●はらぺこキッズ艦隊
きらきらと降り注ぐ光が大海原を晴れ晴れと照らし、蒼海羅針域へと向かう艦列は颯々と風を切って白波に長く尾を引く。
――そんな艦隊の中に、ひときわ大きなキッチンと食料庫が備え付けられた艦があった。
「お昼まであともう少しだぞー! ソース遅れてるよー!」
「メインディッシュかんせーでーす!」
「えらい! 天才!」
「わははー」
ある者はフライパンを、またある者は包丁を。
泡立て器を持った者は、大きなボウルに満たされたソースを混ぜ合わせて。
おたまでぐつぐつと煮える鍋をかき回す。
獅子の身体と少女の上半身、お腹に鋭い牙の並んだおおきな口。
所狭しとキッチンの中を駆け回る、異形の少女たち。
「おしょくじキャプテン~! つまみぐいをした者を捕縛しました!」
そこへ大きな声と共に沢山の少女達が、ぐるぐる巻きにされた少女を掲げて扉を開けて入ってくると。
「よーし、マストにくくりつけておけー!」
キャプテンと呼ばれたながーいコック帽子の少女が、スープの味見をしながら吠えるように応じた。
「やだーーっ、ごはん抜きやだーーーっ」
「自業自得~」
「わるーい」
「わたしもお腹すいたのに我慢してるんだよー!」
ぐるぐる巻きされた者がわあわあと喚き立てると、甲板へと彼女を運ぶ少女達は口々に嗜める。
彼女たちはアルダワの世界から落っこちてきた、マンティコアの幼体――マンティコアキッズたち。
――ここは『喰らう飯号』。
蒼海羅針域を破壊すべく集ったマンティコアキッズ達の、輸送艦の一つである。
朝・昼・おやつ・晩・夜食と、ほとんど一日中。まるで戦争のように食事と戦いながら過ごす乗組員のマンティコアキッズたちは、じゃんけんに負けたおかげでコックという厳しい任務を与えられた精鋭達だ。
そう! ここは艦隊の食事を司る、胃袋と命を握る艦なのである!
「あーーっ、べんごしをよべーーっ!」
「現行犯だから諦めてー」
その上、つまみ食いには死を持って償う義務が与えられた厳しい艦なのだ。
●おなかぐーぐー
「はぁいはい、センセ。船の移動が続いて大変だとは思うっスけれど、もう一つ頼まれて欲しいンスよ」
鉄甲船を背にした小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)はペコリと頭を下げてから、猟兵を見やる。
グリードオーシャンはグリモアの予知もテレポートも、そして島間の飛行をもが阻害される気象を持つ世界だ。
現在猟兵達がグリモアを通して移動が出来るのは、猟兵達がこれまで探索した海域に浮かぶ島々――『蒼海羅針域』だけである。
その中心に存在する『サムライエンパイアに通じる渦潮』。ここが破壊されてしまうと、猟兵達はグリードオーシャンに訪れる事が出来なくなってしまうのだと言う。
結果。
コンキスタドール――オブリビオン達は、厄介な猟兵達の通り道を潰すべく。艦隊を組んで『蒼海羅針域』へと押し寄せてきているのだ。
「センセ達にお願いしたいのはマンティコアキッズたちの乗った艦隊のひとつ『喰らう飯号』の制圧っス!」
この艦隊を放置しておくと猟兵達が『戦争サバイバル』と呼んで毎日戦いを続けている地域へと、敵の増援が向かう事となってしまう。
「そういう訳で先に叩いておく事で、少しでも危険を減らしておこうって訳っス!」
『喰らう飯号』は愉快な名前の通り、マンティコアキッズ達を乗せた艦隊の『台所』の艦である。
この艦を落とすとマンティコアキッズ達は、お腹が空いてテンションも下がるし辛い気持ちで困ってしまう事だろう。
「艦隊が霧の多い海域を通る際に、この鉄甲船でこっそり飯号の土手っ腹に突っ込むっスから! センセ達はそのまま船に乗り込んで制圧してきて欲しいっス~!」
可愛い見た目であろうとも、マンティコアキッズ達は人を食らうモンスターだ。
――幼体であれど、その『食事』は。
「それじゃァ、くれぐれも頼んだっスよセンセ達」
コンとぽっくり下駄を鳴らしたいすゞはもう一度頭を下げて、猟兵達を見送った。
絲上ゆいこ
いつもお世話になっております、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
こちらは一章で完結する、羅針盤戦争のシナリオとなります。
今回もよろしくお願い致します!
