6
抗う者に祝福を

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




●脆弱な蜂起
 いつも暗いこの国にも、時折は微かに晴れる日があるそうだ。とはいえ、辺境の村で暮らす青年に晴れ間の印象はほとんどない。そんな穏やかな一日を体験したのは、おそらく片手で足りるほどだろう。
 青年は、日々を農作に費やしながら暮らしていた。彼に割り当てられた土地は、どうにも作物の育ちが悪かった。土そのものが痩せているのだろうが、それで徴税が軽くなるわけでもない。不毛の土地に、苦しい生活。それでも青年が腐らず生きていけたのは、彼に守るべき家族がいたからだ。
 青年には妹がいた。健気で、いつも誰かに笑顔をもたらしてくれる気立てのよい娘だ。青年が妹と過ごした安らぎは、両手を束にしてもきっと数えきれないことだろう。青年にとって妹は、たったひとりの大切な家族だったのだ。
 そんな妹が、あるとき領主の目に留まってしまった。領主の手懐ける獣から野兎の如く追い立てられ、生きたまま四肢を食い千切られた。肉親が、圧政者の嗜虐のためだけに惨たらしく殺されて……どうして、変わりなく生きていけると思えるのだろう。
 決行は夜間。仲間と共に農具をかき集めると、合図のように松明へと火を点けた。しかし青年は、仇討ちなんて大それたことは望んでいない。
 彼はただ、せめて家族と同じ場所にいきたかった。

●幼子の綴る一頁
「……と、まぁこんな感じで。青年は領主に牙を向くことになりましたとさ」
 グリモア猟兵の一人、ウィルマ・シャーオゥ(古書のヤドリガミ・f00154)は芝居じみた様子で語る。
 舞台となるのは『ダークセイヴァー』の辺境。小さな村を支配するヴァンパイアは『オルトロス』と呼ばれる犬のようなオブリビオンをけしかけて、戯れに住民を狩猟するらしいのだ。それも『獲物』と親しい者を拘束し、その一部始終を見せつけながら。
「そこまでならまぁこの世界だとよくある話なんだけどネ。この青年は似たような境遇の住人を集めて、なんとまさかの一斉蜂起!」
 とはいえ、住人が所有する武装といえば農具や日用品といった貧弱なものばかり。対するオルトロスは群れでの戦闘能力に長け、その個体数も計り知れない。住人達が総出で挑んだとしても、その結果は火を見るよりも明らかだった。
「このままじゃ、ヴァンパイアに辿り着くまでもなく全滅だネ。仇討ちっていうよりも、もしかしたら自暴自棄になってるだけなのかも。だけど、住人の陽動があれば強固な警備にも隙ができる。そこに諸君が便乗しちゃえば、強敵の撃破も充分可能という訳なのです、まる」
 猟兵達が取る行動の流れを纏めるならば、『騒ぎに乗じて領主館に侵入。警備のオルトロスは遭遇次第各個撃破。館内の私室にいるであろうヴァンパイアを探し出し、これを打倒する』というものになる。実行は夜間だが、住民の持つ松明や領主館の照明で、視界に不自由することはそうそうないだろう。
「オブリビオンを倒せたら? そーだネー……住人を励ましたりとか、墓地の掃除とか。そういうことも手伝ってあげたら喜ばれるんじゃないかなーたぶん」
 ヴァンパイアの統治下では、その悪趣味による犠牲者達を弔うこともままならなかったそうだ。それに、この作戦に住民全員が参加する訳でもないらしい。遺された者が為すべきことも、相応に山積みとなるだろう。
 戦いが終わって何をすべきか迷ったら、村外れの教会に向かえば良いはずだ。おそらく、猫の手を借りたいほど忙しいに違いない。
「ま、諸君なら大丈夫だと思ってるよ。オブリビオンさえ倒してもらえれば、それ以外は基本的にお任せします。それじゃー気をつけて行ってきてネー!」


藤川棗
 今回はダークセイヴァーよりお届けします、藤川です。以下は補足となります。

●第一章
 オブリビオン『オルトロス』との集団戦になります。敵の能力等はフラグメントの記載をご確認くださいませ。
 本来はこのオルトロス達が館の内外を無数に徘徊・警備しているため、領主館への侵入は困難を極めていました。攻め入る好機が生じていますが、館内を守るオルトロスは健在です。戦闘そのものは避けられませんが、工夫次第で有利な状況を作り出すこともできるでしょう。
 また、奇しくも陽動を行っている住民達ですが、彼らは戦いの経験も武器らしい武器も持ち合わせておりません。このままでは確実に全滅するでしょうが、作戦への影響はありませんのでご安心ください。彼らを援護することも可能ですが、猟兵達の目的はあくまでもその先にあることをお忘れなきよう。

●第三章
 無事ヴァンパイアの撃破に成功したら、村には束の間の日常が訪れることでしょう。失われたものに何を感じるか、遺されたものに何を語るのか。どうか皆様の心のままに。

 それでは、皆様の反骨精神に溢れたプレイングをお待ちしております。
24




第1章 集団戦 『オルトロス』

POW   :    くらいつく
自身の身体部位ひとつを【もうひとつ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    ほえる
【悲痛な咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    なかまをよぶ
自身が戦闘で瀕死になると【影の中から万全な状態の同一個体】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

緋縅・善蔵
「理由なき殺戮は赦さん。オブリ死すべし」
先に【スナイパー】を利用して村人が交戦するであろう敵集団の進路に【トンネル堀り〕と【破壊工作】を使って罠を張っておく。
自分は【オーラ防御】と【力溜め】で守りを高め【支援要請】でレベル÷3機分の無人機を招集。
敵と交戦する村人は搦手に掛かった相手に相対することになるが、一応〔影の追跡者〕を付けておき、劣勢になったら救援に【ダッシュ】。屠龍と月光を使った〔斬鐡〕で敵を屠る。
無人機だけでは押し切られるので、味方を巻き込まないようダッシュで戻って〔ミサイルカーニバル〕を含む【一斉発射】。
近距離の敵は〔マジ殴り〕で牽制し〔回転撲殺拳〕で倒す。
アドリブも連携もOK。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。私は、自分の心に従うわ。
そうするべきだと、最近教えてもらったから…。

【断末魔の瞳】を開き周囲の魂を吸収
心の中で暗視した霊達の残像に語り掛けて手を繋ぐわ。
体を呪詛のオーラで防御し、空中戦を行う“血の翼”を広げ音速で飛翔しよう。

…怨みでも、憎しみでも無い。
貴方達の大切な人を護るために、力を貸して…。

今までの戦闘経験や第六感を頼りに敵の殺気を見切り、
武器で受け流しつつ、生命力を吸収する呪詛のオーラでカウンターを行う

怪力の踏み込みから、大鎌の2回攻撃で敵陣を傷口を抉るようになぎ払い、
なるべく大暴れして存在感を放ち囮になるわ。

…私は多くの人の想いを受け継いでここにいる。
貴方達を死なせたりはしない。


エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎

POW

ふーん、ここがオブリビオンに支配された世界か
銀河帝国を野放しにしてたらSSWもこんな風になってたのかな…
まぁ、考え事の前に今は仕事に集中しますか

俺は館の外にいるオルトロスを片付けに行く
素人に囮やらせて自分らが楽するなんて恥ずかしい真似できるかって話
照明弾打ち上げて、本当の囮役として派手にやってやろう

UCで飛行可能なこっちからすれば、警戒すべきは咆哮くらいのもの
ビームライフルとグレネードランチャーで確実に狩っていく

上空からのほうが視界は広いだろうし、必要なら他の猟兵に敵の位置を知らせていこうかな



●援護、陽動戦・一
 平素は死んだように静まり返る辺境の村が、今宵は蛮勇の高揚に満たされていた。各々が農具を手に取り、領主に一矢報いるのだと口にする。中には心からそれを信じ込む若者もいたが……大半の住民は、それが叶わぬ夢であると理解している。ただ、それをけして言葉にはしなかった。その現実を口にした瞬間、立ち向かう意思すら挫かれてしまいそうだったからだ。

