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羅針盤戦争〜生物が進化すると誰が決めたのか

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #バルバロス兄弟 #『三つ目』の襲撃


「みんな、ついにグリードオーシャンで決戦が始まるわ!」

 ふわふわと浮かぶシャボン玉の向こうから、ユメカ・ドリーミィ(夢幻と無限のシャボン玉・f18509)は緊迫した声で告げた。
 その名は──『羅針盤戦争』。
 グリードオーシャンの世界はもちろん、そことつながっているサムライエンパイアの世界にまでも、場合によっては危険が及びかねないという重大な戦いだ。
 この戦いの重要性と深刻さを深く認識し、猟兵たちはユメカの言葉を聞く。

「今回あたしが予知したのは、「七大海嘯」の一人である「『三つ目』バルバロス兄弟」っていうやつの居場所よ。いきなり七大海嘯戦、つまり幹部戦になるから、くれぐれも油断しないでね」
 ユメカはきゅっと唇をかみしめ、真剣なまなざしで注意事項を口にしていく。
「これまでの戦争のフォーミュラや幹部たちと同じように、バルバロス兄弟は「絶対に先制攻撃をしてくる」はずよ。まず、これにどうやって対応するかを考えておくことが必要ね。でも逆に言えば、この対応策をあらかじめ考えておけば戦いは有利になると思うの」
 猟兵たちはしっかりとユメカの言葉を心に刻み付け、次の言葉を待つ。
「そして、もうひとつ」
 ユメカの重々しい口調が響いた。

「おサルさんになっちゃうかもしれないから気を付けて!」

 ……はい?
 思わず聞き返す猟兵たちに、ユメカはまじめに繰り返す。
「みんながおサルさんになっちゃうかもしれないのよ。あれ、知らない? サル」
 いや知ってるけれども。今までのシリアスな空気は何だったのか。
「……えっと、このバルバロス兄弟が使う能力は、「相手を退化させる力」なの。つまりそれを食らうと、みんなは人に進化する前のサルに戻ってしまう可能性があるわ。あるいはもっと昔の生き物に戻されちゃうかも」
 そこまで説明されてやっと猟兵たちは理解した。一見ギャグっぽく聞こえる攻撃だが、実はかなり厄介だ。退化させられてしまったら、頭脳戦や高度な技術を使った戦闘は、かなり難しくなるだろう。
「人じゃないとしても油断しないで。例えばウォーマシンさんだったら、きっと……8bit機とかに退化させられてしまうわ!」
 それはかなりヤバい。むかーしのゲーム機くらいの演算能力だ。
「あと、ダンピールならコウモリさんとか。妖狐なら普通の狐さんとか。神様なら……神様はどうなるのかしらね? 神様に対して進化論で攻撃するってかなりセンシティヴな気がするけど……で、でも何かにはさせられちゃうと思うわ。くれぐれも注意してね!」
 それはフリなのだろうか、という疑問を抱きながら、猟兵たちはとにかくも出撃準備を整えた。
 目指すはグリードオーシャン──バルバロス兄弟!
 あとサルには気を付けて!


天樹
 こんにちは、天樹です。
 このシナリオは「羅針盤戦争」の戦争シナリオです。一章で完結し、戦況に影響を与える特別なシナリオとなります。

 ユメカが強調していたように、SPDを選択する方は退化攻撃への対応が必要になります。もし「うちのキャラはこれに退化させられたい」というご希望がありましたら(あるのかな……)プレイングに記入なさっていただければと思います。何もなければMSの方で適宜決めさせていただきます。
 もちろん、必ず退化しなければならないわけではありませんし、POWやWIZなら純粋なパワー勝負になるでしょう。しかしいずれにせよ、七大海嘯は「必ず先制攻撃を行います」ので御注意ください。これに対応することでプレイングボーナスが発生します。
 では、皆様のプレイングをお待ちいたします。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟』

POW   :    フォーアームズ・ストーム
【四腕で振るった武器】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    「オルキヌスの瞳」
【弟ハイレディン(左頭部)の凝視】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【肉体、精神の両面に及ぶ「退化」】で攻撃する。
WIZ   :    バルバロス・パワー
敵より【身体が大きい】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
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シャルロット・シフファート
転移と同時にサイキックキャバリアを起動し搭乗。
キャバリアは5mで規格統一が成されるわ。そして5mあれば体格差はほぼ同じでしょう?
そうすればアンタのデバフは意味を為さなくなるわ。
そして電脳精霊術を使い幻属性と時属性、空属性でキャバリアを拡大変容。つまりはキャバリアそのものの次元や可能性を操作してバルバロス兄弟よりも巨大化させるわ。

念には念を入れてユーベルコードを起動。万能機械を融合合体型に製造してキャバリアに合体。ただ巨大化させるだけでなく敵に対して有効な機能や形態をとりながら巨大化していき、電脳精霊術による魔術で薙ぎ払っていくわ。


荒谷・ひかる
大きくて、力強くて、見た目以上に速い……
うん、わたしの手に負える相手じゃありませんね。(諦め)
ですが、何とかして時間を稼げさえすれば……

コード発動までの時間稼ぎをする
まず敵へ向け閃光弾と爆音弾を連続投射
更に自分の周囲には催涙煙幕弾を焚き、敵の目と耳と鼻を誤魔化して可能な限り命中率を下げて逃げ回る
(自分で吸わないようガスマスクも用意)

反撃は空から駆けつけてきた【宇宙の精霊さん】にお任せする
(※SSWの宇宙船も丸呑みにする巨体を誇る宇宙怪獣)
この子の巨体ならバルバロス兄弟を上回れるはずですから、きっと有利に戦えるはずです
強化されたパワーを活かしての体当たりや噛み付き、締め付けで攻撃です!



「そうか、これか、この感覚か!」
「ああそうさ兄者、どうたらこいつで間違いないようだぜ!」

 まばゆい陽光を遮って立つ巨大な影がある。天空さえも圧するほどの威容がある。
空間さえひしゃげるような重厚巨大な体躯に、あろうことか、五本の腕と二つの頭を備える異形。それこそが、世界を暗黒に染める脅威、すなわち「七大海嘯」のひとつ──バルバロス兄弟に他ならなかった。

 その二つの顔で、バルバロス兄弟は、二重の邪悪な笑みを漏らす。
「ふははは、まんまとやってくるというわけだな、俺たちの獲物が」
「一撃で仕留めてやるとしようぜ!」
 兄弟は巨岩にも紛うその拳を振りかぶり、握りしめた剣を構えた。
 炯々と光る三つの目で狙うは、眼前の空間──そう、今しも湾曲した次元の奥から現われ出でくるはずのもの。
「グリモア猟兵! そのグリモアもらったぜ!」
 怒号とともに、巨大な剣が風を切って叩きつけられた──が。

「アティルトッ!」

 鋭い叫びともに鮮烈な火花を散らし、その一撃はがっきと受け止められていた。
 邪悪なる巨人と互角の体躯を備えるそれこそが、電脳精霊術の神髄を凝縮させた巨大兵装、エレクトロスピリットサイキックキャバリア、アティルト!
 そのコクピット内で不敵な笑みを美しい唇に浮かべていたものは、シャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)に他ならなかった。

「やっぱりこっちを先に狙ったわね。ええ、アンタたちがグリモアを欲しがってるってのは知ってたのよ。だとすれば、間違いなく私を狙うはず。先制攻撃をするつもりで、アンタたちはまんまと私に釣られたってわけよ!」

 そう、シャルロットはグリモア猟兵である。ゆえにその身にはグリモアの波動が漂う。
 ……だからこそ。だからこそ、シャルロットはそれを逆に利用したのだ。

「さあ、今よっ、精霊術のお仲間さん!」
「は、はいっ!」

 シャルロットの声に、可憐な返事が返った。アティルトの背に潜んでいた、荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)が、ふわりと身を翻して大地に降り立ったのだ。シャルロットを囮に、ひかるに戦闘体勢を整えさせる、それが二人の精霊術師の作戦だった。
「ちっ、ちっぽけな人間風情が小細工を──!」
 凶暴な顔に憎悪をみなぎらせて、バルバロス兄弟ははるか高みからひかるの華奢な体を睥睨する。その圧力にぞわりと身を竦めながらも、ひかるは引かない。

「大きくて、力強くて、見た目以上に速い……うん、わたしの手に負える相手じゃありませんね。……ですが!」

 そう、ひかるは引かない。敵の強さの要素は、すべて知っているものだから。速さなら知っている、高機動戦を得意とする友がいるのだから。力強さなら知っている、蒸気を纏う友がいるのだから。大きさなら知っている、共に戦う宇宙の精霊がいるのだから。そして何よりも、巨大な暴威にひるまぬ勇気を──愛する人と共有しているのだから!
「退きませんっ!」
 彼の面影を胸に、ひかるは凛然と唇を引き結ぶ。シャルロットの作ってくれた時間で、既に準備は整っている。──そう、発射の準備は。
「全弾、斉射ですっ!」
 ひかるの声とともに、無数の弾幕が展開される。閃光と爆音を引き起こし炸裂する弾幕が!
 影さえ飲み込むほどの光が、空間さえ引き裂くほどの音が、周囲一面を埋め尽くした。いかに巨人が巨大な体躯を誇ろうともそれを圧するほどの鮮烈な光と轟音が。そしてさらに。
「ぐおおおおっ!」
 バルバロス兄弟が吠える、野獣のように。二つの頭を共に苦しげに振り立てながら。そう、ひかるが放ったもう一種の弾丸は催涙煙幕弾。涙に霞むバルバロス兄弟の視界に、ゆらりと影が蠢く。
「三つも目があっても、それじゃあ役に立たないわね!」
 シャルロットの凛とした声とともに、アティルトの巨拳が巨人に叩きつけられる。
 大岩山さえ揺らぎ抉り抜くような衝撃とともに、さしもの巨人がぐらりとよろめいた、しかし、ペッと血反吐を吐き捨て、バルバロス兄弟はなおも牙を剝く。
「小癪な……大きさだけ同じにしたからとて、それは単に強化能力が発揮されないだけのことだ!」
「兄者の言うとおりだぜ、素のタイマン勝負なら負けやしねえ!」
 そう、バルバロス兄弟は単に巨体と異形、そしてメガリスに胡坐をかいているだけの浅薄な敵ではない。彼ら自身が備える武器術や格闘術もまた、恐るべき練度に鍛え上げられているのだ。
「おらぁぁあっ!」
 五本の腕が唸り、立て続けに巨人の剣が、槍がアティルトを襲う。嵐のように大気を切り裂き、波濤のようにすべてを飲み込まんと。それはまさに「七大海嘯」の名に相応しい絶対的にして圧倒的な破壊の化身そのもの!
「やるわね、……でも!」
 だがシャルロットも怖気はしない。その瞳はすでに爛々と輝き、電脳精霊術の発動を物語る。
 おお見よ、アティルトの外見が。バルバロス兄弟の三つのまなざしに映る、キャバリアの外見が。時空を超越し次元を嘲弄し、幾何学の彼方からなる遠く果てしない線分で構成された恐るべき「もの」へと変容し変貌する──真に畏怖すべきはどちらなのかを知らしめんとするように。
「『錬鉄から蒸気へ、蒸気から電子へ、電子から鋼鉄へ、鋼鉄から宇宙に。その連鎖は叡智の申し子を産みだし我が手に万能の聖名をもたらす』──」
 朗々とした詠唱が告げる、彼女たちこそは生命の埒外、破壊の理を破壊するものだと。
「『聖杯機譚、電子と鋼鉄の申し子は拝跪する(グレイルバース・ユニバーサルマシン)』!!」
 宣明と共に、巨人を圧倒する夢幻無明の超越機が顕現し、恐懼する巨人をがしりと捕縛した。
「捕まえた! 仕上げはあなたの精霊に任せたわっ!」
「はい! 頑張ってください、宇宙の精霊さん!」
 シャルロットの声にひかるの声が和する。アティルトにしっかりと押さえつけられた巨人の頭上から、虹色に輝く超次元の不協和音が降り注ぐ。見開かれた巨人の眼に映る、映ってはならない影。それこそはひかるの呼び出せし精霊にして、永劫と久遠の中に住まうもの……巨大宇宙船すら飲み下す魔蟲、宇宙モンゴリアンデスワーム! その偉大なる狂気の力は、ひかるの能力でさらに強大に化している!
「タイムリミットは96秒。耐えられますか!?」
 それは事実上の最後通牒。ひかるの号令一下、星間宇宙を泳ぐ魔蟲はバルバロス兄弟に襲い掛かる、無慈悲に残酷に、シャルロットに捕縛されて動けぬ巨人に!
「ぐあああああっ! グリモア……グリモアさえあれば……!」
 苦悶する巨人に、シャルロットとひかるは冷ややかに答えた。

「関係ないわ。アンタたちが負けるのは」
「あなたたち自身の傲慢と強欲の故なのですから」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シズホ・トヒソズマ
退化とは厄介ですねえ
ま、なら引っ掛けてやるだけですが

転移前に着用者(中華男の娘海賊)にお願いし非着用状態
私はユングフラウの中にマスク状態で隠れます

敵のUCで着用者がただでさえ可愛らしかったのがさらにきゃわゆい子供オサルちゃんになり終わった所で「終わりましたー?」って感じで出てきて着用
ふふ、ヒーローマスクは子供サルであろうと力を猟兵として引き上げられるのです!
指での操作しにくさはマインドテンタクルの◆操縦でカバーし人形を◆早業で操作

UCで帝竜オロチの力を使用
緑の溶解粘液で頭部や足元を狙い
眼の再発動封じや巨体の体勢を崩すことを狙います
崩れた所でシュヴェラの◆空中浮遊で
胸を炎獣牙剣『王劾』で◆串刺し


ノエル・フィッシャー
【SPD】
王子様にして勇者たるこのボクが退化すると何になるか、キミは知ってるかい?知りたいならば、その面白メガリスを試してごらん。ボクは受けて立つよ。

王子様にして勇者たるこのボク、ノエル・フィッシャーの根源は何か?それは人の願い、即ち溢れ出る光そのもの。そしてその願いとは世の安寧とそれを邪魔するものを倒す力さ!
さあ受けるがいい、このボクのUCは【燦々輝く太陽の王子様】だ!光に分解されつつも、それさえもキミを焼く光条へと変え、連続照射でその瞳を、そしてその歪な体全てを燃やし尽くしてみせよう!

アドリブ・共闘歓迎だよ。



「ぐははははは! てこずらせてくれたが、いかに猟兵といえども、こうなってしまってはもう終わりだなあ!」
 天地を揺るがすような哄笑が響く。一つの巨体に乗った二つの口から。
 それは世界を侵食する恐るべき七大海嘯の一人、『三つ目』ことバルバロス兄弟の笑いだった。勝利を確信した故の。
 なぜならば。

「うわー! なんてすごい力でしょうかー! やられましたー!」
「うわー! ボクとしたことが食らってしまったー!」

 眼前で苦しんでいる二人の猟兵、シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)と、ノエル・フィッシャー(イケメン王子様・f19578)に、まんまとその凄まじい力を──『オルキヌスの瞳』の呪いの視線を浴びせることに成功したからであった。
 オルキヌスの瞳はバルバロス兄弟の弟、ハイレディンの備える力。その効果は、おお、なんたることか、生物を退化させてしまうという恐るべきものである。まさに、未来を否定し過去から染み出てくるオブリビオンに相応しい悍ましき呪いであった。
 ……まあ、その力を受けて苦しんでいるはずのシズホとノエルの悲鳴は、何故か完全にわざとらしいというか棒読みっぽかったのだが、すっかり自分たちの優位を確信しきったバルバロス兄弟はそのことに気づかない。
「ほれほれえ、退化していくぜえ! はっはっは、サルになっちまったんじゃあ、お前らも終わりだなあ!」
 バルバロス兄弟の言うとおり、二人の姿が見る間に変わっていく。まずは可憐なシズホの姿が縮み、そのぷりんとした魅惑的な臀部からはぴょこりと尻尾が、そして全身が、もふっとした毛で覆われていく……。数百万年から一千万年の時間を瞬時に逆行し、サルへと退化しようとしているのだ。なんたることか、サルになってしまっては猟兵の偉大な力も使えない。このまま世界は終わってしまうのか。我らの猟兵はここで敗北エンドを迎えてしまうのか。このシナリオは失敗判定なのか。
 
 ……そんなわけなかった。

「ぐはははは……ぐえええ!」
 バカ笑いを続けていたバルバロス兄弟の二つの顔面を、宙高く飛んだ拳が思い切り殴りつけたのである。さらに続けてキック、チョップ、尻尾ビンタ!
「あーすいませーん、もうその攻撃終わったかなーと思いましてー」
 しゅたっと地面に降り立ったその影は、シズホ。彼女の明敏な意思ははっきりと輝く瞳が示している。退化攻撃が効かなかったのか? いや、そんなことはない。シズホの外見は、すっかり可愛い子ザルへと成り変わっているではないか。
 だが。
「ふふ、ヒーローマスクは子供サルであろうと力を猟兵として引き上げられるのです!」
「うっきー!!」
 然り。
 シズホはヒーローマスク、すなわちマスクが本体であり、着装者の力を猟兵として変じる種族であった。すなわち、あえて退化攻撃を受けたのはシズホの着装者のみであり、本体のマスクは身を潜めてやり過ごしていたのである。
 しかも、サルになったことでその俊敏性は逆に上昇し、いわば猟兵の大いなる力を使いこなす素早く身軽な子ザルという、さらに手に負えない存在へと変わっていたのだ。パ〇マン2号のごとくに!

 そしてもう一人も。
「王子様にして勇者たるこのボクが退化すると何になるか──これがその答えさ!」
 ノエルの凛とした声が響く。燦燦と輝くまばゆい光がそこに煌めいていた。暗闇を引き裂き、未来を照らし、希望をもたらす光の瞬きがそこにあった。
 それこそが、ノエルの根源。人の願い、即ち溢れ出る光そのもの!
「そしてその願いとは……世の安寧とそれを邪魔するものを倒す力なのさ!」
 願いは存在の奥底からほとばしる想いの力。ゆえに、たとえ退行させられようともその本質が変化することはなく、そして願いがあり続ける限り、ノエルの光もまた、その一途な美しさを失うことはあり得ない! 王子とは、勇者とは、人の未来へ歩む道を導く光の謂いに他ならぬのだから! 
「その面白メガリスは確かにボクの体を光に分解した、だけど、それさえも──ボクの力としてみせよう!」
 ノエルの宣言は高らかに、燃え盛る太陽の力をその身に宿す。生命を育む力、すなわち、過去にとらわれたオブリビオンとは対極の力を持って、その輝きは降り注ぐ!
「『王の血族は太陽の子――陽の輝きが万物を照らす!』」
 灼熱の閃光が大気そのものを染め上げるかのように撃ち出され、まっすぐに巨人の魁夷な巨躯を貫いた。それは一閃にとどまらない、無限にして永続の連射、あたかも人の願いが久遠に続くかのようにノエルの光も終わらない。それこそがノエルの秘儀、『燦々輝く太陽の王子様(サン・オブ・サン)』の洗礼!
「ぐあああああ!」
 天を衝くほどの巨体さえも焼き尽くさんとする凄絶な光のシャワーを浴びて、先ほど二人の猟兵たちが上げたような悲鳴を今度はバルバロス兄弟が上げる。だが今度は演技ではない、心底からの苦悶の悲鳴を。
「て、てめえ……だがまだ終わらねえぜ! もう一度邪眼を浴びせて、今度こそ……」
 巨人のくぐもった声が怨嗟を持って響いた。焼き尽くされようとする苦しみに喘ぎながらも、七大海嘯と恐れられるだけのことはある無尽蔵の耐久力と執念にものを言わせ、バルバロス兄弟はなおも前に出ようとする。
 
 しかし。
「そうはいきません。──『人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す!』」
 シズホの声が呼んだのはかつての恐るべき邪悪の力。魔を持って魔を滅するため──悍ましき帝竜オロチの力を、今こそシズホは呼び起こす! 
 その身に纏った昏き力さえも未来のために。シズホが放ったのはオロチの使った不気味な緑色の粘液、それが巨人の足元に降り注ぎ、見る間に地盤を溶解せしめた。雲つくような巨体の重さを、溶け落ちた大地が支えきれようはずもない。泰山が崩れ落ちるかのように、巨人は地響きをあげて転倒した。
「隙ありです! 受けてもらいます、炎獣牙剣『王劾』!』
 舞い上がったシズホの手から放たれたのは、やはりかつての恐るべき敵ガイオウガの力を宿した鋭刃。その灼炎の剣が、まっしぐらにバルバロス兄弟の分厚い胸元を刺し貫いた。
「があああああっ!!」
 そこへさらに、ノエルの光が降り注ぎ、身動きできぬ巨人の体を焼き尽くしていく。
「ふふ、串刺しの挙句こんがりと焼きあがりそうですね。おサルさんはこうして火の使い方を学び、進化したのかも?」
「退化を操るつもりで自分が進化の教科書になったのか。皮肉な笑い話だね」
 二人の猟兵の言葉を、シズホの体である子ザルは、きょとんと可愛らしい顔をしたまま、ただ聞いていた。
「うっきー?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
パワー勝負なら任せろ!
…混ざり物のオレが退化したら何になるんだ…?
人間基準?神様基準?

攻撃されたら【指定UC】で防御するな
オレ自身は壁を【クライミング】で登って攻撃が終わったタイミングまで待機するぜ
【結界術】で足場を生成して、【残像】が見える速度で移動し、Tyrfingで【怪力/(腐敗)属性攻撃/呪詛/鎧無視攻撃/鎧砕き】を仕掛けるか

アドリブ、共闘大歓迎


上野・修介
※アドリブ、連携。負傷歓迎

――呼吸を整え、力を抜き、専心する
――熱はすべて四肢に込め、心は凪の如くに

拳を相手に突き出し、
「推して参る」
と真っ向勝負を挑むと所作で見せる。

姿勢を低く、相打ち覚悟の捨て身特攻と見せて真っすぐ突っ込むことで売り下ろすような攻撃による迎撃を誘う。

視線と殺気、体幹と重心の向き、関節の駆動から攻撃の向きとタイミングを見切り、衝突の直前で地を打撃し、急ブレーキを掛けて攻撃を遣り過ごすと同時にその勢いを利用し頭を飛び越え背後を取り、組み付いてUCによるジャーマンスープレックス。
そのまま追い打ちに下段突きを叩き込む。

勝負は一瞬。
『観』を誤れば死。

「まあ、いつものことか」


トリテレイア・ゼロナイン
8bit……最終的に算盤などの原始的な計算機になるのでしょうか…
幸い、お互いに真っ当な勝負が望みのようですね

今を生きる人々を守護する騎士として
その略奪、阻ませて頂きます


中々の武器捌き、特に下段への迎撃を特に修練を重ねられたようですね
ですが…
疾走し接近、敵の武装の軌道を●瞬間思考力で見切り把握
大盾を地に突き立て縁を持ち●怪力で身を運び●踏みつけスラスターの●推力移動も併用し敵の頭上へ跳び回避し●騙し討ち

事前に方角を情報収集していた陽光背に●目潰ししつつUCによる剣の一閃で手を斬り●武器落とししワイヤーアンカーで強奪

良きメガリスですね
使い潰させて頂きましょう!

●怪力で操り攻撃5倍、回数半分で斬撃



「退化攻撃ね………混ざり物のオレが退化したら何になるんだ……? 人間基準? 神様基準?」
 アトシュ・スカーレット(狭間を歩く放浪者・f00811)はぽつんとつぶやく。かつて宿敵との激戦の末に見出した己の根源、人と神の混ざりものだと知った時のことを思い、ふっと自嘲するかのように。もしもその技を受けてみれば、あるいは自分の存在を定義づけることができるのかもしれない。陽が落ちる直前の、昼とも夜ともつかぬ、泣きたくなるように懐かしいけれども揺らめくように不安定な黄昏の時間のように、アトシュは自分が何者かを定めかねている。
 だが、彼は小さくかぶりを振った。
「……今は先へ進むのみだ。過去も、根源も、振り返るのに意味がねえとは言わねえ、だがそれは今じゃねえ」

「私が退化したら8bit機ですか……なんとも」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)もまた、出撃時にユメカに言われた言葉を思い出し、苦笑の色にセンサーアイを明滅させた。そこからさらに時代を超えてさかのぼっていけば、
「……最終的に算盤などの原始的な計算機になるのでしょうか……」
 己の頭の形をした白いそろばん玉がずらっと並んでいる様をビジュアルイメージとして構築してみる。……知人の一部が指さして笑いそうな気がし、トリテレイアは黙ってそのイメージをデリートした。
「……幸い、今の場合はお互いに真っ当な勝負が望みのようですね」

「退化か……これまで積み上げ、鍛え上げた結果が無駄にされる、というのはあまりいい気分じゃないな」
 上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)も、ふと敵の得意な攻撃について思いを馳せた。己の長きにわたる研鑽はすでに自分の血肉となり、魂に刻み込まれた。それは苦しみではなく、己を確かに昇華していったという道標でもある。
 しかし、そこまで考え、修介はふと思いつく。
「いや待てよ……つまり、それを消されるということは、また最初から鍛錬できるということか? 一歩ずつ、丁寧に」
 それはそれで楽しいかもしれない、と鍛錬マニアは一瞬思う。だが無論、それは可能性の中で遊んでみた、ただの戯れ。喧嘩に明け暮れた日々の記憶も、師との拳での語らいも、いずれも失うわけにはいかない己の中の輝きなのだから。

 三人の猟兵がそれぞれ内心で思い浮かべたのは、刹那にも満たない僅かな一瞬、電光石火の間隙にすぎぬ。なぜならば。
「くらえええええ!!!!!」
 彼らの眼前には既に、大気を引き裂き大地ごと叩き潰さんばかりの勢いで、双頭複腕の巨人が振るう巨大な武器が迫っていたのだから!
 それこそは恐るべき七大海嘯が一人、『三つ目』のバルバロス兄弟が繰り出す必殺必中の破壊技、名前の通り嵐のごとき威力を備えたフォーアームズ・ストーム!
 まともに食らえばいかに猟兵とてひとたまりもない、だが。
「凄絶な勢いです。ゆえに、軌道は読みやすくもあります」
 トリテレイアのマルチセンサーと冷静沈着なアルゴリズムは既にその軌道を観測し分析し終わっている。巨大な盾を瞬時に大地に突き刺すと、トリテレイアはそれを足場とし、スラスターのまばゆい軌跡を残して、白銀に輝く巨体を轟と宙に舞わせた。
「むうっ!?」
 バルバロス兄弟の兄、オルチは一瞬、トリテレイアの白い輝きとスラスターの炎に気を取られ、視界を上方へとさまよわせる。同時に、
「何っ!?」
 バルバロス兄弟の弟、ハイレディンは眼前の光景に戸惑った。己に応じまっすぐに突っ込んでくるように見えていた修介のダッシュが、寸前で急停止したためだ。修介の鍛え上げた拳が大地を打ち、勢いを止めてタイミングをずらしたのだ。
 兄はトリテレイアの動きを追ってしまい、弟は修介の行動に注目してしまった。兄と弟、二人の意思が統一され意識が共通であれば双頭の体は強大な力を発揮するだろう、だが、……二人の意識が分断されれば? その場合、体が共通であるだけに、巨大すぎ強力すぎる巨体の制御は一挙に不安定となる!
「うかつだな七大海嘯! 『我が呼び声に応えよ!無垢なる願いの結晶たる守り、我が身を滅ぼしてでも証明せよ』っ!!」
 その瞬間、アトシュの令明が響き渡った。絶対無敵の城壁を想像し創造する、それこそはアトシュの能力、幻想召喚・城壁式(サモン・シュロス)!
 一瞬で築き上げられた堅牢無比な城壁が、足元を揺らめかせたバルバロス兄弟の腹部に突き刺さるように聳え立つ。体勢を崩した巨人はまともにそこへと突っ込み、己の超重量と突進の猛威を自分自身で味わう羽目となった!
「ふっ、パワー勝負ならオレも負けてねえぜ、七大海嘯」
「ぐおおおおっ!?」
 美しい容貌で不敵に笑むアトシュと対照的に、血反吐を吐いてよろめくバルバロス兄弟。
 瞬間、その背後に音もなく影のように回り込んでいた修介の姿がある。いかなる巨体といえども重心を崩せば投げられる、力は不要にしてただタイミングをつかむのみ、それは確かに真理であり武術の神髄。だが、おお、あろうことか。修介は5mもの威圧的な体躯を誇る巨大なコンキスタドールを──打ち投げんと欲する!
「ちっぽけな人間が……ふざけ……!!」
 その意図に気づき、怒りに燃えるまなざしで、バルバロス兄弟は抵抗せんと試みた。だが。
「邪魔だな、その無駄に太い脚」
 陽ざしに揺らめくような幻が見えた。それはアトシュが風に刻んだ残像。既に彼は神器を振るっている──Tyrfing、腐敗をつかさどる呪いの太刀を。その剣先が狙い誤ることなく、深々と巨人の足を切り裂いた。
「ぐあああああっ!」
 見る間に腐食に侵食されていく足の激痛に巨人は吠える、大地さえ揺らぐほどに。だが吠えようとも修介の技は止まらぬ、踏ん張るべき巨人の足は腐り萎えているのだから。
 だがまだ巨人には腕がある、武器を抱えた腕が。その腕を無理やりに背後へ回し、バルバロス兄弟は修介に突き立てんとした。しかし、それさえも許さぬ、トリテレイアが許さぬ!
「少々、不作法ですがこれも戦法。ご容赦を」
 言葉と裏腹の冷淡な語調で、トリテレイアの剣が舞うように閃き、巨人の武器を次々と叩き落す。
「今を生きる人々を守護する騎士として、その略奪、阻ませて頂きます」
 白銀の機械騎士から打ち出されたワイヤーアンカーが、巨人の四腕が保持していた武器をすべて絡め取る──、『四腕』? いや違う、バルバロス兄弟には、「五番目」の腕がある! 巨大なその掌で一薙ぎするだけでも修介は吹き飛ぶに相違ない腕が。
 その隠し腕を振るおうとした刹那、光が走った。アトシュが投じたTyrfing、そしてトリテレイアが奪った巨人武器が、同時に隠し腕を貫いたのだ。
 絶望の叫びが上がる。既に抵抗のすべがないと瞬時に悟ったバルバロス兄弟の叫びが。巨人はただの木偶の坊では決してない、彼ら自身、武器術と格闘術の達人である。だからこそ、分かったのだ。もう逃げられぬと。
「――呼吸を整え、力を抜き、専心する。――熱はすべて四肢に込め、心は凪の如くに……」
 巨人の絶叫と対照的に、修介の心は水鏡のように静かだった。
 そのまま、ふわりと、ゆらりと。
 ここに武の極致はその完成を見る──。
 七大海嘯の巨体は、天空に大きく弧を描き、虹のように。
 深く深く、後頭部から大地に叩きつけられていたのだ。二つの頭を、共に。
 それは芸術にも等しい、武にして舞であった。
 体内からすべての呼気を吐き出させられ、巨人は地に沈む。
「『観』を誤れば死だったが。……まあ、いつものことか」
 静かにつぶやく修介の傍らで、アトシュとトリテレイアも思いを馳せる。
「お前ら兄弟も『家族』。……家族が一緒に死ねるってのもいいもんだろうぜ」
 「家族」の言葉に深い感慨を秘めたアトシュの言葉は風に乗り、トリテレイアも微かに頷いた。
「……そうですね、私も兄弟機を葬ってきながら、自分ひとり生き延びてきたのですから……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリア・フォルトゥナーテ
アドリブ連携歓迎

「退化させる力だと?それは神の呪いで不変不死となったこの身にも効くものなのかな?きひひひ」

ヴェールを外して、悪の極みである主人格になり、心臓を抉って死者の宝箱に納める事で、この身は審判の日まで死ぬ事も変じる事もできぬ身になる。同時に髪はイカ足、左手右足は蟹の手足になり、肌もイカと同じ質感になる。

「どうだ、バロバロス兄弟。死ぬのは怖いだろう?」

そして、呪いにより海そのものと化したこの体は、海ならばどこにでも瞬間移動が叶う。幽霊船フライングダッチマン号の甲板上から、甲板に沈み込むように消え、バルバロス兄弟の背後に、地面から生えるように現れて、その二つの頭を蟹の手で切り裂きにかかる。


シノギ・リンダリンダリンダ
三つ目は…配下が押し寄せてきた時に喧嘩売ってない派閥ですね。まぁ部下に喧嘩売ってないのでボスに直接売りましょう
今回はその前哨戦という事で

SPDに対抗
退化する、ドールである私でしたらまぁ製造途中とか起動直後とかですかね
だったら問題ありません

海賊幽霊船で船長をするために作られたミレナリィドール
遊戯船という表の顔のために後付けで人格を形成されたため、退化し起動直後になった時、感情が無いがその分戦闘、蹂躙に特化し限界突破する
【飽和埋葬】で死霊騎士を召喚
無慈悲に、無感情に、串刺し、呪殺弾を放ち、砲撃し、呪詛をこめた属性攻撃をし、集団戦術にて蹂躙する
目の前の海賊を殺す。それだけに特化したドール



「「さあ、海賊の時間ですよ!」」

 二つの口から同じ言葉が叫ばれた。それは双頭の巨人、七大海嘯バルバロス兄弟のもの……ではなく。
 まぎれもなく別々な、しかし妙に息の合った二人の猟兵の言葉であった。
 口にして、思わず二人はお互いに顔を見合わせる。良く見知った顔を。
「……あらー。お誘いした事件にご一緒に行けなかったと思いましたら」
「今度は誘い合わせてもいないのに顔を合わせましたね……」
ともに海を駆け、宝物を奪い、そしてバカ騒ぎをする海賊の仲間にしてライバル、マリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)と、シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)はそろって首をかしげる。だが。

「「まあどっちにしろ、海は私のものなので! 身の程知らずに七大海嘯などと名乗るお排泄物様にはとっとと退場していただきましょう!」」

 結論は同じなのだった。
「舐めるな! ……っていうか女の子がそんな汚い言葉使いすんな!」
 激昂するコンキスタドールに意外な事実。なんとバルバロス兄弟は妙なところで真面目だったと判明した。それはさておき、幹部戦なので必ず先手を取られる、これはシステム上の絶対制約である。
「生まれ変わって品良く育ちなおすがいい! 食らえ、究極の退化ビーム!」
 しゅびびびび! バルバロス兄弟の弟ハイレディンの備える恐るべき能力、強制的に対価をもたらす悍ましき呪いたる「オルキヌスの瞳」が二人の海賊を直撃した!
「「アバーッ!!」」
 大ピンチ! 呪いに掛けられたマリアとシノギの運命はここで終わってしまうのか!
 だがここで──劇的な変化が起きた。

「……きひひひ」
 ガラスのひび割れるような耳障りな声が大気を侵して滲み出た。それは、呪われたはずのマリアの唇から漏れた笑い声。破壊の権化のようなバルバロス兄弟さえぞくりと総毛だつような忌まわしき声だった。
 見るがいい、名前の通り聖母のような美貌を備えていたマリアの姿が、おお、なんたることか。今や、悪夢めいた姿に変じているではないか。その身には深く暗い海底でのたうつ魔獣のごとき触腕を備え、白く芸術品のようだった腕は甲殻類のように変り果てている。
「馬鹿な! 退化が効かねえのか!?」
「退化させる力だと? それは神の呪いで不変不死となったこの身にも効くものなのかな?」
 バルバロス兄弟の兄オルチの驚愕の顔に、マリアはきゅっと唇を歪めて地獄のように嘲笑う。
 然り、今のマリアはその秘められた本来の姿を顕わにしていた。心臓をえぐりだし、「死者の宝箱」の奥深くしまい込むことで、審判の日まで死ぬ事も変じる事もできぬ身へと。呪いの視線など笑わせる、マリアの身は既に神によって、とうの昔に呪われ果てているのだから!

「あ、兄者、こっちの奴もだ!」
 弟ハイレディンの戦慄したような声が響く。そのまなざしの向こうには、きしりと関節を軋ませて立つ影があった。その表情に最善までの生き生きとした生気はなく、動きに情動と欲望に溢れた活気もない。
 あるのは、ただ。無慈悲に無感情に敵を殲滅し鏖殺する合目的的行動パターンのみ。
 そう、それこそが、シノギ・リンダリンダリンダの起源、偉大なる創造主「“黄金”のリンダ・タッチダウン!」に海賊船の船長として創造されしミレナリィドールの起動直後の姿。本来ならば製造後に感情を付与されていたはずのシノギの、その作業が完了する前の姿なのだから。
「……敵影を確認。抹殺指令を遂行します」
 抑揚のないシノギの宣言と同時、朧に周囲が霞み始める。いびつに歪んだ時と空間が悲鳴を上げるかのように震え、狂った因果の果てから、青白い顔の無数の死体が──死霊の従者たちが歩み出た。整然と列をなし、淀んで焦点を持たぬ暗渠のような目に憎悪のみを燃え上がらせ、ただ生を呪うためにだけに、ただ死を振りまくためだけに。
「くっ、こいつら!」
 バルバロス兄弟は手にした武器を振るい、死霊たちを薙ぎ払う。熟練のその技は狙い誤たず死霊兵たちを打倒していくが、終わらない、死者の行進は終わらない。無制限に無際限に、ダンス・マカブルは果てしなく続く。
「抹殺。殲滅。蹂躙。攻撃を続行」
 同時にシノギ自身もまた攻撃を加えていく。無表情なシノギ自身と対照的に構えた銃口が吠え猛り、炎を吐いて、終焉を導くために猛威を振るう。冷徹に光る刃が風を裂いて襲い掛かる。呪詛を、猛毒を帯びた弾丸が、剣先が、無慈悲に巨人を追い詰めていく。

「くひひひひ、そっちにばかり気を取られていて、いいのかなあ?」
 幽鬼の哄笑のようにマリアの体が宙に溶ける。海そのものと化したマリアの体は、海を戦場とする限りいずこにであろうとも出没しうるのだ。
 バルバロス兄弟よ、海嘯と名乗るか? しょせん大波の謂いにすぎぬではないか。今のマリアは海それ自体である!
 シノギの猛攻にたじろぎかけていたバルバロス兄弟の背後に、次の瞬間、溶けだすように滲み出すようにマリアの姿が現れた。巨人は二つの頭でそれを察知するも、既に遅い。マリアが狂気に満ちた相貌で振るった爪が、深く深くその身を血潮に刻む!
「ぐおおおおっ!」
 苦悶の絶叫をあげ、マリアに対峙しようとする巨人だが、再びマリアは宙に溶け、隙のできた巨人の背中にシノギの砲撃が集中し、肉が爆ぜ、骨が砕かれていく。
「おのれ、猟兵ども……!」
 歯噛みするバルバロス兄弟にマリアは嗤い、シノギは冷ややかに見つめる。
「どうだ、バロバロス兄弟。死ぬのは怖いだろう? まあ死ねるだけマシかなあ、私は死ねないからなあああああ!」
「死。恐怖。本機が認識していない情動です、ゆえに、考慮しません」
 呪いの爪と爆炎とがその山のような巨体を包み込み、バルバロス兄弟はゆっくりと崩れ落ちていく。
「馬鹿な……なぜ、なぜこんな……」
 息も絶え絶えになりながら、バルバロス兄弟はしゃがれた声でつぶやいた。
 
「なぜこんなシリアスに……この章はギャグじゃなかったのかよ……!」

「愚かですね、マジ愚かですね。あなたはさっき、究極の退化ビームとやらを撃ったじゃないですか」
 退化効果が切れ元に戻ったシノギが、何言ってんですかこいつ、というような視線で見下ろす。
「猟兵はもともとだいたい基本シリアスな設定なのを味付けでギャグにしてる人が多いんですから、それを元に戻したらシリアスになるに決まってますよねー」
 元に戻ったマリアもそうだそうだと言っています。
「くっ……ぬかったぜ……がくり」
 ばったりと倒れ伏すバルバロス兄弟に、凱歌をあげる二人の海賊船長なのだった。
「さあ、目指せ懸賞金王ですよ!」
「海賊らしいですねー!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

波山・ヒクイ
やっべえ…鹿と鷲のキマイラのわっちが退化したら!
…どうなるんじゃろう?
気になるところじゃけどそれはさておき。ていっ(おもむろに鉄傘をばっと開いて身を隠す)
物陰に屈んで全身を隠せばわっちは凝視も視認もされないという作戦です!
そんでもって変化の術はこっちにもある、お手軽飯テロ変化ー!兄弟の頭よ…おいしそうなリンゴになーれ!
…ふふん、わっちの術は見ようが見まいが百発百中。伊達に変化の術でここまで戦い抜いておらんもーん。
どうよ見てみぃ、今のおぬしらは愉快なリンゴ頭じゃぞー。…まあリンゴに目なんざついてないから見ようがないけど。
なにはともあれ、これで安心して戦える。それじゃあがぶっと、いただきまーす!


高砂・オリフィス
退化する視線!? 見た目の大味さに比べてずいぶん技巧派じゃない?

ってうぐおおお銃おもっ、早速退化してるしぃ……手強い、ずるいぞぉっ!?

とりあえず体を覆うように前面に出して視線を銃でガード! 漫然とこっちを見てるだけなら視線でも受け止められるよ。直接見られてるわけだしね

で、カウンターで同じユーベルコードで反撃! おらーっ退化しろー! 人から時間を奪う罪を思い知るんだよっ! 失われたものはもどんないだから、反省しなさーい!



「やっべえ……鹿と鷲のキマイラのわっちが退化したら! ……どうなるんじゃろう?」
 波山・ヒクイ(ごく普通のキマイラ・f26985)は頭をひねりながら想像をめぐらす。獣と鳥が同時に退化。もしもそんな謎の姿になった状態を上手く配信できたとしたら……これはもうバズること間違いなし! 配信も登録者数うなぎのぼり! いいねも思うがまま、子供たちの憧れの的となり、「将来なりたい職業」の代表格になれるのではないだろうか。
「いいかもしれんのう……いや、マジでかなりいいかもしれんのう!」
 割と本気で乗り気になりかけているヒクイの腕を、慌てて高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)が引っ張った。
「危ない、危ないよぉ! それに危険な動画配信はBANされちゃうかもしれないよ!」
「おおっ、それは確かに! ならばやめておくとするかの!」
 咄嗟のところで我に返ったヒクイとオリフィスの前に、雲つくような巨体と双頭複腕の異形が迫る。世界を侵食する七大海嘯、バルバロス兄弟の魔手が。
「今更慌てふためいても遅いぜ! さあ、退化しちまいなあ!」
 オルキヌスの瞳が悍ましき光を放つ。それこそが、凝視した対象の時を強制的に逆行させ、退化させる恐るべき呪いに他ならない。
「そうはいかぬ! ていっ!」
 ヒクイは素早く手にした蛇の目鉄傘を大きく差し広げ、自らとオリフィスの身を潜ませんとした。呪いが降りかかるのは凝視した対象、ならば傘の影に隠れてしまえばその視線は通らない!
 だが。
「何とっ!? 傘が退化して……おっきな木の葉っぱにじゃと!?」
「わあ、こっちもだよ!」
 ヒクイの傘は呪詛を受け、唐傘を通り越し、さらに時間をさかのぼって巨大な木の葉になってしまっていた。しかも虫に食われて穴だらけである。これでは次の視線攻撃はかわせない!
 そして同様、オリフィスも慌てていた。自身の体はヒクイの傘にガードしてもらったものの、手にしていた銃が傘の範囲から外れ、僅かに視線を浴びてしまったのだ。まともに呪いを受けた傘よりは効果は少なかったものの、変り果てた銃の重量がズシリとその手に掛かる。
「うわあ、重っ! こ、これ、火縄銃!? 火縄銃ってどう撃つの!?」
 そう、オリフィスの銃は一瞬で時代をさかのぼり、火縄銃にまで退化してしまっていたのだ。
「がはははは! うまくよけたな! だが次はそうはいかねえぜ! もう身を隠す手段もねえようだしなあ!」
 得意げに哄笑しながら、バルバロス兄弟は次なる呪詛を放つべく二人の猟兵を睨みつけた。追い込まれ、猟兵たちの額に汗がにじむ。
「手ごわい、ずるいぞぉ! ……でもっ! いつまでもやられっぱなしじゃない! 今度はこっちの番だよ!」
 きりっとオリフィスの焦げ茶色の瞳が決意の色に光る。それは一か八かの賭け、だがあえて、オリフィスは賭けに出た!
 オリフィスは逃げることなく──前に出たのである。
 ふわりと軽やかに大きく足をあげ、高らかに宙を跳ね、陽光を受けてまぶしい金髪が光のシャワーのように広がり、オリフィスの伸びやかな肢体がまるで鮮やかな絵画のように舞う、踊る! 爽やかな風の音が通り過ぎるように、煌めく虹がまたたくように、美しく、麗しく。
「何っ!?」
 わかっていながらも、巨人の視線が一瞬だけ泳ぐ。集中が刹那の間だけ途切れ、バルバロス兄弟の視線が、ほんのわずかに誘導される。それほどの魅力を備えるのがオリフィスの舞い、芸術的なダンスの技巧に他ならなかった。
 そしてオリフィスが作った一瞬の隙を、ヒクイが見逃すはずはない。
「今じゃ! 変化の術はこっちにもある、お手軽飯テロ変化ー! 兄弟の頭よ……おいしそうなリンゴになーれ!」
「何だとぉ!?」
 ハッと気づいたバルバロス兄弟だったが、既に遅い。どろん、と煙が上がったかと思うと、バルバロス兄弟の二つの頭は、……なんということか、巨大なリンゴに変化してしまっていた。まるで「僕の頭をお食べよ」とでも言っているかのようである。しかも、品種はそれぞれ「サンふじ」と「ゴールデンデリシャス」(めっちゃ美味しい)という贅沢ぶりだ。
「……ふふん、わっちの術は見ようが見まいが百発百中。伊達に変化の術でここまで戦い抜いておらんもーん。どうよ見てみぃ、今のおぬしらは愉快なリンゴ頭じゃぞー!」
「もがっ、もがもがーっ!」
 もがき苦しむバルバロス兄弟にドヤ顔でヒクイがのたまう。まあ、兄弟はリンゴになってしまっているので、見ようがないし、しゃべりようもないのだが。
「それ、まずは自業自得ってやつを食らってもらうかの!」
 ヒクイはひょいと先ほど葉っぱにされた傘を振るうと、その葉っぱについていた虫が、よろこんで兄弟のリンゴに飛び移り、ガジガジとかじり始めた。
「もががーっ!?」
 じたばたと暴れるバルバロス兄弟。その姿に若干引きつつ、オリフィスももちろん手加減するつもりはない。
「うわぁ、割とえぐいね……でも、人から時間を奪う罪を思い知るんだよっ! 失われたものはもどんないんだから、反省しなさーい!」
 ようやく操作法を見出した火縄銃を、オリフィスはしっかと構える。先ほど呪いを受けたのはこの銃、ゆえに、その呪いを撃ち返すことも可能! それこそがオリフィスのユーベルコード!
「リズムに合わせて、せーの、行っけーっ!」
 轟音と共に、火縄銃からユーベルコードが撃ち放たれ、呪いはまっすぐにバルバロス兄弟へと突き刺さる。生命の自然な歩みを否定し退化をもたらす悍ましき呪いが、巨人たち自身を食い尽くすように。
 そして……すべてが終わった後に、ぽつんと残っていたのは、一本のシダの樹だった。
 バルバロス兄弟はリンゴ、つまり植物として退化させられてしまったのである。
「そーれ、ぽいっ」
 二人の猟兵は力を合わせてシダを引っこ抜き、海の底へドボンとお帰り願った。退化能力の効果が無事に切れても海の底、ずっと海の底でおねんねしているならそれはそれでよし、あとのことは彼女たちの知ったことではない。 
「しかし、退化の効果は肉体ではなく頭部を基準に判定されるというわけかのう。これは面白い! ぜひ検証動画として配信じゃ!」
「はは……受けるかなあ、それ……」
 意気込むヒクイに、オリフィスはただ肩を竦め、苦笑で答えるのみだった。
 ──なお、その検証動画は一般受けはしなかったものの、猟兵の間やグリモアベースでは高い評価を受けたという。めでたしめでたし。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
物凄い継ぎ接ぎだと思ったらオスマン野郎じゃん…何でござるかこの前衛芸術は

【四腕の武器】を振るわれたら…当たらなければどうということはないでござるね
ホイ当たる直前で体を【ドット絵】に変換!魅惑の二次元ボディなれば武器と武器の隙間を潜り抜ける事造作も無いでござる!
ついでに体勢が崩れる心配もないですぞ!ようは崩れているドットを用意しなければよいのだァ!

おちょくりながら避けつつ、小粋なSEを鳴らして頭に登って…どっちの頭だこれ?あとくっせぇわこのオッサン!
などと挑発しつつこの【流体金属】君を頭からダバァ!クセェ口塞がせて窒息させてやるでござる
海賊なのに溺死するとかくっそ情けないでござるな!


東雲・深耶
フム、先制攻撃権はやはり脅威だな。
しかし、対策が出来れば凌げないこともない。

閃空の波紋と残像を使って空間知覚及び干渉、それを応用して「空間に干渉されて虚を突かれる」という普通なら想像もつかないフェイントを残像も活用して先制攻撃を回避。

私が何をしたか知りたいか?
知りたければ私を倒してみることだな。
とコミュ力を応用して意識をコントロールさせ、欲望に火をつけさせて戦士としての技量を低下させる。

UCは時空間切断による距離座標を無視した斬撃を用いて遠距離から斬撃を放ち斬閃を放つ能力だと思わせて先程のフェイントに余計な推理をさせたり前方から切りかかって背後に大きな斬撃を喰らわせていくぞ。



「物凄い継ぎ接ぎだと思ったらオスマン野郎じゃん……何でござるかこの前衛芸術は」
 エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)が顔をしかめ、濃い髭の中から漏らした罵声に、今しも攻撃に移ろうとしていた異形の巨人はピクリと反応した。
「おい聞いたか兄者、俺たちのことを芸術だってよ! なかなか見どころがある奴じゃねえか!」
「がははは! 猟兵どもの中にも俺たちの素晴らしい価値がわかるやつがいたか! よーし、褒美として、苦しまねえように殺してやるとしようぜ!」
 二つの頭で満足そうに哄笑するバルバロス兄弟に、エドゥアルトはぴくぴくと痙攣するこめかみを抑えた。
「アホだ……アホがいるでござる……しかもアホの二乗でござる……」
「二人いるのだから、せめてどっちかツッコめよという感じだな、やれやれ」
 東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)も疲れたように首を振った。まだ剣を交えてもいないのに、なんだか何戦もしたような気がする。
「さあてそれじゃあ! 一瞬で叩き潰してやるから感謝するんだなあ!」
 心なしか傲然と胸を張り、「芸術」たる肉体を誇示するようにしながら、七大海嘯たる悍ましき双頭の巨人・バルバロス兄弟は巨大な剣を、槍を、斧を、分銅棍を高々と振りかぶり──次の瞬間、暴嵐のごとき勢いと怒涛のような凄まじさで、猟兵たちに向かい、一斉に叩きつけた。その威はまさに天をも覆し大地も翻すほどの圧倒的なる暴! まともに命中すれば、文字通り粉微塵と化すに違いない。
 だが。
 手ごたえはなかった。一瞬遅れて、バルバロス兄弟はその違和感に気づく。たとえ一本の武器から運よく逃れえたとしても、四本の武器の乱撃乱打から逃れきるすべなどあろうか。バルバロス兄弟は単に巨躯と怪力にものを言わせるだけの無能ではなく、その格闘技術自体も鍛え抜かれているのだから。
「その攻撃、脅威には違いないな。しかし、対策が出来れば凌げないこともない」
 驚愕に三つの目を見開いたバルバロス兄弟の兄、オルチの前で、深耶は静かな笑みを浮かべていた。
「貴様、何をした!?」
 
 そしてもう一人、エドゥアルトもまた、弟・ハイレディンの前で、にやけた笑みを浮かべていたのだった。
「ふっふっふ。当たらなければどうということもないでござるよ」
「貴様も何をし……いや、貴様は何をしたか見たらわかるから聞かなくていい」
「えー!? それは掟破りでござるよ! こう、かっこよくかわしたところで技解説に入るのがお約束ってものでしょー!」
「うるせえ、見りゃわかんだよ! なんだそのぺらぺらした体は!」 
 怒号を飛ばすハイレディン。そう、エドゥアルトの体は、今や、厚みのない完全なる二次元のドット絵と変換されていたのである。いかなる暴威が振るわれようと、二次元の体に命中させるのは難しく、さらに言えばダメージグラを用意してないのでダメージにならない、という、結果から経過を導く強引な能力! これぞエドゥアルトの本領である!
 
 ハイレディンがエドゥアルトに翻弄されている一方で、オルチは深耶にギラリとした目を向けていた。
「私が何をしたか知りたいか? ……知りたければ私を倒してみることだな」
 艶めく唇の端に美しい笑みを浮かべ、深耶は舞うように剣を抜き放つ。そう、先述のごとく、バルバロス兄弟はひとかどの武術家でもある。……ゆえに。解き明かせない武技に対しては強烈な関心を抱くに違いない、と深耶は読み切っていた。武の神髄は単に剣を交える際にのみ発揮されるものにあらず、相手の心を誘導し、惑わせ、これを我が掌中とするもの。古人曰く、兵は詭道なり!
「ちっ、舐めたことを!」
 オルチは自らの制御する腕を持って深耶を追おうとする。だが届かぬ、当たらぬ、鋭い突きも激しい打撃も。あたかも、水に映る月を手で掬おうとするかのように。
それは無論、深耶の能力の一部でもある、空間を操作し座標に干渉して閃くようにその身を転移させることは。だがそれだけでは巨人の獲物から逃れきることはできなかっただろう。深耶が舞い続けられたのは、能力に加えて、達人をさらに超えた域の九分一分の見切りと、相手を思うように動かす活人の極意を体得していたからに他ならなかった。
「水月移写は剣の基本にして奥義。巨人よ、修練未だし、だな」
 
 ピロリロリン。小気味いいSEが鳴り、ハイレディンがまたしてもエドゥアルトの捕獲に失敗したことを告げていた。
「てめえ、おとなしくつかまりやがれ!」
 ハイレディンは己の制御する武器を振り回しエドゥアルトを追うが、暖簾に腕押し糠に釘。ぺらぺらと踊るエドゥアルトはへらへらと笑いながらちょこまかと巨人の周囲を駆けまわる。
「ち、畜生、何が二次元だ……技の選択をしくじったぜ、「オルキヌスの瞳」を使っていれば、てめえなんざ洞窟の壁画に退化させてやったのに!」
「まあ、太古の洞窟壁画も、巨人氏のでたらめボディに比べれば、美術としてはずっと進化してるんでござるけどね」
「なんだとてめえ、さっきは褒めたくせに!」
「いや最初から全然褒めてねーですぞ?」
 激昂したハイレディンはついエドゥアルトを深追いした。巨人の頭は二つでも体は一つ、片方がムキになってもう片方のことを忘れれば、その体勢は大きく崩れる。
「うおおおっ!?」
 ぐらりと巨人がたたらを踏んだ。瞬間、好機と見たエドゥアルトはひょいとその巨体によじ登る。
「えーと、……どっちの頭だこれ? あとくっせぇわこのオッサン!」
「なんだとてめえ!」
 吠え猛ったハイレディンの、大きく開けたその口目掛け、エドゥアルトはなみなみと流体金属を注ぎ込んだ。
「ごぼおおおおおっ!?」
「はっはー。海賊なのに溺死するとかくっそ情けないでござるな!」
 嘲笑するエドゥアルトの声も聞こえず、ハイレディンは苦悶にあえいだ。
「し、しっかりしろ弟! 今こいつらを片付けてやるからな!」
「無理だな、今のお前は完全に心を乱している。私の剣など見切れようはずもない」
 動揺するオルチに対し、冷ややかに言い放った深耶の剣が昌々と閃いた。
「ちっ、さっきまでのように間合いを誤魔化す気か? ……いや、そう思わせるのが奴の手……!?」
 オルチは一瞬迷った、そしてその時点で、勝敗はすでに決していた。
 高く上がった血飛沫は、戦の終焉を告げる狼煙にも似て。
「……後ろかよ……」
 ぽつりとつぶやくオルチの言葉には、一種の諦観があった。
 そう、後ろだった。空間座標を切り裂いて、深耶の剣は巨人の背骨を割り絶っていたのだ。
 むしろニヤリと笑みを浮かべさえしながら、ゆっくりと泰山が崩れるように倒れ行く巨人の姿は、せめて最期に一目だけでも武の極みを伺いみることができた武術家としての、ひとかけらの満足感でもあっただろうか。
「第一魔剣・幻も現も割する一振りの鋼にして空(ザイスルモノスベテノザンメツ)。……以て瞑すべし」
 声を静かに響かせたのち、深耶は振り返り、エドゥアルトに声を掛ける。
「お見事だった。あなたの最初の話術で巨人は慢心し、既にそこに奴らの敗因が萌芽していた。優れた戦略家とお見受けする」
「え? いやまあ、それほどのものでござるがな! ははは!」
 エドゥアルトも割とすぐに慢心する方であった、というのは、双方のために知らない方がいい事実である。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン
アイと

あんたあ!顔2つあるけれど、それ不便じゃない!?
あんたら喧嘩したらどうすんのよそれ!
あ、それはそうと戦闘ね!

とりあえず先制攻撃の退化視線がきたらササッとアイのオベイロンの中に隠れるわ!
ってこのロボむっちゃ超合金っぽくなってるわよ!昭和臭がすごいわ!

ところでこれどうやって動かすのよ?中身もブリキなんだけど!
動く機関がない?そんなら気合で動かせばいいのよ!気合で!!
というわけでUC発動よ!
時速9000kmで空飛ばして体当たりするわ!ぶっとべええーー!!
衝撃で中の私達もブリキロボもひどいことになるかもしれないけれど
そんなことは私は考えないわ!!

(アレンジアドリブ大歓迎!)


アイ・リスパー
フィーナさんと

「相手が退化攻撃をしてくるなら、こちらはハイテクで対抗です!
オベイロン、ティターニア、シェイクスピア、電脳合体です!」

【電脳機神】で合体した超巨大ロボに乗り込み、敵と対峙します。

「さあ、フィーナさんも操縦席へ!」

この超ハイテク機体なら、多少退化させられたとしても、普通のロボくらいの性能は残るはず!
全武装の一斉発射で攻撃しましょう!

「行きますよ、グレート・シェイクスピア!」
『ガーピピピ』
「ああっ!?
グレート・シェイクスピアがブリキロボにっ!?」

くっ、かくなる上は仕方ありません。
フィーナさん、やってしまってください!

フィーナさんの魔力をブリキロボに注ぎ込んでもらい、体当たり攻撃です!



「へー。あんたたち、たぶん仲いいんでしょうから実現しないと思うけど」
 
 賢明なる読者諸兄は、もうその一言だけでほぼ次の展開の予測がつくだろう。フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)も、お約束通りに次のセリフを言い放った。

「喧嘩したらどっちが勝つの?」

 双頭複腕の異形巨人、バルバロス兄弟に対してである。

(いいですよ、フィーナさん! 私のチューリングマシンの分析によれば、その一言で相手は喧嘩を始め、同士討ちになるはずです!)

 傍らでその綿密にして確実な作戦を立てたアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)がぐっと華奢な拳を握り締める。
 だが。
「そりゃあ……兄者に決まってるさ。いつだって俺を引っ張って行ってくれるのは兄者だからな!」
「何を言う弟よ。お前の「オルキヌスの瞳」の能力は素晴らしい、俺はいつも感心し、頼りにしているんだぜ」
「兄者、そんなこと言わないでくれよ、俺こそ兄者がいるからここまでやってこれたんだ」
「弟よ、それは違うな。俺たち二人で一人の七大海嘯なんだ」
「そうか、そうだな! やっぱり兄者はすげえや!」
 ……なんか絆していた。
「ちょ、どういうことよアイ! これでうまくいくはずじゃなかったの!?」
「くっ、お約束を外してくるとは予想外でした」
 動揺するフィーナとアイに、双頭巨人は憐みのこもったまなざしを向ける。
「お前ら、友達なら喧嘩すんなよな」
「何でそうなるー!」
 愕然としたフィーナとアイに、大きな隙が生まれた。その隙を巨人兄弟は見逃さない。
「今だ弟よ!」
「了解だ兄者! 食らえ、オルキヌスの瞳―!」
 見よ、これこそが美しき兄弟の絆の力! 生命進化を逆行させる呪いの魔眼、退化を強いる悍ましき力が、今こそ二人に向かって振るわれた!
「プランAは失敗しましたが、プランBに移行すればいいだけのことです! 相手が退化攻撃をしてくるなら、こちらはハイテクで対抗です!」
 アイの毅然とした声がこれを迎え撃つ。指令に応じ、時空を超え次元を超えて召喚されたのは三機の勇壮たる機動戦車と機動戦艦! なんかいい感じにかっけーBGMを読者諸兄は銘々お流しいただきたい!
「オベイロン、ティターニア、シェイクスピア、電脳合体です!」
 画面分割! 変形機構クローズアップ! 各機が電脳合体に要する時間はわずか一ミリ秒である!
「電脳ォォォ機神ッ!! グレェェート・シェイ・クス・ピアァッ!!!」
 ギャキィィィ! 刮目せよ、鋼のSEと真っ赤に燃える正義の魂とともに、大いなる電脳機神が誕生した! 無敵! 不滅! 絶対! 勝利! その名はグレートシェイクスピア!
「ふははははは! このグレートシェイクスピアの前では、オルキヌスの瞳などはへっちゃらへーです!」
 コクピットで高らかに誇るアイの傍らに、フィーナもちょこんと座る。なんかアイのテンションにやや押され気味ではあるが。
 そのグレートシェイクスピアの胸に、大気を引き裂き渦を巻いて、呪いの視線が注ぎこまれた。だが無論、無敵の電脳機神がビクともするはずがな
『ピガーッ! ガガーッ! ガーピピピ!』
 ……ビクともしてしまった。
 なんたることか、天に輝く美と勇気と正義の結晶たる無敵無双の聖なる鋼の戦士の姿が! 見る見るうちに、積み木を目隠ししながら利き手ではない方の手で積み上げたような姿へ変わっていくではないか! これが恐るべき退化の呪いなのだ!
「ちょ、アイ! このマシンなら大丈夫じゃなかったの!? なんかピガピガ言ってるわよ!?」
「くっ、まさか退化ビームがこれほどのものとは! 仕方ありません、フィーナさん、後ろに回ってゼンマイを巻いてください!」
「ゼンマイなの!?」
「電池が切れたようなのです」
「電池だったの!?」
「いえさっきまでは超エネルギー動力だったんです! ほんとです! どんどん退化して、って、ああ、そう言っているうちにとうとう動力自体が切れました!」
「駄目じゃない!?」
 コクピットの中でわちゃわちゃしている二人の声を機体外から漏れ聞いて、バルバロス兄弟はしみじみと言う。
「お前ら、友達なら喧嘩すんなよな」
「むきー! 正論だけにコンキスタドールに言われたくないわ! 正論だけど! っていうか何で正論言われて怒ってるのかしら私! しょうがない、こうなったら最終手段よ! いいわねアイ!」
 凄まじい剣幕でまくしたてるフィーナに、アイは気おされ、勢いでうなずいてしまった。
「はいもちろんです! って、何をですか!?」
 アイの反問も聞かばこそ。フィーナの小さな体から、凄絶なる魔力が炎のように吹き上がる。カッと見開いた瞳にみなぎる闘志は気合とともに煌めきを増し、真夏の太陽のごとく燦燦と光り輝く!
「はぁぁぁぁ……! 燃え上れ! 私のハート! 燃え尽きろ! 私のハート!」
「燃え尽きちゃだめですよ!? って、熱っ!? そしてまぶしっ!?」
 狭いコクピット内で魔力を全開にしているので当然熱くてまぶしい。しかし勝利のためには小さな犠牲である。そのことを当然フィーナもアイもわかっている。
「いえ私はわかっているとは別に……えええ!?」
「行くわよ! ぶっとべええーー!!」
 フィーナの叫びと同時、ロボを覆った魔力が全開となり、大気を焦がし蒼天を撃ち抜くほどの勢いで飛翔した! ポンコツになり果てようともその巨大な質量自体は現存、ならばその大質量そのものを武器にすればよい! 超高速飛翔、時速900キロの無敵人間弾丸となって! その結果、当然機体も中の人もアレなことになるに違いないが、勝利の前には小さな犠牲であることをフィーナもアイもわかっている!
「ふははははは! これが! 私たちの力よぉぉぉぉっ!」
「ちょっと待て! お前ら無茶苦茶すぎるだろ!?」
 迫りくる破壊の化身を三つの目に映して巨人は恐怖に顔を歪め、一方フィーナは高らかに哄笑しながら吶喊していく。そのフィーナの横で、アイはこれまでに出会った様々な事件や人々のことを美しい夢のように思い出しながら、うっとりと微笑んでいた。
「ああ……これが走馬灯なんですね……バーチャルキャラクターの私にも、こんなことができたんだ……」
 ……やがて。
 小さな島の上空で、高く大きなキノコ雲が上がったという。
 かくして、七大海嘯の一つ、『三つ目』のバルバロス兄弟の野望はここにいったん挫かれた。フィーナ・ステラガーデンとアイ・リスパーの尊い犠牲を我々は永遠に忘れることはないだろう。ありがとう猟兵。ありがとうフィーナとアイ。
 完。

「……生きてますからねっ!? アフロヘアですけど!」
「あははは! 勝利よ勝利! この戦法便利ね! これからも使いましょう!」
「もうロボ吶喊はこりごりですよー!」
 ちゃんちゃん。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月05日


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#グリードオーシャン
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#羅針盤戦争
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#七大海嘯
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#バルバロス兄弟
#『三つ目』の襲撃


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト