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暗き龍穴にて

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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●暗き龍穴の主
「きゃははははっ! 砕けろ! 砕けろぉ!!」
 翠緑の剛腕を振るい、分厚い岩盤をゴリゴリと砕いていく。さながらトンネル掘削機のような破壊力を生み出す右腕は、細身の体に不釣り合いなほどの圧倒的な存在感を放っていた。
「岩、岩、岩! 岩だらけ! あぁ~、飽きないよねぇ、ここはさぁ!!」
 彼女はただ破壊を求める。抉られた岩穴は広く、そして深く、深く。
 それはいつしか、彼女を主とする巨大な要塞を成していた。

●未開の地、エメスラルダ島
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)は幾分不明瞭なイメージを携え、猟兵達の前に立っていた。
「おはようございます。早速ですが、新たな『悪夢』のお話をしたいと思います」
 声のトーンが軽やかでないのは寝覚めが悪いから……ではなさそうだが。ロザリアは、自身が『悪夢』と称する予知の内容を話し始める。
「今回舞台となるのは『グリードオーシャン』で見つかった島……『エメスラルダ島』になります。特徴としては、緑が広がる小高い山が連なる形でできている感じでしょうか。グリードオーシャンの島々は別の世界から落ちてきたものになりますが、これは多分……『アックス&ウィザーズ』かと思います」
 例えば、山頂には炎のドラゴンが住んでいたり。例えば、森の奥深くにはゴブリンの巣があったり。そんな想像を掻き立てられる自然が広がっているようだが、その島に巣食っているのは、また別の脅威だ。
「この島もまた、コンキスタドールに支配されていますので、グリードオーシャンでの活動範囲を広げるためにも、この島を制圧しにいきましょう!」
 どんな小さなきっかけでも、掴み取れば何に繋がるかわからない。島民はいないとされるこの島だが、大切なものの一つになるだろう。
「では、その作戦の詳細を説明していきます。この島にいるコンキスタドールの司令官は『滅芽』というようです。力による破壊を好む、凶悪なコンキスタドールですね。彼女が潜むのは洞窟の奥深く……そこは、彼女が力に任せて掘り進めた過程で要塞化してしまっているようです」
 滅芽がいる最深部は特に入り組んでいるようで、戦闘の際は地形なども気にしつつ、うまく立ち回りたいところだ。
「ただ、滅芽に辿り着くまでの道も容易ではなく、その前には『セイレーンの孤児達』と呼ばれる少女達が控えていて、洞窟内部への侵入を阻もうとしてきます。なので、セイレーンの孤児達を倒して進んでいく必要がありますね」
 洞窟があるのは、川が崖より落下して湖へ合流する――滝の裏側。岩壁が抉られ、そこにぽっかり入口が開いているとのことだ。その入口近辺を中心に、セイレーンの孤児達が守りを固めていることになる。
「ひたすら敵を倒して突き進んでいくだけなので、話としてはわかりやすいかと思います。ですが……」
 猟兵達を鼓舞する意味を込めて意気軒昂と振舞っていたロザリアが、ここにきて歯切れを悪くした。
「私が見た『悪夢』の最後のほうに、なんというか……黒い靄がかかっているような感じがありました。その正体をはっきりとは見て取れませんでしたが……水が関係している気がします。皆さん、どうかお気をつけて……このグリモアベースに無事に帰ってくるまでが、冒険ですからね!」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 新世界が色々増えてるなあ、ということで。

●フラグメント詳細
 第1章:集団戦『セイレーンの孤児達』
 森に囲まれた湖の一画。山頂から流れる川が崖から滝となって落下しています。
 その滝壺の上方1メートル付近のところに横穴が開いており、要塞への入口となっています。
 滝に向かって正面突破だときっとずぶ濡れですね。抉られて滝と横穴の間に若干空間があるため、うまく横をすり抜ければ濡れなくても済みそうです。
 入口を中心に、外側だけでなく内部でも守りを固めており、うまくやり過ごして通過する、なんてことはできなさそうです。

 第2章:ボス戦『滅芽』
 集団戦を突破して最深部に到着すると、待ち構えています。
 全体としては空間的にかなり大きな広間ですが、岩の柱が縦横無尽に走っているためある程度の空間に区分けされている、立体的な戦場です。
 滅芽自身は要塞を作ろうとしたわけではなく、己の欲望のままに岩を破壊していった結果こうなった、という感じ。
 空中の足場が簡単に崩れることはないですが、でこぼこがひどく足場としては不安定なので注意が必要かもしれません。これは地面も同じ模様。
 柱は壊してしまっても戦場が即座に崩壊するということはありません。時に戦術として壊しても大丈夫。

 第3章:???
 猟兵達がピンチになるので何とかしましょう。(水が苦手な方はご注意です)
 第3章にて何か使いたいものがある場合、第3章で「準備してました!」と言ってもらえれば十分です。第1章、第2章は存分に戦闘してください。

●MSのキャパシティ
 合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
 ゆったりペースで進行予定です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『セイレーンの孤児達』

POW   :    自作の自信作
装備中のアイテム「【自ら水から仕立てた装備】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
SPD   :    水から服を仕立てましょう
演説や説得を行い、同意した全ての対象(非戦闘員も含む)に、対象の戦闘力を増加する【水で仕立てた服や装飾】を与える。
WIZ   :    これも生きるため
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【操る水】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヴィクトリア・アイニッヒ
島民不在の島。急ぎ動く必要はないかもしれません
ですが、何がきっかけとなって事態が動くかは判りません
…この島を解放し、今後に活かしたい所ですね

さて、正面から突入すれば濡れるのは必至
さりとて濡れるのを怖れ横からすり抜けるのは、私には難しそうです
…内部で守りを固める相手の事を考えると、ここはやはり…

UC【神威の翼】を使用。
太陽神の威光を宿す戦女神に変じ、正面突破を図ります
守りを固める相手を飛行速度と悪意を打ち消す光で牽制しつつ、斧槍を振るって中央突破
後に続く方の道を作りましょう

…そう言えば、戦いの後は何やら不穏な気配があるとか
脱出を容易にする為に、マーキングも必要でしょうか…?

