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争乱を呼ぶか、エースの足跡

#クロムキャバリア #ACE戦記 #フォン・リィゥ共和国

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●残響のエース
 これは夢なのだと理解できる。
 きっと遺伝子が保つ記憶が見せる残響のようなものだと。
「そんなに自分の名前が嫌いか、アイン」
 フュンフ・エイルはそう言った。自分にも同じ様に番号の名前が振り分けられているのに、彼はからりとした笑顔でなんでもないのだというように言ったのだ。
「そりゃあ……可愛げのある名前ではないし、いくらなんでも自分の親と言えど適当が過ぎる」
 憤慨する己ではない己。
 アイン。昔の言葉で『1』という意味であるそうだ。一番最初に生まれた子供だからアイン。それは言ってしまえば、子に対する執着がないのと同じではないのかと。別に自分でもなくてよかったのではないかと。
 そんな風に考えてしまうのだ。

「それはそうかもしれない。けれど、考えてみろ。アイン。『1』はナンバーワンってことだ。オンリーワンでもあるし、先駆けの言葉でもある。そういう意味では、お前にぴったりで俺はいいと思う」
 そんな風に彼は笑っていう。
 己に向けて言った言葉ではないけれど、ナンバーワンでありオンリーワンという言葉にはとても心惹かれる。
 だから、これが例え己ではない己の遺伝子が見せる記憶であったとしても、その言葉に従おう。突き動かされる感情。それに従おう。

 これがいつかの誰かの残響であっても構わない。
 生きると決めた己が為すべきことであり、どんなことをしても構わないと思わせる唯一のことだった。だから己は立ち止まらないと決めたのだ―――。

●楓の六
 フォン・リィゥ共和国。
 それはクロムキャバリアに乱立する小国家の中でも少々治安の悪い国であった。
 廃棄された鉱山を背に広がる嘗ての生産工場群を中心とした国だ。生産施設『プラント』があるおかげで、生産工場はもはや意味を為すものではない。
 その地下にまで及ぶ巨大な工場跡は決して優れた立地ではないが、周辺に隣接する少国家群の侵攻を容易にはさせない。
 鉱山を背に負っている点でも、国の中枢が地下工場の奥に座す点においても、フォン・リィゥ共和国は要塞の中に国を構えているようなものであった。

 故に他国の侵略とは無縁である。
 だからこそ、娯楽というものが必要なのだ。整理された工場区画とは別に設けられた戦闘区画。そこは巨大な『闘技場』であり、日夜キャバリア同士を戦わせる公的ギャンブルとしての娯楽を国が提供しているのである。
 今日も今日とて、いつものように賭け時合が催されている。
「くそっ―――! なんだよ、あの動き! あれが量産型キャバリアのやる動きかよ! こっちはワンオフの……! それも最新鋭キャバリアなんだぞ!」
 戦闘区画として用意された『闘技場』の中にはキャバリアが二機残っており、最後の勝者を決めるための戦いを繰り広げられていた。

 焦るパイロットの視線がコクピットのモニターの中を忙しなく見回す。
「金がほしいんだよ! 俺は! 必要なんだ! どんなことをしてでも! 親兄弟を売ってでも金がぁ!」
 その声とは裏腹に次々とモニターの中に刻まれていく損傷箇所。武装は弾き飛ばされ、プラズマビーム発生装置である翼さえも破壊される。
 手にした無敵斬艦刀だけがもはや頼りであり、クリスタルビットは尽く破壊されてしまっている。
 量産型キャバリアでここまで追い詰められるとは思ってもいなかったのだ。
「遅いな。最新鋭キャバリアに乗っても、その様か―――腕の差を埋めるのが性能差っていうやつだろうに」
 量産型キャバリアのパイロットが静かに告げる。
 淡々とトリガーを引く。弾丸の一つも無駄にはしない正確無比。最小限の機動で攻撃を躱して最短最速で敵機へと迫る。

「なんでだよ! この最新鋭キャバリア―――セラフィム・リッパーは無敵じゃなかったかよぉ!?」
 凄まじい音がして、『グリプ5』から強奪された嘗ての最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』1号機が量産型キャバリアの放った弾丸の一撃によって頭部を破壊され、大地に崩れ落ちる。
「乗ってるのが三流じゃあな。そういうこった。じゃあな『セラフィム・リッパー』。短い間だったが、お前は役に立ってくれたよ」
 量産型キャバリアのパイロットが不敵に笑い、勝利の喝采を浴びるのだった―――。

●闘技場に吹き荒れる
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回は争乱の世界、クロムキャバリアの小国家『フォン・リィゥ共和国』のキャバリアを用いた賭け時合に潜むオブリビオンマシンの存在を突き止め、これを破壊して頂きたいのです」
 ナイアルテは下げた頭を上げて、集まった猟兵達に告げる。
 治安の悪い小国家では度々こういったキャバリアを使ったバトルロイヤル方式の『闘技場』ともいうべき娯楽を催すことがあるのだという。

 今回のその『闘技場』に参加するキャバリアの中にオブリビオンマシンが一体紛れ込んでいるのだという。
「はい……そして、恐るべきことに謎のユーベルコードによって周囲のキャバリアをも徐々にオブリビオンマシン化しているのです」
 このままでは心を歪められたパイロットたちによる殺戮の宴へと小国家が飲み込まれてしまう。
 今回、猟兵たちがなさねばならないことは一体だけ存在している始まりのオブリビオンマシンを探し出し、これを打ち倒すこと。

「この事件の元凶のオブリビオンマシンは上手く気配を隠しています。引きずり出すまで闘技場のバトルロイヤルを皆さんは勝ち抜かねばなりません」
 シード選手以外はまず、闘技場で最後の20体ほどになるまで戦わなければならない。
 オブリビオンマシンはどうやらシード選手の機体の中にいるようである。彼らと同じ舞台に立たなければ近づくこともできない。
「バトルロイヤルを勝ち抜いた後、わずかではありますが補給の時間もあるようです。その最中にオブリビオンマシンを駆る心歪められたパイロットを探すのも良いでしょう」
 オブリビオンマシンに乗っていると思われる者はシード選手の中にいる。その候補として、この闘技場の絶対王者として君臨しているチャンピオン、『グリプ5』から強奪されたはずのキャバリア『セラフィム・リッパー』1号機などが存在してるのだという。

「どちらかがオブリビオンマシンであるはずですが……私の予知ではわかりません。現場の皆さんの機転と判断がオブリビオンマシンを割り出す最後の手段なのです」
 予知でもどちらがオブリビオンマシンであるかはわからない。
 補給の間にオブリビオンマシンを見つけ出し、これを闘技場で打ち倒さなければならない。
「難しい事件ではありますが、これ以上オブリビオンマシンを増やすわけには参りません。どうか、よろしくお願いいたします」
 そういってナイアルテは再び頭を下げて猟兵達を送り出す。
 平和という言葉すら瓦解した世界で争乱を招くオブリビオンマシン化のユーベルコードはなんとしても止めなければならない。
 そう、戦いの火種を広げることはあってはならないのだから―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はクロムキャバリアにおいて新たな小国家に存在する『闘技場』で暗躍するオブリビオンマシンと周囲のキャバリアをオブリビオンマシン化する謎のユーベルコードを阻止するシナリオになります。

 キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
 ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。

●第一章
 集団戦です。
『闘技場』の予選試合です。シード選手以外の全員がいっぺんに戦う『バトルロイヤル方式』になります。20体ほど残るまで戦闘が続行されます。
 猟兵の皆さん以外にも手練はいるようですが、数が多いので必然的に目立つ猟兵の皆さんに攻撃が集中することでしょう。
 ただ、強さはオブリビオンマシンではないので、さくさく倒せるレベルであると思ってください。

●第二章
 日常です。
 うまく気配を隠しているのか、未だオブリビオンマシンの所在はわかっていません。決勝までの間、補給など他のパイロット闘士との交流をしたり、オブリビオンマシンに乗るパイロットの目星を付けるなどをしても構いません。
 オープニングで情報が提供されていますが、長年闘技場の絶対王者として君臨するチャンピオンの機体か、もしくは最近流れてきた『グリプ5』から強奪されたはずの『セラフィム・リッパー』1号機(ただし、前回の戦いで色々と装備を補っていたり修理しているパッチワークな機体です)のパイロットか、そのどちらかが怪しいということは提示されています。

●第三章
 ボス戦です。
 決勝戦もバトルロイヤル方式です。
 皆さんの目的はあくまでオブリビオンマシンの撃破です。オブリビオンマシンではない他の闘士たちの駆るキャバリアの妨害も当然あると思っていいでしょう。
 これらを躱しつつ、ボスであるオブリビオンマシンを打倒しましょう。

 それでは争乱続く世界、クロムキャバリアにおける新たなる事件と局面を猟兵の皆さんが駆け抜ける物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『Coyote』

POW   :    RS-A『散弾砲』 / RX『ナイフ』
【至近からの散弾】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ナイフ攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    RS『短機関銃』 / RS-S『ミサイルポッド』
敵より【ダッシュなどで高機動状態の】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ   :    『Coyote』
【他のCoyote】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[他のCoyote]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 フォン・リィゥ共和国において公然と行われているキャバリア同士の賭け時合。
『闘技場』となった地下工場群の中を疾走する無数のキャバリアたちは、己の生命と機体を担保にファイトマネーを稼ぐために今日も戦場を疾走する。
 殆どの闘士たちは『Coyote』と呼ばれる量産型キャバリアを駆り、バトルロイヤル方式の試合を戦う。
 各々がカスタマイズした『Coyote』であるが、殆どは見掛け倒しの装備ばかりである。

 そんな機体であれば、かりにこの予選試合であるバトルロイヤルを勝ち抜いたとしても、本戦に控えるシード闘士たちが駆る専用キャバリアに敵うことなどありえない。

 否。
 一度だけ大番狂わせがあった。
 量産型キャバリアでシード闘士のキャバリアを打倒し、たった一人だけ『Coyote』で優勝したパイロットがいた。
 そのパイロットはもうこの国にはいないが、それゆえに長年闘技場の絶対王者として君臨していたチャンピオンは歯噛みしていた。

「俺の機体の調整が間に合っていれば……! あんな女、捻り潰してやるはずであったのに。俺が参加していない試合と言えど、新入りが優勝をかっさらうなど、許せない……! 許せない……! チャンピオンの座は、穢れなき無敗伝説は俺のものであるべきなのだ―――!」
 そのチャンピオンの座す背後に立つカッパーの装甲輝くキャバリアのカメラアイが妖しく輝く。

 そして、今日も『闘技場』にキャバリア同士がぶつかる激しい火花が散るのだった―――。
才堂・紅葉
「稼ぐなら参加者じゃなくて胴元でいたいものね…」
何時の時代も賭け事で一番儲かるのは胴元だ

忍者めいた黒の機体に棒一本の軽装備で参加する
これで油断してくれるなら楽が出来るが、あからさまなワンオフ機なので無理だろう

方針
オブリビオンが絡む以上、ここは参加者にとって命を賭けるに値しない場だ
そんな所で参加者から死人や怪我人を出すのも寝覚めが悪い。効率良く無力化しよう

杖術で重さの無い物のように六尺棒を操り、古武術由来の起りの無い動きと棒のリーチで【先制攻撃】
インパクトの力加減で衝撃を操縦者に徹して意識を奪う。足を止めず手際良くだ【早業、貫通攻撃、衝撃波、気絶攻撃】

「神武不殺とか私の柄じゃないんだけどね……」



 かつての地下工場群はすでにキャバリアを用いた『闘技場』と化している。
 整理された区画とは別に設けられた乱雑に戦いの跡が残る『闘技場』は多くのキャバリアが疾走している。
 それがフォン・リィゥ共和国の催す賭けキャバリア試合の『バトルロイヤル』である。
 今行われているのは予選の試合だ。何十機というキャバリアが入り乱れて銃弾や火花を散らせる光景は、すべて国営放送の電波に乗って国中のモニターやブラウン管、あらゆる画面に配信されている。
 城塞のような工場群の中に国を構えているが故にフォン・リィゥ共和国に侵攻する国は少ない。ある意味で平和であったのかもしれないが、人の性か、こうして争いの種はどこにでもくすぶっているのである。
『Coyote』と呼ばれる量産型キャバリアの放つミサイルが乱舞するように戦場に飛び交い、銃弾が機体装甲をかすめては、凄まじい音が響き渡る。

 それを見て人々は熱狂し、鬱屈としたただ生きるだけという日常に彩りを求めるように賭けに興じるのだ。
「稼ぐなら参加者じゃなくて胴元でいたいものね……」
 いつの時代も賭け事で一番儲かるのは胴元であると、才堂・紅葉(お嬢・f08859)はキャバリア『迦楼羅王』の黒い装甲に覆われたコクピットの中で呟く。
 彼女の駆るキャバリアの武装は無骨な棒のようなものが一本だけである。
 ミサイルポッドや銃火器の類は見受けられず、相対的に彼女のオッズはどんどん下落していく。

「これで油断してくれるなら楽ができるんだけどね……あからさまなワンオフ機だし、無理よね」
 紅葉にとって、それは当たり前のことであった。
 殆どが改造されている量産型キャバリアが相手であっても、殆どがハリボテのような見掛け倒しの機体が多い。
 そんな中で紅葉の機体は明らかに、それとは違うという雰囲気を隠すことはできなかった。
 彼女の機体を遠巻きに囲うのは他の一般キャバリア闘士たちである。
 彼らはまず、強敵であろう紅葉から集団で倒すようにと結託したのだろう。それもまたバトルロイヤルの常である。

「悪くない選択ね。けれど、オブリビオンが絡む以上、貴方達にとって命を賭けるに値しない場だ。悪いけれど―――ここは効率的にいかせてもらう」
 手にした棒を構えるキャバリア『迦楼羅王』。
 その構えは紅葉の体術に由来するものであろう。ミサイルポッドから放たれたミサイルが『迦楼羅王』めがけて飛来する。
 機動性に優れる『迦楼羅王』であれば躱すことは難しいことではない。

「神武不殺とか私の柄じゃないんだけどね……」
 けれど、もう決めたことだ。
 パイロットの生命は奪わない。此処がもしも、彼女の言うところの命を賭けるに値する戦場であったのであれば、生命のやり取りは発生したかもしれない。
 神武不殺(シンブフサツ)。
 それこそが彼女のユーベルコードであり、彼女が己に課した使命でもあった。
 機体の動きは最小に。
 何も魔法や魔術を使うわけではない。古武術由来の歴然とした技術で、まるで彼女の機体が瞬時に動いたかのように見せる。

「この間合いを一瞬で!? なんだ、やっぱりこいつ、只者じゃ―――!」
 量産型キャバリアのパイロットがたじろぐ。
 間合いを一瞬で詰めたかと思った瞬間、『迦楼羅王』の放った六尺棒の先端が一瞬でコクピットの装甲を撃つ。
 だが、それは貫けるほどの威力を持っていなかったが、そのリーチ、インパクト時に一瞬六尺棒を引くことによって衝撃だけをコクピット内部へと伝える高等技術は、パイロットの意識を奪い取るには十分な威力であった。
「そこで気絶していなさい。これが技量差というものよ」
 紅葉は戦場を『迦楼羅王』と共に駆け抜ける。
 手にした六尺棒を振り回し、相対する量産型キャバリアたちを機体を傷つけずにパイロットを気絶させることによって無力化させていくのだ。

 これにはモニターで彼女の戦いを見る観客たちも息を呑むほかない。
 派手な爆発やキャバリアが爆ぜる様子こそが、彼らにとっての日常であったはずだ。けれど、紅葉のやっていることはまるで理解できない魔法を見せられているようなものであったことだろう。
 静かに、けれど徐々に賭け試合を見る観客たちから紅葉が何を為したのかを理解する者たちが現れ始めると、彼女を止められる者はいないのかと野次が飛ぶ。
「まあ、ブーイングもあるでしょうけどね。それは私を倒してからにしてもらいましょうか!」
 紅葉は構わず不殺を貫く。
 機体は破壊せず、パイロットだけを気絶させていく戦いは、あまりにも圧倒的であり、観客たちを別の意味で沸かせるのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
キャバリアによるバトルロイヤルか。見世物としては面白れーだろうな。
それじゃあ、参戦するとしようか。

『スルト』に搭乗。見世物という事で魅せる戦い方を意識しておきます。

残像を残してスルスルと流れるように移動しつつ、『万象斬断』の手刀や蹴りで敵機の四肢破壊。(勿論、コックピットは狙いません)
敵POWUCは至近距離なので発動のタイミングを見切って間合いを詰めて銃口を明後日の方角に向けつつ、そのまま一撃を入れます。(見切り×カウンター)
マイクパフォーマンスとかも状況に応じて。

それにしてもグリプのセラフィム・リッパーか。よく見かけるなぁ。

アドリブ歓迎です。



 戦場となった地下工場群は『闘技場』と呼ばれるキャバリア同士の賭け試合の会場となっている。
 あちらこちらにキャバリアの残骸や配管、その他のかつての工場であったものが産卵している故に、市街地戦のように身を潜める者もいれば、遮蔽物として利用し罠を仕掛ける者もいる。
 この戦いがバトルロイヤル方式である以上、そのような技術もまた戦い抜くために必要な技量であったことだろう。
 そして、その戦いの光景はモニターを通じてフォン・リィゥ共和国の国民ならば全員が見ることのできる娯楽として提供されていたのだ。

「キャバリアによるバトルロイヤルか。見世物としてはおもしれーだろうな」
 漆黒のオブリビオンマシン『スルト』に騎乗するアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)が悠然とバトルロイヤルの『闘技場』に降り立つ。
 その場の誰が見ても、アレクサンドルの駆る『スルト』が尋常ならざる機体であることを理解できたのだろう。
 一対一では勝てる見込みのない相手であるということもまた同様である。
 ならば、そういう時、この戦いの方式……最後の20数名になるまで戦い続けなければならない予選試合においてこの場限りの協定が結ばれることは想像に難くないことであったことだろう。

「殆どが量産型キャバリアってやつか……本命はシード闘士。なら、見世物らしく魅せる戦いをしなくっちゃな!」
 結託した一般の量産型キャバリアを駆るパイロットたちが一斉に『スルト』に散弾を放つ。
 それらは普通のキャバリアであれば躱すことなどできようはずもなかった一撃であろう。
 なにせ四方八方からメチャクチャに放たれる弾丸は、この場限りの連携しかしない量産型キャバリアの闘士たちにとっては、十分なものであったからだ。

「数で囲えばなんとかなるっていうのは、あまりにも短絡的な考えじゃないか?」
 散弾の雨をするすると残像を残して、流れる水のように躱す『スルト』。
「あの弾丸の雨をすべて躱すだと!? なんだ、あの動き……! アレもワンオフ機だって言うのかよ!」
 散弾を躱した『スルト』に肉薄する量産型キャバリアたち。
 手には近接用の取り回しの良いナイフが握られ、直接『スルト』を仕留めようとしたのだろうが、それはあまりにも無謀な行いであったと言わざるを得ない。

「この世に切れないモノなど存在しないぜ?」
 魔力を纏った『スルト』の腕部や脚部が閃光のように煌めく。
 次の瞬間、万象斬断(ナンデモキレル)の如く量産型キャバリアの両腕と両足が切断され、コクピットだけを残して大地に沈む。
 それはあまりにも早い斬撃故に、その場に居た者たちは愚か、賭け時合をモニター越しに見ている観客たちもまた見ることはできなかった。
 それほどまでに一瞬の鋭い斬撃であったのだ。

「さて、ウォーミングアップにはまだ物足りないが!」
『スルト』の漆黒の機体が残像を残して己を囲い込んだ量産型キャバリアたちに肉薄する。
 銃口を向けられても、瞬時に腕を掴んで明後日の方向に傾けつつ、懐に入り込み腕部を切り裂き、無効化してく。
 神速の如き斬撃は、それが『スルト』の、キャバリアの腕部や脚部から放たれる一撃ではなく、何か別の武装に寄るものであると誤解させたことだろう。
 その正体を知ろうとすればするほどにドツボにハマっていく。
 無理な突進はアレクサンドルにとっては、ただの作業にしなからない単調な攻撃にしか思えなかった。

「この国のキャバリア乗りもこんなもんんかよ。物足りねぇなぁ! なあ!」
 外部スピーカーをオンにしてアレクサンドルはいう。
 その視線の先にあったのは、こちらを見下ろすように配置されているシード闘士たちのキャバリアたち。
 そこに居た一体のキャバリア『セラフィム・リッパー』を見つけ、アレクサンドルは挑発するようなマイクパフォーマンスを行うのだ。
『グリプ5』の最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』。その1号機は強奪されてしまったという話であるが、あれがそうなのだろうか。
 それにしてはあちこちがパーツの欠損が多く、代替品で補われている不格好なパッチワークになっているのが気にかかるものである。

「精々機体をメンテナンスしておきな。ああ、それと―――」
 にやりとアレクサンドルが笑う。
 それは挑発もあったことであろうが、今後のことを慮る神としての傲慢さも垣間見せたのかもしれない。
「高いパーツは外しておきな。壊れて泣いても知らんぜ?」
 その一言はシード闘士たちの闘志に火をつける行為に他ならず、きっと決勝戦ではアレクサンドルは他のキャバリア乗りから狙われることになるかもしれない。
 けれど、アレクサンドルは不敵に笑う。
 むしろ、そのためのマイクパフォーマンスであるのだというように―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーリー・ザルティア
量産型で勝ち上がったチャンピオンか。
面白い。ならボクも量産型で出陣しよう。
今は居ないのが残念だけど、いつかそのチャンピオンと戦ってみたいもの。

まあパールは量産型といってもミキシングビルド機だけどさ。

さて『索敵』っと
機動で勝負か。舐めるなよ。
オーバーブースト!!
殲禍炎剣に狙われないように地表すれすれで最大加速。
『肉体改造』されたボクの体でもきついけど、ボクの『操縦』テクなら五郎次郎ってね。これも一種の『空中戦』さ。

さっきの『情報収集』から『瞬間思考力』で標的を効率よくはじき出して、一気に行くよ。
さて、アストライアの『制圧射撃』とすれ違いざまにイニティウムで『切断』のヒット&ウェイで駆け抜ける。



 フォン・リィゥ共和国で連日のように行われているキャバリア同士による賭け試合。
 俗に『闘技場』と呼ばれる地下工場群跡はキャバリアたちが疾駆する戦場として、あらゆる残骸と硝煙、そして油の匂いに満ちていた。
 この『闘技場』において無敗伝説を誇る無敵にチャンピオンがいるのだが、そのチャンピオンが機体調整のために参加しなかった試合ではあるものの、量産型キャバリアに乗る一人のパイロットが決勝戦で並み居るシード闘士たちの駆るキャバリアを下して優勝するという伝説が打ち立てられていた。

「量産型で勝ち上がったパイロットか。面白い。ならボクも量産型で出陣しよう」
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)はいつもは無人機として運用している量産型キャバリア『パールバーティ』を駆り、フォン・リィゥ共和国の『闘技場』を駆ける。
 量産型と一口に言っても、その性能は様々である。
 この闘技場の中を疾駆している量産型キャバリアもまた同様だ。闘士によって様々な改造が施されてるが、その殆どは見掛け倒しのハリボテのようなものであり、性能にはそう差はないのだ。

 けれど、ユーリーの駆る『パールバーティ』は違う。量産型とはいえ、ミキシングビルド。あらゆるパーツを組み合わせて作られた量産型であってもいわゆるハイエンド機と言っても差し支えないものである。
「一度限りの優勝者、そのチャンピオンはもういないっていうのは残念だけど、いつか戦ってみたいものだよね―――!」
 ミサイルポッドから放たれたミサイルを躱し、ユーリーが機体を反転させる。
 量産型キャバリアが早速一機、ユーリーを標的にしたようだった。
「さて、『索敵』っと。機動で勝負しようたって、舐めるなよ。オーバーブースト!!」
 ユーリーの瞳がユーベルコードに輝く。
 それはオーバーブースト・マキシマイザーの起動を告げる輝きであり、その機体の性能を十全以上に引き出すユーベルコードである。
 地下工場群であれば、暴走衛星『殲禍炎剣』に狙われる心配はない。
 けれど、天上があるというのは、それなり制約を賭けられているのと同じであるが、この世界でいくつもの戦いを経験してきた彼女にとっては、馴染みのある戦場の一つでしかない。

 地表すれすれを最大加速で飛ぶ『パールバーティ』の機体にかかる重力加速度は凄まじ。
 少しでも速度を緩めれば、機体が重力に引っ張られて地表に叩きつけられる。だからこそ、フルスロットルで飛ばねばならないのだ。
「敵機の位置は全部把握ずみ―――ならさ!」
 フットペダルとレバーを匠に操作し、ユーリーの操縦技術が光る。
「なんだ、あの機体! 地面すれすれを飛んで!」
 あれだけ低い位置を飛べばミサイルは命中しない。追いすがるホーミング機能がついていても、その起動に追いつけないのだ。
 ミサイルが地面に激突し、爆風を巻き上げる。
 その中から『パールバーティ』の機体が飛び出し、ユーリーがご機嫌に叫びながら量産型キャバリアを手にしたキャバリア用のブレードで両断し、その戦闘力を奪っていく。

「遅い遅い! ボクの操縦テクを御覧じろってね! これも一種の空中戦さ!」
 低空飛行からの斬撃の一撃は、躱そうと思って躱せるものではない。
 斬撃の一撃から飛び上がったユーリーの瞳が捉えるのは、己の機体を見上げる量産型キャバリアたちの位置情報。
 そのすべてを視線誘導でロックオンしていき、手にしたアサルトライフルのトリガーを引く
 点での狙撃ではなく、面での制圧射撃。
 放たれた弾丸が次々と量産型キャバリアたちを撃ち貫き、その場に膝を突かせる。さらに機体を加速させ、戦場を閃光のように駆け抜けるユーリーの活躍は、モニター越しに熱狂する観客たちの歓声を受けて、さらに煌めくように戦場を制圧していくのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・テルキーネス
●心境

クロムキャバリアのコロシアムかぁ
油の匂いと…硝煙かなぁ。
キャバリア戦は初めてなだけにちょっと緊張。

●キャバリア
サイキックキャバリアのピスケスで出陣します。
先日拾いました。落ちてきました。
動かすのは今日で初めてです(ぉぅぃ)

●戦闘
ぶっつけ本番で頑張ります。
えーと、このボタン何でしょう?(ユーベルコード発動)

ア゛ア゛ア゛ア゛ぁぁぁぁッ(UCによる機体の加速に泣きながらレバがちゃ状態)
無茶苦茶の『操縦』による『空中戦』で機体が偶然敵機にぶつかる『重量攻撃』そしてUCによるミサイル発射で敵を撃ち抜いてる。

や、やっと操縦に慣れてきました。どんどん行きますよ。

アドリブ、連携等OKです。



 油と硝煙の匂いが立ち込める地下工場群……『闘技場』と呼ばれるキャバリア同士による戦いを賭けの対象にした賭け試合の戦場に降り立つ一機のキャバリアの姿があった。
 その姿は薄暗い地下工場跡を煌々と照らすスポットライトに照らされて、いっそ神秘的な姿のようにも思えたのだろう。
 モニター越しに試合を見ている観客たちから思わず声が上がる。
 人魚型のキャバリアが悠然と降り立ち、その美しさを見せつける。
 それはステラ・テルキーネス(バイオモンスターのミュータントヒーロー・f19520)の駆る、サイキックキャバリア『ステラ・ピスケス』の姿であった。
「クロムキャバリアのコロシアムかぁ……これは油の匂いと……硝煙かなぁ」
 そんな彼女は、今日がキャバリアを用いた戦闘のデビュー戦である。
 その挙動は『闘技場』で戦い続ける闘士たちにとってルーキーそのものであり、同時に己のポイントとなる獲物以外の何物でもなかった。

「へっ、あの動き、素人だぜ! あいつは俺がもらった!」
 一機の量産型キャバリアが『ステラ・ピスケス』に迫る。
 ミサイルポッドから放たれたミサイルが尾を引くようにしながら宙を舞い、『ステラ・ピスケス』の機体を爆散させようと迫る。
「ちょっと緊張……えっと、ぶっつけ本番だけど頑張らないと……えーと、このボタン何でしょう?」
 ミサイルの接近を知らせる警告音が響くが、ステラにとってこれはぶっつけ本番の初陣である。
 マニュアルなどあるわけもなく、わりと困惑したままの参加になってしまったのだ。
 なにせ、彼女の言葉を信じるのであれば『先日拾った』のだという。落ちてきたのだと。
 それが本当なのか、常人には信じられないことばかりであったことだが、生命の埒外にある存在である猟兵にとってはある意味でありえることであったのだ。

「えぇ~い。このボタンだー」
 ぽち、と適当にボタンを押した瞬間、『ステラ・ピスケス』の機体のアイセンサーが輝く。
 それはユーベルコードを知る者にしかわからぬユーベルコードの輝き。
「……ア゛ア゛ア゛ア゛ぁぁぁぁッ―――!?」
 それは一瞬の出来事だった。
 ユーベルコードによって圧倒的な速度で飛翔するキャバリアの重力加速度に負けてステラはコクピットの中で凄まじい衝撃に襲われる。
 一瞬で向かい来るミサイルと交錯し躱した機体が、ミサイルを放った量産型キャバリアに迫る。
 ステラは体に押しかかる殺人的な重力加速度によって錯乱状態に陥りながら、滅茶苦茶な操縦―――つまる所、レバガチャ状態に陥りながら奇跡的なバランスで機体を制御し、一気に機体と量産型キャバリアを激突させる。
 まるで交通事故。

 装甲がひしゃげた音がしたが、『ステラ・ピスケス』には傷一つついていない。ひしゃげたのは相手の機体だけであった。
 機体からいつのまにか放たれたミサイルが、弾き飛ばした量産型キャバリアを貫き、コクピットブロックを残して爆発する。
 その光景を呆然とステラは見上げていた。
 これがユーベルコード無限弾道舞踏祭(ステラミサイルパーティー)と名付けられる由来となる出来事であったが、今のステラにはその自覚すらないのだろう。

「わー!? 止めて、止めて! あ、このレバーでしったっけ?」
 それからというもの、ステラと『ステラ・ピスケス』はまさに暴走列車の如く、突進と突撃、ミサイルの乱舞という他の闘技場参加者にとっては悪夢のような予測の付かない軌道をする機体として蹂躙していく。
「や、やっと操縦に慣れてきました……どんどん行きますよ! ……って、あれ?」
 ステラがキャバリア操縦に慣れた頃、すでに彼女の周囲に機影はなく、彼女の暴走機動に蹂躙された量産型キャバリアの残骸が積み上がった状態となっていた。
 その機体のあちこちから呻くようにパイロットたちが這い出してきたのは、人命が損なわれていない証拠であろう。

「ふ、不幸中の幸いですよね―――!?」
 偶然に偶然が重なるのもまた猟兵の運命であろう。
 ステラはコクピットの中で一人赤面するが、悪夢のような戦場に一機だけ悠然と立つ『ステラ・ピスケス』の雄姿は、モニター越しにフォン・リィゥ共和国の国民達を熱狂させたのだった―――!

成功 🔵​🔵​🔴​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語

闘技場のバトルトーナメント、強い奴が集まるのなら有効だな
遠距離戦仕様だがやってやる

まずは闘技場の壁に背中を付け【地形を利用】し背後から攻撃を受けないようにする
AIに【情報収集】を任せて俺は攻撃に専念
黄の災い:感電【マヒ攻撃】をUCで弾丸に付与して【先制攻撃】【クイックドロウ】【スナイパー】【全力魔法】で撃ち込んでから藍の災い:圧壊【重量攻撃】を付与した弾丸を【2回攻撃】で打ち込む
接近を許してしまったら魔銃を捨てDagger&Gunを片手剣に【武器改造】して防いで弾き【体勢を崩し】【怪力】【早業】で敵機体を【切断】する



 戦いとは常に己の長所を他者に押し付けることが優先されるものである。
 短所を補うために長所を伸ばす必要があるのだとすれば、それは当然の帰結であったことだろう。
 キャバリアという人型兵器にもまた長所と短所がある。それはキャバリア毎に違った目的と戦術に細分化されたものである。
 例えば近距離戦に特化した機体。
 機動性に優れた機体。
 コストを切り詰めた数を間に合わせるためだけの低コスト機―――今回のフォン・リィゥ共和国の賭け試合において最も多く参戦され、使用されていることの多い、量産型キャバリア 『Coyote』 もまたその細分化され、低コストという面において特化された機体であった。

『ターゲットロック』
 AI補助の女性の声がコクピットの中に響き渡る。『銀の銃兵』と呼ばれるキャバリアを駆るルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は機体を闘技場の壁に背を預け、構えたキャバリアの魔銃の引き金を引く。
 離れた弾丸がバトルロイヤルにひしめく量産型キャバリアの一体を穿つ。
「闘技場のバトルトーナメント、強い奴が集まるのなら有効だな。遠距離戦仕様だがやってやる」
 そう、ルイスの駆るキャバリア『銀の銃兵』は遠距離戦仕様のスナイパーとしての機体である。
 彼の義眼のメガリスの力を属性付与(エンチャント)することによって開放される災いの力はキャバリアと言えどただではすまない。

『撃破を確認。次のターゲットをロックします』
 無機質だが女性の声をしたAIがコクピットの中のモニターに次なる標的を示す。
 遠距離戦に持ち込まれた時点でバトルロイヤルに参加している量産型キャバリアたちはルイスに狙い打たれるしかない。
 狙撃ポイントを保ちつつ、放つ弾丸は一機に付きニ発。
 まずは黄色の災いの力を籠めた弾丸が感電によって敵機の起動を麻痺させる。そのまま藍色に輝く災の弾丸が圧壊の力を開放し、機体の要所を押しつぶすのだ。
「これで二機目……!」
 放たれた弾丸は過たずにキャバリアを破壊する。
 彼らはオブリビオンマシンに心を歪められたわけでもなければ、悪しき心を保つ者たちであるとも言えない。

 ただの一般人の生命を奪うことはしない。
 遠距離から安全に、確実に内貫けるのであれば、パイロットに配慮した戦いもまたできるのだ。
「やはり量産型キャバリアと言えど、質が悪すぎる。低コスト機というのは、皆こうなのか……」
 ルイスの疑問も尤もである。
 キャバリアという兵器の頭数を揃えるためだけに生産されたとしか考えられない機体だ。
 しかし、その性能差はパイロットの技量によって埋められるものである。油断したわけではないが、同じポイントから狙撃していれば、当然射角からルイスの位置を特定する者も現れる。

「スナイパー! そこか!」
 量産型キャバリアの一機がルイスの『銀の銃兵』に迫る。接近を許したスナイパーほど脆いものはない。
 けれど、ルイスもまた猟兵である。
 即座に判断を下す。魔銃と狙撃ポイントを捨て、手にした片手剣でナイフを受け止め、機体の出力を上げて敵機体を押し返す。
「接近戦ができないと思ったか―――! 甘い!」
 片手剣でナイフを弾き返し、耐性を崩した量産型キャバリアのオーバーフレームを切断する。

 崩れ落ちるコクピットとアンダーフレームだけになった機体を無視し、魔銃を拾って狙撃ポイントを後にする。
「堅実だなんだと言われても、こっちは遠距離戦仕様なんでな。悪く思うな」
 ルイスの活躍はスナイパーとしての戦い方であり、見目には派手ではなかったことだろう。
 けれど、確実に敵を穿っていく姿は、シード選手たちにとっては確かに脅威に映ったことだろう―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バーン・マーディ
ふん…コロッセウムという奴か

…なんだマーズよ
不服と思うたが…寧ろ戦意を増しているようだな
良かろう…その力を見せるが良い
軍神たる貴様の覇を示す時だ

【戦闘知識】
戦いの舞台の地形の把握
敵がどこから攻撃するかを予測

【オーラ防御】展開
機神の周囲を赤いオーラが包む

【運転・カウンター・二回攻撃・武器受け・怪力・鎧破壊】
運転で機動力を上げて
接近してくる機体には軍神の剣を盾に
手刀による連撃で襲い掛かり四肢を破壊

離れて攻撃する相手には
UCによる閃光による範囲攻撃
我が光から逃れられるとは思わぬ事だ

全ての攻撃はコックピットを避ける

折角だ
此処で覇を示すのも悪くは無かろう
我が力を以て須らく粉砕し頂点を目指すとしよう



 フォン・リィゥ共和国。
 そこは地下工場にある生産施設『プラント』を中心に背を鉱山に守られた天然の要塞となった中にある国である。
 その立地故に侵攻は難しく、それ故に戦乱が続くクロムキャバリアにおいては治安の悪さも相まって、娯楽として整理された区画以外の地下工場群を『闘技場』に見立て、連日に渡って賭け試合が行われている。
「ふん……コロッセウムという奴か」
 バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は彼の覇気によって虚空より出現した破城神機『マーズ』を背に呟いた。

 いつの時代にも、戦いを娯楽として提供する者がいれば、それを甘受する者もまた在るものである。
 そこにあった感情は呆れであっただろうか、それとも落胆であっただろうか。バーンにしか知れないことであるが、彼と繋がるキャバリア『マーズ』から伝わる意志にバーンはわずかに伏せた瞳を開く。
「……なんだマーズよ。不服と思うたが……寧ろ戦意を増しているようだな」
 それは意外な意志であった。
 戦いを見世物にする場所へと赴くことに憤慨はしても乗り気ではないと思っていたのだ。

「よかろう……その力を見せるが良い。軍神たる貴様の覇を示すときだ」
 バーンの身体が機神のコクピットに吸い込まれ、その機体を覆う赤いオーラが現出する。
 その姿はまさに機神と呼ぶに相応しき威容であり、この予選試合を見ているモニター越しの国民たちですら、息を飲むものであったことだろう。
 それほどまでの威容を放っていても尚、向かってくるものはいる。そうしなければならないほどに『闘技場』に参加しているキャバリアの闘士たちは追い詰められているのだ。
 いつもであれば、量産型キャバリアばかりの予選であるのに、今回は多数の猟兵たちが参加していることにより、多くのワンオフ機や特殊戦機が多く見受けられる。
 そんな中であればバーンの駆る『マーズ』にもまた結託して挑む者たちがいるのである。

「我を囲い、狙うか……その意気やよしといいたいところであるが……無謀が過ぎよう」
 散弾銃から放たれた弾丸が『マーズ』を襲うが、赤いオーラによってすべてが防御され、地面に落ちる。
 軍神たる『マーズ』にとって、攻撃がどこからやってくるかは察知できたであろう。だが、それを避けることはしない。
 避けるに値する威力の攻撃を量産型であるキャバリアは有していないのである。
「なんだよ、あの硬さは! 装甲に傷一つついてないだと!?」
 迫る量産型キャバリアのパイロットがやけくそのようにナイフを振りかぶり、『マーズ』に接近する。

「如何に間引きの時と言えど、脆弱なる機体で我等に抗おうという気概は買おう―――だが、それは蛮勇である」
 手にした軍神の剣が一閃されれば、量産型キャバリアの機体が四肢を切り刻まれ大地に沈む。
 遠距離からミサイルが飛んできたとしても、『マーズ』は不動のままである。

「我は選別する。我に牙剥く者、我に抗うもの、我に刃向けるもの、我を貶めるもの…!須らく等しき神罰を与えん事を!!」
 ユーベルコード、Cross of Sort(ジュウジノセンベツ)が発動し、十字型の閃光が放たれ、遠距離から『マーズ』の動きを止めようとしたキャバリアたちを一網打尽にする。
「我が光から逃れられるとは思わぬことだ」
 あれほどの大規模攻撃のさなかにあって、量産型キャバリアのパイロットたちは無事であった。
 コクピットブロックだけになったキャバリアから這い出すパイロットたちを見下ろしバーンは宣言する。

「折角だ。此処で覇を示すのも悪くは無かろう。我が力を以て須らく粉砕し、頂点を目指すとしよう。汝ら刮目せよ。我が覇道、我が力、その行く末を以て、我が威とする瞬間を―――!」
 万雷の如き輝きが機神『マーズ』から放たれる。
 一歩も動かず、けれど己に向かってくる者は尽く切り捨てる。その無敵の如き圧倒的な力は、モニター越しの国民達のみならず、シード闘士たちにもまた戦慄を走らせるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリッセ・トードゥ
『量産機が何体来ようと私の敵じゃないのよ』
AIのALICEが調子に乗っている。
他国の技術での現地改修を重ね過ぎて、量産機から特殊機(Xナンバー) に登録変更されたのが何やら御満悦らしい。

とは言え外見は量産機の寄せ集め。基本スペックも平凡なものだ。調子に乗るものじゃない。
フォースセイバーで戦う。レーダーで【索敵】【情報収集】し、AIとの並列思考による【瞬間思考力】で全体の動きを把握。【推力移動】の高速機動で乱戦の死角を縫う様に飛び回り、搭乗者を傷付けない様、駆動部を【切断】し機能停止させていく。
AIとの精神リンクによる異常な追随性が私達の最大の特性。機体スペックも戦力差も大した問題じゃないよ。



 バトルロイヤル方式において、考慮すべきことはいくつかあることだろう。
 まずは戦場の立地を正しく理解すること。
 そうすれば、己の技量と機体特性において為すべきことが見えてくる。できないことを無理にしようとすれば、それは敵の思うつぼであり、だれもが足元を掬おうとする戦場においては決定的な隙になりかねないからだ。
 けれど、フォン・リィゥ共和国において連日開催される賭け試合の予選試合は殆どが量産型キャバリアばかりである。
 強力な機体性能を保つキャバリアを駆る闘士たちは皆予選をパスすることのできるシード権を有している。

 だからこそ、今予選試合を戦うキャバリアたちは猟兵たちが駆るキャバリアの敵ではなかった。
『量産機が何体来ようと私の敵じゃないのよ』
 キャバリア『CZ-X』のAI兼OSであり、アリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)の同一人格である『ALICE』が調子づいたような声を上げる。
 それを聞いてアリッセは、本当にこれが己の裏人格とは言え同一のものであるのかと未だ疑問が消えないでいた。
 彼女の機体は他国の技術での現地改修を重ねに重ねた結果、量産機をベースにしながら特殊機―――いわゆる『Xナンバー』を型式に戴くことになったのが何やらご満悦であるようであった。

「そうは言え外見は量産機の寄せ集め。基本スペックも平凡なものだ。調子に乗るものじゃない」
 そう言ってアリッセは嗜める。
 ALICEが己と同じ人格を有しているのならば、自身もまた同様に多少の嬉しさはあるのかもしれない。
 そんなことをわずかに頭の隅に抱えながら、アリッセはキャバリアが抜き放ったフォースセイバーを構え直す。
 レーダーが捉えた機影はすでにAIである『ALICE』との並列思考によって共有され、どのように対処するかを即座に把握しているのだ。
『方針は―――』
「―――決まっている。機体だけを破壊し、搭乗者は傷つけない」

 一気に機体が戦場を駆け抜ける。
 すでに地下工場群の残骸や、遮蔽物、敵機の位置は把握済みである。高機動で『闘技場』となっている戦場を駆け抜け、乱戦での死角を抜けるように機体が飛ぶ。
「量産型キャバリア……名前を 『Coyote』……なるほど、100年戦争中期の間に合わせの機体か……! ならば!」
 すでに機体データは頭の中に入っている。
 相手がキャバリアである以上、オーバーフレームとアンダーフレーム。そしてコクピットブロックによって構成されている。
 搭乗者を無傷で生還させるために必要なのは、駆動部を効率よく切断するしかない。

『私達の利点はもうわかっているよね。どれだけ数を集めようとも私達の敵じゃないって言ったのは』
 慢心でもなければ驕りでもない。
 純然たる事実だ。
「ああ、精神リンクによる機体と反射の異常な追随性」
 そう、並列思考と直感的な操作技術を紐付け、その間の僅かなロスすら失くすのだ。それこそがアリッセたちの保つ他にはない圧倒的な差である。
 手にしたフォースセイバーが一瞬で死角に回り込んだキャバリアの駆動部を切断し、大地に沈める。
 敵パイロットからすれば、何が起こったのかもわからなかったことだろう。

 その一手が仮にアリッセたちに注目を集めたのだとしても、そこにあったのは数々の戦場を経験し戦い抜いてきた一機当千(サウザンドキル)としての実力である。
「数を揃えれば勝てると思うな!」
『機体スペックも戦力差も大した問題じゃないよ―――』
 二人で一つ。
 アリッセとALICE。2つの人格がキャバリアという器を得て、扇状を駆け抜け、障害にも成り得ぬ量産型キャバリアたちを斬り捨てていく姿は、目をみはる物があったことだろう。
 モニターの向こう側で賭け試合に興じていた国民たちをも熱狂の中にいざなう見事な戦いぶりで、アリッセはその存在感を確かに知らしめるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
普段なら、このような試合に関わる事はないのですけれど
オブリビオンが関係していると聞いた以上、知らんぷりは出来ません
せめて、他の皆様の負担が軽くなるようお手伝いさせて頂きますね

この世界にて心を交わした『アセナ』と共に参加します
まずは『七竜珠』の一つ、地の珠の力で闘技場の土から鎧や盾、即席の防壁を造り
防御を固めたら、音を頼りに周囲の状況を把握します

まるで歌うかのように響くアセナのエンジン音を媒介として
UCを用いて試合相手の機体に干渉します
明白にならないよう、機体の反応遅延や武装の動作不良、照準やホーミングへの干渉などを行い
躱した攻撃が他の機体に(コクピットは避けて)当たるよう誘導していきます



 争いが技術を進化させるのであるとするのならば、人の心を荒ませるのもまた争いである。
 それがどうしようもない人間の性である。
 フォン・リィゥ共和国の現状を見れば、それがわかる。国の中心である生産施設『プラント』。それを囲むようにして展開される地下工場群。背には鉱山がそびえ、この国を攻め落とすのは如何にプラントを巡って争いが起こるクロムキャバリアと言えど、容易に手出しすることはできない国であった。
 本来であれば、平和な国となったことだろう。
 けれど、人々は安寧だけでは生きていけない。食料もそうだが、次に必要なのは娯楽であろう。

 整理された地下工場群とは別区画、そこは『闘技場』と呼ばれるキャバリア同士を戦わせる賭け試合の会場となっていた。
 国民はすべて提供される映像をモニター越しに見て、キャバリアを駆る闘士たちに金銭を掛けていく。
「普段なら、このような試合に関わることはないのですけれど……」
 だが、オブリビオンマシンが関係していると聞いた以上、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は知らない振りはできない猟兵であった。
 戦うことを好まない彼女にとって、キャバリア同士とは言え闘争に身を任せるというのは抵抗があったのだろう。

 だからこそ、彼女は神騎『アセナ』を駆る。
 純白と透き通る青の装甲を身に纏う優美な機体のコクピットの中でソナタの周囲に浮游する謎の水晶結晶、その地の力を司る宝珠が大地の土から鎧や盾、防壁を形成させ、機体の防御を固める。
 すでに試合ははじまっており、バトルロイヤル方式であるが故に味方はだれもない。誰も彼もが敵である。
「皆、戦いに酔っているのかもしれません……自分以外は敵……お願い……応えて」
 神音の調律者(メザメルスベテノコドモタチ)たるソナタの瞳がユーベルコードの輝きによって煌めく。
 神騎『アセナ』のエンジンが徐々に上がっていく。

 それは機械の立てる音とはとても思えぬほどの旋律となって闘技の中に響き渡っていく。
 場違いな音。
「―――なんだ、この音……外部スピーカーが拾っているのか……?」
 量産型キャバリアのパイロットたちは耳にしただろう。
 ソナタの歌を、『アセナ』の奏でる戦慄を。その音を聞いた瞬間から、己達の駆るキャバリアの機体動作が徐々におかしくなっていることに彼らは気がつけない。
 低コスト機であるがゆえの不具合など日常茶飯事であったのだろう。
 だから、それが人為的にソナタによって引き起こされた異常であるとだれも気がつけなかったのだ。

「機体が、重い……! トリガーも効かない―――うわぁッ!?」
 次々と量産型キャバリアたちが武装の動作不良や照準、ホーミングなどおシステムへの干渉によって相打ちになって大地に沈んでいく。
「争いばかりをするから心が荒むのです……争い意外にも、どうか心を向けてください―――」
 ソナタの歌が響く。
 戦場に響く歌声は場違いであったかもしれない。
 けれど、彼女の歌はそんな状況すらも飛び越えて、人々の心に染み渡っていく。コクピットを避けるように互いに相打ちになっていく量産型キャバリアの残骸の中心でソナタと『アセナ』の優美なる機体が立つ。

「『平和』の意味を知らぬ争乱の世界にあっても、必ず訪れるはずなのです。ですから、今は」
 ソナタの青い瞳がユーベルコードの輝きを宿し続け、その力を発現し続ける。
 キャバリア『アセナ』がそれを増幅するようにエンジン音を響かせ、その力をより遠くへ、より広く伝播させていくのだ。
 破壊され倒れ伏すキャバリアのコクピットブロックから次々とキャバリアのパイロットたちが顔を出し見上げる。
 それはまるで目に見えぬ何かにキャバリアたちが次々と平服しているような光景であり、一歩も動かず、けれど己の手を掛けることなく争いの器となったキャバリアたちを慰めるように、ソナタと『アセナ』は神の如き歌を闘技場に響かせるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
『闘技場』か。以前と違って自分の機体を使えるのはいいわ。
「式神使い」、器物覚醒。
『GPD-331 迦利(カーリー)』(いつも通りで)、起動。

密集した環境で天井ありか。つくづく『迦利』には不利な環境だわ。
それでも、勝ち抜いてみせる。

数を相手どるなら、こちらも手数がいる。
「レーザー射撃」の「弾幕」で「制圧射撃」兼「範囲攻撃」。
鋭角の先端に「全力魔法」の「オーラ防御」を張って、防御する敵キャバリアに吶喊。「貫通攻撃」で相手の機体に先端を埋め込み「なぎ払い」、オーバーフレームを破壊する。

「レーザー射撃」は『迦利』の二等辺の側面全体から。(短辺部は推進器)
さあ、突っ込んでらっしゃい。蜂の巣にしてあげる。



 無数の小国家がひしめくクロムキャバリアにおいてキャバリアを用いた賭け試合が催されている小国家というものは珍しいものではないのかもしれない。
 治安が悪い国家であれば、規模の大小はあれどこのような見世物が興るのはある意味で必然であったのかも知れない。
「『闘技場』か。以前と違って自分の機体を仕えるのはいいわ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)はため息まじりではあったものの、ユーベルコード器物覚醒(キブツカクセイ)によって機甲式『GPD-331迦利(カーリー)』―――白と紫の逆三角形の形をしたサイキックキャバリアを起動させる。

 ふわりと空中に浮かぶ機体は、それだけで『迦利』が機動性に優れた存在であることを示したことだろう。
 量産型キャバリアには到底真似することの出来ない戦闘機動。
 さらには無人機であり、操縦者であるゆかりは機体の外にあるが故に、その機動は人間の、パイロットの存在を無視した動きさえ可能であるのだ。
「密集した環境で天井ありか。つくづく『迦利』には振りな環境だわ」
 本来であれば、『迦利』は三次元機動を得意とする機体である。
 このフォン・リィゥ共和国の『闘技場』である地下工場群での戦いは遮蔽物や天井という存在が在るがゆえに、その最大の長所である三次元機動の範囲を大きく制限されてしまう。

「―――それでも、勝ち抜いてみせる」
『迦利』が地下工場群の合間をすり抜けて飛ぶ。
 その姿を捉えた量産型キャバリアたちが次々に集まってくる。完全に『迦利』だけを狙う形になっているのは、その特異な機体のせいであろう。
 この闘技場の予選に参加しているキャバリアは改造が施されているとは言え、殆どが量産型ばかりである。
 そんな中に特異な機体が紛れ込めば悪目立ちしたとしても仕方のないことであり、周囲と結託し、囲い込んでしまおうというのは当然の帰結であったことだろう。

「数だけを頼みにして―――! その後どうするかなんて、その時その時でしか考えていないんでしょう!」
 数を相手取るなら、こちらも手数が必要だ。
 その点、『迦利』の機体性能を考えた時、それは容易だった。
 レーザー射撃が弾幕のように張り巡らされ、逆三角形の鋭角たる機体の先端に貼り付けたバリアが機体の突進能力を高める。

「こいつ、なんて出鱈目な動きを!」
 レーザーが放たれ、周囲に散ったキャバリアたちを猛追する。
 追いつかれてオーバーフレームを破壊されて、擱座する機体をよそに『迦利』の機体が凄まじい勢いで飛び、撃ち漏らした機体を貫く。
 鋭角がオーバーフレームを薙ぎ払い、その機体の存在を知らしめる。
 バトルロイヤル方式であるのならば、数を一定まで減らさなければいつまでたっても時間だけを浪費してしまう。

 だからこそ、ゆかりはわざと目立つように『迦利』の機体を宙に翻す。
「さあ、突っ込んでらっしゃい。蜂の巣にしてあげる」
 外部スピーカーから放たれる挑発の言葉。
 それを聞いた量産型キャバリアのパイロットたちが、『迦利』を討ち取らんと殺到する。
 けれど、それはゆかりの術中に嵌ることと同義だ。
「ほんと、単純でいいわ。機体性能の差、教えてあげる―――!」
 まるで燕が乱舞するように宙を舞う『迦利』がレーザーを放ち、次々と量産型キャバリアたちを貫いていく。
 その映像は普段見ることの出来ない見慣れぬ兵器の見本市の如くフォン・リィゥ共和国の国民達を沸かせたのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーん参った…
これはキャバリアがあった方が見栄えが良いパターン…
どうしたもんか…

キャバリアはサイズ5mでアンダーフレーム、コックピット、オーバーフレームで構成される…
まずサイズの事を念頭から外す
そうすれば上記3つを兼ね揃えていれば実質キャバリアなのでは?

アンダーはバイク!コックピットは私!オーバーは…うーん段ボールにきゃばりあって書いて服の上に着とくか
よし!これがワイのキャバリアや!!


EX:I.S.T[BK0001]に乗って【Link=Ex:I.S.T】起動
バイクに乗って速度でぶっちぎろう
足元を集中して狙って速度を乗せた剣撃で『吹き飛ばし』て転ばして動力部にトドメ

…いやこれ段ボール邪魔だわ



「うーん参った……」
 わかっていたことではあった。
 争乱続くクロムキャバリアにおいて戦争の花形であり主役、主戦力はキャバリアである。だからこそ、今こうしてフォン・リィゥ共和国で連日催そされている賭け試合もまたキャバリアがぶつかり火花散らす見世物であるのだ。
「これはキャバリアがあった方が見栄えが良いパターン……どうしたもんか……」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は『闘技場』という名の地下工場群を前に腕組みして考えていた。

 彼女はメカニックではあるものの、自前のキャバリアを用意していなかった。
 これまでもクロムキャバリアにおける事件を解決に導いてきたが、彼女自身、猟兵としての力だけで戦ってきた故にキャバリアを持っていないのである。
 必要ないと言ってしまえばそれまでであるのだが、目の前の現状はそうも言っては居られない。
「なぜなら、キャバリア・バトルロイヤルだから!」
 ばーん!
 何故か玲が自信満々な顔で声高らかにいう。しかし、キャバリアがないといったらない。ないものねだりをしてもしようがないし、ないなら作っちゃえばいいじゃん、というの玲の持つ信条である。

「キャバリアはサイズ5mでアンダーフレーム、コクピット、オーバーフレームで構成される……」
 ぽくぽく。
 玲の中でプランがいくつも提示されていく。キャバリアとはなんぞや、という問いかけに対する答えが彼女の頭脳の中で組み上げられていく。
 まずは概念の基礎。そして、それを囲む大枠を取り除く。
「まずはサイズの事を念頭から外す……そうすればアンダーフレーム、コクピット、オーバーフレームの3つを兼ね備えていれば実質キャバリアなのでは?」
 ちーん!
 ひらめいた! という風に玲はバトルロイヤルの会場である地下工場群に立つ。
 不敵な笑みを浮かべるのは、圧倒的強者感。いや、実際にこの『闘技場』の中でも彼女の力は生身単身であっても相当上位なのだが、いまいち微妙に閉まらないのは何故か。

 それは彼女の姿にあった。
「アンダーはバイク! コクピットは私! オーバーは……」
 そう、今の彼女はEX:I.S.T[BK0001]と呼ばれる模造神器運用補助用に開発された特殊バイクにまたがっている。
 本来であれば、彼女の開発した模造神器の運用を助けてくれる外部の機材ではあるのだが、それをキャバリアのアンダーフレームと言い張るのはギリギリだった。
 なぜなら、アンダーフレームが戦車であったり、オーバーフレームがヘリであったりするキャバリアもまた存在するからだ。
 バイクがアンダーフレームのキャバリアがいないとは言い切れない。

 だが、そこまでならよかった。
「オーバーは……うーん、段ボールに『きゃばりあ』って書いて服の上に着ておくか」
 まさかの段ボールである。
 薄茶色の段ボールに『きゃばりあ』と丁寧に描かれた装甲。装甲? を着込んだ玲が戦場に飛び出す。
「よし! これがワイのキャバリアや!!」
 あとは度胸と根性、あと謎の男の子理論で押し通せば行けると玲は踏んだ。踏んだのだろう。
 普通であれば止められるものであるが、玲の謎の自信によって止める者は近づくことなどできようはずもない。

 傍から見たら正気を疑う光景である。
 だが、それでも玲という猟兵の実力は見かけによらぬものであった。
「BK0001、戦闘支援モードに移行。リンク開始―――」
 オーバーフレームの段ボールはハリボテ如何であるが、彼女の開発した特殊バイクは違う。
 Link=Ex:I.S.T(リンク・エクスアイエスティー)―――そのユーベルコードによって起動した特殊バイクの速度は尋常ならざるものであった。
 的が小さい上に速度はキャバリア以上、さらに速度の乗った模造神器による一撃は、次々と量産型キャバリアのアンダーフレームを引き裂いて大地に落とす。
「はい、そこもらった」
 転倒したキャバリアの動力部、エネルギーインゴットの格納された装甲を切り裂き、機能を停止させ、さらに玲は戦場を駆け抜ける。

 その姿はキャバリア乗りにとってはまさに悪夢そのものであったことだろう。
 画面に映るのは段ボールに『きゃばりあ』と描かれたハリボテを被ったバイク。そのバイクが凄まじい速度で駆け抜けた後には、キャバリアの残骸しか残っていないのだから。
「く、来るな! 来るな! 来るなぁ―――!!」
 悲痛な叫びが戦場に響き渡る。
 それは無慈悲にも切り裂かれ、悲しいほどに理不尽な攻撃によって次々と打倒されていく量産型キャバリアのパイロットたちを引退し、真面目に働こうと決意させるには十分なものであったのだ。

 だが、当の本人、玲は段ボールのオーバーフレームを脱ぎ捨て、
「……いやこれ段ボール邪魔だわ」
 言っちゃったのである―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
また厄介な者がが紛れたな。
よし、俺もキャバリアを用いよう。

■騎
斬艦刀を装備した『総重量90t以下』のキャバリアを
貸してほしい。燃料ナシで。

■闘
何をすると?【牛鬼】で振り回す。
視界を妨げない場所へ隠れ、キャバリアの掴み易い部位を
掴んで持ち上げ【空中戦】形態へ。

【残像】を伴う反復横跳びやおかしな体勢の急旋回など、
『キャバリア離れ』した動きで翻弄。至近距離に入られたら
敵のいない方向へ【ダッシュ】で緊急回避。

頃合いが来たら姿を見せネタバラシ。そこから【怪力】全開で
キャバリアを振り回し、敵機に斬艦刀の部位を当て一刀両断。
おお、『正気ではない』という声が【聞き耳】ナシでも聞こえた。

※アドリブ歓迎・不採用可



 猟兵とは生命の埒外にある者である。
 それは数多の異世界を渡り歩くからでもあり、多種多様な種族がいるからでもある。だが、猟兵の姿はどれだけ奇異なものであっても、その世界に生きる猟兵以外の生命には違和感を与えないものである。
 例え翼の映えた偉丈夫であったとしても、違和感を覚えず接するのだ。
「また厄介な者が紛れたな。よし、俺もキャバリアを借り受けるとしよう……すまぬが、『闘技場』に参加したいのだが、貸し出せるキャバリアはあるだろうか」
 愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は小国家フォン・リィゥ共和国の闘技場の受付で、そう尋ねる。

「貸し出すのは構わねぇが、どんな機体が所望なんだ? あいにくとなんでもかんでもあるっていうわけじゃあないんだが……」
 ふむ、と清綱が考える。
 自身の考えている方策が上手く行けばいいと考えていたが、思った以上に機体を選り好む必要無はないのだと知る。
 キャバリアはオーバーフレームとアンダーフレーム、そしてコクピットブロックで構成されるクロムキャバリアの主戦力だ。
 その装備は様々なものがあり、エネルギーインゴットによって動力を稼働させている。

「ならば、大型ではないキャバリアを。そして斬艦刀……実体剣が好ましい。後は、エネルギーインゴットは不要であるので外しておいて欲しい」
 そう伝えると、明らかに怪訝な顔をされる。
 だが、用意してくれと言われたものを用意するのが、闘技場のスタッフの役割だ。エネルギーインゴットもなしに戦場に出るということは的以外の何物でもない。
 何か破滅願望のある男なのかと腫れ物に触るように清綱は用意された機体と共に闘技場に降り立つ。

「ふむふむ……なるほど。バトルロイヤル。乱戦方式、乱取りというやつだな。ならば、此方のほうが目立ちやすいか」
 そういう清綱はキャバリアのコクピットブロックの中ではなく、外に立っていた。
 キャバリアを動かすこともせず、ひとしきり納得してからキャバリアの脚部にふれる―――否、掴む。
「―――此れで充分だ」
 ず、と嫌な音がしてキャバリアが持ち上がる。それは牛鬼(ウシオニ)たる清綱のユーベルコードである。
 つかみやすい部分を掴み、持ち上げることができる。
 その膂力、まさに90トン以内であれば持ち上げ、奮うことができるのだ。まさに人外。その光景を見たものは、自身の目を疑うことだろう。

「キャバリアが、反復横跳び……!? なんだ、あの動き、というか……機動?」
 量産型キャバリアのパイロットたちも同じであった。
 奇怪な行動を取るキャバリアを目視したのはいいが、一体どういう原理と目的でそれを行っているのかわからないのだ。
 無理なからぬことである。
 まさか生身の人間がキャバリアを掴んで持ち上げ、振り回しているなど誰が想像できようか。

「ふむ、やはり奇抜すぎたか。だが、ネタバラシをしてもあまり驚いてはもらえないようだ」
 ならば、と清綱はキャバリアを掴んだまま、その凄まじき怪力を全開にしてキャバリアを『振るう』。
 手にした武装、斬艦刀の切っ先が在れば、清綱にとってキャバリアも刀同然である。
 ただサイズがキャバリアサイズであるというだけの話。
 その切っ先が量産型キャバリアを両断する。まさに悪夢のような光景だった。キャバリアを武器のように、それこそ手足の延長線のように文字通り、振るった清綱の一撃がキャバリアをも切り裂くのだ。

 これが悪夢でなくて何というのだろう。
 いくら猟兵が違和感を抱かれない存在であったとしても、こればかりは―――。
「おお、正気ではないという声が聞こえた」
 快活に笑いながらキャバリアを振るう清綱。
 どこか嬉しそうな声色なのは気の所為だろうか。目を疑うような光景を量産型のパイロットたちは見せつけられる。
 彼と遭遇した者たちは口早に今回のことを語るであろうが、だれもが作り話として取り合うことなどなかったのだ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
戦場がない故に、戦場を用意する。
なるほど、自分の様な戦う事しか能がない者には、
この様な戦場がある事は喜ばしい事でありますな。

そしてー
ディスポーザブル01に搭乗。操縦。
鈍重な機体、囲んでしまえば容易く落せると踏んだか!!
『ブレイクダッシュ』(多対壱で不利な状況と判断)
凌ごつつ瞬間思考力で攻撃を行おうとした機体をカウンター
フォースウィップで捕まえる

間違いではない。所詮は頑丈さとパワーだけの量産機だ!
パワークローで叩き潰す。コックピットはギリギリ狙わず、しっかり叩き潰して戦意を挫く。

さぁ戦え!敵を発見したならば!烏合の衆でないならば!走れ!
推力移動、敵集団に突っ込んで近接武装で敵機達を破壊する。



 クロムキャバリアにおいて戦争とは日常のことである。
 100年戦争とまで呼ばれる争乱が途切れることなく続いているのは、オブリビオンマシンが平和に近づく度に、それをかきまわしてきたからだ。
 泥沼のような状態がもうずっと続いている。
 そんな世界にあっては『平和』という概念はすでに虚像のようなものであり、言葉は知っていたとしても、それを正しく理解出来ているものはいないのかもしれない。

 此処『フォン・リィゥ共和国』はいびつであるが、わずかに戦争という他国の争いから遠い距離にある小国家である。
 背を鉱山に守られ、生産施設であるプラントは地下工場群という障害に守られている。それを中心に整理された区画に住まう人々にとって他国の侵攻は近くはないが、遠いものであった。
 戦いが遠くに合っても尚、クロムキャバリアに生きる人々には平穏はない。あるのは麻痺したような感覚、感情を呼び起こす闘争であったのは、皮肉でしかない。
「戦場がない故に、戦場を用意する。なるほど、自分のような戦うことしか能がない者には、この様な戦場がある事は喜ばしいことでありますな」
 朱鷺透・小枝子(ディスポーザブル・f29924)は虚空より現れし量産型キャバリア『重装甲ディスポーザブル01』のコクピットの中で独りごちる。

 戦うことに存在意義を見出す者。
 それはクロムキャバリアにおいては、稀に見る者ではないだろう。争乱だけが支配する世界において戦うことができるということは、それだけで価値のある者だ。
 だからこそ、この国のように賭け試合が娯楽として成り立つ。
「いたぞ! 新入りのカスタム機だ! 囲んでしまえば、あの鈍重な動きだ、いい的だ!」
 ぐるりと小枝子の機体を囲む量産型キャバリアたち。
 この闘技場において新参者とは常に狙われる者である。予選試合に参加しているキャバリアの殆どは間に合わせのために低コストで生産された粗悪な機体ばかりである。
 そんな中に新しい参戦者、しかも量産型とはいえ見慣れぬ機体があれば、こぞってこれから落とそうと考える者ばかりだ。

「―――鈍重な機体、囲んでしまえば容易く落とせると踏んだか!!」
 ブレイクダッシュ(ハシレハシレハシレ)と心のどこかで叫ぶ声が小枝子には聞こえたかも知れない。
 状況は不利そのものである。多対一。普通であれば囲まれて終わりであろう。サレンダーする他ないかもしれない。
 けれど、小枝子の心の中は荒れ狂うような戦意で満ち溢れていた。
 走れ、走れ、走れ、と何かに急かされるようにミサイルや銃弾が飛び交う戦場を鈍重な機体で生き残る。

 そのために己は在るのだというように彼女の思考は戦闘に染まり上がる。
 瞬間思考。
 機体から与えられる情報のすべてを処理し、優先順位をつけていく。
 ミサイルの威力は高いが着弾まで余裕がある。ならば、優先的に破壊するべきものは弾速の早いライフルを持った機体。
 接近してくる機体もあるだろうが、弾丸の速度で迫るわけではない。
「腕部、電磁パルス発生! フォースウィップ始動!」
 機体の腕部に装備されたガントレットからフォースウィップが伸び、瞬時に射撃を行おうとした機体を捉える。

「自分を狙ったのは間違いではない。初戦は頑丈さとパワーだけが取り柄の量産機だ!」
 だが、そのパワーを侮ってはならない。
 フォースウィップによって捕縛した機体を引き寄せ、パワークローによって叩き潰す。コクピットブロックは避けてはいるものの、見た目には完全に押しつぶされたような機体を投げ捨てる。
 それは大げさではあったけれど、自分の機体を取り囲む者たちに対する威嚇も兼ねていた。
 破壊的なパワーを目の前にして、己もああなるのではと想像しないものはいない。それは躊躇いとなって一瞬であったとしても致命的な隙となる。

「さぁ戦え! 敵を発見したならば! 烏合の衆でないならば! 走れ!」
 誰にいうでもない。
 己に、他者に、その言葉を叩きつけるように機体が走る。スラスターが噴き、圧倒的な推力で重装甲の機体が飛ぶ。
 フォースウィップが敵を捉え叩き潰す。どれだけの敵集団がいようとも構わない。元より圧倒的不利な戦いには慣れている。
 そのために機体なのだから。
 目的を果たすために、己の存在意義を果たすために、破壊する。
 生命は破壊しない。それは取り返しのつかないことだとすでに頭ではなく、魂のどこかが知っている。

 だからこそ、意識的ではないのかも知れないがコクピットブロックは狙わない。
「戦え! 目の前にいるものが敵だ! 戦わなければ何もかも喪うことになるのだから―――!」
 その働きはまさに獅子奮迅であった。
 重装甲故に弾丸は効かず、あらゆる攻撃の機先を制する様に放たれるフォースウィップが満足な連携さえも取らせない。
 その圧倒的な個としての一を見せつけるように小枝子は走り続ける。
 自分が何にも気がついていないのだとしても、今此処に在るという意味だけを胸に抱いて、戦うことを続けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
騎士として真っ当に武を競いたい欲求が無いと言えば嘘になりますが…
作戦目標が観戦している以上、手の内を見せぬ方が良いですね

ロシナンテⅣの装備は剣のみ
地形をセンサーで●情報収集
直線機動力が削がれる入り組んだ工場地形を●推力移動の姿勢制御織り交ぜた建物●踏みつけ3次元機動
敵を翻弄し●瞬間思考力で攻撃●見切り躱してUC
機関銃奪取しコクピット避け主要箇所●乱れ撃ち
以後は剣を用いたり、倒した敵機から銃を補給しつつ戦闘続行
数を減らしてゆきます

他国工作員と内通者によって強奪された機体
足がつきやすく、国際間の火種にもなり得るそれを偽装無しで運用とは…
データを抜かれ裏市場に流された?
後で入手経路を調べたい所です



 戦いばかりの日常にあって、そこに意義を見出す者もあるのだとすれば、純粋に技術を、技量を高めたいと感じる高潔なる者もまたいるはずであろう。
「騎士として真っ当に武を競いたい欲求が無いと言えば嘘になりますが……」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、己の中にある騎士道精神に則るのであればこそ、そのような感情を持つこともあるだろう。
 だが此処は敵地であると同然の場所―――『闘技場』である。
 小国家であるフォン・リィゥ共和国。
 鉱山を背に守られ、生産施設プラントを地下工場群を障害物として存在するが故に容易に侵攻出来ぬ立地にある小国家である。
 だからこそ、戦いとはわずかであるが距離を置くことのできる国であった。けれど、それでもなお、人々の心は荒む。

 戦いから遠ざかっているからこそ、娯楽としてキャバリア同士の賭け試合を公的に行うというのは争乱の中にあるクロムキャバリアという世界にあっては皮肉以外の何物でもなかった。
「……作戦目標が観戦しているいじょう、手の内を見せぬほうが良いですね」
 トリテレイアはキャバリア『ロシナンテⅣ』を駆り、量産型キャバリアを相手取りながらバトルロイヤル方式の予選試合を戦う。
 この状況、映像は国営的な賭け試合であるがゆえに国民やシード闘士たちにも自由に見ることができる。
 それはつまり猟兵たちが追うオブリビオンマシンの搭乗者にもこちらの動きが筒抜けであるということだ。

 だからこそ、トリテレイアは己の機体の性能、武装、戦術をひた隠すようにして戦う。
「実戦です、手癖の悪さはご容赦を」
 今の『ロシナンテⅣ』の武装は剣だけだ。手の内を見せぬようにと装備を最小限にしたのはいいが、飛び道具の前には容易に敵に近づくことはできない。
 損傷を避けつつ戦わなければならないトリテレイアが取ったのは、銀河帝国所属ウォーマシン・臨時武装調達法(システム・マルチウェポンマスタリー・スティール)―――有り体にいえば、敵武装の強奪である。
 工場群の地形を熟知した機動で『ロシナンテⅣ』の機体が三次元の立体機動を描き、量産型キャバリアに迫る。
「この動き―――! まさか、こっちの武器を奪うつもりか!」
 相手もさるものである。
 こちらの狙いを瞬時に理解したのだろう。だが、その思考もまた瞬間的な思考が可能なウォーマシンたるトリテレイアにとっては遅い判断であったと言わざるを得ない。

 量産型キャバリアの持つ機関銃を奪い、銃口をぐるりと回転させて向ける。
「この種の武装の心得もありますよ……ええ、多芸がモットーでありますゆえに」
 コクピットブロックを避けた機関銃の斉射によってキャバリアが膝をつく。
 そのまま予備の弾倉を頂き、トリテレイアは新たなる敵影へと進む。確実に数を減らしつつ在るバトルロイヤルの参加者たち。
 このままで推移すれば、予選突破の20名は殆どが猟兵であろう。後は決勝戦に参加してくるシード闘士たちと、その中にいるであろうオブリビオンマシンを倒すだけだ。

 だが、トリテレイアには未だ気がかりなことがあった。
 そう、『セラフィム・リッパー』である。破損している箇所が多く補填、補修されてはいるが、間違いなくシード闘士のキャバリアの一機は『セラフィム・リッパー』である。
『グリプ5』において他国工作員と内通者によって強奪された機体。
 それをこの近隣国であるフォン・リィゥ共和国が知らぬわけがない。ならば、その機体が此処で闘技場の機体として運用されていることにもトリテレイアは疑問を抱くのだ。
「―――足がつきやすく、国家間の火種にも成り得るそれを偽装為しで運用とは……データを抜かれ裏市場に流された……? 入手経路を調べたいところですが……」
 如何なる理由があったのだろうか。
 今は判断材料が少ない。
 どちらにせよ、この予選を戦い抜いた後にある補給のタイミングで知ることができるだろうか?
 仮に『グリプ5』で邂逅した2号機と3号機と同じくオブリビオンマシンであったのだとすれば、あの機体の損壊事態が不可解である。
 尋常ならざる性能を持ち、パイロットの心を歪めるオブリビオンマシンにしては、猟兵以外に損傷を受けさせられたというのがあまりにも辻褄が合わない。

 そんなことをトリテレイアは考えながら、新たに量産型キャバリアをまた一体、下すのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!(お約束

とまあ控室だとひどいことになるかもですが
情報収集のためにも目立つ作戦です
ホントですってば!

バトルロイヤルはCoyote(機動力高カスタム)を借りて戦いますね
壊れてもシリカ(猫)に怒られませんし!
ヒット&アウェイでいっきまーす!

敵機に接近したら標準兵装で!
散弾砲で怯ませてからのナイフの一撃で頭部を破壊
敵機からの散弾砲はともかく
ナイフの一撃はナイフで受け止めます
わらわらと敵機が集まってきたら一網打尽チャンス!
「手数こそ正義!参ります!」
手数重視の【疾風怒濤】で仕留めますよ!

※アドリブ連携OK



 キャバリア同士の賭け試合。
 それはバトルロイヤル方式で行われるフォン・リィゥ共和国における公然とした娯楽の提供であった。
 生命の保証のない危険な戦いであるからこそ、多額のファイトマネーが支払われる。
 勝てば富を。負ければ生命すら喪う危険がある。
 そのリスクを前に平穏なる世界を知る者は尻込みするかもしれない。けれど、クロムキャバリアは平穏という言葉の意味すら虚像と化すほどに荒廃した世界である。
 己の生命すらも天秤に掛ける荒くれ者たちがひしめくのが、このキャバリア同士による賭け試合―――『闘技場』の闘士たちである。

「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!」
 お約束の名乗り口上で現れたサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は闘技場への参加者、つまりキャバリア乗りたちのいる控室で、どろんとやってみせたのである。
 凄まじい胆力である。
 とうてい真似できない。彼女の情報収集のために敢えて、このような行動に出たのだが、本当でござるか~? と誰も突っ込まないのでサージェは内心でホントですってば! と一人で気持ちを奮い立たせるのである。
「いや、流石にその胸は目立つでしょ」
「それで潜むのは無理」
「むしろ、ちょっと分けて欲しい」
 などなど控室が男女に別れていたのはある意味で幸いであったかもしれない。年若いサージェのようなパイロットは妹分としてわいわいきゃいきゃい可愛がられるものである。

「も~! 本当にクノイチなんですってばぁ!」
 そんなサージェの言葉は軽く流され、バトルロイヤルが開始される。
 あれだけ和気あいあいとしていた控室であったが、戦場に出れば命のやり取りが行われてしまう。
 刹那的な交流であったとしても、サージェは誰も死なせるつもりはなかった。
 彼女が闘技場で駆るのは他の量産型キャバリアと同じく『Coyote』と呼ばれる低コスト機である。
 高機動型にカスタマイズしてもらってはいるが、本来の彼女の乗機ではないのが彼女を知る者であれば首を傾げただろう。

 その理由は単純にして明快である。
「借り物なら壊れてもシリカに怒られませんからね!」
 胸を張っていうことではないが、なるほどと頷ける。しばしばキャバリアを損壊させてしまう戦いをするサージェはとてもよく怒られるのだ。
 それが身の安全を守るために必要なものであるからではあるが、やっぱり怒られたくないのだ。

「ヒット&アウェイでいっきまーす!」
 カスタマイズされているとはいえ、他の量産型キャバリアと機動や武装は大きく変わることはない。
 散弾で相手をひるませてからのナイフの一撃で頭部を破壊する。
 そのセオリーに則った戦い方で順調に撃破数を稼いでいく。
「やるじゃないか! 変わった新入りだと思っていたが、楽しませてくれる!」
 このバトルロイヤル方式に置いて味方はいない。
 全方位すべての機体が敵なのだ。控室で和気あいあいとしていたパイロットであっても、ここでは真剣勝負だ。
 ナイフとナイフがぶつかりあい火花が散る。少しの間とは言え見知った相手だ。けれど、それで動きを止めることはできない。

 ぎりぎりとナイフ同士が鍔迫り合いするように火花を散らせていると、膠着状態にある二機を仕留めようと量産型キャバリアが集まってくる。
「一網打尽チャンス! 手数こそ正義! 参りますよ!」
 サージェの瞳がユーベルコードに輝く。
 機体が違えど、彼女のユーベルコードによって放たれるナイフの連撃は疾風怒濤(クリティカルアサシン)の如し。
「そにっくぶろー!」
 放たれたナイフの連撃がコクピットブロックを外して放たれ、集まってきたキャバリアたちを言葉通り一網打尽にして下す。

 その機体性能の限界まで引き上げられた機動は、見事な連撃であったが、やはり機体がきしむ。
 フレームがまたもや保たなくなりそうな気配を感じつつ、サージェはバトルロイヤルの終了まで機体を持たせるために腐心するのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
騒乱の渦中に在る世界ですが、政情・経済が比較的安定している国も存在するのですね
しかしこれまで見てきた歪みとは、また違った形の問題を抱えている様だ

それが本題ではないとはいえ。あまりにも危うい…


※キャバリア騎乗戦闘

あまり目立つのも得策ではありません
必要最低限の損耗で本戦に進み、捻出した時間でオブリビオンマシンを特定しなくては

他心智證通を発動
読心術+聞き耳で敵意を持って向かってくる機体を選別

動体視力+早業を用いたキャバリアライフルで的確に武装を射貫いて無力化する

接近戦を仕掛けてくる敵は見切り+残像で躱してグラップル+気絶攻撃
ブラストナックルでコクピットを狙い、パイロットは失神させる


…見られている?



「騒乱の渦中にある世界であすが、政情・経済が比較的安定している国も存在するのですね……」
 戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は今回の事件の舞台となった小国家、フォン・リィゥ共和国の状況を見遣り、そう評した。
 クロムキャバリアは100年戦争と言われるほど戦争が多発し、小国家同士が緊張状態にある世界である。
 どこへ赴いても争いの跡があり、紛争が絶えることはない。
 それがオブリビオンマシンの介入によって引き起こされていることを猟兵たちは知ることができても、この世界に生きる人々には知る由もないことだ。
「しかし、これまで見てきた歪みとは、また違った形の問題を抱えている様だ」

 蔵乃祐は見た。
 鉱山を背にし、生産施設プラントを地下工場群という障害に囲まれた国は、確かに戦いというものから少しだけではあるが遠のいた小国家である。
 だが、そんなある意味で平穏に近い国であっても、人々は争いをやめない。隣国との争いがなければ、内側で公然とキャバリア同士による賭け試合が国営として営まれている。
 それが区画整理された地下工場群とは別に用意された戦場であり、『闘技場』と呼ばれるあちこちに戦いの跡が残る大地であった。
「戦いがなければ、戦いを望む。刺激、娯楽として戦いを望むというのは、それが今回の事件の本題ではないとは言え、あまりにも危うい……」
 この状況をオブリビオンマシンが生み出したのだとすれば、オブリビオンマシンを破壊するだけでは抜本的な解決にはならないだろう。
 けれど、それでも猟兵は戦わなければならない。例え小さな一歩であったとしても世界をより良いものへと変えるためには、その一歩こそが肝要なのである。

「しかし、あまり目立つのも得策ではありません」
 そう、この予選試合はシード闘士……その中にいるオブリビオンマシンの搭乗者にも見られている。
 蔵乃祐もまた同じ様に対策を取るように必要最低限の消耗で本戦に進むため、そして捻出した時間でオブリビオンマシンを特定するために戦うのだ。

「至知百千億那由他心念正覺―――」
 キャバリアに騎乗した蔵乃祐のユーベルコードが唱えられる。
 他心智證通(タシンチショウツウ)と呼ばれるユーベルコードは恐るべきことに他者の心の内を読み解く。
 それは相対する同じく予選試合に参加したキャバリア乗りたちの思考をも蔵乃祐は読み切り、己に敵意を持って向かってくる機体を選別するのだ。
 無理にキャバリアを破壊する必要はない。
 消耗を少なくするということは、無理に戦わずバトルロイヤルを終えることが最上である。

「む―――!」
 敵意が感じる。
 誰も彼もが刺激を求めている。平穏に暮らせないことはない国であっても、それでもなお刺激を、娯楽を求めている。
 スリルという名の刺激は人の生を活性化させるものであったことだろう。彼らは富のため、名声のため、そういった動機を後付にして、己の生を実感するためにこのような危険極まりない賭け試合に望んでいるのだ。
「生きる実感を欲するか―――死んでしまっては何もなせぬというのに」
 敵意、悪意には、それ相応のものでもって相対する。
 キャバリアのライフルが火を噴き、相対する量産型キャバリアの武装だけを的確に打ち貫く。

 武装が破壊されたじろぐ機体へと突進すれば、腕部による打撃によってコクピットを狙い、衝撃だけを内部に通してパイロットを気絶させた。
「不殺、と言うには易し。ですが、これもまた僕の戦いであればなおのこと。生命を奪うのは簡単ですが、あまりにも陳腐。水が上から下に流れるのが必定であるように、当たり前のことではありますが、それに逆行し、叛逆してこそ人の戦いであれば―――」
 パイロットの意識を喪わせた機体を他の機体の射撃や流れ弾に当たらぬように横たえ、新たな悪意を迎え撃つ蔵乃祐。

 だが、ふと視線を感じる。
「……見られている?」
 それはこの闘技場たる地下工場群を見下ろすように配置されたシード闘士たちの駆るキャバリアのカメラアイから感じる視線であった。
 カッパーの装甲職をした機体。
 その機体のツインアイが妖しく煌めく。それはまるで闘技場を疾駆する猟兵達を見定めるように。蔵乃祐にはそれがとてつもなく不快に感じる。
 オブリビオンマシンが過去の化身である以上に騒乱を呼ぶ者であるからこそ、感じる感情。

 それを蔵乃祐は嫌というほど、バトルロイヤルが終わりを告げるまで感じるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『マシンも人も補給の時間』

POW   :    機体の搬入、重たい荷物を運ぶのを手伝う

SPD   :    燃料やパーツ、食料などの配給を手伝う

WIZ   :    電装、パーツの在庫などのデータ管理、ムードを盛り上げる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 予選試合のバトルロイヤルが終了した音が響く。
 バトルロイヤルを勝ち抜いた機体の数は15機。それはすべてが猟兵達の駆る機体であった。
 ほか全てのキャバリアたちは猟兵達によって排除されており、シード闘士が駆るキャバリアを含めた30機で決勝のバトルロイヤルが執り行われる。

「補給、整備の時間は1時間。2時間後には決勝試合が執り行われる。それまでに為すべきことをなせ!」
 そう告げられ、各々に補給や整備の時間が与えられる。
 猟兵達の戦いはこれで終わりではない。もちろん、決勝試合でオブリビオンマシンを打ち倒さなければならないのだが、そのオブリビオンマシンを突き止めるのもまた猟兵達の戦いだ。

 グリモア猟兵は事前に二機のキャバリアがオブリビオンマシンである可能性を提示していた。
 一体はこの小国家の賭け試合で無敗伝説を誇るキャバリア乗りであるチャンピオンが駆るカッパーの装甲を持つキャバリア。
 もう一体は、幾人かの猟兵は数度戦ったことの在る最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』のレストア機。
 おそらく1号機であり、2号機、3号機がオブリビオンマシンであったことからオブリビオンマシンではないかと考える者もあったことだろう。
 けれど、猟兵達の訪れる前に開催されたチャンピオン不在の試合において、この『セラフィム・リッパー』1号機は量産型キャバリアを駆る、今はこの国にいないパイロットにより打倒されているという事実がある。

 もし、それが本当ならば、量産型キャバリアに倒されるオブリビオンマシンなどいるはずがない。
 いくつかの因縁がこの小国家に交錯している。
 それは猟兵たちが紡いだ縁もあれば、他の誰かが紡いだ縁でもある。

 限られた時間では在るが、オブリビオンマシンに対応するために装備を整備するのもいいだろう。
 破壊されたキャバリアを運び出したり、処置を施すのを手伝うのもいいだろう。
 情報を集め、オブリビオンマシンへ繋がる道筋を見つけ、本戦でこれを打倒する。
 そのために与えられた猶予を無駄にはできないのだから―――。
ステラ・テルキーネス
●心境

ふう、疲れました。
あと凄い痛いです(頭を打ったらしい)

●行動
判定:POW
ボクはチャンピオンが怪しいと思うのですけどねー。
でもこっそり調査するスキルはないので自分の機体の整備に専念します。
ごめんなさい。整備は出来ないので専門の整備員さんに任せるので、荷物運びで手伝います。

こー見えても(そーしか見えないともいう)力には自信があります。
『怪力』をアピールして運搬の手伝いを言い出します。
手伝いをする合間に、機会が合ったらチャンピオンについて聞き込みします。
一応参加選手がチャンピオンについて情報集めるのは不自然じゃないですしねー。

目指せ優勝。目指せ国立(注:たぶん違う)



 バトルロイヤルの予選試合から機体を『闘技場』の外へと戻したステラ・テルキーネス(バイオモンスターのミュータントヒーロー・f19520)は乗機である『ステラ・ピスケス』から頭を擦りながら降りてきていた。
「ふう、疲れました。あとすごい痛いです」
 どうやら機体に慣れていないことも相まって無茶苦茶な機動でコクピット内部のあちこちに頭をぶつけてしまったようだった。
 あれだけの速度が体にかかる重力加速度は凄まじいものであったことだろう。
 それに耐えるには並の体では不可能であるが、バイオモンスターである彼女にとっては、問題のないことであった。

 機体を決勝試合が始まるまでの間ハンガーに預け、自分の乗機の整備に専念しようと意気込んだのだ。
 しかし、ステラはこの機体を乗機としてはいるが、つい先日落ちてきたし、拾っただけである。整備の仕方などわかるわけもなく、すごすごと『闘技場』付きの整備士に頼むことになったのだ。
「ごめんなさい。ごめんなさい。整備できると言ってしまったんですけど、やっぱりできません。荷物運びを手伝いますから、どうかお願いします」
 ステラは早々に泣きついたのだが、整備士の男性は苦笑いしながら引き受けてくれる。
 少し治安の悪い小国家であっても良い人はいるものである。
「荷物を運んでくれるって言うならありがたいけどよ、お嬢ちゃんだいじょうぶかよ?」

 そんなふうに訝しむ整備士の男性。
 確かにステラはバイオモンスターであるがゆえに長身である。だが、猟兵である彼女は一般の人間には違和感を感じさせない。
 少し身長の高い女性、くらいにしか思っていないのだろう。だからこそ、出た言葉であった。
「こー見えても力には自信があります! 任せてくださいよ!」
 ふーん! と自信満々に言うステラに整備士の男性は笑う。
 それは頼もしいと。ならば、自分がきっちりと機体の整備を請け負うから、そこらの荷物を頼むと告げて整備に入ってくれる。

「よかった……ほんとうに良い人で! さて、がんばりますよ~!」
 ステラは勢いのままに荷物を運び出す。
 中には何が入っているのだといいたく為るような重たいものもあったが、ステラのバイオモンスターとしての膂力であれば運ぶことのできないものなどなかった。
 ついでに無敗伝説を持つというチャンピオンについても尋ねてみようとあちこちの整備士にたずねて回る。
「ああ、チャンピオンね。確かに強いよ。以前はまあ……とにかくキレイな戦い方をする人だったよ」
「機体を整備する俺らに負担を掛ける戦い方は二流だって言う位だったからな」
「けど、最近はめっきりそういう事言わなくなったよな。戦い方が力押しっていうか、新しいキャバリアに乗り換えてからだよな」

 そんな話を聞いてステラは考える。
 まず1つに、今のチャンピオンと以前のチャンピオンとでは戦い方が違う。
 以前は機体を整備する整備士たちの仕事が少ないくらいにキレイな戦い方をするパイロットであったということ。
 だが、最近では機体性能に任せた戦い方をするらしいということ。

「ふむふむ。オブリビオンマシンに乗ったパイロットの心が歪んで破滅的な思想に囚われることは多いって聞きますし……」
 ステラは聞きかじった内容を反芻する。
 オブリビオンマシンに乗って心を歪められた結果、荒い戦い方をするようになったのであれば、やはりオブリビオンマシンはチャンピオンの機体であろうか?
 色々と考えることは多い。
 けれど、ステラは自分を呼ぶ機体の整備をしてくれた整備士の声に振り返って掛けていく。
「一応、チェック項目には目を通しておいたぜ。一応、速度重視の機体ってことはわかってるけど、普通のキャバリアとは使い方が違うかも知れないから、一応シュミレーターで確認しといてくれよな」

 ステラ自身も自分の機体について詳しくはない。
 けれど、整備士てもらって自分の癖のようなものが染み込んでいくような気配は在る。
 ならば、ステラがやるべきことは一つだ。
 己に向かってくる敵を打倒し……。
「目指せ優勝。目指せ国立!」
 最後の国立はなんだか違う気がしたが、整備士はその意気だとステラと機体を万全の状態で送り出してくれたのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
さて、補給時間ね。アヤメ、手伝って。
「式神使い」で『迦利』に損傷や要補給箇所がないか精査。
必要があれば、傷口は呪符で塞いでおく。
キャバリアの形をした式神である故に、整備や補給なんてこの程度でいい。
術者が健在なら、式は己の下知を果たす。

さて、整備は終わったし、軽くシード選手の方を回ってきましょ。
特に、この闘技場に君臨するチャンピオンが気になるわね。
「コミュ力」で接する。

ご機嫌よう、ミスター・チャンピオン。あたしは村崎ゆかり、陰陽師。まあ、分かりやすくいえば呪術師ね。
まあ、新参者としてではあるけれど、このショウを盛り上げてみせるから、皆さんよろしく。

出来ればチャンピオンと握手して、感覚を探りたい。



 キャバリアとは鋼鉄の巨人である。
 人の手による整備は必要であるが、最小限のもので済ますことのできる機体もまた存在している。
『闘技場』において予選を勝ち抜いたキャバリアたちが次々と整備のためにハンガーへと入り込んでくる中、整備士たちに任せること無く自分たちの手で整備を行うのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)とユーベルコード、愛奴召喚(アイドショウカン)によって恋人にしたエルフのクノイチの式神・アヤメである。
「さて、補給時間ね。アヤメ、手伝って」
「はい、呪符の用意もできておりますよ。こちらに」
 そう言ってゆかりに手渡したのは式神用の呪符である。ゆかりの操る機甲式『GPD-331迦利(カーリー)』は式神の一種である。

 前進に呪が刻まれ自律行動が前提であるが、損傷箇所などは呪符によって修復することができる。
「キャバリアの形をした式神っていうのも便利でいいわね。整備や補給なんかも、この呪符で行えるんだから」
 術者であるゆかりが健在であるならば、操る式は己の下知を果たす。
 それが式神使いとしての本領であろう。
 予選試合の戦いは殆どが量産型キャバリアとの戦いであったが、損傷らしい損傷と言えば、機体の鋭角であろう。
 オーラの力によって保護されているとは言え、何度も突撃を繰り返せば摩耗していく。呪符を貼り付け、修復している間にゆかりは周囲を見回す。

「シード闘士の方々、気になりますか?」
 式神のアヤメがゆかりの隣に立って言う。
 オブリビオンマシンを乗機とする闘士がいる以上、この後に控える決勝試合こそがオブリビオンマシンを打倒する絶好の機会である。
 周囲のキャバリアをオブリビオンマシン化していく謎のユーベルコードも気がかりではあるが、今はその大本を探ることが先決だ。
「ええ、特に闘技場に君臨するチャンピオンが気になるわね……どこにいるか目星は付いている?」
 アヤメに尋ねると、すぐに答えが返ってくる。
 別室に設けられた専用の控室にチャンピオンは座しているようだった。

「そ、ならちょっと尋ねてみましょうか」
 アポイントはないけれど、同じ闘技場で戦う闘士同士であれば辿り着けないこともないだろう。
 アヤメと共にチャンピオンを尋ねるゆかり。
 無敗伝説を持つチャンピオンの控室とあって、そこは他の一室とは別物であった。
「ご機嫌よう、ミスター・チャンピオン。あたしは村崎ゆかり、陰陽師。まあ、わかりやすく言えば呪術師ね」
 その言葉にチャンピオンは一瞥をくべるのみだった。
 クロムキャバリアにおいてサイキックキャバリアなどの存在はあれど、総じて戦いを決するのはいつも鋼鉄の巨人であるキャバリアの力だ。
 魔法や魔術といった類の力にはあまり興味がないのかもしれない。

「まあ、新参者としてではあるけれど、このショウを盛り上げてみせるから、よろしく」
 にこやかに余裕を持ってゆかりは手を差し伸べる。
 握手が握り返されることはないだろうな、と予感はしていたが、やはり返ってくることはない。
「盛り上げてくれるのは勝手だが、怪我をしたくなければ俺の前に立たないことだ。命の保証はしかねるからな。どんなことが起ころうが、どんな相手だろうが、俺の勝利は代わりないからな」
 差し伸べた手が空振りになったことをゆかりは惜しまない。
 チャンピオンの言葉に不敵にゆかりは笑って立ち去る。なるほど、と得心が行く。もしも、彼がオブリビオンマシンによって心を歪められたのだとしたら、あの勝利、己の持つ無敗伝説に対する執着が、それであろう。

「ま、バトルロイヤルであることが幸いしたわね。オブリビオンマシンは必ず闘技場に出てくる。逃げることはしないでしょうし、相対すれば必ずオブリビオンマシンだってわかる」
 だからこそ、目星をつけておいたのだ。
 後は、戦いの火蓋が切って落とされるのを待つのみである―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
ボクはずばり…セラフィム・リッパ‐が怪しいと思うわ。
忘れられないのよね、あの最初の事件…フュンフくんを取り込んだオブリビオンマシンの一件よ。

擬態…いえ、あれはまるで寄生だったわね。
アレと同種の事態なら、必要な時まで潜伏するぐらいの忍耐力はふつうにありそうね。
むしろオブリビオンマシンの種を配布するオーディエンスってオチすらありそうよ。

リモート・レプリカントでパールバーティには遠隔操作でセラフィム・リッパーに関しての情報を施設から『ハッキング』で『情報収集』させるわ。
フォローARICAお願いね。

ボクはアリバイ作りのためにパーツや燃料の搬入の手伝いをやってるわね。
整備員さん。ボクの愛機いかすでしょ♪



 戦いの記憶によって紐解かれるものがある。
 それは『グリプ5』における騒乱の記憶だ。はじめてそこで起こった事件、オブリビオンマシンによる最新鋭キャバリア暴走事故をユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は思い出していた。
 そう、『セラフィム・リッパー』。
 あの時オブリビオンマシン化していたキャバリアの名である。その名前と同一の機体が、フォン・リィゥ共和国の闘技場に存在するということはユーリーにとってはどうにもきな臭いものであったのだ。
「忘れられないのよね、あの最初の事件……フュンフくんを取り込んだオブリビオンマシンの一件」
 何故あの機体……あの事故の時オブリビオンマシン化していたのは3号機であった。その後に続いた事件でもまた『セラフィム・リッパー』は2号機がオブリビオンマシン化し、パイロットの心を歪めていた。

 ならば、今回姿を見せた1号機はどうであろうか。
「擬態……いえ、あれはまるで寄生だったわね。アレと同種の事態なら、必要な時まで潜伏するぐらいの忍耐力は普通にありそうね。むしろ、オブリビオンマシンの種を配布するオーディエンスってオチすらありそうよ」
 深読みしすぎかもしれない。
 けれど、その穿ったものの見方が何かを引き寄せることだってあるかもしれない。それはある意味で当然の帰結であったからだ。

「それじゃ、ARICA、フォローお願いね」
 ユーリーはリモート・レプリカントと呼ばれるユーベルコードによって脳波からキャバリア『パールバーティ』を遠隔操作し、自身はパーツや燃料の搬入の手伝いを行う。
 いわゆるアリバイ作りというやつだ。
 もっとも、『パールバーティ』に搭載された学習型AI『ARICA』がバレるようなヘマをするとも思えないが、保険は掛けておいて損はない。
 キャバリア『パールバーティ』から闘技場施設に存在する『セラフィム・リッパー』の情報を探っていく。

「―――ふむ」
 機体が流れてきたのは別の国から……少なくとも『グリプ5』からということではないようだった。
 1号機は内通者と敵国の手引によって強奪されたということであったが『フォン・リィゥ共和国』が直接関与していたというわけではないようだった。
 機体と共に渡ってきたのがパイロットであるが、このパイロットが前回のチャンピオン欠場時に量産型キャバリアでもって『セラフィム・リッパー』を下した者であるようだった。
 名前は隠匿されている―――いや、闘士情報を抹消されている。

「どういうことだろう? 普通優勝したパイロットなら名前は絶対残すはずなのに」
 けれど名前も存在も経歴も塗りつぶされるようにデータベースから消されているのだ。まるで故意に誰かが消し去ったかのように。
 機体はその後、損壊したパーツを他のキャバリアのパーツを持って補填したようだ。それがあのシード闘士の乗る『セラフィム・リッパー』のパッチワークしたような機体なのだろう。
 出自はどうあれ、あの『セラフィム・リッパー』1号機事態はオブリビオンマシンである可能性はないようだった。

「空振りだったか……でも、確証が持てたのは大きいね。なら、消去法でオブリビオンマシンはチャンピオンの機体、か」
 いざ決勝試合が始まって猟兵達の動きが、二機のキャバリアに分散することを潰せたという点においてはユーリーの調査は無駄ではなかった。
「え、なんだって?」
 隣にいた整備士がユーリーの独り言に反応するが、ユーリーは手を振ってにこやかに笑う。

「ううん。整備員さん。ボクの愛機いかすでしょ♪」
 誤魔化す言葉であったが、その言葉に偽りはない。ユーリーは調査の手応えを得た上で、決勝試合に挑む。
 ここからが今回の事件の本題だ。
 相手は無敗伝説を誇るパイロットにオブリビオンマシン。激戦が予想されるが、それでもユーリーは負ける気などさらさらなかったのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
チャンピオンとセラフィム・リッパー、どっちがオブリビオンマシンか。
まあ、無敗のチャンピオンの方が好みだな。
ちょっと、絡んでみるかね。

先程のマイクパフォーマンスなど忘れたような風情で気安くチャンピオンに話しかけます。

よー、調子はどうだい?

一応、会話の中でオブリビオンマシンの影響下にあるか試してみますが、根本的にチャンピオンもセラフィム・リッパーもどちらも破壊すればいいという考えなのでそこまで真摯ではありません。

おっと時間か。じゃあな、良い仕合をしようぜ。

『スルト』は『スルト・スキン』により短い時間でも勝手に自己進化・自己再生しています。

アドリブ歓迎



 グリモア猟兵から提示されたオブリビオンマシンである可能性が高い二機のキャバリア。
 無敗伝説を誇る闘技場のチャンピオンの駆るキャバリア。
 そして、『グリプ5』の騒乱に関与した猟兵であれば記憶に新しいオブリビオンマシン『セラフィム・リッパー』。
 そのどちらかがオブリビオンマシンであり、周囲のキャバリアをオブリビオンマシン化するという謎のユーベルコードを持っている。
 徐々に周囲のキャバリアをオブリビオンマシン化されてしまえば、小国家が争いの中に巻き込まれていくのは必然であったことだろう。
 そうなってしまえば、クロムキャバリアにおける平穏はさらに遠く。

「チャンピオンと『セラフィム・リッパー』、どっちがオブリビオンマシンか。まあ、無敗のチャンピオンの方が好みだな」
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は、個人的な嗜好でもって直感的であるがチャンピオンの方がオブリビオンマシンであると踏んだ―――いや、そうであるといいな、というくらいの気分であったのだろう。
 だからこそ、調査という名目のままに歩を進める。ちょっと絡んでみるかね、とどちらが悪役かわからぬ不敵な笑みを浮かべるのだった。

 それにアレクサンドルを見やるシード闘士たちの視線が鋭い。
 それもそのはずだ。
 彼は先の予選試合においてマイクパフォーマンスという挑発を行っていたのだ。けれど、そんな刺さる視線をどこか心地よく感じながらアレクサンドルは無敗のチャンピオンの専用控室の扉を開く。
「よー、調子はどうだい?」
 さすがは無敗伝説を誇るチャンピオンの控室である。
 専用であり、他の控室とは扱いが違うことが一目でわかる。こちらに視線をよこすチャンピオンの眼光もまた鋭い。
 それはアレクサンドルのマイクパフォーマンスに起因するものではなかった。

 気安いアレクサンドルの言葉に耳を方向けはするが言葉を発することはしない。その重圧はアレクサンドルにも伝わる。
 これまでクロムキャバリアにおいて『エース』と呼ばれるパイロットたちと度々相対してきたが、それに類するたぐいの重圧である。
「人の心配をする前に、自分の心配をすることだな。俺の勝利は揺るがないが、お前の生命の保証はしかねる。後ろの奴等がお前をどうするかは、俺の関知するところではないからな」
 そう言ってチャンピオンが視線をアレクサンドルの背後にいる者たち―――挑発されたシード闘士たちを促す。
 しかし、アレクサンドルは大げさに肩をすくめ、なんでもないというように言葉を発するのだ。

「有象無象には興味ねーよ。俺が興味あるのはアンタだけだ。いわゆる『エース』ってやつだろう、アンタ。無敗伝説……ああ、アンタが欠場したっていう試合で優勝をかっさらった量産型キャバリアのパイロットがいるって言ったっけなぁ―――」
 その話題を振った瞬間、アレクサンドルはこれまでにない重圧を感じる。
 それは穢れなき無敗伝説に執着するチャンピオンの鋭い殺気のこもった眼光だった。
 ギラギラとした光。
 それはいっそ狂気と言ってもいいほどの眼光だった。キャバリアも何も関係ない。己の執着するものを奪われまいとする獣の如き眼光。
 今が試合でなくても素手でもアレクサンドルに襲いかかりそうなほどの凄まじい威圧感。

「おっと時間か」
 決勝試合を告げるブザーが響く。
 このまま素手でやりあってもよかったかもしれないとアレクサンドルは本気か冗談かわからないことを思いながら、己の乗機『スルト』の元へ歩みをすすめる。
「じゃあな、良い仕合をしようぜ」
 己の前に立ちふさがる者がいるのであれば、全て破壊すればいい。
 どちらかがオブリビオンマシンであろうと関係ない。最後に闘技場に立っているのが己であれば万事解決であるのだから。

 己の機体、漆黒のオブリビオンマシン『スルト』を見上げる。
「この世界には『エース』てやつが大勢いるな。戦乱の世界、あながち闘争が人間の進化を促すっていうのも間違いじゃあないのかもな」
 楽しみが一つ増えた。
 そういうかのようにアレクサンドルもまた新たな戦いの予感に笑うのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語

戦闘用なのに申し訳ないが、力を貸してくれMinerva
配給を手伝う
そういえば、シード選手はどういう人なんだ?初参加で分からないんだ

Minerva専用端末を耳につけ【情報収集】する
Minervaには【世界知識】を使って機体の違和感を調べてもらい、俺はシード選手達の情報を集める
必要なら彼らの事を知らないと【言いくるめ】ながら尋ねたり、メガリスを使う
【怪力】でパーツや燃料を運ぶのを手伝いながら【視力】【聞き耳】で色んな人物や機体から見つけられる物が無いか探す



 キャバリアの多くには戦闘を補助するオペレーティングシステムや、それに準ずるAIを搭載した機体がある。
 殆どの場合、機体の制御であったりパイロットに必要な情報を適時提供するための役割をもつのだが、猟兵の多くはAIに人格をもたせたものを愛用する者が多いのもまた事実であろう。
 ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)の駆るキャバリア『銀の銃兵』にもまた戦闘補助システム〝Minerva〟と呼ばれるAIが搭載されている。
 主に戦闘を補助するためのオペレーティングシステムであるが、情報収集に加え、自我が存在するように流暢な会話さえも可能としているのだ。

 そのMinerva専用端末であるインカムを耳に装着してルイスは決勝試合に参加してくるシード闘士たちの情報を集めようとしていた。
「戦闘用なのに申し訳ないが、力を貸してくれ〝Minerva〟」
『了解しました。こちらは彼らの使う専用キャバリアの情報の精査を』
 互いに役割を分担する。
 ルイスはシード闘士たちの人となりを探っていくことにしたのだ。
 人と人との情報のやり取りで大切なのは距離感であり、持ちつ持たれつというものである。
 見返り無く情報を渡す者などいない。
 もしも、見返りなしに情報を渡す物がいれば、それは余程のお人好しか、もしくは騙そうとする者のどちらかでしかない。

「配給を手伝おう。そっちの荷物を運べばいいのか」
 そういってルイスはデッドマンである己の膂力を頼りに資材などを運び出す。
 整備士たちや、それに準ずる闘技場周辺で働く者たちにとっては、資材を運ぶことさえ重労働だ。それもそのはずだろう、キャバリア用の資材である。
 重機で運ぶほどでもないものは人の手によって運び出さ粘らないのだから。
「その代わりと言ってはなんだが、シード選手はどういう人達なんだろうか? 闘技場事態が初参加でわからないんだ」
 資材を運ぶのを手伝う傍ら、同じ様に働く者たちにルイスは言葉をかける。
 彼らは少し考えた上で言葉を選ぶようにしてルイスにささやくのだ。

「まあ、言ってしまえば荒くれ者って一括にできるわな。だが、チャンピオンは違うぜ? あれは本物だよ。以前はキレイな戦い方をする……高潔な武人って感じだったが、少し前から様子がおかしいんだよな。なんていうか、取り憑かれてるというか……」
 彼らが言うには無敗伝説を誇るチャンピオンの様子が最近おかしいのだという。
 以前までは戦いの中に美学を持つタイプであったようで、魅せる戦い方をするチャンピオンであったようだった。
 けれど、一度機体を新調するだとかで欠場した後から様子がおかしくなったのだという。
 それまで行ってきたキレイな戦い方は鳴りを潜め、勝つためには手段を選ばず、ねじ伏せるような戦いが目立つようになったのだという。

「なるほどな……ありがとう。参考になったよ」
「いいや、こっちこそ手伝ってくれてあんがとよ。試合じゃ死なねぇように立ち回んな」
 じゃあな、と彼らと別れてルイスは情報端末から〝Minerva〟に呼びかける。
『機体の違和感……つまるところオブリビオンマシンである可能性のある機体に該当するのは一機でした』
 流暢なAIの語る言葉にルイスはこれまで聞いてきた整備士たちの言葉と統合し、結論を出す。

「―――なるほどな。機体の新調、欠場によって無敗伝説という記録に唯一ついた欠落……それがオブリビオンマシンによって歪められた心が見せる執着というやつか」
 ルイスは己の出した結論に確信を持って、己の機体へと向かう。
 決勝試合が始まる予告のブザーが響き渡る。
 これからが戦いの本番である。ここから先、闘技場に現れるキャバリアたちはどれも闘技場という蠱毒の中で選りすぐられた技量を持つ者たちばかりだ。
 気を抜くことは出来ない。
 目標を定めた義眼のメガリスが眼帯の奥でうずくように輝くのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
「今回は勝たせていただきました!」
気持ちの良い声で勝ち名乗りを上げる
っと、注目を集めた所で【コミュ力、礼儀作法】を発揮する

「って新参者が威張るのは非礼ですね。背中が怖いですし。お許しいただけるなら、優勝の前祝に一杯奢らせてくださいな」
茶目っ気で誤魔化し、この手の場所には付き物の非公式な宴会スペースでお酒を振舞います
荒くれ相手の処世術と言う奴です

「私はまだ飲めませんので、皆さん楽しんでくださいな」
お酌に回りながら、皆と歓談して【情報収集】を行います
怪しい相手は絞り込むべきですしね

まぁ舐められて悪戯されても困るので、手刀でのビール瓶切りの余興はやっておきますね【グラップル、早業、パフォーマンス】



「今回は勝たせていただきました!」
 それはいうなれば、世渡り上手(カネトコネ)とでも言うべき、才堂・紅葉(お嬢・f08859)の気持ちの良い勝ち名乗りであった。
 彼女の言葉は闘技場という狭いコミュニティを円滑に回すコミュニケーション能力であり、彼女が獲得してきたこれまでの経歴が積み重ねてきた一つの技術であったことだろう。

 バトルロイヤルという乱戦が主戦場である闘技場において敵を作らないということは必須であった。
 特に今回のケースのように本命であるオブリビオンマシンがどこに潜んでいるかわからない状況であれば尚更である。
「って新参者がいばるのは非礼ですね。背中が怖いですし」
 などと冗談を交えながら決勝試合に挑む者たちの控室で紅葉は、その技術を遺憾なく発揮し、冗談めかしたような口調で試合前のピリつく空気を一掃する。
「お許しいただけるなら、優勝の前祝いに一杯奢らせてくださいな」
 にこやかに、それこそ淑女のような微笑みを浮かべて紅葉はシード闘士たちを、この手の場所には付き物の非公式な宴会スペースにいざなう。
 彼女の茶目っ気と、新参者であるからという下手にでた態度は、ギラつくシード闘士たちであっても懐柔するには十分なものであった。

「私はまだ飲めませんので、皆さんで楽しんでくださいな。お代は私持ちにしてありますので、遠慮なく」
 などと言いながら内心では勘定の算段が動いている。
 お酌に周り、徹底的に太鼓持ちのように振る舞う姿は一種の処世術というやつだ。これもまた彼女の経験から来ているものであろう。
「そんな事言わずに一杯―――」
 流石に荒くれ者たちである。紅葉が下手にでれば、彼女を舐めてかかるのは当然であった。

 けれど、紅葉は慌てずにその手を振るい、手刀で持ってビール瓶の口を断ち切る。
「―――まだ飲めない年なんです。分かっていただけましたか?」
 にこり、と微笑み、ビール瓶の口を切ったものを傾け、注ぐ。
 楚々としていながらも有無を言わさぬ迫力に荒くれ者たちと言えど黙る他なかった。
 結果から言えば、宴会に誘ってやってきた闘士たちの中にオブリビオンマシンによって心を歪められた者はいなかった。

 けれど、紅葉はシード闘士たちから情報を引き出していた。
 酒の席であるからこそ口が滑ったというものなのだろう。チャンピオンの変わりように対してである。
 機体を新調してから、どうにも今までのキレイな戦い方からヒールのような機体性能に任せたような乱雑な戦い方になり、敵機を徹底的に破壊しようとする凶暴性を見せる用になったのだという。
 それは今までの無敗伝説を誇ることこそすれ、それに固執するようなことをしなかったチャンピオン像を一変させるには十分な出来事であったのだろう。
「そういうことが……その機体を新調したっていうのは、欠場した試合の時に?」
「ああ、あの時は量産型に乗ったパイロットに優勝かっさらわれたんだよなぁ……どっかの国から流れてきたワンオフ機だって歯が立たなかった。けどまあ、それっきり参加しなくなったから、優勝賞金でも持ってどこか別の闘技場に行ってしまったのかもな」

 紅葉は思いの外、オブリビオンマシンに搭乗している者がチャンピオンであるという確証を強める情報を掴んだ。
 それにチャンピオンが欠場した試合。
 おそらく、ワンオフ機が『セラフィム・リッパー』1号機なのだろう。乗っているのは、「グリプ5」の関係者でもない、この国の闘士であったようだ。
 金に物を言わせて買い取ったはいいが、量産型キャバリアを駆る凄腕のパイロットに返り討ちにあったのだ。
「なら、『セラフィム・リッパー』の線はない―――なら、攻撃の目標はチャンピオンの機体のみね」
 これならば、決勝予選に参加する猟兵達の目標がブレることはないだろう。

 そして、決勝試合の開始を予告するブザーが鳴り響く。
 どたどたとシード闘士たちが己のキャバリアに向かう姿の後から紅葉はゆっくりと歩を進める。
 この先が本番だ。
 キャバリアをオブリビオンマシン化する謎のユーベルコードの存在は未だ掴むことは出来ない。けれど、その大本の尻尾を掴んだのだ。
 あとは、その尻尾を思いっきり踏みつけてやるだけだ―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
整備も補給も特に必要ではありませんし、今のうちに探りを入れてみましょう
オブリビオンマシンが確定出来れば、きっと皆様のお役に立ちます

とはいうものの探偵の素養がある訳ではないですし、機械にも疎いですし……
そうですね……では間近に接してみて感じるものがないか確かめてみましょう
これまでに数多のオブリビオンと相対した経験が役に立つかもしれません

UCで姿を消し決勝前の慌ただしさや喧噪、客席から響いてくる歓声に紛れてそれぞれの機体に近づき、自身に宿る聖性を頼りに感じるものがないか確かめてみます
ついでに周囲で交わされる会話にも聞き耳を立てておきます
(接触事故防止のため、猫さん達に周囲への注意を忘れないで)



 ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)がクロムキャバリアで出会い、心を通わせた神騎『アセナ』は、予選試合の激戦をくぐり抜けてもなお、その純白と透き通るような青の装甲のどこにも陰りをみせることはなかった。
 優美なる機体はまさに『フォン・リィゥ共和国』という欲望と戦禍の渦巻く小国家に置いて掃き溜めに鶴というべきものである。
 その搭乗者であるソナタもまた、闘技場という場所においては似つかわしい存在であったことだろう。

 元より戦うということに対して彼女は積極的ではない。
 争うことよりも争い事態を失くすことに注力する彼女にとって、戦うことによって意義を見出す闘技場は相容れぬものであったのかも知れない。
 けれどオブリビオンマシンによる災いが訪れようとしているのであれば、彼女もまた戦うことを決めるのだ。
 だからこそ、この世界において出会ったサイキックキャバリアである神騎『アセナ』は彼女に従い、その力を振るうのだ。
「整備も補給も特には必要ではありませんから、整備士の方々はお休みしておいてください。わたしは―――そう、少し散策を」
 ソナタはそうたおやかに微笑んでから、自身の機体にエネルギーインゴットなどの補給をしようとした整備士たちを制する。
 彼らに暇を与え、ソナタ自身の足でオブリビオンマシンの特定を急ぐのだ。

 そうすれば、他の猟兵達の役に立てると考えたのだ。
「とはいうものの探偵の素養がある訳ではないですし、機械にも疎いですし……」
 どうやって探りをいれようかとソナタは頭を悩ませる。
 サイキックキャバリアを駆ることができたとしても、それは機械全般に詳しいということにはならない。操縦することと整備することは直結してはいるが、イコールではないのだ。
 ならば、ソナタに取れる択はそう多くはなく、彼女が選ぶ択は―――。

「間近に接してみて感じるものがないか確かめて見ましょう」
 彼女のこれまで多くのオブリビオンと相対した経験が役に立つはずだった。
 過去の化身オブリビオン。
 その機械の体、鋼鉄の巨人であるキャバリアがいつのまにかオブリビオンマシンとしてすり替わっていることによって、クロムキャバリアは騒乱を100年以上も続けている世界である。

 ならば、他の異世界で接したオブリビオンと似た気配があるかもしれない。そう感じたのだ。
「もう……いたずらしちゃ駄目ですよ」
 足元にじゃれ着く仔猫たちがソナタの体に触れ、姿を透明へと変えていく。
 それこそが彼女のユーベルコード、幻妖童歌 其之百六十六『迷子の仔猫』(アナタトアソブカクレンボ)である。物音や体温は消せないが、決勝試合前の慌ただしさや喧騒にまぎれて気にされることもないだろう。

 決勝試合前のエキシビションだろう。
 前座のようにキャバリア同士が演舞のように打ち合わせの在る戦いを観客に見せている。その歓声がキャバリアのハンガーにまで届いているのだ。
 シード闘士たちの機体は15機。そこに猟兵達の機体も合わせて30機近いキャバリアが決勝試合をバトルロイヤル方式で戦い抜くのだ。
「―――グリモア猟兵の方が言うには、怪しいと思われる機体は二機とのことでしたが……」
 すでにオブリビオンマシンの持つ謎のユーベルコード、周囲のキャバリアをオブリビオンマシンに変える力が発現しているかもしれない。

 それを考えればソナタの慎重な行動も頷けるものであろう。
「それにしたってチャンピオンの機体、新調したって話だけど、これまで整備もさせてくれないっていうの、なんでなんだろうな?」
 仔猫を抱え、シード闘士たちのキャバリアに近づき自身に宿る聖性を頼りに感じるものがないかを確かめていたソナタの耳に届く整備士たちの噂話。
 無敗伝説を誇るチャンピオンの機体は少し前に新しい機体へと新調したのだという。

 だが、一度も整備させてもらったことはないと整備士たちは、己たちの腕を信じてもらえていないように感じているのだろう。
「もしかして―――」
 ソナタは、チャンピオンの機体―――カッパーの装甲色のキャバリアを見上げる。
 その機体、そのツインアイが妖しく輝く。
 それを見ただけでソナタは確信する。この機体だ。ぞわりと背筋が泡立つ。こちらの姿はユーベルコードによって見えていないのに、それでも自身に宿る聖性が告げる。

 この機体は、災厄を撒き散らすための力を宿した存在であると。
 ソナタはその場から急ぎ離れる。
「―――あの機体は、野に放ってはいけません……! あの疫病を撒き散らす力……!」
 あの機体が本当の力を発揮し、周囲にオブリビオンマシン化する謎のユーベルコードを撒き散らす前に打ち倒さなければならない。
 その確信を胸に、ソナタは走るのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリッセ・トードゥ
調査も必要だが、まずは補給と整備だ。
AIに自己診断させ、消耗パーツを交換。交換頻度の高い箇所には汎用部品を多用している。この作業にはそう時間はかからない。
その後、交換部品の慣らしと全体のバランスの再調整。本来パイロットの役目だが、AIに任せる。自分でやるのと同じ事だ、問題はない。
私は配給等を手伝い、決勝参加者と話をしてみよう。流石に他国の軍属の立場は隠す。腕試しの傭兵を装ってみる。
架空の経歴を話して相手にも私の情報を与えつつ、チャンピオン達容疑者の事を聞き出す。
出来ればセラフィムを量産機で倒したという人の事も知りたい。オブリビオンが量産機に負ける訳が無いとは言え、腕次第では分からないからな。



 猟兵たちが事件に対して向き合う時、多くの制約や制限の中で行動しなければならないことは多々あることだろう。
 特にクロムキャバリアにおいてキャバリアを駆る猟兵にとって機体のメンテナンス、補給は死活問題である。
 鋼鉄の巨人がオブリビオン化したオブリビオンマシンと相対するキャバリアは損耗も激しいものである。それに付け加えて今回の事件はバトルロイヤル方式の試合である。
 決勝試合もまた同じ方式であるがゆえに、機体の整備不良は足元をすくわれないとも限らない。
「調査も必要だが、まずは補給と整備だ」
『はいはーい、おまかせ!』
 AIでありOSであり同一人格を宿した『ALICE』にアリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)はキャバリアの機体状況を自己診断させる。

『機体の損壊率は悪くないね。装甲もフレームも無事。ちょっと駆動系の摩耗があるからメンテナンスをすべきところはそこかな』
 瞬時にAIが導き出すのは機体の消耗具合である。
 相手が量産型キャバリアと言えど、バトルロイヤル方式の戦いであれば数が多い。その多数と戦い続ければ、どれだけ高性能な機体であっても整備なしでは戦うことすらままならない。
「交換頻度の高い箇所には汎用部品を多用しているのが助かったな」
 アリッセは汎用性という言葉に頷く。けれど、『ALICE』はそうでもないようであったが、戦い続けることが容易であるという点においては同意できるものであった。

「ならば、後の慣らしや全体のバランスの再調整は任せた」
 本来であればパイロットの役目であるフィッティングであるが、同一人格がAI兼OSを兼ねているのであれば自分が行うのと同じである。問題はなにもないのだ。
 その間、アリッセは配給などを手伝い、決勝試合の参加者であるシード闘士たちと会話を試みていた。
「あなたはシード闘士だな。腕試しの傭兵として私は今回初参加しているのだが……」
 アリッセは架空の経歴であるが、それを自身の情報としてシード闘士の一人に提供する。あちらも初参加の機体や闘士に対する情報は欲するものであることだろう。
 だからこそ、自身の情報を最初に提供する。
 言わば情報の交換だ。

「ああ、なるほどな。情報は一個でも欲しいか。ここのチャンピオンは強いぜ? なにせ無敗伝説があるくらいだからな。まあ、最近は昔以上に勝ちにこだわるようになったもんだから、相手をする時は気をつけた法が良い」
 以前は観客に魅せる戦いをした上で勝利を得ることが多かったようだが、今はそうでもないようであった。
 勝利に執着し、相手のことを気にかける様子もなく、時には人命にまで及ぶような荒い戦いをするようになったようである。
「それも機体の新調だかなんだかで欠場してからだな。だから、ルーキーだっていうんなら、チャンピオンには近づかねぇこった」
「その欠場した試合、量産型が優勝をかっさらったようだが……」
 アリッセにとっては、そちらの方が興味深い事柄だった。

『セラフィム・リッパー』―――グリプ5における最新鋭キャバリアであり、オブリビオンマシン化をニ度も起こしているいわくつきの機体。
 アリッセ自身も二度戦っている機体であるからこそ、あの機体の性能の凄まじさは知っている。それを量産型キャバリアで打倒したパイロットと言われれば気にもなる。
「ああ、あれは単純にパイロットの技量だな。量産型であんな動きができるのかと目を疑ったよ。ありゃあ、いわゆる天才、天賦、そういうたぐいのやつだ」
 一度だけ出場して後は出ていないところを見ると、すでにこの国を出ているのだろう。
 アリッセは礼を告げてから考える。

 オブリビオンマシンがただの量産型キャバリアに遅れを取るとは考えられない。
 何より『セラフィム・リッパー』の性能を知っているからこそ、余計に信じがたいことだ。パイロットの技量の差があっても埋めようと思って埋められるものではない。
「ならば―――『セラフィム・リッパー』は、此処にいる1号機は、オブリビオンマシンではない」
 そう結論づけるほかない。
 だが、強奪までした機体を此処で捨てる意味は?
 新たな疑問が生まれるも、決勝試合の開始を告げる予告のブザーにかき消される。今は消去法でたどり着いたオブリビオンマシン―――チャンピオンの機体に集中する。
 アリッセは己の機体へと足を向けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
休憩をしている暇はないであります。
最優先はオブリビオンマシンの破壊。

『オペレート』
迷彩外套を装着、索敵を行います。

今の内に敵を見定めておきたい。
決戦は近い、シード選手もおそらく近くにいる筈
忍び足で区画内を疾駆し、聞き耳、周囲の人間の会話を瞬間思考力で聞き分け、パイロットを探します。

相手の練度にも寄りますが、
戦場では、どこまで手加減できるか分かりません。
話を盗み聞きしつつ、タイミングを見計らってシード闘士に気絶攻撃

(申し訳ございませんが、排除させていただきます)

ワイヤー(呪詛が眠りを強める)で拘束(捕縛)、怪力で運び適当な処、
ロッカーの中とかに隠します。

試合もそろそろ始まりますね。戻らねば。



 戦い続ける者に安息は必要ないと考えるのは、それが生命なきものであるからかも知れない。
 それはある意味で立ち止まることを恐れているからであるかもしれない。その生命の在り方を憐れに思う者がいるのであれば、それは侮辱に他ならない行為であると知れ。
 朱鷺透・小枝子(ディスポーザブル・f29924)はユーベルコード、オペレートによって見えない外套―――迷彩外套を身に纏い、闘技場におけるシード闘士達の姿を探していた。
「今の内に敵を見定めておきたい……」
 それは戦うことを存在意義にしている彼女にとって当たり前のことであった。
 休息は必要ない。
 立ち止まっている時間があるのであれば、己の為すべきことを、為せることをすべて為してから事に挑みたい。

 だからこそ、小枝子は片時も止まることはしない。
 シード闘士たちを探しているのは、彼らが一人でも多く存在していれば、今回の事件の大本であるオブリビオンマシンとの対決の際に邪魔になるし、障害物になってしまう可能性があるからだ。
 一人でも多くのシード闘士を闘技場のバトルロイヤルから排除できるのならば、それに越したことはないと闘技場の中を探し回る。
「こちらで宴会をしているという話は本当でありましたか」
 一人の猟兵が情報を得るためにこういう場であれば付き物である非公式な宴会を実費でもって開いたという話を聞きつけ小枝子は迷彩外套で紛れて潜む。
 シード闘士の殆どが参加しているようであり、ある意味で好都合であった。

「相手の練度によって捕縛の難易度が変わると思っておりましたが、なるほど……この場を提供してくださった猟兵の方のお陰で大幅に下方修正できるでありますね」
 アルコールを摂取している故に、相手の練度はさらに下がる。
 どれだけ普段鍛えていたとしても、アルコールは容易く彼らの練度を下げる。それにしても、試合前であるというのに彼らがアルコールを摂取するのは、どうせ今回もチャンピオンの優勝であろうというある意味で怠惰そのものであったのかもしれない。

 怠惰。停滞。
 それは小枝子にとって縁のないものであった。それこそが切り捨てるものであり、小枝子にとって必要のないものであったからだ。
 幾ばくかの申し訳無さを感じながら小枝子は一人のシード闘士を背後からワイヤーで縛り上げ拘束し、呪詛の力によって眠りへと導入させる。
「申し訳ございませんが、排除させていただきます」
 呪詛の力が籠められた機械ワイヤーであれば、一般人が抵抗できるわけもない。
 そのまま女性には似合わぬ怪力で大の男を書か敢えて適当なロッカーに隠す。目が覚めれば自力で脱出してこれるであろうし、その頃には事件は終わりを迎えているはずだ。

 それを数人こなしたところで小枝子は息一つ付かずに決勝試合開始の予告を告げるブザーを聞く。
 おそらく今回の事件の大本となるキャバリア―――いや、オブリビオンマシンは他の猟兵たちがすでに目星をつけているであろう。
 ならば、己が為すべきことはすでに定まっている。
「オブリビオンマシンを破壊し、謎のユーベルコード……周囲のキャバリアをオブリビオンマシン化することを防ぐ。破壊し、拡大を防ぐ。単純でありますな!」
 だが、それでいい。
 小難しいことを考えるのは己の役目ではない。己がするべきことは、たった一つ。オブリビオンマシンの破壊。
 ただそれだけでいい。
 その目標に向かって矢の如く駆け抜けることこそが、己の存在意義であり、やらねければならないと、この喪われたはずの魂が叫ぶのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
乗っていたCoyoteの元へ
ふふ、さすが量産型
クセの無い安定した強さでした
それにメンテもバッチリで
ありがとうございます!(整備士さんにお礼

それで整備のついでにお願いがー
キャバリアシールドがあったら嬉しいななんて?ダメ?(上目遣い

さっき控室で知り合った人たちを捕まえて
戦ったよしみで教えてくださーい

前に『私みたいに』量産機で勝ち上がった人がいたって聞いたんですけど
どんな人だったか知ってます?
ちなみに私と比べてどうですか?(ポーズキラッ
※聞きたいのは人となりのはず?

本命じゃないんですけど
どうも引っかかるんですよねー
数字の人たちに何か関係あるのなら
ここで探っておいて損は無いはずです

※アドリブ連携OK



 鋼鉄の巨人、キャバリア。
 それは体高5mのクロムキャバリアにおける主戦力であり、戦争状態が長く続く小国家においてはなくてはならぬ兵器である。
 当然それを操縦するパイロットもいれば、それを整備する者もいる。
 パイロットだけでは成り立たず、けれど整備士たちだけでも戦うことはできない。だからこそ、互いに敬意を払って接するのだ。
「ふふ、さすが量産型。癖のない安定した強さでした。それにメンテもバッチリでありがとうございます!」
 そんなふうに整備士たちに頭を下げて礼を告げるのは、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)であった。

 彼女のキャバリアは今此処にはない。
 だからこそ、戦う機体である今回借り受けたキャバリアをメンテナンスしてくれた整備士達に感謝の気持ちを伝えることを忘れはしないのだ。
「ああ、ルーキーだって言うのに大したもんだ。無事勝ち抜けてよかったな」
 整備士達もそう言われて悪い気はしないものだ。
 これくらい普段から白猫又のアバター、シリカにも言っていれば引っかかれることなどなかったのではないだろうかという疑問は言わぬが花であろう。

「それで整備のついでにお願いがー……キャバリアシールドがあったら嬉しいな、なんて? ダメ?」
 此処ぞとばかりにクノイチムーブをするサージェ。
 そういうとこやぞ、という声が普段は聞こえてくるところであろうが、今はそれを為すシリカはいない。
 俗に言う美少女にそんなことを頼まれて嫌と言える男はいないだろう。
 なまじ整備士が男所帯で幸いした。彼らは安請け合いするようにサージェのおねだり? を受けてシールドを探し回ってくれている。

 それを尻目にサージェは控室で知り合った予選試合を戦うパイロットたちに駆け寄っていく。
「前に『私みたいに』量産機で勝ち上がった人がいたって聞いたんですけど、どんな人だったか知ってます?」
 気になっていることがあったのだ。
 今回の事件、その大本であるオブリビオンマシンとは関係がないように見える一件。けれど、これまで猟兵たちが関わってきた、調べてきた事柄から、それもまた今後の事件に繋がる事柄ではないだろうかとサージェは思ったのだ。
「ちなみに私と比べてどうですか?」
 くねっとしたポーズを取るサージェの頭を小突きながら、同じ控室であった女性パイロットたちが言う。

「調子に乗るんじゃない。決勝試合なんてのは、本当に洒落にならないくらい危険な試合なんだ。銃口向けあった仲だけれど、そう無駄死にして欲しいわけじゃない」
 そういいながらも教えてくれるのは人がいいのか悪いのか。
 彼女たちの言葉を聞くかぎり、量産型キャバリアで優勝したパイロットは同じ様に女性であったようだった。
 量産型キャバリアで予選を勝ち抜くことも稀であるのに、そのままワンオフ機やカスタマイズ機がひしめく決勝試合において損傷もなく優勝したのは、この闘技場のチャンピオンが打ち立てた無敗伝説を陰らせるには十分な戦果であったようだった。

「あれは正直な所、天才っていうものなんだろうね。キャバリア戦をするために生まれてきたような……言わば怪物みたいなやつだったよ」
 名前は名乗っていないから知ることは出来なかったようだが、サージェは頭の中に一つの関連を思い浮かべる。
『グリプ5』。
 そこにいた数字で呼ばれたキャバリアパイロットたち。
 それに関連しているのかどうか、サージェにはまだわからない。
 わからないことだらけであるが、それでも一つはっきりとしていることがある。この事件の大本にいるオブリビオンマシン。それを打ち倒さなければ、まだまだ戦いは続くということだ。

 だからこそ、サージェは気を取り直して、メンテナンスの終わった『Coyote』へと足を向けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
オブリビオンマシンの候補は2体かあ…
あえて候補を上げるならチャンピオン機かなあ…
あえてね、あえて
だって候補2体じゃん?
なら両方倒せば良いんでしょ?
簡単に倒れる方が一般機で、倒し辛い方が本命だよ
完璧じゃん


1~3号機に加えてレストア機…
これだけ居れば、1体分の金型で4機分の商品が…
レストア機の外装データを収集出来れば、限定プラモとして…
商機到来では?

よしまあ、多分本命じゃないだろうけど1号機の方も情報収集しとこうかな!
暇してる『メカニック』は要らんかえ~とメカニックの押し売りで、整備班に入れてもーらおっと
とりあえずパイロットについて聞き込みでもしとこうか

私?
私の機体はそこにあるよ…ほら段ボール



 オブリビオンマシンはいつの間にかキャバリアとすり替わり、その搭乗者の心、思想を狂わせる。
 大概の場合、破滅的な思想に歪められたパイロットによって齎される戦乱の火種が飛び火することによって国家間の戦争にまで発展する。
 けれど、何故、どのようにしてオブリビオンマシンがキャバリアとすり替わるのか、そしてオブリビオンマシンは以下にして増えていくのかは未だ謎のユーベルコードによるものとしか知られていない。
 だからこそ、猟兵たちが赴き、その大本であるオブリビオンマシンを見つけ出し叩かねばならないのだ。
「オブリビオンマシンの候補は2体かあ……あえて候補をあげるならチャンピオン機かなあ……」
 あえて。あえてである。
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとって、それは本当にあえて、という候補の上げ方であった。
 そもそもグリモア猟兵から提示された情報には目星として2機が挙げられている。ならば、両方倒せば良いという考え方であった。

「ま、簡単に倒れる方が一般機で、倒しづらい方がが本命だよ。完璧じゃん」
 うんうん、と一人頷く玲。
 彼女にとってオブリビオンマシン以外の一般機の存在は障害物以下の存在でしか無い。どれだけ数を揃えようとも、生命の埒外に在る存在である猟兵にとって、シード闘士たちの駆るキャバリアと言え、数のうちには入らないのである。
 それがまた事実であるがゆえに、玲の考え方は間違いではなかった。

「それ以前に『セラフィム・リッパー』だよね。1号機、2号機、3号機に加えてレストア機……」
 そう、1号機は強奪されたはずである。
 その機体がこの『フォン・リィゥ共和国』に流れ着いているということも驚きであるが、すでに一度破壊されてレストアされているという点が彼女にとって引っかかっているのであろう。
 オブリビオンマシンであった2号機と3号機。それに関連していないと考えるほうが不自然であったからだ。

「これだけ居れば、一体分の金型で4機分の商品が……レストア機の外装データを収集できれば、限定プラモとして……商機到来では?」
 違った。
 びっくりするくらい別のことを考えてた。商機とは。一体どこで商売を始めるつもりなのかわからないが、それはそれとして売れそうな気がする。
 具体的にはマニアから『もっとよく見ろ』と怒られそうな気配がするほどにバリエーション豊かな商品展開。脅威の技術力によって再現された商品が一般人を困惑に叩き落とす未来さえ見えるような気がする。多分気の所為であるが。

「よしまあ、多分本命じゃないだろうけど、1号機の方も情報収集しとこうかな!」
 頭を切り替えて玲はキャバリアたちが格納されているハンガーで忙しく働いている整備士達の元へと向かう。
「暇してるメカニックは要らんかえ~」
 暇ならてつだってくれ! と大忙しの整備士たちに連れられて玲は、彼女の持つメカニックとしての才覚を遺憾なく発揮する。
「ほいきた! って、アクチュエーター死んでるじゃーん。油差しとけばいいってもんじゃないでしょ。関節駆動部に負荷がかかり過ぎだから、摩耗係数ちゃんと見ながらセッティングしなきゃ。え、フィッティング? 量産型にフィッティングとか、逆に癖にしかならないでしょ」

 とかなんとか大忙しである。
 ちょっと整備班に入れてもらって、終わったらのんびりでお茶でもしばきながらお話きこうかと思っていた玲にとってえは完全に誤算であったが、打ち解けることができるのならこの際なんでもいいのだ。
「へ~あ、そうそう。セラフィム・リッパーだっけ? あの機体のパイロットってどうなの?」
「ああ、あのワンオフ機の。性能は相当なもんだけど、パイロットがなぁ……流れてきた機体を買い取って乗ってはいるが、正直あれだな」
「ああ、乗ってるっていうよりは、乗らされてるって感じ。完全に機体性能を活かせてない」
 だから、量産型にも足元すくわれてむざむざチャンピオンが欠場した試合で優勝を逃すのだと整備士たちからは不平不満が噴出する。

 どうやら、あの『セラフィム・リッパー』のパイロットは二流止まりなのだろう。
 どう考えても、オブリビオンマシンと関連があるとは思えない。ならば、あのセラフィム・リッパーは正真正銘、本物の最新鋭キャバリアなのだろう。
 2号機、3号機とは違う。
 ならば、玲が求めた解答は測ること無く齎されたことに為る。

「そういえば、あんたも決勝試合出るパイロットだろ? 機体はどうするんだ?」
 え、と玲は何か思い出したようにキョトンとした顔をしてから、
「私? 私の機体はそこにあるよ……ほら」
 指し示した先にあったのは、四角い段ボールに『きゃばりあ』と描かれた無残なものであった。
 え、と誰もが絶句した。
 だって冗談だと思ったし。まさか本当にあれで出るとは思ってもいなかったし、アレで通用するならキャバリアとは……と宇宙の真理に触れそうになった顔をしてしまう整備士たちを残して、玲は立ち上がる。

「だいじょうぶだいじょうぶ。なんとかなるって。お話どうもね~」
 応援よろしく! とビッ! と指先でサインを作ってから玲は駆け出す。
 愛機……と言っていいのかわからない段ボールへ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バーン・マーディ
本音を言えば
既に大体の察しはついているのだ
我が鎧の一角であるマーズが…対峙するべき機神…「神機」を見出している故な

さて
自己再生もできるようだが…やはりキャバリアとやらについてある程度は知っておかねばなるまい

なので整備については色々と学ぶとしよう

肉体であってもコンディションを整えるのに考えねばならぬことも多いからな

さて…此処のチャンピオンについて聞いておくとしよう

UC発動
他のデュランダル騎士達も散開させて数多の人々から最近起きたことやチャンピオンについてこまごまと聞いておくぞ

最近使っているキャバリアとこれまでの戦闘記録も見ておくとしよう

敵を知り己を知るのもまた悪の神に軍の機神の在り方だろう



 オブリビオンマシン。
 それは事件の大本にして猟兵が打倒しなければならない敵である。今回の事件に置いてオブリビオンマシンは上手く気配を隠しているのだが、こうして猟兵達の調査で徐々に情報が集まってきている。
「本音を言えば―――」
 そんな中、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は独りごちる。
 そう彼の中ではすでにオブリビオンマシンの存在、その機体の名を知っているのだ。
「既に大体の察しはついているのだ。我が鎧の一角であるマーズが……対峙するべき機神……『神機』を見出している故な」
 バーンと彼が駆るキャバリア『マーズ』。
 彼らが求める敵はすでに在ることを知っている。だからこそ、無用に動くことはないのだが、自己再生も可能なキャバリアという点においてはある程度知る必要があると、バーンは思い直し、整備について学ぶことを始めるのだ。

「肉体であってもコンディションを整えるのに考えねばならぬことも多いからな」
 バーン自身の考えによって重い腰を上げたのならば、為すべきことをなさねばならない。
 彼が知るべきことは『闘技場』のチャンピオンについてである。
 おそらく彼がオブリビオンマシンであり、バーンの追い求める敵の搭乗者であるのならば、パイロットを知ることもまた戦いの一つであろう。

「死して尚共に在りし忠臣たる騎士達よ。我が声に呼応せよ。今が戦いの時だ」
 ユーベルコード、デュランダル騎士団招来(セイシヲコエキタルエイユウキシタチ)によって、志半ばに倒れたデュランダル騎士団の精鋭たちの霊を召喚する。
 彼らを散会させて多数の人々から最近起きたことやチャンピオンについて細々と情報を引き出していく。

「ふむ……最近使っているキャバリアとこれまでの戦闘記録も見ておくとしよう。敵を知り、己を知るのもまた悪の神に軍の神機の在り方であろう」
 戦闘記録を見る限り、魅せる戦い方をするチャンピオンであったようだ。
 それでいて戦歴は全勝無敗。
 無敗伝説が誇らしげに語られるのも無理なからぬ技量であることは言うまでもない。場所が場所であるのならば『エース』と呼ばれるに相応しい力であることは言うまでもない。

 だが、これまで乗っていたキャバリアに不調が出たたため、乗り慣れた機体から新しい機体に乗り換えたのはつい最近のようだった。
 チャンピオンが欠場した試合において勝利を収めた量産型キャバリア。
 それは記憶に新しく前例にない出来事であったゆえに、鮮烈に人々の心に刻まれたことだろう。

 それこそ無敗伝説が霞むほどに。
 それからというものの、チャンピオンの戦い方は一変している。キレイな戦い方をしていたものから、勝ちを意識するようなものにかわり、それまで相手の技量を引き出しつつも打倒するという戦い方は、相手を圧倒し、ねじ伏せる戦い方に変わっている。
「なるほど……歪められたがゆえか。放置しておくには忍びない」
 バーンにとって、それは如何なる感情を呼び起こすものであったことだろうか。
 美しきものを好む者によって、心を歪められたがゆえに喪った美麗さ。美しさ、生命の輝きのようなものが無くなってしまったチャンピオン。
 そこにどれだけの価値があるのか。

「ならば、悪を為すとしよう。我が悪には悪の正義が在るのだと世に知らしめようではないか―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
情報を整理しましょうか


セラフィム・リッパー3号機起動実験失敗

存在を擬装し、機体内部に潜んでいたオブリビオンマシン


第二次憂国学徒兵プラント占拠事件

狂気の伝播による学生の洗脳。思考操作による煽動とスタンピード
※備考
フルーⅦ武力侵攻


1号機は他国のスパイと内通者に奪われた


目的と手段は全て繋がっている

フォン・リィゥ共和国上層部は地の利だけに甘んずることなく。各国に諜報員を送り込んでいる

1号機入手はその成果。データ解析終了で用済みに
量産型にはそのデータが流用されている?
レストアされた1号機=元々のパーツは何処に?


チャンピオンは次世代型試作量産機のテストパイロット
闘技場=実験場


彼の機体、クロですね



 錯綜する情報の中にあって一つのつながりを見出すことのできる事柄もある。
 数多の情報の中にあって、それが何に導かれるのか。
 戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)にとって情報とはつまるところそういうものである。過去彼が関わってきたクロムキャバリアにおけるオブリビオンマシンに関連した事件。

 まずは『セラフィム・リッパー』3号機の起動実験に起因する暴走事故。
 存在を偽装し、機体内部に潜んでいたオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』。その機体は事態は『フルーⅦ』と呼ばれる小国家の最新キャバリアであったことが契機となって、新たな事件を呼んだ。

 次に『第二次憂国学徒兵』プラント占拠事件。
 狂気の伝播による学生の洗脳。数多のオブリビオンマシンが確認されている。思考操作による扇動とスタンピード。
 以前の事件から関連して繋がる事件である。さらに『セラフィム・リッパー』の1号機は他国のスパイと内通者に強奪されている。

「目的と手段はすべてつながっている」
 それが蔵乃祐の導き出した答えである。
 1号機強奪の事件に『フォン・リィゥ共和国』がつながっているようにも思える。未だ確証はないけれど、この国の地の利だけに甘んずること無く各国に諜報員を送り込んでいるのではないかという疑念は消えない。

「ならば、1号機入手はその成果であると考えるのが自然でありましょうな。データ解析終了で用済みに……ならば、足が着くことを恐れて流したと考えるものでしょうか」
 最新キャバリアのデータが転用された量産機というのもまた自国の戦力を底上げするには必要なものであろう。
 だが、『セラフィム・リッパー』の1号機は、この国の『闘技場』で量産型キャバリアによって一度打倒されている。

「しかし、そうなるとチャンピオンの技量は如何なるものでありましょうか」
 無敗伝説を誇るほどの力を持っている。
 さらにこれまでの猟兵から得られた情報を省みるに以前はキレイな戦い方をする魅せるタイプのパイロットであったようだった。
 けれど、欠場して機体を新調してから様子が変わった。
「となれば、オブリビオンマシンに乗ったから、ということにほかならない」

 そして、闘技場を見回す。
 モニターされていることはもうわかっている。データ取りというやつなのだろうか。闘技場という娯楽を提供しつつ、其処に戦うパイロットたちのデータをも収集しているのだとすれば、此処は『闘技場』ではなく―――。

「―――実験場」
 そして、もう用済みであるというのならば。
 オブリビオンマシン自身の娯楽のために運営される破滅的な戦いの坩堝。そして、新調されれたという機体。
 あの『セラフィム・リッパー』のレストアされた機体の状況を見れば分かる。元々のパーツは破壊されているのだろう。
 プラズマビーム発生装置である翼、クリスタルビットは破壊されている。
 それは『セラフィム・リッパー』固有の武装であり、機体の運動性などを除けば、最たる特徴であろう。
 斬艦刀は他の機体とも類似した武装であるし、取り立てて言及される武装ではない。

「だから破壊されなかった―――となれば、固有武装だけを狙って破壊した量産がやキャバリアのパイロット」
 その人物こそが『グリプ5』にいた内通者であり裏切り者であるということだ。
 わざと此処に目を引く『セラフィム・リッパー』を残したのだ。そうすれば辻褄が合う。もういないというそのパイロットから目を逸らすために、機体だけを置いて消えたのだ。

「……どちらにせよ、クロであるのは、チャンピオンの機体。あのカッパーの装甲色のキャバリアですね」
 蔵乃祐は結論に至る。
 あまりにも用意周到なる立ち回りをする『グリプ5』の内通者にして、量産型キャバリアで圧倒的な性能差を見せるワンオフ機体を打倒してみせる技量。
 今後また相まみえることもあるかもしれない。
 少なくとも、蔵乃祐にはそれだけの理由と因縁が生まれていたのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
どちらかが『白』と判明すれば『黒』と確定する可能性が高い
対象を絞って『セラフィム・リッパー』について調査を行いましょう

妖精ロボを補助演算装置としてこの国の情報網に●ハッキングし●情報収集
国家間の通信網は無くとも、国の内部には存在します

賭けが絡む以上、違法擦れ擦れの情報が集まる場所も…
正確性が気にかかる所ですが、既に日数が経っている以上、情報の精査も進んでいる筈です
…存在は認めますが、騎士としてはあまり覗いて気分の良い物ではありませんね

機体、パイロットの個人データ、機体の入手経路…
機体をレストアに追い込んだ量産機と搭乗員も戦闘力だけを見るなら容疑者となり得ますね
念の為、確認しておきましょう



 自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)。それは複数の偵察用妖精型ロボによる国家のデータベースにハッキングという攻撃を仕掛けるユーベルコードであった。
 補助演算装置としてではあるが、それでも国家の機密に触れるためには必要な装備であるとトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は考えていた。
「国家間の通信網はなくとも、国の内部には存在します……ならば、そこから情報を得るのは定石でしょう」

 グリモア猟兵から提示されたオブリビオンマシンらしき機体は2体。
 けれど、どちらかが『白』と判明すれば『黒』と確定する可能性が高いのであれば、トリテレイアは名を知る二度もオブリビオンマシンとして存在した『セラフィム・リッパー』というキャバリアに対象を絞るのは当然のことであったのかもしれない。

 この『フォン・リィゥ共和国』において姿を見せたレストア機となった『セラフィム・リッパー』1号機。
 それは過去に行われたチャンピオン不在のバトルロイヤルにおいて無名の新人の駆る量産型キャバリアによって撃破されたせいである。
 それはすでに情報として掴んでいた。
 問題はそこから先のことである。
「賭け―――つまるところ金銭が絡む以上、違法すれすれの情報が集まる場所もまた存在しているでしょう」
 正確性には欠ける所があるだろうが、既に日にちが立っている以上、情報の精査も進んでいることだろう。
 いわゆる蛇の道は蛇、というやつだ。

 騎士を志すトリテレイアにとっては、あまり覗いていて気分の良いものではないが、それでも情報が集まる場所には雑多ながらも彼が知りたいと思う情報が存在しているのだ。
「―――ありました。これですね。無敗伝説を誇るチャンピオンの機体……今まで使用していた機体に不備が出てきたために乗り換える……その機体の調整が間に合わず欠場した際に行われたバトルロイヤル」
 下馬評では『セラフィム・リッパー』が本命であろうということであった。
 だが、実際にはダークホースもダークホースである量産型キャバリア、それも新人で新参のパイロットが『セラフィム・リッパー』を下すという大番狂わせ。

「……この欠場を境にチャンピオンの戦い方が粗暴なものにかわった、と」
『セラフィム・リッパー』事態はこの国のオークションで競り落とされたものであるようだった。
 どこかの国から流れてきたものであるとか、盗品であるとか、そのような文言は見受けられるが、肝心な部分がわかっていない。
 パイロットは良くも悪くも二流といったところであったのだろう。

「となると、この量産型キャバリアのパイロットは」
 あの『セラフィム・リッパー』をレストアにまで追い込んだパイロット。その戦闘力だけを見るならば、容疑者としてトリテレイアは挙げられると感じられたが、どうやらすでに出国して、この国には存在していないようである。
 ただ、当時の映像の殆どは破棄されて残っていないようだった。
 アーカイヴには他の大会の映像が残っているのに、チャンピオンが欠場した試合だけがどこもかしこも、全て削除されているのだ。

「……意図的に、この大会の映像だけを消した……? ですが、大会の前後、セレモニーなどの映像は残っているはず―――」
 見つけ出した大会前のエキシビションの映像にわずかにパイロットの顔が映っている。
 女性だと辛うじて分かる画像の粗さ。
 けれど、その瞳の輝きは鮮明ではない画像の中にあって印象的であったことだろう。

 これ以上は情報は得られない。妖精型ロボの演算を終わらせ、トリテレイアは息をつく様に肩を落とす。
「―――『セラフィム・リッパー』は白……必然的に消去法で、チャンピオンの機体が黒、というわけでありますが……」
 どこかしこりの残る情報であった。
 見落としているわけではないけれど、何かがまだ足りない。そんな印象を電脳が受ける。
 けれど、それでも決勝試合は始まる。
 ブザーが鳴り響き、試合に出場する闘士たちの準備が促され、トリテレイアもまた己の機体へと歩みをすすめるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
容疑者は……ではなく容疑機(?)は2機。
鹵獲されたマシンと、チャンピオンのマシン。
が、まだ時間はある。今は頑張ったキャバリアを労おう。
■行・壱
【POW】
先ずは機体磨き。汚れやキズを目立たなくするのは勿論、
光沢が出るまで磨き続け、美しい姿にするぞ。
お次は武器の手入れだ。刀の手入れと違うかもしれない故、
技師にやり方を教わってから行おうか。

■行・弐
此処からは調査。怪しいのはやはりチャンピオンだろうか?
先ずは情報収集と称し周囲の技師たちにチャンピオンの乗る
機体の特徴や、チャンピオンが以前乗っていたマシンに関する
情報を聞いてみる。

ここから何か突破口が見つかればいいのだがな……

※アドリブ歓迎・不採用可



「容疑者は……ではなく、容疑機は2機」
 愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は律儀に言葉を訂正して、情報を改める。
 オブリビオンマシン。
 それは搭乗者の心を歪め、破滅的な思想にとりつかせ、戦乱の種を蒔く鋼鉄の巨人である。
 グリモア猟兵によって示されたのは2機のキャバリア。
 鹵獲されたマシンと、チャンピオンのマシン。
「どちらかがオブリビオンマシンであると―――……が、まだ時間はある。今は頑張ったキャバリアを労おう」

 そう言って清綱は己が振り回した機体の元へと向かう。
 乗ったというよりは、武器のように振り回しただけであったのだが、それでも愛着が湧くものであるのだろう。
 機体を磨き始める。
 汚れや傷を目立たなくするのはもちろんのこと、光沢が出るまで磨き続けるのだ。
「やはり佇まいからして、戦場に出るものは整えなければならない。きちんと清掃されていない軍隊は衛生的な面以上に士気を下げるものでるからな」
 そう言って清綱は己の借り受けたキャバリアをぴかぴかに光沢が出るまで磨き倒す。
 美しい装甲色を取り戻した機体は、清綱にとって満足行く出来栄えであった。

 それは闘技場という油や煤に塗れた環境にあって、あまりにも場違いな輝きであったが、それでも清綱は気にすることなく次なる手入れを開始する。
「お次は武装であるな。斬艦刀。言葉の響きは、こう、心に来る物があるな……さて、俺の刀の手入れとは勝手が違うかも知れないが……おお、そこの御仁!」
 清綱は斬艦刀の手入れを整備士に声を掛けて、やり方を教わっていく。
 自分一人では時間がかかるであろうからと、整備を手伝ってくれた初老の整備士に礼を告げ、斬艦刀までも磨き上げた清綱は、非常に満足した面持で頷く。

 これならば、次なる決勝試合においても他と遜色することのない武者映えとなることは間違いなかった。
「さて、些か時間が開いたな。御仁、感謝する。それとついでで申し訳ないのだが、チャンピオンについて教わってもよいだろうか?」
「チャンピオン? ああ、確かに強いな。なにせ無敗伝説を築き上げているパイロットだ」
 この闘技場における絶対。
 それがチャンピオンの無敗伝説なのだという。技量はもちろんのことであるが、闘技場において魅せる戦い方をした上で勝つという離れ業を何度も行っているのだという。

 けれど、機体を新調してから様子がおかしくなったというのだ。
「以前の機体は、堅実な装備の機体だったよ。堅実、オーソドックス、基本に忠実といえばいいのだろうかな。そつなくこなしつつ、けれど見栄えのする戦いをするある意味で天才だった」
 だからこそ、彼には熱球的なファンもついたし、賭け時合になれば殆どが彼に賭けてしまって、成立しないときもあったのだという。

「ほう……では、今はそうではないと?」
 清綱の疑問も尤もであったことだろう。これまでと突然戦い方が変わる。
 つまるところ、それはオブリビオンマシンに乗った影響からではないかと訝しむのだ。
「ああ、がむしゃらといえば聞こえがいいかもしれないが、かなり乱雑な戦い方をするようになったし、整備も俺達に任せなくなった。あの機体になってからだな」
 そう言って示す先にあるのはカッパーの装甲色を持つキャバリア。
 あれがチャンピオンの機体であると教えてくれる。
「……ならば、なるほど。礼を言う、御仁」
 そう言って清綱は、チャンピオンの機体を見上げる。
 見栄えのする機体ではある。けれど、どこか……嫌な気配を感じるのまた彼の直感だった。
 確証はない。
 けれど、自身の肌が伝えている。

「この機体を自由にさせていてはならない―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『輝光神機『ロクシアス』』

POW   :    BSプラズマライフル『黄金の矢』
【プラズマライフルのレーザーサイト 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【プラズマ化した超高熱熱線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    高速戦闘演算機構『予言の神』
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【BSプラズマライフル 】から【相手の回避行動を読み切った超連続射撃攻撃】を放つ。
WIZ   :    対人虐殺機構『疫病の矢』
自身の【機体全身 】から【疫病ウィルス型ナノマシン】を放出し、戦場内全ての【キャバリアに乗らない生身での戦闘行動】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はテラ・ウィンディアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 あの日のことをよく覚えている。
 機体に不備が出て、新しい機体を預かる日。フィッティングを行っていたが、調整がずれこんで、その日の『闘技場』に参加することができなかった。
 それまでは己の持つ『無敗伝説』に頓着をしていなかったのだ。たまたま己が勝ち続けているだけであり、己より力のある者が育てば、伝説は終わるのだと思っていた。

 けれど、それは己が負けたという自覚あっての結果ならばの話だ。

「大番狂わせ―――! 勝者は量産型キャバリアの―――!」
 その声が大きく頭の中に響く。
 映像を見た。ワンオフ機を量産型キャバリアで下すパイロットはどんな魔法を使ったのかと。
 だが、それが間違いであったのかも知れない。
 見なければよかった。
 知らなければよかった。
 己が頂点であるとは思っていなかったが、それに近しい者であるという自負はあった。それこそ『エース』と呼ばれるに値する存在であると。

 だが、違ったのだ。
 己は何者でもない。心が折れる音がした。それほどまでにあのパイロットの戦いは尋常ならざるものであった。
 機動性に劣る機体であるはずなのに、あの動き、攻撃精度、あらゆる物が別次元であった。 
 あれを天才と呼ぶことすらおこがましい。あれは―――。

『怪物』だ。
 あんな存在が居て良いはずがない。
「そうだ。あれは規格外だ。在っていい存在じゃない。俺がもっと輝くために! 俺が俺であるために! あの『怪物』を塗りつぶすほどに輝かなければ―――!」
 無敗伝説を誇った嘗てのチャンピオンがカッパーの装甲色を持つ機体に乗り込む。
 アイセンサーが妖しく輝き、起動する機体。

 バトルロイヤルが始まる。
 今回は多数の新参者が多く決勝試合に進んでいることはわかっている。
 だが、だからなんだというのだ。
「新参だろうが、なんだろうが関係ない。俺の輝きの前に、全て眩めばいい。俺が俺であるために、全て塗りつぶす! 俺の無敗伝説は誰にも穢させはしない―――!」
 チャンピオンの機体が『闘技場』と呼ばれた地下工場群へと飛び出す。

 その機体の名は、かつて―――輝光神機『ロクシアス』と呼ばれていた。
 今はもうオブリビオンマシン。
 謎のユーベルコードによって周囲のキャバリアをオブリビオンマシンへと変貌させる災厄の機体なのだ―――。
ユーリー・ザルティア
さて、情報通り。セラフィム・リッパーがオブリビオンマシンじゃなくてよかったよ。行くよパールバーティ!!

ヤレヤレね。
エース…チャンピオンの苦悩って奴ね。
結構挫折は人を成長させるものよ。ここで一度倒れて…また立ち上がりなさい!!

他の選手はサクッと無視。
目的はあくまであのオブリビオンマシンだからね。
ファイナルブレイカー・モード起動!!

自慢の『操縦』テクで回避しつつ強化したダークマンティスの『エネルギー充填』を行いつつ、アストライヤで『威嚇射撃』で間合いと射線を確保するよ。
充填率120%『限界突破』よし。
『瞬間思考力』で次の敵機の動きを即断。
そこッ『レーザー射撃』開始。ダークマンティス…ファイヤっ!!



 バトルロイヤルの幕が開ける。
 一斉に機体が『闘技場』と呼ばれるようになった地下工場群の中へ飛び出していく。
 けれど、予定されていた数よりも機体が少ない―――それは在る一人の猟兵がシード闘士を捕縛し、決勝試合に間に合わせないようにしたためであった。
 それは本来であれば許されることではないが、オブリビオンマシンが闘技場に出る以上、猟兵たちにとってはシード闘士たちはよきせぬ障害にしかなりえない。
 だからこそ、事前に数を減らしたことは、猟兵たちにとってプラスの状況を作り出す事に成功していた。

「さて、情報通り。セラフィム・リッパーがオブリビオンマシンじゃなくてよかったよ」
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は胸をなでおろす。
 それは見知った『グリプ5』の少年がいたずらに心をかき乱されないことへの安堵であったのかもしれない。
「行くよ、パールバーティー!! ユーリー・ザルティア、出るっ!!」
 普段は無人機として使用している『パールバーティー』と共に戦場へと駆け出すユーリーを待ち構えて居たのは、輝光神機『ロクシアス』と呼ばれる機体であった。

 それはこの闘技場における無敗伝説を持つチャンピオンのキャバリアである。
 カッパー色の機体が輝き、アイセンサーが妖しく輝く姿は対峙してはじめて、この機体がオブリビオンマシンであることを知覚できる。
 これほどまでに気配を消せるということは、猟兵にとっても恐るべきことであった。
「最初の獲物はお前か―――!」
「ヤレヤレね。エース……チャンピオンの苦悩って奴ね」
 それが心を歪められたからこその発露であることをユーリーは知っている。
 どれだけの苦悩が人を苛むのだとしても、挫折とは人の心を折ったままでは終わらないものだ。
 人を成長させるのは成功ではない。
 失敗こそが学ぶものが多き実り在るものであるのだからこそ……一度の挫折でへし折れたままでいるというのはユーリーにとって許せないことだった。

 チャンピオンの機体とユーリーとの間に入る者はいない。
 なぜなら、これまでキレイな戦い方をするチャンピオンに対し、今のチャンピオンは近づくものをすべて破壊する粗暴なる戦い方ばかりをする者であることを他のシード闘士たちは知っているからだ。
「他の選手は無視するつもりだったけれど、却って手間が省けてよかった! あくまで目的はオブリビオンマシンだからねっ! なら、遠慮なく―――ファイナルブレイカー・モード起動!!」

 プラズマライフルの牽制射撃が『パールバーティー』に飛ぶ。
 牽制の射撃であっても恐ろしいと感じるほどの精度の射撃にユーリーは冷や汗を欠く。これまで経験してきた『エース』たちとの戦いを思わせる凄まじい攻撃。
「まだ、ボクには手段が残ってる!!行くよッ!!!!」
 ユーリーの操縦テクニックがなければ、おそらく牽制射撃の間に鎮められていたことだろう。
 けれど、ユーリーとて伊達に『撃墜女王(エース)』を名乗っては居ない。背に負った超巨大荷電粒子ビーム砲へと充填させれていくエネルギーのパーセンテージを視界に収めながら、アサルトライフルで応戦する。

「退け! 俺の無敗伝説を穢すやつはすべて排除する! 貴様たちの機体もまた、俺の伝説の礎にしてやる!」
 プラズマライフルの弾丸が飛び、その機体の装甲からにじみ出そうとする疫病ウィルスナノマシンが噴出しようとする。
 それこそが、輝光神機『ロクシアス』の本当の狙い。
 疫病ウィルスによって、この国―――『フォン・リィゥ共和国』すべてを滅ぼし、白紙に返そうとする目論見だったのだ。

「そんなことさせない! させやしない! 挫折を知ったからなんだって言うんだ! ここで倒れて……また立ち上がりなさい!!」
 そんなのは間違っている! とユーリーが叫んだ瞬間、超巨大荷電粒子ビーム砲のチャージが完了する。
 充填率120%。限界を超え、チャージされた荷電粒子砲が湛える光が漏れ出し、一瞬の交錯の後に機体が空中でくるりとアクロバティックに回転する。
 上下が逆さまになっていたとしても関係ない。

「―――そこッ! ダークマンティス……ファイヤッ!!」
 放たれた荷電粒子ビームが戦場を煌々と照らす。
 その一撃は凄まじい熱量を伴って散布されかけた疫病ウィルスナノマシンを一瞬の内に蒸発させる。
 輝光神機『ロクシアス』は、ナノマシンを焼き尽くされはしたが、ギリギリのところで回避せしめるが、強大なエネルギーの本流の前に機体装甲が溶解し、ただれたようにダメージを受けていく。

「パージっ!」
 ダークマンティスの砲身から強制解除され、『パールバーティー』の機体が飛び出す。
 手にしたアサルトライフルの弾丸が回避しきった後の『ロクシアス』を捉え、そのカッパーの装甲を穿つ。
 一瞬の交錯。
 けれど、それでユーリーにとっては十分であった。エネルギーインゴットが消耗し、機体のエネルギーの残量が少ない。
 あのウィルスナノマシンが放たれれば、国事態が終焉を告げる。
 それだけは阻止しなければならない。

「この俺の機体に傷を―――!」
「本当は一撃で仕留めるつもりだったけど―――!」
『エース』同士の戦いは凄まじく、モニターの外では二機の激突が大きくクローズアップされていたのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
では、始めましょうか、最後のショウを!

「式神使い」、器物覚醒。『GPD-331迦利』起動。

不敗伝説のチャンピオンが乗るオブリビオンマシンか。ぞっとしないわね。
でも、皆で力を合わせれば倒せない相手じゃない!

二等辺からの「制圧射撃」の「レーザー射撃」「弾幕」で、有象無象のキャバリアを近寄らせない。
「全力魔法」の「オーラ防御」を鋭角に展開した瞬間に、滞空から一気に最高速へスパート。
まずはその右腕のライフルをもらう。

……う、何か調子が悪い。アヤメ、大丈夫?
預けてた「浄化」の符で不調を吹き飛ばそう。しっかり身につければ、障りは何処ともなく引いて。

まだ息は荒いけど、充分やれる。続けましょう、チャンピオン!



「では、始めましょうか、最後のショウを! 急急如律令! 汝ら、我が下知に応じ、手足の如く動くべし!」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)の背後に浮かび上がる機甲式『GPD-331迦利(カーリー)』の逆三角形の異質なる機体。
 それはユーベルコード、器物覚醒(キブツカクセイ)によって式神を憑依させることによって自在に操ることのできる無人機としてのキャバリアである。
 彼女が対峙し、打倒しなければならないのは、この『闘技場』において最多の勝利と圧倒的な実力を兼ね備えたパイロットの駆るオブリビオンマシンである。

 荷電粒子ビームの光が地下工場群の中を明滅させる。
 それほどの威力を持ってしても、オブリビオンマシン輝光神機『ロクシアス』を滅するにはまだ足りない。
 だが装甲が融解しているのは見て取れる。
 押し込むのならば今しかない。
「不敗伝説のチャンピオンが乗るオブリビオンマシンか。ゾッとしないわね。でも―――みんなで力を合わせれば倒せない相手じゃない!」
 猟兵達の目的は一つだ。
 この大会で優勝することではない。オブリビオンマシンを打倒し、これ以上謎のユーベルコードによってオブリビオンマシンと化すキャバリアを産み出さないためだ。

「『迦利』―――!」
 二等辺三角形のような機体から放たれるレーザーによる制圧射撃によってチャンピオンの駆る輝光神機『ロクシアス』と猟兵の戦いにシード闘士達のキャバリアを近づけさせぬようにと牽制しながら、鋭角にオーラの力を張り巡らせた『迦利』が宙を舞い、一瞬で最高速に達する。
 有人機であれば、決してできることのない機動。
 けれど、無人機であれば制約のない機動が可能になる。その特性を活かし、ゆかりは凄まじい勢いで機体を『ロクシアス』へとぶつける。

「まずはその―――!」
「―――狙いは、右腕……いや、ライフルか。武器破壊を狙うとは、些かぬるいぞ!」
 チャンピオンが吠える。
 その言葉の意味をゆかりは理解しただろう。突撃した『迦利』の鋭角を掴む左腕。一瞬の交錯であったはずなのに、見切られたのだ。
「あの速度で掴む!? そんな馬鹿みたいな芸当―――!」
「これが出来ないで何がチャンピオンか!」
 掴んだ『迦利』の機体を地面に叩きつけるように振りかぶる『ロクシアス』。けれど、ゆかりはまだ諦めていなかった。

「なら、その左腕ごと!」
 機体の二等辺からレーザーが飛び、左腕の装甲を焼く。一瞬の刹那、緩んだ瞬間を狙って、レーザーと鋭角をライフルに集中させる。
 照準器が破壊されるが、ライフルの破壊にまでは至らない。だが、これであの恐ろしいまでの精密射撃は殺せたはずだ。
「『ロクシアス』―――!」
 機体の装甲から溢れ出る疫病ウィルスナノマシンが周囲に撒き散らされる。
 それはキャバリアに乗らぬ生身の人間を襲う凄まじいユーベルコード。あらゆる生命を侵し、殺すナノマシンが散布される。

 一度は荷電粒子ビームによって焼き払われたものの、オブリビオンマシンが存在している以上、常に散布することができるのだ。
 それこそがオブリビオンマシンの本当の狙いであったのだろう。
「……う、何か調子が悪い。アヤメ、だいじょうぶ?」
 ぐらりと猟兵であっても体に染み込む毒。
 それは浄化の符によって相殺されるが、受けたダメージは確実にゆかりとアヤメの体を蝕んでいた。
「ですが、これ……かなり強い毒です。無理は禁物ですよ」
 アヤメに符を任せ、ゆかりは立ち上がる。
 どことなく痛みはひいてはいるものの、未だ体の中に残ったウィルスが猛威を振るっているのがわかる。

 けれど、ここで立ち止まるわけにはいかないのだ。
 荒い息を吐き出しながらゆかりが、その紫の瞳を輝かせる。それはユーベルコードの輝きであり、未だ潰えず、折れぬ意志を湛えていた。
「充分やれる。続けましょう、チャンピオン!」
 その言葉とともに再び『迦利』と『ロクシアス』の攻防が続く。
 その戦いの様子は、モニターを通して、国民達の手に汗を握らせる攻防であったことは間違いない。

『迦利』の機体はすでにボロボロになっている。
 それでも向かい続け、撒き散らされるウィルスに侵されながらも舞う姿は、どこか神々しくもあったのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語

輝きか、いずれ廃れる物なのに縋ろうとしているのか
前のチャンピオンは綺麗な戦い方をしていて素晴らしいパイロットだったと聞いた
そう称していた人達に今の戦い方を見せられるのか?

SPDで判定
俺は【視力】【暗視】【聞き耳】でAIと一緒に敵機の【情報収集】
壁に背を付けて【地形を利用】し背後から狙われないようにする
【早業】【見切り】【足場習熟】と【ジャンプ】を駆使しながら避け
橙の災い:爆破【爆撃】をUCで弾丸に付与し【スナイパー】【クイックドロウ】【全力魔法】を使い相手の視界を晦ます
それから【2回攻撃】で藍の災い:圧壊【重量攻撃】を付与した弾丸をコックピット以外に撃ち込む



 その義眼のメガリスが輝く。
 その輝きは一時のものであるとルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は知っている。どれだけ激しくも盛るように輝くものであったとしても、永遠に輝き続けるものなどありはしないのだ。
 どれだけ燦然たる者であったとしても、それは変わらない。
 盛者必衰の理が、どの世界にも在る。 
 永遠はない。
 けれど、とルイスは思うのだ。

「輝きか、いずれ廃れる物なのにすがろうとしているのか」
 ルイスは知っている。
 以前のチャンピオンを語る者たちの言葉を。彼らが語るチャンピオンとは、技量を持ち得ながらも人格者でもあったことを。
 その戦い方をキレイと評するのは、ある意味で戦場を共にする彼らにとって誇るべきものであったはずだった。
 逆三角形の無人機キャバリアと華麗に空を舞うように戦闘軌道を行う輝光神機『ロクシアス』に、その面影はもうどこにもなかった。
 あるのは歪な輝きを放つ醜悪なるオブリビオンマシンとしての姿しかない。

「それを見るに耐えぬと思うのは俺の傲慢だろうか―――いや、違う。チャンピオン、あんたの戦いをキレイと評した人達に今の戦い方を見せられるのか?」
 その言葉は本来発するべきものではなかったかもしれない。
 ルイスの駆るキャバリア『銀の銃兵』は遠距離戦仕様のキャバリアである。
 本来であればスナイパーとして機体の気配を気取られることなく狙撃するはずであった。
 けれど、ルイスの中に溢れる激情はそれをさせない。
 工場群の影に背をあずけた『銀の銃兵』が魔銃を構える。

「俺の戦い方がなんだというのだ―――! あの戦いを、『怪物』の如きやつの戦いを見た後でも、それを言えるか!」
 カッパーの融解した装甲のまま『ロクシアス』が空をかけ、己を狙い付ける『銀の銃兵』の姿を捉える。
 構えたプラズマライフルの照準は破壊されてはいるが、未だ射撃に関しては健在である。
 飛翔しながら発射されるプラズマライフルの弾丸は牽制射撃であっても躱すのが難しいほどの精度を持っていた。

 どれだけ足場を習熟していようとも、かの『ロクシアス』に搭載された高速戦闘演算機構『予言の神』は、ルイスの思考を読んでいるかのような……それこそ、未来が見えているのではないかと錯覚するほどに正確な射撃を撃ち込んでくる。
 脚部、アンダーフレームが撃ち抜かれ、『銀の銃兵』が膝をつく。
「スナイパーが姿を現したのならば、覚悟を決めていただこう!」
 飛翔する『ロクシアス』の機体がプラズマライフルを構える。
 絶対回避不可能なる射撃を放つ弾丸が『銀の銃兵』を狙う。

「その演算機構が見えているのは、俺の、キャバリアの動きだけだろう―――なら、これならば!」
 ルイスの義眼のメガリスが橙に輝く。
 それは属性付与(エンチャント)。義眼のメガリスの力を付与したユーベルコードの輝きであった。
 橙色に輝く弾丸が放たれ、凄まじい爆発で視界が遮られる。
 それは目潰しのようであり、チャンピオンにとってはある意味で不意打ちであったのかもしれない。

「不意打ちだろうが、視界を潰されようが! 俺は『視えて』いるぞ!」
 高速演算が導き出した解はルイスの『銀の銃兵』の未来予測。
 脚部を破壊され、動けないキャバリアの姿を幻視している。どれだけ爆風で目潰しを受けようが、其処に『在る』と知っているのならば、プラズマライフルで狙えないわけがない。
 それだけの技量を持っているからこそ、不敗伝説を打ち立てたパイロットである所以なのだ。

「ああ、俺は動く必要がないからな―――だが、この弾丸の軌跡、輝きまではわかるまい!」
 ルイスの義眼のメガリスは二度輝く。
 橙の輝きに紛れるようにして輝くのは藍色の輝き。
 それはメガリスが紡ぐ災いの輝きであり、圧壊の力が籠められし弾丸であった。放たれた弾丸は爆風を突き抜け、プラズマライフルの放った弾丸と交錯し『ロクシアス』の肩アーマーへと着弾する。

「ぐっ―――……!」
『銀の銃兵』のオーバーフレームの腕がプラズマライフルの弾丸によって撃ち抜かれ、脱落する。
 アンダーフレームも撃ち抜かれ、オーバーフレームの腕部までも喪ったルイスはしかし、己の勝ちを確信していた。
「藍色の災いは、圧壊……つまる所、撃ち抜くというだけではない」
 展開されるメガリスの災い。
 藍色の輝きが『ロクシアス』の打ち込まれた肩アーマーから明滅するように光り輝き、その力を発揮する。
 弾丸の内側から圧壊するように発生した重量が一瞬で『ロクシアス』の機体を大地に失墜させる。

 それは凄まじい土埃を立て、轟音を響かせる。
 これまでのチャンピオンの戦いの中で、そんなことは一度もなかった。ここに来て漸くチャンピオンに土を付けることができたのだ。
「―――とは言っても、こちらも戦闘継続は無理、か……すまないな」
 だが、『銀の銃兵』は己の役割を正しく果たしたというように、どこか誇らしげに機体の色を輝かせるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・テルキーネス
●心境
目指せ優勝。目指せ国立。目指せ大統領!!
やっぱり何か違うような。
いえ頑張ります!!

●戦闘

ピスケス…ステラ・テルキーネス、いきま~す!!

操縦は予選で実践したおかげで大体わかりました。
ボクの自慢のステラ・テルキーネスの長い髪の毛を接続して『武器改造』
ほら、ピスケスのケーブルがボクの髪と同期して動くようになりました。
髪刃切断…ケーブルの先をブレードに変形。
熱線を『武器受け』させつつ接近させます。
そして、あなたに『切り込み』ます
どーです。使いこなして…あれーーーー(アクセルふかしすぎてそのまま体当たり『重量攻撃』状態で敵機に接触事故発生。)


●その他
アドリブ連携ともにOKです



「目指せ優勝。目指せ国立。目指せ大統領!!」
 そう高らかに宣言し、『闘技場』となった地下工場群へとステラ・テルキーネス(バイオモンスターのミュータントヒーロー・f19520)は乗機である『ステラ・ピスケス』と共に飛び込む。
 その宣言に何の意味があるのか、モニターでこの決勝試合の様子を見守る『フォン・リィゥ共和国』の国民たちはよくわかっていなかったが、予選でも活躍した彼女の機体を見れば、それがなにかの掛け声なのだろうと勝手に理解し、同じ様に大統領コールが始まっていたのだが、それはステラも知るところではなかった。
「……やっぱり何か違うような……いえ、がんばります!! ピスケス……ステラ・テルキーネス、いきま~す!!」

 彼女のキャバリア『ステラ・ピスケス』は人魚型であるが主に空中戦において真価を発揮される機体だ。
 けれどクロムキャバリアにおいて空中戦とは自由とは程遠いものである。在る一定の高度を高速で飛翔する物体に暴走衛星『殲禍炎剣』は無差別に攻撃を加え、キャバリアであれば問答無用で叩き落されてしまうからである。
 だが、今回に限って言えば、地下工場群での戦いであることが幸いしている。天井の在る戦場とは言え、彼女の機体の特性が活きる戦場であることは間違いない。
「操縦は予選で実践したおかげで大体わかりました。ボクの自慢のステラ・テルキーネスの長い髪を~!」
 コクピットの中で彼女の髪が接続されるやいなや、『ステラ・ピスケス』の髪の毛を模したケーブルが彼女の意のままに動くように為るのだ。

「珍しい機体であろうが、輝光神機『ロクシアス』の前には―――!」
 この闘技場のチャンピオンのキャバリアでありオブリビオンマシンである輝光神機『ロクシアス』がステラに襲いかかる。
 すでにカッパーの装甲は融解し、肩アーマーはひしゃげたように破損している。
 その手にしたプラズマライフルのレーザーサイトが『ステラ・ピスケス』を捉える。
「これで終わりだ!」
 放たれた光熱の熱線が瞬時に放たれる。だが、放たれた熱線すらも切り裂いて宙を飛ぶ『ステラ・ピスケス』の姿があった。

「ボクの髪はブレードになります!」
 髪刃切断(エクステンションリッパー)とでも言うべきか。
 彼女のユーベルコードによって彼女と連動するキャバリアのケーブルの先がブレードへと変形し、放たれた熱線を切り裂いているのだ。
 切り裂かれた熱線が周囲の工場群に飛び散り、その熱量の凄まじさを知らしめるように次々と建物が溶解していく。
「熱線を切り裂く、だと―――!? この、状態で!」
 その驚愕はもっともなものであったことだろう。
 熱線の攻撃を切り裂く者がいようとは誰が思うだろうか。それ以前に放たれた熱線その速度、威力を顧みても、それが可能であるとは誰も思えない。

 だが、それでもステラはキャバリア『ステラ・ピスケス』ならばやれると信じていた。
 熱線を切り裂きながら飛びかかるようにして『ロクシアス』へと迫る。
「どーです。使いこなして……あれ―――!?」
 本来であればケーブルの先端を変形させたブレードで切り裂くつもりであったのだろう。だが、それは彼女の未だ慣熟とはいい難い操作技術においては未だ為し得ないことであったのだろう。
 思いっきり加速した機体をそのまま『ロクシアス』へとぶつけ、その衝撃で持ってコクピットの中のチャンピオンに凄まじい打撃を与える。

 いくらなんでも出鱈目がすぎる。
 だが、それでも装甲がひしゃげていくのは、『ステラ・ピスケス』もまた同様である。
「わー! へこんだー!? じ、自賠責保険! あ、いや、キャバリアってそういうのってあるものなの!?」
 おそらく無い。
 まさに接触事故の如きジャージで『ロクシアス』を吹き飛ばしつつ、ステラはひき逃げ同然に空を掛けていく。
 周囲には未だ他のシード闘士たちの駆るキャバリアがいる。
 ステラを逃さぬと追いかけてくるキャバリアたちを引き連れ、ステラは次々と立ちふさがるキャバリアたちを吹き飛ばして突き進み続けるのであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
「ったく。あんまり仲良くするもんじゃないわね」
かってのチャンプの話をする時の、荒くれ達の目が脳裏を過る
あれはヒーローを語る目だった

方針
他の連中を棒で無力化しつつチャンプに挑む
ここでは未知の技法だろうが、一度見せたら対応するのが超一流
不利を承知で棒で応戦。致命傷を避けつつ勝機を測る
遊びがなく合理的な殺戮技巧
それが隙ね
レーザーサイトに合せ突きを放つ
一歩届かぬ間合い
ここで三節に伸ばすギミックを初披露だ

「イグニッション」
真の姿の【封印を解く】と、紅蓮の機体で高速タックルからの斥力投げ
上空で【捕縛、怪力、部位破壊】し、そのまま超重力での落下技を狙う

「そのやり方、あんたには似合わないわよ、チャンプ!!」



 キャバリア同士による衝突の衝撃で輝光神機『ロクシアス』の機体は弾けるように吹き飛ばされる。
 それは今までの『闘技場』における無敗伝説を誇るチャンピオンに起こり得ない光景であったことだろう。
 この決勝試合をモニターしている『フォン・リィゥ共和国』の国民たちは皆一様に驚愕していた。
 戦い方が変わってしまったとは言え、チャンピオンは以前無敗伝説を誇ったままなのだ。それは国民たちにとって英雄が次々と追い詰められている光景に違いないだろう。
 例えそれがオブリビオンマシンによって心を歪められているのだとしても。

「ったく。あんまり仲良くするもんじゃないわね」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)は彼女が駆るキャバリア『迦楼羅王』のコクピットの中で息を吐き出す。
 彼女が情報を集めるためにシード闘士たちと宴会を催した時に、無敗伝説を誇るチャンピオンを語る彼らの目を思い出したのだ。
 あれは、そう。
 言わばヒーローを語る目であった。彼らの中では畏怖と同時に憧れでもあったのだ。あの技量、圧倒的な戦いぶり。

「酒を一杯おごってもらった恩はあるが! だからといって手を抜く俺らじゃねーぞ!」
 次々と紅葉と『迦楼羅王』に襲いかかるシード闘士たち。
 彼らは確かに紅葉と交流していた。けれど、戦いと成れば、それとこれとは別の話である。それは紅葉も了解していたことであり、むしろ望むところであったことだろう。
「それはそうね! けれど、簡単に取らせるほど私も甘くはない」
 手にした六尺棒で襲い来るキャバリアたちを次々と打倒していく。それは簡単なものではなかったけれど、やれないことではない。
 そこへカッパーの装甲を融解させ、ひしゃげさせたチャンピオンの乗機でありオブリビオンマシンである輝光神機『ロクシアス』が飛び込んでくる。

「ぐっ―――……俺が、此処まで追い詰められるだと! あってはならない! 俺の、俺だけの無敗伝説が! 汚されてしまう」
 そう、紅葉は気がついていた。
 オブリビオンマシンである『ロクシアス』は飛び込んできたのではない。ましてや紅葉を狙ってきたわけでもない。
 他に戦う猟兵達によって追い込まれてきていたのだ。

「そういうのはさ―――」
 紅葉が開きかけた言葉。同時に互いの獲物が互いの機体に向けられる。
 片やレーザーサイト。片や六尺棒。
 カッパーの装甲と黒鉄の装甲の鋼鉄の巨人同士が互いの間合いを測る。だが、それは言ってしまえば、一触即発のタイミングを測っているようでも在った。
「黙れ―――!」
 プラズマライフルから放たれた弾丸が『迦楼羅王』に迫る。
 それを六尺棒を回転させ弾き返す。それは今まで彼が見たことのない棒術であったことだろう。
 だが、その技量がどれだけのものであったとしても、知らぬ間合いの武装を扱うキャバリアであったとしても、チャンピオンをチャンピオン足らしめる超一流の技量は、その未知を埋めるのだ。

「もう対応してきた―――! この間合で!」
「弾丸の速度を見切っているだと! この距離で!」
 互いに一歩も引かぬ攻防。
 一見すれば、紅葉が不利であろう。プラズマライフルの弾丸は速く、それを防ぐ防戦一方になっているように思われたからだ。
 だが、チャンピオンはわかっている。『ロクシアス』が熱線を放つためにはレーザーサイトを当てなければならない。
 それを理解され、対応されているのだ。

「遊びがない、こういう合理的な殺戮技巧は、経験がないでしょう!」
 魅せる戦いをしてきたチャンピオンにとって、紅葉の合理を突き詰めた棒術はあまりにも経験のないものだった。
 けれど、それに対応してみせるだけの技量は凄まじいものであったことだろう。
 レーザーサイトの一瞬に間に合わせた紅葉の踏み込み。
「だが、踏み込みが甘い―――ッ!?」
 突き出されれる六尺棒。
 一瞬の攻防。見切られた突き。だが、それはここに来て初めてみせる三節に伸ばすギミックによって到達出来ぬはずのあと一歩の間合いを埋める。

 瞬間、『迦楼羅王』が炎に包まれ、紅蓮の機体色へと変貌を遂げる。
 踏み込みの速度が上がる。三節棍へと姿を変えた棒が一瞬で『ロクシアス』の機体の装甲を斥力制御によって投げ飛ばす。
 空へと舞い上げられた『ロクシアス』の機体が防御の耐性を取ろうとする。けれど紅葉にとって、それこそ狙いであった。
 回避ではなく防御。
 対応するとわかっていたから。

「まだ引斥自在って訳でもないけど……あんたを沈めるには十二分ね!!」
 これこそが、ハイペリア重殺術・裏天殺(リテンサツ)。
 回避間に合わぬ防御の体制をとっていたとしても超重力柔術の技巧による追撃は意味をなさぬ。
 空へと舞い上げたのは回避を塞ぐためではない。
 ―――そう、高く打ち上げたのだ。三節棍となった六尺棒が『ロクシアス』の機体をつかみ、そのまま機体を大地へと勢いよく叩きつける。
 轟音が響き、『ロクシアス』の機体が再び地に伏す。

 それを見下ろし紅葉は高らかに宣言する。
「―――そのやり方、あんたには似合わないわよ、チャンプ!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
悪しき呪縛より目覚め、かつての自分を取り戻して……

アセナ……貴方も感じますか、災いを運ぶ風を
ええ、ならばなすべき事は一つです
力無きものに降りかかる災厄を消し去りましょう

散布されたナノマシンを対象として【聖櫃】を発動
作り出された結界内部の時間の流れを極限まで加速することによって
外界の者にはほとんど認識さえ出来ない程の高速移動を可能とした上で
神狼形態に変形したアセナで戦場内を縦横無尽に駆け
全てのナノマシンをまるで喰らうかのように効果範囲内に取り込んでいきます

放出の限界時間を迎えましたら、その瞬間を逃さずロクシアスに肉薄
勢いのままに機体の四肢、又はライフルを狙って噛みつき攻撃を仕掛けます


アドリブ歓迎



 宙に舞い上げられたカッパーの装甲を持つ輝光神機『ロクシアス』が大地へと凄まじい勢いで叩きつけられる。
 その衝撃はコクピットの中に居るパイロット、チャンピオンにまでしたたかに届いたことであろう。
 だが、それでも立ち上がってくる。
 機体が無事であったとしても、それを操るパイロットが無事でなければ戦いを続行することなどできようはずもない。けれど、それでも立ち上がってくる。
 それこそが、この『闘技場』における無敗伝説を誇るチャンピオンであったからだ。
「俺は、負けない―――負けられない。俺の持つ伝説が、無敗が―――こんなところで終わって言い訳がない!」
 オブリビオンマシンによって心を捻じ曲げられたがゆえに固執する勝利。
 それが如何に虚しいものかをソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は感じ、チャンピオンの身を案じていた。

「悪しき呪縛より目覚め、かつての自分を取り戻して……」
 それはソナタの切なる願いであったことだろう。
 彼女の駆るサイキックキャバリア、神騎『アセナ』の動力部が唸りを上げるように出力を上げていくのを感じる。
 それは心歪められし者の悲哀を感じ取ったからであろう。
 ソナタは頷く。
「アセナ……貴方も感じますか、災いを運ぶ風を」
 ずっと気がかりであったのだ。
 あのオブリビオンマシンの機体。その力が宿す疫病の気配を。あの機体を見て漸く悟った。
 己がこの場にいる意味を。何をなさねばならないのかを。

 滲むように『ロクシアス』のカッパーの装甲から溢れ出す疫病ウィルス型ナノマシン。それは周囲に散布されてしまえば、生身の人間だけではなく、それを使用するパイロット―――チャンピオンの生命すらも削りきってしまうユーベルコードであると。
 それを神騎である『アセナ』もまた感じ取っていたのだ。
「ええ、ならば為すべきことは一つです。力なきものに降りかかる災厄を消し去りましょう―――暖かな明日を希い……」
 彼女の瞳と『アセナ』の機体がユーベルコードの輝きを放つ。

 それはナノマシンすべてを包み込む時を統べる結界へと変える。
 ソナタのユーベルコードによって作り出された結界の中は時間の流れ、それを加速させる。
「なんだ、これは……ナノマシンが、消された……いや、違う―――!」
 結界の外では『アセナ』と『ロクシアス』が対峙したままのように見えるだろう。
 だが、ソナタのユーベルコードによって作り出された結界の中は極限まで加速された時間の中にあるのだ。
 その中を凄まじき速度で駆け抜ける一騎のキャバリアがあった。

「『アセナ』―――頼みます!」
 純白と透き通る青の装甲に包まれた優美なる機体、その姿が変貌する四足の狼の如き形態へと変形した『アセナ』が結界の中を所狭しと駆け回る。
 それは『ロクシアス』からにじみ出るナノマシンのすべてを食い尽くすかのように大顎を開き、次々と結界へと変換していく。
「消しているのではない……! 喰らっているのか、あのキャバリアが!」
 ナノマシンの噴出は止めていない。
 だというのに、全てを蝕むはずの疫病は結界の外は一切漏れ出るどころか、ナノマシンである以上無機物のためにソナタのユーベルコードによって尽くが変換され、無効化されているのだ。

 それを為すのがソナタのキャバリア、神狼とも言うべき『アセナ』である。
「かつての貴方は、このような行いをする方ではないはずです。思い出してください。戦いだけが日常の世界にあって、貴方は―――!」
 ソナタの言葉が響く。
 結界の中に彼女の悲痛な思いが迸る。それを受けて『アセナ』は益々速度を上げ、ナノマシンを尽く無効化するのだ。
「言うな! 俺はもう決めたのだ! 後戻りなどできようはずもない! あの『怪物』じみたヤツを―――!」
 心が捻じ曲げられたがゆえの言葉。
 けれど、ソナタ走っている。どれだけ捻じ曲げられたものであっても、その根本まで歪められないことを。
 だからこそ、戦うという選択肢ではなく言葉を尽くすして、疫病を撒き散らさんとするオブリビオンマシンの目論見を打ち砕くのだ。

「その歪みを喰らって―――『アセナ』!」
 ナノマシンの放出が止まった瞬間、『ロクシアス』に肉薄する『アセナ』。左腕に大顎が食いつき、そのオーバーフレームの腕部を凄まじい勢いで引き裂き、食いちぎるようにして破壊せしめる。
「こ、の―――!」
 チャンピオンの反応もまた凄まじい。
 左腕を捨ててでもプラズマライフルの銃口を向ける。けれど、その弾丸が放たれることはなかった。

 狼の如き形態へと変形したソナタの『アセナ』。
 その姿は嘗ての己を連想させられたからだ。戦いだけが続く世界、クロムキャバリア。そこで生きることは簡単なことではない。
 獣のように生きねばならなかっった時代があったのだ。それを思い出し、トリガーを引く手が止まる。
 結界が解かれ、加速していた時間が戻る。
『アセナ』とともにソナタは引きちぎるようにして奪った左腕を噛み砕き、完全に破壊する。

「貴方の力は、力なきものを照らすための力であるはず―――嘗てそうであったように。貴方の戦い方をキレイと評し、そこに希望の光を見出した方々のためにも」
 ソナタは言葉を紡ぐ。
 ただ打倒するだけではない。歪められた心をもとに戻し、その後に待ち受ける戦い……生きるという道を再び示すために、彼女は彼女自身の戦いをするのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
再びCoyoteを借りて参戦

量産機にやられちゃうワンオフ機ってどうなんですかね?
ふふ、再現ってやつです
あなたにも味あわせてあげようと思って

さぁいっきまーす!

とはいえ出力は向こうが上!
しかも予感は的中、遠距離強い!
そこでこのキャバリアシールドです!

スラスターによる推力移動で突撃
シールドで黄金の矢を受け止める…と見せかけて
手放して囮にしながら射線から離脱
シールドが爆発している隙に懐まで一気に踏み込みます

至近距離から標準兵装のRS-A『散弾砲』で目くらまし
そして高威力ナイフによる【疾風怒濤】で一気に攻めます!
「手数こそ正義!参ります!」

ふふん、量産機に傷つけられる気分はどうですか?

※アドリブ連携OK



 カッパーの装甲から滲み出ていた疫病ウィルス型ナノマシンの尽くが猟兵のユーベルコードによって無効化されていく。
 それは一瞬の攻防であり、疫病ウィルス型ナノマシンを外へと漏らしてはならぬという確固たる意志を感じさせた。
 その意思は紡がれ、ナノマシンは流出していない。
 そこに飛び込んできたのは量産型キャバリア『Coyote』である。
「―――量産型が……! 目障りな!」
 輝光神機『ロクシアス』のレーザーサイトが付け狙うが、狙いを定まらせないように動き回る姿は乗り手の技量を示しているかのようであった。

「量産機にやられちゃうワンオフ機ってどうなんですかね?」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は量産機を駆りながら、そんな挑発めいたことを言葉にする。
 それは無敗伝説を誇るチャンピオンにとっては侮辱以外の何者でもなかった。機体性能にかまけていたわけでもない。
 けれど、圧倒的なパイロットとしての技量の前に心折られ、オブリビオンマシンによって捻じ曲げられた心は、それに気がつくことすらできない。
「ふふ、再現ってやつです。あなたにも味あわせてあげようと思って」
 映像で見るのと経験するのとでは問題が違う。
 サージェは効率的にチャンピオンを挑発し、その目を自分へと惹きつける。
 それがクノイチとしての技量であったのかも知れないが、今はキャバリアでの戦いである。

「さぁいっきまーす!」
 プラズマライフルから放たれる弾丸がサージェを襲う。
 コクピットを外すだとか、そんなことは一切関係のない冷徹なる狙い。出力は完全に向こうが上だ。機体性能の差は言うまでもなく、遠距離から放たれるプラズマライフルとレーザーサイトに捕まってしまえば高威力の熱線が機体を蒸発させるだろう。
 だからこそ、サージェは対策をとっていたのだ。
 整備士たちに『おねだり』したキャバリアシールド。若干重量が気になるが、装甲の厚さ故であろう。

 このシールドならば熱線をわずかでも防ぐことができる。
「消え失せろ!」
 レーザーサイトがサージェの駆る『coyote』を捉え、熱線が放たれる。凄まじい出力である以上に、その攻撃の速度が異常であった。
 回避することなどできようはずもない凄まじい速度で迫る熱線。だが、サージェはひるまなかった。
 彼女の機体のために時間を惜しんで整備してくれた整備士たち。
 彼らに報いるために己が生きて帰らなければならない。無茶をするな、といった今日あったばかりの闘士たち。
 死んでほしいわけじゃないといった言葉がサージェの心のなかに光を灯す。

「このシールド、なら―――」
 火花をちらしてキャバリアシールドの装甲が融解していく。装甲が溶け出し、熱線の威力を知らしめる。
 機体の熱温度が上昇していくアラートが響き渡り、スラスターの推力であっても押し負ける。
「消えろ! 消えろ! 俺の前から消えてしまえ! 目障りなんだよ、その機体は!」
 チャンピオンの怒号が響く。
 それは歪められたこころでは飲み込めぬ叫びであったことだろう。だからこそ、サージェは飛ぶ。
 自身の身を守るシールドを手放し、熱線から離脱する。シールドが完全に融解し、地面をえぐる土煙に紛れるようにして一気に距離を詰める。
「手数こそ正義! 参ります!」
 手にした散弾砲から放たれた弾丸が『ロクシアス』を完全に捉えたと思った瞬間、その散弾すらも回避するのがチャンピオンの技量であった。

「見え透いた手を! 失せろ!」
 左腕を喪っても尚、その動きは精彩を欠くことはない。蹴り出された脚部がサージェを捉えるが、その場で一回転するように機体を反転させ、裏拳のようにナイフを振るう。
 それは『ロクシアス』の頭部の装甲を削る。
「ふふん、量産機に傷つけられる気分はどうですか?」
 どこまで行ってもサージェは挑発をやめない。
 心を歪められる前であれば、挑発など無意味であったことだろう。魅せて勝つからこそ無敗伝説を誇るチャンピオンであったのだ。

 けれど今サージェが相対するはオブリビオンマシンによって心を歪められた『エース』でしかないのならば!
「きさ、ま……!」
「ええ、最低の気分でしょうね! だから、私が止めてさしあげます! そにっくぶろー!!」
 放たれる連撃は疾風怒濤(クリティカルアサシン)の如く。
 ナイフによる斬撃の一撃一撃は軽いものであったことだろう。けれど、ユーベルコードの輝きによって強化されたナイフは違う。
 凄まじき連撃と共に放たれたナイフが『ロクシアス』の機体装甲を次々と癒えぬ傷跡を刻んでいく。

 それはまるで、虚飾の色に塗れたオブリビオンマシンのガワを剥ぎ落とすかのような疾風そのものであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリッセ・トードゥ
データ的には全て相手の方が上、か。
問題ない。どちらが強いかじゃない。どうやって勝つか、だ。

サイキックフォースによるサイコバリアーの【オーラ防御】で攻撃を受け流す。
戦って敗けたのなら納得出来たのかもしれない。だがお前は敗けずして敗けた。
不敗ではあっても無敵ではないと自分で認めてる。お前にはこのフォースは抜けない。
この力は世界の敵を倒す為に世界がくれた猟兵としての力。オブリビオンに対しては無敵と断言する。
自機への負担も大きい。一撃にかける。マルチプルミサイル発射。【誘導弾】で包囲攻撃。
敵の回避パターンを【瞬間思考力】で高速演算。隠し武器のスラスターカノンでフォースを【衝撃波】の砲弾にして狙い撃つ。



 無数の斬撃が輝光神機『ロクシアス』の美しかったはずの装甲を引き剥がすように刻まれ、その姿は満身創痍であった。
 過去、ここまでチャンピオンの駆るキャバリアを追い詰めた者たちはいなかった。バトルロイヤル方式の試合であっても尚、チャンピオンはチャンピオン足る戦いを魅せていた。
 そのキレイな戦いと誰もが口を揃えて言った戦いぶりは、オブリビオンマシンに乗ることによって失墜していたと言っても過言ではなかった。
『スペックを見る限り、すべてのパラメータが上回ってる機体だよ』
 AI兼OSの『ALICE』の音声がコクピットの中に響く。
 アリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)は、その客観的な事実に趣向する。わかっている。データ的に見てもすべて相手が上だ。
 けれど、落ち着き払った様子のアリッセは静かにトリガーを握る。

「問題ない。どちらが強いかじゃない」
 アリッセにはもうわかっていた。
 これがキャバリア同士の戦いであればまだ考える余地はあったかもしれない。けれど、今アリッセは猟兵であり、対峙するはオブリビオンマシンである。
 ならば、そこにあるのは彼我の戦力差ではない。
「―――どうやって勝つか、だ」
 カスタマイズされたレストア機である『CZ-X』の機体が戦場へと飛び込んでいく。すでに多くの猟兵たちがチャンピオンの駆る『ロクシアス』を消耗へと導いている。
 あれだけの数の猟兵を前にして未だ健在であることは、凄まじいものであったが、アリッセはそれが機体性能に寄るものではないとわかっていた。

「チャンピオンの技量と言うやつか。だが!」
 レーザーサイトがアリッセを狙う。
 あの攻撃は不可避の攻撃であり、熱線の威力は凄まじい。それはすでに他の猟兵たちが証明してくれている。
 データは充分に揃っている。ならば、そこから勝利へと至る道筋を付けることができるのが人の技量というものであろう。
「量産機がわらわらと俺の前に立つな! 目障りなんだよ、お前たちは!」
 放たれる熱線が機体を襲う。

 機体性能、パイロットの技量。
 どれもが己を上回っている。けれど負ける気がしない。これが純粋なるチャンピオンとの戦いであったのならば、この時点でアリッセは地に伏していただろう。
 確実に敗北していた未来が見える。
 だが、今は違う。
「戦って敗けたのなら納得出来たのかも知れない。だあが、お前は敗けずして敗けた。腐敗であっても無敵ではないと自分で認めている」
 機体を覆うサイキックフォースの力が張り巡らせるサイコバリアーが熱線を受け止める。サイコバリアーが削られていくが、一向に熱線はアリッセには届かない。
「こちらの出力が落ちているッ!? いや、違う、出力は落ちていない……! 何故だ!?」

 火花散るサイコバリアーの中でアリッセは、その瞳に宿るユーベルコードの輝きをさらに強く輝かせる。
 それは一分の疑念もない揺るぎない意思。
「『信じる想いが力になる』……戯言じゃない。世界の真理だ。お前にはこのフォースは抜けない」
 真理力(トゥルーフォース)。それは無敵のサイキックフォースを想像から創造し、己の意志が曲がらぬ限り、その力を無敵足らしめるユーベルコード。
 アリッセは何も疑問を抱かない。
 今この瞬間をおいて己は無敵であることに一切の疑念を抱かない。

「今のお前は『チャンピオン』ではないからな―――この力は世界の敵を倒すために世界がくれた猟兵としての力。オブリビオンに対しては無敵だ! 今のお前は即ち『世界の敵』」
 ならば、その理が乱れることはない。
 覆ることはない。多弾頭ミサイルが一斉に放たれ数百というミサイルが『ロクシアス』を襲う。
 ミサイルの包囲網が『ロクシアス』を襲うが、チャンピオンの技量によって尽くが撃ち落とされ回避される。
「この、程度、で……! 俺が落とせると思うな!」
 プラズマライフルの弾丸がミサイルを撃ち落としていく。凄まじい戦術機動。正確無比なスラスターの挙動と機体の制御。
 確かに技量は凄まじいものであった。

 けれど、アリッセの言葉を借りるならば。
 ―――彼は『チャンピオン』ではない。オブリビオンマシンによって心を歪めれた過去の化身のパーツにほかならない。
 そこに歪められた意志はあれど、矜持はない。
「ならば、その歪められた心を撃つ―――!」
 ミサイルと共に『ロクシアス』を猛追するアリッセの機体が迫る。すでにミサイルを打ち尽くして有効打はないはずだ。
 だが、瞬間アリッセの機体のスラスターが不可思議な光を放つ。
 それはスラスターに偽装されたカノン。サイキックエナジーの砲弾が放たれ、拘束演算によって導き出された不可避の一撃を『ロクシアス』に打ち込む。

「な、に―――!?」
 凄まじい衝撃を受けて、残ったミサイルの追撃を受けながら大地へと失墜していく『ロクシアス』を見下ろしながらアリッセは呟く。
「その輝きは、歪められているからこそだ。思い出せ、本来のお前を。不敗を誇る己ではなく、人々を熱狂させる戦いをしていた魅せる『チャンピオン』であったころのおまえを―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
チャンピオンと猟兵の戦闘の余波の被害防ぐ為センサーで●情報収集
先んじて『セラフィム』含む他選手を脱落させ退避

機動性に頼らぬUCでの最小限の挙動で攻撃誘導し回避
反撃し無力化…

…!
私の戦法に既視感があるようですが、執着を増幅されて…

強さを希求することは正しきこと
ですが破滅を齎すその力は看過できません

●世界知識でプラズマ余波●見切りUCの挙動で回避
柄尻にワイヤー付けた剣を●投擲
回避された瞬間巻き取り●ロープワークで操り後退して射撃放たんとする敵の後ろから斬撃

体勢崩した敵に●推力移動で急接近
●操縦挙動を動から静に一瞬で変え射撃躱し大盾殴打

その機体から降り己を見つめ直し下さい…強者たる貴方であれば必ずや



 オブリビオンマシンである輝光神機『ロクシアス』と猟兵達の戦いは激化していく。
 無数のミサイルとサイキックエナジーに寄る砲撃によって再び『ロクシアス』は大地に失墜する。
 機体の装甲は傷だらけであり、肩アーマーは損壊し、左腕は喪われている。
 それでもなお立ち上がってくるのがオブリビオンマシンというものであるのならば、その戦いの余波はバトルロイヤル方式の戦いにおいて、他の一般闘士たちにも類が及ぶことだろう。
 それを懸念したトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は他の猟兵たちが蹴散らし退避した闘士たちとは別の集団のキャバリアと対峙していた。
「『セラフィム・リッパー』……因縁ある機体ではありますが、今は疾く打倒させて頂きます」
 それは機械騎士の戦闘舞踏(マシンナイツ・バトルワルツ)のような美しき演舞の如き戦いぶりであった。

 スラスターを一切ふかさず、機体制御のみにおいて回避行動を実現させる戦術機動の極地。そこに至ったトリテレイアの駆るキャバリア『ロシナンテⅣ』の稼働は流麗そのものであった。
「くそっ! 攻撃が当たらねぇ!」
『セラフィム・リッパー』だけではない、他の闘士たちの攻撃が一切『ロシナンテⅣ』には通用しないのだ。
 尽く攻撃を回避し、無駄のない洗練された反撃によってシード闘士たちのキャバリアを戦闘不能へと追い込んだ。
 最後に剣でもって『セラフィム・リッパー』の頭部を切り裂き、大地に沈めるとトリテレイアはオブリビオンマシンである『ロクシアス』へと向き直る。

「―――!」
 レーザーサイトが『ロシナンテⅣ』に狙いがつけられた瞬間、熱線が飛ぶ。
 その熱量は凄まじく完全に見きったと思った瞬間に機体の装甲を焼き、溶解して脱落していく装甲。
 ユーベルコードによって戦術モードを戦場全域の連続予測に最適化していても尚、誘導しきれぬ射撃。
 その凄まじさを見せつけられながらもトリテレイアは怯むこと無くワイヤーの取り付けられた剣を『ロクシアス』に投擲する。
「その動き! 洗練された動き! 似通っている! あの『怪物』と……! だが、まだ足りない……! あれはまだ、こんなものではなかった!」
「……! 私の戦法に既視感が在るようですが……執着を増幅されているのですね……」
 投擲された剣を回避した『ロクシアス』。
 だが、投擲した刀剣は『ロクシアス』を狙ったものではない。かの機体の背後にある地下工場群の壁面へと突き立てられた剣をアンカー代わりにしてワイヤーを巻取り、スラスターでは不可能な速度で『ロクシアス』の背後を取る。

「その程度の斬撃で!」
 壁面から抜かれた剣の一撃をさらに躱す『ロクシアス』。機体の性能ではない、とトリテレイアは冷静に判断していた。
 これは技量に寄る回避行動。反射と思考。それが戦闘経験によって紐付けされた練磨の結果であると理解する。
 だが、背後からの強襲を無理に回避すれば態勢が崩れるのは道理である。
「ですが、態勢は崩せました。その一瞬の隙さえあれば、機体性能の差など―――!」
 一気に距離を詰める『ロシナンテⅣ』と『ロクシアス』の機体が交錯する。プラズマライフルの弾丸が『ロシナンテⅣ』の頭部を打ち抜き、その頭部無き機体を前に勝ちを確信する。

「やはりそうだ! あの『怪物』には遠く及ばない! お前も! 奴等も、俺さえも、あの『怪物』の前には無意味な存在でしか―――!」
 視界失いし機械騎士の動きが止まる。そのキャバリアに止めを差さんと迫る『ロクシアス』は、しかし機体より先にチャンピオンが言い知れぬプレッシャーに一瞬引こうとするが、機体は、オブリビオンマシンは止まらない。
 目の前の死に体の猟兵に止めを差さんと『ロクシアス』は迫り、そして動から静、一瞬の攻防のさなかに放たれたプラズマライフルの弾丸を躱し、その手にした大盾を振るう。

 シールドバッシュ。
 それは近接戦闘に置いて、人が銃器を手にする以前において攻防一体の凄まじき重量攻撃として知られる戦闘技法であった。
 チャンピオンは、それを感じ取っていたがオブリビオンマシンは感じることもできなかったことだろう。
 放たれたシールドの一撃は『ロクシアス』の装甲をひしゃげさせ、その頭部をいびつに歪めさせる。
「……やはり。その機体は何も感じ取れはしないようですね。ならばこそ、この敗北は『貴方』のものではありません。その機体から降り、己を見つめ直して下さい……強者たる貴方であれば必ずや―――」
 その後に続く言葉をトリテレイアは紡がない。
 その先にある言葉をもう、チャンピオンは知っていたであろうから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル01に搭乗、操縦。

敵はチャンピオン、ロクシアス。
戦え『ディスポーザブル』この命が壊れ失せるまで

リミッター解除。流血を無視して、思考を研ぎ澄ます。
敵機に向かってダッシュ、超反射・瞬間思考力によりレーザーサイトを見切り、フォースウィップで敵レーザー射撃をオーラ防御。

その暗い光に、焼かれるものか!
機体の限界を越えた推力移動で常に至近距離を維持。
念動力で機体の機動限界を越え、怪力でパワークローとブラストナックルを叩きつける。疎まれる光は停滞を生んだ!

BS-Bを展開、電磁音波で機体へ属性攻撃
貴様の光には、背を向ける者ばかりだ!
チャンピオンとは、そういう物か!!?

返事は聞かず、戦闘を継続。



 大盾の一撃により、装甲がひしゃげ歪な形となったオブリビオンマシン、輝光神機『ロクシアス』が立ち上がる。
 すでに機体の損傷は装甲が用をなさぬものへと代わり始めていたいが、未だフレーム事態に対する損傷は左腕だけに止めていた。
 これまで数多の猟兵達の攻撃にさらされても尚、この程度のダメージで済んでいるのは無敗伝説を誇るパイロットの技量故であろう。
 通常のバトルロイヤル方式の試合であれば、すでに戦いは決して居るであろう損傷であっても、オブリビオンマシンには関係がない。
 猟兵を前に退くことなどありえない。
 互いに滅ぼし合う関係であるのならば、なおのことである。

 すでにほとんどのシード闘士たちは猟兵達によって撃破され、退避している。それは朱鷺透・小枝子(ディスポーザブル・f29924)が事前にシード闘士たちを捕縛し、試合に出場させないようにしていたからである。
 彼女は今、重装甲ディスポーザブル01を駆り、『ロクシアス』へと迫る。
「敵はチャンピオン、ロクシアス。戦え、『ディスポーザブル』、この生命が壊れ失せるまで」
 その言葉は己に対する言葉でもあったことだろう。
 戦うことが存在意義であるというのなら、小枝子は無いはずの生命を燃やし続ける。
 ディスポーザブル(タタカッテタタカッテタタカッテ)が疾駆する。
 小枝子の瞳から流血し、ユーベルコードに寄る超反射能力と超高速思考状態へと移行する負荷が彼女の体を苛むのだ。

「戦え、戦え、戦え!」
 叫ぶようにして機体が唸りを上げ、その重装甲の機体でありながら在りえぬ反射速度と機動でもって『ロクシアス』の放つレーザーサイトを見切り躱す。
 あのレーザーサイトをポインターとして作動させなければ熱線は放たれない。それはすでにこれまでの猟兵達の戦いによって理解している。
 ならば、己の機体を制御し、かわし切るために必要なのは機体の制御と、相手の虚を着く機動であった。
 腕部から射出されたフォースウィップが地下工場群の建物に絡みつき、レーザーサイトの照射された瞬間に変幻自在な機動で持って予測不可能な起動を描く。

「狙いを、絞らせないつもりか!」
「その暗い光に、焼かれるものか!」
 機体がきしむ。
 己の身体がきしむ音を小枝子は聞いた。けれど、壊れても進む。壊れても戦う。その情念とも執念とも言えぬ感情のままに機体を動かし続ける。
 機体の機動限界はすでに越えている。己の身体と機体のフレームがきしむ音は、もう聞き飽きるほどに響いている。

「だからなんだというのだ! 自分は戦うために此処に居る!」
 念動力が機体の限界を超えた動きをカバーし、パワークローとブラストナックルを『ロクシアス』へと叩きつける。
 万全の状態の『ロクシアス』であれば躱されたかもしれない。けれど、これまで消耗してきた機体であれば別だ。
 食いしばる歯の音が頭に響く。
 痛みと、苦しみが体中を駆け巡るような、凄まじい負荷がかかっている。それでも、この生命が壊れ失せるまでは―――。

「このっ、死に損ないが! 離せ!」
 もがくようにして『ロクシアス』が振り払おうとするが、左腕の脱落した状態ではディスポーザブルを引き離すことはできない。
 胸部に装着されたパルスアトラクターが展開され、キューブの形状をした音響兵器が現出する。
「疎まれる光は停滞を産んだ! 貴様の光には、背を向けるものばかりだ! チャンピオンとは、そういうものか!?」
 強すぎる光は人の目を焼く。
 けれど、目の前のチャンピオンは、今はそうではなくても以前はどのような光を放つ存在であったことだろうか。
 それを知るもの達の瞳をみればわかる。

 今の輝きは、偽りの輝きにしていびつなるもの。
 ならば、己の生命が猟兵であるというのならば、なさねばならないことはもうわかっている。
 返事を聞くつもりはなかった。
 放たれた電磁音波の一撃が至近距離で放たれ、『ロクシアス』の機体を盛大に吹き飛ばし、地下工場群の建物へと激突させ、幾棟もの建物を倒壊させながら沈黙する。

 荒い息を吐き出しながら、小枝子はユーベルコードの輝きを治める。
「壊れるには足りない。けれど、確かに取ったぞ。その歪な光の一端を―――」
 ディスポーザブルの胸部にあったパルスアトラクターは過剰にかかった負荷により半壊し、脱落しかけていた。
 けれど、それでもオブリビオンマシンの放つ歪な光を陰らせるには十分な戦果であったのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バーン・マーディ
あれが…貴様の求める「神機」か(対峙する機神

【戦闘知識】
乗り手の癖と戦い方
構造からコックピットの位置の把握

そして過去の戦い方の記録

敗北は醜い、か

マーズ
(共鳴する二機、バーン達さえ聞こえぬ会話)
「久しいですなアポロ…いやロクシアスか。再び相見えるとは思いませんでしたぞ」
「口調?ははは私も色々ありましたとも。そなたも変わりましたな。人を愛するそなたがそんな真似をするとは。その歪みは我が剣とバーン殿が断ちましょう」

戦闘
もはや言葉は不要!
武を示すのみ!
UC起動!
【切り込み・オーラ防御・二回攻撃・怪力・鎧破壊・鎧無視・武器受け】
回避はせぬ!受け止め!耐え距離を詰

太陽よ
地に墜ちよ!(軍神の剣で怒涛の攻め



「あれが……貴様の求める『神機』か」
 地下工場群の建物を幾棟も瓦解させ、ようやくに機体を止めた輝光神機『ロクシアス』がいびつに歪んだ装甲のまま漸くにして立ち上がるのをバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は彼の乗機である破城神機『マーズ』のコクピットから見下ろしていた。
 左腕は脱落し、肩アーマーは砕けている。
 さらに頭部の装甲はひしゃげ、アイセンサーがかろうじて残るのみ。
 さらに全身の装甲はひしゃげたり、融解したりとこれまで受けてきた猟兵の猛攻の凄まじさを伝えるには十分なものであった。
「まだ、まだ……! まだだ! 俺は、終わらない! ここから俺が巻き返す―――!」
 パイロットであるチャンピオンの咆哮が響き渡り、『ロクシアス』のアイセンサーが妖しく輝きを灯す。

 だが、不意に機体が止まる。
 それは目の前にした『マーズ』と『ロクシアス』が対峙し、機体の制御の外で何事かが行われているようであった。
 搭乗者であるバーンにすら聞こえぬ会話であり、それが如何なる理屈によって成り立つのか、オブリビオンマシンであっても理解できぬ部分は多いのだろう。
 言葉にできぬ何事か、旋律の如き光のやり取りのあと、バーンは彼が学んだ『ロクシアス』の搭乗者であるチャンピオンの戦いの癖や構造から見出したコクピットブロックの位置、それらの把握を素早く行う。
「敗北を醜く思うか。以前の貴様であれば、敗北を是として受け入れて尚陰らぬ輝きを見せたであろうが―――それがオブリビオンマシンによって歪められたのであれば」

 目の前の『ロクシアス』を駆るチャンピオンの戦い方はすでに記録で見ている。
 相手に華をもたせつつも、全力を引き出した上で打倒するスタイル。
 観客を意識した魅せる戦い方。それは生半可な技量でできるわけもない。それに見合った実力と技量在ってこそなせる業であるとバーンは知っている。
「―――もはや言葉は不要!」
 バーンの駆る『マーズ』のカメラアイが輝き、その意志を宿すように剣を構える。同時にそれは『ロクシアス』もまた同様であった。
 一瞬の後に二機の鋼鉄の巨人が飛翔する。
 高速で飛翔し、互いの獲物による攻撃を加え続ける。
 片や高速演算に寄る未来予測の如き正確無比な射撃。プラズマライフルの弾丸が次々と『マーズ』の機体装甲にあたってはオーラの防御を弾いていく。
「マーズよ、破壊の神としての力を見せるが良い。今ここに叛逆の刃を突き立てん!!」

 プラズマライフルの弾丸は確かに正確無比である。
 だがバーンの駆る『マーズ』の装甲を穿つにはまだ足りない。
「回避しないだと―――!? 突っ込む気か!」
「そのとおり! 受け止め! 耐え! 彼我の距離を詰める。これこそが我が覇道にして王道たる剣の一撃成れば!」
 その一刀は城壁の破壊者(ソード・オブ・アレース)の如く。万物を分解する破壊のオーラを纏った剣が冗談に振りかぶられる。
 それは如何な神機と言えど容易く耐えられるものではなく、プラズマライフルの弾丸によって距離を離そうにも被弾を恐れずに突っ込んでくる『マーズ』の気迫はそれこそ、威容なるものであった。

『その歪みは我が剣とバーン殿が断ちましょう』
 それはわずかに聞こえた何者かの声であったかもしれない。
 誰が知覚できたかもわからぬ声であったが、最上段に構えた剣より放たれる破城の一撃は『ロクシアス』の未来予測を持ってしても躱すことのできない不可避なる一撃。
「太陽よ。地に墜ちよ!」
 バーンの裂帛の気合と共に放たれた斬撃が『ロクシアス』の光背の如き背面ユニットを一撃の下に斬り捨て、その機体を大地へと失墜させる。

 それを見下ろし、声なき声が聞こえたかも知れない
「人の生命の煌きの如き輝きを美しいと称賛するのであればこそ、触れてはならぬ物があると知れ、『ロクシアス』―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
なかなかカッコいい機体だ。オブリビオンマシンと化したのが惜しーな。
そして、チャンピオン。
無敗伝説は今日で終わるが、俺達相手にここまで戦えたんだ。
お前は十分、輝けてるぜ。

『スルト』に搭乗。『スルト・コックピット』によりゴッドハンドの動きを再現して戦います。
『戦闘モードⅠ』により戦闘力を増大化させて超音速戦闘へ。
残像を残して流水の動きで攻撃を回避したり、途中邪魔な機体を破壊したりしてチャンピオンに迫ります。
敵POWUCの発動を見切り、変則的な動きで残像を撃たせてそのタイミングで渾身の一撃を。
アドリブ歓迎です。



 輝光神機『ロクシアス』の光背のような背面ユニットが破城の如き一撃によって破壊され、飛行能力を喪って失墜する。
 すでに装甲の剥離は甚大であり、フレームが無事であること以外に無事な部分がないほどの状態になっても尚、オブリビオンマシンであるからか、それともチャンピオンの持つダメージコントロールの技量が功を奏しているのか、どちらにせよ『ロクシアス』は未だ骸の海へと還ることなく、猟兵達の前に立ちふさがるように『闘技場』の中に立つ。
 まるでそれは、己がこの『闘技場』の主であると知らしめるかのようでもあった。

「なかなかカッコいい機体だ。オブリビオンマシン化したのが惜しーな」
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は漆黒のオブリビオンマシン『スルト』のコクピットの中で立ち上がってくる『ロクシアス』の機体を見つめる。
 その感想はどこか子供っぽさを感じさせるものであったが、そう感じてしまった以上、偽ることは意味がないと言わんばかりに称賛を送る。
 すでに猟兵たちの猛攻の前に損傷していない部分など無い。
「まだ、輝かなければ―――俺は、チャンピオンなのだから……!」
 未だ戦意を喪わないチャンピオンの気概というやつには頭が下がる思いでアレクサンドルは戦意をみなぎらせる。

 それでこそであると。

「チャンピオン。無敗伝説は今日で終わるが、俺たち相手にここまで戦えたんだ。お前は十分、輝けてるぜ」
 その言葉は心を歪められていないければ、幕引きの言葉に相応しいものであったことだろう。
 例え敗けたとしても、そこに後腐れはない。戦い、戦って、敗れたのだから。悔いの残らぬようにと戦うのが本来のチャンピオンであったことだろう。
 だが、今は違う。
 オブリビオンマシンによって歪められた心は何よりも勝利を望む。それがどんなに見るに堪えないものであったとしても、関係ない。
 勝てば、いいのだ。

 プラズマライフルのレーザーサイトが放たれる。
 瞬間アレクサンドルの乗機である『スルト』の漆黒の装甲が黄金の魔力によって覆われ、残像を残すほどの超スピードで戦場を駆け抜ける。
「魔力開放――」
 戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)へと移行した『スルト』の踏み込みは、変則的な動きながら、圧倒的な速度でも持って『ロクシアス』へと迫る。
 プラズマライフルの牽制射撃もまた正確であるがゆえにアレクサンドルにとっては見切りやすいものであったが、即座に対応してくる。
 変速的に動くのであれば、牽制射撃の精度をチャンピオンは揺らぎをもたせてくるのだ。
 正確無比から、揺らぐ射撃を躱すのは至難の業である。目がなれた瞬間に、即座に正確性を取り戻して射撃を行ってくる。
 これがチャンピオンと呼ばれる者の技量。
「はッ―――! いいじゃあないか! そういうのはよ!」
 ゴッドハンドの優れた体術をトレースするコクピットがアレクサンドルの気性を受けて再燃するかのように黄金の魔力を燃やす。

「残像ごときで俺の目を騙せると思ったか!」
 レーザーサイトが『スルト』の頭部を捉える。放たれる熱線。一瞬の間隙を縫うかのような精密射撃。 
 けれど、それはアレクサンドルの持つ魔力が大気に残した言わば、魔力を残した残像であった。
 なるほど、とアレクサンドルは思う。
 あれが直感的に行う射撃。目に見えぬ魔力を感知し、そこに射撃を加えているからこそ、こちらの動きがどれだけ変則的なものであれ当てにきていたのだ。
 ならば、その魔力を残した残像を於けばどうなるか。
「―――その優れたるが故に、ドツボにはまるってやつだ! 歯ぁ食いしばりな!」
 放たれる渾身の一撃が、『ロクシアス』のオーバーフレーム、そのコクピットブロックの装甲を叩く。
 ひしゃげ、装甲板が弾け飛び、機体が吹き飛ばされる。

 その一撃の代償は凄まじく、『スルト』の拳を放った腕部がまるごとひしゃげてしまうほどであった。
 だが、アレクサンドルは笑う。
「いい戦いだった。また闘ろうぜ―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
屈服を恐れるが故か……なれば話は早い。
技師の皆、もう一度力を貸して下さらぬか?

■騎
先程借りたキャバリアにインゴットを乗せる。
勿論作業は俺も手伝う。

ここからは普通に操縦する故(正座)

■闘
俺も『怪物』になってみせる。
キャバリアに【破魔】のオーラを纏わせ、ロクシアスがいる
戦場のど真ん中で予選にやった『滅茶苦茶な動き』を再現。
機体を大回転させたり、回転した状態で突進など。
攻撃が来たら回転を強め、刀で弾くように【武器受け】だ。

ロクシアスの姿がモニターに映ったら刀にすっと手をかけ、
【早業】の抜刀から【薙鎌・乱】をキャバリア越しに放つ。
内部から乗り手が【貫通攻撃】……斬新でごさろう?

※アドリブ歓迎・不採用可



 戦いにおいて敗北とは屈服することである。
 試合での勝ち負けにこだわる者にとっては、その心が折れていなければ敗けたことにはならない。即ち負けではないのだ。
 生きている限り、再起が可能である。
 だからこそ、心折れ、屈服することを恐れるのだ。それは人間として―――生命としては当たり前の自衛本能であったのかもしれない。
「屈服を恐れるが故に勝利に執着するか―――……心を歪められたとは言え、なれば話は早い」
 愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は己の借り受けたキャバリアにエネルギーインゴットを搭載し、整備士たちに礼を告げてから闘技場へと飛び出した。
 これまで規格外の膂力によってキャバリアを刀のように振るってきた清綱であったが、今回はキャバリアのコクピットの中に居住まいをただし、正座して乗り込む。

 静かに瞑想し、集中力を高める。
 これより己が為すべきことはなにかを心に問いかける。
 かのチャンピオンが恐れるのが『怪物』の如き技量を持つ者であったのだとするならば、己もまた―――。
「俺も『怪物』になってみせよう」
 刮目し、その瞳が輝く。
 猛禽の翼を持つ者であるがゆえに、その戦いに対する思いもまた紳士であるのならば、キャバリアを通してでる闘気もまた同様のものであったことだろう。
 キャバリアを包み込む破魔のオーラは、それだけで闘技場に何が舞い降りたのかを輝光神機『ロクシアス』に知らしめたことだろう。
 戦場のど真ん中に立ち、『ロクシアス』を待ち受ける。
 すでにあの機体は他の猟兵達の活躍によって発生させるはずの疫病ウィルス型ナノマシンを尽く無効化され、飛翔能力を持つはずの光背の如き背面ユニットもまた喪われている。

 だからこそ、ど真ん中に立つ猟兵を無視できない。
 滅ぼし合う関係であればこそ、逃走の二文字はなく、闘争に明け暮れたチャンピオンであるからこそ退くことなどできようはずもない。
「―――参る」
 清綱の清廉なつぶやきがこぼれ出た瞬間、その戦闘機動は凄まじきものであった。『ロクシアス』は機体の装備の殆どを喪っているが、清綱の出鱈目のような機動に食いつく……いや、それでもなお凌駕する動きを見せる。
 プラズマライフルの弾丸が放たれ、清綱は刀で弾くようにそれをいなす。
 一進一退の攻防はまるで輪舞曲のように機体を闘技場に舞わせる。装備した斬艦刀がプラズマライフルの弾丸を切り払う度に砕け、刃こぼれしていくが清綱は構わなかった。

「距離を詰めるか―――だが、その武器が保つか!」
 放たれたプラズマライフルの弾丸が遂に斬艦刀をへし折る。
 その瞬間肉薄する『ロクシアス』。破壊の意志にとりつかれたオブリビオンマシンはコクピットにいるであろう清綱を直に叩き潰さんと迫るのだ。
 だが、清綱は慌てることはなかった。
 キャバリアの武装が破壊されようとも、彼は猟兵であり―――剣豪である。
 なれば、その手に保つ最後の武器は己の中にある刃そのものであろう。

「秘伝……薙鎌」
 コクピットの中で正座していた清綱がまるで音も立てずに流麗なる足運びで立ち上がった瞬間、瞬時に鞘から抜き放たれた刀が煌めく。
 それ以上に清綱の瞳はユーベルコードの輝きに満ちていた。
「薙鎌・乱(ナギカマ)―――斬新でござろう?」
 それは清綱の放った斬撃を虚空より放つ斬撃波。キャバリア越しに放った剣戟が『ロクシアス』の機体を無数の破魔の力宿した斬撃となって放たれる。

 カッパーの装甲はすでに猛攻によって散々に破壊されている。
 残すはフレームのみ。
 そのフレームすらも破魔の斬撃は切り裂き、その機体をきしませる。
「この不可視なる斬撃の軌跡……堪能していただけたであろうか。キャバリアには未だ可能性ありき。故に、このようなことも可能であるのならば―――未だ誰も『怪物』には届くまい」
 心折られたのならば、刀と同じである。
 折れたのならば、打ち直し、鍛えなせばいい。それが心に刃を宿し、一振りの刀足らんとする剣豪の一念なのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
うわあ段ボール戦機だ(酔狂な闘士も居たものですね!)


このロクシアスも、因子を株分けされた子機の様に思えます

危機の元凶。悪意の先駆であるかといえば
否でしょう

新造機でありながらの多大な戦績
これは単純な戦闘力だけではなく、操縦者の技量と経験を奪い尽くす捕食行為そのもの

何れは飛蝗の群生行動の如く
増殖した暴走兵器の殺戮に全てが飲み込まれる前に
此処で仕留める!


※騎乗戦闘

殺到する敵機体を気絶攻撃+重量攻撃のブーストチャージで無力化

コクピットからパイロットを取り出し
スパークするエネルギーインゴット、油圧駆動システムから溢れ出る鮮血を餌に蛟竜を召喚

焼却のブレスとライフル射撃の波状攻撃で高速飛翔戦闘に対抗する


月夜・玲
戒道さん(f09466)と共闘

誰だ!こんな所にゴミ(段ボール)を持ってきたのは!!
ふざけた奴だなあもう
ブッブー(ブブゼラを吹く)


《RE》Incarnationを抜刀
【Code:F.G】起動
速度には、速度で対応しようか
速度が近しいなら、後はどうとでもなる
避けきれない攻撃は『オーラ防御』で減衰させて、『武器受け』して斬り払う
戒道さんの波状攻撃に合わせて、敵の上方から懐に突っ込んで斬撃をお見舞い
同時に超重力を放って地面に『吹き飛ばし』
そのまま重力で地面に縛り付けて、潰してしまおう

怪物なんて居ない方がいいのは同意
ああいう手合いは技術屋の頑張りをひっくり返す
特にエースとかそういうのの先に居る存在は…さ



「うわあ段ボール戦機だ」
「誰だ! こんな所にゴミを持ってきたのは!! 巫山戯た奴だなあもう」
 ブッブーとブブゼラの甲高い音が『闘技場』の中に響き渡る。
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)と戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)との間にそんなやり取りがあったことは、おそらく『闘技場』の決勝試合のミニターには映らなかったが、どこからともなく聞こえてきたブブゼラの聞き慣れない音に『フォン・リィゥ共和国』の国民たちは一様に首を傾げたことだろう。

 猟兵達の猛攻にさらされてもなお、輝光神機『ロクシアス』は立つ。
 戦場である『闘技場』の中にあって尚立つ姿は、それがオブリビオンマシンだからではない。無敗伝説を誇ったチャンピオンが駆る機体であるがゆえに、その機体の装甲が鈍く輝くのだとしても、その技量は燦然と輝いていた。
 だからこそ、蔵乃祐は思うのだ。
「あの『ロクシアス』もまた因子を株分けされた子機にょうに思えます。危機の元凶。悪意の先駆けであるかと言えば否でしょう」
 あの機体装甲から滲み出していた疫病ウィルス型ナノマシンもまた、たった一つの因子に他ならず。
 だからこそ、ここで止めなければならない。
 これ以上搭乗者の技量を吸い上げ、捕食し、あらゆるものを喰らい尽くす飛蝗の群生行動の用になる前に、その増殖し歪められた心が導く先にある殺戮という未来へと到達する前に。

「此処で仕留める! ―――無垢にして残虐なる仔竜の巣。我が意に応えて顎門を開け」
 蔵乃祐の駆るキャバリアが『ロクシアス』へと突撃し、組み付くようにしながら、パイロットを引きずり出す。
 すでにコクピットの装甲が喪われていたのが幸いした。すかさず背面に回り込み、エネルギーインゴットの格納されているユニットを引きずり出し、鮮血の如きオイルが噴出する最中、ユーベルコードが発言する。
 竜言語・蛟竜招来(リュウゲンゴ・コウリュウショウライ)によって召喚される無数のドラゴネットたちが渦巻く竜巻のように『ロクシアス』を取り囲む。

「―――!!!」
『ロクシアス』が奪われたパイロットというパーツを奪い返さんと咆哮し、蔵乃祐に迫る。
 その機体が光背の如き背面ユニットを喪っていなければ、飛翔し未来予測の如き高速演算によって手がつけられなかったであろう。
 だが、今は飛翔能力を猟兵たちによって奪われ、その手に在るプラズマライフルしか武装はない。
 だからこその勝機。
 大地を疾走する『ロクシアス』がプラズマライフルを放つ。ドラゴネットたちを撃ち落としながらも、群がるように殺到するドラゴネットの数の前に徐々に押されていく。

「重力制御、リミッター解除。周囲空間の重力掌握開始」
 無数のドラゴネットに竜巻に見舞われたかのように足止めされる『ロクシアス』を前に模造神器を抜刀する玲の瞳にユーベルコードが輝く。
 それはCode:F.G(コード・フル・グラビティ)。
 彼女の保つ模造神器の力を開放し、重力をも己のものとするユーベルコードである。
 それは『ロクシアス』に今、できなくて玲にできることである。高速で飛翔し、蔵乃祐の生み出した竜の竜巻の中へと飛び込む。
「超重力の力、なめんなよーってね!」
 飛翔し、竜巻の上部から『ロクシアス』へと斬りかかる玲。
 放たれた模造神器からの一撃は超重力を纏って、すでに死に体の『ロクシアス』の機体をしたたかに打ち据え、大地に叩きつける。

「―――!!!!」
『ロクシアス』の咆哮が再び響く、手を伸ばしたのは如何なる意味があってのことだろうか。
 玲はそれを知らず、蔵乃祐もまた、それの意味を解することはなかった。
 けれど、オブリビオンマシンが乗り手を求めるのは、結局の所己が兵器であるが故であろう。
 自律行動を主とする機体であれば別であろうが、コクピットが存在している以上、パイロットとはキャバリアにとって必要不可欠な存在だ。
 そう、戦うことの因子、その最も必要なファクターなのだから。

「怪物なんて居ない方がいいのは同意するよ。ああいう手合は技術屋の頑張りをひっくり返す。特にエースとかそういうのの先に居る存在は……さ」
 だから、と玲はその手にした模造神器の力を開放する。
『エース』という輝きが人々の心に希望を灯すものであるのはわかる。理解もできる。だが、行き過ぎた力は眩い輝きであるがゆえに、人の目をも潰す何かに変貌してしまう。
 それを『怪物』と呼ぶのであれば、チャンピオンの心を折ったパイロットは正しくそのとおりであったことだろう。

「人の心は脆い。それ故に輝きを必要としながらも、その輝きに押しつぶされることもある。人の心の寄る辺、それさえもオブリビオンマシンは歪めてしまうのならば、それを悪意と呼ばずしてなんと呼ぶのでしょう―――」
 蔵乃祐の呼び出したドラゴネットたちがほどかれるようにして道を開け、その模造神器から現出する超重力の力を持って、最後の一撃を加える。

 輝きに手を伸ばすようにした『ロクシアス』の右腕がひしゃげ、大地にめり込み、その機体を超重力と大地の間に圧壊せしめる。
 すでに機体フレームは取り返しのつかないところまで破壊され、その機体の全身は粉々に砕けていく。
 むしろ、これまで猟兵達の猛攻に耐えてきたことこそ、驚愕に値する性能であると言わざるを得ない。

 だが、それでも神機は敗北する。
 それは『ロクシアス』―――かの太陽の神の名の異名であるがゆえに、失墜するように超重力の渦へと堕すように霧散し、骸の海へと還るのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月26日


挿絵イラスト