 松明の列が領主館へと進みゆく。先頭の男が敷地内へ足を踏み入れると、男の身体は刹那の間にかき消えた。どよめく集団に、影がむくりと首をもたげる。それは憎き獣を形取り、その内の一体が消えた男の喉笛に牙を突き立てていた。
「ひ、怯むな! 俺たちの怒りを思い知らせてやれ!」
 一人の男が叫ぶ。しかし、彼らは戦いなど無縁に生きてきた一般人に過ぎないのだ。彼らの戦意はこの瞬間に折れてしまったのだろう。腰が抜けて動けない者、無様に逃げ出す者。闇雲に農具を振り回しても、それがオブリビオンに通用することもない。
 脆弱な蜂起は、小鹿の群れを相手取るような狩猟へと変貌する。そのはずだった。
「理由なき殺戮は赦さん。……オブリビオン、死すべし」
 若者に迫る獣の横面を、緋縅・善蔵(首輪付き・f06737)の拳が吹き飛ばした。唖然とする若者を横目に見遣りながら、善蔵は自身の通信機器を用いて支援要請を送信する。
「こちら、『カラミティ』。無人機支援を要請する」
 すると、瞬く間に『参』の字が刻印された十体の機兵が現れ、方々に散って獣――『オルトロス』の群れとの交戦を始めた。
「カラミティ……さ、災厄……? あんたは、いったい……」
「俺はただの傭兵だ。名乗るほどの者ではない。それよりも立て、すぐ次が来る」
 援護はしてやる、無念を晴らせ。軍人らしい硬質な口調で端的に伝えると、善蔵は再び戦場を駆ける。住民の手で仇討ちが果たせないかと、可能な限りで援護に努めるつもりでいたのだが……善蔵が想定した以上に、住民達は頼りない。これは忙しい戦線になりそうだ。
 善蔵が護衛のために影の追跡者を走らせると、共有する視界が仲間の姿を捉えていた。一人は表情に乏しいが端麗な容姿を持つ少女。もう一人はパワードスーツに身を包んだ小柄な鎧装騎兵、エルト・ドーントレス(灰色の雷光・f14009)だ。
「銀河帝国を野放しにしてたら、スペースシップワールドもこんな風になってたのかな……」
 武装で判別し難いが、呟く声は若々しい。小柄なのではなく、そもそもの年齢が若いのだろう。
「素人に囮やらせて自分らが楽するなんて、俺はそんなの嫌だね。思いっきり暴れて、派手に引き付けてやろう」
 しかし、戦いに臨む誇りは高く、戦士と評するに恥じないものだった。エルトはそう言うと、自らの全身を電脳魔術の産物『守護擬精アウロラ』が増幅した電磁スパークで覆いつくす。背部のブースターユニットが電力によって爆発的な推力を得ると、エルトは電光を放ちながら天高く飛翔した。地を這う獣は双頭と化して吠え立てるが、その牙が空中戦を選んだエルトに届くことなどあり得ない。
 ビームライフルとグレネードランチャーを使い分けて、確実に敵を葬り去っていくエルト。しかし『厳重な警備』と言われるだけあり、獣の数も劣っていない。
「撃ってる間は死角のカバーが難しい……おじさん、悪いけどそっちの影とか頼めるかい?」
「おじ……ああ。だが過度な期待はするな!」
 善蔵が応えると、エルトは照明弾で方向を指し示した。閃光が一瞬影を奪うほどに煌めいて、共に戦う少女、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の姿が鮮やかに照らし出された。
「……ん。私も、自分の心に従うわ。それでいいと、そうするべきだと教えてもらったから」
 少女の脳裏に過ぎるのは大切な人の言葉だった。もしあの人がこんな目に遭ったなら、自分は絶対に敵を許さない。大切な人を奪われる無念は如何ほどのものだろう。それはきっと、残された者も……遺してしまう者も、魂すら裂かれるような苦しみだ。
 リーヴァルディの左眼に刻まれた愛執に呼応するように、亡と淡い光が集っていく。痛い、助けて――少女の心に数多の叫びが木霊する。今際の声は悲痛と恐怖が色濃くて、宥めるように語りかけてもけして和らぐことはない。
 だがそれ以上に、最も強く響く願いも同時に感じられた。
『助けて。あの人を、たすけて。死なせないで』
 ――彼岸と此岸に別たれてもなお、あなたたちは、生きていてほしいのね。
「……怨みでも、憎しみでもない。貴方達の大切な人を護るために、力を貸して……」
 リーヴァルディは血色の翼を羽ばたかせ、目にも止まらぬ速度で大鎌を振るう。精神の同調によって強化された斬撃は獣の反撃すら許さない。誰も死なせたりはしない。その想いを、死者達から力として託されたのだから。

 少女に負けじと宙を舞い、敵群の注意を引き続けるエルト。獣が講じる手段の中で、最も大きな被害を生みかねないのは咆哮の技だ。唸る個体を素早く見つけ出し、照明弾で注意を促す。善蔵も、全武装の一斉射や拳撃のバリエーションで連携しながら応戦していく。
 依然として敵の群れは尽きることがなく、この場で戦うだけでは領主の元には辿り着けないかも知れない。それでも、無力な人々を捨て置くことなどできやしない。そんな考えの基、猟兵達は未だ奮戦を続けている。

 突然の援軍に困惑を示しながらも、住民達の胸中には微かな期待が芽生えていた。本当に、一矢を……仇を討ち、死者達を弔うことができるのではないか、と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​


●先行、索敵戦
 夜闇の中においてもなお、贅を尽くした造りが見てとれる領主館。その正門方面から、男達の怒号と銃声や轟音が聞こえてくる。住民による決起集団がオルトロスの防衛隊に発見され、援護に向かった猟兵達がきっと戦端を開いたのだろう。
 館の内部にも警備体制は敷かれており、これを突破して元凶のヴァンパイアを探し出す必要がある。他の猟兵を信じて進む。それもまた、大切な戦いだった。
イーファ・リャナンシー
私、こういうことする人って一番嫌い…今の私にどれだけのことが出来るか分かんないけど、このままほうっておくなんて出来ないわ

何回やっつけても万全な状態の敵が出てきちゃうってわけね
だったらここに突っ立って戦ってても意味ないってことだし、前に進むしかないわ
【全力魔法】で【ウィザード・ミサイル】を撃ちまくって、敵の戦線復帰前に前に進む…この方法で前進するつもりよ
仲間や自分、あとは民衆に接するタイミングがあれば、それを【鼓舞】しながら少しでも敵に立ち向かう力を与えられたらって思うわ
喰らいなさい!イーファちゃんのとっておきよ?

みんなに比べて体が小さいってことで少しでも戦闘時の番狂わせになれないかなって思うわ



「私、こういうことする人って一番嫌い……」
 伝え聞いた領主の所業に眉を顰めながら、イーファ・リャナンシー(忘都の妖精・f18649)は警備の薄くなった地点から館内への侵入を果たした。今宵の機を逃せば、この村の領主――オブリビオンを討つことが困難になる。暗がりに潜む敵を相手に、自分はどれだけの働きを為せるものか。しかし、一抹の不安を振り払って少女は凛と前を向く。どのみち、この村の現状を放っておくことなど出来ないのだから。
 妖精の小さな体躯を物陰に潜ませながらも、素早く館内を進むイーファ。開けた場所を自らの纏う燐光で照らすと、そこは使われた痕跡のない調理場のようだった。包丁や食器の類は一目で高価なものだと分かる。先程垣間見た、住民の持つそれらとは大違いだ。
「インテリアでしかないってこと……?」
 自らの腕輪に触れた片手へ力がこもる。住民達は日々の生活にすら困窮しているはずなのに、この領主は全くの無為に財を投じている。イーファの言い様のない憤りが、ぐらぐらと身体の底から滲み出てくるようだった。
 その時、影の中から一体の獣が現れる。どうやら定期巡回の個体と鉢合わせたらしい。仕留め損ねれば増援が駆け付けるのは必至。ならば、一撃で確実に葬り去るまで!
「イーファちゃんのとっておきよ? たっぷり喰らいなさい!」
 全力を込めた炎の矢群が影の獣を焼いていく。惨めったらしい狗の声が上がるものの、それは仲間に届くほどの力を持たなかったようだ。
 作戦が功を奏したことに安堵しながら、イーファは先を急ぐのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ベアータ・ベルトット
その身に宿した怒りを信じて進みなさい
道は私達が拓くわ

館に突入後、まず蝙翼機光を展開
背後からの攻撃をオーラ防御すると同時、輝く光の翼で犬共の目を引く
パックの血液を浴びて血臭を纏い囮になるわ

獣の如く―
機脚のブーストダッシュを活かしたトリッキーな機動で駆けまわり銃撃
咆哮対策で敵の喉を狙い、機腕銃+スナイパーで精密に撃ち抜く
接近されても見切って躱し、喉をカウンターの獣爪で裂く
深追いせず、より多くの敵を引きつける事に注力

手負いの獣が周りにたくさん集まったら…
両機腕銃の弾丸一斉発射(+2回攻撃)と攻撃回数に全振りしたUCで大量迎撃
仲間呼ぶ暇も与えぬ早業でまとめて吹き飛ばすわ

飼慣らされた犬如きに…負けるか!



 館内の仄暗い廊下に、むせ返るような血臭が残されている。調教された狩猟本能が疼くのか、複数匹の獣がその臭いを辿り、忍び寄っていく。行く手には血液を滴らせた少女の影。すぐさま襲いかかるかと思いきや、少女の背から放たれる光を嫌うように、獣達はじりじりと間合いを図っていた。
「中の敵は警戒心が強いのかしら」
 感覚を研ぎ澄ませていたベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)も、接近する獣達の存在に気がついていた。なにせこの血は、自らを囮にするため意図的に被ったものなのだ。
 ここでより多くの敵をおびき寄せて撃滅すれば、他の猟兵が効率的に探索を行えるはず。あるいは、館の外へ向かう戦力を減らせるかもしれない。虐げられた者達の怒りは報われるべきだろう。そのためにできることを、ただ全力で為すのみだ。
 会敵したからには見逃す選択肢などあるはずもない。ベアータは機脚の加速機構を駆動させると、増幅された脚力で獣の懐に入り込む。両腕に内蔵したアサルトウェポンで一体の喉笛を撃ち抜けば、獣は絶命の間際に変異頭部で血肉を求めて牙を剥く。それと同時に背後から迫る二体をベアータは機翼で弾き飛ばし、至近の獣牙には鋭い蹴り上げを叩き込む。
「飼慣らされた犬如きに……」
 獣のあぎとを足場に宙返りをすると、再度距離を取り直して照準を合わせた。
「負けるかっての!」
 ヴァリアブル・ウェポンの連射が後続の二体を蜂の巣に変え、そのまま消滅へと至らしめる。同時に襲いかかってきたのは三体だが、周囲には未だ血を求める獣の気配があった。
「全部吹き飛ばして、私達は先に進むわ……まとめてかかってきなさいよ!」
 血液の滴る獣爪を構え、餓獣の少女は不敵に吼えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

彼岸花・司狼
…中途半端だ、どこまでも。
倒したいなら確かに死ぬ気でやれば良い。
死にたいなら自害すれば良い。
どちらも出来ず、死んでも良い、殺して下さいとか。
悲しいだろ、そんなの

【目立たない】ように気配を消しつつ、オルトロスが近づいてきたところで
同じく気配を殺している鋼の狼を【範囲攻撃+一斉発射】、【早業+二回攻撃+鎧砕き+怪力+生命力吸収+傷口をえぐる】で速やかに【暗殺】する。

生き延びても苦しみが続くだけかもしれない、だが死なせたくもない。
ヴァンパイアが見つかるまでは住人の近くで、気配を消したまま援護を続ける。

現が例え、どんなに寂しい夢だとしても
その命を投げ出さないで欲しい
なんて他人事だから言える我が儘かね


ルパート・ブラックスミス
他にも猟兵はいるのだ。【おびき寄せ】る頭数が増えてもよかろう。

UC【錬成カミヤドリ】展開。
複製鎧たちに短剣を持たせ住民たちを【かばう】ように館外の敵に対峙、遠距離攻撃を主軸に応戦。
複製鎧は短剣の【投擲】。【誘導弾】だ、誤射もないし当てれば【生命力吸収】する。
自身は青く燃える鉛の翼を展開し熱風【属性攻撃】、突破し接近してきた個体は大剣で頭部を【串刺し】【なぎ払い】。

住民たちは叱咤しつつ下がらせる。


虚け共が。貴様ら以外に誰が死んだ者たちを想うというのだ。
生きろ。背負え。その嘆きを糧に未来に至り、既に終わった者たちの人生に意味を与えろ。
…それは、お前たちにしかできないことだ。

【共闘・アドリブ歓迎】



●援護、陽動戦・二
 おびただしい数の鋼狼と鎧騎士、そして影の獣が入り乱れて戦っている。鋼の狼は彼岸花・司狼(無音と残響・f02815)が、複製された鎧の騎士はルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)がそれぞれに指揮を執って応戦していた。無力な住民達を守りながらの戦闘は、ただ攻め入るより気を遣わされる。今も気を逸らせた男が一人、がむしゃらにピッチフォークを突き出しては獣の反撃を受けようとしていた。
「う、うわあぁあ!」
「無謀に攻めるな! 後退せよ!」
 間一髪のところにルパート自身の複製体が割って入り、構えた短剣でその牙を受け止める。力の流れに沿って刃を走らせ、受け流しざまに切り伏せた。
 猟兵達が援護に加わったことで、自暴自棄だった住民達の目には僅かに希望が灯り始めている。鋼狼共々隠密状態からの奇襲に専念する司狼には、その表情の変化がよく見えていた。
 敵を倒すことも、失意のまま後を追うことも選べずに殺されに行くだなんて。
「悲しいだろ、そんなの」
 また一体、オブリビオンである獣を一息に始末して呟く司狼。生殺与奪を他人任せにするなんて、どこまでも中途半端なことであると感ぜざるを得ない。頭骨状の仮面の下で、最初は微かな失望さえも滲んでいただろうか。
 しかし、彼らはこの乱戦の中で確かに選び始めている。惰弱でも、情けなくても、彼らは懸命に叫んでいた。
「このままじゃ、兄貴に顔向けができねぇよ!」
「死んでたまるか……いやだ、死にたくない。死にたくないんだ!!」
 ダークセイヴァーはオブリビオンによる支配が盤石となった暗闇の世界だ。ここで圧政を敷く領主を滅ぼして平和を得たとしても、それも束の間の出来事に過ぎないのかもしれない。
 だが、何もかも諦めた顔で死にに行くよりはずっと良い。住民達の心の変化は、司狼にとっても好ましいものだった。死にたくないと叫ぶなら、己も死なせないよう共に戦おう。草刈り鎌の刃にかかるよう、司狼の意を汲んだ鋼狼が獣に向けて突進した。その甲斐あって、一体の狼を仕留めた若者が喜びに沸く。
 が、即座に飛んでくるのは複製体で防衛線を構築するルパートの叱責だ。
「虚け共が。貴様ら以外に誰が死んだ者たちを想うというのだ! 下がれ、前に出すぎだぞ貴様!」
「す、すみません騎士様!」
 その様は正に革命軍の司令官という表現がぴったりだろう。ルパート自身は戦線からやや距離を取っているものの、それはただ安全に身を置いているわけではない。複製騎士の数は三十をゆうに超え、ルパートはそれらをすべて己の念力によって統率している。その上で彼ら村人の動きに檄を飛ばしながら、自身の体内に燻る青炎を操って攻撃に参加していた。
「生きろ。背負え。その嘆きを糧に未来に至り、既に終わった者たちの人生に意味を与えろ!」
 ルパートの言葉が、その身を盾に人々を守る姿が住民達を勇気づける。抗う意思を持つこと。生きるという選択を鼓舞されるうちに、次第と住民達の蛮勇は形を潜めていく。無理無謀な行動が少なくなると、形勢は自然に猟兵達へと傾いていった。

 ほどなくして、無限に思われた館外の警備は失われた。先んじて館内で領主を探し回る猟兵達と合流を果たすならば頃合いだろう。数名の男達は同行を申し出たのだが、次なる相手はより強力なオブリビオン。守りながらの戦いは今以上に苛烈なものになってしまう。
「今のあなた方を信じてないわけじゃない。でも、俺たちはこれからもっと強い相手と戦うんだ。むざむざと危険に晒したくない……なんて。当事者はあなた方なのにな」
「いや、今の戦いで……俺達がついて行っても足手まといになることは理解したよ」
 一人の青年が首を振る。青年がそう言うと、同行を志願する男達も悔しそうに頷いた。
「もう一度、妹のために生きようと思わせてくれたこと……感謝、する」
「……それは、お前たちにしかできないことだ」
 優しさ故の厳しい口調で、ルパートはそう答えた。

