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羅針盤戦争〜盗んだ船で漕ぎ出して

#グリードオーシャン #羅針盤戦争


●悪戯小僧現る
 奇妙な夜であった。
 雲ひとつない夜空、月は煌々と輝き、星は瞬く。
 それなのに船の甲板は水が張り、木製の所はともかく鉄製の場所では足を滑らせる者も現れる。
 転んだ者に手を貸そうと近付いた者もすっ転び……悲しい出来事が幕を開ける。
「……へ?」
 見えたのは、小人のような影。
 転んだ乗組員の背に、肩に、臀部に。手を添えている小人の影。
 押された乗組員は、手すりを超えて、夜の海上に放り出される。
「……おいおいおい! あいつ落ちたぞ!?」
「誰か、ロープ持ってこい!」
 奇妙な夜であった。
 雨は降らず、風もない。波も穏やかで、錨を下ろせば船自体がゆらゆら揺れる揺り籠だ。
 そんな日に海に投げ出された乗組員。……それを助けようと動き出した者も、次から次へと足を滑らせ、転落していく。
 思わず手すりを掴み、落ちた者を見下ろす。
 これでも海で髑髏を背負う者たちだ。まったく泳げないなんて事はない。それでも、人体の乏しい浮力では溺れてしまうのは時間の問題である。
「い、一体何が――」
「何人落とした?」
「8人!」
「えー! まだこっちは3人なのに」
 ――それは、背後から聞こえてきた。
 この船にそぐわない子どもの声。無邪気なそれは、信じられない事を口走る。
 振り向けばその姿を見られるのか。いや、それよりも落ちた者達を救助しなければ。
 そう思いつつも、身体は動かない。助けようとして動いた者の末路を、すでに見てしまっているから。
「まあいいか。この人で4人目だー!」
「違うよ、オレが落とすから9人目だー!」
 奇妙な夜であった。
 穏やかな海で酒を飲み、寝室に移る時。聞こえるはずのない子どもの声が聞こえてきた。酔いで聞こえた幻聴だったら、どれほど良かったか。
 無邪気な笑顔に青い水の身体。その姿の子ども達は、一夜にして我々海賊団の船を乗っ取ったのである。

●グリモアベース
「グリードオーシャンでコンキスタドールが現れたようだ」
 まとめた資料を片手に鋼鉄の人型、萩原・誠悟(屑鉄が如く・f04202)が口を開く。
 コンキスタドール……この欲望渦巻く海、グリードオーシャンにて呪いの秘宝『メガリス』に触れ、死してオブリビオンとなってしまった者たちの総称。
 誠悟が広げる資料には件のコンキスタドールの人相が描かれている。
「見た目は子どもだが、立派なコンキスタドールだ。実際、海賊一個船団が彼らにやられ、そして海賊船が盗まれている」
 どこから集めてきたのか、海賊も実力に反してかなりの数の船を有していたようだ。おかげで、今その数隻もの船はコンキスタドールの戦力となってしまっている。
「……海賊に対して言いたい事がある者も居るかも知れんが、それは置いておこう」
 薄い紙っぺら一枚に収められた海賊団の資料を隅っこに追いやり、誠悟は空いたスペースに別の資料を広げる。
「今回、連中が向かっている先は蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)と呼ばれる海域……その中心にある『サムライエンパイアに通じる渦潮』だ」
 蒼海羅針域の海図を広げ、その中心部を指さしながら、誠悟は説明を続ける。
「それは我々猟兵がこの世界に介入する要……これが無くなってしまうと、我々はこの世界に介入する事が出来なくなってしまう」
 つまりこれをどうにかする事こそが、今回の仕事であるという。
 コンキスタドールの資料を持ち上げ、誠悟がうなずく。
「今回の戦場は海上、あるいは船上になる。海上では飛行や転移といった行動は阻害されてしまう点に注意が必要だ」
 資料に、誠悟が海上の行動に関する注意事項を記したメモを貼り付ける。
 自由に飛び回る事は出来ないし、相手の船上に転移するのも難しい。そういった内容のメモだった。
「現地の海賊が敗れた今、彼らに対抗出来るのは我々だけだ。悪戯小僧の折檻だと思って軽く考えず、しっかりと食い止めてくれ」
 全ての資料を広げ、空いた手を腰に当て、説明を終える。……あとはこれを言えば終了だ。
「――諸君らの健闘を祈る」
 短く月並みな、しかし軽い気持ちでは言えない台詞。
 誠悟は猟兵達を、これから荒れる事が予想される海に向かう者達を励ます言葉を持って、見送った。


あるばーと。
 こんにちは。あるばーと。と申します。
 今回は『羅針盤戦争』のシナリオとなります。
 第1章のみで完結する特殊なシナリオとなります。

●第1章:集団戦
 盗んだ海賊船で蒼海羅針域へ向かうコンキスタドールとの戦いです。
 海上、船上が舞台となります。下記行動によるボーナスが付きますのでご参照ください。