●今回のシナリオ
この戦場でのシナリオ成功ひとつにつき、戦争サバイバルの🏅5000が加算されます。
受付状況はタグや、お知らせスレッドでご確認ください。
できるだけ早めにお返し、少数採用(+元気の続く限り)の予定です。
もし沢山プレイングをいただけた場合は、
採用は先着順では無く、大成功・またはそれに近いプレイングから採用させて頂く予定です。
●喰らう飯号
大きなキッチンが備え付けられた台所艦です。
台所には熱いフライパンや煮えたぎる鍋、包丁など危険なものがたくさんあり、キッズ達は危険な台所用品を使って応戦する事でしょう。
また甲板のマストにはつまみ食いをした悪い子達が数人縛り付けられており。
縄を解いて餌付けすると、少しの間だけ共闘してくれるでしょう。(しかしすぐに猟兵に牙を剥きます)
●プレイングボーナス
海上戦、船上戦を工夫する(海上では飛行や転移が阻害されています)。
台所や、悪い子達を上手に利用してくれるとボーナスが付きますが、利用せずとも失敗にはなりません!
●キッズ艦隊
シナリオタグ『#キッズ艦隊』のシナリオとは、同じ艦隊が相手のふんわり合わせになっています。
攻略対象は別の船で、攻略タイミングも別々なので同時参加も大歓迎です!
どれでもご自由に、お気軽にご参加ください。
それでは熱いプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『マンティコアキッズ』
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POW : こいつをたおしたらご飯にしような!
【食欲】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : もうちょっとだけがんばる!
【お昼寝の時間までがんばる気持ち】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ : 今がチャンスだけどおやつが食べたい…
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【おやつ】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
👑11
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實生・綿糸楼
【アドリブ、共闘歓迎】
元気があっていいと思うが、戦いの中枢である厨房を任せてよかったのか…?
実際現状に不満を持っている子たちがいるようなので彼らを誑かして…
もとい助けて協力を仰いでしまおう。
「この船上でご飯が食べられないのはつらいよな。」
「奴らは大盛ご飯が食べたいから君たちのご飯を抜いたに違いない」
彼らを率いて厨房に乗り込み、同士討ちを誘おうと思う(破壊工作)
勝ち残ったほうが私に牙をむきだすかもしれないが、今度は【指定UC】で召還した私の忍軍との連戦だ
少し卑怯と思うが、これも忍務なのでな
●忍者のお仕事
艦の土手っ腹へと体当たりをブチかました鉄甲船。
誰よりも早く船の壁や手すりを蹴って、霧深い甲板へと降り立った實生・綿糸楼(二代目實生忍軍棟梁・f31351)は周りをキョロキョロと見渡した。
「あっ、おまえ! くせものだなー!」
「縛られているうぬの方が、よっぽど曲者では……?」
「あー、それを言われると弱いなー」
かくんと肩を落としたマストに縛られたマンティコアキッズは、そのままぐうとお腹を鳴らし。綿糸楼は瞳を眇める。
――つまみ食いには死を持って償う義務がこの船にはある、と聞いていた。このまま放っておくと、干からびて餓死するまでこの子は縛られっぱなしなのかも知れない。
綿糸楼はマンティコアキッズと視線を真っ直ぐに交わすと、甘やかに言葉を紡ぎだす。
「――こんなに美味しそうな匂いがしているのに、ご飯が食べられないのはつらいよな」
「うっ」
指摘に呻いたマンティコアキッズは、よっぽどお腹が空いているのであろう。顔を背けると、苦しそうな表情を浮かべて。
「どうして奴らが君のご飯を抜こうとしているか、分かるか?」
「え……、つまみ食いしたから……」
サソリの尾をしょんと下げた彼女に、綿糸楼はゆるゆるとかぶりを振って断言する。
「始まりは確かに、そうかもしれぬな、しかしな。――君が食べぬという事は、その分奴らの取り分が増えると言うことだろう」
「……!!!?」
はっとした表情、マンティコアキッズは顔を上げて。
キリリと神妙な表情を維持する綿糸楼は、尚も甘言を口に。
