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You've Got a Friend in Me

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #マロリー・ドラッケン #ケットシー #災魔の卵


●愛情反転
「……これが、ここの地域の恩人記念碑……ですか」
 そこには石碑がひとつ。
 それを、丸眼鏡の少女が手で触れ、撫でながら読み上げる。
 書かれていたのは、外の国の人間がブリキ人形やぬいぐるみなど様々な『玩具』を作ってはケットシーの子ども達に与え、そして最終的には『猫の国』に伝えたという内容。
 ケットシー達の感謝と共に、それらが書き綴られていた。
「『猫の国の玩具の父、アンディ』……なるほどなるほど、そういう『物語』ですか」
 少女の表情は、笑顔だ。
 だが、その笑顔は温かなものに触れた優しいものではなく。
「ああ、良いかも、これ……この『物語』! 欲しい!」
 その笑顔は値打ちの芸術品を前に、蕩けた笑みを浮かべる『蒐集家』のものであった。
「あ、ダメだこれヒートアップしてる。おい、マロちゃんの眼鏡、外してくれよ」
「了解さ、ワンドの兄貴。ケヒヒ」
 少女の持つ『杖』の指示を聞き、周囲を浮遊していた『本』が少女の眼鏡を挟んで引っ張る。
 顔から眼鏡が引き抜かれ、少女は一瞬虚空を見つめ、表情を落とす。
「いたた……ウフフ、アナタ達。眼鏡は優しく外しなさい。デリケートなんだから」
「マロちゃんが? 眼鏡が?」
「両方よ」
 眼鏡が外れた、マロちゃんと呼ばれた少女の表情は先ほどの、よく言えば天真爛漫なものから一変し、挑発的な妖しいものとなる。
 改めて、少女は記念碑を撫で読む。
「ケットシーの子ども達が『玩具で遊ぶ』喜びを、『玩具の父』に感謝しているのね……素敵」
 恍惚とした表情で記念碑を眺める少女。
 それを急かすように、少女の周りを『本』が飛ぶ。
「早速やっちまおうぜマロちゃん!」
「ええ、そのつもりよ。……さあ」

「この恩からどんな災魔が生まれるのか……楽しみね?」
 光る指先、記念碑に沈む光。
 これが猟書家と呼ばれる少女、マロリー・ドラッケンの一手であった。

●グリモアベース
「ミャオ、猟書家ってヤツが現れるらしいぜ」
 口火を切ったのは、西部劇に出てくるガンマンのような装いのケットシー、サミュエル・ブラウニング(ブラウン・キッド・f16740)だった。
 火を点けないままくわえられた煙草を転がしながら、サミュエルはメモをめくる。
「今回ヤツらに目を付けられたのはアルダワ世界の『猫の国』の『恩人記念碑』だ。これに、どうやら災魔の卵ってのが埋め込まれてしまうらしい」
 災魔の卵。
 それを埋め込んだ物体は『災魔化』し、人に害を振りまく存在になってしまう、忌まわしい物体。
 とりわけ、今回の代物は恩人記念碑に記されたもの……つまり、それを記した者の受けた『恩』の逆を行う災魔が生まれるという。
「ちなみに記念碑の内容には……『玩具で遊ぶ子ども達』の姿が含まれている……さて、じゃあどんな災魔が生まれるんだろうな?」
 両手を広げ、それを左右交換するように腕を交差する。
「簡単だ。生まれるのは『子どもで遊ぶ災魔』だ。これはなかなか厄介じゃないか?」
 そして、またもサミュエルは腕を広げて呆れる動作を取る。
 おどけた動作を、サミュエルは「だが」と切る。
「だが、そうはならない。何故なら、これを阻止するために猟兵が動くからさ」
 サミュエルは帽子を上げ、猟兵達を見据える。
「わざわざ遠出して玩具の作り方や玩具で遊ぶ楽しさを伝えるなんて……この『恩人』とやらは、よっぽど玩具が好きだったんだろうな?」
 しかし、その楽しみは、災魔によって捻じ曲げられようとしていた。
 それは、許されるべき事ではない。

「これはケットシーの子どもの希望を守る戦いだ。頼むぜ、みんな」
 サミュエルのその顔は先ほどの笑みを同じようでいて、しかし真っ直ぐだった。


あるばーと。
 こんにちは。あるばーと。と申します。
 今回は猟書家、幹部シナリオとなります。そのため、全2章の構成となっております。

●第1章:集団戦
 子どもで遊ぼうとする雑魚災魔達を蹴散らしましょう。

●第2章:ボス戦
 猟書家・マロリー・ドラッケンとの対決です。
 彼女を倒せば記念碑はもとに戻ります。

 プレイングボーナス(全章共通)……記念碑を立てたケットシーの話す「恩人の思い出話」を、攻略に役立てる。
 ※記念碑を立てた本人ではありませんが、大体はサミュエルが話している事を参考にしていただければOKです。
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第1章 集団戦 『グレムリン』

POW   :    スパナスマッシュ
【巨大なスパナ】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    ツールボックス
いま戦っている対象に有効な【分解用の工具】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    ハイドアンドシーク
自身と自身の装備、【アイコンタクトをとった】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
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クリナム・ウィスラー
青花(f17570)と

誰かの思い出を踏み躙るなんて失礼ね
そもそも猟書家とかいう輩が気に食わないのよ
さくっと沈めてやるわ

それで……「子供で遊ぼうとする災魔」ですって?
ちょっと、わたしは子供じゃないわ
青花も笑ってないで手伝いなさいよ
ああもう、鬱陶しい

透明になってちょこまかとちょっかいをかけてくる相手なのかしら
それなら辺り一帯纏めて薙ぎ払えばいいのよ
海辺に咲く花、全部沈めて
【範囲攻撃】で自分の周囲を攻撃するわ

花びらは目くらましにも使うわよ
アイコンタクトの阻害をしたり、青花の奇襲の手助けをしたり

それにしても玩具ねぇ……
わたしからすれば青花だって立派なブリキの玩具なのだけれど
そういう話じゃない?そう……


天泉・青花
クリナム(f16893)と

猫の国ってパラダイスに攻め込むとはなぁ
猟書家が気に食わないのは俺も同じ
さくっとこの国救ってやるぜ

あ、クリナムが子供認定されてる
めちゃくちゃ絡まれてる……
面白いけど眺めてたら怒られそうだ
適当なタイミングで割って入ろう
『穿ち釘』で【武器受け】だ
スパナだろうがなんだろうが気合で受け止めてやる

クリナムの魔法に合わせるように行動し、奇襲で敵の数を減らす
攻撃力重視で『穿ち釘』を撃ち込んでいくぜ
スパナは何かを殴るもんじゃねぇぞ
それこそアンディみたいに何かを作るために使うもんだ

地味にクリナムがひでーこと言ってる気がするけど……
そうじゃなくて、アンディの話はもっと浪漫のあるやつだから!



