#クロムキャバリア
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厳粛に述べる。『帝国』は女王陛下が治め、歴史と誇りある偉大なる国家である。
女王は国家を統治し、貴族は女王と国家への守護を誓い、議会は市井を整調し、市民は国家を支える。
厳粛に述べる。『帝国』は頑健であり、慈悲深く、屈せず、敵を打ち据える。
「その、はずだ……!」
痛苦の滲んだ声が、飛行船のブリッジの中で響いた。警報音が辺り一面に鳴り響いている。
『地上の貴様! これが帝国の飛行船と知っての攻撃か! 貴様の行いは女王陛下に対しての――』
『ああ? 狼藉? 不敬? それとも……侮辱とか?』
唾と血を散らして叫ぶ将校の声は、地上から届いた通信によって遮られた。通信は少女の声だった。
『私もこの砲を腕に嵌めるまではそうだったが、堅苦しく考えすぎだよ貴族様! これはゲームだ!』
少女の気楽な声と共に、地上から空に向けて光が突き立った。
「――!」
両舷で爆炎が二つ上がったのがブリッジから見えた。先ほどからの攻撃と今ので、自分以外の飛行船が全て撃墜された瞬間だった。
『小さいのを落としたら五十点! 大きいのを落としたら百点! このギムレウスと競争してるんだ! ――気楽に考えて、死ぬ気で逃げてくれ!』
●
「新世界で事件ですの!」
猟兵達の拠点、グリモアベースでフォルティナ・シエロは言う。
「現場はクロムキャバリア。人型機械である『キャバリア』が特徴的な世界ですわね」
クロムキャバリアは無数に分裂した小国家同士が、体高5mの人型兵器『キャバリア』を主力に生産施設『プラント』を奪い合う、荒廃した世界だ。
「オブリビオンの暗躍によりこの世界は百年以上もの間、戦争を続けていますの……」
『オブリビオンマシン』として蘇ったキャバリアが、搭乗者を破滅的な思想に狂わせ、戦火を拡大させている為だった。猟兵以外はどれがオブリビオンマシンか識別できず、その状況を認識する事もできない。
現地の様子を映した資料を提示しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「皆様に今回依頼したいのは、オブリビオンマシンによって襲撃される飛行船の救助ですの。
高速飛翔体を無差別砲撃する暴走衛星“殲禍炎剣(ホーリー・グレイル)”によって高速飛翔体が破壊されるこの世界では、自国間の輸送、つまりプラントから市街地へうあ、低速の航空機である飛行船を使うことがありますわ。
そんなプラントからの物資を満載した飛行船がオブリビオンによって撃墜される光景を予知しましたの! この悲劇を防ぐため、飛行船を護衛してくださいまし!」
現場の状況を説明しますわ、と、画像を次々に表示していく。そこには格調高い意匠が施された飛行船が映っていた。
「護衛対象は『帝国』という国家の飛行船で、数は五隻。プラントから飛び立ち市街の倉庫へ向かっている最中、郊外の丘陵地帯上空に差し掛かったところで……」
と、次に表示した画像には、砂色で重厚なデザインの人型機械が表示されていた。『キャバリア』だ。それも『オブリビオンマシン』の。
「……突然地上からの対空砲撃で撃墜されてしまいますの。この機体の名前はギムレウス。腹部から前方に伸びる頭部と、背部から伸びる大型キャノン砲を特徴とする、長距離支援機のオブリビオンマシンです。鈍足ですが長射程と高火力を誇り、集団による砲撃で目標物を破壊しますわ」
体高はやはり他のキャバリアと同じく五メートル程だ。
「生身で戦うのもアリですし普通に可能な方もいらっしゃるでしょうが、この世界ではキャバリアをジョブやアイテムとして持っていない方でも現地の勢力からキャバリアを借りて乗ることができます。今回の場合ですと、戦場は周囲に何もない丘陵地帯ですので転移次第、件の帝国飛行船に連絡し、飛行船が運搬する荷物の中にあるキャバリアを貸与してもらうことになりますわね」
因みにユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできますの、と付け加えながら掌から光を生み出す。砂状のグリモアは、空間に文字を描いていく。
「まとめますわ」
・新世界『クロムキャバリア』で飛行船撃墜事件。
・現場に急行し、これを阻止してほしい。
・人型機械『キャバリア』に乗って戦いたい場合は、貸与してもらえる。
転移の準備を進めながらフォルティナは顔を上げ、猟兵達の顔を見回す。
「転移先は地上でも上空でもどちらでも構いませんわ。ギムレウスを撃破後は敵指揮官であるオブリビオンと戦闘になりますわね。そして全てが無事に終わった後は……『帝国』からお礼がもらえるかも? しれませんわね。何だか面子を大事にしてそうな国家ですので。
――ともあれ、飛行船護衛作戦、お願いしますわ!」
シミレ
シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
今OPで33作目です。クロムキャバリアの依頼は初めてです。
不慣れなところもあると思いますが、よろしくお願いいたします。
●目的
・敵オブリビオンの撃破。
・飛行船の護衛。
●説明
・新世界『クロムキャバリア』で飛行船が撃墜される事件が予知されました。オブリビオンによるものです。
・猟兵達は現場に急行し、飛行船を護衛してください。
・現場の状況は『天候:晴れ』、『障害物が少ない丘陵地帯』、『敵はそんな地上から対空砲撃で飛行船を狙っている』、『飛行船は五隻』、『周囲に民家とかは無し』、とかそんな感じです。
・この世界は『キャバリア』という人型機械が主力の世界です。「ジョブやアイテムとしてキャバリアを持っていないけど、搭乗して戦いたい!」という人は、現地勢力から貸与されます。今回の場合は護衛対象の飛行船から貸与されます。
・その他『クロムキャバリア』という世界についての情報を知りたい場合は、第六猟兵の『説明書』ページを読んでください。
●他
皆さんの活発な相談や、自由なプレイングを待ってます!!(←毎回これを言ってますが、私からは相談は見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください。勿論相談せずとも構いません!)
第1章 集団戦
『ギムレウス』
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POW : 砲撃モード
自身の【背部大型キャノン砲】を【砲撃モード】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD : メタルファング
自身の身体部位ひとつを【機械で出来たワニ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 接近阻害地雷敷設
自身からレベルm半径内の無機物を【対キャバリア地雷】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
猟兵達が転移した場所は様々だった。
それは地上の丘陵地帯であったり、その上空の、
「!? 何だ、いきなり現れたぞ……!? ――回避!」
帝国飛行船のすぐ側であったりした。そして、それが功を奏した。
『あァ――!? 外した!?』
進路を突然変えた飛行船に対応できず、地上に潜んでいたオブリビオンマシン達の第一射が逸れたのだ。
「今のは対空砲か!? 総員警戒態勢! 敵だ! 地上と、そして空中! 女王陛下の船に傷をつけるな!」
飛行船から直接護衛依頼を受けたわけでは無いのだ。彼らは突如出現した猟兵達に対しても地上のオブリビオンと等しい警戒をしていたが、猟兵達によって初撃を回避できたこと、そして何よりオブリビオンと戦闘を開始した猟兵達の姿を見せたことで、
「……疑わしい真似をすれば、貴様らもすぐに攻撃する!」
何とか最低限の協力は取り付けられた。
●
「……はあ!?」
帝国飛行船艦隊の艦長は驚愕した。
「この船で今運んでるキャバリアを貸してくれ……!? 正気かお前ら! どこの馬の骨とも知れん貴様らに我が帝国の機体を――」
瞬間。飛行船のすぐ側を砲撃が通り過ぎた。ギムレウスの実体弾だった。
「っ……! ……速度が足らん、積み荷を降ろせ! ……キャバリアもだ!
猟兵と言ったか。貴様らにはこれが終わり次第、洗いざらい話してもらうぞ!」
※
誤字報告(OP)
× > 高速飛翔体を無差別砲撃する暴走衛星(中略)つまりプラントから市街地へうあ、
○ > 高速飛翔体を無差別砲撃する暴走衛星(中略)つまりプラントから市街地へは、
フュテュール・ステラセ
・心情
……さて、これが初陣ではありますが
あなたに選ばれ、『猟兵』となりこの世界を救う……それが、きっと私の使命なのでしょう
だから、往きましょうセイヴェリオス
まずは、あの飛行船を守る為に……
急に空に放り出されてしまったので、驚かせてしまったのは、不本意ではありますがね?
セイヴェリオス、あなたも飛べるでしょうに……
・戦闘
光刃乱舞で、敵キャバリアを攻撃します
どうやら、敵は地雷を仕掛けてくるようですが……その場から動かずに攻撃すれば、あまり意味はないでしょう?
どうか、お覚悟を
・その他
アドリブ等は大歓迎です
セイヴェリオスは意思を持つサイキックキャバリアなので、自由に喋らせて頂いて構いません
●
風……。
転移を終えた瞬間、フュテュールがまず最初に感じたのはそれだった。
大気の厚みが全身を包み、耳の奥で竜巻のような風切り音が響いている。
視界に広がる青と白の色、そして眩しい陽の光で、ここは空の上なのだとすぐに解った。すると、
『――!!』
耳の中の竜巻を吹き飛ばすような、大きな汽笛の音が押し寄せた。
飛行船だ。
突如現れたこちらに対し、急ぎの回避行動を取っていくのが見える。
「今のが護衛対象の……」
『帝国』という国家の飛行船。その内の一隻だ。フュテュールとしても彼らを驚かせてしまったのは不本意ではあるが、
「まあ、急に空に放り出されてしまいましたものね……」
『外したァ――!?』
地上から声が聞こえてくる。自分達猟兵が転移したことにより、戦局は最早予知から外れた結果となっているのだ。
帝国もオブリビオンも混乱する最中、自分は地上へ向けて降下しながら、己のキャバリアの名を呼んだ。
「――セイヴェリオス」
あなたも飛べるでしょうに……と、口の中で小さく呆れの呟きをしながら。
●
「!?」
帝国飛行船の艦長はそれを見た。突如として空中に現れた純白の少女が、地上へ向けて落下して行く最中、
「サイキックキャバリアか……!」
彼女の側の虚空から白のキャバリアが突如として現れたのだ。少女と同じく純白で、騎士のような姿をしたキャバリアは腕で抱き寄せるようにして、少女をその内部へと完全に納めた。そして、
「――!」
敵勢の前に、土煙の一つも上げることなく着地した。
●
「……さて、これが初陣ではありますが」
フュテュールはセイヴェリオスのコックピットの中で言葉を紡いだ。
「あなたに選ばれ、『猟兵』となりこの世界を救う……。それが、きっと私の使命なのでしょう」
セイヴェリオスが寄越す視界によって、自分の周囲を数多くのギムレウスが取り囲んでいるのが見えた。が、フュテュールが言葉を贈る相手は彼らではない。
『…………』
コックピットの中を沈黙が広がった。しかしそれはただの無音ではなく、明確な気配を感じるものだった。
セイヴェリオスだ。
意志有るこのキャバリアが喋ることを、フュテュールは知っている。この沈黙もこちらの言葉を待ち、伺うという意味なのだということも。
なので言う。
「だから、往きましょうセイヴェリオス。まずは、あの飛行船を守る為に」
『――ええ、往きましょうフュテュール』
意思を込めた言葉に応え、セイヴェリオスが構えを取ったのと同時。敵も動き出した。
『ゲームが変わっちまったけどまあいい! お前ら、その白いキャバリアは二百点だ!』
『……!』
敵陣奥から響いた敵指揮官の声と共に、ギムレウス達が一斉にある行動を取ったのだ。各ギムレウスから発せられた光線によって、周囲にあった無機物が姿を変えていく。
『これは……地雷、それもキャバリア用の物ですね』
セイヴェリオスの言う通り、地表に突き出た岩石や砲弾の薬莢が見る見るうちに巨大な地雷へと姿を変えていった。それら地雷の殆どは両者の間に設置されており、フュテュール達が接近することを阻害し、
『皆! このまま一旦距離を離すぞ!』
砲撃に適した位置へと、撤退するつもりなのは明らかだった。
「――だけど、その場から動かずに攻撃すれば、この地雷もあまり意味はないでしょう? どうか、お覚悟を」
「……!?」
背を向けずに後退していたギムレウス達の内、幾つかの機体は全く狼狽えていないフュテュールの様子に気付き、後退を取り止め、身を沈めた砲撃体勢に移ったが、しかしそれは既に遅かった。
「術式展開……。お願い、セルヴェリオス!」
「はい。フュテュール!」
『な……!?』
ユーべルコードが発動したからだ。
“光刃乱舞(マスカレイド・レイスパーダ)”。虚空より現れた百の魔法剣が一斉に飛翔し、ギムレウス達が砲撃するより速く、その砲身や機体を切り刻んでいく。そして時には、剣に施された火炎や雷撃といった魔法で攻撃していった。
そうしていけばやがて、
『正気を取り戻した方は急ぎ退避し、降伏して下さい!』
オブリビオンマシンが破壊されたことで、その呪縛から捕らわれたギムレウスのパイロット達が転がるように出てくるのが見える。
それを一つの結果として見届けながら、フュテュールはさらに戦闘を続けていった。
成功
🔵🔵🔴
播州・クロリア
滞りなくキャバリアを貸与していただけましたね
(キャバリアに乗り込み操縦席を眺める)
どれを動かせばいいのやら全く分かりません
ですがリズムに従って操作すれば
きっと問題ないでしょう
({霹靂の旋律}で『ダンス』するときのリズムで適当にボタンやレバーを弄る)
後は{霹靂の旋律}に乗せた電気信号で相手のカメラを『ハッキング』しキャバリアと飛行船の『残像』を作って敵の砲撃を外させつつUC【蠱の宴】で動きを封じキャバリアの武装で各個撃破していきましょう
キャバリアでダンスできるかどうか
不謹慎ながらワクワクします
もし成功したらキャバリア買おうかな
●
おお……。
転移してからしばらくして、クロリアは地の揺れを足裏から感じた。
「いやあ、滞りなくキャバリアを貸与していただけましたね」
揺れの残響がまだ足裏に甘く残るのをどこかくすぐったく感じながら、歩みを前に進めていく。足が向かう先にあるのは、今しがた上空から投下されたキャバリアだ。
五メートルの人型機体は飛行船と同じような意匠が施されており、こちらにコックピットを開いて片膝付きの姿勢だ。
「よっ……と」
キャバリアの足先を踏み蹴って跳躍しコックピットの縁を掴むと、滑り込むように中へと入っていく。
うーむ……。
そうしてコックピットの中を見渡せば、一つ解ることがある。
「どれを動かせばいいのやら全く解りません」
何分初めての機体どころか初めての世界だ。解ることの方が少ない。
視界の中、一番目立つところにあるボタン上に、この世界で“閉鎖”を示す語が書かれていたのでそれをタップしてみる。
「――――」
コックピットのハッチが閉鎖した。一瞬、暗闇に包まれたが、すぐに電灯とキャバリアの視界が全周モニターに映し出された。
空の青、雲の白、丘陵の緑、オブリビオンマシン・ギムレウスの砂色。全てが視界に入って、
「……!」
次の瞬間には砲撃されていた。
己は、反射的に操縦桿を掴んだ。操作方法など解らないが、しかしそれを躊躇わず一気に動かす。
果たしてキャバリアは瞬間的に立ち上がり、搭乗してる自分ですら体感で感じるほどやや強引な機動で、迫り来る砲弾を回避した。
『! 敵は素人だ! 操縦に慣れてないぞ!』
挑発や動揺狙いで外部出力してきた敵の声に、そうですね、と呟きながら、しかし言う。
「――ですがリズムに従って操作すれば、きっと問題ないでしょう」
砲撃は止まない。だが己も止まらない。
空気を割る音が連続する中、自分は操縦桿やボタン、スイッチといった全てを感性に任せて触れ、押し込み、握り込んだりしていく。
ステップはつんのめるようだったり、踊るようであったり、跳ぶようであったり、蹴躓くようだったりと様々だったが、しかし当たらない。
至近を砲弾が過ぎ去って機体が揺れる。
大地も抉られ、足場は荒れ、だけど、
「――♪」
気づけばメロディを口ずさんでいた。
雷鳴のような大音が続く中、刹那のステップを刻み、砲弾の雨を潜る。
『チッ、何だこいつさっきから……!? もういい! コイツより先に上の飛行船を――』
痺れを切らした敵は、最早こちらではなく上空の飛行船に狙いを変えようとした。だが、
『は!? な、船が、増えて……!?』
『こ、こっちのキャバリアもだ!』
上空とこちらを見て、固まった。
リズム赴くままに機体のスイッチを適当に入れ、そんな己のリズムを先ほどから周囲に電気信号として送っていたのだ。それは敵のカメラシステムをハッキングし、飛行船やこちらの残像を焼き付けた。
『う、撃て! 適当でも良い!』
『――外れです。ダラキュですね』
短く呟いた言葉がいつの間にか外部出力されていた。だが丁度いいと、己は言葉を続ける。
『操縦は未だ良く解りませんが、でも踊るの楽しいです。リアです』
言う。
『――皆さんは楽しんでいますか?』
●
……!?
