●フェアリーランドへの侵入者
鳥居の奥に、不思議な空間が広がっている。
そこは、既に滅んだと言われる都。
鳥居をくぐってそこに行けば、なくしたはずの物を拾ったり、過去の幻想を再体験できたり、死別した人に再会できたりすると言う。
ここは、フェアリーの壺の中。ユーベルコード製の、『フェアリーランド』である。
「よいしょっと」
不意に地面に開いた穴から、ひょっこりとウサギの耳が覗く。続いて現れたのは、若い女性の姿である。
「へ~、なるほど、素敵な場所だね!」
ウサギ耳の女は辺りを見回しながら歩き、やがて、フェアリーの女性の姿を目に留めた。
「当フェアリーランドにお越しいただき、誠にありがとうございます」
「あ、これはこれはご丁寧に」
深くお辞儀するフェアリーに、思わずウサギ耳の女も頭を下げる。
「どうぞ、ごゆっくりお過ごしください」
フェアリーは、目の前のウサギ女が『スーパーウサギ穴』で侵入してきたと知らず、『壺に触れる』という正しい手順でやって来た客人だと思っているようだ。
「歓待、嬉しいよ! だけど……残念! 私の手で悪夢の世界に変わっちゃうんだよね~、ここ」
彼女――猟書家『レプ・ス・カム』は、無邪気にも見える笑顔を浮かべながら、悪意に満ちた言葉を吐く。
戸惑うフェアリーの背後から、ふと――。
『ティキル』
名を呼ぶ声がして、フェアリーは振り向いた。
『なぜ俺を置いていった』
そこには、かつての冒険者仲間の姿――血まみれだ。
「ひ、あああぁぁっ!!」
フェアリーは、その場から飛び去る。
この悪夢の世界からは、逃げられない。
●グリモアベースにて
「アックス&ウィザーズで、とあるフェアリーが、自身がユーベルコードで創造した『フェアリーランド』に閉じ込められています。これは、猟書家『レプ・ス・カム』の仕業です」
アウグスト・アルトナー(悠久家族・f23918)は、普段どおりの仏頂面で告げる。
「そのフェアリー……『ティキル』さんという名前の女性なのですが、彼女はこのままでは衰弱死してしまいます。ユーベルコードが解除できず、生命力を消耗しているんです」
しかも、フェアリーランドは悪夢の如き世界に変えられているのだと、アウグストは述べた。
「小さな壺の近くに、ぼくが皆さんを転送しますので、壺に触れてティキルさんのフェアリーランドに飛び込んでください。フェアリーランドの中には鳥居があって、皆さんはまず、そこをくぐることになります。そうすると、失われた都に行くことができます」
一呼吸置いて、彼は続ける。
「その都では、皆さんの過去が幻となって、歪められた形で現れます。記憶とは食い違う、悪夢のようなものとして出てくることでしょう」
例えば、ティキルの場合は、冒険で命を落とした仲間が恨み言を吐く幻が現れている。事実は違うはずだ。
「そこで、『本当はこんなじゃなかった』と幻を否定することが必要になります。ティキルさんが見た幻を否定してもいいですが……皆さん自身が見ることになる、悪夢化した過去の幻を否定し、記憶をたどって『事実』を述べるというやり方でも良いでしょう」
そうすることでティキルは、自身の、あるいは猟兵たちの『正しい過去』に思いを馳せ、楽しいことを考え始めるはずだ。それによって、フェアリーランドの悪夢化が少し抑えられる。
「ティキルさんの前で幻を否定してみせ、その後に、現れる猟書家レプ・ス・カムを倒してください。どうか、ご武運を」
アウグストは羽根型のグリモアを手のひらの上に浮かばせ、猟兵たちの転送を開始した。
地斬理々亜
地斬です。
よろしくお願い申し上げます。
このシナリオは、幹部シナリオです。
全2章の構成となります。
●プレイングボーナス(全章共通)
『フェアリーに楽しいことを考えてもらう』ことです。
(このシナリオにおいては、皆さんが『悪夢の幻を否定し、楽しい過去を語る』ことが必要です)
●フェアリーについて補足
名前は『ティキル』。物腰丁寧で落ち着いた印象の女性。
ユーベルコードが使える、腕利きの冒険者です。
かつて、仲間が命を落としたことは本当のようですが……?
●第1章
皆さんの過去が幻となって、歪められた形で現れます。
必ず『悪夢のようなもの』となり、記憶とは食い違うことでしょう。
もしも、元より悪夢のような過去である場合は、そのままの形で現れることになります。その場合は、ティキルに対しては『楽しい過去だったという嘘』をついてください。
リプレイ描写で間違いのないよう、プレイング末尾に【嘘】の文字を入れていただけると助かります。
皆さんの過去について語るのではなく、ティキルの過去を推測し、幻を否定するというアプローチも可能です。
なお、『なくしたはずの物を拾った』場合、それが、フェアリーランドを出ると消える幻なのか、不思議なことに手元に残るのかは、プレイング次第です。
●第2章
猟書家『レプ・ス・カム』との決戦です。
引き続きプレイングボーナスはありますので、ティキルに語りかけながら戦うといいかもしれません。
●プレイング受付について
今回は断章投下なしで、OP公開と同時に受付開始します。
受付締め切りの日時は、様子を見て決めさせていただきます。
ツイッターと自己紹介ページでお知らせ致しますので、ご確認ください。
●省略記号について(プレイング文字数を節約したい方向け)
アドリブ多め希望の方はプレイング冒頭に◎を、少なめ希望の方は×をお書きください。
いずれも書かれていない場合は、プレイング内容に応じて適宜アドリブを入れます。
それでは、皆さんのご健闘をお祈り致します。
第1章 冒険
『失われた都』
|
POW : 何かを拾った
SPD : 何かが起きた
WIZ : 誰かに会った
|
ロッテ・ブラウ
…ココは?
ボクが見る過去の幻は『クロムキャバリアの激戦地』
飛び交う銃弾
朝は談笑していたのに一瞬で零れ落ちる救えなかった命や
血まみれでグロテスクで恨み言を吐く幻
『本当はこんなじゃなかった?』
表情が抜け落ち
絶対見せない冷めた目で空間を見つめます
いやいや…
仲間を死んでいった人たちを馬鹿にするな!!
リアルはこんな甘い世界じゃねぇよ!!
生きるか死ぬかの命を張ってんだ!!
うわぺりだけの薄ぺらい嘘で世界を語るな!!!
吐き捨てるように叫んだあと
「禍津血」
消えそうな声で口にして虚空を空間を勝ち割、愛機を呼び出し乗り込みます
ティキルさんには悪いけど、、、ボクは明かるのは示せないや
風通しを良くするよ!!行くよ!!
●戦場の幻
「……ココは?」
鳥居をくぐった、ロッテ・ブラウ(夢幻・f29078)が周囲を見回す。
そこには、戦場があった。
過去の幻。――クロムキャバリアの、激戦地の光景だ。
銃弾が宙を飛び交い、敵味方の命が次々に失われてゆく。
朝に談笑していた仲間も、ほんの一瞬で、たちまち屍に変わり果てた。……救えなかった。
動かなくなったキャバリアのコックピットハッチがひとりでに開き、血まみれのパイロットの姿が露わになる。体の一部が、吹き飛んでいた。
『まだ生きていたかったのに』
開いた口から、鮮血と言葉が吐き出される。
『なんでお前は生きてるんだよ。ずるいだろ』
恨めしげに、ロッテを見つめながら。
「……本当はこんなじゃなかった?」
ロッテの表情が抜け落ちる。
普段は絶対に見せない、冷めた目で、彼は空間を見つめていた。
幻を否定し、フェアリーのティキルが楽しいことを考えられるようにすること。それが、猟兵たちに求められていることだ。
嘘の言葉でこの悪夢を塗り固め、『明るい過去』を示すこと――。
「いやいや……」
ロッテは、首を横に振る。
「――仲間を、死んでいった人たちを、馬鹿にするな! リアルはこんな甘い世界じゃねぇよ!!」
過去を否定することなど、彼にはとてもできなかった。
「生きるか死ぬかの命を張ってんだ!! 上辺だけの薄っぺらい嘘で世界を語るな!!」
吐き捨てるように、ロッテは叫ぶ。
ひとしきり叫んだ後、乱れた呼吸を整えたロッテは、
「禍津血」
消え入りそうな声で、小さく口にした。
それは、愛機のサイキックキャバリアの名。空間を断ち割って現れた愛機へと、ロッテは乗り込んだ。
ちらりと下方を見下ろせば、見守るティキルの姿があった。
ロッテは明るい過去こそ示せなかったが、その過去への向き合い方は、彼女に勇気を与えたらしい。
「風通しを良くするよ!! 行くよ!!」
ロッテは前を向き、愛機を発進させた。
成功
🔵🔵🔴
馬県・義透
◎
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第三『侵す者』武の天才 橙狼
一人称:わし 豪快古風
清石春光→馬舘景雅となった経歴あり(馬舘家に嗣子なし。女系親族)
清石家は狼のキマイラ。
ああ、十で養子にいった時の。
五つ離れた実兄の恨み言と叱責、あと精々した…とな?
あのな…実兄こと春房殿はな、自他ともに認める『弟大好き青狼』でな。かなり泣かれたぞ。
二人の幼き弟たちも呆れるくらいに。
たしか…
「うん春光が条件満たすのはわかるけれど、それにしても行くの早くない?まだ幼いよ?(中略)待ってもらってもいいんじゃない?だめ?(以下略)」
と言って。
※
三人(数年後に、他人行儀に接された春房が滝涙状態だったのを目撃した)
●青狼の幻
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、複合型の悪霊である。
四人で一人の彼は今、第三の存在である『侵す者』を表に出していた。橙狼とも呼ばれる彼は、武の天才である。
かつての名は、馬舘景雅。さらに、嗣子のない女系親族の馬舘家の養子になる前は、清石春光というのが彼の名であった。
『春光』
その名を呼ぶ声が聞こえる。懐かしい声だ。
義透がそちらを見ると、五つ離れた実兄が、恨めしげな視線を己に向けていた。
『お前が馬舘家の跡取りになるだって? 相応しいはずがない、理解できないな』
(「ああ、十で養子に行った時の」)
義透は自分の顎をさする。
『いずれにせよ、お前の顔をもう見なくて済む。清々したよ』
「……ふむ」
ちらりと横を見ると、フェアリーのティキルが悲しそうな表情で義透と実兄を見つめていた。
「あのな……」
義透は語り始める。『事実』を。
「実兄こと春房殿はな、自他ともに認める『弟大好き青狼』でな。かなり泣かれたぞ」
「え……そうなんですか?」
「ああ、二人の幼き弟たちも呆れるくらいにな」
それを聞いたティキルが、春房の幻を見やる。怨嗟に溢れたその表情からは、とても想像できないようだ。
「確か……」
そこで義透は、咳払いして喉の調子を整える。
「『うん春光が条件満たすのはわかるけれど、それにしても行くの早くない? まだ幼いよ?(中略)待ってもらってもいいんじゃない? だめ?(以下略)』と言って」
春房の声真似つきで、言葉を再現してみせる義透。
「……あははは! あなたは、本当にお兄さんに愛されてたんですね!」
ティキルが笑う。それと同時に、春房の幻が、別れを惜しんで大泣きしているものに切り替わった。
「楽しいことを、考えられたようだな」
満足げに義透が笑う。
「……でも、春房『殿』って仰ってましたよね? そんな風に他人行儀に接したら、もっと泣いてしまうのでは……?」
ティキルのその言葉に、義透の中の他三人がしみじみ頷いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
黒城・魅夜
「悪夢のようなもの」といいますか
……悪夢そのものが私の故郷であるのですけどね、ふふ
ええ、ですからこのように(襤褸屑のような肉体で血塗れで笑い)
斬り裂かれ引きちぎられ、焼かれ抉られ潰される、
……そんな経験も数えきれないほど越えてきた馴染のものです
愚かなウサギ、しょせんあなたの悪夢など
「悪夢の滴」たるこの私の前には陳腐なもの
私を脅やかそうというのならもっと違うものを見せてきなさい
ふふ、こんにちは、ティキルさん
私が見たのは楽しい過去でしたよ
人々の希望と未来への祈りが込められた、ね
……それは嘘ですが、でもある意味では本当です
無限の苦痛と恐怖と絶望を乗り越えるのはいつだって希望の力なのですから
●悪夢の幻
(「『悪夢のようなもの』といいますか……悪夢そのものが私の故郷であるのですけどね」)
黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は、艶然たる微笑を浮かべる。
「ふふ」
それから彼女は、自分の体を見下ろした。
血にまみれた、ボロ屑のような肉体だ。
斬り裂かれた痕。引きちぎられた痕。焼かれ抉られ潰された痕。
たった今つけられたばかりに見える、生々しい無数の傷痕。これこそ、魅夜が見ている過去の幻だ。
(「このような経験も、数え切れないほど越えてきた馴染のものです」)
痛々しい姿で、魅夜は笑う。
「愚かなウサギ」
笑顔のまま発した呟きは、レプ・ス・カムに向けてのもの。
「しょせんあなたの悪夢など、『悪夢の滴』たるこの私の前には陳腐なもの。……私を脅かそうというのなら、もっと違うものを見せてきなさい」
彼女は、虚空へと言い放った。
それからやがて、別の方向から、ふわふわと一人のフェアリーが飛んでくる。
「ふふ、こんにちは、ティキルさん」
「はい、こんにちは。……あなたもここで、悪夢を?」
魅夜は、ティキルのその問いに対し、こう答えた。
「私が見たのは楽しい過去でしたよ。人々の希望と未来への祈りが込められた、ね」
「……そうなんですか?」
怪訝な顔で、ティキルは首を傾げる。
「ええ」
魅夜は頷き……内心で思った。
(「嘘ですが、でもある意味では本当です」)
無限の苦痛と恐怖と絶望を乗り越えるのは、いつだって希望の力なのだから。
「……人々の希望と、未来への祈り」
ティキルは、魅夜の言葉を反芻する。
「……悪夢に負けてなんていられませんね。私は、希望と共に歩む冒険者なんですから」
「ええ。それでいいんですよ」
魅夜が――悪夢を纏いし希望の魔性が、微笑む。
「希望はいつでも、あなたの味方です。ティキルさん」
大成功
🔵🔵🔵
アパラ・ルッサタイン
◎
岩むき出しの暗い部屋
ああ、此処は鉱山の奥の
幼い身体を横たえていると
煤だらけの大柄な男が怒声を挙げて入ってくる
何やってる
熱が出たから何だ
早く来い
「道具」が遅れたら明日は無いと思え
他にも何か言っているけれど
……あは、笑っちゃうな!
あなた
そんなお喋りじゃあ無かったろ
「飯」「寝る」以外
どれ程言葉を発していたっけ?
ねえ、ティキルさん
あなたの周りにも居ない?
そりゃもう
絶望的に言葉が少ないひとってさ
なのにポロっと言ったあたたかな言葉が
あたしにずうっと残っているんだ
熱を出したのは本当
けれど
あの時彼は「休め」と言ったのさ
「ありがとう、また明日」って
全く
狡いよね
ね、ティキルさん
あなたの思い出も
あなただけのものさ
●『あなた』の幻
アパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)は、フェアリーランド内の鳥居をくぐる。
次の瞬間には、周囲の光が消え失せた。アパラは、自身が、岩肌の露出した暗い部屋にいることに気づく。
(「ああ、此処は鉱山の奥の」)
幼い頃の記憶と、目の前の光景が重なる。あの日、熱を出したアパラは、この部屋に横たわっていた。
『何やってる』
怒声が響く。入ってきたのは、煤だらけの大柄な男性であった。
『熱が出たから何だ。早く来い』
「――」
『「道具」が遅れたら明日は無いと思え』
(「……あなたに、そんな言葉を言われるだなんてね」)
ちり、と胸の奥が疼いたのは気のせいだろうか。
けれど、これは幻。歪められて悪夢に変えられた、幻想だ。
『その目は何だ。「道具」の分際で――』
「……あは、笑っちゃうな!」
だからアパラは笑う。この悪夢を、笑い飛ばすのだ。
「あなた、そんなお喋りじゃあ無かったろ。『飯』『寝る』以外、どれ程言葉を発していたっけ?」
否定する。彼はこんなに饒舌ではなく、とても無口なひとだったと。
「ねえ、ティキルさん」
傍でアパラの様子を見守っていたフェアリーへと、アパラは声を掛ける。
「あなたの周りにも居ない? そりゃもう、絶望的に言葉が少ないひとってさ」
ティキルが頷き、アパラは続ける。
「なのに、ポロっと言ったあたたかな言葉が、あたしにずうっと残っているんだ」
停止していた幻が、動き出す。
ティキルが楽しいことを考えた影響で、悪夢化が抑えられた幻が。
『休め』
あの時を、再現するように。彼が、真剣な眼差しでアパラを見つめる。
『ありがとう、また明日』
そこで、幻は消失する。
「……全く。狡いよね」
また明日なんて言われたら、また会えると思ってしまうのに。
「ね、ティキルさん。あなたの思い出も、あなただけのものさ」
「はい……!」
ティキルが明瞭な声音で応じる。
アパラの胸には、あたたかな言葉。……決して、忘れない。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『レプ・ス・カム』
|
POW : ミラージュ・ラパン
自身と自身の装備、【自身がしたためた招待状を持つ】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD : 兎の謎掛け
【困惑】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【鬼火の塊】から、高命中力の【蒼白い炎の矢】を飛ばす。
WIZ : 素敵な嘘へご案内
【巧みな話術】を披露した指定の全対象に【今話された内容は真実に違いないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
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●レプ・ス・カム
「悪夢化を抑えてしまったんだ? 困るね、非常~に困るよ」
ひょっこりと姿を現したのは、ウサギ耳の女……猟書家、レプ・ス・カム。
「私は、ある物を探すために、このフェアリーランドに来ているんだよね。フェアリーランドを悪夢化してるのは、それを見つけるための手段に過ぎないんだ。別に嫌がらせとかじゃなくて、目的のためにはやむを得なかったんだよ」
ぺらぺらと、レプ・ス・カムは喋り始める。
「世界を救うために、どうしてもそれが必要なんだ。目的は一緒だよね? だから、このフェアリーランドを私がもう一回悪夢化するのを、大人しく見ててよ。大丈夫、そこのフェアリーは死んだりしないから」
――虚実を織り交ぜた、話術だ。鵜呑みにしてはならない。
後方では、ティキルが祈るように手を組んで、猟兵たちを見守っている。
このフェアリーランドを完全に悪夢化から解き放ち、ティキルを救うために、この猟書家を倒さなければならない。
猟兵たちは、身構える。
馬県・義透
◎
引き続き『侵す者』
武器:黒燭炎
お主自身は知らぬだろうがな。すでに何度か交戦しておるのよ。
しかも、主にわしがな。騙されるかよ。
結界術をクモの巣のように展開。
姿消せども、その熱源と音は消せぬ。結界にも引っ掛かろう。
黒燭炎での二回攻撃。一度目はなぎ払っての体制崩し、二度目は指定UCを使用する。
そういえばな、実家と養子先は同格で。
で、実家の清石家当主は、当たり前のように春房殿でな。まあ長男であったし、清石家向きの浄化能力持ちであったし。
わし?『魔断ち』能力持ちじゃったから、『馬舘』へいったわけよ。
まあ、何度か話したが…ある時、振り向いたら。orzな体勢でいたな。
三人(それ、他人行儀で崩れ落ちたやつ)
●魔断ちの狼
「騙されるかよ」
義透が……『侵す者』が言い放った。
「お主自身は知らぬだろうがな。既に何度か交戦しておるのよ。しかも、主にわしがな」
「へえ? その節はお世話になりました、とでも言っておくべきかな?」
言ったレプ・ス・カムの姿が、周りの風景に溶け込むように、消える。
そこで義透が片手を掲げると、周囲一帯に結界が展開された。
まるで蜘蛛の巣のように広がった、結界。その一角で、ばちっ、と火花が散った。レプ・ス・カムが結界に掛かったのだ。
「そこか」
義透は、黒いスピアを手にし、駆ける。
まず、敵の体勢を崩すことを狙って、横薙ぎの一撃を仕掛けた。確かな手応えが返る。
続く攻撃は、ユーベルコードだ。
四天境地・『狼』――ただ一点に力を込めての、破壊。
空を裂いて鋭く突き出された、黒いスピア『黒燭炎』は、ざくりとレプ・ス・カムに突き刺さり、その身を破壊する。
「ぐぁ
……!!」
悲鳴が上がり、レプ・ス・カムの透明化が解けた。
腹部を押さえ、うずくまっているレプ・ス・カム。その隙に義透は、ティキルへと声を掛ける。
「そういえばな、実家と養子先は同格で」
「はい」
「で、実家の清石家当主は、当たり前のように春房殿でな。まあ長男であったし、清石家向きの浄化能力持ちであったし」
「そうなんですね……あなたはどうだったんです?」
「わし?」
自分を指さす義透……『侵す者』。
「『魔断ち』能力持ちじゃったから、『馬舘』へ行ったわけよ」
「なるほど。その後、春房さんとの関係はいかがでしたか?」
「まあ、何度か話したが……ある時、振り向いたら」
義透は、黒燭炎の穂先で、レプ・ス・カムの方を示した。
「ちょうど、今の彼奴のような体勢でいたな」
地面に両手両膝をついた、四つん這いの体勢である。
(「「「それ、他人行儀で崩れ落ちたやつ」」」)
義透の中の他三人が、思った。
「そ、それはそれは……」
周囲の悪夢化が抑えられてゆく――ティキルが楽しい気分になってきたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
黒城・魅夜
ロッテさん(f29078)とご一緒に戦いましょう
ですがロッテさんが少し熱くなってしまっているご様子
「優しさ」と「祈り」でロッテさんに語り掛けます
お気持ちはわかりますが闘志は深く胸に秘め己を研ぎ澄ませましょう
ええ、あの愚かな子兎が許せないのは私とて同じなのです
炎の攻撃を「見切り」で最小限のダメージに抑え
受けた傷を逆に利用してそこから噴き出た血を霧に変え展開
身体の内側から引き裂く鎖を味わいなさい
そしてこの霧の効果はもう一つ、五感を鈍らせることにあります
そう、鈍ったあなたが
ロッテさんのキャバリアにロッテさんが乗っていないことにさえ
気づかないほどにね、ふふ……
ロッテ・ブラウ
魅夜さん(f03522)と一緒に
魅夜さんと合流出来てほんとよかった
駄目駄目だね
見せられた幻で、熱くなり過ぎてたみたい
まだまだボクは甘ちゃんってことかな?
静かに冷静に心は熱くが基本
常にハメる側に居ないとね
気を取り直して冷静に召喚した「告死蝶の群れの眼」を使って情報収集
「禍津血」を遠隔操作で先行させて会敵
無人のキャバリアに一人おしゃべりって滑稽だね
発動しない何故って表情もマジで滑稽
さて幻のお礼は熨斗をつけて返してあげる
ボクといっしょに死地を超えてきた相棒さ
ボクが乗ってなくても十分強いよ。さぁ「「天誅」」思いっきりぶん殴ってあげよう
えっ?また熱くなってる
?・・・・気のせい気のせい(笑)
●兎狩り
魅夜が目にしたのは、キャバリア『禍津血』だ。搭乗したロッテが、レプ・ス・カムを探している。
その荒い操縦の仕方から、ロッテが冷静さを失っていることが、魅夜には見て取れた。
「ロッテさん」
魅夜は語りかける。『禍津血』の頭部が、魅夜の方を向いた。
「お気持ちはわかりますが、闘志は深く胸に秘め、己を研ぎ澄ませましょう」
過ぎた熱さを鎮められるように、祈りを込めて。優しい声音で言葉を紡ぐ。
ややあって、『禍津血』のハッチが開く。中から、ロッテが姿を現した。
「駄目駄目だね。まだまだボクは甘ちゃんってことかな?」
先刻、幻を見たことで、あまりに熱くなり過ぎていたと、ロッテは自らを省みる。
「静かに冷静に、心は熱くが基本。常にハメる側にいないとね」
「ええ、あの愚かな子兎が許せないのは、私とて同じなのです」
調子を取り戻した様子のロッテを見て、魅夜は微笑んだ。
気を取り直して、ロッテはユーベルコードを発動する。
無数に召喚されるのは、告死蝶の群れ。羽ばたくそれらと、ロッテ自身の視覚を繋げる――『蝶の眼』で見下ろす。
これによって、彼はレプ・ス・カムの姿を発見した。
「あっちにいるね」
「わかりました。では、まず私が行きましょう」
微笑んだ魅夜が、漆黒の髪をなびかせて、猟書家の元へ向かう。
「猟兵……! 邪魔しに来たんだね」
腹部を押さえながら、レプ・ス・カムは魅夜を睨みつける。それから、改めて口を開いた。
「ここでクイズです! 『イチ足すゴは何でしょう?』」
「はい?」
魅夜は呆気に取られる。
(「単純な計算問題であり、ロクが正解? ……そんなはずはありませんね。ならば、イチゴ
……?」)
困惑する魅夜。その目の前で、レプ・ス・カムの傍に鬼火の塊が現れた。そこから、蒼白い炎の矢が魅夜へと飛来する。
「っ」
それを見切った魅夜は、身をよじった。炎の矢は、魅夜の脇腹を浅く抉るにとどまる。
「――鮮血の屍衣を纏いし呪いの鋼、喰らい尽くせ汚濁の塊」
魅夜の傷口からは鮮血が溢れ……それが、赤黒い濃霧に変わった。
ユーベルコード、『血に霞みし世界に祝福を捧げよ硝子の心臓』を、魅夜が発動したのである。
「これは? ……っぐ」
辺りを見回していたレプ・ス・カムが、不意に自分の腹部を押さえる。
別の猟兵から腹部に受けていた刺し傷が痛んだだけではない。
「……何? 冷たくて、重い、何かが――」
次の瞬間、レプ・ス・カムの腹から、鎖が飛び出した。
「あ、ああああぁっ!?」
引き裂かれる痛みに、猟書家は絶叫する。
「ふふ……」
霧の中の対象内に転移し、内側から引き裂く鎖だ。けれど、この鮮血の濃霧の効果はもう一つある。魅夜は口元を手で隠し、静かに笑う。
そこへ、ロッテのキャバリアが到着した。
激痛を押し殺しながら、レプ・ス・カムは、再びユーベルコード『兎の謎掛け』を用いる。キャバリアの中に搭乗しているであろうロッテへ向けて。
「……クイズです、『イチ足すゴは何でしょう?』」
……返るのは、ただ、静寂。鬼火の塊が、現れない。
「え……」
愕然とするレプ・ス・カム。
その頃、ロッテは――。
「無人のキャバリアに一人おしゃべりって滑稽だね。その表情もマジで滑稽」
キャバリアのコックピット内ではなく、『離れた場所』から、告死蝶の眼を通して戦場を眺めていた。
魅夜の鮮血の霧によって五感を鈍らされたレプ・ス・カムは、キャバリアが、誰も乗っていないと気づけない。
「さて、幻のお礼は熨斗つけて返してあげる」
共に死地を超えてきた相棒を、ロッテは遠隔操作する。搭乗していなくとも、その強さは十分。
「さぁ」
『禍津血』が、ロッテに従う。
「天誅」
キャバリアの拳が猟書家の体を捉え、思い切り殴り飛ばした。
「また熱くなっていませんか?」
魅夜が言う。その唇の動きを読んだロッテは、笑った。
「……気のせい気のせい」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アパラ・ルッサタイン
◎
ふんふんなるほどなるほど?
貴女にも事情があるんだねえ。
けれど、あたしはね
どんな理由があれど他者の範囲を侵すってのが気に食わないんだ
だから貴女を倒す
それだけ
ティキルさん
実はあたしは店を構えていてさ
店を荒らそうってヤツが
どんな事情を抱えていようが知らないっての、ねえ
此処はティキルさんが店主
……いや、ランドだから王様?
そのあなたを差し出したりしないから
どうか安心しておくれな
身を割くオパールからお出で
疾く広く走れ、炎よ
透明になろうが焔と熱波は唯在るものを焼く
声や炎の揺らぎに違和感がある場所が無いか注意
其処に貴女が居るだろうから
見いつけた、が出来たなら
全力で2手目を放とうか
悪夢はこれで終いにしよう
●ランプ屋の戦う理由
「ふんふんなるほどなるほど?」
レプ・ス・カムがぺらぺらと喋った内容を聞いて、アパラは相槌を打った。
「貴女にも事情があるんだねえ」
「そうだよ。だから、見逃して?」
「いいや」
アパラはレプ・ス・カムに対して、首を横に振る。
「あたしはね。どんな理由があれど、他者の範囲を侵すってのが気に食わないんだ。だから貴女を倒す。それだけ」
不機嫌さを隠そうともせず、アパラは冷ややかに言い放った。
「ちっ……残念!」
舌打ちしたレプ・ス・カムの姿が、かき消えた。
アパラは、後方のティキルへと言葉を投げる。
「ティキルさん。実はあたしは店を構えていてさ」
「お店、ですか?」
「ああ」
だからこそアパラには分かるのだ。自分の領域というのが、いかに大切であるか。そして、それを侵されることが、いかにやるせないことであるか。
「店を荒らそうってヤツが、どんな事情を抱えていようが知らないっての、ねえ」
アパラは一度、ティキルへ振り向く。
「此処はティキルさんが店主。……いや、ランドだから王様?」
「お、王様? いえ、そこまででは!」
両手を顔の前で振りつつ、慌てて否定するティキルの姿に、アパラは思わず笑顔をこぼす。
「そのあなたを差し出したりしないから、どうか安心しておくれな」
「もちろんです。信じていますよ」
明瞭なティキルの返事。周囲の悪夢化が、抑えられてゆく。
それから、アパラは改めて前を見る。猟書家は姿を隠したままだ。
アパラの身体を斜めに走る裂け目からは、色鮮やかなプレシャスオパールが覗いている。彼女はそこに、軽く手で触れた。
「お出で。疾く広く走れ、炎よ」
オパールから引き出された炎が、たちまちのうちに周囲一帯へ広がる。
「っ……!」
悲鳴を押し殺したような声が、アパラの耳に届く。その方向を見れば、炎の揺らぎ方が他と異なる場所があった。
「見いつけた」
二手目として放たれるのは、アパラの全力の炎。高温のそれが、レプ・ス・カムの全身を包んだ。
大成功
🔵🔵🔵
クレア・フォースフェンサー
世界を救うため――か
なるほど確かに、そう纏めてしまえば同じ目的のように聞こえるのう。
じゃがその中身は、わしらとおぬしらとでは大きく異なっておりそうじゃ。
是非、詳しく聞かせてほしいところじゃが……その言葉に信を置けぬ以上、何を聞いても無駄かもしれぬな。
まずはわしらの世界を救うため、骸の海に還ってもらうぞ。
光剣を構え、敵の動きを周囲の空間の揺らぎごと見切る。
姿を隠したとて、音や匂い、空気の流れを隠せぬのなら、丸見えと同じじゃ。
おぬしを殺すのは、もちろん嫌がらせなどではないぞ。
世界を救うという目的にためには、やむを得ないことなのじゃ。
大丈夫、今のおぬしが死んだとて、代わりはいくらでもおるのじゃろう?
●ひとかけらの真実
「世界を救うため――か」
全身に傷を負ったレプ・ス・カムの前に、クレア・フォースフェンサー(UDCエージェント・f09175)が立った。
「なるほど確かに、そう纏めてしまえば同じ目的のように聞こえるのう」
クレアは金色の眼をレプ・ス・カムに向け、『じゃが』と続ける。
「その中身は、わしらとおぬしらとでは大きく異なっておりそうじゃ。是非、詳しく聞かせてほしいところじゃが……その言葉に信を置けぬ以上、何を聞いても無駄かもしれぬな」
レプ・ス・カムが、猟兵と同じ意味で『世界を救おうとしている』のだとは、クレアにはとても思えなかった。そもそも、語られたその目的自体が、虚言の可能性が高い。
「まずはわしらの世界を救うため、骸の海に還ってもらうぞ」
光の剣をクレアは構える。その眼前で、レプ・ス・カムの姿がかき消えた。
クレアが動じることは、ない。
「丸見えと同じじゃ」
彼女の見切りの技は、ユーベルコードの域に達している。レプ・ス・カムがいる、その周囲の空間の揺らぎなど、少し本気を出すだけで簡単に見える。足音も、血の臭いや焦げ臭さも、空気の流れも。全てがはっきりと、レプ・ス・カムの位置を示していた。
駆け寄ったクレアは、まず体術による足払いをレプ・ス・カムにかける。尻餅をつく音がした。
「おぬしを殺すのは、もちろん嫌がらせなどではないぞ。世界を救うという目的のためには、やむを得ないことなのじゃ」
レプ・ス・カムが言った言葉を、クレアは、ほぼそのまま返してみせる。
「……くっ」
「大丈夫、今のおぬしが死んだとて……」
光剣を、振るう。
「――代わりはいくらでもおるのじゃろう?」
猟書家の首が、宙を舞った。
同時に、フェアリーランドは、完全に悪夢化から解き放たれてゆく。
それから、空から小さな何かが降ってきた。
「む?」
クレアが受け止めて見てみると、それは一本の、輝く鍵であった。
「探し物というのは、本当じゃったのか。何の鍵じゃろうのう」
クレアの手の中で、鍵はきらきらと輝いていた。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2021年01月15日
宿敵
『レプ・ス・カム』
を撃破!
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