羅針盤戦争~ケダモノたちの狂宴
――グリードオーシャンを支配する『七大海嘯』の居場所を示す手がかりが、『蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)』にある。
謎の予兆を受け、進撃を開始した猟兵達は迅速だった。
しかし、対する七大海嘯の王たる『王笏』カルロス・グリードもまた、猟兵たちの動向を掴んでいる。
号令一下、すぐさま本格的な大攻勢を開始。
目標は、蒼海羅針域の中心にある「渦潮」。
グリードオーシャンとサムライエンパイアを結ぶ道を破壊し、猟兵たちの侵略を阻まんと動きだしたのだ。
手を掲げ、コンキスタドールの王は厳かに告げた。
「汝らの王たる我、カルロス・グリードより、全てのコンキスタドールに命ずる。全軍を以って猟兵との戦端を拓け。メガリスを求める次なる航海にも同乗したくば、戦いによって汝らの意気を示すのだ」
かくして。
海と戦乱の世界に、王命は下された。
●巨人海賊『苛烈な斧』艦隊
空と海の青を侵食するように、大海原を黒々と埋めつくす影がある。
『蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)』の破壊に向かうべく進軍する、多世界侵略船団コンキスタドールの大艦隊だ。
大きく頑丈なその船上には、一般人をしのぐ巨躯の男たちがひしめきあっている。
鍛えあげられた両碗には、禍々しい紋。
手に携える武器は、揃いも揃って斧、斧、斧……。
そのうちの1体が盛大に顔を歪め、眼をそばめた。
「おぃ見ろよ、野郎ども! あれが、オレたちの海を侵そうって命知らずの船団だァ!」
手にしていた巨大な斧を肩にかつぎあげれば、周囲の海賊たちも呼応するように「ガッハッハァ!」と豪快に笑いあう。
「王の言ってた、『グリモア』を持ってるってヤツラだな」
「なんでも、未来予知と世界移動ができるエネルギー体らしいじゃねぇか」
「……ンだそりゃ?」
「要するに。そいつがあれば、オレたちゃさらに無敵になれるってことよ!」
「ブチのめせ!」
「喰らいつけ!」
「奪いとれ!」
「殺っちまえ!」
手にした斧を空に掲げ、構成員たちが野獣のごとき咆哮をあげはじめる。
なかでも、特に巨大な体躯の男――『傷持ち(スカー・フェイス)』がゆらり立ちあがり、言った。
「オレたちの船を阻むヤツは、海の藻屑と消える決まりだ。……だが、虫けらを蹴散らすばかりじゃ、死天使(スケッギヨルド)は微笑まねぇ。――だからこそ、敵は強けりゃ強いほどいい」
――恐れを捨て、戦果を重ねれば。いずれ、死天使が迎えにやってくる。
ケダモノである彼らにとって、ただひとつの信仰。
「死ぬまで奪って、死ぬまで戦え。そうすりゃ、オレたちゃあの世で『英雄』だ」
●vs 猟兵船団
「よぉ。てめぇらの耳にも届いてるか。ケダモノどものクソ耳障りな咆哮が」
そう告げたのは、デッドマンのグリモア猟兵――卍・ダリヤ(九骸・f31861)だ。
「オレたち猟兵の進行の起点は、『渦潮』だ。これを破壊されようもんなら、この世界での探索ができなくなる上に、世界はヤツらの思うがままになるだろうさ」
危機が迫っているというのに、女は緑の眼を細め、ニィと口の端をもたげ、続ける。
「だからこそ、やられる前にやれ、ってな。――『渦潮』を破壊しようとする海賊どもの大掃除ってワケだ」
――巨人の団員によって構成された海賊団『苛烈な斧』。
戦闘ともなれば、構成員たちは1人1人が戦場に響く大声をあげ、恵まれた体格で猪の如く邁進する。
やっかいなのは、常に二人一組で行動し、銃の軌道すら見切り懐に入るという、驚異の俊敏性も併せ持っている点だ。
「鉄甲船はある程度の数を出すから、足場はあるけどね。何しろ海のど真ん中だ。地の利はヤツらに有ると言っても過言じゃない」
少しでも敵の数を減らし、渦潮に迫ろうとする敵の動きを食い止めることができたなら、戦果は上々。
「さあ、存分に暴れてこい!」
西東西
こんにちは、西東西です。
グリードオーシャンの『羅針盤戦争』にて。
戦場『グリードオーシャン大海戦』に該当するシナリオです。
プレイングボーナス……海上戦、船上戦を工夫する(海上では飛行や転移が阻害されています)。
戦争シナリオのため、章クリア必要最低数での執筆を予定しております。
先着順ではなく、プレイング内容にて検討させて頂きます。
それでは、ご武運を。
第1章 集団戦
『巨人海賊『苛烈な斧』構成員』
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POW : 野獣の如き戦闘咆哮
演説や説得を行い、同意した全ての対象(非戦闘員も含む)に、対象の戦闘力を増加する【自身の恐怖を忘れ、敵に恐怖を与える鬨の声】を与える。
SPD : 野獣の如き野蛮で奔放な戦闘スタイル
【高い身体能力と戦闘で得た経験を駆使し】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 野獣の如き気性と友情、そして特徴的なメガリス
【相打ちすら恐れない気性の荒さ】【共に過ごした相棒との信頼と連携】【攻撃を当てると体力を回復する斧のメガリス】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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やがて、水平線が黒く染まった。
時は満ちたとばかりに、野獣の如き巨人海賊たちが手にした斧を振りかざし、腹の底から雄たけびをあげる。
「「「 ウォォォオオオオオォォォォォォォォオオオオオ
!!!!! 」」」
それはまるで津波のように、あっという間に船から船へと伝わっていき。
猟兵たちの真正面に居並ぶ『苛烈な斧』艦隊のすべてから、轟くように響き渡る。
――自身の恐怖を忘れ、敵に恐怖を与える鬨の声。
名張・辿
おっかないねぇ、真正面からじゃ潰されちまう
引っ掻き回すだけならやってみるかい
【不生不死】を使用し、手足を伸ばしてマスト等の高所の船上構造物を介して敵船を逃げ回りながら移動していくよ
そこから目や鼻を潰す毒をいれた容器を敵に投擲したり、帆等の脆弱そうな部分を潰して回ってみようか
そのうち経験則で対応されるだろうから
接舷用のロープ等をそこらから取った木片とかの投擲で破壊したりもして、フェイント織り交ぜどっち狙うか分からないようにしよう
逃げる時もフェイントで行先を誤魔化して一時海中に逃げたり、挑発で連携を阻害したりしてみようかね
徒党を組まなきゃ小物一匹追いかけられないのか、天使様も失望するんじゃないかい
岩永・勘十郎
「全く。頭より力で来る連中を相手にするのは、骨が折れるぞ……まぁ難しい事ではないが」
足場の悪い船の上で敵を見る勘十郎。すぐさま弓を取り出し【戦闘知識】を駆使し姿勢を低く取る。右手には複数本の矢を握り、すぐに撃てるように構えた。これでバランスを崩さずに安定して撃つ事が出来るだろう。
「野獣の“狩り”なら慣れてるんだ」
得意の【サバイバル】技術や知識を駆使し、普段からしてる猪狩りや熊狩りの要領で動きを読み、【早業】の如く矢を放っていく。【怪力】による矢を引く力は半端ない。相当なスピードと貫通力を出せるはずだ。
●
「おっかないねぇ。この勢いじゃ、真正面からじゃ潰されちまう」
言葉とは裏腹に、飄々とした調子でつぶやいたのは名張・辿(鼠遣われ・f04894)。
無頼の旅人装束に身を包み、揺れる鉄甲船の上で身を縮めるようにしてバランスを取る様は、さながらはしっこい小動物のようだ。
しかし、永続的に荒れる海域、揺れる船上での立ちまわりともなれば、相対する海賊たちの方が手慣れているように見える。
まだいくらかの距離があるというのに、気の早い海賊はすでにこちらの船へ飛び移る機を伺っている。
「まったく。頭より力で来る連中を相手にするのは、骨が折れるぞ」
同意し、これみよがしに肩をすくめてみせたのは、詰め襟の学ランに学生帽をまとった岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)だった。
潮風に流れる髪を押さえ、揺れる船上に立ち続けるのは不慣れな様子であったが。
「……まぁ、難しいことではないが」
だれにともなく呟くと同時に、足を擦らしずらして姿勢を低く取る。
左手に弓を。
右手に複数本の矢を握り、すぐに撃てるようにと腰を据え構えれば、それまでざわついていた気持ちまでもが穏やかになっていくようだ。
(「これなら、いくらでも射ることができる――」)
試しに一矢と撃ちはなてば、矢は海賊のもとに届く前に長柄の斧によって両断されてしまう。
「なんだぁ今の攻撃は!?」
「オイオイ。オレたちゃ遊びで海賊やってンじゃねーぞ!」
「わざわざ殺されにきてくれるなんざ、ありがたいったらないぜ!」
そんな矢では誰ひとり仕留められやしないと、海賊たちが大口を開けてドッと笑う。
勘十郎はというと、すまし顔で。
赤の双眸でまっすぐに『ケダモノ』たちを見据え、次の矢をつがえる。
「……お前さん、手加減したね」
ニヤリ、口の端を曲げた辿の問いに、勘十郎は目を細め応えるのみ。
「引っ掻き回すだけなら、俺もやってみるかい」
ぐるりと肩をまわし、辿は胸中で唱えた。
(「――生き急ぎの友にして、死に急ぎの仇たる歪みの病よ。その狭間に、我を導け」)
次の瞬間、辿はドンと甲板を蹴り、敵軍の船へと向かって跳ねていた。
巨人海賊艦隊と、猟兵船団。
たがいの間には海賊たちさえ飛ぶのをためらうだけの距離があったのだが。
ユーベルコード『不生不死(ダイイングアライブ)』で己の身を超活性化状態に変じた辿は、その距離をものともせず跳ねた。
「なんだァ! 気でも狂ったか!?」
海賊たちのざわめきを耳にしながら中空で半身をひねると、敵船のマストへ向けて手を振りおろす。
餅のごとく柔軟に変化した男の腕はしかとマストを掴み、まるで空中ブランコでもするかのように、巨人たちの頭上を軽々と飛び回った。
「あンの野郎……!」
「上等だ! 引きずりおろせェ!」
怒り狂う者。
面白がる者。
海賊たちの反応はさまざまだったが、敵も素人ではない。
すぐに身軽な者たちがマストに登り始めたが、
「失礼するよ」
目鼻を潰すための毒入り容器をぶちまければ、重すぎる身体は一瞬で真っ逆さま。
そのまま帆接舷用のロープを破壊しながら、高所から、高所へ。
以後もかく乱に努めようと決意を新たにした、その時だ。
――ドッ! ガゴッ!!
鈍い音がたて続けに響きわたり、握っていたマストの柄が、砕けた。
支えを失った身体が、ぐらり傾き。
とっさに手を別の支柱に伸べることで、墜落を免れる。
海賊たちが、手にしていた斧を投げはじめたのだ。
それも、自分たちの船を破壊することさえ厭わずに!
「徒党を組まなきゃ、小物一匹追いかけられないのか。それでは、天使様も失望するんじゃないかい」
苦し紛れに挑発をはなつも、次々と放たれる斧はしだいに正確さを増しており、回避を考えれば無駄口を叩く間も惜しい。
(「南無三
……!」)
たまらず吐き捨てた、その時だ。
ギャッと海賊の悲鳴があがり、辿へと斧を投げようとしていた身体が崩れ落ちた。
その後も、次々と海賊が悲鳴をあげては、甲板に倒れていく。
注意深く骸を見やれば、その眉間に深々と矢が刺さっていることに気づく。
ものの数分もする頃には、あたりは頭部を貫かれた海賊たちの骸であふれていた。
「見事なもんだ」
己が陽動を行っている間に敵戦に乗りこんだ勘十郎の元へと降り立ち、「助かった」と礼を告げる。
「言っていなかったか? 野獣の“狩り”なら、慣れてるんだ」
勘十郎は、普段から猪狩りや熊狩りを行っている。
ゆえに、『ケダモノ』を仕留めるなど造作もないこと。
怪力によってはなたれる矢は、頭蓋をも砕く。
「初耳だね」
辿はそう告げると、また別の敵艦に乗り込むべく、力強く甲板を蹴った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
無間・わだち
厄介だ
死を恐れず、悪を顧みず、友を信じる
こういう相手は本当に厄介だ
無数の船を足場に使います
地の利はあちらだ
足場の観察を常に忘れないよう
【地形耐性、環境耐性
生身の俺相手にどの能力を強化するかまではわからない
けれど、攻撃と状態異常なら問題ない
痛みも呪いも耐えられるように出来てる
そういう躰だ
【激痛耐性、呪詛耐性
船上は揺れるから、互いに狙いはつけづらい
走り回って意識を向ければ
嫌でも狙ってくれるでしょ
俺に攻撃を向けている最中を狙い
偽神兵器を針へと変形
ありったけの数で一斉に集団を縫い留める
終いはアサルトウェポンによる制圧射撃
これで、おわり
互いを信じあう姿が
妙に右眼を震わせたから
少しだけ、閉じていて
●
鼠遣われ(f04894)と帝都の浪人剣士(f23816)が、連携して船を制圧した頃。
別の場所では。
「さっきから逃げてばっかじゃねぇか!」
「ここへ来てビビったのか、ツギハギ野郎!」
挑発を浴びせながら、交互に攻撃を仕掛ける2体の巨人海賊。
その斧が、デッドマンたる無間・わだち(泥犂・f24410)の眉間を撫でた。
――縫い目が這う、土気色の膚。
(「厄介だ」)
手にした偽神兵器を変形させ、盾代わりにして2体の攻撃を受けとめる。
綿密な作戦などありはしないのだろう。
力まかせに振りおろされる二斧の連撃は、偽神兵器ごとつぎはぎの身体を叩き潰さんとしつこく攻撃を繰りかえしてくる。
――死を恐れず、悪を顧みず、友を信じる。
間合い深く。
反撃など恐るるに足らずと、双眸をギラつかせる様は獣そのもので。
青の髪を、さらりなびかせ。
ちいさな瞳とおおきな瞳が、そろって海賊たちを見やった。
(「こういう相手は、本当に。厄介だ」)
細身の痩躯をよじり、タイミングを見計らって。
――ギィン!!
偽神兵器に斧が叩きこまれる瞬間、武器に力をこめ、海賊たちの斧を受け流した。
「おおっと!」
多少姿勢を崩しはしたものの、巨人海賊たちはすぐに体勢を立て直した。
わずかの瞬間を逃さず、わだちは手近にあった船へと跳躍。
船と船の間を駆け抜ければ、さらに別の巨人2体が連携して襲いかかる。
わだちは瞬時に周囲の地形を把握し、荒波による揺れを受け流しながら甲板を駆けた。
この揺れであれば、互いに狙いはつけられまい。
(「走り回って意識を向ければ、嫌でも狙ってくれるで――」)
次の瞬間。
頭蓋に鈍い衝撃がはしり、その勢いごと身体が甲板に叩きつけられた。
視界が赤に染まり。
全身が、つめたく濡れそぼっていくような、不快感。
後頭部に重しを乗せられたかのような、この感覚は――。
「ヤロォ! そのガキはオレたちの獲物だ!」
「先に見つけたのはオレたちだ」
視界はまだ生きていて。
荒々しい足音に続いて、1体の巨人海賊が、倒れたわだちの頭に足を乗せたのがわかった。
「ガタガタぬかすな。ここじゃあ、仕留めたヤツが絶対なンだよ」
声とともに、後頭部が軽くなる。
血濡れの斧が視界に入る。
そうして、己の身になにが起こったのかを、悟って。
ひらいていた指先を、かたく、握り締める。
(「……痛みも呪いも、耐えられるようにできてる。そういう躰だ」)
『そう』であることに、今さら、感慨など抱かない。
ただ。
互いを信じあう敵の姿が、妙に右眼を震わせたから――。
だから。
そっとまぶたを閉ざし、唱えた。
「――優しくなんて、できない」
瞬間。
少年を仕留めた海賊たちの頭上に、幾何学模様を描き複雑に飛翔する鉄針が生じ、4体を一瞬で串刺しにした。
貫かれた方は、ひとたまりもなかった。
わけもわからず針に貫かれたところへ、アサルトウェポンによる制圧射撃が続いて。
残ったのは、蜂の巣になり絶命した海賊たちの骸ばかり。
「これで、……おわり」
ユーベルコード『衆合』を展開する間に半身を起こし、かろうじて血濡れの手で握っていた銃が、ゴトリと音をたて甲板に落ちる。
つぎはぎの身体も、追うように再び倒れて。
わだちは、身の内でうごく『あのこの熱』を感じながら。
そっと、大きさのちがう眼を閉ざした。
成功
🔵🔵🔴
ビードット・ワイワイ
なるほど、船を沈めればいいと
あい分かったならば我こそが最適である
我が姿は強大にして勇猛
幾千も喰らいし猛者へと変わる
これが!メカモササウルスである!
来るがよい蛮勇なりし者共よ。汝らは等しく
捕食者の前の獲物である
我が巨体が暴れれば味方にも被害が出よう
少し離れた場所から行動開始
深く潜り急速浮上しそのまま飛び上がる
敵船に倒れ込めばそのまま船を沈められよう
雷撃にて船底破壊すれば更に容易か
討ち漏らした者が居っても巨人ならばよく沈むであろう
浮いておったなら良い獲物よ
我が顎はその大きさであっても容易く引きずり込み噛み砕かん
ヴィヴ・クロックロック
ふむふむ、死をも恐れぬ巨人の軍団か…
ならこちらは死者をぶつけてみようか。
まずはUCで船団を召喚。相手は連携も統率も取れている海のプロ。
しかしまあこの際召喚する幽霊たちの技量はあまり関係ない、真っ直ぐ相手に船に突っ込めればいいのだからな!
という訳で【リミッター解除】した私の船団にありったけの爆薬を積みこんで特攻させて爆破させるのが私の狙いだ。帆船のリミッターってなんだろう…
相打ち覚悟?それもいいだろう。こっちは相打ち前提だ!相手の船ごと沈めてしまえば個々の練度も連携の練度も覚悟もまとめて海の藻屑、戦争は残酷だな……。
(※連携アドリブ歓迎です)
●
――海上を埋めつくす船団と、船上で熾烈な戦いを繰り広げる猟兵たち。
参戦していたどの猟兵たちも健闘し、艦隊を蹂躙していったが、船団全体で見れば戦況はまだまだ拮抗している。
「ふむふむ。死をも恐れぬ、巨人の軍団か……」
潮の香りをはらむ風に外套をはためかせているのは、小柄な少女――ヴィヴ・クロックロック(世界を救う音(自称)・f04080)だった。
一見あどけない少女だが、その横顔は、どこか大人びているようにも見えて。
娘は、敵と相対する船の舳先に立ち、戦場を観察していた。
敵船へ乗り込んでいった猟兵たちのおかげで、猟兵たちの海上拠点ともなっている鉄甲船団は健在。
今のところこちらに攻め入る巨人海賊もおらず、ヴィヴは両腕を組み、泰然と思考を巡らせることができていた。
とはいえ。
このまま戦場を眺めているだけというわけにも、いくまい。
「相手は、連携も統率も取れている海のプロ。……なら、こちらは『死者』をぶつけてみようか」
ゴーストキャプテンであるヴィヴは、海の藻屑と消えた死者の魂を従えることができる。
真昼の空へ、星を掴むがごとく両手を掲げて。
「星辰より染みいでよ! ――いざ、出航!!」
船先の眼前の空に、インクの染みを垂らしたかの如くじわりと闇がひろがる。
滲みでた闇からあらわれたのは、複数本の強靭なマストを備えた空飛ぶガレオン船の船団だった。
――『鬼宿船団・アンナトラ』。
本来であれば水底に沈むであろう船底は鈍く光り、燐光をはなつ航走波を空いっぱいに描きながら、悠然と宙空を進んで往く。
どの船にも、船内にありったけの爆薬を積みこむようヴィヴが命じた。
ゆえに、船団はゆっくりと、しかし確実に、その高度を下げつつある。
「空だ! 空から来るぞ……!」
「迎え撃て!」
迫る船団に気づき、敵船上の巨人海賊たちが騒然としはじめる。
敵艦隊との衝突予想区域から、蜘蛛の子を散らすように巨人たちが撤退していく。
実に単純明快な作戦ではあったが、海上という戦場にあって、海の死者の声を聴くことのできる娘の力は圧倒的だった。
「いかに相手が海のプロだろうと、召喚する幽霊たちの技量は関係ない。なにしろ、真っ直ぐ相手の船に突っ込めばいいのだからな!」
先頭をはしっていたガレオン船が、上空から敵船を圧し潰すように接触。
一瞬、世界が鮮烈な光に包まれ、爆音をとどろかせ爆発、炎上する。
「個々の練度も、連携の練度も、果ては覚悟も。相手の船ごと沈めてしまえば、まとめて海の藻屑。……戦争とは、かくも残酷なものだな」
――しかし、だ。
「「「 ウォォォオオオオオォォォォォォォォオオオオオ
!!!!! 」」」
命知らずの巨人たちは鬨の声を挙げては次々と爆炎へ飛び込み、まだ空に残るガレオン船団に先制攻撃をしかけはじめた。
当然、中には爆発を誘発するものもあったが、船を推し潰され、確実に沈められるよりは空中で処理した方がいくらかマシと踏んだのだろう。
勇猛なる死を果たせば、死天使(スケッギヨルド)が出迎えてくれる。
死後の栄誉を約束してくれる。
――だからこそ、恐れるものなど、なにもない。
「相打ち覚悟? それもいいだろう」
世界にはうつくしいものがあると知ったヴィヴには、その思想は理解できない。
だが、構うものか。
「こっちはそもそも、相打ち前提だ!!」
召喚したガレオン船には、海の幽霊たちが乗船している。
彼らなら、死した巨人たちも新たな同胞として喜んで迎え入れることだろう。
「そうして新たな海の藻屑となり果てたなら。この私が、いくらでも従えてやろう!」
*
空飛ぶ船が高度を下げ、敵の船を推し潰しては、爆発していく。
そうして、巨人たちが無謀ともいえる攻撃を仕掛けながら、同じく爆発に巻きこまれ散っていく。
「なるほど、船を沈めればいいと」
あい分かった、とひとりごちたのは、無骨な体躯をもつウォーマシンのビードット・ワイワイ(絶対唯一メカモササウルス・f02622)だった。
猟兵たちの本陣でもある鉄甲船団からやや距離をおいた地点から戦況を見守っていた彼は、この戦場において、最も優位である形体を理解した。
なにを成せばこの世界が破滅し、ハッピーエンドを実現できるかを理解した。
ゆえに、確信した。
「ならば、『我』こそが最適である。我が姿は強大にして勇猛。幾千も喰らいし猛者へと変わる」
そう告げるなり、厳かに唱える。
「古代に滅びし海龍よ。海は其方を忘れたぞ。絶対なりし海の王。機械の体に魂宿せ。古代と最新今こそ合わされ。――我らこそが、モササウルスだ!」
足場にしていた船が水柱をあげて一瞬にして消滅し。
代わりに現れたのは、全長300mの巨大な龍の姿だった。
これこそ、ビードットが『メカモササウルス』と称する、七海征する最新にして古代の龍。
すぐさま海中へと深く潜航した後、急浮上した勢いのまま、敵船団の真中に飛びあがる。
海面上まで跳躍して、船上の誰の眼にも留まるよう、見せつける。
「見よ! これが! メカモササウルスである! 来るがよい蛮勇なりし者共よ。汝らは等しく、捕食者の前の獲物である」
そのまま敵船に倒れこめば、巨体に圧し潰された船もろとも、巨人たちが成す術もなく海底へ次々に沈んでいく。
空飛ぶガレオン船が今なお敵船を沈めるなか、さらに現れた巨大海獣を前に、さすがの巨人海賊たちも驚きを隠せなかった。
「なんてデタラメなヤツらだ!!」
しかし、勇猛果敢にして無謀の魂をもつ海賊たちだ。
すかさず、特に巨大な体躯の男――『傷持ち(スカー・フェイス)』が大声で叫んだ。
「野郎ども! 仕留めたヤツには財宝ひと山くれてやる! かかれ!」
「死天使(スケッギヨルド)の恩寵あれェエエエ!!」
「「「 ウォォォオオオオオォォォォォォォォオオオオオ
!!!!! 」」」
海に投げ出されてもなお器用に泳ぎ逃げ、海賊たちはメカモササウルスめがけ斧を振り下ろし始めた。
まるでひるむ様子のない敵たちを前に、ビードットは冷静に判断する。
この形態は、時が経てば経つほどに理性を失っていく。
だからこそ、判断を遅らせるという選択肢はなかった。
頭部にあしらわれた角がバチバチと雷をまとったかと思うと、取りついていた巨人たちめがけ雷撃砲を撃ちはなつ。
雷撃にたまらず手を離せば、待っていたのは龍のあぎとだ。
「我が顎は、その大きさであっても容易く引きずり込み、噛み砕かん」
狙いをつけるまでもない。
海を漂っていた巨人たちは、口をひらけば次々とメカモササウルスの口へと流れ込んできた。
巨人海賊『苛烈な斧』艦隊の一角は。
こうして、ことごとく壊滅した。
大成功
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