不可思議な操縦を見せるキャバリアを相手取っていたギムレウス部隊は、瞬時に異変に気付いた。
『敵が一気に加速したぞ……!?』
未だ不慣れな動きなのは間違い無いが、何か加速システムでも起動したのか敵の挙動が一見して変わった。それは機体の計測システムから、
『――――』
速度を報告しようとしたが、違った。計測システムは先ほどと変わらないデータを寄こしている。
『――? ……。――――』
また、敵からの音声すらも高速化していることに気付いた。もしやと思い、相手の音声を五分の一速度で再生し直してみる。その結果、自分達の感覚や予想が文字通り外れていることに気付いた。
●
『加速? 違います。その予想はダラキュですね』
クロリアはリズムを刻み続けた。機体を介して己の旋律を外へ披露し続けていく。
『皆さんが遅くなったのです。五分の一の速度に。操縦に不慣れな私ですら、狙えるほどに』
なので狙った。カメラのある頭部や、砲を背負う背部を。帝国のキャバリアに積んだ武装で撃ち、切り落としていくのだ。
周囲のギムレウス達を置き去りにしながら、動き続けていく。
『ぶっつけ本番ですが、踊れました。リアですね、キャバリア』
買おうかな?
成功
🔵🔵🔴
アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎
やってきました新世界~ここでは『キャバリア』が特産品らしいのよー
どんな味がするのか楽しみねー
ひこーせんを護って食べさせてもらいましょー!
わー、『キャバリア』はアリスの倍くらいのおーきさがあるのー、食べ応えがありそーねー
さて、まずは上空から妹達を沢山呼んでひこーせんに張り付き、【ジャンプ】で『ギムレウス』の砲撃を受け止めて【かばう】のよー
アリス達は沢山いるから少しくらい減ってもへーきへーき
その間に地上の妹達は【ダッシュ】で接近して【集団戦術】で取り囲み自慢の前肢で敵を切り裂くのよー
とりあえず四肢と大砲をむしり取っておきましょー
みんなー、中のパイロット以外は【捕食】していーわよー
●
見晴らしがいいわねー、というのが転移してすぐのアリスの感想だった。
『やってきました新世界〜』
青い空、白い雲、遠くに見えるのは街並みかしら? と、そこまで思った所で、声が来た。
『な、何者だ!』
下、というか足元から響いてくるのはスピーカーで増幅された音声だ。
音圧? で身体が揺れるのー……。
ちょっとおもしろい。
『き、聞いてるのか!? ――我らが帝国の飛行船に張り付いている貴様だ!』
多分、自分のことだ。というか、周りを見渡しても飛行船に張り付いているのは自分以外にはいない。
なので飛行船の外からブリッジの窓まで身体を運び、姿を見せて答えた。
『はじめまして。私、アリスって言うのー』
『……!?』
窓に張り付いている姿を直接見たのと、脳内に声が響いたのに驚いたのか、ブリッジの中がちょっとパニックになった。
が、
「――!!」
今は戦場なのだ。船の至近で爆破した砲弾によって、クルー達の意識が半強制的に戻される。
そうだ。戦場なのだ。つまり時間が無い。なのでこちらは手短に要件を伝えることにした。
『えっとねー、ここでは“キャバリア”っていうのが名産品らしいわねー。このひこーせんを守るから食べさせてもらいに来たのー』
『は? ――はあ!?』
艦長が驚いたのはこちらが伝えた内容もそうだが、
『? ああ、“妹達”よー』
一気に姿を増やしたこちらがブリッジの窓中に、否、五隻全ての飛行船の、全ての箇所に張り付いたからだ。
……しかし、“妹達”もアリスと同じ姿なのに、なんで驚くのかよくわかんないわねー……。
自分の姿はさっきから見せてる。結構数は増えたかも知れないが、今のブリッジは再びのパニックというか半狂乱みたいな状態になっている。“妹達”が窓の外でちょっと身じろぎするだけで、『あ、脚が! 脚が!』とか言ってるけど大抵の生き物は脚有るのよー?
ともあれ、比較的冷静なクルーは中には居るようで、彼は計器を見て驚いた顔をした。
『艦長! 高度が……!』
『んま。アリス達が重いっていうのー』
でも、そーねー、と。
『ちょうど次の砲弾が来そうだし……。うん、行くわよ、みんなー』
せーの。
『ジャーンプ』
●
アリスは行った。否、“アリス達”は行った。
一人だけではない。幾つかの“妹達”と共に、張り付いていた飛行船から跳び立ったのだ。
『――!!』
飛行船は高度としては一キロメートルは優に超えており、そこから跳び降りたのだ。
重力に惹かれるまま、大気の壁に全身からぶつかり、それを突き破って行けば、身体の後ろへ風が回っていくのが実感できる。
脚を閉じたり開いたりすることで空気抵抗の調整とし、向かうのはたった一つの目標だ。
『……! 次の砲弾、来るわよー!』
砲弾だ。
眼下にいる無数のキャバリアが上空へ向けている砲、そこから砲弾の軌道を予測し、全員でリンクされている意識に共有すると、近くの個体がその軌道へと飛び込んでいく。
『――――』
行った。
『……うーん、やっぱり持たなかったわねー……』
結果としては双方の破壊だった。
地上からの砲撃と、現在進行形で自由落下中の自分達。両者の距離は相対速度で一瞬に詰まり、だからこそ衝撃も大きい。
爆炎という赤と黒の色、そしてそれに吹き飛ばされていく“妹達”が空のあちこちで見られるが、
『ひこーせんは無傷なのよー』
そして、
『アリス達はいっぱいいるから、少しくらい減ってもへーきへーき』
空に爆炎の華がまた咲いた。
●
『どうなってんだ……!? 全部迎撃されてるぞ……!』
ギムレウス隊は空で起こる異変に意識を奪われていた。自分達が撃った砲弾、飛行船へ直撃ルートだと思っていたその全てがしかし辿り着かず、空の手前で爆発していっているからだ。
飛行船からの迎撃だというのはすぐに解った。が、輸送目的の飛行船にそんな充実した迎撃武装が有るはずがないし、それは事前に確認済みだ。
ならば一体何故。レーダーなど探知システムを総動員で作動させたことで二つのことが解った。
一つ、迎撃の正体はピンポイントで投下された生物だということ。
そしてもう一つは、
『――地上にもいるぞ!?』
空に意識の大部分を向けていたから気付くのが遅れたが、いる。
丘の稜線の向こうから大群としてやって来るのがレーダーで解る。すぐにそれは稜線の影から姿を現し、肉眼でも解るようになった。
蜘蛛のような姿だった。だが脚の数や何より大きさですぐにそうではないと解るが、わかったところでそれは最早重要ではなかった。
『――!!』
“蜘蛛”達は鋭い多脚を次々に大地へ突き刺し、前へ前へと爆走してきたからだ。高速で差し込まれる脚によって丘は耕され、柔らかくなった土は背後や空へ蹴飛ばされていく。
黒く湿った土が、ギムレウス隊の全方位で壁のように立ち上がった。敵の数は最早測定不能だった。
『――!!』
ギムレウス隊の殆どは絶叫し、迎撃の砲を放った。
直撃。
土煙の上に大きな爆炎が被さった。
だがそんな燃え盛るカーテンの向こうから、“蜘蛛”達は依然として飛び出してきた。止まらないのだ。
「……!!」
硝子で釘を掻き毟ったような鳴き声が戦場に響いた。
●
地上部隊のアリスは、全員でリンクされている意識から言葉を拾った。
『――少しくらい減ってもへーきへーき』
それは空の上にいるアリスの言葉であり、それは地上にいるアリスにとっても同じだった。皆同じで、同じ意見なのだ。
正面から水平撃ちに切り替えた砲撃が来るが、自分達は走り続ける。
直撃すれば身体が吹っ飛ばされ、当たりどころが悪かったら活動停止だってありうる。
なので時には跳躍したり、地面の下へ潜り込んだりして回避もするが、基本は最短ルートである直線をダッシュだ。
一気に詰め寄っていく。
「――――」
すると正面から砲弾が来るのが解った。回避は間に合わない。なので受け止めた。
直撃。
数十キログラムの砲弾が音速超過で正面から来るのだ。甲殻で受けても流石に後方の空まで吹き飛ばされる。だがそこからだと戦場をよく俯瞰できた。
自分の後ろにいたアリス達が、吹き飛んだ自分のスペースを後ろから詰めていく。先程からと同じ繰り返しだった。
そしてだからこそ、敵のキャバリアの元まで他のアリスがたどり着いたのが見えた。
『は、離れ――、うあ、うわああっ!』
一体のギムレウスに複数体。それほど数に差が有るのだ。二メートル超えの身体はギムレウスの手足、そして砲へ重点的にしがみつくと、
『喰って、喰ってきやがる!! 誰か! 誰か!』
鋭い前肢や牙でキャバリアの装甲を引き剥がし、咀嚼していった。だが、
『みんなー、中のパイロット以外だけよー。捕食していーのはー』
アリス達全員はちゃんとその意識を持っている。なので四肢と砲を食べ終えたら途端に取り付くのを止め、次のキャバリアへ向かっていく。
残されるのは手足をもがれたギムレウスと、その中にいるパイロットだけだ。
『に、逃げろ! この後、巣にでも持って帰ろうってつもりなんだ!』
『こんなキャバリア何で乗っちまったんだ俺は……!』
逃げ出そうとしたり、コックピットの中で震えていたりと、パイロット達の様子は様々だ。
そんなことしないわよー? と思いながら、そこで、
「――――」
吹き飛んだ身体が地面に墜落した。もんどり打って、転がって、身体のダメージが大きい。中枢神経まで損害を受けているので、
『――みんなー。後は任せたのよー』
そこで意識が途絶えた。
成功
🔵🔵🔴
ノインツィヒ・アリスズナンバー
アドリブ・絡み歓迎
ちわわ~☆
新人アイドルのノインツィヒちゃんです☆
帝国さんにぃ~お仕事貰いに来たんですけどぉ~☆
……アレ、どうにかすればいいんですよね?
とりあえず、このキャバリア一機貸ーして☆貸せ☆
ふーん。ユーベルコードがこれから出せるんなら、操縦だってどうにかなるんじゃなーい?
後とりあえず、スピーカーの出力上げといて。
私ちゃん、こう見えてアイドルなので☆
相手に飛行船を狙わせないように、UCと【パフォーマンス】【歌唱】【ダンス】を駆使して注目を引いちゃうよ☆
対キャバリア地雷なら、踏まないようにステップしちゃうものね。
対空砲だって、直線状にしか飛ばないんだし【念動力】で弾道を曲げちゃう☆
ニトロ・トリニィ
アドリブ大歓迎!
おぉ、ここが新世界!
そしてあれが噂のキャバリアかぁ… ロマンがあって良いねぇ!
おっと… はしゃいでいる場合じゃなかったね。
僕も猟兵としての仕事をしないと。
行動
あれは… まさか地雷!
流石にあんなのを踏み抜いたら終わりだし…
僕は飛行船から〈スナイパー/鎧無視攻撃/鎧砕き〉を合わせて貫通力と命中率を高めた《集約する炎》で下に居る敵キャバリアを〈砲撃〉してみようかな。
攻撃するだけで無く、飛行船を守る為にも飛んでくる砲弾も出来るだけ撃ち落としておかないとね。
●
帝国飛行船艦長は幾度目かの驚愕をした。
「おぉ、ここが新世界……!」
「ちわわ~☆」
いつの間にか、先ほどの“猟兵”とやらが船のブリッジの中にいたからだ。一人は黒づくめの長身の男で、もう一人は一房だけ色の違う灰髪の少女。
男は興味深そうに地上の戦闘の様子を見て、少女の方はというと真っ直ぐこちらを見て、
「新人アイドルのノインツィヒちゃんです☆!」
挨拶された。
「は? な、何――」
「あ、僕はニトロって言います」
男の方も忘れていた、とそんな感じで気楽というかマイペースに挨拶してきたが、
「ち、違う。そうじゃない! 貴様らいつの間に――」
言葉はしかし爆音で掻き消された。戦場なのだ。今も眼下では他の猟兵が戦っているが、船に迫る砲弾が無いわけではない。
「帝国さんにぃ~お仕事貰いに来たんですけどぉ~☆ ……アレ、どうにかすればいいんですよね?」
少女、ノインツィヒの言う通りだった。
●
ノインツィヒは上機嫌で船の格納庫内部を歩いていた。整然と並ぶキャバリア達を下から見上げながら、
「ふーん。ユーベルコードがこれから出せるんなら、操縦だってどうにかなるんじゃなーい?
――んでとりあえず、このキャバリア一機貸ーして☆ 貸せ☆」
近くに立っていたキャバリアを指さし、ノインツィヒの後ろを歩く男に振り向く。艦長が寄越した世話役だ。
「わ、解りました……。艦長からも要望通りにするように、と連絡を受けていますので。……ですが、これは非常に限定的な処置でして……」
「おっけおっけ☆ 無傷で返せばいいんでしょ無傷で☆ あっ、あと、とりあえずスピーカーの出力上げといて。付いてるよねこのキャバリア」
「外部に向けたスピーカーですか? 標準装備として確かについていますが……、何故?」
疑問や困惑といった表情がありありと向けられているが、ノインツィヒはとびきりの笑顔で返した。
「私ちゃん、こう見えてアイドルなので☆」
急ぎ出撃準備が始まる格納庫の中、ノインツィヒは件のキャバリアに向かって行った。
●
ノインツィヒがキャバリアでの出撃を決めた一方、ニトロは飛行船から離れないことを選択した。
彼が艦長に告げた言葉は、
「あ、ここの窓って開けてもらえます? 」
たったそれだけだった。いつ至近で砲弾が爆発するか解らないため、開けてもらえた窓は少なかったし、ブリッジからも離れた場所だった。そもそも、
「いったい何の目的で?」
と、そう聞かれた。キャバリアで出撃するわけでもなく、ここで一体何をするのかという問いだ。ニトロだってその問いを当然だと理解している。なので簡潔に答えた。
「狙撃をします」
軽い頷きと共に答えた後、開けられた窓に取り付く。そしてそこから、
「――――」
腕を外へ出した。指を伸ばし、地上の敵群へ向ける。すると、
「指先に、光が……!?」
球のように集まった光が、否、蒼い炎が、指先で螺旋を描いて渦巻いていく。その螺旋は段々と高速になっていき、
「……発射!」
刹那。炎は線となって大地に向け、一直線に放たれた。大気を焼く焦熱音から、それがやはり熱を持った火炎なのだという事が解る。
空気を焼きながら走る熱線の先端は依然螺旋を続けており、抉るように一体のギムレウスの片脚へ突き刺さった。
『……!?』
数千メートル離れた距離からでも、ギムレウス達が驚愕し狼狽えたのが解ったが、それもすぐにパニックになる
貫通痕から一気に溶解していくからだ。機体の脚部基礎を溶かし、ギムレウスはすぐに立っていられなくなり、身を大地に沈めた。
「な!? 個人のビーム兵装で、この距離を減衰せずに……!?」
「しかもギムレウスの装甲を貫通してる!」
ものの数秒で、それも個人がキャバリアの砲撃体勢を崩壊させたことに、様子を見ていたクルー達がざわつき始めたのがニトロには否応なしに解った。恐らく熱線の出力や精度などで驚いたのだろう。
生身でキャバリアと戦えたら“超人”扱いらしいからね、この世界……。
彼らからすれば大きな成果であり、見過ごせない異常なのだろう。だが、今は説明してる時間が無い。
「! 面舵いっぱい!」
熱線を警戒した敵がこの艦に砲撃を集中させに来たのだ。艦長の回避号令とともに、ニトロは再度熱線を放って発射前のギムレウスのうち何機かを倒すが、相手の数が多い。残りのギムレウス達はすでに飛行船に砲口を向けており、
「……!」
一斉射が来た。飛行船を交差点とした数十発、ニトロは熱線を振るって迎撃したが、それでもまだ有効弾はいくつか残る。
このままでは飛行船に衝突するが、しかしそうはならなかった。
『イェ――イ!!』
飛行船格納庫から飛び出たキャバリア。その外部スピーカーから発せられた大声によって、迫り来る砲弾のことごとくが破壊されたからだ
降下していく姿は窓からも見えた。ノインツィヒだ。
●
ノインツィヒは行った。キャバリアという機械の体を格納庫から投げ出し、今、空の上にいる。
『おー。やっぱ、操縦どうにかなったじゃーん☆』
操縦システムを手繰って降下を安定させながら、機体のカメラを回した。先ほど誘爆させた砲弾の爆炎や粉塵は音圧で消し飛ばされ、周囲にあるのは飛行船から振り注がれるニトロの熱線だけで、それ以外は非常にクリアだ。と、
『お? もう一発来る? イイヨイイヨー☆』
熱線を放つニトロだけではなく、一瞬で砲弾を無効化したノインツィヒも脅威と判断したのか、迫る眼下の中、砲のいくつかは飛行船だけではなく彼女に向けられていた。
それを見てノインツィヒはしかし慌てず、
『私ちゃん――、アイドルターイム……!』
ユーべルコードを発動した。次の瞬間、ノインツィヒの背後に複数の人影が現れた。
「――――」
それは楽器を構えた姿だったり、熱狂して腕を振り上げる姿だったりと様々だったが、しかし何よりも目を惹くのはそれが“姿”だけだったことだ。
おぼろげなその“姿”は、足回りが特に顕著であり、霞んでいた。
霊体だ。ユーべルコードで召喚された彼らの正体は、
『私のバッグバンドと私のファン! つまりこれで私のライブの準備完了~☆』
それはつまりどういうことか。
『――どこでも私のステージってこと☆』
『……!?』
ギターがメロディを起こし、ドラムがテンポを決め、ベースが全体を支え、キーボードが調律する。そしてそこにノインツィヒの声を当てれば、
『――!』
空間全体が振動した。彼女の声もバッグバンドの音も、キャバリアのスピーカーで増幅して出されるからだ。メロディが続き、歌詞が乗り、合いの手として
『……! ……!』
ファンが腕を振り上げ、歓声を上げる。それら全てが戦場上空で行われているのだ。
……イイわね! ノッてるし、みんな注目してるわ☆
非常に目立つし、そしてそれはノインツィヒの狙い通りだった。なぜならそうすれば敵が砲撃を寄こしてきて、飛行船への被害は減り、
『AH――!』
砲弾に合わせてサビをぶち込むと気分が良い。降下も終わり、ちょうど着地も出来た。周囲はギムレウス達に囲まれ、こちらが地表に降り立つことを予想して、地雷も散布されている。
でも、
『~~♪』
踏まなければ結局、良いのだ。サビが終わり、次のメロディの間、気分良くノインツィヒがステップを刻めば、ファンも併せて踊り始め、やはりその踊りで、
「――!」
砲弾が、そしてギムレウス達も散っていく。
散って、散って、散って。
砲弾の爆炎も、大地の粉塵も、ギムレウスの破片も、全てノインツィヒのステージの彩りだ。
『チッ! せめて飛行船だけ――、くそっ……!』
敵の中にはノインツィヒを狙うことを止め、飛行船を狙おうとしたギムレウスもいたが彼女から離れていた者は上空のニトロからのカウンターで抑えられ、そして彼女の近くにいる者は、
『――アハ』
ノインツィヒの指の一振りで、発射された砲弾の軌跡が歪み、あらぬ方向へと飛び立っていった。
『まだ曲は終わってないわよ☆ ちゃんと最後まで聞きなさいっ☆』
増幅されたCメロの圧によって、周囲のキャバリア達が一斉に吹き飛ばされていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御門・結華
ユウヤ(f01546)と参加
クールな魔動人形。ツンデレ
一人、飛行船のブリッジに転移され
「マスターは……外ですか。ある意味、好都合でしょうか」
無線で伝え
「マスター、私は予定通り護衛に回ります。ご武運を」
船員の人達へ
「私は猟兵です。あなた方を守るために来ました」
「ここから敵を狙撃できる位置はありますか?」
デッキからカードを引いて光に包まれて変身します。
「雷の精霊よ。我が身に宿れ」
防具改造で白と金の騎士ドレスを纏い、UCを発動。武器改造で生み出した双剣を合体させた弓から雷の魔力を圧縮した矢を射る。
「ライトニングロア」
雷撃は敵の砲撃を貫き敵の頭部や武装まで一瞬で到達し、破壊またはスタンさせる
「次です」
ユウヤ・シュバルツ
相棒の結華(f01731)と参加
スマートな白銀色の愛機「シルフィード」搭乗状態で空中に転送される
「空か……ルル、結華は?」
コクピットにセットされた端末に居るお転婆な電子妖精に確認し
「ん~とね。あそこの飛行船にいるみたいだよ!」
「大丈夫そうだな。よし、オレ達は予定通り地上の敵を直接叩くぞ!」
「うん!了解!」
UCを発動し、船や自分たちを狙った砲撃を右腕のビーム砲で撃ち落とし、高速で接敵する。
「ユウヤ!敵の地雷があるみたい!モニターに出すね!」
「了解だ!」
敵の攻撃を見切りや残像で回避、カウンターに右腕のビーム砲や左手に持ったショートブレイドで切断する。
「シルフィードのスピードに追い付いつけるかよ!」
●
お……?
転移が完了したユウヤが最初に感じたのは、シートに沈む自分の身体と、下から押し上げられているような浮遊感だった。
「ここは……空か」
自分が座っているのはコックピットのシートであり、目の前にある視界モニターから移されている景色と、僅かに見えるスマートな白銀色の機体から、それがシルフィードという己の愛機のコックピットだということはユウヤはすぐに解った。
空中に転移したのだ。そうして自分の現状を確認した後、次に確認したのは、己と同時に転移した相棒だ。
「ルル、結華は?」
彼女の姿が見えないので、ユウヤはコックピットのコンソールに接続された携帯端末に言葉を送った。すると、
『ん~とね……。あそこの飛行船にいるみたいだよ!』
端末のディスプレイに少女の姿が映った。緑髪の表情豊かな少女は支援AIのルルだ。彼女の言葉を聞いたユウヤは、己とそしてシルフィードの視線をそちらの方へ向ければ、見つけた。
『結華!』
コックピットの視界モニターの中、飛行船のブリッジの窓へフォーカスが当てられている。
●
『大丈夫か?』
結華は飛行船のブリッジの中で、己の相棒の、否、
『はい。マスター。ご心配ありがとうございます』
マスターであるユウヤの通信に返事をした。飛行船の左舷側に、彼の愛機であるシルフィードが飛行しているのは、ブリッジからも見えていた。飛行船のクルー達は突如として出現したことに混乱している。
「か、艦長! また未確認キャバリアです!」
「う、うろたえるな!」
騒がしいですね。とそう思うが言葉にも表情にも出さない。今は気にしている場合では無いからだ。
『マスター、私は予定通り護衛に回ります』
『解った。じゃあこっちも予定通りだ。ルル、地上の敵を直接叩くぞ!』
『うん! 了解!』
『ええ。――ご武運を』
それだけだ。次の瞬間にはシルフィードはその場を後にしている。空に走る背部スラスターの残光を見送り、己はブリッジの面々へ向き直り、言う。
「私は猟兵です。名は御門・結華。――あなた方を守るために来ました」
「守る? 本来であれば帝国法に則って不法侵入者は厳罰に処するところだが……」
そこまで言って、艦長は溜息を吐いて首を振った。
「そちらの要望は?」
「この船で、敵を狙撃できる箇所はありますか?」
艦長の号令の下、皆が動き出した。
対ギムレウス戦は終盤に差し掛かっていた。
●
ギムレウス隊は空を見上げていた。今、彼らの視界の中は単純だ。空の青と、雲の白、僅かばかりの大地の緑、そして、
『……!』
純白のキャバリアだ。敵だ。
丘のあちこちで自分達の背部に背負った砲が火を噴き、砲弾の群れが空に突っ走り、飛翔距離や敵との距離に応じて内部から弾けて、黒煙をぶちまけていく。
衝撃波そのものとも言える黒が、空の至る所で広がっていた。
『――!』
そんな制限された空の中を純白のキャバリアは飛翔していく。飛行船を狙わせるわけにはいかないので目立つ立ち回りをし、ギムレウス隊の注意を引く。だがそうすれば必然、砲撃の圧も高くなり、何もかも絶え間が無くなる。
『…………』
ギムレウス隊は予想する。頭上の敵は恐らく高起動型、しかしこの砲撃の壁の中ではそう長く無いだろうと。
そう思っていた。
「――――」
瞬間。何もかもが消え失せたことを、ギムレウス隊は知った。
消失したのは自分達の予想であり、空に広がっていた黒の花々であり、そして、
「!?」
純白のキャバリア、それ自体だ。
いない。その一語だけが脳に走りながら隊員たちは急ぎ空を見渡せば、そこでやっと痕跡だけを見つけた。
『――!!』
空に長く伸びる白い線は、音速超過の何かが大気にぶつかって、しかし止まらず進んだ証拠だ。白の線を目で追い、首を振って追い、そこで遅れて音が聞こえてきたが、やはりまだ見えない
『くそ……! 加速しやがった……!』
間違いなかった。純白のキャバリアは今、先ほどとまでとは比べ物にならない速度で自分達の頭の上を高速飛翔している。それも、対空砲の結果として広がった黒煙その全てを吹き飛ばす程の超速度だ。
ギムレウスは鈍重な機体だ。追おうにも土台無理な話で、離れた位置にいたギムレウスの一機が望遠映像を寄こした。
そこに映っていたのは、背部のメガスラスターに莫大光を灯して空を翔ける純白のキャバリアが、カメラに向けて右腕の砲を構えてる瞬間だった。
●
『――HIT! HIT! HIT,HIT,HIT!!』
ユウヤは連続着弾を知らせるルルの声を聴いた。視界の中、突き出したシルフィードの右腕から発せられた光線は、迫り来る無数の砲弾を正面から貫き、その奥にある砲身すらも砕いた。
『――――』
しかしそれも一瞬の光景だ。何もかもが高速で背後へと流れる視界は、最早音速なんてとうの昔に超えている。時速にして7700キロメートル。マッハにして六足らず。全ては一瞬に距離が詰められ、遠近の把握を怠れば一瞬にしてクラッシュする速度域だが、
『――行くぜ、シルフィード!!』
行った。
速度を緩めることなく戦場を翔け回り、砲弾が迫ることもあるがそれすらも見切って回避し、何もかもを背後へと置いていく。
ギムレウス達の頭上を円周軌道で回り、周回する度に対空砲が砕かれ、行動不能となったギムレウス達が地上で数を増やしていくのだ。
『ユウヤ! 地上が薄くなってきたよ! でも地雷を置いてったみたい連中。モニターに出すね!』
『了解!』
ルルの言葉通りだった。鈍重な機体故、もとより移動することを捨てたのだろう。敵は大地に地雷を敷き詰め、シルフィードの着陸や墜落の際の警戒としていたのだ。
視界モニター上にフォーカスされた地雷は至る所に存在しており、文字通り足の踏み場が無い様子だったが、
……光?
