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水泥涙々(みぃどろ・るいるい)(作者
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●水泥涙々(みぃどろ・るいるい)
「質を問わなきゃ、何でもある」
 方唇を嫌らしく釣り上げる様な、下卑た仕草が、髑髏渦巻く、この街には良く似合う。行き交う者に正気は無く、狂気と愉悦と快楽がこの街の全て。希望を無くした瞳が頑丈な鎖に繋がれ、奴隷商人に引き摺られ、市場で捌かれる。明日を生き延びられれば幸運で、2度目の朝日を拝めれば、主の寛容に感謝する。
 隣人は乾いた音一つで息絶えて、時に戯れに殺し合わされ、色欲を満たす為の玩具として扱われ、明日は己かと頭の歯車を狂わせる。壊れて用無しならば、やはり何時か何処からか調達された彼等に加工され、悪鬼共の糧となる。
 髑髏と渦巻きの紋章が、満たされた退廃に、満足するようにはためいて、妖しく嗤う。人の不幸も、血も肉も、極上の蜜。滴る汗血全て、ヴォーテックス・ファミリーへの献上物。治める都市の名はソドムでもゴモラでも無く、ヴォーテックス・シティ。
 超超巨大都市の高層建築物、その応接間で、持ち込んだ石像は生身の人間を塗り固めた一品であると、捕獲したレイダーが大袈裟に語り、変わった趣味だと嘗ての王が愉悦に嗤う。
 身動き取れぬ商品が、流せぬ涙を伝わせながら、断崖の絶望に、儚き希望を求めて歌う。光など、有りはしないと知りながら。

●グリモアベース
「レイダーの大型都市が見えた……不幸に遭っとる人等が居るけー、救出を頼みてえ」
 見えた物の悪趣味さに、不機嫌を隠そうともせず、海神・鎮(ヤドリガミ・f01026)は吐き捨てる様に救出を頼むと、猟兵の方を見て、首を数度振る。
「酷え言い方じゃった。済まん。順を追って説明するよ。先ずは行って貰う世界についてじゃな。分かっとる人等は適当に聞き逃して良えからな」
 そう言って資料を猟兵に配り、自身もページを捲りながら、事件の起こった世界について説明していく。
 世界はアポカリプスヘル。オブリビオンストームと言う嵐によって人類の大半が死滅した世界であり、生存した人類は禁忌としたオーバーテクノロジーを解き放ち、ベースと言う拠点を築き、生活している。既存文明はほぼ破壊され、都市間通信も侭ならない荒野の世界だ。
「物資が極端に少ねえ上にレイダーってオビリビオンや、動く死体に機械、果ては発狂した人間なんかも荒野に闊歩しとって、生存が厳しい環境じゃな」
 そんな中でも人類は逞しく生き延びようとしており、人道に背いている技術を開放した理由も、捨て身の反撃を試みる為だ。
 物資困窮に対して、荒野に出て動き回る者達を奪還者、ブリンガーと言い、猟兵の立場はこれになる。
「猟兵の皆は大体、好感を持たれる環境じゃねえかな。通貨も当然整備されてねえから、物資やサービスのやり取りは物々交換が主流になるよ」
 極限環境であるせいか生存本能が強いらしく、優秀な奪還者は恋愛対象として求められやすい様だ。
「と、長うなったな……代わりにこっちの頭も大分冷えたよ……付き合ってくれて有難う。今回の依頼について、きちんと説明していくな」
 レイダー達が根城にしている大規模な都市が見つかった。嘗て栄えた大陸の主要都市、その2倍はあろうかという規模の有る、ヴォーテックス・シティ。
「支配者はヴォーテックス・ファミリー。髑髏と渦巻の紋章が特徴じゃ。勿論、レイダーの都市で人の権利なんてな。有るわけが、無えんよ」
 あらゆる悪逆と欲望の渦巻く狂気の都市。その土地での人の命は米一粒と等価値で有れば良い方だ。
「今回は生きたまま石像にされた人等の売買が行われる現場に出向いて、この人等を助けて欲しい。小せえ悪事に見えるけど、人の命を軽んじとんのは変わらん」
 場所は都市の一角に聳え立つ高層ビルの最上階、一帯を仕切るレイダーの応接間。丁度取引がされる現場に飛び込む事になると、鎮は告げた。
「奴隷は10人行かん程度、もう一度言うけど、まずは救出をお願いしてえ。やり方は皆に任せるよ。宜しく頼む」
 最後に鎮は丁寧に頭を下げ、皆を送る準備をし始めた。





