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ドーラ様へのプレゼントはキマイラ!

#キマイラフューチャー #猟書家の侵攻 #猟書家 #ドーラ・ワルダー #キマイラ #ちょびっとネタ感


●ドーラ様、なんだか悲しい。
 12月。イベントが大好きなキマイラたちがそわそわし始める頃。それをアジトの望遠鏡で眺めながら溜息を吐く女がいた。『猟書家』ドーラ・ワルダーだ。
「わたくしの計画が一向に進まないのは猟兵たちの所為……わたくしたちが弱いわけでは……」
 悔しそうな、悲しそうな、疲労が滲む声。それを陰で聞いていた怪人たちは顔を見合わせる。
「ドーラ様、疲れてるのかな……」
「最近ちょっと寒いしな……」
「キマイラたちが浮かれるシーズンだから尚更なんか切なくなるよな……」
「ドーラ様をどうしたら元気になるかな……」
 こそこそ、こそこそ、怪人たちがその場で相談し始める。そこに逞しくも軽やかな足音がした。
「話は聞かせてもらった!」
「お前は……押し込みクーリエズ!!」
 まるでヒーローの如く格好良くポーズを決める3人。
「ドーラ様を元気にしたい!?ならばプレゼントだッ!」
「「「「それだァ!!!」」」」
 いつの間にか大きくなっていた声に振り向いたドーラは怪人たちの意図を察して、心がちょっと温かくなって――いつも通り声高に笑う。
「……オーッホホホホホ!!わたくしらしくなかったわね!けれどお前たちのその心は嬉しく思うわ。押し込みクーリエズ!お前が言うプレゼントは何を指すのかしら?」
「はっ、キマイラたちです!」
 ビシイッ。3人は綺麗に敬礼した。軍隊の如く揃っている。
「よろしい!ならばお前にプレゼントを強請るとしましょう!」
「「「お任せください、ドーラ様!」」」
 押し込みクーリエズは箱を持って外へ走っていく。

●猟兵、結構忙しい。
「ドーラ、だったっけ。またキマイラ誘拐事件を起こそうとしているようだ」
 尾花・ニイヅキと名乗ったミレナリィドールの少女は少し頭を下げてから説明を始めた。
「今回出てくる怪人は『押し込みクーリエズ』。名前の通り箱に押し込んで相手を閉じ込めてしまうのが得意な怪人だ。しかも足もそこそこ速い。キマイラを追いかけて箱に入れてドーラのところへ配達する気なんだろう」
 彼らも怪人でなければシーズン的に忙しいだろうに。猟兵の一人がぼんやりとそんなことを考えた。
「なんとか逃げているキマイラたちだが、このままでは疲れ果てて追い付かれてしまう状況だ。クーリエズたちは三人一組で行動している。何組か散らばって行動しているようだから、各方面警戒してクーリエズを撃破、キマイラを助けてあげて欲しい。
 もちろん、こちらがキマイラ誘拐を妨害しようとすればクーリエズも応戦してくる。うっかり箱詰めにされるのはもちろん、箱から何か出てきそうになったら警戒したほうがいい。奴ら、相手の嫌いなものや苦手なものを箱から出す力があるようだ」
 キマイラが安心して年末年始を迎えられるように、箱詰めされて贈り物にされて怪人にされないように。皆なら大丈夫。頼むよ。グリモア猟兵は笑った。


春海らんぷ
 お初にお目にかかります。春海です。第一作目です。
 もうすぐクリスマスですね。

●シナリオについて
 このシナリオは猟書家幹部シナリオで、二章構成です。
 なおこのシナリオには以下のプレイングボーナスがあります。

●プレイングボーナス
 キマイラに応援される(ちなみに戦力はゼロです)。

●世界
 キマイラフューチャーです。街は年末年始に向けてなんだかそわそわわくわく感。

●第一章
 キマイラを誘拐しようとする『押し込みクーリエズ』さんと戦うことになります。
 猟兵の皆さんはクーリエズとキマイラの追いかけっこ状態の現場にやってくることになります。
 ちなみにクーリエズは拘束具――というか筋肉増強のための負荷を付けているようです。
 白昼堂々いろんなところ(プレでご指定いただいてもOKです)で箱詰めしようとしていますので駆け付けてキマイラを救助してあげてください。

●第二章
 『ドーラ・ワルダー』様との戦いになります。
 第一章でキマイラの誘拐を防ぐことでキマイラが応援してくれます。
 ヒーローショーみたいに派手に戦ったりアピールすると喜んでくれるかもしれません。ファンサは大事。

 以上、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『押し込みクーリエズ』

POW   :    パック!
【味方に声掛けをしてタイミングを合わせて】から【一斉に突撃してダンボール箱やロープ】を放ち、【無理やり梱包すること】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ライド!
【味方の押す台車に乗る(※危険です)】事で【高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    デリバリー!
いま戦っている対象に有効な【グッズ(プレイングで指定可能)入りの箱】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
レイチェル・ルクスリア
pow

キマイラなんて箱詰めしてどうしようっていうのかしら?
ペットとしてプレゼント?それとも「ナマモノ」表記で肉ギフト?……それにしてもわざわざ箱詰なんて面倒なだけじゃない、理解出来ないわ……。

ともかく、人攫いの所業は見逃せないわね!
キマイラ達の逃走方向を予想して押し込みクーリエズを待ち伏せするわよ!
【目立たない】技能を活かしてクーリエズの目を欺きつつ、通りかかったところを【グラップル】で地面に組み伏せてやるわ!

え?箱から苦手なものを取り出してくるですって?
苦手な物と言われても特には無いのだけど、強いて言えば黒板を引っ掻いた時や、太目のマジックペンがキューッと擦れる音かしら?

アドリブ&絡みok



「お前はドーラ様へのプレゼントになるのだ!」
「やだぁ!」
 びゅん、と風を切って走っていく影を少し離れた場所から見ていたのはレイチェル・ルクスリア(ホワイトウィドウ(シロゴケグモ)・f26493)。
「わざわざ箱詰なんて面倒なだけじゃない、理解できないわ……」
 呆れたような呟きが零れる。そういえば詰めた場合、品名表記はどうなるのだろう。ペット?ナマモノ?そんな疑問が一瞬脳裏を過ったが、人攫いはさせない。品名を書くことはない。そう考えてレイチェルは耳を澄ます。賑やかな街に負けず、キマイラとクーリエズの声は結構響いている。容易にキマイラの逃走方向が分かった。
「こっちね」
 まずはキマイラたちと同じ方向へ走っていき、近くまで来たら敢えて一本違う道に入る。キマイラたちが来るであろう道に繋がる細い路地に入り、息を潜める。第一線で活躍したプライベートオペレーターであった彼女が気配を消して敵を待つなど朝飯前だ。
 少し待つと、期待通りキマイラの叫び声が聞こえてくる。その後、クーリエズの声も。
「いやああああっ!」
「待てぇ――っぐぅ!?」
 どごすん。路地から飛び出たレイチェルの拳を受けた一体のクーリエズの頭が地面に沈む。一体は巻き込まれて転ぶ。残った一体が状況を確認して叫んだ。
「来たな!猟兵!」
「邪魔するならお前も詰めてやる、行くぞお前たち!」
 転んでいた一体がどうにか立ち上がって声を上げる。地面に沈められていた一体も立ち上がって戦おうとするが、滅茶苦茶ふらふらしている。
「あなた、頭凹んでるけど大丈夫なの?」
 やった本人であるレイチェルが思わずツッコミを入れるくらい頭の段ボールが潰れていた。そりゃふらふらするわ。
「心配してくれてありがとう――じゃなくて!今度こそ行くぞお前たち!」
「「応ッ!」」
 段ボール箱やロープを構えてレイチェルを捕えようとするクーリエズ。レイチェルはその突進をひらりと躱す。何度も何度も「アツい心ォ!」「「応!」」など声掛けしながら突進を繰り返すクーリエズにだんだんレイチェルの表情が冷めたものになる。
「奮えクーリエごふぅっ」
 レイチェルが冷めた表情のままクーリエズの腹に鋭い蹴りを入れる。ついでにクーリエズが構えていた段ボールも蹴り潰した。
「ぐふぅ……っ、き、貴様ぁ!ワレモノ注意って知らないのか!」
 痛みに崩れ落ちながらクーリエズが悲痛な声を上げる。別にその段ボール何も入ってないし割れ物も何もないよね。
「五月蝿いわね。猟兵はオブリビオンより凶暴なことがあるって覚えておきなさい!」
レイチェルは拉げた段ボールにもう一発蹴りを入れた。クーリエズの必死の抵抗だったのかころりと太目のマジックペンが転がり出たが、不愉快な音を鳴らさないそれはレイチェルの脅威になる訳がない。鳴らないペンはただのペンだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フローライト・ルチレイテッド
アドリブ連携歓迎です。

よし、迎え撃ちましょう!
バーチャルレイヤー【Dress】を起動してキラキラ光って【存在感】を主張して【誘惑】し、まずはキマイラの人達から意識をそらします。
元々無闇に目立ちはするはずですが、そこはそれ(サンソル水着コン1位なのでそこそこ有名勢)。

指定UCを発動しつつ、【情熱】に任せ、【楽器演奏、歌唱、パフォーマンス、浄化、催眠術、精神攻撃、範囲攻撃】を駆使して曲を演奏。
よく引きつけてどーんと行きます。
以降は逃げ惑うキマイラの人たちを【鼓舞】しつつ箱の人を攻撃します。

あちらの攻撃は【地形の利用】を駆使して台車が事故りやすい場所を動きつつ防御と回避を。
悪い運送さんは許しません!



「よし、迎え撃ちましょう!」
「来やがったな猟兵!ええい仕事の邪魔だ!退けぇ!」
 ひたすらキマイラを追いかけていたクーリエズを前にフローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)は慣れた手付きでバーチャルレイヤー【Dress】を起動する。華やかな光が散り、ギターを構えれば、思わずクーリエズも足を止めてしまう。そう、そこに居るのは一般的な猟兵ではない。ギタリスト“K”だ。
 その輝きに気づいたのか、それとも有名人の登場の所為か、追われていたキマイラも足を止める。ぱぁっと目を輝かせて近寄ってきたが、フローライトが早く逃げて、とジェスチャーをすればこくりと頷いて素直に逃げて行った。
「さあ、……行くよ!」
 すぅ、と息を吸って手を動かす。奏でるのは激しいギターと魂を込めた【M.M.M.~MusicMetalMonster】。フローライトの想いがその場の空気を震わせ、ライブ会場を思わせる熱を生んだ。
(その足を止めないで、きっと猟兵が助けにいくから)
 先程のキマイラだけではない、この騒動に巻き込まれている全てのキマイラへ届くことを願いながらフローライトは歌う。その歌は敵であるはずのクーリエズの心にも響く。
「すっげぇ……プロってこういうことなんだな……オレ感動しちゃいそう……」
「感動しちゃいそうっていうか俺はもうしてるぞ……」
 うっすら頭の段ボールが濡れている気がする。スポーツタオルで段ボールを拭いているが効果はあるのだろうか。そしてゴシゴシ擦っている所為で表面がごりごり削れていることに気づいているのだろうか。
「……良い曲だった……。……はっ!?な、な、や、やられたっ!追え、追うぞーッ!」
 歌が終わると共に本来の目的を思い出したクーリエズが台車を取り出して乗る(危険だから良い子の皆は真似しないでね!)。
「行かせません!」
「退けっ!退かないなら轢くぞ!」
 そんな脅し文句にも屈せずフローライトは動かない。その突撃スピードに怯まず、前に立っていた――が、直前でひょいと避けた。
「はあーっはっはっは猟兵といえど轢かれるのは怖ぉあぁあ!?」
 隆起した地面に引っかかったのか台車がガツンと動きを止め――そのまま乗っていた一人の身体が吹っ飛んだ。
「キマイラを狙うどころか台車に乗ってる時点で悪い運送さんじゃないか!」
ごもっともである。フローライトが「僕はそういう運送さんに楽器を運んでほしくないです!」と叱ると台車を押していた二人は段ボール越しなのにわかるくらいしゅんとする。その隅で投げ出された一人は震えていた。余程痛かったのか段ボールがしっとりしている。
「もう台車乗る係やらない……」

成功 🔵​🔵​🔴​

二本木・アロ
上司を元気づける為にプレゼントとかクーリエちゃん達イイヤツじゃん(もぐもぐ)
でもなー、キマイラちゃん達にメーワクかけるのはいただけねーんだよなー(もぐもぐ)
……ってコトでそこで追っかけてるヤツらは覚悟しろやゴルァアアア!

キマイラからこっちに気を引く為に【恫喝】しながら【ダッシュ】で接近。
『アヴァチュホヤの御裾分け』で余裕で追い付けるだろ。

「っつーかそれ楽しそーじゃん! それあたしが乗るから退けよ!」
食ってた焼きもろこしの芯で台車に乗ってるヤツの額をど突いて落とす。
乗ったらキックスケーターよろしく台車で走り回ってクーリエちゃん達轢いて回るわ。
ファンサ? 『台車で怪人轢いてみた』とか撮る?



 小さな飲食店が並ぶ通りで悲鳴交じりの声とガラゴロと台車が走る音がする。
「来るな来るな!」
「来るなと言われても追うのが俺たち押し込みクーリエズなのだァ!」
 キマイラの少年が息を荒げながら走る。クーリエズも全力で追っているが周囲の香りに負けたのか台車に乗っていた一人がぽつりと呟いた。
「先輩、僕お腹すきました」
「キマイラ捕まえたら奢ってやるから我慢しろ!」
 その言葉に気合を入れ直した後輩クーリエズは段ボールを構え直す。その時、ほんのりと醤油の香りがした。ぐう。三人の腹の音が綺麗に重なった。
「上司を元気づける為にプレゼントとかクーリエちゃん達イイヤツじゃん」
 唐突に褒め言葉が聞こえた。聞き慣れない声な上に何かを食べているのか僅かにくぐもっているが、褒めるということは多分同僚なのだろう。誇らしげにクーリエズは笑う。
「そうだろうそうだろう!お前も俺たちを見習うと良い!」
「でもなー、キマイラちゃん達にメーワクかけるのはいただけねーんだよなー。ってコトで」
 続いた言葉に不穏さを感じた三人がバッと横を向く。そこに居るのは焼きもろこしをもぐもぐしている猟兵、二本木・アロ(ガードカツィナの娘・f02301)だった。同僚どころか敵だった。
「オアーッ猟兵!」
「覚悟しろやゴルァアアア!」
「ヒィイイン!!」
 情けない声を上げクーリエズが逃げ出した。地を蹴るようにして走るアロは時折焼きもろこしを齧る。そんな相手に追い付かれまいと高を括っていたクーリエズだが、追い付かれるどころか先回りされてしまった。【アヴァチュホヤの御裾分け】。その力で焼きもろこしを食べていない者は途端に動きが悪くなってしまう。そのことに気づけなかったのが敗因だった。決して空腹で速度が落ちていたとかではない。
「っつーかそれ楽しそーじゃん!あたしが乗るから退けよ!」
「ぇえ……」
 そっち?困惑の声を上げた後輩クーリエズの額に食べ終わった焼きもろこしの芯が突き刺さり、ズシャアと台車から転がり落ちた。
「こ、後輩ーーッ!!」
 後輩の大怪我(?)に台車を止め駆け寄ったクーリエズ二人にもボコンと焼きもろこしの芯が刺さる。アロはガクガク震えるクーリエズから台車を奪い取り、キックスケーターの様にくるくる乗り回す。感覚を掴んだのか満足そうに頷くと、台車をクーリエズに向け――思いっきり突撃した。
「ぎゃーっ!?痛、貴様ァ!猟兵の癖に轢くのか!?」
「轢くけど」
 クーリエズのツッコミにしれっと返したアロは何度もクーリエズを轢き潰す。なんだなんだと隠れて様子を見ていた少年キマイラに気づいたアロは轢く作業を止めないまま手を振った。
「おーい、『台車で怪人轢いてみた』とか撮る?」
「撮る~!」
 無邪気な声と共にカメラが向けられる。普通に考えたら大問題な絵面だがここはキマイラフューチャー。彼女の華麗な台車捌きは大人気動画になったそうな。

成功 🔵​🔵​🔴​

舞莽・歳三
中々愉快な事をしてんな、手伝ってやろうか…?なんてな

面倒事が余計面倒になる前にまずは【地形の利用】をしつつ【暗殺】でちくちく嫌がらせしてくぜ
俺の苦手なオバケとか出してきたらナイフによる【投擲】で牽制しながらUCで確実なタイミングを見計らって引かず突っ込み過ぎずでとどめをさそう



 キマイラは小さな行き止まりで震えていた。逃げ切ったと思っていたのに。また近くでガラゴロと嫌な音がする。ここは細い道がたくさん分かれているから、大丈夫だって思っていたのに。
「誰か、助けて……」
 小さな声と涙がぽろりと零れ落ちる。そこに黒い影が舞い降りた。
「そこに隠れてな」
「猟兵さん……?」
 その問いに小さく頷いた舞莽・歳三(とし・f30567)は台車の音がする道へ歩み出る。
「その雰囲気……猟兵だな!?おい、キマイラを見なかったか?いや、隠したのか!?」
 キマイラを見失ったことに焦っているのか、もしくは猟兵の登場に焦っているのか、クーリエズが怒鳴る。そんなクーリエズに対し、歳三は肩を竦めて意外な発言をした。
「中々愉快な事をしてんな、手伝ってやろうか……?」
「えっ……お前もしかして良いヤツなのか」
 良い猟兵もいるじゃん……!クーリエズがきゅんとした瞬間、ヒュッと何かが空気を断った。ぱらり。段ボールの切れ端が地に落ちる。トスッとクーリエズの後ろの壁に刺さったのは良く磨かれたナイフだった。
「なんてな」
「ですよねー!一瞬でも信じた俺たちが馬鹿だった!」
 悔しさに任せて台車で突っ込んできたクーリエズを良く引き付けてから歳三は細い道へ入る。クーリエズが道を覗き込むタイミングを見計らい、頭の箱のド真ん中にナイフを突き刺した。怯んだ二人にも流れるように刃を振るう。
「いっでぇ!」
「そりゃ痛むようにやってるからな」
「ひっでぇ!」
「敵だからやるだろ」
 至極真っ当な返しにクーリエズはぐぬぬと唸る。躍起になって彼女を捕えようとするが捕えるどころか様々なナイフで切り刻まれてしまう。
「くそッ!」
 自棄を起こしたようにクーリエズの一人がボロボロの段ボールを構える。ボフン!と音を立てて開いたそれからは靄のようなものが現れ、ぐんにゃりと形を変えた。
「……オバケ」
 歳三が一歩だけ退く。その動きを見逃さなかったクーリエズがこれまでの仕返しだと言わんばかりに高笑いした。
「はっはぁ、お前はオバケが苦手なのか!行けぇバケバケ1号!」
 雑な名前で呼ばれたオバケがひゅーっと謎の鳴き声を上げながら歳三へ向かって行く。オバケから距離を取りつつナイフを投げる彼女の目はクーリエズから離れない。隙さえあれば相手を叩けるのに。そう思いつつも距離を取らざるを得ない状況に歯噛みする。
「……オバケは実体がないからな……」
 自分で呟いた言葉にはっとする。ならば。僅かに笑った歳三はクーリエズの斜め上に跳んだ。それに反応したオバケが主を守るように立ちはだかるが、構わずナイフを放つ。【チリヌルヲ】による重力を受けたナイフたちはオバケをすり抜け、油断しきっていたクーリエズの頭をドスドスと射抜いた。ダメージ故か驚き故かクーリエズはばたりと倒れ、オバケも箱の中に戻るように消えた。
「すり抜けは卑怯……」
「いやオバケ出すほうが卑怯だろ……」
 歳三はツッコミを入れつつくるりと背を向け、キマイラを保護すべく元の道へ戻っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ベルベナ・ラウンドディー
【演技・変装・盗み】
見つけたぞ!追え!クーリエズ、あのキマイラを捕まえろ!
梱包完了次第私がドーラさまんとこまで運んでいく!


…ってな感じで
梱包までやらせたところで私がバイク【騎乗】で救助します。お疲れ!
ふ、キマイラとの追走激で体力を消耗させてからバイクで逃げる完璧な作戦
…ってオイオイオイ台車でバイクと張り合うとか冗談だろあいつら!?


体力勝負に持ち込むべきか?
スピード勝負で強引に振り切るか?
いやここはあれだ
高速コーナーに持ち込んで  必 殺 の 急 ブ レ ー キ  で勝負を決めましょう
ガードレールに叩きつけてやれ【地形破壊】

運送用の台車に高性能ブレーキなんざあるはずないしイケるイケる



「見つけたぞ!」
 逃げ疲れて公園で休んでいたキマイラの前に仮面を被った怪人が現れた。先程まで追ってきていた箱頭たちとは違う。再び逃げようとするキマイラの足はふらつき、歩くのがやっと。
「クーリエズ!ここだ!あのキマイラを捕まえろ!梱包完了次第、私がドーラ様んとこまで運んでいく!」
「お、おう……!」
 キマイラに撒かれうろうろしていたクーリエズは見知らぬ同僚に導かれ、再び獲物を視界に捉えた。ふらついているキマイラなどクーリエズにとって止まっているようなもの。あっさり追いつき抵抗する暇も与えず箱に入れ、きゅきゅっとロープで縛った。
「……でもこれ本当は俺たちが運ぶべきじゃね?」
 ちょっと横取りされてる感あるよなあとぼやいた瞬間に同僚がバイクに乗って現れた。
「どうだ?捕まえられたか?」
 クーリエズはその仮面をじっと見る。まあ、コイツのおかげでキマイラ捕まえられたしな!一瞬で意見を一致させたクーリエズは仮面の怪人に箱を渡した。
「じゃあ安全運転で頼むぞ」
「ああ。――お疲れ!」
 かしゃん、仮面が投げ捨てられた。
「……は?もしかして猟兵ですかーッ!?」
 そう、彼は怪人ではない。ベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)、れっきとした猟兵だ。ベルベナは答える代わりににこりと笑ってバイクで逃げ出した。
「キマイラとの追走劇で体力を消耗した相手からバイクで逃げる完璧な作戦」
 ふふん。ちょっとだけドヤ顔しつつ、キマイラを車酔いさせないと思われる程度のスピードで走っていると、後ろから地鳴りのような音が近づいてくる。
「待てやゴラァ!返せェ!キマイラ返せェ!」
「オイオイオイオイ台車でバイクと張り合うとか冗談だろ!?」
 段ボールの中から奇妙な光が見える(気がする)くらい凄い剣幕で近づいてくるクーリエズ。
「返せェ!返せェエェ!」
 呪いのレコードの如くドスの利いた声を繰り返しながら手を伸ばしてくる。その手がキマイラの箱に届きかけ、離れ、また届きかける。
(まずい……体力勝負に持ち込むべきか、スピード勝負で強引に振り切るべきか……どうするか……)
 ベルベナはひとまずスピードを上げ、距離を取ることにした。クーリエズは周囲に目もくれずバイクを追い続ける。もう正直キマイラとか関係ないかもしれない。
 あてもなく逃げていたベルベナの視界に入ったのは緩いカーブ。状況を一瞬で整理し、活路を見出した。
(ここは……あれだ、台車に高性能ブレーキなんざあるはずないしイケる、多分イケる)
 閃きをそのまま愛車に伝えるように速度を上げる。負けじと走るクーリエズの台車も最高速に達する。ベルベナはそれににやりと笑い、ブレーキをかけた。
(必 殺 の 急 ブ レ ー キ !)
 ベルベナのその行動の意味を理解したクーリエズは台車を止めようとするが、全てが遅かった。
「がほぁ」
 クーリエズは速度を落としきれず、そこにあったガードレールに激突し――ガードレールが嫌な音を立てて折れる。クーリエズはそのまま崖下に落下していった。
 崖下がどうなっているのか少し気になりつつ、ベルベナは爪で箱を開け、キマイラを助け出した。箱の中にいたキマイラが目を回していたのはまあ仕方ないだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『ドーラ・ワルダー』

POW   :    わたくしにひれ伏しなさい!
【鞭】が命中した対象に対し、高威力高命中の【踏みつけ攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    下僕達、やっておしまいなさい!
戦闘用の、自身と同じ強さの【力自慢の下僕】と【テクニック自慢の下僕】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ   :    こうなったら奥の手よ!
自身が戦闘で瀕死になると【巨大なびっくりメカ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
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 魔城ワルドーラ。
 まるでプレゼントを待つ子供のようにそわそわしながら部下の帰還を待つドーラのもとに、クーリエズたちが走ってきた。
「キマイラは捕まりましたの!?」
 一瞬、ぱぁっとドーラの表情が明るくなったが、ボロボロの箱を見て、クーリエズたちが失敗したことを理解した。
「……お前たちに任せっぱなしだったわたくしが愚かでした」
「も、申し訳ございません、どうかもう一度チャンスを――」
 焦ったクーリエズが言い終わる前にドーラのヒールがカツンと鳴る。
「プレゼントを強請る前に、わたくしたちがすることがある。それを忘れていましたわ」
「え」
 ずいっとクーリエズに顔を寄せたドーラは意外と嬉しそうに笑っていた。
「わたくしたちはプレゼントを『貰う』のではない!『奪う』のです!猟兵に邪魔されようとキマイラを捕えようとしたお前たちの心……わたくしが忘れかけていたものを思い出させてくれました!」
「ドーラ様ァ!」
 何か無駄に感動ものみたいなテンションだし、ちょっとキラキラオーラすらある。ここは魔城ワルドーラ、悪の組織のアジトである。嘘ではない。
「お前たちの分までわたくしが猟兵を叩き潰し、キマイラを捕えてきます。お前たちはそこでわたくしの活躍を見ていなさい!」
 クーリエズは素晴らしい上司を見送った。


 ――一時間後。
 シャンシャンシャン、鈴のような音がしてキマイラフューチャーの住人たちは空を見上げた。そこには謎の技術で浮くそりとその上に立つドーラ・ワルダー。最近事件を起こしてばっかの人だ!とかそんな反応をされているがドーラはいつも通り高笑いをした。
「オーッホホホホ!キマイラたち、覚悟なさい!」
「やばいよー!逃げろー!」
「今日はその必要はありませんわ」
「……え?」
 キマイラを捕まえようともしない悪の組織のトップ。その違和感に気づいた住人たちは逃げる足を止めた。
「今日のわたくしの目的は『猟兵からお前たちを奪うこと』!そう、猟兵を倒し、猟兵の目の前でお前たちを連れ去ります!」
 ……何か悪の組織の癖に正々堂々やり合います宣言してるってことに気づいてるのかなあって顔をする住人たち。まあ猟兵が来てくれるし多分勝ってくれるからいいや!と異様な状況をすんなり受け入れた。
「来なさい猟兵!今日のわたくしは一味違いますわよ……!」
 再びそりの上で高笑いしたドーラ。一味どころかメチャクチャ違うんじゃないかな。
 ともかく、猟兵のすべきことは変わらない。住人たちの期待通り、ドーラ・ワルダーを撃破せよ!
ベルベナ・ラウンドディー
【苦戦OK】
技能:捨て身の一撃・スナイパー


高所から名乗りを上げて正々堂々と戦う
それは正義の味方のお約束
…まずいな、人気を奪われてしまう



ならば私は更に高くから空中降下して正々堂々戦うまでのこと!
空浮くそりの更に高く、成層圏から 不 意 を 突 く 

繰り返す
スカイダイビングで不意を突く!
ユーベルコード使用・巻き起こる衝撃波をすれ違いざまに叩きこむ!
今日の正義の味方は一味違うのです!
雲に穴を空け 空浮くそりを突き破り
ピンポイントで奴に攻撃を叩きこめば…




地面が目の前だ☆



敵のユーベルコード対策?
鞭が命中するまでもなく平伏するから大丈夫ですよ
成層圏からノーブレーキで落下して無事なわけありませんし…



 キマイラ救助を終えたベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)がドーラの前に現れる。猟兵の登場に沸く住人たちに見守られる中、彼はヒーローの様に声を張り上げた。
「高所から名乗りを上げて正々堂々と戦う、それは正義の味方のお約束!お前がそんなことをすると……人気を奪われてしまう!それはまずい」
 そこ?住人たちが心の中でツッコミを入れる。
「なるほど、そんな奪い方もあるわね……」
 良い事聞いた、みたいな顔をするドーラ。それを奪ってどうする気なのか。
「人気を奪われるわけにはいかない、ならば……私も正々堂々と戦うまでのこと!」
 ベルベナが勢いよく地を蹴ると強い風が吹き、その姿は一瞬で見えなくなる。
「な、どこに……!?」
 姿を消した猟兵を探しつつ反撃せんと構えるドーラ。彼女の真上の雲が切り取られたように不自然に開き、その真ん中に輝く何かが見える。ドーラに向かって急降下してくるベルベナだ。このまま落下すればただでは済まない。それを覚悟して攻撃態勢に入る姿はまさに正義の味方。だが。
「相手が高所にいるのなら……その更に高く、成層圏から不意を突く!」
 力一杯の「不意を突く!」発言。正々堂々と言っていた正義の味方の台詞だろうか。微妙なラインだが戦略であれば多分問題ないだろう。上空からの突撃に関わらずベルベナの狙いが狂うことはない。いくらドーラと言えど僅かな時間で対応できることは限られている。
「不意を突くのは卑怯ですわよ!」
 間に合ったのは防御でも回避でも反撃でもなくツッコミだけ。そのツッコミにもベルベナは自信満々に返した。
「今日の正義の味方は一味違うのです!だから不意を突く!」
 言い切ると同時、【すれ違いざまの一撃】により強化されたボディストレートが綺麗に決まった。その力と落下スピードで生じた衝撃波がドーラを襲う。そのままそりも突き破られた。足場であったそりを失った二人は隕石のように地へ落ちていく。
(地面が目の前だ☆)
(地面が目の前ですわ……)
 端からこうなることは想定していたので清々しい表情のベルベナ。一方で墜落を確信したのか諦めの表情のドーラ。
「わ、避けろー!」
 物凄い勢いで落ちてくる猟兵たちに巻き込まれてはたまったもんじゃないと住人たちが落下地点と思われる場所から離れた。その数秒後に二人が地面に激突し、謎の大爆発が起きる。
 煙が晴れるとそこには倒れ伏すベルベナとその上に座っているドーラがいた。ドーラは墜落の際にベルベナを下敷きにしたのか、落下による傷は浅いようだ。対してベルベナは捨て身の攻撃の疲労とドーラに乗っかられた所為かぐったりしている。ドーラにとってこれは猟兵を倒す最大のチャンスだったのだが、攻撃するどころか律義に彼の上から退いた。
「わ、わたくしを守ろうとした下僕精神に免じて……これくらいにしておいてあげましょう!」
 どうやらベルベナが庇ったと認識したらしい。ただの偶然なのだが今日の彼女にはそう見えたようだ。
「別に守ろうとはしてないんですがね……あと下僕じゃないです」
 というか落ちた原因は私の攻撃なんですけど、とベルベナが小さくツッコんだが、ドーラには届かなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

舞莽・歳三
へぇ、空飛ぶソリなんて本当にあったんだなカッケェー。俺も乗せてくれよ

【空中浮遊】で乗り込んで【だまし討ち】で手早く攻撃するぜ
常に相手の間合いを測りながら、最適な距離でナイフを【投擲】させて自分のペースに持ち込もう
これはプレゼントだ、これとこれも、ナイフなんていくらあってもいいだろ?



 ドーラはふらふらとよろけながら、それでもまっすぐに空に向かって手を伸ばす。
「ふ……そりが一つだと思わないことですわね!来なさい、そり2号!」
 ぱちんと指を鳴らすと、再びそりが現れドーラのもとにやってくる。それに乗り込み上空に戻ったドーラは、びし、と鞭を引っ張りポーズをした。
「へぇ、空飛ぶそりなんて本当にあったんだなカッケェー」
 そりを見上げしみじみと呟いたのは舞莽・歳三(とし・f30567)だった。そんな夢の乗り物が実在するなら彼女が思うことは一つ。
「俺も乗せてくれよ」
 やっぱり浪漫なものには乗りたいよね。高く飛び上がり、歳三はそりに乗り込んだ。彼女らしくドーラの背後を取ることも忘れない。
「な、なんという脚力ですの……!?」
 ドーラが振り返るよりも早く手刀を入れた。痛む首を押さえるドーラをよそに、歳三は想定外のことにむっとする。
「狭い」
 二人乗るのがギリギリのそりは少し乗り心地が悪い。なので、ドーラには降りてもらいたい。歳三は未だに首を押さえているドーラに早く降りろと思いながら背を切った。
「ぐぅ……っ」
 痛みに耐えながらドーラは反撃しようと鞭を振るう。この狭い場所であれば確実に当たるはずなのだが、手ごたえはない。それどころか、歳三の姿が見当たらない。また猟兵を見失った彼女はきょろきょろと見回し、どうにか歳三を見つけ出そうとする。まさか下に降りたのか、と覗き込むと真横からナイフが刺さる。
「ぎゃぁっ!?」
 普段のドーラからは想像できない声が出る。攻撃が来た方向を見ると、そりから僅かに離れた場所で浮きながらナイフを構えている歳三がいた。
「……え?何で浮いて……」
「多少は空中浮遊出来るんでね」
「じゃあそりいらないんじゃ……」
 ドーラの言葉に歳三が大きな溜息を吐いた。コイツ分かってねぇなって顔に書いてある。
「実在しないと思ってたもんがあったら乗りたい。けどお前が邪魔。だから叩き落とす」
 叩き落とした後のことを考えているのか歳三の目が僅かに輝いてるように見えるのは気のせいだろうか。
「そりを持って浮けばいいでしょう!?」
 ドーラもそりを奪われたくないので必死に反論をする。そういうことではないのは理解はしているが、もう一度地面に叩きつけられたくはないので反論するしかない。
「……仕方ない」
 再び歳三が溜息を吐く。諦めてくれたのかとドーラが安心した瞬間、頬に痛みが走る。
「なんですの……!?」
「これはプレゼントだ」
 投げられたナイフが彼女の頬を掠ったのだ。ご自慢の顔を傷つけられたドーラは怒りをあらわにした。
「わ、わたくしの顔を傷物にするなん」
 最後まで言わせず、今度は腹にナイフが刺さる。
「い゛っ……!わたくしのお腹を的のようにしないで欲しいんですが!?」
「ナイフなんていくらあってもいいだろ?」
 これとこれも、と言いながら次々にナイフを投げる歳三。相手に反撃させることなく『プレゼント』が掠め、刺さり、ドーラの体は傷が増えていく。
「こんなの、こんなの酷いですわ……」
 傷だらけになったことのショックに耐えられず蹲ったドーラ。それを見逃さず歳三は彼女を蹴り飛ばした。そのままドーラは地面に落ちていく。落下しながらすんすん泣くドーラに構うことなく、歳三はそりを乗っ取った。
「やっぱりカッケェ……」
 ぱっと見ると普段とあまり変わらない表情ではあったが、確かに目はキラキラと輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

二本木・アロ
ファンサ。ドーラちゃんの後ろで踊る。空飛ぶソリで踊ってみた。
え? どーやって乗ったか?
そこのビルで【クライミング】して飛び移ったんだけどダメ?

ドーラちゃんに言いたいコトがあって来たんだ。
その……流石にこの季節にそのカッコは冷えるんじゃねーか?
え? あたし? 若いからヘーキ(悪気の無い【挑発】)
あ、ほら、暴れるとソリが揺れうわ落ちぎゃああああああああ(【激痛耐性】で何とかする)

びっくりメカ出てきたらあげみざわ。
何それ貸して! イイじゃんちょっとくらい貸して貸して貸しうわああん貸してくんないならぶっ壊すからなーっ!!(【捨て身の一撃】で【頭突き】をぶちかます)



 二度も高所から落下したドーラは涙目になりつつ、それでも諦めずにもう一度指を鳴らした。
「ふ、ふふふ……!わたくしはきちんと予備の予備を用意してますわ!出でよ!そり3号!」
 前二つに比べ少しシンプル――というか、木箱を切って電飾を付けただけのそりに飛び乗る。そんなそりにも関わらず、住人たちはカメラを向けていた。
「ここの住人は案外シンプルなのが好み……?」
 わたくしのセンス、悪くないかも……と思いポーズを決める。そこで何かが腕にぶつかった。
「あ」
「あ゛ぁあまたですの!?またぁ!?」
 いつの間にか二本木・アロ(ガードカツィナの娘・f02301)がそりに乗っていた。
「おおおおおお前ど、どうやって、」
 墜落のトラウマに震える声をかき消すように下からブーイングが巻き起こる。
「ダンスの邪魔―っ!」
 住人たちが見ていたのはドーラやそりではなく、ドーラのそりで踊っていたアロだった。そりの持ち主が誰かなど知ったことではない。
「どーやって乗ったかって……ビルでクライミングして飛び移って来たんだけどダメ?」
「ダメですわよ!人のものに勝手に乗らない!」
 悪の組織とは思えぬ説教。そんな相手に驚くこともなく、アロは真っ直ぐにドーラを見つめた。
「……ドーラちゃんに、言いたいコトがあって来たんだ」
 真剣な眼差し。ドーラはどきりとする。ドーラだって乙女心はある。その想いに応えられはしなくても、せめて自分の言葉で断るべきだと分かっていた。
「わ、わたくし女性は――」
「その……」
「でもお前の気持ちは嬉し……」
「流石にこの季節にそのカッコは冷えるんじゃねーか?」
「は?」
 雰囲気ぶち壊しの台詞が飛んできた。ドーラは呆然とする。少しときめきを感じていたものだから裏切られた気分。大体、それを言うならビキニアーマーのアロだってそうだろう。
「お、お前だって……」
「あたしは若いからヘーキ」
 心配しなくていいぜと純粋に笑う。それがドーラの心のダムを決壊させた。
「最低ッ!わたくしのときめきを返しなさい!それにわたくしそんなに年上じゃありませんわよおおおッ!!」
 ギャン泣きするドーラ。鞭を振るう余裕すらないのかアロをぽかぽか殴りだす。ドーラの大暴れにそりはバランスを崩し――ごてんと横転した。空中にあるのに何故か横向きに維持されている。
「うわ落ちぎゃああああああ!!」
「ばかああああ!」
 ドーラ、本日三回目の墜落。ズベシャアと派手な音を立てて顔から落ちた。その横でけろりとしているアロ。思ったより痛くなかったらしい。
「うううわたくしの顔を、心を傷だらけにして……ッ!許しませんわよ猟兵ーーッ!!」
 ドーラが地面をバンと叩く。するとどこからともなく巨大ロボが飛んできた。頭にはトナカイの角を模した木の枝が刺さっている(予算不足)。乗り込んだドーラが仕切り直しのつもりなのかいつものように高笑いする。
「オーッホッホッホ!これは最新びっくりメカ『トナトナモン』!お前なんてこれでぺっちゃんこ」
「何それ貸して!」
 テンションブチ上げなアロがぴょんぴょん跳ねながらドーラの言葉を遮った。
「……お前のような猟兵にはぜーったい貸しませんわ!」
 先程までの仕返しだと言わんばかりに意地悪な言葉を吐き、勝ち誇った顔をするドーラ。それに負けずアロは粘る。
「イイじゃんちょっとくらい貸して貸して貸して!」
 20歳女子の全力駄々こね。そんな彼女を見下ろしドーラは嘲笑う。
「ぜーったい、ぜぇーったい貸しませんわ!」
 アロは悔しそうにドーラを見上げ、子供のようなことを言い出した。
「うわああん貸してくんないならぶっ壊すからなーっ!!」
「えっ」
 自棄を起こしたかのように走りだすアロ。彼女の石頭がロボの足にぶち当たる。ロボの足は見た目に反し脆かったのかがくりと片足をついた。
「わ、わたくしの浪漫を悉く壊すのはやめなさーい!」
 ドーラの浪漫はアロの前では弱いのか、それとも元々弱いのか。それは誰にも分からない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フローライト・ルチレイテッド
アドリブ連携歓迎でーす。
キラキラ光ってキマイラの皆を【鼓舞】しながら、音量を上げてライブスタートです。
ついでに派手なキマイラとしてドーラさんも【誘惑】しておきます。

指定UCを使用。ステージは比較的小回りの利く形態に変形。
外部スピーカーの音量を上げ、配信も繋げて準備OK。

翼広げて明日へと羽ばたく火の鳥よ、今日と未来を繋いで行けッ!
天駆ける翼に【情熱】を乗せて、【楽器演奏、歌唱、パフォーマンス、範囲攻撃、浄化】を駆使して、浄化の光を空からばら撒きます。

飛んでくる攻撃は【地形の利用】と飛行【パフォーマンス】と【オーラ防御】でなんとかしましょう。

皆と仲良くするとかなら、誰も何も言わないのに!



 破損したロボに乗ったままのドーラの前に立ったのはフローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)。今度はそりに乗っていないから高所から叩き落とされることはないという心の余裕があるドーラは高笑いをする。
「オーッホッホッホ!タダ乗りしてこない猟兵なら恐れることはありませんわ!今度こそぺっちゃんこに――」
 ロボを動かそうとするドーラの手が止まる。眩い光がフローライトから発されているからだ。住人たちはわあっと声を上げ、拍手をする。ライブが始まる前から住人たちの興奮は止まらない。ドーラは直感でこれを攻撃してはいけないと思った。罠かもしれないと思いつつ相手の動きを少しだけ待ってみる。
「これをこうして……」
 フローライトの【FIRE BIRD REINCARNATION!】が発動される。それはすぐにドーラに攻撃するわけではなく、彼の空飛ぶステージを作り上げていく。スピーカーの調整も配信準備も慣れた手付きで終わらせた。
「よし」
 ギターもステージも自分自身も準備万端。フローライトのライブが始まった。
「翼広げて明日へと羽ばたく火の鳥よ、今日と未来を繋いで行けッ!」
 ギターと共に紡がれる力強い言葉。それは連日の事件に疲弊したキマイラフューチャーの住人たちの心に火をつける。猟兵たちと一緒に頑張っていかなくちゃ。その想いとリズムに乗る。
「なんですの、これは……」
 ドーラは戸惑ってロボの操縦桿から手を離した。その時、フローライトが演奏する手を止めずドーラのロボの前に飛んでくる。その曲に少しだけ不釣り合いな柔らかい笑みを浮かべ、再び住人たちのもとに降りていった。
「……もっと近くで聞きたい!」
 ドーラの為だけに向けられた笑顔ならば彼女だってきゅんとしてしまう。傷だらけの体に構うことなく、すたんとフローライトの前に飛び降りた。そこでドーラはフローライトのステージから降り注ぐ光に気が付く。焔なのに、雪のよう。その温かな光はささくれ立っていたドーラの心を優しく慰めてくれる。
(……ああ、でも)
 ドーラは猟書家。彼の演奏がどんなに素晴らしくて、どんなに聞き続けていたいと思っても、彼女は目の前のギタリストを倒さねばならないのだ。だから、演奏に負けぬ力で彼を倒そう。そう決めたドーラは音楽や住人たちの応援に消されようとも、精一杯の声を出した。
「下僕達、やっておしまいなさいッ!」
 飛んで来た段ボールの巨人と湧き出るように現れる小さな段ボールのネズミの群れ。ドーラの意向か段ボールネズミたちは周りの住人たちを巻き込まないよう、距離を取るように誘導する。フローライトはステージを更に高く飛翔させながら微笑んだ。敵であっても彼女にも歌が届いているならば嬉しい。
 段ボールの巨人が上空に飛んだフローライトをステージごと倒そうと腕を振り下ろす。フローライトは歌を止めずするりと避け、続いた素早く薙ぎ払う攻撃もオーラで弾く。巨人を伝って登って来たネズミの突撃も難なく躱した。無事に歌い終わったフローライトは少しだけ咳払いをして、マイク越しにも関わらずドーラに叫んだ。
「皆と仲良くするとかなら、誰も何も言わないのに!」
 その言葉に段ボールたちがぴたりと止まる。ドーラは何か言いたげにフローライトをじっと見た後、いつものように笑った。
「……オーッホッホッホ!わたくしがそんなことすると思って!?」
 そう言いながらも段ボールの下僕がフローライトや住人たちを攻撃することはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒風・白雨
随分と頑張って持ち上げておるのう
いやなに、ただの感想じゃ。気にせんで良いぞ

久方ぶりに目覚めてみれば、幽世以外の世界にも行き来できようとは面白きことよな
しかし、いずれの世界にもお主らのような骸の海からの吹き出物がいるとは、なんとも興がそがれることじゃ

しかも、お主の目的は、あの者達を攫って下僕に改造することであったか
己が力量も顧みず、下僕を無理矢理増やそうとするなど、上に立つ者がすることではない
少し折檻してやるゆえ、覚悟せよ

相手が放った鞭を掴み取り、力任せに奪い取る
鞭で相手を縛り上げ、派手に周囲に叩きつけよう

世間は祝祭日のようだが、お主らは骸の海で反省会でも開くのだな

UC指定:見切り、怪力、捕縛



「久方ぶりに目覚めてみれば、幽世以外の世界にも行き来できようとは面白きことよな」
 このまま戦うかどうか迷いだしたドーラの後ろで鷹揚な声がする。振り返るとそこには黒風・白雨(竜神・f31313)が笑みを浮かべていた。
「しかし、いずれの世界にもお主らのような骸の海からの吹き出物がいるとは――なんとも興が削がれることじゃ」
 目の前のドーラから僅かに視線を逸らし、思い出すように一柱の竜神はふむ、と考える。
「吹き出物ですって……!?」
 吹き出物。自らの顔に自信を持っているドーラは吹き出物扱いされたことにカッとなり、そのまま持っていた鞭を振るう――が、白雨は視線を向けないまま鞭を掴んだ。
「しかも、お主の目的はキマイラを攫って下僕に改造することであったか……」
 掴んだ鞭を気にしていないのか白雨は未だ思考を続けている。ドーラが無理に鞭を引き抜いてもう一度振るおうとするが、白雨の手から鞭を抜くことが出来ない。
「なんで……ッ」
「己が力量も顧みず、下僕を無理矢理増やそうとするなど、上に立つ者がすることではない――少し折檻してやるゆえ、覚悟せよ」
 神は人の上に立つもの。『上に立つもの』のすべきことはわかっている。だからこそ、それに相応しくないドーラを見逃すはずがないのだ。漸くドーラに視線を向けた彼女は鞭を手繰り寄せ、ドーラからそれを奪い取った。細腕に見合わずあっさりと引き抜いたのは彼女の怪力故か。
「あっ、わたくしの鞭……!」
「折檻される側に鞭はいらん」
 笑みを崩さぬまま、けれどどこか冷たい声で白雨は言い放つ。そのまま奪い取った鞭をドーラに向けて打つ。鞭はドーラが扱うよりも柔軟に、まるで生き物のように動き、ギッと元の持ち主を縛り上げた。
「ぐ……!」
 巻きつく速度に対応しきれず綺麗に締めあげられてしまったドーラがそれを解こうとじたばたと暴れる。それに構うことなく白雨は腕を振り上げた。
「え……」
 その動きでドーラは次に何をされるかを理解した。これは思いっきり地面に叩きつけられるやつだ、と察し、血の気が引く。
「ほれ」
 ドーラの予想通り、地面に叩きつけられた。びたん、などと可愛らしいものではなく、ドゴン、ドゴンと地を打つたび舗装された道が罅割れるほどの力で叩きつけられる。時折その勢いで顔面を叩きつけられ、大きな傷に響くように叩きつけられ。ドーラの体力は限界を迎えていた。
「世間は祝祭日のようだが、お主らは骸の海で反省会でも開くのだな」
「……わたくし、今すぐに反省できることがありますわ」
「ほう、聞こう」
「わたくしらしくなく、正々堂々猟兵に挑んだのが間違いでしたわ」
「……それはそうであろうな」
 懺悔もどきを聞いた白雨は一際力強くドーラを地に叩きつけた。謎の爆発が起こり、ロボや段ボールの下僕たちも花火のような光を散らして爆発していく。白雨の手から鞭が消え、煙が晴れたときにはドーラの姿は消えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​


 花火のような光も消える頃、キマイラフューチャーの住人たちの歓声が上がる。
 彼らの中では猟兵たちの勝利は決まっていたものだが、それでも目の前でその戦いを見届けられたのは嬉しいのだろう。
 年末年始、忙しくも楽しいシーズン。猟兵たちは平和と共に、喜びもプレゼントできたのかもしれない。

最終結果:成功

完成日:2020年12月24日


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#キマイラ
#ちょびっとネタ感


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ガジル・コリアンダーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト