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アルダワクリスマス準備祭〜雪兎の幻〜

#アルダワ魔法学園 #戦後


●アルダワで、クリスマスのお話を
 白い雪が舞い散る幻想的な光景が、グリモアベースの一部屋で起こっていた。
「来てくれてありがとう」
 雪の様に白い肌と氷のような髪をした妖精、ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)。
 彼女はグリモア猟兵で、招待した皆を待ち構えていた。

「アルダワでクリスマスパーティの準備を募集中!」
 との張り紙を見た猟兵皆様方を待ち構えていた。

 今はクリスマスのシーズン。当然アルダワの面々も浮足立つのだ。
「えっとね、アルダワさんの大広間の一つでね、おっきなクリスマスツリーが飾られるの!それでね、飾りつけに『雪のランタン』っていうのを使うんだって。ピカピカ光って、きらきら雪が降るんだよ」
 しかし問題が発生したのだ。
「雪のランタンはね、作る時にね、雪の妖精さんの力を借りるみたいなの。でも今年の雪の妖精さん、みんなダンジョンに引きこもって出てこなくなったんだって。それでアルダワのみんなで捕まえて、雪を降らせてもらうようお願いすることになったの」
 するとポーラリアは空中に手をかざす。
 かざした手からきらきら舞う雪が、何もない所に白い幻を映し出す。
 雪の中、舞うようにはしゃぐ白い妖精達の幻……その中心に、兎耳のフードを被った少女らしき白いシルエットがあった。
「そんな話になったんだけど、なんだかダンジョンの……妖精さんがいるところに災魔さんがいるみたいで、りょーへーさんの力も借りたいんだって」
 災魔……オブリビオンがいるなら、猟兵の出番でもある。
 アルダワの方々にいい所を見せるチャンスかもしれない。

「アルダワ学園さんは冬景色でー、ダンジョンは雪景色!きっとゆるいお話になると思うから、たっくさん冬を楽しむといいの!」
 そう言ってポーラリアはベルの形をしたグリモアを取り出し、光らせると。
「それじゃあ、お手伝い、お願いねー!」
 猟兵達を転送していくのだった。
 冬の雪が舞うグリモアベースから一転、程良く暖かなアルダワ学園へ――。

●真っ白な世界の中で
 雪の中、息を一つ。
 白く冷たい、冷気の吐息。
「…………」
 ダンジョンの奥、真っ白な冬の世界で、飛び舞う妖精達の中。
「…………」
 雪空のような色をした防寒着を身に纏う、雪兎の少女達はただ静かに、触れた。
 そこにある白い雪に。優しく肌を撫でる冷たいぬくもりに。


古塔
●概要
 クリスマスの雪を降らせるために妖精達に力を貸してもらいにいくシナリオです。

●補足
 今回、貴方達猟兵は、アルダワ学園で「臨時教師」の立ち位置にあります。
 アルダワの生徒さんと交流を深めながら、ダンジョンに潜って一緒に目的を達成し、生徒達に経験を積ませる事が重要となっているそうです。

●生徒について。
 詳しい指定がありましたらその通りの方が出てきます。
 大体は、ガレージの『アルダワ魔法学園』にいる種族とジョブみたいな、人間、ドラゴニアン、ケットシー、ミレナリィドールの10代の方々が、クリスマスの準備をしたり、冒険に同行したりします。

●1章
 ダンジョンに冒険する前に、クリスマスの飾りつけを済ませるよう頼まれます。
 きっと帰る頃にはクタクタかと思われるので。
 転送された広場中央に巨大なクリスマスツリー。これを中心に生徒達と飾りつけを行ってください。
 また、クリスマスツリーにはプレゼント交換の一環で、思い思いのプレゼントを皆で飾り付けるそうです。
 これを機会に何か、素敵なプレゼントを作ってみてはいかがでしょうか。

●2章
 アルダワダンジョンで冒険です。雪を降らせる妖精達を捕まえに行きます。
 何故かはわかりませんが、今回はホワイトクリスマスのような雪原世界のフロアの様です。
 いたる所に妖精達が潜み、悪戯して追い返そうとしてきます。
 生徒達と一緒に、がんばって説得、もしくは捕獲をお願いします。
 万一倒しても、アルダワの職人さんが妖精達の素材を使った雪のランタンを作るそうです。

●3章
 集団戦です。
 雪妖精達の集まる中心に、何かいるみたいです。
 いえ、災魔です。災魔なのですが、その……とても、脆く、儚い存在です。
 どうするかはお任せします。
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第1章 日常 『探そう、プレゼント!』

POW   :    カッコいい武器、防具を探す・作る!

SPD   :    美味しそうな食べ物を探す・作る!

WIZ   :    お洒落な装飾品を探す・作る!

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 まず初めに猟兵達が辿り着いたのは煌びやかな大広間だった。
 そこは暖房めいた魔法がかかっているのか、淡く光って暖かい。
 アンティークな西洋の、高貴な壁に囲まれた広い空間。その中心には巨大なクリスマスツリー。
 周囲の壁にはどこまでも上に上がれそうな階段と回廊が一定の高さ感覚でかかっており、回廊には点々と別の棟へと続く扉が。
 更に天井付近の壁も凝っており、魔術かそれとも技術か。夜空のように暗く、星が瞬くものとなっていた。
 まだ少し、ボリュームが寂しい所だが。

 錆びたような音がちょっとした後、クリスマスの音楽が鳴る。
「あ、ちゃんと動いた!テステス……上手く鳴り続けるか知りたいから、ちょっと流れるよ」
 ガジェッティアの人間が蒸気レコードを起動した音だった。
 音に伴い近くのサンタ人形がピカピカと光り出す。

「にゃ!先生こんにちはだにゃ!」
 ケットシーとミレナリィドールの子らが猟兵達に駆け寄る。
「お願い事は聞いての通りと思いますが、『それ』は最後の仕上げにしたく」
 『それ』とは雪妖精の件だろう。
「当日も残り短いから、飾りつけのお手伝いをしてほしいのにゃ!」
 猟兵の協力、それも埒外の技術があればもっとアルダワのクリスマスは華やかになる。
 アルダワ生徒達は何でも聞く姿勢を取っていた。

「あ、丁度良かった。すみません、プレゼントはもう決めてきましたか?」
 ツリーにリースやベル等、様々な飾りつけをしていた。ドラゴニアンの少女が舞い降りて質問をしてきた。
「ここでは、当日にツリーに飾ったプレゼントを皆で取り合うプレゼント交換をしているのです。思い思いのプレゼントが続々と届いているのですが……」
 ツリーには既にいくつかのプレゼント箱が点在していた。
「せっかくなので先生も何かプレゼントを作っていきませんか?あ、生ものは1週間は保存の効くものでお願いします。……重いものは大丈夫です。このツリー特殊で丈夫なので。」
 広場から少し離れた所に、主にガジェッティアを作成する工房があるようだ。
 今はフリーで解放されている。

 さあ、さあ。
 ここで、どのようなクリスマスを作りましょう。
 暖かで、穏やかな冬の日常、どうぞお過ごしを。
フリル・インレアン
ふわぁ、クリスマスツリーにプレゼントを飾るんですって、アヒルさんプレゼントは何にしましょうか?
ふぇ?聞かなくても決まっているんだろうって、決まっていますけど気分ですよ。
私は毛糸の帽子です。
これから寒くなってきますから温かく過ごしてもらえるようにです。
はい、アヒルさん、プレゼントを高い所に飾ってくださいね。




「ふわぁ、クリスマスツリーにプレゼントを飾るんですって、アヒルさんプレゼントは何にしましょうか?」
 冬の装いを身に着けたフリル・インレアン(f19557)がきょとんとしてツリーを見上げる。
 アヒルさんは…フリルの手に抱えられたアヒルのガジェットは、翼をぱたぱたと広げ何がかと意思表示している。
「ふぇ?聞かなくても決まっているんだろうって。決まっていますけど気分ですよ。クリスマスのシーズンなので」
 そう言うとプレゼントの箱を探し始める。
 アルダワ学園の方曰く、中身を秘匿する意味もあってアルダワの工房でそういうのはやっていると聞いたフリルは一転工房へ。

 工房の中は仕切りで仕切られており、隣で作業している人が見えない作りになっていた。
 入り口で好きなデザインのプレゼント箱を受け取ると、その内の1つで作業を開始する。
 暖かい乳白色の毛糸で、アヒルのようなニット帽子をあみあみと。仕上げに頭頂部をアヒルさんの頭のはねっ毛のようなもので仕上げると、それを箱に丁寧に畳み、詰めていく。
「私は毛糸の帽子です。これから寒くなってきますから温かく過ごしてもらえるように、です。」
 きゅっとした口でどこか満足そうな目をして、フリルのプレゼントは出来上がった。

 所再び変わって、あのツリーの所までやってきたフリル。
「はい、アヒルさん、プレゼントを高い所に飾ってくださいね。」
 プレゼントの箱を乗せたアヒルさんはかしゃりかしゃりと羽ばたき動き、ツリーのてっぺん、星に届きそうな付近まで届く。
「……そういえば、どうやってプレゼントを括り付けるのでしょう。」
 プレゼント箱の頭には引っかける紐と輪が付いている。それを枝に入れる感じだろうか。
 アヒルさんガジェットはてっぺんの小さな枝の一つに頑張って紐を引っかけようとする。
 輪は小さく、あっちへぱたぱた。こっちへぱたぱた。
「ふぇ…アヒルさん、大丈夫ですか?」
 おどおどとしながら固唾を飲んで見守るフリル。
 軽いせいかプレゼント自体のバランスが崩れやすい。
 上下に飛ぶアヒルさんによって小さく跳ねたプレゼントは、遂にバランスを崩して下に――。
 といったところで、飛んでいたドラゴニアンの少女がそのプレゼントをキャッチした。
「そこに括り付けるの?」
 黒い鱗で赤い瞳のドラゴニアンの少女は、枝の一つに飛んでとまるアヒルさんを追いかけ、その枝に輪を通す。
 きゅっと紐を引っ張るとあっという間にきつく締まり、プレゼントが括り付けられた。
「ふわぁ、ありがとうございます。」
「…ん。」
 フリルは余り人前で喋るタイプではないようだが、このドラゴニアンの少女もそんな感じだった。
 アヒルさんガジェットを抱えて降りてきたドラゴニアンの少女にお互い会釈する。
「…素敵な、クリスマスを。」
「あ、はい。素敵なクリスマスを。」

 飾られたそのプレゼントは誰に届くのか。
 おどおどして行ってしまった今のあの子に届いてもいいかもしれない。
 なんて事を心の片隅にふと浮かびつつ、フリルは再びツリーを見上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リサ・ムーンリッド
雪乃さん(f06012)と
ここのダンジョンはいろんな地形があって楽しいよねぇ
時々、実験施設みたいなのもあるからその調査も楽しくてね
と無駄話をしていたら、肘で小突かれるなど

おっと脱線したね
ふむ、ならばこれを見せよう
広場の地面が、この成分なら…
慣れれば魔法陣は要らないんだけど、臨時教師としてお手本も兼ねて
魔法陣で魔力の流れの設計図を書いて、魔力を流し込めば…
最小限の力で素早く質のいいゴーレムの完成だ
限定的な振動による粒子の分離で揃った粒を魔力で集めて吸い上げることで最小限の消費で…ん?
何故そうなると聞かれても…物理法則だからなぁ
まあ、錬金術の極意だよ
ささ、飾り付けを進めるよ
アドリブアレンジOK


御影・雪乃
リサ(f09977)さんと
そういえばしばらく母校に帰ってませんでしたね
さて、私の魔法の師にあたる人を連れてきました
変な人ですが、魔力制御の腕は確かなので得るものはあると思います
さ、リサさんどうぞ

(関係ない話をするリサへビシビシと肘)
無駄話してないで、ツリーの飾り付けついでに何か魔法のお手本見せてください

(リサが物理法則の説明を始めたのでまた肘をびしびし)
そういう難しいのはいいですから…

…話はそれましたが、これは闇雲に魔力だけを使うのではなく、魔力以外の力も利用しましょうという話ですね
身近の何気ないものをよく観察すると、こういうのに気づけたりします
と解説しつつ飾り付けを手伝い
アドリブアレンジOK




「そういえばしばらく母校に帰ってませんでしたね」
 賑やかく沸き立つアルダワのクリスマス準備祭に、氷の様に冷ややかな青いミレナリィドールが舞い降りた。
「あっ、あなたが臨時講師さん?」
 アルダワ生徒が駆け寄ると、そのミレナリィドールも会釈を返した。
「あ、どうも。雪乃(ウィンター・ドール・f06012)と申します。」
「本日は宜しくだにゃあ!猟兵さんの意見も聞けばもっと華やかなクリスマスになると思って。何かいい案とかあるかにゃ?」
「…まあ私も一応講師みたいですが、こういうのはちゃんとした方に頼んだ方がいいでしょう。」
「というと?」
「私の魔法の師にあたる人を連れてきました。何やら手伝いたい気分で一杯みたいなのでお役に立ってくれるでしょう。さ、リサさんどうぞ。」
 すると雪乃は背後から駆け寄ってくる人物から横に逸れ正面を譲る。
 慎まやかな緑と白の軽装を纏う長い金髪のエルフがそこに現れた。
「はいはい!御呼ばれ致しましたるはこの私。リサ・ムーンリッド(知の探求者・エルフの錬金術師・f09977)でございます。みんな、今日はよろしくね!雪乃っちも おぐっ!?」
 雪乃を雪乃っちと呼ぼうとした時、リサは脇腹を肘で小突かれた。

「(小声で)今回は雪乃っち禁止です。皆が見ている所ですので」
「(小声で)えぇ~?そりゃあ今回は臨時教師って建前だけど、雪乃っちは形式ばるんだねぇ。じゃあ何で呼ぼうか」
「雪乃『さん』で」
「『さん』」
 年が、高さ(身長)が、リサよりも雪乃の方が幼げと見てわかる。
 だが今回立場が同じなのだ。
「臨時教師の雪乃として立っていますので、どうか。」
「ん~可愛いなぁもう雪乃っt」
 再び脇腹に肘が入る。
「雪乃『さん』です。…改めて宜しくお願いします」
 リサの脇腹を肘で小突きながら、雪乃はアルダワの生徒達に挨拶した。

「いやぁ、今回はアルダワかぁ。ここのダンジョンはいろんな地形があって楽しいよねぇ。時々実験施設みたいなのもあるから、その調査も楽しくておふっ!」
 手を広げアルダワの感想を突如話かけたリサに、びしり、雪乃が肘で小突く。
「無駄話はいいですから、飾り付けついでに魔法のお手本を何か見せてください」
「おっと本題だね。ふむ……」
 リサは少し考えた後、地面にうずくまり、懐からチョークを取り出して幾何学模様を描きだしていく。
「急にどうしたのです?」
 ミレナリィドールの生徒が説明も無しに行動するリサに声をかけようとするが、雪乃が止めた。
「多分これは労働力を作ろうとしてるのだと。簡単なゴーレム生成ですね。」
「ゴーレム自体なら作った人が操作する感覚で複数人が協力してやってるにゃ。ほらあそこ」
 ケットシーの生徒が指さす先、アースジャイアントのようなゴーレムが、3人がかりで動かして高い所の飾りつけをしているのが見えた。
「あれよりもすごい奴かにゃ?」
「とりあえず見守りましょう。変な人ですが、魔力制御の腕は確かなので。」

「広場の地面が、この成分なら…いやなに、慣れれば魔法陣は要らないんだけど、今回は臨時教師としてお手本も兼ねておこう」
 リサがチョークで描くそれは魔法陣の様に見えて、科学的なものだった。
 設計図だ。人型のゴーレム生成する為の。
「さあさあ、錬金術の一端を今お見せしよう♪」
 出来上がった魔法図形に手を置くと、床に書いた設計図が光る。すると地面が砂の様に宙に吸い上げられ、巨人の形を成していく。
「よし!最小限の力で素早く質のいいゴーレムの完成だ」
 出来上がった土のゴーレム……否、それは地中の砂利を固めて出来たような感じだった。
 それが1体、また1体と、アルダワ生徒達が作ったものより大きく柔らかそうな形で出来上がる。
 何人かのアルダワ生徒の眼がきらめき立っていた。
「ふふん。これが私の実力さ!今のこれは限定的な振動による粒子の分離で
「揃った粒を魔力で集めて吸い上げることで最小限の消費で作り上げているのですね!」
 生徒の少女が突如挙手した。
「おっ、分かる人いる?」
「吸い上げるラインが出来ていますよね。陣のラインごとにこれが筋肉、これが骨組みで…」
「そうそう。土と言っても成分は砂に石灰と様々な材質が混ざり合ってるからねぇ。粒ごとに分けてらせん状にする事で効率良く吸い上げて、この陣のここで一気に……」

「…………」
 ついていけないといった目で見ているのは、リサの隣にいる青い少女の魔導人形、雪乃だ。
 雪乃は冷たい瞳を流しながら、少し頬を膨らませていた。
 彼女はリサが何やら難しい話をし始めたのでまた肘で小突こうとしたのだが、思ったより生徒の食いつきがいい。
 それに複雑な感情を抱いていたのだ。
 まあ、仕方が無い。
 ここはアルダワ学園。魔法も魔力も前途多望の若者達が集まる場なのだから。
「むう…」

 しかしふと横を見ると、ついていけない生徒達がいた。
 彼らは予習のヤマが外れた授業の如く、リサと専門的な生徒達の話に何が何やらぽかんとした顔をしている。
「…そうですね。これは闇雲に魔力だけを使うのではなく、魔力以外の力も利用しましょうという話です」

 雪乃は突如懐から水筒を取り出し、ツリーのふもと、低い位置のプレゼントをかける棒を拾って生徒達に見せた。
「普通に魔法で作ってもいいのですが、」
 そして棒で何か四角い……否、台形?的な図形を描き出し、図形の内側の槌を足で掃き除く。
 そこに水筒で薄く水を流し込み……雪乃は薄く張った図形水に手を触れ、冷気を流し込む。
 ぱきり、氷の板が出来上がり、持ち上げて見せた。
「何だと思います?」
「氷の板…?」
「窓かにゃ?」
「結構細長い…あ!分かったかも。」
 ドラゴニアンの女性が雪乃から氷の板を受け取ると、階段の手すりを支える棒の間に差し込んだ。
「ぴったり!これ螺旋階段の柵を氷で埋めてステンドグラス見たいにする奴?」
「まあ、そんな感じです。同じ形、それが大量にある場合、一つ一つに魔法をかけるよりもこうして。」
 更に水を張り、凍らせて板を作る。その上に更に水を張り、凍らせる。
 何層にも出来上がった、同じ図形の窓のような氷板がコピー用紙の様に量産されていく。
 ちょんと足でそれを小突けば、1枚1枚が綺麗にスライドされて取り出しやすい形に少し滑りズレた。

「とまあこんな感じに。身近の何気ないものをよく観察すると、こういうのに気づけたりします。…それでは飾りつけを開始しましょう」
 ふとリサを見やる。彼女はまだアルダワ生徒達と話に夢中になっていた。
「制御の仕方なんだけどね、地中の砂は一見固まっているように見えて実は常に動こうと、どこかしらにベクトルが働いてる。地震が地中のプレートのずれで起きるみたいにね。こうして触れてみて計算で見極めて……えっこれ分かる?そうそうだからこのベクトルのこの粒子だけを集めて行動神経の基幹にすれば」
「もういいでしょうリサさん。飾りつけを」
「おっと!?まあそうだね時間はまだあるけど、雪乃っt」
 びしびし。雪乃に脇腹を小突かれるリサ。
「あうっ…雪乃さんがそういうなら、話がてらに飾り付けを開始しようか。」

 そうこうしていてもアルダワ生徒はしっかり動く。
 階段の手すりにふわふわの綿飾りを氷柱の様に取り付けたり、ゴーレムやドラゴニアンによって重いプレゼントや大きな飾りがツリーに飾られたりしていった。
 その作業はリサの量産したゴーレムによってさらに効率を進められていた。
「ふむ、此処は天井までがとても高いね…よし、更に気前良く錬金術の一端をお見せしようじゃないか♪」
 リサは更に長い設計図を地面に描いていく。
 そこに魔力を流し込むと……なんと、とても胴の伸びる伸縮自在のゴーレムが出来上がった。
 仕上がり時点では身長の2倍までだった物が、粘性の土を腹に凝縮した結果、縦に伸縮していく機能が付いた。
「これなら天井まで届くはず。さあそれを貸して。吊り下げて!ゴーレムくん!」
 ゴーレムは天井にも光る風船のような飾りをつけ足していくのだった。

 それとは別のゴーレムが、壁を塗る巨大なペイントローラーを持たせて塗装しようとしている。
 そこに雪乃が近づいた。
「…まあ、少しくらいは協力しましょうか」
 ふぅ、と、氷の吐息をローラーにかける。
「あ…すみません、今ちょっと雪は」
 アルダワの人間が心配そうに声をかける
「何かまずいのですか?」
「雪の妖精が雪の魔力を独り占めしているせいか、今ここではすぐに溶けてしまうんです。どんなに凍らせても1分と持たず」
「ちょっと気になる事を聞いた気がしますが、まあ十分です。1分なら」
 ローラーには雪結晶のような氷がまばらに盛り上がっていた。
 それを使ってゴーレムが壁を塗装していくと、雪結晶の部分だけ塗装がされず。
 壁は雪の夜空の景色の中で、雪結晶の模様をくりぬいたような出来上がりとなっていた。

「そういえば雪乃っ…さん、クリスマスは楽しい?」
 一仕事終えたような顔でリサが雪乃に問うた。
 そこで雪乃はきっぱりと「ノーコメントで」と言おうと……して、少し考慮した。

 記憶が駆け巡る。
 恋華荘のあの人やこの人と、もう彼女は素敵な冬を、二人きりのひと時を、何度か過ごしていた、その記憶が。

「…そうですね、まあ、人並みには。」
「おっと、ミレナリィドールと言ってもやっぱり年頃だね。今年は二人きりのご予約等おありかな?」
「ノーコメントで」
「おありかな?」
「ノーコメントで」
「ん~? おありか」
 びしり。再びリサの脇腹を肘で小突く雪乃。
「な゛っ!……んもう。からかっただけなのに」
「そういうのいいですから。……その話は当日まで、公に言うものじゃないです。」
 冷たい表情にどこかほんのり染めたような、そんな顔で目を逸らしながら、クリスマスの飾りつけを進行していく雪乃達だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『氷雪妖精達の悪戯』

POW   :    妖精の悪戯なんかに負けない!気合で突破だ!

SPD   :    妖精達より素早い速度で捕まえる

WIZ   :    話し合ったら、悪戯を緩めてくれたり、従えたりできるかな…?

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●準備祭、あらかた完了。
 アルダワ学園の大広間は無難にクリスマスな仕上がりとなった。
 どこまでも続きそうなほど高い壁は上に行くほど暗くなり、雪結晶を散りばめた夜空が出来上がり。
 オーナメントの如く風船が浮き、ツリーには様々なクリスマスの飾りと、プレゼントが沢山。
 柔らかい地面の土は幾何学模様が刻まれてなんだか高級そうな床となり。
 階段には高級そうなカーペットが敷かれ、壁にかけられ螺旋の様に続く階段の手すりには氷……は溶けてしまったので、雪のような綿とほのかに輝く硝子(ガラス)で彩られた。

 後はこの広間に吊り下げる『雪のランタン』を飾り付けるのみとなった。
 雪の魔力がこもったそれを吊り下げ灯す事で、広間には夜空の中にランタンの星々が灯り、雪が降り注ぐ素敵なクリスマスの光景が出来上がるらしい。
 人や床に落ちれば溶け、ツリーにかかればホワイトクリスマスの如く積もる。いい塩梅に、そう言った不思議な雪が灯る。

●雪妖精の集い場
「ここが今回のダンジョンだね!」
 猟兵達はアルダワダンジョンの1フロアに来ていた。
 そのダンジョンは入り口からして冷気が零れ出し、ふわりと雪の混ざった風が吹く。
 ちょっと中の様子を見るだけでも終始雪が降っている事が分かり、奥には厚く積もった雪が見える。
 そこは冬とはいえ既にUDCアースの日本の北方よりも寒そうに見えた。
 暖かなクリスマスの大広間とは一転、防寒対策は必須かもしれない。

 猟兵達はそんな氷雪フロアの奥へ進む……するとどういう事だろうか。
 眼前に見えるのは、クリスマスツリーの並木通りだ。
 それも全て雪で出来ている。
 雪で出来た真っ白なクリスマスツリーに、赤、青、黄、緑と様々な色に彩られたオーナメントの飾り。
 積もった雪の中にはサンタ帽子を被った雪だるまなんかもいる。
 雪と不思議な飾りが盛られた、ホワイトクリスマスの雪原世界のようだ。

 そんな雪の中、よく目を凝らすと、ひょこり、ひょこりと顔を覗かせる少女のような小人がいた。
 彼女達は雪で出来たような肌と服を纏い、氷で出来たようなアクセサリーや翅を持ち、淡く白く輝いていた。
 雪妖精だ。
 なにかひそひそと声が聞こえる。

「来ちゃったよ 来ちゃったよ」
「どする…?」
「多分あの子の仕業なの」
「でもでも、渡すのやだよ?」
「うん……」
「でもでも、おとなしく掴まっても、激しく抵抗しても、多分悲しむ人ができちゃうの」
「じゃあ、どする…?」

 ひそひそ声が止んだ。
 すると猟兵やアルダワ人達を襲うように、突風のような吹雪が吹いた。
「こんにちは、猟兵さん」
「こんにちは、クリスマスへ」
 吹雪に乗って、現れては消える雪妖精。
「突然だけど――」
「思いっきりひんやりしてもらうの!」

 ふっと消える雪妖精達。
 だが気配はする。
 彼女達は雪に隠れて、これから何らかの悪戯を参戦者達にしでかすようだ。

 急に冷たい吹雪を押し付け、衣服を氷に変えたりする。 
 足元が急にぱきぱきと凍り付いてアイスバーンみたいになる。
 どさどさと、積もった雪塊が雪崩の様に落ちてきたりする。
 吹雪と共に急に服の中に入り込み、冷たい氷を押し付けてきたりする。
 ごろごろと雪玉が転がってきたりもする。
 実は所々に薄い氷の床があり、割って下の水に落とそうとしてきたりする。

 それはどこか、猟兵やアルダワ人をこの先に進ませようとしたくないようにも見える。
 どういう事なのだろう?目的の為にも、悪戯を掻い潜って捕まえてみよう。
 別に無視して先に進んでもいい。奥にはなんだかもっと沢山雪妖精がいるみたいだから。
 別に倒してもいい。ここの妖精達は冬が終われば儚く消える。
 倒して出た素材は雪のランタンの加工素材にできるだろう。


 薄暗いホワイトクリスマスのフロアの先、雪の霞によって見えない遠方距離。
 そこに何か、影が見えた。
 妖精達が舞う中で、妖精達よりも大きな、兎耳の生えた、少女のような姿が。
御影・雪乃
リサさん(f09977)と
(しばらくちょろちょろと妖精を追いかけるが上手く捕まらず)
(【氷結耐性】もあり寒さによる被害は無いが、不機嫌そうにムスッとする)
こいつら全部氷漬けにしてやりましょうか…
…冗談ですよ
…ふう、ところでリサさんも働いてください
人手が必要なのですから
と、言っていたらあれよあれよと…
こういう詐欺師みたいなことやらせたらほんと一級品ですね…魔術の制御もすごいのですがこう、ゴミのようなものを魅力的に見せる類の口のうまさが…
さて、カンテラ作りに協力してくれそうな妖精さんに、カンテラを作ってもらいましょう
戦闘以外では、私はあまり役に立てませんからね


リサ・ムーンリッド
雪乃っち(f06012)と
おお、寒い
雪のランタンを作るために妖精のちからを借りるのだったかな
しかしどうも非協力的のようだ

寒さが平気な雪乃さんが元気よく追いかけてるけれど、なかなか大変そうだ
え、見てないで手伝えって?
うーん労働は苦手なんだけどなぁ
と、おもむろに道具を広げて『錬金術師の営業タイム』を開始
要は、関心を持ってもらい、技術投資…つまり手伝いたくなるように心を動かせばいいんだね
さあ楽しい実験タイムのスタートだ
さあさあ、ここに取り出しますのは――
【演技】や【言いくるめ】も交え【ブームの仕掛け人】となれるようワクワクするような実験をしよう
雪の妖精さんはどんなものに興味を持ってくれるかな?



●雪妖精、手強し
 ホワイトクリスマスのダンジョンの中、アルダワ生徒と雪乃は雪妖精を追いかける。
「そこにゃ!」
 ケットシーの子が逃げ回る雪妖精を捕まえに飛び込むも、ひょいと躱される。
 地に足を着けた瞬間、その足場が砕け、下にたまった氷の水に沈んでしまう。
「にゃー!?」
「大丈夫ですか!?」
 すぐさま巨大な腕のガジェットで引き上げるアルダワの少女。
「ぶるぶる…がちがち…」
 ケットシーの子の毛並みは凍り付き、とても寒そうだ。
 そうして引き上げている中、不意に少女のお尻が寒くなった。
「…え?きゃっ!?」
 くすくすと笑い声がする中、少女のスカートがめくられ、ぺチンと冷たいものが当たった。
 雪妖精がスカートをめくり、下着を見せたままのスカートを冷たい手による冷気で凍らせたのだ。
「ちょっ、やめ、凍って…もっ戻せな…きゃー!」
 慌ててスカートを叩く少女、操作を誤ってガジェットを離す!
「にゃ、にゃー!?」
 再び落ちようとするケットシーだが、水に落下する事はなかった。
 ふっ と、一瞬だけ吹雪が吹く様な音がすると、地面の水が凍り、スケートをする様に高速滑走して通りがけにケットシーを抱え、場所を離すミレナリィドール。
 雪乃だ。
「あ、ありがとうだにゃ!」
「…どうやらお互い足元には気を付けた方がいいですね」
「にゃ?」
 見ると、雪乃の頭にも雪が覆いかぶさっていた。何かあったのだろうか。

「そっちへ逃げました」
 他のミレナリィドールの証言に合わせ、ぱたぱたと逃げる雪妖精を、狩りをする猫の様に追いかける雪乃。
 雪妖精は一瞬地に落ちると、こっそりと地面を凍らせ、飛翔する。
 緩急のついた動きと氷の床に雪乃は足を取られるも、すぐさまバランスを取り戻し、アイススケートの様にアイスバーンを滑走する。
 そうして飛び上がる雪妖精に手を伸ばそうとすると、雪妖精が細かな氷の飛沫を雪乃の顔にぶちまける。
「っ」
 視界を一瞬惑わされた雪乃。その瞬間別の雪妖精が足元を透明な氷で盛った。
 雪乃は氷の段差に足を取られ、転ぶ。
 転んだ直後、どさどさと頭に雪が降りかかる。
 近くの雪もみの木から雪の塊を雪妖精達が落としてきたのだ。
 雪まみれの状態で、むっとなって木を見やるも、くすくすと冷たい笑い声を残しながら雪妖精達は一目散に逃げ出した。

「て、手強いですね」
 トリニティ・エンハンスの炎で何とか凍ったスカートを解凍した少女が雪乃を起こす。
「こいつら全部氷漬けにしてやりましょうか…」
「にゃ、にゃ、そ、それは最後の手段にして欲しいにゃ!?」
 雪乃が本気を出せばきっと雪妖精も、辺り一面も氷漬けになるだろう。
 そうなれば雪妖精は物言わぬ氷となり、手伝うどころではなくなるし、素材も氷になって採取が難しい。
 何より生徒としてついてきた周りのアルダワ生徒も一緒に氷に閉じ込められかねなかった。

「あはは、災魔でないからって手を抜いてたら、見事に遊ばれたという感じかな?」
 リサがからかった。彼女は近くで何か準備している。
 カウンター的な台のようなものを設置し、クロス(布)の敷かれた台の上には、何やら色々と?

「力の制御はできないのかい?頭だけ解凍するとか、そういう器用な事は?」
「あいにくと加減が効かないもので。」
 さらに言えば今現在の捕まらなさに機嫌が悪い。こうなった雪乃が氷の力を振るえば、どうなるか分かったものではない。

「こちらは人手が必要で仕方ないのですが。リサさんは働かないのですか」
 ぶーすかと頬を膨らませながら雪乃は問う。
「あいにくと労働は苦手なんだよねぇ。でも折角だし、今準備を整えている所だよ。…できた」
 台の上に置かれたるは、錬金術で作り上げた様々な商品……マジックアイテムだった。

●リサのマジックアイテムショー
「さあさあ雪の妖精さん、寄って、見て、ご覧になって。楽しい実験タイムを始めるよ!」
 リサは両手を広げ、ぼんやり光る錬金アイテムに何かしようとしている。
 その様子をなんだろうと、興味深そうに物陰から見る雪妖精達。

「ここに取り出しますのはスノードーム。中にはサンタさんが入っているね」
 きらきらと細かい紙飾りの雪が舞うサンタさんのスノードームを掲げた。
「サンタさんの手の辺りにちょんと指をくっつけて…さてまずは、上に、ぐーんと」
 リサが指でスノードームをなぞると、中のサンタがそれに応じて動き始めた。
「勿論歩かせることもできるよ。下側の方を2本の指でくいっくいっとしてみると…ほら!」
 中のサンタがきこきこと歩き出し、雪原の様なスノードームの中を歩きだす。
 その様子を雪妖精達は遂に、体を乗り出し、台まで飛び、まじまじと見始めた。
「さてもう一つスノードームをご紹介。中にありますは雪だるまと、レンガ造りの小屋!」
 リサはまたしてもスノードームの下側を、今度はとんとんと叩く。
 すると中の雪だるまが跳ね上がり、雪の積もる家の上をぴょんぴょんとのぼり出した。
「…すごい」
「一体どうやってるの?」
 雪妖精達が食いついてきた。
「簡単さ!私の指と中の物が磁石みたいな反応を起こしているんだ。」
 リサは説明を始める。
「指に引き寄せる為のS極の魔力とN極の魔力を作って…おっと、慣れない、使えないアナタにはこの手袋が…今なら妖精サイズも…」
 説明を受け、スノードームを手に取り、手袋をはめたりして実際に動かしてみる雪妖精達。
 たちまちリサの商品に夢中になり、すっかり悪戯する気も無くなっていた。

「おっと、お代は結構だけど、代わりに働いてくれると嬉しいよ。具体的にはそうだねぇ、このランタンに力を貸してもらえると…」
「ランタン?」
「あっ、毎年やってる……でも」
「作ってくれるだけでいいんだ。ずっとランタンの中に居るとかそういうのはしなくていいよ」
「これ、『あの子』にもっていっていい?」
「あの子が誰なのかは知らないけど、もちろんいいとも!」

 リサの作戦は大成功した。
 懐柔された雪妖精は空っぽのランタンに不思議な雪の魔力を込めはじめ、どこかへ飛んでいった妖精は、その方角に進めば目的の災魔に逢えるという道案内を示していた。
 あれよあれよと事態を解決した様子を、雪乃とアルダワ生徒達はまじまじと見続けていた。
 
「ふふん、押してだめなら引いてみる。関心を持ってもらい、技術投資…つまり手伝いたくなるように心を動かせばいいんだよ」
 リサは鼻を鳴らして自慢げになっていた。
「こういう詐欺師みたいなことやらせたらほんと一級品ですね…魔術の制御もすごいのですがこう、ゴミのようなものを魅力的に見せる類の口のうまさが…」
「えーっ!何さ!これだって一生懸命に作ったのに!」
 だがスノードームは結構簡単な材料で作った為、材質は脆い。それも跳ねるとか歩くとか、単純な動きしかできなかった。
「でもまあ、スノードームの…おもちゃのブームが蔓延出来たのはいい感じかな。もう私達に妖精達は強力的のようだ。」
 1つ、2つ、スノードームと似たような、粉雪を起こして輝くランタンが、雪妖精達によって出来上がる。
 だがまだまだ数は足りなさそうだ。
「さあみんな、先へ進もう。こんな寒い所、早く切り上げないとだからね。雪乃っちもうぐっ!」
「…今回は余り役に立てませんでしたけど調子にのって雪乃っち呼びは止めて頂きたく」
「ゆ、雪乃さんも災魔には強いからね!はは。それじゃあ先へ進もうか♪」
「…あと寒さは素敵。雪も素敵。これくらいの寒さで暖を求めるのは心外。いいですね?」
「こだわるなぁ…」
 ちょっぴり苦笑いしながらも、雪とエルフの少女はアルダワ生徒を引き連れて、先へと進むのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アーレ・イーナ(サポート)
 サイボーグの戦場傭兵×咎人殺し、20歳の女です。
 普段の口調は「ボクっ娘(ボク、~君、~さん、だね、だよ、~かい?)」、敵には「冷酷(私、てめぇ、だ、だな、だろう、なのか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●サイボーグ雪を行く
「ボク、変な所に来ちゃった?」
 雪妖精達の悪戯に困らされていたアルダワ生徒達によって、猟兵、サイボーグの女性、アーレ・イーナ(機械化歩兵・f17281)が呼び出された。
 だがその依頼内容は戦闘ではなく捕縛、もしくは説得との事だった。
「まいっか。こういうのも新鮮だし。頑張るぞ!」
 赤茶の髪をなびかせて、煌びやかな雪のクリスマスフロアを闊歩していく。

「それっ、雪玉だー!」
 雪妖精達の雪玉が容赦なくぶつけられていく。
「そんなの効かないよ!」
 アーレ・イーナはがっしゃがっしゃと歩きながら、雪玉を物ともせず歩く。
 そして雪妖精が次の作戦をと逃げようとした時、アーレ・イーナのサイバーアイがぎょろりと動き、雪妖精達の動きを逐一サーチした。
「よーし、こうだ!」
 機械の内部からじゃらりと拷問具を取り出すと、長い鎖をしゅっと振りつける。
「きゃー!」
 いともたやすく雪妖精が一人掴まった!

「わ、わ、」
「貴方の事は忘れないからー!」
「ちょ、ちょっと、助けてー!」
 観念してぎゅっと祈るようなポーズを取ると、ユーベルコード級の吹雪を妖精は巻き起こした。
 だがサイボーグのアーレ・イーナは有り余る装甲で普通に耐えたのだ。
「えっと、あとはこのランタンに…使い方どうするんだっけ。とりあえず閉じ込めとこっと」
「ふぇ!」
 きゅっきゅとランタンを開いて、雪妖精を閉じ込める。
「あ、あたしに何をするの!えっちな本みたいな事するの!」
「どこで学んだ言葉かは知らないけどしないよそんな事!えっと、その雪のランタン?を、作って欲しいとか記憶回路にあるんだけど」
「雪…らんた…」
 はっとなって、ランタンの中のマジックな内容物に、自身の雪の力を込めていく雪妖精。
「…でも、あたしアルダワには戻らないからね。今年は『あの子』と一緒に居るって決めたの。」
「良く分からないけど、手伝ってくれるならよかったよ!さあ、もっと人手が必要だね。」
 アーレ・イーナは次の標的をとゆっくり進んでいく。

「こっちきた」
「こっちきたよ」
「ぷらんびー、ぷらんびーでいくの」
「よういできてるよ!」
 雪妖精達が物陰からこそこそと声を放つ。アーレ・イーナはサイバーアイで狙いをつけようとするが…。
 突如、ぐしゃりと足元で音が鳴る。
 いつの間にか薄い氷の床を踏み抜いていたのだ。
「うわっー!?」
 アーレ・イーナは氷水の中に沈んでいった。

「やった」「やった」「ひんやりだいせいこう!」
「でもあのひとおもそうだったよ」
「うきあがるかな…」
 常人なら下手をすれば凍死しそうな氷の水の中に入ったアーレ・イーナ。
 だが雪妖精達の心配をよそに次の瞬間、氷水の中から勢いよく飛び上がった。
「ふう。まったくもう、ボクのユーベルコードが無かったらどうなっていたか!」
 アーレ・イーナは馬に乗っていた。
 このフロアでかつて凍死したと思わしき、亡霊の馬に。

「びっくりした」
「なんだかすごいのに乗ってるよ!」
「今水に浸かってたから、上がった時に冷えて、水が凍って…体中に氷柱がびっしり!」
 然り、アーレ・イーナと亡霊馬の身体には、北国で大寒波にあったかの様に氷柱が沢山垂れ下がっていた。
 それは傍から見れば、馬に乗った氷の騎士の氷像が、ぎこちなく氷を擦る音を立てながら動いているようだった。

「あんなに冷えていたら…」
「『あの子』もだいじょうぶかもしれないわ」
「お友達になってくれるかな」
「どうかなあ」「むりかも?」

「うわっ、凄い凍っちゃった。あんまり寒さを感じないのは機械の身体だからかな…まあいっか。」
 アーレ・イーナはここから妖精を捕まえに回ろうとしたが、更に気になるのを見つけた。
 サイバーアイが察知したのだ。この先に更に雪妖精達が密集している所があるのを。
「あそこに集まっているのは何だろう?気になるなあ。沢山捕まえられるかもだし、いっちょ行ってみますか!」
 氷のサイボーグと亡霊馬は、とても寒そうな見た目のまま雪妖精達に見送られ、先に進むのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フリル・インレアン
ふええ、雪妖精さんを捕まえなければいけないのに、なんだか遊ばれている気がします。
そういえば、さっきの子は大丈夫でしょうか?
ふええ、よそ見していた隙にまた悪戯されてます。
猟兵は臨時教師のはずなのに、これじゃあ私の方がダメダメじゃないですか。
って、張り切ってもダメダメなものはダメダメなんですよ。
ふええ、どうしましょう?
あ、アヒルさんが捕まえてくれたのですね。
ありがとうございます。
隙だらけだったから楽勝だったって、私を囮にしてたのですか。



●聖なる雪夜の翻弄劇
 真白の園、妖精達だけが雪と共に舞い、賑やかす、少し寂しい冬のお祭り。
 その最中に潜む雪妖精を捕まえに、フリルは教師として来ていた。
「あ、あの、その、雪妖精さん、捕まえ、がんばりましょうっ」
 フリルはその場にあった雪だるまとアヒルさんガジェットの影に隠れながら、アルダワ生徒達にそう言った。

「と、とりあえずみんなで頑張って一人ずつ囲んでいって」
「探知は任せてください」
 ガジェットを使うミレナリィドールが妖精の位置をあぶりだすと。
「追いかけっこはまかせてにゃ!」
 ケットシーのチームが飛び込んで追いかけに行った。
「ふええ、みんな手慣れてます。」
 教師という指令一つあるだけでも、集団というのは心根が出来て強くなるものなのだ。
「わたしもまけてはいられません。アヒルさん、がんばりましょうっ」
 アヒルのガジェットを抱えながら、フリルも雪の中を駆けだした。

「もうすぐで掴まるにゃ!……ぶにゃっ!?」
 追いかけていたケットシーの子らが突如何かにぶつかるようなリアクションをして倒れた。
 よく見ると透明な氷の壁が出来上がっていた。
「あっ、こちらに来ましたよ。捕まえて見せます。えいっ」
 逃げる先にフリルは回り込み、待ち構えていた。突撃しそうな雪妖精は、クスリと笑って、あえて加速した。
「ふえ?」
 雪妖精はフリルの服の中に入っていった。
「ふえぇ!つめたっ、くすぐったっ、やめてくださいぃ」
 体の中をこちょこちょされたり、冷たい手で変な所をタッチされたりしたフリルは、最初は服越しから捕まえようとするも、あっという間にへたり込んでしまう。
 フリルの冬仕様に仕立て上げたスカートがひょいと持ち上げられると、そこから雪妖精は飛び出ていった。
「ああっ」
 一瞬見える下着に恥ずかしがってスカートを押さえ。
「ま、待って、あぅ」
 追いかけようと手を伸ばしたフリルはごつごつした感覚が体中に入ったのを感じると、すぐさま悶えるように服をバサバサと揺らし始めた。
 服の中のあちこちに、雪の塊を入れられたのだ。

「ふええ、雪妖精さんを捕まえなければいけないのに、なんだか遊ばれている気がします。」
 中の雪を落とし払う中、雪のツリーから妖精達の笑い声が聞こえた。
「そういえば、さっきの子は大丈夫でしょうか?わたしは今臨時ですけど教師ですから、しっかりしないといけません」
 そう言って1歩足を踏み込むと、そこから足が動かなくなった。
「ふえぇ?」
 足に付いたるは雪結晶で出来たボード。
 そのボードに足裏が凍り貼りついていた。
「わ、わ、止まってくださいぃ」
 フリルはいつの間にか雪のボードで雪の世界を滑り始める。
 制御ができなくて、あっちの木にどすんと当たればくるくる回転し、盛り上がる斜面に突入すれば制御も聞かずにくるりとターンして滑ってしまう。
「ふえぇ、誰か、誰か止めてください」
 摩擦を無くすユーベルコードがあったけど、実際やられたらこんなに困る事になるのですねと思いながら。
 あわあわして自身ではどうすることもできない中、誰かの人影にドスンと当たる。
「…ぁ」
 先の章、アルダワ準備の時に会ったあのドラゴニアンの少女だった。
「…大丈夫?」
「ふええ、だ、大丈夫です。いえ、大丈夫じゃありません。これじゃあ私の方がダメダメじゃないですか。」
 困惑しながらももう恥ずかしい所は見せたくないと、止まったのを機に頑張って雪のボードを地面に叩き、割ろうとするも、割れない。
「…溶かす?」
「あ、ええと、すみません、お願いしても」
 ドラゴニアンの少女から、弱い炎のドラゴンブレス。
 たちまち雪のボードは溶けた。
「あ、ありがとうございます」
「…困った時は、お互い様…」
「ふえ、ありがとうございます。でも、わたしも一応教師ですので、がんばる所はこれから見せたいです。」
 立ち直りシャキッとしたフリルは、ドラゴニアンの少女と組み、再び雪妖精を追いかけに行く。

 雪の中、ジングルベルが鳴り響く白の世界。
 雪以外は夜景の様に暗い背景をし、その最中に浮く白い雪の妖精達。
「ちょっと怖いですけど、連携プレイ、です。」
 ドラゴニアンの少女に脇を抱えられ、宙を飛びながら追い詰めるフリル。
「アヒルさん、お願いします」
 横からぱたぱたと先行するアヒルさんガジェット。
 足には捕縛用の虫取り網が掴まれていた。
 アヒルさんは雪妖精の横を通り過ぎ、虫取り網を構える。
 フリルはいつでも降りる準備をして、ドラゴニアンの少女も尻尾で狙いを定める。

 だが、ふと気が付くと追いかけている妖精とは別に、雪妖精達がフリル達を囲んでいた。
「ふええ?」
 雪妖精達はフリル達の周りをくるくる回り、ユーベルコード並の強力な吹雪を作り上げる。
「ご、ごめん、落ち……」
「ふええぇぇ~」
 吹雪に煽られ、力なく落ちるフリル達。
 雪の上にぼふっと落ちると、ごろごろと鈍い音。
「ふえ?」
 直後、他の雪妖精達が転がしてきた巨大な雪玉にフリル達は巻き込まれた。

 ごろごろごろ……。
 真っ白な雪のクリスマスツリーの下、ドスンと止まる。
「わーいわーい♪」「雪だるまの完成だー♪」
 雪玉からフリルとドラゴニアンの少女が頭を出す。
「ふええ、張り切ってもダメダメなものはダメダメでした。寒いです。どうしましょう」
 冷たくて、寒くて、身動きが取れない。
 フリルは涙目になりながらも、頭上できゃっきゃと小躍りしているのを眺めるしかなかった……。

「ふぇ?」
 今の声は雪妖精だ。
 横からばさりと、虫取り網が妖精達をかっさらった。
「わ、わわ、何々何なの?」
 もがきあう雪妖精達。虫取り網の入り口は拷問道具を改造した縄でキュッと締められ、網が取り外され、さながらズタ袋に詰められた妖精の様になった。
 それが、雪だるまフリル達の周りで既に何個も置かれていた。
「あ、あら?なんでしょう?」
 アヒルさんガジェットだった。
 勝ち誇ったようにぱたぱたとフリルの頭上で羽を動かすアヒルさんは、先程から頑張っていた。
「あ、アヒルさんが捕まえてくれたのですね。ありがとうございます。」
 アヒルさんは身振り手振りでフリルが色々困っている間に何をしていたかを伝える。
 フリルが、否、アルダワ生徒達が雪の悪戯にかかる度、雪妖精達は油断していたので、その都度後ろから虫取り網を使い捕縛していたのだという。
「隙だらけだったから楽勝だったって、私を囮にしてたのですか。ふえぇ……。」
 あぅ、と、雪で動けない状態ながらも恥ずかし気に顔を赤らめるフリル。
「……でも、おかげで助かった……」
 隣にいたドラゴニアンの少女が、ぼうっと火を吹いて雪玉を溶かす。
「ありがとう」
 そう言って彼女はダンジョンの奥へと駆けていった。
「あっ、ま、待ってください。」
 フリルは追いかけようとして、アヒルさんと一緒に捕縛した雪妖精を纏め、他の生徒に持ち帰る様(超ビクビクしていたのでアヒルさんに手伝ってもらって)指示した後、改めてダンジョンの奥へと追いかけていったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 集団戦 『『雪兎の精霊』スノーラビット』

POW   :    人の温もりに触れた雪兎の最期
自身が戦闘不能となる事で、【心を通わせた】敵1体に大ダメージを与える。【対象に別れや感謝の言葉】を語ると更にダメージ増。
SPD   :    臆病な雪兎は物陰からこちらを見ている
肉体の一部もしくは全部を【雪うさぎ】に変異させ、雪うさぎの持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
WIZ   :    雪兎が見せる小さな奇跡
【舞降る雪】を降らせる事で、戦場全体が【ホワイトクリスマス】と同じ環境に変化する。[ホワイトクリスマス]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●突破の先には
 ある者は捕まえ、ある者は懐柔し、ある者はそのまま突き進み。
 そうして雪妖精達を切り抜けた奥、気温は氷点下を更に下回る冷たい世界。

「ごめんなさい、ごめんなさい」
 雪妖精はその人影に誤っていた。
「これ以上こっちに来られたら、溶けちゃうかもしれないのに…」
 その人影は、兎耳を生やした防寒着の少女の人影は、こくりと頷くと。
「いいの」
 そう言った。

「あなた達にはいっぱいよくしてもらえたけど」
 そんな人影がまた1人、また一人、雪の中に増えていく。
「それでも私、欲しい。」
「ぬくもりが」
「この手に触れて、溶ける様な暖かさが」
 その少女達は、向こうに見える猟兵達に歩み寄ろうとしている。
「だめ、だめなの。」
 雪妖精が止める。
「冬の間だけなの。クリスマスは、とても寂しそうにしているから。だから今年の冬は、あなたと一緒に遊ぶって決めたの」
「いいの」
 兎耳の少女はそう言った。
 そして雪妖精に顔を向け。
「ありがとう」
 表情は凍り付いたまま、冷たい心で、精一杯の感謝を述べた。

●妖精達の想い
「この先に災魔がいるの」
 捕まったり懐柔された雪妖精達は、猟兵達に事の真相を告げる。
「でも、とっても無害なの」
「私達みたいな、雪の精霊さんなの」
「沢山沢山、雪で遊んだの」

「でも……」
「あの災魔さん達、ちょっとでも暖かくなると」
「溶けて、消えちゃうの。」
「体が雪で出来てるの」
「雪の中でしか生きられないの」

「だから、私達」
「雪の中で寂しそうにしてるあの子達に、クリスマスを教えたの!」
 アルダワで毎年、雪のマジックアイテムの生成に駆り出されている雪妖精達は、クリスマスの事を知っていた。よく知っていた。
「とっても嬉しそうだったの!」
「とっても賑やかになったの!」
「でも、クリスマスが終わると、このフロアは冬を忘れちゃうの。」
「私達がつきっきりでも、普通の温度の普通のダンジョン」
「そうなるだけで、あの子達は消えちゃうの。」
「だから」
「だから……」

「「「今年のクリスマスは、あの子達と遊ぶって決めたの!」」」
 妖精達は懇願するように、猟兵とアルダワ生徒達に訴えた。
「でも……」

 迂闊にも、雪妖精がこのフロアに籠ってしまったことで、必然的に生徒達が、猟兵が駆り出された。
 彼らがこの地で彼女らと出くわせば、そこで終わり。
 スノーラビットは妖精が止めても触れ合い、冷やし、そして……儚く、消える事だろう。
 だから雪妖精達は抵抗した。
 だから雪妖精達は、少しでも体温で溶けないように冷やそうとした。
 『だけど』雪妖精達は、例年通りに捕まった。
 猟兵達は、この地に足を踏み入れた……。

●雪兎達の最期のクリスマス
 暗い石造りのフロアの中は、降りしきる雪によって真白に化粧をされていた。
 闇の中、照明はツリーや雪像に飾られた、大量のランタンやオーナメントが担う。
 イルミネーションが象る、ロマンチックな夜のホワイトクリスマスの様な世界。
 全て、全て、雪妖精達が、クリスマスの思い出を儚き彼女達にせめてと作り出した世界。

 柔らかい、雪を踏む音が聞こえた。
 災魔にして雪兎の少女、雪の精霊スノーラビット。

「……猟兵……アルダワ……」
「倒しに来たのなら、最後に、教えて。」
「私達に、暖かい、ぬくもりを。」

 ざふり、今度は猟兵が彼女に1歩歩み寄る。
「ぁ」
 するとスノーラビット達はびくりと兎耳を振るわせて。

「だめ」
「こわい」
「あぅぅ」

 ……一斉に逃げ出した。

 少し距離を置いて、立ち並ぶ白いクリスマスツリーや雪だるま。
 その陰から、スノーラビットの少女達は、猟兵とアルダワ生徒達を覗き見ていた。


※3章について
 集団型オブリビオン『『雪兎の精霊』スノーラビット』との邂逅となります。
 敵意はありません。殆ど殺傷能力もありません。
 POWで挑んだ際、全身氷漬けになりそうな程の冷たさを味合わされる(と同時に自滅する)程度です。

・その身体は肌は勿論、杖やアクセサリ、服などの所有物に至るまで全てが雪で出来ています。
・舞い散る雪の一粒の様に、体温のある者に触れれば即溶けて消えます。
・ただの雪で出来た体なので、普通に叩くと普通に倒せます。
・アルダワ生徒達が挑んでも倒せます。

・このフロアより高い気温の場所にいけば、たちまち溶けて消えます。
・放っておいてもクリスマスが終了すれば勝手に溶けて全滅します。
・その儚さ故に、天然の雪妖精達が構って匿っていたようです。

 戦場は妖精達が作り上げた雪のクリスマス会場です。
 付き合うのであれば、触れないように距離を取るか、彼女らと同じくらい氷点下の身体を持たなければ溶けます。
 スノーラビット達は臆病なので、驚かせると雪兎に変身して逃げます。
 彼女達は、それでも『暖かいもの』を求めています。

 当シナリオの目的は『雪妖精を捕まえて雪のランタンを作ってもらう事』です。
 どうするかは、おまかせします。
御影・雪乃
リサ(f09977)さんと
(めんどうそうだな…という顔)
(さらにリサさんが乗り気そうでめんどうだな…という顔)
確かに私は【凍結耐性】で寒いの平気ですし自前の『冷気』でマイナス方向の温度調整もできますが…
何したら良いんですか…ダメージのない雪とかも出せはしますが
…と、手伝えオーラを出していると
リサさんが見慣れたものを出し…ぶふっ、あああ…手とか足とかセンサー類とか私の予備パーツががが
無断使用に不満MAXですが、とりあえず心を通わせるのはこのコピーに任せれば良さそうですね

遊びに付き合い、みんな満足したっぽかったら冷気の操作で空気の流れを作り温度を変えてトドメを
また来年、雪の季節に会えるといいですね


リサ・ムーンリッド
雪乃っち(f06012)と
なるほど
…オブリビオンは倒さないと世界に悪影響があるんだけど…まあ、せめて心残りがないよう遊びに付き合うのはありかな?
というわけでゆきのん頼んだ
私はこの寒さは普通につらい
その点、雪乃さんならいくら寒くても平気だろう?
んーどうしても働けというのなら…
(雪乃の予備パーツを取り出して『命の錬成』の材料にし寒さに強い生物を作成、これを遊びの代理とする)
いつも君の体をメンテしてるの私だし、そりゃ予備パーツは持ち歩いてるよ
さ、これで寒さに強い遊び仲間が増え…寒っ!ちょ、雪乃さんやめてくれないかな!?
帰ったら消費したパーツちゃんと作るから、やめて!私を凍らせないで!



●スノウリィ・ドール(ズ)
「はぁ……」
 寒い雪の中、雪乃は思わず白いため息をついた。
(めんどうそう…)
 面白そうな依頼があると飛び込み、実力を我慢して妖精達と奮闘し、いざ災魔となったらこの様子である。無理もない。
「…まず、状況を整理させてもらえませんか。」

 私達はクリスマスの準備の為、雪妖精達を捕まえに来た。
 捕まえたと思ったら、実は災魔(オブリビオン)を匿っていた。
 その災魔(オブリビオン)は『ぬくもり』を知りたくて自ら猟兵達に近づいてきた。

「なるほど。…普通に倒したらどうかね?雰囲気でしか分からないけど、雪妖精達がへそを曲げてランタンを作らなくなる、という事は」
 リサはそう言うと、試しに銃でスノーラビット達を狙ってみた。
 雪妖精達は『きゃっ!』となって、動ける妖精達がスノーラビットを庇おうとしていた。
「…オブリビオンは倒さないと世界に悪影響があるんだけど…まあ、せめて心残りがないよう遊びに付き合うのはあり、かな?」
(…めんどうそう…)
 雪乃は一層冷たい視線でまた白いため息をついた。
 そこにリサが肩をぽんと叩く。
「いやいや、こういうのゆきのんの得意分野だろう?」
「いや…何したら良いんですか…」
「まずここは寒い」
 リサは両手を広げて今回の戦場を見渡した。
 一面真っ白な雪景色に、アルダワの広場に負けない程の、雪や氷で出来たクリスマスの装飾が飾られている。
 加えて先程の妖精地帯よりも、災魔の雪の力によってこんこんと雪が降り続け、気温が下がっている。
「まともに付き合う為には防寒が必要だろう?その点言えば冷気を操れるゆきのんの体質は非常に適しているじゃないか!」
「確かに私は寒いの平気ですし、自前の冷気で温度調整もできますが……」
 雪乃は手をちょっと空にかざす。すると雪の風が舞い上がる。
 それを見たスノーラビット達は、興味深げに雪乃に近づいてきた。
「ゆき……」
 スノーラビットの一人が雪乃の手を引っ張る。
 とふとふと雪の上を歩く。
「……」
 雪乃は冷たい顔して引っ張られ、クリスマスツリーの一つに辿り着くと。
 スノーラビットはぴょんぴょんと跳ねて杖をかざし、もっと雪を降らせる。
「…好き…」
「……」
 また手を引っ張られ、とふとふとあっちの雪景色へ、こっちの雪景色へ。
「上手くやれているじゃないか?」
 アルダワの生徒達と共に防寒着を身に纏ったリサの下へやがて辿り着いた。

「代わってください」
「え、なんで?」
「ぶっちゃけ、めんどうです。倒す前にぬくもりを与えるとかなんとか…あと、この空気に合わせられる気がしません。」
 リサは少し試案した。
「ふむ、しょうがないな。どうしてもというのなら……量産しよう。」
「…何を?」
 リサは羽織るマントの中から、どこにそこまで詰まっていたのかと言わんばかりに……ある物を雪の上に並べた。
 それを見た時である。常に冷たい雪乃が盛大に噴き出したのは。

 そこに並べたのは、ミレナリィドールである『雪乃の身体』だ。
 正確には何らかの故障や激しい戦闘による破損の為に常日頃リサが持ち歩いている、予備の雪乃の身体であった。 
 リサはその場にある雪を核に、雪乃の身体の予備を器に、錬金術で融合、錬成し、白い雪乃の姿をしたミレナリィドールが、次々と生まれ出る。
「あ、ああ……あ……手とか、足とか、センサーとか、私の予備パーツががががが……」
「何を狼狽えてるんだい?いつも君の体をメンテしてるの私だし、そりゃ予備パーツは持ち歩いてるよ」
 ぽこぽこと現れた、真っ白な雪乃達。
 外側は一緒だが、リサのユーベルコードによって命を吹き込まれたそれの中身は違う。
 白雪乃達は突き放して戻ってきた雪乃の代わりにスノーラビット達に近づき、雪を降らし、手を取ろうとする。 
 冷たいその感覚に、スノーラビット達は少し溶けそうになりながらも受け入れた。

「さ、これで寒さに強い遊び仲間が増え…」
 突如吹雪が、予想外の方向から飛んでくる。
 雪乃が、睨んでいた。
 とても冷たい目で、睨んでいた。
 恐ろしく冷たい目で、睨んでいた。
「寒っ!寒っっ!?ちょ、やめて、雪乃さんやめて…!」
「人の身体を、何を…無断で…」
 その指先からは凍てつく吹雪が放たれ、スノーラビットやリサごと凍らせようとしている。
「かかか帰ったらまたちゃんと予備パーツ作るから、やめて!凍らせないで!雪乃さんんん!」
「…………」
 ふと、おびえながら凍り付こうとしているスノーラビット達が、白雪乃に寄り添っている所を見て。
「わかりました。とりあえず心を通わせるのはこのコピーに任せれば良さそうですので。」
「わ、わかってくれたたた……あ、あったかい暖炉……火、火……」
 吹雪が収まると。少し漏れた涙さえ凍り付き、かろうじて震える程度には動ける、全身氷漬け一歩手前のリサ。
 兎にも角にもダンジョン内でのホワイトクリスマスが始まった。

「雪……綺麗……」
 アルダワ生徒達と雪乃とリサは、案内される様にホワイトクリスマスの世界を巡っていく。
 ミレナリィドールさえまともな体では凍結してしまうので、雪乃達以外は防寒着とトリニティ・エンハンス、ドラゴニアンの炎などで暖かくなりながら。
「雪…あなたの雪と…私の雪…違う…」
 スノーラビット達は杖を振り、掲げる。
 もう片方の手で舞い散る雪を、手に受け、感じる。
 同じように白雪乃も、舞い踊るように手を広げ、雪を生み、舞わす。
 それはまるで雪兎の少女と西洋の雪女がワルツを踊っている様だった。
「つめたい…」
「つめたいのに、あたたかい…」
「こんなの、はじめて……」

「うむうむ、いい感じに働いてよかったよ」
 マントを何枚にも羽織って震えるリサと、傍観する雪乃。
 そこにスノーラビットが何人か近づいてくる。
「あなたたちも、あたたかい…」
「あ、いや、暖かいのはあっちの命にしてもらっても」
「ぁ」
 雪乃が止めようとするも、ぎゅ、とリサを掴んだスノーラビットは。
「ええ。」
 にっこりと微笑んで。

「――お友達、作ってくれて、ありがとう。」

「――ぁ――」

 リサは真っ白な光に包まれた。
「……一応聞いておきます、大丈夫ですか?」
「あ、あはは、だ、大丈夫……大丈夫さ……」
 先程の雪乃の寒さとは違う涙が零れ落ちながら、先程と同じように、全身から氷柱が生え、鼻水を垂らして氷漬け寸前になるリサ。
 その目の前には、溶けて雪に消えた、スノーラビットの残骸らしき雪片があった。

 スノーラビットは沢山、遊んだ。
 真っ白な雪乃と、かろうじて寒さに慣れてきたアルダワ生徒達によって。
 ホワイトクリスマスの中、雪合戦をしたり、魔法の応用で巨大な雪の結晶を作ったり。
 うさ耳の生えた雪だるまを皆と協力して作った後、異変は起きた。
 
「………ありがとう………ありがとう………」
 スノーラビット達は、胸を押さえた。
 胸の辺りから溶けかけてきていた。心に、ぬくもりが伝わっていったのだ。
「……わたしたち」
「ずっと、わすれない」
「またいつか、ゆきのひに」

「…いえ、溶かしはしません。」
 ふうっと、指先を通して雪乃は吐息を吹きかける。
「ぁ――」
 その白い吹雪のような飛沫を浴びた、心が溶けたスノーラビットの身体が、瞬く間に凍り付いていく。
「溶けるぬくもりを知ったからと言って消えなくてもいいのです。」
 冷たい雪の身体が、永遠に溶けないであろう氷の中に閉ざされていく。

「……クリスマス前ですが、雪兎のお相手と遊び相手、確かに承りました。」
「ちょっと寒い思いもしたけど、次は私達のクリスマスを手伝ってくれるかな?」
 雪乃達が締める。問うたのは雪妖精達にだった。
「…うん…」
「今年は災魔さんが寂しくならないためにも」
「素敵な、素敵な、雪を作るの!」
「の!」
 そう言って、雪妖精達は雪の中、雪乃達と共にアルダワへと向かう。
 この雪の地に、溶ける事無き氷と化して、雪に埋もれていく雪兎の少女達を残して。
「……そうですね、また来年、雪の季節に会えるといいですね。」
 去り際に雪乃がそんな言葉を漏らしながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディルク・ドライツェーン(サポート)
実際の年齢より無邪気で子供っぽい言動です。
好奇心旺盛で素直なので、楽しい事などは積極的に行動し
友好的な相手には仲良く接します
戦闘以外の知識には乏しいですが、戦闘時は本能的に考えて戦います。
拳に【怪力】を乗せて戦うのが主ですが、敵が多い場合はオウガ刀で【なぎ払って】【吹き飛ばし】て戦います。
敵の攻撃には【野生の勘】で回避したり【激痛耐性】で耐えます
バディペットのアインや海竜のシュタインと連携して戦います。
仲間が危なければ【かばい】ます。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




「うおぉーっ、雪だーっ!」
 琥珀色の髪をした羅刹のディルク・ドライツェーン(f27280)は、その真っ白な世界にはしゃぎだす。
 雪の上にぼふんと飛び込むと、その跡を残す。
「つめてぇーっ!」
 すると見上げた先には、身体が雪で出来た、兎耳フードの防寒着を着た雪兎の少女が、もじもじと見つめていた。
「なんだいアンタ!一緒に遊ぶか!?」
 ディルクは駆けよるも、足を滑らせ、雪兎の少女に勢い余って抱き着くようにぶつかってしまう。
「あっ…! オイ!アンタ大丈」
 ディルクが痛みで起き上がった時、雪兎の少女は溶けて消えていた。
「うわああああーっ!?」

 だが、ふと周りを見ると、彼女に近い様な雪兎の少女が一人、また一人とディルクを物陰から覗き見していた。
「おわっ、いっぱいいる!そうかアンタ達集団型オブリビオンってえ奴だな!」
 ディルクはなんとなく事情を察した。
「……でも、なんだか敵意なさそうだな……?」

 するとディルクは懐からお菓子を取り出した。
 宝石の様にキラキラしたカラフルなドロップの詰まった瓶。一粒取り出す。
「おーい!これやるから、一緒にあそばねーかー!」
 ディルクの誘いに兎耳をぴここと動かし、じりじりと雪兎の少女達が近づいてくる。
 その内の1人が、不意に雪に足をとらわれ、ずっこけた。
「おわあっ!」
 勢いでディルクにぶつかると、カラフルドロップは宙に飛び、ぶちまけられる。
 そのドロップに……雪兎の少女の一人が、杖を向ける。

 すると、舞い上がったカラフルドロップに雪がくっつき、さながら色とりどりの雪が降り注ぐ様にディルク達を祝福した。
「お、おお!なんだか寒いけど、凄いな、ロマンチックとか言うやつだ…!」
「……あたたかい……」
「……とても、とても……」

「おあっ?」
 雪となったドロップが全て落ちた時、そこに雪兎の少女はいなくなっていた。
 舞い散る暖かなクリスマスの光景に、自爆するかの様に溶け、消えていた。

「……なんだかわからねえけど、凄い光景だったな。」
 この光景を忘れないように、アルにもいつか見せたいと思いながら、雪が止むまで、ディルクはそこに居続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フリル・インレアン
ふええ、そうだったのですか。
アヒルさん、妖精さん達を開放してあげてください。
妖精さん達も雪兎さん達とのクリスマスが終わったら雪ランタン作りの協力をお願いしますね。

さて、私達の体温が雪兎さんを溶かしてしまうのでしたら、これはどうでしょうか?
ぬいぐるみの魔法なら体温がありませんから、雪兎さんが溶けずにすむと思います。
ただ、受けた効果は私が受けてしまうのですが、それは我慢すればいいですよね。



●それは、温もりに触れた雪兎の
「ふええ、そうだったのですか。アヒルさん、妖精さん達を開放してあげてください。」
 フリルはそうごちて、アヒルさんガジェットが動く。
 網の中から大量の雪がどさどさと。その中から雪妖精達が次々と飛んでいった。
「事情を知らなかったのです。妖精さんは、雪兎さん達とのクリスマスが終わったら雪ランタン作りの協力をお願いしますね。」
「わ、わ、」
 解放された雪妖精達はここがアルダワの工房でない事を知りあたふたする。
「まだ遊んでていいの?」
 雪妖精の一人が言う。
「いえ、クリスマスの時間が終わったらで。」
「むー、バレちゃったならこの際いいや。お姉ちゃんも一緒に遊ぼう!」
「ふえ?ふええ、ちょっと待ってください」
 雪妖精達が氷の様な手でフリルの手を引っ張り、ホワイトクリスマスの世界へと導いていく。

「あ」
「…………」
 目の前には雪兎の少女。
 杖を着いてびくりとしながらこちらを見ている。
 雪兎の少女の後ろには、また別の雪兎の少女がこっちを覗いている。
 その雪兎の少女の後ろには、また別の雪兎の少女がしゃがんでこっちを覗いている。
「ふええ、こわくないです、こわくないですよ。」
 そっとフリルが手を差し伸べようとして。
「そうです、私の体温が雪兎さんを溶かしてしまうのでした。では、これはどうでしょうか」
 フリルはアヒルさんガジェットの中から何かをまさぐり、取り出す。
 まず出てきたのは、布だ。
 布の端をつまみ、風船の様にぷーっと息を吹きかける。
 するとむくむくもこもこと布が膨らみ、綿が詰め込まれていき。
 巨大なサンタのアヒルさんぬいぐるみが誕生した。

「この子は魔法で出来ているので体温がありません。これなら雪兎さんが溶けずに済むと思います。」
 フリルは指さしてぬいぐるみをけしかけた。
 もふり。
 おびえながらも触ったスノーラビットに心地よい弾力が返ってくる。



 降りしきる雪にピカピカ輝くオーナメントの、ホワイトクリスマスのアルダワダンジョン。
 そこにいた雪兎の災魔達は、今、巨大なぬいぐるみに夢中になっていた。
「……もふもふ……」
 抱き着いて離れない雪兎。
「……たかい……」
 アヒルさんぬいぐるみの上に座って白い世界を見下ろしている雪兎。
「……かぜ……」
 ばっさばっさ揺れ動く翼の風を受けながら、目を閉じつつ一緒に歩いてる雪兎。

「ふえ、なじんでくれて助かりました。あのまま遊んでいれば、納得してくれるでしょうか。……ひくちっ」
 白い息を吐きながらその様子を見守るフリルはくしゃみをした。
「あれ、慣れてきたと思ったのですが、さっきより寒くなってませんか」
 そういえば、と。
 フリルの作ったぬいぐるみは、受けた効果を作成者が肩代わりする能力を持っていた筈である。
 雪兎達から伝わってくる冷たい冷気が、実は今フリルの全身に伝わってきているのだ。
「ふええ、でも、我慢すればいいですよね。ぶるぶる」
 吐く息が次第に雪女の吐息の様に、雪が出来上がる程になっていく。
 上に乗っている雪兎の少女が更に雪を降らせようと杖を振る。
 サンタアヒルさんぬいぐるみに厚く雪が降り積もると、フリルの身体に霜が降りた様に、どんどんと凍り付いていく。
「ふえ、え、さ、さむい、です。」
 このままでは沢山の冷気を受けて、大丈夫なはずの冷気で氷漬けになってしまうのではと、震えるフリル。

 そんな彼女の手を取る者がいた。
「…寒いなら、暖める。」
 先のドラゴニアンの少女だ。
 更に彼女にマフラーをかける者がいた。
「先生でも困った時はお互い様だにゃ!」
 ケットシーの生徒だ。
「あ、い、いえ、お気になさらず。だって、自分の分が」
「にゃーは毛皮があるから大丈夫だしにゃ!」
「ふええ」
 困るフリルに、更に暖かい何かが感じられた。
 ミレナリィドールとガジェッティア専攻の少女がストーブを用意してくれたのだ。
「襲ってこないし、この先は行き止まり。お宝もないし、倒すには忍びないッス。」
「……多分、もう少しであれは……」

「ふええ、み、みなさん、ありがとう、ありがとうございます。」
 フリルにとってアルダワ生徒達の関係は、まだ正直人見知りの域である。
 隣にいるドラゴニアンの少女だって、今日会ったばかりだし。
 それでもこうして寒いときは協力して手伝ってくれる。
 フリルは煌びやかな白の世界で、ぎゅっとドラゴニアンの少女の手を握り、じわりと、暖かくなりながら……。


 何か。
 何かふと、目の前に雪兎の少女が映る。
 それはぬいぐるみの魔法の代償か何かだろうか。たぶんアヒルさんぬいぐるみの視界に映っている者を共有しているのだろうと思った。
 周りは白かった。
 雪兎の少女から、目が離せなかった。

「とても」
 冷たくも可愛らしい声を、その少女は発する。
「とても、暖かい……」
「けど、いつまでもこうしていてはいけないの」
「ひとには、ひとのクリスマスがあるの」

「ありがとう」
 雪兎の暖かな心が、溶けるように染み渡る。
「わたしたちは、その場に行けないけれど」
「あっという間に、溶けてしまうけど」
「とても、とても楽しかった」

「さようなら」
「また、ゆきがふったら」
「私達の事」
「――――」


 ふと、気が付くと。
「ふ、ふえ、え、へくちっ。」
 フリルは雪に埋もれていた。
 アルダワ生徒達も雪に埋もれていた。
 まるで先程のクリスマスの世界がなかったかのように、そのアルダワダンジョンのフロアは一面雪で埋もれていた。
 その場で動いていたのは、生徒達の作っていたストーブ(周りが雪に囲まれていたのでここまでとかしてくれなかったが)。
 そして、目の前で頬をぺちぺちしていた、雪妖精達。

「大丈夫?」
「ふええ、風邪ひいたかもしれません。」
「だめだよ。もっとあったかくしてないとー。」
 でもなんだかそれはそれでこの妖精達は濡らして来そうな気がするが。
「ありがとうっていってたの」
 雪妖精達は他のアルダワ生徒達を雪から引っ張り出しながら。
「だから、皆のクリスマスも、『ありがとう』って言わせられるくらい」
「ボク達、がんばるね。」
「綺麗な雪のランタン、おつくり」
「するー!」

「わ、その気になってくれたん、ですね。」
 そっと雪妖精がフリルの帽子に乗りながら。
 目の前の雪兎の少女達が、完全にこの場からいなくなったのを確認した猟兵達と、アルダワ生徒達は引き上げる。
 自分達のクリスマスに、素敵な雪を降らせるために。


●今年のアルダワクリスマスにて
 学園の至る所で、きらきらした、カラフルで、いい感じの音楽が流れる。
 12月の末、楽しいクリスマスが始まる。
 一角の広場では、満点の星空が魔法によって壁にかけられた、巨大なクリスマスツリーと、溶けない氷の手すりで出来た螺旋階段。
 そこに吊り下げられたプレゼントとオーナメント。
 そして魔法で浮かび、きらきらと、触れては消える、幻想的な雪を降らせる魔法の、『雪のランタン』が飾られていた。
 ランタンの中には舞い踊る雪妖精の様な姿が現れては消え、クリスマスに訪れた者達を祝福するかの様に白い世界を作り続けた。

 そして、手すりの端や、クリスマスツリーにもう1つ。
 ひょっこりと飾られているのは、雪兎。
 災魔でも魔法で作られたものでもない、フェルト造りの雪兎だが。
 見る者が見ればきっとあの日の事を思い出したであろう。

 雪兎は、クリスマスが終わるまで、降りしきる魔法のホワイトクリスマスの中、ずっと、ずっと、そこにいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月05日


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#アルダワ魔法学園
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挿絵イラスト