第3章 ボス戦 『荒野の王』

POW ●覇王の刻印(ロード・オブ・ハイペリア)
全身を【覇王の刻印のもたらす超重力の力場】で覆い、自身の【混沌の荒野を恐怖で統治し、秩序を築く意志】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD ●この私こそが我が軍の保有する最強の力なのだよ
【戦車砲を軽く弾き返す無敵の肉体と反応速度】【伝説の黙示録CQCと冷静沈着な判断力】【片手に持った支援重火器による激烈な弾幕】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ ●殲滅が望みならば応えよう
【執務を行う陸上戦艦“凱王”を殲滅形態】に変形し、自身の【持つ統治者としての最後の慈悲の一欠片】を代償に、自身の【指揮する機甲死人大隊と試作超能力強化小隊】を強化する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は才堂・紅葉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●果て無き野心
 男はかつて、荒野に一大勢力を築き上げ、そこに秩序を齎した。それを天命とし、勢力を拡大し、この都市へと行き着いた。恐怖によって築かれた秩序と、ただ圧倒的な軍事力。無慈悲な人体実験を糧とし、自身の肉体を最強の保有戦力と嘯きながら、築き上げたそれ等は、ヴォーテックス・シティにしてみれば、一勢力に過ぎないと言う事実に、男の自負が倒壊し、野心が轟々と渦を巻いて膨れ上がる。
 この都市を手にするのだと。渦巻いた野心が、この都市で生んだ化物を稼動させる。自らが居るビルに取り付き、根元から八本脚の関節が、自身の根城であった高層建築締め上げ、瓦解させる。
「音声認識は良好。試験稼動には良い口実だ。勢いの侭制圧出来れば良いが。彼等は何処まで護り切れるものかな? いや、彼等の正義の手伝いだと褒められて良い行いだなこれは」
 超大型多脚戦車の上で、大口径の砲門が辺り構わず災禍を撒き散らし始める。都市部の一角を炎と硝煙に染めながら、荒野の王は猟兵達を嘲笑う。

●状況整理
 ヴォーテックス・シティの一角に、一際大きな黒煙と炎が上がる。取引をしていた高層建築の主が、戦車よりも遙かに巨大な多脚戦車に乗り、見境無く砲撃と追撃を開始した様だ。レイダーも人間も巻き添えにする無差別砲撃、多脚による三次元高機動力を活かし、高速で移動しながら、周囲一帯を炎の海としながら進軍する。目的は不明、自棄にも見える。
 多脚戦車には重火器が過剰と言えるほど搭載されている。主砲となる無反動砲が2門、ガトリングが副砲として4門、格闘戦用の間合いを想定した火炎放射器が2門。格闘戦用に、収納可能なショート・ブレードが8本の脚に1本ずつ。操作は基本音声認識の様だ。目に付く者を皆殺しと言う訳でも無さそうだが、周囲に構う筈も無く、オブリビオンの目的も不明瞭だ。
 猟兵は逃走経路と、鉄製の巨大蜘蛛、そして逃げ惑う人間達を見比べ、手を差し伸べる範囲を考えながら、行動を開始する。
エルヴィン・シュミット
親玉のお出ましか…
奴を潰さねえとここからは逃げ切れんだろうな。

奴に小細工が効くとは到底思えん。
真正面から仕掛けて他の猟兵達が攻撃できるだけの隙を作れるか試す以外に無いか…!

とにかくユーベルコード発動!
真正面から【怪力】【グラップル】で殴りかかる!
【見切り】と【野生の勘】で相手の動きをよく見て可能な限り確実に殴りつけ、雷撃で攻撃する!
どうやっても反撃は受けるだろうからそこは【気合い】と【覚悟】と【激痛耐性】で押し通す!
俺だけでどうにかなる相手じゃねえ、他の猟兵の為にも出来るだけ持ちこたえたい所だ…!

『ここが本気の正念場だ、全開で行くぞ!』


●業火の街に降る稲光
「親玉のお出ましか。奴を潰さねえとここからは逃げ切れんだろうな……」
 エルヴィン・シュミット(竜の聖騎士・f25530)は追走してくる鋼の蜘蛛と、上がる火の手に、トラックの上で独りごちる。救出に奔るにも、逃走するにしても、足止め役は必要だろうと、鎧の下の瞳孔が開く。
「奴に小細工が利くとは思えん。俺だけじゃあらゆる意味でどうにもならんだろうが、正面から殴り合って気を引こう」
 ぶっきらぼうな伝達を終え、魔力変換。騎士の鎧を解除、同時に竜血の覚醒を促進させつつ、翼を蒼空へ向ける。矢弓の如く飛翔する。
 見開かれた金瞳は元々そうであったかのように、爬虫類のそれを宿し、骨格が人のそれから竜の物へと筋肉の肥大化に追い縋るように骨格が変形、5メートルもあろうかという巨体が、雷光の如き光を纏う。遙か上空から竜の瞳が鉄騎に乗る砂色の大男を捉え、咆吼と共に竜の尾を棚引かせ、稲光が、業火渦巻く都市に落ちる。
「大仰な果たし状だな。だが、好ましくもある。此方に構うな。。お前はそのまま、好きに暴れていろ」
 指示を受けた鉄蜘蛛の制御系が飛び立った大男の指示に従い、半自律モードに切り替わり、轟音を響かせては、建物に取り付き、瓦解を助長する。
 様子を一瞥しながら、覇王の刻印が仄かに灯り、超重力の力場を発生させ、反発を許可し、降る雷を真っ向から受け止めんと、超速で跳躍する。当然のように音を置き去りにするそれを、エルヴィンは勘だけで感じ取る。
「当たるべき所を間違えているとは思わんか? 私はお前達と向いている方向は同じなのだがな」
 互いの衝突に、蒼空に耳を塞ぎたくなる轟音が鳴り響く。互いの繰り出した雷撃の籠もる巨大な爪撃を受け止める。当然のように傷一つ付いておらず、エルヴィンは舌打ちと共に返しの一打を捌きながら離脱。敵の言葉は聞き流す。
「此処では石像の方が長く生きられる。保証しよう。全ては、私がヴォーテックス・ファミリーを打ち倒し、秩序を打ち立てるまでの間だ。有情だとは思わなかったか、お前が叩きのめした1階の連中は皆、小綺麗な格好をしていただろう? あのビルの近くは、他に比べて清潔だったろう?」
「良く言うぜ。何であんなに怯えてたんだって話だ」
 彼等の増援は確かに、何かに怯えていた。清潔は規則の様な物だったのだろう。死なないオブリビオンが恐れるのだから、目の前の男の懲罰は、常軌を逸した物だと容易に想像出来る。
「恐怖は秩序を敷くにあたって不可欠な要素だ。恐怖無くして統一非ず。私は彼等の無秩序が許せんのだよ」
「手前ェの事を棚上げて良く、口が回るもんだ!」
 閃光となって絡み合い、衝撃と轟音を蒼空に撒き散らしながら、巨体の身体に重力入りの拳が幾度も叩き込まれ、持ち前の怪力と技術でいなし、それでも伝わる痛覚を歯を食い縛って気合で耐える。出し惜しみは命取りの超高速飛行戦闘を、エルヴィンは凌いでいく。
成功 🔵🔵🔴

レテイシャ・マグナカルタ


とんでもねぇモン出してきやがったな
車を襲う軌道の瓦礫等は全て拳で打ち砕いて救助者を守りながら
車が跳ねるタイミングを狙って飛び降りあえて敵車の真下に
大質量大重量が押しつぶそうと迫る中で、体内の魔力を総動員した拳の突き上げで真下からボスの所までぶち破るぜ!
そのままの勢いでボスの顎に一発ぶち込めれば行幸だ!
「テメェにどんな御大層なお題目があろうと、全部オレがぶち抜いてやる!」

●事後
直ぐに全てを救えないのはわかっているが見過ごせず
帰らずに潜伏して出来る範囲の情報収集と救助を決意
悪徳の街の影へ消える
欲望と暴虐の渦巻く闇の中で自身も様々な危険に曝されながら暗闘を続けていく


