●アーホルン宗主国辺境「フェルゼ市」管轄地域
ある日の夕暮れ時。
エアトベーレ都市軍との国境にも近い、アーホルン宗主国辺境のフェルゼ市郊外において。二人の男性が国境の方角にそれを見つけた。
「おい、あれは……」
「キャバリア……それに『クロムブルー』?」
何機ものキャバリアと、たくさんの人型重機の「クロムブルー」が、国境線を越えてこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
これだけの数、ただ事で無いのは間違いない。男性が顔を見合わせる。
「まさか、またエアトベーレの連中がプラントを狙ってきたのか?」
「大方そうだろう、俺たちには関係ないさ。静かにしていれば――」
静かにしていれば、プラント狙いの連中なら見逃してくれる。この国のプラントは首都周辺にしかないから、辺境に用事はないはずだ。
そう考えて、男性たちは木陰に身を隠そうと動き出す、のだが。
響く銃声。飛来する銃弾。それが、男性の足を貫いた。
「ぐわっ!?」
「な、なんでだよ!? ここはプラントとは関係ないだろ!?」
突然、自分たち目掛けて行われた銃撃に、困惑する男性たち。止まない銃声と雨のように降る銃弾が、フェルゼ市を血で染めていく。
その暴挙を指揮する深紅の機体のコックピットでは、瞳を爛々と輝かせた男性が下卑た笑いを零していた。
「くくく……愚かで汚らわしいアーホルンの虫どもめ。お前らのような連中はこの世界には不要なんだ」
指揮官機「ブレイジング・バジリスク」に搭乗したアルトゥル・ガストは、本来なら美しいであろう顔を醜悪に歪めながら笑った。正気の沙汰で無いことは目に見えて分かる。
先を行く「クロムブルー」と「ドッグ」のコックピットでは、これまた狂気を目に宿した青年、老年、女性が、操縦桿を握りながらぶつぶつと呟いていた。
「そうだ……アルトゥル様の言う通り……」
「排除する……この世界から……」
そう発しながら、彼ら彼女らは殺戮を繰り返していく。
こんな行動は、本来ならあってはならないことだ。キャバリアが人間を直接殺すなど。
それを指揮するアルトゥルが、狂気に満ちた叫び声を上げた。
「この『紅き機動長』アルトゥル・ガストが、貴様らに須らく引導を渡してやる!! 死ねぇぇぇ!!」
●グリモアベース
「お初にお目にかかります、猟兵の皆様方。このリーンハルトが、皆様をクロムキャバリアでの案件にご案内申し上げます」
グリモアベースにて。リーンハルト・ハイデルバッハ(黒翼のガイストリヒェ・f29919)は深く一礼をしながら、集った猟兵たちにそう言った。
最近にグリモア猟兵となった彼曰く、アーホルン宗主国においてまたも事件が発生する予兆が見えたらしい。
「アーホルン宗主国とエアトベーレ都市軍の国境地帯、フェルゼ市管轄地域において、エアトベーレ都市軍所属と思われる多数の機体が国境線を越えて進軍してまいります。それだけならよくある国境侵犯、プラント狙いの行動なら常からのものでございますが……私の見る限り、どうも様子がおかしいのでございます」
そう言いながら、彼は手元のグリモアから映像を映し出す。そこに映っていたのはまさしく惨劇だった。
キャバリアから放たれた銃弾が人を貫き、爪が人を引き裂いている。
本来、この世界ではキャバリアとキャバリアが戦闘を行うもの。「人間」は攻撃対象にはならないはずだ。
「アーホルン宗主国において、プラントは首都近辺に集中しております。なので辺境の市には目もくれないはずなのですが……彼らはそこに、攻撃を加えようというのです」
つまり、プラントとは一切関係のない村を、そこに住む人々を攻撃しようとしている。リーンハルトはそう言って目を伏せた。
こんな凶行を、見過ごすわけにはいかない。
猟兵たちがまなじりを決するのを見て、ケットシーの男性も頷いた。
「敵軍構成は人型重機『クロムブルー』が先鋒として多数。後備えとしてキャバリア『ドッグ』がこれまた多数。指揮官機『ブレイジング・バジリスク』が一機、後方に控える形で戦場におります。搭乗するキャバリアが必要な方は、ハイドリヒ重工社の所有する倉庫がフェルゼ市にございますので、そこからお貸しいたします」
先鋒を務める「クロムブルー」はキャバリアではなく重機だが、雑兵として戦闘に使用されることもある機体だ。アームを各種兵器に換装して攻撃するほか、強化された脚部機構とAIによる攻撃起動予測で攻撃を的確に回避し、同型機が集まれば集まるほどそれらを強化することが出来る。
攻撃の第二波としてやってくる「ドッグ」は大きな盾と銃器を備えたキャバリアだ。盾を利用した加速突進と、キャノンモードによる銃器での攻撃と射程距離を強化しての遠距離攻撃を得意とする。また、動力炉をオーバーロードさせて高速移動を可能にすることも出来るようだ。
指揮官機の「ブレイジング・バジリスク」は大型バーニアユニットを備えた、高速移動による三次元機動と多角的な射撃を得意とする機体だ。右腕のライフルによる射撃を行うほか、ライフルを巨大化させて振り回すこともしてくる。さらには機体から発せられる漆黒のオーラで、戦場全体の機会兵器のエンジンを動作不能にすることもできるようだ。
各機体の説明をしたところで、リーンハルトがふと、思い出したように声を上げる。
「ああ、それと……『クロムブルー』に搭乗している兵士たちは、なるべくなら救出し、フェルゼ市にて匿って差し上げてください。どうやら『クロムブルー』の搭乗者と『ドッグ』の搭乗者は、互いに縁ある方々が選出されて搭乗しているようなのでございます」
曰く、縁がある相手が選ばれて乗せられているが故に、「クロムブルー」の搭乗者が死亡した場合は「ドッグ」の搭乗者がより狂気に囚われ、強化されてしまうのだという。逆に無事に救出でき、助けとなる言葉を受け取れれば、きっと狂気から解放できるだろう。
「『ブレイジング・バジリスク』に搭乗するアルトゥル・ガストは……ええ、私もよく存じておりますとも。エアトベーレ都市軍の大都市の一つ、ゼーフント市の市長にして指揮官でございますれば。本来ならこのような暴挙に出るような方ではございません。きっと、かの機体がオブリビオンマシンなのでございましょう」
そう話すリーンハルトが、寂しげに目を伏せる。他国の民である彼がそう話すということは、きっと相当な有名人なのだ。本来なら民衆に慕われる、高潔な人物なのだろう。
そこまで説明をしたところで、リーンハルトがにこりと笑った。手の中のグリモアを回転させてポータルを開く。その向こうから、微かに乾いた風が吹き込んできた。
「それでは皆様、準備はよろしゅうございますか? お怪我をなされぬよう、気をつけて行ってらっしゃいませ」
屋守保英
こんにちは、屋守保英です。
クロムキャバリアから、国境地帯の戦いをお届けです。
案内役のリーンハルトさんも初登場。よろしくお願いします。
●目標
・ブレイジング・バジリスク×1体の撃破。
●特記事項
この依頼では、キャバリアをジョブやアイテムとして持っていないキャラクターは、アーホルン宗主国のキャバリア製造会社からキャバリアを借りて搭乗することが出来ます。
ユーベルコードはキャバリアの武器等から、通常使用するのと同様に放つことが出来ます。
●場面・戦場
(第1章)
アーホルン宗主国辺境、エアトベーレ都市軍との国境地域の平原です。時刻は夕方です。
人型重機「クロムブルー」がオブリビオンマシンと化して、宗主国に攻め込んできます。
なお、搭乗者は敵マシンが撃墜されても、コクピットが無事なら無事に生還できます。
(第2章)
第1章と同様、国境地域の平原です。
量産型キャバリア「ドッグ」がオブリビオンマシンと化して、第二波として攻め込んできます。
なお、「ドッグ」の搭乗者は、「クロムブルー」に搭乗していた兵士たちと縁の深い相手であることが分かっています。第1章で敵側搭乗者が死亡している場合はパワーアップし、救出されてその想いを伝えることが出来れば戦闘を有利に進められます。
搭乗者は敵マシンが撃墜されても、コクピットが無事なら無事に生還できます。
(第3章)
第1章、第2章と同様、国境地域の平原です。
攻撃の首謀者たる人間が「ブレイジング・バジリスク」に搭乗し、自ら攻め込んできます。
搭乗者は狂気に飲まれており、侵略行為を正当化しながら襲ってきます。
なお、搭乗者は敵マシンが撃墜されても、コクピットが無事なら無事に生還できます。
それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『極地作業用人型重機『クロムブルー』』
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POW : 戦闘用改造個体
自身の【アーム部分】を【指揮官から支給された兵器】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD : 移動用改造個体
【強化された脚部機能と攻撃軌道予測AIで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 防衛用改造個体
【拠点を死守すべく共に戦う同型機】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[拠点を死守すべく共に戦う同型機]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
👑11
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カーバンクル・スカルン
スペックから察するに武装されているのは両手足だけ。ならば、そこを捥いじゃえば相手は何も出来なくなってコクピットから出ざる負えないと見た!
ならばカタリナの車輪を群れている所に突撃させて、一気に刈り取らせていただきます! どれだけ逃げても私が指差している限り車輪は追いかけて続けるからねー?
で、万が一外へ這い出て来た搭乗者がいたら、戻るときに車輪から伸ばした鎖で拘束してこっちに強制的に連れてくるとしましょう。うっかり別のに踏み潰されないようにね。
キャバリアを使わない普通の肉弾戦ならこっちの方が経験豊富なんだよ、大人しく投降しなさーい。暴れても気絶させるだけだけどー
●荒野
「殺戮……」
「殺戮を……」
そんな声が、クロムブルーのコックピットから漏れ聞こえてくる。
背後に見えるフェルゼ市の町をチラリと見てから、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)は前方の敵機を見て小さく笑った。
「ふーん、なるほどね」
敵は人型重機というだけあって大型だ。その躯体も両手の爪も強靭そうだ。キャバリアに搭乗していないカーバンクルでは、破壊するには一筋縄ではいかないだろう。
しかし、相手はキャバリアですらない。構造も単純だ。それなら。
「スペックから察するに武装されているのは両手足だけ。ならば、そこをもいじゃえば相手は何も出来なくなってコクピットから出ざるを得ないと見た!」
そう言いながら、カーバンクルは傍らに巨大な車輪を呼び出した。拷問器具「カタリナの車輪」。棘のついた車輪が独りでに勢いよく回る。
「車輪が発車します、ご注意ください!」
そう言いながらクロムブルーの一機に指を向ければ、そちら目掛けて車輪が一気に走り出した。棘だらけの車輪が横倒しになり、機体の脚を刈り取るように突撃する。
「わっ!?」
「なんだ、高速で動き回る、謎の物体が!?」
突然の高速物体に、クロムブルーのパイロットたちが困惑する。二機ほどが集まり、背中合わせになりながら車輪目掛けて銃を放つも、なかなか捉えることが出来ない。
「いいよー、そのままもいじゃえ、カタリナの車輪!」
そこに、カーバンクルが再び指示を飛ばす。縦向きに戻った「カタリナの車輪」が更にスピードを上げた。一撃で、二機のクロムブルーの腕を吹っ飛ばす。
そこから戻ればもう一撃。あっという間に、クロムブルーの両腕がもがれて地面に落ちた。
「ぐわっ、機体の武装、激しく損傷!」
「戦闘続行不可能……! くそっ、これじゃ撤退も出来ない! 脱出を――」
脚もやられて片膝をつくクロムブルーのコックピットから、二人の男性が這い出てきた。と、その瞬間だ。車輪から伸びた鎖が男性たちを縛り上げる。
「ひっ!?」
「ぐわ……!」
「よーし捕獲捕獲」
その鎖の端を手に持ちながら、カーバンクルはにっこり笑った。これで敵兵士の捕獲は完了だ。
男性たちの元に歩み寄り、自信満々に彼女は笑ってみせる。
「キャバリアを使わない普通の肉弾戦ならこっちの方が経験豊富なんだよ、大人しく投降しなさーい。暴れても気絶させるだけだけどー」
「う……」
その言葉に、兵士たちは何も言い返せない。当然だ、キャバリアですらない人型重機とはいえ、生身の人間に呆気なく破壊されてしまったのだから。
その化け物じみた実力に、彼らも観念したらしい。神妙な面持ちで俯きながら口を開く。
「妻よ……娘よ……父さんはお前たちを愛しているぞ……」
「ザビーネ……最期にもう一度逢いたかった……」
「えーちょっと、なに変なこと言ってるわけ? 殺さないから、ほら、大人しくして」
観念しすぎて遺言を残し始める彼らに困惑しながら、カーバンクルはフェルゼ市の敷地内に彼らを連れていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
ブリッツ・エレクトロダンス
(通信中)おいおいおいおい…なんだよこれ、大虐殺予定に敵軍団がどうも複雑な事情っぽい連中も込みか…
とりあえず出来るだけ穏健には済ませてえもんだな…
ところで発注かけてた俺の"ストレイトマン"は…ああ、まだ輸送中?
