●
この国のプリンセスは男だったが、その清廉で優しい真心はまさにプリンセスに相応しく、国中の者達が揃って挨拶を交わす。愉快な仲間はお喋りでその場を盛り上げ、時計ウサギは「プリンセス、次の通路まであと1分です」なんて言いながら、力持ちは「うんしょ」とアリスナイトを持ち上げて、老木は葉を揺らし、所在なく縮こまっている殺人鬼にも「そんなに警戒しないで」と微笑みかける。
皆がみんな、この国――彩と陵の国を好いていた。美しく極彩の満ちるこの国は、果てしなく繁栄するのだろうと信じていた。しかし、その国の端から拡がる黒い影。それにいち早く気が付いたのも、またプリンセスだった。黒い薔薇による浸食――……此処は戦場になる。皆を早く避難させなければ!
「諸君! 此処はいくさ場になる! 動ける者は城の方へ逃げて! 動けない者は私が守ろう!」
そう言うプリンセス『サクヤ』は、豪華絢爛なプリンセス姿へと姿を変え空を翔け巡り、黒い影の侵食に向かい花弁を散らしてゆく。すると其処は元通りの美しい彩を取り戻し、侵食された動けない愉快な仲間の樹々や茸たちも正気を取り戻した。
「プリンセス! 嗚呼ぼくらのプリンセス! どうかこの国を守っておくれ!」
「この黒薔薇は危険じゃ……のう、我らがプリンセス。どうか覚悟召されよ」
その声に「ありがとう、みんな!」と声を返すサクヤ。樹々の助言の通り下をよく見れば、真っ黒な影だと思っていたそれは漆黒の薔薇だった。そしてその中央で、星の瞳を輝かせ見つめる少女が一人。
『素敵! 素敵! 「優シイココロノ証」カラ舞イ散ル花ビラガ、私ノ「黒薔薇」ヲ壊シテイク……ナンテ綺麗ナノ!』
と声を上げている。その正体こそ、この黒薔薇を拡げ彩と陵の国を乗っ取らんとする猟書家・エンデリカだった。黄金に輝く機械の翼を広げ、黒薔薇をじわじわと広げてゆく。そこにはプリンセスへの強烈な憧れがあった。
『嗚呼。プリンセス、素敵。私モ、アナタミタイニナリタイ! この国ヲ壊シタラ貴方ヲ丁寧ニツカマエテ、少シズツ解剖シテアゲル。ユックリト、丁寧ニ。私ガ貴方ヲ理解スルマデ』
その為なら、エンデリカは何でもするだろう。まず此の健やかで心温まる国を崩壊させ、オウガを蔓延らせる。次いでプリンセスを捉え、目玉をくり抜き、手足を引き抜いて、唇に口付けて、臓腑を改めて。それでも絶対に死なせないようにしてじっくり……ゆっくり……二人で一つになる為に。
「君にこの国を侵させはしない!」
『プリンセス! 嗚呼、ワタシのプリンセス! 待ッテイテ。今カラ貴方ヲ犯シテアゲル』
サクヤとエンデリカ、彩りと漆黒、二つの花びらが衝突する。今はまだサクヤのドレスアップ・プリンセスの効果が効いているが、サクヤ自身が狙われては此の作戦も崩壊する。そうなる前に、誰か――!
●グリモアベースにて
「皆、集まってくれてありがとう。今回は世界中に散らばった猟書家との闘いとなる。皆心してかかってくれ」
至極真面目な顔で事態を告げるのは、アリス適合者にしてグリモア猟兵のトート・レヒト(Insomnia・f19833)。元から深いクマをより濃くしながら、予知の内容を集った猟兵達に告げる。
「まず、戦うことになる猟書家はエンデリカというアリスラビリンスに出現するオブリビオンだ。彼女は機械の羽根を持ち呪いの鱗粉などを操り、黒薔薇でこちらの戦意や生命力を喪失させてくる」
これが厄介で、エンデリカがいる限り黒薔薇がアリスラビリンス――今回の舞台である『彩と陵の国』を侵略し続けるのだという。幸いにも対抗策があり、それこそが国のプリンセスである『サクヤ』が持つユーベルコード、ドレスアップ・プリンセスであるというのだ。
黒薔薇の侵食に対しドレスアップ・プリンセスで花弁を撒き続ける事によって、侵食を相殺することが出来る、とトートは語るが、簡単な事ではない。なにせ敵はエンデリカだけではないのだ。
「主役(プリンセス)を妬むオブリビオンが、エンデリカと共に襲来し彼女の手助けをする。強さはそれほどでもないが、数はそれなりにいるだろうな。なにせ、主役はひとりしか選ばれないのだから」
まずは主役になれなかった者達を排除し、それからエンデリカに向かって欲しい。勿論、その間もプリンセス・サクヤは空を飛び続けドレスアップ・プリンセスを行使し続けている。彼を守りながら戦うのも、また仕事の一つであることを忘れてはならない。
「主役を妬む奴らは、エンデリカが侵した黒い薔薇の上で戦うことで戦闘力が増す。それを如何に凌ぐか、或いは無力化するかも戦いの肝になるだろう」
サクヤのドレスアップ・プリンセスの力もまた強力で、一片散ればオウガなどいない元通りの豊かな国に戻るような暖かみを持つ。この上では彼の連中も最大の能力は発揮できないだろう。
「エンデリカは強敵だ。国を壊し、自分にはない能力を持ったプリンセスを我が物にしようと躍起になっている。プリンセスを、国を救えるのは猟兵だけだ。何分、請け負ってやってはくれないか」
トートは頭を下げて猟兵に願った。エンデリカが強い事は分かり切っている、恐らく簡単な戦いにはならないだろう。それでもやって良いというのなら――。
「ありがとう。彩と陵の国に座標セット。目標、プリンセス・サクヤ。彼の作り出す彩りを、君達に託すよ」
グリモアが虹の輝きと共に、転送が開始された。
まなづる牡丹
オープニングをご覧いただきありがとうございます。まなづる牡丹です。
今回はアリスラビリンスが舞台、薔薇と聞いたら駆けつけないわけがない私です。
※猟書家戦につき、二章で終わる特殊なシナリオとなっております。
●第一章
『星屑のわたし達』
主役に選ばれなかった者たちの末路。数は猟兵より多いです、場合によっては一人で多人数と相手をする場合もあるかもしれません。(プレイングによります)
●第二章
『エンデリカ』
アリスラビリンスに現れた、鉤爪の男の目論む「超弩級の闘争」を実現すべく行動を始めた猟書家です。今回は成人男性サクヤの治める国『彩と陵の国』への侵攻を開始し、プリンセスの能力に魅了されてしまいました。
決して楽な戦いではありませんが、サクヤの黒薔薇を相殺する力を利用すれば圧し返す事も可能です。臨機応変に自由に戦ってみて下さい。
※プレイングボーナス(全章共通)……空飛ぶプリンセスを守り続ける。
(今回に限らず、猟書家戦ではプレイングボーナスを利用しない場合極端に不利または返却になる可能性があります)
●NPC
『サクヤ』
Lv90相当の人型成人男性のプリンセス。ドレスアップ・プリンセスはもちろん活性化しており、終始飛翔しながら色鮮やかな花弁を振りまいています。
一章では彼を守ることで有利に戦闘を進めることが出来、エンデリカ戦では黒薔薇の進行を止め拮抗することが出来ます。また、彼はいかなる状況に陥ろうとも国を見捨てることはありませんので、多少の無茶なお願いでも聞いてくれます。
●プレイング送信タイミングについて
一章は断章なしで、公開されたタイミングでプレイング受付いたします。締め切りはMSページにて。
二章は断章を挟んだ後、プレイングの受付期間をMSページに記載しますので確認をお願いします。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『星屑のわたし達』
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POW : パ・ド・ドゥをもう一度
【ソロダンスを披露する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
SPD : 我らがためのブーケ
いま戦っている対象に有効な【毒を潜ませた美しい花束】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : そして、わたし達は星になる
【星のような煌めきを纏う姿】に変身し、武器「【白銀のナイフ】」の威力増強と、【魔法のトウ・シューズ】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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オート・チューン
プリンセスを守るナイト参上!
白鳥にも黒鳥にもなれないけど、その役割は必要不可欠って話!
プリンセスを守るナイトが重要って事よ、ふふーん!
主役じゃない者同士、正々堂々と勝負だー!
正々堂々と勝負っていったのに毒とかずるっこなんだー!
毒で体力を削るっていうなら
【ガチキマイラ】で齧りまくって回復しちゃうよ!
解毒できなくても倒れなかったらこっちの勝ちだもんね!
プリンセスには指一本触れさせないぞ!
飛んで跳ねてしゅばっと守り切って見せるんだから!
ついでに主役じゃない君も齧って落としちゃうぞ
あべべべ~なんだか痺れてきた?!遊びの時間は終わりだ!(かっこつけ)
君達の出番はもう終わり!舞台からおりなさーい!
がおー!
●
黒き茨と花を踏み散らし、颯爽と現れたるはプリンセスを守るミミズクの翼を持つナイト。白鳥にも黒鳥にもなれないけど、その役割は必要不可欠って話! その名もオート・チューン(太陽のバースデイ・f04855)、プリンセスを守るナイトが重要って事よ。と「ふふーん!」と声を弾ませる。さぁ、主役じゃない者同士、正々堂々勝負といこうじゃないか!
『あなた……嫌い。あなたみたいな輝いている人を見ると、吐き気がする……』
「えーっ!?」
投げつけられた言葉に、ショックを受けるオート。輝いている人、というのはあながち間違いではない。オートは煌めきの申し子、闇など似合わない輝きを裡に秘めている。そんな相手を前にして、星屑の少女は憎しみすら覚えた。どうして、主役じゃないくせにそんなにニコニコしていられるの。私はこんなに悔しいのにと。
『あなたには此れがお似合いよ……』
「なぁに? ってわー!!」
投げつけられたのは毒の仕込まれたアカネグサの花束。純白に黄色のそれはとっても美しいけれど、触れた処から肌が焼けるように熱い! 腐食性の花束が、じんわりと、しかし確実にオートの健康そうな肌を焼いていく。
「正々堂々勝負っていったのに、毒とかずるっこなんだー!」
『そんなこと……私は一言も言ってない……』
相手が毒で体力を削るというのなら、こちらは腕をライオンの頭部に変形させて少女の肉を食い破る! がじがじ齧って、生命力を回復だ! 幸いにも花束に触れなければこれ以上侵食されることはない。少女は新しい花束を作り出そうとするも、ライオンの頭で腕を齧ってそれを阻止する。
『嗚呼、黒い薔薇よ……私に力を……!』
「プリンセスには指一本触れさせないぞ!」
空中を飛び回るプリンセスは今も懸命にドレスアップ・プリンセスで花弁を振り撒いている。いつの間にか星屑の少女の足元にあった黒薔薇は、彩りを取り戻していた。さぁ、こうなったら圧し切るだけ! 飛んで跳ねてしゅばっと守り切ってみせると、オートは意気込む。
「主役じゃない君も齧って落としちゃうぞ」
『私は……主役に、なりたかった。プリンセスになりたかった
……!!』
【ガチキマイラ】によって手も脚も齧られて、ズタボロになった星屑の少女は、ただ泣いた。どうして私が選ばれなかったの。或いはこんな醜い感情を持っていたから? 分からない、誰か教えて。教えてくれないなら……せめてこの輝きを持つ少女を倒したい!
「あべべべべ~、なんだか痺れてきた!? 遊びの時間は終わりだ! 君達の出番はもう終わり! 舞台からおりなさーい!」
差し出された花束を毟り、オートは星屑の少女を舞台から引きずり降ろす。選ばれなかった理由なんて、どうだっていい。プリンセスを護れた。それが今は一番大事。
「がおー」と手を掲げ、勝利の雄叫びをあげるオートだった!
大成功
🔵🔵🔵
セツナ・クラルス
あなたの紡ぐ物語の主役はあなた以外あり得ないのに
あなたたちはいったい何を見ているんだい
観客が欲しいなら作ればいい
例えば…私なんかどうだい?
目を離せない程の煌めきを私に見せておくれ
私は空を駆けることはできないが
操る灯火は自由に宙を舞うことができる
灯火は彼女たちの周囲を明るく照らし、
隙を見せれば焼き殺さんと付き纏う
…『主役』になりたいのだろう?
この程度の小火、掻き消す程の存在感を発揮せねば、ね?
余裕ぶって、挑発めいたことを言うものの
実際には攻撃を防ぐことで精一杯
彼女たちには本気で戦い、実力以上の能力を発揮して貰いたいのだよ
そして、自分は端役ではないということを自覚して欲しい
それが私の救済の方法だよ
●
人生という舞台に於いて、自分が紡ぐ物語の主役は自分以外あり得ないというのに、彼女ときたら、一体何をみているのか。観客が欲しいなら作ればいい。例えば……私、セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)なんてどうだい?
「目を離せない程の煌めきを私に見せておくれ」
セツナは空を駆けることはできないが、操る灯火は自由に宙を舞うことができる。灯火は彼女たちの周囲を明るく照らし、隙を見せれば焼き殺さんと付き纏う。『主役』になりたいのならば、この程度の小火を掻き消す程の存在感を発揮してもらわねば、ね?
『……ッ、邪魔――』
「君の価値はそんなものかい? もっともっと、君達を私に魅せてごらん」
『ああああ!! うるさい五月蠅いウルサイッ!! 私は星になる。その為に……邪魔者は全て排除するッ』
バレエドレスから星のような煌めきを纏う姿に変身し、手にした白銀のナイフの威力を高めると共に、魔法のトゥ・シューズによる飛翔能力を得る。その力で一気にセツナに向かい、凶刃を構えて突進してきた。
ふぅ、とため息が出る。余裕ぶって挑発めいたことを言ったは良いものの、実際には攻撃を防ぐことで精一杯。飛翔するプリンセスの周りに灯火を回している分もあって、別々に操るのに少々骨が折れる。だが、星屑の少女の意識が自分に向いている内はまだ良い。プリンセス自身も相当に強いようだから、一撃でやられてしまう心配はないだろうが……。
「そう……良いね、それがあなたの本性。プリンセスでも何でもない、あなただけのあなただ」
『何を、言ってるの……?』
「あなたは決して端役ではないということだよ」
本気で戦わせて、実力以上の能力を発揮させることにより、それを自覚して欲しかった。人生は楽じゃない、必ず誰かと競い合って、勝者と敗者が生まれることがある。でも、それがなんだと言うのか。敗北したら残りの人生すべてに『敗者』という烙印が押されてしまうのか。
そんなことはない、何故なら人生という一人きりの舞台では、主役は常に自分ひとり。そこに友人や伴侶が加わったり、子供が出来る事もあるけれど、基本は何も変わらない。観客はその他大勢だ。そして自分もまた、誰かにとってはその他大勢に含まれることも忘れてはいけない。
「大丈夫、今のあなたはとても輝いているよ」
『プリンセスにもなれなかったのに……?』
星屑の少女がドレスアップ・プリンセスにより彩りを取り戻した花の上に頽れる。両手で顔を覆い、わんわんと泣いた。少女はオブリビオン、もう永久に主役になれることはない。だからこそ、セツナの言葉が胸に響いた。――そうだ、私は。誰かの為じゃなく、自分の為に、プリンセスになりたかったのに――……。
「誰でもない、あなた自身をよく見せてくれたね。ありがとう。私の言葉が、あなたの煌めき、私がずっと覚えているよ」
誰でもない、彼女自身がそれを認めた時。ぶわっと花が崩れるように少女は花弁となり散っていった。言葉のもつ力が誰かを救うこともある。それが、セツナの救済方法――。
大成功
🔵🔵🔵
ココレット・セントフィールズ
【お屋敷】
「まぁ、ご存知ない様ね。
パーティーには常に『本日の主役、もしくは主賓』が存在していてよ。
そして今日の場合、それはあなたたちでは無く…
当然、わたくしでもない。…彼のプリンセス・サクヤ様だわ。
輝く時を捉え違えた上、妬みを向けるのは…見苦しくてよ。」
民に愛され、国を守るプリンセス…素晴らしい方だわ。
今日のわたくしは守られる者でありながら、
守る者になってみせる。必ず彼を守るわ。
わたくしのささやかな花もこの国の彩りの一部になれるかしら…?
【鈴蘭の嵐】を使い敵を攻撃するわ。
優雅に舞いましょう。
同行させる従者はディアを選んだわ。
プリンセス・サクヤ様を守りながら、このわたくしも守り抜いてみせなさい。
ディアリス・メランウォロス
【お屋敷】
プリンセスを護るのは騎士の務め。
私はお嬢様の騎士だ、だがそのお嬢様が護ると決めたものは私も護る義務がある。
美しきプリンセス、今宵はこの力をあなたの為に揮おう。
剣を持つ手に力を込めて斬りつけていくよ。
相手と距離が開くようなら装備している投げナイフ[這いまわるスピーサ]を投げつけるよ。
毒を使うらしいけど、私の用意したナイフの毒は通じるのかな。
けん制くらいにはなるといいな、私の得意分野は接近戦だからね。
でもとりあえずお嬢様に向かう敵を優先して排除するよ。
私にとってはそれが一番の敵だからね。
●
彩りを侵す黒を圧し返すドレスアップ・プリンセスを振り撒くサクヤ。今も天を駆け、花弁をひらひらと舞わす。美しいそれに醜い感情を向ける星屑の少女に、ココレット・セントフィールズ(エレガント・リトルパレス・f00369)は一歩前に躍り出て言い放つ。
「まぁ、ご存知ない様ね。パーティーには常に『本日の主役、もしくは主賓』が存在していてよ。そして今日の場合、それはあなたたちでは無く……当然、わたくしでもない。……彼のプリンセス・サクヤ様だわ」
天から応援ありがとうと手を振るサクヤ。星屑の少女の足元に彩が広がる。ココレットは長い髪を揺らし、地からそれに応える。暖かな光景も、後ろに控えるディアリス・メランウォロス(羅刹の黒騎士・f00545)あってこそ。
「私はお嬢様の騎士だ、だがそのお嬢様が護ると決めたものは私も護る義務がある。プリンセスを護るのは騎士の務め。美しきプリンセス、今宵はこの力をあなたの為に揮おう」
『忌々しい……あなた達はプリンセスじゃなくても、誰かにとっての主役だわ。ずるい、ずるいズルイ! 私はあんなに頑張ったのになれなかったのに!』
「輝く時を捉え違えた上、妬みを向けるのは……見苦しくてよ」
シンフォニックデバイスを無数の鈴蘭の花びらへと変え、ココレットは星屑の少女たちに向けて嵐を巻き起こす! ぶわっと吹き荒ぶ花弁に、目が眩む少女たち。彼女らは戦法を変え、プリンセスを攻撃する役とココレットを狙う役に分かれた。
だがそれをディアリスが阻む。ココレットに向かう敵を優先して排除する、それがディアリスにとっては一番の役割であり、許せざる敵だからだ。剣を両手に持ち、向かってくる星屑の少女を斬りつける! ソロダンスは白銀のナイフの威力を上昇させ、飛翔能力を持たせた。それにより少女は狙いをココレットからプリンセスに代える!
『プリンセス……死ね!』
「させないわ」
鈴蘭の花びらが星屑の少女を包みこむ。ぶわっと少女の視界が白くなり、何も見えなくなる。その間に、プリンセス・サクヤは高く飛翔し彩りの花弁が降り注いだ。黒薔薇の力が浄化され、地に光と元気が蘇ってくる。嗚呼、憎いにくいニクイ! 主役(プリンセス)をとったあげく、私たちの舞台も奪うなんて!
「ディア、プリンセス・サクヤ様を守りながら、このわたくしも守り抜いてみせなさい」
「御意に」
視界を奪われ地に堕ちた少女から、ディアリスは容赦なくその剣で引き裂いていった。距離を取られたら投擲用の短剣[這いまわるスピーサ]を投げつけ、逆にこちらから攻め入る。ずいっと一歩脚を踏み込み、スピーサごと散らす。ディアリスの戦術はあくまでも接近戦なのだ。
相手は毒使いのようだけど、こちらが仕込んだ毒は効くのかな? なんてのは杞憂で、ぐらりと星屑の少女たちは眩暈を引き起こしたように屈む。そうなってしまえばもうディアリスの独擅場。脇役が主役を食う勢いだ。ココレットはディアリスに「大立ち回りも加減しなさい」と告げ、飛翔するサクヤに話しかける。
「プリンセス・サクヤ。お加減は大丈夫かしら?」
『君達のおかげで私の国も何とか持ちこたえているよ。私はこれからもこの黒薔薇に対抗する為に花弁を降り注がせる! 諸悪の根源は……君達に任せても良いかな?』
「ええ、任せて頂戴」
「お嬢様がそう仰られるのであれば、その通りに」
『ああああ! アンタさえいなければ!!』
星屑の少女が凶器を手に浮遊するサクヤに浮きながら突撃してくる! それにディアリスは牽制用にとっておいたスピーサを投げつけ往なすと、サクヤは再び宙へと昇ってゆく。凶器を弾かれその場で自暴自棄になる少女へ、ココレットは鈴蘭の花を凛束を授けた。
「この花はね、『再び幸せが訪れる』という花言葉があるの。あなた達にもいつか、主役が巡ってきますよう」
「お嬢様……」
分かっている。オブリビオンになった以上、もう永遠にそれは訪れないことだと。でもせめて、心だけでも救ってあげたかった。ココレットの優しい心が具現したように、大きな鈴蘭の花びらが少女に纏い……。
「あなたが主役の舞台を、楽しみにしているわ」
ぎゅっと花弁が圧縮されて、ひらりひらりと花弁が舞い散った時には、既に星屑の少女はいなかった。煌めくステージの真ん中で踊れるのは、たった一人。ココレットもある意味そうだろうけど……人はみな、人生という大舞台で、台詞ひとつ間違えられない運命を辿っているのだ。
「そういえば……鈴蘭には毒があったわね。彼女、今頃苦しんでないかしら」
「大丈夫ですよ、お嬢様。もう逝きましたから」
あとに残ったのは、鈴蘭とサクヤが放つドレスアップ・プリンセスから舞い落ちる色とりどりの花弁のみ――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クロム・エルフェルト
*アドリブ・連携・その他色々歓迎
眩い主役に固執しなくても
遣り手の引き立て役、という居場所も有るのだけど
……そう、残念
蹴散らされる敵役をお望みなら
プリンセスを護るナイトの役は、私が貰おうかな
挑発一つ、心を揺さぶり平静を奪う
投げつけられた花束は手刀で叩き落し
……ッ
激痛、神経を蝕む毒
望む役を獲れなかった、無念の痛み
……あぁ、これは……痛い
痛々しい程に、ちっぽけな毒(プライド)だ
入り込んだ毒を[焼却]、失活させる
神経を焼く痛みは歯を食い縛り噛み殺す
[ダッシュ]で瞬きの間に距離を詰め
[早業]で最速のUCを叩き込む
是こそが華焔一閃
決して主役になれはしないけど
心に強く灼き着く不吉の華よ
さぁ、次のお相手は誰?
●
華やかな舞台に必要なものは、主役の他に観客と小道具、そして主役を引き立てる名脇役も必要であると言ったのは誰だったか。クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)も全く以てそう思う。眩い主役に固執しなくても、遣り手の引き立て役という居場所もあるのにと。
『プリンセスじゃなきゃ意味がない。主役以外は……見向きもされない!』
「……そう、残念」
蹴散らされる敵役をお望みだというのなら、プリンセスを護るナイトの役はクロムが貰う事にしよう。手をくいっと挙げて手招き二回。続けて発する挑発ひとつ。
「プリンセスは健やかで献身的な者が選ばれる。そんな醜い嫉妬心、プリンセスには相応しくないよ」
その言葉に星屑の少女はぐらぐらと心を揺さぶられる。図星だからだ、本当は自分が、一番それに気付いていたのに、いざ他人に突き付けられると痛い程に苦みが口の中に広がる。平静はもう保てなかった。クロム目掛けて夾竹桃の花束を投げつけた! バシっと花束を手刀で叩き落す。
「……ッ」
激痛。神経を蝕む毒。望む役を獲れなかった、無念の痛み。悔しい、惨め、後悔……そんなものが詰まっている。――……あぁ、これは……痛い。痛々しい程に、ちっぽけな毒(プライド)だ。
入り込んだ毒を内側から焼却し、失活させる。神経を焼く痛みは葉を食い縛り噛み殺す。この程度の痛みがなんだ。私は、クロム・エルフェルトは……何時だって主役じゃなかった! それでも今日まで生き延び、世界に仇なす者を討ってきた! だからこそ言える。主役だけが『物語の登場人物』なんかじゃないってコト。
瞬く間に星屑の少女との間の距離を詰め、早業で以って最速の【仙狐式抜刀術・彼岸花】を胸の中央に叩き込む! 是こそが華焔一閃。決して主役にはなれはしないけど、心に強く灼き着く不吉の華。嗚呼、斬撃が胸に散らした華の、なんと美しきこと。永遠に主役の座には至れない者の末路。
「さぁ、次のお相手は誰?」
星屑の少女たちは互いに顔を見合わせた。誰も死にたくはない。どうしてこんなことになってしまったの。私はただプリンセスになりたかっただけなのに。プリンセスを殺せば、次にその役割が巡ってくるのは『わたし』のはずなのに!
可哀そうに、彼女たちは誰しもがそう想っている。サクヤさえいなければ、次のプリンセスは自分だと信じて疑わない。分かっている、彼女たちもプリンセスになろうと努力し、研磨してきたことは。それでも選ばれなかったのは……やはり、何かが足りていないか、あるいは余計だったかのどちらかだ。
「誰もこないの? じゃあ私からいくよ。プリンセスに……手出しはさせない」
少女たちが向ける毒入りの花束を叩き堕とし、切り裂いて、逆に返してやった。どうだ、己の撒いた毒の味は。黒薔薇の加護が無ければ、もう立ってもいられまい。そしてこの領域は……最早プリンセス・サクヤのドレスアップ・プリンセスの効果が優勢だ。永久にさようなら、無貌の敗者たち――。
大成功
🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】
なるほど、彼のカリスマ性や勇気は
確かに物語の主役のようだね
そして今はヒロインでもあるのかな
梓のUC後、サクヤに近付きこうお願いする
自分はここに居るぞ、と大声でアピールしてほしい
大丈夫、決して君に傷は負わせないから
更にPhantomをサクヤの周囲に飛ばす
敵の攻撃が来た際にオーラ防御で彼を守る為
そして、敵に彼の位置を知らせる為
のこのこと敵が集まってきた瞬間、UC発動
サクヤを透過させる性質を与えた大量のナイフを
彼を中心として放射状に次々と投擲
命中率重視で確実に刺し殺す、又は地に落とす
サクヤを囮にして敵を集め一網打尽にする作戦
こんなの、彼ほどの勇敢なプリンセスじゃないと
とてもお願い出来ないね
乱獅子・梓
【不死蝶】
ああ、なんというか、たくましくて頼もしいよな
対して猟書家は絵に描いたような悪役だな…
主役と悪役が揃っているなら
最後はどちらが勝ってどちらが滅びるかは分かるだろう?
UC発動し、辺り一帯を闇夜へと変化させる
これで敵は俺たちやサクヤを
見つけるのが困難になるだろう
敵の目が闇に慣れる前に
成竜の焔に綾と一緒に乗りサクヤのもとへ
正直、綾の作戦はかなりヒヤヒヤしたな…
あんなヒロインの守り方があるか
あいつなら出来る、と信じたわけだが
綾の奇襲で倒しそこねた敵は
零の氷のブレス攻撃でトドメを刺していく
オウガとはいえ無残に焼き殺すのは気が引けるからな…
美しい姿のまま氷漬けにして逝かせるのが
せめてもの慈悲だ
●
その美しさは見る者に勇気を与え、清廉な心は人々を癒し、真っ直ぐな精神はこの彩園の国の指標となった。プリンセス・サクヤ。男にしてプリンセス、そして結構強いのには、それなりに訳があるのだ。
「なるほど、彼のカリスマ性や勇気は確かに物語の主役のようだね。そして今はヒロインでもあるのかな」
「ああ、なんというか、たくましくて頼もしいよな。対して猟書家は絵に描いたような悪役だな…」
主役と悪役が揃っているなら、最後はどちらが勝ってどちらが滅びるかは分かるだろう? と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)が零せば、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)もニッと笑って頷いた。悪は滅びる、それがこの世の定め。
さて、そんなプリンセスにひとつお願い事がある。おっとその前に、梓は紅い蝶の群れを降らせ、戦場全体をそれが舞う闇夜と同じ状況にする。味方の暗闇での戦闘適応力を高めるこの蝶たちのお陰で、星屑の少女たちは梓やサクヤを見つけることが困難になるだろう。
敵の目が慣れる前に、成竜となった焔に綾と共に乗ってサクヤの元へ。彼はこの暗闇でも自分の成すべきことを見失っては居なかった。例え世界が暗くなろうと、其れは夜と同じだ。何も恐れる事は無いと、ドレスアップ・プリンセスを続ける。そんなサクヤに綾は焔の上に立ちこそっと内緒話のように耳打ちする。
「自分は此処にいるぞ、って大声でアピールしてほしいんだ」
サクヤはそれに驚くも、敵対するオブリビオンから彩園の国を守ってくれる猟兵が言うのだからと、少し考えて綾を見据えた。
『……何か策があるのかい?』
「まぁね。大丈夫、決して君に傷は負わせないから」
Phantomをサクヤの周囲に飛ばす。敵の攻撃が来た際にオーラ防御で彼を守る為に、そして敵に彼の位置を知らせる為に。そうして準備が出来たら、サクヤは思い切り声高らかに叫んだ!
『国を侵す者たちよ、私は此処だ! プリンセスの座が欲しくば掛かってくるがいい!』
星屑の少女たちは天を見上げ、紅い蝶をじっと見つめる。トゥ・シューズに魔法を掛けて飛翔し、サクヤ目掛けてナイフを突き立てるように掲げた。さぁ、のこのこと敵がやってきた。此処からは綾の作戦通り。まずはサクヤを透過させる性質を与えた大量のナイフを、彼を中心として放射状に次々と投擲!
ナイフを持つ手は逆に鋭利なナイフによって傷を与えられ、嗚呼、彼女は墜ちた。彼女は喉を貫かれて逝った。そして私は顔面と体中に降り注いだナイフによって舞台に上がる権利を失った!! 当てる事を最優先に、確実に刺し殺し、または地に堕としていく。
正直、梓は綾の作戦を聞いた時はかなりヒヤヒヤした……そんなヒロインの守り方があるかと。それでもあいつなら出来る、と信じたわけだが。次々と潰えていく星屑の少女たち、墜ちてもまだ息がある者は黒薔薇の上に立ち戦闘力を強化して、再び力強く地を蹴る。しかし、それは許されない。
「大人しく氷漬けになっててくれ」
綾の奇襲で倒し損ねた星屑の少女たちは、成竜となった零の氷のブレスで一気にトドメを刺して行く。もう二度とその地から離れられないように。本物のプリンセスは飛べても、お前たちでは所詮真似事しか出来ないと分からせる為に。
焔の炎のブレスを使わなかったのは、梓のせめてもの思いやりだった。オウガとはいえ無残に焼き殺すのは気が引ける……せめて美しい姿のまま逝かせるのが慈悲というもの。二度と溶けない氷に閉ざされた星屑の少女たちは、舞台にも上がれず骸の海へ還ってゆく。
一方綾。向かい来る何人もの星屑の少女たちに向かい、次から次へとナイフを投げ込んでいく。痛いね、苦しいね。でもそれを選んだのはお前だろう? プリンセスに選ばれなかったことを理由に、サクヤを恨んで、妬んで、手を煩わせて。そんな奴に、プリンセスのお鉢が廻ってくると思う?
「嫉妬は醜いね。君達にこんなことできる?」
サクヤを囮にして敵を集め、一網打尽にする作戦。こんなの、彼ほどの勇敢なプリンセスじゃないととてもお願い出来ないことだ。――だからさ、木っ端はそれらしく、端役で満足しておけばよかったんだよ。
ザシュっとナイフの雨が降り止んだ頃には、地には彩りが戻り、氷塊がそこいら中にオブジェのように置かれていた。氷塊の中身は何もない。血が花弁を染めた痕もない。彼女たちは最後まで、舞台女優として、穢れぬままに召されたのだ。
『……驚いたよ、私に向かって敵が飛んで来た時は、どうしようかと思った』
「あはは。言ったでしょ、大丈夫だって。それよりも、ご協力ありがとう、プリンセス・サクヤ」
「この作戦の肝は間違いなくサクヤ、あんただったよ」
『そんなことはない。君達の勇敢で思慮深い策あってのものだよ。さぁ、これから侵略者の大元のお出ましだ……!』
再び陽光を取り戻した彩園の国の森に敷かれた散歩道。その奥からじわりじわりと、黒薔薇を纏った少女が現れる。黄金に輝く機械の羽根を持った少女は、にこりと笑い手を広げると……彩られた地面が墨を零したように真っ黒に染め上がった……。
大成功
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第2章 ボス戦
『エンデリカ』
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POW : 咲キ誇リナサイ
自身の【体を茨に侵蝕させること】を代償に、【機械の翅から召喚する黒薔薇蝶々の群れ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【黒薔薇に体の自由を奪われる呪いの鱗粉】で戦う。
SPD : コレガ「自由」ノ形
【機械に侵蝕された姿】に変身し、武器「【機械仕掛けの翅】」の威力増強と、【羽ばたき】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ : ドウゾオ静カニ
自身の装備武器を無数の【戦意と生命力を奪う黒薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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猟兵と連携あっての活躍で、黒薔薇が拡がるのを抑え込み、国を守り続けるプリンセス・サクヤを見て、エンデリカはうっとりと星の瞳を輝かせた。
『嗚呼、ナンテ素敵ナノカシラ! アノ娘達ヲ蹴散ラシテ、私ノ黒薔薇ノ侵攻をヲ留メ続ケテイル。欲シイ! 私モアノ『力』ガ! 全テヲ魅了シ、全テに愛サレテ、全テニ信ジラレルヨウナ……ソンナプリンセスニ、私モナリタイ!』
其の為には、まずはあのプリンセスを捕まえなければ。そして『分解』するの。目玉を入れ替えて、手足を引き千切って自らの茨の脚の一つとし、この機械の翅にあの花弁を散らす能力を植え付けて、全てを黒に染め上げるの。嗚呼でも、耳元で叫ばれても大変だから喉は焼いておきましょうか。
それでも絶対に殺さないわ。だってそう、プリンセスは幸せな結末を迎えなければいけないのだから。私と二人で、永遠に、幸せに暮らしましょう。あなたが抵抗すればするほど、苦しめば苦しむほど、私は幸せなの。ねぇプリンセス、あなただって本当は、誰かに死ぬほど愛されてみたいんじゃない? うふふっ。
今から楽しみでしょうがない。邪魔な猟兵達が抵抗し妨害してくることは分かっているけど……私はエンデリカ。彩りを染める黒薔薇の猟書家である私に、一体どれほど迫れるか、お手並み拝見といきましょうか。さぁ、おいでなさい。たっぷり翫んであげる。
オート・チューン
プリンセスと結ばれるのは白馬の王子様って相場が決まってるんだよ!
きみはどう見ても悪い魔女ちゃんじゃないかー!
……
プリンセスと結ばれる魔女ちゃんもありか~!
応援してあげるからまずはその怖い妄想をやめて改心しなさーい!
鵺鳥の嘆きで攻撃するよ!
撃てば撃つほどエンデリカちゃんの自由が黒薔薇に奪われるって寸法よ!
動きが鈍くなってこっちの攻撃も当てやすく…ってわー!
蝶々の群れで見えないー?!
構うもんかー!撃って撃って撃ちまくれー!
他の猟兵くん達が攻撃当てやすくなるでしょー!ふっふーん!
ぎゃわー!蝶々いすぎー!プリンセスーー助けて―!
●
「プリンセスと結ばれるのは白馬の王子様って相場が決まってるんだよ! きみはどう見ても悪い魔女ちゃんじゃないかー!」
『マァ、失礼ナ子。私ハプリンセスト永遠ニヒトツトナリタイダケ……』
「……プリンセスと結ばれる魔女ちゃんもありか~! 応援してあげるからまずはその怖い妄想をやめて改心しなさーい!」
マァ、応援シテクレルノ? と、エンデリカはオートに向けて微笑みを向けた。こうしていれば本当に、普通(?)の夢見る乙女なのだ。しかし、その実態はプリンセスを地に堕とし、心行くまで『分解』しようとする狂気の沙汰だ。
オートもまた応援するとは言ったものの、どうしたら良いのか悩んだ。だってそうだろう、この悪い魔女は絶対に改心することはないのだ。むしろ誰を傷付けてでもプリンセスを我が物にしようとしている。此処はわたいが守らねば! と、オートは意気込みファルセットノイズを構えた。
「喰らえー! 改心の裁き!!」
ファルセットノイズの歌声がエンデリカに届く。最初は歌に合わせてるんるん、としていたエンデリカだったが、次第に矢が降り注いでくるのに気付いた。一発でも当たれば大怪我は間違いないだろう。コノ女、応援スルナンテ言ッテオイテ、油断サセタノネ! とエンデリカは怒りの炎を燃やす。
撃てば撃つほどエンデリカの自由が黒薔薇に奪われるという寸法だったが、そうは問屋が卸さない。段々動きが鈍くなってこっちの動きも当てやすくなるはずだった。しかし、エンデリカはその身をあえて茨に侵食させる。途端、辺りが真っ黒になった!
「わーっ!! 蝶々の群れで見えない!?」
ぶわっと群れる黒薔薇蝶々がエンデリカの黄金の機械の翅から次々に召喚され視界を奪い、足元の黒薔薇がオートの動きを捉える! 絡みつく茨は棘と共にオートの脚を伝いじわじわと上へ登っていく。しかしそんな事は気にしないオート。ちょっと擽ったいけど、構うもんか!
「それー! 撃って撃って撃ちまくれー! ふっふーん!」
他の猟兵くん達が攻撃を当てやすくなるだろうと、尚も矢を射続ける。黒薔薇はファルセットノイズの邪魔をしようとするが、威嚇されてぴゃっと引っ込んだ。UDCが怖いのか、それとも奇声を上げ続ける大弓そのものが怖いのか、この黒薔薇は。
黒薔薇蝶々は次第に数を増やし、呪いの鱗粉でオートの動きを鈍らせていく。もう体が自由に動かない。
「ぎゃわー! 蝶々いすぎー! プリンセスーー助けてー!」
『大丈夫かい!?』
遥か上空を飛んでいたサクヤはドレスアップ・プリンセスで辺りと蝶々を元の彩りに代えながらオートを救出する。「もう大丈夫、ありがと!」と笑顔で応えるオートに、サクヤはまた上空へと戻っていった。
『私ノプリンセスニ気安クシナイデッ!』
「おっと、不興を買ってしまったか☆」
黒薔薇の足場から逃れたオートは、再び【鵺鳥の嘆き】を行使する。相手の心が折れるまで、何度でも――。
成功
🔵🔵🔴
セツナ・クラルス
機械の身体ならば酸で錆びさせることも出来るだろうが…ところ構わず散布すればプリンセスの動きの妨げになるかもしれないな
…ふむ…
ゼロと敵を挟むように位置取り、人には無害な塩属性を付与させた武器にて斬り合う度に塩を擦り込むとしよう
時間が経つほど動きが鈍ればいいのだが
自分にないモノを欲しくなるというのは理解できる
では、あなたはそれを得る為に何を支払うんだい
対価も払わず何かを手に入れられるなんてことあり得ないよ
そんなことができるなら
とっくに私がやっているもの
『…オマエが言うとシャレにならねぇんだけど』
呆れたように言う愛し仔の声にふわりと微笑み
ふふ、きみが永遠に私と共にあるなら、私は何を捧げても構わないよ
●
星の瞳を持つ少女は、茨の脚に機械の翅を携えていた。凡そ人間とはかけ離れたその存在感に圧倒されるも、セツナは考える。機械の身体ならば、酸で錆びさせることも出来るだろうが……ところ構わず散布すればプリンセスの妨げになるかもしれないと。それに、この彩園の国を枯れさせてしまうのも忍びない。
ふむ……と少し思案しながら、ゼロを呼び出す。彼とエンデリカを挟むように位置を取り、人には無害な塩属性を付与させたクラーレで、ガキンガキンと金属音を立てながら斬り合う。その度に塩はじわじわとエンデリカの翅に染み込んでいった。
時間が経つほど動きが鈍れば良いのだが……あの翅、見た目通りの金で出来ているのなら厄介だ。金は腐食性が高い、普通の塩では効き目が現れるのにどれだけの時間が掛かるか。いざとなったら自分にも降りかかるのを覚悟で濃塩酸でも吹っ掛けるくらいは出来なくはないが。
『私トプリンセスノ邪魔ヲシナイデッ! 私ハアノ『力』ガ欲シイノ!!』
「……自分にないモノを欲しくなるというのは理解できる。では、あなたはそれを得る為に何を支払うんだい」
『私ノコノ純粋ナ気持チデハ不満ナノ?』
「ハッ!」
ゼロが鼻で嗤う。何が純粋な気持ちだ。そんなものが対価になるだなんて、成程こいつぁ夢見るお嬢様だ。誠意だとか純情だとか、目に見えないものが。手に取れないものが。相手にとって価値があるかどうかも分からないもので、『力』を得ようだなんて……馬鹿げている。
「きちんと対等な対価も払わず何かを手に入れられるなんてことは、あり得ないよ。そんなことができるなら……とっくに私がやっているもの」
「……オマエが言うとシャレにならねぇんだけど」
「ふふ、きみが永遠に私と共にあるなら、私は何を捧げても構わないよ」
呆れたように額に手を当て、やれやれといったポーズで言う愛し仔の声にふわりと微笑む。洒落で言った心算はない、本当の事だ。何かを得る為に、セツナは代償を払ってきた。生きる為、赦しを得る為、そして二人でいる為に――。
その辺の事情はゼロも分かっている。セツナに何もしてやれない自分が歯痒い事だってある。それでもセツナはいつだって柔らかく微笑むのだ。だから強くいられる。いや、弱気なところなど、ゼロには似合わない!
『痛イ……ナンナノ? 翅、チャント動キナサイヨッ!』
力強い羽搏きが二人の間に割り込み、距離を取る。やれ、折角感傷に浸っていたというのに、空気を読まない女の子だ。まぁ、いつだって女の子はお姫様でプリンセスなのだろう。だからこそプリンセスの『力』を欲しがった。黒薔薇だけでは飽き足らず、プリンセスとの永遠に恋した。普通の女の子なら可愛い夢だね、で済むけれど。
「やっと塩が効いたかな。その翅も身体も……朽ち堕ちていくと良い」
「手間ァかけさせやがって。そこの黒薔薇で茨と一緒にお寝んねしてな」
二人の言葉に怒りすら覚えるエンデリカ。大丈夫、まだ羽搏ける。こんな奴らに負けはしないッ! ばさっと飛翔し、彩りの花弁に黒薔薇をぶつけた――。
大成功
🔵🔵🔵
クロム・エルフェルト
*アドリブ・連携・その他色々歓迎
宙に舞うサクヤの花弁をそっと手に取る
……さっきの子達より質が悪い
只速やかに、ご退場頂きたい
翼での突進を何とか回避しつつ、縦横無尽に立ち回る
動きが速い、こっちは牽制と[カウンター]で手一杯
……なんて、ね。
無軌道に見える立ち回りに[結界術]の基点作りを隠す
円状に六つ、念を込めたサクヤの花弁を落とし、結界作成
結界効果限定、風の集束。
――サクヤ!!花びら、もっと!!
叫びながらUC発動
焔を纏い、近付くエンデリカに火傷を負わせ
尚も戦いながら結界の中心へ誘導、結界発動
舞い散る花びらを一点に集め、巻起すは強烈な火災旋風
焔の渦に捕らえたエンデリカを胴薙ぎに斬りつけよう
●
宙に舞うサクヤの花弁をそっと手に取った。ほんのり暖かくて、柔らかくて、心に沁み入るような花弁に勇気をもらう。視線はじっとエンデリカへ。
「……さっきの子達より質が悪い。只速やかに、ご退場頂きたい」
機械の翼を広げ、ばさっと鳥のように羽搏いたエンデリカの突進を転がりながらも必死で回避しつつ、縦横無尽に立ち回る。足場は常にサクヤが撒く花弁の上へ。黒薔薇には近寄らない。エンデリカの地を黒薔薇に染めながらの動きは素早い、こっちは牽制とカウンターで手一杯……なんて、ね。
特に決まった軌道など無いように見える立ち回りに、結界術の基点を作りを隠す。バレては作戦が水の泡、慎重に、大胆に、行動を起こしていく。ぐるりと円状に六つ、念を込めたサクヤの花弁を落とし、結界を作成。効果限定、風の集束。
「――ヤクヤ!! 花びらもっと!!」
『任せておくれ!』
結界を中心として、サクヤは天よりぶわりと花びらを舞い躍らせる。それらは黒薔薇を浄化し、また結界の中へと吸い込まれていった。そのまま憑紅摸の焔を纏い、近づくエンデリカを焼く。植物で出来た脚は良く燃えて、「キャアッ」と叫び声があがった。
そのままじりじりと引き付けては鍔迫り合い、引き留めては追い込んで結界の中心へエンデリカを誘導する。エンデリカも負けじと足元に黒薔薇を拡げ、機械に侵食された身体を軽やかに滑らせてクロムの細腕に茨による傷をつけていく。
『私ノプリンセスニ指図シナイデッ!』
「彼はあなたのものではないよ」
『アナタ達サエイナケレバ……今頃プリンセスヲ『分解』デキテタノニ!』
「……やっぱり、あなた、質が悪い。私は、彼を護る」
舞い遊ぶ花びらを一点に集め、巻起こすは強烈な火災旋風ッ! 下から上へ渦を巻いて、火柱がエンデリカを包み込む! 植物の脚が焼け、機械の翅はギシギシと音を立てて傷む。これにはたまらないと炎を薙ぎ払うようにしてエンデリカは結界から抜けようとするが、クロムがそれを逃がすわけもなく。
焔の渦に捉えたエンデリカをスパっと胴薙ぎで以って斬りつけた! 溢れ出るは真っ黒な血。それすら糧にして地が黒に染まる悍ましい光景に、サクヤもクロムもゾっとした。それほどまでに、この国を、この力を欲するか。サクヤは後方に降り立ちクロムに向かって叫ぶ!
『お嬢さん! 少し下がれるかい!?』
「サクヤ?」
言われた通りに下がれば、結界の周りは既に黒に染まっていた。そこからわき道に逸れるようにサクヤが花弁で路を作っている。
『君のお陰で私は動き回れている。だからこそ、君も自由になれるように』
「……ありがとう、プリンセス・サクヤ」
さぁ、その黒い薔薇も、鮮やかな花びらに退いて。私はまだ動ける。私を助けてくれた彼を護る為にも……何度でも此の剣を振るおう!
大成功
🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】
全てに愛され信じられるような、か…
でも君の言う愛も幸せも、全てが一方的
そんな君は永遠に悪役止まりさ
まずは前回に続きPhantomをサクヤの周囲に飛ばす
今回は純粋に彼をオーラ防御で守る為だけにね
速攻でケリをつけてくるから
もう少しだけ頑張ってほしい、サクヤ
焔の背に乗せてもらい
射程圏内までエンデリカに接近したら
ジャンプしながら大きく振りかぶった
Emperorを叩きつける…フリをする
敢えて大ぶりな動作で俺に注目させるのが狙いで
実は本命はこっち
梓から預かった零がコートの中から飛び出す
敵の捕縛に成功したら俺もUC発動
改めてEmperorを構え直し
場外まで吹き飛ばす勢いで力溜めた一撃をお見舞いする
乱獅子・梓
【不死蝶】
うわぁ、純粋そうな顔で悪趣味なこと言う娘だな…
プリンセスという存在に憧れているようだが
あいつには「悪のプリンセス」という
肩書きがお似合いだろう
綾と一緒に成竜の焔に乗り、一気にエンデリカに接近
飛んでくる黒薔薇の花弁攻撃は
焔の炎属性のブレス攻撃で
燃やしていきながら強行突破(範囲攻撃・焼却
その間にこっそりと綾に仔竜形態の零を託す
攻撃を仕掛けるフリをした綾に
一瞬でもエンデリカが気を取られた瞬間
綾の懐から零が飛び出し、ブレスを浴びせる
そして畳み掛けるようにUC発動
動きもうざったい花弁も全て封じ込める
さぁ、舞台は整えたぞ綾!
綾のUC効果が切れたら
すかさず焔の背でキャッチしてそこから撤退
●
エンデリカは夢見る永遠の少女。プリンセスの『力』に憧れて、それを欲しがる強欲の化身。瞬く星は揺らめきの随に、静かに立ち塞がる二人を見た。私のプリンセスに、あんな危ないことをさせるなんて。ユルセナイ……!
「うわぁ、純粋そうな顔で悪趣味なこと言う娘だな……プリンセスという存在に憧れているようだが、あいつには『悪のプリンセス』という肩書きがお似合いだろう」
「全てに愛され信じられるような、か……でも君の言う愛も幸せも、全てが一方的。そんな君は永遠に悪役止まりさ」
星屑の少女戦と同じく、綾は赤く光る蝶の群れであるPhantomをサクヤの周囲に飛ばす。今回は囮ではなく、純粋に彼を守る為だけに使う。サクヤは『またかい?』なんて顔をしたけど、それに首を振って応えた。
「速攻でケリをつけてくるから、もうすこしだけ頑張ってほしい、サクヤ」
『信頼しているよ』
成竜となった焔に乗り、梓は綾と共にエンデリカへと一気に接近! 黒薔薇をひと一片ずつ花弁に代えて戦意を奪おうとしてくるが、その花弁は二人には届かない。焔の炎属性を帯びたブレスでジュッと燃やしていきながら強行突破だ。
黒薔薇の花弁は前に後ろに上に下にと全方位から襲い掛かってくるも、焔は首を曲げて息を長く焼却していく。炎はどこまでも熱い。焼き尽くしている間、こっそりと梓は綾に仔竜形態の零を託した。
忌々シイと、サクヤの空を翔けながら舞うドレスアップ・プリンセスの花びらに心奪われるエンデリカは、その極彩の花弁に黒を叩きつけ領域を広げていく。
「嗚呼、私ノプリンセス! ドウカオ逃ゲニナラナイデ!」
今までの所業から何を言いだすかと思えばこれだ。やはり脳内までお花畑、それも真っ黒がこびりついている。どこまでいっても救えない、邪な悪のプリンセス。Phantomのオーラ防御で何とか凌いでいるものの、破られるのも時間の問題か。
綾は射程圏内までエンデリカに接近したら、ジャンプしながら大きく振りかぶったEmperorを叩きつける……フリをする。敢えて大振りな動作で自分に注目させるのが狙いで、本命は別にある。ぴょこ、っと梓から預かった零が綾のコートのふくらみから飛び出した!
虚をつかれたエンデリカが気を取られた瞬間に、零は絶氷のブレスを彼女に浴びせる! 「キャアッ!」っと狼狽えたエンデリカは氷を振り払うように腕を振るうが、氷はミシミシと植物の脚を凍らせ、機械の翅を冷たくさせる。
「氷の鎖に囚われろ!」
畳み掛けるように梓は【絶対零度】を発動、エンデリカの動きを止め、うざったい花弁も、全て封じ込める。黒薔薇の力を振るえないエンデリカは、黙っていればまるで可愛いお人形のようなのに、悲しいかな……このプリンセスは何もかも真っ黒だ。思考も嗜好も試行も。なにもかも。
「さぁ、舞台は整えたぞ、綾!」
「はいはーい!」
エンデリカの捕縛に成功した梓の合図を貰い、綾は己がヴァンパイアの血を一時的に増幅し、全ての能力を上昇させる。代償としてしばらくの後に昏睡状態に陥ってしまうのだが……何、それまでにエンデリカを何とかすればよいだけの事。
改めてEmperorを構え直し、場外まで吹き飛ばす勢いで力を溜めた一撃をバッサリ心臓から肩へかけての切り上げをお見舞いする! ぶしゃあっと溢れ出る真っ黒な血。その血でまた大地が穢れてゆく。トドメには至らずとも、エンデリカもかなりの深手を負った。最早マトモに戦えまい。そしてこちらも。
「梓~、あとは……任せ、――」
「綾っ!」
昏睡状態に陥った綾を抱き留め、梓は焔と共に後方へ避難。その道はサクヤが切り開いてくれた。エンデリカ、あの娘はプリンセスとひとつになりたいと言っていた。愛しい者と同化したいという気持ちは分からないでもないが、あの娘が願うそれは絶対に叶わない。
猟兵が居る限り、プリンセスを護ろうとする意志がこの世界にある限り……サクヤがこの彩と陵の国を見捨てることはないだろう。だから綾、ほんのしばらくだろうけど、安心して眠れ。次目が覚めた時は、屹度何もかもが終わってるさ――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ココレット・セントフィールズ
黒薔薇のエンデリカ…「あなたはあくまで私のもの」_ね。
まさしく花言葉通りの醜い思想の持ち主だわ。
わたくしにはまだ解らない感情だけれど、独りよがりなその愛の成す形は醜悪よ。
わたくしの従者は確かに「わたくしのもの」ではあるけれど、
そこに親愛という名の愛を欠いた覚えは一度としてないわ。
さぁ、わたくしの従者、ディア。
その忠義、美しいと称して間違いないわ。
続けて命じるわ。今よ、行きなさい【優雅に昂れ、美しき忠誠心】!
そしてサクヤ様にお願いさせて頂くわ。
必ずあなたを守るわ、だから_1分間だけわたくしを守って頂戴。
わたくしの目指す場所を先ゆく貴人…。
敬愛と尊敬を込めて。
ディアリス・メランウォロス
【お屋敷】
プリンセスが欲しいと思うのは良いけれど、君は中々激しい愛し方をしそうだね。
しかし、相思相愛が一番だよ。
剣を構え、エンデリカを見据えて微笑む。
レディはお淑やかにするものさ。
お嬢様を護りながらの戦いは継続、隙を見て攻めるよ。
お嬢様がユーベルコードで気絶なされた瞬間にでも隙ができると良い、そこは思いっきり突かせてもらおう。
えぇ、お嬢様。お任せください。
万事優雅に事を済ませます。
●
赤い薔薇は愛情を、白い薔薇は純潔を、黄色い薔薇には友情が指し示されている。では、何者にも染まらない漆黒の薔薇が示すものとは?
「黒薔薇のエンデリカ……『あなたはあくまで私のもの』――ね。まさしく花言葉通りの醜い思想の持ち主だわ。わたくしにはまだ解らない感情だけれど、独りよがりなその愛の成す形は醜悪よ」
全身に舞い落ちてくる花びらを受け、ココレットはその内のひとつ……ボルドーよりも更に深い紅色の花弁をぎゅっと握りしめた。植物における『黒』とは本来、深い赤のこと。エンデリカのように炭を零したような真っ黒ではない。屋敷の庭師が教えてくれた豆知識を、ひっそりと思い出す。
「わたくしの従者は確かに『わたくしのもの』ではあるけれど、そこに親愛という名の愛を欠いた覚えは一度としてないわ」
勇ましきその力を正義の為に振るうことへの敬愛も、良き話相手となってくれる友愛も、全てを内包した親愛だ。何者にも侵されないその心はまさに王者の風格。ココレットが生来持った気質がそうさせるのだろう。それに少し恥ずかしそうにしているディアリス。表情は全く以ていつも通りだが、肩がぷるぷる震えている。
「お嬢様……そのように考えて下さっていたとは恐縮です。このディアリス、感銘を受けました。身に余る光栄です」
「喜んでいる場合ではなくてよ。さぁ、わたくしの従者、ディア。その忠義、美しいと称して間違いないわ。続けて命じるわ。今よ――行きなさい。何事も優雅に行ってこそ、わたくしの従者!」
「えぇ、お嬢様。お任せください。万事優雅に事を済ませます」
ディアリスに力がどくどくと流れ込んでいく。ココレットの能力で跳ね上がった怪力、瞬発力、瞬間的思考に、チャキ……と剣を構え、ココレットを護りながらの戦いを継続。隙を見て攻め入ることにする。
ニィと笑ったエンデリカは、溢れ出る蔦から戦意と生命力を奪う黒薔薇の花びらを生み出し、突風のようにディアリスに吹き付ける! 咄嗟にココレットの前に立ち、花弁から守った。あって良かった武器受け、黒剣を旋風の様に回し斬り刻んでゆく!!
『アナタ達……邪魔……プリンセスト私ノ、愛ノ軌跡ヲ阻マナイデ!!』
「プリンセスが欲しいと思うのは良いけれど、君は中々激しい愛し方をしそうだね。しかし、相思相愛が一番だよ。君の愛し方では、プリンセスは幸せにはなれない」
上空を飛ぶサクヤにココレットは手招きをして、降り立った彼にお願い事をひとつ。こんなこと、普通の……守られるだけのプリンセスにはお願いできないことだけど、サクヤになら。
「必ずあなたを守るわ。だから――、一分間だけわたくしを守って頂戴」
――わたくしの目指す場所を先ゆく貴人……敬愛と尊敬を込めて。いつかわたくしもその境地に至れるように。今はその力、お借りしますわ。
ガクっと力が抜けて倒れるココレットを、サクヤは優しく横抱きにして再び空へと舞い上がる。ディアリスは今も懸命に戦っている。その援護もサクヤの重要な役目。天から地に向け、声を張る。
『彼女の事は私に任せてくれ! 君はその黒薔薇の君を!』
「頼みました、プリンセス・サクヤ」
これまでの戦いで軋む翅と焼け爛れた脚で必死に動くエンデリカは、逃がさないとばかりに黒薔薇の花弁をサクヤ達に向ける。しかし、サクヤは宙を自在に舞いそれを躱していく……そして強敵から視線を外せば、狩られるのは自分なのだとエンデリカはまだ気付いていない。
強力な能力を付与されたディアリスは跳ねるように俊足でエンデリカに近づき、黒曜剣でまずは一発頭を横殴りに叩き、脳震盪を起こしてぐらぐらと揺れる身体に刃の切っ先を向ける。ココレットの許可は出ている、此れを抜いた以上……敗北は存在しない!
黒い血を流すエンデリカの首に、容赦なく一刀を断ち入れる。ごろりと転がった首からはシャアアアとシャワーのように黒い液体が流れ出たが、やがてそれは透明な水に変わり、エンデリカは纏っていた服だけその場に残し、頭も身体も黒い煤となって風化した。
『起きて、お嬢さん。この国に彩りが戻ったよ』
「ん……ディア、終わったの?」
ドレスアップ・プリンセスで黒く染まった部分を全て浄化しきったサクヤは、目を覚ましたココレットをディアリスの待つ地上へと送り届ける。まだほんのり眠たいが、事態の収束を確認しなくては。其処には優雅に、気品漂う笑顔の従者がいた。
「滞りなく。お嬢様のお力添えのお陰です」
「そう、なら良いの。サクヤ様もご協力ありがとう」
『私の方こそ、ありがとう。君たちの行く末にもまた、彩りがあるよう此処から祈っているよ』
そうして、一体の猟書家がまた倒された。しかし、敵はオブリビオン。過去から現代へ蘇るもの。戦いはまだまだ終わりではない――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年11月15日
宿敵
『エンデリカ』
を撃破!
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