●悪童現る
 玩具。
 それは、基本的には子どもの遊び道具だ。
 ぬいぐるみ、人形。木や鉄でできた小さな車、プラスチックの模型。
 声を録音したボイスボックスなどを内蔵して、人形のキャラクターを喋らせる、なんていうものも存在するらしい。
「……ずるイ」
 狡い。
 災魔、グレムリン達が生まれてきた時に抱いていた感情。言い換えれば妬み。
 それらが、グレムリン達を突き動かす。
 そこでグレムリン達がまずやった事は、子ども達から玩具を奪うという行為だった。
 可愛い人形、小さくてかっこいい車。模型。
 奪って、遊んで、飽きて、そして捨てる。
 盛り上がるグレムリン達。対してケットシーの子ども達は、部屋の隅に固まって動かない。
 グレムリンの存在自体も、それは恐ろしいものだろう。
 しかし、それよりもケットシーの子ども達の目を掴んで放さない存在が、そこにある。
 破れて綿が出るぬいぐるみ、首や足がもげた人形、潰れた車。
 全て、グレムリン達に奪われ、そして『捨てられた』もの。
 そのグレムリン達の乱暴な遊び方を、ケットシーの子ども達は目の当たりにしていた。
「どうすル、どうすル?」
「ギギ、ネコ、カワイイし着せ替エ?」
「ヴィランごっこがいいゾ! ヒーローごっこはもう古イ!」
 グレムリンは持っていたヒーローの人形の腕を持ち、ぶんぶん振り回す。
 あまりの荒い扱い方に、ヒーローの腕はもげてしまう。
 次は、自分達。
 それを感じてか、ケットシーの子ども達はおびえ切ってしまっていた。

「『子供で遊ぼうとする災魔』ですって?」
 その声は、開け放たれた扉から聞こえてきた。

●第一印象
 災魔の気配を感じ、扉を開けたのはクリナム・ウィスラー(さかなの魔女・f16893)……少女の姿の、神である。
 その場で、クリナムは現場の状況を目視する。
 グレムリン達と、ケットシーの子ども達……部屋は広く、ケットシーの子ども達は部屋の隅に居る。
 ケットシーは小柄な種族、子どもとなれば猶更だ。それが隅っこに居てくれるのであれば、戦闘になっても問題はないだろう。
 確認を終え、クリナムはグレムリン達に視線を移す。
 当のグレムリン達は、集まってぼそぼそと話し合いをしている。ちらちらとクリナムを見る者も居た。
「……どう思ウ?」
「ネコ達もちっちゃいけド、たぶんあのニンゲン……ニンゲン? も、ちょっとちっちゃイ」
「ってことハ……」
 ――子どもダ!
 結論を口に出さずとも、グレムリン達の意見は完全に一致した。
「……あ、クリナムが子供認定されてる」
 クリナムの次に部屋に入り、開けた扉に寄りかかっている男はサイボーグ、天泉・青花(シンプル・ハート・f17570)。
 クリナムより後から入ってきた青花だが、一歩引いた視点からグレムリン達がクリナムをどう扱うかをなんとなくではあるが把握した。
 青花の言葉を受け、クリナムは自身もどういう目で見られているのかを覚る。
「ちょっと、わたしは子供じゃないわ」
 思わずそう抗議するクリナムだが、グレムリン達は意に介さず。
 目を爛々とさせ、クリナムを取り囲んでいく。
「めちゃくちゃ絡まれてる……」
 災魔に包囲されるという、良いとは言えない状況なのだが、青花にはグレムリン達の斜め上の対応が可笑しく、たまらず浮かぶ笑みを手で覆う。
「ああもう、鬱陶しい」
 クリナムはグレムリンを追い払わんと『叡智の杖』をぶんぶん振り回す。
 その表情は当然、至極忌々し気である。
「青花も笑ってないで手伝いなさいよ」
「はいはい」
 堪りかねたクリナムが青花に視線を移すと、同時に青花は前進。
 やや強引にクリナムとグレムリンの間に割って入ると、振り下ろされてきたスパナを『戦闘用義肢』の右腕で受け止める。
「ギギ!?」
「面白かったけど、これ以上眺めてたら怒られそうだ」
 クリナムが思い通りに動かないため、グレムリンの一体がスパナを取り出した、そのタイミングだった。
 そのまま右腕を振り払い、一度グレムリン達を追い払う。
 青花の言葉に引っかかる所はなくもなかったが、とりあえず今回は聞かなかった事にして、クリナムは改めて戦闘態勢をとる。
「猫の国ってパラダイスに攻め込むとはなぁ」
「そもそも猟書家とかいう輩が気に食わないのよ」
 クリナムを庇うように一歩前を陣取って構えをとる青花も、クリナムの言葉に同意するように笑みを浮かべる。
「さくっと沈めてやるわ」
「さくっとこの国救ってやるぜ」
 ……ややニュアンスは違うものの、その言葉と求める結果はふたりの中で一致していた。

「ギギ……あのウデ、かたいゾ」
「スパナ、きかなイ? ……じゃア、やり方変えよウ」
 提案した個体が目配せをすると、その個体と視線を向けられた個体の姿が急速に透き通っていく。
 グレムリンの能力のひとつであろうという覚えが、クリナムと青花にはあった。
「透明になってちょこまかとちょっかいをかけてくる相手……それなら辺り一帯纏めて薙ぎ払えばいいのよ」
 叡智の杖を両手に持ち、垂直に立てる。
「――海辺に咲く花、全部沈めて」
 短い詠唱の後、クリナムの持つ杖は無数の、白く細長い『ハマユウ』と呼ばれる花びらとなり、散っていく。
 クリナムの持つUCのひとつ、【ハマユウの海】。
 攻撃力を持つ無数の花びらによる、多対象遠隔攻撃。
 器用に青花やケットシーの子ども達を避けつつ、花びらが部屋全域を舞う。
「ギギャ!?」
「なんだこレ!?」
 短い悲鳴。それは何も見えない空間から聞こえてきた。
 目では何も見えない空間に、花びらがびしびしと纏わりついていく。
「見えなくても、関係ないわ。……青花ッ」
「了解だ!」
 クリナムの呼びかけと同時に青花が駆け出す。
 ダッシュと同時に右腕を振りかぶり、【ヴァリアブル・ウェポン】の『内蔵兵器』を展開し、狙いを定める。
 姿は見えない。しかし。
「そこに居るのはわかってるぜ!」
 グレムリン達の能力のひとつ、【ハイドアンドシーク】。発動するグレムリン自身と、別個体のグレムリンの一体が透明になるもの。
 だが、言ってしまえばそれだけ。体温や物音は消せないし、まして存在が無いかのように振る舞う事はできない。
 青花の戦闘用義肢『穿ち釘』による渾身の一撃は、正確にグレムリンに沈み込む。
「グギャ!?」
 グレムリン達の悲鳴と『穿ち釘』の駆動音、そして衝撃。それらが合わさり、大きく響き渡る。
 青花はこの一撃で複数のグレムリンを吹き飛ばしたという手ごたえを感じた。
 残り何体居るのかを確認するべく、青花は部屋を見渡す。
「おっと!」
 正面から敵意を感じ、咄嗟に青花は右腕で頭を庇う。
 そこへ、スパナが振り下ろされてきた。
 ハマユウの花びらのせいで『アイコンタクト』をする事ができないグレムリンは、しかたなく元の手段での攻撃を選択してきた。
「うち漏らしたか。結構重いじゃねぇの……けど!」
 先ほどと同じように右腕に力を込める。
「スパナだろうがなんだろうが気合で受け止めてやるぜ!」
 そのまま右腕を振り払い、グレムリンを弾き飛ばした。
 空かさず、クリナムがハマユウの花びらで弾き飛ばされたグレムリンを集中攻撃。
「ギヤァー!?」
 全身を花びらに包まれつつ、グレムリンは倒れた。
 そこへ、青花は飛んできたスパナを左手でキャッチ。
 実用というには大きすぎるそのスパナは攻撃力を上げるためか、見た目よりもさらに重かった。
「……スパナは何かを殴るもんじゃねぇぞ。それこそアンディみたいに何かを作るために使うもんだ」
 すでに動かないグレムリン達を一瞥し、青花はスパナを放り捨てた。
「……よしよし、もう大丈夫だぜ」
「怪我は無いかしら」
 ひとまず脅威の排除が確認され、クリナムと青花はケットシーの子ども達に駆け寄った。
  