分かった、暫くは生身でどうにかするから早めに届けてくれ。(通信切断)
さて、ハッカーなりの戦い方ってのを見せてやるか。
確か、クロムブルーのゼロデイ脆弱性の情報があったはずだ…よし。
OKOK、ウイルスを構築しつつ、ミニ落雷でクロムブルーをうまく誘導…
十分集まったな、特製のウイルスを送信ッ!一気に感染拡大しやがれ!
●雷霆
「おいおいおいおい……」
ブリッツ・エレクトロダンス(★3:DJ.Blitz・f01017)は、茂みの中に身を隠しながら、電脳ゴーグルに内蔵されたマイクに声を入れていた。
現在、どこかしらの相手と通信しながら状況把握中。
「なんだよこれ、大虐殺予定に、敵軍団がどうも複雑な事情っぽい連中も込みか……出来るだけ穏便に済ませてえもんだがなぁ……」
なかなかにハードな状況にそうぼやきながら、ブリッツは眉根を寄せた。
ただの悪者ならいざ知らず、相手のパイロットは後続のパイロットと何かしらの関係にある一般人。機体もろとも爆散させては後味が悪い。
戦い方を考えないとならないか、と思考しながら、ブリッツは通信相手に呼びかけた。
「ところで? 発注かけてた俺の『ストレイトマン』は……あぁ、まだ輸送中?」
先般発注をかけた近接戦闘仕様のキャバリアの状況を聞くが、まだ手元には届けられないらしい。無いものは仕方が無い。
ため息を付きつつ、ブリッツは茂みの中から様子をうかがいつつ相手に声をかけた。
「分かった、暫くは生身でどうにかするから早めに届けてくれ。それじゃ」
そう言って、通信を切る。
キャバリアが手元に無い現状、敵に見つけられて攻撃されたら目も当てられない。とはいえ、相手は機械だ。ハッカーのブリッツにとっては、与しやすい相手である。
「さて……ハッカーなりの戦い方ってやつを、見せてやるか」
そう独りごちて、彼は電脳ゴーグルを目元までかぶる。情報検索、と同時にプログラム構築。
「『クロムブルー』のゼロデイ脆弱性……よし、まだ修正パッチは出てねぇな。これであとは……と」
手早くウイルスプログラムを組み上げながら、彼は静かに指を前方に向けた。指の向いた先、クロムブルーが進行する辺りへと落雷を落としていく。
「落雷……確認! 侵攻ルート、調整……」
「よしよし。これであとはあそこに集まるはずだ」
落雷を確認したクロムブルーが進む方向を僅かに変えるのを見て、ブリッツはほくそ笑んだ。他のクロムブルーも落雷の発生を受けて侵攻ルートを変えている。
結果、四機のクロムブルーが一箇所に集まる格好となった。
「ブルー4、ブルー2、7、8と合流。司令、どうしますか? ……了解。そのまま前進します……」
指揮官に確認を取ったクロムブルーが、そのまま一緒になってこちらに接近してくる。
好都合だ。ブリッツは組み上げたばかりのプログラムを、自動実行モードになっていることを確認してぶちまける。
「よしここだ、ウイルス送信!」
ブリッツの手で、クロムブルーのオペレーティングシステムに送信されるウイルスプログラム。それが機体に侵入するや、すぐさまに機能を破壊しにかかる。一機に侵入すると同時に、周辺にいる他の三機にも拡散していく。
突然致命的な不具合に襲われたパイロットたちは大混乱だった。
「わっ、なんだっ!?」
「オペレーティングシステムに致命的なエラー発生! 操作不能!」
「コックピット開放コマンド……くそっ、ダメだ! 緊急開放!」
「暴走するぞ、急げ!」
暴走しながら自壊を始めるクロムブルーから、次々にパイロットたちが飛び出してきた。それを確認したブリッツが、ゴーグルを上げながら舌を舐めずる。
「ま、ざっとこんなもんだ。さて……あとは」
無力化には成功した。あとは最後にもう一仕事。
彼は茂みの中から立ち上がった。まるで野良仕事をしていた市民のように。
「おーいそこの人たち! 大丈夫か!?」
ブリッツが声をかけたパイロットの四人が、驚きに目を見開きながら顔を見合わせる。オブリビオンマシンの狂気から解放された彼らを落ち着かせながら、ブリッツはフェルゼ市に案内するのだった。
成功
🔵🔵🔴
バロン・ゴウト
搭乗者の正気を奪って虐殺させるとは、卑怯にも程があるのにゃ!
こんな非道を許すわけに行かないのにゃ。絶対に止めるのにゃ!
以前のクロムキャバリアでの戦いと同様、レルヒェをお借りするのにゃ。
今回も何としてでも搭乗者を助けなければならないのにゃ。
その為にも今回搭載してもらったファミリアーユニットの力を見せるのにゃ!
ファミリアーユニットに【眠りの悪魔アルプ】の力を載せて敵へとぶつけるのにゃ!
アルプの力で敵が動きを止めた隙に、コックピットを外してクロムブルーを攻撃、動力部分や手足を破壊するのにゃ!
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
●昏倒
国境を越えて進軍してくる「クロムブルー」を見つめながら、バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)は憤慨していた。
「搭乗者の正気を奪って虐殺させるとは、卑怯にも程があるのにゃ! こんな非道を許すわけに行かないのにゃ。絶対に止めるのにゃ!」
正気を失わせ、あまつさえ罪もない人を殺させるなど、あってはならない。オブリビオンマシンの悪辣さ、ここに極まれりといったところか。兎にも角にも、止めねばならない。
想いを新たにしながら、バロンはそっと操縦桿を撫でた。
「さて……『レルヒェ』、今回もよろしくなのにゃ」
ハイドリヒ商工社所属、近接戦闘用量産型キャバリア「レルヒェ At-III」。前回の案件の際に貸与されたそれに、バロンは再び搭乗していた。
もちろんコックピットもケットシー仕様、操縦感も機動性も、前回乗った時と何も変わりがない。さらに、今回はハイドリヒ商工社が開発したばかりの、新兵器も搭載していた。
「ファミリアーユニットも動作良好にゃ? よし、これなら行けるにゃ!」
新兵器の稼働状況が問題ないことを確認して、バロンは操縦桿を握る。「レルヒェ」が急速発進し、「クロムブルー」に向かって突撃を開始した。
当然、その姿は敵の目に留まる。クロムブルーの腕部武装が、サブマシンガンへと変形した。
「敵キャバリアを発見! 応戦します!」
「『レルヒェ』だ、近付かせるな!」
次々に放たれる銃弾。それを高速機動で避けながら、バロンはファミリアーユニットの射出スイッチを押す。
「ファミリアーユニット射出! 夢魔アルプ、出番なのにゃ!」
「ニャー!」
猫の鳴き声を上げながら、夢魔アルプをまとったユニットが飛び出した。
飛び出したファミリアーユニットは本物のアルプさながら、敵機に取り付いて躯体を叩く。その途端に、クロムブルーはプスンと音を立てて動作を停止した。
一機が止まれば、もう一機にもユニットが取り付いて。たちまち二機のクロムブルーが、戦場に棒立ちになる。
「あっ、あれっ!?」
「オペレーティングシステム、ロックダウン! さ、再起動を――」
「隙ありにゃ!」
その大きな隙を突いて、バロンの駆る「レルヒェ」が一気に距離を詰めた。黄金のレイピアを抜きはなって、駆動系を狙って一撃。もう一機の駆動系にも一撃。
致命的なダメージを負ったクロムブルーのコックピットが、搭乗者を守るために自動開放される。その中では、狂気から解放された一般人の男女がぽかんとしていた。
「……あ、れ?」
「私は……それにここは?」
どうやら、自分たちが国境を越えてきたことも分かっていない様子。そのことに目を僅かに細めながら、バロンは敵パイロットへと呼びかけた。
「パイロットさん、無事ですかにゃ? ここにいると危険ですにゃ、あっちの町に一旦避難してくださいにゃ」
「あ、ああ……」
「ありがとうございます……」
バロンの案内を受けながら、フェルゼ市へと向かっていく男女。彼らの安全を確認してから、「レルヒェ」は再び国境付近へと舞い戻った。
成功
🔵🔵🔴
キョウ・キリノ
人を狙うキャバリアがいるならば、キャバリアを斃す人も居るが道理。
悪しきキャバリア許すまじ、この斬機一刀が貴様らを決して許さぬ。
俺は生身でキャバリアを斬る者、ゆえに我がキャバリア斬月には未だ乗らず。
敵機体から発する『殺気』を読み、その挙動を『瞬間思考力』で把握、そして攻撃を完全に『見切り』攻撃を『受け流し』ながら距離を詰め【抜即斬】!
チェストォ!チェストチェストチェストチェストチェストチェストォォ!
射程に捉えた機体を次々に抜き打ちで斬り廻り、その四肢を『なぎはらい』両断して機体の戦闘能力を奪い去ってゆく。
俺に、斬れぬモノは無し…!
☆アドリブ等、歓迎
●斬鉄
辺境の荒野に、一陣の風が吹く。
キョウ・キリノ(斬機一刀・f30324)の長い髪がその風に吹かれ、流れゆきながら、彼は腰に佩いた一刀に添えた手をしっかと握った。。
「人を狙うキャバリアがいるならば、キャバリアを斃す人も居るが道理。悪しきキャバリア許すまじ、この斬機一刀が貴様らを決して許さぬ」
悪を為すキャバリアは斬る。一片の容赦もなく斬り捨てる。それこそが斬機一刀、キョウの修める剣術流派の信条であった。
しかし、キャバリアでなく重機だとはいえ、そのサイズは三倍近くの開きがある。故に身一つで戦場に乗り込んだキョウを見て、クロムブルーの搭乗者は呵々と笑った。
「人間だと!? こんな場所で!?」
「無謀な奴だ、踏み潰せ!」
ガシャンガシャンと音を立てながら、クロムブルーの躯体がキョウへと迫る。その足が彼の身体を蹴上げ、また踏みつぶそうとする中で、キョウの手の中で刃が煌めく。
「俺は生身でキャバリアを斬る者。斬機一刀の剣筋、とくと御覧じろ!」
刹那。
「チェストォ!」
「なっ!?」
まるで瞬間移動したかのような速度で、キョウがクロムブルーの背後に抜ける。それとほぼ同時に、クロムブルーの一機の右足が根元から切断された。
抜即斬。神速の抜き打ちが続けざまにクロムブルーへと炸裂する。
「チェストチェストチェストチェストチェストチェストォォ!!」
「わ、わ、わっ
……!?」
「なんだ、何が起きて……うわぁ!!」
あまりの速度、そして一瞬で無力化される重機。両腕両脚を切断され、ほとんど球体に近くなったクロムブルーのコックピットが、戦闘続行不能を受けて開放される。
中から転がり出た搭乗員は、今になっても何が起こったのか、認識できていないようだった。
「え……」
「な、何だったんだ、今のは……?」
無事にコックピットから這い出した兵士たちを見て、キョウは静かにその刀を収めた。
「俺に、斬れぬモノは無し……!」
自信満々にそう告げて、彼は不敵に笑うのだった。
成功
🔵🔵🔴
ヘザー・デストリュクシオン
ロボってなんか強そうよね!
いっぱい壊しあえそうでわくわくするの!
まずは敵の前に出ておびき寄せるの。
たくさんあつまってきたら高くジャンプしてからのUCで地面を攻撃して敵の足元をくずすの。
バランスをくずしたところでさらにUCで足を狙って攻撃して壊すの!
これでもう立てないでしょ?
あとは敵の攻撃をジャンプやダッシュ、スライディングで避けつつコックピットのふたを壊して中の人を引きずり出すの!
ロボのせいで攻撃してきたなら、出てきたらきっと正気にもどるのよね?
みんな、とりあえず今はなんとかって町まで逃げて。
あとであなたたちの大切な人のせっとく、してもらうから。
壊しあうのはあやつられてやることじゃないの!ね?
●加虐
そしてまた、戦場の中に生身で飛び込む猟兵がいた。ヘザー・デストリュクシオン(白猫兎の破壊者・f16748)が頭のウサギ耳を揺らしながら無邪気に笑う。
「ロボってなんか強そうよね! いっぱい壊しあえそうでわくわくするの!」
壊したい。壊されたい。そうしている間は、自分が生きているって実感できるから。だから、彼女はクロムブルーの前に飛び出して朗らかに呼びかけた。
「あはは、みんな、わたしと遊びましょう?」
「な、なんだ?」
「子供……? こんなところにか?」
その異様な状況に、クロムブルーの搭乗者が揃って戸惑いの声を上げる。
子供でキャバリア乗りがいないわけではないから、戦場に子供がいること自体はおかしくもない。子供が『生身で』戦場にいることが、これ以上なくおかしいのだ。
程なくして、一人の兵士がしびれを切らして声を荒げる。
「ど、退けっ! 邪魔をするなら子供だろうと容赦しないぞ!」
数歩前に踏み出してヘザーを威嚇するも、彼女は全く怖がらない。くるくる回って逃げ出した。
「あっははは!」
「な、なんだあれ……?」
「構わん、邪魔者は全て殺せ、との司令官の指示だ!」
誘うようにゆらゆら動く彼女に、ますます混乱する兵士たち。しかし邪魔ものなら敵だ。すぐにヘザーとクロムブルーの追いかけっこが始まる。
そうこうするうちに他のクロムブルーも集まってきて、気が付けば一対四。やがてヘザーは追いつかれ、完全に囲まれてしまった。
「ふんっ、どうだ! こう囲まれてはいくら子供でも逃げられまい!」
「行くぞ、一気に潰せ!」
ヘザーを取り囲んだクロムブルーが、一斉にその両手の武装をブレードに換装して彼女に向ける。
と、そこで彼女はまっすぐに跳び上がった。そのまま落下し、ブーツの靴底を地面に向ける。そして。
「はぁっ!!」
「わ!?」
強烈な蹴りが炸裂し、荒野の地面が大きくへこんだ。足元の地面が崩されて、クロムブルー四機の体勢が崩される。
「なにっ、地面が!?」
「あ、足がとられて……」
「そこだよっ、もう一発!」
相手の大きな体がぐらりと傾いだのを見て、ヘザーは今度は両手を振り下ろした。クロムブルーの足に命中し、その足がばきりと砕かれる。
「く、くそっ、銃に切り替えろ!」
「なんだこいつ、速い! ぐわ……!」
そのまま剣を振り回し、あるいは銃に武装を切り替えてヘザーを殺そうとするクロムブルー。しかしその攻撃が彼女の小さな身体を捉えることはなく、逆に彼女の手がコックピットの強化アクリルを打ち砕いた。
そこから引きずり出された兵士が、途端にきょとんとする。
「あ……あれ?」
「うん、やっぱりコックピットから出てきたら正気に戻るのね」
そのままヘザーは四機分、つまり四人の兵士をキャバリアから引きずり出した。事態を飲み込めずにぽかんとする兵士たちに、彼女は告げる。
「みんな、とりあえず今はなんとかって町まで逃げて。あとであなたたちの大切な人のせっとく、してもらうから」
「なんとか……フェルゼ市か?」
「確かにあそこは、ここのすぐ近くだが……」
彼女の言葉に、兵士たちは顔を見合わせる。確かにこの近くの町と言えばあそこだ。機体も失った状態で彼女に敵うはずもない。彼らは大人しく従った。
「壊しあうのはあやつられてやることじゃないの! ね?」
にこやかに笑って話すヘザー。その嬉しそうな様子に、もう一度兵士たちは顔を見合わせた。
成功
🔵🔵🔴
アイオライト・セプテンバー
私のキャバリアは【ブルーテイル】
奇しくも、同じ青を名前に冠する機体のようね……
高速戦闘特化機である本機は、移動用改造個体の相手をしましょう
【推力移動】にて、殲禍炎剣に注意した低空機動で接近
ユーベルコード【ハイスピード・アサルト】による格闘戦を仕掛けるわ
敵機の回避を逆にこちらで【見切り】、回避方向へプラズマブレード【BX-A〝スラッシュ〟】による格闘戦
コックピットを避けて、脚部を狙って切断しつつ動きを止め、確実にパイロットを助けていきましょう
接近しての格闘戦ならば、【操縦】技能には自信があるもの
プラントの争奪ならこの世界の理の一つ……
でもね……人を殺すだけの戦いなんて、見過ごすわけにはいかないの
●肉薄
フェルゼ市の塀の中から、一機のキャバリアが矢のように飛び出す。
殲禍炎剣の標的にならないよう、低空を維持したまま愛機を超高速で飛行させるアイオライト・セプテンバー(〝ブルーテイル〟・f29954)は、グラスコックピットに多数反応が映る敵機を見て、ふっと目を細めた。
「私のキャバリアはブルーテイル……奇しくも、同じ青を名前に冠する機体のようね」
相手はクロムブルー、キャバリアでないにせよ同じく青を冠するもの。これも何かの縁だろうか。
全身に制御スラスターを持ち、超スピードで戦場に突入するブルーテイルの姿をクロムブルーも無論認めた。甲高いエネルギー排出音を響かせながら接近してくるこちらを迎え撃つべく、脚部の底面からエネルギーを吐き出す。
「キャバリアがまた出てきたぞ!」
「速い!? こちらも速度で対抗しろ!」
そうして始まる、キャバリアと重機の超高速での格闘戦。ブルーテイルの速度と姿勢制御、プラズマブレードによる攻撃の苛烈さは勿論凄まじいが、その攻撃を手の爪でいなしながら渡り合うクロムブルーも、キャバリアではないながらなかなかやるものである。
「私の速度について来られる?」
手ごたえのある相手にほくそ笑みながら、アイオライトは操縦桿をさらに押し込んだ。排気量増加、ブルーテイルの速度がますます増していく。
こうなると性能差は圧倒的だ。高速戦闘と軽量性に特化したブルーテイルが、みるみる敵機を翻弄していく。
一気に劣勢に立たされたクロムブルーの搭乗者が焦り始めた。焦燥感と緊張感で細かな操作が雑になってくる。
「くっ、この――」
「甘いわ」
若干雑に行われたクロムブルーの回避、その隙をアイオライトは見逃さない。回避方向に向けてプラズマブレードを一閃、的確に両脚を切り裂いた。
「ぐわ
……!!」
脚を切断されたクロムブルーが地面に転がる。まだ両腕が無事なためか、コックピットが強制開放される様子はない。
好都合だ。ここでパイロットが戦場に転がり出たら、巻き込んでしまうかもしれないから。
「コックピットは無事ね。そのままそこで転がっていなさい。後でちゃんと助けてあげるから」
そう呼びかけて、再びエネルギー排出音を響かせるブルーテイル。次のクロムブルーに向けて吶喊しながら、アイオライトはコックピットで独り言ちた。
「プラントの争奪ならこの世界の理の一つ……でもね。人を殺すだけの戦いなんて、見過ごすわけにはいかないの」
プラントを狙うのではなく、人を狙う戦い。それはクロムキャバリアという世界の理に反するもの。そんな無益な戦いを終わらせるべく、アイオライトはブルーテイルを敵機に突撃させた。
成功
🔵🔵🔴
エイス・シノノメ
この世はプラントによって賄われる世界
プラントを失った国は遠くない日に滅するものです
逆を言えば幾ら人々を殺してもプラントある限りキャバリアのみならずレプリカントやロボットヘッドらは産まれ続け戦線の影響は軽微
何て益の無い事をするのか!
この様な無益極まる戦さ場は過去見た事が無い!
どうやらパイロットは正規では無さそうですね
近縁者を連れ込むとはオブリビオンマシンの策略でしょうか
フェルゼ市の皆さんも助けねばなりませんし此処はアタシのクロムキャバリアをAI操縦に切り替え自身は救助活動を行います
AIには足止めを中心に指示、可能なら脚部破壊で行動不能を狙わせます
一人でも無辜の人々を救わなければ!
