羅針盤戦争~さとりと石の話
●四の王笏島にて
カルロス・グリードが島が開かれる気配を感じて暫し。
もうすぐ猟兵どもがやってきて、自分と相対するだろう。其れくらいの事は判る。“この鎧を使わなくても”。
「これは三つ目の島も開かれたか。だが――」
そうすると、“ヤツ”が目覚める。“ヤツ”は厄介だ。文字通りの狂犬だ。それに猟兵どもがどう対抗してくるか――さて。
其れよりも、自分にどう対抗するかが見物だな。
そう考えるカルロスは、白い鎧に身を包んでいた。名は“白騎士の鎧”。その能力は――。
●
「そう、未来予知さ!」
踊るように騙るように語るのはヴィズ・フレアイデア(棺を創ろう・f28146)。
「面白いよねえ、素晴らしいよねえ! 奴は其の能力をふんだんに生かして貴様らに攻撃を仕掛けてくるだろう。必ず敵が先手をとる。“必ず”ね。――肝心なのは“2撃目”だ、最初じゃない。予知されたその先をどうするかが肝要……そうだろう?」
周囲の猟兵を見回して、去る者がいないことにヴィズは満足そうに頷いた。
「うむ、佳い! では一つ、昔話をしてやろう」
とあるところにさとりという妖怪がいた。
心を読み、人を騙してきた妖怪だ。
――しかしあるとき、道を歩いていると思わぬ熱い一撃を頬に喰らってもんどりうつ。なんだとみてみれば、其れは居眠りしている男の傍で燃える焚火から爆ぜた小石であったという。
「……心を読むことと未来を読むことは似ている。この話がお前たちの糧にならずとも、あたしは勝利を祈っているよ」
key
お久しぶりです、keyです。
第四の王笏島でのカルロス・グリード戦です。
●目的
「未来予知を超越しろ」
●プレイング受付
都度タグにて掲載いたしますが、
「2月11日8:30~12日24:00」までは確実に募集しております。
以降成功度が達成できていなかった場合のみ追加募集致します。
●この章について
「白騎士の鎧」を纏ったカルロス・グリードとの戦闘です。
カルロスは鎧の超AIによる「予知にちかい未来演算」を用いて猟兵の動きを予測し、攻撃・回避を行うでしょう。
この演算にどう対処するかが鍵となります。
●プレイングボーナス!
「敵の先制攻撃に対処する」事でボーナスが付きます。
対処を考えなかった場合、苦戦・失敗になりますのでご注意ください。
(万一そのような事態になった場合はそっとプレイングをお返しする事になるかと思います)
●ファイティングボーナス!
シナリオをクリアすると、本拠地以外の七大海嘯支配下の島を一つ解放できます。
島を解放することで次のボスへの道が開けるかも知れません。
頑張りましょう!
●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
●
此処まで読んで下さりありがとうございました。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『四の王笏』カルロス・グリード』
|
POW : 収束する運命の斬光
【対象の未来位置へ放たれる貫通レーザー】が命中した対象を切断する。
SPD : ディアブロ・オーバーブースト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【纏う白騎士の鎧による未来予測】から【判明した敵の攻撃を回避し接近、光剣の斬撃】を放つ。
WIZ : デストロイマシン零式
戦闘力のない【66機の動画撮影ドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【正確無比な未来予測シミュレーション】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第四『不動なる者』盾&まとめ役
一人称:わし 質実剛健古風
武器:黒曜山(剣形態)、四天霊障
未来予知。だが、それで引くわけにもいかんて。どれほど苦戦し、地を這うことになろうとな…!
先制攻撃…ああ、ドローンの数を減らしていくしかなかろう。
予知がある以上、攻撃の回避は考えぬ。内部三人が防御の結界術回してくれておるが。激痛耐性もある。
早業でのなぎ払いを黒曜山で行い、四天霊障の封印をとく。
…いつもは封印にて制御しておるのだ。制御が完全に外れれば、予測不可能じゃろうて。霊障ゆえに見えぬしの。
そして、攻撃すべてに指定UCついておる。
我らが悪霊である意味、思い知れ。
*
「未来予知……」
ざ、と草履が大地を滑る。馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は剣の形をした“黒曜山”を肩に担ぎ、ゆっくりとした動作でカルロスの眼前に現れる。
「だが、其れで引くわけにもいかん」
どれほど苦戦し、地を這い石を噛む事になっても。退かぬと決めた義透は退かぬ。
「貴様に“未来を観測される”恐怖を教えてやろう――行け」
ぶうん、ぶうん。
羽音に似た音を立てて、数百にも及ぶドローンがカルロスから放たれる。それらは攻撃をする事はないが、義透をじっと見て、録画している。光の剣をカルロスはゆっくりと抜いた。
「どうだ。これだけの観客がお前を見ている。何か思うところはないか」
「無い。わしの目的はただ一つ、お主の首を獲る事のみよ」
義透は静かに黒曜山を構えた。カルロスが駆け出す。
――お前の読みは判っている。其の眼差し……ドローンを壊す気だろう? 判っている。たかだかドローンに貴様がかかずらっている間に、私の剣が貴様を貫くのだ!
――義透が動く! 其の狙いはやはりドローン、早業にて居合の如し、ドローンを瞬く間に一つ二つと破壊していく。
其の無防備な背中にカルロスの剣が牙を剥いた。
……がりり!
