つぎはぎdressing
●
むかしむかしあるところにお姫様がいました。
お姫様、というよりはお転婆で。暴れん坊で。すぐに手が出る。
……そんなのお姫様として相応しくないですって?
いいのよそんなの。私がお姫様と呼ばれるのは、女の子は皆お姫様なのだから。男の子だって望めばお姫様よ。
いつしかお姫様は王子様になりたいと願った子の傍にいました。
だって王子様の隣にはお姫様がつきものでしょう?
傍にいてあげたの。眩しくて太陽みたいな男の子。いつも笑顔だったわ。情けない顔した時には背中を叩いてあげていたの。背中をしゃんとしなさい、って。
そうすると困った様に笑いながら、お転婆だなあって言ってくれるの。満更でも無かったわ。
困っている子を助けてあげた時もあったわ。あれは大体私のお陰。もっと褒めてくれても良いのよって、頭を突きだしたらずっと撫でてこっちが恥ずかしくなりそうだったわ。でも、あの時はあの子はちゃんとした王子様だった。
でも、いつかは置いていかれる。
あんなに一緒だった王子様も死んでしまったし、あの子もいない。
とうの昔に泣きはらした顔。潰れてしまった喉は乞うこともできず。
でも私はお姫様だからそんな風に思っちゃいけない。いけない。
――いけないから、切り離した悲しみの欠片すってんころりん、兎の穴の中へ。
ねえ、ずっと待ってるわ。王子様。愉快な仲間も、騎士もいらない。私が望むのは王子様。其処に居続けぼろぼろになってしまったドレスはきっとこの国なら直してくれるはず。
ねえ、そうでしょう。アリスナイトさん。
貴女のドレス、私にちょうだいな。
●
不思議の国を護るため。魔法の騎士になれた時、私と一緒に喜んでくれたのはお母さんだった。
その日からお母さんが何かをしていたけれどお母さんは秘密よ、と言って目を伏せて口元に笑みを浮かべながら唇を人差し指で蓋をしていたから私は特に追求しなかった。でも、本当は知ってた。私が喜んで、お母さんが喜ぶ顔を知りたかったから。
ある日、出来上がったのは鎧とまでは行かずとも、丈夫で伸びが良くて動きやすい素材で作られた長袖のドレス。ウエストの部分で切り替えしがあって、前は膝丈で後ろはふくらはぎまであるアシンメトリーの少しだけ大人っぽいドレス。その下にパンツを履けば格好良く。パニエを仕込めば可愛らしく。どちらにもなれる素敵な、私だけのドレスだった。
「勇気が出るおまじないが掛かっているドレスよ」
ちくちく。ちくちく。昼は暖かな日差しに辺りながら。夜は手元をライトで照らしながら。お母さんが微笑みながら魔法のドレスを仕上げてくれたのを知っている。それが嬉しかった。私だけの、私の勇気が出る世界で一つの自慢のドレス。それを着た私は勇気が出る。どんな強敵にも立ち向かえる。そう、思っていた。
けれどオウガはとても強くて。戦っている最中にお母さんが大事に作ってくれたこのドレスはオウガに追い掛けられて、掴まれて破かれてしまうし。逃げる途中で木の枝に引っかけてしまうし。踏んでしまって、蹴ってしまって、穴を開けてしまうし。何より自分が落ち込んだ。お母さんが作ってくれたドレス。
そうだ、此処はお裁縫の国なのだから針も糸も生地もミシンも色々ある。なんだったらお母さんに。――いいや駄目だ。
不器用だから私は直せないし。お母さんのところに戻っている場合じゃない。ああ、早く。
早くなんとかしなくちゃ。
●
「お裁縫って難しいよねえ」
見てよこれ! と両手両指に巻かれた絆創膏を頬を膨らませて不貞腐れながら見せつけたのは一年・彩(エイプリルラビット・f16169)。
自分のスタイルに合わせた衣装を作るものの、何年経っても慣れないんだよねえと眉を顰めて溜息を付く姿に笑顔は無く、両手を机の上に投げ出して、机に頬を押しつけて突っ伏した。
「ね、皆はお裁縫得意?」
ごろん、と彩が首だけ上げると眼鏡を掛けた兎のグリモアから映し出されたのはぼろぼろのドレスを着たアリスナイトの一人の少女の姿。自分の身に着けているドレスの状態を見ながら困惑している様だった。
「アリスナイトの嗣葉ちゃんって言うんだけど。お母さんからもらったドレスがボロボロで。勇気が出ないみたいなの。でも嗣葉ちゃんとっても不器用で、お裁縫した事ないんだって!」
好きな衣装がボロボロだとテンションあがらない。その気持ち分かる、と一人で勝手に納得している彩は頷く。
「ボロボロでも格好良いとは思うけど、嗣葉ちゃんにとってはお母さんの大事なドレスだからさ。皆でドレスを直して元気付けて欲しいんだよね」
ましてや逃げ帰って来た勲章のようなもの。より一層自信が無いのも無理はないだろう。
「裁縫道具なら、嗣葉ちゃんのいる『お裁縫の国』にあるから心配しないで! お裁縫駄目な人も得意な人も、分からない事があれば愉快な仲間たちが教えてくれると思うよ」
裁縫が苦手な人は彩と一緒に頑張ろうね……。そう呟きながら彩の視線は上部、虚空を見つめていたが数秒後にははっとして首を横に振り、ツインテールを揺らして我に戻った。
「んでもって、嗣葉ちゃんと一緒にオウガを倒してきてほしいの!」
勢いよく立ち上がって片手で拳を作って、空高く挙げる。
「皆だったらできるよ! 大丈夫! 彩が保証する!」
眼を伏せて掲げた拳をピースに変えて、くるりと回った眼鏡を掛けた兎のグリモアはくるりと回って笑顔で見送った。
さけもり
OPをご覧くださり有難うございます。さけもりです。
プレイング受付日時、断章追加のアナウンスなどはMSページ、タグをご確認ください。
全章通してのプレイングボーナス……アリスナイトを励まし、「アリスナイト・イマジネイション」の威力を増加する。
●1章
12歳ぐらいのアリスナイト、嗣葉がいます。
OPの記述通り、お裁縫の国にはお裁縫道具は一通りあります。分からない場合にはミシンの愉快な仲間などが教えてくれたり、手伝ってくれたりするかも。
お裁縫の上手さ下手さは自己申告でどうぞ。ダイスにお任せでも可です。
さくっと「直す」という指示があればそれで大丈夫です。
余裕があれば他に何かを作っても大丈夫ですがアイテムの発行などはございません。
●2章:プリンセスの残滓『待焦』
戦いになります。相手は嗣葉を狙ってきます。
プレイングボーナスを利用して戦って下さい。
1章のみの参加でも構いません。皆さまの参加をお待ちしております。
第1章 日常
『ワーク・ワーク・ニードルワーク』
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POW : 気合でやればどうにかなる、とりあえず針を手にしよう。
SPD : こういう物は機械を使えば早くできるものだ、手早く縫う。
WIZ : こういう事は知識が物を言う、情報を仕入れてから作り始めよう。
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●お裁縫の国
「お嬢さんどうしたの?」
「あっ! ドレスがボロボロ!」
「こんなに素敵なドレスなのに……」
「此処には何にもないけれど、お裁縫にまつわることならなんでもあるよ」
そう口々に言うのは、まち針、縫い糸、糸切り鋏の愉快な仲間達。戦うのには向かないけれど、縫い物に関したことなら任せてと胸を叩きました。
「お母さんが。お母さんが作ってくれたドレスが……」
どうやらオウガに襲われて戦っていたアリスナイトの嗣葉はドレスの裾を握りしめたまま。無敵の鎧となる筈だったドレスはただの布へと成っていて、唇を噛みしめたまま俯いて言葉を開きません。彼らがドレスを直したとしても、それはドレスが直っただけで、彼女の心はまたオウガに引き裂かれて立ち直れないでしょう。
愉快な仲間達はオウガの恐ろしさを知っていますし、彼女の心に話しかけてもきっとそれは仮初めの鎧にしか仕立て上がらないかもしれません。
「ドレス、直さないと」
嗣葉の手にぎゅうと、力が籠もって裾に皺が寄ります。俯きながらも戦う意思は折れていない彼女に、何ができるでしょうか?
逢月・故
【うさちゃんズ】
へぇ、こりゃまた派手にぼろぼろだねぇ
嗚呼泣かない泣かない、だーいじょーぶ!
何てったってオレは兎の帽子屋さん!裁縫は大得意さ!
メトロちゃんはどうするー?
オレはちょーっと真面目にオシゴトするつもりだけど
布製品壊れてんのって見捨てらんないんだよねぇ
裁縫道具は大体持ってるし、足んない分は其処らのコから借りるかなー
んふふー、オレねぇ、とーっても嬉しいよ嗣葉ちゃん
だって、君の鎧になれと願われたこのコは、ちゃーんと役目を果たしてくれた
まだ未熟なアリスナイトの君が生きてるのがその証拠
君のお母さんの願いの賜物
あのね、オレは知ってるよ
君の力にと願って君のためだけに作られた物に、力がないはずないんだ
メトロ・トリー
【うさちゃんズ】
お姉さん泣いちゃうの!?
だめだよだめだめ同じ涙ならおかしくってお腹抱えて笑い転げた時の涙の方がね、ずーっとおいしいんだよ!
ってことで赤白黒のうさちゃんズにお任せあれ!
そう高らかに宣言するぼくは故くんのアシスタント兼可愛い役に徹するのだエッヘン!かわいいポーズ!
うんうん、故くんが布製品だけに優しいところ、ぼく嫌いじゃないよ、お手伝いしちゃうとも!かわいいポーズ!
え?ぼくが可愛いとお仕事が捗るだろう?うん、これ持って立ってるの、うん。
可愛いポーズ!
えへへ、故くんすごいでしょ〜、おいしくない涙は、ほらどっかお行きよ。
●うさぎの耳はどうして長いのか
ぴょこん。ぴょこん。うさぎの耳を立てて、聞き取ったのは弱音を吐いた少女の泣き言。泣きそうな子は何処だとうさぎの耳を揺らしていた。
きょろ。きょろ。メトロ・トリー(時間ノイローゼ・f19399)と逢月・故(ひとりぼっちのワンダーランド・f19541)は辺りを見回しながら、その声の持ち主のところへゆっくりと歩いて行く。
「お姉さん、大丈夫?」
弱音を吐いた少女の嗣葉の顔をしゃがみこんで、うさぎの耳を揺らして尋ねると心許ない声が返ってきた。
「へぇ、こりゃまた派手にぼろぼろだねぇ」
「お母さんの、ドレス……うっ、うぅ……」
「お姉さん泣いちゃうの!?」
「嗚呼泣かない泣かないだーいじょーぶ!」
大丈夫。そう言われても嗣葉の涙は止まらない。
自分が弱いから。自分でドレスを駄目にしたのは知っている。けれど故に改めて言われて、堪えていた涙もたちまち溢れてしまった様で涙が止まらない。アリスナイトとはいえ、まだ両手の数を少しだけ通り越した少女。恐怖を乗り越え、戦わなくちゃいけなかったのに。――悔しい。悲しい。その気持ちが溢れていった。
「だめだよだめだめ同じ涙ならおかしくってお腹抱えて笑い転げた時の涙の方がね、ずーっとおいしいんだよ!」
「へ……?」
涙に美味しいも何もあるのか。嗣葉は目をまるくして、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。涙を手袋越しに拭い取るメトロ、自分の仕事道具でもある大きな鋏を取り出した故を交互に見つめた。
「何てったってオレは兎の帽子屋さん!裁縫は大得意さ!」
「ってことで赤白黒のうさちゃんズにお任せあれ!」
立ち上がって人差し指を空にさし、メトロは高らかに声をあげてから自分の両頬に人差し指を当てて可愛いポーズを取る。きょとんとしながらも嗣葉はじゃあ、と恥ずかしそうにしながらふくらはぎまであった筈のドレスの裾を二人に見せた。
「メトロちゃんはどうするー? オレはちょーっと真面目にオシゴトするつもりだけど」
「ぼくは故くんのアシスタント兼可愛い役に徹するのだエッヘン!」
腰に手を当てて胸を張るメトロを横目で見ながら故はそっかあと呟いた。
自分が帽子を仕立てるうさぎだから。布製品が壊れているのは見捨てられないと嗣葉の解れたドレスの裾を見つめる。なんせ自分は帽子屋だから。裁縫道具は大体持ってるけれど、それでも帽子とドレスを仕立てるのは訳が違う。道具だって違う。使う材料だって違う。足りない道具は愉快な仲間たちに声を掛けるとすぐに集まって来た。
「うんうん、故くんが布製品だけに優しいところ、ぼく嫌いじゃないよ」
お手伝いしちゃう!……とは言いながらも先程からメトロがしているのは本当の応援。メトロが理性を捨てて可愛いと思うポーズをとればとる程、故の裁縫は上手くいく秘術。その事実を故は知らない内に受けているが、“そうである”事は知らない。
「……メトロちゃん、さっきから何してるの?」
「え? ぼくが可愛いとお仕事が捗るだろう?」
「えー、じゃあこれ持ってて」
ぽい、と故から投げられたのはミシンの下糸に使われるボビンの愉快な仲間。メトロの両手の中に納まってすやすやと眠っていた。
「うん、これ持って立ってるの、うん」
何に使われるか分からないけど。人差し指と親指で軽く持ってその穴を覗き込めば、きっと素敵なドレスが待っている筈。
「んふふー、オレねぇ、とーっても嬉しいよ嗣葉ちゃん」
「えっどうして?」
「あっ! 危ないから前向いて僕の可愛いポーズを見てて!」
口元に笑みを携えながら故は嗣葉のドレスを縫って行く。後ろを振り返りそうだった嗣葉は前にいた顎の下に両手を添えたメトロの方を見る。
「だって、君の鎧になれと願われたこのコは、ちゃーんと役目を果たしてくれた」
未だ未熟なアリスナイトの少女が生きているのがその証拠。――彼女の母の願いの賜物。
「あのね、オレは知ってるよ。君の力にと願って君のためだに作られた物に、力がないはずないんだ」
ほらできた。ぱちんと縫い糸を切ればドレスのお直しはおしまい。
「えへへ、故くんすごいでしょ~」
まるで自分の功績の様に笑うメトロに思わず嗣葉の顔も綻んでいく。おいしくない涙は、どっかへ行ったみたいだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オネスト・ファッション
逃げ帰ってきた?そうは思わないけどなぁ
服が汚れたり破けたりするのは
それだけ一生懸命頑張ったって証なんだぜ
嗣葉はこれまですごい頑張ってきたってことだろ?すごいぜ!
とは言え大事な服がボロボロになるのはショックだよな…早いとこ直そう!
嗣葉にどんなドレスだったか、それとどんなドレスが着たいかを聞きたいな
言葉で難しかったら絵に描いてもらい
それを元に愉快な仲間たちの力を借りて[裁縫]で手直ししていく
最後に、嗣葉が良ければドレスに合わせた刺繍を入れる
元気が出るように、僕からのおまじないだ!
どんなにボロボロになってもまだ立ち向かおうとしている
勇気を無くさなかった嗣葉ならなんだって出来る!僕はそう思うぞ!
●見た目も大事だけど本当に大事なのは?
いくら弱いとはいえ。幼いとはいえ。アリスナイトの一人なのだから。嗣葉の中で情けなさと悔しさが募っていく。立ちながらドレスの裾を握り締めて、俯きながら唇を噛み締める。
「逃げて帰ってきた?」
けれど、オネスト・ファッション(見せ掛け以上・f31551)はそうだとは思わないと首を横に振る。
「服が汚れたり破けたりするのはそれだけ一生懸命頑張ったって証なんだぜ」
見掛けの悪魔とは言えども、その目は見た目だけでは無く、きちんと中身を見据えることのできる悪魔である。とはいえ、大事な服がボロボロになるのはショックな事も知っている。自分の繕った服が、丹精込めて作ったものが、台無しにされては努力は無駄では無かったとは言えども全部無かったことになってしまうのは辛い。
オネストが取り出したのは普段から自分がスケッチやデザインを取るために持ち歩いているスケッチブックと鉛筆。
「どんなドレスだった? 着たいドレスとかあるか?」
「えっと……」
服装については分からない。口籠る嗣葉が手渡されたスケッチブックと鉛筆を受け取るとゆっくり筆を走らせていった。
「お母さんが作ってくれたドレスは……」
確か、こんな感じだった。でもあんまり手を加えるのもそれは何か嫌な気がする。だから最小限に。長袖だけど動きやすくするなら袖を切っていいかもしれない。後ろの裾は動きにくいかもしれないけれど可愛いからそのままが良い。
「ど、どうかな」
「上出来なデザインだ! よし、お前らちょっと力を貸してくれ!」
何々、と裁縫箱の中で様子を伺っていた縫い針、縫い糸、裁ち切り鋏の愉快な仲間たちはそのデザインに嬉しそうな声を上げた。
「ステキ!」
「これからもっとステキになるね!」
「じゃあそのお手伝いをしちゃいましょ」
仕付け糸もチャコペンの跡も何も無い、布地をシャキン、シャキンと嗣葉の肌を傷つけない様に切り落とす。それでも裾は解れが出てしまうから、折り返してまつり縫い。でもそれだけじゃただの質素なドレスになってしまう。
「なあ、嗣葉ってどういう字を書くんだ?」
「『つぐ』は何て説明したらいいか分からないけど、『は』は葉っぱの葉だよ」
「元気が出るように僕からのおまじないだ」
どんなにボロボロになってもまだ立ち向かおうとしている少女に見掛けの悪魔からのプレゼント。裾には植物が伸びる様に。どこまでも伸びて留まる事を知らない蔦の刺繍。わあわあと素敵だと騒いで笑う愉快な仲間たちに嗣葉も釣られて笑い出す。
「勇気を無くさなかった嗣葉ならなんだって出来る! 僕はそう思うぞ!」
大成功
🔵🔵🔵
ジャスパー・ドゥルジー
よっす、そこのアリス
お名前なんてーの?嗣葉?
嗣葉は何でそんなに落ち込んで…はっはあ、ドレスを直したいのに直せないんだな
俺もハンクラの類は大好きだけど
最初は針に糸通すのもおっかなびっくりだったし、わかるぜ
そうだなあ、出来る事からやってみる、ってのはどうだ?
裁縫が苦手だったら、これとか!
そう言って取り出すのは可愛らしいワッペン
これな、縫い付けなくてもアイロンでつけられるんだ
火傷にさえ気を付ければ大丈夫
小さい穴なら塞げるんじゃねえかな
好きな柄を選んで、そう
嗣葉のお母さんと、嗣葉の合作だ
せっかくの「無敵の鎧」だろ
より可愛く、格好良く生まれ変わらせようぜ
必要なのはほんのちょっとの勇気だけ
●悴む指先をあたためてくれるのは?
「よっす、そこのアリス」
俯きながら針に糸を通そうとしていた嗣葉は肩を跳ね上げらせる。振り返るとズボンのポケットに手を突っ込んでいるジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)の姿があった。一見その身はオウガにも悪魔にも見えたが先程まで戦っていたオウガとは違ったようで胸を撫で下ろす。
「お名前なんてーの?」
「つ、嗣葉」
「嗣葉は何でそんなに落ち込んで……はっはあ」
彼女を周りをぐるりと囲んだ長い糸の山。待ち針ばかりが刺された針山。指に嵌められた指ぬきはぶかぶかで針を持った手が余計に危うい。察するに、ドレスを直そうとしたけど直せないと言ったところか。ジャスパーは彼女に視線を合わせる様にしゃがみ込んで、膝に肘を乗せながら話し掛けた。
「俺もハンクラの類は大好きだけど最初は針に糸通すのもおっかなびっくりだったし、わかるぜ」
「お兄さんお裁縫できるの? じゃあ、これは……?」
うんうんと頷いたジャスパーに嗣葉は穴の開いたパニエを見せる。何かに引っかけて穴でも開けてしまったのか、多くの小さい穴が点在していた。刺繍を施すにしてもこの量、この広さはきっと縫い糸と針だけでは裁縫が苦手な嗣葉がしたら日が暮れてしまうだろう。
「そうだなあ、出来る事からやってみる、ってのはどうだ?」
裁縫が苦手ならば縫わなくても良い。なんなら張り付ければいい。そう取り出したのは花のワッペンだった。
「これな、縫い付けなくてもアイロンでつけられるんだ」
「僕の名前を呼んだかい?」
熱々の鉄の三角頭がひょっこりと植垣から顔を出せば、ジャスパーが手招きその手に収まる。台の上にふわり乗せられたパニエの上に花のワッペンを乗せて、熱いアイロンを数秒当てればまるでシールの様に簡単にできると嗣葉に見せた。爪先で突いても取れない! 目を丸くしていても、アイロンはきっと熱い。不器用な自分にできるかどうか。
「でも熱いんでしょう?」
「火傷さえ気を付ければ大丈夫。小さい穴なら塞げるんじゃねえかな」
それでもまだまだパニエには穴が開いている。だからもっと飾ればいい。花でもいい。熊でも兎でも良い。好きなものをたんとお使い。
「そのドレスは嗣葉のお母さんの作ったもんだろ? 嗣葉のお母さんと、嗣葉の合作だ」
「合作……」
「せっかくの『無敵の鎧』だろ、より可愛く、格好良く生まれ変わらせようぜ」
ジャスパーのその言葉に頷き、次々にアイロンを当てて、色鮮やかになるパニエに嗣葉の顔は段々と明るくなっていく。
必要なのは技術でも何でもない。必要なのはほんのちょっとの勇気だけ。
大成功
🔵🔵🔵
黒川・文子
綺麗なドレスが布切れになっております。
ここはわたくしめにお任せ下さい。
わたくしめはメイドですから、このようなドレスもすぐに直してみせます。
そちらのドレスをわたくしめに貸して下さい。
愉快な仲間達が手伝って下さるのなら早めに仕上がるかと。
ミシンがあるのでしたらミシンをお借りしましょう。
時間も限られておりますから軽く直す程度です。
わたくしめに時間がありましたらもっとしっかりと直しますのに……。悔やまれますね。
愉快な仲間達と共にドレスの損傷が激しい箇所を直しましょう。
手際良く直して行きます。もう大丈夫ですよ。
勇気の出る素敵なドレスなのですね。
そのような素敵なドレスを直す手伝いが出来た事を光栄に思います
●愉快な仲間たちは本当に愉快なだけ?
「ここはわたくしめにお任せ下さい」
布切れになってしまったドレスを手にした嗣葉は頭を下げた黒川・文子(メイドの土産・f24138)を見上げた。
「わたくしめはメイドですから、このようなドレスをすぐに直してみせます」
メイドたるもの、家事は勿論の事裁縫だってできるのです。そう自信満々に胸を張った文子にそれなら……と自分のドレスと、布切れに成り果てたドレスの欠片を文子に渡した。
「お召し物代わりにどうぞ」
肌着だけでは風邪をひいてしまうだろうし、周りに男性がいないとはいえども女の子。服の代わりになるキルト生地を嗣葉に纏わせてあげると恥ずかしそうに頭を下げられて文子は礼を受け取った。
「ミシンさん、いらっしゃいますか」
がたがたと白い肩幅を揺らしながらやって来たのはミシンの愉快な仲間。上糸と下糸をミシンから伸びた腕で抱えて文子たちの前に姿を現した。
「何でい」
「こちらのドレス、繕えますか」
どれどれと文子の手には嗣葉から預かったドレスの欠片を見る。
「ったりめえよう。でもよう、細かなところはオイラはできねえなあ」
それに時間も限られているから全部が全部ミシンの愉快な仲間に頼るわけには行かない。
「わたくしめに時間がありましたらもっとしっかりと直しますのに……」
もっと時間があったら。場所が確保できたら。大事なドレスは直せたであろうに。文子の中で悔いが募る。
ぱんぱん、と手を叩いて呼び出すのは自身と同じ「愉快な仲間」たち。ごそごそと裁縫箱の中にいた彼らは顔を出して、どうしたどうしたとお伺いを立てる。
「何々?」
「どうしたの?」
「お手伝いをしてほしいのです。ここの細かな穴をですね……」
がたがたとミシンの愉快な生化が針を進める傍ら、仕上がったドレスの細かな穴、ほつれを見据えて文子も針を進めていく。メイドですもの。手際良く、完璧に。時間内で妥協せずに愉快な仲間たちの声援を、手伝いを受けながら針は進んでいった。
「もう大丈夫ですよ」
ふわり。嗣葉に仕上がったドレスを着せ、キルトの仮衣装を脱がすと素敵なドレスを纏ったアリスナイトの出来上がり。
「わあ……! これで、大丈夫! 勇気を出して戦えそうだよ!」
「素敵なドレスなのですね」
そのような素敵なドレスを直す手伝いが出来た事が光栄だと文子は胸に手を当て、嗣葉に頭を下げて微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵
穂結・神楽耶
【赤椿】 メイジー様/f08022と
仕事関係の知人ですが、
なんとなくメイジー様向けきのお仕事かな…と思いまして。
ご協力頂けて嬉しいです。
どうぞ、よろしくお願いしますね。
…ええ、そうですね。
嗣葉様、思い出してください。
はじめてこのドレスに袖を通した時、どんなことを思いましたか?
それを着たあなたは、どんなアリスナイトになりたかったんですか?
わたくし達はそれを手伝うだけです。
だから、あなたの願いを教えてください。
いやたぶんて。
そこは断言しましょうよ…。
ともあれあなたの勇気を出すためにもさっそく繕いましょう。
メイジー様もご一緒にお願いします!
わたくしも拙い身ではございますががんばって縫いますので!
メイジー・ブランシェット
【赤椿】
神楽耶さん/f15297とは最近お話をするようになりました
このお仕事も神楽耶さんの紹介です
村で繕い仕事はしていたので足手纏いにはならないと思うのですが…
……縫わなくて、良いんですか?
縫った方が良いですよ。縫わないと、きっと後悔します
戦えないこと、じゃなくて、何もしなかったこと
自分の大事なものなのに、何もしなかったことを
不器用なんて関係なくて……やらない理由なんていくらだって思いついちゃうから
あ。でも……そのドレスだけに頼らないでくださいね
そのドレスは勇気をくれるけど、そのドレスが勇気を出すわけじゃないですから。……たぶん
はい。それはもう手伝います!
……変になっても笑わないでくださいね?
●次々繕うのはどんな気持ち?
「お仕事、ですか?」
「なんとなくメイジー様向けのお仕事かな……と思いまして」
最近話をするようになった仕事関係の知人からの紹介は、自分に向いているものだというから首を縦に振った。ご協力頂けて嬉しいですと穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)は不思議の国を進んで行く。
確かにメイジー・ブランシェット(演者・f08022)は寒村で悴む指で繕い仕事をしていたから、紹介してもらったこの仕事は確かに自分向けではあると思うが自分が役に立てるかどうか。
「足手纏いにはならないと思うのですが……」
その指先を合わせながらメイジーは神楽耶の後を付いて行くがその顔は頭巾で陰りを落とす。でも、できると首を縦に振った以上は顔に陰りを落とすわけには行かない。真っ直ぐ見据え直した。
「あちらの方ですね」
背中を丸めている少女の後姿はとても小さなものに見えて、声を掛けるのを戸惑う。しかしメイジーはゆっくりと言葉を紡いで縫い針に糸を通し終えた嗣葉の震える指先、何度も布に針を通そうとして、溜息をついた姿にゆっくりと声を掛けた。
「……縫わなくて、良いんですか?」
「……できない、から」
その声は指先を針で刺してしまわないか。上手に縫えるか。震える指先。その気持ちは分からなくもない。寒い日、悴む手は、指は思う様に動いてくれなくて。何度指に針を刺したことか。それでも仕事だから動かさなくちゃいけない。
「縫った方が良いですよ。縫わないと、きっと後悔します」
戦えない事じゃなくて。何もしなかったことにきっと後悔すると嗣葉の瞳をメイジーは真っ直ぐに見つめる。猟兵たちの協力もあって仕上がりかけたドレスは、本当にそれで完成していいのだろうか。嗣葉の瞳は揺れて、手元の針に向けられた。
「……ええ、そうですね。嗣葉様、思い出してください。はじめてこのドレスに袖を通した時、どんなことを思いましたか?」
「どんな事……」
「それを来たあなたは、どんなアリスナイトになりたかったんですか?」
自分たちはそれを手伝いに来た。その声を、気持ちを、聞かせてほしいと神楽耶は耳を澄ます。小さな声も、気持ちも聞き逃さないために。
「……この国を、護れる。アリスナイトになりたい。……ううん、なるんだって思った!」
丸めた背中は真っ直ぐに。声は大きく。あの頃のなりたかった自分になるんだと改めるもその背中はすぐに丸くなりそうになる。
「でも私、不器用で……」
「不器用なんて関係なくて……やらない理由なんていくらだって思いついちゃうから」
なりたいものになれるのだから、やりたいものもやれる筈だとメイジーは震える嗣葉の手に自分の手を重ねて震えを止めさせる。
「ドレス、縫うの失敗したら?」
「大丈夫です、無敵のドレスなのでしょう? 限られた時間ではありますが、直していきましょう!」
着物の袖を捲り、神楽耶も嗣葉の勇気を出すためにもさっそく繕いましょうと身を乗り出す。
「あ。でも……そのドレスだけに頼らないでくださいね。そのドレスは勇気をくれるけど、そのドレスが勇気を出すわけじゃないですから。……多分」
「いやたぶんて。そこは断言しましょうよ……」
ゆっくり縫えば大丈夫。布を手繰り寄せる様に、同じ大きさのひだを作れば綺麗に縫える筈……とメイジーは自分の技術を嗣葉に教えていた。すうっと布を通って行く針、糸。できた! と喜ぶ嗣葉の顔に神楽耶とメイジーの顔をも綻んでいく。
「メイジー様もご一緒にお願いします! わたくしも拙い身ではございますががんばって縫いますので!」
時間は限られている。全部が全部嗣葉に行わせてしまったらそれこそオウガが来る頃には中途半端な無敵な鎧ができあがるだろうから、嗣葉には難しい所を二人は直していこうと針を持ち直す。
「はい。それはもう手伝います! ……変になっても笑わないでくださいね?」
「笑いませんよ」
だってそれは、一生懸命やったものなのだから。笑う方が可笑しいのだと言わんばかりに神楽耶は微笑んで針を進めていく。
大成功
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第2章 ボス戦
『プリンセスの残滓『待焦』』
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POW : お転婆でも許してね
レベル×1tまでの対象の【髪、服、武器】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : 哀れみなんていらないのよ
【白いリボンかレース、フリルのどれか】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : お前なんて王子様じゃないわ!
【顔を隠していたフリル】を脱ぎ、【悍ましくも醜い顔をした姫君】に変身する。武器「【服から無限に涌き出る白い花弁】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
👑11
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●すてきなドレスのできあがり!
「できた!」
ぷつん、と糸と切った嗣葉の掛け声に愉快な仲間たちはぱちぱちと拍手を送ったり、額の汗を拭ったりしてみせる。
胸を高鳴らせながらドレスに袖を通すと母親の作ったドレスとは少しだけ重みの違った気がした。くるり、と回って見せると感嘆の声が漏れた。それは一人ではきっとできなかった。大勢の猟兵、仲間たちの協力があってこそできた『無敵のドレス』――今度こそ。オウガには負けたりしないと嗣葉は力強く拳を握りしめる。
ふわり、レースとフリルが嗣葉の頬を掠める。一体どこから。ふと振り向くとそこには嗣葉が襲われたというオウガ・プリンセスの残滓『待焦』の姿だった。レースとフリルは嗣葉のドレスの裾を摘まんで引き千切ろうとしたものの、それに気づいた愉快な仲間たちは声を上げる。
「危ない!」
その次にはきゃあ! と悲鳴を上げた愉快な仲間たちは裁縫箱に逃げ隠れ、ぱたりと閉じて家の中へ。その言葉に直ぐ反応した嗣葉もスカートの裾を硬化した盾で防いだ。
「……?」
宙に浮いたプリンセスの残滓『待焦』は手を組み、自分の攻撃が通らなかった事に不思議そうに首を傾げる。
おかしいわ。あのドレスはさっきボロボロだったはずなのに。直っている。
「!」
だけど『待焦』にそんなの関係無かった。
――だって、またそのドレスはボロボロになるかもしれないのだからと微笑みを浮かべた。
今度は布すら残らないかもしれないけれど。
●お姫様の我侭
あの子も素敵。その子も素敵。この子も素敵。どの子も素敵だけれど、私が一番素敵!
だって私はお姫様だもの! 一番素敵でなくてどうするの?
だけどボロボロのドレスじゃ王子様のいる舞踏会には行けない。硝子の靴は何処に置いて行ったのだっけ。足がないから忘れちゃったわ。ティアラはあるからお姫様って分かってもらえる筈なのよ。
ボロボロのドレスの直し方なんて簡単。素敵なあの子とその子とこの子からお洋服を貰えば良いだけ。貰えないなら引き千切って貰っちゃえばいいの! なんて名案なのかしら!
引き千切って。引き裂いて。切り裂いて。破いて。素敵な部分をつぎはぎ合わせて素敵なオートクチュールドレスのできあがり! ……の筈。
だけど足りない。素敵なエッセンスが足りない。そう、例えばあの子のドレス。王子様とも、お姫様とは違うあの子。ええとなんだったかしら。そう、確かアリスナイトのあの子ドレス。素敵だった。あの子のドレスと私のドレス、つぎはぎ合わせたらとっても素敵なものになるはずだったのに。
ボロボロのドレスはどうしてあんなにも綺麗になっているのかしら? いいえ、それだけじゃない。刺繍も、ワッペンも可愛い! 縫い目の荒いドレスなんて正に私に引き千切ってくださいと言っている様なもの!
良いわ、全部私のドレスにしてあげる。お裁縫なんてした事ないけど。きっと針に指を刺したら眠ってしまうだろうけど。
――だって、そうしたら王子様が来てくれるでしょう?
ねえ。素敵なナイトさん。私にそのドレス一つ、頂戴な。
いつか王子様に会うための、大事なドレスにしてあげるから。
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≪補足≫
・愉快な仲間たちは裁縫箱のお家に帰りました
・開けた場所での戦いになります
障害物等気にせず戦ってください
メイジー・ブランシェット
【赤椿】
神楽耶さん/f15297と
欲しがる気持ちはわかるんですけどね
それが大切なモノ、大切な思い出がありますから
それを見て、羨ましいって思うのは……私にもありますし
でも、貴方が欲しがっているのは、嗣葉さんのドレスだけど、嗣葉さんのドレスじゃない!
