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スパヰ特急

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #スパヰ甲冑

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●シベリア超特急にて
 ぱち、ぱち、と懐中時計の蓋が何度も開閉する音。チェスボードに視線を落として深く思考する色黒の初老の男が、脳内で戦局の流れを読み取っていく。
 そして、ぱちん、と懐中時計の蓋を閉めて。
「チェックメイト」
 クイーンが移動したチェスボード。顎髭を蓄えた男が、目の前の将校の青年に詰みを突きつける。
 むむ、と将校の青年が腕組みをしながら盤面をじっと見下ろすが、すでにどうすることもできない状況だった。このままゲームを進めても自分が負けてしまうことが分かったのだろう。小さく息を吐くと、目の前の男にぺこりとお辞儀をした。
「完敗でございます。流石は大軍師と呼ばれたお方、非才である私では源一郎殿の策謀を打ち破ることはできません」
「ハハハ、謙遜しないでくれたまえ。ぎりぎりの勝負だった、気を抜けば私が負けていたよ」
 革のアタッシュケースと中折帽、茶褐色のコートを纏めると、その場から立ち上がった。
「それで……つかぬことをお聞き致しますが。源一郎殿、シベリア超特急に、本日はどのようなご用事で?」
「ふふ、何、しがない老人の一人旅といったところだよ」
 青年から遠ざかり、懐中時計を確認する。扉を開けて、別の車両へ移動した。その背中を見つめた後、将校の青年が感嘆混じりの声を漏らす。
「よもや、帝都桜學府の有名人と一局交えることができるとは……私は運がいい」
 しかし、青年将校は気付かない。
 帝都桜學府幹部『黒田・源一郎』が、警戒するような視線を向けていたことに。

●暗躍する影
「……グラッジ弾に影朧兵器、そして籠絡ラムプ……無数の影朧兵器を投入する幻朧戦線だけど……皆もそろそろ不思議に思っている頃だと思うわ。彼らの資金はどこから来てるのか、そしてなぜ緻密な行動と作戦を可能にできているのか」
 万象・穹(境界の白鴉・f23857)が、集った猟兵たちにそう言った。
 いくら幻朧戦線といえども、共通した思想に結びつく者たちだけで、緻密なテロ行為が可能とは到底思えない。
「調査を進めて、あることが分かったの。……幻朧戦線には、加担する者がいるみたい。黒い首輪をつけていない、一般市民に紛れた協力者……スパイが」
 白の鴉羽が宙を舞うと、魔法によって映像が投影される。サクラミラージュ、露西亜のシベリアと欧州を横断する鉄道『シベリア超特急』だ。
「……幻朧戦線に資金と情報を提供しているだろう人間について調査が完了しているわ。名前は『黒田・源一郎』、帝都桜學府に所属している幹部の一人よ」
 映像が書き換わると、そこに顎髭を蓄えた色黒の初老の男の姿が投影された。年齢は五十を超えているというのに、肉体は筋骨隆々で、身を包んだ旅の服装でも分かるほどのガタイの良さだった。
「源一郎はシベリア行きのシベリア超特急に乗っているの。……一人旅、って言ってるけど、いくらなんでも怪しすぎるわ」
 ぶわり、と白の鴉羽が中空を舞うと、映像が途切れた。
「皆には、同様にシベリア超特急に乗車してもらって、彼がスパイである証拠を探し出して欲しいの。……だけど、猟兵だとバレないようにお願い。後ろから近づいて攻撃、気絶させる、というのはあまり現実的じゃないわ」
 帝都桜學府幹部の幹部の一人、戦闘においては、猟兵にも負けず劣らずだろう。
 つまり、重要なのは『スパイかどうかを探る者だとバレない』ということ。そして、源一郎に近づき何かしらの探りを入れることでスパイであることの証拠を探し出す。
「帝都桜學府幹部の幹部故に、簡単なユーベルコードを使えるみたい。源一郎に身分を偽って近づく、その手荷物を調べる。色々なやり方があるわ」
 席を外した際に源一郎の手荷物を探ったり、シベリア超特急内の源一郎の部屋を探ったり……そのやり方は猟兵たちに任される。
 鴉羽が宙を舞う。転移を開始した猟兵に、穹は告げた。
「帝都桜學府に所属する人がスパイだなんて考えたくはなかったけど……サクラミラージュの安寧のため、これは必要なことよ。皆、頼んだわ」
 転移先はシベリア超特急の中。源一郎の目的を探り、スパイだった場合は……速やかに捕らえなくてはいけない。


夕陽
 まだ疑わしいという状況ですが、『疑わしきは罰せず』です。
 OPをご覧頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして、すでにお会いしている方はこんにちはこんばんは、夕陽です。
 今回のシナリオはサクラミラージュ、幻朧戦線に加担する人間、スパイを捕らえるシナリオとなっております。

 以下、補足です。

 『黒田・源一郎(くろだ・げんいちろう)』52歳。屈強な肉体に色黒の肌、蓄えた顎髭。かつて『大軍師』と呼ばれていた凄腕の學徒兵だったようですが、既に第一線から身を引いています。
 ユーベルコードは猟兵より劣りますが、『スカイテッパー』と『灰燼拳』が使えるようです。

 第1章 シベリア超特急内にて、『黒田・源一郎』がスパイである証拠を探りましょう。一般客に紛れて源一郎に接触する、目を離している隙に荷物を盗み見る。なにかしらのユーベルコードを使って調査する。その他諸々調査方法はお任せ致します。
 また、シベリア超特急内は食堂車両での超高級料理や、流れゆく風景を楽しむ展望車両などが存在します。まったりと寛いでいる描写をプレイングに入れて頂いても構いません。

 第2章 スパイだと判明した場合、源一郎は逃走します。シベリア超特急は無数の鉄道が並走する巨大な線路になっているので(?)、列車間を飛び越え、別の並走する列車に逃げ込んだりとかなりスタイリッシュに逃走します。猟兵も同様に『活劇的なプレイング』をした場合、プレイングボーナスが発生します。

 第3章 スパヰ甲冑との戦闘です。

 断章更新後にプレイング募集を開始致します。それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 日常 『旅客車に揺られて』

POW   :    食堂車両で何かを頂く

SPD   :    展望車両で景色を眺める

WIZ   :    客席車両でゆったりする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●交錯する思惑
 車両通路を、革靴の音を響かせて歩く源一郎。懐中時計を開けて、時刻を確認する。
「……ふむ」
 小さく唸ると、向かいの車両へ。車両も行き来しているのも謎だが、どうにも落ち着きがない。その様子を、一般人に紛れるようにして猟兵たちが監視していた。
 どうにも行動に一貫性がない。旅と言うからには、窓からの風景を楽しんだり、食堂の料理を堪能したり、幾らでも楽しみ方はあるというのに。
 猟兵たちは行動を開始する。しかし、警戒した方が良いだろう。腐っても帝都桜學府幹部……そしてかつて『大軍師』と呼ばれた學徒兵だ。
神代・凶津
今回のターゲットは『黒田・源一郎』、帝都桜學府の幹部がスパイとは世も末だな。
「・・・まだ疑わしいだけですが、証拠が出しだい確保しないと。」
おうよ、相棒。
ミッション開始だぜッ!

ここは思い切って本人に接触するか。
相棒は『近々、帝都桜學府に所属する事になった新人學徒兵』って設定で話かけよう。
怪しまれないように俺は黙ってるから頼んだぜ、相棒。
「・・・すみません。もしかして『大軍師』の黒田様でいらっしゃいませんか。
こんな所でお会いできるなんて、感激です。」

ある程度情報収集したら怪しまれない内に離れるぜ。
去り際に、式神を付けてな。
「・・・式、召喚【追い雀】」
これで離れても情報収集できるぜ。


【アドリブ歓迎】



「今回のターゲットは『黒田・源一郎』、帝都桜學府の幹部がスパイとは世も末だな」
 鬼を象った仮面がやれやれ、といった声音で囁くように呟いた。外に広がる広大な自然、車両内の雑多な会話の中に紛れるように。
「……まだ疑わしいだけですが、証拠が出しだい確保しないと」
 そんな神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)に、その仮面の依代たる巫女、神代・桜が答えた。
「おうよ、相棒。ミッション開始だぜッ!」
 車両の扉を開けて、ターゲットの背中を見つめる。大きな背中はやはり目立つ。近づいて、すぅ、と息を吸う。
「……すみません。もしかして『大軍師』の黒田様でいらっしゃいませんか」
「ん?おや、君は……」
「やはり……こんな所でお会いできるなんて、感激です」
 普段冷静な桜も、演技のために幾らかの感情を込めて、表情を綻ばせる。桜の言葉を聞いた源一郎が、にこりと微笑んだ。
「どうにも、有名人になりすぎたかな。見たところお嬢さんも旅の途中かね?」
「はい……その、近々、帝都桜學府に所属する事になった新人學徒兵の桜と申します」
「ほう、新人か」
「まさかこのシベリア超特急でお会いできるなんて思っても見なかったです。宜しければ、お話でも……」
「大変申し訳ない、先客がいてね。新人のこれからの夢を聞いておきたいところだが、またの機会にさせてもらおう」
「……そうですか、残念です」
 では、とぺこりとお辞儀をした源一郎の背を見送って、桜が小さく呟いた。
「……式、召喚【追い雀】」
 それは源一郎にも聞こえない小さな声だった。翻った鳥型の霊符が微かに発光すると、源一郎を追従する。
「相棒、聞いたか?先客がいるらしいぜ」
「……本当なら、この中で誰かと会う予定なのかも」
「もしくは、俺たちから離れるための口実を作った可能性もあるけどな」
 追従する雀の式神が、五感を共有してその行動を桜へと伝達する。
「……鞄の中に、何か、ある?」
 僅かな隙間からでは、ある程度の情報しか把握することができないが、どうやら『何かの書類』のようだ。
「ま、他の猟兵たちにも伝達はしておかないとな」
 相棒の言葉にこくり、と頷いて他車両にもいる猟兵へ情報の共有を行う。近くにあった席に座って外の景色を眺めると、シベリアに近づくにつれて、雪が降り始めてきたようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

蛇塚・レモン
イケオジヤッター!(大歓喜

まさか帝都桜學府に内通者がいたなんてね……っ?
なにか事情がありそうだけど……

モガ風の旅行者に変装
そのまま偶然を装って黒田のおじ様とぶつかるよ
「ごめんなさいっ! あの、乗車券をこの辺りで落としてちゃったみたいで……探しているんです。どうしよう……!?」
コミュ力と礼儀作法と誘惑で、男性の心をくすぐってみるよ
一緒に探してほしいと依頼
ある程度探したら、懐から乗車券を“さも見付けた素振りで”取り出す

お礼をしたいと願い出て、おじ様の話し相手に
おじ様の輝かしい戦歴を聞きながら、座席の下にミニ蛇神様を召喚
UCでおじ様を眠りに誘い、熟睡したら手荷物を調べるよっ!

アドリブ台詞&連携◎



(イケオジヤッター!)
 なんて考えているのは、蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)であった。どストライクの様。
 わくわく、と瞳を輝かせるレモンではあるが、ミッションは対象人物が幻朧戦線のスパイであるかどうか確認すること。
「でも、まさか帝都桜學府に内通者がいたなんてね……っ?なにか事情がありそうだけど……」
 帝都桜學府幹部に、嫌疑がかけられるというのは前代未聞だ。モダン風の衣装に身を包んで、レモンが源一郎のいる車両へ赴く。
 しきりに時計を気にしている源一郎の後ろから、どん、と軽くぶつかった。
「あ、ごめんなさいっ!」
「ふむ?お嬢さん、そんなに急いでどうしたんだね?」
「あの、乗車券をこの辺りで落としてちゃったみたいで……探しているんです。どうしよう……!?」
 そわそわ、と視線を動かして。肩を上下させて、さも今までずっと落とした乗車券を探していた、と対象に思わせるようにだ。
 その様子に、周囲の乗客からも同情の視線が突き刺さる。オロオロしている少女が可哀相だと思ったのか、源一郎がレモンの頭に手を置いた。
「落ち着きたまえ。うむ、ならば私も乗車券を探すのを手伝おう。どこで落としたか心当たりはないかね?」
「乗る時にはあったんですけど……席について、お手洗いに行って、その後が……」
「よろしい。私はそちらを探してみよう」
 乗車券探しから数分後。源一郎が戻ってくる。こちらにはなかった、と答えた源一郎に、レモンがまた深く謝罪した。
「あ、あの!さっき客席の下に落ちてたのを見つけました!本当にありがとうございます!」
「おや、そうかね。それは良かった」
「是非お礼をさせて下さいっ!よろしければ、お話相手にでも……!」
 別に構わない、と言い切る源一郎に、レモンは食い下がる。その様子に源一郎は折れたようで、近くあった客席に腰を下ろした。
「あの、おじ様はもしかして……」
「おや、お嬢さんにも素性は知られているのか」
 やれやれ、と肩を竦めて。レモンが源一郎の武勇伝を聞こうと目を輝かせていた。そのことに気付いて、源一郎は重い口を開く。
「……そうだな。では、かつての影朧との激戦について語ろうか」
 飽和状態の戦線。その状況下で、源一郎はその類まれなる戦略によって部隊の壊滅を防いだこと。その功績もあって、今の地位に立っていること。そうして紡がれていく言葉が弱々しくなっていく。
 頬杖をついて目を閉じた源一郎に、レモンは探りを入れる。
【戦術召喚使役術式・眠れ、この甘美な蛇神の毒にて(タクティカルサモンコード・スリーピング・ヒュドラ)】。白き蛇神とレモンの重複催眠念動波だ。眠りに落ちた源一郎の手荷物を確認しようとするが、荷物は鍵がかけられていて開けられそうにない。
 その次に懐を確認して―――。
「懐中時計……?」
 錆の汚れが目立つ、源一郎がいつも使っているだろう懐中時計だ。開けてみて、はて、とレモンが首をかしげる。

 懐中時計のガラスが、ひび割れている。

 しかし、時計としての機能は失われていないようだ。小さい音を響かせて、秒針が動いていた。
「ん……」
 小さくうめき声をあげた源一郎。すぐに懐中時計を戻して、席に座る。
「おや、眠ってしまったようだ……すまないね、お嬢さん」
「お気になさらずっ……!すみません、あたいのせいで……」
 その後、ぺこりとお辞儀をして源一郎から離れたレモンだったが。
(……何か、意味があるのかなっ?)
 ひび割れた懐中時計。その映像が、脳裏に焼き付いて離れない。

成功 🔵​🔵​🔴​

土斬・戎兵衛
は~、猟兵やオブリビオンが列車と絡むとね、大抵危ないことが起こるから嫌だよ
スパヰのおじちゃんだけ早々に捕らえて、あとはその報酬でシベリア旅行に行きたいなぁ
ペリメニとか食べたい

一般人に【変装】して座席にかけておじちゃんが通りがかるのを待つ
おじちゃんが通り過ぎたらUCを使って背後から【早業】で鞄の中を覗き見よう
超視力特化のUCを使えば、鞄が空いてなくても中身くらい分かるハズさ
おっと、瞳の光は抑えないと、気づかれてしまうかな?

UCを使ったら反動もあるし、そのまま座席で寝てしまおう
車窓からの穏やかな風に揺られてうつらうつらと……、えっ、シベリア行きだし窓開けてたら寒い? もしかして

絡み・アドリブ歓迎



窓の外に広がる広大な自然、遥か遠方まで続くかのような平地を走り抜ける鉄道に揺られて、着物を着た猟兵が、はぁと息を吐く。
「猟兵やオブリビオンが列車と絡むとね、大抵危ないことが起こるから嫌だよ」
 窓から吹き込む空気は少し冷たい。ぽつり、と呟かれた言葉は独り言となって客席車両内の喧騒に掻き消された。
 土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)が周囲を見渡せば、シベリアへいく旅行客の姿が見受けられる。通路を行き来する子どもたちや、それを叱りつける母親、小説を読み耽る者や、窓の景色を指差して笑う者、様々である。
「スパヰのおじちゃんだけ早々に捕らえて、あとはその報酬でシベリア旅行に行きたいなぁ。ペリメニとか食べたい」
 厳密には、まだスパヰだと決まった訳ではないのだが。オレンジの瞳を動かして、戎兵衛はその時を待つ。
 がらり、と客席車両の扉が開いた。ちらり、と視線をそちらへやると、調査対象の源一郎が、通路を横切ろうと歩みを進めている。
 子供を通り抜けて、入れ違うように。謝る母親に会釈して、大柄な体躯を翻し。
 戎兵衛の横を通り過ぎようとした、その瞬間。猟兵のユーベルコードが発動する。
 オレンジの瞳が燦々と光り輝いた。ぶわり、と曙光の如き輝きを放つ双眸を、源一郎の荷物へと向ける。
 【みおむその瞳:過重輪】。万事を見切る瞳術によって、ミレナリィドールとしての限界を突破する。
 アタッシュケースは鍵がかけられており、通常ならばその中身を確認することは不可能だ。しかし、戎兵衛のユーベルコードをもってすれば、まるでレントゲン写真のように鮮明に視て取れる。
(中身は書類の束……確かに旅行にしちゃ妙なもの持ってるねぇ)
 着替えなどは、自室に置いたまま、ということだろうか。しかし、瞳の光を抑えるために目を細めた戎兵衛が、その書類に書かれた内容を見ておや、と首を傾げる。
「んー?なんだ、暗号文か?」
 適当な文字の羅列が書き連ねられている、妙な書類だった。
と、そこで。

「……む?」

 ユーベルコードの力の残滓を感じたのか、源一郎が振り返る。そこにいたのは、客席に頬杖をついて眠りこけている戎兵衛の姿だ。
 不審の視線は、気のせいかと呟かれた後に消失する。
 眠りに落ちていく意識の中、戎兵衛が思考の底で。
(……あれ。シベリア行きだし窓開けてたら寒い? もしかして)
 その後、子連れの夫婦が窓を閉めたようだ。起きたら顔が霜焼けに、なんてことにはならなかった。……ミレナリィドールのため、実際はそんなことにはならないが。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「憧れの列車に乗って外国巡り…素敵ですわね」
大型トランクに栞を挟んだシベリア超特急に関する小説を山のように詰めて参加

「此処で探偵が犯人を取り押さえて…はあ」
「パイプを燻らせた場所は…あら?」
「この車両でパイを…あの、このメニューはあります?」
所謂聖地巡礼状態ではしゃぎ回る
人に聞かれたらその小説を見せてどんなにその探偵や描写が格好良かったか力説

「今は本が貸本屋ではなく自分で購入して楽しめますでしょう?ですから是非自分の目で見比べながら確かめたかったんです…貴方も読まれます?」

食堂車でも最初は大騒ぎしつつ味に感服したように見せ静かに食事
UCは乗車後すぐ使用
食事中や騒ぎ疲れて転た寝装った時に相手観察



「憧れの列車に乗って外国巡り…素敵ですわね」
 客席車両の通路を、大きなトランクを引いて通る女性の姿があった。婦人帽を被って、周囲の喧騒を聞きながらきょろきょろと辺りを見回しているのは、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)。がらがら、とトランクを精一杯引きながら、小説に存在する場所を―――聖地巡礼しながら、キラキラと目を輝かせている。
「此処で探偵が犯人を取り押さえて…はあ」
 なんだなんだ、と周囲の客たちが怪訝な表情。
「パイプを燻らせた場所は…あら?」
 ここかな、と覗き込む。しかし、お目当ての場所ではないようだ。がたがた、とトランクを引きずって次の場所へ。
 食堂車両では、上流階級の人々が優雅に食事をしていた。またきらきらと表情を輝かせて、食事を提供しているシェフへと顔を向ける。
「この車両でパイを…あの、このメニューはあります?」
 あるにはあるが、と答えたシェフに、桜花がおおはしゃぎだ。食い気味にシェフへと顔を近づかせて、是非!と。
「お嬢さん、もしかして小説の場所を巡ってるのかい?」
「ええ、ええ!!こんなこと滅多にありませんもの!ここはかの有名な―――」
 怒涛のマシンガントーク。シェフを唸るほどの喋る暇も与えない言葉の応酬であった。
 と、そこで。
「お嬢さん、失礼させてもらうよ」
 後ろから声がかかった。見れば、調査対象の源一郎が、丁度食事を取ろうと食堂車両に来たようだ。
 おや、と小説を片手に必死に喋っている桜花の姿を見て、にこりと笑った。
「小説が好きなのかね?」
「ええ!今は本が貸本屋ではなく自分で購入して楽しめますでしょう?ですから是非自分の目で見比べながら確かめたかったんです…貴方も読まれます?」
「ああ……いや、そうだな」
 差し出された小説に目を落として、源一郎が呟く。
「あれも、この小説が好きだったか……」
 ぼそり、と呟かれた言葉を、桜花は聞き逃さない。
「あれ、と言いますのは?」
「ん、いや、ね。私の旧友がこの小説が好きなものでね。……どうだい、お嬢さん。この老いぼれと一緒に食事というのは」
「まあ!小説のお話もできますわ!是非ご一緒させて下さい!」
 そうか、と再びにこりと笑った源一郎が、桜花と豪華料理を堪能する。だが、これは想定済み。桜花のユーベルコードはすでに発動している。
(おいで蜜蜂、花の蜜をあげましょう。私の代わりに追い駆けて、全てを見て聞いてくれるなら)
 【蜜蜂の召喚】。五感を共有し、怪しい場所を調査し始めた蜜蜂の視界に入ったのは、座席にかけられたロングコートのポケットの中の写真だった。
(……なんでしょう。戦争か何かの写真でしょうか?)
 源一郎ともう一人、満面の笑みを浮かべる學徒兵の男性が写っている。

 ―――あれも、この小説が好きだったか。

 先程呟いた源一郎の言葉。その写真。何か繋がるような、そんな予感が桜花の脳裏を過ぎったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アズサ・シュヴァルツァー
(アドリブ、マスタリング歓迎)

_

…迷子を装う
お偉い方の身なりを整えられた、やんちゃな子どもを

「……わっ!」

車内を走って、事故を装ってターゲットにぶつかりに。
その際彼が手荷物をぶちまける様狙う
「…ごめんなさい、」
慌てて中身を拾いつつ入っていた物を確認・記憶。
持っていた本の種類やタイトル、栞が挟んであった凡その頁数までも瞬時に確認
ペンの種類や、他小物類も確りと覚えておく
特に疑わしいと思ったもの…若しくはそのまま子どものフリに合う様珍しいものを拾い上げて無垢に彼を見上げる
とってもキレイですね、とか。当たり障りのない子どもらしいことを言っておく
その際に彼の表情に変化はなかったか、子どもの仮面の裏で観察



「……さて、と」
 客席車両を通り過ぎるように移動する源一郎。きょろきょろと辺りを見回しているのは、客たちの喧騒に戸惑っているのか、あるいは、誰かを探しているのか。
 別車両へ移動しようとしたところに、それは突然訪れる。

「……わっ!」
「おっと」

 どん!と源一郎の持っていたアタッシュケースが中空を微かに飛んだ。そのまま床に転がると……鍵の調子が悪かったのか、中に入っていた書類がばら撒かれてしまった。
「…ごめんなさい、」
「いや、坊やの方こそ怪我はないかね?」
 大柄な自分にぶつかって、逆に目の前の子供が怪我をしたと思ったのだろう。書類を片付けもせずに、アズサ・シュヴァルツァー(影月・f24293)の肩や腰についてしまった汚れをぱんぱん、と払っている。
「あ、そ、そんなことより、おじさんの荷物……」
「ああ、すまないね」
 わたわた、と散らばった書類を集めて源一郎に手渡す―――その瞬間、アズサの頭脳が閃く。
 全ての書類の内容を把握し、インプットする。通常ならば成すことのできない、直観像記憶に似た記憶力。
 と、そこで。源一郎が持っていた懐中時計もまた床に落ちてしまったことに気付く。
「……これ、とってもキレイですね……!」
「ふふ、ありがとう。ともだちに貰った大事なものなんだ。車両を駆け回っているところを見るに、探検かい?」
 懐中時計を受け取って、源一郎がそう問う。
「あ、そうなんだっ!今、後ろがどうなってるのか見ようとしたところなんだけど……」
 しょんぼり、と肩を落とす。アズサの演技は完璧だった。大軍師と呼ばれた源一郎でさえも騙されるほどに。
「おかーさんとおとーさんがおこっちゃうから……そろそろ戻るね。おじさん、ほんとうにごめんなさい」
「気にしないでくれたまえよ。君の両親も心配しているだろう」
 優しく微笑む源一郎に背を向けて、別の車両へと駆け出したアズサは、別の車両に移動して、ふぅ、とため息をつく。
(懐中時計の話をする時、瞳の奥に哀しさがあるようですね)
 それとは別に、書類の内容は全く理解できない文字列で構成されていた。あの書類は、一体。
 くるり、と振り返って、扉のガラス越しに見える源一郎の背を見つめる。
 その背中は……どこか寂しそうだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

茜崎・トヲル
え、つよじゃん。つよつよじゃん。軍師ってだけでも強いのに、大がつくってなにごと?
ぜーったいかてねーやつじゃん。おれ頭よくねーし。頭いいひと連れてきたらよかったなあ。
まあいーや。できることをね、しないといけないから。
隠れ蓑かぶってー、あとつけてー……ってやってもだめだな。きっと気配とかでバレるよ。おれしってるんだ。あーいうひとは視線に敏感なんだよ。うしろめたいことしてるひとはね、そーなるんだ。ふふ。
隠れ蓑かぶって通路側のイスにすわって、となり通るときに荷物をサイバーアイで透視して偵察!
これなら本人みなくていいし、気配だけついてくるってことにもなんないだろ? おれにしては頭いいとおもう。自画自賛!



雪の降る絶景を眺めながら、真っ白な服の襟の奥、その口元を綻ばせているのは……
「え、つよじゃん」
 本音出た。
 茜崎・トヲル(白雉・f18631)が、窓の外に降りしきる雪の数をじっと数えている。1、2、3―――。
「つよつよじゃん。軍師ってだけでも強いのに、大がつくってなにごと?」
 素数を数えるようなアレであった。正直、勝ち目無くね?みたいな雰囲気ダダ漏れではある。
「ぜーったいかてねーやつじゃん。おれ頭よくねーし。頭いいひと連れてきたらよかったなあ」
 簡単な謀略は見抜かれてしまうかもしれない。とはいえ。とはいえである。
「まあいーや。できることをね、しないといけないから」
 こう見えても、数々の依頼をこなしてきた猟兵だ。そこら辺は自信持って行けそう。
「そーだなー。隠れ蓑かぶってー、あとつけてー……」
 うーん、とひとしきり唸った後、
「……ってやってもだめだな。きっと気配とかでバレるよ。おれしってるんだ。あーいうひとは視線に敏感なんだよ。うしろめたいことしてるひとはね、そーなるんだ。ふふ」
 それは、トヲルとしてのキマイラの直感か。これまでにこなしてきた依頼からの知恵か。少なくとも、それは真理であった。
 客席車両の後ろから足音。トヲルがそれに気付いて、『天狗の隠れ蓑』を羽織る。着た者の姿を巧みに隠す、神秘の隠れ蓑だ。
 後ろから足音が近づいてくる。座席に座って、しばしの沈黙。

 来た。

 横を通りかかるその一瞬、眼球に埋め込まれた『サイバーアイ』が視界に写った情報を解析、瞬時にそれをトヲルへと出力する。
(おれにしては頭いいとおもう。おー、結構うまくいったぞー)
 視界に映る解析情報を見ると、アタッシュケースの中に存在する書類の暗号文の一時的な解析結果だった。
「えーと……?いろはにほへと……うーん……?」
 文字が並んでいるが、完全な解析までまだ時間がかかるようだ。
「……やっぱり頭いいひと連れてきたらよかったなぁ」
 表情はにこやかなままだが、ちょっとブルーになってるらしい。
 他の猟兵にサイバーアイで解析した情報を流して、トヲルが隠れ蓑を取り外した。外を見れば、雪は更に吹き付けてきている。
「まっしろー。なにも見えない、暇だなー。そーだ、なんかすっごい料理あるんだっけ」
 よーし、と、食堂車両へと移動していった。事態が変化するまでは、高級料理を堪能である。

成功 🔵​🔵​🔴​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

幻朧戦線…それに協力する者…黒田源一郎…
奴がスパイ…諜報員である証拠を掴む為にも…

食堂車両でお茶を飲みつつ
黒田の動向を[目立たずに情報収集]するとしよう
[視力]で行動を細かく観察し人混みでも見失わないように[追跡]しよう

黒田が泊まる車両に着いたら【凄惨解体人間】を用いて
ドロドロに溶け[闇に紛れながら]、部屋や戸の隙間を通り抜け
黒田の部屋に侵入し彼が諜報員であるという証拠を探るとしよう

情報を集めたら他の同行者と情報を共有しよう…

諜報活動とやらは疲れるね…
拷問であれこれ吐かせるほうが簡単だけれど…
食堂車両に戻って何か甘い物を食べようかな…



 ほんの数分前、源一郎が一人の猟兵と食事をしている時だ。そこから少し離れた座席で、出された紅茶を飲みながら外の風景を眺めている猟兵がいた。
 仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は黒い髪を掻き上げて、視線を外の風景から僅かに源一郎へと移す。
(幻朧戦線…それに協力する者…黒田源一郎…奴がスパイ…諜報員である証拠を掴む為にも…)
 会話をしている様子では、スパイである様子を微塵も見せない源一郎ではあるが、他の猟兵から聞いた話では、暗号書のようなものを持っていると聞いている。
「…ご馳走様。美味しかったわ」
 ウェイターにお礼を言った後席を立つ。目指すが源一郎が泊まっている個室。その扉の前に到達すると、周囲を見渡す。現在お昼時であるためか、ほとんどの乗客は食堂車両へと移動しているようだ。
 誰もいないことを確認し、アンナはユーベルコードを発現させる。指先が、脚が、どろりと溶け落ちるように融解していく。【凄惨解体人間】と呼ばれるユーベルコードは、アンナの肉体を赤黒色の血液と細かい肉片と髪の毛の束に変異させるユーベルコードだ。
 全てがどろりと溶け落ちたアンナは、扉の下からするりと侵入してみせると、元の姿に戻って周囲を見渡した。
「新聞記事、読み途中の小説に……あら」
 ベッドの上に置かれている小説を捲ってみると、メモのようなものが挟まっている。覗き込むと、書きなぐったような酷い文だった。

『あの悲劇を忘れてはいけない。だからこそ、私は悪魔になろう』

 続けて書かれていた文に、アンナが眉を顰めた。

『Own sacrifice is the condition of the virtue.』

 ―――『自己犠牲は、美徳の条件である』。それは、有名な哲学者の言葉だった。

 小説とメモを戻してその場を後にするアンナが、顎に手を当てた。
「何かをしようとしているのは確かみたいね…」
 だからといって、先程のメモがスパイの証、とは言えないだろう。ふぅ、と小さく息を吐いて、源一郎の部屋から脱出すると、食堂車両へ続く通路を見つめる。
「諜報活動とやらは疲れるね…拷問であれこれ吐かせるほうが簡単だけれど…」
 再び、面倒くさい、とばかりに小さくため息を吐いた。
「食堂車両に戻って何か甘い物を食べようかな…」
 ともあれ、他の猟兵への連絡は忘れない。グリモア猟兵に対して連絡を取りつつ、アンナは車両内で提供されるチョコレートケーキを堪能することにしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀
【PPP】

大軍師の思惑や思想、背後関係は不明ですが、資金提供が状況を激化させている様ですから。この機会に、証拠を押さえて、その流れを止めましょう。

今も受け渡しのために、何かしらを所持している可能性があります。

【行動】自分は、旅の占い師に扮して、大軍師に接触します。

「落ち着きのない御様子なにか気掛かりな事が御有りか?自分は旅をしながら占術を学ぶ者、これも縁とみます。その憂い払ってみましょう」

媒介道具を取り出すと、UCオトモ楽団を召喚。その怪しく揺らぐ輝きと音色に合わせた緩やかなダンス。媒介道具を通して見えた未来を告げましょう。

「御食事は、食堂車にてイタリア料理パスタや肉料理が良いと出ました」


シャルロット・シフファート
【PPP】
食堂車両での超高級イタリア料理、パスタや肉料理などを食べながら同じく食堂車両で食事をとっている大軍師にUCの魔眼を応用して「スパイとなった起源」を探る。
食事が終わったら大軍師の行き先を見てから学府から取り寄せたポロライドカメラを持って大軍師の部屋か手荷物を魔眼で遠隔から透視して証拠となるべき資料や手記などがあればそれを念写【念動力】でポロライドカメラから写真を現像する。
証拠を揃え終えたら食堂車に戻り、紅茶とザッハトルテケーキを用意してもらって合同班に配ったインカムで各自状況報告を聞いていくわ。
勿論何かあったらすぐに動けるよう準備をしてね。


アリシア・マクリントック
【PPP】
私はターゲットと同じく一人旅を装いましょうか。父から世間を見て回るよう促されてそのための旅の途中、といったような設定で。
このようなところでかの高名な「大軍師」に出会えるなんて何という僥倖!これもなにかの縁です、不躾なお願いとわかってはいますが貴方の武勇伝を直接お聞かせ願えないでしょうか……?
と。自分を慕う者を無下にはしないでしょうし、これで情報は引き出せるはず。「彼の視点からの過去」の話から寝返るきっかけになるようなことがなかったか考えるとします。
雲雀さんの「占い」に興味を示して彼女へのサポートも行います。


天玲寺・夢彩
【PPP】
スパイが帝都桜學府にいただけで驚いたけど…まさかあの黒田さんがなんてショックだよう。

う~ん、夢彩は學徒兵だから髪型が服装までしっかり変装するけど‥直接接触したらバレる可能性が高い気がするし、元大軍師を気づかれないギリギリの距離で尾行・監視しよう。

でもずっと監視してると怪しまれるからシベリア超特急をその度満喫しながら何か怪しい行動や発言を確認したらインカムで仲間に伝えるよ。

食堂車両に行くなら何かあったらすぐさま動けるように、夢彩は食べるのに時間のかからない物でも頼もうかな。

【アドリブ大歓迎】


バニッシュ・インヴィジブル
【PPP】

姿を見られる事はない。
何故なら透明だから。
「(あぁ、厨房からいい匂いが。)」
本来であればスパイの監視等する筈だが、任務そっちのけで厨房入り摘み食いをする。
突如消えていく料理、食材に驚き慌てる職員達を横目に摘みまくる。
ふとターゲットが気になって客間に戻り、見えないことを良い事に財布をスろうとする。
「(誰にも見られないのは時に良い物だなぁ。)」
その過程で何か手掛かりが見付かれば万々歳なのだが。



 ―――車両内で作戦を練る猟兵たちの姿があった。
「大軍師の思惑や思想、背後関係は不明ですが、資金提供が状況を激化させている様ですから。この機会に、証拠を押さえて、その流れを止めましょう」
 インカムで、離れている猟兵たちに連絡するのは、妖狐のシャーマンである天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)だ。オッドアイの双眸が、緊張で微かに揺れている。
「そうね。できれば、気付かれずにいきたいところだけど……」
 その通信に応えるのは、ツインテールの髪を翻すシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)である。現在は別車両で待機中であるが、すでに他の猟兵も準備完了である。
「今も受け渡しのために、何かしらを所持している可能性があります。それを炙り出しましょう」
「……スパイが帝都桜學府にいただけで驚いたけど…まさかあの黒田さんがなんてショックだよう」
 複雑な気分だ、とインカム越しに告げたのは、源一郎と同じく帝都桜學府の學徒兵である天玲寺・夢彩(春の大嵐少女・f22531)だ。彼のことを知っている彼女からすれば、幻朧戦線に加担するような人間ではないと思っていたのだから。
「う~ん、夢彩は學徒兵だから髪型が服装までしっかり変装するけど‥直接接触したらバレる可能性が高い気がする」
「それなら、夢彩さんは源一郎さんの様子をギリギリの距離で尾行して監視して下さい。私たちは、少しアプローチをかけてみようと思います」
 アリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)の凛とした声が、インカムに届けられる。相手は大軍師と呼ばれた男、一筋縄ではいかないだろう。
「じゃあ、私は好き勝手やらせてもらうよ」
 短く言葉を切ったのは、バニッシュ・インヴィジブル(透明な記者・f29280)だった。人間だが、怪奇人間として―――彼は、透明人間だ。

 作戦開始と、全員の声が揃う。

 客席に居座る源一郎が、新聞を広げて何かしらの記事を読んでいるようだが、しきりに周囲を見渡し、集中力がない。そこで声がかかる。
「落ち着きのない御様子なにか気掛かりな事が御有りか?」
 斜め後ろからの声に源一郎が振り返ると、雲雀がにこりと微笑んでいる。おや、と小さく帽子を引き下げて。
「シベリアへの到着が待ちきれなくてね。……その様相、もしや占い師か何かかね?」
「ええ、自分は旅をしながら占術を学ぶ者、これも縁とみます。その憂い払ってみましょう」
 その言葉に、源一郎がにこりと笑った。
「それは有り難い。是非お願いするよ」
 雲雀が媒介道具を取り出して、占術を開始する。ユーベルコードによって喚び出された無数の狐火の『オトモ』たちが、幻惑に誘うような音色を響かせ、緩やかにダンスを踊る。
 ふう、と小さく息を吐いた雲雀が、占いの結果を告げる。
「御食事は、食堂車にてイタリア料理パスタや肉料理が良いと出ました」
「む、まずは運勢を食事から変えてみると良い、ということかな?」
 そのとおりです、と続けた雲雀に、源一郎が快活に笑った。
「ハハハ、結構。それでは、そのようにしてみよう」
「―――あの」
更に、源一郎にかかる声。占い師との会話を盗み聞き“していたように”、アリシアがおずおずと源一郎たちの会話に混ざってくる。
「もしかして……やはり!このようなところでかの高名な「大軍師」に出会えるなんて何という僥倖!」
「やれやれ、有名人は辛いものだ。秘密の一人旅の予定だったのだが、そんなに目立つかな?」
「もちろんです。かの有名な大軍師を見間違えるなど!これもなにかの縁です、不躾なお願いとわかってはいますが貴方の武勇伝を直接お聞かせ願えないでしょうか……?」
 煌めくアリシアの碧眼に負けたのか、肩を竦めるようにして源一郎が頷く。
「仕方ない、それでは先程料理を堪能してしまったのだが……食堂車両に向かうとしようか、お嬢さん方」

 食堂車両に向かう間、アリシアが源一郎へ語りかける。
「源一郎様は、どうして一人旅を?」
 そんな他愛のない会話。その質問に、源一郎は苦笑した。
「なに、友がかつてこの鉄道に乗っていたのでね。思い出を振り返ろうとしているのさ」
「友、というのは……」
 付き従うアリシアの問いに、うむ、と懐かしむように顎髭を投げる。
「かつて影朧の大群が帝都を蹂躙したことがあってね。死地の中の死地、私と共に戦った男がいた。その男の足跡を辿ろうとしたんだ」
 後ろに控えていた雲雀が、口を開く。
「……その方は、今どこに?」
 源一郎は無言になると、懐に持っていた懐中時計を取り出した。
「その戦いで、殉じてね。これはその形見だ」
 酷くくすんでいる懐中時計を取り出して、遠い過去を思い出すかのように、源一郎は語る。
 食堂に到達すると、源一郎たちが空席に腰を下ろす。占い師である雲雀の言葉の通りに、料理を注文するその離れた場所で、シャルロットはその様子を【始まりを観る起源憑龍の魔眼(オリジントラストレイト・バロールゲイザー)】で見つめていた。

万物万象の起源を知る神秘の魔眼。それが、源一郎を、アタッシュケースを、そして―――懐中時計を射抜く。
 その瞬間だ。
 源一郎の過去が迸り、シャルロットの脳内に無数の情報を提示した。

―――帝都の平和のために、死んでくれ、■■。……このような命令しかできない私を許してくれ……。

―――大軍師。『大軍師』……だと?戦いを……死地に至る戦士の姿も知らない愚民共が。

―――なぜ私は称賛され、■■は弱者だと否定される?あり得ない。あり得ない!私の友は、お前たちを護るために戦ったのだ。護るために散ったのだ。それを。それを―――!!

―――貴様らにも、混乱と混沌の渦中、戦の全容を知ってもらおう。大正を終わらせる幾多の血と鉄の雨。貴様らが無能だと蔑んだ■■の痛みと嘆きを知れ。

 轟!と意識が引き戻され、シャルロットは痛みに震える双眼を押さえ込む。

「……これは、予想以上ね」

 そこで、突然の事態が起こった。突然、源一郎が床に置いていたアタッシュケースが“飛んだのだ”。
 唖然とする源一郎が、その様子をただ椅子に座って眺めることしかできない。
 それを成しているのはパニッシュだ。
(誰にも見られないのは時に良い物だなぁ。だけど……これはやっぱり気になるよな)
 鍵が破砕しアタッシュケースの中身が散らばる。無数の書類が飛び交って―――それを見た夢彩が飛び出してくる。
「これは……まさか……!」
 突然現れたピンク色の髪の學徒兵。その様子を見た源一郎は、全てを悟ったようだ。
「黒田さん……この資料……帝都の機密情報である秘匿回線用の暗号化文書だよ……!どうしてこんなものを……!」
「……やれやれ。成程、私はいつの間にか、蜘蛛の巣に絡め取られていたということか」
 帽子を引き下げて、口元を綻ばせる。逃すまいと集ってきた猟兵たちに、源一郎は告げる。
「そうとも、私は幻朧戦線に資金と……帝都の機密情報を横流ししているスパイでね。よもや、超弩級戦力の君達がこんなにも早く私に目をつけるとは思ってもみなかったよ」
「……アンタ、一体過去に何があったのよ……」
 その過去を垣間見たシャルロットが、目の前の男にそう問いた。ふっ、と笑った源一郎は、手元にあった“その男”の形見である懐中時計を突きつける。

「絶望だよ、お嬢さん」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『乗り換え禁止ライド』

POW   :    勢いに任せて追いかける

SPD   :    技術を利用して追いかける

WIZ   :    逃げ道を予測して先回りする

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「昔話をしよう」
 そう静かに切り出した源一郎は、取り囲む猟兵たちを見て不敵に微笑む。
「かつて、帝都に無数の影朧たちが押し寄せ、壊滅的な被害を出た。私と、私の友は影朧を押し止めるべく戦った。だが、敵の戦力は膨大……部隊を逃がすために、私は、彼に命令しなければならなかった。『部隊のために……帝都のために死んでくれ』と」
 ふぅ、と小さく息を吐いて。
「そうして私たちは生き延びた。影朧に占領された区域は、後に部隊を増強させたことで奪還できたが……友への評価は捻じ曲げられた。無数の影朧は何者かの手によって引き起こされた事件だとマスコミは口々に言い合い、そして愚かにも情報操作を行った。戦いで死んだかの男こそ、この事件を引き起こした張本人であると。大した実力もない學徒兵による愚かな強行だと」
 ぎり、と源一郎が拳を握りしめる。その無念は……計り知れない。
「私はそれは間違いだと何度も言い続けた。なのに、愚民どもはツバを吐き叫び散らした。『この襲撃で散った私の家族を返せ、愛するものを返せ』と」
 戦いの地獄は、その場所のみではなく、帝都全体へと広がったのだと。
「そうして、友の評価が最低にまで落ち込んだのに対して、私は『部隊を存続させた偉大なる學徒兵』―――大軍師、だと言われたのだ」
 源一郎が、拳を振りかざして車両の壁に突きつける。ユーベルコード【灰燼拳】によって車両にどデカイ風穴が開く。吹きすさぶ烈風が源一郎のコートを揺らし、吹き込む雪が猟兵たちの視界を覆う。
「……これまでにしよう、猟兵たち。私はまだ捕まるわけにはいかないのでね。あの愚かな民衆共に―――戦いによる本当の地獄を見せつけるまで、絶対に」
 猟兵たちが、はっ、と目を見開く。並走してきた列車へと、源一郎が飛び出したのだ。
【スカイテッパー】によって向かい側の車両へと着地した源一郎が、帽子を押さえて踵を返す。
「さらばだ、猟兵。大正の世を終わらせる血と鉄の雨、その時にまたお会いしよう」
茜崎・トヲル
かなしいなあ。いいひとがバカにされたんだ。
おこったいいひとが悪いことをしている。すごくかなしい。
いっつもこうだ。いいひとがワリを食う。おれがぜんぶ変わってあげられたらいいのにな。
追いかけるよ。二足歩行だと追いかけにくいかな。じゃあ指を鉤爪にして、四足で追いかけよう。列車ってひと乗ってるんでしょ? じゃーあんまムチャできないかなあ。
外を逃げるなら空中を蹴っておっかける。列車の中に逃げるなら小さくなって追っかける。
ひとの居ない列車に逃げるなら……車両の横をハンマーで殴って、車両ごとぶっ飛ばしてつかまえる。
おれ、あんたの痛みとか苦しみとか、わかんねえから。
つかまえるね。おれをたくさん嫌っていいよ。


土斬・戎兵衛
目が覚めてみたらおじちゃんが窓の外をぴょんつくしてるよ、元気だなぁ……
それでは拙者も、参るでござる

【早業】で硬貨を射ち放ちながら追いかけよう
瞳はだいぶ休めたが、まだ全快とは言い難い
通常の視力強化UCで列車流れを掴んでこちらも乗り換え飛び回り、源一郎殿の動きを【見切り】て距離を詰める

人斬り(せっしゃ)に言わせれば、地獄などこの身一つで作れば良いものを、わざわざスパヰ活動など持って回った真似をする
本人は受け入れずとも、軍師の呼ばれも強ち間違いではないようだ

接近したら源一郎殿の足元にスライム物質Xの缶を放る
この物質は摩擦係数を奪う
足を屋根から落として、ぶらり途中下車してみるか?

絡み・アドリブ歓迎


神代・凶津
「・・・そんな事が。」
シャキっとしろ、相棒ッ!
大軍師のおっさんの話を聞いて思うところがあるだろうが考えるのは後だッ!
おっさんを追いかけるぞッ!

おっさんの乗り換えた列車にタイミングを見切って俺達も飛び移るぜ。
幸い、おっさんに【追い雀】がまだ付いている。
おっさんの動きを情報収集して逃げ道を先回りしてやるぜ。
おっさんが列車間を飛び移ってくなら俺達も列車の動きを見切って追いかけねえとな。

おっさんにどんな事情が在ろうが無関係なやつらの幸せを踏みにじる理由にはならねぇよ。だろ、相棒?
「・・・ッ!ええ、その通りです。あの人を必ず止めますッ!」


【技能・見切り、式神使い、情報収集】
【アドリブ歓迎】



 向かいの列車に消えていく源一郎、その背中を追うように飛び出したのは。
 四肢を列車の床につけて、飛び移る。がりがりと床を削って、追従してきた猟兵の一人に、源一郎が振り向いた。
「……ほう」
「……かなしいなあ。いいひとがバカにされたんだ。おこったいいひとが悪いことをしている。すごくかなしい」
 ゆっくり立ち上がって、消沈した表情を見せたのは茜崎・トヲル(白雉・f18631)だった。視線は源一郎に向けながらも、その悲しみに同調するように瞳の奥に翳りが見えている。
「いっつもこうだ。いいひとがワリを食う。おれがぜんぶ変わってあげられたらいいのにな」
「……そうともさ。いつだって善い者が悪辣なる者たちに蹂躙される。だからこそ、私は捕まるわけにはいかぬのだ」
「―――人斬り(せっしゃ)に言わせれば」
 同じく、列車に飛び移ってきた猟兵はもう一人。土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)は煌々と輝くオレンジの瞳を源一郎に向けながら、不敵に微笑んだ。
「地獄などこの身一つで作れば良いものを、わざわざスパヰ活動など持って回った真似をする」
 むぅ、と小さく唸って、源一郎は再び踵を返した。
「本人は受け入れずとも、軍師の呼ばれも強ち間違いではないようだ」
「いやはや、世間の評価はその者をそれたらしめる。私もまた、世論という悪に膝を屈した老いぼれの一人に過ぎなくてね。しかし、だからこそ」
 車両の扉を開け放ち、次の車両へ通じるその合間の天井を【灰燼拳】で打ち抜いた。
「私は大軍師たる所以をもってして、彼奴等を混沌の渦に引き込んでみせよう」
 車両の屋根へと這い上がった源一郎を追うために、二人の猟兵が駆け出そうとしたその刹那だった。
「……待って下さい」
 大雪と風鳴りでも聴こえる透き通る声に、二人の猟兵が振り向いた。見れば鬼の仮面を手に持った巫女、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が、こちらへ鎮静の視線を向けている。
「すでに私の【追い雀】が彼を追従しています。情報収集なら任せて下さい。彼への最短ルートを指示します」
 風を裂き、雀の式神はすでに源一郎を追跡している。二人の猟兵にルートを指示すると、仮面が咆えた。
「何が何でも捕まえなくっちゃあな!俺たちも後から行く、頼んだぜ!」
 トヲルと戎兵衛が頷いて、源一郎の追跡を開始した。トヲルが四肢で床を蹴って、獣に似た動きで屋根へと這い上がる。戎兵衛は凶津―――桜に言われた通りに、源一郎を先回りするように駆け出した。
 姿が見えなくなった猟兵たちの後、桜が小さく嘆息する。
「……そんな事が」
 源一郎から告げられた真実に、瞳が揺れ動く。それは、源一郎がスパイへ身を投じた真実の理由だろう。だが。
「シャキっとしろ、相棒ッ!大軍師のおっさんの話を聞いて思うところがあるだろうが考えるのは後だッ!おっさんを追いかけるぞッ!」
 激が飛んだ。凶津からの叱責に、桜はぐっ、と拳を握りしめる。
「おっさんにどんな事情が在ろうが無関係なやつらの幸せを踏みにじる理由にはならねぇよ。だろ、相棒?」
「……ッ!ええ、その通りです。あの人を必ず止めますッ!」
 歩き出す。身を薙ぐ暴風に逆らうように、桜は源一郎を先回りするべくその車両を後にした。

 源一郎が屋根を駆ける。後ろを振り向けば、追い縋る者の姿。トヲルが四肢を翻し、源一郎をその速度で追い詰めていく。
「おれ、あんたの痛みとか苦しみとか、わかんねえから。つかまえるね。おれをたくさん嫌っていいよ」
 ふっ、と源一郎が笑った。
「嫌わんさ。君達には役割がある。私と同じように。ただそれだけのことだ」
 その言葉を聞いたトヲルが、よかった、と小さく呟いた。ウォーハンマーを構えて、車両の横へと移動。中に人の気配はない、貨物車両か何かか。ならば。

 四肢にぎしり、と怪力が宿る。その動作に、源一郎が目を見開いた。
「―――まさか」
「そのまさか、だよ」
 撃鉄に似た音が響き渡る。車両そのものを打ち砕く一撃、それによって源一郎とトヲルが乗っていた車両が真横へと飛んでいく。それはまるで、だるま落としのように。
かろうじて【スカイテッパー】を使用してその一撃を回避した源一郎が、先の車両の屋根に足を下ろそうとしたところで。

「足を屋根から落として、ぶらり途中下車してみるか?」

 すでに、戎兵衛が先回りしていた。放り投げられた物体に、源一郎がすかさず【灰燼拳】で迎え撃つ。迸ったのは『スライム物質X』と呼ばれる液体だ。
「……ぬ……!」
 スカイテッパーで再び飛翔しようとした源一郎の足元がつるり、と滑った。摩擦係数を0に近づける虹色の液体は、源一郎の全ての摩擦をないものにしようとしていた。
「やるな、猟兵諸君。だが……!」
 再び、灰燼拳が迸った。車両を突き穿ち、その衝撃波で身に纏わり付いた液体を振り払った源一郎は、その車両の中に着地した。
「……恐るべき追跡力だな、猟兵というのは」
 その中にいたのは、桜。符を構えて、ここから先にはいかせまいと立ちはだかる。
「……黒田様。あなたの無念と憎しみは、正しいものであるのかもしれません。ですが……それでも、関係ない者たちを巻き込み、更なる不和を成そうとするのは、間違っています」
 帽子を押さえて、源一郎は口元を綻ばせた。
「ああ、そうだろうとも。間違っていることなど最初から分かっている。だからこそ、私は幻朧戦線に与した」
 拳を握りしめて、告げた。
「他者の幸せを……友の幸せを踏みにじった私には、もはや、引き返すことなどできないのだよ」
 ごぱぁ!と【灰燼拳】が再び炸裂した。車両の残骸が舞い飛び、上に控えていたトヲルと戎兵衛、桜と凶津の視界を遮る。
「車両そのものを破壊して、粉塵に紛れて別の車両に飛んだようだね」
「うわー逃げ足はやいな。おれと同じことしてる。おいかける?」
「乗客たちが騒ぎ始めてるみてぇだ。落ち着かせるために、別の奴らに任せようや」
 戎兵衛とトヲル、凶津と桜たちが顔を見合わせて、並走する車両を見つめる。
 ―――他の猟兵たちも源一郎の追跡を開始していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

黒田!
…逃がすまいぞ!!!

風穴から顔を出し[視力]を用いて
黒田の姿を見失わないように[追跡]しつつ
[氷結・環境耐性]を纏い[ダッシュとジャンプ]で
風穴から飛び出そう

【吊るし首の刑】で強化した鎖の鞭を振り回し
[ロープワーク]で並走する列車の出っ張りに引っ掛けて移動しよう

移動中に障害物になる木々などがあれば片手で鉄塊剣を振るい
[なぎ払い地形破壊]で断ち切ろう

鎖の鞭を伸び縮みさせて列車に乗り込み黒田を追いかけよう
ある程度近づけたら片足目掛けて
拷問具を[投擲、捕食し傷口をえぐり]動きを鈍らせよう…

黒田め…貴様の感傷に付き合っている暇はない…
一足先に地獄を見せてやろう…ワタシは…処刑人だ!



 もう一つの車両の屋根に着地した源一郎が、ふぅ、と息を吐く。吹き荒ぶ雪は増し、視界を覆う。
 やれやれ、と車両の中に見を潜ませようとした源一郎が、次の瞬間目を見開いた。
「黒田!……逃がすまいぞ!!!」
「……むっ……!」
 吹雪を切り裂いて、『鎖の鞭』が放たれた。【吊るし首の刑】によって強化された鎖の鞭だ。源一郎の足に巻き付いた鎖が甲高い音を立てて、列車の車両の角に引っかかる。常人を超える跳躍によって現れたのは、その身を漆黒に包んだ女性だった。
 仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は、『赤錆びた拷問器具』が源一郎の足に投擲する。
「ぐ、ぬ……!」
「黒田め…貴様の感傷に付き合っている暇はない…一足先に地獄を見せてやろう…ワタシは…処刑人だ!」
 足に嵌った拷問器具から、鮮血が溢れ出す。それでも、源一郎は不敵に微笑んだ。
「ははは……これはまた美しき死神だな。だが……!」
 【灰燼拳】が唸りを上げる。轟音を上げると、拷問器具が力任せに取り外された。足の傷から滴り落ちる血は雪と混ざり合い、列車の屋根に複雑な血の文様が刻まれた。
 迸った衝撃波によって源一郎を絡め取っていた鎖の鞭が剥がされた。複雑に宙を舞う鎖の軌道を読み取って手中に収めたアンナは、追撃を与えようと再び鞭を振り上げた。
「処刑人、成程、私の罪はそういう罪ではあるな」
「そうとも……黒田。貴様の思想は無力なる者を貶める悪だ……!だからこそ……私はこの鞭を振るおう……!」
「……覚悟を秘めた、良い目だ。猟兵というのは、実に素晴らしい信念を持っている」
 追従する鎖に向かって、再び源一郎が【灰燼拳】を振りかぶった。鎖と拳がぶつかり合い、吹雪が一瞬にして周辺に拡散する。
 視界を覆った衝撃波と雪の嵐にアンナが片手で顔を覆う。先を見れば、すでに源一郎は別の車両へと飛んでいた。

「だが、私はその覚悟に屈する訳にはいかないのだよ……!その地獄は未だ遠い、戦争と言う名の地平の彼方になくてはな!」

 鎖を握りしめてアンナは源一郎を追っていく。他の猟兵も、源一郎へ包囲網を敷き始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「私は、ある意味では桜學府に従わぬ者です。不死帝がもたらす影朧と転生を肯定する。桜學府も幻朧戦線も、不死帝の司る優しい世界が濁り澱まぬための、不死帝がなした世界を均衡させる巨大な撹拌装置に過ぎないのではないかと思っている。救われぬものを惜しむのに、救われぬものがあるこの世界を否定しない。この世界の存続を望むがゆえに、この世界の有り様を肯定する。貴方がそうであることを惜しむけれど、貴方の行いを否定しない。分かりませんか?貴方が逃げようが戦を起こそうが、それはどこまでいっても不死帝の手のひらの上です」
UC「精霊覚醒・桜」使用
飛行し追いかけ逃走の意思を削ぐ

「私は矛盾した、不死帝の信奉者ですから」



着地したと同時に、足に走った痛みにうずくまる。むぅ、と小さく声をあげながらも、怪我を物ともせずに歩き出した源一郎に声がかかった。
「友人の為、ですか。救われない友のために、自らの力を振るう。素晴らしい話です」
「……全く、私の逃走先に回り込むとは」
 帽子を被りなおして源一郎はそこに立っている少女を見つめる。メイド服に身を包んだ猟兵、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は優雅に、にこりと笑った。
「私は、ある意味では桜學府に従わぬ者です。不死帝がもたらす影朧と転生を肯定する」
「ほう、あの帝が影朧と転生を司っていると?」
「桜學府も幻朧戦線も、不死帝の司る優しい世界が濁り澱まぬための、不死帝がなした世界を均衡させる巨大な撹拌装置に過ぎないのではないかと思っている」
 ばっ、と両腕を広げた。
「救われぬものを惜しむのに、救われぬものがあるこの世界を否定しない。この世界の存続を望むがゆえに、この世界の有り様を肯定する。貴方がそうであることを惜しむけれど、貴方の行いを否定しない」
「……」
「分かりませんか?貴方が逃げようが戦を起こそうが、それはどこまでいっても不死帝の手のひらの上です」
「……いいや。分かる、分かるともさ」
 ふぅ、と小さく息を吐き出した。桜花を見つめるその双眸は、悲痛を秘めている。
「私が成そうとしている地獄も、私の動向全ても、人を超越したあの帝が捉えているのやもしれぬ。そして、地獄を作ろうとする私さえも、帝が嗜む遊戯の一つかもしれんな」
 ぶわり、と桜花の周囲に舞う桜の吹雪。暴風となった吹雪と混ざり合い、複雑な軌道を描く桜の花びらと共に、桜花が飛翔する。列車のスピードさえも追い越す力を持つ、【精霊覚醒・桜】の力だ。
「―――だから、諦めろ、と?有り得ん。私はそれさえも承知の上で此処に立っている。猟兵という超弩級戦力と対峙するだろうということは、すでに想定済みだった。それが……早まっただけだ!」
 【灰燼拳】が炸裂する。列車の屋根を突き穿ち、塵と吹雪が舞い上がり、桜花の視界を遮った。
「君が私を否定しない。そして、帝の掌中であることさえも否定しない。成程、君は……」
 その問いに、桜花が粉塵を突き破って微笑んだ。

「私は矛盾した、不死帝の信奉者ですから」

 源一郎の服を掴もうとのばされた手はしかし虚空を切った。【スカイテッパー】と【灰燼拳】、双方の力が具現化し、源一郎を空高く打ち上げる。桜花の頭上を飛んだ後、今度は上空に向かって【灰燼拳】を打ち放った。その反動で源一郎が別の車両の屋根を突き破り、その中へ着地する。
 力任せの強制移動に桜花があら、とまた微笑む。
桜花がその車両にいる猟兵へと追跡を譲渡した。足を怪我している源一郎は、どこまで逃げることが出来るだろうか。

成功 🔵​🔵​🔴​

天玲寺・夢彩
【PPP】
駄目だよ。
こんなやり方じゃ最後に残るのはまた誰かの絶望‥それに御友人の死だって無駄になっちゃう…。
(今の黒田さんを見たら桜學府のみんなショックだろうな‥夢彩だって嘘であって欲しかった。)

これでも運動神経やスピードには自信があるんだよう!

列車間を空中にUCで氷の足場を瞬間的に作って移動したり、列車内は仲間の方が上手く探せるだろうから並走した列車の屋根とか主に上から時にはアクロバットに追跡して捕まえる。

帝都桜學府の學徒兵として黒田さんを止めてみせるよ!

【アドリブ大歓迎】


アリシア・マクリントック
【PPP】
逃がすわけには……!扉よ開け!マリシテンアーマー!
ハヤテ・ワイヤーガンを使って列車間を移動。そしてセンリガン・ゴーグル起動!各種センサーを使い分けて見失わないようにしましょう。狙ったものを直接透視するのは難しいでしょうが、限られた情報でも列車内を走る大人くらいは見分けられるでしょう。
おそらくですが、目標は極端に身体能力が高いわけではないはず。列車内には遮蔽物も多い事も考えると、一時的に身を隠してやり過ごそうとするかもしれません。注意が必要ですね。
状況は限定的になりますが、ゲンジュツ・プロジェクターも逃走ルートの制限や誘導に使えそうです。
十分に接近できたらワイヤーガンで捕縛を試みます。


天星・雲雀
【PPP】
大軍師が、幻朧戦線に加担して地獄を広げることで、友人さんの賭けた命を無価値な物にしているようで少し悲しいですね。
友人さんはそれほどまでに、死後の名誉に固執する人だったのでしょうか?
英雄に成れるなら、死んでも良いと言ってましたか?
友人さんの残した懐中時計に込められた思いは、『報復』だったのでしょうか?
【行動】UC空々落ち葉を大軍師を思い浮かべながら自分にかけて追跡します。

流れ出すいたずらな風は、半径79m以内の大軍師までの道を示す。

「進むべき先も辿るべき跡も、風が教えてくれます!」

付与された落ち葉をカイロ代わりにして。シベリアの寒さ対策を踏まえつつ列車の屋根や車内を風の速さで追います。


シャルロット・シフファート
【PPP】
ふざけてるんじゃないわよ...
その友人の遺志を継ぎたかったならアンタがするのは幻朧戦線に帝都の平和を渡すことじゃない!
友人が命を落としても構わないと思えた帝都の平和を守り抜くことで、その友人の名誉を貶めた奴等に目にモノを見せることでしょうが!

UC起動。
光に纏わる魔術と科学技術で線路間を光速で移動し追跡する。
そして、大軍師がいる可能性のある列車内を散策するときは私のグリモアの『ダークブルー』を使って索敵するわ。


バニッシュ・インヴィジブル
【PPP】
「なかなかのスキャンダル。是非とも記事にして世界中にばら撒きたい。」
懐から鉤縄を取り出し並走している列車にくくり付け、勢い任せに飛ぶ。
「あぁ!風圧がっ、キツい〜‼︎」
必死に縄にしがみ付いてなんとか列車に入る事に成功。
「もう二度とやりたくない…。」
こんなにも大変な思いをしているが透明な為、認知されてない悲しみ。
「さて、探そう。地道になるが相手も見えんのだ、不意をつけよう。」
手頃な武器を調達し、大軍師を捜す。



「……既に捉えられている、か」
 列車の中を移動しながら、その視線に気付いたのは源一郎の鋭敏な直感故だろう。誰かが見ている。見つめている。それは、壁を越えて見つめる、狩猟者の眼のように。

「逃がすわけには……!扉よ開け!マリシテンアーマー!」
 それはまるで忍びの如く。瞬時に衣装を変えたアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)が、列車の壁にハヤテ・ワイヤーガンを括り付けて列車間を移動する。それはさながら、ヒーローズアースで有名なかの蜘蛛のヒーローの如くだ。
 センリガンゴーグルが、対象の熱源を探し出す。それを見つけるのは、外が吹雪に見舞われているために容易だった。車内を駆けている源一郎を探し出して、共に在る仲間へと口を開く。
「いました!あの車両です!」
「―――はい、私もすでに」
 アリシアに追従するのは、体に燃えるような落ち葉を纏った天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)だった。【空々落ち葉】と呼ばれるユーベルコードは、雲雀を“風”へと変貌させる。
 源一郎の灰燼拳によって穿たれた車両の穴から入り、逃走を続ける源一郎を追跡する。
「風そのものとの競争とはね……!」
「進むべき先も辿るべき跡も、風が教えてくれます!大軍師、貴方はもう―――」
「終わりではないさ、まだ、なッ!」
 【灰燼拳】が炸裂、車両の壁を穿ち、源一郎が車両の上へと逃げ込んだ。
「逃さないよ……!」
 源一郎が、はっ、と頭上を見上げれば、そこには氷の足場を作って移動する天玲寺・夢彩(春の大嵐少女・f22531)の姿があった。【悪魔召喚「Crocell」】によって、氷と幻覚を操る夢彩が、源一郎を追い詰めるべく接近する―――!
(帝都桜學府の學徒兵として黒田さんを止めてみせるよ!)
 帝都桜學府に所属するものとして、間違ったことをした同志がいたのなら、それを灸しなければ、と。
「この氷雪の中、氷を足場にして私を追跡するとはね……!」
「黒田さん、駄目だよ。こんなやり方じゃ最後に残るのはまた誰かの絶望‥それに御友人の死だって無駄になっちゃう……!」
 その言葉に、源一郎が口元を綻ばせた。
(今の黒田さんを見たら桜學府のみんなショックだろうな‥夢彩だって嘘であって欲しかった)
 大軍師の背を見つめて、今も努力を続ける仲間をいる。彼らが今の源一郎の姿を見たら、何を思うだろうか。
「無駄、か。全てが虚構に塗り潰されたあの日、あの時に、“無駄”であることは始まったのだ。ならば、友の死は、意味のあるものだったのか。私が彼に命令した言葉は、誰かを救うための激励と覚悟の言葉であり……死の言葉だったのだ。それが、民衆たちによって私の言葉ではなく、友の存在そのものが“無駄”だと断じられたあの日……!許せるわけがないのだよ!」
「大軍師が、幻朧戦線に加担して地獄を広げることで、友人さんの賭けた命を無価値な物にしているようで少し悲しいですね」
 風と共に、雲雀が現れる。佇む源一郎は、むぅ、と唸った。
「友人さんはそれほどまでに、死後の名誉に固執する人だったのでしょうか?英雄に成れるなら、死んでも良いと言ってましたか?友人さんの残した懐中時計に込められた思いは、『報復』だったのでしょうか?」
「いいや、違うな。違うだろう。あれは誰よりもお人好し過ぎた。民衆の悪意など意に介さぬほどに、純真すぎた」
「それなら……」
「だからこそだ。その純真さは、民衆たちの悪意の標的となった。守護を生業とする者が、敵だけでなく、味方の悪意をも受け入れる器となった。それが……なにより許せんのだ!!」
 【スカイテッパー】が放たれる。侵食してきた氷を蹴って、源一郎が飛翔する。

 その刹那だ。源一郎の行く手を遮るように、“光”が瞬いた。
 飛び上がる光の塊は、瞬時に人の形を形成する。怒りに燃える瞳を源一郎に向けたのは、シャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)だ。
「ふざけてるんじゃないわよ……その友人の遺志を継ぎたかったならアンタがするのは幻朧戦線に帝都の平和を渡すことじゃない!友人が命を落としても構わないと思えた帝都の平和を守り抜くことで、その友人の名誉を貶めた奴等に目にモノを見せることでしょうが!」
 一息で放たれた言葉、シャルロットが肩で息をしながら、拳を強く握りしめる。
 源一郎は帽子を深く被り込んで、小さくため息を吐いた。
「……全く、正論も正論だ。老体に若者の言葉というのはなかなかに厳しいね」
「目を覚ましなさい!アンタがやってることは……友人の死を無駄にしたその連中と同じことをしてるのよ!」
 にこり、と優しく微笑んだ源一郎は、再び【スカイテッパー】で空中を駆る。
「……もはや、後戻りはできんのだよ、猟兵諸君。君たちにとって、私は帝都の腫瘍そのものだ。ただちに切り捨てるのが懸命だろう」
 空中を蹴って、他の車両へ移動する。着地した源一郎は、そうして吹雪の中に澄んだ声を残した。
「社会の膿には、社会の膿なりのやり方がある。失礼させてもらおう―――……む……ッ!」
 源一郎がそれに気付いたのは、吹雪の流れがおかしくなったからだろう。突如として目の前に現れた鉄のポールが、体を打ち付けた。両手をクロスさせて防いだ源一郎が後方へと吹き飛んだが、スカイテッパーによって車両の屋根に器用に着地した。
「なかなかのスキャンダル。是非とも記事にして世界中にばら撒きたい」
「……怪奇人間、か?透明人間とは実に愉快だ」
 バニッシュ・インヴィジブル(透明な記者・f29280)は、そこにいてそこにいない、なぜなら彼は、透明人間だからだ。
 翻った鉄のポールが地面に落ちる。

 ほんの数分前のことだ。車両の屋根の上に待機して、バニッシュが唸っていたのは。
「あぁ!風圧がっ、キツい〜!!」
 鉤縄を使うことでなんとか列車間を移動していたバニッシュだが、あまりの風圧にその場でしゃがんで動けない。
 列車間を飛んで、ふぅ、と息を吐いていた。
「もう二度とやりたくない……」
 しかも、透明人間のために他の人間、および猟兵たちにほとんど認知されていない。しかし、それでも彼も猟兵だ。
「……さて、探そう。地道になるが相手も見えんのだ、不意をつけよう」
 手元にあった鉄製のポールを構えて、他の仲間の連絡を待ち、源一郎が逃げてくるだろうポイントで待ち伏せる。そして、その時はようやく来た。

「ぐ、ぬ……!」
「逃さないと言ったはずです!」
 アリシアのワイヤーガンが、源一郎の足を捕らえる。傷を負っていた足を再び縛り上げられて、源一郎が苦悶の声をあげた。
「ふはは……強気なお嬢さんだ。私も言ったはずだ、捕まるわけにはいかないとねッ!」
 【灰燼拳】が連続で打ち放たれる。連打の音、迸る衝撃波と砕かれた車両の粉塵。吹雪と車両の残骸の中、源一郎は別の車両へと逃亡していったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アズサ・シュヴァルツァー
アドリブ、マスタリング歓迎

_

…この男がどんな無念を抱こうとも私は無関心だった

私にも失い難い人はたった一人だけいて、その人が誰かの悪意に貶められたのなら、彼のような憎悪を抱くのだろうか
…わからない。ただ一つだけ判明しているのは
彼を止めねばならぬと言うこと
私情を抜きにして、それが仕事だからだ

素早く反応し鋼糸を飛ばす
…脚を絡めとり、動けないまでの負傷に追い込めば上々だが
案の定であっても冷静沈着に状況を分析、怪力や鋼糸を駆使
偵察や闇に紛れる為の手段を活用し
駆けつつも足音を殺して奴を追跡
鋼糸を用いて奴の自由を奪うか
捨て身の一撃にて背後からタックルをするか
それともそれ以外の方法か
状況に応じて臨機応変に対応


蛇塚・レモン
黒田のおじ様のあの懐中時計、やっぱり、そんなエピソードが……
ライム! 黒田のおじ様を追うよっ!

UCで時速440kmの高速飛行
ライムの炎で雪を溶かし、おじ様へ接近

黒田のおじ様っ!
お願い、あたいの話を聞いてっ!
あたいのマヒの呪詛入り呪殺弾とライムの高速移動で行く手を阻む

おじ様……あたいはおじ様は間違ってないと思う
市中の人々は真実を知るべきだし、おじ様の友人の名誉も回復すべきだよ
でも、幻朧戦線に与するのだけは間違ってるっ!

真実を伝える方法なら、ラジオや街頭演説、他にもあるよっ!
戦乱は負の連鎖を生むだけだから……っ1
それは、おじ様が一番よく理解しているはずでしょっ?

だからお願い……自首してよ

台詞創作◎



 列車の屋根を疾駆する源一郎だが、足の傷から滴り落ちる鮮血によって、その行動の追跡は容易なものになっている。
「……ふむ」
 後ろから迫ってくる二つの影。一人は、同じように列車の屋根を伝って。もう一人は、空中を飛翔しながら、こちらへと迫り来る。
「あの時の坊やに……切符を失くした少女か。私の観察眼も落ちたものだ」
 やれやれ、と肩を竦めて、傷など意に介さないかのように疾駆する姿は、五十代の男性の身体機能を超えている。
「黒田のおじ様のあの懐中時計、やっぱり、そんなエピソードが……。ライム! 黒田のおじ様を追うよっ!」
 蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)の言葉に応えた炎の蛇神、ライムが火炎弾を打ち放つ。屋根に積もった雪を溶かし、吹き荒れる吹雪を切り裂く。溶けて無くなった屋根の上を、もう一人の猟兵、アズサ・シュヴァルツァー(影月・f24293)が突き進む―――!
【戦闘召喚使役術式】によってライムに変身したレモンが叫んだ。
「黒田のおじ様っ! お願い、あたいの話を聞いてっ!」
 呪殺弾が源一郎の行く手を遮り、ライムがその眼前に翻る。立ち止まった源一郎が、こちらへと鋼糸を打ち放ってきた少年の猟兵へと向き直った。腕に巻かれた鋼糸をぐい、と引っ張るが、アズサの怪力は源一郎の力を超えている。
「万事休す、というところかな」
「おじ様……あたいはおじ様は間違ってないと思う」
 炎の蛇神となった変身を解いて、レモンは悲しそうな表情で源一郎へと口を開いた。
「市中の人々は真実を知るべきだし、おじ様の友人の名誉も回復すべきだよ。 でも、幻朧戦線に与するのだけは間違ってるっ!」
「……」
「真実を伝える方法なら、ラジオや街頭演説、他にもあるよっ! 戦乱は負の連鎖を生むだけだから……っ1 それは、おじ様が一番よく理解しているはずでしょっ?」
 ぐっ、と拳を握って。レモンは絞り出すように、再び口を開いた。
「だからお願い……自首してよ」
 無言を貫く源一郎、帽子を深く被って思案するような姿。それを見ながら、アズサは拳を自分の胸に当てた。
(……この男がどんな無念を抱こうとも私は無関心だった)
 それは、自らの在り方の問答だった。
(私にも失い難い人はたった一人だけいて、その人が誰かの悪意に貶められたのなら、彼のような憎悪を抱くのだろうか)
 もし、源一郎と同じ立場に立ったなら。自分は、目の前の男のようになるのだろうか、と。
 思案し、思考する。考え、深く、深く思考し。
(…わからない。 ただ一つだけ判明しているのは、彼を止めねばならぬと言うこと。 私情を抜きにして、それが仕事だからだ)
 鋼糸を握りしめて、源一郎を逃すまいと車両の屋根を踏む。諦めたのか、その言葉に突き動かされたのか。源一郎は、深く息を吐いた。
「……真実を伝える方法、か。キミはマスコミの情報操作がなんたるかを分かっていない。誰が何を叫ぼうと、彼らは利になる報道を行うだろう。もちろん、自分たちにとって、な」
 腕に巻かれた鋼糸を気にもとめず、源一郎はアズサへと近づいた。そして、その頭に手を置く。
「坊や、キミもそうだろう。その眼、悪意がなんたるかを識っている眼だ。どれだけ足掻こうと、正しき者の言葉は悪辣なる者の雑音に掻き消される。正論は悪意に弱すぎる。だからこそ……」



 ―――だからこそ、私は幻朧戦線ではなく……キミ達を利用しようと決めていたのだ。



 吹雪の中聴こえた声に、レモンの両目は見開かれ、アズサの眉が微かにピクリと動いた。

「……おじ様、それは一体どういう―――」
 ことなの、と訊こうとしたレモンの声が、列車の音でも、吹雪の音でもない―――別の音に掻き消された。
 上空から無数の光が降り注ぐ。みれば、頭上に紅く燃えるような紅の甲冑が浮かんでいる。
 その攻撃によって、レモンとアズサが後退する。顔を覆ったその先、飛来した甲冑は、列車の速度に追従し、源一郎の元に降り立った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『スパヰ甲冑』

POW   :    モヲド・零零弐
【マントを翻して高速飛翔形態】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【目からのビーム】を放ち続ける。
SPD   :    影朧機関砲
レベル分の1秒で【両腕に装着された機関砲】を発射できる。
WIZ   :    スパヰ迷彩
自身と自身の装備、【搭乗している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「スパヰ甲冑を潜ませていた甲斐があったようだ」
 針葉樹生い茂る平原を突き抜ける列車を追いかけるように、スパヰ甲冑は飛翔する。猟兵たちが集った車両の屋根を見下ろす形で、源一郎はスパヰ甲冑を自由自在に操作していた。
「ここは撤退を……と言いたいところだが、超弩級戦力のキミ達だ。如何に私が逃亡しようと、必ず見つけ出すだろう。よって……」
 じゃき、と片腕の機関砲が突き付けられた。
「キミ達をここで始末し、終わりにする。さあ、吹雪舞う死闘といこうか、猟兵諸君!」
 源一郎の覇気。それは猟兵たちを抹殺する覚悟に満ちている。
 『幻朧戦線ではなく、キミ達を利用する。』そう呟いた源一郎の真意は不明だが、旅客車両にいる乗客たちを巻き込むわけにはいかない。
 猟兵たちは武器を構える。目標はスパヰ甲冑の撃破……そして、源一郎の捕縛だ。
神代・凶津
「・・・どうしても止まれませんか。」
どうやらおっさんは本気のようだぜ、相棒。
ならこっちも全力で迎え撃つッ!
鬼神霊装でいくぜ、相棒ッ!!
「・・・転身ッ!!」

止まれねえってんなら無理矢理にでも止めてやるよ。
黒田のおっさんッ!!

敵の攻撃を引き上げた反応速度で見切って避けながら高速移動で距離を詰めて左手の薙刀でなぎ払うぜ。
多少の攻撃ならダメージを軽減する風で防げるしな。
敵が飛翔したらこちらも空に舞い上がって高速移動で縦横無尽に飛びつつ、右手に持った妖刀に雷撃を纏わせて斬撃の放射をぶちこんでやるッ!

これは最早、意地と意地のぶつかり合いだ。
勝つぞ相棒ッ!!


【技能・見切り、なぎ払い、空中戦】
【アドリブ歓迎】



「……どうしても止まれませんか」
 巫女服が吹雪の風に煽られる。それでも、毅然とした態度は崩さない。神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は、鬼の面を持ちながら、上空を飛ぶスパヰ甲冑―――その中にいる源一郎へ語りかける。
「愚問だな。ここで止まれば、全てが水の泡となる。立ち止まる訳にはいかんのだ―――!!」
 ぶわり、とマントを翻して、スパヰ甲冑が飛翔する。影朧機関砲をその先にいる桜へと突き付けた。
「どうやらおっさんは本気のようだぜ、相棒。ならこっちも全力で迎え撃つッ!」
 鬼の面、凶津が奮起の声を上げる。桜から立ち上る霊気が、霊的能力を限界まで押し上げた。
「鬼神霊装でいくぜ、相棒ッ!!」
「……転身ッ!!」
 轟、と大気が軋む。鬼の面をつけた桜が、ゆらり、と刀と薙刀を構える。
 凶津の封じられていた力を要に、二つの霊装を一つにした超強化状態―――すなわち、【鬼神霊装(オーバードフォーム)】。
 それは言わば、4つのユーベルコードを展開した、雷と風を操る鬼神の姿だ。
 『無銘の妖刀』を片手で構え、『霊鋼の薙刀』を片手で軽々しく振るう。霊鋼という素材を用いて作られた破魔の武器たちの力が、迸る。
「止まれねえってんなら無理矢理にでも止めてやるよ。黒田のおっさんッ!!」
「―――来いッ!」
 舞い上がる。飛翔する。連射される機関砲の銃弾が、荒れ狂う暴風によって逸らされる。刀と薙刀が振るわれる度に大気が斬り裂かれ、斬撃が鎌鼬の如く放射される。
「これは最早、意地と意地のぶつかり合いだ。勝つぞ相棒ッ!!」
 こくりと頷いた相棒に、微かに笑みを含んだ息を吐いて。
 斬撃を回避したスパヰ甲冑から機関砲が連射される。しかし、何度撃とうとも暴風の流れに銃弾が逸れてしまい、無為な攻撃となっていた。針葉樹の中に身を潜ませようとした源一郎を先回りするように―――飛翔するスパヰ甲冑を追うように、凶津たちがその飛翔力を駆使して追い詰める。
 スパヰ甲冑は持ち前の機動力で斬撃攻撃を回避するが―――吹雪の流れが桜に近づくにつれて変性している。そのまま飛翔を続けようとしたスパヰ甲冑が、がくんとふらついた。
「……そこですッ!!」
 妖刀と薙刀が翻る。迸った斬撃が、スパヰ甲冑を包囲するように接近する。雷撃と風撃が襲いかかり、針葉樹の森に稲光が瞬いた。
 列車へと戻った凶津たちだが、ユーベルコードの代償によって呪縛を負ってしまったようだ。膝をついて、森の奥から再び現れた影をじっ、と見つめた。
「……なかなかに、やりおる。甲冑相手に生身で……しかも圧倒するとは、これが猟兵の力か」
 響き渡る声は驚きというよりは―――喜びに満ちていた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茜崎・トヲル
いいひとがまっすぐ向かってきた。なら、おれもまっすぐ向き合わないと。
肉体改造で脳を良くして考える。
この人は桜學府の幹部だ。部隊を存続させた偉大なる學徒兵。目的は地獄を見せつけることで、猟兵を利用しようとしてる。死闘。
民衆はまだ、このひとがスパイだってことを知らない。
スパイだと明らかになることで、桜學府の権威を傷つけたいのかな。
自分を貶めて、本当はトモダチこそが勇者だったとしたい?
ズタボロになることで、戦いの残酷さを見せつけたい?
勝ったらそれはそれでいいんだろうか。
考えるのはここまで。戦おう。
攻撃はよけない。痛くないし死なない。まっすぐいって、ハンマーで潰す。
さようなら、あんたいいひとだった。



 中空を滑空するスパヰ甲冑をじっと見つめ、茜崎・トヲル(白雉・f18631)は普段とは違う輝きを双眸に秘めていた。
「……いいひとがまっすぐ向かってきた。なら、おれもまっすぐ向き合わないと」
「ははは、いい人、と来たか。スパヰに堕ちた私へ、そのような言葉を口にするとはね」
 スパヰ甲冑から響く源一郎の声は、呆れたような―――しかしそこに軽蔑の声音は存在しない。
 トヲルの目が据わる。ユーベルコードの奇蹟が発現し、脳の処理速度が加速する。【肉体改造】は、筋力のみではない、体の内部、その効率、知能さえも強化する―――!
(この人は桜學府の幹部だ。部隊を存続させた偉大なる學徒兵。目的は地獄を見せつけることで、猟兵を利用しようとしてる。死闘)
 幻朧戦線ではなく、猟兵を利用すると決めていた。それは、先程源一郎が言っていた通りだ。そして、友を否定した民衆へ地獄を見せることだ、とも。
(民衆はまだ、このひとがスパイだってことを知らない)
 つまり、ここで源一郎がスパヰであることが公表されれば。
(スパイだと明らかになることで、桜學府の権威を傷つけたいのかな)
 だが、“それは猟兵を利用する意味が存在しない”。それならば、わざと憲兵に捕まってしまえばいいことだ。
 ならば、もう一つ。
「自分を貶めて、本当はトモダチこそが勇者だったとしたい?」
 トヲルの口から放たれた言葉に、源一郎の声音が、む、と小さく変化する。
「ズタボロになることで、戦いの残酷さを見せつけたい?」
「……さて、どうだろうね。私の目的は、キミたちを利用し、あの時の“悪意”を掻き消すことだけだ」
 影朧機関砲が構えられた。突き付けられた銃口にしかし、トヲルは動揺する素振りを見せなかった。
「……勝ったらそれはそれでいいんだろうか」
 ウォーハンマーを携えて、トヲルは源一郎を睨みつけた。勝利すれば、全てが解決するのかどうか。思案に思案を重ね、それでも到達できない問いに、トヲルは頭を振って思考を中断した。
「考えるのはここまで。いくよ、いいひと」
「良かろう……私の一撃を受けるが良い!」
 機関砲の連弾が襲いかかった。吹雪を裂くような連続の発砲音。ハンマーを構えて跳躍したトヲルの骨が軋む。銃弾が体を貫通し、鮮血が咲いた。それでも、止まらない。
【身を削る】。接敵したトヲルの覚悟に、源一郎は一言呟いた。
「―――恐れを知らぬ塔<ルーク>だな、キミは」
 その突進を、源一郎は避けようとしない。聴こえた声に、トヲルは微かに微笑む。

「さようなら、あんたいいひとだった」

 空間に伝播した衝撃波は、列車を揺らすほどの強撃だった。スパヰ甲冑の片腕を叩き潰して、トヲルは鮮血に塗れる服を翻し列車の屋根に着地する。黒煙を上げ始めた甲冑の中で、源一郎が深く嘆息した。
「……あれに別れを告げる間もあったのなら、私も諦めがついたかもしれんな。感謝しよう、塔に坐る白き雉よ。私を理解しようとしてくれた事、ただそれだけで十分だ」

 微かに目を見開いたトヲルがまた、小さく呟く。

「いい人は、しあわせがいいよ。おれはそれでいい」

大成功 🔵​🔵​🔵​

土斬・戎兵衛
ふぅむ、ひょっとしたらスパヰとして俺ちゃんたちに討たれて、「かつての事件を引き起こしたのは友ではなく私だったのだ!」とか世間にアピールするつもりかな?
もしそうなら望み通り殺すより生かした方が仕事とは上々か

迷彩なぞ施したところで、そこに在るなら見えぬはずなし
UCの視力で空気や雪の動きを見て、敵の居場所を見出そう

ビームや機関銃は首枷で【盾受け】
飛翔するなら硬貨の【早業】乱れ撃ちでこちらも遠距離攻撃だ

ここぞという時がきたら抜刀
甲冑の内、源一郎殿の肉の入っていない部分を【見切り】、動力や兵装だけを断ってみせよう

それにしてもよく冷える
拙者も熱のこもる甲冑でも身に着けたいものでござる

絡み・アドリブ歓迎


御園・桜花
「動かぬ水は淀んで腐る。世界も同じだと思うのです」

「貴方の行動は正しくないのでしょうけれど。生きることは願うこと。願いを否定する権利は誰にもありません。ただ願いがぶつかることはあります。そしてそれが世界に関わる時は猟兵が投入される。それだけだと思うのです」

「貴方はここで他者を巻き込んで派手に散り、世間が事件の真相に興味を持つように仕向けたいのでしょうけれど。他者を巻き込むことだけは、阻止させていただきます」
仲間や乗員乗客が怪我をしたらUC「癒しの桜吹雪」
誰1人重体以上の怪我はさせない
怪我の程度によっては源一郎にも使用

敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
高速・多重詠唱で破魔乗せ制圧射撃し仲間の攻撃補助



「……それにしてもよく冷える。拙者も熱のこもる甲冑でも身に着けたいものでござる。なあ、源一郎殿?」
 着物が暴風によってなびいている。甲冑の中からの返答はない。
「ふぅむ、ひょっとしたらスパヰとして俺ちゃんたちに討たれて、「かつての事件を引き起こしたのは友ではなく私だったのだ!」とか世間にアピールするつもりかな?」
 刀の柄に手を置いて、土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)は飛翔を続ける源一郎の機体、スパヰ甲冑をそのオレンジの瞳で見つめている。
 今度はその問いへの答えが返ってきた。
「……ハハハ……さて、どうかな。確かに、私は友人の汚名を払拭するために此処にいる……キミの憶測は真理に近いかもしれん」
「掴みどころのない「大軍師殿」、でござるな」
 『本差し・分渡』を抜き放ち。吹雪の中、スパヰ甲冑とミレナリィドールの剣豪が睨み合う。
「もしそうなら望み通り殺すより生かした方が仕事とは上々か」
 そう呟いた戎兵衛の瞳の奥が、煌々と輝いた。む、と源一郎が小さく呟く。見れば、戎兵衛の後ろにもう一人、猟兵が佇んでいた。
「―――動かぬ水は淀んで腐る。世界も同じだと思うのです」
 戎兵衛の後ろ、メイド服が暴風で暴れまわっているが、それでもその佇まいは揺らがない。スパヰ甲冑へ語りかけるように、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は口を開く。
「貴方の行動は正しくないのでしょうけれど。生きることは願うこと。願いを否定する権利は誰にもありません。ただ願いがぶつかることはあります。そしてそれが世界に関わる時は猟兵が投入される。それだけだと思うのです」
「ああ、そうだ。私の行動は正しくはない。だからこそキミたちによる抑止がかかる。世界を破滅に近づける行動は、キミたちの監視から逃れられないことを意味しているだろう」
 スパヰ甲冑から響き渡る声に、桜花は目を細める。
「貴方はここで他者を巻き込んで派手に散り、世間が事件の真相に興味を持つように仕向けたいのでしょうけれど。他者を巻き込むことだけは、阻止させていただきます」
 ふっ、とスパヰ甲冑に搭乗している源一郎が、息を小さく吐いたのが聴こえた。

「ならば、私の全力を以て、キミたちの力を超えてみせよう!」

 スパヰ甲冑の姿がかき消える。吹雪に紛れて飛翔するスパヰ甲冑の完全迷彩だ。列車が線路を征く音、針葉樹が揺れる音、吹きすさぶ雪の嵐。

 だが、全てを消し去ることなど不可能だ。

 戎兵衛の眼がそれを射抜く。飛翔音、吹雪を掻き分けるような空気の流れ、逸れるような雪の動き。
 刀が、ちゃきり、と音を立てた。

「迷彩なぞ施したところで、そこに在るなら見えぬはずなし」

 跳んだ。列車の慣性を読み、そこに存在する鋼鉄の人形を斬ろうと。
硬化の束が源一郎へと撃ち放たれ、構えられた機関砲の軌道がずれる。戎兵衛の腕を掠ったが、それでもその一撃は止まらない―――!

 吹雪を断つような、鋼鉄を裂く必殺の一撃だった。空間に閃いた一筋は、吹雪の間隙を造り出すほどの剣戟だ。
 その一撃によって、スパヰ甲冑の胴体に刀傷が刻まれる。黒い煙を出して飛翔能力が低減するが、それでも源一郎は諦めていなかった。
「私は、負けるわけには―――ぬ……ッ!」
 スパヰ甲冑に纏わり付いたのは、【癒しの桜吹雪】。機械の損傷は癒やすことはできないが、その内部にいる源一郎の傷を治癒していく。猟兵の一人に刻まれた足の傷がたちまちに治癒し、源一郎は眉を顰める。
「何の真似かね、お嬢さん」
 片腕を眼前に掲げて、ユーベルコードの奇蹟を発現させた桜花に、源一郎はそう問いた。この戦闘で傷を負った者、列車内で戦闘の余波を受けてしまった者も治癒されていた。
 しかし、源一郎が解せなかったのは、その対象に「自分」も含まれていた事だった。
「先程言った通りです。派手に散ろうなどあり得ません」
「ふふ、そうか。……まあ良い」
 スパヰ甲冑から続けて、言の葉が紡がれる。
「『Own sacrifice is the condition of the virtue.』。有名なとある哲学者の言葉だ。『自己犠牲は、美徳の条件である』。私は、その言葉が―――とても好きでね」
 スパヰ甲冑の戦闘モードは解除されない。心の奥底まで響くような声音で、源一郎は続けた。
「もちろん、自己犠牲に酔いしれている訳ではない。あの言葉は、自己犠牲が素晴らしいものだと説く裏で、自己犠牲では何も解決しないことの真理を突いている。キミ達の戦力全てが王<キング>である以上、私に勝ち目など存在しない。ならば……やるべきことはただ一つだ」
 吹雪と列車の轟音が鳴り響く中、スパヰ甲冑の機関砲が掲げられた。

「……まだ終わりではない。かかってきなさい、猟兵諸君」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蛇塚・レモン
やめてよ、おじ様
最初から、あたいらに勝つ気なんてないくせに

猟兵達を利用する……
おじ様の目的は戦乱を世に広める事
そして、最初から幻朧戦線に加担する気はない
そうでしょ?

十中八九、おじ様が此処で必死の抵抗をしても猟兵達に捕縛される
すると、幻朧戦線の目論見が潰れるよねっ?
追い詰められた幻朧戦線は、いずれ帝都で大規模な軍事行動を開始するはず
そうすれば世間は混乱に陥る
あたいらが動くたびに、この世界は真綿で首を絞められてゆくんだよ

すごいね
おじ様はこれを予見してたのっ?

UCで雪を炎に変換(氷は無機物)
透明化した敵機体をも炎に変えて焼き尽くす

もう一度言うよ
お願い
自首して
真実を世間に公表して
あたいらも力を貸すから



 かかってきなさい、と力を込めて言い放った源一郎は、スパヰ甲冑を停止させる素振りを見せない。そして、スパヰ甲冑が迷彩によって姿を消した。
 そんな源一郎に、一人の猟兵が口を開いた。
「……やめてよ、おじ様。最初から、あたいらに勝つ気なんてないくせに」
 胸に当てた片手を握りしめて、蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)は悲しそうに瞳を向けた。
「猟兵達を利用する……おじ様の目的は戦乱を世に広める事。そして、最初から幻朧戦線に加担する気はない。そうでしょ?」
「……」
 無言を貫く大軍師と呼ばれた學徒兵。その問いの答えは、ほとんど当たっているのかもしれない。
「もしそうだとして、この戦いに意味はないとでも言い張るのかね、お嬢さん」
「……十中八九、おじ様が此処で必死の抵抗をしても猟兵達に捕縛される。すると、幻朧戦線の目論見が潰れるよねっ?」
「……ほう」
「追い詰められた幻朧戦線は、いずれ帝都で大規模な軍事行動を開始するはず。そうすれば世間は混乱に陥る。あたいらが動くたびに、この世界は真綿で首を絞められてゆくんだよ」
 どうあれ、源一郎の策は完成する。最初から勝利を掴めない戦だと分かっていても、“最終的”に勝利してしまえばいい。大軍師たる謀略は、すでに張り巡らされていた。
「すごいね。おじ様はこれを予見してたのっ?」
「……全く、人は老いるものだ。それは、私であっても変わらぬようだな」
 レモンの周囲が、白熱する炎の束へと変化していく。【憑装・蛇塚ホムラオロチ神楽】と呼ばれるユーベルコードは、妹であるライムの魂を自身と“重ねる”ことで発動する、浄化の炎を操る力だ。
「もう一度言うよ。お願い、自首して。……真実を世間に公表して。あたいらも力を貸すから」
 周囲の吹雪が炎へと転じていく。熱波を浴びながらも、源一郎はふっ、と笑った。
「健気なお嬢さん、キミの言うことは尤もだ。猟兵諸君の力を借りれば……可能かもしれん」
 炎が大気を蹂躙する。迷彩化したスパヰ甲冑が、浄化の炎に焼かれて再び現出した。
「だが……私もまたもう一度言おう。……後戻りは出来ぬのだ。幻朧戦線による混沌も、帝都桜學府の信用の失墜も、全て副産物に過ぎん。私が成したいのはたった一つ、友の汚名を払拭すること。それだけだ……!」
 機体を焼かれ、炭化していく機体を翻し、源一郎はその炎を振り払う。
「此処に戦いを成さねばならん……!情報を繰る者たちが言い逃れできぬほどの、激闘をな!」
 スパヰ甲冑の瞳がぎらり、と輝いた。
「……おじ様の、わからずや」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アズサ・シュヴァルツァー
アドリブ、マスタリング歓迎

_

……悪意を
識っているのか、私は。
痛めつけられるのも、誰かの贖罪の為の贄とされるのも、全ては私が生まれたことが最も重い罪であるゆえだと。
そう言われて今まで生きてきた。
彼のいう『悪意』がこれを指すなら
私は悪意しか識らぬ化物、なんだろう。

彼が悪意を憎み復讐を成すとして
けれどその怨嗟が関係ない誰かを巻き込み源一郎を『悪意』と見なすなら
…何故か私は納得しかねた。
悪意を憎む者が誰かの悪意になってしまう。
それは、駄目だと…どうしてか思うのだ。

周りに誰かいれば積極的に庇う。
誰かの攻撃に紛れ瞬時に接近
機をてらい放つは『壊』
捨て身の一撃にて起動部や機関砲を狙う。
状況に応じ臨機応変に対応



 スパヰ甲冑の駆動音が、吹雪の中に響き渡る。列車の屋根の上で佇む猟兵の姿は、他の者と比べて小さかった。
 漆黒の眼を細めて、アズサ・シュヴァルツァー(影月・f24293)は先程源一郎に言われた言葉を思い出していた。
「……悪意を、識っているのか、私は」
 自分に対する問いのようでもあった。今まで歩んできた過去が脳裏を灼き、濁流の如く押し寄せる。
 《黒》であることで、ただ痛めつけられ、他人の贖罪の為の贄にされ。《黒》だったからこそ、生さえも否定された。
「お前に、生きる価値などない、と。そう言われて今まで生きてきた」
 その言葉に、源一郎が反応する。
「……忌み子、か。坊や、キミの瞳は、酷く“黒い”。それはキミの元来の《黒》ではない。他者の悪辣な烙印によって生じた“黒”だ」
「……そうか」
 源一郎の言う『悪意』がこれを指すなら。
「……私は悪意しか識らぬ化物、なんだろう」
 ばさり、と纏ったマントが翻る。列車を吹き付ける暴風によって、吹雪の白とマントの黒が混ざり合う。

「―――何を言う。化け物であったならば、キミは“此処”にはおらんだろう」

 瞳が、小さく、微かに見開かれる。スパヰ甲冑の中にいる大軍師、それを呟いたのが彼だと知ったのは、3秒ほど遅れてからだった。
 すぐに平静に満ちた瞳へと戻り、黒の手袋を纏った片腕をぐっ、と握る。
(彼が悪意を憎み復讐を成すとして。けれどその怨嗟が関係ない誰かを巻き込み源一郎を『悪意』と見なすなら)
 『悪意』。化物であるはずのアズサは、やがてその違和感に気付く。

「貴方様は、本当に『悪』ですか?」

 問いた。簡潔ながらも、その“核心”を貫く問いに、大軍師の声音が歪んだ気がした。
「ああ、悪だとも。少なくとも、化物と断じたキミよりは、否定するまでもなく『悪』だろう」
「……そうですか」
 ぐっ、と両足に力を込める。彼は“悪”か。
 列車の屋根を蹴る。同時に、スパヰ甲冑のマントが翻った。
 赤き星と、黒き月が激突する。
ユーベルコード【壊(シャッテン・ヴェト)】。
 隕石が降り注ぐような衝撃波の音が中空に弾け飛び、余波を伴って列車を揺らした。脱線するぎりぎりのところで踏みとどまった列車の屋根の上に再び降り立って、傷に塗れた頬にアズサは手を置いた。
 スパヰ甲冑の力の余波によって頬が切れたが、その激突の結果は明白だった。スパヰ甲冑の片腕の機関砲が沈黙し、黒い煙を上げている。
「……坊や。キミが、私を捕まえようと此処に来た意志と決意は、誰かによるものかね?」
「……いえ。違います」
 そうだ、と。アズサは気付く。悪意を憎む者が誰かの悪意になってしまう。だが、目の前にいる男は、『悪意』であろうと努力し、しかしその仮面を拭うことが出来ないでいる。
 確信と共に、
「貴方様をただ『悪』だと断じることはできません。それは、駄目だと…どうしてか思うのです」
「……そうか」
 そうか、と二度呟いて。スパヰ甲冑から響き渡る声音は、弱々しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

黒田…
貴様の目論見に利用されるのは御免被る…
その身に纏う甲冑を打ち砕き引きずり出してやる…!

仮面を被り真の姿に変身

[オーラ防御と電撃耐性]を身に纏い
ビーム攻撃を鉄塊剣での[武器受け]で防ごう

【ゲヘナ・フレイム】を発動させて飛翔し敵を[追跡]し
[空中戦]へ移行しよう

[残像]を発生させながら敵の攻撃を躱しつつ
鉄塊剣と妖刀を抜き敵へ突進
[なぎ払いと2回攻撃]でマントと手足を[部位破壊し体勢を崩そう]

そして天高く飛び急降下して
敵を蹴り[吹き飛ばし]て雪原へ墜落させよう

墜落した敵纏う甲冑を[怪力と鎧砕き]で
装甲を引き剥がし、搭乗する黒田を掴み引きずり出したら
殴りつけ気絶させ[捕縛]しよう…!



 吹雪が、黒衣から迸る火炎の渦によって蒸発する。放熱を受けて、源一郎の乗るスパヰ甲冑が軋んだ。
「……炎獄の死神といった様相だな、お嬢さん」
「黒田……貴様の目論見に利用されるのは御免被る……」
 仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)の姿は、普段の黒衣とはまた違ったものとなっている。黒と赤、周囲に迸る赤熱はアンナを覆い、鉄の処女をモチーフにした大剣『錆色の乙女』が、スパヰ甲冑に突き付けられた。
「その身に纏う甲冑を打ち砕き引きずり出してやる……!」
 仮面の奥で、アンナの瞳は処刑人の覚悟に満ちていた。源一郎の口から、息が漏れる。
「ふ……全く、猟兵とは度し難い……。私の策謀を打ち破るほどの熱量だな……ッ!!」
 スパヰ甲冑のマントが翻る。同時に、アンナの体を裂くように、地獄の火焔が迸った。両者が同時に飛翔、スパヰ甲冑から発せられるビームを、アンナは【ゲヘナ・フレイム】による機動力によって見事に躱していった。
 天空での激突。錆色の乙女とスパヰ甲冑の片腕が拮抗した。火花と火焔がスパヰ甲冑の片腕を溶かしていくが、その目が放たれたビームがアンナの仮面へと向けられる。
 恐るべき、反射神経だった。ビームが発せられるとほぼ同時に、アンナの首が真横に傾く。本来存在するはずだった頭はそこにはなく、ビームは吹雪の空へと消えていく。もう片方の大剣が振るわれ、炎熱の束がスパヰ甲冑を貫いた―――!

 それはまるで、火竜のブレスの如き、熱の束。

 スパヰ甲冑が衝撃に備えて両腕を掲げていたが、

「―――むう……ッ!!」

 頭上から、衝撃。その機動力は、アンナが『処刑人』である故の覚悟の具現だった。地面に叩きつけられるほんの数センチで踏みとどまったが、すでにアンナはスパヰ甲冑の装甲を捉えている。
 べきり、と装甲が剥がれ落ちた。その先にいる源一郎の目が驚きに見開かれている。
「言ったはずだ、黒田……!貴様を引きずり出してやると……!」
 アンナの片腕が振るわれたが、源一郎の操縦技術は凄まじかった。自分の体を顧みない、高速回転によってアンナを振り払うと、再び飛翔する。
 類まれなる運動神経によって列車の屋根の上に戻ってきたアンナが、装甲の剥がれたスパヰ甲冑、その中にいる源一郎を睨みつけた。
「……ハハハ!いやはや、お見事だ、美しき死神。未知数たる戦闘能力、それこそ、私の策謀を揺らがせる……!」
 ふっ、と源一郎の視線が下を向いた。
「……キミのような決意と覚悟に満ちた者が、他にもいるのだろう。私の役目は……そろそろ終わりのようだ」
 そんな、小さな言葉が紡がれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀
【PPP】
【行動1】『オトモ』達に、戦死した友人さんの霊を呼びに行かせます。

友人さんは、大軍師いわく、お人好しな性分の方だったんですね。

本来、今の大軍師さんを止めるのは其の友人さんの勤めなのでしょうが、残念ながら、亡くなられているという事なので、精神的にブレエキが効いて無い様にも御見受けします。

自分という猟兵は、大軍師さんの狙い通りに踊らされている様で、悔しく思いますが、さしあたって物理的に御止めいたしましょう。(オトモが戻るまで時間を稼ぎます)

UCは、千切り糸の結界で、姿を消しても、範囲攻撃の弾幕撃ちで、攻撃。

【行動2】友人の霊が迎えられたら、からくり人形に降霊して、大軍師を説得してもらう。


アリシア・マクリントック
【PPP】
あの機関砲が厄介ですね……それならばこのシラハ・スナイパーガンで!銃口もしくは放熱穴を狙って狙撃します。透明化にはセンリガン・ゴーグルの熱源探知で対応します。
射撃を繰り返しながらより狙いやすい位置を探して移動しているうちにうっかり列車から落下、あえなくリタイア
……したように見えたのはゲンジュツ・プロジェクターが作り出した幻影。本物はカミカクシ・クロスで姿を隠し、すきを見て敵に取り付きます!接近してしまえばこちらのもの。こちらのインビジブル・マンは一人だけではないのですよ!
外見的にも関節部が弱点のはず……隙間へナイフを突き立ててやりましょう。状況次第ではマントを切り裂くのもいいですね。


シャルロット・シフファート
【PPP】
いい加減にしなさいこのスタコン!
そんなに悪夢に、無念に苦しめられているなら...
私が引っ張って、目を覚まさせて上げるわ!

ユーベルコード起動。
戦場一帯がオブリビオンのみを滅ぼす四大元素で構築された迷宮となり、スパイ甲冑『のみ』を四大が滅ぼしていく。
そこに【絶対四元軍旗】を水属性の粉雪で出来た旗槍にしてスパイ甲冑の胸部に突き立てるわ。

「目を覚ましなさい!本来の立場は私のような子供をアンタのような大人が悪夢から叩き起こすモノでしょうが!」


天玲寺・夢彩
【PPP】
…ああ、もう!
私はあの頑固な大軍師に後で思いっきり、平手打ちしてやるだよ!!

みんなのサポートや結界術を応用して空間に透明の壁を作って妨害・誘導しようと思うの。
どんなに早く飛んでいても妨害や他の攻撃があれば速さは落ちるし隙も出きると思う。

スパイ甲冑の体勢が少しでも崩れたらタイミング計って相手に飛び乗る又は結界の足場を使いのち飛び上がってUCで破壊するよ。

今の黒田源一郎は御友人の死どころが、託した大切な想いまで台無しにしてるんだよ!

【アドリブ大歓迎】



 すでにスパヰ甲冑は黒と白の煙をあげて、今にも墜落しそうになっている。それでも、源一郎の操縦桿は握られたままだ。
「いい加減にしなさいこのスタコン!そんなに悪夢に、無念に苦しめられているなら...私が引っ張って、目を覚まさせて上げるわ!」
 吹雪の中声を張り上げたのは、シャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)だ。気の強そうな瞳をスパヰ甲冑に乗り込んでいる源一郎に向けて、その指先を突き付けた。
「それは恐ろしいな。だが……私はこの激闘を最後までやりきらねばならん」
 じわり、とスパヰ甲冑が迷彩に包まれる。列車の上で、覚悟を秘めて別の猟兵の口が開かれる。
「…ああ、もう!私はあの頑固な大軍師に後で思いっきり、平手打ちしてやるだよ!!」
 もはや、説得は不可能。天玲寺・夢彩(春の大嵐少女・f22531)が両腕を掲げて、結界術を展開する。
 四方八方から、連続した発砲音。超高速で動き回るスパヰ甲冑だが、それに対応して攻撃を回避したのは。
「あの機関砲が厄介ですね……それならばこのシラハ・スナイパーガンで!」
 マリシテンアーマーに身を包んでいるアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)が、『シラハ・スナイパーガン』を構えて透明になっているスパヰ甲冑へその銃口を向けた。
『センリガン・ゴーグル』による熱源探知は、明瞭にその機体を炙り出す。周囲を薙ぐような吹雪の中、その熱を隠すことなど不可能だ。
 スナイパーガンから銃弾が撃ち放たれた。しかし、源一郎もその行動を読んでいる。
「―――頭を捻るだけが、私の得意分野ではないのだよ、お嬢さん!」
 ひらり、と宙を舞い、反撃とばかりに機関砲を連射する。その攻撃を素晴らしい身のこなしで回避したアリシアだったが。
「……!?」
 列車の屋根の上は狭い。ずるり、と足がそこから放り出された。そのまま戦場から姿を消した少女に、源一郎はため息をつく。
「まずは一人、というところかね?」
 ぎちり、と源一郎の周辺の空間が揺らいだ。その異常を感知したのは、“大軍師”故か。
夢彩の結界術が、周辺の空間に透明の壁を創り出したのだ。四方を囲まれる前に離脱した源一郎は、次に起こる異変に眉を顰めた。
「なんだ……?」

「四天に熾天を捧げ、災いもたらす愚鈍と無感動を砕くは理解と慈悲を奉じるが為、此処に聖閃を形にしよう」

 詠唱は、全てを滅ぼす迷宮を形成する。空に拡散するように、大空に立体的な元素の迷宮ができあがる。
【罪深き咎神に滅びを捧げよ熾天迷宮葬送曲(フォールブリンガー・オブ・メルカバー)】と呼ばれるそれは、オブリビオンに纏わる事象を滅ぼす四大元素の迷宮だ。
 源一郎はともかく、スパヰ甲冑はただでは済まない。機体が、酸に溶かされるように削られていく。
 目を見開いた源一郎は、飛来したその攻撃を見切ることは出来なかった。
 『絶対四元軍旗』。シャルロットが持つ、四大元素の属性武装だ。
 旗槍がスパヰ甲冑の胸部に突き刺さり、その行動を阻害する―――!
「目を覚ましなさい!本来の立場は私のような子供をアンタのような大人が悪夢から叩き起こすモノでしょうが!」
「―――!!」
 目を瞠ったのは、二度目。四元素の迷宮の奥から現れた猟兵は、二人。
「なんだと……キミは先程、列車の上から……!」
「いいえ、あれはゲンジュツ・プロジェクターが作り出した幻影です!こちらのインビジブル・マンは一人だけではないのですよ!」
「今の黒田源一郎は御友人の死どころが、託した大切な想いまで台無しにしてるんだよ!」
 アリシアと、夢彩が交差する。
【シノビ・アサシネイト】による、短剣の必殺攻撃。ついで、【桜嵐】による桜霊刀の必殺の一撃がスパヰ甲冑に叩き込まれた。
 迸った閃光は、スパヰ甲冑の心臓部を穿ち―――追撃は、光の束。
 見れば、着物を着た妖狐の猟兵、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)の周囲に、無数の輝きが収束している。
「自分という猟兵は、大軍師さんの狙い通りに踊らされている様で、悔しく思いますが、さしあたって物理的に御止めいたしましょう」
 両腕が広げられる。飛び散ったのは、光の粒子。【千切り糸の結界】がスパヰ甲冑を取り囲み、包囲攻撃を開始する。鋼鉄さえも斬り裂く光の糸によってたちまち甲冑は裁断され―――とうとうスパヰ甲冑は沈黙した。
 落下したスパヰ甲冑は列車の屋根に横たわり、火花をあげた。そこから抜け出すように、源一郎が這い出てくる。
「……これ、は。私の、負けのようだ、な……」
 小さく呟いて、煤に塗れた頬を拭った。佇む猟兵たち、その中の一人、雲雀が歩み寄る。
「……友人さんは、お人好しな性分の方だったんですね」
「……」
「皆さんのおかげで時間を稼ぐことが出来ました」
「なに……?」
 雲雀の後ろから、からくり人形が現れる。源一郎を見下ろすように、小さくその口から声が漏れた。

―――本当に、変わらないなぁ、源一郎。

 大軍師はその目を大きく見開く。聴こえてきた声音と、その口調。聞き覚えがあった。
「……お前、か。そう、か……」
 ふぅ、と小さく息を吐いて。帽子を縫いで、その場にあぐらを掻く。佇むからくり人形に再び視線を向けた。
「……完敗だ。素直に降伏するよ。猟兵諸君」



「まさか、私の友人の魂を降霊させるとはね。猟兵の力とは未知数だな」
 止まった列車、どよめきが起こる車両を隔てて、猟兵と源一郎が静寂の満ちる車両の中で向かい合う。
「さて……私を捕縛しないのは、訊きたいことがあるからかね?」
 危険性はないし、逃亡もしないだろう、と。黒髪の少年猟兵(f24293)が猟兵たちに促したのだ。席に座って長く息を吐いた源一郎は、猟兵たちの“問い”に答える。
「まあ、キミ達が思っていることはほぼ正しい。この戦いに私の勝敗は関係なかった。私が成したかったのは、友の汚名を晴らすこと。それだけだったのだ」
 机の上に置かれた懐中時計は、激戦によってその機能を完全に失っている。
「猟兵という、絶対的な存在に、私の願いを知らせる必要があった。激闘を繰り広げ、捕縛され……なぜ“大軍師”がこんな凶行に走ったのかを、もみ消せないほどに拡散させる必要があったのだ」
「……おじ様は、帝都に住む人たちに絶望を見せたいんだよねっ?」
 金髪のポニーテールの猟兵(f05152)が、悲しそうにそう言った。だが、源一郎はにこりと微笑む。
「ハハハ、わたしのハッタリは未だ健在のようだ。策というのはね、真実と嘘を織り交ぜることでこそ完成する。確かに、民衆たちへ思う所はある……しかし、先程言った通り、私が第一に成したかったのは“友の汚名を晴らすこと”だ」
 小さくまた息を吐いて、源一郎は言葉を続ける。
「マスコミたちは、私の凶行の理由を情報操作できないだろう。もしそれをすれば、超弩級戦力である猟兵たちに目をつけられる。そして、もみ消せなければ……過去の情報操作を明るみに出すしかない。将棋でよく言うだろう?王手飛車取り、というやつだ」
「……でも、貴方が捕まったとなれば、幻朧戦線は活発化すると思うわよ」
 強い視線を込めて、金髪の縦ロールのツインテールの猟兵(f23708)が腕を組みながらそう言った。
「何を言っている。キミ達がいるだろう。幻朧戦線の策略に負けぬ、覚悟を持った者たち……超弩級戦力、猟兵たちがな」
 そう言うと、黒衣に身を包んだ猟兵(f09978)に視線を向けた。
「でも、帝都桜學府の信用が落ちちゃうし、帝都中が大混乱になっちゃうよ?」
 同じ學徒兵でもある猟兵(f22531)が、心配そうな表情を浮かべていた。それを見て、源一郎がまたにこり、と微笑む。
「それなら……キミ達に選択肢を与えよう。アタッシュケースの中を見てみなさい」
 アタッシュケースを開けてみれば、例の暗号書がしまわれている。それを机の上に置くと、源一郎が二つに分けた。
「ここに、二つの暗号書がある。一つは、帝都桜學府が使用する本物の暗号解読書、そしてもう一つは、偽物の暗号解読書だ」
 とん、と指先を叩く。
「憲兵に証拠品としてどちらかを提出し、どちらかを処分する。もし本物の暗号解読書を処分すれば、私は“幻朧戦線に偽の暗号書を拡散させようとし、その活動を阻害しようとした者”として扱われるだろう。帝都桜學府へのパッシングもある程度は沈静化する。しかし偽物の暗号解読書を処分すれば……」
 ふむ、と小さく頷いて、猟兵に選択を促した。
「選んでくれたまえ。私は、自らの罪を真摯に償うつもりだ。もちろん、幻朧戦線に関わったことの情報全てを憲兵に話す。キミたちの選択に委ねよう」
 腰に浅く腰掛けて、源一郎は帽子を深く被りこんだ。
「……ああ、そうだ」
 と、そこで黒髪の小さな猟兵に、源一郎が目を向けた。
「坊や、年長者として一つだけアドバイスしておこう。キミがここに来たのは誰でもない、キミ自身の意志だ。それは、揺らぐことのない “キミのもの”でもある」
 そうして、源一郎は帽子を脱ぐと、その猟兵の頭に被せた。
「常に考え続けたまえ。なにが正しく、なにが間違いなのかを。そうすれば、キミの世界はもっと広がるだろう」
 にこり、と優しく微笑んで。
「それは選別だ。年寄りの持ち物だが、気に入らなければ捨ててくれて構わん」
 さて、と再び全ての猟兵たちに向き合った。

 猟兵たちが、暗号書に手を伸ばす。どちらを選んだのか―――。情報がそこで閉ざされたため、結果は、分からない。

 しかし、少なくとも……幻朧戦線を追い詰める一つの要因になったことは、確かだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月09日


挿絵イラスト