羅針盤戦争〜愚鈍な強欲は悪食を尽くし
●七大海嘯が一『鮫牙』ザンギャバス大帝を撤退させろ!
「この状況は……参ったな」
グリモアが齎した光景を見て、グリモア猟兵館野・敬輔は顎に手を当て考え込む。
傍らの丸盾のグリモアは、存在意義を主張せぬよう、限りなく透明に近い白へと変化していた。
グリモアの色に気づいた猟兵達が敬輔の周囲に集まり出す気配を察知したか、敬輔が顔を上げ、猟兵達に呼びかける。
「ああ、皆。以前、七大海嘯が一『鮫牙』ザンギャバス大帝への襲撃に対応してもらったが……皆の探索の成果が出て『鮫牙』の本拠地に乗り込めるようになった」
猟兵達の進撃で発見された、『鮫牙』の本拠地「鮫牙島」。
乗り込む機会を得て逸る猟兵達を、敬輔は「最後まで話を聞いてくれ」と制止する。
「ザンギャバス大帝は【無敵】だ。倒すことはできない」
――無敵状態を解除する術は、現状、猟兵の手元にはない。
「だが、【長時間暴れれば飢餓状態になり、獅子のような姿に変化して撤退する】弱点は変わらず持っているようだから、今回も飢餓状態に追い込んでもらうことになるな」
しかし、飢餓状態に追い込むために、極めて厄介な障害がひとつある、と敬輔は語る。
「鮫牙島の周囲には、凄まじい数の巨大鮫が棲みついて回遊しているんだ」
鮫牙島に棲みついた巨大鮫の数は、ほぼ無限。
「しかもザンギャバス大帝は、空腹状態になるとこの鮫をぽりぽりと貪り食い、空腹を満たそうとする」
巨大鮫はほぼ無限に存在する以上、空腹を満たす「餌」もまた、無限に存在するということだ。
「そこで、皆にはザンギャバス大帝の周囲から巨大鮫を遠ざけてもらい、その上で飢餓状態に追い込んで撤退させてほしい」
巨大鮫がザンギャバス大帝の手の届く範囲に残っていると、生死を問わず貪り食うため、数を減らすより遠ざける方が良いかもしれない。
……もちろん、巨大鮫を遠ざけるだけで勝てる程、甘い相手ではないが。
「ザンギャバス大帝は七大海嘯を冠するコンキスタドールだ。たとえ愚鈍で知能が低く、空腹状態に陥っていても、俺たちより遥かに強い。俺たちのユーベルコードに先んじて自分のユーベルコードを使用してくるからな」
先んじて使用されるザンギャバス大帝のユーベルコードに己が技量や知識、作戦を持って対処し、然るべきのちに一撃を叩き込む。
……それがかなわぬならば、『餌』となるのは猟兵達のほうだろう。
「『餌』になりそうになったら緊急回収させてもらうが、そうならないのが一番だ。皆、注意して当たってくれ」
頭を下げる敬輔に、猟兵達は其々の想いを胸に頷いた。
なお、『鮫牙』ザンギャバス大帝を撃破すると、彼の者が「餌」として狙いを定めていた島をひとつ、解放できるという。
その島の名前は、アリスラビリンスの水族館とも呼べる「アクアリウム島」。
「『餌』として狙われる前に察知できたのは僥倖だ。皆、絶対阻止してくれ」
では頼んだ、と敬輔は丸盾のグリモアを大きく展開し。
――猟兵達を、鮫牙島の近くに停泊している鉄甲船『伊州丸』の甲板に導いた。
●グリードオーシャン・鮫牙島
鉄甲船『伊州丸』で鮫牙島に接近した猟兵達は、我が目を疑った。
『伊州丸』の接近を察知したのか、鮫牙島が急速に深海へと潜航し始めたのだ。
慌てて水中に飛び込み追いかける猟兵達の耳に、おどろおどろしい声が届く。
「ふしゅるるるぅ……コロス」
それは、愚鈍かつ暴食の権化たる、七大海嘯の声。
「グリモアだぁ……ぜんぶコロス!」
その声と共に姿を見せるのは、愚鈍かつ無敵の巨躯。
――『鮫牙』ザンギャバス大帝。
島の周囲を回遊していた巨大鮫の群れが、徐々に接近する中。
――暴食の権化たる七大海嘯との戦いが、始まった。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
七大海嘯が一『鮫牙』ザンギャバス大帝の本拠地「鮫牙島」が発見されました。
猟兵の皆様には、「鮫牙島」で待ち受ける『鮫牙』ザンギャバス大帝の空腹を満たさぬようにしながら撃破をお願い致します。
有力敵戦につき、やや厳しく判定致します。
それ相応のご準備をなされた上での参加をお願い致します。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「羅針盤戦争」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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状況は全てオープニングの通り。
今回は冒頭の追記はありません。
●本シナリオにおける「プレイングボーナス」
【敵の先制攻撃ユーベルコードと「巨大鮫を喰おうとするザンギャバス」に対処する】とプレイングボーナスが付与されます。(両方必要となります)
巨大鮫は無限に出現しますので、遠ざける工夫の方が有効です。
