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薔薇の女王

#UDCアース

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#UDCアース


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 それに気がついたのは、部活動の指導の為に朝早くやってきた男性教師だった。
 校門からグラウンドを見れば、遠くに見える桜の木に違和感を感じた。
 急に花が咲いたとか、倍に伸びたとかそんなわかりやすいものではなく、なんとなく変だと感じる、そんな些細な変化。
 ああ、そうかと男は納得した。
 幹に何かくっついていて、それが幹の太さを一回り近く大きく見せているのだ。
 目の悪い教師は眉間にシワを寄せて桜を凝視する。グラウンドの端だ。輪郭がぼやけていててよくみえないが、あれは、赤くないだろうか。
 そしてここまで漂ってくる、鉄のような臭い。
 男の喉仏が大きく上下に動いた。
 血の臭いだ。
 男が最悪の予感を、まさかそんなと否定しながら桜に向かっていき。

 それを、目にした。

●グリモアベース
「富歩高等学校で起こった猟奇殺人事件って知ってるか、お前ら。まあどっちでもいい、資料配るから目を通しとけ」
 何時も通りやる気のなさそうな藤堂・藤淵がお決まりのように紙の資料を配りだす。

 富歩高等学校連続殺人事件。
 都内にある私立高校、富歩高校で4人の女子生徒が行方不明になる事件が発生。
 翌日、上記の内3人が校内に植えられた桜の木に磔にされて死んでいるのが発見された。
 遺体は全て生前に加えられた激しい暴力により損傷。まるで獣にでも襲われたような凄惨な死体であった。
 直接の死因は全身に打ち込まれた杭によるもの。
 全員の口腔内には薔薇の花弁がぎっしりと詰め込まれており、猟奇的な殺人として話題を呼んだ。
 1人だけ見つかっていない白木・マイという女子生徒が重要参考人として捜索されるも、事件から半月たった今も見つかっていない。
 当初は猟奇殺人だとして捜査されていたのだが、先日同じような手口、より過熱した遺体の損傷具合で4人の男の死骸が高校の近くの繁華街で発見されるに至ると、捜査は一変。

「人間じゃ不可能な犯行だったんだよ」
 今度は磔ではなく串刺し。アスファルトに打ち付けられた巨大な杭によって、肛門から口まで。杭が抜けた口腔内にも薔薇の花弁が無理矢理に詰め込まれていた。
「こんなん重機でももってこねえと無理。かと言って遺体発見現場にそんなもの持ち込めるスペースもなけりゃ、目撃者もおらず防犯カメラにもうつってねえ。更には杭の素材がな、木でも石でも金属でもねぇ。生モンだったんだよ。前の女子生徒を磔にしてた杭ってのと同一の素材だったんだと。ていうことで警察ではお手上げとなって俺たちにお鉢が回ってきたわけ」
「要点を言え。結局俺たちは何をすればいい」
 1人の猟兵の意見に他の者達も頷く。
「1つ。この学校の奴らを調べろ。教職員、生徒、全員揃って何かを隠してるってのが警察、現地協力組織双方の見解だ。だが頑なに口を割らねえ。まっとうじゃない手段でどうにかしろ。2つ。敵はほぼ間違いなくUDCがらみだ。ソイツを見つけて確実に始末しろ。以上」
「学校の人間を調べる方法」
「任せる。現地の協力組織に頼めば学校に潜入出来るよう取り計らってくれるとよ。ソレ以外でやるなら、校外で生徒や教員に近づく、端末パクってSNSやらを拝見する、とかじゃね」
「この白木・マイは?」
「わからん。加害者かもしれんし被害者かもしれん。警察とUDCが行方を捜査しているから情報が入ったら知らせる。お前らの役割は学校関係者の調査だ」
「4人の男性は?」
「学校とは関係のないチンピラのチームだな。未成年のガキどもだが、かなり派手に色々やらかしてたみたいだ」
「彼らと先の女子生徒たちの関係は?」
「わかんねえ。言ったとおり学校関係者たちからの聞き込みが難航しててな」
 敵――UDCに直接つながる情報が殆ど無い以上、あからさまに怪しい学校を調べるしか無いということだ。
「もう質問はねぇか? わかんねえなら直接ガキどもか教師達から聞いてくれ。俺の掴んでる情報よりまともなもんもってるだろうよ。たぶんな。それじゃあ頑張ってきてくれや。土産は女教師の連絡先とかでいいぞ」


サラシナ
 拙作に目を通していただきありがとうございます、サラシナです。
 学校潜入という王道かつ浪漫あふれるフラグメントを見て今回の話と相成りました。

 基本的には調査が主となる話ですので、皆さんお好きなように学校で好き勝手してみてください。もちろん、ソレ以外の調査も歓迎いたします。

 今回は分岐らしいものはありません。オーソドックスな調査&邪神の殲滅任務となります。
 それでは皆さんの熱いプレイング、首を長くしてお待ちしております。
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第1章 冒険 『潜入!秘密の学園生活!』

POW   :    学校でトラブルを起こしたり首を突っ込んだりして情報を炙り出してみる

SPD   :    邪神の手がかりになりそうな場所や物品などを歩き回って探してみる

WIZ   :    学校関係者(生徒や教師などなど)に扮して人から情報を集めてみる

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セリオン・アーヴニル
【選択行動:POW】
前提として校内移動時は防具の迷彩機能とスペルカードの隠匿効果を常時発動。

校内掲示板又は人が必ず通る一番目立つ場所に『つぎはあなたのばん』と血文字に似せた字で書きなぐった貼り紙を設置。
遠目でそれを見る連中の挙動を観察し、特に反応が顕著な奴を標的に、
そいつ、又はそいつらが単独になったタイミングを狙って拒否や煮えきらなくとも、半ば強引にでも口を割らせる。
「喋らなくても構わんが、その時は覚えておくと良い。俺は何があろうと、お前を、『必ず』見捨てる」
情報源はお前だけでは無いからな?
と、追撃の一言を与えつつ。

入手した情報は、他の猟兵に展開して回り、必要に応じてその時々のフォローも行う。



 学校というものは意外にも静かなものだ。休憩や登下校の時間ともなれば人でごったがえすが、授業中ともなれば人々は皆教室や特定施設に引っ込んでくれる。廊下をふらつくような者はまずいない。たまに教師のような者がなにを目的としているのか巡回しているが、迷彩とスペルカードでもって光学的にも、魔術的にも高度な隠密を行っているセリオン・アーヴニルを見つけることは出来なかった。
 
「なんだよこれ」
 そこに集まった生徒達がざわめいていた。
 時間は少し過ぎて昼休み。誰もが通る下駄箱前の掲示板に、大きく血のようなもので書かれた文字があった。
『つぎはあんたのばん』
 おどろおどろしい文字でそんなことを書かれては嫌でも半月前の事件を思い出すし、耳ざといものならば繁華街で起こった4人の事件とも関連付けるだろう。
(誰かが釣れればいいが、さて)
 それを観察するのは、落書きの下手人たるアーヴニル。仕掛けは単純にして効率的。複数人に聞き込みをするよりもこうして不特定多数に揺さぶりを駆けるほうが早い。
 果たして。
(女、か)
 血の気の失せた顔をした女子生徒が1人。口元を抑えながら、けれどもなんともない風を装って人混みから離れていく。気付かれないようにそっと尾行をして、丁度人気が絶えた瞬間を見て口を抑えて暗がりに連れ込んだ。
「騒ぐな。お前の知ってることを全部吐けば開放する。わかったか」
 唸り声をあげて女子生徒が身悶えする。こちらが男だとわかったからか、その暴れ方は激しく、必死であった。暴行でもされるとおもったのだろう。目に涙を溜めてアーヴニルの拘束から逃れようと足掻く様は憐れみすら感じる。
 だがこちらもこの世界の警察のように未成年だからと温厚に話を進めるつもりは一切ないし、時間もない。
「つぎはあんたのばん」
 先程のそれを繰り返してやれば、急激におとなしくなる。殴るより早い。
「その反応、あの事件について知っているな。吐け。洗いざらいだ」
 激しくかぶりを振る。
「喋らなくても構わんが、その時は覚えておくと良い。俺は何があろうと、お前を、『必ず』見捨てる」
――情報源はお前だけでは無いからな?
 囁くように言葉を添えれば、女子生徒は遂に陥落する。
「マイは、私の友達だったんです。でも、あの3人に虐められてて……相談されたけど、私なにもできなくて……それで、こんな事になって。きっとマイが復讐したんだ。それで、何も出来なかった私も、殺そうって、きっとそうなんだって」
「大人は。相談しようと思わなかったのか」
「薔薇が、あったから」
「薔薇?」
「この学校の決まり……何かしら薔薇を見かけたら、それは秘密にしなきゃ駄目なことなんです。誰にも言ったら……ああ、私、こんな事喋ってしまって。私も殺されるんだ。あ……あぁああ」
 この世の終わりのように泣き崩れる女生徒は、もはや何も語れなさそうだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鏡島・嵐
判定:【WIZ】
学校ぐるみで隠さねぇといけねえって……どんな大それた秘密なんだか。
人の噂とかあれこれ詮索するのは趣味じゃねぇけど……そうも言ってられねぇよな。

年齢的に適当だから、生徒として件の高校に潜入。
なんかやべぇ事件あったんだって? 被害に遭った女子ってどんなだった? まだ行方不明の女子がいるって聞いたけどどんな奴?
……なんて話題は教師じゃ口割ってくんねぇだろうから、話好きそうな生徒を捕まえて尋ねてみる。〈コミュ力〉技能も駆使して、あまり目ェつけられねえ程度に。
あとは《彷徨える王の影法師》で、適当な他の生徒がSNSやってるところを覗き見。
こういう調査は手間かかるけど、コツコツやるさ。



(学校ぐるみで隠さねぇといけねえって……どんな大それた秘密なんだか。人の噂とかあれこれ詮索するのは趣味じゃねぇけど……そうも言ってられねぇよな)
 不穏な空気を感じつつも、鏡島・嵐は学校に潜入する。
 協力組織の口添えによって彼は他の猟兵たちと同じく、生徒として高校に紛れ込むことに成功していた。
 そこそこの高身長、色黒の肌、よく通る声は学生たちにも好評で、コミュ力もある彼は学校カーストでいえばそれなりのグループの中に受け入れられていた。
(こういうのは教師じゃ口割ってくんねぇだろう)
 学内で堂々と聞くのも憚られる。それとなく近づいた男子生徒と2人きりになれる状況を作り、情報を引き出すことを試みる。
「そういや、なんかやべぇ事件あったんだって?」
「あー、うん。鏡島君えらいタイミングで来ちゃったね。こんな時期に転校ってことは、親の都合とかそういう?」
 他にも被害にあった女子、行方不明の白木のことを聞くのだが、のらりくらりと話題をそらされていると感じる。質問に質問を返すなとツッコミたいのをぐっと堪えて、核心へとメスを入れることにする。
「……これってもしかして振っちゃ拙い話題だったり、するのか?」
「……鏡島君さ、あんまこの話題、出さないほうが良いよ。アンタッチャブルっていうか、禁忌のたぐいだから」
「きんき」
 子供が言うと異常に浮いたその言葉を鏡島は反芻する。滑稽、と笑うにはこの男子生徒の顔は嫌に真剣だ。
「うん。薔薇が関わったらね、見ざる言わざる聞かざる、それがこの学校の暗黙の了解なんだ。不気味だろうけど、それさえ守ってればいい所だからさ。頼むからコレ以上は、な?」
「悪い」
「良いんだよ。新しく来た人に教えるのも先達の努めってやつ」
 表情を切り替えて、ややぎこちなくでも明るく笑う男子生徒は良い人なのだろう。だからこそ、もう一度、ごめんと内心で謝る。

 影を件の生徒に貼り付けた。行動、もしくはネット上での会話を覗き見るためだ。
 調査のためとは言え人の私生活を暴き見るような悪趣味に抵抗がないわけではない。けれどもこれもまた彼と、彼を含む人々の安寧の為。

『鏡島君に軽く学校のルールを注意しといた』

『おつー』
『どうだった』

『不思議そうだったけど納得してくれた、かな? 自信はない』

『そらまあ、外から来た人にはわかんねえよな。俺もなんなんだって思ったし』

『俺も半信半疑ではあるしな。でも、あんな事件起こっちゃったらな……実際怖い』

『実際怖いw』

『茶化すなよ。ぶっちゃけどう思う? なんか学校以外にも殺人事件起きてるらしいじゃん』

『あー、アレな。まだ公表はされてないけど、あの被害者、俺と同中でさ。色々聞くけど、そいつらあんましいい噂ねえんだよ』
『高校にも行かねえで遊び歩いてて、薬やってるとか、女車に連れ込んでマワしてるとかそういうヤベー噂しか聞かない』

『世紀末かよ』

『世紀末ですな。で、まあ噂なんだけど、コイツラの口にさ、あの3人と同じ様に薔薇のはなびらが詰め込まれてたんだと』

『世紀末でサイコパスかよ。終わってんなこの国』

『何をいまさら』

『ハハハこやつめ』

『ハハハ。まあ、そういうことであんまその件も首突っ込まねえほうが良いぞ。でないと次はお前が、ってことになりかねん』

『やめろよこええじゃん』

『マジな話しさ。今までは噂とか実物無かったから俺もそれほど信じちゃ居なかったが、こうして死人がきちんと出てくるとな。薔薇には近寄るな、ってのはマジだとおもうよ。冗談ごとじゃねえさ』

『だな。気をつけるわ』

『おう。鏡島にもきちんと言っといたほうが良いぞ』

『そうするわ』

 話題が変わって男同士のバカ話に移行しても、鏡島は男子生徒が眠りにつくまで監視を続行した。

成功 🔵​🔵​🔴​

イルナハ・エイワズ
核心部に迫るのは他の人たちに任せるとして
まずは範囲の絞り込みをしましょう

学校周辺もしくは繁華街を縄張りにしてる子たちと
交渉して情報提供をお願いしましょう
情報に対応した報酬を十分に用意しておきましょう

カラス、猫などの動物と話し、情報収集をします
人やカメラには捉えられてなくても、目撃した子がいるかもしれませんからね
人名などキーとなる情報が拾えるといいんですけどね
役立つ情報があれば他の猟兵に伝えて活用してもらいましょう

目立つと小言を言われるので
周囲に違和感を与えない服装などで目立たないようにしておきます
調査にはユルにも第六感と野生の勘で協力してもらいましょう
ユルも頑張ったらおやつをあげますからね?



 学校から繁華街への道をとことこと歩いているのは、イルナハ・エイワズ。彼女は1人、いや1人と1匹でこの地を散策していた。
 無論、ただの散歩ではない。態々目立たぬようこの世界、国、地域で違和感を持たれない服装をして挑む徹底ぶりで挑むのは情報収集だ。
 彼女が情報源に定めたのは人ではなく、機械でもない。そもそも防犯カメラに映っていないという情報は既に得ている。
 目立たぬように、けれども的確に視線を巡らせて目当ての存在を探す。
(おかしいですね)
 違和感。
 彼女の目当ての存在が中々見つからないからだ。
 エイワズが探しているのはこの界隈を根城にしている動物達だ。猫、犬、もしくは鳥といった、物言わぬ目撃者達。
 しかしそれがどれだけ探しても見当たらない。
(これだけ人がいる場所なら、烏か野良猫の一匹くらいいてもいいものですが)
 見つかるのは人ばかり。事件現場周辺を物見遊山で撮る者や、うわさ話をする者は幾らでも見つかるが動物が居ない。

 長いことかけて見つけた彼女は家猫のミーと名乗った。見つけたのはユル。エイワズの相棒の竜だ。
『ああ、そりゃアンタご苦労だったねえ。自由猫の連中は皆逃げたよ。おかしな気配がするってんで、まきぞえをくらわないように暫く離れるってさ』
 喉をごろごろと鳴らしながらエイワズの持参したおやつを口にしつつ、どこか達観した風情で教えてくれた。
 ふくふくと良く肥えた毛並みの良いシャム猫だ。ここまで肥えるとシャム猫の優美さは無く、愛らしいお饅頭という風体だ。
『貴方は逃げないのですか?』
『アタシはいい加減歳だしねえ。それに飼い主を置いていくわけにもいかないでしょう? あの子はアタシがいないと何もできないからねえ、仕方ないわ』
『人間を守るおつもりですか?』
『そんなんじゃないわ。ただ、どうしようもないもんはどうしようもない。それだけ』
『……なるほど。お聞きしたいのですが、そのおかしな気配について、なにかご存知ですか』
『アタシは直接見たわけでもないし、噂しかしらないけど。それでいいかい?』
 ミーが自由猫や近所の猫から聞いた話曰く。
 夜中に建物の屋根を飛び回る変な生き物を見た。数は1。大きさは大体人と同じくらい。だがその跳躍力と膂力はどんな動物よりも優れていた。
 どうしようもなく厭な臭いと気配で、野良犬などより、猫狩りの人間より恐ろしげ。
 ソイツは人を何人も纏めて抱えながら嗤っていたのだそうだ。心底楽しそうに。壊れたように。ゲラゲラと。
 目撃情報はそこまでで、事件の現場までは恐ろしくて誰も見ていないらしい。
 懸命だ。動物は人より余程命の危機に敏感である。
(態々防犯カメラに映らないように行動した? 知能は人並みに残っているようですね)
『ネグラに心当たりは?』
『わからないねえ。好奇心猫を殺すとは人間もたまには上手いことを言うけど、実際そうさ。危ないところには近づかない。離れる。それが鉄則。お嬢ちゃんもこんなところ早く離れたほうが良いよ。まだ若いんだから』
『お心遣い感謝いたします。ですが、私もやらねばならないことがあるので』
『そうかい? それは危ない事をしてまですることなのかい? 駄目だよ、命を無駄にしたら』
 心配してくれるミーに改めて礼を言って、あむあむとおやつを齧るユルを引き連れてエイワズは調査に戻るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
薔薇を使った猟奇殺人…何らかのメッセージでしょうか?
薔薇の色や花言葉も関係しているのかもしれませんが、まずは情報収集ですね

殺害された四人の男性…彼らと交友関係にあった学校内の不良グループと校外で接触し、情報を集めてみましょう

調べる内容は男性四人の最近の動向や犯罪履歴、被害者女性達との関係性でしょうか

警察関係者では警戒されすぎるかもしれませんし、被害者遺族に調査を依頼された私立探偵と名乗って接近、「礼儀作法」に気をつけて質問しましょう。
公僕ではないと判断されて荒事になったら、彼らの動きを「見切り」「怪力」で「優しく」制圧し、再度質問します
…あまり愉快な内容でないのは想像がつきますが…



 殺害された不良グループの繋がりから着手したトリテレイア・ゼロナインだが、調査は難航していた。
(同じ学校、となるとそれらしい人がいませんね)
 素行の悪いものが1人はいるだろうと当て込んだのだが、少なくとも件の高校の生徒でそういう人物は見当たらなかった。
 繁華街を練り歩いても見かけるのは他校の制服を着たものか、もしくは関係のない不良ばかり。
 それならそれで構いはしないと死亡した4人とつながりのある人物から優しく話を聞くことにした。

 路地裏に響く悲鳴は、潰れたカエルのようにくぐもっていてけして表通りまで届くことはない。
「あまり手荒なことはしたくないのです。貴方がたも流動食のお世話にはなりたくないでしょう?」
 片腕で1人の若者を締め上げながら、トリテレイアは優しく残りの2人のチンピラに声をかけた。身長3m近い大男に喧嘩を売る度胸は大したものだったが、命のやり取りを潜り抜けてきた戦士を相手にするには彼らは余りにも非力だった。
「な、なんなんだよ、おめえ」
「ですから、先程も申したとおり探偵です。被害者遺族に依頼されて今回の事件を追っています。何かご存知ありませんか。彼ら、もしくは彼女らについて」
 片手で渡すのは被害者達の顔写真と簡単な経歴がまとめられた資料。
「け、警察に全部話したよ。俺らはしらねえって」
「ふむ……では、彼らはどこから遊ぶ金を得ていたのでしょう? 聞いた話ですと随分と好き勝手やっているようですが、資料を見た限りそれほど裕福というわけでも、仕事をしていたようにも思えません」
 古今東西、若者が好むような遊びをするのならば相当な金が必要になる。万引きや強盗、そういったあからさまな事件を起こしていては警察の厄介になることは必然。だというのに彼らは捕まることもなく、表の世界を闊歩していた。パトロンがいたのか、それとも捕まらない理由があったのか。
「ヤ、ヤクザにでも飼われてたんじゃねえの。やたら改造されたワゴンとか、なんかカメラとかいいの持ってたな」
「あれ、この女みたことあるわ」
 不意にもう1人のチンピラが資料を見ながら声をあげた。
「それはいつ?」
「あ、ああ。事件が起きるよりもっと前だけど、タツ……この死んだ4人の1人なんだけどさ、そいつが最近できた女ってスマホの写真見せびらかしてた記憶があるよ。お嬢様だから中々会えないとかなんとか、愚痴ってたっけ」
「実際、富歩高校の生徒はこのあたりでは見ませんからね」
「アイツらは進学校のボンボンだからな。ここらに着たら即カモだよ。ちっと脅してやりゃ言うこと聞くから、あそこの制服は財布君って一昔前は呼ばれてたな」
「だから来なくなったんでしょう?」
「まあ、そうだな。そんなんと付き合ってるとか言うからおかしいなとは思ってたんだよ。だから覚えてたんだけど」
「彼女から金を巻き上げていたんでしょうか?」
「さあ、そこまでは知らねえけど、大分熱あげてたみたいだぜ? 金づるにしてたようには、見えなかったなあ。むしろタツが貢ぐ側になりそうな勢いだったし」
 殺害された女子生徒とチンピラには繋がりがあり、同時期に殺された。未だに1人は見つかっていない。
(想像どおり……碌でもない事があったのでしょうね)
 段々と明らかになっていく事実に、トリテレイアは暗澹たる気持ちで調査を続行するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

碧海・紗
高等学校、みなさんがお勉強されているところですね?
制服って可愛いですよねぇ…
………校内を探検するのには制服を着ていた方が怪しまれませんよね?ねっ?

と、言うことでこの高校の制服を着ます。
わぁ…リボンもスカートも、とっても可愛らしい!

あっ、そういえば調査でしたね
忘れて何ていませんよ?
【第六感】でピンときたところを片っ端から探検しましょう!
音楽や絵画も出来るだなんて楽しそうで羨ましい…
人体模型は一瞬本物かと思ってびっくり!

私の大好きな本がいっぱいある「図書室」はどこでしょう…
絵や写真のある図鑑というものを見るのが好きなんです!
少しくらい読んでいても怒られないですよ、ね?

そう、これは調査なのですからっ



 スカートをつまんでくるり。
 つまんだ手を離してもひとつくるり。
 零れる笑顔は童女のような満面のそれ。
 碧海・紗(25)だ。彼女は組織によって転入生(25)として件の高等学校に潜入を果たしていた。
 ちなみに高等学校とは主に15歳から18歳の子供が通う教育施設である。概念上19歳以上でも通えるは通えるが、それは本当に稀有な例であることをここに追記しておく。因みにこの世界には子供になってしまうような薬もなければ謎のパワーもない。
 童顔だからいける、と思ったのだろう。実際彼女の顔は実年齢よりは明らかに若く見えたし、その挙動は成人しているとは思えぬほどあどけなかった。
 現地協力組織の担当者も「ああ、まあ、うん……いけるんじゃないですかね?」と胡乱な感じで彼女のカバーストーリーに学生(18)とつけて送り出したのだった。
 実際彼女は割りとすんなり受け入れられた。
 25歳の女性が学生のコスプレをして堂々とやってくるという奇天烈な真実より、少し大人びた子だという方が余程現実的だ。
 事実は小説より奇なり。この真実を知られたら、学生たちは、そして碧海はどういう反応をするだろうか。否、碧海はきっと気にしなかっただろう。
 何故なら彼女は今、学生生活を最高に満喫していたのだから。
(ふふ、リボンも、スカートも、とっても可愛らしい)
 終始笑顔で、楽しいことだらけと言った雰囲気の彼女はそれはもう学生たちから構われた。どこから来たのかだの、趣味はだの、中学は何処だったのかだの、アドレス、電話番号、SNSしてる? 好きなタイプは? 等々。
 そういった転校生への洗礼を、これまた彼女は楽しんでいたのだが。
(あ、そうです。調査、調査。忘れていませんよ?)
 誰に言い訳をしているのか。
 わたわたと立ち上がると、追いすがる生徒たちに謝罪しながら休憩中の校内を走り回ることにしたのだった。
 彼女の第六感がピーンと反応する!
(これは! 音楽の勉強をする部屋ですね)
 ゴッホが、ベートーベンが、いかつい顔をして彼女を睨んでいる。
 さらに彼女の第六感がピピンと反応!
(これは! 絵の勉強をするところですね。知ってます、これは石膏像。皆で囲んで写生とかするんですよね。ああ、私もやってみたいな)
 さらに彼女の第六感がピピピン!
「キャッ!? ああ、なんだ、人体模型という奴ですね……うわぁよくできてますね」
 さらに彼女の第六!
(ここに違いありません! いざっ)
 そうして彼女は目当ての場所へと足を踏み入れて、下校時間が過ぎても出てくることはなかった。
『図書室』
 部屋の前にはそう書かれていた。

失敗 🔴​🔴​🔴​

日月・わらび
学園ぐるみの秘匿がうまくいってるあたり犯人は偉い奴だの
それもぶっちぎりで偉いんじゃなくて中の上あたりの権力者!!
テレビドラマで見た!!

生徒や先生の周りを回るのもいいけど
圧力が薄そう且つ屈さなさそうなところに斜めから突撃するのもやり易いと思うのさ

【POW】
そんな訳で用務員に襲撃するんだの

学園全体マップから掃除スキルの観点で
清掃で単独になり易いポイントを探り
用務員に襲撃するんだの

スリッパサイコキネシスでガッて峰打ちして穏やかに眠って貰うの

狙いの本命は用務員の業務日誌とスマホ
情報統制の甘そうな過去やら鍵垢!!
徘徊してる用務員を仕留めたら忍び込んで見れると思うのさ
用務員が常時複数居る学校は少ないからの



 閃いた。きゅいきゅい。
「学園ぐるみの秘匿がうまくいってるあたり犯人は偉い奴だの。それもぶっちぎりで偉いんじゃなくて中の上あたりの権力者!! テレビドラマで見た!!」
 ばばーん。
 きゅいきゅいと道を歩きながら持論を展開したのは日月・わらび13歳。
 ちなみに高等学校とは主に15歳から18歳の子供が通う教育施設である。概念上19歳以上でも通えるは通えるが、それは本当に稀有な例であることをここに追記しておく。因みにこの世界には急に18歳になるような薬もなければ謎のパワーもない。
 因みに上記の断りに意味はない。
 多少小さい子がいようが、まあそういう子も居ると……思われなくも……あ、だめだわ年下に見られるわこの13歳。
「おや、どうしたの? ここは小学校じゃないよ?」
「ふぅぅん!」
「ぐほぉ!」
 迷子かと日月に優しく声を書けた用務員、生柳・悟(46)は急遽斜め45度から振り下ろされた謎のスリッパによって盆の窪を叩かれて昏倒した。
「安心するの。峰打ちスリッパサイコキネシスだ」
 なんて?
 ともあれ、彼女とて無計画に学内に侵入し、通り魔的に用務員さんを手に掛けたわけではない。
 コレにはきちんとした理由があり、そのために致し方ない処置だったのだ。いわば超法規的措置。
 きちんと下調べをした計画の通り、今の犯行を誰かに見られた様子はない。であれば直ぐ様証拠の隠滅を図る。
 用務員、生柳・悟(46)を引きずっていき草むらの中に遺棄する。念のために簀巻きにして目覚めてもすぐ助けを呼べないようにしておく。なに、用事が済んだら開放するのだ。少しの間の辛抱だ。
 そうして主無き用務員室に侵入を果たした日月は、今さっき手にかけた被害者の業務日誌、及びスマホ内の鍵垢へとその魔手を伸ばす。
 ざっと調べた所おかしなところは見られない。当然だ。記録に残るようなものに危険な物は書かないだろう。SNSの登録は無し。今どき珍しいほどネットに疎い男のようだった。空振りだったかと日月は嘆息して、ふとおかしな物を見つけた。男の私小説のようだった。
 文中に出てくる『私』というのは多分用務員そのものだろう。仕事や学校周りの情報がそのままだ。固有名詞を避けるように書かれてはいるが、見るものが見たらはっきりとわかる。
 そこには1人の女子生徒についての記述が散見された。
 まるで恋い焦がれる少年のように男は彼女の事を目で追って、情感たっぷりに想いを綴っていた。誰も見るものの居ないブログで。
「ロリコンだの」
 彼女は文武両道、容姿端麗、美辞麗句がいくらでも付くような出来すぎた女性だった。これが創作のキャラクターだったら赤点をもらうキャラ造形だ。
 兎にも角にも彼女はあっという間に人々を支配して、学校を掌握していく。まるでそれは病原菌が人体を犯していくさまのようで、ぞっとするものがあったという。『私』こと用務員もそのさまを『恐ろしい』とも『悪魔的』とも表現している。けれども『私』は彼女から目が離せなくて、自分もその魅力的な糸に絡め取られているのだと。
 薔薇。
 彼女が登場する時は決まってこの表現が使われる。何かの比喩だろうか。それとも、今回の事件に関係するのか。
 出来すぎた話だ。まるで御伽噺のような出来すぎた女と、あっという間に支配下に入る人々。しかし、どうにもこの異常な学校にはお似合いの物語ではなかろうか。
 彼女は生徒会長であるらしい。なるほど確かに、中の上あたりの権力者と言えなくもない。
 日月は次の目標を定めて用務員室を後にした。

成功 🔵​🔵​🔴​

霄・花雫
【輝彦と】
ひゃー、ちょっと悪いコになったみたい
ちょっぴり楽しいね

ちょっとくたびれた感じの先生狙おっかな
こう、ぐいぐい行かれたら断れなさそうな感じの

小さくても大人っぽく見えるように服を整えて、
ちょっぴりお化粧もしておめかし
「ね、おにーさんなんだかちょっと疲れてるみたい?あたし、イイ所知ってるの。一緒に行こうよ」
腕を絡めて、甘く作った声で誘いをかける
大丈夫、ダンスでも情熱的な演技は必要だから
【誘惑、パフォーマンス、挑発】

路地裏のイケないお店の方へ
あたしもドキドキしちゃうけど、顔には出さないよ!
手を下ろして恋人繋ぎみたいに先生の指に絡めて見せて、

わ、わー……輝彦さんすっごい……
本物のヤクザさん感……


嶋野・輝彦
●POW
トラブルで情報得る
教師に美人局

下校途中の教師を
霄花雫f00523に誘惑させる

誘惑してる所を教師の首根っこ掴んで
恫喝、存在感、コミュ力で
何やってんだゴラァ!
で路地裏連れ込む

恫喝、存在感、コミュ力
わかってんのかコイツ未成年だぞ
学校に垂れ込むぞ
白木マイと学校の外に出せない資料、生徒に聞き込みしても良い兎角調べてその辺の情報もってごいやぁ

ヤクザの振りして
おじさんさぁ、自分とこのシマで訳わからん殺人とか困る訳よ
どうしたらいいかわかるぅ?

恫喝、存在感、コミュ力
わかってんのか?おい?
蹴り入れて
花雫と肩組んでる写真撮って
これ学校に流すぞ!
ちゃんと情報持って来いやぁ!必死さが足りねぇんだよ舐めてんのか



 教師というのはブラック企業も真っ青な勤務形態である。授業のレジュメ作りから部活動の指導。勉強会もあれば教師間の付き合い、派閥、文科省が急に取り入れた制度への対応や、父兄からのクレームに相談の処理。問題や怪我をした学生が居れば24時間頭を下げに走らねばならない。聖職とは殉教するということである、とは誰がいったのか。
 学校を出られるのは夜遅くになることが当たり前となっている。
 その日もその男性教師は何時も通り深夜の街を死んだ顔をして歩いていた。その時だ。
「ね、おにーさんなんだかちょっと疲れてるみたい? あたし、イイ所知ってるの。一緒に行こうよ」
 男に声をかけてきたのは、まるで熱帯魚のような少女。すいすいと人混みを泳いでくる様は見ていてハッとする華があった。
 左右色の違う瞳がくりくりと瞬いて見上げてくれば、男は思わず唾を飲み込んだ。
 魅力的な少女であった。張りのある肌に、世の穢れを知らぬ宝石のような瞳。夜の女にしては明らかな違和感。遊んでいる学生にしたって、もう少し粗雑な、有り体に言えば下手くそな化粧や利益への汚さが見える。
「い、いや、駄目だよ君、そういうことは私は」
「いいからいいからっ。危ないお店じゃないからさ、ちょっと気晴らしするだけだよ」
 強引に腕を組まれて引っ張られる。無理やりというほどではない。けれども繋がり絡められた指が抗いがたい引力を発し、男はついつい足を運んでしまう。
 明らかにおかしい。そう思える程度の理性は男にもあったが、この魅力的な少女と少しでも一緒にいたいという欲望が、男の判断を狂わせた。

「あぁ!? そんなツモリもなにも女と腕組んでただろうがゴラァ!」
 路地裏。すえたゴミの臭いと、雑多な荷物の中に、男は沈んでいた。
「っ、ご、ごめんなさい! 違うんです、それはその子が!」
「女のせいにしようたぁ随分とご立派な……ほーう、アンタ先生なのか。大した先生もいたもんだなあ、おう?」
「っ、か、返せ」
「返してくださいだろうがぁ!」
 財布を取り返そうと立ち上がった男が苦鳴を吐いて再度倒れる。
 美人局。
 女を使って人を脅迫する手口。
 男に暴行を加えている嶋野・輝彦と、その隣で若干引き気味に眺めている少女、霄・花雫が仕掛けた罠だ。
 哀れにも男はその罠に両手両足をがっちりと絡め取られてしまった。
「なあ、先生コレ見えるか? よぉく撮れてるだろ。さっきアンタがコイツの肩に手を回していた時の写真だ」
「ひっ、……な、なにが、目的だ、ですか。金、金なら払う」
「ちっげぇーんだなあ。おじさんが欲しいのはそういうんじゃねえの。……白木マイ」
 嶋野の発した名に、男が明らかにびくりと震えるのが見えた。
「おじさんさぁ、自分とこのシマで訳わからん殺人とか困る訳よ。どうしたらいいかわかるぅ?」 
「わた、私は知らない。本当だ!」
「知らねえわけねえだろうがっ!」
 十二分に手加減をした足先が、男の腹部に突き刺さる。大きくえづく男が落ち着くまでまってからその髪を掴んで目線を合わす。
「おじさんもさあ、ガキの使いじゃねえんだよ。アンタだってそうだろう? なあ? じゃあどうすりゃいいかわかるだろ?」
「だ、駄目だ。そんな、そんな事したら私は消される」
「あん? どういうことだ」
「秘密なんだ。薔薇が関わったモノは探るなと、そういう決まりなんだ。破った教師が不祥事をでっち上げられて懲戒免職にされたり、飛ばされた先で死んだり、そ、そういう話が」
「ガキじゃあるまいし噂を信じてお前、職場で起きた事件、無視きめこんでんのか!」
「ひぃっ、し、しかたないだろ。私だっておかしいと思ってるさ! だが、反発したら職どころか、命が危ないんだ!」
 今まさに目の前にある暴力と天秤にかけられるほどその秘密とやらの強制力は強いらしかった。
 もう2、3発殴って言うことを聞かせてやろうかと腕を振り上げる嶋野を、霄が後ろから止めた。
「おにーさんさ、これ以上頑張ったら本当に死んじゃうよ? この人怒ると手加減できなくなっちゃうから。でも、おにーさんの言うこともあたし少しわかるからさ、せっちゅうあん」
「折衷案?」
「それを知ってそうな人の名前だけで良いんだ。おにーさんの事は口外しないし、あたしたちもこういう問題ほうっておくと困るから。しっかりカタつけてあげるよ。ね? 全部綺麗さっぱりすれば、もうその決まりを守る必要もないでしょ?」
 アメとムチ、北風と太陽。まあつまりそういうことで、2人は無事に核心へと繋がりそうな情報を手に入れるに至った。
「御船・紗羽、ねえ」
 それが秘密の根源にして薔薇の主、富歩高校生徒会長の名前だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

何とも面妖な事件だな…邪神は薔薇の化物か何かか?
殺し方としては中々に興味深い
是非とも会得し、その邪神に同じ方法を試してみたいものだ

まずは現地協力組織に頼み、転校生という体で学校に潜入してみよう
我の容姿であれば、学生でも恐らく通用する筈だ
…それに、学生というものを一度体験してみたくもあったのでな
しおらしい演技でもして、初動から怪しまれぬ様にするか
その後は、この学校に馴染む為に色々教えて欲しいという名目で生徒や教職員に近付き、誘惑・言いくるめ・催眠等を駆使して情報を収集する
駄目押しとしてUC:ヴィーゲンリードも使っておくか
必要であれば、放課後や校外でも生徒や教職員に接近する

※アドリブ歓迎



 異国、どころか異世界人というのはこういう時に便利である。
 人は似通った物の差異を見つけるのは得意だが、外から来た異物に対しては基準となる例が少ないので誤解を生みやすい。
 つまりどういうことかというと。
「フォルター・ユングフラウと申します。この国にはまだ不慣れで何かと無作法が有るかとおもいますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくおねがいします」
 ユングフラウは20人そこそこの少年少女達の前で流暢に自己紹介をしていた。
 成人済みとはいえ、その日本人とはかけ離れた人形のように整った容姿、なにより外国人を思わせる名前がフィルターとなって彼らの目を曇らせた。
「こちらこそよろしくお願いしますね、ユングフラウさん。僕は神原。学級委員をしております。何か困ったことがあったら仰ってください。微力ながら、お手伝い出来たらと思います」
 すっと背筋の通った男子生徒が柔らかく笑いながら歓迎した。
「ねえ、あの子すごくない。モデルさんかな」
「やっぱ外国人ってすげえな。こっちの女子とはまったくちげえよ」
「やっべ、俺惚れた」
 生徒たちが突然現れた異物を肴にさえずるのが聞こえる。
(同胞が死んで、明らかな異物が来たというのにコレか。疑いすら持たないとはここの民は随分と温い環境で育っているのだな)
 少なくとも、彼女の生まれた世界だったならば何らかの関連性を疑うだろう。生き残るということは疑うということだ。間抜けは真っ先に淘汰されるのがユングフラウの世界の常識なのだ。
 16、7の子供が通う施設ときいていたが、このふやけた顔を見ているともっと年下の、ものを知らぬ童のようにすら見えた。
(現実を知らぬのか)
 優しい世界なのだろう。表向きは。
 それが良いことなのか彼女にはわからない。わからないが、想像していた学校という物とだいぶ違うなと新鮮な驚きを彼女は感じていた。
(調査が主だが、それなりに楽しめるか)
 内心での思考をおくびにもださずに、ユングフラウはしおらしくクラスに馴染んでいくのだった。

 情報は割りとすんなりと手に入った。
 適当に呼び出した委員長とやらを人気の無いところに連れ込んで、誘惑。さらにはユーベルコード【ヴィーゲンリード】を使ってしまえば彼女の前に秘密は存在しなくなる。
「はい。薔薇がある場合は僕たちは関わっていけないんです。白木……はい。死んだあの3人と一緒のところを見たことがあります。ですが、薔薇の印があったので私達は全く関わりませんでした」
「何だそれは。誰が決めたルールだ」
「御船生徒会長です」
「みふねせいとかいちょう、とやらは何者だ」
 生徒会長という聞き慣れない単語を口の中で転がしながら。
「この学校の支配者です。教師も、校長も、彼女には逆らえません」
「ほう、では今回の殺人も御船が?」
「わかりません。ルールですから」
「チッ。同胞が死んでるというのに、知らぬ存ぜぬか」
「ルールですから」
「木偶が。術にかかりやすいと思ったら元から木偶だったか」
 薔薇の印と御船生徒会長。確認してみる必要がありそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八上・玖寂
教職員と生徒が揃って隠すことと聞いてまず思い浮かぶのはいじめですが、
さて、実際どんな醜聞が隠れているんでしょうね?

学校内に潜入して、自分の足で【情報収集】してみましょうか。
【目立たない】【忍び足】は常に意識。

どこかで【聞き耳】できれば簡単ですが、徹底的に隠しているのなら
直接的に分かる言葉は身内相手でもそう口にしたりしないと思いますし、
【盗み】が早いですかね。
授業で空いてる教室か更衣室を見繕って入り、生徒の携帯端末を拝見しましょう。
子供の方が口が軽そうですし。
SNS、もしくは学校の裏サイトなんかが見つかるといいですね。

探し物が終わればお借りしたものは綺麗にそのままお返ししますよ。


※アドリブ歓迎


壥・灰色
移動教室中などに、教室に入ってスマートフォンを物色
どれか一つくらい、パスワードの掛かってない端末があるんじゃないかな
SNSアプリにログインし、ダイレクトメッセージやメールを調査
何らかの情報が得られるまでいくつか教室を回って同じ事をする
もし有力な情報、人物などが見つけられるようであれば、影の追跡者を召喚しそいつを尾行しよう

証拠になるようなものを掴んだら、必要があれば腕尽くで締め上げ、黒幕により近づくための情報を引き出す
洗いざらい吐いて貰おう
最初から殴らないだけ、大分マシだったと思って欲しい
おれは頭を使うのが、元々苦手なんだから



 八上・玖寂は足音を殺し、目立たないように意識し校内を聞き耳を立てながら移動する。
(教職員と生徒が揃って隠すことと聞いてまず思い浮かぶのはいじめですが、さて、実際どんな醜聞が隠れているのでしょうね?)
 そのものずばりが噂話という形でささやかれていれば儲けものだが。
 残念ながら早々うまい話は転がっていなかった。
 人に見つからぬよう注意深く移動していたのもあってか、それほど多くの距離が稼げなかったのもあったろう。もしくはもっと高度な隠形の技術があれば広範囲の探索もできたかもしれないが、それは無い物ねだりというものだ。
 仕方ないと八上が向かったのは探索している間にみつけた教室の1つ。丁度体育かなにかでもあったのか、八上が欲しているスマホの類いはいくらでも見つけることができた。
 幾つか物色してロックのかかっていない物を探す。
(鍵くらいかけておきましょうね。仕事が楽で助かりましたが)
 防犯意識の向上が叫ば
れて久しいが、家の鍵をかけるほどにはまだスマホのロックは普及していないようだ。未来ある若者達の将来を1ミクロン程心配しつつスマホの内容を拝見することにした。

『やばくね、なんでミキ達が殺されてんだよ』

『おい』

『ミキ達って会長のお気に入りじゃねえのかよ。あんだけ尻尾振
ってたのに、殺すってどういうことだよ』

『おいばかやめろだまれ』

『わりい』

『いいけど俺まで巻き込むなよ』

『わりいでもさ、こええじゃん。なんなんだ会長狂ったのか』
『おい』
『おい』
『無視すんなよてめえ』

(ミキ、とは確かあの殺された3人の女子生徒でしたね)
 流石、鍵もかけないような者は口も軽い。随分と様々な知り合いへと自分の不安をぶちまけているようだが、誰からも同じように無視を決め込まれている。
 会長とやらのカリスマ、もしくは恐怖は相当な物であるらしい。
(当たってみるのが正解、ですかね)


 八上と同様の情報を壥・灰色もまたつ
かんでいた。
 八上と違ったのは彼には隠形の心得などないことだったが、幸いにも歳が適当だったこともあって転校生という体であっさりと校内を歩き回れる権利を得ていた。
(こいつから話を聞くのが早いかもな)
 何故か妙に怯えている。まるで会長その人が殺人犯だとでも考えているような
口ぶりだ。少しつつけば小鳥よりも滑らかに歌ってくれるだろう。とりあえずは【影の追跡者】を喚びだしてこの男子生徒に貼り付け、会話できる機会を探る。

「な、なんなんだよアンタ!?」
「質問しているのおれ。きみは答える側。進学校というのに馬鹿なのか」
「なっ」
「もう一度問う。会長について何を知っている。お前は何をした」
「知るかよ」
 小馬鹿にしたように笑う男子生徒の腹を、軽く撫でてやる。
 その場に蹲り身もだえる男子生徒。びちゅびちゃと音を立てて零れる胃の中身。大丈夫。血の類いは見られない。身体に重大な損傷は与えていない。
 とはいえ、壊さないように加減するのに多大な注意が必要だった。できればもうしたくないと、場違いな感想を抱く。
「最初から殴らないだけ、大分マシだったと思って欲しい。おれは頭を使うのが、元々苦手なんだ」
 男子学生が歌うには、会長という人物は学校の実質的な支配者なのだそうだ。
 どこぞの大物政治家
だか大企業の社長だかの娘で、ヤクザ者ともつながりがあるとかなんとか。噂でしか無い。
 確かなのは彼女が学内では大変な影響力を持っており、彼女に逆らう者は潰されるとうこと。
 では、白木はその虎の尾を踏んだのかと言うと。
「わからない。急にアイツ、虐められて……それで」
「それで?」
「動画をさ、見つけたんだよ。裏に流れてた奴で、投稿者がすぐ消したんだけど、俺、保存してて」
「内容は?」
 無言でスマホを操作して、見せてきた。
 酷いものだった。複数の男に乱暴される女性。そういった層むけに作られているヤラセでないことは、その絶叫を聞けば誰でもわかる
だろう。人間が真に恐怖して出したときの悲鳴は、演技で出せるような綺麗なものではない。
 喉が潰れることも構わず出す声は、一度聞けば忘れられるものではない。
「白木か?」
「ああ、間違いない、と思う。これ多分、例の殺されたって4人の仕業なんじゃないかって。ほら、カメラかまえて
る奴を入れたら、写ってるのと入れて4人、だろ? きっと用済みになったから、3人みたいに殺されて……秘密を知った俺も殺されるんじゃないかって」
「では何故後生大事に動画を持ち歩いてる。死にたくないなら消しておけば良いだろう」
「……それ、は」
 大方、なにかに使えるのではと男
なりに考えたのだろう。脅しか、命乞い用の材料か。どちらにしろ、肝の小さい彼には向いていないし、証拠らしい証拠も無い。
「少し借りるぞ」
 男からスマホを没収して、さてどうするべきかと考えて、すぐさま放棄する。壥は考えるのが苦手なのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霧生・真白
🔎WIZ
猟奇殺人事件か
へぇ…面白いじゃないか
僕が部屋から出るに相応しい事件だ
引き受けよう

まずは情報収集だな
せっかくだから学校に潜入してみようか
一足先に高校見学ができるというわけだ
何、演技なら得意だ
任せたまえ

そうだな…その被害者の女子生徒と親しかった生徒やクラスメイトを中心に聞き込みをしようか
「あんなに優しい子たちがどうして殺されなきゃならなかったんだろう…マイちゃんも見つかってないって言うし…何か知らない?」
「次は誰が狙われるんだろう…私怖い…」
こんな風にいかにも怯えて同情を誘う感じで
何か知っていたら僕を安心させるために情報を話してくれるだろう
もしくは反論か……何にせよ何か聞き出せるはずさ



「猟奇殺人事件か。へぇ……面白いじゃないか。僕が部屋から出るにふさわしい事件だ。引き受けよう」
 不適に笑う少女はまさに傲岸不遜。
 事件を楽しむかのように学び舎を睥睨するのは霧生・真白。HN『Shellingford』。顧問ネット探偵兼動画配信者という不思議な生業をもつ少女だ。
 高校に入るにはその容姿はあどけないものだが、そこは演技力でどうとでもなると、意気揚々と乗り込むのだった。

「かわいー!」
 無理だった。いや、一応高校生の転校生であることに一々疑問を挟む者はいなかったのだが、いかんせん目立ってしまった。
 それはそうだ。残念ながら実年齢の12で見ても平均より明らかに小さい身長、見目麗しいその容姿、演技で出した小動物めいた弱々しい言動は、人形めいた愛らしさを全開に発揮することと相成り、主に女子生徒から熱烈な歓迎を受けてしまった。
(かわいいかわいいって君らはそれしか無いのか。語彙が貧困にも程があるだろう。幼児か)
 内心の侮蔑、罵倒、罵詈雑言をひた隠しにする。
 こういった禄に物を考えてなさそうなのに、人生を謳歌しているような人種は苦手であった。それは霧生には逆立ちしてもできない『普通』だから。彼女の内面にある劣等感が疼く。
 頭を切り替える。思考を溶け込む事から調査にシフトする。
 霧生の転入したクラスはあの亡くなった女子生徒と同じクラス。親しい者もいるだろうとそれとなく事件の話に持って行こうとするのだが、まるで柔らかい膜に阻まれているかのようにまったく話が進展しない。
「あの、さ。霧生ちゃん、あんまりその話は、出さない方がいいかなって」
「どうして、ですか? 私、怖くて。哀しくて。だって、学校は違いましたけど、友達だったんです」
「それでもさ、あー、うん、この学校ではね、薔薇が関わっていたらタッチしたらいけないって意味なの」
 あれだけ周りにいた生徒達が1人、また1人と霧生の元から離れていく。まるで恐れるように、そそくさと無関係を装い出す。
 異常だ。好奇心旺盛な若い娘達がこれほどの話題に一切関わろうとしないなんて。
「それで、いいんですか? 皆さんだって亡くなった方々とはご学友だってのでしょう?」
「もう! しつこいなぁ! やめてって言ってるの!」
「……ごめん、なさい。でも私、どうしても気になって」
「貴方の為を思って言っているの。無事卒業したかったら薔薇のルールは絶対。どうしても知りたいなら、アタシに聞かないで」
 言い捨てて、最後の1人が席を離れていった。
 薔薇、ルール。強硬手段を使わず聞き込みだけでの成果としてはまずまずの結果だろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

境・花世
着たこともない制服に身を包み
右目の花は眼帯に押し込んで
放課後の教室を見て回る

誰か、出来ればそう、
単独で残っている生徒が良い
見つけたら音も立てず近寄って
友好的に柔らかに話しかけ

ねえ、ひとりでいたらだめだよ
犯人がまだ捕まってないの、知ってるよね?

心に入り込むように見つめて、
視線が交わればきみはもう術の内
催眠で意識を搦め取って、
閉ざした唇を開いて貰おうか

白木マイについて、教えてくれる?
一体どんな女の子だったのか
それから、
学校で彼女に何が起きたのか
唯一見つからないマイに
手掛りがあるのは間違いない筈だから

聞き終えたらすぐに眼帯を毟り取る
窮屈なこの服も守られたこの場所も
――わたしにはやっぱり、場違いだ



 夕暮れで真っ赤に染まった教室は、異界のような怪しさを放っていた。
 1人、その教室に残ってぼうっとする女子生徒がいる。その瞳は葛藤か、懊悩か、複雑な波紋を浮かべていた。
「ねえ、1人でこんなところにいてはだめだよ」
 ふわりと、どこからか花の香気が漂ってきた。この学校特有の、冷たく恐ろしい薔薇の匂いではなく、もっと別のもの。
「誰?」
 女子生徒が振り向くと、そこには今日転校してきた女子生徒がいた。確か、そう。
「境、花世、さん?」
「ええ、名前、憶えていてくれてうれしい」
 眼帯をした、妙に大人びた転校生は女子生徒にするすると近付いてくる。穏やかだが、嫌と言わせぬ圧があった。不可思議。
 まるで本当に異界に落ちたかのようなあやふやな感覚を、女子生徒は感じていた。
「犯人がまだ捕まってないの、知ってるよね?」
 笑いながら見つめてくる境に、目を、合わせて。

 それで、この女子生徒は境の術中に落ちた。視線から人を操る催眠の術だ。
 無論、一瞬で相手の生殺与奪を握るほど異次元のレベルには到達していないが、口を軽くするくらいならば容易い。
「犯人と言えば、ねえ、まだ見付かっていない白木マイ、どんな人だったか知ってる?」
「大人しい子。両親を事故で亡くしちゃって、今はお父さんのほうの実家でお婆さんと2人で暮らしてるって言ってた」
「なるほど。居なくなる前、どうだった?」
「……虐められてた。ミキ達のグループに、突然。理由なんてわかんないけど、酷かった……あれは、やり過ぎだって、思った」
「でも助けなかった」
「うん、だってそういうルールだから。薔薇の」
「薔薇の、ルール?」
「会長のルール。薔薇を見たら関わるなって」
「……じゃあ、今回の殺人も会長がしたの? 薔薇、あったよね」
「違うと思う。会長は頭良いから、そんな目立つような事しないと思う。あの人、なんか私達と違う世界に生きてるみたいで、自信、ないけど」
「じゃあ誰だと思う?」
「白木さんの、復讐なんじゃないかって、私は思う」
 なるほど。その流れならば大分話がすっきりする。
 いじめの復讐ということならば、繁華街の男達はどうなのかと聞いたがそれについては彼女はなにも知らなかった。
 となれば後は会長その人に当たるのが一番早かろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神楽威・紅葉
WIZ

組織の手を借りて高1生徒として転入しますね。
学校で情報通を探すとしたら苛めグループとかかな?

人付き合いが苦手そうに振る舞ってみて、苛めグループが絡んできそうな雰囲気をだそうかと…(軽い男性恐怖症を患っているので男子生徒や男性教師には実際に少し怯えます)

人気のない所とかに連れて行ってもらえると好都合なんですけど、あいにくと交渉系のスキルは所持してませんので、場所は問わずに少し手荒に情報を聞き出すことになると思います。

余剰効果を期待するものではないけど、苛めグループの一つを潰せると個人的には嬉しいかな?

アドリブ歓迎・絡み歓迎



 虐めグループでも居れば締め上げて情報を吐かせよう。
 そういう心算で学校に潜入した神楽威は困り果てていた。
(どうしよう、普通にいい学校だ)
 人付き合いが苦手な振りをして、連中が好きそうな立ち居振る舞いをしているのに、誰も食い付いてこない。
 いやまあ流石に転校初日でそういうこともあるまいと、次の日があるだろうと思っていたのだがどうにもおかしい。
 歩き回ってみて解ったことなのだが、そういった雰囲気、いかにもといった偉そうな連中や、集団を笠に着てなにかしそうなグループというのが見当たらないのだ。
 居るのはただただ普通の善良で無害そうな生徒達だけ。
 計画が頓挫したのかもしれないと神楽威は冷や汗を流す。仕方ないと、引っ込み思案そうな女子にそれとなく近付いて情報を引き出してみる。
「なんかこの学校って、怖そうな人とかいないよね?」
「あ、すごい、神楽威さん探偵さんみたいだ。うん、ここね、会長さんが凄い人で、そういったことする人を許さないんだって」
「会長が?」
 いやいや、そんなただの一生徒でどうにかなる問題なら日本はもっと良い国であるはずだ。おかしいと思わないのか。
 女子生徒の瞳はキラキラと輝いており、憧れの芸能人の話をしているような風情だ。きっと一片たりともおかしいと思っていないのだろう。
「うん、カリスマっていうのかな。私も一度だけ見たことあるけど、凄い綺麗な人でね。なんかおとぎ話の世界から出て来た人みたいなの」
「お姫様みたいな?」
「ううん。どっちかというと女王様かな。大人っぽいから。あ、大人っぽいと言えば」
 同時期に転校してきた人達がモデルのように綺麗だとか大人っぽいという話をふられて、神楽威は苦笑いして話しをあわせるしかなかった。
 まさか自分と目的を同じくする連中で、人によっては成人をとうに過ぎてます、などとは口が裂けても言えなかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

姫咲・沙良
制服に袖を通す機会が再び訪れるとは思っていませんでした
えぇ、これも天使様の庇護あってこそ
常、感謝しております

どうです?似合いますか?
ふふ。天使様も制服に着替えてみては?
さぞやその醜きお姿にはお似合いかと
くすくす

姿も声もなく常に取り憑く存在に語りかけながら学生服に着替え校内を探索しましょう

知っています?薔薇の花言葉は本数で変わるのですよ
口の中いっぱいの花びらがそれを意図したものだとしたら
何本の薔薇の花弁を詰めたのでしょう?
どんな想いを込めたのでしょうね

さて、と
皆様の調査の邪魔をされぬようにと
適度に間引いておきましたがお役に立てたでしょうか

くるり振り返り
宿す光に誘惑された列なる人々を眺め、くすりと


マレーク・グランシャール
食べるために殺すのは自然の摂理。
愛する者を食べることもまた。
だがUDCは違う、奴らはただ殺し、狂気を糧にしている。
そこには生命に対する尊びも、他者に対する愛情もない。

私に学生は無理だ。
音楽の非常勤講師ということでどうだろう?
楽器の演奏はそれなりだ。

ふと、思ったのだが。
薔薇は何の符号だろう?
それが敵のシンボルならば、胸に赤い薔薇を挿して歩くことで学生や教員の警戒を緩め、誘導尋問に持ち込めないものだろうか。

「私はこの薔薇に招かれた。私の求める主は何処におわすのだろう?」

演奏の【誘惑】が有効なら万々歳。
行方知れずのままの娘も敵と共にいる気がする。
場所が分からずとも怪しい者を燻り出せたらそれでいい。



 姫咲・沙良、マレーク・グランシャール、両名の行った行動はある意味もっともクリティカルな物となった。
 誰もが潜み、情報を積み重ねていく中2人がしたこととは『目立つこと』。
 姫咲はその生来の色香で。
 グランシャールはこの事件の鍵となる薔薇で。
 お互いそれぞれに思惑はあったのだろう。姫咲は人目を引くことによっての他猟兵への援護、グランシャールは情報収集への足がかり、といった風に。
 だが……。

 姫咲は色香を振りまきながら校内を練り歩いていた。
 目が合った男子に微笑み、すれ違った女子に軽く声をかけて、人々を誘惑の糸で絡めとっていく。
 その様が楽しいのか、それとも事件に思いを馳せたのか、楽しげに彼女は笑っている。否、彼女が笑っているのはもっと別のもの。誰にもみることの出来ないおぞましき存在にむかって微笑んでいるのだ。
 その笑みは感謝(恨み)と愛(呪い)に満ちていて、すれ違った者をまた1人虜にする。
(薔薇の花言葉は本数で意味を変えるのですよ。口の中いっぱいの花びらがそれを意図したものだとしたら。何本の薔薇の花弁を詰めたのでしょうね。どんな想いを込めたのでしょうね)
 くすりくすりと歩むその先に、1人の男子生徒が立ちはだかっているのが見えた。

 グランシャールは音楽の非常勤講師として無事校内に入ることに成功したのだが。
(緊張……もしくは恐れか?)
 彼を見る人々の目には急にやってきた非常勤講師に向ける物とは思えぬ色があった。
 原因はわかっている。
(薔薇か)
 胸元に挿した赤い薔薇。誰もがそれに眼をやった瞬間に空気を変える。
 敵のシンボルならば、仲間だと思わせて情報を聞き出そうと思ったのだが。
(裏目に出たか)
 それならそれで、何らかの反応が引き出せたという情報は得た。もしくはこのままでいれば、向こうからの接触もあるかもしれない。そう前向きに捕らえる。
 竜である彼は失敗から学びはするが後悔に囚われたりはしない。
 さて、どれほど待つか。
 名目上は講師でもあるので仕事をしている振りなどしていると、やがて。
「失礼します。先生、生徒会室までご足労願えませんか?」
 1人の男子生徒が接触してきた。

 そうして目立ちに目立った2人は図らずも合流し、誰よりも早く生徒会室へと向かうこととなったのだ。
 生徒会長その人の招待を受けて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『重要人物を守りきれ』

POW   :    肉体言語は万国共通の優れた言語です。おはなし(脅迫)しようよ。

SPD   :    話術等の技術で相手の心を揺さぶる。

WIZ   :    相手立ち居振る舞いや言葉尻から推理し、確信に迫る。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「お前を守れと? 今、そう言ったのか」
 自らつかんだ情報で、もしくは他の猟兵に教えられて、もしくは招かれて。
 猟兵達が一堂に会したのは生徒会室。件の生徒会長――御船・紗羽が自己紹介もそこそこに発した提案が猟兵達に怪訝な表情をさせていた。
 自分を守ってくれ。
 そう提案してきたのだ、御船は。
 猟兵達の間に猜疑と警戒の色が浮かんだのは仕方の無いことだろう。
 猟兵は彼女の課したルールによってこの学校に異常が起きていることを知っている。
 猟兵はそのルールにのっとって、無残な虐めが見て見ぬ振りされてきたのを知っている。
「誰から守れと? そも、なぜ俺たちに頼む。まるで、」
「まるで、自分たちが今回の事件を解決しに来たと知っているようでは無いか。違いますか?」
 猟兵の言葉を先回りして、高校生とは思えぬ艶やかな笑みを浮かべる御船。
 なるほど、これならば大人すら籠絡するのは簡単だろう。そう思わせる傾国の微笑みだった。
「同時期にこれだけ人が入ってくれば想像がつきます。それなりに友人もおりますので、色々なお話しも耳にしますし、ね」
 情報が漏れたのか。それとも断片的なものから推測したのか。もしくはこの女自体が、邪教徒、ないしUDCに関わりの有る世界の敵なのでは。
 空気がピンと張りつめた。
「そんなに怖い顔をなさらないでください。私はただの学生にすぎませんわ。それこそ、件の猟奇殺人犯などに狙われたらひとたまりもないでしょう」
 猟兵の、いや、殺しを経験して来た者達の視線を一身に集めても御船の泰然とした態度は小揺るぎもしない。
「ですから、その殺人犯から私を守って欲しいのです」
 報酬はご満足いただける額を提供できると思いますわ、と付け加えて。
 もう一度御船はにっこりと、人を虜にするような顔で微笑むのだった。
日月・わらび
ご満足いただける報酬
お茶もお饅頭も食べ放題だの!
本当に貰えるのかの
(尻尾パタパタ)













【POW】
騙し討ち鎧砕き怪力併用
裏破牙で会長…の真横の床を砕くの

わたしの情報が取得されてたとして
用務員室にきゅいきゅい入ったおバカな子どもだの
だから逆手にとって、騙し討ちだよ

反応を見て消していいサイコかいけないサイコか判断するよ
超常に慣れてない一般人が無理してるなら仮面剥げる筈だし
無反応か慣れてそうなら消していい奴だしそう言うの

手口からして自分の課した制約が守られる自信があり過ぎるのが第一
態々姿を現して信用を得るよりペースを握るの優先したのが第二
何より狼にビビらないお前はおかしい!
尖兵か本人かはわかんねーけどの!



 パタパタきゅいきゅい。
「ご満足いただける報酬! お茶もお饅頭も食べ放題だの! 本当に貰えるのかの」
 日月・わらびが年相応に何も考えていないような顔で笑って。
 次の瞬間、床が爆散した。
 下手人は、日月。彼女は己の得物と技術、猟兵の力を使って御船の横の床を叩き砕いたのだ。
 完璧なだまし討ちだった。床が陥没し、足下が崩れ、自らが転倒するまで、御船は日月の姿を捉えることもできなかっただろう。
 尻餅をついて破壊し尽くされた床と、下手人の小さな少女を交互に見つめるその表情は、驚愕。
 目を見開いて、口を半開きにして、あり得ないモノを見るかのような表情をしている。
 ヤドリガミたる日月に人の心は完全には理解できない。心理学者のように挙動から本心を探るような事もできない。けれども日月が見る限りその表情に嘘は無いように見える。
 日月は自分が感じたことを疑うような愚かなことはしない。
「これは、消しちゃいけないサイコ
かの?」
 そう断ずる。少しでも見慣れた所作や、攻撃と受け取って対応しようとすればその場で肉塊にしてやろうかと思ったのだが。少なくとも此方側の事情を知っている人間には見えない。ただ慣れていないだけかもしれない。確証はないが、直感で言えばただの人間だ。
 小首をかしげる日月に、ようやく御船が復帰した。
「凄い、凄い凄い凄い! 貴女、今何をされたの? そんな小さな、スリッパ? それでこんなこと出来てしまうんですか!?」
「あ、これ駄目だの。ナチュラルボーンのヤベー奴だの。TVで見た」
 心底呆れた日月の言葉など聞こえていないかのように、破壊の爪痕と日月を見つめる目は子供のようにキラキラと輝いていたのだった。
 そこに恐怖は無い。自分が殺される事を考えていないわけではないだろう。自らを次の瞬間には粉みじんにできる猛獣の檻の中に居ると知ってさえ尚、新しいこと、興味がわいたことを優先する。
 細かい理屈なんて必要ない。小難しい言葉のやりとりなどなくとも日月は御船の本質にもっとも素早くたどり着いたのかもしれない。
 まともでは無い。やはり消した方がいいかもしれないと、日月は冷めた目で御船を見つめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

嶋野・輝彦
●POW
おはなし(脅迫)しようよ

紗羽の動きを第六感で読み
先制攻撃、だまし討ち、怪力で締め上げ逃げれん様に
恫喝、存在感、コミュ力、殺気
テメェ大人舐めてんのかゴラァ!
捜査が全部お前んとこで止まるんだよ、ただの学生?何を信用しろってんだ
俺たちゃ事件を解決しろとは言われてるが死体の数を減らせとは言われてねぇんだよ
それとも今すぐ一個増やしてやろうか、ああ!!
舐め腐ったガキが…良いぜゲームをしよう

○ェンガ的な積木を出して
「負けたら情報を寄越せ。パスも可だ。代わりに」
激痛耐性、覚悟で顔色を変えずに自分の指を折る
「舐めた答えでも折るからな、負けたら俺のも折るから安心しろ。十ゲーム分、どこまで耐えられるかな?」



 未知との遭遇の衝撃と興奮から立ち直った御船の胸ぐらを、嶋野・輝彦が掴みあげた。
「テメェ大人舐めてんのかゴラァ! 捜査が全部お前んとこで止まるんだよ、ただの学生? 何を信用しろってんだ。俺たちゃ事件を解決しろとは言われてるが死体の数を減らせとは言われてねぇんだよ! それとも今すぐ一個増やしてやろうか、ああ!!」
 あふれ出る殺気と圧力は普通の人間ならばたちどころに命乞いをしそうな勢いであった、が。
 嗤っていた。
 体が浮くほどに持ち上げられて、目つきの凶悪な男に凄まれてもなお、御船は酷く愉しそうに嗤っていたのだ。
「何をそんなにお怒りになっているのか私にはわかりませんが。どんな話をお望みなのですか?」
 舌打ち。嶋野の勘が、目の前の女を一筋縄ではいかない相手だと判断した。
「舐め腐ったガキが……良いぜゲームをしよう」
「あら、酷いことでもされるのかと思ったのですが」
「テメェはそれでも平気で嘘つくだろ。そういうツラしてやがる」
 傷みや脅迫によって得られる情報というのは絶対ではない。命ほしさに質問者の望む虚偽の回答を出す者もいるし、精神的に強固であればそもそも効かないということも十分にあり得る。
 嶋野の勘が、少なくともこの女にはいつもの手が通じないと囁いていた。
 机の上にバラバラと木の棒をぞんざいにぶちまける。
「積み木遊びだ。積み上げたそれから1本ずつ抜いていって倒した方が負け。シンプルだろ? 負けたら情報を寄越せ。パスも可だ。代わりに」
 枝を折るような音。
 嶋野は自らの指を顔色1つ変えずに折って御船に見せつける。
 負けたら指1本。そういうことだ。
「舐めた答えでも折るからな、負けたら俺のも折るから安心しろ。十ゲーム分、どこまで耐えられるかな?」
 御船の笑みが亀裂めいて深くなるのを嶋野は見た。

 一戦目。御船の勝利。嶋野は相変わらず平気な顔をして自分の小指を折った。
 二戦目。同じ。
 三戦目。同じ。
 四戦目。御船の敗北。悲鳴の1つでもあげるかと思いきや、御船は嬉々として自らの小指を折った。息をのんだのは彼女か、それとも周りの猟兵か。
 恐れは、傷みは、この女に無いのか。否。嶋野と違い、御船の肩が折った瞬間に跳ね上がり、目を見開いて、呼吸が浅く短くなるのを猟兵達は看破した
。だというのに悲鳴も上げずに嗤うこの女の精神性はどうなっているのか。
「負けて、しまいましたね。では、何を聞きたいのですか?」
「テメエはこの殺人事件の犯人か」
「いいえ」
 さらさらとその豊かな黒髪を揺らしながら。
「そうかよ。じゃあ続きだ」
「あら、もう1本、と言われるか
と」
「勘だがな、テメエ、ゲームのルールは守るだろ。心底楽しんでるってツラだ。抜け道は探っても不正はしねえ、そんな気がする」
「そんなことはいたしませんよ?」
「もう1本いっとくか? あ゛あ?」
「まあ、恐ろしい」
 鈴が鳴るように、指が変な方に曲がった手で口元を隠して嗤う。
 次からは嶋野の独断場だった。やはり傷みはあるようで、それ以降の御船は集中力に欠けケアレスミスを続け、ついには片手の指全てを自らの手で折るに至る。
 得られた情報は、
 御船は殺人の犯人では無い。
 薔薇が死体に詰め込まれた理由は自分に対するなんらかのメッセージでは無いかと推測していること。だからこそ護衛を求めたらしい。「恨みはそれなりに買っている自覚はありますし」とのこと。
 白木を虐めていた実行犯でもない。
 薔薇のルールはのし上がる上での諸々の行いを隠蔽していく流れで自然と作られ、意図的に広めたモノであること。
 一般人が知らない情報諸々を決定的な単語を避けて問うたが知らないようだった。つまりUDC関連の組織員でもない。
「これ以上、聞きたい、ことは、ございませんか?」
 脂汗を浮かべながらも尚優雅に笑い、膨らみつつある指など気にもとめない御船に嶋野は頷いた。
「10本全部折ってやってもいいが、俺はこれ以上聞きたいことはねえ」
 別に嶋野は正義の味方では無い。倒すべきモノ、仕事になるモノでないのならば別段構いはしないのだ。そういった意味ではこの女はただの悪党でしかないと判断した。UDCに対する餌、それ以上の価値はないように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八上・玖寂
強者とは得てして都合の良いものです。だからこそ強者なのですから
が、当初の依頼は「学校関係者の隠し事を調べること」「UDCを始末すること」
まだ一つ目の依頼が終わっていませんね

白木が何故虐められたのか?そっと【情報収集】しましょう
【誘惑】【礼儀作法】込みで
彼女の友達に、彼女が虐められる前に本当に何もなかったか聞いてみましょうか。
何か貰ったとか、犬に吠えられたとか、何でもいいですよ。

しかし、告発は握り潰される可能性が高く、
UDCや猟兵が手を下しては組織としてのUDCに揉み消される。
とあっては、根源を自浄して頂くしかないですね。
教師も生徒も皆あんなに心酔してる訳ですから、つつけば転ぶかもしれませんね?



 八上・玖寂は護衛ではなく引き続きの情報収集に走った。
(僕達の仕事は学校関係者の隠し事を調べあげること。UDCを始末すること。まだ1つ目の依頼が終わっていませんからね)
 UDCに至る道を学校で調べろという文言ではあるし、今回の鍵は会長であることは明白。黙って護衛をするだけでも仕
事は終えられそうではある。だが、八上は仕事はしっかりしないと落ち着かないのだ。
 調べろと言われたら徹底的に調べないと据わりが悪い。

 接触したのは件の白木と友人関係にあった女子生徒だ。彼女の情報は他の猟兵から得ている。
 下校時刻を狙ってそれとなく接触。おかしな人物だと疑われないように適当な職業と名刺をでっち上げれば、完全とは言わないまでも「少しだけ、なら」と最低限の信用を得ることに成功した。
 近所の喫茶店に座ると早速核心へ、とはいかなかった。元々恐怖やルールで縛られた学校関係者の口を割るのは並大抵のことではない。
 万能型の彼は一瞬で異性を虜にするような人外めいた技は使えない。その分時間と、絡め手を使って少しずつ、確実に相手の心を解いていくのだ。
 礼儀正しく適切な距離感で、信頼に足る大人の男性であると会話をしながらすり込んでいく。
 頼りになる。いざとなったら助けてくれる。そういう風に信用されれば後は簡単だ。
(世慣れしていない子供を籠絡するなんてあまり愉快な話ではありませんが)
 仕事の為だ。悪く思うなよと、ほんの僅か数ミクロン程思いながら。
「白木さんは、何故虐められたんだと思いますか? 直前に何か変わったこととかなかったでしょうか。何か貰った、犬に吠えられた、なんだって構わないのですが」
「……わかりません。本当に突然」
「薔薇が関わっていたと言うことは会長と何かあったと思うのですが、そういうことは?」
「私が知っている範囲で言えば、会長とマイには接点がありませんでした。すれ違ったことすら、ないんじゃないかと」
「マイさん自身が何か目立つような、それこそ勉学や容姿、言動、そういったもので彼女の不興を買った可能性は?」
「いいえ。別にマイは頭がいいわけでも、特に悪いわけでもないですし……どちらかというと目立たない容姿でした。だから、どうして、って私思って……」
 空振りか。彼女が何らかの理由で真
実を隠している可能性は零ではないが、確認のしようも無い。もっと高度な説得や籠絡の技術があれば違ったのかもしれないが、現状彼女の言うことを信用するしか無い。

成功 🔵​🔵​🔴​

壥・灰色
御免だ。おれは降りる
面倒事は好きじゃない


――と場を去りつつ
今回はこれを使いっぱなしだな
『影の追跡者』を喚び、密かに御船に付ける

付かず離れずの距離を取って彼女の行動を監視
護衛しろ、という言葉が何に根差すかは、暫く様子を見て判断しよう
何かが襲ってくるならそれを撃退し、尻尾を掴み直せばいい
御船が怪しい動きをするのなら、その時改めて問いただせばいい
どちらにせよ腕尽くには訴えず、いざとなれば守る

暫くは距離を取ってつきっきりの尾行をすることになるけど……
根性比べだね。もしかしたら報われないかも知れないけど、こういう戦い方には慣れている

……まだ二月だし、なるべく早くケリがついて欲しいんだけどね。
ああ、寒い。



「御免だ。おれは降りる。面倒事は好きじゃない」
 そう言って早々に部屋を後にしたのは壥・灰色。
 御船のようなタイプとまともに会話をしても無駄と判断したのだ。いくら問答を続けたところで逆に相手のペースに飲まれることになる。真実か虚偽か、それを確かめるためにまた裏取りに走らさ
れるのは目に見えていた。
 ならば今までと同じように調査を続ける方が早い。
 壥はこういう場合におあつらえ向きな技も持っている。
【影の追跡者】
 先の尾行にも使ったこれはまず相手にばれることはない。もし何か隠しているのならば尻尾もつかめるだろう。部屋を出た瞬間に喚びだして、つかず離れずの距離をとって監視することにする。

 猟兵のいくらかは彼女の護衛をすることになったようだった。学校、生徒会、プライベートとつきっきりで彼女に侍っている。
 これなら別に影は必要なかったかもしれないな、などと思いながらも監視を緩めることはしない。
 付き合いのある人物、交わした言葉、要すればスマホや端末をのぞき見ておかしな事をしていないか監視する。
 我慢比べだ。有るかどうかも解らない真実を、しかも相手がボロを出すまで待たねばならない。それは狩猟ににている。
 ここだと思ったポイントを経験でもって割り出して、1晩でも2晩でも獣が通るのを待つ。
 ポイントを間違えればそもそも無意味だし、獲物にばれるようでは三流以下。よしんば獲物が現れたとしても1発で仕留めなければどこかへと走って逃げてしまうだろう。
 しばらく観察して解ったのは、御船の人脈と権力が高校生の範疇に収まっていないということ。
 親は旧華族の流れをくむ人物でわかりやすい程の富裕層、その中でも抜きん出た資産を有しているようだった。調べてみれば政界においても確かな発言力と影響力のある人物のようである。では親の七光りで学校を支配したのかというとそれだけでもないようで、どうやら彼女自身の力も大きく関係しているようだっ
た。
「傾国、か」
 かつて国を傾け亡ぼしてきた恐るべき女達。御船はまさにそれだった。
 蠱惑的な魅力で骨抜きにされる者、またはそのカリスマや行動力に心酔する者。清濁併せ呑んだその手口は放っておけばそれこそ政治中枢に食い込むことも可能なのではと思わせるほどだった。
 正しい目的のためにその求心力が発揮されるのならば良いことなのだろうが、自らで得、伝え聞いてきた所業と影で見たあの生徒会室での問答を加味すれば、とてもでは無いが正道を歩むとは思えなかった。
 しかしそれだけ張り付き調べ上げても、邪神崇拝組織のようなものとのつながりは今のところ見付からない。彼女自身がUDCの変化したようなもの、というわけでもないように見える。
 ただ善良な人間などではないことは、確かだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

どうにも胡散臭い女だ、いけ好かぬ
生徒は勿論、教師も校長も誰も逆らえぬとは…まるで、奴の庭ではないか
奴が絡むと決まって使われる、薔薇という言葉
薔薇の花弁を詰め込まれた遺体
…やはり、奴を守る気にはなれぬ

薔薇が関わったモノを探ると危ない、か…ふふっ、向こうから消しにくるならばむしろ好都合
それなりに友もいるのであれば、我の動きも当然耳に入るだろう
簡単に尻尾を掴ませる愚は犯さぬだろうが、それならばそれで我は奴の調査を続けるだけの事
引き続きスキルとヴィーゲンリードを駆使し、生徒や教職員に加え教頭や校長とも“お話”してみるか…会長自身が身の危険を感じているので守りたい、という名目でな

※アドリブ歓迎



 胡散臭い女だ。いけ好かぬ。
 そういって早々に部屋を後にしたフォルター・ユングフラウ。まるで現状を楽しむようなあの顔、立ち居振る舞い。とてもでは無いがまともに会話をする気になれなかった。
 力によって征服し支配してきた彼女とは対照的なそのあり方は水と油のようで、『女』を使う事を知っているあの顔は自分とあまりにも似通っていて。
 同族嫌悪に近い気分の悪さを、もしかしたらユングフラウは感じていたのかもしれない。
「いいだろう。格の違いを教えてやる」
 たかだか小さな学び舎1つ手中に治めていい気になっている小娘に、一国一城の帝王であった力を見せてやろうではないか。

 ユングフラウを前にして逆らえる人間など存在しない。居るとするならば他者を求めない真性の外れ者か、もしくは五感の無い脳だけの存在くらいか。
 兎も角、部屋をでて真っ先に校長室と書かれている部屋へとやってきたユングフラウはノックも無しにずかずかと中へと押
し入った。
「っ!? 何だね、君」
「怯えるな、下郎。二三尋ねたいことがあるだけだ。良い声で歌えば褒美もくれてやるぞ」
「なん、っ!」
 視線がユングフラウを捉えてしまえばもう抗う術は無い。例え目を瞑ろうと彼女の声を聞き、匂いを嗅いでしまえば同じ事だ。
 校長らしき紳士然とした壮年の男の目が、酒に酔ったように蕩けるのに瞬きの時すら必要としなかった。
「我は味方だ。貴様の愛しい会長殿に頼まれてな。奴を護衛しているのだ」
「会長……御船……」
「そう、その御船よ。貴様らはどういう関係だ? 何故貴様のような責任のある大人があんな小娘に従っている」
「あの娘は恐ろしい……刃向かえば、私の、醜聞が……世に」
「ほぅ、脅されているのか。中々に単純な話になってきたな。何を知られた。それは何処にある」
「私が、彼女を襲っている時の写真……何かの間違いだったんだ……どういうわけかあの時、自制がきかなくて。駄目だと思っているのに私は彼女を押し倒してしまって……」
「ふぅん? 薬か、術か、どちらにしろなにかされたな。在処は? 我に従うならそれをどうにかしてやっても良い」
「無理だ……データを消したところで、私が彼女に図った便宜はどれもこれも……ああ、早く彼女が卒業してくれないと」
 舌打ち。20にもなっていない小娘にここまで良いようにされて、ただ嵐が過ぎるのを待つとは。骨抜きというよりも元から骨なしのような男なのだろう。
「では奴はこの学校を支配してなにを目論んでいる。何か聞いていないか」
「知らない。ただ私はもみ消せと言われたことをもみ消して、関与するなと言われたことに関与していないだけだ。私は何も、何もしていない」
 再度舌打ち。
「では薔薇は。なんの意味がある。今回の殺人事件の犯人と奴はどう関わっている」
「しらない。私は無関係だ。早く、アイツが卒業してくれれば」
「屑が」

 その後、教頭、教師、諸々の大人を籠絡して回ったが、心酔して骨抜きになっている者か、脅迫されてがんじがらめにされている者しか見付からず、邪神や犯人に関する情報は一切得られなかった。
 何より業腹なのは会長一派からなんの妨害もされなかった事だ。まるで歯牙にもかけていないかのように。
 自尊心の高い彼女に対しては最高の侮辱だ。口元がつり上がるのがわかる。
「ならば別方向から攻めてやろう」
 ユングフラウは知人へと連絡を取るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
アドリブ・連携描写歓迎

御船様…親か本人のコネで裏社会、UDC組織とも繋がりがあるのかもしれません
問題はその力で学園を支配し、悲惨な虐めを黙認か指示した可能性のある精神性です
正直オブリビオンより脅威に私には思えます

他の猟兵と連携、教師、親、情報を流した疑いのUDC組織人員、他にもいるかもしれませんが彼女の後ろ盾の醜聞を握り、無力化して彼女の持つ力を年相応にまで弱めたいところです

これらを見せ札に薔薇の意味、白木様への虐めの真相を詰問します
センサーで体温を測って動揺を「見切り」彼女の内心が測れればよいのですが

私は騎士として弱者をお守りします。ですが御船様は弱者の皮を被った強者、あるいは別の「物」かも



 生徒会室での会合中、どこかと連絡を取り合っていたトリテレイア・ゼロナインが動いた。
「失礼、御船様1つ、よろしいですか?」
「ええ。いかがなさいました?」
「我々は各界にそれなりの伝手があります」
 嘘だ。協力組織はそれなりに力を持っているが政界や財界の要人を陥れたり出来るほどの力はないだろう。
 けれども目の前の邪悪を挫けるのならば、いくらでもブラフを張ろう。
「どういった意味でしょう?」
「いえ、貴女のその立場は盤石では無いと言うことです。例えば、校長や教師達が貴女を裏切ったら……」
 嶋野がゲームを持ちかけ稼いだ時間は、ユングフラウに籠絡と情報収集をさせるのに十分なものだった。
 知人である彼女が纏め上げた数々の醜聞、学校の要職しかしか知らないような金の動き、それに関わる不正の証拠を御船にだけ見えるようにして渡す。
 一瞬で全体に目を通したのか、御船の目が爛々と変化するのがトリテレイアにはわかった。内部センサーで彼女をスキャンすれば、軽い興奮状態であることがわかっただろう。
「あら、まあ……それで?」
「我々が知りたいのはこの事件の真相。薔薇とはなにか。何故白木様は虐められなければならなかったのか」
「私の護衛にそれは必要なことなのですか?」
「いいえ。私の本来の仕事に関係することです」
「なるほど。ですが1つ、思い違いをしてらっしゃいますね」
「どういう、ことですか」
 焦りは、見えない。御船から感じ取れる雰囲気は、むしろこの状況を楽しんでいる子供のようなそれ。
「それはそれで、ということです。どうぞ、新聞社でも週刊誌でも売り込んでいただいて構いませんよ。貴方方への報酬はご破算になるかとは思いますが、仕方がありませんよね?」
「私は金銭で動いているわけではありません。本当にしますよ?」
「そうでしょうとも。同様に、私も貴方が想像しているような女ではない、ただそれだけです」
 金銭で支配できない人物がいるように、トリテレイアが取った脅しでなびかない人物もまた居るのだと、御船は嗤うのだ。
 力を削がれれば困るだろう。
 後ろ盾を失うのは避けたいだろう。
 大概の権力者にとってはそうだろうが、今目の前に居る名状しがたき女にはそれがあてはまらなかった。
「ですが短時間にそこまで調べ上げた手腕に敬意を表して、1つだけお答えしましょう。……薔薇の意味を」
 もったいぶった言い回しに知らずトリテレイアは引き込まれるように彼女を注視した。
「何も」
「何も?」
「ええ、何も。ただ私の身近にあって使いやすかっただけ。それを使って『秘密にしてくださいね』とお願いをしたことはありますが、それ以上の意味などありませんよ。先ほどから皆様が何を気にしているか、わかりかねますが私はただの学生に過ぎません。皆様のように不思議な力も無ければ1つ1つの行動に深淵な意味があるわけでもありませんよ」
 不思議そうな顔。作り物めいた『どうして?』の表情で。
「この学校の皆さんもそう。私はただの女でしか無いのに。他の何かに見えましたか?」
 女の顔は、おぞけがはしるほど美しかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリオン・アーヴニル
狙われていると言う自覚があるのか?
そうか、なら先ず『薔薇』と『事件の発端・経緯』について知っている事を全部話せ。
俺達が得た情報は関係ない。
お前自身が知り得た情報を、『お前の口から』聞きたい。
これは、あくまで『要望』だ。
あえて『取引』にしなかった意味、お前なら分かるな?

等と、遠回しに『信頼を得たければ誠意を見せろ』と伝える。
とぼける様子を見せたり、
今まで得た生の情報に矛盾があったらそれまでだ。
護衛はするが、いざとなったら見捨ててやると言わんばかりの視線を向けてやる。

もし全部話すなら、真相はともかく護衛はきっちりこなしてやろう。
ポジションは…奇襲対策辺りを担当しようか。



 セリオン・アーヴニルは他の猟兵同様に強気な態度で御船に当たった。
「狙われている自覚があるのか? そうか、なら先ず『薔薇』と『事件の発端・経緯』について知っていることを全部話せ」
「あら怖い。そんなに凄まれなくとも皆さんなら既に大凡の事はご存じなのではありませんか?」
「お前の口から直接聞くことに意味がある」
「それは護衛のお話となにか関係がありますか?」
「ある。犯人がわからなければ対策のしようも無い。そもそも俺たちは別件で動いている。それを忘れるな」
「話さなければ?」
「別にどうもしない。これは『お願い』でしかない。お前がここの連中に課し
たルールと同じくな」
 強制力は無い。けれども無視したらどうなるかは、きっと御船自身が一番わかるだろうと言外に込めてアーヴニルが冷たく御船を見据える。
『もしそうなら、覚悟はしておけ』という脅しだ。
 しばらく考える素振りをしてから御船が口を開く。
「そうですね、薔薇のルールは先ほど申し上げた通り、私が始めた一種の遊びですね。名前を出す代わりに薔薇に関連する何かを置いて『秘密にしてください』とお願いをしていたわけです。それなりに手を回したり、噂を故意に流したりはしましたけれど」
「それで、何故こんな事件になった」
「さあ? 私は犯人ではありませんから何故と仰られても回答のしようがありません」
「護衛を頼むくらいだろう。心当たりがあるんだろうが」
「はい、それはもう。綺麗な掌でないことは自覚しておりますから。怨恨が一番あり得ます。貴方がたも自身が怨みの1つも買っていると考えたことはございませんか? 例えばその力を振るった何者かの親族、友人、もしくはそれで不利益を被った誰か。それを特定できますか?」
「言葉遊びをしに来たつもりは無い。問答をするつもりもない。それが、お前の誠意と受け取っていいんだな?」
「ご随意に。私も報酬以上の働きは求めていませんから」
 明らかに存在として格上の自分達にここまで啖呵を切れるのはどういうことか。今すぐ殺すことだってできると、先の日月の力を見ればわかるだろうに。そんなことはしないとたかをくくっているのか。
 そうではないとアーヴニルは睨む。会話自体を愉しんでいる。脅されることすらこの女の喜びの1つなのか。
 御船の土俵に引きずり出されたような不快感をアーヴニルは感じずにはいられなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

姫咲・沙良
承りましょう

即答。やんわりと微笑み返し
手にした御旗を媒介にぐにゃり、と空間を軋ませて

顕現せしは醜悪なる二頭の化身

牛と羊に似て非なる醜き巨躯のナニカを侍らせ

会長自らが招き、望まれたとあっては応えぬ訳には参りません
姫咲・沙良。及ばずながら微力を尽くしましょう

えぇ、お代はのちほど
私を満足させるだけのものを支払って頂けるとのことで。報酬がどれほどのものか……楽しみにしておりますね

そのまま生徒会のお手伝いの名目で会長の護衛に
天使様の一端たる二頭にお任せし襲撃に備えましょう

あら駄目ですよはしたない……物欲しげに涎を垂らされても何も差し上げられませんわ。……今は
そう怒らないで下さいませ。えぇ、えぇ……ふふっ



「承りましょう」
 誰よりも早く護衛を了承したのは姫咲・沙良だった。
 御船にやんわりと本心の見えない微笑みを返すとその場でユーベルコードを展開する。
【権限せし醜悪なる二頭】
 それは異様な化け物だった。牛と羊のようにみえる。けれども明らかに違う。
 醜悪で、恐ろしく、巨大だった。
 天井を突き破らんばかりのそれは、身をかがめながら御船を睨みつけてだらだらと涎を垂らす。
「あら駄目ですよはしたない……物欲しげに涎を垂らされても何も差し上げられませんわ。……今は」
 くすくすと嗤う姫咲の目は、どこか御船と似通った壊れた色があった。
「まあ、まあまあまあ。先ほどの力も凄いですけれど、こんなことも出来るのですね」
 当の御船は自身をねめつける巨大な化け物2頭にそれなりに驚愕したようだったが、すぐに復帰。今ではまるで初めて動物園にきた子供のようにはしゃいでいる。
「……所で、此方の牛? 羊? の方々は常に?」
「そのつもりですけれど」
「騒ぎになりますね」
「確かに」
 朗らかに嗤う2人だったが、流石にそれは無用な混乱を招くと緊急時を除き引っ込める事と相成った。
「ああ、ちなみに姫咲さん? 報酬で私個人を望まれているのでしたら、申し訳ありませんがお応えできかねますよ?」
「あら、それは残念ですね」
「ふふ、流石に私も自分の命を救ってくれたお礼に体を差し出す、なんてことは出来ません。英雄に嫁ぐ村娘ではありませんので」
 姫咲の護衛中は、他の猟兵のときよりも一層機嫌良さそうに御船は過ごしていたという。

成功 🔵​🔵​🔴​

鏡島・嵐
表面上は今まで通り生徒として振る舞いつつ、御船紗羽を護衛。
〈目立たない〉技能で傍目には護衛だとは気づかれねえよう、けど御船本人にだけはおれが護衛だとはっきりわかるよう行動する。会話とかも、さも以前から親友だったように親しげに接する。

正直な話。こういう顔をする女は気に入らねえし、信用できねえ。
だけどこの一件、彼女の身に何か起きんのはマズい。なんとなくそんな気がする。
――ところで「紗羽」って変わった名前だな。読みは? 意味は?
……アンタにとって薔薇ってどういう存在だ?

その一方、おれに対して接し方が変わった、或いは御船とよく接触する教師や生徒に《彷徨える王の影法師》を張り付けて、常の言動を監視する。



 護衛は名乗り出た数人の猟兵によって持ち回りで行われることになった。
 四六時中張り付いていては此方が持たないし、なにより不自然だ。

 最初に御船に付いた鏡島・嵐は目立たないようそれとなく御船に侍り護衛をこなしていた。
「御船の今日の予定ってどうなってんだ」
「どう、ですか……そうですね」
 教えられたスケジュールは過密の一言。まるでどこかの重役のようなものである。学校、生徒会、課業後となれば習い事にどこぞの会食に出席。休む暇が無い。
「それ、おれらがついてっちゃまずいんじゃ無いか?」
「そこはどうにかしますよ。そうでなければ困りますし、御願いしているのは此方ですから」
 会話の合間にも様々な生徒がやってきては彼女に声をかけていく。決まってそれは部活の長だったり教師の中でも要職にいるものだったりするのだ。彼等にそっと影を貼り付けて監視するように命令する。
 一般の生徒は彼女から距離を置いて眺めてくる。視線は大雑把に分けてしまえば羨望と、恐れのように見えた。
「随分と人気者だな」
「いえ、私などまだまだですよ。日々己の無力を痛感しております」
 政治家のような女だ。その言葉に真実は無く、常に裏があるようにすら思える。これは彼女の所業と生徒会室での狂った笑みを見ているから、そういうバ
イアスがかかってしまっているだけだろうか。
 鏡島にはよくわからない。
「ところで、紗羽(さわ)って変わった名前だな。意味は?」
「初めて聞かれました。……どうなんでしょう。今度両親に聞いてみますね」
「……アンタにとって薔薇ってどういう存在だ?」
「とても美しいと思いますよ。我が家にも薔薇園があるのですが、今は時期ではないのが残念です。もう少し遅ければ皆様にも我が家の薔薇をご覧になっていただけたのに」
 暖簾に腕押し。この女は自分が信用されようとかそういうつもりが一切無いようにすら思える。
 胡散臭い。信用できない。だが放っておいて彼女の身に
何か起こるのは危険な気がする。
 鏡島の目がうろんな物になるのも仕方が無かった。守る気がわかない、というのが正直なところである。
「アンタ、命が狙われてるってのに怖いとか思わないのか?」
「怖いですよ? でも、そうですね。それで自分がしたいことを出来ないのなら、それは死んでいるようなものじゃないですか」
「アンタのしたいことって?」
「楽しむことです」
 鏡島にだけ見える角度で、悪戯っ子のように微笑む彼女は中々に魅力的といってもよかった。
 よくわからない女だ。鏡島はより一層不信感を募らせるに至る。

 影による監視は空振りに終わった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マレーク・グランシャール
御船・紗羽の護衛として授業中以外は片時も離れずに側にいる
この女の性格や過去や企みなど俺には関係ない
教師と生徒だということも気にしない
俺はただUDCが現れるのを待ち、喰らえればそれでいい
この女の正体がUDCならそれこそ近くにいた方が喰いやすい

怪しい者が現れたなら抱きしめて【水晶竜鱗】で透明化、声を出さないよう彼女の口唇は塞ぐ
姿だけ消しても悟られるなら、【蒼炎氷樹】で逃げる隙を作る
彼女が傷ついたなら【竜聲嫋嫋】の歌声で癒すだろう

俺は何も問わないしカマを掛けることもしない
駆け引きに慣れた女と腹の探り合いするより、番犬を演じて信用を勝ち得た方が早い

彼女は大切な『餌』
「お前を喰わせろ」くらいは言うかもな



 マレーク・グランシャールはどの猟兵よりも静かに護衛を務めた。
 質問をするようなことはしない、腹も探り合わない。それは相手の土俵であることを直感で悟っていたからだ。なにより彼自身駆け引きのようなものを好む性分では無い。
 敵、UDCを喰らえれば良い、それだけだ。
 長時間無言で侍るグランシャールに御船の方が先に折れた。
「貴方、いえ、先生は何も仰らないのですね?」
「不満か」
「いえ、沈黙は金、という言葉が日本にはあります。大変結構なことかと。ですが……少々拍子抜けですね。問いつめられたり拷問まがいのことを一気に受けたせいか、落差が」
「……報酬の件だが」
 喋れと言うなら喋ってやろうと思いついた言葉を吐いただけなのだが、御船はきょとんとした表情でグランシャールを見上げてくる。
 何かおかしかっただろうかと不思議に思いながら言葉を続ける。
「お前を喰わせろ」
「あら、情熱的なお誘い……というわけではないのですね」
「人間的な言い回しは俺は出来ん」
「あら、やはり人間ではないのですね」
「気づいていたのか?」
「何に対してかはわかりませんが……そうですね、あれだけ不思議な力を使う皆様ですから人間ではないのかと想像力を逞しくしていただけのことです」
「そうか」
 何がおかしいのか御船が横でくすくすと笑い出す。笑われている、というわけではないのだろうが気分が悪い。
「ああ、申し訳ありません。そんな怖いお顔をなさらないでください。ただちょっと、今までしたことも無いテンポの会話だったもので、新鮮で」
 そのようなことで笑うのか。人間、いや女という者はよくわからない。それともこいつがおかしいだけか。
 興味も無い。どうでもいい。
 グランシャールは変わること無く四方へと注意を向け続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧生・真白
🔎WIZ

へぇ、容疑者自ら姿を現すとはね
御船さん、気分転換に僕と話をしないか?
襲撃に備えて気を張っているのも疲れるだろうし
まあ、僕が色々と聴いてみたいだけなんだけれどね
君のことを守るんだからいいだろう?
フェアにいこうじゃないか

そうだな…薔薇のルールとは何か
どうしてそんなものを作ったのか
これを破ると最悪殺されるそうじゃないか
そして今回の猟奇殺人には君が作ったルールである薔薇が使用されている…
どうしてかな?
それと、その猟奇殺人犯に心当たりはあるのかな?
例えば行方不明の白木マイ…とか

まあここら辺を聴いておこうか
僕たちに用心棒を頼んだのは、こっそり何かを為すための足止めの可能性も無きにしもあらず、だが



 午後の休み時間。護衛の猟兵を侍らせながら、生徒会室で仕事をしている御船に1人の猟兵が近づいた。
「御船さん、気分転換に僕と話をしないか?」
 霧生・真白だ。御船が了承すると他の役員にお茶の準備をさせて応接用のソファーへと腰掛ける。安物では無い。材質も座り心地も量産品とは思えない確りとした作りだった。
 学校がこんなものを用意するとは思えないから、きっと御船のポケットマネーかなにかで購入したのだろう。茶葉にしてもそうだ。霧生はお茶を煎れてくれた役員に礼をいいながら、匂いと味から銘柄を特定する。一級品だ。学生が気軽に嗜むには少々値が張りすぎる。
「いい紅茶だね。ただの学生には少々不釣り合いだ。会長特権かい?」
「いいえ、さる友人からいただいたものです。それで? お話とは」
「ちょっと事件の真相を知りたくてね。襲撃に備えて気を張っているのも疲れるだろうし。まあ、僕が色々と聞いてみたいだけなんだけれどね。君のことを守るんだからいいだろう? フェアにいこうじゃないか」
「あら、護衛の任を受けていただいたとは初耳ですが」
「やっているよ、勿論。君に張り付いていないだけで何かあったら風より早く馳せ参じよう」
「ならば報酬は確りお支払いしないといけませんね。フェアに。それともその質問が報酬代わりと考えても?」
「む……」
 彼女の中で一瞬報酬の金と知的好奇心が天秤にかけられた。この歳で自ら生活費を稼いでいる彼女にとって金とは軽々しく蹴っていいものではない。ないが。
「構わない」
 好奇心を満たさずしてなにが探偵か。
「承りました。では、どうぞ」
「薔薇のルールとはなにか、これはまあ他のが聞いたね。ただの趣味、と。また今回の殺人事件で使われている理由も。確か、『犯人からのメッセージ』だったかな?」
「ええ、そうですね」
「犯人の心当たりも多すぎてわからない。……これは嘘だよね」
「あら、どうしてですか?」
「誰だって気づくさ。だからあの質問をした彼だって君を見限ったんじゃないかな? さておき、犯人が残したのはメッセージだけじゃない。先の4人、そして女子生徒の3人。僕と僕の同僚が掴んだ情報だと彼等にはつながりがある。その線の一端は、君だ。そこまで揃えば君だって誰が犯人かくらい目星がついているのだろう?」
「そうですね。探偵さんはもう片方の端にも気づいているようですが」
 自分の生業を知っているのかと少し驚いた。気持ちを切り替える。今はそれを追求する時ではない。
「白木・マイ。違うかい」
「当たりです。私もそう思います。ですがそれ以外の可能性も、考えていますよね?」
 御船の顔は完全にミステリーを楽しむ観客のそれで、拍手でもしそうな勢いだ。
「気づいていたのかい?」
「だって、皆さんまるで私が巨悪の根源のように問い詰めてくるんですもの。それこそ誰だって気がつきます」
「君、本当にふざけた人間だね。いつか痛い目を見るよ……。ともあれだ、明
らかに容疑者の1人としてあがっている人物が僕らを態々招き入れた。何か別の企みを進行している、そう考えるのもし方ないだろう?」
 一拍おいて。
「例えば僕らを足止めしたかった、とか」
 揺さぶり、カマかけ。なにか動揺でもあればしめたものなのだが。
 御船の表情は揺らがない。にこやかな仮面の内側を、霧生は読み取る術を持たない。
「なるほどそういう考え方もあるのですね。ですが、これ以上は秘密です。探偵さんが自ら推理してくださいね?」
「おいおい、フェアの約束はどこへいったんだい?」
「申し訳ありません、興が乗りやすいのが私の悪い癖でして。何より、自供だけで完結してしまうミステリなんて面白くないでしょう? 推理と暴露の見せ場が無い探偵小説なんて退屈に過ぎます」
「ここはフィクションなんかじゃない。現実だぞ」
「同じですよ。楽しいかどうか、全てに通じることです。それに」
「それに?」
「探偵さんも、そこに興奮するからこそ真実を暴くなんて事をしているのでしょう?」
――社会正義なんて幻想では無く。ただ己の満足の為に。

成功 🔵​🔵​🔴​

境・花世
いざとなれば庇うつもりで
淡々と彼女の傍らへ控え
白く美しい横顔を眺めていよう

箱庭に君臨する女王様
かわいい生徒たちは皆、
きみの思いのままだね

幽かに首を傾げて、
もしも視線が合ったなら
一言、静かに問うて

――何が、目的だった?

意味も無く虐めを楽しむ程
頭の悪い人間ではないね
ならば何故、マイを追い詰めたの?

あえて手管は使わずに、
違う花の色した眸で真直ぐ見つめ
そんなにも赤く麗しく、
滴るように咲いた唇は
何を聞かせてくれるだろう

許すも許さないも
わたしの領分じゃないけれど
仕事の報酬に一片の真実くらいは、ね

浅く笑って静かに耳を傾ける
薔薇の下で囁き交わせば
それは全部、ひみつごと

※アドリブ・絡み大歓迎



 次の護衛は境・花世。
 彼女は淡々と御船に付き従い、護衛の任をこなしていた。

 片手の指が全て潰れているとは思えぬ速度で仕事をする横顔を。
 狂った笑みなどかけらも見せず、にこやかに他人と話しをする様を。
 何を考えているのだろうか。境はその美しい横顔の奥にある熱情を思う。
 有能な人物なのは明らかだった。親の権力や、大人を誑し込む手練だけで、小さいとはいえ学校という数百人の集団をここまで完璧に支配は出来はしないだろう。
 彼女にどれほどの熱意があって、なぜこんな傍目には意味のわからない虐め等と言うことに加担したのか。それが疑問だった。
 ある時、護衛の最中に通りかかった校庭で薔薇を見つけた。今は咲いてはいないのだけれど、それは確かに薔薇の木であった。
「私の趣味で植えて貰ったんです。流石に温室というわけにもいかなかったから、冬はこうして寂しいものだけれども。暖かくなればそれはもう見事な花がつくのですよ」
 自らの宝物を披露するように振り返った御船と目が合った。
 言葉は自然と漏れた。
――何が目的だった?
 境が発した言葉は酷く端的だったが、それでも過たず御船に伝わったようだった。
 少し驚いたように目をしばたかせ、その後むくれる。
 色んな表情を持つ女性だなと境は思う。
 艶やかな彼女、狂笑を貼り付けてゲー
ムに興じる彼女、氷の微笑で仕事をこなす彼女。そして目の前の子供のような彼女。
 どれが本当、なんて考えるのは野暮なこと。どれも彼女なのだろう。どれも彼女ではないのだろう。
「率直な人なのですね、貴女は」
 おそらく駆け引きが出来なくて面白くなかったのだろう。見てきた時間は僅
かだったが、それでも多少は御船の人となりはわかる。その性質は享楽的で、破滅的。打算的で狡知に富む。だから遊べなくてむくれているのだろう、と。
 けれど立ち去らないところをみるに、不興を買ったと言うことも無いのだろう。
 彼女のルールにのっとり薔薇の側での質問がよかったのか、それとも手練手管を用いない実直な質問がよかったのか、わかりはしないけれども。
「ですが好感がもてます。だから、貴女だけですよ?」
 境の耳元に口をよせる。意中の男性を教え合う女子のように、密やかに。
「――」
 秘密ですよ。そう言ってごく普通の少女のように笑う御船は、薔薇があしらわれたハンカチを境に手渡すのだった。
 Under the Rose。
 従う意味は無いけれど、それは確かに契約であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イルナハ・エイワズ
おびき寄せるための餌が用意出来たみたいですから
あとは喰いつくまで待てば良さそうですね?
喰いつくまで時間がありそうですから
私はネグラ探しでもしてみましょう

標的を選んでいる点も含め、知能は残っているようですね
白木マイさんだと仮定して
女子高校生が行動する範囲は限られますので
ネグラはそんな離れた場所ではないと思うのです

ミーさん達から得た情報
繁華街、学校、白木さんの実家
自由猫や他の動物たちが消えた地域
情報を整理しながら範囲を狭めていきましょう
あと薔薇を確保出来る場所が絡めば可能性は高いでしょうか?

結局は学校が一番怪しいとなりそうなのですが
それはそれで問題はないでしょう

もし遭遇し、戦闘になったらUCで対応



 イルナハ・エイワズは会長と問答をするわけでも、護衛をするわけでも無く、引き続き街での調査を続行していた。
(知能の形跡はある。対象を選んでいる事、カメラを意識した行動、何より薔薇を使うメッセージから明らか。後は絞り込むだけですが)
 動物たちが逃げたというのならばそれはある程度の法則性があるはずだ。感覚が人より優れている分、それは顕著に表れるはず。
 更に絞り込める情報といえば薔薇の入手先だ。盗難や荒らされた形跡といった通報があれば助かるのだが。
「ありませんか」
 現地協力組織経由で得た警察の情報からそういった通報はなかったという。であれば、露見しないような箇所から盗んだ。もしくは。
「まっとうな手段で手に入れたか、ですか」
 それはつまり協力者がいる、あるいは人の姿で活動できるということだ。中々に面倒な話になってきた。

 調査は困難では無かったが、ひたすらに時間と労力を食った。
 自由猫の消えた範囲を特定し、飼育されている犬からの聞き込みでその範囲を狭めていく作業は1人と1匹だけで行うには少々荷が重かった。それこそ可能ならば警察の得意とするローラー作戦でもしたいところだ。
 だが、それでもエイワズはやり遂げた。
『ご主人ったらひでーんだぜ。コース外れるの嫌がって無理矢理俺を引っ張っていきやがるんだ』
 散歩コースを変えようとして飼い主に大目玉を食らった犬の情報が何より参考になった。
 更には薔薇の購入者リストを警察から手に入れて、動物たちが避けて通る範囲でと照らし合わせる。
 時間はかかったが確実に調査が進んでいるという手応えを感じる。
 どれほど街を歩き回ったろう。猟兵でありヤドリガミでもある彼女は疲れという感覚は希薄だが、共に調査していたユルはぐったりとして青色吐息だった。後でしっかりご褒美をあげねばなるまい。
 ユルをどうにかこうにかなだめすかしながら調査を続け、日も暮れた頃に炙り出されたのか。
 NPO団体『救済の会』。
 ホームページを見る限り、虐められた子供を引き受け心のケアや法律的な対処法を共に考えるといった趣旨の団体であるらしい。
 明らかに怪しい。仮に白木が殺人の犯人だとしたら、虐められていた時期に立ち寄っていた可能性は大いにある。
 踏み込んでしまおうか。いや、虎の巣に入り込むには単独では危険であるし、エイワズには潜入の技術は無い。仲間に連絡して監視あたりが妥当なところだろうか。
 だが、その心配は杞憂に終わった。
 施設から飛び出し、人とは思えぬ跳躍力を見せる影が現れたのだ。
 おそらく、犯人。
 止めるか。否、今ここでコードを使用して大立ち回りなどすれば被害と目撃者はどれほどの数になるだろうか。
 エイワズは発揮しようとした力を収め、影が向かった方向を見定めた。
 南南西。その方角にあるのは、件の学校だ。
――いけない。
 エイワズは素早く他の猟兵へと連絡を取った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黒装の破壊者』

POW   :    砕け散れ
単純で重い【拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    贄となれ
自身の身体部位ひとつを【異形の大蛇】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    磔になれ
レベル×5本の【物理】属性の【邪神の肉で作った杭】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は麻生・大地です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 襲撃は生徒会室にて行われた。
 ガラス窓に飛び込んでくる人影を、けれども猟兵達は万全の体勢で迎えうつことに成功する。
 事前の情報があり、さらにはしっかりと警戒し護衛対象に侍っていた猟兵が居たのが大きな要因だったろう。
 窓から飛び込んできたモノは、人型に近い造形をしていた。あえて形容するならば血の色をしたヘルメットとボディースーツを着用し、背中から触手めいたなにかを生やした人間のようなナニカ。
 間違いない。UDCだ。
 背中から生やした触手状のものをのたくらせながら、部屋に居る猟兵達を端から順に視線に収める。
「誰?」
 声は意外なことに人のそれだった。狂気に乱れることもなくしっかりと発音できている。
「会長の護衛、みたいなものだ。白木・マイだな?」
 猟兵の問いに、ナニカは小さく頷いてから、部屋に視線を走らせる。
「あの女は、どこ? 殺さないと、いけないの。私みたいに貫いて、泣かして、許してって懇願させて、殺さないと。だめなの。殺さないと。だめなの殺さないと殺さないと」
「白木……」
 知能はかろうじて残っているようだが、今この瞬間にもぽろぽろと零れて消えていくのがわかる。
 言葉をかけてやれるなら今だけだろう。
 同時に、苦しませずに殺してやれるのも今だけだろう。
 放っておいたらきっと近いうちに彼女は化け物そのものに成り果てる。ただの高校生の少女が、化け物として世界に記録されるのは避けねばならない。
 猟兵達は各々、得物を握りしめて……。
鏡島・嵐
判定:【WIZ】
《大海の姫の恋歌》で味方を支援。状況に応じ〈援護射撃〉〈フェイント〉〈鼓舞〉を使用。

心のどこかで予感はしていた。犯人の正体も狙いも……その末路も。
おれにはやっぱり、救ってやれねぇ。戦いではいつも無力で、怖くて震えが止まんなくて、自分を奮い立たせるのが精一杯のおれには。
癒しの歌も、多分、もう彼女には届かねぇ。
――それでも、逃げたらきっと、後悔する。たとえどんな結末でも。だから逃げねぇ。

全部終わって、もしその権利がおれにあるなら。
一つだけ、誰かに問いてぇことがある。言っておきてぇことがある。
――本当に死んでいい奴なんて、この学校に一人でもいたのか?


八上・玖寂
強者の享楽により弱者は握り潰され、今は狂気がもがくのみ。
原因など最早無意味な事柄。
それでも結論を求めてしまうのは、そう、好奇心ってやつですかね。

基本的に死角から『咎力封じ』を使用して動きを封じる方針で。
【先制攻撃】【2回攻撃】【傷口をえぐる】【目立たない】【暗殺】が上手く働けばいいですが。

可能なら、最後に本人にも問いを投げかけたいですね。
僕は好奇心から今回の原因を探しましたが、これが中々見つからない。
彼女が貴女を斯様に至らしめたのは、理由があってのことですか?
それとも、彼女の気まぐれですか?

UDCの始末を承った故、貴女の未来を変えることは出来ませんが
僕は御船の依頼を受けた覚えはないのですよね。


イルナハ・エイワズ
UDCよりユルの機嫌を戻す方が大変なので
さっさと終わらせます
やりたいことがある人はさっさと済ませてくださいね?

観察による敵の行動分析
そこから攻撃のタイミングを考えましょう
素早く戦闘を終わらせるために持てる技能のすべてを使い
仲間と協力し戦闘を有利に進めます
アッサルの槍で串刺しにして動きを止めることを狙いましょうか

戦闘後
報酬として生徒会長に
未婚の女性教師(30~46才)の写真、連絡先を紙媒体で要求します
電子媒体はいろいろ面倒です
土産には
面倒なおまけが付きそうなのでお勧めはできません
とコメントを付けておきます

準備が出来るまではユルのご機嫌を取りつつ
ミーさんたちへの挨拶を最短ルートで済ませます


壥・灰色
階下、戦闘音
ようやく出番だ

壊鍵、起動

「壊鍵」は衝撃と応力を司る魔術回路
四肢に応力、撃力とベクトルの集合体たる「衝撃」を装填し、敵に叩きつけて粉砕する
それだけの為に設計された殺傷用の魔術回路

床を『壊鍵』による衝撃を宿した脚で蹴り破り階下へ落ちる
直下は丁度生徒会室
何度も確認しておいた

言い残すことがあるなら端的に言え
お前がしたかったことをやってやれるかもしれない

駆け寄り、格闘戦を展開
最短距離で急所を狙う、殺人のための格闘術
それに衝撃を乗せて、放つ

白木の言葉は確かに聞く
裁くと約束なんぞ出来ないが
あの女が、確かに死ぬに足ると思ったその時は
おまえの代わりを、おれが務めてやるよ

だから迷わず逝け
さよならだ


セリオン・アーヴニル
【無窮流転】を発動し攻撃力重視で自身を強化。
人格は変化させず髪と瞳をより深い黒へと替える。

『2回攻撃・フェイント』を併用。
一手で攻撃を捌きもう一手で斬撃を与え体力を削りつつ、応戦の合間に白木への問答を行う。
何を知った?何をされた?
やり取りの後、獲物だぞ?と言わんばかりに意図的に御船への道を空ける。
御船《おとり》へ無防備に飛び掛かろうとした瞬間、横から最上段からの一撃を思い切り叩き込む。
殺させる気はないが、御船の守りは他の猟兵に任せる。

戦闘終了後、御船に一言。
「やり方は好まれないだろうが、手腕と胆力、何よりその『好奇心』はある意味見事だった。…お前、猟兵に向いてるぞ?」
と、連絡先を添えながら。


嶋野・輝彦
第六感で動きを予測
怪力で押さえ込み
捨て身の一撃、零距離射撃で攻撃
ダメージは激痛耐性、覚悟で耐える
紗羽への攻撃は第六感で予測、俺が代りに被弾

紗羽は生かす
生かしてウチ(UDC組織)で使い潰す
アレは生きる事に倦んで腐って反省も後悔もない
そんな所だろ?
それであれだけやらかすんだ
無駄に優秀なんだよ
情報源でもなんでも使い様はあるだろ?
今回の件も
自分を餌にして
事件を起した狂人と正義の味方を殺しあわせたら面白いんじゃねーかな位の話だろ?

記憶消しても同じ事繰り返すだけ
なら有能な狂人は狂った世界で使い潰せばいい
だからお前にゃ譲ってやれねーわ死体に帰れ

後は殺す位だが
悪人も可哀そうな女の子も死にました
オチとして詰らん


日月・わらび
それやったってサイコは泣かねーと思うけどの
ま、処分するのさ

怪力鎧砕き裏破牙を主に正面から殴るの
相手が引けば大振りでどかーんしたり
近接殴りあいだの


戦闘後に報酬として沢山お金要求するの
わぁい、やったー!おじじとおばばの饅頭代もあるのー!
グリモア猟兵へのお土産…用務員の連絡先で良いや










きゅい










騙しうち発動
全員が報酬を受け取り次第会長をぶん殴るよ

非日常へ憧れが強くて精神構造もおかしいから
再発やら他の組織と繋がる前に処分したいのさ
改心を期待できるレベルを超えてるしの

って宣言して
お大事にしたい猟兵が居れば庇える程度の速度で裏破牙

ほら、やっぱ泣きはしねぇの

処分成功時は薔薇をおいてくの
勝手に隠蔽してくれそうだしの


マレーク・グランシャール
予想通り白木に【水晶竜鱗】で透明化した俺達の姿は見えない
だが触手を伸ばされれば何れ気づかれる
御船は身を挺して庇うが、傷を受けたなら血と引き替えに【ブラッド・ガイスト】を発動、迎撃開始だ
【蒼炎氷樹】で動きを一時止めたら【赫灼竜紋】で触手を噛み喰らい、UDCを融合してしまおう

御船は俺の姿に驚きこそすれ怯えはしないだろう
守り切れずに付けてしまった傷は【竜聲嫋嫋】で癒し、死なせはしない
この女がどんな女でも、俺の知ったことではない

UDCのことも俺のこともそのうち忘れるだろう
記憶はやがて色褪せて散る薔薇のようなもの
いらなくなった胸の薔薇を髪に挿して残していこうとすれば、きっとまた笑うのだろうな


姫咲・沙良
本当に残念です

私の代わりを、と思いましたのに
あっさり『天使様』を拒まれるなんて

その場で殺そうと思いましたが
お力を以てお守りすると交わした手前、それも叶わず

……本当に残念

今しばらくは私にお付き合い下さいませ


あんな女は貴女は相応しくありませんわ


約束通りに会長の護衛に専念

身を盾にして乱れ飛ぶ杭から私を、その背にある会長を守る二頭をうっとりと見つめ

あぁ……なんて醜く惨い有り様ですこと
なんて愚かで愛おしい……うふふ

私の世界は狭き鳥籠
薔薇の園とは比にならず
けれども。薔薇に巣くう虫けらがするりと迷い込むやもしれません

くるりと振り返り
満面の笑みと内なる光を以て会長に【誘惑】を試み

いつでもお待ちしておりますわ


フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

【古城】でトリテレイアと共に参加

白木よ…貴様の苦しみが理解出来た等とわかった風な事は言わぬ
苦しみは理解及ばずとも、貴様という存在は、我が心の中に永劫に留めてやる
UC:トーデスシュトラーフェにて、引導を渡してやろう…!

…白木を葬っても、奴が接触した「救済の会」を放置する訳にはいかぬ
戦闘後もスキルを活用して調査を行い、黒であれば…今回の件の黒幕の一つとして、きっちりとツケを払わせてやる

あぁそうだ、御船よ…貴様にも一つ言っておく
我は今後も、貴様を監視し続ける
猟兵としてでなく、フォルター・ユングフラウ個人としてな
手出しされぬと高を括るなよ
…次に杭に貫かれるのは、貴様かもしれぬぞ

※アドリブ歓迎


トリテレイア・ゼロナイン
【古城】でフォルター様と共に参加
白木様…その怨嗟は御船様を貫いた後、貴女を救ってくれなかった世界そのものに向かうでしょう
私は騎士としてそれを止めなければなりません

御船様を最優先で狙うでしょうから護衛しつつ、注意が逸れたら隠し腕で拘束します

戦闘後、イルナハ様が見つけた救済の会の調査に加わり「黒」なら猟兵として対処。…粛々と調査を行った彼女に敬意を

ある種の駒がルールによって絶対に移動できない盤のマスが存在するように猟兵として、騎士として動く私は「今」の御船様を敵手として捉えることはできないでしょう。…将来はわかりませんが。

白木様の祖母に許可を貰い位牌に手を合わせ無力を詫びます。自己満足ですが…


境・花世
薔薇の少女を背に庇って
何の波も立たせず笑う
女王様、望んだ劇の始まりだ
存分に愉しむといい

“再葬”

現れるもうひとりに彼女を託し
いざとなれば身を挺し護らせよう
命に良いも悪いもありやしない
これがわたしの、仕事だから

彼女を散らされぬよう、
逆方向へと身を躍らせて
囮になるべく捨て身の一撃
記憶消去銃から放つ衝撃波で、
黒装を深く抉ると共に、
その恨みを少しでも消せるなら

薔薇はわたしが殺してあげるから
きみはどうか、もう、おやすみ

全て終えたら無事だけ確認して、
静かに其処を立ち去ろう

……殺さないよ、仕事じゃないもの

ハンカチで頬に散る血を拭ったなら
薔薇は穢れてしまうだろうか
或いは――いっそう赤く鮮やかに、映えるだろうか


霧生・真白
ねえ、御船さん
君は白木マイがこんな姿になっていることも予想していたのかな?
――それとも、こういう姿になるように仕向けたのかな?
自分は直接手を下すことはせず、高みの見物を決め込んで、さ
それで自分の手に負えなくなって僕たちに頼んだのかな
――はぁ……邪神なんかより君のほうが余程地球に仇なす存在な気がするよ…

白木さん
真相を話すなら今のうちだ
君が何をされたのか、僕は知りたいね
洗いざらい話してすっきりしてしまいなよ

正直戦う気なんて起きないけれど
苦しまずに――というのなら……
でも直接手を下せるほどの勇気は僕には……
申し訳ないけど、皆の援護に回るよ
足止めくらいは出来るから、さ

――感情なんて本当に邪魔なだけだな


レッグ・ワート
救済の会だか何かは、紹介や誘導無しに自分で見つけたのかどうだろうな。ざっくり聞いただけだが、殺して苦さから少しでも逃げられたならそれはそれで。ただ先には行かせない。

人命最優先。事前にドローン複製しておいて、戦場の天井隅と敷地上空、後は相談の上で御船がいる場所や近くに迷彩配備。先のを消さずに済むなら、開戦後は鉄骨もコピーして、並べ重ねて猟兵や床壁の盾、敵の進路妨害に使うぜ。邪魔なら消す。後は見切り武器受けで捌いたりかばいながら鉄骨で近接戦だ。

影響力柄遊べる相手も限られるんだろうが、他の奴で遊ぶなよなあ。そんで自分もだいじに。きっと絡まれるなら癖の強いギリ味方くらいの手加減が嬉、いやそれも怖いわ。



(UDCよりユルの機嫌を戻す方が大変なので、さっさと終わらせたいですね)
 誰かが、UDC――白木に言いたい事でも有るのならそれを待つくらいはできるが。
 そう思ってイルナハ・エイワズは他の猟兵達をそれとなく観察する。何人かの猟兵は思うところがあるのか、表情を強張らせて白木を見つめている。何か殺す以外の事をしたがっている顔だ。
(人間というのは本当に不思議なものです)
 救えない以上、殺すという結論に変わりはないのに。そこに真実や想いを求めてわざわざその柔らかな心を傷つけていく。実に不可解で興味深い者達である。

「女王様、望んだ劇の始まりだ。存分に愉しむといい」
「感謝いたします」
 互いに本心のまったく見えない笑みを御船と交わして、境・花世は力を発現させる。
【再葬】
 分身したかのように現れた、瓜二つの人物が御船へと侍るのを見届けてから境は白木へと走る。
(命に良いも悪いもありやしない。これがわたしの、仕事だから)
 割り切ったプロとしての動き。護衛対象から気をそらすべく、逆方向へと身を躍らせる。護衛用に自身の分身を配置しているからこその手だ。そうでなければ敵は一直線に護衛対象へと殺到するだろう。
「薔薇はわたしが殺してあげるから。きみはどうか、もう、おやすみ」
 向けられる銃は葬送の歌のように優しく、白木を削り取っていく。

 襲撃と直後に始まった戦闘音を、壥・灰色は現場の直上にある部屋から聞いていた。
「ようやく出番だ」
――壊鍵、起動。
 彼の四肢に仕込まれた魔術回路に力が通る。それは破壊のみに特化した人外の力。
 足を振り上げ、下ろす。ただそれだけの動作で床を破壊。瓦礫と共に敵――白木の前へと躍り出た。
 化け物とはいえ、元は人。急な展開に一瞬白木の体が動揺で止まった。すかさず抜重。重力と、魔力と、殺しの技術を合わせた拳が急所を正確に殴り穿つ。
 それは人に対しての殺人術であった。UDCに有効かは不明。
 けれども二本の手、二本の足を備え、重力の影響を受け地を踏んで移動し、会話をし、思考をする生物であるのならば狙える場所は無数にあるのだ。
 例えば腱、例えば魔力の流れのハブとなる箇所、正中線に沿って点在する経穴。
 人ならば何度も死ぬような衝撃をその身に受けて、白木が吹き飛ばされた。
「言い残すことがあるなら端的に言え。お前がしたかったことをやってやれるかもしれない」
「ころ、す。殺す殺すころす、アナタも御船も、誰もかれも、全部ぜんぶころしてやる!」
 白木はそれでも生きていた。生きてはいたが、その破滅的な衝撃から直ぐには立ち直ることができずに藻掻いていた。壥は無情にもそれを踏み潰しにかかる。

「ねえ、御船さん。君は白木マイがこんな姿になっていることも予想していたのかな? それとも、こういう姿になるように仕向けたのかな? 自分は直接手を下すことはせず、高みの見物を決め込んで、さ。それで自分の手に負えなくなって僕たちに頼んだのかな? はぁ……邪神なんかより君のほうが余程地球に仇なす存在な気がするよ……」
 今まさに戦い、傷ついていく者たちを遠目に見ながら霧生・真白が問うた。
「もはや調査の時ではありませんよ、探偵さん。証拠不十分では自白は取れません」
「君は……こんな時までブレないね」
「貴女こそ。ですがいいのですか、私になどかかずらっていて。ほら、白木さんが立ち上がりましたよ」
「仕事はするさ」
 ぶっきらぼうに答えて構えた仕込み銃は、違えること無く白木のその足を打ち抜く。ただの銃弾ではない。氷雪の魔力を籠めた魔弾だ。それは空間ごと白木の足を凍りつかせてその歩みを止めるのに成功した。
 更に目立たぬよう接近していた八上の【咎力封じ】が、白木の手を拘束する。
 死角から放たれたそれを白木は視認することすらできなかったに違いない。
(強者の享楽により弱者は握りつぶされ、今は狂気がもがくのみ。原因など最早無意味な事柄)
 八上とて、事件のおおよその流れくらいは読めていた。それでも、明確な結論を求めてしまうのは一種の病的な好奇心故だった。
 問答をするにはうってつけ。攻撃の合間を縫って近づいた猟兵達が彼女へと声をかけた。
「白木さん、真相を話すなら今のうちだ。君が何をされたのか、僕は知りたいね。洗いざらい話してすっきりしてしまいなよ」
「何を知った? 何をされた?」
「僕は好奇心から今回の原因を探しましたが、これが中々見つからない。彼女が貴女を斯様に至らしめたのは、理由があってのことですか? それとも、彼女の気まぐれですか?」
「なんなのよ……なんなのよアナタ達……知らない知らないしらないしらない! そんなのもうどうでもいい! 私は、あの女を殺す! 邪魔するならアナタ達も殺す! 殺すころすころす!」
 無遠慮に放たれた猟兵達の『どうして』は、それこそ人であった時の白木こそが問いたい事だったのだろう。
 被害者と言われる者たちが、自身が狙われた理由を知っているケースが世にどれだけあるだろう。
 人としての尊厳をかなぐり捨てる程の魂の恥辱と汚辱の記憶を、赤の他人に聞かれたい者がいるだろうか。
 少なくとも、興味本位で聞いていい内容ではない。
 逆鱗に触れた。
 白木の全身が膨張しみちみちと音を立てて、霧生と八上の施した封印を無理矢理引きちぎった。
 眼の前にいるのはセリオン・アーヴニル。射程圏内だ。白木が腕を大蛇へと変化させて襲いかかろうとした、その時。
 アーヴニルが体をずらす。まるで道を開けるかのように。その先に、白木は憎き女の姿を見た。
「皆様、傷心の女性に中々に酷いことをされるのですね。私感心してしまいました」
「みぃふねぇえええええええええええええぇ!!」
 瞬間、標的を御船に切り替えて弾丸の如き勢いで突っ込んでいく。
 その体が急に別ベクトルからの圧力に屈し、たたらを踏む。
 何事か。
 アーヴニルだ。
 最上段から叩き込こまれた剣が、白木の片腕を切り飛ばしていた。痛みすらすぐには感じさせない見事な斬撃。
 囮だったのだ。
 わざと白木から注目を浴び、その先にいる御船に視線が行くように誘導した。
 飢えた獣より愚直に御船へと疾走る白木はいい的でしかなかった。
 更に。
「申し訳ありません白木様。ここを通すわけには、まいりません」
 よろめく白木を、トリテレイアが【隠し腕】でもって拘束する。
 正式名称、腰部稼働装甲格納型隠し腕。ワイヤーでもって制御された腕が、白木の手足を拘束すれば。
「……」
 声もなく、背後から空間転移してきたフォルター・ユングフラウによって、触手を根こそぎ切り裂かれるのだった。
「ぃいぃぃいいいいだあぁあああああああぎぃいいいぃいいいい!」
「白木よ……貴様の苦しみが理解出来た等とわかった風な事は言わぬ。だが、理解及ばずとも、貴様という存在は、我が心の中に永劫に留めてやる。だから……」
 せめてもう安らかにあれ、と。
 願うように、祈るように、再度ユングフラウはその刃を閃かせるのだった。

 もはや問答の時は過ぎた。後はただ、殺すだけ。
 化け物へと変じた白木は、ついこの前まで人だったとは思えないほど自身の体の性能と、暴力に習熟していた。すぐさま御船を殺しに来なかったのは、もしかしたら化け物の体に慣れる為だったのかもしれない。
 杭を打ち出し、大蛇に変じた腕で猟兵達をなぎ払い、剛力でもって床もろとも叩き壊しに来る。
 尋常ならざる力だった。1人2人の猟兵であったら手に余ったかもしれない。
 けれども、数の前には無力であった。

 エイワズの【アッサルの槍】が逃げ場のない面制圧射撃を仕掛け、防御のために止まった白木にグランシャールの【蒼炎氷樹】が直撃。拘束したところに更に武器による猛撃を加えていく。
 白木の体が食い破られる度にグランシャールの体はより強固に、強く、漲るのだ。
 UDCの肉体を喰らうって融合しているのだ。どちらが化け物かわからぬその所業。
(御船は俺の姿に驚きこそすれ怯えはしないだろう)
 グランシャールの理解はむしろ、白木よりも御船の方に寄っていた。
 生きて喰らう事に純粋であるが故に、ただ在って欲求に正直な御船はむしろ当たり前としか彼には映らなかったのかもしれない。正も邪も、生きていく上では関係ないと割り切っていただけかもしれない。
 苦し紛れに放った攻撃はレッグ・ワートの鉄骨が阻み、食い止める。
「ざっくり聞いてだけだが、殺して苦さから少しでも逃れられるなら、それはそれで。……で、7人も殺して少しでも気ははれたのか?」
「あああああああああ!!」
 答えはない。狂乱した白木との会話は最早叶わない。
 けれどもこれ程御船に拘泥し暴れまわるならば、殺しても殺してもきっと気持ちは晴れはしなかったのだろうと予想はつく。
 我武者羅に振るわれる蛇と杭の嵐を武骨な鉄塊で受け止め、見切り、捌き、一歩もひかないと、先には進ませないと踏ん張る。
 それこそが彼の存在意義だから。いくら体が削られ破壊されようとも、引くつもりはない。
 とはいえ、だ。できることなら護衛対象は早く逃げてくれると尚良いのだが。
 白木を殴り飛ばした隙にちらりと目をやれば、目を輝かせて戦いを観戦している御船が見えた。
(見世物じゃないんだがな)
 困った護衛対象である。UDCでも邪神崇拝者でもないならば守った方が良いとは思って動いてはみたが失敗したかもしれない。
 目が合った瞬間、新しいおもちゃでも見つけたように喜色を浮かべる御船に、慌てて視線を切った。

 白木とてただ無抵抗に嬲られていたわけではない。
 大蛇に变化させた腕で、足で、時には頭部で、猟兵達の肉を喰らう。
 喰らった肉で触手を再生さて再度御船へとその杭を放つ。けれどもそれは巨大な牛と羊のように見えなくもない醜悪な生物の体に阻まれた。
 姫咲・沙良の【権限せし醜悪なる二頭】だ。
 天使と彼女が呼ぶそのおぞましい生物達は突き立った杭を引き抜きながら大きく吠えた。
 部屋全体が振動するかのような吠え声は、痛みによるものか、それとも怒りか。
 主たる姫咲以外それはわからない。
「あぁ……なんて醜く酷い有り様ですこと。なんて愚かで愛おしい……うふふ」
 淫靡に笑うその表情は酷く御船と酷似していた。それは愉しむ者の顔。争いも血も、悲劇も喜劇も諸共に食らって嗤う外れた者特有の顔だった。
「私の世界は狭き鳥籠。薔薇の園とは比にならず。けれども。薔薇に巣くう虫けらがするりと迷い込むやもしれません」
 不意に、姫咲が振り返り御船をその視界に捉える。
 濡れた瞳で、蕩けさせる声で。
「いつでもお待ちしておりますわ」
「ええ、待っていてくださいね」
 情欲に燃える瞳で、まるで褥への招待を受けるかのように。

 怨敵には届かない。ならば猟兵達から先に始末してしまおう。そう白木が思ったかは不明だが、いくら喰らおうが穿とうが、猟兵達は1人も脱落しない。
 それもそのはず、後方から鏡島・嵐が休むこと無く癒やしてまわっていたからだ。
【大海の姫の恋歌】
 召喚された人魚が声の限りに歌い上げれば、猟兵達の傷がみるみるふさがっていく。
(できるなら、これで白木も癒やしてやりたかったが)
 それは叶わない。白木の傷も、憎悪に狂ったその心も、もはや人魚の歌が届く場所には居ないのだ。
(どこかで予想はしてた。犯人の正体も狙いも……その末路も)
 そんなことはないという否定の材料が欲しかった。そのために調査を重ねた。けれどもあるのは当たり前で非情な現実だけ。
 心が折れてしまいそうだった。被害者でしかない少女を殺さなければ行けない現実と、激しさを増す戦闘の恐怖に。
(逃げたらきっと、後悔する。たとえどんな結末でも。だから逃げねえ)
 ただの自己満足でしかない。別に自分がやらなくとも他の誰かが、それこそもっと殺しに慣れた生粋の猟兵が自分より手早く確実に事を済ませてしまうだろう。
 それでも、それでもだ。
(嫌だからって、誰かに任せるような、そんな奴にはなりたくない。だからごめん、白木。おれはおれの我が儘で、お前を止める)

 拳が、剣が、銃が、止むこと無く白木を打ち据えていく。
「それやったってサイコは泣かねーと思うけどの」
 日月・わらびの【裏破牙】が。
「迷わず逝け。さよならだ」
 壥の魔拳が。
 白木への致命傷となった。
 触手はつき、両手すら失い、全身の傷から鮮血を垂れ流して、白木はその場に崩れ落ちた。
 最早立ち上がる力も残ってはいない。
 7人を残虐に殺した少女は、その命運を閉じようとしていた。
 そんな白木に近づくものが1人。
「さっきからなんで、なんで、なんで、って難しく考えすぎなんだよ」
 嶋野・輝彦だ。
 ゲームを通して御船と向き合ったからか、嶋野は今回の事件をだいぶ深いところまで理解していた。
「生きるのに膿んで腐ったガキの思考なんざ、案外単純なもんだ。俺らを呼んだのだって自分を餌にして事件を起こした狂人と正義の味方を殺しあわせて、それを特等席で見られたら面白い、その位の話だろ?」
 御船は黙して語らず。ただ亀裂のような深い喜悦の笑みを答えとした。
「そういう女だ。一々まともに考えるだけ無駄だ」
 かつりかつりと、白木に歩み寄ってその頭に銃口を突きつける。
「でもな、あの女は使える。お前にゃ譲ってやれねーわ」
「い、やぁあ、やめて、も、私を、いじめ」
「死体に帰れ」
 銃声。
 それきり、白木は二度と起き上がることはなかった。

●リザルト
 UDCは始末した。御船も守りきり、2つの依頼を同時にこなした猟兵達は当分の間生活に困るようなことになならないだろう。
 恍惚とも言える表情で猟兵たちをねぎらった御船と、それぞれ報酬の交渉を済ませたまさにその時。
「非日常へ憧れが強くて精神構造もおかしいから、再発やら他の組織と繋がる前に処分したいのさ。改心を期待できるレベルを超えてるしの」
 猟兵達にだけ聞こえる声音で宣言したのは、日月だった。
 踏み込み。
 きゅい。
 一瞬で御船との距離を零にすると日月がその凶器を振り下ろそうとする。
「やめとけ」
 その腕を嶋野が止めていた。
「止められちゃったの」
「こきやがれ。そうなるように誘導したのはお前だろうが」
 表面上は渋々と凶器を収める日月。
 御船は急に動いた状況にも、どこか予想していたのか目を細めるだけだ。
 もし、日月が本気であったならば、誰にも止められることもなく御船は死んでいただろう。頭蓋を粉々にし、脳症をぶちまけて。痛みすら感じなかったに違いない。
 戦闘後の弛緩した空気、一般人を直接手にかける者など居るわけがないという油断。
 タイミングは最上だった。
 宣言と手加減さえなければ。
 まるで止めたいのなら止めろ、とでも言わんばかりの不意打ちだった。
 日月は他の猟兵に問うたのだろう。この女が生きるべきか死ぬべきか、明確に、今この場で答えを出せと。
 少なくとも1人、それに答えられる者は居たわけだ。
「悪人も可哀そうな女の子も死にました。んな話、オチとして詰まらん。どうせなにしたところでこの女は反省も後悔もしねえよ」
「泣きもしないと思うの」
「だろうよ。なら、使い潰す」
「ああ、それはそれでまあ、ありかの? いや、無いんじゃないかの?」
 御船本人を加えずに、彼女の今後を決める会話がなされていく。
 ようはこの世界の協力組織にそのコネと力を取り込んでしまおうという話だ。
 下手に邪神崇拝組織などと接触するよりかはコントロールができそうだが、それはそれで今後さらなる災厄を招きかねないとも思える。
 まるでそれを企むかのように嗤う御船にユングフラウが声をかけた。
「我は今後も、貴様を監視し続ける。猟兵としてでなく、フォルター・ユングフラウ個人としてな。手出しされぬと高を括るなよ……次に杭に貫かれるのは、貴様かもしれぬぞ」
「ふふっ、恐ろしいですね。けれど意外です。貴女からは少し、私と似た匂いを感じたのですけれど」
「気色の悪い事を言うな。誰が貴様と一緒など」
「力を振るい、我を通す。自分より弱いものを押しのけ踏み潰し。……貴女と私にどれほどの違いがありますか? 目的は違えど、やっていることは変わりはしませんよ」
 嗤う女を殴り殺してやりたいという衝動を、ユングフラウは奇跡的に抑えこんだ。「お前は狂っているよ」
「褒め言葉として受け取っておきます」

 次に接触したのはアーヴニルだった。
「やり方は好まれないだろうが、手腕と胆力、何よりその『好奇心』はある意味見事だった。……お前、猟兵に向いてるぞ?」
「お褒めに預かり光栄ですわ。いつかまた、お会いできる日を楽しみにしています。あら?」
 アーヴニルから連絡先を受け取っていた御船に、グランシャールが無言で近づいていく。
 彼はもはや不要となった薔薇を引き抜くと、御船の髪に挿す。
 御船の生死、進退などどうでもいい。いらぬものを置いておく良い台座があったとでも言うかのように。
 飾り気も、言葉も、想いすらなく去っていく。
 その様がまた御船の琴線に触れたのか、口元を抑えて声を上げて笑うのだった。
 長く、長く。

 利用しようとするもの、思いを告げるもの。
 それらに交じること無く境は部屋を辞した。彼女の仕事は終わったのだ。
 UDCは倒した。世界はまた平穏を取り戻した。彼女がするべきことはそこまでだった。それはある種の諦観のようでもあるし、自分の手を出してはならない領域を知り尽くした賢人の悟りでもあった。
「……殺さないよ。仕事じゃないもの」
 それは誰に対しての呟きだったのか。
 死んだ白木にか。もしくは正義と名のつくなにがしかにか。
 白木の返り血がまるで抗議するかのように体にへばりついていた。御船から貰ったハンカチでそれを拭う。
 薔薇のハンカチだ。
 どす黒い血に染まって、薔薇はより艶やかに狂い咲いた。

 鏡島にはわけがわからなかったのかもしれない。
 別に御船を殺したいとまでは思わなかったのだろうが、それでも悪党はそこにまだ存在しており、被害者の少女は死んでしまい、それでこの事件は終わろうとしている。
 こんなおかしな結末のために、自分達は調査をし、戦ったのだろうか。
 虫けらのように弄ばれ、最後には消されることとなった白木の人生とは一体なんだったのか。
「本当に死んでいい奴なんて、この学校に1人でもいたのか?」
 耐えきれず零した想いは虚しく響いて消える。
 薔薇は嗤い、猟兵達は沈黙を選んだ。

●エピローグ
 エイワズの情報を元に件の『 救済の会』へと赴いた猟兵達は、もぬけのからとなった施設を目にした。
 目的は果たしたと言うことか、それとも猟兵たちの気配を察知して逃げ出したのか。どちらにしろ限りなくこの団体が黒であることはわかった。組織に報告しておけばそのうち尻尾を掴んでくれるだろう。

 エイワズ、日月の2名はグリモア猟兵にお土産と称して個人の連絡先を入手したり、世話になった動物への挨拶回りをしたりと余念がない。
『ほんと、ありがとうね。これで離れていた自由猫達も帰ってくるでしょう』
 思えば、ミーからの言葉が今回の依頼で初めてまともに貰った感謝の言葉かもしれない。
 白木は感謝などしなかったろうし、会長の言葉は素直に受け取れない。
(別に感謝が欲しくてやったわけではありませんが、動物にだけ感謝される仕事というのも大概おかしいですよね)
 そんなことを考えながら、エイワズはユルにも礼とおやつを与えながら、次の動物達の元へと歩いていくのだった。

 白木の遺体はUDCのまま人の姿には戻らなかった。その為、表の世界で弔うことは不可能だと判断された。
 このまま行方不明として処理され、残された親族はいつか帰ってくるという希望だけを頼りに生きていかなければならない。それは死よりも尚残酷な現実であった。時として明確にならない真実は、残されたものに一生涯に渡る影を落とす。
(別れすら告げられず、人として葬られる事もなく、ですか。彼女が一体何をしたというのでしょう)
 白木の祖母が住む家を遠目に眺めながら、トリテレイアは深く嘆息した。
 手をあわせてやりたい。その願いすら叶うことはない。
 化け物に落ちるとはそういうことだ。たとえ彼女が被害者なのだとしても、もう表の世界に痕跡を残すことは許されない。
 UDCも邪神も、ありえないものは秘密にしなければ社会は維持できない。公表などしたらいらぬ混乱を招くだけだ。
 表の世界はいつもどおり、おかしな事などないという風に装い続けなければならない。
 それはまるで、あの学校にはびこった薔薇のルールのようだった。

 猟兵達は高校から、この世界から去っていった。
 残されたこの世界は、またつかの間の日常を始めるのだろう。
 薄氷の下に残酷な真実を隠したまま、虚構の平和を謳歌するために。
 無数の屍を、氷の下へと沈めながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月10日


挿絵イラスト