●
絡み取り、そして捉える蜘蛛の糸。
突如現れたそれらはカクリヨファンタズムを白の世界に染め上げた。
カサカサ、カサカサ、と聞こえてくるのは小さな足音。不気味なその足音に気づかれないように妖怪たちは静かに息を潜めている。
そんな死んだような白い世界の中で、風景から浮かび上がるような艶やかな暗色の恰好をした少女が1人。
そんな彼女は世界に挑みかかるようにこう言った。
「妾は失ったものを取り戻す。必ず、必ずじゃ」
●
「さて、毎度毎度のことながら、大事件です。いえ、今回の場合は大事件という言葉に収まるかどうかは疑問に思いますが」
未・明(東方妖怪のレトロウィザード・f28408)は猟兵たちへ温度のない声でそう告げた。
自らの過去を失っている彼は今日も過去の断片を探すべく、多くの事件に顔を出す。今日もまた、その目的を果たすために猟兵たちの前に現れた。
「この度、事件が起きますのはカクリヨファンタズムとなります。とはいえ、此処まで聞けば『あぁ、いつも通りの事件だ』とお思いになりますでしょう。ですが、此度の事件が異常なのはその規模がカクリヨファンタズム全体であるということです」
つまり、
「早くしなければ、カクリヨファンタズムそのものが崩壊するでしょう。皆様には急ぎ、事件を解決していただなければなりません」
最たる問題はといえば、それがどのような事件なのかという点だろう。未・明は温度のない声とは裏腹に火急の危機を言葉にした。
「此度の事件を端的に表すならばこうでしょう。『蜘蛛糸満つる世界』と。すなわちカクリヨファンタズムが蜘蛛の巣に覆われてしまったのです」
カクリヨファンタズム全てを覆いつくす蜘蛛の巣。考えるまでもなく明らかな異常事態だった。
「原因には間違いなく蜘蛛の形質を持つ骸魂、つまりオブリビオンが関わっているでしょう。皆様にはそれを討伐していただきます」
とはいえ、そんなわかり切った黒幕の正体を告げられたところで意味がない。水先案内人の役目は人を導くこと。導かれる側が推測できるものを提示するだけでは存在価値は無に等しい。
故に未・明は更に言葉つづける。
「事件調査のとっかかりとして提示できるのは、カクリヨファンタズム中に蜘蛛の巣が現れた後に妖怪が行方知れずとなっていることでしょう。蜘蛛の巣の出現と行方不明の妖怪。この両者が同時に起こっている以上、無関係とは考えにくいと思います」
第一目標が提示された。行方不明となった妖怪の探索。まずはここから事件を探るべきだろう。
だが、状況は混迷を極めている。痕跡を探し回るにしろ、術や使い魔で手がかりを探すにしろ、行方知れずとなった妖怪を追うのは困難だろう。もしかしたら妨害があるかもしれない。カクリヨファンタズムの妖怪は猟兵に好意的だから聞き込みという手段もあるが、とはいえ状況が状況だ。やはり障害があることを考えた方が良い。
そして気を付けなければならないことが1つある。
「注意していただきたいのは、何故事件の首魁が妖怪を攫ったのかという点です。物事には理由がある。その点は決してお忘れなく」
未・明は言葉を濁す。真相を隠しているのか、あるいは本当に知らないのかは彼の態度からはわからない。どちらともそう取れる以上、分かる事実を飲み込むしかない。
つまり行方不明となった妖怪は敵に利用されている可能性があるということだ。
「さて、それでは情報を整理しましょうか。最終目標はカクリヨファンタズムを蜘蛛糸に満ちる世界へと変えてしまった元凶の討伐。そして、その元凶へ近づくために蜘蛛糸が発生したと同時に起きた妖怪が行方不明になった事件をまずは調査してください。妨害や障障害が立ちふさがることをゆめゆめお忘れなきよう。十分にお気をつけて、ご参加ください」
さぁ、全ての情報は出揃った。思考を回せ、覚悟を決めろ。自らの力と知恵、そして技で以て未曽有の災害に襲われたカクリヨファンタズムを救い出せ。
MR2
はじめまして、新人マスターのMR2です。まだまだ不慣れな部分が多いですが、頑張ります。
さて、今回はカクリヨファンタズムの事件です。蜘蛛の巣だらけのカクリヨファンタズムを救い出してください。
第1章は冒険パート。行方不明となった妖怪を探していただきます。その最中、ボスの手駒による妨害が入るかもしれないので、探索中に妨害があった場合の対処法をお考えください。
第2章は集団戦。ボスが用意した敵対者用のオブリビオンとの戦闘になります。
第3章はボス戦。ボスとの戦闘です。ボスとのやり取りをご用意しますので、ボスに対する言葉を考えていただくことになります。
以上が本シナリオの概要となります。皆様の参加をお待ちしております。
第1章 冒険
『消えた妖怪の行方を追え』
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POW : 足を使って探し回る
SPD : 聞き込みなどで手がかりを探す
WIZ : 術や使い魔で跡を辿る
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メグレス・ラットマリッジ
アドリブ歓迎
何はともあれ、まずは情報を集めます
いなくなった妖怪について詳しいであろう親族や友人にお話を伺いましょう(礼儀作法)
近頃、痴情のもつれで大事件の報せをよく耳にします
世界を天秤にかけるとはけしからぬ話ではありますが私も乙女一度でいいからそういう愛憎劇を繰り広げてみたいですねうんうん
(自分語りから正気に戻って)……そういうことなので、色恋関係のお話があれば是非!
収穫があれば次はそれの関係者に……という具合で情報の糸を手繰ります
襲撃は移動手段でもあるUCで轢きます、殺意と質量を勢いに乗せて轢きます
誰も見ていなければ黙々と、そうでなければ良くない印象を持たれないように振舞いたいですね
「何はともあれ、まずは情報を集めましょうか」
メグレス・ラットマリッジは蜘蛛の巣に染め上げられた白い世界で1人呟く。
カクリヨファンタズムを崩壊させかねない事件だが、それでも調査の基本の基本は抑えていく。
(近頃、痴情のもつれが原因にある大事件の報せをよく耳にします。今回の大事件も色恋にまつわるものだと個人的には盛り上がりますが!)
そんなことを思いつつ、彼女が着目したのは行方不明となった妖怪たちの近しい者たちだ。
「いなくなった妖怪について詳しいであろう親族や友人にお話しを伺いましょう」
蜘蛛の糸をよけながら、そして時にぶちぶちと引きちぎりながら、彼女は集落を目指す。
「どなたかいらっしゃいますか?」
辿り着いたとある家屋の木製の引き戸を優しく叩き、彼女は住人に呼びかけた。
すると、恐る恐るといった様子で顔を出したのは頭に小さな角が生えた少女――鬼の少女だった。突然の見慣れぬ来訪者に少女は怯えながらも、こう問うた。
「………一体どちら様でしょうか?」
「そんなに怯えなくてもよろしいですよー。私はグリモア猟兵のメグレス・ラットマリッジと申します。ひとつ、お聞きしたいことがございますの」
「グリモア猟兵……!えっと、はいっ、何なりとっ」
「肩の力をお抜きになって。さて、それで聞きたいことというのは行方不明となった妖怪についてのことなのです。あなたの近しい人でいなくなった方はいらっしゃいますか?」
メグレスの問いを聞いた途端、鬼の少女の顔が曇る。
それはつまり、心当たりがあるということだ。鬼の少女は沈んだ声で言葉を紡ぐ。
「えっと、はい。実は弟がもう随分と帰ってなくて…。何とか手に入れた情報ですと、連れ去られた妖怪はここから少し遠いところにある廃神社に連れ去られているようなのです」
「それは誰に、いえこの場合は『何に』とお聞きする方が正確でしょうか?」
「えっと、噂によれば連れ去ったのは子g――?!」
言葉の途中で突然、鬼の少女の顔が恐怖で引きつり、声は裏返った。
理由はメグレスにもわかってる。彼女の背後に現れた犬くらいの大きさを持つ蜘蛛の集団だ。
蜘蛛は蜘蛛の巣に獲物がかかったことを獲物がもがく振動で察知するという。おそらく、この蜘蛛と呼ぶにはあまりに巨大すぎる蜘蛛たちはメグレスが蜘蛛の巣を引きちぎったときの振動を頼りに彼女の所在を突き止めたのだ。
「これが先に言われていた妨害というやつですか。あのちなみに廃神社はどちらにあるのですか?」
「ここら北西に行ったところです。って、そんな呑気に話をしている場合じゃないでしょう!」
鬼の少女は反射的にメグレスを家屋に引き込もうとする。彼女なりの善意でそうしてくれているのだろう。だが、それは無用な善意である。だってメグレスはこの世界を救いにきたグリモア猟兵なのだから。
「下がっていてくださいね。近くにいると少々危ないです」
きょとんとする鬼の少女を尻目に、彼女は自らの力を解放した。
「『偉大なる冥府の王よ、暗がりに眠る指輪への道を示し給え』」
ユーベルコード、サモニング・ガイスト。メグレスの身長の2倍ほどもある【鎧を纏った軍馬の亡霊】が現れた。彼女はそれに慣れた様子でまたがる。
(本当は誰も見ていないところの方が良かったのですけど)
そんな不満を胸に抱き、彼女は獰猛な表情を浮かべて敵を睨む。
「っと、その前に」
大事なことを思い出した。メグレスは両手で頬を揉みしだき、柔和に微笑みながらぽかんとしている鬼の少女にこう言う。
「情報提供、感謝いたします。ありがとうございました」
「……どういたしまして?」
情報過多で茫然としている鬼の少女は空返事を返してきた。おそらく伝わってないが、言わないよりは良いだろう。
最低限の礼儀を果たし、メグレスは軍馬の亡霊の手綱をしっかり握りなおす。
そして凄絶にこう言った。
「さぁ、行きましょうか!」
メグレスが巨大な軍馬の亡霊の腹を足で軽く蹴る。軍馬の亡霊は勇ましく嘶き、駆けだした。そして一歩踏み出すと同時にその質量で以て蜘蛛を踏み殺す。
「この程度なら、このサモニング・ガイストの敵ではないですねっ」
故にメグレスに躊躇いはなく、蜘蛛を踏みつぶしながら進む。ついでに邪魔な蜘蛛の巣も派手に引きちぎり、自らの存在を敵に誇示しながら。
(私に注意を引き寄せれば、あの鬼の少女は捨て置かれるでしょうし)
メグレスが見つかったということは共にいた鬼の少女も見つかったということ。ならば彼女が蜘蛛の脅威にさらされないようにしなければならないだろう。蜘蛛の巣を派手に引きちぎるのそのためだ。
(よくない印象を持たれたくはないですからね!)
そう心中で前向きに意気込むと、メグレスは進む速度を跳ね上げた。
目指すは北西。迫りくる蜘蛛と蜘蛛の巣を圧倒的な質量と明確な殺意で以て轢きつぶしながら、彼女は行方不明となった妖怪の跡を追う。
大成功
🔵🔵🔵
アマネク・アラニェ
アドリブ・連携OK
【WIZ】
アラー、これはまた盛大な巣/狩場ね。
相当腹ペコなのか何らかの儀式の生贄なのか……
いずれにしろ放ってはおけないわね。
巣の持ち主の近くに獲物/攫われた妖怪がいると思うから、
その居場所を探すわ。
とはいえ、蜘蛛の巣だらけの状況でアタシが歩き回ったら
妖怪たちが怖がるかもしれないし、
この【地形の利用】して手っ取り早くいくわよ。
周囲に一般妖怪がいないことを確認、
『寄眼』を呼び出した上で手近な巣を揺らす。
これで相手の手駒を【おびき寄せ】て、
そいつらがどこから来てるのか足取りを逆に『寄眼』に
【追跡】させて【情報収集】を試みるわ。
襲ってくる手駒自体はUC『機蛛縦横』で迎撃よ。
カクリヨファンタズムに1人の女が来訪した。
「アラー、これはまた盛大な巣/狩場ね。相当腹ペコなのか何らかの儀式の生贄なのか……いずれにしろ放ってはおけないわね」
その女はグリモア猟兵アマネク・アラニェ(ユビキタス・アラニェ・f17023)。蜘蛛の糸に支配されたカクリヨファンタズムを救うために彼女は此処にやってきた。
とりあえずの第一目標は何者かによって攫われた妖怪の捜索だ。攫われた妖怪の近くには巣の持ち主がいるだろうとあたりをつけ、彼女は巣の持ち主を探すことで攫われた妖怪の居場所を突き止めるつもりであった。
「とはいえ、蜘蛛の巣だらけの状況でアタシが歩き回ったら妖怪たちが怖がるかもしれないし、この地形を利用して手っ取り早くいくわよ」
カクリヨファンタズムの妖怪を怖がらせないように、周囲を確認。集落やら家屋やらが近くにないことを認めると、アマネクは自らの手駒を召喚する。
諜報プログラム:寄眼。彼女が保有するサーチドローンだ。掌大の蜘蛛型情報収集プログラムは誰にも悟られないように情報収集するためには蜘蛛の巣だらけのこの事件での最適解だった。
召喚数は10体。アマネクが召喚し得る最大数である。事件の規模が大きい以上、数を揃えるしかない。
そして自らの手駒を引き連れたアマネクは不敵に笑んだ。
「んふ」
彼女は指先を伸ばし、手近にあった蜘蛛の巣を揺らす。
目的は単純。振動で巣に掛かった獲物を感知する蜘蛛の習性を利用して、敵の手駒をおびき寄せるためだ。
「手駒が、来ましたわね」
カサカサ、カサカサ。聞こえる。妖怪でも、獣でもない無数の足音が。
足音の主は蜘蛛だ。アマネクの存在に勘づいた、蜘蛛と呼ぶにはあまりにも大きい蜘蛛たちである。黒い波となった蜘蛛の群れは敵対者たるアマネクの下へ殺到した。
敵の存在を目視したアマネクは迫る脅威を前にして、あくまで冷静に言葉を紡ぐ。
「四方八方、縦横無尽、いくわよアタシの仔蜘蛛ちゃんたち!」
ユーベルコード、『機蛛縦横』。小型の戦闘用の高機動蜘蛛型機械兵器を彼女は立て続けに召喚する。『機蛛縦横』によって召喚された高機動蜘蛛型機械兵器は一撃で消滅するが、しかしこの兵器の有用性は数にこそある。
『寄眼』の10体どころではない。その総数310体。アマネクの兵隊たちは数で以て、敵の手駒を迎撃する――!
「さぁ、行きますわよぉ」
機械の蜘蛛と生物体の蜘蛛が激突する。どちらも共に波状攻撃。だが、個のスペックは『機蛛縦横』の方が高い。高機動蜘蛛型機械兵器。その名にふさわしく『機蛛縦横』で召喚された兵器群は敵の領域である蜘蛛の巣をアクロバティックに動き回り、敵の群れと激突する。
蜘蛛の爪をはじき、腹を裂き、時に倒されながら、それでもアマネクの兵隊は黒い波を粉砕していった。
あぁ、そしてこの乱戦で敵の手駒は気づいていないのだろう。
自らがおびき寄せられたことこそが彼らの主を追い詰めているということに。
アマネクが召喚した『寄眼』。アマネクのもう1つの10の目たちは世界を白に染め上げた蜘蛛の巣に紛れ、首魁の居場所を探し始めていた。
蜘蛛の足取りを追跡し、分析、情報収集することによって……。
大成功
🔵🔵🔵
スピーリ・ウルプタス
「一度、蜘蛛の糸でがんじがらめになってみたかったのですよね。
どうでしょうフジ様、是非私を囮にしてみるのは…おや、駄目ですか」
UCによる召喚大蛇にぷるぷると首を振られ、潔く諦め。
我慢も焦らしプレイと受け入れる変人
では、と大蛇の嗅覚(舌を出す事で空気の匂いや味把握)に頼ってみる。
攫われた妖怪たちの当時の痕跡や、まさに攫われたばかりな現場があればそこで攫った方角を調べる
襲撃されれば
「フジ様の尾ビンタは貴重ですよ。私が代わって欲しいくらいです!」
とぐろに巻かれ守られつつ自身も応戦。本体(禁書)で殴ったり
住人や住処に被害が出ぬようひたすら防戦
「ふむ、蜘蛛の子を散らすとはまさに。辿ってみましょうか」
蜘蛛の糸に覆われたカクリヨファンタズム。突出した異常の最中にあるが、しかしそんな世界にも負けないほど強力な個性を持った男が1人。
肉体を持つことで覚えた感覚の内、『苦痛』に快楽を見出すようになった猟兵スピーリ・ウルプタス(柔和なヤドリ変態ガミ・f29171)だ。快楽主義者たる彼は自らに快楽を与える『苦痛』を得るべく、こんな提案をする。
「一度、蜘蛛の糸でがんじがらめになってみたかったのですよね。どうでしょうフジ様、是非私を囮にしてみるのは…おや、駄目ですか」
しかしユーベルコード『守り蛇』で召喚した、スピーリの身長の倍ほどもある大きさの【淡藤色の大蛇】――フジ様に首をぷるぷると振られ、提案した策を潔く諦めた。
まぁ、潔く諦めたのは我慢も1つの焦らしプレイと考えてる側面が無きにしも非ずなのだが。
とにもかくにも彼は事件解決のために動き出す。
「事前情報によれば行方不明となった妖怪を探すのが事件解決の鍵でしたね。であるならば、彼らの痕跡を探しましょうか」
そうしてやってきたのは、妖怪たちの集落。行方不明となった妖怪の痕跡を探すにはやはり妖怪たちが集中的に住む場所で探すのが最適解だろう。
「ではフジ様、お願いします」
スピーリが頼むと、フジ様は舌を出す。こうすることでフジ様は空気に混じった妖怪の匂いと唾液に溶けた空気を通じて味を把握できる。蛇の嗅覚ともいえる能力を活かして痕跡を探ろうという算段だ。
しばらく集落を1人と1体で歩き回る。そしてとある家屋の前でフジ様が、クイッ、と反応した。
「見つかりましたか」
応じるようにフジ様が頷くと、スピーリを導き始める。どうやら北西の方向へ向かうようだった。
「このまま順調に行ければ良いのですが……そうも言ってはいられないようですね」
北西に向かえば向かうほど、不自然に厚くなる蜘蛛の巣の層。一度壊され、修復したかのように見えるそれらを触れずに進むことはできないだろう。
蜘蛛の巣に触れるということは蜘蛛に居場所を知らせるということ。それはつまり襲撃を受けることと同義である。
「フジ様、気合を入れて参りましょうか」
1人と1体が臨戦態勢に入る。フジ様がスピーリを中心にとぐろを巻き、防御態勢へ。それを確認すると、スピーリは手近にあった蜘蛛の巣を自らの本体――禁書で破いた!
「来ましたよ!」
蜘蛛の巣を伝って現れたのは犬ほどの大きさの蜘蛛。蜘蛛と呼ぶには大きすぎる蜘蛛の群れがスピーリとフジ様の前に現れた。
そして。
「フジ様の尾ビンタは貴重ですよ。私が代わって欲しいくらいです!」
先手必勝と言わんばかりに、フジ様の尾ビンタが1体の蜘蛛を叩き潰した。フジ様が召喚されたことで得られたユーベルコードの力は生命力の共有と互いの戦闘力の強化。故に1人1体のペアは有象無象の蜘蛛の群れに敗北する道理はない。
最初の1体を叩き潰されたことから、蜘蛛たちはフジ様へと殺到する。フジ様はその巨体を利用して、スピーリを守りながら蜘蛛を撃退していく。
噛みつき、尾ビンタ、胴の叩きつけ。蜘蛛は1体、また1体と撃滅されていき、蜘蛛の残骸が辺りに散らばっていく。
「フジ様ばかりが注目を浴びるのは寂しいですね。私にも是非注目してください!」
そして、スピーリも負けじと応戦。フジ様が打ち漏らした蜘蛛たちを彼の本体である禁書でつぶしていく。
そこに快楽を求める欲求があったかどうかは……スピーリにしか分からない。
やがて、蜘蛛たちは一息にとある方向へ撤退し始めた。埒が明かない、とそういう判断があったのだろう。
白い世界に消えゆく蜘蛛達を見て、スピーリは呟く。
「ふむ、蜘蛛の子を散らすとはまさに。辿ってみましょうか」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『龍神片』
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POW : 肉喰(にくはみ)
自身の身体部位ひとつを【大元の龍神もしくは混ざりあった邪神】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD : 龍乱舞
【回避と攻撃が一体となった神速の旧き套路】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 属性撃
【龍神が司っていた属性での攻撃(投射可能)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【をその属性によって染め上げて】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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攫われた妖怪を追って、猟兵たちが辿り着いたのはカクリヨファンタズムに流れ着いたとある廃神社。白い世界に蠢く蜘蛛はなりを潜め、強大な力を持つ龍型のオブリビオンたちが猟兵たちを迎え撃つ。
彼らの名は龍神片。邪神との闘いで大きく傷ついた龍神の骸魂が妖怪たちを取り込んで、化したオブリビオン。彼らが持つ水を司っていた龍神の力は弱いが、それでも元は神の一柱。強大な力の持ち主であることを忘れてはならない。
そして骸魂が取り込んだ妖怪は猟兵たちが探していた行方不明となった妖怪だ。彼らは龍神の力を宿す兵隊となるために此度の事件の首魁によって拉致されたのである。
さて、これより始まるのは本番前の前哨戦。語る言葉はいらない。言葉を交わす必要もない。純粋なる暴力だけが支配する世界へようこそ。己が誇る力で以て、骸魂に呑まれた妖怪たちを救い出せ。
それから、同時に。
誰も知らない場所で響く、迫る【正義の味方】に対する少女の憎悪の声があった。
「誰にも邪魔はさせぬ。奪われなかった恵まれた者になぞ、決して!」
※成功以上で骸魂に呑まれた妖怪を助けることが可能です。提出していただいたリプレイに応じて、プレイングボーナスをつけさせていただきます。リプレイには以下の補足情報を参考にしてください。
・龍神片について
カンフー系の近接格闘戦闘を得意とするオブリビオンとなります。また時に水を司る龍神としての力を用いて水を操った遠距離攻撃を行ってきますが、こちらはそれほど強力な攻撃にはなりません。あくまで牽制や水の目くらましといった補助として用いられるとお考えください。
アマネク・アラニェ
アドリブ・連携OK
(普段はですます口調を使わない)
【POW】
成程、さらった妖怪を兵力に変えてたってわけね。
あいにく浄める系の力はないし、肉弾戦で
骸魂をブットばしていくわよ。
迫ってくる相手の攻撃は【早業】で『砥盾』を貼り、
防ぐことを試みるわ(【オーラ防御】【盾受け】)
ついで『砥盾』の光量を上げて
龍だか邪神だかの頭部への【目つぶし】!
布被ってる顔にも少しは効くと思いたいわね。
怯んだら更に蜘蛛糸をぶつけて目くらまし。
UC『一刻閃蹴』の初撃よ、
当たったらそのまま蹴り飛ばしてやるわ!
こいつらの次はいよいよ親玉、さて鬼が出るか蛇が出るか……
ま、御同類(クモ)が出るわね、きっと。
「成程、さらった妖怪を兵力に変えてたってわけね。あいにく浄める系の力はないし、肉弾戦で骸魂をブットばしていくわよ」
猟兵アマネク・アラニェ(ユビキタス・アラニェ・f17023)は敵を認めるとすぐさま臨戦態勢へ自らを切り替える。
(――来るわね!)
ダンッ、と大きな踏み込み音を立ててアマネクに迫る龍神片は3体。真正面と左右前方の3方向のオブリビオンを認めると、彼女は【早業】で青い光の盾を電脳空間から具現させた。
『防御プログラム:砥盾』。防御のために展開させたそれをアマネクは激しく輝かせて、目つぶしとして活用しようとした。
しかし、相手は顔に布を巻いている。光は布に阻まれて、怯ませることは出来たものの目つぶしとして期待できるほどの効果は得られない。
けれども、怯ませた。その一瞬が彼女の望んだ成果だった。
「いくわよっ!」
『砥盾』が龍神片の腕が変化した龍神の頭に噛み千切られると同時にアマネクは蜘蛛糸を龍神片の顔に投げつける。自らの攻撃と同時に放たれたそれに龍神片は突然の知覚外の異物に思わず動揺した。動揺してしまった。
「足癖が悪くてごめんあそばせ?」
ユーベルコード、一刻閃蹴。文字通り、瞬きの間に放たれる蹴りを初撃を皮切りに連続で敵オブリビオンに叩き込む。
まず犠牲になったのは真正面の龍神片だ。龍神片の腹を蹴り上げ、真上に浮かせると跳躍して、胸に空中回転蹴りを食らわせた。バキ、と踵から嫌な音が足を伝ってくるが、アマネクは拘泥しない。硬い鱗と皮膚にめり込ませる形で足を振りぬくと、風切り音を立てて龍神片が飛んでいくのは左方の龍神片だ。真正面の龍神片に巻き込まれた左方の龍神片は砲弾と化した真正面の龍神片に全身の骨を砕かれ沈黙する。
残るは右方の龍神片。真正面の龍神片を蹴り飛ばした反動で右方の龍神片へまっすぐ向かっていたアマネクは右方の龍神片が僅かに体勢を整え、こちらに右拳を射出したのを見た。
ただ、それでもアマネクは止まらない。
勢いはそのままに。アマネクは拳に向かって、力づくの回転蹴りをぶつけ合わせる。
激突する蹴りと拳。拮抗したその激突はやがてアマネクが押し返し、そして――
「終わりよっ」
――アマネクの蹴りが龍神片の右拳を粉砕する。
片腕をもがれた右方の龍神片はそれでもなおアマネクに食らいつかんとするが、しかし最早彼女の敵ではない。
龍神片の背後に背中合わせに着地したアマネクは流れるように右方の龍神片の頭を回し蹴りで以て砕くのだった。
「こいつらの次はいよいよ親玉、さて鬼が出るか蛇が出るか……ま、御同類(クモ)が出るわね、きっと」
成功
🔵🔵🔴
メグレス・ラットマリッジ
アド歓
ムッ、我が神性センサーに反応アリ! 本能が危険信号を発している!
神様が出てくるなんて聞いてないんですけどー!?
しかし、よく見ると神様なのは外側だけですね。
根競べ、しましょうか。生き汚さじゃあ負けませんよ。
◆戦闘
まずお馬さんは還しておきます
借り物なのに浄化されたら怒られてしまう
腕に覚えがあるとはいえ所詮は人間、真っ向からぶつかりたくはないですね
矢を射掛けて傷を負わせつつ、接近された場合は杖を抜きます
同じ型から繰り出される技は二度目から見切り、防戦を心掛けて大技であるUCを誘います
敵UCは腕を噛ませ、牙を筋肉で締め上げて頭部を捉え
がら空きの顔に拳を思いっきりくれてやりますよ
出現した龍神片たちに思わず猟兵メグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)は戦慄していた。
(ムッ、我が神性センサーに反応アリ! 本能が危険信号を発している!神様が出てくるなんて聞いてないんですけどー!?)
とはいえ、それが外側だけであることを冷静に分析。改めて心を落ち着け、メグレスは戦闘に臨む。
「根競べ、しましょうか。生き汚さじゃあ負けませんよ」
とりあえず、攫われた妖怪を探す際に呼び出した軍馬の亡霊を返還した。あくまで借り物。勝手に浄化されたら、あとで怒られる……。
代わりに取り出したのはロングボウ。矢を番え、龍神片たちへと射かけた。
「腕に覚えはありますが、所詮は人間ですからね。真っ向からぶつかりたくないですね」
矢が飛んでいく。この向けた敵意によって龍神片たちが一斉に『起動する』。
「―――!」
矢が飛ぶ方向に居た2体の龍神片が奔る。メグレスの矢の狙いが定まらないくらいの速さでだ。
(敵オブリビオンの速度を見誤りましたかっ。ですが、まだっ)
当たらなくて構わない、と方針転換。再度、戦闘をデザインし直す。
一矢、二矢、そして三矢。それから何度も何度も何度も。走り、そして跳躍する龍神片に矢は掠りはすれども当たらない。鱗を破り、柔らかい肉にダメージを与えているが、致命傷とは程遠い。
だが、それで良いのだ。
(矢の真なる目的は龍神片の移動経路の誘導。そして、その誘導は私の予想通りになりました!)
肉薄する2体の龍神片。しかしそれはメグレスにとって予定調和の結末だ。
すぐさま獲物をロングボウから杖へ変更。ほぼ同時に放たれた龍神片の拳を杖で受け止めた。
強力な打撃に杖を持った手がしびれる。しかし、怯んでいる暇はない。続く2体の大きい踏み込みによって放たれる重い拳と蹴りを紙一重で回避して、すぐさま一定の距離をとった。
そして始まるメグレスの防戦。2体の龍神片の連撃を杖で受け止めてはいるものの、しかし彼女が攻勢に出ることはない。むしろ押されているとするのが正しい評価だった。
でも、それでも確実に彼女の勝利は近づいている。
「腕に覚えがあると言ったでしょう」
大きな踏み込みで以て放たれる重い拳と蹴り。二度目のそれを杖で容易く受け流し、彼女は2体の龍神片に杖を叩きこむ。
一度受ければ、二度目は見切る。それを可能とするのが彼女の戦闘技能。
再び繰り出される龍神片の撃。だが、やはりもうメグレスには届かない。だって、もう見切ったから。二度の攻撃を認めるほど、メグレスは甘くない。
やがて自らの拳と蹴りが通じないことに業を煮やした龍神片は自らの腕を変貌させた。ユーベルコード、肉喰。体の一部を龍神の頭へと変形させるユーベルコードだ。
こちらは完全初見。故にメグレスは避けられない。邪魔な杖を持つ腕を狙った2体の腕の噛みつきは狙い通りに彼女を害した。
けれども、それまでもメグレスの誘導だった。彼女は予測していたのだ。全ての攻撃を自身が捌いてしまえば、大技を仕掛けてくるだろう、と。
「『私の黄金の右が、骨を砕く音はもう聞かないと決めたのに!』」
すぐさまユーベルコード、肉斬骨砕(テリブル)をメグレスは発動する。この技は【攻撃を受け止め、捨て身で放つカウンター】。その一撃は強力な威力を誇る。
噛みついた牙を筋肉で締め上げ、龍の頭を拘束する。そして、がら空きとなったオブリビオンの顔にメグレスは極大の一撃を立て続けに放った。
そうしてオブリビオンは粉砕され、骸魂から解放された妖怪たちはメグレスの手によって助け出されたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
架空・春沙(サポート)
『断罪します』
人狼の女性
ピンク掛かった銀髪と同色の狼耳・狼尻尾、緋色の瞳
スタイルが良い
服装:ぴっちりスーツ
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」
罪有る者には「冷徹(私、あなた、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。
・性格
通常は明るく人懐っこい女性ですが
罪有る者に対しては冷徹に、処刑人として断罪しようとします
・戦闘
大鎌「断罪の緋鎌」を振るって戦います
ユーベルコードはどれでもいい感じで使います
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
現れ出でた龍の形質を持つ人型、龍神片。廃神社を守護する敵オブリビオンを前に、緋色の刃の大鎌、断罪の緋鎌を手に持つ女が冷たい殺意を湛えていた。
「攫った妖怪を骸魂に取り込ませたのですか」
猟兵、架空・春沙(緋の断罪・f03663)はそう呟く。
「紛うことなく悪ですね。断罪します」
鎌を大きく振りかぶり、架空は右足を引く形で体を開いた。
そして、踏み込む。
「行きます」
静かに冷徹に、ただ戦意と共に架空は行く。
そして応じる形で龍神片も前に出た。
(数は四体…ですか。やや多いですね)
それから架空の予測より速い動きだ。太い龍の脚が生む爆発力は常人のそれを超越する。
だが、あくまでその上で、架空・春沙は進む足を速めた。
速く、速く、より速く。加速する彼女は龍神片との距離を指数関数的に短縮する。
何故ならば、
(敵も私と同様に激突の場所を予測しているはず。ですが、その予測は外せます。先程、私の予測が外れたように)
架空が行った龍神片の移動速度の予測は外された。それと同じこと相手にもやり返す。接触位置を能動的にずらすことで架空は戦闘の優位に架空は立つのだ。
そして、訪れる交差の一瞬。四体の龍神片の拳が同時に架空へ向けて放たれた。しかしあまりにも不完全な体勢で放たれたそれは万全の一撃とは言い難い。架空が行った『予測ずらし』。その効果が明確に表れた。予測がずれた龍神片は、しかし立て直せず、拳を放ち、加速した架空に追いすがるしかなかったのだ。
対する架空は加速を躊躇わない。迫る万全からは遠い龍神片の拳。キレのないその四つの撃を避けるのに鎌を使うまでもない。ただ、追い抜いた。拳の着弾点を抜き去って、架空は四体の龍神片の背後を取る。
そして速度を落とし、左脚を軸に振り向き構えると大きく鎌を振りかぶった。
それから言う。
「断ちます」
ユーベルコード『緋鎌一閃』。それは【大鎌の斬撃、またはそれによる衝撃波】。
龍神片がユーベルコード『肉喰』を発動し、腕を龍の頭部に変えて架空に噛みつかんとするがもう遅い。
無言のまま、架空はその緋色の刃を刹那の内に振りぬいた。
「い、ぐぁ……っ」
上がるうめき声。それは消えゆくオブリビオンが最後にあげた呼吸が生んだ音だった。
断罪の緋鎌は四体の龍神片をそのユーベルコードごと切り裂き、切断した。容赦なく。肉と骨を完全に断ち切り、胴を切断する形で彼女の鎌はオブリビオンを撃破する。
引きはがされる骸魂。分離された妖怪たちの生死を確認し、こう言った。
「よかった」
成功
🔵🔵🔴
佐原・鷹弥(サポート)
もし、場所が閉所なら簡易的なバリケード作成して基本はその後ろから遠距離攻撃を行います。
せっかくのアームドフォートなので、点で一体一体攻撃するのではなく、面で多数を一度に攻撃するようにします。初手でフルバースト・マキシマムを使って数を減らすor全体的に弱らせます。その後後退してバリケードから攻撃を開始します。バリケードが突破された場合、火力が高いプレイヤーの盾となるように動きます。
他プレイヤーが前線を維持のために動く場合はその行動を補助するように命中重視でヴァリアブル・ウェポンを使用します。
他の猟兵たちが敵オブリビオンの龍神片を相手取っている最中、猟兵の佐原・鷹弥(元公務員サイボーグ・f27503)は森の中で自らがやれることを探していた。
龍神片は近接格闘を主軸とするオブリビオン。故に銃火器類を主軸に戦う彼女は遠距離からの銃撃を行うのが妥当だろう。
「他人に迷惑をかけるレベルで手を抜くわけにはいきませんからね」
彼女が構えたのはサイボーグとなった体の右腕に内蔵したアームドフォート『プラズマドライバー』。ロックオンすることで誘導性を持たせられる機能を持つそれを未だノーマークの佐原が放てば必殺となる。
エネルギーを最大まで充填。理由は一撃でより多くの龍神片を巻き込むために他ならない。狙いをつけたのは敵オブリビオンが密集しているところにいる1体だ。
「――発射」
佐原の短い言葉と共に手放された莫大なエネルギーは凄まじい光と熱を伴って龍神片へと放たれる。放つ佐原自身の目と体を焼いてしまいそうな極大の砲撃は間違いなく全てを消滅させるに等しい威力を持つ極撃だった。
「――――!」
龍神片たちが勘付くがもう遅い。ロックオンによる誘導が機能するまでもなかった。不意打ちの砲撃は弾道上の全てを巻き込み、彼女の敵を消し去った。
その数、およそ15。オブリビオン撃破に伴い、骸魂から剥離した行方不明の妖怪たちが地面に倒れこんでいる。
「彼ら彼女らの救出を行わなければなりませんね」
とはいえ、とはいえ、だ。あれほど派手なことをしたのだから、当然龍神片にも気づかれる。
『プラズマドライバー』の弾道上にいなかった龍神片が一斉に佐原の元へと駆けた。それもユーベルコード『肉喰』を発動させ、腕を龍の頭に変えた上で。
「やはり相当に速いです…!」
歯噛みをし、彼女は一度森の中に撤退する。木々が交差し、根が地面の上に盛り上がる森ならば、龍神片も速度を落とさざるを得ないだろうという判断だ。
しかし、その予想はいとも容易く覆される。
「――っ!」
佐原は思わず息を呑む。それは龍神片が三次元的挙動を取ったからだった。
『地面を走る』などという固定観念は彼らにない。木の幹ですら足場にして、彼らは速度を落とさない。
展開したままの『プラズマドライバー』。そのロックオン機能を利用して、一体一体を撃墜していくが、しかし間に合わない。
「まず――っ!」
砲撃が追いつけなかった最後の一体。その恐るべき蹴りを佐原は体に受けた。
バキボキゴキ、という原始的な破壊音がサイボーグの体の中で鳴る。そして蹴りが振りぬかれ、佐原は木々を破砕しながら吹き飛んだ。
「ぐ、が……はぁ…っ!」
地面に叩きつけられた佐原は最早指一本すら動かせない体のまま、なんとか呼吸を取り戻す。
それから音もなく降り立った不気味な龍の人型を目視した。
絶対絶命の危機。しかし地面に伏しながら、痛みに喘ぎながら、それでも佐原は薄く笑った。
何故ならば。この場面でのみ召喚できる心強い味方がいるからだ。
ユーベルコード『戦場の亡霊』。これは彼女が瀕死の時のみ【戦場の亡霊】を召喚するユーベルコード。そして【戦場の亡霊】は高い戦闘能力と佐原と同じ攻撃手段を持っている。
戦場に突然登場した【戦場の亡霊】にたじろぐ龍神片。だが、それで【戦場の亡霊】がとまるわけでなし。【戦場の亡霊】は静かに右腕を展開すると、エネルギーを充填し始めた。
つまりは、アームドフォート『プラズマドライバー』のエネルギーを。
「さよ、なら」
そして光と熱があった。焼け跡と焦げ臭さを残してその龍神片は消滅したのだった。
成功
🔵🔵🔴
スピーリ・ウルプタス
蜘蛛や蜘蛛の巣に意外と悪戦苦闘して(変人自身はすこぶる充実した模様)
ようやく辿り着けば、すでに他猟兵の方々が交戦中
「出遅れに関しては後程、全力で皆様宛に土下座させていただきます!」
UC発動
自らの肉体を囮にし、好戦型の黒蛇がその隙に攻撃するスタイル
「はっ…もしやこちら(敵)、肉弾戦を得意とする方でしょうかっ」
無駄に嬉しそうな変人
超高速連撃を(本体は頑張って避けつつ)いっそ受けて、蛇に攻撃してもらう
※負傷描写OK
「望まれたならば、この身悦んでお付き合い致します、が
“攫った”というのは、同意無し、と同義ですね。
それはいけません」
妖怪さんを帰してあげてください、とニッコリ
黒蛇に容赦なし攻撃指示
「蜘蛛の襲撃や蜘蛛の巣には苦労しましたが、それはそれとしてたいへん充実した時間でした」
そう言いながら、やや熱の籠った息を吐き出すのは猟兵スピーリ・ウルプタス(柔和なヤドリ変態ガミ・f29171)だ。蜘蛛や蜘蛛の巣に意外と悪戦苦闘して、彼は妖怪たちが攫われた廃神社へとたどり着く。
其処では既に他の猟兵たちによる敵オブリビオンとの戦闘が開始していた。
「出遅れに関しては後程、全力で皆様宛に土下座させていただきます!」
焦燥感と謝意をたっぷりにスピーリは戦闘体勢を取ると、早々に自らのユーベルコードを発動する。
「いらっしゃい締め付け担当さん!」
ユーベルコード『蛇締め(スネークトレイン)』。スピーリは自らの身長の2倍ほどもある【黒い大蛇】を召喚した。得られる力は互いの戦闘力強化と生命力の共有。結びついた1人と1体はその連携で以て、彼らの敵を撃滅する。
「望まれたならば、この身悦んでお付き合い致します、が“攫った”というのは、同意無し、と同義ですね。それはいけません」
静かに戦意を滾らせるスピーリ。確かに彼は『苦痛』に快楽を見出す変人ではある。しかし、だからといって彼が良識と正義感を持ち合わせないということにはならない。
故に非道の産物である敵オブリビオンに対して、スピーリは微塵の容赦もなく、【黒い大蛇】にニッコリ微笑みながら攻撃指示を出す。
「妖怪さんを帰してあげてください」
そして1人と1体が瞬発した。
向かうは3体の敵オブリビオン――龍神片。龍の形質を持つ人型へと彼らは突貫した。
「では、お先に失礼しますよ!」
【黒い大蛇】より前にスピーリが飛び出す。この戦闘における彼の役目は囮だ。1人と1体の算段としてはスピーリが囮として敵を惹きつけているうちに、【黒い大蛇】が龍神片を砕くというものだった。
「はっ…もしやこちら(敵)、肉弾戦を得意とする方でしょうかっ」
突出したスピーリに3体の龍神片が肉薄する。ユーベルコード『龍乱舞』。【回避と攻撃が一体となった神速の旧き套路】を発動させて、次々と突き出される超高速の拳と蹴りの連撃だ。これを紙一重で避けるスピーリは何処か嬉しそうではあるが、やや窮地であった。
「ふ――っ、ふ、は――っ」
拳と蹴りがスピーリをかすめていく。相手が早すぎた。ただでさえ尋常ではない速度なのに、更にユーベルコードで速度を底上げしているときた。これでは囮にも限界がある。
腹への拳を腕に手を添えることで逸らし、頭部への蹴りを膝を曲げることで回避、それから胸への拳は【黒い大蛇】が攻撃の隙をついて、尾による打撃で龍神片を1体撃破することで事なきを得る。
「ありがとうございます!」
【黒い大蛇】に礼を言うが、しかしそれが明確な隙だった。
残された2体の龍神片の拳と蹴りが飛ぶ。深い踏み込みと共に放たれた重い一撃が真っ直ぐスピーリの腹に吸い込まれた。
気づき、それを見逃さなかったスピーリはなんとか直撃を免れるものの、しかし完全にはよけきれず、2撃を受けてしまう。
「ぐ、はぁ――っ!」
吹き飛ぶ、吹き飛んでいく。地面に叩きつけられた彼は腹の痛みに呻きつつ、また同時に快楽に悶えつつ、それを目撃した。
【黒い大蛇】が2体の龍神片に絡みつき、その首を噛み千切る瞬間を。
(やってくれましたね…!)
戦闘において最も大きな隙とは何か。それは最大の攻撃が敵に命中した直後に他ならない。敵を撃破したことによる緊張の弛緩。それが致命の隙を生み、スピーリの相方である【黒い大蛇】による決着を導いたのだ。
骸魂が剥離して、取り込まれた妖怪たちの姿が露わになる。スピーリは【黒い大蛇】が解放された妖怪たちをその背に載せている光景を見ながら、ひとりごちる。
「さて、次が首魁の登場ですかね。一体何が出てくるのでしょうか?――未知の『苦痛』を与えてくれるオブリビオンだと嬉しいのですが」
成功
🔵🔵🔴
サーシャ・ペンローズ(サポート)
バーチャルキャラクターの電脳魔術士×バトルゲーマー、18歳の女です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、敵には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
エッチな描写もNGです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
禍神塚・鏡吾(サポート)
ヤドリガミの電脳魔術士×咎人殺し、35歳男性
「喋る鏡」のヤドリガミです
いつもニコニコしていて、丁寧な口調で話します
(それ以外の表情が作れません。笑顔が場にそぐわない時には、仮面を被っています)
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用します
それ以外では、電脳魔術を使った幻影やハッキング、あるいは言葉によるハッタリ等で敵を妨害する事を得意とします
他の猟兵が動きやすくなるよう、文字通りサポートを行います
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
又、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません
他はお任せします
現れ出でる龍の形質を持つ人型。出現した歪な怪物たちを前に2人の猟兵がタッグを組む。
「ではサーシャさん、気合を入れてまいりましょうか」
「はいはーい!がんばりまーす!ところで、仮面をしてるのはなんでです?」
少女の問いに男は仮面の下でニコニコ笑顔を崩さずに無視をした。仮面をしているのは過去の出来事のせいで微笑む以外の表情を創れなくなってしまったため。微笑みが場にそぐわない場合は今のように仮面をかぶっているのだ。
快活な少女と仮面をつけた紳士。この奇妙な取り合わせの2人の名前はそれぞれサーシャ・ペンローズ(バーチャルキャラクターの電脳魔術士・f26054)、禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)と言った。
この異色な即席のタッグを組むに至ったのは、ある種の必然だった。
「ではしっかりサポートお願いしますね!」
「えぇ、それは勿論。貴女も私がカバーしきれないほどのへまをしないでくださいね?」
「しーまーせーん!いまいち優しいのか酷いひとなのかよくわからないですね、あなたはー!」
実のところ、この2人は此度の敵オブリビオンである龍神片とはやや相性が悪いのだ。
龍神片は近接格闘戦を得意とするオブリビオン。対する2人はやや特殊な攻撃法を持ち、遅れを取ることはないだろうが、しかし押される可能性があった。そのため2人は急場でチームを作り、事件にあたることになったのだ。
タッグを組んだ2人の内、まず最初に動いたのはサーシャだった。
「では、行きますよ!」
彼女が取り出したのは【動画撮影ドローン】。ユーベルコード『グッドナイス・プレイヴァ―』。これを通して彼女の戦いぶりをライブ配信することで得られた視聴者の応援が彼女の力となる。
「いっくよーっ」
そして立て続けに召喚されたのはユーベルコード『バトルキャラクターズ』で召喚された戦闘用ゲームキャラクターたち。額の『1』を刻印された62体のサーシャの下僕が果敢に敵オブリビオンへ挑んでいく。
「さて、それでは私もお手伝いしましょうか」
禍神塚は手をかざす。すると龍神片と戦闘用ゲームキャラクターの間に幻影が生まれた。それは禍神塚が電脳魔術で生んだものだ。その幻影に実体はない。しかし龍神片を惑わすには十分だった。
ぶつかりあう龍神片と幻影の間を行く戦闘用ゲームキャラクターたち。龍神片の蹴りと拳に吹き飛ばされる幻影。戦闘用ゲームキャラクターの剣によって撃破される龍神片。混戦に混戦を極めていたが、それでも猟兵勢力がやや優勢だった。
「――!これならよゆーそうですねっ」
「いいやっ、まだだろっ!」
一瞬緩んだサーシャ。其処に龍神片の牙が来る。
ユーベルコード『肉喰』。龍神片の腕が変化した龍の頭の拳は幻影と戦闘用ゲームキャラクターの網を潜り抜け、サーシャを食らいつかんと牙をむく。
禍神塚はとっさにサーシャと龍神片の間に割って入った。そして言葉を紡ぐ。
「『受け止めること盾のごとく、見通すこと鏡のごとし』!」
ユーベルコード『ペルセウスの鏡盾(イージスフォーム)』。これは自身をあらゆる攻撃を受けつけぬ無敵の盾に変ずるユーベルコードだ。
『使え!』
盾となった禍神塚はサーシャにそう叫ぶ。
反射的にサーシャは盾となった禍神塚を手に取り、迫る龍頭を防いだ。
「ぐ、ぎぁ」
怯む龍頭。サーシャはそれを見逃さず、無敵の盾を掴むとその平面で龍頭を叩きつけた。
「ふん!」
「ぐが……っ」
そのまま龍頭はノックダウン。本体もまた腕の痛みに怯んだところを戦闘用ゲームキャラクターに殺され、骸魂が妖怪たちから剥離した。
安全を確かめた禍神塚は鏡から戻り、そして声色に不満を隠さず言う。
「雑ですね。もう少し丁寧に扱っていただきたいものです」
「き、緊急事態だったんだから、しょうがないですよね!あと、ほら、まだまだたくさんいますし!」
「それは、そうですね。では、貴女がまたへまをしないうちに片づけましょうか」
「一言余計ーっ!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『鬼喰らいの絡新婦』
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POW : 蜘蛛の巣の主
【戦場全体に張り巡らされた糸による拘束】が命中した対象に対し、高威力高命中の【鋭い脚での串刺しや、鬼の膂力での縊り殺し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 蜘蛛糸の舞
見えない【程細いが、鋼鉄よりも強靱な蜘蛛の糸】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
WIZ : 可憐なる母蜘蛛
【呼び出した子蜘蛛達の放つ糸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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断章を出しますので、リプレイ提出は断章が出るまでお待ちください。
猟兵たちによって首魁の尖兵たる龍神片は駆逐された。あちこちに転がる龍神片となっていた攫われた妖怪たちの保護を行う彼らは『彼女』の顕現を目撃する。
「忌々しい猟兵どもめ。痛みを知らぬ恵まれた者共め」
『彼女』は穴から現れた。その穴は廃神社の空中を黒で塗りつぶしたような円だった。一体どういう原理なのか。厚みを持たないその穴は猟兵たちの目から見ても埒外のものに見えた。
奇怪が過ぎる穴から現れた『彼女』こそがカクリヨファンタズムを蜘蛛の糸で覆いつくした首魁。蜘蛛の骸魂が鬼娘を取り込んだことで生まれたオブリビオン。上半身が鬼娘、下半身が蜘蛛の小柄な少女は地面に降り立つと剥き出しの憎悪で以て言葉を吐き出した。
「妾は奪われた者を取り戻したいだけじゃ。我が伴侶と我が子らを。奪われなかったお主らに妾の渇望はわかるまい!」
小さな少女の体から殺意が噴出する。猟兵たちでさえも喉を鳴らして、唾を飲み込むほどの凄まじい殺意が。
たじろぐ猟兵。顕現した小さな少女は自らの強大な力を躊躇いなく解放し、咆哮する。
「さぁ、来るがよい!我が野望を拒む非道な者共よっ。妾は恵まれ、そして絶望を知らぬ貴様らを打ち倒し、我が伴侶と子を取り戻すっ!」
さぁ、火蓋は切って落とされた。
奪う者と奪われた者。2つの立場を併せ持つオブリビオンからカクリヨファンタズムを取り戻せ。
※皆様、お疲れ様です。MR2です。第三章はボス戦になります。対ボス戦戦闘のプレイングの他、ボスの憎悪と渇望の言葉に対する猟兵の言葉をプレイングを加えてくださればプレイングボーナスをお付けします。
スフィア・レディアード(サポート)
『皆さん、頑張りましょう!』
ミレナリィドールの妖剣士×鎧装騎兵、20歳の女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、機嫌が悪いと「無口(私、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は元気で、楽しい祭りとかが好きな少女。
武器は剣と銃をメインに使う。
霊感が強く、霊を操って戦う事も出来る(ユーベルコード)
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
北条・優希斗(サポート)
『敵か』
『アンタの言う事は理う解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ』
『遅いな』
左手に『蒼月』、右手に『月下美人』と言う二刀流を好んで戦う剣士です。
自らの過去を夢に見ることがあり、それを自身の罪の証と考えているため、過去に拘りと敬意を持っております。その為オブリビオンに思想や理想があればそれを聞き、自分なりの回答をしてから斬ります。
又、『夕顔』と呼ばれる糸で敵の同士討ちを誘ったり『月桂樹』による騙し討ちを行なったりと絡め手も使います。
一人称は『俺』、口調は年上には『敬語』、それ以外は『男性口調』です。
見切り、残像、ダッシュ等の機動性重視の回避型の戦い方をします。
2刀を腰に提げた剣士が毅然と敵オブリビオンの前に立つ。
「敵か。アンタの言う事は理解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ」
猟兵北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)。左手に『蒼月』、右手に『月下美人』の2刀を握りしめ、彼は現れ出でた敵オブリビオンに刀を向ける。
また同時に敵オブリビオンへ噛みついた者がいた。
「あなたに起きたことは、確かに悲しいことだけど、でもそれでも誰かの涙を生むことは認められないよ!」
赤い瞳に戦意を湛え、赤い髪を揺らして猟兵スフィア・レディアード(魔封騎士・f15947)はいきり立つ。その手に持つは『封魔葬霊剣』。刀身に退魔の紋章が施された長剣だった。
偶然にも言葉が重なった2人は思わず顔を見合わせた。そして、目配せだけで互いの意図を理解する。
(同じ獲物を持つ者同士――)
(――此処は共同戦線を張りますよ!)
北条は2刀を、スフィアは一振りを構え、疾駆した。
「おのれおのれ、我が癒しを許さぬ猟兵どもめ。何故許るさぬ、何故認めぬ!」
底知れない憎悪の声と共にオブリビオンが、何かを2人に向かって噴出した。
それは蜘蛛の糸だ。【見えない程細いが、鋼鉄よりも強靱な蜘蛛の糸】が2人に向かって吐き出されたのだ。
ユーベルコード『蜘蛛糸の舞』。超高速で噴出されたあまりにも硬い蜘蛛の糸は人体を切断しうる刃となって、北条とスフィアに襲い掛かる。
だが、北条は不敵に笑った。
「『見えない』というのは傲慢だね。『見えない』だけで『存在しない』わけじゃないんだから。呼吸、空気の乱れ、あるいは光の反射。痕跡はいくらでもある。だから『見えない』なんて大したことじゃあないんだ」
ただの一閃だった。いや正確には二閃か。左の『蒼月』と右の『月下美人』をただ一振りだけで『蜘蛛糸の舞』で放たれた【見えない程細いが、鋼鉄よりも強靱な蜘蛛の糸】を断ち切った。
「な――っ」
敵オブリビオンは戦慄するが、しかしスフィアは北条の斬撃を正しく理解する。
(私たち剣士は視覚だけじゃなく、五感全てで剣を振るう。だから見えないなんて問題じゃないのよっ)
そして、北条はそのまま敵オブリビオンの下へ疾駆した。
「来るかッ!」
敵オブリビオンが術を編み始める。だが、北条の方が早かった。
「かの舞は、水面に移ろう陽炎の如く」
ユーベルコード『絶技・蒼下鏡月花』。それは北条が持つ3刀による連撃。
敵オブリビオンの懐に北条はもぐりこむ。それから大きく『月下美人』を振り上げると上段から一息に切りつけ、左に寄った全身を反発力で大きく撥ねさせると左の『蒼月』で横一文字の斬撃を繰り出す。そして三撃――二刀を捨て、取り出したのは純銀の刃を持つ『鏡花水月』。両の手でそれを握りしめ、二撃目の後で縮こまった体のばねを瞬発させ、牙突を放つ――!
連撃の締めとなる大技。だが、だからこそ、其処に隙があることを敵オブリビオンは見逃さない。
「阿呆が。ただ受け続けるだけと思うたか!」
「な、く――ッ!」
牙突を放つその瞬間。北条の体は何かに絡めとられた。最早、言うまでもないだろう。それは蜘蛛の糸だった。だが、敵オブリビオンが出したものではない。それは既に世界に在ったものだった。
「此処は我が領域。それを忘れてはおらんか?」
ユーベルコード『蜘蛛の巣の主』。それは【戦場全体に張り巡らされた糸による拘束】し、【鋭い脚での串刺しや、鬼の膂力での縊り殺し】を行う技だ。つまり北条を絡み取ったのはカクリヨファンタズム全域にある蜘蛛の巣だったのだ。
蜘蛛の巣に絡み取られた北条に鬼の恐るべき拳が迫る。なす術もない北条の頭が吹き飛ばされそうになった、その瞬間。
「私のこと、忘れてるの?」
敵オブリビオンの腕に何かが被弾する。
「私は剣だけじゃなくて、銃も使うのよね」
彼女の手にはもう『封魔葬霊剣』は握られていなかった。代わりに握られていたのはライフル型の武器である。
「私の声に応えて……霊達よ、私に力を与えてね!」
逼迫した声で彼女はユーベルコードを起動する。『ファントム・スナイパー』。それは【霊的エネルギーを秘めたライフル型の武器】による狙撃。
時間は北条が稼いでくれた。溜めにため切った霊的エネルギー。先程、北条を助けるために用いた分なぞ、その一部でしかない。
ライフル型の武器に溜まった霊的エネルギーが振動する。それは正しく敵を穿つための武器からの合図。
スフィアはその振動に導かれるままに引き金を引いた。
「ショット!」
放たれる弾丸。それは正しく敵オブリビオンの腹へ飛んでいく。
「ええい、うっとうしいっ」
だが、敵オブリビオンは硬い蜘蛛の脚でそれを弾き飛ばし、後退する。
「やっぱり甘くはいかないか!」
そう落胆を表しながら、敵オブリビオンが後退するとスフィアは北条の救助を行った。
やはり敵は強い。カクリヨファンタズムを崩壊の危機に陥れただけはある。
スフィアと北条は一度後退し、次に敵オブリビオンへ食らいつく猟兵の背中を見送ったのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
三条・姿見(サポート)
招集を受けた援軍だ。…俺も力を貸そう。
指示があるならば、そのように。猟兵として務めは果たす。
**
『ある刀を探している。取り戻さなければならないものだ』
ヤドリガミの剣豪 × 化身忍者
年齢 27歳 男
外見 178cm 黒い瞳 黒髪 普通の肌
特徴 短髪 口数が少ない ストイック 天涯孤独の身 実は読書好き
口調 生真面目に淡々と(俺、お前、だ、だな、だろう、なのか?)
偉い人には 作法に倣って(俺、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
**
主武装は刀と手裏剣。…相手の数に応じて使い分ける。
薬液が効く相手なら、毒や麻痺薬も使用する。
賑やかな場所はどうにもな…だが鍛錬となれば話は別だ。
励むとしよう
禍神塚・鏡吾
技能:落ち着き、恐怖を与える、残像、逃げ足
アドリブ・連携OK
取り戻したいだけだと言うなら、八つ当たりは御遠慮願いたいですね
「成程、貴方が何故家族を失い、どれ程の絶望を感じたのか、それは私にはわかりません
では、貴方のご家族なら、それを理解できますか?」
「他の妖怪を取り込んでオブリビオンと化し、『奪われなかったから』と言う理由で関係のない妖怪たちを犠牲にする行いを、貴方のパートナーやお子さんは納得してくれるんですね?」
伸るか反るか、精神的に揺さぶってから照魔鏡を使用して質問
「ご家族が今の貴方をどう思うか。考えた事がありますか?」
UCの成否に関わらず、反撃が来る前に残像だけ残してその場から撤退します
「招集を受けた援軍だ。…俺も力を貸そう。指示があるならば、そのように。猟兵として務めは果たす」
怒り猛る敵オブリビオンを前にして、ただ一人眼光を鋭くさせる男がいた。
猟兵三条・姿見(鏡面仕上げ・f07852)。刀と忍具を操る男は静かに愛刀『封刃・写』に手を添えた。
彼は敵オブリビオンとは言葉を交わさない。それは無理解からではなく、彼女が明確な敵だから。彼も彼とて追い求める者。彼女の言わんとするところに共感できる部分もある。だが、外道に堕ちてカクリヨファンタズムを混乱に陥れた彼女を猟兵として認めるわけにはいかなかった。
故に彼女を斬る。そう決めた。
「行くぞ」
短い彼の言葉は敵オブリビオンへの宣戦布告であると同時に一時の協力者に向けてのものだった。
「はい、よろしくお願いいたします。私も精一杯、私なりの戦いを行いますので」
消せない笑顔を隠すために仮面を被った白い肌の男、猟兵禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)は折り目正しくそう言った。
禍神塚が行うのは毛色の違った三条の支援だった。すなわち、精神干渉。彼は自らのユーベルコードで以て敵オブリビオンの本質を叩きにかかる。
「取り戻したいだけだと言うなら、八つ当たりは御遠慮願いたいですね」
三条が前線にて刀を振りぬくのを視界に収めながら、禍神塚は敵オブリビオンに諭すようにこう問うた。
「成程、貴方が何故家族を失い、どれ程の絶望を感じたのか、それは私にはわかりません。では、貴方のご家族なら、それを理解できますか?」
「理解できる、理解できるに決まってる!妾の絶望をきっと妾の伴侶や子らはきっと理解してくれるはずじゃっ」
「であるならば。他の妖怪を取り込んでオブリビオンと化し、『奪われなかったから』と言う理由で関係のない妖怪たちを犠牲にする行いを、貴方のパートナーやお子さんは納得してくれるんですね?」
「してくれるともっ、納得してくれるに決まってる!それが家族なのだからっ」
禍神塚の穏やかな、しかし責め立てるような問いに彼女は必死に答えていた。その必死さは不都合な真実から目を背けているようにも見え、何処か痛々しい。おそらく此処が最好機。彼女の本質をさらけ出すための精神的な揺らぎは最大限まで高まった。
故に禍神塚は手札を切る。
「鏡が照らし出すは真実のみ」
ユーベルコード『照魔鏡』。その効果は【鏡から目映い光】で以て、質問に対する答えが真実かどうかを判別するものだ。質問に対して対象が真実を答えれば、鏡から放たれる光は消える。真実でないならば、その光は対象を照らし続けるのだ。
彼は取り出した鏡から放たれる光を敵オブリビオンに当てると、至極単純な問いを彼女に投げる。
「ご家族が今の貴方をどう思うか。考えた事がありますか?」
■
「そ、れは……っ」
三条はあからさまに敵オブリビオンの動きが落ちたのを感知した。
「はッ!」
『封刃・写』の刃をきらめかせ、三条は彼女に肉薄する。
「く――っ」
彼女が苦し紛れに起動しようとするユーベルコード『蜘蛛糸の舞』。見えないほど細い、鋼鉄ほどの硬度を持つ蜘蛛の糸が至近で爆発するが、なんなくそれを斬り捨てる。
裸になった敵オブリビオン。三条は敵オブリビオンの首を狩らんと刀を横に振りかぶった。
「終わりだ」
眼にもとまらぬ速さで刀を振りぬくとともに短く切った三条の言葉に彼女は怒り猛った。
「なっめるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
硬い外殻の蜘蛛の脚で三条の一振りを押さえつけんとし、しかし抑えきれず蜘蛛の脚が宙を舞った。だが、確実に減退した刀の速さは彼女の目でも認識でき、鬼の膂力で三条の刀を受け止めた。
「―――」
三条はその彼女の反撃を冷静に受け止めた。素早く刃を彼女の掌に当て、一息に引き抜く。
「づぅッ!」
痛みに悶え、弱まる刀を掴む力。刀を彼女の拘束から解き放つと、鞘に納めた。それから後退と同時に三条は【起爆の術符を結んだ投擲武器】を多数投げつけると、喝破する。彼の武器は刀だけではない。何せ彼は化身忍者。例えばこういう絡め手だって得意だ。
「爆ぜろ劫火!」
そして一斉に爆破する起爆の術府。大爆発を引き起こすユーべルコード『大爆炎符』。三条はその爆炎を目くらましとして撤退とする。
その最中、彼は寂しげな女の声でこんな言葉を耳にした気がした。
「きっと肯定してくれるだろう、と。そう思っておるよ」
■
「そうですか」
禍神塚もまた爆炎の中で掻き消えそうな女の言葉を聞いていた。
そして、未だ『照魔鏡』の光が消えていないから、彼女の言葉が真実ではないことを示している。
彼女だってわかっているのだ。これが間違ってもいないと思ってないまでも、取り戻そうとしている家族が自らの所業を否定するだろうことなんて。とっくに。
「最も取り戻したい人に否定されるとは悲しいことですね」
爆炎の向こう。沈黙を保つ彼女を憐れみながら、禍神塚は残像を残して撤退するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アマネク・アラニェ
アドリブ・連携OK
【SPD】
咆哮を受けて、眉をひそめながらも気を取り直す。
「はぁい御同類。色々背負ってるみたいね?」
……ええ、アタシは親も子もいなけりゃ
伴侶にと望んだ相手もいない。
アンタの絶望はわかりゃしないわ。
でも、アンタを放っておいたら、
同じ苦しみを背負う誰かがきっと増える。
それは、許せないのよ。
「【コード:ユビキタス】限定使用」
自らの蜘蛛脚を電脳魔術で強化。
放たれる蜘蛛糸を受け止めにかかるわ。
成功したら、相手が糸を手放す間もない
【早業】で絡め取り、振り回し、地に叩き付けてあげる。
鋼鉄並みの強度の糸が食い込む蜘蛛脚は傷つくかもしれないけど、
骸魂を倒し、鎮めるためならば気にしないわ。
カクリヨファンタズムの異常を知り、行方不明の妖怪を探して辿り着いたその結末。猟兵アマネク・アラニェ(ユビキタス・アラニェ・f17023)はこの事件の首魁の咆哮を受けて、眉をひそめながらも気を取り直す。
「はぁい御同類。色々背負ってるみたいね?」
言葉面は軽い。でも、だけど、其処には静かな怒りがあった。
アマネクには親も子もいない。伴侶にと望んだ相手もいない。だから彼女には敵オブリビオンの絶望なんて分かりはしない。
「でも、アンタを放っておいたら、同じ苦しみを背負う誰かがきっと増える。それは、許せないのよっ」
「――ッ」
敵オブリビオンの顔が悲痛に歪む。それは自らの絶望を誰かに押し付けることとなるという当たり前の現実を改めて直視したからだ。彼女はその現実から目を逸らし続けていた。盲目的に自らの行いを肯定したことによって。だから、気づいてしまえばもう自分を騙せない。
「いくわよ」
短く宣告。そしてアマネクは自らのユーベルコードを発動する。
「【コード:ユビキタス】限定使用」
ユーベルコード『変幻自在』。【330秒間、電脳魔術で強化した蜘蛛脚】を巨大化し、半径66m以内なら容易に届くほどの長さにするユーベルコード。その蜘蛛足はアマネクの腰骨と肩甲骨から伸びたものだ。
「く、くそっ」
苦し紛れに敵オブリビオンはユーベルコード『蜘蛛糸の舞』で【見えない程細いが、鋼鉄よりも強靱な蜘蛛の糸】を展開した。
だが、それをアマネクは傷を覚悟で【早業】で以て絡めとる。
「――っ」
走る裂傷の痛み。だが、構わない、止まらない。
「お、おぉぉぉぉぉぉっ」
2本の足で踏ん張り、アマネクは巨大化した四本の蜘蛛の脚で敵オブリビオンを掴み取る。
「せぇぇぇぇぇいっ!」
そして持ち上げれば、何度も地面に叩きつけた。何度も、何度も、何度も。正直、敵オブリビオンは重い。蜘蛛の部分が特に重い。蜘蛛の脚が伸びる肩甲骨や腰骨は激痛を訴えているが、しかしやはりアマネクは止まらない。
彼女の絶望も、カクリヨファンタズムの混乱も、全てを終わらせるためにアマネクは此処に立っている。
だから。
「いっくわよーーーッ!」
両の足で踏ん張って、アマネクは敵オブリビオンを投げ飛ばす。
投げ飛ばした先は廃神社。元から木材が腐りかけていた其処は既に建築物として致命的な状態にあった。
そんな状態の建物にそれなりの重量があるものを投げ込んだらどうなるか。
答えは単純だ。アマネクの目の前に広がっている光景を述べれば良い。
すなわち、崩落した。
成功
🔵🔵🔴
ロバート・ブレイズ(サポート)
『否定せよ』
人間の文豪 × 悪霊
年齢 79歳 男
外見 184.6cm 黒い瞳 白い髪 色白の肌
特徴 立派な髭 投獄されていた 過去を夢に見る 実は凶暴 とんでもない甘党
口調 冒涜翁(私、貴様、~である、だ、~であろう、~であるか?)
気にいったら 冒涜王(俺、貴様、~である、だ、~であろう、~であるか?)
恐怖・発狂・誘惑などの精神的な攻撃に対しての異常な耐性を有しています。
否定する事で恐怖を与え、冒涜する事が多いです。実は凶暴なので近接戦闘が好み。
宜しくお願い致します。
鬼と蜘蛛の形質を持つオブリビオンの娘は瓦礫を押しのけると崩れた廃神社の中で戦慄した。
「何が其処に居る……?」
猟兵か?否、そう単純に言い切ってしまって良いものか。そこにいるアレは…アレは、なんなんだ?分からない。彼女には其処に立つ者を彼女は正しく計りかねている。
彼女が視界に収めたのは背筋をしゃんと伸ばした老年の男、猟兵ロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)。底知れないその男は不気味なほど静かに彼女を見据えていた。
脳の芯を直接叩くような声でロバートは告げる。
「私は貴様におもねることなどしない。故にただ否定する。貴様の絶望も、貴様の嘆きも、貴様の善心も知らぬ。否定だけだ。私が貴様に向けるのは」
ロバートは敵オブリビオンの娘ことなぞ、微塵も興味がなかった。ロバートの言に倣えば、否定対象。それ以上でもそれ以下でもない。ただそれだけだった。
「変異した魂は悪魔の玩具だ」
ユーベルコード『闇堕ち(ダークネス・デモノイド)』が発動する。彼の傍らに寄り添うように顕現したのは【肉体を巨躯の怪物に変異させる、寄生体】。それを自らに寄生させることで、彼は自身を変異させる。
「ぬぉぉぉぉぉぉっ!」
変異の感覚に生体反応からくる咆哮を上げるロバート。やがて巨躯の怪物へと成った彼の姿はどんなオブリビオンよりも恐ろしい姿かもしれなかった。
「行くぞ」
巨躯の怪物がそう呟く。寄生された今、ロバートは寄生体の支配下にあるはずなのだが、しかし彼は異常なまでの精神耐性で以て寄生体の支配を退けていたのだった。
この恐るべき男に、オブリビオンの娘は声を震わせながら問う。
「お前、お前はなんなのじゃっ。一体何が目的で其処に居るっ」
彼女は自らを巨躯の怪物へと変じた男が理解できなかった。失ったものを取り戻そうとする彼女は、強い渇望を持つ彼女は、ロバート・ブレイズという男の一切に理解が及ばなかった。
恐怖に揺らぐ彼女。対するロバートは変わらぬ答えを告げた。
「否定だ」
そして、彼は巨躯の怪物の体を操り、瞬発する。
「く――ッ!」
咄嗟に発動するユーベルコード『蜘蛛糸の舞』。見えないほど細く、鋼鉄のように硬い蜘蛛の糸は超高速で放たれて、刃となった。触れるだけでも腕の一本は飛びそうな一撃。だが、それをまるでコバエを追い払うようにロバートは容易く引きちぎった。
「児戯である」
オブリビオンの娘の攻撃を踏みにじって、愚弄して、ロバートは肉薄する。
「―――ッ!」
瓦礫を跳ね上がらせるほど強い踏み込みから突き出されるロバートの拳。対するオブリビオンの娘もまた重ねるように鬼の拳を突き出した。
一瞬の拮抗。だが、それは瞬きほどのそれでしかない。
「ぐぬぁぁぁぁぁっ」
拳がひび割れた。誰の?オブリビオンの娘の、である。
「言ったはずだ。私はただ貴様を否定すると。既にそれは決定事項であり、覆せるものではない」
「ふぅー、ふぅー、ふぅー」
「そして、傷の再生を待つほど私はこらえ性があるわけではないのだ」
ロバートは振りぬいた拳で以て、オブリビオンの娘の首根っこを掴む。掴んだ腕に突き立てられる鬼の爪。だが、それを意に介さず、彼は敵オブリオンを崩落した神社の残骸に叩きつけた。
何度も、何度も、何度も―ッ!
容赦のない叩きつけにオブリビオンの娘は一つの沈黙を得た。力ない体に最早命の輝きはない。
「終わりだ」
怪物の親指を首根っこから放し、喉仏があるあたりにまでもっていく。
首を折るのだ。オブリビオンとて人型を取っているということはその死の在り方も人と同じということ。人の殺し方さえ知っていればこのオブリビオンは撃破できる。
怪物に変じたロバートにとって小娘の首を折るなど容易きことだ。故にここから先は見え透いた結末になるかと思われた。
カサカサ、カサカサと足音がロバートの耳に届く。足音の主は犬の大きさほどもある蜘蛛だった。つまりは、オブリビオンの娘の子。彼らは自らの親が窮地に立たされているのを感知すると廃神社に集結したのだった。
「…………」
ロバートは黒い波のようになった蜘蛛の群れを一瞥する。
注意をオブリビオンの娘から逸らしたその瞬間が彼らにとっての合図だった。
「隙を見せたな、バカ者め!」
もう死にかけていたはずのオブリビオンの娘がロバートの腹に当たる部分を蜘蛛の脚で以て蹴り上げる。
一体何処にそんな力を隠し持っていたというのか。疑問に思うほどの力強さで蹴り飛ばされたロバートは反射的にその手をオブリビオンの娘から離してしまった。
蜘蛛の群れは手が親から離れると同時にロバートへ襲い掛かってくる。逃亡を図るオブリビオンの娘を追わんとロバートは踏み込んでいたが、その一歩を拒まれた。
だからと言って、ロバートがオブリビオンの娘を見逃す道理はない。敵の妨害程度でロバートは立ち止まることはしないが、しかし彼は立ち止まった。
理由は単純。オブリビオンの娘を正確にとらえる一人の猟兵の姿を認めたからだ。
成功
🔵🔵🔴
コーデリア・リンネル(サポート)
アリス適合者の国民的スタア×アームドヒーローの女の子です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、機嫌が悪いと「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
内気な性格のため、三点リーダーや読点多めの口調になります。
ですが人と話すのが嫌いでは無いため、
様々な登場人物とのアドリブ会話も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
その少女は、これまでの戦いをずっと見ていた。他の猟兵たちが敵オブリビオンの少女を追い詰めていく様をずっと。
「悲しみを…抱えるのは、苦しいですよね…。ですけど…、悲しみを癒すために、誰かの涙を流させるのは、許せない、ですっ」
猟兵コーデリア・リンネル(月光の騎士・f22496)。彼女は誰も寄り付かない森の中から廃神社での戦いをずっと観察してきた。
戦いに一度も加わらなかった明確な理由は既に彼女の手に握られている。
「『ビームフォトンサイクロン』。これで、狙撃をします……っ」
妖たちの世界で科学の粋が敵を討つ。それが銃の内部で光子を強化増幅させて一斉に放つ、高度な科学技術で作られた兵器を操る少女が導き出した戦闘計画だった。
その上で必要なユーベルコードが『無音の慈悲』。半径78m以内のコーデリアの存在に気づいていない敵を【ビームキャノン『フォトンサイクロン』】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中するというもの。必中必殺のこのユーベルコードを成立させるために、コーデリアはずっとずっと潜伏していたのである。
そして、とうとう彼女の時が来た。多くの猟兵たちが戦うことで導かれたこの現状。廃神社から逃げるようにして、敵オブリビオンは姿を現したのである。
妖の世界に似合わない科学技術の結晶をコーデリアは構える。銃口は真っ直ぐ敗走する鬼と蜘蛛の形質を持つ娘を捉えていた。
おまけに相手は警戒することすら忘れてしまうほど追い詰められているようで、コーデリアが向ける戦意に気づく素振りはない。
つまりは、絶対の好機。これを見逃すほどコーデリアは未熟ではなかった。
「せめて安らかに眠れます様に……」
ユーベルコード『無音の慈悲』発動。クーデリアは迷いなく引き金を引く。
キュイィィン、という甲高い音を鳴らし、『フォトンサイクロン』は光輝く光子弾を射出した。
狙いは心臓。密かなる狙撃で以て、敵オブリビオンの死を導く。
「な――っ」
敵オブリビオンが目を剥いた。それをコーデリアは視認する。
慌てた敵オブリビオンはユーベルコード『蜘蛛糸の舞』で以て見えないほど細く、鋼鉄のように硬い蜘蛛の糸を射出した。
光子弾の着弾が速いか。蜘蛛の糸の防御が速いか。瞬きのほどの刹那の時間。すれ違う両者の雌雄は一瞬にて決した。
その結末にクーデリアは思わず叫ぶ。
「防がれ。ましたか!?」
逸れた弾道。光子の弾丸はコーデリアの狙い通り心臓を穿たなかった。
蜘蛛の糸が光子弾を阻害したのだ。だが、だからと言って完全に防ぎ切ったわけではない。逸れた弾丸は敵オブリビオンの肩を穿ち、大きく吹き飛ばした。
吹き飛んだ先はコーデリアの射程距離外。もうコーデリアの存在に気づかれてしまった以上、同じ手は使えない。そのため彼女は最後の一押しを別の猟兵に託すこととなる。
成功
🔵🔵🔴
メグレス・ラットマリッジ
アド歓
復讐自体は否定しませんがこれもお仕事なので
復讐とは殊勝な心掛けですね、私だったら大事な物が奪われても命がある事に感謝するだけです
考えようによっては素寒貧も悪くない、ポジティブに考えるのが楽しく生きるコツですよ!
触れれば切れるとは糸というか最早刃物ですね
見えないほど細いのなら重さも相応でしょうか
UCのロープをプロペラのように回して風を起こすか、巻き上げてみます
岩に括り付けて飛ばしてくるとかなら気合でいい感じに処理
近づけたら得物と脚でチャンバラします
負傷上等、屍を越えていくがいい!
お釈迦様は罪人を引っ張り上げるのに蜘蛛糸を使ったと言いますが
これじゃあ傷つけるばかりで誰も救えないでしょうに……
蜘蛛の巣だらけのカクリヨファンタズムで、行方不明となった妖怪探しから龍神片というオブリビオンとの戦闘までこなしてきた。2回の冒険を経た猟兵メグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)は長い戦いの終わりに立ち会うこととなる。
「復讐自体は否定しませんがこれもお仕事なので」
メグレスと敵オブリビオンの戦いの場になったのは、敵オブリビオンが吹き飛ばされた先の廃神社から遠く離れた何処か。カクリヨファンタズムにある、蜘蛛の巣だらけの何処とも知れぬ何処かである。
「ぐ、ぬぅ、ぅっ」
疲弊した敵オブリビオンが体をふらつかせながら立った。これまでの戦いで負った傷自体はその類稀なる再生能力で癒していたものの、再生する際に使う生命力が既に枯渇していた。故に、この戦いが彼女にとっての分水嶺。生きるか死ぬかの境目だ。
敵オブリビオンは荒い息のまま、自らの前に立つメグレスに問う。
「貴様も妾を否定するのか」
「いえ、そういう気はありません。復讐とは殊勝な心掛けだと思います。ただ私だったら大事な物が奪われても命がある事に感謝するだけですね。考えようによっては素寒貧も悪くない、ポジティブに考えるのが楽しく生きるコツですよ!」
彼女の言は随分と場面にそぐわない、前向きな言葉だった。
毒気を抜かれたのは敵オブリビオンは、思わず、と言った様子で笑う。
「何を言っておるんじゃ、貴様は」
「何をと言われれば、自らの思うことを。それ以上でもそれ以下でもありませんとも。そして、あなたもそうだったのではありませんか?」
「妾は…妾は、分からなくなってしまったよ。伴侶も我が子も、きっと今の妾を肯定はしまい」
「ですが、そんなことは分かっていたのではないでしょうか?あなたが取り戻したかったものを一番近くで見ていたのはあなたです」
「…………」
「でも、それでもあなたは我を押し通そうとした。世界を危機に陥れてでも。だとするならば、あなたのやりたいことなど決まり切っていますでしょう?」
メグレスの人の良さが表に出た。敵は敵。それは間違いない。ただ彼女には敵オブリビオンの娘に向ける憎悪はなかった。故にこその言葉。余計であり、自らのポリシーに反することは自覚しているが、しかし口を出さずにはいられなかった。
(不用心では、あると思いますけど)
とはいえ、言ってしまったものしょうがない。吐いた唾は飲み込めないのだ。
敵オブリビオンの娘の手に力が宿る。瞳に戦意が戻る。今にも倒れそうなほど震えていた蜘蛛の脚は力強く地面を踏みしめた。
「妾は我を通すぞ。例え否定されるとしても妾は失ったものを取り戻すっ」
最後の激突が始まる。
1つの大事件を締めくくる、正真正銘最後の激突が。
「絡み取り、そして縛りあげよ。汝は我が腕なれば!」
「深く冥い海の底に沈みなさいな」
両者共、ほぼ同時にユーベルコードを発動した。
敵オブリビオンは『蜘蛛糸の舞』。【見えない程細いが、鋼鉄よりも強靱な蜘蛛の糸】を展開し、刃のように敵を害するユーベルコード。
対するメグレスは『凧の糸(テリブル)』。【頭部と手足を狙う】【投擲技術により意のままに操れる】【アンカー付きの強靭なロープ】を召喚し、手元に収める。
(速く、そして鋭い蜘蛛の糸。ただし、ただそれだけですっ)
メグレスは手にしたロープをプロペラのように振り回す。
巻き起こる風。敵オブリビオンの武器は所詮は蜘蛛の糸でしかない。羽のように軽いそれは、容易に風で舞い上がり、目標を失った。
「ならば、これならばッ!」
蜘蛛の糸の突端が周囲に満ちる蜘蛛の巣へ伸びていき、それらを絡み取った。そして形成するのは蜘蛛の糸による白い巨大な剣だ。
仮称『蜘蛛糸の剣』。精密操作性の高い『蜘蛛糸の舞』はこんなことだって成し遂げる。
「気合が入りすぎでしょうがっ」
しかし、焚きつけたのは自分であった。保身第一のポリシーを無視するんじゃあなかったとメグレスは後悔する。
何はともあれ新たな脅威が噴出した。メグレスはロープを消して、黒い手斧――『艶消しのトマホーク』を右手に握り、白い巨大な剣を迎え撃つ。
ゴウアッッッッ、と風音を鳴らしながら巨剣がその大きさに似合わない速度でメグレスに迫る。
そして、一呼吸の後に黒い手斧と白い巨剣が重なった。
「負傷上等!屍を越えていくがいい!」
手斧を握った右腕が悲鳴を上げる。ゴキリ、という骨が折れる音がした。だが、右腕を代償に白い巨剣の破壊は成った。ならば良い。右腕が駄目になろうとも、左腕が生きている。
ならば、まだ戦える。
白い巨剣が砕け散る、その瞬間。崩壊し、塵となった剣の残骸を目くらましとして、メグレスは敵に肉薄した。
「―――ッ!」
敵オブリビオンが目を見開く。その瞳を見据えながら、メグレスは『艶消しのトマホーク』を左に大きく振りかぶった。
狙うは首元。その一点のみ――ッ!
「これで終わりですッ」
メグレスは振りかぶることでひねった体を引き戻し、黒い手斧を振るう。光沢を持たない凶器は無光の軌跡を描き、真一文字に振りぬかれた。
あとはあっけないものだった。
「――――」
敵オブリビオンの娘の首が、ごとり、と声もなく地面へ落ちた。血は出ない。代わりに溢れたのは光の粒。骸魂が剥離していくのだ。また同時に彼女が原因となっていたカクリヨファンタズムを覆いつくしていた蜘蛛の巣も消滅していく。
最後に全てを終わらせたメグレス・ラットマリッジは骸魂から解放された妖怪を介抱しながら、終わりゆく異変を見つめて呟く。
「お釈迦様は罪人を引っ張り上げるのに蜘蛛糸を使ったと言いますが、これじゃあ傷つけるばかりで誰も救えないでしょうに……」
さて、それは敵オブリビオンのユーベルコードのことを指しているのか、それとも蜘蛛の糸を操りながら、害するだけで誰も救えなかった、もし勝利していても歪んだ形でしか救いをもたらせない敵オブリビオンのことを指しているのか。その言葉の真実はメグレスにしか分からないのだった。
成功
🔵🔵🔴