「玩具ねぇ……わたしからすれば青花だって立派なブリキの玩具なのだけれど」
「地味にひでーこと言ってる気がする」
 グレムリン達を倒した人達。
 その人達は、グレムリン達が全員倒れた事を確認して、部屋の後片付けをしている。
「そうじゃなくて、アンディの話はもっと浪漫のあるやつだから!」
「そう……」
 仲が良いような、悪いような。
 助けてくれたから、あの人達はヒーローなのだろうか。
 ケットシーの子ども達の純粋な視線にふたりが気付いたのは、しばらく経ってからであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木元・杏
双子の兄、まつりん(祭莉・f16554)と

む、子供で遊ぶのはダメ!
子供にオーラ防御を施してグレムリンから守る

子供達は玩具で遊び、玩具と一緒に遊ぶの
グレムリンなあなたは…子供も玩具も壊してしまう
壊す子とは一緒に遊べない

【Shall we Dance?】
うさみん☆が踊る音楽はタンバリンでわたしが伴奏
玩具と子供、皆でマーチ♪
タッタカター、タッタカター♪コッケコッケ♪
まつりんのメカたまこのリズムにも合わせたダンス、さ、皆楽しんで?

それが分解する工具?
使用方法はしっかり確認しなきゃミスするよ、とアドバイスしつつ
幅広の大剣にした灯る陽光を怪力で思い切りぶん投げ
グレムリンが使い方を理解する前に工具を破壊


木元・祭莉
双子の妹、アンちゃん(f16565)とー。

グレムリン!
道具箱持ってるね。キミたちもオモチャ好きなの?

こども? 子供にはネジはないよ?
くるくる回ったり、鳴き声あげたりしないよ??

……あー、おいらはくるくる回るケド。歌も歌えるケド。
でも、オモチャじゃないよ?
猟兵、だよ?(にぱっ)

せっかくだし、仲良く遊べばいいじゃんー。
おいらのオモチャ、見せてあげるね!
いでよー、メカたまこー♪
(虚空から召喚したのは、コケコケ鳴き喚くロボ雌鶏90体)

わわ、メカたまこが分解されちゃう!?
ぶんかい……(工具を迎撃するロボたち)
あ。工具が分解されちゃった。
オモチャの逆襲だー!

(子供たちに)どう、面白かった?
ならよかったー♪



●他人のフリ見て
 物を大事に。
 大抵の場合、そう教えられて人は育つ。
 それは玩具に関しても同じ事。特に玩具を作っていた『アンディ』やケットシーの大人は、玩具もまた『友達』なのだと教えてきた。
 それだけ愛情を持って玩具は作られて、子どもに渡されてきた。
 それなのに。
「チェ、これもう飽きたゾ!」
「これもういらなイ!」
「次の玩具を出セ!」
 急に現れた『あいつら』は、ボクらの玩具を次々に奪い、遊んで、飽きては放り捨てて次の玩具を奪っていく。
「なんダ、その顔。オレ達はお前らと同じように遊んでるだけだゾ?」
 気が付かないうちに、ボクらもあんな風に玩具を扱っていたのだろうか。
 そんな疑問が浮かんでしまう。
「それよリ、もう玩具ないのカ?」
「もういいだロ。こいつらで遊ぼうゼ!」
 そう言う『あいつら』は、そう言いながら笑ってボクらの方へ近寄ってくる。
 床や壁に叩きつけられた人形の姿が脇に見える。

●玩具の戦争
「む、子供で遊ぶのはダメ!」
 グレムリンがケットシーの子ども達に触れる寸前、グレムリンの手に火花が走り、弾かれる。
「ギャッふーッふーッ!」
 弾かれた手に息を吹きかけつつ、グレムリンは声のした方に振り向く。
 そこに居た人影はふたつ。
 まず、子ども達を守った火花の主は少女の方、木元・杏(きゅぴん。・f16565)。
 白銀に煌めく光の剣『灯る陽光』の飛光による防御だった。
「やあグレムリン!」
 そして、こちらはもう片方の人狼の少年、木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)。
 双子揃ってやって来たふたり、兄の方・祭莉は気さくにグレムリンに歩み寄っていく。
「道具箱持ってるね。キミたちもオモチャ好きなの?」
 人懐こい笑みを浮かべて、普通の事かのように話しかけていく祭莉。
 それに対してグレムリン達は顔を見合わせ、少しして互いに笑い声をあげる。
「モチロン! 玩具と子どもが好きなのサ!」
「こども?」
「そウ! 玩具も子どもも楽しい遊び道具サ!」
 グレムリンの言葉を受け、祭莉は髪の毛を分けて頭をかいたり、身体を捻って背中を確認する。
「子供にはネジはないよ?」
 確かに。
「……あー、おいらはくるくる回るケド。歌も歌えるケド。でも、オモチャじゃないよ?」
 わからない事を言い出したとばかりに、また顔を見合わせるグレムリン達。
 その様子を見て、祭莉はにぱっと笑う。
「おいらは猟兵、だよ?」
 祭莉がそう言うと、隣に人影がひとつ現れる。
「――音楽スタート?」
 それまで後ろに居た杏がタンバリンを鳴らすと、人影はビシ、とポーズを決める。
「ギギ、なんだこリャ?」
「これはうさみん☆だよ」
「う、うさみん?」
「ちがう、うさみん☆」
 人影こと、杏の操る人形『うさみみメイド・うさみん☆』は杏の鳴らすタンバリンに合わせてダンスを始めた。
「玩具と子供、皆でマーチ♪」
 タン、タン、と鳴らして、リズムに合わせて『うさみん☆』はステップ。
 さらにその後ろには、ケットシーの子ども達も足を鳴らしている。
 祭莉が話している間に杏が誘導していたようだ。
「おいらのオモチャも見せてあげるね! いでよー、メカたまこー♪」
 祭莉が両手を広げると、虚空からその場にずらりと現れたのはメカたまこと呼ぶ……戦闘用の『ニワトリ型ロボ』。
 それらはロボットのはずが、本物と同じくコケコケと鳴いている。
「な、なんだコリャ!?」
「メカたまこだってば!」
 次々と現れ、存在感を放つ祭莉と杏の玩具達に、グレムリン達はすっかり面食らってしまっている。
「せっかくだし、仲良く遊べばいいじゃんー」
「うん。さ、皆楽しんで?」
 祭莉のメカたまこも乗れるようにリズムを調整し、杏はタンバリンを叩く。
 杏の『うさみん☆』にメカたまこ、そしてケットシーの子ども達も合わせて、いつの間にかかなり賑やかなマーチとなっていた。
「ギギ、何がマーチ、ダ!」
「オレ達が楽しめればいいんだヨ!」
 気に入らないとばかりにグレムリン達は【ツールボックス】に手を突っ込み、手当たり次第に工具を取り出していく。
「分解してオレ達の玩具にしてやるゾ!」
「よっシャ、いケー!」
 両手に工具を持ったグレムリン達はメカたまこと『うさみん☆』に襲い掛かる。
「わわ、メカたまこが分解されちゃう!?」
「それが分解する工具? 使用方法はしっかり確認しなきゃミスするよ」
「うるセー!」
 工具の取り扱いに関して率直に意見する杏に対し、グレムリン達はさらに勢いづく。
 そのまま、まずはメカたまことグレムリン達の取っ組み合いに発展し……。
「あ。工具が分解されちゃった」
 メカたまこの迎撃により、グレムリンの工具がバラバラに散らばる。
「う、うソーッ!?」
 思わぬ攻撃を受けグレムリンは仰天し、散らばる工具を眺める。
 それに追い打ちをかけるように杏は『灯る陽光』を大剣状に変化させる。
「まだあるね。使い方を理解される前に全部壊しちゃうよ」
 その白銀の光を放つ大剣を、杏は振り回しながら豪快に投擲する!
 投げ放たれた『灯る陽光』は、的確にグレムリン達の手元をかすめ、持つ工具を破壊していく。
「えェ、なんデ!?」
 あっという間の制圧劇に、グレムリン達は狼狽えるしかない。
 ……グレムリン達は気が付いていないようだが、種明かしをするとこれは杏のUC【Shall we Dance?】の効果が表れていた。
 そのダンスを楽しまない者の行動速度を著しく低下させる効果を付与する……という内容の技。
 ダンスに付き合わないグレムリン達は、その時点で敗北が決まっていたようなものだったのかも知れない。
 一旦タンバリンを鳴らすのを止め、杏は手をぱんぱんと払う。
「子供達は玩具で遊び、玩具と一緒に遊ぶの。グレムリンなあなた達は……子供も玩具も壊してしまう」
 工具を破壊されたグレムリン達は、すっかり勢いを尽かして後ずさっていく。
 それに応じて、メカたまこと『うさみん☆』もじりじり、じりじりとにじり寄る。
「――壊す子とは一緒に遊べない」
「オモチャの逆襲だー!」
 杏と祭莉はふたり揃ってグレムリン達を指さすと、『うさみん☆』は両手を振り上げつつ、メカたまこもそれぞれけたたましい鳴き声を上げながらグレムリン達に襲い掛かっていった。
 グレムリン達は悲鳴を上げつつ、なりふり構わず逃げだした。
「こ、こわイ! うさみみメイドこわイ!」
「にわとりももういやダー!?」

 メカたまこと『うさみん☆』に追い掛け回されるグレムリン達をひとしきり眺めたあと、祭莉は先ほどまで一緒に踊っていたケットシーの子ども達に声をかけた。
「どう、面白かった?」
 最初は怖がっていたケットシーの子ども達も、今はグレムリン達を笑って見ている。反応は上々だ。
「……ならよかったー♪」
 最終的に杏と祭莉、そしてケットシーの子ども達は顔を見合わせ、皆で笑いあっていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリエル・ポラリス
どういうことなの。
子供で遊ぶオブリビオンがいると聞いてきたのよ……!
なのにどうして……。

──どうしてウチのシャティ(ジャイアントキャバリア)に見向きもしないのよっ!?
ちょっと大きいからってシャティは子供じゃないっていうの? 生後数カ月なのに!
可愛そうなシャティ……遊び相手ならまた後で探してあげるから、猫さんたちと一緒に下がってなさい。

さて、私のシャティをしょんぼりさせた罪は重いのよ!
この怒りをUCに乗せていざ変身!
めらめら燃えるこの姿で、巨大スパナごとこんがり焼いてあげるんだから!

……このスパナ、シャティのおもちゃにならないかしら?


月山・カムイ(サポート)
すいません、少々遅れましたが援護に参りました

既に戦いに入っている猟兵達の援護に入る形で参戦
集団戦なら攻撃のきっかけになるように、縦横無尽に切り結び
ボス戦なら他の猟兵がトドメを刺す為のサポートを行う
武器を切り裂く、受け止めたり逃がすべき相手を空を跳んで抱えて逃したり
上記の様な行動で現在戦っている猟兵が活躍出来るよう動かしていただければありがたいです

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●大きくても可愛い
「どういうことなの」
 子どもで遊ぶ災魔……オブリビオンが居る。
 今回の転移担当だったケットシーから聞き、こうして馳せ参じた筈。
「なのにどうして……」
 しかし、どうも聞いた話と違う。
 その災魔の習性なら、きっと『遊び相手』になってくれる。
 そう思っていたのに。
「──どうしてウチのシャティに見向きもしないのよっ!?」
 そう叫ぶ人狼の少女、アリエル・ポラリス(焼きついた想いの名は・f20265)の後ろには……『巨大な人型』が、丸まって座っていた。

「いや、だってデカいシ……」
「ゴツいシ……」
 グレムリンもアリエルの後ろにいる巨大な人型に視線を向ける。
「ちょっと大きいからってシャティは子供じゃないっていうの?」
 アリエルが『シャティ』と呼ぶのは……別の世界、クロムキャバリアで極稀に産み落とされるユミルの子。つまるところ『ジャイアントキャバリア』である。
 巨人の種族と渡り合うほどの体躯は、否が応でも目に付く存在感を放っていた。
「生後数カ月なのに!」
「イヤ、ソンなこと言われてモ……」
 どちらかと言えばグレムリンの方が絡まれているように見えなくもないが、これもアリエルとしては考えた末の行動である。
 もし『シャティ』に子ども認定が下れば、グレムリンの注意を引けるし、ついでにグレムリンを『シャティ』の遊び相手にできる。
 そうなれば、あとは頃合いを見てアリエルが『紅蓮』の炎で燃やしてしまえば良い。そのはずだったのだが。
「可愛そうなシャティ……遊び相手ならまた後で探してあげるから、猫さんたちと一緒に下がってなさい」
 残念ながら、グレムリンからは子どもとしては認められず。それどころか、むしろ避けられているような……。
 丸い姿勢で膝を抱えて座る『シャティ』も、心なしか気落ちしている風である。
 しかし、おかげでケットシーの子ども達は『シャティ』を盾にして隠れる事ができている。
 これであれば、アリエルがどう暴れてもケットシーの子ども達に被害が及ぶ事はまず無いだろう。
「ケッ、デカいのが攻撃してこないなラ、お前なんテ!」
 先ほどから出方を窺うあまり攻勢に出られずに言われるがままだったグレムリンは、『シャティ』が積極的に攻撃してこない事を察して狙いをアリエルに絞る。
 グレムリンの1体が巨大なスパナを握りしめ、アリエルの突撃する。
 その振りかぶりは大きく、威力を重視した攻撃を放ってくる事は容易に想像がついた。
 どちらに避けようか……アリエルはそう考えていた。
 考えていたのだが、何やら横から別の気配。
「あら?」
 気配は一直線に現場に突撃してくると、アリエルとグレムリンの間に割って入ってきた。
 敵意は感じず、アリエルはあえて『紅蓮』の炎を出す事もしない。
 突撃してきた気配、人影は二尺程の刃渡りの刃物でスパナを攻撃するように振りぬいた。
「ギギ!?」
 グレムリンのスパナは予想外の力に勢いよく弾かれ、釣られるようにグレムリン自身も跳ぶように一度距離を取った。
「すいません、少々遅れましたが援護に参りました」
 その人影、少年月山・カムイ(絶影・f01363)は、アリエルに振り向くと、ひとつ頭を下げる。
「いいわね、助かるわ」
 その短い刃物、小太刀はグレムリンの持つスパナと比べると質量、重みが軽そうに見え、防御には向かない形状に見えたが、それを飽くまで攻撃する動作でスパナを弾いてみせた。
 カムイの小太刀『絶影』。その『殺戮捕食態』を活かした防御というわけだ。
「じゃあ、あなたは私を助けてくれるのよね?」
「はい、合わせますよ」
「ならお言葉に甘えて」
 カムイと顔合わせを済ませたアリエルは一歩前進。跪いて地に手を付ける。
「……親分がどうして偉いか知ってるかしら? 舎弟を見捨てないからよ!」
 後ろに居る『シャティ』達を想い、アリエルがその『誓い』を口にした時、その姿は急速に炎に包まれていく。
「……なるほど、真の姿」
 カムイはやや後ろで、変身を遂げるアリエルを見つめている。
 真の姿とは口に出したものの、その姿は炎を熱気によって揺らぎ、全体像は判然としない。わかるのは『四足の獣型』であることだけだ。
 それだけでも強力な形態である真の姿、それを『誓い』を立てる事でさらに強化する【愛駆る絆の狂騒火】。
 アリエルの怒りが、炎となって纏わりついていた。
「私のシャティをしょんぼりさせた罪は重いのよ!」
 口調はそのままに『四足の獣型』となったアリエルはグレムリンの群れに突撃。
 駆け抜けた足跡には炎が走り、グレムリンを追い詰めていく。
「マ、マズい……はやく、しとめロ!」
 その熱量に恐れを抱いたグレムリンは、すぐさま反撃。
 それぞれ巨大なスパナを握りしめ、アリエルに飛び掛かる。
 グレムリンの【スパナスマッシュ】、集中攻撃だ。
「……残念だが、そうはいかない」
 そこへ、一瞬遅れてカムイも参入する。
 突撃するアリエルの背後を守れる位置取りを意識していたカムイは、やはりというかそこを狙うグレムリンの攻撃を、小太刀『絶影』で弾き返す。
「ギギ!?」
 一撃は食らわせられたと考えていたのだろうグレムリンは、しかしその目論見を砕かれ、戸惑いと共に視線だけふたりを追う。
「今です。……私は燃やさないでくださいね」
「任せなさい!」
 カムイがカバーした背後以外の攻撃をすべて凌いだアリエルは、さらに温度を上昇。熱をため込んでいく。
 炎に包まれた『四足の獣型』。その炎の色は『紅蓮』。
「――巨大スパナごとこんがり焼いてあげるんだから!」
 ためた『紅蓮』の炎を開放。
 背後を守ったカムイだけを避け、その炎は次々とグレムリンを飲み込んでいく。
「ギギャー!」
「あ、あつイ!」
 順番に上がるグレムリンの断末魔。
 しばらく燃えれば、そこにすでにグレムリンの姿はなく。
 あるのは、彼らが使っていた巨大なスパナのみであった。

 周囲にグレムリンが居ない事を確認したアリエルは能力を解除、一度元の姿に戻る。
 自らが焼いた地に目を向け、その中にグレムリンのあのスパナがある。
 しゃがみ込んで、もっと近くでスパナを見る。
「……このスパナ、シャティのおもちゃにならないかしら?」
 カムイは思わず苦笑い。
「……いや、どうでしょう……?」
 スパナを玩具にするという発想については、カムイは何とも言えない。
 が、その一方で随分とあのジャイアントキャバリアが可愛いのだなと、カムイはアリエルの行動を微笑ましく眺めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『マロリー・ドラッケン』

POW   :    インテリジェンス・イービル・ワンド
【手にした「喋る杖」が勝手に魔法】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    リアライズ・パニック
自身が【恐怖】を感じると、レベル×1体の【モンスター化した書物の登場人物】が召喚される。モンスター化した書物の登場人物は恐怖を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    ダブル・マロリー
【眼鏡を外した別人格のマロリー】の霊を召喚する。これは【勝手に放つ魔法】や【杖でのぶん殴り】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​
アリエル・ポラリス
さあ、スパナよシャティ!
男の子だもの、木の棒とか拾って振り回すのも好きでしょうきっと!
でも、シャティには巨大スパナでもちょっと短いかしら……。

というわけで魔女さんから杖を貰いましょ!
魔女さんの杖は勝手に魔法を使っちゃう悪い子と聞くわ!
つまり、あの杖を黙らせるのはシャティがスパナをゲットする切欠を作ってくれた魔女さんへの『恩返し』にもなるの!

……戦闘手段を取り上げるのは恩返しじゃない?
何を馬鹿な、恩返しに関しては私の右に出るものはいないのよ!

UCで作った炎の腕を伸ばして杖を掴むわ! シャティは魔法を炎で防いでね!
杖を取り上げたら、シャティからスパナを貰って……杖の頭に突き刺して出来上がりよ!



「さあ、スパナよシャティ!」
 先の災魔、グレムリンとの戦いから少しして、アリエル・ポラリス(焼きついた想いの名は・f20265)は戦利品を掲げていた。
 共闘した猟兵とはすでに別れ、次の戦闘まではまだ少し時間がある。
 そこでアリエルはジャイアントキャバリアである『シャティ』の遊ぶ玩具として確保していたグレムリンのスパナを調べていた。
 一応、やたら大きい以外は普通の金属製スパナで怪しい点、危険な要素などは無いようだ。……強いて言えば重量がある為、取り扱いは要注意と言ったところか。
 ――男の子だもの、木の棒とか拾って振り回すのも好きでしょうきっと!
 と、アリエルは当人であるシャティよりもはしゃいだ笑顔でシャティに対してスパナを差し出す。
 アリエル的にもスパナは……有り体に言えば超重かったが、キャバリアサイズの『男の子』であるシャティには問題はないだろう。
「でも、シャティには巨大スパナでもちょっと短いかしら……」
 実際に持たせてみると、シャティに対してスパナがやや短く小さいもののようにアリエルには見えた。
 グレムリンもそこまで体躯の大きい生き物ではなく、そのグレムリンが持てるサイズと考えれば、この結果は致し方なしか。
 ――微妙だったかしら……。
 と、アリエルは気を落とそうという時だった。
 シャティはアリエルから渡されたスパナを識別すると……ゆっくりと、天高く掲げた。
 その様相は、まるで「いい感じの棒を手に入れて満悦な男の子』のようで。
 ……期待以上の反応に、アリエルの笑顔はさらに湧いた。

●お礼参り
「というわけで魔女さんから杖を貰いましょ!」
 ――どういうわけ!?
 アリエルの言葉に、魔女と呼ばれた少女と『本』、そして『杖』は同時につっこんだ。
 シャティとのやり取りからさらに十数分後、アリエルは猟書家、マロリー・ドラッケンを発見していた。
「え? え? なんでワンドさんだけ? 何かしました!?」
「落ち着けマロちゃん! こっち来て俺達ずっと一緒に居ただろ!」
「ケヒヒ、ひょっとしてワンドの兄貴の悪名だけ轟いてるのかも!」
 話に聞いていた通り、その魔女は『本』と『杖』を従えて(?)いた。
 であれば『あの話』も正しいのだろう。アリエルは確信した。
「そうよ、魔女さんの杖は勝手に魔法を使っちゃう悪い子と聞くわ!」
 アリエルの言っているそれは猟書家、マロリー・ドラッケンの持つ杖、『インテリジェンス・イービル・ワンド』の事である。
 敵に対してはマロリーの意思に関係なく勝手に魔法で攻撃する、言わば『喋る無差別破壊兵器』。
「な、ななな、何を根拠にそんな!?」
「めっちゃ動揺してる!?」
 アリエルの指摘に落ち着かず、あちらこちらと向きを変えて震えだす『杖』。
 ……実際には彼らは持ち主であるマロリーの目的と願望の実現に向けて動くので、結局のところはマロリーと『本』と『杖』でひとつの『敵』となるのだが。
「で、でもでも! それでなんでワンドさんだけあげなきゃいけないんですか!?」
「恩返し」
「ていうかマロちゃんからワンドの兄貴取り上げて何する気……え?」
 何か聞こえた気はするものの、その言葉の意味が理解できないマロリー達は、思わず口を止める。
「その杖を黙らせるのはシャティがスパナをゲットする切欠を作ってくれた魔女さんへの『恩返し』にもなるの!」
「え、えぇ?」
 言葉の意味は知っているが、その言葉がこの状況で出てきた意味が理解できないマロリーは思わず間抜けな声を出す。
 一方で、その矛先にされている『杖』はマロリーの手の中で分かりやすく泡を食っている。
「やべぇよあの狼娘怖いよ! マロちゃん助けて!?」
「こ、攻撃! 攻撃です!」
 独りでに振動する『杖』をマロリーはアリエルに向けて掲げる。
 マロリーの行動で我に返ったのか『杖』は魔法で大気を震わせる。
「喰らえー!」
 大慌てで『杖』が発動した魔法により、マロリーの周囲に雷雲が立ち込める。
 やがて雷雲には指向性が与えられ、複数の雷がアリエルに襲い掛かっていった。
「――シャティ!」
 アリエルは呼び声を上げると共に両手を前に出と、その後ろで当のシャティもまたアリエルの動きに合わせるように両手を前に出す。
 アリエルの放つ『紅蓮』の炎を、シャティの生み出す地獄の炎が増強する。
 ふたりの炎の熱量を前に、『杖』の雷はそのことごとくを阻まれた。
「げぇ、なんじゃそりゃ!?」
 シャティが持つ地獄を生み出す機関は、アリエルの補助が無ければ実質機能しない。
 マロリーは『杖』で戦った。アリエルはシャティと戦った。その違いが結果として表れる。
 そして、その次の行動に移るのもまた早い。
「――この紅蓮こそ我が地獄。愛をくべて、願いをくべて、燃えぬ想いをつかみ取れ!」
 シャティの炎による防御の後、アリエルは即座に【愛結う我らの重奏火】で腕に地獄の炎を纏う。
 地獄の炎は物質化されており、主に物を掴む事が目的だ。
 対象はやはり……『杖』である。
「うわー!?」
 隙を突いて急激に伸びてきたアリエルの魔の手……もとい炎の腕はマロリーの手にある『杖』を掴み上げる。
 炎の手に悲鳴を上げる『杖』。マロリーも負けじと『杖』を握りしめる。熱くはないが、それはこの際関係がない。
「うわぁあマ、マロちゃんんん……!」
「う、うぐぐ……こ、こんなの、恩返しじゃ……!?」
「何を馬鹿な」
 ふん、とアリエルが息を吐いて力を込めると、そのままマロリーの手から『杖』が引っぺがされる。……いくらなんでも力量が違いすぎた。
 そして、引っぺがした『杖』をがしりと鷲掴みにし、アリエルはもう片方の手を腰に当てて胸を張る。
「――恩返しに関しては私の右に出るものはいないのよ!」
 ……なんだかよくはわからないが、その主張にはアリエルの確固たる自信があり、マロリーも、そしてお喋りな『杖』や『本』でさえその口は挟めなかった。
「シャティ、ちょっとスパナ貸して!」
「お、俺に何する気なんだー!?」
 アリエルの指示を受け、シャティは傍らに置いておいたスパナをアリエルに手渡す。
 良くはない状況、しかし今自身は敵の手中。そうあっては『杖』には抵抗すら難しい。
「言ってるでしょ」
 スパナを手に、アリエルは『杖』を押さえつける。
「『杖』を黙らせるのが恩返しなの」
 にこりと笑って、アリエルは『杖』に向けてスパナを振り下ろし――
 ――鈍い音が、鳴った。

「う、うぎゃぁぁああッッ!!?」
 悲鳴が響いたのは、そのすぐ後だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天泉・青花
クリナム(f16893)と

猟書家ってもっと厳つい奴かと思ったぜ
可愛い子だから殴りづらいが……厭な気配だって十分感じてる
油断しねぇよ、任せな

クリナムが魔術で俺を支えてくれる
それなら多少の無茶は厭わない
俺が前に踏み出してればケットシー達だって巻き込まずに済むはずだ
痛みは歯を食いしばって耐える

俺は杖による直接攻撃に対処しよう
『穿ち釘』でぶん殴りを【武器受け】しつつどんどん前へ
クリナムの治療魔術を頼りに足は止めない
一気に距離を詰めてカタをつける!

射程距離まで来たら陸穿ちだ
こういう時はシンプルな攻撃が一番だ

アンディが遺した思い出も
この地に生きるケットシー達も
これ以上傷つけさせやしない
骸の海に還るんだな!


クリナム・ウィスラー
青花(f17570)と

貴女が猟書家ね?
色々と制御は出来ていなさそうだけれど、強いのは十分に理解出来る
油断せずにいきましょう

敵はマロリー本体と彼女の別人格、それに喋る杖
無駄に賑やかね
これだけ数がいれば「攻撃を受けない」というのは難しいでしょう
だから……青花、無茶してくれる?

魔術で青花を治療しつつ、合間にわたしも攻撃するわ
【呪詛】を籠めた【全力魔法】で敵の術を打ち消しましょう
わたしだって魔女だもの
魔術で負ける訳にはいかない

わたしの役割は青花の道を作り、彼の背中を支えること
猟書家と違って自分の魔術も配下もきちんと制御する
青花が頑張る姿はケットシー達の心の支えにもなるでしょう
ヒロイックに頑張りなさいな



●遭遇
「見つけたぜ」
 広い路地裏で猟書家、マロリー・ドラッケンの背後から声をかける者が居た。
 声をかけた男と少女のコンビは隠れる事はせず、ふたり並んでマロリーを見つめる。
「貴女が猟書家ね?」
 少女の方、クリナム・ウィスラー(さかなの魔女・f16893)は情報の照らし合わせを行っていた。
 喋る『杖』と『本』、そして本体であるマロリー・ドラッケン。話によれば彼女にはさらに『別人格』まで居るそうな。
「無駄に賑やかね」
「猟書家ってもっと厳つい奴かと思ったぜ」
 クリナムの隣で男の方、天泉・青花(シンプル・ハート・f17570)は所感を漏らす。
 近接格闘が主な攻撃手段である青花としては当然、ボスとは殴り合う事を想定していたのだが、今回その相手は女の子の姿を取っている。
「可愛い子だから殴りづらいが……」
「ちょっと」
 容姿の感想を述べ始めた青花を、クリナムは肘で小突く。
「色々と制御は出来ていなさそうだけれど、強いのは十分に理解出来るでしょ?」
「ああ、厭な気配だって十分感じてる。油断しねぇよ」
 青花がそう繕いつつクリナムに視線を移すと、彼女はマロリーを凝視して小さくうなっている。
「相手の手数は多いわ。わたしも居ると攻撃を受けきるのは難しい」
「ああ……家の中のケットシーにも危害が及ぶかも」
 青花がチラリと見ると、ケットシーの子どもが窓からこちらの様子を覗き込んでいた。
 目が合った青花は、人懐こい笑顔をケットシーの子どもに送った。
 その様子を見たクリナムは、青花に歩み寄る。
「……青花が頑張る姿はケットシー達の心の支えにもなるでしょう。だから、青花」
「ああ」
「無茶してくれる?」
「任せな」
 一見するとかなり『無茶』な注文。
 それでも青花は文句ひとつ言わず、笑って一歩前に出た。
 クリナムもその反応がわかっていたのか、そのまま青花の背を見つめる。
「よろしい……背中は支えるわ。ヒロイックに頑張りなさいな」
「よっしゃ!」
 言葉と共に背中を押し、クリナムは走り出す青花を見送った。

「ふえぇ、ワンドさんの修繕がまだ終わってないのにー!」
 一方、まさに仕掛けようとこちらに駆け寄ってくる青花を前にマロリー達は泡を食っていた。
「ケヒヒ! ワンドの兄貴、休憩終わりだぞ!」
「杖使いが荒いぜ!?」
 クリナム達より前に戦った猟兵による攻撃で『杖』は激しく損傷しており、ひとまず絆創膏で応急処置(?)が施されている。
 元の姿を知っていると痛々しいにも程がある状態だが、それを気にするものはマロリーを含め誰もいない。
「いいから早く追い払ってー!」
 怖気づいて目を伏せながらマロリーは『杖』を振りかざす。
「ちくしょー!?」
 前に出された形となった『杖』は青花達に応戦しようと魔法を発動。多数の火の玉が浮かび上がってくる。
 今駆け寄っているのは青花だ。そのため、やはり『杖』は優先的に青花を狙う事になる。
 生成された火の玉は青花に集中して向かっていく。
「なんのこれしき!」
 対して、青花はこれに戦闘用義肢を盾にして突き進む。
 その勢いを、クリナムが後押しする。
「わたしだって魔女だもの。魔術で負ける訳にはいかない」
 たっぷりの呪詛を乗せたクリナムの魔法は津波の姿となって、青花を守るように火の玉を飲み込む。
 クリナムにも火の玉は来ていたが、青花の援護ついでに魔法で打ち消せる範疇であり、問題にならない。
「――現世の水面へおいでなさい、そして生者の力と変われ」
 火の玉が少なくなったのを見てクリナムは次の手を打ち始める。
 詠唱によって召喚されたのは『深海魚の霊』。それはまっすぐ前方を走る青花へと泳いでいく。
「……おっと!」
 足を止めない青花だったが、不意に上から薄い気配を感じ、戦闘用義肢で頭を守る。
 そこへ、重量感のある打撃が襲い掛かる。
 打ってきたのはマロリーと同じ姿の少女で……やや身体が透けていて、眼鏡を外している。
「なるほど別人格ってヤツか!」
「その通り。それよりもアナタ、このままだと死んでしまうのではなくて?」
 挑発的な笑みを浮かべる『マロリーの霊』は、華奢な見た目とは裏腹に力が強い。
 なんとか直撃は免れたが、青花は戦闘用義肢で受けた衝撃を感じて、思わず肝が冷える感覚を覚える。
「いいや、クリナムが魔術で俺を支えてくれる」
 拮抗している力比べ、そこへやっと追いついた『深海魚の霊』が青花にかぶりつく。
 攻撃ではない。火の玉を受けて身体のところどころが焼けていた青花のダメージが見る見るうちに消えていく。
「……置いて行かれる深海魚の身にもなりなさいよ」
 クリナムのUCのひとつ【魚魔女の治療術】。これで召喚した『深海魚の霊』はその牙でかぶりついた相手の傷を癒す。
 さらに。
「ま……まさか!?」
 この『深海魚の霊』は一時的に対象者の戦闘力をも増強させる。
 これにより力比べの均衡は崩れ、青花の戦闘用義肢が『マロリーの霊』を振り払い、吹き飛ばす。
 その先にマロリーの本体も居り、飛ばされてきた『マロリーの霊』がぶつかる。
「きゃあ!?」
「なんて無茶な……!?」
「多少の無茶は厭わないぜ!」
 相手の体勢が崩れたのを見逃さず、青花は全力で走り出す。
「――砕け、壊れろ、道を開け!」
 走りながら戦闘用義肢『穿ち釘』を展開、いつでも放てる状態へ。
「アンディが遺した思い出も、この地に生きるケットシー達も、これ以上傷つけさせやしない!」
 その最後の踏み込みは、舗装された地を砕く。
「――骸の海に還るんだな!」
 繰り出されたのは渾身の一撃、【陸穿ち】。
 マロリー達に沈み込んだその一撃は駆動音と衝撃から轟音を鳴らし……。
「きゃああぁぁッ!!」
 マロリーも『マロリーの霊」も、そして『杖』も『本』も、一緒くたに吹き飛んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

貴女が猟書家ね?
玩具と遊ぶ喜びを教えたアンディの物語は、貴女が手を出していいものではない
わたし達もおかあさんから身をもって教えられた
ね?まつりん(こくり頷き
そう、悪いことした子には、おしおき

眼鏡を外した貴女は…誰?
クールでビューティな雰囲気
これはわたしも負けられない
【どれすあっぷ・CBA】
眼鏡をかけてぴりっとした、優等生な出で立ちのくーるびゅーてぃに変・身!
眼鏡をくいっと
それが合図
うさみん☆、逃げ足で魔法を避けてダッシュ!
わたしも一気に飛びマロリーへと接近
ふふ、ぶん殴り対決なら負けない
幅広の大剣にした灯るようこうで思いきりマロリーのお尻を叩く
ん、おしおき


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と!

え、母ちゃん?
うん、言ってたよね。
人に迷惑かけちゃダメなんだって。
迷惑かけたら、お仕置きなんだって……おしおき……(涙)

ううん、おいらは迷惑かけてないから、大丈夫!
足掴みぐるぐる回しとか、そういうのはされない!(気を取り直す)
行くよ、アンちゃん!

喋る杖だ。
コレ、おもちゃだよね?
魔法喋るおもちゃって、スゴいね!?
え、違うの??(魔法を如意な棒からの衝撃波で相殺しながら)

……クールでビューティていうか、ホットでワイルド?(ぽそっと)

ん、猫の恩返しが欲しかったんだよね?
じゃあ、代わりに。
アンちゃんと息を合わせて。
おいらが魔法……じゃなくて、魔法ぽい拳をプレゼントだー♪



●双子のおしおき
 旗色が悪くなってきた。
 走る猟書家、マロリー・ドラッケンは現状をそう分析していた。
 ここの恩人記念碑の物語は大変魅力的だ。しかし、それを守るかの如く集まる猟兵達もまた大層おっかない。
 先程からさっぱり上手くいっていないため、もう帰ってしまおうか。それを『杖』や『本』に相談してみるところであった。
「貴女が猟書家ね?」
「ふぇっ」
 突然の声に、マロリーの肩が跳ねる。
 マロリーが振り向いた先には同じくらいの背丈の少年と少女が立っていた。
 ふたりのうち、少女の方が一歩前へ。
「玩具と遊ぶ喜びを教えたアンディの物語は、貴女が手を出していいものではない」
 先程の問いかけと同じ声で、少女が告げる。幼いながら、意思を感じる話し方だ。
 玩具という子ども達の遊び道具、それをもたらしたアンディへの感謝。
 それに安易にも手を出した猟書家にひとつ物申したい。
 そんな思いで、木元・杏(きゅぴん。・f16565)はまた口を開く。
「わたし達もおかあさんから身をもって教えられた。ね、まつりん?」
「え、母ちゃん?」
 呆気に取られた反応で少年の方、木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)が杏に振り向く。
 話を振られるとは思っていなかった様子で、どう返事をすべきか少し考える。
「うん、言ってたよね。人に迷惑かけちゃダメなんだって。迷惑かけたら、お仕置きなんだって」
 満足のいく答えだったのか、杏は笑みを浮かべてこくんと頷く。
「そう、悪いことした子には、おしおき」
「……おしおき……」
 言葉を反芻し、祭莉はまだ両親と暮らしていた日々を思い出す。
 その時に親から受けたおしおきの記憶まで掘り起こされ、気分が落ち込んでいく。
 暗い気分に涙を浮かべかけた祭莉は咄嗟に首を振る。
「ううん、おいらは迷惑かけてないから、大丈夫! 足掴みぐるぐる回しとか、そういうのはされない!」
 言い聞かせるように自身を奮い立たせ、祭莉は杏の隣に並び立った。

「ぜ、全力で走れば逃げられたり……」
「するわけねぇだろマロちゃん、覚悟決めな? じゃワンドの兄貴、頼むぜ!」
「今回俺出ずっぱりだなぁ!?」
 突如として現れた双子の兄妹の元気さに尻込みするマロリー、それに喝を入れる『本』、そして、行動を起こしたのは『杖』だった。
 マロリーの手に握られたまま『杖』はずい、と前に身を乗り出し、双子に向けて魔法の光弾を放つ。
 それを、さらに一歩出た祭莉が手に持つ『如意みたいな棒』で弾く。
 思いのほか簡単な所作で防がれた事に『杖』は驚いたようだ。
「チィ、やるじゃねぇか! ならもっと……」
「喋る杖だ」
「今度はもっとたくさん……え?」
 さらなる攻撃を準備する『杖』に、ふと自身に言葉が向けられた事を感じ取る。
 言葉は目の前、まさに今一度『杖』の魔法を防いで見せた人狼の少年が口にしたものだった。
「コレ、おもちゃだよね? 魔法喋るおもちゃって、スゴいね!?」
 感嘆する言葉と共に、祭莉は息巻いてずんずん前進していく。
 祭莉にとってよほど興味深い対象だったのか、射線や戦闘距離もお構いなしだ。
「いや混ざってる混ざってる、ていうかおもちゃじゃねぇから!」
「え、違うの??」
 あまりにまっすぐ接近されるため、マロリーと『杖』は距離を取りながら先ほどよりも多めに光弾を放つ。
 が、それらもまた祭莉の棒術の前に防がれていく。一応、進行速度自体は抑えられているが……。
「ていうか怖い怖い! あの子めっちゃ食いついてます!?」
「ケヒヒ、ワンドの兄貴は人気だなー!」
「他人事だと思ってよー!?」
 距離は徐々に詰められ、『杖』の魔法も捌かれていく。
 ジリ貧の状況を打破するため、マロリーは次の手を考えた。

「というわけでわたしの出番なの。ウフフ」
 双子の前に現れたのは、もうひとりのやや身体の透けている『マロリーの霊』。
 祭莉の猛攻(?)を止めようと次の手として召喚されたのが彼女である。
「眼鏡を外した貴女は……誰?」
 そんな彼女の前に少女の方、杏が立ち塞がる。
「ウフフ……わたしはわたしよ、お嬢さん」
 杏に対し、挑発的な笑みを浮かべる『マロリーの霊』。
 そんな彼女に、杏は密かに対抗意識を燃やしていた。
「クールでビューティな雰囲気……これはわたしも負けられない」
 一息吐いて、目を瞑り、両腕を広げる。
「――わたしはクールな女……変・身!」
 言葉を口にした時、杏の身体は光に包まれる。
 その光は強く、光の中に居る杏の状態は何もわからない。
 そして、次に杏が光の中から姿を現した時……彼女は変貌していた。
「準備、おっけー」
 服装に大きな変化は無いが、何よりも目を引く、主張する要素が追加されている。
 それはレンズのサイズは控えめ、下部に縁のない……『眼鏡』である。
「あら、アナタは眼鏡をするのね?」
「今日はくーるびゅーてぃーな杏だから」
 得意げに眼鏡のフレームをくい、と持ち上げる。
 その直後、杏の背後から飛び上がる影がひとつ。
「む、それは?」
「うさみみメイド・うさみん☆よ」
「ああ、グレムリンが怖がってたメイドさんね」
 前に出た『うさみん☆』はそのまま『マロリーの霊』に接近する。
 もちろんそれを簡単には許さず、『マロリーの霊』も杖から光弾を撃ち込んで迎え撃つ。
 それを、素早い動きで『うさみん☆』は避けていく。
「なっ……想定より速い?」
 グレムリンとの戦いを伝え聞いた時より、その動きは速い。
 それもそのはず、先ほどのは単なる着替えではなく、【どれすあっぷ・CBA】による強化を伴う変身であるのだから。
 強化された『うさみん☆』は素早い動きで激しく攻撃を繰り出し、『マロリーの霊』を追い詰めていく。
 それを『マロリーの霊』は光弾や杖で応戦するが……忘れているものがある。
「あっ」
「ふふ、ぶん殴り対決なら負けない」
 『うさみん☆』の攻撃への対処で手一杯だった『マロリーの霊』は、その背後に居た杏本人に気付く事が出来なかった。
 そして、手の『灯る陽光』は形状を幅広の大剣に変化させている。
 つまり……杏はすでに攻撃の準備を終えていた。

「よぉし、今だー!」
「ふぇ!?」
 それまで光弾を捌いていた祭莉は、ここにきて急接近。
 一息で至近距離まで到達した祭莉は、今まで握っていた棒を一時手放す。
「ん、猫の恩返しが欲しかったんだよね?」
 口にしたそれは、マロリーが欲しがっていたあの『物語』。
 アンディがもたらした、玩具とケットシー達の思い出。
 しかし、それを彼女に渡すわけにはいかなかった。
 祭莉は拳を握りしめ……輝きだした。
「だから、代わりに。おいらが魔法……じゃなくて」
 一方、杏の方も『灯る陽光』を振りかぶっていた。
 狙うは『マロリーの霊』という挑発的な少女……その尻。
「ん、おしおき」
 手の『灯る陽光』をそのまま横なぎに振るわせて、『マロリーの霊』はその尻を『叩かれた』。
 まさかの尻叩きである。
「いっ……たぁぁああ!?」
 かなりの力で叩いた事により、『マロリーの霊』は大きく吹き飛んでいった。
 そして、それに合わせて。
「魔法ぽい拳をプレゼントだー♪」
 握りしめた祭莉の拳は琥珀色に煌めく。
 その光が最大になった時に、その拳は振り上げられた。
「拳がプレゼントて、そんなぁあ!?」
 アッパーカット……祭莉の【灰燼拳】によってマロリー本人も大きく吹き飛ばされた。
 そして、双子の攻撃によって飛ばされたマロリーと『マロリーの霊』は、互いに激突。
 それまでの猟兵達による攻撃で蓄積していたダメージは、双子の攻撃が決め手となり。
 ……猟書家、マロリー・ドラッケンは完全に沈黙した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月22日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アルダワ魔法学園
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#マロリー・ドラッケン
🔒
#ケットシー
🔒
#災魔の卵


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠村雨・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト