追憶の彼方に見るのは、エースの残影
●懐古
「君は生きろ。君だけは幸せになるべきだ」
あの人はそう言ったけれど、正直な所私にはどうでもいいと思った。
だって、私の幸せが家族みんなで笑ってご飯が食べたいということであったから。
でもそれもう無理だから。
家族はみんな戦争で死んでしまった。
だから、それはも叶わない。もうどうだっていい。どれだけ戦う才能が在ったところで、私の幸せの在り処はも何処にもないのだと知っている。
「永遠に喪われてしまうものなんてない。いつか君が望むものを。その時のためにも君は生きるべきだ」
『憂国学徒兵』と呼ばれた彼はそう言って瞳を伏せた。
彼だって同じ身の上であることは分かっている。『サスナー第一帝国』の侵攻から私が仕える国『八咫神国』を守ってくれたのは、単なる偶然に端を発することであったけれど。
それでもどこか私は彼に共感を持った。
「なら……なら、きっと生きるわ。でも、その時は貴方も一緒に幸せになって。約束よ。一人でなんて幸せになれない。人はそういう生き物だから。だから―――」
その約束は果たされない。
これはきっと歴史にも刻まれぬ言葉。それでいい。ただ、あの人の……フュンフ・エイルの笑顔だけが私の生涯において最も忘れ難くて。
そして同時に私の、環・括の執着になったのだ―――。
●輓近
機動殲龍『空翔』が空を飛ぶ。
このクロムキャバリアの世界において暴走衛星『殲禍炎剣』の脅威は凄まじく、空を飛ぶ高速飛翔体はなんであれば無差別に砲撃され撃ち落とされる運命に在る。
その中で『殲禍炎剣』の砲撃に晒されぬギリギリの高度を保って飛翔できるキャバリアはそう多くはない。
『八咫神国』。それは100年戦争のおりに『グリプ5』の前身である国と共に『サスナー第一帝国』の侵攻に抵抗した小国家の一つである。
『グリプ5』に起こった『最新鋭キャバリア暴走事故』『友好国からの侵略』『第二次憂国学徒兵による内乱』の争乱を受けて救援に向かっている最中なのだ。
「へえ、なるほどね。今はそういうことになっているのね」
その声に機動殲龍『空翔』のパイロットが目を剥く。
なぜなら、その声は翼竜を思わせる機体の頭部……嘴の部位の先端から聞こえてきたのだ。そこにあったのは一人の少女の姿であった。緑の炎を思わせる人魂めいた火球を周囲に浮かばせた、その姿はあまりにも場違いであった。
彼女は機体にしがみついていたのかもしれない。だが、いつから? 『八咫神国』を飛び立ってからもう数時間は立っているはずだ。
ありえない。
「タダ乗りさせてもらっているのに申し訳ないけれど―――そろそろ起きたら? 貴方達」
少女が軽く機動殲龍『空翔』の嘴部分を軽く踵で叩く。
瞬間、その音が周囲にあった部隊の同じキャバリア達に伝播するように広がっていく。
「き、機体の制御が効かない―――!? な、なんだ、これは! こんな! こんなこと―――!」
心が歪められていく。
どうしようもないほどの独占欲が心を侵食していく。
この空は、俺達のものだ。他の誰も飛んでいていいわけがない。俺たち以外に飛ぶものがあれば、それは自分たちの領域を侵す者たちだ。許してはおけない。叩き落さなければならない。
そんな感情に塗りつぶされていく心。
「ええ、そうよ。奪われたのなら奪い返せばいい。貴方達の空を。ほら、あれもそうよね。飛行船っていうのよね? あれも貴方達の空を無断で飛ぶ者。墜としてしまいましょう?」
少女―――『緑炎妖狐』環・括が、どこか懐かしむように視線を向けた先にあったのは一機の飛行船だった。
オブリビオンマシンへと変じた機動殲龍『空翔』、そのパイロットたちの瞳は狂喜に歪む。
ギラギラとした瞳は、もはや正気を喪わせ、本来であればこれから救援に向かう『グリプ5』の空を飛ぶ物資運搬用の飛行船を己の敵として認識し、そのトリガーを引くのであった―――。
●復興
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件は、争乱の世界、クロムキャバリア……その小国家『グリプ5』に迫るオブリビオンの悪意による『飛行船の撃墜』を未然に防いでいただきたいのです」
そう告げるナイアルテ。
彼女の予知したのはプラントからの物資を満載した飛行船がオブリビオンによって撃墜された光景。
クロムキャバリアにおいて遺失技術によって作られた『プラント』は国の礎たる生産施設である。
先日、『第二次憂国学徒兵』が引き起こした『プラント制圧による生産停止』は半日とは言え、『グリプ5』の国家のインフラに多大なる影響を齎した。それ故に再稼働したプラントから生み出された物資をプラント群から市街地へ運ぶ作業が急増しているのだ。
殆どの小国家の場合、プラントで生産された物資を運ぶのは飛行船であったり運搬トレーラーであったりと様々である。
今回はその運搬方法の一つである飛行船が撃墜されてしまう。
「そうなれば、『グリプ5』の国民の皆さんの生活はさらに困窮してしまうことでしょう。飛行船は低空飛行の上、高速で移動することはできません。襲ってくるオブリビオンマシンは低空飛行ながら空戦を得意とするキャバリアです。これに対抗し、飛行船を無事に市街地まで護衛していただきたいのです」
ただ、このオブリビオンマシン―――機動殲龍『空翔』は『グリプ5』の友好国である『八咫神国』からの救援部隊であったはずなのだ。
「何故、オブリビオンマシンと化したのかわかりません。機動殲龍『空翔』の数は多く、続く争乱によって消耗した『グリプ5』を護るために大部隊を派遣したのが仇となったようです……『八咫神国』にとっては、機動殲龍『空翔』が突如独断で友好国である『グリプ5』を攻撃しただけです。飛行船を撃墜されてしまえば、その友好にもヒビが入ることでしょう」
そうなってしまえば、益々小国家同士が疎遠になり平和への道程は遠いものとなってしまうことだろう。
「それに、皆さんにも知っておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、『最新鋭キャバリア暴走事故』のおりにオブリビオンマシンに乗り込んでいたパイロット―――フュンフ・ラーズグリーズさんが飛行船を操縦してるのです。若き『エース』の原石である彼を喪うわけにも参りません」
オブリビオンによって四度目の災いが降りかかる『グリプ5』。
戦いの傷跡は浅くはない。けれど、それでも懸命に藻掻く人々のために猟兵ができることは唯一つである。
争いの火種を巻き続けるオブリビオンマシンを打倒すること。
「高高度に飛翔すれば、『殲化炎剣』によって撃ち落とされてしまいます。難しい空戦になりますが……どうか、よろしくお願いいたします」
そう言ってナイアルテは再度下げ、猟兵を送り出す。
未だ戦乱が下火になることはなく、争いばかりが引き起こされる世界。けれど、先が見えずとも見果てぬ『平和』のために今を戦い抜かなければならない―――!
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリアにおいて、度々登場している『グリプ5』の行く末の分水嶺へと差し掛かった事件です。
プラントからの物資を運ぶ飛行船、そしてそれを操縦するパイロット。オブリビオンマシンによって心を歪められた『八咫神国』のパイロットを救うシナリオになっております。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
集団戦です。
飛行船は一機だけですが、そこにオブリビオンマシンの大部隊が群がります。
皆さんはオブリビオンマシンを空中戦で墜とすか、それとも地上から攻撃するかの手段を用いてオブリビオンマシンの大群を打倒しましょう。
オブリビオンマシン化していますので、パイロットは空中戦で撃墜されても自力で安全に生還できます。
●第二章
ボス戦です。
『八咫神国』からの救援キャバリア部隊をオブリビオンマシンへと変じさせた『緑炎妖狐』環・括と呼ばれるオブリビオンの駆るキャバリア『妖術機兵』銅鐸との戦いになります。
彼女はオブリビオンですので、キャバリアだけでなく彼女も躯の海に還す必要があります。
●第三章
日常です。
戦いを終えた皆さんに活躍の結果、『グリプ5』から飛行船での遊覧飛行が提案されています。
度々窮地を救ってくれた皆さんへの慰労と感謝の気持ちなのでしょう。
どのように過ごして頂いても構いません。
食事や小国家『グリプ5』の景色、もしくは他の乗客や乗員との会話をすることも可能です。
それでは争乱続く世界、クロムキャバリアにおける新たなる事件と局面を猟兵の皆さんが駆け抜ける物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『機動殲龍『空翔』』
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POW : ブリッツウィング
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリア】から【ミサイルと機銃による追尾攻撃】を放つ。
SPD : オーバーブーストマキシマイズ
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリアを更に加速。敵に近づき翼】から【敵機を吹き飛ばす衝撃波】を放つ。
WIZ : ダブルバレルカノン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリア】から【鋼鉄をも貫くビームカノンによる連続攻撃】を放つ。
👑11
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『グリプ5』におけるプラント群と市街地は離れている。
それはプラントを動かすことが困難であるということと、仮にもしまた戦争になった時、敵国の狙いは常にプラントであるがゆえに戦禍が市街地まで及ばぬようにとの配慮であった。
だが、逆にそうすればプラントから生産された物資を運ぶには時間がかかる。
搬送トレーラーでいつも物資を運ぶのだが、今はそうも言っていられない。『最新鋭キャバリア暴走事故』『友好国の侵略』『第二次憂国学徒兵による内乱』。立て続けに起こった争いのために少しでも多くの物資が必要なのだ。
故にフュンフ・ラーズグリーズは飛行船のパイロットを買って出たのだ。
「あれは『八咫神国』の機動殲龍『空翔』……! なんで、彼らがこちらに攻撃を
……!?」
『フルーⅦ』と同じく友好国であった『八咫神国』。
事前の連絡でこちらの状況を慮って部隊を派遣してくれることになっていた。だというのに、彼らは自分が乗る飛行船に発砲してくるのだ。
「どういうことだ……? ―――クッ!」
アンサーヒューマンである彼の瞬間思考が飛行船をギリギリで弾丸から回避させる。
だが、それも長く続くことはないだろう。
このままではプラントから生産された物資を満載した飛行船が落とされ、物資は喪われてしまう。
そうなってしまば、度重なる戦いの影響で困窮している人々はさらに生活に困る。それは争いが生む以上に人々の暮らしを凄惨なものへと変えていくはずだ。
だからこそ、この飛行船は落とされてはならない―――!
「……―――あの挙動」
機動殲龍『空翔』の大部隊が飛行船へと襲いかかる光景を、はるか後方から見つめる瞳があった。
機動殲龍『空翔』をオブリビオンマシンに変貌せしめた少女、オブリビオン『緑炎妖狐』環・括は呆然と呟いていた。
あの動き。
あの操縦の癖。
一瞬の判断力と決断力。
「間違いないわ……ああ、フュンフ!」
緑色の炎が逆巻く。懐かしいものを見た。こがれたものを見た。
終ぞ手に入れることのできなかったものを、見た―――。
ユーリー・ザルティア
フュンフくん…うん覚えている。無事復帰できてよかったよかった。
あの時頑張ったかいがあった(うんうん)
う~ん。やっぱり前回のパンチはヤヴァかったかぁ。
レスヴァントの修理が間に合わなかったのでシビリアンジョーで出撃するよ。
オブビリオンマシンだけど味方機だからね(汗)
この子は地上戦が得意だからねー。『ダッシュ』『悪路走破』で急いできたよ。
パールバーティにはいつもの様に『援護射撃』。こっちの子は『空中戦』も完備だからね。
『対空戦闘』開始っと。
『エネルギー充填』開始っと。
『索敵』『情報収集』うん『瞬間思考力』でマルチロックオンっと
『範囲攻撃』化させた『レーザー射撃』と∀キャノンで敵機を一気に撃墜するよ。
戦いの傷跡が残るのは国や建物だけではない。
争乱のさなかにあればこそ、キャバリアの機体は深刻なダメージをおっていく。それはキャバリアが機械である以上避けられぬことであろう。
格闘戦を行えば機体フレームが歪む。
射撃戦を行えば弾薬が消耗されていく。
戦争とは常に戦う兵士たちを飢えさせぬようにと断続的に続く補給線を保つこともまた勝利への絶対条件である。
それを損なった国から滅びていくのが必定である。
「フュンフくん……うん覚えている。無事復帰できてよかった。あの時頑張ったかいがあった」
ひとしきりキャバリアのコクピットの中で頷くのは、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)である。
彼女は『グリプ5』における争乱に何度も介入した猟兵の一人であった。
『最新鋭キャバリア暴走事故』において『セラフィム・リッパー』3号機のパイロットであったフュンフ・ラーズグリーズの乗る飛行船が襲撃されているとなれば、出撃しないわけにはいかなかった。
「う~ん。やっぱりキャバリアでのパンチはヤヴァかったかぁ……レスヴァントの修理は間に合わなかったけど……」
前回の戦いにおいて彼女の機体であるレスヴァントは腕部に重大な破損を招いた。
今彼女が搭乗している機体は『シビリアンジョー・イェーガーカスタム』―――オブリビオンマシンである。
無人機としてリモートコントロールされている量産型キャバリア『パールバーティ』を僚機として出撃しているが、若干の暴走の危険性を保つ機体である。オブリビオンマシンであるがゆえに仕方のないことであるが、猟兵であれば乗りこなしてみせるのが生命の埒外の存在であることの証明でもあろう。
「他の猟兵の人達にも伝えておかなきゃなぁ……オブリビオンマシンだけど味方機だからねって」
プラント施設と市街地を結ぶ中間点―――戦いによって荒れ果てた建物が散在する地域へと急行する。
大地を疾駆する姿は、元々『シビリアンジョー』が地上戦用の機体であるからだろう。
「―――っと、あっちは飛行船に釘付けか……なら、下からの攻撃には疎かでしょう!」
すでに飛行船を襲うオブリビオンマシン化した機動殲龍『空翔』はべったりと張り付くように空を飛んでいる。
僚機である『パールバーティ』と共にターゲットサイトに機動殲龍『空翔』の機体を捉える。
「対空戦闘開始っと―――エネルギー充填開始……索敵、オールクリア!」
ユーリーの視線がモニターに映る機動殲龍『空翔』の機体を捉える。視線誘導システムによって次々とシビリアンジョー・∀キャノン(シビリアンジョー・ターンキャノン)の砲門が空を舞う機動殲龍『空翔』をロックオンする。
物理的にロックされたパーツが弾け飛び、砲身が稼働する。それはまるで拘束具を引きちぎるようであり、一切の遠慮のない行動であった。
「マルチロック―――! これがシビリアンジョー・イェーガーカスタムの真の力だよ。代償は僕の命か…。シャレてる兵器だバカヤローッ!!」
瞬間思考によってあらゆる情報の精査と狙いが付いているとはいえ、それは彼女の脳に負担を強いる行為である。
頭が痛む。
けれど、それでも今は飛行船の安全が優先だ。『パールバーティ』の援護射撃と共に一斉に放たれるレーザー射撃と∀キャノンが空へと放たれる。
それは空を飛ぶ飛行船を執拗に狙い続けていた機動殲龍『空翔』にとっては思いがけない一撃であったことだろう。
「コクピットは狙わない。その飛行能力だけを潰させてもらうよ!」
次々と放たれた弾丸とレーザーが機動殲龍『空翔』の翼や武装を焼き切っていく。
爆散した機体からパイロットたちが次々と落下傘を広げて脱出している。流石は空戦部隊。
手練が多いのだろう。
だからこそ、不可解である。
あれほどの技量を持ったパイロットたちが地面からの攻撃に一切警戒をせずに一方的に攻撃を加えられている。
「―――……初撃は無警戒だったって言い訳できるけど……空飛ぶ機体だけを執拗に狙い回すのかな……? なら、悪いけど、狙い放題だね!」
ユーリーはさらに地上から、空を飛ぶ機動殲龍『空翔』に狙いをつける。
オブリビオンマシン化したキャバリアであれば破壊せねば、いつまでたっても彼らは飛行船を狙い続ける。
それは復興しようとする『グリプ5』にとっては招かれざる者に過ぎない。
だからこそユーリーは狙い打ち続ける。
助けた生命、助かった生命のためにも、争いの火の粉は振り払わないといけないのだから―――!
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
フュンフくんいえーい!
元気してるー?
もうこの国お祓いして貰った方が良いと思うよ
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏
やり方知らないけど
●
空の記憶とBlue Birdを抜刀
空中戦を仕掛ける
推力と翼で空を掛けるのなんて時代遅れでー
今は重力制御の時代だよ
【Code:U.G】を起動
飛行船を中心に敵に対して重力照射開始
これで動きも鈍るっしょ
後は自信の体を覆うように『オーラ防御』を展開し風の抵抗、敵の攻撃からの防御に
面倒なのは殲化炎剣だけど…まあ高度にさえ気を付ければ大丈夫かな
後は敵を落とす
近場の敵に対して最大加速からの二刀による『2回攻撃』で翼を落として地面に落とす
獲物の硬度さえあれば威力の不足は速度で補えるんだよ?
『グリプ5』の空を飛ぶ飛行船を執拗に狙い続ける機動殲龍『空翔』。
機銃とマイクロミサイルが乱舞し、飛行船のパイロットであるフュンフ・ラーズグリーズのアンサーヒューマンとしての瞬間思考能力がなければ、とっくに撃墜されていたことだろう。
だが、それも時間の問題である。如何にアンサーヒューマンであろうと機動力の低い飛行船で空を我がものとするように乱舞するキャバリア、機動殲龍『空翔』の空戦能力の前には無力だ。
「もうこれ以上は躱しきれない……!」
諦めてはいなかった。
けれど、諦めないからといって機銃とマイクロミサイルが舞う空をいつまでも躱していることなどできやしない。
迫るマイクロミサイルが飛行船を直撃する瞬間、一つの影がマイクロミサイルを両断し、飛行船の操縦室に張り付く。
「フュンフくんいえーい! 元気してるー?」
それは、月夜・玲(頂の探究者・f01605)の姿であった。
生身で飛行船の高度まで飛び上がってきたという事実以上に、生身単身でマイクロミサイルを斬り捨てたという事実に驚愕する。
彼女は顔を見知った女性であったけれど、フュンフは開いた口が塞がらなかった。すごい人だと思っていたけれど、今どういう感情で飛行船の操縦室の外壁に張り付いているのかわからない。
ぴすぴすとピースサインを送っているから尚更だ。どういう精神状態かフュンフにはまるで検討も付かなかった。
「あ、玲さん!」
「もうこの国お祓いして貰った方がいいと思うよ。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……やり方知らないけど」
抜刀された模造神器によって機関銃の弾丸をすべて凄まじき速度の剣速でもって切り捨てる玲。フュンフの警告する前から気がついていたのだろう。機動殲龍『空翔』の放つ機銃の弾丸など、彼女には無意味だった。
「まあ、大船に乗ったつもり……もう飛行船乗ってるか。いいや、安心しておねーさんにまっかせなさーい」
ひらりと飛行船の操縦室の外壁から身を翻し玲が空に舞う。
飄々としていて巫山戯ているのか、真面目なのかわからない女性であるがフュンフにとっては心強い援軍であった。
なにせ、彼女は―――超常の人である。
「重力制御開始。地の理は今此処に―――Code:U.G(コード・アンロック・グラビティ)起動」
重力を制御した形態へと移行する玲のガジェットによって彼女の体は生身単身であったとしても生身単身で大空を飛ぶことができる。
「推力と翼で空を駆けるなんて時代遅れでー! 今は重力制御の時代だよ」
掲げた模造神器から放たれる重力。
それは飛行船を中心に放射状に放たれる弱い重力の波であったが、空を飛ぶことを前提としたオブリビオンマシン化した機動殲龍『空翔』にとっては、それはどうしようもないほどに致命的な攻撃であった。
「面倒なのは『殲禍炎剣』だけど……まあ、高度にさえ気をつければだいじょうぶでしょう」
重力制御のガジェットが力を反射し玲の体を空に弾丸のような、それでいて不規則な軌道を描いて駆けさせる。
振りかぶった模造神器の二振りが、一瞬の内に機動殲龍『空翔』の翼を切り捨てる。
それは人間の身でありながらキャバリアの装甲を切り裂くという異常なる事態。パイロットたちは心を歪められているとは言え、大いに驚愕したことであろう。
「なんだ、あれは! あれだけ薄い刀身で……! それこそ、生身だぞ、相手は!?」
悪い夢を見ているようであった。
生身の人間がキャバリアよりも自由自在に空を飛び、剃刀の如く薄い刃の剣でキャバリアの翼を次々と切り裂いていくのだ。
これを悪夢と言わずして何というのか。
「あっまーい! 獲物の硬度さえあれば威力の不足は速度で補えるんだよ。物理だよ、物理。何も不思議なことなんてないのさ―――!」
玲は振るった二振りの模造神器が凄まじい勢いで機動殲龍『空翔』の部隊を失墜させていくのだった―――。
成功
🔵🔵🔴
菫宮・理緒
『グリプ5』も大変だね。
でもせっかくここまでがんばったんだし、
民間の人のためっていうことなら喜んでお手伝いさせてもらうよ。
空からなら【ネルトリンゲン】の出番。
【モーフィング換装】で装甲5倍、速度半分の防御仕様でいくね。
速度は出せないけど飛べはするし、飛行船のさらに上空で対空防御。
『空翔』への対空砲火は【E.C.O.M.S】も使うよ。
【Octagonal Pyramid】を召喚したら、対空ミサイルっぽく使っていくね。
「『弾幕薄いよ!』とは言わせないから、ねー」
攻撃で狙うのは翼メイン。
コクピットやエンジンは避けて着弾させて、
空母に不時着できるくらいにしておいて、パイロットは保護できると嬉しいな。
空中戦の繰り広げれられている『グリプ5』の空は、機動殲龍『空翔』がフュンフ・ラーズグリーズの操る飛行船を落とそうと執拗に周囲を飛び回っている。
猟兵たちの介入によって大部隊である『八咫神国』のキャバリア、機動殲龍『空翔』はオブリビオンマシン化したとは言え、なんとか数を減らしつつある。
しかし、まだ安心はできない。
飛行船の足は遅い。プラントからの物資を満載しているからとはいえ、こうも周囲を飛び回る機動殲龍『空翔』があれば航路も定まらない。高度をあげようものなら暴走衛星『殲禍炎剣』によって撃ち落とされる危険性があり、実質逃げ道は高度を落とすしかなかった。
そうすれば今度は頭の上を押さえられ窮地に陥るだけであった。
「こちらの下に! 潜り込んで!」
それは菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の声であり、ミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』から発せられた言葉であった。
「―――!」
彼女の意図を汲み取り、一瞬の判断で飛行船のパイロットであるフュンフ・ラーズグリーズは飛行船の機体を空母『ネルトリンゲン』の下へと滑り込ませる。
そうすれば頭を抑えられることはないのだが、逆に『ネルトリンゲン』が敵オブリビオンマシンの集中砲火を浴びることになってしまう。
「『グリプ5』も大変だね。でもせっかくここまでがんばったんだし、民間の人のためっていうことなら喜んでお手伝いさせてもらうよ」
理緒は誰かのために戦う猟兵である。
今まで戦ってきた『グリプ5』での争乱も彼女は誰かを助ける行動に注力してきていた。そのおかげで人的な被害は殆ど出ていない。
そんな彼女の言葉だからこそ、飛行船のパイロットであるフュンフは即座に従ったのだろう。
「でも、今度は貴方の船が!」
「だいじょうぶ。モーフィング換装で装甲をの強度は上げてあるから―――作戦行動、開始! E.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)展開!」
『ネルトリンゲン』から小型の正八角形の戦闘用端末が飛翔し、次々と機動殲龍『空翔』の放つマイクロミサイルを撃ち落としていく。
小型で耐久力は高いものではないが、それでも弾幕のように張り巡らされた戦闘端末はそれだけで分厚い壁のように機動殲龍『空翔』の接敵を防ぐ。
「『弾幕薄いよ!』とは言わせないから、ねー! 狙うのはあくまで翼メイン……なら!」
『ネルトリンゲン』の指揮を取りつつ理緒はゴーグルタイプのウェアラブルコンピューターで脳波と瞳の動きによって次々と戦闘式を繰り広げていく。
機動殲龍『空翔』の放つビームカノンの一撃は重たいが、モーフィング換装によって硬度を上げた『ネルトリンゲン』の装甲を抜くまではない。
「消火活動急いで! あとは飛行船の警護続行。物資を運んでいるから足は遅いけど……この程度なら、『ネルトリンゲン』も耐えられる!」
他の猟兵達によって撃墜されていく機動殲龍『空翔』から次々とパイロットたちが脱出し、落下傘が開いていく。
「―――! あの人達も保護しないと! 誘導できなら、誘導して『ネルトリンゲン』に収容させて」
目まぐるしく動いていく戦況。
そんな中であっても理緒の冷静な状況判断は続く。彼女のウェアラブルコンピューターのモニターの中で様々な数値や周辺情報が錯綜していく。
それらすべてを整理、精査しながら的確な人命救助を行っていく。人が死ねばそれだけ戦乱の火種が撒き散らされることになる。
だからこそ、理緒はその掌で救い上げる生命をこぼさぬようにと、己の保つ力のすべてを注ぐのであった―――。
成功
🔵🔵🔴
アリッセ・トードゥ
敵は空戦型か…。飛行船を守るには同じ舞台に立つしかないか。
仕方ない。飛ぶぞ。
『了解。FMS稼働、全スラスター展開』
今行くぞ、フェンフ。
【フォースマスター】使用。スラスターの【推力移動】で【空中戦】。
【念動力】による【オーラ防御】が空気抵抗を制御し、揚力に頼らない高速飛行を可能とする。
レーダーでの【情報収集】と【第六感】【瞬間思考力】で敵の攻撃を回避。衝撃波は【オーラ防御】。フィジカルジャマーによる【ジャミング】で撹乱。敵を引き付け、飛行船から引き離す。
どれだけ速くとも翼による飛行は軌道を計算しやすい。ミサイルを【一斉射撃】。強化された念動力による精密な【誘導弾】で、点ではなく面で殲滅する。
アリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)にとって、見上げる空にあるキャバリア、機動殲龍『空翔』の空戦能力は暴走衛星『殲禍炎剣』の存在が天上にあって座す世界クロムキャバリアでは脅威であった。
高硬度を飛ぶことは叶わずとも、低空飛行で凄まじい速度をもって滑空する機体は、その存在だけでも戦闘行動にほころびを生んでいく。
「敵は空戦型か……そして、護るべき飛行船があるということは―――同じ舞台に立つしかないか。仕方ない。飛ぶぞ」
『了解。FMS稼働、全スラスター展開』
彼女の乗機『CZ-1=カスタム』の機体に装備されたスラスターが展開する。元は空戦仕様ではない機体であるが、敵が空を舞うキャバリアである以上、地の利はあちらにある。
ならば、飛ぶという選択肢しかなく、機体のOSにしてAIである『ALICE』もまた同意見であった。
『スラスターの残量、限界値の確認をしっかりね』
自身の裏人格にして同一である『ALICE』の言葉遣いにはいつもアリッセは頭を抱える。本当に自分と同じなのであろうかと思うほどに小娘のような口の聞き方をする。
だが、アリッセにとって『ALICE』の齎す情報は無視できるものでもなければ、信用のおけないものでもなかった。
「―――ああ、リミッター解除! 今行くぞ、フュンフ」
フォースマスターたる彼女の機体がスラスターによって空へと打ち上げられる。
念動力に寄るオーラ防御によって空気抵抗を制御し、揚力に頼らない高速飛行を可能にする。
彼女の持つ力こそが、空へと打ち出した機体を制御する要である。
「空を駆ける―――とは趣が違うかも知れないが!」
機体の周囲に集まってくるオブリビオンマシン化した機動殲龍『空翔』。彼らは空を飛ぶ物体に集まってくる習性があるとでも言わんばかりにアリッセの機体へと殺到する。
それは高速飛翔とともに翼より放たれる衝撃波によってアリッセの機体をばらばらにしようとする戦闘起動であった。
「衝撃波でもって私達を此処に釘付けにするつもりか……だが、その目論見は浅はかであるとしか言いようがない!」
フィジカルジャマーによって展開されるサイキックエナジーに寄る幻影が周囲に浮かび上がる。
それはアリッセの機体によって制御される幻影。
「どれだけ速くとも翼に寄る飛行は軌道を計算しやすい……ターゲットサイトに映る私が本物か幻影か……その選択肢をバラけさせるだけでいい」
空をかける幻影をおって機動殲龍『空翔』があちらこちらへと飛んでいく。そうなれば、飛行船に群がっていた機動殲龍『空翔』の一部がアリッセにひきつけられ、引き離されていく。
そこまでいけばアリッセの目論見通りであった。
「後は各個撃破すればいい。どれだけ機動性に優れた機体であったとしても」
一斉に放たれるミサイル。
それは一つ一つがアリッセの念動力によって制御された追尾型の精密なる誘導弾。どれだけ高速で逃げようとしてもアリッセの念動力によって加速された誘導弾型のミサイルからは逃れられない。
『コクピットブロックは外して―――』
「わかっているとも!」
放つのは点ではない。
ミサイルの弾頭が分裂し散弾のように放たれた弾頭が次々と機動殲龍『空翔』の翼や武装を破壊して失墜させていく。
次々とパイロットたちが脱出を果たし、落下傘が開いていく。
「空戦仕様のキャバリアを任されるほどだ……彼らもまた手練なのだろう。脱出の支援は……却って邪魔か……フュンフの援護に回る」
機体のスラスターを再び噴かせ、アリッセは飛行船の警護につく。飛行船の操縦室から見える少年『フュンフ』の横顔は、以前対峙した時よりもわずかに大人びていたような、そんな雰囲気をアリッセは感じるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ダビング・レコーズ
仮にオブリビオンマシンが望むものが果てなき闘争の続く世界だとするならば、人類がもたらす秩序など彼らには意味を持たない、か
メインシステム戦闘モード起動
こちらアークレイズ
これより作戦行動に参加します
速力と飛行能力の確保はストームルーラーを搭載していれば問題は無い
留意するべきは高度か
少なくとも敵機より高度を上げるのは避けなければならない
飛行船の防衛を最優先とし敵機の進路妨害と迎撃に専念
機銃ならばEMフィールドで遮断
誘導弾はベルリオーズで弾幕を張り撃ち落とし
そして敵機を射程内に捕捉次第シューティングスターで反撃
対空誘導弾とはいえ空翔は音速を容易に突破する高速機
旋回の切返し等減速するタイミングを狙い発射
戦うことだけに存在意義を見出す存在がオブリビオンマシンであるというのであれば、彼らが望むものは何か。
「仮にオブリビオンマシンが望むものが果てなき闘争の続く世界だとするのならば、人類が齎す秩序など彼らには意味を持たない、か」
ダビング・レコーズ(RS01・f12341)はウォーマシンである。戦う存在。
争いの中に自分の存在意義を見出し、己の中にある命令……オーダーを履行することが彼の唯一の使命である。
メインシステムが立ち上がっていく。
クロムキャバリア『アークレイズ』の白き機体が立ち上がる。その背面に接続された先制強襲用複合ブースターユニットが、機体の重量をさらに重くしている。
炉に火が灯り、起動した数々のインターフェイスがモニターに浮かんでは消えていく。
「メインシステム戦闘モード起動。こちらアークレイズ。これより作戦行動に参加します」
炉から伝達されたエネルギーが背面のブースターユニットである『ストームルーラー』のバーニアの炎となって噴き出す。
機体がせり上がり、圧倒的な速度でダビング・レコーズが駆る『アークレイズ』が空へと舞い上がる。
それは白き装甲を輝かせ、飛翔する一本の弓矢のようでもあった。
「留意すべきは高度。少なくとも敵機より高度を上げるのは避けなければならない……」
そう、このクロムキャバリアの世界には暴走衛星『殲禍炎剣』がある。
在る一定の高度を高速で飛翔するものを撃ち落とし続ける暴走衛星は、何人たりとも逃げることは叶わない。
キャバリアであろうとオブリビオンマシンであろうと。それこそ猟兵であろうとだ。
「飛行船の防衛を最優先―――敵機識別……クリア。EMフィールド展開」
電磁障壁が展開され、機体の周りを青白いエネルギフィールドが包み込んでいく。
「俺達の空を! 我が物顔で飛ぶかよ、白いキャバリア!」
機動殲龍『空翔』が空を飛ぶ『アークレイズ』を目ざとく見つけ、マイクロミサイルと機銃を乱射しながら飛翔する。
彼らはオブリビオンマシンによって心を歪められている。
大空は己たちの所有物であり、その空を侵犯するものを許しはしない。電磁障壁によって機銃の弾丸は阻まれるがマイクロミサイルは爆風もあって防ぎきれるものではない。
「ベルリオーズ、セット。トリガー確認…ファイア」
リニアアサルトライフルの引き金を引く。放たれる弾丸が速射性能を見せつけるようにばらまかれ、次々とマイクロミサイルを撃ち落としていく。
爆風が空に舞い上がり、その爆風に飛行船を巻き込まぬようにと電磁障壁を広げる。
「ミサイルの威力は申し分なし……ならば、全目標ロックオン完了、発射」
MM19シューティングスター(マイクロミサイル・フルバースト)より放たれた無数の超高機動小型対空誘導弾が機動殲龍『空翔』へと迫る。
どれだけ機動殲龍『空翔』が高速で飛翔することができようとも、放たれた誘導弾を振り切ることはできない。
「パイロットも並ではないのであれば、その機体の旋回性能を熟知しているはず。必ず誘導弾を回避するために旋回をする。そこが狙うべきところ」
次々と追いすがる誘導弾を背に負いながら機動殲龍『空翔』が空中で旋回する。直線での戦闘起動の速度は目をみはるものがある機動殲龍『空翔』であったが、翼によって揚力をコントロールする以上、機体は旋回する他ない。
それがミサイルという誘導弾を回避するためには空中を旋回するしかない。
「―――このっ、ミサイルごときに!」
急旋回。
当然だ。このクロムキャバリアにおいって空戦は上方向に逃げることはできない。まるで世界に蓋をするように『殲禍炎剣』が高度をあげたものから撃ち落としていくからだ。
無理な旋回は機体に負荷を掛けるだけでなく、ミサイルに付け入らせる隙を産み出してしまう。
「敵機に命中。目標からパイロットの脱出を確認。次なるターゲットを索敵……」
爆散する機動殲龍『空翔』から脱出するパイロットの落下傘が開いたのを確認し、ダビング・レコーズは再び『アークレイズ』の機体を飛行船周辺に探す。
今回の戦いにおいて飛行船の無事は絶対条件。
ならば、オブリビオンマシンの狙いが飛行船である以上無理に攻勢に出て守りに穴を開けるわけにはいかない。
多くの猟兵が駆けつけたことによって、大部隊である機動殲龍『空翔』の大群もなんとか飛行船に寄せ付けないで済んでいる。
「この後に控えるオブリビオンマシンが本命……ならば、守りきりましょう。それがオーダーであるのだから―――」
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
飛行船に乗ってるのはツヴァイの弟君か。いいでしょ、細い縁だけど繋がった以上は手を貸す。
『GPD-331迦利(カーリー)』起動。(いつも通り)
「式神使い」と器物覚醒で行動を制御する。
あたしも距離を取って飛鉢法で空へ上がるわ。
『殲禍炎剣』の攻撃高度と地表との距離を考えると、三次元的な高速の攻防は難しそうね。なら、いつも通りに。
目標の搭乗者は機体を撃墜すれば自力脱出してくれるから、考慮せずに行く。
三角形の鋭角に「オーラ防御」を張って、「レーザー射撃」で「制圧射撃」となる「弾幕」を張る。そのまま鋭角を敵機のフレームに「貫通攻撃」として高速で叩き込み抉る。
あたしは呪符をチャフとして戦場一帯にばらまくわ。
数多のオブリビオンマシンと化したキャバリア、機動殲龍『空翔』が大空を舞う。
飛行船はすでに多くの猟兵達によって護られているが、これだけの大部隊を前にしては守りきれるのも気が抜けないことだろう。
多くのオブリビオンマシンとなった機動殲龍『空翔』は高速ながら直線的な機動が多い。それは翼と推力によって機体を制御しているからに他ならず、有人機としての機動の限界でもあった。
「飛行船に乗っているのはツヴァイの弟君か。いいでしょ、細い縁だけどつながった以上は手を貸す」
そう言って地上から空を見上げるのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)であった。
彼女の背後で起動する機甲式『GPD-331迦利(カーリー)』は紫と白のサイキックキャバリアであり、逆三角形型の前進に呪の刻まれた無人機として行動するのが前提の機体であった。
「さあ、今回はあたしも空へと飛びましょう。ノウマク サマンタ ブッダナーム バーヤベ スヴァーハー。風天よ! 天吹き渡る其の風の効験を、ひととき我に貸し与え給え! 疾っ!」
華麗な戦巫女の盛装に変身したゆかりは空を飛ぶ鉄の大鉢へと飛び乗る。
飛鉢法(ヒハツホウ)と呼ばれるユーベルコードは、ゆかりの体を大空へと舞い上げる。
このクロムキャバリアにおいて、空とは自由の象徴ではない。
暴走衛星『殲禍炎剣』によって高硬度を高速飛翔する者は尽く撃ち落とされる運命にあるからだ。それによって飛行船もまた低高度を飛ぶしかなく、速度も出せない。
けれど、それでも輸送という観点に置いては障害物などによって運搬が困難な地域にも迅速に物資を届けられる輸送船はクロムキャバリアにおいては必要不可欠なものであったのだ。
「この空は俺たちのものだー! どけどけー!」
奇声の如く狂乱に呑まれたパイロットが操る機動殲龍『空翔』が直線的ながら圧倒的な速度でゆかりへと突っ込んでくる。
背に負ったツインバレルカノンより放たれる鋼鉄すらも貫くビームカノンの砲撃がゆかりを襲う。
「『迦利』―――!」
鋭角にオーラ防御を張り巡らせた『迦利』が前面に突出しビームカノンを受け止める。先端によって弾かれたビームが周囲にほとばしり大地を穿ち土埃を立てる。
オーラ防御によって強化されていなければ、鋼鉄をも貫くビームを防ぐことはできなかったことだろう。
そのまま放つ牽制射撃のレーザーが機動殲龍『空翔』の装甲を焼く。弾幕のように放たれ続けるレーザーを放つ『迦利』が有人機では見せることの出来ない急直角、急制動を見せながら背後に周り、オーラの防御が張り巡らされた鋭角を機動殲龍『空翔』のフレームごと貫くように叩き折り、失墜させる。
「パイロット! 脱出できるんでしょう! 機体を捨てなさい!」
ゆかりは鉄鉢の上から呪符をチャフのようにばらまきながら、呼びかける。彼らは空戦用の機体を任されるほどの技量を持つ者たちだ。
脱出することは容易いだろう。
程なくして失墜する機体から脱出し、落下傘を開くパイロットの姿を認めゆかりは胸をなでおろす。
上空での戦いは思った以上に神経をすり減らす。
こちらはパイロットに危害を加えるつもりないが、あちらはこちらを殺す気でかかってくる。
「難しいけど、人の生命には変えられないわね。オブリビオンマシン……それだけが問題であるのは単純でいいけれど、コクピットを狙わずに戦うのは骨が折れるわ……」
まあ、それも慣れたけれど、とゆかりは白い呪符を手に鉄鉢にのってクロムキャバリアの空を舞うのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語口調
フュンフ、あの時の子か。分かってくれたようでよかった
だが、空を独り占めするという思考も植えつけられるのか
SPDで判定
敵は飛行しているが、自分のキャバリアで行こう
俺は【視力】で相手を見て、自分とAIで【情報収集】する
普通の弾丸で【威嚇射撃】して【挑発】する事で攻撃を誘発
AIの【戦闘知識】も使いながら【見切り】相手に黄の災い【マヒ攻撃】の弾丸を【スナイパー】【全力魔法】で撃ち込んでマヒさせてから、藍の災いの圧壊【重量攻撃】を【全力魔法】【零距離射撃】でコックピット部分以外を撃つ
『敵機、高速飛翔を確認』
そのAI―――戦闘補助システム〝Minerva〟の流暢な女性の言葉が『銀の銃兵』のコクピットの中に響き渡る。
オブリビオンマシンと化したキャバリア、機動殲龍『空翔』は空戦を得意とするキャバリアである。すでに多くの猟兵たちが会敵し、飛行船を護衛している。
本来であれば数多くの争乱に見舞われた『グリプ5』への応援という形で派遣された『八咫神国』のキャバリア部隊であるが、大部隊であることが災いしたとしか言いようがない。
オブリビオンマシンは猟兵にしか知覚できず、一般の者たちには見分けを付けることすらできない。
機体がいつの間にかオブリビオンマシンと入れ替わっていたとしても気が付かないのだ。
「フュンフ、あの時の子か」
そうコクピットで呟くのはルイス・グリッド(生者の盾・f26203)であった。彼は以前に『グリプ5』で起こった『最新鋭キャバリア暴走事故』において『セラフィム・リッパー』3号機のパイロットを努めていた少年のパイロットのことを知っていた。
オブリビオンマシンに心を歪められていたが、こうしてまた人々のためにキャバリアに乗る以外の戦いを続けていたのはルイスにとって幸いなことであった。
「俺達の空に異物が飛んでいるんじゃあない!」
機動殲龍『空翔』のパイロットたちは半狂乱になりながら飛行船を執拗に追いかけ回す。猟兵達も対空攻撃や空戦に駆って出ているが、なにせまだまだ数が多いのだ。
「空を独り占めするという思考を植え付けられるのか……いや、元々あった心を歪めるのがオブリビオンマシン……大空に焦がれるからこそ、歪められた姿と言えるか」
『銀の銃兵』の機体の中でルイスはAIと共に機動殲龍『空翔』の情報を収集する。
一直線の戦闘機動は凄まじい速度をもているが、急旋回や急制動はできないようであった。
現にそれを見抜かれ猟兵達によって撃墜されている。
「ならば―――」
『銀の銃兵』が属性付与(エンチャント)された弾丸を魔銃に装填する。
『目標修正。弾道予測、風速、オールグリーン』
AIから送られてくる弾道予測。義眼のメガリスが輝き、その災の力を弾丸に込める。放たれた輝きは黄色。
それは放電する雷撃であり、弾丸が放たれた瞬間、空に明滅する。
「なんだ!? 機体の制御が!」
機動殲龍『空翔』の推力エンジンが電撃によって動作を止め、高度を保てなくなったように失墜を始める。
さらに放たれる弾丸。
「藍色の災いは圧壊。失墜したとしても再び舞い上がられては敵わないからな―――ここで確実にコクピット以外を潰させて頂く!」
藍色の輝きが放つは圧壊の災い。
弾丸が命中した機体は打ち込まれた弾痕から周囲に広がる押しつぶすような衝撃によって翼がひしゃげ、機体の武装を次々と使い物にならなくさせていく。
「パイロット、今のうちに脱出するんだな。できないわけではないだろう」
ルイスはそう告げ、彼らに脱出を促す。
空戦用の機体を任せられるほどの技量を持った兵士たちだ。脱出は困難ではないだろう。
脱出したパイロットたちが落下傘によって無事に大地に降り立つのを見てルイスは再び義眼のメガリスを輝かせる。
その瞳が見つめるのはオブリビオンマシンと化して、争いの火種を撒き散らす存在のみ。
オブリビオンマシンはいつだって人々の心を歪めさえ、終わらない戦争を続ける。どれだけ人心が乱れようとも、オブリビオンマシンにとっては関係ない。
そのようにしてクロムキャバリアは100年戦争が続いているのだ。
「生命は奪わない。機体だけを破壊する……咎あるのはオブリビオンマシンだけだ」
ルイスは再び弾丸を放つ。
それはオブリビオンマシンの放つ火種、火の粉を振り払う輝きとなって空に明滅し続けるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
はて、この鋼鉄に我等を満たすものはあるのでしょうか
少々疑問ではありますが、敵ならば狩るのが我等です
我等が怨念は底無し故、糧に貴賤は問わぬ
空を飛ぼうが血に潜ろうが、余さず喰らってくれよう
【行動】POW
五感と第六感+野生の勘を働かせ敵の動向を把握し隙を見切る
先制攻撃+UC+スナイパーでモニターを潰すと同時に機体を捕縛、怪力と夜砥の巻き上げで敵機に乗り上げる
装甲は鎧無視+貫通攻撃で動力部まで傷口をえぐり、UCを潜り込ませて爆破
乗り上げた敵機と別の敵機の反撃は見切り+武器受けで回避、乗っている機体にダメージを与える事に利用しUCで傷口をえぐる
終われば別の敵機に乗り移り攻撃を繰り返す
鋼鉄の巨人が疾駆する世界、クロムキャバリアの空を見上げるのは爛々と光る赤い瞳であった。
その赤い瞳の持ち主はゆらりと体を揺らせる。
それはまるで幽鬼のようでもあったが漆黒の髪が風に揺れた瞬間、彼の影が一斉に空へと駆け上がるようにして放たれた。
それはユーベルコードの為せる業であり、影面(カゲツラ)という名で知られる西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)の力であった。
黒い影と共に空に在るオブリビオンマシン、機動殲龍『空翔』へと放たれた超極細の糸が翼竜をもした機体の頭部へと絡みつき、その外部カメラーを潰す。
「はて、この鋼鉄に我等を満たすものがあるのでしょうか」
織久は小首をかしげる。
彼の体はすでにオブリビオンマシン、機動殲龍『空翔』の機体の上へと飛んでいた。
ユーベルコードによって黒き影が命中した瞬間、織久と自身を影の腕で繋いのだ。そうすれば後は機体の上に巻き上げるようにして自身が飛べばいい。
「少々疑問ではありますが、敵ならば狩るのが我等です」
彼の言葉はゆっくりとしたものであるが、確かな疑問が残っていた。鋼鉄の機体。キャバリア。それが彼の中に蠢く怨念と狂気が果たして満たされる相手であるのかと。
物静かな青年にしか見えぬ織久の中は、既に狂気と殺意に満ち溢れていた。
オブリビオン、過去の化身は殺さねばならぬ。
ただそれだけが怨念の糧となる故。
けれど、この鋼鉄の機体がオブリビオンマシンであるというのならば、それが怨念の糧になるのだろうか。
「我等が怨念は底なし故。糧に貴賤は問わぬ」
そう、オブリビオンマシンもまた生物とは言えぬが過去の化身であるのならば、彼の中に蠢く怨念の糧となるのは必定である。
「空を飛ぼうが地に潜ろうが、余さず食らってくれよう―――何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
次の瞬間、放たれた影の腕が機動殲龍『空翔』の装甲をたやすく突き破り、引き剥がす。
動力部に到達するまで何度でも影の腕を叩き込み、到達させる。
「これが動力部。これがこの鋼鉄の心の臓であるのならば―――」
影の腕が動力部に直結している管ごとエネルギーインゴットを握りつぶし、爆散させる。
機体が爆発し、パイロットが脱出する。
「往くがいい。我等の狙いは鋼鉄のみ。心歪められた人は我等の糧でない。であれば―――」
動力部を破壊したオブリビオンマシンの装甲を蹴って、さらなる別の獲物へと飛ぶ。
生命は奪わない。
オブリビオンマシンは鋼鉄であるが、過去の化身そのもの。
討たねばならぬ敵は間違えては居ない。影の腕が再び伸び、高速で飛翔する機動殲龍『空翔』をまるで浮き石を飛ぶようにして乗り移っては影の腕を叩き込み、次々と失墜させていく。
「他愛のない―――これが鋼鉄の過去の化身……」
織久はまるで赤子の手をひねるようだと感じたかもしれない。
このクロムキャバリアは暴走衛星『殲禍炎剣』が上空を高速飛翔するものを許さない。尽くが撃ち落とされる運命であれば、低空で飛ぶほかなく、本来の強みである三次元的な機動が行えないのだ。
それは言わば翼があるのだとしても、翼無きもの。もしくは、空に蓋をされた戦場において自由を奪われた哀れなる鋼鉄の塊にすぎないのだ。
「哀れ―――とは言うまい。我等の糧として尽く」
その腹に収めてしまおう。
単身生身のまま戦う猟兵は少なくない。その黒き死神の如き活躍は、その赤き瞳を持ってして、超常の人として戦場に艶やかに咲き誇るように戦果を上げ続けるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ジーノ・エヴァーソン
※アドリブ歓迎
さーさー、いつもの仕事の始まりだ。
物資を運ぶ。お約束みてぇに襲撃機が飛んでくる。それを護衛する。
世界の仕組みが分かったって、やる事も大して変わらんな
〈世界知識〉
殲化炎剣、その火を逃れる可動領空域は嫌ってほど知っている
その空の飛び方もな、空中戦開始
速さは同じ…いやそれ以上か…にゃろう。なら機体をちょいと弄って〈限界突破〉、速度上昇
〈情報収集、瞬間思考力、戦闘知識〉により敵機速度から複数機の接近・展開位置を割り出して、【UC】発動
遠方機は両手のライフルによる狙撃、接近機には左肘から展開した仕込みブレードによる切断。これで数を減らす
「上手いこと乗り切れよ…飛行船の操縦士さんよ」
「さーさー、いつものお仕事の始まりだ」
白いキャバリア―――『メビウス』のコクピットの中でジーノ・エヴァーソン(Xeno_Fire・f30003)は呟いた。
傭兵として生きてきた年月がどれほどのものであるかジーノ以外知る由もないことであるが、クロムキャバリアにおいてプラントから物資を運ぶということは、詰まる所お約束のようなものであった。
「襲撃機が飛んでくる。それを護衛する。世界の仕組みが分かったって、やる事も大して変わらんな」
彼の感想ももっともであった。
猟兵として覚醒したが故にクロムキャバリア『メビウス』に乗って戦いの中を渡り歩く。
平和など来ない世界において、信じることができるのは戦いの中で培った戦闘技術だけであったことだろう。
今日もコクピットの中には透明感のある空を思わせるようなミュージックがBGMの様に大音量で流れている。
「『八咫神国』の機動殲龍『空翔』ね……空を飛ばれているのはやっかいだが」
だが、このクロムキャバリアにおいて空とはどこまで上昇していけるものではないことはジーノがよくわかっている。
暴走衛星『殲禍炎剣』が在る限り、空は蓋をされたようなものであった。
自由なようでいて自由ではない。
高さを制限された空は窮屈極まりないものであるが、それでもあの暴走衛星から放たれるものはキャバリアであろうと関係なく撃ち落とす。
「この空は! 俺たちのものだ! 俺たちが管理して! 俺たちが飛ぶ!」
オブリビオンマシンに心を歪められた者たちは得てしてこういう事を言う。自分だけのもの。
それはどうしたって人が抱える欲望そのものであったけれど、それを否定することはできない。欲望は人の生きる糧であり、生存のための意義だ。
凄まじい速度で機動殲龍『空翔』は飛翔する。だが、その動きは推力と翼を持って制御されているがゆえに直線的なものだ。
「速さは同じ……いや、それ以上か……にゃろう!」
『メビウス』の機体の周りを忙しなく飛ぶ機動殲龍『空翔』は、さらに加速し翼から衝撃波を放ってこちらを翻弄してくる。
それは速度に優れるキャバリアであっても容易に捉えられるものではない。
「ならよ! オーバーブースト・マキシマイザー!」
ユーベルコードが輝く。
ユーベルコードに覚醒した者にしか操ることの出来ないクロムキャバリア。その真価はユーベルコードを使用してこそ発揮される。
一瞬で加速する。
すでに頭の中には機動殲龍『空翔』の加速したとは言え、直線的な動きの予測は描かれている。
直線であるがゆえに予想することは容易い。
「―――そこだ!」
放たれた両手のライフルが火を噴く。スピードが早すぎるのであれば、銃口でもって狙うのは下策である。
ならばどうするか。
「それだけ直線的な動きを見せつけてりゃあな! 加速度と銃弾の速度を計算するだけでぶつかってくれるってもんだろう!」
そう、直線的な動きであれば動きがどれだけ早かろうが到達位置は割り出せる。そこに予め予測し銃口を向けてトリガーを引くだけでいいのだ。
機動殲龍『空翔』の機体に穴が空き、爆散する。
コクピットを外しているが故にパイロットたちは脱出して無事だ。
「そら、次だ!」
僚機がやられてしまったのならば、こちらに突貫してくる。
それすらも読み切ったジーノの騎乗する『メビウス』の左肘から展開されたブレードが突貫する機動殲龍『空翔』の翼を両断する。
「うまいこと乗り切れよ……飛行船の操縦士さんよ」
此処から先は追わせはしない。
ジーノにとっての仕事とは飛行船を護衛することだ。オブリビオンマシン化した機動殲龍『空翔』が諦めるのが先か、それとも全滅させるのが先か。
「ま、答えは出ているよな―――」
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
空の青はいいなぁ
もっと高く飛べればいいんだけど
ここまで狙われるなんて
何があるんだろうね、この国
鉑帝竜でドッグファイトを挑むよ
パイロットの心配をしなくて済むのはありがたいね
すれ違いざまにガトリングガンで攻撃
そのまま反転して後方から翼を撃って落とそう
念動力で飛んでるからね
航空力学的にあり得ない半径で反転するよ
…まあ、その分搭乗者の負荷も凄いから搭乗席がいるんだけどね
そして重量を気にしない重装甲だから
多少の攻撃は弾けると思うよ
まあ、敵からしたら魔法っていうか詐欺だよね
相手が加速したら邪神の領域を使用
停滞した時間の中で両足で相手の翼を握りつぶすよ
文字通りの格闘戦だね
翼竜に竜の相手はちょっと荷が重いかな
小国家『グリプ5』の空は青かった。
季節柄というのもあったのだろうが、見上げる空は自由の象徴のように異世界を渡り歩く猟兵は感じたことだろう。
「空の青はいいなぁ。もっと高く飛べればいいんだけど」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は試製竜騎「鉑帝竜」のコクピットの中でそう呟いた。
それがこのクロムキャバリアにおいては絶対にできることのないことはわかっていた。
暴走衛星『殲禍炎剣』の存在が在る限りクロムキャバリアの空は自由の象徴ではない。見えない蓋に覆われているような息苦しささえ感じてしまう。
低空飛行であれば飛ぶことに支障がないとは言え、それでも高く上昇できないのは、異世界の空を知る者にとってはストレスなるものであったことだろう。
「ここまで狙われるなんて何があるんだろうね、この国」
晶の疑問も尤もであった。
小国家『グリプ5』。それは幾千もの小国家が生産施設『プラント』を巡って闘いを続け、100年以上も戦争状態が持続した世界において、それほど強大であるとはいい難い。
オブリビオンマシンによる戦争の火種をしつこく蒔かれ続け、今回だってプラントで生産された物資を運ぶ飛行船が狙われている。
空に飛び上がる試製竜騎「鉑帝竜」がオブリビオンマシンと化した機動殲龍『空翔』と大空の元一瞬の交錯を果たす。
「俺達の空! 俺たちだけの空を飛ぶものはすべて敵!」
マイクロミサイルと機銃でもって飛翔しながら襲い来る機動殲龍『空翔』は確かに凄まじい速度を持っていた。
けれど、晶は己の騎乗する試製竜騎「鉑帝竜」にもまた自身を持っていた。
「ドッグファイトには自信があるんだよ!」
直線的な動きしかしない機動殲龍『空翔』と違って、こちらの試製竜騎「鉑帝竜」は念動力によって制御されているがゆえに機体の制御は航空力学の観点からすればありえぬ変則的な機動を持って翻り、がら空きの背面にガトリングガンを叩き込む。
「……―――まあ、その分僕にも負担が凄いんだけどね!」
そのために操縦席を設けているのだが、それでも重力加速度の体への負担は大きい。
周囲を飛ぶ機動殲龍『空翔』の放つ機銃とマイクロミサイルは邪神の領域(スタグナント・フィールド)によって、己に放たれる弾丸を神気によって固定し失墜させるのだ。
「なんだ!? ミサイルが失速……いや、止まったのか!?」
だが、それはあまりに遅きに失するものであった。
推力と揚力によって機体を空へと飛ばす機体であれば、空中での急制動は落下するしかない。
だが、展開された邪神の領域の中にあっては、存在は固定される。そこに推力も加速も何もない完全なる停止状態。
運動エネルギーすらもどこに消えたのか検討もつかぬ現実に、彼らは混乱の極みへと達するのだ。
「まあ、魔法っていうか詐欺だよね。けれど、悪いね。こっちは君たちが思っているようなドッグファイト……空中格闘戦とは違う意味での格闘戦を想定しているんだ」
試製竜騎「鉑帝竜」が機動殲龍『空翔』の両翼に掴みかかり、その羽根の装甲を握りつぶす。
ひしゃげる装甲の破片すらも邪神の領域の中では固定され、大地に失墜することはない。
「パイロットのみんなは脱出する手順。だいじょうぶだよね。さあ、固定を解除するよ」
ユーベルコードが解除された瞬間、固定されていた空間が消え失せ、其処には破壊されたオブリビオンマシンだけが残っていた。
パイロットたちは皆脱出し、落下傘が大地に咲いている。
「ま、翼竜に竜の相手はちょっと荷が重いかな」
晶は微かに笑う。
他人から見れば些細な違いであったかもしれないけれど、それでも晶はパイロットが脱出したオブリビオンマシンが爆散していく姿を見送り、飛行船の護衛へと映るのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
へぇ、飛行船のパイロットはフュンフ君か。
この前は自分が乗って、今回は襲われるか……オブリビオンマシンによくよく縁があるみてーだな。
まあ、とりあえずあいつ等を墜とすか。
搭乗した『スルト』に黄金の魔力を纏わせ飛翔。(戦闘モードⅠ)
操縦席を避けつつ『炎の剣』を振るってどんどん撃墜していきます。
(操縦席を魔法で進化させ、以前よりさらにゴッドハンドの動きを再現できるようになっています。『スルト・コックピット』)
敵POWUCの攻撃は『炎の剣』を横なぎに振るって灼熱の衝撃波を出して迎撃破壊。(衝撃波×属性攻撃:炎×焼却×範囲攻撃)
アドリブ歓迎です。
フュンフ・ラーズグリーズ。
その名をアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は覚えていた。
「へぇ、飛行船のパイロットはフュンフ君か」
『最新鋭キャバリア暴走事故』は未だアレクサンドルの記憶に新しい事件であった。
とは言え、この『グリプ5』は、その事件を皮切りに連続してオブリビオンマシンによる事件が頻発している小国家である。
短い期間にこれを合わせれば四度。
他の猟兵達も何かがおかしいと思ってもしかたのない頻度であった。
「この前は自分が乗って、今回は襲われるか……オブリビオンマシンによくよく縁があるみてーだな」
ろくな縁ではないが。
そうアレクサンドルはオブリビオンマシン『スルト』のコクピットの中で独りごちる。
戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)へと移行した『スルト』の漆黒の機体が黄金のオーラに包まれ飛翔する。
敵が空戦を得意とする機体、機動殲龍『空翔』であるのならば黄金の魔力によって飛翔する『スルト』にとってはアドバンテージと呼べるものは存在していない。
手にした『炎の剣』が燃え盛るように膨れ上がる。
「さあ、操縦席も俺の技量をトレースできるように改良済みだ―――この間のような失態は許されんぞ、『スルト』!」
前回の戦いにおいてアレクサンドルのゴッドハンドとしての技量についていけなかった機体強度とトレース技術。
それを念頭に置いた進化が起こった『スルト』は今やアレクサンドルにとって手足の延長でしかない。
「翼もなしにキャバリアが飛翔するなど―――!」
機動殲龍『空翔』から放たれた機銃の弾丸やマイクロミサイルが『スルト』に迫る。
だが、飛び道具で『スルト』がどうなるわけでもない。手にした『炎の剣』を横薙ぎに奮って弾丸を斬り捨て、『スルト』の黄金の魔力が更に膨れ上がっていく。
灼熱の力の籠められた『炎の剣』は更に膨れ上がり、周囲の大気を揺らめかせる。
「まあ、とりあえず墜とすか―――」
空気の膨張は『炎の剣』の周囲で揺らめき、振るわれることによって目に見えぬ衝撃波となって機動殲龍『空翔』へと放たれる。
それは圧倒的な射程と有効範囲、何よりも視界に捉えることのできない熱波としてオブリビオンマシンを穿つ。
元々空戦仕様である機動殲龍『空翔』にとって装甲とは薄くはできても厚くすることは機動性を損なうことである。
衝撃波であったとしても、その装甲はひしゃげ、翼が歪んでいく。
「無理することはない。とっとと脱出装置を作動して帰ってしまえばいい」
アレクサンドルは圧倒的な力で持って宣言する。
周囲を飛び回る機動殲龍『空翔』にとってはあまり意味のないことであったかもしれないが、それでも萎縮させるには十分であった。
「こっちの目的は敵の全滅というよりは飛行船の安全の確保だからな……やけっぱちで特攻なんてされたらかなわんぜ」
そう、オブリビオンマシンに乗っている以上、猟兵が討たねばならないのはオブリビオンマシンだけでありパイロットの人間ではない。
彼らはオブリビオンではなく心を歪められた一般人にほかならないからだ。
この場において生命が散ることは許されない。
なぜなら、心を歪められたとは言え、無辜の一般人の血が流れれば、それだけクロムキャバリアにおける『平和』は遠のいていく。
「まったく、二重に人質を取られているような気分だ」
飛行船、パイロット。
こちらのやるべきことは多いが、オブリビオンマシン側は破壊の一手だけでいい。
だが、それでも猟兵は多くを為さなければならない。
それが『平和』への第一歩だと信じるしかないのだ―――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
改造装甲車【エンバール】で地上から飛行船の後を追おうか…
……凄い群がってるなぁ……取り合えず通信でフュンフに呼びかけて…
…いまから空翔の動きを止めるから…その隙に良い感じに撃ち漏らしを倒してしまって、と…
…●ダブルバレルカノンを運転技術で回避しながら重奏強化術式【エコー】で強化した【連鎖する戒めの雷】を発動…
…同種の存在…つまり空翔をまとめて雷鎖で縛ってダメージを与えると共に動きを封じるよ…そして空中で動きが停止するとどうなるかと言えば…
…地上へゴー…まあ、脱出するまでの時間はあるからパイロットは無事だろう…あとはフュンフの援護に回れば敵の第一陣は凌げそうだね…
生産施設であるプラントから物資を満載した飛行船は猟兵たちの活躍によって今の所無事である。
連日の事件が引き起こされた小国家『グリプ5』においてプラントの生産物資は欠けることの許されぬものである。
以前の戦いで『第二次憂国学徒兵』たちがプラントを半日停止させただけでも国民の生活は困窮の一途を辿った。
プラントが無事であっても産み出された物資が無事に彼らに届かなければ、先日の戦いは水泡に帰すと言ってもいいだろう。
「……凄い群がってるなぁ……」
改造装甲車『エンバール』を運転し、オブリビオンマシン化したキャバリア、機動殲龍『空翔』の猛追を躱そうとしている飛行船を見上げ、通信装置にスイッチを入れたのはメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)であった。
「……飛行船のパイロット、聞こえている? 今から敵機の動きを止めるから……その隙に良い感じに撃ち漏らしを倒してしまって……」
「―――?! 貴方は……! けど、こっちの飛行船には武装がなくって……!」
なるほど、とメンカルは得心する。
確かに飛行船とは言え、暴走衛星『殲禍炎剣』によって空を高速飛翔することを制限されている世界では空での戦闘はそう多くはないし、それを可能とするキャバリアも限られているのだろう。
抵抗する装備がないのであれば……。
「……撃ち漏らさないようにする。もしくは護衛してくれている猟兵に通信で頼んでおいて」
メンカルは改造装甲車『エンバール』のアクセルを踏み込む。エンジンが唸りを上げて大地を疾走する。
上空を見上げれば、機動殲龍『空翔』が本来の用途であろう地上の戦力を一方的に砲撃するためのツインバレルカノンを『エンバール』へと剥けている。
「……鋼鉄すら打ち貫くビームカノン、だっけ……なるほど。地上の敵勢力をどうこうじゃなく……敵基地やシェルター、隔壁を破壊するための兵器ってわけ……」
メンカルの電子型解析眼鏡『アルゴスの眼』から送られてくる情報によって彼女は、そう断定する。
あのビームカノンは敵を破壊する以上に敵陣地の崩壊を目的としているのだ。
もしくは歩兵や地上を往くキャバリアの障害となるものを排除する……言わば、空飛ぶ戦車としての役割を持っていたのだろう。
ビームカノンの砲撃が『エンバール』を襲う。
それをメンカルが巧みなハンドルさばきによって回避し、ドリフトターンの後に急停止した車体からメンカルが乗り出す。
重奏強化術式『エコー』が車体を包み込み、乗り込んだメンカルのユーベルコードの輝きをさらに強くしていく。
「紡がれし迅雷よ、奔れ、縛れ。汝は電光、汝は縛鎖。魔女が望むは魔狼封じる天の枷」
紡がれる詠唱と共に同時に多数展開される魔法陣が輝く。
それは連鎖する戒めの雷(ライトニング・チェイン)。同じ性質の存在に伝播する雷の鎖を放つユーベルコードであり、その鎖は多重に展開された魔法陣から一斉に放たれる。
雷撃の明滅の如きスピードで伸びる雷の鎖は、同一の性質を持つ存在―――つまるところ、オブリビオンマシンである機動殲龍『空翔』へと迸るように走り、その機体に絡みつく。
「……同種の存在……つまりは、空を飛ぶオブリビオンマシン、貴方達。その雷の鎖は動きを止める」
雷の鎖は断ち切ることもできず、空中で伝播し次々と機体を停止させた。
「―――……そして、空中で動きが停止するとどうなるかと言えば……」
もう後は言うまでもないだろう。
推力と揚力によって飛翔する機体であるのならば、空中で静止した瞬間、大地へ失墜するしかない。
「……地上へゴー……」
雷の鎖が伝播した機体は尽くが大地へと墜落していく。
如何にキャバリアと言えど空戦しようであれば装甲は極限まで削がれているだろう。そんな機体が低空飛行とは言え、大地に落ちればどうなるのかは明白だ。
パイロット達は次々と機体を脱出し、落下傘を広げ無事だ。
「流石空戦機体のパイロット。心を歪められていても状況判断はしっかりしたものだね」
開く落下傘が広がる空を見上げながらメンカルは頷く。
後は飛行船の護衛に回ればいい。敵の第一陣を凌げば後に残るオブリビオンマシンを倒すだけでいい。
猟兵達は敵の撃滅もそうであるが、第一は飛行船の無事が優先目標なのだ。
あのプラント物資をすべて喪うことはインフラの観点からもあってはならないことだからだ。
メンカルは再び『エンバール』のアクセルを踏み込み、大地を疾走し、飛行船を地上からサポートするのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
ロシナンテⅣは空戦型ではありませんが…
敵が飛行物体を優先的に狙うならば空に上がるまで
腕を上げられましたね、フュンフ様
ご挨拶は後程、これより援護に移ります
今の内に距離を稼いでください
UCで無理矢理向上させた●推力移動と機体●ハッキング直結●操縦による細やかなサブスラスターの姿勢制御で機動力に対抗
●瞬間思考力で最適な位置取りと行動を●見切り機銃とミサイルを●武器受け盾受け、格納銃器の●乱れ撃ちの●武器落としで防御し飛行船●かばい
…分析完了
挙動データが揃った以上、攻撃機会は逃しません
ワイヤーアンカー接続した剣を●投擲し鞭の様に●なぎ払い
サブアームのライフル含めた全射撃兵装も含む攻勢で一気に敵群無力化
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の駆るキャバリア『ロシナンテⅣ』は空戦仕様の機体ではない。
長距離砲撃、機動性に耐久性を備えた機体ではあるが、その戦場は主に地上を想定していた。
それは当然の帰結であった。
クロムキャバリアにおいて空とは際限のないアドバンテージを生み出す戦場ではないのだ。
暴走衛星『殲禍炎剣』が存在する限り、高高度に達することはできず、低空飛行しかできない。低空飛行であれば対空防御の網目は細かくなり、撃ち落とされるだけの存在にしかならない。
故にこのクロムキャバリアにおいて空戦を行うキャバリアの主な目的は地上を戦うキャバリアを妨げる障害物の排除……つまるところ、歩兵を守るための戦車としての役割であったことだろう。
「ですが、敵の狙いは飛行船……それも飛行物体を優先的に狙うならば空に上がるまで」
機械騎士の防衛機動(マシンナイツ・ディフェンスマニューバ)こそ、その本懐である。
『ロシナンテⅣ』のスラスターを一気に噴かせ、機体を飛行船が飛ぶ高度まで跳ね上げさせる。
機体の各所、スラスターには多大なる負荷を強いることになるが防衛行動の前には致し方ない。それは戦機としてではなく騎士としての己を優先させた結果であろう。
一瞬交錯する飛行船の操縦席と『ロシナンテⅣ』のアイカメラ。
そこに捉えたのはトリテレイアも知る少年、フュンフ・ラーズグリーズの顔であった。オブリビオンマシンによって心を歪められても尚、誰かのために何かを為す行動をとった彼の横顔はどこか大人びて見えた。
「腕を挙げられましたね、フュンフ様。ご挨拶は後ほど、これより援護に移ります。今のうちに距離を稼いでください」
手短に。
今はそれでいい。トリテレイアにはやるべきことがあり、フュンフもまた為すべきことがある。
互いの交流は、その後でも十分できる。
「その攻勢、推進剤が尽きるまで阻ませて頂きます―――!」
スラスターの推進剤が凄まじい勢いで消耗していっている。だが、それでもプラントの物資を喪うことは、機体を損壊させるよりも重大な損失を生み出すことをトリテレイアは理解していた。
電脳が目まぐるしく演算を加速させる。
周囲に散在するオブリビオンマシンと化した機動殲龍『空翔』の位置を瞬時割り出す。
スラスターで飛び上がったのは最適な位置取り。
高速で飛翔する機動殲龍『空翔』は直線的な動きしか取れない。それはどれだけ空を飛ぶことに特化したキャバリアであっても推力によって飛ぶのであればどうしようもないことであった。
「俺達の空を、無断で、飛ぶな―――!」
機銃の乱射、ミサイルが飛ぶ。
その狙いは心を歪められ、狂気に侵されていてもなお正確であった。それは空戦仕様のキャバリアを任されるほどの技量であれば当然であったことだろう。
だが、その技量の遥か上を行くのが戦機、ウォーマシンであるトリテレイアである。
電脳演算によって瞬時に割り出された位置。
そして狙うべき場所。
「分析完了。挙動データが揃った以上、攻撃機会は逃しません」
格納銃器が展開し、大盾で防いだマイクロミサイルの爆風から機動殲龍『空翔』を狙い付ける。
どれだけ爆炎で視界が遮られていようとも各種センサーの前には丸裸も当然であがる。
「その狂気に侵された翼、墜とさせて頂きます。脱出装置のご用意を願います!」
瞬間、放たれた銃火器の弾丸が狙い過たずに機動殲龍『空翔』の推進機や翼を貫く。
さらにサブアームが展開され、ワイヤーアンカーに接続された剣が弧を描き一斉に空を飛ぶ機動殲龍『空翔』の機首を叩き折る。
一瞬の攻防に己が持てる戦力のすべてをつぎ込んでの電撃戦。
「敵機、戦闘継続能力の80%の低下を確認―――空戦仕様であったのが仇となりましたね。装甲と機動性は常にどちらかに割り振らねばならぬのが兵器としての定め……今は墜とさせて頂きましょう」
スラスターの推進剤が低下し、高度を保てなくなった『ロシナンテⅣ』もまた大地へと落下していく。
機動殲龍『空翔』から脱出したパイロットたちの開く落下傘と共に、正気に戻った彼らの保護もまた猟兵たちの役目である。
トリテレイアは彼らを保護すると同時に、現れるであろうオブリビオンの影を見るのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…
とかなんとかやってる場合ではないのでした
フュンフさんってどこかで聞いたような?
んー?あー!ツヴァイさんの!
これは見知らぬ振りはできませんね!
Pシリカに空中戦機能が無いので
仕方ありません、私が直接行きます!
Pシリカのエンジェライトスラスターで
垂直に飛び上がり、到達点で降ります!
ここからは【VR忍術】の出番です!
まずはミニ竜巻の術!
足元に竜巻を作ってそれに乗って移動です
細かい動きはできませんが大雑把に動ければいいので!
あとは飛行船から敵機を引き剥がして
取り囲ませてからのー
「特大!火遁の術!」
全周囲に特大の火遁の術をぶっ放しまーす!
※アドリブ連携OK
戦乱渦巻く世界、クロムキャバリア。
100年戦争状態が継続する世界において『平和』とは虚像のようなものであり、その概念すらも喪われようとしていた。
それはオブリビオンマシンの暗躍に寄るものであり、オブリビオンマシンを知覚できるものは猟兵だけであるのならば、この世界に生きる人々は明日をも知れぬ世界に希望を見出すことなどできようはずもなかった。
ただ、救いを求める……それに応える者もまた猟兵である。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……とかなんとかやってる場合ではないのでした!」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、とても良い感じのBGMとナレーションと共に華麗なる登場シーンを再現しようとして逼迫した事態を思い出していた。
小国家『グリプ5』は今、オブリビオンマシンの蒔いた火種により事件が頻発している。それはサージェもまた知る所であろう。
「フュンフさんってどこかで聞いたような?」
首をかしげる。
プラントで生産された物資を運ぶ飛行船。その操縦をしている者の名前だ。フュンフ・ラーズグリーズ。
グリモア猟兵が告げた名であり、どこか聞き覚えがあるのだ。
「んー? あー! ツヴァイさんの!」
ぴっこん。
豆電球が頭の上で明滅した気がした。ツヴァイ。ツヴァイ・ラーズグリーズ。『第二次憂国学徒兵』の内乱をオブリビオンマシンによって引き起こされ、心を歪められた『セラフィム・リッパー』2号機のパイロット。
その弟の名がフュンフであったのを思い出したのだ。
「これは見知らぬ振りはできませんね! ファントムシリカ!」
指を鳴らし、出現したキャバリア『ファントムシリカ』へと搭乗する。
だが、『ファントムシリカ』には空戦能力がない。
それでも飛翔体を狙って攻撃してくるという習性に近い行動を取るオブリビオンマシンと化した機動殲龍『空翔』の狙いを飛行船ではなく自身へと剥けさせるのは飛翔する他ない。
「エンジェライトスラスター、展開! シリカ、推進剤の残量チェックよろしく!」
光輪のように広がったスラスターの噴射口が光を放ち、空へと機体を飛び上がらせる。
垂直に飛び、一気に空を飛ぶ機動殲龍『空翔』の横を駆け抜ける。
「―――!? なんだ、地上から、ここまでスラスターだけで飛び上がったのか!?」
機動殲龍『空翔』のパイロットたちからすれば、それは対空砲撃のようなものであった。キャバリア事態を空へと無理やり飛ばす。
それは従来の戦術にはないものであった。
だが、空へと飛び上がるだけでは機動殲龍『空翔』を止めることはできない。推力によって直線的であるが凄まじい速度で飛ぶ機体を垂直に飛び上がったファントムシリカはどうすることもできない。
「心配ご無用っ! ここからは―――メモリセット! チェックOK! 参ります!」
コクピットの中に専用コンソールがせり出す。
そこにメモリをセットし、インストールすればVR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)が発動するのだ。
「まずはミニ竜巻の術!」
ファントムシリカの足元に小さな竜巻が展開され、それを足場としてサージェは空を駆け抜ける。
宛ら水の上を移動する水蜘蛛のように戦場となった空を駆けるファントムシリカ。
細かい動きはできないが、相手も直線軌道を描く機体であれば、細かいことはいいのだ。
「俺達の空を、俺たち以外の機体で飛ぶなど!」
機動殲龍『空翔』のパイロットたちは血走った目でファントムシリカを追い回す。包囲するように取り囲む機動殲龍『空翔』は竜巻の様に旋回し、次々とミサイルをファントムシリカへと放つのだ。
「誘い込まれましたね! ミサイルごと―――! 特大! 火遁の術!」
ファントムシリカのバーチャル忍術が再現される。
それは凄まじき業火の竜巻となってミサイルを誘爆し、機動殲龍『空翔』の機体装甲を吹き飛ばす。
フレームが露出し、推進機が破壊された機動殲龍『空翔』が次々と焼け焦げ、失墜していく。
パイロットたちは皆脱出し、落下傘を広げている。
「ふふん! これぞバーチャル忍術! えっへん! どうです、これがクノイチの本領なんですよ!」
得意げにコクピットの中で鼻高々になるサージェ。
クノイチが忍ぶ者であると彼女が定義しているのであれば、この大立ち回りは決して目立っていないわけではないのだが……だが、まあ、猟兵としてならば文句なしの実力を遺憾なく発揮したのだった―――
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『『緑炎妖狐』環・括』
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POW : 妖術同化
骸魂【『緑炎妖狐』を自身から取り出しキャバリア】と合体し、一時的にオブリビオン化する。強力だが毎秒自身の【妖力】を消費し、無くなると眠る。
SPD : 銅鐸戦闘形態
自身が操縦する【『妖術機兵』銅鐸】の【敵を追尾し貫く「RS-F銅剣」】と【あらゆる攻撃を反射する「RXS-F銅鏡」】を増強する。
WIZ : 狐怨翠炎陣
レベル×1個の【富に反応する緑の炎彩】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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オブリビオンマシン化した機動殲龍『空翔』が次々と空から叩き落されていく。
こちらの手駒としたキャバリアが猟兵によって墜とされているという事実は、本来であれば忌々しいものであったけれど、それでも過去の化身、オブリビオン―――『緑炎妖狐』環・括の心の中は別の激情によって散々にかき乱されていた。
「……やっぱり。やっぱり。やっぱり。ああ!」
その瞳にあるのは憎悪でもなければ狂気でもなかった。
爛々と輝く瞳は、周囲に浮かぶ人魂の如き緑の炎の人魂すら煌々とした光で包むようにきらめいていた。
在ったのは、狂喜。
狂おしいほどの激情が身を焦がしていくのを感じる。それは痛みすら齎すものであったけれど、同時に喜びに満ち溢れていた。
「フュンフ! フュンフ・エイル! その動き、その挙動、その癖、何度も見たわ! 何度も隣で見てきたもの。忘れるわけがない! あなたもやっぱり骸の海より染み出したのね! ああ! 貴方はやっぱり約束を守ってくれる!」
感激したように言葉を紡ぐ。
あの日交わした約束。
『サスナー第一帝国』との戦いのさなかに、自分は生命を落としてしまったけれど、こんな姿になってもまだ己の中には彼への執着が残っている。
だというのに彼もまた迎えに来てくれた。フュンフ・エイル。名を呼ぶだけで旨が張り裂けそうに成るほどの喜びが襲い来る。
「でも、それには―――貴方を取り囲む羽蟲が邪魔ね? ええ、わかっているわ、フュンフ。だって貴方という眩い『エース』の輝きには人が集まるのは仕方ないのもの。わかっているわ。ええ、だから―――」
その瞳にあったのは狂喜であり、己と『エース』以外の存在を認めようとしない狂気であった。
「猟兵を排除しましょう。……―――銅鐸!」
彼女の背後に召喚される銅鐸。
青銅の如き色の装甲をした銅鐸が可変し人型へと姿を変える。その姿はどこか神性すら帯びるような神々しさを持ち、『妖術機兵』と名が着くにはあまりにも清廉なる機体であった。
緑の炎が環・括を包み込み、一瞬で機体と同化をせしめる。
頭部のツインアイが緑色に輝き、大地を疾走する。その瞳が捉えるのは飛行船。そして、その周囲で護衛についている猟兵達。
「いつだってそうよ。『エース』の周りには人が集まる。ええ、それが力を持った人の責務であり、逃れ得ぬ宿業」
でも、と環・括は呟く。
「けれど、人はいつだって強すぎる力に寄りかかる! 『エース』であったとしても、人は人! その心に押しかかる重責は、一人で背負っていいものじゃない! 猟兵! 貴方達は私が―――滅ぼす!」
凄まじい勢いで妖術機兵『銅鐸』が大地を疾駆し、飛行船を猛追する。
その姿は鬼気迫るものであり、通常のオブリビオン以上の力を、プレッシャーを猟兵達に与えるのであった―――!
ユーリー・ザルティア
え、いや…あれ…何?
戦場で感じたことないタイプのプレッシャーなんだけど(汗)
と、とりあえずフュンフくんと護衛対象にはアレはこっちに任せるように連絡しておくわ。なんか近づかれる方が面倒な気がするし…
さて、続いてシビリアンジョーで戦闘続行ね。
地上戦闘が得意なな子だけど…『空中戦』ができないってことは無いのよ。
UCを使用してモードチェンジ。
飛翔速度は遅いけどそこは『操縦』テクでカバーよ
アタシもエースでね(注:自称)
アストライアの『制圧射撃』『威嚇射撃』で敵の炎を撃ち落とし迎撃しつつ、『エネルギー充填』を『限界突破』させたダークマンティスによる『レーザー射撃』で銅鐸で撃ち抜くわね。
狐怨翠炎陣―――。
それはオブリビオンである『緑炎妖狐』環・括が生前得意とした己のユーベルコードをキャバリア妖術機兵『銅鐸』から増幅して放つ緑色の炎であった。
「『エース』に群がる羽蟲! 己の力のなさを棚上げして!」
明滅する『銅鐸』のツインアイが、その感情の振れ幅を示していたのかも知れない。どれほどの情念が在れば、このような重圧を放つのか。
それはユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)にとって初めて相対する重圧であったのかもしれない。
「え、いや……あれ……何?」
彼女の額から冷や汗が一筋落ちる。
じりじりと機体のコクピットを突き抜けて肌に刺さるような重圧。今までどれだけの戦場を渡り歩いてきたか知れないユーリーでさえも、その感情、情念とも言うべきオブリビオン、『緑炎妖狐』環・括の鬼気迫る猛追に焦りを覚えた。
「戦場で感じたことないタイプのプレッシャーなんだけど」
「―――ならば、ここで知るがいい、猟兵! 戦場において気圧された方が負ける! 結局の所人の争いはどれだけ文明の利器が発達しようが、最後にはそれを操る人の力によって決するのだと」
炎が飛ぶ。
緑色の炎は、ユーリーの機体『シビリアンジョー・イェーガーカスタム』へと放たれる。
装甲板がたやすく融解するほどの熱量。
だが、気圧されて負けるつもりなどユーリーにはなかった。
「こっちはボクたちに任せて、フュンフくんは、速く距離を―――ッ!?」
緑色の炎がこちらの挙動を読んだように背面へと回り込む。
眼前に迫る緑の炎と背後から強襲する炎。瞬間思考。
考える。考える。互いに乗機はオブリビオンマシン。だが、それでもユーリーにとっては歩が悪い。
地上戦闘が得意である機体なのだが、妖術機兵『銅鐸』は、さらにその上を行く。機体のポテンシャルは負けていない。
ただ、重圧が凄まじい。
装甲が弾け飛ぶ。
背面のユニットは無事だ。拘束具のような装甲であったけれど、強敵と相対しては、その装甲ですら惜しい―――いや、違う。
これは弱気になっているとユーリーは瞬間思考のさなかに思い直す。機体のモニターには状況がレッドアラートに染まっているのがわかる。
「まだ、ボクには手段が残ってる!! 行くよッ
!!!!」
融解した装甲は邪魔だ。
一気にパージし、ファイナルブレイカー・モードへと移行する。背面ユニットがせり上がり、超巨大荷電粒子ビーム砲が向けられる。
「その様な長物を近接戦闘で持ち出そうなど!」
手にした銅剣が砲門のうちの一門を切り裂く。
だが、ユーリーにとって、それは僥倖だった。2門同時に斬り捨てられていたら、どうしようもなかった。狙いがバレてしまうから。
「わざわざ長くて重たかった砲身を短くしてくれてありがとうっ! ボクも『エース』でねッ!」
斬り捨てられた砲身では荷電粒子は安定させられず暴発してしまうかもしれない。
けれど、近距離まで近づいているのならば射程は関係ないし、最悪暴発したとしても、巻き込む事ができる。
「シビリアンジョー! 限界を越えて!」
斬り捨てられ、短くなった砲身が至近距離で妖術機兵『銅鐸』の肩に突き立てられる。
充填されていたエネルギーが暴発寸前まで高められる。それはユーリーの超絶為る操縦と同時に平行して行われたエネルギー安定の手入力の操作によって為し得た神業めいた結果であった。
「この距離―――! 始めから砲身を捨てるつもりで!」
砲身がひしゃげる。
妖術機兵『銅鐸』の肩装甲へとめり込み、ゼロ距離での荷電粒子ビームが迸る。
神性を帯びたような装甲が荷電粒子ビームを弾く。けれど、砲身による直接の打撃とともに徐々に装甲を貫くビームの熱。
「こっちが耐えられるかどうか、瀬戸際だっていうんなら! 行け―――!!」
ダークマンティスの砲身が溶け落ちる。
同時に暴発した荷電粒子ビームの爆風が巻き起こり、シビリアンジョーを吹き飛ばす。膝をついて見上げた先にあったのは、肩の装甲を喪い、フレームがむき出しになり、頭部の半分の装甲が剥離した妖術機兵『銅鐸』の姿であった―――。
大成功
🔵🔵🔵
アリッセ・トードゥ
何だ?奴は何を言っている?
『…敵の思想の分析は後。今は戦闘に集中して』
相方も珍しく歯切れが悪い。彼女もフェンフの件に何か思う事があるのか。
『あれは機体じゃない、怪物だよ。気を付けて』
…承知。
フィジカルジャマーを起動し【ジャミング】。疑似質量を持った無数の分身を投影。
【フォースマスター】。もう少しもってくれCZ。
サイキックで生まれた分身を【念動力】で制御。それぞれを個別に動かしセイバーでの包囲波状攻撃。
銅剣の狙いをそらし、銅盾は分身の疑似攻撃で引き付ける。
剣での攻撃に目を慣れさせ、フォースチェーンを伸ばし【切断】。
お前の言う事はやはり分からない。彼を支える為に今私達はここにいるんじゃないか。
「ふぅ―――! ふぅ―――! 猟兵、風情が……私の邪魔をする! 約束を! あの日果たせなかった約束を!」
オブリビオン『緑炎妖狐』環・括の激昂がクロムキャバリアの大地を震撼させる。その重圧は凄まじいものであり、大気すらも揺るがすようなすさまじいものであった。
情念と呼ぶにはあまりにも生々しく激しい感情の発露。
手にした銅剣と銅鏡が煌めく。それはユーベルコードによって強化された武装であり、猟兵の攻撃によって肩装甲と頭部の半分を溶解させた姿と相まって、凄まじい形相を見せつけていた。
「何だ? 奴は何を言っている?」
アリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)にとって、『緑炎妖狐』環・括の言葉は理解できるものではなかった。
どれほどの激情が彼女を突き動かしているのか。
目の前のキャバリアであり、オブリビオンマシンである妖術機兵『銅鐸』から放たれるプレッシャーの根源をアリッセは体感すれども理解にまでは及ばなかった。
思考が侵される。
何故、という思考は迷いになって戦場においては決定的な隙へと変わる。
それを困惑と呼ぶことも在るが、それを断ち切るように同一人格でありAI兼OSの『ALICE』の声が発せられる。
『……敵の思想の分析は後。今は戦闘に集中して』
その言葉は端切れが悪いとアリッセは感じた。
いつもならば即断即決であるはずなのに、今何を言いよどんだ? 『ALICE』は己の同一人格であり、己の裏の人格でもある。
だとすれば、彼女が感じることもまたアリッセが感じたことである。
フュンフに対する何か思い当たるものがあるのか。それを問いただす前に『ALICE』が警告する。
『あれは機体じゃない、怪物だよ。気をつけて』
ただそれだけで理解する。
AIでありOSである『ALICE』とはテレパシーでつながっている。
相対する機体がどれほどの存在であるかを言葉が如実に語っている。ならば、己が為すべきことは一つ。
「……承知。フィジカルジャマーを機動させる。リミッター解除!」
サイキックエナジーが脈動するように己の機体『CZ-1=カスタム』から溢れ出す。
機体の剛性は持つかどうかわからない。
だが、ここで全力を出さなければ、やられてしまうのはこちらの方だと肌で感じる。
「……分身、投影……なるほど。『ドライ』の好きそうなもの。あの頃の幻影装置を発展させたのね。忌々しいくらい」
『緑炎妖狐』環・括の駆る妖術機兵『銅鐸』のアイセンサーが輝く。
手にした銅鏡が煌き、残像を照らす。サイキックエナジーによって産み出された残像は光に照らされ、そのサイキックエナジーを乱す。
「―――ッ! 出力を上げろ!」
フォースマスターのユーベルコードが輝く。
それはアリッセ自身の限界をも超える駆動であった。念動力によって残像を操作しながらの高速機動戦闘。
肉体に、機体にぎりぎりと負荷がかかっていく。
残像と言えど、それはサイキックエナジーによって産み出された質量を持つ存在である。
手にしたサイキックエナジーの光剣でさえ、再現されている。
「ただの残像だと思っていたら、痛い目を見るぞ!」
放たれる無数の斬撃。
それは四方八方から放たれる不可避の斬撃であった。だが、その斬撃は尽く銅鏡によって防がれる。
人智を越えた反応速度。
剣戟が見透かされている。経験、いや、ユーベルコードの力である。強化された反応速度によってあらゆる攻撃を反射するのだ。
その証拠に銅鏡によって受け止められた光剣が次々と相殺され消滅していくのだ。
「目が慣れてきたわ―――……」
妖術機兵『銅鐸』の手にした銅剣が振るわれる。
次々と残像が切り裂かれ、霧散していく。それでもアリッセは残像に寄る飽和攻撃をやめない。
ここで『緑炎妖狐』環・括を止めておかねばならないという直感が働く。
「お前の言うことはやはりわからない」
アリッセは冷静だった。
彼女の言う言葉のどれもが理解できるものでなかった。けれど、彼女は闇雲に攻撃を加えていたわけではないのだ。
目が慣れた、と『緑炎妖狐』環・括は言った。
それは『慣れた』のではない。『慣れさせた』のだ。この最後の一撃。この一手にアリッセは賭けたのだ。
放たれたフォースチェーンが銅剣と銅鏡の間合いの外から一瞬で迫り、妖術機兵『銅鐸』のオーバーフレームの装甲を切り裂き、引き剥がす。
「彼を支える為に今私達はここにいるんじゃないのか。私は寄りかかるつもりなどない。一人で立つのに、手助けなどいらない―――」
それはアリッセにとって宣言であった。
この激情の、重圧の意味をまだ知らない。
けれど、それは他者に向けていいものではないことはわかる。強すぎる思いはいつだって、誰かを傷つけるものであるから―――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語
何やら勘違いしているようだな
エース、か。確かに寄りかかられるかもしれないが、その分支えようとする人だっているはずだ
SPDで判定
【視力】【暗視】【聞き耳】でAIと一緒に敵の【情報収集】
跳ね返った攻撃を受ける【覚悟】をしてから銅鏡に対して黄の災いの感電【マヒ攻撃】をUCで付与し【スナイパー】【クイックドロウ】【全力魔法】で撃つ
銅鏡の力がマヒすれば上々、しなかったとしても放たれた電気を反射させて目眩しが出来るはず
敵を【視力】で視認しAIと自分の【戦闘知識】で藍の災い【重量攻撃】を付与した弾丸を【スナイパー】【クイックドロウ】【全力魔法】を使いながら撃ち込む
サイキックエナジーによる一撃が『緑炎妖狐』環・括の駆る妖術機兵『銅鐸』のオーバーフレームの装甲を引き剥がすように切り裂く。
青銅の如き装甲が剥離し、大地に落ちる。
すでに荷電粒子ビームによって肩の装甲が脱落しているのは先行した猟兵たちの成果であろう。着実にダメージが蓄積してきているのが見て取れる。
「邪魔をする! 『エース』という光に群がる羽蟲! 猟兵!」
手にした銅剣と銅鏡が輝きを放つ。
ユーベルコードであろうと銅鏡は攻撃を反射する。さらに銅剣の一撃は正確無比である。
『緑炎妖狐』環・括の瞳は爛々と狂気に輝き、その力の発現を示すように妖術機兵『銅鐸』の装甲から緑色の炎が噴き出している。
「何やら勘違いしているようだな」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は大地にて妖術騎兵『銅鐸』と対峙する。
緑色の炎がルイスの駆るキャバリア『銀の銃兵』の装甲を照らす。
平素であれば、その緑色の輝きは美しいものであったかも知れなが、こうして対峙してわかる。あの緑の炎は情念そのものだ。
呪いにも似た力。
だが、それでルイスがたじろぐことはない。災いの力、メガリスの義眼が輝く左眼が在る限り、ルイスにとってあの力は恐るべきものではない。
「猟兵は滅ぼす。それはお互い様でしょう。貴方達は私を滅ぼす。力在る者が残るは必定―――ならば、やるべきことは言葉をかわすことではない!」
妖術騎兵『銅鐸』が大地を疾駆する。
凄まじい踏み込みの速度と、それをさせぬと放つ『銀の銃兵』の放つ弾丸が交錯する。掲げた銅鏡が弾丸を弾き返し、反射する、という言葉の通り鏡に光が反射するように『銀の銃兵』へと弾丸場跳ね返されるのだ。
「―――その盾、いや、鏡か……! 厄介な装備だが!」
放たれるは属性付与(エンチャント)された弾丸。
メガリスの義眼が黄色に輝き、籠められた黄の災いが発現する。迸る電流。感電の力を持つ弾丸が、銅盾に吸い込まれ雷撃を反射してくる。
「この程度の弾丸一つで私の銅鏡を破ろうなど!」
反射された雷撃が周囲にほとばしり、視界を明滅させる。塗りつぶされる視界は白ばむが、ルイスの瞳には見えていた。
『ターゲットロック、弾道予測。ファイアリング、セット』
AIの補助情報が入り込み、『銀の従兵』のアイセンサーが捉えた妖術機兵『銅鐸』の機体へと再び放たれる藍色の災いの輝き籠められた弾丸。
圧倒的な重量の籠められた弾丸は、再び銅鏡へと吸い込まれる。
「何度やっても無駄だ! この銅鏡はあらゆる攻撃を反射す―――!?」
ばし、と嫌な音が響く。
それは圧壊の災いを受けた銅鏡の鏡面にヒビが入る音であった。
メガリスの義眼から籠められた災い。
それはルイスにとって今できる最大限の力を籠めたものであった。メガリスの義眼の埋め込まれた眼窩から血がにじみ、頬に血の筋を刻む。
けれど、それでも構わなかった。
「『エース』、か。確かによりかかられるかも知れないが、その分支えようとする人だっているはずだ」
人は一人では生きていけない。
誰だってそうだ。いつの時代だってそうだ。力在るものには確かに寄りかかる者が多いかも知れない。
けれど、それは観点を変えれば、支えようとしている姿であるかもしれない。
このクロムキャバリアにおいて、キャバリアは絶対的な力の象徴である。
だが、そのキャバリアの整備は、生産は、物資の調達は。
人一人でできるものではない。『エース』たるキャバリア操縦技術は類まれなる才能かもしれない。
けれど、機体を整備し、補給し、パイロットの英気を支える者がいなければ、『エース』であっても人だ。
「お前の時代にもそんな人々はいたはずだ。お前を支える者も、必ず」
だからこそ、ルイスの藍色の災いは輝く。
銅鏡にヒビを入れ、その絶対なる反射の力を弱まらせるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ダビング・レコーズ
言動から推察するに彼女はかつて飛行船のパイロットのパートナーだった
そしてエースを支え切れず戦いの中で倒れたと
後悔と執心がオブリビオン化を促したのだろうか
目標は近接戦闘型と認定
中距離を維持し射撃主体で応戦する
貫通性に優れたベルリオーズで集中砲火
反射による無力化を視認
リフレクターシールドか
ならばより強力なルナライトのプラズマキャノンを発射
これも反射されるか
戦術変更
接近戦へ移行
ユーベルコード選択
ブレードホリック
高速機動でルナライトでの一撃離脱を繰り返す
スラスターの噴射により直前で機体姿勢を変え乱舞するように斬り付ける
そして斬撃により装甲に生じた裂傷へプラズマキャノンを至近距離から発射
「撃ち砕く」
度重なる猟兵の攻撃が、ついに妖術騎兵『銅鐸』の手にした銅鏡にヒビを入れる。
絶対なる反射の力。
その力は銃弾さえも反射させる。
「羽蟲風情が! 私の邪魔をするな!」
『緑炎妖狐』環・括が吼える。それは苛立ちと狂気に歪んだ瞳であった。かつての清廉さは欠片もない。
かつて願ったはずの祈りも、願いさえも過去の化身となったことで歪んでしまっている。あるのは妄執。
その咆哮の理由はダビング・レコーズ(RS01・f12341)にとって推察する他ないことであった。
ウォーマシンである彼にとって人間の情緒、その機微というものを理解することはできても、それが正しいことなのかどうかの判別まではわからなかった。
もしも、彼が人間としての感性を持っていたとしても、他の人間であっても『緑炎妖狐』環・括の心の内側までは見通すことはできなかったことだろう。
「彼女はかつて飛行船のパイロットのパートナーだった。そしてエースを支えきれず、戦いの中で倒れたと。後悔と執心がオブリビオン化を促したのだろうか」
全ては想像の領域でしかない。
それが正しくても、正しくなくてもダビング・レコーズにとって為すべきことは変わらない。
「フュンフ! フュンフ・エイル! 私が必ず隣にいるから! だから!」
叫ぶ言葉が迸るようにしてオブリビオンマシンである妖術機兵『銅鐸』の装甲から緑色の炎をほとばしらせる。
手にした銅剣が翻り、ダビング・レコーズの駆るアークレイズに迫る。
そこでダビング・レコーズは気がついた。
彼女の執心している『フュンフ・エイル』は飛行船のパイロットの名前である『フュンフ・ラーズグリーズ』と共通する部分はあれど、違う名前だ。
ならば、己の推察は間違っているのか。
だが、確かに彼女は飛行船のパイロットに執着している。名前が同じであるから? 否である。あの執着はそんな生易しいものではない。
「攻撃を続行―――どちらにせよ、あの飛行船には近づけさせはしない」
放たれるリニアアサルトライフルから放たれる弾丸。
速射性に優れたベルリオーズから放たれる弾丸は過たず妖術機兵『銅鐸』へと吸い込まれていく。
だがひび割れた銅鏡に反射される。
あの盾とする銅鏡の反射性能は理解していたつもりであるが、視認した事実にダビング・レコーズは即座に装備を切り替える。
「リフレクターシールドか。ならば、強力なルナライトのプラズマキャノンを―――!」
構えたプラズマブレードが発する青白い光が明滅し、刀身が開き、プラズマ・キャノン発射機構が露出する。放たれるプラズマの弾丸すらも銅鏡によって反射され、大地をえぐる。
「これも反射されるか―――ならば!」
展開したプラズマキャノン発射装置が閉じられ、刀身を青白いプラズマが覆う。スラスターが火を噴き一気に格闘戦へと持ち込む。
高速機動。
一撃離脱を繰り返す斬撃は、銅鏡で防ぐことはできないであろう。だが、それでも『緑炎妖狐』環・括は対応してくる。
銅剣とプラズマブレードがぶつかり合う。
「接近戦を私に挑むのなら!」
銅剣であるのにプラズマブレードと打ち合って当たり負けしない。それは緑色の炎が力を増しているせいであろう。
これほどの技量。
これが過去の化身たる者の力であるのかと疑うほどに剣戟の一撃一撃が重い。打ち合う剣同士がぶつかりあい、火花を散らす。スラスターの噴射により機体姿勢を変幻自在に変えて打ち込むダビング・レコーズと『緑炎妖狐』環・括の剣戟が大地に響き渡る。
ブレードホリックたる彼の剣戟は徐々に『緑炎妖狐』環・括を押していく。
互いの機体装甲に傷が刻まれ、その剣戟の差が埋まってきていることを知らしめる。
「接近戦であれば、そちらに一日の長があるのだろうが」
一撃離脱。
それこそがアークレイズにあって、妖術機兵『銅鐸』にはないものである。
スラスターを噴かせ、打ち合っては離れ銅剣の切っ先を躱し続ける。次第に装甲に刻む傷跡は深くなり、一瞬の隙を付いて放たれた刺突がオーバフレームの装甲を割る。
「撃ち砕く」
プラズマブレードの刀身が展開され、露出したプラズマキャノン発射装置が光を湛え、一気に放たれる。
そのプラズマの奔流は妖術機兵『銅鐸』の内部フレームを焼く一撃であった。
どれだけ優れた盾と剣を持っていたとしても、それを振るう者の疲労は隠せない。
ダビング・レコーズにとって彼と彼女の明暗を開けたのは、そこであったのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
真の意味で一人で戦る者などいません
俺が、我等が一人で戦えるならどれだけ良いか
それはともかく、敵と交えるのは言葉ではなく刃であるべき
鋼鉄諸共我等が喰らい尽くしてやろう
【行動】POW
五感と第六感+野生の勘で常に状況把握と敵行動を予測
UCに夜砥を忍ばせ捕縛。怪力で引き寄せと同時に影面を道にしてダッシュ+串刺し。爆破で傷口をえぐる
敵攻撃を残像+ダッシュでフェイントを混ぜ避け、避けられないものは武器受けと体術で受け流しつつ、範囲攻撃+なぎ払いのカウンターで亀裂から武器が纏う怨念の炎(呪詛+殺意+生命吸収+継続ダメージ)を流し込む
炎の弱体やカウンターで隙を作り、串刺しで槍伝いに内部にUCを流し込み爆破
プラズマの光が妖術機兵『銅鐸』の内部フレームを焼く。
けれど、それで倒れるオブリビオンマシンではない。フレームに損傷が入ったとしても、尚立ち上がってくる。
それはまるで幽鬼のようであり、凄まじいプレッシャーを猟兵達に与えたことであろう。
「―――……私は戦う。私はもう誰も一人にはしないと誓ったのだから! あの人の孤独も、あの人の懊悩も、『宿業』でさえも共に背負うと決めたのだから!」
『緑炎妖狐』環・括は凄まじき妄執に囚われた者であったのかもしれない。
彼女の言葉の端々からは狂気にも似た感情を感じる。
果たせなかった約束。
それが過去に起こった何かであることは伺い知れよう。けれど、猟兵と言えど、過去まで見通すことなどできようはずもない。
「真の意味で一人で戦える者などいません。俺が、我等が一人で戦えるならどれだけ良いか」
西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)にとって、体の中に宿る血と怨念の炎は、彼の体の中に常にうごめいている。
個を捨て怨念の集合体としての『我等』として戦う姿は、『緑炎妖狐』環・括は相反しながらもどこか似通った部分があったのかもしれない。
人はそれをシンパシーと呼ぶのかも知れないが、織久にとってみればそれはあまりにも意味のない感傷とも言えるものであったのかもしれない。
互いに対峙するのは、大地。
オブリビオンマシンたる鋼鉄の巨人、妖術機兵『銅鐸』。青銅色をした機体は猟兵たちの攻撃を受け、傷だらけである。
だが、それでも尚立ち上がってくるのは、その身に抱えた妄執故か。
「それはともかく」
織久はゆっくりと視線を向ける。
対峙する『銅鐸』のアイセンサーと瞳がかち合う。赤い瞳と緑色のアイセンサー。
それはどちらともなく結ばれた暗黙の了解であったのかもしれない。
―――敵と交えるのは言葉ではなく刃であるべき。
それが両者の認識であった。
静かに、けれど互いの攻防は落雷の如き一瞬。
織久の肉体に宿る五感。そして第六感とも言うべき超感覚と野生児じみた直感が敵機の行動を予測させる。
緑色の炎が妖術機兵『銅鐸』の装甲の内側へと収束していく。
それは圧倒的な妖力とも言うべき力であったが、織久にとっては関係のないことであった。
彼が為すべきことは一つ。
鋼鉄諸共、己たちが喰らい尽くすのみ。
放たれた黒い影が超極細の糸と共に放たれ、互いを繋ぐ。影の腕と『銅鐸』の機体の腕が繋がれ、互いの膂力を持って拮抗する。
倒れない。
なんたる力。それは生身単体で戦う織久にも言えることであった。鋼鉄の巨人、キャバリア。
それを相手取ったとしても、生身でも引けを取らぬ膂力はユーベルコード、影面(カゲツラ)の力を用いているのだとしても尋常ならざるものであったことだろう。
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
綱引きの様相を呈していた影の腕の上を織久は一瞬で駆け上がる。
振るわれた銅剣が影の腕を切り裂く。跳躍する身体がふわりと妖術機兵『銅鐸』の頭上を飛び越える。
再び放たれた影の腕。
けれど、切断された影の腕は消滅したというのに、いまだ『銅鐸』の腕は何かに引き寄せられるようにしてぴくりとも動かない。
それは無念の死を遂げた者の怨念であったことだろう。その者の髪と血を撚り合わせて加工し砥上げた糸が未だに『銅鐸』の動きを封じているのだ。
そして、すでに数多の猟兵たちが傷つけた装甲の傷跡から死せる者、織久の中にある怨念の炎が流し込まれ、機体の内部を灼く。
奇しくも互いに炎を扱う者であれば、その炎はその力の源をせめぎ合わせるものであったことだろう。
「―――……悲しいほどに。我等が怨念は尽きる事なし……であるが、あなたの妄執は我等に及ぶべくもなし」
流し込まれた炎。
そして、再び打ち込まれた黒い影が、妖術機兵『銅鐸』の内部で爆発を引き起こす。
機体の装甲の中で弾けた爆発が、その威力を物語る。
あのオブリビオンにあるのは怨念ではない。己達とは似て非なるもので動く化身であるのならば、人はそれを妄執と呼ぶのであろう―――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
器物覚醒、「式神使い」。『迦利』、敵は地上よ。
随分嫌な感じの気配ね。妄執かしら。オブリビオンマシンだけじゃない。
乗り手もオブリビオン?
それなら全て断ち切って、骸の海へ還すのみ。
妖術機兵と機甲式、どちらが上か試してあげるわ。
『迦利』が切っ先に「オーラ防御」を張って、「レーザー射撃」で「制圧射撃」を仕掛けながら、鋭角を衝角として特攻。
衝角には「火炎耐性」を付けた上で、不動明王火界咒を敵機体内で爆散させる。
「火炎耐性」で緑の炎を弾きつつ、有人機には出来ない軌道を持って、『銅鐸』を翻弄。
動きが止まったところに、九天応元雷声普化天尊玉秘宝経で落雷を落とす。
あー、似たタイプの機体相手は骨が折れるわ。
内部フレームの焼け焦げる匂いが鼻につく。
それは猟兵たちの攻撃に寄るものであった。妖術機兵『銅鐸』。その青銅色をした機体装甲は傷だらけであるが、猟兵たちの猛攻を受け、内部から破壊されようとしていたとしても未だ神性が宿るような装甲の輝きは損なわれず、装甲の内側から溢れる緑色の炎が『緑炎妖狐』環・括と呼ばれる所以であろう。
「私は負けない。負けるわけにはいかない。もう二度と、喪わさせてはいけないのだから。約束を果たせないのは―――」
もう二度としてはならない。
その純然たる想いをも感じさせるのに、対峙する猟兵達はどこか歪んだものを感じる。
それがオブリビオンマシンに搭乗したものの末路であることを猟兵達は知っていた。どうしようもなく歪んでいく心こそが、オブリビオンマシンの特性であり、争いの火種を蒔く行いそのものであった。
「随分と嫌な感じの気配値。妄執かしら」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)が感じるのは、重圧とともに放たれる妄執と呼ぶに相応しき執着であった。
飛行船を操縦するパイロットである『フュンフ・ラーズグリーズ』を『フュンフ・エイル』と呼ぶ彼女の言葉は、時と場所が違えば純粋なるものであったのかもしれない。
尊いものであると言えたのかも知れない。
けれど、オブリビオンと化して歪んだ心はもはやどうしようもない。
「乗り手もオブリビオン? それならすべてを断ち切って―――骸の海へ還すのみ。妖術機兵と機甲式、どちらが上か試してあげるわ」
ユーベルコード、器物覚醒(キブツカクセイ)によって機甲式『GPD-331迦利(カーリー)』が空を舞う。
逆三角形たる機体の鋭角にオーラの力を張り巡らせ、放つレーザー射撃は牽制と共に戦場を制圧する一斉攻撃であった。
だが、妖術機兵『銅鐸』の装甲から溢れる炎が、それらすべてを相殺する。
「どちらが上か……なるほど。いつの時代も変わらぬものね。人も、猟兵も……どんなときだって優劣を付けたがる」
それが勝負を決する方法であるのならば、当然のことだ。
『緑炎妖狐』環・括にとって、それこそが憎むべき戦いの諸悪であった。
無人機である『迦利』の機動は有人機では不可能な急直角、急制動を繰り返し、『銅鐸』の狙いをつけさせない。
放たれた炎が機体を打つが不動明王火界咒と炎への耐性を持って弾き返していく。
「炎はお互い効かないみたいね! あたしの手がそれだけだと思うのなら!」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
有人機と無人機のメリットとはどこにあるのだろうか。
有人機であれば、搭乗者を守る分厚い装甲が挙げられるだろう。機体は己の手足の延長線上であり、人体ではありえない動きも可能とする。
けれど、有人機の弱みは結局の所『人が乗るがゆえの限界機動』である。
そして、無人機の強みは『無人であるがゆえの限界のない機動』。だが、ゆかりにとってそれはおまけ程度のものでしかない。
猟兵である以上、己の身の丈以上のオブリビオンと対峙することは少なくはない。
本来の彼女の力は巨躯をも覆す強大なるユーベルコードの力である。
「『迦利』! 動きを止めなさい!」
鏃のように放たれた『迦利』の機体が『銅鐸』へと体当りするようにぶち当たる。その機体の鋭角が装甲に突き刺さり、容易には抜けない。
「こ、の―――、木偶人形風情が!」
打ち下ろされた『銅鐸』の拳が『迦利』の装甲を砕き、鋭角を引き抜き大地へと叩きつける。
だが、それはあまりにも下策であった。
無人機のメリット。それは術者と機体を別つことである。
「九天応元雷声普化天尊玉秘宝経―――あー、似たタイプの機体相手は骨が折れるわ。けれど、これで!」
放たれる視界を明滅させるほどの雷撃の一撃。
それは天より放たれし激烈なる落雷。如何に神性を帯びるような装甲を持つ『銅鐸』であったとしても、その雷撃の一撃を受けて無事ではいられまい。
爆風が吹き荒れ、爆心地から『迦利』の機体が吹き飛び、ゆかりの元へと舞い戻る。
彼女の言う通り、確かに似た機体であったのだろう。
ゆかりが感じた嫌な気配。
それは狂気にも似た感情故であろう。手強いと感じる以上に怖気が走る。
愛とは時に狂気にも勝る『何か』に変わる。その光景をゆかりは、様々と見せつけられたような気分になるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ジーノ・エヴァーソン
飛行船内のフュンフ・エイルへ無線連絡。
「こちら傭兵『Xeno_Fire』。…あんたに狐耳の恋人がいたってことはお姉ちゃんは知ってんのか?アレ何だ。説明を求める」
どんなアンサーでも任務の障害だ、撃墜する
人間大の標的相手なんて例が無いんでね…。ここはこの場で【白兵鬼】換装
攻撃力半減、移動力5倍に設定!短剣2本、加速ブースタ増強のフレームへ変え、接近戦に移行する
妙な術で同化してようと元はキャバリアだ。強化した〈推力移動、ダッシュ〉と〈切断〉攻撃の一撃離脱を繰り返し、消耗と相手が痺れを切らすのを狙う
こういう激情家な奴は飄々とやってヘマをさせるに限る
激重感情なんぞ、機体のデッドウェイトになるだけだぞ
空を明滅させるほどの落雷が落ちる。
それは猟兵の放ったユーベルコードの一撃であり、それほどの一撃であっても尚、オブリビオンである『緑炎妖狐』環・括を仕留めきれていないという事実は驚嘆に値するものであったことだろう。
その力の根源は妄執にも似た狂気であり、おそらく言葉にするのであれば愛であったことだろう。
けれど、時に愛とは狂気以上の何かをはらんだものへと変化する。
プラスとマイナスの感情が背中合わせのように、翻った愛が狂気以上の何かに変わる時、その力は世界をも滅ぼすものへと成り代わるのかも知れない。
「こちら傭兵『Xeno_Fire』。……あんたに狐耳の恋人がいたってことはお姉ちゃんは知ってんのか? アレ何だ。説明を求める」
コールサインと共に飛行船のパイロットであるフュンフ・ラーズグリーズへと問いかけるのは、ジーノ・エヴァーソン(Xeno_Fire・f30003)である。
あのオブリビオンは明らかにフュンフに執着している。
元は飛行船を撃墜し、『グリプ5』へと打撃を与えることを目的としていたことは間違いない。
けれど、どこでスイッチを入れ間違えたかのごとく、『緑炎妖狐』環・括は飛行船を破壊するのではなく追いすがるようになっていた。
その道程に猟兵がいるから払う、それだけのために彼女は行動しているように思えたのだ。
「そんな、恋人なんていたことなんてないです。それに、僕の名前は確かにフュンフですけど……フュンフ・ラーズグリーズです。『フュンフ・エイル』じゃあないんですよ!」
彼自身も困惑しているのだろう。
その答えを利くだけでジーノはよかった。元よりどの様な答えが返ってこようとも、あのオブリビオンは任務の障害だ。撃墜する以外の選択肢などない。
「ならいいさ。よく似た名前の人違いってやつだろうさ。妙なことを聞いた。他人の空似だからって追いかけ回されるのも、気分のいいもんじゃあないだろうからな。とっととケツをまくって逃げちまえ」
ジーノは軽口を叩いて通信を切る。
とはいえ、あの機体。妖術機兵『銅鐸』との相性は悪い。ならば、やるべきことは換装、白兵鬼(コンバージョン・スパルトイフレーム)へと機体を変えることだ。
「特化武装設定完了。"白兵鬼"換装。さあ、行くぜ!」
攻撃力は半減するが、その突進能力は通常のメビウスの約5倍。
短剣を両手に構え、ライフルを捨てる。
射撃をした所であの銅鏡に弾かれてしまう。ならば、此方が取れる択は―――!
『メビウス』の加速ブースターの増設されたフレームが一気に踏み出した大地を割るほどの神速の踏み込みで妖術騎兵『銅鐸』との間合いを詰める。
「この踏み込み―――! 機体特性を変えてきた……!」
機体と同化し、緑色の炎が吹き出す『銅鐸』。
間合いを詰められたとしても、それに即座に対応してくる。短剣は取り回しがよく、攻撃力が低かろうが確実に相手を削れればいいのだ。
「それはそうだろう……! 結局のところ、どれだけ機体がよかろうが!」
互いの短剣と銅剣が交錯する。
ジーノの短剣さばきは見事であった。銅剣の攻撃は確実にこちらの装甲を削るものであったが、既のところで躱し続けていた。
装甲が削れるも、いずれも致命傷ではない。
だが、こちらは手数で圧す。放たれる短剣の斬撃はまるで相手のミスを誘発させるかのように飄々としていた。
「致命的な場所にさえ当たらなければ、負けはしない。こっちが負けないってことは、そっちの勝ちでもないってことだからな! どうした! お前も『エース』により掛かるハエの一匹か!」
その言葉は完全に『緑炎妖狐』環・括の虎の尾を踏むものであった。
激情が、その狂気じみた感情を表すように機体から溢れる緑の炎を吹き荒れさせる。ただそれだけでメイビスの『白兵鬼』の換装フレームの装甲を歪ませるほどであった。
「私を、私達の思いを愚弄するか、猟兵―――! 『エース』の! なんたるかも知らず! フュンフがどれだけのことをしたと―――!」
ジーノはその激情を受け止める気などさらさらなかった。
なぜならすでに確証を得ていた。彼女の言う『フュンフ』とジーノたちが知る『フュンフ』は別人だ。
何を持って彼女が『フュンフ』に己の憧憬と執着を見出したのかはわからない。
けれど、たったひとつ確かなことがある。
「激重感情なんぞ、機体のデッドウェイトになるだけだぞ。戦場にあっては激情なんてものはなぁ―――!」
歪む装甲を捨て、ジーノは『メビウス』の機体を滑らせるように滑走させ、妖術機兵『銅鐸』の背面を取る。
煽り、激情のままに力を振るわせる。
それは決定的な隙であった。本来の彼女の実力であれば、背面を取らせることなどなかっただろう。
けれど、ジーノの煽りを受けて激情を晒した。
それが明暗を分けたのだ。
放たれた短剣の連撃が『銅鐸』の背面装甲を深く十字に切り裂く。短剣が途中でへし折れてしまったが構わない。
残った刀身は機体フレーム深くまで食い込んでいる。
あれでは動くたびにフレームがきしみ、傷を深くしていく。離脱しながら、ジーノは考える。
あれが過去の化身であるというのならば、彼女の言う『フュンフ』とは何者か。
同じ操縦の癖、挙動、それらを今の『フュンフ』に見たというのならば、ジーノの知る『フュンフ』とは一体何者なのか。
答えはでない。
大音量のミュージックだけが、ジーノの心に戦場にあってその心に入り込んでくるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
ふーん、この世界のオブリビオン、オブリビオンマシン。
こういう奴もいるのか。いろんなタイプがあるもんだな。
しかも、恋する乙女かな?
しっかし、思い込みが激しいのは生前からなのかね、支離滅裂だぞ?
先程の戦闘状態のまま銅鐸戦に移行。(スルト×戦闘モードⅠ)
ゴッドハンドの動きをスルトで再現して戦います。
操縦者の命を考えなくて良いってのは楽でいいな。
敵POWUC、普通に戦います。
どーした、さっさと決着をつけねーと、お眠の時間になるんじゃねーか?
まあ、こっちも時間をかける気はねーがな。
大技
スルトが耐えられる極限まで戦闘能力を増加させてからの最大速度で放たれる『炎の剣』の突き。
アドリブ歓迎です。
背面ユニットの装甲が破壊される。
破片が飛び散る。刀身が内部フレームにまで到達し、機体の動きを阻害する。最初からこれが狙いであったのかと思うほどに的確なる判断。
猟兵。
己が滅ぼさなければならないという理由なき自覚だけがある。
『緑炎妖狐』環・括にとって、それはさほど重要なことではなかったけれど、それでもこの体が猟兵という存在を拒否する。
互いを滅ぼし合う関係であるとわかっているからこそ、今の己にはあれらは排除しなければならない『敵』なのだ。
「貴方はこういうやり方、一番嫌いなのでしょうけど。でも、こうしなければならないことも納得している。だからいいでしょう、フュンフ」
『緑炎妖狐』環・括の中にある何かを引きずり出す。
妖術機兵『銅鐸』の装甲から緑色の炎が溢れ、その光は大地に煌々と燃え盛る篝火のようであった。
己の存在を誇示するように、見て欲しいと願うように。
「ふーん、この世界のオブリビオン、オブリビオンマシン。こういう奴もいるのか。いろんなタイプがあるもんだな」
煌々とした緑色の炎を受けてアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)と移行し、黄金の魔力を身に纏う『スルト』のコクピットの中で呟く。
彼にとって『緑炎妖狐』環・括は言わば良くなく子犬のようなものであった。
かまってほしいと気になる相手に吼えるような、そんな愛らしささえ、場違いながら思ってしまうのだ。
「しかも、恋する乙女かな?」
人間の恋模様などには興味がない。
けれど、今まさに対峙する『緑炎妖狐』環・括はそうであるとしか思えない。
オブリビオンマシンが互いに対峙した時、それは何を意味するのだろう。
猟兵に抑え込まれ、屈服された同胞への哀れみか、それとも怒りか。
「恋? これがそんな安っぽいものであるわけがないわ。ああ、そう! 本当にそうなの! これは恋なんて生易しいものじゃあないわ! 愛よ! 誰かの幸せをあの人は願ってくれた。自分のことを顧みずに! あの献身に私は!」
緑色の炎が妖術機兵『銅鐸』の装甲から噴出し、一気に大地を蹴る。
地面が割れ、肉薄する。
『スルト』の黄金の魔力と緑色の炎が激突する。
「しっかし、思い込みが激しいのは生前からなのかね、支離滅裂だぞ?」
互いの銅剣と炎の剣が打ち合う。
火花散る代わりに散るは炎の残滓。叩きつけられるたびに、目の前の相手の技量の高さをアレクサンドルは知る。
この時代の『エース』とは別種の力。
オブリビオンになったからとかではない。何か異質なものを感じる。機体性能ではない。いや、機体事態は―――。
「どーした、さっさと決着をつけねーと、お眠の時間になるんじゃねーか? まあ、こっちも時間をかける気はねーがな」
「エネルギーインゴットのことを言っているのなら、旧式と侮るのはやめなさい、猟兵!」
やはりそうだ。
確信が持てる。機体の制御系、動き。駆動部の可動領域の狭さ。それは一見すれば機体のデザインゆえであろうと思っていたが違う。
今までこの時代の機体を見慣れていたせいだろう。あのキャバリア―――妖術機兵『銅鐸』は何世代も前の機体。
骨董品と言ってもいいレベルの機体だ。
「はっ―――! そんな機体で俺たちと渡り合ってきたかよ! ならよ!」
互いの重圧が焔となってぶつかりあう。
静謐のような時間が大地に流れる。それは互いの一撃を持って雌雄を決すると互いが理解した瞬間であった。
「『スルト』よ、前回のような無様、晒してくれるなよ」
アレクサンドルの技量。
それにオブリビオンマシンたる『スルト』が耐えられない。けれど、常に進化を続けるコクピットや技術体系は、以前よりましている。
極限まで高められた戦闘能力。
最大にして最速。
手にした炎の剣と銅剣がぶつかりあい、その威力が周囲に衝撃を齎し、大地をえぐる。
「上出来だ―――」
黄金の魔力を消耗させながらも、『スルト』の放った炎の剣による神速の突きは銅剣の切っ先から根本までを砕き、破壊せしめていた。
機体のフレームからはレッドアラートが鳴り止まないが、それでも機体は耐えきっていた。
それをまだ上出来と呼ぶにはアレクサンドルの持つ戦闘力は十全に発揮できていないのであろうが、それでも。
それでも過去の化身たる、『緑炎妖狐』環・括を圧倒するのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
エースも1人では戦えないし
責任を背負うのはエースだけではないよ
銅鐸の周囲を旋回して飛び回り
ガトリングガンで攻撃
銅鏡での反射が難しくなるように
できるだけ違う向きから撃とう
銅剣は急旋回や神気の固定で躱したり
地面近くを飛んで衝突を狙ったりするよ
相手がこちらの動きに慣れて
正確に銅鏡を合わせられるようになったら
泡消火放水砲を機体の背中に創造し発射
銅鐸表面を泡で覆って一時的に反射できなくしまおう
これは消火であって攻撃じゃないからね
ガトリングガンで攻撃を続けつつ接近して急上昇
背後から来る銅剣を使い魔の念動力で加速して銅鐸に突っ込ませるよ
その執着の源が何であったかを考えると悲しいけど
骸の海に還すしかないからね
砕けた銅剣の破片が大地に飛び散る。
それは力の激突であり、周囲の大地をえぐるエネルギーの奔流となって撒き散らされる。妖術機兵『銅鐸』は言わば旧世代のキャバリアである。
今でこそサイキックキャバリアという分類に属するものであるが、見るものが見ればわかるものである。
あの機体は言ってしまえばキャバリアの黎明期に開発された機体だ。今の時代のキャバリアを見れば、妖術機兵『銅鐸』の構造はあまりにも単純だ。
オーバーフレームとアンダーフレームに分けられてこそいるが、可動領域は狭い。だというのにこれだけの猟兵と戦っても尚、引けを取らぬのはオブリビオンマシンであるからか、それともパイロットの技量が為せる業か。
「どれだけ時が流れても、人の営みは、性根は変わらない! 優れた力を持つものの庇護下にあってなお、自称弱者が吼える。その言葉の意味もわからずに『エース』という眩い光の影から他の弱者を狙う!」
それが許せぬのだと『緑炎妖狐』環・括の身の内に渦巻く情念めいた怨念が緑色の炎となって噴出する。
「『エース』も一人では戦えないし、責任を背負うのは『エース』だけではないよ」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は試製竜騎「鉑帝竜」のコクピットの中で呟いた。
人は一人で生きていけないからこそ、社会を作り上げる。
コミュニティという名の循環施設だ。その中でコミュニティ同士の争いが起これば、だれもが無責任ではいられない。
『エース』のあり方であってもそうだろう。
妖術機兵『銅鐸』の周囲を旋回するように飛び回り、かの機体を此処に釘付けにするようにガトリングガンで牽制する。
機体の装甲は旧式であったとしても、サイキックエナジーの力によって弾丸は威力を減退させられている。
「―――銅鏡を警戒する……! この盾の性能を理解している!」
そう、晶は旋回しながらガトリングガンを放ち続けている。あの銅鏡が攻撃を反射するものであり、鏡という形を取っているのならば、反射できる角度というものが決まっているのだろう。
反射できなくても逸れたりすることもあるはずだ。さらに言えば、他の猟兵たちの攻撃によって銅鏡はヒビが入っている。
十全の性能を今は発揮出来ていないはずだ。
「人は一人では生きていけないってわかっているはずだろう! 助けてくれる人がいるって本当にありがたいねって思えることが、人の善性だろうに!」
複製創造支援端末(ブループリント・ライブラリ)によって呼び出された別世界、UDCアースにて設計された泡消火砲が機体の背中にマウントされる。
銅剣がサイキックエナジーによってコントロールされ、飛来する。
それを躱し、神気によって固定したりを繰り返しながら飛翔する試製竜騎「鉑帝竜」の機体。
「善性を持った人間が他者を殺す! ならば、人の悪性とは何か! その線引は!」
『緑炎妖狐』環・括が吼える。
それは争いが続くクロムキャバリアにおいてはもっともな疑問であったことだろう。どれだけ人間の性根が善きものであったとしても、争いは起こる。
人間が一人で生きていけないのならば、必ずそこには諍いが起こる。起こらないわけがない。
最初は些細なことであっても、飛び火するように戦火は広がっていく。
「私にはそれがどうしてもわからない!」
銅鏡が徐々にガトリングガンの銃弾を弾き返すようになってきていた。
慣れてきているのだ。
そこに背面にマウントされた泡消火放水砲から凄まじい勢いで白い泡の奔流が迸る。
それは一瞬で銅鏡を覆い隠し、機体のアイセンサーを覆う。
「―――!? これは、泡!?」
「そう、これは消火! その激情を鎮めるためのね! 攻撃じゃなければ、その銅鏡も反射はできないでしょう!」
晶の声が響く。
同時に晶を狙っていた銅剣を使い魔の念動力で操り、泡まみれの銅鏡へと突っ込ませる。
ひび割れていた銅鏡が砕け散る音が響き渡る。
「その執着の源がなんであったかを考えると悲しいけど」
晶は呟く。
あのオブリビオンの執着。フュンフという名に、存在に対する執着が何を意味するのか、それは正しく理解できるわけではないけれど。
それでもあの執着はきっと歪められたものであって、根本に在るのはきっと善きものであったには違いない。
だからこそ、悲しいと思える。
「―――けれど、骸の海に還すしかないからね」
それがどれだけの理由を、どれだけの善きものを根本に持つものであったとしても、それでも。
それでも晶たち猟兵は彼女を討たねばならないのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
引き続きエンバールに乗って、だね……
それにしても…うん……うん?思い込みが激しい性格なのかな……
そして…富に反応する、か…この装甲車も一財産ではあるけど…
…飛行船にも反応しうるという点が一番驚異だね…
【尽きる事なき暴食の大火】を発動…そちらが緑であればこちらは白…その大火を操って緑の炎彩を喰らい尽くすよ…
…緑の炎彩を迎撃しきったたのであれば喰らって大きくなった大火で銅鐸を囲み、全周囲からの攻撃で焼き尽くそう…
…フュンフと何があったかは知らないけど…過去は過去…もうお前が関与をしていい話では無いよ…
……大人しく骸の海に還るといい…
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は改造装甲車『エンバール』と共に大地を疾走する。
その背後には飛行船が戦闘から逃れるように退避しているが、未だ気を抜くことはできない。
あのオブリビオン、『緑炎妖狐』環・括は飛行船と言うよりは、それを操縦する『フュンフ』に強い執着を見せている。
これまでの経緯を見るに、飛行船を操縦する『フュンフ』と彼女の間には因縁があるようには思えない。過去の化身たる存在であるのならばクロムキャバリアにおける過去の存在であることは間違いない。
けれど、今を生きる彼らとどこで結びつくというのだろうか。
「それにしても……うん……思い込みが激しい性格なのかな……」
あの激情は妄執と言っても差し支えのないものであった。
あれほどの強い情念を持って何をなそうというのか。破壊しか、戦乱の火種しか撒き散らさないのがクロムキャバリアにおけるオブリビオン、オブリビオンマシンであるならば、彼女が為すことすべてが今を生きる彼らに害を為すものでしかない。
「退け、猟兵! 私の邪魔をするな―――!」
緑色の炎が泡まみれになった機体から溢れ出し、泡を吹き飛ばす。
その機体の状況を見れば、今まで猟兵たちが与えてきたダメージの蓄積は言うまでもない。電子型解析眼鏡である『アルゴスの眼』には、その機体の状態が手に取るようにわかる。
旧式の機体。
オブリビオンマシン化しているせいか、性能自体は大幅に向上しているようであるが、関節や設計思想は変わることはない。
100年戦争が続くクロムキャバリア、その黎明期に建造されたであろう妖術機兵『銅鐸』。
銅鐸形態によって召喚され、召喚した者のサイキックエナジーを持って変形し人型へと至るキャバリア。
戦地に生身で飛び込み、敵地で機体を展開しての電撃戦に優れた機体であったのだろう。
「私の炎は富める者を焼き尽くす! ああ、フュンフ、貴方を縛る弱者たちの枷、それを破壊すれば、そんな不自由な飛行船になんて乗らなくって済むでしょう?」
放たれる緑の炎。
それは飛行船を真っ直ぐに狙い、飛翔する。
「やはり富に反応する、か……物資を満載した飛行船は即ち『富』とみなす……なら―――貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)が『エンバール』から展開された魔法陣から飛び立ち、あらゆるものを燃料にする白色の炎が、飛行船へと迫ろうとする緑色の炎すらも喰らい尽くす。
「そちらが緑であれば、こちらは白……あらゆるものを燃やす炎であれば、貴方の情念の炎であっても同じ……」
同じ炎であるというのに、富を焼き尽くさんとする緑色の炎と、あらゆるものを燃料に変えてしまう炎はあまりにも相性が悪かったと言わざるを得ない。
「私の炎を、喰った
……!?」
「フュンフと何があったかは知らないけど……過去は過去……もうお前が関与していい話では無いよ……」
尽きる事なき暴食の大火の白き炎が極大にまで膨れ上がる。緑色の炎を残らず食らい付くした白き炎は、妖術機兵『銅鐸』を囲い、その逃げ道を塞ぐ。
それはどうしようもないほどに極大なる炎。
「私は約束を果たすだけだ! 私が果たせなかった約束を! 共に生きると誓った、あの願いを!」
白色の炎に包まれ、機体の装甲が溶解していく。
それだけの熱量を与えられれば、コクピットの中のパイロットは蒸し焼きにされてしまうことだろう。
だが、オブリビオンたる彼女は死なない。
消耗を受けても、通常のパイロットであれば死んでしまう攻撃を受けて尚、情念の炎は消えること無く燃え続ける。
「今度こそ、私は生きて、フュンフの隣に……!」
その言葉をメンカルは切り捨てる。
なぜなら、彼女はオブリビオン。過去の化身。100年戦争の黎明期に開発された機体を乗機としている以上、今を生きる『フュンフ』と彼女の間に縁があるはずがない。
もしかしたのならば、か細い何かがあるのかもしれないが、それはメンカルの関知する所ではない。
「……おとなしく骸の海へ還るといい……」
これ以上、フュンフに何かを背負わせる必要なんて無い。
それが己の預かり知らぬものであるのならば尚更のことである。
白色の炎が、妖術機兵『銅鐸』。過去の遺物にしてオブリビオンという怪物を焼き尽くさんと燃え盛るのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
羽蟲登場!とやっ!
ふーん珍しいタイプの機体
でも、ふるくさーい
ごめんね、考古学は趣味の範囲外なんだ
準備完了
外装転送、いざいざ真の姿
全剣抜刀、4刀流こそ我が神髄ってね
【Code:F.F】を起動
加速を掛けて銅鐸へ接近戦を仕掛ける
敵の追尾剣は副腕の剣で『武器受け』して弾く
接近中に敵の損害状況を『情報収集』して分析
ダメージが大きく隙になる部分を探して接近、4刀一斉斬撃
その銅鏡、何処まで持つかな?
もっとも、こっちもこれで終わりじゃないけどね
副腕の2刀で1つ、私が持つ2刀で1つ合計2つの球状のエネルギー体を形成、一斉放射し『2回攻撃』
過去を蔑ろにする訳じゃないけど、君みたいなタイプの女はニッチなジャンルだよ
白色の炎が妖術機兵『銅鐸』の機体装甲を融解させていく。
僅かに残った装甲の青銅色はもはや見る影もない。けれど、頑強なる設計のもとに組み上げられた内部フレームは未だ健在であった。
数々の猟兵たちの攻撃を受けてわずかに湯がう程度の内部フレームは、構造的に見ても頑強さを優先した設計であることは言うまでもない。
それが最新鋭ではなく、今の次代にそぐわぬものであることは技術者としての目を持つ者であれば、明白なことであった。
「羽蟲風情が……! いつも、いつも私の邪魔ばかりする! 私はただ生きていたいだけなのに! 敵も味方もいらなかったのに」
『緑炎妖狐』環・括が叫ぶ。けれど、目の前に降り立った猟兵の姿を見れば、心の内側から湧き上がる衝動がそれを許さない。
羽蟲。
それは光に集まってくる煩わしいもの。
生命ではあるのだろうけれども、それでも煩わしい。まばゆい光『エース』。それは強大な力であるが、それを持つのもまた人である。
背負うものが他者よりも多いのだ。それを『宿業』と呼ぶには、かつて『エース』と呼ばれた彼は優しすぎた。
「羽蟲登場! とやっ!」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は空中戦を終え、大地に降り立つ。
目の前にはオブリビオンでありオブリビオンマシン。妖術騎兵『銅鐸』を駆る『緑炎妖狐』環・括の姿があった。
「ふーん、珍しいタイプの機体」
玲は即座に機体の状況、その設計思想を看破する。
確かに珍しいタイプである。可変機であり、人型へと移行するこができるが可変機故にフレームが頑強である、という思想ではないことが見て取れる。
可変することを前提としていながら、可変する前の形態でのメリットを考えられていない。
まるでトロイの木馬のようなものだ。
敵地奥深くに入り込んでから変形し、敵地を混乱に陥れ電撃戦でもって制圧する。それこそが妖術機兵『銅鐸』の正しい設計思想であろう。
「でも、ふるうさーい。ごめんね、考古学は趣味の範囲外なんだ」
あれはもはや出土したものというのが正しいレベルの遺物でしかない。
キャバリア黎明期の機体であるが、珍しいという以上の感想は齎さないものだ。
「―――……でもまあ、放ってはおけないよね。外装転送、いざいざ真の姿。全剣抜刀、四刀流こそ我が神髄ってね」
玲の身に纏う外装。
それは模造神器を振るうに値する頑強さを兼ね備えたものである。
自身の持つ二振りの模造神器。そして、背面ユニットに装備された新たなる副腕とも言うべきアームがさらに模造神器をニ刀抜き払う。
「―――最終公式起動、全てを零に!」
Code:F.F(コード・ダブルエフ)。それは模造神器すべての力を纏うユーベルコード。そう、彼女が今抜き払った模造神器は四振り。
擬似的とは言えUDC―――邪神の力を再現した力は即ち、模造でありながら神に近しい力を持つ。
生身の体であれ、鋼鉄の巨人に遅れを取る理由などありはしない。
圧倒的な加速で踏み込み、その手にした二振りの剣を振るう。放たれた斬撃は重い。思念でコントロールされた銅剣が受け止めるも、たやすく折れる。
「な―――……! これは、っ、外の!」
『緑炎妖狐』環・括は目にしたであろう。
生身でありながらキャバリアと引けを取らぬ攻撃力を持ち、振るう念動の銅剣を物と物せずに叩き折る玲の姿を。
それはかつて己がそう言われたように超常の人としての姿であった。
追尾するように飛翔する銅剣が玲を狙う。
キャバリア同士であればいざしらず、生身の人間に向けて精度ある攻撃ができようはずもない。
副腕が振るわれ、追尾してきた銅剣をすべて叩き落とす。
放たれた斬撃の一撃が銅鏡によって受け止められるも、すでにひび割れはじめていた銅鏡ではUDCの力を再現した一撃を受け止めることはできても反射することはできない。
「その銅鏡、何処まで持つかな? もっとも、こっちもこれで終わりじゃないけどね」
気がついたか、と玲は笑う。
これが外なる神、邪神の力であると。勘所は悪くない。けれど、それは『緑炎妖狐』環・括の持つ直感的なものであったことだろう。
玲のように経験と知識の積み重ねの上に成り立つものではない。
「過去を蔑ろにする訳じゃないけど―――」
「猟兵が―――! 私の道を、あの人の! 願いを、妨げるな!」
その咆哮の意味を玲知らない。
知らないことを知ることはできても、目の前の歪められた彼女を救う方法は一つしか知らない。
副腕の模造神器が交錯する。球状のエネルギーが形成されていき、玲自身の腕が振るう模造神器もまた同じ球状のエネルギーを生み出す。
それは悲しいことだけれど、
「君みたいなタイプの女はニッチなジャンルだよ」
四振りの模造神器が振るわれる。
放たれた凄まじい力の奔流が同時に放たれ、妖術機兵『銅鐸』の機体を吹き飛ばす。
銅鏡で一つは防ぐことはできたのだろう。ただし、その代償は銅鏡の損失という痛手であった。
吹き飛ぶ腕、強大なるエネルギーは、機体を弾き飛ばし、荒野の大地へと沈ませる。
「嫌いな人ばかりではないとは思うけれどね……でもさ、それはもう考古学みたいなものだよ。温故知新というわけではないけれど―――」
それは決定的な言葉であったことだろう。
今を生きる者と過去より滲み出た者。
それが交わることなどないという、決定的な事実であった―――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
引き続き『ファントムシリカ』に乗って参戦
愛、それは愛…とか歌い出しそうな勢いですが
一方的な想いはストーカー案件です!
健全クノイチ(?)の私が見逃すわけにはいきませんっ!
というかあんまり触れてると気が狂いそう(ヒィィィィってなりそう)なので
速攻で仕掛けます
本日二度目で負荷かけちゃうけど
エンジェライトスラスター起動!
一気に、いっきまーす!
「手数こそ正義! 参ります!」
攻撃回数重視の【疾風怒濤】で!
継戦能力はそちらが上かもですが
その妖力ごっそり削り取ってあげます!
敵機の反撃は…
シリカ、シリカ頑張って!(他人任せ
※アドリブ連携OK
「愛、それは愛……とか歌い出しそうな勢いですが、一方的な想いはストーカー案件です! 健全クノイチの私が見逃すわけにはいきませんっ!」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はキャバリア、『ファントムシリカ』のコクピットの中で大々的にそう宣言した。
想いとは常に健全であるものばかりではない。
妄執という名の感情は、いつだってだれかを傷つける刃と成り得ることを知っているのであればこそ、彼女は見過ごすことは出来ないのだと語る。
健全クノイチという言葉は、微妙に周囲の者たちに理解されることがあったかは別問題ではあるが、それでも健全な精神は健全な肉体に宿るという言葉があるように健全でなければ、その思いがどれだけ強いものであったとしても、他者を傷つけるのだから。
「というか、あんまり触れていると気が狂いそうです」
他者の狂気に恐れを抱くのであれば、それは言わば己の精神が正常である証であろう。受け入れることさえしなければ、それは心の防壁となってサージェの心を鎧う。
『ファントムシリカ』の機体が光の環を生み出す。
エンジェライトスラスターは今日で二度目の負荷がかかる出力を引き出す。シリカが怒りそうであったけれど、それは今は考えている余裕はない。
なぜなら、相対するオブリビオンもまた愛故に強固な想いと共に虚偉大な力を齎すのだから。
「私の愛が、負けるわけがない。私はもう二度と喪われないと決めたのだから! それだけのために私は過去から―――!」
妖術機兵『銅鐸』の焼けただれた装甲の内側から緑色の炎が噴出する。
それは煌々と大地を照らす圧倒的な光であった。
『姉さん、機体の出力が上がっている。油断しないで』
「一気に、いっきまーす!」
ああ、姉さん、ちゃんと最後まで話を聞いて。『ファントムシリカ』に宿る魂のアバターであるシリカが猫又の姿で頭を抱える。
エンジェライトスラスターの機動は確かに強力な武器であるが、相手のもまた緑色の炎によって機体を強化しているのだ。
迂闊に飛び込んでは、と静止しようとしたが無駄であった。
「手数こそ正義! 参ります!」
一瞬の踏み込み。
けれど、その速度を上回るのが妖術機兵『銅鐸』の踏み込みだった。
念動制御による銅剣を手に、そして複数の銅剣が空に舞い上がる。
「その判断は間違っていない。けれど、それは相手の手数よりも、こちらの手数が多い場合にのみ―――」
銅剣がフローライトダガーとぶつかる。
火花が散り、互いの手数とが激突する。多くは相殺されていくが、徐々に空を舞う銅剣をいなせなくなってくる。
『だから、姉さん気をつけてって―――!』
シリカの声が響く。
けれど、サージェは止まらない。
なぜなら、継戦能力は妖術機兵『銅鐸』が上。ならば、息切れした瞬間にサージェの勝ちはなくなる。
だからこそ、責める!
「シリカ、シリカ頑張って!」
まさかの人任せである。
だが、今回はそれでいいのだ。防御を捨てる。サージェは攻撃の手を緩めない。己が目指すのは疾風怒濤(クリティカルアサシン)の如き連続攻撃。
一つのことしか専念できない。
攻撃と防御。
そのどちらもやらないとならないのが戦いの常であるが、彼女は一人ではない。いつもコクピットにはアバターのシリカがいる。
たった一人で戦っているわけではないのだ。
後でこってり絞られるかもしれないけれど、今は些細なことだ。だって、目の前のことで精一杯であり、懸命だからだ。
サージェの目の色が変わる。それはユーベルコードの輝き。
「―――……! ここに来て速度があがる、だと!?」
もはや一心不乱であった。
放たれる銅剣の回避や防御は頭の中にない。シリカが何か言っているが聞こえない。それでも制御を任せた以上、サージェの攻撃は止まらないのだ。
フローライトダガーの緑色の残光が大地に華を散らすように妖術機兵『銅鐸』の装甲を削り、弾き飛ばし、頑強なる内部フレームまでをも削り取っていく。
「ふぅっ! これで、ふぃにっしゅの! そにっくぶろー!」
放たれた最後の一撃、それがビームの光を残して妖術機兵『銅鐸』の頭部に癒えぬ傷跡を残し、『ファントムシリカ』は駆け抜けるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
フュンフ様、八咫神国の機体データ(ハッキング・世界知識・情報収集)を送れますか?
あの機体の強化法…まるで骸魂
骸魂は生前の縁者に執着する行動パターンがありますが、あの声に彼が覚えがなく、機体が過去の物であれば…
騎士として此処を通す訳にはいきません
二人の『フュンフ』様、そして貴女の想いの為に
飛行船かばい●推力移動で激突
ワイヤーアンカー●ロープワークで自機ごと拘束
機体放棄
自己●ハッキング限界突破●怪力でコクピットハッチ破壊
搭乗者を外に引っ張りUC
(例え生まれ変わりでも、同一機種の内部データが異なるように)
貴女の『エース』は彼ではありません
約束を交わす程の仲であれば…きっと貴女をお待ちしている筈ですよ
数多の猟兵たちの活躍によって、妖術機兵『銅鐸』を駆る『緑炎妖狐』環・括は、消耗の一途を辿っていた。
機体装甲は溶け落ち、攻撃の尽くを反射する銅鏡は砕け落ちた。
残った武装の銅剣も浮遊するものも含めれば、多くのものが脱落している。さらに頭部には癒えぬ傷跡が無残にも刻まれ、その満身創痍たる機体であってもなお、『緑炎妖狐』環・括の中にある骸魂の力を引きずり出し、緑色の炎を機体の内部フレームから噴出させ続ける。
「私は―――、分かたれることはしない……! あの日果たせなかった未来を、私が、過去が、掴まないと!」
彼女の慟哭は『グリプ5』の大地に虚しく響き渡る。
それはきっとだれにも理解されることのない願いであり、想いであったことだろうから。
もはや妄執と同じである。
すでに彼女を知るものはない。また彼女が知る者もまたいない。
それが100年続く争乱のはじめに生まれた者の宿命であるのならば、その妄執の向く先にあるのが『宿業』であろうか。
「フュンフ様、八咫神国の機体データをこちらに転送することは可能でしょうか」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は『緑炎妖狐』環・括と他の猟兵たちの戦いを見て、飛行船の操縦者である『フュンフ・ラーズグリーズ』へと問いかける。
戦い方を見ればトリテレイアもわかるのだ。
あれがクロムキャバリアにおいて、あまりにも構造が単純化……いや、キャバリア開発の黎明期に産み出された機体であると。
「……あ、ありますけど……何か、わかるんですか?」
フュンフの声にトリテレイアは頷く。
自身の憶測が正しいのであれば、あのオブリビオンは―――。
「あの機体の強化法……まるで骸魂」
カクリヨファンタズムに存在する弱いオブリビオンである骸魂。骸魂は生前の縁者に執着する行動パターンが見受けられる。
トリテレイアにとって、それはまさしく『緑炎妖狐』環・括に当てはまると考えていた。
『フュンフ』に対する強い執着。
けれど、今飛行船を操縦している『フュンフ・ラーズグリーズ』には、彼女の声に聞き覚えがない。
そして、彼女の言葉を信じるのであれば『フュンフ』は『エース』。彼は未だ『エースの原石』でしかない。
ならば、そこに矛盾が生まれる。
送られてきた機体データを照合する。
「妖術機兵『銅鐸』……なるほど。他の猟兵の方々が感じられた通り……あれは、はるか昔、100年戦争の初期に開発された機体」
そこでトリテレイアは言葉を切った。
オブリビオンが過去の化身であるのであれば、そういうこともあるのだろう。それ以上の言葉は要らない。
これ以上は何もかもが憶測でしか無い。
だからこそ、トリテレイアのアイセンサーに光が灯る。
「なればこそ!」
「そこを退け―――! 羽蟲
……!!」
飛行船に追いすがる妖術機兵『銅鐸』。その機体の進路を妨害するように『ロシナンテⅣ』が駆ける。スラスターをふかせ、機体同士が激しく激突する。
すでに数多の猟兵達によって『銅鐸』の機体は限界を迎えている。
だと言うのに、これだけの力を発揮するのが想いの力であるというのならば、尚更歪められたものであるのが惜しい。
ワイヤーアンカーが『銅鐸』と『ロシナンテⅣ』をぐるりと取り囲み、拘束する。
「何を!」
コクピットハッチからトリテレイアは飛び出し、『銅鐸』のコクピットハッチを力任せに引き剥がし、『緑炎妖狐』環・括を引きずり出す。
「貴女の『エース』は彼ではありません」
それは残酷なる真実であったのかもしれない。けれど、トリテレイアは言いよどむことはしなかった。
彼女がオブリビオンである以上、それは無意味な言葉であったことだろう。
だからこそ、彼が振るうのは骸の海へと還す力ではなく。
慈悲の短剣(ミセリコルデ)。
放たれた一撃が、環・括を撃つ。
オブリビオンの悪影響を除去するナノマシンが彼女の身体を駆け巡っていく。歪めさせられた心が、如何なる作用を齎すかわからない。
けれど、トリテレイアは確信していた。
これがどうしようもない御伽噺であったのだとしても。
それでも、人の想いが見せる光が冷たいわけがない。
「約束を交わす程の仲であれば……きっと貴女をお待ちしている筈ですよ」
その言葉は確証の持てぬ戯言のように聞こえたかも知れない。
けれど、霧散していく環・括の身体だけが、その言葉に応えた。消えていく身体。歪められた心が正常なるものに変わったかどうかはわからない。
それでもと思う。
機械の身であれど知っている。
人の心の穏やかな光は、きっと果たされなかった願いを癒やしてくれるであろうと―――。
大成功
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第3章 日常
『遊覧飛行』
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POW : 景色を眺めながら軽く食事をとって楽しむ
SPD : 眼下に広がる景色を絵や写真に残す
WIZ : 他の乗客や乗員との会話を楽しむ
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猟兵たちの活躍によってプラントからの物資を満載した飛行船は守られた。
『八咫神国』からの応援部隊であったキャバリアのパイロットたちの保護も終わり、『緑炎妖狐』環・括と呼ばれたオブリビオンをも打倒した。
これで猟兵たちの戦いは終わりである。
だが、『グリプ5』は度重なる争乱の折に猟兵達に助けられてきた。
彼らの感謝は言うまでもなく。それでも何か猟兵に報いることができるのではないかと『グリプ5』のキャバリアパイロットたちが集まって提案されたのが飛行船に寄る遊覧であった。
猟兵達は招かれ、そこで談笑に加わるもいいであろうし、容易されたささやかであるが『グリプ5』の名物料理であったりを頂いてもいいだろう。
すでに日は落ちて夜の帳が織りているが、飛行船から見下ろす『グリプ5』の夜景は、街の灯りが宝石のように煌めく光景でもあったことだろう。
「今回は本当にありがとうございました」
そういうのは飛行船のパイロットであった『フュンフ・ラーズグリーズ』。彼は猟兵達によって都合二度助けられた者である。
彼こそが、この遊覧飛行の発起人でも在った。
この飛行船には猟兵だけでなく、『グリプ5』の首脳陣も訪れているし、フュンフの母親であるヌルもいる。
家族も来ているであろうが、探せばいるかもしれない。
ともあれ、プラントで生産された資材を喪うという最悪の事態は免れた。
今日くらいは滞りのない生活を送ることのできたことを喜び、楽しむのも悪くはないだろう―――。
アリッセ・トードゥ
フェンフに声をかける。招待ありがとう。お互い大変だったな。
どうせ謙遜するだろうが、彼の操船技術があったから私達も守りきれた。誇って貰えた方が私達も気持ち良く功を自慢出来るよ。
年も似たようたものだろう。特殊機のパイロットとしての技術、戦術論やオフの過ごし方等、話してみたい事は多い。
寛いだ口調で語り合う。
別国の兵士同士、肩を列べて戦う事はないかもな。だが、あんたの敵が私の敵でもあるなら、いつでも横から殴りつけに来てやるよ。
フェンフ=エイルの件。敵はフェンフだけでなくドライの名や彼等の技術の事も知っていた。そもそも何故彼等は数字で呼ばれてる?
思う所は多い。けど今は新しく出来た友人との交流を楽しもう。
四度の争乱に見舞われた小国家『グリプ5』であるが、猟兵たちの活躍によって国民の生活は今の所困窮しているという話は聞かない。
これも今回の事件に置いてプラントから生産された物資が喪われなかったことが起因していることは言うまでもなかった。
それにともなって猟兵……現状では傭兵として扱われる猟兵たちに今回の事件、そしてこれまでの事件の解決に対する報酬以外にも何かねぎらうことができないかと発案したものがいた。
その者の名は『フュンフ・ラーズグリーズ』。
一度目の事件『最新鋭キャバリア暴走事故』の折に『セラフィム・リッパー』3号機に乗っていたパイロットの一人である。
彼は都合二度目になる猟兵達から救われたことをひどく感謝しているようであった。
「招待ありがとう。お互い大変だったな」
そう言って彼に声を掛けたのはアリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)だった。
飛行船のラウンジにて見知った顔、フュンフを見かけたが故に声を掛けたのだが、彼は少し困ったようなはにかんだような表情を受けて、そんなことはと謙遜した。
どうせ彼は褒めても謙遜するだろうな、とアリッセはどこかわかっていたような口ぶりで彼の肩を軽く拳で叩いた。
「そういうと思ったよ。あんたの操船技術があったから私達も物資を守りきれた。誇ってもらった方が私達も気持ちよく功を自慢できるよ」
そう言ってアリッセはフュンフを称える。
それは偽りのない言葉であった。事実、彼でなければ飛行船はとっくに撃ち落とされていたであろうことは想像に難くない。
「ありがとうございます……無我夢中でしたし……」
敬語で話始めるフュンフにアリッセは首をかしげる。
同じ年頃だろう、と。
そこに敬語が交じるのはなんとも居心地が悪いと感じる。年齢が近いからか、アリッセにとって同じ特殊機体に乗るパイロットとしての共通点は多い。
それ故に興味のほうが勝るのだ。
「な、なら……アリッセ。ありがとう。僕は貴方達に感謝しているんです。何度も国の危機を救ってもらった。言葉で言えば陳腐に為るかも知れないけれど、それでも」
そう言って互いに言葉をかわす。
戦場で矛を交えたこともあったかもしれない。けれど、奇妙な縁で互いはつながっているのを感じる。
少し打ち解けてくれば、会話も弾む。
パイロットしての技術や戦術論。そこまでは硬い話ではあったけれど、戦乱が続くクロムキャバリアにおいて、このような機会は層多くはない。
「オフの日は……そうだね。やっぱりシュミレーターに乗っていることが多いかも知れない。歴代スコアを更新するのが今のところの目標かな」
歴代スコアの一位から十位を独占しているスコアラーにはまだ届かないのだけれど、とフュンフは少しだけ年相応な負けず嫌いな顔をのぞかせたのがアリッセには面白かった。
「別国の兵士同士、肩を列べて戦う事はないかもな」
小国家同士は友好や同盟を組むことはあっても、共通の敵を叩く機会は少ない。戦乱が続く世界であればこそ、今日の敵が明日の味方になることもあれば、また逆も然りである。
だからこそ、アリッセは告げる。
「だが、あんたの敵が私の敵であるなら、いつでも横から殴りつけに来てやるよ」
そう言って冗談なのか、ユーモアなのかわからないことをアリッセに告げられフュンフは笑う。
なら、逆の立場でもそうするよ、と互いに手を取る。
友好の握手。
それはある意味でジンクスであったのかもしれない。互いに触れた相手。だからこそ、敵として相対しないことを願うものであった。
アリッセはほどなくしてフュンフと別れる。
彼女の中では未だ疑問が浮かび上がっていた。
『フュンフ・エイル』―――確かに敵オブリビオンはそういった。そして、フュンフに異常な執着を見せていた。
名前が同じ。
けれど『エイル』と『ラーズグリーズ』。その名の相違はある。それにフュンフだけではなくドライの名前も出した。
アリッセの機体に搭載されたフィジカルジャマーは元は『グリプ5』から提供されたシステムである。
それをあのオブリビオンが知っていたということが引っかかる。
そもそもだ。
「何故彼らは数字で呼ばれてる?」
数字を名前に組み込む風習はなくはない。ありえない話ではないのだ。けれど、どこか違和感を感じる。
この喉につかえたような感覚は一体なんだろうか。けれど、アリッセは想い直す。
「今は新しく出来た友人……」
友人という言葉が出てきたことがなぜだかおかしい。口元が緩む。これが楽しいということならば、それは良いことだ。
懸念が無いわけではない。けれど、それでも。
未来は明るのだと信じていたかった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ダビング・レコーズ
当機は外観通り談笑という場面には些か不適切であり食糧の経口摂取を行う機能も存在しません
ですがご厚意を無気にするのは無礼に当たる行為という認識は理解しています
なのでこの場に於ける戦闘兵器としての使命を努めさせて下さい
当機が敵勢力であるならばこの機を逃さない
よって飛行船に随伴し警護任務に当たる
先に交戦したオブリビオン
彼女の力はハードウェアが持つそれ以上のものだった
執念と怒りが力を引き出したのだろうか
人の本質の規定を超えた力
イレギュラー
当機には理解しかねるが多くの猟兵もそういった能力を発揮している事実がある以上存在を否定は出来ない
この世界の閉ざされた空をいつか開くのもそういった類の人の力なのだろうか
猟兵とはなにか。それは生命の埒外に在るものであり、その姿は多種多様である。
正しい意味で猟兵という存在の姿を知る者は多くはないだろう。真なる姿であったとしても、そこに規則性は見出すことは難しい。
だが、どれだけ奇異なる姿であったとしても猟兵ではない人々にとって猟兵の姿は違和なき者に映る。
例えそれが機械の身体であったとしてもだ。
ウォーマシンであるダビング・レコーズ(RS01・f12341)もまたその一人である。
自身が外観通り談笑という場面にはいささか不適切であるという事実と、少量などを経口摂取する必要もなければ機能も存在していないことから、彼は飛行船の警護という形で戦闘兵器としての使命を努めようとしたのだ。
救出対象であった飛行船のパイロットであるフュンフ・ラーズグリーズはそれでもと食い下がったものだが、その好意だけを受け取るとダビング・レコーズは一礼するのだった。
「当機が敵勢力であるならば、この機を逃さない」
そう、戦いの後、一息を入れるタイミングこそが最も油断するタイミングであることは言うまでもない。
ダビング・レコーズにとって、それこそが今回の事件における最悪のシナリオである。ならば、その万難を排しておこうという考えはウォーマシンとして正しい行いであったことだろう。
それが戦闘兵器としての使命。
機体に乗り込み飛行船に随伴し、警護の任務に当たる姿は他者からみれば生真面目すぎるきらいも在ったことだろうが、それでもそれが己の使命であるとするのならば、何に恥じることもない。
ただ厚意を無碍にするというのは無礼であるということは重々承知している。
「これもまた感情というもの。しかし……」
ダビング・レコーズは考える。
先に交戦したオブリビオン。あの力はハードウェアが持つ力以上のものだった。エモーショナル、というものがその者の力量を大きく引き上げ、潜在能力を引き出すということはよく取り沙汰される事柄だ。
「執念と怒りが力を引出したのだろうか。人の本質の規定を越えた力」
それをダビング・レコーズは『イレギュラー』と呼ぶ。
「当機には理解しかねるが、多くの猟兵もそう言った能力を発揮している事実がある以上存在を否定できない」
己に在るとは思えないが、それを理解することはできる。
飛行船と共に機体を飛ばせる。
飛行船の中では和やかな歓談が行われていることだろう。それを害す者がいるのであれば、それを阻む。
そうやって人が連綿と紡いできたものを守護するのがウォーマシンの本懐。
夜の空は眼下に見える街の光を映えさせる。
守ることが出来たという充足は機械の身たる身体には満ちることがあるだろうか。
「この世界の閉ざされた空をいつか開くのも―――そういった類の人の力なのだろうか」
答えはでない。
暴走衛星『殲禍炎剣』によって閉ざされた世界。クロムキャバリア。そこに一筋の希望の光が宿るのだとすれば、それは猟兵だけではない、この世界に住まう人々の心の光が齎すものであろうから―――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
やっとこの国にも余裕が出て来たみたいね。お礼をしてくれるというなら、アヤメと一緒に飛行船に乗せてもらいましょうか。
フュンフとは直の面識は無し。彼には挨拶だけで済ませて、『グリプ5』の夜景を楽しみましょう。
UDCアースのような果てない人工の灯りとは違って、闇の海に浮かぶ光の島みたい。
発電設備はこの世界どうなってるのかしら? プラントは直接発電してないようだし、発電機を生産してる?