ザンギャバス本体に対しては、過去の襲撃シナリオと同様、作戦や知略を持って挑むのが極めて有効となっておりますが、力押しももちろん可能。
なお、ザンギャバス大帝は無敵ですので、撃破はできませんが、戦力を削り切るとそれ以上は出現しなくなります。(少なくとも、この戦争中は)
●プレイング受付期間
オープニング公開直後から受付開始。
受付締め切りはマスターページとTwitter、タグにて告知。
●【重要】プレイングの採用について
本シナリオは早期完結を重視するため、必要最低限のプレイングのみ採用とし、必要成功数到達時点で未採用のプレイングは全て却下してお返し致します。
また、執筆時間確保の観点から、【おひとり様での参加】をお願いしております。
以上2点、ご了承の上での参加をお願い致します。
●島の解放について
本シナリオを成功させると、『鮫牙』の戦力を1減少させるとともに、七大海嘯支配下の新たな島をひとつ解放できます。
解放される島の名前は、アリスラビリンスから落ちてきた「アクアリウム島」です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『鮫牙』ザンギャバス』
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POW : ザンギャバスハンド
レベル×1tまでの対象の【腕や頭】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : ザンギャバスファング
自身の身体部位ひとつを【竜、山羊、蛇、蛇のいずれか】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : ザンギャバスポイズン
攻撃が命中した対象に【肉体の部位「蛇」からの猛毒】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肉体を侵食する猛毒】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
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實生・綿糸楼
鮫ばかり食わず、たまには緑黄色野菜も取ったらどうだ悪食め
とはいえ、まずは空腹にさせねばどうすることもできんな
島にある木々などの【地形を利用】し、【實生流忍法【天駆】】の速度強化を駆使して敵の攻撃を回避することで相手を疲弊させよう
鮫の対処は配下に任せようと思う。【羽虫下忍】を餌に鮫を船上から遠ざけるぞ
鮫は羽虫を食うのか?いや、連中に鮫の気を引くことをさせればよい
相手が飢餓に陥ってしまえばこちらのものだ。【方手裏剣「秋津丸」】による攻撃で畳みかけるぞ
●鮫と巨躯を翻弄するは、羽虫と忍者
(「鮫ばかり食わず、たまには緑黄色野菜も取ったらどうだ、悪食め」)
心の中で侮蔑を投げかける實生・綿糸楼(二代目實生忍軍棟梁・f31351)の視線は、水中に沈む七大海嘯『鮫牙』ザンギャバスの姿を捉えていた。
(「速度強化を駆使して、敵の攻撃を回避することで、相手を疲弊させられれば……」)
そう考え、綿糸楼がスカイフィッシュのメダルを取り出した瞬間。
「ふしゅるるるぅ……食ってやる!」
ザンギャバスが急浮上し、綿糸楼に襲い掛かった。
その腕は既に竜に変じており、綿糸楼の左腕を喰らわんと大きな咢を開けていた。
(「早い!? しくじったか!!」)
慌ててその場を離れようとするも間に合わず、竜の咢は綿糸楼の左腕に食らいつく。
急いで竜の咢を振り払ってその場を離れる綿糸楼だが、左腕の流血と、何より精神的なショックは隠せない。
(「しまった……メダルに頼らず回避する術を考えるべきだったか」)
『鮫牙』を始めとする「七大海嘯」は、皆、猟兵より遥かに強いコンキスタドール。
故に、綿糸楼がスカイフィッシュのメダルを取り出そうとした頃には、既にザンギャバスの腕は竜に変じており、綿糸楼の行動を妨害できるようになっていた。
そもそもグリモア猟兵は、はっきりと「俺たちのユーベルコードに先んじて自分のユーベルコードを使用してくる」と告げていたはず。
それは、回避目的でユーベルコードを使用しようとすれば、ザンギャバスはそれに先んじてユーベルコードを使用し、回避そのものを阻止するように動かれる可能性をも示唆していたのだ。
綿糸楼の左腕から滴る血が、海中に赤い線を引きながら漂い始める。
「猟兵だぁ……コロス!」
ザンギャバスは左腕を押さえ止血を試みる綿糸楼に接近し、さらに喰らおうとする。
綿糸楼は貼りつける機会を逸したメダルを左手に握りしめたまま、それでも水上に頭だけ出した木々を利用し、ザンギャバスを、竜を翻弄。
「ぐぬぬぅ
……!!」
ザンギャバスは、巨体が邪魔をして木々の隙間を通り抜けることができないが。
――ざぱーん!
鮫牙島の周囲を回遊していた巨大鮫の群れが、海中に漂う血の臭いで凶暴化し、波しぶきを立てながら、綿糸楼とザンギャバス、双方に迫る。
「鮫だぁ……食うぞ!」
ザンギャバスの手が、竜の咢が、巨大鮫に伸びようとした瞬間。
「のう、力を貸してくれぬか?」
綿糸楼が呼び寄せた羽虫の姿をした下級妖怪たち――下忍羽虫の群れは、ザンギャバスから巨大鮫を隠すように飛び始め、同時に巨大鮫を挑発し始める。
鮫が羽虫を食べるか否かは、綿糸楼にもわからなかったのだけど。
目の前をウロチョロする下忍羽虫をうっとおしく感じたのか、巨大鮫たちが執拗に羽虫を喰らおうと追いかけ始めたのを見て、いける、と確信する綿糸楼。
「羽虫たちよ、船から遠ざかれ!」
綿糸楼の命を受けた下忍羽虫たちが鉄甲船『伊州丸』から遠ざかるように飛び始めると、羽虫しか目に入っていない巨大鮫の群れは、それを追って船とザンギャバスから遠ざかる。
「ふしゅるるるぅ……食わせろ!」
巨大鮫という餌を奪われたザンギャバスは、再度綿糸楼を喰らうべく、竜の頭を伸ばすが。
「さあ、捉えられるなら捉えてみせよ!」
ようやくスカイフィッシュのメダルを貼りつけ、カメラで捉え切れない程の超加速を得た綿糸楼は、易々と竜の頭を見切り回避していた。
「どこだぁ……コロス!!」
ザンギャバスも執拗に竜に噛みつかせようとするが、綿糸楼の超加速に目と動きが追い付かず。
「このまま飢えるが良い!」
ザンギャバスの死角に回り込んだ綿糸楼は、右手に方手裏剣「秋津丸」を握り込み、少しずつ巨体を削いでいった。
先手こそ取れなかったものの、綿糸楼の羽虫と手裏剣の攻撃は、巨大鮫を遠ざけ、ザンギャバスを飢餓状態に追いこむきっかけを作っていた。
――戦いはまだ、始まったばかり。
苦戦
🔵🔴🔴
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
暴食の化身、お前は飢え続けるのがお似合いだよ☆
事前に「肉体改造」を自身に施し、自身の表面をヌルヌル成分と吐き気成分で覆います。
これで掴もうとしてもヌルヌルして掴めないよね!
対策したら次はUC【飢餓つくと肉肉しい惨劇】で肉塊になるよ!
肉体改造はそのままに、巨大鮫にわざと肉塊の一部を齧らせて鮫の内部で増殖して爆散★肉片に吐き気成分を纏わせよう!
吐き気成分ごと肉片や肉塊をザンギャバスにも食べさせて、内側のものを全部逆流させれば飢えるよね!
UCの飢え続ける匂いを海水に混ぜてもザンギャバスを飢え続けさせられるはず!
それに、水中戦はちょっと得意だよ♪
勝利の暁には羊肉で宴会だよ☆
●はらぺこ七大海嘯には飢餓がお似合い
(「暴食の化身、お前は飢え続けるのがお似合いだよ☆」)
ピンクのぶよぶよどろどろ肉塊で形成されたクジラ(?)に乗りながら
(??)、ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)は水中で激しく蠢く肉体に悪態をつきつつ、水中へ。
沈みゆく中、『鮫牙』ザンギャバス大帝の巨体が、真っ先にラヴィラヴァの目に入った。
あらかじめ体表に仕掛けを施しておき、ラヴィラヴァは真正面からザンギャバスに接敵する。
「ぐぅぅおぉぉぉ……クッテヤル」
ザンギャバスは戦艦すら軽々と持ちあげる膂力を誇る手で、ラヴィラヴァの腕を掴み、投げようとするが。
「ぐぅぅ……ヌルヌル……」
ラヴィラヴァの体表を覆っているヌルヌル成分で手が滑り、意図せず腕を離してしまった。
懲りずに何度も掴もうとするが、その都度ラヴィラヴァの腕が手の中から逃げてしまい、掴めない。
(「ふっふ~ん、これで掴もうとしても掴めないよね!」)
あらかじめ体表をヌルヌル成分で覆っておいたおかげで、致命的な掴みを避けたラヴィラヴァの目に、迫る巨大鮫の群れが目に入る。
巨大鮫の視線は、明らかにラヴィラヴァを捉えていた。
「たっぷりたらふく満足するまでオイラを召し上がれ♪」
ラヴィラヴァはザンギャバスと巨大鮫たちの目の前で、ピンク色の巨大な肉塊へと変身。
突然現れた「餌」に狂喜したか、巨大鮫は何も考えずにラヴィラヴァの肉塊に食らいつき、引きちぎり、咀嚼。
高栄養の肉塊を嬉しそうに食らい続ける巨大鮫だったが、数度咀嚼したところで突然動きを止め、苦し気に身を捩り始める。
「――――!!」
巨大鮫が何度も身を捩り、食べたものを吐き出そうとした、次の瞬間。
――ボンッ!!
巨大鮫の群れが一斉に体内から爆散、その肉を周囲に散開させる。
胃に納めたラヴィラヴァの肉塊が果てしない増殖を続け、体内から巨大鮫の肉体を圧迫、爆発を引き起こしたのだ。
「うおぉぉぉ……肉、肉ぅ……」
ラヴィラヴァから気を逸らし、巨大鮫の肉を勿体無いとばかりに食らうザンギャバスも、数度食らったところで突然手を止め、目を大きく見開き口を押え、しゃがむ。
「ゲゲェ……」
肉と共に食したものを、その悪食の象徴たる口から全て吐き出してしまう、ザンギャバス。
――これでは、飢えを満たすどころか、更なる飢えに襲われるだけ。
「やった! 全部食べてくれちゃった★」
肉塊のまま、してやったりと笑み(?)を浮かべる、ラヴィラヴァ。
ぬめり成分のほかに、吐き気を催す成分にも覆われていたラヴィラヴァの肉塊を食した巨大鮫の肉には、吐き気成分が十分に浸透していた。
もし、吐き気成分が十分浸透した肉を、何も知らずに口にしたらどうなるか?
……その答えは、吐き続けるザンギャバスの反応、そのものにあった。
さあ、勝利の暁の宴会を目指し、もうひと踏ん張りしよう。
陸に戻ったら、羊肉が待っているのだから。
成功
🔵🔵🔴
エミリィ・ジゼル
サメが食料など鮫魔術師として許せません
絶対に阻止しなくては
幸いわたくしは呼吸不要のバーチャルキャラ
水中戦もお手の物
高速泳法と水中機動で速度を確保し、先制攻撃を可能な限り防御
致命傷を避けつつ、攻撃をしのいだら即座にUCを発動
増えたかじできないで一斉にホラ貝を吹き、鮫魔術師の力と動物使いでサメたちに避難するように指示
水中でほら貝が届くのかと思われるかもしれませんが、実は空気中より水中のが音は届きやすいのです
クジラとかがエコーロケーション使うのはそのためです
避難後はかじできないたちがバラバラに別れ、それぞれがザンギャバスを罵倒
タゲをバラつかせながら時間稼ぎに徹します
やーい、お前の母ちゃんアナコンダー
●蛇の子は蛙ではなく悪食の象徴?
