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セイクリッド・キャバリア

#クロムキャバリア #神聖王国グランティア

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#クロムキャバリア
#神聖王国グランティア


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●王国に降りかかる災厄
 神聖王国グランティア。クロムキャバリアに存在する封建制の都市国家であり、代々グランティア王家によって統治されてきた王国だ。
 その王権の証が、王家の血を引く者だけが操縦できるという、神から遣わされたと伝えられる人型ロボット――キャバリアである『神聖機グランティア』である。

 王宮の宝物殿に祀られた、純白の装甲の各所を黄金で装飾された『神聖機グランティア』。その機体が鎮座する宝物殿に、一人の少女が足を踏み入れた。
「ネティシア姫様、どうかご自重ください!」
「いいえ。お父様――国王陛下が病に倒れられた今、わたくしが『神聖機グランティア』を動かし、王国の正統な後継者であることを示さなくてはならないのです」
 『神聖機グランティア』の前で、ネティシアと呼ばれた少女が、古傷だらけの中年男性――グランティア王国親衛隊長に、つぶらな青色の瞳を向ける。
 王族が着る高級なドレスを身に纏ったネティシアは、丁寧に手入れされ腰まで伸びた絹のような金髪をポニーテールにまとめながら、親衛隊長にジトッとした視線を投げかけた。
「わたくし、パイロットスーツに着替えますので、向こうに行ってくださる?」
「で、ですが……。っと、しっ、失礼いたしましたっ!」
 宝物殿内でドレスを脱ぎだしたネティシアの前で、親衛隊長は慌てて後ろを向いて視線を逸らす。
 その隙に手早くパイロットスーツを着込んだネティシアは『神聖機グランティア』へと乗り込むと機体を起動させた。
「この『神聖機グランティア』を動かして正統な後継者であることを示せれば、きっと国の民たちや、病床のお父様も安心してくださるはずです」
「ひ、姫様っ!?」
 呆然とする親衛隊長を置き去りにし、ネティシアが操縦する『神聖機グランティア』はバーニアを全開にし、出撃用ハッチから飛び出していった。

 ――そして、その数時間後。
 神聖王国グランティアの王都は、ネティシアの乗った『神聖機グランティア』によって火の海と化したのだった。

●新世界へ
「皆さん。いよいよ新世界、クロムキャバリアへの道が開かれました!」
 グリモアベースで猟兵たちに熱い声で語りかけるのは、グリモア猟兵のアイ・リスパー(f07909)だ。
「クロムキャバリアは、キャバリアと呼ばれるロボットが存在する世界です! なんて素晴らしい世界でしょうか!」
 メカオタクなアイは、目を輝かせながらクロムキャバリアの説明をおこなう。
 『殲禍炎剣(ホーリー・グレイル)』と呼ばれる衛星兵器の暴走により高速飛行手段を失った人々が、各地に小国家を作りながら暮らしている。それがクロムキャバリアという世界だ。
 だが、新世界への好奇心に満ち溢れていたアイの瞳が、一転、憂いを帯びたものに変わった。
「今回、私が予知したのは、そのクロムキャバリアにある一つの都市国家、神聖王国グランティアで起きる事件です」
 アイがホロキーボードを操作すると、空中に一機のロボット――キャバリアの3次元映像が表示される。純白の装甲に黄金の意匠を施された威風堂々とした機体。その横に『神聖機グランティア』という名称が浮かび上がった。
「この機体はグランティア王家に伝わるキャバリアで、王家の血を引く者にしか操縦できないというものです。国王が病気に倒れ、国民たちが不安に駆られているのを見かねた王国の姫が、この機体に乗り込んだのです」
 姫の名はネティシア・グランティア。金髪碧眼で心優しい16歳の美少女だ。
 国王が病に伏し、国民たちが不安に苛まれているのを見かねて、彼らを勇気づけようと正統後継者であることを示そうとしたのである。
「ですが、ネティシア姫の行動は失敗に終わります。――『神聖機グランティア』の暴走という最悪の結末で」

 空中に投影されていた『神聖機グランティア』の姿が、禍々しい単眼漆黒のキャバリアのものに変化した。
「ネティシア姫がキャバリアに認められなかったのか、それとも何らかの事故なのか――原因は不明ですが、ネティシア姫の乗った『神聖機グランティア』はオブリビオンマシンと化してしまいます」
 単眼漆黒のオブリビオンマシン――『モノアイ・ゴースト』へと姿を変えた『神聖機グランティア』は、暴走して王都を破壊しようとするという。
「ネティシア姫はコックピットで意識を失っていますが、呼びかければ反応があるかもしれません! 市街戦になりますが、なんとか『モノアイ・ゴースト』を倒し、街への被害を防いでください!」
 オブリビオンマシンを倒しても、コックピットのネティシア姫は無事なので遠慮は不要だ。

「『モノアイ・ゴースト』は、倒されると半壊した機体で撤退を開始します」
 空中にグランティア王都近郊の地図が投影され、市街地から山岳部へと向かう矢印が示された。
 撤退するオブリビオンマシンは、山岳部へと通じる森林地帯に、召喚した無人のキャバリア部隊を展開。猟兵たちの追撃を防ごうとしてくるようだ。
「キャバリア部隊は、一機一機は弱いものの数だけは多いです。なんとか敵の監視網をかいくぐって、オブリビオンマシンを追跡してください」
 なお、敵は弱いので力づくでの突破も可能だ。隠密行動で行くか、強行突破するかは猟兵の得意な方法で構わない。

「キャバリア部隊を突破すれば、変形して真の姿になったオブリビオンマシンとの決戦になります」
 空中に投影された単眼漆黒の機体が、光の翼を広げビットを展開した機体へと姿を変える。そこに浮かぶのは『セラフィム・リッパー』という文字だ。
「このオブリビオンマシンを撃破すれば、『神聖機グランティア』は元の姿に戻り、ネティシア姫も助け出すことができます。皆さん、どうかグランティア王国の人々とネティシア姫を助けてください!」

 そう言うと、アイはホロキーボードを操作し、クロムキャバリアへのゲートを開いたのだった。

●惨劇の幕開け
「うう……お父様……国民の皆さん……」
 単眼漆黒のオブリビオンマシン『モノアイ・ゴースト』のコックピットの中では、純白のパイロットスーツに身を包んだ金髪碧眼の少女、ネティシア姫が意識を失ったままコックピットシートに拘束されていた。オブリビオンマシンにとって、パイロットは生体パーツにすぎないのである。
 王都の市街地に降り立った『モノアイ・ゴースト』は、街を火の海にせんと光学兵器を構えた――。


高天原御雷
 オープニングをご覧いただき、どうもありがとうございます。高天原御雷です。
 ついにロボものの新世界です。今回はクロムキャバリアの『神聖王国グランティア』という国を舞台としたシナリオをお送りさせていただきます。
 王都を破壊しようとするオブリビオンマシンと化したキャバリアから、姫を救い出して王国を助けてください。
 以下、シナリオの詳細説明です。

●一章:ボス戦
 ネティシア姫の乗るオブリビオンマシン『モノアイ・ゴースト』との戦いです。
 戦場は中世風の市街地ですが、住民は避難済みですので人的被害を心配する必要はありません。
 建物などへの被害を抑えると住民たちから喜ばれるでしょうが、破壊しても大丈夫です。
 なお、ネティシア姫はコックピットで意識を失っていますが、呼びかけることによってオブリビオンマシンの動きを妨害できるかもしれません。(プレイングボーナスが入ります)
 オブリビオンマシンを倒してもネティシア姫は無事ですので遠慮なく撃破してください。

●二章:冒険
 市街地から山岳地帯に向かって撤退したオブリビオンマシンの追撃をおこないます。
 森林地帯に無人キャバリア部隊が展開して警戒をおこなっていますので、隠密行動をしたり、強行突破したりといった自由な方法で警戒網をくぐり抜けてください。

●三章:ボス戦
 真の姿『セラフィム・リッパー』に変形したオブリビオンマシンとの決戦です。
 戦場は見通しの良くない山岳地帯ですが、敵は障害物ごと斬り裂く巨大剣や、障害物を迂回して攻撃してくるビット、高出力のプラズマビームなどを駆使して攻撃してきます。
 地形を上手く使うなど工夫したプレイングにはプレイングボーナスが入ります。
 オブリビオンマシンを倒せば、ネティシア姫を無事に救出することができます。

●NPC:ネティシア・グランティア
 グランティア王家の一人娘。金髪碧眼の16歳の少女。
 国民や父親を想う心優しい少女だが、それゆえに責任感が強く、無茶なことをすることも多い。
 国王が病に倒れたのを受け、国民を安心させるためにグランティア王家に伝わるキャバリア『神聖機グランティア』に乗り込んだ。

●キャバリアについて
 キャバリアをジョブやアイテムで持っていない場合でも、グランティア王国からキャバリアを借りたということでキャバリアに乗ることができます。
 なお、ユーベルコードをキャバリアの武器から放つことが可能です。
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第1章 ボス戦 『モノアイ・ゴースト』

POW   :    バリアチャージ
【バリアを纏った】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【支援機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    パルス・オーバーブースト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【オブリビオンマシン】から【光学兵器による一斉攻撃】を放つ。
WIZ   :    ゴーストスコードロン
自身が【敵意】を感じると、レベル×1体の【支援キャバリア】が召喚される。支援キャバリアは敵意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

秋山・軍犬
OPでフラグ立てまくり問題の姫様自重して?

はい、という訳で仕事前に
王宮の食堂でパインサラダ頼んだら
生暖かい目で、凄い頑丈そうな機体を
貸して貰えた軍犬、行きまーす!

【ヴュルギャリテ】
頑丈さとパワー、コミカルな運動性が売りの
スーパーロボットよりの量産型キャバリア

粘り強い泥臭い戦いが得意な事と
味のある見た目のダサさが相まって若手騎士からは割と不評

飛来するミサイルを受け止め投げ返したとかいう
眉唾伝説を持つ

秘水「一応、整備はしときましたけど
ハンドルとアクセルペダルで操縦できるとか
どこのザブ〇グルですか」(指定UCのメカニック)


機体の格闘と銃器を駆使して支援キャバリアに対応
(運転+グラップル+スナイパー)


神代・セシル
「このロボット、説明書はないんですか」とグランティア王国の人に聞く。

操縦は下手(ロボ音痴)すぎて、戦闘はうまくできない。
「得意の領域に入りたいですが、ユーベルコードが使える?」と思って、『1st Chapter of Grimoire』試しにを使う。
「しっかりしてください、姫様」

最後はある赤いボタンを見た。
「これは…アルティメット?」と思ってボタンを押し下げ、その後唐突に自爆する。

【アレンジ・アドリブ大歓迎】


サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!

こほん失礼しました
あんまり遊んでる余裕はなさそうですか?
えーキャバリア貸してくださーい!
ではいっきまーす!

武器はBXSビームダガー二刀流
クノイチらしい素早い身のこなしで翻弄してみせます(意気込みのみ)
相手の突撃はビームダガーをクロスさせて受け止めれば!
「痛ったぁぁぁぁぁぁ!?」
めっちゃ痛いんですけど!
でもこの間合い、もらいました!
「ネティシア姫!立ち上がって!愛する者を救うために!」
声は届くはず
隙ができたなら攻め時!
「手数こそ正義!参ります!」
【疾風怒濤】で一気に攻めまーす!

※アドリブ連携OK



●世に潜めないクノイチ
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜む忍び……」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)が、シュタッ、という静かな着地音と共にグランティア王国軍の格納庫に姿を現した。
 クノイチを名乗るだけあり、その登場は突然だった。格納庫に並ぶキャバリアの出撃準備をしている整備士たちや、キャバリアに乗り込もうとしている軍人たちは、まるで煙のようにどこからともなく現れたサージェに目を丸くし――。
「――なあ、あの子、随分派手な格好してるな」
「――それに幼そうな顔立ちの割に胸は大きいぞ」
 格納庫にいる男性たちにどよめきが走り、サージェへと視線が集まる。

 サージェが身にまとうのは、太ももが露出するくらい短い丈に、胸元も大きく開いた忍び装束だ。それは、必然、彼女の12歳とは思えない大きな胸を強調することになっていた。
 そんな格好をした金髪碧眼の美少女が現れて注目を集めないのも無理というもの。
 自身に集中する視線――主に胸元に注がれている――を意識したサージェは顔を真っ赤にして叫んだ。
「世に潜む忍びだもん! 胸が目立ちすぎて潜めないとか忍べないとか、そんなことないもん!!」
 ――どうやら本人も胸が大きくて目立つことは自覚しているようだった。

「あー、お嬢さん、少々よろしいですかな?」
 地団駄を踏んで悔しがるサージェに向かって、太く低い声が投げかけられた。
 声の主は顔中に古傷がある中年の男性だ。純白の軍服をカッチリと着こなした風体には威厳すら感じられる。
「私はグランディア王国親衛隊長のタングステンと申します。実は今――」
「知ってます。姫が乗ったキャバリアが街で暴れてるんですよね?」
 さらりと答えたサージェの言葉に、親衛隊長を始めとして、格納庫にいる全員の動きが止まった。
 その事実は、親衛隊長の命令で緊急発進しようとしているキャバリア部隊のメンバーしかまだ知らないはずだ。
「な、なぜ、そのことを……!?」
「それは、ひ・み・つ。情報を扱うこともクノイチの専門分野ですからねっ!」
 サージェは悪戯っぽくウィンクをすると、周囲を見回して呟いた。
「けど、この緊急発進の準備を見ると……あんまり余裕はなさそうですか? えーキャバリア貸してくださーい!」
「お嬢さん、誰とも知れない相手に軍のキャバリアを貸すわけには……」
 サージェに向かって親衛隊長が制止の声をかけようとするが、キャバリアに向かって駆け出した少女は止まらない。
 機体のコックピットに登るためのタラップを降ろしもせずに、サージェはひらりと跳躍してキャバリアへ乗り込むと機体を起動させた。そして発進デッキへとキャバリアを進ませる。
「あ、名乗るのを忘れてました! 私はクノイチのサージェ・ライト。猟兵です! この後も仲間たちが来ると思うので、よろしくです! ではいっきまーす!」
 その言葉を残し、サージェが乗るキャバリアは発進用カタパルトから出撃していった。

「あれが、規格外のパイロットと言われる猟兵……」
 親衛隊長とキャバリア部隊のメンバーは、嵐のように去っていったサージェをただ見送ることしかできなかった。

●伝説のパインサラダ
「まったく、フラグ立てまくりの姫様には自重してほしいっすね。あ、食堂のおばちゃん、追加でパインサラダとステーキくださいっす! ……え、品切れ? 仕方ないっすね。それじゃあ帰ってきたら食べるんで、準備しといてほしいっす」
「おい、見ろよアイツ……伝説のパインサラダとステーキを頼んでるぞ……」
 王宮の食堂で戦いの前の腹ごしらえをしていた秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)は、周囲のキャバリアパイロットや整備士たちから生暖かい目を向けられていた。
 この国の歴史の中で、パインサラダやステーキに関するエピソードでもあるのだろうか?

「なんか不思議な視線を感じたっすが、とにかくキャバリアを借りないといけないっすね」
 ミリタリールックに身を包んだ軍犬は、腹ごしらえを済ませると格納庫へと向かう。
 そこでは一足先に出撃した猟兵に続こうと、親衛隊長とキャバリア部隊のメンバーが出撃準備をしているところだった。
 格納庫にずらりと並ぶ鋼鉄の騎士。それらは街で暴れるキャバリアを止めようと、今か今かと出撃の時を待っているかのようだ。

「あのー、自分は猟兵の秋山軍犬という者っすけど、キャバリアを貸してほしいっす」
「ああ、あんた、さっき食堂でパインサラダとステーキを頼んでた……」
 軍犬の声に答えたのは、一人の壮年の整備士だ。どうやら、先程の食堂の一件を見ていたらしく、軍犬へ向けられる視線は生暖かい。
「親衛隊長から猟兵の方が来たらキャバリアを貸すよう言われています。さあ、こちらの機体を」
「なんか他の機体と雰囲気違わないっすか!?」
 軍犬が案内されたのは、ダサい――もとい、味のある見た目のスーパーロボット風の量産型キャバリアの前だった。

 整備士は咳払いを一つすると、機体の解説を始める。
「これは『ヴュルギャリテ』という機体でして、若手には不評なのですが、頑丈さとパワー、それに運動性には優れています。粘り強い泥臭い戦いが得意で、伝説では飛来するミサイルを受け止め投げ返したとか……」
「なんか眉唾っぽい伝説っすね……まあ、ありがたく使わせてもらうっす」
 そう言うと、軍犬は以前に契約した水精霊を呼び出す。
 格納庫の床に描かれた魔法陣から現れた上半身は人型で、可愛らしい顔をした美少女であった。
「マスター、秘水クティ、召喚に応じ参上いたしました」
 一礼したクティは召喚陣から出ようと、にゅるり、と一歩を踏み出した。

 ――にゅるり?

「なっ、しょ、触手!?」
 クティの下半身に生えた触手を見て、整備士が驚きの声を上げる。
 だが、クティは可愛らしく頬を膨らませながら、不機嫌そうに反論した。
「私は水精霊の亜種の触手の精霊で、実家は触手農家をやってます。いいですか、触手はエロいなんて誰が決めたんですか? 偉い人にはそれがわからないんですよ!」
 触手農家令嬢のクティ。彼女の実家は、軍犬が作ったタコ焼きをパクった……もとい、オマージュとした触手焼きの売上で大繁盛しており、そのお礼としてクティは軍犬と契約を結んだのである。
 そんな触手農家令嬢のクティは多才である。料理やメカニック、操縦といった技能はもちろんのこと、触手への耐性からか、狂気耐性と勇気も持っているという才媛なのだ。
「では、『ヴュルギャリテ』の整備はお任せください」
 クティは、長らく乗る者がいなかった『ヴュルギャリテ』に近づいていき、無数の触手の足の先端で工具を握る。触手農家の令嬢はメカの整備くらいできなければ務まらないのだ。
 クティの触手に握られたスパナやドライバーが閃く。
「な、なにっ、整備士歴40年の私の目で捉えられない……だと……!?」
「二本しか腕のない人間が、この触手精霊の私にかなうと思わないことです」
 壮年の整備士の驚愕の声に、クティが余裕の表情で返す。

 そして、待つことしばし。

「マスター、『ヴュルギャリテ』の整備が完了しました。しかしハンドルとアクセルペダルで操縦できるとか、男の子な感じがする機体ですね」
「助かったっすよ、クティ。それでは出撃するっすよ!」
「はい、マスター!」
 クティと共に『ヴュルギャリテ』に乗り込んだ軍犬は、機体を出撃カタパルトへと移動させる。
「秋山軍犬および秘水クティ、『ヴュルギャリテ』、出るっす!」
 王宮の3階に位置する格納庫のカタパルトデッキから、勢いよく『ヴュルギャリテ』が射出されていった。

 ――その射出されていく『ヴュルギャリテ』を見て、放心していた壮年の整備士がようやく我に返る。そして小さく呟いた。
「……あ、『ヴュルギャリテ』は地上専用機だから、カタパルト発進後の着地が難しいと伝え忘れたな」

 果たして、軍犬とクティは無事に着地できるのか!?

●魔女とロボットの出会い
「あの、ロボットを借りたいのですが……」
 青色の長髪を縦ロールにし、赤い瞳に片眼鏡をかけた少女、神代・セシル(夜の読書も大事です・f28562)が、本を小脇に抱えながら、おずおずと格納庫の整備士に声をかけた。
 セシルは、手作りしたドレスのような魔女服を身にまとい、頭には紫色のチャーミングな魔女帽を被っている。西洋妖怪である彼女だが、普段は人間と変わらない外見をしていることもあり、こうしている姿は魔法使いそのものだった。
「ああ、あなたも猟兵ね。話は聞いているわ、好きな機体を使ってもらって大丈夫よ?」
 セシルの言葉に、まだ年若い整備士の少女が答える。
「好きな……機体……」
 ぐるりと格納庫を見渡すセシル。
 ロボットというものがよく分かっていない彼女にとって、格納庫にずらりと並んだキャバリアは、どれも同じに見えた。
 この中から好きなものを選べと言われても、知らない言語で書かれたメニューから好きな料理を注文しろと言われているようなものだ。どんな料理が出てくるのか、注文してみるまでわからない。

 だが、格納庫を見回していたセシルの視線が、一機のキャバリアの前で止まった。
 セシルは、なぜかその機体に呼ばれたような気がしたのだ。
「あら? そのサイキックキャバリアが気になったの?」
「サイキック……キャバリア……?」
「ええ、搭乗者の超能力に反応して動くと言われている、古代魔法帝国時代のキャバリアよ。……ただ、グランティア王国建国以来、誰一人としてそのキャバリアを動かせた人はいないんだけどね」
 セシルが見上げる機体は、よく見ると長いこと整備されていないようで、装甲の塗料が剥げ落ちたり、金属部分に錆が浮いたりしている。それは、この機体が格納庫の隅で長い時を過ごしてきた証だ。
 だが、セシルの脳裏に今度こそ明確な声が響き渡った。
『汝、我と契約し力を求めるか?』
「はい。私はあなたの力を……借りたいです」
『よかろう。我の力を汝に貸そう』
 サイキックキャバリアの目に光が灯ったかと思った瞬間。機体の全身が魔力の光に包まれた。

「そんな、嘘……このキャバリアが動くなんて……」
 セシルと、驚きの表情を浮かべる整備士の前で、サイキックキャバリアを包む魔力光が収まっていく。
 そして、二人の目の前には、まるで新品のごとき純白の装甲で身を包んだサイキックキャバリアが立っていたのだった。
『さあ、我の中へ』
 セシルの身体が魔力光に包まれたかと思うと、ふわり、と宙に浮き上がる。
 そのまま少女の小柄な身体がサイキックキャバリアの中に吸い込まれていったかと思うと、気がつけばセシルは機体のコックピットの中にいた。
「ここが……ロボットのコックピット……? あの、このロボット、説明書はないんですか?」
「説明書なんてないわよ! このサイキックキャバリアが動くなんて、王国史上初めてなんだから!」
 白いキャバリアの外部スピーカーから聞こえてきたセシルの声に、整備士の少女が大声で叫び返す。
 だが、そのやり取りに割り込むようにセシルの頭にサイキックキャバリアの声が響いた。
『そのようなものは不要。汝が思う通りに我は動こう』
 その言葉に、セシルはごくり、と喉を鳴らし――。
「それでは、姫様を助けに行きましょう」
『承知』
 白いサイキックキャバリアは、両眼に魔力の光を灯し空中に飛び上がったかと思うと、コウモリの翼を思わせる羽を広げて格納庫から飛び出していった。

「……せ、整備長ーっ、大変ですっ、伝説のサイキックキャバリアがーっ!」
 格納庫に整備士の少女の悲鳴にも似た声が響き渡った。

●Turn1
 神聖王国グランティア王都、その市街地。
 そこに、漆黒の装甲に身を包んだ単眼のキャバリア――『モノアイ・ゴースト』が佇んでいた。
 紫紺のオーラを全身に纏わりつかせるその機体こそ、元々はグランティア王家に伝わる王権の証たるキャバリア『神聖機グランティア』だったものである。
 ネティシア姫が乗ったキャバリアは、オブリビオンマシンと化したことによって、その姿形までもが邪悪なものに変化してしまっていた。機体には、もはや『神聖機グランティア』の高貴にして高潔な面影は全く残っていなかった。
 気絶したままの姫を乗せた『モノアイ・ゴースト』は、手に持った銃を市街地に向けて引き金を引こうとし――。

「街を破壊させるわけにはいきませんっ! クノイチとして、素早い身のこなしで翻弄してみせますっ!」
 物陰から風のように飛び出したサージェの乗ったキャバリア。機動力を重視した軽装の機体が『モノアイ・ゴースト』に肉薄する。
 サージェの機体が両手に持つのは、緑色に輝く光の短剣、BXSビームダガーの二刀だ。その双剣が流れるような華麗な動きで『モノアイ・ゴースト』の装甲を斬り裂こうと迫り――見えない壁に当たったかのように弾き返された。

「なっ、バリア!?」
 驚愕の声と共に目を見張るサージェ。
 見ると、『モノアイ・ゴースト』の両肩に装着されたバリア発生装置が輝き、その全身を輝くバリアが包み込んでいた。
 『モノアイ・ゴースト』は、バリアを展開したまま、サージェ機に肩からの突撃を敢行してくる。
「突撃っ!? そんなもの、ビームダガーで受け止めれば!」
 とっさに、両手のビームダガーをクロスさせるサージェのキャバリア。
 だが、ビームの刃と『モノアイ・ゴースト』のバリアが衝突した結果、大きく吹き飛ばされたのはサージェの機体だった。
「痛ったぁぁぁぁぁぁ!?」
 建物に激突した衝撃でコックピットが大きく揺れ、ゴン、と頭をぶつけたサージェが涙目で叫んだ。

 だが『モノアイ・ゴースト』の攻撃はそれでは終わらない。
 市街地の建物の影に潜んでいた、『モノアイ・ゴースト』が操る支援キャバリアたちが、主に付き従うように陣形を組む。
 そして、いまだに立ち上がれないサージェ機を押しつぶして鉄屑に変えんと、全機で一斉突撃しようと背面スラスターを全開にし――。

「うわああっ、そこを退くっすよー!?」
 空中をすっ飛んできた、軍犬とクティが乗る『ヴュルギャリテ』が、支援機の群れに突っ込んだ。
 『ヴュルギャリテ』は、支援機たちを巻き込んでゴロゴロと地面を転がっていき……数十メートルほど道路に溝を作ってようやく停止した。
「痛いっす……。飛行能力がないなら、先にそれを言ってほしいっすよ」
「整備士さんの話を聞かずにカタパルト発進したのは、マスターの責任ですからね!?」
「いや、やっぱり発進はカタパルトからに限るじゃないっすか」
 地面に逆さに転がった体勢の『ヴュルギャリテ』のコックピットの中で軍犬とクティが言い争う。

 だが、そんな隙だらけのキャバリアを見逃すほど、『モノアイ・ゴースト』は甘くはない。
 『モノアイ・ゴースト』の瞳が妖しい輝きを放つと、数体の支援キャバリアたちが『ヴュルギャリテ』に銃口を向ける。
「って、なんか狙われてるっす!?」
「マスター、早く機体を起き上がらせてくださいっ! 私、こんなところで触手焼きになりたくありませんっ!」
「自分も焼かれるのはごめんっすよ!?」
 コックピットで慌てる軍犬とクティ。
 だが、支援キャバリアたちは無情にもライフルの引き金を引こうとし――突如として爆炎に包まれた。
「た、助かったっすか!?」
「あ、あれは……!?」
 燃え盛る支援キャバリアの残骸の上空を見上げ、クティが呆然と呟く。
 そこには――コウモリのような翼を広げた純白のサイキックキャバリアが飛翔していた。

 軍犬とクティが乗る『ヴュルギャリテ』を助けたのは、セシルが乗るサイキックキャバリアだ。
 王宮の格納庫から飛行してきた白きキャバリアは、『ヴュルギャリテ』を取り囲む敵の支援キャバリアを見て、戦闘態勢に入ったのだった。
「得意の領域に入りたいですが、ユーベルコードが使える?」
『ああ、汝の力、思う存分に振るうが良い』
 セシルが【1st Chapter of Grimoire】を発動すると、キャバリアの周囲に数百本のルーンソードが召喚された。ルーンソードは幾何学模様を描くように複雑な軌道で支援キャバリアに殺到すると、各機体を包囲し装甲を刺し貫いていく。
 装甲を貫通され、動力炉を破壊された支援キャバリアたちが、次々と爆炎に包まれていった。
 まるで魔神のごとき威容を誇る、セシルの駆るサイキックキャバリア。
「操縦は下手で上手く戦闘はできないですが……」
『心配は無用だ。動きは我が担当しよう。汝は魔力の扱いに集中するがよい』
 その言葉にセシルは小さく頷くと、『モノアイ・ゴースト』に向かって声をかける。
 白きキャバリアの外部スピーカーから、セシルの必死な言葉が響き渡った。
「しっかりしてください、姫様! そのようなロボットに負けては、だめです」
 セシル機は、空中を飛翔しながら新たなルーンソードを召喚し、姫の囚われている『モノアイ・ゴースト』へと向き直った。


「そうっすよ! 帰ったら美味しいパインサラダとステーキが待ってるんすから、姫様も一緒に帰るっす!」
「マスター、それってフラグ……」
 軍犬も機体を立て直すと、『ヴュルギャリテ』の腕や肩に装着されたバズーカやロケット弾を放ち、敵の支援キャバリア部隊を攻撃していく。
 量産型だけに安定した性能を発揮する『ヴュルギャリテ』の攻撃の前に、支援キャバリア部隊の防衛網に穴が空いた。

「敵の機体、見えましたっ!」
 そこに飛び込むのは、サージェのキャバリアだ。
 あえて軽いビームダガーのみを装備した機体は、その軽さを活かした高速機動で建物の死角から死角へと忍ぶように移動し、支援キャバリア部隊をくぐり抜けて『モノアイ・ゴースト』へと接近する。
「ネティシア姫! 立ち上がって! 愛する者を救うために!」
『愛する……者……? うう……』
 『モノアイ・ゴースト』の外部スピーカーから、苦しそうな少女の声が響く。
 それと同時に、一瞬、『モノアイ・ゴースト』の動きが止まる。
「この間合い、もらいました!」
 サージェは巧みにキャバリアを操作すると、敵のバリアに向かって次々とビームダガーを叩きつけていく。
 バリアによって弾かれながらも、その攻撃は見えない壁を徐々に斬り裂いていき――。
「手数こそ正義っ! そにっくぶろーっ!!」
 【疾風怒濤】による超連続攻撃を受けて『モノアイ・ゴースト』のバリアが甲高い音を立てて砕け散った。

「今ですっ!」
「了解っす! 全弾発射っすよ!!」
 サージェの言葉に、軍犬が『ヴュルギャリテ』の実弾兵器を乱射。バズーカとミサイルによる爆発が『モノアイ・ゴースト』の装甲を焦がす。
「行きます、Grimoire!」
 さらに白きサイキックキャバリアから無数のルーンソードが飛翔。『モノアイ・ゴースト』の装甲を削り取る。
「これでーっ!」
 サージェのキャバリアが二本のダガーを『モノアイ・ゴースト』に突き立てた。

 ――だが、それでも『モノアイ・ゴースト』は倒れない。

 装甲を傷つけられながらも真紅の一つ目に力強い輝きを宿した『モノアイ・ゴースト』は、さらなる支援キャバリアたちを喚び寄せた。

「ちょっ、これでも倒れないなんて!?」
「まずいっす、残弾が残ってないっすよ!」
 ビームダガーを手放したサージェ機と、全武装を撃ち尽くした『ヴュルギャリテ』に、支援キャバリアたちの銃口が向けられた。
 『モノアイ・ゴースト』の紅い単眼が勝ちを確信したかのように輝いて、支援キャバリアたちに一斉攻撃を指示しようとし――。

「これは……アルティメット?」
『汝! そのスイッチは……!』
 セシルがコックピットの赤いボタンを押した瞬間、緊急脱出装置が起動。セシルが地上に強制的に転移させられ――。
 白きサイキックキャバリアが、突如、その身を炎の玉に変えると、支援キャバリア部隊の中心に突進。地面に激突すると同時に大爆発を巻き起こした。

 サイキックキャバリアの自爆技によって支援キャバリア部隊が壊滅したのを見て、『モノアイ・ゴースト』は戦場から後退していったのだった。

「た、助かった―」
「危なかったっすね……」
 サージェと軍犬が安堵の息をつき、セシルに礼を述べる。
「ありがとう、ロボットさん。あなたの犠牲は忘れません……」
 青空でサムズアップしている白いサイキックキャバリアの幻を見上げ、呟くセシル。

 ――その脳裏に、聞き慣れた声が響くのだった。
『しばし休息すれば回復するゆえ、必要になったら我を呼ぶがよい』

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

霧島・クロト
市街地ねー。
普段と違ってちと融通効かなくて面倒なんだよなァ。

『貪狼の神骸』に接続――
ご注文は建物の被害抑えろっつー話だし善処はしますか。
俺のこの身体(キャバリア)と追いかけっこして貰うぜ。

まず【瞬間思考力】で
コクピットや市街地に被害出さん位置を【見切り】。
【高速詠唱】【属性攻撃】【マヒ攻撃】【呪殺弾】【2回攻撃】の
氷の魔弾で【フェイント】掛けつつ確実に削ってく。
で、数発でもカスれば良い。
あとは【指定UC】で勝手に凍り始めるしな。

ったく、お嬢さんに風邪引かせる趣味もねぇし。
この声が聞こえるってんなら
さっさと乗り込んだ程の覚悟示してくれるか?
成りたいのは悲劇の王女でもなんでもねーだろ?