●救助
フェルゼ市の程近く、小高い丘の上で。エイス・シノノメ(機獅道一直線ガール!・f30133)は戦場を遠くに見つめていた。
「この世はプラントによって賄われる世界……プラントを失った国は遠くない日に滅するものです」
クロムキャバリアはプラントを中心にして形成された国家同士が争う世界だ。プラントを日々攻撃し、奪い、奪われを繰り返し、国の発展と淘汰がそこかしこで行われている。
このアーホルン宗主国と、あちらのエアトベーレ都市軍だって例外ではないのだ。プラントを奪われたらどちらかが滅び、どちらかが生き残る。
だが。それは『プラントを攻撃した』場合の話だ。
「逆を言えば幾ら人々を殺しても、プラントある限りキャバリア、のみならずレプリカントやロボットヘッドらは産まれ続け戦線の影響は軽微……何て益の無い事をするのか!」
そう、いくら敵国の人間を殺したところで、戦線にはなんら影響はないのだ。
キャバリア乗りを殺したところで代わりはプラントから生まれてくるし、人間も後から後から教育を受けてキャバリアに乗れるようになる。ましてや民間人を殺すなど、何のメリットもない。
無益だ。どこまでも無益だ、敵のやろうとしていることは。
「この様な無益極まる戦さ場は過去見た事が無い! 終わらせましょう、こんなものは!」
そう言い放ちながら、エイスは白と青の愛機を発進させた。駆動音を響かせながら、荒廃した大地を駆ける。
その姿を見つけられないほど、敵も盲目ではない。
「ク、クロムキャバリアだ!」
「最新鋭機まで出てくるだと!? くそっ、応戦しろ!」
すぐにこちらにサブマシンガンを向けてくるクロムブルー。その姿と、動きの等星の採れていない様子にエイスは目を細めた。
「どうやらパイロットは正規では無さそうですね……これもオブリビオンマシンの策略でしょうか」
敵はキャバリアですらない重機。搭乗員は正規のキャバリア乗りでもない様子で、さらには数も多くない。
これなら、押し切れる。そう判断したエイスはコックピットに据えられたボタンを押し込んだ。
「統合型射撃統制機体制御システム起動! 敵機の制圧は任せましたよ!」
EP-IFCAAS。AI制御OSが起動し、自立した行動を取り始める。その間にエイスはコックピットを飛び出し、地面に降り立った。
その行動にクロムブルーのパイロットたちが瞠目する。
「降りた!?」
「いや、自動操縦だ! 向かってくるぞ!」
エイスのキャバリアはプラズマライフルを片手に向かってくる。応戦するべく相対するクロムブルーを後目に、エイスはフェルゼ市の塀の中へと取って返した。街の外縁部にいて外の様子を窺っていた住民に声をかける。
「皆さん、大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます……おかげさまで、町はなんとか……」
住民の女性は戸惑ってこそいるものの、怪我もなさそうだ。ざっと見た感じ、殆どの住民は市内中心部の市庁舎に避難している様子。先般の戦闘で確保したクロムブルーの搭乗者は、ハイドリヒ商工社が塀の中に持つ倉庫に匿われている様子だ。
「フェルゼ市の住民への被害はほぼ無し……救出したエアトベーレ都市軍のパイロットたちも命に別状なし。水際で食い止めているおかげですね」
町への被害はなさそうだ。その事に安堵しながら、エイスは再び塀の外に向かうべく踵を返す。塀の近くにいる何人かの住民に声をかけつつ飛び出した。
「なるべく皆さん、市庁舎に避難して屋外には出ないでください。すぐに終わらせてきますから」
そうして彼女は荒野を駆ける。徐々に見えてくる自分の白と青のクロムキャバリア。
ちょうど、クロムブルーのラスト一機を抑え込み、無力化したところだ。
「さて……残りのパイロットたちも助けてきましょうか」
搭乗する敵パイロットを救い出すべく、エイスは走る速度をさらに上げた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『ドッグ』
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POW : 突撃
【盾を利用した加速】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【斜面や狭所など地形】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : D2エンジン起動
自身に【動力炉のオーバーロードによる熱気】をまとい、高速移動と【エネルギー屑】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : マイナーチェンジ
【更なる装備を重ねたキャノンモード】に変形し、自身の【移動能力】を代償に、自身の【攻撃力と射程距離】を強化する。
👑11
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●悲嘆
「殲滅を……」
「容赦のない殲滅を……」
陽が徐々に沈みゆき、空が藍色に染まりゆく中。
うわごとのようにそう呟きながら、敵の第二波が国境を越えて進軍を開始した。
量産型キャバリア「ドッグ」。盾と銃器を手にした重厚な装甲を持つキャバリアが、足を踏み出すごとに地面を揺らす。
そんな地響きに乗って、いくつもの嘆きの声がコックピットから聞こえてきた。
「ああ、先んじて戦場に飛び出した息子よ……どこにいる、お前を失ったら、私は……」
父親の声が。
「あなた……無事なの、それとも死んだの、あなた……」
妻の声が。
「パパ……死なれたら悲しいよ、パパ……」
息子の、娘の声が。
既に出撃し、全機が撃破された「クロムブルー」のパイロットと縁のある者の声が、戦場に訥々と響く。
救出のため、再会のため、猟兵たちは再び戦場へと飛び出した。
●特記事項
・キャバリア「ドッグ」との戦闘です。だいたい第一章で登場した「クロムブルー」と同数くらいが戦場にいます。
「ドッグ」の搭乗者は、「クロムブルー」の搭乗者と何らかの関係を持っています。「クロムブルー」の搭乗者は全員救助され、フェルゼ市の中で匿われています。本人からのメッセージを届けてあげることで、戦闘が有利に進みます。
・タイミング的には第一波の攻撃からいくらか間があり、猟兵たちは一旦フェルゼ市側に撤退し、救助された搭乗者たちと接触できているものとします。
アイオライト・セプテンバー
※アドリブ歓迎
今度の相手はキャバリアか……クロムブルーよりもよほど手ごたえがありそうね
誰かを助けても、別の誰かを討てば、大きな悲劇が生まれてしまう
……このパイロットたちも、出来る限り助けてあげたい
「ドッグ」のパイロットたち、聞こえている!?
「クロムブルー」のパイロットたちは無事よ
……誰もが、大切な誰かとまた、生きて明日の青空を共に見つめたがっている
貴方たちの帰りを待つ人々も、あそこにはいるのでしょう!?
それでも、話を聞かないようなら……
【ライトニング・パイル】による接近戦で、可能な限り武装などを狙い、敵パイロットを傷つけないよう攻撃
私の【操縦】で無傷で抑え込めるか……全力を尽くしましょう
●悲哀
国境を越えて、地面を踏みしめながら進軍してくるドッグたち。
その姿をブルーテイルのコックピットから見つめながら、アイオライトは僅かに目を細めた。
「今度の相手はキャバリアか……クロムブルーよりもよほど手ごたえがありそうね」
先程は単なる人型重機だったが、今度は正規のキャバリアが相手。先程よりはしっかりとした戦いが出来そうだ。
とはいえども、この相手も先のクロムブルー同様、オブリビオンマシンに操られている搭乗者が動かしている。しかもその搭乗者は、クロムブルーの搭乗者と縁のある相手だ。
「誰かを助けても、別の誰かを討てば、大きな悲劇が生まれてしまう……このパイロットたちも、出来れば」
助けたい。助けられなかったら、また別の悲劇を生んでしまう。
だから、アイオライトは武装を構えながらも敵機と距離を取ったまま、動かずにいた。
「破壊を……」
「殲滅を……」
ドッグの搭乗者の漏らす声が、細々と聞こえてくる。
そのどこかうつろな声に眉間に皺を寄せながらも、アイオライトは機体外部のスピーカーに繋がるマイクを握って声を張った。
「……っ、『ドッグ』のパイロットたち、聞こえている!? 『クロムブルー』のパイロットたちは無事よ!」
彼女の率直なその言葉に、ドッグの足が止まる。
「何を……」
「……誰もが、大切な誰かとまた、生きて明日の青空を共に見つめたがっている。貴方たちの帰りを待つ人々も、あそこにはいるのでしょう!?」
信じられぬ、と言いたげなドッグのパイロットの声に、アイオライトが腕を大きく振った。その腕の向く先には、フェルゼ市の街並みがある。
「フェルゼ市……」
「そこに、いるのか……俺の……」
自分の愛する人が、大事な人がそこで待っている、という言葉に現実味を感じたのか、ドッグの動きが明らかに鈍った。
「話は通じたかしら……なら、ここで!」
相手の動きが止まった隙を、アイオライトは見逃さない。見逃す理由もない。ここで敵機の撃破が出来なければ、彼らの愛する人々も命を散らしてしまうかもしれないのだ。
腕部からビームブレードを展開し、一気に距離を詰める。ドッグのコックピットがあるであろう胴体部を外しながら、敵機の武装を確実に刈り取っていく。
「あ……」
「ここで……もう……」
武装を切り取られた二機のドッグが、軋んだ音を立てながら荒野に落ちていく。戦闘力を刈り取られ、しかし搭乗者の命は救われている二機を見て、アイオライトはほっと息を吐いた。
「コックピットは外したわ……じきに自動開放されるでしょう。そうしたら、会いに行ってきなさい。大事な人と……」
そう言い残して、ブルーテイルは再び地を蹴った。大事な人を救い、悲しい結末を避けるために。
成功
🔵🔵🔴
カーバンクル・スカルン
とりあえずー、戦場に戻る前に敵キャバリアに【ハッキング】してクロムブルーのパイロット達の声をダイレクトに届けてみるとしますか?
それで安心して停止するか、人質を助けようとして突進してくるか、音声ソフトを使った偽物だと勘違いするかは賭けだがね。後者だったら、あとが怖いぞー。
いずれにせよもし攻撃を止めないようであれば、物陰からフックを投じて足に引っ掛けさせて……体制を崩したところをワニを嗾けて噛み砕いてもらうとします。
5mの巨体と比べたら、子供のようなサイズかもしれないけど……同じくらい機構は積んでるんだよ!
エレクトコード起動、高圧電流で気絶しろキャバリア!
●発声
戦闘区域からいくらか離れたフェルゼ市の倉庫の中で。カーバンクルは一心不乱にキーボードを叩いていた。
「んー……」
手元の端末の画面に映るのは、ドッグのコックピットのオペレーティングシステムだ。その発声プログラムにハッキングを仕掛けるカーバンクルの指が、力強くリターンキーを押す。
侵入成功だ。
「よし、いけた! じゃー皆、私が合図したら好きに叫んじゃって!」
「あ、ああ!」
「よろしく頼みます!」
そうして彼女がマイクを手渡すのは、クロムブルーに搭乗していた兵士たち。彼女は、彼らの声を直接、ドッグのコックピットに届けようとしたのだ。
倉庫を飛び出し、フェルゼ市の塀を超え、カーバンクルは駆ける。駆けて駆けて、戦闘区域の物陰に隠れながら、独り言ちる彼女だ。
「んー、とはいえ、これで安心して停止するか、人質を助けようとして突進してくるか、はたまた音声ソフトを使った偽物だと勘違いするか……そこは賭けだけどねー。勘違いされたら後が怖いぞー」
この賭けが、吉と出るか凶と出るか。それはやはり、やってみないと分からない部分で。
カーバンクルが固唾を飲んでドッグを待ち構えていると、来た。
「殺せ……」
「殺せ……!」
うわごとのように呟く声が、ドッグのスピーカーから垂れ流されている。この距離なら、届くはずだ。
「よし、敵機見えた! 今よ!」
すぐさまカーバンクルはフェルゼ市に向かって合図を送る。それを契機にして、ドッグのコックピットに直接、彼らの愛する人々の声が届いた。
「……!?」
「な……」
途端に動きを止めるドッグ。間違いなく、声が届いている。声が届いて彼らは困惑している。
「……」
その様子を静かに見守るカーバンクル。と、彼女の目の前で二機のドッグが、ゆっくりと足を踏み出した。
「あ、あ……」
「そこに、そこにいるのか……お前は……?」
その声は、喜んでいるようで、また夢うつつのようで。腕を前方に伸ばし、乞うようにしながら前へと進みだすドッグを見て、彼女はにんまりと笑った。
「あー、なるほど。だとしたらこれでいけるかな。ワニくん、行っといで!」
そう言ってスクラップ製のワニをけしかけながら、カーバンクルはフックを二本投じた。そのフックがドッグの足に絡み付き、動きを止めたところにワニが思い切り食らいつく。
「なっ!?」
「わ……!」
5メートルの巨体に比べれば、子供のようなサイズのワニだ。しかしその力は絶大、しっかり噛みついて離さない。そこに。
「エレクトコード起動、高圧電流で気絶しろキャバリア!」
カーバンクルの言葉を受けて、高圧電流がワニの牙から迸った。全身に電流を流し込まれ、ドッグの武装が停止し、エンジンが悲鳴を上げる。
煙を上げながら動作を停止するドッグを見て、カーバンクルは茂みから姿を見せながら笑った。
「ふー……よし、後はキャバリアから引っ張り出せれば大丈夫ね」
そうして彼女はドッグのコックピットに駆け寄る。搭乗者二名が無傷のままにそこから救い出されるまで、時間はかからなかった。
成功
🔵🔵🔴
バロン・ゴウト
事前にクロムブルーの搭乗者さんとお話して、搭乗者さん自身の名前や家族に伝えるメッセージを聞いておくのにゃ。
再びレルヒェに乗り、レルヒェのスピーカーでドッグ達に対して【大声】でクロムブルーの搭乗者の名前と、無事に救助されたことを伝えるのにゃ。
声に反応したドッグに狙いを定めて一気に近づくのにゃ。
【トリニティ・エンハンス】の風の魔力と【オーラ防御】で風のシールドを作り、攻撃を躱し、防ぎながらもクロムブルーの搭乗者さんから預かったメッセージを伝えるのにゃ!
メッセージを伝えてドッグの動きが鈍ったら、駆動系を攻撃して無力化し、ドッグの搭乗者を救出するのにゃ。
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
●伝達
フェルゼ市の敷地内から、漆黒の機体が再び発進する。
レルヒェに搭乗したバロンは、先程の短い時間の合間に交流し、話を聞いたクロムブルーのパイロットからのメッセージを携えて、戦場へと飛び込んだ。
「皆さんのメッセージは確かに受け取ったのにゃ。頑張って、ドッグのパイロットさんに届けるのにゃ!」
伝えるべき言葉は胸の内に、確かにある。名前もしっかり聞いた。これを届けられれば、きっとドッグの搭乗者が狂気に囚われていても、届くはずだ。
戦場に飛び込んだバロンは確かに見た。国境線を超えて、臙脂色をした巨体のキャバリアが何機も、何機も進軍してくる。
「あれがドッグだにゃ……たくさんいて、どの機体に誰が乗っているのか、一見しては分からないのにゃ……」
その機体はいずれも同じ色、同じ形をしていた。量産型キャバリアなのだろう、一見してどれに誰が乗っているかは分からない。
だが、乗っている人間が分からなくとも、声を届けることは出来るのだ。
「それなら、こうするにゃ!」
そうしてバロンはキャバリア外装部のスピーカーに繋がるスイッチを押した。音量最大、声の限りにマイクに叫ぶ。
「ハンス・コッホ! ラルフ・ツェンガー! レナルト・ヴァインシュタイン! この三人の名前に覚えのあるパイロットさんは、ちょっと待ってほしいのにゃ!」
三人の、クロムブルーのパイロットの名前をフルネームで叫ぶ。と、三機、ドッグの中で足を止める機体があった。
「ハンス
……!?」
「父さんの名前……なんで
……!?」
困惑する声がスピーカーから漏れている。見つけた。
その足を止めた機体に向かって、バロンは黄金のレイピアを抜き放ちながら急速接近。距離を詰めながらなおもマイクに声を張った。
「三人からメッセージを預かっているのにゃ! 皆さん、無事に救助されてフェルゼ市に匿われているのにゃ!」
無事でいること、命を救われてフェルゼ市にいることを伝えれば、相手の動きはますます鈍る。もう一押しだ。風の魔力でシールドを張りながら、ダメ押しとばかりに、バロンは受け取ったメッセージを叩きつけた。
「ハンスさんは『私は無事だ、お前もどうか無事でいてくれ』って言ってたにゃ! ラルフさんも『妻よ、愛している。もう一度地上で会おう』って! レナルトさんも『私の息子よ、死に急ぐな』って、そう言ってたにゃ!」
その言葉に、いよいよドッグの搭乗者三人、ハンスの、ラルフの、レナルトの縁者は茫然として動きを止めた。レイピアでキャバリアの駆動部に攻撃を受けているのにも関わらずに、だ。
「ああ……」
「そんな……あなた……」
感動と驚愕の入り混じった声が戦場に響く。そうして三機が完全に動きを止めた時。
「今だにゃ!」
バロンのレイピアがキャバリアの動力部を正確に刺し貫いた。一機を刺しては離れてもう一機。そしてそのまま、三機のドッグが行動不能に追い込まれる。
「あ……!」
「こ、コックピット、緊急開放……!」
致命的なダメージを受けたキャバリアが、搭乗者を排出するべくコックピットを解放する。その瞬間、狂気からも解放される搭乗者たち。
ぽかんとした三人に向かって、バロンは優しく声をかけた。
「皆さん、無事ですにゃ? 今すぐフェルゼ市に案内しますにゃ!」
そう言いながら、レルヒェがそっと手を差し伸べる。三人のパイロットたちは、戸惑いながらもその手を取り、フェルゼ市に向かうべく歩き出した。
成功
🔵🔵🔴
ブリッツ・エレクトロダンス
(納品されたストレイトマンの初期設定・動作確認を終わらせる。)
よし、思考通りに動いてくれてるな。
忘れ物は―――(ジシ7のストレージをチェック。"預かり物"はある)ねえな。
よし!ブリッツ・エレクトロダンス&ストレイトマン、突っ込むぜ!
(高速移動中の敵機に接近!敵弾を脚部ブースターで回避しつつエネルギー屑は疾風で出来るだけ散らす!)
そこのリミッター解除して派手に暴れてるアンタ!名前を聞かせてくれよ!
(敵機パイロット名に関連した"預かり物"、敵機パイロットの関係者からの伝言ボイスデータを再生)
アンタにお届け物だぜ!ちょっと聞いていきな!
で、安否も分かった事だしよ…動力炉のリミッターを元に戻さねえか?
●配達
はたまた、フェルゼ市の倉庫前にて。納品された直後の傷一つないクロムキャバリアが一機、出撃直前の最終チェックを行っていた。
「……システム、オールグリーン。よし、思考通りに動いてくれてるな。忘れ物は……」
搭乗者は、ブリッツ。グラスコックピットに表示される各種計器類の表示を確認して、いずれも問題ないことをチェックする。
そして、愛用する電脳ゴーグルのストレージもチェック。『預かり物』も、確かにある。二つ分、問題ない。
「ねえな。よし」
最終確認オッケー。キャバリアの脚部がエネルギーを放出し、空中へと飛び上がる。
「ブリッツ・エレクトロダンス&ストレイトマン、突っ込むぜ!」
刹那、光のようにその最新鋭機が飛び出した。ドッグの高速移動にも負けず劣らずのスピードで接近していく。
「破壊せよ……」
「虐殺せよ……」
うわごとのように呟きながら銃器を乱射するドッグ。その弾丸を弾き、避けながらブリッツは敵陣に切り込んでいった。
「脚部ブースター起動! で、疾風行使、緊急回避!」
銃弾は避け、エネルギーの残滓は突風を発生させて散らしていき。そうして戦場がいくらかクリアになったところで、ブリッツはスピーカーのスイッチを入れた。
「ヘイ! そこのリミッター解除して派手に暴れてるアンタ! 名前を聞かせてくれよ!」
いっそ気軽にも聞こえる呼びかけ。しかしその声を聞いて、何機かのドッグが進行速度を鈍らせた。
「名前……? 我が名はヨアン……」
「同じく、イェンス……」
何名かが律儀に名乗ってくる。そうでもしないとこれだけの量産機だ、区別がつかないのだろう。
その名前のいくつかを聞き留めて、ブリッツは二機のキャバリアへと狙いを定めた。
「ヨアン……イェンス……ヨアン・ファルケンベルクとイェンス・レドルだな!? オーケー、アンタらにお届け物だぜ! ちょっと聞いていきな!」
外部スピーカーとジシ7の出力端子を無線接続、音声再生。そうして戦場一帯に、力強い声が響き渡った。
『ヨアン兄さん……俺は無事だ、兄さんも無事に帰って来てくれ……』
『父さん、貴方の娘のグレタよ……私たち皆、生きているわ。フェルゼ市で待っているから……!』
明確に、その二名へと呼びかける声。先程フェルゼ市で、クロムブルーのパイロットから聞き取った声を録音したものだ。
そのメッセージは、確実にその二人へと届いたらしい。
「な……アドルフ
……!?」
「グレタ……お前……」
信じられないと言いたげな声が漏れ聞こえてくる。それを受けてほっと安堵したブリッツが一層ドッグに接近して言う。
「間違いじゃなかったみてーだな、よしよし……で、安否も分かったことだしよ。動力炉のリミッター、元に戻さねえか? そのままじゃその機体、派手にぶっ壊れて諸共お陀仏だろ?」
両の拳を下ろしながら話すブリッツ。なるべくならこれで押し留まって、自発的にキャバリアを降りてくれればよかったのだが。
「う……」
「私は、うぅっ……」
敵機のパイロット、ヨアンとイェンスは苦悶の声を漏らすばかり。やはり、オブリビオンマシンの狂気はそう簡単に払えないらしい。
「……チ、やっぱ力づくで止めねーとダメか。ちっと我慢しろよっ!」
舌を打ったブリッツが操縦桿を握れば、ストレイトマンがこぶしを握る。刹那、ドッグの頭部を撃ち抜くように、鋭い拳が放たれた。
成功
🔵🔵🔴
キョウ・キリノ
そうか、先の機体を操縦していた者達…そして今また迫り来る彼らは……なるほど、リーンハルトの言っていた通りか。
悪辣な事をやるオブリビオンマシン、許せぬ…!
此度は斬月に搭乗して出撃、敵中へと『切り込み』拡声器を用いて先の人々の無事を伝えよう。
お前達の大切な人々は、妻は、子は、父は無事だ!
悪しき束縛から解かれよ!
声を発した瞬間に【妖剣解放】し斬月のコクピットから飛び出して『瞬間思考力』で敵機体の駆動部や弱点を『見切り』目にも止まらぬ素早い斬撃と衝撃波でそれらを『切断』『薙ぎ払い』無力化を図る。
俺の剣は悪しき機、オブリビオンマシンを許しはしない。
☆アドリブ、絡み、歓迎
●千々
フェルゼ市郊外の荒野を、黒い騎士甲冑のごときキャバリアが駆ける。
最新鋭キャバリア「斬月」に乗り込んだキョウは、徐々に接近しつつある臙脂色の機体を見つめながら、苦々しく呟いた。
「そうか、先の機体を操縦していた者達……そして今また迫り来る彼らは……なるほど、グリモア猟兵の言っていた通りか」
黒猫のグリモア猟兵は言っていた。先の人型重機のパイロットと、あの臙脂色の機体のパイロットは、互いに縁のある者同士だと。
どちらかが死ねば、残されたもう片方は悲しみ、打ちひしがれ、より狂気に飲まれてしまう。逆にここで臙脂色の機体のパイロットを殺しても、助けられた方のパイロットは悲しむだろう。
「悪辣な事をやるオブリビオンマシン、許せぬ……!」
悪辣だ。こんなことは決して許されるものではない。
故に、キョウは愛機斬月を躊躇なくドッグの目の前へと飛び込ませた。視界に何機ものキャバリアを映して、彼はガイブスピーカーに繋がるマイクへと声を張る。
「ドッグのパイロットたちよ、お前達の大切な人々は、妻は、子は、父は無事だ! 悪しき束縛から解かれよ!」
その言葉に、ドッグの動きが一瞬止まった。
無事だ。その言葉は確かに、彼らの心を救う一言であって。
「あ……?」
「無事、だと……?」
何人かのパイロットが、信じられないと言いたげな声を漏らした。それを受けてキョウは、腕を大きく振って後方のフェルゼ市の塀を指し示す。
「そうとも、あれに見えるフェルゼ市の市内で匿われている! 無意味な破壊はやめ、本来の意思を取り戻すのだ! とうっ!」
そうして敵機の意識がそちらに向いた瞬間、キョウは斬月のコックピットを開放した。強制開放ではない、自らの意思でである。
「なにっ!?」
「飛び出し――ッ」
まさかこの状況で、搭乗者がキャバリアから飛び出してくるとは思わなかったのだろう。明らかに反応が遅れるドッグのパイロットたち。
そこに。
「チェストォォッ!!」
妖剣解放を発動したキョウが、空中を蹴りながら高速で刀を振り回した。刀の切っ先から放たれた衝撃波が、的確に駆動部、動力部を見抜き、鋭い剣閃を以て切断していく。
「わ……!」
「ぐわ……!」
見る間にバラバラにされたドッグが二機、崩壊して地面へと崩れていく。それでもコックピットは無事に護られており、強制開放されたコックピットからパイロットの男性たちが顔を出した。
「俺の剣は悪しき機、オブリビオンマシンを許しはしない……!」
剣を収め、開放したままの斬月のコックピットに降り立ったキョウが、静かに告げる。敵軍の侵攻は、徐々に終わりを見せ始めていた。
成功
🔵🔵🔴
エイス・シノノメ
このドッグとやらは真っ当な戦闘用キャバリアですか
しかしパイロット個々の技量も無く相互の連携も満足に取れぬ様な者達でどうにかできるほど戦さ場は甘いモノではありませんが…此度のオブリビオンマシン、徹底して人間の盾を利用してくる積りの様ですね
真っ当な戦争に介入するのではなく搦手を用いる様になったと言うことでしょうか…?
オブリビオンマシンにも何かしらの考えがある様ですね
AIにそのまま前線維持を指示しつつクロムブルーに乗っていた皆さんに呼びかけをお願いします、ここにいると
彼らは皆さんの無事を欲している
このまま戦闘を続ければ避難した庁舎を崩してしまいかねません
戦闘行為は望むものと逆の結果を生んでしまうと
●救出
再び小高い丘にて戦場を見下ろしたエイスは、残り二機となったドッグの姿を見ながら僅かに目を細めた。
「このドッグとやらは真っ当な戦闘用キャバリアですか。しかしパイロット個々の技量も無く、相互の連携も満足に取れぬ様な者達でどうにかできるほど、戦さ場は甘いモノではありませんが……」
如何にキャバリアが有能であっても、ただバラバラに攻め込んで、連携もなしに戦果を挙げられるほど、戦場は甘いものではない。年若いながらも戦場というものをよく理解しているエイスは臍を噛んだ。
敵は、このような愚行を分かっていてやっているのだ。
「此度のオブリビオンマシン、徹底して人間の盾を利用してくる積りの様ですね、なんて卑劣な!」
正規のキャバリア乗りでなくても、素人であっても。構わずに乗せて、人間の盾として使う。その過程でいくらか人間を殺せれば十分。きっと、そう考えているのだろう。
何としても許すわけにはいかない。搭乗者というよりは、そういうことを強要しているオブリビオンマシンを。
「EP-IFCAAS! 継続して前線維持をお願いします!」
故にエイスは自身のクロムキャバリアに搭載したAIへと呼びかけた。彼女の白い機体が速度を上げ、ドッグと交戦に入る。
自身のキャバリアのスピーカーと繋がるマイクとは別に、彼女はトランシーバーを手にして声を張った。
「こちらエイス・シノノメです。トマスさん、聞こえますか!」
『その声は前線の!? あ、ああ、聞こえている』
声を返してきたのはクロムブルーに搭乗していたパイロットの一人、トマス・ガンスキーだ。今はフェルゼ市の倉庫の中で他のパイロットと一緒に保護されている。
他のパイロットがドッグに搭乗していた家族や友人、恋人と再会する中で、彼だけはまだ会えていなかった。今戦場でエイスのキャバリアと交戦しているドッグには、彼の家族が乗っているはずだ。
「あと残っている機体は、おそらくトマスさんのご家族の搭乗した機体だけです! 声は拡散しますので、呼びかけをお願いします!」
『わ、分かった!』
エイスの声に、トマスが声を返してくる。そしてキャバリアと繋がるマイクにトランシーバーを近づけると、そこから伝わった声がエイスのキャバリアを通して戦場に響く。
『マルタ! ディーター! 父さんは無事だ、もう戦わなくていいんだ!』
「な……」
「あなた……? どこ、どこから声が……」
トマスの声に、ドッグの動きが明らかに鈍った。
狙い通りだ。畳みかけるように、エイスは自分の声でキャバリアから声を届けていく。
「トマスさんはフェルゼ市の中にあるキャバリア格納庫に避難しています。クロムブルーに搭乗していた皆さん、全員が無事です」
「ああ……」
「父さん……そうなのか……」
感極まったような声がドッグから聞こえてきた。自身のキャバリアのAIにコックピットを攻撃しないよう指示しつつ、彼女は声を張り上げる。
「このまま戦闘を続ければ避難した倉庫も、市民が避難する市庁舎をも崩してしまいかねません。彼らは皆さんの無事を欲している……戦闘行為は望むものと逆の結果を生み出してしまいます!」
その言葉を聞いて、明らかにドッグは動きを止めた。ダメ押しとばかりに、もう一度トランシーバーの受話部をマイクに近づける。
『みんなで一緒に国に帰ろう、だから……もうやめてくれ!』
「そうです、今助けますから、少し我慢してください!」
エイスがそう言うと同時に、プラズマライフルから放たれたレーザーがドッグの頭部を貫いた。二機のドッグが後方に倒れ、コックピットが強制開放される。
「あ……れ?」
「私は、一体……」
搭乗していた二名――マルタ・ガンスキーとディーター・ガンスキーが、狂気から解放されてぽかんとした表情で虚空を見上げる。二人の視界には、太陽が沈んで藍色に染まりゆく空が見えていることだろう。
「私のキャバリアでお二人をフェルゼ市まで運びます。そのまま待機していてください」
もう一度、二人に声を届けたエイスが僅かに表情を緩めたところで。トランシーバーからトマスの声がする。
『あの……一つ、いいか?』
「はい、どうしました?」
トマスに声をかけると、彼は少し悩むような呻き声を発した。そして、問うことには。
『アルトゥル様は……助けられるのか?』
その問いかけに、表情を硬くするエイスだ。
指揮官機「ブレイジング・バジリスク」に搭乗するアルトゥル・ガスト。今回の作戦を指揮した人物。
助けられるかどうか、すぐに答えを出せるものではない。しかし、彼もオブリビオンマシンに操られているだけの、善良な人間であるはずだから。
「……助けてみせますとも」
そう言って、エイスはトランシーバーの通信を切るのだった。
成功
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第3章 ボス戦
『ブレイジング・バジリスク』
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POW : ブレイジング・シュート
【ライフルの集中射撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : バジリスク・ランページ
【右腕のライフル】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : エンジンキラー
自身の【オブリビオンマシン】から【漆黒のオーラ】を放出し、戦場内全ての【エンジン】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
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●狂気
ドッグの搭乗者も救出され、フェルゼ市の中で各々が再会を喜んでいる中。
また一機、エアトベーレ都市軍の領域からキャバリアが進軍してきた。
深紅に彩られた、刺々しい外見のキャバリア。量産機ではない。恐らくはクロムキャバリアだろう。
その機体から、狂気に満ちた男性の声が聞こえてくる。
「くははは……! 全てのクロムブルーを、全てのドッグを破壊したくらいで、いい気になるなよ、アーホルンの虫ども」
侮蔑的な表現を撒き散らしながら、ブレイジング・バジリスクは足を進める。その機体の端々から、漆黒の靄のようなオーラが立ち上った。
「あんな連中がいくら集まったところで、俺一人に殺せる人数には決して届かないんだ。俺一人で、貴様らを全滅させるには十分なんだ」
その声は、心ここにあらずと言ったような具合で。本来の彼の思想とは大きくかけ離れているような、狂気に彩られた声だ。
じゃきり、と右腕のライフルが唸りを上げる。その銃口から火花が散る。
「『紅き機動長』として恐れられるこの俺の力を見せてやろう! 貴様ら全員、悉く死ね!!」
夜の帳が落ちる中、フェルゼ市の郊外での決戦が幕を開けた。
●特記事項
・時刻は夜になります。街灯りがあるほか、敵キャバリアがサーチライトを照らしているため敵の位置は分かりやすいです。
・敵キャバリアの搭乗者、アルトゥル・ガストは、エアトベーレ都市軍の有力者で、市民からも慕われている人物です。オブリビオンマシンのみを破壊し、コックピットを破壊しなければ、救出することが出来ます。
アイオライト・セプテンバー
※アドリブ歓迎
敵機はブレイジング・バジリスクか……
この型との戦闘は初めてではないとはいえ、だからこそ一筋縄でいかないことは知っている
パイロットを助けようと思うなら、尚、手は抜けない
全力で行きましょう
自機キャバリア【ブルーテイル】のリミッターを全解除、【真の姿】を解放
全力の【推力移動】を【操縦】技能で制御、夜闇を利用した高速戦闘
敵機バジリスク・ランページを【見切り】回避しながら、プラズマブレードでコックピットを避けての格闘戦を挑むわ
エンジンキラーを使う暇は与えない
体にかかる負担は無視できない
でも誰かの命を救おうと思うのならば、私だって命を燃やさなきゃ釣り合わないわね
付き合いなさい、ブルーテイル!
ブリッツ・エレクトロダンス
さて、いよいよ親玉がおいでなすったな。
ウォーミングアップも十分、ここからは本気出していくか!
操縦システムをリガー・システムに切り替え!
(電脳ゴーグルを介してストレイトマンと"直結"、思考操縦に切り替える)
よーしよしよし、あそこでサーチライト垂れ流してる奴が"赤トカゲ"だな。
そんじゃ、仕留めにかかると―――武器腕ライフルが肥大化!?とりあえず手近な遮蔽物に身を隠すぜ…ッ!
まだ俺好みの塗装もしてない新品に傷をつけたかねえ…!
…よし、リロードしてんな?遮蔽を飛び越えて、上空から殴りかかるぜッ!
ジャブ!ストレート!ジャブ!ストレート!
いいぜリガー・システム、ちゃんとタイムラグなくついてきやがる!
バロン・ゴウト
ブレイジング・バジリスクの搭乗者も他のキャバリアの搭乗者と同じ様に洗脳されてるみたいなのにゃ……。
だったら一刻も早く搭乗者さんを救出するのにゃ!レルヒェ、もう少し一緒に頑張ろうなのにゃ!
【POW】
レイピアの収納部に【オーラ防御】を張り、収納部を狙うよう【おびき寄せ】る動きをするのにゃ。
レルヒェなら耐えてくれるって信じるのにゃ!
あえて敵の攻撃に当たり、油断した隙をついて壊れた収納部をパージして、一気に敵に近づいて【金色の一閃】で敵のライフルを真っ二つにするのにゃ!
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
●対峙
月が空に昇り始めたフェルゼ市郊外の荒野。
ブレイジング・バジリスクがゆっくり足音を響かせ、地面を揺らす中、ブルーテイル、ストレイトマン、レルヒェの三機は並び立ちながら彼の紅い機体を迎え撃った。
「さて、いよいよ親玉がおいでなすったな」
「敵機はブレイジング・バジリスクか……この型との戦闘は初めてではないとはいえ、一筋縄でいかないことは重々承知しているわ」
「あの搭乗者も、他のキャバリアの搭乗者と同じ様に洗脳されてるみたいなのにゃ……」
互いに通信チャネルを開き、会話しながら前方を見据える。敵機の放つサーチライトの光が機体の表面に反射して、ブレイジング・バジリスクの姿を夜闇の中に映し出していた。
「く、くはは、有象無象のキャバリアが何機集まったところで、こ、このブレイジング・バジリスクを止められるものか!」
その機体のスピーカーから聞こえる声には、明らかに異常が見て取れる。どう考えても正気の人間の発する声ではない。
ブリッツがストレイトマンのコックピットの中で、深くため息を吐いた。
「あーあー、すっかり操られて、本来の思想を歪められてやがる」
「一刻も早く搭乗者さんを救出するのにゃ!」
バロンもレルヒェの操縦桿を握りながら、気持ちを新たにする。構えを取る二機を見やりながら、アイオライトが静かに声を届けた。
「パイロットを助けようと思うなら、尚、手は抜けない……全力で行きましょう、レルヒェ、ストレイトマン」
「おうよ。ウォーミングアップも十分、ここからは本気出していくか!」
雄々しく答えたブリッツに呼応するように、ストレイトマンが拳を打ち鳴らす。その姿を見てか、ブレイジング・バジリスクのコックピットでアルトゥル・ガストが高らかに笑った。
「ははは、退かずに立ち向かってくるか……いいだろう、粉々に粉砕してやる!」
距離を保ったまま、紅い機体が右腕のRSライフルを此方に向けてくる。それと同時に、メーカーの異なる三機のキャバリアが一斉に大地を蹴った。
●急襲
三機の中で、まず先んじて飛び出したのはブルーテイルだ。高速戦特化の機体らしい速度を最大限に発揮しながら、とてつもないスピードで宙を駆ける。
「リミッター全解除! 少しばかり、付き合ってもらうわよ」
そのスピードは、レルヒェとストレイトマンをあっという間に置き去りにするほどだ。バロンとブリッツが揃って感嘆の声を上げる。
「速いのにゃ!」
「置いてけぼりを喰らうなよ、レルヒェ! ストレイトマン、操縦システムをリガー・システムに切り替え――」
後れを取るまい、とブルーテイル同様に近接戦闘を得意とする二機が推進力を上げる。が、その矢先に。
「って、おいちょっと待てなんだあれ!?」
「右腕のライフルが肥大化したにゃ!」
「撃ってくるわ、二機とも隠れて!」
ブレイジング・バジリスクの右腕のライフルが、機体と同等かはたまたそれ以上かのサイズにまで肥大化した。それはまるでグレネードランチャーのようだ。
そこから放たれる、超長距離射程を持つ実弾射撃。それが次から次から、矢継ぎ早に放たれては三機に襲いかかる。
「ひゃははは! ライフルの有効射程距離なんて関係ない、この超長距離射撃から逃れられるなら逃れてみろ、アーホルンの虫どもが!」
けたたましく笑うアルトゥルの声が、射撃音に混ざって聞こえてくる。岩陰に隠れたレルヒェとストレイトマンは、自分たちの横を通り過ぎてなお速度を落とさない弾丸に、背筋の冷える思いがした。
「この距離までとどくのにゃ!?」
「なんだよあの連射性、バケモノかよ! まだ俺好みの塗装もしてない新品に傷をつけたかねえ……!」
ブリッツがなんとも現金なことを言いながら、ざりと足元の土を踏む。だが事実、表面の塗装もちゃんとしていない、地金が顕わになったままで無理を言って輸送してもらったのだ。どうせなら傷をつけず、ちゃんと塗装屋が仕事できる状態で帰りたいのだ。
レルヒェが横殴りの弾丸の雨を避けながら前方を見れば、大きく先行していたブルーテイルが弾丸の間を縫うように細やかな操縦を披露していた。
「く……急速回避!」
機体を急速旋回させながら、弾丸を紙一重で躱してさらにブレイジング・バジリスクに接近するブルーテイルだ。それを見て、バロンは居ても立っても居られなくなったらしい。岩陰から果敢に飛び出した。
「ブルーテイル、ギリギリで躱しているのにゃ! ボクも負けてはいられないのにゃ、レルヒェ、出るにゃ!」
「気をつけろよ、やっこさん何度も撃ち続けてくるっぽいからな……!」
ストレイトマンが岩陰から顔を覗かせて、飛び出していくレルヒェを見送る。自分も出来れば前に出たいが、この弾丸の嵐の中では出るに出れない。
そんな嵐の中を、レルヒェはその機体に傷がつくのも構わないで突っ切っていった。弾丸をギリギリで躱し、まっすぐ一直線に突っ込ませるバロンの耳に、ブルーテイルからの通信が聞こえてくる。
「レルヒェ、軽率に前に出ないで! あいつの射撃は射程距離の長さと連射性を併せ持っている、安易な接近は敵のいい的よ!」
「心配ありがとうにゃ、でも、大丈夫にゃ!」
アイオライトの強い口調に、しかしバロンは明るく返した。
全速力で突っ込んだおかげで、ブルーテイルには追いついた。二機は既にブレイジング・バジリスクの姿を捉え、突っ込めば攻撃できる距離まで接近している。
そんな二機を、自由に動くことを許すほど敵機が甘いはずはない。
「くははは! 無策に突っ込んでくるなんて、だからアーホルンの連中は虫だというんだ! 叩き潰してやる、喰らえっ!」
ブレイジング・バジリスクの肥大化したライフルの銃口がレルヒェとブルーテイルに向いた。ブルーテイルが急速に上空へと逃げ、レルヒェもそれに続こうかというところで、ライフルから放たれた無数の弾丸が襲い掛かる。
否、レルヒェは続かなかった。むしろ最小限の動きで機体の位置を調整し、殆どその場にとどまるようにしながら弾丸の嵐に身を晒す。
「ん……!」
「レルヒェ!」
「おい、何してる!」
機体の表面に少なくない傷を作るレルヒェに、ブルーテイルから、ストレイトマンから、声が飛ぶ。
しかしその瞬間、バキリ、とレルヒェの腰部分、レイピアを収納するための鞘代わりの装甲にひびが入ったと同時に。
「っ……狙い通りだにゃ! 武装装甲パージ!」
「なにっ!?」
レルヒェが腰部分の装甲をパージ、それまで以上に速度を上げてブレイジング・バジリスクのライフルに突撃した。明らかな速度上昇、アルトゥルの反応速度も上回る。
「おぉぉぉーーーっ!!」
裂帛の気合とと共に突き出された黄金のレイピアが、肥大化したライフルに深々と突き刺さった。
これこそがバロンの狙いだったのだ。敢えて自らが攻撃を受け、敵が仕留めたと思った瞬間にカウンター気味にライフルを狙いに行く。そうして攻撃を止めることが出来れば最上だ。
狙い通り、レイピアがライフルの駆動部に突き刺さって、その射撃能力を抑え込む。アルトゥルの苦悶の声がブレイジング・バジリスクから聞こえた。
「ぐ……!」
「そういうこと……よくやったわ、そのまま!」
攻撃は止んだ。その隙をついてブルーテイルがプラズマブレードを構えて突っ込む。
ここからは格闘戦だ。ブレイジング・バジリスクがライフルを剣代わりにしてブルーテイルの高速の剣戟に応戦する中、内心で胸を撫で下ろしたストレイトマンも立ち上がる。
「ひやひやさせやがる……っし、今だ! 行くぞストレイトマン!」
岩陰から飛び出してブースター最大出力。ストレイトマンが一気にブレイジング・バジリスクの側面から突撃した。ブルーテイルと、ちょっかいをかけてくるレルヒェに集中していたアルトゥルは、完全に虚を突かれた格好だ。
「何――っ」
「おぉぉぉら、喰らえーーっ!」
ブレイジング・バジリスクの顔面を、横から一気に殴りつける。そこから連続してジャブ、ストレートの繰り返し、目まぐるしい乱打。
防御もままならない高速の殴打に、振り回されるアルトゥルだ。
「ぐ、あ……!」
「はっは、いいぜリガー・システム、ちゃんとタイムラグなくついてきやがる!」
「ストレイトマンもなかなかやるわね、そのまま押し切るわよ!」
歓喜の声を上げるブリッツ。その挙動の淀みなさに感心しながら、アイオライトもブルーテイルによる攻撃をさらに加速させていく。
斬って、殴って、突いて。三機のキャバリアによる連携攻撃に、ブレイジング・バジリスクは完全に振り回されている。
「体にかかる負担は無視できない……でも誰かの命を救おうと思うのならば、私だって命を燃やさなきゃ釣り合わないわね。付き合いなさい、ブルーテイル!」
「レルヒェ、もう少し一緒に頑張ろうなのにゃ!」
アイオライトとバロンの声が、コックピットの中で響く。それと同時に、二本の剣が的確に、ブレイジング・バジリスクの装甲を削り取り、穿っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
獅子身中の虫、って言葉知ってるかい? いるだけで組織の害になる存在、ってやつよ。……おめーのことだよ、オブリビオンマシン。スーパーロボットやサイキックみたいに意志があるかは知らねーけどさ。
しかし腐っても特注機でしょ、こっちもとっておきを繰り出させていただきますか。機械仕掛けのワニとボディ・サスペンションで【断罪変形】!
キャバリアにしては小さい? そうだね、でもだからって舐めたらおしまいよ。
フックでまずは相手の片足を捕縛して引っ張り、引き寄せながら転ばせる。そして弾が打ち止めになったところで右腕の牙でライフルを再起不能なまでに噛み砕いてしまおう!
全身真っ赤で「紅き機動長」にならなくてよかったねぇ
キョウ・キリノ
元凶、か。
いかなる物事にも根があり、始まりがあり、元がある。
その物事が凶事であるならばソレを断ち切らねばならない…そしてその役目は、俺が引き受けた!
此度は決戦、俺は専用キャバリア斬月を駆って出陣。
いざ、勝負!
巨大な対艦刀を担いでフルブースト、敵機の攻撃を【殺気】を読む事で【見切り】【受け流し】ながら【切り込む】
そこは、俺の間合いだぁぁぁ!
間合いに捉えたら【瞬間思考力】にて敵機駆動部を【切断】する太刀筋を即座に見極め、渾身の【蜻蛉】一閃【薙ぎ払い】で四肢や駆動部を斬り捨てて敵機を戦闘不能に追い込む。
オブリビオンマシン…死すべし!
アドリブなど大歓迎
エイス・シノノメ
クロムキャバリアに真っ当な軍人、これは油断出来ませんね
しかしエアトベーレの皆さんから聞いた話では市井の臣にも慕われていると言う程の人物だとの事でしたが……オブリビオンマシンによる精神影響がかなり出ているようですね
狂人と言っても差し支えない程の状態です
人々の呼び掛けで正気を取り戻すとは思えませんし、であれば早くマシンから下ろすしかありません!
機体を引き戻しAIにコックピット解放を指示、飛び乗り操縦モードをマニュアルへ
すぐさまブースタを全開にして高速戦闘を仕掛けます
なるべく敵機より上を取るように動き射線を上へ誘導、流れ弾が市庁舎などへ行かないよう配慮
そして両手足潰してやる気概で全弾叩き込みます!
●狂乱
装甲を削られ、傷を深くつけられたブレイジング・バジリスクが、ゆっくりと立ち上がる。
「へひ、ひひ、ひ……む、虫どもォ
……!!」
コックピットから聞こえてくる声と笑い声は、もはや狂気の域だ。悪辣な殺人鬼が搭乗している、と、事情を知らぬ人なら言うだろう。
しかしそこにいるのは高潔な軍人であり、施政者であるはずなのだ。キョウが、エイスがキャバリアに乗り込みながら苦々しい表情をする。唯一キャバリアを持たないカーバンクルも、眉間に深いしわを寄せていた。
「元凶、か」
「あーあー、すっかり狂わされちゃって」
「狂人と言っても差し支えないほどの状態です……オブリビオンマシンによる精神影響がかなり出ているようですね」
エイスの言葉が的確に状況を表していた。指揮官機であるが故にか、それとも機体のもたらす狂気が強大なのか、アルトゥル・ガストは明確に狂っていた。
キョウが自身の「斬月」の背に負った無敵斬艦刀を握り、僅かに抜きながら強い口調で話す。
「いかなる物事にも根があり、始まりがあり、元がある。その物事が凶事であるならばソレを断ち切らねばならない……!」
「全くよね。オブリビオンマシンのせいであることは間違いないわ」
カーバンクルもボディ・サスペンションを握り、機械仕掛けのワニも傍に置きながら言い放った。
オブリビオンマシンのせいであることは疑いようも無いのだ。であれば、倒し、破壊し、強制的にコックピットから出して救い出すしかない。
「しかしクロムキャバリアに、真っ当な軍人です、これは油断出来ませんね」
しかしエイスが、小さく唸りながら口を開く。そう、相手は有象無象の量産機ではない、最新鋭機たるクロムキャバリアなのだ。さらに搭乗者が正規の軍人。既にいくらか破損しているとはいえ、これだけの相手を相手取るのは容易ではない。
ブレイジング・バジリスクの右腕のライフルが、強い光を放つ。
「殺す……殺す、殺す!」
光が銃口に集まり始め、撒き散らされる殺意と一緒に膨れ上がった。明らかにこちらに向かって撃とうとしている。エイスが自機の拳を握った。
「来ます。お二人とも、準備はいいですか?」
「無論だ」
「あ、ちょっと待って」
キョウが答えるが、カーバンクルが待ったをかける。彼女はすぐに、ボディ・サスペンションを握った右手を突き上げた。
「腐っても特注機、こっちもとっておきを繰り出させていただきますか。断罪変形!」
叫びと共に、カーバンクルの身体を光が包む。光が収まった後、そこにはワニとボディ・サスペンションと合体した、身長3メートルほどのロボが立っていた。
「これでよし、と」
「キャバリアよりは、幾分小柄だが……問題なさそうだな」
此方に向かって放たれる銃弾を、変身直後から華麗に躱すカーバンクルを見て、キョウが笑みを向けながら声をかける。
「当然。これが私の全力だからね」
それに対してカーバンクルは、ロボの操縦席に座ってにんまりと笑って見せた。
●崩壊
銃弾が飛ぶ。嵐のように、暴風のように。
宙を高速で舞うエイスへと、地上を駆けるキョウとカーバンクルへと、ブレイジング・バジリスクの右腕のライフルが放つ銃弾が無数の矢のように飛び舞った。
「ひははは、次から次へと湧いて出てきやがって、この虫どもがぁ!!」
ライフルを振り回すようにしながらも、的確にこちらの機体を狙って当てに来るアルトゥル。その射撃の技量たるや、並大抵ではない。
類まれなる高速戦闘への適性。「紅き機動長」の異名は、伊達ではないということなのだろう。
そんな彼へと、全速力で駆けまわりながらカーバンクルが呼びかける。
「獅子身中の虫、って言葉知ってるかい?」
「あぁ?」
UDCアースなどでよく言われる諺を、なぞかけのように投げかけるカーバンクル。果たして、アルトゥルが狂気に彩られた声色で返してきた。
「組織内部にいる邪魔者、害悪をなすもの……そういう意味合いのことを言うんだったなぁ?」
その返答にカーバンクルは目を見張った。いかに狂気に囚われていると言えど、思考能力や一般常識を弔っているわけではないらしい。
「まあそうね、いるだけで組織の害になる存在、ってやつ……おめーのことだよ、オブリビオンマシン。スーパーロボットやサイキックみたいに意志があるかは知らねーけどさ」
しかし彼女の声色が、不意に暗くドスの利いたものになって。同時に飛んでいくボディ・サスペンションのフック。
ブレイジング・バジリスクがそれを躱すべく後方に飛びのくところへと、エイスのキャバリアと斬月が飛び込んでは攻撃を重ねていく。
「あなたの存在は害悪です。アーホルン宗主国にとっても、エアトベーレ都市軍にとっても。ですので、ここで完膚なきまでに破壊します」
「そうだ、搭乗者たる貴様ではない、貴様を狂わすその紅き機体が悪なのだ」
空中を駆けながら銃器を乱射するエイスの援護を受けて、斬月が一気にブースターに点火、加速してブレイジング・バジリスクへと斬り込んでいった。
「悪の根は刈り取る、一つ残らず――!」
「ひははは、羽虫が吠えやがって!!」
急速接近してくる斬月を、ブレイジング・バジリスクのライフルから放たれる銃弾が迎え撃つ。放たれる無数の弾丸が、斬月の機体に穴を穿とうか、というその瞬間。
ブレイジング・バジリスクの機体を衝撃が襲った。
「おっと、させないよ!」
「此方がお留守ですよ!」
「な――!?」
見れば、右腕にロープがしっかりと巻き付いている。更には背中に被弾の後。カーバンクルとエイスが攻撃を加え、命中したのだ。
「小バエ共が、小癪な真似を!!」
「小バエとはご挨拶だね、たしかにキャバリアよりは二回りくらい小さいけれど、パワーじゃ負けないんだから!」
右腕を振ってロープを振り払おうとするアルトゥル。しかしフック付きでがっちり巻き付いたロープはほどけない。
振るだけではらちが明かない、と、ブレイジング・バジリスクが射撃を止めて左手でロープを外そうとした、その瞬間。そこを狙ってカーバンクルが腕に一気に力を籠める。
「うぉおらあぁぁぁ!!」
「う、お……!」
その力で、ブレイジング・バジリスクの機体がぐらりと傾いだ。片方の足が僅かに浮き上がる。
その瞬間を、キョウもエイスも見逃さない。
「好機!」
「今です、全弾発射!」
エイスが一気にミサイルポッドからミサイルを放った。地面の土が舞い上がり、さらにブレイジング・バジリスクのバランスを崩していく。
そこに突っ込んでくる斬月が無敵斬艦刀を一閃。浮き上がった左足が根元から斬り飛ばされる。
「が――!!」
「クロコダイル・ファング、最大出力! 喰らえー!」
機体損傷を知らせるアラート音。それにアルトゥルが一瞬動きを止めた。そこを狙ってカーバンクルが右腕を突き出す。がっちり右腕のライフルを咥えこむと、一気に歯を閉じた。バキリ、と音を立ててライフルが真っ二つに折れる。
「なっ……がっ!」
「そこは俺の間合いだ――チェェェストォォォォ!!」
そこで出来上がった隙に、再びキョウが斬り込んだ。斬月の振るった無敵斬艦刀、それによる蜻蛉が、ブレイジング・バジリスクの脚を、腕を一気に切り離す。
もはや胴体だけとなったブレイジング・バジリスクへと、エイスが最後のトドメとばかりにプラズマライフルの銃口を向けた。
「これで終わりです……はぁぁぁぁっ!!」
放たれる極太のプラズマレーザー。それがブレイジング・バジリスクの、頭部から胸にかけてを飲み込んだ。
同時に発生する爆発。巨大な雲が夜空に立ち上る。
「あ……」
後に残され、破損して強制開放していたコックピットから、アルトゥルの声が僅かに漏れた。
●再会
戦闘終了の報を受けて、エアトベーレ都市軍からやってきた兵士たちが、一般人たちが、夜闇の中荒野へとやってきていた。
既に避難命令は解除されている。フェルゼ市はいつも通りの日々を取り戻していた。
猟兵たちの見守る中で、兵士たちが倒れ伏すアルトゥルを取り囲んでいる。
「アルトゥル様!」
「アルトゥル様!」
「うう……?」
何人かの兵士たちに抱きかかえられて、ようやくアルトゥルは意識を取り戻した。目を開いて、自分を取り囲む自分の仲間たちを見やる。
「ここは……お前たちは……」
「アーホルンとの国境地帯の、アーホルン側です」
「私たちは、貴方に率いられて……ここで虐殺を為そうと……」
一人の女性が、涙ながらに語るのを聞いて、彼が大きく目を見張る。
信じがたいだろう、自分が主導して、キャバリアを駆って人間を虐殺しようとしたなんて。驚愕を色濃く映しながら、彼が身を起こそうと身じろぐ。
「そんなことを、私が……? うっ」
痛みに顔をしかめるアルトゥルに、周囲の人々がさらに近寄って気遣っていく。
話に聞いてはいたが、本当に慕われている人なのだ。その事にホッとしながら、エイスが微笑む。
「無事に、元に戻れたみたいですね」
「ああ、よかった」
「ほんとね」
キョウもカーバンクルも、表情を崩しながら心配して心配されての現場を見つめる。と、いくらか状況が落ち着いたところで、カーバンクルがふとアルトゥルの傍に寄って笑った。
「全身真っ赤になって、文字通り『紅き機動長』にならなくてよかったねぇ?」
「うっ……」
「おや、もしかして図星でしたか? 異名の謂れもそこにあるとか?」
「有り得るな。敵機のオイルにまみれ、それが紅く見えたから……などという力強い異名ではないのかもしれん」
言葉に詰まるアルトゥルに、さらに乗っかるようにエイスが笑みを浮かべる。キョウも心なしか楽しそうだ。
それからいろいろと話を聞いて、結果的に「赤ら顔な上に怒ると顔全体が紅潮するから」という微笑ましい理由が、アルトゥルの口から飛び出すのだった。
大成功
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