地雷が光った、というより、何かの光が地雷に当たった。それは白や黄色といった色味で、光源としては、
「俺達の頭の上――」
刹那。雷撃が頭上から地雷へと降り注いだ。数は無数、否、地雷と同じ数だけのそれは、
「結華か!」
飛行船からの援護だった。
●
結華は吹き荒れる風と陽光を身体に感じていた。
「高所で、視界良好……。確かに狙撃の場としては適していますね」
荒れる髪を手で抑えながら立つ場所は、飛行船の最上部。
「屋上と、そう言えるのでしょうか」
飛行船の屋根、エンベロープと言われる場所の上に立っていた。全天の下だ。大地の敵と、そしてシルフィードが飛翔しているのが眼下に見える。
「――雷の精霊よ。我が身に宿れ」
純白のキャバリアがさらに加速をしたのが見えた。ユーべルコードを発動したのだ。合わせて結華も所持するデッキホルダーからカードを引いた。
「――――」
直後。変化は一瞬だった。結華の身に着けていたドレスが光に包まれたかと思うと、白と金を基調としたドレスに姿を変えたのだ。
カードに刻まれていた雷の精霊の力を発動させた結果だった。ドレスには騎士を彷彿させる意匠もあり、その手に持った双剣も同じく雷の精霊の力を受けていた。
「雷の精霊よ」
結華は双剣を胸の前に掲げ、柄尻同士を合わせた。すると結華の思念に従ったのか、合わさった精霊剣が形を変え、弧を描いてその両端を雷電の糸で繋げた。
弓だ。変化が完了したその新たな武器を起こし、結華が弦を引くと、自然とやはり雷の矢がつがえられた。
「我が敵を刺し穿て。――ライトニングロア」
高空故の突風の中、静かに告げた言葉は力となり、空を走った。
雷撃の矢が放たれたのだ。
空の上から見える敵の姿は極小だが、視線は届いている。雷の矢は減速も減衰もすることなく、空中をひた走っていく。
光速で放たれた矢は、全ての結果をほぼ同時に寄越した
一つ、放電現象によって矢の周囲の大気は焼かれ、軌跡が空に残されたこと。
一つ、軌跡を辿れば、矢が対空砲すらも貫き、爆炎を抜け、ただ大地へ向かい、そしてそこに敷き詰められた地雷を穿ち貫いていったこと。
そしてもう一つは、
『……!?』
大地で爆発が起こったことだ。
それら全ての結果から、ほんの数瞬遅れて、追加の爆発が大地を走った。
突如炸裂した地雷によって他の地雷が連鎖爆発したのだ。半球状に土をぶちまけた戦場の中、ギムレウス隊が混乱し、そこへシルフィードの強行着陸を許した。
高起動型の純白機は着陸の勢いで固まらず、むしろその速度でさらに吹き飛ぶような機動をぶち込み、突撃し、
『おぉ……!』
近くの一体を左腕に装備したショートブレードで斬り伏せた。
『シルフィードのスピードに追い付いつけるかよ!』
『――次です』
その結果を見届けながら、対空砲へ、そしてその奥にいるギムレウスへ結華はさらに射撃を敢行し続けた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『BS-A量子収斂炮『プリマドンナ』』
|
POW : クワンタム・カノン
【エネルギーインゴットを装填すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【量子収斂炮の高エネルギー量子ビーム】で攻撃する。
SPD : オーバーロード・クワンタム
【量子収斂炮から飽和量子エネルギー攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : クワンタム・ヴォイド
自身の【量子収斂炮】から【骸の海】を放出し、戦場内全ての【近接武器】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ピオネルスカヤ・リャザノフ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
飛行船の艦長は、眼下の戦闘が一端の収束を得たことを確認した。
「艦長! ギムレウス達の脅威度が下がってきます!」
そうだ。眼下では砂色の砲兵キャバリアのことごとくが破損し、しかしパイロットが無事なのだ。パイロットたちは逃げ出したり、動かなくなったギムレウスの中で投降に応じる信号を出したりと様々だったが、その全てが無力化されていった。
『何だよ、つまんねェ――』
だが戦闘が終わったわけではない。
『回避しろ……!』
光が大地から空へ突き立った。
これまでの対空砲はギムレウスの背部砲から放たれた実体弾だったが、今のは違う。空を突き破った極太の光線は、たった一機から放たれた光学兵器だ。
『……!?』
否、違った。ギムレウスが沈黙したことによって開けた戦場の中、艦長も、猟兵達もその姿を見る。
『子供……!?』
褐色の少女が戦場に立っていたのだ。空へ突き立てた右腕には、巨大な砲が接続されている。
『“プリマドンナ”!? 何故それを貴様が……!? しかも……腕にそのまま!?』
『うーん……。いっぱい質問されたが、それはゲームに必要な事か?』
さらに一射。光の柱が至近を通過したことで、飛行船が大気干渉で揺れる。
『お前ら帝国のこの新兵器も、お前らの仮想敵国である『教団』も『L.S.』も他も、この世界全部がただのゲーム相手なんだよ!』
さあ、と通信が来る。
『精々お互い楽しもう!』
フュテュール・ステラセ
・心情
さて、あなたが指揮官ですか
あなたにどのような理由があるのかはそこまで興味がありません
ただ、猟兵としてオブリビオンを打ち倒させて貰います
往きましょう、セイヴェリオス
・戦闘
【オーラ防御】や【念動力】を駆使して敵の攻撃を防ぎつつ、『戦嵐刃雷撃』で攻撃します
どの道敵の攻撃は範囲も広いようなので、真っ向勝負となるでしょうか……?
頑張りましょう、セイヴェリオス
・その他
アドリブ等は大歓迎です
セイヴェリオスは意思を持つキャバリアで喋ったりもします
ニトロ・トリニィ
アドリブ・協力大歓迎!
おっと!
今のビームは… あの子の攻撃かな…
これは… 熱線での狙撃では多分勝てないね…
仕方ない… 下へ移動するか!
行動
彼女のビーム攻撃はかなりの威力がありそうだし、命中率も高そうだ…
降下中に狙撃されない様にキャバリアには乗らず〈迷彩〉で〈目立たない〉様にしながら移動かな。
降下に成功したら《蒼炎ノ一撃》で青い炎を作り出し、それをブレイズキャリバーの力で物質化させて味方を全力で守るよ!
余裕があるのなら〈範囲攻撃〉を合わせた蒼炎で彼女を包み込み、視界を遮ってビームの命中率を下げれないかやってみようかな。
フフ… 狙撃手が狙撃しか出来ないと思ったら大間違いだよ!
ノインツィヒ・アリスズナンバー
何々~?
今度は生身で相手してくれるの~?
じゃあ、私ちゃんもキャバリア置いて生身でやっちゃう☆
狙いはエネルギーインゴット。
【レーザー射撃】で邪魔しつつ、【パフォーマンス】【悪路走破】【切り込み】で懐にダッシュ☆
相手が装填するときに、エネルギーを送るパイプ部分をUCでぶっ壊しちゃうぞ☆
乙女の拳はどんなものでもぶっ壊す。
そういえば、この戦いはゲームだと思ってるんだよね?
なら、私ちゃんが贈る言葉は一つかな☆
ゲームオーバーだ。ガキ。
アドリブ・絡み歓迎
●
「おっと!」
ニトロは窓から、飛行船の至近を通り過ぎ去った光を見送った。緊張に包まれるブリッジの中、窓から大地を見下ろした。
「今のビームは……。あの子の攻撃かな……」
今回の飛行船襲撃の中核である少女だ。
「これは……、熱線での狙撃では多分勝てないね……」
ギムレウスの実体弾とは様子が違う。狙撃しても正面から飲み込まれるかもしれないし、何より飛行船が危険だ。
「仕方ない……。下へ移動するか」
そう言って窓を全開にしたら、艦長が信じられないものを見る目で見てきた。
「は!? お、おい貴様!? い、一体何するつ――」
「ごめんなさい。戸締りお願いします」
手を挙げて、頭を下げた。それから後は聴覚も、視界も、全身も、何もかもが風に包まれた。
●
『――フュテュール』
『ええ、見えているわ。セイヴェリオス』
フュテュールは、己を呼ぶ乗機の声に返事をした。己とセイヴェリオスが共に視線を向ける先、今まで姿を見えていなかった者がそこに現れたからだ。
『さて、あなたが指揮官ですか』
異常な大きさの腕部兵装、十中八九キャバリア用のそれを装着した少女との距離は数百メートル。加速して詰めるにしろ射撃を送るにしろ、お互いにとって絶妙な距離だ。
通信を送った先、少女が退屈そうに肩をすくめた
『指揮官? んー……、私は連中を指揮したかもしれないし、それはただ一緒にゲームしてただけかもしれない』
いい加減な答えだった。が、フュテュールにとってはそこまで重要では無かった。
『あなたにどのような理由があるのかはそこまで興味がありません』
『お? そりゃよかった。私も問答は別に必要無いと思っててさー』
直後。砲撃が来た。
『……!』
抜き打ち気味の一発は少女の腕部兵装、プリマドンナから放たれた光線で、セイヴェリオスの正面からだった。
直撃コースだった。
●
プリマドンナの少女は確信した。砲撃は直撃だと。
数百メートル程度の距離なんて一瞬だっつーの……。
問答の最中に即座の水平撃ちだ。猟兵からすれば、突如として視界の中で光が生まれたと、そう思っただろう。次の瞬間には、視界全てが光で埋まり、そして、
「ドカン……! 二百点ゲー――」
ット、という言葉はしかし続かなかった。
「――アァ?」
前方の結果が、確信したものとは違う結果だったからだ。
見える。プリマドンナから放たれた青い光柱が、飛沫くような音を立てて前方にいる女騎士のようなキャバリア、セイヴェリオスへ接近し、衝突した。
と、そう思った瞬間。
「!?」
光柱とキャバリアの間に、飛び込んで来た影があった。それは意外な所からの突入だった。
「空から……!? ――飛行船か!」
見上げない。そんな必要も、暇も最早無いからだ。
直後。光がキャバリアの手前で発散した。
プリマドンナが放った光が、標的であるキャバリアの前で四方に広がっているのだ。直撃による貫通でも、衝突による爆発でもなく、明らかに防御の結果だった。
プリマドンナは帝国の新兵器で、威力は折り紙付きだ。
それを防ぐって、どーゆーことだ……?
そんな疑問はしかしすぐに解消された。プリマドンナから放たれる光の奔流の隙間に、その答えを視認できたからだ。
「やっぱりさっきの仲間か!」
セイヴェリオスの前方に、先ほど飛び込んで来た影が見える。それは黒一色の人影、ブラックタールの男だった。
青白のキャバリアとブラックタール。二者は各々の力を持ってこちらが放った光撃に相対していた。
『セイヴェリオス……!!』
一方は、手に持ったロングソードを身体の前に掲げ、そこから波打つ光を生み出していた。恐らくオーラによる防御だ。
「――炎よ!!」
そしてもう一方は、己の腕や、腰から突き出た触手から蒼い炎を生み出していた。蒼炎はただの燃焼ではなく質量を持っており、迫る光に衝突しても吹き飛ばされずに持ちこたえていた。
そして、
「――!」
光が、一気に吹き飛んだ。弾けたわけではない。軌道を変え、彼方へ逸らされたのだ。
光の放射ももう終わっている。両者の間にあるのは散り消えていく光の破片と、それを反射させる硝子化した地表だけだった。
『へぇ! オーラとその蒼い炎で防いで、念動力か何かで発散させたのか?』
『…………』
通信で挑発してみるが、猟兵達はこちらの声にやはり答えない。
残光の中、キャバリアが防御のために構えた長剣を、こちらへ突き出した。
そして、ただ短い言葉を放った。
『――往きましょう、セイヴェリオス』
来た。
●
セイヴェリオスは加速した。フュテュールから送られるサイキックは最初から全開だった。
『……!』
プリマドンナの少女とセイヴェリオスの間には、文字通り大きな溝が出来ている。砲撃によって半円形に抉られた大地が、高熱で硝子化したのだ。
彼我を結ぶ一直線の道上をセイヴェリオスが進めば、硝子で塗装された路面が彼女の足下で砕きを得ていく。
『フュテュール。プリマドンナの充填を検知しました。二射目が来ます』
『そうね。だけどこのまま往くわ。』
フュテュールの意思が言葉通りだということは、彼女の意思と増幅されたサイキックからセイヴェリオスも解っていた。
『どの道、敵の攻撃は範囲も広いようだし、真っ向勝負よ。頑張りましょう』
前進だ。先ほどのように防御をせずに、ただ敵へと向かう。最早発射直前となった敵の砲撃に対する備えとしては、
『僕に任せて!』
背後に残ったニトロからの通信と同時、蒼炎が硝子の路面の上を舐めるように走って、セイヴェリオスを追い越していった。
『チッ! 相打ちかよ!』
セイヴェリオスの先で、光と炎が二度目の衝突をした。両者は砕け、破片となって広がっていく。
光は霧散し、そして炎は、
『は!? 消えない!?』
砕けた破片のまま、しかし宙に残っていた。
再集合。それによって再度、一個の炎となった蒼炎はプリマドンナの少女の元まで飛んでいくと、壁やドームのように変形して、彼女の周囲を覆っていった。
『視界を防いだから、今のうちに!』
『ありがとうございます。ニトロさん』
最早敵との距離は百メートルと少し。あと一息の距離まで来ていた。蒼い炎に包まれた中、敵はうっとうしそうに腕のプリマドンナを振り回している。
『邪魔臭ぇなあ、この炎! こうなったら吹き飛ばして……!』
そう言って敵が砲の一部を開放し、そこからエネルギーインゴットを排出しようとしたのが炎の向こう側で見えた。使用済みのインゴットを排出することで三度目の砲撃を叶えようというのだ。だがそこで、戦場にまた新たな動きが生まれた。
『――ハァイ☆』
セイヴェリオス達とは別の方角から、明るい声音と共にビームの連射がプリマドンナの少女に撃ち込まれたのだ。
●
『何々~? 今度は生身で相手してくれるの~? じゃあ、私ちゃんもキャバリア置いて生身でやっちゃう☆』
ノインツィヒは借り受けたキャバリアから飛び出すと、そのまま大地の上を疾走した。
戦闘の余波で路面は荒れていて、イレギュラーな状態だったが、彼女は気にせずただ前に進んでいく。
「むしろこっちの方が、“映える”かも~☆」
地雷が爆発したことでクレーターのようになった窪みへ飛び込み、砕けて散乱するギムレウスの残骸を踏み越え、そして硝子の路面を踏みしめていく。
「クソがっ……!」
ニトロの蒼炎の向こう、プリマドンナの少女が慌てた動きでインゴットを吐き出すのが見えたが、ノインツィヒは構わなかった。
「よっと☆」
ニトロが操作して生まれた炎の隙間から入っていけば、そこは隔離されたドームの中だ。少女がプリマドンナを振り回せる程度に広がりを持った場で、ノインツィヒは拳を構えた。その指にはめられた煌めきは、
「乙女アイテム☆」
「メリケンサックじゃねぇか!」
ノインツィヒは答えず、踏み込んでいき、拳を振るった。
「ちっ!」
少女は咄嗟に、右腕のプリマドンナを盾にして構えたが、ノインツィヒの狙いはむしろそのプリマドンナだった。
「――!」
堅音が一つ鳴り、合わせて何かが砕ける音も響いた。
「パイプが……! 乙女の癖にどういうパワーだよ!?」
踏み込んで放った右ストレートで、プリマドンナのパイプをその基部からもぎ取ったのだ。
「そのパイプがインゴットからのエネルギーラインでしょ? それが壊れると撃てなくなるわけだ☆ だ・け・ど……」
パイプは一本だけではない。プリマドンナの砲身の上下左右四方向を、繋いでいる。
「……!」
ノインツィヒは破壊を、少女は防御を。残り三本を巡っての攻防が、蒼炎の下で繰り広げられていった。
「クソ! 離れろ!」
「そういえばさ~、この戦いはゲームだと思ってるんだよね?」
砲身をこん棒のように振り回してくるのを、ノインツィヒはバックスウェーで回避。そして振り抜いた後の隙を狙って、一打を与えた。
打撃と破砕の複合音が再び続き、パイプ内に残っていた燃料が光となって噴出した。
残り二本。
拳は止まらない。
サックをデコった分だけ蒼炎を反射し、ドームの中で拳の軌跡が色とりどりに走っていく。
「……っ!」
上段からの振り下ろしはサイドステップで躱し、横薙ぎのスイングは胸を膝につけるほど屈んで回避。
そのまま屈んだ姿勢で前へ詰めれば、砲口を突き込むように、斜め打ち下ろしの刺突が来るので、
「せいっ☆」
タイミングを合わせて、ノインツィヒは拳を当てていなした。
すると勢いそのまま、砲口が地面に突き刺さる。
「あっ!? く、くそ!」
「んで、そういえば、この戦いはゲームだと思ってるんだよね?」
少女が地面から引き抜こうと四苦八苦しているが、砲の重量故、簡単には抜けない。
「なら、私ちゃんが贈る言葉は一つかな☆」
「うるせェ! こうなったら諸共……!」
少女が砲を引き抜くのを諦め、逆の手で取り出したエネルギーインゴットをポートに差し込もうとするが、それをノインツィヒが許すはず無かった。
「――ゲームオーバーだ。ガキ」
即座に叩き込まれたワンツーによって残った二本のパイプが砕かれた。
パイプの破片が宙に舞い、装填されたインゴットからのエネルギーがただ光となって垂れ流され、そして、
『――セイヴェリオス!』
蒼炎の外から、力が来た。
●
フュテュールは行った。セイヴェリオスと共に真っ向からだ。プリマドンナの少女との距離は最早百メートルを割っている。
視界の先ではニトロの蒼炎で出来た檻が解除され、内部の状況がクリアに見通せるようになっていた。
そこに居たのは、砲を地面から引き抜いた褐色の少女と、こちらに手を振って退避していくノインツィヒの二人だった。
そして今、ノインツィヒの退避は為され、残るのはたった一人だけとなった。
『――嵐よ』
セイヴェリオスが片手の掌を向け、フュテュールと共に詠唱を開始した。
やがてその掌から生まれたのは、大きな風のうねりだった。渦巻くそれは一気に前へ突き進み、プリマドンナの少女へ直撃していく。
「……ッ!?」
普通、突風に煽られればもんどり打って吹き飛ばされるが、しかし少女はそうではなくむしろその逆だった。その場で竜巻の渦に捕らわれ、身動きが取れないのでいたのだ。
竜巻の中に仕込まれた捕縛の術式、その影響下に置かれた彼女はもがきながら叫ぶが、その声も突然の雷鳴によってかき消された。
『――雷よ』
フュテュールの視界に、驚愕の目で見上げてくる少女の顔があった。
飛翔し、空の上で掲げられているセイヴェリオスのロングソードに雷撃が宿っているからだ。
剣先を突き付ける。
『――我らに勝利の一撃を』
言葉と共に、一気に下降した。高所から放電現象を伴いながら真っ直ぐに向かう先は無論、敵だ。
否、
『オブリビオンマシン……!』
加速の乗った雷の一刀が、少女の右腕へ叩き込まれた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
播州・クロリア
あれほどの高威力の光線が、あの距離からでも放てるとは...
キャバリアだけの装甲では心もとないですね
(『念動力』でギムレウスの残骸を操り盾代わりにして接近する)
『第六感』で敵の砲撃の瞬間を見極め、そのタイミングで
キャバリアを放棄、盾とキャバリアを囮にして攻撃を回避した後
『衝撃波』で一気に近づきUC【蠱の枷】で敵を拘束します
本来であればダンスもしたいところですがそんな余裕はなさそうです
全部が終わった後にゆっくり踊るとしましょう
●
空に突き立った光を見てクロリアは眉を上げた。
あれほどの高威力の光線が、あの距離からでも放てるとは……。
数百メートル以上の上空まで、威力として減衰していない。帝国から借り受けた機体を操作しその掌を眺めてみる。
「キャバリアの装甲だけでは心もとないですね」
ギムレウスとの戦闘で操作には幾らか慣れた。キャバリアの手を回し、二度三度掌を開いたりしながら、近くにあったギムレウスの残骸まで歩いて行く。
「せー……の、っと」
己の両掌から生まれた念力が、キャバリアを通して外部に作用した。狙いを違うことなくギムレウスの残骸を掴み、キャバリアの胸前に持ってくる。
即席の盾だ。軽く振り回して具合を確かめ、良好だということを知ると、
「行きます!」
盾を構え、光線の源へ向かっていった。
●
迫り来る猟兵に対して砲撃することは、プリマドンナの少女にとって当然の判断だった。
「ギムレウスの残骸を盾代わりにしているとはいえ、真正面からねえ……」
迂闊だと、そう言ってもいい。先ほど見せた通り、エネルギーインゴットを装填した砲撃、”クワンタム・カノン”は強烈だ。残骸と言えど重装甲のギムレウスは幾らかの盾になるだろうが、動くものが自分達以外にいない戦場で直進してくるのは自殺行為だった。
「…………」
慣れた手つきでインゴットを排出。装填。そして視界の中央に映るキャバリアへ砲の先端を向ける。
向けた。
「――終わりだ」
光が収斂していた砲口から、噴火のように光が噴き出した。収斂した量子は質量よりもその熱で大気を押し退けて前進していく。
全方位へ突風を吹き荒らし、大地を溶解させる。
風で煽られたギムレウスの軽い破片が、管楽器を地面にぶちまけたような音を鳴らす。
そうやって光撃が猟兵のキャバリアへ押し寄せていく最中、
……あ?
猟兵がキャバリアから脱出したのが、光の隙間に見えた。
砲撃の勢いに恐れたか、それとも最初からその狙いだったのか。解らない。だが、
「どっちにしろ一緒だ!」
放たれた光は光線と言うよりは光柱だ。直径にして十数メートルはあり、それから逃れようとしてもこちらが手元を少し振るだけで、向こうからすれば数十メートルの薙ぎ払いだ。
彼我の距離は数百メートル以上開いてもいるのだ。回避できても接近は容易ではない。
そして、
「――!」
プリマドンナの砲撃が、正面から猟兵のキャバリアへ衝突した。
直撃だった。
●
プリマドンナの少女は見た。
まず、キャバリアの前面に盾として掲げられたギムレウスの残骸光を受け止めた。
やはり重装甲機体だ。ギムレウスの砂色の装甲はしばらく光を受け、押し留めることに成功する。だが装甲は次第に赤熱していき、高温によって形が保てなくなっていく。
溶解していくのだ。装甲の表層が失せ、深部まで光が浸透し、貫通。その奥の猟兵が退避したキャバリアに到達した。そのキャバリアも大体の流れは盾の時と同じだったが、ギムレウスよりも軽装であるため溶解も早い。
すぐに機体全体が崩れ、光の威力が機体内部のエネルギーを刺激し、行き場を求めて内側から押し広げられた。
「――!」
爆発だ。キャバリアから光や熱、音といったものが衝撃波として全方位へ走っていく。
爆発の被害圏内に未だ残っていた猟兵にも、その洗礼は漏れなく浴びせかけられた。
……まず衝撃波でズタズタか? ああ、それとも煽られて何かに叩きつけられる?
予想は、その通りだった。
猟兵は衝撃波に煽られて吹き飛び、もんどり打って宙を転がり、
「!?」
次の瞬間にはこちらの眼前に来ていた。
●
眼前にプリマドンナの少女が映ったのは、クロリアも同じだった。
爆風に上手く乗れましたね……。
己が持つ衝撃波の技能と、至近で爆発したキャバリアの衝撃波を合わせて、一気に敵の元へ詰めたのだ。
リアですと、思考の片隅でそう思いながら、背中の翅を姿勢制御にいっぱいに使い、飛翔というよりは弾き飛ばされる勢いで向かって行った。
「クソッ……!」
「薙ぎ払おうとしても、手元まで来たら数センチの誤差です」
勢いそのまま、少女が振るってきたプリマドンナへ蹴りを叩き込む。
彼方に吹き飛んだ光撃は、やがてインゴットのエネルギーが尽き、消え失せていった。
「物騒な代物です……。ダラキュですね」
「お、おい! 何す――」
次弾が発射される前に、少女へ密着するほど距離を詰めると、
「――――」
己の身体を一気に変形させた。
少女を拘束する腕や手、足などが、拘束具へと変化していくのだ。
「アッ、ガッ……、い、意識が……」
「大丈夫ですよ。目覚めた頃にはもう、その砲も無くなって、元のあなたに戻っています」
ユーべルコード”蠱の枷”による体力と気力を奪う拘束服で、少女の意識がどんどんと落ちていくのを目で送りながら、思う。
本来であればダンスもしたいところですが、そんな余裕はなさそうです……。
ただまあ、
「全部が終わった後にゆっくり踊るとしましょう」
成功
🔵🔵🔴
アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎
わー、すごい攻撃なのー
うーん、あれをアリス達が空中で受け止めるのは無理かなー?
みんなーどーしよーかー?…ふむふむ、なるほどー、114514番目のアリスの案を採用するのー
『プリマドンナ』さんの周りにみんなで集まってお家を作っちゃいましょー
【団体行動】でみんなで協力して瓦礫と糸で敵を覆い隠してしまうのよー
アリス達のお家はがんじょーだから少しは持つと思うし、撃ち抜かれても見えない的なら簡単には当てられない筈よー
敵の攻撃で壊れた部分は修理して逃がさないよーにするのー
あとはホームの【地形を利用】して敵をみんなで齧るのー
アリスは近接武器を持っていないけど牙は使えるのかなー?
●
アリス達の意識は相互にリンクされ、その中で盛り上がっていた。
『わー、すごい攻撃なのー」
アリスの中の誰かが、そして全員がそう思考した通り、凄まじい攻撃だった。
『――――』
見下ろしたり、見上げたりと、各地のアリスによって様々だったが、やはり視界も共有されている。
極太の光の柱が空へ突き立ち、飛行船は熱風に煽られ、雲すらも割られているのだ。
……うーん、あれをアリス達が空中で受け止めるのは無理かなー?
ギムレウスの砲弾と同様に、飛行船から飛び立って受け止める。それはやってみないと解らない部分もあるが、
『蒸発?』
『気化?』
『雲散霧消?』
そういった単語が共有意識に浮かぶし、もしかしたら大体その通りになるかもしれない。
ならばどうするか。
『みんなーどーしよーかー?』
考える。すると一斉に思考が来た。
『――――』
この戦場にいるアリスだけでなく、意識のリンクは種族全体なのだ。ここにいないアリスからも様々な案が膨大に寄せられ、それらを皆で比較し、検討し、適宜修正を与えてさらに確認を進め、そして、
『ふむふむ、なるほどー、114514番目のアリスの案を採用するのー』
決まった。その案を作戦の主軸として、アリス全員が動き出していく。
●
「来たか……!」
プリマドンナの少女は見る。周囲に展開していた猟兵の一人が、否、
「一人どころじゃなくて大勢だな、こりゃ……!」
全方位から猟兵がやって来る。一種の個体が分身でも分裂でもなく、ただ大群としてやって来るのだ。その姿は蜘蛛にも似た姿で、荒れた地形の上を巧みに多脚を操り、快速と言える速度だった。
爆発痕のクレーターを飛び越え、そしてギムレウスの残骸を、
「掴んだ!?」
猟兵がその鋏のような肢で持ち上げたのだ。ギムレウスのパーツや武装、フレームなど様々なものは破損の程度によるが、猟兵の身体かそれ以上の大きさのものもある。だがそんな鋼鉄の塊を猟兵は難無く持ち上げて体の前へ掲げ、
「……!!」
奇怪な鳴き声を挙げながら、前進を続けて来る。
「ハンッ! 盾代わりってか? ……チッ!」
応戦としてプリマドンナの砲口を向けて光線を放ってはみるが、ギムレウスは重装甲のキャバリアだ。光撃の勢いは装甲で減衰し、構えた猟兵の元まで届かない。
アレを貫くにはもっとスゲェ攻撃じゃないと駄目だ……。
その方法は二つある。
一つは、プリマドンナへエネルギーインゴットの充填を行い強力な砲撃を放つこと。しかし猟兵が今にも迫りそう中、悠長に装填している暇は無いし、何よりあれは一方向しか狙えない。却下だ。
もう一つは、プリマドンナのオーバーロードを行って全方位を同時攻撃する方法だ。射程距離は大きく落ちるが、これが最善手だと思う。わざわざ敵が、全方位から迫って来てくれているからだ。後はこっちでタイミングを合わせれば一網打尽だ。
が、
「!?」
その予想が無意味になったことに、己はすぐに気付いた。
「――!」
前進から一転、弧を描くようなルートに。猟兵の大群が一斉に方向転換したのだ。つまり、
「こっちに近づいてこないってことだ……!」
どうする。そして異変はそれだけではなかった。
猟兵達が、ギムレウスの残骸を地面に手放していること。
猟兵達の描く弧が、こちらを中心とした円周運動であること。
そして、猟兵達の口と思われる位置から何か煌めく物が宙に伸びていた。
「――――」
糸だ、とそう気づいた時にはもう遅かった。
「……!!」
残骸には既に糸が巻き付いており、猟兵達が弧を描く度、騒々しい衝突音を立てて集合。一つの塊となっていく。
高さと広がりのある障害物をバリケードという。ギムレウスの残骸でそれらが全方位に生まれた。
「閉じ込める気か!」
前後左右、そして頭上すらも壁で防がれた。一気に光が失せて薄暗くなった中、
「――――」
バリケードの外から猟兵達の不気味な声が聞こえていた。
●
アリス達は光を見た。
『おー』
バリケードの隙間から光が漏れた。かと思えば次の瞬間、大波が飛沫いたような音が鳴り響いた。プリマドンナの発射だ。
『エネルギーインゴット? ってやつをほじゅーしたのかしらー?』
しかしその砲撃はアリス達が作った“家”の一部を破壊したにすぎず、狙いも定まっていない攻撃は、アリス達にとって脅威とはならなかった。
『修理するのよー』
“家”の壁に空いた穴は、すぐさま他所の残骸を持ってきて埋め合わせる。全員の意識が共有されているが故、修繕作業には終始無駄が無い。
これで敵の拘束に成功した。砲撃は未だ脅威だが、有効打を与えられないなら無視できる。
『それじゃーそろそろ中へ突入ー』
ならば後はこちらの攻勢だ。キャバリアの残骸で出来た“家”には扉や窓などは存在せず、中へ入るために穴を空けても、敵の逃走を考えれば適切ではない。
なのでアリス達は慣れ親しんだ場所から敵へと向かった。
「――地下か!」
ご名答ー。
●
プリマドンナの少女は迷わなかった。
「……!」
足の下、大地の中で明らかな異音がする。それは土を削る切削音であり、地面の揺れを感じるほどの勢いだ。猟兵がどういう方法か大地の中を通って迫ってきているのだ。
先ほどから砲でバリケードに突破口を開いているが、それがすぐに修復されていた。
ならばプリマドンナをオーバーロードさせて、周囲の一切合切を破壊しようとも考えたが、
……無理だ!
バリケードの内部が狭い。オーバーロードという名の通り出力調整は出来ないので、放った瞬間、自分の身体も周囲と共に消し飛ぶ。
しかし敵は迫っているので対応をせねばならない。なので迷わず選んだ方法は三つ目のユーべルコード、“クワンタム・ヴォイド”だ。
「接近戦ならこれで無効化すれば……!」
猟兵がバリケードの外から砲撃せずに、地中を来たということは遠隔兵装ではなく接近戦による決着を望んでいるということだ。
正直、勝機は低い。こちらだって接近戦の準備は無く、そして何より向こうは恐らく近接武器を――、
「!」
そこで、来た。地中から鋭い足が一本見えたかと思えば、続々と足が増えていく。大地が割れ、その中からぬばたま色の瞳が見えた。
「クワンタム・ヴォイド発動……!」
地面に空いた穴へ砲口を向け、今までとは別の物がそこから一気に放出された。
「――――」
骸の海。その不可思議なもので満たされたバリケードの中、今にもこちらへ襲い掛からんとした猟兵達が一瞬動きを止めた。
振り上げた鋏腕を無感情な瞳で見上げた後、
「……!!」
「やっぱお前ら、”武器”持ってねえよなぁ……」
その大きな顎を開き、こちらの腕へ一斉に群がって来た。
成功
🔵🔵🔴
御門・結華
ユウヤと参加
ユウヤとルルのやり取りを無線で聞いて、無表情で溜息をつき
「ここから援護をすれば、飛行船が狙われますね」
飛行船から飛び降りると同時に右手でカードデッキから風の精霊のカードを引く
「お願い、シルフ」
召喚した風精の少女の浮遊魔法で落下の衝撃を抑え、戦場へ降り立つと精霊を戻す
「ありがとう、シルフ」
ユウヤが苦戦しているのを見ると、弓を構えて敵へ雷撃の矢を放つ
「大丈夫ですか。マスター?」
敵の攻撃を雷速の残像移動で回避しつつ、弓矢で迎撃します。
「あの武装を破壊しないと」
マスターとルルが時間を稼いでる間に、全力魔法で全エネルギーを圧縮した矢を右腕のオブリビオンマシンへ撃ち込む。
「ライトニングロア!」
ユウヤ・シュバルツ
結華と参加
敵をサーチしたルルから
「ユウヤ!あの子も操られているみたい!」「あの腕がオブリビオンって訳か」
少し思案した後
「ルル、暫くシルフィードを任せる」「……わかった。気を付けて!」
地面に着地、無銘の刃を抜刀し飛行船を狙わせないように挑発
「さて……そのおっかねぇ大砲、切除してやろうか?」
敵のビームにはカウンターで、無銘の刃の封印を解放してビームを切断し防ぐ。
「いくぜ『雷切!』」
正面から突っ込み、残像を囮に敵の後ろに回り込み、大砲を狙い
「貰ったぜ!」
敵が骸の海を放ったら距離を取り、見切りと残像で回避に専念
「ちっ、これが骸の海か!?」
結華の魔法とルルはシルフィードのビームで援護
「結華!」「ルル!」
●
ギムレウス部隊を無力化したユウヤは、轟音の中にいた。
「……!」
プリマドンナの砲撃だ。天上へ向けて放った砲撃だが、だからこそ全方向の大気が激震し、キャバリアのコックピットの中でも身体が痺れる感覚がある。
ユウヤは衝撃波に吹き飛ばされないよう、シルフィードの加速器を全開にして堪える。
『ユウヤ!』
激震の中、コンソールに接続した端末から声が聞こえた。ルルだ。
『あの子も操られているみたい!』
敵をサーチした彼女が言った意味は解る。この世界ではオブリビオンマシンと呼ばれる存在がパイロットの破滅的な思想へと狂わせるからだ。
つまり、
「あの腕がオブリビオンって訳か!」
シルフィードの視界がフォーカスする先、少女の右腕には不釣り合いなほど巨大なキャバリア用装備があった。
プリマドンナ。少女を狂わせた原因となったオブリビオンマシンを、破壊すれば少女に元に戻るが、
逆に言えば、プリマドンナだけを破壊しなければならないってことだ……!
ユウヤは自分よりも、結華よりもずっと小さな少女を見て、しばらく逡巡した後、
「ルル、暫くシルフィードを任せる」
迷わなかった。
●
結華は飛行船の屋根の上で、地上からの無線を聴いていた。ユウヤとルルのやり取りだ。光砲が飛行船の至近を通ったことで通信は乱れて途切れ途切れだったが、聞こえる。
ユウヤがルルにシルフィードの操縦を提案し、
『…………』
ユウヤのもう一人の相棒である電子妖精が息を飲んだ。そんな気配が通信の向こうから来た。
彼女のことだ。ユウヤの提案に対し、端末の液晶の中で様々な表情やモーションをしたのかもしれない。それらはきっと困惑や驚き、心配などに類するものだろう。
ルルは無邪気ですからね……。
感情をすぐ表に出す。私とは違いますね、と結華は思う。だが、
『……わかった。気を付けて!』
マスターを信頼しているのは、私と同じですね……。
ルルの答えを聞きながら、結華は無表情で溜息を吐いた。そんな吐息の音を二人の会話へ参加する挨拶代わりとして、言う。
『ここから援護をすれば、飛行船が狙われますね』
『ああ。結華もありがとう』
何だか会話として繋がっていないように感じるが、結局のところ、結華がユウヤの援護を変わらず続けるということを、彼が言外に汲み取ったのだ。それはルルもで、心配そうな声音で通信を寄こす。
『結華も気をつけてね!』
『ええ。ご心配ありがとうございます、ルル。私なら大丈夫です』
そうだ、大丈夫だ。
だから行った。
「――お願い、シルフ」
足を踏み出し、飛行船の屋根の上から飛び降りたのだ。
●
プリマドンナの少女は見た。
「……?」
頭上の飛行船から何かが落下してきたのだ。その正体が、先ほど飛行船からギムレウスや地雷を狙撃していた狙撃手だと、特徴的な銀髪ですぐに解った。
「…………」
チャンスだと、そう思った。何しろ相手は重力加速のみの自由落下状態だ。止まっている的を撃つのに等しく、プリマドンナの照準は既に捕捉をしている。だが、
「先にこっちか!」
狙えない。現れた猟兵が一人ではなく、二人、
「いや、三人か!?」
いきなりビーム砲が連射されてきた。シルフィードと呼ばれたキャバリアからだ。何とかプリマドンナで迎撃しながら叫ぶ。
銀髪の女猟兵が飛行船から降下するのと同時。今射撃を送ってきたキャバリアから、茶髪の少年の猟兵が飛び出したのが見えた。
彼は今地面に着地し、しかしシルフィードは動き続けている。
……遠隔操作か?
キャバリアやキャバリアのパイロットには、それが出来るものが存在する。少年がコックピットから降りた際、コックピットの内部には他に姿が見えなかった。そんな風に思考を巡らせていたら、
「さて……、そのおっかねえ大砲、切除してやろうか?」
少年が身体を起こし、抜き放った刀の切っ先をこちらに向けた。
明らかな挑発だった。
だが先のキャバリアからの射撃といい、意識を一瞬でも頭上の猟兵から切り離されてしまった。
「チッ」
もう、頭上の猟兵は狙えない。さっき、視界の端で降下中に右手でカードを抜いたのが見えた。それによって何らかの術式を展開したのか、身体の周囲の大気を操作して自身に加減速を加えているからだ。
照準の再計算をしていたら、少年が詰めて斬り伏せて来るだろう。
溜息一つと共にシルフィードへ牽制の射撃を放った後、プリマドンナの砲口を茶髪の少年に向き直し、
「で? その刀一本でどーすんだ!?」
一撃を正面からぶち込んだ。
●
『……ッ!』
ルルは牽制の射撃を回避しながら、シルフィードの中で息を飲んだ。シルフィードの視覚素子が得た映像には、光撃の正面にユウヤが立っているのが見える。
壁のように押し迫る光に対して、彼が持っているのは抜き身の刀一振り。銘は無い。”無銘の刀”とユウヤは呼んでいる刀だ。
莫大量の光と、文字通り”太刀打ち”する気なのだ。はたから見れば異常な光景だろうが、
信じてるからねユウヤ……!
疑わない。
見える。ユウヤの持った刀に、魔力が通された。だがそれも、一瞬の最中だった。
「――――」
次の瞬間には刀も、ユウヤも、何もかもが光の濁流の中に飲まれていった。
●
風の精霊シルフの力を借りて降下の最中、結華は迷わなかった。
高度にして三百メートルを切ったところでプリマドンナの少女が、ユウヤに対して砲撃を水平射撃で撃ち込んだのだ。
空からの視界だと、戦場の様子が良く解った。
大地の上にある二つの点。その片方の点から光が弾けたかと思えば、地表にラインを引くように青光が一直線に伸びていく。その光は逆側の点である、ユウヤに迫り、やがて接触。
光が、ユウヤを一飲みにするかと見える。だがそうはならないことを結華は知っている。
「――切り払います」
降下の風に包まれる中、呟いた言葉の通りだった。
「――!」
ユウヤに触れた瞬間、光が二分されたのだ。
彼の身体を中心にして左右方向へ、垂直に割断されていく。
十メートル越えの光の壁が、刀一本の切れ味によって断たれ、屈折し、軌道を曲げていくのだ。
光によって抉れたのはユウヤの両サイドの大地だけであり、彼が立っている場所から背後は扇状に大地が現存していた。
防いだのだ。
「――はぁ!?」
プリマドンナの少女の驚愕と困惑の叫びが聞こえるころには、高度は百メートルを切っていて、結華も着陸体勢に移っている。
「――ありがとう、シルフ」
扇形の地面へ緩やかに着陸出来たことを風の精霊に感謝し、結華は精霊を入れ替えた。
「――――」
霹靂閃電。一瞬にして、結華の姿はギムレウス戦と同じく雷の騎士装となった。
それはユウヤ、結華、ルルの三人が攻勢にシフトしたことを示す合図だった。
●
「いくぜ、『雷切』!」
切り払ったプリマドンナの砲撃の残光が散る中、ユウヤは行った。一歩目から全力だ。
「……!」
高熱によってくり貫かれ、硝子化した大地の上を疾走していく。安定した足場ではないし、転倒でもすれば鋭利な路面によって重傷もありえるような場だったが、彼は身を低く屈め、速度重視の姿勢でただ前進していった。
「ああ、クソ! なんだその刀!?」
プリマドンナの少女は、そんなユウヤからバックステップで距離を取りながら、迎撃の速射を放つが、
「!? 残像!?」
彼女が狙った位置に、ユウヤは既にいなかった。
少女の言う通りそれはユウヤの残像だった。彼の類稀なる速度もそうだが、硝子の路面で屈折した光をも利用した技術だったのだ。
「……!」
本当のユウヤがどこにいるか。プリマドンナの少女は慌てて探すが、それは今、外れた砲撃によって舞い上がった硝子の破片に、反射として映っていた。
「後ろ!?」
「――貰ったぜ!」
少女が振り向くより早く、ユウヤは振りかぶった”無銘の刀”を少女の右腕へ振り下ろした。その刹那。
「アアアァアァァ!」
絶叫するような叫びと共に、少女が自分の足下に向けてプリマドンナを発射した。狙いも無茶苦茶なその攻撃は、しかし光によるものではなかった。
「ちっ、これが骸の海か……!?」
ユウヤの視界の中、砲口から噴出した骸の海が周囲に満ち広がったかと思えば、
「セェーーフ……!! これでお前の自慢の刀も、無効化だ!」
絶大な切れ味を誇った”無銘の刀”が、否、『雷切』が鈍い音を立ててプリマドンナの砲身に弾かれた。
「くそっ……」
『雷切』を引き戻し、体勢を立て直そうとしたユウヤだったが、
「――遅いぜ」
砲口が、ユウヤの顔前にあった。
直後。光が走った。
しかしそれは、プリマドンナの砲撃ではなかった。
「大丈夫ですか。マスター」
「結華!」
騎士装の結華が放った雷の矢だった。
●
結華は視界の先で、己の放った矢がプリマドンナの砲身を横合いから打撃し、狙いを外させたのを見た。
「チッ! 飛行船の狙撃手か!」
車線事照準をずらされたプリマドンナの少女は砲の発射を取り止め、骸の海によって無力化したユウヤよりも、遠距離装備の結華を危険視し、砲撃を送った。
「遅いです」
しかし、やはり結華もユウヤと同じく、迫る砲撃を残像によって回避した。
雷光のような光と共に次々と移動するその姿は、正しく雷のような瞬発の連続だった。
結華は思う。
あの武装を破壊しないと……。
少女が狂化している原因は、あの腕部兵装だ。
今、ユウヤは近接武器を無力化され、ルルの操るシルフィードでは流石にプリマドンナだけの精密な破壊は難しい。
ならば自分だと、結華はそう思い、なのでそれを叶えるための魔力を練り上げ始めているのだが、
「……!」
プリマドンナの少女もこちらを警戒して、先ほどから砲撃の連打を止めない。
雷速の移動によって回避は出来ているが、このままでは全力の魔法を放つため、魔力を圧縮する時間が確保できない。
どうするか。そこでユウヤが声を挙げた。
「ルル!」
ユウヤがプリマドンナの少女から距離を取った後、ルルの名前を叫ぶと、
『はいはーい!』
「! チッ、面倒臭ェなあ!」
彼女が操縦するシルフィードから、次々に援護射撃が寄越された。砲を放とうとした少女は回避と防御に追われ、結華への砲撃の手が止む。
チャンスだった。
「――――」
その瞬間を逃さず、結華は己の全魔力を一気に圧縮した。
一本の矢へと。
「……!?」
周囲への放電現象は今までとは比べ物にならなくなり、大気の弾ける雷鳴が大音となって轟いている。異変に気付いたプリマドンナの少女が結華へ意識を向けるが、
「させるかよ!」
『こっちこっち~!』
ユウヤとルルがそれを阻止し、やがて魔力の圧縮は果たされた。
全てを込められた一本の矢は、内部に込められた膨大なエネルギーによって、荒れ狂う雷そのものといった様子だった。
それがつがえられたことで、呼応して荒み始めていく紫電の弦を引き絞っていく。そうして弦の張りが頂点に達した時、
「――ライトニングロア!」
結華がプリマドンナに向け、矢を放った。
●
何もかもが吹き飛んだ。そのことを戦場にいた全員は知った。
「――――」
まず消え失せたのは光だった。莫大量の雷光によって視界は稲光が照らす白と、その影である黒の二色のみとなった。
そして次は音だ。大気という壁は一瞬にして高温で焼き割られ、最早人の可聴域を超えた。
光と音が吹き飛んだのだ。そしてそんな静寂な二色空間で、ユウヤと結華、ルルの三人は見た。
プリマドンナの少女の右腕、腕部兵装に光が衝突したかと思えば、次の瞬間。
「……!」
光が腕部兵装だけを貫き、破砕し、そして過ぎ去っていったのだ。
●
何もかもが吹き飛んだことを、戦場の全員は知った。
光も、音も、そしてオブリビオンマシンもだ。
やがて世界に光と音は戻って来たが、しかしオブリビオンマシンの姿は二度と現れなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『キャバリアの入手』
|
POW : 破壊力に優れたキャバリアを選ぶ。
SPD : 敏捷性に優れたキャバリアを選ぶ。
WIZ : 特殊能力を持ったキャバリアを選ぶ。
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
五隻の輸送飛行船が、帝国の発着場へ着陸した。
飛行船に巡らされた格調高い装飾やデザインは、どれも一様に先の戦闘で薄汚れていたが、何処にも傷は無かった。
どの飛行船も、丘陵地帯を無傷で抜けてきた証だった。
「――この輸送船団を代表して、謹んでお礼を申し上げます」
ギムレウス部隊のパイロット達、そして褐色の少女を乗せたことで満載となった飛行船から降りると、艦長が恭しく猟兵達に頭を下げた。
艦長は言う。
「皆様方は我々、引いては女王陛下と帝国への大いなる助けとなりました。しかし……」
しかし、と。
「……状況は非常に特殊です。
何故、皆様が急に現れたのか?
何故、皆様は機体だけを破壊し、パイロットを救出したのか?
――何故、そうすることでパイロットの精神が元に戻ることを知っていたのか?」
艦長は言う。
「皆様方は我々の大いなる助けであり、そしてこの件に関しての重要参考人です。――ご同行をお願いしたく思います」
発着場に自動車が次々に到着した。
●
それからは長い、長い時間だった。
「成程……。――では、もう一度同じことを聞きますが……」
発着場に着いた送迎用のリムジンの中、帝国の役人に質問攻めにされ、
「成程……。――では、もう一度同じことを聞きますが……」
帝国首都に着けば、専用当局にてやはり質問攻めを受け、
「ご協力ありがとうございます。少々の間、この部屋でお待ちください。ご用命があれば外の者まで……」
豪勢な、恐らく迎賓室か何かで待機を命じられ、そして、
「――お待たせしました」
少々という時間が大幅に超過した後、役人が来た。
「皆様の処遇が決定しました。
――偉大なる女王陛下の慈悲深きお言葉を、代わりに宣する栄誉を頂けたことを神とそして陛下に感謝し、私がこれより皆様への報告を始めさせていただきます……」
長い、長い報告だった。
●
要約すると、こうだ。
・帝国領土内の武装や戦闘行為、またそれによって生じた地形や資産的な損害について、一律に不問とする。
・この適用は”猟兵”という個人・集団に対して、以降も続く。他の小国家に対しても、例え敵対小国家であっても帝国が布告し、そうするように帝国側からも働きかける。
・以上は、オブリビオンマシンという存在が帝国、引いてはこの世界の危機であると判断し、彼の敵の撃破に対して”猟兵”が不断の努力と協力を約束する限り続く。
・また、捕らえられたギムレウス部隊や褐色の少女に関しての処遇は、オブリビオンマシンなど様々な事情を勘案し、最大限の酌量をすることを約束する。”猟兵”が己の損害も厭わずに選択した結果を損なわいことを約束する。
そして、
「――”新世界”の歓迎として、帝国からの感謝の贈り物がこちらです」
戦闘も、取り調べも、休息も、全てが終わった夜。猟兵達が連れてこられたのは、帝国首都にあるキャバリア格納倉庫だった。
「キャバリアを有していない”猟兵”の方は未だに多いかと思われます。この世界での戦闘、または他の世界での戦闘にもし必要であれば、この中のどれでもお求めください。最適な状態で、お渡しします」
莫大な広さの格納庫に鎮座しているのは、汎用的な量産型から特化したハイエンド機まで、様々な帝国キャバリアだった。
特徴としては飛行船と同じく格調高く、剣や盾といった武装からも騎士然としているように感じられた。
帝国の役人は言う。
「勿論、皆様の戦闘スタイルがあるでしょうから、キャバリアが必要が無ければそれで構いません。
もうすでにお持ちの方であれば、弾薬なり動力源であるエネルギーインゴット他の補充等。
はたまたもっとそれ以外の、キャバリアと全然関係ない何かを報酬としてお求めして下さっても構いません」
また、と。
「私共とすれば皆様方全員に、キャバリアにしろ何にしろ、何らかのお礼をさせていただきたいのが心情ですが、――世界は未だ、戦乱の最中です。
他の戦場に向かう方もいらっしゃるでしょう。ここに留まる必要もありません」
役人は少し困った顔で、……流石に、全員いなくなるのは勘弁してくださいね? と言いながら、
「――では、どんなキャバリアをお求めですか?」
フュテュール・ステラセ
・心情及び行動
※行動選択肢としてWIZのサイキック・ロードを選択
さて、ではエネルギーインゴットの補充をお願い致しましょうか
いえ、おそらくセイヴェリオスもエネルギーインゴットで動いているはずなので……いや、動いていますよねセイヴェリオス?
私、そこまではあなたのことは聞かされていないのですけれど?
後は、この国のお菓子等を少々いただければそれで……こら、セイヴェリオス、笑わないでくれます???????
・その他
アドリブ等は大歓迎です
セイヴェリオスも好きに喋らせて構いません
●
「そうですね、ではエネルギーインゴットの補充をお願いしましょうか」
「成程。そちらのキャバリア、セイヴェリオスの分ですね」
言葉の後、フュテュールの背後を帝国の役人が見上げていく。そこにセイヴェリオスが立っているからだ。
『――――』
自分に意識が向けられていることに気付いたのか、セイヴェリオスが微笑みながら会釈。役人は僅かに驚いた表情をした後、会釈に応えた。
「随分、自然な動作のキャバリアですね。それに人格AIも。戦闘の報告書通り、とても高性能な機体とお見受けします」
『あら、ありがとうございます』
微笑して礼をしてきたセイヴェリオスに最早驚くのを通り越したのか、役人は苦笑しながら近くにあったコンソールパネルを操作すると、格納庫の中へ大量のエネルギーインゴットを持ってこさせた。
「さあ、どうぞ。いくらでも持って行って下さい。これほどのハイスペックな機体だと特にご入用でしょう」
今の言葉を、そう意味のある言葉として役人が口にしていないことはフュテュールも解っていた。
セイヴェリオスがインゴットを大量消費するか否か。肯定すれば、セイヴェリオスの高出力や高性能だということを、否定すれば、セイヴェリオスがインゴットをあまり必要としない高燃費であり、やはり高性能だということを。
向こうとしては、失言とならないようどちらの意味でも取れる言葉を言うのが、役人としてクセとなっているのだろう。
だがそれも、前提としての条件がある。
目の前に束として積まれたインゴットの一つを手に取りながら、フュテュールは少し逡巡し、口を開いた。
「……いえ。おそらくセイヴェリオスも、エネルギーインゴットで動いているはず、なので……」
セイヴェリオスがこの金属を動力源として動いている。それが大前提だ。
しかしそれが確かかどうか、自分は知らない。知っていない。解らない。
どうしたものかと、そう思っていれば己の背後で
『――ふふっ』
笑い声が聞こえたが、これ間違いなくセイヴェリオスですね???
●
セイヴェリオスは、半目で振り返ったフュテュールに笑みを返した。
『どうしました、フュテュール?』
「……いや、”これ”で動いていますよねセイヴェリオス?」
手中にあるインゴットを見せてくる。自分も、そして記憶喪失の彼女ですらも、それがキャバリアの一般的な動力源だということは知っている。この世界の常識だ。中には他の何某を動力として動く機体もあるが、基本はあのインゴットだ。
「――ねえ? 私、そこまではあなたのことは聞かされていないのですけれど?」
その通りだった。言っていない。
今、半目を強くしてこちらを見上げてくるフュテュールという少女は、自分の記憶も、自分が乗るキャバリアのことも、何も知らない少女だ。知らないということばかりを知っている、世間知らずの娘だ。
それでもそんな彼女は戦いに身を投じ、あろうことか戦いに導くこちらを気にかけてくれている。贈り物と言うほど大層なものでは無いし、補充という面の方が強いだろうが。
それでも、手の中のものをこちらに掲げて、
「ちょっと? 聞いてるのセイヴェリオス?」
『ああ、すみませんフュテュール。ただ、私を動かすためにはフュテュールの力だって必要です。なのでフュテュール、貴女個人が望むものも報酬として告げた方が良いかと』
そう言えば、役人が用聞きのためにパネルを構えてフュテュールを見た。フュテュールの方も自分個人として頼むものを事前に決めていたのか、
「…………」
一瞬間を空けたが、しかしあまり迷わず役人へ言葉を告げた。
「それじゃあ後は、この国のお菓子等を少々いただければそれで――、こら、セイヴェリオス、笑わないでくれます???????」
こちらを見る半目がさっきより深くなりましたね……。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
(格納庫を歩きながらキャバリアを眺めている)
色々と我々猟兵の活動に便座を図っていただいた上に
さらにキャバリアもご提供していただけるとは
感謝の言葉をいくつ重ねても足りないほどです
(ジャイアントキャバリアの前でぴたりと止まる)
これは、拘束具...?誰も搭乗していないのに?
え?必ず暴走して危険だから?近々処分する予定?
...そうですか
({メトロノーム・コイン}でコインロールしながら)
どうやらこの子は強制的に戦わされるのが嫌だったようです
戦うなら何かご褒美が欲しかったと...
(顎に手をやり考え込む)
では私が踊ることの喜びを貴方に差し上げましょう
(役人に振り返り)
この子ください
名前は...{舞狂人形}で
●
「おぉ~」
クロリアは格納庫の中を興味深そうに歩いていた。視線は常に上。見上げながら、足を軽やかに運んでいく。
「色々と我々猟兵の活動に便座を図っていただいた上に、さらにキャバリアもご提供していただけるとは……」
辺り一面にキャバリアが並んでいる。重量級や、軽量級。接近戦を得手とするものから遠距離戦のものまで多種多様だった。
そんなキャバリアの林のような区画を、己は歩いていっている。
「感謝の言葉をいくつ重ねても――」
足りないほどです、そう言おうと思い、振り返ったら、
「――おっと、失礼しました。歩くのが早かったですね。申し訳ありません」
「い、いえお気になさらず」
役人が離れた位置で、早歩きに近づいて来る真っ最中だった。自分としては殊更早く足を前に出していた訳ではないが、キャバリアを見上げながら次々と見て回っていたので、歩幅が普段通りになってしまっていたようだ。
身長二メートル越えのストライドでは歩けば歩くほど差が広がる。なので役人を待とうと、少し立ち止まったところで、
ん……?
格納庫の奥に、周囲とは変わったキャバリアがあることに気付いた。
ここにあるキャバリアの多くは装甲のデザインから武装まで、騎士然とした機体が多いのだが、そこにあったキャバリアはむしろその逆だった。
「――――」
野生だ。武装も装甲も何も装備されておらず、代わりにある物が異常と言っていいほど身体を覆っていた。
「あれは……、拘束具?」
「……ああ、あのキャバリアですか」
追いついた役人が、こちらの背後から視線を合わせてくる。
「あれは……何です? 他のと雰囲気が違います。ここにあるということは誰も乗っていないのですよね。なのに拘束具を?」
何故、と問えば、
「あの機体はジャイアントキャバリアで、……その、はっきり言って運用を持て余しています」
役人は言う。
「ジャイアントキャバリアはプラントから稀に生産されますが、どれも暴走の危険性を孕んでいます。あの機体は特にその傾向が強く、必ず暴走するんです」
視線を振れば、頷きを持って返された。なので二人で近づいていく。
件の機体へ。
「あんなに拘束具を着けるということは、それほどひどい暴走なのですか?」
「はい。指示を聞かず、受け付けず、辺り一面を砕いて暴れまわります。誰かを適当に乗せて敵陣へ放り込む……それくらいの運用方法しか挙がりませんでしたが、騎士団を筆頭にそのような戦いは受け入れられない、と。
そろそろ調査研究も終わり、後は廃棄処分が待つのみです」
「……廃棄処分。そうですか……」
足を止め、見上げる。
「…………」
己の真上。頭上の先。俯いたキャバリアの頭部が見える。拘束具で顔すらも覆われ、表情すらも解らない。
「――失礼」
見上げたままポケットに手を突っ込み、中からある物を取り出した。
コインだ。数は一枚。それを手の中で回し、転がし、指の間を通していく。
「……?」
隣の役人が怪訝な雰囲気を出しているのは解る。だが、今、己が集中すべき”リズム”や”色”は彼ではない。
「――――」
見上げる。キャバリアを見上げながら、手元を見ずにコインを回していく。すると、コインが段々と一定のペースとリズムになっていく。手中で踊っていくのだ。
「……!」
なだらかに指の間を通っていったかと思えば、急に跳ねて逆の手へ飛ぶ。捕まえようと指を伸ばせば、震えて手の甲へ回っていく。いった。なのでそれを逆手の甲で追い、受けて、落ち着かせる。
キャッチ。
コインの”リズム”は役人のでも、ましてや手繰っている自分のものでもなかった。
「成程……。どうやらこの子は強制的に戦わされるのが嫌だったようです」
「……え? この子、というのは、この……?」
役人もこちらと共に見上げる。
「はい。戦うなら何かご褒美が欲しかったと……ふむ……」
コインを持った方の手を顎に当てて、しばし考え込んだ。そしてその後、もう一度キャバリアと視線を合わせた。
「――では私が、踊ることの喜びを貴方に差し上げましょう」
そこまで言って、己は役人に振り向いた。
「この子ください」
「え! い、いいのですか? 危険なのはお伝えした通りですが……」
「ええ、大丈夫です」
「うーむ……。まあ、貴女様がそれで良いのでしたらいいのですが……」
役人が付近のタッチパネルで手続きを進めながら、あ、と声を挙げた。
「譲渡の手続きの際、この機体の名前を登録する必要があるのですが。どのような名前にされますか?」
「名前……」
それは、この狂える機体に己が与えるものということだ。
ならば、
「名前は……”舞狂人形”で」
役人が一礼。
画面に、名前が刻まれていく。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎
うーん、銃弾は食べなれているし、エネルギーインゴットは少し興味があるけどやっぱり特産品のキャバリアがいーよねー
どーれーにーしーよーかーなー?(一番派手な機体の前で足を止めて)これがいーかもー!
何か豪華だし、きっとデコレーションケーキのよーに美味しーに違いないわー
それじゃー貰っていくねー…え?協力してほしーのー?
別に構わないわよー、オブリビオンマシンからみんなを守る為にここに残って戦うのよー
とりあえずー、ひこーせんにくっついていた子達を置いていくねー
環境に影響しない程度に増えるからへーきへーき
あとはその辺で適当に暮らながらしオブリビオンマシンを撃退しておくのよー
●
役人は少し困惑していた。前に立った猟兵が少女だということは解るが、少し、
長身というか全体的に、大柄? で……。
身長にして二メートル越え。つまりキャバリアの半分足らず程度の彼女は、
歩き方というか足音が、カサカサ? で……。
『うーん……』
買い物に悩む少女のように気軽に唸って、
それが音ではなく脳内に、思考に? で……。
そして、
『銃弾は食べなれているし、エネルギーインゴットは少し興味があるけどやっぱり、特産品のキャバリアがいーよねー』
何か不穏なことを言っている。
●
アリスはキャバリアの間をうろうろ歩き回っていた。
『どーれーにーしーよーかーなー?』
どれもこれも魅力的だ。武装が少ない量産型などはスナック感覚で手軽にいけそうだが、やはり戦闘終わりはガッツリいきたい。
なので、足は必然と重装甲やハイエンド機の方へ向いて行く。
『どーれーにーしーよーかーなー?』
忙しなく見渡し、見比べていく。やはり重装機は武装が豊富で、食いでがありそうだった。ハイエンド機は素材にこだわっていることが一目瞭然。どれもこれも魅力的だったが、
『んー?』
その中で、一番派手な機体が目についた。ので、立ち止まって見上げていれば、後ろから役人が声をかけてくる。
「こちらが、お気に召されましたか?」
『そうねー。このキャバリア、何か豪華ねー』
武装は遠近共に充実しており、素材も勿論一級品。装甲の上に走るデザインはラインの一本にも抜かりは無かった。
「ええ、そうでしょうとも。こちらは帝国の最新作のキャバリアです。最新の装備が多数搭載されており、各騎士団の団長をはじめ、騎士団の要職者の方などにご利用されております」
なるほどー、と己は頷く。
『デコレーションケーキのよーに美味しーに違いないわー』
「……デコ、はい? えっ?」
『それじゃー、これ貰っていくわねー』
「え、あ、はい。……えっ?」
背後で戸惑った声音が連続するが、そんな事より自分にとっては目の前のキャバリアだ。
やっぱり爪先からいくべきかしらー……。
やはりキャバリアの顔面は文字通り機体の”顔”なのか、一層手が込んでいる。ケーキで言うなればトップの砂糖菓子。お楽しみとして取っておくべきか、と思ったが、バランスを考えて食べないとキャバリア自体が倒壊しそうだとも思う。
『悩ましいわねー……』
ああでも、今は格納庫に懸架されている状態だからこのまま食べれば安定するかしら、と思っていたら、
「えっと……まあ……、帝国の最新型ですからね。このキャバリアを使えば大きな力となるでしょう。是非、世界平和にご協力をお願いします」
『協力? さっきも言ってたわねー。別に構わないわよー、オブリビオンマシンからみんなを守る為にここに残って戦うのよー』
そう言うと、役人があからさまに驚いた顔をした。
「残ってくださるのですか? それは……願っても無いことですが。ええと、ちょっと待ってください、その件に関してはまた手続きを……」
近くのパネルで、恐らくこちらへの譲渡手続きをしていた役人は、自分の携帯端末を取り出すと並列で何やらの作業を始めた。
「えっと、具体的な滞在期間や、場所についてお聞かせ願えますか? それと貴女様だけでしょうか? 他の猟兵の方などは……」
それを聞いて自分は何回目かの、なるほどー、という言葉を思考に浮かべた。仔細を知りたがっているのだ。なので言う。
『ずっといるわよー。場所は決まってないわー。街でも原っぱでもスクラップ場でもどこでもいいわよー。他の猟兵は解んないわねー。とりあえず私だけだけど増えるわー』
「成程成程……期間は永住で。住居は……えっと、未定で・アリス様お一人。そして――、はい?」
『とりあえず、ひこーせんにくっついていた子達を置いていくわねー』
格納庫の外に張り付いていた”妹達”が、扉を開けて入ってきた。
●
「……!?」
役人は困惑していた。それもかなりだ。
突如格納庫に入ってきた”生命体”が蜘蛛のような姿をしているが、
長身というか全体的に、大柄? で……。
体高にして二メートル越え。つまりキャバリアの半分足らず程度のそれらは、
歩き方というか足音が、カサカサ? で……。
「……!」
金属を擦り合わせるような鳴き声を放って、
それが私の脳内では、思考に聞こえていて……。
聞こえる。
『環境に影響しない程度に増えるからへーきへーき。あとはその辺で適当に暮らながらしオブリビオンマシンを撃退しておくのよー』
何か不穏なことを言っている。
大成功
🔵🔵🔵
ノインツィヒ・アリスズナンバー
あークッソ疲れた……なんで何度も同じこと聴くかな。
連絡系統どうなってんじゃこの国は。
え、キャバリアくれるの!?
やったぁ☆私ちゃんタダでキャバリアゲット☆
じゃあ私ちゃんはこのキャバリア!
指揮官向けの索敵と通信能力が高いこの子ね!
んでもって、これカスタムできる?
出来れば思い切り音声出力を上げてくんない?
ライブステージにも出来るでしょ?私ちゃんアイドルなので。
名前は……イドラ。
アイドルの語源。偶像の意味。
この国では、そんなのも必要でしょ?
●
あークッソ疲れた……。
ノインツィヒは疲労で天を仰いでいた。件の戦闘について今まで聴取を受けていたのだ。
「なんで何度も同じこと聴くかな……」
送迎のリムジンから始まった聴取だが、質問の内容は結局のところいつも同じだった。つまり、
あの丘陵地帯で何が起こって、何をして、どうなったか……。
なのでノインツィヒは何度も伝えた。飛行船を護衛し、キャバリアを貸与してもらい、そして敵を打倒。借りたキャバリアも傷一つ無く返した、と。
「――連絡系統どうなってんじゃこの国は……」
口の中で小さく呟きながら、役人に従われるまま他の猟兵と歩いていく。アイドル的にちょっとカメラ映り悪い表情をしてるので位置としては列の最後尾だ。
次はどこで何するんだろー……。
聴取は終わった。処遇も告げられ、幾らかの休息もした後、さらに連行だ。
面倒じゃなかったらいいけど、とそう思いながら幾つかの扉を抜け、最後に大きなハッチを潜った先。そこに有ったのは多数のキャバリアだった。
役人の声が聞こえる
「――では、どんなキャバリアをお求めですか?」
「え、キャバリアくれるの!? やったぁ☆」
疲労が吹き飛んだので、グイグイ前に行った。
●
列の最後尾から飛び出したノインツィヒは、他の猟兵達と同じく付近のキャバリアを見て回り始めた。
「~~♪ 私ちゃんタダでキャバリアゲット~☆」
一番近くにあったのはハイスペックなキャバリアの区画だった。だがノインツィヒが求めるのはその中でも特別な存在だった。
「んーっと……、あ!あった☆」
「お決まりですか?」
さっきまでの疲労はどこへやらといった様子で動き回るノインツィヒだったが、役人も彼女の動向を見逃さず声をかけてくる。
「うん☆ 私ちゃんはこのキャバリア!」
「これは……、現行キャバリアの指揮官タイプですね」
「そ☆ 索敵と通信能力が高いこの子! んでもって、これカスタムできる?」
指で突くように示したキャバリアは隊長機という設計の通り、他のキャバリアよりも見た目が僅かに違う。キャバリアの見た目に直結するのはカラーリング等のデザインもそうだが、パーツもだ。
「例えば~、スピーカーとかを強化したりしたいんだけど☆」
「カスタム希望ですか? でしたらお目が高い! こちらのキャバリアは追加パーツなどの発展性も考えられた機体ですからね。その隊長機ともなればなおの事、様々な状況に対応できるようになっています」
して……、と役人が首を傾げながら。
「ご希望のパーツはスピーカー、ですか? あまり改造としては聞きませんが……、まあ可能でしょう。何だったら特注もさせますので、少々お時間がいるかもしれませんが。必ずご用意します」
「やった~☆ よろしく~☆ めいっぱい出力上げてね! 低音も高音も聞き分けられて、そして何より音声出力! それを重視してね☆」
「承知いたしました。今日の戦闘の報告を聞く限り、ノインツィヒ様にはそのカスタムが一番必要でしょうね」
役人の言葉に、ノインツィヒは片眉を上げて目を細めた。
そりゃ何回も同じ事報告したからな……。
と、少しは思いもするが、それとは別に気楽に笑う。
「まぁね~☆ 今日もそうだったけど、この子がいれば今日よりずっと、いろんな場所がライブステージにも出来るでしょ? 戦場に街に学校に病院に……どこでも行くから☆
私ちゃんアイドルなので☆」
「ええ、そう承っています。正しく戦場の歌姫ですね。それで……この機体の名前は?」
譲渡手続きを済ませながら、役人がノインツィヒにキャバリアの名を問うた。
空白の入力欄に、カーソルが点滅している。
「名前は……」
もう決まっている。だから言った。
「――イドラ。アイドルの語源。偶像の意味」
想像してみてよ、とキャバリアの顔を見上げながら。
「この国では、そんなのも必要でしょ?」
「……そうですね。戦乱が続くこの国家で象徴となる存在がどれだけ民を慰撫するかは、女王陛下の元にいる我々には強く理解できます」
イドラ。
入力された文字は、一拍の間を置いて確定。
「――よぉーし☆ んじゃカスタムまで待たせてもらおうかな☆ あっ! 横から色々口出しするからねっ☆」
「ええ、勿論結構ですとも。――ノインツィヒ様とイドラが、この世界の慰めとなることを心より願っております」
大成功
🔵🔵🔵
ユウヤ・シュバルツ
結華と参加
点検とエネルギーインゴッドの補給を受けているスマートな白銀色のクロムキャバリア『シルフィード』を見上げつつ、手元の端末に表示されているルルに
「ルル、機体の調子はどうだ?」「うん!大丈夫!完璧だよ!」
「よし。あとは」
担当の役員に朗らかに話しかけ
「うちの子への補給ありがとうございます!」
ユウヤの癖に合わせ、高機動型に仕上げたシルフィード。今後の戦いを考えると換装用のフレームを作るための情報が欲しい。
「せっかく、近くに優秀な帝国のキャバリアもあるんだし、少し見ておきたいかなぁって」
水中型、騎士型、重武装型、いろいろなフレームのキャバリアを見といて損はないぜ。
「結華やルルもそう思うだろ?」
御門・結華
ユウヤと参加。
通常の操縦をするクロムキャバリアや量産型キャバリアの適性がないことが判明している結華は、機体のチェックとルルとの会話に集中しているユウヤの後ろに控えています。
「マスター。帝国の方がお話があるとのことです」
ユウヤが調子の良いことを言うたびに無表情にため息を隠しながら、マスターの邪魔をしないよう控えます。
ユウヤから話を振られたら
「はい。これからもオブリビオンマシンと戦う以上、キャバリアについて知ることは大事だと思います」
案内される最中に、サイキックキャバリアの話に興味を示します。
「古代魔法帝国……魔法で動く機械、ですか」
魔動人形である自身と重なるところが気になり、珍しく色々と尋ねます
●
結華は格納庫の中で、ユウヤの側に控えていた。否、正確にはユウヤと、
「ルル、機体の調子はどうだ?」
『うん! 大丈夫! 完璧だよ!』
彼の愛機であるシルフィードの側にだ。今、白銀のクロムキャバリアは格納庫の空きスペースに懸架されてメンテナンスを受けている。
作業員や作業機械がシルフィードの外部に張り付いて、消耗したエネルギーインゴットの補給、そしてシルフィード全体の点検を進めているのだ。
それを内部から補佐しているのがルルだった。シルフィードの中にアクセスした彼女は、文字通り”内部”からの視点でメンテナンスに協力している。
「凄い機体だ……。フレームからして軽量機なのは間違いないが……」
「ああ、このスラスター……。それに右腕のビーム砲だって凄い出力だ! どう出力配分してるんだ……?」
『ふっふーん! 凄いでしょ!』
今もメンテナンスをしている作業員達の感嘆とも言える感想に無邪気に答えながら、しかし作業の手は淀み無かった。結華は事前にキャバリア操縦の適性が無いことは解っていたが、そんな結華でも整備作業が順調に進んでおり、このまま任せていて大丈夫だということは明らかだった。なので、
「あとは……」
「――マスター。帝国の方がお話があるとのことです。こちらです」
と、誰かを探すように首を回したユウヤに、結華は言葉を送った。彼の側に控えていた結華は彼が次に何を望むか察して、先んじて帝国の役人を見つけておいたのだ。
「ああ。ありがとう結華」
いえ、と短く返事だけをして、役人の元へ歩き出したユウヤの後ろを結華はついて行く。
「今回はうちの子への補給、ありがとうございます!」
「いえいえ。それを言うならこちらこそ。今回は我が国の飛行船を救っていただいて……。して、報酬の整備や補充に関してはご満足いただけましたでしょうか?」
「それはもちろん!」
会話を始める二人の側で、結華は静かに控え続けている。
●
ユウヤは役人が自分から視線を外すのを見た。その先にあるのは己の愛機であるシルフィードだ。
「ユウヤ様のシルフィード……。あれは非常にハイスペックで何より専門性の高い機体だ、と先ほどメンテナンスを請け負ったここのスタッフが申しておりました。抜かり無いサポートが出来ているようでしたら幸いです」
その言葉でユウヤもシルフィードへ振り返った。
「…………」
結華が一歩引いて視線を開けてくれた。そのことに軽く頷いて礼として、
「そうですね。シルフィードは確かに高出力で高機動です。だけどそれも、俺の癖に合わせて仕上げたからなんです。電子妖精のルルも補佐的に操縦することもありますが、基本は俺です」
「ええ、報告で聞きました。最後はルル様も含めたコンビネーションで、”プリマドンナの少女”を制したと。成程……。シルフィードは完全にユウヤ様の専用機なのですね」
役人の言う通りだった。シルフィードはユウヤの専用機であり、彼の癖を把握した運用となる。なのであのような高機動や高速飛行などが可能なのだが、それは裏を返せば、
「スタッフの皆さんが言う通り、それに特化してるって事ですね」
彼らがシルフィードを『専門性に特化している』と評価したのも、量産機や汎用機、そしてワンオフ機なども見た者達だからこそ下せた包括的な評価なのだろう。
そしてそんなキャバリア達が集まるこの格納庫に足を運べたのは、ユウヤにとっても大きなチャンスだった。
「あの、もし良かったらシルフィードの整備の間、ここのキャバリアを見せてくれませんか?」
「? ここのキャバリアをですか? 勿論構いませんが……」
役人の声は怪訝というよりは不思議そうだった。報告の上と言えどもシルフィードの力を知っているので、ユウヤがさらにキャバリアを求めたのが不思議だったのだろう。
「この世界でオブリビオンマシンと戦う上で、いろんな機体を見ておきたいんです。なので、せっかく近くに優秀な帝国のキャバリアがあるなら、見ておきたいかなぁって」
この世界での戦闘となると相手もキャバリアなのだ。今後の戦いでは様々なシチュエーションが考えられ、それに対応するため換装用のフレームを作るための情報が欲しい。
「結華やルルもそう思うだろ?」
●
ユウヤと役人の会話を聞いていた結華は、ユウヤが調子のいい事を言うたびに溜息を隠していた。
……ふぅ。
「結華やルルもそう思うだろ?」
無表情という仮面の下で幾度かの息を吐いた後、ユウヤが自分とルルに言葉を向けたので、結華は頷いて答えた。無表情のままだ。
「はい。これからもオブリビオンマシンと戦う以上、キャバリアについて知ることは大事だと思います」
『ルルも賛成~!』
「それは良かった。帝国の者として、皆様に帝国のキャバリアをご案内出来て光栄です。ささ、こちらへ……」
満場一致だ。その結果に役人が笑顔で結華とユウヤを先導していく。
……あ。ルルも見てますね。
シルフィードの視覚素子が、自分達を追っているのが結華には見えた。ルルは基本、ユウヤの契約デバイスに内蔵されているが、今はシルフィード付きとなっているため同行が出来ないのだ。
「特化しているシルフィードに対して参考になるのは、やはり別方向の特化でしょう。ですのでこの辺りのキャバリアはいかがでしょうか」
役人が示した区画を三人が見た。
そこにあったのは確かにシルフィードとは全然別物の機体だった。
「これは……凄い流線形の機体だ。それに推進系に力を入れてるみたいだ。抵抗を落として推力を確保……。水中戦用の機体だな」
「マスター。こちらの機体は剣、それに盾を持っています。だけど装甲が重装甲でシルフィードとは正反対です。それに射撃武装があまり見当たりません。今までの中で一番、騎士然としている印象を受けます」
『わー! その隣はすっごい重武装! 見てみて、主砲に副砲にミサイルに……。うーん、もしシルフィードがあんな感じになったらロックとか検知とか大変そー……』
三人でそれぞれ感想を言い合いながら見学していると、役人の説明を聞く。
「おっしゃる通り、順に、水中型、騎士型、重武装型となっております。
水中ではなく空を飛翔し、重装甲ではなく高機動で、遠近の片方に特化ではなく、オールマイティな距離に対応できる。そんなシルフィードとは、これらの機体は差異が強く、だからこそ参考になるかと思います」
役人は説明を続けていき、
ん……?
その中に、結華の興味を引くものがあった。それは何か。
「帝国の中でもサイキックキャバリアは存在します。しかしあれは出自が古代魔法帝国時代のものであり、乗り手も選ぶので普及は――、って、どうかされましたか? 結華様」
「古代魔法帝国……」
おそらく字面の通りだろう。古代に存在した、魔法によって帝国を築けるほどの卓越した国家。そして、
「魔法で動く機械、ですか」
サイキックキャバリアという存在は端的に言えばそう表せる。そしてそれは自分自身にも当てはまるということは、結華もよく解っていた。
私は魔動人形です……。
それも古代遺跡で発見された、だ。自分には目覚めるまでの記憶が無い。発見者であるユウヤを”マスター”と認識してからの記憶しかないのだ。
ユウヤに保護され、ユウヤが「過去を探そう」と言ってくれ、そして彼と共に今へ至っているのだ。
「……結華」
「ええ」
隣のユウヤと目を合わせ、結華は役人に向き直った。
「すみません。もう少し詳しくお話を聞かせてください。……古代魔法帝国のこと、サイキックキャバリアのこと……全てを」
「え? え、ええ。勿論構いませんが、私も専門家というわけでは無いので、常識の範囲になりますが……」
何かが、解るかもしれなかった。
大成功
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