※アドリブ可


雛菊・璃奈
わたしはこういうロボット持って無いしね…生身で戦わせて貰うよ…。

【九尾化・魔剣の巫女媛】封印解放…。

呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱、全力魔法】で敵の動きを拘束し、【呪詛】を送り込む事で機体の弱体化を狙ったり…。
後は敵本体及び召喚した支援機を【呪詛】を纏った無限の魔剣を放って攻撃したり支援機を迎撃・殲滅させつつ、高速飛行しながら攻撃…。
敵の光学兵器や支援機の攻撃を強化したアンサラーの反射【呪詛、カウンター、オーラ防御、武器受け、早業】で跳ね返し、逆に反撃すると同時に建物を防御したりもするよ…。

なるべく、被害は最小限に抑えた方が良いよね…。

姫様、頑張って…絶対助けるから…。だから、機体に負けないで…!



●機巧魔術士と魔剣の巫女
 猟兵たちの猛攻によって後退を余儀なくされた『モノアイ・ゴースト』。
 だが、まだ装甲に傷を付けられた程度の損傷だ。市街地を火の海に変えるには十分な戦闘能力を残している。
 漆黒のボディを持つ『モノアイ・ゴースト』の真紅の単眼が激しく明滅した。それは、暗号化されたレーザー通信を発するためのものだ。通信による指示を受け、支援キャバリア部隊――ゴーストスコードロンたちが『モノアイ・ゴースト』の元に集結した。
 王都の広場に集まったゴーストスコードロンたちは、銃火器を構えると市街地を蹂躙せんと進軍を開始した――。

 その様子を建物の屋上から眺める二人の猟兵が居た。

「市街地ねー。普段と違って融通効かなくて面倒なんだよなァ」
 ガシガシと白い短髪をかきながら呟くのは、漆黒の装甲に身を包み、紅いバイザーをつけたサイボーグの青年、霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)だ。
「ご注文は建物の被害抑えろっつー話だし、善処はしますか」
 チョコミント味の鯛焼きを齧りながら、ぼやくクロト。――彼は鯛焼き屋の主人にして、『鯛焼きに含まれる糖分はユーベルコードを活性化させる』という持論の持ち主なのだ。そして何より甘党なのであった。

「わたしはこういうロボット持ってないしね……。生身で戦わせて貰うよ……」
 クロトの隣に立つのは、銀色の長髪に同色の尻尾を風になびかせるクールな妖狐の少女、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)である。
 白地に赤い縁取りの露出度の高い巫女装束――九尾の羽衣を身に着けた璃奈は、魔剣や妖刀を祀る魔剣の巫女だ。ロボットを操ることはできないが、頼れる魔剣を手に携え、璃奈は銀色の瞳でゴーストスコードロンたちを無表情に見下ろしていた。
 ――その璃奈の視線が、クロトが持つ鯛焼きに向いた。狐の耳がピコピコ動き、尻尾がひょこひょこと揺れる。

「――食うか?」
「ん、ありがと……」
 クロトが差し出した鯛焼きを無表情でたいらげた璃奈は、小さな声で礼を言う。
 甘いものが好きな璃奈の口元には、わずかに笑みが浮かんでいたのだった。

●Turn2
「さぁて、この俺と追いかけっこして貰うぜぇっ! 出ろぉ、貪狼の神骸っ!」
 クロトが指をパチンと鳴らすと、生体型キャバリアの『貪狼の神骸』が地響きを立てて現れた。
 その巨体に向かって、クロトが屋上から跳躍する。
「貪・狼・接・続っ!!」
 『貪狼の神骸』の胴体に組み込まれるように、クロトのサイボーグボディが生体接続されていく。
 クロトを取り込んだキャバリアは、あたかも巨神のような神々しさを放っていた。
「ふんっ!」
 クロトの意思の通りに『貪狼の神骸』が腕を振るい、広場のゴーストスコードロンの一体を薙ぎ払う。『貪狼の神骸』に組み込まれ、巨体をあたかも自身の身体のように操るクロトの口元に獰猛な笑みが浮かび吼える。
「よーし、ボディとの接続も問題なし、だぜ!」
 『貪狼の神骸』の慣らし運転を終えたクロトが、ゴーストスコードロンの群れに突撃し、その機体を片っ端から吹き飛ばしていった。

「姫様、頑張って……絶対助けるから……」
 璃奈は、広場の奥でゴーストスコードロンたちに指示を出す『モノアイ・ゴースト』を見つめながら、ネティシア姫を想う。
 あの機体の中には、気を失った姫が囚われの身になっている。
 ――オブリビオンに捕まった姫の姿が、自身の過去と重なる。
「なるべく被害は最小限に抑えながら、姫様を助けるよ……。お願い、魔剣たち。私に力を貸して……。我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
 【九尾化・魔剣の巫女媛】の発動とともに、璃奈の銀色の瞳に強大な呪力が宿り、その尻尾が九尾に变化した。封印を解き魔剣の巫女媛となった璃奈は、あらゆる魔剣・妖刀を強化する権能を発揮することができる。
 身にまとった莫大な呪力を放出させることで飛翔した璃奈は、広場の上空に滞空すると、その周囲に無数の魔剣を顕現させた。
「いくよ、魔剣たち……っ!」
 右手を振り下ろす璃奈。その動きに追従して、召喚された魔剣たちが眼下のゴーストスコードロンの群れに向かって雨のように降り注ぎ、その装甲に突き立った。
 呪詛をまとった魔剣に貫かれた支援キャバリアは、またたく間に装甲が腐食し崩れ落ち、原型をとどめない屑鉄と化していく。

 だが『モノアイ・ゴースト』も黙って見てはいない。
 単眼を激しく明滅させてゴーストスコードロンに反撃命令を下す。
 司令を受けたゴーストスコードロンは、機関銃やバズーカ、ミサイルといった装備を構えて、クロトと璃奈に照準を向け――武装を一斉に発射した。


「馬鹿野郎っ! こんな街中で機関銃はともかく、ミサイルだぁ!?」
 ゴーストスコードロンたちを殴り飛ばしていた『貪狼の神骸』に接続されたクロトが目を見開く。
 ここは建物が密集する市街地の広場。そんな場所でバズーカやミサイルをぶっ放されては、街が火の海になるのは避けられない。
「ちぃっ、他に方法は……ねぇか!」
 クロトは瞬間的に頭脳をフル回転させる。市街地に被害を出さない方法を分析し、『貪狼の神骸』の両腕を広げて敵の攻撃の前に立ちはだかった。
 『貪狼の神骸』のボディに機関銃の弾が嵐のように叩きつけられ、バズーカの砲弾が機体を揺らし、ミサイルの爆発によって爆煙に包まれる。
 ――生身であれば、灰も残らないような激しい砲撃。
 だが、爆煙が晴れたとき、そこには機体装甲を焦げさせた程度のダメージしか受けていない『貪狼の神骸』が仁王立ちしていた。もちろん、背後の建物は無事だ。

「ったく。建物の被害を最小限にするのも骨が折れるな。貪狼の神骸じゃなかったら危なかったぜ! 今の攻撃、倍にして返してやらァ!」
 赤い瞳を鋭く細め、口元に冷酷な笑みを浮かべたクロトは、機械魔術を発動。『貪狼の神骸』の掌に巨大な氷の魔弾を生成しゴーストスコードロンに向かって次々と解き放っていく。
 氷弾に貫かれたキャバリアは機体中枢を凍らされながら動きを止め、なんとか直撃を免れた機体も魔弾が掠った部分から氷柱が生えていき、全身を氷に包まれて停止していく。
「北天に座す七天の戒めを――お前に、ってな」
 攻撃が命中した相手の身体から氷柱を生やし、ダメージを与える。
 これがクロトが操る機械魔術、【氷戒装法『芽吹きし凍獄』】の効果だ。
「凍らせるなら、街中で敵が爆発する心配もないしな」
 氷像が立ち並ぶ広場を、クロトの『貪狼の神骸』が歩んでいく。


「その程度の攻撃……!」
 広場の上空を飛翔する璃奈は、自身に向けて放たれる機関銃の火線を避けるように、縦横無尽に空を駆ける。その流れるような華麗な動きの前に、ゴーストスコードロンたちの機関銃は虚しく宙を裂くだけだ。
 だが、その璃奈に、バズーカやミサイルランチャーを構えたゴーストスコードロンたちが砲口を向けた。そして、その引き金を引き、無数の砲弾やミサイルが璃奈へと迫る。
「……っ!?」
 高速で飛翔する璃奈にとって、砲弾やミサイルを回避することは容易い。
 だが、上空に向けて放たれた攻撃を回避したら、流れ弾で街が火の海になるのは間違いない。
「避け……られない……」
 璃奈は、自身の背後に広がる街並みに目を向けると、動きを止める。
 ゴーストスコードロンの放った攻撃が、空中で動きを止めた璃奈に命中――するかと思った瞬間。

 璃奈が腰に下げていた幅広の魔剣が強大な魔力の光を放ちつつ、ひとりでに宙に浮かび上がった。
「……アン……サラー?」
 魔剣アンサラー。それは、璃奈の持つ強力な魔剣の一本である。
 璃奈が魔剣の巫女媛となり強大な呪力を纏ったことで、アンサラーもその魔力を解き放ったのだ。
 アンサラーが持つ力は、自らに向けられた攻撃を跳ね返し、増幅して報復をおこなうというもの。
 璃奈に向けて放たれた砲弾やミサイルは、アンサラーの魔力によって見えない壁に反射したかのように跳ね返り、広場のゴーストスコードロンたちに牙を剥いた。
 爆煙に包まれていくゴーストスコードロンたち。『モノアイ・ゴースト』の支援部隊は、自らの武器によって自滅したのだった。


「さぁて、あとは親玉だけだな!」
 『モノアイ・ゴースト』に向かってクロトが笑みを向け、『貪狼の神骸』の腕に巨大な氷の弾丸を生み出す。
 敵の機体のコックピットの位置は把握済みだ。
 乗っている姫に危害を加えないように、関節部だけ凍らせて動きを封じる目算はある。
「お嬢さんに風邪を引かせる趣味はねぇ。この声が聞こえるってんなら、さっさと乗り込んだ程の覚悟示してくれるか?」
 『貪狼の神骸』の腕から、今にも極大の氷弾が撃ち出されようとしていた。

 『モノアイ・ゴースト』は、クロトの攻撃を回避するため、後方に跳躍しようとし――。
 足元から伸びてきた漆黒の鎖によって機体を絡め取られ、動きを封じられた。

「逃さない……。姫様は必ず助け出してみせるよ……」
 呪力による縛鎖を放ち『モノアイ・ゴースト』を拘束したのは璃奈だ。
 強大な呪詛の込められた漆黒の鎖は、キャバリアの装甲を腐食させながら、深く食い込んでいく。
 拘束から逃れようとする『モノアイ・ゴースト』だが、璃奈の呪力を振り切ることはできない。
「姫様……そんな機体に負けないで……」
 祈るような璃奈の声が、静かに、しかしはっきりと広場に響き渡る。

『私は……民を……』
 漆黒単眼のキャバリアの外部スピーカーから聞こえる、少女の弱々しい声。
 だが、その声が聞こえた瞬間、『モノアイ・ゴースト』の動きが一瞬止まった。

「いまっ……」
「おうよ、任せなっ!」
 クロトの『貪狼の神骸』から巨大な氷弾が撃ち出され、璃奈が放った無数の魔剣が『モノアイ・ゴースト』に迫る。

 氷弾が命中した箇所から『モノアイ・ゴースト』の機体が凍りついていき、さらに全身に突き立った魔剣が纏う呪詛によって装甲が腐食していく。
 まるで苦しむように全身を震わせる『モノアイ・ゴースト』だが、璃奈の縛鎖による拘束が脱出を許さない。
「このまま決めるぜっ」
 クロトの言葉に、璃奈がこくり、と頷く。

 ――だが、その瞬間。
 『モノアイ・ゴースト』が全身に搭載した光学兵器を一斉に発射した。

 狙いも付けずに無差別に放たれた光学兵器。
 それらは、広場の地面を超高温で灼きながら、周囲の建物に向かっていき――。

「ちいっ!」
「させない……!」
 クロトの『貪狼の神骸』が身を挺して光線を遮り、璃奈が魔剣アンサラーで光線を上空へと逸らす。

 その一瞬の隙をついて、『モノアイ・ゴースト』は氷を砕き、呪力の縛鎖から逃れると、大きく跳躍して撤退していったのだった。

「ったく、成りたいのは、悲劇の王女でもなんでもねーんだろ?」
「けど、姫様に街を壊させはしなかったよ……」
 クロトは、光線で灼かれて溶解した『貪狼の神骸』の装甲を見て溜息をつき。
 璃奈は、姫が街を破壊したという重荷を背負わずに済んだことに安堵する。

「ま、なんだ。おつかれさん」
「ありがと……」
 璃奈は、クロトが差し出した鯛焼きを受け取るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
騎士として必ずや王国と姫の災いを祓ってみせましょう

キャバリア(銃・実体剣・盾装備)借用し●操縦
…出来れば通信機を頂けますか?

●乱れ撃ちスナイパー武器落としで支援機を破壊し接近

貴女は王家に連なる姫
国や民を脅かすなどご自身が一番許せない筈
その意志をお示しください!

UCで機体●限界突破
怪力で剣を投擲
バリアを串刺し発生機に損害与え
突進から街をかばい盾で受け止めシールドバッシュ

機体を放棄し敵機体に取り付きアンカーで強制有線ハッキング
一瞬でもコクピットが開けば隙間に通信機投擲

聞こえておりますか、ネティシア様
貴女を慕い案ずる王国の皆様の声が

今でも貴女は立派な姫です
この声にお応えください

私達がお助けいたします


ユウキ・ダイエイト
【アドリブ・絡み感激】

王様と国民のために頑張ろうとしたお姫様が乗ったロボが大変なことになったって!?これは放っておけないね!
行くよブレイバーZ!あたしたちの勇気でみんなを助けるんだ!

「オーラ防御」で身を守りつつUC発動!真っ向勝負!正面からドーン!
そのまましっかり相手を掴んでお姫様に呼びかけるよ!
お姫様ー!目を覚まして!あなたは国の皆を助けたいんでしょー!
だったら起きなきゃだめだよ!あなたはここで自分の意思を……勇気を示さなきゃ!
一人で上手くいかなくってもあたしが、みんなが力を貸すから!だから立ち上がって!



●騎士道と勇気
 全身の装甲に無数の傷を負った漆黒単眼のオブリビオンマシン『モノアイ・ゴースト』が、王都を駆ける。猟兵によって損傷を受けたが、まだ駆動系も電装系も致命傷は負っていない。
 『モノアイ・ゴースト』は、市街地に向かって銃を構え紅き単眼を光らせた。

 ――人々を恐怖に陥れようというオブリビオンマシンとしての衝動が、漆黒の機体を突き動かしているのだった。


 白銀の装甲に身を包んだ、騎士の如きウォーマシンのトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が、王宮のキャバリア格納庫に姿を現す。
 儀礼用の長剣を持ち、大盾を背負った全高3メートルにも達しようかというその巨体は、まるで小型のキャバリアである。
 だが、そのような姿をしたトリテレイアであっても、猟兵としての『世界の加護』によって、現地住民に違和感を与えることはない。せいぜい、騎士鎧を着込んだ大男として認識される程度であろう。

「騎士殿。その体躯に威風堂々とした佇まい、猟兵の方とお見受けしました」
 顔中に古傷がある白い軍服姿の中年男性――親衛隊長タングステンがトリテレイアに声をかけた。
 焦りの表情を浮かべる親衛隊長に対し、トリテレイアは騎士として丁寧な礼を返す。
「そのご様子ですと、戦況はよろしくないのですか?」
「ええ……、恥ずかしながら、我ら親衛隊のキャバリア部隊は、暴走した『神聖機グランティア』が放った支援キャバリア部隊と交戦中です。街を戦火から守るのが精一杯で、姫様――『神聖機グランティア』を追うのは猟兵の皆様に頼り切りな状況です」
 親衛隊長は苦り切った顔でトリテレイアに状況を説明した。
 その顔には、姫を救えないもどかしさが浮かんでいる。

 それを見て、トリテレイアは安心させるように言葉を紡ぐ。
「ご安心ください。騎士として、必ずや王国と姫の災いを祓ってみせましょう」
 力強く頷いたトリテレイアは格納庫を見回し、一機のキャバリアを指し示した。
「よろしければ、あちらのキャバリアをお借りできますか?」
 それはまるで、騎士のごときフォルムをしたキャバリア。
 銃の他に実体剣と盾を装備したその姿は、トリテレイアを巨大化させたかのような印象を与える機体だった。
「……それと、通信機もいただけませんか?」

 騎士のキャバリアを借り受け、颯爽と乗り込んだトリテレイアは、カタパルトから機体を発進させたのだった。


 王都の大通りを、小柄な少女が駆け抜けていく。

「王様と国民のために――!」
 バキィッ!
「頑張ろうとしたお姫様が――!!」
 ドカァッ!!
「乗ったロボが、大変なことになったってーっ!?」
 ドッカーン!!!

 銀色の瞳をしたフラスコチャイルドのユウキ・ダイエイト(力こそドカーン!!・f25719)が、制服の上から羽織った黒いコートを翻しグランティア王国の王都を疾走していた。
 ポニーテールにした黒髪に一房混じった赤い髪が風になびく。

「そんな勇気あるお姫様が困ってるとなったら放っておけないね!」
 バァー―ン!!

 グリモアベースで事件のことを聞いたユウキは、ネティシア姫を助けようと『神聖機グランティア』――オブリビオンマシン『モノアイ・ゴースト』を追って王都を駆けていた。
 だが、その行く手を無数の支援キャバリア部隊――ゴーストスコードロンたちが阻む。
「邪魔しないでよねっ、もーっ!」
 ユウキの拳がキャバリアのボディを貫き、爆散させる。
 そのまま走る速度を緩めずに爆風をまっすぐに突き抜け、さらに眼前に立ちふさがったキャバリアに踵落としを食らわせ、大地に沈ませる。

 先程から聞こえていた派手な音は、ユウキがゴーストスコードロンを素手で撃破している音なのだった。

「もうっ、しつこいなぁ!」
 行く手に見える無数のゴーストスコードロンたちを見て、ユウキが拳を握り込み、強行突破しようとし――。

 ――上空から降り注ぐ銃弾によって、ゴーストスコードロンたちが爆散していった。

「ご無事ですか!?」
 銃を乱れ撃ち、ゴーストスコードロンを壊滅させたのは、トリテレイアの乗る騎士型のキャバリアだ。
 カタパルト発進による飛翔の勢いを背面スラスターを全開にして打ち消しながら、ゆっくりと地上へと降り立つと、騎士型キャバリアはユウキへと向き直る。
「お嬢さん、ここは危険です。すぐに避難を……」
 だが、トリテレイアの言葉を遮り、ユウキが大声で叫んだ。
「ちょ―どよかった! お姫様のところに向かうんでしょ? あたしも一緒に乗せてってよ!」

「いやー、あのロボットたち、素手だとちょっと面倒だったから助かったよ!」
「いえ……、支援機とはいえ、キャバリア相手に素手で立ち向かえるのは凄いと思いますが……」
 王国の親衛隊のキャバリア部隊ですら相手をするのが精一杯というゴーストスコードロンを素手で撃退していたユウキに、トリテレイアは驚愕する。
 もちろん、トリテレイアとて歴戦の猟兵である。生身で支援キャバリアを撃破することは可能だ。
 だが、目的を達成するためには手段を選ばない現実主義者のトリテレイアの電子頭脳は、敵陣を生身で強行突破するなどという解を導き出すことは決して無いだろう。
「あー、ちょっと、あたしのは、乗り込んで移動すると街を破壊しちゃいそうだったから……」
 明後日の方向を向いて、気まずそうに乾いた笑みを浮かべるユウキを掌に載せて、トリテレイアの駆る機体は背面スラスターを噴射して跳躍し、建物を飛び越えていくのだった。

●Turn3
「ターゲット、発見しました!」
 トリテレイアの駆る機体の望遠モニタに、『モノアイ・ゴースト』の姿が映し出された。
 紅く光るカメラアイを周囲に向けながら、銃を構える漆黒のオブリビオンマシン。
 その引き金が引かれ、市街地に銃弾がばら撒かれ――。

「させませんっ!」
 スラスターを全開にした騎士キャバリアが、大盾を構えて射線に割り込んだ。

 金属製の盾を銃弾が叩く激しい金属音が周囲に鳴り響く。
 ――『モノアイ・ゴースト』の放った弾丸は全て大盾に弾かれ、街の建物には傷一つ付けられなかった。

「貴女は王家に連なる姫。国や民を脅かすことなど、ご自身が一番許せない筈。その意志をお示しください!」
 トリテレイアは、ネティシア姫の乗る『モノアイ・ゴースト』と対峙すると騎士型キャバリアの実体剣を抜き放つ。
 それはトリテレイアにとって、主に使える騎士の象徴だ。
「この剣にかけて、貴女をお助けします!」
 騎士のキャバリアは、鋭く光を反射する長剣で漆黒単眼のキャバリアに斬りかかっていった。


「ここまで送ってくれてありがとーっ!」
 トリテレイアの機体が『モノアイ・ゴースト』の銃撃を防ぐために飛び込む直前、キャバリアの掌から飛び降りていたユウキ。
 騎士のキャバリアがオブリビオンマシンのバリアに向かって激しく切りつけるのを遠目に眺めながら、ユウキは天に向って大声で叫んだ。
「カモン! ブレイバーZ!!」

 ユウキの声と同時に、彼女の眼前に影が落ちた。
 ひゅるるる……という音とともに、影は徐々に大きくなっていき――。
 ズドーン、という盛大な音とともに、ユウキの前に一台のキャバリアが降ってきた。

 太い腕と脚を持つ巨体のキャバリア――黒と赤でカラーリングを施されたスーパロボットである『ブレイバーZ』。
 これこそ、ユウキの愛機たる黒鉄の巨人なのである。
 気合の掛け声と共に地面を蹴りコックピットに飛び乗ったユウキは、相棒に声をかける。
「行くよブレイバーZ! あたしたちの勇気でみんなを助けるんだ!」
 ユウキの言葉に応えるように、ブレイバーZの瞳に光が灯った。


 トリテレイアの駆る騎士のキャバリアの剣をバリアで弾き返した『モノアイ・ゴースト』は、バリアを展開したままトリテレイア機に突進する。
「この程度、支えてみせます!」
 大盾を構え、トリテレイア機は突進を受け止める。

 だが、『モノアイ・ゴースト』の突撃の勢いは想像以上だ。勢いを止めきれずに、両脚で地面を削りながら後方に押されていく。
「い、いけません、後ろには建物がっ!?」
「任せてっ!」
 機体が建物まで押し切られる直前。
 トリテレイア機の背中をユウキの乗るブレイバーZが支え、『モノアイ・ゴースト』の突進を停止させた。

「よーし、反撃だよ! こっちも真っ向勝負でいっくよー!」
 ユウキの乗るブレイバーZが勇気のオーラに包まれ、闘気を爆発させる。
 それは、まさに神にも悪魔にもなれるかのような絶大な力だ。
「勝負だよっ、正面からっ、ドーーンッ!!」
 ユウキは【パワーチャージ】により、バリアを張った『モノアイ・ゴースト』にものすごい勢いで突進した。
 バリアと闘気が衝突し激しい閃光が飛び散るが気にしない。そのままバリアと拮抗しながら押し合いを続けていく。

 そのままでは勝負が付かないと思われた刹那。

「私が居ることもお忘れなく!」
 トリテレイアも騎士キャバリアのリミッターを解除。その出力を限界以上に引き出していく。それは、まるでリミッターを解除して護衛用戦闘能力を極限まで高めたトリテレイア自身のようだった。

 仲間――トリテレイア機の協力を得て威力が倍増したブレイバーZの突進は、『モノアイ・ゴースト』を押し返し、バリアの一部を中和していく。
「そこですっ!」
 バリアが消えた場所をトリテレイアのセンサーアイは見逃さない。
 限界まで出力を上げた機体の怪力で剣を投擲すると、『モノアイ・ゴースト』のバリア発生装置のひとつを貫通、破壊した。

 バリアを破られオーバーヒートした『モノアイ・ゴースト』の動きが止まる。


「今ですっ!」
 その隙を突いて、トリテレイアは騎士のキャバリアのコックピットハッチを解放。
 身体に内蔵したワイヤーアンカーを伸ばして『モノアイ・ゴースト』に取り付くと、強制的にハッキングを開始した。
 
「お姫様ー! 目を覚まして!」
 ユウキも声を張り上げて、必死にネティシア姫に呼びかける。

「外部からのハッキングでは……一瞬が限界ですね」
 トリテレイアは、『モノアイ・ゴースト』にコックピットハッチ解放命令を流しつつ、手に持った通信機を放り投げた。
 通信機は、機体の装甲に当たって跳ね返る――かと思った瞬間、一瞬だけ開きかけたコックピット内へと滑り込んだ。

 トリテレイアは、もうひとつの通信機を手に持ち、姫に向かって呼びかける。
「聞こえておりますか、ネティシア様。貴女を慕い案ずる王国の皆様の声が!」
 通信機をオープンチャンネルに切り替えると、トリテレイアは親衛隊の通信回線と通信を繋いだ。
 そこから流れてくるのは、ゴーストスコードロン部隊と戦う親衛隊のキャバリア部隊の声だ。
『親衛隊各機、猟兵の皆さんが姫様をお助けくださるまで、敵に街を焼かせるなよ!』
『はっ、隊長! この身に代えましてもここは突破させません!』
『帰ってパインサラダを食べるまで、俺は死ねないっ!』
『俺、この戦いが終わったら、故郷の幼馴染と結婚するんだ……』

 さらに、ユウキも通信回線に向かって声をかける。
「お姫様、あなたは国の皆を助けたいんでしょー! だったら起きなきゃだめだよ! あなたはここで自分の意思を……勇気を示さなきゃっ!」
「ええ、貴女は立派な姫です。この声にお応えください!」
 ユウキの声に、トリテレイアの声も重なった。

『うう、私は……ここは、いったい……?』
 通信機から聞こえる、か細い、しかし、はっきりとした声。
 それは、ネティシア姫がオブリビオンマシンの支配から徐々に抜け出そうとしている証拠だった。

「一人で上手くいかなくっても、あたしが、みんなが力を貸すから! だから立ち上がって!」
「ええ、私達が……いえ、王国の全員が貴女をお助けいたします」

『みな……さん……どうか私を……』
 通信機から姫の声が聞こえたかと思うと、『モノアイ・ゴースト』は大地を蹴って大きく跳躍し、撤退していった。

「くっ、もうスラスターの推進剤が……」
「あたしのブレイバーZで追いかけると、家を踏み潰しちゃうし……」
 トリテレイアとユウキは、『モノアイ・ゴースト』が去った方角を仲間へと伝えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桐嶋・水之江
へぇ、神聖機と囚われのお姫様ね
報酬がたっぷり出そうね
あわよくば機体もいただいて…いえなんでもないわ

こういうので外せないのはやっぱり戦艦からの発進シーンよね
ワダツミからウバザメで出撃するわ
仕事の内容は神聖機の奪取…じゃなくてお姫様の救出だったわよね?
OK任せなさい
ジェリーちゃんの触手をニョロっと伸ばしてグランティアを捕まえるわ
そして蝕む機巧感染でウィルス化したナノマシンを浸透させましょう
システム周りに機能不全を起こさせるわ
パイロットはそのまま、機体だけ死んでもらうわよ
お姫様には下手に動かないよう直接通信で呼びかけておきましょう
敵の支援キャバリア?Dプラスとデミウルゴスに相手させておけば大丈夫よ


天星・雲雀
まさかの国王機がオブリビオンマシン?歴代の王達が従えていたとか?などと邪推しつつ。

ともかく、国家滅亡の危機から救わなくては。

【行動】絶無が、空間の割れ目から、こちらを覗く。
「急かさなくても、呼ぼうと思っていた所です・・・」
了承とばかりに、空間を砕き割りながら、現実世界に介入し其の影響を還現する絶無。
またたく間に国全体が巨大な嵐に包まれる。

自分は、一機で勝手に行こうとする絶無に慌てて飛び乗って、

「オトモ!嵐で敵の支援機の動きを抑えつけます、その間にUCで敵機を減らしてください。建物には極力傷つけずに!」(側面に設けられた全砲門から射出)

「御姫様、気をしっかり持って!今あなたの国がピンチです!」



●風と炎の魔神
「まさか国王機がオブリビオンマシン? もしかして歴代の王たちはオブリビオンマシンを従えていたのでしょうか?」
 可能性としてはあり得なくはないと考えながら、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)は逃走していく『モノアイ・ゴースト』の姿を目で追っていた。
 黒髪をツインテールに束ねた妖狐の雲雀は、肩を大きく露出させるように着崩した丈の短い和服を身に着けている。本来、彼女の瞳は金色だが、刀傷のある左目は機械式の義眼である。
 その義眼の赤色のレンズが遠方を跳躍するオブリビオンマシンの姿を大きく拡大して捉えていた。

「ともかく、国家滅亡の危機から救わなくては」

 雲雀の心がざわつくのと同時に、それを感知したのか、雲雀の目の前の空間が、まるでガラスがひび割れるかのように砕け散る。
 そうしてできた空間の亀裂から覗く、巨大な瞳。
「急かさなくても、今から呼ぼうと思っていたところです、絶無……」
 それは、雲雀が使役するサイキックキャバリア――炎と風と光の力を宿す魔神だ。名を絶無という。
 雲雀の言葉を聞いた絶無の瞳が歓喜の色を浮かべる。

 ――次元の狭間から外に出ることができる、と。

 瞬間。雲雀の周囲が巨大な嵐に包まれ、竜巻の中から絶無の巨体が現れた。
 巨体を風の魔力に包み、一機で飛び立とうとする絶無。
「勝手に行かないでください!」
 雲雀は自分勝手な絶無の機体に慌てて飛び移り、コクピットに乗り込んだ。

 そして、雲雀を乗せた絶無は、今度こそ風の魔力を放出し、『モノアイ・ゴースト』が消えた方角へと飛翔していったのだった。

●狂喜のマッドサイエンティスト
 同時刻、神聖王国グランティア王都上空。
 暴走衛星『殲禍炎剣(ホーリーグレイル)』の魔手が届かぬギリギリの高度に、一隻の船が浮かんでいた。
 このクロムキャバリアの世界で一般的な乗り物である飛行船――ではない。
 鋼鉄の装甲を持ち、鋭利なフォルムをした飛行戦艦『ワダツミ級強襲揚陸艦』の一番艦である。
「へぇ、神聖機と囚われのお姫様ね。報酬がたっぷり出そうね」
 ワダツミの艦長席に優雅に座った美女、桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)が、口元に妖艶な笑みを浮かべた。
 露出度の高い上着にタイトスカート姿でくつろいでいた水之江は、モニターに映った『モノアイ・ゴースト』を見ると艦長席から立ち上がった。
「ワダツミ、自動巡航モードで待機。私は出るわ!」
 外出用の白衣を纏い、紫色のポニーテールを揺らしながら、水之江は艦内の格納庫へと向かう。
 その顔には、マッドサイエンティストのような笑みが浮かんでいた。
「神聖機……あわよくば機体もいただいて分解したいわね。――無傷で返して報酬を研究資金にするのと、どっちの方が得かしらね?」
 水之江の脳内では、取らぬ狸のシミュレーションが展開されていた。

「さて、それでは改修したウバザメの実戦テストといきましょうか」
 ワダツミの格納庫のハンガーに固定された『ウバザメ級キャバリア』に乗り込み、その機体を超伝導リニアカタパルトデッキに移動させた水之江。
 大気圏内や水中だけでなく、宇宙空間にも適応した――正確には本来宇宙戦艦である――ワダツミには、宇宙空間でも艦載機を発進させられるよう、高性能なリニアカタパルトが搭載されている。
「リニアカタパルト、発進準備」
 ワダツミの制御AIに指示を出すと、ウバザメがカタパルト内で宙に浮き上がった。
 そこに、クレーンに吊られてクラゲのようなメカが運ばれてくる。
「支援ユニット・ジェリーちゃん、装着」
 ワダツミの頭部を覆うように装着されたクラゲのようなパーツは、『海月型支援ユニット・ジェリーちゃん』だ。敵の攻撃を吸収分散させるバリアとしての役割の他、触手型の武装を操るための補助ユニットにもなっている。
「桐嶋水之江、ウバザメ・ジェリーちゃん装着モード、出るわ!」
 リニアカタパルトの超伝導リングによって加速されたウバザメは、瞬時に最大速度まで加速。
 高空に浮かぶワダツミから地上に向けて飛び出していったのだった。

