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エンドレス・リピート

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #ベスティア・ビブリエ #愉快な仲間

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●転調のモジュレーション
 音符の飾りは木々の彩り。
 メルヘンな字体でそこら中に張り付いているが……どうやら、あれは果実のよう。
 足ともに敷かれた五線譜の道は、果てしなく。
 どこまでも長く広がり、分岐することはあっても、果てがない。
 始まりこそどこかわからないものの、繰り返す道があり、休むべき憩いの場所がある。
 ただし、この国の道に終りはない。
 フィーネの記号は、この国には、ない。
 音と歌が溢れた秘蔵図書の愉快の国が、この小さな世界だ。
 大抵の愉快な仲間は、"楽譜"であり本である。
 奏でるに必要な楽器の愉快の仲間も存在するが、本のほうが圧倒的に多かった。
 自分に記録された楽譜を演奏したり、歌ったり。
 勝手気ままなアドリブで音を奏でたり、賑やかな音に溢れた世界。
 そんな世界に、――"静寂"が落ちてきた。

 音に飢えた異質な本が、歌の多い森に落ち、風もないのにページを揺らす。
 ゆらりと湧いて現れるベスティアは、大変耳が良い。
『谺イ縺励>』
 鼻を鳴らし、標的の数を歌を、物語を舐るように遠くから味わいそして――。
『蜈ィ縺ヲ蜈ィ縺ヲ雋ー縺」縺ヲ縺�%縺�シ∽ソコ縺ョ縺���』
 その日、森の中から音が消えた。
 無残に転がる金管楽器と、沢山の白紙の束。
 楽譜の仲間は描かれた物語の音ごと存在字体が食い散らかされ、楽器は総じて物言わぬ装飾となった。
 話しかけても応じて返す声はなく。楽器として鳴らしてみても音は――鳴らない。

●移調のトランスポーズ
「アンタは……音楽に、詳しい?歌とか、好き?」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)的には好きか嫌いかは、どちらでもいいようが、一応として尋ねたらしい。
「じャあ、魔法の本とかは?……ある"不思議の国"には、賑やかな音が溢れてるんだと。いや、居たんだと」
 四六時中、誰かが音を奏でている。夜なら相応に子守唄の割合が多く。
 日中ならマーチ、行進曲や楽しくなる軍歌のような音が、歌が、響いている。
「……ああ、運悪く猟書家幹部が入り込んだようでな。良いように食い散らかされて、大勢で奏でる重厚な音は散り散りになっていて、無残なソロやデュエットくらいのか細さしか維持できていない。つまり、国自体が歌う音がすごく静かに成りつつ在る」
 大人数で歌っていれば、獣が来ると愉快な仲間が逃げ出す。
 耳の良い悪い狼さんが来るから、歌が止まる。
 国の要の音色が、途絶える。
 それは――不思議の国として崩壊を呼ぶかもしれない事柄。
「ベスティア・ビブリア……獣は、本からオウガの群れを引き連れて現れたそうだ。全く言葉は通じない」
 行動を見れば、判るかも知れないが意思疎通は取れない可能性が高い。
 叫び吼えて、"物語"を食らう。
「音と歌が溢れた秘蔵図書の愉快の国"には、歴史書並に分厚い楽譜の愉快な仲間がいたり、禁書と呼ばれる禁忌の歌を記した楽譜書のやつがいたりする。曰く付きから童謡の本まで色々いるようだが、それでも愉快に生きてる奴らなんだが……綴られた楽譜字体が、物語」
 生物として持ち得る記録、記憶。音、音色。音節。
 文字列に起こされた楽譜は、誰かの情熱を移したモノとも言える。
 音を鳴らし、相手に伝える楽器は、共有する感情を持てることが希望であり、夢。
 つまりは、彼らの存在自体が、彼らの人生の集大成。
「愉快な仲間がどんな生まれ方をしたかは定かではないが……"疑似生物の根幹の情報を喰われたら"、存在価値が無くなる。実によくない」
 幹部は、ユーベルコードを使って、物語の在り方を、食らう。
 舐り一心不乱に喰らおうと、する。
「……ただ、獣は獣。複雑な生き方をする物語は、食べきるまでに時間が掛かるようだな。所謂、魂の重さ、とかそういうの…………。物言わぬただのモノにするには、情報量が複雑なんだろうさ。獣に出くわした時の対策に、へんてこな奴を連れていた方がいいかもしれん」
 少しだけ犠牲にするには心苦しいが、情報量が多ければ、獣はきっと夢中になり、手一杯になる。猟兵への信頼があるから、きっと任されてくれるだろう。
「へんてこな奴を見つける簡単な手段なら、ある。獣と一緒に現れたオウガが、住人になりすまして取り入ッているからな」
 魔力を持つ本が人の姿をとり、幼い子供の姿で楽器や楽譜の仲間たちに混ざっているという。周囲の歌は楽しい気分を齎すものだが、幼子の歌は誰も聞き取れない。
「マジックスペル、……つまり、魔導書だから、魔法を唱えてる。獣に居場所を知らせる"一節"だ。コイツらには、獣と同じ"存在を奪う力"はないよ。ただし、輪の中にへんてこな愉快な仲間がいたらガン見しているだろうから、そこまでの驚異じャないかと」
 驚異ではないが、獣を呼ぶ魔法を常時使っているので、遠くで雄叫びが聞こえだしたら、幹部が来る。
 獣が来る。嵐と静寂と、終りが来る。
「幹部を探す手間も、へんてこな愉快な仲間を探す手間もあまりかからない。ハハ、さあ、歌の聞こえる場所に向かおうか」


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は、猟書家の侵略に関わる感じの""二章編成"のシナリオ"。

 舞台はアリスラビリンス、ある世界、小さな国の森での出来事です。
 音と歌が溢れた秘蔵図書の愉快の国。
 楽譜の本の仲間で溢れた不思議な国です。この国では、本と楽器をメインに据えて居ますが音楽に関わる系の不思議の仲間であれば、タテガミが理解できれば恐らくいると思います。
 シナリオの傾向は  心情寄り > 殺伐 です。

●集団戦は、『リトル・マジックスペル』。
 小さな魔術師のような子どもと出会います。元の姿は、本です。
 音と歌で遊ぶように、して、愉快な仲間と友好的関係を築こうとしていますが、『へんてこ愉快な仲間』をすごく凝視しるため、愉快な仲間たちからは「不審な子(オウガ)」として扱われていて、仲間はずれ気味になっています。
(オウガはオウガなので、隷属化を恐れて口答えは、していないようです)

●ボス戦は、猟書家幹部・ベスティア・ビブリオ。
 完全文字化けした口調で話しますが、言葉が通じないだけで猟兵の言葉は聞いています。ボスが物語を喰うのはこのシナリオ上では言葉を習得したいがため。
 歌には言葉があり、音の力で言葉が生まれる事があるからです。
 よって……幹部の攻撃は全て、物理的なダメージは0となり、物理的ダメージを猟兵に与えることはありません。猟兵を敵と認識した時点で、猟兵からも記憶、記録、行動への思考。その辺りを奪うことを優先します。奪われても、倒せば奪われたモノは所有者に戻ります。猟兵よりも、へんてこな愉快な仲間の方が優先度が高いので、居ない場合は苦労するかもしれません。

●プレイングボーナス(全章共通)……へんてこな「愉快な仲間」を連れてくる。
 集団敵あるところにいるはずなので、「どんな子がいた」、というのをプレイングで教えてもらえると、嬉しいです。こちらから、指定は特に、しませんが……特に記載がない場合は、当たり障りない目立つ子がいた事になる可能性があります。

 ※依頼では、著作権の関わるリアルな歌詞等を反映することができません。
「――♪」末尾に音符、等で歌っていることを表現する場合があります。
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第1章 集団戦 『リトル・マジックスペル』

POW   :    びりびりするよ
【手にした魔導書から稲妻】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    みんな、おいで
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【呪文で編まれた自らの分身】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    おいかけてあげる
【きらきら光る魔法文字】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●みんなでうたおう

 耳をすませば、うっすら音が声が、聞こえてる。
 楽器の音だ、楽譜が捲れる音だ。
 楽しげに木々が揺れて、"いつもどおり"の日常を続けている誰かがいるらしい。

 楽器姿の愉快な仲間と、楽譜を身に記す本の愉快な仲間は見た通りの姿をしている。その中に、ヒトにしか見えない姿で混ざり込む子供の姿。
「きょうはどんなおうたがいいかなあ」
 愉快な仲間と歌うようにして、会話に混ざっているがあれは――多重詠唱だ。
 聞こえている言葉に魔術的な意味を込めて、気づかれない内に罠を張る。
「ねえ、どんなおうたがいいかなあ――♪」
 歌を歌うのも話すのも、誰もが好きな国で、"逃げたくても逃げられない空気"。
 リトル・マジックスペルは兎に角不思議な仲間に関心を持って、その個体に意見を求める。求め続ける――。その個体が、主人である幹部に捧げるにふさわしいかどうかの答えが、得られるまで。
木霊・ウタ
心情
オウガがやっている事を
許すつもりはないぜ

けど…
話したくて言葉を求めたり
友達になりたいけどなれない姿は
哀れに思うぜ

海へ還してやろう

へんてこ
手足がついたウクレレ
愛称ウク

戦闘
ギターとウクレレのアンサンブルと行こうぜ?
誘って強引に合奏に

ああ獣が来るかもな
その為に俺達が来たんだ
この国がいつまでもこんなんじゃ嫌だろ?

他の愉快な仲間へ避難勧告

弦を爪弾き即興のメロディ
ウクを誘い或いは挑発するように

旋律に獄炎を乗せ
即ち紅蓮の渦を生む

稲妻は炎壁で防御
ウクを庇う

ウタとウク
ギターとウクレレの合奏が響き合うにつれて
炎は強く大きく燃え盛り
リトルを焼却

事後
風に消えていく灰へ鎮魂曲
きっと海で沢山の友達に会えるぜ
安らかにな



●燃え上がるシラベ

 歌声、演奏。
 控えめに親しむ在るべき調べに、酔いしれるようにかき鳴らされる。
 譜面台なんてどこにもなくて。
 ぱらり、と楽譜の仲間がページを捲り、先へ先へと奏者を急かす。
『つぎのおとを、ことばをしっていてるのはきみだけだものね♪』
 リトル・マジックスペルは自ら演奏する、ということはないようで。
 皆が奏でる"いつものおと"を楽しげに聞いて、不思議な節をつけて話しかけた。
 不協和音のように潜ませる多重詠唱が歌声や演奏に華を添える。
 どこか恐い者が訪れるような感覚が、愉快な仲間たち全員にはあった。
 見ず知らずの"本来は恐れるべきオウガ"がこんな親しげだなんて、と。

 ――オウガがやってる事を許すつもりはないぜ?
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は木々の影から、様子を眺めていた。
 マジックスペルから手が出されている様子はない。
 ただ、愉快な仲間たちと音楽を楽しんでいるように見えるのだ。
 ――あれが、主人である幹部の獣に何か合図を……ん。
 よく笑い、よく喋っているという印象をウタは受ける。大きめの魔導書を抱える子供の姿というのもあって、到底敵意の在る敵のようには見えなかった。
 言葉に魔法を仕込んで、到着待ちだというのなら、話は変わるものだが。
 ――話したくて言葉を求めたり今の、……そう、あの顔。
 ――よく笑う顔……あれは孤立も気にしないって顔だ。
 ――……音楽仲間になりたいけど、なれない姿は…………。
 真実に仲間ではない、証。
 この国の疑似生物たちと、オウガである子供との大きな壁がある。
 ――哀れに思うぜ……ここにいることも。
 ――躯の海のほうが、賑やかだぜ?さあ、還る時間だ。
 木々の影から、じっと見ていて、ウタは気がついていた。
 マジックスペルが興味を示していた愉快な仲間の姿を。
「なあ、いい姿してるな……?さっきからいい音だと思ってたんだ」
「……お?分かってるねぇ!」
 楽器そのものの姿の仲間が多い中で、ひょろ長く手足が伸びるウクレレがいた。
 自分で弦を爪弾いて、演奏する姿はよく目立つ。楽器本体を揺らし、音色と全く反りの合わない曲を掻き鳴らす姿は、特に印象的だった。
「このギターとも合いそうだ。飛び入りは可能かい?俺はウタ……名前は?」
 ワイルドウィンドをきゅぃいんと音を鳴らして、音楽の新風の到来をアピールするウタに、ウクレレは応える。
「ウクレレに名前は……ああでも、俺のことは、ウクでいい」
「じゃあ、即興アンサンブルと行こうぜ?」
 背中を合わせて、思い思いに強引な合奏が始まる。
 お互いの音楽性なんて、掻き鳴らしている内に理解すればいい。
 もしソリ合わないなら自分の音(主張)を技巧の中に溶かして、相手を魅了すればいいのだ。
 ウタとウク、二人が目立ち周囲の愉快な仲間たちは、聞き手に回る。
 その中で、ふらり、とマジックスペルが笑みを潜めて、囁き出した。
『いいおんがくだね♪ここが、びりびりしちゃうくらい♪』
 心とも言える魔導書を、手拍子のようにぽんぽん叩く度に生み出される稲妻。
 ばちりばちりと、音色と楽譜、それから音楽を雷鳴が上回って吼えまくる。
 音楽で、ウタとウクが周囲を魅了したことを、マジックスペルはやり返そうとしているのだ。
 物理的に、全身を痺れさせてクラクラさせてしまうくらい。
「……あいつ、なんか怖いんだ」
「ああ、獣が来るかもな。呼ばれて飛び出す悪い獣が。その為に俺達が来たんだ、この国がいつまでもこんなんじゃ嫌だろ?」
 緊張感と、緊迫感が隣り合わせの毎日。
 そんなものは、どこまでも息が詰まるだろう。
「……さあ、みんなはもう少し離れたところに居てくれよな!」
 指先に、ぎゃぁんと力を込めて弦を弾く。
 ウタのあまりの激しい楽器の扱いに、指先に多少の赤が点った。
 少量だろうと、切り裂かれた場所から発火する炎は誰に求められない。
 爪弾く音素に、炎が乗り獄炎は荒れ狂うように渦を生む。
 音楽の聞こえる範囲でのみ、燃え盛る物理的な聴覚を支配する領域。
 囲ってしまえば、外に獣を導く呪文は遮断されて届くまい。
『びりびり、しない……どして、どして♪』
 魔導書から放たれる稲妻の、届く範囲から仲間たちは離脱していて、届かない。
 ウタとウクの燃える旋律の音楽に、雷もまた絡め取られて激しい音の一つに加えられてしまっているのだ。
「それは……俺にも分かる。音楽の良さが分かってないんだよなあ」
「そういうこと。どうしてか分かるまでは、燃える炎の中で考えてみなよ」
 曲の激しさはメタル調。
 心に刺さる音はガリガリと、何かを削るような訴えかける音楽で。
 ギターとウクレレには出し得ない音が、炎の雷のセッションで再現されていた。
 炎は大きく燃え上がり、燃え盛った炎はマジックスペルの周囲だけに縮小されていき、逃げ場のない子供は音楽の中に燃えとかされるのである。
 身に浴びるほど、音楽を浴びて。ヤドリガミのように存在した子供の本体、魔導書が一気にぼぉうと燃え盛って灰になる。
 さらさらと、勢いの風に吹かれて消えていく灰へ、送る曲としてふさわしいのは鎮魂の音。ウタが曲調を変えれば、ウクは相当気があったのか落ち着いて悲しげな音を表現し始める。
 ――これは、俺たちからの鎮魂の曲。
 ――きっと、海で沢山の友達にまた会えるぜ。安らかに、還りな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
※感情が尻尾と耳によく表れる

【書庫組】の皆と参加なの

わぁ、愉快な音楽団のみんなだって
愉快な仲間たちって、ほんとに色んな姿のがいるね?
ぼくもトロンボーンを吹いてセッションなの
ナブッコ序曲冒頭
チンバッソの愉快な仲間と、金管低音のセッションで意気投合なの
ね、ぼくたちが守るから、ここを守るために、力を貸して?

まずは、魔導書のオウガを、骸の海にご案内なの
【高速詠唱】でUC発動
さらにその詠唱を【乱れ撃ち】なの
たくさんの鳥型ファミリアに帯電させて突撃なの(【属性攻撃】)
鏡介おにいさんに向かう魔法文字や、マジックスペル本人に体当たり
数を頼りにUCを使い続けさせて、弱らせながら攻撃なの


アン・カルド
書庫組として。

奏でるそれが物語なんて面白いじゃあないか、頼めば僕の魔導書も演奏してくれないかな…なんて。

さ、まずは愉快な仲間を見つけようか、獣の猟書家には僕のを喰わせるつもりだしそこまで複雑じゃなくてもいいかな。
【縫包】…ぬいぐるみの軍団、僕らと一緒に下手くそな歌を紡ごう。
期待以上のチグハグな歌、これを続ければ…ほら出てきた、演奏がなっていないと怒る愉快な仲間達が。
君は…手足のついた指揮棒、ナナフシみたいだね…ごめんごめん、君が一緒なら演奏も引き締まるんだろうけど、どうだい?

上手く勧誘出来たら一緒に演奏だ、オブリビオンのUCはぬいぐるみに突っ込んでもらえばなんとかなるだろう。


夜刀神・鏡介
【書庫組】
音楽はあまり得意じゃないんだが……そこまで関係ないようでとりあえず一安心か
耳を澄まして集中、話し声や音楽のする方向を探ってみよう。アン達の演奏とあわせて……ふむ、なんとなく分かった気がする

その気になれば大きな音を響かせる事ができるけれど、引っ込み思案な性格で全力を出せない、引っ込み思案な性格の喇叭の仲間に声をかけてみる
怖いか?そうだな、その気持ちはわかる。だがこのまま放っておく訳にはいかないというのも分かるだろう
君は本当は強い力を持っている。だからその力を貸してくれ。大丈夫、きっと守ってみせる

敵を見つけたら鉄刀を抜いて、UC込みで積極的に斬り込む
先程の発言を示すように、堂々と


二條・心春
【書庫組】で参加
音と歌に溢れた国、とても素敵です。愉快な仲間の皆さんと仲良くなって、この国を助けましょう!

アンさん達の演奏に惹かれた愉快な仲間たちの中から変わった子を探しますね。
見た目は普通のバイオリンですが……口?から他の楽器の音を出して、一人二重奏ですか。すごいです!ここを守るために、貴方のその力を貸してもらえませんか?お礼に私も演奏させてください。
確か、楽器の音を出せるアプリがあったはず。タブレットを操作して、みんなで楽しく演奏しましょう。

混じった敵はタブレットで召喚したクラーケンさんの触手で向こうに放り投げちゃいます。ついでに麻痺させて動きを封じます。クラーケンさん、よろしくね。


ゴロウザエモン・サンモト
【書庫組】
犠牲にするために助ける…複雑でございますが、この国を救うことでトントンになればいいなあ…でございます。

さて、私もアン様の演奏に便乗を。
頭部が琵琶になった琵琶法師の【アート】を【早業】で描き召喚。来やれ琵琶牧々。
見た目で言えば愉快な仲間たちと似通っておりますし、愉快な仲間を誘う餌に。
もしくは敵に愉快な仲間だと勘違いされて囮になれるかも。

とかやっていたら琵琶牧々そっくりの愉快な仲間が私の琵琶牧々にセッションのお誘いを。
…仲良くなってくれたのなら都合が良いか。

敵は、事前情報通りであれば愉快な仲間たちに夢中なようですし、その隙に後ろから【鎧砕き・部位破壊】で頭かち割るのでございます。


アウラ・ウェネーフィカ
【書庫組】
戦争の時以来だな、不思議の国は
相変わらず興味の牽かれる物ばかりで、色々と調べてみたい所だが……
仲間もいる事だ、やはり自重しよう

■行動
ほう、向こうから来て貰う作戦か
それなら私も【UC】で創った使い魔に発声器官を組み込んで……
うむ、急拵えだから出来は悪いが、今回はこれで良い
梟の鳴き声で奏でる伴奏だ、最初はイマイチだろうが、楽器達に指導を貰って交流しながら調整していこう
む……?伴奏の事なら俺に任せとけ?
また熱い性格のピアノだな……まぁ、お願いしようか

戦闘では使い魔を魔法文字に飛び込ませる事で身代わりにして周囲を守り、
私自身は敵を鉤爪で空中に連れ去り、仲間が攻撃し易い場所に【運搬】してやろう



●不思議で愉快な音楽団

 時々話し声が聞こえて、時々音の調律を行う音がする。
 こんこんと中身の空っぽそうな樹を叩き、合図を送るモノもあるが統率は殆どとれていない。そう、彼らの中には多少の音楽性の違いは存在する。
 オウガに追われ、幹部に追われ――逃げるように身を寄せ合ってごく最近、顔を合わせた即席集団なのだ。
 高音域の楽器も、低音域の楽器も頭数はバラバラ。
 歌い手も、楽譜の仲間も必要数整っていない。
 歌って誤魔化そうとも思ったが、アカペラでは余計に混沌とした音色を生んだ。
 それでも楽器の疑似生命が愉快に集えば、不思議な音は生まれるもの――。


「わぁ、愉快な音楽団のみんなだって!」
 ぱたぱたと掛けてきた、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)の尻尾と尾が揺れる。本当に楽しそうな光景だと、思ったのだ。
「愉快な仲間たちってほんとに色んな姿のがいるね?」
 見渡す限りに楽器と楽譜、手足があったりなかったり。チューニングに音合わせ、色んな活動をしている愉快な仲間が居て、賑やかだった。
「奏でるそれが物語なんて」
 最高じゃないか――とアン・カルド(銀の魔術師、或いは銀枠の魔術師・f25409)は魔導書を握り込む。書き上げた魔導書もまた、見方をずらせばアンの綴る物語。
「言葉なら此処にいっぱい書いてあるんだけど……頼めば僕の魔導書も演奏してくれないかな、なんて」
 想いを告げてみるけれど、魔導書からの応答は――なかった。
「楽しそうではあるよね。雰囲気がとても。……でも、急にあの中に紛れ込むというのは、少々難しい気がするから……まずは愉快で愉快な子、そんな子を見つけよう」
 ――獣の猟書家には僕のを喰わせるつもりだし。
「……そこまで、複雑じゃなくてもいいかな」
 これでも女の子だから、というアンの傍に大量のぬいぐるみが世界を超えてやってくる。大量に現れたぬいぐるみ達が集まることで、密度が上がる。
 ふわふわともこもと、音楽の世界は絶大だ。
「ぬいぐるみ軍団、僕らと一緒に下手くそな歌を紡ごう」
「じゃあじゃあ、ぼくが先導しちゃうねー」
 ロランの手には金色輝しいトロンボーン。管を少し抜いて、調整は完璧。
 大きく息を吸って、今この場に合いそうな曲を選んで楽器と歌い手の割合がとてもバランスの悪いちぐはぐさだった。
 ある曲の、冒頭を再現する。
 アンのぬいぐるみたちは、数がいるので、各担当楽器のパートを声で表現した。
『ぬあーーーーー』
 気の抜けたぬいぐるみたちの声のハーモニーとトロンボーンの音が愉快な仲間たちの気を引く。
 かざかさと、輪から外れていた楽器の仲間たちが飛び出してきたのだ。
「あ、トロンボーンの子だあ」
 ロランが見つけた大きなベルは、トロンボーンのソレによく似ていた。
 煌めく金、大きな金管楽器の愉快な仲間。
『お、おれとろんぼーんじゃねえしぃ』
 のんびりとした口調で、返答した愉快な仲間は、ロランの演奏に寄り添う形で参戦し始める。合奏のタイミングを逃してしまい慌てての参戦に急いでいたようだ。
 さり気なく合流して、此処からが即席セッションの始まり。
『チェンバッソ、っていうんだあ。おもしろいがっきでしょお』
「うん、実は……知ってたの僕!良い楽器だよね、チェンバッソ!」
『なんだあ、はなし、あうじゃないかあ』
 気を良くしたチェンバッソとの意気投合に成功し、両者楽器のベルアップでご挨拶。なんだ、よく、わかってる!
「ね、みんな思い切り楽器演奏や歌が歌えないんだよ、ね?うん……ね、ぼくたちが守るから、ここを守るために、力を貸して?」
 力を貸す、というロランの言葉に、チェンバッソは体を揺らして応えた。
 "なんて頼もしい、第一トロンボーンなのだろう"。
 すこおしずれた感想が、チェンバッソの中にあったことは、ロランは知らない。
『……おいおいおい!なんだこの音は!こんなの音楽なんかじゃない!!』
 遅れて飛び出してきた誰か。
 アンが一番目を引いたのは、その愉快の仲間だった。
 見た目は、怒鳴り散らす指揮棒。
『森中にこんな下手くそ音楽を響かせるんじゃあない!!ああ、全然タイミングもずれてるじゃないか!!』
 これもそれも"指揮者"がいないからだな、と一人で納得した指揮棒の仲間。
「……」
『アンタが指導者?はあ困るんだよこういうのは……!!』
「君は……手足のついた指揮棒、ナナフシみたいだね」
『それが挨拶でいいのか?』
 ピリピリとした空気を出す指揮棒には、棒状の身体に似合わない手足がぴょんぴょんと飛び出していたのだ。メルヘンな手足と、細すぎる身体。思わず口に出したことで、苛立ちは余計に加速した。
「ごめんごめん……君が一緒なら演奏も引き締まるんだろうけど、どうだい?」
『当然だ、いわれるまでもない。これは楽団でのオレ仕事――さあ!乱れた音楽を正せ!沈まれ!リズムをよく聞け!!』
 音楽の起点に指揮棒が加わって、やや音楽にまとまりが生まれだした。


『うーん、まだまだ音がばらばらさんだねえ。きみ、どうにかまとめられない?』
『ぼ、ぼくにはできないよぉ……』
 楽団の中、一番音の通るだろう風貌をした楽器の仲間が困惑を極めていた。
 楽器らしいものを持っていないリトル・マジックスペルに話しかけられたトランペットの仲間。みるからに気弱そうで、喇叭の内側には音を消音化させる機材添えてある。おどおどしているか音は飛ばず、声もまた、飛ばない。
『だって、ぼくなんかが目立っても……』
 耳を澄まして。聞こえる音は数多く。
 色んな音の主張を聞いていた夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)。
 ――音楽は、あんまり得意じゃないんだが……。
 ――……うん、音楽表現をしろ、というんじゃないようで一安心だ。
 楽器演奏中でも、紛れ込むお喋り。楽譜を無視したアドリブの歌。
 所々に、全く関係ない言葉は混ざり込んでいる。誰かが話し込んでいる。
 音楽に、歌に集中していないのは……この国ではあまり、いないのではないか?
 此処は音楽と楽器の、賑やかな国だというのだ。
 幾らオウガと幹部に怯えたからといって、元々の在り方まで疑似生物達は変えないだろう。こっそりと、ひっそりと、続けるはずなのだ。
「音と歌に溢れた国、とても素敵です!」
 見つけた楽団に、音は大変溢れていた。
 二條・心春(UDC召喚士・f11004)もわくわくするほどの、大人数だ。数が多ければ、敵の狙いの的になる。だからこそ、溶け込む不思議な子を見つけなくては。
「素敵。ああ、そうだな……これだけの数が居て楽しくないのは頂けない」
 ――たくさんの、色んな方がいるようですから……。
 ――愉快な仲間の皆さんと仲良くなって、この国を助けましょう!
 決意を胸に楽器たちの輪に、心春の気持ちが先に飛び込んでいく。
 アンたちが既に参加しているこの演奏の中で、鏡介が聞いた目立つ話し声は少しだけ遠かった。今も、よくは聞き取れないが声が聞こえる。
 どうも明るくない口調の、誰かの声が。
「ふむ、こちら……かな」
 しかし輪から完全に居ないわけでもない気がする。
 今楽器を下ろしている誰かが喋っているのだと、推測が過る。
「あ、まってくださーい!」
 鏡介が向かう先も気になるので、心春の愉快の仲間との交流は、まずそちらから!

 ――トランペット。
 少し離れた林の中で楽器の仲間は、見るからにしおしおと管楽器の身体を文字通り、曲げていた。
「その気になれば大きな音を響かせられるんだろう?」
 声を掛けてみるが、こちらをちらりと確認しただけで彼は何も言わない。
「ああ……引っ込み思案なのか。それで実力がだせない、と」
『あ、あなたにはわからないんですよ。……ぼくには、音楽団の中でソロを独占する力量なんてないんだあ』
「試したことが?」
 演奏したくないから、林の影にいるわけではないだろう。
 ――輪の中に入るつもりは在るから、この場所にいるはずだ。
 ――決意は在る、ただし、勇気がないと見た。
 押せばいい背中が此処にある。押せばいいのだ、誰かが。
『……ないよぉ。すぐに失敗しちゃうから……』
「見つけましたよ、変わった子!」
 心春の姿がないと思ったら、連れてきたのはバイオリン。
 弓で弦を撫でれば鳴る音色は、トランペットの張りのある音。そしてやや控えめに自分の音。本来、トランペットの仲間が演奏するべきパートを肩代わりして演奏している仲間だ。
『ちょっとちょっと音の厚みが足りないのよアータ。なーに、あたしについてこられないの。情けないわね』
 オカマ口調がとても目立ち、次の瞬間には自在に違う楽器の音も弾いて鳴らす。
 厚みの足りない音を聞き分けて、即座にアドリブで加勢する。
 なんでもできて、自分の音も忘れない器用な天才肌のバイオリンだった。
 トランペットとは丁度正反対の、愉快な仲間である。
「とても見た目はよく見かけるバイオリンのかたかと思ったんですが……口?から他の楽器の音を出して、一人二重奏なんですよね?」
 思わず見つけて驚いて、心春は此処まで連れてきてしまった。
『そうよ!もっと足りないときは三重までなら……』
「すごいです!」
 バイオリンの言葉を遮り、感動に目を輝かせる心春。
「……ああ、こういう仲間が怖いか?そうだな。その気持ちはわかる」
 威圧的な仲間に強く言われたら。彼らにそういう気持ちがなくても、自信の無さが申し訳無さで押しつぶされる気持ちに。
「だがこのまま放っておく訳にはいかないというのも分かるだろう?俺らは、もっと一つの音楽が聞きたくてね」
「此処を護るために、貴方のその力を貸してもらえませんか?お礼に私も演奏させてください!」
『演奏?……アータが?』
「はい!ええと、確か……」
 タブレット操作して、アプリを探す。いつも触るタブレットの中でふさわしい物があったのを覚えている。
 たぁん、と歯切れよくタップして起動。
 表示された楽器のマーク、叩けば音が鳴る。
『へえ、アタシも驚きのいい音ね!』
 天才バイオリンに褒められて、一緒に笑いながら演奏出来る時間を楽しむ。
「ほら、音楽って……ああいうのがいいところだろ?」
『そ、そう……だね?』
「君は本当は強い力を持ってるんだ。だからその力を貸してくれ。大丈夫、きっと守ってみせる」
 遠めに聞こえる合奏に混ざるように奏でれば――皆で一緒に楽しみを共有できる。
 トランペットの弱きな心に、明るい気分の灯火が、点った。


 ――成程。
 ゴロウザエモン・サンモト(『魔王』山本五郎左衛門・f27245)はひとつ、雰囲気にコクリと頷いた。
 結果的に彼らを救う行動になるという、活動。
 ――犠牲にするために助ける……なかなか複雑でございますが。
 ――この国を救うことでトントンになればいいなあ……でございます。
「演奏の手は、もっとあっても良いのでございましょう?」
 一つ一つ、方向の違う糸を束ねて一つの音楽を。
 音楽の国にあるべきものは、やはり誰もが楽しい音楽があるべき姿。
 魔王の顔を持ち合わせる少女が、魔王の絵筆で素早く音楽とは異なる別の芸術作品。流れるように一瞬で描かれた絵は、実体化して身体を持つ。
 対応した名は――ひとつ。
 悪魔を喚び、名を持って従わせる。
「来やれ――汝が名は、琵琶牧々」
 べべん、と三味線のように頭部とは別に琵琶を叩き鳴らす法師のような悪魔。
 愉快な仲間たちは驚きながらも、悪魔とも妖怪とも取れるそのものを楽団内に受け入れた。
 ――見た目は驚く事に、似通っておりますし……。
 ――なんだか想像していた以上に馴染んでおられますね。
 ――誘い込むのは、成功と言ってよいのでしょう。
 ――敵が見間違えてくれれば、誰も傷つかずに……。
 囮として、見間違いを受けるならばそれに越したことはないとゴロウザエモンは想うのだ。
『おや、おや……?これは珍しいお姿。ワタクシそっくりな方がいらっしゃいますねェ?』
 年季の入った渋い語調なわりに、軽口を叩く琵琶法師の姿が在る。
 楽器の頭部にゆるりと伸びる大きく立派なカイゼル髭。
 おそらくは、この楽団内で一番の年長者の愉快な仲間である。実質、リーダーとして率いているらしい。
 ゴロウザエモンが喚びだした琵琶牧々と、あまり差異がないことに、内心驚いた。
『この楽団には琵琶に詳しいモノがおりませんので、どうですゥ?』
 つん、つん、と弦を調律しながら尋ねてくるのはセッションの誘い。
 琵琶法師の仲間から、琵琶牧々へ申し込まれたこれに、複雑な気持ちを持つのはゴロウザエモン。
 ――……似た風貌が仲良くなってくれたなら、都合がいいか。
 ――どちらも、"琵琶法師"。
 ――どちらも、この場において"愉快な仲間(共演者)"でございます。
「勿論。主旋は貴方様に、こちらは追従するように追いましょう。音楽の楽しみとは、掛け合いのなかにこそあるというものでございいますから」


 ――ほぅ……戦争の時以来だな、不思議の国は。
 見渡すアウラ・ウェネーフィカ(梟翼の魔女・f25573)の目に映るたくさんの楽器。魔法の掛けられていて音を出す度に音符を物理的に発生させている楽器や、ソレ以外にも沢山。これが急務のことでなければ興味深い対象たちに話を聞きたくなって、両腕の羽がざわりとうずく。
 ――しかし、仲間もいる事だ、やはり自重しよう。
 興味深い、関心を牽かれる国では在る。機会があれば、またくればいいと、アウラは頑張って好奇心を飲み込んだ。
 ――ほう、向こうから来て貰う作戦か。
「それなら、私も」
 アウラがばさりと広げた翼で地面に作り出す影。
 自身の影から直接繋ががる闇を更に広げて、呼び掛ける。
「闇よ、今ここに形を成して我が命に従え」
 聞き届けられた結果、ずずずと闇から生まれ出る漆黒の梟型の使い魔が身を起こす。闇梟がぅるると喉を鳴らして、主張する。今回付与されたのは、聴覚とも視覚の共有とは異なっていた。
「なにか違和感があるのか?急拵えに、発声器官を組み込んでいる」
 使い魔に、姿にふさわしい発声を行えるようにした。
「ホ、ホ……ホ?」
 自分自身の声に闇梟はどうもしっくり来ないようだ。
 出来が悪い、というのはアウラの評価。滑らかに鳴き声をあげていないのが、なによりの証拠である。
「今更撤回はしない。今回は、これでいいんだ。伴奏代わりに鳴いてくればいい」
 声も音楽の一員だ。例え言葉を紡がなくとも、耳に届けば"歌"である。
「……すまないが、創り出した使い魔がおかしな音を鳴いていたら教えてくれ」
 周囲に軽く声を掛けながら音楽の輪に混ざり込めばアウラの近くにいた楽器の仲間がそうじゃない、こうじゃないよとあれこれ口を出してくる。
 同じタイミングでリズムを刻んでくれたり、手拍子をアウラに頼んできたり。
 なんとか合うように、趣向を凝らして一緒に楽しもうとしてくれたのだ。
「ホホ、ホゥ!」
 ――最初はイマイチな出来だと思ったが……。
 ――音楽仲間として、認めてくれたようで熱心に教えてくれてるな。
『鳴き声参戦があるときいたぞぉ!!』
 ガラガラガラガラ、と騒々しい車輪の移動で地面が若干えぐれた。
 五線譜の道を、荒らしても荒らしたと考えない団内イチの巨体。
 ガタガタと身体を揺らして、バタバタと開閉を繰り返すことで話すこれはグランドピアノ。
 仕舞われた白と黒の鍵盤がとても白く、騒々しく飛んできたこの仲間は、恐らくオーバーリアクションが身に染み付いている。
「ああ、調声していたつもりだが……おかしかった、か?」
『いいやそんなことはない!伴奏の事なら俺に任せとけ!なあにお前なら出来るさ!!!!』
「また熱い性格のピアノだな……まぁ、お願いしようか」
 熱血的言動をこぼすわりに、自動演奏のように鳴らすピアノの音は優しい。

●演奏者=共演者
 散らばった音楽が、指揮者の元で一つにまとまる。
 猟兵の交流で、へんてこな仲間たちも合奏の輪の中にやってきてくれた。
『……あー、いいきょくぅ』
 小さな子供がふらふらと、林の向こうから歩いてくる。
 ひとりじゃない、複数人。
 文字は言葉というようにきらきら光る魔法の文字を空中に浮かべていた。
 読めない文字の連なりを、愉快な仲間たちはオウガの綴る歌のようなものだと思って警戒すらしていなかったが――。
『いいねえ、いいねえ。ほしいねえ』
『ぼくにもっときかせてよぉ、たくさんたくさんいっぱいねえ』
 リトル・マジックスペルたちが自身の魔導書から顕した文字列を、これまで見つけていた"愉快な仲間"へ投げつける。
 逃げようとしても、無駄だ。光る文字列はまるで蛇のように追いかけていく――。
「音楽を聞くのに手出しはいけないなあ」
 鉄刀を抜いて、素早く刀の切先を向けることで踏み込みの速度上げる鏡介が先陣を斬った。文字通り、一体のマジックスペルごとばっさりとだ。
『あぐぅ!?』
「静かに。どこにいてもマナーは護るべきだよ」
 突きで肩を貫き、積極的に背後で合奏を続ける音楽団を護るように立ち回る。
 先程言った言葉は、正しいのだと、堂々とした戦闘で示すように。
 文字列は切り捨てず、仲間に託して踏み込んだ。
 そう、鏡介の後方にはロランがいた。
「我が言の葉において、内なる門より、汝ら集結せし――」
 キラリと目を輝かせ、高速詠唱で既に解放の準備は万端。
 大量に現れる鳥型のファミリアに更に雷爆ぜる魔術詠唱を重ねて、突撃させることで効力ごと打ち消すのだ。
 一撃一撃で捨て身で行うファミリアの補填は、乱れ打ち。
 マジックスペルが手を出してこうとする数だけ、全てを撃ち落とし迎撃の音を更に合奏に加える。時折、ユーベルコードの文字列を躱したファミリアが、雷を纏って体当たりをしていた。
 小さな攻撃も、降り積もれば驚異となる――。
「……それにね、演奏者の演奏を妨害するのってよくないよね」
 奏者が揃ったことで、ぞろぞろと先の役目を終えたアンとぬいぐるみの軍がマジックスペルたちを囲い出す。
 逃げる場所はないと示し、逃さないと示す。
「突っ込んでもらうよ、囲ってしまえばなんとかなるだろうし」
 実は、ふわふわもこもこした音楽の国にじわりと改変されていた。
 足場ももこもこで、慣れないとすぐに足を取られて転んでしまう。
『う、うわあ~ぬいぐるみさんたちつよいよぉ~なんでぇ~』
「さあ……どうして、でしょうか!」
 ぽよよんと跳ねるふかふかの五線譜の道の上空に、ゆらりと動く大きな不審な影がひとつ。タブレットを揺らして召喚を行った心春がにっこりわらって、子供の姿をしたオウガに手をふる。
「上空をみたな。あれも捕らえなくては、大変なのではないか?」
 アウラの言葉で、マジックスペルたちは魔法文字を不審な生き物に向けて投げかけ始めるが少々遅い。
「捉えるべきはあれではない。私だったのにな」
 がしりと鉤爪に掴まれて、両腕の翼が空を往く。
 逃げ遅れた子供が、連れ去られるように運ばれる。
 どこへ?――それは、仲間の仕掛けた素晴らしい場所へ、だ。
「答えはちゃんと考えていてくださいねさあ、――クラーケンさん、よろしくね!」
 にゅるにゅるっと伸びるクラーケンの触手が、運搬されたマジックスペルを捕まえて。それから、追跡するように足の数だけ標的を足に絡めて捕まえた。
 びりびりと神経に届くほどの麻痺を見に浴びせて、ながあい腕を活かし明後日の方向へ――ぶん投げる!
 ぶぉん、と派手な音が耳が拾った。風を斬るほどの速度で、放り投げている。
 無事に生き延びて着地できたとしても、当分彼らは動くことすらできまい。
「痛みに負けて眠っておしまい。それはそれは平和なおしまいでございましょう?」
 放り投げられても息も意識もあるマジックスペルは、動けない。
 逃げられなければ、ゴロウザエモンと視線が合う。
『うわぁ~ん、あのこもそのこも、みんなおもしろいこなのにぃ~』
『ほしいよぉ、ほしいよお。絶対、きにいってくれるのに~』
 誰が?恐らく、この場に来てほしいとひっそり喚んでいる獣の幹部が、だ。
「手出ししたくても、動けないのでは仕方がないことでございます、ね?」
 強引に起き上がろうとする頭は無防備だ。
 決して手放さない魔導書よりも、当然、丸裸なほど護りはない。
「「「おやすみなさい」」」
 誰かと声が重なった。
 ゴロウザエモンの手元には、用途に合わせて換装させた魔王の小槌が。
 振るって砕くは子供の頭。考える頭脳をなくしては、オウガでもこの国から退去しなくてはならない。
 決して重くない手に来る反動が、幾つも戦槌越しに伝わった。
 もう視覚的に怯えをもたらすものは、ない。



『まってまってえ、ぼくをけすのは、まって』
 一体のマジックスペルは降参を申し添えてきた。
 主の言葉は、きっとあれも理解が出来ない。
 そのまま出くわしては、意思の疎通など絶対不可能。
 だから、こっそり翻訳をしてあげる、と。
 結果がどうなっても、役目が終われば皆の後を追わせてくれて、かまわないから、と。にっこりわらって、両手を上げて捕虜のような扱いを受ける事を望んてきた。
『――――』
 獣の吼える声が、だんだん近づいてくる。
『きこえるでしょお。くるんだよ、きてくれたんだよ』
 首元から魔術師マジックスペルがホイッスルを取り出して、おもむろに吹く。
 ピィーーーーヒョロロロロ、なんて、音が成って。
 巻き笛のような玩具のようにばさりと広がる子供だまし。
 最終行程。此処に配下がいると――場所を明確にするお呪い(おまじない)。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ベスティア・ビブリエ』

POW   :    縺願�縺檎ゥコ縺�◆縺ョ縺ァ鬟溘∋縺セ縺励◆
攻撃が命中した対象に【埋まることの無いぽっかりと空いた心の穴】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【一秒毎に記憶を次々と失っていき、衰弱】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    譏疲�縺ゅk縺ィ縺薙m縺ォ
自身の【憑依しているが、使い捨てる本のページ】を代償に、【Lv×1体の幸せそうな物語の登場人物達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【世界の『正』を『負』に捻じ曲げた幻想】で戦う。
WIZ   :    蟷ク縺帙↓證ョ繧峨@縺ヲ縺�∪縺励◆
いま戦っている対象に有効な【精神攻撃をする『物語』を演じられるもの達】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フィオレンツァ・トリルビィです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●言葉を求める暴食の猟書家『ベスティア・ビブリエ』

 一体のリトル・マジックスペルの笛の音が広く森中に響く。
 主はもう近くに来ている。ならば、場所を示して迎えよう。
 
 音符の果実を無残に地に落とし、獣が唸り声をあげる。
 ずざあ、と砂埃を巻き上げて。大きな獣が全てに休符を与えるためにやってきた。
 大きな口を開けた単眼の獣が、猟兵たちを見下げている。
「繧医¥隕九▽縺代◆縲り、偵a縺ヲ繧�m縺�€√>」
『"よく見つけた。褒めてやろう"?』
 ふふふ~、と見た目相応に照れくさそうに喜ぶ配下のこども。
「縺�>迢ゥ蝣エ縺倥c縺ェ縺�°��」
『"いい狩場じゃないか"――ものがたりがたくさんあつまるところ。がんばってみつけたよぉ~』
 周囲全体を眺め回し怯えたように身をすくませた愉快な仲間たちをみつけて、ぺろりと舌舐めずりする獣。
 これが猟書家幹部・ベスティア・ビブリエ。
 配下が見つけた、主への献上品だらけの狩場へやってきたのだ。
 音と歌と物語と全てを奪われたら――この国には何も残らない。
 感情を伝える手段も、声も、言葉も。
 意思疎通の交流手段、その何もかもが喰われてしまえば静寂だけが残される。

 猟兵が愉快な仲間を庇うように立ち塞がっていることで、獣は狙いを一先ず、猟兵へと向けた。
「縺雁燕縺溘■繧ゅ∪縺溘€√え繝槭◎縺�□」
『"お前たちもまた、ウマそうだ"、か。あとはもうぼくひとりしか、いないけれどね~……あ、そうだぁ』
 魔導書に触れて、空中に魔法文字を浮かべるマジックスペル。
 猟兵ひとりひとりへ向けて、文字の破片を頭上に灯す。
 敵への妨害ではなく、あくまで宣言通りの猟兵への援助。
『我らが主の言葉は、ききとれないでしょ?これで、きっとぼくがそばにいなくてもききとれるねぇ~』
 示す意志は主とは異なれど、主と同じ本から出てきたマジックスペルに戦意はない。主が消えれば、マジックスペルもまた消え去る運命。
 既に仲間も死に絶えたマジックスペルには抵抗する素振りすらなく、愉快の仲間たちにさり気なく混ざってのんびりと観客を気取るつもりのようだ。
『ふふふ、我らが主とってもおおぐらいなんだよ?きをつけてねえ』
 きをつけていないとぜんぶぜんぶ、たべられちゃうよ。
 感情も、理想も夢も、歌も音も。
 言葉を作り出すものは全てが、彼の求めるものだから。
曽我部・律(サポート)
『この力を得たことは後悔していない……』
『私以外の人間が不幸になるところを見過ごすことはできないんでね』
『こういうのには疎いんだが……ふむ、こんな感じか?』
とある事件で妻子を失い、その復讐の為にUDC研究を続けているUDCエージェントです。ですが、UDCを強引に肉体に融合させた副作用として徐々に生来の人格は失われつつあり、妻子の記憶も彼らの写真によって辛うじて繋ぎ止めています。
多重人格者としての別人格『絶』は凶悪なオブリビオンの存在を察知すると、律に代わって表に出てきて戦います。その際、口調は『おい律……うまそうな匂いがするじゃねぇか。代われよ』みたいな凶悪な感じになります。



●忘却

「……うまそう。確かにそういったね」
 曽我部・律(UDC喰いの多重人格者・f11298)は賑やかな国の有様の中に躍り出てきた獣を見た。
 あれが猟書家ベスティア・ビブリエ。
 獰猛そうな吐息、唸る喉の音など近くもないのに聞こえてくる。
 言葉が聞き間違いであったなら、話を聞こうかとも思った律。
 だが、――男は獣に言葉を交わす意味を見いだせなかった。
「縺雁燕縺ッ縺セ縺壹◎縺�□」
 "おまえは まずそうだ"。
 よく聞こえない言葉が同時に翻訳され、獣に選り好みを受けていると悟った。
 律の背後の音楽関連の愉快な仲間が、どれもこれも"美味しそうなものだ"と主張するのとは、逆。
「私には、幸せそうな音が無いからか?」
 とある事件で妻子を失った律が、その人生に幸福を今現在抱えているとは言えないだろう。まるで、本の中の世界をさすらい歩くような感覚。
 自分の事なのに他人事のように思え、戦いの度に忘れてはペンダントを見つめ朧気に思い出す毎日。
「縺ゅ≠縲√∪縺壹◎縺�□�∝ケク縺帙◎縺�↓隨代▲縺ヲ縺ソ繧搾シ�」
 "ああ、まずそうだ!幸せそうに笑ってみろ!"。
 自身が飛び出し、大事に持っていた"始まりの魔導書"を躊躇なく捕食のための餌として使う。憑依している本のページは使い捨てる為に、びりり、と獣にしては器用な手付きで千切る。
「蝨ィ繧狗塙縺ョ迚ゥ隱�」
 "これは、ある男の物語"。
 登場人物は女と、男。そして、女と控えめに手を繋ぐ息子。
 物語は、男と女が出会い過ごした時間を切り取られたようだ。
 過去、UDCに襲われて律の家族が他界する前にあったはずの光景。
 これは、――幻想。破かれたページは、いつのまにか律の精神を転写したように、律の過去を踊らせている。
 見せつけて、心を摩耗させて。
 敵の生命力を掠め取り、目に飛び込む情報で苦しむさまを愉しむつもりだ。
「諛舌°縺励>縺�繧阪≧縲ゅ≠繧上○縺ヲ繧�m縺�€∝、ァ莠九↑閠�↓」
 "なつかしいだろう。あわせてやろう、大事な者に"。
「幸せそうだが……結構だ。それは、私とは関係のないものだ」
 ――いや、私とは縁が随分と遠退いた……。
 UDCと融合するたび、副作用の側面は色濃く律の人格を侵食し、浸透していきつつ在る。力の代わりに意識が記憶が、曖昧な色を帯びていく。
『……おいおい、律。まずそうなのは、ベスティア・ビブリエ…………お前であると何故いってやらねぇんだ』
 別人格が当たり前の顔をして、当たり前に律の口から主張してくる。
 ああ、律は獣に対してそう思っていない。
 あくまでストイックに、獣のことは敵であると認識していたが。
「"登場人物"は幸せそうだが、キミは代償に私から思い出を、国から音を奪っているだろう」
 耳をすませば、無音の中に聞こえるの獣の吐息。
 そして、律の言葉。
 楽器や歌、色んな耳を刺激するものばかりの国で、耳は音を拾えない。
 目が資格情報として"音があるはずだ"、という概念だけがそこに在る。"正しい"在り方は捻じ曲げられて、僅かな獣の餌と変換されて幻想に成り果てている。
『ククッ、もう良いだろう律よぉ……代わりに食っちまおう!』
「鬟溘≧�溘ワ繝上ワ隨代o縺帙k縺ェ縲∵焔繧貞�縺呎ー励↑縺ゥ縺ェ縺九▲縺溘′縲√♀蜑阪□縺代�荳ク蜻代∩縺ォ縺励※繧�m縺�°��」
 "食う?ハハハ笑わせるな、手を出す気などなかったが、お前だけは丸呑みにしてやろうか!"
『ばあーーーーーか、俺が食うってんだから食うんだよ!今勝手に食い散らした分を、やりかえしてなあ!』
 凶暴な人格の絶技は此処に。
 手先は既に記憶消去銃の威力調節のリミッターは最大にセットしている。
 喰うと言って、殺す一撃を加えると獣は身構えただろう。しかし、そうではない。

 軽い銃声が一つ鳴った。
 パン、と玩具のような音だった。

 記憶消去の針は獣の身体に突き刺さり、獣は呼吸を忘れ一時停止した。
 ……今消した、今奪った。喰らった。
 ベスティア・ビブリエは律にも国にも、何も出来なかった。
 わずかに呆けた後、獣は律に会った事を忘れているだろう。
 国の音を一度、奪い返されている事も。
 忘れているから、もう一度、猟兵相手に挑むのだ。
「……ああ、悪い夢のようだね」
 ――キミも、私も。
 男は獣から視線をそらし、つらそうな顔した。

成功 🔵​🔵​🔴​

アト・タウィル(サポート)
『どうも、アトです。』
『ふふ、それはどうも。』
『私にできることなら、なんなりと。』

ねじくれた魔笛≪Guardian of the Gate≫を携え、ふらっと現れる女性。性質は大人しく、いつも笑顔を浮かべているが、その眼は深く開いた穴のように光を写さない。大体平常心で、驚くということがあまりない。その代わり、空気は読むので、必要に応じて驚いたふりなどはする。

戦闘では、魔笛を用いてUCを使う。音楽系はもちろん演奏で、サモニングガイストもそれに合わせて現れる形。ミレナリオ・リフレクションでは、相手のUCが剣などを使う場合は必要に応じて武器としても使う。

後はお任せします、自由に使ってください



●窮極

 捻じくれた魔笛を吹きながら、小柄な女は獣の前を通り過ぎるように現れて。深淵寄りの黒い目で、じぃ、と。
 少女はベスティア・ビブリエの単眼を見上げた。
 単眼は視線に気が付き見つめ返し、逸らされない。
 獣の唸り声を返事に、アトは笛を一度下ろし――期待に答える。
「どうも、アトです」
 自己紹介を先手必勝で投げつけるアト・タウィル(廃墟に響く音・f00114)。恐怖に身をすくませて、動けなくなるならベスティアには心があるのだ。獣は当然のお湯に前足で地を踏んで、評価を下す。
「蠎慕衍繧後〓螂ウ縺�」
 "……底知れぬ女だ"。
 たった一つの目でアトの精神性を、獣は見透かそうとした。
 瞳を覗き込んでくるのだから、瞳に映る性格かなにかが見て取れればと考えていたが、彼女の瞳はただ深き闇が広がっていて――。
 落ち着いて微笑むその表情からも"ただの穏やかな雰囲気を持つモノ"ではないと、判断させる。ただ、ソレ以外が全く不鮮明と獣に映った。
「ふふ、それはどうも」
 獣の幹部相手に、おとなしく純粋な例の言葉を述べて。
 すぅ、と魔笛を口元に構えた。
 吹き鳴らすのは、今感じたインスピレーションのアドリブ楽譜。いくら楽器の愉快な仲間たちでも、アトの自由演奏のソロに食い込んでくることなど出来ない。
 音が遠く、文字通りの独奏を行うアトの演奏を、演奏家の端くれとして聞いているのだ。どことなく不安を誘う曲が、飛び入り参加したくなる意欲を削いでいく。ここはアトの独壇場。専用ステージも同然だ。
「蟷ク縺帙↓證ョ繧峨@縺ヲ縺�∪縺励◆」
 "曲。音楽。お前に有効なモノは……これではないか"。
 獣は唄う。誰にも聞き取れない言葉で、配下であるリトル・マジックスペルですら、翻訳できない言語で唄う。
 言葉は独自の物語を編み上げて、召喚される。
 物理的な攻撃をする演者ではない。
 そう――精神に攻撃を持たらすモノだ。

 ずずずずず、と召喚されたものは……黒い。

 目に飛び込む印象は、それだけだった。
 人型であるのにただどす黒く、漆黒よりもなお黒い。
 光の反射する場所すらない、完全な闇の塊。
 これが何だと、誰にも形容できないだろう。これは――アトの瞳を覗き込んだ者が感じる、ごく一部に視る深淵の模写だ。
「ああ、もっと――もっと、覗き込みたいんですね?」
 背後に複数の存在を感じる愉快な仲間たちに目を向け向けさせないよう、力ある音を吹き鳴らす。
 魔笛≪Guardian of the Gate≫で行うミレナリオ・リフレクション。
 瞳のサイズより、更に大きい黒黒したモノがぐぐぐ、と眼の前で伸びをする。獣が創り出した人型の"黒いなにか"を、正確に全く同じものを笛の音は編み上げて、展開した。
「だめですよ。これはずぅっと見ていてはいけないんです」
 獣の人型は形容するには、歪なもの。アトが出現させた"黒"は、不思議とアト自身の姿によく似ていた。
 意図的に似せたのだろうか。
 闇のアトが獣のユーベルコートから生まれたものに抱きついて、相殺の二文字が生まれる。
 いや――黒い闇は、二つの闇がぶつかったことで消滅した。
 消えたのでも打ち消されたのでもないかもしれない。
「次はあなたも消えますか?」
 狂気に触れて、狂気に問う。
 明るめの曲が演奏されていたにも関わらず、獣の胸の内側はざわめく。
 この猟兵を捕食対象としてはならない。
 本能が、そう告げるのだ――目をそらし、標的を変えたいところだがアトの瞳がじいいとベスティア・ビブリエを見ている。
 視線をそらせば、ゆるりと視界の内側に入り込んでくるのだ。
 不安にさせる魔笛を吹き鳴らしながら、時折言葉を挟み込んで。
 恐らく、言葉に裏はなく、正しい意味で告げられている。
「消すお手伝いをしましょうか?」
 目は逸らされない。ミレナリィドールは返答を待つのだ。
 耳に付く音が正気を削り、底しれぬ狂気の音に気圧されていくのを待つのも良い。時間なら在る。そう、たっぷりとある。獣が返事を返すまで、イエスと頷く動作を――その目がしっかり映すまで。
 フルートの音は、――鳴り止まない。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜城・さくら(サポート)
キャバリアでの戦闘をメインに。
『オーバーフレーム換装』では、装甲を犠牲に攻撃力か射程を上げて仲間を援護するように攻撃します。【スナイパー】技能使用。
手数が必要な時は『無限射撃地獄』です。敵がビット攻撃してきた際には相殺するように展開することも。

キャバリア以外では、『ギタギタ血まみれの外科手術』で仲間の治癒と戦闘力増強に励みます。
「ちょっと痛いですよ? でも大丈夫。すぐに元気すぎるくらいになりますからね」
笑顔でノコギリを振るいます。大丈夫怖くない怖くない。



●Splatter
 ザッ、と勇ましい音が響く。
「共通言語で話せない、獣の猟書家がいると聞きました」
 ポニーテールを揺らし、奇抜なデザインだがお気に入りのアンサーウェを着込み猟書家ベスティア・ビブリエの前に、立ちふさがる影。立ち塞がりしは、異教からやってきた巨人――緑色のキャバリアは、当然獣よりも大きかった。
「……そうですね、動物と言うには少し野性味が強そうです」
 上からしたまで獣の患部を流し見て、分析する彼女。量産型の汎用性を好む、夜城・さくら(不思議ちゃんの量産型キャバリア・f30006)は、動物が好きだ。
 だが、敵幹部に対して油断を見せれば何が起こるか――。
「お手並み拝見……!」
 戦闘に気持ちを移行させ、徐々に言葉の数を減らす。
 事前に聞いた情報が正しいのなら、獣は物理的攻撃を仕掛けてくるタイプではない。
 ならば――速攻で近づき、痛手を追わせる作戦を。
 ――そのために必要なものはやはり、手数でしょうか。
「蜈ア騾夊ィ€隱槭〒縺ェ縺代l縺ー縺�縺九i縺ェ繧薙□縺ィ縺�≧縺ョ縺�」
 "共通言語でなければだからなんだというのか"。
 獣の言葉は配下の魔法によって翻訳され、直接聞こえる。
 どこの国、どこの世界でも通じるはずの言葉がこの猟書家とは通じない。
 さくらがキャバリアからの遠隔攻撃を行う事を、獣は直感で理解した。
 自身の憑依する本に手を当て、唸る。此処で一番、精神的負荷を与えられるだろう演者を想像し、手駒として召喚するのだ。
「謨ー縺ォ縺ッ謨ー繧呈ソ€縺励>髣倅コ峨%縺昴′縺ゅl縺ー繧医>縲りカ�シゥ邏壹�髣倅コ峨→蝨ー迯��髮�将縺ウ繧偵≠縺偵h」
 "数には数を激しい闘争こそがあればよい。超弩級の闘争と地獄の雄叫びをあげよ"。
 ベスティアの周囲に召喚される物語。
 それは、さくらの乗るキャバリアとは違う形状の、量産型キャバリアの群れだ。
 楽譜の本の仲間で溢れた不思議な国に記されるべき、戦禍の姿ではない。
 さあ始めよう、"地獄の如き闘争"による小さな小さな戦争を。

 先に動いたのは、さくらだった。
 キャバリアにより増幅された思考波――所謂脳波コントロールによって、操る戦闘ドローン。
 相手が数で攻めるつもりなら、ドローンを森の中に向けて飛ばし迷彩色によるステルス機能を振るに活用する。
 ――敵が撃ち込んでくる前にただ、撃て。
 遠隔からビーム射撃をする国の物語たちは、さくらのキャバリアを一点集中で狙ってくる。軌道だ単純化すれば、アンサーヒューマンの直感力に従って避けることもまた可能。背後に愉快な仲間の姿を見つけていたからこそ、全ての弾丸はダルズビットによって、必ず迎撃・相殺を施す。
「精神攻撃としては一味足りません。なにしろ――」
 キャバリアAZで獣の四肢をぐっと押さえつけて、にっこりと笑顔を見せたさくら。
 羽交い締めにされるなど、想像していなかった獣の背後はがら空きだった。
 ドローンと、量産したユーベルコードで創り出した『物語』を高みの見物していたのが運の尽き。すぐに獣は行動しておくべきだった、行うべき"捕食"を。
「私を足止めして、その間に"捕食"するつもりだったのでしょう?心無い患者です、あなたは」
 手元に魅せるのは、医療ノコギリ。
 患部の切断に用いられる、切れ味の鋭い、大型のもの。
 大丈夫、怖くない怖くない。大公開ギタギタ血塗れの外科手術のはじまりはじまり。獣の身体を派手に斬りつけて、同時に治療する。
 ほぼ切断された痛みと、その部位の肉体改造的回復。
 切断した場所をいい感じにつなぎ合わせれば、元通り!大量に、赤い色が飛び散って、溢れかえってスプラッタ!
 同時に襲い来る闇医者的な外科手術は、他の事を考えさせない為に行われた。
 思惑は、想定以上の効果を発揮した。
 拘束されて動けなれけば逃げ出すことを優先する。
 痛みから逃れるため、それだけに逃げ出そうとする意欲は傾くのだ。
「――――!!!!!!」
 逃げ出せず、叫ぶしか無い獣の声なき絶叫が――森に響く。

成功 🔵​🔵​🔴​

アン・カルド
書庫組として。

ああ、やっと来たね…嬉しいなぁ。
物語を食べてくれるんだろう…君なら僕を、わかってくれるかもしれない。

【世界】。
自分を見つめる目玉。
空を泳ぐ魚。
切り合う侍。
崩れる壁。
世界の笑い声は聞こえるかい?
もしかしたら歌声か、向こうも賑やかなのが好きだから、愉快な仲間たちも歌を返す、彼らは近いのかもね、歌が一つの訳になって…これならきっと皆にもわかる。
でも、君はまだかかるみたいだ…ダメだよ、僕の大切な友達をずらずらと並べても、君がわからないと残酷な物語は作れない、ただの木偶だ。ほら、はやく食ってしまえ。
はやく!

…ああ、終わりか。

…ごめん、皆も巻き込んだ。
見てほしかったんだ、1人はつらいから。


ロラン・ヒュッテンブレナー
【書庫組】
※アルターギア
ロランと魔力で接続し電脳空間からのコマンドで動く脚部がブースターユニットな鳥型キャバリア

存在を喰う獣…
貪欲で恐ろしい姿は、ぼくの中の音狼みたい…
少し前の依頼で人狼化して暴走しちゃったのを思い出しちゃうの
もう、そんな事には、させないよ
チンバッソさんと、約束したもんね?
アルターギア、召喚なの

アンおねえさん?
これが前に聞いたライブラの世界…
咄嗟に【結界術】で時間稼ぎなの
敵味方識別と攻撃のプログラム(【索敵】【誘導弾】)を即席で作るね
自動操縦(【継戦能力】)で何とかするの
後はアルターギアのAIが獣を【全力魔法】のUCで砲撃(【乱れ撃ち】)するの
速攻なの

ファンファーレが聞こえるの


ルゥ・グレイス
【書庫組】

お待たせしました。
レオンさんに続いて皆の下へ。

脳裏に自殺教唆を振り撒く天使の如き怪物の姿、そして意識の混濁。
これは…アンさんのライブラ、【世界】?

確かこれは八十秒で死に至るものだったはず、それより先に倒せるか?

揺れる頭でUC【形而上銀河鉄道の車窓より】を発動
電子回路に意識の98%を移植し加速した思考で彼我の戦力を測定。

計算終了。六十秒で十分に鎮圧可能。
意識混濁が激しい仲間のサポートをしつつ迅速に事態の終了を図る。

戦闘終了の三秒前、アンさんに向け強制ハック、筋神経制御で手に持つライブラを閉じさせ、魔術を終了させて僕は意識を落とす。

アンさん。お気持ちは察しますが時間切れです。


夜刀神・鏡介
【書庫組】
あれが猟書家、記憶を奪う者。趣味が悪いにも程が……っ、世界が……歪む。この風景は……何が見えて、いる?
何か、拙い。すぐに、動かなければ……
俺の根幹は親友と、鍛錬の日々の記憶。思考を封じられ、記憶も失えば、今の俺に戦う理由も、戦う術もない

微かに聴こえる声と演奏が心を揺さぶる。想い、約束、遺志。そうだ、戦う理由はこの胸に

記憶と思考を失っても、残るものがある。意志と、身体に刻んだ鍛錬までは失われない
力強く鳴る喇叭の音が示す、その方向へと突進。攻撃は完全に直感と反射で回避して肉薄
神刀の封印を解き抜刀、【砕牙】
抜刀した一瞬だけ記憶と思考を取り戻し、すぐにまた失いながらも残りの三連撃を叩き込む


二條・心春
【書庫組】
言葉も大切ですが、私は目に見えないものこそ一番大切だと思います。感情や希望、そして絆……それを奪い去る貴方は絶対に許しません!

これは……頭がうまく回らない?【狂気耐性】があるうちに皆さんから離れましょう。アンさんの様子もちょっと変ですし、速めに倒さないとまずいのに……!
動揺しているときに、愉快な仲間の皆さんの演奏が聞こえます。……そうですね、心の赴くままに。私達の想いを見せつけてあげましょう!【ウェポン・ブースト】を使って、余計なことは考えずに怒りに任せて敵に突撃です。
私は皆さんを信じています。一気に決めてしまいましょう!

これがアンさんの大切なもの、なんですね……。


アウラ・ウェネーフィカ
【書庫組】
言葉を、知を求むる獣か
その欲求自体は分からないでもないが……む?
アンさん、一体何を――!?

これは、ライブラの世界?
不味いな、このままでは呑まれる……
ここは咄嗟に目を閉じて影響を緩和しつつ
急ぎ【UC】で土属性のゴーレムを創り、仲間や楽器を守る様に指示

この中では敵の召喚物は勿論、仲間も正常な判断は出来なくなるだろう
敵の攻撃、同士討ち、流れ弾、何があるかは分からないが
私が正常な意識でゴーレムを召喚出来ている間は何とか防ごう

――?
演奏に歌声、愉快な仲間達か?
なるほど、この世界を訳してくれているのか
今なら私でも少しだけ適応できそうだ
目を開き、ゴーレム達を操作して敵を【捕縛】
さぁ、今の内だ……!


レオンハルト・アウストラリス
【書庫組】
怯える愉快な仲間たちの集団の間から現れ、彼らを守るように前に立ち剣を振るう
「待たせたな!どうにか間に合った!」

心に宿した消えぬ正義の焔。
されど光が強ければ、転じた時の闇は強くなり、
その剣は守るべき者たちを切る凶刃と化すかもしれない
故に己の心を封じ【魔剣の加護】で、その身を魔剣の内に宿す『魔神』に委ね、
金の髪は銀の髪へ、双眸は紫色へと変わる

『どうやら小僧には荷が重かったか。』

『我が名は魔神シャクイス…貴様を喰らう者の名だ。我が名を刻み、散るがいい。』
その場の全てに邪な意思を向ける獣など一秒でも長く生かさぬと
即座に魔神の膂力と絶技を振るう

それだけアンさんが俺達を信じてくれたってことだろ?


ゴロウザエモン・サンモト
【書庫組】
アン様ーっ!?対策とはいえちょっとーっ!?
とにかく愉快な仲間たちは私から離れろ!

あれ?私は何を…?

正義を振りかざす人たちに囚われている…我が魔王だから、我が悪であると…。
分からない分からない何で今更また…我は…自由になったはずなのに…!

正常な思考なら過去を思い出し、囚われていることが正しいことだと思い込み反撃ができなかったかもしれない。
でも、正常な思考が奪われた今なら感情のまま即座に自由を奪う敵に反撃できる。

正常な思考ではないが自分の仲間は絶対にこんなことはしないという想いのみは狂気耐性で確信し、
攻撃をしてくる存在に迷うことなくカウンター。

アン…帰ったらデコピンの刑である…絶対に…



●My story

 存在するだけで発生している威圧感。
 これが魔導書に憑き物語を喰い散し、世界を白紙に変えようという"本の魔獣"。
 これが幹部ベスティア・ビブリエ。

 ――存在を食う獣……。
 ロラン・ヒュッテンブレナーには少し同じような概念に心当たりがあった。
 沢山の愉快な仲間たちと知り合ったロランは、彼らが標的になる事を肯定しない。
 ――貪欲で恐ろしい姿……。
 ――ぼくの中の音狼みたい……。
 やや少し前の依頼の記憶を思い出す。
 人狼化して暴走した、記憶。
 音狼の遠吠え、魔力回路で武装されたあの日あの時の半人半狼。
 今は此処にあってはいけない。国の中を荒らす必要は、ないのだ。
 たった一体の、"魔導書"を止めれば、いいのだから。
「みんなには助けてもらったの。だから、もう、そんなことには、させないよ」
 チンバッソとの約束も在る。暴走状態に、陥らなくても仲間が、いる。

 怯える愉快な仲間たちの集団の間に愉快な仲間ではない気配。
『ふええ、なんだか怖いよぉ……』
 不安がる愉快な仲間に声を掛けるようにその男はにやりと笑って、前へ進み出る。
 彼らを護るように前に立ち、剣を構えレオンハルト・アウストラリス(金色の焔・f20419)は声を上げる。
 それは、先にこの場に訪れていた仲間へ、だ。
「待たせたな!どうにか間に合った!」
「レオンさん、足が速いですよ……ええ、お待たせしましたね」
 ルゥ・グレイス(RuG0049_1D/1S・f30247)もまた、レオンハルトに続いて訪れた。これにて、同じ旅団の顔ぶれが八人。
 これほど心強い集まりが在るだろうか。

「どうやらあれは智がそれなりにありそうだ。流石、食らうモノ、といったところ」
 アウラ・ウェネーフィカは素直に感心する。
 人と人の会話、人と心あるものの会話に言葉の壁など無い。
 しかし、この魔獣とはどうしても言葉の壁が存在した。
 ――言葉を、知を求むる獣、か。
「その欲求自体は分からないでもないが……む?」
 ぞわああ、と悪寒が両腕の羽毛をざわつかせる。
 単眼のベスティアの目を見たから、ではない。
 敵ではない、身近の……仲間の誰かがから、発生しそうな"嫌な気配"がアウラの気分も揺さぶる。
 では誰だ、なにかをしようとしているのは――。
 悪寒の中心に居た、その存在。ああ、たしかに笑っている。
 だが、あれはなにかが、違うのだ。
「アンさん、一体何を――!?」
 在るき出す仲間、しかし、アウラの言葉が聞こえないのか。
 ふらふらと、彼女は獣の方へ近寄っていく。

「ああ。ああ。やっと来たね……嬉しいなあ」
 重い重い鋼鉄が如き翼を持ち上げてアン・カルドはにんまりと嗤う。
 彼女は待ちわびていた、獣到来。そして、獣の食らうものが、何たるか。
 モノが形成した物語を食らうという。
 人間も、愉快な仲間も等しく食らうのだとしたら……。
「……君なら僕を、わかってくれるかもしれない」
 抱きしめた魔導書、手元で開く。
 此処は不思議の世界、そこに新たな不思議が開かれるのだ。
「これが、僕が見た世界」
 ユーベルコード、ライブラの愉快話・世界が未翻訳の世界を吐き出して実体化する。アンだけが理解し、誰もが理解を拒んだ世界の一節。
 音の世界の華やか賑やかな光景は色んな記憶、世界によって侵食を受けるのだ。
 猟兵、愉快な仲間、ベスティア・ビブリエの視る世界。
 誰もが同じものをみていないかもしれない。

「これは……ライブラの?」
 全域に渡り飲み込む侵食されていく風景に、いち早く気がついたアウラは咄嗟の判断で目を閉じる。
 音ばかりは遮断できない。だが、視界から飛び込んでくる"理解出来ない可能性のあるもの"からの訴えかけは拒める。
 瞼の扉ただ一枚の隔たりでも、魔女であるアウラなら。
 他の魔術師が綴った世界の顕現と浸食は、別の魔術師の術とは在り方が違う。
 我を強く保つことで、少しの間だけは耐えられる隙が生まれよう。
 浸食の緩和を確認して、アウラが行うことは書き換えられていく世界の中で周囲への被害を、減らすこと。

「これが、前に聞いたライブラの世界……」
 ロランと魔力で接続したクロムキャバリアが始動する。
 機動力と魔術に特化したこの機体の名はアルター・ギア。コマンド入力を電脳空間越しに受け取り、脚型ブースターユニットを持つ鳥型機体。
「い、いけない……!」
 いうが早いかコマンドの入力は隔たりを創る結界術。
 キャバリアとの接続により跳ね上げた魔力で、時間を稼ぐのだ。
 ――急ぎ、解析……!
 敵味方の識別が最優先。どれもがゴチャまぜにわからなくなる、その前に。
 攻撃プログラムを向けるべき存在がどれなのかを、マーキングし、記録する。
 短い時間の中で出来るのはこれが限界。ロランの瞳にも、ロランの思考にも。
 ただしいはんだんは、つきそうにいない。二重に防壁を貼られた防衛策の中で、敵が召喚するなら一体何が出るというのだろう。

『遊-@4?遊-@4?』(あそぼう?あそぼう?)
『uib;uib;?6md\、e?』(なにこれなにこれ?おもしろ、い?)
 ベスティアが吼えるように自身の所持する魔導書で召喚した精神攻撃をする"物語の演者たち"。
 それらもまた、正常な形状をしていなかった。だれかの、想像通り。
 捩れるように黒く、いびつで、歪んでいて。大きかったり小さかったり、鼓動の鳴動を身体が刻む。
 ぶよぶよのぜりぃ質のような身体を持つような、おぞましい……なにか、だ。
 誰も、正常な認識を保てないために、おおよそ近しい生き物を表現できない。勿論、喚び出したはずの獣でさえも。
 蟷螂のようにしなる腕があるようでどうも、異なる気がする。
 正しい生き物、正しい幻影として喚ばれなかった召喚物もまた、アンの世界に堕とされてケタケタと異常な笑い声を上げる。
 裂けんばかりの大口で。
 ひどく耳障りなのに"どうして耳をふさがなければいけないのか"を自分に疑うような環境で。

「これは……アンさんのライブラ、"世界"?」
 はた、とこの世界の真実に気がつくルゥ。
 雪崩込んでくる情報が正確な、正常な思考を掻き乱していく。
 脳裏に掠めて離れない自殺教唆を振りまく天使の如き怪物の姿。
 意識が混濁する、現実と幻が混在して、資格情報に飛び込んでくる。
 あるべきはずの現実とありえてはならない過去が、それ以外の何かが入り交じる。
「た、確かこれは八十秒で死に至るものだったはず……!」
 ――それより先に倒せるか?
 ――刻一刻と刻まれる時刻、……六十秒以内勝負ですね。
 揺れる頭で、それだけを覚えていた。
 その情報の正確性を、意識の混濁は疑うばかりで肯定せてくれないが信じなければ……世界を広げ続ける仲間の、アンの死が間近に迫っている。
 演者の生き物が、誰かに攻撃を仕掛けるのも時間の問題。
 アウラが目を瞑ったまま召喚したゴーレムが、ルゥの前にも立ち塞がっている。
 お互いを仲間を、流れ弾を。避ける壁として、喚び出されたそれらは、各一人ひとりに付いている。
 たとえ認識がずれていようが、同士討ちにまで発展させない。
「ほぅ……私が、正常な意識でゴーレムを、召喚できているうちは、防ぐ……!」
「……ならば、お願いします。今、終わらせるべき困難を、数値化しますから」
 ――薬剤、投与。魔術展開、恐らくは、……完了。
 PDBCインターフェースに接続――遅延なく、完了。
 オールクリア、問題無し。
「我は世界を語る亡霊、星を流る哀悼も今はただ彷徨せよ。世界の理を超えて、視るべき、識るべきを此処へ」
 電子回路に意識を速やかに移植。九十八%を移植するルゥの決断は、光よりも早かった。加速する処理速度は、敵を瞳に映し即座に戦力を把握していく。
 単眼の獣、魔導書に憑く侵略者。
 共通言語さえ持たない、異端なる者。
 幹部はどこから現れ、魔術をどうやって行使し、――徐々に情報を奪い取って、吸っている?
「ああ、成程です。そういう、ことなんですね」
 形而上銀河鉄道の車窓より覗き込んで得た情報は、殆ど確信だ。
 ――計算、終了。
「今の戦力の分散を補正しても、残りの秒数もあれば鎮圧可能」
 ルゥの言葉を聞いて動き出すのは数秒後の――。

「あ、アン様ーっ!?幾ら対策とはいえ、ちょっとー!?」
 ゴロウザエモン・サンモトの悲鳴は、一番場にあっていて、当然の叫び。
 なにしろ、敵味方全員の正常な思考を絶ったのだから。
 一時的大魔法とだっていってもいい。
「……とにかくだ、愉快な仲間たちは、私から離れろ!」
 普段の口調が、揺らぐ。奇妙な演者を、一瞬でも見たからか?
 それとも、アンが広げた世界の狂を、心が受け止めきれ――。
 ――あれ?私は、何を……?
 ふと、ゴロウザエモンの瞳は幻が如き、像を映していた。
 正義を振りかざす人たちに、囚われるイメージを想像すれば現実味を帯びて、身体が言うことを効かない。
 ――ああ、我が魔王だから、か。
 自身の記憶、物語。精神に訴えることこそ、攻撃。
 敵の思惑だけが一人で手を伸ばして、ゴロウザエモンの記憶を引き摺っている。
「分からない分からない、分からない!なんで今更また……!」
 ――我は、……もう自由で在るはずなのに。
 正常な思考で現実を見つめられないことで、これが"過去の思い出に入り込みただ囚われる自身"だと、ぽつりと気がつく。
 囚われたことは、正しい。合っている。故に、心は異を唱える。
 今あるべき姿と全く合っていない。今、囚われているのなら――!
 正常な思考が奪われた今、ゴロウザエモンが動くのは――ただ、己の感情に従ってのこと。
「我が目の前に立つ汝は敵に非ず。しかし、――仲間が我に囚われを強いる事非ず」
 絶対にありえない。狂気打ち勝つ確信を持って、仲間の声の行先を信じ、ゴロウザエモンは駆け出した。
 方法はどうあれ、攻撃を繰り出そうとする存在。
 誰かが見つけたものが"敵"。仲間が敵だと言い切ったものが、敵。
 そこに、何の間違いがあるだろう。

「言葉も大切ですが、……私は目に見えないものこそ一番大切だと思います」
 二條・心春が大事にするもの。
 狂気耐性に誰よりも適正があった心春は、獣が聞き耳だけは立てていると信じて、言葉で告げる。
「感情、希望……そして、見てください。私達の絆を」
 仲間が展開する結界、そして、仲間に被弾せぬようにと気を配る心。
 これもまた、歴史を紬ぐ物語の断片。心春を含めた仲間たちが、この場で現在進行系で創り出していく、"今"という物語。
 ――これは……頭がうまく回らない?
 くらっ、とする頭を抱え、狂気に耐える限界があるだろう事を悟り、その場を素早く交代するように離脱する。
 ――アンさんの様子もちょっと変ですし。
 ――早めに、倒さないとまずいですね……。
 では、どちらも終わらせる方法は。考えるが、思考が乱れ、まとまらない。
 焦りは、同様に変わる。ああ、では、どうしたら――。

 見上げてみえたものは、自身を見返す眼。それも一対ではない。
 星のように並び、どれもが見下ろしているのだ。ただ、眼だけがじいいと。
 眼玉が別に張り付いているのに気にせず空を泳ぐ魚があり。
 道なき道で、無差別に切り結ぶアリスラビリンスの住人ではないサムライエンパイアにて戦争に馳せ参じそうな侍共が有志を競い合っている。
 切り結ぶは鋼の音。
 どこにも壁などなかった。しかし、ガラガラと壁無き壁が崩れる。
「世界中に笑い声は聞こえるかい?」
 誰の眼にも正気の世界は、映らない――。

「諢牙ソォ縺ェ莉イ髢薙�縺ゥ繧後□縲ゅ>繧�€√←繧後b縺薙l繧ょ酔縺倥□繧阪≧縲√〒縺ッ窶ヲ窶ヲ縺雁燕縺���」
 "愉快な仲間はどれだ。いや、どれもこれも同じだろう、では……お前だ!"。
 獣も同様に狂乱のなかにいて、魔導書からマジックスペルのように、魔術言語をひらりと浮かべて、並べる。
 自動術式だ、今創り出したものではなく、引きずり出したもの。
「莉イ髢薙′遯ョ蝨ー縺ォ關ス縺。縺滂シ溯�蛻��霄ォ縺ッ縺ゥ縺�☆繧九€ら嚀莉イ濶ッ縺丞�輔■繧九↑繧峨€∽ソコ縺瑚イー縺」縺ヲ縺�¥縺�」
 "仲間が窮地に落ちた?自分の身はどうする。皆仲良く堕ちるなら、俺が貰っていくぞ"。
 ロープのように伸ばされた文字は質量を持ち、ある男を捕らえた。
 獣は特定の誰かを狙っているようで、魔術を施したそれが、当たった対象から物語を奪うと決めて大口を開く。
 文字列が青く輝いて、光のように何かを男の体から、奪い去る。
 それは人間の心にある物語――記憶だ。
「あれが、猟書家、記憶を奪う者……」
 趣味が悪いにも、と言葉をつなげようとして、夜刀神・鏡介の視界が歪む。
 目に映る世界が、書き換えられる。
 世界が歪んで映る像は真実か、幻かの区別さえ、はっきりしない。
「この風景は……何が、みえている?」
 普段よりも自分の思考が拙く思える。軍学校に通う鏡介は、時々寝ぼけ眼を擦ることはあっても、思考を不鮮明などにはしない。
 責務と、己が使う力を修行する身であれば。
 活動に緩みがあってはならないと、自分の意志で固く決めているから。
 ――すぐに、動かなければ。
 やるべきことは、わかっている。数秒前まで、解っていた。
 だが、目に映る記憶のモノローグは、心を掴む。
 正しいことを、思考させない。
 ――俺の根幹、親友と鍛錬の日々の、記憶。
 映画のフィルムが流れていくように、思い出が継ぎ接ぎになり認知の外に出ていく感覚。
 腕に力を込め理由が失われる。
 これまでの剣技を鍛錬を、行ってきたのは何故だったのか――。
 思考を封じられ、記憶が曖昧に消され。戦う理由を鏡介は失った。

「――?」
 正常な意識を、保っている方であったアウラの聴覚を何かが刺激する。
 アレは、音。
 楽器の仲間が、さきほど出会った仲間たちが演奏を下地にすることで意識を束ねてその場に留まっている。
 歌が、聞こえる。愉快な仲間たちは諦めていない。この世界を、彼らは諦めていないのだ。世界の音を、自分の声にして響かせている。
 音の方に、愉快な仲間が――いる。
 では、"共鳴"しないほうに、敵がいる――。
 ――今なら、これなら。
 カッ、と開く瞳に映すのは希望。
 アウラのゴーレムへの指示は、混濁に騙されない。
「さあ、今の内だ!」
 ゴーレムたちが一斉に動き出す。
 明確な、敵へ殺到し――脅かす驚異を、明確に示すため。

「あ……ファンファーレが、聞こえるの」

 頭を振る。曖昧な認知が、レオンハルトにも襲い掛かっていた。
 耳に届いた楽器の音。これは恐らく現実の音である。
 正常な判断が、出来ているかを判断できない。
『小僧、まだ動かぬ気か』
 語りかけてくる声に覚えはもちろんある。握り込んだ魔剣。
 仲間のユーベルコードで正常な判断ができなくなってなお、離さなかった魔剣。
 心に宿した消えぬ正義の焔。
 立ち尽くしたまま、動かぬことを急かしてくる魔剣は正常な判断が出来るらしい。
 何故か、それすらも、考えても分からない。
 ――されど、だが、されど――――。
 ――光が強ければ、転じた時の闇は強くなり――――。
 額に手を当てて、感じる言葉に耳を傾ける。どこから生まれている言葉がも、判断は付かないが。
 ――この剣を、守るべき者たちを斬る凶刃と成すべきに非ず――――。
 ――このまま振えば誰を斬るか分からない。
「……そんなのは、ダメだ!」
「縺ェ縺ォ縺後□繧√□�滓ュ、蜃ヲ縺ァ縺翫o繧九□縺代�縺薙→縺ァ縺ッ縺ェ縺�°」
 "なにがだめだ?此処でおわるだけのことではないか"。
 獣の問いかけも曖昧で、正確性がない。
 しかし、返答を誤れば恐らく存在ごと喰われかねないのだ――。

「これはそう、愉快な仲間の皆さんの演奏が聞こえます!聞こえてますか、鏡介さん!」
 見つけた鏡介が心春の声を聞いているかは、分からない。握る剣が、上げられないところを見ると、心に穴でも開けられてしまっているのだろう。
 誰かが道を示さなければならない。
 忘れた部分を、補うように。
 ――微かに聴こえる声と、演奏が心を揺さぶる、そんな気がする。
 鏡介から言葉として返らなかった、思考。
 胸に抱くべき想い、約束、それから遺志。此処にあって、此処にないもの。
「……ああ、聞こえている。戦う理由は、…………そうだ、この胸に」
 記憶と思考を失っても、鏡介に残るものは合った。
 ものを見る、考える遺志ではない意志と、これまでの身体に刻み込んできた鍛錬に費やした時間。
 記憶から飛んだとしても、経験までは失われない。
「……心。そうですね、心の赴くままに。私達の想いを見せつけてあげましょう!」
 心春の想いと、鏡介の耳に届いた喇叭の音は道を指し示す。
 進むべき道と、その方向――考えるより早く、鏡介はかける。
 他の仲間に差し向けられていた"物語の演者たち"の手を完全に直感と反射のみで、躱し、ボスである獣に肉薄する。
「えーい!」
 ウェポンブーストを掛けた、今はすごく強いだろうUDC管理用タブレット端末の角で思い切りガツン!
 余計な事は考えず、手元に持っていた端末で怒りに任せて敵を殴りつけた心春。
「私は!皆さんを、信じています!皆さん、聞こていますか!一気に決めてしまいましょう!」
「ああ」
 獣の視線が関心が心春に向くのを確認して、普段遣いの刀を戻し、神刀の封印を解き抜刀!
「噛み砕く――肆の型【砕牙】」
 抜刀した一瞬だけ記憶と思考を取り戻し、獣が振り向くまでの間に右から振り抜くように切り裂く。
 いざ振り抜いてしまえばまたすぐに失ってしまう泡沫の記憶だが、――この手は返す刀からの連撃が後二撃あることを、覚えている。
「!?」
 ゴロウザエモンは飛び上がっていた。ああ、単眼の目とぶつかった。
 振り抜き済みの魔王の小槌が蒸気エンジンを用いたことで振り抜き速度が上がる。
 しゅぅううと吹き出す蒸気で目をくらませられたら、最高だ。何しろ獣には目がひとつしか、ないから。

 ごぉおん。
 一つ、大きく獣の身体が揺らいだ。

『小僧、まだか……いや、どうやら小僧には荷が重かったか』
 レオンハルトの声に、誰かの声が載る。
 己が心を封じ込め、魔剣の加護を反映し、その身を魔剣の内側にあるモノに委ねて睡る。
 金の髪は流れるように銀へと染まり、双眸は赤から紫色へと変じた。
「縺昴%縺ョ縺雁燕窶ヲ窶ヲ縺ェ縺ォ繧�▽縺九€よー鈴�縺檎焚縺ェ繧九♀蜑阪�縲∽ス戊€�°縺薙◆縺医h」
 "そこのお前……なにやつか。気配が異なるお前は、何者かこたえよ"。
『身を飛ばし尚、名など尋ねてどうする。我が名は魔神シャクイス……貴様を喰らう者の名だ。我が名を刻み、散るがいい』
 魔剣を構え、飛来する邪な意志に向けて思い切り叩き込むは、刃。
 叩ききれずとも良い。ただ、獣を討てればそれでいいのだ。
 思い一撃で殴られ、ひたすらに斬られ、獣は既に満身創痍。
 決して、危害は加えず情報として餌を食うだけの獣だが、悪食なのには変わらない。手を伸ばせば、どこにでもまだ餌はあるのからだ。
「させないの。それいじょうは……メッ!」
 ロランは漸く、即席で作り出すことに成功した。
 判別した敵に有効的効果を齎しそうな、破壊因子プログラムを。
 ――自動操縦にするの。ぼくは、信じているからね。
 アルターギアのAIに、マーキングと指示を送れば"物語の演者たち"と獣。
『40ー』(うわー)。
『7ーoー;ーqー』(やーらーれーたー)。
 二種の部外者へと、速攻の魔法の弾丸を打ち込み始める。

「……ねえ聴こえる?世界の笑い声はきこえるかい?」
 ロランの全力魔法による乱れ打ちが飛ぶ中で、アンは読み聞かせるように、語る。
 今しがた、蹴散らされた"物語の演者たち"のことではない。
 アンの視る世界に、知っていた世界にそれらはいない。
「もしかしたら歌声か、向こうも賑やかなのが好きだから、愉快な仲間たちも歌を返す、彼らは近いのかもね、歌が一つの訳になって……これならきっと皆にもわかる。
 でも、君はまだかかるみたいだ……ダメだよ、僕の大切な友達をずらずらと並べても、君がわからないと残酷な物語は作れない、ただの木偶だ。ほら、はやく食ってしまえ。はやく!はやくはやくはやくはやく!」
 連続攻撃を叩き込まれ、地に伏した獣は返答しない。
 獣はアンの話し相手にも、なっては、くれなかった。
「……ああ、なんだ。終わりか」
 あっけない終わりだった。
「おわりか、じゃないですよ」
 ルゥの体感では、戦闘終了三秒前。
 計測した予想から、誤差は一秒もない。
 筋神経制御を行うため仲間に強制ハックをかけ、勝手に動くアンの腕。
 手が動けば大事に抱える開いたライブラは、自分の意志に関係なく閉ざされる。
「アンさん。もういいんですよ、お気持ちは察しますが、時間切れ、です……」
 魔術の使用を終了させて、ルゥの意識もまた落ちた。

 その瞬間、周囲に明るい雰囲気と音楽が、音が、歌が、誰の耳にも聞こてくる。
 靄の掛かった正常な思考が、戻ってくる。
 漸く、今言いたかった言葉が言えるのだ。
「アン……帰ったら、デコピンの刑である。何をしたか解っておるだろうな?絶対に……するからな」
 いの一番に苦言を呈したゴロウザエモン。
「いや、あの……サンちゃんごめんって…………」
 謝るべき相手は、彼女一人ではないとアンは知っている。
 故に、仲間たちに向き直って自身の魔導書を握り込む。
「……ごめん、皆も巻き込んだ。見てほしかったんだ、1人はつらいから」
 倒れ込んだルゥを見て、世界を閉じたアン。
 決して望んだ結果ではないけれど。
「これが、アンさんの大切なもの、なんですね……」
「それだけアンさんが俺達を信じてくれたってことだろ?」
 仲間たちはどこまでも、"固い絆"で結ばれているらしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
ウク
この国を守るため一緒に戦ってくれないか
俺が必ず守る
お前のイカした音をなくさせやしないぜ

ウクへ攻撃が向いた場合は庇う
協奏した相手をむざむざやらせないぜ

大した精神攻撃だな
けど無駄だ
俺やウクは今も世界に自分を響かせている
物語を生み出し続けているんだから

戦闘
ウクと協奏
歌い奏で紡ぐ物語をビブリオへ叩き込む

美味いか?
けどなそれはあんたの物語じゃない
幾ら喰らっても
あんたが他人の複写になっちまうだけだ

自分の物語は
自分で感じ考えて生きること
未来へ進むことでしか
生まれないんだぜ?

俺達の音楽で敵の書=お腹を一杯に
他者の物語で自我が混乱したところへ紅蓮
本を焼却し海へ還す

ありがとな
んじゃ祝いの音楽会をしようぜ(ぐっ



●EDITTIME fine

「なあ、今言いたいことが在るんだが」
 猟兵たちの戦いを、愉快な仲間の奏者として遠巻きにみていた木霊・ウタ。
 ワイルドウィンドの音を抑えて、ウクレレの仲間をみる。
「お?」
「この国を守るために一緒にさあ、戦ってくれないか。俺が必ず守る」
「あんなに怖い顔のオウガと戦うのか?……まあいいけどさあ」
 心優しいウクレレは演奏の手を止めて、ついてくる事を承諾した。
 猟兵が共闘を持ちかけて来ることに、ほぼ即返事。
 なんて熱いウクレレなのだろう。
「……任せろよ、お前のイカした音をなくさせやしないぜ」
 ウクとウタの二人は他の愉快な仲間たちから離れて、猟書家・ベスティア・ビブリエの前に進み出る――。

「縺雁燕縺溘■縺ッ蝟ー繧上l縺溘>繧薙□縺ェ�溷多遏・繧峨★縺九€ゅ♀譛帙∩騾壹j鬟溘i縺」縺ヲ繧�m縺�」
 "お前たちは喰われたいんだな?命知らずか。お望み通り食らってやろう"。
 リトル・マジックスペルの翻訳を聞く限り、獣に歓迎されているらしい。
 唯一の捕食対象と出来るならば、獣も本望。
 ウタが持ちかけた決闘の火蓋は此処に落とされる。
「――――!!」
 獣が叫ぶと魔導書から、溢れて現れる謎の"物語を演じられる者たち"。
 召喚され浮いている銀の刃を持つそれの名を、ウタは知っている。
 あれは誰どうみても、ハサミなのだ。
 手で掴むサイズの工作用なのではない、糸を絶つ、裁ちばさみ。
 この場においては、楽器の命を絶つものである。それが複数、しかも人丈サイズに巨大なものがウクに向けて飛来する。
 楽器においての生命線とも言える糸を、狙っているのは明らかだ。
「俺を、切ろうっていうのか!」
 ウクレレの弦を切ろうとしているのは明らかなことである。
 避け無ければと気持ちが焦り冷や汗のもので、精神にクる。とてもとても嫌がらせの攻撃だ。
「……させないぜ!!」
 掻き鳴らすギターの音圧で、ハサミの群れを弾き飛ばす。
 そうだ、二人は演奏している中で獣と対峙しているのだ。
 まさに燃えるが如しの、演奏。雨のように降り注ぐ凶器も、楽しげなマーチなリズムで打ち消す。
 ギターとウクレレ、独自アレンジのマーチだ。
「諠��ア驥上′螟壹>螂エ繧�シ�」
 "情報量が多い奴め!"
「大した精神攻撃だな。斬られると思うとぞっとするが、――無駄だ」
 きゅぃいん、と張りのある音を響かせて、ウタは全身を"地獄の炎"で包み更に火力を物理的にあげる。
「俺やウクは今も世界に自分を響かせてるんだぜ!」
「そうだぜ!これが」
「「物語を生み出しているってことなんだから」」
 声の揃った協力して生み出す演奏に、気持ちはピッタリ重なった。
「……んで?ウクからなにか情報を掠め取れたかよ、美味いか?」
 獣視線は揺らぐ。言葉が通じなくてもウタには解った。
 美味いには美味いのだろうが、情報としてほぼ獲れるいないのだと。
「ああ、いい言わなくても。あんたの物語じゃないんだ、当然だろ」
「幾ら喰らわれても、構わねさあ」
「「あんたが他人の、模写になっちまうだけだってなあ!」」
 自分の物語は、自分の生きざまだと語るウタと、ウク。
 自分の生きざまは歌とリズムと、鼓動(心)で感じたものを伝えることにこそ在る。
「未来へ進むことでしか生まれないんだぜ?」
「縺上€∝眠縺��繧後〓縲√□縺ィ縲ょ・ェ縺�叙繧翫″繧後〓窶ヲ窶ヲ��シ�シ�」
 "く、喰い切れぬ、だと。奪い取りきれぬ……!!!"。
 ユーベルコードで創り出した、奪うための召喚越しに奪う事を続けていたベスティアは根を上げる。
 二人のディエットが生み出す果てしないメロディは、今を生きている為に――終わりがない。
 続き続ける為に、存在を消すほど生命力を奪いきれない。
「どうやら、腹がいっぱいになったようだなあ。いくぜ、ウク」
「――ああ!お前の生き様(音楽)は此処で終わりだ!」
 激しい燃えるミュージックが獣を挟んでクロスする。
 終わりは此処に訪れる。クロスされた先に存在するのは魔導書。
 周囲の暑さに負けるように、済から徐々に燃えていく。
 獣は本に憑いていた。つまり、燃やされた時点で獣の負けなのだ。
「俺たちはお前のエディター……編集して、終わらせるものさ」
 本を焼却し、躯の海に押し返す。
『あ~~……まけちゃったねえ。じゃあぼくもかえるね、ばいばーい』
 主が負けたことにより、一緒に消えていくこども。
 手をふる様子は晴れやかで、遊べて楽しかったと言わんばかりだった。
「ウク、ありがとうな!んじゃ、祝の音楽会を開こうぜ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月27日


挿絵イラスト