「奴らにだけ――大盛りご飯を食べさせて良いのか? それは元々君のご飯だったのだろう?」
それから綿糸楼は彼女を縛る縄を暗器で斬り、立ち上がると彼女へと背を向けた。
「くせもの
……!?」
明らかに怪しい者が自らの縄を断った事と、空腹で混乱しているのだろう。
困惑に揺らぐ声音に、綿糸楼は応じない。
――勿論。放っておかれればそのまま骸の海に戻らされる事となったであろうから、それはマンティコアキッズからしても救いの手ではあったのだけれども。
綿糸楼は振り向くことも無く、ただ背中で語るように言葉を次いだ。
「奴ら、そろそろ食事を始めようという魂胆らしい。……君も腹は減っているだろう?」
「くせもの
……!!」
因みにこの曲者は曲者を呼ぶ際の曲者では無く、呼び声としての曲者です。綿糸楼に良いように扇動されて、横を勢いよく駆け出したマンティコアキッズはまっすぐ厨房へと向かって――。
「わあーっ、わたしのごはん! 返せーーーーっ!!!」
「わーーっ、なになに!?」
「あーーっ、おまえー、つまみぐいした……、痛い、痛いっ!?」
「ごはんーーーっっ!! 大盛りーーっっ!」
飛び交う怒声。
厨房へと足を踏み入れるまでも無く、掛けたマンティコアキッズが大暴れしだした事がよく分かる大騒ぎに、綿糸楼は瞳を一度閉じて、開いて。
「……卑怯に思えるかも知れぬが、――これも任務なのでな」
そうして綿糸楼は彼女の起こした混乱に乗じて、敵を殲滅するべく。
人差し指をぎゅっと握り締めて――。
大成功
🔵🔵🔵
都槻・綾
括り付けられている悪い子さんへ
掌に乗せた饅頭を見せつつ
お腹が空くと悲しい気持ちになりますものね
此れをあげますから元気を出して
でもね
焼いた方がうんと美味しくなるの
縄を解いてあげますから
道具を調達しましょ
私が混乱させている隙に
フライパンを取ってきてくださいな
なんて
片目を瞑ってお誘い
扉の隙間から
ぼうと燈る炎の鳥を放って
キッズ達の尻尾を燃したなら
アチチっと慌てる姿も
愛らしいくらい
気付かれても勿論大丈夫!
彼女たちが手にした鍋やフライパンに
ぽぽいっと饅頭を投げ込んだなら
ほぅら
ふっくら美味しそうな匂いにわくわくするでしょ
ふわわと瞳が耀いた様子に
ふくりと笑んで
鳥葬の数多の水鳥で骸の海まで流してしまおう
ざぶーん
菱川・彌三八
こっそりにしちゃ大胆不敵
さて、昼寝の後の飯といこうか
…と思ったんだが、俺が食える物とは限らねェのか
そいつァちいと当てが外れたなァ
つうかよ
お前ェ等律儀に他人の飯つくっていやがるが、手前で食っちまやあ善いんじゃねェか?
そら、今ならだあれも見ちゃいねえぜ
作ってばかりもつまらねえだろ
なあに、俺が許す
千鳥で帆の辺りに居る奴等の縄も解いてやろう
よーしよし、此方へ来な
蜜柑をやろうな、内緒だぜ
そら、お前ェも好きなだけ食いねェ
喧嘩ァすんなよ
…すんなよ
なんやかやと飯を取り合えばよし
喧騒の中、一匹ずつ千鳥で叩いていけば良い
ついでに俺が食えるもんはねェかなァ…
●嗾
どこか夢めいた光景。周囲に居るはずの艦達も、薄ぼんやりとしか見えぬ程の乳白色をした濃い霧の中。――漂う香りは如何にも旨そうに鼻孔を擽るが、その正体を知っている故に食気はしないもの。
接舷した船からひらりと艦へと乗り込んだ菱川・彌三八(彌栄・f12195)は、猫のようにぐっと身体を伸ばして大きな欠伸を噛み殺した。
「マ、こっそりってェには、大胆不敵よな」
霧に乗じているとは言え直接船と船がぶつかっているのだから、大量の敵が出てきても良いようなものだがその気配も無い。きっと接舷されても気づかぬ程、台所は戦争状態なのだろう。
「なんだなんだー、くせものだなー!?」
ここはこの船の見せしめと刑罰の象徴――謂う所の晒し首なのであろう。
大きなマストに括り付けられたマンティコアキッズが、今にも噛みつかんばかりの勢いで騒ぎ立て。やれと肩を上げた彌三八が切れ長の視線を向ければ、そこには先に乗り込んでいた都槻・綾(絲遊・f01786)の姿があった。
「やぁ、あなた。お腹は空いていませんか?」
しゃがみこんで彼女と視線をあわせる綾の掌の上には、お饅頭が一つ。
「はあ!? くせものに施されるほどおちぶれちゃあ」
ぐう、きゅるるる。
盛大にマンティコアキッズのお腹が鳴って、綾はぱちぱちとまばたきを重ねた。
「……」
「お腹が空くと悲しい気持ちになりますもの、ね? 此れをあげますから元気を出して」
「し、しかたな……」
マンティコアキッズがプライドを0.5秒で捨て去ろうとした瞬間。
青磁の瞳を細めた綾は、すっと立ち上がり。
「ああ、でもね。このお饅頭は、焼いた方がうんと美味しくなるの」
人差し指を立てて内緒の指、片目を瞑って唇に寄せた綾はふくふく笑った。
「道具を調達しましょ。私が混乱させている隙に、フライパンを取ってきてくださいな」
「えー、絶対!? 絶対くれる!?」
「はい、勿論。一番美味しいお饅頭をあげましょうね」
綾とマンティコアキッズの会話はどうにも拐かすという言葉がぴったりに見えて、彌三八はふっと鼻を鳴らして笑い。
「へェ、色男。どうで、ご一緒させて貰えるかい」
「それでは一緒に台所まで行きましょうか?」
「おお、どれ。その前に……よっ!」
綾の了承の言葉に。
彌三八が握った絵筆を宙に滑らせると、筆跡がさらりと幾匹もの鳥に成り。重なる羽ばたきが、マストへ縛り付けられたマンティコアキッズ達の縄を断った。
「縄を解くとは、ばかだなー」
「わたし達の縄を解いたからには、くせもののお前達がどうなるかわかって……」
「よーしよし、ほれ、お前ェ等にゃ蜜柑をやろうな」
威勢よく言い放とうとしたマンティコアキッズに彌三八が蜜柑を投げると――。
「わーっ」
「あーっ! わたしの! わたしの!」
「ちがうー、わたしがもらっただろ!」
一斉に投げられた蜜柑に群がりわちゃわちゃするマンティコアキッズ達。
「喧嘩ァすんなよ、お前ェら」
やれやれと肩を竦めた彌三八がぴっと指を立てて。
「どうせお前ェ等、縄から抜けちまったんだ。そら、またフン縛られる前にヨ……今まで律儀に他人の飯をつくってきたんだ、少し位飯を食っちまっても、善いんじゃねェか?」
こっそり行けばだあれにも見つかりやしねえ、と彌三八は台所方面を指差した。
「なあに、俺が許してやるサ」
悪い笑みをにんまり浮かべると、マンティコアキッズは蜜柑を奪い合う動きを止めて――。
蜜柑をキャッチしたキッズは、蜜柑を皮ごとムシャムシャ。
「まー、このままだと骨になるまでここだもんなー」
「こっそり戻ったらバレなくない?」
「どうせ変わりはいっぱいいるもんねー」
「お饅頭たべたい」
「ちょっとなら平気じゃない?」
顔を突き合わせた悪い子マンティコアキッズ達は、話がまとまった様子。
「えぇ、それでは。私が台所ですこし騒ぎを起こしますから、こっそりと行きましょうね」
「そちもわるよのー」
「ふふ、あなた達もね」
キッズ達とじゃれ合うように言葉を交わした綾が掌を伸ばすと、ひいらりと炎を纏った鳥が空中に生まれて台所へと滑り込んで行き――。
「あ、あっつぅっ!?」
「かじ!?」
「何何、しょうか~! しょうか~!」
「たいへんだー!」
途端に台所で大きな声が上がり。
騒ぎに乗じて悪い子のマンティコアキッズ達が、騒ぎ立てながら台所へと駆け込んで行った次の瞬間。
「あーーっ、何食べてるの!」
「あっ、バレれちゃった」
「うわーーっ、台所で大きくなるの禁止っていったのにーっ!」
駆け込んでいった悪い子が、欲望に屈してすぐに料理をつまみ食いしたのだろう。
輪をかけて喧騒の声が大きくなり、ガシャンガシャンと何かが壊れる音。
「全く。こっそりってェ、てめェ等で言ってたのにな」
「性根が素直な子達なのでしょうねぇ」
台所の前の壁に身を隠して、耳を傾けていた彌三八がやれやれと肩を上げて。
綾はまた、ふくふくと笑った。
――そこに飛び込んできたのは、四足の駆ける音。
「フライパン! フライパンとってきたーっ!」
「まてまてまてーっ、あっ、何!? 人間!? 猟兵たちか!?」
慌てて戻ってきたマンティコアキッズの手にはあつあつのフライパン。ついでに追手のおまけ付き。
「チェ、見つかっちまったか」
「はい、ご苦労さまです」
筆を構える彌三八の横で、綾が約束通りフライパンにお饅頭を置いてやるとふんわり立ち上る、甘い香り。
「わーい、お饅頭!」
「えー、いいなー!」
悪い子も、追手もその匂いに和んだ瞬間。
彌三八と綾の呼び出した、無数の鳥達の羽ばたきにマンティコアキッズ達は飲まれるのであった。
「えーーーっ、まって、まだ食べてないーーーっ」
「わーーーっ!?」
羽ばたきの中に消えたマンティコアキッズ達を見送った彌三八は、残された饅頭を齧り。
「……茶の一つも欲しい所だなァ」
鳥がまた音を立てて、羽ばたいた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メシエ・リンドブラッド
【SPD】
台所艦、なんて素敵な船でしょう。
あちこちから良い匂いが……。(じゅるり)
はっ、いけないいけない。猟兵の務めを果たさないと。
まずはマストに縛り付けられている子たちに話しかけましょう。
どうしてそんな所に? え? つまみ食いをしたから?
……わかる。(しみじみ)
つまみ食い、私もやめられなくて……。
どうでしょう、そこから解放して差し上げますから、少し力を貸しては頂けませんか?
とっておきの毒スイーツもおまけに付けちゃいますよ。
戦闘ではブギー・ブギーフェイスを使用。
マンティコアキッズを狙う振りをしつつ、敵の気を引く目的で食べ物を頂いちゃいましょう。
早くしないと、ぜんぶ私が食べちゃいますよ?
神宮時・蒼
……お話を、聞いている、だけなら、ほっこり、の、内容、なの、でしょう、けれど……
……料理の、中身は、きっと、気にしては、いけない、の、でしょう……
…ボクは、食に、対しての、欲求は、ほとんど、ありません、が、頑張り、ましょう、か
【WIZ】
何ともまあ…
とりあえず、少し可哀想なので元気がない個体だけ、解放してあげましょうか…
…手持ち、に、食べ物…、…ちょこれえと、くらい、しか、ありませんが、食べ、ます?
共闘出来るうちに、周りの子を倒してしまいましょう
「魔力溜め」「全力魔法」「高速詠唱」で強化した白花繚乱ノ陣を「範囲攻撃」で放ちましょう
可哀想ではありますが、これも戦争
……世は、無情、ですね…
エリシャ・パルティエル
まあまあ腹ペコのわんぱくがたくさんね
大勢の胃袋を預かれば台所が戦場になるのもわかるわ
あたしたちも負けられないから
せめて最後にお腹いっぱい食べさせてあげる
マストに縛り付けられてる悪い子ちゃんに
持参した骨付き肉で餌付け
縄を解く代わりに
台所を使わせてもらうことと
他のわんぱくたちが邪魔しないよう協力してもらうの
今からみんなに美味しい料理をご馳走するわ
あっという間にできるからすぐ食べれるわよ
UCで食材を入れればたちどころに
美味しいシチューが出来上がる聖なるお鍋を作るわね
材料を入れればすぐよ
なくなるのもあっという間だと思うけど
どんどん作るわよ!
一生懸命食べたらきっと眠り込んでしまうはず
あとは仲間に任せるわ
●ごちそう
「いいにおい……」
艦内に漂う料理の匂いに、腹がぎゅるりと鳴る。
その料理はメシエ・リンドブラッド(グレイブディガー・f31687)にとっては馴染みの深い『食材』が使われていると知っているものだから、彼女からすれば余計空腹が刺激されてしまうもの。
「はっ、いけないいけない……、務めを果たさないと……」
「うわっ、おばけ!?」
布に覆われた顔を左右に振ってぺたぺた甲板へと出てきたメシエの姿を見て、マストに縛られたマンティコアキッズが大きな声を上げた。
霧の中で白い布が揺れる様は、たしかに幽霊にも見えるかもしれない。
「えっと……、足はあります」
おずと首を傾いだメシエは、マンティコアキッズを真っ直ぐに見て。
「あーーそうだよなーー、びっくりした! えーー、なんでそんなの被ってんだ!? お昼寝船はここじゃないぞ?」
フランクな物言いの彼女は、メシエの事をシーツを被った仲間だとでも勘違いしているのだろうか。どうみたって四足では無いメシエだが、マンティコアキッズの疑問に答えない形で言葉を重ねる。
「あなたこそ、どうしてそんな所に……?」
「そりゃあ、わたしがつまみ食いをしたからだよ」
「……わかります……、やめられませんよね」
「だよなー」
「そうですよね」
しみじみ深い得心の吐息を漏らしてコクコク頷くメシエに、マンティコアキッズもコクコク頷き返すと、メシエとマンティコアキッズのお腹が同時にぐうと音を立てた。
「……えっと……、ちょこれえと……食べます、か?」
話を聞いているだけならば、ちょっとほっこりする内容ではあるのだけれども。
――マンティコアキッズ達は『人食いのモンスター』だ。……ならば、つまみ食いした『料理』の中身は――。
思考を巡らせながらもひょいと姿を現した神宮時・蒼(終極の花雨・f03681)は、チョコレートを2枚差し出して。
「おまえ、くせものか
……!?」
「……おいしい!」
自分たちとは違う姿の者が現れたことに、警戒心も露わに蒼を睨めつけるマンティコアキッズ。受け取った瞬間にすごい勢いでチョコレートを布の下へと収めると、パリパリ食べ始めるメシエ。
「えっ、うまいの!?」
「おいしいですよ」
「うん、……おい、しい、です……、よ?」
チョコを齧りながら首を傾ぐメシエと蒼が、同時に応じれば。
警戒していた筈のマンティコアキッズも、おずおずと差し出されたチョコを一口。
「……うまい!」
「えーー、ずるーーい」
「何たべてんだよー、餓死しろ餓死ー!」
周りの縛られたマンティコアキッズ達がぎゃんぎゃん騒ぎ出す中、彼女たちをぐるりと見やった蒼は口を開いて。
「お腹が、すいたなら……、食堂に、行けば、良いのでは、ない、でしょうか……?」
「行けるなら行ってるっつーのー」
「わたしもちょこ食べたいよー!」
マンティコアキッズ達は、不平不満を漏らすよう。
蒼とメシエは一度顔を見合わせてから。
「なるほど……。では、そこから解放して差し上げますから」
「……少し、力を貸して、……頂けませんか?」
ここでお腹をすかせ続けるよりは良いでしょう、と。
彼女達はマンティコアキッズ達と視線を交わして――。
「♪」
とん、とん、とん。
リズミカルに野菜を刻む包丁の音。
鍋の中身がくつくつと歌っている。
ここの艦は艦隊すべての食事を賄っていると言うだけあって、食材も豊富。
金糸の髪を揺らすエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は、思うままにご飯を作っていた。
――大勢の胃袋を支えるために台所が戦場になってしまうのは、エリシャからすればとても納得の行く事だ。それにつまみ食いをされてしまうと、困ってしまう事だってよーく解る。
だからこそ。
「そいつ敵だろー!?」
エリシャへと向かってかっ飛んできたお皿を、エリシャがご飯を食べさせてあげる約束をしたマンティコアキッズが庇って。
「だめだ、だめだ、いまご飯つくってるんだぞ!」
嗜めるように皿を被ったマンティコアキッズが、皿を投げてきたマンティコアキッズに注意をする。
エリシャは炒めた野菜を鍋へと追加しながら、こっくり頷き。
「うんうん、ありがとう。マンティコアキッズちゃん」
「早く作ってよー」
「はいはい、もう出来るわよ」
つまみ食いマンティコアキッズ達を引き連れて、蒼とメシエが台所へと突入してから数分。
猟兵達の策略によって、マンティコアキッズ達は同士討ちを重ね。
――今この台所は、比喩では無く本当に戦場になっていた。
「おまえ達だけご飯、ずるいぞーーっ」
「おまえがつまみ食いしたのが悪いんだろーっ!」
獣の爪を大きく振るうキッズに、フライパンで応戦するキッズ。
「……吹き、荒れろ」
蒼の魔力が風を生み、白の軌跡を残して蒼の杖が舞うように。
透けるような白の花弁が吹雪と成って、双方のキッズを飲み込み舞い踊る。
「うん、美味しい」
その横でマンティコアキッズの作った食事を、幸せそうに食べるメシエ。
「待て、待て待て待て! 何食ってんだ
!?!?!」
そんなメシエに花弁に裂かれながら、思わず叫ぶマンティコアキッズ。
「ご飯ですけれど」
「見たらわかるよ!?」
「はい、……つまみ食いって、止められませんよね」
しみじみと呟いたメシエの言い分は、キッズにしては理解は出来るが納得できないもの。
否、自分がしたら怒られるのに人がやってるのはやっぱり見逃せない。
「だ、だめでしょーーっ!」
「はい、……早く止めてくれないと、ぜんぶ私が食べちゃうかもしれません」
「こらーーッ!」
一段と踏み込みの速度を上げたマンティコアキッズは真っ直ぐに駆けこみ、メシエが自らの布へと手をかけると――。
「……させま、せん……!」
蒼が杖を大きく振るって風を吹き荒ばせ、飛びかかってきたマンティコアキッズに白の花弁が身体を覆い隠すほどに殺到する。
――それ程までに食に執着する気持ちが蒼には理解は出来ぬが、彼女たちがそれほどまでに食に対して真摯である事は蒼にも理解ができる。――だからこそ少し可哀想に感じる気持ちがある事も、確かだが。
「……これも、戦争、です、から……」
世は無常。
彼女たちが躯の海より蘇り人を襲い喰うオブリビオンである以上、可哀想であろうとも対処をせぬ訳には行かぬのだ。
そこへ。
かんかんかんっ!
フライパンとお玉を打ち鳴らす音が、台所に大きく響いた。
「はーいっ、わんぱくたち! 美味しいシチューができたわよ!」
それはエリシャがユーベルコードによって出した鍋で作った、シチューが完成したという合図である。
「えっ、何!?」
「ごはんのじかん!?」
「そうよ、並んで並んで!」
音に驚いたマンティコアキッズ達も、一斉に振り向くと。
エリシャと約束をしていたマンティコアキッズは既に、黙々とシチューを啜っている。
「ふふ、どんどん作るわ、たっぷり召し上がれ!」
――彼女たちがお腹をすかした幼体の姿をしているからと言って、猟兵は負けてはあげられない。
ならばせめてお腹いっぱい食べさせてあげてから、躯の海にお帰り願おう。
エリシャがお玉にたっぷりシチューを掬って皿へと盛り付けると。
「はい!」
こっくり頷いたメシエが、スプーン片手にエリシャの前へと並んで――。
「……えっ、貴女様まで……、ならぶ、の、ですか
……!?」
思わず蒼が目を丸くして、呟いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
杜鬼・カイト
人を喰らうモンスターか。敵さんってば、可愛い見た目のくせして、結構えげつないことするんだね?
台所制圧といこうか。
台所だからあって当たり前だけど、包丁とか危ないよね。敵に使われたら厄介だし、【赤い糸はちぎられて】で相手の行動を制限する。
「調理器具に触っちゃダメだよ?」
子どもが触ると危ないからね。
普通はそう教えるものでしょう?
動きを封じきることができなければ、【呪詛】をこめた刀で斬りつける。
言いつけを守れない悪い子には、お仕置きが必要だよね?【恐怖をあたえる】
ロニ・グィー
んもー
いたずらっ子には困りものだね!
こんなのまとめて沈めちゃえばいいじゃない!球体くんたち、用意して~
(空を覆うような巨大な球体を出したところで耳元のピアスから囁き声)
え、ダメ?あー…食事ってそういう!
んもーいたずらっ子たちめ~!
●乗船・懐柔
よーしよし、お腹が空いてるんだね~
ふしぎなポケットをポンと叩いて沸き出すお菓子で悪い子くんたちを懐柔するよ!
いい子いい子!ね~ね~いっしょにみんなに仕返ししようよ!
●戦闘的な
よろしく~!と餓鬼球くん部隊に彼らの食欲をぱくぱく食べてもらうよ!
食欲減退してげんなりしたところをUCでドーンッ!
牙を剝いてきた子たちには激辛お菓子を口にシューッ!してからドーンッ!
飛雲・風成
台所迄の道程は「忍び足」と「暗殺」を合わせ進んでいきます
台所に辿り着いたら即【ブラッド・ガイスト】で自身の武器を強化、捕食形態に
敵の攻撃は素早さを活かした身のこなしで躱し、隙間を縫って次々捕食していきましょう
煮えたぎる鍋に入ったもの、調理されているものを横目に、此処へ来る迄に犠牲になった人達の事を思う
恐怖や無念…彼女等を倒し、晴らさないといけませんね
そして、其れを捕食する俺も同罪でしょうか
台所を制圧したら、眼帯の下に隠していた小さな花を一つ供えて合掌
…これだけじゃ全く足りませんが、少しでもいい所へ魂が向かいます様に…
波のさざめく音と、濃い乳白色の霧に包まれた世界。
「んもー、いたずらっ子達には困りものだね!」
鉄甲船に乗ったまやれやれと首を振ったロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、片手を掲げて。
――こんなの船ごと纏めて沈めちゃえばいいじゃない? ねえ、球体くんたち!
その掌から飛び出した球体が、ぐんぐん大きく大きく――。
「……え? あー、成程ねー、……んもうっ、いたずらっ子たちめ~っ」
ぱっと耳に手を当てたロニは、肩を大きく竦めて。
膨らみかけた球体をぱっと収めると、接舷した艦へとぽーんと跳ねるように飛び込んだ。
剣戟と鍋の中身がくつくつと歌う音が何重にも重なって、美味しい匂いと鉄火場の匂いが混ざり合う。
――文字通りの戦場と化した台所で、調理台に片手を付いてぽーんと跳ねた杜鬼・カイト(アイビーの蔦・f12063)を追う、身体を膨れ上がらせたマンティコアキッズ。
カイトは視線と腕だけで彼女へと振り返ると、ぴんと指を立て。
「ねえ、調理器具に触っちゃダメだよ?」
「はあっ!?」
その宣言に何を言っているんだといった表情で目を丸くするキッズへと、カイトの小指に嵌った緑碧の指輪より小さな白い花――白詰草が放たれて。
「訳解んないこと言うの、やめろっ!」
戦闘中にされた事に意味が無い訳は無いが、その行動の理解が出来ぬキッズの出来る事はただ排除する事だけ。
調理台を踏んで大きく獣の足を振り上げ、カイトへと追いすがると――。
「ほら、ダメだって言ったのに……」
身体を大きく膨らせた敵が台所内で暴れて、調理器具に触れぬという事は比較的難しい事に当たるだろう。
――花が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える力。
これは簡単に守れるルールほど、威力を増す攻撃だ。
その為、ルールを破ったとしても彼女に与えられるダメージは少ないだろう。
「料理をする時に、子どもだけで料理をするのは危ないでしょう?」
「っ!」
まな板に足が擦れて、小さな痛みが走って眉を寄せるキッズ。
――決してそのダメージは大きいものでは無い。
しかし、それで良い。
カイトが生み出したかったのは、その一瞬の隙なのだから。
なんたって、ここにはたくさん仲間たちがいる。
「はあっ!」
強い踏み込みと共に響く、鋭き裂帛の声音。
一瞬だけ足を止めたキッズへと飛びかかったのは飛雲・風成(隻眼銀狼・f17723)の姿であった。捕食形態と成った手裏剣は、ぞぶんとキッズを喰らい千切る。
「わああっ、こらーっ! いただきますもせずに食うのはよくないだろう!?」
別のキッズが抗議なんだかどうなんだか分からない苦情と共に、慌てて風成へと鞭のように腕をしならせて横薙ぎに振るう。
「其れは申し訳無いですが……」
間一髪バックステップを踏んだ風成の代わりに、飛びかかってくるキッズと相対したのはロニとカイトであった。
「あ~、解る解る、お腹が空くとイライラしちゃうよねえー」
「でも言いつけも守れない悪い子は、お仕置きが必要だよね?」
ぽんとポケットを叩いたロニは、ポケットから出てきた真っ赤なせんべいを手に。
すらりと抜いた刀を真一文字に構えたカイトは、瞳を細めて。
飛び込んできたキッズを迎え撃つ形で、口にロニが唐辛子まみれせんべいを口に押し込むと、カイトは逆袈裟斬りに刃をすらりと放ち。
「ああ~~っ、この子に君たちの分のお菓子がたべられちゃったな~~!」
それから。
わざとらしくロニが戯けるように甲板でお菓子で懐柔して連れてきたマンティコアキッズへと、告げ口をすると――。
「えー! ずるーい!」
「ご飯食べてるくせにずるい!」
「~~っっ!?」
ぱっと二匹のマンティコアキッズが、せんべいの辛さと刀傷にごろごろする敵へと飛びかかった。
「えーいっ!」
「!?」
そこに仕上げ、と。背後からロニが3体纏めて、一気に単純に重たい拳をブチ込むと。
「油断大敵、ですね……!」
風成が更に得物を振り上げて、食らいつき――!
やれやれと肩を竦めたカイトは、煮える鍋の中身を見やって呟いた。
「……全く、可愛い見た目のくせして、結構えげつない事をするねえ」
「えっボクの事ー?」
「違うよ、敵の事だよ」
まあ、キミもだけれどさ。
煮える『食材』に瞳を細めたカイトは、ロニがくすくすと笑ってかわいいに反応したものだから、また肩を竦めて。
「えー、そう? どうせなら崇めてもいいのにー」
ゆるく笑うロニの横で、風成がやれやれと首を振った。
そうして彼はどうしたって考えてしまう事、――食事の為に犠牲と成った『食材』の事を思う。
そりゃ人間も食事の為に家畜を食べる、食物連鎖の事を思えばそれは当たり前の事だ。
しかし、やはりそれが同族で行われたとすれば――。
エゴであったとしても。
やはり、犠牲になった人達の事を思ってしまうだろう。
恐怖や無念をはらさねば、と思ってしまうものだろう。
そして彼女達を食らう自らだって、彼女達からすれば――。
ふ、と息を吐いて瞳を細めた風成は小さな花を一つ供えて。
更に台所を駆け出した。
――犠牲に成った者達が、少しでもいい所へ魂が向かえますようにと祈りながら。
成功
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