 プレイングボーナス……海上戦、船上戦を工夫する(海上では飛行や転移が阻害されています)。
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第1章 集団戦 『悪ガキ怪盗・フラック』

POW   :    やーいひっかかったー!
【マントの内側】から【大量のミニ分身軍団】を放ち、【目潰しや転ばせ等色々な悪戯攻撃】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    おたからめーっけ!
レベル×5本の【自分にとってお宝になる物の場所を感知する】属性の【伸縮自在で高い盗み技術を持つ腕】を放つ。
WIZ   :    どこからでも出てきちゃうよ!
【メガリス『尽きぬ雨の如雨露』の中身】を降らせる事で、戦場全体が【自分の体の一部】と同じ環境に変化する。[自分の体の一部]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
片桐・公明
【WIZ】
海上での行動はバイク『赤兎』+海戦対応拡張パック『江東の虎』使用して移動する
敵船からの攻撃は普通に回避する
勢いに任せて誘導弾の斉射と共に敵船側部に突撃することで乗り込む

以降船を沈めるためにUCで敵ごと周辺を攻撃する
「液体でできた体でもこの攻撃は効くわよ。」
「流石に船が沈んだらどうしようもないでしょう。」
敵が戦場を変化させてきた場合、その範囲外から出ることに徹する
「敵に有利な戦場で戦う奴なんていないわよ。」
敵船が傾き始めたらバイクに乗り込んで脱出する

(絡み、アドリブ歓迎です。)


鈴木・志乃
水中戦闘は苦手だってのに
厄介な敵ばっか出てきおってからにーー!!
(明後日の方向へ叫ぶ)

魚雷積んだ水陸空行けるヒーローカーで爆走します。
海が汚れちゃうけど、もう四の五の言ってらんないよなぁ。
高速詠唱含めてバンバン撃ち出す。
敵の攻撃は第六感で見切り光の鎖で早業武器受け

敵が調子乗ってUC使ったらUC発動。
海と一体化した体ごと――凍れ。
氷の津波を発生させます。
高速で多重詠唱を繰り返し、暴走を極力コントロール。

私はオーラ防御張った上で、武器改造したヒロカで津波の上を走る!!
いや無茶言ってんのは分かってんだよ、でも私も戦う術そんな持ってないからもうやるしかないんです。ああぁ水は苦手だって言ってんだろに!


マリア・ルート
とんだ悪い子じゃない…船から落ちて海にドボンって、結構一大事なのよ?
おいたがすぎるわね…!

【指定UC】で奴の目や足を攻撃。目潰しや転ばせを狙うわ。あんたらもしているんだから、私たちにされても文句言えないわよね?
相手がどれだけ多くてもこんなに武器があったら対処しづらいでしょ。

混乱してきたら奴の後ろに回り込んで、奴らがしたようにこいつを海に落としてやりましょうか。
ふふ、悪いことは巡りめぐってあんたらに戻ってくるのよ…
え?私の後ろに…?ちょ、ちょっと、待っーー

(アドリブ、連携歓迎です)



●観測
「んー? うげんから何か来るよー」
「うげん? 右からって事?」
 奪われた海賊船は、それを占領した『悪ガキ怪盗・フラック』達の呑気な空気の言葉に支配されていた。
 個体それぞれが思い思いに好きにやっているが、一応大まかに役割分担はしているようで、これも奪った物だが望遠鏡を覗いて周囲を見張る者が声を出す。
「何かって何さ」
「えーと、赤い……なんだろう。ばいくってヤツ?」
「バイクゥ? 地上の乗り物じゃん」
 いまいち納得出来ない個体が望遠鏡をひったくり覗き込むと……確かに赤いバイクが速度で海を割りつつ、こちらに接近してきている。
「マジだ、超ヤバい」
「猟兵ってヤツだよ。砲撃準備ーッ!」
「ああ、オレが言いたかったのに!」
 敵が迫っている割りには危機感のないやり取りで、フラック達は忙しそうに砲弾を装填し始める。
 立派な海賊船が何隻も手に入ったからか、それとも海を走るバイクを見たからか。夜も更けているのに悪ガキ達は完全に浮かれていた。
 元が同じ個体なのだし、当然それはどの個体でも共有する感覚であろう。
「えと、さげん……船の左からも何か来てるんだけど……」
 それをたまたま共有できない者が居るとしたら、別の物を見ていて乗り遅れてしまった者。寂し気に盛り上がっている個体を眺めている。


「……とんだ悪い子じゃない。船から落ちて海にドボンって、結構一大事なのよ?」
 一方で、別の事で手一杯の者も居た
 それこそ、今まさに赤髪の女ダンピールに剣を向けられて動けない者の事である。