(「サメが食料など、鮫魔術士として許せません」)
エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は絶対に阻止しなくては、との気概を持ってこの場にやって来た。
巨大鮫を喰らって空腹を満たそうとする『鮫牙』ザンギャバス大帝を、エミリィは鮫魔術士としても、サメマニアとしても、許せなかったのだ。
鉄甲船『伊州丸』から水中に飛び込み、海底へと潜ってゆくエミリィ。
やがて視界に捉えたザンギャバスは、先の猟兵たちにある程度消耗させられたようだが、それでも殺戮と悪食の衝動は全く萎えていない。
「グリモアの匂いぃ……コロス!!」
エミリィをこの場に転移させたグリモアの気配を感じたか、ザンギャバスは左腕を山羊の頭に変えつつ、一気にエミリィに迫る。
しかし、エミリィは水を得た魚のように水中を自在に移動し、ひらりと山羊の頭の噛みつきを回避。
さらにザンギャバスの首でとぐろを巻く竜が、その首を伸ばしエミリィを食らおうとするが、こちらも一気に距離を離すことで易々と回避。
身に着けた高速泳法と水中機動の業のおかげで水中でも自由自在に動け、なおかつバーチャルキャラクター故に呼吸を気にする必要もないエミリィは、即座に反撃に出た。
「いけ、かじできないさんズ!」
エミリィの号令と共に召喚されたのは、額に「1」と刻印された、91体のエミリィと同じ姿のメイド……かじできないさんズ。
それぞれの手には、大きなほら貝が携えられていた。
エミリィもほら貝を手に持ち、全員で一斉に吹き始めるが……音は出ない。
本来、ほら貝のような管を持つ楽器を水中で吹くのは難しく、音を出すだけで四苦八苦。
呼吸不要とはいっても、管に満ち始めている海水を吸い込めばさすがに噎せかけてしまう。
それでも、何度も挑戦していると、徐々にコツは掴めてくるもので。
――ぶお~♪
やがて皆がそれなりに音が出せるようになってきたところで、エミリィとかじできないさんズは、鮫魔術士の力を乗せたほら貝の音を巨大鮫たちに向けて響かせた。
(「餌にされたくなければ、避難するのです」)
――ざぱーん……。
ほら貝による指示が伝わったのか、巨大鮫たちは徐々にエミリィとかじできないさんズ、そしてザンギャバスから離れていった。
「ぐるぅおぉぉぉ……コロス、コロス!!」
餌たる巨大鮫を遠ざけられ、空腹を満たせず怒り狂ったザンギャバスは、かじできないさんズを集中して狙うが、エミリィのコピーともいえる彼女らもやはり水中を巧みに移動し、回避し続け、一定の距離を保って取り囲みながら挑発する。
「やーい、お前の母ちゃんアナコンダー」
「アナコンダー」
「くやしかったら食ってみろー」
エミリィ含む92人のメイドから一斉に罵倒され、ザンギャバスの怒りはあっさり頂点に。
「コロス、コロス、コロス!!」
もはやエミリィたち以外眼中にないザンギャバスは、片っ端からかじできないさんズを、そしてエミリィを追いかけ、その手で掴もうとするが。
水中に適応し、なおかつ時間稼ぎを狙っているエミリィたちは、ザンギャバスの怒りに駆られた攻撃を片っ端から回避し、着実に消耗を誘い続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
無敵……見つけることができていないだけで、倒す手段がある、だといいのですが……とにかく、今は大人しくなるだけでも、なってもらいましょう
【動物と話す】で危険を伝え、鮫さんに避難をお願いします
聞いてくれないなら【範囲攻撃生命力吸収】光を放ち意識失わせ【念動力】で遠くへ
まだいるようなら……鮫牙さんを、海上へ誘導、試してみましょうか
【推力移動、目潰し】掴もうとしてくる鮫牙さんへ、光を放ち、眩ませると同時に離れて逃れる
掴まれても【覚悟、激痛耐性、継戦能力】鎧の内側から刃、自身を刻んでばらけて逃れる
食べられるわけには、いかないので……!
そして『いつか壊れるその日まで』再生して、上へ上へ、つかず離れずで誘導
●壊れるその日まで、道標と化して
――ザンギャバスは【無敵】であり、倒せない。
――ゆえに、今回も飢餓状態に追い込み、追い払うだけ。
既に猟兵達の間で周知の事実を、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は再度噛みしめる。
(「……見つけることができていないだけで、倒す手段がある、だといいのですが……」)
七大海嘯が一『三つ目』の持つメガリスがあれば、その退化の力を持って倒せるようになったかもしれない。
――『三つ目』は己がメガリスを使い、無敵たる『鮫牙』を殺すつもりだから。
だが、現状、猟兵側に『三つ目』のような手段はなく、それ以外の手段は依然見つかっていない。
……だから、今回も飢餓状態に追い込み、撤退を狙うだけだが。
それでも、誰かがやらねば、いずれ手のつけようがなくなってしまうかもしれないから。
「とにかく、今は大人しくなるだけでも、なってもらいましょう」
そう、心に決めたナイは、水中に身を躍らせる。
途中、ナイの気配を察し接近する巨大鮫の群れに、捕食の危険を伝えようとするも、逆にナイを餌と認識したか、鮫たちが襲い掛かった。
話を聞いてくれそうにない鮫たちを見て、やむなくナイは生命力を吸収する光を放ち、目くらましと共に意識を奪い、一時的に活動不能な状態に追いやった。
無数の巨大鮫が、意識を刈り取られて水面に浮かび上がる。
それを念動力で片っ端から遠ざけようとした、その時。
「鮫だあ! 餌だあ! ヨコセ!!」
海底にいたはずのザンギャバスが、水面向かって急浮上。
……おそらく、狙いは気絶した巨大鮫だろう。
「グリモアぁ……グリモアの匂いだぁ……クッテヤル!」
だが同時にナイの気配にも気が付いたのか、ザンギャバスはその腕でねじり切らんとすべく、大きな手を伸ばす。
(「食べられるわけには、いかないので
……!」)
ナイは咄嗟にカメラのフラッシュのような極めて強い光を生成してザンギャバスの顔面にぶつけ、目を眩ませた。
「ぐぅおぉぉ……眩しい!」
至近距離で目潰しに遭い、もがくザンギャバス。
だが、破れかぶれで振り回した手が、偶然にもナイを掴んだ。
「――――!!」
ナイも逃れようともがくが、胴体を完全に覆い隠す程の手に握られれば、ナイも成す術がない。
ザンギャバスがそのままナイを引き寄せ、口にしようとしたその時。
――ザクッ!!
ザンギャバスの手の中でナイの姿がバラバラになり、零れ落ちる。
黒剣鎧の中に仕込まれていた刃が、着用者たるナイの身体をバラバラにし、悪食たる七大海嘯の手から逃れさせた。
もちろん、その身は激痛に苛まれるが、聖者の聖なる光に包まれた身体は、たとえバラバラの状態からでも瞬時に再生し、元の姿を取り戻す。
……何処にあるとも知れぬ器物が壊れぬ限り、死ぬことのないヤドリカミ。
その特性を最大限に生かし拘束を逃れたナイは、ザンギャバスを誘導すべく、水面へと泳ぎ続け、誘い続けていた。
――『いつか壊れる』その日まで。
成功
🔵🔵🔴
ビードット・ワイワイ
たとえ幾度倒そうと無敵の壁は貫けぬか
なれどこれでも我らは猟兵
近い未来に必ず穿つ
アウトレンジキャンセラーにて煙幕発生
51232892132人の凝縮より血をばら撒きて鮫の注目を集める
鮫を壁にし敵の来るルートを未来予測演算機にて読み解き
攻撃方向にオーラ防御施し仮想破滅収集補助具を展開し衝撃波と共にシールドバッシュし防ぐ
UC発動し100体のメカモササウルスを展開
半数で鮫に襲いかかり恐怖を与え遠くに追いやる
雷にて体を感電させ行動鈍らせ機械翼にて敵周囲を高速で回り渦巻きを発生
吹き飛ばし消耗させる
●かつての海の王者は巨躯を退ける
ビードット・ワイワイ(絶対唯一メカモササウルス・f02622)は、もはや何度目になるかもわからない『鮫牙』ザンギャバス大帝の姿を目の前にし、大きく嘆息する。
(「たとえ幾度倒そうとも、無敵の壁は貫けぬか」)
各地の島に襲来したザンギャバスを悉く退け、この鮫牙島でも何度も飢餓状態に追い込んできたが、その都度飢餓状態から回復し、戻ってくるザンギャバス。
……グリモア猟兵が『無敵だから倒せない』と口をそろえるのも、むべなるかな。
(「なれど、これでもわれらは猟兵。近い未来に必ず穿つ」)
そのためにも、今は何度目――否、十何度目かの飢餓状態に追いこみ、撤退させよう。
――さもなくば、撃破が叶う未来には繋がらないのだから。
「ぐおぉぉぉ……鮫に似た猟兵……コロス!」
潜水するや否や、紅い剣呑な光を宿した瞳を向けられたビードットは、EPアウトレンジキャンセラーから赤い煙幕を張る。
赤い煙幕の成分は……4つの星々に暮らしていた人々、総数51232892132人の凝縮された血。
濃い血の臭いが漂うそれを周囲の海域に一気にばら撒くことで、ビードットはザンギャバスから身を隠しつつ、あえて巨大鮫の注目を集めようとした。
――ザザザザザ……。
血の臭いに惹かれたか、巨大鮫の群れが次々と煙幕に突入。
その数は……ビードットの予測を超えていた。
「喰う、クッテヤル!!」
ザンギャバスは出鱈目に手を振り回し、手にした鮫を片っ端から食べつつ、ビードットに迫る。
(「少し、注目を集めすぎただろうか」)
鮫を壁にして敵の来るルートを未来予測演算機で読み解くつもりだったが、血の臭いが濃密過ぎただろうか。
次々と水中にばら撒かれる巨大鮫の食い散らかしにまぎれるように、ビードットにザンギャバスの腕が伸びるが、ビードットはオーラ防御を展開すると同時に煙幕を斬り裂くような衝撃波を放ち、逃れた。
その一方で、仮装破滅収集補助具を展開し、先ほどの腕攻撃の情報を収集することも、忘れない。
――「蛇」の猛毒に関する情報が得られれば、今後の役に立つかもしれないから。
「海を支配せし古代の海龍。海を制覇せし最新の海龍。2つ合わさり更なる進化を。海は我らに狭すぎた。これより新たな覇王の姿見せよう」
巨大鮫とオーラ防御、衝撃波でかろうじてザンギャバスの腕攻撃から逃れたビードットは、己が分身……と称するには遥かに大きい、全長10mのメカモササウルスを100体召喚。
各々が雷放つ角と機械翼を宿すメカモササウルスは、そのうちの半数が鮫を追い払う様に回遊し、威嚇しながら、生き残った鮫を一気に追い払い。
残り半分はザンギャバスの周囲を高速で回りつつ、角から雷を発射。
「あぎゃぎゃぎゃ……しびれる!」
50体のメカモササウルスから最大出力の雷を浴びせられたザンギャバスの身体が麻痺したその隙に、メカモササウルスの群れは機械翼を広げ、高速で回り始める。
それはいつしか一つの竜巻となり、ザンギャバスの巨体をひたすらかき回し始めていた。
「あぎゃぎゃぎゃ……目が……」
竜巻の中でかき回され、もみくちゃにされたザンギャバスは、先ほど食した巨大鮫のエネルギーを早くも使い果たし、更なる消耗を強いられていた。
成功
🔵🔵🔴
カシム・ディーン
やれやれ
無敵が相手というのも面倒ですね
対wiz
【情報収集・視力・戦闘知識・武器受け・念動力・浄化・医術】
敵の動き
特に蛇の動きを分析し攻撃の癖の把握
更にこれまでの戦闘記録から毒の性質の把握
念動障壁を展開して更に短剣で攻撃を逸らして直撃だけは絶対に避ける
万が一食らった時は解毒剤を服用
反撃
大帝には竜の帝で挑みましょうか
UC起動
【属性攻撃・スナイパー・二回攻撃・切断】
属性を強化した八属性ブレスで焼き払いつつ何度も喰らい付いて引きちぎり激突
対捕食
【捕食・生命力吸収】
周囲に鮫は首の一部を利用して
此方で鮫に喰らい付いて捕食しつつ
水中内でも睨み付けて追い払う
更に喰らおうとする敵の手や生やした頭部に噛みつき妨害
●愚鈍な巨躯を制するのは帝竜なり
「やれやれ、無敵が相手というのも面倒ですね」
弱り切ってなお、餌を求めて蠢こうとしている『鮫牙』ザンギャバス大帝を目にし、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は小さく息をつく。
グリモア猟兵たちが揃って「無敵である」と断言する通り、ザンギャバスを骸の海に還すことは叶わない。
今、できるのは、飢餓状態に追い込み、一時的にその巨躯を獅子に変じさせることだけだった。
……それだけでも、多くの人々が『鮫牙』の暴虐の手から救われるのだから。
「グリモアの匂いぃ……コロス!」
カシムの姿を認めたザンギャバスが、「蛇」の毒を注ぎ込むために、カシムに手を伸ばす。
既にかなり消耗しているのか、弱々しく愚直な程真っ直ぐな攻撃に対し、カシムの対策は極めてシンプル。
ザンギャバスの身体を這う蛇の動きを分析し、攻撃の癖を把握し。
あらかじめ他の猟兵との戦闘記録を分析し、蛇の毒が肉体を蝕む猛毒であることを突き止め。
その結果、導き出した結論は――「直撃だけは絶対避ける」。
「コロス、コロス、クッテヤル!!」
執拗に同じ単語のみ繰り返しながら、ザンギャバスはカシムを捕獲しようとするも、カシムは念動障壁を展開し、さらに短剣でザンギャバスの手首を斬りつけて逸らした。
短剣から伝わる手ごたえは、酷く重いそれだったが、それでも避けた意味は大きい。
(「かろうじて毒は逃れましたか……」)
万一の為の解毒剤は用意しておいたが、どうやら出番はなさそうだ。
「大帝には竜の帝で挑みますか」
強奪した帝竜の眼球の魔力を魂晶石に込め作り上げた魔眼宝石半仮面――装着型の帝竜石を被る、カシム。
「万物の根源よ……帝竜眼よ………今こそ…帝竜の王の力を我が身に宿せ…!! わが身今こそ帝竜へと至らん
……!!」
光り輝く帝竜眼を八首竜へ変えつつ、カシムは炎・水・土・氷・雷・光・闇・毒の八属性を宿す帝竜「ヴァルギリオス」に変身。
「でかい……クウ! クワセロ!!」
突如現れた帝竜に歓喜し、消耗すら忘れたようにその手を伸ばすザンギャバス。
……ザンギャバスには、アックス&ウィザーズを嘗て統べた「帝竜」ですら「餌」に過ぎないのか。
ザンギャバスが喜び勇んでその首に食らいつこうとしたところを、カシムは土属性のブレスで吹き飛ばし、さらに雷属性のブレスで打ち据え、毒属性と炎属性の首でザンギャバスの胴に食らいつき、引きちぎった。
「ふしゅるるるるるるるぅ
……!!」
ザンギャバスが怯んだ隙に、カシムは至近距離から水属性のブレスを叩きつける。
――ゴウッ!!
水属性のブレスに吹き飛ばされたザンギャバスは、そのまま海底に叩きつけられた。
弱り切った『鮫牙』の気配を察し寄って来た巨大鮫に、ザンギャバスは腕を伸ばすが……
――ガッ!!
巨大鮫は寸前でカシム(ヴァルギリオス)の首にかっさらわれ、ザンギャバスが手にする事はかなわない。
「ぐぐぅ……ズルイ!!」
地団駄を踏む余力すらないザンギャバスの目の前で、カシムは炎属性の首で巨大鮫に食らいついて意識的に捕食つつ、光属性と闇属性、毒属性の首で四方八方を睨みつけ、巨大鮫を威嚇。
図体の大きさで敵わないと察したか、それとも帝竜たる威圧感に屈したか、巨大鮫は『鮫牙』を見捨て遠ざかった。
(「もう、これで終わりですよ」)
「餌」に遠ざかられ、落胆するザンギャバスに、カシムは八つ首の頭を向け、一斉にブレスを吐き出し、その全身を蹂躙する。
「ぐぅぅぅぉぉぉぉぉおぉ
……!!」
八属性が混合したブレスの柱から、ザンギャバスの断末魔が響きわたった。
八属性のブレスが途切れた後、その場に残っていたのは……巨躯を保てなくなり獅子に変じたザンギャバス。
飢餓状態に追い込まれたザンギャバスは、海底の闇に紛れるように何処へと消えていた。
――『鮫牙』ザンギャバス大帝、追い払いに成功。
大成功
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