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ショコラ・ドロップ

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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●境界線上の定義と爆破予告
 バレンタインを控える頃になると、キマイラフューチャーの住人も浮足立つ。それはアーティストとしての見せ場の一つであり、恋する異性が居れば当然のことだ。中には動画やサイトで、こんなチョコを貰った、こんなチョコ作ろうと思う、と盛り上がるグループも少なくない。勿論わざわざ作らずとも、彼等はタイミング良く壁をココンコンするだけで自動的に排出されることも知っている。だからこそ、手作りであることに価値があるのだろう。
 キマイラフューチャー、文明発達の後に残ったのは光と影。つまりこの世界では、リアルとバーチャルの壁が薄い。リアルが充実していないとはつまり、バーチャル上ですら充実していないということだ。リアルの充実、バーチャルへの没頭という分別、言葉自体がそもそも破綻していて、古いと言って良い。
 では3Dビジョン、高性能AIが闊歩するバーチャルエリアで、ゲームに入れ込み、AIの有無に関わらず、キャラクターに熱を上げる者達を、此処では何と言うべきだろう。
 そして彼等は、言葉が破綻していると知りつつ、黒い靄の様な感情を、やりきれないそれを消化しようと、口々にこう言うのだ。
「リア充爆発しろ」
 世界の負の面も色めき立つ。カップルへの爆破予告から、それを完遂するまでをリアルタイムで投稿する動画が幾つもアップされ、同時にひ弱な肉体のカップルのキマイラを煽りに煽り、破局させる動画や、カップルのファッションをこれでもかとこき下ろし、破局させる動画などが複数、ネット上に拡散されている。不謹慎だと主張しつつ、内心ざまあとバズらせる者すら居る始末。
 しかし、そんな住民達も、手作りアートチョコフェスティバル会場の爆破予告が来た時には、おいやめろ何を考えてると投稿主を総出で引き留めるコメントの嵐となり、炎上の騒ぎとなった。だが、投稿主はどこ吹く風。住民は、いよいよ頭を悩ませ始めた。

●グリモアベース
「キマイラフューチャーで何か妙な予知を見たけー、解決を依頼するなー」
 緊張感なくわらび餅を食べ、玄米茶を飲み干してから、のんびりと海神・鎮(ヤドリガミ・f01026)が猟兵に語りかける。
「まずこの世界は、儂らの事を非常に歓迎してくれとる。ヒーローの様な扱いじゃな。猟兵と分かった時点でデバイス向けて動画や写真撮ろうとするけー、まあ、その時はきちんと対応してあげてな」
 猟兵の動画をアップすれば分単位でミリオンに到達するほどの人気者だ。これはこれで動きにくいかも知れないが、要はバレなければ良いだけだ。変装して欲しいと言う訳でもない。
「予知の内容じゃけど、バレンタインが近いけー、カップルが主に被害に遭う様じゃな。原因は多分オブリビオンじゃろうけど、まあ、この世界を楽しみながら、のんびり犯人探すとええ。慣れ親しんどる者は、よー知らん者がおったらガイドしてみるのもええじゃろ。一応、カップルが多そうな所に転移させるけー。宜しく頼む」
 そう言うと、鎮は猟兵達を送る準備をし始めた。



●挨拶
 紫と申します。今回はキマイラフューチャーです。
 引き続いてバレンタインシナリオ、ネタ寄りです。
 余り馴染みのない方は観光気分で、慣れている方は日常気分でどうぞ。

●シナリオについて
 首謀者は同一ですが、実行犯が違う事件を順に解決するシナリオです。
 3章で首謀者怪人とご対面。

 1章:ファッションチェッカーな怪人を適当に探し、ファッション勝負。
 2章:マッチョ怪人を適当に探し、スポーツバトル。eスポーツも。
 3章:首謀者怪人からイベント会場を守るシナリオです。倒したらチョコ作って遊びましょう。
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第1章 冒険 『ファッションチェック、してください!』

POW   :    正統派も新しいチャレンジも良い。豪快で自由な発想のコーディネート。

SPD   :    流行を取り入れたり、洗練された技術が光るコーディネート。

WIZ   :    独自の世界観や、配色や組み合わせを熟知したコーディネート。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カチュア・バグースノウ
ファッション…あたしセンスないのよね。悪友たちにも言われるんだけど。全部同じにしちゃう
一張羅ってやつよ!タンクトップに八分丈ズボンね!

まぁいいわ。あたしの超個性的なファッションコーディネイトで唸らせてやるわよ!

ちょっとそこのあんた!ファッションバトルよー!
和風のタンクトップに、オリエンタルな八分丈ズボンにサンダル!
和風とオリエンタル以外はいつも通りだけど、まぁ気にしないで(キリッ
一応こだわってるのよ
和風のタンクトップは襟元が着物の襟元になってるし、柄や素材も和風

さ、どう!あなたのコーディネートをみせて!

アドリブ、絡み歓迎



●フイッチ
 転移した先は最近話題の自然公園。ダンサーやライブアーティスト、ミュージシャン、絵描き、アクセサリー商人が多く集う。年末からこの時期まではカップルや子連れにも嬉しいイベントが多いため、特に気合が入っていく。
 勿論披露する側も、お相手と一緒だったり、客を誘ったりというのも珍しくない。デジタル系アーティストには縁遠い世界でもあり、所謂この世界でのリアルに適当した層であると言えよう。
 ファッション怪人の鈴木さんは頭部と化した名刺をぐるりと回転させ、若年層のカップルを探す。少し年季の入った者になると、外見を気にしなくなるか、彼女側がしっかりするよう、彼氏に言うようになるからだ。挙げ句、買ってあげるから! ほんとうにもう! 等と言った妄想のような展開すら有り得る。恐ろしい。
「さあ、今日も頑張って破局させましょうか。羨ましいから等とは決して思っていませんとも! ええ、けして女性に見繕って欲しいなど! ……畜生!」
 地が出ていますよ、鈴木さん。本心は隠すのが旧人類というものです。頑張れ、負けるな。因みに何故か男性は彼女に似合いそうな小物を見付けるのは得意で、御礼に買ってあげたりする。自身に頓着は無いが、彼女が普段身に付けている物はしっかり見ているタイプだ。
「何でそっちは見てんだよ、しねよ。これだからコミュ力に溢れてるリア充はよお。あああ!」
 誰かの妄想が脳内に挿し込んだのか、鈴木さんが雄叫びを上げた。周囲の人物が怪訝そうな顔を向けるのを見て、冷静さを取り戻す。
「おっといけません。冷静に振る舞わなければ……」
「……こんな所でも目立つ大声で騒いでる奴が居ると思ったら……アンタね」
 頭部が変だからすぐに見付けられたわ、とカチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)がベンチに座ったまま、出店で買った果実たっぷりのクレープを頬張りながら、鈴木さんに語りかける。
 この世界は迷惑をしているだけで、人の生死に関わる事は少ない。猟兵の任務は、どちらかと言うと皆の笑顔を守る為のパトロールだ。今回のようなケースであれば、のんびりしていても何ら問題はない。
「丁度良い甘さだし、酸味が強い果実が多めね。食べやすいわ」
 残ったクレープを興味津々に覗き込んでいた白龍のロディに渡す。そのレシピ自体は単純だ。今度ホテルで再現して、甘すぎるのが苦手な客に出してみよう。考え、ナプキンで、口元を上品に拭う。
「おや……貴方は女性を装うのがご趣味で?」
「……もう一度言ってみなさい?」
「は?」
「聞こえなかったかしら? その無い口で、今の台詞をもう一度言ってみなさい、と言ったのよ。分かる?」
「いえ、ですから……貴方は女性を装うのが」
「耳も目も腐ってるわ! 女で悪かったわね!」
 専用に調整した黒斧が、名刺型の頭部を横殴る。一戦闘シナリオではありません、ご安心下さい。ですが、パワフルな長得物のフルスイングを見たら、信じる人は更に少なくなると思うのも確かです。
「アンタ、もしかしなくてもファッションセンスとか無いんじゃないの! 私より見た目も地味よ!」
「い、いえ、そんなことは……では比べて見ましょう! まずは貴女から!」
「今着てる分だけど?」
 此方に来てから見繕った衣服は和風アレンジコーディネート。
 上下は和柄特有の花柄で纏め、透き通るような白い肌が、絹織物に覆われている。動きを妨げないタンクトップ丈は、見た目より活動的な彼女の魅力を際立たせ、和風八分丈は腿の部分から膨らんでおり、脛の部分を蝶々結びで絞れる構造だ。それ自体が飾りとして成立し、引かれた目を更に下に下ろせば、足元にも気を抜いていない。サンダルは木製の下地。下駄や雪駄を彷彿とさせながらも、鮮やかな花模様をあしらった現代風のデザインだ。総じて、細かい拘りが各所に散りばめられた、活動的でありながらも、可憐さを引き立てるコーデイネートとなっている。
「さ、どう!」」
「もう少しキューティか、フェミニンに攻めても良かったのでは無いでしょうか?」
「……これ以上は難しいわ」
「……ああ。そういう所は恥じらいが」
 言い終わる前に鈴木さんが黒斧で肋の辺りを殴打され、ギャラリーの方へ吹っ飛ぶ。
「危ない危ない。戦闘なら致命傷でした」
「次はそっちの番。あなたのコーディネートをみせて!」
「良いでしょう。私のファッションは……見ての通りです」
「……は?」
 鈴木さんが着用しているのは上から白のワイシャツ、黒の背広、涼やかな印象を与えるネクタイに黒のスラックス。紛うことなき、サラリーマンコーディネートだ。
「地味って言ったわよ?」
「いいえ、何処へ行っても不自然に見られない最強のコーディネートでしょう!」
 鈴木さんの主張にギャラリーは白け、少なからずも挑戦し、華やかに纏め上げたカチュアを指さした。そもそもキマイラフューチャーの住民相手に安牌を狙おうなど、無謀である。
「馬鹿な!」
 彼は評価は出来ても、いざ自身を着飾ろうとすると立ち止まり、閉じこもってしまう性質なのだおる。。ファッション怪人鈴木さんの底は既に見えた。猟兵達は気兼ねせず、色んなファッションを試して遊ぶと良い。

成功 🔵​🔵​🔴​

シーザー・ゴールドマン
キマイラフューチャーの雰囲気も良いね。
あまり来たことがないので観光気分で色々と見て回ることにしよう。

おお、君が今回の怪人かね。
……地味だな。やる気があるのかね?着替えるのを待っても良いが?