●赤兎は海を跳ぶ
「こっちに感付いたか」
 海を疾走する赤いバイク。それを運転しているのはバイクとは対照的に藍色の髪を持つ女性、片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)であった。
 遠目にコンキスタドール『悪ガキ怪盗・フラック』達が騒がしくなっている様子を見て、公明は自身の存在が覚られた事を知る。
 速度はそのままに、公明は周囲を確認する。多少の波はあれど、走行の障害になるようなものは無い。
 重く耳の奥に響く音がする。目指す海賊船から聞こえる『砲撃音』だ。
 やや放物線を描きつつ、公明を狙った砲弾が迫る。
「速度を落とすまでもない」
 公明はハンドルを握りこむ。
 今回の仕事のために装備している海戦対応拡張パック『江東の虎』によって速度は多少落ちているものの、公明のバイク『赤兎』の持ち味である最高速には依然として陰りはない。
(これなら『普通に』回避できる)
 ハンドルを左にやや切り、『赤兎』は左方向にぐい、と曲がる。
 砲撃は公明に対し真っ直ぐ狙って撃たれている。標的が大きかったり動かなかったりする場合は問題ないが、『赤兎』を操る公明は小さいし動き回る。砲弾を当てるには偏差を考慮する必要がある。
 しかし、海賊船を奪っただけの悪ガキ集団にそんな技術はない。
 ハンドルを右に切り返し、今度は右に曲がる。砲弾は全て公明が居た位置か、そのまま進んだ場合の位置に落ち、水の柱を打ち上げる。
 公明もただ撃たれているだけではない。『江東の虎』に含まれる射撃武装で撃ち返す。放たれた誘導弾は、砲弾を避けながらの不安定な撃ち方でもまるで吸い寄せられるように海賊船に向かっていく。
(思ったより砲撃が来ないわね……近づく分には楽で良いけど)
 公明はほのかに違和感を覚える。側面から覗かせる砲門の数的にはもっと弾幕が厚くても良いと思ったのだ。しかし、公明を狙っている砲門は二門のみ。他は遊んでいる状態だ。
 誘き寄せられている線も一瞬考えたが、あの悪ガキ集団にそこまで頭が回るだろうか。
(もう誰か、別の猟兵が居るのかも)
 次に浮かんだのは自身のように、今回の件に介入する者の存在が居るかもしれない点で、これが一番あり得る線であると公明は思った。
(だとしたら早く乗り込んだ方がいい)
 公明はハンドルを捻り、エンジンを鳴らした。

●ダンピールの狩り
「ぎゃー! いーたーいー!」
 顔を覆いながら『悪ガキ怪盗・フラック』の個体が走り回る。それを他の個体は何事かと振り向いて眺めている。
「ちょ、何。今こっち、敵来てるんだけど」
「めー! 目ェやられたー!」
 顔を覆っている個体は痛みが苦しいのか倒れた上にもがいて転がり始めた。
 よくはわからないが只事ではない事だけを感じ取った他のフラック達は、そこでようやく周囲を確認する。
「わ!?」
 そこへ、また別の個体のフラックが声を上げる。振り向くと、その個体は前のめりに倒れこみ、そのままべしゃりと甲板に顔をぶつけている。
「目潰し、転ばせ。あんたらもしている事なんだから、私にされても文句言えないわよね?」
 それはフラック達とは別の、女性の声だった。
 赤い髪を揺らし、靴を鳴らして歩み寄る。銃剣の付いたライフルを持ったその女性、マリア・ルート(千年の王国から堕ちのびた姫・f15057)はふん、と鼻を鳴らす。彼女も、この件のコンキスタドールの対処にやってきた猟兵のひとりである。
「うわ、いつの間に猟兵が!」
「えーい、かかれかかれー!」
 マリアの存在に気付いたフラック達は、自身のマントを勢いよく広げるとその中から小さなフラックのようなもの分身が飛び出していく。
 マリアはそれを、傍に『浮いていた剣』で全て薙ぎ払う。
「……何それ!? そんな武器、一体どこから……」
「はい、隙あり」
「え? わー!?」
 自分達の攻撃が容易く防がれた事に動揺するフラック達は、背後に回ったマリアに気が付かなかった。
 そのままどんと背を押され、二体のフラックが甲板から海上に落とされる。
「ふふ、悪いことは巡りめぐってあんたらに戻ってくるのよ」
 口元を手で押さえ、マリアは(なぜか)意地悪くほくそ笑む。
 マリアとしては、今回の件でフラックがしでかした『悪戯』に対して意趣返しをするのが目的のひとつであった。
 その目的のひとつが達成され、マリアは満足げに落ちたフラックを見下ろしていた。
 しかし……当然ながら、戦闘が終わったわけではない。
「あそこに猟兵が居るぞー!」
「かかれ、かかれ、かかれ、かかれー!」
 船中のフラックの個体がマリアの存在に気付き、今度はさらに多くの小さなフラックの分身がマリアに迫る。
「え? ちょ、ちょっと、待っ――」 
 余韻に浸っていたマリアは、やや反応が遅れてしまい、今度は剣を拾えない。
 小さなフラックの分身の接近を許してしまい……総出で、マリアは手すりを越えて船から押し出されてしまう。
「きゃ……きゃー!?」
 思わず出たそれは、マリアの素の悲鳴であった。