ドレスの形だけが欲しいんだったら、こっちにたくさんありますよ
【仕事道具の使い方】
神楽耶さんの作ってくれた一瞬の光の間に、待焦の周囲に嗣葉さんのドレスと形だけはそっくりなものを大量に
理性の弱った相手なら飛びついてしまうほど、迷わせるように、たっくさん!
嗣葉さん、貴方の大切なモノをあんなふうに、形だけしか見てない人に奪われていいんですか?
穂結・神楽耶
【赤椿】
メイジー様/f08022と
他人の物を欲しがるのは強盗の仕業では?
羨ましいと思うくらいなら健全でしょう。
…こうやって、聞く耳持たず手を伸ばすのは過去の怪物らしいと言いますか。
それではプリンセス、ひと差し踊って頂けますか?
神焔拝領――光、あれ。
見えなければ伸ばす手の先は分からないでしょう?
メイジー様が幻影を準備するまでの一手を稼ぎます。
…さて、嗣葉様。準備はよろしいですか?
あなたがあのオウガを倒してください。
だってあなたは“この国を護れるアリスナイト”になるんでしょう?
今なら彼女はあなたが見えていません。
だから、奪わせないために。
勇気を出して、一歩踏み出して。
さあ、あなたの夢を叶えに!
●輝き+ドレス=?
あれがほしい。それがほしい。指を差してももらえないから、プリンセスの残滓『待焦』はそのドレスが欲しいと手を伸ばす。だがアリスランスを構えた嗣葉の切っ先はその手には触れさせない。この手が届かないから、『待焦』は苛立って髪を掻き毟り、頭を振り乱す。
「他人の物を欲しがるのは強盗の仕業では?」
羨ましいと思うくらいなら健全である。けれど、神楽耶のその声が『待焦』に届く事はない。聞こえていたとしても、それを理解できる程、『待焦』は大人ではなかった。それもまた過去の怪物――オウガらしいと鞘に納めたままの刃を構える。
「欲しがる気持ちはわかるんですけどね」
それには大切なもの。大切な思い出があって詰まっている。それを見て羨ましいと思う気持ちも、メイジーも感じた事のあることから否定はしない。しかし、理解はできないと首をゆっくり横に振った。
「でも、貴方が欲しがっているのは、嗣葉さんのドレスだけど、嗣葉さんのドレスじゃない!」
「ッ!」
うるさい。あなた達に言われる必要ないと声に成らぬ悲鳴を上げ、否定される理由も無いとフリルに隠されていた顔を晒した。腫れて弛んだ瞼、大口を開けたのか口の先が割け、唇は乾燥してその顔は醜く、童話における姫君には酷く遠い。ふわり、ふわりと服から這い出る白い花弁はまるでヴァージンロードを歩いた花嫁が落としたブーケの様だったがそれも今では、猟兵たちを切り裂く凶器の一つに過ぎない。
「それではプリンセス、ひと差し踊って頂けますか?」
本当の素顔を晒した『待焦』に差し出すのは刃の光。神楽耶は王子様でも無い。ダンスを踊るのは、貴女一人。
「神焔拝領――光、あれ」
鞘から引き抜いた刃の光が『待焦』へと当てられる。普段だったらフリルで隠れていた顔はより一層眩しく感じるうえに目の奥が灼ける様に熱く感じられ、顔を覆い悶える間にも体も焼けてしまうのではないかと地面へと転がり落ちた。
見えない。どこ? 私の欲しいドレス、どこ? 手を伸ばしてもその手は手当たり次第地面を叩くだけで、何も布には当たらない。
「ドレスの形だけが欲しいんだったら、こっちにたくさんありますよ」
「!」
メイジーの声に導かれるまま、そっちに向かえば沢山のドレスが出迎えた。赤。青。黒。桃。いっぱいあってどれにしようか迷っちゃう! 嗚呼でも私の欲しいドレスはどれだっけ、と『待焦』は右往左往。――本当に欲しかった嗣葉のドレスは、近くに居ると言うのに。
「……さて、嗣葉様。準備はよろしいですか?」
きゅ、とアリスランスを握り直した嗣葉は神楽耶の問いに首を縦に振った。
「あなたがあのオウガを倒してください」
「わ、私が
……!?」
猟兵たちの力を、助けを借りて何とかなるはずだった。だから自分の手でなんて嗣葉の頭の中には無かった。
「だってあなたは“この国を守れるアリスナイト"になるんでしょう?」
一見、冷たく見えた神楽耶の問いにう、と言葉を詰まらせるも確かに自分はこの国を、アリスラビリンスを護れるアリスナイトになりたいと思っていた。――いや、今も思っている。だからその真っ直ぐな、正論な問いに強張った表情でゆっくりと首を縦に振った。強張った嗣葉の表情を見るなり、神楽耶は優しく彼女の肩に手を置いて大丈夫ですよと頷いた。
「今なら彼女はあなたが見えていません」
「嗣葉さん、貴方の大切なモノをあんなふうに、形だけしか見ていない人に奪われていいんですか?」
「それは……」
今も尚、『待焦』は自分のドレスには目もくれず、メイジーが出した服の迷路に目も心も囚われたまま揺蕩い、どのドレスが良いのか両手に沢山抱えて布の海に体を沈めている。――それに、負けたくない。
「勇気を出して、一歩踏み出して」
「大丈夫、嗣葉さんならできますよ」
嗣葉の肩にメイジーの手も添えられる。先程まで弱々しかった背中を、真っ直ぐ正す様に神楽耶は嗣葉の背に手を置き、メイジーもその背中に優しさを添える様に。二人は嗣葉の背を優しく押し出した。それは、突き放すのでもなく。ただ優しく、見送るために。
「さあ、あなたの夢を叶えに!」
「はい!」
――嗣葉ちゃん、あなたの夢はなあに?
幼い頃に言われた母の言葉を思い出す。あの時は恥ずかしくてはっきりと言えなかったけれど。今なら言える。自信を持ってはっきりと言える。
「この国を! 守るアリスナイトになること!」
布の海に沈んだ『待焦』をより一層ふかふかの幻影の海に沈める様にアリスランスを深く、深く突き刺した。
「!?」
白いドレスが、沈んでいたドレスが突き刺した横腹から赤く、赤く染まっていく。白い薔薇が赤い薔薇に染められ塗られていくように。『待焦』の意識もドレスの海にまた沈んでいく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャスパー・ドゥルジー
そのドレスだって俺はかわいいと思うけどなァ
ほどけた裾だってアバンギャルドだし?
まあ大事なものを奪おうとするのも
女の子の服を許可なく脱がそうとするのも
どっちもダメダメなんで仲良くはなれそうにねーや
自らの血を使って【イーコールの匣】
繰り出すのはボビンやまち針やピンクッションなどなど
奴のUCを巻き取ったり止めたりしてやる
ひとつ封じたって「道具」は俺の血のぶんあるんだ
完封なんて出来やしねえぜ
余裕があったら縫い針を操って
可愛いレースやリボンを逆にオウガの服に縫い付けてやろ
手助けしつつ肝心の攻撃は嗣葉に任せよう
ここでオウガを斃せたら
勇敢なアリスナイトは自分の鎧に更に自信が持てる筈だから
オネスト・ファッション
早速お出ましか!気合い入れていくぜ!
「ウィザード・スタイル」へ[早着替え]
以降言動は物々しく優雅に
ーーさて、物語に於いて、騎士も姫も導くのは魔法使いと決まっているもの。どちらも私が導こうではないか
欲張りなお姫様、奪うなんてはしたない
ドレスならば私が見繕おう
『待焦』に対してUCを発動
隠しもしない欲望は宝石に、乱暴さは隠すようにフリルとレースをたっぷり付けてあげよう
しかし私は魔法使いだがワルい悪魔でもある。相応の対価は頂くよ
UCの効果で服を操り反撃
フリルとレースで手足を[捕縛]し
宝石は重さを増しその身を苛む[重量攻撃]
さあ騎士様、道は示したとも
ドレスを直した対価に、貴女の勇気を見せてくれるかな?
●悪魔+悪魔=?
擦り切れたのか、引き千切れたのか。ボロボロのドレスの裾は泥で汚れてこれでは舞踏会にも行けない。そんなプリンセスの残滓『待焦』が狙うのは勇気を、元気を、つぎはぎではあるけれど格好良いドレスだった。
「そのドレスだって俺はかわいいと思うけどなァ。アヴァンギャルドで」
「あの裾、良いよな。しようたって簡単にできるわけじゃないぜ。でも、それだけだ」
アヴァンギャルド――前衛。革新的。ファッションにおいては大胆で独創的という意味である。白で清楚さを表しながらもそのデザインはお姫様にしては大胆で良いとジャスパーは評価する。一方、繕う事は手馴れている事だけれど、わざと汚したりするのは難しい事だからそれを着て似合っているのは良いとオネストもそれには頷いた。
――けれど納得できるのはそこだけ。二人は敵意を含んだ視線を『待焦』へと向ける。
どうして? 頬に人差し指を添えて『待焦』は首を傾げるが仲良くなる必要なんて無いから別に気にしないと微笑む。だって、黙らせてしまえば良いのでしょう? その手からはレースのリボンが放たれる。煩いものには蓋をしてしまいましょう。
「危ない!」
つぎはぎだけれど勇気と元気を分け与えてもらった無敵のドレスを身に纏った嗣葉は前へ出る。けれどレースのリボンは嗣葉を狙っても硬くて届かない。
「十分魔法が掛かってるみてえだな」
自分の着ていた魔武断学園の改造服を翻し、レースのリボンが届く前にオネストはローブへと着替えた。
「――さて、物語に於いて騎士も姫も導くのは魔法使いと決まっているもの」
魔王軍の幹部魔道士姿になったオネストの物腰は柔らかく。童話に出てくる魔法使いそのもの。違うのは、魔法で助ける魔法使いではなく。あくまで魔法で倒す魔法使い。
「欲張りなお姫様、奪うなんてはしたない」
「まあ大事なものを奪おうとするのも女の子の服を許可なく脱がそうとするのもどっちもダメダメなんで仲良くなれそうにねーや」
『待焦』がむう、と頬を膨らませて怒ってもちっとも怖くはないけれど、腕にたくさん抱えた白いリボン、フリル、レース。これだけあればどれかはきっと当たると信じて投げてもそれは届かなかった。掌の内を爪で引っ掻いたジャスパーの手には丸いパールの付いたまち針と同じものが、彼女のドレスに括りつかせたままでいさせた。じたばた暴れても取れない! 剥げない! びりびり破くしかないのかと『待焦』は両腕をばたつかせる。
ジャスパーの掌からボビン、まち針、ピンクッション。縫い糸に縫い針。通常よりも鉄の色と匂いを受け継いだ裁縫道具をぱらぱらと地面に落としていく。これが無くなっても道具の材料はジャスパーの血液。無限とまでは行かずとも、それを全部封じるならきっと果てしない物語だろう。
「おや、此処に裁縫道具がいっぱいですね」
「足りねーもんがあったら出すぜ」
痛みなんて気にしないジャスパーは笑いながら言い放つが、それをしてしまったら『待焦』が倒れるか、ジャスパーが倒れるかどちらかになってしまうだろうから。有りがたくも気持ちだけ、とオネストは首を横に振りながら微笑み返した。
「着るものが良ければ、気分も上がるものでしょう?」
隠しもしない欲望は宝石に、乱暴さは隠す様にフリルとチュールレースをたっぷり施す。煌びやかな宝石を足し、チュールレースで透け感を増して野暮ったくならないように。
「おっ良いデコレーション。じゃあこれをデコったら良いんじゃね?」
一方、ジャスパーが『待焦』のドレスに施したのはサテンのリボンとリバーレース。光沢あるサテンに多くの糸を組み合わせて作った優雅なリバーレースで一層飾ったドレスはまるでウェディングドレスの様にも見える。
まあ! 両頬に手を当てながら『待焦』は自身のドレスに付いた宝石は何色? 何の宝石? フリルもレースもどれだけ付いているの? とぐるりと一度回ってみるも良く見えないからまた回る。――けれど、魔法は時間が来ればすぐに終わってしまう。
「私は魔法使いだがワルい悪魔でもある」
相応の対価は頂くよ。指をパチン、と鳴らせば魔法は解けてしまう。フリルとレースは手足を縛る鎖に。宝石は重さを増してその身を地上に落として地べたに這わせ、その重さに『待焦』は唸る。その重さは、浮き足立つ気持ちすら失くす。
「さあ騎士様、道は示したとも」
「この道は嗣葉だけの道だぜ」
嗣葉の前には地に落ちた『待焦』が。左右にはジャスパーとオネスト。アリスランスを握り直し、両手で確と構える。
――その勇気が貫くのは左の胸。その左胸を貫いたものに付いたのは騎士としての自信。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
逢月・故
【うさちゃんズ】
嗣葉ちゃん、オレのご同輩
アリスナイトは信じれば何処までだって強くなる最っ高のジョブさ!
もー……うちの国のコも大概頭クルクルしてるから妄言ばっかだけどさー
楽しくない妄言はあっちゃならないよねぇ、メトロちゃん
……とりあえず、最大の文句言って良いかい?
引き裂いたボロ布を適当に継ぎ接ぎしただけの物をオートクチュールとは言わないの!!
侮辱かなー?これ職人へ喧嘩売ってる?売ってるよね?
よっし、ペンキを塗りたくって荊を生やして鋏でバツンっと斬り捨てちゃおう
歌うようにくるくる回って踊って、あは、赤薔薇を咲かせてたら楽しくなって来た!
ほぉら、赤薔薇の女王陛下の帽子屋さんはとーっても強いんだから!
メトロ・トリー
【うさちゃんズ】
ぼくそのドレスも可愛いと思うけどなーア!継ぎはぎオートクチュールはだめなんだって、故くんが言ってるんだからだめだよメ!専門家の意見は聞いた方がいいって芋虫おじさんも言ってたもんエ!もしやぼくのかわいい毛皮を狙ってるのかい!?だめだよだめだめこの尻尾ちょん切ってドレスの飾りにしちゃったりなんかしたら最高にかわいいけどダメだめだめ!
ぼくはてれてれしながら殺戮トランプくんをぽいぽぽい!
さ、赤いショーを始めよう
ペンキにトランプに薔薇にちょっきん!?
大忙しわあわあ!丁度いいね
ショータイムは騒がしいほど素敵だもん
トランプが散って、花吹雪みたい
信ずれば、成り得る
そう、アリスナイトたちの常識さ
●アリスナイトのうさぎ+アリスナイトのうさぎ=?
こんなにも苛立つのはきっと気のせいではない。故の片足はとんとんと地面を叩いて苛立ちの音を鳴らす。許せないものがある。
「もー……うちの国のコも大概頭クルクルしてるから妄言ばっかだけどさー」
「うんうん、何だい故くん僕のかわいいお顔を見つめても何も出ないよ?」
故の顔を覗き込むのは同輩のメトロ。それで解決するならそれでいい。けれど解決しないからはあ、と溜め息を吐いた。
「……とりあえず、最大の文句言って良いかい?」
「何々? 故くん言いたい事があるの? 良いよ!」
職人として、許せない事がひとつある。メトロは何を言うんだろうかとそわそわしながら顔を覗き込み、故は怒りに拳を震わせた後、『待焦』を指さした。
「引き裂いたボロ布を適当に継ぎ接ぎしただけの物をオートクチュールとは言わないの!! そもそもオートクチュールっていうのは一人の為に作った最高級のものだから!」
あら違うの? 両頬に両手を添えた『待焦』は首を傾げたもののそれは良い事を聞いたと微笑んだ。一点ものという意味だったけれどそうではない、と知って一つ賢くなった気がしている一方で故の怒りは募るばかり。
「侮辱かなー? これ職人へ喧嘩売ってる? 売ってるよね?」
「ぼくそのドレスも可愛いと思うけどなーア!」
だんだん、と足音を荒くして苛立つ故の顔を覗き込んだ後でメトロは『待焦』のドレスを見た。うん、悪くないと思うんだけど。
「故くんが言ってるんだからだめだだよメ! 専門家の意見は聞いた方がいいって芋虫おじさんも言ってたもんエ!」
大きな罰印を両手で表すメトロに『待焦』もふうん、とそういうものなの……と聞く耳を持っているけれどもあくまで自分の意思は曲げないらしく、理解はしちゃいない様だった。まさか、とハッとしたメトロは自分の体を庇うように前で腕をクロスさせる。
「もしやぼくのかわいい毛皮を狙ってるのかい!? だめだよだめだめこの尻尾ちょん切ってドレスの飾りにしちゃったりなんかしたら最高に可愛いけどダメだめだめ!」
ぴょこん、と後ろに生えた丸いうさぎの尻尾はまん丸、と見せかけて尻尾の先が少し尖った可愛い尾の形をしていた。それならブローチにしたら可愛いのかもしれない! 『待焦』の手から放たれた白いリボンはメトロの尻尾を狙う。
「わあわあ! 嬉し恥ずかし! だけどだめだめ! ショーが始まるんだから!」
――赤いショーの始まりさ!
嬉しいけどね。だけどだめなの。恥ずかしそうに赤くなった両頬を抑えながらメトロはトランプを『待焦』のリボンへと差し出す。舞台に上がったのならば、その上に立っている役者へのお触りは厳禁なのだ。
「我らが女王陛下に栄光あれ!」
女王陛下の為に白を赤へ塗り替えるペンキを故は辺りに撒き散らし、塗りたくる。舞台はきちんと整えなければ。観客は一人しかいないけれど、それでも女王陛下のために用意したものはいつでも完璧でなければならない。赤いペンキはゆっくりと荊が伸びて赤い薔薇をぽつりぽつりと咲かせていく。荊は『待焦』の腕に、身体にぐんぐん伸びて絡んでいく。顔を隠していたフリルを取って、醜い顔を晒して、無理やりにでも引き千切ろうと荊を掴む。手は、白いドレスは、血で赤く染まっていって女王陛下のお気に召す舞台上へと変わっていくのも束の間。
バツン。荊を、『待焦』の服を、体を故の体を同じくらいの大きさの裁ち鋏が斬り捨てていく。舞台の上で歌う様に、くるくる回って踊って。白いドレスも紅い薔薇を咲かせていたら怒りも段々楽しさに成って行く。
「あは、赤薔薇を咲かせてたら楽しくなって来た!」
ペンキにトランプ。赤い薔薇。色んなものが沢山塗られて、落ちて、咲いて行って目まぐるしく動いて大忙し!
「わあわあ! 丁度いいね、ショータイムは騒がしいほど素敵だもん」
殺戮トランプをぽいぽい投げて、『待焦』の体を切り刻んで行く。まるで、花弁みたいだとメトロは思った。故くんが作った赤薔薇と違う紅い薔薇が舞っている様に見えた。
アリスナイトの先輩であるメトロと故の背を見ながら嗣葉はすごい、と声を漏らした。その声に気付いた故とメトロは振り向き、微笑む。
「ほぉら、赤薔薇の女王陛下の帽子屋さんはとーっても強いんだから!」
「あっぼくだって強いんだよ! なんてったってアリスナイトだからね!」
「アリスナイトは信じれば何処までだって強くなる最っ高のジョブさ!」
「信ずれば、成り得る。そう、アリスナイトたちの常識さ」
先輩達の言葉は嗣葉の心に深く響く。強く握りしめたアリスランスを構えて、未だ荊に囚われたままの悍ましい顔をした『待焦』へと立ち向かう。
「私、貴女を許せない。ドレスだってボロボロにしちゃうし。この国を襲うし」
聞く耳を持たないのか。それとも理性が飛んで聞けないだけか。『待焦』は唸るだけで答えない。
「この国から、出て行って!!」
「!」
切っ先は喉元へと突き刺さり、『待焦』の声にならない声が響く。
「ーー! ッ! っ……!」
『待焦』の体を縛り付けていた荊は解け、赤いペンキの上にドレスは汚れて、赤く染まって体にはぴき、と体にひびが入って砕け散る。残滓――欠片は、更に粉々になってこの世界中に漂っているのかもしれない。
●世界のどこかにいるおひめさま
王子様。ねえ王子様。何処にいるの。返事をして。私の声が出せないから、聞こえないの?
私の顔が見えないから分からないの?
ねえ王子様。
貴方のお姫様は、此処よ。何時か、迎えに来てね。ひとりは寂しいから。
●世界で一つだけのドレス
猟兵さんたちのお陰で世界にたった一つのドレスができあがりました。
繕い直してもらったスカートの裾。刺繍。ワッペン。量の増えたチュールにパニエ。そして、縫い物ができるようになりました。……まだまだ下手くそだけど。
でも、あの時。ちゃんと針に糸を、布に針を通してなかったら。私はあの時の私だったのかもしれない。
今日から。ううん今から、私はこの国を守るアリスナイトとして頑張ろうと思います。
お家に帰ったら、お母さんにお裁縫を教えてもらおうと思いました。糸の縫い始めと縫い終わり、難しいんだよね。
このドレスがまたほつれたら。汚れたら。今度は自分の手で繕って、直して、また無敵のドレスにしようと私は思いました。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