「!?」
肉の感触ではない。カルロスはすぐに理解し、一歩下がった。
「結界術か……!? いつの間に!?」
「ほう。心が読める訳ではなさそうだな」
即ち、多重人格。
義透の内側では、三人の人格たちが保護結界を張って其の肉体を護っていた。其れは動作に出ない信頼。未来を読める“だけ”のカルロスには知りえなかった、義透の心の内だ。
「……ふ、だが其の結界も薄氷。この光剣の前には」
「四天霊障!」
「っ!?」
カルロスは反射的に剣で義透を薙いでいた。其の光は義透を引き裂き、血飛沫を舞わせたが……其の様不動なれば、山の如く動かず。
風が吹く。怨念を孕んだ風が。
「貴様……!」
「我らが悪霊である意味、思い知るが良い」
制御から外れた霊障は小石を舞わせ、ドローンを傷付ける。其の傷が癒えないのは、ドローンだからではないだろう。不自然に持ち上がった小石が次々とドローンを打ち壊し、未来予測の精度を下げていく。ああ、そうだ。不慮の事故だ。中にはドローン同士で衝突して落ちていくものもある。
カルロスにはそれらを追加補充する余裕はない。この剣の傷を少しでも受ければ。そんな未来が見えてしまって、前に出られない。
剣戟の音が響き渡る。自然界の「偶然」すら味方につけた義透に最早恐れるものはなかった。そんな男に、未来に怯えるカルロスが押し勝てるはずもない。
「噴!」
気合一拍と共に放たれた一撃が、カルロスの体を鎧ごと裂いた。
成功
🔵🔵🔴
ダビング・レコーズ
かつて白騎士が現じた時、当機には抗う術がありませんでした
だが今は違う
敵の攻撃はほぼ必中
逆に言えば回避する必要が無い
推力エネルギーをEMフィールドに回し最大出力で全面展開
ルナライトのプラズマキャノンを海面に発射
水蒸気爆発でレーザーを減衰させる
未来視による最善策を取り続けるその性質を利用する
ベルリオーズとヴェスタを広域掃射し弾幕の面を形成
更にメテオリーテを放射状に発射しプラズマキャノンで撃墜
荷電粒子爆発と連鎖誘爆で空間を埋め尽くす
だが敢えて僅かな安全地帯を作りそこへ逃げ込まざるを得ない状況を成立させる
SSDを起動しその安全地帯に突撃
超音速の体当たりを行い重力加速度で押し潰し空気摩擦で焼却消滅させる
*
嘗て白騎士が現れた時、抗う術がなかった。
そう、苦虫を噛むようにダビング・レコーズ(RS01・f12341)は思う。――だが、今は違う。
「動く気がないのか?」
呆れたようにカルロスが言う。2人はお互いを正面に立ったまま動かない。
相手はもう未来予測を始めている。ダビングの思考回路に電気信号が走る。
「誰も彼もそうでは困る――未来を見られ、どこへも逃げ道がないのを知りながら逃げ回るのが良いのだ!」
未来位置予測。演算終了。敵機の未来位置は変わらず。
ならば、とカルロスの鎧がレーザーを放つ。薄青い色を纏ったレーザーがダビングに迫った其の時、ダビングの周囲を電磁障壁が覆った。
「!」
EMフィールドは非物理エネルギーを大きく減衰させる。推力をありったけ回した障壁は普段より分厚く、カルロスのレーザーをすんでの所で押し留めていた。
更に腕のプラズマブレード――ルナライトからプラズマキャノンを海面に撃ち放つ。どおん、と大きくたわんで弾けた水面。熱で水蒸気に変わった海水がレーザーを完全に殺す。
「おのれ……! だが、この程度で未来視を防げると思うな!」
「其方こそ。当機の搭載兵器を侮らないで頂きたい」
カルロスが動いた。彼には見えたのだろう。ダビングが武器庫を全開にして、周囲を弾幕で飽和させる未来が!
第一波。マイクロミサイル・メテオリーテ及び三連装ガトリングガン・ヴェスタでの広域射撃。ダビングの縄張りが扇状に広がっていく。
カルロスはレーザーを鎧から放ちながら滑るように弾幕をかわしていく。AI演算、未来位置……まだだ、まだ来るというのか!
更にダビングはメテオリーテを上空にも放つ。放射状めいて放たれた其れを、ルナライトのプラズマキャノンで撃ち落とせば……荷電粒子爆発、及びそれらの連鎖が出来上がる。
一瞬で場を制圧したダビング。――そう思っているだろう? カルロスはにやりと笑う。張り巡らされた弾幕硝煙の中、僅かな隙間があるのを彼は見逃しはしない。
「其の程度で場を掌握出来たと思ったら大間違いよ!」
片腹痛し。
そう思ったのは、どちらだったのか。
果たしてカルロスが僅かな隙間を潜り抜けてみたものは、くしくもグリードオーシャンの海と雲にも似た……青と白の機体だった。
ダビングの体が慣性と空気の壁から解き放たれる。およそ人知を超えた速さで行われた体当たりは、いともたやすくカルロスを吹っ飛ばし、追いかけ、圧し潰すようにジャングルの木々へと突っ込み――
――猛風がやむ頃。
ジャングルに描かれた一本の線の先には、ダビングしか残っていなかった。
大成功
🔵🔵🔵
宮落・ライア
んんー………グリードオーシャンとはいったい。
まぁいいか。
接近攻撃だけなら別に動きまわる必要はないかな。
速さも光速とか言う訳でもないし。いやクソ速いけれど。
そしてあくまで早くなるのは飛翔速度で動作速度ではない。
未来予測するのはこちらの攻撃だから、攻撃しなければただの超速接近からの斬撃だけ。見切れるかなー。頑張れ気合いだ。
で、二撃目か。
相手の攻撃前に攻撃に移れば回避される。
だから受けよう。攻撃が当たった瞬間に行動しこっちも叩き込もう。
痛い? 気にするな。
難しい? ボクにならできる。
英雄なのだから。
まぁ死にかけるかもしれないけれどイケルイケル。
*
「んぐ……っ!!!」
血反吐が出る。肩から腹にかけてが熱く、熱は次第に痛みに変わってゆく。宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は自らカルロスの一撃目を受けることをえらんだ。
――あー、クソ速いし、クソ痛いじゃんこれ。
星のように駆け抜けるカルロスの剣戟は、思ったよりも速かった。いや、見切れはしたんだよ? したんだけど、こっちに来るのが早すぎたんだ。
痛い。超痛い。でも、ボクになら出来る。ボクは英雄なのだから。
「どうした! 私の速さに手も足も出ないか!」
飛翔するカルロスはUターンし、ライアの痩躯を切り刻もうと駆ける。AI演算、未来位置解析。対象――振り返り動かず。
解析の通りゆるりと振り返ったライア。さあ、其の胴と足を切り離してやろう。私は寛大だ、そう長く体を痛ませる事もあるまい。
「……ボクは英雄だ」
ライアは呟く。
「ボクは、英雄だから、痛みを気にしない。難しくもない。英雄なんだから、痛みなんてどうって事ない……」
「ははは! ついに気が触れたか! ならば一思いに――」
ず、とカルロスの刃がライアの肩に差し込まれた瞬間。ぶしゅ、と血が噴いた。斬られたからではない――ライアが刃を渾身の力で振り上げ、振り下ろしてカルロスにブチ当てたから!
「ボクは……英雄だから! これっくらい、平気なんだよッ!」
痛くない。
辛くもない。
不可能なんてない、其れが英雄だ。ボクは英雄になるんだ。ううん、もうなっているんだ。そう思えば体の痛みなんて吹き飛ぶし、指先まで力が漲る。何キロ越えだっけ? 超速度の敵だって、押し留める事が出来るんだ!