※アドリブ歓迎です



●水面に踊る戦女神
 グリードオーシャンの各島に潜むコンキスタドール。その目的は様々だが、ここ、エメスラルダ島にいるとされる『滅芽』なるコンキスタドールの目的は未だ見えていない。
 グリモア猟兵の予知でも、その動向が害のあるものなのかそうでないのか、釈然としない部分はあったが、読めないことが逆に不気味さを醸し出している。
(急ぎ動く必要はないかもしれませんが……何がきっかけとなって事態が動くかは判りません)
 ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)は要塞の入口がある滝からいくらか離れた草陰に潜み、様子を伺っている。
 おそらくは、此度の作戦は全体からすれば小さいものだろう。だが、何を糧に巨悪へと成長するかはわからない。
 悪の芽は摘めるうちに摘んでおく、というのも一つの選択なのかもしれない。
(……この島を解放することが、今後に繋がれば)
 猟兵の活動に無駄なことは何一つない――そう信じて。

 滝壺から弾ける水音が響く。滝の周辺には、まだ年端もいかない少女のような――セイレーンの孤児達が戯れる。
 目的の場所は滝の裏側。落水の中に黒い影が揺れ、水を免れた暗い空洞が一欠片覗いている。
(……さて)
 ヴィクトリアは滝に目を向けた。
(正面から突入すれば濡れるのは必至。さりとて濡れるのを怖れ横からすり抜けるのは……)
 流れ落ちる滝と崖の間にはいくらか空間がある。そこをうまくすり抜けられれば多少の飛沫を浴びる程度で済みそうだが、誰もが易々と通れるほど贅沢なものではない。
(……私には難しそうです)
 目測ではあったが、ヴィクトリアはそう判断する。
 無理な体勢での突入は後の行動にも影響を及ぼす。要塞内部でも戦闘の継続が予想される状況でもあることから、ヴィクトリアは正面突破を選択した。
 呼吸を整え、草陰から飛び出す。その先は滝ではなく、滝壺から湖へと流れゆく川だ。
『主の威光は、遍く世界を照らし給う……!』
 ヴィクトリアの頭上から陽光が注ぎ、その身を包み込む。白く輝く世界を駆け抜けて、その姿は太陽神の威光を宿す戦女神へと生まれ変わった。
 流れる水面へ飛び出すと直角に進路を変え、飛行して滝への遡上を始めた。直進の勢いに煽られ白い水柱が立ち上がる。
「……敵! 皆! 守って!!」
 セイレーンの孤児達の一体が声を上げた。真っ直ぐ要塞の入口を睨み射抜くヴィクトリアに危機感を覚え、次々と水の中へ飛び込んできた。
 ざざぁっと水が渦巻き、円柱となって川の中から聳え立つ。その上に立ったセイレーンの孤児達が、両手で持った水流銃を構えた。
 セイレーンの孤児達が水を操り作り出した装備だ。半透明で形もいくらか不安定に見えるが、濃縮された水弾は鋼鉄にも匹敵する。
「てーっ!!!」
 号令に合わせ、発射された水弾が川の流れに沿ってヴィクトリアへ飛ぶ。一発でも被弾すれば即墜落の水弾の嵐を、ヴィクトリアは巧みな操縦で紙一重、避けていた。
「私を止めることなど……できませんよ」
 手を伸ばし、ヴィクトリアは陽光を撃ち放った。障害となる水柱を穿ち、岸から加勢しようと駆けてくるセイレーンの孤児達の足元を薙ぎ払い牽制する。
「わあっ」
 水柱の芯を砕かれたセイレーンの孤児達。力のバランスを崩し、足場を失して川へ落ちてくる。
「――はぁっ!」
 直進するヴィクトリアは斧槍を手に、セイレーンの孤児達を掬い上げるように振り抜いた。水衣ごと細い体躯を両断すると、人とさして変わらない肌が水に溶けたように透き通り、やがて水と同化し消滅した。
「次っ! てーっ!!」
 再び水弾の嵐。敵に近づけば嵐もより強く、激しく。しかしヴィクトリアは怯まない。
 くるり、くるりと身を回転させ上下左右に弾道を掻い潜る。さも踊るように飛び回り、ヴィクトリアは嵐を渡り切った。
「あ! まずいよ!」
 第一の防衛ラインを突破したヴィクトリアの眼前に滝が迫る。ヴィクトリアは激しい流れに身を投じ、勢いのままに突き破った。巻き添えとなった水が要塞内部の壁に飛沫跡を描く。
 滝の裏側、要塞の――ほんの入り口ではあるが、ヴィクトリアは足を踏み入れた。自己発光する苔が付着した壁が、ごく緩やかに下るようにして伸びている。
 姿はまだ確認できていないが、内部にも蠢く気配を感じる。後に続く者達のためにも、先陣を切って道を拓かねば。
 ヴィクトリアは改めて斧槍を握る。
(そう言えば、予知の中には戦いの後の何か不穏な気配もあったでしょうか……。この要塞……脱出も考えなくてはならないでしょうし、マーキングなども検討してみましょう)
 壁の苔を指で掬い取ると、指先で光が糊状に伸びた。
 マーキングの目途がついたところで、ヴィクトリアは要塞の先を見据えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四十物・寧々(サポート)
サポートプレイングです。

ひとつの肉体に複数の人格を有し、人格ごとに別々の特性を修得でき、人格を切り替える事で様々な状況に対応できます。(多重人格者の種族説明より抜粋)

そのため、口調は「現在の状況に対応できる人格」です。
シナリオ進行に必要な内容など、喋らせたいことを喋らせて下さい。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

あとはお任せ致します。
よろしくおねがい致します。



●可愛くて冷たいセイレーン
「ひゃあ! めんこい~!」
 黄色い声を上げたのは、四十物・寧々(あいもの・ねね・f28377)……ではなく、彼女が有する別人格の『寧々』だった。多重人格者故、ユーベルコードを利用して呼び出すことも可能だが、その人格は決まってどこかの方言を喋るようだ。
「め、めんこ……? あの、あれは敵です」
 別人格(便宜上、ここでは『ネネ』と称しておこう)の突拍子もない反応に困惑気味の寧々。ネネが指差し騒いでいるのは水に群れるセイレーンの孤児達だ。幼い容姿は遍く受け入れられそうな可憐さを秘めているが、彼女達は紛れもなくコンキスタドールなのである。
「したって、めんこいもんはめんこいし~」
「……まあ、何でもいいです。とにかく、倒しますよ」
「……はぁ~い」
 ちょっぴり膨れっ面になりながらも、ネネはポンポン型記憶消去銃を受け取った。
 寧々とネネ、二方向に分かれ、挟み撃ちの要領でセイレーンの孤児達に迫る。
「これもこの島のため……ごめんね!」
 ネネが持つのは、普段寧々が身に付けているポンポンに光線銃を仕込んだものだ。白黄色の光線が、ネネの引き金を引く指に合わせて連続で射出された。
「水さん! 守って!」
 水際に立つセイレーンの孤児が水を円形に展開し、盾として光線と相殺した。ネネは駆け回り角度を変えて光線を放つが、悉く水の盾が打ち消していく。
「う~、手強い……」
(でも、消耗はしてるはず……ですが……)
 寧々はネネとセイレーンの孤児の交戦を観察し、力の源を探ろうとしていた。
 セイレーンの孤児は光線を防ぐ度に新しく水の盾を生成している。使い捨てであれば、どこかで限界が来るはずだが。
「……なるほど、それが『からくり』ですか」
 セイレーンの孤児をつぶさに観察し、辿り着いた結論。寧々は手にしたポンポンに付属する紐状の部分を伸ばし、セイレーンの孤児の体を絡め捕った。
「わぁ、何!? やめて!」
 ポンポンを操り、寧々は力任せにセイレーンの孤児を持ち上げた。水の中から現れた衣の裾がじゃばじゃばと水を零していく。
「服の裾を水に浸して、失った分だけ吸い上げていた……減らないはずです」
「なるほどー! したら、もう防げないよね!」
 束縛されたセイレーンの孤児へ、ネネが光線を撃ち上げた。セイレーンの孤児もなお足掻き続けようとするが、水の盾は一つ光線を弾いて消滅し、後続の光線が細い体を貫いた。
「いやあ……」
 か細い声と共にセイレーンの孤児の体は水に変化し弾け飛んだ。数多の水滴が雨のように辺りに注ぐ。
「しゃっこい!」
「しゃっ……ともかく、対処法は見つかりました。この調子でいきますよ」
「わかったよーぅ。濡れすぎるとあずましくないから、あまり高く持ち上げないでよねー」
 寧々が捕縛し、ネネが撃ち抜く。息の合った連携で、二人は水辺のセイレーンの孤児達を倒していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

グレナディン・サンライズ(サポート)
『ここはこの年寄りに任せてもらおうかね?』
『こう見えても、まだまだ衰えちゃいないよ』
年齢3桁の婆。
スペースシップワールド出身の元宇宙海賊。
主な武装はフォースセイバーとブラスター。
戦闘スタイルは基本的には前衛遊撃。敵を翻弄するような戦いを好む。
グルメではない酒好き。
年齢なりの経験を積んでいるので、冷静さと余裕をなくすことはない。
口調(あたし、あんた、だね、だよ、~かい?)



●強い者が勝つ、それが戦場
「はっ、とんだ小娘じゃないかい。こう見えても、あたしゃまだまだ衰えちゃいないよ」
 水舞う戦場に颯爽と現れたグレナディン・サンライズ(永遠の挑戦者・f00626)。年齢は大台の100歳を突破しているが、戦場に立つ以上年齢は関係ない。
 フォースセイバーにブラスター、近接戦闘を主体とするが、時に遠距離も織り交ぜ戦場をかき乱す。
「近づかないで!」
 セイレーンの孤児達が、水から作り出した水流銃をグレナディンへ向けた。パパパパッ、と放たれる水弾が降り注ぐところへ、グレナディンは一切臆せず突っ込んだ。
 年季のある皺が幾重にも刻まれたその容姿からは想像もつかぬ軽快な身のこなし。身を反らしながら一つ水弾を避けたかと思うと、今度はバネが反発するようにぐぅんと身を屈めてまた一つ水弾を避ける。しかも水弾の軌道を目で追うのではなく、長年身を投じた戦闘の経験から生み出された直感のみで避けているのだから恐ろしい。
「まだまだ甘いね。銃ってのはね、こう使うんだよ」
 次弾装填のわずかな隙を突く。ガンアクションが速い。ブラスターの銃口を向け、熱線弾を一つ撃ち放ったかと思えば次の標的へ。これもまた、目で位置を把握しているのではなく、これまでの水弾の角度から位置を割り出している。
 熱線は的確にセイレーンの孤児達の胸を撃ち抜いた。彼女達を構成する水が熱線によってじゅっと蒸発し、瞳から光が消えていく。
「来ないでよぉっ!!」
 グレナディンの小柄な体は、その存在感により実際より大きく映っていた。間を詰めるグレナディンに恐怖しセイレーンの孤児達は水壁を作り攻撃を防ごうとする。
 分厚い水壁だ。セイレーンの孤児達の姿が壁の奥に消え、銃で狙いをつけるのは難しそうだが。
「相手との力量は正しく測らないと駄目さ。今は……一目散に逃げるのが正解だったよ」
 不気味に赤く輝く光剣――フォースセイバーで一閃、壁を切り裂き、グレナディンは踏み込む。力を失い落下する水の飛沫を背に感じながら、深くもう一閃、セイレーンの孤児達を断った。
「そんなぁ……」
 現実から目を背けたいが、もう体は動かない。瞳は自らを切り捨てたグレナディンを最期に映す。
 戦場に水が散った。縦横無尽に駆けるグレナディンはセイレーンの孤児達の陣形を確実に乱していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鴨嘴・ケンゴ(サポート)
戦闘をメインに活躍させて欲しいっす。
戦闘での行動は変形する偽神兵器を使って、カッコいい剣撃と銃撃、捕食による敵のデータ収集と偽神兵器の強化を行うっす(メタ的に言うとゲームのゴットイーターな感じ)
敵は絶対殺す又はデータ収集すると言う意思で戦う為に戦闘中は性格が変わったように攻撃的になります。
(口調 少年(おいら、~くん、~さん、~っす、~っすよ、~っすね、~っすか?)
敵には 野生の感覚が蘇る(オレ、アンタ、言い捨て)っす。