ふむ、安牌も良いがたまには挑戦しないと成長はないぞ?

シーザーのファッションは基本はいつもの真紅のスーツ。
気が向けば『創造の魔力』で貴族風の服や軍服に装いを変える。
(いずれも赤が基調)

アドリブ歓迎



●ブラッディ・スタイル
「キマイラフューチャーの雰囲気も良いね」
 あまりこの世界に馴染みのないシーザー・ゴールドマン(ダンピールのフォースナイト・f00256)は、パンフレットを片手にのんびりと物色しつつ、この時間帯に酒が出てくる壁エリアを人伝いに聞き、上品に3回ノックする。好みかどうかは置いておいて、年代物に見える赤ワインボトルが出て来る。
「ほう、実際にやってみると中々面白いな、これは」
「便利よね」
「あの、貴方も、私を探していたのでは?」
「おお、君が今回の怪人か……地味だな。やる気があるのかね?」
「私はカップル破局の方へ全力傾けてますから」
 着替えるのを待っても良いが、や安牌を止めて挑戦するべきだと言おうとしたシーザーだが、どうやら無駄になりそうそうなので止めた。ボトルを開けて一杯やりたい。そんな気持ちにさせる怪人だった。
「では勝負と行こう。私は見た通りだな」
 シーザーのコーディネートは鈴木さんと似ているが正反対のブラッディ・フォーマル。血のような真紅の上下に同じく真紅のタイ、カフス・ボタンは宝石を使っているのかスーツのそれらより濃い目だ。漆黒の髪はそれらに影を落とし、良いアクセントとなっている。黄金の瞳は、髪と服の急な色調変化を緩和している。2m近い身長と、鍛えられた肉体はボディラインを浮き立たせ、紳士の装いは正反対の野性味を宿していた。
「如何かな」
「リア充が! 目立ちたいかよ。そんなによおおお!」
 リア充判定。鈴木さんは最早哀れと言って良いレベルで憤慨していた。
「色調は好みの物を選んでいるから、致し方ない所がある。色直しと言えば」
 自分の知識を紐解き、オドを変化させる。
「私に勝てるかね?」
 誰にともなく問いかける、一小節の詠唱。創造の魔力を活性化。本来の用途は自己強化だが、過程を絞ることで服装変化のみの効果とする事もできる。
 真紅の軍服、少し時代を遡った真紅の貴族、この装いは旧人類時代の御伽話、ドラキュラを連想させる。
「あ、その着替えの作り方便利ね! 今度教えてくれない?」
 側で見ていたカチュアが面白い魔法の使用方法を見て、そんな風に語りかける。
「良いとも。君ならすぐ出来そうだがね」
 大衆が着替える気のない鈴木さんと、シーザーを見比べる。ある種の色気に当てられてファンのような反応を示す住民も居た。丁寧に対応してやる。
「同じスーツだろうが! フォーマルスタイルだろうが! なんなんだこの差ァ!」
「せめてカフス、ネクタイくらいは遊んでも良いと思うのだが」
「面倒ですから。所で私、何時までこれに付き合わないといけないのですか?」
 こんな態度じゃ誰も相手にしてくれないだろう、誰もがそう思う。
「逃げようと考えてはいけない。君は多かれ少なかれ、此処の住人を傷付けたのだろう? うんざりするまで付き合って貰わなければ、釣り合わないというものだ」
 因果応報を脅すように説く。間に彼の体表を覆う魔力がささやかに活性化する。そう、先程のは紛れもなく自己強化の類、破壊の魔力も同時に内包している。
「クソが……後で覚えてろよ!」
 鈴木さんは逃げられないことを察し、虚しくそう吐き捨てた。猟兵によるファッションショーはまだ続く。住民も色々勘付いたのか、デバイスを向け、この顛末を録画、配信し始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロア・ネコンティ
*アドリブ歓迎

壁をコンコンし、必要な道具を集めて鈴木さんのところへ行き[早業]で鈴木さんを無理矢理着替えさせます。

グレーのフランネル生地のスーツにグレーのベスト。シックな濃青のネクタイに、茶色のシューズを合わせて遊び心をプラス。落ち着いたシルバーのカフスリンクスに、トゥールビヨン機構を魅せる腕時計。そして背筋を伸ばして、右手側から見て背中のカーブをS字に。この曲線はスーツを着た男の色気を強調するのです。どうですかギャラリーの方々、ちょっと鈴木さんかっこいいでしょう?

なぜ敵に塩を送るような真似をするかって?
僕は纏っているんですよ。見えない服。『余裕』をね。

あ、服は回収させていただきますねー。


エア・ルフェイム
★アドリブ絡み歓迎★

此処が噂のキマイラフューチャー!
やだ…めちゃくちゃハイセンス…超魅力的なんだけど!!
お仕事しつつ新しいオシャレも開拓しちゃおうっと!

るんるん気分でファッションチェッカーにロックオン
貴方にエアのチェックさせてあげる、光栄に思ってね!

今日は白のブラウス(袖無し)と黒のミニスカで纏めたモノトーンコーデ
エアのファッションにスカートは必需品
ロングよりもミニなのがポイント
こっちのがエアご自慢の美脚が際立つからね!

オシャレに寒さも暑さもない
自分をいかに魅力的に主張できるか
それがオシャレの醍醐味!
そこらのファッションチェッカーに負けるようなエアちゃんじゃないってこと、思い知らせてやるわ!



●魔法使いと鬼姫様
「此処が噂のキマイラフューチャー! やだ…めちゃくちゃハイセンス…超魅力的なんだけど!!」
 感動に目を輝かせながら、エア・ルフェイム(華焔・f02503)はハイテンションのまま、そこらを忙しなく駆け回る。興味のある物に駆け寄り、悪気なくそこらの店を冷やかして回る。
「あんまり離れないで下さいねー」
「お仕事しつつ新しいオシャレも開拓しちゃおうっと……大丈夫大丈夫、分かってるよー!」
 付き人の様にロア・ネコンティ(泥棒ねこ・f05423)が忠告する。此方はこの世界に慣れた物で、彼女のガイド役をしながら、目的地で下準備を進めていく。
「大丈夫かなあ……」
 呟きながら、服飾の出てくる壁を規則正しいリズムで3回ノック。思った物がきちんと出るまで繰り返し、往復数回。終われば、今度はアクセサリの出てくる壁を、最後に腕時計の壁をコンコンコン。彼の魔法使いの様な風体もあって、何かの儀式を思わせるが、道行く人々はちらりと視線を向けては欲しい物があるんだな、と察した顔で去っていく。
「何してるのかナー?」
 ひとしきり冷やかして、お気に入りを幾つか見繕って購入し、戻ってきた所でロアに問いかけてみる。
「ちょっとした準備です。最後にこれを……」
 持ってきた鞄に出てきた物を型崩れに気を付けながら詰め込む。彼自身の身長には合って無さそうだ。要らない分は途中の店や住民に渡し、代価を貰う。
「サイズ的にロアのじゃないよねー……ってことはっ!」
「ええ、今日の僕は舞踏会へ案内する魔法使い、と言った感じです」
「うんうん、イイねイイね! エアそういうの好きだよ! それじゃ行こっか!」 
「魔法は鐘の鳴る時間まで……お約束ですが」
「何か言った?」
「いいえ、何でもありません。行きましょうか」

●現着早着替
 到着した時にはシーザーの言葉に鈴木さんが汚い言葉を吐き、ギャラリーの皆がデバイスを2人に向け始めていた。良いタイミングだったと、ロアが目を光らせる。銀糸で鈴木さんを剥き、鞄に詰め込んでいたスーツ一式に着せ替えさせた。鈴木さんが声を上げる間もない魔法の如き早着替え。ロアは良い仕事をしたと一度、吐息を吐き出した。
「今何が!」
「ほう、中々の見立てだな」
「へー、アンタみたいなのでも、そのくらいの格好はつくのね」
 鈴木さんの横に宙返りで飛び込んで、向けられたデバイスの群れに目を向けながら、芝居がかった仕草でロアが一礼。
「では、僭越ながら、今回のコーディネートを。鈴木さんはスーツがお好きな様でしたので、そこは崩さないままのフォーマルコーディネートとなります。基本のスーツの上下はフランネル生地の物をご用意させて頂きました。ご存知の方も多いでしょうが、此方は柔らかく、着心地が良いのが特長になりますね。色はシックなグレーを。インナーに同色のベストも合わせ、濃青のネクタイとのワンポイントにしてみました」
 鈴木さんが軽く名刺頭を下にやり、肩を交互に上下させ、袖をくいくいと数度引っ張る。
「次は腕ですね。カフスリングスはシルバーの物を合わせ、そこから目を移していきますと、歯車がチラリと覗くんですね。バンドは雰囲気に合わせて革製をチョイス」
 言われるがまま、鈴木さんが腕を立て、ガッツポーズの様にすると、歯車機構、正しくはトゥールビヨン機構が覗く腕時計がはっきりと見え、逆に視線を戻していくとグレー生地の上に付けられたシルバーカフスが陽光に反射してささやかに自己主張している。
「靴は茶色で遊び心をプラスしてみました。最後に、背筋を伸ばしてみて下さい」
「こうですか?」
「はい、右手側から見て背中のカーブをS字に描きます。この曲線はスーツを着た男の色気を強調するのです。どうですか、ギャラリーの方々、ちょっと鈴木さん格好良く見えるでしょう?」
 見事な実況説明に拍手をする者、複数回頷く者、スーツの魅力を再発見した等、それぞれの反応を示す。
「こんなに……私の事を認めてくれる方が……」
「少し頑張るだけで良いんですよ、鈴木さん」
「……はい」
「あ、服は回収させていただきますねー」
「お前ら猟兵だもんな。そんなオチだと思ったよ! チクショオオオ!」
 鈴木さんの悲鳴が木霊する中、ロアは先程と同じ早業で。無慈悲に服を剥ぎ取って行く。因みにロアは一切着替えていないが、全てロアプロデュースのコーディネートに銜え、リアルタイム実況でのコーディネート紹介。最後にオチまで用意して、評価が下がることなど有るはずもない。
 因みに銀糸で剥いたので鈴木さんは、ボロボロになったダメージワイシャツ、ダメージスラックスに無事だったネクタイを着る事になる。これはこれで、ワイルドフォーマルと言う新ジャンルと言えるかも知れない。

●モノトーン・フラワーフレイム
 鈴木さんの暴露によりゲリラファッション会場は最高潮になる。その場で固まった猟兵にインタビューが始まったり、写真撮影が始まったりと、忙しくなり始めた。そんな中でエアは人目を引くように、小さな鬼火を両手に灯して、くるりと回って見せる。
「貴女にエアのチェックさせてあげる、光栄に思ってね!」
 鈴木さんをロックオンしながら、自身のコーディネートを見せつける。エアのファッションはモノトーンコーディネート。フリル多めの白ブラウス。赤い髪、好奇心の宿った緑色の瞳、袖なしなことも相まって健康的で活発な印象を人に与える。腕の曲線に沿って視線を下げると、此方もフリル多めの黒のミニスカート。シンプルだが、自慢の脚線美が際立つ仕上がりだ。
「どうかナー?」
 オシャレとは如何に自身を魅力的に主張できるかであり、寒暖は気にしてはいけないという彼女の信条を良く著しているコーディネートだ。先程の導入もあってギャラリーからの評判は上々である。ある種大胆なファッションに、魅了された異性は少なくない。
「シンプル推しですか。信条がきちんと伝わってきますし、自分を良く分かっているコーディネートだと思います。ニーソックスとかあれば更に私の好みですけど……兎も角、結婚を前提にお付き合いし……」
「エアより強かったら考えてあげる!」
 言い終わる前にウィンクを鈴木さんに振る舞って一蹴。なお、こんな明るく楽しい彼女だが、種族は羅刹、逸話持ち、猟兵と三拍子揃っており、彼女より強いと言うのは結構な難題ではなかろうか。難題だろう。
 因みに鈴木さんはフラれたショックで風化するような描写が挿し込まれた。地味に器用なりアクション芸だが、最早誰も注目していない。後もう少しで彼の心は完全にへし折れるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨識・ライラ
ふぁっしょんばとる?
服で戦うの?

うーんと…ちょっと待っててね!
(ごそごそ)
っはい!

春色のキャミソールワンピースに、ちらりと覗く太ももにはフリルリボンをあしらったワンピースと同じ色のレースを
今だとまだちょっと寒いから、ヴェールの肩掛けをするねっ
あと茶色のブーツ。これもフリルつきだよ
髪の毛はいつもはおろしてるんだけど、頭の左側にまとめてお団子にしてるよ!
髪飾りは桜の花の髪留め

少し春を先取りしすぎたかな…?
怪人さん、どう?
怪人さんはスーツなんだ。あのね胸ポケットにハンケチーフを飾っておくとかっこよくなるよ!はい、どうぞ!



●春の訪れ
「ふぁっしょんばとる? 服で戦うの?
 しとしと、降り注ぐのは優しい無邪気な声音。キマイラフューチャーの騒ぎに晴天のような雨天の訪れる。雨識・ライラ(レインメランコリー・f12440)は今回の趣旨を理解しようと口に出し、可愛らしく首を一つ傾げた。
「うーんと……ちょっと待っててね!」
 ぱたぱたと設置されていた簡易更衣室へ走っていく。一応、同性であるカチュアとエアの2人が同行するが、後を追う者が多くカチュアは頭を悩ませ、エアは専業アイドルの如く手際よく捌いていく。歓迎されるのは嬉しいが、こう言った時に身分がバレているのは厄介だ。そんな状況を知ってか知らずか、簡易更衣室でごそごそと早着替えを終え、見張っていた2人と人垣の間を縫って、ライラは無邪気に駆けていく。
「っはい!」
「うん……?」
 傷心で風化していた鈴木さんに、屈んであどけない笑顔を見せる。まず目に付く桃色の髪は、今日の為に左側に寄せ、団子にして纏めている。ワンポイントに鮮やかな桜の花の髪留め。あどけない緑の瞳はそれらを際立たせ、キャミソールで露出される肩部の白い肌は、まだ寒い時期だからと、透明度の高いヴェールが覆う。フリルの多い春色のワンピースキャミソールは、強烈に少女であることを刷り込むが、覗く太腿にはワンピースと同じレース生地を使ったフリルリボンに視線を移せば、先には茶のレースアップブーツで仄大人である事を仄めかす。そんな小悪魔的な春色のコーディネートだ。
「少し春を先取りしすぎたかな……怪人さん、どう?」
「……梅が咲く季節ですから木にすることはありません。寧ろヴェールで肩を覆うなど、季節に合わせてワンピースの着こなしを良く考えられていると思います。自信を持って良いでしょう。ただ、貴女には……いえ、良く似合っていますよ」
「……? ありがと!」
 その様な格好をするには、年齢以上に幼い様に見える貴女には良くない、と忠告しようとして、似合う物を否定するのも良くないと、鈴木さんは口をつぐんだ。
「怪人さんはスーツなんだ。あのね、胸ポケットにハンケチーフを飾っておくとかっこよくなるよ! はい、どうぞ!」
「有難うございます。これを機に暫く……遠くにでも行ってみましょうか」
 ボロボロになったワイシャツにライラから貰ったハンカチを丁寧に折り、ポケットに挿し込む。知らなかった訳ではない。必要が無かっただけなのだ。着飾ったとして、幸福になれるとは限らない。だから、羨ましかった。鈴木さんは精魂尽きた様子で、フラフラとその場から立ち去っていった。恐らく彼はもう、妬みに任せて破局させるという行いはしないだろう。猟兵達は後を追わなかった。彼らの勝利に、ギャラリーから惜しみない拍手と歓声が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『フンッ!ハァッ!フンハッハッァ!』

POW   :    重量挙げなどパワー系で競う

SPD   :    100m走などスピード系で競う

WIZ   :    eスポーツもスポーツだ、知恵や戦略を競う

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●荒井ブラザーズの休日
 ガンガンもやし体型を煽り、一定数のカップル破局を達成していた荒井ブラザーズは今日を休日と定め、各々のトレーニングに励んでいた。
 共通メニューを終えた後は得意分野のトレーニング。彼らにとっての休日とはトレーニングの為にある。
 随分と悟った様子のワイシャツ姿の鈴木が通りかかったので荒井ブラザーズが話しかけると、暫く長い旅に出るからボスに宜しくということだ。何かあったのかと聞くと、猟兵が来たということらしい。
「やられちまったのか」
「まあ良いんじゃねえの?」
「よし、中央タワー破壊達成。これで敵の本拠へ繋げれるか? どの道ファームする暇は与えないけどなあ!」
 仲間意識は驚くほど薄かった。

●状況整理
 荒井ブラザーズは人気の少ない公園で。それぞれの得意分野のトレーニングをしている。猟兵はのんびりと彼等の居る所まで行き、勝負を仕掛けると良い。
 鈴木さんの時と同じで、彼等の得意分野で勝負し、心を折るのが主な目的となる。荒井ブラザーズは3人兄弟のマッチョメンズ。長男はパワー競技、次男はスピード競技、三男はeスポーツ、頭脳バトルに特化している。
 3人共通で種目、競技を指定し、戦法や戦略を考える手順となるが、三男とのeスポーツバトルのみ、ゲームジャンルの指定が必要となる。キャラクターや機種、車種を使用するゲームの場合は、どういった傾向があるのかを考慮するべきだろう。
 ついでだが、荒井ブラザーズは総じて真面目な性格だ。所謂イカサマには疎い。それがユーベルコードなら尚更だ。何か思いついたら試してみると良い。
 情報を流し見して、猟兵達は何をしようかと準備運動をしながら、あるいはゲームジャンルとタイトル、戦法を考えながら、現場へとゆるゆるした雰囲気で向かう。
シーザー・ゴールドマン
【POW】
さて、次はスポーツか。
そうだね、私は長兄に「アームレスリング」を挑むとしようか。
「単純な競技に見えるがパワー・テクニック・タイミング全てを求められる奥深い競技でもあるね」
とりあえず、尋常に勝負。
パワーは[怪力]テクニックは[フェイント、カウンター、先制攻撃等]タイミングは[見切り]を活用。
そのまま勝てるなら「ふむ、弱いな?」とそのまま勝ち、多分、訓練に使っている重量挙げの道具を片手で持ち上げて「これで練習しているようではね」と心を折に行きます。
(なお、流石に『サイコキネシス』で補助している模様)
拮抗、あるいは負けそうな時はこっそり『サイコキネシス』で、その後は同じ流れです。



●アームレスリング
(さて、次はスポーツか……)
 シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は、目標の情報を頭で整理した後、競技を然程迷うことなく決定した。
 先程の騒動でファンの様な反応を見せた女性に、辺りのガイドを頼み、ガイドマップと照らし合わせ、目的の壁を探す。3回叩き、目的物を掘り出すと、荒井ブラザーズの居る公園へ向かう。遊興として少し名残惜しくはあるが、女性には後腐れのないよう、紳士に対応し、途中で別れた。バーベル上げをしていた荒井ブラザーズの長男にそれを見せ付けるように、悠然と歩み寄る。
「優男の顔で、成程、貴様、鍛えているな」
「褒め言葉として受け取っておくよ。競技は見ての通り」
 抱えていたアームレスリング台を公園へ豪快に下ろす。それなりの距離を歩いた筈だが、シーザーは当然のように汗一つ掻いていない。
「アームレスリングだ。単純な競技に見えるがパワー・テクニック・タイミング全てを求められる奥深い競技でも有るね」
 当然知っているだろう、と問い掛けるように、長男へ挑発的な視線を投げる。
「無論、釈迦に説法とはこのことよ! 良いだろう。その傲慢、正面から崩してやろう!」
「じゃあ俺が審判をやろう。兄貴達だと少し心許ないしな」
「では、身内贔屓な審判をしないと約束してくれるかね?」
「まあ、負けるとは思えねえけど、そういうの皆好きじゃねえからな。良いぜ。スポーツマンシップに則って、誓いを立てよう」
「有難う」
 シーザーは変に勘繰られるのを避ける為、まず背広を脱ぎ捨てた。両腕のボタンを外し、袖を捲ると、逞しい筋肉が顕になる。アームレスリングは単純な競技だが、それ故に厳密なルールが定められている。反則行為は10項目に及び、これを2回行えば敗者となる。また、競技前に一礼をしなければならず、競技のイメージに反して、非常に紳士的なスポーツだと言えるだろう。
 競技台にアーサーと長男が向かい合い、一礼。互いに左腕でグリップバーを握る。
「セットアップだ。手間を掛けるようなことはしないでくれよ? 優男」
「そちらこそ、腕が太すぎるからと言って、やたらと時間を掛けるような真似はしないだろうね?」
「良い度胸だ」
 互いにエルボーパッドに肘を預け、自分の胸が正面になるように構え、手首を曲げず、手の甲から前腕が水平状態になるように組む。この状態で、互いの第一関節が隠れない。セットアップは非常にスムーズに進んでいく。最後に、2人がきっちり拳一つ分、顔を離す。
(流石にこんな所では二人とも手間取らねえか)
 3男が軽く互いの腕に触れ、その時が訪れる。
「……ゴッ!」
「オオオオオオオオオオオオオ!」
 短い掛け声と共に互いが腕に力を入れる。筋肉が瞬間に躍動する。長男の取った戦法は速攻。圧倒的筋力差で畳み掛けようと獣の如き咆哮で全精力を傾ける。通常ではありえないが、金属製グリップバーがへし折れそうな悲鳴を上げる。対してシーザーは無言でひたすら耐え続ける。声も上げず、その表情から笑みは消えず、ただ拮抗する為だけの力を入れ、ジリジリと機を伺う。どちらも力が無ければ成り立たない、相反する戦法だが、掛かる負担は同様でも、心理的作用は真逆。速攻を仕掛けた側は焦燥と消耗、持久を仕掛けた側は余裕が残る。
「ふむ、弱いな?」
「何ッ?」
 気が緩む、一瞬の脱力、シーザーはそれを見逃さない。全精力を傾け、一気に長男の右腕をタッチパッドまで持っていった。競技台に穴が空きそうな衝撃。豪腕を持って、シーザーは彼を捻じ伏せた。
「ストップ! マジか……!」
「ば、馬鹿なッ!」
「弱いな、と言ったんだが、聞こえなかったかな? 」
 ボタンを戻し、背広を着直す片手間に、トレーニングに使用していたバーベルを軽々と持ち上げ、荒井ブラザーズに見せ付ける。
「こんな物で、練習しているようではね」
 常人であれば、持ち上げるのも困難な重量ではある。流石のシーザーでも、素の筋力では難しいので、こっそりと念動のユーベル・コードを使用していたが、気付くはずもなく。
「う、嘘だ嘘だ……お、オオオオオオオオオ!」
 地に手足を付いた、雄叫びの様な長男の泣き声が、周囲に響き渡る。得意競技でもあったのかもしれないが、長男の心は完全に折れてしまった様だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イクス・ヴェルデュール
◆アドリブ歓迎

パワーとか憧れるけど
悲しいかな現実は非情ってもんだぜ…
でもその分得意分野で頑張りゃいい事!
つーわけで三男!俺はお前に勝負を挑むぜ!

eスポーツの中から「格闘ゲーム」をチョイス
キャラはガンガンパワーでおしてくタイプ
投げキャラ枠があればそいつを
これなら俺でもロマン叶えられるし!
素人だからって心配は無用だ
遠慮なしで楽しもうぜ

人の良い笑顔浮かべて言いつつも
メカニックとハッキングを利用し、
三男のコントローラーにちゃっかり小細工仕掛けてみる
キー操作が上手くいかない感じに仕上げたい

…す、少しでも勝率はあげとかないとだろ!許せ!

細工が不発に終わっても、
事前に予習はたっぷりしてきたからな!負けないぜ



●楽しい格闘ゲームの時間だよ!(三男)
 長男が泣き叫ぶのを見て、次男が慰めに入るが、長男の心には中々、届かない。その光景をのんびりとシーザーは見つめ、イクス・ヴェルデュール(春告のひかり・f01775)は少し心を傷ませて、三男の前に立つ。
「来客が多い日だな。そっちのは良いとして、俺の相手は……もしかしてお前か?」
「ああ、宜しく頼むぜ!」
 人の良い笑顔を浮かべ、イクスが握手を求めるが、三男はそれを払い除ける。
「得意分野での勝負だろ? おめー、eスポーツ舐めてんのか。ただでさえ遊びと勘違いされがちな競技なんだぜ……プロドライバーが何で身体鍛えてるか、知らねえとか言わねえよな?」
 頭を使う事が前提であり、次に必要なのは筋肉となると三男は説く。座ったまま、あらゆる作業を指先のみでこなすというのは、存外キツイものだ。必然、足腰や肩に負担が掛かる。
「俺の本業は修理屋だ。体力には自信あるぜ。それでも足りねえか?」
「……チッ、分かったよ。ソフトは選ばせてやる。レギュレーションだが、筐体は今俺が付けてるFMD、5Dサラウンド内蔵ヘッドフォン付きだ。コントローラーは見ての通り、オーソドックスな押し込み上下左右キーと色分け4ボタン。アーケード系の専コンや体感コンは今日持ってきてねえからな。ていうか年代毎にするとキリがねえよ」
「おう、ありがとな! 所でそいつ、大分使い込んでるみたいだな? 良かったら無料で修理するぜ?」
 コントローラーを指差して、駄目元で交渉。意外というか、三男はこれを真摯に受け止めた。
「……大分ヘタって来たからな、そろそろ買換えを考えてた所だ……不具合でてめぇに負けるのも癪だし、良いぜ。好きにやりな」
「変なことしはしねえって」
(バレない様に、ってことだけどな。心苦しいが……許せ!)
 本来なら、真っ当に勝負して、真っ当にゲームを楽しみたい所ではあったが、目的を考えると勝率は少しでも上げておきたい。
 心中を表にはには出さないよう、笑って言いながら、二本のコントローラーを手際よく分解し、修理していく。持ち前の記憶力と修理経験から、このタイプの修理は手慣れた物だ。興味と猜疑を丸出しで見ている三男を気にもとめず、軽く鼻歌を歌いながら、密かに幾つかの細工を施して、修理を終えた。
「終わったぜー。ソフトタイトルは決まってる。有名所の格闘ゲームだな」
 FMDを額に上げた状態で装着。UDCアース辺りで大会化も行われている著名ソフトの最新版のタイトルを告げ、
「此処じゃあ、そいつはもうレトロゲーの部類だが、愛好家が多いのも事実か……コントローラーを取れよ」
「随分と警戒してたけど、良いのか?」
「礼代わりだ。そもそも、多少の細工で素人に負けるようなら、プロ名乗れねえだろ」
 ギラついた瞳、そこにはイクスに対する幾つかの感情が渦巻いているが、中でも特に強いのは嫉妬心だ。どうも、鍛えてない優男と言うのは彼等の癇に障るらしい。FMDを被り、宣言したタイトルを起動、三男は空手家の様な風貌の男性を、イクスはプロレスラーの様な男性をそれぞれ選択した。ゲーム画面が切り替わり、大きく画面にREADYの文字が表示され、GOに変わり、操作可能状態へと移行する。
 先手を取ったのはやはり三男。押し込み、乱れのないキー操作でイクスに差し込む暇を与えず、体力ゲージを削りにかかる。イクスはイクスで染み付けたキー操作で、それらにどうにか反応、対応し、削られるゲージを最小限に抑え、同時に相手のキー操作回数を大凡、カウントしていく。
 イクスの行った仕掛けは規定回数の入力の度、少々反応が遅れるという物だ。時間にしてコンマ1秒あるかないか、気づきにくいが、この手のゲームで、その差は限りなく大きい。
(言うだけあって、流石に強え……!)
 防戦一方から打開出来ぬまま、体力ゲージが3分の1ほどになる。そこでどうにか打開の糸口を見付け、反撃に転じた。対空能力の高い上方突き上げを警戒し、伸し掛かりの使用は控え、地道な弱攻、特に中段を多用しつつ、掴みを狙うが、流石に警戒されている。三男が捌き切り、攻撃に転じようとした所で、細工が効果を上げ、一瞬の入力遅延、その一瞬の隙に、染み付けた投げコンボコマンドを乱れなく入力し、叩き込む。空手家がレスラーに掴まれ、宙高く舞い上がり、頭から豪快に叩き落とされ、ゲージを削り切る。
「……」
 三男が無言でコントローラーを握りしめる、イクスも流石に勝利の声を上げれる心境ではなく、ただ安堵の吐息を漏らす。両者の気持ちを汲み取ること無く、機械音声が2ラウンド目の突入を報せた。
 イクスはしっかり相手のキー入力数自体は記憶した上で、先程の展開を思い返し、行動を変更するが、三男は冷静にそれを切り返し、流れを作るが、1度目と同じく、肝心な所で微細な入力遅延、イクスが先程と同じ流れで体力ゲージを多分に持って行き、そのまま押し切る形となった。
「……ッ! なるほどな……そういうやり口で来たか。クソッ!」
 2本先取した、イクスの勝利で終わり、三男はFMDを上げ、コントローラーを地面に置いてから、座り込んで握り拳を地面に突き立てた。
「だけどな、あの遅延で挿し込める、手前ぇの技量とタイミング図る計算能力、練習量は認めねえといけねえんだよ。畜生……ッ! あとな、細工以外はコントローラーの調子めっちゃ良かったよ! 買い換えなくて済む。後で細工も外してくれよ、ありがとうな!」
 イクスは一瞬間の抜けた表情をしてから、先ほどと同じ人の良い笑顔を浮かべた。今度は飾り気のない、彼が浮かべるいつものそれだ。
「どういたしまして! そっちの方が嬉しいぜ!」
 すぐに作業を終わらせるてコントローラーを返すと、三男の舌打ちと悪態が聞こえてくる。これだから猟兵は嫌なんだと。
 彼の心はまだ折れきってはいない様だが、eスポーツへの意欲が一層強まり、カップルを煽る暇は無くなるだろう。同時に、出来ればリベンジを果たしたい心境に見える、あと1度は付き合ってくれるだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・リデル
シーザー、いつまで遊んでいるのですか?
え、eスポーツですか。はい、やれと言われればやりますが。
それでは三男さん、『野球ゲーム』の挑戦を受けてもらえますか?
(シーザーを迎えに来て参戦)

チームは……よく分からないのでカラーが青の所を選びましょう。
『魔眼』を発現
1回の攻守で操作方法の確認、未来視のタイミングの把握を行う。
2回以降の攻撃では「投げてくるコースを視て」的確に打つ、あるいはボール球であれば見逃す。
守備では「打たれない、打ち損じするコースを視て」投げる。
「読みやすいですね。向いていないのでは?」
(勿論、読んでいる訳ではなく複数のコースに投げた未来を視て、最善のものを選んでいるだけです)



●ベースボール!
「ほらよ、終わったぜ!」
 胡座を掻いたまま、動かない三男に、細工を取り除く作業を終わらせたイクスがコントローラーを手渡した所で、1人の女性がシーザーに声を掛ける。
「シーザー、いつまで遊んでいるのですか?」
 目に付くのは青い瞳と色白の肌、ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)だ。シーザーの庇護下にある彼女は恐らく、何時までも帰って来ない彼に痺れを切らし、自ら出向いたのだろう。荒井ブラザーズの瞳が一瞬で彼の方に向く。
「やあ、ステラ、出迎え有難う。帰ろうと思っていたのだが、何分、彼等がしつこくてね。」
「嘘です。この状況が楽しくて仕方がない、という顔をしています。悪い癖ですね」
「はは、これは痛い。しかし、この辺りは興味深い、もう少し滞在したい所だよ。ふむ……どうかな、ついでに、ステラも少し遊んで行くのは? 君もゲームは得意だろう?」
「え、あ、はい。やれと言われればやりますが」
「だから遊びじゃねえって……」
「君の長男は私に負けた、君は修理屋の彼に負けた。敗者は勝者の言葉に従うべきだと思うがね?」
「チッ……嬢ちゃんはあのFMD使いな。それから好きなタイトルを選べ。汚れが気になるなら、ウェットティッシュを置いとくから、吹きゃ良い。」
 シーザーの言葉に三男は渋々と言った様子で、FMDを親指で示してから、ウェットティッシュをその近くに放り投げた。
「あ、はい。有難うございます」
 念の為に渡されたウェットティッシュで筐体を拭いてから装着。
「それでは三男さん、この野球ゲームで挑戦します。受けて、下さいますね?」
 FMD筐体に表示されたソフト郡から、握ったコントローラーで、SDキャラクターの物を選び、起動する。
「あんまりe-スポーツらしいジャンルじゃねえが……いいぜ」
 対戦モードを選び、リデルはチームに詳しくなかったので、青い所を選ぶ。対して三男は黒い所を選んだ。先行後攻はリデルに先行を譲る形で始まる。野球ゲームの醍醐味は読み合いとタイミング合わせ、長短期のゲームメイク。選択したタイトルの場合、同じ選手を使い続ければ調子が落ち、アイコンが変化するので、選手変更のタイミングも求められる。如何に読ませないかを考えた場合、相手に思考の隙を与えないのが有力と言って良い。
「……え?」
「流石に、大会化もされねえし、あんまり触れてねえけど、鈍ってはねえな」
 録音された実況が終わり、画面が切り替わった所で三男は投球コースを即決、ストライクをあっさり3度もぎ取り、三振に追い込む。煽りは無視し、まず1回はやり方を覚える所からだ。以降、後の2人も三振になるまで、とりあえず色んな操作を試し、バットを振る。
「……選手交代は中央ボタンタイムを挟むのですね」
「っと、そうだな。タイム淹れる時は互いに声掛けだ。制限時間は無しで良いぜ」
 ボタンを押すことで強振になること、十字キーでバッターを動かせる事、カーソル範囲が大きければ打ちやすいこと、三振の間に幾つかゲームシステムを整理する。続いての1回裏、下手すれば延々と回されてしまうのが野球の恐ろしい所だ、なるべく失点は抑える様、望む。投球方法、フライに出来るタイミング、変化球の選択、打たせて取る方法を集中して、この間に掴んでいく。徐々に守備方法に慣れてきたというのもあり、結果3点差で抑える事に成功する。2回表から変わるアニメーションの間にリデルは未来を視る。
「……ここですね!」
 今度は即決する三男のコースを的確に強振で捉え、スタンドに叩き込んだ。ホームベースを走り回るアニメーションの間に次のコースを予測。変化球。見送り、続くのも変化球、見送り。次も真芯で捉え、3塁打を成功させる。そうして3点を返した所で2回裏。
「……随分堂々とサマしてんだな?」
「さて、何のことでしょう?」
「肝が据わってる嬢ちゃんだ……」
 勿論証拠はないので、立証はできない。だがおかしいとは感じるのだろう。彼の様にコース即決は出来ないが、未来を予測し、打ちにくい所、打たせて取れるコースを的確に選んでいく。そうして3回表が始まろうとした所。
「読みやすいですね……向いていないのでは?」
「……タイムいいか?」
「ええ、どうぞ」
 三男がリデルの煽りに押し黙る。リデルはリデルで絶え間ない未来視の連続使用で多量の汗と疲労を伴っている。三男は非常に手強かった。操作ミスが許されない。恐らくだが、このタイムの間が三男の調子崩壊の決定打だった。滅茶苦茶な投球、即決出来る強みはリデルに、どのコースを選んでも打たれる、見送られるという錯覚から投球に迷い、彼女に予知を悠々と行わせる結果となった。失点を許し続け、攻守が変わると、今度は打てる球を我武者羅に拾おうとし、フライとなって打ち取られ、終わる頃にはボロボロの戦績となった。
「……うそだ」
 ゲームが終わった後、三男は無言で燃え尽きていた。先程の試合とは違い、万全の操作が保証されて居るにもかかわらず、明らかに素人だった相手に自身のプロとしての技量はこんなものだったのかと、自問自答し続ける。再び立ち上がるには、恐らく彼女からのネタばらしが必要だが、そもそも彼等の心を折ることが目的である。因果応報と言わざるを得ない。残るはスピード競技の次男のみ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロア・ネコンティ
【SPD】次男さんと300mの障害物競走をしましょう!

障害物を仕掛けるのは僕ですが、どこに何をどの様に仕掛けたかは全て次男さんに教えますよ。

まず、発煙弾と音響閃光弾のワイヤートラップ群を掻い潜り、その先のいくつかある落とし穴を避ければゴールです。ハード過ぎますか?まさか次男さん……逃げ足が速いのが自慢なんてこと、ありませんよね?[言いくるめ]

以下イカサマ[罠使い]
・落とし穴は僕の体重では落ちないようにしてある
・発煙弾と音響閃光弾は僕の手作りで猟兵には効かない仕様

スタートしたら全力[ダッシュ]かつ罠を作動させ[吹き飛ばし+衝撃波+目潰し]で妨害します。

次男さんには気の毒だが正義のためなのです!



●過激な障害物の300メートル競走
「おい、二人とも、しっかりしろ!」
「次男さんは、僕と付き合って頂けませんか?」
 茫然自失となった2人を鼓舞する次男に、とんがり帽子のロア・ネコンティ(泥棒ねこ・f05423)が声を掛けた。
「俺がああなったら2人が救われねえんだが……種目は?」
「距離300mの、障害物競走です。障害物は僕が置いていきますが、どこに何をどの様に置いたかは全て、次男さんに教えます。不公平ではないでしょう?」
「分かった、代わりに、今、障害物を教えてくれ」
「分かりました」
 ロアの仕掛ける障害物は、障害物ではなくトラップだった。ワイヤー式の発煙弾に、音響閃光弾、カモフラージュした複数の落とし穴を予定していると伝えると、次男はあからさまに否定する。
「いやいや……そりゃ障害物じゃねえだろ!」
 最もな意見だった。最早軍隊ですら走らないトラップエリアだが、ロアは怯まない。
「ハード過ぎますか、次男さんは足が自慢だと聞きましたが、まさか逃げ足の事だとは……」
 自尊心に付け入る挑発。掌を頭に当て、大袈裟にロアが首を振る。
「んなわけ有るか!」
 すぐさま、大きな否定の声が耳に届く。
「では、受けて下さるということで、宜しいでしょうか?」
 してやったりと、逃げ場を塞ぐように、了承を取りに行く。次男は言葉を失い、逆上せた頭で不承不承頷いた。こう言われては、受けざるを得ない。
「では、詳細な配置の方は、準備が後わり次第、お伝えしますので、少々お待ち下さい」
 スタート地点に魔法で線を引き、ワイヤー連動の発煙弾と音響閃光弾を設置していく。落とし穴も精霊魔法を使ってスムーズに掘り進める。大体3メートルの深度の物をゴール前に量産し、見た目では判別できないよう、カモフラージュを土の精霊に頼む。堀り跡すら見えない驚異の隠蔽度、手伝って貰った精霊に軽く頭を下げ、大体の位置を紙に書き、次男の元へ戻る。
「詳細な配置図になります」
 差し出した図を次男は無言で受け取ると、すぐに罠の配置を叩き込む。コースは300mの一直線、最初はワイヤートラップ郡、抜ければゴール前に落とし穴の群れ、安全地帯は酷く狭い。
(……迂回するしかねえか)
 ロアもそれは承知の所。スタートの合図は荒井ブラザーズが役に立たないということで、猟兵側、イクスが任されることになった。
「じゃあ行くぜ、位置についてー!」
 声と共にロアが猫本来の四足の姿勢、次男は綺麗なクラウチングスタートの姿勢になる。
「よーい……」
 合図に次男が大きく、鍛えられた下半身を持ち上げる。、
「ドン!」
 イクスの手が勢いよく降ろされる。ほぼ同時に2人が飛び出すが、ロアは走りながら、罠を作動させる。僅かな機械音。迂回を目論みた次男が、音響閃光弾によって視覚と聴覚を剥奪され、発煙弾による追い打ちを食らい、進路を見失った。
「気の毒ではありますが、身から出た錆と反省して下さい!」
 そもそも彼等も唆され、幾多の人間に同じ様な思いをさせている、これは正義の行いだ。言い聞かせるが、公平に勝負をする彼等に、若干の後ろめたさを感じた。
(せめて、この機会に反省して下さいね……!)
 閃光と音響、発煙弾による視界悪は、製作したロアを含め、猟兵には効果のない特別仕様。最初の罠を難なく通り抜け、ロアはゴール地点に向かって超速で駆けていく。
「くっそがあああ!」
 次男は迂回を諦め、見えぬ目と耳で獣の様な咆哮を上げながら、ロアの後ろに縋る! だが、ゴール前の落とし穴の安全エリアを走ることができず、隠蔽された足元の罠が、呆気なく巨体を飲み込んだ。
「……ッ!」
 次男はこの時に、心底後悔した、あんな誘いに乗らなければよかったと、そうすれば、こんな目には遭わなかった筈だと。しかしあまりにも遅すぎた後悔だった。跳躍し、どうにか穴を出た時、ロアはゴール線を越え、イクスがそのことを大きな声で告げた。
 40秒にも満たない、短い激闘だった。
 這い上がった次男は、暫く何も喋らず、虚空を眺めていた。ひとしきり、そうしてからゆっくりと、独りごちる様に口を開く。
「因果応報だよな。これは……悪心が身を滅ぼすってか……分かった。もう二度と悪さはしねえ。嫉妬に駆られて、あんな動画も上げねえ」
「……本当ですね?」
「ああ、だから、誰でも良い。最後に俺達兄弟1人と、遊んでくれねえか?」
 次男は言い終えると、茫然自失となっている2人に声を掛ける。先程、自分が悟ったことと同じ様に兄弟に語る、今日の出来事は因果応報だった、慢心を捨て、一からやり直そうと。時間経過もあったのだろう、気持ちに整理が付いた2人は、ゆっくりと頷き、立ち上がった。
 亮平達の活躍で、彼等の心は折れ切っている。もう他人に迷惑を掛ける事はしないだろう。
 改めて、長男はパワー系競技、次男はスピード系競技、三男はeスポーツや頭脳ゲームが得意だ。彼等は勝負ではなく、遊んでくれと頼んでいる。イカサマも可能だが無理に考えなくても良い。思う存分、好きな相手と好きな競技で遊ぶと良い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
「ふむ、遊び。良いね。
 それでは次男君、私と800m走を楽しもうか?」
『シドンの栄華』〈創造の魔力〉でレースに必要なものを創造
「ハハ、競技で魔法は使わないよ。それでは楽しくないだろう?」
「服装は気にしないでくれたまえ。地底から宇宙空間まで全対応なのでね」
競技
スタート(先制攻撃×見切り)で完璧なスタートを。
セパレートレーンを次男より一歩でも早く。
オープンレーンに入ったらポジション争い、駆け引きを(フェイント×見切り×戦闘知識)制する。
ラストスパートでは全力を出すのみ(ダッシュ)
勝敗はともかく「うむ、楽しかった。邪心なく競うというのも良いものだね?」



●800メートル走を楽しむ
 彼等の懇願にステラの説得をのらりくらりと躱しながら、のんびりと経緯を眺めていたシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)が立ち上がって口を開く。
「ふむ、遊び、良いね。それでは次男君、私と800メートル走を楽しもうか?」
「その顔で鍛えてたアンタか。足の方も自信があるんだな。おう、ありがとな」
 あ、とステラが口を開いて追い縋る頃には、既に話が終わっていた。シーザーが、自在構成のオドを開放し、公園に800メートル走用の本格的なレーントラックを形作る。
「とんでもねえな、そこまでする癖して、服はいいのかよ?」
「服装は気にしないでくれたまえ、地底から宇宙空間まで、全対応なのでね」
 両目を得意げに瞑ったまま、赤の背広を軽く正して見せる。スーツが地底から宇宙空間まで、というのは何とも奇妙だと、次男がスタート地点に立つと、シーザーも続く。審判、合図はロアが務める事となった。高い運動能力と動体視力、審判には適任だろうと言うことだ。
「それでは両者、位置について」
 利き足を後ろに引き、上半身に芯を入れるように垂直を保つ。脇を軽く締め、感覚を研ぎ澄ます。流石というか、効力が長く無いのか、次男の聴覚、視覚は既にあらかた戻っていた。
「よーい……」
 蛍硝子の銃口が公園の蒼天に向けられる。無詠唱で風の精霊魔法を編むと、内部の反射、回転によって徐々に増幅されていき、甲高い音と共に淡い風色の燐光が銃口を彩っていき、増幅臨界に達した所で引鉄を引く。空気が弾け、風魔法と共に、精霊が空へ昇っていく。
 同時に、両者がスタートを切る。僅かに前に出たのはシーザーだった。リズム良く腕を大きく振り、膝を高く上げ、地面を蹴る。筋力量の多さから必然、次男と走り方は同一だった。
 第一曲走路は若干のリードを保ったまま、セパレートラインの最終区間に差し掛かる。幅5cmの白線、100m区間の終わり、ブレイクライン。陸上の格闘技、静かな攻防は此処からだ。
 オープンレーン。シーザーは油断なく次男を見据えながら、インレーンへ寄せていく。それを悟った次男は、寄せ過ぎない程度にインレーン気味に走る。差はほぼないが、リードもあってシーザーが制する形となった。
 200メートル区間、第2曲走路に突入。シーザーはリードを保てる程度のペースを保ち、一方で体力を温存していた次男がピッチを上げてくる。縮まる距離にシーザーは、然し、余裕を崩さない。
 300メートル区間半ばの頃には次男が抜き返す事に成功するが、背にぴたりと付いて来るシーザーに、素直に喜べる展開ではないと冷や汗を滲ませ、案の定、400メートルを過ぎ、600メートルの頃になっても、引き離すことは叶わず、後方からの重圧を浴びたまま、残200メートルのラストスパートに差し掛かる。
 シーザーが急激に加速し、次男も負けじと、速度を上げていく。最初の展開とは真逆だが、リードのまま前を走っていた次男のストレスは、知らずピッチを乱していた様だ。ケットシーの小さな手がゴールを宣言し、勝者がシーザーであることを、審判のロアが告げた。
「鼻差程度ですけどね、良い勝負でした」
 乱れたピッチは僅かな差として、顕著に現れ、そこをシーザーが制した形になったようだ。両者の健闘を称え、猟兵と荒井ブラザーズから小さな拍手が湧き上がる。
「……あー、負けた負けた! いやでも、やっぱ楽しいな。いつの間にか忘れてたなあ。ありがとよ。礼代わりだ。今からなら、アイツの爆破予告よりお前らの方が先に会場へ到着出来る」
「ふむ、良い遊戯と情報の提供、共に感謝しよう。有意義な時間だったよ」
 シーザーが競技用トラックを元に戻しながら礼を述べると、次男が背中で手を振って答えた。彼等はもう、猟兵の前に現れる事はないだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『リア充どもは爆発しろ怪人』

POW   :    リア充は爆破する!
予め【リア充への爆破予告を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    リア充は爆破する!!
【リア充爆破大作戦】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    リア充は爆破する!!!
単純で重い【嫉妬の感情を込めて】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●爆弾頭の独白(ショコラ・ドロップ)
「悪いが、ボリュームを上げていく」
 アートチョコレートフェスティバル会場にコンパクトなリアルタイム配信ガジェットを持って、爆弾頭が独りごちた。
「恋人も出来なかった、クリスマス、バレンタインデイ、ホワイトデイ、こんなつまらない日が巡ってくるのは、もう、うんざりなんだよ」
 旧時代の、随分古い有名音楽ゲームの3作目、好きな洋物ヒップホップを音楽再生ガジェットで再生し、耳のない頭で垂れ流す。その曲の本当の意味を分かっていながら、彼の心は止められなかった。
「モテねえ奴には罰ゲームだろうが。大体俺は甘党じゃねえ、何でこんなもん見せつけられるんだ。うんざりだ。台無しにしてやる。してやるよ。膨れ上がった幸せに爆ぜろよ、お前ら」
 引鉄を引くのも、スイッチを押すのも簡単だ。親指一本、それだけで内部火薬は爆ぜる。簡単だ。実に簡単だ。本当に誰だって出来る。
「死なない程度さ。いつだって、それが俺のショウだからな」
 嫉妬に塗れた爆弾の頭に、歌手のラップが虚しく響き渡る。開場前、撮影機材に爆破予告は別に急ぐ必要もない。仲間の鈴木も荒井達も良くやってくれたと、唇のない頭に皮肉に笑みを形作った。
 正式名称リア充どもは爆発しろ怪人、動画投稿時の今回の彼のハンドルネームは爆弾魔ドロップだ。

●状況整理
 荒井ブラザーズは去り際、会場の地図を落としていった。それらを宛にして、アートチョコレートフェスティバルの会場前に猟兵達は訪れた。爆弾頭が何やら独りごちながら、キマイラフューチャー出身者なら馴染み深い、小型の動画撮影ガジェットを展開している。恐らく予告動画だろう。彼等の言葉は正しかったようだ。
 会場前なこともあって人影は少ないが、爆破音などの物音に気付けば、会場内のキマイラが押しかけてくるだろう。その時は被害が出ないよう、気を付けて戦うべきだろう。また、会場そのものに被害が出ないよう、留意するべきだろう。
 彼のユーベルコードは3つ。

 戦闘力を増強する、爆破予告。
 嫉妬をエネルギーとした高速連続爆破。
 嫉妬を魔法エネルギーに変換し、打撃と共に爆破させる爆破。

 ユーベルコード名は全てリア充は爆破するであり、全くブレていない。気を付けたいのは派手な物音、会場に被害が及ぶ高速連続爆破だろう。
 最後に、会場はチョコを使ったライブアートや飛び入り参加にも肯定的で積極的な為、大量のチョコレート素材がある、猟兵は作りたいチョコレートや、チョコレートを使ったパフォーマンスを考えても良いだろう、と手元の資料に書いてあった。
 どう受け取ったかは兎も角、猟兵は情報を整理し、爆破の阻止を急いだ。
カチュア・バグースノウ
あんたが大元ね
変なこと企んでないで自分は自分でいいのに
…ま、考えらんないからこじらせたのね
あたし?リア充?んなわけないでしょ!

「殺気」で脅かしてみる?
ふふふ、殺しはしないわよ。ちょっと痛いだけだから

アックスソードブレイクで攻撃よ!
大きく振りかぶる攻撃だから、よく狙いすまして叩きつけるわ
敵がPOWの攻撃の予備動作をし始めたらチャンスね
すかさず攻撃!
敵が素早い場合は、「二回攻撃」「串刺し」で攻撃するわ

敵の攻撃は、武器受けでガードする
「見切り」も使って最大限被弾を減らしていく

アドリブ歓迎



●黒白の蒼天
「アンタが大元ね!」
「……誰だ? 俺は今、動画撮影の準備に忙しいんだが」
 カチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)の呼び掛けに、爆弾頭は音響機器のスイッチを切り、鬱陶しそうに振り向いた。
「変なこと企んでないで自分は自分でいいのに……ま、考えらんないから拗らせたのね」
「ハッ、毎年リア充どもが寄り添い合う様を見せつけられて、街中は好きにもなれねえ甘ったるい菓子の匂い。ネットに逃げ込んでも、あいつらの口は止まらねえ。検索結果からは逃げられねえ。俺みたいな奴には地獄でしかねえよ。だから、それを吹っ飛ばす。何だ、守ろうってするってことはアンタ、リア充か?」
 少数が楽しめずとも、多数は楽しんでいる。独りよがりな意見と理屈を吐いて、怪人は鼻で笑う。楽しめなければせめて吐き捨てて我慢すべきということが、既に見えない。
「あたしがリア充? んなわけないでしょ!」
 彼女がが世話になっているホテルの店主との関係性は、ある種リア充と言っても良さそうなのだが、或いは、そこまでの感情は抱いていないのかもしれない。
 否定の言葉を皮切りに、挨拶代わりと、打撃に特化した黒斧が怪人の頭目掛けて振るわれる。難なく避けるが、その後の殺気を孕んだ目に、一瞬彼の身体が竦む。
「殺しはしないわよ。ちょっと痛いだけだから……」
 カチュアが人差し指を曲げて唇に当て、微笑む。獲物を前にした肉食獣の笑みに、爆弾頭は一瞬、背筋が凍る様な錯覚を覚えた。
「……ああ、確かに、リア充とは程遠いな。そんな顔が出来るんなら、誰も寄ってこねえよ」
「うっさいわね! 余計なお世話よ!」
 振るった黒斧の慣性と遠心力を殺さず、回転から踏み込み、逆方向に振り抜き、今度は強引に慣性を殺す。それを爆弾魔は腕で防ぐが。彼女の細腕とは思えない豪腕に、容易く骨の折れる鈍い音が聴覚器官を刺激した。。
(折れた……? どんだけ馬鹿力……ッ!?)
 薙がれ、地から浮きそうになる足を、どうにか踏ん張る。もう一方の腕で黒斧を砕こうとするが、カチュアは斧を盾の様に上手く扱い、打撃の衝撃を逸らし、振り戻す。怪人は内心舌打ちし、軽く距離を開けた。
「……何処が少し痛いだけだよ」
「あら、堪え性が無いわね?」
 短いやり取りから一転、暫しの無言。兆候だと見切り、カチュアは黒斧を蒼天に掲げ、彼が爆破予告を発するより速く懐に入り込み、黒斧を力任せに振り下ろす。
「……ッソだろ!?」
 飽くまで打撃に特化した黒斧が、怪人の脳天に雷撃の様な衝撃をもたらし、揺さぶる。
「ロディ!」
 ふらついたのを瞬時に確認。一度斧から手を放し、数歩飛んで後ろへ下がり、肩上に居る白龍のロディに呼びかける。ロディはすぐに意図を察し、身を黎の槍へと変じさせ、確りとカチュアの両手に収まった。
「こっちはおまけ、よっ!」
 後手から捻りを加え、腹目掛けて突き込む。脳を揺らされ、よろけた怪人の足が浮き、派手に身体が宙を舞う。腹に穴が開かなかったこと、意識を手放していないことを鑑みると、頑丈ではあるようだ。
「ありがとね、ロディ」
 ロディを少龍に戻し、軽く撫でてやりながら、地に落ちた黒斧を拾う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
【POW】
おや、既に始まっているようだね。
さて、爆弾魔ドロップ君だったかな?
お仲間の鈴木君も荒井兄弟も改心したが……君もどうかね?
既にそちらのお嬢さんと遊んで満足したのではないかな?
まだ、遊び足りないなら私が相手になろう。
戦術
オーラセイバーで攻める。
先制攻撃×2回攻撃などで息つく暇を与えない連続攻撃を。
敵のPOWUCは前兆を見切り(第六感×見切り)
ダッシュで間合いを詰めて『バベルの消失』の一撃を放ちます。
防御面は見切り×第六感で回避あるいは受け流してカウンター攻撃を。
「リア充とは現実を充実している者を指すと聞くね。特に恋愛関係にこだわる必要はないのではないかな?」
※アドリブ歓迎・ステラと同行


ステラ・リデル
【SPD】
シーザーが負ける姿は想像できませんが会場への被害は防ぎたいですね。
敵のSPDUCを『魔眼』による未来視で警戒
発動を確認できれば発動前に魔法銃による牽制(先制攻撃)
「爆弾魔ドロップさん、その攻撃は駄目です。
 フェスティバルを楽しみにしている方たちが大勢いますからね」
こちらからは上記以外では仕掛けませんが、向かってきた場合は
先制攻撃×2回攻撃×属性攻撃:氷の魔法銃で迎撃します。
「少し、頭を冷やしてください」
※この件が解決したらシーザーに一週間は付き合うという約束を取り付けたので基本的にはご満悦。
アドリブ歓迎・シーザーと同行



●爆破(したかった)目標
「おや、既に始まっている様だね」
「そうみたいですね。会場への被害は防ぎたいのですが、どうしましょうか?」
 ドロップの飛ばされた先には二人の男女が現れる。シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)とステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)だ。一方は何時も通り、だが、もう一方は心なしか上機嫌の様だった。
「ふむ、そうだな……」
 ステラの進言に考える素振りを見せるが、シーザーの腹積もりは8割方決まっていた。爆弾頭が起き上がるのに合わせて、声を掛ける。
「ってぇ……あの女……本当にちょっとの意味分かってんのか?」
「やあ、爆弾魔ドロップ君だったかな」
「また猟兵……いや、お前等はリア充だな。そっちの女から彼と居られて幸せみたいな感情が漏れてやがる。酷え不快感だ。遠慮はいらねえな」
 交渉の為に口を開こうとしたシーザーだったが、爆弾頭は余地無しと言わんばかりにリア充と断定すると、一瞬で複数の爆弾を生成した。
 ステラは怪人のそれを見て、すぐに魔眼で数秒先を予知、シーザーへアイコンタクト。彼はすぐに読み取り、オドで剣を編み上げ、導火線を片端から切り落とす。
「まあ落ち着き給え、まずは話し合いをしよう」
「リア充が俺に何の話があるってんだ。精々爆風に気を付けながら、その不遜な口を開け。俺の前に立つな、消えろ、爆ぜろ、爆発しろ」
「聞く耳を持っていませんね」
「ステラは、もう少し感情を隠す練習をするべきだな」
「私の所為ですか?」
「少なくとも彼が我々をそういう者達だと断定したのは、君を見てからに思えたが」
「ああもう鬱陶しい、痴話喧嘩なら他所でやれ! 死ね!」
 ドロップが再び爆弾を錬成し、導火線に火を点けようとするのを、ステラが魔眼で感知。阻止すべく、銃を構えた。、
「責任の所在は一先ず置いておきましょう。ドロップさん、その攻撃は駄目です」
 氷結の魔力を選択、シリンダへ装填。普段は見えない超常との契約の証明である時事リウムが、ステラの魔力に呼応し、活性化する。
「フェスティバルを楽しみにしている方達が、大勢居ますからね」
 硝煙代わりの燐光。圧縮された氷結の魔力弾が、ドロップの折れた腕目掛けて吐き出され、着弾先の腕が凍結していく。
 結果を予め知っていたかの様に、シーザーが同時に距離を詰める。側面側から、身体を捻りながら踏み込み、背後を取る。刹那遅れた二つの風切り音。二振りの剣の所在は、爆弾頭の首元と腕。腕を見れば、骨までは行かずとも、筋繊維に食い込む程度まで裂かれている。
「既にあちらのお嬢さんにステラ、2人と遊んだ後だ。これで満足したのではないかな? 彼女の忠言を聞く気は無いかね?」
「仲が宜しい様で結構なこった。自慢の黒髪が縮れてアフロになるまで爆発しな。俺がリア充どもの言う事を聞く訳ねえだろ?」
「鈴木君や、荒井兄弟は改心したが?」
 シーザーの言にドロップはやはり、嘲笑うかのように、無い唇を歪めた。
「俺は、俺の声に同意した奴なら誰でも良かった。イラつくリア充どもを煽って、失意のどん底まで落として、関係を破局させる。そんな動画を上げてくれればな。アイツ等は本当、良くやってくれたよ」 
「成程、傲慢だな」
「人に刃物突き立てながら、言ってくれるよなあ! 優男!」
 爆破予告を遮るように、怪人の片腕が飛ぶ。
「残念だが、交渉は決裂の様だね。ステラ、後ろは任せよう」
「無くとも、負ける姿は想像出来ませんがね」
「信頼は有難く頂こう。然し、今回は静かに終わらせないといけないからね」
「お前等喧嘩してただろ、何でもう水に流してんだよ!?」
 宙に飛んだ腕を代償に、ドロップは剣の拘束から逃れ、痛みにやられそうな頭をどうにか声を出して鼓舞していく。
「だそうだが、私達は喧嘩をしていたかな?」
「此処に来る前までは、少し揉めていましたけど」
 ステラは心中でのみ淡く微笑み、表は冷静を気取る。彼と1週間付き合うという約束がとても嬉しい様だった。
 先程そうだ断定された理由として、怪人はこの僅かな感情の揺らぎを敏感に察知した、という事になる。今もそう言った感情を察知したらしく、言葉にならない苛立ちが火種となって、頭の導火線を伝っていく。
「……爆発しろテメエラアアアア!」
「リア充とは現実が充実者を指すと聞く。特に恋愛関係に拘る必要はないのではないかな? それは兎も角、喚く暇が有ると思っているのかね?」
 オドを開放、両腕に収束させ、凝縮。工程の間に袖下の魔王紋が明滅する。気配を察した怪人が、射程外から逃げるように距離を取ろうとした所で、その足に貫通の魔力弾が突き刺さり、声帯が引き攣る。
「任されましたからね」
「という訳だ。消えたまえ」
 銃口を口元に当て、誰にともなくステラが軽く首肯する。
 シーザーが、カチュアが貫いた腹部と同様の場所に、繰り出した掌底を起点に練り上げ、凝縮されたオドが怪人の体内に流れ込む。膨大な容量と密度を持った魔力エネルギーが怪人の神経を駆け巡り、その一部を容赦なく焼き切っていく。
「が……」
 あまりの痛撃に喉から声が漏れた。男の言う事は良く認識している。言うまでもなく、どちらも嫌いだった。恋人とそれを引き立てる菓子の山には、より我慢出来なかった。
(言っただろう、テロリストは其処を勘違いしているんだ。)
 頭の中でDJの声が響く。本当に爆弾を落とす等、馬鹿げた行為だと。そう言い切ってしまえる彼が、酷く羨ましく思える。
「ふむ、中々の頑丈さだ」
 とはいえ、息があるのが不思議な状態だ。両腕は使い物にならず、胴体の神経が半ば焼き切れている。決着はもうすぐだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メルフローレ・カノン
目前の怪人にも色々事情(?)はあるようですね。
少しくらいは愚痴を聞いてあげてもいいですが……

テロリズムには賛同できませんので阻止しますし
オブリビオンは撃破です。

私の得物はメインがメイス、サブが剣です。
敵はメイスで殴るとか、導火線は剣で切断するとか
[属性攻撃]で水属性で火気を消すとか
使い分けましょう。
[力溜め][怪力]の上で、
[2回攻撃][傷口をえぐる][気絶攻撃][マヒ攻撃]で
攻撃していきます。
「全身で行きますよ!」


敵の攻撃は[見切り]でかわすほか
[オーラ防御]【無敵城塞】で耐えましょう。
一般人や建物などへの被害は[かばう]も活用して
防ぎたいところです。
「ここは堪えてみせます!」



●年齢と外見が一致し辛いシスター(発育と暴力)
「ステラ、私は少し下がる。君は好きにし給え。どうやら、あまり好ましくない気配が近付いて来る」
「では、警戒しつつ、貴方の側へ」
 オドを多量に消費したシーザーの言う通り、神聖の気配を強く纏う黒の色彩を風が撫ぜ、女性らしい細い髪が流れた。
「貴方にも事情があるでしょう、私もシスターの端くれ、告解程度は許しますよ?」
 メルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)が意識朦朧になった怪人を前に、地面にメイスを突き立て、幼い年齢でありながら、シスターらしい振る舞いで、怪人に問い掛ける。
「アンタは……世の愛を祝福する立場だろうが……俺に掛ける言葉なんてねえだろ」
 迷う様に言葉を区切り、興味を持ったのか、他の狙いが有るのか、絶え絶えの呼吸で、一つだけ、彼女に問う。
「音楽で、訴えるってのは、本当に……効果があるもんか?」
「はい、と答えるには私もまだまだ未熟ですので、明確には答えれません。ですが、今の行為に訴えるよりは、可能性があったでしょう。どちらにしろ、今更止められる様な思いでは無いのでしょう?」
「違いねえ」
「最後にもう一つ。会場爆破を止める気は?」
「無えな」
「では、全身全霊で阻止させて頂きます」
「……アンタを、爆破する。有り方が眩しすぎだ、羨ましいを通り越して妬ましい。純粋で居る事が鬱陶しいし妬ましい。そうあることを止めて死ね、悔いて爆ぜろ。リア充が」
 余談だが、彼女は人間の13歳である。純粋なのは当たり前だった。ただ、スタイルについては、年相応とは言い難いかもしれない。
 爆破宣言によって一時的に強化されていく肉体が、氷結を内側から食い破る。筋肉が肥大化し、合わせて血管が強靭な太さへと変貌が遂げていく。切れた腕は強化の影響で止血された。
 瞬時に生成された3つの爆弾がカノンに向かって放られた。2つを見切り、導火線を愛用のグラディスで切り落とす。もう一つは水の属性を持たせた神聖の気で防ぎ、消化した所で、怪人が舌打ちする。素手の間合いから頭に拳が振り上げられるのを、カノンは目で捉えながら、剣を納め、突き立てたメイスを肩に担ぐ。
(ここは耐えてみせます!)
 一拍の呼吸。それに伴う瞬間的な精神集中。神聖を体内で増幅、全身に巡らせ、身体を強化。痛みに耐える強固な意志と、鍛えられた身体が合わさり、理を覆す程の防御力を一時的に作り上げる。頭を狙った拳が、鋼鉄を殴る痛みへと変わり、表皮が軽く破けた。怪人は構うことなく撃の隙を与えず、上中下、3連の重い蹴撃。が、城塞を破るには至らなかった。勿論この状態は長時間維持できるものではなく、カノンも肝が冷えていた。切れ目に担いだメイスを思い切りよく縦に振り抜く。
「そ、お、れっ!」
 怪人が横に飛ぶのに合わせ、持ち上げ、横腹目掛けて思い切り叩き付ける。怪人の反応速度を僅かに上回った殴打が、肥大化した筋繊維の防御を突き破り、脇腹へめり込む音を立てながら、あばらをへし折っていく。怪人は転がりそうになるのをどうにか堪えるが、フラつく脳が肉体を制御しきれず、四つん這いの格好になる。待ち構えたように、メイスが頭に振り落とされた。今日二度目の脳天への雷撃、会話で幾分かマシになっていた頭が、また朦朧とする。
 カノンは直撃と判断すると、振り下ろしきったメイスからすぐに手を離し、納めたグラディウスをもう一度抜き、神聖のオーラを混ぜ込み、手の甲を容赦なく刺す。刺突が、怪人の手の甲と地面を文字通り、縫い付けた。
「全身全霊と言いましたし、このくらいは許して下さいね!」
 猫かぶりの本性、聖騎士としての脳筋の部分が、少しだけ顔を覗かせる。その状態から、再度メイスを振り上げ、痛覚反応より早く振り下ろした。爆弾魔の意識ごと、肉体が風化し、粒子となって風に流されていく。カレンはそれを見て十字を切った。せめて、天国に魂が昇る様にと祈った。

●終幕
 猟兵達の活躍によってイベント会場は大きな被害も無く守られた。精々通行人が誰かと喧嘩している、と認知している程度だった。イベントは滞りなく行われている。
 カチュアは良い機会だと、ホテルで出す菓子の参考にならないかと、会場を歩き回って見学した後、何種類かチョコの試作を試したようだ。
 シーザーとステラだが、彼女との約束通り。まずは共にチョコアート点を見て回って楽しむ。その後、何かを刺激されたシーザーが、立派な悪魔像チョコを作り上げたかもしれない。真偽は当人のみが知る。
 カレンは仕事終わりにおにぎりが食べたくなったのか、おにぎり型チョコレートを作ろうとしていた様だが、搬入されていた液体ョコに身を落とし、歳不相応な色気を振りまいたという噂が流れたとか何とか。
 そうして、猟兵達は戻るべき場所へ帰り、日常に溶け込んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月06日


挿絵イラスト