「仕事の内容は神聖機の奪取とお姫様の略奪ね! OK、任せなさい! ウバザメの運用データと一緒に持ち帰ってあげるわ!」
 ――すっかり目的を見失っているマッドサイエンティストは、不敵な笑みを浮かべるのだった。

●Turn4
 逃走していく『モノアイ・ゴースト』に、飛翔する雲雀の絶無が追いつき、黒い機体の前方へと回り込んだ。
「御姫様、気をしっかり持って! 今、あなたの国がピンチです!」
『うう、わ、私は……』
 雲雀の声に応え、『モノアイ・ゴースト』の外部スピーカーから少女の声が弱々しく聞こえる。
 それは紛れもなくネティシア姫がオブリビオンマシンに抗っている証拠だった。
「御姫様、ご無事なんですね!」
 希望を見出した雲雀の声が明るくなる。

 だが、『モノアイ・ゴースト』は、簡単にはネティシア姫を解放したりはしない。
 漆黒のオブリビオンマシンは、紅い単眼を明滅させ周囲にレーザー通信を送る。
 すると、それに応えて、物陰から無数の支援キャバリア部隊――ゴーストスコードロンが姿を現した。
「この支援キャバリアたち、まだ残っていましたか……」
 猟兵たちや王国親衛隊によってゴーストスコードロンは数を減らしているはずだ。
 それでも、まだ大量の支援キャバリアが残っていることに、雲雀はぎりっと歯をくいしばる。
 このゴーストスコードロンたちを撃破しないことには、姫を助け出すことは不可能だ。

「オトモ! 敵機を蹴散らしてくださいっ! 極力、建物には傷つけずに!」
 【獅子の座流星弾】によって、雲雀が生み出した狐火の『オトモ』たちに光速超重力推進装置が装着され、絶無の側面に設けられた砲門から射出されていく。
「絶無、支援キャバリアの動きを止めます!」
 雲雀の操る絶無が両手を突き出すと、そこから嵐が吹き荒れ、ゴーストスコードロンたちの体勢を崩した。
 そこに光速に近い速度で衝突していく狐火『オトモ』たち。
 『オトモ』が貫通し、支援キャバリアが爆散していく。

「ですが、まだ敵が多いですね……!」
 『モノアイ・ゴースト』は、さらにゴーストスコードロンを喚び出し、自身の守りを固めていく――。


「へぇ? 支援機なんて連れてるのね? けれど、私のウバザメが相手をするほどではないわね」
 上空から聞こえてくる声は、ワダツミから発進したウバザメに乗る水之江のものだ。
 陸・水中・宇宙適応機体のウバザメは飛行能力を持っていない。それゆえ、クラゲ型支援ユニットのジェリーちゃんをパラシュートのように開くことで、落下速度を落として下降しているのだ。
「ワダツミ。Dプラスとデミウルゴスを緊急発進!」
 水之江がワダツミのAIに指示を送る。

 水之江の指示を受けると同時に、上空のワダツミの超伝導リニアカタパルトから射出された何かが飛来してきた。
 それは、小型のキャバリアとも見紛うようなウォーマシン型のドローン『Dプラス』が3機。それからドラゴンを模した巨大ドローンの『デミウルゴス』だ。

「さあ、あなたたちの実力をみせてあげなさい!」
 飛行能力を持つDプラス編隊とデミウルゴスは、上空からビームライフルを乱射したり、火炎のブレスを吐いたりし、次々とゴーストスコードロンを撃破していく。
「どうかしら、私の支援機の性能は?」
 Dプラスやデミウルゴスと違い、飛行能力を持たないウバザメでふわふわ浮きながら水之江が勝ち誇る。

「――今度、ウバザメにも飛行支援ユニットを付けたほうがいいかしらね?」
 ぽつり、と呟く水之江だった。


 雲雀の絶無および『オトモ』の攻撃と、水之江の『Dプラス』、『デミウルゴス』の攻撃により、『モノアイ・ゴースト』が喚び出したゴーストスコードロンたちは撃破された。
「さあ、あとはグランティアだけね」
 着陸したウバザメのコックピットで、水之江が怪しげな笑みを浮かべ、機体を『モノアイ・ゴースト』に近づけ――クラゲ型サポートユニット・ジェニーちゃんのニョロっとした触手を『モノアイ・ゴースト』に絡みつけた。

 それを見た雲雀が慌てて問いかける。
「お、御姫様の機体に何をするのですか!?」
「大丈夫大丈夫。ちょっとウィルスを流し込んで機体を無力化するだけだから。パイロットには悪影響はないわ。――お姫様になにかあって、報酬がもらえなくなっても困るし」
 最後の方は小声で付け足す水之江だった。

 『モノアイ・ゴースト』に絡みついた触手から、【蝕む機巧感染】によって生成されたナノマシン・ウィルスが浸透していく。
 それは、対象のプログラムを書き換え、機能不全――バグを引き起こす効果を持っているのだ。
「ふふ、これに感染したら最後、生かすも殺すも私次第よ? これなら、パイロットも機体も無事なまま鹵獲できるという寸法よ」
 水之江は怪しげな笑みを浮かべ、触手を操っていった。

 だが、ウィルスによってシステム不全に陥る直前。
 『モノアイ・ゴースト』のボディに内蔵された無数のレーザーが発射された。
 全方位に無差別に放たれる光線。

「オトモたちっ、攻撃の相殺をっ!」
 『モノアイ・ゴースト』のレーザーが周囲の建物を灼く前に、雲雀が操る【獅子の座流星弾】によるオトモたちがレーザーを相殺し、周囲への被害を抑える。

 だが、レーザーによって触手を灼き切ったことで自由になった『モノアイ・ゴースト』は、牽制射撃をおこないながら、その場を離脱していったのだった。

「逃げられてしまいましたね……」
「あー、もうっ、これじゃあ分解実験もできないし、報奨金ももらえないじゃない!」
 『モノアイ・ゴースト』の逃げた方角を眺める雲雀と、がっくりと肩を落とす水之江だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セツナ・フィアネーヴ
此処が新世界、か……
眼に見えぬところから忍び寄る災いは、たいてい見える災いより厄介なものだな、本当に。

ところで、きゃばりあは以前世話になった魔導巨人とは違う……のか?
アリシア『いやー、さすがに関係ないと……思いますよ?……多分。』

とにかく、機体を止めればいいんだな?
正直まったく動かせる気がしないが最低限動けてかつ
壊しても怒られないきゃばりあを借りる。

敵の高速飛行も攻撃も装甲任せで無視。
狙うはたった一つ。敵の動きを見切り、その一瞬の隙にUCの短剣をできるだけ命中させる
……これは『衰退の短剣』だ。
“お前”の力さえそぎ落とせば、
味方の戦いも、“姫”の戦いも、やり易くなるはず

※アドリブ連携等歓迎です


支倉・錫華
国を守る、か。ちょっと懐かしい感じかな。
とりあえず、その気持ちはわかるところもあるから、
今回は協力させてもらおうかな。

ここは王都だし『神聖機グランティア』みたいな、
クロムじゃないキャバリアなら、まだ残ってるよね? それを貸してもらおう。

【脈動臨界チューニング】でこの子の移動力を5倍にして、出撃。
元グランティアに接触したら、まずは呼びかけてみないとかな。

姫、民を守りたいという気持ちがまだあるなら、せいいっぱい抗いなさい。
暴走しているのなら、それを抑え込んでこそ王族というものですよ。

戦闘は【モーターブーム】を使いながらヒットアンドアウェイ。
装甲は半分になるけど、そこは当たらなければいいことだしね。




 漆黒単眼のオブリビオンマシン『モノアイ・ゴースト』の電子頭脳は考える。

 ――こんなはずはない。

 起動の要たる王国の血族の少女はコックピットで気を失っている。
 最強のキャバリアたる自分が、漆黒の装甲を無残に傷つけられ、バリア発生装置の一つを破壊され、多数の部下を失い、さらには制御システムまで電子的に乗っ取られかけるなど、あってはならない――。

 ――この傷を癒やし、必ずや王都を火の海に変えてみせる。

 漆黒の機体は傷を癒やすため、王都からの逃亡をはかっていた。

●災禍の竜騎士とキャバリア乗り
「此処が新世界、か……」
 神聖王国グランティアの王宮にあるキャバリア格納庫に足を踏み入れたドラゴニアンの少女、セツナ・フィアネーヴ(災禍貫く竜槍・f26235)が、左右へと視線を彷徨わせながら呟いた。彼女の首の動きに合わせて、ツインテールにした青い髪と、人派ドラゴニアンの証たる竜の尻尾と羽が揺れる。
 文明レベルが衰退しているグランティア王国の王宮の造りは、セツナが暮らすアルダワの文化レベルと大差ない。
 だが、大きく異なるのは、格納庫にずらりとならんだ機械の騎士、キャバリアの存在だ。――すでに親衛隊機は出払っているので、ここに残っているのは下士官用の量産機ばかりだが。
 魔導蒸気機関で動くゴーレムとも違ったキャバリアを見上げ、セツナは傍らにぼんやりと浮かぶ光に語りかける。
「これが説明を受けた、きゃばりあ、というものか。以前世話になった魔導巨人とは違う……のか?」
 セツナは、以前、アックス&ウィザーズ世界での帝竜ヴァルギリオスとの戦争で出会った魔導巨人――ゴーレムのことを思い浮かべていた。目の前のキャバリアは、蒸気機関を動力とするものではないため、アルダワの蒸気ゴーレムよりも、魔法的な力で動いていた魔導巨人たちの方が近しい存在に思えたのだ。
『んー、この機体からは精霊力や魔力を感じませんから、さすがに魔導巨人とは関係ないと……思いますよ? 多分……』
 セツナに答えたのは、彼女の傍らに浮かぶ淡い光。――セツナの友である光と雷の精霊アリシアの声だ。
「眼に見えぬところから忍び寄る災いは、たいてい見える災いよりも厄介なものだな、本当に」
 自身の手に携えた槍『封竜槍アドウェルス』に目を落としながら、セツナがポツリと声を漏らした。
 その槍はセツナの中で暴走する竜の力を、アリシアの助けで封印し物質化したものだ。核となっているのは、『災禍の竜』と呼ばれる古きドラゴンを封じた『災竜の封印』。――セツナにとっては、いつ暴走するかも知れない、まさしく『眼に見えぬ災い』であった。

「それにしても、このような機体、正直まったく動かせる気がしないな……」
 セツナの言葉も無理のないものだ。
 いきなり『ロボットに乗って操縦しろ、さもなくば帰れ』などと言われたら、10人中10人が踵を返して帰ることだろう。
 だが、猟兵たるもの、逃げちゃいけない場面もあるのだ。
『せめて、壊しても怒られない機体をお借りしましょう』
 アリシアの言葉にセツナが頷き、機体の近くにいる少女に声をかけた。
「きゃばりあ、を借りたいのだが……」

「ああ、クロムじゃないキャバリアなら、まだ残ってるみたいね。わたしも勝手に借りてくつもり」
 セツナが王宮の整備士だと思って声をかけたのは、猟兵の支倉・錫華(Gambenero・f29951)だった。
 黒い髪をセミロングにした錫華は、覗き込んでいた量産型キャバリアのコックピットから上半身を引き起こした。その拍子に漆黒のスカーフと腰に巻いたマントがなびく。
 セツナに向き直った錫華。その服装は腹部が大きく露出した丈の短い漆黒の上着に、同色のフレアスカート、そしてつま先から太ももまでを覆う黒いハイニーソックスだった。
 露出の多い黒尽くめの衣装を身につけた錫華の緑色の瞳が、セツナとその隣に淡く浮かぶ光、アリシアに向けられる。
 漆黒の髪を彩る黄色いトパーズの髪飾りが、シャラリ、と揺れた。

「なるほど、キャバリアに乗るのは初めてということね」
「ああ、面目ない」
 錫華の問いかけに、セツナが申し訳無さそうに答える。
 だが、錫華はゆっくりと首を左右に振った。
「わたしはこの世界出身でフリーの騎士をやってる関係上、キャバリアにも慣れてるけど、他の世界から来たんじゃそうはいかないよね」
 錫華は納得したようにセツナとアリシアに頷きかける。
 そして、格納庫に並ぶ量産型キャバリアに近づいていくと、二人に背を向けたまま声を投げかけた。
「国と姫を守る、か。ちょっと懐かしい感じかな。とりあえず、その気持ちはわかるところもあるから、今回は協力させてもらおうかな」
『そ、それって……!』
「キャバリアの基本操作くらいなら教えてあげるよ。マスターして操縦できるようになるかは、あなたたち次第だけど、ね」
 厭世的な笑みを口元に浮かべる錫華だった。

●Turn5
『セツナ、前、前っ!』
「分かっているっ!」
 格納庫のカタパルトデッキから射出されたセツナ機が、王都で一際高い尖塔に衝突しそうになり――慌ててスラスターを噴射。飛行軌道を変える。
 その後ろからは、錫華が乗る量産型キャバリアがセツナ機と同様に空を裂いて弾丸のように飛翔していた。
「カタパルト発進は難易度が高いけど、大丈夫そうかな」
 まるで、巣立った雛鳥を見守るような視線で、前方を飛翔するキャバリアを見つめる錫華。

 王宮のカタパルトから出撃した二機は、あっという間に王都を横断し、『モノアイ・ゴースト』を視界に捉えたのだった。

『いました、ターゲットです』
「着陸する」
 セツナの機体は背面スラスターを吹かして飛翔の勢いを殺しつつ地上に着地すると、機体に装備した短剣を抜き放った。
 一方の『モノアイ・ゴースト』は高速で飛翔を開始する。セツナのキャバリアに向かって全身から光学兵器の一斉攻撃を発射した。
 高温のレーザーが大気を熱しながらセツナの機体に迫る。

 ――あらゆる金属を溶解させる高温の光線。
 その直撃に耐えられるキャバリアは存在しない。

 だが、そのレーザーを、セツナは回避しようとしない。
「どうせ、敵の攻撃を回避する操縦技術はない……」
『なら、耐えきるだけですっ!』
 正面からレーザーの一斉射撃を受けるセツナのキャバリアを見て、『モノアイ・ゴースト』の真紅の単眼が笑みを浮かべたように見え――。

 それが、まるで驚愕の表情を浮かべたように紅く明滅を繰り返した。

 『モノアイ・ゴースト』が全身に内蔵した無数の砲口からレーザーを発射し、その直撃を受けたセツナのキャバリアは、間違いなく灼き尽くされるはずだった。
 だが、セツナの機体はレーザーの直撃に耐えていたのだ。

「お願いされた通りに、機体の防御力を上げて正解だったね」
 敵の攻撃に耐えるセツナの機体を見て、錫華が口元に笑みを浮かべる。
 出撃前、セツナからの頼みを受けた錫華は【脈動臨界チューニング】を用いてキャバリアをセッティングし、その防御力を向上させたのだ。
 錫華によって施された対レーザーコーティングが光を散乱させ、さらに耐熱装甲が揮発することで熱を放出していく。
 これが、セツナ機が超高温に耐えきれる理由なのだった。

『けど、このままじゃ……』
「わかってる」
 いくら防御性能を高めたとはいえ、いつまでもレーザーに耐え続けることはできない。
 セツナは高速で飛翔する『モノアイ・ゴースト』の動きを冷静に見極め――キャバリアの装備する6本の短剣を投擲した。

 その程度の攻撃は効かないとばかり、『モノアイ・ゴースト』はバリアを展開。ダガーを受け止める。
 しかし、セツナの顔には笑みが浮かんでいた。
「ただの短剣だと……思うな! これは『衰退の短剣』だ」
 【穿ち抉れ、衰退の短剣】でセツナのキャバリアの影から生み出された6本の短剣。それは災禍「衰退の災い」の力を帯びた魔法の短剣だった。
 災禍の呪力による干渉を受け、『モノアイ・ゴースト』のバリアが一時的に停止した。
「お前の力さえそぎ落とせば、味方の戦いも姫の戦いも、やりやすくなるはず! いまだっ!」

「ありがと、もらったチャンスは逃さないよ」
 バリアが消滅した『モノアイ・ゴースト』に向かって、錫華のキャバリアが超高速で接近する。
 それは通常の量産型キャバリアの速度――いや、最新鋭のクロムキャバリアの速度さえも上回る超加速だ。
 錫華は、出撃前に【脈動臨界チューニング】で機体に追加ブースターを装着し機動力を5倍に向上させていたのだ。

「姫、民を守りたいという気持ちがまだあるなら、せいいっぱい抗いなさい。暴走しているなら、それを抑え込んでこそ王族というものですよ」
『うう……わ、私は、こんなところでは……』

 ネティシア姫の声が聞こえたと思った瞬間、『モノアイ・ゴースト』の動きが鈍る。
 それを見逃す錫華ではない。
「裂波……!」
 高速機動する錫華のキャバリアは、【モータームーブ】によってキャバリアの質量を乗せた一撃を次々と叩き込んでいく。
 バリアもなく、動きも止まった『モノアイ・ゴースト』は、ただ錫華の機体による攻撃を受け続けるだけだ。

「これでっ……!」
 錫華の機体の一撃が『モノアイ・ゴースト』の頭部を吹き飛ばし――。

 メインカメラを失った『モノアイ・ゴースト』は、大きく跳躍して撤退していったのだった。

「追撃をっ……!」
『無理です、もう機体の装甲が……!』
「こっちも、オーバーヒートか」
 装甲がボロボロになったセツナ機のコックピットで、セツナとアリシアが言葉を交わし。
 排熱が追いつかずにエンジンが停止した機体の中で、錫華も残念そうに呟いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ダイ・オウガ
転送からの着地と同時に地面を一撃必殺

燃える心に勇気を乗せて、唸れ豪腕、大螺旋!
悪あるところ正義あり、勇者猟兵ダイッ(↓)オウッ(↓)ガァァァ(↑↑↑)

豪快な名乗りで付近にも響き渡らせよう
一歩一歩ゆっくりと歩きバリアごとの突進は鉄拳で弾き飛ばす
スローモーションにも思えるパンチの一発一発を叩きつけ
コクピット内で気絶している王女に目覚めてもらおう(脳筋)

「姫よ、正義の心確かに受け取った、少しでいい、こいつの動きを抑えてみてほしい」

再び突進してくる所に一撃必殺のロケットパンチを打ち込んで
この場を撤退するように仕向けよう
市街地では被害が大きくなりすぎるからな 


シャルロット・バニー
姫様、自らの手で愛する国を破壊するなど辛いでしょう
私が楽にして差し上げます!
……あ、いえ、トドメ刺すとか言う事ではなくてですね?

ともあれ一発ぶん殴って正気に戻してあげましょう
縮小サイズのバニーガールから、ロボの頭に変身
「ラビットヘッド・ミューテーション!」
飛来する胴体とドッキング!
「ウサウサ・トランスフォーム!」
合体!誕生!これが私のウサウサMk2!

見た目がファンシーな着ぐるみだからってバカにしてはいけませんよ、姫様
見た目に反して素早く動いて攻撃を回避
そしてピコピコハンマーを構えて
いざ、受けやがれです
最大最強の一撃【黄金の衝撃】で光になれええええ、ですわ!

いえ、本当に光になられても困りますがっ



●勇者ロボ
 王都郊外まで撤退してきた『モノアイ・ゴースト』。
 その装甲は見る影もなく、頭部のメインカメラも破壊され、今はサブカメラで周囲の状況を伺っていた。

「来い! オウガァッ!!」
 神聖王国グランティアの王都に、ダイ・オウガ(勇者猟兵・f30091)の勇ましい声が響き渡った。それは、ロボットヘッドの勇者ダイが、相棒のキャバリア『オウガ』を呼ぶ声だ。

 ダイの秘密基地であるブレイブベースがその呼びかけに応えると、秘密基地の敷地内に建っている小学校がブロックのように変形し、ライオン型のキャバリア『オウガ』となる。
 崖の上にせり上がった巨大カタパルトに乗せられた『オウガ』に、発射用のハンマーが叩き込まれ、カタパルトを全力で滑走。リング状に展開されたグリモア式ゲートに飛び込んでいった。

 そして、クロムキャバリアのダイの元にゲートが開き、そこから『オウガ』が姿を現した。
「ブレイヴコネクト!」
 ダイがオウガと融合合体すると、その姿は巨大なスーパーロボット、勇者猟兵ダイオウガとなる。
 その姿は、まさに、かつて銀河の彼方にある星を救ったといわれる勇者ロボのものだった。
「はあっ!」
 合体したダイオウガは、着地すると同時に地面に拳を叩きつけた。
 蜘蛛の巣のように広がる地割れが、逃亡しようとしていた『モノアイ・ゴースト』の動きを止める。
「合体シーン中に逃亡しようなどとは礼儀を知らないようだな」
 ダイオウガの緑色の瞳が、『モノアイ・ゴースト』を睨みつけた。
 そして、大きく一歩を踏み出すと、大きな声で名乗りを上げる。

「燃える心に勇気を乗せて、唸れ豪腕、大螺旋! 悪あるところに正義あり、勇者猟兵ダイッ(↓)オウッ(↓)ガァァァ(↑↑↑)」

 周囲一体に、ダイオウガの猛々しい名乗りが響き渡ったのだった。

●着ぐるみロボ
「姫様、自らの手で愛する国を破壊するなど辛いでしょう。私が楽にして差し上げます! ……あ、いえ、トドメを刺すとか言う事ではなくてですね?」
 三階建ての建物の屋上で紫色の髪を風になびかせつつ『モノアイ・ゴースト』を見下ろすのは、シャルロット・バニー(ヴォーパルバニー・f30079)。身長115センチ程度に縮小されたサイズだが、人と変わらぬ容姿を持つ有機アンドロイドだ。
 全体的にサイズが縮小されているだけであり、シャルロットは成人女性とほとんど変わらないナイスバディの持ち主だ。なお、なぜかバニーガールの格好をしているのだが、抜群のプロポーションによく似合っていた。

「ともあれ、一発ぶん殴って正気に戻してあげましょう」
 物騒なことを言うシャルロットは、バニースーツのウサ耳を翻し、建物の屋上から跳躍。地上に向けて自由落下を開始する。
 だが、その顔に焦りの表情はない。
 シャルロットは落下しながら大声で叫んだ。
「ラビットヘッド・ミューテーション!」
 有機アンドロイドのシャルロットは、モーフィング変形で姿を変えていくと、兎の頭部に変形。
 そこに、巨大な兎の着ぐるみの胴体が飛来してくる。
「ウサウサ・トランスフォーム!」
 頭部に変形したシャルロットは、兎の着ぐるみの胴体とドッキングした。
 ピコピコハンマーを手に持った、兎の着ぐるみ型の巨大ロボットが大地に降り立つ。
「合体! 誕生! これが私のウサウサMk2!」

 ファンシーな兎の着ぐるみ型のスーパーロボットが、可愛らしく名乗りを上げたのだった。

●Turn6
 突然現れた二機のスーパーロボット、ダイオウガとウサウサMk2。
 『モノアイ・ゴースト』はバリア発生装置を全開にして、スーパーロボットたちに向かって突進していく。

「その程度の突進、効くと思ってもらってはこまる!」
 ダイオウガは、ズシンズシンと大地を震わせながら『モノアイ・ゴースト』との間合いを詰め、その鉄拳を叩きつけた。
 バリアと鉄拳がぶつかり激しい火花が散る。だが、それだけでは終わらない。ダイオウガはさらに次々とバリアに拳を打ち付けていく。
 鉄拳による連続攻撃で、バリアごと押し返される『モノアイ・ゴースト』。その機体が激しい振動に見舞われる。
「この振動で、コックピット内で気絶している姫に目覚めてもらおう!」
 ウサウサMk2と同じ脳筋な方法論を語るダイオウガ。
 ――大丈夫だろうか、このコンビ。

 ダイオウガを強敵と判断した『モノアイ・ゴースト』は、与し易いと見えるファンシーな兎の着ぐるみ型ロボットへと矛先を変えた。
 いかにも勇者ロボなダイオウガよりも、着ぐるみのウサウサMk2の方が倒しやすいのは明白だ。
 ウサウサMk2に突進していく『モノアイ・ゴースト』。
 だが、その攻撃は素早く動くウサウサMk2に回避されてしまう。
「見た目がファンシーな着ぐるみだからってバカにしてはいけませんよ、姫様!」
 突進を回避したウサウサMk2は『モノアイ・ゴースト』の側面に回り込むと、手に持ったピコピコハンマーをフルスイング。
 バリア越しに『モノアイ・ゴースト』に大きな衝撃を与えた。


 ダイオウガとウサウサMk2。
 どちらの相手も強敵だと悟った『モノアイ・ゴースト』は、この場を撤退しようとバリアを全開にしたまま後退を開始した。

「む、いけない。このままでは山岳地帯へと逃げられてしまう!」
「市街地に被害が出るのは避けられますが、姫様をお助けできないのは困りますね。ダイオウガ様、足止めをおねがいできますか?」
「任せてくれっ!」
 ウサウサMk2の言葉に答えたダイオウガは、『モノアイ・ゴースト』に――否、そこに囚われているネティシア姫に語りかける。
「姫よ、貴女が国民を、国王を想う正義の心、確かに受け取った! ならば、少しでいい。こいつの動きを抑えてみてくれないだろうか!」

『国民の皆さん、お父様……私は……っ!』
 ――ネティシア姫の言葉が聞こえると共に、『モノアイ・ゴースト』の動きが止まった。

「私の声に答えてくれて感謝する、姫よ! ついでにもう一つの頼みがある。――ちょっと痛いかもしれないが我慢して欲しい!」
『えっ!?』
「いくぞっ、一撃必殺――!」
 ダイオウガは右腕を上空に掲げると、肘から先の部分を超高速で回転させはじめた。
 回転で生じた竜巻が周囲に暴風を吹き荒れさせ、郊外の森林地帯の木々を大きく揺らす。
「ダイ――ナックル!!」
 ダイオウガが大きく左足を踏み出し、それと同時に振りかぶった右腕を『モノアイ・ゴースト』に向かって突き出した。
 回転する右腕の肘から先が切り離され、竜巻を纏って『モノアイ・ゴースト』に直進し――バリアを突き破って、『モノアイ・ゴースト』の右脚を打ち砕いた。

 だが、これではまだ威力が足りない。
 『モノアイ・ゴースト』は、壊れた脚を引きずるように森林地帯の方へと逃げようとし――。

「準備が整いました!」
 ウサウサMk2の声がダイオウガへとかけられる。
 その腕には、輝くピコピコハンマーが握られていた。
「いきます、モーフィング・チェンジ!」
 空中高く飛び上がったウサウサMk2の全身が、モーフィング変形を開始。
 ダイオウガの巨体と同じくらいの大きさの巨大な右腕に変化する。

 その巨大な右腕は、ダイナックルで肘から先がなくなったダイオウガの右腕へ向かって落下。
 地面に落ちる直前、ダイオウガがウサウサMk2に向かって右腕を突き出した。
「モーフィング・コネクト!」
 ダイオウガは、右腕にウサウサMk2が変化した巨大な腕を装着。
 その腕で、頭上から落ちてきた光り輝くピコピコハンマーをキャッチする。

 ――その一連の動きを、『モノアイ・ゴースト』は、ただ眺めていることしかできなかった。

「姫よ、待っていてくれ!」
「姫様、今お助けします!」
『あのっ、お二人とも、なんか本気じゃ……!?』
 輝くピコピコハンマーを構えたダイオウガが大きくジャンプ。『モノアイ・ゴースト』の頭上に飛び上がった。
 そして、光り輝くピコピコハンマーを巨大な右腕によって振り下ろす。
「いざ、受けやがれです、最大最強の一撃、【黄金の衝撃――ゴールデン・ラビット・ストライク】!!」
「光になれええええっ!」
 光り輝くピコピコハンマーが『モノアイ・ゴースト』のバリアに触れた瞬間。
 バリアが光の粒子になって消滅した。
 そのまま『モノアイ・ゴースト』の上半身から順に機体が光に変わっていく。

 ――『モノアイ・ゴースト』のオーバーフレームとアンダーフレームを完全消滅させ、ようやくピコピコハンマーは光を収めたのだった。

「む、そういえば、姫は……」
「ご安心ください。どうやら、オーバーフレームとアンダーフレームを犠牲にして、コックピットブロックだけ脱出したようです」
 ウサウサMk2は、コックピットブロックが飛び去った山岳地帯の方角を見ながら、新たな戦いの予感を感じていた。

 だが、世界を守る勇者ロボ、ダイオウガとウサウサMk2がいる限り、第二第三の『モノアイ・ゴースト』が現れても安心だ!
 戦え、勇者ロボ!
 世界の平和を守るのだ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 冒険 『警戒網突破』

POW   :    仲間を安全に行動させる為、敢えて自分が派手に動く

SPD   :    周囲の地形を把握し、死角を利用しながら行動する

WIZ   :    レーダー装置やカメラを破壊し、敵の索敵を妨害する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 気絶したネティシア姫が囚われていた『モノアイ・ゴースト』は、猟兵たちの活躍により倒された。
 だが、ネティシア姫を囚えているコックピットブロックは神聖王国グランティアの山岳部へと逃亡。
 ここに、ネティシア姫を救出するための作戦が開始されるのだった。

「皆様、市街地での戦いは、被害を最小限に戦っていただき、どうもありがとうございます」
 白い軍服を着た顔に古傷のある中年男性、親衛隊長タングステンが猟兵たちに礼を述べる。
 だが、まだ姫を取り返していない以上、その顔から緊張の色が消えることはない。
 親衛隊長は、山岳地帯に続く森林地帯の地図を広げながら、作戦の説明を開始した。
「我ら親衛隊は、市街地に展開していた敵の支援キャバリア――ゴーストスコードロンたちを、この森林地帯まで押し返すことに成功しました。ここに絶対防衛線を引き、これ以上市街地へ被害を出さないよう、敵を食い止めます」

 そのまま親衛隊長は、指先を市街地から森林地帯、山岳地帯と動かしていく。
「山岳地帯に逃げ込んだコックピットブロックは、おそらく新たなフレームに換装し、待ち受けていることでしょう。皆様には、まず、この森林地帯を抜けて、山岳地帯にたどり着いていただきたいのです」
 森林地帯には、支援キャバリア――ゴーストスコードロンの大軍が待ち受けている。
 この敵を撃破して突破するなり、警戒の目をくぐり抜けるなりして、なんとか山岳地帯にたどり着く必要がある。
 なお、キャバリアに乗っても生身でもどちらでも構わない。

「それと、この森林地帯の入り口に親衛隊の前線基地を設営しました。簡素ですがキャバリアの修理や補給をおこなう設備がありますし、新しいキャバリアに乗り換える方には、こちらで貸し出しをいたします」
 まずはキャバリアの修理や補給をおこなったり、キャバリアの乗り換えをおこなったりしてから森林地帯に望むのがいいだろう。

「それでは、皆様。どうかよろしくお願いいたします」
 猟兵を送り出した親衛隊長は、自らのキャバリアに乗り込み、ゴーストスコードロンたちが市街地へと侵攻してこないよう、絶対防衛線の守りに向かうのだった。

●マスターより
 この章では、支援キャバリア――ゴーストスコードロンの大軍がうろつく森林地帯を突破し、山岳地帯に向かって頂きます。

 突破方法は自由です。力ずくでも、敵の警戒網を抜ける形でも大丈夫です。
 また、低空飛行であればキャバリア等で空中を飛ぶこともできます。
 キャバリアに乗っても生身でもどちらでも構いません。(2章で生身でも、3章で改めてキャバリアに乗れます)

 敵は一機一機は弱いですが、数が多いので囲まれたりしないように注意が必要かもしれません。
 また、森林地帯なので移動が困難でしょう。(キャバリアで森林を移動することは可能)

 なお、プレイングには、どのような危険が待っていて、どのように工夫して突破するかを自由に記述していただければと思います。それを元に描写を膨らませてリプレイを執筆します。
 森林地帯にありそうなものは、だいたいあるのでご指定ください。(なさそうなものも指定すれば出てきます)
 キャバリアの修理、補給や乗り換えシーンなどに描写をさくこともできます。
 森林地帯について触れなければ、あっさり突破したことになります。

 例1)
 「キャバリアに乗って森林地帯を進んでいたら、数百体の支援キャバリアに囲まれ絶体絶命に。だが、キャバリアの武器で地面を崩し地下洞窟を通ることで包囲網を突破する」

 例2)
 「味方が先に進みやすくするために、ユーベルコードを使って支援キャバリアの大軍を倒しまくって、敵の包囲網に穴をあけようとする」

 例3)
 「生身で森林地帯を突破しようとする。敵に見つからないようにダンボールを被って進み、支援キャバリアをやりすごす。場合によっては背後から近づいて一撃で仕留める」

 POW/SPD/WIZの選択肢は気にしなくて大丈夫ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
秋山・軍犬
さて、市街に攻め込まれるのも
追撃されて山岳でボスと挟撃されても嫌なので
敵はなるべく無力化する方向で

で、親衛隊長に相談
防衛線、市街地への進行ルートから
少し離れた所に囮を置きたいんすけど…

秘水「囮…それは私の【指定UC】!」

指定UCは50m級のスパ〇ボ大戦でも主力級の強さだけど
カッコよくしすぎてデザイン的には触手要素が
ほぼ無くなったのが玉に瑕な精霊機神!

こんな目立つ、強そうなロボに
進行されたら敵としては困りますよねぇ
ほっとく訳にはいきませんよねぇ

という訳で私は敵を誘き寄せて無力化します
軍犬さんは薄くなった警戒網を
森林迷彩にしたヴュルギャリテで抜けて下さいね

軍犬「親衛隊長…これ、囮(決戦兵器)です」


ビッグ・サン
そろそろ頃合いですかね
戦いがひと段落して、ゴーストスコードロンの残骸が散乱する市街地に来たビッグ

ちょっとした実験をするのに、壊れたキャバリアがたくさんあるほうが都合がよかったのだ

オブリビオンマシンなるものがあるのなら、キャバリアもアンデットとして使えるのではないかと
アンデットナイトみたいなものだ
騎士の鎧のアンデット

キャバリアの残骸に呪文を唱えるビッグ

ボロボロのキャバリアが科学の法則を無視して起き上がる
アンデットキャバリアだ

片っ端から術をかけ、アンデットキャバリアの群れを引き連れ、ビッグは性能テストとばかりに森林地帯に行く

キャバリアはゴーレムの素材にもなりますしアンデットにも使えて実に便利ですね



●帰りを待つもの(食べ物)のために
「さて、市街に攻め込まれるのも追撃されて山岳でボスと挟撃されても嫌なので、敵の支援キャバリアはなるべく無力化したいっすね」
 森林地帯を眺めつつ、ミリタリールックの秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)が、親衛隊の食料庫からかっぱらった――もとい、お願いして譲ってもらった軍用食を齧りながら呟く。
「マスター、帰ったらステーキとパインサラダが待っているのではないのですか?」
「ステーキとパインサラダは別腹っす」
 召喚継続中の触手農家令嬢、秘水・クティが美少女然とした顔で瞳を半眼にしてツッコミを入れるが、軍犬にはどこ吹く風だ。
 おかわりの軍事食――スティック状の固形食に手を伸ばすと、ぽいっと口に放り込む。
「さすが、文明が発達してる世界だけあって、軍用食も味がいいっすね」

 満足気に呟いた軍犬は、親衛隊長の方へと歩みを進める。
 親衛隊は、森林地帯から支援キャバリア――ゴーストスコードロンたちが、市街地に突破してこないようにと、森林地帯の境界線にキャバリア部隊を展開させている最中だ。
 白色で統一された親衛隊機が大盾と銃で武装し、三列の横陣を組んで陣形を整えていた。
 そのうちの一機、陣の中心に立つクロムキャバリアが、親衛隊長の機体だ。

 軍犬は、豪勢な装飾の施された親衛隊長機に近づくと声をかけた。
「親衛隊長さん、少し話があるんすけど……」
 軍犬の姿をモニタに認めた親衛隊長は、機体の頭部を頷かせると、コックピットハッチを解放。跳躍して軍犬の目の前に着地した。

●死霊術の研究者
 一方その頃。
 猟兵たちと『モノアイ・ゴースト』との激しい戦いが行われた神聖王国グランティア王都を、黒髪の男性が歩いていた。
 明るい色のジャケットを着て左目に赤いマスクを付けたイケオジ風の男性。ぬいぐるみを抱えた少女を連れた彼は、人形遣いにして死霊術士のビッグ・サン(永遠を求める研究者・f06449)であった。
 ビッグは、戦闘によって散乱したゴーストスコードロンの残骸を見つめると、口元に笑みを浮かべて呟いた。
「そろそろ頃合いですかね……」

 戦争の初戦が決着するのをあえて見守っていたビッグ。
 その目的は、ネクロマンサーたる彼の目的である不老不死の研究のためだ。
「オブリビオンマシン……なかなか興味深い存在がいる世界ですね」
 本来オブリビオンである死霊を操るのが死霊術士――ネクロマンサーである。ならば、機械のオブリビオンであるオブリビオンマシンに死霊術を使ったらどうなるか――。
 それは、彼の知的好奇心を刺激するのに十分な理由と言えた。

「もしも、キャバリアもアンデッドとして使えるのならば、アンデッドナイトのようなものですね」
 ビッグは、周囲に散乱したゴーストスコードロンの残骸に死霊術の基礎である【クリエイト・アンデッド】の呪文を唱える。

 ――すると、破壊されて見るも無残な姿になっていたゴーストスコードロンのパーツが再び寄り集まり、ガシャン、という金属音を立てて立ち上がっていくではないか。
 それは、まさにキャバリアという機械技術と死霊術という魔法技術の融合によって生み出された存在だった。

 王都に転がるゴーストスコードロンの残骸に片っ端から死霊術をかけてアンデッド化していったビッグは、自身に付き従う無数のアンデッドキャバリアの群れを見て満足気に呟く。
「術が成功するのは確認できました。後は性能テストですね」
 『ゴーストスコードロン』の名に恥じないアンデッドキャバリアの軍勢を引き連れ、ビッグは森林地帯へと向かったのだった。


「それではクティ、作戦開始っす!」
「マスター、ほんとにやるんですか?」
「もちろんっす! 親衛隊長さんの許可ももらってるので、何の問題もないっすよ!」
 背の高い木々が生えた森林地帯。
 山岳地帯への進軍ルートから離れた地点で、軍犬がクティに作戦開始を告げていた。

 軍犬が行おうとしている作戦。それは囮作戦だった。
 山岳地帯へ向かうルートから外れた場所で囮となりゴーストスコードロンたちを引きつけ、味方の進軍や敵の市街地への侵攻を妨害しようという決死の作戦だ。

「けど、親衛隊長さんは危険だって言ってたじゃないですかー」
「大丈夫っす。そのためのクティっすから!」
 完全に他力本願な軍犬だった。

「仕方ないですね……」
 クティは諦めたかのように嘆息すると、自身が開発したスーパーロボットを呼び出す。
 今どきの触手農家令嬢は、スーパーロボットの一機くらい開発できないと務まらないのだ。
「触手の名誉と大切なものを守る為、今こそ顕現せよ! 汝、無垢なる触手! テンタクルスマン!」
 クティの呼びかけに応じ、地面に描かれた巨大な魔法陣から無数の触手が出現。
 触手が寄り集まり、巨大スーパーロボットの胴体、両脚、両腕、頭部を形成していく。
 これこそ、全高50メートルにも達するスーパーロボット、【触手精霊機神『テンタクルスマン』】だ。
 通常のキャバリアの実に10倍という巨体の触手精霊機神『テンタクルスマン』は、胴体から触手を伸ばし、クティを体内の操縦席に取り込んだ。

 突如、森林地帯に現れた超巨大触手ロボ。それは、森林地帯を守るゴーストスコードロンたちにとって脅威に映った。特に触手ロボという、放っておくと18禁展開になりそうなあたりが。
 リプレイを健全に保とうと、周囲のゴーストスコードロンたちが『テンタクルスマン』を撃破するため集結し、機銃やロケットランチャーでの攻撃を開始した。

「予定通り、敵が集まってきたっすね。このまま敵を引きつけておいて欲しいっす」
 森林迷彩を施したキャバリア『ヴュルギャリテ』のコックピットに乗り込んだ軍犬は、通信機を通して触手精霊機神『テンタクルスマン』の操縦席に通信を送る。
「任せてください。マスターはこの隙に薄くなった警戒網を抜けてください」
 触手機神に乗ったクティは、通信機に向かって不敵な笑みを向け、軍犬に応える。
「それに、この敵を引きつけるだけでなく、全部倒してしまっても構わないのでしょう?」
「クティ、それフラグっす!?」
 後ろ髪を引かれながらも、軍犬は『ヴュルギャリテ』を操縦し、森林地帯を抜けていったのだった。


「マスターは行きましたね。大切な者の為ならば、正しき怒りで邪神すら討つ、この触手精霊機神の力、見せてあげましょう!」
 クティは『テンタクルスマン』の操縦席で吼えると、機体の触手ミサイル、触手レーザー、触手バズーカによって、ゴーストスコードロンたちに反撃を開始した。その攻撃を受け、撃破されていく支援キャバリアたち。
 森林地帯に爆発が巻き起こり、激しい爆音が響き渡った。

 だが、ゴーストスコードロンたちも黙ってやられるだけではない。
 全身を触手に絡みつかれながらも、健全なリプレイを守るため必死に触手精霊機神に攻撃を行っていく。
「くっ、さすがにこの敵の数は……っ!?」
 ミサイルの爆発を受け、触手精霊機神が苦悶の呻きを上げる。
 巨体を誇るスーパーロボットの装甲も、これだけの激しい攻撃を受けて耐えきれるものではない。あと、さっきフラグ台詞言っちゃったし。

 ――クティと触手精霊機神の命運もここまでか!?
 そう思われた瞬間。

 突如として、触手精霊機神の後方から援護射撃が放たれた。
 無数の飛来するミサイルは、ゴーストスコードロンの部隊に命中すると、激しい爆発を引き起こす。

「アンデッドキャバリアのテストをしようと思っていたところに、ちょうどいい敵部隊がいましたね。私の下僕たちよ、あの敵部隊を壊滅させなさい」
 姿を現したのは、左目にマスクを付けたイケオジ、ビッグだった。
 ビッグの背後にはアンデッドキャバリアの部隊が布陣し、ビッグの指示で攻撃を開始していた。
 突如現れた味方にクティが問いかける。
「助かりました……! あなたは……!?」
「名乗るほどの者ではありません。ただの通りすがりのネクロマンサーですよ」
 ビッグは不敵に笑ってクティに答えるのだった。

 ビッグのアンデッドキャバリア部隊の登場で、戦況は一気に傾いた。
 元々、ゴーストスコードロンとビッグのアンデッドキャバリア軍団の性能は互角だ。
 だが、ビッグのクリエイトアンデッドは、戦場で倒れた味方を蘇らせ、さらに敵を味方のアンデッドキャバリアにしてしまう。
 さらに、クティの触手精霊機神の激しい攻撃で、敵を撃破していくのだ。
 こうなれば、戦闘が長引けば長引くほど、クティとビッグの陣営が有利になっていく。

 こうして、勝ち目がないと判断したゴーストスコードロンたちは、この場から撤退していったのだった。

 危機を救われたクティは、謎のネクロマンサーに向かって礼を言う。
「どうもありがとうございました、おかげで助かりました」
「気にしないでいいですよ。キャバリアの残骸はゴーレムの素材になりますし、アンデッドにも使えるので、実に便利ですからね」
 撃破したゴーストスコードロンの大群を宝の山を見るように眺め、ビッグは満足げに頷いたのだった。 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セツナ・フィアネーヴ
……味方のおかげでだいぶ助けられたな……
で、借りていたきゃばりあをぼろぼろにしてしまったが、これは直せるのだろうか……

きゃばりあの事も気になるが、先に“奴”の事か
既に他の猟兵が動いているようだし、こっちも囮に近いことをしよう
といってもきゃばりあは今回は借りない。さすがに、これ以上壊すのは……

市街地にある残骸、あるいは森林でほかの猟兵との戦闘で破壊された残骸に対して影から生じた『災禍の武器』を突き刺し、【限定解放:災禍の巨神】

災禍の武器を核に、残骸を素材にし『雷鳴と嵐の巨神』を顕現させ、《天候操作》で文字通り嵐を起こしつつ敵へと攻撃を仕掛け、可能な限り数を減らしておこう

※アドリブ他歓迎です



●目覚める竜神機
「ずいぶん無理をさせてしまったな……」
 ボロボロになったキャバリアの前で、セツナ・フィアネーヴ(災禍貫く竜槍・f26235)が呟いた。
 ツインテールにした青色の髪が項垂れるように垂れ下がり、彼女の背に生える人派ドラゴニアンの証たる翼も小さく折りたたまれていた。
 彼女の緑色の瞳が見つめるキャバリアは、『モノアイ・ゴースト』に致命打を与えるために、その猛攻を正面から受け止め――その結果、機体に施した耐ビームコーティングは焼け焦げ、耐熱装甲の耐熱材も完全に蒸発してしまっていた。
 だが、味方の助けにより、即席とはいえ耐熱仕様に改修を受けていなければ、敵の攻撃を耐えきることはできなかっただろう。

『この機体、治るといいですね』
「ああ……」
 友である精霊アリシアの言葉に頷くと、セツナは手に持った『封竜槍アドウェルス』を握りしめるのだった。


「『きゃばりあ』のことも気になるが、先に『奴』の事か……」
『セツナ、やっぱり囮に……?』
「ああ、既に他の猟兵も動いているようだ。さすがにこれ以上壊すのは忍びないので、今回は『きゃばりあ』は借りないが……」
 セツナは覚悟を決めた眼差しで森林地帯を見回す。
 深い森の木々の向こうには、ゴーストスコードロンの大群が潜んでいるはずだ。

 この森林地帯を抜け山岳地帯へとたどり着くには、一体でも多くのゴーストスコードロンたちを倒し、味方の猟兵たちが突破しやすくする必要がある。
「この身に代えても、一体でも多くの敵を倒し、仲間の助けとなることが私の使命だろう」
『けれど、それじゃあセツナはどうなるのですか……!?』
 傍らに浮かぶ淡い光に向かって、セツナは小さく微笑んだ。
 そして、強い意志を込めた言葉を紡ぐ。
「この槍の災禍の力を使えば、多くの敵を道連れにできるはずだ」
『そんなっ、それではセツナは……!』
「『きゃばりあ』を乗りこなせない私が先に進むより、少しでも味方が無傷で進めるほうが効率がいい」
 制止しようとするアリシアを振り切って、セツナは森に向かって一歩を踏み出し――。

 キュイイイン、という甲高い音が背後から聞こえるのに気がつき、足を止め振り返った。

「この……音は?」
『見てくださいっ、機体がっ!?』
 振り返ったセツナとアリシアが目にしたのは、甲高い起動音と共に動力炉を稼働させるボロボロになったキャバリアの姿だった。
 カメラアイに光を灯すその姿は、まるで自分を置いて何処に行くのかと友に問うているかのようだ。

「そんなボロボロになってまで、まだ……」
『セツナ、この機体は、まだ一緒に戦えるって言っています!』

 アリシアの言葉に応えるように、キャバリアはコックピットハッチを解放した。
 ――まるで、早く乗れというかのように。


「すまない。もう一度、力を借りる……!」
 セツナは『封竜槍アドウェルス』を握る力を強め、キャバリアに語りかけた。

 その瞬間。
 セツナの竜の力を封印している槍が眩い光を放った。

「これは……暴走っ!?」
『いえ、これは……機体の想いに槍が応えていますっ!?』
 驚愕の声を上げるセツナとアリシア。
 槍はひとりでに空中に浮かび上がると、キャバリアのボディに突き刺さり、内部に取り込まれていった。

 『封竜槍アドウェルス』を取り込んだ機体は、強大な魔力のオーラを吹き上げ、その姿を変化させていく。
 ボロボロに溶解した装甲は、まるでドラゴンの鱗を思わせる形状の黒く光る装甲に変化し、機体の顔も竜人の顔のように変形した。さらに背面には巨大な翼と太い尻尾が生成されていく。

「まさか【災禍の巨神(ティタノウェルス)】……?」
 セツナの『災禍の武器』を核とすることで生み出される【限定解放・災禍の巨神】。
 それが発動したことで、キャバリアは雷鳴と嵐を操る『災禍の巨神』へと姿を変えたのだ。

 呆然とするセツナとアリシアに向かって、キャバリア――いや、『災禍の巨神』が一歩を踏み出した。友よ、行かないのか、というかのような視線を向けながら。

「……わかった、改めてよろしく頼む」
 セツナとアリシアは、漆黒の竜神機『災禍の巨神』に乗り込み、森林地帯へと向かうのだった。


『セツナ、左前方から攻撃ですっ』
「ああっ!」
 セツナの意志に応えて、『災禍の巨神』が大きく跳躍した。
 『災禍の巨神』が立っていた場所を、ゴーストスコードロンが放ったロケット弾が虚しく通り過ぎる。
「私の思い通りに動いてくれる……! これなら!」
 セツナは『災禍の巨神』の翼を大きく広げると、上空へと飛翔。
 地上から撃たれる機銃の弾丸を漆黒の鱗で弾き返しつつ、ゴーストスコードロンの群れの頭上で静止した。
「『災禍の巨神』よ、その力を顕現せよっ!」
 突き出した両手の先から、『災禍の巨神』は暴風を放つ。それは、まさに雷鳴と嵐の巨神としての力だ。
 暴風が竜巻となってゴーストスコードロンたちを襲う。

 竜巻に巻き込まれたゴーストスコードロンは、はるか上空へと巻き上げられる。
 クロムキャバリアの高高度の上空。そこは、この世界の制空権を握る暴走衛星『殲禍炎剣(ホーリーグレイル)』の射程圏内だ。
 高高度に舞い上がったゴーストスコードロンたちは、上空からのレーザー攻撃を受けて爆散した。

 竜巻の目に入って、上空に舞い上げられることを避けられたキャバリアたちも、『災禍の巨神』が放つ豪雷に打たれ、機体の電装系をショートさせて動きを止めていくのだった。


 こうして、セツナとアリシアの乗る『災禍の巨神』は、多数の敵機を撃破しつつ森林地帯を突破した。
「これなら、仲間たちのサポートもできたはずだ」
『かなり敵を倒しましたからね』

 森林地帯を抜けると同時に『封竜槍アドウェルス』が機体から排出された。
 だが、キャバリアの外見は、いまだに竜の鱗、翼、尻尾を持った竜神機の形状のままだ。

 コックピットから降りたセツナとアリシアを見つめる竜神機の瞳。
 それは、自分をここに置いていってもいいし、このまま使い続けてもいいと言っているかのようだった。

『セツナ、もしこの子を使い続けるなら、きちんと名前をつけてあげないといけませんね』
 アリシアの声が風に乗って消えていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
※前線基地にて

ご依頼のEPメガスラスター(背部大型推進飛行装置)の搬入と私のキャバリア…ロシナンテⅣへの接続は?

…尽力に感謝いたします、姫様は必ずや

UCで出力(移動力)更に向上(推進剤満載、暴走寸前出力で装甲低下)しセンサーでの●情報収集で木々を避け、殲禍炎剣の反応高度に掛からぬ超高速低空飛行

迎撃は●瞬間思考力で反応し●見切って●推力移動で回避しながら頭部、腕部、サブアームの二丁のライフルでの●乱れ撃ちスナイパー射撃で排除

戦域を突破する頃にはEPメガスラスターも限界を迎える以上パージする必要もありますが…此処まで派手に動けば味方を支援する陽動にもなる筈

後は…私の●操縦技術次第ということですね



●天駆ける騎士
 森林地帯に設けられた、臨時の前線基地。
 そこでメカニックたちの手によって、騎士のようなキャバリアが整備を受けていた。
 ベースとなっているのは騎士タイプのオーバーフレームとアンダーフレームだ。
 この世界では古くから特に儀礼用キャバリアなどに多用されてきた歴史あるタイプのフレームであり、グランティア王国の親衛隊にも同系統のフレームを用いた機体は多い。
 だが、そのキャバリア――『ロシナンテⅣ』は、特に耐久性と運動性を重視したチューンナップが施されており、白色の装甲に紫色での縁取りや装飾といった特有の意匠を施されていた。肩やシールドに刻まれた六枚の花弁の文様が見るものの目を惹きつける。

 その機体を見上げるのは、『ロシナンテⅣ』の所有者、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)だ。
 まるで『ロシナンテⅣ』を一回り小さくしたようなウォーマシンの騎士は、壮年の整備士に向かって声をかける。
「お手数をおかけし、申し訳ございません。ようやく愛機が到着しましたもので」
「なに、いいってことよ。けど、ほんとにアイツを装着して出撃するのかい?」
 壮年の整備士――グランティア王国の整備長は、トリテレイアが調達してきた巨大な物体に目を向ける。

 それは、キャバリア本体と同じくらい大きな、化け物じみたサイズのスラスターユニットだった。
 かつて世界が『殲禍炎剣(ホーリーグレイル)』に制空権を奪われる前ならば、スペースシャトルや大陸間弾道ミサイルの推進装置として使われていたような代物。
 それが『ロシナンテⅣ』の背部に接続され、推力の調整をうけていた。

「騎士らしい武装ではないどころか、メーカーの保証外使用……どのような結果になろうとも致し方ありません」
「ああ、メカニックとしちゃあ、あんなモンで飛んでこうなんざ、自殺行為と止めるべきなんだが……」
 そこで、壮年の整備長はトリテレイアの巨体を見上げ、がしがしと頭をかいた。
 そして諦観したように溜息をつく。
「ま、お前さんの鍛え方なら、あのスラスターのGにも耐えられるかもな。――猟兵ってやつは、これだから……」
「……尽力に感謝いたします。姫様は必ずや」
「おう、頼んだぜ、騎士殿」
 整備長のスパナで鎧の肩を叩かれたトリテレイアは、早く飛び立ちたいとでも言うようにスラスターを暖気させている愛機『ロシナンテⅣ』に乗り込むのだった。


「トリテレイア・ゼロナイン、ロシナンテⅣ、出ます!」
 『ロシナンテⅣ』が、背面のメガスラスターユニットを全開にし、耳をつんざく轟音とともに前線基地から飛び立つ。
 プラズマ状になった高温のジェットを吐き出すメガスラスターユニット。それは、通常よりも機動性を重視した『ロシナンテⅣ』の飛行速度を、さらに5倍近くまで強化していた。
『高度に気をつけろよ! その速度だと、中高度に上がっただけで『殲禍炎剣』のターゲットだ!』
「了解しました。後は私の操縦技術次第ということですね」
 無線機から聞こえる整備長の言葉に答え、トリテレイアは『ロシナンテⅣ』の飛行高度を下げた。超高速の低空飛行で、森の木々の上空ギリギリを飛翔していく。
 時折あらわれる背の高い大木に衝突しそうになるたび、『ロシナンテⅣ』は側部スラスターで飛行軌道を微修正して、障害物をやりすごしていく。

 だが、森林地帯を轟音を上げて飛び越えようとする『ロシナンテⅣ』を、ゴーストスコードロンたちが見逃すはずはなかった。
 ゴーストスコードロンたちは、飛翔してくる騎士のキャバリアに向かって機銃やロケット弾、ミサイルを発射する。
 メガスラスターユニットに推進剤を満載し、さらに暴走寸前にチューニングした無茶な運用のため、『ロシナンテⅣ』はスラスターに攻撃を受けたら、空中で木っ端微塵だ。

 しかし、『ロシナンテⅣ』を駆るトリテレイアは冷静だった。
「やはり、迎撃に出てきましたね!」
 敵の攻撃を瞬間的に把握したトリテレイアは、その攻撃を見切り、『ロシナンテⅣ』の側面スラスターを吹かすと、バレルロールをして回避。
 対空迎撃ミサイルを撃ってきたキャバリアに向かって頭部機銃を斉射し、爆発させた。
 さらに、両腕に内蔵した機銃とサブアームに持った実弾ライフルを乱れ撃ち、敵機を正確に撃ち貫いていく。
「私が派手に動けば、味方を支援する陽動にもなる筈です! まだまだっ!」
 森林地帯上空を駆け抜ける一筋の流星となった『ロシナンテⅣ』。
 その白き騎士が飛翔した足元では、無数の爆発が起こり、ゴーストスコードロンたちの残骸が転がるのだった。


「見え――ましたっ!」
 森林地帯の切れ目。山岳地帯の入り口を目にし、トリテレイアは排熱装置がレッドゾーンに突入していたメガスラスターユニットを強制パージ。
 『ロシナンテⅣ』の背部で小さな爆発が起きると同時に、メガスラスターユニットと機体が切り離される。

「ここまで、ご苦労さまでした」
 地面を両脚で削りながら強引に着地した『ロシナンテⅣ』は、背後を振り向くと胸に手を当てる騎士礼の仕草をおこない――地上に落下したメガスラスターユニットに機銃を一斉掃射。
 残っていた推進剤に着火したメガスラスターユニットは大爆発を起こし、『ロシナンテⅣ』を追ってきていたゴーストスコードロン部隊を壊滅させたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

桐嶋・水之江
こういう時は人形機兵隊の出番よ(指パッチン)
デミウルゴスに森林を焼き払わせてから…え?ダメ?
なんで?伏兵がいるセクションは文明を石器時代に戻してから進むのが戦術の基本でしょう?
環境保全?環境は壊すためにあるのよ?
お姫様まで黒焦げバーベキューになりかねない?
機体が無事ならいいじゃない
…はいはいわかったわよ、仕方ないわね
じゃあDプラスを陸上部隊として進ませるわ
あまり乗り気になれないけれど山道なら歩兵じゃなきゃまともに動けないでしょうからね
動くものは全て破壊しなさい
どうせ敵しかいないんだから
デミウルゴスは例のアレに撃ち落とされないよう程々の高度を保って空から監視よ
私?当然安全が確認されてから進むのよ



●マッドな才媛
「こういう時は人形機兵隊の出番よね」
 紫髪の美女、桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)は、身にまとった白衣を大きく翻しながら、右腕を頭上高くに掲げ――パチン、と指を鳴らした。
 その音を聞いて水之江の元に馳せ参じたのは、巨大なドラゴンタイプのドローン『デミウルゴス』である。
 機械の巨体は力強く空を羽ばたき、今にも口から炎のブレスを吐き、すべてを燃やし尽くしそうな勢いだ。
「このデミウルゴスに森林を焼き払わせれば、森林地帯に潜んでいるキャバリアなんて一網打尽よね。もし熱に耐えられたとしても、身を隠す木がなくなった伏兵など、もはや敵ではないわ!」
 ドヤ顔で『デミウルゴス』に森林を焼き尽くすブレスを吐かせようとする水之江に対し――。

「ちょっと待たんかぁあああっ!」
 壮年の整備長から全力で投げられたスパナが、水之江の顔面の横3センチを通り過ぎ、『デミウルゴス』の金属ボディに当たって甲高い音を立てたのだった。

「ちょっと、いきなり危ないじゃない、何するのよ?」
「それはこっちの台詞だ!? いきなり環境破壊しようとするんじゃない!」
「ふっ、大事の前の小事。石橋は叩いて壊す。森林は燃やすためにあるのよ! 姫様が黒焦げバーベキューになっても、機体さえ無事なら研究はできるから問題ないわ」
「問題大ありだっ!」

 森を燃やすなと釘を刺された水之江は、整備長に向かって小声で囁いた。
 それは、まるで迷える子羊を誘惑する悪魔の囁き。
「私のやり方に目をつぶってくれるなら、うちの研究所から格安で機械兵器や強襲揚陸艦を納入するわよ?」
 宇宙世界に拠点を置く水之江の桐島技研。
 そこでは、最先端の機械兵器や全環境適応型の強襲揚陸艦を開発、販売している。
 クロムキャバリアとは別系統のロボット兵器や、この世界では『殲禍炎剣』のせいで失われた航空技術といった貴重なテクノロジーを手に入れるチャンスに、整備長は一瞬、首を縦に振りそうになり――。

「いいや、姫様の安全こそ第一! それに、この森林地帯は隣国からの進攻を防ぐ緩衝地帯としての役割や、動物の狩り、植物の採集などで国民に不可欠なもの。敵を倒すための最低限の損害なら仕方ないが、大規模破壊を許すわけにはいかん……!」
 技術者としての誘惑と、国への忠誠心の板挟みにあいながら、血の涙を流しつつ答える整備長。
 その様子を見て、水之江はくすり、と笑みをこぼす。
「嫌ね。冗談に決まっているじゃない。9割くらいしか本気で言ってないわよ?」
「それはほとんど本気じゃないかっ!?」
「仕方ないわね。プラン1がダメならプラン2ね」
 整備長の言葉を右から左に聞き流した水之江は、空中に開いたコンソールを叩き、ホロディスプレイに命令が流れるのを確認すると不敵な笑みを浮かべた。

 ――直後、グランティア王都上空で待機している『ワダツミ級強襲揚陸艦』から、無数の光点が近づいてきた。
「こんなこともあろうかと量産しておいたのよ」
 腕を組んだ水之江の前に着陸するのは、【機巧の魔女の人形機兵隊(マリオネットソルダート)】と呼ばれる、76機のウォーマシン型ドローン『Dプラス』の部隊だ。
 小型の無人キャバリアとも言うべき『Dプラス』。3機編成の『Dプラス』ですら、ゴーストスコードロンを圧倒するだけの火力を持っていたのだ。それが70機以上も並ぶ姿は壮観を通り越して、もはや1つの軍隊である。
「数は力――戦術の基本よね」
 うっとりとした表情で、整列した『Dプラス』たちを眺める水之江。
 このマッドサイエンティストは、決して敵に回してはいけない。そう心に誓う整備長だった。


「では、Dプラスは陸上部隊として進軍よ。動くものに容赦はいらないわ。どうせ敵しかいないんだから、全力で撃破しなさい」
 水之江の指示を受け、シールドを装着し隊列を組んだ『Dプラス』が、ビームライフルを構えながら進軍を開始した。
 森林地帯という足場の悪い地形も、二足歩行の『Dプラス』部隊には問題にならない。
 さらに、その上空を『殲禍炎剣』のターゲットにならない高度を保って『デミウルゴス』が飛行し、地上を監視するのだった。

 時折遭遇するゴーストスコードロン部隊は、『Dプラス』部隊の一糸乱れぬ動きの前に撃破されていく。
 それでも討ち漏らした敵は、上空の『デミウルゴス』が冷気のブレスを吐いて凍りつかせていった。

 『Dプラス』部隊によって、進路上のゴーストスコードロンがほぼ全滅したのを確認し。
「さて、これで安全に通れるわね」
 キャバリア『ウバザメ』に乗り込んだ水之江は、コックピットでドリンクを飲みながら、悠々と森林地帯を突破したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神代・セシル
あんまり目立ちになりたくないので、キャバリアを使わなくて、コソコソで進みましょう。

「(実はキャバリアをのりたくないです)」

良い視力を利用して、適当なルートを選んで、できるだけ敵を遣り過ごす。

「(順調に進めばいいですけど)」

UCを常に発動し、敵に見つけかれても魔法で倒す。

もし味方を助ける必要が有れば、助けてあげる。


レイス・ソレイユ
向かうのが遅れてしまい、王女様が連れ去られて…!
遅れを取り戻すためにも、ここを乗り越えなくてはいけません…!

ブリムティブマルチセンサーで敵の位置を探り
敵の監視・巡回の隙間を見つけ、出来るだけ交戦を回避して進みます

可能なら、敵の巡回ルートを読んで行動もできたら…

そのまま突破できれば大丈夫ですが
見つかってしまった場合、もしくは
味方のピンチを見つけた場合は戦闘へ!

また、索敵時に味方の危機が察知できていたら
そちらの救援を優先します!

アームブレイドのライフルモードで射撃しつつ接近
そのままウイングソードで斬り込みます!

それでもまだ包囲されていたら
セイバーズ・ガーディアンで武装と本体で連携して突破します!



●メイドと魔女
「馳せ参じるのが遅れてしまい、申し訳ありません。状況は……!?」
 親衛隊の前線基地に、緑色の長髪の少女、レイス・ソレイユ(SoFs-00C・f29922)が駆け込んできた。
 メイド服にホワイトブリムを身に着けたような格好のレイスだが、よく見るとその身にまとうのは普通のメイド服ではなかった。
 機械開発を行う研究所で造られたレプリカントであるレイスは、元々メイドロボとして造り出されたのだが、その後、戦闘用の改修を受けている。
 その身に纏うのは、スカート状のシールド『スカーティングシールドエッジ』に、エプロン型の装甲『エプローシブアーマー』、頭部に付けたホワイトブリム型のセンサー『ブリムティブマルチセンサー』であった。

 レイスに声をかけられた少女が、青い縦ロールの髪を揺らしながら、ゆっくりと振り向く。
 モノクルをかけ、本を小脇に抱えた少女は、神代・セシル(夜を日に継ぐ・f28562)であった。
 魔女の帽子をかぶり、手作りの魔女服を身に着けた西洋妖怪のセシルの姿は、まさに魔女。
 メイド服のレイスと並ぶと、まるでハロウィン会場かのような印象を周囲に与えている。

「姫様は……」
 赤い瞳に不安げな色を浮かべながら、セシルはレイスに現在の状況を説明する。
 実は人見知りな面のあるセシルは、たどたどしくも一生懸命に事件の経緯を語っていった。
「そんな……王女様が連れ去られて……!」
 セシルから『モノアイ・ゴースト』との戦いの顛末や、森林地帯に潜む敵の状況を教えられたレイスは、ぎりり、と両手を強く握りしめた。そして緑色の瞳を森林地帯に向け、決意のこもった言葉を呟く。
「遅れを取り戻すためにも、ここを乗り越えなくてはいけません……!」
「歩いて森を抜けるのですか? キャバリアを使わないなら、私も一緒に……」
「もちろんです。一緒に行きましょう!」
 おずおずと告げるセシルに、レイスは頷きながら力強く答えるのだった。


「10時の方向に敵の反応です。こっちへ……」
 レイスは、頭部の『ブリムティブマルチセンサー』によって、熱や音、電波を感知してゴーストスコードロンの居場所を索敵。敵の監視網の隙間をみつけて進路を示す。
 レイスは、セシルの手を引きながら、なるべく交戦を避けながら森を進んでいく。

 レイスと手を繋いだセシルも、敵との交戦を避ける方針は同じだ。
 セシルは、行く手に目を向けると、レイスに向かって呟く。
「この先は敵がいます……」
 常人よりも遥かに良い視力を持ったセシルの瞳には、視界の利かない森の中でも、遠距離の敵の姿が映っていた。
 さらにセシルは【Windows of Heart】の魔法を常時発動させている。この魔法は、相手より視力が良い場合に、有利に振る舞うことができるものだ。視力が自慢のセシルにぴったりの魔法と言えるだろう。
 ――二人が物陰に隠れることしばし。
 ゴーストスコードロンの一群が二人の目の前を通り過ぎていった。

「ありがとうございます、助かりました、セシル様」
「……いえ、こちらこそ」
 お互いの長所を活かして助け合い、笑みを交わす二人だった。


 レイスとセシルは、上手くゴーストスコードロンの警戒網を回避しながら、森を進んでいた。
「(順調に進めばいいですけど)」
 セシルの心に、一抹の不安がよぎる。
 それは、魔女――西洋妖怪としての超感覚だったのかもしれない。

「敵に発見されましたっ!」
 レイスが警戒の声を上げる。
 彼女のセンサーに、接近してくる無数の敵の反応が映る。
「反対からも……!」
 後方に視線を向けたセシルも、そちらから迫る敵の姿を視界に捉えたのだった。

「セシル様、後方の敵に追いつかれる前に、前方の敵を倒して一気に突破しましょう」
「うん……」
 レイスの提案に、セシルも強く頷く。
 レイスは、左右腕部のアーマーに内蔵された武器『カフュースアームブレイド』を抜き放った。そして、強く地を蹴ると、前方から接近してくる敵の群れに飛び込む。
「落ちて……くださいっ!」
 アームブレイドをライフルモードにして射撃し、レイスはゴーストスコードロンの装甲を撃ち抜いていき――動力炉を撃ち抜かれたゴーストスコードロンは、その身体を爆散させる。

 だが、敵の数は多い。
 射撃のために足を止めたレイスに向かって、ゴーストスコードロンがミサイルを発射しようとし――。
「させませんっ!」
 手に持っていた魔導書を広げたセシルが炎の魔法を放ち、ミサイルを発射しようとしていたゴーストスコードロンを焼き尽くした。

「ウイング――ソード!」
 敵陣に切り込んだレイスが、一対の剣――ウイングバインダーが変形した『ソレイユウイングソード』で敵キャバリアを真っ二つにし。
「風よ!」
 セシルの魔法が敵を吹き飛ばす。

 だが、それでも敵はまだまだ残っている。
 背後からは、敵の増援の足音が聞こえてきていた。


「セシル様、こうなったら一気に決めましょう……!」
「了解です……!」
 レイスは、両手の『アームブレイド』をビームソード形態にし、敵陣に突撃していく。
 それを、後方から魔法で援護するセシル。
「動いて! みんなを守る為に……!」
 レイスは【セイバーズ・ガーディアン】を発動し、ウイングソードを遠隔操作モードに切り替えた。
 空中に浮かび上がったウイングソードはレイスの思い通りに飛翔し、ゴーストスコードロンたちを切り裂いていく。
「これで……っ!」
 レイスが、ウイングソードとビームソードで敵を斬り裂き――。
「受けてくださいっ!」
 セシルが雷撃の魔法を放ち、敵の包囲網に穴をあけた。

「さあ、今です、セシル様!」
「うんっ!」
 レイスとセシルは、手を取り合いながら、ゴーストスコードロンの大群の包囲網を突破し、森林地帯を抜けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

支倉・錫華
森の中の戦いか。今回は生身のほうがよさそうかな?
メンテから帰ってきてくれたけど、アミシアにはフォローに回ってもらおう。
突入のときとか、相手に見つかりそうなときに、
キャバリアからジャミングかけてもらいたいかな。
「見つかったときは、逃げちゃっていいからね」

今回はキャバリアの撃破よりも、森を抜けることを最優先でいこう
身軽さを生かして木々の影に身を隠しつつ、ブービートラップをしかけて、
敵キャバリアの足をとめながら、森を抜けていくよ。

できれば戦わずに相手を無力化していけるといいんだけど、
どうしても戦わないといけないときは【次元召喚分離攻撃】で素早く倒していきたいな。
そのときも足狙いで動きをとめていくね。


シャルロット・バニー
ふむふむ、森の中
そして通り抜ければオッケー
ならわざわざウサウサMk2を呼ぶこともありませんね?
それに私はこの姿でもスーパーロボット
縮小サイズだからって甘く見てるとケガするぜ、ですよ?

てなわけで森の中をバニースーツのまましゅたたたたと駆けていきましょう
木の影に身を隠して敵をやり過ごし
枝から枝にぴょんぴょん飛び回って出し抜いて
ふふふ
スニーキングミッションは得意なのですよ
なにせ合体前の私はスカウト的なアレですからね

っと、単独で動く敵キャバリアがいましたか
見つかることはないでしょうが…単独の相手ならサクッとやっちゃいますか
シーブズ・ギャンビットで首切り兎の本領発揮ですよっ

キャバリアは首をはねられた!


雛菊・璃奈
森林地帯にて、UC(と仔竜(UCで進化して影竜))の力を使いながら進みつつ、ゲリラ戦で敵を攪乱し、味方の侵入を助けながら山岳地帯へ…。

【影竜進化】で家族であるミラ達を影竜に進化させ、影への潜航能力でミラ達と共にわたし自身も影に潜って進行…。

森林の影から影へとそのまま潜航して進み、孤立した敵や他の部隊と連携を取り難い敵部隊に対して、影竜達と共に影から急襲をしかけ、黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】で吹き飛ばしたり、凶太刀と神太刀の二刀で関節や装甲の隙間を縫う様に破壊して撃破…。

撃破後は速やかに再度影に潜航して離脱する等、攪乱戦を仕掛けながら目的地へ向かうよ…。


サージェ・ライト
えー、何でこんな展開に…?
乗りかかった船です
森と警戒網を抜けて山岳地帯に行く
私くらい目立たないクノイチなら…だから目立ってないもんっ!!

キャバリアお返しします
とっても良い機体でしたっ!
ありがとうございましたっ

さて、いっきまーす!
【かげぶんしんの術】でさくっと分身
3〜5人でチーム組んで、散開ですっ!
誰かがたどり着けば…ってことは無く
私が辿り着かないといけないので
分身には陽動してもらいます
ついでに他の猟兵さんも助けてあげてください
その間に本体はこっそりひっそり森を抜けますね

私が敵に遭遇したら
分身と一緒に『漆黒竜ノ牙』を投げ付けて応戦
本体はその隙に撤退
これで何とかなるはずです?

※アドリブ連携OK



●チーム・巨乳
「キャバリアお返しします、とっても良い機体でしたっ! ありがとうございましたっ!」
 金髪碧眼の少女、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、ぶんっ、という音が聞こえそうなくらい勢いよく身体を90度折り曲げて、前線基地の整備兵たちに向かって深々とおじぎをした。
 その勢いで、ポニーテールにした金髪がばさり、と顔にかかる。
 太ももが丸見えになっている丈の短い忍び装束の裾が際どいラインまで翻り、12歳という年齢に不相応な豊満な胸が、ぷるんと揺れた。
「ここから先はキャバリアは使わずに森を抜けますね。敵の警戒網を抜けるくらい、目立たないクノイチである私なら朝飯前ですっ!」
 前線基地の整備士一同の視線を、露出度の高い忍び装束に集めながら、自信満々に言うサージェだった。

「確かに森の中の戦いなら、今回は生身の方がよさそうかな? アミシア、キャバリアでのフォローは任せるね」
 サージェの意見に同意するのは、キャバリアに搭載した自身のパートナーユニットであるAIの『アミシア・プロフェット』に声をかける支倉・錫華(Gambenero・f29951)だ。
 黒髪をセミロングにし、物憂げな表情を浮かべる錫華。首元の黒いロングスカーフと、腰にマントのように巻いた同色のハーフローブ、両脚の黒いハイニーソックスと両腕の黒いロンググローブが彼女の肌を隠しているが――その他に身に着けているのは、大きな胸を強調するような丈の短い黒いシャツとベストに、超ミニのフレアスカートのみだ。
「わたしの諜報員としてのスキルがあれば、影のように目立たず森を抜けることは簡単かな」
 お腹周りと太ももが大きく露出した格好で整備士たちの注目を集めつつ、錫華は静かに言い放った。

「森の中を通り抜けるだけでオッケーなら、わざわざウサウサMk2を呼ぶこともありませんね。私も目立たないように突破してみせましょう」
 サージェ、錫華と同じく生身での森林地帯突破を口にするのは、紫色のロングヘアを揺らす有機アンドロイド、シャルロット・バニー(ヴォーパルバニー・f30079)である。
 身長こそ120センチ程度と12歳のサージェよりも頭一つ小さいが、それは全身の縮尺自体が一回り小さいだけだ。縮尺を除けば、プロポーションは成人女性と変わらないシャルロット。その大きな胸を強調するかのように身に着けたバニースーツと、脚を包む網タイツ。そして頭に揺れるウサ耳が、整備士たちの視線を釘付けにする。
「これでも隠密行動には自信があるんですよ」
 シーフとしての身のこなしで足音を立てずに整備士たちの間を縫うように歩くシャルロットは、自慢気に胸を張るのだった。

「うん……、森林地帯なら、皆の言うように生身でのゲリラ戦が良さそうだね……」
 他のメンバーの言葉に頷きながら同意するのは、銀色の長髪を風になびかせた妖狐の雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)だ。
 魔剣や妖刀を祀る魔剣の巫女である璃奈は、白地に赤い縁取りをした巫女装束『九尾の羽衣』を身にまとっている。それは、下半身の後ろ半分こそスカート状の衣に覆われているが、胸元や腰回りは最小限の布面積しかない。特に璃奈の豊満な胸は、胸の下に巻きつけた注連縄を模した呪術的な装飾により寄せて上げられることで、その存在感を強くアピールしていた。
 だが、魅力を引き立たせることで魔剣や妖刀との親和性を高める効果のある巫女装束は、魔剣の巫女にとって正装だ。
 璃奈がその魅力で整備士たちの注目を集めてしまうのも仕方のないことなのだ。

「俺はサージェちゃんの年齢と胸のギャップがいいな……」
「ばっか、錫華ちゃんの憂いを秘めた表情と、あのスタイルの良さがいいんじゃねーか」
「シャルロットたんのバニー姿、萌えでござるなぁ」
「璃奈ちゃんのケモミミと尻尾こそ至高! ……あと胸と脚も!」

 整備士たちがそれぞれの派閥に分かれて言い争う中、壮年の整備長が嘆息しながら四人の少女に告げる。
「なあ、お前ら。一度、自分たちの服装と容姿を鏡で見てから、『目立たない』という意味を辞書で調べた方がいいんじゃないか……?」
 特に、『露出度が高い』『スタイルが良い』『胸が大きい』とかの言葉が特徴欄にないか、注意が必要だ。


「整備長さん、何をいいたかったんだろー?」
「意味のわからないことを言っていたね」
「どういう意味だったんだろ……」
「もう皆様、無自覚なんて罪ですよ?」
 前線基地から出撃した4人の少女たち。
 サージェ、錫華、璃奈が真面目な顔で首を捻り、バニースーツ姿のシャルロットがイタズラっぽい笑みを浮かべていた。

 今回の森林地帯突破作戦に参加したスタイルの良い少女たちが、全員、生身での森林突破を選んだのには、何かの運命が働いているのだろうか。
 ――え、博士はスタイルはいいけど少女じゃ……いえ、ナンデモアリマセン。

 ともあれ、4人は連携して森林地帯の突破作戦に挑んでいく。


「さて、まずは私からいっきまーす! しゃどーふぉーむっ! しゅばばばっ!」
 クノイチのサージェが胸を揺らしながら【かげぶんしんの術】を使う。
 それは、340体ものサージェの分身を作り出す忍術だ。
 サージェの目の前に、ずらりと金髪碧眼の胸の大きいクノイチ少女が現れた。

 整然と並んだサージェの分身を見て、シャルロットが問いかける。
「サージェ様、これだと目立ちすぎませんか? 特に胸とか」
「だから目立ってないもんっ!」
 涙目になりつつ、サージェは分身たちを3~5人程度のチームにわけていく。
 そして、分身たちに命令を下した。
「では、各チームは森に散開して敵の陽動をよろしくっ!」
「なるほど、分身たちに敵を引きつけてもらってる間に、わたしたちが森を突破する作戦だね」
 サージェの術による機転に、錫華が感心したように頷いた。
 分身たちが敵の目を引きつけてくれれば、森林地帯の突破は容易になるだろう。
「分身の皆さんの魅力的な胸なら、敵の注意も引きやすいかもしれませんし、ね?」
 くすり、とシャルロットが笑い――。
「だーかーらー、クノイチは目立たないもんっ!」
 頬を膨らませるサージェだった。


「では、わたしの相棒を紹介するね」
 錫華の言葉とともに、4人の近くで空間が歪む。
 ――いや、正確には屈折していた光が元に戻ったのだ。
 姿を現したのは、光学迷彩によって姿を消していた錫華のキャバリア――グランティア王国から借りた量産型キャバリアだった。
「普通の量産型キャバリアなのに自動操縦とは、錫華様はいったいどんな手品を?」
 驚きの表情を浮かべるシャルロットの言葉を受け、錫華は機体を紹介する。
「わたしの相棒、パートナーユニットのアミシアに機体の操縦を任せてフォローに回ってもらうことにしたんだ。敵に対する警戒や、ジャミングとかをしてもらおうと思ってね」
「敵の撹乱には力強いかも……」
 再び光学迷彩で姿を消すキャバリアを見上げ、璃奈が頼もしげに呟いた。


「それじゃ、わたしも、心強い仲間を紹介するよ……みんな、お願い……」
 璃奈は懐から呪符を取り出すと、それに声をかけた。
 声を聞いて呪符から飛び出してきたのは、3匹の仔竜。かつて璃奈がアックス&ウィザーズのとある村で知り合い、一緒に暮らすことになった、人懐っこい仔竜たちだ。
「わたしの家族の、ミラ、クリュウ、アイ……」
「きゅる~」
「きゅ~」
「きゅい~」
 紹介する璃奈の声に答える仔竜たち。
「わーっ、なんですか、この子たち、かわいいーっ!」
 サージェは仔竜を抱きしめると、その豊満な胸に埋める。
 だが、完全に顔が埋まって、仔竜はきゅうきゅうと苦しがる。
 それをおろおろと見つめる璃奈。
「ほら、そんなに強く抱いたらかわいそうだよ?」
「あわわっ、ごめんねっ!」
 錫華に声をかけられ、我に返ったサージェが慌てて仔竜を放した。
 そんな錫華は、ちゃっかりと仔竜の一匹を抱いて、頬を綻ばせていたのだった。


「では、最後は私の番ですね!」
 満を持して、シャルロットが胸を張って声を上げた。
 何が出てくるのかと、サージェ、錫華、璃奈の三人が息を飲む。
 だが、待っても一向に何かが出てくる気配はなかった。
「ふっふっふ、何を隠そう、私自信はこの姿でもスーパーロボット! この身体こそが武器なのです! 縮小サイズだからって甘く見てるとケガするぜ、ですよ?」
 シャルロットは有機アンドロイド――この世界で一般にロボットヘッドと呼ばれる機械種族の一形態である。
 鋼鉄並みの強度と高出力を誇るボディは、キャバリアであるウサウサMk2を呼ばずしても、敵キャバリアと互角以上に戦うことができるのだ。
「そ・れ・に、このナイスバディも私の武器ですから。皆様の魅惑的なわがままボディと一緒に敵を悩殺ですよ?」
 シャルロットは、パチリとウィンク。

「私は悩殺とかできないもんっ! ……あっ、けど、クノイチとしてはできるべきっ!?」
 シャルロットの言葉に、サージェが葛藤し。

「いや、敵はキャバリアだよ?」
「……悩殺とかは、無理じゃないかな……」
 錫華と璃奈は呆れた声を出すのだった。


 森林地帯を警戒しながら進む4人。

「アミシアのセンサーに反応ありだよ。この先にゴーストスコードロンの部隊が待ち伏せしてるね」
「錫華さん、了解です。じゃあ、私のかげぶんしんたちで陽動しますっ」
 錫華のキャバリアが敵を見つければ、サージェの分身で敵を引きつけて突破し。

「偵察してきました。前方を哨戒中の敵兵ありです」
 木の上からシュタッと降りてきたシャルロットが報告すると。
「ここは……まかせて……」
 璃奈が【呪法・影竜進化】を使い、仔竜たちを影を操る影竜へと成長させる。
 影竜の能力で森林の影に潜航した4人は、そのまま哨戒中の部隊をやりすごした。

「ふっふーん、私たちのコンビネーションはなかなかですねっ」
「ええ、アミシアだけだと対処しきれない場合もあるから助かるかな」
「ずっと影に潜って進めればいいんだけど……」
「まあまあ、仔竜たちに無理させるわけにもいきませんからね」
 4人は、互いに助け合いながら、森林地帯を突破しつつあるのだった。


 ――だが、順調に進軍していた4人は気付いていなかった。
 いつの間にか、敵が包囲網を縮めてきていることに。

「アミシアのレーダーに無数の反応っ!?」
 光学迷彩で先行偵察しているパートナーから無線通信で連絡を受けた錫華が声を上げた。
 そこに、サージェの声も重なる。
「周辺を偵察中のかげぶんしんたちが、敵の大部隊を確認しましたっ! 陽動を命じましたが、引きつけきれませんっ!」
「これは、まさか……」
「どうやら、敵の罠にはめられたようですね」
 璃奈とシャルロットの表情に緊張が走った。

「ひとまず、アミシアは敵部隊にジャミングを……その後、自己判断で撤退して」
 パートナーに指示を出した錫華は、後方で、自身が仕掛けたブービートラップが爆発する音を聞く。
 敵部隊は急速に包囲を縮めてきているようだ。
 アミシアによるジャミングで敵のレーダーや通信の妨害をおこなっているが、それもいつまでもつか。

「陽動に出したかげぶんしんたち、これ以上敵を引きつけられませんっ」
 サージェの分身たちが陽動しているにも関わらず、ゴーストスコードロンたちの包囲網が縮まってきているということは、それだけの大部隊に囲まれているということだった。

「アミシア様の援護や、サージェ様の分身の陽動がなければ、もっと多くの敵に囲まれていた、ということですね」
 シャルロットが冷静に戦況を分析する。
 どうやら、この森林地帯には想定以上のゴーストスコードロンたちが待ち構えていたようだ。

「こうなったら、正面突破して森を抜けるしかないよね……」
 3体の影竜を従えた璃奈が呟き――。
 残る3人も無言で首を縦に振るのだった。


「それでは、私が先行させていただきましょうっ!」
 木々の間を駆け抜け、シャルロットが前方で待ち受けるゴーストスコードロン部隊に飛び込んでいく。
 その手に握られるのは、刃渡りの短いダガーのみ。
 だが、シャルロットは速度を落とさず、敵キャバリアに向かっていく。
「ふふふ、首切り兎の本領発揮ですよっ」
 【シーブズ・ギャンビット】でダガーによる素早い一撃を放つシャルロット。
 その一撃はスパッとゴーストスコードロンの首を撥ね飛ばし、巨体を大地に打ち倒した。
「これこそ、バニーである私の専売特許! ……あ、クノイチのサージェさんもできそうですね。裸になってみます?」
「なりませんよっ!?」
 漆黒の竜の牙のような光沢をもつクナイ『漆黒竜ノ牙』をゴーストスコードロンに投げつけながら、サージェはツッコミを入れるのだった。

 錫華も、緑色の刀身を持った小太刀『神成翁』と『鬼怒婆』を両手に逆手に構え、敵陣に切り込んでいった。
「これ、躱せる?」
 【次元召喚分離攻撃】により、影のような錫華が召喚され、本体と同時にゴーストスコードロンに斬りかかる。
 分身の小太刀二刀がキャバリアの持つ機関銃を斬り裂き、錫華の小太刀が敵の脚を両断する。
「いくよっ、小太刀四連!」
 影と本体、両者の4本の小太刀が一瞬のうちに閃き、ゴーストスコードロンをバラバラに解体していった。

「黒桜、呪力解放……」
 影竜の力で影に潜航していた璃奈がキャバリア部隊の中央に飛び出す。
 その手に構えるのは薙刀状の呪槍『黒桜』だ。
 璃奈が構えた黒桜から、黒い桜の花びら状の呪力が放出され、ゴーストスコードロンたちを薙ぎ払っていく。
「いくよっ……」
 黒桜を地面に突き刺した璃奈は、腰から『妖刀・九尾乃凶太刀』と『妖刀・九尾乃神太刀』を抜き放つ。それは、強力な呪力を秘めた対となる妖刀だ。
 音速を越えた速度で疾駆する璃奈は、凶太刀と神太刀の二刀でゴーストスコードロンたちの関節や装甲の隙間を縫うように斬り裂いていき――。
 その場のゴーストスコードロン部隊を無力化したのだった。

「皆様、今のうちに森を抜けましょう」
「かげぶんしんたちっ、全力で足止めっ!」
「アミシアもジャミングしつつこっちへ!」
「ミラ、クリュウ、アイ、無理しない程度に敵の足止めをして、影に潜って撤退……」

 全力で木々の間を駆け抜けた4人の少女たちは、敵の追撃を逃れ、森林地帯を抜けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀
歴史ある王国に発展と繁栄をもたらした命の大河は、幾枝にも枝分かれしつつ森林地帯を抜け山岳地帯まで繋がっている。

「鯉は滝を登って竜に成ると言います。絶無は滝登りやったことありますか?」

【行動】海遊装備を絶無に装着すると、スピーカー越しに聞いた御姫様の声を思い浮かべながらUC空々落ち葉を自分に掛けます。

距離があるからか正確な位置は、わかりませんが、大まかな方向と痕跡は見つけられたようなので、行ってみましょう。絶無、出陣ですよ!

念動力で川を逆流させて一気に水中移動します。

敵を引き離し、限界を超えて迫ろうとする機体は殲禍炎剣の餌食になっていきます。

滝の向こうは、山岳地帯です。

進行方向は、上です!!



●鯉の滝登り
「鯉は滝を登って竜に成ると言います。絶無は滝登りやったことありますか?」
 森林地帯を流れる川を眺めながら、虚空――サイキックキャバリアの『絶無』が潜む亜空間――に向けて、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)が声をかけた。
 赤地に華をあしらった紋様のついた和風の衣装――フリルが多用された和メイド服を着崩して肩や太ももを露出させた雲雀は、その左目の義眼を川の上流へと向けた。
 赤い義眼は、かすかな機械音を鳴らすと、拡大された川上の様子を雲雀に伝えてくる。
 幾重にも枝分かれしながら森林地帯を流れる川の上流。その水源は山岳地帯なのだった。

「来てください、絶無」
 雲雀の呼びかけにより、彼女の目の前の空間にヒビが入る。
 それは『絶無』が亜空間から現実空間に姿を表そうとしている前兆だ。
 激しい嵐が吹き荒れたと思うと、空間が砕け散り――嵐が去った後には、炎と風と光の力を宿す魔神『絶無』が立っていた。

「それでは絶無、水中モードです」
 『絶無』は、自身の身体を風で包む。
 その風が消えた時、『絶無』はその身に『海遊装備』を纏っていた。これこそ、古代魔法文明によって作られた耐水モジュールであり、水中での高い機動性を実現するのだ。

「御姫様、どうかご無事で……」
 戦闘中に聞いたネティシア姫の声を思い出しながら、雲雀は【空々落ち葉】を自身にかける。
 進むべき道を示すいたずらな風は、雲雀の周囲の木の葉を風に舞い上がらせ、川上の方へと吹き流していった。
「距離があるからか正確な位置はわかりませんが、大まかな方向と痕跡はみつけられました。行きましょう、絶無。出陣です」
 『絶無』に乗り込んだ雲雀は、機体を川の中へと進めるのだった。


「上流へ向かってください、絶無」
 雲雀の言葉に従い、『絶無』は周囲の川の流れを逆流させて上流を目指そうとする。

 だが、それを簡単に見逃すゴーストスコードロンたちではない。
 水中装備型の機体たちが、『絶無』の進路に立ちふさがった。

「相手をしている暇はありません、一気に引き離しましょう!」
 雲雀は『絶無』を操ると、水中で銛のような武器を構えたゴーストスコードロンたちの合間を縫ってすりぬけていく。
 水流を自在に操る『絶無』の水中機動の前に、水中用装備をしているとはいえ、ゴーストスコードロンでは対処することはできなかった。
 ぐんぐんと速度を上げて川を遡っていく『絶無』は、徐々にゴーストスコードロン部隊を引き離していき――。

 突如、その動きを止めた。

「どうしたんですか、絶無。これでは追いつかれて――」
 『絶無』に文句を言いかけた雲雀だが、目の前の光景を見て絶句した。
 そこは森林地帯と山岳地帯との境界線。切り立った崖に沿った滝壺の中だった。
 頭上には、100メートルを優に超える落差を持った滝が流れ落ちているのだ。
「――このままでは……」
 雲雀は周囲を見回すが、滝壺に迂回路は存在しなかった。

 そして、もたついているところに、ゴーストスコードロンの水中部隊が追いついてきて、『絶無』の周囲を取り囲んだ。
 さしもの『絶無』と言えども、炎や風の使えない水中で、これだけの大部隊を相手にすることはできない。

 ――万事休す。

 そう思った雲雀は、水中を舞い上がる落ち葉を目にした。
 【空々落ち葉】による、進むべき道を示す木の葉であった。

「絶無、上ですっ!!」
 その一言で雲雀の意図を汲み取った『絶無』は、その強大な魔力で水流をコントロールする。
 滝壺に流れ落ちてくる水が静止し――そのまま時間が巻き戻るかのように上空へ向かって逆流していく。
 『絶無』とゴーストスコードロン部隊は、勢いよく上空に向かって滝を『落下』していった。

「凄いです! これこそ、滝登りですね、絶無!」
 崖の最上部まで『落下』した『絶無』とゴーストスコードロンたちは、そのままの勢いで上空へと投げ出されていき――。
 『絶無』は風を操りふわり、と滝上の崖に着陸した。

 一方、飛行能力を持たないゴーストスコードロンたちは、そのまま勢い良く滝の上空へと放り出され――『殲禍炎剣(ホーリーグレイル)』の警戒網にかかり、降り注ぐレーザーに灼かれ、空中で花火となったのだった。

「絶無も滝を登れましたね。これで竜に成れるでしょうか?」
 ――竜程度と我を比較するな。
 そんな声が聞こえた気がして、苦笑する雲雀だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダイ・オウガ
燃える心に勇気を乗せて、唸れ豪腕、大螺旋!
悪あるところ正義あり、勇者猟兵ダイッ(↓)オウッ(↓)ガァァァ(↑↑↑)

目立たないよう(?)に最大音量の名乗りで警戒網を抜けるとしよう!
おかしい……なぜか敵がこちらにわらわら集まってくるな?
少しばかり名乗りをあげて合体して少しばかり巨大なだけだというのに

仕方あるまい、ここはどうやら私が言わねばならない言葉は決まっていたようだ

皆、ここは任せて先に行け!

あえて目立つ経路を突き進み、残骸などを持ち上げて投げつけつつさらなる前進
ダイ・ブラスター・インフェルノで雷属性を与えしばらく大人しくしておいてもらおうか!


霧島・クロト
まぁ、流石に森林地帯となると降りたほうが小回りが利くんだが――
逆に言えば『無機物も多い』訳で。そしてこんだけデカけりゃ『目立つ』。
――『向こうから』集まってもらうかー(にやり)

適当に森の中の石とかを拾って置いて、『弾』にする。
それでから『貪狼の神骸』に乗って待ってれば――
こんなデカブツが突っ立ってたら向こうから『来る』よなァ?
ま、これ自体が『罠』なんだけどさ。

【指定UC】で、拾ってきた小石を氷塊に変えた上で、
ビットのように浮かせて操作すんのさ。
あとはこの氷塊を向こうの機体にぶつけてくだけ。
いやはや機械相手ってある意味楽だなァ?
――勝手が『わかりやすい』。

※アドリブ可



●合体シーンのために、ライオンは一度分離して帰りました
「む、この森林地帯を抜けるのだな……。ならば、来いっ、オウガァッ!」
 山岳地帯への道を阻む深い森を睨みつけた伝説の勇者ロボットヘッドのダイが、大きな声で叫んだ。
 その声に応え、時空を越えて転移してくるのは、ライオン型キャバリアのオウガだ。
「いくぞっ、オウガッ! ブレイヴ・コネクトッ!!」
 ダイは、空中に大きく跳躍すると、人型に変形したオウガと融合合体する。
 その姿は、黒きボディに黄金の装飾を施された巨大なスーパーロボット、ダイ・オウガ(勇者猟兵・f30091)だ。
 胸に付いたライオンの顔と、ダイオウガの頭部、4つの瞳に緑色の光が灯る。
「燃える心に勇気を乗せて、唸れ豪腕、大螺旋! 悪あるところ正義あり、勇者猟兵ダイッ(↓)オウッ(↓)ガァァァ(↓↓↓)」
 両脚を開いて大地を踏みしめ、頭上に掲げた両腕を振り下ろしながら、ダイオウガは最大音量で名乗りを上げた。

 ダイオウガの大音声の名乗りに驚いて森の木々から鳥たちが大慌てで飛び立ち、巨体が大地に降り立った振動に小動物たちが駆け回る。

 そんな派手な合体と名乗りを上げて、周囲のゴーストスコードロンたちがダイオウガの存在に気が付かないわけがなかった。機銃を撃ちながら、木々よりも大きな巨体のダイオウガの元へと集まってくるゴーストスコードロンの群れ。

「むっ、おかしい……。目立たないように、名乗りの最後を普段と違って(↓↓↓)にしてみたのだがっ!」
 なぜ存在がばれたのかとダイオウガは首を捻る。

 だが、すでにダイオウガの周囲は大量のゴーストスコードロンたちに取り囲まれてしまっていた。
 これでは目立たないように森林地帯を抜けるのは不可能だ。

「ならば仕方あるまい。ここはどうやら私が言わねばならない言葉は決まっていたようだ!」
 ダイオウガは体内の燃素機関フロギストンジェネレータを全開にすると、左腕の『オウガ・ドリルアーム』を回転させながら叫ぶ。
「皆、ここは任せて先に行け!」
 ドリルアームがゴーストスコードロンの一体を貫き爆散させ、爆炎がダイオウガのボディを煌々と照らし出した。

●貪狼接続
「おっと、ダイオウガの旦那、一人でカッコ付けはさせねえぜ?」
 漆黒の装甲に身を包み、真紅のバイザーを付けた青年がダイオウガに声をかける。
 サイボーグの青年、霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)は、にやりと不敵な笑みを浮かべると、パチン、と指を鳴らした。
 その音に反応し、森の木々をかき分けて巨体が現れたのは、クロトが操る生体型キャバリアの『貪狼の神骸』だ。
 生身の方が森林地帯では小回りが利くのだが、クロトはあえて『貪狼の神骸』を喚び出したのだ。

「いくぜっ!」
 巨大な義体とも言える『貪狼の神骸』の体内に乗り込んだクロトは、サイボーグ化した身体を『貪狼の神骸』に接続。義体と神経まで共有させて『貪狼の神骸』を自身の身体の延長上として扱えるようにした。

「こんだけデカけりゃ目立つだろ。向こうから集まってきたところを一網打尽ってな」
 【氷戒装法『貪狼の氷棺』】によって森の中の石を氷塊に変換したクロトは、それをゴーストスコードロンに撃ち出す。
 氷塊が命中した機体は、その表面が凍りついていき――文字通り、キャバリアを閉じ込めた氷棺が完成した。

 ――氷塊に変換できる無機物の多い森の中で、あえて目立つように『貪狼の神骸』に乗り込み、敵を迎え撃つ。それがクロトの戦術だった。

「ってわけで、俺も付き合わせてもらうぜっ」
 ダイオウガを見つめ、『貪狼の神骸』の表情に獰猛な笑みが浮かんだ。


「すまないっ、助かるっ!」
「なに、元々、こうして罠を張るつもりだったんだ、予定通りさっ!」
 周囲から続々と迫りくるゴーストスコードロンを前にして、ダイオウガと『貪狼の神骸』が背中合わせに並び立つ。
 勇者ロボットのダイオウガと、生体パーツで構成された『貪狼の神骸』を身にまとうクロト。
 対照的な機体だが、二人の心は一つだ。
「ここから先へは一体も通さない!」
「おら、やられたい奴からかかってきなっ!」
 ゴーストスコードロンを、ダイオウガの鉄拳が打ち砕き、クロトの氷塊が氷に包んでいく。
 熱く燃える魂をぶつけてくるダイオウガと、すべてを凍りつかせる機械魔術を放つクロトの前に、ゴーストスコードロンの群れは徐々に数を減らしていくのだった。


「よし、敵の勢いが弱まったな!」
「おうよ、このままいくぜっ!」
 敵の包囲を抜けたダイオウガとクロトは、わざと目立つように森を進む。
 それは、森林地帯を進む味方から敵を引きつけるためであり、市街地に向かう兵力を削り、絶対防衛線を引いている親衛隊のキャバリア部隊の負担を軽減するためだ。

「いくぞ、ダイ・ブラスター・インフェルノォォォ!!」
 ダイオウガが、胸のライオンの口から大口径ビームを発射する。
 それは、ダイオウガのフロギストンジェネレーターから直接エネルギーを変換して放つ大技だ。
 雷属性を纏ったビームが一直線に森を貫き、ゴーストスコードロンの一群の電装系をショートさせ無力化する。

「こっちも負けてられねぇな。相手が機械ってのはある意味楽だなァ? 勝手がわかりやすいぜッ!」
 クロトの『貪狼の神骸』が周囲の石を氷塊に変換。それを宙に浮かべて射出した。
 クロトの意思に従って飛翔する無数の氷塊がゴーストスコードロンの群れに命中していき――。
 森林地帯に氷棺の森を作り出していった。


 だが、それでもゴーストスコードロンを壊滅させるには至らない。
 ダイオウガとクロトの前に森を埋め尽くさんばかりのゴーストスコードロンたちが現れた。
「私のセンサーによれば、敵が7、森が3だな……。だが、勇者たるもの、その程度では諦めない!」
「よっしゃ、こうなったら、ぶっつけ本番でやるかァ!」
 とてもではないが倒しきれると思えない数の敵を前にしても、二人は諦めない。
 クロトの『貪狼の神骸』が前に出て、その後ろにダイオウガが立つ。

「私の力を受け取ってくれ!」
 『貪狼の神骸』の背中のエネルギーコネクタに、ダイオウガの胸のライオンの口が接続された。
 サイボーグと接続可能な『貪狼の神骸』の機能とダイオウガの【スーパー合体】の能力が可能にした二機の機体の合体だ。
 一つになったダイオウガと『貪狼の神骸』は、いまや一機の巨大な機体と同じだけのエネルギー出力を誇っていた。

「ブレイヴチャージ!」
 ダイオウガの勇者の魂が燃え上がり、不可能を可能に変える未知のエネルギーが『貪狼の神骸』に流れ込んでいく。
「一気にいくぜッ!」
 ダイオウガから流れ込んできたエネルギーも合わせ、クロトは【貪狼の氷棺】を発動させた。
 通常より遥かに広い範囲の無機物を氷塊へと変換し、空中に浮かべていき――。
「北天に座す、貪狼の葬送をッ!!」
 それを、ゴーストスコードロンの大群に向けて解き放った。

 まるで台風の豪雨のように無数の氷塊が敵陣を激しく吹き荒れていく。
 それは、まさに人知を超えた天災のようだった。

 ――そして、その台風が止んだ時。

 台風一過の森林には、物言わぬ氷像となって棺に閉じ込められたゴーストスコードロンたちが残されているだけだった。

「どうやら、無事に任務は果たせたようだな」
「ああ、このまま森を抜けちまおう」
 こうして、ダイオウガとクロトは無事に森林地帯を突破した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『セラフィム・リッパー』

POW   :    断罪の剣
【無敵斬艦刀】が命中した対象を切断する。
SPD   :    エンジェルビット
自身が装備する【BS-Fクリスタルビット】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    フォールンウイング
【光の翼】を向けた対象に、【プラズマビーム】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●山岳地帯の前線基地
「皆様、山岳地帯までの血路を開いてくださり、どうもありがとうございました」
 神聖王国グランティアの親衛隊長が、猟兵たちに向かって頭を下げる。
 彼の背後には、森林地帯のゴーストスコードロンを掃討してきた親衛隊の機体が傷だらけで並んでいた。
「ここまで来られたのも、皆様が敵を減らしてくださったからです」
 親衛隊機の後方では、整備兵たちが整備長の指示の下、突貫で前線基地を構築していた。

「我らの機体は、これ以上の戦闘は不可能です。どうか、ネティシア姫様のことをよろしくお願いいたします」
 親衛隊機は、猟兵たちに深々と頭を下げるのだった。

●囚われの姫
「うう……」
 背中から光の翼を生やした、まるで天使のような機体。
 『セラフィム・リッパー』の姿となった『神聖機グランティア』のコックピットで、金髪の少女、ネティシア姫が苦しげな声を発していた。
 オブリビオンマシンとなった『神聖機グランティア』――『セラフィム・リッパー』の影響で、ネティシア姫は感情をコントロールされ、昏き闇に囚われているのだ。

「お父様は病に倒れ……国民は王族に頼るだけ……こんな国、燃えてしまえばいいのに……」
 光を映さない瞳で操縦桿を操作するネティシア姫。

 山岳地帯の入り組んだ地形に身を隠した『セラフィム・リッパー』は、無数のクリスタルビットを山岳地帯に放っていったのだった。

●マスターより
 皆さんの活躍により、状況はグリモア猟兵の予知よりも好転しました。
 まず、一章でのネティシア姫への呼びかけの結果と、『モノアイ・ゴースト』の撃破により、ネティシア姫が目を覚ましました。
 次に、二章の森林地帯で想定以上の成果を上げたことで、山岳地帯に前線基地が構築されました。

 山岳地帯に前線基地が構築されたことで、皆様のキャバリアが補給や修理を受けたり、機体の借り受けや乗り換えを行うことが可能です。

 また、『セラフィム・リッパー』に乗るネティシア姫が目覚めたことで、姫に語りかけることが可能となっています。
 ネティシア姫を説得しながら戦うとプレイングボーナスが付与されます。

 戦場は見通しの悪い山岳地帯です。
 『セラフィム・リッパー』は、機動力を活かした奇襲や、ビットによる死角からの攻撃、障害物ごと貫通してくるプラズマビームなど、地形を活かした攻撃をしてきます。
 その攻撃へ対処したり、逆に地形を利用するような戦術にはプレイングボーナスが付与されます。

 戦場は山岳地帯ですが、極端に高空に上がらなければ『殲禍炎剣(ホーリーグレイル)』の範囲外なため、飛行することは問題ありません。(『セラフィム・リッパー』も飛行してきます)

 なお、『セラフィム・リッパー』を撃破すれば、ネティシア姫はオブリビオンマシンから解放されますので、遠慮なく敵を撃破して問題ありません。
セツナ・フィアネーヴ
その、このきゃばりあの名前だが、「ケラヴノス」にしようと思う
『ケラヴノス……“落雷”ですか?』
ああ、「雷霆の鋼機」竜神機ケラヴノス、これからもよろしく頼む。

さて……正直説得は苦手だ
だから、その「災い」を討ち取ることに集中させてもらう

手元に「災禍の武器」の中から大剣を呼び出しつつ、ケラヴノスの力で《天候操作・マヒ攻撃》の雷鳴と嵐を巻き起こし、敵端末を巻き込み攻撃。
その後大剣を地面に叩き付け局地地震を起こし《地形破壊》、山中で嵐と地震に襲われれば飛び出さざるを得ないはず

見える場所まで出しさえすれば……
『私の出番です!充填は十分ですよ!』
【天雷の精霊光】で一気に撃ち抜く!!

※アドリブ連携歓迎です




「……どうやら、わたしたちの邪魔をする者がやってきたようですね。ですが、私はその試練を乗り越え、この神聖機グランティアを乗りこなしてみせます……そして、その力で国を……破壊します」
 神聖機グランティア――いや、それがオブリビオンマシンとして変貌した『セラフィム・リッパー』のコックピットで、金髪の少女、ネティシア姫が昏い瞳で呟いた。
 ネティシアの理想はオブリビオンマシンの力によって歪められており、いまや国を破壊しようという暗黒の意識に囚われてしまっている。それを助け出すには、猟兵たちが『セラフィム・リッパー』を破壊するしかないのだった。

●雷霆の鋼機
『やっぱり、あの子を使うことに決めたのですね、セツナ』
「ああ、なぜだか乗っていると、懐かしい感じがしたんだ」
 傍らに浮かぶぼんやりした光――精霊のアリシアに向かって、セツナ・フィアネーヴ(災禍貫く竜槍・f26235)が頷く。
 人派ドラゴニアンの少女であるセツナは、ツインテールにまとめた青い髪と竜の翼を風になびかせ、山岳地帯の高台から『セラフィム・リッパー』の動向を伺っていた。
『セツナ、わたしというものがありながら、あの子に浮気するんですね』
「あ、いや、まってくれ、そういうわけでは……」
 精霊アリシアのイタズラっぽい言葉に、セツナが慌てたような声をあげ――。
『ふふ、冗談ですよ。わたしは嬉しいのです。セツナに、わたしやマスター以外にも心を許す相手ができることが。さあ、呼んであげてください。あの子の名前を――』
 アリシアの言葉に大きく首肯し、セツナは高台から飛び降りた。
 天地が逆さまになりながらセツナの頭上に地面が迫ってくる。
 だが、セツナは冷静に、心の底からその名を叫んだ。

「来いっ、ケラヴノス!」

 セツナの言葉と同時に、地面に映ったセツナの影から一機のキャバリアが飛び出してくる。先の戦いでセツナの災禍の武器を取り込んで『災禍の巨神』となったキャバリアだ。
 『ケラヴノス』と呼ばれた、竜の鱗のような装甲、翼、尻尾を持った漆黒のキャバリアは、落下してくるセツナとアリシアをその体内のコックピットに収容すると、翼を大きく広げて大地に着地した。

『ケラヴノス……『落雷』ですか?』
「ああ、『雷霆の鋼機』竜神機ケラヴノスだ。ケラヴノス、これからもよろしく頼む」
 セツナの言葉に答えるように、『ケラヴノス』は大きく吼えるのだった。


「私の前に立ち塞がるなら……その機体、破壊しますっ」
 『ケラヴノス』が呼び出されるのを『セラフィム・リッパー』のモニターで見ていたネティシアが、機体から無数の飛翔体を解き放った。
 それはBS-Fクリスタルビットを100機以上同時に操るエンジェルビットという技だ。
 空間に張り巡らされたクリスタルビットのドローン群。『セラフィム・リッパー』は、そこに向かってレーザー兵器を放った。

 クリスタルビットは、その角度を自在に変えながらレーザーを反射。空間にさながら光の結界を作っていく。
 『ケラヴノス』に迫る無数のレーザーの光。

『セツナ、来ますっ』
「了解だっ」
 セツナの意志に従って『ケラヴノス』が翼を広げて飛翔。
 迫りくるレーザー網から離脱した。
「素早い……!?」
 その動きを見たネティシアが『セラフィム・リッパー』のコックピットで呟く。

「さて……正直説得は苦手だ。だから、その『災い』を討ち取ることに集中させてもらうっ!」
『わたしとしては、セツナにはもう少し人付き合いに慣れてほしいのですけれど』
 嘆息するようなアリシアの声をスルーし、セツナは『ケラヴノス』の手に災禍の武器である大剣を実体化させた。
 『ケラヴノス』は空中に浮遊したまま漆黒の大剣を構えると、その切っ先を頭上に向ける。
「『ケラヴノス』の雷鳴と嵐の災禍の権能、受けてもらおうっ!」
 漆黒の大剣から激しい嵐が巻き起こる。その嵐は周囲を巻き込み荒れ狂い、雷鳴を轟かせた。

「雷撃による範囲攻撃っ……!? ビットの回収……間に合いませんっ!?」
 『セラフィム・リッパー』のコックピットにネティシアの慌てた声が響き渡る。
 嵐と雷鳴に巻き込まれたクリスタルビットは、ドローンの弱点である電装系に損傷を受け、次々と地上に落下していった。

『セツナ、敵の攻撃がやみました!』
「行けぇっ!」
 『ケラヴノス』が、その手に持った大剣を振りかぶり、『セラフィム・リッパー』が隠れていると思しき岩陰に向かって急降下。大地に向かって大剣を激しく叩きつけた。

 ――轟音とともに、大岩が砕け散り、地面にクレーターが出来上がる。

「なんて……出力っ!?」
 ネティシアは、崩落に巻き込まれないよう機体を操り『セラフィム・リッパー』を飛翔させた。
 背中に光の翼を生やした天使『セラフィム・リッパー』と、竜の翼を広げた漆黒の竜神機『ケラヴノス』が、山岳地帯上空で睨み合う。

「いいでしょう、ならばこの剣で勝負です……! 私はこの世界を滅ぼします!」
 オブリビオンマシンに操られたネティシアが『セラフィム・リッパー』の断罪の剣を構え――。

「姫の身を縛るその災禍の呪い、今ここで打ち砕こう」
 セツナは『ケラヴノス』に災禍の大剣を構えさせる。

「参りますっ!」
「行くぞ、『ケラヴノス』!」
 同時に突撃した二機のキャバリアは、構えた武器を正面から叩きつけ合う。
 周囲に響くは激しい轟音。鍔迫り合いの形で剣を合わせ、互いの力を比べ合う天使と竜神。

 『セラフィム・リッパー』と『ケラヴノス』は、そのまま空中に静止したまま互角の押し合いを続けるかに見えたが――。

「時間は稼がせていただきました。私の……勝ちですね!」
 ネティシアの言葉とともに、電装系のショートから立ち直ったクリスタルビットたちが『ケラヴノス』の周囲を取り囲み、一斉にレーザーを反射して攻撃しようとし――。

 それを、セツナの言葉が遮った。

「時間稼ぎ……それはこちらも同じことだ! ……アリシア、行けるか!?」
『ええ、任せてください、私の出番です! 充填は十分ですよ!』
 『ケラヴノス』の竜の口に、雷を纏った光が収束していく。
 【天雷の精霊光】(ヘヴンズ・ブラスト)。光と雷の精霊たるアリシアの霊力を収束させることで放つ一撃だ。
 アリシアの霊力を収束させる時間に応じて威力が上がる霊力光は、最大チャージ状態で『ケラヴノス』の口から解き放たれ、激しい雷を纏った光条が一直線に『セラフィム・リッパー』へと襲いかかった。

「くぅっ……!」
 とっさに回避行動を取ったネティシアだが、至近距離から撃たれた強烈な一撃を回避し切ることはできない。
 『セラフィム・リッパー』の右肩の装甲が、雷光による超高温でごっそりと溶け落ちていた。

「……ここは、退きますっ!」
 不利を悟ったネティシアは、『セラフィム・リッパー』の光の翼を広げると、高速で飛翔し逃げ去ったのだった。

「姫を縛る災禍――多少でも削れたならいいのだが……」
『大丈夫ですよ、セツナの気持ちは伝わっているはずです』
 アリシアの言葉に同意するように『ケラヴノス』が吼えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

秋山・軍犬
さて、そろそろ頼んでたものが…

ジョン&ナンシー(キャバリア搭乗)「お待たせ!」

避難してた国民から姫様の事を聞いてきたぜ
姫様、皆に愛されてんな

ついでに姫様がお忍びで食べてた好物も
作って貰ってきたわ

軍犬「よし、皆 キャバリア用の拡声器は持ったな!」

国民の心がこもった姫様の好物を食べ
UC【圧力拳・改】を声に乗せて発動
姫様と神聖機に国民の想いを叩きつける

あ、自分の【圧力拳・改】受けてるから
効果が分かるかもだけど、国王の治療
協力できるかも知れんよ、確実な保証は出来んけど

それと、一人で何でもしようとすんな
国民も親衛隊も皆、あんたを助けようとしてくれてるんだから

あと、神聖機もそろそろ根性出して目ぇ覚ませ!!



●パインサラダの力
「さて、そろそろ頼んでたものが届くはずっすね……おかわりっす」
 山岳地帯の前線基地では、ミリタリールックのキマイラ、秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)が軍用食の空き缶の山を築いていた。
 周囲では「おい、このままじゃ前線基地の食料がなくなっちまうぞ」「けど、ここまで活躍してくださった猟兵の方だし……」などと、親衛隊員や整備士たちがひそひそと言葉を交わしている。

 ――そこに轟音を立てながら、何かが飛来してきた。

「なんだ、あれはっ!?」
「鳥か!?」
「飛行船か!?」
 前線基地の親衛隊員と整備士たちが空を見上げながら口々に叫ぶ。

 飛翔してきたのは、流線型のフォルムをしたキャバリアだ。
 そのキャバリアの外部スピーカーから、まるでテレビショッピングのようなノリの声が発せられる。
「これこそが!」
「今回紹介する商品の最新鋭試作キャバリアよ!」
 そう、【深夜の猟兵通販】(グッドナイト・イェーガーショッピング)によって最新型のキャバリアを仕入れてきたジョンとナンシーの声であった。

「軍犬、待たせたな!」
「言われた通り、最新鋭のキャバリアを仕入れてきたわよ!」
 キャバリアのコックピットハッチを解放しながら、サムズアップするジョン&ナンシー。
 そのコックピットには、もうひとり、見知った人物が乗り込んでいた。
「マスター、よくぞご無事で!」
 声の主は、森林地帯で軍犬を先に行かせるために森に残った、水精霊の亜種にして触手農家令嬢の秘水・クティだ。
 クティは、軍犬の無事な姿を見て安堵の息を漏らす。
「クティのお嬢さんが森で困ってたんで拾ってきたぜ!」
「ほら軍犬、何か言うことあるんじゃないの?」
「クティ……」
 思いがけない再会に、思わず言葉を失う軍犬。
 ――クティの存在を忘れてたとか、そんなはずはないと信じよう。

「ああ、このキャバリアを持ってくる途中で、避難してた国民から姫様のことを聞いてきたぜ。姫様、皆に愛されてんな!」
「ええ、ついでに姫様がお忍びで食べていた好物も作ってもらってきたわ」
 ジョンからはネティシア姫がお忍びで街にやってきて子どもたちと遊んでいたというエピソードを聞き。
 ナンシーからはネティシア姫が好きだというパインサラダを受け取った。

「これがあれば……ネティシア姫を助け出せるっすね!」
 軍犬は、ナンシーからパインサラダを受け取りながら拳を握りしめて叫ぶ。
 そこにクティがツッコミを入れるのだった。

「マスター、パインサラダじゃダメなんじゃ……」


「追撃のキャバリアが来ましたか……まだ機体の自己修復が完了していませんが、行きなさい、エンジェルビット!」
 岩陰に身を潜めた『セラフィム・リッパー』。
 右肩の装甲が大きく溶解した機体のコックピットでネティシアが呟くと、無数のクリスタルビットが放たれた。
 宙を飛翔するクリスタルビットは、接近してくるキャバリアへと向かっていく。

 その接近してくる流線型のボディをしたキャバリアのコックピットは――。
「ちょっと、これ狭くないっすか!?」
「マスター、もっとそっちに寄ってください! セクハラで訴えますよ!」
「このキャバリア、今なら3機セットでなんと!」
「たったの50億ガバスよ!」
 ――非常に騒々しい状況になっていた。

「って、マスター! 無数の敵影!」
 レーダーを見ていたクティが軍犬に向かって警告の声を発する。
 それを聞いた軍犬は、大きく頷くと、ジョンとナンシーに向かって声を上げた。
「ジョンは敵の攻撃を見切って回避行動っす! ナンシーはいつでも攻撃できるように準備!」
「了解だ!」
「わかったわ、軍犬!」
「それで、マスターは……?」
 コックピットシートに座り瞑目した軍犬は、カッと目を見開き――。

「自分は――これを食べるっす!」
 ナンシーが持ってきたパインサラダを食べ始める軍犬だった。


「これで……決めますっ!」
 軍犬たちが乗る機体の周囲に展開させたクリスタルビット。
 ネティシアはそこにむかって『セラフィム・リッパー』のレーザー兵器を照射した。
 無数のクリスタルビットに乱反射して迫るレーザー。それは発射源の『セラフィム・リッパー』の位置を特定させない上に、回避困難なレーザーの網で敵を包囲・殲滅する強力な兵器だ。

「さあ、この機体の機動性をお見せしよう!」
「ほーら、こんなレーザーの網の間もスーイスイよね! なんてお買い得!」

「なんですか、あの曲芸じみた飛行は……!?」
 『セラフィム・リッパー』のモニターに映る機体が軽やかな動きでレーザーの網を回避していくのを見て、ネティシアは驚愕の表情を浮かべた。
 必殺のエンジェルビットを軽々と避ける機体とパイロット。それは一体何者なのか。
「ですが、身を潜めていれば相手からは手が出せないはずです。ならばゆっくりと……」
 そう考えたネティシアの思考は、軍犬の行動によって覆されることになる。

「待たせたっすね、準備万端っす!」
 国民たちの真心がこもったパインサラダを食べた軍犬の全身に不可視の力が漲っていく。
 それは、癒やしと活力、そして真心に満ちた神聖なる力。
「ジョン、ナンシー、攻撃準備っす! クティはキャバリアの外部スピーカーをフルオープンっす!」
 ジョンとナンシーが機体をエンジェルビットに向け、クティは外部スピーカーの音量を最大に上げた。
 スピーカーから響く軍犬の大音声が、山岳地帯一帯を震わせる。
「ユーベルコードが奇跡の力だと言うのなら……この程度の理不尽! ぶっ壊せえぇッッ!!」

 キャバリアの拳から放たれたのは、【圧力拳・改】(プレッシャークッカー・ゴールデンヒーリング)。食事から得た神聖なる力を放ち、対象の肉体を傷つけずに邪心と心身の健康状態を阻害する要因のみを取り除く――いわば食事療法だ。
 エンジェルビットを飲み込んだ神聖な力は、クリスタルビットの脳波コントロールを逆流し、『セラフィム・リッパー』のコックピットにいるネティシアに届いた。

「くっ、あああああっ!」
 苦悶するネティシアに、軍犬のさらなる言葉が追い打ちをかける。

「いいっすか、姫様! 一人で何でもしようとすんな! 国民も親衛隊も皆、あんたを助けようとしてくれてるんだから!」
「国民……親衛隊……みなさん……私……は……」
 ネティシアの昏い瞳に一瞬、光が戻りかけ――。
「あと、自分の今の力を受けてわかったかもだけど、国王の治療、協力できるかもしれんっすよ。確実な保証はできないっすけど」
「お……とう……さま……? 本当に?」
 今度こそ、はっきりと瞳に光を取り戻すネティシア。

 だが、それを許すオブリビオンマシンではなかった。
 『セラフィム・リッパー』の身体から立ち上る黒いオーラがコックピットを包み込む。
「あっ、あああああっ!」
 そのオーラに纏わりつかれ、ネティシアが悲鳴をあげた。
 そして、再び瞳が昏い光をたたえる。

「神聖機もそろそろ根性出して目ぇ覚ませ!!」
 再び放たれる【圧力拳・改】を受け、『セラフィム・リッパー』を包む黒いオーラが一瞬弱まり――。
 『セラフィム・リッパー』は、光の翼を広げて撤退していったのだった。

「姫様! パインサラダが待ってるっす! きちんと帰ってくるっすよ!」
「マスター、それだとフラグ立ててますよ!?」
 叫ぶ軍犬の言葉に、クティがツッコミをいれるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

サージェ・ライト
あっ、シリカ(猫)!(合流
これで私『たち』でいけますね
かもんっ!『ファントムシリカ』!

これが私のキャバリア、ファントムシリカ
ここからは全力で…って、ねえねえミニシリカ、サーチサーチ
なんか武装とか名前とかコンセプト被ってないですか?
え、お披露目で?

その被り、挑戦状とみなしましたっ
【百花繚乱】ルベライトビット射出!
ビットにはビットです
「防御と牽制は任せました、後はよしなにっ!」
制御をEPミニシリカに預けて
私はエンジェライトスラスター始動!
「いっきまーすっ!!」
少し高度をあげて障害物のない上から突撃
「手数こそ正義!参ります!」
フローライトダガーによる【疾風怒濤】で一気に削りますね!

※アドリブ連携OK



●集結、宝石3姉妹
「お姉ちゃんっ、見つけたーっ!」
「シリカっ!?」
 白い毛並みの猫がまっしぐらに突撃してきた。それを抱きとめたのは金髪碧眼の少女、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)だ。
 裾の短い忍び装束のサージェの豊満な胸に飛び込んで、頬をスリスリする猫のシリカ。その純白の尾は二股に分かれている。シリカは人語を話す猫又なのである。

「小姉、勝手にコックピットから飛び出していったら危険」
「ミニシリカも!?」
 上空からサージェとシリカにかけられた機械的な音声の出どころは、白色を基調として淡い紫色をアクセントにしたミニ丈のドレスを纏った少女――否、少女のような姿をした女性型サイキックキャバリアの『ファントムシリカ』だ。
 背中に一対の羽根のようなスラスターを展開した『ファントムシリカ』は、ドレスの裾をふわりとなびかせながら優雅に着陸した。
 声の主の『ミニシリカ』は、この機体の制御用AIであり、サージェ、シリカの妹分なのである。

「これで私たち宝石3姉妹でいけますねっ!」
 白猫の猫又シリカを抱えつつ、サージェは『ファントムシリカ』のコックピットに乗り込み、操縦桿を握る。
 『ファントムシリカ』の操縦席はサージェ用にカスタマイズされているだけあり、量産機のように12歳のサージェの足がペダルに届かなかったり、逆に年齢に似合わず大きな胸が操縦桿に引っかかるということもない。まさにサージェのための機体といえた。
「ちょっと、そこのナレーション、うるさいですよっ!?」
「お姉ちゃん、なんか疲れてるみたいだねっ!」
「大姉にもいろいろあったと推測。小姉、そっとしておくのが推奨」
 コックピットで騒ぐサージェとシリカに、静かにツッコミを入れるミニシリカだった。


 背面の一対の羽根状の『エンジェライトスラスター』を展開し『ファントムシリカ』が山岳地帯を加速して飛翔する。その機体の頭上には、天使の輪のような光帯が浮かび上がっていた。
「さて、それでは改めて、私のキャバリア、ファントムシリカのお披露目ですよーっ!」
「りょーかいです、お姉ちゃんっ! 機体各部異常なーし。ミニシリカ、周囲の索敵よろしくっ!」
「大姉、小姉、操縦席では静粛に。周辺のサーチは完了」
 ミニシリカによって、操縦席のモニタに、空中を飛翔する光の翼をもったキャバリアと無数の光点が映し出される。
 それは『セラフィム・リッパー』と、それが放ったクリスタルビットの群れであった。

 モニターに映った『セラフィム・リッパー』の姿と、迫りくるクリスタルビットを見て、サージェの青い瞳が燃え上がる。
「あっ、これ、お姉ちゃんのお菓子をつまみ食いした私を見る目だっ!」
「大姉、脈拍上昇。興奮状態と判断」
「あったりまえですっ! せっかくのファントムシリカのお披露目なのに、ルベライトビットが主兵装のこちらにビットでかかってくるとは、私たちへの挑戦と受け取りましたっ! それにあの外見もファントムシリカへの挑発ですねっ!」
 『クリスタルビット』と『ルベライトビット』――名前までも被りまくりの両機体の主兵装。
 さらに一対の羽根で飛翔し頭上に輪を持つというコンセプトまで同じとあっては、サージェの怒りももっともだろう。
「シリカ、ミニシリカ! 私たちの連携を見せましょうっ!」
「おっけー! まっかせてーっ!」
「大姉のフォロー、受諾」
 ファントムシリカは、背中の羽根状のスラスターを全開にすると、『セラフィム・リッパー』に突撃していったのだった。


「高速でクリスタルビットを突破する気ですか!? そうはさせませんっ!」
 『セラフィム・リッパー』のコックピットでクリスタルビットを操作するネティシアが昏い瞳で叫ぶ。
 機体から放たれたレーザーがクリスタルビットに乱反射しながら『ファントムシリカ』に襲いかかった。
 全方位から『ファントムシリカ』にレーザーが押し寄せる。

「ルベライトビット射出っ! 防御と牽制は任せました! 後はよしなにっ!」
 球形のビットを射出しつつ、サージェは【百花繚乱】(アサルトアサシン)でルベライトビットの操作をミニシリカに移譲する。
 ミニシリカの意のままに操られた球形のビットは、『セラフィム・リッパー』が展開したクリスタルビットに体当たりし、それを撃墜。レーザーの反射を妨害することで攻撃の包囲網に穴を開ける。
「お姉ちゃん、あそこっ!」
「了解っ!」
 サージェは、ミニシリカが開けた突破口に機体を滑り込ませると、クリスタルビットの包囲網を突破する。

「なっ……!? 私の攻撃を突破しました……!?」
 その驚異的な対処に驚愕したネティシアが大きく目を見開く。
 『セラフィム・リッパー』のメインモニタを頭上に向け――ネティシアは太陽を背にした『ファントムシリカ』の姿に思わず目を細めた。

 ――それはまるで、後光を背負った翼を持つ天使だった。

「敵機と太陽との相対位置、パーフェクト」
「お姉ちゃん、いっちゃえーっ!」
 ミニシリカとシリカの言葉に応えるように、サージェは『ファントムシリカ』の操縦桿を押し込んだ。
 背中の翼『エンジェライトスラスター』が大きく羽根を広げるかのようにジェットを噴射し、その干渉により機体の頭上に光の帯が浮かび上がる。
「手数こそ正義! 参ります! そにっくぶろーっ!!」

 『セラフィム・リッパー』と空中ですれ違いざま、『ファントムシリカ』が両手に持つ『BXSフローライトダガー』が緑色のビーム刃の光を煌めかせた。
 【疾風怒濤】による超高速連続攻撃が『セラフィム・リッパー』の装甲に無数の傷を付けていき――。

「くっ、ここは一旦退きますっ!」
 ネティシアは『セラフィム・リッパー』の翼を広げ、飛び去っていったのだった。

「あっ、お姉ちゃん、敵が逃げちゃうよっ!?」
「逃しませんよーっ! ……って、あれ?」
「エンジェライトスラスター、オーバーヒート。再起動まであと3分」
 『ファントムシリカ』のコックピットは、今日も賑やかだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
それは貴女の意思じゃない…機体に操られないで…!
その機体に乗ったのも、お父さんや民衆の為でしょう…。機械の支配になんて負けないで…!

【九尾化・魔剣の巫女媛】の封印解放…!
無限の魔剣の斉射で敵を攻撃・牽制…。
呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱、全力魔法】で動きを封じ、縛鎖や魔剣を通じて【呪詛】を流し込み、機体を弱体化させつつ説得…。

敵のプラズマビームは障害物を貫通してくるのを逆手に取り、障害物に隠れてブラインドにし、UCで強化したアンサラーを構えて反射…。
反射ビームで動揺したところを素早く接近し、魔剣の斉射を機体全身の関節に打ち込み、バルムンクでコクピット装甲を破壊…。
姫様を救出して飛び出すよ…


桐嶋・水之江
その機体はあなたには過ぎた代物なのよ
私が有効活用してあげるから大人しく渡しなさい
あれ?このお仕事の目的ってなんだったかしら?
まあ、細かい事はどうでもいいわよね
早速プラズマビームでお出迎えしてくれたわね
でも焦らない慌てない
避けられない攻撃なら防御すればいいじゃない
こういう時のジェリーちゃんシールドとプロテクトフィールドよ
好きなだけ撃ってきなさい
撃たれるほどエネルギーが充填されてウバザメがパワーアップするわ
そろそろ頃合い?
じゃあこっちの番よ
ガードを解いて反撃よ
触手で捕まえてコクピットをこじ開けましょう
お姫様を取り出して機体を無傷で手に入れるのよ
大人しく降りるなら良し、抵抗するなら…わかるわよね?



●ネティシア姫救出作戦
「そんな……私の神聖機がただのキャバリアに押されるなんて……」
 岩陰に姿を隠した『セラフィム・リッパー』のコックピットでネティシアが呟いた。
 猟兵たちに押され、傷だらけになった『セラフィム・リッパー』。
「けれど……この国は滅ぼさないと……」
 瞳に昏い光を浮かべ、ネティシアはうわごとのように繰り返す。

 ――その瞬間。
 『セラフィム・リッパー』の外部マイクが少女の声を拾った。

「それは貴女の意思じゃない……機体に操られないで……!」
 聞こえるのは、白装束を纏い銀髪を腰まで伸ばした妖狐、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)の声だった。妖刀を腰に差した『魔剣の巫女』の真摯な言葉を聞き、ネティシアは思わず問い返す。
「機体に……操られる……?」
 璃奈の言葉によって感じる微かな違和感。
 自分は、この機体に乗っていてはいけないのではないか……?

 そう思った時、ネティシアの考えを後押しする声が響き渡った。

「そう、その機体はあなたには過ぎた代物なのよ! 私がじっくり分解して研究して有効活用してあげるから大人しく渡しなさい!」
 声の主は白衣の美人科学者、桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)だ。桐嶋総合技術研究所の所長にして、数々の怪しい実験をおこなったり、怪しい兵器を作ったりしている天災科学者(誤字ではない)である。
 水之江は水陸両用キャバリアの『ウバザメ』を操縦し、『セラフィム・リッパー』に向かって機体の外部スピーカーでネティシアに語りかけたのだ。

 ――水之江の言葉を聞いたネティシアは、機体に乗っていることに漠然とした不安をいだきながらも、弱々しく呟いた。
 ネティシアの声が『セラフィム・リッパー』のスピーカーから漏れ聞こえる。
「この機体は、国を滅ぼすために必要なもの……渡すわけにはいきません……!」
 それは、オブリビオンマシンに操られ捻じ曲げられたネティシアの言葉。

 だが、その言葉を聞いた璃奈は、大きく首を振って強く否定する。
「違う……! その機体に乗ったのも、お父さんや民衆のためでしょう……。機械の支配なんかに負けないで……!」
 病床の父王を安心させるため。王国の政情不安に戸惑う民衆の困惑を押さえるため。
 ネティシア姫は、そのために『神聖機グランティア』に乗ったはずだ。
 決して、国民たちを傷つけるためなどではない。
 その璃奈の想いが、オブリビオンマシンに囚われたネティシアの心を揺さぶった。

 さらに璃奈の言葉に続いて水之江もネティシアに想いをぶつける。
「そうよ! 機械の支配なんかに負けないで! そして、とっとと私に研究材料を渡しなさい!」
 神聖王国グランティアの神聖機。それは唯一無二の存在。
 それを持ち帰って研究することこそ、何にも優先する目的だ。
 そのためには邪魔なパイロットを排除する必要があるのだ。
 ――あれ? この仕事の目的って何だっただろうか?
 そんな水之江の機体への執着心が、オブリビオンマシンの精神に怖気を覚えさせ、ネティシアへの干渉を弱めさせた。

 全く想いの違う璃奈と水之江の間に、奇跡的なコンビネーションが発生した瞬間であった。

「私が……この機体に操られて……?」
 瞳に光を取り戻していくネティシア。その精神がオブリビオンマシンの支配を打ち破る――。

 ――かに見えた瞬間。
 『セラフィム・リッパー』の機体を包む黒いオーラがネティシアに纏わりついた。

「きゃっ、きゃあああっ!」
 ネティシアが苦悶の声を上げる。
 それはオブリビオンマシンが強制的にネティシアの精神に干渉しているためだ。

 がっくり、と項垂れたネティシアは、弱々しい声で繰り返す。
「国は燃やします……王国は滅ぼします……国民はひとり残らず消し去ります……」

 ネティシアは『セラフィム・リッパー』の光の翼を広げ、プラズマビームの発射体勢に入る。
 光の翼からプラズマが迸り、それが『セラフィム・リッパー』の正面に集中していく。
「私を惑わす言葉を言う人は、消えてっ……!」

 ネティシアの絶叫とともに、『セラフィム・リッパー』からフォールンウイングという名のプラズマビームが放たれた。


 『セラフィム・リッパー』から解き放たれたビーム。
 璃奈は【九尾化・魔剣の巫女媛】による封印解放で九尾化し、敵の攻撃を跳ね返す魔剣『アンサラー』を構える。
 障害物となる岩を蒸発させながら迫りくるビームに対し、魔剣の巫女媛となった璃奈の呪力で強化された『アンサラー』は、そのビームを反射させ、璃奈の身を守りきった。
「姫様っ……!」
「どうやら……あの機体から引きずり出さないことには、大人しくなってくれそうにないわね」
 水之江の声が『ウバザメ』のスピーカーから璃奈に届く。
 『ウバザメ』は、海月型支援ユニット『ジェリーちゃん』をシールド状に展開し、さらに『プロテクトフィールド』によるエネルギーバリアも張り巡らせることで、『セラフィム・リッパー』のプラズマビームに耐えていた。
 こんなこともあろうかと水之江が対ビーム攻撃を想定して作成した『ウバザメ』の防御機構は、その性能を遺憾なく発揮していたのである。
 その間に余裕の表情をした水之江の指がホロキーボードの上を滑り、『セラフィム・リッパー』を分析していく。
「と言っても、ウバザメのセンサーじゃ、あの黒いオーラの分析は難しいわね……。せめて、どこにオーラが集中してるのかとか分かるといいのだけど」
「あの呪力が集まる場所が分かればいいの……? それなら……」
 呪詛に長け、呪力を視覚で捉えるのが得意な璃奈が『セラフィム・リッパー』の一点を指差した。
 そこは『セラフィム・リッパー』の黒いオーラ――呪力が集まる場所。すなわち、ネティシアがいるコックピットだった。

 『セラフィム・リッパー』の光の翼から放たれたビームが徐々に細くなり、眩いばかりの光が消え去った。
「はぁっ……はぁっ……、これで邪魔者は……」
 『セラフィム・リッパー』のコックピットのモニターを見るネティシアの瞳が驚愕に見開かれた。
 そこには、『アンサラー』によって身を守った璃奈と、バリアで攻撃に耐えきった『ウバザメ』の無傷の姿があったからだ。

「あら、もうおしまいかしら。それじゃあそろそろ反撃といきましょうか! 今度はこっちの番よ!」
「作戦、了解……!」
 頷いた璃奈は、魔剣の巫女媛としての力で自身の周囲の空間に無数の魔剣を生み出していく。それは魔剣を祀る巫女にして、魔剣から好かれている璃奈だからこそ可能な能力だ。
「我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……」
 右手を大きく振った璃奈の指示で、無数の魔剣が飛翔。『セラフィム・リッパー』に迫り――。

「くっ、当たるわけにはっ!」
 光の翼で空中に逃れようとした『セラフィム・リッパー』。
 だが、その足元の影から、璃奈の呪力で編まれた漆黒の鎖が伸び、その四肢を絡め取った。
「なっ、これはっ……!? きゃああっ!」
 地面に縫い留められた『セラフィム・リッパー』の装甲を、豪雨のように叩きつける魔剣が削り取り、機体の関節部にダメージを与えていく。
 さらに、漆黒の鎖や魔剣に込められた呪詛がオブリビオンマシンの意志を蝕む。
『ガアアアァァ!』
 機体が――『セラフィム・リッパー』が苦悶の声を上げた。

「あら? なかなかいい声で鳴くマシンね? 私の好みだわ」
 苦悶の声を上げる『セラフィム・リッパー』を見て、ぺろりと舌なめずりをした水之江が『ウバザメ』を操り接近する。
「さあ、もっといい声で鳴きなさい!」
 『ウバザメ』が装備する『ジェリーちゃん』から伸びた無数の触手が『セラフィム・リッパー』の機体に絡みついていく。
 敵のプラズマビームを吸収してパワーアップした触手が、ギリギリと『セラフィム・リッパー』を締め上げる。

『グアアアアァァァ!』
 苦しむ『セラフィム・リッパー』に向かって、『ウバザメ』の外部スピーカーから水之江の声が響き渡る。
 『ウバザメ』のコックピットで脚を組んだ水之江は、モニターに映った『セラフィム・リッパー』を冷めた瞳で見下ろしながら、冷酷に告げた。
「大人しくパイロットを降ろし私のものになるなら良し、抵抗するなら……わかるわよね?」
 ギリギリと締め付ける触手に、『セラフィム・リッパー』の装甲が軋む音が聞こえてくる。
 コックピットをこじ開けようと、触手が伸びる。

「姫様は必ず救出するよ……っ!」
 漆黒の鎖と『ウバザメ』の触手で捕らわれた『セラフィム・リッパー』のコックピット部分に向かって璃奈が飛翔。その手に持った『魔剣バルムンク』を装甲に深々と突き立てた。
 その一撃は『セラフィム・リッパー』の装甲を貫き、そこにわずかな――だが確かな亀裂を作りだす。

 コックピットの中に差し込む一条の光。
 ネティシアが顔を上げると、わずかな隙間から手を伸ばす璃奈の姿が目に映る。
 それは、オブリビオンマシンに心を囚われたネティシアに対する救いの手だ。

「姫様っ! ハッチを開けて……っ!」
「は、はいっ……!」
 璃奈の言葉に、ネティシアがコックピットハッチを解放しようと手を伸ばした瞬間――。

『ガアアアアアッ!!!』

 『セラフィム・リッパー』が、光の翼から無差別にプラズマビームを乱射。拘束する縛鎖と触手を焼き切った。
 そして、大きく光の翼を広げ、上空へと飛び立つ。

「姫様っ!?」
「ああああっ!!」
 そして、ネティシアもまた、漆黒のオーラに取り込まれ、『セラフィム・リッパー』は空の彼方へ飛び去るのだった。

「残念。もうちょっとだったのに、逃げられちゃったわね」
「姫様……」
 『セラフィム・リッパー』が飛び去った方角を見つめ呟く水之江と璃奈だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ダビング・レコーズ
終局には間に合ったがストームルーラーの推進剤を使い果たしてしまった
パージする
周辺に展開中のイェーガーへ
こちらはダビング、アークレイズです
これより作戦行動の支援を行います

救助目標への説得は友軍に任せ機体無力化に専念
低高度より超高速で突入
ベルリオーズの牽制射で着地地点を確保
高機動型のアークレイズとは言え山林地帯でのオールレンジ攻撃となると全弾回避は困難か
死角の防御措置としてEMフィールドを展開
こちらも環境を利用し攻撃を行います
リフレクションビットをリリース
これにルナライトのプラズマキャノンを反射させ遮蔽物越しに攻撃
目標が斬艦刀を使用するならば敢えて急速接近
ルナライトで一閃し目標の後方へ離脱します


レイス・ソレイユ
(キャバリアは借りませんが
大丈夫そうでしたら補給やメンテナンスは受けてから出撃します)

やっと見つけました…!
必ずお助けいたします!

私達は対キャバリア戦も視野に入れて開発されましたから
遅れは取りません…!

敵の上半身や頭に攻撃が届く高さで『空中戦』を展開
ビットはアームブレイドの両モードでの迎撃や
シールドエッジでの防御で対応

シールドで防ぎきれないような攻撃
特に断罪の剣は可能な限り回避を!

ピンチの時、または逆にあと少しで倒せそうな時は
ENH-ANSWERを起動させます!


人々の暮らし…平和が失われ、みんなが涙を流す…
人々が応えてくれない事はお辛いでしょうけど
涙に暮れる事になるのは、もっと辛いですから…!


トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗中
●地形の利用の為センサーで●情報収集
ビットを銃器で破壊し地形の厚みで地形破壊ビームの回避猶予取れる場所選び移動
奇襲ルート限定、UCで攻撃誘発
●瞬間思考力で攻撃●見切り、機体●ハッキング直結●操縦での僅かな挙動で紙一重で斬艦刀回避し●武器落とし
ワイヤーアンカーの●ロープワークで拘束
引き倒し●踏みつけコクピットに剣付きつけ

無法はお許しを
ですが王族とは国と民あってのもの
それを焼かんとする貴女を姫と扱う訳には参りませんので

起き上がりの反撃に体勢崩した己の隙をUCに活用

貴女の親衛隊は忠義の為に機体を駆りました
姫と名乗る貴女は、何の為にその機体を選んだのですか!

攻撃いなし近接攻撃で痛打



●マシーナリー・イェーガー
「私まで補給とメンテナンスをしていただきまして、どうもありがとうございます」
「なぁに、いいってことよ。嬢ちゃんが森の敵を引きつけてくれたおかげで、俺たちが無事にここまで来れたんだからな!」
 緑色の長髪をしたレプリカントの少女、レイス・ソレイユ(SoFs-00C・f29922)が礼を言うのに対し、グランティア王国の整備長が気にするなと手を振った。
 レイスは、山岳地帯に設営された親衛隊の前線基地で補給とメンテナンスを受けているところだった。
 キャバリア用ではなく、人間サイズのレプリカント用ハンガーに固定されたレイス。そのメイドのような外装からは、頭部のホワイトブリム型センサーや、腕部に内蔵された『カフュースアームブレイド』、そして背面に装着された一対のウィングバインダーが取り外されており、それらが整備士たちの手で丁寧にメンテナンスされていた。
 ――なお、エプロン型装甲とスカート型シールドのメンテナンスは、丁重にお断りしたレイスである。

「しかし、対キャバリア戦もできる武装をしたレプリカントなんて初めて見たな……」
 森林地帯でレイスがゴーストスコードロンたちと戦った戦闘記録を見ながら、整備長は感嘆の呟きを漏らした。
 整備長の視線の先では、補給とメンテナンスを終えたレイスが、髪をまとめながらホワイトブリム型センサーを取り付け前線へと向かっていったのだった。


 山岳地帯を一機のキャバリアが慎重に進んでいた。
 白銀のボディに紫色の装飾を施された騎士のような外見のキャバリア。
 その肩と盾に刻まれた六枚の花弁の紋様を見れば、知っているものはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の機体『ロシナンテⅣ』だと分かるだろう。
 『ロシナンテⅣ』のコックピットで、乗機とそっくりな外見のウォーマシンの騎士、トリテレイアがセンサーの反応を伺っていた。
「徒に速度に恃まず、敵を誘い、撃たれる前に射線から外れ、死角に移動……。理論は単純、実行は至難。さて、私の予測演算で何処まで踊れるか……」
 トリテレイアは、その電子頭脳でセンサーの情報を処理し、事象予測演算をおこなう。
 敵の動きを誘い、読み、死角に移動。言うだけなら簡単だが、その【機械騎士の戦闘舞踏】(マシンナイツ・バトルワルツ)を実現できるのは、正確無比な機械たるトリテレイアしかいないだろう。

「私の予測では、そろそろですね……」
 岩陰を進む『ロシナンテⅣ』の進路に突如現れたクリスタルビット。それに対してトリテレイアは冷静に対処する。
 ビットに反射してきたレーザーを物陰に入ることで回避すると、『RSライフル』を装着した機体のサブアームを物陰から覗かせ引き金を引いた。
 『RSライフル』の一撃を受けて爆散したビットをセンサーで確認すると、トリテレイアは呟く。
「この進軍ルートならば、敵の奇襲の角度も限定されます。それならば対処も可能というものです。……さて、警戒用のビットが飛んでいるということは、このあたりに潜んでいますね」
 プラズマビームへの警戒を怠らず、トリテレイアの駆る『ロシナンテⅣ』は岩陰を進んでいく。


「……ビットが落とされましたか」
 昏い瞳で呟くのは、『セラフィム・リッパー』のコックピットに座るネティシアだ。
 オブリビオンマシンによる精神干渉は未だに健在。その思考は歪められたままだった。
「王国を燃やす邪魔をするなら、私と神聖機グランティアが許しません……」
 口の中で呟きながら、ネティシアは『セラフィム・リッパー』の操縦桿を押し込み、機体を飛翔させた。

 先に『セラフィム・リッパー』と会敵したのはレイスだった。
 レイスのホワイトブリム型センサーが、接近してくる機体と小型のビット兵器を捉えた。
「やっと見つけました……! 必ずお助けいたします!」
 レイスは、左右の腕部アーマーに内蔵された『カフュースアームブレイド』を抜き放ち、両手に構えた。

「そのような近接武器でっ!」
 『セラフィム・リッパー』の操縦席のモニターに映る小さな人影――何故かメイド姿である――を見て、ネティシアはクリスタルビットを展開。緑色の髪のメイド少女へと飛翔させる。
 少女を取り囲んだビットにレーザーを乱反射させ、全方位からの攻撃を放ち――。
「なっ!?」
 メイド少女の持っていたビームソードがいつの間にかライフルに変形し、ビットを撃ち落とされたことに驚愕の声を上げた。

「私達は対キャバリア戦も視野に入れて開発されましたから、遅れは取りません……!」
 レイスは、カフュースアームブレイドをライフルモードからブレイドモードに戻しながら、クリスタルビットの包囲網に向けて跳躍する。
 そして、両手の剣を一閃し、さらに複数のビットを斬り落とした。
「まだですっ!」
 さらにスカート型のシールド『スカーティングシールドエッジ』の下部にビームの刃を生成。
 スカートを翻すかのように空中で舞うと、周囲にビットの爆発による花火が咲いた。

「ならば……防げない一撃で叩き潰すだけですっ……!」
 ネティシアの操作で、『セラフィム・リッパー』が天使としての権能たる大剣『断罪の剣』を振りかぶる。
 それは、あらゆるものを切断する無敵の刃だ。
「この一撃で……消え去りなさいっ……!」
 空中でビットの迎撃をおこなっているメイド少女には回避不能なタイミングで断罪の剣が振り下ろされ――。

「させませんっ!」
 その一撃を瞬間的に見切ったトリテレイアが、『ロシナンテⅣ』の制御回路と電子頭脳を直結させた超精密動作で機体を割り込ませる。
 鞘から抜き放った実体剣を断罪の剣にぶつける『ロシナンテⅣ』。
 その正確無比な一撃は断罪の剣の軌道を僅かに逸らし、レイスへの直撃コースから外れさせた。

「ありがとうございます、助かりました!」
 断罪の剣にシールドエッジの一部を斬り裂かれながらも、無事に着地したレイスがトリテレイアに礼を言う。
 『セラフィム・リッパー』の振るった断罪の剣は、レイスの数センチ横を通り過ぎ、剣圧だけで地面に数十メートルに渡る亀裂を作り出していた。

「邪魔が入りましたか……! ならば二人まとめて斬るまでです!」
 『セラフィム・リッパー』が、レイスとトリテレイアに向かって断罪の剣を構えた。


 『セラフィム・リッパー』が断罪の剣を振り下ろそうとした瞬間――。

「レーダーに機影……!? 速いっ!?」
 コックピットに鳴り響く警告音に、ネティシアが驚愕の声を上げた。
 モニターに映るレーダーの光点が、信じられない速度で接近してくる。
 それは、またたく間に目視可能になり――『セラフィム・リッパー』たちの頭上に到達した。

「終局には間に合ったが、ストームルーラーの推進剤を使い果たしてしまった。パージする」
 音速を超える速度で飛来した白銀色のキャバリアが、衝撃波を撒き散らす背面ブースターユニット『EP-Bストームルーラー』をパージする。
 内蔵した膨大な推進剤を使い切り、その重量を減じさせた強襲用複合ブースターが、ウェイトとなっていた機体を切り離し、反作用で急上昇。『殲禍炎剣(ホーリーグレイル)』のテリトリーを侵した代償に、降り注ぐ極光を浴びて爆散した。

 激しい火花を背景にして地上に降下してきたのは、機械の身体を持ったウォーマシンのダビング・レコーズ(RS01・f12341)が乗る高速近接戦闘型のクロムキャバリア『アークレイズ』だ。
 右手にリニアアサルトライフル『RSベルリオーズ』を持ち、左手にプラズマブレード『BX-Aルナライト』を装着した『アークレイズ』が、外部スピーカーから音声を発した。

「周辺に展開中のイェーガーへ。こちらはダビング、アークレイズです。これより作戦行動の支援を行います」


「ダビング様ですか、ご助力、感謝します」
「この識別コード……トリテレイア様でしたか」
 同じ宇宙世界出身の知己であるダビングの援軍に、トリテレイアが感謝の言葉を述べる。それと同時にトリテレイアは『ロシナンテⅣ』の通信回線を開き、戦闘状況および敵キャバリア『セラフィム・リッパー』のデータを『アークレイズ』へと転送していく。

「状況把握しました。救助目標への説得は友軍に任せ、当機は敵性機体の無力化に専念します」
 駆け巡る電子の速度で状況を把握したダビングは、ネティシアの乗る『セラフィム・リッパー』に向かって『アークレイズ』のリニアアサルトライフルを構え、牽制射撃を開始する。
 『アークレイズ』が構えた砲身から電磁加速によって発射された銃弾は、超高速で『セラフィム・リッパー』に殺到する。

「くっ、増援ですかっ……!」
 飛来する銃弾に対して断罪の剣を盾代わりにしつつ、『セラフィム・リッパー』は光翼を広げて上空へと退避した。
 それと同時にクリスタルビットを射出。レーザーを乱反射させるオールレンジ攻撃によって『アークレイズ』を仕留めようとする。
「ブースターをパージしたなら、このクリスタルビットは回避できないはずですっ!」
 オブリビオンマシンに操られたネティシアが昏い笑みを浮かべ、思念波でビットを操っていく。
 だが『アークレイズ』を駆るダビングは、そのレーザー攻撃に対して『EMフィールド』による電磁障壁を展開。強力な電磁場によってプラズマ化した大気が、ビットの放つレーザーを減衰、無効化させる。

「ビットは、あなたの専売特許ではありません。リフレクションビット、リリース」
 ダビングも【リフレクションビット】によって機体から無人機を放出し、『セラフィム・リッパー』の周囲を囲むような配置につける。
 『アークレイズ』が放ったリフレクションビット。
 それは、個々のビットが強力なEMフィールド発生機となっていた。
「反射角調整、照準誤差修正完了」
 軌道演算能力を向上させるハイビジュアルセンサー『HVS8ゲイザー』によって、瞬時に軌道計算を完了させたダビングは、『アークレイズ』のプラズマブレード『BX-Aルナライト』をプラズマキャノン発射形態に変形させ、岩陰からブラズマを撃ち出した。
「一体どこを狙っているのです!?」
 明後日の方向に飛んでいくプラズマビームを見て、ネティシアが嘲笑を浮かべ――。

 ――その笑みが凍りついた。

「私のリフレクションビットを甘く見ないでもらいましょう」
「なっ、ビームが……反射したっ!?」
 『アークレイズ』が放ったプラズマビームは、周囲に展開したリフレクションビットが発生させる強力な電磁場、EMフィールドが生み出すローレンツ力により軌道を曲げられ、ビット間を次々と反射するように軌道変更していき――。
「きゃっ、きゃあああっ!」
 『セラフィム・リッパー』の背面にビームが直撃。機体を激しい振動が襲う。
 だが、『アークレイズ』の攻撃はまだ終わらない。次々と放たれるプラズマビームが正確無比に計算された軌道で『セラフィム・リッパー』に襲いかかる。

「くっ、ならばっ!」
 ネティシアは『セラフィム・リッパー』の光翼を広げると、リフレクションビットの包囲網を突破する唯一の道――『アークレイズ』への直線軌道で接近戦を挑む。
 断罪の剣を振り上げる『セラフィム・リッパー』。
 ――だが。

「その攻撃、予測演算通りです」
 岩陰から飛び出したダビングの『アークレイズ』が、その近接機動戦用のスラスターを全開にして『セラフィム・リッパー』との間合いを詰めた。
 その左腕には、ブレードモードに戻したプラズマブレード『BX-Aルナライト』が大気を電離させるプラズマの蒼光を湛えていて――。

 交錯する『アークレイズ』と『セラフィム・リッパー』。

 断罪の剣を躱して『セラフィム・リッパー』の後方の地面へと着地した『アークレイズ』。
 『セラフィム・リッパー』の機体のボディは袈裟懸けに斬られ、装甲表面を溶解させていたのだった。


「この……程度で、神聖機は止まりませんっ!」
 プラズマブレードの一撃で、コックピットハッチの亀裂がさらに大きくなった『セラフィム・リッパー』のコックピットで、ネティシアが声を上げる。
 『セラフィム・リッパー』が構えるは断罪の剣。

「しまった、コックピットを避けたため、攻撃が浅かったですか」
 ダビングが追撃のプラズマビームを放とうとするが、間に合わない。 
 背中の翼から光を放ちながら高速で飛翔する『セラフィム・リッパー』の狙いは――この戦闘に生身で参戦しているレイスだった。

「レイス様!」
 トリテレイアがとっさに『ロシナンテⅣ』の大盾を構え、割り込もうとするが、間に合わない。

 『セラフィム・リッパー』の断罪の剣がレイスを斬り裂く――かと思った瞬間。
 レイスの全身を太陽のように輝く粒子が包み込んだ。
「力を……解放します! エンハンサー!」
 【ENH-ANSWER】を起動させ動力機関の出力を解放したレイスは、全身から粒子を放出しながら大地を蹴り回避した。
 断罪の剣が斬り裂いたのは、レイスの残像のみだ。

「そんなっ、残像っ!?」
 レイスの動きを見たネティシアが眼を見張る。

「いえ――あれは残像とは違う現象です」
「ええ。キャバリアのメインモニタが相手の軌道予測をおこなって描画している3D映像……それがあの粒子によって誤認させられているのです」
 ダビングとトリテレイアが、レイスの動きの正体を分析する。
 彼女が身体から放つ眩い粒子が、キャバリアのコンピュータを狂わせているのだ。

 ネティシアが呆然とした隙をついて、トリテレイアの『ロシナンテⅣ』が動く。
「姫、無法はお許しを!」
 『ロシナンテⅣ』の腕から伸びたワイヤーアンカーが『セラフィム・リッパー』に絡みつき、その機体を引き倒した。
「きゃああっ!」
 突然の衝撃に、ネティシアがコックピット内で悲鳴を上げる。
 だが、騎士たるトリテレイアは止まらない。
「王族とは国と民あってのもの。それを焼かんとする貴女を姫と扱うわけには参りません」
 毅然と言い放ったトリテレイアは、転倒した『セラフィム・リッパー』を踏みつけると、コックピットに実体剣を突きつける。
「貴女の親衛隊は忠義の為に機体を駆りました。姫と名乗る貴女は、何のためにその機体を選んだのですか!」
「私は……神聖機を……何のために……」
 コックピットの亀裂から『ロシナンテⅣ』の剣先を見つめ、ネティシアが呟く。

 そのコックピット前に、黄金の粒子をまとったレイスが着地する。
 コックピットの亀裂から、太陽にも似た暖かい光が差し込み、ネティシアの頬を照らし出した。
 そこには、天使のような笑みを浮かべるメイドが立っていた。
「え……王宮の……メイド?」
「いいえ、私は姫様のメイドではありません。ですが、王国ではメイドたちはもちろんのこと、大勢の国民が姫様のお帰りをまっています」
「私の……帰りを……? 私に帰れる場所が……あるのですか……?」
 ネティシアの瞳に、迷いが浮かぶ。
 それはオブリビオンマシンの支配から脱しようとしている証だ。
「人々の暮らし……平和が失われ、みんなが涙を流す……。人々が応えてくれない事はお辛いでしょうけど、涙に暮れる事になるのは、もっと辛いですから……!」
 レイスの必死の問いかけが、ネティシアの心に届こうとした瞬間――。

『グワアアアアア!!』
 オブリビオンマシン――『セラフィム・リッパー』が雄叫びを上げ、漆黒のオーラがネティシアを包み込む。
「ああああっ!」
 悶え苦しむネティシアにレイスが手を差し伸べるが――その手は一歩届かない。

 『ロシナンテⅣ』による拘束から抜け出した『セラフィム・リッパー』は、光の翼を広げて撤退しようとする。

「させませんっ!」
 立ち上がろうとする『セラフィム・リッパー』に実体剣を突き立てる『ロシナンテⅣ』。
 その一撃は『セラフィム・リッパー』の左肩を貫くが――それでも相手の動きは止まらない。

 『セラフィム・リッパー』は、ネティシアを取り込んだまま、飛翔して逃走したのだった。

「私が……姫様の手を掴めていれば……」
「いえ、あなたは最善を尽くしました」
「ええ、きっと彼女の――姫の心に言葉が届いたことでしょう」
 レイス、ダビング、トリテレイアの三人――従者、戦士、騎士の違いはあれど、人の心を持った機械たちは、『セラフィム・リッパー』の飛び去った方向を見つめながら呟いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・セシル
「そういえば、白いロボットさん、名前まだないんですね……そうですね…エアリニスという名前はどうでしょう?」

UCの【グリモバリア二重奏】でエアリニスさん(仮)を遠隔操作する。基本は遠距離から自律浮遊兵装で攻撃する。

自分は【Windows of Heart】常時発動し、有利なところを試して探す。

「人を説得することは苦手(人見知り)ですけど、エアリニス(仮)さんはどう?できます?」(無理強い)


(キャバリアさんの反応お任せします)

【アレンジ・アドリブ歓迎】


天星・雲雀
う~ん。最初は敵機を絶無で押さえ付けてる間に操縦席のハッチをハッキングで開錠して、御姫様を物理的に奪還しようかとも考えたんですが。戦闘中の機体から引きずり出すのは少々安全性が心もと無いですね。それに元国王機の操縦席ブロック、相当頑丈に出来てるはづですし、乗せたままの方が安全かも。強制奪還は最終手段して、先に機体の方を無力化しますか。

【行動】UC使用。敵機が光の翼を向けてきたら、流星弾を当てて、体勢を崩して回避します。

「御姫様!あなたが居るべき場所はコクピットの中じゃない!国王が病に伏し国民が不安に怯える今、貴方が支えるべき大切なものは、とてつもなく多いはずです!思い出して!貴方自身の使命を!」



●妖怪と半妖
「そういえば、白いロボットさん、名前まだないんですね……」
 細く白い指をおとがいに当てて悩むのは、神代・セシル(夜を日に継ぐ・f28562)。
 西洋妖怪――吸血鬼にして、魔法使いでもある、青い髪に赤い瞳の少女である。
 少女は全身を手作りの魔女服に包み、頭には魔女の帽子をかぶっている。
 両手で強く抱きしめるのは、愛用の魔導書『ヴァンパイアチャプター』だ。
 セシルは右目にかけたモノクル(格好いい)をきらりと光らせ、目の前の魔神――グランティア王国のキャバリア格納庫に眠っていた白いサイキックキャバリアを見上げた。
「我のことは好きに呼ぶが良い」
 純白の魔神から、重厚な声が聞こえてくる。
 このサイキックキャバリアは、自我を持ち、言葉を喋ることもできるというサイキックキャバリアなのだった。
「けれど、なんで今まで格納庫の中にいたのですか?」
「うむ。我と波長の合う魔力の持ち主がいなかったのでな」
 サイキックキャバリアとは、『古代魔法帝国』によって作られたと言われている。この魔神がどのように作られたのかは分からないが、どうやら魔法に関係があるらしい。
 そういう意味では、ヴァンパイアにして魔法使いたるセシルが魔神との相性が良かったということもうなずける。おそらく、現代のクロムキャバリア世界には、もう魔法の使い手がほとんどいなくなってしまっていたのだろう。
「それでは、改めて名前を付けさせていただきましょう……。そうですね……『エアリニス』という名前はどうでしょう?」
「エアリニスか……悪くない」
 魔神は、セシルが付けた名前を呟き、まんざらでもなさそうな声音で呟いたのだった。


「はぁ……はぁ……」
 山岳地帯に身を隠した『セラフィム・リッパー』の中でネティシアが荒く息を吐く。
 度重なる猟兵の攻撃により、『セラフィム・リッパー』の全身は傷だらけになり、両肩の装甲は破壊され、胴体には袈裟懸けにプラズマブレードの跡が残っている。
 さらにコックピット部分の装甲は半ば破壊され、機体外部からコックピット内のネティシアの姿が見えるほどだった。

 そこに、狐火の『オトモ』たちを連れた妖狐の少女、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)が姿を現す。
 赤を基調とした華柄の和風メイド服を着た雲雀は、物陰に潜んだまま、左目の赤い義眼を『セラフィム・リッパー』に向けた。
「最初は敵機を絶無で押さえつけてる間に操縦席のハッチを開けて、御姫様を物理的に奪還しようかとも考えたんですが。頑丈にできているはずの元国王機の操縦席ブロックがすでに壊れているのは想定外です。あれなら無理に御姫様を引きずり出さずに、機体を無力化して御姫様を説得しましょう」
 狐火の『オトモ』たちに光速超重力推進装置を取り付けて飛翔させる【獅子の座流星弾】の準備をしながら、雲雀はネティシア説得の機会を伺う。


「見つけました。姫様が乗っている機体です」
 山岳地帯の遥か遠方を眺め、セシルは自身を掌に乗せて飛行する『エアリニス』に向かって呟いた。
 セシルは【Windows of Heart】を発動することで、その常人より遥かに優れた視力を最大限に活かしていた。
 その視力により、セシルは上空から『セラフィム・リッパー』の姿を見つけることに成功したのである。
「では、向かうとしようか」
 【グリモバリア二重奏】によって、魔導書を介してセシルと心を通わせている『エアリニス』は、背中の翼を大きく羽ばたかせると、『セラフィム・リッパー』が隠れている岩陰へと急降下していくのだった。

「敵襲っ!?」
 急降下してくる白い魔神『エアリニス』をレーダーに捉えた『セラフィム・リッパー』の警告音に反応し、ネティシアが慌てて操縦桿を握る。
 だが、『セラフィム・リッパー』が動くよりも『エアリニス』の攻撃の方が速い。
 『エアリニス』の本体から分離させた浮遊型魔法射撃兵装『ウィング・システム』を操り、セシルはロングレンジから『セラフィム・リッパー』へ攻撃をおこなう。

「遠距離からの攻撃っ!? 厄介ですね……!」
 攻撃を両腕でガードしつつ、『セラフィム・リッパー』は光の翼を広げる。
 光翼から放たれるのは、プラズマのビームだ。
 地上から上空へと空を裂くように放たれる、必殺のプラズマビーム。それは魔神『エアリニス』に回避の余裕も与えずに撃ち落とす――はずだった。

「今です、オトモたち!」
 『セラフィム・リッパー』にできる隙。プラズマビームを撃とうとする瞬間を狙っていた雲雀は、光速超重力推進装置を装着した82体のオトモたちに突撃命令を下した。
 突如現れた狐火の大群。それが超高速で『セラフィム・リッパー』に激突してくる。

「な、なんですか、これはっ!?」
 コックピットのネティシアが困惑の声を上げ――その機体が体勢を崩した。
 『エアリニス』を貫くはずだったプラズマの光は、あらぬ方向へと照射され、空に浮かぶ雲に穴を開けた。

 このチャンスを逃すものかと、雲雀が『セラフィム・リッパー』のコックピットに近づき、大声でネティシアに語りかける。
「御姫様! あなたが居るべき場所はコックピットの中じゃない! 国王が病に伏し国民が不安に怯える今、貴女が支えるべき大切なものは、とてつもなく多いはずです! 思い出して! 貴女自身の使命を!」
「私……自身の……使命……!?」
 雲雀の言葉で、ネティシアの瞳に光が戻っていく。

「先輩だけに負担はかけられません!」
 さらに、セシルもネティシアの説得を試みようと『セラフィム・リッパー』に近づくが……。
 はっ、と気がついたように、セシルは抱えた本で口元を隠した。
「私、人を説得することは苦手でした……」
 人見知りセシルは、ぼそぼそと小さな声で呟く。
 そして、縋るような瞳で『エアリニス』の方を見上げた。
「エアリニスさんは、どう? 説得できますか?」
 サイキックキャバリアにネティシアの説得をさせようという前代未聞のミッションがセシルによって発令されてしまった。
 さすがの『エアリニス』も、ネティシアの説得ができるわけが――。

「うむ、よかろう。久しいな、姫よ」
 セシルの言葉に鷹揚に頷いて説得し始める『エアリニス』。
 その言葉を聞き、ネティシアは首をかしげる。
「誰……ですか……?」
「我のことを忘れたか……。まあ、こうして言葉を交わすのは初めてだからな」
 ネティシアと視線を合わせるように、『エアリニス』は膝をついてコックピットを覗き込んだ。
 『エアリニス』の瞳に、優しげな光が浮かんだ――ように見えた。

「あなた……格納庫の『動かずの魔神』……?」
「いかにも」
 ネティシアの瞳が驚愕に見開かれていく。
「姫よ。幼い頃は、よく我のコックピットの中に隠れておったな」
「えっ、あっ、いえ、あの頃は、お勉強をしたくなくて……。隠れるのに『動かずの魔神』の中がちょうどよかったから……」
 過去の思い出を恥ずかしがるように、ネティシアが赤面する。
 そしてネティシアの瞳が、白き魔神を操るセシルに向いた。
「あなたが、この伝説の魔神を動かしたのですね……。私は神聖機を乗りこなせていないのに……」
 白き魔神『エアリニス』と心を交わしたセシルと、『神聖機グランティア』に精神を操らている自分。
 それを比べると、ネティシアの心に闇が浮かんでくる。
「やっぱり、私には神聖機を乗りこなす資格なんて……」
 そのまま、ネティシアの心が再び『セラフィム・リッパー』の闇のオーラに囚われようとした時。

「姫よ。この機体は神聖機ではない」

 魔神『エアリニス』から、驚愕の事実が告げられた。
「そ、それは、どういうことですか!?」
 『エアリニス』の言葉を聞いた雲雀が、勢い込んで問いかける。
 セシルもその表情に驚きの色を浮かべていた。
 そして誰よりもネティシアが最もショックを受けていた。

「ふむ。おそらく、外装は神聖機のもののまま、何者かの手によって中身を入れ替えられたのだろう。こやつの機体からは、神聖機の力が感じられん」
 『エアリニス』の言葉には説得力があった。
 一国を代表するキャバリアが、何故オブリビオンマシンになってしまったのか。
 それは、ネティシアが乗り込む前からオブリビオンマシンにすり替えられていたからだったのだ――。

「そうと分かれば、御姫様! すぐに機体を降りてください!」
 ネティシアを『セラフィム・リッパー』から降ろそうと、雲雀がコックピットの裂け目に手を伸ばした瞬間――。

「きゃああっ!」
 無数の触手のようなものがコックピットから伸び、ネティシアを拘束する。
 それは、『セラフィム・リッパー』がパイロットを逃さないようにするための最終システムだ。

「御姫様を放してくださいっ!」
「姫様っ!」
 叫ぶ雲雀とセシルの目の前で、『セラフィム・リッパー』は光の翼を広げ、空へと飛び立っていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

支倉・錫華
これはさすがにキャバリアなしでは分が悪そうだね。

使えそうな機体もあまり数がなさそうだし、
ここなら人も少ないから、まぁいいか。

「アミシア、スヴァスティカ出せる?」
自分の機体に乗るのは久しぶりだけど、さすがアミシア完璧だね。

地形的にややこしいから、今回アミシアには、
索敵とエネルギー波の探知をお願いして攻撃予測してもらおう。

こちらの攻撃は【E.O.Dソード】かな。
「機密? 解ってるけど、どうせスヴァスティカは出すしね」
それにエネルギーソードくらい使わないと、ダメージ与えられなさそうだし、
そこは姫を助けるためと思っておこう。

「ネティシア姫、あなたも最後まで戦って。誰もあきらめてなんかないからね」


霧島・クロト
ったく、
一介の王女に在り方説く程俺ァ偉くないんだがね。


『貪狼の神骸』接続深度強化。もっと深く俺を刻んでやる。
――お前も俺の身体なんだから、『付いてこれる』よな?

【高速詠唱】で【指定UC】。
見切る必要なんざねぇ。
【オーラ防御】を併用して真正面から突き進む。
誰が、逃げるとでも?
お前が逃げるなら、『捕まえる』。

【属性攻撃】【マヒ攻撃】【神罰】を載せた波動で、
機体を『動けなく』してやる。
――安心しろ、俺が潰すのはその『機体』だけだ。

確かに、『象徴』ってのは拠り所かもしれねェが。
だからといって何もしてくれなかった訳じゃないだろう?
お前がそれに乗ったのは『応えよう』としたからだ。……違うか?

※アドリブ可


ビッグ・サン
ふむ、キャバリアをゾンビキャバリアにしてみましたが、なかなか良い感じでしたね

次はちょっと派手にいってみますかね
懐から自作の賢者の石を取り出す
この強力な魔力増幅装置を使い、ブーストされた魔力で魔法を放つ

何やら不気味な霧が立ち込めたかと思うと、霧の中から巨大な母艦が現れる
甲板には大量のキャバリアの姿がある

「いっきまーす」
などと声をあげてカタパルトから射出されるキャバリアは先ほどのゾンビキャバリアと違って動きがいい
なんせパイロットの幽霊が乗っているのだ

黒い機体に乗った三人が連携攻撃を仕掛けたり、赤い機体に乗った人が「ええい、神聖王国のキャバリアは化け物か」と言いながら戦ったり、良い感じだ


ダイ・オウガ
燃える心に勇気を乗せて、唸れ豪腕、大螺旋!
悪あるところ正義あり、勇者猟兵ダイッ(↓)オウッ(↓)ガァァァ(↑↑↑)

エネルギー補給を受け万全になった以上は泣き言など許されない
国を憂う姫君一人救えずなんの勇者か!

心が闇に飲まれようと思い出せ、民を想う心を、皆が君を呼ぶ声を!
ネティシア姫の目を覚まさせるには大きなショックが必要と見た
ならば何を悩むことがあろう

鉄拳ロケットパンチを発射してわざと外して後方でUターンさせ背中を押させて私の元までセラフィム・リッパーを引き寄せよう
こちらは真正面から突撃し無敵斬艦刀にドリルを叩きつけながらガッチリとロック

目覚めよ姫! 目覚めの時間だ!(UC自爆装置作動)



●決戦・悪魔のキャバリア
『グガアアァ……』
 『セラフィム・リッパー』の頭部フェイスガードが開き、生物のような口があらわになる。
 それこそが神聖機グランティアに成りすましていたオブリビオンマシンの真の姿。
 ナノマシンの集合体として有機部品で作られた、「自己進化」「自己再生」「自己増殖」の機能を有する『天使を斬り裂くもの』という名に相応しい悪魔の機体だ。

「くっ、放しなさい……!」
 『セラフィム・リッパー』のコックピットに生体パーツとして取り込まれたネティシア姫が有機パイプに絡め取られた身体をよじるが、抜け出すことはかなわない。
 生体コアであるネティシア姫の生命力を吸収し、『セラフィム・リッパー』は傷ついた装甲を自己修復していった。


「燃える心に勇気を乗せて、唸れ豪腕、大螺旋! 悪あるところに正義あり、勇者猟兵ダイッ(↓)オウッ(↓)ガァァァ(↑↑↑)!」
 山岳地帯に大音声が響き渡る。
 親衛隊の前線基地で補給とメンテナンスを受けたダイ・オウガ(勇者猟兵・f30091)の声だ。
 初めから、ロボットヘッドのダイと、ライオン型キャバリアのオウガが融合合体ブレイヴコネクトした『勇者猟兵ダイオウガ』の姿になっているのは、そろそろ変身バンクが省略され始めてもいいタイミングになってきたからだろうか。

「整備長、エネルギー補給とメンテナンスに感謝する。万全となった以上は泣き言など許されない。悪魔の機体に囚われた姫君一人救えずなんの勇者か!」
 漆黒の機体に黄金の装飾を施された『ダイオウガ』は、勇者としての力・ブレイヴエナジーを燃え上がらせると、緑色の瞳に勇気を灯らせ親衛隊長や整備長たちに力強く頷いた。
 『セラフィム・リッパー』と戦い姫の洗脳を解くことに成功した猟兵たちからの報告により、姫が悪魔の機体に囚われたことは、すでに周知の事実だ。
 姫は必ず救い出すと燃える『ダイオウガ』に、親衛隊長と整備長の声がかかる。
「お願いいたします。本来であれば、我ら親衛隊がこの身に代えても姫様をお助けせねばならないのですが……」
「無茶言うんじゃねぇ。親衛隊には、もうまともに動ける機体はいないじゃねぇか。……姫様のこと、頼んだぜ、旦那」
「ああっ! 任せておけ!」
 左腕のドリルを力強く回転させながら、巨大な勇者『ダイオウガ』は出撃していった。


 その親衛隊の前線基地から少し離れた場所。
「これはさすがにキャバリアなしでは分が悪そうだね」
 呟くのは、黒髪をセミロングにした物憂げな少女、支倉・錫華(Gambenero・f29951)だ。
 漆黒のスカーフを首に巻き、腰にはマント状にローブを纏った錫華。丈の短い上着とミニのフレアスカートから覗く瑞々しい肌を惜しげもなく晒しつつ、周囲に視線を送る。
「使えそうな機体もほとんどなさそうだよね」
 錫華は前線基地に並ぶボロボロのキャバリアたちを眺めてため息をつく。
 フリーの騎士兼諜報員である錫華は、普段は特定のキャバリアには乗らず、現地調達した量産機を使っている。
 だが、親衛隊の機体がこの状況では、錫華の操縦技術をもってしても『セラフィム・リッパー』に対抗するには心もとないというのが本音だ。
 錫華は諦めたような声で自身のパートナーユニットであるAIに告げる。
「ここなら人も少ないから、まぁいいか。アミシア、スヴァスティカ出せる?」

 その言葉を待っていたかのように、茶色い装甲を纏ったキャバリアが光学迷彩を解除して錫華の前に現れた。
 AIのアミシアが操るのは、錫華の愛機たる量産型キャバリア『スヴァスティカ SR.2』だ。
 機動性と整備のしやすさを優先したためか、装甲の合間から内部フレームが大きく覗いているデザインの機体。それは錫華の故郷の街で開発・運用されていた量産型キャバリアの後期型である。
「わたしのキャバリア、見られちゃうと色々バレちゃうかもだから、なるべく出したくなかったんだけどね」
 仕方なさそうに機体に乗り込む錫華。
 だが、その操縦桿を握る表情は嬉しそうだ。
「スヴァスティカに乗るのは久しぶりだけど、さすがアミシア、メンテナンスは完璧だね」
 錫華の人並み外れた反応速度に、まるで本物の手足のように応じる機体。
 その動きを確認すると、錫華は索敵をアミシアに任せつつ『セラフィム・リッパー』の姿を求め、山岳地帯へと分け入っていったのだった。


「ったく、一介の王女に在り方説く程俺ァ偉くないんだがね」
 漆黒の装甲に紅いバイザー姿の霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)が、口の端を釣り上げながら自嘲気味に呟く。
 彼のその身体はサイボーグ化によるものだ。
 そしてクロトは、生体部品を用いたキャバリア『貪狼の神骸』に乗り込み、その機体をサイボーグの身体の延長上の義体として『接続』して操作していた。

 クロトの――『貪狼の神骸』の視線の先に映るのは、有機部品で作られた悪魔のキャバリア『セラフィム・リッパー』の姿だ。
 自己修復能力で傷ついた装甲を修復する『セラフィム・リッパー』を眺め、クロトは凶暴な笑みを浮かべる。
「なぁるほど、敵さんも俺の同類だったってェわけだ」
 『貪狼の神骸』のコアとして体内に収まっているクロトは、ネティシア姫がいるであろう『セラフィム・リッパー』のコックピットに意識を向ける。
「俺みたいに望んで乗ってるならともかく、無理やり乗せられてるってェなら――それは助けてやらねぇとなァ! 来いよ、『貪狼の神骸』! もっと深く俺を刻んでやらァ!」
 『貪狼の神骸』は、クロトとの接続深度を強化する。
 まるで『貪狼の神骸』が本当の身体になったかのようにクロトの意識が拡張されていく。
 だが、まだだ。『セラフィム・リッパー』に対抗するには、まだ足りない。
「――お前も俺の身体なんだから、付いてきやがれェッ!」
『ガァァァアア!』
 クロトの咆哮に――『貪狼の神骸』もまた咆哮で応えた。


「そこまでだ、セラフィム・リッパー!」
「姫は返してもらうよ」
 『ダイオウガ』と、錫華が操縦する『スヴァスティカ』が、姫を囚えている『セラフィム・リッパー』の前へと姿を現した。
 この『セラフィム・リッパー』さえ倒せば、姫を救出して一件落着だ。

「だめですっ、皆さん、逃げてくださいっ!」
 コックピットに囚われたネティシア姫が叫ぶと同時。
『ガアアアアァッ!』
 『セラフィム・リッパー』が、山を震わせるほどに大きな声で吼える。
 咆哮に応え、地中から無数のキャバリアたちが姿を現した。
 その数は数え切れないほど。『セラフィム・リッパー』へ辿り着かせまいと、陣形を組んで進軍を阻む。

「これは……街や森林地帯で暴れていた支援キャバリアか!?」
「アミシアの分析結果だと、ゴーストスコードロンと同種の存在だね。どうやら、あの無人キャバリアたちは、敵の自己増殖能力で増えたものだったみたいだね」
 立ちはだかるように現れた無数のゴーストスコードロンを前に、『ダイオウガ』と『スヴァスティカ』が脚を止めるが――。

 そこに、クロトの乗る『貪狼の神骸』からの声が響いた。
「なァに、どうせ敵は全部ぶっ潰すんだ。どれだけ増えようが関係ねェよなァ!?」
 『貪狼の神骸』の操縦席でクロトが獰猛に吼える。

 無人キャバリアのライフルの銃弾を見えないオーラによって防ぎつつ、『貪狼の神骸』が正面からまっすぐに突撃していった。
「我が身に北天に座す『破軍』の裁きの理を」
 【氷戒装法『破軍の執行者』】を発動したクロト――いや『貪狼の神骸』は、全身を氷を纏った姿にしつつ、周囲に凍気を放射する。
 放たれた凍気を受けた無人キャバリアたちは、その機体を白く凍りつかせ、その動きを止めていく。
「俺の拳を受けやがれッ!」
 『貪狼の神骸』の拳に打ち砕かれ、凍りついた無人キャバリアたちは粉々に砕け散っていった。

「よし、私も負けていられないな! いくぞ、鉄拳、ロケットパーンチ!」
 『ダイオウガ』は右腕の拳を高速回転させると、大きく右手を振りかぶり、左足で地面を踏み込むと同時にそれを勢いよく突き出した。
 肘から先で切り離された『ダイオウガ』の右腕が、無人キャバリアの群れを突き進んでいき――。
「爆発!」
 『ダイオウガ』の言葉と同時に、無人キャバリアたちが爆発四散していったのだった。
 自動的に戻ってきた右腕を接続しなおしつつ、『ダイオウガ』は左手のドリル『オウガ・ドリルアーム』を回転させる。
「まだまだぁ! 必殺! オウガ・ドリル・ブレイクッ!!」
 『ダイオウガ』のドリルが無人キャバリアたちを貫いていった。

「さすが、二人とも派手だね。アミシア、こっちも歌仙を出すよ」
 『スヴァスティカ』に乗る錫華は、サポートAIに指示を出しつつ、キャバリア用の片刃の実体剣『歌仙』を抜く。
 錫華は歌仙を構えた『スヴァスティカ』を跳躍させ敵陣に飛び込むと、風のように敵陣を駆け抜けた。
 無人キャバリア部隊がライフルやミサイルを撃つ間も与えずに『スヴァスティカ』は歌仙を振るう。
 一般的なキャバリアが使う実体剣よりも細身で、刃も片側にしか付いていない歌仙は、その軽さを活かして無人キャバリアのカメラにも止まらぬ速さで敵を斬り裂く。
 『スヴァスティカ』が再度跳躍し、無人キャバリアたちから距離を取った時には、『スヴァスティカ』を射撃できる位置にいる敵キャバリアはすでに全滅していたのだった。


 ――だが、無限の再生能力を持つオブリビオンマシンの端末たる無人キャバリアたちは、この程度では全滅しない。
 倒れた端から機体が自己再生し、再び『セラフィム・リッパー』の周囲の守りを固めていく。

「くうっ、これでは埒が開かん!」
「雑魚の癖にしつけェ奴らだなァ!」
「アミシアの予測でも、突破する穴はなさそうかな」
 無人キャバリアの群れに包囲された3人は、決死の覚悟を決めようとし――。

 そこで、周囲に不気味な霧が立ち込め始めたことに気がついた。

「なっ、あ、あれはっ!?」
 『セラフィム・リッパー』のコックピットのモニターに映る影に、ネティシア姫が驚愕の声をあげた。
 霧を突き破って姿を現したのは、巨大な空中戦艦なのだった。


 山岳地帯上空を、『セラフィム・リッパー』に向かって一隻の空中戦艦が航行していた。
 その艦長席に座り前方を見つめるのは、左目にマスクを付けた男性、ビッグ・サン(永遠を求める研究者・f06449)だ。傍らには人形を抱いた少女が無言で立っている。
「ふむ、キャバリアをゾンビキャバリアにしてみましたが、なかなか良い感じでしたね」
 ビッグは笑みを浮かべると、手に持った魔力増幅装置『賢者の石』に目を落とす。
 淡い光を放つ賢者の石は、ビッグの魔力を増幅し【幽霊母艦】(ゴーストマザーシップ)で、この空中戦艦の召喚を可能にさせたのだ。

 不気味な霧を纏いながら飛行する空中戦艦の甲板には、大量のキャバリア部隊が整列し、出撃命令が出るのを今か今かと待ち望んでいた。

「キャバリアの操縦はできませんが、操縦をできる人間――いえ、人間の幽霊ならいくらでも呼び出せますよ。なんせ100年も戦争しているような世界ですからね」
 艦橋からキャバリア部隊――死霊術士であるビッグが蘇らせたパイロットの幽霊が操縦している――を見下ろし、不老不死の研究をおこなうネクロマンサーは邪悪な笑みを浮かべ、出撃命令を下した。


「『白い彗星』、いっきまーす!」
「『赤い流星』、出る!」
 ビッグの空中戦艦から続々とキャバリア部隊が出撃していく。
 その数は、『セラフィム・リッパー』が生み出した無人キャバリア部隊にも引けをとらない。
「エゴだよ、それはっ!」
「当たらなければどうということはない」
 ビッグの幽霊キャバリア部隊たちが、『セラフィム・リッパー』の無人キャバリア部隊に攻撃を仕掛けていく。
 黒い3機のホバー式キャバリアが連携攻撃をおこない、青いキャバリアがムチのようなロッドで敵を叩く。
 それらの攻撃によって、次々と爆散していく無人キャバリアたち。

『グァァ!?』
 一方的に押される無人キャバリア部隊の様子を見て『セラフィム・リッパー』が困惑の声を上げる。

 だが、空中戦艦から戦況を見守るビッグには、予想できていた戦果であった。
「ええ、敵の無人キャバリアは、いわば私が実験で作ったゾンビキャバリアのようなもの。動きは遅く、命令されたことしかこなせません」
 ビックは口元に冷笑を浮かべながら、無人キャバリア部隊を観察する。
 その機体は、自己増殖によって数は多く、また自己修復による回復能力、自己進化による強化能力を備えている。
 ――だが、それだけだ。

「私のキャバリア部隊には、この闘争に明け暮れた世界で戦ってきたエースパイロットたちの幽霊が乗っています。――そのエースたちが、オブリビオンマシンはともかくとして、無人キャバリアごときに遅れを取るとでも?」

 戦場の各所で、無人キャバリアの爆発が起こる。


『ガアアアアッ!』
 無人キャバリア部隊が押されているのを見た『セラフィム・リッパー』が、苛立ちの声を上げつつ動いた。
 その背中に伸びた悪魔のもののような闇色の翼に黒い光が集まっていく。
 それこそ、本性を現した『セラフィム・リッパー』が悪魔の翼――フォールンウィングから放とうとしているプラズマの光だ。
 黒い光を見たネティシア姫が、コックピットに拘束されたまま、叫び声を上げる。
「皆さんっ、避けてくださいっ!」

 ――直後。
 『セラフィム・リッパー』から放たれた黒い超広範囲プラズマビームが、戦場を薙ぎ払い――。
 無人キャバリア部隊ごと、ビッグの幽霊キャバリアたちを飲み込んでいった。

「まだだ、たかがメインカメラをやられただけだ!」
「ええい、神聖王国のキャバリアは化け物か」
 かろうじて、超広範囲プラズマビームを回避できた一部の幽霊キャバリア機体。
 だが、それも頭部を破壊されたり、頭部コックピットだけで脱出したりと、満身創痍だった。

「第三艦橋に直撃しましたか……」
 小さな爆発を繰り返す空中戦艦の艦長席でビックが呟く。

 だが、壊滅的被害を受けたのは、ビッグの幽霊キャバリア部隊だけではない。
 『セラフィム・リッパー』の無人キャバリア部隊もまた、主人の超広範囲プラズマビームによってほぼ壊滅していたのだった。

「どうやら、私の役目はここまでのようですね……。みなさん、後はお任せしましたよ」
 墜落する空中戦艦の艦橋から戦場を見渡し、ビッグはそこに立つ3機のキャバリアを見つめた。


 『セラフィム・リッパー』の超広範囲プラズマビームが放たれた瞬間。
 戦場にいた『ダイオウガ』、『スヴァスティカ』、『貪狼の神骸』の3機は、とっさに協力して防御行動に移っていた。

「ぬおおおっ、ブレイヴチャージ! 必殺、ダイ・ブラスター・インフェルノ!」
 『ダイオウガ』は不可能を可能に変えるエネルギーを全開にし、胸部のライオンの口から、燃素機関直結の大口径ビームを放った。
 『ダイオウガ』のダイ・ブラスター・インフェルノが、迫りくるプラズマビームと正面から衝突した。

「ちィッ! その攻撃も凍てつかせてやらァ!」
 クロトは『貪狼の神骸』からあらゆるものを凍結させる波動を解き放つ。
 それは『ダイオウガ』の一撃と一体化して、プラズマビームの勢いを弱めることに成功する。

 ――だが、それだけではまだ、『セラフィム・リッパー』のプラズマビームを止めるには出力が足りない。

「しょうがない、アミシア、あれを使うよ! ――機密なのは分かってるけど、それどころじゃないしねっ!」
 錫華が『スヴァスティカ』の持つ片刃の実体剣・歌仙に、『エネルギーソード・ユニット』を装着した。
 エネルギーソードユニットを接続され、そこからエネルギー供給を受けた歌仙の刀身が、黄金色のエネルギーの光を放つ。これこそ【E.O.Dソード】(エネルギー・オーバー・ドライブ・ソード)。錫華の秘密兵器だ。
「この剣に斬れないものはないよ」
 『スヴァスティカ』は、黄金の光を纏ったエネルギーソードを漆黒のプラズマビームに向かって振り下ろし――。

 ――津波のように押し寄せる超広範囲プラズマビームを、海を割るかのように斬り裂いたのだった。


『ガアアッ!?』
 超広範囲プラズマビームで戦場を薙ぎ払ったにも関わらず、無事に立つ3機のキャバリアを見て、『セラフィム・リッパー』が困惑の声をあげ――。
「みなさんっ!」
 囚われのネティシア姫が喜びの声を上げた。

「姫! よくぞ闇に飲まれた心から目覚めた! 皆が君を呼んでいる! 今から助けに向かおう!」
「はいっ、待っています、勇者様!」
 『ダイオウガ』の呼びかけに、ネティシア姫が大きな声で応え。

「ネティシア姫、あなたも最後まで戦って。誰も諦めてなんかないからね」
「ええ、絶対に諦めませんっ!」
 錫華の声に、ネティシア姫は強く頷き。

「確かに、『象徴』ってのは拠り所かもしれねェが。だからといって何もしてくれなかった訳じゃないだろう? お前がそれに乗ったのは『応えよう』としたからだ。……違うか?」
「はい。私は民の期待に応えたいのですっ!」
 クロトの言葉に、ネティシア姫は自身の願いを口にする。


「よぉし! なら話は簡単だ! その機体、俺が動けなくしてやる! ――安心しろ、俺が潰すのはその機体だけだ」
 『セラフィム・リッパー』に向かって、クロト――『貪狼の神骸』は、『破軍の執行者』による凍てつく波動を解き放った。
『グアアアアアァァァッ!!』
 氷属性の機械魔術によって、『セラフィム・リッパー』が苦悶の声を上げながら、悪魔のような機体を白く凍てつかせていく。
 つま先から頭まで全身を凍りつかされては、いかに無限の自己修復能力を持つ悪魔のキャバリアでも動くことはできない。

「あと一撃なら、エネルギーはもつかな? アミシア、いくよっ!」
 錫華の駆る『スヴァスティカ』が、凍りついた『セラフィム・リッパー』に向かってエネルギーソードを振るい、そのコックピットハッチを斬り裂き――。
「姫様、ちょっと乱暴だけど、許してね」
 コックピット内の有機ケーブルをキャバリアの手で引きちぎり、囚われたネティシア姫を救出する。
 そして、『セラフィム・リッパー』から大きく距離を取ると、仲間に伝えた。
「ネティシア姫は、無事に救出したよ」

『ガアアアッ!』
 ――だが、凍りついていた『セラフィム・リッパー』は、雄叫びを上げながら、その拘束から抜け出した。
 そしてネティシア姫を取り戻そうと、断罪の剣を構える。

「うむっ、ならば後は私の役目だな!」
 『ダイオウガ』が、無人となった『セラフィム・リッパー』の前に立つ。
 その右腕の先が激しく回転し、断罪の剣を構えた悪魔のキャバリアへ向かって撃ち出された。

 ――ギィイン。

 金属質の音を響かせ、断罪の剣に弾き飛ばされたロケットパンチ。
 明後日の方向に飛んでいった鉄拳を無視して『セラフィム・リッパー』は断罪の剣を振りかぶり――。

「戦闘中に油断はしないことだ!」
『ガアアァッ!?』
 Uターンしてきたロケットパンチを背後から受け、『セラフィム・リッパー』が驚愕の声を上げた。
 そのまま、鉄拳は『セラフィム・リッパー』を『ダイオウガ』の元まで引き寄せてくる。
 そこには、左腕のドリルを回転させて『ダイオウガ』が待ち受けていた。
「いくぞっ! ギガ・オウガ・ドリルアーム・ブレイクッ!」
 『ダイオウガ』の左腕のオウガ・ドリルアームが巨大化し、『セラフィム・リッパー』の断罪の剣と正面から衝突し、それを粉々に打ち砕いた。
「断罪されるのはお前だと知れっ!」
 巨大なドリルが『セラフィム・リッパー』に深々と突き刺さる。

 ――だが、胴体に巨大な穴が空きつつも、『セラフィム・リッパー』は強力な自己修復能力で、即座にその穴を埋め始めた。
 さらに、『ダイオウガ』のボディにまでナノマシンを侵食させ始める。

「ちぃッ! 早く助けねェと!」
「エネルギーソード……あと一撃、いける……?」
 クロトと錫華が慌てて『ダイオウガ』を助けようとするが、それを押し留めたのは、他ならぬ『ダイオウガ』自身だった。
 『セラフィム・リッパー』によって侵食されつつあるボディを見つめ、『ダイオウガ』は呟く。
「私の身体はもうダメだ。――それに、ここで完全にこいつを消滅させねば、また復活してくることだろう」
「旦那、何を……?」
「この反応……内部エネルギー機関が暴走して……!? いえ、暴走させているの!?」
 『ダイオウガ』のフロギストンジェネレーターから激しいエネルギーが溢れ出しているのを見て、クロトと錫華は絶句する。
 それは、『ダイオウガ』の最後の手段。自身のエネルギー機関を暴走させることで敵を巻き込む【自爆装置】だった。

「姫を……頼んだぞ……」

 ――その言葉とともにフロギストンジェネレーターを暴走させた『ダイオウガ』が大爆発を起こした。
 山岳地帯に、激しい光の柱が立ち上る。
 その爆炎は、『ダイオウガ』に密着していた『セラフィム・リッパー』を巻き込み、無敵の自己再生能力でも回復できないよう、ナノマシン一つに至るまで燃やし尽くしたのだった。

「ゆ、勇者様ーっ!」
 爆炎に消えた『ダイオウガ』を見て、ネティシア姫が涙を流しながら絶叫し。

「うむ、呼んだか、姫よ?」
 ――自爆の直前、ロボットヘッドの本体だけ脱出したダイが、ネティシア姫に声をかけたのだった。

●エピローグ
「皆様。この度はお助けいただき、どうもありがとうございました」
 神聖王国グランティアの王城。
 その謁見の間で、猟兵たちはネティシア姫からの感謝の言葉を受けていた。
「皆様がいなかったら、今ごろ私は、自分の手で国を炎に包んでいたことでしょう」
 その悲劇を回避できたのも、猟兵たちの尽力のおかげだ。
 幸い、王都の建物に多少の被害があった程度で、人的な被害はないとのことだ。

「それにしても、まさか、神聖機グランティアがオブリビオンマシンにすり替えられていたとは……」
 事件後の捜索で、本物の神聖機グランティアは、王宮格納庫の奥深くから発見された。
 だが、それをおこなった犯人は見つかっていない。

 ――どうやら、この国には、まだ陰謀が隠されているようだ。

「皆様から教えられたことを胸に、私は私としてできることを、ゆっくりとやっていこうと思います」
 ネティシア姫は、そういうと、猟兵たちに深々と頭を下げ、礼を言ったのだった。

 再びこの国で事件が起きるまでは、しばしの平穏が訪れることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月18日


挿絵イラスト