●捕食される意思
「敵は近づけちゃダメ! 皆で力を合わせてここを守ろう!」
「うん、そうだね!」
 セイレーンの孤児達は猟兵達への警戒を口にして気持ちを合わせる。すると水の中から淡いブルーのイヤリングが生み出された。
 それは、セイレーンの孤児達の通じ合った気持ちが生み出す増幅の装飾品。力を高め、猟兵達への反撃の狼煙を上げるつもりだ。
「……ハッ、何をしようが、粗末な小細工に過ぎん」
 セイレーンの孤児達の行動を見ていた鴨嘴・ケンゴ(カモノハシのストームブレイド・f24488)は、その必死の抵抗をも切って捨てる。
 自らの中に眠る野生の感覚がそうさせるのか、丸みを帯びた目も双眸も今は細く鋭い。
「水さんの力、見せてあげるっ!」
 セイレーンの孤児達は両手を広げて水を操る。川からぐぅっと持ち上がった水は餅のように細く伸び、敵を打つ巨大な鈍器となっていた。
「いけぇっ!!」
 セイレーンの孤児達の動きに合わせて、しなる水の鈍器がケンゴに狙いを定めた。空が透けて青みを帯びた鈍器を、ケンゴは横っ飛びで回避する。ずしん、と地面に着弾した鈍器は青々とした芝を削り取っていく。
「パワーは十分……そしてスピードは――」
 初撃を外したセイレーンの孤児達だが、攻撃の手は休めない。地面にめり込んだ鈍器を持ち上げ、横に振り回してケンゴを追いかける。
「なかなかだ。ならその力――」
 軽い身のこなしで鈍器に間合いを詰めさせず動いていたケンゴは立ち止まり、そして向かってくる鈍器に相対した。
「喰わせてもらう」
 偽神兵器【骸喰】に可変ユニットを取り付ける。【捕食の型】と呼ばれるそれを解放し、セイレーンの孤児達が振り回す鈍器へ食らいつかせた。
 セイレーンの孤児達よりもまだ小さいケンゴの体に、ずん、と受け止めた衝撃が走り、ふわ、と一瞬足が地から離れた。偽神兵器【骸喰】を食らいつかせる角度を微妙に変えることで下方向へ分散させた力を利用し、足元の地面を取り戻す。
 土をガリガリと削りながら、ようやく力の均衡。偽神兵器【骸喰】が水へ食い込み始めた。
「もっと! もっと力を合わせて!」
 セイレーンの孤児達が集まり、更なる力を引き出そうとした――が、それより一瞬早く。
「アンタらの力、喰らった」
 ぶちゅん、と水が食い千切られた。この水はセイレーンの孤児達の一部を構成するものだ。
 コンキスタドール――もとい、オブリビオンを食らい、力を増幅した偽神兵器【骸喰】のユニットを付け替え、双銃の型とした。
「吹き飛べ」
 双銃が左右交互に火を噴いた。
「きゃうっ!」
「いやあっ!」
 一撃一殺、弾丸は確実に一つずつセイレーンの孤児達を水へと還す。力を合わせるために集まっていたセイレーンの孤児達は格好の標的だった。
 最後にケンゴは、手の中で銃をくるりと回して、ドン、と双銃を同時に放った。
 二つの弾痕。眉間にケンゴの銃弾を贅沢に食らったセイレーンの孤児が、最後にゆっくりと水底へ落ちた。

成功 🔵​🔵​🔴​

日東寺・有頂(サポート)
 人間の化身忍者×アリスナイト
19歳男
身長183cmです。
口調は長崎弁風+αで「オイ(一人称)・〜ばい・アンタ・〜っさ・〜やけん・〜と?」などです
「です〜〜・ネ〜〜」と語尾を伸ばしてみたりもします。
ノリが軽く暢気でマイペース。おとぼけながらも戦いは愉しみます。
化身忍者的な戦術にはまだ疎くシノビな自覚も薄いですが、時にそれっぽく振る舞いたがります。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用しボコられも厭わず積極的に行動するばいね。他の猟兵に迷惑をかける行為はせんです。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はせんです。
 あとはおまかせ。よろゅう頼んますー。



●巡った因果の果てに
 数の減ったセイレーンの孤児達は最後の防衛戦に入っていた。要塞の入り口付近に固まり、いかなる攻撃をも弾かんとする水の大盾を掲げる。
 背水の陣とはまさにこれだが、そこへ日東寺・有頂(手放し・f22060)が現れてしまった。
「へぇ、小さか体で大きな盾ば持っとーなあ」
 大盾はセイレーンの孤児達の体を首から膝辺りまですっぽりと隠し、まさに壁であった。
 ただ、有頂はそのアンバランスさのみにおいて声を上げただけで、それがいかに堅牢か、という点には触れていない。
「ばってん、オイには通用せんばい。化身ニンジャちゅうんはこがん事もできるばい!」
 右腕をやおら持ち上げると、スナップを聞かせて軽くセイレーンの孤児達のほうへ振った。
 何をしているのか、セイレーンの孤児達があっけに取られた次の瞬間――。
「うぐっ……いやっ」
 突然、大盾を落とし両手を喉元へ持っていくセイレーンの孤児がいた。足元がわずかに浮いたかと思うと、ぐんと体が真横に倒れ川岸へ叩きつけられた。へし折れた体がぶよんと歪なバウンドをして転がっていく。
 もう決して破らせない――強い決意があったはずだった。敵を決して逃さない――有頂が仕掛けてくるであろう動きは、穴が開くほど見ていたはずだった。
 それなのに。壁は剥がされ、打ち捨てられた。
「撃って! 撃ち殺して!!」
 有頂の絡繰りがわからず、無理気味に攻撃へ転じたセイレーンの孤児達。放たれた水弾は空中でぱしゃん、ぱしゃんと何かに遮られるように弾けた。
 これが化身忍者の奥義か。有頂が操るのは、目には見えない忍術的霊力。それを一言で表現するのは本人も難しいようだが、とにかく、セイレーンの孤児達が備える絶対の警戒網を易々と突破できる手段を有頂は持ち合わせていた。
「そがんことばするんはつまらんね。守りが疎かになっとーばい」
 銃と大盾。二つの武具を同時に扱えるほどセイレーンの孤児達は武術的に長けているわけではなかった。遊んでいる大盾の大きな隙間に力を叩き込んだ。
「あぐぉっ」
 鳩尾を打たれ、濁った声を上げてセイレーンの孤児が一体落ちる。盾の裏で次々に仲間が落とされていくのを見ながら、また自分自身も落とされる恐怖。
 銃を持つ手が震えてきて、いよいよ水弾が空を飛んでいった。
「これで終わりばい」
 最後の一体もがっちりと。掴んで、叩きつけて、水へ還す。