 猟兵達は身をひるがえし、不気味に静まり返った館を望む。この村を襲う悲しみの元凶――ヴァンパイアを討つために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●強襲、領主戦・予
 集った猟兵達が館内で合流を果たすと、僅かに残った館内警備を手早く片付けながら領主を探す。先行した者達によってあらかたは調べ尽くされ、残るは建物の最上階だ。
 階段を駆け上がれば広々としたラウンジと、その最奥に一段と豪奢な両開きの扉があった。
 おそらく、ここが領主の私室。各々武装を確かめた後、猟兵は一思いに扉を蹴破った。煌々と燃えるランプに毛足の長い深紅の絨毯、天蓋付きの貴族的な寝台。大きな窓は開け放たれ、館の外を一望できるテラスに名工の作と思われる一人掛けの椅子がある。その椅子でグラスを傾けながら寛いでいる一人の男がいた。
 白銀の髪に切れ長の瞳。生気を感じさせない氷の美貌。猟兵達は直感する。間違いない、この男こそが打破すべきオブリビオン――ヴァンパイアだ。
「茶番はこれで終いかね? なかなか良い美談だったのではないかな。いや、素晴らしい」
 ぱちぱちと空々しい拍手の音が風にとけて消えていく。
「しかし……来賓席にまで乗り込んでくるとは躾のなっていない道化どもよ。どれ、私が直々に誓約を書かせてやろう。『クルーエルオーダー』!」
 威圧的な声とともに、ヴァンパイアの片手に羊皮紙の誓約書が現れる。
「内容は……そうだな。『下賤がきゃんきゃんと喚くな』か……それとも『無様に這いつくばれ』とでも命令してやろうか」
 酷薄な笑みで挑発するヴァンパイア。誓約を遵守しながら戦うか、敢えて破ってでもぶつかるか。
 さぁ、この嗜虐の領主をどう調理してくれようか!
緋縅・善蔵
次に相手するのは躾の出来てない番犬共の飼い主か。
とは言え、相応の力がある者として掛かるか。
戦闘では【オーラ防御】と【力溜め】、そして【盾受け】で万全の防御態勢。
しかし最初に敵に相対するのは〔支援要請〕した最大レベルの無人機。【だまし討ち】させて貰う。
無人機には目標発見まで〔影の追跡者〕を付ける。ダメージも共有なので発見したら消すけど。
発見したら直下から〔破壊絢〕で目標を急襲。
絶えず動き、敵の〔クルーエルオーダー〕などのUCは【第六感】を含む回避運動で回避、或は迎撃する。
回避もするが攻撃も忘れない。
5門の遠距離武器や〔ミサイルカーニバル〕の【一斉発射】。接近時は二振りの刀剣で敵を迎撃、排除する。



 緋縅・善蔵は『参拾弐』の刻印を持った戦闘用無人機に影の追跡者を忍ばせると、斥候として走らせていた。敵を相応の強者として認識するが故、まずは最大強度の無人機で小手調べといったところ。
「あれが、あの躾の出来てない番犬共の飼い主か」
 善蔵は共有視覚で目標――ヴァンパイアを発見し、無人機を下がらせようとする。ところが、ヴァンパイアもほぼ同時に斥候を見破っていたのだ。
「なんだ貴様は? こそこそと小賢しい!」
 無人機に深追いさせるつもりはなかったものの、敵の繰り出す豪奢な刀剣が高速で飛来してくる。撤退の僅かな間に地を掻いた一振りが、影の追跡者に掠ったようだ。五感を共有するために、その衝撃は善蔵本人にも伝わった。
 しかし、これでおおよその位置はつかめた。ならば。
「あとは強襲だ!」
 刹那、轟音とともにヴァンパイアの立つテラスが崩落した。驚愕したように飛び退く敵へ、善蔵の拳、『破壊絢(デスゴッドフィンガー)』が迫る。その単純にして強力な一撃は見事に敵の腹部を打ち据えた。血の誓約書による反撃に備える善蔵だが、痛打を受けたヴァンパイアは言葉を発する余裕がないようだ。反射的に振るわれたヴァンパイアの爪を巨大剣『屠龍』で防ぎ、善蔵が剣の重量を起点にして身をひるがえす。
「貴、様ァ……!」
 人間を射殺さんばかりの憎悪の視線が善蔵に向けられる。
「お望み通り、ここからは正々堂々ねじ伏せてやろう。覚悟しろ、外道が」
 五門の砲塔を突き付けて言い放つ善蔵。彼の先制攻撃により、ヴァンパイアも本格的に戦闘態勢に移ったようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

イーファ・リャナンシー
真の姿:身長が6倍化、人間大に変化する
服装はやや豪華に、妖精の王族のような出で立ち

追跡能力の持ち主ってわけ…それじゃあ、もうちまちま隠れながら戦う理由もなさそうね
真の姿を開放した私の力でヴァンパイアの目にもの見せてあげるわ!

見付けにくいって話だから、とりあえずは蝙蝠を後に回しつつ、サイキックブラストでヴァンパイアを攻撃するわ
動きを止めたところに【全力魔法】で攻撃するの

ただ、蝙蝠に攻撃能力があった場合は対処が必要ね
五感を共有してるってことはヴァンパイア側の痛みや痺れなんかの感覚も蝙蝠に共有されるはずよ
ヴァンパイアを攻撃したタイミングで見つけ出しつつ、サイキックブラストと【全力魔法】で交互に狙うわ


ルパート・ブラックスミス
誓約など不要。"貴様が"何を喚こうがどう這いつくばろうと構わん。
最初から末路は決まっている。

真の姿及びUC【燃ゆる貴き血鉛】起動。
装備に燃える鉛を纏わせ、青い翼で飛翔。【空中戦】だ。

重視すべきは敵の攻撃から味方を【かばう】こと。
こちらの攻撃の主軸は他に任せる。
炎風【属性攻撃】と燃える短剣の【投擲】で契約書を焼き落としつつ、部屋全体を炎上させる。五感を共有する影の蝙蝠とやらも炙り出してやろう。刀剣は大剣で【武器受け】だ。
万が一、契約書が命中したところで炎の攻撃だけは止めない。

【捨て身の一撃】程度、しない【覚悟】が無いとでも思ったか。

その醜悪な魂、塵残さず焼却してくれる。

【共闘・アドリブ歓迎】



 イーファ・リャナンシーの身体が目映い光に包まれると、みるみるうちにその肉体が他種族同様の大きさへと変化する。同時に光は黄金となり、その身に巻き付いて可憐な装飾品と化した。妖精姫の如き出で立ちで、イーファはきらりと眼を輝かせる。
「私のこの真なる力で、ヴァンパイアの目にものを見せてあげるわ!」
 気合十分のイーファが、両の掌に高圧電流を迸らせる。サイキックブラストを放つその瞬間、対するヴァンパイアは翼を広げた。するとその両翼から影の蝙蝠が勢いよく飛び立ち、イーファめがけて群がってくる。
「きゃっ……!?」
「退け、娘よ!」
 そこに割って入るのは、同じく真の姿を解放したルパート・ブラックスミスだ。鎧の内部で燃え滾る鉛の炎を解き放ち、青い炎が大部分の影を払う。しかし一羽の蝙蝠がルパートの影に憑りつくと、その輪郭がぼやけて視認できなくなった。
「庇われたか……まぁいい。これで貴様の動きは手に取るようにわかるというものだ」
「追跡能力の持ち主ってわけね……私への攻撃だったのに。影から攻撃されてるとか、そういう異常はない?」
「ないな。構わん、味方を守ることこそこの身の誉れ。我が身を突き動かす力に他ならん」
「そう……ありがとう。大丈夫、私にアイデアがあるからこれの解除は任せて」
「承知した。防衛は任せよ」
 イーファとルパートが互いに言葉を交わすと、それぞれの意図のもとに動き出した。イーファが魔力を紡ぐ間、ルパートは自らの炎を翼状に広げ飛び上がる。
「我が血はもはや栄光なく、されど未だ闇に消えず…! その醜悪な魂、塵残さず焼却してくれる!」
「ほざけ! 我が血の誓約書よ、ここに!」
 ルパートの『燃ゆる貴き血鉛(ブレイズブルーブラッド)』を宿した短剣がヴァンパイアの誓約書を破壊しようと振るわれる。しかし彼の影に潜んだ蝙蝠がここぞという動きを主に伝えるせいで、紙一重で躱されてしまう。
「『クルーエルオーダー』! 無様に、そして惨めに這いつくばるがいい!」
 ヴァンパイアの宣誓を受け、血の誓約書がその効力でルパートの身体を縛る。身体を循環する『血液』という概念を媒介して、血潮の通わぬルパートにもぎりぎりとした圧力が課されていた。鉛の青炎が重さを増し、飛翔する鎧の身体が誓約の力で地に叩きつけられる。しかし。
「……ッ、貴様が、何を喚こうとどう這いつくばろうと構わん。だが、騎士はそう易々と膝を折りはせん! 幾重の刃を受けようと、数多の炎に焙られようと、そこに誓約など不要!」
 ルパートは立つことをやめない。鉛の炎で絨毯の毛足を焼き、ヴァンパイアへ至らしめんとする。守りは任せろ、と口にしたのだ。妖精の少女が事を為すまで屈するわけにはいかないのだ!
「興覚めだ。ならば私が直々に――」
「させるものですか! お待たせ、イーファちゃん全力の電撃よ!」
 準備を整えたイーファが高度に増幅したサイキックブラストを放つ。その一撃はヴァンパイアを感電させ、その身体を大きく痙攣させる。直撃と同時にイーファはルパートの影を見遣る。影の中には、不自然な脈動を続ける部分があった。
「見えた! そこよ!」
 焙りだした箇所へと即座に魔法を放つと、耳障りな鳴き声とともにそれは消え去った。この追跡能力は一度潜めば視認困難な存在と化すが、使用者と五感を共有する点がメリットと同時にデメリットももたらすのだ。
「共有するってことは、本体のダメージに影も反応するっていうこと。なら見えてる側を叩けばいいのよ!」
「聡明なる妖精姫よ、感謝を」
「いいえ、私一人だったらきっと避けられていたわ。二人で協力できたからこそよ!」
 ヴァンパイアが体の自由を奪われたことで、誓約書の効果も途切れたらしい。幾許か軽くなった身体を動かしながら、ルパートは再度炎の翼で飛翔する。
「さぁ、どんどん反撃していくわよ!」
 それは発想と信念の支え合いがもたらした攻勢だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎

SPD

ふーん、あれが実物のヴァンパイアか
心臓に杭を刺さないと死なないとか言うけどこいつもそうなのかな
ま、実際に試してみればいいか

レッキスは閉所向きじゃないし生身で戦う
獲物は山刀を選択

UC御雷で神経系を電気化
反射の過程と時間をすっ飛ばして四肢の筋肉をダイレクトコントロールする
雷の速さでとまではいかないけど、これで回避も攻撃もこなせる程度の速度は出せる

単に山刀で切りつけるだけじゃ効果薄なら、左腕も電気化して接触部分を焼いてやろう

こっちにしてみれば、あんたはこれから狩ることになる吸血鬼の中の一体にしか過ぎないんだよね
今後の戦闘の参考にはなったけど、そろそろ片付けさせてもらおうか



「ふーん、あれが実物のヴァンパイアか」
 初めて見た、と山刀を構えるエルト・ドーントレス。先ほどまで装備していたパワードスーツ『PSX-03R』こと『レッキス』は、閉所向きではないと判断したため現在は生身の姿である。どこかぼんやりとした眼の少年だが、その四肢はしっかりと鍛え抜かれたもの。大ぶりな刃物を操る動作にも手慣れた様子が見て取れた。
「心臓に杭を刺さないと死なないとか言うけどこいつもそうなのかな」
「ハッ! 下賤の者らしい短絡的な考えだ。試してみるか?」
 ニヤリと嘲笑うヴァンパイアの挑発も、マイペースな少年にはどこ吹く風。淡々と演算をこなし『御雷(エミュレーテッド・ライトニング・アーム)』を起動したエルトは、一瞬面倒くさそうな顔をした後神経系を電気に転じさせる。
「そうするよ」
 返答が先か動きが先か。思考と直結した反応速度を得た筋肉が軋み、光速にも迫るほどの速さでヴァンパイアの懐に潜り込む。その速度は敵の予想を大きく超えていたのだろう。忌々しげな舌打ちと共に無数の刀剣が展開される。それらは念力によって複雑な軌道を描きながらエルトに肉薄していくが、対するエルトもそのすべてを目で追い、考えると同時に回避行動と迎撃を行っていく。
「こっちにしてみれば、あんたはこれから狩ることになる吸血鬼の中の一体にしか過ぎないんだよね」
 低い声で愚痴を溢すと、エルトは小さく目を見開いて自身の左手にも電気変換を及ばせた。山刀で念力操作の刀剣を砕き割ると同時、ヴァンパイアの右腕を電熱を孕む左手で掴み、焼き焦がす。
「がぁあ!」
 充分な戦闘データは採取できた。ならば、そろそろ片付けても良い頃合いだ。誰がとどめを刺すことになるものかと周囲を観察しつつ、エルトはなおも山刀を振るい刀剣の群れを迎撃している。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…茶番だと?道化だと?
己の復讐より、大切な人を守って欲しいと願った、
犠牲になった多くの人達の想いを。
お前などに嗤わせはしないわ。

事前に防具を改造して“忍び足の呪詛”を付与
装着者の存在感を消して小石のように目立たない存在になる。

常に他の猟兵と連携して敵を挟撃する位置取りを心掛け、
死角から大鎌をなぎ払い攻撃しよう。
敵の命令は無視し、ダメージは呪詛耐性や激痛耐性を頼りに耐える。

第六感と【吸血鬼狩りの業】を頼りに敵の攻撃を見切り【血の聖槍】を発動。
吸血鬼化した怪力の掌打から、生命力を吸収する血杭を放ち、
傷口を抉る2回攻撃を行うわ。

…無様に這いつくばったのは、どうやらお前の方だったみたいねヴァンパイア。


ベアータ・ベルトット
…そう、彼らは退いたのね
良いわ。復讐は必ず果たす
彼らが確かに示した叛撃の意志—この獣が届けてみせるわ

真の姿開放

赤翼を狙撃しながら駆ける
誓約書が命中したとて脚は止めない
喚くな?跪け?…巫山戯た事抜かすんじゃないわよ
驕り高ぶる屍の支配に組み敷かれ、只々滅びを待つだけ
…人間が、そんな弱い生き物である筈無いわッ!!
激痛を堪え吼える
この身を突き動かす衝動が、天敵に抗う人間の矜持と信じて

残像を交え素早く立ち回り、剣撃は見切りと武器受けで対処
HAを発動
零距離射撃と獣爪でつけた傷口をえぐるように、拳と蹴撃を放ち喰い千切ってやる

獣を嗾け四肢を喰わせて…さぞや愉しかったでしょうね?
同じ痛み、存分に味わうと良いわ!



 自らの劣勢を悟り、焦燥を滲ませるヴァンパイア。それでも逃亡の意思を見せないのは、支配者としてのプライドだろうか。
 しかし、そんなものはリーヴァルディ・カーライルにとってはなんの価値もない。いっそ好都合と言っても良いだろう。
「……茶番だと? 道化だと?」
 紫水晶の瞳を怒りに燃やし、深く沈んだ声が漏れる。
「己の復讐より、大切な人を守って欲しいと願った、犠牲になった多くの人達の想いを。……お前などに、嗤わせはしないわ」
 吸血鬼を狩る。それはリーヴァルディが己に課した最たる目的なのだが、少女の動機は今やそれだけではなかった。出会いが少女を変え、多くの感情に従うことを学ばせたのだ。誰かを守りたいという心。憎悪に囚われない心。未来のために立ち向かう心。……きっと、それらは優しさと呼ばれる類のものだった。
 呪詛を編んだ外套に身を包み、リーヴァルディは音もなく走り出す。狙うのは挟撃による死角からの一撃だ。時同じくして義憤に駆られるベアータ・ベルトットと協同するのが最善と考え、リーヴァルディは一人暗がりに身を滑らせる。
 一方のベアータは、機銃掃射でヴァンパイアの翼を縫い止めつつも全速力で前に出る。先行して館を襲撃したことによる手傷は、真の姿を露にすることで全て癒し終えていた。万全の力でただ走り、傲慢なる領主に喰らい付かんと距離を詰める。
 その勢いに怯んだのか、ヴァンパイアは誓約書を取り出し己の血で単純な命令を書き連ねていく。右手の爪先をペンのように走らせて、血の誓約を書き付けた。
「喚くな! 止まれ、下賤風情がァ!」
 その誓約が効力を発揮すると、突如としてベアータの機肢へと激痛がもたらされる。しかし、ベアータは痛みに耐えてなおも歩み続けていた。
「喚くな?」
 一歩踏み出す毎に、血液が煮えるような熱と苦痛が身体を巡る。
「跪け?」
 言葉を発すれば、肺腑が締め付けられるような心地さえする。それでも、ベアータは屈しない。
「……巫山戯た事抜かすんじゃないわよ。驕り高ぶる屍に組み敷かれ、支配され続けて只々滅びを待つだけ……?」
「寄るなァ!」
「……ッ人間が! そんな弱い生き物である筈無いわッ!!」
 激痛を堪えながら、ベアータが力強く吼える。人間の枠組みから外れてしまったからこそ、ベアータは人間の在り方に焦がれていた。彼女は人間の強さを信じている。この身を突き動かす衝動は人間としての矜持に他ならない。住民達の叛意を、必ずや領主に突きつけてやると自分自身に誓ったのだ。絶対に、屈してなるものか!
 ベアータの飢餓感が急激に増し、獣の如き呻きが食い縛る歯の根から溢れ出る。骸の海から流れ着いた屍相手とはいえ、血肉の薫りはベアータの獣性を刺激してやまないようだ。腕に仕込まれた『機餓獣爪』を一閃させると、誓約書に刻まれた血文字はおろかヴァンパイアの手首すらをも削り喰らった。
「が、アぁあア!」
 左手を失い悶え苦しむヴァンパイア。そこにリーヴァルディの大鎌が振り下ろされる。一度背面に回り込めば、自らの負傷に狂乱する相手を攻撃するなど造作もないことだ。グリムリーパーを薙ぎ払い、ぼろ切れ同然のヴァンパイアの翼を断ち飛ばす。
「……限定解放。刺し貫け、血の聖槍……!」
 リーヴァルディは、その身に流れる血の半分を励起させる言葉を紡いだ。忌むべき血の力をほんの一瞬解き放ち、万力の余波を掌に込めて敵を穿つ。狙うは敵の左半身、心の臓。
「――『限定解放・血の聖槍(リミテッド・ヴラッドパイル)』!」
 圧縮された魔力が杭の形を成して、ヴァンパイアの肉体を深々と貫いた。敵の血に濡れた魔力の塊が、赤く、赤く染まっている。
「……無様に這いつくばったのは、どうやらお前の方だったみたいねヴァンパイア」
 リーヴァルディの言葉と共に、ヴァンパイアの身体がぐらりと傾いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

護堂・結城
司狼(f02815)と同行

過去のシミがよく吼える、よほど骸の海に還りたいらしい
なんなら手伝ってやるぞ吸血鬼
なに、自分がやってきたことを体験するだけだ

【POW】

【怪力】をいかし【残像】を残す勢いで【ダッシュ】
飛んでくる誓約書は大罪の尾を叩きつける【範囲攻撃・衝撃波・なぎ払い】で打ち払い接近
例え誓約書に触れても【呪詛耐性・激痛耐性・覚悟】で耐えてやる

「遊びや道楽で来てるんじゃねぇんだよ」
「這い蹲って今一歩届かなかった?…バーカ、すでに射程圏内だ」

UC雪見九尾の撃滅白狐を発動し【だまし討ち】
【殺気・捨て身の一撃・全力魔法】に雷の魔力を載せた【属性攻撃・カウンター】

どんな手を使ってでも…外道、殺すべし


彼岸花・司狼
護堂(f00944)と参加
骸の海から上がった死体もどきが死臭を漂わせて、高貴なつもりかね…。
散々殺してきたなら、今度は、自分が死ぬ番だ。
とっくに死んでるんだからな、未練も悔いも在りはすまい。

UC:絶望と反抗により、誓約に対し「黙らない」「屈しない」「何一つ想定を叶えてやる気はない」
UC:無明と終焉で強化した技能で、【目立たない】よう【迷彩】を纏って【忍び足】、死角から【鎧無視攻撃】で【暗殺】を狙う。

後悔も憤怒も反省も、あぁ、死ぬに足る戦場の高揚ですらくれてやる必要はない。
何もわからず、ただ呆気にとられて終わればいい。
きっとその高貴さとやらで、静かに誇り高く死ぬくらい楽なものだろうさ。



「おのれ……おのれおのれおのれ! 下賤な羽虫風情がよくも! よくもこの私の高貴な身体にィイ!」
 猟兵達の猛攻により、もはや立ち上がる余力もないのだろう。ぜいぜいと息を荒らげながら、ヴァンパイアが喚き散らす。
「許さんぞ猟兵共! 殺してやる! 無様に、惨めに命乞いをさせた上で細切れに引き裂いてくれる!!」
「過去のシミがよく吼える、よほど骸の海に還りたいらしい。なぁ司狼?」
 護堂・結城(雪見九尾・f00944)が鼻で笑い、彼岸花・司狼に同意を求める。
「骸の海から上がった死体もどきが死臭を漂わせて、いつまで高貴なつもりかね……」
「なんなら手伝ってやるぞ吸血鬼」
 ヴァンパイアは言葉こそ強気であるものの、それが虚勢であることは誰の目から見ても明らかだった。放っておいてもいずれ消滅する定めだろうが、念には念を込めて。確実に葬り去るべきだろう。
 二人が攻撃の意思を見せると、ヴァンパイアもぼろぼろの身体を奮い起たせて誓約書に右手を突き立てる。しかし既に左手首の先を失い、右腕をはじめ全身がひどく焼けただれているのだ。特に胸に受けた穿孔が酷く、おびただしい量の血を流していた。こんな有り様でもまだ辛うじて動けるのは、ひとえにオブリビオンの強靭さ故だった。
「たかが辺境の村のひとつだ! ゴミ共を解放して何になる!? どうせ貴様らも一時の享楽に酔いしれたいだけではないか!」
「うるせぇな。こっちはテメェと違って、遊びや道楽で来てるんじゃねぇんだよ」
「喚いているのはこちらじゃなかったのかね。尤も、端から聞いてやるつもりは毛頭なかったが」
「ぐっ……!」
 結城のどろりと絡み付くように濃い殺気を浴びて、ヴァンパイアは誓約を綴り始める。とはいえ、この有り様では手を動かすのもやっとの速度だ。妨害は容易い。結城は大罪の名を冠する狐尾を強かに打ち付けると、ヴァンパイアの手元に現れた誓約書を遥か彼方へ吹き飛ばした。
「遅ぇ。這い蹲っても届かない気分はどうだ?」
「うるさい、うるさいうるさいうるさい!」
 喚き散らすヴァンパイアを見下しながら、ずかずかと距離を縮めていく結城。とうに三十センチの間合いに達したが、ヴァンパイアが何かを仕掛けてくる様子はない。おそらく、反撃の手立てなどないのだろう。
「いい気味だな、外道。それじゃあそろそろ」
『無様に、惨めに命乞いをしながら細切れになって死ぬがいい』と、眼前の結城と背後に潜んだ司狼の言葉が重なった。刹那、凝縮された膨大な魔力が爆ぜ、余剰とも言える追い打ちの刃がヴァンパイアの頸に迫る。司狼は『無明と終焉(シハキタル)』で自らの気配を極限まで隠し、一撃必殺の手筈を整えていたのだ。
 ……命乞いをする暇もないか、と司狼が内心で修正する。とはいえ、かのオブリビオンがとうに死んだ身の上ならば、未練も悔いも在りはすまい。後悔も、憤怒も反省も、戦場における死出の高揚ですらくれてやる義理もないだろう。
 何もわからないまま、ただ呆気に取られたまま終わればいい。そう考え、そして動いていた司狼。隠密と暗殺に特化した彼の心は、凪いだ湖面のように穏やかだった。躊躇なき暗殺者の刃が嗜虐領主の頸を捉える。そしてヴァンパイアの頭部だったものがごろんと地に落ち転がった時、破壊されたテラスの向こうから微かな光明が射していた。
 圧政を敷いたオブリビオンは打ち倒された。脆弱な蜂起は数多の猟兵達を巻き込んで、ついにその悲願を成し遂げたのだ。
 長い一夜は終わりを告げ、また新たな朝がやって来る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『誰が為に鐘は鳴る』

POW   :    周囲のひとたちを励ます

SPD   :    何の為の鐘か村人に尋ねる

WIZ   :    静かに祈りを捧げる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●新たな一日
 いつも暗いこの国にも、時折は微かに晴れる日があるそうだ。今日が、たまたまそうだった。
 ひどく長いように感じられた一夜が明け、領主館に向かった住民達が帰ってくる。どこからともなく現れた協力者達の活躍で、全員死に戻ると思われていた者達が何人も、何人も五体満足で帰ってきたのだ。
 それは、まさに奇跡のような出来事だった。一人で行かせるべきじゃなかったと泣く兄がいた。なんで置いていこうとしたのかと怒る友がいた。そうして死に急いだ者達は、己が何をしようとしたのかを改めて悔いたという。
 これまでの犠牲を弔うために、教会の鐘が鳴らされるそうだ。久しく使われていなかったため、きっと掃除が必要だろう。死した魂を慰めるため、野花のひとつでも手向けてやろうか。簡素でもいい、墓標を作ってやろうじゃないか。

