●絆の力は強く儚い
人が寄り付かない岩山が連なる山岳地帯に古い砦がある。
吸血鬼の支配に抗うため組織された『闇の救済者』の活動拠点の一つであり、彼等が救い出した人々が生活する小さな集落だ。
少ない物資を何とかやりくりして砦と井戸を修復し、人が増えると必死に物資をかき集めて砦の周りに家を建てて畑も作った。
彼等の努力の結晶である集落は今日祝いの言葉と喜びに溢れていた。
吸血鬼の支配下でも密かに逢瀬を重ねた男女がいた。男は恋人を守るために『闇の救済者』に加わって活動を続け、ついに恋人を救い出す。
そして恋人から妻になった彼女の妊娠が分かり夫だけでなく闇の救済者の仲間達と集落の全員が喜びに湧いた。
だがその喜びは襲撃を知らせる声と血の臭いに壊される。
―――おんぁああ……うぅ、んああ
甲高く不気味な声が洞窟から響いてくる。ぞろりと滲み出すように洞窟から溢れて来たのは蠢く真っ赤な塊―――あれは子供だ。小さな嬰児や胎児が塊になって蠢いている。
「こんな所に巣ができていたのか」
赤い塊になった子供達を引き連れて、白衣を羽織った男が滴る血の色をした瞳で顔を真っ青にした妻と妻を背に庇った夫、夫婦を守ろうと二人を囲む住人達を観察する。
「実験には丁度よさそうだな」
●一足遅かったグロ注意
猟兵達に集まってもらったキャロ・エレフセレリア(たーのしー!・f12156)は何人か顔色を悪くした猟兵がいた事で「グロ注意!」と言い忘れていた事に気付いた。
メガロスが持っているセラピーアイテムと飲み物を気分を悪くした猟兵に渡して小休止。落ち着いた所を見計らって改めて話す。
「えーっとどこまで話したっけ?『闇の救済者』の事は知ってる人もいるだろうけど、拠点にしていた砦は今ちょっとした集落になってるんだよ。努力の結果だね!」
しかしその努力は吸血鬼の襲撃によって血の海に沈む。
「集落を襲撃したのは『叡智卿ヴェイン』って言うオブリビオンと、ヴェインが連れて来た『未来を歩み出せなかった者達』だよ!」
『叡知卿ヴェイン』―――血も涙もないような非道の吸血きでありながら、いやそのせいなのか人の心や絆に関心を持ち、感情を可視化する『実験』を繰り返している。
「実験の内容は知らない方がいいかな!ごはん食べられなくなっちゃうかもしれないし!」
そんな実験の標的に『闇の救済者』達の集落が選ばれた。
恐るべき吸血鬼に共に反旗を翻し活動して来た仲間の絆。彼等に救われ安住の地を共に作った集落の住民たちの絆。恋人から夫婦になった男女の絆。そして子供を宿し母となり父となる親子の絆。
集落には実に多くの絆があり、ヴェインの興味を引いてしまったのだ。
「集落の周りは岩山に囲まれてて洞窟を利用して作った複雑な道を通らないといけないんだけど、ヴェインはたくさんの配下を連れて人海戦術で突破しちゃった」
未来を歩み出せなかった者達は得られなかったぬくもりを求めている。集落に集まるぬくもりを求めて一心不乱に這って行く。
「みんなは洞窟を通って未来を歩み出せなかった者達を倒しながら集落を目指してね!洞窟の罠とかはもう壊れちゃってるから心配しなくていいよ!」
オブリビオンが道標になると言うのは皮肉だが、洞窟内で時間をかけすぎると集落を救う事ができない。利用できるなら利用しよう。
「集落の人達は砦に籠城してるんだけど、ヴェイン相手じゃあっと言う間に制圧されちゃうからね!洞窟を突破したら砦の近くにいるヴェインを倒しちゃって!」
『闇の救済者』達が命懸けでここまで作り上げた『人類砦』を守るために、生まれてくる新たな命を守るために、猟兵達はキャロが起動したグリモアによってダークセイヴァーへと赴く。
水見
猟兵のみなさんはじめましてこんにちは。マスターの水見です。
今回の舞台はダークセイヴァー。『闇の救済者』達が築いた『人類砦』の救出に向かうお話です。
第一章は『未来を歩み出せなかった者達』を倒すお仕事。
見た目がちょっと怖いと言うか苦手な人は苦手な見た目ですが頑張ってください!
明かりのない洞窟内での戦闘になるので、暗くて狭い場所にわんさか溢れるオブリビオンの群れとどうやって戦うかが大事です。
第二章は『叡智卿ヴェイン』を倒すお仕事。
集落の住民はすでに砦に避難していて『闇の救済者』のみなさんに守られていますが、ヴェインに襲われたらひとたまりもありません。急いで助けに行きましょう!
第三章は日が暮れた集落で一休み。
その日はとてもきれいな満月が出ているようです。月を眺めて戦いの疲れを癒したり、誰かと一緒に見上げるのもいいですし、月夜を肴に盃を傾けるのもオツですね。
ですがそれも無事にオブリビオンを倒してから。みなさまのプレイングをお待ちしてます!
第1章 集団戦
『未来を歩み出せなかった者達』
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POW : 血の羊水へと引き摺り込む
【攻撃に躊躇する者に愛情を求め群がる赤子】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[攻撃に躊躇する者に愛情を求め群がる赤子]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 広がる悪夢
【ゆっくり広がる血溜まりから生える赤子の腕】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【が血の池と化し広がり、赤子が這い出す】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : 悲劇が繰り返される
自身が戦闘で瀕死になると【血溜まりとなり、血溜まりから無数の赤子】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
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洞窟の入り口はそうと知らなければ気付かないようにカモフラージュされていたが、手当たり次第に岩壁を崩して強引に発見したのだろう。崩れた入口から猟兵達が突撃すると洞窟の闇の中に赤い塊を発見した。
塊は蠢きながらうめき声にも鳴き声にも聞こえる不気味な声を発している。
―――ぁあああ…おぁあ……んあ、あぅうう
蠢く赤い塊は幾つも折り重なった赤ん坊や嬰児達の姿をしていた。
『未来を歩み出せなかった者達』―――産まれてすぐに、あるいは産まれる前に殺され母のぬくもりを覚える前に血の海に沈み過去の骸の海から這い出した悲しきオブリビオン。
洞窟の先にある集落にぬくもりを感じているのだろう。ぬくもりを求めて一途に這っていたのだろう。
だが猟兵達はこの嬰児達を見逃す訳にはいかなかった。
ここで倒さなければこの嬰児達は求めたぬくもりを自分達の手で同じ血の海に沈めいつまでも得られないぬくもりを求めて彷徨い続けるだろう。
救われない進行を食い止め、嬰児達を眠らせてやらなければ―――。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし/わしら 豪快古風
対応武器:黒燭炎
暗闇には暗視技能で対応するか。
躊躇なぞするか。ここは戦場(いくさば)、躊躇する者が負傷するが道理なれば。
ははは、そなたらに贈れるのは、この武器での攻撃でな。
洞窟という立地(地形の利用)も考え、なぎ払いか突きの炎属性二回攻撃を。槍も使いようよ。
血が焼けた臭いがするだろうが、まあこればっかりは仕方がない。
…赤子が、数多の命を手にかける。そのようなことがあってはいかんのよ。
故に、止められるのならば止める。それが『わしら』の総意である。
ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と
生まれてすぐに、幸福を知らぬまま命を奪われた子供たち
恐ろしいはずなのに、なんて哀れな……
それでも、今を生きる人々を犠牲にするわけにはいかないわ
悲劇を繰り返さぬように、呪われた生をここで終わらせる
それが、この子達にとって唯一の救いなのだから
【主よ、哀れみ給え】
悲しき子らに捧げ口ずさむは子守唄
悍ましい姿と呪われた宿命が齎す狂気に耐え、覚悟を決めて
優しさと慰めを込め、その魂が安らかなれと祈る
ヴォルフ、あなたの浄化の炎で、悲しみを終わらせて!
ごめんなさい、あなたが求めるぬくもりはここにはないの
骸の海へお帰りなさい
全ての魂が還る場所へ
せめて最期は光と共に、安らかな夢を……
ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と
洞窟内では光源としてランプを持参
この世界では力無き者ほど虐げられ、儚く死んでゆく
あの赤子の群れも、その犠牲者の成れの果てか
だからこそ、その過酷な運命に抗う人類砦を、過去の亡霊に蹂躙させるわけにはいかんのだ
だから俺は躊躇わぬ
人々を、そして最愛の妻ヘルガを守るためならば
そしてあの赤子らを形作る怨念が人類の未来を脅かすならば
俺は心を鬼にして、この地獄の炎で彼らを焼き払う
指先を僅かに切り裂き【ブレイズフレイム】の炎を放つ
赤子らが増える度に効果範囲を伸ばし延焼
鉄塊剣に炎の全力魔法を纏わせなぎ払い焼却
お前たちの望みは、最早この世界では満たされぬ
愛別離苦の妄執、炎と共に鎮め浄化せよ
桐生・零那
血に狂った鬼共の支配に抵抗する者たちの救済。それが今回の任務。
狭くて暗い洞窟内での戦闘ね。了解。
灯りは必要ない。刀を地面や壁面に打ち付けたときの火花で十分。
さぁ、神の慈愛を与えましょう。醜きオブリビオンに堕ちたその身も、罪を恥じて矮小なれば許されるかも知れない。
『零ノ太刀』
相手が群がってくるというならば、きっと二刀では足らないでしょう。
ならば、さらに一刀。触れずの刃を加えましょう。
一つ、二つ、三つ。生者を求めるその卑しき身体を削ぎ落としていく。
神の寵愛を受ける準備は整った?