 いつしか、滝壺の水音が澄んで聞こえるようになっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『滅芽』

POW   :    壊させてくれるの?優しいね!
【鬼神の力で強化した龍の腕】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    きゃはははははっ!潰れろ、潰れろー!
【鬼神と白狼の力で強化した龍と狼の両腕】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    逃すわけ、ないよねぇっ!!
【白狼の力で強化した狼の腕】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【姿や血、特性】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は琶咲・真琴です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『滅芽』なる者
 要塞を照らすのは苔の光だ。弱々しいものだが、猟兵ともなればその程度の光源でも内部を見渡すことができる。
 セイレーンの孤児達を退けて、かなりの距離を下ってきた。
 まるで地の底にでも向かっているような――長い旅路が終わりを迎える。
 要塞最深部。そこは滅芽の住処でもある。
「……こんなところに客かい? 呼んだつもりはないんだけどねぇ……でも、悲鳴も上げずに砕けるだけの岩なんかより、きっとずっといいよねぇ!!」
 破壊の本能。それは地の底深くでは到底満たされるはずもなく。
 下卑た甲高い笑い声をあげて、猟兵達を出迎えていた。
ヴィクトリア・アイニッヒ
…貴方が何者で、何を目的にこの地で蠢いているのか。それを問う気はありません。
ただ、貴方を放っていては…その破壊の意思が、いずれこの世界の無辜の人々に向くだろうと言う事だけは、判ります。
私の力は、人々を守るために。主よ、照覧あれ…!

まずは通常の姿のまま。
相手の腕を掻い潜り、斧槍を振るい立ち向かう。
…本能を技術で往なし、封殺出来れば良し。
ですが、そう上手くは行かないでしょう。

一撃を受け、相手にこちらの特性を覚えられた事を悟れば、UCを発動。
真の姿を晒す事で、自身の特性を上書きすれば…今覚えた事は、無意味となるはず。
この姿となった以上、その破壊というは断じて討ちます。
主よ。悪意を灼く力を──!



●神に捧げる誓いの意味は
 歪な岩の柱がそこかしこに張り出した空間だったが、岩でできた筒の中を長く下りてきたヴィクトリアにはやけに広く感じられた。
「ひゃはは、ようこそ」
 要塞最深部に滅芽はいた。上空、岩の間に渡された水平の柱に腰掛け、ニマニマと笑いながらヴィクトリアを見下ろしている。
「こんなところによく来る気になったねぇ」
「えぇ……私自身、疑問に思うところがないと言えば、それは嘘になります」
 ヴィクトリアは淡々と答える。
「……貴方が何者で、何を目的にこの地で蠢いているのか。私には知り得ぬことですが……それを問う気もありません。ただ――」
 ようやく、ヴィクトリアは滅芽と視線をかち合わせる。
「貴方を放っていては……その破壊の意思が、いずれこの世界の無辜の人々に向くだろうと言う事だけは、判ります」
「人間かあ。地表まで壊し尽くしたら、どこかの島にでも飛ぼうかと思ってたところだったけど……わざわざ壊されに来てくれて、ありがとうねえ!!」
 唐突に戦いが始まる。滅芽は自分が座っていた柱を足場にして蹴り、ヴィクトリアの頭上へ急降下してきた。鬼神の力で強化した龍の腕を振り下ろす。
「……っ!」
 ヴィクトリアも斧槍【L'orgoglio del sole】で対抗した。長柄の斧槍、その入り組んだ刃部分で鋭い爪を受け止め、弾く。
 ファーストコンタクトは互角のように見えたが、滅芽はヴィクトリアに対応されてなおへらへらと笑っており、力の底は未だ見せていないようだった。
「私の力は、人々を守るために。主よ、照覧あれ……!」
 柱が飛び出た小空間、ごつごつした岩肌の上でヴィクトリアは果敢に攻め入る。わずかなでっぱりに靴底を引っかけ加速し斧槍を突き出す。アンバランスな腕を持つ滅芽はそれだけ的が大きいが、その大腕を滅芽は軽々と振り、ヴィクトリアの突きをすんでのところで回避する。
「今度はこっちからだよっ!」
 滅芽は引いた腕を、流れる動きの中でヴィクトリアへ向けて突き出した。引っ込みかけていた斧槍の上をするりと抜けて、鋭い爪の先はヴィクトリアの眼球を抉らんとしていた。
 迫る切っ先。深緑色が視界を侵食していく恐怖が走る。
 反射的に顔を逸らし、爪の直撃をかわしていた。艶のある銀髪が数本、はらりと爪の餌食になった。
(これが破壊を好む本能……地理的不利も併せて考えれば、相当に脅威――)
「これで終わりなわけないよねぇ!!」
 気付けば滅芽の爪は向きを変え、再びヴィクトリアへ向いていた。尋常ではない身体操作能力に、ヴィクトリアは目を見張る。
 体勢が崩れたヴィクトリアが爪の追撃から無傷で逃れるのは至難だった。斧槍の刃、その幅広い面を盾にして受けようとしたが、力の差が圧倒的だった。
 滅芽は斧槍ごとヴィクトリアを弾き飛ばす。投げ出されたヴィクトリアの体は地面から伸びた岩柱を砕き壁に激突した。
「かはっ……ぐっ……」
 衝撃が着込んだ鎧を突き抜けてくる。滅芽の腕はヴィクトリアを弾いた後、そのまま岩の地面へ突き刺さり、ショベルカーで抉ったような穴を開けていた。
 何もかもお構いなしの攻撃に歯噛みするヴィクトリア。それでも、この展開までは予想の内だ。
『──主よ! 命を照らす、陽光の化身よ! 邪悪を灼き、命を護る為の力を!』
 誓う、必ず邪悪を討つと。その誓いはヴィクトリアを――白き翼を持つ戦乙女へと変貌させた。
「この姿となったからには、破壊の権化たるあなたを――断じて討ちます」
 翼を膨らませ、ヴィクトリアは地面を滑空する。
「主よ。悪意を灼く力を──!」
 人一人軽々と弾く滅芽の力は因果なことに、ヴィクトリアに全力を振るう空間を与えていた。広げた翼を遮るものは何もない。
 長柄を生かし、斧槍を振るった。狙うはやはり、右の龍の腕。
「しつこいねぇ!」
 滅芽とて、完全な静の状態から爆発的な力が出せるわけではない。硬い鱗をぶつけにいくが、一瞬の勢いでヴィクトリアが勝った。
 厚い刃がガリガリと隙間に食い込んで鱗を飛ばした。堪らず後方へ飛んだ滅芽へ、ヴィクトリアはさらに一歩追い討って、小指にあたるであろう指の一本に生えた棘をゴリッともっていった。
 鱗と棘を削がれた滅芽はしばし立ち尽くしていたかと思うと、すぐまたひいひい笑い出す。
「いいねえ。これだよ、これ。岩はなーんにもしてこないからねえ。これが……これが人を破壊するってことさあ!!」
 身を削られてなお、滅芽は破壊という行動が内包するありとあらゆる事象を享楽に変えているようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

禍沼・黒絵(サポート)
『クロエと遊んでくれる?』
 人間の人形遣い×ビーストマスター、11歳の女の子です。
 普段の口調は「無感情(自分の愛称、アナタ、ね、よ、なの、かしら?)」、独り言は「ちょっと病んでる(自分の愛称、アナタ、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

一人称はクロエ、人からクロエと呼ばれると喜ぶ。
ちょっと暗い感じの無表情なキャラ
武器は装備している物を自由に使って構いません。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●遊びの代償
「ねぇ……クロエと遊んでくれる?」
 ジャングルジムのように入り組んだ岩柱の上に黄金のライオンが鎮座していた。十分な幅があるわけでもないのに、器用なものだ。
 さてそのライオンが喋ったかと言うとそうではなく、その背にちょんと乗っている人影があった。
 それが声の主、禍沼・黒絵(災禍の輩・f19241)だ。日が照らずとも、ごく当たり前のようにゴシック調の日傘をさしている。
「遊ぶ? いいねいいねぇ!! なら目一杯遊んであげようかぁ!! きゃははははっ!!」
 黒板を引っ掻いたような不快な笑い声をあげて、滅芽は両腕を巨大化させた。元より巨大であったのは龍の腕、そしてもう片方は狼の腕だ。それも今は龍の腕に匹敵するほどの体積を持ち、圧迫感を放っていた。
「潰れろ潰れろー!!!」
 考えなしに振るわれる両腕も、その大きさ故に命中しやすく。台風のように岩石を巻き込みながら壊す、壊す、壊し尽くす。
 黒絵が乗るライオンの足場も危うくなった。もう一瞬遅ければ巻き込まれていたか、というギリギリのところでライオンは跳躍し、そのわずかに下を剛腕が通過した。
 元居た足場は粉々に砕けていた。小岩の嵐の中をライオンは跳ぶ。黒絵の日傘が岩避けとして役に立った。
 ライオンは滅芽の真後ろに着地する。腕を巨大化させた滅芽は破壊力を増した半面、俊敏性が失われている。
 滅芽がようやく振り向けば、そこにはわずかに口角を上げた黒絵の言霊が。
『皆、クロエの声に応えてね』
 滅芽の存在は真正面に見えた。うぅん、と無の宙に暗器が像を結び、呪いに導かれ襲い掛かる。
「うっ……あああ! 鬱陶しい!!」
 巨大な腕で払い落とし、また握り潰しもしたが数に押され、耳の後ろから生えた角の枝分かれが飛んだ。鱗も刻まれ、べりべりと音を立てて剥がれ落ちて血が滲む。
「ああもう! こういう小細工染みたのは嫌いだねえ!」
「その小細工に負けたアナタは……不細工?」
 こてん、と首を傾げる黒絵の仕草が一層滅芽の頭に血を上らせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クレア・ベルディモード(サポート)
かわいい忠犬系お嬢様。
ギャグやお色気シーンの被害者要因。
割とひどい目にあっても健気に頑張ります。
天然でボケて、常識でツッコミをするタイプ。
勉強は出来る方なので、知識面ではそれなりに。
礼儀作法はお手の物、内心はともかく自信に溢れた笑みを浮かべ貴族らしく振舞う事は出来ます。
戦闘面ではいまいちですが、精神面ではどんなにボロボロになりながらも折れない鋼メンタルです。
貴族としての矜持もあり、庶民を守る義務と責任の為に無茶をすることも。

ヤラレ役、あるいは周囲を称賛する役大歓迎。
正直、貴族より農民が向いてる。



●ドジではないです不運です
「ふにゃあ!!」
 クレア・ベルディモード(駆け出し猟兵・f05060)は頭に星を浮かべて目を回していた。
 どこにでも不運な星の下に生まれた者はいるものだ。戦闘の余波で飛んできた岩がごちんと直撃していた。
 さあいくぞ、と意気込んだ直後の出来事だっただけに何とも切ない。しかしクレアは挫けない。
「へこたれません……私にできることを、やるんです……はひゃあ!?」
 びゅん、とまた滅芽が砕く岩の欠片が飛んできた。今度は運よく見えていたため、悲鳴混じりにしゃがんでかわす。
 滅芽が意図的に狙っているのでは? と思わせられるほどに的確に飛んでくるが、全て偶然であり、度重なる偶然はもはや必然のようでもあった。
「負けません……私は私の最善を尽くす……ああこの流れはまた飛んできそうです! なのでいきますね!」
 彼方へ宣言しクレアは滅芽との戦いに身を投じた。
『足りない身体能力は……魔術で補う!』
 視覚に強化を施し滅芽の動きを追う。
「また増えたみたいだねえ!! もう全部壊してやろうかあ!!」
 鬼神の力が溢れ出る。唸りを上げて龍の腕が飛んできた。
「見えているから……よけます!」
 宣言法、などとは誰が言ったか。ともかくクレアは行動を口にして、その通りやってみせる。身体強化魔術のお陰だ。
 そして加速させた思考は、今何が最も必要であるかをクレアに瞬時に判断させた。
「それはつまり……攻撃力!」
 思考と言動が全て把握できるクレアにしか「つまり」の意味はわからない。何はともあれ、クレアは攻撃を選択した。龍の腕の真下へと潜りこんだところに魔法剣を叩き込む。
 一閃、薙いだ斬撃は的確に滅芽を捉え、その腹を裂いた。鱗を被った両腕程、彼女の胴は硬くない。
「ぐぁっ……すばしっこいのも好きじゃない……っねぇ!!」
「わひゃあ!!」
 滅芽の怒気にあてられ寒気がして、足が絡まり前のめりに岩肌へ滑り込むクレア。これは怪我の功名となり、滅芽の追撃から逃れる格好となった。

成功 🔵​🔵​🔴​

婀鎖路・朔梛(サポート)
【アドリブ連携歓迎】

多重人格者18歳女子
電脳魔術士×クレリック

頭脳担当姉「朔梛(少し高音)(あたし、君、呼び捨て、だね、だよ、だよね、なのかな? )」

時々/脳筋型妹「朔椰(無口,少し低音)(僕、あなた、呼び捨て、言い捨て)」

他の猟兵に迷惑をかける行為など公序良俗に反する行動は無し

姉妹共に(特に妹)凄くマイペース

戦闘スタイル:姉は後衛//妹は前衛

行動パターン:積極な方だか怪我には気を付ける。
また隠れて味方のサポートともあり。

UCは指定した物どれでも使用ok

入れ替わり時の姿:妹になると結んだままウェーブ/UC使用時は絵と一緒

 
※お色気NG



●似て非なる対極の二人
『ん……お姉ちゃん、これ、僕の出番』
 猟兵達に幾度となく暴力を振るう滅芽を見て、婀鎖路・朔梛(表裏一体の双子・f12701)の脳裏に声が反響した。
 多重人格者である朔梛の別人格、朔椰が反応していた。この二人は姉妹の関係にあるという。
「うん、あたしじゃ、あれを受け切るの無理だね」
 考えるまでもない。朔梛きっぱり言い切った。
『なら、出ていい?』
「うーん……今回は二人でいこうよ」
『わかった』
「ならいくねー」
 ほわっ、と朔梛の体が光のカプセルに包まれた。光のカプセルはゆっくりと二つに分かれ、ぱっ、と光が拡散すると、そこには朔梛と、外見がうり二つのもう一人の少女がいた。
 髪を白いリボンで結んでいる朔梛と異なり、新たに現れた少女にはリボンがなく、また髪にはウェーブがかかっている。
 彼女が朔椰だ。現れるや、仏頂面のまま両手をぶらぶらとほぐしている。
「お姉ちゃんのタイミングで仕掛けて」
「おっけー、じゃあ一気にいくよ!」
 朔梛は少し開けた空間へ300体もの小型戦闘用機械兵器を召喚した。全てが朔梛の意思の下に滅芽へ襲い掛かっていく。
 飛行する様を見ているだけでも鬱陶しく、豪快な一撃を好む滅芽にとってはなおさら疎ましく感じる存在だ。モザイクのように纏わりつくのを滅芽は巨大化させた両腕で振り払いにかかる。
「ああもうイライラするねえ!! 小細工しかできないのかい!?」
 一掴みで何十体という機械兵器が潰されていくが、残りがチクチクと滅芽へ細かいダメージを与えていく。
 一つ一つは小さくとも、積み重なれば侮れない。加えてここまでの戦いで負ったダメージが追い討ちをかけ、滅芽の動きが鈍ってくる。
 隙は見逃さない。前衛を担う朔椰が間を詰める。
「なら一撃――お見舞いだ」
 朔梛の召喚した機械兵器は目くらましの役目も果たしていた。滅芽が朔椰を視認した時にはもう遅い。
 朔椰は両手で朔椰愛用《アンティーク調.六角形の山型棺》を掴みぶん回した。脇から飛んできた棺桶は巨大化した腕諸共滅芽の体を薙ぎ払い軽々と飛ばす。
「があっ!」
 朔椰の力をそのまま乗せた一撃だ。吹っ飛んだ滅芽の体は岩柱にぶち当たる程度では止まらず、砕けた柱と共にさらに奥まで転がった。
 擦り切れた着物の切れ端が、滅芽が転がった道中に点々と散らばる。
「あああああもう!!! なんでこんなにイライラするんだろうねえ!!!」
 思い通りに動けない自分に癇癪を起こす滅芽。元は綺麗な白髪も、今は砂や岩に塗れてくすんでいた。
「さあね……お姉ちゃん、何でだと思う?」
「あー……それはあれだよ、カルシウム。だから牛乳を飲もう!」
 怒りをぶちまけている滅芽を前に、何ともマイペースな二人だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