 海に向かって真っ逆さま。フラック達の反撃に、マリアはぎゅっと目を瞑る。
 ……しかし、想像していたような海の冷たさはいつまでたってもやってこず、かわりにマリアが感じたのは、持ち上げられているような妙な浮遊感。
「……先客が居るとは思っていたけど、まさか落ちてくるなんてね」
 その声が聞こえると、マリアはぼとりと甲板に足を付く。
「あれ?」
 目を開けると、そこはマリアが落とされる前に見た甲板上。そして声がする横を向けば、マリアとは対照的な青い髪の女性……公明が赤兎と共に船の側部を駆け上がり、甲板上に降り立っていた。
「あ……ありがとう」
 恥ずかしい場面を見られてしまった。マリアはそう言うばかりに、ばつが悪そうに顔を背ける。
 公明としては悲鳴の声が妙に可愛らしかった事が気になるくらいで、特に思うところはない。
「どういたしまして。先に来てくれていたところなんだけど、もうひと頑張りしましょ」
 公明がそう言うと、手に持った拳銃『Mathem842』と『臥龍炎』を交互に撃ち放つ。それは、ただの弾丸ではない。
「う、うわぁ! 火だ!」
 これは公明のUCのひとつ。紅蓮『赤壁乃業火』。
 公明の持つ射撃武器から強い炎のようなエネルギーが放射され、着弾点が燃えるのはもちろん……。
「液体でできた体でもこの攻撃は効くわよ」
「うわ、あちちち! 何これ!?」
 それが敵に命中した場合は、大蛇のようにまつわりつく焔のような性質に変化する。
 その焔は狙い通りにフラック数体に纏わりついて離れない。
「くそー、こうなったら……」
 だんだん劣勢になっていくフラック達。その状況を打開するべく、フラックの一体が懐から如雨露のような物……メガリス『尽きぬ雨の如雨露』を取り出す。
 フラックがその如雨露の水を甲板に流すと……フラック達と同じような性質のソーダ水が、甲板上に広がっていく。それは見たまま、フラックの身体の一部と同じ物である。
「敵に有利な戦場で戦う奴なんていないわよ」
 公明はすぐに、それから距離を取り始める。それを、マリアもまたUCで援護する。
「こんなに武器があったら対処しづらいでしょ」
 フラックの如雨露から流れるソーダ水を押し止める物が、そこかしこに配置されていた。剣に手甲、刀に槍。全て、マリアの持つ武器の形を取っている。
 それらはマリアのUC【血見猛猟・百器野行】によって、マリアの想像から創られた代物であった。
 マリアの援護で如雨露のソーダ水から余裕を持って逃れる公明は、走りながらも紅蓮『赤壁乃業火』の焔をそこかしこに放ち続ける。フラックに命中すれば動きを止められるし、そうでなくても船には火が燃え移る。
「……ん」
 撃ち続けながら、公明は船の揺れが大きくなってきているのを感じていた。この分だと、どんどん傾いていくか。
 海賊船の行く末を感じ取った公明は、再び赤兎の飛び乗る。
「ねぇ、私はそろそろ脱出するけど。ついでにどう?」
「え、なんで?」
 公明に聞かれたマリアは、首を傾げる。
 その疑問に、公明はあっけらかんと答えた。

「たぶん、津波が来るから」

●英雄の車は波に乗る
 ――水中戦闘は苦手だってのに厄介な敵ばっか出てきおってからにーー!!
 ……誰にも聞こえないその叫びを、海は吸収する。
 海賊船の左舷方向、大きく水飛沫を上げて距離を詰める車。そこにこの女性、鈴木・志乃(ブラック・f12101)は居た。
 海賊船に猟兵が乗り込んだ頃、志乃は用意したヒーローカーで機を窺っていた。
 そろそろこちらの存在に気付いても良い頃合いだ。であれば当然、砲撃や敵のUCが飛んでくる。
 ならばと、先んじてヒーローカーに積んでおいた魚雷などを牽制として発射する。
 ――海が汚れちゃうけど、もう四の五の言ってらんないよなぁ。
 申し訳ない思いを抱きつつ、志乃はヒーローカーで突き進む。
 途中、やはりというか敵はこちらに気付いたようで、一発の砲撃が飛んできた。うまく運転すれば回避は出来そうだ。
 しかし、志乃は砲弾を『光の鎖』で弾き、そのまま突き進む。
 砲撃が通用しないとなれば、次はUCだろう。連中の如雨露から流されたと思われるソーダ水が、海賊船からこちらに向かって流れてきているのが見える。……ここまでは志乃の想定内だ。
 ソーダ水を使って領域を広げ、戦場を掌握する敵のUC。ならば、その対策はソーダ水をどうにかする事で足りる。
「――凍れ」
 志乃が口にすると、ヒーローカーの周囲の海面が凍り付き……さらには、どの海面に触れているソーダ水まで凍っていく。
「……あまり力業は得意ではないんだ。無茶をさせないでくれるかな」
 志乃が使っているUCは【エレメンタル・ファンタジア】。『属性』と『自然現象』を合成した現象を発動するもの……だが、その規模の大きさ故に制御が難しい部類だ。
 それを、志乃は絶えず詠唱を繰り返し、なんとか御している。……やるなら今しかない。
 敵のソーダ水をも飲み込みつつ、志乃はどんどん海を凍らせていく。凍った海はせり上がり、やがて氷の津波を形成していく。
 出来上がっていく氷の津波の上を、志乃はオーラで補強したヒーローカーで走り出す。……いや無茶言ってんのは分かってんだよ、と志乃は内心愚痴をこぼす。
(でも私も戦う術そんな持ってないからもうやるしかないんです)
 考えはあるし、無鉄砲なわけでもない。ただ、これは傍から見ればかなりの無茶である事を志乃は自覚していた。
 車輪は滑り、今にも横転しそうだが……それでも、志乃を乗せたヒーローカーは氷の津波を駆け上がる。いつの間にか、氷の津波は海賊船を飲み込むほどの大きさとなっており……。
「――ああぁ水は苦手だって言ってんだろに!」
 志乃の叫びで、ヒーローカーは氷の津波から海賊船を越え、飛び立つ。
 その時すでに氷の津波は、志乃の制御を抜けていた。

「……津波って、氷の津波なの!?」
 公明の運転する赤兎に一緒に乗るマリアは思わずその光景に目を剥いた。
「凍っているけど津波は津波。このままじゃ海賊船ごと飲み込まれるわよ」
 冷静に言っているようで、公明も驚いていない事はない。氷の津波を作って、それを車で駆け上がるとは恐れ入る。
「何あれ!?」
「つ、津波だよ!」
「でも凍ってるよ!?」
「関係ないよそんなの!」
 フラック達は揃も揃ってパニックに陥っている。さすがに無理もないと思うが。
「流石に船が沈んだらどうしようもないでしょう」
 マリアを赤兎に乗せ、公明はその言葉を最後に振り替える事なく発進させる。
 志乃の制御を離れた氷の津波は、その自重に耐え切れない。
 ぴしりという無数の音を立て、亀裂を作っていく氷の津波は、それこそ普通の津波に戻るかのように崩れ落ちる。
 ……公明とマリアが去った後の海賊船を、飲み込みながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クリナム・ウィスラー
悪ガキ達にお灸を据えてやればいいのでしょう?
簡単なことね

海が戦場ならば相応しい存在の力を借りましょう
【呪詛】を籠めて魚の霊を召喚
侵略者達を喰い殺せ

自分の身体と海を同化させているのかしら?
それなら尚更魚達に喰いちぎらせましょう
どこにいようと全部殺すわ

危ないならわたし自身も海に出る
【水上歩行】や【水泳】で海を進み、危険を察知したり敵を探したりするわ
敵の身体は海のようなものなのでしょう?
それならわたしも適応できるわ

むしろ身体の中を泳がれるなんて気味が悪くないのかしら?
そんなことするから身体の内から喰われるのよ

海を死体で汚されるのはいい気分がしなかったのよ
海はあなた達のものじゃない
骸の海で反省しなさい



●魔女の怒り
「悪ガキ達にお灸を据えるなんて、簡単なことね」
 その声に、船に居る『悪ガキ怪盗・フラック』の個体が海に顔をのぞかせる。怪訝な表情をしているのがわかる。だって、声はするのに小舟のひとつもないのだ。
「……おねーさん、まさか歩いてきたの?」
「そうよ」
 フラックの一体が、海上に佇む少女に声をかける。
 その少女、クリナム・ウィスラー(さかなの魔女・f16893)は戸惑っているフラック達を意に介さず、睨みつけている。
「もう一度言うけど、悪ガキ達にお灸を据えに来たのよ。理由はわかるわね?」
「な、何の事かわからないなぁ!?」
 鋭い眼光を前に、とりあえずととぼけてみるフラック。クリナムは思わずため息を吐く。別に、ごまかす必要が無ければ意味も理由も無い筈だが。
「まあ、いいわ。お仕置きの時間よ」
「へ、へーん! オレ達おしおきされる筋合いなんてないもんね!」
「おねーさんも海に沈んじゃえ!」
 クリナムの敵意を感じ取ると、船に居るフラックの個体は総出でメガリス『尽きぬ雨の如雨露』を傾け、水を流す。フラック自身の身体の一部とも言うべきソーダ水が船から溢れ、急激にその領域を広げていく。
 やがて、ソーダ水はクリナムを飲み込む。それを見たフラック達はハイタッチをしようと集まり始めた。
「――現世の水面へおいでなさい、そして好きなだけ喰らいつけ」
 聞こえた詠唱と同時に、ソーダ水を食い破って現れたのは鋭い牙や鱗を持つ深海魚の群れ。フラック達のハイタッチは空振りに終わる。
 クリナムの【魚魔女の使役術】によって現れた深海魚の群れは、再びソーダ水の領域に突撃する。
「うわ、身体を這われてる気分! 気持ちわるっ!」
「自分の身体と海を同化させているのかしら?」
 泳ぐ深海魚に対するフラックの反応から、改めてUCの効果を確認する。
 まずコンキスタドール『悪ガキ怪盗・フラック』はその身体がソーダ水で出来ている。また、持っているメガリスである如雨露から流れる水も、彼らの身体の一部……つまり、ソーダ水である。そしてその領域を広げようとすると、ソーダ水は海と混じりあう。
「それならわたしも適応できるわ。だってあなた達の身体は海のようなものなのでしょう?」
 深海魚の群れはソーダ水の領域を辿って泳いでいく。フラックがメガリスを使い続ける限り、いつかはフラックの元まで辿り着く事だろう。
「海を死体で汚されるのはいい気分がしなかったのよ」
 航海中に船を失った海賊達。その末路は、深く考えるまでもない。おそらく、どこかに浮かび上がっている事だろう。
「海はあなた達のものじゃない。どこにいようと全部殺すわ……骸の海で反省しなさい」
 我が物顔で船を奪い、海を渡ろうとした報い。それが、この深海魚の群れなのか。
 深海魚の群れは数と勢いを増していく。海と混じりあうソーダ水の身体も喰い破り、さらに本体の元へ。
「う……うわー!!」
 そして、最後にはフラック本体が、ひとり残らず食い散らかされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
たく…コンキスタードールなら手加減なしでいいな

【船上戦】だってんなら、燃やしてもいいか?
炎の【属性攻撃】と腐敗の【呪詛】を合わせて船ごと消滅させる!
火力は加減なしでいいからどこまでも上げてくぞ!

…まぁ、ここまでやられて見逃されるわけねぇし…そんじゃ、かくれんぼと行こうや?
【指定UC】で視界から消えるか
時間が経過したらガキどもの真上に出現して、一撃を入れるか!
武器はその場の最適解を選ぶぞ

アドリブ、共闘大歓迎


花盛・乙女
羅刹女、花盛乙女。いざ尋常に。

ただでさえ厄介な此度の戦役。
敵戦力を削っておくのは損はない。
とはいえ…悪童にしか思えんな。
人の命を奪うことを何とも考えていないことや、オブリビオンであるのだから、猟兵としての対し方は心得ている。
…せめて、本当にただの子供であってくれればよかったのだがな。

海上戦、船の上は敵の有利な戦場だろう。
ならばその前提を壊そう。
文字通り「怪力」でもって沈まぬ程度に戦場を破壊する。
歩きにくくなれば行動範囲も読みやすくなる。

姿を表せば【黒椿】の柄に手を添える。
道徳を損なう事、即ち人足りえない。
自我のような攻撃は意に解さない。
せめて、痛みのないように。
『雨燕』にて、その首をもらおう。



●通りすがりに折檻
「ねぇ、なんか船が一隻沈められたみたい」
「マジで? 超ヤバいじゃん」
 とある海賊船の、とある甲板上でそんな会話が始まっていた。
 望遠鏡で周囲を観察していた『悪ガキ怪盗・フラック』の個体から、そのまた個体へと又聞きした情報が話題のようだ。
「まったく油断しちゃってさ。猟兵がこっち来たら海に落としてやろうぜ!」
「そうしよう! オレ達はあいつらとは違うぜ!」
 お互いに決意を表明しているが、いまいち緊張感に欠けるそのやり取り。それを聞いている他のフラックの個体も笑い飛ばしている。
「ったく……やっぱり、コンキスタドールなら手加減なしでいいな」
「え?」
 その声は明らかにフラックの個体の声ではない。不機嫌な声のする方にフラック達の視線が集中する。そこに、これまた顔をしかめる人間の青年、アトシュ・スカーレット(狭間を歩く放浪者・f00811)は立っていた。
「この船、燃やしてもいいか?」
 言うや否やアトシュは右手に持った、剣形態の『Joyeuse』を木製の甲板に突き刺す。突き刺した部位から炎が噴き出し、さらには腐敗の呪詛が船を蝕み始める。
「ちょ、いいわけないでしょ!」
「何するのさ!」
 フラック達は口々にアトシュの物言いに抗議していく。
 しかし、答えなど聞いていないとばかりに当のアトシュは甲板に壁にマストなど、次々と『Joyeuse』で斬り付けては炎と呪いを振る舞っていく。
 船がその剣に斬り付けられるほどに炎は燃え広がり、腐敗で船が崩れる速度が上がっていく。遅かれ早かれ処理する事になる海賊船、火力の加減など、アトシュは気にしていない。
「うわ、船がめっちゃ燃えてる!?」
「あいつを止めろー!」
 散々船を斬られては放火され、フラック達は抵抗としてアトシュを取り囲み、さらにマントから大量のミニ分身を放って退路を遮る。
「……まぁ、ここまでやられて見逃されるわけねぇしな……」
「当たり前! お前も海に落としてやるー!」
 フラックのいずれかの個体の号令で、複数体分のフラックのミニ分身が一斉にアトシュに襲い掛かる。四方からやってくるそれはとにかく数が多く、一見して回避は困難なように見える。
「……そんじゃ、かくれんぼと行こうや? ――あと、言っとくがこの船はもうもたねぇぜ」
 フラックのミニ分身が到達する前であった。
 それだけを言い残し……アトシュは忽然と姿を消した。

●掌握(力ずく)
 羅針盤戦争。
 蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)、その中心の『サムライエンパイアに通じる渦潮』をめぐる戦い。
 厄介な戦役だと、花盛・乙女(羅刹女・f00399)は思った。
 自身も一剣豪であり、海上や船上は剣士にとって戦い辛い場所である事を痛感している。だが、だからこそ敵戦力を削っておくのは損はない。
 しかし、今回はそれとは別のやり辛さを乙女は感じていた。
「……悪童にしか思えんな」
 乙女は眼前のコンキスタドール『悪ガキ怪盗・フラック』達を見て呟いた。
 メガリスに触れてコンキスタドールと化してしまったが、その姿は乙女にはただの子どもにしか見えなかった。
「あくどー? あの人何言ってるの?」
「さぁ? でもオレ達の事ナメてるのかも」
 飛躍する結論に、何故か追従していくフラック達。頬を膨らませて乙女に敵意を向け始める。
 乙女には彼らが人の命を奪うことを何とも考えていない事も、またオブリビオンとして対処する以外にしてやれる事がない事もわかっていた。
「……せめて、本当にただの子供であってくれればよかったのだがな」
 一抹のやるせなさを感じ、乙女はすぐにそれを振り払うように腰に差した刀に手をかけた。
 前提として、海上はもちろん船上もフラックに有利な戦場だ。甲板を濡らすソーダ水が、その領域を物語っている。
 もう一度述べると、乙女のような剣士は特に足場は重要な要素だ。
 乙女は掌に刻まれた赤い蓮華を握りしめる。
(敵に有利な戦場……ならばその前提を壊そう)
 握って出来た拳を振り上げ、そのまま甲板に叩きつける。
 大きな衝撃が船を襲い、甲板は荒く木片に破砕される。
「うわ! ちょっと、オレ達の船に何するのさ!」
「貴様達の船ではないだろう」
 迫るフラック達から離れつつ、乙女はその拳を船に叩きこみ続ける。
 床や壁を砕き、手すりを引っこ抜く。そうして出来た木片や諸々を甲板に放り投げておく。
「くそー、好き放題散らかしてくれたなー!」
 乙女の所業に怒ったフラック達はミニ分身を率いて乙女に駆け寄る。ミニ分身含めかなりの数だが、乙女にはある程度フラック達がどういうルートでかかってくるかは予想できている。あとは、なるべく敵がまとまってくれれば良いが。
「我が魂は瞬きの時消失する――」
 その時、突然聞こえた声に乙女は一瞬足と拳を止める。これはフラックの声ではない。しかし、周りを見ても声の主は見つからない。
 一度見渡して見つからず。それを見つけたのは、一度視界に入った場所を二度見した時だった。
「――されど切り開かれる道は確定する!」
 フラック達の真上に、その少年は突然現れ……神性の呪詛を込めた刀を振り下ろす。そこに現れたのは【証明消失術・反転式】によって出現したアトシュその人であった。
「い、いきなり現れたー!?」
 手に持つ刀『村雨』は纏った呪詛で何体ものフラックを斬り付ける。また、その攻撃が当たらなかった個体もアトシュの突然の出現に動きを止めてしまっている。
(好都合)
 その状況に乗じ、乙女はフラック達の目と鼻の先にまで迫る。射程内。腰の刀『黒椿』が鞘から走る。
 直前に止めた呼吸は、精密かつ必殺の斬閃を生む。それこそが乙女の『我流実戦術』……【雨燕】。
「道徳を損なう事、即ち人足りえない」
 悪戯に熱中するあまり、その過程で命を落とす者が居ても気にしなくなった『悪ガキ怪盗・フラック』。メガリスに触れ、コンキスタドールと化してしまった憐れな子ども。
「その首をもらおう……せめて、痛みのないように」
 彼らに対して放った乙女の技は、乙女なりの情けであった。
 再び『黒椿』が鞘に収まる時、あれだけ騒がしかったフラック達は、誰も喋らなかった。

「もう別の船沈めてきた所なんだけど、オレ邪魔だった?」
(オレ……か)
 現れた少年、アトシュの一人称を聞いて乙女は一歩距離を取った。
「……いや、援護に感謝する」
 一言そう言うと、乙女は船から降りる準備を始める。すでにフラック達の気配はこの船からはせず、制圧が完了している。
 それに、アトシュの刀の一撃により、斬り付けられた船に火がついている。沈むのは時間の問題だろう。
「貴様も早く降りた方が良いぞ」
「ああ、そうするぜ」
 短く挨拶を交わすと、アトシュと乙女はそれぞれ別の場所から船を降りて行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フェルト・ユメノアール
子供と言ってもコンキスタドール
これ以上の被害が出る前にここで倒させてもらうよ!

小型船で目標に接近、フックロープで速やかに船上へと乗り移る
先手必勝、物陰に隠れながら『トリックスター』で敵に奇襲を仕掛けるよ!

そして、それと同時にUCを発動
古の英知よ、今ここに甦れ!
現れろ!高等紋章術師、【SPハイメダリオン・ソーサレス】!

相手は水に紛れて攻撃を仕掛けてくる……なら
トリックスターを投擲、当たらなくてもいい
いや、当てなくていい、ソーサレスの効果で地面に雷の紋章を付加
敵のUCで地面が濡れた事を確認したらフックロープをマストに引っ掛け自身は空中に退避
再度投擲攻撃で紋章を発動させ、電撃で相手を一網打尽にする



●船上サーカス
「ねー、もう他の船みんな沈んでるよー?」
「マジ? あいつらどんだけ足速いんだよ」
 望遠鏡を覗いている『悪ガキ怪盗・フラック』、その個体からの報告を聞いた甲板に居る個体は海図を開く。
 フラックの想定していた以上にペースは芳しくないようで、海図を開く個体は口をへの字にして首を傾げている。
「もうこの船にも来るんじゃない?」
「えー、もう帰ろうかなー」
 他の個体の士気もだいぶ落ちている。首尾よく海賊船を奪って盛り上がっていた所を、はみ出た杭を打つかの如く沈められているのだ。彼らでなくともそうなろう。
「悪いけど、帰すわけにはいかないよ!」
 そんな中、どこからともなく聞こえるフラックではない誰かの声。
 声の主を探し、フラックの個体達はそれぞれ辺りを見渡す。
「ど、どこだ!」
「ここさ!」
 甲板にダガーが数本突き刺さる。
 この装飾の派手なダガーが飛んできた先の手すりを軽やかに越え、縦に一回転して着地。カラフルな出で立ちの少女、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は甲板に立つと、力強く腕を組む。
「これ以上の被害が出る前にここで倒させてもらうよ!」
 現れた時の手ぶらの状態から、まるで手品のように、いつの間にやらフェルトのその手にはカードが握られている。
「古の英知よ、今ここに甦れ! 現れろ! 高等紋章術師、SPハイメダリオン・ソーサレス!」
 そのカード、『ユニットカード』を掲げた後、腕に装着しているデバイス『ソリッドディスク』にセット。
 デバイスの力で【SPハイメダリオン・ソーサレス】は影のような姿で具現化、フェルトの背後を守るように佇み始める
「へーんだ! 何か出してもひとりはひとりさ!」
「オレ達の領域に沈んじゃえー!」
 負けじとフラックの個体達も一斉にメガリス『尽きぬ雨の如雨露』の中身を甲板中に流し始める。
 ぽわぽわと泡立つソーダ水が甲板を濡らしていく。
 フェルトは片手に派手な装飾のダガー『トリックスター』を持って身構える。
 ソーダ水に飲み込まれる寸前、フェルトは跳躍。そのまま数本のトリックスターを連続で投擲する。
 跳んだ直後の空中という事もあり、本体には当たらず。その全てを、フラックの如雨露から出たソーダ水が飲み込んでいる。
(いや、当てなくていい)
 フェルトはそのまま着地を待たず、乗船する際にも使用した鉤爪の付いたワイヤー『フックロープ』を船のマストに引っ掛け、遠心力に身を任せる。
 これがフェルトの考えた、フラックのソーダ水による領域展開への対策である。
「空中に逃げるなんて卑怯だぞー!」
「降りて戦えー!」
 フラックの個体達は口々にフェルトを非難する。子どもの癇癪のようで、いちいち相手にはしていられない。
 フックロープにぶら下がったまま、フェルトは追加でトリックスターをフラックの個体達に投擲。あまり本体には当たっていないが、とにかく数を投げるのが重要だ。
 相手は水に紛れている、ならば。
「――これで一網打尽だ!」
 その時、フェルトが投げたトリックスターが『雷の紋章』を浮かび上がらせる。
 直後、トリックスターはそれぞれが雷を放つ。……フラックが飲み込んでいるトリックスターも含めて。
「あぁあぁあぁあぁあ!!?」
 フラックの身体も、必然的にそのソーダ水の中にある。であれば、電気が流れればこの範囲ならば感電する可能性も高い。
 派手なスパーク音に水は弾け、船は焦げる。その中、フラックの個体達もひとり残らず自分達の流したソーダ水の中に沈み込んだ。
「……ここに居たらボクも感電するかな?」
 未だ元気に雷を発生させるトリックスター。
 このまま着地するわけにもいかず、仕方なくフェルトはフックロープで身を振り、そのままジャンプ。接近のために使った小型船に飛び乗った。

 最後に残った海賊船は、サーカスのように派手な演出で、制圧された。
 その雷を、周囲に居た者は見た事だろう。
 それは、事態の『閉幕』に相応しい光景であったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月10日


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#グリードオーシャン
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#羅針盤戦争


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト