さくとも、不幸不運は連鎖するものですよ?
それはだんだんと、『私たち』を有利な立場にするんですよー。

ああ、生きる気力ですか?もとより死んで悪霊となった身ですからね、生きるもなにもないですよ?
ただ、精一杯、手の届くところを守るために戦うだけで。



 大広間に今在るのは、湯上りの客……のように見えて。
 幽世蝶の群れが舞い踊る三味線奏者、世界を崩壊に導く元凶を待ち構える猟兵。
 そして勿論、そこに在る馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)もそのうちのひとり。
「さてさてー、仕事の時間ですねー」
 三味線の演奏がはじまり鬼火が燃え上がれば、これからは仕事の時間。
 纏うは内部の三人に勧められた蓮の華柄の浴衣のままであるけれど。
「着流しと浴衣、似てますから動きに支障はないですねー」
 ひらり、難なく戦場を駆ける『疾き者』。
 一応借り物ではあるから、できる限り、浴衣は汚さないように気を付けつつも。
 そんな『疾き者』を捉えんと、三味線をかき鳴らす三味長老。
 だが、氷雪・炎・重力……防御の四天霊障による三重属性による守りの気や結界を内部三人に任せて。
 『疾き者』が繰り出すのは、連鎖する呪いを宿した漆黒風。
『これくらいの呪い、燃やし尽くして……っ!?』
「最初は小さくとも、不幸不運は連鎖するものですよ?」
 バチを手を滑らせ取り落とした三味長老は、着物の裾を踏んでバランスを崩して。
 自慢の鬼火のコントロールもままならなくなる。
 例えきっかけは小さい不幸も幾重にもかさなれば。
「それはだんだんと、『私たち』を有利な立場にするんですよー」
『……くっ!』
 三味長老は慌ててバチを拾い、終演の旋律を奏でるけれど。
「ああ、生きる気力ですか? もとより死んで悪霊となった身ですからね、生きるもなにもないですよ?」
 そして義透は戦場を疾く駆けながらも、仄か緑色を帯びる棒手裏剣を再び投擲しこう紡ぐ。
 ――ただ、精一杯、手の届くところを守るために戦うだけで、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

金白・燕
リオ(f29616)と同行
アドリブ、アレンジは歓迎です

温泉宿に宴会場は付き物みたいですから、仕方ないですね
……欲を言えば、もう少し眠っていたかったです

知っていますか?
物語の時計ウサギはいつも、必死で追いかけないとすぐに見失うものなんですよ
しっかり追いかけて下さいね?迷子さん
あんまり心配はしていませんが。

【Paralysis】を発動
爆発と共に鎖で縛り上げましょう
申し訳ありません
良い音ですがそんなに大きな音でなくても聞こえますよ、耳が痛みます
さあ、リオ
宜しくお願いしますね

これは休暇なのかお仕事なのか、判断しかねますが……
ええ、たまにはいいでしょう
まだ入っていない温泉もあるみたいでしたからね


尾宮・リオ
燕さん(f19377)と



やってきた大広間
三味線の音色は綺麗ですが
人に害をなしてはいけませんね
困ったように笑いながら抜刀

燕さんとは何度か手合わせしましたし
お強いことは存じていますが
目の前で傷つけられるのは嫌なので
あまり遠くまで行かないでくださいね

物語の時計ウサギさんみたいに
ちゃんと追いかけますよ
そうしないと守れませんし、なんて
くすくすと冗談を交わして笑った

そうして妖刀を構えて敵を見据える
宜しくお願いしますね、燕さん
言葉通りに彼を守りつつ
放たれた鬼火を剣技で捌く

全部が終わったら
また温泉でも入りませんか?
気兼ねなく、ふたりでゆったりと



 ひらりゆらり、群れて舞う幽世蝶たち。
 そんな幽世蝶たちが数多舞う湯屋の大広間へと足を向けた尾宮・リオ(凍て蝶・f29616)は、情熱的な響きをもつ三味線の音色を聞きながら。
「三味線の音色は綺麗ですが、人に害をなしてはいけませんね」
 三味線をかき鳴らし、周囲に旋律だけでなく鬼火を生み出す三味長老へと言葉を投げるけれど。
「温泉宿に宴会場は付き物みたいですから、仕方ないですね」
 ……欲を言えば、もう少し眠っていたかったです、と。
 久しぶりにきちんとした寝具で休んだ気がするという金白・燕(時間ユーフォリア・f19377)の言葉を耳にし、視線を移してから。
 困ったように笑いながら、すらりと沫雪を抜いて構えるリオ。
 それから、改めてちらりと眼鏡の奥の橙をいろを彼へと向けて紡ぐ。
「燕さんとは何度か手合わせしましたし、お強いことは存じていますが。目の前で傷つけられるのは嫌なので」
 ……あまり遠くまで行かないでくださいね、って。
 そう言っておかないと、またぴょこんと忙しく仕事に勤しんで動きかねないから。
 そんなリオの声に、燕は彼へと赤い瞳を向けて返す。
「知っていますか? 物語の時計ウサギはいつも、必死で追いかけないとすぐに見失うものなんですよ」
 ……しっかり追いかけて下さいね? 迷子さん、と。
 だって、物語の時計ウサギも燕も常に跳びまわっていて、じっとしておくなんて性に合わないのだから。
 そして彼がそういう性分であることは、リオにも分かっているから。
「物語の時計ウサギさんみたいに、ちゃんと追いかけますよ」
 ……そうしないと守れませんし、なんて。
 交わし合う冗談に、思わずくすくすと笑んで。
 その姿映す瞳を細めた燕もこう続ける……あんまり心配はしていませんが、と。
 けれどそのやりとりに無粋に割って入ってきたのは、べべんと奏でられた旋律と燃え盛る鬼火。
『激しく熱いアタシの音色で、アンタたちも燃えちゃいなァ!』
 だが、リオは己が紡いだ言の葉通りに。
「宜しくお願いしますね、燕さん」
 一層激しく三味線をかき鳴らす女が繰り出す鬼火を見据え、ひゅっと放つ刃で叩き斬り払ってゆく。
 燕のことを守ると、そう口にした通りに。
 久しぶりの休息はちょっぴり名残惜しかったけれど。
「申し訳ありません。良い音ですがそんなに大きな音でなくても聞こえますよ、耳が痛みます」
 ――私から離れないで下さいますか?
 そう紡がれると同時に燕が放ったのは、ハートのトランプ。
 刹那、痺れる様な爆発と懐中時計の鎖が轟き放たれる。
 やはり、忙しく仕事をしている方が落ち着くし幸せだから。
「さあ、リオ。宜しくお願いしますね」
 いつだって燕は薄ら宿す笑みを絶やさない。
 アリスも迷子も、皆を案内するのが仕事。
 だから眼前のオブリビオンだって、骸の海へとご案内。
『……くっ! 邪魔……!』
 じゃらりと鳴る鎖で確りと繋がれた三味長老は、バチを思う様に振り上げられなくて。
 刹那、一気に踏み込んだリオが解放した沫雪が妖刀の気を纏えば。
『ぐ……!』
 柔らかな雪が衝撃波放つ猛吹雪かの如く牙を剥き見舞われ、敵を叩き斬らんと振るわれる。
 そんないつも通り仕事をこなしながらも。
「全部が終わったら、また温泉でも入りませんか? 気兼ねなく、ふたりでゆったりと」
「これは休暇なのかお仕事なのか、判断しかねますが……まだ入っていない温泉もあるみたいでしたからね」
 リオの提案に、燕はこくりと首を縦に振って返す。
 ――ええ、たまにはいいでしょう、って。
 社畜……いえ、仕事に勤しむにも、身体が資本には違いないから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

君影・菫
ニーナ(f03448)と

三味線は少し馴染みの有るもんやけど
火遊びはアカンねぇ
これはお仕置きせないかんかなあ

せやね、心身温まった処やし
お仕事も頑張れそ
ゆびさきで操るは数多の簪、菫色の針の雨
『ヴィオラの戯れ』
念動力でくいっと器用に動かし
お先に失礼と先制攻撃からの不意打ちで死角も狙ってみよか

ニーナの歌が心に響くから
お礼みたいにすみれ色のオーラ防御でキミを包む
うちも唄おかな、即興の飛び入り
さっき憶えた旋律をキミと
ふふ、上手く歌えとる?
手を繋いだらきっと心だって結べるから
片手でもうちの雨は正確に相手を追う
すみれ色の雨と鬼ごっこ
――なあ、逃げて見せて?

隣のキミがくれた力を宿したうちはね
負けたりせぇへんのよ


ニーナ・アーベントロート
菫さん(f14101)と
三味線の演奏、ちょっと楽しみにしてたけど
危険な火遊びはノーサンキューだよ!
お風呂で身体も温まったところだし
ひと仕事頑張ろっか

そっちが音楽で来るのなら
あたしも歌で対抗しちゃえ
歌唱でUC『Lorelei』発動
身を焦がすような貴女の音色ごと
あたしの奔流で飲み込むみたいに
…そうだ、菫さんも一緒に歌う?
そう来なくちゃ、と手を繋いで
重ねた歌声で鼓舞し合ったなら
次の一手に繋げようか
菫さんがUC発動する際の隙を突かれぬよう
オーラ防御でお守りしちゃうよ
…ふふ、すみれ色の綺麗な雨だね
それに歌も完璧だったよ!
ねぇ、このままユニットデビューしたら
長老さんを凌ぐ伝説級アイドルになっちゃったり?



 大広間を飛び交うのは、熱すぎるくらい情熱的な三味線の旋律と。
 激しく燃え盛る鬼火と――これまで追って来た、幽世蝶たち。
 確かに、かき鳴らされる三味線の音色は見事なものではあるのだが。
「三味線の演奏、ちょっと楽しみにしてたけど。危険な火遊びはノーサンキューだよ!」
「三味線は少し馴染みの有るもんやけど、火遊びはアカンねぇ」
 周囲や妖怪達を燃やすような火遊びをする悪い子は、決して見過ごせないから。
「これはお仕置きせないかんかなあ」
「お風呂で身体も温まったところだし、ひと仕事頑張ろっか」
 秋の夕暮色をした浴衣をひらり靡かせ言ったニーナ・アーベントロート(赫の女王・f03448)の声に。
 夜桜舞う紺の帳のいろ纏う君影・菫(ゆびさき・f14101)もこくりと頷く。
「せやね、心身温まった処やし、お仕事も頑張れそ」
『アタシの情熱的な旋律で、何もかも燃えちまいなァ……!』
 べべんとより強く三味線がかき鳴らされれば、それに呼応するかの様に鬼火も燃え上がるけれど。
 ――さ、沢山の紫で彩ろうなあ。その視界埋めてまう程に。
 鬼火を打ち消すかのように菫がゆびさきで操るは、菫色の針の雨。
 戯れるかの如く、けれども貫く様に鋭く、敵へと向かう優雅で鋭利な菫色の簪たち。
 それを巧みにくいっと、幽世蝶と舞い遊ぶ戦場に器用に躍らせて……お先に失礼、って。
 先に仕掛けた不意打ちの鋭撃で狙い澄ましてみるは、敵の死角。
 そして大広間に響くのは、三味線の旋律だけではなくて。
 ……そっちが音楽で来るのなら、あたしも歌で対抗しちゃえ、って。
 ニーナが歌うは『Lorelei』――それは、愛する人やものに対する渇望の唄。
 ――身を焦がすような貴女の音色ごと、あたしの奔流で飲み込むみたいに。
 そう、すみれ色の優しい守りの気に包み込まれながら、三味長老に負けないくらい熱く歌い上げる。
 けれど、ひとりで歌うよりももっと楽しいに違いないから。
「……そうだ、菫さんも一緒に歌う?」
 菫へと視線を向け、提案してみるニーナ。
 そんな彼女に、菫色の瞳と笑みを返して。
「うちも唄おかな、即興の飛び入りやね」
 耳にも心にも響くさっき憶えた旋律を、キミと一緒に紡ぎ出す。
 しっかりと、仲良く手を繋いで。
「ふふ、上手く歌えとる?」
 菫はそう訊いてみるけど、でも分かっている。
 手を繋いだらきっと心だって結べるから。
『は、アンタたち、それじゃ手が塞がってるじゃないの!』
 そう再びバチを振り上げんとする三味長老に、菫は瞳細めて。
「片手でもうちの雨は正確に相手を追う」
 ニーナのお返しの気に守られながら再び成すのは、鋭利なヴィオラの雨。
 すみれ色の雨と鬼ごっこ――なあ、逃げて見せて? って。
 今まではひらり舞う幽世蝶を追ってきたから。今度は、こっちが追いかける鬼の番。
 そんな敵へと降り注ぐ雨と、自分の歌声に重なる彼女の声に、ニーナは笑み零して。
「……ふふ、すみれ色の綺麗な雨だね。それに歌も完璧だったよ!」
 悪戯っぽく、ぱちりとウインクしてみせつつも続ける。
「ねぇ、このままユニットデビューしたら、長老さんを凌ぐ伝説級アイドルになっちゃったり?」
 三味長老にぞっこんだった妖怪達だって、ころっと心変わりすること間違いないはず。
 ユニットデビューして伝説級アイドルになっちゃった自分達に、きっと。
 そんなニーナの言葉に、菫もふふっと笑み咲かせて。
 心揺さぶるニーナの歌声を耳にすれば、より戦場へと降っては満ちる菫のいろ。
 ――隣のキミがくれた力を宿したうちはね、負けたりせぇへんのよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
世界に滅びを招くほどの『何か』があるんだろうか
……あるんだとして、それはどんなものなんだろう

そんなことを想う
想っても仕方ないことだけど
それでも、始まりはきっと純粋なものだったんだろうと
なんとなく、思うから

災禍を狩るもの使用
毒耐性や激痛耐性、破魔や浄化等で代償の対処を試みる

衝撃波と吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払いの先制攻撃
鬼火での攻撃は風と水の神力で夜彦と自分が焼けないよう対処
どこまで効果あるかはわかんねぇけどな

俺は別に多少の火傷は気にしないけど
夜彦に鬼火が向かう場合はオーラ防御を展開しつつ確実にかばう

大丈夫大丈夫
なんなら後で怪我に効く湯使わせて貰うし

だからさ……決めてきてくれよ、夜彦


月舘・夜彦
【華禱】
世界さえも燃やし尽くしてしまうような旋律
それ程に思いが込められているのでしょう
ですが、本当に世界を滅ぼすようなことはあってはならない
私達で止めに行きましょう

攻撃は抜刀術『神風』
離れた位置から2回攻撃にて手数を増やす
攻撃を仕掛けながら少しずつ距離を縮めて接近していく
回避されないように接近した際にはなぎ払いも織り交ぜる

敵の攻撃は視力にて確認
残像にて回避する、または武器受けにて防御
鬼火への攻撃は倫太郎に任せ、攻撃を続行
火による攻撃は倫太郎が必ず引き受ける
それが分かっているからこそ、私は攻撃する手を止めない
……それでも、貴方が傷付くことに何も思わない訳ではありませんが

私は、彼の刃だから



 雨の中、その行く先を追ってきた幽世蝶たちがひらりと戯れる。
 それは力強く熱く旋律を奏でる、三味線奏者の女。
 その見事だが激しすぎる音色を耳にしながら、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)はふと思う。
 ――世界に滅びを招くほどの『何か』があるんだろうか、と。
(「……あるんだとして、それはどんなものなんだろう」)
 彼女……三味長老が、鬼火燃やすほどに三味線をかき鳴らす理由。
 世界を崩壊に導くほどの何かが、骸魂に飲み込まれる前の彼女の心にあったのかもしれない。
 けれど、それを想っても仕方ないことだということを、倫太郎は分かっているし。
 でも、それでも――なんとなく、思うのだ。
 始まりはきっと純粋なものだったんだろう、と。
 そんな彼の隣に在る月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)も、共に激しい演奏を聴きつつ。
「世界さえも燃やし尽くしてしまうような旋律、それ程に思いが込められているのでしょう」
 だがすぐに、こうはっきりと言い切る。
 確かに三味線の演奏は見事で、聞くだけで燃えてしまいそうな激しさを宿してはいるけれど。
「ですが、本当に世界を滅ぼすようなことはあってはならない」
 ……私達で止めに行きましょう、って。
 そして、そんな夜彦と共に今此処に在るのは、そのためだから。
 ――狩り、還すは災い。
 だから倫太郎は災禍を狩る。焔の神力で祓い、水の神力で喰らい、風の神力で砕いて。
 生きていればそれでいい。けれど易々と倒れるわけにもいかないから、代償の対処を試みつつも。
 そしてカミの力宿したその身で、敵前へと躍り出るべく地を蹴って。
 衝撃波と吹き飛ばしを乗せた華焔刀で、敵よりも早く大きくなぎ払えば。
『ぐ……ッ、ちぃっ! 演奏を邪魔する奴は燃やしてやるよ!』
 刹那、三味長老がバチを振り下ろせば襲い掛かる、激しく燃え盛る鬼火たち。
(「どこまで効果あるかはわかんねぇけどな」)
 それを倫太郎は、夜彦と自分が焼けないようにと、風と水の神力で対処せんと試みて。
 ――是は空さえも斬り裂く刃也。
 刹那巻き起こるのは『神風』――素早く抜刀し繰り出した夜彦の斬撃が、神の風と成って。
 離れた位置から連撃を放ち、少しずつ距離を縮めて接近して。
『く、そうはいかないよ……!?』
 回避されぬようになぎ払いも織り交ぜ、夜彦が刃を放てば。
 彼の身を燃やさんと放たれるは、複数の鬼火。
 けれど夜彦は攻めるその手を決して止めはしない。
 夜彦には、わかっているから。
(「火による攻撃は倫太郎が必ず引き受ける」)
 それが分かっているからこそ、刃を振るう手を止めない。
 だって彼は、自分の盾なのだから。
 けれど、でも……倫太郎本人も、別に多少の火傷は気にしないのだけど。
「……それでも、貴方が傷付くことに何も思わない訳ではありませんが」
 手は決して止めずとも、そう思わず呟きを落とした夜彦に倫太郎は笑ってみせる。
「大丈夫大丈夫。なんなら後で怪我に効く湯使わせて貰うし」
 ――だからさ……決めてきてくれよ、夜彦、って。
 そして夜彦はその声に応えるように、全力で神風を巻き起こす。
 彼は自分の盾で――そして自分は、彼の刃なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加。

(いつまでも寝ている奏の頬を抓って起こしながら)音楽は確かに人を夢中にさせる。いつまでも聞いていたくなるのも良く分かるんだが、世界の崩壊に繋がるのはねえ。何とかするか。

奏、瞬、前の抑えは任せた。アタシは【忍び足】【目立たない】で背後を取る。背後を取れたら【不意打ち】【騙し討ち】【重量攻撃】で炎の拳で攻撃。【残像】は音波の攻撃だから無効だろう。【オーラ防御】で凌ぐ。

同じ音楽の同志なんだが、燃やすような音楽は頂けない。出来れば、まともな演奏者に戻って、三味線を聞かせて欲しいねえ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

(母さんに頬を抓られて起きる)良く寝ました~。炎を巻き起こす三味線奏者のお姉さんですか。情熱の炎ならいいんですが、実際世界を燃やすとなると・・・同じ音楽を愛する方ですし、取返しのない事になる前に。

音波の攻撃は広範囲且つ威力が高そうですので、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【火炎耐性】で後ろの瞬兄さんを【かばう】体勢で移動距離を犠牲にして全てを護る騎士を発動。出来れば飛んでくる鬼火は【受け流し】【ジャストガード】で対応したいですね。攻撃は【二回攻撃】【斬撃波】で。見事な演奏であることは間違いないので、まともな演奏家に戻って欲しいです。


神城・瞬
【真宮家】で参加

同じ演奏家として夢中になる演奏はぜひお聞きしたいところですが、世界を壊してしまう程の情熱ならば。奏、起きましたか?彼女を止めに行きますか。

前に立つ奏の負担が大きいので【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】を敵に向かって展開。【高速詠唱】で裂帛の束縛を使用。飛んでくる攻撃を【オーラ防御】で凌ぎながら、【武器落とし】を仕込んだ【誘導弾】で攻撃。

演奏自体は見事ですよ、演奏家の同士。どうか骸魂から解放されて、またその演奏を聞いてみたいですね。



 ふかふかソファに埋もれて、思わずぎゅっとしたくなる可愛い抱き枕ともふもふ毛布。
 もうこのままずっと寝ていたい……ところなのだけれど。
 健やかにすやぁとふかふかもふもふに身を預け、いつまでも寝ている真宮・奏(絢爛の星・f03210)の頬をきゅっと抓って。
 放っておけば一向に目覚めそうにない娘を起こしながらも、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は大広間にやってきた三味線奏者へと視線を向ける。
 そんな三味線奏者――いや、三味長老の周囲には、ひらりふわり舞う幽世蝶の群れが。
 そして三味線を構えんとしている彼女を見遣り、響は呟きを落とす。
「音楽は確かに人を夢中にさせる。いつまでも聞いていたくなるのも良く分かるんだが、世界の崩壊に繋がるのはねえ」
 ――何とかするか、って。
 神城・瞬(清光の月・f06558)も響と同じ様に、現れた三味線携えた女へと赤の瞳を向けてから。
「同じ演奏家として夢中になる演奏はぜひお聞きしたいところですが、世界を壊してしまう程の情熱ならば」
「……良く寝ました~」
 ふとようやく母に頬を抓られ、ふわりとあくびひとつしつつも身を起こした奏に、瞬は視線を移して声を掛ける。
「奏、起きましたか? 彼女を止めに行きますか」
 そんな瞬の言葉を耳にして、奏は抱き枕を名残惜しそうにもふもふしながらも。
 彼の言う、『彼女』の存在に気付いて。
 気合を入れなおすように、幽世蝶が教えてくれている元凶を見遣る。
「炎を巻き起こす三味線奏者のお姉さんですか。情熱の炎ならいいんですが、実際世界を燃やすとなると……」
 ただ情熱迸る様な演奏、というだけならばまだしも。
 聞く者や周囲を燃やしてしまうことは許すわけにはいかない。
 だから……同じ音楽を愛する方ですし、取返しのない事になる前に、と。
 この世界を滅亡へと導く旋律をべべんっと力強く奏はじめた三味長老へと、奏は大きく地を蹴って距離をつめる。
 けれど、ただ闇雲に前へと出ているわけではない。
 前に立つ奏の負担が減るために、痺れさせ目潰しを狙った防具をも無視する部位破壊を仕込んだ結界術を敵に向かって展開する瞬。
 そして奏も守りの気を纏い、拠点防御と火炎に対する耐性を宿し、盾や武器で相手の攻撃を受けられるよう技能を駆使しながらも、自分を支えてくれる瞬を庇うような体勢を取り立ち回って。
 全てを護ると、そう改めて誓う。共に在る者達の痛みは、自分の痛みだと。
 刹那、移動距離を犠牲にして奏が発動するのは――『全てを護る騎士』。
『……ッ、!』
 湧き上がる蒼いオーラが全身を覆えば、皆が受けた負傷の分だけ、三味長老へと攻撃のお返しを。
 けれど相手は、世界の崩壊を招くオブリビオン。
 奏の猛攻に顔を顰めながらも、べべんっとバチを振り下ろせば。
 戦場に揺らめき燃え盛るのは鬼火。
 けれど三味長老の攻撃手段は、事前に予知で聞いているから。
 奏は飛んでくる鬼火を受け流し、ジャストガードで対応出来ればと試みて。
 生じた敵の隙を狙い、斬撃波の連撃を返せば。
 ――動きを縛らせて貰います!! 覚悟!!
 瞬から放たれるは、アイヴィーの蔓にヤドリギの枝や藤の蔓。
『なっ!?』
 展開した裂帛の束縛が、鬼火を燃え上がらせる彼女の、三味線を弾く手を鈍らせて。
 それでも飛んでくる炎を守りの気で凌ぎながら、獲物を叩き落とすような誘導弾で攻撃も同時に仕掛ければ。
 奏と瞬に前の抑えは任せていた響が、目立たぬよう忍び足でとったのは――三味長老の背後。
 そして騙し討ちするかの如く、重い不意打ちの炎の拳を敵へと叩きつけて。
『ぐっ! だが、アタシの演奏はまだまだ終わらないよ……!』
 瞬間、響へと、空気を震わす大音量の衝撃が繰り出されるけれど。
 捉えたと思った響は、残像。残像には音波攻撃には無効だ。
 そして燃え盛る鬼火と幽世蝶たちが舞う戦場で、守りの気を纏いながらも響は攻勢を崩さない。
「同じ音楽の同志なんだが、燃やすような音楽は頂けない。出来れば、まともな演奏者に戻って、三味線を聞かせて欲しいねえ」
 三味長老を呑み込んでいるのは骸魂。
 彼女が演奏で世界を燃やし尽くさんとするのは、この骸魂のせいであるけれど。
 ちょっと今は必要以上に熱く激しいとはいえ、奏でる旋律自体は聞き惚れることも分かるような魅力的なものだから。
「見事な演奏であることは間違いないので、まともな演奏家に戻って欲しいです」
「演奏自体は見事ですよ、演奏家の同士」
 奏の言葉に頷き紡いだ瞬は、こう続ける。
 ――どうか骸魂から解放されて、またその演奏を聞いてみたいですね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サン・ダイヤモンド
【森】
相合傘にあったかいお風呂
美味しいご飯もたくさん食べて
僕、今日はとっても幸せなのよ
でもそれは、あなたが一緒だったから
あなたがいないと、僕はもう笑えない

楽しい想い出をくれた世界
僕達が守らないとね

揃いの冬地に薔薇の浴衣をずらし
食べてと白い首筋曝け出す


あなたが優しい事、僕は誰よりも知っているから
獣の牙で自身の唇切り裂き、彼へ血の口付けを【UC

ブラッド、僕を見て
僕だけの、歌を聴いて

あなたが変わっても、変わらなくても
僕はブラッドがだぁーい好きよ!

それだけは変わらない
ううん、もっとずっと好きになる

痛みなんてなんでもないの
むしろこれであなたが生きられるなら
この痛みは、僕の誇り

愛の歌にオーラの加護乗せ彼へ


ブラッド・ブラック
【森】
…サン
俺は、お前と生きたいと思っている
誓って此の気持ちに嘘は無い
だが、

解っている、解っているんだ
其の為には先ず己が生きねばならぬ事
己が生きる為には他者の血肉が必要な事
お前を傷付けねばならぬ事
だが辛くて苦しくて
何と頼り無い意気地無し

俺は…、変わるから
もう少しだけ時間を―


突然の口付けと
眩暈がする程甘く蕩ける血の味に呆然と立ち尽くし

何時の間にか出口の見えない暗い森の中に迷い込んでいた様だ
今俺の瞳を満たすのは愛に煌く愛し子の瞳
そして心を満たすのは愛し子の言葉と、今、此の瞬間

貪婪の腕でサンを庇い
―音とは空気を震わす振動だ
サンには、仮令音であろうと触れさせぬ!

跳躍、燃え盛る【白焔(愛)】纏った一撃を



 いつまでも降り止まない雨の中だって、くるりと咲かせた貴方のいろに守られながら。
 まさに一つ屋根の下の幸せの如く相合傘をして歩けば、長かったはずの森の道も、あっという間に過ぎるほど嬉しくて。
 辿り着いた湯屋で楽しんだのは、貴方いろに染まった、ぽかぽか彼の様にあったかいお風呂。
 肉も甘い菓子も果物も、美味しいご飯もたくさん食べたから。
「僕、今日はとっても幸せなのよ」
 でもその幸せはどれだって全部、ひとりではきっと感じなかったもの。
 ――それは、あなたが一緒だったから。
「あなたがいないと、僕はもう笑えない」
 そう紡ぎ自分を見つめるサン・ダイヤモンド(黒陽・f01974)へと。
 ブラッド・ブラック(LUKE・f01805)も告げる。
「……サン。俺は、お前と生きたいと思っている。誓って此の気持ちに嘘は無い」
 けれどすぐに……だが、と声を落として。
 鮮やかなピンク色を湛える瞳をそっと閉じ、ブラッドは微か首を横に振りながらも口にする。
「……解っている、解っているんだ」
 ――其の為には先ず己が生きねばならぬ事を。
 ――己が生きる為には他者の血肉が必要な事を。
 ――そして……お前を傷付けねばならぬ事を、と。
 そのことは苦悩の末に、過去、了承したはずのことなのだけれど。
 でもやはり傷つけたくはなくて。けれど、喰らわねばならなくて。
 だから……辛くて、苦しくて。
(「何と頼り無い意気地無し」)
 ブラッドはそんな己が嫌になる。
 だが何よりもやはり、傷つけたくないはないから。
「俺は……、変わるから。もう少しだけ時間を――」
 そうふと顔を上げれば……向けられているのは、天使の如き笑み。
「楽しい想い出をくれた世界。僕達が守らないとね」
 そしてサンは躊躇なく曝け出す。
 揃いの冬地に薔薇が咲く浴衣をするりとずらして、白い首筋を――食べて、と。
 だって、サンはよく知っている。
「あなたが優しい事、僕は誰よりも知っているから」
 そんな優しいブラッドへ、って……刹那、サンの唇を彩るのは、鮮血のいろ。
 獣の牙で自身の唇切り裂いて、甘くとろりと流れる赤が、愛する者に無敵の加護を施す。
 ――あなたと二人で、この先も。だからね。僕をあげる。
 ブラッドへとサンが与えたのは、血の口付け。
 そんな突然の口付けと、眩暈がする程甘く蕩ける血の味に、ブラッドは呆然と立ち尽くしてしまうけれど。
「ブラッド、僕を見て。僕だけの、歌を聴いて」
 サンはそれから、にぱっと笑んで。
 両手を一杯に広げ、彼へと告げるのだった。
「あなたが変わっても、変わらなくても。僕はブラッドがだぁーい好きよ!」
 ……それだけは変わらない、って。
 けれどサンは、すぐにふるりと、首を横に微か振って。
 改めてブラッドに咲く薔薇のいろを真っ直ぐ見つめ、こう言い直す。
 ――ううん、もっとずっと好きになる、って。
 そしてそんな向けられた笑みをブラッドは薔薇色の瞳に映しながら。
(「何時の間にか出口の見えない暗い森の中に迷い込んでいた様だ」)
 だが……今俺の瞳を満たすのは愛に煌く愛し子の瞳、と。
 そして心を満たすのは――愛し子の言葉と、今、此の瞬間だと。
 それからサンは、自分を見つめ返すそんな彼に、笑んでみせる。
「痛みなんてなんでもないの。むしろこれであなたが生きられるなら」
 ――この痛みは、僕の誇り、って。
 そんなサンは、ブラッドのためだけに歌う。オーラの加護を乗せた愛の歌を。
 先程は一瞬、甘やかな血の味にくらりと酔ったかのような感覚をおぼえたブラッドだけれど。
『全部、ぜーんぶ、アタシの三味線の音色で燃えてしまいな!』
 敵が繰り出した空気を揺るがすような衝撃波から、貪婪の腕でサンを庇って。
(「―音とは空気を震わす振動だ」)
 ……サンには、仮令音であろうと触れさせぬ!
 ブラッドは甘く蕩ける赤の加護を受けながら、燃ゆる白を滾らせる。
 ――この命に、この愛に、二人の未来に祝福を!
 全ての災いを焼き尽くす白き焔を。愛する者が差し出す血肉を、代償にして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

風見・ケイ
夏報さん(f15753)と

あれ、夏報さんも明日お休みって言ってなかったっけ
そっか……残念だけど、仕方ないよね
……なんだか私も、どうでもよくなってきちゃったな

と見せかけて拳銃で手元を狙う
銃声や銃弾で少しでも音が乱せれば僥倖
(……元々少ない物を失ったところでね)

泥人の夏報さんに少し同情してしまうけど、この湯屋を明日も楽しめると嬉しくなって

敵の頭上に右手を向けて、90㎥の岩板を『星屑』から創り出す
さっき触ったばかりだし、炎にも音にも強い物だ

本当はずっとあのふたりの続きが気になっていた
……でも、振り向くのはもうやめておきます
明日も明るく過ごすために、今日も楽しまないと
お仕事が終わったら、まずは一杯かな


臥待・夏報
風見くん(f14457)と

どうしようこの湯屋めちゃくちゃ楽しい
一日じゃとても遊び尽くせない
明日から仕事かと思うと生きる気力を失うな……

とでも言うと思ったか!
こんなこともあろうかと職場にはUC製の泥人を代わりに出勤させておいた
さっさと骸魂を倒して、湯屋で連泊するんだから!

気力を失ったと見せかけてから騙し討ち
『釣星』のワイヤーを展開し、ロープワークを駆使して三味長老を捕縛する
今だよ風見くん!

三味線の音で心が揺れても、呪詛耐性で耐えておく
あの幻の続きも、本当はちょっと気になっているけれど
過去のこととか
もしもの例え話とか
そんなんじゃなくて、明日何して遊ぶか考えようよ
なんたって、まだお酒飲めてないもんね



 ゆる妖怪の作務衣と同じ柄の浴衣を、やはりお揃いで着て。
「どうしようこの湯屋めちゃくちゃ楽しい。一日じゃとても遊び尽くせない」
 なのに、現実はとても非情で。
 臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は、この休みの終演を奏でるかの様な三味線の音色を聴きながら、大きな溜息をひとつ。
 ――明日から仕事かと思うと生きる気力を失うな……って。
 そんな生き力を失って、もふもふクッションにぽふりと顔を埋める夏報に。
 風見・ケイ(星屑の夢・f14457)は、ふと首を傾ける。
(「あれ、夏報さんも明日お休みって言ってなかったっけ」)
 けれどすぐに、同じ様に溜息をついてから。
「そっか……残念だけど、仕方ないよね」
 ……なんだか私も、どうでもよくなってきちゃったな。
 そう言いながらもやはり、もふもふクッションにぽふん。
 そんなある意味、生きる気力を失って脱力しているふたりに。
『ふふ、私の三味線の音色はどうだい? 生きる気力もなくなるだろう? さァ、終演といこうかねェ!』
 実はオブリビオンであった三味線奏者――三味長老は、景気付いてバチを大きく振り上げるけれども。
「と見せかけて」
「とでも言うと思ったか!」
『……!?』
 クッションを颯爽とふたり揃って部屋の隅にぽいっと置いた後。
 ケイがすかさず構えた拳銃の引き金を引けば、狙うは三味線を弾くその手元。
『くっ、謀ったな……!』
 刹那鳴る銃声や手元狂わせる銃弾で、少しでも音が乱せれば僥倖だと。
(「……元々少ない物を失ったところでね」)
 まんまと引っかかった三味長老を見遣りながら、そうケイが思う隣で。
 ふふんと、得意気に夏報は言い放つ。
「こんなこともあろうかと職場にはUC製の泥人を代わりに出勤させておいた」
 ……さっさと骸魂を倒して、湯屋で連泊するんだから! って。
 そんな本物の夏報のかわりに明日出勤するという泥人の夏報に、ケイはちょっぴりだけ同情してしまうけど。
 でも、微かに零れるのは小さな笑み。
 だって、この湯屋を明日も楽しめると思うと嬉しくなって。
 ということで!
 明日も休みな夏報が繰り出すのは、気力を失ったと見せかけてからの騙し討ち。
『! ……ぐっ』
 幽世蝶と鬼火舞う戦場に『釣星』が踊れば、三味長老の実を捉え捕縛して。
「今だよ風見くん!」
 その声と同時に、敵の頭上へとケイの右手が向いた瞬間。
 あらゆる元素を内包する星のかけら――『星屑』から創り出されるは、90㎥の岩板。
(「さっき触ったばかりだし、炎にも音にも強い物だ」)
 そして三味長老へと容赦なくそれを放ちながら、懲りず響く三味線の音を耳に、ケイはふと思う。
(「本当はずっとあのふたりの続きが気になっていた」)
(「あの幻の続きも、本当はちょっと気になっているけれど」)
 それは夏報も、実は同じなのだけれど。
「……でも、振り向くのはもうやめておきます。明日も明るく過ごすために、今日も楽しまないと」
「過去のこととか、もしもの例え話とか、そんなんじゃなくて、明日何して遊ぶか考えようよ」
 過去よりも、今日や明日を楽しみたいから。
「なんたって、まだお酒飲めてないもんね」
「お仕事が終わったら、まずは一杯かな」
 心置きなく湯屋を満喫できるようになったら、まずは我慢していたお酒で乾杯を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戎崎・蒼
葎(f01013)と
三味線奏者か。色々と厄介そうではあるけれど、対処していこうか
……依頼だというのに、僕もつかの間の休息の時間を楽しませて貰ったから……その御礼も兼ねて、ね

葎と連携しながら敵に攻撃を加えよう
僕はUCの幾数の影で相手の動きを封じられるように
且つ、鬼火なんかも相殺出来るようにしたい
相手が影に気を取られてくれたのなら、そこで相手にSyan-bulletを撃ち込もうか(スナイパー+暗殺)

……さて、宴もたけなわといった所か
ともすればこの公演も終いにしなくてはね?
月に叢雲花に風か、──僕達猟兵が集ってしまったのだから


硲・葎
蒼くん(f04968)と。
これはちょっとバイクさんに乗って素早く動いて
いかないと間に合わないかな。
「よし、バイクさん行くよ!」
『断る』
「……は?」
『ヤル気が起きん』
なんだってー!?完全にむくれてるじゃん!?何が気にいらないの!?
ベリーロリポップを取り出し、UC準備しよう。
仕方ないからUC発動しつつ、見切りとダッシュで
敵の攻撃を出来るだけ避けて。
衝撃波で相手の方に鬼火を打ち返してやろう。
避けきれない分は火炎耐性とかばうことでなんとか蒼くんに
いかないように受け止めたい。
「どう?自分の炎で焼かれるって!」
自分でちゃんと美しく幕引きしてね。
もう、夜も耽けたのだし。



 ひいらり、ゆらりと大広間に舞い遊ぶのは。
 雨の森を抜け、もくもくと煙上げる湯屋までその行方を追って来た、幽世蝶たち。
 そして蝶々は教えてくれる。この世界を滅亡へと導く存在を。
『さァ、全てアタシの演奏で燃やし尽くしてやろうかねェ!』
 吞まれている骸魂の影響か、気性まで烈火の如く激しくなっている三味長老の女。
 けれど、荒ぶるようにバチをふるい衝撃波や鬼火を成す敵を前にしても慌てる様子などなく。
「三味線奏者か。色々と厄介そうではあるけれど、対処していこうか」
 戎崎・蒼(暗愚の戦場兵器・f04968)はそう冷静に、猟兵としての仕事に取り掛からんとするけれど。
 纏う黒地に片滝縞の浴衣をひらり翻しながら、こうも口にする。
「……依頼だというのに、僕もつかの間の休息の時間を楽しませて貰ったから……その御礼も兼ねて、ね」
 さすが、幽世の極楽と言われているだけあって、至れり尽くせりで。
 猟兵の仕事をするべく此処にやってきたはずなのに、楽しいひとときも過ごさせて貰ったから。
 黒地に向日葵の色浴衣姿の、硲・葎(流星の旋律・f01013)と一緒に。
『アタシの演奏は熱いよ!』
 べべんっと三味長老がバチをふるうたびに生じるのは、空気震わせる衝撃波や燃え盛る鬼火。
 葎はそんな敵を見遣り、そしてこくりとひとつ見極めた様に頷く。
(「これはちょっとバイクさんに乗って素早く動いていかないと間に合わないかな」)
 ということで!
「よし、バイクさん行くよ!」
『断る』
「……は?」
 颯爽と戦場を駆けようとした刹那、返って来た答えに思わず葎は瞳を瞬かせて。
 そんな驚いた様子の彼女へと、こう続けるバイクさん。
『ヤル気が起きん』
 その言葉通り、全然ヤル気皆無なバイクさんに思わず声を上げる葎。
「なんだってー!? 完全にむくれてるじゃん!? 何が気にいらないの!?」
 どうしてバイクさんが拗ねていて、何が気に入らないのか、葎には分からなかったけれど。
 でも、そうも言っていられないから。
 ベリーロリポップを取り出して、サボるな! と言ってもヤル気がないなら仕方ないから。
 『相棒変化』を発動しつつも、見切りとダッシュで衝撃波や鬼火を出来るだけ避けるよう葎が立ち回れば。
 ――晩餐会といこうか。──勿論、マナー違反は厳禁だけれどね?
 蒼が禁断の果実による智力を代償に成した、自身に潜む影の幾数もの手が三味長老へと襲い掛かって。
 相手の動きを封じるように、且つ、周囲の鬼火をも相殺出来るように動きをみせれば。
『……くっ! 演奏を邪魔しようってのかい……っ!?』
 ふと影へと敵の意識が向いたことを見逃さず――蒼が撃ち込むのは、透明色な硝子製弾丸の中の蒼い液状火薬『Syan-bullet』。
 そして絶妙のタイミングで葎が放った衝撃波が、鬼火を三味長老へと打ち返す。
『な……ぐっ!?』
「どう? 自分の炎で焼かれるって! 自分でちゃんと美しく幕引きしてね」
 ……もう、夜も耽けたのだし、って。
 そう告げる葎の言葉に、蒼も笑んで頷く。
「……さて、宴もたけなわといった所か。ともすればこの公演も終いにしなくてはね?」
 月に叢雲花に風か――僕達猟兵が集ってしまったのだから、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷹司・かれん
桐江さん(f22316)と
※人格は花恋⇒花音に切り替え

温泉では花恋が少しはしゃいでしまったね
桐江君、色々悪戯されて大丈夫だったかい?

とはいえ、熱くなるのは桐江君の頬だけで十分だ
放火はご遠慮願おうか?

【メイド式格闘銃術】をお見せしよう
メイド姿のまま両手に二丁の短機関銃を持って近接格闘戦を挑むよ
桐江君の援護射撃を受けながら
スカートを翻して蹴り上げた隙に零距離で撃ち
攻撃を避けた動きのまま狙いを定めて撃つ

その最中、敵の鬼火の流れ弾が桐江君の方に向かいそうになるのを、ノールックで撃ち落として桐江君をフォロー
「大切な桐江君を守るのは当然のことさ」
そういって軽くウィンク
…ん?口説いているように見えたかい?


光満・桐江
かれんさん(f22762)と一緒に

温泉では色々な意味であつあつになっちゃいましたけど
流石にダイレクトな意味で燃えちゃうのは流石にいけませんから
退治していきましょうっ!

というわけで、こんな事もあろうかと用意した
出力調整で普通の水遊びからオブリビオン退治まで幅広く対応できるウォーターガン「the・激清流」を手に、かれんさんと一緒に射撃戦です!

敵の鬼火を消火しながら、かれんさんと連携して攻撃!

でもその中でかれんさんとの連携や援護を意識しすぎて
自分の身の守りがおろそかに!?
そこを狙われてしまうけど、間一髪かれんさんに助けてもらい…

って、そこでこくはく!?
突然の急展開にハートが燃えちゃうことに!?



 ふたりで目一杯楽しんだ、ドキドキの温泉。
 ちょっぴり顔が赤いのは、湯あたりかそれとも……?
 光満・桐江(生徒会の魔女・f22316)は、はぁっとひとつ息を吐きながらも、ぱたぱた何だかまだ熱い顔を手で煽ぐも。
「温泉では花恋が少しはしゃいでしまったね。桐江君、色々悪戯されて大丈夫だったかい?」
 鷹司・かれん(メイド探偵が見ています・f22762)――花恋から切り替わった、クールビューティな花音にそう訊ねられて。
「温泉では色々な意味であつあつになっちゃいましたけど、流石にダイレクトな意味で燃えちゃうのは流石にいけませんから。退治していきましょうっ!」
「とはいえ、熱くなるのは桐江君の頬だけで十分だ。放火はご遠慮願おうか?」
 そう見つめられればまた顔が赤くなってしまう気がする桐江だけれど。
 その隙に敵に、鬼火で燃やされるわけにはいかないから。
 気合いを入れて、ふたりでオブリビオンを退治します!
 というわけで、こんな事もあろうかと。
「かれんさんと一緒に射撃戦です!」
 桐江が用意し手にするのは、出力調整で普通の水遊びからオブリビオン退治まで幅広く対応できるウォーターガン「the・激清流」!
 そして花音なかれんも、三味長老に颯爽と披露する――『メイド式格闘銃術』をお見せしよう、と。
 メイド姿のまま両手に二丁の短機関銃を持って、敵へと接敵して挑むは格闘戦。
 ぴゅぴゅーと桐江のウォーターガンの援護射撃を受けながら、スカートをひらり翻して。
『……ぐ、うっ!』
 すかさず蹴り上げた隙に、零距離で撃ち抜く。
 そしてべべんと鬼火を放たれれるも、咄嗟に避けたその動きのまま狙いを定めて、再び狙い撃って。
 燃え盛る周囲の鬼火を消火しながら、桐江はかれんと連携して攻撃!
 でも……かれんと一緒に連携すれば、桐江はふと援護を意識しすぎちゃて。
『ほら、余所見してたら燃やしちゃうよ!』
「あ……!」
 自分の身の守りがおろそかに!?
 そこを狙われてしまって、敵の鬼火の流れ弾が桐江の方へと向かいそうになるけれど。
「……!」
 間一髪、ノールックで鬼火を撃ち落としたかれんに助けてもらう桐江。
 そして、花音なかれんはぱちりと軽くウィンク。
「大切な桐江君を守るのは当然のことさ」
「って、そこでこくはく!?」
 鬼火にはあたらなかったけれど、突然の急展開に桐江のハートが燃えちゃうことに!?
 そんな、耳まで真っ赤にしてあわあわしている桐江に。
 花音なかれんは小さく首を傾けてみせる。
 ……ん? 口説いているように見えたかい? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴久名・紡
芸事というのは
心の成長が作品に出るのだそうだ

噂程の腕前であるなら
きっと、色々な事を経験したのだろう

それが色恋なのか生き死になのか
何なのかは判らないけれど

それでも、世界の崩壊を望むのはどうかと思う……
今はまだ『そう』でなくとも
幽世蝶の存在がそうなると示しているなら止める

煉獄焔戯使用
葬焔を鞭に、禮火は小柄のまま使用
撥を持つ手を鞭で打ち
三味線そのものに禮火と同じく
小柄の形に変化させた神力を放つ
神力と禮火には氷結の属性攻撃を乗せておく
弦が凍ってしまえば大音量も出せないだろう?
……部位破壊で壊してしまおうか
少し、心が痛むがやむを得ない

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避が間に合わない場合はオーラ防御で防ぐ



 幽世の極楽で、沢山の妖怪を魅了するような旋律。
 骸魂の影響でそれは少々熾烈すぎるところはあるかもしれないが。
(「芸事というのは、心の成長が作品に出るのだそうだ」)
 鈴久名・紡(境界・f27962)は、ふと思う。
 話を聞いた妖怪達が口々に、彼女のかき鳴らす三味線は素晴らしいと、そう言うのだから。
 ……噂程の腕前であるならきっと、色々な事を経験したのだろう、と。
 その経験というのが、色恋なのか生き死になのか、はたまた別の何かなのか。
 込められた感情が、思慕なのか怒りなのか嘆きなのか、それとも哀しみか喜びか。
 それは、奏でられるその音色だけでは判らないけれど。
 彼女は妖怪・三味長老、長い年月を生き、きっと沢山の経験をしてきたのだろう。
 ……だが、だからといって。
『アタシの旋律で、何もかも燃えちまえばいいさ!』
「それでも、世界の崩壊を望むのはどうかと思う……」
 紡はそうふるりと首を横に小さく振る。
 三味長老が三味線かき鳴らし生み出した鬼火の間を、ひぃらりひらりと舞う遊ぶその様を見つめながら。
 ……今はまだ『そう』でなくとも、幽世蝶の存在がそうなると示しているなら止める。
 雨空の森を抜け、賑やかな湯屋へと導いてくれた蝶々が、教えてくれるのならば。
 ――欠片も残さず、灰燼に帰せ。
 その手に握った、黄泉路を示す熱のない焔を宿した葬焔を鞭に、白銀の禮火は小柄のままに。
『……!』
 しなる漆黒の鞭でバチ持つその手を打ち、三味線そのものに禮火と同じ加護を乗せて放つ。
「弦が凍ってしまえば大音量も出せないだろう?」
 何物も凍てつかせる氷の加護を招いた、神力と神器をもって。
『くっ、アタシの演奏の邪魔なんて、させやしないよ……!』
 そんな氷ついた三味線を、三味長老は鬼火で何とか溶かそうとするも。
 それを悠長に許すことなど、紡がさせるわけはなく。
 べべん! と不完全な状態から苦し紛れに生み出された空気震わす演奏の衝撃を見切り躱し、残像を駆使し翻弄しながらも。
「……部位破壊で壊してしまおうか」
 狙うは、まだ氷を溶かしきれていない彼女の三味線。
 きっとそれは彼女にとって、商売道具でもあり。
 奏者にとして共に在る相棒でもあるだろうが。
 幽世蝶たちが、竜神である彼が在るこの世界の滅亡を教えてくれるのならば。
 猟兵として、紡もやるべきことを成すべく動く。
 ……少し、心が痛むがやむを得ない、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

飛砂・煉月
【黒緋】

イイ感じに酔って、イイ気分だったのにさー
不協和音の三味線は耳障りで折角の夢心地が台無し
熱いのはサウナくらいが丁度イイやって
彩灯、隣のキミと競った先刻を思い出す

瞬時に思考する最適解
切り替え先は狼の貌
聞こえすぎるのも不便だけど
こんなの塞ぐ迄も無いって彩灯
へーき、へーき
地を踏み締めダッシュからのハクを槍にし投げて竜牙葬送
真っ直ぐな竜の咆哮を奏でてやろ

身体に響く痛み
慣れたオレには風呂より温いかな
彩灯、平気?
…って聞く迄もないや
あっは、キミが咲かせる赫はとっても綺麗だね

ん、不協和音は塗り替えて終い
――さぁ、ハク
もう一回と葬送曲にアンコール
勿論だよ彩灯
緋色が重なれば無敵の心地
キミとの奏でに酔痴れて


壱織・彩灯
【黒緋】

折角湯上りよい気分じゃったが…
おやまあ
耳障りな三味線のおと
もっと艶やかに、
美しく、
奏でて欲しいな?
まあ、無理じゃろうけど
確かに、レンとのさうなとやらの方が
余程熱く愉しい闘いであったな
頼もしい狼と竜の協奏曲に酔い痴れるとも

掻き鳴らすおとを
弾き返すように紅影を盾に
劈く奏でに眉顰め
レン、耳を塞げよ
微温湯とて己を蝕んでやる必要は無い

さあて、湯屋だけに俺も一肌脱ぐか
爺の冗句だが
友を傷つけられるのは赦せんし
当たれば棘が御前の凡てを
絡め取り赫い花を咲かせてやろう

不協和音の演奏会は終いじゃ
レン、ハク、俺と共に奏でてくれるか
緋色が重なれば鼓舞されるように
噫、お前と一緒なら何でも出来てしまいそう



 ひらり、幽世蝶の群れが舞い遊ぶ大広間。
 そこで至福な湯上りの一服……とは、いかずに。
「折角湯上りよい気分じゃったが……」
 壱織・彩灯(無燭メランコリィ・f28003)は聴こえてきた音に、赫き双眸を細め零す。
 ……おやまあ、耳障りな三味線のおと、と。
「イイ感じに酔って、イイ気分だったのにさー」
 飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)も、奏でられる三味線の音に思わず顔を顰める。
 折角の夢心地が台無しだから。激しくかき鳴らされる不協和音の三味線がとても耳障りで。
『さァ、アタシの熱く燃ゆるような演奏を聴いて、燃えるかい!』 
「もっと艶やかに、美しく、奏でて欲しいな?」
 小さくふるりと、より艶やかさ増した湯上りの夜色の髪を揺らし言った彩灯に。
 煉月もハクと共にこくりと頷きながらも思い出す。隣のキミと競った、愉快な先刻の事を。
「熱いのはサウナくらいが丁度イイや」
「確かに、レンとのさうなとやらの方が余程熱く愉しい闘いであったな」
 双方譲らぬ熱いサウナでの熱き戦いは面白可笑しいものであったけれど。
 ただ無闇に世界を燃やすような熱さは、愉快でも美しくもないから。
 彩灯が酔い痴れるは、無粋な三味線の音色などではなく……頼もしい狼と竜の協奏曲。
 そして煉月が思考し最適解を瞬時に導き出せば、無邪気なわんこの如き人懐こさは鳴りを潜め、狼の貌に。
 刹那、空気を震わすのは、大音量の三味線のおと。
 けれどそれを弾き返すかの如く、紅影を盾にしながら。
「レン、耳を塞げよ」
 彩灯は煉月へとそう告げる。聞こえすぎる、彼を思って。
 そんな向けられる声に、煉月は笑ってみせる。
「こんなの塞ぐ迄も無いって彩灯」
 へーき、へーき、って。
 先程の自分達の楽しい熱き戦いに比べれば、三味長老が成す鬼火など微温湯のようなものとはいえ。
 ……己を蝕んでやる必要は無い。
 そう彩灯が紡げば、地を踏み締め刹那駆ける煉月は投じる。何時も共に在る、白銀の竜を。
 ――ほら、相棒。奏でてやんなよ、って。
 竜槍と化した、相棒を。
 そして煉月の声に応えるように、瞬間大広間に響くは、真っ直ぐな竜の咆哮と劈く葬送曲。
 浴びる三味線の衝撃は、身体に響く痛みとなるけれど。
「慣れたオレには風呂より温いかな」
 やはり煉月にとってもそれは、生ぬるい微温湯にすぎない。
 とはいえ、彩灯はその生ぬるさだって赦しはしない。
「さあて、湯屋だけに俺も一肌脱ぐか」
 爺の冗句だが、なんてお道化てみせながらも……友を傷つけられるのは赦せんし、と。
 振るわれし鬼棍棒の鋭利な棘が咲かせるは、敵の凡てを絡め取る赫き花。
『……!』
「彩灯、平気? ……って聞く迄もないや」
 煉月は幽世蝶と戯れるかの如く振るわれる紅影を見遣り、咲いたそのいろに笑う。
 ……あっは、キミが咲かせる赫はとっても綺麗だね、って。
 そしてひらり、白に舞う鶴の羽ばたきかの如く揃いの浴衣をはためかせながら。
「不協和音の演奏会は終いじゃ。レン、ハク、俺と共に奏でてくれるか」
「勿論だよ彩灯。ん、不協和音は塗り替えて終い」
 ――さぁ、ハク。もう一回、って。
 煉月がハクに促すは、葬送曲のアンコール。
 刹那、それは緋と白の協奏曲となって。友のいろが重なれば、無敵の心地。
 そんなキミとの奏でに酔痴れて、鼓舞されるように。
 ふたりは不快な不協和音を緋と白で塗り替えてゆく。
 そしてひいらり幽世蝶舞う中、友との奏を重ねてゆきながら、彩灯が浮かべるは艶やかな笑み。
 ――噫、お前と一緒なら何でも出来てしまいそう、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
千鶴くん(f00683)と

折角ほかほかなのに戦わなきゃ駄目ー?
三味線の音を聞いてると
なぜか昔を思い出すような
なんにもしたくなくて
なんにも見たくなくて
ただ眠ってしまいたいって思ってた頃の

そう、死にたいなぁなんて
いつも思ってることだけど

ねぇ
千鶴くんみたいな綺麗な子と死ねるなら
悪くないと思うな
どんな風に死にたい?
お顔は傷付けない方が良いなぁ
苦しまず痛くない方がいい?
望みの死に方で殺してあげるよ
ああ、最期に罰を受けたいんだね

でも、と続いた言葉に眼を丸く
…へんな子だなぁ
自分のことよりも私が死ぬのが厭なの?
それが君の願いなら
聞いてあげるしかないじゃない

生きてて良かったと思う?なんて
千鶴くんにそっと聞くだけ


宵鍔・千鶴
ロキ(f25190)と

身体もぽかぽか温まった頃合いなのに
折角の夢心地から不協和音の調べ

…なんだろう、厭なおと
爪弾かれる度落ち着かない
逃げ出したい
消えてしまいたい
自分が存在する程、悪いものになる

ロキは、死んでも良いの?

とうに命なんて投げ出したい些末なもの
ロキが、一緒なら怖くないかなぁなんて
きみが殺してくれるなら
痛くても苦しくても良い
罪を刻んでしねるから

噫、でも
やっぱりきみを失くすのは嫌だな
綺麗な琥珀色へ手を伸ばし
あえかに微笑んで
それにね、ロキが死にたいと望んでも
受け入れてあげられない
我儘な俺を赦して
やさしいかみさま

雑音を掻き消すみたいに
桜で覆い隠してしまおう

…どうだろう
其れはこれから見つけたい



 化け猫さん柄の浴衣を着て、妖怪をダメにするクッションにぽふり身を委ねれば。
 身体もぽかぽか、夢心地……であったのに。
「折角ほかほかなのに戦わなきゃ駄目ー?」
 ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)は、子守歌には全くそぐわない音を奏でる女を見遣り、そう口にする。
 幽世蝶が周囲を舞い飛ぶ三味長老、世界を滅亡へと導く輩を。
 宵鍔・千鶴(nyx・f00683)も、響く協和音の調べを耳にしながら呟きを落とす。
 ……なんだろう、厭なおと、って。
 三味線が激しく爪弾かれる度に落ち着かない心。
 ――逃げ出したい。
 ――消えてしまいたい。
(「自分が存在する程、悪いものになる」)
 そしてロキは、心に生じるこの感情を知っている。
 なぜか昔を思い出すような……ただ眠ってしまいたいって思ってたあの頃の。
 なんにもしたくなくて、なんにも見たくなくて。
 ――そう、死にたいなぁなんて。
 それは、いつも思っていることなのだけれど。
 ロキはふと隣にいる千鶴に、ねぇ、とふいに声を掛けて。
 蜜色の瞳をやっぱりいつも通り何処か悪戯っぽく細め告げる。
「千鶴くんみたいな綺麗な子と死ねるなら、悪くないと思うな」
「ロキは、死んでも良いの?」
 そう訊ねられ、ロキはわらって返す。
「どんな風に死にたい?」
 ……お顔は傷付けない方が良いなぁ。
「苦しまず痛くない方がいい?」
 ……望みの死に方で殺してあげるよ、って。
 そんな彼の声に、千鶴は微か首を傾けつつもこたえる。
「ロキが、一緒なら怖くないかなぁなんて」
 命なんて、とうに投げ出したい些末なものでしかなくて。
 だからむしろ、嬉しいかもしれないなんて思う。
「きみが殺してくれるなら、痛くても苦しくても良い」
 ――罪を刻んでしねるから、って。
「ああ、最期に罰を受けたいんだね」
 でも、そう自分を見つめるかみさまに、千鶴は視線を返しながらも零す……噫、でもと。
「やっぱりきみを失くすのは嫌だな」
 あえかに微笑んで伸ばしたその手の行き先は、綺麗な琥珀色。
 自分が、痛みや苦しみという罰を受けながら死ぬことは、密かに心に抱くものではあるのだけれど。
 千鶴は隣に在る彼に、こう告げる。
「それにね、ロキが死にたいと望んでも、受け入れてあげられない」
 ……我儘な俺を赦して、やさしいかみさま、って。
 そんな千鶴の言葉に、ロキは一瞬、眼をまん丸くして。
「……へんな子だなぁ。自分のことよりも私が死ぬのが厭なの?」
 そう大きく首をかしげてみせるけれど。
 かみさまはくすりと笑みながらも、友へと告げる。
 ――それが君の願いなら、聞いてあげるしかないじゃない、って。
 そんな願いを聞いてくれる、やさしいかみさまと共に。
 千鶴は激しく奏でられる雑音を掻き消すべく、月華の閃きを咲かせる。
 蝶々と一緒にはらりひらりと舞い遊ぶ桜の花弁で、覆い隠してしまおう、と。
 それからロキは、まるで内緒話するみたいに。
 ――生きてて良かったと思う? なんて。
 そっと、千鶴だけに訊いてみれば。
「……どうだろう」
 そう呟き落とした後、彼へと千鶴は返す――其れはこれから見つけたい、って。
 それに、揃いの化け猫浴衣を着て過ごすひとときは、楽しいから。
 一緒に死ぬのも良いけれど……一緒に生きるのも良いかもしれない、なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
【廻】

幽世では割とよくある──チオリ?

耳障りな音が
生きる喜び根こそぎ奪っていく
されど
私に死はない
死にたいとも思わない
終など存在しない

一度死んだからもう十分だ
もうあの子を置いていく訳にはいかない

チオリ
何を言っている?
過去と今が混じっているのか

辛かったね
苦しかったね

其れが厄ならば斬ってあげようか
過去と今を絶って
そなたがそなたとして生きられるように
くるしみから救う

其れをそなたは望まないだろう?

『あの子』も
そなたが生きることを望んでいるのではないだろうか
耳障りな音は厄の果てに沈め
全て斬ってしまおう

チオリも一緒に帰るんだよ
あの子が、哀しむからね
桜が迎えてくれる

そなたはいきているよ
意味は、己で定めるものだ


橙樹・千織
【廻】

演奏で物が燃える…
普通ではない気がするのですが
カクリヨの方々は肝が据わりすぎでは?

奏でられる旋律が気味悪く響いている気がする
何かが
削がれていくような

……なぜ、私は…
ぼうっと鬼火に魅入り零れる言の葉

いきているのかしら

だって
そうでしょう?
あの子との約束を破り
一人置いて逝って
のうのうと

記憶のことを言えば気が触れたかと言われ
獣性の片鱗が見えれば化け物呼ばわり…

ええ
絶つことは望まない

あの子が私の生を
本当に望むかしら

あぁ、でも
カムイさん、貴方は帰さなきゃ
桜の館に
彼が待っているもの

振るう刃は己を省みず
傷が付こうと
身を焼こうと関係無い

貴方さえ
生きていればいい

私はいきてる
…意味
みなさんの幸せを
護りたい……



 力強くバチが振り下ろされ、激しい音色が大広間に響けば。
 生み出されるのは、全てを燃やし尽くさんとするほどの鬼火。
 幽世蝶が舞う中、放たれる鬼火は縦横無尽に飛び交って、危険極まりないけれど。
「演奏で物が燃える……普通ではない気がするのですが、カクリヨの方々は肝が据わりすぎでは?」
 それでも気付かず、演奏を楽しんでいた幽世の妖怪達に、思わずそうツッコまずにはいられない橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)。
 そんな千織の呟きに、朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)は朱砂の彩が咲く桜の龍瞳をふと向けて。
「幽世では割とよくある――チオリ?」
 隣に在る彼女の様子の変化に気付いて、その名を呼ぶけれど。
(「奏でられる旋律が気味悪く響いている気がする」)
 ……何かが、削がれていくような。
 三味長老が掻き鳴らす終演の旋律を耳にするたび、心の中で渦巻く大きな揺らめき。
 カムイもその耳障りな音に、生きる喜びを根こそぎ奪われるような感覚に陥るけれど。
 ……でも。
「されど、私に死はない。死にたいとも思わない」
 ――終など存在しない。
 そうはっきりと口にする。
 一度死んだからもう十分だ。
 だって――もうあの子を置いていく訳にはいかないから。
 そんな響き渡る終演の呪縛を払い除けるカムイだけれど。
「……なぜ、私は……」
 ぼうっと鬼火に魅入る千織から、零れ落ちる言の葉。
 なぜ、私は……。
「いきているのかしら」
 それから自分へと視線向けるカムイを見上げ、千織は続ける。
「だって、そうでしょう? あの子との約束を破り、一人置いて逝って……のうのうと」
「チオリ、何を言っている?」
 そう視点の定まらない彼女の言葉に、カムイは首を傾げながらも。
 ふと思い返すは、雨の中で視た光景。
「過去と今が混じっているのか」
「記憶のことを言えば気が触れたかと言われ、獣性の片鱗が見えれば化け物呼ばわり……」
 ぽつりぽつりと声落とす千織に、カムイはふとその手を伸ばして。
 よしよしと優しく撫でてあげる――辛かったね、苦しかったね、って。
 そして……スラリと。
「其れが厄ならば斬ってあげようか。過去と今を絶って、そなたがそなたとして生きられるように。くるしみから救う」
 朱砂の太刀を抜いてみせるけれど。
 でもカムイは分かっているから。だから、千織に敢えて問う。
 ――其れをそなたは望まないだろう? と。
「ええ。絶つことは望まない」
 その言葉に、こくりと千織は頷いてから。
 橙のいろを帯びる瞳を伏せ、紡ぐ。
 ――あの子が私の生を本当に望むかしら、って。
「『あの子』も、そなたが生きることを望んでいるのではないだろうか」
 カムイは千織へと柔く微笑みを咲かせてから。
『そろそろ終わりにしようかい!』
 抜き放った桜龍牙の神刀を振るう。
 千織の過去と今でなく……耳障りな音を厄の果てに沈めて。
 全て斬ってしまおう、と。
 千織はそんな彼を見て、ふるふると横に首を振り紡ぐ。
「あぁ、でも。カムイさん、貴方は帰さなきゃ。桜の館に、彼が待っているもの」
 そして振るう彼女の刃は己を省みぬもので。
 傷が付こうと、身を焼こうと……関係無い、と。
 けれどカムイは、そんな千織へと優しく告げる。
「チオリも一緒に帰るんだよ。あの子が、哀しむからね」
 ……桜が迎えてくれる、って。
 貴方さえ生きていればいい、そう紡ぐ千織に。
「私はいきてる……意味、みなさんの幸せを護りたい……」
 そしてそう耳にした声に、こくりとカムイは頷いて。
 迷えるその心を導かんと、彼女へと教えてあげる。
「そなたはいきているよ」
 ――意味は、己で定めるものだ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫

ふふー、いいお湯だったね、櫻!
僕の尾鰭もお肌もぷりもちさ!
櫻のお肌もつるつる!

ご機嫌に咲く桜に僕の笑顔も満開
君が笑ってると僕は幸せ

綺麗な演奏だね
ヨルもご機嫌に踊ってるけど──僕の愛する櫻を燃やさせる訳にはいかないんだ

音楽は傷つけるためにあるのではないと─僕が言うのはおかしいかな?

桜が萎びてる!
優しく抱いて、よしよしと撫でる
君の神様が何時もそうするように
僕も君を愛しているから

生きていていいんだ
櫻宵
生きて、咲いていておくれ
僕に世界を教えてくれて、愛をくれたいとしいひと
何度気力を失ったって
ちゃんと咲けるよう暖める

歌う、「恋の歌」

君の音ではなく
僕の歌でさ!

さくらさくら
咲き誇れ
君は僕の、愛である


誘名・櫻宵
🌸櫻沫

いいお湯だったわね、リル!
艶々の尾鰭にぴかぴかのお肌
まるで真珠の人魚だわ!

嬉しいことを言ってくれる
あなたは私の、愛なのよ
愛する私の人魚……王子?

あらほんと
綺麗な音楽だけれど
どうも粗くて好きではないわ
美しくやさしい愛をうたう
リルの歌がいい

─私はあなたの横で生きてよいのかしら
光の白に穢れた血色を添えて

こんな呪に振り回されて
あなたをきっと、傷つける
師匠のようにあなたも
ねぇ
私は生きていていいの
リル、

触れる冷たい手が暖かくて心地いい
潰えかけた気力が咲いていく
生きていたい

リル、あなたは私の愛
もっと歌って頂戴
世界を揺るがす愛のうたを

私は、咲かせてあげる
水槽の中のあなたがずっとみたがっていた美しい桜を



 沢山の湯を堪能し楽しく巡った後は、ほかほか身体もあたたまって。
「ふふー、いいお湯だったね、櫻! 僕の尾鰭もお肌もぷりもちさ!」
 リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)の月光ヴェールの尾鰭も真白なお肌も、ぷりぷりのもっちもち。
 何てったって、大胆にぬるぬる真っ黒な美肌の風呂にだって、飛び込んだのだから。
 そんなリルに、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)もはしゃいだように紡ぐ。
「いいお湯だったわね、リル! 艶々の尾鰭にぴかぴかのお肌、まるで真珠の人魚だわ!」
「櫻のお肌もつるつる!」
 そして勿論、櫻宵の美肌もより一層、つやつやのぷるぷる!
 それに、一緒にぴかぴか綺麗になったこともだけれど。
 何よりもリルは嬉しくて、笑顔も満開に咲いてしまう。
「君が笑ってると僕は幸せ」
 ご機嫌にほわりと咲く美しい桜に。
 そんなリルの言葉に、嬉しいことを言ってくれる……って。
 櫻宵は花霞の瞳をそっと細める。
「あなたは私の、愛なのよ」
 愛する私の人魚……王子? って。
 けれど、そんな王子が美しいのはその見目だけではない。
『アタシの演奏を聴きな! 熱く激しい旋律をね!』
 刹那、掻き鳴らされるのは、鬼火や衝撃放つ三味線の音色。
 リルはその音を耳にしながら、歌う様に紡ぐ。
「綺麗な演奏だね。ヨルもご機嫌に踊ってるけど――僕の愛する櫻を燃やさせる訳にはいかないんだ」
 ……音楽は傷つけるためにあるのではないと――僕が言うのはおかしいかな? なんて。
 そう口にするリルの傍で、キュキュッと浴衣姿なヨルも尻尾をふりふり、楽しそうだけれど。
「あらほんと。綺麗な音楽だけれど、どうも粗くて好きではないわ」
 だって、一等美しいことを櫻宵は知っているから。愛する人魚……王子の響かせる旋律が。
 透徹にして玲瓏たる銀細工の歌聲が、春蕩け硝子の音色が。
 だから――美しくやさしい愛をうたう、リルの歌がいい、と。
 けれど刹那、終演へと導かんとする三味線の音を耳にすれば。
 櫻宵はふいに、ぽろりと零れ落とす。
 ――私はあなたの横で生きてよいのかしら、って。
 光の白に穢れた血色を添えて。
 そんな彼の様子に、桜が萎びてる! って、リルは薄花桜の瞳を一瞬大きく見開くけれど。
「こんな呪に振り回されて。あなたをきっと、傷つける……師匠のようにあなたも」
 そうふるふると首を横に振る櫻宵を、ぎゅっと優しく抱いてあげて。
 よしよしと、頭を撫でてあげるリル。
「僕も君を愛しているから」
 ……君の神様が何時もそうするように、と。
 そんなリルを潤んだ瞳で見つめながら、櫻宵は彼に訊ねる。
「ねぇ、私は生きていていいの。リル、」
 そして、真っ直ぐに互いのいろを重ねながら。
 リルは愛しい人の名を呼び、そして告げる。
「生きていていいんだ、櫻宵。生きて、咲いていておくれ」
 僕に世界を教えてくれて、愛をくれたいとしいひとに。
「何度気力を失ったって、ちゃんと咲けるよう暖める」
 今度は、僕の熱をあげる、って。ぬくもりを分け合いっこ。
 だって、ちゃんと常春の桜を美しく咲かせて欲しいから。
 そんなリルが触れる冷たい手が、暖かくて心地良くて……それはまるで、春の訪れのようで。
 潰えかけた気力が花開いてゆくのを感じながら、自然と櫻宵の言の葉が零れ咲く……生きていたい、って。
 そしてリルは歌う。蕩ける程に甘く熱く、やきつくす蠱惑の歌声で――『恋の歌』を。
「君の音ではなく、僕の歌でさ!」
『……何、ぐっ!』
「リル、もっと歌って頂戴。世界を揺るがす愛のうたを」
 恋焦がれる想い歌う灼熱の炎の方が、この心に抱く愛の方がずっと。
 世界を滅ぼさんとする鬼火なんかよりも、もっと熱く燃え上がっているから。
 さくらさくら、咲き誇れ――愛し花を満開に咲かせるために、春を呼ぶ様に。
 ――リル、あなたは私の愛。
 ――櫻宵、君は僕の、愛である。
 そしてふたり、あたたかい春色を共に游いで。
 櫻宵は美しく満開に咲かせてあげる。
 ……水槽の中のあなたがずっとみたがっていた美しい桜を、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
敵と分かっていても、三味線の演奏には、興味ある
暫く聴いてみようかな

なるほど、確かに力強い音
蝶が舞う中での、燃えるような演奏…妖しい美しさで、迫力あるね
そうやって、この世界を燃やしてしまおう、って魂胆?
そうはさせないよ

害が出そうになったら、【迷星】で攻撃
『第六感・聞き耳・情報収集』辺りで、骸魂の気配を見極められれば…それのみ倒したい
何か、鬼火出てるけど…僕の炎とどっちが強いかな
手元を狙っての演奏妨害も
くろ丸も、隙を見て噛み付く等、援護宜しく

君の、体と心から出てくる音は…何だか嫌な音
滅びを願い、招くような音は…幾ら熱くても、心に響かないし、効かない
聴くに堪えない、ってやつだよ
紡がれた音が可哀想だ



 妖怪達に話を聞けば、その評判は上々で。
 演奏を聴くだけで燃えたとか、それで気付かないのはちょっとどうかなどと思うところがありつつも。
 それだけ、聞く者の心をとらえる音色だろうから。
(「敵と分かっていても、三味線の演奏には、興味ある」)
 ……暫く聴いてみようかな、って。
 青和・イチ(藍色夜灯・f05526)は幽世蝶を周囲に舞わせながらも旋律を奏で始めた三味長老の演奏に、耳を傾けてみる。
『熱く激しいアタシの演奏は、至高で最高の音さ!』
「なるほど、確かに力強い音」
 べべんっと振り下ろされるバチが弦を弾く様は、確かに情熱的であるが。
「蝶が舞う中での、燃えるような演奏……妖しい美しさで、迫力あるね」
 イチはこう、彼女へと続ける。
「そうやって、この世界を燃やしてしまおう、って魂胆?」
 ――そうはさせないよ、って。
 終演を奏でる演奏を聴けば、生きる力を失うと聞いているし。
「何か、鬼火出てるけど……僕の炎とどっちが強いかな」
 ……迷子の光。行き先は、あっち。
 被害が出るその前にー―炎対決。
 高熱の青色の炎『迷星』と三味長老の鬼火がぶつかり合い、相殺し合って。
 手元を狙っての演奏妨害も試みつつ、ちらりと目を遣れば。
『……! 演奏の邪魔を、するな!』
 視線があった主の意を察し、がぶりと噛みついて援護するくろ丸。
(「骸魂の気配を見極められれば……それのみ倒したい」)
 きっと、骸魂に呑まれる前の彼女は、見事な演奏を披露する三味線奏者であるのだろう。
 だけど骸魂に呑み込まれた今の演奏は、確かに美しいが熾烈すぎて。
「君の、体と心から出てくる音は……何だか嫌な音」
 ――滅びを願い、招くような音は……幾ら熱くても、心に響かないし、効かない。
 イチはくろ丸ともう一度視線合わせ、こくりと頷きあってから。
 共に連携をはかり、青き迷星を再度、三味長老を呑み込んだ骸魂へと見舞う。
 再び掻き鳴らされ響く旋律に、ふと顔を顰めながら。
「聴くに堪えない、ってやつだよ」
 ――紡がれた音が可哀想だ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、あの人がボヤ騒ぎの犯人さんですね。
あの三味線の演奏を聴くと燃やされてしまうそうです。
あれ?という事は三味線の音が聞こえないように別の大きな音を立てればって、雨音である必要はないですよ。
それにここは室内じゃないですか。
ユーベルコードにそんなことは関係ないって、そんなぁ。
ふええ、今度はずぶ濡れになってしまいました。
アヒルさん、電気風呂はもう結構ですよ。



 湯屋に足を運んでいる妖怪達は、大らかなのか鈍いのか、燃やされても尚気付いていなかったが。
 明らかに幽世蝶たちがひらひら周囲を待っている三味線奏者の女を見遣りながら。
「ふええ、あの人がボヤ騒ぎの犯人さんですね」
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、三味線携えた彼女・三味長老へとおどおど視線を向けつつも続ける。
「あの三味線の演奏を聴くと燃やされてしまうそうです」
 現に幽世蝶だけでなく、三味長老の周囲にはいかにも熱そうな鬼火も舞っている。
 そんな燃え盛る炎を生み出すという敵の様子を、そろりと大きな帽子を押さえつつも窺うフリルだが。
 ふと、あることに気付く。
「あれ? という事は三味線の音が聞こえないように別の大きな音を立てれば……」
 ということで、フリルが発動するのは。
 ――雨、止みませんね。って、ふえええ、雨、強すぎませんか。
 そう……『突然の大雨と雨宿りが齎す恋?物語』!?
「って、雨音である必要はないですよ。それにここは室内じゃないですか」
 フリルはそうアヒルさんを見遣るけれど。
「ユーベルコードにそんなことは関係ないって、そんなぁ」
 それに、折角お風呂に入ったのだけれど。
「ふええ、今度はずぶ濡れになってしまいました」
 またお風呂に入らなければいけなくなりました……!?
 そんな大雨の中、フリルはこう念の為言っておく。
 ――アヒルさん、電気風呂はもう結構ですよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀
この温泉郷は良い所ですね自分も移住したく成ってきました。
移住できなくても、もう少し滞在していきたいです。

三味線の演奏が始まったみたいですね。
でもソファーから離れたくない。もっと休みたい。英気養っても、やる気が出る謂れはないですし。いっそ限界まで英気を蓄えたいです。(ごろごろ)

【戦闘】UCの牡牛に自分の憑依精霊を憑かせて、今ある全ての英気で頑張って戦ってきてもらいます。オトモにも付いて行ってもらって、牡牛に協力して戦ってきてください。
自分はソファーの寝心地を調整しつつ実用性の検証をしてます。(うとうと)
きっと大丈夫、どんな攻撃が来ても協力し合えば突破できます!頑張ってきてください!
まかせました。



 勿論、猟兵の仕事のためにここに赴いているのだけれど。
 何気に狐耳と尻尾をぴこぴこゆらりと揺らしながら。
「この温泉郷は良い所ですね自分も移住したく成ってきました」
 流石は、幽世の極楽と言われているだけあるこの四季の湯屋。
 天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)も、移住したくなるほど快適で。
「移住できなくても、もう少し滞在していきたいです」
 またゆっくりお風呂に入ったり、美味しいものを食べたりしたいとそう強く思うのだけれど。
 ふと顔をあげれば――ひらひらと舞う幽世蝶たちを周囲に侍らせながら、やって来たのは三味線奏者の女。
(「三味線の演奏が始まったみたいですね」)
 ええ、これは猟兵の仕事。
 掻き鳴らされはじめた音色を耳にしながらも。
 ――でもソファーから離れたくない。もっと休みたい。
「英気養っても、やる気が出る謂れはないですし。いっそ限界まで英気を蓄えたいです」
 妖怪をダメにするクッションに、オトモと一緒にダメになっちゃいました!?
 けれど、そうも一応いってられないので。
 ――力こそパワー、推進力の一点集突破です!
 発動するのは、『牡牛座落花彗星』。
 牡牛に己の憑依精霊を憑かせ、ちょっと名残惜しそうなオトモにも付いて行って貰って。今ある全ての英気で頑張って戦ってきてもらうことに。
『く、演奏の邪魔をする気か!?』
 角が良く刺さる牡牛の形をした狐火の突進に、三味長老が堪らず声を上げる最中。
 雲雀はソファーの寝心地を調整しつつ、うとうと。すやぁっとその実用性の検証を。
「きっと大丈夫、どんな攻撃が来ても協力し合えば突破できます! 頑張ってきてください!」
 一応そう鼓舞しつつ、ぽふりとソファーに埋もれながらも。
 雲雀は牡牛さんへと紡ぐ――まかせました、と。
 完全に丸投げ……いえ、これは牡牛への信頼なのです、ええ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佳月・清宵
【奇縁】
どんだけ良い女でも火遊び好きたァ困るな
ああ伊織、てめぇもうっかり大火傷なんざ晒すなよ?
ま、折角の貸切宴会に名手の演奏だ
ひとつ舞でも添えて、華々しく盛り上げてやろうじゃねぇか

頷く代わり、菊里と同時に盛大にUC舞わせ意趣返し
炎の大舞台を誂えてしんぜよう
此方は攻担い、炎に呪詛込め自由を奪う様に敵を囲ってく
同時に早業で手裏剣放ち、此方は伊織と共謀
手元狙って演奏阻害や武器たる三味線落としを図る
アンタの演奏も悪かないが、きゃんきゃんとよく鳴く肴も乙なもんでなァ――其をつつきながらの酒ってお楽しみが待ってんだ
ありゃ生き返る一杯だぜ?(気力失うどころか一層笑い)

さぁて、そろそろ宴も酣だ
仕舞いにしようか


千家・菊里
【奇縁】
どうせなら美味しい焼き物でも振る舞って頂けると良かったんですけねぇ――狐の丸焼きになるのは不味いですね、ええ
火遊びが過ぎれば大火傷するものと、教えて差し上げましょうか
ふふ、では一興に一差
最期の大舞台、僭越ながら華を添えて差し上げましょう

――尤も、舞うのは俺達ではありませんが
清宵と同時にUC舞わせ炎で敵を囲う様に
担うは防、炎に結界術仕込み鬼火や演奏の効果を跳ね除け浄化
隙あれば霊符も花吹雪の如くひらりと舞わせ、演奏の手を止める麻痺を齎しに
ええ――この後はまた祝勝二次会の御馳走たいむという生き甲斐が待っていますから、悄気ている場合ではありませんね

ささっと鎮めて、平和な宴を今一度――ふふふ


呉羽・伊織
【奇縁】
漸く御目見えか
噂通りの別嬪サンだが、焦がれるどころか焦がされて灰になっちゃ笑えな――って誰が火傷なんてするか!
あとアンタらが火遊び云々とか言う??
ああ、もう――

此方は此方で口三味線の名手揃いで参るっての!
華々しい炎を目眩ましに、早業で風切投げたり烏羽で肉薄したりと攻撃
狙いは手元や足元
三味線の武器落としや、演奏ままならぬように体勢崩しを試みる
序でに呪詛も込めて呪縛のオマケも添えとこう
不規則にフェイントや残像も混ぜ、敵の炎に囚われないよう撹乱
…あ~、こんなトコにも敵が!(喧しい狐に手が滑った、と見せ掛け敵を叩き)
どんだけ飽き足りないんだよ、俺はもう色々腹一杯だっての!

さぁ、お開きだお開き!



 幽世の極楽にやってくる妖怪達を、魅了して止まない三味線奏者。
 そして大広間に姿を現したその女――三味長老の周囲には、ひらりひらりと舞う幽世蝶たちが。
「漸く御目見えか。噂通りの別嬪サンだが、焦がれるどころか焦がされて灰になっちゃ笑えな――」
「ああ伊織、てめぇもうっかり大火傷なんざ晒すなよ?」
「――って誰が火傷なんてするか!」
 言葉を紡ぎ終わる前に、そうすかさず割って入って来た佳月・清宵(霞・f14015)に。
 呉羽・伊織(翳・f03578)はいつもの如く、声を上げるけれど。
「どんだけ良い女でも火遊び好きたァ困るな」
「どうせなら美味しい焼き物でも振る舞って頂けると良かったんですけねぇ――狐の丸焼きになるのは不味いですね、ええ」
 伊織の抗議の声は、案の定スルーしつつ。
 清宵に続いたのは、もうひとりの狐――千家・菊里(隠逸花・f02716)。
 狐の丸焼きは御免だし、美味しい焼き物を振舞ってくれないのならばと、菊里は続ける。
「火遊びが過ぎれば大火傷するものと、教えて差し上げましょうか」
 ……いえ、確かに、火傷とか火遊びは危険だけど。
 伊織はやはり、狐ふたりにツッコまずにはいられない。
「アンタらが火遊び云々とか言う??」
「ま、折角の貸切宴会に名手の演奏だ。ひとつ舞でも添えて、華々しく盛り上げてやろうじゃねぇか」
「ふふ、では一興に一差。最期の大舞台、僭越ながら華を添えて差し上げましょう――尤も、舞うのは俺達ではありませんが」
 またもや案の定、何事もないかのようにさらっと流されて。
 そんなふたりに……ああ、もう――なんて、遠い目をする伊織だけれど。
「此方は此方で口三味線の名手揃いで参るっての!」
 刹那、清宵と菊里が戦場に生み出したのは、盛大に燃え上がり舞わせる狐火。
 ……炎の大舞台を誂えてしんぜよう。
『……くっ!』
 呪詛込め自由を奪う様に敵を囲っては攻めの動きをみせる清宵の狐火が、三味長老へと差し向けられれば。
 炎に結界術仕込み、鬼火や演奏の効果を跳ね除け浄化する菊里の狐火が担うは防。
 狐火と共に花吹雪の如くひらりと霊符も舞わせ、演奏の手を止めるべく痺れる花弁を遊ばせて。
 そんな華々しい炎を目眩ましに、素早く伊織が投擲するは風切。
 烏羽を握れば肉薄し振るって――狙いはやはり、手元や足元。
 三味線を狙い、演奏がままならぬように体勢崩しを試みて。添えるは呪詛込めた呪縛のオマケ付き。
 敵を攪乱するべく、不規則にフェイントや残像も混ぜ、立ち回りながらも。
 炎は炎でも、鬼火には囚われぬよう狐火に紛れる。
 清宵も此方は伊織と共謀し、同時に早業で手裏剣放って。
 演奏阻害や三味線落としを図りつつも、気力失うどころか一層笑いながらも紡ぐ。
「アンタの演奏も悪かないが、きゃんきゃんとよく鳴く肴も乙なもんでなァ――其をつつきながらの酒ってお楽しみが待ってんだ」
 ……ありゃ生き返る一杯だぜ? なんて。
 誰かさんをちらりと、愉快気に見ながら。
 そんな楽し気な声に、伊織は溜息をつきつつも。
「……あ~、こんなトコにも敵が!」
『!? な……くっ!』
 喧しい狐に手が滑った……と見せ掛けて、骸魂へと攻撃を叩き込む。
 そしてひとりツッコめば、もうひとりの狐もにこにこ口を開く。
「ええ――この後はまた祝勝二次会の御馳走たいむという生き甲斐が待っていますから、悄気ている場合ではありませんね」
「どんだけ飽き足りないんだよ、俺はもう色々腹一杯だっての!」
 そんなふたりの狐に、伊織は色んな意味で満腹すぎるのだけれど。
「さぁて、そろそろ宴も酣だ。仕舞いにしようか」
「ささっと鎮めて、平和な宴を今一度――ふふふ」
 やはり自分の言葉を聞いちゃいない狐たちと連携し敵を叩きつつ。
 訴える様に言い放つ――さぁ、お開きだお開き! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
いくら見事な三味線の演奏でも、聞く人まで燃やすなんて怪しいわ
今までは死者を出さずに済んでも、今後はどうなるか分からない
行きましょう、ヴォルフ。この素敵な場所を守るために

ああ、やはりあの演奏は滅びの音
生きる気力まで奪う禍々しき響

……ヴォルフ!
またわたくしを庇って……ごめんなさい……

歌うは【涙の日】
三味長老の奏でる音が生きる気力を奪うなら
わたくしの歌は生きる希望を与う歌

善き人々に祝福を
悲しき心に慰めを
そして……愛する人に仇成す者には神罰を

大切な人の命のために
滅びの音色には決して負けはしない
この声に全身全霊の祈りと優しさを込めて……!

ヴォルフ、無事でよかった……
ゆっくり休んで、傷を癒しましょう


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
ああ、勿論だ
この場所を、この世界を滅ぼすわけにはいかん

ヘルガに向かう攻撃を咄嗟に庇う
いつもの鋼の鎧ではない
湯上り時の浴衣のままだ
音の刃が肉を裂き、裂けた場所から血が飛沫く
思わず苦悶に呻いた俺に、嘆くヘルガの涙声が聞こえる

大丈夫だ、ヘルガ
生きることが苦難と絶望の始まりなら
俺は全力で抗ってやる
お前はお前の想いを貫け
あの女には決して歌えない、お前の信じる希望の歌を!

ああ、それでいい
その優しい心があれば、俺は何度でも戦える
生きる気力を奮い立たせることが出来る

……せっかく温泉を堪能したのに、また血で汚れてしまったな
台無しにした浴衣の弁償もだが、落ち着いたら湯治も兼ねて
改めてここでゆっくり過ごそうか



 大広間で待ち構えていた猟兵達の猛攻を受け、揺らぐ三味長老。
 けれどそれでも尚、三味線へとバチを激しく振るわんとしている。
 その旋律は、妖怪達の心を奪う様なものであると耳にしたけれど。
 同時に、演奏を聴いている最中、燃えてしまった者までいると。
「いくら見事な三味線の演奏でも、聞く人まで燃やすなんて怪しいわ」
 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は、三味線掻き鳴らし鬼火漂わせる眼前の女に視線を向けた後。
「今までは死者を出さずに済んでも、今後はどうなるか分からない」
 澄んだ青き瞳でヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)の姿を映し、うたうように紡ぐ。
 ――行きましょう、ヴォルフ。この素敵な場所を守るために、って。
 そんなヘルガの声に、大きく頷いてみせるヴォルフガング。
「ああ、勿論だ。この場所を、この世界を滅ぼすわけにはいかん」
 妖怪達に危害が加わるのも、幽世の世界を滅亡へと導くことも、決してさせぬと。
 だが刹那、三味長老が握るバチが、再び三味線をかき鳴らして。
『さァ、そろそろ終演だよ! アンタたちも世界も、何もかも……アタシの演奏で燃えてしまえばいい!』
 ヘルガは耳を劈くその音色にふるふると、ミスミソウ咲く雪色の髪を微か揺らし首を横に振る。
 ――ああ、やはりあの演奏は滅びの音。生きる気力まで奪う禍々しき響、と。
 だが、べべんっ! と空気を震わせるかの如き大きな音が鳴った瞬間。
「! ……ッ、ぐっ」
 咄嗟にヘルガの前へと立つヴォルフガング。
 今の装いはいつもの鋼の鎧ではない。湯上り時の浴衣のまま。
 だが躊躇なく、彼女へと牙を剥く音の刃をその身に受けたヴォルフガングの肉は裂け、纏う浴衣が飛沫いた血のいろに染まれば。
「……ヴォルフ!」
 思わず苦悶に呻いたその耳に聴こえるのは、嘆くヘルガの涙声。
 ――またわたくしを庇って……ごめんなさい……、と。
 そんな彼女へとヴォルフガングは笑んでみせて。揺るがぬ思いの言の葉を伝える。
「大丈夫だ、ヘルガ。生きることが苦難と絶望の始まりなら、俺は全力で抗ってやる。お前はお前の想いを貫け」
 ……あの女には決して歌えない、お前の信じる希望の歌を! と。
 そしてヘルガは歌う。静謐なる聖歌――『涙の日』を。
 彼はいつも守ってくれ、言ってくれるから……想いを貫け、と。
 だからヘルガは歌うのだ。
「三味長老の奏でる音が生きる気力を奪うなら、わたくしの歌は生きる希望を与う歌」
 想いを乗せた、希望の歌を。
 ――善き人々に祝福を。
 ――悲しき心に慰めを。
 ――そして……愛する人に仇成す者には神罰を。
『なっ……う、ぐぅっ!』
「大切な人の命のために、滅びの音色には決して負けはしない。この声に全身全霊の祈りと優しさを込めて……!」
 刹那、骸魂を在るべき海へと還すのは――邪気を打ち払う眩き裁きの光。
 彼女が響かせる歌声と聖なる光が骸魂を包み込んで払い、そして裁きを下す。
 そしてヴォルフガングは、悪しき者を歌い滅するヘルガへと頷おてみせる……ああ、それでいい、と。
「その優しい心があれば、俺は何度でも戦える。生きる気力を奮い立たせることが出来る」
 だから喜んで盾にだってなろう。愛する者や無辜の民を守護する誓いを立てて。
 それから三味長老を呑み込んでいた骸魂が、まるでひらり舞い遊ぶ幽世蝶に導かれるかのように、躯の海へと還されたことを確認してから。
「……せっかく温泉を堪能したのに、また血で汚れてしまったな」
 ヴォルフガングは己の纏う血塗れの浴衣を見遣るけれど。
「ヴォルフ、無事でよかった……ゆっくり休んで、傷を癒しましょう」
「台無しにした浴衣の弁償もだが、落ち着いたら湯治も兼ねて、改めてここでゆっくり過ごそうか」
 もう誰も、何も燃える心配のなくなった憂い無き湯屋で、改めて過ごすことに。
 此処は何て言ったって、そう――幽世の極楽なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月06日


挿絵イラスト