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スパヰ特急(作者 夕陽
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●シベリア超特急にて
 ぱち、ぱち、と懐中時計の蓋が何度も開閉する音。チェスボードに視線を落として深く思考する色黒の初老の男が、脳内で戦局の流れを読み取っていく。
 そして、ぱちん、と懐中時計の蓋を閉めて。
「チェックメイト」
 クイーンが移動したチェスボード。顎髭を蓄えた男が、目の前の将校の青年に詰みを突きつける。
 むむ、と将校の青年が腕組みをしながら盤面をじっと見下ろすが、すでにどうすることもできない状況だった。このままゲームを進めても自分が負けてしまうことが分かったのだろう。小さく息を吐くと、目の前の男にぺこりとお辞儀をした。
「完敗でございます。流石は大軍師と呼ばれたお方、非才である私では源一郎殿の策謀を打ち破ることはできません」
「ハハハ、謙遜しないでくれたまえ。ぎりぎりの勝負だった、気を抜けば私が負けていたよ」
 革のアタッシュケースと中折帽、茶褐色のコートを纏めると、その場から立ち上がった。
「それで……つかぬことをお聞き致しますが。源一郎殿、シベリア超特急に、本日はどのようなご用事で?」
「ふふ、何、しがない老人の一人旅といったところだよ」
 青年から遠ざかり、懐中時計を確認する。扉を開けて、別の車両へ移動した。その背中を見つめた後、将校の青年が感嘆混じりの声を漏らす。
「よもや、帝都桜學府の有名人と一局交えることができるとは……私は運がいい」
 しかし、青年将校は気付かない。
 帝都桜學府幹部『黒田・源一郎』が、警戒するような視線を向けていたことに。

●暗躍する影
「……グラッジ弾に影朧兵器、そして籠絡ラムプ……無数の影朧兵器を投入する幻朧戦線だけど……皆もそろそろ不思議に思っている頃だと思うわ。彼らの資金はどこから来てるのか、そしてなぜ緻密な行動と作戦を可能にできているのか」
 万象・穹(境界の白鴉・f23857)が、集った猟兵たちにそう言った。
 いくら幻朧戦線といえども、共通した思想に結びつく者たちだけで、緻密なテロ行為が可能とは到底思えない。
「調査を進めて、あることが分かったの。……幻朧戦線には、加担する者がいるみたい。黒い首輪をつけていない、一般市民に紛れた協力者……スパイが」
 白の鴉羽が宙を舞うと、魔法によって映像が投影される。サクラミラージュ、露西亜のシベリアと欧州を横断する鉄道『シベリア超特急』だ。
「……幻朧戦線に資金と情報を提供しているだろう人間について調査が完了しているわ。名前は『黒田・源一郎』、帝都桜學府に所属している幹部の一人よ」
 映像が書き換わると、そこに顎髭を蓄えた色黒の初老の男の姿が投影された。年齢は五十を超えているというのに、肉体は筋骨隆々で、身を包んだ旅の服装でも分かるほどのガタイの良さだった。
「源一郎はシベリア行きのシベリア超特急に乗っているの。……一人旅、って言ってるけど、いくらなんでも怪しすぎるわ」
 ぶわり、と白の鴉羽が中空を舞うと、映像が途切れた。
「皆には、同様にシベリア超特急に乗車してもらって、彼がスパイである証拠を探し出して欲しいの。……だけど、猟兵だとバレないようにお願い。後ろから近づいて攻撃、気絶させる、というのはあまり現実的じゃないわ」
 帝都桜學府幹部の幹部の一人、戦闘においては、猟兵にも負けず劣らずだろう。
 つまり、重要なのは『スパイかどうかを探る者だとバレない』ということ。そして、源一郎に近づき何かしらの探りを入れることでスパイであることの証拠を探し出す。
「帝都桜學府幹部の幹部故に、簡単なユーベルコードを使えるみたい。源一郎に身分を偽って近づく、その手荷物を調べる。色々なやり方があるわ」
 席を外した際に源一郎の手荷物を探ったり、シベリア超特急内の源一郎の部屋を探ったり……そのやり方は猟兵たちに任される。
 鴉羽が宙を舞う。転移を開始した猟兵に、穹は告げた。
「帝都桜學府に所属する人がスパイだなんて考えたくはなかったけど……サクラミラージュの安寧のため、これは必要なことよ。皆、頼んだわ」
 転移先はシベリア超特急の中。源一郎の目的を探り、スパイだった場合は……速やかに捕らえなくてはいけない。





第3章 ボス戦 『スパヰ甲冑』

POW ●モヲド・零零弐
【マントを翻して高速飛翔形態】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【目からのビーム】を放ち続ける。
SPD ●影朧機関砲
レベル分の1秒で【両腕に装着された機関砲】を発射できる。
WIZ ●スパヰ迷彩
自身と自身の装備、【搭乗している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「スパヰ甲冑を潜ませていた甲斐があったようだ」
 針葉樹生い茂る平原を突き抜ける列車を追いかけるように、スパヰ甲冑は飛翔する。猟兵たちが集った車両の屋根を見下ろす形で、源一郎はスパヰ甲冑を自由自在に操作していた。
「ここは撤退を……と言いたいところだが、超弩級戦力のキミ達だ。如何に私が逃亡しようと、必ず見つけ出すだろう。よって……」
 じゃき、と片腕の機関砲が突き付けられた。
「キミ達をここで始末し、終わりにする。さあ、吹雪舞う死闘といこうか、猟兵諸君!」
 源一郎の覇気。それは猟兵たちを抹殺する覚悟に満ちている。
 『幻朧戦線ではなく、キミ達を利用する。』そう呟いた源一郎の真意は不明だが、旅客車両にいる乗客たちを巻き込むわけにはいかない。
 猟兵たちは武器を構える。目標はスパヰ甲冑の撃破……そして、源一郎の捕縛だ。