「き、貴様……! 先程のは私を騙すための……!」
「演技じゃないよ。凄いよね、動きは判ったのに速すぎて見切れなかったもん! だけど……二回目なら、ボクにも勝機はある……ッ!」
かくして、宮落ライアの一撃は――ユーベルコードとして成った。
深々とカルロスを切り裂く刀の一撃。肩を半ばまで切り裂いていた光の剣が抜け、目の前で崩れ落ちるカルロスを見て、ライアは、
「……出来たぁ」
後ろ向きにどさり、と横になった。其の顔に笑みを浮かべて。
成功
🔵🔵🔴
レイン・レーニア
(アドリブ・連携歓迎)
相手のことが手に取るように分かる異能が破れたのは、無意識の偶然だった。か…
さて、上手く活かせればいいのだけど。
心を読む妖しかり未来予測しかり、見えないならその先も読みようがない。
なので情報を集める眼…ドローンを先に潰させてもらおうか!
『ドーシチ』で作った雷の<属性攻撃>弾を『マタル』で空に発射。
<天候操作>で雷雨の嵐を引き起こすよ!
嵐で視界が悪くなるし、高い位置から撮ろうとすれば雷がズドンだ!
相手の装備が万全でないなら、こちらは<環境耐性>で嵐を掻い潜って回避できる!
立て直される前に嵐に氷の矢を混じらせ攻撃だ。
嵐の暴風によるランダム性も加えた矢の雨だ、君に予測できるかな?
*
「相手の事が手に取るように判る異能が敗れたのは、無意識の偶然だった。か……」
案内人が語った昔話を思い出すレイン・レーニア(雨は雲に、雲は雨に・f26412)。水のような髪を揺らし、カルロスと相対す。
「侮ってくれるな。このAIは偶然すらも計算の範囲内。どのような小手先とて――!」
ぶわっ、と虫めいてドローンが飛び立つ。レインは義肢からころり、と一つ弾丸を取り出し、義肢に接続した“マタル”に取り付けた。
真っ直ぐに空へ向けて撃ち放つ。これもきっと、カルロスの予知内なのだろう。ドローンと己を狙わないものには興味はないとばかりに、反撃はない。
――其の傲慢さが負けを呼ぶんだ。
声に出さず、レインは思う。弾は上空でばちん、と自ずから弾けて――斯くして其れは訪れる。ごろろ、ごろろ、と獣が唸るような音を立てて。
「! 雷雲……!」
「自分に当たらないからって放置しちゃいけないよ。船乗りに取って、天候は最も憂慮すべき事だろう?」
高く飛んだドローンが、雷の洗礼を受けて落ちる。耳をつんざくような音と、目を引き裂くような光。
「く……!」
高くドローンを飛ばせない。雨の中では撮影した映像は役に立たない。カルロスは剣を抜き、レインへと迫った。
「おっと!」
袈裟懸けに素早く飛び下がるレイン。其の動きに雷を恐れる仕草はない。狙われるのは恐らくドローンが先だし、環境には耐性がある。
「お触りは厳禁だ、悪いね!」
そしてレインの姿が掻き消える。AIにカルロスはレインの未来の位置を訪ねるが……返って来る映像は影のようなものばかり。――複雑に飛行していて、巧く捉えられないのだ。
「この、肝心な時に役に立たん……!」
「あれれ、仲間割れ? ならぬ装備割れ? まあいいや。さあ、たっぷり喰らうと良いよ!」
きし、と空間が凍るような音がした。雨降り注ぐ、この中では氷の矢を形成するのは簡単だ。およそ700本を越える氷の矢が、カルロスを包囲して――
……AIは、回避不能と回答した。最早カルロスに逃げ場はない。この嵐の中で降り注ぐ矢の軌道は予測できない。出来たとしても、回避するには骨が折れるだろう。
一斉に矢が飛び立つ。鎧にはじかれて割れるもの、鎧の合間を縫うように突き刺すもの。剣に払われて割れ消えるもの、様々であったが――鎧の合間、関節部を狙われてはカルロスは堪らない。其の動きは次第に精彩を欠き、頭部を護ろうと持ち上げた手が遅れ……
ずどん。
其の無防備に過ぎる額を、氷の矢が貫いた。
成功
🔵🔵🔴
黒瀬・ナナ
……昨日より今日、今日よりも明日。
人は常に過去を乗り越えて進歩し、未来を変え続けてきた筈だもの。
あなたが予知したわたしの『限界突破』をすることなんて、朝飯前なのだわ!
相手の先制攻撃には『覚悟』完了!足を踏ん張って全力で耐える!(『激痛耐性』『気合い』『オーラ防御』『結界術』をフル活用)
空を飛ぶ相手を捕まえるのは一苦労だけれども、
攻撃を回避した後は、光剣の斬撃を放つ為に必ず接近してくれるのでしょう?
なら、其処へ。
雷神様の力をお借りして繰り出す『咄嗟の一撃』で、白騎士の『鎧砕き』を狙う!
あなたが予測したのは、さっきまでの過去のわたし。
あなたの予測を鎧ごと砕いて、今のわたしが勝利の未来を掴み取るわ!
*
昨日より今日、今日よりも明日。
人は常に過去を乗り越えて進歩し、未来を変え続けてきた。そう、黒瀬・ナナ(春陽鬼・f02709)は信じている。ナナだってそうだ。昨日より強く、明日はもっと強く。そう在ろうと思い続けてきた。
「――だから、貴方が予知したわたしの“限界突破”をする事なんて、朝飯前なのだわ!」
びしぃ、とカルロスを指差す。
「……豪胆な女性だ。此処が戦場でなかったら、お前は立派な“宝”だったろう。こうして向き合わねばならん運命に涙する」
「全ッ然泣いてないじゃない」
肩を竦めるカルロスに、落ち着け、とナナは深呼吸を繰り返す。相手のペースに乗っちゃ駄目。わたしのペースに持ち込むのよ。
一度目を閉じて、開く。琥珀をはめ込んだようなナナの瞳には、もうカルロスの姿は映っていなかった。
「惜しい。が、仕方あるまい」
目にも止まらぬ速さ。いつ切られるかという恐怖にあの女は怯えているだろうか? いや――そんな女ではない。だからこそ、惜しい。此処で切り捨てていかねばならない猟兵であるという事が。
だが、敵に情は掛けない。其れがカルロス・グリードのやり方だった。
音にも等しい速さでナナの背後を取る。未来演算で振り返る彼女が見えたが、あれでは反撃も出来まい。
さようならだ、お嬢さん。
カルロスの騎士鎧がフォン、という音を立てたのを聞き、ナナが振り返り――ぱりん、と彼女の結界が割れる音と共に、赤黒い血液が舞った。
「っ、ぐ……!」
声は上げない。其れが彼女の気合と覚悟。オーラ防御と結界術をフル活用しても尚、カルロスの光剣はナナの脇腹を深く切り裂いていた。
其のままカルロスは滑るように空を舞う。覚悟はとうに終えた。痛みに耐える準備も出来ていた。そして一撃を受けた。だからこの先は、未来のわたし。
――ところで。
光と音ならば、どちらが速いと思う?
「……か……っ
……!?」
カルロスはAIの観測にない衝撃をこめかみに喰らって、大地に不時着した。其のスピードを止めるには幾らか地を滑る必要があった。
「はあっ、……はあっ……!」
荒く息をするナナの右腕は、雷を纏って巨大化していた。――“神憑り・雷神の右腕”。音のように舞うカルロスを、其の巨大な右腕でしたたかに撃ち付けたのだ。
ばちばち、と砕かれた白騎士の鎧がいかづちを上げていた。
「……どう? あなたが予測したのは、さっきまでの過去のわたし」
いま鎧を砕いてあなたの意識をブッ飛ばしたのは、過去を乗り越えた今のわたしよ!
成功
🔵🔵🔴
ニィナ・アンエノン
白騎士!懐かしいなぁ……結局あの戦争の時は戦えなかったんだけど、皆の記憶に残ってるよ!
ある意味元気っぽいね☆
相変わらず未来なんか読んでくれちゃうんだから困っちゃうよね。
ま、どうせ知られてるなら気にしない!
バイクで真っ直ぐ突っ込むぞ!
出来ればレーザーを撃たれる前に【クイックドロウ】したブラスターを進行方向の地面に撃って土とか【吹き飛ばし】て土煙を上げておきたいね。
目晦まし、と思わせておいてレーザーを散乱させるのが目的。
後は【オーラ防御】とシェルやウィリーさせたバイクでの【盾受け】、【継戦能力】で無傷は無理でも持ちこたえたいね。
後は【激痛耐性】で我慢できる内ににぃなちゃん軍団を召喚!
後は任せたぞ☆
*
白騎士! 懐かしいなぁ……とニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は過去の戦を思い返す。あの戦争のときは戦えなかったけど、皆の記憶に残ってるよ!
「まーそんな姿になっちゃって。ある意味元気っぽいね☆」
「この鎧を知っているのか。貴様も漏れなく歴戦の猟兵であるようだな」
「やー歴戦だなんて。にぃなちゃん困っちゃうなー!」
やだやだ、と照れるニィナに戦場特有の血腥さはない。寧ろこの場にいるのが不思議なくらいの娘だ。そんな娘だからこそ侮れない。
「相変わらず未来なんか読んでくれちゃうんだから困っちゃうね」
ね、と傍らの相棒――宇宙バイクをぽんと叩き、またがりながらニィナは笑う。カルロスも応えるように笑い、手を翳した。AI演算開始、敵の未来位置……
「……言っておくが、無策で突っ込むなど。死ぬぞ?」
「無策かどうかはこれをみてから決めてくんない、旦那!」
宇宙バイクがうなりを上げて走り出す! 同時にカルロスが白騎士の鎧からレーザーを放つ。ニィナは片手で素早くブラスターを取り出すと構え、眼前の地面に光線を射出した。破壊音。舞い上がる土煙、跳ねあがる砂の塊。それらがレーザーを減衰させる。
「よいしょおーッ!」
ごめんねバイクちゃん。ウィリー運転であえてバイクを盾にして、レーザーをやり過ごす。腕を、脇腹を、オーラ防御を突き抜けてちりちりと光線が焼いていく。流石はフォーミュラ、其の出力も想像の埒外という事だろうか。
そう思った瞬間だった。背中に激痛が走り、姿勢を保てなくなったニィナがバイクから転げ落ちる。バイクちゃんが派手に横転し、地面を滑っていくのが見える。
「……う」
「其方から来てくれるとは、親切な事だ」
光剣についた血を振って払いながら、カルロスが笑う。背中を斬られた、と気付くのにそう時間はかからなかった。何とか意識を保つニィナの髪を掴み、持ち上げるカルロス。
「さて、其の首を頂くとするか」
「う……にぃなちゃん……」
「なんだ、遺言があるのか?」
「にぃなちゃん、軍団、カモン……!」
爆発音。カルロスの手が緩み、ニィナの頭が地面に叩き付けられる。――全く、もうちょっと優しい扱いは出来ないのかなぁ……
一方、カルロスの背後には無数のキャバリアがいた。先程の爆裂はキャバリアから為されたものなのだと気付く。なんだこれは。猟兵は、こんなものも味方につけていたのか……!
カルロスが飛ぼうとした其の瞬間。数えるのも面倒な数のガトリング砲が火を噴き、彼を中心にした周囲一帯を焦土と変えた。
成功
🔵🔵🔴
岩永・勘十郎
敵の光線が動きを先読みし飛ぶ。
勘十郎はその光線を【幸運】にもギリギリで【見切り】回避。
「ワシの先を読むか」
この攻撃を3度も見れば概要は把握できる。勘十郎の【戦闘知識】の賜物だろう。だがこのままでは埒が明かない。勘十郎は根競べが大嫌いだ。どこかで攻めなきゃ勝ちはない。
「面倒くさい。全部叩き斬ってくれるわ」
とUCを発動。レーザーという光線すら認識できるレベルの【瞬間思考力】でレーザーという概念ごと【早業】で【見切り】斬り裂いた。熱エネルギーも何もない。そこらへんの紙を斬るのと一緒だ。
「無聊、無聊!」
と敵を【挑発】し、攻撃が自暴自棄になった隙を付き、敵の魂や敵の存在という概念その物を切り裂いた。
*
カルロスの鎧から放たれた青白い光線を、岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)は幸運と動体視力によってギリギリでかわして見せた。
「甘い甘い! ワシの先を読むか!」
「貴様こそ甘い。私の鎧のAI演算、侮るなよ!」
見切って避けた先にレーザーが飛ぶ。当たれば貫く熱の針を、勘十郎はやはり見切ってかわして見せた。
「(……埒が明かん)」
かわしてばかりではどうにもならない、攻撃に転じなくては。と思うのに、行く先々にレーザーが飛んでくるものだからたまらない。段々とイラつく頭を鎮め鎮め、勘十郎はレーザーをかわす。じりりり、と背中を焼かれたところで、苛立ちは頂点に達した。勘十郎は根競べが大嫌いなのだ。
「ははは! どうした、避けてばかりでは決着が付かんぞ」
「ええい面倒くさい! 叩き斬ったが早いわ!」
その場に留まり、あえて狙ってくるレーザーを叩き切る。3度も見れば発光から着弾までの時間は計算できる。刀を一閃、二閃。概念ごと切り裂く刃はまるで長い棒を斬るようにレーザーを両断する。
「無聊、無聊……このような飛び道具ではわしを斬る事は出来んわい」
「そのようだ。どのような絡繰りかは知らぬが、剣にて決するのみ……!」
AIの未来演算は、勘十郎が不動であると答えを出した。カルロスは光剣を抜き、勘十郎へと迫る。
脳天兜割り。振り下ろされた光剣。対して勘十郎は動かなかった。いや――既に動いていた、というべきだろうか。
すぱん。
良い音だ、とカルロスは思った。私が相手の肉を割いた音だと。……だが、瞬きをしても勘十郎の姿が見えぬ。どういう事だ? 私はどうなったのだ? 一体――
「わしの刀は概念を斬る。……未来演算に頼りすぎた末路よな」
「……成程。私は“剣ごと”消えたのか……だが、これだけではこのカルロス・グリードを止める事は叶わんと知れ」
負け惜しみを言う減らず口よ。
しかしカルロス・グリードは数分後には何事もなかったように立っているのだ、きっと。この四の王笏島が制圧されるまで――
一先ずの勝ちを得て、ようやっと勘十郎はふう、と深く息を吐いた。
成功
🔵🔵🔴
ベリル・モルガナイト
白騎士。かつての。戦争で。相対すること。こそ。ありません。でしたが
その脅威は。十分に。聞き及んで。おります
未来予知
その。攻撃を。避けることは。できないしょう
加えて。敵は。強大
防ぎきる。ことは。できない
ならば。必要なのは。傷を。厭わず。斬り込む。覚悟
【オーラ防御】で。覆った。盾を。前に。構え。あえて。愚直に。前進し。レーザーの。射線を。限定
こちらの。動きが。単調ならば。未来予知も。正確さは。あれど。単調に。なる
致命傷に。なり得る。部位は。庇い。それ以外は。【激痛耐性】で。耐えながら。突撃
強化された。身体能力で。踏み込みを。加速させ。体ごと。【シールドバッシュ】を。お見舞い。致します
*
――白騎士。
かつての戦争で相対する事こそありませんでしたが、其の脅威は十二分に耳に届き、覚えています。
ベリル・モルガナイト(宝石の守護騎士・f09325)の赤い石めいて輝く結い髪が揺れる。レーザーの轟音の中、彼女は盾を構えて動かずにいた。
――未来予知となれば、其の攻撃を避ける事は出来ないでしょう。加えて敵は強大なオブリビオン・フォーミュラ。防ぎきる事は出来ない。
湾曲したレーザーが徐々に増え始めているのをベリルは肌で感じていた。盾をかわして体を貫くつもりか。
――……必要です。傷を。厭わず。斬り込む覚悟が。
ゆっくりとベリルは歩み出す。レーザーが身を焼いて痛みを感じるが、歩けなくなる程ではない。
「はっはっは! どうした、芸がないぞ! もっと踊ってみせろ!」
カルロスの哄笑も、ベリルには届かない。ただ愚直に、真っ直ぐに、ゆっくりでも確実に、前進するのみ。攻撃を受け続け、オーラ防御はすり減って、盾に傷が出来始めている。けれど其れはベリルが発動したユーベルコードの助けとなって、彼女の身体能力をじりじりと上げていく。
――私は。守る。この海を。数多の島々を。
其の覚悟が彼女の脚に熱を届ける。だから前に進める。恐ろしくないと言えば嘘になるけれど、覚悟しなければならない時がある。其れが今だ。
「……苛々する。いい加減に諦めたらどうだ、盾使い」
「いいえ。私は。諦めません。この海を。島々を。守ると。決めたのです」
「生意気な……! 剣を抜く価値もない! このまま焼き貫かれて死ね!」
「いいえ。……いいえ。私は。負けない」
焦げた足で踏み込め。焼けた手で盾を握れ。輝け煌宝、この命が燃え尽きるまで!
一気にベリルは駆け出す。盾を振り上げれば防禦は崩れ、無数のレーザーが体を貫く。痛いか? いいえ。痛くなどありません。私は決めたのです。守ると。
カルロスは慄いていた。どんなにレーザーを放っても、未来予知の演算は同じ答えを吐き返す。敵は接近。敵は接近。――敵は接近!
どうして退かない? この島の出身でもない一介の猟兵が、何故そのように――覚悟を決めるのだ。
振り上げられた盾は、振り下ろされる。そんな事は演算しなくても判る! 咄嗟に光剣を抜いて、盾を受け止め……
「ぐ、おおおお……!」
「……私は!」
ベリルの盾が剣を弾き飛ばし、二度目、盾が振り上げられた。
其れは強化された身体能力を持って為された。レーザーに焼かれながらも、ベリルは渾身をもって盾を振り下ろし――四の王笏は其の覚悟の前に斃れたのだった。
成功
🔵🔵🔴
数宮・多喜
【栗花落・澪(f03165)さんと連携】
へっ、どこかで見たと思ったんだよその鎧!
盗人根性猛々しいねまったくさ。
行くぜ栗花落クン、打ち合わせ通りにさ!
そう、事前に打ち合わせは済ませとく。
「偶然」を「必ず」起こす手品には仕込みが必要なんでね。
奴のマシンがアタシらの戦い方を分析しきるまでは、
海賊姿でカブに『騎乗』して、
SMGでの『弾幕』を張るように射撃戦を仕掛けるよ。
頃合いを見て、ライダースーツに『早着替え』!
これが【算乱す声】を使うって合図さ。
ドローンとの意思疎通(通信)をノイズで遮断している間に
『マヒ攻撃』を拳に込めた『グラップル』で接近戦を仕掛け、
タイムリミット前に栗花落クンを回収して離脱さ!
栗花落・澪
【数宮さん(f03004)と連携】
オッケー、任せて!
