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羅針盤戦争~『三の王笏島』を制圧せよ

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #三の王笏島


「羅針盤戦争への参戦に感謝します。リムは戦況を報告します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)はグリードオーシャンの海図を広げると、淡々とした口調で語りだした。
「皆様の活躍によって、コンキスタドールとの戦いは優勢に進んでいます。その結果、『蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)』が示す敵の本拠地のひとつが発見されました」
 彼女が指差した地図の南方には、凶々しい杖が突き立つUDCアース風の島のアイコンが書き込まれている。それは『七大海嘯』にしてこの世界のオブリビオン・フォーミュラ、『王笏』カルロス・グリードの本拠地の一つだった。

「皆様には今回、発見された『三の王笏島』の攻略をお願いします」
 ここは八つある『王笏』の本拠地のひとつ。全ての本拠地を制圧することができれば、彼はもう蘇生することができなくなる。当然向こうもそれをやすやすと許すはずはなく、緒戦で遭遇した分身体以上に全力での反撃が予想される。
「この本拠地に対応するカルロスの分身体『三の王笏』はUDCアースの力を具現化していて、メガリスから邪神を召喚して攻撃してきます。加えて彼の本拠地は『邪神山脈』と化していて、島全体に大量の邪神が蔓延っています」
 『三の王笏』はこの本拠地の特性を最大限活用してくる。邪神山脈と化した大地から出現する邪神は通常の数倍もの大きさがあり、人を狂気にいざなう冒涜的な能力や絶望的破壊力を誇る。その様はまるで地形そのものが猟兵に攻撃を加えてくるかのようだ。

「ですが、邪神の大いなる力はカルロスといえども完全には制御できていないようです。付け入る隙があるとすればそこでしょう」
 UDCアースでの戦闘経験がある猟兵なら知っての通りだろうが、邪神とは人の思惑と理解に収まるような存在ではない。誤って関わった者には死かそれ以上の災いを、利用しようとする者にはすべからく破滅を、というのが当たり前の理不尽で不条理な者達である。
「フォーミュラである彼の力をもってしても御しきれない邪神……改めて異常な存在ですが、何にせよ敵の暴挙をこちらが利用しない理由もありません」
 邪神のコントロールが乱れる隙を狙うか、或いは此方からそうなるよう仕向けるか――いずれにせよカルロスが邪神を制御しきれていない時が反撃を仕掛けるチャンスになる。

「邪神山脈に蔓延る敵全てを相手にしていてはキリがありません。目標は『三の王笏』ただ一人。邪神を操る者さえいなくなれば、その間に島の制圧も進められるはずです」
 オブリビオン・フォーミュラの本拠地の制圧は、本戦争の直接的な勝利条件に関わる。
 それだけに熾烈な戦いが予想されるが、『渦潮』の破壊とカタストロフの到来を阻止する為にもここで退くわけにはいかない。リミティアは真剣な眼差しで猟兵達ひとりひとりを見つめながら『三の王笏島』への道を開く。
「出港準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 早くも発見されました敵本拠地の一角。今回は『三の王笏島』にて、七大海嘯『三の王笏』カルロス・グリードに決戦を挑みます。

 このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。

 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 『三の王笏』カルロスは自身の本拠地の地面から巨大な邪神を出現させ、猟兵と戦わせます。
 地形そのものを味方につけた攻撃は非常に強力ですが、彼の力をもってしても邪神の完全制御は不可能なようです。そこに生じる隙を突ければ勝算はあるでしょう。

 なお本リプレイが成功すると『三の王笏島』の戦力が削れる他に、このシナリオの舞台ではない七大海嘯支配下の別な島をひとつ解放できます(世界地図のマスがひとつ埋まります)。この点は他の戦争シナリオと同じ仕様です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『三の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    邪神「大地を喰らうもの」
【本拠地の島の面積】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【大地を牙の生えた触手】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    邪神「吼えたけるもの」
【目にした者の正気を奪う、漆黒の巨人型邪神】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    邪神「輝き惑わすもの」
【光り輝く宝石のような美しき邪神】の霊を召喚する。これは【命中した対象を宝石に変える光線】や【敵の欲望をかきたて混乱させる輝き】で攻撃する能力を持つ。
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マレア・ソレッタ
…うわぁ。上陸しただけでも分かるね、この嫌な感じ…。
早いところ敵を見つけてやっつけないと!

上陸したら、島の中心を目指して走っていくよ。
邪神と遭遇した時は、開けた場所なら【フェイント】をかけての突破、入り組んだ場所なら【地形の利用】で撒く形で、戦闘は全力で回避。
敵のユーベルコードの攻撃が来たら、触手の届かない範囲まで何とか逃げるけど、無理なら触手の動きを見て、すぐには捕まらなさそうなポイントを見出しそこ伝いに突破。

敵を見つけたら銛での近接戦に移行。
邪神が敵の死角に入るように立ち位置を調整、ボクへの攻撃に敵が巻き込まれるよう仕向ける。
うまくいったらボクも海神殺しで攻撃!



「……うわぁ。上陸しただけでも分かるね、この嫌な感じ……」
 発見された『三の王笏島』に足を踏み入れた瞬間、背中が粟立つような不気味な気配を感じて、マレア・ソレッタ(風と海と太陽の子・f26497)は顔をしかめた。まるで巨大な怪物の腹の中に飛び込んだような――それが比喩ではないことも彼女は知っている。
「早いところ敵を見つけてやっつけないと!」
 悍ましさに心挫けることなく、マレアは島の中心を目指して走っていく。こんな所に長居は無用だと、手には愛用の銛を握り締め、貫くべきコンキスタドールの親玉を探して。

「……これほど早くここが見つかるとはな」
 この島を拠点とする『三の王笏』カルロス・グリードは、開戦から一週間を待たずして猟兵の上陸を許した事に驚きを隠せないようでいた。侮っていた訳では無いが、それでも予想を遥かに上回る侵攻――侵略者コンキスタドールのお株を奪うような迅速な動きだ。
「敵ながらその手腕は見事と称えよう。そして王として、城を訪れた者には盛大な歓迎を催さなければな……来たれ、邪神『大地を喰らうもの』よ」
 男が手に持ったメガリスを振るうと、峻厳な大地が牙の生えた無数の触手に変化する。
 この島はそれ自体に強力な邪神が封印された、UDCアースの『邪神山脈』。指揮者たるカルロスの意に沿って、蔓延る邪神共は侵入者を喰らい尽くすべく牙を剥いた。

「出たね怪物!」
 土地そのものが行く手を阻むように変化した邪神と遭遇したマレアは、伸びてくる触手から全力で距離を取るように走る。まともに相手をしたところで体力を消耗するだけだ、なるべく戦闘は回避しながらボスの元まで辿り着くのが最優先。
「ここは通してもらうよ!」
 立ち塞がる「大地を喰らうもの」の動きをよく見る。地面を埋め尽くすほどの触手群は視界に入れるだけでも身の毛がよだつが、出し抜く隙が無いわけではない。触手の発生点を確認してすぐには捕まらなさそうなポイントを見出すと、そこを伝って突破を図る。

「逃すな、捕らえよ」
 カルロスの号令の下、触手を伸ばす大地の邪神。冒涜的にうねり狂うソレに絡まれぬよう、マレアは移動にフェイントをかけて欺き、入り組んだ島の地形を利用して敵を撒く。
 それでも邪神の攻撃は執拗で、どこまでも触手を伸ばして後を追ってくる。背後を振り向けば心が萎えてしまいそうだ。もはや退路が存在しないのは背中越しの気配で分かる。
「だったらこのまま突き進むだけ!」
 まだ邪神化していない地面を踏みしめ、彼女は全速力で走り続ける。風と海と太陽に育まれたこの身体こそが最大の武器だと言うように、日焼けした肌に汗を浮かべ、躍動し。
 そして遂に島の中心部まで辿り着いた彼女は、待ち受ける『三の王笏』の姿を捉えた。

「あなたがこの島の親玉だね! 覚悟してもらうよ!」
「貴様こそ、無断で我が島に踏み入った覚悟はできていような」
 銛での近接戦を仕掛けるマレアに、カルロスは笏を掲げて応じる。邪神を操る力を抜きにしても、彼はオブリビオン・フォーミュラ――本人の力も尋常の人間のそれではない。
 互いの得物が火花を散らしてぶつかり合い、触れ合えそうな程まで両者の距離が迫る。押し返そうとする『三の王笏』に対して、太陽と海の娘は押し込むかと思いきや、不意にさっと身体を横に逸らした。
「引っかかったね!」
「ぬぅ……ッ?!」
 その直後、彼女の背後に隠れていた触手が伸び掛かり、操り手であるはずのカルロスに牙を突き立てる。マレアは自分の身体が死角になるように立ち位置を調整して、自分を追ってきた邪神の攻撃が敵を巻き込むように仕向けたのだ。

「隙ありっ!」
 邪神からの思わぬ攻撃を受けてカルロスが怯んだ瞬間、マレアは渾身の力で銛を投げつける。オーシャンハンターとして身体に染み付いた【海神殺し】の一投は、矢のような軌跡を描いて過たず獲物に命中した。
「ッ……! やってくれるな」
 突き刺さった銛の先端は無数の針に変化し、抜け落ちないようしっかりと固定される。
 肉体を内側から針刺しにされる苦痛に、カルロスの顔が歪む。いかにフォーミュラと言えども邪神の制御は完全ではないという事前情報を、この攻防は裏付けるものとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
決戦?なにそれ美味しそう!
アクセントをつけようね☆

事前に「肉体改造」を施して弾力と増殖スピードを上げて噛み切れないように強化!
触手の噛み付きを防ぎつつUC【飢餓つくと肉肉しい惨劇】にて増殖し続ける肉塊に変身!
触手の食欲を匂いで(匂いは化学物質だから鼻が無くても出来るはず)増幅させて、増殖した肉塊を齧らせる!
体内に入った肉塊はなおも増殖して……どかーん!

勝利の暁には触手「料理」で「宴会」だー!
あ、代償になった島の面積は切り離した肉塊を改造して島の土壌にするよ♪



「決戦? なにそれ美味しそう!」
 敵の本拠地での大勝負と聞いて、ウキウキ気分でやって来たのはラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)。島中に漂う不気味な気配など吹き飛ばすように、彼女の振る舞いは底抜けに明るく。
「アクセントをつけようね☆」
 ぶよぶよどろどろしたゲル状の巨体をうねらせて『三の王笏島』に上陸すると、すぐに歓迎がやって来る。ここは邪神蔓延る狂気の山脈、悪魔よりも邪悪で恐ろしいモノ達との食うか食われるかの戦場だ。

「猟兵共の血肉を喰らい、存分に飢えを満たすがいい」
 『三の王笏』にそう命じられた【邪神「大地を喰らうもの」】が、牙の生えた触手をうねらせて獲物に襲い掛かる。ラヴィラヴァの体格でその攻撃を躱しきるのは難しく、幾本もの触手がぶよぶよのボディに絡みついた。
『―――???』
 だが。そのままどんなに強く牙を突き立てても、獲物を噛み切ることができずに触手は困惑する。実は島に上陸する前、ラヴィラヴァは自分の肉体に改造を施して弾力と増殖力を強化していたのだ。

「どう、美味しい?」
 噛み付かれるたびに再生と増殖を繰り返しながらニコニコと笑うラヴィラヴァ。理想とする「みんなおなかいっぱいになれるせかい」のためなら、彼女は自分を食材にすることさえ厭わない。果たして邪神の味覚的にもそれが美味であるかは定かではなかったが。
「たっぷりたらふく満足するまでオイラを召し上がれ♪」
 もっと自分を味わってもらおうと【飢餓つくと肉肉しい惨劇】にて増殖し続ける肉塊に変身。ふよふよと空中に浮かぶ彼女の身体からは食欲をそそる匂いが放たれ、触手達の飢餓感を強烈に掻き立てる。
『―――!!』
 周囲一帯の地面を侵食した「大地を喰らうもの」は、全ての触手をラヴィラヴァに向けて喰らいつく。食べても食べても殖え続ける喰らいつくせぬ美味――それは島すら喰らう飢えた邪神を大いに悦ばせるものだったろう。

「…………なんだ?」
 しかし、その様子を見ていたカルロスは違和感を覚える。一方的に邪神が食らっているように見えて、一向に相手を喰らい尽くせる気配がない。ユーベルコードにより高まったラヴィラヴァの増殖速度が捕食速度を上回っているのだ。
「まだまだ殖えるよ☆」
『―――?!』
 そればかりか邪神の体内に入ってもなおも、捕食された肉塊の増殖は止まらなかった。消化されるよりも速く殖え続け、それが体の容積に収まりきらなくなった時――それまで夢中で肉塊を貪っていた触手群は、内側から破裂する。

「どかーん!」
 爆散した触手の真ん中で、楽しそうにはしゃぐ肉塊のラスボス。邪神もまさか自分がこのような敗北を喫するとは思いもよらなかっただろう――餌食にしたはずの相手を食べ尽くせずに負けるとは。
「勝利の暁には触手料理で宴会だー!」
 邪神の無念をよそにラヴィラヴァはいそいそと触手をかき集める。牙だらけで可食部が少なそうだが本当に食えるものか、そしてどう調理するつもりなのかは彼女のみぞ知る。
 ついでに邪神が爆散したことで代償になった分だけごっそりと減った『三の王笏島』の面積は、自分から切り離した肉塊を改造して埋め込み、新しい島の土壌にしておく。

「なんという事だ……」
 配下を撃退されたばかりか、自分の本拠地で怪しい宴会の準備が進められている様子にカルロスは動揺を隠せなかった。狂気の邪神山脈から肉塊の大地に変貌した島の一角で、ラヴィラヴァは心底楽しそうに触手料理を作る――これはこれで狂気の様な気もするが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
まずは目を閉じて何も見ないように
僕は視力には頼らない
全部…【聞き耳】でいくよ

たしかに巨大なのは厄介だけど
大きいとそれだけ動きも鈍くなるし
動作によって生じる風の流れの変化や音は隠せない

念のため【オーラ防御】は纏いつつ
この戦法で回避優先に
地形は【歌唱】で音の反響を聞けば推測できるし
飛べる場所なら【空中戦】
無理でも岩陰などを利用して攻撃の隙をなるべく与えずに
足場に【破魔】を宿した★花園を広げていく事で
巨人や邪神達の移動範囲を狭めていく
破魔は苦手でしょ
なかなか当たらずにいれば、カルロスさんも焦って乱れるかな

その時を待ってたよ
一気にカルロスさんの方に急接近
邪神達も巻き込み【指定UC】の【浄化】で攻撃



「『大地を喰らうもの』だけでは押し止めることはできぬか。ならば次は貴様の出番だ。邪神『吼えたけるもの』よ」
 猟兵達の実力を再確認した『三の王笏』カルロス・グリードは新たな邪神を喚び出す。
 山脈化した大地を引き裂いて現れるのは、あまりにも冒涜的で名状しがたい姿をした、漆黒の巨人。およそ健常な精神の持ち主であれば、それを目にしただけで正気を奪われるだろう――邪神が持つ根源的恐怖を体現したかのような存在がそこにあった。

「僕は視力には頼らない。全部……聞き耳でいくよ」
 その悍ましき巨影が視界に入らぬよう、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は目を閉じて何も見ないようにする。確かにそれなら正気を失うことはないだろうが、その状態で戦闘ができるのは彼のように他の感覚が研ぎ澄まされている者だけだろう。
『グオオオオオオォォォォォォォォ―――』
 邪神「吠えたけるもの」はその名の通り、背筋が凍るような咆哮を上げて襲い掛かる。
 その巨体が一歩動くたびにズシンと足音が響き大地が震える。精神的影響を抜きにしても、か弱き生者を蹂躙するには十分過ぎるほどの威容だ。

(たしかに巨大なのは厄介だけど、大きいとそれだけ動きも鈍くなるし、動作によって生じる風の流れの変化や音は隠せない)
 澪はスケールの違いに怯える事なく、耳を澄ませ近付いてくる邪神の動きを聞き取る。
 戦法は回避優先。念のためオーラで身を守りつつ、オラトリオの象徴たる翼で空に舞い上がる。対する邪神は小蠅を払い落とそうとでもするように、無造作に腕を振るった。
『ウオオオォォォォ――!』
 一度でも直撃を受ければ重傷は必至。だが幸いにも動作は大振りで聴覚だけでも軌道は読みやすい。少年は時に高く飛んで巨腕から逃れ、時に低く飛んで岩陰などに身を隠す。

「咲き誇れ、everywhere garden(どこにでもある花園)よ」
 邪神の攻撃をかい潜りながら、澪が魔力を込めて聖痕をかざすと、ごつごつした岩肌ばかりの大地に花園が広がっていく。この花には彼が持つ破魔の力が宿っており、見た目は美しくとも邪神達にとっては毒の花となる。
「破魔は苦手でしょ」
『ウウゥゥゥ……』
 巨人を筆頭に島内に蔓延る邪神達は、花園化した土地には近寄りたがらない。敵の移動範囲が狭まれば、その分だけ澪は行動の自由を得られ、攻撃を避けるのも容易になる。

「……何をやっているのだ」
 なかなか敵を仕留められずにいる現状に焦れたか、カルロスは邪神を強引に花園に突入させてでも攻勢を強めようとする。しかし邪神が本能的に嫌悪することを無理矢理命じることは、元より完全ではない邪神の制御に乱れを生じさせた。
『グウウゥゥゥゥ……!』
 命令と本能のせめぎ合いにより「吠えたけるもの」が悶え叫びながら攻撃を停止する。
 己の力を過信したか、それとも焦りから判断を誤ったか。いずれにせよカルロスにとってこのミスは大きな失態だった。

「その時を待ってたよ」
 邪神の動きが止まった隙を突いて、一気にカルロスの方に急接近する澪。その全身から放出される閃光が『三の王笏島』に漂う澱んだ大気をかき消し、穢れた大地を浄化する。
「全ての者に光あれ」
「―――ッ!!」
 魔を浄化する【Fiat lux】の光は、周囲の邪神達も巻き込みながらカルロスを包んだ。
 邪神のみならず邪神の力に耽溺するオブリビオンにとっても、その輝きは余りにも眩く――目をかばいながら飛び退いた男の肌は、熱湯を浴びたように焼け爛れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミニョン・エルシェ
それが大地であるならば、私にもやり様はあるのです。

地形が変化したものならば、【地形の利用】も可能な筈。敵たる触手は他の触手を【敵を盾にする】事で回避と【時間稼ぎ】を行い、【視力】で見極めながら【野生の勘】と【幸運】で避け、耐え凌ぐのです。
隙は必ず出来ますから。

凌げば此方の反撃、邪神山脈という【地形を利用】し、【指定UC】を発動。唐沢山、苗木、岩櫃…凡ゆる要素を利用した城に負けぬ城を、此処に普請します!【拠点防御】なら負けられません。
此方からは死霊侍衆の大砲による砲撃と【城対龍誘導弾】を【一斉発射】してカルロスを狙い、
それらを【援護射撃】として一気に懐に飛び込み、簪宗信の一刺しを馳走します!



「……流石はここまで辿り着くだけの事はある。だがまだまだこれからだ」
 予想を越える猟兵達の力を目の当たりにしながらも『三の王笏』カルロス・グリードは冷静に告げる。本拠地にいる限り彼の戦力である邪神が尽きることはなく、何度撃退されてもすぐにまた新たな邪神を出現させられる。戦力的にはまだ明らかに優勢であった。
「それが大地であるならば、私にもやり様はあるのです」
 だが。地形そのものを味方につけた『三の王笏』の力にも怯まず、ミニョン・エルシェ(木菟の城普請・f03471)は前に出る。城郭マニアとしての趣味が高じて身につけた、山地に関する知識――それはこの島でも活かすこともできるだろう。

「征け『大地を喰らうもの』よ」
 カルロスが一声発すれば、地面から生えた何本もの邪神触手が牙を剥いて襲い掛かる。
 土地そのものを代償として顕現するおぞましき光景。しかしミニョンは目を逸らさずに触手の動きを見極めると、山肌を蹴って走り出す。
「地形が変化したものならば、地形の利用も可能な筈」
 敵たる触手の攻撃から他の触手を盾にすることで逃れ、敵の本拠地である峻厳な山地をまるで自分の庭のように駆け回る。城址巡りで鍛えた足腰と野生の勘は、狂気の邪心山脈においても十全に発揮され、時には幸運にも助けられながら彼女は敵の攻撃を耐え凌ぐ。

「まるでカモシカのような娘だな……」
 無数の触手に追われながらひょいひょいと山を駆けるミニョンの姿に、カルロスは感心しながらも厄介そうに顔をしかめる。いっそのこと島全体を邪神で埋め尽くしてしまおうかとも考えたが、彼の力を以てしてもそれだけの規模の邪神を制御することはできない。
(隙は必ず出来ますから)
 敵が邪神のコントロールに苦慮する一方で、好機を信じて逃げ続けていたミニョンは、追撃の勢いが弱まったのをみて反撃に転じる。『邪神山脈』という地形を利用して彼女が発動するのは【我城普請・天守顕現】――想像力をベースとした城郭の創造である。

「唐沢山、苗木、岩櫃……凡ゆる要素を利用した城に負けぬ城を、此処に普請します!」
 歩み、学んできた城の数々からこの土地に適した要素を抽出し、自分が思い描く最高、最強、無敵の城を。ミニョンの豊かなイマジネーションと城郭に対する熱意を礎にして、日本式なデザインの巨大城郭が『三の王笏島』に具現化する。
「我が領土で許可なく築城するとは……!!」
 敵の本拠地のド真ん中に城を建てるという大胆不敵な所業に、無礼千万だとカルロスは怒りを露わにした。直ちに「大地を喰らうもの」を差し向けて一息に攻め落とさんとするが、城に立てこもるミニョンも即座に迎撃体制を取った。

「拠点防御なら負けられません」
 そびえ立つ天守の頂上から敵と戦場を俯瞰して、号令を発するミニョン。すると城内にいる死霊侍衆が配備された大砲を一斉発射し、押し寄せる邪神触手の群れを吹き飛ばす。
 同時にミニョン自身も「城対龍高速誘導弾システム」を発射。対龍・対神を想定した多弾頭ミサイルランチャーが唸りを上げ、戦場に誘導弾の雨を降らせる。
「くっ……何をしている、たかが城ひとつ……!」
 邪神の力を以てすれば、ヒトが作った建造物など簡単に打ち崩せるはずだとカルロスは思っていたのだろう。だが実際にはミニョンの城郭は「大地を喰らうもの」の攻撃を受けてもビクともしない。彼女の心に疑念が生じぬ限り、この城が落ちることは絶対に無い。

「今です! 突撃ー!」
 城郭の堅固さと砲撃の激しさからカルロスが攻めあぐねている隙を突いて、ミニョンは一気に懐に飛び込む。まるで戦国武者のような漆黒の当世具足に身を包み、右脇に差した妖刀「簪宗信」を抜き放つと、体ごとぶつかるように渾身の刺突を放つ。
「一刺し馳走します!」
「ぐぁ……ッ!!!?」
 避ける間もなく脇腹を抉られるカルロス。名に"神刺し"の意を持ち、まつろわぬ神を屠る事に特化した刃は、邪神の力を操る『三の王笏』にも効果覿面だった――少女が与えた傷は後にどのような治療を施そうとも、男が絶命するまで血が止まることは無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

播州・クロリア
邪神を利用しようとする輩は過去に幾度となく見てきましたが
その全ては破滅し骸の海へと沈んでいきました
今回の連中もきっと同じ道をたどるでしょうが
せめて自分たちだけで滅んでほしいものです
(目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始める)
輝きとは道しるべにならなくてはいけません
あの邪神の光は早々に消えていただきましょう
(『念動力』で瓦礫を操作し光線と混乱の輝きの盾にすると{絢爛の旋律}で生み出した光属性の『衝撃波』で邪神に『属性攻撃』を仕掛ける)
もっと邪神を制御できていれば反撃の余地など与えなかったでしょうね
(UC【蠱の人】で人型の光を召喚しカルロスへ攻撃させる)



「邪神を利用しようとする輩は過去に幾度となく見てきましたが、その全ては破滅し骸の海へと沈んでいきました」
 それは故郷であるUDCアースでは珍しくもない事件。自分だけは特別だと思い上がり、邪神の強大な力に魅せられた挙げ句に失敗した連中を、播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)は何人も知っている。
「今回の連中もきっと同じ道をたどるでしょうが、せめて自分たちだけで滅んでほしいものです」
 この手の輩の何より唾棄すべきなのは、自らの破滅に無関係な周囲の者達まで巻き込む事だ。これ以上の災いが蒼海にもたらされる前に消えてもらおうと、少女は『三の王笏』の本拠地に乗り込んだ。

「この『王笏』を、凡百の人間やオブリビオンと同列に語ってもらっては困る」
 邪神山脈と化した自らの本拠地で、『三の王笏』がメガリスを振るう。すると地面から七色の光と共に宝石のような邪神が出現する。それは"邪神"と呼ぶには余りに美しく、人の心を惹きつける輝きを放っていた。
「『輝き惑わすもの』よ、汝の力を示せ」
 カルロスが新たに呼び出した第三の邪神。それが放つ光を浴びた大地はみるみるうちに宝石に変化していく。美しき輝きで心を惑わせ、万物を宝石化させる――壮麗な見た目に反して、それが有する能力は極めて悪辣であった。

「輝きとは道しるべにならなくてはいけません」
 破滅と狂気しかもたらさぬ「輝き惑わすもの」の光に不快感を露わにして、クロリアは目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすとダンスを始める。このグリードオーシャンの蒼天に輝く太陽と、陽光に照らされ輝く大地の美しさを「絢爛の旋律」で表現する為に。
「あの邪神の光は早々に消えていただきましょう」
 栄華のリズムに乗せて少女が四肢を動かせば、周囲に散らばる瓦礫が念動力でふわりと浮かび上がる。それは邪神がもたらす宝石化の光線を防ぎ、惑乱の輝きを遮る盾となる。
 そしてダンスと旋律から生み出された力は光となり、お返しとばかりに敵に放たれた。

『―――!!!』
 栄華と希望と太陽を体現した、絢爛たる光の衝撃波が「輝き惑わすもの」を怯ませる。
 同じ光であっても決して相容れぬそれは、邪神には忌避の対象だった。ダメージ自体は然程でもないようだが、反射的に光から逃れるように後退する。
「どうした、何をしている……!」
 単純な力の差を考えれば、多少の損害など気にせず攻撃に徹すれば勝てたはず。にも関わらず「輝き惑わすもの」がそうしなかったのは、召喚主であるカルロスが邪神を完全に御しきれていない証左であった。

「もっと邪神を制御できていれば反撃の余地など与えなかったでしょうね」
 力に驕った者の過ちを見逃すクロリアではない。攻撃の手が止んだ間隙に【蠱の人】を発動し、自らが紡いだ旋律に肉体を与える。絢爛の旋律とダンスの力で受肉したそれは、燦然と輝く人型の光として具現化された。
「行きなさい」
「ぐ……ッ!」
 舞い踊るクロリアの号令の下、光の人型はカルロスの元に向かって一直線。邪神さえ怯ませた栄華の輝きは、それを操っていたオブリビオンに対しても有効な攻撃手段となる。
 光輝の集団に灼かれた男は苦痛の呻きを上げながら、やむなく体制を立て直すための後退を余儀なくされるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
◆POW
制御もできない力を使うとは余程の自信家か、それとも追い詰められているのか…
どちらにしても強敵には変わりない、油断なく挑む

まずは攻撃より回避を優先、触手に変化していない地面を見極めそこへ移動、そこも触手に変わればまた別の場所へ
邪神の力を完全に制御できていないなら、大量の触手を正確に操るのは難しいのではないかと予想
あえて触手の数を増やしたのは、能力の制御の難易度を上げてやる事が狙いだ

制御もままならない触手なら、多少の無理は通るかもしれない
敵へ向かって走り、こちらを狙う触手ごと三の王笏へユーベルコードで反撃を仕掛ける
フェイントを混ぜて動きに緩急をつけ攪乱しつつ、攻撃の間合いまで距離を詰めたい



「制御もできない力を使うとは余程の自信家か、それとも追い詰められているのか……」
 己でも御しきれないものを頼みとするのはまともに考えれば愚挙の極みだが、敵はこの世界の覇者たるオブリビオン・フォーミュラ。わけてもこの地は最重要拠点のひとつと考えれば、なりふり構わない迎撃体制にも一理はあるかもしれない。
「どちらにしても強敵には変わりない、油断なく挑む」
 敵の思惑がどうあれど、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の気構えに一切緩みはなかった。待ち受ける敵の首魁と邪神を視界に収め、扱い慣れたハンドガンを手に臨戦態勢を取る。

「この拠点をまだ失うわけにはいかんな。迎え撃て『大地を喰らうもの』よ」
 『三の王笏』カルロスは少なくとも表面上は大きな動揺も見せず、上陸する猟兵の迎撃にあたる。顕現した邪神「大地を喰らうもの」は牙の生えた無数の触手を伸ばし、新たな獲物に喰らいつこうとする。
(まずは攻撃より回避を優先だ)
 シキはまだ触手化していない地面を見極めて退避。邪神の侵食範囲が広がりそこも触手に変われば、すぐにまた別の場所へ移動する。この島にいる限り、どこにいても安全地帯など存在しないだろう。逃げ続けてはいられない事は承知の上で、あえての"逃げ"だ。

「逃さんぞ」
 島内を駆け回る標的を追って、カルロスは新たな触手を次々と顕現させる。地面さえあれば場所を選ばず出現し四方八方から迫る触手の群れは、着実にシキを追い詰めていく。
 しかし召喚する触手の数を増やすのはカルロスにとってもリスクがある。強大な邪神を複数体操ることで加速度的に高まる危険性、それはシキがこの窮地を脱する活路だった。
(邪神の力を完全に制御できていないなら、大量の触手を正確に操るのは難しいのではないか)
 そう予想した彼は能力の制御の難易度を上げてやる事を狙って、あえて逃げ回ることで触手の数を増やさせたのだ。いかにフォーミュラと言えども一度に制御可能な邪神の数には限界があると踏んで――そして、彼の予想は正しかった。

『ギギギギ……』
「む……この、我に従え……!」
 あまりにも殖えすぎた触手の一部が、主の意志を無視して無軌道に暴れだす。カルロスは制御を取り戻そうとメガリスから念を送るが、一度外れてしまった首輪を再び付け直すのは簡単ではない。
(制御もままならない触手なら、多少の無理は通るかもしれない)
 待ち望んでいた機を逃さず、シキは踵を返すと敵に向かって走りだした。狙うべき対象へ視線を走らせ、ハンドガン・シロガネの銃口を向ける。無言のまま引き締められた表情は、まさに獲物を見定めた狼のそれだった。

「くっ……貴様、こうなることを狙っていたか……!」
 ようやくシキの狙いに気付いたカルロスはまだ制御下にある触手を差し向けるが、これまでと比較すればその動きは明らかに粗雑で、暴走する邪神の本能を抑えこめていない。
 シキはフェイントを織り交ぜた緩急のある動きで触手を撹乱し、攻撃の間合いまで距離を詰めると、シロガネのトリガーを引き――。
「捉えたぞ」
 狙い澄ました【ブレイズ・ブレイク】の連続射撃が、彼を狙う触手ごと『三の王笏』を撃ち抜いた。実直な鍛錬と実戦経験に裏打ちされた威力と精度は、邪神やオブリビオン・フォーミュラに対しても有効打を与えうるものだ。

「っが……!!!」
 カルロスの身体から鮮血の飛沫が上がり、シキの周囲にいた無数の触手が千切れ飛ぶ。
 これは御しきれない力に頼った男自身のツケでもある。その欠陥を見事に突いたシキは変わらずストイックに銃弾をリロードし、臨戦態勢を維持するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルデルク・イドルド
アドリブ連携歓迎

カルロス・グリードの分身体とは何度か戦ったがまた厄介な感じだな。
さらに此処は敵の本拠地だ気は抜けない。

とりあえず【結界術】の展開はしてみるが望み薄だろうな。
宝石…俺を救ったメガリスの指輪を手に入れた瞬間からあの輝きに魅せられるようになった。
昔の俺ならこの攻撃は堪えたろうが今の俺には宝石とは別の『宝物』があるんでね!

さらにキルケによる【おどろかし】てもらうこと正気を取り戻し
UC【剣乱舞踏】で【蹂躙】



「カルロス・グリードの分身体とは何度か戦ったがまた厄介な感じだな」
 分身ごとに異なる世界の力を具現化させる『王笏』の能力。その脅威を身をもって知るアルデルク・イドルド(海賊商人・f26179)は、口元には不敵な笑みを浮かべながら、眼光は鋭く『三の王笏』を見据える。
「さらに此処は敵の本拠地だ気は抜けない」
 猟兵が始めて上陸することになる七大海嘯の拠点。それは最重要の制圧目標というだけでなく、グリードオーシャンに浮かぶ数々の島の中でも格段の特異性を持つ。島そのものが『邪神山脈』と化したこの地で敵が何を仕掛けてくるか――油断は決して許されない。

「海賊か。強欲な貴様らの相手にはこの邪神が相応しかろうな」
 アルデルクの装束からその生業を看破した『三の王笏』カルロスは、メガリスを振るい【邪神「輝き惑わすもの」】を召喚する。大地を裂いて現れたその邪神は巨大な宝石そのものの外見をしており、その身から放たれる輝きは人を欲望に狂わせる力を持つ。
(とりあえず結界術の展開はしてみるが望み薄だろうな)
 アルデルクは咄嗟に守りの結界を張ったが、強大な邪神の攻撃をそれで防げるとは本人も期待していなかった。輝きを浴びた彼の視線は敵に釘付けとなり、それを手に入れたいという欲が湧き上がる。それが邪神の力と分かっていても抗いがたいほどの衝動だった。

「……昔の俺ならこの攻撃は堪えたろうが」
 だが――一瞬「輝き惑わすもの」に手を伸ばしかけたアルデルクは、その指に嵌めた指輪を見て我に返る。美しく、どこまでも深い海を閉じ込めたような「深海石の指輪」は、かつて彼を救ったメガリスであり、どんな金銀財宝よりも彼の心を惹きつける宝である。
「俺には宝石とは別の『宝物』があるんでね!」
『ソウダ! ソウダ!』
 深海の輝きに魅せられた男は、指輪を嵌めた手を固く握り締め、血が滲む痛みで自我を繋ぎ止める。同時に傍らにいたオウムの「キルケ」が甲高い鳴き声で叫んでおどろかし、惑わされかけた彼をはっと我に返らせた。

「ただの人間が、邪神の精神汚染に正面から抗ったというのか……?!」
 正気を取り戻したアルデルクに対し、カルロスは驚きを隠せずにいた。もしも後一歩、男が宝石に手を伸ばしていたら「輝き惑わすもの」が放つ光線は彼自身を宝石に変えていただろう。まさに間一髪――だがこの先制攻撃を凌いだのは大きい。
「さぁ、踊らせてやる」
 敵が動揺から冷めやらぬうちに、アルデルクは数百本もの海の魔法剣を召喚。それらを一斉に放つ【剣乱舞踏】を以て、カルロスと「輝き惑わすもの」に包囲攻撃を仕掛けた。

「金銀財宝どれも好きだがやはり宝石が一番だ。だがこいつはその中でも特別なんでね」
 深海石の輝きを受けて、複雑な幾何学模様を描き飛翔する海の魔剣。全方位より襲い掛かるそれらはカルロスと「輝き惑わすもの」を分断しそれぞれの身体を斬り裂いていく。
 その光景はまさに蹂躙だった。海賊の心意気を見誤ったカルロスは「おのれ……ッ!」と忌々しげに呟くと、傷を負った身体をかばって後退していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
本拠地強襲とは心躍るわね
蒸気ゴーレム「蒸気王」で登場

・先制対策
巨大な触手は蒸気王でもきつい
直撃を避ける【操縦】、回避不能時の【ジャストガード、受け流し】、被弾時の【オーラ防御】で凌ごう

守勢に回りつつ、奴を冷徹に観察して打開策を探る【情報収集】
触手の攻撃に邪神共を巻き込む立ち回りで、奴の邪神支配力の綻びを待とう

「迦楼羅王!」
勝機を見極め、黒の機体を召喚
「機甲顕現……天蛇王!」
神器蛇矛を依代に深緑の武将めいた機体を召喚

「ったく、これ毎回やるの!?」
錬金科作のUCの口上(強制)を読み上げ、三機合体だ

「力を見せなさい、蒸気帝!!」

その【怪力】で触手を引き千切り、聳える山脈を全力で【吹き飛ばし】に行こう



「本拠地強襲とは心躍るわね」
 早くも発見された『三の王笏島』の海岸線にて、外洋より接近する巨大な影。背中から蒸気を噴き出し、波飛沫と共に戦場に降り立ったそれは、才堂・紅葉(お嬢・f08859)が操縦する蒸気ゴーレム「蒸気王」だった。
「それじゃぶちのめさせて貰うわよ」
 大きく、重く、強い。アルダワ学園錬金科の浪漫――もとい技術の粋を詰め込んだ魔導蒸気文明の申し子は、邪悪なるオブリビオン・フォーミュラを打ち砕くために前進する。

「また大層なものを持ち出してきたものだ。『大地を喰らうもの』よ、歓迎してやれ」
 人の背丈を遥かに越える鋼鉄の巨人に対し、『三の王笏』カルロスは配下の邪神に迎撃を命じる。邪神山脈と化した大地から出現するのは、牙を生やした数え切れない程の触手――大地そのものが牙を剥いたような、冒涜的で悍ましい光景が紅葉の前に立ち塞がる。
(巨大な触手は蒸気王でもきつい)
 振り下ろされる触手から直撃を避けるため、蒸気王を操縦する紅葉。蒸気ブースターによる飛行機能もあって、その機動性は見た目ほど悪くはない。しかし、この島の上にいる限り無限に発生する「大地を喰らうもの」の攻撃から逃げ続けることはできない。

「しょせんは人が造りしものが、邪神の力に敵うとは思わぬことだ」
 カルロスの指揮の下、苛烈に蒸気王を攻め立てる邪神の触手。紅葉は回避不能と判断した攻撃を装甲の厚い部分でタイミングよく受け流し、機体にオーラを纏わせることで被弾時のダメージを軽減する。
(焦るな。相手の動きをよく見ろ)
 彼女は守勢に回りつつも敵を冷徹に観察して打開策を探っていた。これだけ強大な邪神を操るのはフォーミュラと言えども難しいはずだ。触手の攻撃に別の邪神共を巻き込むよう位置取りを考えて立ち回り、敵の支配力に綻びが生じるのを待つ。

『―――!!!』
 紅葉の蒸気王に誘導されて、互いに絡みあい喰らいあった「大地を喰らうもの」達は、やがて無軌道な暴走を始める。これまで以上に悍ましくのたうちまわる邪神触手の群れ。それは召喚主であるはずの『三の王笏』にまで牙を向けた。
「ッ……何をしている、貴様ら!」
 カルロスは苛立ちを隠せない様子でメガリスを掲げ、邪神を再び支配下に起こうとするが、そのためには暫しの時間と集中を要する。それは戦局を逆転させうる十分な猶予だ。

「迦楼羅王!」
 勝機を見極め、紅葉は力強い叫びと共に高機動型キャバリア「迦楼羅王」を召喚。忍者めいた外観の黒い機体が蒸気王の隣に颯爽と降り立ち、赤い焔のマフラーをなびかせる。
「機甲顕現……天蛇王!」
 続いて現れたのは深緑を基調とした武将めいたイメージのキャバリア。神器蛇矛を依代に喚び出された強襲用重装機体「天蛇王」は、いかにも猛将らしい佇まいで矛を構える。
 邪神山脈に並び立った三機の巨人。紅葉の元にこれらが揃った時、"王"すらも凌駕する驚天動地、抜山蓋世、三位一体の究極マシンが降臨する。

「合体支援ガジェット展開……追加ジョイント接続確認……電子系シンクロ承認……蒸気合体!」
 紅葉が「ったく、これ毎回やるの!?」と錬金科作の口上を渋々ながら読み上げると、三機のマシンは空中で合体を開始する。蒸気王を中心として各パーツに変形する迦楼羅王と天蛇王――より巨大に、そして強大に、吹き荒ぶ蒸気の中から現れるその機体の名は。

「出なさい、蒸気帝!!」

 見よ、大地を震わすその威容。ついに降臨せし【蒸気王】は、怯えるように震える触手を無造作に引き千切りながら進撃する。その圧倒的巨体とパワーの前では地形を占有する「大地を喰らうもの」でさえ、ただのたうつだけの蚯蚓同然。
「これは……!?」
 愕然とするカルロスの前で蒸気帝はゆっくりと構えを取り、全力の一撃を叩きつける。
 抜山蓋世――力は山を抜き、気は世を蓋うとの形容通り、その拳は聳え立つ山脈すらも打ち砕いた。

「吹き飛びなさい!」
「な、なんという―――!!!!」
 崩れ行く山の瓦礫に巻き込まれ、落下していく『三の王笏』。この日、彼の拠点の地形は大きく変化し、山脈には蒸気帝が叩きつけた拳の跡がはっきりと刻みつけられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

非在・究子
【WIZ】
か、輝きで、惑わしたり、宝石に変えたり、して、来る、邪神、か……こ、こういう、場合は、BS耐性を、上げる、のが、定石、だな。ぼ、【防具改造】と【ハッキング】の、組み合わせ、で、あ、アタシの、『ゲームアーマー』の、BS耐性値を、限界まで、高める
そ、そうやって、ゆ、UCの、起動時間を、稼いだら……ま、魔砲少女、モードで、一気に、攻める、ぞ。げ、『ゲームウェポン』を、変化、させた、『魔砲』の、攻撃を、受けて、見ろ。

(欲望……あ、アタシに、取っては、金銭も、宝石も、等しく、ただの、アイテムだ……むしろ、欲しいのは……スコア、に、より、早い、クリア、タイム。さっさと、落ちろ、よ、レイド、ボス)



「くっ……恐るべきは猟兵の底力か。まさか我が本拠地でこうも敵の跳梁を許すとは」
 自らにとって最も有利なはずの『三の王笏島』にいながら、猟兵の侵攻に優勢を保てずにいる現状をカルロスは憂い、奥歯を噛みしめる。八つあるうちの一つとはいえ、この地の失陥は残る他の本拠地でも同様の事態が起こりうることを意味する。
「看過し難い事態だ。邪神よ、我にさらなる力を貸せ」
 メガリスを通じて大地に念じると、地の底より現れるは【邪神「輝き惑わすもの」】。
 宝石のような姿をしたその美しき邪神から放たれる光は、人の欲望をかきたて、浴びた者を宝石に変える妖光であった。

「か、輝きで、惑わしたり、宝石に変えたり、して、来る、邪神、か……こ、こういう、場合は、BS耐性を、上げる、のが、定石、だな」
 キラキラ輝く邪神を見上げ、どもりがちに呟くのは非在・究子(非実在少女Q・f14901)。ゲームの世界に生まれゲームの世界で生きてきた彼女の脳は、この「ボスキャラ」を攻略するための作戦をすぐさま導き出す。
「ぼ、【防具改造】と【ハッキング】の、組み合わせ、で、あ、アタシの、『ゲームアーマー』の、BS耐性値を、限界まで、高める」
 彼女の歪んだ現実認識と秘められた才能は、ゲーム上のデータを現実に再現し、現実をゲームのように改変することさえ可能とする。本人にしか見えないステータス画面を開いて、その数値を軽く弄ってやるだけで、彼女の状態異常耐性は飛躍的に高まった。

『―――……』
 邪神「輝き惑わすもの」は何も語らず、究子に向けて光線を放つ。が、耐性値のアップした彼女の「ゲームアーマー」はそれを防ぎ、宝石化のバッドステータスを無効化した。
「ひ、光属性、の、耐性、も、上げて、おく、か……ぐ、ぐひひっ」
 あまり少女らしからぬ笑い方をしつつ、自身のステータスをいじくり回して邪神の攻撃に耐える究子。それを見て直接的な手段は効果が薄いと判断した「輝き惑わすもの」は、欲望をかきたてる光で彼女を混乱させようとするが――。

(欲望……あ、アタシに、取っては、金銭も、宝石も、等しく、ただの、アイテムだ……)
 ゲーマーにとって金銀財宝とはあくまでゲームを攻略するうえでの一要素。フルコンプでも目指さない限りは無理にゲットする必要もなく、余程のレアアイテムでも無い限りは代替手段で入手可能。ただデカいだけのドロップアイテムに興味はない。
(むしろ、欲しいのは……スコア、に、より、早い、クリア、タイム)
 物欲とは別の欲望をかりたてられた究子は【魔砲少女ラジカルQ子】に変身。最高得点での最速攻略を目指し(なお、その基準は本人にしか分からない)、一気に攻撃に移る。

「"ラジカル・エクステンション! 魔砲の力でなんでも壊決! ラジカルQ子、ただ今、惨状!"」
 スキップ不可能な変身演出とセリフに内心(……か、勘弁してくれ)と心抉られつつ。究子改めラジカルQ子は魔砲形態にコンバートした「ゲームウェポン」の砲身を邪神共に向ける。
「この、『魔砲』の、攻撃を、受けて、見ろ」
『―――……?!』
 派手な効果音とエフェクトに合わせて放たれる謎のビーム。いかにもゲーム的な演出だが、現実を塗り替える彼女の攻撃は、その「演出通り」の威力を現実でも具現化させる。
 判定はクリティカルヒット。「輝き惑わすもの」の宝石体に風穴が開き、膨大なエネルギーの奔流がカルロスの元に襲い掛かった。

「ッが……なんだ、この威力は……!?」
(さっさと、落ちろ、よ、レイド、ボス)
 砲撃で吹き飛ばされたカルロスに、無慈悲な追撃を重ねるラジカルQ子。攻略のための効率を何より重んじるゲーマー特有の冷徹さが、グリードオーシャンの王を追い詰める。
 このシナリオのエンディングを――即ち戦いの終わりを見るまで、彼女は止まらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
この島を含め王杓は8つ
着実に攻略したいものですが…先ずは眼前の脅威への対処ですねっ…!

●騎乗した機械飛竜による●空中戦で邪神山脈を飛行
触手の発生と軌道をセンサーでの情報収集と瞬間思考力で見切り、回避しつつカルロスを捜索

統制が不完全な以上、銀河帝国の対空砲火より狙いが甘いのが幸いですね
重力下の空戦経験も積んだ故ですが…!

UCの使用準備も完了すれば加速し敵を捕捉

頭上よりのご無礼はお許しを、王よ
三の王杓、折らせて頂きます

照準レーザー乱れ撃ちスナイパー射撃で触手とカルロスをロックし重力波で押し潰し急降下
●操縦する飛竜の口で噛み付き上空へ拉致
放り投げ●怪力ランスで地上の回復しつつある邪神触手へ叩きつけ



「この島を含め王杓は8つ。着実に攻略したいものですが……先ずは眼前の脅威への対処ですねっ……!」
 機械飛竜「ロシナンテⅢ」に乗って『三の王笏島』に上陸したトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が見たものは、地面を埋め尽くさんばかりの触手の群れだった。大地そのものを代償として顕現する【邪神「大地を喰らうもの」】――その脅威はこの島にいる限り、決して逃げ場がないことを意味している。
『空から来るとは不遜だな。その機械ごと地に引きずり下ろしてくれよう』
 どこからともなくカルロスの声が聞こえてきたかと思うと、地上の邪神が空に向かって一斉に触手を伸ばす。この対空攻撃に捕まれば、機械であろうとたちまち邪神の餌食だ。

「防戦一方では埒が明きません。早く指揮官を見つけなければ」
 機械飛竜を駆って邪神山脈の上を飛び回りながら、トリテレイアは搭載されたセンサーをフル稼働して攻撃予測と索敵に当たる。広大な地面のどこから触手が発生し襲ってくるか、そのタイミングと軌道を把握し見切るのは電子頭脳の思考速度がものを言う局面だ。
「統制が不完全な以上、銀河帝国の対空砲火より狙いが甘いのが幸いですね。重力下の空戦経験も積んだ故ですが……!」
 完全に統制された軍事兵器の攻撃に比べれば、本能のままに暴れる触手の攻撃は荒い。
 オブリビオン・フォーミュラの力をもってしても、邪神の完全制御が叶わなかったのは幸いだった。巧みな空中機動で敵の猛攻をかい潜り、騎士は島内にいる生体反応を探る。

「――……発見しました」
 目標捕捉と同時にトリテレイアは準備していた【戦機猟兵用重力制御兵装装備型強化ユニット】を起動。追加された背部大型スラスターと重力・慣性制御機構を使用して加速、音速を凌駕する猛スピードで目標の上を取る。
「頭上よりのご無礼はお許しを、王よ。三の王杓、折らせて頂きます」
「貴様……!」
 上空から見下されることに苛立ちを露わにするカルロス。彼は即座にメガリスを通じて邪神「大地を喰らうもの」に不届き者の撃墜を命じるが――それよりも早くトリテレイアの頭部に追加されたレンズが輝き、まばゆい光の線が大地に降り注ぐ。

「ッ……なんだこれは」
 カルロスと触手群を捉えたそれは照準用のレーザー。強大なフォーミュラや邪神相手には拍子抜けする程度のダメージしか無いが、その直後にロックオンされた目標に向けて、本命の重力兵器が起動する。
「グラビティガン、最大出力」
「ぐおッ……!!?」
 発生する局所的な重力波がカルロスを地面に這いつくばらせ、触手の群れを押し潰す。
 スペースシップワールドで普及する型とは規模も威力もまるで違う。敵群の動きが止まったのを見て、騎士は飛竜に乗って地上に急降下する。

「これしきの事では王を討つには不足でしょう。失礼致します」
「ぐッ?! は、放せッ」
 急襲したロシナンテⅢは地を這うカルロスに顎で噛み付き、そのまま上空に拉致する。
 そして相手がもがくのにも構わず宙に放り投げると、トリテレイアがその無防備な胴体に渾身の力でランスを突き立てた。
「お覚悟を!」
「がはあッ!?」
 堪らず血を吐いたカルロスの身体は、槍が突き刺さったまま重力に引かれて地上へと、グラビティガンのダメージから回復しつつある「大地を喰らうもの」に叩きつけられた。
 牙が生えた触手の群れの上に落ちれば、双方共痛手は免れえまい。全身血塗れとなり、地面を転げ回る『三の王笏』。その無様な有様から王者としての威厳はまるで感じない。
 ――だが、その眼からは未だ闘志は消えず、憎々しげに上空の騎士を睨みつけていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベリル・モルガナイト
邪神を。操る。ユーベルコード
そして。それを。完全に。制御できて。いるわけではない
ならば

召喚された。「輝き惑わすもの」の。光線を。【煌宝の盾】で。受け止めます
元より。宝石を。埋め込まれた。盾。
私自身もまた。クリスタリアンであり。身に。纏う。鎧も。宝石で。紡がれた。一品
なれば。邪神の。力も。十全には。発揮。できないでしょう
そして。私の。欲とは。守り抜くこと
それ以外に。心乱さぬよう。【狂気耐性】で。耐え抜きます

盾で。受け。止めている。間は。ユーベルコードを。封じます
つまりは。邪神の。制御が。外れる。ということ
邪神に。備えた。私と。そうでない。貴方
どちらが。先に。倒れるか
根競べと。参りましょう?



「邪神を。操る。ユーベルコード」
 世界の枠組みを超えた『三の王笏』の力を、ベリル・モルガナイト(宝石の守護騎士・f09325)は淡い桃色の瞳で見つめていた。強大な異界の邪神を自在に召喚し支配下に置く――なるほど、フォーミュラの座に恥じない驚くべき能力である。
「そして。それを。完全に。制御できて。いるわけではない。ならば」
 観察から作戦を立てた彼女は、「煌宝のレイピア」と「煌宝の盾」を構えて前に出る。そのいでたちには見る者の目を惹きつけ心に安堵を与える、凛々しさと美しさがあった。

「『輝き惑わすもの』よ、迎え撃て!」
 先の攻防により体勢を崩していたカルロスは、咄嗟に召喚済みの邪神に迎撃を命じる。
 巨大な宝石のような姿をした美しき邪神。その輝きはヒトの心を欲望に狂わせ、肉体を生命なき宝石に変える。まさに「輝き惑わすもの」の名の通りに。
『――……』
 今、その権能の標的となったのはベリル。燦然たる光が一点に収束されたかと思うと、驚異の宝石化光線が放たれる。定石であれば回避すべき攻撃――だが元より避けるつもりなど無かった彼女は煌宝の盾を掲げ、その光を真っ向から受け止めた。

「私自身もまた。クリスタリアンであり。身に。纏う。鎧も。宝石で。紡がれた。一品。なれば。邪神の。力も。十全には。発揮。できないでしょう」
 盾に埋め込まれた宝石が、ベリルの瞳や髪と同色の煌きを放つ。彼女は宇宙を起源としながらも異世界で生まれ育った鉱石生命体クリスタリアン。「輝き惑わすもの」の宝石化攻撃に正面から抵抗できる、おそらくは唯一の種族。
『――……?!』
 邪神の光線を浴びても、彼女の肉体と武具はその本来の輝きを失わない。このような種族が存在することはUDCアース由来の怪物には既知の外だったか、自らの権能が及ばぬ相手に邪神は驚いたような反応を見せた。

「……だが、宝石化に抵抗できたとて、精神への影響は無視できぬはず」
 その攻防を見ていたカルロスはある疑問を抱く。「輝き惑わすもの」が持つもうひとつの権能、欲望をかきたて混乱させる輝きは間違いなく敵の精神を蝕んでいるはずなのだ。だのに真っ向から光を浴び続けていながら、ベリルの表情に心乱された様子はない。
「私の。欲とは。守り抜くこと」
 彼女の中で優先されるべきものは、物欲ではなく騎士としての信念。大切なひととの別れを経て、愛しき残影から受け継いだ誓い。もう誰一人として傷つけさえない、それ以上に叶えたい欲などなく――他一切に乱されぬよう、固く狂気から心を鎧う。

「私の。後ろには。行かせません」
 【是は勇猛なりし覚悟の盾なれば(モルガナイト・プロテクト)】。城塞の如く揺るぎのない構えで、邪神の攻撃を受け続けるベリル。そして微塵も動じない彼女とは対照的に「輝き惑わすもの」の様子には変化が現れだしていた。
「どうした、『輝き惑わすものよ』――ッ!?」
 突如として宝石邪神は反旗を翻し、召喚主であるはずのカルロスに光線を放ったのだ。
 いや、カルロスにだけではない。目についたあらゆる物に光を浴びせ、周囲を無差別に宝石化させていく――その様子は明らかな"暴走"と呼べるものだった。

「貴様の仕業か!」
 この状況で邪神暴走の原因は一つしか考えられない。射抜くようなカルロスの視線に、ベリルは優雅な微笑みで応じた。盾で攻撃を受け止めている間、モルガナイト・プロテクトは対象のユーベルコードを封じる。それはつまり邪神の制御が外れるということだ。
「邪神に。備えた。私と。そうでない。貴方。どちらが。先に。倒れるか」
 暴走した「輝き惑わすもの」の悪意は全ての存在に平等に降りかかる。元から敵対していたベリルにとっては何も変わらないが、カルロスからすれば敵が一体増えた事になる。それも自身を上回りかねないほどの力を持った強大な敵が。

「根競べと。参りましょう?」
「おのれ……ッ!」
 不動の構えを崩さないベリルに、光線の射線から飛び退くカルロス。どちらに余裕があるかなど顔を見れば一目瞭然だった。クリスタリアンほどの耐性を保たない『三の王笏』の身体は、邪神の輝きを浴びた末端から徐々に宝石化していく。
「……この我が、飼い犬に手を噛まれるとはな」
 制御を取り戻すこともできず、結局先に音を上げる羽目になったカルロスは、やむなく邪神を強制退去させる。大地に沈み込むように消えていく「輝き惑わすもの」――だが、それまでに受けたダメージは消失せず、彼の片腕は完全な宝石と化していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

漸く、御本人のお出ましか
確かに…先の分身よりも手ごわそうだな

敵の出す触手を踏み付け、その反動でジャンプやダッシュを行い進んで行く
瞬間思考で踏み付けに最適な牙の生えてない部分を即座に判断したり、追撃してくる触手にはカウンターで蹴りを入れたりしてまずは回避に徹する
目指すはカルロスの本体だ

島全体が邪神とはスケールのデカい話だが…
お前自身が制御出来ないのなら、とんだ笑い話だな

カルロスの元に切り込んだらUCを発動
殺到してきた触手をカルロスに向けて蹴り飛ばし攻撃の矛先を向ける
敵が触手に手間取ってる隙を付き、全力で蹴りを叩き込む

御する事の出来ない力を得た者の末路だな
そのまま骸の海へと共に沈め



「漸く、御本人のお出ましか。確かに……先の分身よりも手ごわそうだな」
 到着した敵の本拠地にて『三の王笏』と相まみえたキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は、これまでに遭遇したカルロス分身体との格の違いを即座に感じ取る。
 流石に此処まで追い詰められて、敵も本気を出したということか。邪神山脈と化した島の上なら、UDCアースの力を具現化する『三の王笏』は最大の力を発揮する事ができる。
「島外で戦った"我"と、この我を同列に語ってくれるな」
 男がメガリスをひと振りすると地面が揺れ、牙の生えた触手が無数に湧き出してくる。
 島そのものを代償として喚起された【邪神「大地を喰らうもの」】は、まだ食い足りないとばかりにその触手をキリカへと伸ばした。

「ならば私も全力で相手をしよう」
 キリカは襲ってくる触手のひとつを足で踏み付けると、その反動で跳躍し攻撃を躱す。
 空中から地に蠢く邪神を俯瞰し、"足場"として最適な部分を瞬時に把握。牙の生えているところを避けてまた別の触手を踏みしめ、颯爽とその上を駆けていく。
『―――!!』
 人間風情に足蹴にされたとあっては邪神の名折れ。怒れる「大地を喰らうもの」は触手を殺到させるが、キリカはその都度最適な動作で攻撃を躱し、時にはカウンターの蹴りを入れて道をこじ開ける。目指すはこの触手共を操る『三の王笏』カルロスの本体だ。

「何をしている。我が領土を与えてやったものがその体たらくか!」
 カルロスの恫喝の下で、邪神は何としてでも獲物を捕らえようとする。牙の生えた触手の何本かがキリカの身体を掠めるが、多少血が滲んだ程度で彼女の疾走は止められない。
 彼女の履いている「アンファントリア・ブーツ」は、どんな地形上でも最高の走破性と運動能力を発揮できるよう、最新の現代科学と魔法工学で改造を施された逸品であった。

「島全体が邪神とはスケールのデカい話だが……お前自身が制御出来ないのなら、とんだ笑い話だな」
 装備の補助もあって邪神化した大地を駆け抜けたキリカは、カルロスの元に切り込んでにやりと笑う。もしこの男が完全に邪神を制御できていたのなら、いかに彼女でも無数の触手は避けきれなかっただろう。だがそうでは無かったという事実に勝利の活路がある。
「吹き飛べ」
「……ッ?!」
 アンファントリア・ブーツの機能で脚力を最大強化し【サバット】を発動。極限まで威力を高められた単純で重い蹴りが地面を砕き、彼女の後から殺到する触手を吹き飛ばす。
 その触手が飛んでいった先にはカルロスがいる――獲物に散々足蹴にされ逃げ回られた苛立ちから興奮状態に陥った邪神は、すでに敵味方の見境がつかない状態になっていた。

「やめろ、貴様ら、我を誰だと思っている!」
 荒れ狂う「大地を喰らうもの」に攻撃の矛先を向けられたカルロスは、苛立ぢ混じりに触手を振り払いメガリスから念を送る。だが彼が邪神の制御を取り戻すのに手間取っている好機を、キリカが見逃すはずもない。
「御する事の出来ない力を得た者の末路だな。そのまま骸の海へと共に沈め」
 強化状態を維持した全力の【サバット】が、隙を晒した『三の王笏』に叩き込まれる。
 その蹴りの威力たるや大地を破壊し、巨大戦艦さえも轟沈させる程で――そんなものが生身に直撃すれば、オブリビオン・フォーミュラでも無事では済まない。

「がはぁッ……!!!」
 蹴り飛ばされたカルロスの身体はボールのように吹き飛び、邪神山脈の岩肌にしたたかに叩きつけられる。その後に残された破壊の痕跡は、まるで巨人の足跡のようであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
なんとも豪勢な歓迎だね
お返しだ、盛大に祓うとしよう!

敵UCには《早業+属性攻撃+範囲攻撃+先制攻撃》で先を取り、《目潰し+ものを隠す+爆撃+破魔》の閃光に姿を隠し対策
《念動力+情報収集》の力場感知と《第六感+戦闘知識》の《見切り》で知覚を確保、《空中戦》で攻撃を躱す

稼いだ時間で《封印を解く+限界突破+リミッター解除+魔力溜め+エネルギー充填》、《全力魔法》で【神狩りし簒奪者】発動
白雷槍の《弾幕》と黒炎の嵐、そこから生じる莫大な影鎖の《天候操作+地形破壊+神罰+浄化+蹂躙》で反撃だね

巨大も膨大も望むところ、島ごと平らげるには良い的だ
力には相応の代償が伴うもの
その器は負荷にどこまで耐えられるかな?



「なんとも豪勢な歓迎だね」
 不気味で陰鬱な気配に包まれた大地に、蔓延る冒涜的な邪神達。この世のものとは思えぬ光景を目の当たりにして、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は臨むところだと言わんばかりに強気に笑う。
「お返しだ、盛大に祓うとしよう!」
 拡げた双翼に風を受け、鳥のように颯爽と空を翔ける。待ち受ける島主『三の王笏』は手負いなれども未だ健在を示すかの如く、メガリスを高々と掲げ新たな邪神を召喚する。

「『吼えたけるもの』よ、来たれ」
 大地を裂いて現れたのは、邪神の中でも一際冒涜的な異形を誇る漆黒の巨人であった。
 その姿を目にしただけで人は正気を失い、恐怖と狂気に囚われる。不気味な唸り声を上げて拳を振り上げる姿には、対峙するだけで意気を挫く威圧感があった。
『ウオオオォォォォォ―――!!?』
「おっと、歓迎の挨拶は遠慮するよ」
 だがその拳が振り下ろされるよりも一瞬速く、カタリナは先んじて掌から閃光を放つ。
 不意を突かれた「吼えたけるもの」は目がくらみ、標的の姿を見失う。当てずっぽうで振った拳は空を切り、島の大地に無駄な破壊痕を残した。

『オアアアァァアァァァァァ―――!!』
 尚もぶんぶんと腕を振り回し、周囲を蹴り飛ばす「吼えたけるもの」。技巧的なものは一切無いが、涜神的な巨体から繰り出される暴力はそれだけで脅威となる。そこに相手を"見てはいけない"という制約が重なればなおの事だ。
「声にまで正気を奪う効果がないのは幸いだったかな」
 カタリナは目をつむる代わりに念動力による力場を張り、触れたものの輪郭から周囲を把握する。持ち前の第六感とこれまでの戦いで培ってきた知識があれば、視力を封じても知覚は確保できるはずだ。
『アアアアァアアァァァァァ―――!』
 閉じた瞳の代わりに全身が目になったような挙動で、猛攻をひらひらと躱すカタリナ。
 スケールでいえば羽虫のような相手をいつまで経っても叩き落とせず、邪神の咆哮には徐々に苛立ちが混じりだした。

「仕込みは上々、この戦場はもうアタシの掌の上さ」
 攻撃を避け続け時間を稼ぎながら、カタリナは並行して反撃の為の準備も整えていた。
 発動するのは【神狩りし簒奪者】。体内でチャージされた魔力エネルギーが限界を超えてあふれ出し、白雷と黒炎として具現化する。
「巨大も膨大も望むところ、島ごと平らげるには良い的だ」
 右手をかざせば白雷は無数の槍となり、光の速さで「吼えたけるもの」に突き立つ。
 左手をかざせば黒炎は灼熱の嵐となり、彼女が力を解除するまで戦場を焼き焦がす。
 これは邪神とは異なる世界に存在する神の力。カタリナと融合した魔神"暁の主"の権能が『三の王笏島』に降り注ぐ。

「ッ……何をしている『吼えたけるもの』よ、たかがヒトの小娘相手に……」
 攻守逆転に憤るカルロスの言葉は最後まで続けられなかった。邪神を蹂躙する白雷槍と黒炎の嵐、そこから生じる影が莫大の数の縛鎖に変じ、彼の元にも襲い掛かったからだ。
「力には相応の代償が伴うもの。その器は負荷にどこまで耐えられるかな?」
「おのれ……ぐ、があぁぁぁぁ……ッ!!?」
 これは異能封じの縛鎖。カタリナの視界に収まる範囲ならどこにでも現れユーベルコードを封じる。邪神を操る力を失った男には、反動による膨大な負荷のみが襲い掛かった。
 陽炎のように「吼えたけるもの」の姿が消えていくのにかわって、島内に響き渡るのは『三の王笏』の絶叫。戦いの負傷と召喚の負荷は、確実に彼の心身を蝕みつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トキワ・ホワード
三の王笏、此処で散ってもらおうか

一の王笏とは一戦交えたが…今度は敵の根城。警戒はあの時よりも必要か

敵のUCを観察
回避に専念しつつ能力を暴く

光線の当たった箇所は宝石に
それに奴らの放つ輝きを見ると頭がぐらつく

であれば
UCを発動
雷弾を生成できるだけ展開
そして本体へ向ける為の本命である氷弾を数発用意

お前が輝きで人を狂わすというのなら
其の光輝、閃光の中に沈めてやろう

雷弾を斉射
迸る閃光にて輝きと光線の標準を阻害
及び、本体と自分の直線を挟むように左右に雷弾を着弾させた道を作る

敵への対処が済めば氷弾を本体に向け斉射

ここまでが支度だ
俺の魔銃に宿るは雷
お前に向け作った一筋の射線
最大まで強化された一発でお前を射抜く



「三の王笏、此処で散ってもらおうか」
 上陸した『三の王笏島』で、敵の首魁に杖を突きつけるトキワ・ホワード(旅する魔術師・f30747)。以前にも彼は別の『王笏』の分身体と遭遇したが、今目の前にいる相手はその時とは異なる装備をしていた。
(一の王笏とは一戦交えたが……今度は敵の根城。警戒はあの時よりも必要か)
 油断なく動向を観察しようとする彼の前で、カルロスは手に持ったメガリスを掲げる。
 その瞬間現れるのは【邪神「輝き惑わすもの」】。光り輝く宝石のような異形ながら、見る者の目を引きつけずにはいられない、不可思議な美しさがソレにはあった。

「まだ、この地を陥とさせるわけにはいかぬ」
 手負いのカルロスに代わって前線に出た「輝き惑わすもの」は、その身から放つ輝きを集束させてレーザーのように放つ。直感的に危険を察知したトキワが身を翻すと、光線は彼のすぐ数ミリ先を掠めていき、直前まで立っていた地面を宝石の塊に変えた。
(光線の当たった箇所は宝石に。それに奴の放つ輝きを見ると頭がぐらつく)
 胸の内の欲望をかきたてられるような不快感。これもあの邪神の力だろうと彼は悟る。
 物質を宝石化させ、精神を混乱させる光輝の力。どちらか一つでも厄介な権能を同時に行使するとは、流石はUDCアースで畏れられる邪神の一角と言ったところか。

「であれば――」
 邪神の能力を看破したトキワは【エレメント・バレット】を発動。選択可能な炎・氷・雷の三属性の中から、雷属性の魔弾をできる限り大量に生成し、自らの周囲に展開する。
 人の魔術にて作り出されたものなれど、その眩さは局所的には邪神の輝きにも劣らず。
「お前が輝きで人を狂わすというのなら、其の光輝、閃光の中に沈めてやろう」
 計400発にも及ぶ雷弾の照準を「輝き惑わすもの」に合わせて斉射。迸る雷光にて邪神の輝きをかき消すと共に、宝石化光線の照準を阻害するのがその狙いだ。同時に召喚主であるカルロスに向けても一部の雷弾を撃ち込む。
「魔術師め、やるではないか」
『――……!』
 カルロスは素早く身を躱すが、集中砲火を浴びた邪神はそうもいかなかった。数百発もの雷撃が直撃した「輝き惑わすもの」は感電により動きを止め、心惑わす輝きも弱まる。

「ここまでが支度だ」
 本体を仕留める上で最大の障害を止めたところで、トキワは本命に残していた氷属性の【エレメント・バレット】5発を斉射。同時に精霊宿りの魔銃【セレマ】を抜き放つと、その銃口をカルロスに向ける。
「何を狙っている……?」
 カルロスは手に持った笏で氷弾を受け止めるが、それもトキワの予測の範疇。彼の一連の行動は全て、標的を確実に撃ち抜く為の「レール」を作ることに集約されていた。
 先ほど放った雷弾は標的の左右に電流のラインを引き、その間を氷弾のラインが走る。これにより生じた電位差は、一本の見えない電磁レールをカルロスに向かって形成する。

「俺の魔銃に宿るは雷。お前に向け作った一筋の射線」
 銃身と弾に高圧電流を纏わせることで弾丸を高速射出するのが、科学的にはレールガンと呼ばれる魔銃【セレマ】の仕組みである。その「レール」を銃身からさらに延長する事ができれば、弾丸の速度と精度はさらに向上する。
「最大まで強化された一発で、お前を射抜く」
「―――ッ!!!」
 静かな宣言と共にトリガーが引かれ、一条の雷光が戦場を奔る。
 カルロスが反射的に身を躱そうとした時にはもう――弾丸は彼の胸を撃ち抜いていた。
 一拍遅れて鮮血の花が咲き、男は膝から崩れ落ちる。理詰めにより計算されたトキワの戦術は、紋章宿す『王笏』に続き、邪神率いる『王笏』にも劣らぬとここに証明された。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
この度は当店のアルバイト面接にご参加いただき、誠にありがとうございました。カルロスさんには、二次選考であるグループワーク選考にお進みいただきます。
「仕事理解」「企業理解」そして、「ギャグセンス向上」に繋がるような場ご用意させていただく予定です。

「てなわけでカルロス班は『不味いカレーうどんとは?』をテーマにグループワークを行ってください」
邪神の霊もいつの間にか席についている。
しかも邪神とカビパンによる熱い対談は続いていた。

ダンッ!!

「ブラボー!ブラボーよ!」
そんな素晴らしい邪神のプレゼンのサマに惜しげなく拍手を送る。

大丈夫かカルロス、頑張れカルロス!
内定を巡る駆け引きの第二幕が切って落とされた。



「くっ……猟兵め、この我をここまで苦しめるとは……」
 胸に開いた銃創を押さえながら、よろよろと邪神山脈を彷徨う『三の王笏』カルロス。
 尋常でない耐久力を誇るオブリビオン・フォーミュラとて無視できない程のダメージの蓄積。なおも押し寄せる猟兵を迎え撃つには、一度後退し体勢を立て直す必要があった。
「今の内に少しでも回復を……む?」
 そんな彼の前にふと現れたのは、軍服を着た妙な雰囲気の女。もう猟兵が来たかと反射的に身構えるものの全く敵意が感じられない。どころか友好的な雰囲気すら感じられる。
 この女――カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)は戦いに来たのではなく、今日は自分が営業するカレー屋の店主としてやって来たのだ。

「この度は当店のアルバイト面接にご参加いただき、誠にありがとうございました」
「――――…………は?」
 "悩み聞くカレー屋"店主カビパンは、至極真面目な様子でそんなことを言い放った。
 当然ながらカルロスにそんな面接に参加した覚えなど無い。万が一あったとしても別の分身体の体験した事だろう。『三の王笏島』の防衛にあたる、このカルロス・グリードにとっては預かり知らぬ出来事だ。
「カルロスさんには、二次選考であるグループワーク選考にお進みいただきます」
「いや待て待て待て、我はそんなものを受けたつもりは……」
 カルロスのツッコミなどお構いなしに、【黒柳カビパンの部屋】を発動したカビパンは強引に自分のペースに場を持ち込む。伝説級のトーク力を誇る霊をその身に宿した彼女の口車に一度巻き込まれたが最後、めくるめくギャグ展開からは容易には抜け出せない。

「『仕事理解』『企業理解』そして、『ギャグセンス向上』に繋がるような場をご用意させていただく予定です」
「全てにおいて疑わしいのだが???」
 カルロスに懐疑と不審の眼を容赦なく浴びせられても、カビパンはへこたれないし止まらない。どこから用意したのかパイプ椅子と長テーブルを設置して、なんとなく面接会場っぽいスペースを作る。ここ邪神山脈のド真ん中なのだが。
「てなわけでカルロス班は『不味いカレーうどんとは?』をテーマにグループワークを行ってください」
「だからなんだそのテーマは……待て、カルロス"班"だと?」
 複数を意味する単語が使われたということは、自分の他にこの茶番に巻き込まれた者がいるのかと――辺りを見回したカルロスは、いつの間にか席についている変なのを見た。

『――……』
「って貴様は『輝き惑わすもの』ではないか!?」
 正確には座るというより、パイプ椅子の上でふわふわ滞空している美しい宝石。それは紛れもなくカルロスの支配下にあったはずの邪神の一柱だった。どうも彼よりも先に面接に連れて来られたらしいソレは、カビパンと何やら熱く対談を行っている。
『――……』
「ふむふむ、なるほどなるほど」
「いや何がなるほどなのだ!」
 そもそもヒトとの意思疎通能力のない邪神と普通会話は成立しないのだが、カビパンはなんか分かってるっぽい様子。ピカピカと身体を光らせるパターンから何かを読み取っているのだろうか――暫く目と耳を傾けてから、ダンッ! といきなり机を叩いて叫ぶ。

「ブラボー! ブラボーよ!」
「いや、さっっっぱりわからん」
 素晴らしいじゃ邪神のプレゼンのサマに惜しげなく拍手を送るカビパン。カルロスには一ミリも理解できなかったが、どうも好評らしい。邪神を支配する力を持つ『三の王笏』よりも、一介の猟兵のほうが邪神を理解しているのはどういう事だろうか。
「では次はカルロスさんの番ですね」
「は……?」
 話について行けず置いてけぼりを喰らっていたカルロスだが、カビパンの無茶振りは彼にも容赦なく襲い掛かる。グループワークなんて一切してないしプレゼンの用意などゼロだ。それでも「できません」とは言わせない圧倒的なプレッシャーを彼女は放っている。

「さあどうぞ。さあさあさあ」
「ぐ、ぐぐぐぐぐ……!」
 大丈夫かカルロス、頑張れカルロス。内定を巡る駆け引きの火蓋は切って落とされた。
 本人の意志を置いてけぼりにしたこの圧迫面接から、彼がどうやって逃れたかについては省略するとして――面接後の彼はひどく精神的に憔悴していた事だけは述べておく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
漆黒の巨人…UDCアースの南極(シナリオ「氷界巨神譚」)で同じ様なのに苦戦した事があるけど…今度はそうはいかない…!

幻影術式【残像、高速詠唱、呪詛】で翻弄し、呪術結界【呪詛、高速詠唱、結界術】で敵の力を低減…。
更にカルロスの邪神の制御も呪力で僅かずつでも侵食して狂わせるよ…。

UC発動までの時間を稼いだら【九尾化・天照】封印解放…。
光の屈折を利用した幻影を展開しながら光速でカルロスへ接近…。
光呪のレーザーでカルロス及び邪神を撃ち貫きながらカルロスを狙い、レーザーと凶太刀・神太刀による光速剣で敵本体及びその手の祭具らしきモノを攻撃…。
光速の斬撃でその全身、斬り裂かせて貰うよ…!



「破竹の勢いとはこの事だな……猟兵の攻勢がここまで激しいとは」
 本拠地である『三の王笏島』で自身が劣勢に立たされている事実に、カルロスは驚きを隠せずにいた。前回の「迷宮災厄戦」からおよそ半年ぶりとなる戦争でも、猟兵達の牙は鈍るどころか寧ろ研ぎ澄まされており、海域の探索と敵拠点制圧を順調に進めていた。
「やはり侮れぬ存在か。だが我もまだここで終わるつもりはない」
 傷ついた身体を奮い立たせ、男が喚び出すのは【邪神「吼えたけるもの」】。大地を裂いて現れた漆黒の巨人が、身の毛のよだつような咆哮を上げ、猟兵の前に立ちはだかる。

「漆黒の巨人……UDCアースの南極で同じ様なのに苦戦した事があるけど……今度はそうはいかない……!」
 かつて南極遺跡の調査依頼で遭遇した巨神を思い出しながら、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が妖刀を構える。あの当時と比べれば、自分もずっと成長している。例えこの邪神が氷界の巨神より強かったとしても、もう遅れを取るつもりはない。
『オオオオォォォォォォォオォォ―――!』
 その名の通りに吼えたけりながら、巨大な腕を振り下ろす邪神。見る者から正気を奪う涜神的な巨体から目を逸らしつつ、璃奈は得意の呪術を駆使してこの邪悪な猛威に抗う。
 幻影の術式にて自らの残像を作り、さらに敵の力を低減する結界を張る。幸いにも邪神の力は強大だが攻撃のパターンは単調なもの――幻影で狙いを絞らせないようにすれば、回避はそこまで難しくはない。

『グウウウウゥゥゥゥゥゥゥ―――』
 だが、敵を見てはいけないという制約の元、巨大な敵から逃げ続けるのは心身に負担を強いるものだ。邪神を翻弄しているように見えて、璃奈の額には緊張の汗が伝っている。
 敵もそれを見越しているのだろうか、メガリスを通じて邪神により激しく暴れまわるように命ずる。相手が幻術や結界を使うのならそれごと吹き飛ばせばいい、苛烈な攻撃に耐えかねて集中を切らした時が最後だ。
『ウオオォォォォォォォオォォォ――!』
「む……? どうした邪神よ……ッ?!」
 ところが「吼えたけるもの」は命令に反して、召喚主であるカルロスまで攻撃に巻き込んで暴れだした。元より邪神の制御とは不安定なものだが、こんな単純な指示を本来ならしくじる筈がない――邪神が暴走した原因は、璃奈が張った呪術結界にあった。

「上手くいったみたいだね……」
 敵の力を低減する目的で張った璃奈の結界は、同時にカルロスの邪神の制御を僅かずつ呪力で侵食していた。その結果として、新たな命令を行う際に制御に狂いが生じたのだ。
 これで稼げる時間はそう長いものではないが、彼女にとっては十分。カルロスが邪神の制御を取り戻そうと躍起になっている内に【九尾化・天照】の封印を解除する。
「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
 巫女の身体から目も眩むほどの輝きが溢れ、その毛髪が白銀から黄金に染まっていく。
 その姿はまさに太陽神・天照を思わせる美しき威容。両手に二振りの妖刀を構え直した璃奈は、その身に光を纏ったまま勢いよく駆け出した。

「くっ……仕留めろ『吼えたけるもの』よ!」
 漸く制御を取り戻したカルロスは、向かってくる璃奈を迎え撃つように邪神に命じる。
 だが、再び咆哮と共に振り下ろされた拳が砕いたのは、光の屈折が生んだ幻影だった。本物の璃奈は光の速さで戦場を駆け、既にカルロスのすぐ傍まで接近している。
「覚悟……!」
「ぐおッ?!」
 呪力と太陽の力を集束させた光呪のレーザーが『三の王笏』と邪神を同時に撃ち貫く。
 苦痛に敵が怯んだ隙を突き、璃奈が振るうは妖刀「九尾乃凶太刀」と「九尾乃神太刀」――天照の封印が解かれた今、彼女の斬撃のスピードは光速に達する。

「その全身、斬り裂かせて貰うよ……!」
 肉眼では閃光としか認識できない、文字通りに"目にも止まらぬ"光速の斬撃とレーザーの連撃が敵を襲う。カルロスは盾になるよう「吼えたけるもの」に命じようとしたが、それよりも速く祭具のメガリスがその手から斬り飛ばされる。
「ぐ、おおぉぉぉぉォォォッ!?!!」
 直後に斬撃の嵐に斬り刻まれ、カルロスの装束が真っ赤に染まっていく。邪神さえも凌駕せんと、日々成長を続ける猟兵の力――それはオブリビオンの王すらも圧倒していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
【念動力】の防御障壁と爆裂魔術【高速詠唱、属性攻撃、全力魔法】による爆炎と煙で姿を隠し、先制を回避。

【ブラッディ・フォール】で「最低極まりなき言葉」の「モルトゥス・ドミヌス」の力を使用(フレミアに魔王の翼や角、体格に合わせて外殻が形成)。

「輝き惑わすもの」の力を【己の力にて滅びるがいい】で捕食、または【我が肉体には届かぬ】で無効化。
逆に喰らった邪神の力を妨害して来る邪神やカルロス本体へ向けて返し、突破するわ。

魔王対邪神…そして、邪神の妨害に邪神の力を。
ある意味夢の対決よね。決して歓迎したくはないけど

カルロス本体に【裁定者に仇為す者】で邪神を利用した報いの絶望を騙り、制御を狂わせ、絶望を与えるわ



「邪神の力をすすんで利用しようなんて、強欲なことね」
 UDCアースの力を具現化させた『三の王笏』を、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は冷たい眼差しで見る。自分でも制御できないような力に手を出すのは無謀か狂気か、あるいは愚かか。いずれにせよ歓迎できるようなものではない。
「……我はコンキスタドールを統べる者。強欲であってこその王であろう」
 対するカルロスは血塗れながらも不遜な態度で応じ、拾い上げたメガリスを通じて新たな邪神を呼び寄せる。美しき輝きと共に戦場に出現するのは【邪神「輝き惑わすもの」】――その光に惑わされた者に待つのは、破滅のみ。

「汝も宝石となって、我が財宝の一部となれ」
「絶対にお断りよ」
 輝ける邪神から宝石化の光線が放たれるよりも速く、フレミアは爆裂魔術を発動。念動力の防御障壁で自身の身を守りつつ、爆炎と煙で姿を隠し、先制攻撃の狙いを狂わせる。
 この煙幕は同時に「輝き惑わすもの」の欲望をかきたてる輝きから精神を守る為のものでもある。厄介な権能ではあるが光に依存した能力である以上視界を遮るのが最も有効。
『――……』
 標的を見失った邪神は闇雲に光線を放って炎と煙を散らすが、その時にはもうフレミアの反撃準備は整っている。煙幕の中から現れた彼女は、それまでとは違う姿をしていた。

「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 過去に倒したオブリビオンの力を宿す【ブラッディ・フォール】。フレミアが今回顕現させたのは大迷宮アルダワの支配者・大魔王第五形態『モルトゥス・ドミヌス』だった。
 魔王の力を宿したことで、彼女の身体は漆黒の外殻に包まれ、頭部や背中には悪魔のような角や翼が生えている。その威圧感たるや、目の前に立ちはだかる邪神にも劣らない。
「貴様も異界の力を行使する者か……殲滅せよ『輝き惑わすもの』よ!」
 警戒を強めたカルロスに命じられ、邪神は今度こそ標的を宝石化させんと光線を放つ。
 だがフレミアはそれを避けようともせず、ただ大魔王の能力である『言葉』を発した。

「"貴様らの攻撃は我が肉体には届かぬ"」
 かつて大迷宮にその姿を現したモルトゥス・ドミヌスは、膨大な魔力によって放つ言葉の全てを現実のものにした。それを再演するかのように「輝き惑わすもの」が放った光線は魔力のオーラに阻まれる。
「"己の力にて滅びるがいい"」
 フレミアはさらに言葉を放ち、今度は両手を広げて光線を受け止める。ユーベルコードさえも喰らう大魔王の力を、誇示するかのように――取り込んだ邪神の力はそのまま邪神やカルロスに向けて放ち返す。
『――……???』
「おのれっ……!」
 猟兵達を脅かしてきた宝石化光線の力が、今度はオブリビオン達の元へ。その脅威をよく知る敵は慌てて身を翻すが、それはフレミアに前線を突破する隙を許すことになった。

「魔王対邪神……そして、邪神の妨害に邪神の力を。ある意味夢の対決よね」
 決して歓迎したくはないけど――と呟きながら、フレミアは魔王の翼を広げてカルロスの元に迫る。囁きさえも届くほどの距離から彼女が語るのは、悪意と魔力に満ちた言葉。
「"裁定者に仇為す者には災いあるのみ。邪神を利用した報いの絶望を知りなさい"」
 言霊の大魔王が騙る宣告は、全てが現実のものとなる。それまで制御下にあったはずの「輝き惑わすもの」が突如として暴れだし、召喚主である『三の王笏』に襲い掛かった。
「な……何故だ、やめろ、止まれッ!」
 カルロスがどんなに叫んでも暴走は止まらない。それは邪神を利用しようとした愚か者が辿る末路。忌まわしき光を浴びてしまった男の身体が、徐々に宝石と化していく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
フリークスを山ほど用意しやがって、手厚い歓待じゃあねえか
そこまでしなくたって殺してやるのに

巨人の攻撃とくりゃ、腕の薙ぎ払いかストンプあたりだろう
眼を閉じて、空気の流れに集中
巨大な一撃ともなれば、変化は分りやすい…どういう軌道してるかもな
そいつを【見切り】、回避する
すかさずVoid Linkを実行
さぁ来いよ──虚ろに塗れたウィズワーム!

このデカさ、巨人を相手でも過剰なほどだぜ
俺はこいつを見れねえから、相手はお前に任せる
あぁ、後ついでに──尾をカルロスに向かって伸ばせ
俺はそれを、真っ直ぐたどれば奴に辿り着く
狙われてると知れば、邪神制御にも乱れが出るだろ
上から勢いを利用して、カルロスの首を刈りに行く



「フリークスを山ほど用意しやがって、手厚い歓待じゃあねえか」
 配下の邪神を次々と召喚して猟兵を迎え撃つ『三の王笏』に、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は皮肉げな笑みを見せる。ここは敵の本拠地である邪神山脈、パーティの準備も万全ということなのだろう。
「そこまでしなくたって殺してやるのに」
「では、貴様の命で宴を彩ってもらおう」
 皮肉と殺意の籠もった青年の物言いに『三の王笏』カルロスもまた皮肉げに応じる。
 彼がメガリスを振るえば大地が震え、【邪神「吼えたけるもの」】が咆哮を上げる。

(巨人の攻撃とくりゃ、腕の薙ぎ払いかストンプあたりだろう)
 ヴィクティムは現れた邪神を一瞥して攻撃手段を推測すると、眼を閉じて空気の流れに集中する。UDCアースのフリークス共は総じて冒涜的な造形をしているが、この「吼えたけるもの」は目にしただけでも正気を奪う――なら視覚を使わずに相手をするだけだ。
「巨大な一撃ともなれば、変化は分りやすい……どういう軌道してるかもな」
『オオォォォォォォォオオォォォォ―――!!!』
 咆哮と共に振り下ろされる巨大な腕。邪神がただ身体を動かすだけで暴風が起こり大地が揺れる――ゆえに、その動作は至極見切りやすく。青年は無駄のない動きでひらりと身を翻し、巨人の一撃を回避する。

「さぁ来いよ──虚ろに塗れたウィズワーム!」
 ヴィクティムはすかさず【Void Create『Azi Dahaka』】を実行。その身からあふれ出した漆黒の虚無が、凶々しくも強大な超巨大邪龍の姿を形作る。その大きさたるや、爪や牙のサイズだけでも青年の身長の2倍はありそうだ。
「このデカさ、巨人を相手でも過剰なほどだぜ」
「なんという……!!」
 蒼海を支配し侵略と略奪を繰り返してきた『王笏』も、これほどの怪物と遭遇した事はそうあるまい。驚嘆に目を見開くカルロスの前で、邪龍は耳をつんざく様な咆哮を上げ、その背中で青年は悪童のように笑う。

「俺はこいつを見れねえから、相手はお前に任せる」
 邪龍はヴィクティムの指示に応えて「吼えたけるもの」との交戦に入る。虚無より生まれたモノに奪われる正気など最初からなく、邪神と邪龍の戦いは純粋な肉弾戦となる――爪牙と巨腕が真っ向からぶつかり合う衝撃は、島全体を揺るがすほどであった。
「あぁ、後ついでに──尾をカルロスに向かって伸ばせ」
 熾烈な闘争を繰り広げる邪龍に、ヴィクティムはもう一つ命令を出す。たとえ眼を閉じた状態でも、敵に通じる道があれば、それを真っ直ぐたどれば奴に辿り着くという訳だ。

「来るか……!」
 長大な邪龍の尾の先が自分に向けられれば、カルロスも狙われているとすぐに気付く。
 だが攻撃を警戒し身構えれば、そのぶん邪神の制御は疎かにならざるを得ない。邪龍と戦っている「吼えたけるもの」にとって、その乱れは致命的な隙となった。
『グオオォォォォォオオォォォォ―――!!?!!』
 巨人の喉笛に邪龍の牙が喰らいつき、引き千切る。断末魔の絶叫と共に消えていく邪神をよそに、ヴィクティムは龍の上を滑るように駆け下りていく。眼を閉じたままでも足取りに迷いはなく、手には生体ナイフ『エクス・マキナ・ヴォイド』を握り締めて。

「これで終わりだ、フリークス頼りのスクィッシー」
 上からの勢いを利用した斬撃一閃が、避ける間もなく『三の王笏』の首筋をかき切る。
 頭を落とすには僅かに深さが足りなかったが。深く刈られた首からは噴水のような勢いで血が噴き出し、その表情は苦痛と驚愕に染まる。
「……!!」
 悲鳴を上げることもできず、首の傷を押さえながら、カルロスはがくりと地に伏した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シノギ・リンダリンダリンダ
第三の王笏ゥ!やっと、お前をこの手で!
七大海嘯の一番目の犠牲者は、お前の首ですっ!!!

【強欲の右腕】を起動
欲望をかき立てる輝きなど元より私には無意味。その程度の狂気、我が内なる呪詛に比べればおままごとです
宝石に変える光線は少し惹かれますがさすがにやばいですね。空中戦でたくみに避けましょう
宝石の邪神…気になりますがそうも言ってられない状況です
うむ。こうしましょう

空中戦で避けつつ、王笏に近づき呪詛の猛毒の弾丸を撃ち込む
猛毒で王笏をハッキングし、邪神のコントロールを乱す
乱したら、邪神の宝石光線を王笏に当たるようにして動く
直撃したら、さしもの王笏も宝石になってるでしょう

ふむ。なかなかに綺麗ですよ?王笏



「第三の王笏ゥ! やっと、お前をこの手で!」
 邪神蔓延る島で相対したカルロスに、激しい殺意を示すのはシノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)。海賊としての対抗心か、あるいは他に理由があるのか――何れにせよ生かして返す気はさらさらない剣幕である。
「七大海嘯の一番目の犠牲者は、お前の首ですっ!!!」
 黄金に光り輝く【強欲の右腕】を起動して、カルロス目掛けて一直線。だが、その行く手を遮るように【邪神「輝き惑わすもの」】が出現し、キラキラとまばゆい輝きを放つ。

「……我が首を欲するか。強欲なる者よ」
 血の滲む首筋を押さえながら呟くカルロス。手負いの彼を守る為に「輝き惑わすもの」は自らの輝きで猟兵を混乱させようとするが、シノギの視線は惑うこと無く『三の王笏』ただ一人に向けられたままだ。
「欲望をかき立てる輝きなど元より私には無意味。その程度の狂気、我が内なる呪詛に比べればおままごとです」
 様々な財宝の呪詛を浴び続けた事で生まれた「Curse Of Tomb」の呪毒が狂気を阻む。或いは彼女の場合、強欲過ぎてそもそも変化が現れないのかもしれないが――どちらにせよ今のシノギが狙うお宝は七大海嘯の首だけである。

『――……!』
 自身を無視される形になった「輝き惑わすもの」は、憤慨するように光を集束させる。
 放たれるのはあらゆる物質を宝石化させる光線。精神を惑わす輝きが効果がなくとも、こちらを浴びればシノギもただでは済まないだろう。
「少し惹かれますがさすがにやばいですね」
 実際に食らったら宝石化した躯体パーツが手に入るのだろうか。そんな事を一瞬考えはしたものの、ここは素直に回避を選択するシノギ。右腕から放出される呪詛のエネルギーを推進源にして、巧みに空中を飛び回り攻撃を避ける。外れた光線は大地を宝石に変え、「輝き惑わすもの」は苛立つようにチカチカと身体を瞬かせながらなおも追撃を放つ。

「宝石の邪神……気になりますがそうも言ってられない状況です」
 ひょいひょいと光線を避けつつシノギは次の手を考える。流石にいつまでも回避一辺倒のままでは厳しい相手、かといってそちらに目を向けていては『王笏』を逃してしまう。
「うむ。こうしましょう」
 短い思案のすえに彼女は標的に近づけるギリギリまで近付くと、右掌から黄金の弾丸を放った。それには彼女の体内にて蓄積された、恐ろしい呪詛の猛毒が染み込ませてある。
 万全な状態ならば避けられたかもしれない。だが手負いのカルロスにそれを回避する余裕はなく、撃ち込まれた呪毒は直ちに彼の心身をハッキングし始めた。

「なんだ、この毒は……ッ!?」
 呪毒の目的は『三の王笏』による邪神のコントロールを乱すこと。元より仲間意識など存在しない邪神は、制御を外れてしまえば敵味方に見境なく攻撃を仕掛ける。それを見越してシノギは「輝き惑わすもの」の光線の射線上にカルロスを巻き込むように動く。
(直撃したら、さしもの王笏も宝石になってるでしょう)
 邪神が光るタイミングを見極め、光線が放たれる瞬間に急上昇。シノギの傍を紙一重で掠めていった閃光は、そのまま呪毒に苦しむカルロスに浴びせられた。

「しまっ……!!!」
 間一髪のところで直撃を回避したのは、流石にフォーミュラとしての面目躍如か。しかし暴走した邪神の権能は彼にも無害では済まず、みるみるうちに身体が宝石化していく。
「ふむ。なかなかに綺麗ですよ? 王笏」
 身体の半分ほどまでが宝石になったカルロスを見て、シノギは皮肉たっぷりに笑った。
 怒り、屈辱、焦燥。様々な感情が浮かんでは混じり合う男の表情は実に哀れで無様で、王としての威厳は無いに等しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御前・梨
【街】

この前も言った気がするんすけど、それ(UDC)、うちの物なんで勝手に使うのは止めて欲しいっすね〜…ま〜、貴方とはまた別の貴方に言った事なんで何のこっちゃかもすけどね〜

という訳で、宮入先輩。俺一人じゃ無理なんでお力借りますよ〜

先制対策
傘と短針で触手の攻撃を【受け流し、切断】しながら敵の方へと接近。足場が悪い場合は宮入先輩のサナダ先輩を足場に移動。


宮入先輩が動いたら、【目立たない】ように触手の群れの中に紛れて、敵へと移動。【闇に紛れる、忍び足】

そして、射程範囲まで近寄ったら指定UC発動【騙し打ち、咄嗟の一撃、暗殺、早業】

ほら〜、やっぱり貴方じゃ扱えないじゃないっすか。――じゃ、さよならっすわ


宮入・マイ
【街】っス!

グリシャンなのに見慣れた景色っスな、この触手含めて。

とりあえず触手うねうねだと戦いにくいっスから…『サナダちゃん』頼むっス!
瓦礫やら何やらにくっつけまくって…簡易の足場完成っス!

さー梨ちゃんやっちゃってください!
ズバッと触手が刻まれたら傷口にダイブ!
触手の中なら触手に襲われることはないっス〜、賢い!

さらに〜…【幽言実効】!
触手ちゃん、マイちゃんからのお願い…「暴れちゃダメ」っス!
簡単っスよ〜、ピタっとしてくれたらいいだけっスから!
あーでもでも、カルロスちゃんにはこのお願い届いてるんっスかな…
ま、大丈夫っス!
命令でもダメージくらっても動かなくなるのは一緒っスから!

きゃっきゃ。



「このままでは、不味い……『大地を喰らうもの』よ、我を守護せよ」
 猟兵達の攻勢により窮地に陥ったカルロスは、メガリスを手に新たな邪神を召喚する。
 島の土地そのものを生贄として顕現する「大地を喰らうもの」――男を取り囲むように地面から牙の生えた触手がうねうねと蠢くさまは、直視しがたいほどに悍ましい。

「グリシャンなのに見慣れた景色っスな、この触手含めて」
 しかしまったく動じていない様子の猟兵がここに一人。宮入・マイ(奇妙なり宮入マイ・f20801)にとっては不気味な山も廃墟となった建物も、そして邪神も慣れたものだ。
「この前も言った気がするんすけど、それ、うちの物なんで勝手に使うのは止めて欲しいっすね~……ま~、貴方とはまた別の貴方に言った事なんで何のこっちゃかもすけどね~」
 そんな彼女と一緒にやって来たUDCエージェントの御前・梨(後方への再異動希望のエージェント・f31839)は、故郷の邪神を勝手に利用する『三の王笏』に苦言を呈する。
 分身体同士の記憶がどこまで共有されているかは分からないが、例え忠告が無意味でもここを制圧すればカルロスは復活用の本拠地をひとつ失う。これまでのようにUDCアースの力を具現化するのも難しくなるだろう。

「という訳で、宮入先輩。俺一人じゃ無理なんでお力借りますよ~」
「はいッス! とりあえず触手うねうねだと戦いにくいっスから……サナダちゃん頼むっス!」
 梨の要請にマイはビシッと敬礼で応え、まずは足場確保のための「サナダちゃん」を放った。彼女の身体に巣食う寄生中群「マイちゃん一派」の一つであるそれは、非常に長く頑丈なロープ状の身体を持つ。
「瓦礫やら何やらにくっつけまくって……簡易の足場完成っス!」
「さすが仕事がお早い。感謝しますよ~」
 張り巡らされた虫ロープの上に乗った二人に、襲い掛かるのは「大地を喰らうもの」。
 メガリスの力により支配された長大な邪神の触手群は、捕食衝動のままに牙を剥いた。

「さー梨ちゃんやっちゃってください!」
「ま~、できる限りの事はしますがね~」
 マイが足場を作ったらここからは梨の出番。昼行灯めいた軽薄な調子で黒い傘を広げ、邪神の牙を受け止めると――刹那に時計の短針に似た黒い剣を振るい、触手を切断する。
 彼は猟兵になるまで組織の後方で隠蔽や事務の仕事をしていたと言うが、その太刀筋はとてもただの元事務員とは思えない。彼の実態はUDC組織の中でも暗部にあたる汚れ仕事、表沙汰にできぬものを闇に葬ってきた裏のエージェントである。
「宮入先輩のサナダ先輩がいなかったら、この数は相手できなかったすね~」
 邪魔な触手を斬り捨てながら、虫のロープを伝って『三の王笏』のいる方に向かう梨。その足場とて地面に比べれば不安定なはずだが、戦闘と移動には何の支障もないようだ。

「お見事っス梨ちゃん!」
 梨の活躍ぶりを感心しながら見ていたマイは、彼が刻んだ触手の傷口にぴょんとダイブする。血ではないどろどろと濁った体液があふれ出すそこに飛び込むのはだいぶ勇気がいると思うのだが、寄生虫の集合体という出自ゆえか、彼女に躊躇いはまるで無かった。
「触手の中なら触手に襲われることはないっス~、賢い!」
 確かに邪神にも同士討ちを避ける知性があるのなら、仲間の体内に潜り込んだ相手をどうこうはできないだろう。傷口を抉られた触手は当然のようにのたうち回るが、マイは放り出されないようしっかり四肢を踏ん張って寄生状態を維持する。

「触手ちゃん、マイちゃんからのお願い……『暴れちゃダメ』っス!」
 さらにマイは【幽言実効】を発動し、触手の重要器官に寄生虫を潜り込ませた。もし、この虫に寄生された者がマイの宣告したルールに背いた場合、強制的にダメージが入る。
「簡単っスよ~、ピタっとしてくれたらいいだけっスから!」
 などと彼女は言うが実際のところ、戦闘中に動きを止めるのがどれだけ危険なことか。
 だが逆らう事の危険性を本能的に察知したのか、地を埋め尽くす触手の群れは一時的に身動きしなくなる。何本あろうともこれらは同じ根を持つ邪神「大地を喰らうもの」であり、指定されたルールの影響はこの場にいる全触手に及ぶようだ。

「あーでもでも、カルロスちゃんにはこのお願い届いてるんっスかな……」
 触手の中に潜り込んだまま、マイがひょこりと傷口から顔を出して様子を見てみると、カルロスは動かなくなった「大地を喰らうもの」に憤っている様子だった。虫を直接寄生させられていない彼には、やはりマイちゃんルールは適用外のようだ。
「何をしている貴様ら。さっさと猟兵どもを喰らいつくせ!」
 カルロスはメガリスの力で強制的に邪神を従わせ、ルール違反のダメージも覚悟で敵を殲滅するよう命じる。島の面積を犠牲にすれば新たな邪神をいくらでも呼び出せる彼からすれば、多少の損害は無視してここは押し切るのが最善手だろう。

「ま、大丈夫っス!」
 邪神が再び動き出そうとするのを見て、しかしマイはあっけらかんとした口調で言う。
 傷口から飛び出して逃げる様子さえ見せない。まるでもう勝敗が決まっているかのように、きゃっきゃと無邪気にはしゃぐ。
「命令でもダメージくらっても動かなくなるのは一緒っスから!」
「なにを言って……ッ!!?」
 その態度にカルロスが訝しんだ時、ふいに背後から微かな気配を感じて彼は振り返る。
 いつからだ。一体いつから自分は此奴を見失っていた? そこにいたのは閉じた黒い傘を鞘のように構えた灰髪の男――梨だった。

「ほら~、やっぱり貴方じゃ扱えないじゃないっすか」
「貴様、一体いつの間に……」
 凍りついたように固まるカルロスの表情とは対照的に、梨はへらりと笑う。彼はマイが状況をかき回している間に触手の群れに紛れて、密かに標的との距離を詰めていたのだ。
 もし敵が完全に邪神を制御できていたなら、こんな隙は無かっただろう。強大に過ぎる力を持て余したすえの失態は、彼がUDCアースで散々見てきたものと同じ結末だ。

「――じゃ、さよならっすわ」
 カルロスが何かするよりも速く、梨のユーベルコードが時を止める。停止した世界で抜き放つのは仕込み剣傘・無銘。数多の怪物や裏切者の血を吸わせてきた仕事道具の一つ。
 【――斬(タダキルダケ)】。静寂に包まれた空間で、彼の振るう刃のみが時を刻む。
「…………が、はッ!!!!?」
 そして時が動き出した瞬間、カルロスの身体に刻まれた刀傷から一斉に血が噴き出す。
 数十回分の斬撃のダメージが一気に押し寄せる苦痛は、強固なフォーミュラの心身をもってしても堪え難いものであり。男は自らが作った血溜まりの中にばたりと倒れ伏した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…っ。これが異世界の神の力

…私の心を操ろうとする者は、神であれ赦しはしない

…この世界に住まう人々の為に、そして私自身の為にお前を討つ

邪神の狂気を耐性と闘争心を燃やして気合いで耐え、
心の中で救世の祈りを捧げ真の姿化して"聖霊鎧装"を身に纏い、
邪神の光線を浄化のオーラで防御して受け流しUC発動

…異郷なれど悪なる神に相違無し

…ならば黒炎の鎧よ、黒剣の魂達よ
我が下に集いて、神をも切り裂く刃となれ…!

495体の黒騎士霊を大鎌に降霊して黒炎の魔力を溜め武器改造
極限まで対神属性攻撃を強化した騎士剣を錬成して切り込み、
限界突破した剣閃で光線ごと邪神を切断してなぎ払う

…これが人の、精霊の、そして世界の意志よ



「まだだ……まだ終わるものか。来たれ『輝き惑わすもの』よ」
 重傷を負ったカルロス・グリードは『三の王笏島』攻略の為に上陸した猟兵達を睨み、不気味なメガリスを握り締める。たとえ彼自身が満身創痍でも島の邪神が健在である限り脅威は失われない。邪神山脈と化した島内にはまだ大量の邪神が蔓延っている。
『―――……』
 そんな彼の闘志に呼応するかのように【邪神「輝き惑わすもの」】は妖しき光を放つ。
 かの者の輝きは見る者の欲望をかきたて混乱へと導く。そして人の欲深き一面を嘲笑うかのように犠牲者を宝石に変える、忌まわしき邪神である。

「……っ。これが異世界の神の力」
 その輝きを見たリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)も、心が不可解にざわつくのを感じた。普段は律しているはずの欲望が胸の内から溢れ出し、頭の中をかき乱そうとする――酩酊にも似た不快な感覚に、彼女は気合いを入れて耐える。
「……私の心を操ろうとする者は、神であれ赦しはしない」
 艱難辛苦を経て手に入れた心の耐性と、欲望よりも強く燃え盛る闘争心が、邪神の狂気を退ける。欲望に流されることなく正気を保った少女は「輝き惑わすもの」の前で両手を組む。まるで祈りを捧げるようなポーズだが、祈る対象はこの邪神にではない。

(……この世界に住まう人々の為に、そして私自身の為にお前を討つ)
 心の中で捧げるのは、この世界そのものに向けた救世の祈り。その誓いに呼応した世界中の精霊や霊魂がリーヴァルディの元へと集い、聖なる鎧衣となって彼女の身体を鎧う。
 その装いは黒から白へ。世界の希望を背負い"聖霊鎧装"を纏ったリーヴァルディの真の姿は、凛々しき聖騎士のようでも、麗しき聖女のようでもあった。
『――……!』
 邪神であってもその姿と力には警戒を抱いたのか、「輝き惑わすもの」は自らの輝きを集束させ光線として撃ち放つ。浴びたものを宝石化させる、生命にとっては死の閃光――だが少女は纏う聖霊から白き浄化のオーラを放ち、それを受け流す。

「……異郷なれど悪なる神に相違無し」
 意思を疎通する余地もなく、厄災を振りまく禍々しき威光に、故郷ダークセイヴァーの異端の神に近しいものを感じたリーヴァルディは、静かな闘志を漲らせながら大鎌を掲げ【限定解放・血の騎士団】を発動する。
「……ならば黒炎の鎧よ、黒剣の魂達よ。我が下に集いて、神をも切り裂く刃となれ……!」
 荒涼とした邪神山脈の風景が、無数の武具が突き立った古戦場の幻影に塗り替わる。そこから喚び出されたのは折れた剣や砕けた鎧で武装した黒騎士の霊魂達。朽ち果て主を失い、それでもなお戦場を求める武具の魂の集合体である。

『――我らが剣、我らが炎、汝の元に』
 総勢495体の黒騎士霊は黒炎の魔力としてリーヴァルディの大鎌に降霊され、神を討つ力となる。その力が極限まで解放された時"過去を刻むもの"は"全てを統べるもの"に、美しき騎士剣に形を変える。
『――……!』
「なんと……!」
 煌めく浄化の輝きに「輝き惑わすもの」ばかりかカルロスまでもが驚きの声を上げる。
 彼らの動揺をよそに、リーヴァルディは騎士剣を振りかぶってすっと腰を落とすと――目前の敵を斬り払うために、全速力で古戦場を駆けだした。

「……これが人の、精霊の、そして世界の意志よ」
 世界に満ちるあまねく想いを乗せ、騎士剣を振り下ろすリーヴァルディ。放たれた剣閃は迎え撃たんとした光線に拮抗すら許さず、「輝き惑わすもの」を真っ二つに両断した。
「馬鹿な……人の意思が、邪神を凌駕するだと……ッ!!?」
 愕然とするカルロスの元にも、砕け散る邪神の身体を突き抜け、神狩る剣閃は届いた。
 はっと目を見開いた時には、宝石化された彼の片腕は斬り飛ばされ、宙を舞っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
邪神の蔓延る島とは物騒な……!
とはいえ王笏を放置する訳にもいかぬし、手早く仕留めたいものだ。


邪神の輝きを装飾品の精神耐性で耐えつつ、
すぐに目を閉じて影響を断とう。
直前の光景を学習力で思いだし、
光線を身につけた装飾品の宝石部分で受けるぞ。
元々宝石であるならば、命中してもあまり影響なかろうよ。

敵が邪神を御しきれず、隙を見せたら反撃といこう!
UCを発動し、鏡の精霊に光を反射させながら、
僕は目を閉じたまま精霊銃を乱れ撃ちだ。
勿論、弾は明後日の方へ飛んでいくだろうが──
生憎と、僕の銃には精霊が宿っていてな?
僕が見なくとも、精霊に導かれた弾丸は自在に曲がって敵を穿つさ。

※アドリブ、絡み歓迎



「邪神の蔓延る島とは物騒な……!」
 敵の本拠地たる『三の王笏島』に上陸した瞬間から、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)の五感は言いしれぬ不気味な気配にざわつく。まるで異界に迷い込んだかのような異質で険呑な空気――ここは長居すべき場所ではないと本能が訴えかけてくる。
「とはいえ王笏を放置する訳にもいかぬし、手早く仕留めたいものだ」
 華奢な躯に緊張を漲らせ、手に馴染んだ銃を握り締めながら先に進めば、そこに待っていたのは異国の装束を纏った男と【邪神「輝き惑わすもの」】――何方も満身創痍の様相を呈してはいたが、放つ戦意と狂気に衰えた様子はない。

「我らが勝利の為にもここは死守せねばならん……邪神よ、貴様も死力を尽くせ!」
 カルロスがメガリスを掲げて叫ぶと、半壊した邪神が再び浮かび上がる。光り輝く宝石のように美しいかの姿は、人の心を惑わせる為のもの――それを見たシェーラの心にも、貪欲な衝動が湧き上がりかける。
「僕も欲深いほうだと自覚してはいるが、だからこそ欲望を他人に操られるのは御免だ」
 生来の克己心と身につけた装飾品の効果により、欲望に耐えた彼はすぐに目を閉じて輝きの影響を断つ。たとえ視界を失っても直前まで目に焼き付けた光景を思い出せば、ある程度は支障なく動くことは可能だ。

『――……』
 惑わしの輝きの効果が薄いと悟った「輝き惑わすもの」は、より直接的に外敵を排除すべく攻撃手段を切り替える。放たれるのは宝石化の光線――浴びればミレナリィドールのシェーラでも危ういが、幸いにも対策の手段はすでに"身につけて"いた。
「元々宝石であるならば、命中してもあまり影響なかろうよ」
 彼を彩る煌びやかな装飾品が、今は最大の防具となる。あしらわれた宝石の部分で光線を受ければ、躯体の宝石化は避けられる。あとは相手が隙を見せるまで耐え凌ぐだけだ。

「なにをやっている……!」
 眼を閉じたまま踊るように光線を躱すシェーラの姿に、カルロスは苛立ちを隠せない。
 激戦により蓄積したダメージと疲労は、精神的にも彼を消耗させている。心の乱れから集中が切れるのも致し方ないだろう。だが注力すべき事がある時のそれは命取りとなる。
『―――……』
 猟兵に狙いを集中させていた「輝き惑わすもの」が、ふいに別方向に光線を放ちだす。
 もはやカルロスの現状では、ただでさえ不安定な邪神を御しきるのは難しかった。この好機を逃さず、シェーラが目を閉じたまま精霊銃を構えた。

「隙を見せたな。では反撃といこう!」
 発動するのは【彩色銃技・落花流水】。見目麗しき鏡の精霊を傍らに呼び寄せ、邪神の光線を反射させる。キラキラと散乱する輝きはまるで舞台を照らすスポットライトのようで――その只中にいるシェーラはすっと両腕を左右に伸ばし、精霊銃のトリガーを引く。
「馬鹿め、どこを狙って……」
 カルロスがそう言ったのも無理はない。目を閉じたまま銃を乱射して誰に当たるのだ。
 放たれた弾は勿論、明後日の方へ飛んでいくが――シェーラの口から笑みは消えない。

「生憎と、僕の銃には精霊が宿っていてな?」
 射手に敵が見えなくとも、精霊に導かれた弾丸は自在に曲がって敵を穿つ。本来の射線から大きくうねった曲線の軌道を描いて、乱れ撃たれた弾丸の全てはカルロスを襲った。
「な……ぐあッ!!?」
 これぞ精霊と共に戦う『彩色銃技』の真骨頂。予想を超えた射撃に回避する間もなく、カルロスの口からは苦悶の叫びが上がり、弾痕を刻まれた装束がじわりと赤く染まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・レヴェリー
UDCの邪神と相見えた事はあまりないけれど、完全な制御では無いのなら……こうしましょう

彼が邪神を呼び出した瞬間、その気配を頼りに邪神とカルロスの間に身を滑り込ませるわ
小さなわたしを見るのなら、大きな邪神をも絶対に見てしまうようにね

そこで少しでも隙が出来たら、邪神からの攻撃に巻き込むように距離を詰めながら【友なる金獅子、勇猛の調べ】を発動
ダイナに騎乗して彼に踊りかかりましょう

そうして攻めながらも、彼と邪神の間の位置取りは維持して……背後からの攻撃はダイナの力で周囲の視界を遮らない程度に広範囲に砂を舞わせて、空間を把握することで直視せずに対処するわ

さぁ、余所見をしながらのわたし達の相手は、大変よ?



「我が本拠地で、この『王笏』をここまで追い詰めるか……まだ警戒が甘かったようだ」
 自身にとって最も有利なはずの島で、この窮地。驚嘆と焦りを禁じ得ぬと『三の王笏』は語った。緒戦から全力の進撃を続ける猟兵達は、オブリビオン・フォーミュラの本拠地が一つを、早くも陥落させようかという段階に迫っている。
「しかし我は盤面を途中で放棄はせぬ。『吼えたけるもの』よ、彼奴らを蹂躙せよ!」
 男が血塗れの手でメガリスを掲げると、大地を裂いて巨大な漆黒の邪神が召喚される。
 【邪神「吼えたけるもの」】。その脅威は大きさもさることながら、目にした者の正気を奪う冒涜的存在そのものにある。人を狂気に誘うUDCアースの邪神らしい権能である。

「UDCの邪神と相見えた事はあまりないけれど、完全な制御では無いのなら……こうしましょう」
 だが、敵がその邪神を呼び出す瞬間を待っていた猟兵もいた。アリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)は巨人を直視しないよう視線を伏せながら、その凶々しい気配を頼りにして走りだす。「吼えたけるもの」とカルロス、両者の間に身を滑り込ませるように。
「なっ……?」
 身長130cmにも届かない小柄な少女――それも武芸に秀でているようにも見えない娘が、雲をつくような巨人に自ら近付いてきた意図を、カルロスはすぐには読めなかった。
 だが、少女の様子を見ようとすれば嫌でもその思惑を理解することになる。カルロスの位置から小さなアリスを視界に収めれば、大きな邪神も絶対に見てしまうことになる。

『オオォォオォォォォォ―――!!』
 邪神「吼えたけるもの」の権能は敵味方の区別がつくような都合のいいものではない。
 目にしてしまえば誰であれ、例え召喚主だろうと例外なく正気を奪う。だからこそソレは邪神と呼ばれ、常に恐怖をもって語られるのだ。
「くっ……なんと大胆な真似を……」
 咄嗟に祭具で顔を隠し、邪神を直視しないよう目を背けるカルロス。だがそれは敵を前にした状況では明白な隙となる。この機を狙っていたアリスはさらに距離を詰めながら、【友なる金獅子、勇猛の調べ】を発動する。

「猛る金獅子、気高き王よ、勇みて謳う、わたしの友よ!」
 詩歌を唱えるような呼びかけに応えて、現れるのは黄金の獅子。アリスからはダイナと呼ばれる勇猛なる幻獣は、小さき人形少女をその背に乗せて、カルロスに踊りかかった。
「さぁ、余所見をしながらのわたし達の相手は、大変よ?」
「ぐあ……ッ! 貴様、獣使いか!」
 仮に彼が万全な状態でも、目をそらしたまま獅子の強襲を避けるのは難しかったろう。
 ナイフのように鋭い爪が身体を抉り、血飛沫が地面に赤い花を咲かせる。男はどうにか体勢を立て直そうとするが、彼が警戒すべきはアリスとダイナだけではなかった。

『ウオオォォォオオォ―――!』
「ッ、待て、『吼えたけるもの』よ!」
 駆ける金獅子の背後から追ってきた「吼えたけるもの」が、漆黒の巨拳を振り下ろす。
 それは猟兵達を狙ったものではあったが、乱雑極まる暴力は近くにカルロスがいようともお構いなし。アリスはこれも見越して敵との接近戦に臨んだのだ。
「見えなくても対処できるわよね、ダイナ」
 鬣を撫でる少女の信頼に応えるように、金獅子は大地を蹴立てて砂を舞い上がらせる。
 大地と炎の力を自在に御するのが幻獣としてのダイナの能力。砂塵を介して空間を把握するくらい造作もない。背後から迫る邪神の拳を、ふたりは直視するまでもなく避けた。
 直前までふたりのいた場所に叩きつけられた拳は大地を割り――砕け散った岩石が飛礫となってカルロスを傷つける。巻き添えを喰らった彼としては堪らないだろう。

「この調子よ、一気に攻めるわ!」
 アリスはそうしてカルロスを攻め続けながらも、彼と邪神の間の位置取りを維持する。
 常に邪神に背中を向け、その重圧と狂気を感じながら戦うのはどれほどのプレッシャーだろう。だが勇猛なる友と一心同体となって駆ける限り、少女の心が挫けることはない。
「二対一……否、実質三対一か……!」
 劣勢を悟ったカルロスは体勢を立て直すために、ふたりに背中を向けて後退を始める。
 しかし、その身体には金獅子が刻みつけた爪牙の痕が、深くしっかりと残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御剣・刀也
ははは。島そのものが相手か
だが以下にでかかろうが、操っている奴が居るならそいつを倒せば終わる
この位で俺が止まると思うな

邪神「大地を喰らうもの」で大地を代えられても、勇気で被弾を恐れず、第六感、見切り、残像で避けながら、ダッシュでカルロス・グリードの居るところまで一直線に懸けていき、捨て身の一撃で斬り捨てる
「島一つを武器に変える。その力はすげぇが、俺を止めるには足りねぇ。俺はただ、斬り捨てるだけだ」



「ははは。島そのものが相手か」
 数多の邪神蔓延る島で、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は感嘆の声を上げた。
 蠢く触手に吠える異形、およそこの世のものとは思えぬ光景が目の前に広がっている。この全てをまともに相手取ろうとすれば、なるほど一苦労どころでは済まないだろう。
「だが如何にでかかろうが、操っている奴が居るならそいつを倒せば終わる」
「簡単に……為せると思うてくれるな」
 彼の視線の先にいるのは『三の王笏』カルロス・グリード。いかに手負いとはいえど、邪神を従える能力は今も健在――不気味なメガリスを掲げれば、それに導かれるように大地は蠢きだし、牙の生えた触手が無数に現れる。

「次の獲物は奴だ、『大地を喰らうもの』よ」
 カルロスの指示の元、大地を埋める触手の群れは一斉に刀也に襲い掛かる。土地そのものを代償として召喚された邪神の力、もし油断してかかれば"終わる"のは彼のほうだ。
「この位で俺が止まると思うな」
 だが彼は臆することなく足を踏み出した。剣豪として磨き上げた身のこなしに第六感、見切りのセンスを駆使して触手の攻撃を避け、カルロスのいるところまで一直線に走る。
 文字通りの"敵地"に飛び込むのだ、無傷とはいかない。避けきれない攻撃は甘んじて受け、被弾を恐れず前に進む。苦痛にも邪神の狂気にも屈さない勇気が、彼にはあった。

「なッ……貴様、生命が惜しくはないのか!?」
 迷いのない全力疾走で「大地を喰らうもの」の領域を踏み越えてくる刀也に、動揺したのはカルロスのほうだった。より攻勢を強めるように邪神に命じても、何本の触手に牙を突き立てられても、青年は痛みを感じていないかのように進撃してくる。
「島一つを武器に変える。その力はすげぇが、俺を止めるには足りねぇ。俺はただ、斬り捨てるだけだ」
 そう言って刀也が構えるのは銘刀「獅子吼」。不屈の獅子の様に煌く刃は彼の意志の強さを体現しているようでもあり、その鋭さは人を魅了するほど美しい。この刀を以て彼が成さんとするのは、ただ目の前にいる敵を斬ることのみ。

「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」
 遂にカルロスを刀の間合いに捉えた瞬間、刀也は持てる力の全てを振り絞って捨て身の一撃を放つ。上段から振り下ろされた【雲耀の太刀】は、落雷の如く疾く、そして力強く――対する敵に防御も回避も許さず、一刀のもとに斬り伏せる。
「がはぁッ……!!!!」
 肩から腰にかけて、胴体を袈裟懸けに走る一筋の刀傷。それは心の臓に達しかけるほど深く、噴き出す鮮血は辺りを真っ赤に染める。オブリビオン・フォーミュラの生命力を前提としても、その傷が致命に達する深手であることは、誰の目にも明らかだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルナ・ステラ
邪神...そんな危険な存在を悪用してるなんて!
ここでどうにかしないとですね!

基本的には耐えて隙を狙う戦い方ですね...

地面からの邪神は箒に乗って空で戦うことで、不意打ちをくらわないようにします!
そして邪神の光線や輝きは出来るだけ【見切り】で、避けていきましょう。
その中でユル(方向転換)のルーンカードで跳ね返せそうな攻撃があれば跳ね返して、相手のコントロールが乱れるように仕向けていきます!

隙が一瞬でもできたら、隙ができた瞬間を逃さずに【高速詠唱】と【全力魔法】のUCで一気に畳み掛けます!
—お星さんたちわたしに力を!



「邪神……そんな危険な存在を悪用してるなんて!」
 異界より来たりし冒涜的で悍ましい者共を我が物のように扱う『三の王笏』の所業に、ルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)は憤りを示す。もし、このまま敵の行いを放置すれば、グリードオーシャン全域が邪神の脅威に晒される事態にもなりかねない。
「ここでどうにかしないとですね!」
 気合十分といった様子で、彼女は箒に乗って空を飛ぶ。それは地面から出現する邪神の不意打ちを警戒してのことだ。身構える魔女っ子と、地上のカルロスの視線が交錯する。

「『輝き惑わすもの』よ、撃ち落せ」
 カルロスがメガリスを掲げると【邪神「輝き惑わすもの」】が召喚され、上空に向けて宝石化光線を放つ。これを浴びるのは危険と判断したルナは巧みな箒さばきで空を翔け、流れ星のような軌跡を残して攻撃を躱す。
(基本的には耐えて隙を狙う戦い方でいきましょう……)
 見た目は宝石のように美しい邪神は、輝きで人を欲望に狂わす権能の持ち主でもある。
 なるべく直視しないよう目を逸らしながら、彼女が取り出すのは「ユル(方向転換)」の文字を刻んだマジックルーンカード。飛来する光線をとにかく避けて躱して見切って、タイミングを合わせられそうなものを見定めて――。

「――そこです!」
 ルナがカードを投げつけると刻まれたルーンが発動し、彼女を狙う光線を跳ね返した。
 反射された「輝き惑わすもの」の光線はカルロスの足元へ。反射的に身を躱した彼は、動揺から邪神のコントロールを乱してしまう。
「ぬお……ッ?!」
 それはほんの一瞬の事だったが、戦局を与えた影響は大きかった。『三の王笏』の制御から逃れた邪神は無差別に権能を振りまき、誰彼構わず周囲の全てを宝石化させていく。
 かくして発生した混乱に乗じて、ルナは早口に詠唱を紡ぐ。敵が隙を見せたこの瞬間を逃すわけにはいかない――持てる全ての魔力を使って一気に畳み掛ける。

「お星さんたちわたしに力を! 悪しきものに降り注げ!」
 唱えるのは大切な恩人から教わった【シューティングスター】の魔法。暗い邪神山脈の上空を覆うように、キラキラとまたたく何百という星の光が、地上に向かって降り注ぐ。
 それは宝石の輝きさえ色褪せるような、美しい流星群だった。暴走中につき直撃を受けた「輝き惑わすもの」、そしてカルロスにとっては天より来たる裁きに他ならないが。

「がはあッ……!! 小娘が、これほどの魔力を……!」
 物理的な威力まで伴った流れ星を打ち付けられて、カルロスは堪らず苦痛を叫んだ。
 無垢な優しさの中にあるルナの勇敢さと、邪悪を許さぬ意志の強さを、彼は見誤った。
 降り止まぬ流星群から身を隠すように、やむなく彼は山脈の奥地へと撤退していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リゼ・フランメ
大地、この島そのものが敵
まるで己の強欲さ、そのものね
ならば誇るその邪悪なる魂を灼き斬ってみせましょう


携える断罪刃に破魔、属性攻撃で邪気を焼き払う聖焔を宿して
「さて、罪と悪。刃にて裁かれるのは、どれかしら?」
先制攻撃の予兆として、代償として支払われる島の地形の変化を逃さず見切り
相殺すべく、衝撃波乗せて早業で振るうは烈火の刃
精密に動かせぬのならばと二回攻撃と重ね、カルロスへと迫る隙作り、そのまま炎纏いて切り込むのみ
多少の傷は無視し、UCの代償にと

「何を求め、何を得ようと、貴方は満たされない」


果てなき強欲は、永劫の渇き
海水を飲むように、心と魂が癒える事はないのだから

「焔蝶の刃で、罪の鼓動の終止符を」



「大地、この島そのものが敵。まるで己の強欲さ、そのものね」
 邪神山脈の王として振る舞う『三の王笏』に、リゼ・フランメ(断罪の焔蝶・f27058)は冷ややかな視線を向ける。異界の邪神さえも従わせようとする強欲――或いは傲慢は、彼女の目には断罪すべき咎としか映らない。
「ならば誇るその邪悪なる魂を灼き斬ってみせましょう」
 その手に携えるは断罪刃「ゼーレ」。優美なる刀身には邪気を焼き払う聖焔を宿して、切っ先は断つべき敵に向けて。内なる闘志を顕わすように、赤い髪の毛が風になびいた。

「さて、罪と悪。刃にて裁かれるのは、どれかしら?」
「裁きを恐れて賊徒でいられるものか。我はコンキスタドールの王なるぞ」
 静かなる宣告にカルロスもまた退かぬ構えを見せ、不気味なメガリスを片手に掲げる。
 荒涼たる大地が揺れ、凶々しい邪気が満ちる――それが【邪神「大地を喰らうもの」】召喚の予兆と悟ったリゼは、代償として支払われる島の地形の変化を逃さず見切り、其を相殺すべく烈火の刃を振るう。
「聖焔よ、魔を灼き祓え」
 目にも留まらぬ早業で放たれた斬撃は衝撃波を伴い、飛び出してきた触手を灼滅する。
 相手は大地そのものを依代とした邪神。だが完全制御には至らぬゆえか、動きには無駄が多く精密とは言い難い。ならばとリゼは追撃を重ね、カルロスへと迫る隙を作る。

『ギャアァァァァ―――!!!』
 炎斬の衝撃波が触手を薙いでいった後に、細い一本の道ができる。周囲の触手がそれを埋めてしまう前に、リゼは身体に炎を纏って切り込む。狙うは『三の王笏』の生命のみ、それ以外のものは些末と言わんばかりの、脇目を振らぬ突撃だった。
「ちっ……何をしている、止めろ!」
 カルロスが命じれば「大地を喰らうもの」はリゼの足を止めようと殺到するが、触手に絡まれ、牙を突き立てられようと彼女はそれを焼き切って前に進む。多少の傷は無視し、流れる血もそのままに。痛みを感じないはずは無いだろうに、眉ひとつ動かしもしない。

「何を求め、何を得ようと、貴方は満たされない」
「なんだと……?」
 火の粉が爆ぜる音に紛れて静かに紡がれた言葉に、カルロスは訝しげに眉をひそめる。
 彼を見据えるリゼの瞳は、咎めるような、憐れむような、不思議な輝きを宿していた。
「果てなき強欲は、永劫の渇き。海水を飲むように、心と魂が癒える事はないのだから」
 強欲とは魂が宿す原罪がひとつ。その咎が人を傷つけ続けないよう、惨劇たる罪を焼き尽くして終わらせる事が彼女の願い。かの『王笏』もまた終わりなき強欲の罪に囚われ、満たせぬ渇きを他者の血で贖わんとする咎人ならば――この烈火にて断罪を為そう。

「焔蝶の刃で、罪の鼓動の終止符を」
 掲げるは【緋願之剣花】。流した血潮を代償に、儚くも鮮烈なる願いを火焔に変える。
 それは薔薇のように、血のように、赤い夢を携えて――美麗に舞いて流れる一太刀が、邪神の大地を渡って『三の王笏』を断つ。
「ッ――……がぁッ!!!」
 神霊の火焔を籠めた一撃を受ければ、オブリビオン・フォーミュラとて無事ではない。
 原罪ごと斬り伏せられたカルロスは糸が切れたようにその場に倒れ伏し。流れた鮮血と舞い散る焔蝶が、戦場を紅蓮に染め上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
どこを視ても嫌な気配しかない
長居はしたくない場所だな

周囲の状況に意識を向けておく
大地から出てくる、というのがわかっているなら
目で捉えた地形変化、耳で聴いた地中の音で
攻撃の来る方向を推定できるだろう
全知覚を研ぎ澄ませて、確実に初撃を回避する

続く攻勢を躱しつつ距離を詰めていくよ
制御しきれてないなら、細かな狙いをつけるのは難しいだろ
近接距離に張り付いてしまえば、こちらを攻撃しづらくなるはず
邪神クラスの攻撃なんて、向こうも食らいたくはないだろうしな

銃手は前に出てこないと思った?
生憎、どんな戦い方でもできなきゃ戦場じゃ生きてられないんだ

【終幕の雨】、全弾残らずくれてやるよ
さっさと骸の海に還ってくれ



「どこを視ても嫌な気配しかない。長居はしたくない場所だな」
 敵の本拠地である『三の王笏島』を見渡しながら、鳴宮・匡(凪の海・f01612)は独り言つ。荒涼とした山岳地には陰鬱な空気が漂い、不気味で冒涜的な怪物の咆哮が木霊する――ここは人のいるべき場所ではないと本能が訴えかけてくる、ここは邪神山脈。
「はぁ……はぁ……そちらから押しかけて来ておいて、勝手な言い草だな……ッ」
 その王たる『三の王笏』カルロス・グリードは、満身創痍の状態で肩を息をしていた。
 本拠地制圧のために猟兵達が彼に与えたダメージは、オブリビオン・フォーミュラと言えど耐えられる限界が迫っている。長きに渡るこの激戦にも終わりの時が近付いていた。

「なら、早いとこ決着を付けようか」
 愛銃「BR-646C [Resonance]」の照準を合わせながら、匡は周囲の状況に意識を向けておく。敵の邪神は大地から出てくる、というのは分かっている――なら、目で捉えた地形変化、耳で聴いた地中の音で攻撃が来る方向を推定できるだろうとの考えだ。
「そうだな……終わらせるとしよう!」
 血に塗れたメガリスを掲げ、カルロスが喚び出すのは【邪神「大地を喰らうもの」】。
 土地を代償として、牙の生えた無数の触手が大地を突き破って顕現する。まるで島そのものが巨大な怪物になったような冒涜的光景に、ただの人間では正気ではいられまい――数多の戦場を渡り歩き、心の海に凪を得た、匡のような者でもなければ。

「喰らい尽くせ!」
 カルロスの号令一下、殺到する「大地を喰らうもの」。匡は事前の想定通りに全知覚を研ぎ澄ませて、まずは確実に初撃を回避する。悍ましき触手の群れが彼を捕らえることはなく、牙が抉ったのは山脈の岩肌のみ。
『ウウウゥゥゥゥゥ――!』
 邪神の攻勢はなおも続く。大地を依代として四方八方どこからでも襲ってくる触手を、しかし彼は躱しつつ前に出る。いかに数が多く強大でも、この敵は本能のままに暴れる獣に近い。異形に惑わされず冷静に対処すれば、突破口は必ず見つかる。
「制御しきれてないなら、細かな狙いをつけるのは難しいだろ」
 苛烈だが乱雑な猛攻をくぐり抜け、少しずつ距離を詰めていく匡。砲煙弾雨の中を生き延びてきた経験が、揺らがぬ精神と研ぎ澄まされた集中力が、彼に活路を見いださせる。

「なに……ッ」
 邪神の全力を以てしても仕留められぬばかりか此方に近付いてくる匡を見て、カルロスは驚いたように目を見開く。装備からして射撃戦を得手としていると思しい相手が、危険を侵してまで接近してくるとは予想外だったのだろう。
「銃手は前に出てこないと思った? 生憎、どんな戦い方でもできなきゃ戦場じゃ生きてられないんだ」
 彼の心中を把握したように、匡は表情を変えずに嘯く。これは別に酔狂の類ではない。相手が邪神を完全に制御できていないのなら、近接距離に張り付いてしまえば、こちらを攻撃しづらくなるはずという合理的な判断に基づいたものだ。
(邪神クラスの攻撃なんて、向こうも食らいたくはないだろうしな)
 案の定、匡とカルロスの距離が縮まるにつれて敵の表情は険しくなり、邪神の攻撃は苛烈さを失う。召喚主を巻き込まないよう敵だけを攻撃しろと「大地を喰らうもの」に命じるのは、相当に難易度が高いのだろう――その機に乗じて匡はさらに距離を詰める。

「じゃ、そろそろ終わりにしようぜ。【終幕の雨】、全弾残らずくれてやるよ」
 手を伸ばせば届くほどの超至近距離から、カルロスに突きつけられたライフルの銃口。
 驚愕する敵の目前で、匡は淡々とトリガーを引き――標的の心臓ただ一点のみを精確に狙った、フルバースト射撃の銃声が邪神山脈に木霊する。
「―――!!!!!」
 鉛玉の集中攻撃を浴び、カルロスの体が人形のように踊り狂う。手から祭具のメガリスがこぼれ落ち、周囲にいた邪神触手が一斉に動きを止める。やがて銃声が鳴り止んだ時、しんと耳に残る静寂に辺りが包まれるなか、満身創痍の男はゆらりと顔を上げ――。

「――……我の、敗北か。だが、我が本拠地はここだけではない……」

 そう言って『三の王笏』カルロス・グリードの躯は灰となり、その魂は骸の海に還る。
 かくして猟兵達は『三の王笏島』の主を退け、邪神蔓延るこの島の制圧を成し遂げた。
 ――だが、羅針盤が示す戦いの終焉はまだ蒼海の彼方にあり。次なる敵の本拠地に航路を進める為に、猟兵達はグリードオーシャンの航海を続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月12日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト