●唯一無二の『おともだち』
「みーつけた!」
星も、街も、良い子も、ぐっすり眠るころ。
ある街のぬいぐるみ工場の魔導蒸気機械の前で、虹を帯びた長い白髪を揺らした女の子が微笑みました。
「『おともだち』をー、つくろーお♪」
しんと静まり返ったひろーい工場の中で、響くのは女の子の歌声だけ。
機械の真ん中に嵌った大きな大きな宝石を見上げた、女の子は機械を登りだします。
この機械は、この工場で一番大切な機械。
大きな宝石から抽出した魔力を籠めることで、ぬいぐるみを少しの期間だけまるで生きているかのように動かせる魔法をかける機械なのです。
「わたしの、わたしの♪」
機械へと身軽に登りきった女の子が宝石へ小さな卵を押し付けると、とぷんと宝石へと飲み込まれるように卵は沈み込み。
じわじわと変色した宝石が、しゅわしゅわと煙を吐きだし始めました。
「だいすきな『おともだち』たちっ♪」
それから『失敗作』の女の子はぴょーんと機械から飛び降りると、翡翠色の瞳をぴかぴかに瞬かせて。
こらえきれないという様子でくすくすと笑いだしました。
「ああ、たのしみ! みんな、みーんな、わたしの『おともだち』になってくれるわよね!」
卵の溶けた――『災魔』と化した宝石から溢れ出した煙は、更に、さらに。
星も、街も、良い子も、すべてをぐっすりと深い眠りへと誘います。
眠る人々はなあんにも知らずに。
ぐうぐう、すやすや。
――次に目覚める頃には『おともだち』にされてしまっていることも、ぜーんぜん知らないままで。
ぐうぐう、すやすや。
●グリモアベース
「センセ、センセ、今日はぬいぐるみ工場のある街を救って貰うっスよ!」
挨拶もそこそこに小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)は言葉を切り出した。
――アルダワ世界を狙う猟書家・ミスター・グースの目論む、『魔導蒸気文明の災魔化』。
撃破された幹部『ドクター・パラケルスス』の意志を継いだオブリビオンが、ある街を襲う予知を見たと彼女は言う。
「名前の無い――『失敗作』と呼ばれていた彼女は、今回、人間たちを改造する力を与えられているっス。その力を使って、街の人たちすべてを自分の『おともだち』にしようと目論んでいるみたいっス」
――『楽しい』という感情以外を持ち合わせぬ『失敗作』は、廃棄をされてオブリビオンと成った。
彼女は別に廃棄をされた事を恨んじゃいない。
勿論人だって大好きである。
共に楽しく過ごせる『おともだち』を探しているだけなのだ。
――でもそんな方法を、ひとつだって彼女は知らない。
人がどうなったとしても『おともだち』になってくれれば、彼女はそれで楽しいのだ。
「ま、ま、ま。目的はどうあれ魔導ぬいぐるみ工場の肝たる、魔力の篭もった宝石に彼女は『災魔の卵』を融合してしまうっス」
その結果街の中には、催眠ガスが充満しており。
失敗作は眠った人々を自らで築いた『手術室』に運び込んで、『おともだち』――機械化手術を施そうとしているのだ。
「ある日目覚めたら自らの意志に反して機械の体、だなんて。まったくぞっとしない話っスよねェ」
肩を竦めたいすゞは、左右にかぶりを振って。
「そういう訳で猟書家の……ひいては彼女の野望を阻止してきてほしいっスよォ!」
街の中には、眠りに落ちなかったミレナリィドールたちも隠れている。
見つけ出せばきっと力になってくれるだろうと、いすゞはぽっくり下駄をコーンと鳴らして。
「今回も頼んだっスよ、センセ達!」
そうしていすゞは、猟兵達への信頼に満ちた色を瞳の奥に宿して笑った。
絲上ゆいこ
こんにちは、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
今回は『猟書家の侵攻』に関わる、二章構成のシナリオです。
平和となった世界に伸びる魔の手を、払い除けてやりましょう!
●冒険『蒸気と魔法の星』
星々も眠る深夜、催眠ガスの撒かれた街。
蒸気と魔法に満ちた工場の中や、街中を探索して頂きます。
失敗作は街の人を魔導蒸気機械に溢れた工場の何処かに設置された手術室に連れ込んで『おともだち』に改造しようとしているので、催眠ガスの影響を避けつつ、失敗作を探し出して止めて下さい。
なお彼女は『おともだち』が欲しいので、『おともだち』になってくれそうな人がいると寄っていきます。
催眠ガスの影響を避けつつ、最大限楽しそうに振る舞うときっと失敗作は寄ってくるでしょう。多少トンチキでも楽しげだと、きっと百点満点です。
たくさん楽しげにして、『おともだち』になれそうな雰囲気を醸し出してくださいね。
●災魔化宝石
失敗作が手にしている為、一章では手を出すことが出来ないでしょう。
でている催眠ガスは、猟兵ならば生身でも少しだけならば耐えることが出来ます。
道具や技能、UC、種族次第では完全に無効化できるでしょう。
●プレイングボーナス(全章共通)
・ミレナリィドールの助力を得る。
街人のミレナリィドールを探し出しお願いをすれば、助力をしてくれるでしょう。
またミレナリィドールではありませんが、工場の中には出荷前の本物のように動く魔法のぬいぐるみたちもいます。とてもふかふかでかわいいです。
ぬいぐるみたちは動物を模していて喋ったりはしませんが、基本的には友好的に接してくれるでしょう。
●その他
・受付期間等に関しましては、マスターページに記載しているスレと、タグを利用してお知らせいたします。
・犬塚ひなこマスター、つじマスターとのふんわり合わせシナリオです。直接的な関係はまったくないので、同時参加も可能です! 並べると背景が可愛いです。
・久々なので少数採用になるかもしれませんが、元気が続く限りがんばります!!
それでは、皆様のプレイングをお待ちしておりまーす。
第1章 冒険
『蒸気と魔法の星』
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POW : 力や物理で挑む
SPD : 素早さや技で挑む
WIZ : 魔法や知恵で挑む
イラスト:葎
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
花邨・八千代
いいぜいいぜ、遊ぼうぜ
おともだちにだってなってやるよ
持前の毒耐性でガスを耐えつつ、【ケースバイケース】だ
体長150㎝くらいの真っ黒ひよこを大召喚!
うちの団地産です!
深夜の街中、ぴよぴよ鳴いてりゃさぞ賑やかだろうさ
向かう方向は第六感で決めるぞ、俺ァ勘は良い方なんだ
ほらほら来い来い、かぁいいひよこの大行進だ!
先頭に立って楽しい楽しい夜探索と洒落込むぞ
ありったけのひよこを出して、ミレナリィドール達の隠れ蓑にも
今のうちに他の猟兵のところに行くなり、逃げるなりだ
なんせ80体越えのデカひよこ、良い目隠しになるだろ
ところでお前の名前なんてーの?失敗作?
なるほど、じゃー「しーちゃん」な!
遊ぼうぜしーちゃん!
ハーバニー・キーテセラ
真夜中なら眠くなっても当然ですよねぇ、なんて、うふふ~
ええ、ええ、いいでしょ~。ならばぁ、眠った子も起き、隠れた子も出てくるぐらい騒がしく、楽しくと致しますよぅ!
オーラを衣と纏い、催眠ガスを退け時間稼ぎ
UCで兎&猫さんを呼びつつ、ぬいぐるみさんに協力を打診ですぅ
一緒に宵の街パレードといきませんかぁ?
それぞれが楽器を持ち、灯りを持ち、ぴーぴー、にゃあにゃあ、どんちゃんと!
許諾貰えたら一緒に外へ
寝た子も起こす楽しきの開演ですぅ
音を、オーラの幕を広げて、少しでも催眠ガスを外に追いやれたらいいですねぇ
起きてきた人あればパレードにお誘い
あの子もこの子も誰彼問わずぅ、さあさ、皆さんもご一緒に如何ですかぁ?
●宵街パレード
街を覆う烟りは、息が詰まりそうな重苦しい澱の如く。
星明りを靄に飲み込まれた空は、白い闇が溶けている。
こんなにこんなに、不気味な夜。
こんなにこんなに、静かな夜。
街は白く深く、眠りに包まれている。
そりゃあ、真夜中ならば眠くなって当然だ。
こんな時間に街行く者どころか、猫一匹も居るわけが――。
にゃあ。
いいや、居た。
ぴよぴよ、ぴよぴよ。
いいや、猫一匹どころでは無い。
黒い黒い何かが沢山みっちり蠢いている。
眠りへと誘う催眠ガスなんて、なんのその。
黒いひよこを大量……そう、本当に大量に侍らせた花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)は乳白色の靄を切り裂くように。
小学生男子の感性的であればクリティカルな、拾った丁度良い枝で空を指し示すとぐるりと回して指揮者の如く。
「ほーらほら、行くぞー! かぁーいい大行進だ!」
ぴよぴよぴよぴよ。
八千代の自宅の団地名物とも言える、巨大黒ひよこの大行進。
侍らせたその数、なんと80匹と少しばかり。
八千代の可愛いの感性はちょっとズレているので、この巨大な圧迫感でも彼女は可愛いと言い張ってしまえるのだ。
しかし、しかし。
静けさを割く賑わいは、何も巨大なひよこばかりでは無いもので。
ひよこの鳴き声に混ざって響く、笛に太鼓と楽器の音。
「うふふ~、宵の街パレードですねぇ」
八千代の横でくすくすと笑ったハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)の喚び出したものたちだって、負けず劣らず賑やかだ。
工場からナンパしてきたぬいぐるみがかしゃんとおもちゃのシンバルを叩けば、ハーバニーの喚び出したウサギがタンバリンをしゃんしゃんしゃん。
彼女の頭上で揺れるバニー耳の間に乗った猫が、合わせてにゃぁと鳴く。
重苦しいほど烟る、白い闇を切り裂いて。
騒いで謳って、にゃあにゃあ、ぴょんぴょん、ぴよぴよぴよ。
猟兵の指揮するパレードは、華やかに、賑やかに。
「こーんだけ騒ぎゃ、みーんな起きてくるんじゃねーかなー?」
「ええ、ええ~、眠った子も起き、隠れた子も出てくるぐらい騒がしくぅ! 楽しくゆきましょ~」
「おおー! 俺、騒がしいのは得意だぞー!」
「うふふ~、頼もしい限りですねぇ」
八千代がぎざっ歯を見せてにいっと笑うと、ハーバニーは柔く笑み返して。自らを守るオーラをぴかぴかと広げて、賑やかしにと星を散らす。
――寝た子も起こす、楽しきを!
ぴーぴーぴー。
二人の会話に賛成するかのように、魔法のぬいぐるみが笛を掻き鳴らせば、大きな黒いひよこたちがどすどすと跳ね回って。
「……あのう、えっと……」
――そこに、おどおどと顔を出したのは。
……夜は、その……あまり大きな音や光を立てないほうが良いと、思う、のデス」
ものすごく困った顔をした、一人の少年であった。
球体の関節をしているところを見ると、彼はミレナリィドールなのであろう。
「あ、こんばんはー!!」
「あっ……あっ……、こんばんは……」
八千代のバカデカ挨拶にびくりと肩を跳ねた彼は、おろおろと巨大ひよこを見上げてから、おどおどと視線を反らして。
「あらあらぁ、こんばんは~、ご無事で何よりですよぅ。今この街はぁ、災魔に襲われているのですからぁ」
「そうだぞ、だから皆起きてこねえんだ」
ハーバニーがうさみみをぴょっこり揺らして小首を傾げながら状況を説明すると、八千代が言葉を重ね。
目を丸くしたミレナリィドールの少年は、思わずと言った様子で大きな声を上げた。
「えっ……えっ!? 皆寝てるからこんなメチャ近所迷惑に対して誰も苦情を出してくれないから、わざわざ僕が言いに行く事になったのデス!?」
「大人しそうな顔して結構言うなぁ」
「うふふ~、折角ですしあなたもご一緒にパレードなんてぇ、如何ですかぁ?」
きっとその方が、敵がきても守れるでしょうから。
ハーバニーが空色の瞳を和らげて、ミレナリィドールの少年へと手を差し出し。
「ええ~、ずるい! わたしも混ぜて欲しい!」
次いで拗ねたように響いた声は、可愛らしい少女の声であった。
小脇に眠るケットシーを抱えた少女――失敗作と呼ばれていた彼女は、本当に自然に会話へと入ってきて居た。
その気配に肩を跳ねたミレナリィドールの少年を背に隠すように、笑ったハーバニーはこっくり頷いて。
「勿論良いですよぉ~」
「おー、いいぜいいぜ、遊ぼうぜ。――なんなら、おともだちにだってなってやるよ」
八千代の言葉に虹色の髪を跳ねさせて、失敗作はぱっと笑った。
「わあぁ、うれしい! あなたもわたしの『おともだち』になってくれるのね」
「ところで、……お前の名前なんてーの?」
「わたしはね、失敗作。よろしくね!」
「なるほど、……じゃー『しーちゃん』な!」
「わあ、あははっ、しーちゃん? 『おともだち』がそう呼ぶなら、そうねっ」
八千代の言葉にまた笑った失敗作は、ケットシーを脇に抱えたままくるくると回る。
――手のひらから吹き出す蒸気は、彼女の意思では止めることができぬのであろう。
ハーバニーはそう判断すると、少年をひよこの間に隠しながら失敗作へと歩み寄って。
「しーちゃんさん、その猫さんを持っているとぉ、パレードしにくいでしょぉ? 預かっておきますよぉ」
「ほんとうね! うんっ、ありがとう『おともだち』!」
「いいえぇ、どういたしましてぇ」
ハーバニーが誘拐されてきたケットシーをぴかぴか瞳を瞬かせる失敗作から受け取ると、八千代が手頃な枝をもう一度振り上げた。
「じゃ、改めて! かぁーいい大行進だぞーーーーっ!!」
「おー!!」
失敗作は無邪気に笑って、熱い蒸気を吹き出す手のひらを突き上げる。
彼女を此処に惹き付けている間は。
彼女を此処で食い止めてしまえば。
悲劇は起こりはしないのだから。
ぴよぴよ、にゃあにゃあ、しゃんしゃんしゃん。
「たのしいね、『おともだち』!」
失敗作がくるくると回いながら笑えば、八千代とハーバニーも楽しげに笑って見せて――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ネロ・ヴェスナー
【いぬ's】
オトモダチ、ツクローオ
ダーイスキナオトモダチー
ウン、オ友達、作ル歌ダネ……!
歌ノ続キ、アルノカナ?聞イテミタイ
ワ、ワクワク?ウーン……ボクハチョット、怖イカモ
明ルイ方ガ、ポカポカシテテ、気持チイイ
デモ、オオカミノオニイサント一緒ナラ、大丈夫
工場見学、行ク!後デ、行コウネ!
夜ハ、開イテル所ガ少ナイカラ、静カダネ
ボク、食ベ歩キ、大好キ……!
オ菓子、イッパイ食ベルヨ!駄菓子、好キ!
駄菓子ハネ、美味シイダケジャナクテ、面白イノ
当タリダト、同ジノ貰エルンダヨ!
ソノ人モ、駄菓子好キカナ?
ソノ人ガ好キナオ菓子ハ何カナ?
沢山オ話、デキルトイイネ!
ジョン・フラワー
【いぬ's】
おともだちをつくろーお!
だーいすきなおともだちー!
うーん、いい歌だな!
誰が歌ってたんだろう。続きをもっと聞きたいなあ!
ねえ綿のアリス、霧の深い夜ってわくわくすると思わない?
霧じゃなくて煙? でも僕元気だし多分悪いものじゃないさ!
遊んでる限りずっと元気なんだけどね!
工場見学もできるみたいだよ! 後で行ってみよ!
でも夜はお店が閉まっちゃってて少しさみしいね
だってほら、こんな時はおやつでも食べながらうろうろするものだし!
ミレナリィドールってアリスはこの時間でもおやつ売ってくれるかなあ
……そういえば綿のアリスっておやつ食べるの?
お歌のお嬢さんを見つけたらみんなで食べ歩きを楽しんでもいいね!
●よるに歌う
夜に溶ける白は、街をそっくり飲み込んで。
深夜という事を加味した上で、尚。人々の営みがそっくりと眠りに沈められたこの街は、人が住んでいるとは思えぬほどの息が詰まりそうな重苦しい沈黙をたたえていた。
そこかしこに烟るガスは、澱のよう。
街灯に照らされた道行きも、深い深い濃霧の日のように覆われて。
先を見通す事すらできない不気味な夜。
そんな夜に響き渡る、無闇なまでに明るく調子っぱずれた歌声が二つ。
深夜にも拘らず声を張る事に何の恐れも無いジョン・フラワー(まごころ・f19496)は、ふと口ずさんでいた歌を止めると、共に歌っていたネロ・ヴェスナー(愉快な仲間のバロックメイカー・f26933)を横目で見やった。
「ねえ、そういえば綿のアリス! 霧の深い夜って、わくわくすると思わない?」
うふふと笑ったジョンは、桃色の耳をぴぴぴと揺らして。
「あっ、でもこれ、霧じゃなくて煙? すごくモクモクしているようだけれどガスだっけ? ま、でも今、僕元気だしね、多分悪いものじゃないさ! ふふ、でも僕、遊んでる限り大体ずっと元気なんだけどね!」
ジョンが朗らかに紡ぐ言葉に、まるでとても楽しみにしていたピクニックに行くみたいに軽い足取りは澱む事無く。
「ワ、ワクワク?」
逆に尋ねられたネロは耳をしょんもりとさせたまま、ぷるぷると大きな体を揺すってから言葉を紡ぐ。
「……ウーン……ボクハチョット、怖イカモ」
どうせ散歩を擦るのならば夜の霧に満ちた空気より、陽の光に満ちたポカポカとした明るい空気のほうがネロとしてはずっと好みだ。
「デモ、オオカミノオニイサント一緒ナラ、大丈夫」
それでも、それでも。もう一度ぷるると体を揺すりながらもネロはジョンの顔を真っ直ぐに見やって、気持ちを伝え。
ジョンは楽しげな笑みを宿したまま。ネロの言葉の意味を理解しているのかいないのか、とりあえず大きく頷いてみせた。
「やあ、そうかい? そう言えば、ぬいぐるみ工場の見学もできるみたいだよ! 後で行ってみよ! 綿のアリスみたいなのもいるかもよ!」
「工場見学!? 行ク! 後デ、行コウネ!」
次がれたジョンの誘いにぱっと声のトーンを和らげたネロの足取りが、少しだけ軽くなる。
やっぱり静かな夜の空気は、怖くもあったのだ。
それでも二人で行くのならば、きっときっと大丈夫。
二人ならば暗い暗い町並みをちゃあんと見たって怖くは無いのだから。
ジョンに気持ち二歩ほど近づきながらネロは、キョトキョトと街を見渡して。
「……ソレニシテモ、夜ハ開イテル所ガ少ナイカラ、静カダネ」
「そうだね! 夜はお店が閉まっちゃってて少しさみしいね。……だってほら、こんな時はおやつでも食べながらうろうろするものだしさ!」
たとえお店が開いている時間帯だったとしても、きっと皆眠って閉店状態になってしまっていただろうけれど。
それはそれ、これはこれ。
ちゃあんと活動しているモノたちが居る事は覚えているのだ。
「ミレナリィドールってアリスは起きているんだよね? うーん、この時間でもおやつ売ってくれるかなあ?」
「オ菓子!」
「……そういえば綿のアリスって、おやつ食べるの?」
これほどまでガスが充満していてもネロが何の対策も無くケロっとしているのは、ネロの体が綿の詰まったぬいぐるみであるからだ。
ぬいぐるみであった彼が食事をするのかどうかなんて、ジョンには全く想像も付かない事。
「オ菓子、イッパイ食ベルヨ! 駄菓子、好キ!」
その答えは、是。
ネロはお菓子が大好きなのだ!
大好きなものを語る彼の耳は、ぴいんと立って。尻尾だってぶんぶんぶんぶぶぶん。
先程までの話題よりもずっと声のトーンが明るく感じられる。
「駄菓子ハネ、美味シイダケジャナクテ、面白イノ。当タリダト、同ジノ貰エルンダヨ!」
目の前に今有るわけでもないのに、お話だけでワクワクしてしまうネロの気持ち。そんな彼の様子に、ジョンはニンマリ笑って。
「それじゃ、お歌のお嬢さんを見つけたらみんなで食べ歩きを楽しんでもいいね!」
「ワァ、オ菓子タクサン、アルトイイネ!」
『お歌のお嬢さん』は駄菓子は好きだろうか。
どんなお菓子が好きなんだろうか。
ネロは想像するだけで、なんだか楽しくなってきてしまって、更に尻尾をゆらゆら揺らして――。
「うふふ、一緒に歌うのも楽しみだ!」
「ウン!」
なあんてお話していたら。
ネロはもうちょっとだけ、……そう、ほんのちょっとだけ怖かった道もなんだか怖く無くなった気がする。
それはきっと、狼のお兄さんと一緒にいるから。
楽しいお話を一緒にしてくれるから。
ならば、ならば、『お歌のお嬢さん』とだって。
「沢山オ話、デキルトイイネ!」
「そうだね! 楽しみだねえ!」
暗い暗い夜道に落ちた、白い烟り。
先行きなんて、ぜんぜん見えないけれど。
それでも、それでも、二人ならば。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と
一方通行のおともだちはめんどくさいと思うんよ
一緒にいろんなことして友になっていくもんじゃろて
ガスは…わしの尻尾をぶんぶんしていたら消えんじゃろか?(ぶんぶん)
消えん?やっぱ消えぬか
もしくは燃やす…いやそれは危なそうなのでやめておこう
…せーちゃんに任せた!
ふぎゃっ
突然の、もふ…!
くっ、この箱わしのツボをわかっておる…!
楽しい?
もふられて楽しいとは思ったことはないんじゃけど~(もふもふ)
どちらかというと毛繕い楽しい、尾がふわっとするのに満足して楽しいというような…
せーちゃんはわしのもふ友というやつじゃな
好きにもふったらええよ(諦め)
楽しそうな顔見とるんは、わしも楽しいし
筧・清史郎
らんらん(f05366)と
おともだちか
俺も友は多ければ多いほど嬉しく思うが
一方的なのはおともだちとは言えないのではないだろうか
扇広げ衝撃波でガスを吹き飛ばしつつ
UCで強化したコミュ力で敵を言いくるめ
より楽しんでいる様に思わせよう
ではらんらん、楽しい事をしようか
(上品な所作で、友の尻尾をおもむろにもふもふ
…ん?俺はとても楽しいが
そうだろう、らんらんも尻尾がふわふわになるのは楽しいだろう?(友も言いくるめ
そこのミレナリィドールの子も一緒にどうだろうか(雅スマイル
今日も友の尻尾はもふもふでとても良いな(扇ひらひらにこにこ
ふふ、もふ友か
おともだちの俺が確りと、らんらんの尻尾をふわっふわにしよう(微笑み
●もふ友
星明かりを飲み込む夜霧よりも、もっと深い乳白色の煙。
幾重にも揺蕩う澱のような、白い催眠ガスに沈んだ街。
終夜・嵐吾(灰青・f05366)はガスを口にせぬよう、気持ちばかり息を止めたまま。自らのふかふかの自慢の尻尾を思い切り振ってみる。
空気と煙がかき混ぜられて空気がゆらゆらと淀み、尾を更にぶん、ぶん、ぶん。
風を切って、尾を更に左右に振って、振って。
――うむ。
一通りのチャレンジをしてみた嵐吾は、然もありなんとこっくり頷いた。
試してはみたが、やっぱ消えぬわ。
もともと出来るとも思っとらんかったが……――いっそ、燃してしまおか?
なんて。
一瞬自らの手のひらへと視線を落とした嵐吾は、ふるふると小さくかぶりを振った。
ガスと呼ばれているモノが、白く見える程満ちている場所で炎を使うなんて。
火を生んだ瞬間に、街ごと大爆発だってありえるかもしれない。
とても試すつもりにもならず尾の先まで小さく体を揺らした嵐吾は、こういう時は友に頼るに限ると知っている。
真剣な表情で――ただ嵐吾の尾の動きを目で追っているだけの筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)と視線を交わした嵐吾は、アイコンタクト。
――せーちゃん、任せた。
――ああ、任されたぞ。
迷う事も無く頷いた清史郎はまるで流れるような美しい所作で、嵐吾の尾を優しくもふって――。
「ふぎゃっ!?」
思わず尾の毛をぴゃっと逆立て、愉快な声を漏らしてしまう嵐吾。
慌てて服裾で口を覆ってから清史郎を見据える嵐吾の様子に、眦を和らげた清史郎はまるで今思い出したかのように扇を取り出して。
満足げにも悪戯げにも見える笑みを宿した唇を隠すように、大きく扇を仰ぐと淀み溜まったガスが吹き飛ばされる。
嵐吾はぷはっと大きく息を吸って、吐いて、深呼吸。
「な、なぜ、突然もふを……!?」
それから。
先程ガスを吸わぬように配慮をした為、指摘をできなかった清史郎の行動にやっとの事で突っ込むことに成功した。
そう、このヤドリガミには突然ふかふかした尾などを、無闇に整った笑みを浮かべてもふり出す悪癖があるのだ。
いつもの様子で、清史郎は少しばかり首を傾ぎ。
「ん? 楽しいことをして敵を呼び寄せるのでは無かったか?」
「えっ? まずわし、もふられて楽しいとは思ったことはないんじゃけど……!?」
「ふふ、俺は楽しい」
嵐吾の苦情めいた訴えも、雅やかな笑顔で受け流した清史郎。
苦情も苦言もなんのそので、再び嵐吾の尾をもふり出す。
ゆるゆる揺れる灰青の尻尾をくすぐるように、清史郎は手ぐしでふかふかと整えながら、もふもふ、ふっかふか。
「しかし、相変わらずらんらんの尻尾は極上だな」
「くっ……、この箱わしのツボをわかっておる……」
そんな手慣れた手付きは、くすぐったくも心地よく。
嵐吾が歯噛みして見せると、清史郎は当然と言わんばかりに頷いて。
「ああ。らんらんの尾を一番もふっているのは俺だからな」
「……もっかい言っとくんじゃけど、わしもふられて楽しいとは思ったことはないんじゃが……?」
「そうだな、俺はとても楽しいぞ」
清史郎は言葉の刃を受ける事が得意だし、言いくるめる事もまあまあ得意だ。
毒気を抜かれたように肩を竦めた嵐吾は、耳の先をぴぴっと揺らして。
「うむ……。どちらかというともふられる楽しさとは、毛繕いの楽しさと言うか……、尾がふわっとするのに満足して楽しいというような感じかもの……」
楽しいという事になってしまったので、楽しい点を考えて発表してくれる律儀な嵐吾に、うんうんと清史郎は瞳を細めて。
「そうだろう、らんらんも尻尾がふわふわになるのは楽しいだろう?」
「…………そう言われたらそんな気がして来たかもしれん……」
もはや好きにもふれば良い、と。
なんとなく言いくるめられた嵐吾の瞳には諦めの色、対する清史郎は満足げな笑み。放っておけば寄ってくるガスを扇ではらはら仰ぎ避けながら、嵐吾の尾をもふもふ、ふかふか。
「ああ、今日もらんらんの尻尾はもふもふでとても良いな」
――『友』とは一方的に出来るものでも、なるものでも無い。
沢山の時を重ねて、沢山の感情を重ねて。
色々な経験を共に重ねる事で、『友』になってゆくものだと嵐吾は認識をしている。
ふかふかと尾を撫でる清史郎に瞳を細めた嵐吾は、ゆるーくゆるーく唇に笑みを宿す。
ならば彼との友情に、沢山重ねた経験から名を付けるとすれば。
「せーちゃんは、わしのもふ友というやつじゃな」
「ふふ、もふ友か」
なんたって。
――自らの尾をもふっている時の清史郎の楽しそうな顔を見るのは、実は嵐吾だって楽しいのだから。
「それではおともだちの俺が確りと、らんらんの尻尾をふわっふわにすることとしようか」
さっと携帯用の櫛まで取り出した清史郎に嵐吾は、再びゆるゆるとかぶりを振って。
「お手柔らかに頼むの」
「ああ、任されたぞ」
…………しかし、わしなんでこんなところでもふられてるんじゃっけ?
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
真幌・縫
ぬいぐるみさんの工場かぁ。
それだけでも気になるんだけど。
『おともだち』を探してる子がいるんだね…おともだちって素敵だから欲しいって気持ちはぬいにもわかるけどおともだちは無理矢理つくるものじゃないから…。
催眠ガスは周りの空気を【浄化】してっと。
効果は少ないかもしれないから出来るだけ口を開かないように…。
それじゃあ行くよ。
UC【ぬいぐるみさんのお手伝い】
ぬいぐるみさん達。ここのぬいぐるみさんやミレナリィ・ドールさん達を探してくれる?
ぬい達がきたよーって教えてあげて。
ぬいは【存在感】たっぷりに【コミュ力】を使って身振り手振りで愉快にアピール。
『おともだちになろうよ♪』
●工場の中
浄化の魔力を杖に籠めたけれど、効果はそこまで強くは無いだろう。
だからこそ真幌・縫(ぬいぐるみシンドローム・f10334)はお口をきゅっと閉じたまま、長い廊下を歩む。
――縫はぬいぐるみが大好きだ。
まるで本物のように動くぬいぐるみを作る工場なんて、とても興味がある場所なのだけれども――。
……『おともだち』かあ。
縫は翼の生えたねこのぬいぐるみをぎゅっと抱き寄せて、瞳を細める。
今回対峙する子はおともだちを探している、……作ろうとしていると言う。
おともだちが欲しいと言う気持ちは縫にだって、とってもとっても理解できる。
おともだちと過ごす時間はとっても楽しい。
おともだちと遊ぶ時間なんて、本当に素敵な時間だ。
――それでも、それでも。
おともだちは無理矢理つくるものじゃない、筈だ。
顔を上げて見据え直した工場の中は、街の中よりも一段とガスの烟りが濃いように感じられる。
きっとガスの濃い方へと向かえば、彼女はいる筈だ。
廊下の先すら見えぬ程に溜まったガスに、きゅっと唇を一文字に引き絞た縫は後ろを振り返り。横をぽてぽて付いてきてくれる、喚び出したぬいぐるみさん達が頼もしい。
ぬいぐるみさん達にはこの工場で生まれたぬいぐるみたちや、ミレナリィドールの探索もお願いしている。出来ることから一つづつ。
ようし、と杖をきゅっと握り直した縫の横に――。
「わぁあ! あなた、なぁに?」
はた、と気がつけば。
縫の横に手のひらから蒸気を溢れさせる少女――失敗作が立っていた。
ぴゃっと肩を跳ねた縫は、ぎゅーっとねこのぬいぐるみを抱き寄せて。
なんとか口を開かずに驚く事に成功した縫は、まばたきを一つ、二つ。
「もしかして、あなたもわたしの『おともだち』?」
「!」
大きな丸をつくって、ぱたぱたと手を振って――。
口を閉じたまま、こくこくと頷いた縫は手を広げて、ぴょんぴょん跳ねる跳ねる。
『そのとおり、お友達になろうよ♪』をボディランゲージだけで伝えようとする。
ぬいぐるみ達も、なんとか口を噤んだまま友達アピールをしようとする縫を手伝うように、周りを飛んだり跳ねたり。
「ダンスだね! 『おともだち』は踊るのが上手なのね」
なんて。
失敗作が縫の横で踊りだしたものだから。
……おともだちになろうよアピールが成功したかどうかはわからないけれど――。
きっと、なんとなく成功したのであろう。
多分そういう事なのだろう。
「……うん!」
ぐっと拳を握りしめて、大きく頷いた縫はそういう事にする事にした。
成功
🔵🔵🔴
ダンド・スフィダンテ
俺様も!友達になりたいぞ!
という事で道行くミレナリィドールや工場のぬいぐるみと友達になりつつ、名も無きミューズを探そうか。
友達が欲しいなーーどこかにおともだちになってくれる、心優しいミューズはいないかなーーとか言いながら街を彷徨いてたら来てくれるんじゃなかろうか?
だめ?
とりあえず眠気はユーベルコードを常時発動させておいて、それを見てどうにかしよう。これで少しは長く耐えられる筈だ。
……それにしても……このぬいぐるみ達とても愛らしいな……(ぎゅっ もふ もふ)……(もふっまふっ)…家に持って帰っ(視線を感じる)……はっ!まってくれアンブロジウス!違うんだ!俺様の特別はいつだってアンだぞ!な!?
●おともだち
街の遊歩道沿いにぽつぽつと設置された街灯が、どこか頼りなさげにこうべを下げている。
街に満ちた夜霧のような濃煙は星明りも街灯も包み込んで、ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)が行く手の光景を灰色にぼかしていた。
彼の赤い瞳の奥に宿った光は靄を取り除く事は出来ずとも、その毒性を解除する事は出来る。
だからこそ彼は大きく大きく息を吸って、大きく大きく息を吐いた。
今は深い夜と書いて深夜。
真夜中と呼ばれる時間帯だ。
そのまま彼は顎に手を当て、何かを考え込むように瞳を眇め。
「うーーん、友達が欲しいなーー」
本当によく通る巨大な声で独り言を宣った。
もう一度言うが深夜だ。
――否、昼であったとしても。
きっと普段どおりの街ならば、即誰かに怒られる程度の巨大な声量であるが、今日のこの街に彼をたしなめる者は誰も居ない。
なんたって。
この街の殆どの住人たちはこの濃煙によって深く深く、それこそ自らの体を改造されても気づかないほどに眠らされているのだから。
「どこかにおともだちになってくれる、心優しいミューズはいないかなーー」
次いで更に叫んだダンドの腕の中には、かわいいうさぎちゃんのぬいぐるみ。
まるで本物のように耳をぴぴぴと揺らして、周りを窺っている。
このうさぎちゃんは友達を求める巨大な独り言を聞きつけて、ぬいぐるみ工場から付いてきてくれたダンドの新たなお友達だ。(付いてきてくれるムーブをしているが、汚したりすると不安なのでお友達料金は工場の受付に置いてきました)
「……」
ふと気を抜くとふかふかのその愛らしい姿に、ダンドは思わずぬいぐるみを抱きしめてしまう。
なんたって最近は少し、心もとない気持ちになってしまう日も多かった。
この愛らしい姿はその気持ちを少しだけ埋めてくれるような……。
「…………」
ぬいぐるみを強く抱いた、瞬間。
ダンドはその身を貫くような気配に背を跳ねた。
それは恨みがましいような、訝しいような。どちらかと言うと、負を感じる視線の気配だ。
……ゆっくりとゆっくりと首を動かしてその気配を感じた先、肩に乗った小さな赤い竜アンブロジウスをダンドは見やると――。
アンブロジウスはいつもの可愛らしい鳴き声すら漏らさず、半眼でこちらをじっと睨めつけながら『へーー、そういう事するんだ~。へええーー、良いですけれどねえ~~~~』のポーズを取っていた。
「ま、まってくれアンブロジウス! ち、違うんだ! 俺様の特別はいつだってアンだぞ! な!?」
ダンドが浮気のバレた男のように弁明すると、胸の中でうさぎちゃんがもぞもぞと体を捩る感覚。
あのお友達料金は遊びだったの? の視線がダンドを貫く。
「まっ、まつんだ、うさぎ殿……!?」
肩のアンブロジウスと、胸に抱いたうさぎちゃんの間で忙しなく言ったり来たりするダンドの視線。
「お、俺様は……」
そこに、虹を帯びた長い白髪を揺らして。
「あなたもわたしの『おともだち』?」
濃煙の奥より現れたミレナリィドールであった少女が、ダンドに首を傾いだ。
「ま、まって!! ありがとう! 気持ちは嬉しいのだが、今はすまない! 今はややこしくなるから少し待ってくれるか!? ミューズ!?」
「え、うん! わかった!」
慌てるダンド。
失敗作の女の子は、彼がお手隙になるまで待つ事にした。
お手間おかけいたしますね。
成功
🔵🔵🔴
荊・リンゴ
ネネちゃん(f01321)と
眠気がちょっとでもましになれば、とハンカチで鼻と口を覆います
「……うぅっ」
うとうとする度ネネちゃんが繋いだ手をギュッと更に強く握ってくれます
ネネちゃんの言葉に曖昧に頷きながら足を進めます
お友達、ぬいぐるみ、遊ぶ
眠いのには弱いんです……ごめんなさい……
「ひゃあっ!!」
突然目の前に現れたぬいぐるみにびっくりして眠気が吹き飛びます
横目に、近くで楽しげに遊ぶネネちゃんを見て目的を思い出しました
小首を傾げながら話しかけてくるぬいぐるみに感激しつつ、
差し出されたふかふかの手をそっと取ります
ダンスみたいにくるくる回って遊んでいるのが楽しくて
作戦というのも忘れてしまいそうです
藍崎・ネネ
リンゴちゃん(f09757)と
催眠ガスは困っちゃうの。オーラ防御と破魔で防げないか試してみるの
リンゴちゃん、手を繋ぎましょうなの
傍にいたらちょっとは護れるかもなの
しっぱいさくさんはおともだちが欲しいのよね
工場にいた魔法のぬいぐるみさん達に、一緒に遊ぼうってお願いしにいきましょうなの!
ぬいぐるみさんとリンゴちゃんと私と、いっぱい楽しそうにしたら出てきてくれるかもなの!
おねむなリンゴちゃんが怪我しないように、しっかり先導していくの
ぬいぐるみさん達と一緒にあそぶの!
もふもふでふかふかなの……楽しいの……!
これは作戦なの。遊んでるだけじゃないの。ほんとなの
●楽しい大作戦
街を覆う煙はしらじらと、夜更けの街に澱のように重なり漂い。
災魔と化した宝石より放出される煙――催眠ガスによって深い眠りに沈んだ街は、静寂に満たされていた。
しかし。
街に居る者達全てが全て、目覚める事も出来ぬ眠りに囚われている訳では無い。
僅かながらに存在する、ガスの影響を受けぬ『人に作られた』者達。
そして――この街を救いに来た猟兵達だけが今、この街の危機に立ち向かう事が出来るのだ。
こつ、こつ。
ぬいぐるみ工場の廊下に設置された魔導ランプの明りに照らされて、伸びる影と響く足跡は二人分。
「……うぅっ」
ハンカチで口元を覆う荊・リンゴ(しらゆきひめ・f09757)が小さく呻いて、ふるふると顔を揺すった。
すごーく――眠い。眠たいです。
名前通りの熟れたりんごのような瞳を半分ほど閉じかけながら、じわじわと鉛のように重たくなってきた足を何とか前へと出す。
夢とうつつを彷徨う意識を何とか保つべく、リンゴは手強い睡魔へと抵抗を重ね。
「うー……」
そのまま瞳を閉じてしまうと、かくん、と頭が下がり――。
「リンゴちゃん、大丈夫かしら?」
藍崎・ネネ(音々・f01321)は、今にも歩きながら寝落ちしてしまいそうなリンゴと結んだ手のひらに、ぎゅっと少し力を籠めて。
防御に張り巡らせたオーラの壁を少し広げて、彼女を心配そうに覗き込む。
「ふぁ、……はい」
それはなんだか、お姉ちゃんが手を引いてくれているみたいで。
ネネに掛けられた声と手のひらの感触に、なんとか瞳を開いたリンゴは何とか返事を絞り出した。
なんとか、なんとか、起きていなければいけない、と思う。思った。思います。
思いはするけれど、重たい瞼はだんだん上下が仲良くしようと下がってくる。
うぅぅぅっ……、眠たいれす……。
「ねえ、リンゴちゃん。しっぱいさくさんはおともだちが欲しいのよね」
ネネはそんなリンゴを慮るように、彼女が眠ってしまわないように声を掛ける。
「はひ……おともだち……」
かくん、とロボットのようにリンゴは頷き。
「だから、魔法のぬいぐるみさん達を探し出して、一緒に遊んでもらうの!」
「ぬいぐるみ……、あそぶ……」
「そうなの! いっぱい楽しそうにしたら、きっと出てきてくれるのよ!」
「たのしそう……」
ネネの言葉に何度も頷きながらも、単語を拾って復唱する事しかできなくなっているリンゴ。
――眠いのには、弱いんです……ごめんなさい……。
そんなふらふらのリンゴが転んで怪我をしないように、ネネがしっかりと手を引きながら扉を開いた、瞬間。
「ひゃっ!?」
「きゃっ」
ぴょんと飛びかかってきた何かに、リンゴは目を丸くすると後ずさって飛び上がり。
ネネはその飛びかかってきた何か――ぬいぐるみの犬を思わず抱きとめた。
「みて、みて、リンゴちゃん! とっても可愛い犬さんなの!」
尻尾をぱたぱたしながら頬を擦り寄せてくるぬいぐるみ犬は、ふわふわもこもこ、もっふもふ。
ネネは犬の頭を撫でながら、リンゴへと向けて。
「……こ、これ全部ぬいぐるみさんですか……?」
リンゴは驚きすぎてどきどきする胸を、手のひらでぎゅっと抑えながら。
吹き飛んでしまった眠気に瞬きをぱちぱち重ねて、部屋の中をぐるりと見渡した。
薄暗い部屋の奥で、魔法の動物のぬいぐるみたちがコチラの様子を窺っている。
「わっ、わっ」
しかし、ぬいぐるみの性格にも個体差があるのであろう。
リンゴに向かって、てててと駆けてきたハリネズミのぬいぐるみが彼女の肩まで器用に登ってくると、その様子を見たネネがにっこり微笑み。
「わぁー、ふかふかのハリネズミさんなの! リンゴちゃんがきにいったのかしら?」
逆の手で犬を抱きしめたまま。
ネネがちょいっと指を差し出すと、ハリネズミは挨拶をするかのように指先に手を押し付けて。
「ふふ。かしこいのね!」
「こ、こんばんは……?」
それに倣ってリンゴも指を差し出すと、ハリネズミがその指先に鼻先を押し付け返してくれる。
「わ、わぁー……!」
「わあぁ……かわいいの……!」
二人の歓声を合図にこちらを窺っていた動物のぬいぐるみ達が、一気に近寄ってくると二人を囲み。くるくる回ったり、撫でてと転がったり。
「とってももふもふなの……!」
ぬいぐるみに囲まれて思わず座った瞬間に膝を犬と猫に占拠されてしまったネネは、二匹の背を撫でてあげながら、へんにゃり笑って。
「ネネちゃん、これは……楽しいですね……!」
ウサギとネズミに登られているリンゴが、瞳をぴかぴかに輝かせながら言った。
「ええ、楽しいけれど……、これは仕方ないの。楽しむことが作戦なの。決して遊んでいるわけじゃないのだから……、リンゴちゃん、気を緩める事無くいきましょうなの!」
「そうですね作戦……、作戦ですからね……」
こくこく頷きあった二人は、慎ましく勤勉に作戦に勤しむ事とする。
そりゃあ勿論。
ふかふかで可愛いし、とっても楽しいけれど、なんたってこれは作戦なのだから。
遊んでいるわけじゃないのだから。
「あ、ネネちゃん。その犬さん、追いかけっこがしたいみたいですね?」
「ようし、それじゃ、おいかけっこなの!」
……遊んでいるわけじゃ、ないのです!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リュカ・エンキアンサス
セロお兄さんf06061と
…
マフラーを鼻先まで引っ張って応急処置し
若干難しい顔で探索
お兄さんがガスを散らしてくれるなら助かる
後は、街人を見かけたら声をかけて彼女を知らないか聞こう
楽し…そう。楽しそうね
(それは、人選を間違えたねと言わざるを得ないけど…
(割と真剣に考えて
(等身大のぬいぐるみを手に取って、ぐるぐるっと回してみて
「やあ僕くまさん!素敵で楽しい眠りの町にようこそ!僕と一緒に遊ぼうよ!(裏声
…(居た堪れない
(今日はなんかお兄さんの様子がいつもと違うから何とかしなくてはという気持ちはあるけど
(そして笑われるとほっと一息
……
いや、何笑ってるの。不貞腐れるよ
ほら、いいから探そう(くま抱えながら
セロ・アルコイリス
リュカ(f02586)と
まだこんなことやってんのか、アイツは
悪ィけどリュカ、付き合ってくれます?
アイツや他のミレナリィドールが平気でおれが倒れる訳ゃねーですが
リュカは人ですから【竜巻】でガスを飛ばしましょう
ほらリュカ、もっと楽しそうにしてくださいよ
『おともだち』になれそうだって思わせねーといけねーらしいです
おれはアイツの『おともだち』にゃなれねーから
……
く、ふふっ、
ええくまちゃん、一緒に行きましょう!
って、くまちゃんと手を繋いで眠りの町を歩き出す
(いやぁ、人選は合ってますとも)
……人形にゃ人が必要ですから
ねー、ってリュカにゃ聴こえねーようにくまちゃんに笑って
あー、楽んなった
●失敗作
星も見えない夜。
澱のように重なった濃煙によって、星明かりすら霞む道行き。
灰色にぼける視界の中。突然ぽっかりと浮かんでいるように見える魔法の光を灯された街灯が、唯一のこの街の道しるべのように見えた。
災魔によって齎された深い深い眠りの水槽の底へ、街が沈んでしまったかのような光景。
「……」
常のように何処か眠たげな瞳でマフラーを鼻先まで引き上げながら。
空を見上げていたリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は視線を下ろして、街の中心に存在するぬいぐるみ工場の入口を見た。
そこは街の中に隠れていたミレナリィドールが教えてくれた、災魔が埋め込まれた宝石があったであろう場所。
「悪ィですね、リュカ。付き合ってもらって」
セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)は真っ直ぐに建物を見据えたまま、喚び出している翼竜に大きく翼を薙がせて。
「……うん、それはいいけど」
突風と共にガスが吹き飛ばされ少し薄くなった煙にリュカは瞳を眇めて、それからセロの様子をちらりと窺う。
――今日のセロはリュカからすると、どうにもいつもと雰囲気が違って見えていた。
街の中で隠れていたミレナリィドールに声をかける時でさえ、普段通り振る舞っているように見えて、どこか余裕が無いような――。
「……ほらほら、リュカ。もっと楽しそうにしてくださいよ」
リュカが少しばかり眉を寄せて考えていると、工場へと先に足を踏み入れたセロが振り向き、いつものようにへらと笑って首を傾げ。
「ん」
「どうやらアイツを呼び寄せるには『おともだち』になれそうだって、思わせねーといけねーらしいじゃねーですか」
アイツ。
『楽しい』しか知らぬ、名前も無く『失敗作』と呼ばれたミレナリィドール――の、成れの果て。
棄てられ、壊れて、骸の海から染み出した過去。
セロだって、一度は予知に彼女を見た。
それでも、それでも。
――おれは、アイツの『おともだち』にゃなれねーから。
セロは言葉にしない言葉を飲み込むと、どこか此処では無い遠くを見るかのように東雲色の瞳を細める。
「……ん、ええと、……そうだね」
セロの言葉にリュカは一度瞳を閉じて、開いて。
どう考えたってそれは人選を間違えたね、としか言えないのだけれども。
いつものように笑って見せてくれたって、それでも――なんだかまだセロが普段と違う様子に見えたものだから。
リュカは言葉を飲み込んで、星空を織り上げたようなマフラーを口元へときゅっと寄せる。
「楽し……そう。楽しそう、ね」
それから。
受付横に座っていた大きなくまのぬいぐるみに歩み寄ると、その背に回って息を吐いて、吸って。
「やあ、僕くまさん! 素敵で楽しい眠りの町にようこそ~!」
「!?」
くまちゃんの腕を上げて甲高い裏声でアフレコをはじめたリュカに、セロは目を丸くする。
「君の名前は何カナ? 僕と一緒に遊ぼうヨ!」
リュカはそのままくまちゃんの腕をぐるぐる回してから、ちょいとその腕をセロへと突き出して。
「……」
「……」
きょとんとしたセロが、瞬きを重ねる。
そうして訪れる、地獄のような沈黙の時間。
そりゃあリュカとしては、セロの様子がいつもと違うように見えたものだから、何とかしなくてはという気持ちがあった。
あったけれど。
何とも居たたまれない空気が訪れてしまった様に思えて、リュカはくまちゃんの手を差し出したまま。それでも視線を外すことも出来ず――。
「く、ふふっ、あっははは、そうですね、初めましてくまちゃん。おれはセロです」
きょとんとして沈黙を生み出したのがセロであったとしたら、それを打ち破ったのもセロであった。
背を丸めて弾けるような笑った彼は、くまちゃんのデフォルメされた丸い手へと掌を差し出し返し。
「……何笑ってるの。不貞腐れるよ」
しっかりとくまちゃんの手を彼が取った事に肩を竦めたリュカは、マフラーの下でほっと息をついた。
「ほら、もう。良いから、……探すよ」
「ええ、ええ。くまちゃん、一緒に行きましょうか」
そのままくまちゃんを抱き上げたリュカが立ち上がると、セロもその手を握って。
歩き出した、――瞬間。
「……あ」
「ぅ、わ?」
くまちゃんはすっくと二足歩行で自立すると、セロの横をしっかりとした足取りで歩み出す。
それもそのはず。
この工場で作られているのは、魔力が籠められている間は自分で動くぬいぐるみなのだから。
「……そういえば、自分で歩けるんだね」
「ふ、ふふふ、ホントですね。リュカより大きいじゃねーですか」
「……置いていくよ」
セロの余計な一言に、リュカはさっさと歩み出し。
そんな彼の背を見ながらセロは、またくすくすと笑った。
――アイツがどんなつもりで、またこんな事をやってんのかは知んねーですけど。
ああ。
本当に良かった、今日、リュカと一緒で。
「……人形にゃ、人間が必要ですからね」
先を行くリュカには聞こえぬほどの小さな声でセロは囁くと、ねー、なんてくまちゃんに笑いかける。
――あー、楽んなった。
『失敗作』の彼女とよく似た虹色の髪を揺らして。
セロはリュカへと追いつくべく、少しばかり歩幅を広げて歩み出した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アニー・ピュニシオン
おともだち探しで、人も街を眠らせるとは良い度胸ね?
それならば私は市販のマスクでワンチャン
ガスを防ぎつつ、玩具達のパレードをここで始めよう!
皆が寝静まった素敵な深夜は玩具達が動く時間なのだわ
眠る子を起こす心配もないし、盛大に遊びましょうっ!
マーチングバトンを掲げて、ツギハギ団のご登場っ!
足踏みしながらバトンを動かせば、ベースドラムがダダンと叩き
後ろでラッパを甲高く鳴らせば、どんどん前進していくわっ!
途中で、魔法のぬいぐるみ達を見つければ、
私達の遊び仲間にならないかと誘ってみて
ミレナリィドールを見つければ
町の人を起こす為に、列に加わる様に助力しましょう!
これで寂しがりのあの子が見つかれば万々歳ねっ
●真夜中パレード
災魔の吐き出した澱みはすっぽりと街を覆って、視界を灰色にぼかし揺らがせる。
深い深い眠りに落とされてしまった街は、物寂しくすら感じる静寂に満ち満ちて。
――確かに、静寂に満ちていた筈であった。
しかし、しかし。
皆がすやすや眠る頃に、玩具は箱を飛び出すもの。
「さあ、行くわよツギハギ団!」
ちょっと気持ちお高めのマスクで口を覆ったアニー・ピュニシオン(小さな継ぎ接ぎの国・f20021)がマーチングバトンを高らかに掲げれば、彼女を付き従うように鼓笛隊の装備を纏ったぬいぐるみ達の群れ――ツギハギ団がアニーの背後でぴしりと構えた。
「今日はどれほど騒いだって眠る子を起こす心配は無いわ、盛大に遊びましょうっ!」
足踏みをするアニーがくるりくるりとバトンを回せば、合わせてツギハギ団のベースドラムがだだんと響く。
管楽器達がぽー、ぺー、ぷー、と荘厳な音を立て始めると、アニーを先頭に華やかで賑やかなマーチングパレードの始まりだ!
演奏を重ねて進めば、ぽつりぽつりと街路を照らす物寂しげな街灯だって楽しいマーチングパレードの道しるべ。
「さあ、さあ、起きている子が居ればいらっしゃい! 眠っている子も起きても良いのよっ!」
足踏み、前進、賑やかに。
蒼羽根帽子も、誇らしげ。
バトンを回して、旗を振って、演奏だって高らかに。
しかし、全く。
――自分がお友達が欲しいからって、街ごとまるっと眠らせてしまうなんて良い度胸をしているわ。
瞳を眇めたアニーが、更にバトンを振り上げると――。
「……あのー、深夜に大騒ぎするのは、その、……良くないと思いますよ」
そこに。
そっと遠慮がちに現れたのは球体関節のミレナリィドールの青年であった。
「あらやだ、こんばんは。大きな音を立ててごめんなさいね。でも必要なことだったのよ」
「えっと、こんばんは。確かにこの街の名産は動くぬいぐるみですけれど、深夜にマーチングさせるのは……ちょっと……」
「――そうよね、そうだわ、でも、ね? これだけ騒がしいのに貴方以外出てきて居ないのは、不思議じゃないかしら?」
「……え、あれ。……そういえば」
「ほら、見えるかしら? この煙は災魔が生み出した催眠ガスで、街の皆はみーんな眠ってしまっているのよ」
貴方はミレナリィドールだから効かなかったみたいだけれど、と首を傾ぐアニーに青年は瞬きを重ねて。
彼自身感じていたであろう違和感と、アニーの言葉が繋がったのであろう。
「なるほど、……君は大きな音で起きている者を探していたのですね」
「えぇ、そういう事よ!」
ぴしーっとバトンを構え直したアニーの動きに合わせて、ツギハギ団がじゃーんと音を重ねて。
「……!」
はっとした様子で青年は早合点をしてごめんなさい、と呟き。
それから、意を決したようにその視線を、アニーと確りと合わせた。
「……皆の為に……、僕に出来る事は、ありますか?」
「ふふっ、ありがとう! それじゃあ、一緒にパレードをしましょう!」
「えっ」
アニーの言葉に、青年に旗を渡してくれるツギハギ団の一員。
戸惑う青年
「えっえっ」
「では、楽しげにお願いするわねっ! しゅっぱーつっ!」
「振るんですか!?」
「ええ!」
――列に加わってくれるだけでもそりゃあ充分なのだけれども。
きっと楽しそうな人が多い方が、さみしがり屋のあの子だって寄ってきてくれるはず。
さあ、さあ。
楽しくて可愛くて騒がしい、玩具達のパレードを続けましょう!
大成功
🔵🔵🔵
御園・ゆず
胸に抱えたぬいぐるみで顔を隠しつつ、工場に居るぬいぐるみさんたちに話しかけましょう
「こんばんは!工場の中でかくれんぼしようよ!」
いえいえ、今喋ったのはこちらのうさぎさんです
くまさんもいますよ。一緒にあそびましょ!
広くてごちゃっといろんなものがある工場ですもの
隠れるところは沢山ありますね
え?わたしが鬼ですか?
いいですよ、絶対に見つけちゃいます!
……人形遣いの異能を使えば、わたしのうさぎさんもくまさんも一緒に隠れられますが…
わたしは『埒外』のチカラが好きではありませんので…
うさぎさんとくまさんはわたしと一緒に鬼ですよ
きょろきょろいろんな場所を探して
大きな声で、みーつけたっ!
●あそびましょ
星明かりすら覆い隠す、災魔より溢れ出した白煙――催眠ガス。
街に満ち揺らぐ澱のような淀みは、体内に取り込んだ者に強い眠気を催すもの。
例え猟兵であれど長く街で過ごせば、その効果から逃げる事は出来ぬであろう。
しかし。
――人に作られたモノたちであれば。
この街の中心に存在するぬいぐるみ工場の中では、魔法のぬいぐるみが毎日生みだされている。
布を縫い合わせて、パーツを付けて、綿をいれて。仕上げに魔法宝石から抽出した魔力を籠めれば、魔力が抜けきるまではまるで生きているかのように動いてくれるぬいぐるみ達。
魔力が抜けきってしまえば追加料金を払って魔力を補填して貰う事が出来、愛着の湧いてしまった者達はこぞって元気の無くなってしまったぬいぐるみを連れてくるそうだ。
――そんなぬいぐるみ達は動くと言う特性故、パッケージングされる事は無く。
お店へと出荷されるまでは、工場の一所に集められているのだ。
ここはそんな、ぬいぐるみ達の待機室。
「……!」
ひくひくと鼻先を動かして耳を揺り動かして猫のぬいぐるみが、まあるい瞳を扉の方へと向けた。
その視線の先に居たのは、うさぎさんとくまさんのぬいぐるみだ。
「――こんばんは! 工場の中でかくれんぼしようよ!」
象のぬいぐるみと狐のぬいぐるみが訝しげに声の方を見やれば、たっと駆け出す犬のぬいぐるみ。
そうしてうさぎさんとくまさんのぬいぐるみで顔を隠した御園・ゆず(群像劇・f19168)の足下に絡みつくと、ぐいぐいと頭を押しつけて。
「わ、待って、待ってください。今喋ったのはこちらのうさぎさんです」
ゆずがうさぎさんのぬいぐるみの首を傾げて見せると、犬も合わせて同じ方向に首を傾いで。
「こちらのくまさんも、一緒に遊びたいそうなんですよ。……一緒に遊んでくれますか?」
よろしくね! とぴょっこり手をあげたうさぎさんとくまさんに、よろしくと言う様に犬はひょーいと跳ねて見せた。
そんな犬の様子にゆずに害意が無いと判断したぬいぐるみ達は、柔らかそうな身体を揺らして近寄ってきて。
一気にぬいぐるみのもこもこ山に囲まれてしまうゆず。
肩にはリスが、頭の上には鳥が、犬も猫も狐も象も遊んでと回って跳ねて。
「そうですね、それでは鬼ごっこなんてどうですか?」
ゆずはしゃがんでそんなぬいぐるみ達と目線を合わせながら、あたかもくまさんが提案しているかのように訊ねる。
「それでは初めの鬼は――」
こくこくと頷いたぬいぐるみ達はうさぎさんが言い切る前に、蜘蛛の子を散らす様に隠れだしてしまい。肩を竦めたゆずは、もうと小さく笑った。
「それじゃ、わたしたちがはじめの鬼ですよ!」
わーっと逃げるぬいぐるみ達に声を掛けたゆずは、瞳を瞑って数を数え始める。
「いーち、にーい」
――ゆずは人形を操る事ができる。
ゆずの胸に抱えられたうさぎさんだってくまさんだって、本当は一緒に隠れる事もできる。
「さーん、しー」
しかしゆずは、その『埒外』たるチカラを好いてはいない。
母を狂わせたそのチカラを、使いたいとは思っていない。
「ごー、ろく……」
だから。
うさぎさんもくまさんも、ゆずと一緒にはじめは鬼だ。
――それに走り回っている方が、きっと眠気だって来づらいだろう。
「……じゅう! さあ、みんな、絶対に見つけちゃいますよ!」
それではみんなで楽しく、楽しく遊びましょう。
さみしがり屋の女の子が、遊びに混ぜて欲しくなるくらい!
きみもあなたも、みーんな、みーんな。
「みーつけた!」
成功
🔵🔵🔴
月舘・夜彦
【華禱】
催眠ガス対策に毒耐性は活かされるか分かりませんが一応
友達を作るという言葉はありますが本当に作ってしまうとは
そうしたズレや歪みこそ……えぇ、その通りです
視力、情報収集にて周囲を確認しながら捜索
聞き耳からも何か物音に気付けるようにしておきましょう
倫太郎に呼ばれると、その先には様々な動物のぬいぐるみ達
おや、愛らしい子達……倫太郎、この子は動くのですね
まるで本物のように動いて、仕草も可愛いですね
では、私も……
倫太郎から渡された黒兎を受け取ると、そのぬいぐるみを見下ろして
私達と友達になってくれませんか?
はい、友達は多い方が良いのですからね
それにしても、この子達は本当にふかふかです……
篝・倫太郎
【華禱】
オーラ防御を纏ったら多少はマシかな?
後、毒耐性も……少しは効果あるかな?
にしても、まぁ……
『ともだち』欲しいのは判らなくもないけど
なんでそっち方向往くかなぁ……
いや、言わなくていいぞ、夜彦
それがオブリビオンだから、だろ?
さてっと……出歩いてる住人、居るかな?
流石に難しそう?
(夜彦と二人あちこちうろうろ)
あ、夜彦、夜彦
ぬいぐるみが居る……ふかふかもふもふだ……
ほら、猫とか、兎とかいる
兎ぬいを一羽手に取って夜彦に見せれば
動き出すぬいぐるみに二人顔を見合わせて笑う
凄いな、これで本物じゃないなんて……
よし、うさぎ!ともだちになろうぜ!
夜彦もほら!(黒兎ぬいぐいぐい)
ともだちは多い方がいいだろ?
●もこもこもこ
しらじらと街に満ちあふれた煙は、災魔によってもたらされた眠りを誘うガスだ。
星の明かりすら飲み込んで、すっかりと白と深い眠りに沈んだ街並みを通り抜けて。
月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)と篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は二人並んで、街の中心のぬいぐるみ工場の中を歩み行く。
「友達を作るという言葉はありますが……」
「『ともだち』が欲しいのは判らなくもないけどなあ……」
「ええ、本当に作ってしまおうとするとは、ね」
ぽつり、ぽつりと。
今回の災厄を齎した災魔について交わす言葉は、眠気覚まし代わり。
二人には毒に対する耐性が多少はあるが、それは決して万全とは言えぬ程の耐性だ。
欠伸を噛み殺した倫太郎は瞳を眇めて、細く細く息を吐く。
「全く、なんでそっち方向に往くかなぁ……」
「――そうしたズレや歪みこそ……」
ゆるゆるとかぶりを振った夜彦は、瞳を細めて。
今まで対峙してきた『過去』を思い返す。
骸の海からにじみ出してきた過去は、『世界』に滅びを齎すと言う。
その為、多かれ少なかれ――。
「いや、……言わなくていいぞ、夜彦。それがオブリビオンだから、だろ?」
「……えぇ、その通りです」
ぴっと差し出された人差し指。
倫太郎の制止に、夜彦は言葉を飲み込み。
それから扉をゆっくりと開いた倫太郎は、お、と声を上げた。
「夜彦、夜彦」
「……はい?」
見てみろよ、と。
倫太郎は夜彦に手招き、手招き。扉の隙間から二人並んで、覗き込んだ先には――。
「すっげー沢山ぬいぐるみが居る……、すっっっげーふかふかもふもふだな……」
「おや、本当ですね。……愛らしい子達が沢山です」
そこは完成したぬいぐるみ達の倉庫だったのだろう。
覗き込みながら二人が感想を零し合っていると、――刹那。
ぬいぐるみ達の顔が一斉に倫太郎と夜彦へと振り向いて、その視線がぱっちりと交わされた。
「!」
「!?」
それは事前に情報をきいていなければ、ちょっとしたホラーじみた出来事であっただろう。
動く事の出来る魔法の掛けられたぬいぐるみ達は、購入意欲を促進するが為に。人を見かけると遊んで貰おうと、人へと向かって駆けてくるのだ。
そう。
大量のぬいぐるみ達は一斉に、二人に向かって駆けて――。
「そ、そういえばこの子達は動くのですね」
「そ、そうだったなあ!」
ぴょーんと飛びかかってきた犬を抱き留めた夜彦は、全力のすりすりアタックを頬と胸でうけとめて。
ぴょんぴょんと飛びかかってくるうさぎの群れに埋もれた倫太郎は、頭の上までうさぎまみれ。
それから顔を見合わせた二人は同時にぷは、と吹きだし。
「凄いな、これで本物じゃないなんて……」
「ええ、とてもふかふかですし……、本物の動物のようです」
よしよし、と犬をあやす夜彦は、眦を和らげたまま。
抱きついてくる犬には、生き物の暖かさと声こそ無いけれども。
夜彦にはその動きも甘え方も、本当に生きている動物の動きによく似ているように思えた。
「よし、うさぎ!」
うさぎに埋もれていた倫太郎がうさぎ達をぎゅっと抱き寄せると、甘えるうさぎに、わたわたと暴れるうさぎ。
そんなうさぎのぬいぐるみ達の瞳を、一匹一匹覗き込んで倫太郎は言う。
「ともだちになろうぜ!」
それから黒うさぎのぬいぐるみを夜彦の頭にほいっと乗せてやると、からからと笑って。
「ほら、夜彦も! ともだちは多い方がいいだろ?」
「……そうですね、友達は多い方が良いですね」
犬にはぐはぐされつづけている夜彦がこっくり頷き。
頭上の黒うさぎを手に取ると、その瞳を覗き込んで。
「うさぎ殿、うさぎ殿、私達と友達になってくれませんか?」
黒うさぎがぴぴぴ、と耳を揺らした瞬間。
僕は!? と言わんばかりに犬が、夜彦に飛びかかって全力の愛情表現を行った。
勢い余って引き倒されながら、夜彦は犬と兎を庇うようにぎゅっと抱きしめて。
「わっ、夜彦大丈夫か?」
「ええ、……大丈夫です」
夜彦の顔を心配げ覗き込みながら訊ねた倫太郎(と、うさぎたち)は、すぐに彼が大丈夫だという事に気がついた。
「この子も手加減をしてくれたようですし。……しかし、本当にふかふかですね、この子たち……」
なんたって。
ぬいぐるみを抱きしめながら言葉を重ねる夜彦の表情は、とてもとても優しいものだったのだから。
「ん、そっか」
そんな夜彦の表情に気付きながらも、倫太郎は突っ込まない。
すこうし後ろを向いて、くすくす笑うだけ。
なんたって。
下手に言葉にしてその優しい表情を、止められたくはないもので。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
榎本・英
【春嵐】
嗚呼。ぬいぐるみがいるね。
彼らは喋れないようだが、案内はしてくれるかな?
私たちはミレナリィドールを探しているのだよ。
手助けをしていただきたいのだが。
この三毛猫のぬいぐるみはナナに似ているね。
とても頼もしそうだ。
ふわもこはどのようなぬいぐるみを見つけてきたのだろう。
毛糸玉な彼らとぬいぐるみは中良さそうだ。
なゆ、君は気に入りの子を見つけたかな?
この三毛猫が良いのかい
おともだちになるためには目一杯楽しまなければならないようだ。
さて、君とぬいぐるみとふわもことで遊ぼう。
嗚呼。ぬいぐるみの君、少し触っても良いかい。
それにしても触り心地が良いね。
君の気に入りの子も、とても可愛らしい。
蘭・七結
【春嵐】
自立するぬいぐるみたち
とても不思議ね。これも魔法の力なのかしら
案内の通りに歩んでみましょうか
人形たる彼女は何処にいるのでしょうね
白い毛並みに三色の模様
硝子玉のような眸をじいっと眺む
まあ、ふふ。ほんとうね
まるでナナが此処にいるかのよう
今にもなあ、っと鳴き出しそうだわ
ふわもこさんたちは如何なる子を見つけたのかしら
もこ、もこと連なる毛糸玉の仲間たちがあいらしい
仲良しの子
紫のあなたは何を選んだのでしょう
どのぬいぐるみもあいらしいけれど
視線を運ぶ先には先ほどの三毛猫の子
そうね、この三毛猫の子と遊びましょう
ナツのようなぬいぐるみは何処かにいるかしら
ふわふわとやわい手触りだこと
つい頬が緩んでしまうわ
●ふわもこ、もこもこ
「嗚呼、ぬいぐるみがいるね」
「そうね、ぬいぐるみなのに動いていて……とても不思議ね。これも魔法の力なのかしら」
榎本・英(人である・f22898)がぱちぱちと瞬きを重ねると、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)は首を傾いで。頭を飾る牡丹一華が、ふんわりと揺れた。
ここは街の中心のぬいぐるみ工場。
災魔の撒き散らす催眠ガスによって、深い深い眠りに沈んだ街の中でも。人に作られたモノ故に眠る事無きぬいぐるみ達は、愛すべき人間達の訪問に賑々しく応じてくれる。
――そう。
具体的に言えば二人は工場に訪れた瞬間に、ぬいぐるみ達にみっしりと甘えられていた。
七結の肩を上るおさるさん。
英の足下を転がるひよこさん。
ペンギンたちがひょこひょこ歩み。
犬も猫も羊も、あっちにきたり、こっちにきたり。
ついでに英の呼びだした毛糸玉によく似た愉快な仲間たち……ふわもこ達までもが、ころりころりと転がって行く。
「ふわもこ達も、なんだか楽しそうに見えるね」
英の言葉通り。
沢山のふわふわのぬいぐるみの合間で、毛糸玉のふわもこはどこか気分も良さそうに、ころころころ。
「まあ、あなた。あなたは、如何なる子を見つけたのかしら?」
七結といっとう仲良しの紫色のふわもこへと彼女が声を掛けるも、紫ふわもこはころりころりと転がって。
そのままぬいぐるみ達の群れに消えていったかと思えば、白猫に追いかけられてころころと逃げるように転がって行き、その後を数匹の猫達が駆けてゆく。
「まあ」
「おやおや」
微笑ましい様子に二人は、顔を見合わて笑って。
しかしそれがどれほど微笑ましい光景であったとしても、ちゃあんと英はお仕事だって忘れていない。
膝を付いてしゃがんだ彼はぬいぐるみ達と目線を合わせ、まるで小さな子に言い聞かせるよう。
「やあ、君達。私たちはミレナリィドールを探しているのだよ。手助けをしていただきたいのだが……」
英の言葉に、二人にじゃれついていた毛足の長い犬も、ふかふかのうさぎも不思議そうに首を傾いで。
そんなきょとんとするぬいぐるみ達を背に、威風堂々。
一歩前へと出て来たのは、白い毛並みに三色の模様。硝子玉のような、綺麗で澄んだ瞳の猫であった。
「嗚呼、君が案内を買って出てくれるというのかい? ……なんだか、この子はナナに似ているね」
「まあ、ふふ。ほんとうね」
二人の前へと出てきたその猫の姿は、英の言葉通り。
いつしか煮干しに釣られて縁側に寄りつくようになっていた、二人のよく知る三毛猫の姿によく似た姿。
七結が三毛猫……ナナに良くするように。飾り紐をぷらぷらと揺らしてやるとたしたしと紐の端を叩く姿すらも、ナナによく似ているように思える。
「ふふ、まるでナナが此処にいるかのよう。今にもなあ、っと鳴き出しそうだわ」
「そうだね。ナナとよく似て、とても頼もしそうだ」
頷きながら眦を和らげた英は、三毛猫のぬいぐるみと遊ぶ七結を見やって。
「なゆ、君の気に入りの子はその子かい?」
「そうね。どのぬいぐるみも、あいらしいけれど……、この子と遊びたいわ」
「嗚呼、そうかい。そういえば、先程白い猫も見かけたね」
「まあ、ナツのようなぬいぐるみが?」
「額にバツ印はあったかな?」
英と七結が顔を見合わせると、再びくすくすと笑い合いあっていると――。
三毛猫のぬいぐるみは、揺れが止まった紐と二人を見比べて。
それから。
ちゃんと構えと言わんばかりに、たっしたしと猫パンチを二人に向かって繰り出した。
「……痛くはないし、とても微笑ましいけれど。どうやらおともだちになるためには目一杯楽しまなければならないようだからね」
「ええ、ええ。たっぷり遊びましょう」
言葉を交わす二人の言葉は、動物を甘やすときの甘い響き。
七結は三毛猫を床に転がすと、わしわしとその顎と頭を撫でてやり。
「ふふ、ふわふわとやわい手触りだこと」
「嗚呼。ぬいぐるみの君、少し触っても良いかい?」
英がナンパをするように、白い猫のぬいぐるみへと近づいて行く。
楽しく遊んでいれば、きっと、きっと。
さみしがり屋の彼女も、遊んで欲しくなって姿を現すに違いがないのだから。
だから、だから。
今日は君達と沢山沢山、遊んで行く事としようか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
宵雛花・十雉
【蛇十雉】
ガス…
どうしよう、さすがに結界術じゃ防ぎきれないかも
…って、むぐっ
口と鼻が覆われてちょっと苦しいけど、我慢するしかないか
太めのマフラーに見えなくもない、かも?
そうだね
うちの妹たちもよくごっこ遊びしてたよ
おままごととかお人形遊びとか、そういうの
オレもたまに付き合ってたし
なるほどお花屋さんごっこか
楽しそう
オレも花、好きだし
地べたの上じゃ可哀想だから、広げたハンカチの上に花を並べてあげよ
なつめの隣に座って気分はお花屋さん
いらっしゃいませ、お客さま
綺麗なお花、いかがですか?
そこの可愛いらしいお嬢さんも
この花がきっと似合うよ
梔子は幸せを運んでくれる花なんだ
よかったらオレとも『おともだち』になろ
唄夜舞・なつめ
【蛇十雉】
コレが催眠ガスってェやつか…
ときじ、お前俺の尾毛でも巻いてろ。(自分の梔子付きの尾毛を十雉に巻き付け)
俺も何かこのガス
防げるモン探さねーとな…
…お。おい!
そこのヘビぐるみ!
ちょっと俺の口元に
巻きついてくんねーかな?
…お、ふかふかだ。さんきゅ!
さて、お次は
女の子を探さねぇとな
女の子ってェのは確か……
『ごっこ遊び』つーのが
好きなんじゃなかったっけか
(角と尾に生えてる
花を取り地面に並べ)
なー!そこの
みれなりぃどぉる達も
お客役になってくれよ!
さーさ!どーぞ見てってくれ!
きれーな花が揃ってんぜェ!
……お。おじょーさん
おひとつどーだ?
クク、まいどあり。
お代は…おともだちになる
ってのでどーだ?
●おはなやさんごっこ
災魔より吐き出されて澱のように重なった煙は、街の風景を灰色にぼかしている。
星明かりすら見えぬ夜。
街路沿いにぽつりぽつりと設置された街灯の明かりが煙に飲み込まれて、まるで突然ぽっかりと空中に浮かんだ道しるべのように見えた。
例え、埒外の存在である猟兵といえ。
長時間この煙の中で対策も行わず散策を続ければ、多くの住人達と同じように深い眠りへと飲み込まれてしまうであろう。
「ときじ、お前はコレでも巻いてろよ」
唄夜舞・なつめ(夏の忘霊・f28619)は宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)の口と鼻を覆うように、ぐるりと自らの竜尾の先――梔子の咲くふかふかの毛並みを十雉へと巻き付けて。
「むぐっ!? お、お前……」
突然なつめの尾に絡め取られて、目を丸くした十雉ではあるが。
催眠ガスに対する対策に不安が残っていたことは確かで。
そのまま語気を飲み込むと、なつめの好意に大人しく甘んじる事とした。
それに、ほら。
ギリギリふかふかのファーのマフラーに見えないことも、無い。よな?
ギリギリオシャレと言い張れないか?
なんて、首を傾ぐ十雉の横で。
「さて、お次は女の子を探さねぇとな」
どこからか蛇のぬいぐるみを調達してきたなつめは、自らの口元へと蛇のぬいぐるみを巻き付かせて、催眠ガスへの対策とした。
ぬいぐるみや尾を巻き付ける事で対策となるかと言えば、そりゃあ少しは効果があるだろう。
しかし、しかし。
――対策を幾らしたって、長時間煙の中で過ごせばいつかはきっと眠ってしまうだろう。
ならば、さっさと原因を取り除いてしまえば良い。
瞳を眇めたなつめは決して良くは無い視界の中、街中をぐるりと見渡して。
「女の子ってェのは確か……、『ごっこ遊び』つーのが好きなんじゃなかったっけか?」
「そうだね。うちの妹たちもよくごっこ遊びしてたよ」
なつめの言葉に頷いた十雉は、たまに付き合わされていた妹たちの遊び方を思い出す。
「ほら、おままごととかお人形遊びとか、そういうの」
それは他愛も無い遊びだが、妹たちは確かに楽しんでいたように思えて。
十雉の言葉になつめはどこか満足げににんまりと笑って、顎に手を添えて大きく頷いた。
「へえ、……よし、それじゃあ――」
そうしてなつめは、自らに咲く梔子の花を幾つか摘んで、並べて――。
「ああ、うん。……なるほど。お花屋さんごっこか」
十雉も花は好きだし、楽しそうだ。
ならばごっこ遊び経験者として。
十雉が行える事は、――店のグレードアップであろう。
「店長、地べたの上に花を並べるんじゃあ、女の子受けは狙えないぜ」
「おっ、気が利くなー、ときじ」
斯くして。
さっと広げたハンカチの上に花を並べ直せば、お花屋さんの開店だ。
「さーさ! どーぞ見てってくれ! きれーな花が揃ってんぜェ!」
威勢の良い声掛けのなつめは、花屋というよりは八百屋か鮮魚店のような声かけで
「いらっしゃいませ、お客さま。綺麗なお花、いかがですか?」
さすがにごっこ遊び慣れした十雉は、丁寧な接客だ。
――普通に考えれば、深夜の深い深い眠りに落ちた街中で、花を売って客が現れる訳もないのだけれども。
しゅう、しゅう。
掌から溢れる蒸気の音。
「まあ、あなたたち。ここで何をしているのかしら?」
威勢の良い声につられてたのか。
掌から蒸気を零し、虹色の髪を揺らす少女――『失敗作』の少女は二人を見やって首を傾いだ。
「お花屋さんですよ、可愛らしいお客様。梔子は幸せを運んでくれる花なんだ」
「……お。おじょーさん、おひとつどーだ?」
十雉が柔く笑んでみせると、なつめがわるーい笑みで応じて。
「わあぁ、なんだかとっても楽しそうね! おひとつくーださい!」
「クク、まいどあり。……お代は。おともだちになる……ってのでどーだ?」
「よかったらオレとも『おともだち』になろ」
「えっ、良いの? 『おともだち』になってくれるんだ! うれしいな!」
何処までも楽しげに声を弾ませた失敗作は、なつめの差し出した梔子を受け取って――。
彼女の手より溢れる蒸気によって、一瞬で焼けしおれてしまう花。
しかし、失敗作は気にした様子も無く。
ただただ楽しそうに、にこにこと笑って手を差し出す。
「ねえ、『おともだち』たち! よろしくね」
十雉となつめは、顔を見合わせて――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フリル・インレアン
ふえぇ、お友達は改造して作るものじゃないですよ。
ねぇ、アヒルさん。
ふえぇ、あまりおしゃべりしてると催眠ガスを吸い込んでしまいます。
無酸素詠唱で少しは息をしないで話せますが、ちょっと大変です。
ここはアヒルさんの出番ですよ。
ガジェットのアヒルさんならミレナリィドールさんやぬいぐるみさんとお友達になれるはずです。
災魔さんの居場所を聞き出してくださいね。
●よろしくおねがいします、アヒルさん
人々の営みがすっかりと全て深い眠りへと沈められてしまった、夜の街。
澱の如く積み重なって。白々烟るガスによって齎されたその深い眠りは、夜には眠るといった質のものでは無く。
災厄によって訪れた、死に近い眠りであった。
街灯に照らされた道行きも深い深い濃霧の日のように覆われて、先を見通す事すらできない不気味な夜に。
街の中央に存在するぬいぐるみ工場の中で、大きな帽子を被った少女はふるふるとかぶりを振って。傍らに侍らせたガジェットのアヒルさんを見上げていた。
「ふえぇ……おともだちは改造して作るものじゃないですよ、……ねえ、アヒルさん?」
できるだけガスを吸ってしまわないようにアヒルさんに話しかけるフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、掌で口を押さえながら。
無酸素で詠唱を行う技術によって少しくらいは喋る事ができるけれども、フリルはその技能に精通しているとはとても言えない。
「……ふえぇ、だから、その、アヒルさん……よろしくおねがいします、ね?」
わぷわぷしながらアヒルさんに話しかけるフリル。
それはアヒルさんならばぬいぐるみやミレナリィドールさん達とも仲良くなれるだろう、と言うフリルの期待を込めたお願いだ。
彼女の願いを聞き届けたアヒルさんは、やれやれといった様子でぐうるりその場で旋回を重ねて。
「……!」
ひゅうんと真っ直ぐに飛んだアヒルさんは、その先の扉を器用に開いた。
それは完成したぬいぐるみ達の並べられた倉庫の一つだ。
ぬいぐるみを愛でる人々の為に、魔法を掛けられいるぬいぐるみ達は――。
「ふ、え、ぇぇえっ!?」
ひよこにうさぎ、ペンギンにねずみ、おおきなわに!
フリルへと一直線に飛び込んできた動物のぬいぐるみ達。
そう。
ぬいぐるみに駆けられた魔法は、人間を楽しませる為の魔法。
その結果、人間を見かけると構って構ってと突撃をしてくるのだ。
「お、お友達に、なれる筈とは……っ、思いましたけれど……っ、ふえぇ……っ」
ふかふかのぬいぐるみに沈んだフリルは、たしかに、たしかに。
楽しげな事にはなっていた。
「ふぇええ……あ、アヒルさーーん、た、たすけてください~……っ」
もこもこのおともだち達の、激しい愛情表現にフリルの姿は沈み――。
その上をアヒルさんは、くるくると旋回していた。
成功
🔵🔵🔴
呉羽・伊織
【遊敵】
ガスは毒や環境耐性と――何より『此奴の横で誰が迂闊に寝落ちるか』って気概で相殺
そう――何でまたこの犬猿狐がいるんだよ
えっ
どうして…心の(距離が時々すごく遠い気がするのはきっと気のせいな)友よ…
兎も角!誰がアンタなんかと仲良…くっ、卑劣な!
みっちーも良からぬ輩とつるむのはオヤメナサイ
…いや何言ってんのってか何さらっと茶会始めかけてんの!
いやまぁ、オレも是非お近付きに…コホン、キミの街の為にも力を尽くしたいし!
悪辣狐は放って一緒に楽し(もごっ)
…
あ~こんなお友達に恵まれてしまって毎日楽しくてホント最高だわ!?
(俺じゃなくてコレで遊んでろと狐野郎に狐ぬい押し付けつつ!
嗚呼――急募:優しい友)
吉城・道明
【遊敵】
毒や苦境凌ぐ耐性と、任を成す覚悟で催眠に抗う
ああ、清宵は俺が呼んだ
お前達、いつも楽しげにしているだろう
好適の助人ではないか
?
清宵は良い奴だぞ
色々と良い茶菓子も分けてくれるしな
それにお前達も喧嘩する程何とやら――伊織が少々素直でないだけと聞いている
ああ、そういえば丁度清宵に貰った菓子を持っていたな――貴殿も如何か、ドール殿
(見つけた姿に徐に声掛けつつ水筒や菓子を)
街や工場の平穏を取り戻す為、茶飲みがてら情報を教えて頂けると有難い
(相変わらず阿吽の掛合だなと思いつつ)
いや全く、今日も賑やかで愉快な事だ
(併し二人してぬいぐるみ遊びの趣味があったとは――本当に仲が良いなと、親睦もとい誤解深め)
佳月・清宵
【遊敵】
毒耐性で催眠削ぎ
比較的ガス薄い道を偵察し先へ
眠る暇は皆無
何せ遊んでほしくてならねぇって奴が忙しなく主張してくる
ああ、俺ァ友人の誘いにゃ快く乗るからな
序でにてめぇにも片手間で構ってやるよ
それよか今は“仲良く楽しく”も仕事だろ
心の友の覚悟に背いて足引っ張んなよ
ハッ、自分は良からぬ輩でないとでも?
悪友はてめぇもだろ
似た者同士仲良くしようぜ
で、その菓子な
こんな状況でなんだが、アンタも磨り減り過ぎねぇようせめて一息つきな
(情報収集や敵誘う空気作りも兼ね
道明に続き気楽にドールの娘へ声掛け
――つつ喧しい口へ菓子を)
ああ、良くも悪くも笑顔耐えぬ集いってのは愉しくてならねぇなぁ?
(伊織へ亀ぬい渡し返し)
●夜はお静かに
それは夜更けの事。
漂いだしたガスは澱のごとく漂い、重なり。
星明かりすら届かぬほどの濃霧が降りたかのように、灰色にうすぼけた町並みの中。
人々は災魔によって齎された、深い深い眠りの中へと沈められてしまった。
――作られたモノ達と、皆を救うべく訪れた猟兵達を除いて。
「……で、何でまた、この犬猿狐がいるんだよ……」
街に降り立った瞬間。
眉間にキュッと皺を寄せてめちゃくちゃ嫌そうな顔をした呉羽・伊織(翳・f03578)に、吉城・道明(堅狼・f02883)は、ああ、と顔を上げて。
「ああ、俺が呼んだ。お前達、いつも楽しげにしているだろう?」
小さく首を傾いだ道明の言葉に、伊織は目をまん丸した。
「えっ……???」
不思議ダナー。オレは嫌がってるハズなのにナー。
心の友の筈なのに、心の距離が時々北海道から沖縄程に遠い気がするのは何故カナー……。
思わず呆然としてしまった伊織にぐぐいと近づく犬猿狐――佳月・清宵(霞・f14015)は常の笑みを唇に湛えたまま。
「ああ、俺ァ友人の誘いにゃ快く乗るからな。序でにてめぇにも片手間で構ってやるよ」
先程の倍渋い顔をした伊織が、後ろに一歩引く。
ええい、近寄るな、歩く迷惑物質。
「誰が! アンタなんかと! 仲良……」「それよか今日は『仲良く楽しく』も仕事だろ?」
伊織がわあわあと声を上げた、瞬間。
清宵が人差し指を立てて伊織の口の前へ寄せると、制止するように言葉を被せて。
意地の悪い笑みを深めに深めて、ふ、と鼻を鳴らした。
「ま、精々心の友の覚悟に背いて、足を引っ張んなよ」
「ぐぬ……ぐぬぬ……」
何も言えなくなってしまった伊織は、ぐぬぬってする。
後、今日は絶対迂闊に寝落ちなんてしない! という気概を深める。
こういう事考えるからフラグって言われるんですよ。
「ああ、今日はそのような掛け合いが重要なようだからな。やはり好適の助人であったな」
相変わらず阿吽の掛合で楽しげだ、なんて。満足げに頷く道明。
「みっちー! 良からぬ輩とつるむのはオヤメナサイ!」
そんな心の友に伊織は更に心の距離がある事を感じつつも、心からのお願いをする。
「ハッ、自分は良からぬ輩で無いとでも?」
なんか性悪狐が言ってるケド、オレは知らないから!
道明を祈るような気持ちで伊織は見つめて――。
「? 清宵は良い奴だぞ、色々と良い茶菓子も分けてくれるしな」
当の道明は、きょとんと首を傾げるばかり。
「それにお前達も喧嘩する程何とやら、だろう? ――伊織が少々素直でないだけと聞いている」
「そうそう、似た者同士仲良くしようぜ」
ニマニマと笑いながら清宵は、道明の横で狐の尾をゆらゆら。
「イヤ、イヤイヤイヤ、何言ってんの!?!?」
ぶんぶんと首を左右に振って否定する伊織を尻目に、道明はそうだ、と上を見上げて――。
「ああ、そういえば丁度清宵に貰った菓子を持って来ているのだ、――貴殿も如何か?」
水筒を取り出しながら道明は、上の階の窓より此方を覗き込んでいた栗毛の少女へと声を掛けた。
「わ、……えっと、夜なのに声が聞こえたから……、えっと、違うの。盗み聞きをするつもりじゃなくてね?」
栗毛の少女――ミレナリィドールの少女はおろおろとした様子で言葉を重ねて。
ゆるゆると首を振った清宵が、肩を竦めて応じた。
「構わんさ、――なんたって今は非常事態だ。アンタも気づいているかもしらねぇが、災魔がこの街で今暴れていてな」
「ああ。街や工場の平穏を取り戻す為、茶飲みがてら情報を教えて頂けると有難い」
道明が言葉を次ぐと、清宵も菓子を取り出しながら瞳を細めて。
「……やっぱり、何かが起こっていたのね。……こんな霧、この街で見たことなかったもの」
困ったように眉を寄せた少女はかぶりを振ってきゅっと拳を握りしめると、思いつめたような表情を浮かべる。
「そんなに悲しい顔をしないで欲しい、その為にオレ達が来たんだ。それにオレも是非お近付きに……コホン、キミの街の為にも力を尽くしたいし! 悪辣狐は放って一緒に楽し、もごっ」
最終的に口説いてるのか何なのかわからない着地点に降りようとしていた伊織の言葉を、清宵が饅頭で止めてあげる。
それはこれ以上伊織がなにか言ってもうまくいくビジョンが見えない清宵の精一杯の優しさだ。
「!?」
目を丸くする少女を見上げて、清宵は眦を少しだけ和らげて見せてから、自分自身も饅頭を齧って。
「アンタも磨り減り過ぎねぇよう、せめて一息つきな」
「は、はい……」
呆気にとられた様子で、少女は思わずこくんと頷いてしまう。
その様子からは先程の緊張感や、焦りのような色は取り払われているように見えて。
「いや全く、今日も賑やかで愉快な事だ」
――ああ、本当に。好適の助人であったな。
道明が語気に笑みを混じらせて呟くと、清宵はくつくつと喉を鳴らして笑う。
「ああ、良くも悪くも笑顔耐えぬ集いってのは愉しくてならねぇなぁ?」
「あ~~~~、ホントホント!!!! あ~こんなお友達に恵まれてしまって毎日楽しくてホント最高だわ!?」
できたらオレじゃなくて別のモノで遊んでほしいケド!
伊織がやけくそ気味に吠えながら、狐のぬいぐるみを清宵へと押し付けると、意地の悪い笑みに唇を歪めた清宵は亀のぬいぐるみを押し付け返す。
「――本当に仲が良いな」
「え、あれ仲がいいんですか?」
「? ああ」
わあわあとやり取りする二人を前に。
道明はほのぼのした光景に茶をすすりながら、少女にまた首を傾ぐのであった。
深まる誤解。
近づかない心の距離。
嗚呼、心の友よ……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
徒梅木・とわ
催眠は適宜【浄化】するとして……
さて、とわの楽しい事が気に入ってもらえるといいが
何せ彼女は見た目より少しばかり幼そうだ
少々対象年齢を下げた感じに――
本を読むよ
童話さ。朗読会だ
最初の内の聞き手は喚び出した式神達
幾らかはミレナリィドールやぬいぐるみ達を探して連れてきてもらおう
聴く者の輪が増えれば上手い事彼女を誘えるかもしれない
数は力さ。賑やかなら、それだけ楽しげにも見えるだろう?
さて、作品は『ブレーメンの音楽隊』なんて如何だろうか
種々の理由で虐げられたり、居場所を追われた動物たちが出会い、友となって、最後には仲良く共に暮らしていく話
……境遇を思えば興味は惹けそうだが、この後を考えると酷だろうか
●おはなし、きかせて
「さあ、キミたち。次のお話を始めようか」
深い深い夜、深い深い眠りの底へと沈んだ街の中で。
霊符によって築かれた浄化の結界の中で、妖狐の娘が開く不思議な朗読会。
分厚い本の頁を捲る徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)は、いつもの笑みを唇に宿して真っ直ぐにお客さんを見やった。
とわによく似た幼姿の小さな小さな手のひらほどの大きさの妖狐達――とわの分身たちが沢山。
それに。
ネコさんにイヌさん、ヒツジさんにオオカミさん、クマさんに――。
工場から分身達が呼んできてくれた、動物のぬいぐるみたち。
それに何人かのミレナリィドールたち。
彼らも分身が連れてきてくれたのであろう。
よし、よし。
実に賑やかになってきたものじゃ無いか。
――数は力だ。
参加するモノが多ければ多いほど、こういうイベントは楽しげに見えるものだろう。
客の殆どが自らの分身だとしても、その分身にぬいぐるみ達が構って構ってと転がっていたとしても。
賑やかすモノが多ければそれで今は十分だ。
それになにより、――読書はとわの好きで、楽しいことだから。
先程から真剣な表情で話に耳を傾けてくれているミレナリィドールと視線を合わせたとわは、くふふ、と笑って。
「そうだね、それでは次のお話は――」
そうして。
とわは薄紅色の瞳を眇めて、物語を語りだす。
人間に虐げられ逃げ出したロバにイヌ、ネコに日曜日には食べられてしまう雄鶏。
様々な理由で居場所を追われ、逃げ出した動物たちは町の音楽家を目指して旅をする。
その旅路で仲を深めた動物たちは、『ともだち』になり。
最後には悪者を退治して、自分たちの居場所を手に入れる物語。
とわは語る。
分身たちが動物のぬいぐるみを重ねる姿を横目に見やりながら。
――向こうから現れた、虹色の髪の少女を見やりながら。
「……めでたし、めでたし、という訳さ」
「ねえ、お話、面白いね!」
しゅうしゅうと手のひらから吹き出す蒸気を、彼女はきっと止めることも出来ないのであろう。
にっこりと笑う彼女は、楽しげに、楽しげに。
「他に、どんなお話があるの?」
『失敗作』の少女はせがむように、とわに問いかける。
「……そうだねえ、次は――」
――無邪気故の残酷さが滲むその瞳を、とわは真っ直ぐに見やって。
大成功
🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩迎櫻
之が縫いぐるみ…このうえなく愛らしいね
思わず頬が緩んでしまう
縫いぐるみの皆と遊ぶの?
何だか夢のようだ
カグラ
ガスを防ぐ結界をはって
サヨは桜うさぎ
リルは子ペンギン
ふたりともよく似合っていて可愛い
まるでぬいぐるみのようだ
私?私はその……似合わない
え、まっ……ヒヨコ
変ではない?
たくさんのヨルに埋もれてカグラが幸せそうだよ
私もヨルを抱っこしてみたいな
大蛇の、抱き枕…
サヨ…何故だろう
その蛇、とても斬り裂きたいよ
や、やんでれ?!
私もしらないよ、ねぇリル
私は丸くて黒い鴉のぬいぐるみだよ
何故だかとても愛着が湧いてね
円な瞳が可愛いだろう?
勿論、私の巫女と同志の方が可愛いけれど
和やかな時が楽しい
噫、ずっとだよ
リル・ルリ
🐟迎櫻
もふもふなぬいぐるみがたくさんだ
三人をオーラ防御で覆ってガスを防ぐ
僕は子ペンギンぱーかー!
櫻はうさちゃんだ
カムイは…そんな気にすることないよ!楽しもう!
僕はヒヨコがいいと思う
他のぬいぐるみたちと一緒にぱーてぃだ
僕にはヨルがいる
ぎゅうと抱きしめながら櫻とカムイに自慢する
ヨルをたくさん呼ぼう
美珠抱き枕、抱き心地良さそうだ
…櫻、悪夢じゃだめじゃん
やんでれってなに?僕知らない
ねーカムイ
あ!カムイの…丸い鴉ぐるみかわいい!
円な瞳がたまらない
ふかふかに埋もれて幸せ気分
ふふ
僕達はとーっても仲良しなんだから!
笑みをかわしあう
深い深い友達でそして
僕の夫の櫻と、櫻の夫(神)のカムイ
2人は、僕の新しい家族だ
誘名・櫻宵
🌸迎櫻
きゃー!かぁいいわ!
熊に兎に犬に猫、かぁいいぬいぐるみだらけ
皆も一緒に遊びましょ!
ガスは風の属性惑わせ桜吹雪と共に薙ぎ払って祓っていくわ
桜うさぎなパーカーを着てみたの
皆でもふもふぬいぐるみパーティーよ
リルはヨルパーカー、にあってるわ
カムイは…着てないの?
気にすることないのに
あなたは雛(ひよこ)にしましょ
ほらかぁいい神様ね
私はね
大蛇の美珠ちゃんぐるみよ
うふふ蛇の抱き枕なの
巻き付かれるみたいな悪夢をみられるわ
斬り裂きたいだなんて
さてはカムイ、ヤンデレね!
リルも結構ヤンデレだったわ!
カムイは、かぁいい鴉ぐるみね
ころんとしたくろからすさま、いいわね
ねぇ抱っこさせて
そうよ
仲良しなの
ずっとずっとね
●ずっと、ずっと
夜更けの街を覆った濃煙は、生きる全てを眠らせる。
眠ってしまった街で起きているのは、作られたもの達。
そして、――街を救うべく訪れた猟兵達だ。
街の中心に存在するぬいぐるみ工場の一室に、一体のカラクリ人形が周りを警戒するように結界を維持している。
その部屋の中では――。
「きゃー! かぁいいわ!」
桜色のうさぎの耳がついたパーカーを羽織った誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)はすり寄ってきたクマちゃんのぬいぐるみを掲げて、頬に擦り寄せた。
「之が縫いぐるみ……」
桜の色を宿した瞳を瞬かせた朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)がぐるりと部屋の中を見渡す。
ここは出来上がったぬいぐるみ達の倉庫なのであろう、まるで生き物であるかのように動き回るぬいぐるみ達は、人々を見ると遊んでもらおうと甘えてくるようで。
「すごい……。もふもふなぬいぐるみが、たくさんだ!」
子ペンギン――ヨルを模したパーカー姿のリル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)が空中を尾鰭で蹴り上げると、リルの鰭を追うようにアヒルたちがてちてちと付いてくる。それを更に追って、ネコのぬいぐるみがぴょーんと跳ねて。
「……ふふ」
真っ黒でまあるいカラスのぬいぐるみを抱き寄せたカムイは、思わず頬を緩めて笑う。
愛らしいぬいぐるみ達に囲まれて、彼らと遊ぶというだけでも夢のようなのに。
ぬいぐるみと戯れる、動物に扮した友たちの姿もまた――。
「ふたりとも、其の服もよく似合っていて可愛いね」
カムイの言葉に、櫻宵が袖で口元を上品に隠すとうふふと笑って。
「今日はもふもふぬいぐるみパーティーだものね」
「ふふ。子ペンギンぱーかー、良いだろう? 折角だから、カムイも着たらよかったのに!」
「そうね、きっとかぁいい神様になったでしょう?」
じゃれるネコを尾鰭の先でひらりひらりと躱しながら、パーカーの裾を指先でぴっと引いて腕を広げると、パーカーお披露目ポーズをとったリルは小さく首を傾いで、カムイを見やり。
こっくり頷いた櫻宵も同じように首を傾いだ。
「私? いいや……私は、その」
二人の真っ直ぐな視線に晒されると、思わずカムイの視線が泳いでしまう。
だって、……二人と違って。
もごもごと口の中で言葉を噛み潰すように、ぼそりと一言。
「……似合わないだろう?」
「……」「……」
櫻宵とリルは思わず顔を見合わせてから。
「まあ! そんな事……、気にすることないのに」
そんな事を気にしていたのねえ、と。
ぬいぐるみを拾い上げた櫻宵はカムイに一歩近寄って。
気にしなくてよいのに、と。
リルもぬいぐるみを拾うと、ひいらり尾鰭を揺らす。
「そうだよ、カムイ。僕は、ヒヨコがいいと思う」
「そうねえ、あなたは雛――ひよこにしましょうか」
「え、まっ……ヒヨコ……?」
それから。
「…………その」
――櫻宵とリルはひよこのぬいぐるみをたっぷりカムイに乗せて、寄り添わせて。
ぴょこぴょこ跳ねて、転がって、重なって。カムイの肩の上で、頭の上で、跳ねるひよこたち。
愛らしい、とても愛らしいけれど。
「変ではない?」
ひよこまみれになったカムイは表情を隠すように掲げたまあるいカラスのぬいぐるみの上から二人を見やると、小さな声で尋ね。
「勿論よ。うふふ、かぁいい神様ねえ」
「うん、とってもかわいい!」
二人の太鼓判を得る事ができれば、くすぐったげに肩を竦めて笑った。
そんなカムイの様子に、リルも満足げに。そういえば、と顔を上げて。
「その丸いカラスのぬいぐるみも、かわいいね。つぶらな瞳がたまらないな」
「そうよねえ、ころんとしていていいわ。ねぇ、その子も抱っこさせてくれないかしら?」
櫻宵が腕を広げれば、良いよ、とカムイはぬいぐるみを手渡して。
「つぶらな瞳が良いと、私も思っていたよ」
櫻宵の腕の中でわたわたと羽根を動かすカラスに、カムイは眦を和らげて言葉を紡ぐ。
「……何故だか、とても愛着が湧いてね。勿論、私の巫女と同志の方が可愛いけれどね」
「うふふ、よーく知ってるわよ!」
褒められたら褒められた分だけ調子にのる櫻宵は、カラスを抱いたままやんやん、と体を揺すって。リルもまんざらでも無いのか大きく頷いて、やんやんする櫻宵の横に視線を落とした。
「櫻の横にいるぬいぐるみは、大きいね」
「そう! 大蛇の美珠ちゃんぐるみよ? うふふ、抱き枕にだってなってくれるわよ」
「もう名前もつけたの? ……でも美珠抱き枕、抱き心地が良さそうだな」
「そりゃあもう、巻き付かれるみたいな悪夢をみられるわ!」
「悪夢じゃだめじゃん……」
櫻宵の言葉に思わず半眼になって呆れるリルの横で、ひよこをぽろぽろ零したカムイがむっと眉間に皺を寄せて――。
「サヨ……何故だろう。……その蛇、とても斬り裂きたいよ」
何かしらの本能が疼いたのだろうか。
じっと大蛇のぬいぐるみを見つめるカムイの視線は、まあまあ真剣だ。
まあ! と櫻宵は声を上げて、大蛇を背中に腕を広げて守るポーズ。
「斬り裂きたいだなんて……さてはカムイ、ヤンデレね!?」
「や、やんでれ!?!」
言葉の意味はわからないけれど、なんとなく良い言葉では無い気がして。
カムイが肩を跳ねるとリルがカムイの袖をくいくいと引いて尋ねる。
「え? やんでれってなに? 僕知らない」
「わ、私もしらないよ!?」
慌てるカムイに、首を傾ぐリル。
櫻宵はぴしっと人差し指を立てて――。
「リルも結構ヤンデレだったわ!」
「え、やんでれってなに?!?」
「やんでれ!?」
ヤンデレ気味の二人は、思わず大きめの声をあげるのであった。
「ねー、ヨル、……ヨルは知ってる?」
いくらきいたって櫻宵が教えてくれないものだから。
リルは子ペンギン――ヨルをぎゅっと抱きしめて。
きゅ? と首を傾ぐヨルは、言葉の意味を知っているのか居ないのか。
そんな子ペンギン二人の様子に、櫻宵は微笑ましげに肩を上げる。
「リルはぬいぐるみより、ヨルが一番かしら?」
「そうだよ! 僕にはヨルがいるからね」
そのまま力を歌を籠めるとぬいぐるみに負けないくらい、たくさんたくさんのヨルを呼び出すリル。
きゅ、きゅ、きゅ、きゅきゅっ。
一瞬でぬいぐるみパーティは、ヨルパーティになってしまうけれど。
ぬいぐるみも、子ペンギンも、じゃれあって、寄り添って、楽しげに跳ねて、転んで、追いかけて。
「にぎやかなパーティーになったわねぇ」
櫻宵がくすくす笑うと、カムイが再びまあるいカラスのぬいぐるみを抱きしめて眦を和らげて。
「たくさんのヨルに埋もれてカグラも幸せそうだよ」
流れるは楽しくて、優しくて、和やかな時間。
――外の世界は怖くとも。
リルは櫻宵の夫で、櫻宵の夫はカムイで。
――3人はずうっと仲良しで、家族なのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
神狩・カフカ
【異烏】
そこの顔が恐ぁいお兄さん、お困りかな?
ガスならおれに任せな
羽団扇を一振り
ガスを吹き飛ばし自分達に結界術を
ざっとこんなもんサ
へェ、同じ鴉の名を持つ奴に“偶々”会えるたァ
面白ェ巡り合わせだ
そういや愉しく振る舞うンだったか
どれ、とクロウの腕に己の腕を絡めて
でも仲良さそうに見えるだろォ?とぐいぐい
おれのよく知る香りもするしなァ
おれの素性が気になるのかい?
いつからねェ…姫さんが生まれる前からサ
…なァんてな!
顔に出てるぜ?とにやーり
語る思い出に、にこにこと相槌
楽しそうで何よりだ
いやいや馬鹿になンてしてないサ
ま、お前さんがいくら思い出を重ねようと
おれには敵わねェよ
ははっ!知りたきゃ己で確かめてみな!
杜鬼・クロウ
【異烏】
俺一人じゃァ愉しく振舞う所か逃げられそうだ
極力催眠ガスを吸わず口を手で押さえ
途方に暮れてる時に遭遇
ガスが瞬く間に消え驚く
顔が恐いは余計だわ知ってっケド
助かった
自己紹介
工場か街中歩き探索しつつ会話
腕?組むと何か誤解…って近ェよ!
お前、この常春桜の香を知ってるのか
…カフカは旅館の人間でも客でもねェンだろ(第六感
いつから、知ってる?
エッ
…(面白くない。顔に出る
お前何歳?
俺の方がアイツのコト好きだし(”だった”にしないといけねェのに
一緒に紫苑見に行ったし
温泉も入ったし
ドヤ顔で楽しくマウント取り
馬鹿にしてねェ?(ジト目
ハ、凄ェ自信
じゃァお前の話も聞かせろよ
な…はぐらかすなや!
わっと騒いで誘き寄せ
●あのさくらのかおり
降り立った街は、災魔の気配がぷんぷんとする濃煙に包まれていた。
通りの向こうが見通せぬ程の、視界の悪さ。
灰色にうすぼけた世界で杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は口を手で押さえて、ガスを吸わぬように息を潜める。
――ここまで酷ェとはな。
こんな状態で愉しそうに振舞う事なんて。
ましてや、今回クロウは一人でこの街に降り立っている。
誰かと合流するにしたって、この視界の悪さだ。
「……チッ」
「ちょいと、ちょいと。そこの顔が恐ぁいお兄さん、お困りかィ?」
先程までそこに気配も無かったと言うのに。
コン、とヒールが石畳を叩く音。
和傘をくるりくるりと回した神狩・カフカ(朱鴉・f22830)が、人を喰ったような笑みを浮かべて、クロウの後ろへと立っていた。
「譬えば――催眠ガスに困っていたり、旅の道連れを探しているとか、サ?」
誂うように言葉を紡いだカフカは、懐から羽団扇を差し出すとクロウにひいらりと振って見せて。
瞬間。
張られた結界の効果によって、すっとクロウの呼吸が楽になる。
「……顔が恐いは余計だわ。知ってっケドよ。……まあ、あンがとな、助かった」
クロウは小さくかぶりを振ってからカフカを見やって。
「それに、後者もご明察のとおりだ。お前が付き合ってくれるってンなら、助かるな。――名前、聞いてもイイか?」
俺はクロウ。杜鬼クロウだ、と手短な自己紹介を重ねるクロウに。
「――ああ、良いぜ。おれのよく知る香りもするしなァ」
おれの名前は神狩カフカってンだ、なんて。からからと笑いながら、クロウの腕に自らの腕を絡めながら小さく鼻を鳴らして、彼の相違う瞳を覗き込んだ。
「ふうん、……香り? って、近ェよ! 何だよお前!」
慌てて振りほどこうとしたクロウの腕にきゅっとくっついたまま、カフカはゆるゆる左右に首を振る。
「待て待て、愉しく振る舞うンだろォ? ……それに甘ぁ~い桜の香りがサ、お前さんからするのサ」
「……コイツのコトか?」
カフカを振りほどく動きを止めたクロウは、訝しげな表情を浮かべ。懐から闇色に桜が描かれたお守りを取り出す。
ガスがアレほどまで充満しているというのに、この匂いだけを嗅ぎ分けたというのか。
「へぇ、そうか、そうか。なるほどなァ」
「……この香を知ってるたあ、お前……。いつから、知ってる?」
どこか確信めいた勘をクロウは感じている。
――コイツはあの『旅館』の関係者では無いと。
奇妙な違和感に、クロウは警戒に似た表情を浮かべて瞳を細めて。
「はははっ、いつからねェ……? おれの素性が気になるのかい」
警戒をする彼がいかにも面白い、とカフカはまた笑った。
それから真っ直ぐにクロウと視線を交わすと、差し出した人差し指が彼の唇に触れぬ距離で止めて、言葉を紡いだ。
「――姫さんが生まれる前からサ」
「……エッ? ……お前何歳?」
一気に目を丸くしたクロウに、カフカはまた笑う。
「なァんてな!」
冗談なのか、本気なのかも判断しかねてしまう。
思いっきり嫌な顔をしたクロウに、カフカは満足げ。
「思ったより顔にでるなァ、お兄さん」
「……うるせェ。俺の方がアイツのコト好きだし。一緒に紫苑見に行ったし。温泉も入ったし」
クロウは細く細く息を吐いてから、カフカを見やって。
本当は、本当は。
もう『だった』にしなければならないのに。
それでも、それでも、まだ。
簡単に、その言葉は言い切れない。
思い出を語るたびに、表情だって緩んでしまうもの。
あとなんかコイツムカつくからマウントを取っておきたい。
「うん、うん。楽しそうで何よりだなァ」
そんなマウント取りなんて一つも効いていない様子のカフカは、やさしくやさしく頷いて。
思わずクロウはカフカをじとっと睨めつける。
「……なンか、馬鹿にしてねェ?」
「いいや、いや、馬鹿になンてしてないサ!」
ひらひらと手を振るカフカは、心外だなァと肩を竦めて。
「ま、お前さんがいくら思い出を重ねようと、おれには敵わねェよ」
「ハ、凄ェ自信だな? じゃァ、お前の話も聞かせろよ」
唇に好戦的な笑みを宿したクロウは、カフカを煽るように言った。
「ははっ! 知りたきゃ己で確かめてみな!」
「な……はぐらかすなや!」
腕を解いて跳ねるように離れたカフカを追って、クロウはわっと追いかけて。
――さあてさて。
同じ鴉の名を持つ奴に『偶々』会えるたァ、面白ェ巡り合わせだなァ。
カフカはのらり、くらり、笑みを深めて、言葉を躱して。
それは『偶々』。
それとも、それとも。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ディフ・クライン
類(f13398)と
うん、やり方を誰も教えてくれなかったんだね
けれどもそれを、悲しいとも思えない、か
何だか親近感が沸くよ
UC【死せる深き森の主】でムースを呼び
角に纏う風でガスから身を守ろう
頼めるかい、ムース
neigeは灰のオコジョの姿で顕現し
灯環も一緒に仲良くじゃれては笑って
街のドールたちが共に居てくれるなら
もっと楽しそうに見えるかな
人見知りを知らぬneigeと悠然と立って触れさせるムース
ふと類の視線に気づけばムースと目を合わせ
類、良ければムースが背にどうぞって
類の呼びかけに瞬き
誘いには頷いて、その指をそっと握ろう
やったことないけど、楽しそう
誘われ彼女が出てきたなら
彼女の分の場所を空けようか
冴島・類
ディフさん(f05200)と
お友達になる為に機械にする、か
あなたと僕もだけど
違っていようと、友にはなれるのにね
親近感、に込められた意味を想い
ガスはムースの風を頼りながら
可能なら近場の浄化も試す
ネージュ達や灯環も連れてたら
種族越えた仲良しあぴーるになるかも
楽しそうにして誘う為
街中のミレナリィドールさん達に声をかけて
一緒に遊んでとお願いしてみましょうか
動物触れ合いは良い誘惑になりそうだ
灯環を遊ばせ
僕もムース触れたい(じ)
え、良いんですか…!
後は…指をぴっと宙にあげ
大縄跳びするひとこの指とーまれー
ディフさんも皆と跳んでみません?
相縁使い、瓜江と僕で縄回しますよ
彼女が出てきたら
おいで、遊ぼうと手招きを
●ちがっていたって
喚び出された大きなヘラジカがひゅうるりと風を巻き上げれば、しらじらと街を染める煙が少しばかり晴れたように思える。
深い深い夜に、深い深い眠りに落ちた蒸気の街。
街路沿いにぽつりぽつりと立てられた魔法光を宿した街灯を道標に、冴島・類(公孫樹・f13398)とディフ・クライン(灰色の雪・f05200)は、中央に存在するぬいぐるみ工場へと向かって歩いていた。
「お友達になる為に機械にする、か」
うっすらと見える星明かりを見上げて、ぽつり、と類が言葉を零す。
「違っていようと、友にはなれるのにね」
「うん、やり方を誰も教えてくれなかったんだね。けれどもそれを、悲しいとも思えない、か」
こっくりと頷いたディフは、深い海の色をした視線を少しだけ落とす。
――ディフと類は、たしかに違っていようと友になる事が出来た。
しかし、しかし。
ディフは――、まだ知らない。人の傍で生きると決めた今も。
まだ、からっぽだ。
はじめから機能不全を起こしている。
心が壊れている。
自らには感情がほとんど無いと、思うのだ。
「何だか親近感がわくよ」
「……うん」
ディフの言う『親近感』。
それはきっと、彼が。
類は萌葱色の瞳を細めて小さく息を飲む、――彼の言葉の意味を想って。
そんな類の様子を感じ取ったのか、そうでないのか。彼の肩の上にくっついていたヤマネの子――灯環が鼻先を類の頬に押し付けて。
「わ、灯環。……ふふ、くすぐったいよ」
そんな類の声を聞いて顔を上げた、ディフに寄り添う灰雪の精霊ネージュは今日は灰色のオコジョの姿。
ひょい、ひょいと類の背を登って灯環の背中にぺったりとくっついた。
灯環は一瞬驚いたのかぴょんと跳ねて。
それがネージュに抱きつかれたと気づいた瞬間、くしくしと頭を押し付ける。
――動物達がじゃれあって遊ぶ姿は、例え違っていても。
種族を超えた『おともだち』になれる、というアピールには丁度良いかもしれない。
「ディフさん楽しそうにするには、ぴったりじゃないですか?」
ふ、と笑ったディフは、小さく頷いて。
「そうだね、ドール達を見つけたら誘ってみようか」
「うん!」
こっくり頷いた類はそれから、視線をスライドさせる。
そう、それは種族を超えた『おともだち』になれる、というアピール。
触ってみたいだけじゃなくて、そう、おともだちにね。
……類は喚び出された大きなヘラジカ――ムースの姿をじいっと見やって。
そんな視線に気がついたディフは、また小さく笑んで手のひらでヘラジカを指し示した。
「類、良ければムースが背にどうぞって」
「……! え、良いんですか…!」
ぱっと笑った類は早速ムースに近づき、小さく挨拶。
やんわりその毛皮を撫でて。
ころころと転がってゆくオコジョとヤマネを見やると、ぴーんと思いついた表情を浮かべる。
「大縄跳びするひと、この指とーまれー」
そしてぴっと人差し指を立てると、大きな声で宣言した。
「……!」
「瓜江と僕で縄は回しますから――ディフさんも飛んでみません?」
一瞬きょとんと瞬きを重ねたディフを、類は誘うように指先を傾けて。
ディフは青の眦をすこしだけ和らげて、人差し指を握った。
「そうだね、――やったことないけど、楽しそうだ」
「わあぁ、それって、それって、わたしもまぜてもらっていい?」
そこに響いたのは、少女の声音。
ディフと類が振り返ると銀に虹を宿した髪を靡かせて、少女が笑っていた。
――それは、ミレナリィドールの成れの果て。
『失敗作』の少女の姿。
しゅうしゅうと手のひらから蒸気を吐き出す彼女は、ねえ、と首を傾いでいる。
類とディフは一瞬顔を見合わせて――。
「うん、勿論!」
「一緒に飛ぼうか」
「わあ、わたしもはじめて! 楽しいなあ!」
始める前から楽しい、と笑う少女は、縄も無いのにぴょーんと跳ねて。
さあさあ。
みんなで、大縄跳びをはじめようか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴィクトル・サリヴァン
夜の蒸気の街とは洒落てるねー。
認めてくれるかは分からないけども頑張っちゃおう。
年は気にせず。
夜目利かせつつ無事なドールの人探して街を歩く。
ガスには風属性の魔法で周囲に空気の壁を作ってガード。
探索ではUCで空シャチ召喚、捜索手伝って貰うね。
ドールの人見つけたらこの異変を解決する為にと協力をお願いする。
それから工場へ向かい空シャチに飛び回って貰い、その上を俺や協力者が楽しそうに跳ねたりしてみる。
ちょっと位スリルある方が楽しいよ?そーれい!(落下のフォローは万全)
出てきたら夜空の散歩、一緒に遊ぼ?と誘ってみる。
工場のぬいぐるみもポーンと弾いてお手玉したり…あくまで扱いは丁寧に。
※アドリブ絡み等お任せ
●空を泳ぐシャチ
災厄によって訪れた死に近い眠り。
人々の営みは深い眠りへと沈められてしまった。
災厄の煙は澱の如く積み重なって、街をすっかりと灰色にくすませている。
「へえ、まるでガスが煙みたいだね。……大丈夫? 頼んだよ」
風の魔法を纏ったヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が、空を泳ぐシャチ達にミレナリィドール達の探索をお願いすると、ひいらりひらり。
シャチ達は濃煙を裂いて、鰭を揺らして空を泳ぎ行く。
「さて、楽しそうにする、……かあ」
ぽつりぽつりと街路を照らす物寂しげな街灯が並ぶ街路を歩みながら。
ヴィクトルはすこうし悩んだ表情。
『楽しい』かつ、失敗作の少女がこちらを見つけやすい方法が良いだろう。
街灯の立っている先に見えるのは、大きなぬいぐるみ工場。
街の真ん中にあるあの場所ならば、きっと、きっと目立つだろう。
「……うん、よし。キミたちはこっちだ」
それから。
思いついた様子でヴィクトルは空シャチを侍らせながら、工場へと駆けて行き――。
「…………みゃーーっ!?」
ぽーん。
シャチの鼻先で大きく大きく跳ねた、ミレナリィドールの青年。
「あはは、ちょっと位スリルある方が楽しいでしょ? そーれい!」
「まっ、まっっ! まっってっ!?」
――夜空の散歩といえば、とても聞こえが良いだろう。
空シャチと一緒に遊ぼう、と誘われた街人のミレナリィドールは今、ぬいぐるみ工場の上空を跳ねていた。
最初はたしかに空を飛んでいたのだが、スリルと言われた結果空シャチは青年を大きく大きく夜空の真ん中に投げ出して――。
しゅるり、と彼をキャッチするシャチ。
「うん、うん、上手上手」
「す、スクラップになるかとおもった……」
「大丈夫、大丈夫、もし落ちても俺が捕まえるよ」
「本当、本当ですよ!?」
「うん、うん」
青年の言葉に頷いたヴィクトルは、はた、と気配に気づいた様子で振り向いて。
「……やあ、キミ。夜空の散歩なんてどう? 一緒に遊ぼうよ」
「わああ! いいわね! 楽しそう!」
『失敗作』の少女は、頷きにっこりと笑って――。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『失敗作』
|
POW : わたしのだいすきな『おともだち』!
無敵の【虹色の髪を持つ『おともだち』 】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : あなたもわたしの『おともだち』?
【掌から噴き出す魔導蒸気 】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、掌から噴き出す魔導蒸気 から何度でも発動できる。
WIZ : だいすきな『おともだち』、はぐはぐ!
【掌から灼熱の魔導蒸気を噴きつつの抱擁 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を魔導蒸気で満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:楠なわて
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠セロ・アルコイリス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●『失敗作』
白く染められた、夜の街。
少女はぴょんと跳ねて、とことこ歩く。
腕の脇から、尻尾がゆらゆら。
楽しいね。
今日は、楽しいパレードをみたよ!
いっしょにおどったのも、楽しかったなあ!
おはなしもきかせてもらったし。
おにごっこも、おおなわとびも、ふしぎなおはなももらったの。
――おおきな『おともだち』、ちいさな『おともだち』。
たくさんの『おともだち』になってくれるって、いってくれて楽しかった!
虹を帯びた白い髪を靡かせて。
翡翠色いっぱいに、ぴかぴかと楽しさに瞬く光を宿して。
うふふ、と少女は笑う。
なんたって彼女は、楽しいしか知らないのだから。
楽しいときは、笑顔がでてしまうもの。
「楽しいなあ、楽しいなあ。……でももーっと『おともだち』がいたら、もっともっと楽しいよね!」
――ねえ。
ねえ、『おともだち』!
だいすきだよ、だいすきだよ。
あなたもわたしのだいすきな『おともだち』に、なってくれるよね!
棄てられて、壊れた、失敗作の少女。
ミレナリィドールの成れの果て――災魔と成った少女は、夜の街を歩む。
途中で持っていた『おともだち』は、『おともだち』と遊んでいる間にいつの間にか居なくなっていたから。新しく『おともだち』になってくれる子を拾ってきたのだ。
失敗作は眠るケットシーの女の子を脇に抱えたまま。
楽しくなって、街路をぴょーんと跳ねた。
目指すはぬいぐるみ工場の奥に設置した『手術室』。
「ふふふ、じょうずにできたら、いいなあ」
――その行く手を、猟兵達が阻む事も未だ知らず。
彼女はまた、うふふ、と笑った。
オズ・ケストナー
しーちゃん
きみに会うのは3回目
だいじょうぶ、とめるよ
ねえ、しーちゃん
わたしとおともだちになろっ
その子を抱いたままだといっしょにあそべないもの
わたしにまかせてね
じゅんばん、じゅんばんだよ
なにしてあそぼうかっ
楽しく笑いながら女の子を預かろうと
安全なところに寝かせるね
ガジェットショータイム
現れた虹色クマの両手を握ると
開いた口からシャボン玉が溢れる
きれいっ
しーちゃんもやってみてっ
中には花やキャンディ
大きなシャボン玉にはぬいぐるみの幻
しーちゃんのすきなもの、みえる?
当たれば生命力吸収
そっと避けながら
わたしね、しーちゃんのたのしそうなえがおがすきだよ
これでさいごになる予感がするから
さいごに贈るのもきみの色
花邨・八千代
しーちゃん、しーちゃん
そいつは駄目だ、しーちゃん以外が楽しくない
おともだちってのは一方通行じゃ駄目なんだよ
そうだなぁ、みんなが同じことで「楽しい」なら良かったんだけどな
でも、そうはならなかったんだ
みんな、違う「楽しい」があるんだよ
わからねぇ?……わからなくてもいいさ
それでももう、良い子はおうちに帰る時間だぜ
符を放って【還御符】だ
しーちゃんと、攫われて運ばれてる奴らがターゲット
寝てる奴らにダメージがいきそうなら指定はしーちゃんだけ
帰りたくねぇか?じゃあ遊ぼう
しーちゃんが満足するまでいくらでも付き合うさ
大丈夫、新しくおともだちは作れねぇが俺らがいくらでも遊んでやる
お前が死んでも、おともだちだ
●きみのいろ
「『おともだち』をー、つくろーお」
白い夜の散歩道。
失敗作の少女の足取りは軽く、軽く。
デタラメな拍子を刻む歌だって、楽しくてたまらない。
なんたって今日は、たくさんの『おともだち』と出会えた。
もっともっとたくさん『おともだち』がいたら、明日はきっともっともっと楽しい。
ふふ、と笑った失敗作は、真っ直ぐに前を向いて。
「わたしの、わたしの……」
ふ、と口ずさむ歌が止まった。
街に立ち昇る煙にぼけた、人影一つ。
「しーちゃん、こんばんはっ」
彼女の行く手に立ち塞がったのは、街灯の明りにきらきらと金糸の髪を輝かせるミレナリィドール――、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)であった。彼は何時ものように微笑むと、手をぴっと上げて失敗作の前まで歩み寄り。
失敗作はその笑顔に応じて、屈託もなく挨拶を返す。
「こんばんはっ!」
「わたしはオズだよ。ねえ、しーちゃん。わたしとおともだちになろっ?」
オズの口にした言葉は、3度目の『おともだち』の約束。
「しーちゃん?」
なあんにも憶えていない失敗作は、首を傾げて。
でもその呼び方は、さっきも他の『おともだち』にされたもの。
自分のことだよね、と自らを指差す失敗作。
「うん、しーちゃんだ」
大きくオズは頷く。
それは、きみのこと。3度目の今なら、ちゃーんとなんてよべばいいかわかっているよ。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
……しーちゃんのこと、とめるからね。
「わあぁ、あなたもわたしの『おともだち』なのね!」
オズの言葉にぱっと笑みを深めた失敗作は、思わずしゅうしゅうと手のひらから魔導蒸気を溢れさせて。小脇に抱かれたケットシーがその熱さに体を捩っている。
「うん、そうだよっ、おともだち! でもね」
オズはもう一歩彼女へと歩み寄り。
「でも?」
手を伸ばしてさっとケットシーを受け取ると、空色の眦を和らげた。
「その子を抱いたままだと、いっしょにあそべないでしょっ?」
「あっ、そうだねえ。……でも、そのこも『おともだち』になるんだよ?」
「うん、うん。じゅんばん、じゅんばんだよ」
「そっかっ、うん! じゅんばん、じゅんばん!」
そこへこつこつと、響いた足音。
和やかに見える会話を交わす二人は、同時に視線を向けて。
「おっ、しーちゃんじゃん。俺もまーぜて」
白煙にぼやける道より姿を現したのは、花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)であった。
「あ! あなたは――『おともだち』!」
わあと腕を振った失敗作に、八千代はにっと笑いかけてゆるーく手を振り返し。
懐から符を一枚取り出すと、オズの腕中で眠るケットシーの額へと貼り付けた。
「そうそう、また会ったなー。えーっと……は、はらえどの……おおかみたち……?」
それから。
無理やり暗記した異国の言葉のように、とても覚束無い詠唱をもごもご。実際多分無理やり暗器してきたのだろう。
「なにかな、なにかなっ」
「なーんだろうねー?」
八千代がはじめた行動にオズと失敗作は興味津々といった様子。首を傾げて、瞬きを重ねて。
「――疾う疾う、如律令」
二人に見守られながら八千代が何とか詠唱を終えると――。
ぱっと魔法のように、オズの腕の中からケットシーの姿が掻き消えた。
「わあっ、すごーい!」
「ええーっ、わたしの『おともだち』になるこ、どこにきえたの!?」
ぱちぱちと拍手したオズ。きょときょとと周りを見渡して、ケットシーを探す失敗作。
「良い子はおうちに帰る時間だからなあ」
八千代は、はぐらかすように応じて瞳を眇めた。
――還御符は、対象を棲家に転移する符だ。ケットシーは棲家……家へと無事転移された事だろう。
「でも大丈夫だ。俺らがいくらでも遊んでやるよ」
言葉を重ねる八千代に、オズは同意を重ねるように頷いて。
「なにしてあそぼうかっ、しーちゃんっ」
それからえいっ、と。大きな斧の形をしたガジェットをオズが振りあげると、かしゃんかしゃんと変形と変形したガジェットが虹色のクマと成る。
「わあぁ、ねえ、ねえ! それはどうやって、あそぶの?」
「うーんと……」
こうかな、なんて。オズがクマの両手を握ると、かぱっと開いた口からシャボン玉がぷわぷわと溢れ出し。そのシャボン玉の虹が揺れる膜の奥に花やキャンディ――ぬいぐるみの幻影が、ゆるゆると揺れているのが見えた。
「おー、面白いな」
「わああ、きれいっ! 楽しいねっ!」
八千代が思わず声を上げると、その倍以上のテンションで失敗作がぴょんぴょん跳ねて。
オズが更に失敗作に向かってぷわわーっとシャボン玉を生み出すと、くすくすと笑った。
「うんうん、きれいだねっ。しーちゃんもやってみてっ」
「うん! やってみる!」
オズに倣って、手のひらからふわふわとシャボン玉を生み出した失敗作は瞳をぴかぴか瞬かせて、白に虹を帯びた髪を揺らす。
揺れるシャボン玉の中には甘いお菓子に、きれいなお花。
可愛いぬいぐるみ達に――。
「ねえ、しーちゃんのすきなもの、みえる?」
「うん、ぜんぶだいすき! 楽しいねえ!」
――体に触れると、揺れる虹を弾けるシャボン玉。
ぱちんぱちんと弾けるたびに、彼女の生命力をしっかりと奪っている事がオズにはわかるというのに。
問いに失敗作は、屈託もなく笑う。
オズは、柔く柔く笑みを返して。
「うんうんっ、……――わたしね、しーちゃんのたのしそうなえがおがすきだよ」
「わたしもおずのことがすきだよ! ふふっ、もっともっとたくさん『おともだち』をたくさんつくりたいなあ!」
オズはそうっとシャボン玉を避けながら、思わず眉尻が下がってしまう。
彼女の『ともだちづくり』は、人々が人で無くなってしまう『ともだちづくり』だ。
わかっているよ、戦わなきゃいけないことは。
だからちゃんと、――とめるからね。
「……しーちゃん、そいつは駄目だ」
本当に無邪気に振る舞う彼女の姿に、瞳を細めた八千代は息を吐く。
「そいつはな、しーちゃん以外が楽しくないんだ。……おともだちってのは一方通行じゃ駄目なんだよ」
きっと彼女は言ったところで、何一つ分からない。
理解なんて出来ない。
そう聞いている、そう見えている、そう感じている。
それでも、それでも。
八千代の口を衝いて、言葉は出ていってしまう。
「みんなが同じように『楽しい』なら、良かったんだけどな」
でも、そうはならなかったんだ。
だからここで、このお話はおしまいだ。
「……うん? 楽しいよ? やちよはあそばないの?」
「いいや、遊ぼう。しーちゃんが満足するまでいくらでも付き合うさ」
きょとんとした失敗作の言葉にゆるゆると八千代はかぶりを振って、身を低くするとしっかと構えなおす。
「大丈夫。新しくおともだちは作れねぇが、俺らがいくらでも遊んでやるよ」
「うん! わたしたちと、たくさんあそぼうね!」
オズがぷわぷわとシャボン玉を生み出すと、失敗作はまたぱっと笑って。
「うん! たくさんあそぼうね、『おともだち』たち!」
揺れる、揺れる、シャボン玉の虹色。
跳ねる、跳ねる、彼女の虹色。
――なんだか、しーちゃんとはこれでさいごになる予感がするから。
さいごに贈るのも、きみの色。
「うんっ」
「……ああ!」
地を蹴って踏み込む八千代は、しっかと失敗作の姿を瞳に映して。
――そう。
お前が死んでも、おともだちでいてやるからな。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フリル・インレアン
ふええ、なんとか抜け出すことができました。
あんなにたくさんのおともだちに囲まれてしまうのも考え物ですね。
あれ?あの方が今回の事件の犯人さん?
ふ、ふえええぇ、そんな熱烈なおともだちアピールは結構です。
それにその手から出ている蒸気は絶対火傷してしまいます。
躱しても、どんどんあの方が強くなってしまうだけですから、
恋?物語で雨を降らして蒸気を流してしまいましょう。
今日はなんだかおともだちについて考えさせられる一日でした。
真幌・縫
ただ『失敗作』だと言って捨ててしまうのは捨てられてしまうのはきっと悲しい。
ぬいだって人形じゃないだけで失敗作じゃないなんて証拠はどこにもないから…。
『お友達になろうよ♪』あの言葉は本当だよ。
友達だからしちゃだめなことをとめてあげなくちゃいけないの。
そうやって友達を『作る』のは間違いだよって。
さぁ、貴方が骸の海に帰るまではぬいは友達だよ!いっぱい遊ぼう!
UC【ぬいぐるみさん行進曲】
ぬいぐるみさん達は踊る様に楽しげに。
相手のUCは【野生の勘】で【ダンス】でひらりと回避♪
●大雨は突然に
「あ! 『おともだち』! またあったねえ」
屈託も無く笑った――『失敗作』と呼ばれる少女はぽーんと街路を跳ねて、飛んで。縫の方へと駆けて来る。
失敗作だと捨てられてしまう事は、きっと悲しい事なのだろう、と縫は思う。
縫はミレナリィドールでは無い。
しかし。
縫はミレナリィドールでは無いだけで、失敗作では無いという保証はどこにだって無い。
例えば縫がミレナリィドールとして生まれていたら。
失敗作と捨てられ、今あそこに立っていたのは縫だったかもしれない。
――だから、だから。
たくさんのぬいぐるみを召喚した縫は、失敗作をしっかと見据える。
友達になろうと言った言葉は――。
「――あの言葉は、本当だよ」
呟いた縫の周りへと、本当にたくさんの――400近いぬいぐるみ達が召喚される。
ぬいぐるみ達は縫を守るように、彼女の周りへと侍って。
「わあぁ! あなたも『おともだち』を呼べるのね! すてき!」
はぐはぐ!
途切れる事無き蒸気の吹き出す手のひらで、ぎゅうっとぬいぐるみを抱きしめるとその姿が一瞬で掻き消える。
「……あれ? あはは、きえちゃった!」
「あのね、ぬいはあなたの友達だから……友達がしちゃだめなことは、とめてあげなくちゃいけないの」
ぽこぽことぬいぐるみが舞うような足取りで失敗作へと飛び込んでくる度に、失敗作がぬいぐるみを抱きしめる度に。ぬいぐるみ達の数は減ってゆく。
失敗作は一気に縫へと迫り。
避けきれぬ速度で迫る彼女をしっかと見据える縫の視線は、『おともだち』から逸らされる事は無い。
お友達のハグを避けきれなければ、受け止めるだけだ。
失敗作はにっこりと微笑んで。
「あはは、楽しいね!」
そこに割り入ったのは、大きな帽子の姿であった。
「ふ、ふぇえぇっ……そんな強烈なおともだちアピールは、駄目ですよ……!」
なんとかぬいぐるみの群れから抜け出してきたばかりだと言うのに。
先程囲まれていたぬいぐるみのお友達よりも、ずっとずっと多いぬいぐるみ達。
それでも思わず飛び出してきてしまったフリルは、ぬいぐるみの群れを超えて勢い余って縫を押し倒し――。
「ふぇええっ!?」
「わーーーっ!?」
そのままぬいぐるみの山に二人で縺れて転がりながらも、フリルは大きく腕を振り下ろした。
瞬間。
ドザーっと巨大なバケツをひっくり返したかのような、すごい大雨が降り出した。
「わっ、わっ、何? なになに? すごい雨! ふふふっ、楽しいー!」
ばちばちと叩きつける雨雫に晒されて思わず足を止めた失敗作は、雨を受けて心地よさげにくるくるり。
地に満たされた蒸気が、雨に打ち流され――。
帽子をきゅっと押さえたフリルは、縫へと手を伸ばして首を傾げた。
「ふえぇ……、その、怪我はありませんか……?」
「うん、……大丈夫!」
こっくりと頷いて応じた縫が、その手を取って立ち上がるとにっこり微笑んで。
「――あの子におしえてあげなくちゃ。お友達を『作る』のは間違いだよ、って!」
「ふええ……、そうです、ね」
フリルの願いに応じるように、仕方ないなとくうるり回るアヒルさん。
その頼もしさにきゅっと拳を握ったフリルは、雨を緩めて――。
そのタイミングを見計らったように、縫はぴしっと人差し指を立てた。
「せーのっ、攻撃開始っ!」
「……アヒルさん、お願いしますっ!」
ぬいぐるみとガジェットのアヒルが一直線に失敗作へと駆けて行く。
「わあ、たくさんだねえ。うふふ、楽しいっ!」
沢山のぬいぐるみとガジェットが自らに向かってくる様子が楽しくてたまらない様子で、大きく腕を広げた失敗作は蒸気を更に手のひらから吐き出しながら。
縫はそんな彼女へと、大きな大きな声で伝える。
「ねえ、――貴方が骸の海に帰るまではぬいは友達だよ! いっぱい、いっぱい遊ぼうね!」
「いいよ、『おともだち』! たくさんあそぼうね!」
言葉だけ聞けば、遊びの約束を重ねるだけの二人。
しかし、それは、それは――。
猟兵か、災魔。
どちらかが倒れるまで、終わらない遊びなのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ネロ・ヴェスナー
【いぬ's】
しゅじゅちゅししゅ、しゅじゅしゅしちゅ
しゅじゅちゅちゅしゅ!
ウーン、ウーン……言エナイヨ
チョットズツ……シュ・ジュ・ツ・シ・ツ
言エタ!
オトモダチ、ナリタイケド、
作ルッテ、ソウイウノジャナイト思ウ
自然ト集マッテ、来ルヨウナ、ソウイウノ
オオカミノオニイサン、フワフワナノ?ボク、見タイ!
遠吠エ、カッコイイ!ボクモ、スル!
アッ、勢イ余ッテ、咎力封ジ……出チャッタ
エット、エット、今ノ内ニ、ボクモドーン!スルッ!
ソッカ、しゅじゅちゅしつ、壊セバ作レナイ!
ボクガ、アッチデモ、ドーン!スレバイインダネッ
オオカミノオニイサンハ、頑張ッテ抑エテテ
動ケル人形達ト、皆デドーン!シテクル!
ジョン・フラワー
【いぬ's】
今日の遊びはしゅじゅちゅち しゅじちゅ しゅ
……言える?
やあお嬢さん! いいことしよう!
忙しい? そんなこと言わずに遊んでよ!
少しくらい平気さ! だって僕たちおともだちでしょ?
ほら、ぬいぐるみたちも遊びにきてくれたよ!
大きな綿のアリスだっている! いやあ、ふわパラだねえ!
ここだけの話、実は僕もふわふわなんだ。見たくない? 見たいだろう!
そっと進行方向を塞いだら張り切って遠吠えだ!
狭い? 大きいことはいいことさ!
おてもできるんだよ。受け止めてくれる?
何事も体験さ! いくよ! どーん!
っていうかしゅづつしちゅ壊したら解決なんじゃない?
どうしようアリス! 僕大きくて動けないかも!
●言えない言葉
「……言える?」
「シュジュチュシシュ、シュジュシュシチュ、ジュシュジュシュ」
「しゅじゅちゅ、じゅ、しゅじゅちゅ、しゅ」
「シュジュチュチュシュ!」
「言えてなくないかい?」
「ウーーン……、チョットズツ……シュ・ジュ・ツ・シ・ツ」
「言えた!」「言エタ!」
戦場の匂いを感じていても、いつもの様子で言葉を重ねるジョンとネロ。
彼らの周りはふわふわ、もこもこ。
ジョンの頭の上にもひよこちゃん。
横を歩く、ねこちゃんにひつじさん。
沢山のぬいぐるみ達を侍らせて街路を真っ直ぐに歩んできた二人を、失敗作が見つけると首を傾げて。
「あれ? あなたたちも、わたしの『おともだち』?」
「そうだよ、お嬢さん。いいことしようか!」
「オトモダチ! ……デモキミ、オトモダチ『作ル』ンダヨネ? ソレハヨクナイヨ」
ジョンがへらへらと手を上げると、ネロがうーんと首を傾げて。
『おともだち』は改造して作るものでは無い、と思う。
自然と集まって来るような、そういうものが『おともだち』だとネロは思うのだ。
こうやって今『おともだち』になったとしても、改造をされてしまうのかもしれないと思うと気が気では無いだろう。
尻尾をちょきんと切られて、新しい尻尾をつけられたりしたら、たまったものじゃない。
「いやあ、良いさ、良いさ、折角だから遊ぼうよ。僕たちはお友達だものね!」
ジョンは話を聞いているのか居ないのか、適当に手のひらを左右にフリフリ、へらへら笑う。
「うん! あそぼう! 『おともだち』とあそぶと楽しいよね!」
失敗作だって、話を聞いているのか居ないのか。
ぱっと微笑むと、蒸気の吹き出る手のひらを少し合わせて。
「そうさ! ほら、ほら、見てごらん! ぬいぐるみも、大きな綿のアリスだっている! いやあ、ふわパラだねえ!」
「ふわパラ?」
「そうだよお嬢さん、ふわパラだよ」
「フワパラ……」
「ふふ、そうそう。ふわパラさ!」
ジョンの言葉には、失敗作だけでは無くネロまで首を傾いで。
獣耳をぴっと揺らして頭の上に乗ったぬいぐるみを強調したジョンは、どこか誇らしげに胸を張ってからすこーしだけ声を潜めた。
「ここだけの話、実は僕もふわふわなんだ。見たくない?」
すすっとぬいぐるみ工場へと向かう道に背を向けて歩むと、ひみつの話、オオカミこそこそ話。
「見たいだろう!」
そうして次の言葉は、ボリューム大。
オオカミこそこそ話は30秒も持たないのだ。
「ワー! オオカミノオニイサン、フワフワナノ? ボク、見タイ!」
ネロがジョンに合わせてぴょんと跳ねて。
「ふわふわなの? 楽しそう!」
「オッケーオッケー、本当は秘密なんだけど特別に見せてあげちゃう! いくぞ!」
瞬間。
わおーーーーん。
ジョンは人の形をした者が発したとは思えぬ声音で、遠吠えを上げた。
合わせてボクモボクモ、とネロが遠吠えを上げて。
「ねえ、お嬢さん! おてもできるんだ、受け止めてくれる?」
むく、むく、もこ、もこ。
ジョンの体は建物ほどの高さに大きくなって、膨れ上がり――。
「アッ」
ついでにネロからぽろっと放たれたのは拷問具達。
うっかり飛び出た拷問具達。
「何事も体験さ! いくよ! どーん!」
「……エット、エット、今ノ内ニ、ボクモドーン!」
街路みちみちに膨れ上がった薄紅色を抱いた毛並みのオオカミのおてと、拷問具が失敗作へと飛び出した。
「わああ、大きくて楽しいねえ!」
ロープが絡みつき、ふわもこの手のひらの圧に地を強かに転がりながらも失敗作はくすくすと笑って。
「うふふ、じゃあ、わたしもとくべつに――だいすきな『おともだち』をみせてあげる!」
瞬間。
大きく蒸気が噴き出したかと思うと、失敗作達が生まれていた。
「わあ、お嬢さん、キミは増える事ができるんだね!」
「『おともだち』だよ!」
「『おともだち』だよ!」
失敗作達が同時に答えると、はっと気づいた様子のジョンはネロへと振り返って。
「なるほどねえ……、……っていうか、綿のアリス! 僕今気づいたんだけどねえ、しゅづつしちゅ壊したら解決なんじゃない!?」
「ソッカ、シュ・ジュ・チュ・シツ、壊セバ作レナイ!」
納得したネロはぴょーんと飛び跳ね。ジョンの隙間を縫って街路の向こう側へとくぐり抜けると、ぬいぐるみ工場へと向かって一気に駆け出して。
「アッチデモ、ドーン! シテクルネッ!」
「そうだね! 行こ……うわーーーっ、ねえ! どうしようアリス! 僕大きくて動けない!」
「オオカミノオニイサンハ、頑張ッテ抑エテテ!」
「わか……、あっ待って、アリス! お嬢さんの蒸気が熱い、あつ、あっ焦げちゃう、焦げちゃう! 待って?! 綿のアリス!?」
「あはは、楽しいね! 『おともだち』!」
「オニイサン! ガンバッテ!」
「うん! うん、うんうん……頑張……ああああ!?!?」
「ガンバッテー!!」
「き、きゃーーーー!!」
駆けゆくネロと、この街の明日を守るべく。
建物と建物の間に挟まったジョンは、その大きな手で一生懸命失敗作ズをてちてちするのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
筧・清史郎
【雅嵐】
人の身を得て、友とは良いものだと
俺も実感している故に、気持ちは分からなくもないが
互いに相手の事を知りたいと思うからこそなのでは
無理矢理に結んだ関係は、残念だがおともだちとは言えないな
箱で在った時は分からなかったが
沢山の友と時間を共有し、知った事だ
なので申し訳ないが、はぐはぐされるわけにはいかない
抱擁されぬ様に敵の動作を見切り躱して距離を取り
数多の桜吹雪の刃をお見舞いしよう
そういえば、らんらんは酒を飲むとよくはぐはぐしてくるな
やじゃ~まだかえらん~酒飲むんじゃ~などと言いながらな(微笑み
潰れて姫抱きして帰った事もあったが…
ん?一度や二度ではないぞ?
その時は尻尾ももふり放題だがな(にこにこ
終夜・嵐吾
【雅嵐】
あの嬢ちゃんがおともだちを探しとる子か
失敗作――わしも、そじゃな
一族に袖にされた方じゃから、嬢ちゃんを嫌いにはなれんのじゃけど
――まぁ、そんなこともうどうでもええか
今は、そうではないしの
おともだちになってもええんじゃけど、それはわしが望む友の形ではないじゃろう
ごめんな、嬢ちゃん
熱烈なはぐはぐもいらんよ
わしはもっと強く抱擁してくれるもんがおるし――なぁ、虚よ
しかし望むなら、抱き返してあげよ
虚が、じゃけど
はぐはぐ? わしが? そんな事しとらんよ
まだ飲むは言うとる気がするが…
肩を借りたことならありそ…姫だっこ?
何をいっとるんじゃ?
せーちゃんこそ夢ン中の話じゃないんか、それは(覚えてない
●酒は飲むとも飲まるるな
建物の屋上へと陣取った二人は夜に霧の如く立ちこめる、ガスの向こう側へ瞳を凝らして。眠りに沈んだ静かな街で俄に上がった、喧噪の先を見据える。
「あの嬢ちゃんか」
「ああ、そのようだ」
柔らかに整えられた灰青の尾を揺らした嵐吾は獣の耳をぴんと張り、扇を揺らす清史郎が応じる形で頷く。
二人の視線の先には、猟兵達と交戦しながら街路を駆ける少女の姿。
彼女こそ『おともだち』を求め探す、『楽しい』以外の感情を持たぬ少女。
――失敗作と呼ばれた、ミレナリィドールの少女の成れの果てである。
「無理矢理に結んだ関係では、残念だが『おともだち』とは言えないだろうな」
言葉を交わし、新たな経験を重ね。
酒を交わし、食事を共にして。
櫛で尾を梳いたし、酔っ払った友の介助だってした。
無理矢理心を縛り付けて過ごしたとしても、決して得られぬであろう感情。
それは箱であった時には、とても知り得なかったこと。
清史郎が人の身を得てから、沢山の友と呼べる者と出会って知ったことだ。
友と重ねた経験ひとつ一つが、清史郎に友と呼べる者と過ごす良さを思い出させてくれる。
「そじゃの。一方通行の感情は、友とは呼べぬ」
「互いに相手の事を知りたいと思える相手を俺は、友と呼びたいと思うな」
「うむ。わしもじゃ、せーちゃん」
唇の端に笑みを宿した嵐吾は、視線をゆるゆると地へと落として。
そのまま、こくりと喉を鳴らした。
脳裏にへばりついたままの、『失敗作』という呼び名。
追従するように脳裏に過ぎる、過去の一欠片。
それは、それは――。
「……わしも、そじゃもんな」
嵐吾は一族の中にあって、袖にされた方であった。
だからこそ。あのミレナリィドールの少女の事を、嵐吾は嫌いになれそうに無い。
蓋をしておきたい感情が、胸裡の底でちりりと燻り。
嵐吾は瞳を細めて息を零すと、かぶりを振った。
「――まぁ、そんなこともうどうでもええか」
……今の嵐吾は、決して失敗作などでは無いのだから。
そこに。
ふ、と刀の柄へと手を添えて構えた清史郎が、一歩地を踏み込み。
「さて、来るぞ。行こうか、らんらん」
「うむ、わしらで止めてあげよか」
言葉を交わして頷きあった二人は、そのまま屋上から飛び降りた。
窓の上に供えられた庇を蹴って、跳ねて、一気に失敗作へと肉薄した嵐吾はひらりと手を振って。
「こんばんは、嬢ちゃん」
「こんばんは! 楽しいよるだね! あなたのわたしの『おともだち』?」
「いいや、申し訳無いが――おともだちでは無いな」
壁を蹴って空中で半回転した清史郎が、刃を抜く。
長い藍色の髪が揺れて広がると同時に、解けるように蒼き刀が桜の花弁へと乱れ舞う。
「わああ、きれい、きれい! 楽しいねえ!」
舞い吹雪いた桜の花弁は、刃と成って。
失敗作へと殺到し彼女の身体を裂くが、失敗作は楽しげに笑って。
「こんなにきれいなおはなをみせてくれるなんて、やっぱり『おともだち』になりたいなー!」
制御できぬ掌より蒸気が溢れ出した失敗作は気持ちの昂ぶりのままに。目の前の嵐吾へと抱きつこうと両腕を広げて。
「うーむ。おともだちになってもええんじゃけど、……それはわしが望む友の形ではないじゃろうからの」
勢いよく飛びかかってきた失敗作をスカす形で、身を低く低くした嵐吾は失敗作の下を潜り抜けた。
「ごめんな、嬢ちゃん」
……それに嬢ちゃんのはぐよりもっと、強く強く抱擁してくれるもんがわしにはおるし、の。
右の眼孔を覆う眼帯をそろりと撫でた嵐吾はどこか甘やかに、その名を呼ぶ。
「――なぁ、虚よ」
身を張って、地を這って、影の色をした黒茨が地を蜘蛛の巣のように一気に染めて。
「わっ、これもすごい! すごい! きれいだねえ!」
自らの足に絡みついた黒茨に、楽しげな歓声をわあと上げた。
「……そういえば、らんらんは酒を飲むとよくはぐはぐしてくるな」
地にしっかりと降り立ち、踏み込みなおした清史郎がそこで、はた、と思い出したように。
「……えっ? わしが? そんな事しとらんよ……??」
「いいや、やじゃ~まだかえらん~酒飲むんじゃ~、などと言いながら、良くはぐはぐしてくるぞ」
怪訝な表情の嵐吾に、雅やかに微笑んで痴態をお知らせする清史郎。
失敗作も、うんうんと話に聞き入っている。
「…………まだ飲むは言うとる気がするが…………、えっ、現実の話しとる?」
「ああ、完全に潰れて姫抱きして帰った事もあるな」
虚が頑張って失敗作の足に絡みつく横で、嵐吾はこめかみに手を当てて。
寝耳に水、一つも思い出せないエピソード達。
少しでも思い出そうとこめかみをマッサージしてみるが、酔っ払ってる時の事を思い出せる人おる? おらんよな?
「えっ、えっ、肩を借りたとかじゃなくて……えっ、姫だっこ? 姫だっこをわしが? されて? 何をいっとるんじゃ????」
「ん? 一度や二度の事ではないぞ? その時は尻尾ももふり放題で、俺は楽しいがな」
「…………せーちゃんの夢ン中の話じゃないんか、それは…………?」
楽しげに微笑む清史郎に、ぱたぱた腕を伸ばす失敗作。
「え~、いいなー、ふかふか、わたしももふりたいよ~」
「いやいやいや、せーちゃん、現実の話でないんじゃよな?」
「らんらんが酒を飲んだ時は、それだけじゃなくて……」
「えっ!?」
「ねえ、ねえ、わたしも~!」
眠りに沈んだ街の中心で。
猟兵と災魔は、わあわあと自由に言葉を交わし合って――。
大丈夫? お仕事の事おぼえてます?
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
榎本・英
【春嵐】
私たちとおともだちになってくれるのかな?
生憎だがこのぬいぐるみたちを
君のお友達にするわけにはいかないのだよ
お友達がどういうものなのか
君に説いても理解は出来ないのだろうね
それならば、我々に出来る事をするまでだよ
さて、遊び相手を探しているのだろう?
私とふわもこたちが相手になろう
このような見た目をしているが
ふわもこはとても頼もしい仲間だよ
ぬいぐるみ作りもお手の物だからね
針と糸は持ったかい?
なゆもふわもこも彼女と遊んでおいで
彼女が失敗作であろうと、楽しむ心があるのなら
上手く付き合えば、本当の友人になる事が出来たかもしれない
仮定の話はやめようか
少しでも彼女が楽しむ事が出来たなら良い
それで十分さ
蘭・七結
【春嵐】
ご機嫌よう、可憐なるひと
よければご一緒に遊んでくださるかしら
あなたと、おともだちになりたいの
この地で出逢ったあいらしい子たち
関わった時間は、とても短なひと時なれど
彼らも、ひとつの思い出も、くべることは出来ないの
遊び相手ならば、悪戯すきなあなたを喚びましょう
お出でなさい、イルル。久方ぶりの外界は如何?
嗚呼、ふわもこさんに絡まるのではなくて
あちらの彼女と遊んでいらっしゃいな
ふふ。そうね、わたしたちも遊びましょう
あなたもどうぞ、ご一緒に
そうっとあなたへと指のさきを伸ばしましょう
真と偽、ひととひとならざるもの
この場ではふたつを隔てるものは必要ない
心ゆくまで遊びましょう
遊戯は始まったばかりだもの
●縁の糸を結ぶが如く
白い煙が失敗作の服裾からふかふかと漏れている。
その元こそ、この街へと眠りを齎しているガスの元凶。
災魔と化した宝石なのであろう。
眠りに沈んだ街で、抱えていたケットシーだって既に帰されたけれども。
失敗作の彼女としては猟兵達と楽しく遊びながら、街路を追い立てられるように駆けて行く。
「こんばんは」
「ご機嫌よう、可憐なるひと」
立ち並ぶ街灯が導く先。
次に彼女の前へと立ち塞がっていたのは、青年と少女であった。
「わあ、こんばんは!」
「ふふ、あなた。よければわたしたちと、ご一緒に遊んでくださるかしら?」
少女――七結は淡く笑むと、自らに寄り添い侍る白蛇の頭を指先で撫でて。
「あなたと、おともだちになりたいの」
「嗚呼。私とふわもこたちが相手になろう」
七結の重ねた言葉を追って頷いた青年――英は肩に乗った毛糸玉じみた生き物を肩で跳ねさせると、眼鏡の奥で瞳を細める。
「わあぁ、もちろん!」
提案にえへへと笑った失敗作は英と七結、沢山のふわもこ達。そして、ふわもこにくるくると絡みついている白蛇のイルルを指折り数えるよう。
「たくさんの『おともだち』がいるのね! せっかくだから、わたしの『おともだち』もしょうかいするね」
満面の笑みを浮かべる失敗作がえーいと腕を上げて。掌からごうと蒸気を吐くと、同時に人影が生まれる。
「ね、わたしのだいすきな『おともだち』だよ!」
白に虹を抱いた髪が、街灯の光をぴかぴかと照り返し。
人影――失敗作によく似た少女は、じゃれるように猟兵達へと飛びかかる。
「嗚呼。お友達がどういうものなのか、君に説いても理解は出来ないのだろうね」
それは彼女が生み出した、イマジナリー・フレンドだ。
しかし、しかし。
お友達とは、一人で生み出して出来るものでは無いと英は知っている。
だが『楽しい』しか知らぬ彼女に、いくら言葉でソレを問いたところで――通じるとは到底思えない。
否。
知っているからこそ彼女は『おともだち』を他に求めて、住人を改造しようとしたのかもしれないけれども。
しかし、しかし。
それではイマジナリー・フレンドと代わりが無い。
それでは『おともだち』では、ありえないのだ。
「――我々に出来る事を、するまでだね」
針と糸は持ったかい。
英がふわもこ達に指揮をするように腕を伸ばすと、コクリと頷き返した七結は侍る白蛇を見下ろして。
「ええ。イルル――、……まあ。久方ぶりの外界を楽しんでいるのね」
視線の先では、先程とは形勢逆転。
ふわもこに逆に絡まれ返されているイルルに、七結はぱちぱちと瞬きを重ね。
「嗚呼、でもね。ふわもこさんとでは無く、あちらの彼女と遊んでいらっしゃいな」
白蛇に絡みつくふわもこへ手を伸ばして、するすると解きながら七結が眦を和らげた。
――刹那。
「あーそんでっ!」
ぶしゅうと蒸気を掌から吐き出しながら飛びかかってきた失敗作と、そのイマジナリー・フレンドが七結へと肉薄する。
彼女の危機を英は気づいているが、瞳を眇めるばかりで動きはしない。
……なんたって。
「やあ、彼らはね。見た目こそふわふわもこもこだけれど――とても頼もしい仲間なのだよ」
英の信頼する愉快な仲間たちが、思い切り地を蹴って跳ねていたのだから。
「わ、わ、わ、わっ!?」
ぽこぽこぽこぽこ!
無数の毛糸玉が失敗作達へと体当たりを重ね。
勢いに押された彼女達は空中でバランスを崩して、ぽーんと後ろへと跳ね飛ばされ街路に転がる。
すかさずしゅるりとイルルが地を這い、駆けて。
「あはははは、楽しい! 『おともだち』たち、小さいのに力がつよいんだね!」
失敗作は、上半身をがばっと起こして笑って。
英はぽこぽこと転がるふわもこ達をねぎらうように、彼らのひとりを拾い上げながら言葉を紡いだ。
「――生憎だが。工場の中のぬいぐるみたちも、街の住人たちも、君のお友達にするわけにはいかないのだよ」
「ええ、関わった時間はとても短なひと時なれど……。彼らも、ひとつの思い出も、くべることは出来ないの」
――もしかすると、彼女が失敗作であろうと。
彼女が災魔と成る前ならば。
もし、彼女が災魔であったとしても。
彼女に楽しむ心があるのならば、上手く付き合う事ができれば。
――……本当の友人になる事が出来たかもしれない。
否。
猟兵達の中では、オブリビオンは明確な『世界の敵』とされている。
倒さなければ、世界はいずれ必ず滅ぶのだ。
英は小さく首を振る。
仮定の話をした所で、この街が救われる事は無いのだから。
思考を巡らせる英の掌に、ふ、と。添えられた七結の細い指先。
だから。
代わりにとは、言えぬけれども。
「ふふ、英さん。わたしたちも遊びましょう」
「……嗚呼、そうだね」
今、この場には――言葉を別ち、隔てるものは必要無い。
本物の友達、偽物の友達。
ひとと、ひとならざるもの。
良いでしょう。
一緒に、心ゆくまで遊びましょう。
少しでも彼女が楽しめれば良い。
彼女が躯の海へと沈むまで、楽しいと思う気持ちを沢山持って還ってくれれば良い。
「あなたもどうぞ、――ご一緒に」
失敗作へと指先を伸ばした七結は、また眦を和らげて。
「わあ、うんうんっ! あそぼう!」
無邪気に言葉を紡ぎ飛びあがった失敗作は、埋められていたふわもことイルルをぽーんと跳ね飛ばして、笑った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
篝・倫太郎
【華禱】
拐かして、改造して……
それってホントにともだちなんだろかね?
何にせよ、止めねぇとな
さっきともだちになったぬいぐるみ達には
必要なら拐かされた子の保護手伝って貰おう
戦ったらだめだぞ?壊れちまうからな
攻撃力強化に篝火使用
『おともだち』を戦闘に利用するのか?
ともだちは利用するものじゃない
対等で在るべきもんだし
諍いに巻き込むもんじゃない
だから、お前のそれは『ともだち』じゃねぇよ
ま、ぼっちだから
『ともだち』について説いたところで分かんないだろうけどな
鎧無視攻撃と鎧砕きを乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返してフェイントも交ぜて2回攻撃
敵の攻撃は見切りと残像で回避
ぬいぐるみ達や夜彦に攻撃が及ぶ場合はかばう
月舘・夜彦
【華禱】
友人が欲しいという想いが暴走して
あのような行動をしてしまったのでしょう
だからこそ、止めなくては
先程の兎と犬のぬいぐるみ達には戦わずに離れて貰い
状況に応じて拐かされた子の保護をお願いします
大丈夫、私の春暁を行かせます
春暁、彼等の手伝いをお願いします
動物使いにてバディペットにぬいぐるみ達を手伝わせます
友人は自分の思うままに利用するものではありません
共に戦おうとする意思も、その人に応える為のもの
早業の抜刀術『風斬』にて攻撃
基本は攻撃力重視の2回攻撃、躱され易い時は命中率重視へ変更
敵からの攻撃は視力、見切りにて動きを読んで残像にて回避
ぬいぐるみ達に攻撃が向かう時は武器受けにて防御後、カウンター
●ともだち
眠りへと誘う白煙。
ガスの色が濃くなっている事を感じる。
星空も見えぬ濃煙の下で、倫太郎は街路に華焔刀――薙刀の柄を真っ直ぐに立て、そこを支点に寄りかかるように。
「拐かして、改造して……、それってホントにともだちなんだろかね?」
肩を竦めた彼は、眉間に皺を確りと刻んだままボヤくように言葉を零す。
「友人が欲しいという想いが暴走して、あのような行動をしてしまっているのでしょうね」
倫太郎を諭すように言った夜彦は刀の柄へと手を添えて。
「……ま。何にせよ、止めねぇとな」
「ええ。だからこそ、止めなくては」
漂う白煙によって、ぽっかりと光だけが浮かんでいるような街灯が立ち並ぶ街路の向こう側。
此方へと向かってくる気配を、確りと見据えた。
「わあぁ、こんばんは!」
ぴょーんと跳ねた失敗作。
それを追うように、彼女によく似た白に虹を抱いた髪を跳ねさせる少女――失敗作のイマジナリー・フレンドが続く。
「いまね、むこうからね! ずーっとおいかけっこをしてきたの!」
うふふ、楽しいねえ、と笑う彼女の既にケットシーの姿は無い。
先行した猟兵達が、彼女の凶行を食い止めて暮れたのであろう。
――かといって、彼女を見逃す訳には行きはしない。
彼女より濃く漂う白煙。
彼女の持つ災魔と化した宝石の吐き出すガスによって、この街は眠りに沈んだまま。
放っておけば無邪気に遊ぶように、彼女はまた街の人たちを改造しようとするだろう。
神力を纏い華焔刀を構えた倫太郎は、駆けぬけて行こうとする失敗作の前へと割り入り。
「わっ!」
瞬間。
風のように早く。
空を割かんばかりの鋭さで夜彦が放った居合斬りをイマジナリー・フレンドが受け止めると、失敗作は倫太郎と衝突する前にきゅっと足を止めて。
「あはははっ、おにいさんはやい! おにごっこ、楽しいね!」
「俺は鬼じゃなくて、羅刹だよ」
――あのイマジナリー・フレンドは彼女が『おともだち』だと信じている限りは無敵であると倫太郎は知っている。
だからこそ、琥珀色を眇めて彼は言葉を紡ぐ。
「なあ、あんた。『おともだち』を戦闘に利用するのか?」
「……? せんとう?」
ぱちぱち、と首を傾ぐ失敗作は、猟兵たちと戦っているという自覚すら無いのかもしれない。
ただ『楽しく』遊んでいるだけなのかもしれない。
――倫太郎は、ぬいぐるみ工場のぬいぐるみ達を思い返す。
彼らも人間に愛されるべく、愛嬌を振りまく魔法の掛けられた、作られた存在。
掛けられた魔法だって、少しばかりの期間が過ぎれば解けてしまう。売られる為に生み出された商品である。
そんな事、倫太郎にも分かっている。
掛けられた魔法の効果ではあるが、彼らは健気にも工場の外まで付いてこようとしてくれた。
しかし。
倫太郎も夜彦も、彼らが付いてくる事を是としなかった。
勿論それは、彼らが出荷前の商品であった事もある。
――それ以上に、二人は彼らに壊れてほしくなかったのだ。
彼らをともだちと呼びたかったから。
――未だ彼らも出会っていない、彼らを家に迎えるであろう子ども達。
そんな子ども達と出会って、『家族』に成ってゆくであろう、『おともだち』の未来を。
倫太郎たちの手伝いで、奪いたくは無かったのだ。
それは彼らの役割だ。
それは彼らの未来だ。
――しかし、失敗作の彼女を放っておけば、その未来だって。
この街の未来だって。
全て、全て、奪い尽くされてしまう。
「なあ。ともだちは利用するものじゃない。――対等で在るべきもんだし、諍いに巻き込むもんじゃないだろう」
「ええ。――友人は自分の思うままに利用するものではありませんよ……!」
地を蹴り踏み込んだ倫太郎は、刀を横薙ぎに振るい。
重ねる形で一気に跳ねた夜彦が、更に二度。目にも留まらぬ速度で刀を駆けさせる。
イマジナリー・フレンドが失敗作の前へと飛び出すと、刃をすべて受けとめてぐっと跳ね返し。
倫太郎は尚も、伝える為に吠える。
「お前のそれは、『ともだち』じゃねぇよ!」
「共に戦おうとする意思も、その人に応える為のもの。……あなたは今、彼女に庇わせて、一つだって戦っていないでしょう」
イマジナリー・フレンドが蒸気を吐き出して、大きく腕を振るうと刀を滑らせて軌道を反らして。
ポーンと後ろへと跳ねた夜彦が、夜に溶ける髪をさらりと靡かせて。
倫太郎は刃を返し再び振るうと、敢えて挑発するように、は、と息を零した。
「ま、ぼっちだから、『ともだち』について説いたところで、あんたにゃ分かんないだろうけどな」
「わたしはなあんにもしらないけれど、『おともだち』はいっしょにいてくれるのよ。でも、そうね! 『おともだち』がもらうなら、わたしもいたみをもらったほうが『おともだち』かしら!」
あはは、と笑って、楽しいねと。
無敵であるイマジナリー・フレンドの前へと飛び出した失敗作は、倫太郎の放つ刃の前へと自らその姿を曝け出して。
「あはは、ふふふっ、いたいね! 楽しいね!」
彼女には『楽しい』しかない。
彼女はだからこそ、全てを受け容れる。
『不快』だという感情すら、疑問を抱くことすら、できないのだ。
「ねえ、『おともだち』のけんも、やいばも、きれいね」
ただ、楽しいから友達が欲しい。
笑う失敗作のその歪さに夜彦は瞳を眇めて、柄をぎゅっと握り直す。
「――止めなければ、いけませんね」
「……ああ」
倫太郎と夜彦は、身を低く、低く構えて。
同時にその刃を、放った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ハーバニー・キーテセラ
うふふ~、貴女も含めてぇ、楽しんで貰えたなら何よりですよぅ
さぁさ、パレードを楽しんだ後は鬼ごっこなんてどうでしょ~?
捕まえられたらぁ、私も『おともだち』に出来るかもしれませんよぅ
とは言いつつ、捕まってあげる訳にもいかない訳でぇ
UCで蹴るのは大地と空
蒸気の湯気をすり抜けるように、『おともだち』を求める手から遠のくように空へ
なんて、こっちを追いかけてくれればぁ、誰かがその隙を突いてくれるかもですしぃ、そうでなくてもぉ、ぬいぐるみさん達に纏わりついてもらったりぃ、それが危険なら私自身が遠間からスナイプしちゃいますよぅ
……楽しんで貰えたのは嬉しいことですが、でも、楽しい時間にも終わりはあるのです
徒梅木・とわ
さて、彼女が抱えていたケットシーの子は無事かな
戦いに巻き込まれない状態であればいいが、そうでないならその子の【救助活動】を最優先しよう
どちらにせよ、とわは防戦一方で構わない
受けて受けて、全部受け止めてやるさ。この結界で
攻撃も。思いの丈も
彼女を討つって事は彼女の望みを、やりたい事を、そういうものを捨てさせるって事なんだから
そいつの辛さは、人より少しばかりは知っているつもりだ
恨み言の一つや二つ、もしあるなら聴いてやらなくちゃあ、ね
……或いはただ、とわが聞きたいだけなのかもしれない
もしそれさえ楽しい事だと認識できるのだとしたら、納得できるのだとしたら、その心の内がどうなっているのかってね
アニー・ピュニシオン
もしかしたら友達になれるかも、
と淡い期待を抱いてたわね
……確かにおともだちは作るものだけど、
他人を改造して造っちゃうのは不自然過ぎるわっ!
私達と一緒に、途中から旗を振ってくれてる
青年ドール君みたいに
ふとした感じからお友達は出来ていくものなの。
無理やり眠っている子を
機械化して友達に出来ても
真の友情というものは得られないのよ。
……兎にも角にも
このままじゃ、町は眠ったままなのだわ。
皆を取り戻す為にツギハギ団と青年の力を貸してもらうわね
マーチングバトンも元の姿の光槍に変形させて、
彼女の前に立ちはだかりましょう
私も色んな事を楽しめる、明るい貴女が大好きよ
だから、貴女の為に。――全力で貴女を止めてみせる。
御園・ゆず
おともだちさん、みーつけた
わたしと遊んでくださいな?
ぴょこん、と彼女の前に出て、提案を
わたし、とってもダンスが上手なんです
一緒に踊りましょう?
左足を軸に回し蹴りを。ローファーの踵を叩き込みます
腰後ろのホルスターからFN Five-seveNを抜いて、彼女のどてっぱらへプレゼントです
ほらほら、仲良く踊りましょ
楽しいですね、楽しいでしょう?
仲良くなれそうですか?
仲良くなりましょうよ!
…………わたしもよく知りませんが、多分お友達はそうやって作るものでは無いと思います
……いつか何処かで、素敵なお友達が出来るといいですね
さようなら、失敗作と呼ばれない世界で会いましょう
●
星空は完全に白に覆い尽くされ。
街路沿いにぽつりぽつりと設置された街灯は、煙の中で光だけが浮いているようにも見える。
先程よりもずっと濃くなった、白煙。
それもそのはず。
失敗作が白煙――、眠りを齎す災魔と化した宝石を持っているのだから。
彼女の近くに煙が多くなってしまうのは、当然の事と言えた。
そこに。
「おともだちさん、みーつけた!」
街に霧のように立ち込める煙の合間から、ぴょんとゆずが失敗作の前へと飛び出した。
「わあ、こんばんは、『おともだち』!」
「はい、こんばんは。――ねえ、わたしと、遊んでくださいな?」
そして制服のスカートの裾を摘んで、素敵なカーテシー。
「わたし、とってもダンスが上手なんです。一緒に踊りましょう」
なんて、ゆずが身を低くして踏み込むと、左足を軸に円を描くように踵蹴りをねじり込み。
それから腰より自動拳銃を引き抜き、勢いよく失敗作の土手っ腹を撃ち抜いた。
「あはは、ほんとう! だんすじょうずだね! わたしもおどるよ!」
腹を撃ち抜かれ、自らより砕けた欠片がぱらりぱらりと地へと落ちようとも失敗作は笑っている。
かくん、と体を揺らめかせてから、踏み込んだ失敗作はゆずと同じように円を描いて。
痛みが無い訳ではないのだろう。
しかし、痛くて『不快』だという気持ちすら無く、『楽しい』と笑う失敗作。
「くふふ、だんすをするのならば、会場は整えなければね」
はらりと霊符を侍らせたとわは、一瞬で氷の結界で街を包み込む。
ゆずへと放たれかけた蹴りが氷に囚われ、受け止められて。
「わああ、きれい! あっ、うごけない!?」
それすらも楽しいと笑う失敗作に、バトンを握りしめたアニーはきゅっと眉を寄せた。
しかし、しかし。
「わー……、すごいですね……」
「そうね……」
青年のミレナリィドールの言葉に同意したアニーのは彼に同意しているようで、また違う視点で『すごい』と言っている。
彼は猟兵達の戦いを素直にすごい、と思っているようだ。
しかし、しかし、アニーは。
もしかして友達になれるかも、と今の今まで、失敗作に対して淡い期待を抱いていたのだ。
けれど彼女の行動によって、アニーのそんな甘い気持ちは全て砕かれてしまったような気分であった。
おともだちは作るもの。
それでも、他人を改造して作ってしまうというのは、不自然極まりない事だ。
その上、攻撃をされたとしても彼女は『楽しい』と笑っている。
――……友達は意のままに操るものではない。
彼のように、ふとした瞬間からお友達は出来ていくものだ。
「――無理やり眠っている子を機械化して友達に出来ても……、真の友情というものは得られないのよ」
ふるふると首を揺すったアニーは、バトンを握り直して。
青年を見やる。
「ねえ、もう少しだけお手伝いしてくれる? この街を、あなたたちに返す為に!」
彼女と分かり合う事はできないかもしれない。
それでも、それでも。
街を眠らせたままで、居るわけには行かない。
「はい、勿論!」
こっくりと頷いた青年は旗を握りしめ。
ぱぽーぷー。ツギハギ団だってラッパを吹き鳴らして、準備万端。
「ありがとう! さあ行くわよ、ツギハギ団フューチャリングミレナリィドールボーイ!」
「ボーイって年齢じゃないですけれど」
「楽しい楽しい行進曲を、かき鳴らせ!」
じゃんっ!
楽器が同時に響き合い、ツギハギ団は荘厳な演奏を始める。
――今日最後の演目を、開始する。
アニーの握りしめたマーチングバトンも、光槍と成って。
「おやおや、ずいぶんと素敵なだんすぱあてぃになりそうだね」
「うふふ~、本当ですねぇ~」
くっと笑ったとわの後ろから、ぴょんと跳ねるハーバニー。
跳ねる、跳ねる、跳ねるはウサギ。
ウサギといえば、ハーバニー!
地を蹴ったかと思えば、空を駆ける彼女は失敗作の上へとひょいんと飛び込んで。
「ダンスと一緒に、鬼ごっこはいかがですかぁ~? 捕まえられたらぁ、私も『おともだち』に出来るかもしれませんよぅ」
「わぁあ! そんなのぜったいにたのしいねえ!」
ばきん! と音を立てて氷を割った失敗作が、ハーバニーを捕まえようとすると掌から蒸気が噴き出して。
「おーにさん、こちらぁ」
するん、と空を蹴ったハーバニーの足先が失敗作の掌からするりと逃れた。
「あっ、『おともだち』! にげるのじょうずだね!」
「駄目ですよ、踊りに身がはいっていませんよ」
ほら、ほら、仲良く楽しく踊りましょう。
ゆずが彼女を追うように背から蹴っ倒すと、幾度も幾度も弾を撃ち放つ。
「ねえ、楽しいですね、楽しいでしょう?」
――ゆずだって、友達の作り方なんて知らない。
でも、ゆずにだって、それは違うと分かっている。
「……仲良くなれそうですか? 仲良くなりましょうよ!」
「あは、あはははっ! いたい、いたいねえ! おともだちのくれるいたみは『楽しい』ねえ!」
割れる彼女は笑う。
ああ、なんて、なんて、彼女はいびつなんだろうか。
ああ、なんて。
「うふふ、楽しいですかぁ~、楽しんでもらえて、何よりですよぅ」
笑うハーバニーも重ねて、スローイングナイフを鋭く撃ち放ち。
空中を蹴り上げて一回転すると死出の旅路への片道切符――拳銃を引き抜いて。
彼女達を鼓舞する、高らかなる音楽が響く中。
彼女達を守るとわは、更に霊符を放って結界を強固なものと成す。
「キミにとって、『おともだち』って何だい?」
「え? ……『おともだち』がいると、『楽しい」でしょう! だから、だいすきよ!」
――彼女を討つって事は彼女の望みを、やりたい事を、そういうものを捨てさせということだ。
望みを捨てる事は、辛いこと。
とわはその事を、人より少しばかりは知っているつもりである。
だからこそ、彼女の言葉をきいてやりたい、と思う。
しかし、しかし。
彼女はとわとちがって、苦悩はしないようだ、苦しみはしないようだ。
『楽しい』しか持たぬ彼女は、『苦痛』すら『楽しい』と認識しているようで。
――ならば、ならば、とわは気になるのだ。
捨てる事すら、厭わず楽しいと言い切れる、彼女の心根が。
――それこそ、壊れているだけなのかもしれないと、言い切りたくはないのだ。
「……『楽しい』以外は、ないのかい?」
「わからないよ、『楽しい』もの!」
きゅっと一歩踏み出したアニーは、そんな彼女を見据えて。
光槍を手に、地を蹴った。
「私も色んな事を楽しめる、明るい貴女が大好きよ」
だから、だから。
貴女の為に。
光槍を突き出したアニーは、確と失敗作を見据えて。
「――全力で貴女を止めてみせるわ!」
「……いつか何処かで、素敵なお友達が出来るといいですね」
拳銃を構えたゆずは、ぽつりと思わず言葉を零してしまう。
――ああ、失敗作と呼ばれない世界で、いつか。
「そうですねぇ、…………楽しんで貰えたのは嬉しいことですが、楽しい時間にも終わりはあるのですから」
空をはねるウサギ。
ハーバニーは瞳を細めて、呟いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
杜鬼・クロウ
【異鴉】
俺達を見て楽しいと思われてたかは謎だが
実質愉しンでたのはカフカだけだよな(ジト目
彼女の前に立ち塞がる
なァ、そいつは本当にお前の「おともだち」になれると思うか(虹色髪の子指差し
ダチっていうのは作るンじゃなく、
言葉を交わして関係を育んでそうなれるモノだと思うぜ
伝わるか分からねェが
憐憫な目で見下ろし溜息
楽しいか
…そうか(言葉呑み込むは優しさ故か
【蜜約の血桜】使用
彼女を桜で囲み蝕む
手向けの花代わり
UC使う時にカフカの様子見て鼻で笑う
さて何のコトやら
好きだろ、この香り
玄夜叉を握り締め前へ
距離詰めおともだちを一刀両断
極力苦しまぬよう一撃に総てを込め
黒焔で灼き払う
来世では唯一無二に巡り会えるとイイな
神狩・カフカ
【異鴉】
おやおや、お前さんは楽しんでくれなかったのかい?
おれはとーっても楽しかったけどな!
いやはや、クロウは優しいねェ
このお嬢さんはおれ達の物差しでは測れない世界で生きているンだろう
おともだち――友人の作り方もそれしか知らないンじゃなァ
人の世じゃ、お嬢さんのやってることは止めなくちゃならねェ
楽しんでるとこ悪いがな
…ほぉーん?
お前さん、おれの前でその桜を使うたァいい度胸だな
――ま、いいサ
意趣返しを籠めてクロウの背を勢いよく押して前へ
援護は任せな
煙管を吹かして彼岸の花を咲かせて
彼に向かう攻撃の手を燃やしてやる
あとは任せたぜ
…壊れちまっても
楽しいって感情しかねェことが救いか
次はちゃんと作ってもらえよ
●きみのふたつ星
『楽しい』事をして災魔を呼び寄せろ、と言われていた。
そう、それはそうだ。
だからこそ、幾つも言葉を重ねた。
あの姫の話だって、自らのあり方だって。
「いやいや、可笑しいなァ。『楽しく』お話が出来たってェのに」
ムスッとした様子のクロウは、半眼でカフカを睨めつける。
「愉しンでたのはカフカだけじゃねェか」
「おやおや、お前さんは楽しんでくれなかったって言うのかい? おれはとーっても楽しかったのにさ!」
災魔が散策中に現れなかった事に、クロウは眉間にきゅっと皺を寄せて。
それはたまたま災魔が現れないルートだっただけの事なのだが……。
――否。
彼の眉間のシワは、それが原因では無いかもしれない。
肩を強引に組んでぱんぱんと叩いてくるカフカを、クロウは驚くほどにうっとおしそうに見て。
それから深い深い溜息を漏らしてから、肩を下げる。
なんたって。
此処に訪れてから行った事は、ただただカフカに誂われ続けているだけのような気すらするもので。
「まあ、楽しそうね! ふふ、あなたたちもわたしの『おともだち』かしら?」
そこに。
ぴょんと街路の向こうから跳ねるように姿を現したのは、探していた災魔の姿。
既に他の猟兵達が救ってくれたのだろう、彼女の腕の中にはケットシーの姿は無い。
しかし。
放っておけばまた彼女が、街人を攫ってくる事は目に見えている。
彼女の進路を塞ぐように前へと出たクロウは首を傾いで。
「……なァ、お前。『おともだち』は作るものだと思うか?」
「……?? ちがうの?」
わからない、と失敗作は瞬き。
クロウはゆるゆると左右にかぶりを振って。
「違ェよ。ダチっていうのは作るンじゃなく、言葉を交わして、関係を育んで、――なるモンだ」
「わあ、おしえてくれてありがとう! じゃあおしえてくれたから、もうわたしたちは『おともだち』ね!」
ことばをかわしたもの!
なんて。
ぴかぴかの笑顔で笑う彼女には、きっとなあんにも伝わっていない。
「……」
クロウが思わず息を飲むと、うっとりとした瞳で彼女は更に言葉を紡ぎだす。
「ねえ、ねえ。わたしもっともーっと、『おともだち』をつくりたいの! そうしたらもっともーっと楽しいもの! ……あっ、なるんだっけ?」
クロウは相違う瞳色の視線を、地へと落として。
肺の中身が全て居心地の悪いものに成ってしまったかのように、重く深いため息が溢れた。
「……そうか」
嗚呼、伝わらない。
コイツは何を言っても、何を伝えても。
きっと笑って薄っぺらな言葉で、全てを受け入れてしまうのだろう。
だからこそ。
クロウは何も言えなくなる、言葉を飲み込んでしまう。
そんな二人のやり取りを、静かに見つめていたカフカはくっくっと笑って。
「いやはや、クロウは優しいねェ! ――このお嬢さんは、おれ達の物差しでは測れない世界で生きているンだろうよ」
先程、煙草を強請ったというのに。
自分自身でちゃあんと煙管を持っていたカフカは、ぱちりぱちりと火を煙管に灯す。
「あのな、お嬢さん。人の世じゃ、お嬢さんのやってることは止めなくちゃならねェンだ」
――友人を『作る』事しか知らないと云うのならば。
「お嬢さんがどれほど楽しんでいようとも、な」
カフカはそのまま深く深く吸った煙をほうと吐き出すと、煙はガスの白と混ざって溶けて。
「……」
言葉を奥歯で噛み潰してしまったクロウは、甘い甘い常夜桜の残香を漂わせはじめる。
その香りは桜の花弁と成って、桜吹雪を呼び――。
刃と成った花弁が、一気に失敗作へと殺到する。
「わあ! きれいねえ、うふふ。『おともだち』はすごいのね!」
桜吹雪に切り刻まれながら無邪気に笑う失敗作は、楽しげに瞳を細めて。
「でもね、でもね、わたしの『おともだち』もすごいのよ!」
なあんて。
次の瞬間には、彼女によく似た『おともだち』――イマジナリー・フレンドが現れていた。
二人の少女たちは、ただただ、嬉しげに、楽しげに、切り刻まれる体をきゃっきゃと喜んで。
「あなたのくれるいたみ、とっても『たのしい』わ!」
逆に仲間であるカフカは、ぷかぷか煙草を吹かしながら眉を寄せていた。
「……ほぉーん。お前さん、おれの前でその桜を使うたァいい度胸だな」
「さーて、何のコトやら」
カフカの様子にやっと意趣返しが出来たと、クロウはにんまり笑って。
「好きだろ、この香り?」
「そりゃ、勿論。――ま、いいサ」
面白くなさげにやれやれと肩を擡げたカフカが、どんとクロウの背中を押した。
「援護は任せな」
「っと」
身の丈程もあろう漆黒の剣を抜いたクロウが真一文字に刃を構えようとも、少女達はきゃっきゃと喜ぶばかり。
その様子はどうにも斬りづらい光景ではあるだろうが。
――彼女達が喜んでいる姿は、ひどく歪に見える。
「……ああ、任されたよ」
「ああ、任せたぜ」
ふう、と。
再びカフカの吐き出した煙が彼岸の花と成って、はらりと顕現する。
彼女達を取り巻くようにぽぽぽと咲き誇る朱い花は、桜吹雪と混ざって、爆ぜて。
――炎と成る。
「なァ。そんなまがい物じゃなくて、……来世では唯一無二に巡り会えるとイイな」
「……次はちゃんと作ってもらえよ」
一気に踏み込んだクロウは膂力の全てを籠めて。
刃を横薙ぎに払うと、宿した焔の魔力が黒焔と成って燃え上がり――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
朱赫七・カムイ
⛩迎櫻
女子会
あれは女子というのだね
楽しかったよ
サヨもリルも愛らしかったよ
……カグラ、どさくさに紛れてヨルを持って帰ってはいけない
懐から出してあげて
友達か
サヨを見つめて柔く微笑む
私の大切なきみ
おともだちが欲しくても改造してしまうのは良くない
其れは友とは呼べない
大丈夫かい?
サヨ
食べてはいけないよ
きみは相変わらず食いしん坊だ
リルの……いや、私の方が美味しいと思う
衝動が抑えられないなら私の血をあげる
遊んであげよう
ひとの子を写したそなたと
カグラ、サヨとリルに守りの結界を
リルの歌は誠に美しい
早業でかけて出方をみつつの先制攻撃、見切り躱し
切断する
春暁ノ朱華
誠に楽しかったかい?
私はそなたを失敗作とは呼ばないよ
リル・ルリ
🐟迎櫻
女子はひとりもいないけどな
楽しかったのは本当だよ!
人形に変えるのはダメだぞ
ヨルとぬいぐるみ達に応援してもらえたら僕もっと頑張れる
あれ?ヨルどこいった
おともだち、か……あの子をみてると
なんだか寂しい気持ちになってしまう
悪意はなくて、本当におともだちにしたい
無垢だからこその
そうだね、遊ぶように
楽しむように
送ってあげようか
怖いくらい美しい櫻の微笑みに尾鰭がぴるると震える
櫻、変なのは食べちゃダメ
…僕のが美味しいのに
カムイもそう思うよね…え?張り合ってきた?!
もう!
2人に鼓舞をこめ歌うよ
『魅惑の歌』
動きを絡めて痛みも凡てを蕩かせる
かぁいい、なんて
褒められるのは僕だけでいいよ
なんで少しだけ
ヤキモチ
誘名・櫻宵
🌸迎櫻
リル、カムイ!楽しかったわね
もふもふぬいぐるみ女子会、癖になりそうね
無邪気でかぁいいお嬢さん
だいすき、なんて
愛なんてないくせに
味気ない空っぽの言葉が愉快でいっそかぁいらし
おともだちになりましょう
私はおともだちを食べるのがだいすき
失敗作、だなんて思わない
無垢で無邪気でいいお顔
優しく壊してあげるわ
リルったらヤキモチかしら?
カムイ、大丈夫よう
私はいつも通りだもの
あなた達もとっても愛らしい
一緒に遊びましょ
リルの歌に踊るよう
身を朽ちさせる桜花の神罰を纏わせて
蹂躙するようになぎ払い、蒸気を衝撃波で払いながら斬り祓う
カムイの太刀筋に重ねて抉る
うんうんとっても
楽しかったわ
それじゃあね
かぁいいおともだち
●ざわざわ
「楽しかったわね! ふふ。もふもふぬいぐるみ女子会、……癖になりそうだわ」
白く染まった夜の中で、へんにゃり笑う櫻宵の足取りは軽く。
パーカーから伸びるウサギ耳が、ふかふかとなびく。
「成程、女子会。あれは女子というのだね」
そんな櫻宵の後ろをテクテクと歩みながら、カムイが大真面目な表情で頷き。
「ううん、女子はひとりもいないけどな」
リルが鰭の先をぴぴぴと揺らしながら、ゆるゆると手を振って断言した。
しかし、しかし。
しっかり否定されたとしても櫻宵もカムイも、あんまりそういう言葉が耳に入っていかないタイプだ。
「サヨもリルも愛らしくて、とても楽しかったね」
カムイは思い返すように唇に笑みを宿すと、くすくすと笑みを漏らして。自らに寄り添う人形――カグラに告げるよう。
「楽しかったのは、確かだけど!!」
カグラはたしかに頷いて居るけれど、そこに女子は居ないんだよ。
リルが尾鰭を揺らして伝えても、柔らかくカムイは笑むばかり。
いやあもう。
今日の愛らしい服装のリルが、何を言ったってひたすら愛らしいのだ。
もう、と小さくかぶりを振ったリルは、手を伸ばして。
「ヨルも女子じゃないものな。って……あれ? ヨル? どこいったの?」
空振りする手。
居るであろうと思った場所に存在しないヨル。
「あら、迷子かしら?」
きょときょとリルと櫻宵は周りを見渡して、ヨルの姿を探し始め。
「噫、……カグラ」
ふと気がついてしまったカムイは、瞳を細めてカグラを真っ直ぐに見やる。
「どさくさに紛れて、ヨルを持って帰ってはいけないよ」
「あっ、ヨル!」
カムイの指摘通り。
カグラの懐の中でぬくぬくしていたヨルが無事発見され、リルは大きな瞳を丸くしてヨルを指差すのであった。
真顔で視線だけ反らして、ヨルを取り出すカムイはちょっと嫌そうにも見える。
――そこに。
「わぁぁ、こんばんは! こんやはたくさん『おともだち』とであえる、よいよるね!」
白に虹を抱いた髪を揺らす少女が、ぴかぴか笑顔を浮かべて姿を現した。
この街は今、この白く染まるガスによって全てが眠りに沈んでいる。
眠っていないのは作られた存在である故に眠らぬのミレナリィドール、そして猟兵たち。
――そして今回の元凶であるミレナリィドールの成れの果て。
災魔の失敗作だけだ。
「それで……ねえねえ、あなたたちもわたしのだいすきな『おともだち』?」
小さく首を傾いで笑った失敗作の言葉に、カムイは思わず櫻宵をチラリと見て。
「友達か」
それはカムイにとって、特別で大切な言葉。
唇に宿る笑みは、無意識なのだろう。
噫、大切な友達。――大切な、きみ。
「――そなた。おともだちが欲しいのだとしても、改造してしまうのは良くないことだ。其れを私は、友とは呼べないと思うよ」
「そうなの? なら、どうすれば『おともだち』なの?」
カムイの言葉に無邪気に笑いながら首を傾ぐ失敗作は、本気で理解ができない様子で。
リルはそんな彼女の様子を見ていると、心根がなんだかざわざわしてしまう。
なんだか寂しくて、悲しくて。
――あの子は本当にしている事に悪意はないのだろう、と感じるからこそ。
本当にただ純真に、無垢に、おともだちが欲しいだけなのだろうと思えるからこそ。
リルは眉尻を下げて、ぎゅっとヨルを抱きしめる。
「ねえ、無邪気でかぁいいお嬢さん」
そこにふふふ、と形よく唇を笑みに歪めて、一歩前へと櫻宵は踏み出した。
嗚呼、嗚呼、嗚呼。
だいすき、なんて。なんてココロを感じられぬ薄っぺらな言葉。
そこに愛なんてないくせに、味気ない空っぽの言葉が、愉快で、滑稽で。
――いっそかぁいらしくすらあるわ。
「おともだちになりましょうよ」
刃を抜いた櫻宵は、艶やかに、艷やかに笑みを深めて。
ひたり、と失敗作の顎先を刃先で擡げると、彼女の瞳を見据えた。
「私はおともだちを食べるのがだいすきなの」
ねえ、私はあなたを『失敗作』だなんて思わないわ。
「無垢で無邪気でいいお顔ね、――優しく壊してあげるわ」
「えっ! そうしたら『おともだち』なの? ふふ、じゃあ、こわしてね」
こっくり頷いて笑う失敗作。
彼女は全てを受けいれる。
なんたって彼女には、恐怖も苦痛も無い。
『楽しい』以外、何も備わって居ないのだから。
「櫻、変なのは食べちゃダメ」
リルは背筋から尾鰭の先まで、ふるると震わせる。
――それは自らの愛しい人の笑顔が、怖いほど美しくて、綺麗だったから。
それに、それに。
「そうだよ、サヨ。食べてはいけないよ」
きみは相変わらず食いしん坊だね、と言葉を継いだカムイの横。
「……僕のが美味しいのに」
ざわざわ、心根がざらつく。
リルが下唇をきゅっと噛んで、小さく小さく言葉を零した。
「カムイもそう思うよね……」
なんて。
リルがカムイを見上げると――。
「そうだね。リルの……いや、私の方が美味しいと思う」
顎先に指を寄せてすこし考えてから、カムイはきっぱりと言い切った。
「え? 張り合ってくるの?!」
「サヨ。衝動が抑えられないなら、私の血をあげるよ」
「カムイ!?」
えっえっ、そういう展開!?
リルが目を丸くすると、櫻宵がくすくすといつもの調子で笑って。
「リルったらヤキモチかしら?」
「そ、そ……、違うぞ!?」
ぴゃっと尾鰭を跳ねたリルが、慌てて否定するけれど。
やんでれだから仕方がないね。
ゆるゆると首を振った櫻宵は次にカムイを見やり。
「カムイ、大丈夫よう、私はいつも通りだもの」
ねえ、と息を吸うと、櫻宵は確りと失敗作を見つめ直した。
「あなた達もとっても愛らしいわ」
「ねえねえ、そろそろこわしてくれた? 『おともだち』のはぐはぐ、してもいいー?」
「ふふ、そうね。お待たせしたわ、――一緒に遊びましょ」
掌から爆ぜるような音を立てて蒸気を噴き出した失敗作より、一度バックステップで距離を取る櫻宵。
「そうだね、遊んであげよう。――カグラ、サヨとリルに守りの結界を!」
……ひとの子を写したそなたと。
さらりと太刀を抜いたカムイが、櫻宵へ合わせるように構えながら頷くと。
彼の人形は願われるままに結界術をその場に施して。
「うん。……遊ぶように、楽しむように。――送ってあげよう」
リルは美しき歌を、旋律を紡ぎ出す。
ミレナリィドールすら魅惑する、美しき曲を。
それは彼女を送る、鎮魂曲と成り得るだろう。
「わあぁ……おうた、じょうずね!」
美しき旋律に合わせて、桜の花弁がはらりはらり、舞うように。
「そうよ、リルは歌が上手なの」
ぽうっとハグすら忘れてしまったような様子の失敗作に、櫻宵は一気に踏み込んで。
雅やかに地を蹴り跳ねたカムイが、少女に向かって太刀を一直線に振り抜き。
「誠に楽しかったかい? ――私はそなたを失敗作とは呼ばないよ」
「ええ、それじゃあね。――かぁいいおともだち」
「まあ、『おともだち』! ふたりともわたしをこわしてくれるのね!」
それで『おともだち』になれるのならば。
失敗作は、無邪気に、無邪気に笑って。
そんな様子にリルは少しだけ、また心根がざわざわとするのを感じてしまった。
――かぁいい、なんて。
……褒められるのは僕だけでいいのに。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
唄夜舞・なつめ
【蛇十雉】
泣くなときじ。
アイツにゃあ、
楽しい感情しかない
泣きたくても泣けなくて
怒りたくても怒れなくて
ただただ『笑う』しか
出来ねーんだ
それがどれだけ…辛いか
俺ら猟兵が分かってやらねーで
誰が分かってくれンだ
……俺らが、それを分かった上で
弔ってやるンだ
大丈夫。子守唄を聴かせてやるよ
ーー『終焉らない輪舞曲を』
たのしいたのしい。子守唄。
聴き惚れてるだけでいい
そうしてるうちにきっと
解放される。
……おやすみ。
俺らの『おともだち』。
来世は、笑って、泣いて、怒って。
十色の思いを持って生まれて来られっといいなァ…!
きっとその方が、
何百倍も『たのしい』ぜェ…!
宵雛花・十雉
【蛇十雉】
酷いよ、お花を燃やすなんて…
『おともだち』だって言ったのに
ベソかいて鼻をすすりながら尋ねる
君にとっての『おともだち』って、いったい何?
笑うしか出来ない…そっか
何が君をそんなにしたんだろう
そうなったのがどうして君だったんだろう
やるせないよ…
怒りや悲しみと共に湧き出す恨みの感情が【八つ咲き】の大鎌を形作る
せめて苦しまないように、ひと思いに送ってあげるから
場に響く、楽しい楽しい歌
それは子守唄であり葬送歌であり、そして鎮魂歌でもある
きっと楽園には楽しいものがたくさんあるよ
だから今は安らかに、お休みなさい
もしも生まれ変わったら、また『おともだち』になろうね
●一つしか知らない
辺りを包み込む白煙が、一層濃くなっていた。
静かな夜にしめやかに響く、ぐずぐずと啜り泣く声。
涙をぼろぼろ零す十雉が鼻を啜ると、失敗作をまっすぐに見やった。
「ねえ……、酷いじゃないか……お花を燃やすなんて……、『おともだち』だって言ったのに……」
「おはながもえてしまうことは、ひどいことなの?」
涙を零している十雉の瞳を興味深げに見つめる失敗作は、まばたきを二度重ねて。
「そうだよ……。君にとっての『おともだち』って、いったい何?」
「わたしの『おともだち』はだいすきなこよ! だいすきな『おともだち』といっしょにいるのは、楽しいでしょ!」
うふふ、と笑う失敗作は、やっぱり十雉の瞳をじいっと覗き込んでいる。
「ねえ、ねえ。あなたのひとみ、いっぱいきらきらのしずくがでてきて、きれいね!」
「……っ」
その言葉に十雉は酷い違和感を感じる。
此方を見ているのに、此方を見ていないような――。
そんな十雉の背を叩いたなつめは、ぐっと十雉の首根っこをひっつかんで自らの方へと寄せて。
「――泣くんじゃねーよ、ときじ。アイツにゃあ、『楽しい』感情しかないって聞いてただろう」
「そう、だけど……」
「泣きたくても泣けなくて、怒りたくても怒れなくて。アイツはただただ『笑う』しか出来ねーんだ」
「……笑うしか出来ない……」
ぐっとまた零れそうになった涙を飲み込むように、十雉は瞳を細める。
ゆらゆら涙のしずくに揺れる視界を、服の裾でぐっと拭った。
「なあ、それがどれだけ辛いか。――俺らが分かってやらねーで、誰が分かってくれるってンだ?」
「そっか……、そうだよな……、でも……」
なつめの言葉に十雉はくっと下唇を噛む。
そうだとしたら、なんて、なんて、彼女は。
苦しいだろう、悲しいだろう、それが理解すら出来ないという事は、――ひどく、ひどく、やるせない事だ。
ああ。
何が彼女を、そんな風にしてしまったというのだろうか。
どうして彼女が、そうなってしまったというのだろうか。
何故それが、彼女だったのだろうか。
「――だから俺らが、弔ってやるンだ」
「……うん、そうだね」
ゆらゆら、揺れる十雉の気持ち。
心根がざらついて恨めしい程のやるせなさが、掌の中に大鎌を形作る。
そう、そうだね。
せめて、せめて、苦しまないように。
「ひと思いに、送ってあげるから」
「わあ、おくってくれるの? うふふ、おともだちがどこにつれていってくれるのか、楽しみ!」
無邪気に笑う失敗作は、なんだか、うれしくてはぐはぐしたくなっちゃった、なんて。
留まることの無い蒸気をその掌に宿しながら、二人に向かってぴょーんと飛び跳ねた。
「ああ、おくってやる。――子守唄を聴いているうちに、すぐ行けるさ」
なつめが紡ぐ旋律は、優しく響く子守唄。
楽しい歌に、聴き惚れているだけで良いさ。
――そうしていれば、ときじがお前を開放してくれる。
「わああ! すごいね、おうた、じょうず! わたしのほかの『おともだち』も、おうたがじょうずなのよ!」
二人の目前で歌に聴き惚れたように足を止めた失敗作は、楽しげにまた笑った。
きれいな歌。
楽しい歌。
優しいその歌は――きっと、子守唄であり、葬送歌であり、そして鎮魂歌でもあるのだろうと、十雉は思う。
息を飲んで一歩きゅっと踏み出すと、十雉は大きな大きな鎌を構えて――。
「ねえ、……きっと楽園には楽しいものがたくさんあるよ」
「ああ、……おやすみ。俺らの『おともだち』」
重なる十雉となつめの言葉。
「それはきっと、すてきなことね! うふふ、おやすみなさい、『おともだち』たち!」
何の話かも、理解していないのだろう。
失敗作は笑みを崩す事無く、そのかんばせいっぱいに笑みを湛えたままこっくりと頷いた。
――なつめは願う。
彼女の来世は笑って、泣いて、怒って。十色の思いを持つ事ができるように、と。
――きっと、きっと。その方が何倍も、何倍も、『楽しい』のだろうから。
「……もしも生まれ変わったら、また『おともだち』になろうね」
十雉は失敗作へと向かって、大鎌をまっすぐに振り下ろして――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
呉羽・伊織
【遊敵】
ああ、双方楽しく過ごせたなら何よりさ
でもな
(道明に頷きつつちらちら狐睨み)
相手が望まぬ事
自分だけ楽しんで相手が哀しむような事
まして相手を玩具に――命を玩具にして遊ぶような事は、駄目だ
…
話聞け悪辣狐
曲がりなりにも友人騙りやがるなら人“で”遊ぶな!
みっちーも!何か言ってやって!
…俺は帰ったらみっちーと色々話し合う必要があるから悪酔狐は一人酒でもしてろ
わぁつれない…☆
勝手に決めんな!
コホン
君にももっと色んな“心”を教えてあげられりゃ一番だったんだがな
手品でも見せるよーに
早業で闇と毒のくるくると切替つつUC
掌狙い蒸気の源の部位破壊
せめて最後まで笑顔で、お別れと行こう
――在るべき所に還ってお休み
佳月・清宵
【遊敵】
愉しい記憶で満たされか
そりゃ幸いだ
(最期にそんな一時を得たなら――
と思いつつ
ちらちらへにやにやと)
まだ構えってか?
だが今の遊び相手は奴さんだからなぁ?
ま、帰ったらまたたんまり遊んでやるから安心しな
あァ?人聞きの悪い言い回しをすんなよ
別に玩んじゃいねぇさ――皆で仲良く囲んで可愛がってやってるだけだよなぁ、道明?
(道明に手を打って笑い)
なら飲み明かしてから道明と鍛練で決まりだな?
さて――感傷は後で、酒で流せ
叶わねぇ以上、せめて最期に戯れに付き合うぐらいはしてやろう
チャンバラと火遊びとどっちが好みだ?
――否、特別に両方サービスだ
麻痺毒仕込んだ刀で掌狙い
早業UCで送火
楽しい夢を胸に
ぐっすり眠れ
吉城・道明
【遊敵】
楽しく友人と思い出を作れたならば――唯それだけならば、良かったのだがな
相手の心身を蔑ろにしては、共に楽しむ事も、友人となる事も、能わぬ
そして斯様に道を踏み外しかけたならば、其を止めるは友人たれば当然の事
(併し恒例の漫才喧嘩は特に止めぬ模様)
――ああ、よく膝を抱えていじけている男を仲良く輪に迎えるもまた、友人たれば当然では?
?俺は早朝鍛練の為帰ったら寝る
何ならお前達も偶には共に如何か
其方の娘も、共に――と招けぬ事は心苦しいが、そうだな
遊び疲れて眠る迄、せめてお相手仕ろう
蒸気阻害の為連携し掌狙い肉薄ことチャンバラへ
…面白味が薄く悪いな
代わりに戯れる狛犬を遣わそう
夢路迄、少しでも楽しく案内を
●心の友とのココロの距離感
片腕が切り落とされた失敗作の少女の腕には、既にケットシーは存在していない。
何処かで猟兵によって助けられたのであろう。
ふかふかと白煙を吐き出す少女は企みがひとつもうまく行って居ないだろうというのに、三人へと楽しそうに笑いかける。
「うふふ、いろんなおともだちとあそんできて、とってもとっても楽しかったの!」
「愉しい記憶で満たされたか……、そりゃ幸いだ」
そうか、と相づちを打つ清宵。
最期にそんな一時を得られたのならば――、それを幸いと言わずとして何と呼ぼうか。
「楽しく友人と思い出を作れたならば、……そうであろうな」
応じるように頷いた道明は、内心歯噛みをしてしまう。
――唯それだけならば、良かったのだ。
しかし、しかし。
そうでは無い事を、道明は知ってしまっている。
それは、全てとは言わぬが、ほとんどが彼女の独り相撲であったのだろうから。
「ああ、双方楽しく過ごせたなら何よりさ」
『双方』と言う言葉にやたらと力を籠めた伊織は、清宵を睨めつける。
そんなネッチリとした伊織の熱視線に気がついた清宵は、ニッコリ人の悪い笑みを浮かべた。そりゃあもう、満面の笑みだ。
「……でもな、相手が望まぬ事、自分だけ楽しんで相手が哀しむような事――」
笑みにたいてい返すのは、マリアナ海溝より深い眉間のシワ。
失敗作に伝える言葉が、ついでにあの性悪狐に刺さりますように。
祈りと恨みがましさを籠めて、伊織は失敗作の琥珀色の瞳を見やる。
「まして相手を玩具に。――命を玩具にして遊ぶような事は、駄目だよな?」
「そうなんだ!」
初耳、と言った様子で失敗作はぱちぱちとまばたきを重ねて。
「そうダヨ、相手を玩具にする事は、駄目な事なんだ」
ねえ。
祈りと恨みがましさが倍増する言の葉。
清宵がぴかぴかに満足げな笑みを浮かべている事を感じるからこそ、伊織はそちらを見ない。
「相手の心身を蔑ろにしては、共に楽しむ事も、友人となる事も、能わぬ」
道明が伊織の言葉を継ぐように、恨みがましさは一切感じられぬ口調で失敗作へと低い声音で語りかける。
「そして斯様に道を踏み外しかけたならば、其を止めるは『友人』たれば当然の事だろう?」
「……わたしは、みちをふみはずしかけていて……、『おともだち』たちはわたしをとめてくれている、ってこと?」
「物分りが良いじゃねェか」
清宵はくすくすと笑って。
――物分りがいいだけで、その言葉にはうすっぺらなモノしか無い事も気づいている。
それでも、それでも。
『友人』が伝えたいことがあるというのならば、止める気も無い。
伊織へとくすくすと笑いかける清宵は、性悪狐の笑みで。
「この位、聞き分けがよければなァ。まだ構えってか?」
「おーい、悪辣狐!? 話聞いてた!??」
「ま、今は少し忙しいからなァ。帰ったらまたたんまり遊んでやるから安心しな」
「わぁ~~っ、耳家にでも忘れて来たの!? 曲がりなりにも友人騙りやがるなら人『人』で遊ぶなってんの! みっちーも!何か言ってやってくんない!?」
聞く耳を持たぬとはこういう事。
清宵にきゃんきゃんと吠える伊織に、清宵がたっぷりと嘲笑を籠めた息をはっと漏らす。
「あァ? 人聞きの悪い言い回しをすんなよ」
それから清宵は、道明に妙に人懐っこい笑顔を向けて。
これは友人向けスマイルです。
「別に玩んじゃいねぇさ――皆で仲良く囲んで可愛がってやってるだけだよなぁ、道明?」
「――ああ、よく膝を抱えていじけている男を仲良く輪に迎えるもまた、友人たれば当然では?」
道明はウム、と納得した様子で頷き。
「わああ、『おともだち』たちはとっても、とっても、楽しそうにおはなしをするのね!」
ぴっかぴかスマイルで応じてくれる失敗作。
嗚呼、嗚呼。
三者三様、三人の顔を順番に見た伊織は確信してしまう。
ここに伊織の味方は居ない、と言う事を。
「え~……っと……、俺は帰ったらみっちーと色々話し合う必要があるみたいだカラ、悪酔狐は一人酒でもしてろ、絶対にくんなよ」
とりあえず心の友の勘違いだけは解いておかねばならぬ、と。
決心した伊織が、道明をじっと見やると――。
「? 俺は早朝鍛練の為、帰ったら寝るが?」
きょとん、と応じた道明は瞬きを一つ、二つ。
伊織だってその言葉には、瞬きを一つ、二つ。
見つめ合う二人。
「ああ、そうだ。お前達も偶には、共に早朝鍛錬は如何か」
「わぁつれない~……☆」
ヤダ~~~。
この心の友、ほんとに心の距離が遠い~~~。
伊織がウフフと笑って現実逃避モードに入ると、清宵は手を打ってけらけらと笑って。
「なら飲み明かしてから、道明と鍛練で決まりだな?」
「勝手にフルコースを決めんな! 一人で飲んでろって言ってるよネ!?」
「でも、みんなでのんだほうがきっと『楽しい』わ!」
ね、と諭すように失敗作にまで言われてしまえば、伊織はすごい顔。
清宵は壁をバンバン叩いて笑い転げているけれど、それでも道明は仕事を忘れては居ない。
――そう、みんなで飲めるのならば。
きっとそれは、幸せで楽しかったのだろう。
しかし。
道明には『彼女も共に』などと招く事なんて、できはしないのだから。
「……すまないな。遊び疲れて眠る迄、せめてお相手仕ろう」
失敗作をまっすぐに見据えて、道明が言葉を紡げば。伊織もコホン、と咳払いを一つ。
「……君にももっと色んな『心』を教えてあげられりゃ、一番だったんだがな」
それは、彼女が災魔である限りは叶わぬ事。
知っている、知っているのだ。――そんな事、出来ない事くらい。
「さて――感傷は後で、酒で流せ」
笑い転げていた清宵は、道明と伊織の背を同時にばん、と叩いて。
「叶わねぇ以上、せめて最期に戯れに付き合うぐらいはしてやろう」
「……? なあに、あそぶの? ふふっ、いいわよ!」
「――なァ、チャンバラと火遊びとどっちが好みだ?」
身を低く低く構えて、刀の柄に手を添えた清宵は尋ねる。
「ちゃんばらあそび! わたし、とくいなのよ!」
「あ~、手品もいいんじゃナイ?」
ねえ、と伊織はくるりくるり。
暗器の纏う属性を切り替えて鋭く放った事を皮切りに、一気に清宵と道明も地を踏み込んだ。
「わあ、でもそれってにんじゃごっこじゃないかしら?」
「――なら、忍者ごっこにチャンバラ――、火遊びまで全てサービスしよう」
清宵の言葉と同時に炎が膨れ上がって舞うように。
靡くように、炎が彼女へと殺到して――。
その炎にまぎれて清宵が鋭く振るうは、腕を狙う一撃。
「わあぁ、もりだくさん! ほのおも、そのぶきも、きらきらしてきれいね!」
ただ刀を構えて同時に振り下ろしていた道明は、む、と片眉を上げて。
自分だけ攻撃に面白さが全く無い事に気がついてしまった。
「……面白みが薄くて悪いな」
ならばせめてもの手向けにと。
道明が狛犬を呼び出せば、狛犬がじゃれるように失敗作へと飛びかかる。
――嗚呼。最後まで笑って、彼女が夢路に付けるように。
在るべき所に迷わずたどり着けるように。
――おやすみなさい。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
冴島・類
※ディフさん(f05200)と
伝えに行きましょう、ディフさん
知らなかったなら、知れば良い
道中、工場のぬいぐるみさん達に
誘拐された子を救助して来たら
連れて離れてくれないか協力お願い
彼女にはまた会ったね!と声かけ
その子を連れて行ってどうするの?
同意なく、は良くないよ
帰してあげてと、まずはお願いするが…
戦闘になれば、瓜江を踏み込ませ
フェイントで気を引き
その隙にケットシーの子奪還狙い
…うん
受け入れる為、氷で温度を下げるディフさんに頷き返し
自分も近付く為舞で軽減し側へ
君にとっての友達は
有りの侭じゃ一緒にいられないのかい?
違ってたって、手を繋げるだろう
ほら、伸ばして繋ごうと
放つ衝撃波は災魔化した宝石へ向け
ディフ・クライン
類(f13398)と
そうだね、類
知ることが出来れば、彼女はきっと失敗じゃない
類と共にぬいぐるみたちに協力をお願いして
彼女と相対したら
会いに来たよ、オレたちは友になったんだろう?
さっきは楽しかったかいと首傾げ
戦闘になれば類の動きをサポートし
類、友を受け入れたいんだ
フードに潜んでいたneigeを呼び
UC発動
オレの身体を極限まで冷やしておくれ
ほら、ハグを望むのならありのままおいで
熱を極寒の冷気と霜で冷やしつつ
ハグを受け入れて
そのまま霜を彼女にまで広げよう
類への攻撃を制限しながら
…冷たい身体だろう、これがオレだ
オレと貴女、そして類は違う
けれど、友になれるよ
同じじゃなくたって、なれるよ
宝石へ氷結の風を
●教えて
沢山沢山傷ついた彼女が、此方に向かって来る姿が見えた。
それでも彼女は笑っている。
それでも類もディフも、さっきまで――彼女と楽しく遊べていたのだ。
掌から蒸気が吹き出そうとも、彼女は楽しく笑っていたのだ。
ならば、彼女に伝えてあげたい言葉がある。
知らなかったならば、知れば良いのだ。
「ねえ、ディフさん」
「……あぁ。そうだね、類」
――きっと、きっと。
『知る』事ができれば、彼女は失敗では無い。
彼女はまだ、――知らないだけなのだ。
ボロボロの体で跳ねるように歩く失敗作の前へと姿を現した類は、軽く手を上げて。
「やあ、また会ったね!」
「会いに来たよ、……オレたちは友になったんだろう?」
ディフが重ねて首を傾ぐと、失敗作はその言葉にぴかぴかと翡翠色の瞳を輝かせた。
「わああ、あいにきてくれたの? ふふ。またあえてよかった、こんばんは『おともだち』たち!」
ここに来る前に猟兵達に救出されたのであろう。
くすくすと笑って応じる彼女の腕の中には、既にケットシーの姿は無い。
「さっきは楽しかったかい?」
「うん! ふふふ、はじめてのあそび、たくさん! 『おともだち』がたくさんいると、とっても『楽しい』ねえ!」
「そうだね。……それで、あなたは他に友達を作ろうとしたの?」
「あ、しってるの? うふふ、でもねえ、とちゅうで『おともだち』がだめっていうから、あのこはだめだったみたい」
類はその言葉に瞳を細める。
それは根本的に――、『作り変える』と言う事は駄目だと思っていないようで。
「……そうだね。同意が無いのに連れて行くのは、良くないよね」
「だから、ほかのこをさがすの!」
「……他の子は機械になる事を、同意してくれると思う?」
ディフの問いにぱちぱち瞬きを重ねる失敗作。
「うーん……わかんない。でも、わたしは『おともだち』がほしいなあ」
ぶしゅ、とまた彼女の掌の上で蒸気が跳ねた。少し考えた後に彼女はうん、と頷いて。
「やっぱり、ほしいからつくってこよーっと! うふふ、おともだち、またね!」
「っ! 待って!」
「うん? なあに。わあ、もしかしてわたしとまたあそんでくれるの?」
類が引き止めようと声を上げた瞬間。
くるんと踵を返した彼女は、まるで童女のように無邪気に両腕を広げて。
吹き出す蒸気もそのままに、類へと向かって駆けて来る。
「……類、オレは友を受け入れたいと、思う」
彼女の導線上に割り入ったディフは、類へと視線を投げかけて。
しゅうるりとフードから飛び出したネージュが、ディフの願いを受けて。
冷気の魔力を高めると、ディフの体の体の周りを舞うように。
はらりはらりと彼の温度を奪ってゆく。
極限まで、彼女の熱い蒸気に耐えられる程に、もっともっと、冷たく、冷たくしておくれ。
「……うん」
ディフの気持ちを全て受け止めた類は、舞いの足取り。
風よ、集え。風よ、舞え。
少しでも熱を軽減できるように、その体を神霊体と成す舞を。
「うふふ、なにしてあそぼう!」
冷えたディフの体と熱い蒸気がぶつかり合って、激しい音を立てる。
「おともだちは、とてもつめたいのね」
「貴女はとても、温かいね。――……この冷たい身体が、オレだ」
「わあ、ふふ、はんたいね」
「あぁ、反対だ。――オレと貴女、そして類も。そして貴女が『おともだち』にしようとした者も、みんな、みんな違うんだ」
ネージュが少し離れた位置から、懸命に冷気を送っている。
ぱきぱきと彼女まで広がり、落ちる霜。
掌以外の部分は熱くは成っていないのだから、それは当然の帰結だ。
氷が蔦のように絡みついて、ぎゅうっとディフに抱きつく彼女の背をディフは抱き返す。
――それは類へと攻撃を向かわせぬ為。
それは彼女の、……友の抱擁に応じるが為。
「けれど、それでも友になれるよ。――同じじゃなくたって、なれるよ」
「ねぇ、君にとっての友達は、有りの侭じゃ一緒にいられないのかい?」
ディフの言葉に、類が言葉を継いで。
失敗作はそれは嬉しそうに、嬉しそうに笑った。
「わああ! そうなの? うふふふ、それはとっても『楽しい』ことね!」
彼女は何も知らない。
彼女は何もかもを受け容れる。
だって『おともだち』がいうならば、そうなんだろう。
「違ってたって、手を繋げるんだよ」
「そうだ、例え言葉が通じなかったとしても、友になれるのだから」
類は失敗作に手を伸ばして、ディフがこくりと頷く。
「それって、とっても、ふふ。すてきね」
ディフから腕を離した失敗作は、止める事の出来ない蒸気が吹き出す掌を類へと向けて――。
その瞬間。
災魔と化した宝石が失敗作のポケットの中で、ぱきりと音を立てた。
それは、冷たく冷たく冷やされた災魔の卵が限界を迎えた音。
彼女から噴き出していたガスが、ぴたりと止まって。
「……わあ、きれいなおとがしたね!」
嬉しそうに、嬉しそうに、失敗作は笑った。
手をつないだままの類と、ディフは小さく笑んで。
「こわれちゃったから、とりにいってくるね。じゃあ、またね! 『おともだち』たち!」
次の瞬間。
ひょーいと失敗作は、街路を飛び越えて行った。
――彼女の笑顔は、彼女の言葉は、きっと嘘では無かったのだけれども。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴィクトル・サリヴァン
さてさて楽しい夜の散歩も第二幕、もうちょっと手伝ってねー。
次は綺麗な手品でも。
UC発動して旋風と泡の属性を合成、催眠ガスと魔導蒸気を巻き込み吹き上げる泡塗れの風の渦を作り出す。
泡は魔力でコーティング、足場にできる固さに調整。
高速詠唱からの光の魔法で空に光源打ち上げれば泡が光を反射して工場照らしいい感じの景色に。
さあシャチの次は泡の上、追いかけっこなんてどうだい?と誘い気を惹いて。
人質いるなら親切なふりで抱えてたら難しくない?とか言って離すよう誘導、俺が気を惹いてる隙にドールの青年にこっそり救出して貰う。
安全確保出来たら風を強くし泡と一緒に夜空へ吹っ飛んでもらおうかなー。
※アドリブ絡み等お任せ
●シャチのマジックショー
工場の前で待ち構えていたヴィクトルは、失敗作の少女を歓迎するように尾鰭をゆうるりと揺らして腕を広げた。
既に他の猟兵達が救ってくれたのだろう、彼女の腕の中にはケットシーの姿は無い。
しかし。
放っておけばまた彼女が、街人を攫ってくる事は目に見えている。
だからこそヴィクトルは、人が良さそうな笑顔をにっこり浮かべて。
「やあ、ようこそ。ちょっと遊んでいくかい?」
彼女の気を引けるように、泡をもこもこと掌の中に生み出した。
「わああ、『おともだち』! あそんでくれるの? うふふふ、なあにそれ?」
ぴかぴかに瞳を輝かせて笑う彼女の有様は全身ボロボロに傷ついて、腕なんてほとんど取れてしまいそうな程だ。
その上、災魔化した宝石は、もはやガスを吹き出す事をやめてしまっているらしい。
それでも彼女は楽しそうに、楽しそうに笑っているもので。
瞳を細めたヴィクトルがふう、と泡を吹くと、ぷわぷわとシャボン玉のように泡が膨らみ、浮いた。
「うんうん、夜空の散歩の次の演目は――追いかけっこだよ」
それから。
ヴィクトルが大きく腕を振るうと、風と泡が大きく吹き上がり。
工場の周りの空へと、硬い硬い泡をまとう風の渦が幾つも生まれた。
「じゃあ、最初はキミが鬼だよ」
安全だと、と示すように。
ヴィクトルが泡の上に飛び乗ると、失敗作はわあいと大きく跳ねて。
「わー、つかまえたらいいのよね! しってるよ、まけないからね!」
ぴょん、ぴょん、とヴィクトルが上へ、上へと泡の風渦に乗って逃げはじめると、失敗作はそれを追いかけて泡の風渦へと乗り――。
「うん。じゃあ、いってらっしゃい」
瞬間。
ごう、と吹き上がった風が彼女を巻き上げ、遠くへ遠くへと飛ばしてしまう。
風の渦をかき消して、地へと降り立ったヴィクトルは空を見上げて――。
「……鬼側が追いかけてくるのを邪魔しない、とは言ってないしねえ」
ぽつり、と言い訳じみた言葉を零した。
成功
🔵🔵🔴
ダンド・スフィダンテ
ミューズ、ミューズ。
俺様と話をしよう。
折角友達になったんだ。
俺様は、ミューズが悲しんでいたり苦しんでいたりするの、嫌なんだ。
でも、楽しさしか無い事も、それはそれできっと苦しいだろうと、思うんだ。
なぁ、ミューズ。
俺様の大事な者が言っていたんだが……友達は出来るものではなく、作るものでもなく、成るものなんだそうだ。
ミューズ、俺様と友達になろう。
さっきはちょっと、時間をかけてしまった答えだが、聞き入れて貰えるだろうか?
俺様も、失敗作だしさ。
きっと仲良くやれるよ。
共に在ろう。
大丈夫だ。
眠るまで傍に居るとも。
●友よ、聞かせてくれないか?
ころん、と屋上から飛び降りてきた失敗作の姿を見つけると、ダンドはぱたぱたとそちらへと駆け寄って。
「やあ、ミューズ。良い所でまた出会えたな」
なんて、軽く手を上げた。
失敗作は大きく頷いて、うふふと笑ってから。
「あ! 『おともだち』! そうだね、またあえてよかった!」
「ああ、折角友達になれたのだから――俺様と話をしよう」
「うん、いいよ」
――それはダンドの背に展開された、宙へ浮く聖印の効果でも在るのだろう。
こっくりと頷く失敗作は、素直にその場に座った。
きっと他の猟兵達が救ってくれたのだろう、彼女の腕の中には攫われてきたケットシーの姿は無い。
それどころか既に片腕を失った彼女の姿は、どこもかしこも傷だらけ。
しかし、彼女は今のままではまた繰り返すだろう。
『おともだち』を作るための愚行を、幾度も、何度も。
その痛々しい姿に眉根をぎゅっと寄せたダンドは、細く息を吸って、吐いて。
「……俺様は、ミューズが悲しんでいたり苦しんでいたりするの、嫌なんだ」
「うん? だったら、だいじょうぶ! 『楽しい』よ!」
「……その、楽しさしか無い事も、それはそれできっと苦しいだろうと、思うんだ」
「そうなの?」
ダンドの言葉にぴんと来ていない様子で首を傾ぐ彼女には、『楽しい』しか無い。
痛みや、人から攻撃される『不快』すら『楽しい』ものなのだ。
「……なぁ、ミューズ。俺様の大事な者が言っていたんだが……」
ダンドはそれでも、それでも、粘り強く彼女を諭すように。
言い聞かせるように。
「友達は出来るものではなく、作るものでもなく、成るものなんだそうだ」
「うふふ、みーんなそういうのね。わたし、もうすっかりおぼえちゃったわ!」
「……そうか。なあ、ミューズ、俺様と友達になろう」
それは作るのでは無く、成ろうという願い。
さっきはすこうし、時間をかけてしまった答えだけれども。
「俺様も、失敗作だしさ、きっと仲良くやれるよ」
「わあぁ! ほんとう? それって、とてもすてき! おそろいって『楽しい』ね! うふふ、よろしくね『おともだち』!」
ぱあっと笑う失敗作の瞳は、ぴかぴかに瞬いて。
「ああ、共に在ろう。――大丈夫だ。眠るまで傍に居るとも」
「それは、とても楽しそうね」
ダンドはその言葉に、心根に安心と同時にざらつく感情を覚える。
伝わっていない、と言う不安。
それでも、彼女は笑って。
「ねえ、ねえ、『おともだち』。わたしね、ちょっととってくるものがあるから、またもどってくるね!」
「待つんだ、ミューズ――」
そうしてぴょんと飛び跳ねた彼女は身軽に、片腕を振って。
まっててね! なんて。
――追いかけても、追いつけぬだろう速度で駆けてゆく彼女。
嗚呼。
ざらざら、ざらつく心根。
きっと。
彼女がもうここに戻ってくる事は――。
「……そうか、わかった。待っているよ、ミューズ」
くっと下唇を噛んだダンドは、瞳を閉じて。
成功
🔵🔵🔴
セロ・アルコイリス
リュカ(f02586)と
『手術室』かあ
なんか生まれた場所を彷彿とする
アイツは親に似たんですかね?(首傾げ)
くまちゃんは待っててくださいね
ねぇリュカ、『あんなん』だったんですよ、おれも
失敗でしょう、あんなモン
でも、不思議ですね
はいはいはぐはぐ【存在意義】
おれとあんたは対で創られて
No.12、強いて言うなら『おねーちゃん』、
だからおれは『おともだち』にゃなれねーけど
リュカ、お願いします
コイツを壊したい、より
殺させたくねーってココロが勝ちますから
同じだったのに、
師匠に、リュカに、みんなに逢って、
……おれは失敗作じゃ、なくなって来たの、かなあ
はは、
おれが学んでるなら
リュカも変わってきてますよ、きっと
リュカ・エンキアンサス
セロお兄さんf06061と
…さあ。或いは親を思い出してるのかもしれないよ
くまさんは置いておいて序盤はうたいの鼠で麻痺攻撃
救出対象がいる場合は救出優先
弱らせて…って、俺が倒すのか
お兄さんがそれでいいなら、いいけど
灯り木に持ち替えて撃つ
おやすみなさい
お友達にたくさん会える、いい夢を
…何を以って失敗と為すのか、俺にはわからない
俺だって、人間にしては失敗作の方だろう
だから、お兄さんが失敗してるなら、少しくらい失敗したままでいてくれた方が、俺は一緒に居やすいけどね
でも、少なくとも俺には、
お兄さんが、何かに失敗してるようには、見えないけれど
…お姉さんも、そんな風に
寄り添える人がいたら
違ったのかもしれないね
●『失敗作』と『失敗作』
相も変わらず、星の見えぬ空。
それでも街を包む白々としたガスは、少し薄くなってきたように思えた。
それはラファガが大きく風を起こしてくれている事だけが、原因では無いようで。
「手術室ってーのは、コイツですかねぇ」
「そうみたいだね」
工場の中庭に設置されていた大きな繭の様な施設の中を覗き込めば、正に『手術』を行う為の設備が整っていた。
それは何処か、セロの生まれた場所を彷彿とさせるその品揃え。
瞬きを二度重ねたセロが扉を閉じると、前で見張っていたリュカは警戒を解くこと無く。
手にしていた拳銃型のガジェット――うたいの鼠へと弾を籠めた。
災魔と化した宝石からガスが放たれており、そしてその宝石を持っているのは『失敗作』である、と聞いている。
――失敗作が討たれたか、それとも宝石が壊れたか。
否。
討たれたという事は無いだろう。
なんたって――。
「――アイツは親に似たんですかね?」
星の見えぬ空の向こう側を見通すような視線。
確かに感じられる気配に、セロは首を傾ぐとぽつりと言葉を零して。
「……さあ。或いは親を思い出してるのかもしれないよ」
星が見えぬ中でも美しく星を宿すマフラーを鼻先まで改めて引き上げたリュカは、小さくかぶりを振る。
リュカは自分の親――家族の記憶なんて一つも無い。
どこにいるのかも生きているのかも知らない、想像すら出来ぬことだ。
しかし。
未練も思い入れすら無いというのに、リュカは会えるのならば家族と会ってみたいと思うことが在る。
『親』を知っている『子』ならば尚更ではないだろうか、と思う。
セロはくっと瞳を細めると、笑って。
「ねぇ、リュカ。おれもね――『あんなん』だったんですよ」
白に虹を帯びた色、ボロボロに傷ついた体。
しゅう、と勢いよく吹き出す蒸気は掌だけで無く、壊れて腕が千切れた側は肩から噴き出している始末だ。
それでもセロによく似た髪を跳ねてぱあっと笑った少女を、セロは確りと見据えて。
「わあっ、こんばんは! ねえねえ、あなたたち、わたしとあそんでくれるの? あなたたちもわたしの『おともだち』?」
「その質問、以前にも聞き覚えがあるな」
傷ついても体が欠損しても、尚笑顔を崩すことが無い彼女。
やれやれと瞳を細めたリュカは彼女の笑顔を見る事が、初めてでは無い。
「――友達なんて、自分から言うやつは碌なもんじゃないって。俺を育ててくれた人が言ってた」
「ね、……失敗作でしょう? あんなモン」
リュカの言葉に肩を竦めて、セロは自嘲的に呟く。
『親』は人間を創ろうとしていたのだと言う。
しかし、生まれたのは『楽しい』という感情しか持たぬ人形達。
――セロは彼女……『No.12』と対で作られた存在だ。
セロも彼女と同じ、失敗作。
壊れて躯の海に落ちたか、落ちなかったか。
その程度しか差は無いのだろう、と思っていた。
「……何を以って失敗と為すのか、俺にはわからないけれど」
セロが自分を指し示す意味で使う『失敗作』という言葉は、リュカも幾度か聞いた事がある。
だからこそ正解の言葉を選びきれず、リュカは短く言葉を紡ぐと真っ直ぐに銃口を失敗作の少女へと向けて。
「そうなの? じゃあ『おともだち』になろう!」
まずは、『おともだち』のはぐはぐ!
ぱっと笑みを深めた失敗作は、蒸気を纏いながら大きく腕を広げて。
麻痺の魔力の籠もった弾丸を撃ち放ったリュカへと向かって、鋭く飛び込んで行く。
「はいはい、はぐはぐ」
そんなリュカと失敗作の射線に割り入ったセロは、蒸気を纏って。
激しくぶつかり合い膨れ上がった二人の蒸気が、ふしゅ、と間抜けな音を立てて熱を失う。
強かに胸へと飛び込んできた失敗作の背を抱くと、セロはぽんぽん、と柔く叩いてやり。
「ふふふっ、『おともだち』とはぐはぐ『楽しい』ね!」
「いいや……あんたはおれの『おねーちゃん』です」
彼女の耳元でセロは囁くよう。
「そうなの?」
きょと、と首を傾ぐ失敗作の言葉に、セロは瞳を閉じて長いまつ毛を揺らす。
「だからおれは、あんたと『おともだち』にゃなれねーけど――……、リュカ!」
「ん。お兄さん、何?」
「お願いします」
それは彼女のトドメを願う言葉。
……ハグは言い換えれば、動きを抑え込んでいるという事で。
「お兄さんが、それでいいならいいけど」
セロの因縁を自分が断ち切っても良いのかと空の色を瞬かせるリュカに、セロは失敗作を抱きとめたまま頷いた。
「……おれはコイツを壊したい、より……、殺させたくねーってココロが勝ちますから」
うたいの鼠からアサルトライフル――灯り木に持ち替えたリュカは、こっくりと頷いて。
「なあに、なに、あそびのそうだんなら、わたしもまぜて!」
失敗作はぎゅーっとセロに抱きついて、せがむよう。
セロは小さくかぶりを振って応じると、その頭を一度撫でてやった。
「ちがうよ、『おねーちゃん』。これはおやすみの相談です」
「おやすみ? やすむのも、『楽しい』よね!」
「あんたはそうでしょうね。……今日は楽しかったですか?」
「うん! 『おともだち』とたくさんあそんだよ!」
セロは『楽しい』しか知らなかった。
なにかを学ぶためには、盗む事しか識らなかった。
「……、そうです、か」
それでも。
『ココロ』は『感情』で『想い』で『過去』のことでもあるらしいと教えて貰って、セロは知ったのだ。
「おやすみなさい。お友達にたくさん会える、いい夢を」
――リュカの言葉は小さいけれど、静かな夜によく響いた。
アサルトライフルより撃ち放たれた弾は、失敗作の頭を確かに鋭く貫き。
「……うん、おやすみ、なさい……、おと……」
失敗作が言葉にならない言葉を紡いだように見えた。
次の瞬間。
笑顔を浮かべたままの彼女はセロの腕の中で、糸が切れたように崩れ落ち。
風に吹かれる砂のように、その体がさらさらと解けて行く。
そうして最後に残った大きな宝石が、地へとごとんと零れ落ちた。
「……おれも、同じだったのに、」
セロは宝石を見下ろして、小さな小さな呟く。
今は『楽しい』と思えない。
それは不思議な事だけれども――。
「師匠に、リュカに、……みんなに逢って、……おれは失敗作じゃ、なくなって来たの……、かな」
灯り木の銃口を下ろしたリュカは、セロへと歩み寄って。
「俺だって、人間にしては失敗作の方だろうし」
すっかり煙を吐き出さなくなった宝石を拾い上げてから、セロの薄紅色の瞳を覗き込んで言葉を継ぐ。
「……だから、お兄さんが失敗してるなら、少しくらい失敗したままでいてくれた方が、俺は一緒に居やすいけどね」
でも、少なくとも俺には、と。
リュカは視線を逸らす事無く、まっすぐにまっすぐに。
「お兄さんが、何かに失敗してるようには見えないから。……何か変わったんだとしたら、きっと、お兄さんは学んだんじゃないかな」
セロはココロを持たぬ人形では無い、と。
リュカは思っている、感じている。
彼の真っ直ぐな言葉に、セロは瞬きを一つ、二つ。
それから、ぷは、と吹き出すように笑って。
「はは、おれが学んでるなら。リュカも変わってきてますよ、きっと」
「……ん。……お姉さんも横に誰かが居たなら、違ったのかもしれないね」
「――、そうかも、しんねーですねぇ」
学ぶココロ。
今は、うれしい、も、さみしい、も、少しずつ。
――あんたのふたつ星には、なってはあげられなかったけれど。
二人の見上げる空は煙もすっかりと晴れて、ぴかぴかといくつもの星が瞬いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年12月21日
宿敵
『失敗作』
を撃破!
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