疾く逝きなさい。
さすれば偉大なる神の愛が貴方たちを包むでしょう。
●
暗闇を見通す馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の目に映るのは狭い洞窟にひしめく赤い塊。蠢く嬰児達―――『未来を歩み出せなかった者達』
「……赤子が、数多の命を手にかける。そのような事があってはいかんのよ」
いつも穏やかな声は今ばかりは硬く、四人の無念が集まり形成された義透の人格はこの戦いを最も確実に終わらせるための物へと変わっていた。
「故に、止められるのならば止める。それが『わしら』の総意である」
嬰児達が産まれる事ができなかった世とこんな姿で生まれなければならなかった事への怒りが、黒いスピア黒燭炎に渦巻く炎となって燃え盛る。
狭い洞窟でも槍の突きは遮られる事もなく、炎を纏った穂先が未来を歩み出せなかった者達を穿ち焼き尽くして行く。
だがその炎が自分達を焼くためだと理解できていないのだろう。まだ焼かれるには遠いものは炎のあたたかさを感じるや義透に向かって行く。
えうぅ……きゃあああ……。
まるで構ってもらえて喜ぶ赤子のような声。心なしか嬰児たちの顔も笑っていて。
しかし義透に群がり体のあちこちを掴む手の強さは容易に人の肉を引き裂き骨を砕く。
「躊躇なぞするか」
群がる赤子をなぎ払う。ここは戦場、躊躇する者が負傷する。そして死と言う敗北に倒れるのだ。
義透が憐れな嬰児のオブリビオンに贈れるのは黒燭炎の一撃だけ。
「わしの一撃、受け切れるか!」
侵略すること火の如く―――『それは火のように』激しく、叩きつけられた単純で重い一撃は未来を歩み出せなかった者達をことごとくなぎ払い槍の直撃地点の岩壁まで粉々に破壊する。
後には焼けた血の臭いだけが漂っていて、砕けた岩壁の破片だけが転がっていた。
●
未来を歩み出せなかった者達の数は多く、洞窟のあちこちにひしめき合っている。ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)が携えるランプが生む陰影は蠢く姿をより不気味に見せていた。
バスターソードを振るいどれだけ斬っても後から後から這い出して来る嬰児達にヴォルフガングは歯噛みする思いだった。
「この世界では力無き者ほど虐げられ、儚く死んでゆく……あの赤子の群れも、その犠牲者の成れの果てか」
こんなに小さな命がこれほど多く犠牲になっているのか―――。
ヴォルフガングと共に戦うヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は悍ましいと言ってもいい光景にも嫌悪ではなく哀れみで心を痛めていた。
「生まれてすぐに、幸福を知らぬまま命を奪われた子供たち。恐ろしいはずなのに、なんて哀れな……」
もし世界がもっと平和であったなら、もしかしたらこの嬰児達は今頃母親の胸に抱かれて健やかに成長する未来があったのかもしれないのに。
「それでも、今を生きる人々を犠牲にするわけにはいかないわ」
ヘルガはシンフォニックデバイスに神聖なる祈りの力を籠めて行く。
「その通りだ」
最愛の妻ヘルガの想いをヴォルフガングは力強く肯定する。
「だからこそ、過酷な運命に抗う人類砦を、過去の亡霊に蹂躙させるわけにはいかんのだ」
この弱き者が虐げられ儚く命を落とす世界に反旗を翻した『闇の救済者』と彼等がようやく築いた『人類砦』をみすみす血の海に沈めさせるものか。ヴォルフガングの振るうバスターソードに躊躇いはない。
ヘルガも覚悟を決めていた。シンフォニックデバイスを通して悲しき子らに捧げるための子守唄を歌う。悲劇を繰り返さぬように、呪われた生をここで終わらせるために。それが唯一の救いのなると信じて。
ヘルガの歌に込められた嬰児達への哀れみと、どうか魂が安らかなれと祈る優しさが光を生み出す。
「天にまします我れらが神よ。その御心の許、我らに加護を。かの者に懺悔の時を……!」
『主よ、哀れみ給え(キリエ・エレイソン)』―――神聖なオーラがヘルガの背中にある天使の翼から光となって放たれた。
瀕死の状態から血溜まりとなり、そこから再び無数の赤子の姿になって飛び掛かろうとしていた未来を歩み出せなかった者達が光に包まれて動きを止める。
その光は痛くも苦しくもなく、ヘルガの想いを内包してしっかりと嬰児達を包み込んでいた。
「ごめんなさい、あなたが求めるぬくもりはここにはないの」
だから、骸の海へお帰りなさい。
全ての魂が還る場所へ。
「ヴォルフ、あなたの浄化の炎で、悲しみを終わらせて!」
「ああ、終わらせよう」
あの赤子らの形作る怨念が人類の未来を脅かすならば―――。
「俺は心を鬼にして、この地獄の炎で彼らを焼き払う」
人々を、最愛の妻ヘルガを守るために。
自らの指先を切り裂き噴出する地獄の炎、紅蓮の色をした『ブレイズフレイム』が動きを止めた未来を歩み出せなかった者達を焼き、延焼して行く炎が次々と飲み込んで行く。
「お前たちの望みは、最早この世界では満たされぬ。愛別離苦の妄執、炎と共に鎮め浄化せよ」
意のままに操れる紅蓮の炎は一人も逃さず包み込み、未来を歩み出せなかった者達を荼毘に伏す。
うえええぇ……ぁあ……ああ……
泣いているのだろうか。弱々しい声を上げて燃え尽きて行く嬰児達のためにヘルガは祈る。
「せめて最期は光と共に、安らかな夢を……」
●
金属が擦れる音と火花が散る。固い岩に刃を打ち付けた僅かな一瞬の火花を頼りに押し寄せる敵と戦う事は簡単な事ではない。
だが狭い洞窟にひしめき合い襲い掛かって来る未来を歩み出せなかった者達に武器を当てる事は難しくはなかった。
ううう……あぅ……んあああ……
縋るような赤子の声―――未来を歩み出せなかった者達は絶えず声を上げている。
「血に狂った鬼共の支配に抵抗する者たちの救済。それが今回の任務―――」
桐生・零那(魔を以て魔を祓う者・f30545)は傷付きながらも刃を振るう手を止めず斬り続ける。
この刃は神の慈悲。神に仇なすものに苦しみと解放を与える霊刀神威。醜きオブリビオンに堕ちたその身も、罪を恥じて矮小なれば許されるかも知れない。
「さぁ、神の慈悲を与えましょう」
次々に血の羊水に引き摺り込もうとする小さな手が群がる。零那がそれを斬れば斬るほど零那自身もダメージを受けて行くのだが、躊躇など欠片もなかった。
オブリビオンの殲滅こそ神の救済。神の慈悲。
岩に打ち付けて生まれた一瞬の火花に浮かぶ蠢く塊。
「散りなさい」
『零ノ太刀(ヌカズノヤイバ)』が零那の殺意を込めた視線に捉えられた未来を歩み出せなかった者達を切断する。
「神の寵愛を受ける準備は整った?疾く逝きなさい。さすれば偉大なる神が貴方たちを包むでしょう」
零那は心からそれを信じていた。疑う余地もなくそんな発想をする事自体が罪だ。
故に、神の存在を知らぬまま死んで行ってオブリビオンと成り果ててしまった未来を歩み出せなかった者達を神の身元に送る事は自身の任務であり、慈悲だ。
一つ、二つ、三つと刃は振るわれありとあらゆるものが赤く染まって行く。
「貴方たちが求めたぬくもりは神の御許にあるのよ」
だから安心して逝きなさい。
血に染まった洞窟の中、零那は髑髏が不気味に笑う十字架を手に神への祈りを捧げるのだった。
成功
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九石・纏
吸血鬼が人間をまとも扱うなんざ、端から期待しとらんが…。
赤子を見やる。
まったく、なんてもんを従えてやがる。
『銀狼の聖剣』地を這う光刃の斬撃で道を作り、駆ける。
掛けながら、剣を振るい光刃を飛ばし赤子達を斬り祓う。
すまんなぁ。この世界に生れさせてやれなくて。
守ってやれなくて。本当にすまんなぁ……。
口でそう呟きつつも、斬撃を放つ手は止めない。
詫びの気持ちは、申し訳ねぇのは本当だ。
だが、今生きてる奴らを、やらせる訳にはいかん。
リボルバーを構え、クイックドロウ。
剣で祓い切れない赤子へ、銀の弾丸を撃ち込んで浄化。
怨んでくれるな、とは言わん。ただ、眠れ。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
医療が進んだ世界でも生まれる前に死んでしまう子はいる。
そうでない世界ならなおさらだろう。
でも今をこれからを生きる者の為に俺はこの刃を振るう。
基本存在感を消し目立たない様に立ち回り、可能な限りマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC剣刃一閃で攻撃。
例え赤子の姿をしているとしても、いや、だからこそ速やかに骸の海に帰そう。
このままでいる事はきっとどちらにしてもよろしくないだろうから。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。
リーヴァルディ・カーライル
…未来を歩み出せなかった者達、ね。ごめんなさい
…私の力では貴方達を救済する事は出来ない
…せめて、これ以上苦しむ事無く葬送してあげる事しか…
敵の攻撃は"写し身の呪詛"による存在感のある残像(武器)で受け、
闇に紛れ吸血鬼化した自身の生命力を吸収して魔力を溜めUCを発動
…来たれ、世界を調律する大いなる力よ
…次こそはこの世界に産まれてこれるように、
彼の祝福されざる憐れな魂達に、慈悲と祝福の光を…!
術の反動による傷口を抉るような激痛を耐性と気合いで耐え、
清浄なオーラで防御を無視して浄化する"光の風"を放ち、心の中で祈りを捧げる
…その手が罪で塗れる前に眠りなさい
光に抱かれて、せめて安らかに…
●
銀の剣が輝く度に未来を歩み出せなかった者達が照らし出され切断される。銀装飾がついた刃が血脂で鈍る事はなくリボルバーから放たれる銀の弾丸は尽きず、九石・纏(人間の咎人殺し・f19640)は次々に洞窟内にひしめく嬰児達を倒していたが眉間の皺は深くなるばかり。
「吸血鬼が人間をまともに扱うなんざ、端から期待しとらんが……」
ゆっくり広がる血溜まりから生える赤子の腕は纏の足や腕を恐ろしい力で掴むだけでなく、次々と新たな血の池を作りそこからまた嬰児達が這い出て来る。
「まったく、なんてもんを従えてやがる」
うめき声のような泣き声のような声を上げて血の池からぼこぼこと這い出て来る嬰児のまだ目も開いていない顔。
この世界のなにひとつも理解できないまま、苦痛だけを味わって逝ってしまった嬰児達。
過去の骸の海から這い出て来てはオブリビオンの身となっては感じる事もなくなってしまったぬくもりを求めて人々を殺めて行く存在に成り果てた未来を歩み出せなかった者達―――。
あうぅ……あー、あー……。
拙く伸ばされる手は纏いの義手を軋ませ、足を砕かんばかりに強い。その必死な様子が体のあちこちを掴まれる痛みよりも胸に響く。
「すまんなぁ。この世界に生まれさせてやれなくて」
『銀狼の聖剣(アルタール)』から生まれる触れた物を切断する光刃を飛ばし、まとわりついてくる未来を歩み出せなかった者達を切り裂いて行く。
「守ってやれなくて。本当にすまんなぁ……」
光刃を受けても死にきれず襲い掛かって来たものをクイックドロウで素早く仕留める。
銀の弾丸を撃ち込まれた未来を歩み出せなかった者達は浄化され消えて行く。
嘆く気持ちも申し訳なく思う詫びの気持ちも本物だったが、纏の手が止まる事はけしてなかった。
「今生きてる奴らを、やらせる訳にはいかん」
死んで行った仲間達よ、戦友の名を冠した剣よ、弾丸よ、どうかこの哀れな嬰児達を眠らせてやってくれ。
「怨んでくれるな、とは言わん。ただ、眠れ」
振り下ろした銀剣の刃がまた一つ、未来を歩み出せなかった者達を骸の海へと還して行った。
●
様々な世界に渡ってきた黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)から見たこの世界は吸血鬼の支配が続いているせいで人々に余裕がなく、生活も医療も、何もかもが人に恩恵をもたらせないまま停滞していた。
「医療が進んだ世界でも生まれる前に死んでしまう子はいる。そうでない世界ならなおさらだろう」
母親の体のみで命を育み生み出すのは決して簡単な事ではなく、どんなに発達した世界でも出産には危険が伴った。
未来を歩み出せなかった者達がどんな経緯で母親の腹に宿るに至ったのか、何故生まれる事も誰かのぬくもりを知る事もないまま死んで行ったのかは分からない。
目立たないように洞窟の闇に潜みながら未来を歩み出せなかった者達に接近する。瑞樹は自分の本体でもある大ぶりなナイフ黒鵺と自分に合わせて摺り上げた一振り胡(えびす)を抜き、未来を歩み出せなかった者達が反応する暇も与えず切り裂いた。
きゃああああ!あああん!
赤子の甲高い悲鳴と泣き声が声量とは違うもので瑞樹の耳をつんざく。一つの泣き声は他の嬰児達にも伝搬して洞窟内は泣き声で満ちて行く。本当にただの赤子のような泣き声だった。
それに心が痛まないわけではなかったが―――。
「でも今をこれから生きる者の為にオレはこの刃を振るう」
例え赤子の姿をしているとしても、いや、だからこそ。速やかに骸の海に還すために躊躇いはしない。
愛情を求め群がる赤子の仕草も泣き声も、引き摺り込もうとする嬰児達につけられた傷の痛みも瑞樹の刃を鈍らせる事はできない。
押し寄せて来る嬰児達をかわし、掴みかかる手を受け流し、二刀をもって切り裂く。
「骸の海へ還れ。ここにいても何も得られない」
『剣刃一閃』の一太刀で嬰児にとどめを刺す。
すでに今までの麻痺していた未来を歩み出せなかった者達の泣き声は瑞樹の一閃によって沈黙する。
●
おぁああ……ああぁ……。
洞窟に反響する声は不気味で、ひしめきあう赤い塊は更に異常な姿をしている。
だがリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の表情を暗くしたのは未来を歩み出せなかった者達への哀れみと救う事ができない悲しみだった。
「…ごめんなさい…私の力では貴方達を救済することは出来ない」
未来を歩み出せなかった者達が骸の海から這い出るほどに繰り返された悲劇はどれほどのものだったのだろう。
過去を刻むもの、黒い大鎌グリムリーバーの刃でいくら倒されても嬰児達は次々と襲い掛かってくる。
写し身の呪詛が作り出す残像は未来を歩み出せなかった者達には捉えきれず、リーヴァルディは労せずして嬰児達を切り刻む事ができた。
だが未来を歩み出せなかった者達は瀕死になると血溜まりに戻り、そこから新たな無数の赤子の手が這い出してまた襲い掛かって来るのだ。
それを見る度にリーヴァルディはこの嬰児達に自分が出来る事は一つしかないのだと突きつけられる。
「…せめて、これ以上苦しむ事なく葬送してあげる事しか…」
リーヴァルディは嬰児達に決定的な攻撃を与えるために闇に紛れ吸血鬼化する。
「…来たれ、世界を調律する大いなる力よ。……限定解放。テンカウント。吸血鬼のオドと精霊のマナ。それを今、一つに……!」
『限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)』―――力が解放され、強大な魔力が渦巻く。制御しようとすれば激しい反動が傷口を抉り激痛が走る。それでも、この力が必要なのだ。
「…次こそはこの世界に産まれてこれるように、彼の祝福されざる憐れな魂達に、慈悲と祝福の光を…!」
未来を歩み出せなかった者達を飲み込む光の風は激しい爆風だけでなく、嬰児達を浄化する光でもあった。
光に飲み込まれて消えて行く嬰児達にリーヴァルディは心の中で祈りを捧げる
…その手が罪で塗れる前に眠りなさい。
光に抱かれて、せめて安らかに…。
大成功
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フォルク・リア
未来を歩み出せなかった者達を見て。
「こんなものを引き連れている奴が相手なら
このままだと村も悲惨な結末を迎える事は見えている。
急ぐとしよう。」
【高速詠唱】で冥雷顕迅唱を発動。
敵の動きから村の方向を見定め。
そこに集中し【範囲攻撃】の雷弾を放つ。
雷光やレッドシューターの炎で暗闇を照らし
道が開けたら【ダッシュ】して駆け抜け。
一刻も早く村へ向かう為、
攻撃は最低限、道を塞ぐ敵のみ倒す。
「残念だけど。君たちの歩むべき未来は既にない。
この先にいる、まだ未来を掴める者の為。
此処で消えて貰う。」
決意を固めたように右手に雷の魔力を集中し
手を地面につけると共に地を這う様な雷の魔力を解放。
辺りの敵を雷撃で焼き払う。
網代・徹
【ローグス】
はァー。コレが生身だったら金持ちにいい値で売れるんですけどねェ…。水子食す美食家っつーのも世の中にァ…ってあァいやいや、冗談ですよやだなァ。そんなヒトデナシみたいなこと思っても言いませんよゥ。
ァ、マディソンさんそっちから来ますよッ。
集落への到着を最優先に。赤子たちには【錬成カミヤドリ】で網を生成し、血溜まりから生える手や体をまとめて壁に張り付けるようにどけたり、網を捻って圧殺したりする。
マディソンのハーレーの後ろに乗り、あまり感慨はなさそうに、生まれなかった赤子の無念に興味も薄そうに、口に煙草をくわえて洞窟の奥へと進んでいく。
「残念だねェ。この世界には縁がなかったんだよ。また来世」
マディソン・マクナマス
【ローグス】
俺だって人間だし、ガキの姿した敵は何度やっても撃ち辛いぜ
とは言え今は可哀想とか気が引けるとか言ってる場合じゃねぇからな、今は生きてる奴を助けに行かなきゃなんねぇからな
……だから、死んでるお前らにゃ構ってやれねぇんだ
今は集落への到達が最優先だな
『オブリビオン殺します』『料金応相談』『猟Pay支払可』と書かれた幟旗を差した暴走宇宙ハーレーを駆り、網代さんと2ケツで狭い洞窟内を【運転】技能任せに突破
敵が群がってくるだろうが無視だ無視。邪魔な奴は血の池ごと轢殺して、他はUC【自爆特攻中古ドローン】の自動攻撃に散らさせる
各所で集落を目指し洞窟内を進む猟兵達の戦いが続く中、二人の仲間と共に洞窟に入ったフォルク・リア(黄泉への導・f05375)も奮闘を続けている。
「こんなものを引き連れている奴が相手ならこのままだと村も悲惨な結末を迎える事は見えている。急ぐとしよう」
ああぅう……えうう……
幼く拙いが不気味な声を上げながら押し寄せる嬰児達の小さな手。
物量で迫る嬰児達を寄せ付けず、高速詠唱からの雷光と魔道書から作られた黒手袋レッドシューターから放たれる炎に照らし出される姿。未来を歩み出せなかった者達は死霊術士であるフォルクの目から見ても悲惨で憐れだった。
しかし嬰児達の間を駆け抜ける足も、高速詠唱を続ける事も止められない。ひしめき合う未来を歩み出せなかった者達の塊の間に道が開ければすかさず走り込み、一歩でも先に進む。
今は一刻も早く集落に辿り着かねばならないのだ。
「残念だけど。君たちの歩むべき未来は既にない。この先にいる、まだ未来を掴める者の為。此処で消えて貰う」
フォルクの決意の言葉と魔力が紡がれ、右手に雷の魔力が集中する。
「上天に在りし幽世の門。秘めたる力を雷と成し。その荒ぶる閃光、我が意のままに獣の如く牙を剥け―――『冥雷顕迅唱(オーバーライトニング)』」
地面についた右手から感電効果もある落雷と雷弾が地を這うように放たれる。周辺一帯に拡散された雷撃は地面を這う未来を歩み出せなかった者達だけでなく、新たに産まれた血溜まりごと焼き払った。
「はァー。コレが生身だったら金持ちにいい値で売れるんですけどねェ…」
フォルクが集落の到達を最優先に更に一体を雷光で焦がし尽くす後ろで網代・徹(淵に臨みて・f30385)は冗談とも本気ともつかない事を言い出す。
「水子食す美食家っつーのも世の中にァ…ってあァいやいや、冗談ですよやだなァ。そんなヒトデナシみたいなこと思っても言いませんよゥ」
だからそんな苦虫噛み潰したような顔せんでくださいなと鳶色の目でフォルクに笑いかける。
フォルクの足元に近寄って来ていた嬰児達の声も縋る手にも興味も薄そうに背中の背負子から自分の本体を取り出し『錬成カミヤドリ』で複製した十本を操作する。
投網のように未来を歩み出せなかった者達に覆い被さった網はそのまま血溜まりから這い出て来る手足を捕え捻り上げ、壁や地面に押し付けて身動きを取れなくさせる。
動けなければフォルクの雷撃と洞窟内に銃声を響かせる火器のいい餌食だった。
徹を『オブリビオン殺します』『料金応相談』『猟Pay支払可』と書かれた幟旗を差した暴走宇宙ハーレー の後ろに乗せたまま狭い洞窟内でも巧みに走らせ、徹の網に捕まった未来を歩み出せなかった者達を轢殺しながらマシンガンを撃ったマディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)が、パイプの煙を乱暴に吐き出す。
「俺だって人間だし、ガキの姿した敵は何度やっても撃ち辛いぜ。とは言え―――」
「ァ、マディソンさんそっちから来ますよッ」
「ああ無視だ無視。それくらいコイツに任せろ」
徹にペンペンと背中を叩かれるが暴走宇宙ハーレーとマディソンの運転技術が合わされば、幟旗通りに未来を歩み出せなかった者達は血溜まりごと轢殺される。
「はいも一つどうぞ」
潰されなかった嬰児も徹が再び操った網に捕らわれ手を話す。マディソンも血溜まりと嬰児達の手に取られそうになった前輪をえぐるように回転させながら『自爆特攻中古ドローン』を操作した。
「今は可哀想とか気が引けるとか言ってる場合じゃねぇからな、今は生きてる奴を助けに行かなきゃなんねぇからな 」
何より集落に到達する事が最優先だ。
「……だから、死んでるお前らにゃ構ってやれねぇんだ」
フォルクの雷撃と徹が張った網で身動きが取れない嬰児達にすまねぇなと詫びながら敵を自動追尾する大量の自爆特攻ドローンを作動させる。
「爆薬載せたドローンが、自動操作アプリでお手軽ミサイルに……全く良い時代になったもんだ」
もし未来を歩み出せなかった者達がこの世界に産まれごく普通に育っていたら、このドローンが運ぶのは爆薬ではなく子供たちの笑顔だったろうに。
そんな感傷ごと吹き飛ばす激しい爆撃と洞窟内に立ち昇る爆炎。そしてフォルクが放つ雷撃。全てが収まった後に生き残っている嬰児はいなかった。
三人は焼け焦げた痕を乗り越え先に進む。
「残念だねェ。この世界には縁がなかったんだよ。また来世」
徹は煙草をくわえて火をつける。生まれなかった赤子の無念に特に感慨を込めず煙を吐き出し、マディソンが操るハーレーが走るに任せて洞窟の奥へ向かった。
成功
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第2章 ボス戦
『叡智卿ヴェイン』
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POW : ご機嫌いかがかな、諸君
対象への質問と共に、【自身の影】から【嘗て被験体にされた亡者たち】を召喚する。満足な答えを得るまで、嘗て被験体にされた亡者たちは対象を【怨嗟の声や呪詛】で攻撃する。
SPD : 耐えられぬなら泣き叫べ
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【スカルペル】で包囲攻撃する。
WIZ : もっと、よく見せてくれ
【敵を掴んで観察する為の拳】【手脚を縫い付ける為の縫合絲】【身体を切り刻む為のスカルペル】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
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未来を歩み出せなかった者達を乗り越え洞窟を突破した猟兵達を岩山の中に作られた盆地の集落とその奥に佇む古い砦が出迎える。
しかし集落に人気はなく、所々に真新しい破壊された跡や戦闘の跡が残っているだけだった。
その痕跡に血や死を思わせるものがない事に安堵しつつ猟兵達は集落の奥にある古い砦に向かう。
「……鼠が生意気にも巣に立て籠もったかと思えば、薄汚い溝鼠が這い出て来たか」
正門にバリケードを張った砦の前で白い髪と白衣が月夜に浮かび上がる。
駆け付けたのが猟兵だと分かったのか、砦の中から歓声が聞こえるとその手が神経質そうに眼鏡を直す。
しかしレンズの下にある赤い瞳にはおおよそ感情らしきものは浮かんでおらず、血のぬくもりも涙の熱さも感じさせない冷酷な瞳が猟兵達を見下ろしている。
「まあいい。『実験』には多くのサンプルが必要になる。お前達のような溝鼠でも使い道はあるだろう」
カツンと踵の音を立て『叡知卿ヴェイン』が猟兵達と向かい合った。
ここで猟兵達が敗北すれば砦に立て籠もった人々は抵抗も虚しくヴェインの『実験』とは名ばかりの拷問の末に死に絶え、漸く生まれた『人類砦』も儚く消えてしまうだろう。敗北は決して許されない。
今はまだ小さな希望を守るため、猟兵達はヴェインとの戦いに挑む。
九石・纏
よう、吸血鬼。早速だが死ね。
クイックドロウ、銀の弾丸を撃ち込み、2回攻撃。
怪力で銀の大剣を扱い、突きを放つ。
別にキレちゃいねぇよ、だが奴は殺す。
(怒ってはいない。ただ殺すと決めた)
溝鼠でも、追い詰められれば猫にだって噛みつくもんだ。
それぐらいは、からっぽの頭でも理解できんだろ?
叡知卿が放ったスカルぺルを避けず、そのまま受ける。
『妖念変化』土塊と化した身体にスカルぺルを受け止める。
だいだらぼっちそのものにはならない
ただ、土塊、つまり大地と融合したのを利用し、
相手の立つ地面から義手を生やす
聖者の短刀。義手から伸びる刃を吸血鬼に突き立て、聖痕をつけ浄化。
手前の無機質な眼が、からっぽだって言ってんだ
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
絆か。
俺も人の心やそういうものに興味はあるけど、でも可視化なんてできるのか?
実験とはいえ行動は結果に過ぎないんじゃないのか。
どちらにしろ自分の欲求の為に殺めるのは許せないと思う。
先程と同様に存在感を消し目立たない様に立ち回る。可能な限りマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC剣刃一閃で攻撃。
オブリビオンだからじゃないな、ヴェインの行動理由自体機嫌良い物じゃない。死してなおこんな風に使われるなら。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛呪詛耐性で耐える。
「よう、吸血鬼。早速だが死ね」
突然銀色の煌めきが夜空の中に二つ。いや三つ―――九石・纏(人間の咎人殺し・f19640)が放った銀の弾丸と銀の大剣アルタールが『叡知卿ヴェイン』を口上ごと断ち切った。
「怒り狂った溝鼠は手が早い事だ」
目にもとまらぬ銃撃とオブリビオンの体すら切り裂く大剣の突きを受けながらヴェインの目には一つの感情も揺らいでいない。
「別にキレちゃいねぇよ」
対して纏の顔にも先程まで浮かんでいたはずの嫌悪も日頃浮かべている口元の笑みも消え失せ、ただ藍色の瞳に強固な決意だけがあった。
怒りではない。ただ決めた―――奴は殺す。
「溝鼠でも、追い詰められれば猫にだって噛み付くもんだ。それぐらいは、からっぽの頭でも理解できんだろ?」
「それは力量の差を見極められないそちらの頭の方だろう」
銀の大剣とヴェインが手にした小さなスカルペルの鍔迫り合い。ヴェインの掌ほどの長さしかない刃物は纏の大剣と比べるべくもない物だったが、オブリビオンの人知を超えた力にはそれで充分。
そら、この通り。ヴェインは纏の大剣の刃を押し返し、返す刃で何百ものスカルペルに変えた。
「痛みに耐えられぬなら泣き叫べ」
強烈な痛みの感情ならば可視化できるかもしれない。スカルペルが一斉に幾何学模様を描きながら飛翔し周囲を切り刻みむ。
纏はそれを全て受け止める。『妖怪変化』で土塊と融合し、大地を操るダイダラボッチへと変化した纏の肉体は耐えきったのだ。
膝をついたのは痛みからではなく地面に妖怪の力を込めた義手を突き立て悠然と立つヴェインの足元を狙うため。何の感情も浮かんでいないヴェインに向かって吐き捨てる。
「手前の無機質な眼が、からっぽだって言ってんだ」
ヴェインの足元から生えた義手は聖者の短刀と呼ばれるネクロスティグマを仕込んでいた。
そら、窮鼠からのお返しだ。突き刺さった刃が刻む聖痕から浄化の力が注ぎ込まれ、多くの人々の血で穢れたヴェインを焼いた。
更に音もなく忍び寄った黒鵺と胡、二つの刃がよろけたヴェインの脇腹を切り裂く。
駆け抜けた斬撃の後を追うように流れる黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)の銀髪が月明かりに照らし出された。
「一匹、仲間を囮に……いや、これは戦うもの同士の絆と言う物か」
ヴェインと纏の戦いが始まる直前から瑞樹は気配を決して闇夜に潜んでいた。見事に隙を突いて自分に更なる痛手を受けさせた瑞樹だったが、冷酷な瞳に何の揺らぎもない事に戦いの前に考えていた疑問が再び浮かぶ。
(俺も人の心やそういうものに興味はあるけど、でも可視化なんてできるのか?)
疑念はヴェインの所業を聞けば聞くほど強くなり、ここでヴェインの瞳を見て確信を得た。実験とはいえ行動は結果に過ぎないんじゃないのか。自分の欲求の為に人をなぶり殺しにして来ただけだ。
「しかし一度姿を見せれば二度目はないぞ。今の気分はどんだものだ?」
ヴェインの影から召喚されたのは嘗て被検体にされた亡者たち。『実験』によって元の姿など見る影もない程痛めつけられ怨嗟の声を上げ呪詛を呻く存在にされた被害者。
「ヴェイン、お前の行為は許せない」
瑞樹の答えは明確だった。
オブリビオンだからではなく、ヴェインの行動理由自体が瑞樹には受け入れられなかった。受け入れてたまるものか、こんな行為など。
「お前の所業はここで終わらせる」
身に纏わりつくような怨嗟の声と呪詛を跳ね除け、生者を憎む存在と成り果てた亡者たちの腕をかわしてその呪われた存在を終わらせるために。亡者たちの間を斬り抜けヴェインを狙う。
しかし耐えたとは言え呪いに鈍った瑞樹の刃はヴェインにとって受け切るのは難しい事ではない。
ただし、その体が切り裂かれた脇腹から入った毒に侵されていなければ―――。
受け止めようとした腕が麻痺している事に気付いた時には瑞樹はすでに間合いに入っていた。
『剣刃一閃』―――触れたものすべてを切断する一閃は鋭くヴェインに叩き込まれ、上がった血飛沫が月夜に照らされた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『侵す者』。
見下すか。傲慢で、何とも気に食わんの。
…おそらく、あやつにはわしらの特性を感づかれるか。戦友という絆があるからの。
UC交えつつ、炎属性の二回攻撃。此度はなぎ払えるかの。
ついでだ、生命力吸収でもつけておく。
易々と被験体になると思うなよ。
亡者…そなたらのことは気の毒に思う。だが、それまでだ。情は挟まぬ。
四天霊障でオーラ防御しつつ、怨嗟も呪詛も気にならぬ。
もとよりこの身、すでに悪霊なれば。その二つは常に寄り添うものである。
白衣を血に染めてもヴェインの瞳に感情の揺らぎは生まれない。踵を鳴らして姿勢を正した姿は変わらず猟兵を見下している。
「見下すか。傲慢で、何とも気に食わんの」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の声にも表情にも今や微笑みの欠片もなく、四人の中から浮かび上がった『侵す者』が黒燭炎の穂先に炎を纏わせる。
「わしの一撃、その程度の刃物で受けきれるか!」
一見何の変哲もない黒い槍から繰り出される一撃は火のごとく激しく重く、一度振るえば人体など容易く両断してしまうスカルペルごとヴェインをなぎ払い、足元の地面が爆散した。
「そうか、四人の亡者が一人の体に入った事で一蓮托生に……これも一つの絆か」
「……おそらく、おぬしにはわしらの特性を勘付かれるかと思ったが」
ヴェインは確かに義透が四人の魂の複合体である事は見抜いたが、それが戦友と言う名の絆の下に結ばれた事にはまったく気付いていなかった。
「精神的複合体は前例のないサンプルだ。抵抗を止めるなら丁重に扱うが?」
ヴェインの拒絶を許さない問い掛けと召喚される亡者たち。途切れる事のない怨嗟の声と呪詛が義透に纏わりつき、問い掛けの答えを強要してくる。
「おぬしのような輩に、わしらが易々と実験体になると思うなよ」
怨嗟と呪詛に纏わりつかれながら義透の黒燭炎が燃え上がる。その炎は怒りであり、馬県義透を名乗る四人の無念が集まった四天霊障から吹き出す呪詛そのもの。
「亡者……そなたらのことは気の毒に思う。だが、それまでだ。情は挟まぬ」
何よりここで屠ってやる事こそ、実験台にされた挙句安らかな死すら奪われた亡者たちへの救いになる。
「この一撃はそなたらへの手向けだ」
月明かりよりもなお眩しく夜を照らす炎が亡者たちをなぎ払う。
ヴェインが何人亡者を召喚しても同じこと。それどころか使い捨てるように亡者を次々召喚するヴェインに義透の怒りの炎はより激しく燃え盛る。
成功
🔵🔵🔴
リーヴァルディ・カーライル
…そこまでよ。ここから先は人々の希望が集まる絆の地
…お前のような下衆が軽々に踏みにじって良い場所ではない
…お前がどんな存在で、どんな過去があったとしても、
あの憐れな嬰児達を使役していたお前を赦す気は無い
…何一つ目的を果たせぬまま骸の海に消え去るがいい
今までの戦闘知識と経験から敵の殺気を暗視してUCを発動
敵の乱れ撃ちの隙間を見切り一点突破の早業で回避する
…無駄よ。弾幕で私を止められると思うな
避けきれない攻撃は大鎌(武器)で受け流しつつ切り込み、
限界突破した魔力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払い、
血の斬撃のオーラで防御ごと傷口を抉る闇属性攻撃を放つ
…全魔解放。この一撃、受けきれると思うな…!
鞍馬田・珠沙子(サポート)
普段の口調は「~っしょ。~だべ?~じゃね?」といったギャル風。
戦闘時に敵を煽ることもしばしば。
性格も口調と同様その場のノリで生きる喧嘩っ早い性格ですが、元箱入り娘らしく分別と道徳心は割と持ち合わせています。
猟兵のスタンスとしては、自分の知り合いといった『自分の手の届く範囲の人』を守れれば十分と考えているため、態々依頼に参加する理由は何か面白そうだったから、もしくは『映え』そうな場所だったからといったふわっとしたものが大半を占めます。
割と勝つために手段を選ばない性格で、素手による戦闘を身上としてはいますが陰陽術を使った相手への妨害や周囲のものを武器として利用することも積極的に行います。
「…そこまでよ。ここから先は人々の希望が集まる絆の地」
義透がどれほど屠ろうとも次々に亡者を召喚していくヴェイン。それは目に余る光景だった。
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)のグリムリーバーの刃が月夜に輝き、それ以上にリーヴァルディの紫の瞳が確かな怒りに輝いている。
人々がようやく手に入れた吸血鬼の支配下にない集落。そこは確かに安住の地となるはずで、人々が細々と繋いてきた絆と力がようやく実を結ぼうとした『人類砦』なのだ。
「…お前のような下衆が軽々に踏みにじって良い場所ではない」
思い返すのはあの憐れな嬰児達。ヴェインが配下として使役した憐れな命―――。
「踏みにじる?私は被検体を踏みにじった事など一度もない」
ヴェインが返したのは己の非道など何一つ自覚していないものだった。
「ただ私は知りたいだけだ。感情とは何か。絆とはどんなものなのかこの目で確かめたいのだ」
だから『実験』に使う被検体を粗末にした事はない。踏みにじってしまえば被検体は簡単に死んでしまうため実験に使う器具も一級品を使ったとのたまう。
それがリーヴァルディの魔力の枷を解き放った。
「……限定解放。忌まわしき血に狂え、血の寵児(リミテッド・ブラッドアニマ)」
鮮血の仮面をまとったリーヴァルディは吸血鬼の魔力を圧縮し、血色の斬撃で幾何学模様を描き飛来するヴェインのスカルペルをなぎ払う。数百を超える弾幕も今のリーヴァルディを止められない。
「何一つ目的を果たせぬまま骸の海に消え去るがいい」
夜を照らすのは月明かりと義透が放った炎だけ。リーヴァルディにはそれで充分。どれだけスカルペルが襲い掛かって来ようと弾幕の僅かなタイムラグを逃さず打ち払われる。
限界突破した魔力の刃はグリムリーバーをより恐ろしい切れ味を誇る大鎌へと変え、恐るべき怪力で振るわれた大鎌はスカルペルの嵐を突破しヴェインに迫った。
「…全魔解放。この一撃、受けきれると思うな…!」
血の斬撃がヴェインの防御ごと肩を切り裂き血飛沫が上がる。
与えられた傷はただ肉を切るだけでなく、刃に込められた闇の魔力により更に深く傷口が抉れヴェインに膝をつかせた。
「溝鼠どもめ……」
冷徹なヴェインの表情が僅かに歪む。
「うわ激やばじゃん!アタシも負けてらんない!」
解放されたリーヴァルディの魔力と大鎌の鋭さは鞍馬田・珠沙子(SUTEGORO☆ONMYOJI・f26157)のやる気を大いに湧かせた。
珠沙子がダークセイヴァーまで足を運んだのはオブリビオンを倒し危機に陥った『人類砦』を救うため―――だけではなかったが。
岩山に囲まれた古い砦は武骨で厳めしい外観がよかったし、小さい集落の建物は珠沙子が見慣れている建築様式とは違っていて異国情緒的な意味でもよかった。
何がいいかと言うと『映える』事である。
「でもいい写真撮るなら血まみれスプラッターはだめっしょ?」
軽く羽織ったモッズコートから取り出した大量の形代は術の媒体だ。
「つーかこんな可憐な女の子が闘うってのにアンタら何もしない気?」
大量の形代を放って行使した術は珠沙子の演説や説得と言うより短くそれでいてストレートな発破かけによって、それに同意した全ての対象に『闘魂注入(オマエモタタカエ)』を行うものだ。
「アタシがこの眼鏡ボコにしてやっから、アンタらも手伝ってよね!」
珠沙子の呼びかけと術が砦に立て籠もって集落の住民を守っていた『闇の救済者』に『気合いのビンタ』と言う闘魂注入。湧き上がる力はヴェイン相手では敵わなくても、召喚された亡者なら何とかなるほど。
これもまた絆の一つ。いくら珠沙子が術を使っても闇の救済者に集落を守るために命懸けで戦うほどの絆が生まれていなければ効果はなかっただろう。
「つーか感情の可視化とか馬鹿じゃね?中二もいい加減にしなよ!」
拳で亡者を倒しながら形代の盾を自分ではなく闇の救済者を守るために使い、気合い一つでヴェインまで突破してきた珠沙子は傷だらけだった。
だが拳はまったく衰えていない。リーヴァルディが与えた闇の魔力によりえぐられる傷から立ち直っていないヴェインに避ける事はできず、ストレートが頬を貫く。
成功
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フォルク・リア
「命を弄んだお前には溝鼠相手で十分だ。
あとは、その溝鼠に討たれた言い訳位は考えておくか?
言う相手は冥府の死霊位しかいないだろうが。」
と闇討ちの法陣を【高速詠唱】で発動。
敵の攻撃をよく観察し【見切り】、
【残像】を伴い回避、攪乱。
【2回攻撃】を使い絶え間なく闇討ちの法陣での
武器群による攻撃を浴びせ続ける。
更に発動の瞬間に緩急をつけ躱されない様に注意。
敵に消耗が目立てば詠唱時間を長くとり威力を上昇。
敵の拳での攻撃を受けた後、スカルペルを受ける前に
【カウンター】で【全力魔法】を乗せた闇討ちの法陣を発動。
「実験の結果がこれか?叡智卿。どうやら名前が勝ちすぎたな。
此方は『戦い』。背負うものが違うからな。」
ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と
ああ、あの亡者たちも先刻の赤子と同じだ
死を受け入れられぬ絶望と狂気は、直接手を下したこの男への怨嗟以上に、世の理不尽を呪い、嘆き、憎悪する
……すまない、俺にはお前たちの死を覆すことは出来ない
だからせめて、これ以上の犠牲を出さぬために
奴は必ずこの手で討つ!
亡者の怨嗟の声や呪詛は狂気耐性と覚悟で耐え、剣に破魔の力込め浄化
ヘルガへの攻撃を身を挺して庇い、傷口から【ブレイズフレイム】で地獄の炎を噴出しカウンター
たとえこの身が傷つくとも、人々に、そしてヘルガに傷一つ負わせるものか…!
亡者たちよ、骸の海で安らかに眠れ
そしてヴェイン、貴様は断じて許すまじ
地獄の業火に焼かれて消えろ!
ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と
この男は、今までどれほど『実験』を繰り返してきたというの
実験とは名ばかりの残酷劇のために、今までどれほどの人が殺されたの
その上この砦に集う人々を手にかけようというの
そして今、この男は大切なヴォルフを傷つけたばかりか
わたくしにもその手と刃を向けようとしている
許せない
許さない
この男だけは決して許さない……!
歌うはレクイエム【怒りの日】
神の怒りよ、神罰の光となって降り注げ
迫る凶刃も針も、わたくしを攫おうとする悍ましい手も、
そして忌まわしいあの男も、裁きの業火で焼き尽くして
この世界に灯った希望の光は絶やさない
人の命を、心を踏み躙る悪を、わたくしは決して許さない
夜は更け月はいよいよ強く輝き、猟兵達と膝をつくヴェインを照らし出す。その忌々しげな顔からは冷酷かつ悠然とした強者の余裕が剥がれ落ちている。
「溝鼠め……」
「命を弄んだお前には溝鼠相手で充分だ。あとは、その溝鼠に討たれた言い訳くらいは考えておくか?」
フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は術士であり研究者でもあった。猟兵として世界を渡り歩くのは新たな術の獲得や実験のためでもある。『実験』とは名ばかりの殺戮と拷問を行って来たヴェインに対する言葉は硬質かつ冷淡な物だった。
「言う相手は冥府の死霊くらいしかいないだろうが」
挑発的なフォルクに向けてスカルペルを放とうとしたヴェインはまた一つ自分が見落としていた事にようやく気付いた。
夜の暗闇と月光の中に浮かぶ魔法陣。他の猟兵との戦いに気を取られている間にフォルクは高速詠唱で法陣を組み上げていたのだ。
「地面に縫い留められては維持できまい!」
被検体を捕えて切り刻むためのスカルペルと手脚を縫い付ける為の縫合絲がフォルクの法陣を阻止するために放たれる。
しかし術士が詠唱中に狙われる事など充分予測しているフォルクはスカルペルと糸の軌道を冷静に観察し、法陣を維持したまま躱し、残像を用いての攪乱までやってのけた。
そして長き研究の末編み出されたフォルクの『闇討ちの法陣(セイヴァークロス)』が発動する。
「撃ち抜け、破魔の銀礫。その手管を包み封じよ静謐なる織布。邪なる赤き流れを食い荒らせ、呪いの鉄針。暁の剣よ終わりなき夜に終止符を」
法陣から放たれる銀の弾丸、封魔の骸布、血喰い釘、白銀の剣、それらすべてに吸血鬼に対し特効を持つ蒼炎が付与されていた。
弾丸に縫い留められ、骸布に捕らわれ釘で打ち付けられ、今までヴェインが被検体に、そして先ほどフォルクを縫い留めようとした行為をそのまま自身に返される。
「実験の結果がこれか?叡智卿。どうやら名前が勝ちすぎたな。此方は『戦い』。背負う物が違うからな」
蒼炎を纏った銀剣がヴェインを貫く。
冷徹冷酷、多くの『実験』で人々を殺めて来た叡智卿ヴェインの口から今まで彼が犠牲にしてきた『被検体』と同じ絶叫が上がった。
「おのれ……この私が、このように無様な事を……!」
過去の骸の海から這い出てより今まで経験した事のない屈辱。ヴェインは縫い留められた手足と胴体に穴が開くのも構わず拘束を引きちぎり、自分の影からこれまでで最大の亡者を召喚した。
「被検体としても不要だ。亡者どもの餌になるがいい」
ヴェインの精神状態が反映されたのか、現れた亡者達の姿は酷い有様で、すでに心臓は動いていないと言うのにボロボロになった全身から血が滴っていた。
ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は亡者達の凄惨な姿にあの憐れな嬰児を思い返す。
「ああ、あの亡者たちも先刻の赤子と同じだ」
―――死を受け入れられぬ絶望と狂気は、直接手を下したこの男への怨嗟以上に、世の理不尽を呪い、嘆き、憎悪する。
ヴォルフガングはそれを理解できた。
ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)もまた同じ光景を思い返していた。
「この男は、今までどれほど『実験』を繰り返してきたというの。実験とは名ばかりの残酷劇のために、今までどれほどの人が殺されたの……」
無意識に祈るように組まれた指先が血色を失うほど握り込まれる。
「……すまない、俺にはお前たちの死を覆すことは出来ない」
怨嗟の声と呪詛がヘルガとヴォルフガングを蝕む。この程度の痛みなど、亡者が受けた凄惨な『実験』を思えばどうと言う事もない。
「だからせめて、これ以上の犠牲を出さぬために奴は必ずこの手で討つ!」
覚悟と決意が呪詛に蝕まれるヴェインの体を動かす。破魔の力を込めた剣が亡者を浄化して行く。
「亡者たちよ、骸の海で安らかに眠れ。そしてヴェイン、貴様は断じて許すまじ。地獄の業火に焼かれて消えろ!」
ヴォルフガングの傷口から流れる血が炎となって噴き出した。
ヴェインを討つ―――ただ一つの意思によって地獄からもたらされた紅蓮の炎。しかし当のヴェインはその炎から逃れる術を見出していた。
「地獄に堕ちるのは貴様だ」
人の感情を可視化するために多くの絆に関心を持って来たヴェインは大切な者を失った時、人の心がどれほど傷付き時に壊れるかをよく知っていた。
ヴォルフガングの刃を止めるには本人を狙うよりもっと確実な手がある。
「その絆はどれほどのものか、私に見せてくれ」
スカルペルの鋭利すぎる刃と糸が狙ったのはヴォルフガングではなくヘルガだった。
傷付きながら剣を振るったヴォルフガングの体は少なからず動きが鈍り、ヴェインを討たんと接近している。いかに猟兵でもこの距離とタイミングで放たれたものを叩き落す事は不可能―――。
「ヘルガには指一本触れさせん!」
「ヴォルフ!?」
月光に照らされる血飛沫。しかしそれはヴェインが想像したものとは違い、躊躇いなく我が身を投げ出しヘルガの前に立ちはだかったヴォルフガングのものだった。
「許せない―――」
その光景は下手な傷よりもヘルガの心を傷付けた。
人の絆を踏みにじるヴェインの悪意への恐怖と嫌悪が、大切なヴォルフガングを傷付け、その献身をあざ笑うように再びヘルガに放たれるヴェインの凶刃が激しい怒りを呼ぶ。
「許さない―――この男だけは決して許さない……!」
あの洞窟で見た嬰児達のように、ただ生きたいと言う無垢の願いを冒涜し、大切な者を想う人の心も命もを愚弄するヴェインの所業。
「神の怒りよ、神罰の光となって降り注げ。迫る凶刃も針も、わたくしを攫おうとする悍ましい手も、そして忌まわしいあの男も、裁きの業火で焼き尽くして……!」
まさにヘルガの心を表す『怒りの日(ディエス・イレ)』の歌声が欺瞞を暴き邪悪を滅する裁きの光となる。
「ヘルガ」
怒りに身を任せるヘルガの肩にヴォルフガングの手が触れる。
「共にヴェインを討とう」
「ヴォルフ……ええ、この世界に灯った希望の光を守りましょう」
人の命を、心を踏みにじる悪を、わたくしは決して許さない―――ヘルガの裁きの光はヴォルフガングの紅蓮の炎の力と共にヴェインを焼く。
「何者も因果応報の理より逃れる術は無し。今ここに不義は潰えん。悪逆の徒に報いあれ」
炎と光、二人の力は太陽の如き熱と輝きとなり、多くの人々の命を弄んだヴェインを跡形もなく焼き払った。
光の中消えて行くヴェインの影とは別に安らかな顔をした人々の影が見えた気がしたが、確かめる間もなく光は収まり夜の帳が再び落ちて行く。
大成功
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第3章 日常
『月明かりの下で』
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POW : 語らい合って過ごす
SPD : 空を見上げて過ごす
WIZ : もの思いにふけり過ごす
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猟兵達の奮闘によって『人類砦』は無事守られた。
『闇の救済者』は猟兵に救われた事に深く感謝していたが、籠城するしかなかった自分達に不甲斐なさを感じてもいた。
しかし暗い顔などしていられない。砦に匿っていた住民に危機が去ったと伝えに行く。
住民達からも惜しみない称賛と感謝の言葉が送られ、特に妊娠が分かったばかりの妻とその夫からは涙ながらに感謝された。
気が付けば月は空高く輝き、緊張から解放された人々もようやく家に帰って行く。『闇の救済者』の一人でもある夫も妻と一緒に帰された。
他はこれから集落に異常はないか見回りと洞窟に仕掛けてあった警報の修復に。仕掛けがあったからこそ襲撃にいち早く気付いて砦に避難できたのだ。
一人が猟兵達に一晩ここで休んで行ってほしいと言う。砦は古いが人が住めるように清潔に整えられており、戦いで傷付いた体を癒すために中庭にあった浴場も復旧されていると言う。
また集落から少し上がった所にアイリスに似た花の群生地もある。ここで見上げるだけでも美しい月だが、月夜の花もまた見事な事だろう。
迎えが来るのを待つ一夜。猟兵達は思い思いに過ごすのだった。
ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と
もしよろしければ、闇の救済者夫婦とお話ししたいわ
お二人はもうすぐ『親子』になられるのね
新たな命の誕生、なんと喜ばしいこと
わたくしたちからも、是非祝福させてくださいまし
捧げるは【Marchenlied】
愛し子を慈しみ、幼ごころを慰める歌
絶望と悪意に凍てつく闇の世界にも、あたたかな命の芽吹きがある
乾いた荒れ地に力強く根を張り、背を伸ばして咲き誇る草花があるように
夜の帳の中、導きの光を灯す星月があるように
逆境の中でも、人は強く生きて行ける
その笑顔を絶やさぬよう、そっと希望を繋いで
この世に生まれ来る新たな命に
そして全ての善き人々に
生きる希望と加護があらんことを……
ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と
ひとまずの脅威は去ったが、身重の奥方に無理はさせられない
何かあれば手伝おう。遠慮なく言ってくれ
なに、客人としての気遣いは不要。俺達は共に戦う同志だ
この世界を、人々を、命を守るため共に力を尽くそう
愛する人を、家族を守り抜こう
あえて口には出さないが、ふと道中で遭遇した『未来を歩みだせなかった子ら』のことを思い出す
この世界が闇の眷属と、それが齎す諸々の歪みや悪意から解放されたなら
あのような悲しい存在が生み出されることもなくなるのだろうか
生者に祝福を、死者に安らぎを
ヘルガ……いつかお前との間に子供が生まれたなら
俺は父として、夫として、騎士として
家族と、世界を守り抜くと誓おう
集落にぽつぽつと建っている家は例外なく質素だったが、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)とヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)を迎え入れた家は資源が少ない中でも精いっぱい居心地を良くしようとする思いが感じられた。
闇の救済者の一人である夫とその妻がお互いを想い合って整えた家はあたたかい。
「本当によろしいんですか?」
「助けて頂いたのに雑用まで……」
恐縮する夫婦にヴォルフガングは気にするなと言って夫の肩を叩く。
「なに、客人としての気遣いは不要。俺達は共に戦う同志だ。この世界を、人々を、命を守るため共に力を尽くそう。愛する人を、家族を守り抜こう」
「はい。勿論です!」
さっきまで恐縮していたと言うのに、愛する家族―――妻を連想した青年の返事は心強い。
「ひとまずの脅威は去ったが、身重の奥方に無理はさせられない」
そうだろう?と聞くと夫はありがとうございますと頭を下げる。襲撃を知った時二人は支給された物資の仕分けや整理をしている途中で、取る物も取り敢えず砦に避難したため床にも机にも荷物が乱雑に出されたままだった。
「お二人はもうすぐ『親子』になられるのね」
片付けが終わりせめてお茶でもと出された一杯を味わいながらヘルガはにかむ夫婦に微笑む。
「新たな命の誕生、なんと喜ばしいこと。わたくしたちからも、是非祝福させてくださいまし」
ヘルガの声が紡ぐ『Marchenlied(メルヒェンリート) 』は愛し子を慈しみ、幼ごころを慰める歌。この世に生まれ来る新たな命に、そして全ての善き人々に捧げられる純粋な祈り。
―――絶望と悪意に凍てつく闇の世界にも、あたたかな命の芽吹きがある
乾いた荒れ地に力強く根を張り、背を伸ばして咲き誇る草花があるように
夜の帳の中、導きの光を灯す星月があるように
逆境の中でも、人は強く生きて行ける
その笑顔を絶やさぬよう、そっと希望を繋いで―――
ヴォルフガングはヘルガの歌声を聴きながら洞窟で戦った『未来を歩み出せなかった者達』を思い出していた。
(この世界が闇の眷属と、それが齎す諸々の歪みや悪意から解放されたなら、あのような悲しい存在が生み出されることもなくなるのだろうか)
ヘルガの祈りと共にヴォルフガングも祈った。
―――生きる希望と加護があらんことを……生者に祝福を、死者に安らぎを。
(ヘルガ……)
窓から差し込む月明かりが歌うヘルガと肩を寄せ合う夫婦を照らしている。この集落の外に出れば闇の眷属に支配された不条理な世界があるとは信じられないくほど、穏やかな時間が流れていた。
この光景が血に染まらないように、ヴォルフガングは静かに耳を傾けながら心の中で誓う。
(いつかお前との間に子供が生まれたなら、俺は父として、夫として、騎士として、家族と、世界を守り抜くと誓おう)
この一夜が明ければ再び戦いに身を投じる日々が続くだろう。その戦いの先に希望があると信じて、ヴォルフガングはヘルガと共にその道を行く。だが今この一時は、穏やかな空間に響く歌声を聴いていよう。
聖なる祈りの力が宿る歌声は夜風に乗って集落を渡り、きっとあの洞窟まで届くだろう。
大成功
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馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『侵す者』
…月夜の花でも見に行くか。
故郷にも似たような場所はあったが、ああ、別世界のもいいの。
四人並んで見られぬが、四人一緒には見られる、か…。何とも不思議よな。
よき絆に新しき命、息災であれ、とは思えど。わしらはどうしようもなく悪霊で、祝福には向かぬ。
…まあ、思うのは自由じゃろ。
此度も間に合ってよかった。わしらのような者を出したくはないしの。
未だ絆、傷跡にて繋がるわしら…。手の届く場所で間に合うのならば、助けたいと思うておるしの。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
籠城しかできなかったというけれど、喜びも悲しみも生きてこそ。
確り仕掛けがあったから籠城できたのだから。
だから生き延びられた事を素直に喜んで、この先も積み重ねられるようにしていってほしいな。
折角だし花の群生地で月見を。アイリスに似てるっていうけど花言葉も似てるんだろうか。
アイリスには「吉報」とか「メッセージ」という花言葉があるのだから、もしかしたらこの砦が無事だったのはそういう虫の知らせというものがあったのかもな。
地形に頼り切らずちゃんと罠を仕掛けて敵襲をあらかじめ知ったりできたっていう。
……俺にも吉報をもたらしてくれたらいいな。
どんなかは俺にもわからんが。
九石・纏
話に聞いた花の群生地に向かう。
ほぉ、月光が、綺麗なもんだ。
視線の先は花。アイリスか…花言葉はなんだったか…。ま、いいか。
適当に腰を落ち着ける。
やれ、終わった。終わった。休憩だ。
未来を歩み出せなかった者達。この世界じゃ、死んじまう赤ん坊なんて珍しくもない。あの時戦った奴らは、そのほんの一握りだ。
そう思いながら、自分の左腕、義手を月光に翳す。
あの時殺せていたら、そんな子を減らせたかね……やめだ。辛気臭い。昔を振り返ったって仕方ねぇ。
今は、そうだな…未来の希望。
さっき見たあの腹の子がちゃんと生まれてくる事を願おう。
なぁに、きっと大丈夫だ。生れてくる。
仰向けに寝転がる。そう信じる事ぐらい構わんだろう。
●
戦いが終わり、住民も粗方家に戻ったのを見届けた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はふと目をやった岩肌に奥へと延びる道を見付けていた。あれが先程住民に聞いた花の群生地に繋がっているのだろう。
「……月夜の花でも見に行くか」
集落から岩山の中に入って行く道は岩を削った階段になっていた。角は丸くなり表面に長年風雨にさらされた劣化の跡もある。集落にある砦と同じくらいの時期に作ったのだろうか。
とりとめのない事を考えながら階段を登りきった義透の前に広がったのは白い輝き―――アイリスに似た白い花が月光に照らされてほんのりと輝いている。
「故郷にも似たような場所はあったが、ああ、別世界のもいいの」
胸に去来するのは今はもう失われた故郷の景色。懐かしい記憶は胸を温め痛みを生む。
しかし今は決して肩を並べる事のない、四人の悪霊が一人を形成する身が共に同じ光景を見ている不思議と、確かに救えた命があった喜びが痛みを和らげてくれる。
「此度も間に合ってよかった。わしらのような者を出したくはないしの」
―――ああ、今度は救えたのだ。吸血鬼の支配下でも結ばれたよき絆。そして結ばれた絆から生まれるだろう新しい命を。
息災であれと思うが、 長い間彷徨った果てに四人の悪霊が絆と呼ぶには歪な傷痕で繋がったのが今の『馬県義透』だ。我が身を鑑みれば祝福があまりに似合わない事に浮かべた笑みも苦みが差す。
「……まあ、思うのは自由じゃろ」
これから生まれて来る命に幸あれと静かに願うには良い場所だ。
●
折角だからと花の群生地に月見にやってきた黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は黒くかげる岩山の上に輝く月と、月に照らされて地上で淡く輝くアイリスに似た白い花に見入っていた。
「これは自慢してしまうのも分かるな」
ここに来る前に話した『闇の救済者』達は襲撃に遭い籠城する事しかできなかったと悔やんでいたが、この花の群生地の事を話す時は持てる語彙を総動員して自慢していた。
「籠城しかできなかった、ではないだろうに」
突然襲撃されても死者が出なかったのは混乱することなく即座に避難して籠城できたからだ。この美しい光景も集落の誰かが犠牲になっていたら霞んでしまっただろう。
「喜びも悲しみも生きていてこそ。生き延びられた事を素直に喜んで、この先も積み重ねられるようにしていってほしいな」
吸血鬼に反旗を翻しようやく築かれた『人類砦』は支配され隷属を強いられている人々の希望なのだから。
「そう言えば、アイリスには「吉報」「メッセージ」と言う花言葉があったな」
アイリスに似ているが開花時期も咲いている場所も異なるこの白い花の名前は誰も知らなかったが、もしかしたら籠城した住人達が無事でいたのも襲撃にいち早く気付いたのも、この花からの虫の知らせがあったからかもしれない
もちろん『闇の救済者』が侵入者対策にただでさえ複雑な洞窟に目を騙す罠を作ったり警報が鳴るよう設置していたりと、この天然要塞のような地形に頼らず工夫していたからこそ敵の襲撃を知る事ができたのだろうけど。
「……俺にも吉報をもたらしてくれたらいいな」
できれば良いものでありますように。
●
「ほぉ、月光が、綺麗なもんだ」
夜が深まるほどに月の輝きはいよいよ増して、月光を受けて微かに輝く白い花もまた同じ。風に揺れれば淡い光の漣のよう。九石・纏(人間の咎人殺し・f19640)はこの見事な光景にようやく体から力を抜いた。
「やれ、終わった。終わった。休憩だ」
花を潰さないように岩肌から突き出た出っ張りに座る。白い花にはあまり香りがないらしく、土の匂いと纏自身に染みついた血の匂いの方が強く感じた。
常に血の匂いが付いて回る纏だが、今は戦いが終わったばかりでより強く感じる。『未来を歩み出せなかった者達』の姿と嬰児達を屠った感触はなかなか消えそうにない。
「この世界じゃ死んじまう赤ん坊なんて珍しくもない。あの時戦った奴らは、そのほんの一握りだ」
しかし―――左腕の義手を月光に翳せば己の罪の記憶と嬰児達を屠った瞬間の記憶が胸を刺す。
もしあの時自分が躊躇わなければ。もし戦線から離れていなければ―――あの嬰児達のような子供を減らせたかも知れない。仲間達を喪う事も―――。
「……やめだ。辛気臭い。昔を振り返ったって仕方ねぇ」
握り込んでいた義手を投げ出すように四肢を放り出して岩の上に寝転ぶ。
この光景をいつかあの『親子』も見るだろうか。
『闇の救済者』の夫とその妻の元に子供が産まれてくるのはまだ先の話だが、纏は未来の希望が無事に生まれる事を願わずにはいられなかった。
「なぁに、きっと大丈夫だ。生まれてくる」
この世界を覆う闇はいまだに深く暗い。それでもこうして人々は絆を結び、新たな命が生まれようとしている。大丈夫だ、あの集落で生まれる子はきっと幸せになるだろう。
大成功
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ニーヤ・カト(サポート)
『色々冒険していくにゃ!』
ケットシーの探索者×ヴィジランテの男です。
普段の口調は「猫(おいら、お前、呼び捨て、にゃ、にゃん、にゃあ、にょ?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、にゃ、にゃん、にゃあ、にょ?)」です。
お前が「おみゃー」となってしまいます。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。基本的には女好きなケットシーです。昔は金持ちの見せ物になっていたという過去があります
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
薬師神・悟郎(サポート)
俺は忍びと咎人殺しの技と技術が使えるだけの男
臆病で慎重、派手な振る舞いや行動は苦手だ
過去に仕事を失敗したせいで目標達成を優先させる傾向にある
使える技能は何でも使い、俺の心や感情が目的に必要なく邪魔なものであれば制してみせる
隠密行動を好み弓を使い、接近戦に切り替える時は忍刀を使用
表で活動する必要があれば何時でも使用できるよう拷問具を背負う
敵への牽制の意味も含め
幾つかの耐性で防御に備え、麻痺毒破魔属性攻撃、使えるものは何でも利用する
UCは通常であれば情報収集、戦闘であれば自己強化に適したものを状況に応じて使用
また依頼が成功する確率が上がるのであれば他者との連携も拒まない
あとは臨機応変にお任せしよう
●
どさっと座り込むと体の重みと荷物の重みを強く意識してしまう。今すぐに立ち上がろうとしたら絶対に軽やかにとはいかない自信がある。
ニーヤ・カト(猫の冒険家・f17782)は白い手で頬をかく。ケットシーは猫の姿をしているので身軽だと思われがちだが、ニーヤはどちらかと言うとパワフルなタイプだ。
しかも二十後半になると十代の頃のようにはいかないにゃ……と実感してしまう事が増えて来た。
「いやいや、今からそんな気分でいたらあっという間に老け込んでしまうにゃ」
外の世界を見たくて飛び出したニーヤにとって猟兵になれたのは幸運だった。
ニーヤにとってオブリビオンを倒すと言う依頼はあらゆる場所に赴く冒険と同義だった。そして冒険には危険と新たな風景がつきもの。
「ここまで来た甲斐があったにゃ」
岩山の上で輝く月は美しく、咲き誇る白い花もまた然り。そんな中に紛れ込む白いケットシーもこの景観にいい味を出すのに一役かっているのだが、そんな事はつゆ知らず。ニーヤは冒険の一ページに新たな景色が増えた事に満足して月夜の花見を楽しむのだった。
●
夜の闇夜は薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)には馴染み深いものだ。忍びであり、咎人殺しである悟郎にとって闇夜こそ自らの技を振るうに相応しい場所。
しかしこの暗闇は何もかもが白く輝き悟郎の業にも、過去の失敗がいつまでも重く纏わりつく心にも、どうにも似つかわしくない。
煙管をいつもより深く吸い込んで吐き出した煙ですら月光に照らし出されて、客観的に見れば月光の下で煙管で一服、なんて粋な事をしているのでは?と思いついてしまうと余計に落ち着かない。
「俺にはこう言った場所は似合わないな……」
煙管をもう一度深く吸い込んで、ふとこの白く美しい世界に似合うものを思い浮かべる。
悟郎の宝であり何よりも美しい特別―――あの美姫がこの白く輝く世界の中にいるのを想像してみる。なんとも美しい。美しすぎて吸った煙を吐き出すのを忘れるくらいだった。
「帰ったらこの景色の事を話してみるか……」
きっと喜んでくれるだろう。そう考えればこの景色の中にいるのも悪くない。
悟郎はようやく落ち着いて、土産話にするためにこの景色をじっくりと目に焼き付けるのだった。
成功
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リーヴァルディ・カーライル
…ん。ありがたい申し出だけど、今は遠慮しておくわ
私にはまだ、為すべき事が残っているから…
…あの憐れな子達が二度と迷い出る事がないように、
きちんと葬送して見送ってあげないと…ね
洞窟内の戦場後に戻り左眼の聖痕に魔力を溜め、
"未来を歩み出せなかった者達"の魂を暗視しUCを発動
…他の猟兵達も浄化したみたいだけど、まだ残っているのね
…貴方達がこの地に留まる事はできないの
もう惑い苦しむ必要は無いわ。ゆっくりと眠らせてあげる
彼らの霊魂に残った呪詛を浄化して光の精霊化した後、
両手を繋ぎ祈りを捧げて見送るわ
…今度こそ、祝福されて産まれてくる事を祈っているわ
…その時は、この世界を覆う闇も晴らしてみせるから
鞍馬田・珠沙子
っしゃあ終わった終わったー!!
じゃ、片っ端から映えたとこ撮ってくべ。
とりあえず岩山クライミングしたりなんかしてー、このイケてる砦を全体で撮んのはマストでしょ。それから集落の皆に他にも映えそうな場所がないか聞いてこっか。
まぁアタシが映えた写真撮りたいってのはモチロンなんだけどー、何より自分らの住んでる場所の良い所を再確認したら、この村をもっと好きになってここを守る皆のモチベももっとアガるみたいな?
そんで最後は一番気に入った場所で近くの人らと自撮って〆ってかんじかな。これから先、数えきれない人たちの故郷になるべき場所を守れたんだからこの写真はマジプライスレスっしょ。
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輝く月光も洞窟の中には届かず、あれだけの戦いがあったにも関わらず今はリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の足音だけが響く。
「…他の猟兵達も浄化したみたいだけど、まだ残っているのね」
戦闘の跡だけが残る洞窟―――『未来を歩み出せなかった者達』との戦いがあった場所を左眼の聖痕に魔力を溜めて見ると、執着と言うには拙く幼い思いの残滓が漂っているのが分かる。
「きちんと葬送して見送ってあげないと…ね」
あの憐れな嬰児達が二度と迷い出る事がないように、その霊魂を浄化するのがリーヴァルディの為すべき事。
ヴァンパイアの力を持ちながらこの世界の支配者に弓引く者として、リーヴァルディは自分の中にある人ならざる力を誰かを救うために使うのだ。
「…貴方達がこの地に留まる事はできないの。もう惑い苦しむ必要は無いわ。ゆっくりと眠らせてあげる」
両手を組んで祈りから紡ぐ『限定解放・血の煉獄(リミテッド・ブラッドレクイエム)』―――傷付いた魂に捧げる鎮魂の歌は洞窟内に残った嬰児達の魂を浄化し、光の精霊へと変える祈りの歌。
どこかから微かに流れて来た別の祈りがリーヴァルディの祈りと協奏曲を奏でるように重なり響き合い、清らかな祈りが満ちて行く。
「…今度こそ、祝福されて生まれてくる事を祈っているわ」
左眼にはもう彷徨う霊魂の残滓は見えない。
「…その時は、この世界を覆う闇も晴らしてみせるから」
嬰児達の霊魂が過去の骸の海から這い出るためではなく次の生を待つ眠りについたと信じて、リーヴァルディは誓う。
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「っしゃあ終わった終わったー!!」
戦いの緊張感から解放された鞍馬田・珠沙子(SUTEGORO☆ONMYOJI・f26157)は待ってましたとデコりにデコられたスマホを取り出す。
花の群生地はもちろんだが、見回りの途中で見付けた見晴らしのいい場所や個人的なお気に入りスポットなどを聞いた珠沙子は早速スマホ片手に集落を写メって回る。
「いいじゃんいんじゃん、これめっちゃ映えてる!」
満足な出来になった写メをまだ残っていた住民に見せると、表情が輝き夢中になってこの写真はあの場所だ。これは自分のお気に入りの場所だと珠沙子と一緒に盛り上がる。
「ほらこれなんかめっちゃ上手くね?住んでる場所の良い所を再確認したら、この村をもっと好きになってモチベももっとアガるみたいな?」
珠沙子が写メを撮って回るのはもちろん映えるものを撮るのが好きなのもあるが、こうして集落の良さを住民達が見る事でより愛着を持ってくれればと言う思いもあった。
「んで最後はアタシおすすめの映えスポットで撮るべ」
写メにすっかり夢中になった住民達は喜んで珠沙子が一番気に入った場所―――この集落の始まりである『闇の救済者』の拠点であり、いつか平和な世になれば集落の顔になるだろう砦がもっとも見栄えよく見える場所へ。写真に慣れない住民達は何度か撮り直してもちょっとぎこちなかった。
「数えきれない人たちの故郷になるべき場所を守れたんだからこの写真はマジプライスレスっしょ」
ぎこちない半笑いや中途半端に珠沙子を真似たポーズをとろうとしている住民達が映った写真。いつかもう一度見たら撮り直して欲しいと言うだろうか。
あと何時間かすれば空も白み夜が明ける。
『人類砦』はこうして守り抜かれ、迎える朝には一つの悲しみもない。
住民達は近く生まれる新たな命を楽しみに日々を生き、希望を繋いで行くだろう。
大成功
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