ネウ・カタラ
意志の強さは折り紙つき
だからそう、なり果てたんでしょう
ひとをやめたひと。怪物に
そういう意味では、似たようなものかもね。俺も

血統覚醒を使って、大鎌からの衝撃波となぎ払い
力場に阻まれてももう一度
仲間が攻撃できるすきが出来たらそれでいい

恐怖は己の狂気で相殺して
痛みはじっと堪えて我慢する
だって痛い痛いと嘆き苦しんだヒト達が
ここには沢山いたんだから

だいじょうぶ、わかってる
あいつに伝えてやらなきゃ、ね?
きみ達の、声を

呪詛の籠もった黒剣の刃を
大柄な体躯目掛けてふるう

きこえる?
散っていったヒト達の悲願のこえ
一度うけた呪いは消えないよ
いのちが潰えたそのあとも、ずっと

きみが与えた恐怖を、きみにも返してあげる、ね?


村崎・ゆかり
こんな大物まで追っ手として出張ってくるとはね。
OK。立ち塞がるならぶっ潰すまで。

アヤメは他のレイダーを警戒しつつ、救出した人たちを守って。

「高速詠唱」の方術『空遁の法』で一気に薙刀の間合いを作り、薙刀で「なぎ払い」「串刺し」「衝撃波」を交えた連続攻撃を、転移を絡めながら仕掛ける。
「地形の利用」で周囲の車を盾にしながら、ウィンドウ越しに付きを放ったり。
敵が明確にあたしを目標に定めたら、『空遁の法』で別の場所に転移して、それから再転移し、死角からの攻撃を加える。
とにかく変幻自在な高速戦闘を仕掛けて、反撃を受ける機会を減らし、全力を叩き付けるわ。

仕留めた! さあ、自由への脱出よ! 突っきりましょう。


勘解由小路・津雲
同じ系統の術者がいると楽でいいね。が、最後の相手は楽に、とはいかなさそうだ。火力だけでも後鬼の数倍はありそうだ。だが、こいつはヴォーテックス一族とは別、この街の本の一部なのだな。

【作戦】
 陸上戦艦と軍隊の投入とは、熱烈歓迎、痛み入るぜ。こちらは【歳刑神招来】を使用。
鋼鉄の蜘蛛が槍や鉾で貫通できる装甲とは思わない。だが多脚戦車の関節部を【スナイパー】で狙うとしよう。そこも当然防御が施されているだろうが、構造上そこまでの強度はないはず。破壊までは出来ずとも、確実なダメージを与えられるだろう。

残りの槍矛は敵部隊の牽制に。こちらはこちらでやっかいそうだが、頭を叩けば弱体化するだろう。


●空遁
「こんな大物まで追っ手として出張ってくるとわね。OK。立ち塞がるならぶっ潰すまで。アヤメ、こっちの護衛任せた」
「では私も外へ参りますので、陣をお借りしますね」
「……そんな簡単に干渉出来るなんて言われると、それはそれで傷付くわね」
「伊達に式神の身体では有りませんよ」
 従者であり、恋人でもある彼女にその様に微笑まれ、従者村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は溜息を吐いて、立ち上がる。先程、霊符で作り上げた結界用の法陣の中央に立ち、早口に呪を紡ぎながら、手早く印を結ぶ。呼応した陣が暗闇の中で、小さな光を灯す。
「現世の裏に無我の境地あり。虚実一如。空の一心によりて、我が身あらゆる障害を越えるものなり。疾っ!」
 紫刃を携えたゆかりの身体が食い合う陰陽魚の如くに捻れて消え、その後にアヤメが踏み入れ、座標を変更し、転移の門を潜る。
「もう少しの辛抱ですから、ご安心下さい」
 救助した者達に振り返り、安心させる様に、微笑んで手を振り、業火の戦場へと飛び込んでいく。

●秩序と欺瞞
「同じ系統の術者が居ると楽で良いが、最後の相手は楽に、とはいかなさそうだ」
 勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)は自律行動を始めたらしい鉄の大蜘蛛の姿を、式神を通し、持ち上げた金属鏡に認め、独りごちた。人が居なければ建物に取り付き、多脚を絡めて倒壊させ、或いは足場として、罅を入れる。そうして炙り出され、自身を襲撃する人影を優先して焼き、蜂の巣にし、逃げ惑う者には無反動砲に角度を付け、榴弾で雑に焼き払う。挙動に津雲は若干の違和感を覚えたが、その正体を掴む前に、敵の新たな追っ手が後方から迫る。遙か上空で、衝撃を撒き散らす大男が慇懃に唇を釣り上げる。
「空の上から熱烈なこった。歓迎、痛み入るぜ」
 倒壊した建物の瓦礫を踏み潰しながら、陸上に無限軌道の大型戦艦が地鳴りを上げ、陸上戦艦が鈍重な機体の砲塔を持ち上げた。
「とんでもねぇモン出して来やがったな」
 レテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)は追っ手を一瞥して、毒付きながら、砲撃の余波で飛散する瓦礫を、魔力の宿る拳で打ち砕く。
「本当に熱烈な歓迎ですねえ」
 数は300、内30の人員が頭痛に苛まれながら、自在軌道で車両を強襲し始める。
「んだコイツ等?!」
 狂気を宿した者、錯乱しながら向かう者、見えぬ者を見ながら何事かを呟きながら、向かう者。正気を失った超能の兵総勢30、男の秩序とは詰まる所、そう言う事だ。
「強化手術と言う奴か。どう言おうが、性根は矢張り変わらん。八将神が一柱、刑罰を司る歳刑神の名において、汝を裁かん。急急如律令!」
 手早く五芒星を切り、宙空に陣を描く。自在軌道で威圧する彼等を津雲の操作する長得物が追い掛ける。間にレテイシャと視線を交わす。それぞれが意図を理解し、撃墜に注意が向いた所で、超能兵士へと拳を叩き込む。感触に吐き気がした。
(人間じゃねえか……!)
 オブリビオンでは無く被害者側。手を差し伸べるべきか。再起不能と諦めて引導を渡すべきか、レテイシャは悩んで歯噛みする。
「丁度良い所だった様ですねー。飛んだりは出来ませんが、跳ねたり、目を潰すのは得意ですよー?」
「頼むぜ。こっちを追ってくる、大仰なあれとは別に、暴れてる奴も居るみたいでな」
「人間だ……助けられるか?」
「そりゃあ……折れる骨が肋骨だけで足りるなら御の字ってやつだ」
 目眩く状況の進行と共に、陸上戦艦の砲が照準を合わせ、轟音。水銀で強化されているとは言え、砲弾に耐えられるかは未知数だと判断し、津雲は手早く九字を切り、簡易の結界を張る。車両全体を爆撃から守護、同時にアヤメが分身を展開、宙空で生成した苦無をばら撒き、逃走経路を限定、迎撃に足を止めた所で、急所を外し、切っ先で貫く。気絶へと容易に持ち込めるそれを錯乱しながら、逃走する相手に困った様な顔をしつつ、分身一体を作り、其方の両手を発射台とし、逃れた強化兵に蛇のように絡んで抱き付いて、首を締め上げ、気絶させ、そのまま車両に持ち帰る。
「どうやら薬の類も使用されている様です。助けたとしても、普通の生活を送るのは困難かと」
「……クソが!」
 アヤメの言葉に、レテイシャは吐き捨て、戦闘を続行する。

●化獸
「意志の強さは折紙つき、だからそう、なり果てたんでしょう。ひとをやめたひと。怪物に」
 そう言う意味では、にたようなものだと、ネウ・カタラ(うつろうもの・f18543)は自虐的に上で衝撃を響かせて縺れ合う大男に語り掛ける。ちりりと耳飾りが揺れて、茫洋とした瞳に血が灯る。
「その名前を、口にしては、いけないよ。呪われてしまうから、のろわずにはいられないから。いのちの川を渡って、さあ、おいで」
 身体の中で血が暴れ、拍動が加速度的に脈打つ。細められた瞳孔、背を突き破る様に蝙蝠の翅を携えて、発達した犬歯が口唇に触れる。眞白の獸が亡者の呪いと血臭を引き摺り舞い上がる。
 接近戦をするエルヴィンを援護する様に、夜色の大鎌を一閃。拳一つで相殺され、その隙を縫って雷光を宿す爪撃が叩き込まれるも、真っ向から拳一つで相殺する。構わず音無しの二合、紡がれる鎌鼬に、男が視線を寄越す。
「夜を治める者が何故、私の邪魔をしに来たのかな」
「なんで? 分からない?」
 可笑しい可笑しいと、唇を歪めて含み笑う。大鎌を投げ付け、影色の大剣を構え、エルヴィンと鋏み打つ形で横薙ぎに振るう。
「聞こえる? きこえるよね。なげき、うらみ、つらみ、いたみ。うめき。ねえ、可哀想。かわいそう」
 呪詛を練り込めた影色の刃。視覚化し、渦巻く呪の濃度に、血色が混じり、一閃ごとに、大男を渦巻いて取り囲む。
「全ては尊い犠牲だ。大事の前の小事という奴だ。獣には理解出来んだろうがね」
「じゃあ、さっさと統一しなさいよ。出来ない独裁者気取りの妄言なんて、笑われて当然よね?」
 結わえた黒の三つ編みと、紫刃が妖しく揺らめいて、虚空に線を描く。ゆかりの腕を削ぐ一撃が、恐るべき肉体強度によって皮膚で止まり、振り切るのを諦める。
「開!」
 即座に転移、エルヴィンとネウが敵の軌道を限定したのに呼応し、三方からそれぞれ、雷鳴と怨嗟、紫刃の軌跡が描かれ、それら全てを重力を宿した拳による近接格闘術で捌く。僅かでも距離が開けば、支援重火器による煙幕弾を展開し、視界を奪い、エルヴィンの翼がそれを吹き飛ばすが、足を止めた所で、加速と体重を乗せた肘が突き入れられ、瞬時に頸動脈を裂く軌道の紫刃と、頭蓋を砕く唐竹の軌道で、黒剣が叩き込まれ、渦巻く呪詛が皮膚にじくじくと浸食する。
「きえない、消えない。ひがんのこえ。いのちが潰えたそのあともずっと、ずっと」
「振り向いたら毎日千人が死にそうな呪い言葉ね、それ……」
 狂気を深めるネウに呆れたように言いながら、ゆかりは360度全方から転移を繰り返し、相棒の薙刀を幾度も振るう。

●多脚戦車
 射程外から飛来し、奇妙に自身を襲撃する金属をセンサーアイは捉え、出鱈目に機関銃を放ち、時に高層建築を足場に跳躍し、ガトリングで撃ち落とす。高周波の音は硝子の飛散音と、音感センサを通じて判断し、尚も弱点である関節を的確に狙い、機動力を削ぐそれ等を、殲滅最優先対象とし、他の事項を優先度を最低限に移行。
 目前に入る熱源反応を無視、した筈が、火炎放射器で焼き払う。レッドアラート。深刻なバグの発生を自覚し、関節を一度、飛来物が貫く。想定外の負荷が判断機構に掛かり、警告が室内に鳴り響き続ける。訳が分からぬストレスに振り回されながら、響く四言の侭に包囲網を敷く飛来物に照準を合わせ、火砲を連続的に振り撒く。


●幕間
 要塞の車速は幸い此方に比べれば遅速、30の超能力兵をどうにか沈黙に追い込みながら、トラックの荷台に積み込み、津雲が拘束の呪によって沈静化させる。他方、遠目に居る多脚戦車の様子のおかしさに、式神とした二足歩行戦車の事が思い起こされる。
「……まさかな」
 特殊な場合を除き、意思が宿るとは考え辛い。非人道的な行いを辞さないと言うならば、中身に何を使っていようと不思議では無いと、金属鏡を覗き込む目を細めた。一先ずは脚を?ぐ程度に抑えるべきだろう。

●砕き星
 車体が支援砲撃の余波で浮くと同時に、レテイシャは宙空を睨み付け、歯を食い縛る。慈悲など何処に有る物か。この所業、只の悪党と、何が違う。
「ああ、とっくにぶち切れてんだ。俺はよ」
 竜の瞳が引き絞られ、無意識に目に集中した魔力が、動体視力を極限まで高め、上空の動きを明確に捉え、牙を剥く。流動する魔力が勝手に脚に集中し、爆発的な脚力強化を生む。地面を割りながら、金色の流星が一筋、悪徳の都に流れた。
「テメェにどんな御大層なお題目があろうと、全部オレがぶち抜いてやる! 歯ァ食い縛れ。クソ野郎!」
 脈動する全魔力を総動員した単純過ぎる突き上げ、だが絶好の拍子に鋏まれたそれが、大男を突き刺し、更に蒼空へ、その身を突き上げた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