 やわらかな朝陽に照らされて、辺境の村に忙しい一日が訪れる。
エルト・ドーントレス
アドリブ歓迎

仕事は終わり
でも、まぁこれも何かの縁だし手伝っていくのもいいかな

部外者がずかずか中に踏み入るのもなんだし、外の掃除でもしてようか
蜘蛛の巣はらったり、雑草刈ったりボチボチやってく

---

落ち込んでる人になんて声かければいいか、正直わからない
死に別れて置いてかれた気持ちはわかるけど…

…だからって後を追うのはやっぱ違うと思う
それは自分の命は無価値って認めたようなもんだから

もうしばらくすれば、たぶん情勢は変わる
何をどうするかは、それを確かめてからでも遅くないと思うよ

---

…まぁ、情勢を変えてくのは俺たちの仕事なわけだけど
面倒だけど、無理のない範囲で頑張りますか



 村外れの教会に、朝から多くの人が出入りしていた。皆忙しなく、しかしどこか晴々とした空気を纏っている。
 そんな人々を離れた場所からエルトが眺めていた。己の仕事はあくまでも戦うことであり、この村での仕事は既に完了している。帰還しようかとも考えたのだが、ほんの気まぐれに後処理を手伝うことにしたのだ。
 屈んで墓地外縁の雑草を抜いていると、エルトの頭上に影が差す。見上げれば、一人の男が立っていた。
「見ない顔だが……もしかすると、援軍に来てくれた一人、だろうか」
 そういえば、住民達を守る戦闘の中では武装状態だった。非武装時の姿ではピンと来ないのだろう。頷いて返すと、男はエルトにありがとうと答えた。
「英雄が何故こんな隅に?」
「……ずかずか入り込むのも気が引けて。それに、落ち込んでる人になんて声かければいいか、正直わからない」
 束の間の沈黙が落ちる。それでも言葉を紡ごうと、口を開いたのはエルトの方だった。
「あのさ。死に別れて置いてかれた気持ちはわかるけど……だからって後を追うのはやっぱ違うと思う」
「……あぁ」
「それは自分の命は無価値って認めたようなもんだから」
「命の価値、か」
 エルトの言葉に、男は顔を険しくしている。大切な人を失って、それから先をどうするべきか……そんな思いが交錯しているのだろうか。
「根拠は説明しづらいんだけど、もうしばらくすれば、たぶん情勢は変わるからさ。何をどうするかは、それを確かめてからでも遅くないと思うよ」
 この言葉が少しでも励ましになればいいと考えながら、エルトは再び草をむしる。柵に居着いた蜘蛛の巣を棒きれで払うと、男も屈みこんで小石を拾い集めていた。
 静かな共同作業を終え、エルトはぐっと身体の筋を伸ばす合間に考える。情勢を変えるには猟兵達の働き次第だろう。面倒ではあるものの……無理のない範囲で頑張ろう、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
住民たちと共に犠牲者たちを弔う。墓場を【掃除】し墓を建てる。
すべての作業が終わったら、【祈り】を捧げながら、勝手ながら身の上話をさせてもらおう。

自分は一度死に、そして奇跡的に命を取り戻した。
しかし目覚めたとき、すべての記憶を失っていた。
亡んだ故郷を、死んだ家族や知人を誰一人覚えていない。
大切だった者たちの死を、真の意味で悼み悲しむことができない。
……それはな、惨いことなのだ。

お前たちはそうではないだろう。

生きろ。背負え。
もういない者たちを想い…そして至った未来で。「かつて確かにいたのだ」と語れ。その証となれ。
…もう、ここにいる「俺」にはできないことだ。

【アドリブ歓迎】



 墓所の掃除が終われば、次は墓作りに入る。穴を掘り、回収できた遺骨や遺品を収めると再び土に埋める。大きさを整えた木材を十字に括り付け墓標に仕立て、倒れないよう石で根元を固定する。これでようやく一人分。作るべき墓の数は両手でも数えきれないほどなのだが、そのすべての作業をルパートは黙々とこなしていた。
 住民達も休みなく動き回るが……昨晩はよく眠れない者も多かったのだろう。己が働き続けることで要らぬプレッシャーをかけているのではと考え、ルパートも一時休憩を取ることにした。完成した墓に祈りを捧げながら、ルパートは共に墓作りへと勤しむ者達に自らの身の上を語り出す。
「自分は一度死に、そして奇跡的に命を取り戻した。……しかし目覚めたとき、自分はすべての記憶を失っていた。亡んだ故郷を、死んだ家族や知人を誰一人覚えていない。大切だった者たちの死を、真の意味で悼み悲しむことができない」
 それは、とても寂しくて、惨いことなのだ、と。彷徨う鎧の騎士は訥々と語る。亡んだことを覚えている。失ったことだけを覚えている。だが、生きていた時の喜びにつながるものを何ひとつとして覚えていない。――とても、空虚だ。
 まるで肉体を失った鎧の身を表しているかのようだ……とは、語らずに飲み込む。己の身体の在り方は、この世界に住む人々の理解の外側にある可能性が高かった。
「悲しみを鮮明に覚えている。日常を褪せることなく思い返せる。お前たちは、俺とは違うのだろう?」
 そろそろ休憩は十分だろうか。ルパートは一人立ち上がり、再び遺品を埋葬していく。独り言のような声量で、しかし確かに聞かせるように語りながら。
「生きろ。背負え。もういない者たちを想い……そして至った未来で。『かつて確かに存在した者』として語れ。その証となれ」
 それは、もうここにいる『俺』にはできないことだから、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イーファ・リャナンシー
思ったよりたくさんの人たちが無事に帰って来られたのはほんとに良かったわ
住民同士でもいろいろ思うところはあるんだろうけど…命あっての物種
それだけは言い切れるわ
きっと生きてれば仲直りのチャンスだってある

生きて戻って来れなかった人たちには…冥福を祈ってあげるしか私にはできることがないみたい
お花を手向けたりとか、作業の邪魔にならない範囲でお墓を作ったり弔ったりもお手伝いするわ

私はあの都で目を覚ますまでの記憶が無いけど、これからのことは忘れない
この世界でこういう事件があったこと、そこで命を落としてしまったこと絶対に忘れないわ
救えなかった命には忘れないことが何よりの弔いだと思うし、次への力にもなると思うわ



 イーファが手向けの野花を摘みに出歩けば、教会から離れた場所で涙をこらえる少年がいた。猟兵達の加勢により、大勢の住民を救うことができたとはいえ……その全員が無傷だったとは言い難い。大半の者は軽傷に留まっていたはずだが、まさか。
 そんな考えから居ても立っても居られなくなり、イーファは少年に声をかけた。
「ねぇ、あなた。大丈夫? どこか怪我をしたの? それとも……」
「う、ねぇちゃん……おれ、おれ友達にひどいことを……!」
 差し伸べられた気遣いに、少年の涙がとうとう零れ落ちる。嗚咽交じりから聞き取ったところ、どうやら領主館に向かった友人と手酷い喧嘩をしてしまったらしい。互いに親もなく、兄弟同然の相手だったという。少年は病による死に別れであったが、年上の友は違った。人知れず領主への憎悪を募らせ、何も言わずに飛び出していった。
「帰ってきてよかったって、無事でよかったって思うのに……! 置いてかれたのが悔しくて、相談されなかったことも悲しくて!」
「そう……二人とも、つらかったのね。つらいときは我慢せずに泣くものよ」
 大丈夫、相手が帰ってきたならまた仲直りができるはず。保証するわ、と微笑むイーファに、少年は声を堪えることもなく泣き出した。そうしてひとしきり泣き終えると、気恥ずかしそうな小声の礼が聞こえてくる。
「ね。よかったら、お墓に供えるお花を探すの手伝ってくれないかしら。お友達の家族の分も探して、ごめんねって言うの」
「うん。それならもうちょっと行ったところに、花が咲いてたと思う。ついてきて!」
 駆けだす少年の後を追いながら、イーファは密かに思いを馳せる。失われた都で目を覚ますより以前のことは思い出せないでいるものの、これからのことであれば覚えていけるはず。
 この村の出来事を確と胸に刻んで生きよう。この件に関わった者として、イーファにできる最たる弔いは……きっと、忘れないことなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

彼岸花・司狼
復讐はなにも生まない、等と言うがそれは当然だ。
負の感情の元を祓い、前を向くためにキリを付ける事なんだから。
復讐は生み出す行為ではないが…だがきっと、これで後ろ髪を引かれることもあるまいよ。

鐘のことを聞き、掃除の手伝いをした後
最期に鐘の音に合わせて少々余計なお世話かもしれんがお節介を
UCで強化した【鼓舞】と【破魔】、【催眠術】で惨劇の詳細をほんの少しだけフィルター越しに感じられるようトラウマを祓おう。
悪夢でも、なかったことにはしたくないが、
目の前で起きたソレを鮮明に覚えてしまっていては辛いだけだろうしな。

復讐は悪いこと、なんて正論で諦めきれるわけも無し。
正論では、正しくてもなんの慰めにもならん



 墓作りと花の準備が進む中、司狼は教会の鐘を手入れしていた。埃にまみれた金属を布で拭い、壊れた舌を検分する。鐘と舌を繋げる部品が痛んでいたのだろう。ここを直せばまた充分に鳴らせそうだった。
「この村とは縁も所縁もないってのに、何から何まで……本当に済まないねぇ」
「俺がしたいからしていることだ。気にしないでほしい。部品の予備はあるか?」
「倉庫に使えるものがあると思うよ。ちょっと取ってくるから待っとくれ」
 そう言い残して年老いた修道士が離れていく。葬送を引き受ける立場でありながら、これまで何もできなかったことが大層心苦しいのだろう。聞けば最初の頃はこまめに弔っていたという。しかし次第に領主が葬儀を面白がるようになり、一人弔えば二人死に、三人弔うと五人殺されるようになった。葬儀を取り止めることで死者の数が徒に増えることもなくなったため、以来そのままにされていたのだ。
 蛮行の話を聞けば聞くほど、司狼には彼らが復讐に駆られたのが当然のように思えた。それと同時に、圧倒的な力の差に絶望する板挟みの感情を思う。やりきれないだろうが、その領主は確かにこの手で滅ぼしたのだ。これで、復讐に後ろ髪を引かれることもないだろう。
 戻ってきた修道士から部品を受け取り、破損個所を付け替える。ものの試しに鐘を揺らせば、澄んだ音色が村の果てまで響き渡るようだった。
「あぁ……ようやく、こいつを鳴らしてやれた。ありがとう。ありがとうなぁ……」
 静かに祈りを捧げる修道士。その目元には一際濃い隈が刻まれている。聖職が非道に屈したことへの自責の念が深いのだろう。
 お節介かとは思いつつ、司狼は鐘の音に『原初の言葉・制限(プライマルワーズ・リミテッド)』の力を乗せた言葉を重ねる。もう眠れぬ夜は来ない。村に悪夢は訪れない。未来を歩みだせるように、己を労り慈しめ――。
 惨劇をなかったことにはできないが、せめて少しでも慰めになれば良いと祈りながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベアータ・ベルトット
花を手向ける列に交じって、村人たちの様子を眺める

束の間の安寧かもしれない。でも…今日の穏やかな陽は、確かに彼らが勝ち取った物
…歪みきった食物連鎖を断ち切り、この世界に光をもたらす事ができるのは、私達じゃない
それは、この地に生きる人々の力

妹を奪われた青年がいたら話してみたい

いずれ別のヴァンパイアがやって来るかもしれない
その時アンタはどうするの?
――答えがなんであれ、私達はいつでも力を貸すわ
ただ、約束してほしい

生き抜きなさい
決して諦めず、最期の瞬間を迎えるその時まで
未来を求める光を、脅かす者達への怒りの火を灯しなさい
生を渇望し支配に抗う「人間の力」
それこそが。この世界にとっての太陽なのだから



 葬送の鐘が鳴り響く頃、おおよその埋葬が完了した。集められた野花を手に、遺された者達が過去へと別れを告げていく。手の中の白い花を握りしめ、ベアータは一人葬列を進む。例えこれが束の間の安寧だったとしても、今日という一日は確かに彼らが勝ち取ったものだった。
 いつかこの世界に決戦の時が訪れたとき、猟兵は間違いなく戦うだろう。だがそこへと至るには、この地に住まう人々がそれを強く望む必要があるはずだ。猟兵は世界の雇われ兵。盤上を返すには、人々の……この世界の力が必要だった。
 縁者の少ない墓に花を足し、ベアータは葬列を離れる。すると奥まった場所の墓前に予知で語られた青年の姿があった。近づいてくるベアータに気付いたのか、青年はハッとしたように頭を下げる。
「……妹さんだったのよね。聞いたわ」
「はい。優しくて、器量もよくて……俺にはもったいないほどよく出来た娘でした」
 近所の昔馴染みが懸想していたのだ。いずれ一緒になるのだと思っていた。嫁に行くときはきっと泣いて送り出すんじゃないかと思っていた――。一言語るごとに、青年の眼から涙が溢れ出る。ようやく彼は、妹の死を受け入れて泣いているのだろう。ベアータはそう直感した。
「……この村に、いずれ別のヴァンパイアがやって来たとして。その時アンタはどうするの?」
「はは……あまり、考えたくないこと、ですが。今回のようなことはきっとしないと思います」
「それがいいわ。……約束して」
 ベアータの言葉に青年は耳を傾ける。
「絶対に、生き抜きなさい。決して諦めず、最期の瞬間を迎えるその時まで……未来を求める光を、生命を脅かす者達への怒りの火を灯し続けなさい。アンタ達が諦めない限り、私達はいつでも力を貸すわ」
「ありがとうございます。本当に、心強い」
 二、三言葉を交わしてから、ベアータは青年に別れを告げた。生を渇望し支配に抗う力は、確かに彼らの中に芽生え始めている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。皆、本当にありがとう。
おかげで彼らを護る事ができた。
この地を恐怖で支配する領主はもういない。
後は貴方達の魂がこれ以上苦しみに囚われる事のないよう、葬送するだけね。

魔力を溜めた両目に【断末魔の瞳】で取り込んだ魂の残像を暗視して、
心の中で彼らに祈りを捧げ感謝を込めて手を繋ごう。

鐘の音が鳴れば吸血鬼化して【血の教義】を発動
光の力を使う反動で、傷口を抉るような痛みに気合いで耐え、
死者の呪詛を浄化する無数の“光の粒子”を放ち、
取り込んだ魂ごと、この地の魂を昇天させる。

…闇の娘が光の精霊に乞い願う。
この憐れな魂が闇に惑う事の無いよう、導いて…。

…もう苦しむことも無いでしょう。
眠りなさい。安らかに…。



 教会から離れた場所で、リーヴァルディは静かに目を閉じる。この身体の半分は、彼らが忌むべきヴァンパイアと同じもの。戦いが終わった今となっては、ほんの少しだけ近寄り難く感じてしまったのだ。
 しかし、そんな半魔の身でもよいと、力を貸してくれる魂達がいた。これからを生きる彼らとは別の方法で、死した者達を送ってやらねばならない。
「……ん。皆、助けてくれて、本当にありがとう」
 受け入れてくれてありがとう。皆の力で、彼らを守ることができた。この地を恐怖で支配する領主はもういない。悲しみに暮れ、憂う必要はもうないのだ。だから。
「……闇の娘が光の精霊に乞い願う」
 あとは、死者の魂が苦しみに囚われぬよう導き、送り出すだけだ。祈りの形に両手を組み、彼らを繋ぎ止めている両の瞳に魔力を込める。鐘の音が遠く響いて、リーヴァルディの頭を揺らす。聖なる光の力は闇を纏う身には眩しすぎて、焼けただれるように痛みが走る。
 それでも、これは自分が為さねばならぬこと。苦痛に耐え、怯える魂に祈りを捧げる。大丈夫、心配することなんて何もない。
「限定解放、テンカウント。この憐れな魂が闇に惑う事の無いよう、導いて……!」
 ひとつ、ふたつ。魂の光が輝いてリーヴァルディから離れていく。聖なる光が苦痛を清め、魂達が安らいでいくのを感じ取れた。リーヴァルディの身に宿した魂がすべて天へと昇っていくと同時、離別の衝撃が少女の華奢な身体を襲う。
「う、あァ……!」
 苦悶に呻いて脱力したように座り込むリーヴァルディ。ぼうと空を見上げれば、無数の光がやわらかな晴天に吸い込まれてひとつになっていくようだ。その幻想的な光景は、きっと教会の――遺された人々の目にも届くはずだ。
「……もう苦しむことも無いでしょう。眠りなさい。どうか、安らかに……」
 死者と、彼らが案じた生者の安らぎを祈って。リーヴァルディは再び瞼を下ろした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月09日


挿絵イラスト