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魔獣前線に終止符を

#ダークセイヴァー #人類砦 #闇の救済者

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「ぐ、くう……ッ」
 呻き声が上がる。半壊した砦の中で、なけなしの装備で武装した男達が、全身の傷を処置している。
「まだ、動けるか?」
「ああ……あいつら俺らをいたぶってやがるんだ」
 この砦の後ろには男達の故郷がある。
 密やかに貧窮に喘ぎながらも平穏を保っていた山間の集落は、突如、魔獣達に襲われた。
 どうにか朽ちていた砦で、敵を追い返す事が出来たのは良かったが、数日おき、ある程度回復が出来た頃合いを見計らったように、次の襲撃がやってくる。
「……ッ、くそ、また来たぞ!!」
 時折、集落には行商がやって来ていた。その行商の誰かがここの事を漏らしたんじゃないのか。
 そんな疑いに目を逸らす事も、すぐに出来なくなっていた。
 思い付く限りの罵声を飛ばして槍を握る。統率された魔獣は、今回も適当に損害を出して、帰っていくのだろう。
 背後の集落諸ともに疲弊させ、この魔獣を操っている何者かの要求を飲ませる為か、もしくはただ、弄んでいるのか。
 そうと分かっていても、彼らはその掌で踊るしか出来はしないのだ。

 ◇◇◇

「いやあ! 私は感激しましてね! 反逆の興奮、そして活力に満ちた奴隷達の……ごほん元・奴隷達の躍動!」
 営業スマイル百パーセントで、奴隷商人……もとい元・奴隷商人が手を叩く。
「改心したのですよぉ! 私はぁ!」
 先日、奴隷の闘技場をメチャクチャにした際に、人間を裏切っていた彼は生き延びる為に今度は吸血鬼を裏切った。
 と言うことで絶賛、味方アピール中ではあったのだが、持っている情報は流石なもので。
「今、強力な魔獣に教われている集落があるのですよね、どうです? 助け出して、ね? 拠点にでも……」
 という商人の頭に天秤が揺れて見えた。
 この突然現れた猟兵とかいう救世主に乗っかるか。それとも現時点で世界を支配する彼らがオブリビオンと呼ぶ勢力に媚を売るか。
「さあ! オブリビオンの魔の手から救い出しましょう!」

 ◇◇◇

「と、状況は告げた通りだ。愚弄する闇に包まれた絶望の行く先を鴉が指し示した」
 コクヨウ・ダークネスシャドウ(人狼の化身忍者・f29880)が作戦を説明する。
「遅い来るは、魔狼の群れ、それを統率する魔獅子、それを退けたとして、最後は魔牛の群れが詰めてくる。だがそれは、絶望を照らす福音ともなろう」
 最後の魔牛は、肉は栄養が豊富で味もよく。皮は丈夫で保温性もよく、骨は硬く研げば様々な道具に転用でき、内蔵は薬になる。という代物だそうだ。
 解放された奴隷と共に、砦の兵士に助力して、砦と集落を救う。
 それが今回の目的だ。
 コクヨウはそうして話を終えた。


熱血漢
 第一章で魔狼の群れと、兵士や元奴隷達と戦います。

 第二章で、数を減らすと魔獅子が現れるので、魔狼の対処は彼らに任せて猟兵は親玉の魔獅子『マンティコア』を討伐します。

 第三章では、魔牛の群れが現れるので、収穫しましょう。
 収穫の氷室で保管できるので、食べきれない数でも大丈夫です。

『暗き簒奪家に聖夜の贈り物を』からの設定引き継ぎがありますが、奴隷が殺しあう闘技場を滅茶苦茶にぶっ壊してきた後日、というだけなので、あまり気にしなくてもOKです。

 では宜しくお願いします!
 
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第1章 集団戦 『暗闇の獣』

POW   :    魔獣の一撃
単純で重い【血塗られた爪】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    暗闇の咆哮
【血に餓えた叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    見えざる狩猟者
自身と自身の装備、【自身と接触している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:アノン
狼と獅子は喰わねェのか……オレは喰うけど。
UDCを纏って黒い狼の姿になる
咆哮の衝撃は液体金属で音を防げば多少は凌げる。貫通してきても激痛耐性で耐えるぜ。精神的な恐怖はこっちからも殺気を放って相殺
「その程度で怯むかよ」
速度と勘で攻撃を避けながら近づき、喉元や腹に喰らいついてやる

人格:ロキ
20cmほどの妖精人形に意識を移します。
「医療の心得がありますので救助の必要な方はお申し付けください」
傷ついた兵士がいたら医術で応急手当てします。救助が不要そうであればバリケードの製作を手伝いましょう。狭い所まで入れますし、UDCの液体金属でできた羽を変形させて運搬や切断も可能です



「それでは、そちらはお任せしますよ」
「……好きにしろ」
 瞼を閉じた少年が、静かに、それでいてどこか獰猛さを思わせる声色を喉から吐き出した。
 言い残して去っていく20cm程の妖精人形を目で追うこともなく、目を開かずとも感じる獣の足音で大体の数を把握する。
「狼と獅子は喰わねェのか……」
 成人の時を近くに感じるだろう年齢だが
未だに幼さの残るすらりと長い手足。服の裾から細い腰を撫でつけるように溢れ出た黒の中の七色の色彩を孕む液体金属が、彼の体を多い尽くしていく。
 そして、黒が作り上げるのは遅い来る魔獣とも違う黒い狼。
 水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)。その人格はアノン。操作された遺伝子に結びつき発生した、異常の体に生まれた異常。
「オレは、喰うけど」
 生き物は全て、食い物だ。本能、ではなく理性がそう叫ぶアノンは、その紫の目を開き。
 山間の平野を駆けた。遅い来る魔狼へと風となり迫り行く。
「グォッォオアアアアアアッ!!!!」
 彼に気づいた魔狼が、地面を震わせ砕くような咆哮を放つ。周囲全てを破壊し、精神ごと打ち砕くようなそれに。
「その程度で怯むかよ」
 毛並みが波打つ。液体金属が衝撃を吸収し、漲る殺意で恐怖は忘れる。
 であれば、首を空へ向けて叫ぶ魔狼は、ただここへ噛みついてくれ、と言わんばかりで。
 液体金属の狼があぎとを開く。その内の怜悧の口に液体金属の牙が光り、喉笛を容赦なく切り裂いた。

 ◇◇◇

 咆哮が聞こえた。
「――ッ」
「大丈夫ですよ、アレが勝手に喰らってくれますから」
 そう砦の中でも、恐慌へと至りそうになる傷病者を宥めるのは、冒頭で「好きにしろ」と言われた人形だった。
 怜悧の人格のひとつであるはずのロキは、意識を人形へと移し、単独で行動しているのだ。
 液体金属の羽を変化させて、小さな体で人体の応急処置を行う。
「壊れた砦にバリケードでも張りたい所ですが、優先はやはりあなた方でしょうね」
 薬が足りていない。衛生に気を回せない状況では、感染症が蔓延するのも時間の問題だったろう。澄んだ川が近くにあるのは幸いだった。
 なければ全員とっくに死んでいる。
「不幸中の幸いというべきか、ともかく、休む暇は無さそうですね」
 処置を終え振り返る。横たわる負傷兵、重傷者が重傷者を看護する悪環境で、みなひどく疲弊した顔をしている。
「さて、次ですね」
 ロキは液体金属を揺らし、自分へそう告げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
「年始早々結構な事で…
はは!余程人類を怖がって…
団結を阻みてぇと見える!」

挑発しながら現れ
「よく生き残った!こっからは俺らの仕事だ!」

声をかけ安心させよう
…何回か剣(皆)と爪打ち合っていたが埒が空かねぇ
相手もそう思ったのか姿が消えやがった
「…っ!見えるようにする!…正気でいようとは思うなよ!」
UC発動。民間人含み…ダメージ負ってる全ての回復、一部消える事からの敵の炙り出しに使うぜ
正気なんざ簡単に投げ捨てるさ
…もっとも最初から取り繕ってるだけでねぇのかもしれんが


アドリブ歓迎



「年始早々結構な事で」
 狼達の前に現れた男は、三日月を思わせる笑みでそう嘆息する。
「はは!余程人類を怖がって、団結を阻みてぇと見える!」
 尾守・夜野(墓守・f05352)は侮りをそのままに口に出す。あからさまな挑発、だが、辛うじて人語を解した魔狼の意識を引くには十分だった。
 一斉に魔狼が夜野に駆け出した。
「よく生き残った! こっからは俺らの仕事だ!」
 周囲の民間兵に告げて、迎え撃つように彼は魔狼へと肉薄していく。
 刃と爪が走る。
 互いに弾き、反らし、避けては、返す。数の暴力で襲いかかる狼に、しかし、圧倒的数的劣勢である夜野を押しきれずにいる。
 拮抗。
「……埒があかねえ」
 おもわず溢す。その瞬間、魔狼達も同様の判断をしたのだろう。その姿が忽然と消え失せた。
「なっ、……いや」
 僅かに耳を擽った風切り音に頭を逸らせば、頬が裂け、すぐそばを何か大質量が空気を押し潰す風が駆けた。
(見えない……なら、見えるようにする!
 即座に行動。無駄と知りながらも、巻き込む民間人へと声を上げた。
「【死散血餓】……悪いとは思うが」
 頬から流れる血を拭う。その滴が内から沸騰するように泡となってぷつんと弾けたその瞬間。
「正気でいようとは思うなよ!」
 地獄が幕を開けた。
 いや、もとよりそこは地獄だったか。
 空から血の雨が降り注いだのだ。生命力の雫であるそれらは傷を癒していく。
 だが、それだけではない。その血を浴びた民間兵は、数秒でその正気を失い、暴れ、理を犯して、己の腹へと刃を突き立てる。
 自死と渇欲、狂気に呑まれた誰かの顔は血の雨に阻まれて見えない。敵味方関係なく殺し合い貪り合い、生命力の雨に肉体だけが滾り続ける地獄に、正気を保つのはただ一人。
 始めから正気など取り繕うだけの狂人が一人。
 夜野が血の雨を突き破る。
 魔狼の姿は依然見えていない。だが、見えている。血の雨が忽然と消え、体から離れた瞬間に滴となる空白。
 血に歓喜を叫ぶ刃が、呪詛に満ちる。波紋に跳ねる雨粒に写る憎悪の色は幾人もの叫びを代弁し――空白へ。
 消えた魔狼の体内へ滑り込む。直後消え去った刀を、残る手の感触だけで握りしめ。
「ゴォァアアアッ!」
 鮮血と内蔵が吹き散った。透明化の消えた狼が、毛皮の中身をばらまきながら崩れ落ちる。
「はっ、いい様だ」
 死に際に放たれた爪に胸が裂かれる。それすら血の雨が癒す中で呟き、夜野は次の獲物を探しだしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW ◎☆

「ほうほう、獣たちが突っ込んできマスカ。ドントウォーリー! ワタシは援軍デース!」
流石に犬と猫を料理にするのは人を選びマスガ、ラストの牛はおいしいと聞いて駆けつけマシタ。
肉食魔物たちに横取りはさせマセーン!

「カモン! バルタンズ!」『バルルー!』
UC《秘密のバルタンズ》でミニ・バルタンを呼び出してお駄賃を支払い、魔狼共の相手をしてもらいマース!
動作の大きいケダモノなら、小さい彼女たちで対処可能! 数の暴力には数の暴力デース!
バルタンズが前線構築している間に、ワタシはバックで【救助活動】しマース。
もし突破してやってくるようなら【カウンター】を決めて、兵士の皆さんには近づけマセーン!



「ほうほう、獣たちが突っ込んできマスカ」
 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、わらわらと突撃してくる狼の群れを眺める。
「あ、あんた……ッ」
 流石にアレを料理し始めたら、逆に士気が下がってしまうかな、などと考える彼女に、兵士が恐る恐るというように声をかけてきた。
「ドントウォーリー! ワタシは援軍デース!」
「え、いや、ここは危ないって――援軍?」
「イエース、ということで、カモン! バルタンズ!」
 バルタンは彼の反応を待つこともなく、手を空へと掲げた。その手に握られていたのは幾らかの硬貨。それがバラバラと宙を舞い。
「バルルーっ!!」
 何処からともなく降ってきた小さなバルタン達がそれを空中キャッチして、周囲に折り重なる。最も硬貨を集めたものを頂上に、マスゲームのようにピラミッドを造り、バルタン本人と共に兵士へとサムずアップ。
「数の暴力には数の暴力デース!」
「バルルルー!!」
 だだっとピラミッドを崩して一斉に駆け出していくミニバルタン達。
 押し寄せる狼の懐へと潜り込み、それぞれに装着した武器で翻弄していく。狼の攻撃は素早いとはいえ、小さなミニバルタン達を的確に狙える緻密さはない。速度と威力で圧倒する魔狼には相性が悪い。
 咆哮で吹き散らそうにも、退避も早ければ人員補充も早い。
 瞬く間にミニバルタンの足止めによるミニバルタン戦線が発生していく。
「でハー? ちゃんと動けるようにも少し治療……」
「バルー!!」
「グォオオオオ!!」
 その瞬間、ミニバルタン戦線をすり抜けた魔狼がバルタンの背中に食らいつこうとして。
「あぶッ」
「ゴオ、ッ、ガア!!」
 顎を吹き飛ばすような鋭いアッパー(パイルバンカー)によって、まさしく顎を吹き飛ばされて地面へと沈みこんだ。
「ねえ……?」
 思わず声をだした兵士は、その光景に絶句する。
「治療をしマスネー!」
 豪快にパイルバンカーの杭を再収納して、また打ち出せるようにしながらバルタンの発した言葉に「それで治療とは」と戦慄する兵士に、彼女はきづかないのだった。

 ◇◇◇

 ちゃんと普通の治療、できました。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…奴隷商人、人を食い物にしてきた輩が改心…ね

…経緯を知らない以上、今この場でどうこうする気は無いけれど…

少しばかり、釘を刺しておいた方が良さそうね

空中戦を行う"血の翼"を広げ敵の攻撃が届かない上空に飛翔して、
吸血鬼化した自身の生命力を吸収してUCを二重発動(2回攻撃)

…来たれ。この世界を覆う大いなる力よ
世界を蝕む過去を打ち砕く黒き星を此処に…!

両掌に"闇の重力"球を形成して怪力任せに手を合わせ圧縮
限界突破した重力属性攻撃の魔力を溜めた"闇の流星"を放ち、
超重力のオーラで防御ごと敵陣を圧潰してなぎ払う

…その両の眼を見開いてよく見ておきなさい
これが次に私達を…人類を裏切った時のお前の姿よ



「……」

「……」

「……」

「……、……あの?」

 商人は、2度見からの更に2度見で計4度見の末に、堪えきれずにそう問いかけた。
 というのも、目の前のダンピールの女性、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が、他の猟兵と違い、すぐさま戦場には向かわなかったのだ。
 というより。
「……私、監視されてます?」
「いいえ、頃合いを見計らっているだけ」
 砦から少し離れた安全地帯、そこからの景色にそう告げるリーヴァルディは、ふむと一つ狼の集まり具合に頷いた。
 そろそろいいかしら、と。
 その言葉に商人はようやく彼女の視線から離れられると嘆息しかけた、まさにその時。
「それじゃあ、行くわね」
「はい、どうぞどう……アレ、なんで私の襟首を持つんです? え、なんでそのまま翼を広げてらっしゃ……ぇ、浮い――とぉあああああ!?」
 空へと駆け昇る未知の恐怖に叫ぶ声が砦中へと響き渡っていた。

 ◇◇◇

「裏切った方が得だと思ったら裏切る、そうよね?」
「い、ぃぃいやあ……まさか、そ、そそんなことは……」
 砦よりも高い高度。腕一本とリーヴァルディの機嫌が命綱である状況で、へこへことひきつりながらも笑う商人へと、彼女はむしろ分かりやすくていいかもしれないのか、と呆れと共に視線を彼から地上へと移す。
「そ、それでぇ……そのぉ……私は、何を……?」
「見てなさい」
 砦の屋上へと商人を転がして、それだけを告げる。
 そして彼女は更に高度を上げて、魔狼の爪も咆哮も届かぬ上空で留まっては、その両手それぞれにユーベルコードを発動させる。
 渦巻く黒、暗黒。光の無い闇が膨大な重力子と混ざり合い、無の有を造り出す。
 言葉は少なく。短い。
「――消えなさい」
 ともすれば、それを扱う両腕を引きちぎる程の威力を腕力で捩じ伏せながら圧縮した闇の双星が、声と共に解放された。
 駆けるように降り落ちる闇の流星は、自ら崩壊しながら戦場を駆け――。

 ◇◇◇

「これが次に私達を……人類を裏切った時のお前の姿よ」
「……は、……はい……」
 そう静かに突き付けられた現実に、商人は震えすら忘れてそう返した。
 星の尾羽が、触れた全てを超重力に砕き砂塵と化した。
 魔狼がそれに耐えられることはなく、当然、商人がそれに耐えられるはずもなく。
 そう頷くしかできなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヤコ・ナゴ
☆ええ、ええ。ちょーっとこないだは少しやり残しがありまして。
『おやつ』を食べ損ねたストレスがありますので…

(謎の大型ゴーレム…もといキャバリア「しょべるくん」が襲来する魔狼の側面からエントリーだ!
 乱戦の中に突入して敵味方まとめて突き殺す事態は回避されました)

shovel、エンジン出力最大!対事故セーフティ解除!ドリル回転開始!
『警こk』
全部纏めて!ドリルで突き殺してあげますよお!

…はぁ、終わった…
(しょべるくんから降りて一休み…あれ?なんか見覚えのあるのがいるような)



「ええ、ええ。ちょーっとこないだは少しやり残しがありまして」
 コクピットで一人頷く。AIも無視が最適解だと反応してくれない。
「『おやつ』を食べ損ねたストレスがありますので……」
 モニターに映る景色にヤコ・ナゴ(チキンレッグ・f29509)は言う。まるで川のように右から左へと流れる人狼の群れ。
 今まさに、目の前の砦を、人を殺しつくそうと迫るその群れの土手っ腹に。
 土塊を巻き上げ猪突猛進。突如人間対魔獣の蹂躙サバイバルマッチに豪快エントリーする謎の大型ゴーレム……もとい、ヤコの駆るキャバリア『しょべるくん』!
 ドライブレコーダーとか付けてたら確実にヤバいスプラッタードリフトだ!!
「警k」
「shovel、出力最大! 対事故セーフティ解除!!」
「警」
 衝撃と熱源に、ガクンとエンジンを止めたAIを説得(横車)して、再起動する。飛びかかる狼を急加速超信地旋回で振りほどき、
「……k」
「ドリル回転開始!!」
「……承認、実行します」
「やってやりますよぉ、狼どもォオオオオ!」
 ストッパー折れる。安全性を考慮された出力制御を停止させ、内燃がヤコの叫びとハーモニーを奏でて、ドリルを最適解された軌道で振り回す重機が戦場をかき乱していく。

 ◇◇◇

「はあ、終わった」
 繋ぎの上を垂らして、汗を拭うヤコは、砦の前でキャバリアを降りていた。
 崇拝にも似た畏怖の混ざる尊敬の視線。一般人を自認するヤコには居心地の悪いが、嫌な気はしない。
「や、また会えたね」
 そんなヤコの前にひょっこりと、あんまりみたくなかった人狼の顔があった。というかぐいぐい来る。
「それとも、オレの事が忘れられなかった?」
「いや、離れてもらえま……ちょ、だか、近……手ーっ! 何処突っ込んでんですか!」
 シャツの肩口から手を侵入させた人狼を突き飛ばして叫べば、彼は満面の笑みを見せる。
 外見は思わずドキリとしてしまいそうなのが厄介だ。
「何処って、暖かいキミのナカ……」
「如何わしい言い方しないでもらえます!?」
 口を開けば質の悪いセクハラ野郎だが。
 なんというか、助けた兵士の目が救世主へのそれではなく、妙な察しと共に距離を置くようなそれになっている。
 つまり、目を合わさないように逸らされている。
「公認の仲って奴?」
「轢き潰されたいんですか?」
「ベッドの上でなら……」
「ッケーッ!! ベッドごと煎餅みたいにしてやりますよォ!」
 しょべるくんに再搭乗した。
 AI『shovel』は承認してくれなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミラン・アレイ
◎☆
襲われてるっていうなら、見過ごせないよね!

兵士さんと奴隷さんたちに先駆けて、魔狼の群れへ駆けるね!
少しでも数を減らして、有利な状況を作るよ!

雷撃の【属性攻撃】によるドラゴン【ブレス攻撃】で魔狼の群れを【範囲攻撃】!魔狼を怯ませたところで、一気に群れの奥まで入り込むよ!
攻撃は【第六感】で予測してかわしつつ、魔狼たちを十分に引き付けた所で、雷霆剣を抜き放ってUC【雷迅剣】で一網打尽を計るね!



 奴隷と兵士が簡単な連携を結んで、迫る戦線を迎え撃とうとする。
 その陣形の中から、一つの蒼点が飛び出した。
 ダゥ!!と大地を駆けるのはミラン・アレイ(ドラゴンガール・f29182)に兵士達も狼狽えない。
 その頼りがいのある、というよりは護りたいと思わせる後ろ姿を心配そうに見つめつつも、彼女の作戦通りの行動を止めはしなかった。
 どうして一番危険な枠を自ら引き受けるのか。そんな疑問を抱かずにはいられない。
 といっても、反対したとして彼女を止められはしなかったろうけど。
「い、くよーッ!」
 接敵、その間際。食らいつかんと迫る狼の牙。
 に。
 蒼い光が照り返す。
「――ッだ!」
 声と共に無数の線が走る。蒼い光の線。直後思い出したように、雷轟がその線の走った道を砕き、吹き飛ばした!
 雷竜の息吹が轟音を響かせ、それを放ったミランの前方にぽっかりと空隙を造り出す。
 恐怖をねじ伏せた爪の攻撃が振るわれる。だが、ミランはそれをかわし群れの奥へ!
 過ぎ去った魔狼も、彼女を止めねばと叫ぶ本能にその背に追いすがり。
「ふふーん!! たっくさん集めて集めて」
 反撃は最小限に、回避に専念する。群れの動きが彼女を中心に渦を巻くように変じたその時に。
「一気に――」
 ぱち、とミランの前髪に蒼い稲妻が弾けて。鞘に納めていた剣を抜き放つ。
「疾れ、雷刃!」
 奇妙な音が走った。金属板の端をぶつけて震えた音の最後の部分。それを拡大したような高く鈍い音。
 円を描くように刃を舞わせる。
 蒼い雷撃の輪、瞬いたミランを中心に発生したそれは、鋭い刃となって周囲の魔狼を障害とも思わぬように広がり消えた。
「襲われてるっていうなら見過ごせないものね!」
 兵士の疑問に答えるなら、そうなる。
「だから、少しでも数を減らして、有利な状況を作るよ!」
 彼らの勝利のため。ミランは雷撃を纏って駆けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『暴食のマンティコア』

POW   :    刈り取り喰らう
【強靭な牙や爪による引き裂き】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    魔獣の威圧
【強い衝撃波、聞く者を恐怖で竦ませる咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    猛毒を持つ鋼鉄の尾針
【放たれる針、穿たれる尻尾】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【が腐敗し毒が広がり猟兵達を沈める】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その時、兵士達は猟兵達の助太刀により
魔狼を押し返し始めていた。
 勝てる。
 そう、朧気な希望が彼らの脳裏に浮かんだ瞬間。その考えを打ち砕くような、豪烈な咆哮が彼らの耳をつんざいた。
「グゥオオオオアアアアアッ!!!!」
 声に誰もが身を竦めた。目の前の獣を押し返すことを忘れて、恐怖に硬直する。
 それを発したのは、魔獣の群れの主将。マンティコア。
 誰もがその姿に恐れを為す――、いや。
 彼らは違った。
 猟兵達は、その声にも姿にも恐れでその身を竦ませず、その脅威に立ちはだかる。
 その背に。
 その姿に。
 自らが持つことの出来なかった その勇気を讃え、その震えぬ足を讃え、その見えずともある輝きを讃え、兵士の誰かが呟いた。

 ――勇者。

 と。

 ◇◇◇

 第2章です。
 マンティコアとの戦闘です。狼の群れは残っていますが兵士達が押さえています。

 三章では、マンティコアを倒して狼を撃退したあとに魔牛が来るので、倒して食べたりします。

 プレイングおまちしてます!
リーヴァルディ・カーライル
◎☆

…此処は今を生きる人々が集う希望の地
お前達が軽々に踏み込んで良い場所では無い

…それでも退かないというならば、
お前達の命運は今日、この時を以て潰えると知れ

敵の毒属性攻撃は全身を覆う浄化のオーラで防御して受け流し、
今までの戦闘知識から敵の殺気や闘争心を暗視して攻撃を見切り回避

…お前の事は知っている。強靭な爪牙に猛毒の尾針、
そして衝撃を放つ咆哮…それは止めさせてもらうわ

第六感が好機を捉えたらUCを発動して"血の翼"を広げ、
敵の死角に残像が生じる空中戦機動の早業で切り込み、
限界突破した魔力を溜めた大鎌を怪力任せに連続でなぎ払い、
同時に傷口を抉る血の斬撃を乱れ撃ちする2回攻撃を行う



「此処は今を生きる人々が集う希望の地」
 猛る魔獣にリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、手にした大鎌の切っ先にも似た鋭い視線を突き付ける。
「お前達が軽々に踏み込んで良い場所では無い」
 そこより先に。
 この身より後ろに。
 その脚を進めようと言うのならば、その知性に訴えろと、睨む。
「お前達の命運は今日、この時を以て潰えると知れ」
 故に、生きる事への執着を本能として持つならば――返答は、一声を震わせ踏み込んだその爪の一撃で為された。
「ゴアアアッ!!」
 はぜるような声の振動。迫る爪を避ける気力を砕く咆哮。僅かに身が凍る。
「知っている」
 リーヴァルディは、己の体が縛られる瞬間には、既にその爪を弾く軌道に刃を振るっていた。
 動き出す寸前、その内に膨れ上がった敵意、殺意が、未来予知じみた直感を彼女に与えている。
「あなたの爪も、毒も、声も――」
 爪を弾く。火花が散る。衝撃に弾かれ、浮いた体にサソリの尾から放たれた毒液を纏う針。それをオーラで軌道を逸らし、誰もいない大地を侵させる。
 着地。足裏に返る踏み込みの衝撃にリーヴァルディが肉薄するその、寸前に。
「グ……」
 咆哮が放たれる。刹那。
「――っ!」
 血の翼が開く。
 マンティコアの目が彼女をそこに捉えたままに、しかし、その胴体が彼女の振るった大鎌の刃に抉り取られた!
「ガッ……!?」
 残像、マンティコアの目に残っていたのは、見失った事を脳が認識するまでのラグにすぎない。
 超高速で駆け出したリーヴァルディは、無防備なその胴体に大鎌を振るい、斬られたとマンティコアが認識するよりもさらに速く、その身を反対側の胴体へと回り込ませる。
 遠心力。怪力。限界突破した魔力。それらが全てのった刃は、マンティコアの強靭な肉体すら、水菓子のごとく切り裂く。
 マンティコアが、彼女の姿を見失ったと気づく瞬間には、既にその胴体を挟むように振るわれた二重の斬撃が激痛をもたらした。
「ギャオォオオオッ!!」
 その咆哮は、恐怖を与える爆砲ではなく、激痛に叫ぶ戦慄の咆哮。
 それは誰の脚を震わすこともなく。
「ならば、その答えを悔いながら――息絶えろ」
 リーヴァルディは刃についた血を振り払い、そう告げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW ◎☆

「オー、マンティコア。初めて目撃しマシタガ、事前情報通りのビジュアルデスネ!」

あまり気負いせず、戦場を俯瞰しながらゆとりを持って挑むであります!
……ふむ。距離を取り過ぎれば衝撃波が飛んできて、後ろに回り込んでも有毒の尻尾が飛んできマスカ。
それなら小細工無用、正面から斬り込むデース!

ファルシオンを抜いて白兵戦! 強靭な牙や爪による破壊をUC《剣刃一閃》で相殺つつ、
【武器受け】【受け流し】【カウンター】を狙いマース!
致命的な一撃には届かないかもしれマセンガ、パリィ盾として前線で働きマスヨー!

……Hum,余裕があってチャンスがあったら、羽を落とすとかやってみマスカナー?



「むむ、ミニバルタンズには、荷物が重量級ですネー?」
 怪我している兵士を片っ端から捕まえて、治療していたバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、響いた咆哮に目を向けて、そんな風に軽く言った。
 隣で、その咆哮に転んで腰を打った兵士がいるというのに、彼女はまるで動じていない。
「オー、マンティコア。初めて目撃しマシタガ、事前情報通りのビジュアルデスネ!」
 ワタシもいくとシマースカー。と鎧ごと転んで、打撲傷を腰に受けた兵士を軽く治療してから、彼女は前線へと向かっていくのだった。

 ◇◇◇

 参戦への歓迎は手厚く。
「オウ! 吹き飛ばされソウデスネ!」
 跳ねるように回避した横を豪然と抜けていく、音の塊の余波ではためくロングスカートを押さえてバルタンは言う。
 兵士がまともに受けたなら確実に命を取られるだろうそれに対する感想としては、緩すぎるそれにマンティコアは気分を逆撫でされたのか。
 更に爪を放ってくる。
 他の猟兵の攻撃の間に、バルタンは肉薄して、ファルシオンでの白兵戦に挑んでいた。
「離れれバ衝撃波、背後は毒の尾。それなら小細工無用、正面から斬り込むデース!」
 要するに、いつも通りだ。
 破壊をもたらす爪牙を、ファルシオンの斬撃でいなし、弾き、生まれた隙に傷を刻んでいく。
 目を見張るようなダメージがあるわけではないが、己の攻撃が届かない。常に視界に入り、妨害を行うバルタンという存在は、やはり目障りなのだろう。
 時を経るにつれて、その攻撃がバルタンへと集中し始めていた、その時。
 マンティコアの背後から攻撃が放たれ、その意識が尻に向く。
「……これハ、チャンスというモノ!」
 おざなりに放たれた爪を、弾き、その強靭な脚を足場に飛び上がったバルタンは、その背でジャンプ。一回転して地面へと降りるその最中に、翼の根本へとファルシオンを合わせた。
「ドンピシャですネー」
 ざぐん、と刃が肉を断つ音が上がり、翼が落ち、血が吹き上がる。
「ぐぉ、ルォオ……!」
「おっと、お怒りデスカー?」
 睨むマンティコアに、バルタンは再度、パリィ重視に構えて、怒りに満ちた視線に受けて立った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:アノン
引き続きUDCを纏って黒い狼の姿。
コイツは喰いでがありそうだなァ。毒も纏めて喰ってやるぜ
UDCの空中浮遊で宙を駆けるように移動。空中戦を仕掛けるぜ。衝撃波は野生の勘で回避。殺気で恐怖を与えつつ、胴体から液体金属を伸ばし、怪力とロープワークで拘束する。
まずは邪魔な尻尾に噛みついて部位破壊で喰い千切るぜ。針も毒も甲殻も纏めて喰ってやる。拘束が振りほどかれたら一旦距離を取り、前爪で羽を切り裂くぜ。液体金属だから伸ばせば多少の距離は届く。
動きが鈍ったら脇腹に噛みついてやる



 駆ける、駆ける――。
 眼下に魔狼を置き去り、黒狼と化した水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は空を駆ける。
 空気を踏み締めるように、宿すUDCの権能に怜悧、アノンは、吠える魔獅子、マンティコアの直上へとたどり着いていた。
「さて」
 跳躍、今まで捕まえていた空気を掴まず、その身体は急直下。マンティコアへと墜ちていく――!
 迫る巨体、しかし、獣の顔に浮かぶ表情は笑み。
「コイツは喰いでがありそうだなァ」
 殺気が迸る。それに気づいたマンティコアが、上空のアノンを察知して、咆哮を打ち放った!
「――ッ、と!」
 空を蹴る。見えぬ衝撃波に、アノンは真横に壁を作るように横飛びし回避。更に跳躍を挟みながら、発する殺意を研ぎ澄ませて次砲を構えたマンティコアの動きを一瞬、留める。
「はっ! これくらいでチビってんのか!? 世話ねえな!」
 上空から、一斉に体毛を作り出す液体金属をワイヤーと化して放った。地面に縫い止める杭が深々と地面、それからマンティコア自身に突き刺さり、拘束する。
「グ、ルルゥアア!!」
 吠えるマンティコア。上空から飛び降りた衝撃をその背に叩き込みながら、蹴り飛ばしマンティコアの背後へ。
「まずはその邪魔な尻尾、貰うぜ」
 拘束に、そして激痛にマンティコアはその尾を操る事すら満足にできないままに。
「ギュォアアアッ!!!!」
 蠍の尾、その節の隙間に滑り込んだアノンの牙が、刃と伸びて切断せしめていた。
 毒性の体液が、流れ込む。焼けるような痛み。熔ける体内。
「ぐ、く……ぁ、あ!」
 悶え苦しみ、しかし、急速に毒への耐性を得るに至る怜悧の身体は、即座にその激痛を忘れ去っていた。
「便利だぜ、全く、よお!」
 ガギン! とワイヤーのひとつが弾ける。それを皮切りに、ガガガガッと拘束が外される音が連続し、マンティコアの体が跳ねるようにアノンへと迫り来た!
 叫び、飛び退き、相対する。
 手負いの獣が最も恐ろしい。その形相は確かに、今までの余裕を見せていたものよりも更に凶悪に、唸り声だけですら人の命を奪い取れそうな響きを孕んでいる。
 だが、その動きは既にアノンの経験として蓄積されている。怒りに狂おうとも、染み付いた動きは変わることはない。
 もし、違う動きをしようとも、それをも血肉と変えて牙を立ててやろう。
「グォアオオオオッ!!」
「上等……全部纏めて喰らってやるよ!」
 2体の獣が、互いの命を暗い尽くさんと、傷を、血を交わしていく。
 死獣の交わり、その終わりは近く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイク・リー
◎☆

「退場願うぜ」
八邉鬼衆を現して相対し集中による魔力溜めを行いつつ、相手の動きを待つ。
第六感で危険を予知してダッシュで一旦距離を取る。
「焦んなよ。咆哮で動き止めて嬲るつもりだったか?」
ああ、準備完了。今度はこっちのターンだ。
一気に詰めて鞘に納めた状態から殴打し情報を得たら残像を作り出し、迷彩で消える。
ジヴァ・アラスの覇気を無数の剣に形成して頭上から降り注がせる。
ダッシュの速度と乱れ撃ちを応用した連撃を叩きこんでやる。
「勇者じゃねえ。ただの傭兵だ」



 さあ、そろそろ仕舞の時間だ。
 人の物語に、これ以上悪鬼がごとき魔獣をのさばらせていいものか。
「出番は終わり、退場願うぜ」
 ジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)は、満身創痍。獣に相対する。
 空の手に、現れる魔刀を握り息を吐く。細く、一定に吐く息に意識を集中させ、反転、魔力をその身に循環し蓄え、高めゆく。
 苦戦によって、何かを掴んだのか。乱打を止めてマンティコアはジェイクの動きを見据えている。
 死合。
 この瞬間、動けば、瞬きの間に勝敗が決するという確信がもたらす緊迫。
 動いたのはマンティコア。その動きは、相手の命を奪う事に洗練され、研ぎ澄まされた必殺の一撃――足り得る程の爪はしかし、ジェイクの振るった鞘に閉ざしたままの魔刀の殴打に勢いを削がれ、僅かに皮を切るばかり。
 だが終わらない。
 次撃。絶え間なく放て。己の存在。その喪失への恐怖が、逆に冷静な思考をマンティコアにもたらす。
 その腕を振るう。その相手を探し、今度こそその爪はジェイクを切り裂いた!
 ジェイクは切り裂かれたままに揺らぎ、薄れ――消える。
「……っ!」
 またしても、残像。両脇をいまだ痛め続ける傷が疼く。
 ――どこへ。
 思考が周囲へと意識を向けさせた。瞬間。
「残念、前だ」
 声。
 ジェイクはどこへも回り込んではいない。ただ後ろへと距離を取っただけ。
 マンティコアは見る。ジェイクの姿を、そして、その上空に並ぶ剣刃の群れを。
 戦神ジヴァ・アラスの闘気に構築された、その刃先がマンティコアへと向けられ、奔る。
 獣が見るのは、無数の剣閃の嵐。その中を切り裂いて飛ぶ、魔刀の刃。
 その煌めき。
 そして。

「勇者じゃねえ。ただの傭兵だ」

 人間達の勝利の歓声。それに埋もれるようにして、消うる闇の中でその声が響いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『魔牛捕獲作戦』

POW   :    正面から挑んで、捕獲する

SPD   :    罠を仕掛ける

WIZ   :    魔牛の習性を利用する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 よく戦ったのでご飯が必要だ。
 都合よく美味しい魔牛の群れが突っ込んでくる。
 戦った後だがぶっ倒れてる暇じゃねえ!! 勝利の宴だ!! やつらを狩って、美味しくくってこれからの元気をつけなきゃなんねえ!!
 魔牛狩りじゃあああああ!! 

 ◇◇◇

 第三章

 オーバーキルは、部位がなくなっちゃうので抑えて頑張って下さい。
ヤコ・ナゴ
☆(これまでのあらすじ)無茶したんでしょべるくんのドリルが止まった。帰ったらオーバーホール確定。

あの変態が離れてくれなかったし周りが気まず過ぎてマンティコア狩りどころじゃなかったんですが。
とーにーかーくー…
牛肉食べにいきましょう、牛肉。

とりあえずホローポイント(HP)弾マガジンを装填して…っと。
ストッピングパワーの高いHP弾なら牛肉も行動不能にしやすいですし。

さぁて…バレットカーニバルですよぉ、派手に銃弾ぶちまけてトリガーハッピーキメちゃいましょうねえ…!

…後の宴会で変態がべたべたしてきたりなんかベッドに連れ込まれそうなのはもう諦めましょう。



「『再三の警告を無視し』敵性存在の群れに『突っ込み』『マニュアル外の緊急対応』をせざるを得ない状況での『操縦者による過度な動作』での破損の為、安全地域での『移動行動以上の機能ロックの解除』は承認できません」
「じゃあ、代わりに俺が彼を『乗り潰して』『バッテリー切れ』にさせてあげるよ」
「『肯定』」
 キャバリア搭載のAIと顔見知り以上のなんでもない人狼が、物騒な会話を交わしているのをどうにか無視しながら、ヤコ・ナゴ(チキンレッグ・f29509)はドリルの過剰運転でオーバーホール確定の機体の中からアサルトライフルを担ぎ出していた。
「……とーにーかーくー」
 どうにか嫌な予感しかしない変態をAIから引き離し、ついでに周りの視線から逃れてアサルトライフルにホローポイント弾のマガジンを装着する。
 弾頭の空洞で貫通力を削ぎ、エネルギーを着弾対象に集中させる弾丸だ。
「ストッピングパワーの高いHP弾なら牛肉も行動不能にしやすいですし……」
 ギラリと、やや邪気を孕んだ眼光を光らせて、ヤコはアサルトライフルを構えて笑う。
「さぁて……バレットカーニバルですよぉ……」
 突っ込んでくる魔牛の頭蓋にポイントを合わせて、銃弾を吐き出した。手に返るなれた振動。強靭な肉体を打撃の銃弾がドラミングする鈍い連弾音。
「フフフ、フフフフ」
 ヤコの笑い声と魔牛の叫声。銃弾が奏でる銃鈍な音楽が戦場に響き渡る。
「派手に銃弾ぶちまけてトリガーハッピーキメちゃいましょうねえ……ッ!」
 手応えのある的が、ごまんと溢れている。しかも、どれだけ仕留めても嫌な顔はされないだろう有用素材。
「フフ、フハハハハハ!!」
 その後、大量の牛の素材とともに、ホクホクとしたやりきった顔でヤコは宴会に招かれるのだった。

 ◇◇◇

 後の宴会。
 最初は、妙にヤコに優先して肉をよそってくれるなあ、位に思っていたが、そのうち肉を載せた皿とともに周りから人が消え、気づけばソイツと二人になっていた挙げ句。
「……ん?」
 ――寝室が同室にされていた。
 そういえば、精が付くようにとか何とか、血の多い部位をよそわれていた気がする。
 さて、その人狼が一体ヤコがストレスを発散している間何をしていたのかというと。
「外堀……っ」
 後悔は先に立たない。
 背後でドアが締り、ご丁寧に鍵まで閉める音がヤコの背に響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
UCの効果が切れて見れば死屍累々…いや一般人混ざってるが…最終的に元よりは回復してるし…許してくれるといいんだが…まぁ
「巻き込んですまなかったなって今度はなんだ?!
牛?!」
…多分一般人の方たち、短期間に筋肉の破損と再生繰り返してるし一気に他の人よりはマッシブになってるんじゃねぇかな

そんな彼らに向かい牛を追いかけるのは呼び出したわんこーず

迎え撃つのは俺ら
細く伸ばした黒纏足に絡めて転けさせるなり、頭ぶん殴るなりで仕留めよう
何せ牛なら血ですら資源だ。食料だ。
…新鮮な内しか無理だが
最終的にどうするかは知らんがむやみに捨てられる訳じゃねぇだろ



「……はあ」
 血の雨が降り止んで。
「こいつは、まあ……やっちまったなあ」
 尾守・夜野(墓守・f05352)は、がしがしと頭をかいて、今まさに消えていく魔狼の死体と、気を失った兵士たちの死屍累々な光景を見回した。
 どうするか、と思っていると、兵士たちが意識を取り戻し起き上がりはじめた。
「あー……、巻き込んですまなか――」
 そう謝ろうとしたその瞬間に、ブモォオオ!! と上がる叫び声に夜野は振り返ってその声のもとを見る。
「牛……?」
「魔牛だっ!」
 兵士が声を上げる。牛は有用な資源だ。血の一滴まで使い所はある。聞けば。近くの山に氷室を作っているらしいから、できるだけ備蓄したいと。
「こうしちゃいられねえ、他の奴らも追ってるはずだ!! すまん、兄ちゃん手伝ってくれねえか!」
「あ? ああ、いや――分かった!」
 過剰回復によっていささか無理矢理に強化状態にあるような兵士たちが一斉に牛の大群へと突っ込んでいくのを、一歩遅れて駆け出す。
 謝罪は、牛の収穫で返すのがいいかと、気持ちを切り替えた。
「なら、追い立てに適役ってもんだ!」
 召喚した黒妖犬が兵士たちを追い抜き魔牛へとひた走る。
「多少つまみ食いしてもこれだけいるなら問題ねえだろ――そら構えろ、あいつらがこっちに追い立ててくれるから、轢き潰されるなよ」
「お、おう! ちょいと体の調子もいいからな! やってやるさ!!」
「ブモォオオオ!!」
 勝利の余韻と諸々で、熱が入っているらしい兵士たちの怒声へと、牛の悲鳴じみた叫びが飛び込んでくる。
 兵士と牛がぶつかる。その中で夜野は、鞭のように形状を変化させた衣服、黒纏を魔牛の足に引っ掛け横転させて、他の魔牛もろともにドミノ倒しを起こしたり、脳天を殴打しながら魔牛の波に乗るように駆けていく。
「あんまり、体が弾けねえように……手加減ってのも性に合わねえか?」
 そう嘯きながら、夜野は、次々と獲物を仕留めていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:アノン
UDCで狼耳と尻尾を象り、手足にも纏って獣人のような姿になる
群れの上まで飛んで、適当に触手を伸ばして何匹か生きたまま捕獲
とりあえず1匹味見するぜ。脇腹にでも噛みついてみよう。
んー……美味いけどオレは獅子の方が好きだな。
喰いきったら残りのは生きたままで、飛んで集落まで運ぶ。
何か慌ててんな。あ?魔獣?自分たちで殺せねーのか。面倒だなァ
「獲ってきたけど。どーすりゃイイ?」
言われた通り首切って血抜き。余るなら貰おうかと思ったが血も使うなら仕方ねェ。加工とかも手伝うケド細かいのは面倒だから任せたぜ
集落のヤツら(人間)も美味そうなんだけどな……喰うとロキが怒るから我慢するぜ



 全身に纏っていた液体金属を、手足に纏い、そして頭の上に耳と、尻に尾を生やす。
 半獣人とでもいうべき姿で立ち上がった水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は、そのUDCによって強化した膂力でもって大跳躍する。
 弾丸のように風を切る彼の身体は、数秒もたたずに魔牛の真上へと到達する。本来、慣性に従うならそのまま通りすぎていってしまう所を、眼下へと伸ばした黒色の触手で牛を捕らえて持ち上げるその反動で急制動。
 怜悧、いやアノンは、跳ね上げた牛の一体を自由落下しながらに引き寄せて、その脇腹へと躊躇いなく食らいついた。
「グモォオオっ!」
 腹から響く低音が歯を震わせるが、気にせず噛み千切り、舌から下し、溢れた血を飲み込んだ。
 濃い生命の味がする。だが。
「んー……美味いけどオレは獅子の方が好きだな」
 先刻、喰らったマンティコアの方がアノンの好みにあっていた。
 ひとまず地面に着地して、食いかけの一頭を平らげた彼は、残りを触手に掴んだままに再度跳躍する。
 向かうは砦の向こう、少し離れた集落だ。

 ◇◇◇

 既に何頭もの牛が持ち込まれ、川辺は血抜きで真っ赤に染まっていた。
 血も使うとはいえ、流石に保存も効かないので必要量以外は破棄するそうだ。
「そこに掛けておいてくれ、そうそう。それで首のその辺りを縦に――」
 なんというか処刑台のような急造の吊るし台にぶら下げた魔牛の首を指示通りに斬れば、意識はないが息のある牛は滝のように血を流していく。
 噎せるような血の臭いが跳ね返る。
 食欲が刺激される。
 集落のヤツらも美味そうなんだけどな。などと、周囲で動き回る人間に思えば、その住民の間を飛び回っていたロキが、キッとアノンを睨んできた。
(勘のお鋭いことで)
 肩を竦めて「我慢する」とジェスチャーすれば、どうやら上手く伝わったようで、ため息と共に作業に戻っていった。
「……ま、血抜き見てても暇だし、別の狩ってくるとするか」
 狼や獅子に比べれば弱いが、流石に魔獣。兵士達も怪我をしたりと大変そうだ。どこをどう切り分けて――などという細かい加工は面倒でしかない。
 アノンは、後処理は全部放り投げることにして集落を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイク・リー
◎☆

ルー・モナークを持ち、目立たない様に物陰から物陰へと移動しながら矢を射る。
電撃の属性攻撃によるマヒ攻撃で動けなくしたら素早く仕留める。
「どんだけ仕留めるかだな」
20頭分の肉を持って帰ればよく、余りは砦の住人に渡す。
宴に参加はせずに肉を持ち帰るだけ。
傭兵である以上、要が済めば次の戦場に向かうだけと言って去る。



 滑車がワイヤーに引かれて静かに張り詰めた音を立てる。
 ルー・モナーク、滑車による力学的補助を備えた霊弓。近代的なコンパウンドボウに近いそれを引くジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)は、息を潜め素早く番えた矢を撃ち放った。
 空へと放たれた矢は、パチリと僅かな紫電を放ちながら魔牛の群れのただ中の地面へと着弾し、込められた雷撃が周囲に拡散する。
 一個集団が丸々麻痺したその瞬間に、連射される矢が次々と魔牛を仕留めていく。
 動ける牛がその射手を睨もうとも、その瞬間には別の場所から矢が射られて絶命する。
 何人に囲まれているのか分からなくなるような、連撃。
「――さて、30は仕留めたか」
 果たして、しかし、それはジェイクただ一人によって為されていた。
 無駄弾はない。放った矢の数から仕留めた数を計算して、徐に身を隠していた茂みから立ち上がる。
 もう無事だった牛も麻痺を解いて逃げ出している。反撃はないだろう。
 ジェイクは獲物に近づき、確実に息の根を止めていることを確認する。
 この大きさだ。20頭分もあれば十分。残りは――。

 ◇◇◇

「い、いいのか? 解体までしてるのを」
「十分だ、必要量が多いのはそっちだろう」
「そうか、ありがたくもらっておくよ!」
 ジェイクは、余った肉を砦に持ち込んでいた。保存するなり、宴で消費するなり、あとは好きにしてくれればいい。
 やることは終わったと、ジェイクは背を向けた。その時。
「あ、なあ! あんたも宴寄っていかねえのか?」
 呼び止める兵士に、ジェイクはひたりと立ち止まり、肩を竦めて返す。
「悪いが」
 肩越しに視線だけ振り返り、それ以上の感情も、それ以下の思惑もないとばかりに言い捨てた。
「俺は傭兵だ。仕事が済んだなら次の仕事に行くだけだ。終わった戦場に用はない」
「……そうか」
 どこか残念そうに眉尻を下げる兵士に、ジェイクは何も言わずに立ち去るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW ◎☆

「HAHAHA! ハンティングの後のボーナスステージ、デスネ!」
皆さんの歓声を背に受けて、物資捕獲のために、
「再びカモン! バルタンズ!」『バルルー!』

UC《秘密のバルタンズ》再起動。追加賃金を支払って、お手伝いしてもらいマース!
そう、魔牛の捕獲デース!
バルタンズがワラワラと群がって取り付き、押しとどめてもらったところでワタシがミネウチ! 
気絶した牛を後方の兵士さんたちのところまで運んでもらいマース!
これを繰り返すことで、安定していっぱい確保できるって寸法デース!

ひと段落ついたところで、魔牛を【料理】に使わせてもらいマース!
ステーキ、シチュー、ロースト、いろいろできマスネー♪



「HAHAHA! ハンティングの後のボーナスステージ、デスネ!」
 勝利の高揚に吠える兵士の声を背に、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は再度、ミニバルタンズを召喚する。
「バルルー?」
「イエース! 追加賃金はきっちり発生デース!!」
「バルバルー!!」
 ミニバルタンズを呼び出したのは、他でもなく、魔牛捕獲の為だ。
 隊列を組んだミニバルタンズは、魔狼の群れでさえ留めてみせた。
 魔牛の群れなど朝飯前である。
 巨大な打楽器が打ち轟いたような豪快な衝撃音を撒き散らしながらも、牛の群れを止めてみせたそこへ、バルタンが駆け抜け牛の脳天を峰打ちで打ち据えていく。
 後方待機していた兵士へと、ミニバルタンズが気絶した牛を運び、血抜きし解体していく。
 工場のような流れ作業。効率化された魔牛収穫風景。
「安定していっぱい確保できるって寸法デース!」
 魔牛をばったばったとぶっ倒しながら、バルタンの声が牛の叫びの中に埋もれていった。

 ◇◇◇

「大収穫デース!」
 目論見が型にはまり、大漁旗を掲げたい程の成果を上げたバルタンは、ご満悦であった。
 牛肉。牛、豚、鳥と最もポピュラーな食肉とされる内の一つ。
 特に、牛肉は、地域によってではあるが『肉』とだけ称されれば、牛肉を指すことも少なくはない程の浸透度を誇る。
 故に、それを使ったレシピの数も列挙に暇がないほどに存在する。
「ステーキ、シチュー、ロースト――」
 材料はいくらでもある。香草や香辛料その他の食材は満足なほどはないが、材料そのものの旨味があれば、それもカバーできるというもの。
「これは、手があと二、三本欲しくなりマスネー!」
 竈場で材料を前に、レシピを頭で構築しながら、戦場よりも忙しくなりそうな行程に腕を捲り気炎を上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月20日


挿絵イラスト