孤独のバレンタイン
バレンタインチョコレートフェス。
そう書かれたポップでビビットな看板を、ソリ・テュードは見上げていた。
もうすぐバレンタインがある。それは分かる。
バレンタインといえばチョコレート。それも分かる。
そのお祭り騒ぎをもっと楽しもうとフェスが開かれるのも同様。なのだが。
「……僕、何でここに居るんだろう?」
大勢の女の子達で盛り上がる中、ぽつりとソリは呟いていた。
「ソリー。見て見てこれラビットバニー柄だよー。エモいよねー」
ふわふわな銀の髪を靡かせたネコキマイラが、ピンク色のどこかで見たウサギがプリントされた小さなチョコレートの詰め合わせを持って来て。
「ソリもハート型ってベタかなって思ってたっしょ。でも見てこれ、可愛いっしょ!」
何か儀式が始まりそうなマスクをつけた少女が、両手に乗るほどでっかい、でもそこに繊細な模様が刻まれたハート型の板チョコレートを掲げて。
「あ、ほら見てー。あっちの、箱もチョコもすごいキラキラしてるー」
「こっちはめっちゃカラフルなトリュフっしょ」
あっちへこっちへとソリを引っ張っていく。
それは、バレンタインを一緒に楽しむ女友達、といった光景で。
様々なチョコレートを愛でながら、それを渡す相手を想って一喜一憂する、女の子ならではのこの時期の風物詩だったけれども。
「僕、男なんだけど……」
「ソリー、何か言ったー?」
「ほらこっち、限定チョコがあるっしょ。急ぐっしょ」
小さな主張は流されたまま。
男の子テレビウムであるはずのソリは、また2人に引っ張られていった。
そんな頃。キマイラフューチャーの別の場所で。
「オーッホホホホ!
わたくしの名はドーラ・ワルダー! ドーラ様と呼びなさい!」
ザ・悪役といった雰囲気の、露出度の高い黒い服を着た長い黒髪の女性が、鞭を振るって高笑いを上げていた。
「はい、ドーラさま♪」
「わたしたちのごしゅじんさま♪」
そこに傅くのは、エプロンドレスを着た金色の髪の少女達。
浮かべられた妖しい笑みに、ドーラは満足したように頷くと。
「この星は、悪の組織『ワルドーラ』が戴く事に決めました。
さあ、下僕怪人ども! この星の住民……キマイラどもを、集めて集めて、集めまくるのです! 手段は一切問いません!」
またぴしっと鞭を振るいながら命令する。
「かしこまりました、ドーラさま♪」
「たくさんたくさん、あつめてまいりますわ♪」
傅く少女達は、妖しく笑い続けて。
「どんなしゅだんでもいいなら、どろどろにしましょう♪」
「ええ、チョコレートをいっぱいめしあがっていただきましょう♪」
「ちょこすらいむさんもよびましょう♪」
そのスカートから、どろりどろりと茶色の液体が滴り落ちる。
それは溶けたチョコレート。
そっと持ち上げたスカートの下を、蠢くチョコレートでいっぱいにして。
「チョコレートがすきな、おんなのこをあつめましょう♪」
「すてきね♪ あつめてチョコレートでかためましょう♪」
「チョコまみれにしてかためて、たくさんたくさん、めでましょう♪」
くすくす、くすくすと妖しく笑う。
その様子に、さすがのドーラもちょっと不安になって。
「ちゃんとわたくしのアジトまで連れてくるのですよ……?」
「はい、ドーラさま♪」
「わたしたちのごしゅじんさま♪」
釘を刺せば、甘い不思議の国『チョコスイーツ・アリス』の陽気な声が、何重にもなって返ってきた。
「キマイラフューチャーで行われているチョコレートフェスが、猟書家『ドーラ・ワルダー』に狙われているよ」
集まった猟兵達を前に、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は困ったような苦笑で説明を始めた。
悪の組織『ワルドーラ』の首領を名乗るドーラは、キマイラフューチャーの住人であるキマイラ達をアジトに連れ去って殺し、下僕怪人として蘇らせようとしているらしい。
その計画で今回狙われたのが、バレンタインの時期に合わせて開催された、チョコレートフェス。女の子キマイラ達が沢山集まるイベントなのだが。
「……どうも、見知った彼もいるようでね」
女の子でもキマイラでもないのに、と夏梅は苦笑を深める。
まあ、なかなか活動的な友人ができたようだから、なんやかんやと連れていかれたのだろうとは想像がつくけれども。
それでまた事件に巻き込まれるとは、なかなか穏やかに暮らせないようで。
「まあ、助けてやっておくれ」
夏梅は困ったように、でも少し嬉しそうに笑って、猟兵達を送り出した。
佐和
こんにちは。サワです。
ソリ君はチョコを渡される側なのか渡す側なのか!?
ソリ君は、ごく普通のテレビウムです。
何となく独りでいましたが、友達ができて一緒にいろいろわいわいやってる模様。
今回は、女友達2人と一緒にいます。
3人とも戦力ゼロです。しかし、その応援はプレイングボーナスになります。
ソリ君達について知りたい方は、タグを利用して過去の登場作をご確認ください。
尚、未読で全く問題ありません。
ソリ君達に全然関わらないままでも充分いけますので。
第1章は『甘い不思議の国『チョコスイーツ・アリス』』との集団戦です。
チョコレートフェスの会場を、チョコレートで襲ってきます。
フェス会場にはソリ君達以外にも沢山の女の子キマイラ達がいます。
チョコレートで固められてしまっても、固めたアリスが倒されれば元に戻れます。
第2章では幹部猟書家『ドーラ・ワルダー』とのボス戦となります。
悪の組織『ワルドーラ』の首領です。
チョコレートがお好きかどうかは不明です。
それでは、たっぷりのチョコレートを、どうぞ。
第1章 集団戦
『甘い不思議の国『チョコスイーツ・アリス』』
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POW : どろどろにしてあげる♪
【チョコ触手による捕獲】が命中した対象に対し、高威力高命中の【浴びると固まるドロドロに溶けたチョコ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : いっぱいめしあがれ♪
【スカート】から【垂れ落ちる溶けたチョコレート】を放ち、【全身ドロドロチョコ固め】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : ちょこすらいむさんだよ♪
【溶けたチョコレート】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【相手を引きずり込むチョコスライムの沼】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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丸いトリュフに四角いカレ。
シンプルな板チョコに、1口サイズの詰め合わせ。
様々なチョコレートが並べられたフェス会場は、何度回っても飽きることはない。
……のだろうな、とソリは思った。
「ほらリディ、見て見てー。この四つ葉型、プラリネだってー」
「プラリネって何だっしょ?」
「んー……中に何か入ってるやつー」
「コート、適当言ってるっしょ」
「適当だけど美味しいよー」
「美味しいなら問題ないっしょ」
あっちへこっちへ目移りしながら話が弾む、友人のネコキマイラとヒーローマスク。
その様子には、飽きるどころか何時終わるとも知れない雰囲気があって。
どうしよう、と思いながらソリは2人を追いかける。
と、その視界の端に、大きなチョコレートが映った。
「……ライオン?」
気になって近づくと、それは獅子を思わせる少女の形をしたチョコレートで。
ソリよりも大きな、等身大と思われる立像は。
毛の流れも服のしわも、驚いたような表情も、とても精緻に作り込まれていた。
「わー。すごいねー」
「本物みたいっしょ」
友人達も寄ってきて、まるでライオンキマイラをそのままチョコレートで固めたかのような見事な出来栄えを褒め称える。
「あー。これ、デインにあげるチョコにいいかもー。
大きいしー。かっこいいしー」
「食べ応えあるって、きっと喜ぶっしょ」
そしてもう1人の、ライオンキマイラの友人の名前が出てきたところで。
ふと、気になっていたソリは聞いてみた。
「ええと……僕のチョコ、は?」
「えー? ソリの分は買わないよー」
「買うわけないっしょ」
「……そっか……」
あっさりと返ってきた答えに、ソリは落胆と同時に納得していた。
(「僕なんかがチョコレートを貰えるわけがない」)
ずっとずっと、独りだった。
それがこうして声をかけてもらえて。
一緒に出かける相手ができて。
もうそれだけでも充分すぎる変化なのだから。
(「それ以上を望むなんて、欲張りだ」)
そう思って、顔を上げると。
「こんにちは♪」
目の前に、エプロンドレスを着た金髪の少女が、いた。
「チョコレートは、すきかしら♪」
ずいっと迫ったその顔に浮かぶのは歪んだ笑み。
その勢いに圧されるように、ソリがおずおずと頷くと。
「すきだったら、いっぱいめしあがれ♪」
「ええええ!?」
少女がそっと持ち上げたスカートから溶けたチョコレートが垂れ落ちて。
そのままドロドロとソリに襲い掛かってきて。
「はい、チョコレート・テレビウムのできあがり♪」
気付けばソリはチョコ固めにされていた。
「ソリー!?」
「これピンチってやつっしょ!?」
「わあ、チョコレートがすきなひとが、いっぱい♪」
「みんなみーんな、いっぱいめしあがれ♪」
そして、甘い不思議の国『チョコスイーツ・アリス』がくすくす笑うそこに。
ネコキマイラとヒーローマスクのチョコレート像が出来上がった。
「さあ、どんどんかためましょう♪」
「みんなみーんな、チョコレートにしてしまいましょう♪」
「チョコまみれにしてかためて、たくさんたくさん、めでましょう♪」
そしてまた、チョコスイーツ・アリス達は。
フェスに集まっている他のキマイラへと、迫っていく。
白神・チグサ
さてさて、実戦は初めてなんだけどねぇ〜。頑張っちゃうよ!
ねぇ、あなたはチョコレートが好きだからこんなことしてるのぉ?
わたしはぁ……悪〜い子を食べちゃうのが好きかなぁ…!
設定したユーベルコードで応戦するわ。やっぱり実戦はいいわねぇ。
もし他のお仲間がいれば状況に応じて連携も取れるといいわねぇ。
テフラ・カルデラ
※アドリブ可
こ…これは羨まし…じゃなくて大変な事になっています!?
このままじゃキマイラのチョコ漬けオブジェが立ち並ぶ素敵な…大変な事に!
【癒しの鳴き声】でソリさんやキマイラ達を元に戻して逃がして上げなければ…
あとは襲い掛かってくるアリス達を【氷結の指輪】で迎撃しましょう!
溶けたチョコも凍らせてしまえば怖くはありません!(特大フラグ
ひゃっ!?何かが覆いかぶさって…これは…チョコ!?
しまった!相手のチョコを浴びて身動きが…あっ…気づいたら囲まれて…
チョコの触手が…迫って…助け―――
(アリス達が離れる頃にはドロドロチョコ固めされてもはやオブジェと化したうさぎ少年が…)
コンコンコンで大抵の物が出てくるキマイラフューチャー。だから普段は適当な場所をコンコンして、それなりの物を手に入れて、呑気に楽しく暮らしているのだけれども。
これが欲しい! となった時だけは別。
どこから出てくるのか探す、というのも楽しいけれど。
欲しいものが売っている場所に行く方が確実で早いから。
住民の多くは店やイベントにそれを買いに行く。
そう、例えば……バレンタインのチョコレートのように。
ずらりと並んだ様々なチョコレート……製作動画をアップして人気を集めた誰かが作った物だったり、この日のためにコンコンして見つけた物だったり……を眺めながら、白神・チグサ(淡雪に舞う・f32016)は、ゆっくりとフェス会場を歩いていた。
時折見かける試食のチョコレートを気ままに摘まみながら。
口の中に広がる、少しずつ違う甘さを楽しみながら。
白と黒のしましま尻尾をゆらゆら揺らして、チョコレートフェスを堪能する。
このまま楽しいだけで終わりたいところだけれども。
進むチグサの前に現れたのは、ヒョウキマイラの少女を象ったチョコレート像。
不思議そうに振り向いた格好の、精緻な造りのそれが、オブリビオンによってチョコレートで固められた本物のキマイラだと知っているチグサは、おやおや、とのんびりした驚きを見せながら、灰色の瞳でにっこり笑った。
「さてさて、実戦は初めてなんだけどねぇ~。頑張っちゃうよ!」
一応気合いを入れてはいるようだけれども。
どこか気の抜けた口調で、ゆったりと周囲を見回すチグサの様子は、チョコレートを眺めている時とあまり変わらない、おっとりマイペースなもので。
緊張感を感じさせぬまま、ゆるふわとオブリビオンを探す。
すると、近くで、ひゃっ!? と小さな悲鳴が上がった。
振り向けば、そこにはチグサと同じキマイラの猟兵がいて。ヒツジキマイラ少女のチョコレート像を前に、驚愕の表情を浮かべている。
そこに浮かぶ感情は、恐怖か悲壮か焦燥か……
「こ、これは、羨まし……じゃなくて、大変な事になっています!?
このままじゃキマイラのチョコ漬けオブジェが立ち並ぶ、素敵な……大変な事に!」
あ、歓喜か憧憬か喜悦辺りでしたね。
本音が隠しきれていない声を上げたテフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)は、でも猟兵として来たことを忘れてはおらず。
「元に戻して逃がして上げなければ……」
ウサギ耳をぴょこんと揺らしながら、癒しの鳴き声を響かせた。
「にゃ~ん♪」
ウサギキマイラの猫の声真似に、おや? と首を傾げるチグサだけれども。
その鳴き声は、治療の力を持つユーベルコードだったから。
「可愛い!」
「ウサギなのにネコ? あっ、ネコなのにウサギ、かな?」
「どっちにしても可愛いよ」
「うんうん可愛い」
ヒョウキマイラもヒツジキマイラもチョコレート化から元に戻って、早速スマホのカメラを構えながら、可愛いのもう1回! なんてテフラを囲んでいた。
猟兵仲間のそんな活躍を、なるほどぉ、と眺めるチグサの前で。
何かに気付いたテフラは、キマイラの少女達をぐいっと自身の後ろへ下がらせる。
少女達と共にチグサが疑問符を浮かべた、その時。
「あらあら、せっかくチョコレートにしたのに♪」
「せっかくすてきなチョコレートができていたのに♪」
甘い不思議の国『チョコスイーツ・アリス』達が、歪んだ笑みを浮かべて現れた。
いや、ここに彼女達の被害に遭ったチョコレート像があったのだから、戻ってきた、と言うのが正しいのだろうか。
いずれにしろ、対峙したオブリビオンを、テフラが可愛らしく睨み付けると。
「でもまたチョコレートにしましょう♪」
「そうね♪ またチョコまみれにして、かためてしまいましょう♪」
「ほら、ちょこすらいむさんだよ♪」
チョコスイーツ・アリスのスカートから絶えず垂れ落ちていく溶けたチョコレートが、幾つものドロドロな塊となってテフラへ向かった。
飛び来る攻撃に、だがテフラは慌てずに、氷結の指輪をはめた手をかざす。
途端、指輪に込められた冷気の魔力がチョコレートを覆い。一気に冷やされ、固まったチョコレートは、勢いも削がれて地に落ちた。
「溶けたチョコも凍らせてしまえば怖くはありません!」
「あらあらたいへん♪」
胸を張るテフラに、しかしチョコスイーツ・アリス達は、怪しい笑みを浮かべたまま次々とまたチョコレートを放ち。テフラがまた冷やし固めて落とす。
拮抗する戦況を、どこかゆったりと眺めていたチグサは。
チョコレートから戻ったキマイラの少女達が、安全な位置に居るのを確認してから。
それじゃあわたしも、と前に出る。
「ねぇ、あなたはチョコレートが好きだからこんなことしてるのぉ?」
近づいたチョコスイーツ・アリスにそんな問いかけを投げかければ。
「そうね♪ チョコレートはだいすきよ♪」
「チョコレートでかためるのもだいすきよ♪」
「かためて、めでるのが、だぁいすきよ♪」
歪んだ笑みと共に、くすくすと答えが返ってくるから。
ふぅん、とチグサは白い髪の下で灰色の瞳を細めて。
「わたしはぁ……悪~い子を食べちゃうのが好きかなぁ!」
ふわもこな白い袖と白い手袋に覆われた手を差し出すと。
その手が、ふわもこな白いたてがみを持つ白いライオンの頭部に変形して。
大きく開いた顎が、チョコスイーツ・アリスの1人に噛みついた。
「きゃああ♪」
食べられながらもどこか楽し気に、狂った笑みを浮かべるチョコスイーツ・アリス。
「だめよだめよ♪ たべるならチョコレートにして♪」
「ほら、いっぱいめしあがれ♪」
別のチョコスイーツ・アリスが、持ち上げたスカートから垂れ落ちるチョコレートをまたドロドロと放つけれども。それはテフラの冷気が固めて落として。
「わたしが全部凍らせます!」
「ありがとねぇ」
その間にチグサはさらに手を伸ばし、新たな1人に噛みつき、食い千切った。
「やっぱり実戦はいいわねぇ」
手応え……と言うべきか噛み応えと言うべきか……を感じながら、テフラの援護を受けつつ、チグサは次々とチョコスイーツ・アリスを噛み消していく。
と、そこに。
「ひゃっ!?」
聞こえたのはテフラの短い悲鳴。
チグサがどこかのんびりと振り向くと。指輪をかざしたテフラの足元から、どろり、と茶色い触手のようなものが這い上がっていくところだった。
「これは……チョコ!?
しまった! 落ちたチョコがまた溶けて……あっ……」
そう。それはテフラが凍らせて地に落としたチョコレート。
それがいつの間にやらまた溶けて、テフラの足元に沼のように広がっていて。
そこから、沼に引きずり込むかのように、ドロドロのチョコレートがテフラの身体を這い伝って覆っていく。
「た、助け……」
あっという間にチョコレートに覆われてしまったテフラは、助けを求める手を伸ばし、怯えた表情のまま、チョコレートのオブジェと化した。
「おやおや、まぁまぁ」
その様子を眺めたチグサは、んー、と考える仕草を見せて。
自身の手が変形したライオンの頭を見下ろして。
(「わたしはぁ、にゃ~んって治療できませんからねぇ」)
「敵を倒せば元に戻りますよねぇ」
きっと、と呟きながら、くるりとテフラのチョコレート像に背を向けると、またチョコスイーツ・アリスへ向かっていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
木霊・ウタ
心情
皆を助けてやりたいぜ
戦闘
皆へ避難の促し
もう大丈夫だ
落ち着いて行動するんだ
攻撃し敵注意を引き付ける
攻撃されそうな一般人や仲間いれば
爆炎加速で移動し立ち塞がり
炎を広げ灼熱の防御幕として庇う
チョコなんざ触れられやしないぜ
爆炎纏う焔摩天で薙ぎ払い
砕き溶かす
攻撃の余波の炎を
チョコ固めされた人達へ延焼
チョコのみ溶かす
瞬間的に炎で包む要領で
熱ダメージを最小限に
岩盤浴位のカンジで
回復した人へ避難の声掛け
武器受けで防御し炎で溶かす
攻防ともチョコを片っ端から溶かし
そのままアリス諸共炭化させて灰へ還す
アリス
スカートからチョコとか
なんかこう
チョコを貶めてるってカンジだよな
紅蓮で送ってやる
海へ還れ
事後
鎮魂曲
安らかに
ニコリネ・ユーリカ
バレンタインは乙女の聖戦
ラビバニ柄のチョコもカラフルなトリュフも
カワイイが好きな女の子も、男の子だって守ってみせるわ
先ずは敵に狙われる皆さんの保護を
営業車Floral Fallalでフェス会場に乗り込み
来場者と敵の間にドリフトで割り込む
車体を盾にしつつ、運転席から身を乗り出して避難を呼び掛ける
既にチョコ像にされちゃった子も大丈夫
連中がぶつけるチョコは愛のない唯の無機物
96m圏内のチョコを全てお花に変えて
綺麗なお洋服の儘、皆を解放してあげたい
さぁ金髪エプロン(私もだけど)のお仕置きの時間よ
変換したお花を風魔法で集めて花嵐に
貴女達にぶつけてあげるわ
覚悟なさい、スカート捲れるってレベルじゃないわよ!
「すっごーい。等身大ウサギキマイラチョコレート?」
「可愛いし、長い髪とかふんわりスカートとかも細かいね。よくできてるぅ」
「怯えた表情もリアル! 本当に、助けて、って言ってるみたい!」
呑気な感想を言い合いながら、チョコレート像にされてしまったキマイラの元にわいわい集まって来る、キマイラの少女達。
「わあ♪ またキマイラがきたわ♪」
「どんどんあつまってくるわ♪」
「それじゃあチョコレートにしましょう♪」
「どんどんチョコレートにしましょう♪」
そこに、甘い不思議の国『チョコスイーツ・アリス』達もまた集まってきて。
「どろどろにしてあげる♪」
ひょいとつまみ上げたエプロンドレスのスカートの下で、ドロドロと溶け落ちてきたチョコレートがまるで触手のようにキマイラ達へと伸びていった。
迫るチョコ触手に、本能的に恐怖を感じてか、キマイラ達は表情を引きつらせ。
しかし、捕えられるよりも、悲鳴を上げるよりも早く。
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)が割り込んで来る。
「チョコなんざ触れられやしないぜ」
振り回すのは、爆炎を纏った巨大剣・焔摩天。
刃に刻まれた梵字どころか、刃そのものも見えない程に燃え上がった紅蓮の炎は、防護幕のように広がり、チョコレートを押し止め。さらに焔摩天の薙ぎ払う動きでチョコ触手を切り裂くと、そこから一瞬にして炭化させていった。
チョコ触手を防ぎ切ったウタは、肩越しにキマイラ達へと振り返り。
「もう大丈夫だ。落ち着いて、安全なところへ避難……」
「きゃー! 猟兵だわカッコいい!」
「写真撮っていいかなぁ? あ、動画の方がいいかも」
「握手したーい」
逃げろと呼びかけたものの、ウタの登場に大はしゃぎで、むしろ近寄ってきそうな程。
先ほどのチョコスイーツ・アリスの攻撃で被害が出なかったのも、キマイラ達に緊張感がない要因の1つとなってしまったかもしれません。チョコレート像が本物のキマイラだということにも思い至っていない様子。
これはどうしたらいいのかと、ウタが迷うその隙に。
「ちょこすらいむさんだよ♪」
溶けたチョコレートが、今度はスライムを思わせるドロドロの塊となって、幾つも幾つも放たれた。
もう一度、とウタは焔摩天を構え直す。
そこに、1台の小型トラックのような車が突っ込んできた。
沢山の荷物を積めそうな後部には、荷を積み下ろしするためだけでなく、開けた扉が屋根や台になるように工夫がされていて。白色のレトロな小屋を思わせる、シンプルながらも統一された外装が整えられている。
その見た目からは、移動販売車、という言葉が思い浮かぶけれども。
車を支えるタイヤはゴツく大きく。横滑りしながら突っ込んできたその動きは、まぎれもなくドリフト走行だったから。
豪快な登場に、本当に移動販売車なのかと疑問が生まれる。
その正体はともかく、車は放たれたチョコレートの前に壁のように立ちはだかり。
ウタを、そしてその後ろのキマイラ達を守るように止まった。
「皆さん大丈夫ね?」
運転席から身を乗り出したのは、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)。
ふんわり柔らかな長い金髪を揺らし、にっこり浮かべるのは花咲く笑顔。
そのまま流れるようにドアを開け、現れた姿もしなやかに揺れる花のようで。
腰にエプロンをつけた店員さんスタイルで停まった車の横に立つと。これはやっぱり移動販売車だったのだと納得できる。
集まる視線に、ニコリネがそっと手を振り応えると。
「きゃー! 猟兵だわ素敵!」
「手振ってもらっちゃったぁ。あ、写真写真」
「握手したーい」
わあっとキマイラ達が盛り上がって。
ニコリネはそれを微笑ましく眺めてから、さて、と車の向こうにいるチョコスイーツ・アリス達へ向き直った。
「バレンタインは乙女の聖戦」
ブーツを履いた足を肩幅程度に開いて地を踏みしめ。
スカートとエプロンとをふんわり揺らしながら、後ろを守るように手を広げる。
「ラビバニ柄のチョコも、カラフルなトリュフも。
カワイイが好きな女の子も、男の子だって、守ってみせるわ」
「きゃー! カッコいい!」
「お姉様ぁ」
「握手してー」
びしっと決めたニコリネに、またキマイラ達が盛り上がった。
黄色い歓声を受けながら、ニコリネはちょっと照れるのを隠しつつ。
「車の影に隠れていてね」
「はぁい」
Floral Fallalという店の名を持つ車を指し示せば、猟兵達の活躍を間近に見れ、かつ車体が盾となるある程度安全な場所に、キマイラ達は大人しく従ってくれる。
「本当は、遠くに逃げてって言いたかったけれど」
「難しいようだからな。助かる」
ぽつり零した言葉を拾って、ウタも苦笑交じりに小さく言った。
そして、即席の観客席をさらに安全にするべく、ウタは巨大剣を手に地を蹴る。
剣に纏った爆炎をその背にも広げ、吹き出す炎の勢いで加速。
キマイラ達の前に割り込み、助けた時と同じスピードで、あっという間にチョコスイーツ・アリスの1人の目前へと飛び込んだ。
「どろどろになりにきてくれた♪」
一気に肉薄したウタに、だがチョコスイーツ・アリスはどこか嬉しそうな、歪んだ笑みをにたりと浮かべて。またそっとエプロンの揺れるスカートを持ち上げる。
垂れ落ち、伸びたチョコ触手は、今度はウタだけを狙ってきた。
「スカートからチョコとか……
なんかこう、チョコを貶めてるってカンジだよな」
切り裂き、焼き尽くし。チョコレートを灰にしながら。
ウタがどこか呆れたように言うと。
「そうね。あの金髪エプロンがぶつけてくるチョコは、愛のない唯の無機物」
(「私も金髪エプロンだけどっ」)
ニコリネは愛を込めて、ユーベルコードを発動させる。
「Flowers don’t tell, they show.」
すると、ニコリネの白い車を汚していたチョコレートが、次々と花に姿を変え。
白に映える、色とりどりの鮮やかな花弁を開いていった。
「きゃー! お花がいっぱいだわ綺麗!」
「動画よねこれは写真より動画よね」
「あの中に飛び込みたーい」
無機物を花に変換するユーベルコードは元々華やかなものだけれども。
元のチョコレートは地味な茶色。それが、赤に黄に紫、青、ピンクにオレンジに、そしてそれらを支える瑞々しい緑色に変わっていくのは、いつも以上に華やかだから。
「お花の移動販売車『Floral Fallal』です。ご用命はお気軽に!」
ついでに営業も入れつつ微笑むニコリネに、さらにキマイラ達のテンションアップ。
あ、車体が白色だったのも、販売するお花を引き立てるためだったんですね。
そんな背景効果も十分に生かしながら、美しい能力をニコリネはどんどん広げて。
「さぁ、お仕置きの時間よ」
次々とチョコレートを変換し、チョコスイーツ・アリスの攻撃を防ぐ。
そこにウタが好機と走り、もう一度巨大剣を振るえば。
紅蓮の炎は、花となったチョコレートを避け、チョコスイーツ・アリスへと向かう。
ついでに、防御に使っていた分の爆炎を別の方向に伸ばして。ウサギキマイラのチョコレート像を覆い尽くせば。
炎はウタの意思に従ってチョコレートだけを溶かし燃やし。白い毛並みと褐色の肌を持つ可愛いウサギキマイラは元に戻って、その場に座り込んだ。
「はあ。とっても素敵な……大変なことになってました」
ほっとしたような、でもどこか少し残念そうな、そんな声を零すウサギを横目に。
ウタはさらなる爆炎に覆われた焔摩天を振り上げた。
「覚悟なさい。スカート捲れるってレベルじゃないわよ!」
そこに、ニコリネの風の魔法が吹き荒れて。
チョコレートを花に変えたそばから巻き上げていく。
花嵐はチョコスイーツ・アリスを巻き込み、混乱をもたらすと。
生み出された隙に、炎が走る。
「紅蓮で送ってやる」
爆炎の勢いも乗せて、思いっきりウタは焔摩天を振り抜いて。
「海へ還れ」
薙ぎ払うような炎に、チョコスイーツ・アリスは次々と灰になり、消えていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
ソリ、チョコを頂いたらチョコになった…
ちゃんと元に戻って、もう少し普通のチョコ、貰わなきゃ
…まつりんもチョコ頂きたい?
チョコになっちゃダメよ
ん、チョコになった子達には灯る陽光からオーラを放ち防御
そして【うさみみメイドさんΩ】
半数は皆の防御を、半数はうさみん☆と共に、片手にミニバケツを持って攻撃に加わって?
スカートひらりがチョコの来る合図ね、分かりやすい
メイドさん達、放たれたチョコは逃げ足で直撃を回避しバケツで受け止めて
チョコに罪はない、後でわたしが美味しく召し上がる
あ、でも先に少し味見を…(ぱくり)
…(ぱくぱく)
ん、ごちそうさま
それじゃ、と灯る陽光で叩ききる
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。
またソリ巻き込まれてる。
あれ、今回はお友達も一緒?
このチョコは食べられないなぁ。
よっし、疾走発動!
触手に触れないように、空中戦だー!
あ、チョコが掛かると後で大変だから、耳と尻尾は引っ込めとく。
アンちゃんがソリ達を保護してる間、上空をぶんぶん飛び回って威嚇。
如意な棒からの衝撃波で、チョコ触手の襲撃をぶっ飛ばしながら。
振り払ったチョコの飛沫が、粒状に固まって。
チョコの雨が降るキマフュ世界。
あ、撮影されてる?
いぇーい♪(ぴーす)
さて、そろそろ仕上げ♪
突撃しては、正拳どーん!
ぶっ飛ばしては、次々どんどーん♪
さてと。
大ボスさん、出てこーい!
今度は、チョコもらってあげようー!
「またソリ巻き込まれてる」
「ソリ、チョコを頂いたらチョコになった……」
テレビウムのチョコレート像を囲むのは、双子の兄妹、木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)と木元・杏(メイド大戦・f16565)。
動けない友人を、面白がるように、心配そうに、覗き込んで。
「あれ、今回はお友達も一緒? 確か、コートとリディ、だっけ?」
祭莉はその近くに立っていた、こちらも会ったことのあるチョコレート像……ふわふわ髪のネコキマイラと、ジャングルの奥地で怪しい儀式を始めそうなヒーローマスクの少女の周囲も、くるくると回って見た。
細かい毛の流れや服の動き、そしてもちろんその表情も、綺麗に固めたチョコレートはとても艶やかで、白くなったりまだらになったりもしていない。部分的に見ればとても美味しそうなものだけれども。
「このチョコは食べられないなぁ」
「ちゃんと元に戻って、もう少し普通のチョコ、貰わなきゃ」
いくらお菓子が好きでも、さすがに友人の形をしていては、しかも友人本人を元にしているとなれば尚更、祭莉も杏も食べる気にはならない様子。
でも、本当に、チョコレート像の原料はいいチョコレートのようだったから、祭莉は残念そうに狼耳をぺたんとしていて。
「……まつりんもチョコ頂きたい?」
「うん。食べたい」
「でも、CCまつりんはもうダメ」
「そうだね。チョコが掛かると後で大変だね」
釘を刺す杏に祭莉はにぱっと笑い、チョコレートコーティングされてはたまらないと、人狼の特徴である狼耳と狼尻尾を引っ込めた。
確かに、ふっさふさなその毛の間にチョコレートが入ったら、洗うのも大変そうです。
そうして準備を整えた祭莉は。改めて、甘い不思議の国『チョコスイーツ・アリス』達へと向き直り。
そのスカートから垂れ落ちたチョコレートが、地面に広がっていくのを見やる。
「よっし、空中戦だー!」
どう見てもチョコスイーツ・アリス達に有利そうな地形に、祭莉はあっさりとそう判断すると、その身を燃やすかのように白炎を纏い。
元気なテンションそのままに空へと舞い上がった。
「ん。わたしは守る、ね」
それを見上げた杏は、糸を繰り、うさ耳付きメイドさん人形も舞わせると。
ユーベルコードで人形の複製を幾つも幾つも作り上げる。
一気に増えた人形の半数が、元のうさみみメイドさんを追いかけて。
残る半数は杏の周囲に展開。杏がかざした灯る陽光から放たれたオーラと共に、チョコレート像を守るように広がっていった。
「ソリもバレンタインも、護ってみせる」
キリッと金色の瞳に力を込め、杏が頑張って睨むように見据えるチョコスイーツ・アリスの上空で。白炎に覆われた祭莉が、そして合流したうさみみメイドさん人形達が、ぶんぶんと飛び回って翻弄する。
「どれをつかまえればいいのかしら♪」
「どれをチョコレートにすればいいのかしら♪」
くすくす歪んだ笑みを浮かべながら、悩むような言葉を紡ぐチョコスイーツ・アリスだけれども。その足元からドロドロしたチョコ触手が、とりあえず適当に捕まえようと言わんばかりに伸ばされる。
ぶんぶん気ままに飛んでいたような祭莉は、でもしっかりその動きを見て。
チョコ触手に捕まらないよう避けながら、如意な棒を振り回した。
「そーれっ」
放たれた衝撃波がチョコ触手をぶっ飛ばし、どろどろチョコが飛び散って。
粒状になったそれが、ぱらぱらと地面に振っていく。
「見て見て。こっちにも猟兵だよ。こっちも可愛い!」
「うんうん可愛い。それにチョコレートの雨だよ。すっごーい」
飛んでるうちに気が付けば、祭莉を見上げるヒョウキマイラとヒツジキマイラの少女達が見えたから。
「あ、撮影されてる? いぇーい♪」
その手に構えられたスマホに向けて、祭莉は元気にぴーすした。
「でも危ないから近づいちゃダメだよ」
楽しむ最中に、注意も忘れず、にぱっと告げれば。
「心配されちゃった。可愛い!」
「うんうん可愛い。あ、はーい。分かってまーす」
歓声を上げながらも、キマイラの少女達は祭莉の言葉に従い。ちゃんと安全な場所まで下がってから、ちゃっかり観戦を続けていく。
これなら大丈夫、と祭莉も満足そうに頷いたところで。
「なかなかつかまえられないわ♪」
「もっといっぱいチョコレートにしないと♪」
「もっといっぱい、いっぱいめしあがれ♪」
チョコスイーツ・アリス達が、エプロンの下のスカートをひらりと持ち上げ。そこからさらにチョコレートがドロドロと垂れ落ちると、触手の時以上の量で、祭莉を飲み込む波のような勢いで放たれる。
「攻撃の合図、分かりやすい」
しかし、その動作からチョコレートの追撃を読んでいた杏は糸を繰り。うさ耳付きメイドさん人形を、チョコレートの波へと向かわせた。
いつの間にかミニバケツを装備していたうさみみメイドさんは、直撃を回避しつつチョコレートを掬い上げると、くるりと杏の元へ戻っていく。
その動きは複製した他のうさみみメイドさんも同じ。ミニバケツをかざし、回避しつつ受け止め、戻る。幾つもの人形が、幾つものバケツをチョコレートで満たし、次々と杏の元へ向かっていくから。
「メイドさんがチョコレート運んでる。可愛い!」
「うんうん可愛い。でもどうするのかな?」
わくわく観戦するキマイラの前で、杏はミニバケツの1つを受け取った。
「チョコに罪はない。だから、後でわたしが美味しく召し上がる」
こくんと頷いた杏は、その言葉の通り、保管するように足元にバケツを置いて。倣うように他のうさみみメイドさんも、チョコバケツを並べていく。
そしてチョコバケツを手放したうさみみメイドさんは、すぐに空のミニバケツを持つとまたチョコレートの波へと向かっていった。
せっせと働くうさみみメイドさん達に、祭莉は守られ、チョコバケツが増えて。
安定した戦況に、ちらり、と杏の視線がチョコバケツへ向かう。
「あ、先に少し味見」
言い訳するように呟けば、ぱくり、と一口つまみ食い。
途端に、甘くて美味しいチョコレートが杏の口いっぱいに広がって。
「味見は、大事」
ぱくり。ぱくり。
「大事……」
ぱくぱくぱくぱく。
「すっごい食べてる。可愛いっ」
「うんうん可愛い」
キマイラ達に注目されているのにすら気付かぬほどに、夢中になって食べていく。
そして、チョコレートをひとしきり堪能したところで。
「ん、ごちそうさま」
ようやく杏は立ち上がり、灯る陽光を構えた。
ぶんぶん空を飛ぶ祭莉とうさみみメイドさん達に気を取られているチョコスイーツ・アリス達へと一気に駆け寄ると、白銀の光が象る剣を叩きつけるようにして切り裂く。
思わぬ方向からの攻撃に、慌てたチョコスイーツ・アリス達の動きが乱れれば。
「さて、そろそろ仕上げ♪」
空から祭莉も急降下。突撃しながら正拳を突き出した。
「どーん!」
祭莉の擬音が似合うくらい、ぶっ飛ばされるチョコスイーツ・アリス。
そこにまた杏の剣が閃いて。
「どんどーん♪」
さらに祭莉の拳も振るわれれば。
「ああ……チョコレート、が……」
「たくさんたくさん、あつめたかった、のに……」
チョコスイーツ・アリスの姿が1人、また1人と消えていく。
「……ドーラ、様……」
そして最後の1人が倒れ。足元のチョコレートと一緒に消えたのを見て。
地面に降り立った祭莉は、さて、とおひさま笑顔で声を張り上げた。
「大ボスさん、出てこーい!
今度は、チョコもらってあげようー!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふえ?この等身大テレビウムさんのチョコレートはどこかで見たような・・・。
ふえ?ついこのあいだ美白の魔法をかけただろうって
ああ、あの時のテレビウムさんですね。
あれ?美白の魔法にテレビウムさん、そしてチョコレートって何か嫌な予感がするんですけど。
ふええ、思い出しましたチョコレートでお祝いされそうになったんでした。
今日は美白の魔法は用意していませんよ。
どうしましょう。
お洗濯の魔法で固まったチョコを落とすしかありませんね。
双子がそれぞれ空を飛びチョコレートを集め始めた頃。
ひょこっと現れたフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、チョコレート像を覗き込んで首を傾げていた。
「このテレビウムさんのチョコレート、どこかで見たような……」
特徴がないのが特徴とも言える、ごくごく普通のテレビウム。
驚き戸惑うようなポーズでチョコレートに固められたそれは、今にも動き出しそうな程に精緻な造りだったから。人見知りなフリルは、つばの広い帽子の下からおずおずと、物を見るというより人を見るような感じで見つめる。
すると、フリルの手の中に収まっていたアヒルちゃん型のガジェットが、鳴いた。
「ふえ? 何ですかアヒルさん。
え? ついこのあいだ美白の魔法をかけただろうって?」
がーがー、としか聞こえない声に、フリルはその意思を聞き取って。
もう一度、改めてチョコレート像を見た。
示されたユーベルコードと、テレビウム。それをキーワードに記憶を探ると。
敵の右手にあった、犬を模したパペットから放たれたビーム。
そんな光景が蘇る。
そして、フリルが選んだのは、有害な光から護り肌をケアする蒸気を生み出す魔法で。
『テレビウムさんも、スキンケアはいかがですか?』
『え、でも、テレビに湿気って……』
おろおろする、顔の画面に鍵の画像を映し出したテレビウムに、大丈夫です多分、と微笑んで手を伸ばし……
「ああ、あの時のテレビウムさんですね」
ようやく、ガジェットが示した記憶を思い出し、フリルは顔を輝かせた。
でもすぐにまた、疑問符が浮かんで。
「あれ? 美白の魔法にテレビウムさん、そしてチョコレートって……」
キーワードを1つ増やして考え込む。
あまり良い感じではない、どちらかというと嫌な予感を感じながら、眉を潜めて。
今度は、でっかいチョコフォンデュタワーが思い出された。
「ふええ、チョコレートでお祝いされそうになったんでした」
オブリビオンなそれは、フルーツなどの素材がやってくることを待つことなどなく、むしろ素材に襲い掛かるようにチョコ触手を伸ばしていて。
よりによって真っ白なウェディングドレスを試着していたフリルやキマイラ達に向かってきていたから。
『はい、これでチョコレートをかけられても大丈夫です』
フリルは同じ蒸気で摩擦抵抗をなくし、皆のドレスと夢を守っていた。
そんなドレス姿の住人達の中に、確かテレビウムもいて……
見知った相手と気付いたフリルの緊張が少し解けたけれども。
フリルは、今度は別の意味でおずおずとチョコレート像を見た。
「今日は美白の魔法は使えませんよ。どうしましょう」
ビームの時やチョコフォンデュの時と違って、テレビウムはもうすでにチョコレートまみれになってしまっているから。汚れを『防ぐ』魔法では対抗できないかと、フリルは情けないくらいに眉を下げて。
困り果てたその様子に、再び、手の中のガジェットが、がー、と鳴く。
「そうですね。お洗濯の魔法で固まったチョコを落とすしかありませんね」
少し呆れたような、でもちゃんと背中を押してくれる鳴き声に、フリルは微笑むとその手をテレビウムに伸ばした。
防げないなら、落とせばいい。
どんな頑固汚れでも、どんな効果でもはたき落とせる『身嗜みを整えるお洗濯の魔法』を発動させ、ぽんぽんぽんっ、とテレビウムの身体を軽く叩くと。
「……あ、あれっ?」
チョコレートから解放されたテレビウム……ソリが、画面の中の目をぱちくりさせた。
状況が飲み込めないのか、きょろきょろ落ち着きなく辺りを見る様子に、怪我などはなさそうだと判断したフリルは微笑んで。
ガジェットに手をつつかれて、そうでした、と振り向く。
「こちらのチョコレートもですね」
そして、ソリの友人達のチョコレート像へも、フリルは手を伸ばしていった。
成功
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第2章 ボス戦
『ドーラ・ワルダー』
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POW : わたくしにひれ伏しなさい!
【鞭】が命中した対象に対し、高威力高命中の【踏みつけ攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 下僕達、やっておしまいなさい!
戦闘用の、自身と同じ強さの【力自慢の下僕】と【テクニック自慢の下僕】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ : こうなったら奥の手よ!
自身が戦闘で瀕死になると【巨大なびっくりメカ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
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「ソリー。よかった元に戻ったー」
「ソリ、大丈夫っしょ? もうどこもチョコじゃないっしょ?」
「う、うん……」
ふわふわな銀の髪のネコキマイラと、ジャングルの奥地が似合いそうなヒーローマスクの友人に囲まれて、ソリは互いの無事を確認し。
「大ボスさん、出てこーい!」
すぐ近くで、見覚えのある猟兵が両手をぶんぶん振りながら叫んでいるのを見た。
その声を目印にしたかのように、他の猟兵達もソリの近くに集まってきていて。
ちょっと遠巻きに見るように、キマイラの少女達がわいわい騒いでいる。
(「あ、また何か巻き込まれたんだ……」)
細かい状況はソリには全く分からないけれども、それだけは理解して。
(「また助けてもらえた、のかな」)
とりあえず、猟兵達にまたお礼を言わないと、と思ったその時。
周囲の景色がぐにゃりと歪む。
気付けば、ソリと猟兵達は、お城の玉座の間を思わせる、広く豪奢な部屋に、いた。
フェス会場と同じか、それ以上に広い。もしかしたら、大量に並べられていたチョコレートがないからより広く感じるのかもしれないけれど。それでも、右も左も、走ってもすぐ手をつけないほど壁が遠く。天井もスカイダンサーが悠々と踊れるほどに高く。ゆえに幾つもの柱が立ち並ぶ場所。
とはいえ、キマイラフューチャーであることに変わりはないらしく。柱や壁の装飾や、飾ってある絵画などは、どこかポップでファンシーなものばかり。
そこにソリと2人の友人、そして猟兵達は、いた。
他の、観戦していたキマイラの女の子達や、フェスのお客はいないようだ。
そして、そんな空間を見下ろす、1つの壁沿いの少し高い位置に玉座が、あった。
「ちょっとぉ……何で城中の食べ物全部チョコレートになってるのよ……」
「コーティングどころか芯まで全部チョコでやすね」
1つだけ用意された大きくて装飾の多い椅子に、露出度の高い黒い服を着た長い黒髪の女性が座って……いや項垂れていて。
控えるように傍に居る、肉襦袢でも着ていそうな大柄な男が穏やかに頷く。
「ドーラ様ぁ! ワインがありましたぁ!」
そこに、ひょろっとした小柄な男が瓶を掲げて駆け寄ってきて。
「あら~ぁ、よくやったわねぇ。ほら、さっさとお注ぎよ」
「はいっ」
上機嫌な女性の差し出したグラスに、早速開けた瓶を傾ける。
「……チョコレートドリンクでやすね」
「あーもう、おバカっ!」
「あれー!?」
どろっと流れ出た液体を見た女性に、小男は見事なまでに張り倒された。
そんなコントのような流れを、思わずぽかんと見てしまったソリだけれども。
それは友人2人も、そして猟兵達も一緒だったようで。
ちょっと微妙な空気が漂う。
そんな中、やっとこちらに気付いたのは小男。
「ドーラ様、ドーラ様」
「何だい役立たずっ。早くチョコレート以外の食べ物を探しといで!」
「それより、何かあそこに居るっすけど……」
彼に示されて、ようやく、女性と大男の視線もソリ達へと向いて。
「猟兵でやすね」
「キマイラもいるっすけどね」
「…………」
微妙な空気が濃くなりました。
「オーッホホホホ!
わたくしの名はドーラ・ワルダー! ドーラ様と呼びなさい!」
そんな空気を吹き飛ばすように、というか、今までのやりとりをなかったことにするかのように開き直って。椅子からびしっと立ち上がって豊かな胸を張り、高笑いを上げる女性……猟書家『ドーラ・ワルダー』。
下僕らしき大男と小男も、ドーラの左右で決めポーズを見せています。
「この悪の組織『ワルドーラ』の本拠地まで来るとは見事!
いいでしょう。わたくしが直々に、下僕怪人にして差し上げましょう!」
ぽかんとしたままのソリの前で、何だか戦いが始まるようだった。
鈴木・志乃
……お邪魔しました(震え声)
ごめん、笑っちゃった。なんかワルダーさんが可愛く見えてきて。いや、敵なんだけどね? 違うか。ワルダーさんかわいい人だったんだ。……(笑いが堪えきれていない)
まあまあドーラ様、良かったらこのチョコレートドリンクをご馳走しますから。是非御召し上がりくださいませ(たぶん怒ると予測)(UC発動)
ソリさん達も良かったら……さっきまでチョコまみれだったもんな。じゃあお口直しでジュースどう? のむ?
人をチョコまみれにしちゃだめだぞ。部下が上手く動かないからって足蹴にするのもだめ。わかった?(チョコ出しながら)
高速詠唱全力魔法で(空の)お星さまにする。
玉座の間を思わせる広い広い部屋に、高笑いが響き渡る。
露出度の高い黒い服を纏い、下僕の男2人を付き従えて、壁沿いの少し高い台座から猟兵達を見下ろすようにふんぞり返る猟書家『ドーラ・ワルダー』。
鈴木・志乃(ブラック・f12101)は、震える身体でそれを見上げて。
「……お邪魔しました」
「フッ、そう簡単に帰すと思って?」
震える声に機嫌良さげにさらに胸を張るドーラ。
たまらず志乃は吹き出した。
震えていたのは笑いをこらえていたからなのだが、それを怯えととったらしいドーラの様子がまた志乃のツボにはまり。抑えきれなくなってさらに大きく身体を震わせる。
そこまで来ると、さすがのドーラも笑われていると気が付いて。
「なっ、何を笑っているのです!?」
「ごめん、笑っちゃった。
なんかワルダーさんが可愛く見えてきて」
「可愛……っ!?」
笑い過ぎてオレンジの瞳にちょっと涙も光らせながら、志乃がさらりと告げた感想に、言葉を詰まらせるドーラ。
「てっ、敵であるわたくしに、かっ、かっ、可愛いとは、ぶっ、無礼な!」
「いや。うん。敵なんだけどね? 見れば見るほど可愛くて」
笑いをこらえながら尚も言葉を重ねる志乃に、さらにドーラの挙動が不審になる。
黒いマスクで半分隠された顔が真っ赤なのは、照れているからなのか、笑われた怒りからなのか。自分でも分かっていないのではと思えるほどの混乱っぷりが見えて。
「違うか。ワルダーさん、可愛く見える、じゃなくて、可愛い人だったんだ」
やっぱりこらえきれなくなった笑いを零しながら、うんうんと頷いた志乃に、ドーラの頭からオーバーヒートしたかのような蒸気が上がった。
「ドーラ様、ドーラ様、落ち着くっす」
慌てた小男が宥めるように両手をぶんぶん上下させ、その逆側にいた大男がどこから取り出したのか大きな団扇をあおいで風を送る。
そんな大混乱な敵陣を、まだ消えない笑みを湛えたまま志乃は見上げて。
「まあまあドーラ様、良かったらこちらを。是非御召し上がりくださいませ」
執事を思わせる優雅な仕草で、トレイに乗ったグラスを差し出す。
ダッシュで駆け寄ってきた小男がトレイごとそれを受け取り、ドーラの元へ運ぶと。
「……チョコレートドリンクでやすね」
「要らないって言ってるでしょうが!」
中身に気付いたドーラが、それを力いっぱい叩き落とした。
あーあ、と肩を竦めた志乃は、くるりと後ろを振り向いて。
「ソリさん達も良かったら……
あ、さっきまでチョコまみれだったもんな。じゃあお口直しでジュースどう?」
こちらに差し出したのは、甘い果実のジュースを入れたグラス。
「飲むー! ほらほら、ソリも飲むでしょー?」
「え、あ、うん……」
「猟兵からもらえるのを断る理由はないっしょ」
わいわい楽しむ様子を、こちらには微笑ましい笑みを向けて眺めてから。
志乃は、周囲の猟兵達にもジュースをすすめていく。
そんな和気藹々とした雰囲気に、ドーラの怒りが照れを凌駕して。
「下僕達、やっておしまいなさい!」
「はいでやす」
「はいっす!」
ばっ、と黒手袋に覆われた手で志乃を指し示すと、男達が飛び出した。
しかし、志乃へと襲い掛かろうとするその動きはやたら遅く。自慢の力もテクニックも志乃に難なく避けられてしまったから。
「ちょっとお前達、何やってるんだい!」
「いや、コイツすごくすばしっこいんすよ」
「捕まえられないでやす」
自分達が志乃のユーベルコードで行動速度を落とされていることに気付かず、わたわたするそこに、ドーラも傍から見ると遅い動作で怒りのままに蹴りを繰り出し。
「この役立たず!」
「あーれー」
あっさり仲間割れしているそこに、志乃はすっと近づいた。
「人をチョコまみれにしちゃだめだぞ。
あと、部下が上手く動かないからって足蹴にするのもだめ。わかった?」
言いながら、分かったらあげるよ、と言わんばかりに差し出したのはチョコレート。
「だから要らないって言ってるでしょうが!」
反射的にまたそれを叩き落としたドーラは、再び甘いものを楽しんでいない対象となり下僕達と共に行動速度を5分の1にされると。
志乃が放った魔法でやたら高く吹っ飛んで、天井を破り空に瞬く星になった。
大成功
🔵🔵🔵
火土金水・明
「おやコントは、おしまいですか。せめて、熱湯チョコレート風呂のくだりは見たかったのですが。」「ソリさんは、誰が熱湯チョコレート風呂に入ってほしいですか?。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にし、『ドーラ・ワルダー』と下僕らしき大男と小男の三人を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
空へと舞い上がった星が、そのまま悲鳴と一緒に落ちてくる。
吹っ飛ばされたその場所へ律儀にも戻ってきたそれは、地響きともくもくと上がる砂煙と共に小さなクレーターを作り上げ。その中心でひょこんっと上体を起こした。
「あー、もうっ。何なんだい!」
ぺたんとへたり込んだ格好で文句を言う姿は、汚れて煤けてはいたけれども。ザ・悪役といった露出度の高い黒い服には破れ1つなく。血塗れだったりもせず、大きな負傷の様子も見られなかったから。
「おや。コントはおしまいですか」
果実ジュース片手に気軽にクレーターを覗き込んだ火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、にこにことそんな声をかけていた。
確かに、あれだけ吹っ飛ばされておいてほぼ無傷となれば、劇か何かかと思うのも無理からぬところですが。一緒に飛ばされたはずの下僕達の姿がない辺り、それを盾にして防いだとかそんなところなのかもしれません。あとはギャグ補正とか。
とりあえず明は、その不可思議現象を特に抵抗なく受け入れて。
「せめて、熱湯チョコレート風呂のくだりは見たかったのですが」
むしろもう一声、と言わんばかりに、残念そうな声を零す。
そのままくるっと回り、黒色のマントをふわりとさせながら振り向けば。大きな黒色のウィザードハットの下で、黒い瞳ににこにこ笑顔を浮かべたままソリを見る。
「ソリさんは、誰が熱湯チョコレート風呂に入ってほしいですか?」
「え、えぇ!?」
唐突な問いかけに、ソリは素っ頓狂な声を上げていた。
露出度高めな黒い服、というのはドーラと同じだけれども、正統派魔術師を思わせる意匠はどこか爽やかで健康的にその白い柔肌を魅せていて。また、ソリにとっては2度目の邂逅だったから。戸惑いながらも目を反らさず、ソリは画面をぱちくりさせる。
その傍で、ジュースをすすりながら様子を伺っているネコキマイラとヒーローマスクにも、明はふわりと笑いかけてから。
答えを待たずにまた黒マントを翻し、クレーター側へと向き直った。
その間に、クレーターから這い上がった猟書家『ドーラ・ワルダー』は、ぱたぱた汚れを払いながら、何とか態勢を整えて。
「こうなったら奥の手よ! 来なさい巨大びっくりメカ!」
叫んだ声に応じて、どこかお間抜けな印象ながら、右目に眼帯をしてちょっと悪びれた感じも演出した巨大メカが出現した。
淡いピンク色で塗装された、2足歩行だけれどもどこかずんぐりむっくりしたそれは。
「ブタだねー」
「ブタっしょ」
「ブタですね」
「何よ! 何の文句があるっていうのよ!」
ネコキマイラとヒーローマスク、そして明の素直な感想に、ドーラがぷんすかと怒鳴り散らす。
だってねー? と顔を見合わせる少女達に、ドーラはさらに顔を真っ赤にして。しかし何とか再度の怒鳴りを抑えると、頑張って冷静を装い、肩口にかかっていた長い黒髪を手でふぁさっと払った。
「フッ……そんな態度でいられるのも今のうちです。
悪の組織『ワルドーラ』の力、見せてあげましょう!」
ドーラの声に応えるように、両目のライトをぴかっと光らせたでっかいブタメカは。ずんぐりむっくりした胴体の一部をカシャンと開けると、そこからドーラが持っているのとよく似た、だがメカの大きさに合わせて巨大化した黒く長い鞭を取り出して。
無造作にも見える動きで振り回し始めた。
ものすごい音を立てて風を切り、ビシバシと周囲を跳ね回るように攻撃する巨大鞭。
それが叩きつけられた床には大きなヒビが入り。
ぶつかった太い柱にも亀裂が刻まれる。
「オーッホホホホ! さあどんどんやっておしまいなさい!」
その威力に気をよくしてか、ドーラの高笑いが響いた。
そんな中、明は笑顔のままふわりと地を蹴り、ブタメカへと近づいていく。
察したブタメカが集中させた鞭の攻撃を、明は広げたマントを左右に揺らし、素早く避け続けていたけれども。
そんな明の動きの先を読んだかのように、ついに鞭の一撃が直撃して。
「残念」
鞭が残像を打ち払ったのを見た明は、にっこり微笑むと。
黒い長手袋に覆われた右手を、ブタメカへとすっと差し出す。
「我、求めるは、冷たき力」
生み出されたのは、数百本もの氷の矢。
それはブタメカの巨大な身体へ、狙い違わず突き刺さり。
だが巨大ゆえに、動きを鈍らせる程度にしか凍らせられなかった。
けれども明の笑みは変わらず。
「私1人で倒せるとは思っていませんから」
とんっと地を蹴り、後ろへ下がると、その場を不死鳥へと譲った。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、お洗濯の魔法を使っていたら、突然変な部屋に飛ばされてしまいました。
なんで私だけこっち側に転送されているんですか。
ふえ、みなさんと離れた場所にいたからって、確かにそうですけど、ドーラさん達のそばじゃなくてもいいと思います。
いくらお洗濯の魔法でも元々がチョコレートドリンクのワインをワインにすることはできませんよ。
でしたら、お菓子の魔法用に持ってきたクッキーはいかがですか?
ふええ、私をお料理自慢の下僕に任命しないでくださいよ。
ふえ?のどが渇いたから飲み物ですか?
では、このワインをどうぞ。
ふええ、ですから元々がチョコレート・・・。
あ、のどが渇いている時にチョコレートドリンクはきついですよね。
「ふええ、また突然変な部屋に飛ばされてしまいました」
広い部屋の片隅で、ようやく状況を飲み込んだフリル・インレアン(f19557)は、大きな青い帽子の広いつばをぎゅっと引き寄せながら身を縮ませていた。
「しかもなんで私だけこっち側に転送されているんですか」
フリルがいたのは、他の猟兵達やソリ達とは大分離れた場所。
というか、猟書家『ドーラ・ワルダー』が座っていた玉座の傍だった。
ドーラと下僕達のやりとりから、魔法で空に吹っ飛ばされる流れの全てを、玉座の影からそっと見ていたフリルは、ようやく誰も居なくなった玉座におずおずと出てきて。
お星さまから戻ってきたドーラが、巨大なブタメカを召喚する背を見ていると。
こつん、と足に当たったのはワインの瓶。
そっと持ち上げると、中にはどろっとした液体が入っていて。
「いくらお洗濯の魔法でも、元々がチョコレートドリンクのワインをワインにすることはできませんよ……」
チョコレート像にされていたキマイラ達を助けるのに使ったユーベルコードを思い浮かべながら、ですよね? と問いかければ。手にしたアヒルちゃん型のガジェットが、肯定するように、でもどこか呆れた声色で、鳴いた。
その鳴き声に、気付いたように振り返るドーラ。
「ふええ!?」
「何だいお前は」
たった1人で猟書家と対峙している状況に、というよりも、極度の人見知りで身体をびくつかせたフリルに、ドーラは睨むようにして近寄ってくる。
どうしたらいいのかとおろおろするフリルは必至で対応を考えて。
「ふえ、その、あの……くっ、クッキーはいかがですか?」
怯えた赤い瞳を反らしたまま、ずいっと持っていたクッキーを差し出していた。
それは、それを楽しんでいないものの行動速度を低下させるユーベルコード『お菓子の魔法』を使うために用意していた、フリルの手作りクッキー。
既製品にはない、ちょっと不揃いな、でも温かみのあるシンプルなクッキーは、もちろんチョコレートではなかったから。
「献上品とは見上げた心がけです。
いいでしょう。その腕前、わたくしに見せて御覧なさい」
嬉しそうに瞳を輝かせながらも、飛びつきたい衝動を何とか抑えたドーラは、頑張って横柄な態度を維持して差し出されたクッキーに手を伸ばした。
さくっと口に頬張れば、その表情に隠しようのない喜悦が混じって。
「ああ、チョコレートじゃない食べ物……
この甘さ控えめでバター多めな感じがスバラシイ……」
クッキーそのものの素朴で優しい美味しさ以上に感動するドーラを見て、フリルはほっと胸を撫で下ろす。
いや、クッキーを楽しまれちゃったらユーベルコードは使えないのですがね。
その事実に気付かぬまま、とりあえずこの場をしのげたことにフリルは心の底から安堵したけれども。クッキーを咀嚼したドーラは、びしっとフリルを指差して。
「決めました。お前はわたくしの料理自慢の下僕にしてあげましょう」
「ふええ!?」
そんなことを言い出したから、フリルの安心はあっさりと吹っ飛んでいた。
「さあ下僕、わたくしは喉が渇いているのです。飲み物を持ってきなさい」
「はうう……」
怯えながらも言われるがまま、フリルはドーラの命令に従って。
「で、では、このワインをどうぞ」
先ほど拾ったワインの瓶を、ドーラが差し出すグラスへと傾けた。
「……って、チョコレートドリンクじゃないかい!」
「あ、のどが渇いている時にはきついですよね」
「それもそうだけどね! そうじゃないんだよ!」
地団太を踏みながら、怒りのままに鞭を振り回すドーラだけれども。
その鞭は決してフリルに当たることはなかった。
それはドーラがフリルを大切に扱っていたから、というわけではなく。
非戦闘行為に没頭している間の行動が、それを妨げようとする攻撃などから守られる、フリルのユーベルコードが発動していたからで。
「ふええ……ドーラ様、何か別の飲み物を探してきます……」
下僕としての行動に必死になっていたフリルは、呆れたようなガジェットの鳴き声とともに、無事にドーラの元から立ち去っていった。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
ハッピーな時間を守るのも
猟兵の務めだ
ソリ達
危ないから下がっててくれ
応援をろしく頼むぜ(ぐっ
…最初からこう言ってた方が
余計な動きをされなくて済みそうだ
戦闘
ワイルドウィンド奏で
音
即ち空気の振動に獄炎纏わせ
焔の旋律で三人やメカを薙ぎ払い
燃やす
地獄のメロディって奴だ
何度でもアンコールしてくれ
メカに対しては
旋律が炎渦を為し溶かす
チョコみたいに
ソリ達が攻撃されそうな時は
炎壁で庇う
ドーラ
応援ってのは
未来を信じ
未来を願う行為だ
だから俺達が負ける道理はないぜ
あんたは折角の日に
チョコと愛とか贈る相手はいないのかよ
可哀そうに
今、海へ還してやるぜ
事後
鎮魂曲
手作りチョコとか楽しみだな?>ソリ
ハッピーバレンタイン!
巨大な鞭を振るう巨大なブタメカに、木霊・ウタ(f03893)はギターを手に進み出た。
「危ないから下がっててくれ」
肩越しに振り向きながら告げる相手は、ソリとその友人達。
戦う手段を持たない彼らをしっかり庇いながら、ウタは片手をぐっと握って見せて。
「応援をよろしく頼むぜ」
「は、はいっ」
「分かったー。任せてー」
「応援するっしょ。しまくるっしょ」
こくこく頷くソリと、楽しそうなネコキマイラとヒーローマスクに、さらににっと笑って見せてから。ウタはブタメカに向き直り、そっと息を吐いた。
(「最初からこう言ってた方が、余計な動きをされなくて済みそうだ」)
それは先ほどのチョコレート戦で学んだこと。
逃げろと言っても、キマイラフューチャーの住人達は、人気者である猟兵の活躍を見たいがために留まってしまうから。それも、ちゃんと猟兵が守ることができていて、危険を体感できない状況であるなら尚更のこと。
だからウタは観客席を作り。
そこは絶対に守ってみせると、盾となるように立ちはだかる。
(「ハッピーな時間を守るのも猟兵の務めだからな」)
そしてギターを、ワイルドウィンドを奏で始めた。
広がる音、すなわち、空気の振動に地獄の炎を纏わせて炎の旋律と成し。
「嵐のお通りだ。ちょいと荒っぽいぜ?」
まるで不死鳥が翼を広げて羽ばたくように、いななくような音を轟かせて、氷の矢で動きを鈍らされたブタメカへと向かっていく。
しかし、炎の不死鳥は、ブタメカの巨大さの前では鷹程度のサイズ比でしかなく。またどこか愛嬌のある見た目ながらも、その装甲は頑丈そうで。それだけでは牽制程度にしかならないかと思われたが。
ピシッ……と小さな音がウタの耳に届く。
「急激な温度変化って、メカにはよくなさそうですよね」
黒色のマントを翻し、黒色のウィザードハットの下でにこにこ笑うウィザードの明るい声に、さらにピシピシッと音が連続して、そして大きくなって聞こえてきて。
察したウタが再びワイルドウィンドを奏で、もう一度不死鳥を向かわせると。
音の速さで突撃した炎の勢いに、でっかいメカブタに大きな亀裂が走った。
「おおー。すっごーい」
「音楽がまたカッコいいっしょ」
盛り上がる少女達の横で、ソリも見惚れるようにウタを見ていたから。
「地獄のメロディってやつだ。何度でもアンコールしてくれ」
「やったー。アンコールー」
「アンコールっしょ」
「が、がんばれっ」
声をかければさらに少女達は盛り上がり、そしてソリもおろおろしながらも頑張って応援の声を上げてくれる。
その声援を力に変えながら、ウタはワイルドウィンドを爪弾いて。
「応援ってのは、未来を信じ、未来を願う行為だ」
巨大メカブタの向こうにいる猟書家『ドーラ・ワルダー』へと語りかけた。
同時に、炎の旋律の音色を変え、炎の渦でメカブタを包み込み。
「だから俺達が負ける道理はないぜ」
亀裂から、外部装甲に比べれば脆い内部へと炎を侵入させると。
チョコレートのように中からメカブタを溶かし、そして燃やし尽くしていく。
崩れ落ち、消えていくピンク色のブタを見下ろしていたウタは。
ふと、思い出して振り返った。
「そういえば、ソリ。
手作りチョコとか楽しみだな?」
「……え?」
にっと笑って言うウタに、きょとんとした顔を見せるソリ。
分かっていなさそうなその様子に、それはそれで楽しそうだとウタは笑みを深め。
再び、巨大メカブタが消えたその向こうへと向き直る。
「ドーラ。あんたは折角の日にチョコと愛とか贈る相手はいないのかよ」
「チョコレートはもう充分だよ!」
半ばトラウマになっていそうなその単語にだけ反応して、むやみやたらに鞭を振り回すドーラに、ウタはやれやれと肩を竦めると。
「可哀そうに」
炎の旋律が生み出す不死鳥の如き火矢が、三度、空を裂いて飛んだ。
「今、海へ還してやるぜ」
大成功
🔵🔵🔵
ニコリネ・ユーリカ
んンッ、この展開TVで観た事ある
追い込まれて猶も抗う悪役の切札「メカだのみ」!
ヤッター、今回のメカも浪漫があって格好良いわねぇ
なぁんてウットリしてちゃダメ
バレンタイン商戦にお花を喰い込ませに来たんだもの
悪玉がメカに乗り込む瞬間か発進直前に【ProSEEDs】!
相棒Floral Fallalの荷台を展開してお花の馨を広げちゃう
さぁ美人のお姉さん(歳いってそうだけど言わない)
お付きのダンディーな殿方も見てってくださいな
本日のオススメは恋色に染まったシレネ
花姿も可憐でしょ?
花言葉は「誘惑」そして「落とし穴」
悪玉達が財布を探した隙にシャッター棒でお尻をべちん!
バレンタインをひっかき回す悪玉にお仕置きよ
「んンッ、この展開TVで観た事ある!
追い込まれて猶も抗う悪役の切札『メカだのみ』!」
出現した巨大ブタメカを見て、紫の瞳をキラッキラに輝かせたのは、ニコリネ・ユーリカ(f02123)。手にした果実ジュースを零さんばかりにぶんぶんと振り回し、その場でそわそわと興奮気味に落ち着かない。
「ヤッター! 今回のメカも浪漫があって格好良いわねぇ」
「ブタだけどねー」
「ブタでもやっぱり、メカはロマンっしょ」
「そっかー。確かにそうだよー。メカだもんねー」
「しかも巨大はさらにロマンっしょ」
こちらもずずっとジュースを啜りながら、納得顔でうんうん頷いているネコキマイラとヒーローマスク。
その横で、テレビウムのソリがどこかぽかんとしてますが。
「そうよね? そうなのよ!」
賛同してもらえたことに喜んだニコリネは、2人の手を順に握ってぶんぶんして。ついでに流れでソリの手もぶんぶんして。
ようやく、はっと思い出したかのように我に返った。
「そうだわ。ウットリしてちゃダメ。
私はバレンタイン商戦にお花を喰い込ませに来たんだもの」
あれっ? 猟書家退治に来たのでは……?
と疑問に思わせる間もなく、ちゃんと一緒に転送されてきていた移動販売車『Floral Fallal』に乗り込んだニコリネは、巨大ブタメカが倒されたそこへ走り込み。
「あちちち……お前達、何とかおしよ!」
「そんなこと言ってもアチッっすね。こっちもアチッ燃えてアチッっすよ」
「呼ばれた途端に火が飛んでくるんでやすから」
炎の旋律によって、腕に脚にお尻にと小火を出してる3人組の前で、キキィッと小気味よいブレーキ音を立てて止まった。
あ、お星さまになった時に消えていた下僕2人ですが、いつの間にやらまた猟書家『ドーラ・ワルダー』に召喚されたようです。
走って飛んで転げ回って、何とか火を消し、どこか煤けた3人は。目の前で、ぱたんぱたんと荷台を展開し、車からお店へと変わっていく移動販売車を、まじまじと目を奪われたかのように見つめ。
そして、準備を終えて振り返り、営業スマイルを浮かべたニコリネを、見た。
「さぁ美人のお姉さん。お付きのダンディーな殿方も、見てってくださいな」
(「お姉さんっていうより歳いってそうだけど、言わない言わない」)
本音を隠した美しい声の呼び込みに、ふらりとドーラ達は惹きつけられ。
「あ、あらぁ。もちろん、わたくしは言われるまでもなく美人だけれども」
「え、ダンディーっすか? ダンディーっすか!」
「殿方とか言われたのは初めてでやすね」
あっさり煽てられて近寄ってきたその前に、香りと共に数多の花が広がる。
可憐なガーベラに、豪華なバラ、ドレスのようなスイートピーやカラー。優雅なアルストロメリアの傍らで、そっと香りを添えるフリージア。
バレンタインらしく、ピンクや赤といった暖色を中心に揃えられた切り花も美しいけれども、荷台には緑の葉が瑞々しい鉢植えも多々あって。
花弁を重ねたミニバラにラナンキュラス、背丈低めで可愛いカーネーション。キュートなチューリップに、まあるいお花が並ぶビオラやプリムラ。濃淡の美しいサイネリア、小さくも輝くセントポーリア。
レトロな小屋のようなシンプルで白い車体に映える色とりどりの花々に、ドーラ達から感嘆の声が零れ出る。
「本日のオススメは恋色に染まったシレネ。花姿も可憐でしょ?」
そこにニコリネがひょいと取り上げたのは、1つの花鉢。
桜に似たピンク色の可愛らしい小さな花が幾つも咲いたその姿は確かに可愛らしい。
「確かに可憐でやす」
「可愛いっす。買いたいっす」
「恋の季節にぴったりじゃないかい。お前達、財布をお出し!」
「へい!」
3人はニコリネの営業トークの虜となり、揺さぶられた感情は購買欲へと結びついて。
慌てて財布を探し出したそこに。
「花言葉は『誘惑』……そして『落とし穴』」
にっこり告げたニコリネは、移動販売車備え付けのシャッター棒をぐるんと回し。
べちべちべちん! と小気味よくそのお尻をひっぱたいた。
「バレンタインをひっかき回す悪玉にお仕置きよ」
大成功
🔵🔵🔵
テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可
う…うーん…この猟書家…意外と悪い人ではないかも…?
い…いや!猟書家ですからそうやって油断させて一網打尽にするつもりかもしれません!(盛大な勘違い
バレンタインチョコレートフェスらしく【あま~いちょこれーとらびりんす】を発動!
自分も巻き込まれてしまいますが、敵を倒せるならへっちゃらなのですよっ!
あ、もちろん猟兵さん達やキマイラさん達はお外に避難させておかなければ…(いつの間にか侵入しても可
「あ痛ぁ!」
「イタッっす」
「痛いでやす」
花に見惚れたその隙に、お尻をリズム良く叩かれた猟書家『ドーラ・ワルダー』と下僕の小男と大男。
それをまじまじと見ていたテフラ・カルデラ(f03212)は。
「う、うーん……この猟書家、意外と悪い人ではないかも……?」
煤けたままお尻をさする間抜けな姿に思わずそんな感想を抱いていた。
髪色と同じ乳白色のウサギ耳を困ったように項垂れて、赤い瞳に迷いの色を見せていたけれども。ハッと気づいたように、ぶんぶん首を左右に振って。
「い、いや! 猟書家ですから!
そうやって油断させて一網打尽にするつもりかもしれません!」
自身に言い聞かせるように口にして、そうはさせないと気合いを入れる。
「そーかなー?」
「盛大な勘違いっしょ」
「僕もそう思う……」
観客席のそんな声は聞こえぬまま。
テフラはぐっと胸元で両手を握り、ドーラ達の前へ進み出ると。
「バレンタインチョコレートフェスらしくいきますね」
先ほどのチョコスイーツ・アリスを思い出しながら、ユーベルコードを発動させ、辺り一面にドロドロのチョコを広げた。
「あま~いちょこれーとらびりんすです。
チョコスライムに襲われないようにしてくださいっ!
固められたら……ごめんなさいね?」
あっという間に戦場を覆った入り組んだ茶色の壁や床は、もちろんチョコレート製。
迷い込めば、チョコ沼などに取り込まれてしまったり、どこかにチョコスライムが彷徨っているものの。あくまでこれは迷路でしかなく。
そこに在るだけで攻撃力はない。だけれども。
「あーもうっ。またチョコチョコチョコチョコチョコレートっ!」
「ドーラ様、落ち着くっす」
「でもさすがにゲンナリしやすね」
ドーラ達には精神的ダメージが与えられているかのようでした。
その様子を見てから、テフラはちらりと肩越しに振り返って。
(「キマイラさん達はちゃんと迷路の外に出せてますね」)
不要に巻き込んでいないことを確認し、ほっと胸を撫で下ろす。
あとは自分が迷路を抜けて、ドーラ達をチョコレートラビリンスに取り残せば……と思い、1つしかない出口へと向かうと。
「あ、後ろ……」
迷路の外に出る最後の直線に出たところで、誰かのそんな声が聞こえる。
「え?」
首を傾げて振り返ったテフラの前にあったのは。
「ひゃっ!? チョコスライムがドロドロに……あっ……」
襲い掛からんと飛び上がったチョコレートの塊。
ドロドロしたチョコスライムが、大きく広がってテフラに覆いかぶさると。
そこには、怯えたように身を縮ませ、でもどこかうっとりしたように両手を両頬に当てた姿の、テフラのチョコレート像が出来上がっていた。
大成功
🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
ソリ、コート、リディ、元に戻ったね、よかった
そしてここはチョコだらけの魅惑のお城…(ごくり)
こんな素敵空間だけど、ドーラ様はお気に召さないみたいね、まつり…
…まつりん?どこ見てるの?
何やらドーラ様のふわふわに視線がいってる感
……まつりん、もしや踏まれたい?(ジト目)
(こほん)
ん、倒す
【うさみみメイドさんΩ】
んむ、うさみみメイドさんズはテク自慢へGO
貴女達のテク(主に目潰し)で下僕を圧倒してきて
わたしは、力自慢…ふ、負けない(怪力80)
ん、下僕を抑える。まつりん、ドーラ様よろしく
終われば楽しいチョコ選び
ふふ、ソリ、チョコ貰えそう?
コートはソリにもあげるの?
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。
げぼく……なんかドキドキするね?(馬鹿者)
はっ、ソリと母ちゃんぽい子とトメさん(自分の作ったTRPGキャラ)似の子が見てる!
えーと、おいらは怪人じゃないぞ。かかってこいー!(胸張り)
わわ、鞭使いだ!(野生の勘で避ける)
姉ちゃん、強いね。たゆんたゆんするね♪
あらよっと。いい眺めー♪(踏み付けをころころ転がって避ける)
あ。アンちゃんもうさみん☆も、見かけによらないからね?
気を付けて……あー。
さあ、おいらも本気出していくよー!
れっつ・だんしん!(ぱちん☆)
ヒマワリと一緒に踊りながら。
あー、見るならおいらを見ろー!(対抗して超踊る)
……ゴメンね、骸の海に戻ってね!(正拳)
チョコレートの迷路が崩れ、ウサギキマイラのチョコレート像が立つ中で。
「何で床がチョコレートまみれなままなんだい!」
「ドーラ様、落ち着くっす」
「掃除が大変でやすね」
半狂乱になっている猟書家『ドーラ・ワルダー』と、その下僕2人。
そんな様子をじっと見た木元・杏(f16565)は。
「ここはチョコだらけの魅惑のお城……」
ごくりとつばを飲み込んで、キラキラと金色の瞳を輝かせていました。
チョコスイーツ・アリスのチョコレートをたくさん食べて、じゃなかった、味見していた杏ですが、まだまだその甘い美味しさは魅力的な様子。
しかし、皆が皆そうだというわけではなく。
「下僕ども、さっさと綺麗におし!」
「2人じゃ無理っすよ」
「もうチョコレートはうんざりなのよ!」
「同感でやすけどね」
「ドーラ様はお気に召さないみたい。ね、まつりん……」
こんな素敵空間なのに、と怒るドーラ達に首を傾げながら振り向くと。
「げぼく……なんかドキドキするね?」
「まつりん?」
木元・祭莉(f16554)が、杏とは違うところに喜んでいました。
杏の金瞳がすっと据わり、戸惑うソリの横で、ネコキマイラとヒーローマスクがそっと距離を取るように数歩後ろに下がっていく。
はっとして、ようやくそんな周囲に気付いた祭莉は。双子の妹と、テレビウムの友と、そして自身の母のように元気で陽気な女の子と、今夢中になっているゲームで操るキャラクター・トメさんを思わせる少女へと振り返り。
集まる視線に、きょとんと首を傾げる。
「ええい、だったら下僕怪人を増やそうじゃないか!」
そこに、痺れを切らしたかのように突然、ドーラが鞭を振り上げ叫んだ。
すぐに視線を戻した祭莉は、また嬉しそうにぱあっと表情を輝かせて。
「えーと、おいらは怪人じゃないぞ。かかってこいー!」
どーんと胸を張って、弾む足取りでドーラに挑みかかる。
「わたくしにひれ伏しなさい!」
振り回される黒い鞭は、迫る祭莉を重点的に狙ってくるけれども。
狼のような素早さと、野生の勘で何とか避けて。
「姉ちゃん、強いね。たゆんたゆんするね♪」
「……まつりん? どこ見てるの?」
嬉しそうに言った祭莉に、また、杏のジト目が向いた。
「……まつりん、もしや踏まれたい?」
「そんなことないよー。ほら」
訝しむ妹に、にぱっと笑いかけながら。
鞭の攻撃の最中に、祭莉を狙って踏み出された黒いハイヒールブーツの一撃に、踏まれることなくころころと転がって避けていく。
「あらよっと。いい眺めー♪」
そしてまた、にぱっと笑う祭莉に。
杏は、こほん、と咳払いを1つ見せて。
「ん、倒す」
据わった金瞳でドーラを見やった。
「うさみみメイドさん、いってらっしゃい」
そして、傍らで主と同じように呆れた雰囲気を漂わせていたうさ耳付きメイドさん人形をユーベルコードで大量に複製すると。
一斉にドーラへと向かわせる。
「そうはさせないっすよ」
しかしそこに立ちふさがるのは、下僕その1の小男。
「自慢のテクニックで返り討ちっす」
「テクニックなら、うさみみメイドさんも負けない」
小柄な身体を生かして、スピードと技を見せつけてくる小男だったけれども。
何体かを落とされつつも、うさみみメイドさん達は着実に相手に迫り。
可愛い見た目に似合わぬ肉弾戦を繰り広げると。
その小さな手を突き出した。
「目潰しイタッっす」
「ん、テクニック」
顔を押さえて蹲る小男。
その横を、満足気に頷いて、走り抜けた杏の前に。
「それなら、自慢の力で返り討ちでやす」
今度は大柄な、下僕その2の大男が立ちはだかった。
肉襦袢を着たかのようなその体格は、ちまっとした杏と比べると、まるで大きな山のようだけれども。
「ふ、負けない」
杏は真っ向から力対決を挑む。
その対応に少し驚いた大男は、その可愛らしい小さな繊手が自身と拮抗する力を生み出すことにさらなる驚きを浮かべて。
「あ。アンちゃんもうさみん☆も、見かけによらないからね?」
鞭をくるりと避けながら、気を付けてねー、と祭莉がにぱっと笑いかけた。
そんな祭莉の、ドーラ相手で楽しそうな様子に、杏はジト目を見せて。
どこか八つ当たりするように、大男を圧倒していく。
そうして下僕達を押さえてくれている妹達に、うん、と頷いた祭莉は。
「さあ、おいらも本気出していくよー!」
一瞬にして、ひまわり着ぐるみに着替えると。
「れっつ・だんしん!」
ぱちん☆と鳴らした指の音に応えるように、その周囲にひまわりを咲かせた。
それはもちろん普通のひまわりではなく。
きぐるみまつりんと動きを揃えるように、花を葉を茎を揺らして踊り出す。
ふわりと花咲くコミカル時空。
「何だいこれは……」
その綺麗な花に、そして何よりリズミカルな動きに、ドーラは見惚れてしまい。
「あー、見るならおいらを見ろー!」
ひまわりにばかり向いているその視線を奪うように、不思議可愛く踊るひまわりに対抗するかのように、祭莉もすっごく踊っていく。
そんなひまわりダンスは、ドーラを、そして下僕達の意識も惹きつけたから。
「まつりん」
「うん、まっかせてー」
その隙を逃さず、祭莉は一気にドーラに接近し。
「ゴメンね、骸の海に戻ってね!」
鋭く重い正拳を打ち込んだ。
「あーれーぇ」
「ドーラ様ぁ!」
殴られた勢いそのままに吹っ飛んだドーラは。
追いかけるように、杏とうさみみメイド人形に吹っ飛ばされた下僕達と一緒になって転がっていって。
「おっ、覚えてなさいよっ!」
悪役のお約束な捨て台詞を残して、わちゃわちゃしたまま姿を消した。
いぇい! とポーズを取るひまわり着ぐるみに、こくんと頷く杏。
「やったー」
「倒したっしょ。勝利っしょ」
大喜びで盛り上がる少女達の声に、辺りに安堵の雰囲気が漂い。
そしてまた周囲の景色がぐにゃりと動くと。
皆はチョコレートフェス会場へと戻っていた。
「はあ。またとっても素敵な……大変なことになってました」
ウサギキマイラのチョコレート像もまた元に戻り。
さほどの損害もなく、オブリビオンが消えて騒ぎも収まった会場は、改めて、楽しい時間をまた紡ぎ始めていく。
そんな変化を、戻ってきた平穏を、ソリはぱちくりと見回して。
「ふふ。ソリ、チョコ貰えそう?」
そんなソリに、杏がふわりと笑いかける。
「え……」
問われてソリは、騒動の前の会話を思い出していた。
『えー? ソリの分は買わないよー』
『買うわけないっしょ』
(「そうだ……僕に、チョコなんて……」)
また気分を落ち込ませて。
でも、こうして一緒にいてくれるだけで幸せなんだから、とまた自分に言い聞かせて。
やっぱりちょっとがっかりして。
ふっと俯いたその様子に、杏は不思議そうに首を傾げた。
そして、すぐ傍にいるネコキマイラに問いかける。
「コートはソリにもあげるの?」
「もちろんー」
「リディも?」
「あたりまえっしょ」
「……え?」
返ってきた言葉に、ソリは驚いて顔を上げる。
「ソリの分はー、リディと一緒に作るんだよねー」
「だからここでは買わないっしょ」
続く言葉に目を丸くしながら、そういえば、と思い出す。
『そういえば、ソリ。
手作りチョコとか楽しみだな?』
黒髪の少年にかけられた、そんな言葉を。
(「じゃあ、僕は……」)
「チョコ、もらえる……の?」
「楽しみにしててねー」
「がんばるっしょ」
にこにこ楽しそうな少女達に、ソリの表情もゆっくり綻んで。
「よかったね、ソリ」
ふわりと微笑んだ杏も、嬉しそうにそう声をかけた。
「あれ? でも、ライオン君……えっと、デインだっけ?
そっちには手作りチョコあげないの?」
その最中、ふと、祭莉が首を傾げると。
「デインには買うよー。
去年は作ったんだけどー。もう手作りは勘弁してくれって言われたんだー」
「今年はソリにあげてくれって言ってたっしょ」
にこやかに、不穏な空気を作り出し始める2人。
「生肉好きかなってチョコに入れたんだけどねー」
「そういえば、バレンタインからしばらく会えなかったっしょ」
「そうそうー。すごくげっそりしちゃってたよねー。何でだろー?」
「え……」
心底不思議そうに首を傾げながら続く会話に、ソリの画面が青くなって。
「……よかったね、ソリ」
「がんばれー」
杏がそっと目を反らし、祭莉がにぱっと笑いながら。
友人の楽しいバレンタインの無事を、祈っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