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ふわもふびより

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●晴れのちふわもふ豪雨
 カクリヨファンタズムの、さる日本家屋風のお屋敷にて。
 大きな月を見上げながら、縁側でのんびりと月見酒を愉しんでいる酒呑童子の姿が在った。
 この酒呑童子は、空を見上げながら酒を呑むことが日課のようなものであり――。
 しかし、連日連夜似たような空ばかり見上げていては、いずれ飽きがやってくるというもの。
 星は流れず、花は見飽きた。
 雨は肌寒く、雪は冷たい。
 灰や火は平和な酒の席に合わない。
 温かくて飽きず、酒の席にも合うような、何か和めそうなものを。
 例えばそう、西洋の妖怪であるケサランパサランはどうだろうか!
 あれらは降り注いでも害は無く、白いふわふわは夜空にきっと合うに違いない。幻想的な雰囲気に、ますます酒も進むだろう。
 ほろ酔い気分ですっかり上機嫌。
 そうだ。何か面白いものよ、降ってくれ!
 お猪口を片手に夜空を見上げていた酒呑童子に、ふわりと纏わり付く骸魂の姿が。
 ――……その結果。

 こんこんと雲一つない夜空から降り注ぎ始めるのは、白いふわふわに、蒲公英の綿毛。
 無数のケサランパサランに、動物のぬいぐるみ……。
 ――あ、テディベアも。

●世界が『ふわもふ』で溢れたのなら
「ぬいぐるみ好きなら、一度はぬいぐるみに埋もれたいって……そう思います、よね……?」
 ポケットに入れていたゴールデンレトリーバーのぬいぐるみをモフりながら、花染・あゆみ(夜明けの光・f17667)はグリモアベースに集まった猟兵たちにそう問いかけた。
 あの子も、この子も。運命の出会いは数え切れないほど在って。そうしてぬいぐるみたちを集めているうちに――気付けば、部屋がぬいぐるみで一杯に。
 そんな経験がある者も、いるのかもしれない。
 ぬいぐるみのみならず、テディベアやふわふわとした生物が好きなら、一度は沢山集まったそのもふもふに身体を埋めてみたいと思うもの。
 思うことこそきっとあるのだろうが、それを実現しようとする者は存外少ないだろう。
「想像と現実は違うの、ですが……。本当にカクリヨファンタズムの世界で、ケサランパサランやぬいぐるみを始めとする『ふわもふ』が降り出してしまったみたいで……。このままでは圧死待った無し、です」
 事の発端は、ほろ酔い気分の酒呑童子だった。
 月見酒も花見酒にも飽きていたこの酒呑童子。酔いのままに「暖かくて和めるような――例えば、ケサランパサランのような――面白いものよ、降ってくれ!」と願ったところに、タイミング悪く周囲を漂っていたヤマタオロチの骸魂が酒呑童子取り込んでしまったらしく――。
 酒吞童子の「なんか良い感じの景色が見たい」と、ヤマタノオロチの「とにかく酒が飲みたい」という願いが中途半端な形で合わさって実現されてしまったらしい。
 現在、カクリヨファンタズム全域でケサランパサランや白いふわふわ、蒲公英の綿毛に動物のぬいぐるみ、テディベアに布団やクッションなどなど……『ふわもふ』な物体が豪雨の如く降り続いている。
 幸い落下スピードが非常にゆっくりな為、怪我の被害が出る可能性は少ないだろう。しかし、このまま降り続ければ、文字通りカクリヨファンタズムの世界が『ふわもふ』に埋もれてしまう。
「空から降ってくるケサランパサランの中には、骸魂に取り込まれた妖怪の方も、大勢いるようで……。そちらの救出も、お願いします、ね」
 ……降り積もったただのケサランパサランやぬいぐるみ、クッション等は、気に入ったものがあったら持ち帰って構わないとあゆみは続ける。
 寧ろ持ち帰って欲しい。世界が元に戻っても、きっと『ふわもふ』たちは消えずに残ったままだろうから。
「世界の危機と呼ぶには、何だか少し気が抜けてしまう終わり方、ですが……。危機であることに変わりはありません、ので……。どうかよろしくお願いします、ね」
 ゴールデンレトリーバーのぬいぐるみをモフモフしつつ、あゆみは猟兵たちを送り出すのだった。


夜行薫

 お世話になっております。夜行薫です。
 今回は、酒に酔った妖怪の思い付きでゆるっと世界の危機に瀕してしまったカクリヨのお話です。
 オープニング通り、「ふわもふ」が大量発生した世界となります。なんか降らせたくなりました。後悔はしていません。
 テディベアやぬいぐるみ、クッションなんかも降ってきます。ふわもふに関するものなら、割と何でも。

●シナリオについて
 ゆるっともふっと進行になります。
 (世界の危機ですが)全体的にふわふわした雰囲気になります。
 要約すると、ふわもふを楽しんで、黒幕と宴会をしつつ、どさくさに紛れて攻撃して倒せばオッケー! な感じです。
  受付/締め切りはMSページとタグで連絡します。

●1章:冒険『見上げれば、なにかが』 
 ゆーっくりと「ふわもふ」が降っています。
 酒吞童子のいる屋敷近くから、屋敷前まで「ふわもふ」を掻き分けながら進む冒険の章です。
 屋敷まではそれほど距離は離れていませんが、腰ほどに積もった「ふわもふ」が邪魔で進み辛い道のりとなっています。また、空からも低速ですが、ぬいぐるみやクッションやらの大きめの物体が降ってきているため、飛行しての移動も工夫が必要でしょう。
 降り積もった「ふわもふ」をどかすなり燃やすなり、モフるなりしながら、酒吞童子の屋敷へ。
 「ふわもふ」要素を含むものなら、生き物を除き割と何でも降ってきます。
 降らせたい「ふわもふ」がございましたら、プレイングでご指定を。
 ご指定がなければ、無難に白いふわふわ+時々ケサパサ&偶にぬいぐるみになるかと。

●2章:集団戦『ケサランパサラン』
 酒吞童子の屋敷入口に降り積もった大量のケサランパサランとの戦闘です。
 骸魂によってオブリビオン化した方のケサパサですが、倒せば元の妖怪に戻るので、遠慮なくボコるなりモフるなりしてくださいませ。

●3章:ボス戦『酒呑み竜神『酔いどれオロチ』』
 とうとう辿り着いた酒吞童子の屋敷の縁側で、黒幕である「酒呑み竜神」とのモフ見酒の宴会――否、戦闘です。
 竜神と酒盛りしつつ骸魂を倒しきれば、自然と酒吞童子は解放されるでしょう。
 酒吞童子が用意したおつまみや甘味、各種アルコール類が置きっぱなしになっていますので、もしよろしければ。(※未成年の方はノンアルコールとなります)
 お酒が呑みたいだけの骸魂ですので、酒を吞んでいる最中に攻撃を受けても気付かないでしょう。
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第1章 冒険 『見上げれば、なにかが』

POW   :    気にせず無理矢理先へ

SPD   :    回避しながら先へ

WIZ   :    片付けながら先へ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●積モフ60センチ
 ――むにっと何かを踏みつけた感覚がした。
 足元の感覚に釣られるまま視線を落とせば、柔らかいクッションを踏みつけていることに気付く。
 視界一面を占めるのは銀世界……ではなく、降り積もった『ふわもふ』たちによる白を始めとするカラフルな色彩で。
 肩に何か触れたことに気付いて夜空を見上げれば、コンコンと降り続けているのは雪……ではなく、白くふわふわとした綿のような物体だった。
 重さの感じられないふわふわは、手に乗るとコロンと転がり、足元の降り積もった積モフを構成する一部となる。
 上を見れば……冬眠から目覚めて慌ててプレゼントを配りだした、寝ぼすけなサンタさんの姿も見えないのに、終わり無く降り続けるふわふわやケサパサ、ぬいぐるみの数々が。
 宛先も無ければ、出所も不明で、際限も無いので余計にタチが悪かった。
 良い子へのプレゼントを造る機械が故障して、延々と『ふわもふ』を吐き出しつづけているのだろうか?
 そんな現実逃避をしているうちにも、『ふわもふ』たちは地面へと降り積もり続ける。
 足場が非常に悪いけど……元凶を倒さない限り、延々と降り続けるのだろう。
 白いふわふわが降る光景は幻想的で、それに戯れるように纏わり付いてくるケサパサや、降り積もった『ふわもふ』の間からつぶらな瞳を向けているクマさんなど、誘惑(?)は多いけれど。
 とりあえず、今は目の前の屋敷まで。
レスティア・ヴァーユ
【ふわもっふもふ】
これは…
見渡して
目的の為には乗り越えなくてはならないもの…なのだが…
掻き分けて進もうと足を踏み入れ腰まで埋もれたところで、もふりと手に当たった感覚を見る

たくさんのもふもふ(けせぱさ)の中に、とても表情の可愛らしいテディベアが
その瞬間――
私は自分の脳内で、理性が崩壊する音を聞いた。

アシュエル―確かに…世界の危機かも知れないが―
『私一人がサボっていていもバレないのではないだろうか!!』
真顔で真摯に親友へ説得を試みる

全て!このふわもふを総て持ち帰りたい!
――うるさい黙れ放っておいてくれ!!

…せめて…せめてこの可愛い『くま』だけでも、連れ立っていっても構わないだろうか…
持ち帰りたい…


アシュエル・ファラン
【ふわもっふもふ】
こりゃ難儀だなー
全部燃やすのも手っ取り早いが、ぬいぐるみとかあるしな。顔がついてるものに火付けるのもかなり良心痛むだろ、これ…
仕方ない、UCで片付けながら少しでも道らしい物を作って進―レスティア?

―ちょっ、待っおま!!
世界の危機だぞ、世界がこんなんで埋もれて終わるとか、俺なら死んでも死にきれな――
どう見ても正気失ってるな!? やめてください、あたまいたいから『死んでもいい!』とか真顔で言うんじゃない!!
うっさいだまれ!!こうなったら襟首掴んでも連れていくからな!

…あー、分かった…もうテディベアの一匹くらい連れてっても怒られないだろ……
(連れていっても大丈夫かはお任せします…)



●運命の出会い(物理)
「これは……」
「こりゃ難儀だなー」
 同じ光景を見ていたとして、同じ感想を抱くとは限らない。
 現に、冷静さは保ったままだが、その青き瞳を静かに煌めかせているレスティア・ヴァーユ(約束に瞑目する歌声・f16853)と、その隣でげんなりとした表情を浮かべているアシュエル・ファラン(盤上に立つ遊戯者・f28877)が正反対の感情を抱いていることは、誰の目からしても明らかなことだ。
 転移と共に一歩を踏み出せば、腰まで降り積もった『ふわもふ』たちが邪魔をして進み辛いことこの上ない。
 『ふわもふ』たちを掻き分けるようにしてゆっくりと進むしかできないのだから、アシュエルにとっては「面倒」の一言に尽きる話だった。
「全部燃やすのも手っ取り早いが、ぬいぐるみとかあるしな。顔がついてるものに火付けるのもかなり良心痛むだろ、これ……」
 「燃やす」と口に出した瞬間、降り積もった『ふわもふ』たちから無言の圧のようなモノを感じて、思わず寒気を感じたアシュエル――ただの物体であるぬいぐるみに魂が宿っているはずも無いのだが、それでも自分を見つめる彼らの視線が確かに極寒になったのを感じていた。
 気まずくなってスッと視線を逸らすと、次には骸魂に取り込まれてケサパサと化した妖怪たちが助けて欲しそうな視線を向けてくるものだから――余計に居心地が悪い。
 ……元に戻るとはいえ周辺の『ふわもふ』と共に丸焼きにするのも、何だか後味が悪い。万一それで炎に対してトラウマを抱かれてしまっては、罪悪感が纏わりついて離れないだろう。
 どうしたものかと頭を悩ませているアシュエルの少し後ろで、レスティアは瞳を微かに見開いたまま、微動だにしなかった。
「目的の為には乗り越えなくてはならないもの……なのだが……」
 可愛いは正義。目的は屋敷であって、降り積もった『ふわもふ』たちではない。そんなこと、レスティア自身が一番良く分かっている。
 つぶらな瞳で見つめてくる彼らには悪いが、先を急がなくてはいかない。
 瞳を伏せて数度頭を振ると、レスティアは『ふわもふ』を掻き分けて進もうと手を『ふわもふ』の中へと突っ込み――……。

 ――ふと、「置いていかないで」と。誰かが突っ込んだ手を引いた気がした。

 振り向いた先に、降り積もったケサパサたち。ただの生物である方も、骸魂に取り込まれて助けを待つ方も。等しくレスティアの瞳には映らない。
 映っていたのはただ、一つだけ。
 ふわふわとした柔らかい毛並みに、つぶらな瞳。きゅるんと愛らしい視線で、レスティアを見つめていた。ケサパサに押しつぶされて、静かに救助される時を待っている。

 ――そこにいたのは、とてもとても愛くるしい表情をした、ふわふわなテディベアだった。

 テディベアと視線が混ざり合った時、レスティアは確かに、己の理性が崩壊する音を、聞いていた。
「仕方ない、愛しいマイレディーたちに頼んでもらって、片付けながら少しでも道らしい物を作って進――レスティア?」
 何れ再び道は埋もれてしまうだろうが、それでもやらないよりはずっと良い。
 苦肉の策を実行させようとしたところで、アシュエルはレスティアの異変に気が付いた。
 ……何があったのか知らないが、一点を見つめまま彫刻のように固まってしまっている。
 そして静かに。普段以上に冷静な表情のまま、レスティアは友の名前を呼ぶと。
 ゆっくりと、語り始める。
「アシュエル――確かに……世界の危機かも知れないが――」
 レスティアの理性の強度が一瞬で無に帰してしまう賽の河原の塔ほどに脆い物なのか、神にしか破壊できぬバベルの塔の如く堅牢なのかは――本人にしか預かりしれぬこと。
 しかし、結局どちらも崩壊してしまう定めにあるのだ。
 レスティアの理性が崩壊するのも、くまさんとドラマチックな出逢いを果たすのも、神が定めし運命として遥か昔から刻まれていたのであろう。多分、恐らく……いや、きっと。

「私一人がサボっていていもバレないのではないだろうか!!」

 皆、『ふわもふ』ばかりに気をとられていて、周囲に気を配る余裕のあるものは少ない。
 だから、一人くらいサボったとしてもモーマンタイなのである。全くのノープロブレムである。
 無二の親友だ。きっと理解してくれるはずだ。レスティアは目の前の親友へ、真摯に説得を続けていく――くまさんと手をしっかりと繋いだまま。
 一方、レスティアの発言に一瞬でフリーズしたアシュエル。
 降ってきたケサパサが身体中に纏わりついても、クッションが頭に当たってもふんとバウンドしても、アシュエルは動かない。否、動けない。たっぷり五秒固まってから、彼は叫ぶ。
「――ちょっ、待っおま!!?
 世界の危機だぞ、世界がこんなんで埋もれて終わるとか、俺なら死んでも死にきれな―――」
「死んでもいい! くまと死ねるのなら、寧ろ本望だ!!」
「おい、どう見ても正気失ってるな!? やめてください、あたまいたいから『死んでもいい!』とか真顔で言うんじゃない!! 心中決意する暇があるなら、戻ってこい!!」
「全て! このふわもふを総て持ち帰りたい! ――うるさい黙れ放っておいてくれ!! このふわもふと共に在ると決めたんだ!!」
「うっさいだまれ!! こうなったら襟首掴んでも連れていくからな!」
 何が悲しくて、ふわふわに埋もれながら、じわじわと死までのカウントダウンを待たねばならないのだろうか。
 ぬいぐるみだのに憧れる夢見る少女では無いのだから、『ふわもふ』に埋もれて緩やかに圧死、もしくは窒息死する定めなど不本意だと大声で断固拒否するアシュエル。
 それに対してくまをしっかりと抱きしめながら、ふわふわ達が呼んでいるのだから、と全力で首を振るのはレスティアだった。
「……せめて……せめてこの可愛い『くま』だけでも、連れ立っていっても構わないだろうか……。持ち帰りたい……」
 先ほどまでの駄々っ子から一転。しゅんとしながら、くまさんとアシュエルを交互に見つめるレスティア。
 レスティアの眼差しに、アシュエルも言葉を詰まらせる。気まずい空気だった、非常に。
「……あー、分かった……もうテディベアの一匹くらい連れてっても怒られないだろ……」
 勝者、レスティア。運命の出会いは、親友すらも拒むことは出来なかった。
 パッと顔を綻ばせて、何処となく嬉しそうな様子でくまさんに話しかけ始めるレスティアにアシュエルは静かにため息をつく。
 近いようで遠い、屋敷までの道のり。レスティアが好みそうなぬいぐるみたちは、その間に無数に積もっている。
 彼らが屋敷に辿り着くのは――果たしていつになるのだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神崎・ナオ
うわ~、凄いっ!
これが天国って奴かな!?
はっ!? ゴホン、魔王にとってはこんな可愛いものは必要な……あっ! あのワンちゃんのぬいぐるみも可愛い~!
(手当たり次第に可愛いモフモフのぬいぐるみやクッションをかき集めてるナオに相談役の治水蝙蝠がやや飽きれつつも集めるのを手伝ってくれます)

でもこの中進んで行くのは結構大変だよねぇ……どうしよっか?
って、んんっ!?
進むごとに吹っ飛んでく!
そっか、モフモフは軽いから私の進軍は阻めないってことだね!
(ナオは自分の威厳とか力とかと勘違いしてますが、其の実は魔王軍がこっそり降り注いできたり進む先のモフモフを次々ぶっ飛ばしていきます)
よーし、ガンガン進むぞー!



●魔王様見守り隊withぬいぐるみズ
 ゆっくりと空からぬいぐるみたちが降ってくる光景は、世界の危機とは思えないほど幻想的で、ファンタジックな光景で。
 お気に入りの子を探すのは勿論のこと。普段なら現実不可能な――降り積もったぬいぐるみたちの海にダイブする、という行為もここでは思いのまま。
 ここでは誰も『ふわもふ』やぬいぐるみを愛する行動を制止する者は居ない――厳密に言えば、制止する余裕もないのだが、それは些細な違いだろう。多分。
「うわ~、凄いっ! これが天国って奴かな!?」
 目の前に広がるパラダイスもかくやの光景に、澄みきった空色の瞳を輝かせるのは神崎・ナオ(魔王と勇者のハーフな悪魔・f32386)だった。
 可愛らしいぬいぐるみたちが選り取り見取り。これほどのふわふわが一斉に集うことは、滅多に見られない光景だろう。
 降り積もった『ふわもふ』の影に良い感じに隠れながら。嬉しそうに表情を綻ばせるナオの姿を、こっそりと微笑ましそうに見守っているのは配下である魔王軍たちだった。
「はっ!? ゴホン、魔王にとってはこんな可愛いものは必要な……あっ! あのワンちゃんのぬいぐるみも可愛い~!」
 ナオは恐い怖い魔王である。何千何万という配下たちを連ね、悪事の限りを尽くす以上、魔王にとってこんなものは必要ない。そう言いきってしまうことは、簡単なのだろうけれど。目の前にもふんと降り積もったぬいぐるみたちが、それを許さなかった。
 ナオは魔王でもあるけれど、同時に年頃の少女であることにも変わりない。
 可愛らしいぬいぐるみを前に、魔王としての威厳もふわふわと溶けてしまう。
 降り積もった『ふわもふ』たちを掻き分けながら、最初に目が合ったワンちゃんの元へ!
 抱きかかえるのにちょうど良いサイズのワンちゃんの手触りはふかふかで、延々ともふもふしてしまいたくなってしまう。
 歩き辛いけれど、この子たちを前にしたら、そんなことは些細な問題!
 魔王軍がこっそーりと見守っていることにも気付かずに。ナオはワンちゃんを抱きかかえつつ、気に入ったクッションやぬいぐるみを手当たり次第に集め始める。
 ちまっとディフォルメされた三頭犬のぬいぐるみは魔王が持つに相応しい気がしたし、月夜に羽ばたく蝙蝠がプリントされたクッションは気が付けば手を伸ばしていた。
『若は全く……』
 頼もしいナオの相談役である治水蝙蝠が無い首を振ったような気がしたのも、きっと気のせいじゃない。何処となく呆れつつも、周辺を飛び回ってナオ好みの『ふわもふ』を見つけてきたりと、しっかりと手伝ってくれるのだ。
 相談役として、魔王の配下として。主であるナオの好みを把握しておくことなど、治水蝙蝠にとっては当然のことであった。
「でもこの中進んで行くのは結構大変だよねぇ……どうしよっか?」
 魔王に相応しい『ふわもふ』たちを両手いっぱいに抱えながらナオが見つめる先に広がるのは、まだまだ続く『ふわもふ』の海。
 かき分けながら進むことがきっと王道なのだろうけれど、それだと折角の『ふわもふ』たちとサヨナラしなれければならない。
「って、んんっ!? 進むごとに吹っ飛んでく!」
 とりあえず、で踏み出した一歩。その瞬間にふわっ! と吹き飛ぶぬいぐるみの群れ。
 舞い上がったふわふわたちは、ナオの後ろへと降り注ぎ小さな山になっていく。
「そっか、モフモフは軽いから私の進軍は阻めないってことだね!」
 モフモフたちは軽ければ、戦闘力も持っていない。魔王である自分の進軍を阻むことは出来ないのだと気付いたナオは、意気揚々と『ふわもふ』たちを抱きかかえながら歩き始める。
 ……実はナオの魔王軍がこっそーりと振ってくる大きいもふもふを弾いたり、ナオの歩みに合わせてぬいぐるみの山を吹き飛ばしていたりしているのだけど、それはナオが知らなくて良いこと。
「よーし、ガンガン進むぞー!」
 ぬいぐるみたちを開拓のお供に、ナオの進軍はゆるりと続いていく――目指すは、あの屋敷へ!

成功 🔵​🔵​🔴​

ポク・ョゥョゥ
わー
ふわもふだー
ゆ~っくりくるのー?何が来るかなー?

おぷるっ
頭に何かもふっときたおー
わーケサランパサランたんだー真っ白だね~
はじめましてなのーぽくはねー、ぱんだだよー
白いもふもふのとこはお揃いかなー?
あがめよー
一緒にお散歩するー?

ぱく(お供のミニ白竜)はそれなーにー?
クッションかわいいね~
気に入ったのー?
よーし、ちょっともらってこー
かぽ(お供のミニナノマシン)ー、ふわもふ触ってー
ゆるとこに吸い込んじゃおー
お星さまクッションとー、パンダのぬいぐるみとー
あー
ふわふわしたきのこないかなー
面白そうだよねー

かぽにいっぱい吸い込んで貰いながら進むおー
時々ふわふわに座っておやつ休憩しながら~
お屋敷どこかなー



●ゆるもふつあーず
 「わー。ふわもふだー」
 身体の半分ほどが埋まってしまうけれど、それでも器用に四肢を動かして。よいしょっと降り積もった『ふわもふ』に乗り上げたのは、小さなパンダの――あれ、もふっとしたパンダのぬいぐるみが動いている?
 いいえ、一見するとパンダに見える彼は、ポク・ョゥョゥ(よろしくなの〜・f12425)。パンダ系のブラックタールの少年です。
 降り積もった『ふわもふ』たちをクッションに、ふわふわのてっぺんで空を見上げれば、まるで自分もカクリヨファンタズムに降り積もった『ふわもふ』たちの仲間入りを果たしたかのよう。
「ゆ~っくりくるのー? 何が来るかなー?」
 ケサランパサランやぬいぐるみに埋もれながら空を見上げていれば、ふわふわゆーっくりと振ってくる『ふわもふ』たちの姿が目に入ってくる。
 何が来るのかな? それは、『ふわもふ』たちの姿が近くなってからのお楽しみ。
「ゆ~っくり降りてくる感覚って、どんなのかなー? おぷるっ。頭に何かもふっときたおー」
 ゆ~っくりと落ちてくるから、怖さもきっとあまりなくて。ふわふわ不思議な浮遊感が楽しそう。のんび~りと落ちてくる『ふわもふ』を待っていたら、ちょうどポクの頭の上に落ちてきた!
 ふわっと跳ねたそれは、ポクの頭で一回もふりと跳ねると、そのままポクと同じ目線の高さになるまでふわ~っと落ちてきて、「こんにちは」って挨拶をしてくる。
「わーケサランパサランたんだー。真っ白だね~」
 舞い落ちてきたケサランパサランは雪みたいに真っ白だった。
「はじめましてなのーぽくはねー、ぱんだだよー。白いもふもふのとこはお揃いかなー?」
 身体が真っ白なケサランパサランと、白いふわふわなフードを被っているポク。
 偶然が齎した可愛らしいお揃いに、ケサランパサランは嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねた。
「あがめよー。一緒にお散歩するー?」
 もふもふと身体全体を使って、「うん」を伝えてくるケサランパサラン。
「じゃあ、いこっかー」
 ポクの声を出発の合図に、ポクとケサランパサランはお屋敷までの道を歩き出す。
 『ふわもふ』は沢山降ってきていて、ふわふわとのんびり進むポクの目の前にも。
 もふりと降ってきたクッションの一つが気になったのか、不意にポクのお供の白竜・ぱくがパタパタと小さな翼を羽ばたかせて降り積もったクッションの一つを加えてくると――そのままくるりとUターンして、ポクの元へ。
「ぱくはそれなーにー?」
 ポクが手を差し出せば、ポトリとぱくが落としたのは、白くてふわふわした雲みたいなクッションだった。
「クッションかわいいね~。気に入ったのー? よーし、ちょっともらってこー」
 本物の雲を触っているかのような肌触りに、思わずモフモフする手が止まらない。ぱくもその感触が気に入ったのか、嬉しそうに鳴き声を上げていた。
「かぽー、ふわもふ触ってー。ゆるとこに吸い込んじゃおー。お星さまクッションとー、パンダのぬいぐるみとー」
 雲の他にも、ぱくが集めてきたものも、ポクが気に入ったものも。ナノマシンであるかぽに頼んで旅団に転移させれば、『ふわもふ』でいっぱいになって歩けなくなる心配も無いから。
 お星さまのクッションに、パンダのぬいぐるみに、パンダの顔をしたクッションも!
「あー。ふわふわしたきのこないかなー。面白そうだよねー」
 ふわふわしたきのこはどんなお菓子になるのだろう。それも気になったから、「ふわきのこないかなー」なんて、探しながら。
 そして、かぽにもいっぱい吸い込んでもらいながら、ポクたちは進んでいく。
 でもでも、ふしぎ。これだけ吸い込んでも、降り積もった『ふわもふ』は少しもその数が減らなくて。
 選びたい放題なのは楽しいけれど、お屋敷が見えなくて少し困るポクだった。
「お屋敷どこかなー」
 ふわふわに座って、何度目かのおやつ休憩。
 ぱくやケサランパサランたちと一緒におやつを食べれば、美味しいおやつがもっと美味しく感じられる。
「あれ、あれかなー。大きい門があるやつー」
 のんびりと進んでいくポクたちは確実にお屋敷へと近づいていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

スティーナ・フキハル
ミエリ視点で ★付の所は分離したスティーナ側に
(開幕でUC使って二人に分離します)

私達の身長だと歩くのも大変ですね。
お姉ちゃん、人格交代するから神薙猛風刃で吹き飛ばして!

★あーミエリ、すっごく言いにくいんだけど、
ここに来たとき分離にシスコン使っちゃったから今ムリかなって……。

ああああ……何やってるのもう!!
武器のラスボス部位で両腕を鬼の手に【肉体改造】して
ふわもふを投げ飛ばして除雪ならぬ除もふを行い
お姉ちゃんが回避する道を作りながらつき進みます!

★ちょ、ちょっと待ってミエリ! 何か欲しいぬいぐるみあるー!?

猫!! できれば白いの!!

★アッハイ、白い猫のぬいぐるみ拾って妹に付いていきまーす……。



●もふに埋もれる
 こんこんと夜空から落ちてくるのは、ケサパサにふわふわにぬいぐるみに。ふわもふした物体ばかり。
 地面を踏みしめる感覚もふわっとしていて、気を抜けば地面近くの『ふわもふ』に気をとられて転んでしまいそう。
 腰よりやや高い位置まで『ふわもふ』に埋もれながら、手を大きく動かして進む人影が二つあった。スティーナ・フキハル(羅刹の正義の味方・f30415)と、その妹のミエリだ。
「私達の身長だと歩くのも大変ですね」
『全然進まないわね。これが雪じゃなくて良かったわ』
 やや小柄なこの身長。その分だけ、進み辛くて。
 それにこれがもし雪だったとしたら、もっと冷たかっただろう。ミエリは姉であるスティーナの言葉に相槌を打ちながら、『もふもふ』の中に手を突っ込んだ。
 一体、何度同じ作業を繰り返しているのか。降り積もった『ふわもふ』を掻き分けながら、一歩、二歩、三歩……。姉妹揃ってもふもふと足を踏み出せども、全く進んでいる気がしない。
 何なら、『ふわもふ』たちに良い感じに遊ばれて、さっきから同じところで足踏みしているような感覚さえするのだから。
「こうも進まないと……お姉ちゃん、人格交代するから神薙猛風刃で吹き飛ばして!」
 かき分けて進むより、吹き飛ばしたり燃やしたりするほうがずっと手っ取り早い。
 それに、『ふわもふ』でカクリヨファンタズムが埋もれてしまう速度を、少しだけど遅らせることができるから。
 勢い良くミエリの口を飛び出したお願いに対し、しかし、スティーナは気まずそうに視線を横に逸らして……それから、ポソリと答える。
『あーミエリ、すっごく言いにくいんだけど、ここに来たとき分離にシスコン使っちゃったから今ムリかなって……』
 ぽふり、と。空から降ってきたクッションがミエリの身体に当たって、傍に落ちる。
 気付けばクッションを目で追うのも忘れて、ミエリはスティーナをじっと見つめていた。
 今、目の前のお姉ちゃんは何と言ったか。なんかこう、希望が儚く砕かれるような言葉を口に出していたような。
 こんこんと音もなく空から降ってくる『ふわもふ』たち。スティーナはミエリから視線を逸らし、振り積もっていた犬のぬいぐるみに視線を落したまま、ミエリの方を見ない。
 そう。二人は、此処に来た時に分離していた。暫くはムリかもしれない。
「ああああ……何やってるのもう!!」
 しっかり数秒固まって。何なら、その数秒のうちにスティーナの言葉を何度も頭の中で反復横跳びさせて。
 お姉ちゃんの言葉を十二分理解したミエリは、大きな声で叫んだ。
 頼みのお姉ちゃんは、暫く無理そう。つまり、自分で何とかするしかない。
「もう、つき進むよ!」
 宣言するや否や、ミエリの行動は早かった。
 大きく、冷たく、熊の爪が生えた両腕。両腕を鬼の手に変化させて、ミエリは目の前の『ふわもふ』たちへと勢い良く突っ込んだ!
 そのまま下から掬い上げて、後方へと『ふわもふ』たちを投げ飛ばしていく。
 先ほどまでののそのそと亀さんのようなスピードから一転、後ろへ後ろへと『ふわもふ』たちを送りながら、邁進を始めた。
 スティーナが通れる道を作りながら、屋敷の方へと勢い良く進んでいくミエリ。妹の姿を、スティーナは慌てて追いかける。
『ちょ、ちょっと待ってミエリ! 何か欲しいぬいぐるみあるー!?』
「猫!! できれば白いの!!」
『アッハイ。――この子とか! あとは……ミエリに付いていきまーす……』
 ミエリが除もふしたぬいぐるみの中に、長毛が可愛い白猫ぬいぐるみの姿が。
 前から飛んできた白ニャンコを見事にキャッチしたスティーナは、白ニャンコを抱きしめたまま静かにミエリの後をついていく。
 今口を挟んだら、色々と不味そうだったから……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】◆
うわぁ、なんだかメルヘンなことになってるねぇ
ふわふわのカラフルな世界
何となく、アリスラビリンスの戦争で訪れた
パジャマパーティーの国を思い出す

屋敷への道は梓のドラゴンたちが確保してくれてるから
俺は何をしようかなぁ…と考えていたら
ふと目の前に降ってきたのは棒のついたふわもふ
もしかして、とキャッチしてペロッと舐めてみたら甘い
これは間違いない、わたあめだ
しかも次々と降ってくる
これ食べながら屋敷に向かおうか

白以外にもピンク色、水色、黄色などなど
色んな色彩のわたあめが降ってきて楽しい
更にはレインボーカラーのわたあめも登場
ガチャでスーパーレアを引き当てた気分
ふふ、食べるのがちょっと勿体無いかも


乱獅子・梓
【不死蝶】◆
相変わらずこの世界は
ヘンテコな理由でピンチに陥るよなぁ…
ふわもふで圧死だなんてある意味恐ろしい

とりあえずこのふわもふたちをどけないとな
UC発動し、風属性のドラゴンを多数召喚
羽ばたきで風を起こし目の前のふわもふをふっ飛ばして
屋敷までの道を開いてもらう

食べ物まで降ってくるのか…!?
ハッ、このままではわたあめが地面に落ちてしまう
食べ物を粗末にしてはいけない!
わたあめを次々とキャッチ
おっ、これはチョコレート味か
ほら、お前たちもいっぱい食べな
仔竜の焔と零にもわたあめを渡せば
器用に棒を両手で持って嬉しそうに食べる姿がすこぶる可愛い
更に、召喚したドラゴンたちにも
頑張ったご褒美として食わせてやる



●わた雨
 雲一つない夜空を我が物顔で支配している大きな望月。
 今日は望月が主役の舞台公演――になる予定が、突如として乱入してきた無数の『ふわもふ』たちのせいで、主役の姿がすっかり霞んでしまっている。
「うわぁ、なんだかメルヘンなことになってるねぇ」
 キュートでファンシー、カラフルなふわふわが降ってくる様子を見上げていた灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、思わず連想してしまう光景が一つ。
 あれはそう、迷宮災厄戦でのこと。とってもふわふわしていたおやすみなさいの国に、似たような雰囲気を感じる。
 迷宮災厄戦も、今目の前の光景も。広がっているのは、とても世界の危機とは思えないほどファンタジックな光景だ。
「相変わらずこの世界は、ヘンテコな理由でピンチに陥るよなぁ……ふわもふで圧死だなんてある意味恐ろしい」
 とはいえ、確かに世界の危機が迫っているのだと、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は呆れ交じりにため息をつく。
 妙な理由で事あるごとにピンチに陥っているのが、このカクリヨファンタズム。仕方ないこととは言え、今回は理由が理由なのだから、イマイチ緊張味に欠けていた。
 それでも、この『ふわもふ』の海に埋もれてしまったら最後――待つのは緩やかに圧死か、窒息死だ。
 遠のいていく意識と感覚に苦しみながら死を迎えるのは、可愛らしい見た目に反して恐ろしいと、ゆっくり頭を振る梓。
「とりあえずこのふわもふたちをどけないとな」
 世界が完全に『ふわもふ』に潰されてしまう前に、屋敷の黒幕を倒さなくては。
 梓は百体を超える風属性のドラゴンを呼び出すと、羽ばたきで目の前の『ふわもふ』たちを吹き飛ばしてもらうように頼む。
 突然吹き出した強風に、ふわふわコロコロ……と転がっていく『ふわもふ』たち。妙に軽い調子で吹き飛んでいている気がするが、気のせいだろうか。
「俺は何をしようかなぁ……。こうして手持ちブタさん、とか」
 屋敷への道は梓とドラゴンたちが作ってくれている。何なら、綾が出る幕も無い。完全にすることが無かった。
 何をしようかと付近に積もっていたブタさんぬいぐるみを手に持ち――手持ちブタさんと手持ち無沙汰さんがそれぞれ一体と一人ずつ。
 何をしようかと手元のブタさんと戯れていたところ、ふと綾の目の前に降ってきたのは棒のついたふわもふ。
 棒が付いていて、ふわふわと少し甘い匂いがして、手で触れると少しべちゃっとしている――綾も良く知る、あの食べ物にそっくりだった。
「これは間違いない、わたあめだ」
 もしかして、とキャッチしてペロッと舐めたら、大当たり。完全に綿飴のソレだ。
「折角だし、これ食べながら屋敷に向かおうか」
 よいしょっと腰を上げ、綾は順調に作られていく道を進み出す。
「食べ物まで降ってくるのか……!? もしかして、この周辺に積もっていたの全部綿飴か……?」
 一方、今まさに道が作られている最前線で綾の手にした綿飴を見、驚きのあまり声を上げたのは梓だった。
 今さらだったが、ぬいぐるみやクッションといった大きな物体が見られないこの周辺。
 そして、やけに軽く転がっていく――『ふわもふ』たち。
 もしかして、と周辺の『ふわもふ』の上辺をなぞれば、溶けかけた綿飴特有の粘着感が指に纏わりついていく。
「ハッ、このままではわたあめが地面に落ちてしまう。食べ物を粗末にしてはいけない!」
 小さなパックに詰められたもの、縁日で有名な大きな袋に入ったもの、綾が手にした棒付きのものまで。上から降り続ける綿飴に我に返った梓は、次々に綿飴をキャッチ!
 そしてひとしきり降ってくる綿飴を集め終わることには、両手で持ちきれないほど沢山の綿飴が集まっていた。
「色んな色彩のわたあめが降ってきて楽しいねぇ~」
「おっ、これはチョコレート味か」
 綾と梓が集めた綿飴をよくよく見てみれば、味も数えきれないほど沢山だった。
 薄っすらと茶色掛かったチョコレート味に、淡いピンクのイチゴ味に、黄色のバナナ味。果ては味が想像つかない水色や、緑色に至るまで。
「ほら、お前たちもいっぱい食べな」
『キュー♪』
『ガウ!』
 梓が棒付きの綿飴を仔竜の焔と零に手渡せば、器用に棒を両手で持って嬉しそうに一鳴きして。
 もっもっと綿飴を少しずつ食みながら食べる姿がとても可愛らしい。
「上手いなこれ、気に入ったか?」
 同じものを食べながら焔と零に問いかければ、間を置かず満足そうな鳴き声が返ってきた。
 よっぽどお気に召したらしい。次を強請る焔と零に微笑みながら、梓はイチゴ味の綿飴を差し出した。
「そうだ。召喚したドラゴンたちも、頑張ってくれたしな」
 と、召喚した風属性のドラゴンたちに綿飴を差し出せば――百一体ドラゴンは、あっという間に食べ終わってしまう。
 だって、百体以上いるんだもの。まだまだ食べたい盛りの彼らが、スッと無言で見る先に――……。
「ふふ、食べるのがちょっと勿体無いかも」
 レインボーカラーの綿飴を手にした綾の姿が在った。
 赤に黄色、緑に白に。カラフルで大きな、レインボーの綿飴。UDCアースで買えば、それなりに値段のする高級なアレである。
 味も贅沢に移り変わっていくのだろう。ガチャでスーパーレアを引き当てた気分。食べるのが惜しくて鼻歌交じりに綿飴を眺めていたら、じっと見られているような気がして。
 綾が振り返ると、レインボーの綿飴を凝視している百一体のドラゴンの姿が。
「綾が食べないのなら、ドラゴンたちが食べるぞー?」
「ちょっ……!? これは俺の!」
 茶化すような梓の声に、綾はさっと体の後ろにレインボー綿飴を隠す。
 瞬間、二百二の瞳が咎めるようにジィ……っと綾に向けられたが、いちいち気にしていてはゆっくり楽しむことも出来ないのだから。
「代わりに、これなんかどう?」
 ほいっと綾がドラゴンたちに渡したのは、うさぎの形をした大きくて可愛らしい綿飴だ。
 見た目を楽しむという余裕があったのなら、少しはうさぎも喜んだのかもしれない。
 けれど、空腹の方が勝ったドラゴンたちによって――すぐに、もふんっとあちこち食まれて欠けた、無残な姿に。
「うーん。可愛いウサギの形が、見るも無残な姿に。弱肉強食だねぇ」
 うさぎに若干の憐れみを感じつつも、ドラゴンたちがうさぎ綿飴に夢中に隙にちゃっかりレインボーの綿飴を楽しんでいる綾。
 ドラゴンたちが掻き分けた道は歩きやすく、ゆっくりと空から降ってくる綿飴の数々。
「綾、よく見れば珍しい綿飴幾つか持っているな?」
「え? 気のせいだってー。これなんか、普通のブタのぬいぐるみだし。だから、そんな視線を向けられても、」
 賑やかに進んでいく。二人とドラゴンたち。彼らの綿飴の旅は、もう少し続きそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】

ゆぇパパ
お空からふわもふしたのが降って来る!
もふもふに埋もれてみたい気持ちはあるけれど
けさらん…って、なあに?
パパ物知り!

わわ、パパありがとう
パパに助けてもらって、ゆっくり避けて進みましょう
注意して…

わっ

ふわふわに足元を取られて転んでしまうけれど
大きなヌイグルミにぽふんと沈んで痛くない
うん大丈夫よ、パパ

ここは大きなヌイグルミさんがたくさん!
こっちはキツネさんに、ヒツジさん
みんなかわいい

パパがじっと見つめる黒いふわもこさん…
本当、あのコに似てるわ
そのコはララに?
親友のヌイグルミに似てると言われると
…結構かわいい

ね、パパ
このコ連れて帰ってもいい?
黒いふわもこ雛さんを見せておねだり
やった!


朧・ユェー
【月光】

おや?ふわふわとしたのが降ってきますね?
白い塊?いえ、ふわふわもこもこ
ぬいぐるみでしょうか?
ケサランパサランはタンポポの綿毛のような白いふわふわした生き物ですよ
自分達が埋もれるほど降る中で
彼女の上に積もりそうなもふわこをキャッチしてそっと退かせる

大丈夫ですか?
ルーシーちゃんと同じくらいの大きさの子達がいっぱいですねぇ
コレはクマのぬいぐるみ?こちらはうさぎ…

じぃーと見つめる黒いふわもこの雛のぬいぐるみ
ふふっ、あの子に似てますね
この子はララちゃん似かな?
可愛い子は見つかりましたか?
おや、その子を?
えぇ、お友達に加えてあげてくださいねぇ
と嬉しそうに笑って



●新しいお友達
 ふわふわっと空から降ってくるのは、白いもふもふに、大小様々なぬいぐるみに、ふかふかのクッションや布団の数々。
 そして地面には、『ふわもふ』の海が広がっている。じっと見つめてみれば、空にも海にもぬいぐるみたちの姿が見え隠れしていて。
「ゆぇパパ、お空からふわもふしたのが降って来る!」
「おや? ふわふわとしたのが降ってきますね? 白い塊? いえ、ふわふわもこもこ。ぬいぐるみでしょうか?」
 頬を桃色に染めながら、無邪気に朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)の手を引いてみせたのは、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)だった。
 ルーシーに釣られるようにしてユェーが空を見上げれば、今まさにぬいぐるみがもふん! っと降り積もってくる最中で。ぬいぐるみの隙間を縫うようにして、ゆっくりと白いふわふわがくるくると周りながら落ちてくる。
 大好きなぬいぐるみや、『ふわもふ』に埋もれたい気持ちはあるけれど、同時に自分にふわりと纏わりついてくるニコニコ笑顔の白いふわふわの存在も気になっていたルーシー。
 表情があったり、自分の意思で動いたりしていて、普通の白い綿とは少し違うみたい。見上げてパパに尋ねたら、すぐにどんな生物なのか教えてくれる。
「けさらん……って、なあに?」
「ケサランパサランはタンポポの綿毛のような白いふわふわした生き物ですよ」
「パパ物知り!」
 ふわふわと無邪気にふわりの周りを回ってみせるケサランパサラン。と、瞳を輝かせるルーシーの上に、ふんわりと着地しそうなケサランパサランの姿が。
「わわ、パパありがとう」
 ユェーはルーシーの上に積もりそうなふわもこをキャッチして、そっと退かせてあげた。
 上はもふもふ。下もふわふわ。自分達が埋もれるほどの『ふわもこ』が降る中で、手と手を繋いで、ゆっくりと。足元に気をつけながら二人は歩き始める。
 一歩ずつ気を付けて、ゆっくり、確実に。
「注意して……わっ」
 それでも、体重を掛ければもふもふはその分沈み込むし、降り積もった『ふわもふ』に足をとられてしまうもの。周囲に散らばるぬいぐるみも、気になってしまって。
 ルーシーの足元でかくれんぼしていたふわふわに足元を取られて転んでしまったけれど、返ってきたのはぽふんとした感触。
 ルーシーが思わずぎゅっと閉じた目を開くと、大きなヌイグルミの黒い瞳が目の前にあった。
 どうやら、転んでしまったルーシーを上手に受け止めてくれたみたい。
「大丈夫ですか?」
「うん大丈夫よ、パパ」
 大きなヌイグルミが受け止めてくれたおかげで、何処も痛くはない。
 ユェーに助けてもらいながら、ルーシーは身体を起こして再び歩き出す。
「ルーシーちゃんと同じくらいの大きさの子達がいっぱいですねぇ。コレはクマのぬいぐるみ? こちらはうさぎ……」
 もふもふを掻き分けながら進んでいたら、いつの間にかぬいぐるみばかりが降り積もる一角に足を踏み入れていたらしい。
 クマのぬいぐるみが隙間から顔をのぞかせていたり、うさぎが空から降ってきたり。ルーシーにぽこっと当たりそうだったうさぎさんは、ユェーがもふっとキャッチして、そっと仲間の元へと返してあげた。
 「こっちはキツネさんに、ヒツジさん。みんなかわいい」
 くるくるくると、ルーシーの瞳に映るのはもふっと寄せ集まったヒツジさんの群れや、大きなキツネさんのぬいぐるみ。大きさも形もそれぞれ違うけれど、もふっとむぎゅっと集まった姿はとてもかわいくて。
 そんななか、ユェーはぬいぐるみの海の間からこちらをじぃーっと静かに見つめる黒いふわふわの雛のぬいぐるみに気が付いた。
「ふふっ、あの子に似てますね」
「本当、あのコに似てるわ」
 上に降り積もったぬいぐるみに押し潰されていた、黒いまるもふの雛。
 もふっと上に降り積もったぬいぐるみたちを掻き分けてまるもの雛ぐるみを救出したのなら、押しつぶされて少し不格好になっていた毛並みをふわりと整えて、ユェーはルーシーへと手渡した。
 まるっと膨れた黒い雛。ユェーとルーシーもよく知る『あの子』にそっくりで、雛ぐるみを見つめながら、二人で静かに笑い合った。
「この子はララちゃん似かな?」
「そのコはララに?」
 じぃーっと周囲に降り積もるぬいぐるみたちを見て見れば、まだまだ見つかる、誰かに似ているような子に、何処かで見覚えのあるような子。
「……結構かわいい」
 ワン! と今にも元気よく鳴きだしてしまいそうな牧羊犬。明るい瞳で、抱き上げるルーシーのことをじっと見つめている。
 親友のぬいぐるみによく似ていると言われると、途端に可愛らしく見えてしまうから、とても不思議だった。
「可愛い子は見つかりましたか?」
「ね、パパ。このコ連れて帰ってもいい?」
「おや、その子を?」
 ぬいぐるみたちは沢山いるけれど、ルーシーが気になるような可愛い子は居たのだろうか。
 ユェーが優しく問いかければ、「このコ」とルーシーが見せてきたのは、さっきの黒いふわもこ雛さん。
「ダメ?」と黒いふわもこ雛さんを見せておねだりするルーシーに、「勿論」とユェーは優しく微笑んだ。
「やった!」
「えぇ、お友達に加えてあげてくださいねぇ」
 ぱあぁと笑みを咲かせて喜ぶルーシーを見守っていたユェーもまた、嬉しそうに笑みを浮かべる。
 片手で黒いふわもこ雛さんを抱えて、もう片手はしっかりゆぇパパと繋いで。
 歩み出す二人に、また新しいぬいぐるみたちが「初めまして」を告げている。
 周辺をぬいぐるみさんたちに囲まれて、『ふわもふ』を巡るお散歩の一時。確かに世界の危機ではあるけど、少しくらい楽しんだって、構わないのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

炎獄・くゆり
【獄彩】


やだァ~~~ナニコレェ!!!
もっふもっふ!

高級絨毯みたぁ~~い
もっふりと地面に倒れ
メッチャ気持ちイイですよお
フィーちゃんも一緒に倒れましょお!
言えば飛び込んできてくれる軽い身体をむぎゅり受け止め
至福のひと時ですねぇ
ンン~……
このままちょっとお昼寝しません?
ぬいぐるみを枕に
フィーちゃんにぎゅうと抱きついたまま
おやすみなさぁ~~い

ふぁあ
さてと
満喫したしそろそろ燃やしますか

フィーちゃん、屋敷まで路作ってくれます?
ファイヤ~~~
右手を掲げて炎を噴出すれば
インクを伝うように炎の路が伸びていく
んっふ、今日もあたしの炎はキレイ
モチロン一番はフィーちゃんのおめめ!
その彩が見られてあたしもハッピィ~~


フィリーネ・リア
【獄彩】


あら、あらら
びっくりするくらいふわもふなの

ふかふかの心地にだいすきなあなたの聲が誘うから
くゆちゃんって半ば抱きつく形でえいって倒れ込んじゃう!
ふわもふとくゆちゃんとお昼寝
そんなの、そんなの
フィーが断れる筈ないの!
柔い心地に、あったかいあなたに茜色を双瞼を臥せて
うふふ、おやすみなさい

おはよう、そうだね
フィーたちもお仕事しなきゃ
まるでスイッチの切替のように

任せて、魔女のフィーに
屋敷の方へ可燃性インクを絵筆で豪快に奔らせる
くゆちゃんが燃やしてくれたらそれは
焔のカーペット

うふふ、何度見ても猛る赤は綺麗
だいすきって映すフィーの眸はきっと
手を繋いでフィーたちが歩く道に添える虹色
ねぇ、綺麗でしょ?



●高級絨毯(材料:ケサパサ、ぬいぐるみ、綿、その他ふわもふ)
「やだァ~~~ナニコレェ!!! もっふもっふ!」
 もふふふっっ!! っと、勢い良く降り積もっていた『ふわもふ』に飛びつくようにしてスライディングをかます人影に、降り積もったケサランパサランや白いふわふわがふわりふわりと盛大に舞い上がる。
 スライディング跡の残る『ふわもふ』の海。周辺に着地する予定だったケサランパサランたちも、突然舞い上がった仲間たちに何が起こったのかと、慌ててもっふと上に避難!
 スライディングをしたのが誰かなんて確かめようにも、張本人は『ふわもふ』の海に沈んで特徴的なピンクの髪しか見えなかった。
「あら、あらら。びっくりするくらいふわもふなの」
 よいしょっと、丸くて大きな雀のぬいぐるみを両手で持って脇に除けながら。ゆっくりと道を作って、『ふわもふ』から辛うじてその姿を覗かせているピンク髪に近づいていくのは、フィリーネ・リア(パンドラの色彩・f31906)。
 見た目以上のふわもふ具合に驚きながらも、もふもふと感触を楽しみながら、『ふわもふ』の海に穴を開けて落っこちた大好きなくゆちゃんこと、炎獄・くゆり(不良品・f30662)の元へと向かって行く。
「高級絨毯みたぁ~~い」
 『ふわもふ』の海から勢い良く起き上がったくゆりは、再びもっふりと地面に倒れ込む。
 もふんっと身体を受け止める『ふわもふ』の感触が何とも心地良い。
 高級絨毯? 埋もれてみたいけれど、きっと礼儀や作法が厳しく求められるからノーサンキュー!
 作法も礼儀もお行儀も、纏めて束ねて、着火剤へ! フィーちゃんと眺める綺麗な色彩の材料に早変わり。
「メッチャ気持ちイイですよお。フィーちゃんも一緒に倒れましょお!」
 きっと、大量に『ふわもふ』が積もっているいまだからこそできること。だから、楽しむのなら今のうちに。
 近づいて来たフィリーネにそう誘いかければ、気持ち良さそうなふかふかの心地に、それに、他でもない大好きなあなたの聲だから。
「くゆちゃんっ」
 『ふわもふ』に埋もれてゴロゴロしていたくゆりに半ば抱きつく形で、えいっとフィリーネは倒れ込んだ!
 飛び込んでくるフィリーネの軽い身体をむぎゅりと受け止めたくゆり。
 そのまま顔を上げるフィリーネに、にこりと笑いかける。
「至福のひと時ですねぇ」
 軽く自分たちの身体を受け止める『ふわもふ』の海に、胸元にはむぎゅっと抱き着いてくるフィリーネが。
 これを至福のひと時と言わずして、他に何と表現するのだろか。
「ンン~……。このままちょっとお昼寝しません?」
「そんなの、そんなの。フィーが断れる筈ないの!」
 断れないのに、くゆちゃんずるい。むーっと頬を膨らませながらも、次の瞬間には温かいくゆりに、自然とフィリーネの双眸も下がってくる。
 柔い心地に身を委ねながら、茜色は瞼の向こう側へ。
 くゆりもまた、むにーっと柔らかぬいぐるみを枕に、フィリーネにぎゅうっと抱き着いたまま、
「おやすみなさぁ~~い」
「うふふ、おやすみなさい」
 おやすみなさいを告げ合えば、あっという間に夢の世界。

●炎のカーペット(材料:フィーちゃんのインク、くゆちゃんの炎)
「ふぁあ。さてと、満喫したしそろそろ燃やしますか」
 ふわふわに抱かれて、お昼寝から目覚めたくゆりは伸びをしながら身体を起こす。
 周りを見てみれば、お昼寝前よりも少し『ふわもふ』の海が高くなったような。
「あれ、フィーちゃん?」
「フィーはここなの」
 眠る前は確かに抱きしめていたフィリーネ。でも、起きて見れば感覚はあるのに、姿が見えない。
 呼びかけてみれば、身体の上をデコレーションしていた白いふわふわを巻き上げながら、もふっとフィリーネが顔を上げた。
「あっら~~。そんなところに! フィーちゃんおはようございます~~」
「おはよう、そうだね。フィーたちもお仕事しなきゃ」
 ぎゅっと身体を起こせば、此処から先はお仕事の時間。
 まるでスイッチを切り替えるように、意識を切り替えて。
 お遊びの時間は、お仕事が終わってからのお楽しみ。
「フィーちゃん、屋敷まで路作ってくれます?」
「任せて、魔女のフィーに」
 虹色の絵筆に抱かせるのは、可燃性のインク。
 屋敷の方へと道を開くように、豪快に絵筆を奔らせて。『ふわもふ』たちにインクを染み込ませていく。
「くゆちゃんが燃やしてくれたら、焔のカーペットね」
「それ、ファイヤ~~~」
 くゆりが右手を掲げて炎を噴出すれば、ゆらゆらメラメラとインクを伝う様に、伸びていくのは炎の路。高級絨毯が、炎のカーペットに早変わり!
 夜空まで燃やしてしまうかのように、上へ上へと手を伸ばして。
 綿を食み、ぬいぐるみをパクっと丸呑みにして。
 ゆらりと踊るように燃え広がる『ふわもふ』たちに、慌てて逃げていくケサランパサランの姿。
 火の爆ぜる音と、微妙に色彩を変える炎の揺らめき。あの日と変わらない彩を抱いた炎が、二人の目の前で再びその姿を見せていた。
「んっふ、今日もあたしの炎はキレイ。モチロン一番はフィーちゃんのおめめ!」
「うふふ、何度見ても猛る赤は綺麗ね」
「その彩が見られてあたしもハッピィ~~」
 二人の大好きと大好きが揃ったのなら、手を差し出して、しっかりと繋いで。
 だいすきって映すフィーの眸はきっと、手を繋いでフィーたちが歩く道に添える虹色なのだから。
「ねぇ、綺麗でしょ?」
「モッチロ~ン! とってもキレイ!」
 ゆらゆらと炎が消えたのなら、手を繋いで炎が切り開いた道の先へ。
 指先に伝わる温もりの持ち主と微笑み合えば、二人一緒に笑い合う。大好きな彩は、きっとまた見られるから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーファス・グレンヴィル
六架(f06485)と

うわあ、歩き辛え
積モフを踏み締めて歩く
目指す先は屋敷だけど
流石に身動きが取れねえ
腰まであるふわもふに溜め息ひとつ

手で掻き分け少しずつ進む道
空から降ってきたぬいぐるみが
頭上にクリーンヒットし動きを止める

……、

無言でそれを鷲掴む
隣で黒竜のナイトが笑ってる気がする
溜め息吐きながら見上げれば
同じような洗礼を受けてる六架の姿
思わず噴き出して、けらけらと笑った

愛しそうな微笑みを見て
大事なヤツなんだな、なんて
わざわざ指摘もしねえけど
ほら、六架、これも持って帰るか?
と頭上にぬいぐるみをぽんと置く
ソイツと一緒に遊んでやれよ

首元に忍ばされたケサランパサランに
気付くのは、もう少しだけ後の話


栗花落・六架
難航するルーファ(f06629)の背を見つめ
ふわり。奇形の翼で宙を舞う
陸が駄目なら空かなと思って
ケサランパサランを捕まえた黒猫がクシャミをひとつ

先行し羽ばたきで彼の負担を軽減出来たらと
大丈夫?
振り返るとぬいぐるみの洗礼を受けた渋い顔
その場に留まり笑っていると頭に洗礼を受けた

……。

黒猫が笑い
彼らも笑うならきっと俺も笑ってしまう
俺には勿体ないくらい穏やかな時


ぬいぐるみ好きの友人がいるんです
その人を想い愛おしく笑み
一番手触りの良いぬいぐるみを手に取る
ルーファの優しさで頭に乗せられたぬいぐるみ
ありがとうと微笑み受け取る
お返しにそっと
ケサランパサランを首元に忍ばせ
君たちに幸福が訪れますようにと目を伏せた



●君に幸あれ
 グッと降り積もった積モフを踏みしめたのなら、体重を掛けた分だけ沈み込んだ。
 しかし、少しでも力を緩めると次に返ってくるのはもふんという軽い反発の感触。
 靴底を通してふわふわとした不安定な感覚がありありと伝わってきて、歩き辛いことこの上ない。雪のように踏めば踏んだ分だけ固まるのなら良いのだが、『ふわもふ』は固まる素振りをみせない。
「うわあ、歩き辛え」
 腰まである『ふわもふ』に埋まりながら、ルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)は溜め息ひとつ。
「目指す先は屋敷だけど、流石に身動きが取れねえ」
 踏みしめればもにゅんと跳ね返ってくるばかりで、不確かな足元。確かに屋敷は視界の中にあるのに、進んでも進んでもちっともその姿が近くならない。
 それどころか、不意に現れる地面近くに積もった大きなぬいぐるみやクッションのせいで、転んでしまいそうになることも。
 一度歩みを止めたルーファスは、遠い目をして屋敷の門を見つめていた。
「陸が駄目なら空、でしょうか」
 ふわり、と。夜空の色に染まる翼が、空から降ってくる『ふわもふ』を遮るように広がった。
 難航するルーファスの背中を見つめるのは、栗花落・六架(紅线・f06485)だ。
 陸が進み辛いのなら、空から。降り続けている『ふわもふ』にさえ気をつければ、陸路よりも攻略は簡単なのだろう。
 ケサランパサランや白い綿は当たったところで平気だし、時折降ってくる大きなぬいぐるみや布団に気を付ければ良いだけの話。
 黒染の、しかし不揃いで歪な背中の翼。片翼は大きく真夜中を抱き、もう片翼は小さく薄明を抱いている。
 翼を広げて空を往けば、降ってくるケサランパサランが気になったのだろうか。
 六架の肩に器用にしがみついている黒猫が、片足でちょいちょいとケサランパサランにちょっかいを翔け。次の瞬間には、目にも止まらぬ速さで振ってくるケサランパサランを捕まえていた。
『――ッぷし』
 と、不意に間の抜けるようなくしゃみひとつ。ケサランパサランのもさもさが鼻に触ってむずがゆかったのか、黒猫が何度か鼻を摩っている。
 六架の前を歩むルーファスとの距離が、徐々に開いてきているような。
 手で掻き分け、少しずつ少しずつ。牛歩の歩みなのは承知の上、歩み辛いのだから仕方がない。
 一歩ずつ着実に歩みを進めるルーファスの方が、着地点として最適だと判断したのだろうか。
 空からゆーっくりと音もなく迫るのは、まるっとした灰色の物体。
 ルーファスの頭上を着地点に決めて、空から盛大な嘴のアタックを――。
『ピイィィ!!』
 空から降ってきたぬいぐるみがルーファスの頭上にクリーンヒット!
 盛大に鳴き声を上げて、ルーファスの頭にへばりついた。
「……、」
 思わず動きを止め、むんずと頭に居座るソレを無言で鷲掴む。
 押すと鳴くタイプのぬいぐるみのようだ。
 たまたまぬいぐるみのセンサー部分が頭に当たったのだろう。ただの鳴き声が、まるで笑い声のようにも聞こえてしまう。
 ペンギンだけじゃない。ルーファスの隣で、黒竜のナイトも笑っている気がする。
「大丈夫?」
 何時の間にやら、追い抜かしていたらしい。
 『ふわもふ』を吹き飛ばしてルーファスの負担を少しでも軽減出来たらと前方を飛行していた六架は、後ろからの話し声が途切れたことを不思議に思い――振り返る。
 するとそこには、ペンギンのぬいぐるみを鷲掴みにしたまま、渋い表情で固まっているルーファスの姿が。
 黒竜のナイトも、笑う様にその身体を小刻みに揺らしている。ぬいぐるみの洗礼を受けたことは、火を見るよりも明らかだった。
「当たったんですね」
 渋い顔をして咎めるように。ペンギンの雛ぬいぐるみをむぎゅっと鷲掴みにする様子が面白くて。
 その場にふわりと翼を広げて六架も笑っていたら――ふと、頭に何かが当たるぽこっとした感触がした。
「……。」
 無言で首に手を伸ばせば、首元にひっかかっていたピンク色のペンギンの雛のぬいぐるみが現れる。
 憎らしいほどに明るい笑顔を向けてくるペンギンの首根っこを一言も発しないまま摘まみ上げれば、黒猫やルーファスが堪えきれないように笑い声を上げた。
 先ほどまではルーファスが受けたぬいぐるみの洗礼を笑っていたはずなのに。これでは、どちらも似たようなものだろうから。
 次はいつぬいぐるみの洗礼が起こるのだろうか。そんなことも考えずに呑気に笑っている彼らを見ているうちに、六架の頬も自然と緩まっていまう。
 そう――六架にとっては、勿体ないくらい穏やかな一時だった。
「ぬいぐるみ好きの友人がいるんです」
「なら……。ほら、六架、これも持って帰るか?」
 ひとしきり噴き出して笑い合った後、再び進み始めた二人だったが、ふと道の途中で六架が口を開いた。
 ぬいぐるみの好きな友人を思い浮かべ、愛おしそうな笑みを浮かべる六架。折角なら、一体くらいお土産として持ち帰ってみるのも良いかもしれないと。
(「大事なヤツなんだな」)
 なんて、わざわざ野暮なことを指摘するルーファスでは無いのだけれど。
 愛しそうな微笑みを浮かべる六架に、言葉多く語らずとも、相手が大切な人であることには間違いないだろうから。
 降り積もっていた中でも一番手触りの良い、ゆるっと溶けかけたデザインが可愛らしい――狸のような、猫のような。そんなふかふかのぬいぐるみを選んで抱えた六架。
 それから、もう一つ。ルーファスは六架の持つタヌキ猫ぬいぐるみよりも一回り小さい子タヌキ猫を見つけると、それをそっと六架の頭の上に乗せるのだった。
「ソイツと一緒に遊んでやれよ」
「ありがとう」
 言葉の代わりに、行動で。ルーファスの優しさを受け取った六架は、お返しに、と。
 彼に気付かれぬように、ケサランパサランを首元に忍び込ませた。
 ルーファスの首元を居場所に定めたケサランパサランは、早くもくったりと寛ぎ始めているようで。
(「君たちに幸福が訪れますように」)
 一人そっと目を細めれば――彼が首元の存在に気付くのが、今から楽しみなのだから。
 歩くたびにもふっと揺れ動く毛玉の姿が一つ。少しの間観察していた六架だったが、ルーファスが気づく素振りは全くなくて。
 首元に忍ばされたケサランパサランにルーファスが気付くのは――もう少しだけ後の話。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セリオス・アリス
【双星】◆
邪魔だないっそ燃やすか?
…って思ってたけど
アレスみたいな犬のぬいぐるみを見つけて視線が釘付け
城にいるやつそっくりだ
1つくらいなら持って帰れるか?

ん?どうした…って、そんなにてるかぁ?
笑い、表情を真似てみて
楽しいけど…なんかこう…
もやっとしたから
アレスって一声呼んで
その手を自分の頭にのせる

お前それは狡いだろって
言えない代わりに一言だけ
…ばぁか

ああでもどうせなら
俺もアレスと犬を並べてぇ
どーっとたくさんいたらかわいいんじゃねぇか?
どーっと…ってアレス!?
山になったアレスわん(仮称)をどんどん掘って
埋もれるアレスを探しだす
ふ、ふはっ!
並べてみてもやっぱ似てるな
どれもいいけど
俺も、お前が特別だ


アレクシス・ミラ
【双星】


セリオスなら一気に燃やすかって言い出しそうだな…
なんて考えてたら
…ん?
黒猫のぬいぐるみがふわーっと降りてきたのでキャッチ
…何だか城にいる子に似ている
それと、彼にも

セリオス、こっち向いて
黒猫さんと彼を見比べて
…うん、やっぱり似ている
愛らしさに目を細め
連れて帰ろうかなと黒猫さんを撫でもふ

…していたら
僕の手を自分の頭に乗せる彼にきょとん
そのまま髪を撫で
柔く頬にも触れてみる
(この子の撫で心地も好きだけど)
…君は特別だな

どーっと?何だいそれ…って
わあぁ!?
犬のぬいぐるみの雪崩に埋もれるも
発掘されて安堵
はあ…すまない、助かったよ
…セリオス?

…ほんのり、頬に熱を感じたので
言葉の代わりに撫でておいた



●揃いの『特別』
 目の前に積もった『ふわもふ』の海に、『ふわもふ』たちは上空から終わりなく降ってきていて。
 まともに片づけ出したらキリがない。これを手っ取り早く片付けるのなら、どんな方法があるだろうか。
 そう問われれば、浮かんでくる選択肢は大きく分けて二つほど――燃やすか吹き飛ばすか、である。
(「邪魔だな。いっそ燃やすか? ……って思ってたけど」)
 二つ分けたうちの前者を選択して……何なら、あと数秒後には着火する気満々だったセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)は、しかし、降り積もった『ふわもふ』の中にとあるぬいぐるみの存在を見つけ、寸前のところでぬいぐるみたちに火をつける手を止めていた。
(「城にいるやつそっくりだ。1つくらいなら持って帰れるか?」)
 着火する気満々であったセリオスの気を一瞬で変化させた猛者といえば――彼の視線の先に、その正体が。
 セリオスがじっと見つめる先に、アレスみたいな犬のぬいぐるみの存在が。
 くしゃっとしたゴールドの毛並みに、透明な青き瞳が青空のよう。何処となく、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーを思わせるような。そして、アレスを犬化させたら、あんな風になるような。
 一つくらいなら持って帰れるだろうか考え始めたセリオスの脳内から、燃やすという選択肢はいつの間にか掻き消えてしまっていた。
(「セリオスなら一気に燃やすかって言い出しそうだな……」)
 付き合いが長いだけあって、相手の考えそうなことは手に取るように分かるもの。
 犬のぬいぐるみに視線が釘付けなセリオス。しかし、少し前は目の前の『ふわもふ』に着火寸前だったことも、恐らくアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)の想定範囲内。
 一気に燃やすのも時間のうちか。しかし、今その気はなくなったのだろうか。なんて考えていたら、ふわーっとアレクシスの目の前に降りてくるぬいぐるみの姿が。
「……ん?」
 ふわーっとまるで何かに導かれるように、アレクシスの目の前に降りて来たのは、夜空を纏った黒猫のぬいぐるみ。
 そっと両手で受け止めるようにキャッチすれば、すとんとアレクシスの手のひらにお座りして。
(「……何だか城にいる子に似ている。それと、彼にも」)
 おすまし顔で、静かに佇む黒猫のぬいぐるみ。誰かに似ているような、見覚えがあるような。
「セリオス、こっち向いて」
「ん? どうした……って、そんなにてるかぁ?」
「……うん、やっぱり似ている」
 手元にちょこんと佇む上品な黒猫さんと目の前のセリオスを見比べること、数度。
 やっぱり似ている――というより目の前の彼とそっくりだと、アレクシスは愛らしさに目を細めた。
 紫がちらつく黒い毛も。青星が二つ、静かに瞬く双眸も。目の前の彼を猫に喩えたかのようで。
 連れて帰ろうかな、とアレクシスは黒猫さんを撫で撫でふり。撫でてもツンとおすまし顔もまた、何処か彼に似ているようだった。
(「楽しいけど……なんかこう……」)
 黒猫を真似ておすまし顔でアレクシスを見つめていたセリオス。しかし、アレスの視線は、先ほどから手の中の黒猫にばかり注がれてしまっている。
 自分よりも、手元の黒猫さんにご執心のよう。撫でるのも目の前の黒猫なら、話しかけるのも目の前の黒猫ばかり。アレスがちっともこちらを見ないことに、何となくもやもやとしたから。
「アレス」
 彼の名前を呼んで――そして、セリオスはそっとアレクシスの手を取ると、自分の頭の上へと導いた。
 突然、手を取り頭へと誘ったセリオスに、アレクシスはきょとんと眼を丸くしてセリオスのことを見つめている。
 でも、何も言わなくとも、何となくセリオスの望むことは伝わってきたから。
 そのまま真っ直ぐに下へと伸びるセリオスの柔らかな長髪に指を絡ませて。指先を滑らせて、梳くように撫でていく。そっと、優しく。
 指先が頬まで下っていったのなら、柔らかく頬にその指を添わせるのだ。
(「この子の撫で心地も好きだけど」)
 やはり、特別なのは目の前の君自身だから。
「……君は特別だな」
 アレクシスが思ったままの素直な感想を口に出せば、スッと横に逸らされる視線。
 少し間をおいてセリオスから返ってきたのは、「……ばぁか」という小さな囁き。
 お前それは狡いだろって、そうは言えない代わりの一言だった。
「ああでもどうせなら、俺もアレスと犬を並べてぇ」
 アレスが黒猫と自分を並べたのだ。
 どうせなら、と呟いたのはセリオスだった。決して、さっきアレクシスが黒猫と自分を見比べていた姿が羨ましくなったのではない。決して。
「どーっとたくさんいたらかわいいんじゃねぇか?」
「どーっと? 何だいそれ……ってわあぁ!?」
「どーっとって、こう、どーっと……ってアレス!?」
 アレスを中心に犬のぬいぐるみをどーっと並べたのなら、きっととても可愛く見えるはず。
 そう思っただけの何気ない発言だったのだが、神か何かがセリオスの発言を丁度見ていたのか――狙った様にぬいぐるみの山の一部が崩れ、アレクシスと共にどーっと雪崩になった!
 慌てて救出しようと、セリオスは犬のぬいぐるみを掘っていくのだけれど。
「全部、何処となくアレスに似てる?」
 アレクシスを巻き込んだ犬のぬいぐるみは、どれも何処かアレクシスに似ているような。
 金の毛並みに、明るい表情に。犬のぬいぐるみ――否、アレスわん(仮称)をどんどん掘って、セリオスはようやくアレスわん(本人)を発掘する。
「はあ……すまない、助かったよ」
 ぷはっとアレスわんの真ん中から、身体を引きずり出して息を吐いたのはアレクシス。
 セリオスに引っ張られながら抜け出したら、
「ふ、ふはっ! 並べてみてもやっぱ似てるな」
 そっとセリオスが自分の隣にどーっとアレスわん(仮称)を並べていたことに気付く。
 ……やっぱり、犬のぬいぐるみとどことなく似ているような。
「どれもいいけど」
「……セリオス?」
「俺も、お前が特別だ」
 真っ直ぐに青を射抜く瞳、気まぐれな黒猫の本音。
 ほんのり頬に熱を感じたアレクシスは、言葉の代わりに、もう一度セリオスの頭を柔く撫でた。
 ――今はもう少しだけ、この特別な時間を。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

真宮・響
【真宮家】で参加

うわ、もふもふが大好きな奏が定住希望しそうな状態だ。酒飲み同士の願望が合わさったのも突っ込みたいが。奏がこの場を切り抜けられるかどうか・・・高速ダッシュで奏がふわもふに埋まりにいったよ。

私もふわもふは嫌いではないが、こんなに多いのは流石にね。何より足元がふわもふだらけじゃまともに歩けないじゃないか。可哀想だが、赫灼の闘気でふわもふを吹き飛ばす。奏がふわもふに埋まって動けなくなってたら手を引っ張って救出。まだ奏が夢の中だったら頬を抓る。まあ、少しふわもふが降るならサプライズだが、量が多過ぎる。さて、先に進んで解決の糸口を見つけようかね。


真宮・奏
【真宮家】で参加

ふわもふは至上の癒しですよね!!何か変に意気投合してふわもふ降り放題になってしまったようですが。・・・私に取っては楽園に来たと同然です!!いざ、ふわもふの群れへ!!(超高速ダッシュでふわもふの群れへ飛び込む)

ふわもふの真ん中で縫いぐるみを抱いて絢爛のクレドでくるくると踊ります。そんな事をしている内に降ってくるふわもふに埋まってしまいます。まあ、これでも幸せなんですが、窒息する前に母さんに救出され頬を抓られて正気に戻ります。縫いぐるみを大事に抱えて先に進みます。ぬいぐるみはいずれ消えてしまうかもしれませんが、この世界にいる時だけは一緒にいたいな。宜しくね。


神城・瞬
【真宮家】で参加

お酒を飲みたいのも良い景色を見たいのも良く分るんですが。このカクリヨファンタズムともなると混沌としたものとなりますか・・・あ、奏が物凄い速さでふわもふが集中的に降っている場所に飛び込んで行きました。この状況だと我を失いますよね。

このままでは先に進めないので、物凄く荒っぽいですが、凍てつく炎でふわもふを焼き払います。ふわもふの群れから救出されてぬいぐるみを大事そうに抱える奏の頭を撫でて先に進みます。何か道は険しそうですが、とにかく行きましょうか。



●もふもふパニック
「ふわもふは至上の癒しですよね!! 何か変に意気投合してふわもふ降り放題になってしまったようですが」
 本来の願い通りならば、生物(?)なケサランパサランだけが降る予定だった、このカクリヨファンタズム。
 しかし、骸魂と取り込まれた妖怪の願いが中途半端に合わさってしまったせいで、『ふわもふ』なら殆ど何でも降ってくるという異常気象に見舞われてしまっていた。
「……私に取っては楽園に来たと同然です!! いざ、ふわもふの群れへ!!」
 もしかしたら、光よりも早いかもしれない速さで――超高速のダッシュを決めて、そのまま『ふわもふ』の群れへダイブを決めたのは真宮・奏(絢爛の星・f03210)だ。
 勢いのままゴロンゴロンと『ふわもふ』の海を揺蕩えば、上も下も何処もかしこもふわもふまみれ!
 下には積もった『ふわもふ』がしっかり奏のことを受け止めてくれるし、上を見上げればゆーっくりと『ふわもふ』たちが奏の元へと舞い降りてきている。
 落ちてくるケサランパサランに手を伸ばせばじゃれるように奏の両手に纏わりついて、ちょっとくすぐったかった。
 ふわもふまみれのこの世界。世界の危機ではあっても、奏にとっては楽園に来たと同然。
 きっと移住可能だったのなら、即断即決していたに違いない。
「うわ、もふもふが大好きな奏が定住希望しそうな状態だ。酒飲み同士の願望が合わさったのも突っ込みたいが」
 ほろ酔いの発想の終着点が『ふわもふ』まみれの世界なのだ。どうしてこうなった。酒飲みファンタジーと呼ぶべきか。
 内心で突っ込みを入れつつも、テンション高く『ふわもふ』の群れに飛び込んでいった娘の姿を目にした真宮・響(赫灼の炎・f00434)はそっと頭を押さえている。
「奏がこの場を切り抜けられるかどうか……高速ダッシュで奏がふわもふに埋まりにいったよ」
 奏と『ふわもふ』を引き離しているうちに、自分たちまで『ふわもふ』の海に埋まってしまうかもしれない。
 考えられる上で最悪の結末だったが、大はしゃぎで降ってくるぬいぐるみをキャッチし、ゴロゴロと『ふわもふ』の上で転がる奏を見る限り、その結末が割と現実味を帯びてきているような。
 奏にとっては――否、『ふわもふ』を愛する全ての者にとっては悪魔のトラップ。
 奏が楽園から戻って来なければ、その時は頬を引っ張るなりして強制的にでも現実世界に連れ戻そうと決意する響だった。
「お酒を飲みたいのも良い景色を見たいのも良く分るんですが。このカクリヨファンタズムともなると混沌としたものとなりますか……」
 お酒を飲みたいのも、良い景色が見たくなるのも、生きて居る限り当然のこと。しかし、そんな些細な願いすらふとした拍子で世界の破滅に繋がってしまうのが、このカクリヨファンタズムという世界だ。
 ある意味無限大の可能性を秘めた世界で、これまた酒飲み同士の妙な願いが合わさって生れ落ちた産物――『ふわもふ』にはしゃぐ義妹の姿を眺めながら、神城・瞬(清光の月・f06558)はポツリと呟きを零す。
「……この状況だと我を失いますよね」
 もふりすとにとって、我を失うなという方が難しいかもしれないこの空間。
 『ふわもふ』たちの海を泳ぐように移動する義妹に、瞬も仕方ありませんね、と微苦笑を浮かべた。
「ふわもふで、本当に楽園みたいですね!!」
 テンションの上がるまま、身体が自然に動くまま。
 ふわもふの真ん中で、気付けば手の中に在ったもるふっとしたインコのぬいぐるみを抱いて、くるくると踊り始める奏。
 もふっとした不安定な足元すらも物ともせず、くるりと舞って、降ってくるぬいぐるみに手を伸ばして。
 『ふわもふ』に囲まれて幸せな奏の想いを感じ取ったのか――突然、局地的豪雨のように、どさどさと空から落ちてくる『ふわもふ』の数々。
 くるくると踊っていた奏は、あっという間に『ふわもふ』に埋まってしまった。
「ふわもふに埋もれるのも、ある意味幸せですね……!」
「私もふわもふは嫌いではないが、こんなに多いのは流石にね。何より足元がふわもふだらけじゃまともに歩けないじゃないか」
「先に進めないのは、事実ですからね。奏には悪いですが」
 埋もれてもなお、幸せそうな奏の声にやれやれと頭を振る響に、瞬は困ったように笑みを返した。
 奏は悪いけれど、数が多過ぎる上に、止む気配がない。顔を見合わせた響と瞬は、それぞれ『ふわもふ』を退けて道を造ることに決めるのだった。
「可哀想だが、世界の明暗が掛かっているからね!」
 降り積もった『ふわもふ』の中心で炸裂するのは、燃え上がった響の闘気。
 一度『ふわもふ』の山に向かって闘気を放てば、軽い『ふわもふ』は面白いくらいに吹き飛んだ。
 ポコポコと吹き飛ぶぬいぐるみやらクッションやらを見送りながら、響は山の中に沈んでいた奏を救出する。
「ほら、そろそろ戻ってきな」
 『ふわもふ』に埋もれていた奏の手を引っ張り――それでも、まだふわふわの夢に片足を突っ込んでいるよう。
 だから、むにーっと響は奏の頬を抓って現実世界に呼び戻すのだった。
「……はっ!?」
「お、戻ってきたか」
「ぬいぐるみと遊ぶ一時は楽しかったですか、奏?」
「はい!」
 ハッキリと答える娘の姿に、響は苦笑を浮かべながらも、「楽しめて何よりだね」と返すのだった。
「ここはそろそろ、良いでしょうか」 
 炎で『ふわもふ』を焼き払う。それは少し荒っぽいかもしれないが、その分手っ取り早い。ゆっくりしていては、全てが『ふわもふ』の海に埋まってしまうかもしれないのだから。
 青白い凍てつく炎で『ふわもふ』を焼き払い道を作っていた瞬も、一度作業する手を止め、救出された奏の頭を優しく撫でていく。この周辺に積もっていた『ふわもふ』はある程度その量を減らしていた。
 頭を撫でられた奏は嬉しそうに目を細めながら、大事そうにぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる。先ほど、山から一緒に引っ張り出されたお気に入りのぬいぐるみである。
「この世界にいる時だけは一緒にいたいな。宜しくね」
 突然湧いて来たぬいぐるみたち。いずれ消えてしまうかもしれないけれど、今この時だけは。
「さて、先に進んで解決の糸口を見つけようかね」
「はい。何か道は険しそうですが、とにかく行きましょうか」
 少しふわもふが降る程度ならサプライズ。だけれど、それにしては量が多過ぎる。
 元凶を倒して延々と降り続けている『ふわもふ』たちを止めるべく、三人は屋敷に向かって進み始めるのだった。
 行く手を阻む『ふわもふ』の群れは――響が吹き飛ばし、瞬が焼き払うから、心配する必要もない。
「それにしても、これを見上げながら酒盛りは――どうなんだろうねぇ?」
「感性は人それぞれですから、中には見ながら飲みたい人もいるのではないでしょうか」
 元凶となった妖怪と骸魂に対する見解を交わしつつ、進む道のりは順調そのものだった。
 縁側から見上げる光景は、果たしてどのようなものなのだろうか。息を飲むほど美しい光景か、それとも、「どうしてこうなった」と突っ込みたくなるような混沌か。
 全て、屋敷に辿り着けば分かることだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
 もー腰まで積もってるなんて。海の水でも陸を覆い尽くすのは難しそーなのに。すばら。

 ある時にハンドパペットを習って以来、ちょくちょくちくちくしてたら仲間は増えたけど、なかなか遊べてなくて。この機会にまとめて相手しちゃお。同士達で溢れる海へ愛犬達を一斉に放ち、自分もダイブ。

 愛犬達は、この大海に埋もれてる事で起こる摩擦音なんかを聞き分けて、それぞれの位置までばっちり把握するので平気。なんかね、情報は沢山でも音だと処理できるってゆか。

 皆かわいーけど、愛着が違うから自然とうちの子愛でてしまう。でも行き先が頭から抜けてたや。。全員を抱っこ出来たところで偶々辿り着けてますよーに……。


連携、アレンジ歓迎



●ハンドパペットたちともふの大海
 海が七割。陸が三割。地球の半分以上を覆うのが海水であれど、陸全てを覆い尽くすことは出来なくて。
 しかし、目の前の光景はどうだろう――腰まで降り積もった『ふわもふ』が十割。そして、その先にちょこんと見えてるお屋敷の大きな門。
 このままふわふわと降られてしまっては、何れ背の高い建物まで『ふわもふ』で覆い尽くされてしまう。
 緩やかな破滅がゆっくりと。しかし、着実に進んでいるのも、『ふわもふ』の一つ一つが物体だからか。そして、時々ごろっと大きな布団やクッションやらが紛れているものだから、『ふわもふ』の侵略に勢いが加わっているのだろう。
「もー腰まで積もってるなんて。海の水でも陸を覆い尽くすのは難しそーなのに。すばら」
 聞いていたけれども。実際に目にすると、びっくりしてしまう積モフの光景。そして、想像以上に歩き辛い。
 ノネ・ェメ(ο・f15208)も驚きの速さで、愛すべきモフたちは侵略を進めているらしい。思わず最後に本音が漏れてしまったのも、仕方のないこと。
 嗚呼。素晴らしきかなこの世界。
 幾らモフが世界を破滅に導こうとも、彼らは偶々喚び出されただけなのだ。降り積もった『ふわもふ』たちに罪はない。
「ハンドパペット、遊ぶ機会がなかなかなかったし、この機会にまとめて相手しちゃおっか」
 何時だったかのハンドメイドマーケットで習った手作りのハンドパペットたち。
 一匹目のハウンドドックの猟犬をきっかけに、ちょくちょくちまちまと仲間たちを増やしていたら、いつの間にかかなりの数になってしまっていた。
 これだけの数の愛犬達と一緒に遊ぶ機会はなかなか無くて。
 だからノネは、良い機会でしょと、犬やふわふわ――仲間たちの溢れる海に、愛犬を一斉に放った。
 もふんと『ふわもふ』の海に潜ったり、揺蕩ったり。各々好きに過ごし始める愛犬達。最後にノネがダイブすれば、ふわふわと盛大にケサランパサランや綿たちが舞い上がった。
「いざ、もふの海へ!」
 自由自在に大海を揺蕩っている愛犬達。それでも、その一匹一匹の定位置をノネはしっかり把握している。
 もしゃっと沢山のケサランパサランに纏わりつかれている子。クッションに乗り上げて夜空をのんびり見上げている子。
 摩擦音や物音なんかを聞き分けて、把握はばっちり、抜かりはないのである。
「なんかね、情報は沢山でも音だと処理できるってゆか。ま、ここは楽しむ一択で。――ぁ、ケサパサに負けた? 恐るべし、ケサパサたち」
 情報の濁流も不思議と処理できてしまう。処理過程の理論や理屈よりも、今はモフを楽しみたいノネ。
 ハウンドドッグと共にパクっと綿を食べる真似をしたり、ケサランパサランに押し潰されている愛犬を救出したり。
「皆かわいーけど、やっぱりうちの子が一番?」
 ぬいぐるみたちと戯れつつも、やっぱり愛らしいのは自分のハンドパペットだ。
 一から作ったハンドパペットたち。愛着が違うのだ。うちのこかわいーになってしまうのも仕方がない。
「……あ。でも、でも行き先が頭から抜けてたや」
 もふの大海を漂っていた愛犬達を一匹ずつ回収しつつ――モフと戯れていたところで気づく。
 あ、行き先確認するの忘れてた、と。
「偶々辿り着けてますよーに……。ハンドパペットの神様に頼んどこー……」
 いち、に、さん……。オッケー。迷子の子は居ない。全員回収出来たところで、大きなクッションをもっと蹴って。
 ふわっと浮上すれば、ノネの願いが通じたのか、お屋敷の門がすぐ近くにあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

重松・八雲
【守】◆
(立ちはだかるふわもふに無邪気&好奇心溢れる笑顔向け)
ふわもふの山とは、実に困った道程じゃな!(進み難い、実に進み難い――足場が悪くて歩き難いというより、寧ろ誘惑が凄くて離れ難い的な意味で)
天国の様な心地ではあるが、うむ、分かっておるとも!気合を入れて参(もふ)ろうぞ!
(厳つい見目に反し無類のもふりすと)

(言うや否や意気揚々と千切っては投げならぬもふっては投げ!)
む、今何か違うものが混ざっていた様な?
(振り返れば、うっかりもふっと伊織の顔面に当たったらしいモノが目に入り)
おお、大当たり(雛ぬい)が(顔面に)大当たりしたか!
儂もたぬこさま風ぬいとかほしいのうー!(更に気合入れ掻き分け!)


呉羽・伊織
【守】◆
(ふわもふと可愛い女子の組み合わせならまだしも七十歳児――あんまりな絵面に軽くくらりとしつつも)
ウン、屋敷を目前にして、あらぬ方向にほいほい寄道したり迷子ったりとかやめてくれよ!
うっかり埋もれて本当に天国送りになったら笑えないからな――って今何てった、もふろうって幻聴が聞こえたケド!?

(とりあえず頑張ってもっふもふと掻き分け――てたら、爺サンからの流れ弾もとい流れ毛玉が勢い良く顔面にもふっと)
ふへ…!(投げ返そう、と思ったらお供のぴよこ似の綿毛雛ぬいで、思わず見つめあいフリーズ)
う…コレは…っ(序でにみつけた亀と合わせそっと懐にしまった!)
趣味と実益兼ねてるとかホント幸せな爺サンでー!



●運命の出会い(流れ毛玉)
 ふわっふわもっこもこにはある種の人をとらえて離さない不思議な魅力がある。
 何なら、このモフと共になら世界の終わりを迎えて良いのではないかと思えてしまうくらい――……。
 しかし、どうにかして理性を取り戻して寄り道もほどほどに。進んでいかなくては、遠からず世界が崩壊してしまうのだから。
「ふわもふの山とは、実に困った道程じゃな!」
 その瞳の煌めきや、まるでぬいぐるみを目にした少女のように無邪気で。
 その表情の純粋さや、まるで未知への冒険に憧れる少年のように好奇心に溢れていて。
 ああ、困った。実に困ったとワザとらしく言ってみせるのは重松・八雲(児爺・f14006)。言ってみせるも言葉の端々から、隠しきれない嬉しさが滲み出てしまっている。
 誘惑のままに近くの大きなテディベアさんを抱きかかえれば、心地の良いもふっとした感触が八雲を受け止めてくれる。
 嗚呼、好きかな。天国とは、まさに此処のことをいうのではないだろうか。
(「ふわもふと可愛い女子の組み合わせならまだしも、七十歳児とクマ――あんまりな絵面じゃないか……」)
 夢見心地でクマを抱きしめる八雲を見つめ、軽い目眩を覚えたのは呉羽・伊織(翳・f03578)だった。
 目の前の光景をどうにかして、大きなクマを抱きしめる幼気な少年に変換しようとしても――脳内フィルターが故障しているのか、目に入ってくるのは、クマを抱きしめる七十歳児。
 それも、見知らぬ他人ではない。伊織の知人である。よく知った仲である。
 (少なくとも伊織にとっては)残酷な真実に軽くくらりとしつつも、どうにかして思考を切り替えた……否、半ばヤケクソになって叫んだ。
「ウン、屋敷を目前にして、あらぬ方向にほいほい寄道したり迷子ったりとかやめてくれよ!」
「天国の様な心地ではあるが、うむ、分かっておるとも! 気合を入れて参(もふ)ろうぞ!」
 誘惑は無限大。屋敷を前にして迷子になっていたとか、目の前の七十歳児ならやりかねない。
 釘をさす意味でそう言った伊織だったが、八雲からの返事は……モフるとか愛でるとか。何処か、別の意味を孕んでいたような。
「うっかり埋もれて本当に天国送りになったら笑えないからな――って今何てった、もふろうって幻聴が聞こえたケド!?」
「……気のせいじゃろう!」
 たっぷりしっかり三秒間。視線の先はクマさんに、そして妙にハキハキと返ってくる返事。威勢が良すぎて、逆に不信になってしまう。
「まーあ、とりあえず頑張って除モフと行きますか」
「もふっておったら、屋敷に着くじゃろう。それにしても、歩き辛いの」
「それ、ほんとーに文字通りの意味か?」
 言葉通りの、「足元が不安定で歩き辛い」というよりは、「誘惑が多くて歩き辛い」という意味に聞こえて、思わず振り向いた伊織。しかし、八雲は豪快に笑うばかりである。
 そして伊織からの更なる追撃を躱すかのように、八雲は意気揚々ともふっては投げ、もふっては投げ!
 もふるのは例え一瞬であったとしても、瞬時にそのもふり心地を判断するのがもふりすと。
 もふり心地が良いものは、投げずにそっと傍に置いておいた。伊織にはバレて居ない。そのはずである。
「む、今何か違うものが混ざっていた様な?」
「ふへ……!」
 ぶん投げた中に、何か黄色い物体が紛れ込んでいたような。
 不思議に思った八雲が振り返れば、ちょうどその黄色い毛玉が伊織の顔面めがけて一直線に飛翔して――あ、クリーンヒット。
「爺サン、気を付け……」
 めきょっと顔面に張り付いた黄色を引っぺがし、八雲に投げ返そうと思った伊織。
 しかし、よくよく見て見れば、何か見覚えがあるような?
 そう、伊織のお供であるぴよこによく似ている、綿毛雛ぬい。交わる瞳と瞳。そして――いおりとぴよぬいの刻が止まった。
「おお、大当たりが大当たりしたか!」
 雛ぬいが顔面にダイレクトアタックを決めたのだ。大当たり以外の何物でもない。
 ケラケラと外野こと八雲が囃し立てるように笑っているが、八雲の笑い声は伊織の耳元まで届いてはいない。
 あるのは唯、ぴよこぐるみの存在だけである。悠久にも感じられる一瞬のなかで、伊織の五感を占めるのはぴよこぐるみ、唯一体だけであった。
「儂もたぬこさま風ぬいとかほしいのうー!」
 伊織に運命の出会いがあったのだ。儂にだって、と。更に気合を入れてもふを掻き分け始める八雲。
 このモフを掻き分けた先に、たぬこさまに似たぬいぐるみが居ると信じて!
「う……コレは……っ」
 爺サンからの流れ毛玉で思わぬ出会いを果たした、あったかわいいもふぴよぬいぐるみ。そして地面に視線を向ければ、モフの隙間から自分を見上げている亀と目が合った。
 「どうも、本日モフから助けて頂いた亀です」と言いたげなゆるっとした表情の亀さんと、ぴよこぬいぐるみと合わせると――伊織はそっと、懐にしまった!
 八雲は除モフに熱中している。きっと、バレてはいないハズである。
「趣味と実益兼ねてるとかホント幸せな爺サンでー!」
 伊織は八雲の方へと、掻き分けたもふを盛大に投げていく。先ほどのお返しではない、決して。
「お、何やら飛んで……」
 八雲の後頭部を着地点に、芸術的なまでに美しい弧を描いて飛んでいくのは茶色い毛玉。モフっと後頭部へと着地する姿は、十人中十人が満点を与えるだろう。
「おお、たぬこさま風ぬいが来たわい!」
 ぽとっと落っこちたぬいぐるみを拾い上げれば、八雲はぬいぐるみが似合う少女すらも霞んでしまうような、花溢れる満面の笑みを浮かべた!
 まるっとした二頭身。ふわふわもっふるな手触りはそのままに、幾分か小さくなったたぬこさまの姿がそこにあったのだから。これを奇跡と呼ばずに、何と呼ぶのだろうか。
「たぬこさま風ぬいは、一匹と決まった訳ではなかろう!」
「爺サン、こっちに飛ばすなよ! ……ぴよこたちも、一匹だけじゃあ何か物足りないよな……」
 お互いへとモフを投げつけつつ、何なら、運命の出会い(流れ毛玉)にちょっぴり期待なんかもしつつ――八雲と伊織は確実に屋敷までの道を作っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ケサランパサラン』

POW   :    もふもふ体当たり
【もふもふの体での】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【仲間】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    ふわふわ膨らむ
全身を【ふわふわ膨らませて一回り大きな姿】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    ふよふよ漂う
【ふわふわの体で誘うようにふよふよ漂う姿】を披露した指定の全対象に【ケサランパサランを追いかけたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 燃やして、道を切り開いて、或いは誘惑にかられながら……それでもどうにかして、お屋敷前の大きな門へと辿り着いた猟兵たち。
 中に簡単に入れるかと思ったけれど、そうは、ケサパサたちが卸さない。
 屋敷に近付くにつれてぬいぐるみやクッション、羽毛の姿は徐々に減り……いつの間にか、妖怪が骸魂に取り込まれた結果変化した、ケサランパサランの姿ばかりが見えるように。
 屋敷の周りにはふよふよふよと数えきれないほどのケサランパサランたちが漂っていた。
 その数何百。いや、何千だろうか。取りあえず、何もせずに突っ立っているだけでもしゃあっ……と、ケサパサたちの方から突っ込んでくる始末。
 彼らに戦意があるのかは不明だけれども、とりあえず……数を減らした方が、縁側で酒盛りをしている黒幕も倒しやすいだろう。
 モフるなり、遊ぶなり、全力をぶつけるなり。方法は、ご自由に。
レスティア・ヴァーユ
【ふわもっふ】
この『くま』は本当に良く出来ている
愛嬌があるのに、作りは精巧で…ずっと傍らに置いても飽きることのない眼差し―ん?

この群れは
流石にケセパサの数に目を奪われ
待て!お前はこれが埋もれていたものと同じ存在に火を付けると!?認められるか!嫌だ断る!!

…くまをぬい質に取られたので、大人しく働こう…くま…

涙を呑みつつ、思考を切り換え
―進むのであれば、まずは周囲からが妥当だろうな
息を吸い、指定UCで一斉に攻撃
反撃に関しては、盾受けとオーラ防御で防ごうとして―突進してくるもふもふと、つぶらな眼差しと目が合った、合ってしまった

思う『……楽園なのでは?』

全弾受けて悔いなく沈む
待て『くま』は置いていけ!


アシュエル・ファラン
【ふわもっふ】
親友が本気でぬいぐるみ連れてきましたよ…
過労か…過労では…?これ終わったら無理にでも休ませよう…

…これは冗談抜きに火付けた方が早いだろ。心痛いけど骸魂に呑まれてるなら、どのみち倒さにゃなら……
なに、『嫌だ断る』!?ならせめてもう少し屋敷に近づく方法考えろ!このポンコツが!

はい!ひとまずくまは没収!働け働け!!

仕方ない、こちらも指定UCで合体はさせずに。迫ってくるのと、浮いているケセパサを叩いて無力化させて地面に落とそう。地面に落とせばマイレディーにも手伝ってもらえれば、多少蹴散らしながらでも進めるだろう。

レスティアは…こっちがくま持ってりゃ追っかけてくるだろ…あー、あたまいたい…



●馬に人参、親友に『くま』
「この『くま』は本当に良く出来ている。愛嬌があるのに、作りは精巧で……」
 屋敷へと向かう珍道中。ぬいぐるみが徐々にその数を減らしても。仲間になりたそうにケサパサたちが見つめても。そのどれもが等しく彼の視線に映らない。
 レスティア・ヴァーユの視界いっぱいを独り占めにするのは、唯一の存在――彼の両手に抱かれた、ふわもっふなくまだけだ。
 つぶらな瞳でレスティアを見つめるくま。くまの視線にも、同様にレスティアだけしか映らない。
 ふわふわもふもふ。愛嬌があるばかりか、縫製もしっかりしている。とても大切に作られたのだろう。
 夢見心地でふわもふを堪能しているレスティア。くまとなら、何時間だってこうしていられる。
「待て。今何か『ふもっと』した感触が……」
 くまはふわふわだ。今さっき、一瞬だけだが何か別の感触がした。
 大事なくまに何かあってはいけないと慌ててくまの全身を確認すれば、悪戯好きなケサパサが数匹くまに張り付いている。
 慌てて追い払うレスティアと、逃げるように去っていくケサパサたち。
 ――これでレスティアとくまの背景に無数のケサパサたちが漂ってさえいなければ、気の抜けるほど平和で牧歌的な光景なのだろう。
「それに、ずっと傍らに置いても飽きることのない眼差し――ん? この群れは……」
 と、ようやく自身の周りを漂う白いもふもふに気付いたらしい。数の暴力とでも呼ぶべきか。
 レスティアも、ちょっとケサパサに惹かれ始めたようだ。
「親友が本気でぬいぐるみ連れてきましたよ……」
 何かの間違いであって欲しいと思った。
 だが、何度己の頬を抓ってみても目の前の親友はくまに話しかけている。
 優しげな声音で、ネタでもドッキリでもなく。本気で。
 おまけにレスティアは自分のことも、眼中にないようだ。親友であるというのに、出会って数十分のくまの方を取るのか……。
 過労が祟ってレスティアは何かの幻覚を見ているのではないか?
「過労か……やはり、過労では……? これ終わったら無理にでも休ませよう……」
 とりあえず、レスティアは休ませよう。ベッドにくまと括り付けてでも。
「……これは冗談抜きに火付けた方が早いだろ」
 レスティアとくまのことは少し放っておいても問題ない。それよりも今は目の前の真っ白な彼らだと、アシュエル・ファランはケサパサたちに向き直る。
 風に吹かれてふわふわと舞い落ちてくるものに、地面に降り積もったもの、ふよふよ周囲に漂っているものまで。
 いちいち攻撃していたら無い。今回ばかりは火をつけた方が早そうだ。
 仕方ないと緩く頭を振ってアシュエルが火をつけようとしたところで――。
「心痛いけど骸魂に呑まれてるなら、どのみち倒さにゃなら……」
「待て!! お前はくまが埋もれていたものと同じ存在に火を付けると!?」
「それ以外に何か方法があるか!?」
「神聖なもふに火をつけるなど認められるか! 嫌だ断る!!」
「なに、『嫌だ断る』!? ならせめてもう少し屋敷に近づく方法考えろ! このポンコツが!」
 くまを抱きしめたまま最高速度で駆けてきたかと思うと、全力で止めに入ってくるレスティア。そうはさせまいと藻掻くアシュエル。
 大人気ない喧嘩を繰り広げる二人に、もふもふとケサパサたちが張り付いていく。
「はい!! ひとまずくまは没収! 働け働け!!」
「ああ……くまがぬい質に……。仕方ない。大人しく働こう……」
 今度の勝負はアシュエルに軍配が上がった。没収したくまを抱えながら、ぽいっとレスティアをケサパサたちの群れに放り込む。ついでに、身体にもさっと纏わりついていたケサパサたちも叩き落とした。
「くま……」
「そんな物欲しげな目で見ても、これが片付くまで返さないからな」
「……くま」
 くまくま。鳴き声まで「くま」に変わってしまったレスティアに頭を押さえながら、アシュエルは愛しのマイレディーたちを呼び出した。
 くまとの別れに涙を呑みつつも、思考を戦闘モードに切り替えたレスティアもまた大きく息を吸う。
「――進むのであれば、まずは周囲からが妥当だろうな」
 刹那。周囲に響き渡るのは大音量の金切り声に交じる超音波。
 空間を揺らし、ケサパサたちを吹き飛ばして。レスティアを中心に生み出された音の奔流は、遠くへ遠くへと広がっていく。
 だが、されたままで終わらぬケサパサたちではないようで。
 奏でられる夢幻の世界の物語に引き寄せられるように、ふよふよと勢い(低速)をつけてレスティアに向かっていくケサパサたち。
 少しでも響き渡る調べを静かにさせようと、もふんと勢い良くアタックを繰り出した!
 レスティアは武具を構えるとオーラによる防御を展開し、ケサパサ・アタックを防ごうとしたところで――目が、あってしまった。
 つぶらな眼差しはそのままに、真剣さを帯びた表情は敵ながら見守ってしまいたくなる不思議な魔力を秘めている。
(「……楽園なのでは?」)
 ケサパサたちが、自分を目指して我先にと翔けてくるのだ。もふんもふんとそのふわふわな身体で包み込んでくるのだ。
 此処を楽園と呼ばずに、何と呼ぶのだろう。
 もふもふに埋もれられるのならば、悔いはない。
 ふわもふたちの攻撃を甘んじて全弾受けたレスティアは――白に埋もれていた。
 仕方ない。ふわもふたちが自分を囲んで離れないのだから。
「働くといった傍からサボるか!? くまは良いのか、くまは!」
 もふに沈んだ親友に、すかさず大声で突っ込んだのはアシュエルだった。
 意識は月明かり照らす刀身に向けながらも、視線ばかりは親友の方へ。
 追ってくるケサパサたちを叩き落とし、時には手にした双剣で切り裂いて。舞う様に、優雅に。
 白と踊るアシュエルをサポートするのは、彼が呼び出した戦乙女たちだ。
 地面に落ちたケサパサにトドメを差し、蹴散らしながら。確実に白の勢力を削いでいく。
「そろそろ現実に戻ってこい!!」
 ケサパサを狩るついでに、レスティアに纏わりついていたケサパサの数も削いでおく。
 散々待ったのだ、今さら容赦はしない。毛刈りの時間である。
「良い感じに減ってきたか? よし、このまま屋敷まで――」
 とは言ったものの、レスティアは未だモフに埋もれている。
 しかし、アシュエルの手元には心強いくまさんの存在が。
「レスティアは……こっちがくま持ってりゃ追っかけてくるだろ……あー、あたまいたい……」
「待て『くま』は置いていけ! 私とくまの仲を裂く気か!!?」
 くまさんを掲げながら、戦乙女と共にケサパサを狩りつつ屋敷の方へと。
 背後で白いケサパサに覆われた人型の何かが自分を追ってきているのは――恐らく、アシュエルの気のせいである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神崎・ナオ
うわ~、なにこれ!
こっちもすっごくモッフモフ~
こういうのをダンジョンとかの一室に敷き詰めるように配置してもいいなぁ~(なんて将来作る予定のダンジョンの構造を妄想しながら杖を構えます)
なんだかフワフワ軽そうだし、一先ず周囲を爆破してその爆風で屋敷までの道のり作っちゃお~う!
(相変わらずナオの言動に合わせて魔王軍が本人に気付かれない様にこっそり攻撃しています)
ふははは~、控えろ~控えろ~、こんなモフモフでは魔王である私の敵ではないのだー
(なーんてついでに魔王ムーブの練習したりもするなかで、治水蝙蝠はやれやれといった感じにお子様なナオを見守ります)



●魔王様の快進撃!
 蒲公英の綿毛もかくやにもっもっと飛び交うのはケサランパサランたち。
 視界を覆う白いふわふわは、オブリビオンであることを忘れてしまいそうなほど幻想的で。
 取り込まれた妖怪にしてみれば堪ったものではないだろうが、これだけいるのだから、こっそり一匹や二匹くらい持ち帰っても……。そんな誘惑さえ浮かんできてしまう。
「うわ~、なにこれ! こっちもすっごくモッフモフ~」
 近くを飛んでいたケサランパサランに神崎・ナオが指先を伸ばせば、攻撃しているつもりなのだろうか? もっもっと一生懸命身体を使って体当たりを仕掛けてくる。
 しかし、身体自体がふわふわで動きもゆっくりであるため、ふわふわとした感触しか感じられなくて。少しのくすぐったさを覚える動きに、一生懸命頑張る姿が愛らしい。
「こういうのをダンジョンとかの一室に敷き詰めるように配置してもいいなぁ~」
 指先でケサランパサランを突きながら、ナオは想像を広げている。
 ドドン! と将来作る予定のダンジョンの構想。魔王である自分が構える最奥の部屋は、堅牢な造りにすることは殆ど確定で。
 途中の一室にケサランパサランのような生物や物体を一面に敷き詰めたとしたら。
 扉を開けた瞬間に、ふわんふわんと出迎えるふわふわたち――最強である。挑戦者にとっては手強い誘惑で、味方達にとっては心強いの癒しで。
 攻防一体。最恐のダンジョンを作るためにも勉強がてら、なんて。そんなことを考えながら、ナオは魔杖アヴェントスを構えた。
(『全員配置に――』)
(『誰か! 後少しだけ時間稼ぎを……! ふわもこで動き辛い!』)
 ナオは知らぬことなのだが、魔王軍がナオの位置を把握するGPS代わりにもなっているこの魔杖。
 それにナオが魔杖を構える仕草に合わせて、コソコソと魔王軍が「最も攻撃が派手に見える配置は何処か」とか、そんなことを計算しつつ、いそいそと用意を始めていたことも――やっぱり、ナオが知らないことだった。
「なんだかフワフワ軽そうだし、一先ず周囲を爆破してその爆風で屋敷までの道のり作っちゃお~う!」
 魔杖を振り下ろすと同時に、舞い散る火の粉、噴き出す炎はユラユラとその手をケサパサたちに向かって伸ばして――また一匹、貪欲な炎の口に呑み込まれた。
 炎に巻き込まれなかったケサパサたちも、決して無事では無くて。爆風と共にポポポン! と勢い良く地平線の向こうに向かって吹き飛んでいくケサパサたち。
「ふははは~、控えろ~控えろ~、こんなモフモフでは魔王である私の敵ではないのだー」
 相変わらず、ナオの言動に合わせてこっそりと攻撃を繰り出している魔王軍。そうとは知らないナオは、吹き飛んでいくケサパサたちを見て絶好調だ。
 魔王ムーブの練習をしながら、ゆったりと余裕のある振る舞いで屋敷の門をくぐっていく。
 ナオが一歩踏み出すと海を割ったとある聖人のように、サッと二つに分かれるケサパサの群れ。気分はケサランパサランの女王様だ。
 ナオがふふんと得意げにケサパサの通路を通り抜けていくその少し後ろで――治水蝙蝠はやれやれと呆れ交じりに見守りながら、ナオを追いかけて飛んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

炎獄・くゆり
【獄彩】

ぎゅうと繋いだ手はそのままに
立ち止まってパチクリ

あららァ~~~
フワフワちゃん達がいますねぇ
それもおびただしい数
圧がすごぉい
向こうから寄ってきますよ
燃やされたいんですかね?
フィーちゃん、どうしましょ?

ウフフ、ならちょっと遊んでいきますぅ~~?
ひとつ摘んでふわわんと投げれば
ぽふんと彼女の頭に優しく当たる
雪合戦ならぬフワフワ合戦!
アハ、投げ甲斐なさすぎてウケる
気持ちイイし安全でイイですねェ
負けませんよお~~
そりゃあ勿論、楽しんだモン勝ちィ!

そろそろ飽き…満足しちゃったァ
フィナーレと行きますか
フィーちゃんにおねだりされちゃったら張り切るしかないですねェ~~~
そお~~れ、ファイヤ~~~!


フィリーネ・リア
【獄彩】

くゆちゃんとの手繋ぎはぎゅと握ったまま
うふふ、うふふ
さっき作った路よりも多いだなんて

ぐっすりしたから睡眠は十分
でも実は、フィーね
未だ遊び足りないと思ってたの
お仕事を楽しいだなんて悪い子だけど
くゆちゃんがいっしょなら仕方ないのよ
いーっぱい遊ぼ?
ふわふわ合戦
フィーも負けないの
当たり心地は気持ちいいよくゆちゃん
ぽふん、ぽふん
ところで此れ勝ちの条件は何になるのかな?

そろそろ満足した頃合い
綺麗な色になるようにフィーもお手伝いするから
くゆちゃん、フィーの好きな色を見せて?
――魅せる焔を

絵筆を一振り
撒くインクはあなた達を綺麗な赤に染める為
ふたりの足元には虹色パレットを描いて
景気よく燃やしてもらうの



●ふわもふ合戦と隠れん坊と
 炎が去った後に出来上がった一本道。二人で創り出した、共同制作の作品。
 手と手をぎゅっと繋いだまま端から端まで渡りきれば、大量のケサランパサランたちがお出迎え。
 佇んでいる二人に、もにっとぶつかってくる。
「あららァ~~~。フワフワちゃん達がいますねぇ」
 目の前に広がるのは――殆ど、白。少し上下左右に動いただけで、ふよんとぶつかる白いもふもふたち。圧倒的密度と圧倒的存在感を放って、目の前に立ち塞がっていた。
 炎獄・くゆりは立ち止まったまま、白を映す焔色の瞳をパチクリと瞬かせる。
 フワフワちゃん達のお出迎え。それも、とても燃やし甲斐のある形で、或いはとても遊び甲斐のある形で。
「うふふ、うふふ。さっき作った路よりも多いだなんて」
 まだまだ遊び足りないフィリーネ・リアは、好奇心のままに近寄ってくるケサパサたちに、クスリと笑みを零していた。
 フワフワちゃんたちは沢山いる。モフるのも、雪合戦みたいに投げ合うのも、勿論燃やすのも。全て、二人の望むがままに。
 フィーとくゆちゃんは楽しめるし、妖怪たちは元に戻れるからきっとどちらもwin-winなのだ。
「それもおびただしい数。圧がすごぉい」
 近寄ってきたケサランパサランに向かってくゆりが悪戯半分に手で風を起こせば――ふよふよとあっという間に押し流され、別の個体にぶつかって……もふんもふんと白い波紋が出来上がる。
 少し気味の悪さを覚えるくらいのケサパサ密集体は、相変わらずマイペースに屋敷周辺を漂っていた。
「向こうから寄ってきますよ。燃やされたいんですかね? フィーちゃん、どうしましょ?」
 燃やすも遊ぶも、思うがままに。
 好奇心のまま、再びくゆりの方へと近寄ってきた数匹のケサパサ。くゆりが「燃やす」と発言した瞬間――先ほどまでのふよふよが嘘に思えてしまうほどの素早さで、スススッと飛んで逃げるとサッとフィリーネの髪に隠れた!
「でも実は、フィーね。未だ遊び足りないと思ってたの」
 ぐっすりしたから、睡眠は十分。だけど、まだ遊び足りないから。
 直ぐに燃やしてしまうのは勿体ないと告げるフィリーネ。ふわふわしたフィリーネの髪の間から、くゆりの様子を伺う様に体半分ほどを覗かせていたケサパサたちは、フィリーネの返答にあからさまにホッと息を吐き出した。
「お仕事を楽しいだなんて悪い子だけど、くゆちゃんがいっしょなら仕方ないのよ。いーっぱい遊ぼ?」
「ウフフ、ならちょっと遊んでいきますぅ~~?」
 お仕事でも何でも、二人一緒なら全部楽しくなってしまうのだから仕方がない。
 くゆりが周囲を漂っていたケサパサをひとつ摘んでふわわんと投げれば、ぽふんとフィリーネの頭に優しく当たり、そのまま髪へと潜り込む。
「フィーちゃんの髪にフワフワちゃんたち、すっかり住み着いちゃっていますねぇ」
「フィーの髪はフワフワちゃんたちの巣じゃないの。くゆちゃん、取って?」
 フィリーネの髪に不法滞在を続けるケサパサを摘まめば、文字通りくゆりの手によってもふっと強制退出されるケサパサたち。
「お帰りはこちら~~~。雪合戦ならぬフワフワ合戦! アハ、投げ甲斐なさすぎてウケる」
 フワフワちゃんたちは、元居た空中へ。
 くゆりがプロ投手もかくやの流麗なフォームで投パサすれば、綺麗な弧を描い……否、描かずに、もふっと途中で落下した。
「気持ちイイし安全でイイですねェ。負けませんよお~~」
「フィーも負けないの」
 ふわっとフィリーネによって送り出されたケサパサがくゆりに纏わりつけば、ふわふわ合戦の始まりだ。
 当たり心地は気持ちよく。ふわんと跳ねて返ってくる。
 ぽふんぽふんと跳ねる姿もまた可愛らしくて。
「ところで此れ勝ちの条件は何になるのかな?」
「そりゃあ勿論、楽しんだモン勝ちィ!」
 身体中ケサパサまみれで、ふわふわ合戦に夢中になるあまり勝ちの条件を忘れてしまっていたのだけど。
 フィリーネがくゆりへと問いかければ、快活な答えが返ってくる。
 楽しんだモン勝ちなら、きっと引き分けだろうから。
「そろそろ飽き……満足しちゃったァ。フィナーレと行きますか」
 そして、ふわふわな感触とケサパサまみれをひとしきり楽しんだ後で。
 十分に楽しんだし、飽き……否、満足する頃合いだった。
「うん。綺麗な色になるようにフィーもお手伝いするから。くゆちゃん、フィーの好きな色を見せて?」
 ――魅せる焔を。二人の彩を。
 絵筆を握ったフィリーネがそのまま絵筆を一振りすれば、一瞬で白が赤へと染まりゆく。
 白いふわふわが、ちょっぴりロックで可愛らしいカラー・ケサパサに早変わり。
 二人の足元に描き出される虹色パレットに、真紅に染まったふわふわたち。
 舞台は整った。後はくゆりに景気よく燃やしてもらうだけだ。
「フィーちゃんにおねだりされちゃったら張り切るしかないですねェ~~~。そお~~れ、ファイヤ~~~!」
 大好きなフィリーネにおねだりされたら、頑張るしか方法はない。飛び切り派手に、美しく、大きく!
 くゆりの右腕から発せられた灼熱の焔は、幾重もの波と成りメラメラとケサパサたちを飲み込んでいく。
「って、ちょっとちょっと。こっち向かってきてません?」
 ふよふよとゆっくりに見えるけれど恐らくは彼らにとっての全速力で、荒れ狂う炎の大波から逃げようと――二人の方向へと向かってくるケサパサたち。
 真っ赤な色に染まったまま、もふんもふんと襲い来るフワフワの大波。
 フワフワの大波から逃れるように端へと寄れば、次の瞬間にはフワフワを追いついた焔がぱくりと丸呑みにして。
「ちょっと景気よくやりすぎちゃったの」
「まさかの危機イッパツゥ~~。でもま、これくらい派手な方が楽しいでしょ!」
 焔が綺麗にケサランパサランたちを食べていったらしい。フィリーネとくゆりの目の前には、モフっ子一匹いなくなってしまっていた。
「これで一件落着ゥ? ……あ」
「まだ隠れていた子がいたの」
 沢山眠って、沢山遊んで。後は元凶をお仕置きするだけ――と、屋敷へと向かおうとしたところに丁度、もにっとフィリーネの髪から飛び出てきたケサパサが。
 どうやら、ずっと隠れん坊していたらしい。
「ま・さ・かとは思いますけど、もういませんよねェ~~」
「くゆちゃんの髪はチェックして無いの」
 くゆりが少しかがんでフィリーネに目線を合わせて。フィリーネがくゆりの髪をもさもさと調べれば、直ぐにふみっとした感触が――あ、先っぽの方に沢山住み着いてた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スティーナ・フキハル

★付の所だけミエリ視点で(肉体一つに戻りました)

怒って引っ込んじゃったよミエリ……後でちゃんと謝んないと。
それはそうとベッドにできそうな位大きいケセランにぼふっと寝転んでお話タイム。

ねー聞いてよケセラ~ン、妹怒らせちゃった。
最近、体分離できるようになってからつい呼んじゃってさ。
無意味に呼ばないでって言われるんだけど、
ずっと頭の中で話してたミエリと向き合って、
二人でいるとすっごい楽しいんだ……。

眠……ぐぅ。

★(脳内)寝たら叩き起こすつもりだったけど……凄くやりにくい。
布槍を念動力で動かしてほっぺつついて起こします。

んぁ、あー寝てたか。
んじゃ吹っ飛ばしとくかぁUCで。
着地は自分でがんばってなー。



●聞いてよ、ケセラン!
 掬って吹き飛ばして、また掬って。除モフを繰り広げること、何度目だったのだろう。
 そうしてやっと辿り着いた先のお屋敷前に、何百、何千という数のケサランパサランが漂っているのを見て――。
『まだあるの!? もう知らない!』
 ようやく屋敷に辿り着いたかと思ったら、まさかの「続き」を目前にして。
 道中の「お姉ちゃん頼れなかった事件」と併せてすっかりプンプンと怒ってしまったミエリがスティーナ・フキハルの目の前で引っ込んでしまったのが、ついさっきのこと。
「怒って引っ込んじゃったよミエリ……後でちゃんと謝んないと」
 でも、それはそれで、これはこれ。ミエリに謝ることと目の前のもふもふは、関係あるようで関係ないのだから。
 心の中のやることリストにミエリに謝ることを付け加えながら、それでもしっかりと目の前のもふもふに寝転がるスティーナだった。
 妖怪の種類だって、大小それぞれ。スティーナの目の前に転がっていたケサランパサランは、恐らくかなり大きい妖怪を飲み込んでオブリビオン化してしまったのだろう。
 ベッドにできそうな位大きいケセランにぽふっと寝転べば、もにっと返ってくる柔らかい感触。下手なベッドよりも寝心地が良いかもしれない。
 もにんもにんと寝返りを打ったり、足をバタバタさせたり。ケセランの上で寛げば、大きなケセランとお話タイムの始まりだ。
「ねー聞いてよケセラ~ン、妹怒らせちゃった」
 ケセランの上からケセランの顔を覗き込むように話しかければ、黒くて丸い二つの瞳がスティーナの方に向けられる。どうやら、聞いてくれているみたい。
「最近、体分離できるようになってからつい呼んじゃってさ」
 そう。産まれた頃から自分の中の「闇」の一面として存在していた妹の存在だけれど、実際に妹が姿を持って対面できたのは最近のこと。それまではずっと、姉妹二人で身体を共有していたのだから。
「無意味に呼ばないでって言われるんだけど、ずっと頭の中で話してたミエリと向き合って、二人でいるとすっごい楽しいんだ……」
 頭の中で話しているだけだった少し前と、こうして、直接姿を見て話せる現在と。
 楽しさも二倍で、ミエリとしたいことも数えきれないほどあって。
 無意味に呼ばないでって言われているのは、スティーナ自身も分かっている。けれど、ついつい楽しくてミエリのことを呼び出してしまうのだ。
 そう。一緒にケセランに寝転がったり、そのまま心地良い微睡を揺蕩ったり――ミエリと二人でしたいことを考えるうちに、うとうとと少しずつ下がってくるスティーナの瞼。
「眠……ぐぅ」
 ケセランの上ででろーんと伸びたスティーナの瞼が完全に降りきるまで、それほど時間はかからなかった。
『寝たら叩き起こすつもりだったけど……凄くやりにくい』
 眠りの世界に旅立ったスティーナを見送りつつ、脳内でそっと呟いたのはお話タイムの話題人物でもあったミエリ本人だった。
 スティーナが寝たら叩き起こすつもりだったけれど、先ほどの会話を聞いてしまった以上……とても、それはとてもやり辛い。
 仕方がないと、叩き起こす代わりに念動力で布槍を動かして――つんつんとスティーナのほっぺを突く。
 が、なかなか起きない。
 むにっと少し強く頬を突けば、むにゃむにゃと言いながら漸くスティーナが目を覚ました。
「んぁ、あー寝てたか。んじゃ吹っ飛ばしとくかぁ」
 くるり。お話タイムから一転して綺麗に百八十度変わってみせたケセランの扱いに、ケセラン自身も「え?」みたいな反応をしている。
 ちょっと待って、と言いたげなケセランのことなどお構いなしに、スティーナは霊気の竜巻を放ち――。
「着地は自分でがんばってなー」
 ひゅーんと綺麗な流線を描いて飛んでいくケセラン。背後でスティーナが健闘を祈る! と小さく手を振っていたが……きっと、気付いてはいないだろう。
 それから少しした後、かなり離れたところで無傷のまま、何故だか地面に半分埋まって気絶している妖怪が見つかったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】◆
この子たちが門番なのかな
これは簡単には中に入れそうにないねー困ったねー
こういう時は焦っても仕方ないよねー

というわけでケサパサの群れの中にもふっとダイブ
うわぁ…極上の羽毛布団みたいで気持ちいい
人をダメにするケサランパサランだね
さっき沢山のわたあめを食べたのもあって
程よい眠気がやってくる
少しくらいならいいよね…すやぁ

ちょっとした夢を見た
俺と梓で縁日に行っている夢
手にはわたあめ
夢の中でも食べているなんてね
ひとつのわたあめを梓と一緒に取り合うように食べる

そんな穏やかな時間を過ごしていたら
謎の突風に襲われて現実に引き戻される
梓のせいでケサパサ布団が
ふっ飛ばされたからだと後で知るんだけど


乱獅子・梓
【不死蝶】◆
綾のやつ、この状況でよく寝られるな…!?
まぁ、こいつらあまり強くなさそうだし
ほっといても多分大丈夫だろう
せっかくだからお前たちも遊ぶか?
焔と零をケサパサの中に放つ
ふわもふと戯れる姿、可愛いなぁ…

……ん? 焔と零がいない…!?
大量のケサパサにもみくちゃにされて
どこに行ったのか分からなくなってしまった
かすかに鳴き声は聞こえてくるんだが…
おーい、どこだー!

普通に探していたら時間がかかりすぎる
こうなったら…UCで風属性のドラゴンたちを召喚
道中と同じように羽ばたきで風を起こし
ケサパサを一気に散らしてもらう
おっ、いたいた!
焔と零を無事確保、よしよししてやる

綾が地面に突っ伏しているが…まぁいいか



●人とドラゴンをダメにする系ケサパサ
 もふっとぶつかって、そしてそれぞれ別方向にふよふよふよ……とあっちへこっちへ漂い続けているのは、何百、何千というケサパサたち。
 本人たちに戦意があるかは不明だが、もふもふとお屋敷の門の周囲を漂う様子を見れば、まるで彼らが門番のようにも思えてしまう。
「この子たちが門番なのかな。これは簡単には中に入れそうにないねー。困ったねー」
 急がば回れ。焦らず慌てず、のんびりと。
 綿飴だってあれだけゆーくりと落ちてきていたのだ。少し回り道をしても大丈夫だろう。
 世界の危機も脇に置きっぱなしにしたまま、のんびり「困った」と繰り返しているのは灰神楽・綾だ。
「こういう時は焦っても仕方ないよねー」
 そう、焦っても仕方がない。
 何千と漂っているケサパサたちを倒すのはどうしたって直ぐにはできっこないし、何ならこの珍しい光景を楽しみたくもある。
 これだけのケサパサが一斉に集まる機会なんて、恐らくそれほど見る機会が無いのだから。
 羽毛布団代わりに積もったケサパサに寝転ぶことも、思いきり戯れることも、全ては綾の思うまま。
 だから――。
「うわぁ……極上の羽毛布団みたいで気持ちいい」
 ケサパサの群れにもふっとダイブすれば、一瞬沈んだ後に軽くふわりと浮き上がる不思議な感覚に身体が支配される。
 自分の真下でもしょもしょとケサパサが動く気配もくすぐったい。もさもさとケサパサたちをもふれば、静電気で毛がもふんと大きく広がった。
「人をダメにするケサランパサランだね」
 ゴロゴロとケサパサの群れの上で転がれば、今が非常事態であることもすっかり記憶の果てへ。
 さっき沢山のわたあめを食べたのもあって程よい眠気が綾を包み込んでいく。
「少しくらいならいいよね……すやぁ」
「いや待て。おい待て。綾のやつ、この状況でよく寝られるな……!?」
 秒で寝落ちた綾に乱獅子・梓はすかさず突っ込みをいれる――が、張本人は早くも眠りの世界へ出国してしまった後らしい。寝言一つすら聞こえない有様。
「まぁ、こいつらあまり強くなさそうだし。ほっといても多分大丈夫だろう」
 もさもさもさと微妙に綾の乗ったケサパサの群れが何処かを目指して移動している気がしなくもないが……。そして、その先をちらりと見れば屋敷の池が存在している気がしなくもないが……。ほっといても大丈夫。多分。
 それよりも、折角ふわふわが目の前にあるのだ。今はこの瞬間にしか出来ないことを。
「せっかくだからお前たちも遊ぶか?」
『キュー!』
『ガウ』
 梓が焔と零に問いかければ、即座に嬉しそうな鳴き声が二つ返ってきて。
 焔と零をケサパサの群れへと放ってもふりと潜れば、そこはもう夢の世界。
 だらんとだらけたり、ポンポンと鼻先でケサパサをお手玉のようにして遊んだり。
 纏わりついて、駆けまわって。一応は敵ということは……すっかり忘れてしまっている模様。
 人をダメにする不思議な魔力を備えたケサパサは、竜すらもダメにしてしまうようだった。
「ふわもふと戯れる姿、可愛いなぁ……」
 のんびりと眺めていたら、一際大きい群れがもふもふと焔と零に向かって行ったかと思うと――ケサパサの群れが去った次の瞬間には、焔と零が忽然と消えていた!
「……ん? 焔と零がいない……!?」
 大量のケサパサにもふもっともみくちゃにされて、何処に行ってしまったのやら。
「かすかに鳴き声は聞こえてくるんだが……。おーい、どこだー!」
「梓、それ俺の綿飴ー……」
「綾のことじゃないんだが……」
 ついでに言えば、ケサパサは食べ物ではない。
 もにもにとケサパサに齧りつこうとしている綾の姿に、ふよふよと逃げ回るケサパサたち。
 喜ぶべきなのかどうかは複雑だが、綾は眠っていても梓の言葉にしっかりと反応していた。
『……ュー』
『……ウ!』
「こうなったら……」
 雲に包まれてしまったかのよう。普通に焔と零を探していたら、時間が幾らあっても足りない。
 だから、屋敷までの道のりと同じ解決方法で。
「むにゃ……」
 ケサパサの布団で眠ったままの綾は、ちょっとした夢を見ていた。
 梓と一緒に行った縁日で、両手に様々なわたあめを抱えて。
 夢の中でも綿飴を食べているのは、さっきたくさん食べたせいかもしれない。
 一つの綿飴を梓と取り合う様にして食べようとしたところで――。

「おっ、いたいた!」

 梓が召喚してみせたのは、屋敷までの道中でも呼び出した百体を超える風属性のドラゴンたち。
 梓の掛け声と共に巻き起こる突風に、一気に端の方へと猛烈な勢いで転がっていくケサパサたち。
 風属性のドラゴンたちは吹き飛ばした白いふわふわを、心なしか期待に満ちた視線で見送り――それが綿飴でないことに気付いたのか、無言で解散していった。
「何処もケガしてないか? 良かった良かった」
 最後までしぶとく焔と零に纏わりついていたケサランパサランを手でふわふわと飛ばし、無事に確保。
 怖かったなと抱き寄せてよしよし撫でれば、焔と零は大きな鳴き声を上げて梓に引っ付いてきた。
 梓たちから少し離れたところで綾が地面に突っ伏しているが……まあ、大丈夫だろう。
 ちらりと一瞬だけ綾の方を見た梓はすぐに焔と零に向き合うと、ぎゅっと抱き上げる。
『ガウ!』
『キュー!!』
 ケサパサの群れに吞まれたことがよほど驚いたのか怖かったのか、周囲を漂うケサランパサランに向かって賑やかに威嚇するように鳴き声を上げ始めたので――梓はよしよしと二体を宥めるのだった。
「梓、綿飴を独り占めにするつもりなのかな!?」
 一方、放置されたままの綾と言えば。ケサパサの群れにも置いてきぼりにされて……べちっと地面に叩きつけられて、眠りの世界から強制帰還させられるところで。
 夢の中で梓が独り占めにしようとしていた綿飴。夢の中でもにーっと取り合っていたソレが綿飴ではなくケサパサだったことに気付いてパッと顔を上げれば、下に敷かれていたケサパサ布団も、自分を受け止めていたふわもこたちの姿も無くなっていて。
 いるのはただ一匹。綾に捕らわれて、今までみょんみょんと散々引っ張られていたケサランパサランの姿だけ。
「俺、なんで地面で寝てるの……?」
 綾の呟きに「知らんがな」と捕らわれたままのケサパサがジト目になった。
「あれ、もしかしなくても蚊帳の外かな?」
 少し離れたところで、一人と二体の世界が創り上げられている。気付けば置いてきぼりにされていた。
 一人と二体のやり取りが一区切りつくまで、再びの手持無沙汰さんだ。暇つぶしにむにーんと伸ばされるケサランパサラン。綾に捕らわれた彼(?)が解放されるのは、もう暫く後になりそうだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ポク・ョゥョゥ
やっとついたねー
あれー?ケサランパサランたんがいっぱいいるよー
一緒に来た子のお友達なのー?でも悪い子が憑いちゃってるのー?
じゃあー元に戻そー

いっぱいいるねー
でもぽく負けないよー
さっきいっぱいおやつ休憩でぽくっきーたべたのー
そしたらねー、ぽくが増えるよー
いっぱいの敵に~いっぱいのぽくで突撃だー

一斉体当たり~からの、ぽよーんと跳ねて別のもふもふにもあたーっく
ぽくはちょっとぽよってるぱんだなんだー
はねーるはねーる、今度はぽくきーっくー
大乱闘もふぽよ~
ぱくもお手伝いしてくれるー?じゃあねー風のブレスで敵たん集めてー
よーし、いっくよ~
まとめてぐるぐるぽくぱーんちー

元に戻ったかなー?良かったねー
あがめよー



●もふっとあたっく
「やっとついたねー」
 のんびりゆったり、それでも着実に。
 気になるふわもふを集めつつ、時々休憩も挟んで――ようやく辿り着いた先のお屋敷前。
 中に入ろうとポク・ョゥョゥが門へと歩いていけば、道を塞ぐようにふよふよと周囲からケサランパサランが大量に集まってきて道を塞ぐ。
「あれー? ケサランパサランたんがいっぱいいるよー」
 もこもこと威嚇するように毛を膨らませて。一斉にもふもふと通せんぼをし始めた。
 ポクへと集まったケサランパサランたちは、道中で出会ったケサパサたちと似ているようで……でも、何処か違うような?
「一緒に来た子のお友達なのー? でも悪い子が憑いちゃってるのー?」
 ここまで一緒に歩んできたケサランパサランへとポクが問いかければ、ぽんぽんと全力でその身体を上下に揺すってみせる。
 悪い子が憑いてしまっているのは、本当らしい。
「じゃあー元に戻そー」
 友達が悪い子に憑かれたままじゃあ、きっと悲しいだろうから。
 ポクがゆるっとそう言えば、ポクに着いてきていたケサランパサランも笑顔になった。
「いっぱいいるねー。でも、ぽく負けないよー」
 簡単には返さないぞ、と。毛を逆立たせたケサパサたちがポクの周りを取り囲むように漂い始める。
 数は多いけれど、それで負けてしまうようなポクではない。
 だってポクにはかぽやパクがいるのだから!
「さっきいっぱいおやつ休憩でぽくっきーたべたのー」
 戦いとは、戦闘中だけではありません。
 その前の準備も戦いに入ります。お家に帰るまでが遠足であるように。
 という訳で、実は密かに前から準備していたポク。もしかしたら、たまたまぽくっきーを食べていただけかもしれないけれど……それはそれだ。
 ポクの顔を象った、甘くて美味しいしっとり系チョコ味のクッキー。チョコなのにしつこくなくて、さくさくと幾らでも食べられてしまう。
 食べた分だけ、ポクの宣言と共に増え始める沢山のポクたち。
 いっぱいぽくっきーを食べただけあって、ポクの数もいっぱいだった。
「いっぱいの敵に~。いっぱいのぽくで突撃だー」
 突然増えたポクに目を丸くしているケサパサたち。敵が驚いているうちに、一斉体当たり~。
 最初に体当たりしたケサパサを踏み台に、ぽよーんと跳ねて別のもふもふにもあたーっく。
 上手くぽよーんと跳ねれば、どんどんと高くまで登っていける。トランポリンみたいで、ちょっと楽しい。
「ぽくはちょっとぽよってるぱんだなんだー」
 はねーて、はねーて。
 上からゆっくりと落ちながら、今度はぽくきーっくー。
 上から降ってきたポクのキックを受けたふわふわは、もふっと凄いスピードで何処かに飛んでいてしまった!
 いっぱいのポクが、キックをしたり、パンチをしたり。ポクとケサランパサランによる大乱闘だ。
「ぱくもお手伝いしてくれるー? じゃあねー風のブレスで敵たん集めてー」
 ふわりとポク(本体)の元に飛んできたぱくは、何かを告げるようにポクに向かって身振り手振り。どうやら、手伝ってくれるみたい。
 ふわりと巻き起こる風のブレスで、白いふわふわと一つの場所に集めたのなら。
 最後はポクの一斉攻撃で、お終いだ!
「よーし、いっくよ~。まとめてぐるぐるぽくぱーんちー」
 いっぱいのポクがぐるぐるとグーに握った手を回しながら、竜巻に捕らわれたふわふわたちに向かってパーンチ!
 必殺技を受けてぽふんと飛んでいったふわふわたちから、白い毛がぽふん! と抜けたかと思えば。すっかり元の妖怪の姿を取り戻していく。
「元に戻ったかなー? 良かったねー」
 元に戻った仲間たちに、ポクに着いていたケサランパサランは嬉しそうに身体を揺らしていた。
「あれ、この子は元がケサランパサランたんだったんだねー。まあいいやー。あがめよー」
 白い毛が抜けてない子がいたかと思ったら、どうやら元からそんな身体だったらしい。
 悪い子をやっつけて元の姿に戻れたことに、妖怪たちはポクの周りに集まってお礼を伝えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルーシー・ブルーベル
【月光】

ケサパサさん達がいっぱい
いよ本当に前が見えないわもっふ
ありがとう
パパ位の背があれば埋まらないのに

みんな遊びたいの?
ふわふわぽわぽわしたケサパサさん達を
えいと上に投げるとポーンと飛んで
ふむふむ

パパにケサパサさんをパースっ
ねえ、ルーシーに返してみて!
パパお上手!
ケサパサさんが返ってきたら、またポーンと
キャッチボールじゃなくて
キャッチケサパサさんをするわ

あっ、黒ヒナさんは連れていっちゃダメ!
確かにふわほわしてるけど!
そのコはルーシー達といっしょに帰るの

「妖精花の舞」
こっちへおいで
いっしょに踊りましょう

黒ヒナさんがケサパサさんの毛で少し白い
白ヒナさんもかわいいけれど
後でキレイにしてあげるからね


朧・ユェー
【月光】

えぇ、あの白い子達がケサパサさんですよ
おやおや、大丈夫ですか?
ふふっと笑って彼女の前の子達を退ける
きっと背は高くなりますよ
僕までは複雑ですが

目の前に飛んでくる白い子達
どうやらとても楽しそうですね

おや?キャッチボール、良いですよ
彼女から受け取ってそっと彼女に返す
楽しそうにする彼女にこちらも嬉しく笑って

黒ヒナを仲間と思ったのでしょうか?
一緒に連れて行く白い子達
えぇ、その子ももう僕達と帰るのですから連れ戻しましょうねぇ

獄導
黒ヒナに興味を持った子達にハグして攻撃

可哀想ですが
黒ヒナが白ヒナに?
ふふっ、綺麗にして一緒に帰りましょうねぇ



●白もふさんと、黒ヒナさんと
 呑気に漂っているけれど、門を潜らせるつもりはないらしい?
 それとも、遊んで欲しいのだろうか。
 ふよんふよんと集まってくる白いふわふわの姿こそが、ケサランパサランという生物(?)で。
 屋敷に至る道程で、ルーシー・ブルーベルがゆぇパパこと朧・ユェーに訊いていた生物が目の前の彼らだった。
「ケサパサさん達がいっぱい」
「えぇ、あの白い子達がケサパサさんですよ」
 手を伸ばせば、遊んでいるつもりなのだろうか。ルーシーの手のひらにもふんもふんと触れてくるケサパサさん。
「いよ本当に前が見えないわもっふ」
 遊びに誘うかのように、ケサパサたちは数十匹で一斉にもふん! と掛かってくる。
 急にやってきた白いふわふわたちに、ルーシーの身体はすっぽりと埋もれてしまった。
 彼らなりには一生懸命な姿に、思わず微笑みが零れてしまうけれど。ふわもふに埋もれるのは勘弁だった。
「おやおや、大丈夫ですか?」
「ありがとう。パパ位の背があれば埋まらないのに」
「きっと背は高くなりますよ。僕までは複雑ですが」
 ふふっと笑みを零しながら、ユェーはルーシーにもふっと体当たりを決めてみせたケサパサたちをそっと退けていく。
 パパ位の背があれば埋もれないのに、と。何処か拗ねたような口ぶりで呟くルーシーに、思わず自分の身長位まで成長した彼女の姿を想像して――成長が嬉しいような、身長は追い抜いて欲しくないような。どちらかと言えば、今のままの可愛らしい彼女で居て欲しいような。ユェーは複雑な心境に。
 パパ位までとはならなくても、ルーシーの身長はこれからどんどんと伸びていくだろう。
 愛娘の成長が楽しみであると同時に、何れ自分の手を離れる時がくると思うと少し寂しくなるユェーなのだった。
「パパ嫌い! なんて、言わないでくださいね?」
「パパ大丈夫よ。大きくなっても、絶対に言わないから」
 成長期あるあるの「パパ嫌い!」を怯えるユェーに、ルーシーはそんな日は来ないからと優しく微笑みを浮かべる。
「どうやらとても楽しそうですね」
「みんな遊びたいの?」
 未来のお話もほどほどに、先ほどから視界の端っこの方で「忘れないで」と自己主張をしていたケサパサたち。
 目の前に飛んでくるふわふわたちの姿は、とても楽しそうで。
「ふむふむ」
 ふわふわと周囲を漂っていたぽわぽわなケサパサたちをそっと両手で包み込んで、ルーシーはえいと上に投げた。
 楽しそうにポーンと大空を目指していくケサパサさんは、ゆっくりとユェーの方を目指して飛んでいく。
「パパにケサパサさんをパースっ」
「おや? キャッチボール、良いですよ」
「ねえ、ルーシーに返してみて!」
 ルーシーからケサパサさんを受け取ったユェーは、そのままそっと彼女の方へとケサパサを送り返した。
 先ほどとは違って、少しだけ速さを増して送り出して。少しスリリングな空中散歩に、ケサパサさんも楽しそう。
「パパお上手!」
 ケサパサさんが返ってきて、そのままパパの方へと送り返そうとしたら――「次は自分の番!」と主張するかのように、ルーシーの手のひらにもそもそと乗ってくる数匹のケサパサさん。
 交代でね、とルーシーはケサパサさんたちに告げると、今度は別の子をポーンと高く投げ返した。
 パパとキャッチボールじゃなくて、キャッチケサパサさん。
 キャッチケサパサさんと楽しんでいたら、不意にケサパサさんたちが黒ヒナさんと取り囲んで――。
「あっ、黒ヒナさんは連れていっちゃダメ!」
 一緒に遊ぼうと、誘うように空の先へ。まるもふっとした体に、白か黒かの違いだけで、仲間だと思ってしまったのだろうか。
「黒ヒナを仲間と思ったのでしょうか?」
「確かにふわほわしてるけど! そのコはルーシー達といっしょに帰るの」
「えぇ、その子ももう僕達と帰るのですから連れ戻しましょうねぇ」
 ふよふよと白い子たちに囲まれて、お空の旅へと旅立ってしまった黒ヒナさん。
 黒ヒナさんを連れ戻すべく、ルーシーは白いケサパサさんたちに手を差し伸べる。
「こっちへおいで。いっしょに踊りましょう」
 遊び誘おうと近寄ってきたケサパサさんを、優しく絡め取ったのは釣鐘水仙の花吹雪。
 青とも紫とも取れる優しい色彩を宿した花びらは、そのままケサパサさんたちを在るべき場所へと、元居た場所へと。
 静かに。揺蕩う花弁が風に乗る度に、また一匹、ケサパサさんが居るべき場所へと戻っていく。
「可哀想ですが」
 黒ヒナさんに興味を持った白い子たち。可哀想だけれども、此処はこの子たちの居るべき場所では無いのだから。
 優しくけれど残酷に、おやすみなさいのハグを交わすのは召喚された地獄の使者たち。
 地獄の門番が伸ばした無数の手が、白いふわふわたちに手を伸ばして。
 「またね」が叶った先で、一緒に遊べたのなら。その時まで、少しのお別れだ。
「黒ヒナさん!」
 ケサパサさんたちが居なくなって、元の姿を取り戻した妖怪さんたちが元に戻れたことに喜びの声を上げている。
 歓声が沸く中、誰も頭上からゆっくりと落ちてくる黒ヒナさんに気付いてはいなかったみたいで。
 慌てて駆けだしたルーシーが、地面に落ちる前に何とか黒ヒナさんをキャッチ!
「……黒ヒナさんがケサパサさんの毛で少し白い」
 ケガが無いか調べて見れば、黒ヒナさんがケサパサさんたちの残していった毛で白くなってしまっている。
「黒ヒナが白ヒナに?」
 ユェーがルーシーの手元をそっと覗き込めば、そこには確かに白ヒナさんの姿が。いや、完全に白く染まっていないから、斑ヒナさんだろうか。
「白ヒナさんもかわいいけれど、後でキレイにしてあげるからね」
「ふふっ、綺麗にして一緒に帰りましょうねぇ」
 そっと黒ヒナさんの身体を撫でれば、ふわりと舞い上がるケサパサさんの毛。
 白ヒナさんも可愛いけれど、やっぱり『あの子』によく似た黒ヒナさんが一番だから。
 仲良く微笑みあって、ユェーとルーシーは門の方へと歩いて行く。
 元凶のお酒好きな骸魂ヤマタノオロチにお仕置きしたら、後は黒ヒナさんと一緒に帰るだけ。
 ある程度の毛は落としたけれど、それでも薄っすらと白がかかっている黒ヒナさん。
 一緒に帰ったら、二人と一匹で何をして遊ぼうか。今からそれが、楽しみだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加。

この白いのが有名なケセランパサランか。それにしても量が多過ぎる。奏は・・・敵の方へ飛び込んでいったか。まあ、流石に異常には気付くだろうし、戻ってくるだろう。

敵が多いので一網打尽にしようと【ダッシュ】で敵の群れに飛び込もうとするが、敵の渾身のタックルに転びかけた所を瞬に支えられる。助かった。瞬の助力を得て【範囲攻撃】【2回攻撃】を併せた竜牙で薙ぎ払う。

奏は無事にもどってきたようだね。良かった。さあ、この騒ぎを起こした願いの主に会いにいこうか。何が起きるか不安ではあるが、何とかなるさ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

ああ、白いふわふわが一杯・・・(うずうず)もう我慢できない!!(わき目もふらずケセランパサランの群れに飛び込んで行く!!)

(無意識に【オーラ防御】を展開しながら)ああ、白いふわふわ、堪らない・・・(ケセランパサランを掴みながら頭と肩の上にも乗せる)あ、目の前が見えない・・・(足元がふらつく)これは、私はいいですが、普通の妖怪の方が危険ですね・・・不本意ですが、煌く神炎でケセランパサランを焼き払います。

ぱっぱと身体を祓ってから家族の元へ。私には楽園ですが、他の方は大変ですし。さあ、先にいって、状況を解決しに行きますか。


神城・瞬
【真宮家】で参加

(降ってくる大量のケセランパサランに呆然)こ、これは確かに数が多過ぎますね・・・奏は・・・思った通り、群れに飛び込んで行きましたか。まあ、流石に戻って来るでしょう。

一応【オーラ防御】しといて走っていく母さんを慌てて追いかけて転びかけた母さんをしっかり支えます。ええ、2人で何とかしましょうか。【範囲攻撃】で疾風閃と【衝撃波】を駆使してケセランパサランを蹴散らしていきます。

奏は・・・戻って来ましたか。ええ、願いの結果といえ、この状況は異常過ぎる。願いの主に直談判しにいきますか。さて、いったい何が起きるんでしょうか。



●大量のケサランパサランが現れた!
 一部界隈で有名なケサランパサランと言えば、蒲公英の綿毛や動物の体毛のようにもふもふしている謎の生物(?)とされる丸い物体である。
 おしろいを与え、桐の箱で飼育すると持ち主に幸運が齎せられるとか。
 さて、希少性など何処かに吹き飛んでいってしまったらしく、幸運の証ともいわれるケサランパサランが大盤振る舞いで大量発生しているこの状況。多くの妖怪たちにとっては骸魂に取り込まれるという不幸に違い無いが、一部のふわもふ好きにはまさしく『幸運』と呼ぶべき状況で――。
「ああ、白いふわふわが一杯……もう我慢できない!!」
 愛くるしいまん丸な瞳。白い毛をふわんと膨らませて威嚇している子も、遊ぼうと纏わりついてくる子も。真宮・奏にとってはその全てが愛おしく、また尊い存在だった。
 そんなケサランパサランが何百、何千と漂っているのだ。天国もかくやの状況に、うずうずとしていた奏は――次の瞬間には、わき目もふらずケセランパサランの群れに飛び込んで行った!
 世界の危機という意識も何処かにポイっと放り出して。仕方ない。あんまりにケサランパサランたちが可愛らしいのだから。
「この白いのが有名なケセランパサランか。それにしても量が多過ぎる」
 もにもにっと頬に体当たりを決めている(つもり)らしいケサパサを手でそっと遠ざけながら、真宮・響はポツリと呟いた。
 むぎゅっと屋敷周辺に集まったケサパサを眺める響の視線がどこか遠いものになっているのは、きっと気のせいでは無いだろう。
 有名なケサランパサランとはいえ、量が多すぎる。こうして立っているだけで、四方八方からもふもふと纏わりついてくるのだから。
 最も、それがふわふわ好きな奏にとっては堪らないのだろうけれど。
「こ、これは確かに数が多過ぎますね……」
 呆れたようにケサパサ集合体を見つめる響の隣で、神城・瞬は目の前の光景に思わずフリーズしてしまっていた。
 多いとは聞いていた。でもまさか、これほどとは誰も思ってもいないだろう。
 ふよふよと隙間なく空中を漂うケサランパサランに、呆然とすること少し――それでもどうにか目の前の光景を受け入れた瞬は、大はしゃぎでケサパサへと飛び込んで行った奏を見やる。
「奏は……敵の方へ飛び込んでいったか。まあ、流石に異常には気付くだろうし、戻ってくるだろう」
「はい。奏は……思った通り、群れに飛び込んで行きましたか。まあ、流石に戻って来るでしょう」
 ふわふわとて、立派なオブリビオンだ。
 ケガをしないか少し心配だったが、ケサパサと戯れる姿を見るに、恐らく大丈夫だろう。
 この大量発生はさすがに異常であると気付いてくれると信じて。ケサパサの真ん中ではしゃぐ奏を見守りながら、響と瞬は目を合わすと頷き合った。元凶の元へ辿り着くためにも、ケサパサの群れを倒さなくては。
「ああ、白いふわふわ、堪らない……」
 ケサパサの中心ではしゃぐ奏はもふっと一斉のアタックを受けても動じない。
 だって、無意識にオーラ防御を展開しているのだもの。安全にモフるための対策は万全だった。
 ……ケサランパサランの攻撃を受けるまでもなく、奏がケサパサを追いかけているのはきっと気のせいだろう。
 ケサランパサランをそっと掴むと、頭と肩の上に乗せてみたり。頭の上でちょこんと乗っている感覚が、とてもキュートだった。肩に乗せた二匹は恐い物知らずのようで、ちょこちょこと動き回っているのだけれど。
「あ、目の前が見えない……」
 もふっとケサパサに塗れていたところ、ふわふわと前方から飛んできたケサランパサランがめにょっと奏の顔に張り付いた!
 もっと顔に張り付いたものだから、前が見えない。はがそうと手を伸ばすが、もにもにと動き回るせいで上手く摘まむことができない。
 足元をふらつかせながらも、数分間の格闘の後、奏はどうにかしてケサパサを剝がすことに成功するのだった。
「これは、私はいいですが、普通の妖怪の方が危険ですね……」
 ケサパサに張り付かれたことで、ようやく奏も我に返った模様。
 もふりすとには堪らない状況でも、普通の妖怪達が危険だった。前方は見えないし、積もったケサパサで転びそうになるし、そうこうしているうちに、骸魂に呑み込まれかねない。
「不本意ですが――」
 そう、非常に不本意だったけれど。世界の方が大切だから。
 奏は神聖な霊気を宿す、白熱した煌きの炎を生み出すと――もふもふした姿を見て躊躇ってしまう前に、一斉にケサパサたちを焼き払っていく。
「こうも多いと……一網打尽にするに限るっと!?」
 一匹一匹は大したことが無いが、数の暴力とは言ったものだ。何百、何千と集まられると、厄介の一言に尽きた。
 攻撃される前に一匹でも多くのケサランパサランを倒そうとダッシュで駆けだした響がケサパサの群れに飛び込もうとしたところで、ケサパサたちの渾身のタックルが炸裂した!
 数が集まれば何とやら。もふっとした感触に、足元に積もったふわふわと相まって転びそうになったところで――。
「大丈夫ですか、母さん!」
 響の元にサッと駆け寄る人影があった。義理の息子である瞬だ。
 間一髪のところで転びかけた響を支えた瞬は、優しく響の身体を立て直すと、怪我が無いか確認する。
 幸い、足を滑らせただけで怪我は見られないようだった。
「助かったよ。ありがとう」
「ええ、2人で何とかしましょうか」
 少し離れたところで、炎が上がっている。どうやら、奏が攻撃に移ったらしい。
 これ以上仲間を倒されてはかなわないと、もふもふっと響と瞬を取り囲むように集まってくるのは大量のケサパサたち。
 先ほどまでの愛くるしさはそのままに、顔つきが少しだけキリリとしたものに変わっていた。どうやら、本気で掛かってくるようだ。
 対する瞬と響もまた、それぞれの武器を構えて――とっておきの一手を放つ。
「疾風よ、奔れ!! 母さん、今です!」
「この一撃は竜の牙の如く!! 喰らいな!!」
 もふっと全力の突進をしてきた無数のケサパサたちをオーラ防御で抑え込んだ瞬は、そのまま手にした杖を振り上げると衝撃波を生み出し、ケサパサたちを吹き飛ばした!
 攻撃が不発に終わった直後という無防備になった隙をつかれ、至近距離で衝撃波を浴びたケサパサたちは、勢い良く吹き飛ばされ、生み出された疾風の刃にその身が切り刻まれていく。
 瞬によって体勢が崩されたケサパサの群れ。そこに切り込んでいくのは響だった。
 鋭い輝きを宿す赤い軌跡が勢い良く迸ったかと思うと、次の瞬間には、身体に無数の切り傷が走っていて。
 響の剣による一閃を受けたケサパサたちは、自分の身に何が起きたのかも理解できぬまま、もふんと地面に落下していった。
「まだだよ!!」
 響の薙ぎ払いは、一度だけでは終わらない。一難去ってまた一難。攻撃をどうにかやり過ごし、ケサパサたちが油断した隙をついて再び薙ぎ払った。
「こんなところでしょうか」
「大体は片付いたようだね」
 瞬と響の猛攻によって、瞬く間にその数を大きく減らしたケサパサたち。この一角に、白いふわふわは見られなくなっていた。
 と、そこへ遠くから走ってくる人影が。
「兄さんも母さんも、無事でしたか? 私には楽園ですが、他の方は大変ですし。さあ、先にいって、状況を解決しに行きますか」
 ぱっぱと身体についた白いふわふわを掃った奏は、響と瞬に問いかける。白いふわふわが身体のあちこちに付いてしまっているが、二人とも怪我はないみたいで。ホッと安堵の息を零すのだった。
「奏は無事にもどってきたようだね。良かった」
「奏は……戻って来ましたか。ええ、願いの結果といえ、この状況は異常過ぎる。願いの主に直談判しにいきますか」
 家族三人で見上げる屋敷の門。ケサパサたちが一層された今だから分かるが、屋敷は不気味なほどにシンと静まり返っていた。
「さあ、この騒ぎを起こした願いの主に会いにいこうか。何が起きるか不安ではあるが、何とかなるさ」
「さて、いったい何が起きるんでしょうか」
 願いの主はケサランパサランを降らせようとして、ぬいぐるみやクッションやらの『ふわもふ』を降らせるぐらいなのだ。願いが変な風にねじ曲がって、何が起きたって不思議ではない。
 世界を崩壊させる訳にはいかないから。何が起きたって、何とかなると信じて。
 三人は、屋敷の門を潜っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・六架
幾千の白いケサランパサランにとハッと思い出す
ルーファ、これが噂のダンマクというものですか?
隣で溜息を吐くルーファ(f06629)の背を鼓舞するように叩き微笑む
行きましょうか。ルーファ、ナイト


しゃらり――香炉を振れば拡がり爆ぜる鈴蘭と乳香の香
黒猫は魔獣に姿を変え毛玉を殴り『まだ終わらんのかや』と渋い顔
これが終われば美味しいお酒が飲めますよ


ユキガッセン?知らない言葉に小首を傾げ
ぽふと顔面に当たるふわふわ
きょとんとしてると笑う彼らに釣られて笑う
これを投げたら良いんですね
と白い毛玉を投げて遊ぶ


自然と笑みがこぼれ
こうして友人と遊ぶのも幸せなひととき
ケサランパサランが幸せを運ぶのも
強ち間違いではないのかも


ルーファス・グレンヴィル
六架(f06485)と
ダンマクって弾幕か?
あれは銃撃で出来る弾丸の…──
向かってくるケサランパサランの姿を見て
イヤ、ウン、似てるかも知れねえ
げんなりした顔で溜め息ひとつ

双子鉈を振り回して敵を倒すも
数千も居るから流石に飽きてきたな
終わった後の酒も楽しみなんだが

不意に一匹を手に取って
コイツとも遊べたら楽しめるだろ
ただ遊び方なんて分からねえからな
六架、カーボン、雪合戦でもするか?
ほい、とケサパサを投げつける
見事に顔面に命中したら
けらけらと可笑しそうに笑う

ケサランパサランは
幸せを運んでくる、だったか?
折角なら、このまま遊び尽くそうぜ!
口角を上げて次々と放り投げ始めた
ダチと遊ぶのは、確かに幸せな時間か



●もふ合戦と幸せな時間
 戦争映画やゾンビものでありがちな、無数の弾丸を一斉に放ち弾丸の幕を作るアレ。
 それに似たような光景が、今、目の前に広がっていた。
 ……最も、もふんもふんと発射されるのは金属の塊ではなく白いもふもふで、その速度も弾丸に比べれば遥かにゆっくりなのだけれど。
 ふわんふわんと一斉にこちらに向かってくる様は、弾幕のそれに似ているような。
「ルーファ、これが噂のダンマクというものですか?」
 何百、何千と向かってくるケサランパサランの姿に、思わず弾幕を連想してしまったのは栗花落・六架。
 ひゅーん……とこちらに向かって飛んでくるのは良いが、勢いが足りずに途中でぽとりと落下してしまうのも多い――否、殆どが途中でもふっと地面に落下してしまっている。
「ダンマクって弾幕か? あれは銃撃で出来る弾丸の…──」
 あれは銃撃で出来る弾丸の幕であって、決して白いふわふわで出来るようなものではない。ルーファス・グレンヴィルは六架に向かってそう言いきろうとしたところで――むにっとルーファスの顔に綺麗に着地したケサパサが一匹。
 もにょもにょと這い回るケサパサを引っぺがし、次々にルーファスの顔を目掛けて飛んでくるケサパサたちを手で叩き落としながら、ルーファスはげんなりした様子で呟いた。
「イヤ、ウン、似てるかも知れねえ」
 本物の弾幕と比べれば、速度も殺傷能力も劣るけれども。もふもふと自動追尾機能が備わっているし、生物であるから頭が回る。
 厄介だとため息を吐くルーファスの背を、六架は鼓舞するように一度強く叩くと、彼に向かって微笑みかけた。
「行きましょうか。ルーファ、ナイト」
 掛け声と共に、ルーファスの前で揺れるのは華麗なステップを踏み出した六架の後ろ姿。
 しゃらりと香炉の揺れる軽い音が一つ鳴ると、端から鈴蘭の花びらへとその姿を変えてゆく。
 六架の歩みと共にふわりと爆ぜる鈴蘭の乱舞と共に広がるのは、乳香の香だった。
 仄かな香りを纏った鈴蘭が舞い上げるはケサパサたち。渦を巻き、切り刻み。鈴蘭の花嵐が踏み出すのは、永遠の眠りへのステップだ。
 舞い踊る六架の背後で、大きな魔獣へと姿を変えた黒猫は――もふっと寄ってくる毛玉たちの片っ端から、高速で猫パンチ!
 幾らぺしぺしと投げ飛ばし、叩き落としても次から次へとやってきて。 
『まだ終わらんのかや』と口を窄めて思わず渋い顔をした黒猫に、六架はニコリと微笑みかかる。
「これが終われば美味しいお酒が飲めますよ」
 それなら仕方ない。毛玉てしてしを再開した黒猫の背後では、ルーファスが双子鉈を振り回して、毛刈りをしている真っ最中であった。
 軽やかな動きで繰り出される刃の舞踏。ある時は真っ二つにして、またある時は斜めに振り下ろして。
 ルーファスが鉈を振り下ろす度に、ケサパサの白い毛がふわりと辺りに舞い散った。
 倒して、倒して――身体が返り血もとい、返り毛で白く染まってもなお。
「数千も居るから流石に飽きてきたな。終わった後の酒も楽しみなんだが」
 鉈を振るう手を止めて思わずぼやく。終わらない。終わる気配も見えない。
「そうだ。コイツとも遊べたら楽しめるだろ」
 近くをふよふよと漂っていた一匹を手に取って、ルーファスはしげしげとケサパサを観察してみせる。
 けれど、遊び方なんて分からないから。
「六架、カーボン、雪合戦でもするか?」
「ユキガッセン?」
 そんな言葉と共にほいっと六架に向かってケサパサを投げつければ、小首を傾げる彼の顔にもぬっと見事ケサパサが命中した!
 ぽふんと顔面に当たってそれからするすると滑り落ちていくケサパサの姿に、ルーファスはけらけらと可笑しそうに笑い始める。
「これを投げたら良いんですね」
 楽しそうに笑うルーファスとナイトに釣られて、六架もまた笑みを浮かべると、お返しとばかりに白い毛玉をルーファスに向かって投げ返した。
 ぽんぽんと空中を行き交うケサパサに、楽しそうなはしゃぎ声。
 ルーファスの投げたケサパサを『叩くのはもう飽きた』とばかりに黒猫がベシッ! と容赦なく叩き落とし、弾みでリバウンドしたケサパサがもっとナイトを目掛けて飛んでいく。
 宙にひらりと飛び上がって回避したナイトを見たケサパサは、標的を六架へと変えて――。
「ケサランパサランは幸せを運んでくる、だったか?」
 そう。ケサランパサランは幸せを運んでくるといわれている。
 これだけいるのだから、運ばれてくる幸運も桁違いなものであると思いたい。
「折角なら、このまま遊び尽くそうぜ!」
 口角を上げたルーファスは、次々とケサパサを六架に向かって放り投げ始めた。
 弾幕ならぬ、弾モフである。これだけ投げたら、数匹は彼にくっつくと信じて。
 そして、ルーファスの計算通り、白い毛玉を頭や翼やら――あちこちにくっつかせた六架。その隣で、澄まし顔で佇んでいる黒猫もいる。どうやら、黒猫は全て容赦なく叩き落としたらしい。
 自分が投げた倍以上のケサパサを投げ始める六架を見たルーファスは、慌てて逃げ出した。無防備になった背中にもふもふとケサパサたちが張り付いて。
「ケサランパサランが幸せを運ぶのも、強ち間違いではないのかもしれませんね」
「そうだな。ダチと遊ぶのは、確かに幸せな時間か」
 友人と遊ぶのだって、確かに幸せな一時なのだ。
 自然と溢れる笑みと声に、賑やかな一時は緩やかに過ぎ去っていく。
 ルーファスが放ったケサパサのうちの一匹が「『コイツとも遊べたら楽しめるだろ』って言ってたじゃん。いつの間にか、唯のボール役になってるじゃん」という何とも言えない微妙な表情で放物線を描いていくのは、きっと気のせいだ。
 ケサパサ『と』遊ぶのではなく、ケサパサ『で』遊ぶことになっていることも、きっと気のせいだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アレクシス・ミラ
【双星】


この大群をどうにかする前に黒猫さん…仮でセリにゃんと呼ぼうか…を何処にしまうか
考えているとぬいぐるみを胸元に入れる彼の姿が
(何故そんな所に…
気に入ったのかな…?)
…ん?
セリにゃんを鎧に押し込まれぽかん
…まあ、セリオスも心なしかセリにゃんも満足そうだからいいか

あ、こら!だからって油断しては…
セリオス!?
押し流された彼を受け止め
【天誓の暁星】、此処で止める意思で強く踏ん張る!
大丈夫かい!?…はあ、よかった
ほら、君達もそんなに押し寄せないでくれ
彼を抱えたまま盾で押し返し追い払おう

派手にやったなあ…
あ、ちょっと待ってセリオス
ふわふわがついている、と払ってあげて
…ん、僕もかい?
ああ、ありがとう


セリオス・アリス
【双星】◆
アレスわん(仮称)は戦闘の邪魔になるから
胸元にインして…ん?
なんだアレスもしまい場所に悩んでるのか?
コイツもここでいいだろう
鎧の隙間に押し込んで
うん、かわいいじゃん

っと、気を取り直して突撃だ
ふわふわしてるし押し退けて行けるだろ
…わあ!?
軽い気持ちで進んだらそのまま押し流されてアレスのとこへ
なんか…アレスともふもふに挟まれたら快適すぎて
このままでいいような気がしちまうけど
さすがに量が多すぎる!
剣を抜いて【蒼ノ星鳥】
前方の奴らを一掃する!

ん、大分減ってスッキリしたな!
けどなんか、まだちょっともふもふしてる
目を閉じてアレスの手を受け入れて
ふふ、アレスもついてんぞ
アレスのは俺がとってやろう



●もふに挟まれたのなら
 寄せては返す、白いふわふわの大波たち。
 屋敷の門を守るように立ち塞がるケサランパサランたちは、仲間たちの活躍によってだいぶその数を減らして――減らして……きている。そのはずである。
 ちっとも数が変わらないようにもみえるケサパサたちとの戦闘。でもその前に、することが一つあったから。
 もそもそと具合の良い場所を探るようにして身体中を調べていたのは、セリオス・アリスだった。その手には、アレスそっくりな金色わんこのぬいぐるみが握られている。
「アレスわん(仮称)は戦闘の邪魔になるから、胸元にインして……ん?」
 肩に腰に、幾つか場所を試して一番戦闘に支障なく、丁度良い場所が胸元だった。
 もにっと外套の中にアレスわんを差し込めば、衣服の隙間からひょっこりと顔だけを覗かせている。ちらりとケサパサの様子を伺っているようにもみえるアレスわんの姿は、何とも愛くるしいもので。
 少し柔らかな眼差しをアレスわんに送るセリオスに、アレクシス・ミラは内心で首を傾げていた。
(「何故そんな所に……。気に入ったのかな……?」)
 ポケットとか、他にも場所はあるだろうに。どうして、よりによって胸元なのだろう。
 それほど金色わんこのことを気に入ったのだろうか。
 もしそうだとしたら――自分に似た金色わんこを愛でるセリオスに、アレクシスはむず痒いような、嬉しいような。少しの気恥ずかしさを感じていた。
「この大群をどうにかする前に黒猫さん……仮でセリにゃんと呼ぼうか……を何処にしまうか」
 戦闘の邪魔にならない場所となると、比較的場所が限られてしまう訳で。
 セリオスのように胸元にインするのも、お揃いという事実が恥ずかしい。
 おすまし顔のセリにゃんを抱きしめたまま、ウロウロとさせていたら、横からスッとセリにゃんを掬い上げる手が。
「なんだアレスもしまい場所に悩んでるのか? コイツもここでいいだろう」
「……ん?」
 言い終わらないうちにセリにゃんをアレクシスの鎧の隙間に押し込んでみせたのは、セリオス当人で。
 押し込まれたとは思えないほど違和感なく鎧の隙間に埋まるセリにゃんの姿に、満足そうに頷くセリオスの隣で、アレクシスは事態が呑み込めないままポカンと口を開けて固まっている。
「うん、かわいいじゃん」
「……まあ、セリオスも心なしか、セリにゃんも満足そうだからいいか」
 されるがままにセリオスに遊ばれたような気がするが、セリオスやセリにゃんが満足そうなら良いかと結論を出すアレクシス。
 アレスわんとセリにゃんの定位置が定まったのなら、いよいよもふもふとの戦いだ。
「っと、気を取り直して突撃だ。ふわふわしてるし押し退けて行けるだろ……わあ!?」
 そう。相手はふわふわしているだけの毛玉なのだから。
 数が多いだけで、どうにかなる。そんな軽い気持ちで進んだセリオスは、もふっと一斉に身体を膨らませたケサランパサランたちに押し流され――そのまま、アレクシスのところへ。
「あ、こら! だからって油断しては……セリオス!?」
 慌てて忠告を飛ばすアレクシスだったが、間に合わなかったようで。
 両足にグッと力を籠め、強く踏ん張って。勢い良くもふの濁流に押し流されてきたセリオスを、どうにかして受け止める。
「大丈夫かい!? ……はあ、よかった」
 大量の白い毛が絡みついている以外に、セリオスに変わった点はないようだ。転んでしまったりしていないことに安堵の息を吐きつつ、片手でセリオスをしっかりと抱きしめたまま、アレクシスは押し寄せるケサパサたちに向き直る。
「なんか……アレスともふもふに挟まれたら快適すぎて、このままでいいような気がしちまうけど」
 さすがに量が多すぎる!
 頼もしいアレクシスとふわふわなケサパサたちに挟まれて、快適なのもまた事実――しかし、むぎゅっと押し潰されているのもまた事実で、どうにも身動きが取りにくい。
 流石に量が多いとアレクシスの胸元で叫ぶセリオスの顔に、むにっとアレスわんがぶつかってくる始末。
「そうだな。さすがに、これは……ほら、君達もそんなに押し寄せないでくれ」
 むにむにと押し寄せるケサパサたちに押し潰されては堪らないと、アレクシスはセリオスを抱えたまま盾でぐいぐいとケサパサたちを追い返す。
「前方の奴らを一掃する!」
 アレクシスが押し返すケサパサたちに、引導を手渡すのはセリオスだった。
 アレクシスの胸元から飛び出し、目にも留まらぬ速さで斬撃を次々に繰り出していく。
 斬撃と共に生み出された眩い輝きを宿した星の尾を引く鳥型の炎の闘気が、あっという間にケサパサたちを包み込んだ。
「派手にやったなあ……」
 鳥型の炎が前方のケサパサたちを貪りつくし、そして一体残らず飛び去った後で。
 アレクシスが前方を見ると、そこには微かな白い毛を残すだけでケサランパサランの姿は一匹もなく。
 呆れたような、驚いたような声音でそう呟けば、隣から清々しい声が返ってきた。
「ん、大分減ってスッキリしたな! けどなんか、まだちょっともふもふしてる」
「あ、ちょっと待ってセリオス。ふわふわがついている」
 すっきりしたと心なしか嬉しそうに周囲を見渡すセリオスの髪に、ケサパサの白いふわふわが付いてしまっている。
 それに気付いたアレクシスは彼の名前を呼ぶと、そっと髪に付いていたふわふわを掃ってあげた。
 目を閉じたセリオスもまんざらでもない様子で、アレクシスの手を受け入れている。
「ふふ、アレスもついてんぞ。アレスのは俺がとってやろう」
「……ん、僕もかい? ああ、ありがとう」
 指越しに伝わるアレクシスの熱が去ったところで瞼を開ければ、アレクシスの金髪にふよふよと絡まる白い毛の存在がセリオスの視界に飛び込んできた。
 自身よりも少し高いアレクシスの身長。そっと手を伸ばして金髪を梳けば、はらりと白い毛が舞い落ちていく。
「……あ、背中にも」
「結構あちこちについてるな。アレス、背中のもとってやるよ」
 思いのほか、身体のあちこちにふわふわが付いていたらしい。あれだけもみくちゃにされたのだから、当然といえば当然なのだろうけれど。
「おー。しつこいくらい取れないぞ。瞬間接着剤でくっつけたか?」
「なんで取れないんだろう……」
 戯れるようにしてモフ毛を取り合う二人の姿を、アレスわんとセリにゃんが優しく見守っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

呉羽・伊織
【守】◆
ウン、ある意味たいへんだったネ(子守ならぬ爺守が)
しっかし肝心なのは此処からだぞ
ホントはしゃぎすぎて足腰痛めてくれるなよー!あとソレ(たぬい)も落として泣かないよーにな!

――いや気のせ…(つつかれた拍子にぴよっと何かが顔出し)
っコレはアレだ、良いコに留守番してるお供達への土産だ土産!
おかわりってどんだけもふれば気が済むの!
でもま、気分良く打上げする為にも頑張るのは同意だ!

(俺までうっかり追いかけっこ始めたら児爺をとやかく言えなくなる…!と、必死に感情に抗いつつUC)
くっ、そんな風に戯れついてにてもダメだからな俺は遊ばないからな~!(言いつつ突撃してきたのはもふっと受け止め優しく眠らせ)


重松・八雲
【守】◆
ふ、たいへん(魅力的)な道程じゃったが、漸く辿り着いたのう!
うむ、先程迄は準備運動の様なもの――道中のふるもっふで疲労するどころか逆に活力も得たでな!
(いつの間にかふえたたぬいぐるみを満足げに撫でつつ懐にしまった!)

ところでお主もやけに懐が膨らんでおらぬか?(つんつん)
ふはは、こりゃ帰ったら本物達と並べてふるもっふおかわり祭じゃな~!
ではこの漲る勢いで毛散らしてもとい蹴散らして救出と行くぞ!

テンションそのままに勢い良くUCで突撃
おおぽふぽふもふもふ反撃が!くすぐったいのう!
しかし何だか雪合戦やらお手玉やらしたくなる見た目じゃな!
(もふもふぽいぽい遊んでいる様に見えるが戦っている、筈!)



●手強い相手
 救って投げ飛ばして、或いは燃やして、また或いは吹き飛ばして――。
 肉体的にも重労働だった『ふわもふ』が降り積もった道のり。それでも、肉体的疲労よりも精神的疲労の方が強いのは、呉羽・伊織の気のせいだろうか?
「ふ、たいへん(魅力的)な道程じゃったが、漸く辿り着いたのう!」
 七十歳とは、飾りの年齢なのだろうか。心の底からもふを楽しんだことによって、心も身体もきらっきらのツヤツヤな重松・八雲。
 漸く辿り着いたと豪快に笑ってみせる八雲の姿に、伊織はげんなりとため息を吐いた。
「ウン、ある意味たいへんだったネ」
 子守ならぬ爺守が。
 おざなりに返す声が棒読みになったのも、無理はない。
 少し目を話せば、ふらりふらりとぬいぐるみを追いかけて走り出すわ、もふりだして全然前に進まないわ、第二第三のたぬいを探し始めるわ……七十歳児のお守は、「大変」の一言に尽きたのだから。
「しっかし肝心なのは此処からだぞ」
 そう。大変なのは此処からだ。屋敷までの道のりは、準備運動に過ぎない。
 もふんと周囲を漂うケサランパサランの数は、数えきれないほどで。
 先行した仲間たちがかなりの数を削ってくれてはいたが、それでも多すぎる。
「ホントはしゃぎすぎて足腰痛めてくれるなよー! あとソレ(たぬい)も落として泣かないよーにな!」
 ケサパサに夢中になって足腰を痛められても、たぬいを落されて幼児よろしくぎゃん泣きされても……その光景を想像しかけた伊織だったが――即座に想像した光景を箱に詰めて、上から封印のお札貼り付けた。
 ダメだ。七十歳児の大泣き姿は、色々な意味で刺激が強すぎる。
「うむ、先程迄は準備運動の様なもの――道中のふるもっふで疲労するどころか逆に活力も得たでな!」
 ケサパサも十分にもふってこそのもふりすと。ふるもっふする八雲の活力は十分なようだ。
 そう。あれから更に沢山のたぬいと出会えて――気が付けばいつの間にか増えていた、たぬいぐるみを満足げに撫でつつそっと懐にしまう八雲だった!
「ところでお主もやけに懐が膨らんでおらぬか?」
「――いや気のせ……」
 ふわふわなぞ厄介だ、という体を保ったままの伊織。しかし、八雲が見逃すはずもなかった。
 ケサパサを眺める伊織の懐が、もふっと不自然に膨らんでいることに!
 訝し気な視線を向けたまま伊織の懐をつんつんすれば、案の定、ぴよっと何かがひょっこりと顔を出して。
 それも一羽だけじゃない。数羽のぴよぴよが突く度に、ひょこひょこと顔を覗かせていく。
「っコレはアレだ、良いコに留守番してるお供達への土産だ土産!」
「それにしては、大量じゃのう?」
 慌ててぴよこたちを懐に仕舞い直す伊織に、にまにまと八雲は笑顔を向ける。
 なんだかんだ言って、ぴよこたちを集めて持ってきているのだから、伊織も同類だ。
「ふはは、こりゃ帰ったら本物達と並べてふるもっふおかわり祭じゃな~! ではこの漲る勢いで毛散らしてもとい蹴散らして救出と行くぞ!」
 テンションそのままに、勢い良くケサパサの群れへと突撃していく八雲の後ろ姿。
 もふんと勢いそのままにケサパサに飛び込めば、ふわりと優しく身体を受け止めてくれる。
 「おおぽふぽふもふもふ反撃が! くすぐったいのう!」
 ぽぽんと恐らくは体当たりをしているつもりであろう、ケサパサたち。
 彼らにとっては本気でも、八雲にとっては可愛らしい反撃にしかならない。
 くすぐったさに身を捩りながら笑い声を上げれば、ぽふん! と身体に受ける衝撃が一層強いものに変化した。
 どうにも負けじと奮闘しているケサパサたちだが、八雲はちっとも動じない。それどころか、「頑張るのじゃ」と優しく見守り始めるものだから、ケサパサたちからしてみれば、本末転倒も良いところだろう。
「しかし何だか雪合戦やらお手玉やらしたくなる見た目じゃな!」
 戯れにぽんぽんとお手玉を始めて見れば、思いのほか愉しくて。
 ぽいぽいとされるがままで投げられるケサパサに、どうにかして逃げようと投げられながら機会を伺うケサパサに。個体毎の特徴もよく現れている。
「おっと。そう簡単に逃がすわけにはいかぬのう」
 もふもふぽいぽい。上に投げて、ふわりとキャッチして。傍から見れば盛大に遊んでいる様に見えるが――戦っている、筈!
「お主も来るかの?」
(「俺までうっかり追いかけっこ始めたら児爺をとやかく言えなくなる……!」)
 無邪気にケサパサと戯れている児爺が羨ましい訳ではない。断じて。断じて……!
お誘いに心が揺らいだとか、そんなことはない。はず!
 必死に感情に抗いつつも、伊織はどうにかしてユーベルコードを発動させるのだった。
「くっ、そんな風に戯れついてにてもダメだからな俺は遊ばないからな~!」
 とかなんとか。
 口ではそう言いつつも、行動は気持ちに従順だった。
 突撃してきたケサパサたちはもふっと受け止め――暫しもふもふとこねくり回して感触を楽しんだ後、そっと優しく眠らせる。
 つぶらな瞳を向ける彼らを無下にすることなど出来なくて。
 もふもふ遊びながら、そっとケサパサから見えぬ位置から暗器を近づけ、眠りの世界へと。
「ある意味、手強い相手だことで……!」
 呑気にお手玉してみせる八雲のように開き直れたら、どんなに良かったことか。
 八つ当たりにうにょにょ~ん……とケサパサを引っ張ってみても、彼らは気持ち良さそうにその身体を伸ばすのだから、それがまた悔しい。
「ぴよこの方が可愛いからな!」
 とか言いつつも、しっかり手はケサパサを撫でくりモフり。
 二人のもふもふタイムは、もう暫く続きそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
 ■◆


 まんまるって。まんまるって。無理、むり。しんぷるいずなんとかってやーつ。ひとまずうちの子らとは遊べたことだし、ここでの出会いゃここだけのふれあいもまた大事、うん。

 あまり享受するばかりでも申し訳ないよな気がしてしまうし、こちらも何かしらこう、もふもふな姿になって、お互いにもふり合える感じになれるといーな。UCで着替えれば、いろんな事が得意になるし。例えば――

・ふわもふとゆー名の海にどれだけ深く埋まろーとも●深海適応して長時間もふれたり。
・ふわもふの流れを●見切り、積もった●地形も利用して、その場を●操縦(コントロール)するかの如く、スムーズかつ効率良く、いっぱいもふれたり。

 なんてね。



●尊し、もふ
 まんまる。ふわっふわのまんまるが、ふよふよと大量に浮かんでいる。
 それも、大変愛らしい表情で、ずっと眺めてみたくなるような仕草で。
 屋敷に近くを漂うケサパサを一目見たその瞬間から、ノネ・ェメはふわもふに陥落寸前だった。
「まんまるって。まんまるって。無理、むり。しんぷるいずなんとかってやーつ」
 しんぷるいずべすと。まるもふいずぱーふぇくと。
 きっと、まるもふはモフの神が創りし究極のもふなのだ。それ以外に何と言えよう。
 ノネの姿を見るなり近寄ってくるのだ。人懐っこいところも、グッド。攻撃しているつもりかもしれないが、痛くないのでノープロブレムだ。
「ひとまずうちの子らとは遊べたことだし、ここでの出会いゃここだけのふれあいもまた大事、うん」
 一期一会。出会いは大切にしないと。
 だからこれは浮気ではないのだ。ただ、ここでの出会いを楽しんでいるだけ。そうハンドパペットたちに言い訳をしつつ、よってきたまるもふをこねこねこね。
 もしょもしょとノネの両手を動き回るケサパサは、小動物のような愛らしさを秘めている。
「ハムスターみたいに何処まで薄くなれるかちゃれーんじ」
 あれ。いつだったかSNSで話題になった、溶けるハムスター。
 形が似ているしケサランパサランも溶ける? と、興味本位ですりすりマッサージをすれば、段々とへにょーん……と薄くなっていくケサパサの姿。
 暫くの間こねくり回していたら、ぺたんとハムスターも驚きの薄さになった。
「お、新発見。ふわもふは液体なり」
 溶けながらももしょもしょと相変わらず、掌の上を動き回るケサパサ。
 どうやら、彼らの正体は個体ではなく液体であるらしい。多分、このままケサパサを四角い箱に入れたら箱の形にフィットするのだろう。猫みたいに。
「そだ。あまり享受するばかりでも申し訳ないよな気がしてしまうし、こちらも何かしらこう、もふもふな姿になって、お互いにもふり合える感じになれるといーな」
 ふわもふは尊し。けれど、享受するばかりも申し訳なくて。
 お互いにもふり合える感じになったら、きっと皆ハッピー。それに、もふるだけではなくて、もふられる側も体験してみたいよーな。
 思いついたら即実行のノネだった。
「UCで着替えれば、いろんな事が得意になるし。例えば――」
 もふっとまるもふそっくりな姿にノネは変身してみせる。
 うにょーんと身体を伸ばしてふわもふという名の大海に深く埋まれば、本当にケサパサの仲間入りを果たせたような。
 全身をもふに包まれるのも、また尊いものだった。
 ふわもふの海流の流れに乗りつつ、揺蕩うもふたちを片っ端からもふっていく。
 時には、もふられる側になることもあって。もにっともふられる側の感覚は新鮮だった。思わずケサパサが溶けてしまうのも納得の気持ち良さ。高級マッサージでも受けている気分だ。
「これは、帰って来れないかなー」
 ふよふよと数えきれないもふと共に大海を漂ってこの心地良さを知ってしまえば、陸地に戻ることが億劫になる。
「おれ、うにうにこうげきー」
 スムーズかつ、効率に。
 むにむにとノネのもふり攻撃を受けたケサパサがまた一匹、液体となって溶けていく。
 屋敷の門が近くに見えるけれど、今は存分にもふりたい気分。
 新たなケサパサを手招きしたノネは、一瞬お屋敷に視線を向けた後、再びもふの海を漂い始めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『酒呑み竜神『酔いどれオロチ』』

POW   :    桜に酒はよく似合う
【周囲に咲いている桜の花びら】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    月も酒にはよく似合う
非戦闘行為に没頭している間、自身の【頭上に輝く満月】が【怪しい光を照らして包み込み】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    やはり祭りに酒はよく似合う
【頭上の提灯の怪しくも楽しそうな灯り】を披露した指定の全対象に【倒れるまで踊り狂いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は高柳・源三郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●月に叢雲、花に風、モフに猟兵
『これはこれは、実に愉快じゃ!』
 世界が危機に瀕した影響だろうか。
 門を潜り抜け、どう考えても外見よりも遙かに長ーーい裏庭を通り抜けたら、不意に視界が広がった。
 右手側には見事な日本庭園が造られ、大きな池には、空に浮かぶ望月が映り込んでいる。
 そして、やはりと云うべきか。『ふわもふ』が大量発生した影響をモロに受けているらしく、松の木に小さなリスのぬいぐるみが乗っかっていたり、家に普通のケサパサがふよふよと浮かんでいたり……。裏庭の至る所に『ふわもふ』たちが見え隠れしている有様だ。
 そして、猟兵達の左手側には……件の元凶である、骸魂に呑み込まれオブリビオンと化した酒呑童子、否、『酒呑み竜神『酔いどれオロチ』』が降ってくる『ふわもふ』たちを見上げながら、吞気にモフ見酒と洒落込んでいた。
 どうにも、酔うと笑い上戸になる性質であるらしい。
 突然屋敷に乗り込んできた猟兵達のこともちっとも不審がらず、『お主らもどうじゃ?』と酒盛りを勧めてくる始末。
『心配せずとも、酒以外も用意しておる。童に飲酒は禁忌だからの!』
 件の一件の元凶は、本当に美しい光景を見ながら酒盛りがしたいだけであるらしい。
 しかし、相手はオブリビオンと化した存在だ。此処で倒してしまわなければ、近いうちにカクリヨファンタズムの世界が滅びてしまう。
『友を誘ったのじゃが、何故か誰も来なくての。お主等と呑めるのなら、酒の席が華やぐわい』
 恐らく、酒呑童子が誘っていたのだろう。しかし……その友とやらも、縁側に辿り着く前に骸魂に呑み込まれ、ケサパサ化してしまったようだ。猟兵達の足元で、もしょもしょと数匹のケサパサが蠢いているのだから。
『ささ、酒も摘まみもたんとある。なんなら、西洋のすいーつもな』
 何とも気の抜ける状況だが、折角の機会(?)だ。
 ……適当に宴会を盛り上げ、楽しみつつ倒してしまえば問題ないだろう。
 恐らく、酒好きな骸魂にとっても、それが最善の方法だろうから
レスティア・ヴァーユ
【もっふ】
くまを親友に預け、敵の目に留まる前
…日和ったままではなく、シンプルに問いたい
…純粋にただ酒を楽しんでいる存在に、最後に刃を向ける事は出来るだろうかと
―否。やらねばならない事は分かっている
世界が滅んで良いわけではないのは分かっている、だが
躊躇う
心に一つ、浮かぶ―『理不尽』という感情

…アシュエル。一つ、卑怯な事を言っても許されるだろうか
私は、他の猟兵のサポートに回る

敵の誘いと共に酒自体を楽しむ
それが最後のよき記憶となるように
話を合わせ、飲み、そして
「では、芸の一つも披露させていただこうか」
UC発動、士気高揚歌の中でも出来れば場に合う戦色の少ないものを

敵UCは甘んじて
受けてしまえば不可抗力


アシュエル・ファラン
【もっふ】
…甘い
その『相手に害意向けられないと、自分から先手で仕留めるの躊躇う』癖
直さないと、いつかその油断でおまえが死ぬぞ
言いながら
…それは、見たくないもんだな…と、内心でふと

しゃあない
でも、せめて依頼だから物理一発でも入れておかないと怒られるだろ
では宴会芸らしく行きましょうかねっ
盛り上げるだけ盛り上げて
明るく酒も互いに浴びるように飲んで
念動力で敵に酒を注ぎながら、ついでに当ててUC発動

「せっかくだから、酔っ払い勝負と行こう!
(UCルール)『俺とそちら。俺の親友が歌ってる間、酒を口に運んだ方が負け』
たまには桜だけ見るのもいいモンだろう?」

これであいつの歌う時間くらいは稼げるだろ
桜も綺麗だな…



●理想と現実の境界で
 この骸魂と化した妖怪が何を思って幽世を目指したのか。それは本人しか知らぬであろうこと。
 しかし、酒吞童子を取り込んだ骸魂が幽世に辿り着けず命を落とし、骸魂と化したこと。それだけは事実なのだから。
 誰が悪い訳でもない。唯、運が悪かっただけ。それだけの話。骸魂になった今でも酒を追い求めているのだから、幽世で飲める酒を楽しみにしていたのかもしれない。
 だからこそ。
「……日和ったままではなく、シンプルに問いたい」
 降りゆくモフや大きな望月を眺め、上機嫌でお猪口を掲げる竜神の姿を見た時、レスティア・ヴァーユの足は自然と歩みを止めた。
「……純粋にただ酒を楽しんでいる存在に、最後に刃を向ける事は出来るだろうかと」
 くまを隣の親友に預け、眺める竜神の姿。そこに、敵意や害意の存在は感じられない。
 あるのは、酒を楽しみたいという純粋な気持ちだけだ。それすら、赦されないのだろうか。
 或いは、存在して居ること自体が罪に成るとでも云うのか。
 彼は唯、そこで酒を楽しんでいるだけだと云うのに?
「……甘い。その『相手に害意向けられないと、自分から先手で仕留めるの躊躇う』癖。直さないと、いつかその油断でおまえが死ぬぞ」
 酒の席には似つかわしくない。レスティアの低く冷たい声音で放たれる問いに、アシュエル・ファランは冷静な声で――しかし、ハッキリと隣の親友に告げる。
 言外に、それは赦されないことなのだ、と。
「……本来なら、死んだ瞬間に終わっているはずの魂だ。二度目はあり得ない」
 オブリビオンである以上、存在しているだけで世界を破滅へと導いてしまうのだ。それが無意識的であれ、意識的であれ。
 残酷なようだが……レスティアに紛れもない真実を告げながらも、アシュエルはそっとその瞳を伏せた。
(「……それは、見たくないもんだな……」)
 この悪癖を治せ、とは言わない。それがレスティアの魅力でもあるのだから。唯、コントロール出来るようになって欲しいだけだ。
 理不尽や問いを抱きながらもなお、最後には刃を向けられる強さと優しさを。
 情けを掛けて油断したところをつかれるか、敵の攻撃に思わず手を止めてしまうか。レスティアは何れ死への道を辿るのだろう――それが出来ない限り、待っているのは確実な死のみだ。
 そしてアシュエルは目の前で親友が死に逝く様を、見たくはなかった。
「――否。やらねばならない事は分かっている。世界が滅んで良いわけではないのは分かっている、だが」
 躊躇う。害意無き存在に、刃を向けることに。
 レスティアに心に一つ、浮かぶには――『理不尽』という感情。
「『納得しきれない』って顔してるな。……だが、それが現実だ」
 レスティアは誠実で、そして良くも悪くも純粋だった。この世は理不尽なことも数えきれないほど、溢れ返っていると云うのに。
「……アシュエル。一つ、卑怯な事を言っても許されるだろうか。私は、他の猟兵のサポートに回る」
「しゃあない。でも、せめて依頼だから物理一発でも入れておかないと怒られるだろ」
 親友の問いに、それを許そうとする自分もまだまだ甘いな、なんて。心の片隅でそんなことを思いながら。
 アシュエルは気分を切り替えるために両手を数度叩くと、竜神のいる縁側へと大きく歩み寄った。
『お、お主らも飲むかの?』
「はいはい、飲みますよっ。では宴会芸らしく行きましょうかねっ」
 後先のことなんて考えちゃいない。楽しんだ者勝ちだ。
「けっこうな飲みっぷりですね!」
『お主も負けておらぬだろう』
 囃し立てて、盛り上げるだけ盛り上げて。
 明るく、ともすれば半ば自棄とも捉えられるアシュエルの口調に、並べられていた酒瓶が見る間に空になっていく。
『この酒は旨いじゃろう? 辛さと少しの甘さが癖になるんじゃ』
「そう、ですね。宜しければ、何という銘柄かお伺いしても?」
 そしてレスティアもまた、竜神の話に相槌を打ちながら、少しずつ口元に酒を運んでいた。
 この宴会が、最後の良き記憶となるように。
 竜神の話に相槌を打つ自分は、果たして上手く笑えていたのだろうか。
「せっかくだから、酔っ払い勝負と行こう! 『俺とそちら。俺の親友が歌ってる間、酒を口に運んだ方が負け』。たまには桜だけ見るのもいいモンだろう?」
 偶然を装って当てられたアシュエルの念動力。竜神は恐らく、突風に吹かれて何かが身体に当たったとしか感じていないのだろう。手元に視線を落したのも一瞬で、直ぐに酒へと視線を移したのだから。
「では、芸の一つも披露させていただこうか」
 コホンと小さく咳払いを一つすれば、場の注目が一斉にレスティアの方へと集められる。
 そして白翼の天使が口ずさむのは、古き英雄の御伽噺。戦争を主題におけど物語性を強調したこの歌は、きっと――酒の場にも合うだろうから。
 敵の攻撃と、それが齎す踊れ狂いたいという感情を受け止めることが。恐らく、今、自分に出来ること。
 何処か妖しげな提灯の灯りをスポットライトの代わりに、レスティアが感じるがままに酒瓶を剣に見立ててミュージカルのように歌いながら踊れば、歌に合わせるようにして手拍子が届けられる。
(「これであいつの歌う時間くらいは稼げるだろ。桜も綺麗だな……」)
 はらりと何処からともなく咲き誇り始めた満開の桜。そのうちの一片が零れ落ちて、アシュエルが手にするお猪口にひらりと舞い落ちた。
 いつか、醒める夢で在っても。どうか、一夜くらいは。
「あ、今飲んだな?」
『……気のせいじゃないかの』
 ちらりと竜神を伺えば、早くも酒をちびちびと飲み始めていた。
『この酒はかなり辛口か。舌が痺れるわ』
 実際はアシュエルのユーベルコードによるダメージだったりするのだが……。それは秘密のままに。
 レスティアの即興舞台を皮切りに、宴は益々盛り上がりを見せていく。
 今はまだ。それでも、いつか受け入れられる日が来たのなら。
 その時まで、そっと親友としてフォローしようか。
 アシュエルがそっと見上げる先に、咲き誇る桜の花と、大きな望月が浮かんでいる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ポク・ョゥョゥ
ドラゴンたんがボスなのー?
お酒おいしー?そっかー
宴会しよー

ご挨拶するおー
ぽくだよーぱんだなのー
あがめよー(ぺこり)
パクとかぽもいるのー
あのねーまだお酒は飲めないからー
ジュース頂きまーしゅ

いっぱいたべるのー
おすすめのおやつなーにー?
スイーツ好き~そだーこれぽくが焼いたぽくっきーなのー
マヒらない方あげるよー
おいしー?よかったのー

一発芸するよー
もふもふ積み上げて~その上にパクとぽくとかぽでー
柔らかトーテムポールだ~
あわわ~ぐらぐらしながらはいぽーずー
決まったかなー?

あれー
ドラゴンたんに何かついてるよー
取ってあげるのー
めがとんぽくぱーんちー
憑いてたの取れたかなー?
お友達もぽよっとぱんちで治しておくねー



●すいーつ・ぱんだ
「お酒おいしー? そっかー。宴会しよー」
 好奇心のままにちょこんと竜神が手に持つお猪口を覗き込めば、ツンとした匂いがポク・ョゥョゥの鼻を掠めていった。
 大人になったらぽくもお酒の味が分かるかなー? なんて、そんなことを思いながら。
 お猪口から顔を上げたポクは、竜神へと向き直る。
「ご挨拶するおー。ぽくだよー。ぱんだなのー」
『ぱんだか。不思議なぱんだも居るのじゃな』
「あがめよー」
『おお、あがめよー!』
 「こんばんは」の代わりに、「あがめよー」と明るく挨拶すれば、ノリ良く『あがめよー!』と挨拶が返ってくる。
「パクとかぽもいるのー」
『パクとかぽか、愛らしいの』
 ポクの紹介と共に、ひょっこりとポクの後ろから顔を覗かせたのはパクとかぽ。
 ふわりと白い翼を広げて降り立っパクは挨拶代わりに一鳴きして、かぽは小さい身体を大きく見せるように、ブンブンと元気良く手を振っている。
「あのねーまだお酒は飲めないからー。ジュース頂きまーしゅ」
 まだお酒は飲めないけど、気分だけでも一緒に感じられたなら。
 ポクはワイングラスに注いだブドウジュースを掲げると、竜神やパクとかぽと、「かんぱーい」とグラスを打ち合わせた。
「いっぱいたべるのー。おすすめのおやつなーにー?」
『そうじゃな。ポクそっくりのドーナツもあるぞい』
 竜神がそっと勧めてみせたのは、パンダの形をしたドーナツだった。その次に、白黒のロールケーキに、パンダのカップケーキに……。
 最後にポクお手製のぽくっきーを隣に並べてみれば、宴が徐々にパンダに侵略されているような?
「ぱんだがいっぱいなの~。スイーツ好き~。そだーこれぽくが焼いたぽくっきーなのー。マヒらない方あげるよー」
 はもはもとドーナツを口に詰めながら、ポクはぽくっきーを差し出して。一口齧れば、しっとりサックリ優しいチョコがふわりと口の中に広がるから。
「おいしー? よかったのー」
『とても美味しいぞ。マヒる方もあるのか。不思議なお菓子じゃな』
 スイーツを話題にひとしきり盛り上がったところで、ちょこんと立ち上がったポク。
 周囲に降り積もっていたぬいぐるみや白いふわふわとポイポイと積み上げると、よいしょっと『ふわもふ』タワーに上り始める。
「一発芸するよー。もふもふ積み上げて~。その上にパクとぽくとかぽでー」
 ひらりと『ふわもふ』の上に華麗にパクに、よいしょっとポクが上って。更にかぽがポクの頭の上でじゃじゃーん! とポーズ!
「柔らかトーテムポールだ~」
 右へ左へ。ぐらぐらしながら、それでも崩れてしまわないようにバランスをとって。
 はいぽーずー! と決めてみせれば、温かな拍手が送られる。
「決まったかなー? 決まったねー!」
『実に可愛らしい一発芸じゃった!』
「あれー。ドラゴンたんに何かついてるよー」
 柔らかトーテムポールの上から覗いたからこそ、気付けたこと。ドラゴンたんの角の当たりに、何か黒い靄が付いている。
「取ってあげるのー。めがとんぽくぱーんちー」
 トーテムポールをジャンブ台代わりに、勢いをつけてモフっとジャンプ!
 桜の吹雪を浴びながら、それでもキラキラと明るいお星さまを纏ったポクのパンチは竜神の角にしっかり命中!
 もふんとした音と裏腹に、黒い靄が欠けたような。
「憑いてたの取れたかなー? お友達もぽよっとぱんちで治しておくねー」
 まだドラゴンたんから元のようかいたんに戻るには少し掛かりそうだけど、この調子ならきっと。
 ケサパサになっていたお友達のことも忘れていなかったポクは、次に白いふわふわにもっ! とパンチを繰り出していく。
 身体を包んでいた白い毛が抜け去れば――そこには、お友達の妖怪が仲良く目を回していた。
「けがはないかなー。元に戻れて良かったねー」
 多分、今目を覚ましたら、目の前の光景に驚いてしまうだろうから。
 お友達はもう少しそっと寝かせておこうと決めるポクだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】

オロチさんはお酒がお好きなのね
ルーシーはお酒がダメだし
ゆぇパパにお任せね

……でも気になってしまう
ねえパパ、お酒ってどんなお味?
美味しいの?パパはお好き?
辛い……ワサビみたいのかしら
でもお好きなのね
う?酔ってみたい、の?
大人って不思議がいっぱい

ルーシーはミルクコーヒーと……あ、ドーナツがあるわ!
パパも何か食べる?
マフィンもあるみたいよ
オツマミの方がいい?
じゃ、マフィンどうぞ!

黒ヒナさんを抱えて
お月様とてもキレイね
パパがお空にも居てくださるみたい

わあ!パパとお揃い?
うれしい!
んふふ、おいしいわ
ありがとう!

お酒は分からないけど
こんな日に誰かと居たい気持ちは分かるかも

ええ、いつか
大人になれたら


朧・ユェー
【月光】

オロチさんのお酒好きよいですねぇ
実は僕は呑んでも酔わないです。酔って楽しむオロチさんが羨ましいです
バーテンダーもしてますので、オロチさんの好きなカクテル作りましょうか?

お酒の味?そうですねぇ、辛いモノから甘いモノまでありますよ
ジュースと一緒で色んな味があるのですよ
酔う事はないですが好きですよ

ミルクコーヒーとドーナツを食べてる彼女を微笑んで
マフィンを頂きます

はい、ルーシーちゃん
僕が作ったカシスオレンジです
ノンアルコールですがお酒の様に楽しめますよ
僕と同じ、お酒の入ったカシスオレンジ
お酒はまだ早いけど同じモノを味わいましょう

月を見上げながら
飲める様になったら一緒に飲みましょうねぇ



●月蜜酒
 揃って並んで縁側に座れば、竜神の影響で狂い咲き始めた満開の桜が目に入る。
 はらりはらり、と。散っていく傍から蕾が咲いて、再び散った分だけ綻んで。
 頭上には妖しくも楽しい提灯の灯りが灯り、縁側の隅には酒や甘味の数々が並べられている。
「オロチさんはお酒がお好きなのね」
「オロチさんのお酒好きよいですねぇ」
『そうであろう。酒は良いものじゃ』
 親子揃って傍らに座る竜神へと声をかければ、カラカラと陽気な返事が返ってくる。
 一人でも、何人でも。美しい景色を見ながら。家でひっそり。
 どんな形でも、お酒という飲み物は楽しめるのだから。
「ルーシーはお酒がダメだし、ゆぇパパにお任せね」
 パパとドラゴンさんは飲めても、ルーシーはまだ飲めない。
 自分だけ飲めない。その事実に少しだけ寂しさを感じながら、パパこと朧・ユェーが手にする深い葡萄色を少し羨ましそうに見つめているのはルーシー・ブルーベルだった。
 お酒とジュースの違いはアルコールが入っているかそうじゃないかなんて、よく聞く話だけど。きっと、違いはそれだけじゃない。
 感じる雰囲気とか楽しさとか、そういったものもアルコールの有無で変わってくるような気がして。
 ユェーが手にするワイングラスをじっと見つめながら、ルーシーはそんなことを思ってしまうのだった。
「実は僕は呑んでも酔わないです。酔って楽しむオロチさんが羨ましいです」
『そうなのか。酔いには体質や差があるからのう』
 呑んでも酔わないユェーとは反対に、竜神はすぐに酔いが回ってしまう性質らしい。もう既に、顔が桃色に染まっていて、語る口振りも何処か饒舌なものだった。
「バーテンダーもしてますので、オロチさんの好きなカクテル作りましょうか?」
 グラスを彩るのはシュガーとくるりくるりと螺旋を描いたレモンの皮。
 ブランデーにラスキーノ、レモンジュースにアロマチックビターをシェーカーに注ぐと、ユェーは慣れた手つきでシェイクし始める。
 そして、シェーカーからゆっくりとグラスへと注げば――ふわりと広がる、ユェーと同じ望月色の色彩。夜空に浮かぶ満月をそっくりそのまま組んできたかのように、淡い煌めきを放っている。
 竜神がユェーに頼んだのは、ブランデー・クラスタと呼ばれているカクテルだった。
「ねえパパ、お酒ってどんなお味?」
 パパと同じ彩を宿すカクテルを興味津々でルーシーは覗き込んでいる。
 お酒はまだ飲めないけれど……でも気になってしまうから。
「お酒の味? そうですねぇ、辛いモノから甘いモノまでありますよ」
「美味しいの? パパはお好き? 辛い……ワサビみたいのかしら」
 ユェーはルーシーに微笑みながら、オロチさんが好きなお酒は少し辛いことを教える。
 きょとんと瞳を瞬かせるルーシーは、目の前に広がる月色が辛い方なんて、ちょっと信じられないことなのだけれど。
「甘そうな色なのに、不思議ね」
「ジュースと一緒で色んな味があるのですよ。酔う事はないですが好きですよ」
「でもお好きなのね。う? 酔ってみたい、の?」
「酔えませんからね。可愛い色合いでも辛かったり強いものがあったりしますから、ルーシーも大人になったら気を付けるんですよ」
 お酒に興味津々なルーシーに、ユェーは色だけで判断してはいけないことを教えていた。
 でも、甘いのは分かるけれど。ワサビみたいに辛いのに好きとか。
「大人って不思議がいっぱい」
「ルーシーも、大人になったらきっと分かりますよ」
『そうじゃな。大人になったらじゃのう』
 優しく語るユェーと、ユェーの言葉に相槌を打つ竜神。
 大人になったら、言葉通り分かるのかな。そう思うと、大人になる日が今から待ち遠しかった。
「ルーシーはミルクコーヒーと……あ、ドーナツがあるわ!」
 お酒の代わりに、と。ルーシーが選んだのは、温かくて甘いミルクコーヒーとドーナツだ。
 春に差し掛かった季節とはいえ、夜はまだ冷える。両手でマグカップを包み込めば、じんわりと温もりが伝わってきた。
「パパも何か食べる? マフィンもあるみたいよ。オツマミの方がいい?」
「マフィンを頂きますね」
「じゃ、マフィンどうぞ!」
 ルーシーはもぐもぐとドーナツを口に含みながら、片手はマグカップに、開いているもう片方の手でユェーにそっとマフィンを差し出す。
 忙しなく口や手を動かしている彼女の姿に、ユェーはそっと微笑んだ。
 もぐもぐとドーナツを食べるルーシーの姿は、食べ物を口に詰める小動物らしさがあって――見ていて飽きない。
「お月様とてもキレイね。パパがお空にも居てくださるみたい」
「お空に居たら、離れていてもルーシーちゃんのことを見守っていれますね」
「そうね。離れていても、一緒に居られるわ」
 黒ヒナさんを抱えて見上げる月は、まんまるで大きくて。
 そしてパパみたいに優しく、縁側に座る皆を照らし出してくれている。
「はい、ルーシーちゃん。僕が作ったカシスオレンジです。ノンアルコールですがお酒の様に楽しめますよ」
 ルーシーが月をうっとりと見上げているうちに、ユェーはさっとカシスオレンジを作っていた。
 月からこちらを見た瞬間にそっと差し出せば、彼女の顔が明るく綻ぶ。
「わあ! パパとお揃い? うれしい!」
 ユェーが悪戯が成功したかのように、ウインクをしながら微笑めば、ルーシーも釣られるようにしてぱっと微笑んで。
「ええ。僕と同じ、お酒の入ったカシスオレンジ。お酒はまだ早いけど同じモノを味わいましょう」
「んふふ、おいしいわ。ありがとう!」
 薄いオレンジから、濃いオレンジへ。夕焼け空のように移り変わる色合いを眺めながら一口飲めば、爽やかな甘みが口の中に弾けて広がっていく。
(「お酒は分からないけど、こんな日に誰かと居たい気持ちは分かるかも」)
 パパと同じ色彩の満月が夜空に輝いていて。ふわりと舞い上がるのは桜吹雪。
 ふわりふわりと落ちてくるふわふわたちは、白くて幻想的で。
 景色が美しい日に誰かと居たい気持ちは、きっと大人も子ども同じだから。
「飲める様になったら一緒に飲みましょうねぇ」
「ええ、いつか。大人になれたら」
『記念日に飲む酒は、より美味しいものになるからの』
 ルーシーが成人したら、その夜は。
 とびきりのお酒を用意して、二人でお祝いをしよう。
 バーテンダーだから分かる。良いお酒との出会いは、タイミングが全てだった。
 彼女が成人するまで、十年と少し。その間に、最高のお酒を探そう。妥協はしないと、こっそりと決意するユェーだった。
 親子を微笑ましそうに見つめる竜神に、ルーシーがそっと放った釣鐘水仙の花びらが絡みついたりしたのだけれど。
 オロチさんはきっと、知らないままで良い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神崎・ナオ
えー? なになに? ご馳走してくれるの? わーい、やったー!(討伐に来たことも忘れてはしゃぎます)
私はお酒は飲めないから、和風とか西洋すい~つ頂こっかな~
(酔いどれオロチの真横に座ってふわもこな風景を楽しみながら食べ始め、すっかり目的を忘れたナオの代わりに魔王軍がこっそり敵へ呪詛呪言を掛けて弱体化とかを図ったり攻撃したりします)

可愛いふわもこ見ながら食べるスイーツも中々なもんだね!
食堂とかにも配置してみてもいいかもしれない?
(な~んて呑気にとんでもな案を空想しながら、やんわりと治水蝙蝠に止められたりもしたりて)
さぁ~て、ご馳走様でしたっ!
美味しかったぁ!
あれ? 私何しに来たんだっけ?



●花よりスイーツ
 マカロンにあんみつ、どら焼きに、ロールケーキに。
 オレンジジュースに、抹茶オレに、ココアだって。
 目の前に並べられているのは、古今東西様々なスイーツに、飲み物に。
 宝石よりも輝いて見える美味しそうな食べ物と飲み物に、負けじと神崎・ナオの瞳もキラキラと輝き始める。
「えー? なになに? ご馳走してくれるの? わーい、やったー!」
『元気の良いお嬢ちゃんじゃな』
(『ああ。若がスイーツに負けました……』) 
 討伐に来たこともすっかり忘れ去っているナオの姿に、木陰や縁側の影からそっと様子を見守っていた魔王軍たちは――一斉にため息を吐いた。
「私はお酒は飲めないから、和風とか西洋すい~つ頂こっかな~」
 どうやら、最大の敵は目の前の竜神ではなく、竜神が用意したスイーツだったらしい。
 今すぐスイーツを吹き飛ばして目的を思い出させたいところだけれど、それをすると後が怖い。だから、大人しく見守ることに徹する魔王軍たちだった。
「どれもすっごく美味しいね!」
 敵であるはずの竜神の真横に座って、ふわもこな風景を楽しみながら。
 桜と共にふわりと自分の胸元に飛び込んできたケサランパサランを膝に乗せて、少しずつどら焼きを千切ってあげてみたり。ふわふわな感触を楽しみながら、はもっと綿飴を食べてみたり。
「可愛いふわもこ見ながら食べるスイーツも中々なもんだね!」
 ケサパサたちにそっくりな綿飴を差し出してみれば、自分と似た外見の綿飴に少し驚いた後――ゆっくりと食べ始める。
 三食団子の真ん中を落さないようにどうにか奮闘して食べつつ、ナオは近くに降ってきた肌触りの良いクッションに手を伸ばした。
 ふみふみとクッションの触り心地を楽しみながら、だらっと少しだらければ――ますますスイーツを食べる手も進むもの。
 勢いの良いナオの食べっぷりに、竜神も楽しそうに見守っている。
(『若……すっかり目的を忘れている……』)
(『弱体化と、酒が不味くなる呪いを……!』)
 目の前に広げられるスイーツへの誘惑を断ち切りながら、コソコソと動いていたのは魔王軍たちだった。
 呪詛呪言を竜神にバレないように、少しずつ、少しずつ重ねがける。そこに、少しだけ個人的な恨みが交じってしまうのは――きっと、仕方ない。
 だって、とってもナオと竜神が美味しそうにスイーツを食べているのだから。
「食堂とかにも配置してみてもいいかもしれない?」
 アイスクリームを突きながら、ふわりと思い描くのはダンジョンの構想。
 食堂に癒しとして、ケサパサを料理人に任命してみたり、ふわふわたちを配置してみたり。うん、食欲がとても増す気がする!
 な~んて呑気に空想していたところ、「料理に毛が交ざると……」とか、何とか。やんわりとナオの発想を止めに入るのは、少し疲労の色が見え隠れし始めた治水蝙蝠だった。
 治水蝙蝠は考える。若の発想と共にふわもふに支配され、廊下や浴場にもふわふわが溢れ返る光景を……。少し考えただけで、頭痛がしたのはきっと気のせいではないような……。
「さぁ~て、ご馳走様でしたっ! 美味しかったぁ!」
 元気良く手を合わせて、そして――何かを忘れているような気がして。
 ナオはきょとんと首を傾げるが、どうにも思い出せそうもなかった。
「あれ? 私何しに来たんだっけ?」
『そのうち思い出すじゃろ。それまで、宴をゆっくり楽しめば良い』
 食べ終えたら、若は漸く本来の目的を思い出すだろう。魔王軍にも、そう思っていた時期がありました。
 食べ終えてもなお、飲めや騒げやの宴を楽しむナオの姿に――魔王軍が人知れずズッコケたのは、此処だけのお話。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】◆
へぇ、こんなに見事な庭園に繋がっていたとはな
これは酒盛りするにはうってつけだ
よーし、乗った。俺も一緒に呑むとしよう!

綾、お前は酒強くないんだから程々にしておけよ
なんならオレンジジュースでもいいんだぞ

酒呑童子にお酌をしてやったり、してもらったりしながら
ぐひぐびと景気良く飲みまくる
いやぁ美味いなこの酒
土産に持って帰りたいくらいだ

宴会には歌もつきものだろう?
零、一曲歌ってやりな
UC発動し、零の美しい咆哮を響かせる
綾の蝶の花弁と合わせて、眠らせるように攻撃

…俺も、美しい景色を眺めながら美味いもん食って美味い酒飲んで
最後は眠るように死ねたら本望だろうなぁ…
ホロ酔いの頭でそんな事を考える


灰神楽・綾
【不死蝶】◆
普通に戦う気が失せちゃう相手だねぇ
同じ阿呆なら踊らにゃ損損、だね

むっ、子供扱いしたね?俺だって飲めるもんねー
お猪口にお酒を注いでグビッと一口
…あっ、結構アルコール強いコレ
一杯でやめておこう

そんなお酒をからからと笑いながら
水のように飲んでいく酒呑童子と梓
ザルかな??
その辺をふよふよしていたケサパサを
適当に捕まえてむにむにしながらその様子を眺める

良い景色を眺めながらお酒が飲みたいんでしょ?
じゃあこういう景色はどう?
UC発動し、紅く光る蝶の花弁を周囲に飛ばす
桜の花弁に混ざって、盃のお酒の上に
蝶の花弁が浮かぶ様はなかなか綺麗でしょ

まぁその花弁はこっそりと骸魂の生命力を奪っていくのだけどね



●楽しき刻に
 縁側から臨む庭園の景色は、圧巻の一言に尽きた。
 大きな池に映り込む柔らかい望月に、池に横たわる瀟洒な橋。
 松に盆栽、苔と庭園には濃淡の異なる永遠の緑色が広がっている。
 そこに見え隠れするのは、降り積もった『ふわもふ』たちで、庭園の雰囲気を壊していることは確かなのだが――それでも何処か、憎めなかった。
「へぇ、こんなに見事な庭園に繋がっていたとはな。これは酒盛りするにはうってつけだ」
 乱獅子・梓の眺める先には、そんな庭園の景色が広がっている。見事な景色を眺めながら酒盛りをすれば、自然と宴の場も盛り上がることだろう。
「普通に戦う気が失せちゃう相手だねぇ。同じ阿呆なら踊らにゃ損損、だね」
 縁側では酒を飲み進めている竜神がすっかり寛いだ様子で出来上がっており、まともに相手をする気が不思議と削がれてしまうような。
 宴をそっちのけで戦闘をすれば、きっと一瞬で決着がつくだろう。
 でも、折角ならば。雰囲気を壊さずに。酒を勧めてくる竜神に、楽しんでから隙をついてこっそりと攻撃しようと灰神楽・綾は決心するのだった。
『この世は一期一会。お主らもこの一時を共に楽しもうぞ』
「よーし、乗った。俺も一緒に呑むとしよう!」
 竜神の勧めに、一早く威勢よく「乗った」と答えた梓に、綾は慌てて「俺もー」と手を挙げる。
 負けじと飲む気満々の綾をちらりと見た梓は、そっと綾の前へとオレンジジュースを進呈させて。
「綾、お前は酒強くないんだから程々にしておけよ。なんならオレンジジュースでもいいんだぞ」
「むっ、子供扱いしたね? 俺だって飲めるもんねー」
 梓は保護者としての親心から、無理をしないようにと綾にオレンジジュースを勧めたのだが――どうやら逆効果だったらしい。
 わざとらしく頬を膨らませて、綾の手は梓の勧めたオレンジジュースを通り過ぎて、日本酒とお猪口へと伸びていく。
 ムキになった勢いのまま、お猪口にお酒を注いでグビッと一口で煽れば、焼けるような辛さが口内に広がって。
 身体を包み込むアルコールの香りに、思わずくらりと視界が揺れた。
「……あっ、結構アルコール強いコレ」
「言わんこっちゃない……」
 一杯でやめておこう。
 そっとお猪口を戻すと無言で梓の勧めたオレンジジュースを飲み始めた綾の姿を、梓は苦笑いで見守っている。
 お酒はムリにして飲むものでは無いのだから。
 自分に合うものを、それぞれのペースで。それがきっと、一番楽しい飲み方だ。
「いやぁ美味いなこの酒。土産に持って帰りたいくらいだ」
『その酒はたんとあるぞ。持って帰るかの?』
「ん、良いのか? じゃあ、お言葉に甘えて――」
「……ペース可笑しくない?」
 お互いにお酌したり、してもらったり。
 酒の味の評論や議論をしながら、ぐびぐびと景気良く飲みまくる梓と竜神。
 見る間見る間に空になっていく瓶の数々に、全く衰えをみせない二人のペース。
 水でも飲むかのように酒を飲み進める一人と一体の姿に、若干引き気味で綾はポツリと呟いた。
 これ、梓と竜神が特殊過ぎるだけじゃない?
「ザルかな?? 二人が飲んでいるのって、ただの水だったりしない??」
 仲間外れとか、悔しくないし。あんなペースでお酒を飲める二人が特殊なだけだし。
 その辺をふよふよしていたケサパサをもぎゅっと適当に捕まえた綾は、ケサパサをむにむにひっぱたりもふったりしながら、竜神と梓の様子を若干遠い目で眺めている。
「やっぱり、特例だよねー」
 梓と竜神が飲んでいるお酒が気になったのだろうか。ふよふよと綾の手を離れて、そちらへと向かって行ったケサパサも……途中で綾の方に、くるっとUターンして戻ってきた。
「うん。やっぱり、二人の飲みっぷりが凄いだけだね。そうだ。良い景色を眺めながらお酒が飲みたいんでしょ? じゃあこういう景色はどう?」
 ひらり、と。桜舞う望月夜に踊るのは、紅く光る蝶の群れ。
 夜空に無数の真紅の軌跡を描いて、降りゆく桜の花弁の間を縫うようにして舞っていく。
「桜の花弁に混ざって、盃のお酒の上に蝶の花弁が浮かぶ様はなかなか綺麗でしょ」
『おお。蝶々か。幻想的な光景じゃのう。もふも良いが、蝶も良いな。ますます酒が進むわい』
 蝶の光を受けてぼんやりと淡く光る手元のお酒に、愉快愉快とからからと笑いながら。竜神の酒を飲むペースが上がったのは、綾の目から見ても明らかなことだった。
「宴会には歌もつきものだろう? 零、一曲歌ってやりな」
『ガウ』
 零と視線を交わせば、任せてと梓に示すかのように、自信に満ちた鳴き声が返ってきて。
 その刹那、縁側に響き渡るのは零による美しい方向の調べ。
 雄々しく、それでも不思議と穏やかに全てを包み込む子守唄のように響く咆哮に、上機嫌でお酒を飲んでいた竜神もついウトウト。
(「まぁその花弁はこっそりと骸魂の生命力を奪っていくのだけどね」)
 居眠りしている間に、気付かれぬように。こっくりこっくりと竜神が船を漕ぎ始めたところに――ひらりと舞い踊る真紅の飛蝶と零の澄んだ咆哮が、少しずつ骸魂の生命力を削っていく。
 でも、それは知らなくて良いこと。美しい光景が毒を孕んでいることも、言わなければ分からないのだから。
(「……俺も、美しい景色を眺めながら、美味いもん食って美味い酒飲んで、最後は眠るように死ねたら本望だろうなぁ……」)
 竜巻となり夜の彼方へと去っていく桜の花びらを見送りながら、梓はホロ酔いの頭でそんな事を考える。
 酒吞童子を取り込んだ骸魂のように。美しい景色を眺めて、美味い料理と酒に舌鼓を打ちながら、眠るように死ねたのなら――と、そこまでところで、ふと自分を呼ぶ鳴き声に気が付いた。
 自分の胸元まで潜り込み、てしてしと前足で突っついてみせている焔と零。心配してくれているのだろうか。
 すり寄ってくる焔と零をわしゃわしゃと撫でながら、梓は舞い上がる蝶と桜を見上げていた。
 終わりに想いを馳せることはあっても、終わらせるにはまだ早い。見足りない景色もあれば、楽しみ足りない酒も――。
「……ぁ、土産の酒貰ってない」
 今さらになって、割と大事なことに気付いた。
 竜神は気持ち良さそうに船を漕いでいて、綾はケサパサをむにむにしている。
 土産の酒は楽しみにしながらも――もう少しこの瞬間を楽しんでからでも良いだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

炎獄・くゆり
【獄彩】


ココでクイズです!
あたし達は今何歳でしょおか!
ピンポンぴんぽ~~ん!
正解景品はあたしのハグでぇす

お酒の用意バッチリなんてヤリますねェ~~~
飲めちゃうんですよねぇ、ハタチですから!
でも初めてなんで何がなんだかワケわかめぇ
女子向けのカワイイヤツくださぁい
無かったら作ってくださぁ~~い
カワイイあたしとフィーちゃんの為に!

コレがお酒!
乾杯しましょ乾杯!
はえ~~~お酒ってこんなんなんですねぇ、ジュースみたぁい
確かにアッチのはヤバそー?
色々あるんですねェ
なぁんかフワフワしてきたぁ~~
にゃはは、これが「酔う」?

ウフ、いただきまぁす
あたしもお返しに、あーん!

そんじゃそろそろ
酔拳ってヤツ披露しちゃお~


フィリーネ・リア
【獄彩】


ふふ、可愛いクイズ
フィーとくゆちゃんは先月いっしょに二十歳になったよ
景品も豪華ってぎゅってしちゃうの

うん、飲めちゃうの
フィーね、初めてお酒を呑む時はくゆちゃんと決めてたんだよ
うふふ、くゆちゃん困らせちゃ駄目よ?
でも可愛いのはフィーも欲しいの

とびきり甘いお酒で乾杯
細い音を響かせるグラスの音に柔く頬ゆるめて
ジュースみたいなのは可愛く作ってくれたからかもしれないね?
だってあっちの人たちのは苦そうで強そうな匂いがするもん
この味なら…ね、くゆちゃん
そこの西洋のスイーツも味わえそうだよ

ふわふわ不思議な心地の中で
最初のひと口はあなたに
はい、あーん
可愛いお酒の合間にどーぞなの

最後は絵筆で彩を
ばいばい



●初めてを一緒に
 お酒と煙草は二十歳になってから。
 未成年の飲酒は、成長面から見てもご法度で。それに、大人になっていても飲めない人も大勢いる。
 だから、縁側にはノンアルコールカクテルやジュースも置かれているのだけれど――。
「突然ですが、ココでクイズです! あたし達は今何歳でしょおか!」
 にゅにゅっともし此処にカメラがあったのなら、その顔がドアップで映るくらいだったかもしれない。
 ぬ! と元気良く身体を突き出して、転がっていた空の瓶をマイク代わりに、すっかり出来上がっている竜神に炎獄・くゆりは大きな声で問いかけていた。
 気分はすっかり、クイズ番組の司会者だ。
 ほろ酔いでウトウトと船を漕いでいた竜神も、くゆりの元気な声に思わずハッと目を覚ます。
「ふふ、可愛いクイズ」
 可愛いクイズで、それに、フィリーネ・リアにとってはとても簡単なクイズだった。
 いつもフィーとくゆちゃんは仲良しで、誕生日まで仲良しこよしなのだから。
「フィーとくゆちゃんは先月いっしょに二十歳になったよ」
「ピンポンぴんぽ~~ん! 正解景品はあたしのハグでぇす」
 瓶のマイクは竜神からフィリーネの方へ。
 二人一緒に二十歳になったのは、つい先月のこと。お酒も漸く楽しめるようになったばかりなのだ。
「景品も豪華ね」
 瓶のマイクをぽいっと放り出して、ぎゅっとハグしてきたくゆりを受け止めれば、フィリーネも負けじとぎゅ~っを返す。
 二人の目の前には、古今東西様々なお酒が用意されていて。
 そして、二十歳になったばかりで。
 此処で飲まないという選択肢は、無いだろうから。
「お酒の用意バッチリなんてヤリますねェ~~~。飲めちゃうんですよねぇ、ハタチですから!」
「うん、飲めちゃうの」
『成人したのかの。それはめでたいことじゃ』
 ご機嫌良くからからと笑ってみせる竜神に、二人でにぱーっと笑顔を返して。
 初めてお酒を吞むときも、二人一緒で。きっと、忘れられない想い出になるだろうから。
「フィーね、初めてお酒を呑む時はくゆちゃんと決めてたんだよ」
「でも初めてなんで何がなんだかワケわかめぇ。女子向けのカワイイヤツくださぁい。無かったら作ってくださぁ~~い。カワイイあたしとフィーちゃんの為に!」」
「うふふ、くゆちゃん困らせちゃ駄目よ? 可愛いのはフィーも欲しいの」
『女子向けの可愛いお酒かの。どれ、ちょっと――』
 カワイイヤツ! 無かったら作ってください! という大雑把なくゆりの説明に、「困らせちゃ駄目よ?」とフィリーネはクスリと微笑む。
 それでも酒好きのプライドとして、探さないことは許せないようだ。竜神はガサゴソと置いてある酒類を吟味し始める。
『カワイイとなると、ロゼ・ワインや、サングリア辺りじゃろか? 後は……』
 ブツブツと呟きながらコンコンと並べられるお酒の瓶は、お酒の色だけではなくて、瓶自体も可愛らしい。
 淡いピンク色にシュワシュワと泡の弾けるロゼ・ワインの瓶には、可愛らしくワインと同じ色のリボンが巻かれていて、丸っとした透明なサングリアの瓶の中には、ごろっとフルーツが転がっていた。
「コレがお酒! 乾杯しましょ乾杯!」
「ふふ。そうね、乾杯しちゃうの」
 眩い月明かりを受けて、グラスの中で揺蕩うのは透き通った深い赤色。赤に包まれてグラスに沈み込んだオレンジやリンゴ、イチゴといった果実が、ゆらゆらとその身を揺らしていて。
 軽くグラスを掲げて乾杯したら、カランと澄んだ音が響き渡る。
 とびきり甘くて、可愛らしくて。軽やかな音に、思わず柔く頬も緩んでしまうから。
「はえ~~~お酒ってこんなんなんですねぇ、ジュースみたぁい」
「ジュースみたいなのは可愛く作ってくれたからかもしれないね?」
 可愛く、飲みやすい様に。そうやって作られたフルーツ・サングリア。
 ジュースみたいにゴクゴクと飲めてしまうけれど、飲み過ぎには気を付けて。だって……。
「だって、あっちの人たちのは苦そうで強そうな匂いがするもん」
 ゆっくりとフルーティーな味と香りを楽しみながらグラスを傾けるフィリーネの視線の先に、すっかり出来上がった仲間たちの姿が。
 日本酒だろうか。苦くて、ツンとする香りがするお酒を、ハイペースで飲んでいる。
「確かにアッチのはヤバそー? 色々あるんですねェ」
「そうね。色々あるみたいなの」
「あと、アッチのはよく燃えそー? 見るからにアルコール度数高そうですし~~」
「火は付けちゃ駄目よ?」
 ゆっくりと飲み進めるフィリーネの隣で、くゆりのペースは少しずつ上がっていってるみたい?
「なぁんかフワフワしてきたぁ~~。にゃはは、これが『酔う』?」
 ほんのり薔薇色に染まった頬に、へにゃりと溶けたくゆりの笑顔。うん、酔ってるね。
「この味なら……ね、くゆちゃん。そこの西洋のスイーツも味わえそうだよ」
 甘いお酒には、甘いスイーツが良く合うから。
 ふわふわ海中を漂っているような、微睡んでいるような。夢見心地の不思議な心地の中で、フィリーネはそっとくゆりの口元に一口サイズのシュークリームを運ぶ。
 最初のひと口はあなたに。
「はい、あーん。可愛いお酒の合間にどーぞなの」
「ウフ、いただきまぁす」
 ぱくりと一口でシュークリームを食べちゃえば、じんわりと広がるのはカスタードの濃厚な甘さ。
 カスタードの甘さにサングリアのフルーティーな味がマッチして、これなら幾らでも食べられてしまいそう。
「あたしもお返しに、あーん!」
「いただきますなの。うん、美味しいね」
 くゆりが差し出したシュークリームをはもっと銜えれば、もっもっと噛む度に甘みがゆっくりと感じられる。
 シュークリームは始まりに過ぎなくて。ビターチョコに、レモンケーキに、チーズタルト。
 甘いお酒と一緒にスイーツを楽しめば、あっという間にお腹がいっぱいに。
「そんじゃそろそろ、酔拳ってヤツ披露しちゃお~」
 ぐるんぐるんと、まるで酔っているかのような独特な動きが特徴の酔拳は――実際に上機嫌で酔っているくゆりが繰り出すことによって、摩訶不思議で予測不能なミラクルパンチに。
 読みようがないんだから、避けようもない。くゆりのパンチは、めきょっと竜神に命中した!
『へぶ!? ……大丈夫かのう? だいぶ酔っているみたいじゃが』
「くゆちゃん、かなり酔っているみたいね」
 うふふと笑いながら、絵筆を一振りするフィリーネも――どことなく、足元が覚束なくて。
 でも、命中したから大丈夫。竜神も攻撃されたとは思ってないから、もっと大丈夫。どうにも締まらない気がするのは、仕方ない。
 舞い散る桜吹雪と妖しく光る提灯の灯りを受けて、くゆりとフィリーネの初めてのお酒の時間は、ゆるりと過ぎていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

真宮・響
【真宮家】で参加

あ、単なる酔っ払いに見えるが、一応何とかしないとこのもふもふばかりの惨状は解決できないんだよね・・・まあ、家族で酒飲めるのアタシだけだし、付き合ってやるか。

気軽な飲み友達の感覚でオロチと酒を飲む。飛んでくる花びらに合わせて【残像】が出たりするが、芸という事で。オロチのボケに併せて思わず【炎の拳】で突っ込みを入れるが一発ぐらいは許して欲しいね。出来れば骸魂が抜けて元に戻っても一緒に飲みたいねえ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

あ、この龍の方、既に酔っぱらっていますねえ。酒の相手は母さんに任せて宴を盛り上げましょう。あ、このサイダー頂いていいですか?

では、とっておきの芸を見せましょう!!なんか凄く踊りたい気分です!!絢爛のスピリトーソで踊りますよ!!剣持って踊るのでうっかり【衝撃波】でてオロチさんに当たってしまいますが、許してくださいね?(笑顔で【手をつなぐ】)兄さんも盛り上げてくれるんですね!!(飛んでくる花弁を【オーラ防御】で防ぎつつ)お手をどうぞ。一緒に踊りましょう!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

既に盛り上がってるところ申し訳ないんですが、この世界の崩壊は止めなければなりませんので。宴に物騒な攻撃は野暮ですね。酒の相手は母さんに任せて宴の盛り上げをしましょう。

宴に最適な提灯もありますし、花の嵐を添えましょう。月下美人の嵐で花弁を舞い散らせます。オロチの方に花弁がかすっても許してくださいね。隣で奏が楽しそうに踊ってますね。ええ、ダンスのパートナーは任せてください。(奏の手を取り、息の合ったダンスを見せる)



●呑めや、踊れや
 どさくさに紛れて繰り出されている猟兵たちの攻撃にも、徐々に骸魂にダメージが積もっていることも。
 盛り上がりを見せる宴の中心、上機嫌で酒を煽る竜神は気付く素振りをみせない。
 猟兵たちの余興に拍手を送ったり、酒の議論を熱く交わしたり――その様子は何処からどう見ても、酔っぱらいのソレである。
「あ、単なる酔っ払いに見えるが、一応何とかしないとこのもふもふばかりの惨状は解決できないんだよね」
 単なる酔っぱらいに見えても、正体は立派なオブリビオンだ。
 もふが降り積もり続ける庭園を少し遠い目で見つめた真宮・響はポツリと呟いて、縁側に転がる竜神が空にした瓶やらお菓子の包装やらに目を向ける。
 こうして呑気に宴会を開いているだけだが、そのせいで世界は崩壊の危機に瀕しているのだ。これ以上、世界をモフに溢れさせないためにも、倒さなければならない。
「……まあ、家族で酒飲めるのアタシだけだし、付き合ってやるか」
 瞬も奏も、まだお酒を飲むことは出来ない。
 それなら仕方ない。少しくらい付き合うのも、偶には良いだろう。緩く頭を振りながら響は、竜神の方へと向かって行くのであった。
「この龍の方、既に酔っぱらっていますねえ。あ、このサイダー頂いていいですか?」
「既に盛り上がってるところ申し訳ないんですが、この世界の崩壊は止めなければなりませんからね」
 お酒の相手は母さんに任せて、自分たちは宴を盛り上げようと真宮・奏と神城・瞬は見つめ合う。
 盛り上がっているところ悪いが、世界一つの命運がかかっているのだ。止める以外に、方法はない。
 とはいえ、宴に物騒な攻撃は野暮だ。折角盛り上がっている雰囲気を壊さないためにも、攻撃と分からないような攻撃を。
『サイダーか。好きなだけ飲むと良いぞ!』
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
 竜神へと軽く会釈を返した奏は、近くにあったサイダーを手に取ると力を込めて蓋を開けた。
 今では珍しい、瓶に入ったサイダーは、一口飲むとしゅわりと弾ける感覚と共に何処か懐かしいような味がして。
「サイダーだけど、良い飲みっぷりだねぇ」
『共に酒を飲み交わす将来が楽しみじゃな?』
 気分は気軽な飲み友達のように。
 竜神と酒を飲み交わしていた響は、サイダーをくぴくぴと呷る奏の姿に苦笑いを浮かべていた。
 サイダーがお酒に変わったとしても、不思議と違和感は無い。娘や息子とお酒を飲み交わせるようになる数年後が楽しみなような、心配なような。
 響の脳裏に上品に酒を嗜む瞬と、反対に景気良く一気飲みする奏の姿が浮かび上がって――大人になった二人と一緒に呑めたのなら、それはきっととても賑やかで面白い宴になるだろう。
『ところで、お主……さっきから、微妙にブレてないかの? それとも飲み過ぎか……?』
 どれだけ飲んでも倒れることは無いが、今日は飲み過ぎたのだろうか。
 先ほどからどうにも、響が微妙に揺れ動いて、二人になったり三人になったりしているような?
「気のせいじゃないかい? と言いたいところだけど、これはちょっとした芸だよ」
『芸とな。さては、お主忍者の末裔じゃな? それとも、分裂できる体質なのかの?』
 お酒を飲みながらも器用に飛んでくる花びらに合わせて、残像を生み出し避けてみせる響。
 そのせいで先ほどから、響が分裂したかのように竜神の目には映っているのだが……これは、ちょっとした芸ということで。
「残念だけど、忍者じゃないさね。分裂もできないよ」
 竜神のボケに併せて思わず迸るのは、響の情熱がありったけに込められた赤熱する拳だった。
 響きによる渾身のツッコミ(物理)を受けて、思わず仰け反る竜神。ボケ役の定めというべきか、ツッコミはクリティカルヒットだ。
「おっと、少し力を入れすぎてしまったようだよ」
『これが、本場のツッコミかの……。さてはお主、芸人じゃな?』
「いや、芸人でもないから」
 しゅっと繰り出される二発目のツッコミ。勢いが一発目よりも増していたのは、きっと気のせいだ。
 すっかりボケ役とツッコミ役と化した竜神と響を背景に、奏がサイダーを飲み終わるのを待ってから、瞬は立ち上がる。
 舞う花びらに、妖しく楽しく頭上に輝くのは提灯の光。
 宴の熱気に宛てられたのか、無性に踊りたい気分だった。
「では、とっておきの芸を見せましょう!! なんか凄く踊りたい気分です!!」
 サイダーの瓶をぽいっと放り出して、頬を赤く染めてにこにこ笑っているけれど、きっと酔ってはいない。ちょっと、頭上の提灯の灯りにあてられただけである。
 奏の心の底から込み上げてくる、踊りたいという感情。そして何故だかとても陽気な気分になっているのも相まって、そのまま元気良くステップを繰り出していく。
「宴に最適な提灯もありますし、花の嵐を添えましょうか」
 飛んだり跳ねたり、くるりと一回転してみせたり。元気良く踊りを披露する奏に合わせるように、奏の舞台に花を添えるように。
 瞬がそっと舞い散らせるのは、月下美人の花嵐。ふわりふわりと月明かりを受けて青白く輝きながら舞い上がる白と、ほんのりと広がっていく濃厚な花の香り。
『月下美人とは、これまた風流じゃのう』
 身体を掠める月下美人の花弁を掬い上げながら感嘆の息を漏らす竜神は、その花びらが自身の身体を少しずつ切り刻んでいっていることに、全く気付いていない様子。お気楽なものである。
「あ、ごめんなさい。ちょっと当たっちゃいました!」
『良い良い。気にすることなはいからのう』
 ひらり、きらり。舞いは美しく、繰り出す剣筋は鋭く鮮やかに。奏の剣舞がその勢いのあまり、竜神に当たったりしたのだが――言ってしまえば、あえて当てている節もあるのだが。ほろ酔い気分の竜神は笑って許してくれた。
「あ、兄さんも盛り上げてくれるんですね!!」
「ええ、ダンスのパートナーは任せてください」
 瞬が手を差し出したことに気付いた奏は光よりも早い速度で剣をしまうと、笑顔で瞬の手を取った。
 ……ところで、奏に降り注ぐ桜の花びらが微妙な角度で全て弾かれているのは、きっと何かの気のせいだろう。オーラ防御を展開しているなんて、竜神が知るはずも無いのだから。
「お手をどうぞ。一緒に踊りましょう!!」
 差し出された手に手を重ねて。
 身を焦がす感情のままに踏み出されるステップでも、不思議と息が合っている。
 お互いの足を踏むこともなく、くるりと手を取り優雅に回ってみせて。
 時折視線が交わる度に微笑み合えば、ますます息も合っていく。
 ダンスに合わせて舞い上がる月下美人と桜の花びらに、二人を照らし出すのは提灯の灯り。
 小さなダンスホールと化したこの場所で踊る瞬と奏の姿は――とても絵になっていた。
『余興と呼ぶには、とても美しい踊りじゃのう。思わず魅入ってしまうわい』
「踊り過ぎて、倒れてしまわないと良いんだけどね」
 ひらりひらりと先ほどまでの優雅なダンスから変わって、少し激しい動きが交ざってきた。
 どうも提灯の灯りの影響をもろに受けているらしい奏が踊り過ぎて倒れてしまわないか少し心配な響だったが、瞬が相手をしているから、その心配もないだろう。
 奏が倒れてしまわぬよう、きっちりペース配分はしてくれるはずだ。
(「出来れば骸魂が抜けて元に戻っても一緒に飲みたいねえ」)
 この世の終わりとは思えないほど、世界の危機の元凶とは思えないほど――この宴は、賑やかで平和なもので。
 骸魂が抜けきってから、改めて飲めたら。今回とはまた異なった楽しさがあるだろうから。
 出来れば、縁側の片隅で目を回している酒吞童子の友人達も一緒に。
 仲間の攻撃によってケサパサから元の姿に戻った友人達だったが、まだまだ目を覚ます気配はなさそうだ。
『それにしても、あの流れるような踊り方……やはり、お主らは忍者ではないかの?』
「いや、違うから」
 全て終わって、平和になった後で。
 もう一度飲めたら良いと思いながら、再びボケ役と化し始めた竜神に、何度目かのツッコミを入れる響だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
 ■◆


 ふわもふにわかりみがおありだなんて、オロチさんはじつに趣きのわかるお方~。視覚的にはふわもふの絶景がすでに出来上がってるので、わたしからは竜神さんのお好みに沿う音楽をお耳にお届けしたいな。

 雅楽でも謡物でも、祭囃子でも何でもお任せあれ。川のせせらぎや鹿威しといった環境音だってOKだし、ご所望とあらば完全な静寂さえも可能なUCですので。
 そそ、これはUC。でもオロチさんが非戦闘の状態で居続ける限りは、お酒をより美味しくさせる効果しかありませんので。なんだったら飲めないわたしは、代わりにお酒をおつぎしましょーか?

 ぉゃ、つぐペース早いですか? ゃ~でも竜神様ならいけるかと~。ささぐいっと。



●ふわもふと祭囃子
 分かる人には分かる一方で、分からない人には分からない。それが『ふわもふ』という存在だ。
 ふわふわとした病みつきになる手触りも、もふっと受け止めてくれる柔らかい感触も、心地の良い温もりも――その全てを知らないだなんて人生を損しているのでは? と思ってしまうかもしれない。
 幸い? というべきか、目の前の竜神は『ふわもふ』にわかりみがあるご様子。何なら、とっくの昔に『ふわもふ』の虜にさえなっているようで。
「ふわもふにわかりみがおありだなんて、オロチさんはじつに趣きのわかるお方~」
『お主こそ、なかなかのもふりすとと見るがの』
 この出会い、まさに僥倖なのでは。運命と言っても過言ではないのでは。
 もっもっと遊びに誘うように寄ってくるケサパサたちをノネ・ェメはもしょもしょと撫でつつ、見渡す庭園には見え隠れするぬいぐるみたちの姿が。
 外の音に耳をすませば、降ってきたもふがぽよんぽよんと跳ねるモフ音が聞こえてくる。
 五感全てをもふに支配されているこの空間で、竜神とノネはもふ話に花を咲かせていた。
「ささ、折角のもふ尽くしですし、わたしからは竜神さんのお好みに沿う音楽を。雅楽でも謡物でも、祭囃子でも何でもお任せあれ」
『おお。良いのかの』
 「お任せくださいませ」とぽふんと胸を叩いたノネに甘えることに決めたらしい竜神は、早速好みであるらしい祭囃子をリクエスト。
 途端、何処からともなく聞こえてくる風が鳴くような笛の音に、鉦の奏でる金属音、そして後から太鼓の音が重く響いてくる。
 賑やかだが何処か郷愁を覚える祭りの音色に、ノネの周りに集っていたケサパサたちもはしゃぐようにひょこひょこと跳ね始めた。
「もふ、いとかわゆきかな」
 神輿の代わりに小さなキーホルダーのぬいぐるみを担いで、ワッショイワッショイと練り歩き始めるケサパサたち。
 一生懸命な分、少し悪戯してみたくもなってしまう。行く手を塞ぐように手を置けば、ケサパサ神輿は手を避けるように進路を変え……ず、そのまま直進したかと思うと、もしょもっしょとノネの腕に上ってきた!
「そうくるとは。さすがはもふたち。度胸も発想も違う」
『もふは無限の可能性を示す存在じゃの』
 もっしょもっしょと右腕から肩を通って左腕へ。そして、そのまま再び床へとケサパサ神輿は進み行く。
 何処を目指しているのかは――多分、ケサパサ当人たちも分からない。だって、先ほどからぐるぐると似たような進路を回ってばかりいるのだから。
 賑やかな祭囃子の元を辿れば、ノネのユーベルコードに辿り着く。しかし、これは攻撃ではない。竜神さんを楽しませるための手段だ。
 竜神さんが非戦闘の状態で居続ける限り、お酒をより美味しくさせる効果しかない。
「なんだったら飲めないわたしは、代わりにお酒をおつぎしましょーか?」
『では、頼むとしようか』
 にこにこ笑顔のノネがお猪口にお酒を注ぎ、竜神がそれを口元に運ぶ――何度かそれを繰り返してるだけなのだが、
「ぉゃ、つぐペース早いですか? ゃ~でも竜神様ならいけるかと~。ささぐいっと」
『そうじゃな。まだまだ飲めるじゃろて』
「ゃ~さすが竜神様。ほれぼれするような飲みっぷりで」
 ケサパサ神輿を楽しみながらお酒を飲んでいたら、無意識に口に運ぶペースが早くなっていたらしい。
 そのペースを更に加速されるようにノネが花を持たせれば、竜神は景気良くぐいっとお酒を一気に口に含んで――あ、目を回した。
「竜神様~。もしもーし?」
 ノネが揺するが、竜神は返事すら返さず。否、返せず。薬も過ぎれば毒と成るを体現するかのように、完全に気絶してしまっていた。
 ……お酒はほどほどに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スティーナ・フキハル
◆ 
ミエリ視点
★部分はスティーナで

何故かジュースを渡されました……子供じゃないんですが。
やはり身長……などと考えながら飲んでます。
お姉ちゃんはまた分離したうえオロチさんに絡みに行ってますし。
……なんで同じ外見であっちはお酒貰えてるんだろう。

★んでおっちゃんどうよ?
人いっぱいいるけど楽しいか-?
んー?
え、妹のほうはいいのかって?
えーとね、ここまで頑張ってくれてたから今はアタシが張り切る番なの!
わかっかー?
お、これ持ってってやれって? おっけー!

★ミエリーおっちゃんが猫のぬいぐるみとお菓子一杯くれたぞー!
こっちはお姉ちゃんが盛り上げとくからゆっくりしてなー!

そ、そう……ま、楽しそうだからいいかな。



●お酒と姉妹と
「……」
 ミエリの目の前にちょこんと差し出された、グラスに入った明るいオレンジ色のソレ。
 最初はフルーティーで飲みやすい、ジュースを用いた甘いカクテルか何かと思いましたとも。
 でも、お酒の香りはしないし、代わりにふわりと香るのは柑橘系の香りで。
 正直言って、この時からもしやと思ってはいた。
 だけど、一縷の望みに賭けて一口口に含めば。
(「やっぱりこれ、オレンジジュースだ……」)
 色も見た目も、完全にオレンジジュース。アルコールなんて一ミリも入ってない。百パーセント果汁のオレンジジュースだ。
「……子供じゃないんですが」
 そう。ミエリも姉のスティーナ・フキハルも二十五歳になる。平均よりも背が低く幼く見られることが多いくらいで――それだけだと思っていたのに。
 たかが身長。されど身長。恨むに恨めない、自身の背たけ。
(「やはり身長が……」)
 ジュースを手渡された原因は、この身長にあるのだろう。
 もう少し背が高ければ。せめて、百五十は超えていれば。そんなことを考えながらも、ミエリは少しずつオレンジジュースを口に含む。だって、これはこれで美味しいんだもの。
「……なんで同じ外見であっちはお酒貰えてるんだろう」
 ミエリの視線の先には、再び分離した姉のスティーナの姿があった。
 お酒を飲み過ぎたらしく先ほどまで気絶していた竜神だが、漸く復活したらしい。
 復活して早々だが、グラスを片手に自由気ままに宴会を練り歩くスティーナに早速絡まれている。
 姉妹で手にしているのは同じようなグラスに、同じような色合いの液体。でも、決定的に違う箇所が一つだけ。それは――アルコールが入っているかいないか。
 いまいち納得のいかない表情で、スティーナと竜神を眺めるミエリ。ミエリのジト目にも、絡むことに夢中になっているスティーナは気が付いていない。
『んでおっちゃんどうよ? 人いっぱいいるけど楽しいかー?』
 オレンジのカクテルを相棒にスティーナが竜神に話しかければ、かんらかんらと明るい笑いが生まれ落ちた。
『皆のお陰で、大いに楽しませてもらっておるぞ』
『そりゃー良かった』
 敵とはいえ、この一時は折角だから楽しいものにしたい。
 楽しんでいるようで何よりだと告げるスティーナに、竜神はミエリの方をちらりと見ると。
『ところでじゃが、妹ちゃんの方は良いのかの?』
『んー? えーとね、ここまで頑張ってくれてたから今はアタシが張り切る番なの! わかっかー?』
『そうかそうか。妹想いじゃの。どれ、なら――』
『お、これ持ってってやれって? おっけー!』
 竜神がスティーナに手渡したのは、大きな猫のぬいぐるみと大量のお菓子。
 両手で抱えきれないほどのそれは、少し歩いただけでスティーナの手からぽろりと零れ落ちてしまいそうなくらいだった。
 頑張った妹にということらしいが……ミエリの扱いが完全に子どものソレである。
『ミエリー。おっちゃんが猫のぬいぐるみとお菓子一杯くれたぞー!』
 竜神から何かを貰っていたかと思うと、今にも零れ落ちそうなお菓子の数々とでかニャンコを抱えて小走りで戻ってきたスティーナの姿にミエリは瞳を丸くする。
「どうしたの、それ」
『おっちゃんが、あげるって』
 はい。と手渡される大量のお菓子と、最後にもふっと降ってきたニャンコぬいぐるみ。
 それだけを手渡すと、スティーナは再び竜神の方へと舞い戻っていく。
『こっちはお姉ちゃんが盛り上げとくからゆっくりしてなー!』
 それだけを言い残して。
「そ、そう……ま、楽しそうだからいいかな」
 やや困惑気味に答えるミエリ。
 先ほどからスティーナに振り回さればかりな気もするが……偶にはスティーナのいうように、ゆっくりするのも良いだろう。
 どら焼き、カップケーキに、バウムクーヘン。貰ったお菓子はどれも美味しそうで。
 手元のお菓子に迷い始めるミエリは、終ぞ気が付かなかった――スティーナの勢いが良すぎるあまり、徐々に竜神が(物理的にも、精神的にも)押し潰されていっていることに。

成功 🔵​🔵​🔴​

重松・八雲
【守】◆
ふわもふの次は馳走の大盤振舞か!
至れり尽くせりじゃな!
(また嬉々と満面の笑みで)
では餞別は望み通りぱあっと盛大に、最後まで気分良く参ろうか!

(オロチへ早速御機嫌に甘酒乾杯持ち掛け!)
ふ、甘酒の飲み比べならばどんとこいじゃぞ~!
モフ見にすいーつまで欠かさぬとは、中々気が合うではないか!
お主よぉくわかっておるのう!
さぁさ、どんどん楽しもうではないか!
伊織も遠慮なく輪に入るが良いぞ!
(大福を摘ま――もうとしたら
もちっ
ではなく
もふっ
とした触感がして)
おお失敬!似ておったんで間違えた!
(そのまままたもふもふ愛でつつ
改めてもちもちも楽しみ!)

満足するまで付き合い尽くせば
最後はUCで華やかに送火を!


呉羽・伊織
【守】◆
大満足のふるもっふ&フルコースで良かったネ
(疲れを知らぬどころか益々元気一杯な児爺に
現実逃避気味に珍妙な庭へ視線背け)
ま、どうせならぱあっと送り出すに越した事は――

ってちょっと目を離した隙にー!
(視線戻せばもう始まっていた甘酒盛を二度見し)
敵より寧ろ味方が手に負えないってか何意気投合してんのってか相乗効果で盛り上がりすぎでは!?
オカシイ、片方は素面な筈なのに馴染みすぎている…(まがお)
イ~ヤ~!とんでも酔いどれ野郎達に挟まれても嬉しかな~い!
(結局巻き込まれ自棄甘酒煽りつつも楽しんでいれば)
いやソレ大福じゃないー!
(慌ててもふっと救出)

宴も酣になりゃ余興の如く
UCで檠燈操り餞の篝火を!



●もふ甘酒盛
 『ふわもふ』の降る降る珍道中に、お屋敷前のケサパサの大群。
 『ふわもふ』のフルコースを楽しみ尽くしたと言いたいところだけれど、まだメインディッシュの竜神との酒盛りが残っている。
「ふわもふの次は馳走の大盤振舞か! 至れり尽くせりじゃな!」
 古今東西ありとあらゆる地方や年代の酒類が集い、ずらっと並ぶ光景は圧巻の一言に尽きた。
 酒好きを自ら自称するだけはあるのだろう。並んだ酒類の中には、サラッと珍しい品まで紛れ込んでいる。
 飲み物だけではなく、食べ物も方もまた豪華で。
 何から手を付けようか。馳走の大盤振舞を前に、重松・八雲の視線は嬉々とした満面の笑みであっちを行ったりこっちに来たり。
 食べ物が逃げ出すという珍事態は起こらないだろうが、迷っている最中に横からひょいっと仲間たちに取られる――ということは、しょっちゅうで。
 『ふわもふ』との出会いは一期一会だが、馳走との出会いも一期一会である。
 さっきは迷っているうちに気になる和菓子が消えたのだ。今度こそは、と意気込みと共に和菓子の確保に走る八雲の姿を遠くから「連れではありません」みたいな表情で眺めていたのは呉羽・伊織だった。
「大満足のふるもっふ&フルコースで良かったネ」
 思わず棒読み口調になってしまうのも仕方ない。
 疲れをみせるどころが、依頼が進むにつれて益々元気いっぱいになっていく児爺に、ため息の一つも自然と生まれ落ちてしまう。
 子ども以上に落ち着きがなく――伊織が見ていて恥ずかしくなるほどのはしゃぎっぷりである。
 現実逃避気味に、もふと和の融合する珍妙な庭へ視線背ける伊織。視線の先にももふが居て、嫌でも八雲との道中の賑やかなアレソレを思い出してしまう。児爺守も楽ではない。
(「ま、どうせならぱあっと送り出すに越した事は――」)
「ふ、甘酒の飲み比べならばどんとこいじゃぞ~!」
 突然、伊織の思考を遥か彼方まで吹き飛ばすかのような大声が響き渡る。
 何事かと声の発生源を辿れば、早速竜神へご機嫌な様子で甘酒の乾杯を持ち掛ける八雲の姿が目に飛び込んできた。
「モフ見にすいーつまで欠かさぬとは、中々気が合うではないか!」
『お主も同志と見受けた。此処で仲間に出逢えるとは、まさしく僥倖じゃ!』
 高々と掲げられる甘酒の入った湯呑に、乾杯と打ち鳴らされる陶器の涼やかな音。
 乾杯の勢いが良すぎたせいか、甘酒がちゃぽんと零れ落ちる。
 そのままぐいっと飲み干せば、心も身体も暖まるばかり。
「お主よぉくわかっておるのう! モフもすいーつも、とても尊い存在であろう!」
『そうであろう! 屋敷前のけさらんぱさらんは、まさにふわふわ天国じゃ』
「ふわふわ具合では、ぬいも負けておらぬじゃろ~?」
『そうじゃ。もふを語るうえでぬいぐるみは外せぬ――』
 甘酒を片手にもふとスイーツについて語れば、言葉が勝手に口を滑りだしてくる。
 スイーツの何が良いか、もふの至高さについて等々……八雲と竜神の話は盛り上がる一方だ。
「ってちょっと目を離した隙にー!」
 視線を戻せば、いつの間にか始まり盛り上がりを見せている甘酒盛に、伊織は思わず二度見する。
 視線を逸らしていたのはほんの少しの間であったはず。それなのに、あの短時間でここまで盛り上がるというのか。
(「敵より寧ろ味方が手に負えないってか何意気投合してんのってか相乗効果で盛り上がりすぎでは!?」)
 敵とすっかり意気投合した様子の八雲。もふ×甘酒×スイーツの掛け算は無敵過ぎた。
 すっかり敵味方の垣根を飛び越える――どころが、真っ向から薙ぎ倒し、語られ続けるもふの魅力。
「オカシイ、片方は素面な筈なのに馴染みすぎている……」
 人間、驚きが一定上限を越してしまうと思わず真顔になる。
 真顔で自分を見つめる伊織に気付いたのか、八雲が振り返ると伊織に向かって大きく手を招いた。
 竜神も「新たなもふ仲間が増えるのじゃな?」みたいな、期待に満ちた視線を伊織に向けている。
「さぁさ、どんどん楽しもうではないか! 伊織も遠慮なく輪に入るが良いぞ!」
「イ~ヤ~! とんでも酔いどれ野郎達に挟まれても嬉しかな~い!」
 精一杯の抵抗を示しても、恥ずかしがっていると酔いどれたちは都合よく解釈。ドナドナド~ナと瞬く間に伊織も甘酒盛へ仲間入り!
「もふもふ派とふかふか派の決着は永劫つかぬだろうな!」
『両者の間には決して超えられぬ溝があるからのう』
「……もふもふでもふかふかでも、どっちでも良いんじゃないでしょーかネ」
 結局巻き込まれた伊織は自棄に甘酒煽りつつ、八雲と竜神が繰り広げるもふ話に投げやりに話を合わせる。
「そういえば、先ほど摘まんだ大福がとても美味しくてな! 伊織もどうじゃ?」
『あれはお勧めじゃぞ! 触感も甘みも至高の一言に尽きるわい』
 すっと伸ばされる、人の手と竜の手。
 それぞれが大福を摘ま――もうとしたら、
 「もちっ」ではなく、
 「もふっ」とした感触がして。
「いやソレ大福じゃないー! ぴよこぬいー!」
 八雲が手に持っているのも違うし、竜神が口に放り込もうとしたのも大福じゃない。
 叫び声を上げつつ、八雲からはむにっと取り返し、竜神からはぺしっと叩き落とし。伊織は慌ててぴよこズをもふっと救出!
 間一髪セーフだ。あと一秒遅れていたら、どうなっていたことか。
「おお失敬! 似ておったんで間違えた!」
『食べてしまいたくなるほどカワイイを実践してしまうところじゃったわい!』
「いや、絶対反省してないよね!?」
 かんらかんらと呑気に笑い声をあげる八雲と竜神に、伊織渾身のツッコミが被さって響いていく。
 そのまま、今度は間違えることなくまたもふもふを愛で始める八雲と竜神。
 改めてもちもちと大福の感触も楽しみながら、宴の刻は過ぎていく。
「さて、最後にとっておきの芸をみせようぞ」
「ソウデスネー。最後の締めと行きますか」
 ふわりふわりと黒降りる夜空に生み出されるのは、無数の灯火。
 ゆらゆらと揺らめいて竜神を取り囲むそれらは、余興という名の攻撃で。
『これはもふにも負けぬ幻想的な光景じゃの』
 揺れ動く焔に見惚れる竜神は、自分の身体がこっそり焼かれていっていることに気付かなかったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・六架
竜神の振舞いを受け
余興と言う名の攻撃を仕掛けましょうか
竜神への酒は切らさず
杯が空きそうになったらすかさず注いで
痛みが鈍麻すれば攻撃も心地が良いはず

黄金の獅子を喚び魔獣化した黒猫と
鈴蘭の舞と獅子と黒猫の曲芸を攻撃を織り交ぜ披露する
『我輩、見世物ではないんじゃがなぁ』
と独り言ちる黒猫
沢山良いお酒を呑んだお礼だと思ってね
と微笑んで

ルーファ(f06629)とナイトもどうですか?
取られた手は武骨ながらも優しく少し擽ったい
友から杯を受け取り煽る酒は格別で
眠るナイトをひと撫でし
黒猫も再び酒を飲みだす
夢心地の様な友との盃
宴もたけなわといきましょうか

どうか最期まで堪能してくださいね、竜神様


ルーファス・グレンヴィル
六架(f06485)と

ようやく目的地か!
長かったなあ、と笑い飛ばし
竜神との酒盛りへ乗り込む

すかさず酒を注ぐ六架を
すげえな、と感心して見つつ
接待よりも自分の楽しみを優先する
つまみを食べて、酒を飲んで
竜神と一緒にけらけらと笑って

やがて舞いを披露する黒猫を見て
感嘆の吐息と共に拍手喝采
六架から伸びた手を取り
なあ、お前は飲まねえのか?
なんて不思議そうに問う

折角だ、一緒に飲もうぜ

にんまりと笑って杯を差し出す
ナイトは飽きたのか寝てるけれど
こういうのは楽しまないと損だろ?
接待ばっかしてねえでオレとも楽しもうか

ま、どれだけ酒を浴びても
酔い潰れたりしねえから
ちゃんと最後には倒すけどな
オロチ、良い酒盛りをありがとよ



●宴と芸と酒と
 漸く辿り着いた目的地。
 並べられる古今東西様々な酒類の数々に、種類も味も豊富な食べ物たち。
 贅沢の限りを尽くしたラインナップは、最期の晩餐に相応しいだろう。
 最も……身体を焼かれたり切り刻まりしてもなお、呑気に酒を煽っている竜神は今宵が最期の酒盛りになることに気付いていないだろうが。
 酒のお陰か、感覚もだいぶ鈍麻しているようだ。骸魂を倒しきるまで、もう一押しといったところだろう。
「ようやく目的地か! 長かったなあ」
 漸く辿り着いたと、縁側に転がる空き瓶や空き缶の類とその中心で寛ぐ竜神を見やりながらルーファス・グレンヴィルは笑い飛ばしていた。
 長かった目的地も、辿り着いてしまえばこちらのもの。
 世界の崩壊を防ぐべく、ルーファスは酒盛りの席へと乗り込んでいく。
「さあ、遠慮なさらずに」
『お主は気が利くの。有難く頂戴するかの』
 酒は一切切らさずに。杯が空になりそうになったら、すかさず声をかけて注いでいく。
 慣れた手つきで酒を注ぐのは、ルーファスと共に乗り込んだ栗花落・六架だった。
 敵意一つすら見せずににこやかに竜神へと酒を振舞う六架だが、これも計画のうち。
 接待や余興という名の攻撃で、酒で痛みが鈍麻すれば攻撃も心地が良いはず――と考えての計画だったが、思った以上に効果があったようだ。
 猟兵たちによる酒盛りが積み重なった上に、六架によるお酌がトドメとなりべろんべろんの酔いどれと化した今、少し強めの衝撃位なら、身体に何か当たったくらいに思うだろう。
 なお、六架が裏や打算塗れの『おもてなし』をしている背景で、黒猫が「我関せず」を貫きながらちゃっかりお酒を飲み飲みしているのは――ご愛敬、というヤツだろう。
 お酒を見る目は十二分以上にあるらしい。同じ銘柄が並べば一瞬で「豊作」とされる年のものを咥え、並べられている酒類の中に貴重なものを発見すれば、すかさず前足で抱きしめて「吾輩のものである」と全身を使って主張している。
前足と口を使って器用に開けて、何本目かのお酒をペロペロ。
「……水甕に落ちないでくださいね?」
『吾輩は、そんなヘマをする猫ではない』
 六架の忠告をゆる~く聞き流しつつ、悠々自適な一匹酒だ。
「すげえな。気配りも超一流か」
 杯が空になる直前を見計らって酒を注ぐ六架を見て、感心したようにルーファスは誉め言葉を口にする。
 六架の気配りを見習いたいと思わなくもないが、ざっと見渡しただけでも幾つか貴重な酒が隠れん坊しているのだ。接待なんかよりも、今は自分の楽しみを優先したいルーファスだった。
「ん? これは有名な――」
 酒を楽しみつつ、次を探していたルーファスの目に飛び込んできたのは、貴重なオールドヴィンテージワインだった。
 それも、「豊作」とされる年のものである。
 これは飲むしかない、と瓶に手を伸ばせば――てしっと、何かが自分の手に重なった気がして。
「……」
『……』
「『……』」
 自分よりも遥かに小さい、黒いニャンコの手。手の先を辿れば、静かに光る色違いの瞳と目が合った。
 無言で見つめ合うルーファスと黒猫。交わす言葉は無くとも、向けられる視線は鋭く。なんなら、一歩も譲るまいと手に込める力は徐々に強い物になっていく。
 ワインを取り合う一人と一匹の姿を、「くだらない」と言いだけにナイトが見つめていることに、果たして気付いていたのだろうか。
『取り合わずに、共に飲めば楽しいぞ』
 竜神の一声に、表向きはにこやかに――しかし、次こそは負けないとお互いに静かに睨み合うのだ。
「――そうだな」
『それも一理あるか』
 つまみを食べつつ、酒を飲み交わし。
 交わされる言葉や冗談の類に、竜神と一緒にけらけらと何度笑ったことだろう。
「さて、そろそろ曲芸の披露と行きましょうか」
 頃合いを見て告げられる六架の言葉に、竜神とルーファスの注目が六架に集められる。
 六架が呼び出したのは、太陽もかくやの毛並みを持つ巨大な黄金獅子と、魔獣化させ大きくなった黒猫で。
 ふわりと鈴蘭の花嵐を舞わせ、幾重もの輪を作り出し――徐々に小さくなっていく輪を器用に潜り抜けていく獅子と黒猫の姿に、溢れんばかりの拍手が送られた。
『我輩、見世物ではないんじゃがなぁ』
 曲芸の合間に、ポツリ。独り言ちる黒猫。
「沢山良いお酒を呑んだお礼だと思ってね」
 ニッコリと微笑んだ六架は、すかさずそう言って微笑みかける。隠れてペロペロしていたことはばれているのだ。
 ルーファスのナイトは大人しく――というより、興味無さげに静かにしているのに。
 やがて獅子と黒猫の見事な舞が全て終われば、感嘆の吐息と共に送られる拍手の嵐。
 舞に紛れて竜神へ攻撃も仕込んでいたが、お酒が効果覿面だったのか、やはり全くバレていない。
「ルーファとナイトもどうですか?」
「なあ、お前は飲まねえのか?」
 舞が終われば、再び宴が戻ってくる。
 そう問いつつルーファスに手を差し出せば、不思議そうに問い返された。
「それもそうですね。折角なら」
 己の手を取るルーファスの手は武骨ながらも優しく少し擽ったい。
 その優しさに甘えながら六架がルーファスの隣に腰を下せば、にかっとした笑みと共に杯が差し出される。
「折角だ、一緒に飲もうぜ」
「では、お言葉に甘えて」
 同じ酒でも、友から杯を受け取り煽る酒はやはり格別で。
 味も良ければ、香りも一層濃厚なものに感じられるから。
「ナイトは飽きたのか寝てるけれど、こういうのは楽しまないと損だろ? 接待ばっかしてねえでオレとも楽しもうか」
 そうだ。接待ばかりしていては、詰まらないだろう。
 眠るナイトをルーファスは六架と共に撫で、今度は自分が接待をする番だと六架に酒を注いでいく。
 飲んでいて上等だと感じたものは、残しておいたのだ。
 一人で飲む酒も上手いが、やはり友と飲み交わす酒は格別なのだから。
「おっと、スマン。少し酔ったのか、手が滑っちまった」
 ルーファスが竜神の動向を伺いつつ、酔ったふりをして空になった瓶をわざと取り落とせば、めきょっと竜神の手元にクリティカルヒットした。
『気にするでない。痛くはなかったからの』
 ……どうにもすっかり感覚がマヒしているらしい。笑って許す竜神の姿を見て、ルーファスは内心でごちる。
(「ま、どれだけ酒を浴びても酔い潰れたりしねえんだけど」)
 先ほどのは演技だ。
 酔い潰れたりしないから、ちゃんと最後は倒す算段だった。
「オロチ、良い酒盛りをありがとよ」
「どうか最期まで堪能してくださいね、竜神様」
 そう。最期まで。骸魂を倒しきるまで、あと少し。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アレクシス・ミラ
【双星】


本当に楽しんでるだけなんだね…
うん、依頼である事は忘れずに参加を…って、言った側から!
ため息つきつつ控えめに呑んでいれば
どんどん注がれて…
君、もう酔ったのかい!?
…酔ってるな

セリオスの顔に金色わんこの手をむにっと押し付けガード
…こら、呑ませようとしすぎ
呑むなら僕は君と呑みたいのだけれど
君は?
―少し酔いが回ったのだろうか
じゃれる彼が可愛く見えてしまって
不思議に思いつつも
隣に座る彼の頭をいい子だね、と撫でる
うん、一緒に呑もう
彼に小さな杯を渡して
セリにゃんは僕の膝の上に
…うん、同じ顔してる

ああ、世界の危機は防がないと
宴も楽しい気持ちも壊さぬように
【君との約束】
浄化の光属性の花弁を降らせよう


セリオス・アリス
【双星】◆
なるほど状況は理解した…
なら飲まなきゃ損だよな!
よぉしアレスも飲め飲め!
ご機嫌で酒席についてまずは一杯
喉をならして楽しげに
アレスももっと飲めよ!
少し減ったアレスの杯に減ったぶんだけ注ごうと(わんこそばならぬわんこ酒)
そんな簡単に酔うわけねだろまだいっぱい目だぞ
アレスわんすとっぷを受けたらけらけらわらってアレスわんの鼻にじゃれつき小さくキス
しょうがねえ、俺もアレスと飲みたいから
誘導されるままに隣に座り小さくなった杯でちびちび飲む

楽しい時間を続けたくはあるが
このままじゃ世界が滅ぶんだもんな
悪いな、いつかまた
巡り会えたらその時は飲もうぜ
せめて楽しい気持ちのままで
【君との約束】で送ってやろう



●わんこ酒とほろ酔いにゃんこと
 知らぬが仏とはいったものだろうか。
 骸魂にすっかりダメージが蓄積されて、あと一歩で倒されてしまいそうなほどボロボロだと云うのに。
 自身の傷には全く目もくれず、すっかり出来上がった酔っぱらいと化した竜神は愉快愉快と明るい笑みを浮かべている。
 そこに敵意や殺意といった鋭い感情は感じられず、あるのはただただ純粋に酒を楽しみたいという呑気な感情だけ。
「本当に楽しんでるだけなんだね……」
 聞いてはいたが、ここまでとは。
 滅びる寸前だと云うのに酒を手放すことのない竜神に、呆れたような驚いたような、複雑な声をアレクシス・ミラは漏らす。
 本当に楽しんでいるだけとはいえ、世界一つの存亡が掛かっているのだ。見過ごす訳にはいかない。
 どうせなら、楽しいまま送り出そう。
 となれば、必要なことは唯一つだけ――。
「なるほど状況は理解した……なら飲まなきゃ損だよな!」
 そう、この宴を楽しむことである。
 アレクシスがそう宣言するよりも一瞬早く、さっと竜神の傍へ滑り込んでいったのはセリオス・アリスだった。
 美味い酒が飲める機会なのである。それをみすみす見逃すセリオスではなかった。
「うん、依頼である事は忘れずに参加を……って、言った側から!」
 言った傍から杯を手に取り、竜神と乾杯の音頭を取るセリオスにアレクシスはため息を吐きつつ、セリオスの後を追って自身もまた宴の席へと赴いた。
 依頼の趣旨を忘れていないか心配して問いかける間もない。聞くまでもなく、無邪気に酒を飲むセリオスを見ていれば、それだけで分かる。
 ……依頼であることは恐らく忘却しているだろうし、なんならもう酔っているかもしれない。
「よぉしアレスも飲め飲め!」
 乾杯の勢いを伴ったまま、ご機嫌な様子でまずは一杯。喉をならしつつ、楽し気にセリオスは酒を煽る。
「アレスももっと飲めよ!」
 ちみちみと控えめに飲んでいるアレクシスの杯に、「景気良く!」と減った分だけすかさず注ごうとして――だばっと溢れた分の酒が漏れだした。
 それにも構うことなく注ごうとするセリオスを、そっとアレクシスは制止する。
 わんこそばならぬわんこ酒は、またの機会に。
「君、もう酔ったのかい!?」
「そんな簡単に酔うわけねだろまだいっぱい目だぞ」
「……酔ってるな」
 ええ、ええ。一杯目でもう出来上がっていますとも。それはもう、綺麗なまでに。
 アレクわんとわんこ酒を掛け始めて、けらけらと笑い出してしまうくらいには。
 言葉で止まらぬなら行動で、と。
 アレクシスはセリオスの顔に金色わんこの手(ぷにぷに肉球付き)を近づけると――そのままむにっと押し付け、完全ガード。
 ぷにっと柔らかな肉球の感触がセリオスの顔を包み込む。
「……こら、呑ませようとしすぎ。呑むなら僕は君と呑みたいのだけれど。君は?」
 アレスわんすとっぷに、けらけらとわらったセリオスは、アレスわんの鼻先に小さくキスを落とす。
 一瞬じゃれつくように触れたそれは、次の瞬間にはふわりと飛び立っていた。
「しょうがねえ、俺もアレスと飲みたいから」
 ――少し酔いが回ったのだろうか。
 アレスわんに無邪気にじゃれつくセリオスが妙に可愛く見えてしまって、アレクシスは慌てて頭を振った。
 セリオスが可愛く見えてしまうだなんて、そんなこと。
 誘導されるがままに、ちょこんと自分の隣に座ったセリオスをちらりと伺えば、素直に杯を小さいものに変えているところだった。
 自分と飲みたいからと、素直に言うことを聞いて杯を変えるセリオスの姿も、また愛らしく……。
(「いや、そんなはず」)
 胸を満たす不思議な感情に首を傾げつつも、隣に座るセリオスの頭を「いい子だね」とアレクシスは撫でていく。
 一説によれば猫は液体であるらしいが、猫らしい気質を兼ね備えたセリオスもまた、それに当てはまるようで。
 アレクシスが撫でれば撫でた分だけ、へにゃりと溶けていくセリオスの姿。彼の黒髪に、伏せられた猫耳が見え隠れしているような。
「うん、一緒に呑もう」
 セリオスの身体からぽろりと落ちたセリにゃんは、アレクシスの膝の上に。
「……うん、同じ顔してる」
  酔いのせいか、何処か柔らかい雰囲気を纏ったセリオスの様子。
 大人しくちびちびと酒を飲み進めるセリオスとセリにゃんと見比べれば――やっぱり、そっくりだった。
『実に楽しい時間じゃったわい。本当にあっという間じゃったな』
 セリオスとアレクシスが共にじゃれ合うようにして飲み合えば、すっかり幾つかのお酒が空になって。
 夜も深まる一方だ。そろそろ、お開きの時間だろう。
「楽しい時間を続けたくはあるが、このままじゃ世界が滅ぶんだもんな」
「ああ、世界の危機は防がないと」
 楽しい時間も、いつか終わりを告げる。宴が終われば、普段通りの日常が戻ってくる。
 そしてその日常に――オブリビオンと化した骸魂は、存在してはいけない。
「悪いな、いつかまた巡り会えたらその時は飲もうぜ」
 せめて楽しい気持ちのまま。酒を浴び、眠るように還れたら。それがきっと、目の前の竜神にとっても本望だろうから。
 宴も、楽しい気持ちも壊さぬように。夢のような一時が、終わらぬように。
「楽しい気持ちのまま、眠りにつけたら」
 カラコロと木鈴が鳴る。赤星の想いに応えるように。
 周囲に光の剣が現れる。青星の想いに応えるように。
 すぐ傍で互いに瞬き合う赤と青、双星の願いが共鳴するかのように。
 光が生まれ、周囲を照らし出していく。見るもの全てを浄化してしまうように――強く、眩く。
 虹の前で交わした互いの約束。久遠に違えぬその誓いを、今。
 想いを力に。剣と盾は、共に存在してこそ全ての力を発揮できるのだから。
 ひらりひらりと散り始めた桜に交じって降り注ぐのは、浄化の力を宿した光属性の花弁。
『ほう。これは宴の最後に相応しい芸じゃのう――……』
 花弁に見惚れていた竜神。その瞬間をついて。
 現れた数多の光宿す剣が、骸魂を完全に貫いた。
「……どうやら、元に戻ったみたいだな」
「ケガもなさそうだね」
 そうして、光と共に竜神が去った後。
 縁側に、べしゃーっとだらしなく突っ伏する妖怪・酒吞童子の姿があった。

●ふわもふびより
 骸魂は無事に還され、カクリヨファンタズムの世界には平穏が――完全には戻らなかった。
 ケサパサ化された妖怪は全員元に戻れたものの、各地に降り積もった『ふわもふ』の類は大多数が消えずにそのまま残ってしまっている。
 おまけに、普通の生物(?)であった方のケサパサたちも、もふんもふんと屋敷周辺を漂っていて。
 誰が引き取るの、これ。と思わず現実逃避してしまいたくなるほどの数だ。
 ケサパサの行方は元に戻れた酒吞童子が面倒を見ると言っているからどうにかなりそうだが――降り積もった『ふわもふ』の徐モフ作業は、骨が折れそうだ。
 問題、もとい『ふわもふ』は文字通り山積みになっているが、まずは世界に平和が戻ったお祝いにお酒でも。
 酒吞童子とその友と共に再び飲み直す者、「もふこそ至高!」と趣味を兼ねた徐モフ作業に勤しむ者、世界に平穏が戻ったことを見届け帰路につく者等々。
 猟兵たちのその後はそれぞれだが、まあ、今日くらい羽目を外したって多少は多めに見てくれるだろう。
 だって、今宵は絶好のふわもふびよりなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月26日
宿敵 『酒呑み竜神『酔いどれオロチ』』 を撃破!


挿絵イラスト