何にしても弱々しい灯りね。星座の違う星空がよく見える。
そろそろテーブルで食べましょうか。お腹いっぱい食べるわよ、アヤメ?
ひとしきり歓談を楽しんだら、鍵のかかる個室を借り切って、二人で愛を交わす。生き残ったものの特権ね。
「やっとこの国にも余裕が出てきたみたいね。お礼をしてくれるというなら」
「ええ、断るのも野暮というものですから」
そう言って二人の女性、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)とユーベルコード、愛奴召喚(アイドショウカン)によって恋人にしたエルフのクノイチの式神・アヤメが飛行船に乗船する。
猟兵として『グリプ5』が見舞われた争乱を解決してきたが、ようやく平時の状態に戻りつつあることを喜びながら、ゆかりは飛行船の窓から眼下に見える『グリプ5』の夜景をアヤメと共に楽しむ。
UDCアースや他の世界と違って荒廃した世界ではあるものの、プラントという生産施設があるが故にこの様な光景が見えることは僥倖であったことだろう。
飛行船のパイロットであるフュンフとは直の面識はなかったものの、挨拶だけはしておくべきだとゆかりは軽く挨拶をして、夜景を楽しむのだった。
「発電設備はこの世界どうなっているのかしら? プラントは直接発電していないようだし、発電機を生産してる?」
夜景を見て、そんなことに考えをはせてしまうのは猟兵としての性であろうか。
思い出すのはUDCアースの果てない人口の光。
あちらは規模が違うものの、それと比べると『グリプ5』の夜景は闇の海に浮かぶ光の島のようであった。
侘び寂びというものを理解できれば、どんなものにも美しさは見いだせるものだ。
「でも、私は嫌いじゃないですよ」
アヤメと並んで見る夜景はどのような光景であっただろうか。
違う光景に見えたかも知れないし、はたまた違う感想になったかもしれない。
「そうねぇ……何にしても弱々しい灯りね。だから、空を見上げれば星座の違う星空がよく見える」
地上の灯りが強ければ強いほど夜の闇は薄くなる。そうすれば、星空は白ばみ、星の輝すらかすませる。
それが人の叡智のなせる業であるというのでれば、それを甘受することはあれど嘆くこともないだろう。
「そろそろテーブルでたべましょうか。お名一杯食べるわよ、アヤメ?」
今回は猟兵としてではなく貴賓客扱いだ。
存分にもてなしてもらおう。テーブルには質素ながら、それなりに工夫をこらした食事が列べられている。
ゆかりたちにとっては物珍しいものではないかもしれないけれど、それでもこの荒廃した世界にとっては貴重なものだ。
それ故に彼らがどれだけ猟兵達に感謝しているのか、それがわかる。
お腹を満たした後は……
「……いいですよね?」
アヤメの顔を見る。
にこりと笑うのはゆかりであり、それが何を意味するのか知るのは二人だけだ。
「ええ、だれも咎めることはないでしょう。生き残ったものの特権ね」
そう言って二人は歓談続く船室から消えていく。
これ以上は野暮であろう。
秘めてこそ華であろうから―――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIの口調は前回と同じ
(AIとキャバリアに)また無茶させたなありがとう
絵の才能も無いしどうするか
ここの騒動も終わりか、災いがこれ以上無い事を祈る
キャバリアとAIを労った後、窓際の席でノンアルコールの飲み物を頼み1人で飲んでいる
絵の才能も無いし、俺はそんなに食べなくてもいいからな
フュンフと彼の家族を見かけたら会話したい
冗談っぽく平和もいいものだろうとか言ってみようか
俺は覚えていないから家族や友も大事にしてほしい
戦いの後とはいつだって、張り詰めた緊張の糸が切れ、身体が重たく感じることだろう。
それはキャバリアという兵器であっても、それを支えるAIもまた同じであるとルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は考えていた。
オブリビオンマシンとの戦いはいつだって激烈なる衝突が多い。『銀の銃兵』というキャバリアの仕様が遠距離戦向きの機体であったとしても、度重なるユーベルコードの発動、戦闘機動を重ねれば、摩耗し、消耗していく。
だからこそ、整備は怠ることはできないのだ。
「また無茶をさせたな―――」
労るようにチェック項目を確認していく。
関節周りは入念に。照準やセンサーもまた同様である。戦う場所が殆どの場合、地上であるからこそ、砂埃や目に見えづらい損傷もまた顕著である。
「……ありがとう」
己の生命を、他者の生命を守ってくれて。
それを為すための機体であることはわかっていても、感謝の言葉を言わずには居られない。
この後は飛行船の遊覧に誘われている。
発起人は飛行船のパイロットである『フュンフ・ラーズグリーズ』だ。これを無下にするものも悪いと想いルイスは飛行船に乗り込むのだが、見下ろす夜景を見てどうしたものかと小首をひねる。
写真を撮ろうか、絵を描こうか。
色々と悩んだ挙げ句、才がないことを理由にやめる。
眺めるだけでも、あのか細い街の光の先に己たちが守った人々の生活があるのだ。
「なら、ここの騒動も終わりか、災がこれ以上ないことを祈ろう」
戦乱が続くクロムキャバリアにおいて、それは切実な願いであった。
けれど、きっと戦いは続く。争乱の種を巻き続けるオブリビオンマシンが在る限り、終わることなどきっとない。
だが、それでも祈らない理由がない。
ルイスは飲み物を受けって、夜景を眺めながら一人で眼下の街並みを見る。
そうしているとフュンフの姿が見える。
隣にいるのは弟妹だろうか。まだ少年と言っていい年の頃のフュンフと、さらに年若い弟妹たちの姿をみてルイスは微笑んだかも知れない。
「『平和』もいいものだろう」
少し冗談ぽく言ったのは、気恥ずかしさもあったのかもしれない。
記憶がないこともあったのかもしれない。家族の事、友の事。覚えていないことのほうが多い己であるが、それでも誰かの微笑ましい光景を前にすれば、微笑むことだってあるだろうから。
「ええ……正直、まだ『平和』ってなんだろうって思いますけれど……」
フュンフもまたルイスと同じ様な表情を浮かべていた。
問いかけられた言葉。その意味を噛み砕く。正しいとも、間違っているとも思えない。未だ模索の中にいる表情だ。
だが、それでいいとルイスは思った。
「でも、こいつらが……弟や妹が平穏無事にいられるようになったら、嬉しい。そう思えるのなら、『平和』もいいものだって思います」
その言葉を引き出せただけで、ルイスは戦ってよかったと思った。
『平和』を知らぬ者。
その慟哭を知るからこそ、その言葉の真価は計り知れぬものであったことだろう。今や彼にとって『平和』とは虚像でもなんでもなく、目指すものへと変わったのだから。
「そうか―――……なら、家族や友も大事にして欲しい。俺は覚えていないから」
自身にないもの。
それを持つ者には、その価値を知っていて欲しいとルイスは願う。そんな彼に差し伸べられる手があった。
フュンフ・ラーズグリーズの右手。
「なら、ひとまず僕と友達になってください。友人とはこれっきりなんて嫌ですから」
その手はきっといつか一人だけではない、多くのものと繋がれる手であった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ジーノ・エヴァーソン
【WIZ】
連携歓迎
人と話したくはあるが…ご歓談にはならないだろうなぁ
探す相手はヌル・ラーズグリーズ。最新鋭キャバリアの技師なら、見つけにくい場所にはいないだろ
まだ年端もいかないアンサーヒューマン
フュンフという同じ名前、同じ操縦技術(環・括の見立て通りなら)を持つもの
ラーズグリーズを中心に起きるオブリビオン騒動…
…きな臭さを嗅ぎ分けろ、厄介事に突っ込まない為。ってのが傭兵の鉄則の一つ、なんだが…
ヌルへ接触できたなら質問を一つ
「『フュンフ・エイル』という名前に覚えはあるか?」
答えがあった所で俺がどうすることもない――のに何で訊いたんだか
このままじゃアホらしいから飯食って終わり!
飛行船遊覧の発起人は『フュンフ・ラーズグリーズ』であるという。
それを聞いた時、ジーノ・エヴァーソン(Xeno_Fire・f30003)は一瞬躊躇った。己は猟兵であるが傭兵でもある。
傭兵としての直感が言う。
どうにもきな臭いと。
これまで『グリプ5』の争乱の折に戦ってきた彼ではあるが、今回の事件でさらに何か直感を感じる身体の何処かに在るであろう器官がざわめくようであった。
兆候はあったのだ。
それは疑問として頭の何処かにしこりとして残っていた。
まだ年端も行かないアンサーヒューマン。
フュンフという同じ名前、同じ操縦技術を持つ者。ラーズグリーズを中心に起こるオブリビオンマシンによる争乱。
どれもこれもがジーノにとってきな臭いと感じるものであった。
「……きな臭さを嗅ぎ分けろ、厄介事に突っ込まない為。ってのが傭兵の鉄則の一つ、なんだが……」
その鉄則に従うのであればジーノは、遊覧への誘いを断るはずだった。
けれど、直感が言う。これを野放しにしていては、もっと悪いことが起こるのではないかという予感だった。首元がざわざわとするような嫌な感覚だ。
彼が探していたのはキャバリア技師のヌル・ラーズグリーズ。
フュンフの母親である彼女ならば見つけにくい場所にいるはずがない。
思いの外、彼女の姿はすぐに見つかった。
息子がいる、という年齢にしては若々しい印象の女性。物静かなイメージであったが、確かにそのとおりであった。
「……あれが、フュンフの母親、ヌル・ラーズグリーズ」
彼女は何を思っているのだろうか。
何か関係があるのだろうか。疑問だけが逆巻いていく。このオブリビオンマシンの騒動の渦中には彼女もまた存在意義があるはずだった。
「どうされましたか、ジーノ・エヴァーソン」
こちらの視線を感じ取ったのだろう。飛行船から『グリプ5』の街並みを見下ろす場所でジーノとヌルが視線を合わさずに言葉を交わす。
「『フュンフ・エイル』という名前に覚えはあるか?」
答えが在ったところで自身がどうすることもない。だというのに何故聞いたのか。 そもそも答えが返ってくるのだろうか。
本来であれば、こんなことを聞くことはなかった。けれど、直感が言う。それを知らなければならないと。
「ええ。この『グリプ5』の過去の英雄。今はもう『第一次憂国学徒兵』と呼ばれた国を起こした者たちの『エース』。私の息子の名前も、そこから頂戴しました。英雄のように『エース』のように、成れるようにと」
つながっていくものが在る。
過去の化身オブリビオン。環・括。フュンフ・エイル。
ジーノは己がそれを知って何かをできるとは思っていなかった。けれど、知らなければならないとも思っていた。
過去の化身と過去の英雄の間に何があったのかを今を生きる己には推し量ることしかできない。
けれど、それでも。
「―――……そうかい」
ジーノは最後までヌルと視線を交わすこと無く、その場を後にする。
なんで聞いた?
それだけが頭の中に反響する。
「―――このままじゃアホらしいから飯、たらふく食ってやる」
できることはすくない。
けれど、それでも知ることで何かを変えることはできるかもしれない。そんな望みにも似た可能性をジーノは己の中に芽生えさせた。
それを誤魔化すように容易された料理を頬張る。うまいんだか、まずいんだかわからない味と共に、それを飲み込むのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
よお、フュンフ君、元気にしてるかい?
これの発起人らしいな? ありがとよ。
(ほぼ面識がないのに親戚のにーちゃんのような親しさ、あるいは馴れ馴れしさで接します)
飛行船の操縦は見事なもんだった。
(敵を撃退撃破したのは猟兵だが)
あの攻勢の中を生き残れたんだ。才能はあるし、天運もあるんだろう。
それに伸びしろはまだまだあるように見えるぜ。頑張りな。
(夜景と食事を楽しみつつ、首脳陣と会話する機会があればオブリビオンマシンへの理解がどの程度、広がっているのか確かめます。頻発しているのである程度は認知が進んでいると思われますが、上の理解が深まるほど洗脳された者の社会復帰が容易になると考えるので)
アドリブ歓迎です
「―――よお、フュンフ君、元気にしてるかい?」
そう言って飛行船の歓談室でフュンフ・ラーズグリーズの肩に腕を掛け、引き寄せたのは、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)であった。
陽気な雰囲気で隔てりなく接してくる姿はどこか親しみを覚えるものであったことだろう。
「お、おかげさまで……えっと、ありがとうございます」
フュンフはというと、やはり少年らしいと言えばいいのだろうか。
年相応な表情でアレクサンドルの腕の中で困ったようにも、少し嬉しそうな顔をしていた。
「これの発起人らしいな? ありがとよ」
殆ど面識はないアレクサンドルとフュンフであったが、どこか近所に住まう親戚のお兄さんのような親しみやすさでもってアレクサンドルはするりとフュンフの心に入り込んでいた。
「いえ、僕のほうこそ。度々助けて頂いて……」
フュンフにとって猟兵……この場においては傭兵という扱いであるが、アレクサンドルたちによって助けられたことのほうが多いのだ。
今回だって助けられたのだから。
「いや、飛行船の操縦は見事なもんだった。あの攻勢の中を生き残れたんだ。才能はあるし、天運もあるんだろう。それに伸びしろはまだまだあるように見えるぜ。頑張りな」
そういってアレクサンドルは笑う。
『エースの原石』。それは正しくフュンフという少年を言い表した言葉であった。
この世界、クロムキャバリアに置いてアレクサンドルは少なくとも二度『エース』と呼ばれる者と拳を交えてきた。
キャバリアという鋼鉄の巨人を手足のように扱い、その力を人の身体以上のものにせしめる技量。
その片鱗をフュンフにも見ていたのだ。
フュンフを開放するとアレクサンドルは、肩を叩いて別れる。
後は食事と夜景を楽しむのだ。
「―――っと、その前にっと」
これだけ『グリプ5』という小国家を取り巻く状況が変わってきている。そこには首脳陣たちも同じ考えの者がいてもおかしくはない。いや、いないと困る。
友好国である『フルーⅦ』、『八咫神国』との関係性は完全に途切れてしまったものではない。
これから彼らの努力で友好関係は維持されることだろうが、またオブリビオンマシンによってかき回されては面倒なことこの上ない。
彼らがオブリビオンマシンについて理解しているのか、もしくは何処まで理解しているのかをアレクサンドルは知らなければならなかった。
「確かに……どの周辺国でも原因不明のキャバリアの暴走事故や、将校の反乱が起こっているようですな……中には闘技場を建設し、キャバリア同士を剣闘士のように戦わせ、賭け試合を行っているところも……」
アレクサンドルはうなずきを返す。
どうやら、オブリビオンマシンは猟兵以外に知覚できていないようだった。
そして、それが何故かわからない原因不明の事件としてしか処理されていないことも。他の猟兵達がオブリビオンマシンの暴走や事件を食い止めているからこそ、無用な戦火が広がっていないだけの状況であることがわかる。
「ま、在る種の病気みたいなもんだ。そういう流行病みたいな……事実、キャバリアから降りたら、あの空戦仕様のキャバリアのパイロットたちも覚えていなかったりしたんだろう?」
ならば、オブリビオンマシンによって心を歪められたパイロットたちの処遇も寛大なものとしなければならない。
間違っても、彼らを断ずるような事態になってはならないとアレクサンドルは説く。
幸いにして首脳陣たちは、それに大きくうなずき処理を進めていくことだろう。
アレクサンドルは息を吐き出す。
やるべきことは多いが、煩雑すぎる。けれど、眼下に見下ろす街並みの光を見れば、それも悪くないと思える。
「―――ま、それでもやらないとならねーのならやるさ。それが俺の役目でもあるわけだしな」
あの光の先に、人が守りたいと願ったものがある。
それを知ればなおのこと、アレクサンドルは思うのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
鋼鉄を狩るのは少々調子が狂いますね
血肉を存分に啜れなくては飢えてしまいます
存在すると認識した以上、狩らねばなりませんが
絡繰りとも違う機械の塊は俺以外の我等は経験した事がない様子
情報収集をしておきましょう
【行動】WIZ
感謝に慣れていないので淡々と自分のやるべき事をする
キャバリアのような敵は禍魂の記憶にもない
血肉や怨念を喰らう代わりにどう糧にするか怨念の炎も影も物足りず蠢く程
なるべくそれを抑え話しやすいよう爛々と光る瞳を帽子で隠してパイロット達に話を聞いて回る
主にキャバリアや基本的な戦術、そう言った記録が閲覧できるものはあるか、グリプ5や八咫神国の事など今後に役立てるための情報収集を行う
鋼鉄の巨人、キャバリアが主戦力となって争い続ける世界クロムキャバリアは、数多の異世界を渡り歩いてきた猟兵にとって、其処に存在するオブリビオンマシンという存在は馴染みのないものであったことだろう。
少なくとも、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)にとってはそうであった。
「鋼鉄を狩るのは少々調子が狂いますね……血肉を存分に啜れなくては飢えてしまいます……」
オブリビオンマシン、過去の化身が存在すると認識してしまった以上、オブリビオンマシンを狩ることに変わりはないし、やるべきことに変更はない。
けれど、鬱憤のようななにか体に渦巻いていくものがあるのもまた事実である。
この体の中に渦巻く怨念を鎮めるためにはオブリビオンの血肉が必要であれば、血と肉の通わぬ冷たい鋼鉄の体を持つオブリビオンマシンは少々難儀な相手であった。
「絡繰とも違う機械の塊は俺以外の我等は経験したことがない様子……知らなければ、為すことのできないこともあるはずですから……」
そう思って、飛行船遊覧の誘いに応じてやってきたのだが、『グリプ5』の人々は次々に織久の元にやってきては感謝の言葉を述べていく。
「ありがとうございました! 貴方達がいてくれなかったら、プラントの物資を喪ってしまって、明日の生活も儘ならぬことだったことでしょう」
飛行船のパイロット出会った少年が織久の手を取って感謝を述べる。
一方、織久にとって感謝されることは慣れていなかったせいか、少々戸惑った気もするが、彼は己のすることをわきまえていた。
「……いえ。感謝ついでに……」
織久は目元を隠す。
それは未だ過去の化身の血肉、怨念を喰らうこともままならずに、物足りなさを感じて蠢く体の中の怨念達の影響か、爛々と光る瞳を帽子で隠す。
それは無用な恐怖や不安を煽るべきではないと彼が案じたからであろう。話を聞こうとするには、あまりにもこの瞳の輝きは剣呑すぎたから。
「キャバリアの基本的戦術、ですか? それならデータベースなんかもありますし……基本は部隊編成を組んで、色々とパターンを覚えたりしなければなりません。単独行動が許されるのは、一握りのキャバリア乗りだけですね」
飛行船を操縦していた少年、フュンフが快く教えてくれる。
純朴な少年という印象であったが、わずかながらに大人としての面影も見え始めている。この年頃の男子というものは、驚くほど成長が速い。
壁を突き破るほどの衝動とエネルギーに満ち溢れているのだろう。
「この国や、『八咫神国』については、どうです?」
「この国や、友好国に関しては制限がありますけど……元々は100年戦争の黎明期……まあ、キャバリアの黎明期と重なるのは戦争状態が長く続いているからですけど……友好が結ばれることがあっても、完全に戦争状態が終わることはなかったんです」
それがオブリビオンマシンの暗躍であることをクロムキャバリアの人々は知らない。知ることが出来ない。
なぜなら、猟兵にしかオブリビオンマシンは知覚できないからだ。
そうやって何年も、100年も戦争状態を維持するためにあちこちで戦乱の種をオブリビオンマシンは巻き続けてきたのだろう。
そこには怨念もあれば、流れた血も多くあることだろう。
鋼鉄の巨人。
あれは希望というよりは、己達に近いものがあるのかもしれない。
敵を撃滅するために建造された鋼鉄の戦士。そこに籠められたものは、敵への怨念ばかりではないにしても、多くがネガティヴなものであろうことは間違いない。
「―――……『平和』を知らぬというのも無理なからぬこと。ですが」
それでも人はそれを求める。
どれだけの怨念と憎悪に足を取られてしまったとしても、それを求めてしまう。その怨念を糧にするのであれば、己のあり方もキャバリアと同じであるのかもしれない。
そんなことを思いながら織久は未だ戦いの余韻、その物足りなさを感じて蠢く怨念の炎を抑え込むように目深に帽子をかぶってフュンフに一礼してから、その場を後にしたのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
シリカ(猫)と一緒に
不思議です
何故、私は今、お空がとっても綺麗に見える窓際で
正座しているのでしょう?しかもお座りしている白猫又の前で
ぎゃー?!ごめん、ごめんてばシリカ!!(ひっかかれた)
それからシリカの目がめっちゃ怖いんですけど!!
ううう、ごめんなさいぃぃ
熱血し過ぎましたぁぁぁ
うっ、めちゃくちゃ痛かったと言われると返す言葉も無く…
え?Pシリカが壊れたの3回目?グリプ5だけで?
アハハ、まさかそんな…ひぃ、ふぅ、みぃ……3回目ですね(汗)
ぎゃーーー
!!!!!(猫の体で可能なあらゆる攻撃を受けた)
ううう、シールドか装甲の追加装備かんがえ、ます(ばたっ)
(なお、シリカは満足げ)
※アドリブ連携OK
「……不思議です」
それはぽつりとこぼれた呟きであった。
少しの理不尽さと、少しの申し訳無さが入り混じった複雑な感情からこぼれた言葉であった。
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は今まさに―――。
「何故、私は今、お空がとっても綺麗に見える窓際で正座をしているのでしょう? しかも……」
目の前におすわりしている白猫又であるアバター『シリカ』の前で。
理不尽極まりない。
せっかく『グリプ5』が感謝の印にと飛行船の遊覧飛行に誘ってくれたというのに、なぜだか自分は床に正座をさせられてしまっている。
全く皆目検討もつかぬ。
ばりぃ。
引っかく音が船室に響き渡る。
「ぎゃー?! ごめん、ごめんてばシリカ!! 無言で睨んでひっかくのやめて! それからそれから! シリカの目がめっちゃ怖いんですけど!!」
理不尽だとサージェが抗議するように叫ぶ。
アバターのツメとは言え、引っかかれれば痛みはあるのだ。戦いの後だというのに。
「理由はお姉ちゃんが一番わかっていると思うんですけど。ですけど!」
にゅ、とツメが伸び妖しく煌めく。
わかってないならもう一度やりますけど、とシリカの瞳が言っていた。
「ううう、ごめんなさいぃぃ。熱血しすぎましたぁぁぁ」
そう、戦闘において機体である『ファントムシリカ』にかかった負荷は相当なものであった。
それだけオブリビオンマシンとの戦闘が激化しているということもあるのだから、仕方のないことではあったのだ。
キャバリア戦闘において完全に無傷でことが終わることのほうが稀である。
弾丸が飛び、それもどこからでも飛来する銃弾は凄まじいの一言につきる。その乱戦の最中、無事に生命があるだけでも儲けものではないのかと、一瞬抗議しようと思ったけれど、そしたらまたあのツメがばりぃってやられるとサージェは野性的なアレで理解していた。
「わかりますか、姉さん。何も損傷したから怒っているわけではないのです。時と場合を考えてほしいです。めちゃくちゃ機体のダメージが痛いのもありますけど、それでも……機体に負荷がかかりすぎれば、それだけ姉さんへの危険もあがるのです」
シリカにそう諭されてはサージェも返す言葉がなかった。
こちらの身を案じてくれているのだと分かるからこそ、なおのことだ。
「それにファントムシリカが壊れたのは3回目なんですよ!?」
むしろ、こちらのほうが大きな要因であった。
え!? とサージェもこれには目を剥く。え、3回?!
「それもグリプ5だけで、ですよ! おかしいでしょう! いくらなんでも!」
口角泡を飛ばすような勢いで責め立てられるサージェ。
え、そんなに? と彼女を首をひねる。
あ、ほんとだ。と笑った瞬間、ばりぃ! とまた勢いよく引っかかれる。
「ぎゃ―――
!!!!!」
そこからはもう猫のカララで可能なあらゆる爪とぎが始まる。
新手のプレイか拷問かな? と思わせるほどの多種多様な責めにサージェは傷だらけだ。
そこでサージェが提案したのは、ある意味で折衷案であった。
「ううう、シールドか、装甲の追加装備かんがえ、ます―――」
ばた、とその場に倒れ伏すサージェ。
その頭の上に、とふっと降り立って満足げなシリカ。
どちらが従で主なのかわからないおかしな関係であったけれど、それでも、それを微笑ましいな、と飛行船のパイロットであったフュンフは見守っていたのであった―――!
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
判定:POW
ねえ、何でキャバリアって壊れるのかしら…。
(レスヴァントとシビリアンジョーの修理費請求書を見つつ)
両機とも特殊な改造施してるから馴染の工房以外任せれないのよね…。
はぁ、社会保障もないし…キャバリア保険もないし…戦いの後って虚しいものね(orz)
いえねー。招待はありがたいし、料理も珍しくおいしいわ。
でもねー。職業病かしらねー。
自分の操縦するキャバリアのコックピット以外で空に居るのって…ちょっと落ち着かないのよねー。
まあ、でも…あの子達を自由にこの空をどこまでも高く飛ばせれたらって…思うのよねー。この星の色は何色かしら、ってね。
フュンフくんはどう思う?
あの空の上…怖い?それとも憧れる?
戦いが生み出すのは破壊だけである。
そんな風に言ったのはだれであったか、それはもう思い出せぬことであるけれど。
無残にも傷だらけ、損傷だらけになってしまった己の乗機を見上げるのは、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)であった。
「ねえ、なんでキャバリアって壊れるのかしら……」
それはもはや哲学的な言葉にしかユーリーには聞こえなかった。
なんで壊れる。
それは戦うからであるけれど、戦うために作られた存在意義がキャバリアにあるのであれば、損傷することが存在意義を満たすものだったのかもしれない。
人間の男性が戦傷を誇るのと同じであったのかも知れない。
けれど、ユーリーにとっては、乗機であり愛機である『レスヴァント』と『シビリアンジョー』の修理費請求書がすべてであった。
大変、そのぉ……と言いたく為るような金額であったためもあるが、どちらの機体も特殊な改造を施されており、馴染みの工房以外に持ち込んで修理できないか、帰って具合を悪くしてしまうようなものであった。
だからこその修理費の金額であるが。
「はぁ、社会保障もないし……キャバリア保険もないし……戦いの後って虚しいものね」
毎度のことであるが、ここ最近は特に損傷が激しい。『グリプ5』から傭兵として支払われている金額もあるが、機体が特殊すぎているため補填が間に合わない状況なのだ。
それもこれもみんなオブリビオンマシンってやつらのせいなんだ! とは言えても、オブリビオンマシンを知覚できるのは猟兵であるがゆえに根本的な解決ができていないのがまた腹立たしさを加速させ、行き場のない怒りは遂には虚しさへと姿を変えるのだ。
「いえねー。招待はありがたいし、料理も珍しくおいしいわ。でもねー。職業病かしらねー」
そんな風に飛行船遊覧に招かれユーリーは歓談室で、そこそこ美味しい料理を口に運びながら息を吐き出す。
その隣には今回の事件で飛行船のパイロットをしていた少年フュンフの姿があり、ユーリーを労るように料理を運んできてくれていた。
「自分の操縦するキャバリアのコクピット以外で空に居るって……ちょっと落ち着かないのよねー」
「それはユーリーさんのキャバリア操縦技術に対する自負の現れなのでは……」
フュンフは、それだけ自信を持っているという裏返しなのではないかと言い換えてくれている。
それは彼女の戦闘を見ていてもわかることであった。
卓越したキャバリア操縦は、フュンフの目から見ても鍛え上げられたものであることは疑いようがない。
だからこそ、困難な戦いの中でも生還してくる力強さがあるのだ。
「まあ、でも……あの子達を自由にこの空をどこまでも高く飛ばせれたらって……思うのよねー。この星の色は何色かしら、ってね」
それは未だ見果てぬ夢であろう。
暴走衛星『殲禍炎剣』があるかぎり、それは叶わない。
高く飛べば飛ぶほどに、あの暴走衛星は許さぬとばかりに砲撃を加えてくる。その精度は凄まじく、実質的に人類をこのクロムキャバリアの世界において宇宙へと進出させず、国同士の交流を断絶させている原因だ。
「フュンフくんはどう思う? あの空の上……怖い? それとも憧れる?」
ユーリーにとっては見果てぬ夢である。
だが他の人間はどう考えているだろう。そんな風に興味を抱くのは、彼にもまた似たものを見出したからかもしれない。
「あの空の上……想像もしたことがないですけど……あの先に何があるのかは知りたいです。もちろん、星があるのはわかっていますけど」
夜空に輝く星を見上げる。
荒廃した世界はかつての人類の栄華を誇るような明るさはない。それ故に空は白ばむことなく闇を濃くし、星の輝を増す。
「あの星の海を征けたら、という思いは分かる気がします。ロマンっていうのかもしれないですけれど、あの向こうに行くには人一人の力では難しいでしょう……だから、友達は多いほうがいいのかなって」
そんな風に思うんです、とフュンフは笑う。
だから、手始めに、と手を差し伸べてくる。僕とも友だちになってください、そういって差し出したフュンフの手を、ユーリーは掴んだだろうか―――?
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…そういう話であれば…飛行船の内部を良く見たいな…
整備の人やフュンフに頼んで機構を説明してもらいながら見学に行こう…
…なるほどなるほど…武装がないと言われたけど…『殲化炎剣』がある以上空対空戦の重要性は高くないし、武装積むぐらいならその分物資を積む事を選択してる訳か…
…と言っても、今後後同じようなことが起きた時は困るね…
…方法としては下手に砲台を付けるよりはキャバリア用の砲座を付けて装甲を高めるぐらいかな…物資の搭載量も考えないと…効果的な方法無いかな…
(用意して貰った軽食を食べつつ設計図を見せて貰いながらぶつぶつと考える。フュンフや技術者とも意見を交わしつつ。それこそが楽しみなのだから。)
オブリビオンマシンを撃退した猟兵達に齎されたのはつかの間の休息と飛行船による遊覧飛行への誘いであった。
小国家『グリプ5』は近年稀に見るレベルでの争乱が続いている。直近だけでも四度も争いの火に晒されているのだ。
猟兵の存在がなければ、今『グリプ5』という小国家は存続していないだろう。それは救われた『グリプ5』が一番理解していることであり、それを為してくれた猟兵たちに心ばかりであるが、報いたいと考えるのは自然なことであった。
その発起人であるのは飛行船のパイロットをしていた『フュンフ・ラーズグリーズ』であることも、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が誘いを受ける要因の一つであったのかもしれない。
「……そういう話であれば……飛行船の内部を良くみたいな……」
彼女の興味の対象はガジェットや魔術理論の体系など、多岐に渡っている。それらすべてを用いて研究の対象としているのだから、彼女の頭脳がどれだけの好奇心を秘めているのか、その行動力の源が尽きることはないであろうと思われた。
「速度はあんまり出せないんです。物資を積んでいるというのもありますけど、中身が動いて重心がずれたりするとバランスを取るのが難しかったり……」
そんな風にフュンフは整備の人間たちとともに飛行船内部を案内してくれていた。根本的にUDCアースやサクラミラージュに存在する飛行船と変わりない機構であることは、メンカルの目にも明らかだった。
「……なるほどんるほど……武装がないと言われたけど……『殲禍炎剣』がある以上空対空戦の重要性は高くないし、武装積むぐらいならその分、物資を積むことを選択してる訳か……」
メンカルの言う通りであった。
空には在る一定の高度へと至った瞬間に砲撃してくる暴走衛星『殲禍炎剣』の脅威が未だに根強い。
一度狙われてしまっては、それをかいくぐることはできず、それ故に飛行船は物資を運ぶ、という役割以上のものは求められていないのだ。
それに物資を運ぶだけの飛行船であれば、国の領域内であるから護衛されることはあっても、本当に護衛が必要となる事態に陥ることはなかったのである。
「……と言っても、今後同じ様なことが起きた時は困るね……」
「はい。今回が異常な事態だってことは、わかっているんですけど……」
整備班の人間も頭を悩ます種が一つ増えたような状況であるようだった。
まさか友好国のキャバリアが襲ってくる、なんてことを想定しろと言われても難しいだろう。
ひとしきり案内してもらったと、歓談室に通され料理を頬張りつつメンカルの頭脳が回転していく。
「下手に砲台を付けるよりは、キャバリア用の砲座を付けて装甲を高めるぐらいかな……物資の搭載量も考えないと……」
「でもそうなると、足が遅くなってしまいますよね? 確実に物資を運ぶ、というのならそれこそ遠征をする時に用に別途用意するとか……」
メンカルとフュンフは互いに意見を交わしていく。
難しい問題であるけれど、考えることをやめる気はなかった。
効果的な方法がないかと互いに意見を交換し、互いの矛盾や発展型を目指す議論はメンカルにとって、楽しいものであった。
食事も大切なことであるが、語り合う言葉は尽きない。
料理の並んでいたテーブルはいつのまにか設計図の図面が開かれ、メンカルを中心にして技術者や整備の者たち、はたまたパイロットたちも集まりだして、喧々諤々……うるさく議論する場になってしまっても、それでもメンカルは表情こそ、そこまで動かないまでも感情は楽しさを滲ませていた。
「貴重な意見をありがとうございます!」
そう言って議論していた者たちと別れて息を吐き出すメンカル。喋りすぎて喉が乾いたな、と思っている所にフュンフが飲み物を持ってきてくれる。
「どうぞ……お茶ですけど」
そう言ってフュンフも意見を交わしすぎたのか、喉がガサガサしている。
それがわかって彼自身もおかしかったのか、笑う。
経緯はどうであれ、そうやって笑う事のできる未来を掴めたことは、喜ばしいことだった。
飲み物を受け取り、礼を告げるメンカルの喉もまたガサガサとかすれた声を紡ぐ。
けれど、それは互いの意見交換の結果であり、成果でもあるようで……好ましいと思えるものであったことだろう―――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
鉑帝竜は邪神の聖域に仕舞って搭乗し
飛行船からの眺めを楽しもうか
あの明かりの下にいる人達を守れたなら何よりだよ
使い魔本体は頑張ってくれた労いも兼ねて一緒に搭乗しているよ
グリプ5の名物料理ってどんな料理なんだろうね
とっても美味しそうですね
ごちそうになるのですよー!
僕はフュンフ君に挨拶に言ってみようか
ここのところ災難続きでご愁傷様
無事乗り切れて本当に良かったよ
セラフィムリッパー暴走事件の後はどうしてたのかとか
グリプ5の名所だとか話しかけてみようかな
家族と一緒の時間が増えてるなら
それに越した事はないんだけど
この状況だと厳しいのかなぁ
暗い話ばかりしても楽しくないし
できれば励ます言葉をかけられるといいかな
邪神の聖域(トランキル・サンクチュアリ)に鉑帝竜を格納した佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はフュンフ・ラーズグリーズが発起人となった飛行船に寄る遊覧飛行へと招かれるままに搭乗していた。
晶の隣には使い魔の本体が同じく飛行船へと乗り込む。今回の戦いで活躍してくれた使い魔にも労いを兼ねてと思っていたのだ。
それに料理が出るのに一人で食べるというのも気が引けた。
どんなに美味しい料理でも一人でする食事というものは、どこか侘びしくさびしいものであるからだ。
「『グリプ5』の名物料理ってどんな料理なんだろうね」
晶は未だ見ぬ異世界の、それも大小様々な小国家がひしめくクロムキャバリアにおける名物料理というものに思いを馳せていた。
戦乱が続く世界であるから、そこまで多様な料理というものも期待はできないかもしれない。
「とっても美味しそうですね。ごちそうになるのですよー!」
使い魔が勝手に料理の列べられたテーブルへと駆け込んでいく。
それは微笑ましい光景であったけれど、あんまり食べすぎてお腹を壊さないようにと後で釘をさしておかなければと晶は思った。
「わー、スープ料理が多いのですねー! お肉……これもプラントで生産したものなのです? 保存食を多様したものが多いのは、やっぱり戦時下って感じがしますねー」
などとはしゃいでいるから、多分言っても聞かないだろうなと晶は半分諦めて、この遊覧飛行の発起人であるフュンフ・ラーズグリーズを探す。
「あ、いたいた。ここの所災難続きでご愁傷さま。でも無事に乗り切れて本当に良かったよ」
そんなふうにして気兼ねなく挨拶ができるというのはありがたいことであった。
フュンフも同じ思いであるのだろう、助けてくれた猟兵である晶に対して礼を告げてから、少し話を続ける。
「あの事件の後は、少し病院で検査を受けたりだとか、そういうのばっかりでしたね。おかげさまで体は万全ですけど」
どうやら『最新鋭キャバリア暴走事故』からのリハビリや経過は良好のようだった。
流石に事件のことばかりを話すのは気が引けて、『グリプ5』の名所なんかを晶は話に交えながら和やかに歓談が続く。
見下ろす眼下には街の灯りがきらめいている。
UDCアースに比べるとささやかな街の灯りであったことだけれど、あの灯りの下にいる人々を守れたのならば、それが何よりであると晶は満足だった。
どんな思惑があれ、これを機にフュンフの家族と一緒の時間が増えていることを祈るしかない。聞けば簡単に知ることができたことであろう。
けれど、そこまで踏み込んでしまうのも気が引けた。
いつだってそれはデリケートな問題であるから。暗い話題ばかりでは楽しくもない。だから、晶は友達にそうするように楽しげな話題を振っていく。
「なら、今度その銅像の場所を案内しておくれよ。街中だと僕も不慣れなものだからさ。君ならそういうの、だいじょうぶだろう?」
「ええ、その時は端末に連絡をください。いつだってご案内しますよ」
こんな口約束だけれど、それでも二人には十分だった。
励ます言葉も告げたかったけれど、この約束だけで二人の間には友情のようなものが紡がれていたのかも知れない。
最後に握手を交わす。
それはちょっとしたジンクスみたいなものであったけれど、争乱ばかりが続く世界においては、ジンクス以上のものであったのかもしれない。
満足した表情で握手を交わしたフュンフの顔をみて、晶は今どきの若い男の子は成長が速いな、と感じたかも知れない。
もう少年の面影はなくなって、青年の顔になっていた。
ならば、もう自分たちが庇護する対象ではないだろう。自分だってそうだったはずだ。
少年から青年へ。そして大人になっていくものだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
あの搭乗者の執着…生まれ変わり等という偶然ではない…!
首脳陣の端末通信を糸口にハッキング情報収集
第一次憂国学徒兵エースの写真含め機密を根こそぎに
首脳陣とヌル様へメール送信
呼び出し
『憂国学徒兵エースのクローニングについて』
彼ら彼女らは過去のエースのクローンですね
戦力増強、エース再来という士気高揚の象徴
必要性は認めましょう
ですが
自由意志持つ命を『エース』という道具として完成させる
それは『悪』です!
必要悪を為すならば最善を尽くすべし
エースを消耗品とする国に未来はありません
兄弟達、いえ、これからのクローン達の処遇に更なる人道的配慮を要請します
環・括様
貴女のエースを想った心は
きっと彼らを護る筈です
そこに真実があるかぎり、糸口を掴むことは容易である。
それが異世界より現れし猟兵ともあれば、さらに真実へと至ることは可能であったことだろう。
オブリビオン『緑炎妖狐』環・括の執着。
あれは一体何であったのかとトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は考えていた。
そして電脳がはじき出した結論は、『フュンフ・エイル』と『フュンフ・ラーズグリーズ』が生まれ変わりなどというカルトめいた偶然による産物ではないということであった。
彼は即座に首脳陣の端末通信を糸口に情報を集める。
過去の情報。
この『グリプ5』と呼ばれる小国家の興りから振り返る。そこにあったのは『第二次憂国学徒兵』が祖とする『憂国学徒兵』の存在があった。
『サスナー第一帝国』と戦い、『八咫神国』と共同戦線を張った『憂国学徒兵』たち。彼らの中には俗に言う『エース』と呼ばれる者がいたことがわかる。
その名は『フュンフ・エイル』。
超絶なるキャバリア操縦技術によって戦場を駆け抜け、遂には『サスナー第一帝国』すらも打ち破ることになった立役者である。
今も尚、その姿は街中に銅像として立てられている。建国の祖として。
「―――……やはり。そういうことですか」
遊覧飛行のために今首脳陣と、その技術主任であるヌルが一堂に会している今がチャンスであった。
メールによって呼び出した場所に訪れた彼らをトリテレイアはアイセンサーで持って迎えた。
現れたキャバリア技師であるヌルの姿は母親であるという事実を忘れるほどに若い容貌であったことをトリテレイアは驚くが、それは別の要因であった。
彼らを呼び出したメールの件名は簡素なものであった。
『憂国学徒兵エースのクローニングについて』
ただそれだけ。それがトリテレイアがハッキングと電脳によって導き出した解答でもあった。
「何の御用ですか。呼びたてられることはわかっていましたが、少々強引で驚きました」
トリテレイアは通信でしかヌルとの接触はない。その時の印象は今でも変わらない。けれど、事実を知った後では、それが如何なることを意味するのか、電脳を有するトリテレイアでも測りかねていた。
「彼ら、彼女らは過去のエースのクローンですね。戦力増強、エース再来という士気高揚の象徴。その必要性は認めましょう」
その効果がもたらすのは絶大なるものであろう。
よくわかる。トリテレイアにとって、それが合理的な手法であることも。この戦乱が続くクロムキャバリアにおいては呆れるほどに有効だということも。何もかも。
「ですが、自由意志を持つ生命を『エース』という道具として完成させる。それは『悪』です!」
その言葉はトリテレイアにとって許し難いことであったのだろう。
人の善性を見た。知った。感じてきた。
だからこそ、一方でこのような悪性をも見てきたのだ。それは必ずしも善き結果を齎すものでもないことも。
だからこそ、トリテレイアは言葉でもって相対するのだ。『悪』と。
「ええ、その通りです。人間とは『悪』であるのです。元より人間の根源は『悪』でしかない。どうしようもないほどに」
それは同時にクローニングを認める言葉であった。
ヌルの瞳に合ったのは狂気の光ではなかった。哀しみでもなかった。諦観でもなかった。あったのは、これまでトリテレイアが出会ってきた人間たちと同じ意志の光だ。
「『悪』とは陳腐であり、普通のことです。当たり前に人間という生命が持つものでしょう」
「必要悪を為すと? ならば最善を尽くすべし、エースを消耗品とする国に未来はありません」
それは機械ゆえの答えであったことだろう。
最速最善。それこそが求める最適解であろうと。同時に消耗品と言ったトリテレイアも気がついていた。
彼女はまさしく母親だった。あの通信の言葉は嘘ではない。だからこそ、最善をと声を発する。
「ええ……貴方が求めることも理解しているつもりです。つまるところ……」
「兄弟たち、いえ、これからのクローン達の処遇にさらなる人道的配慮を養成します」
ありがとう、とヌルは呟く。
それがトリテレイアへの答えであった。ヌル・ラーズグリーズ。彼女もまた『憂国学徒兵』のクローン。
この計画の責任者であり、番号で呼ばれた彼ら兄弟の母親でもある。『セラフィム・リッパー』暴走事件のおり、トリテレイアは通信を届けた。
あの時に声、言葉に偽りはない。だからこそ、トリテレイアは人がわからなくなる。
人の本質は『悪』であるという彼女の言葉から溢れていたのは、子に対する愛情であった。
それが『善』なるものであるのならば、人とは何か。
一方で環・括もまた同じであるのならば。
「―――貴方のエースを想った心は」
果たして『悪』と言えるだろうか。それとも『善』と呼べるものだろうか。
わからない。けれど、それでもと電脳が揺らぎ、トリテレイアの内側から発せられる言葉は。
「―――きっと彼らを護る筈です」
彼女が見たものが幻影であっていいはずがない。その彼方に語りかけるように、トリテレイアの声は溶けるように消えていったのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
フュンフ・エイルにフュンフ・ラーズグリーズ…か
エイルにラーズグリーズ、どっちもヴァルキュリヤの名前だけど…
こっちにもそんな話があってそれに肖ってるのかな?
…ま、こういう風に物思いに耽れるのも平和な証か
ちょっとだけ、探偵ごっこでもしてみようか
…付け髭持ってないんだよなあ
ヌルさん探してみよっか
技術的にも気になるし
まずは軽く雑談…と言いたい所だけどここは知的好奇心が勝る!
ヌルさんぶっちゃけ子沢山だけどさー、全員お腹痛めて産んだ子?
あ、ごめん気を悪くしないでね
ただなんとなーく
彼等さ過去の英雄の再現?再誕?まあそんな感じの目的で遺伝子操作されてる?
私だって研究者だもん、超気になる
そういう事も必要だろうし
重たい息が吐き出される。
それは思いの故か、それとも胸に抱く罪悪であるからか。どちらにせよ、それはお門違いの感情であることをヌル・ラーズグリーズは知っていた。
「まいったな。こういう雰囲気の中で流石に付け髭つける気にはなれないな。……付け髭もってないけど!」
場違いなくらい明るい声が響き渡る。
ヌルが見上げた先にいたのは、月夜・玲(頂の探究者・f01605)であった。彼女は彼女の知的好奇心によって行動していた。
『フュンフ・エイル』と『フュンフ・ラーズグリーズ』。
エイルにラーズグリーズ。どちらもヴァルキュリヤの名前である。それは多数の世界があることを知る猟兵にとっては、馴染みの深いものであったり全く関係のないものであったりするかもしれない。
クロムキャバリアにおいても、そうであるのかはわからない。そんな話があって、それに肖っているかもわからない。
わからないことだらけであるからこそ、知りたいと願う人の欲求に玲は従う。そうして今までだって生きてきたのだから。
まあ、だからといって探偵役だから付け髭つけようという考えに至るところは、やはり掴み所がない女性であると言うしかない。
「貴女は……」
ヌルの瞳に映る眼の前の玲はどのような人間に映ったことだろうか。
まるで鏡合わせであると彼女は感じたのだ。
己の知的好奇心を隠せない。わかってしまったのなら、止まれない。為そうとすることに対して一切の嘘がない。
玲の想像以上にヌル・ラーズグリーズという女性の姿は若々しかった。
「ヌルさんぶっちゃけ子沢山だけどさー、全員お腹痛めて産んだ子?」
それはあまりにも直球な質問であった。けれど、飾らないことが彼女の美徳であったのかも知れない。
それにヌルという女性は玲と同じタイプの人間であった。
方向性は違うかも知れないし、性格も違う。けれど、根本が同じであると思えたのかもしれない。
「……いいえ。けれど、あの子達は私の子で、あの子たちの母親は私です」
それは偽りのない言葉であった。
てっきり気を悪くして答えてくれないかと玲は想っていたが、すんなりとした言葉に少し驚く。けれど、下手に隠すのは時間の無駄だ。
だからこそ、はっきりと告げたのだろう。
「彼らさ、過去の英雄の再現? 再誕? まあそんな感じの目的で遺伝子操作されてるよね?」
クローニング。
玲の目から見ても不可解であったのだ。過去の化身たるオブリビオンが執着するフュンフという存在。
彼はエースと呼ぶにはいまだ原石にすぎない。
ツヴァイもそうなのだろう。
まるでかくあるべきとして存在しているような規範的な人間であった。まるで完成された人格のように振る舞う彼女は年齢を考えれば早熟という以上に違和感が勝る。
「あなたの言う通りです。貴方達は鋭い。貴女の前にも同じ様なことを言われました。けれど、貴女は私と同じなのですね」
「うん、私だって研究者だもん。超気になるし、そういうことも必要だろうし」
理解できる。
あらゆる意味で、そうしなければクロムキャバリアという世界を生き抜く事は難しいであろうと。
「私自身もその一人です。過去の『憂国学徒兵』の……中核を為した者たちの、写し身」
もしも、『緑炎妖狐』環・括がオブリビオンとして蘇らなかったら、露見することはなかっただろう。
いや、玲ならば感づいていてもおかしくはなかった。
『ラーズグリーズ』―――『計画を壊す者』。
その言葉の意味する所、それはきっと何もかもをも壊すという意味ではないのだろう。
「なるほどねー。計画はすでに壊されていたってことか。本当はさ、家族として生活する予定なんてなんかったんでしょ。だってそうだもんね。管理した方が簡単だもの。わざわざ家族ごっこなんてする必要なんてないんだし。人の『悪性』って、こういうことまでできちゃうものだものね。仕方ない」
けれど、その『計画は壊された』。
それが目の前にいる同じくクローニングされたヌルが果たした結果であるのだとすれば、人の本質である『悪』から生まれた『善』たろうとする意志であろう。
瞳を伏したヌルの前に玲は立ち、その手を取る。
「でもさ、人の『善性』だって捨てたもんじゃあないよ。人間は放っておくとすぐに『悪』になるけど、それをしないからこそ『善』足り得るんだもの」
計画を壊してでも勝ち得たもの。
オブリビオンマシンによって分かたれたものがある。喪われたものがある。けれど―――。
「まだ貴方達は生きようとしているんだね。『善』き生き方をしようとしているんだね」
そこに偽りはなく。
追憶の彼方に見たであろう幻影は、幻影ではなく。
人の『善性』によって齎される『エース』の再来であろうから―――。
大成功
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