まずは自身に【オーラ防御】を纏わせ
【聞き耳】で戦場全体の音を聞き分け
★靴に風魔法を宿す事で跳躍力を強化しながら
数宮さんの射撃の合間を埋めるように
★杖のフルスイングをぶつけては退く
ヒットアンドアウェイ戦法でいくよ
掴まれても【ダンス】経験を生かし
顎でも思いっきり蹴り上げて逃げる
数宮さんのUC発動を確認したら【指定UC】
本当は接近戦苦手なんだから
手間かけさせないでよね!
足元に【破魔】の★花園を広げ逃げ道を奪ったうえで
【高速詠唱】で破魔を混ぜた光魔法の【属性攻撃、全力魔法】
数宮さんには届かなくてもいい
小さな声で
100秒経ったら、よろしくね
*
「へっ、何処かで見たと思ったんだよ其の鎧!」
盗人根性猛々しいとはこの事だね、全くさ。
ねえ? と数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は栗花落・澪(泡沫の花・f03165)に同意を求める。眼前には白騎士の鎧をまとったカルロスと、数十、数百に及ぶドローンが広がっている。既に行動を読まれている事を承知で全くだね、と澪は頷き。
「じゃあ、行こう。数宮さん」
「ああ!」
“海賊姿の”多喜がカブにまたがり走り出す。SMGで弾丸をばらまくが、カルロスはするりと其の弾幕をかわして見せた。
「ふん。どんな弾幕であろうと、必ず穴はある。この程度では……」
「はっ!」
澪だった。
Venti Alaの踵を鳴らし、聖なる杖でカルロスの横っ面を殴ろうとフルスイング。――カルロスは其れを身を逸らすことでかわし、澪の腕をつかむ。
「このドローンの数が判らんか? 貴様の動きなどこれで……」
「触らないで!」
誇らしげに語るカルロスの顎を、羽生えた靴で蹴り上げる澪。其れはダンスのワンステップというには物騒で、ダンスパートナーは彼の手を離してしまう。
「ぐ、っう、貴様……!」
「其の鎧が良いものでも、受け取る頭は一つだからね!」
言いながら、再び澪が宙を蹴り、杖を振り上げる。今度はカルロスとて油断はしない。光剣を抜き、澪を撫で切りにしようと――
「おっと、其れはさせないよ! こっちも見て貰わなきゃ困るってもんだ!」
光剣の軌道がぴたりと止まり、カルロスが身軽に避ける。澪もまた下がった其の空間に、銃弾の雨が撃ち込まれる。カブに乗った多喜だ。其の姿は――“ライダースーツ”。
「数宮さん!」
「ああ!」
――じじ、じ…
「……!? どうした
……!?」
異変に最初に気付いたのは、誰あろうカルロスであった。ドローンとの通信、更には予知AIとの通信が乱れたのだ。
「貴様等、何をした
……!?」
「別に? “ちょっと焚き火をした”だけさ」
「そう。ちょっと小石が跳ねただけ」
そして其のアツアツの小石が、貴方の額にクリーンヒットしただけさ!
猶予は99秒。澪もまたリミッターを外すと、杖の先に光の球を発現させる。其れはぷくぷくと泡のように分裂し、宙を舞い、カルロスの周囲を包囲して――
「本当は接近戦苦手なんだから! 手間かけさせないでよね!」
接近戦が得意なのは、寧ろ――多喜の方だ。ノイズで思念波以外の意思疎通手段を遮断した彼女は、丸裸となったカルロスへと肉薄。其の顔面に拳の一撃をお見舞いする!
「っぐあ、」
「まだまだぁ!」
99秒が近付くまでは、あなたを開放してやらない。
拳は麻痺の力を持ち、次々とカルロスに叩き込まれる。油断したところに顔面に一撃、更にボコボコにされてしまえば最早麻痺も何もない気はするが……念には念を、という奴だ。
そしてふと、フラフラのカルロスの足元に花が咲いた。みるみると花咲く大地は、彼の足元を中心にして展開される。
其れが合図。言葉さえ通じない中で、多喜と澪は入念な打ち合わせの通りに行動していた。周囲を漂っていた光球の輝きが増す。麻痺して動けないカルロスに、澪は……容赦なく光線の一撃を放った! 光線は光球から光球を辿り、あみだくじめいてカルロスへと肉薄する。光球を中継する度に其の威力を増しながら!
――――――――!!!
閃光が眩しい。多喜は光を背に跳び、澪の華奢な体を抱えてカブへと乗り込む。
2人が使ったユーベルコードは、どちらもリスクを伴うものだ。多喜は命を、澪は意識を失うというリスクを賭け――そして勝った。
光に呑まれたカルロスがどうなったかは……落ちていくドローンの破砕音を聞けば判る。
「……数宮さん」
聞こえなくてもいい。澪が呟く。
「時間が来たら、宜しくね……」
徐々に闇が視界を侵食してゆく。澪は一抹、すっきりとした気持ちを感じながら……目を閉じた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
プリンセラ・プリンセス
【帝国】
連携・アドリブ可
トリテレイア様と一緒であれば百人力です。
敵の先制攻撃への直接的な対処はトリテレイア様にお任せします。
私はその背後から敵のドローンの撃墜を行います。
人格はケイ姉様に変更。
○援護射撃、○範囲攻撃、○クイックドロウでドローンを落としていきます。リロードは○早着替えで手早く。
人格をプリンセラに戻し、
トリテレイア様の攻撃に合わせてネクロ・インペリアルを使用。
3割を弓騎兵、7割を騎兵として召喚。
トリテレイア様の攻撃に合わせて全方向からの騎兵突撃。
この攻撃を回避をするようなら○2回攻撃からの弓騎兵の○誘導弾、○スナイパー、○乱れ撃ちによる弓の迎撃。残りの騎兵も○槍投げなどを行う。
トリテレイア・ゼロナイン
【帝国】
プリンセラ様が嘗て苦杯を舐めた力に挑むとお聞きし、加勢させて頂きました
それに騎士として相容れぬ存在とはいえ、かの白騎士が忠誠を誓った対象は銀河皇帝只一人
その力、骸の海に還して頂きます
SSWでレーザーは対抗策含め普及済み
光線反射処理施した大盾で盾受け(防具改造+世界知識)しプリンセラ様をかばい防御
同時に頭部、肩部格納銃器を展開し●乱れ撃ちスナイパー射撃でレーザー強化するドローン撃墜
盾が保つのも一瞬
ワイヤーアンカーで物資収納スペース手榴弾掴み●投擲
予測迎撃回避行動取らせ攻撃中断図り
UC発動
レーザー武器受けしつつ突撃
私への対処にかまけて良いのですか?
この物量、未来を読めただけでは覆せませんよ
*
「アレが白騎士の鎧――」
「ええ。私がかつて苦汁を舐めた力です。でも、今日はトリテレイア様がいらっしゃる。負ける事はありえません」
プリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)とトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は並んで、カルロスに対峙していた。
「ほう、この鎧に縁ある者か。悪いがもう再戦の機会はない。此処で未来予知の前に成す術なく死んで頂く」
「いいえ。白騎士は騎士としては相容れぬ存在、とはいえ――忠誠を誓っていたのは銀河皇帝ただ一人であったはず。その力、骸の海に返して頂きます」
「ほう。……やれるものならやってみるがいい! 私が読んだ未来を乗り越えて!」
ぶわっ、とドローンが鎧の各所から放たれる。其れらが空を舞うと同時、一条のレーザーが二人めがけて放たれた。
「プリンセラ様、後ろに!」
「ええ。――ケイ姉様」
プリンセラはトリテレイアの後ろに回りながら祈る。嘗て共に駆けた人格の残滓、……どうか力を貸してくださいませ。
目を閉じて、開けば――其れはプリンセラではなく、ケイという銃使いの人格だ。
素早く両手に銃を抜き取ると、上空のドローンへ弾丸をお見舞いする。
「はっはァ、鴨撃ちだなァ! この程度で俺たちの未来を決めようだなんて甘ェんだよ!」
一方トリテレイアは、あらかじめレーザー反射処理を施した盾でレーザーを受けていた。しかし相手はオブリビオンフォーミュラ、そして貫通力に長けた光の槍。じりり、と表面が焦がされる。
「く……!」
「どうした騎士よ。幻影の私を打ち倒してきた者の中には、そのまま前進してきた者もいたぞ?」
「……其れは、できません」
後ろにプリンセラがいるから。守るべき者がいるから。
守り留まる事をえらんだトリテレイアの頭部と肩部から銃器が展開される。それらは上空に向けて乱れ放たれて、ドローンを次々と撃墜してゆく。しかし、盾はすり減っていく。僅かな傷が瞬く間に大きく広がって、
「プリンセラ様!」
盾にいよいよ穴が開くかというところで、トリテレイアは盾を放棄。物資収納スペースから手榴弾を取り出し、カルロスに向かってピンを抜いて投げると、プリンセラを抱えて横合いへ跳んだ。
「……トリテレイア様!」
「大丈夫です、相手なら……」
「ちぃ……!」
トリテレイア達を狙おうとしたレーザーが掻き消えて、カルロスが横合いに跳ぶ。爆音がして、手榴弾が弾ける。
“プリンセラ”に戻った姫君を下ろし、トリテレイアは再び盾を構える。
「私の後ろからおいで下さい。良いですね」
「わかりました。行きましょう!」
トリテレイアが真っ直ぐに、手榴弾を避けたばかりのカルロスへ肉薄する。カルロスは咄嗟に光剣を抜き応戦、盾と剣の攻防が始まる。
「――いいのですか?」
だが、其れだけで終わるはずもない。
「私への対処にかまけて、大事な事を忘れていらっしゃるようだ」
「何
……!?」
「死して尚の忠義、感謝します! 必ず報いましょう――突撃!」
わあっ、とおよそ多数の鬨の声が上がった。騎兵がカルロスを取り囲み、弓騎兵がきりり、と狙いを合わせ矢を解き放つ。
――何処へ行けばいい?
カルロスはAIに問う。だが、未来予想図は敵に囲まれたカルロスしか映してくれない。
――私は、何処へいけばいい?
其れは羅針盤を失った水兵の如く。
そして四の王笏、フォーミュラの分身体という泥の小舟は、圧倒的な数の前に沈んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
【DARK】
野郎の未来予知は確かに強力だ
だがそんなもんじゃあ…俺を越えられやしねえ
いいか?未来が分かるから「当てられる」「避けられる」
その両方を封じるにはどうすればいいか?簡単な話だ
"攻撃をわざとくらい、そのままホールド"するんだ
当たったという結果は変わらないし、そこからの即反撃の予知は難しいだろう…何せその鎧はお前の物ではないからな
来てみろよ…借り物が無きゃ何も出来ねえカス野郎
着弾の瞬間が勝負…緊急発動、身を委ねろ
──捕まえた。ついでにダメージも無い
腕を掴んでホールド…『報復の剣』は成った
ついでに鎧も【ハッキング】して、予知AIを吹っ飛ばす
後は上手くやってくれ…このまま捕まえておいてやるから
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【DARK】
未来が見えたところで使い方がこれじゃなあ
これが宝の持ち腐れって奴?
――さて、私には因果の改変も隠し球もない
未来予知の前には無力な生き物だ
だからハイドラの言うことは全部聞くよ
ヴィムの準備が整うまでは頑張りたいとこだ
手足くらいまでなら、持ってかれても地獄の焔で補えるしな
ブレイズキャリバーさまさまって奴だ!
ヴィムの固定が終わったら私の手番だ
幻想展開――【怒りに燃えて蹲る者】
貴様の未来予知に、終末の竜の姿はあったかなァ
逃げたくとも逃げられまい?安心しろ、楽に死なせてはやらないさ
そこでじっと、惨憺たる自分の未来を予想していると良い
私の爪と牙が命を刈り取るまで
さァ――蹂躙といこうじゃないか
ハイドラ・モリアーティ
【DARK】
よーォチートなコスプレ野郎
いいスーツだ。着心地は如何?
俺がこう聞くことももうわかってた?
ハッハ!いンや、毎日がつまんなさそうな能力だなって思ってさァ――
【CHEATNING】
作戦の説明をしてやる
俺に向かってレーザーをぶつけるってなら
俺は「直前の未来」を見てナイフを犠牲に避けるってカンジ
わかるだろ?俺とお前で未来の読み合い合戦をするのさ
ま、結局俺たちの後出しジャンケンだけど
「未来通りにならない」よなァ?だっはは!
そうさ。――勝つのは俺たちだ
二人にゃ指示を出す。俺にゃ替えが効くが二人には酷だし
いざとなりゃ盾にもなる
さあ、ヴィクティムに固定してもらったら
あとは兄貴にぶっ殺してもらうだけだ
*
――野郎の未来予知は確かに強力だ。ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は語る。だが、と鼻を鳴らした。
「未来が見えたところで使い方がこれじゃなあ」
「ふん。仲間がいると途端に饒舌になる。弱者はいつもそうだ。私はこの鎧を使いこなし、未来を――」
「はーん? チートなコスプレでイキってンなよ。あ、俺がこう聞くことももう判ってた?」
呆れたように呟いたニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)に語るカルロスの言葉を、虫を手で払うようにハイドラ・モリアーティ(冥海より・f19307)がいなす。
「何か思うところがあるか、小童」
「ハッハ! いンや」
――毎日がつまんなさそうな能力だなって思ってさァ。
ハイドラは吐き捨てた。そして其れに、頷きなく二人は同意する。見えない明日だからこそ生きるという難事が楽しい。自らの手で未来を切り開く楽しみを、目の前の四の王笏は切り捨てた。クソ面白くもない判り切った毎秒を生きるオウサマってのは、楽しいのかね?
「予定された毎日は平穏を呼ぶ。其れは海賊や貴様らのような下々の者らには退屈にも映るだろう。だが――」
王者たるものには、平穏が必要なのだ。これから世界を新たに切り開かねばならない私は、特にな?
静かに応えるカルロスだが、剣を抜く手は素早い。怒りがこもっている。おー怒ってらっしゃる、とハイドラは肩を竦めてみせた。
「で? そのオウジャ様ってのはヨーイドンがないと戦っちゃいけねェルールでもあンの?」
「其れはお互い様だろう。貴様等の場合は私の出方を伺っているというところだろうが」
ね。
言葉とレーザーが放たれたのは同時。白い鎧の青く輝く各所からレーザーが放たれ、ハイドラへ向かって収束する。
よっぽどドタマにきてるらしい。……一つだけ修正してやるよ、チートなコスプレ野郎サマ。お前はただのコスプレ野郎だ。何故なら――
ちゃりんっ、と金属が地に落ちる。
「……何?」
「あッとだッしジャンケ~~~~~ン。ヒャッハ!」
ハイドラへ向かって収束したレーザーは、彼女の体を焼けなかった。代わりにナイフが一本、焼け焦げて其の鋼に孔を開け地面に横たわっている。
「種明かしはねーぜ。兄貴」
「ああ。行ってくる」
緩やかに、けれど疾風のようにニルズヘッグが駆け出す。竜種の彼には、そもそもハイドラやヴィクティムのような器用な真似は出来ない。いや、要らないと言っても良い。未来予知上等、力をもって圧し潰す。其れがニルズヘッグのやり方だ。
「真っ直ぐ奔って来るか! 真っ直ぐと!」
「ああ。私は真っ直ぐ行くよ」
レーザーが迸って、ニルズヘッグの肩を、胸を貫く。けれど彼は其の進路を止める事はない。全ては鍵となる端役の準備が整うまで。
――ま、手足くらいまでなら地獄の焔で補えるからなァ。
のんびりととんでもない事を考えながら、カルロスに拳を向ける。
「! 徒手空拳で挑むとは」
「私には隠し球も何もないからな」
未来予知の前には無力だよ、と言いつつも、確実に急所を狙ってくるニルズヘッグにカルロスは内心で慄いていた。当たれば死ぬかも知れぬ。分身体であるとはいえ、死ぬのは誰だって怖いのだ。……怖いはずだ。目の前の男は傷を負っているのに、笑ってさえいる。
死ぬことを恐れないモノが、この海にいるはずがない。――証明してやる。怯えて震える最後の一人を切り裂いて!
「っと」
カルロスの姿が消えた。ふぉん、ふぉん、と上空で音がする。そうして其の影が島の奥に消えたかと思うと――疾風が起こる。
空気の壁をも超える速さでヴィクティムに接近し、其の腹を貫く――! 未来演算の結果を見てもヴィクティムは動かない。この臆病者めが!
――斯くして、其れは為った。
為った、筈だった。
「な」
「……」
ヴィクティムは笑っていた。其の体に傷はなく、カルロスの剣を持つ腕を片手で掴んでいる。
一方で腕を掴まれただけのカルロスは、よもやという顔をしていた。未来演算のAIにエラーが生じている。エラーを吐き続けている。
「捕まえたぜ……」
「お見事ォ、ヴィクティーム! ……あらあら? コスプレのオウサマは怯えていらっしゃる?」
動けないカルロスに、ハイドラとニルズヘッグが歩み寄る。そう、動けないのだ。鎧がいう事を聞かず、脚部ユニットは固定されたように動かない。にやりと笑ったハイドラが覗き込んできても、其の眼差しを払う事すら出来ない。
「動けないオウサマに種明かしをしてやるぜ。俺はお前と“未来の読み合い合戦”をしたのさ。俺の読んだ未来はごく僅かな先の事だからまあ……さっき言った通り、後出しジャンケンなんだよ」
「そうか……ナイフをレーザーの収束点に据える、其れは一瞬で良い……!」
「そのとーり! 偉いな~オウサマは。偉い偉い。で、今は」
「俺に其の“借り物”をハッキングされて予知AIをぶっ飛ばされたという訳だ。借り物がなきゃ何も出来ねえカス野郎。革命だよ。お前はオウサマから貧民に大転落だ」
「く……そ……!」
「さて問題。そんなオウサマには、これからどんな事が待っているでしょう?」
ハイドラは愛らしくにこりと笑い、……背後にいるニルズヘッグに視線を向けた。
「ヴィム、お疲れ様だ。あとは私に任せてくれ」
「ああ。俺を巻き込まないように頼むぜ?」
「其れは保証できかねるな」
ああ、見たまえ。
ニルズヘッグが姿を変えていく。みるみると、幻想の王者の姿へ。其の鱗は固く、牙は鋭い。爪はカルロスが取り落とした剣よりも太く長く、そして鋭い。
――皮翼をはためかせれば、ああ。其処には一匹の邪竜がいる。
「貴様の未来予知に、終末の竜の姿はあったかなァ」
「く……! 動け、動け……!」
「安心しろ、楽に死なせてはやらないさ。其処でじっと、惨憺たる自分の未来を予想していると良い。私の爪と牙が、貴様の命を刈り取るまで。……ヴィムの事だ、其れくらいの余地は残してくれているだろう?」
ハイドラがゲラゲラ笑っている。其の声が恐怖するカルロスの頭にわんわんとこだまする。見える。私が、爪に裂かれ、牙に割かれ、恐怖に打ち震える姿が……ああ……
――蹂躙という名の饗宴は始まった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