南護・炎(サポート)
 人間の剣豪×パラディン、18歳の男です。
 普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、級友には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●熱血と冷静が合わさり最強に
「ははあ……なるほどな」
「……なぁにが、『なるほど』なんだかねえ……?」
 幾多の攻撃を受け、滅芽の体はボロボロだ。それでもなお立ち上がってくる姿を前に、南護・炎(人間の剣豪・f23789)は何か納得した表情を見せていた。
 ここまで手は出さず、ただ観察に徹していた彼だが、当然観客としてここにやってきたわけではない。滅芽を倒すのに必要な一手として、観察し、見極めることが重要だった。
「滅芽……だったか? お前のその腕……見切ったぜ」
 炎はまさに勝ちを宣言し、サムライブレイドを抜いて滅芽に迫った。ただ真っ直ぐに、突っ込んでいくだけの単調な仕掛けだ。
「面白いことを言うね! なら……避けてみなよ!」
 鬼神の力で強化した龍の腕が、ごう、と唸りを上げて水平に飛んだ。全てを刈り取る一撃――しかし炎は滅芽の射程ぎりぎりのところで踏み止まり、龍の腕を回避する。
「まだまだだよ!!」
 鋭い爪を生かした突きを続ける滅芽。それを炎はすっと半身横にずれて避ける。滅芽が腕を引く瞬間は隙があるように見えたが、炎は手を出さず、ただひたすら滅芽の攻撃を避けることに徹していた。
 滅芽は袈裟に腕を振るう。炎は横跳びで腕の軌道、爪の軌跡から逃れていた。間髪入れず、滅芽はVの字を描くように振り上げたが、今度は体重を後方に預けた後ろ跳びで空を切らせた。
 炎は滅芽を完全に翻弄している。
「何故当たらないか、教えてやろう。お前のその腕……その大きさだから、それなりに重いんだよな? だから振り回す時に体の軸がわずかにぶれる。そのぶれた方向で腕を振る向きがわかるって寸法だ」
「……!! うるさいねえ!! 知った口を利いて!!」
 滅芽は炎の指摘に一瞬目を見開いた。己でも薄々感じていたのだろう。それを的確に指摘され、取り繕おうにもただの喚きしか出てこない。
「無用の長物、ってのは、まさにお前の腕のことを言うんだろうな!」
 炎は懐に潜り込む。腕が大きい分、滅芽自身に近いところはカバーしにくく、また炎が滅芽の弱点を指摘したことで鬼神の力が封じられていた。
 一閃、軽やかに薙いで炎は懐から離脱した。線状に迸る鮮血が綺麗なアーチを作り上げる。
「うっ……くううぅぅぅ……!!」
 体が言うことを聞かず、滅芽は膝をつく。もはや力はほとんど残されていなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

藤堂・こずゑ(サポート)
あまり見た目妖狐っぽくないけど、妖狐なの

右目を何とか見せない、見ない様に生きてるわ
妖狐な部分は出したくないから…

依頼に拘りは無いわ
誰とでも連携し、どんなのでも遂行してみせるわよ
日常パートはアンニュイな感じでクールに過ごすわ
一応喜怒哀楽はあるつもり

戦闘パートは古流剣術で挑むけど…
流派は忘れちゃった
マイナーだから廃れちゃったみたい

振るう刀は宵桜(ヨイザクラ)ね
可愛いでしょ

大気の流れを読んで攻撃したり避けたり、後の先を得意とするわ

UCはどれでも使用し、攻撃するUCばかりだけど…
他の猟兵との連携などで避けて敵を引き付ける必要がある時は『流水の動き』を使ってね

後はマスター様にお任せするわ
宜しくね



●その身、壊れるまで
 爪をがりっと地面に突き立てて、滅芽は立ち上がってくる。しかし膝はがくがくと揺れっぱなしだ。
「まだ……立つの?」
 宵桜を抜いた藤堂・こずゑ(一閃・f23510)が問う。
「バカ……だねえ……まだこの体は、壊れてないんだよ……」
 見る人が見れば壊れていると言ってもおかしくない滅芽の体。しかし「人の形を保っている」という観点で見れば、確かに壊れてはいないのかもしれない。
「……なら、ちゃんと最後まで『壊さなきゃ』……ね」
 滅芽の言葉を借りて、こずゑは結末と共に刀の切っ先を突きつけた。
 刀身から白い煙のような、それでいてある程度の形を保ったものが湧き、こずゑの体へと流れてきた。
 刀自身が宿す強烈な念――それを纏うことで、使い手は新たな力を得る。
「ハハハ……その前に……潰して、あげるよぉ!!」
 滅芽の笑い声は乾いていた。威勢も絞りかすをさらに絞ってようやく染み出たものだろうが、コンキスタドールとしての矜持というものがあるのかもしれない。
 故に、どんなに手負いであっても、こずゑは全力で向かう。命を削る大技でも惜しみなく使うのだ。
「あああっ!!」
 龍の腕を振るうのに合わせ、滅芽は叫んだ。叫ぶでもしなければ振るえない。
 誤魔化しのように絞り出した力だが、質量がある分脅威でもあった。こずゑは正面から受けることを避け、回り込むように高速移動して回避する。
「可愛いこの子に、傷は……つけたくない」
 滅芽の側面へ回ると、こずゑは後方へ跳びながら刀を薙いだ。滅芽から離れながらの行動で当然刀身は直接当たらないが、斬撃を繰り出すことによる衝撃波が代わりに滅芽の体を刻んだ。
 滅芽の腕には鱗がある。それが一瞬にして剥ぎ取られ宙へ散った。
「あ……ぐぅ……」
 痛みに堪らず腕を抑えるような動きを見せたが、巨大であるため不格好だった。
「斬って斬って斬って斬って斬って――斬り尽くしてあげるわ」
 もはや巨大な的と化した滅芽へ向けて、こずゑは刀を振り回した。ただひたすら、壊すために。
 高速の斬撃による衝撃の波状攻撃が斬撃の腕を、足を、体を裂く。身を守る鱗もなくなり、すぱ、すぱと肉が口を開いていた。
 最後の一筋の衝撃波が、滅芽の体を胴から水平に断って。
「おま、えら……せめ、て、みちづ……れ……」
 斬り離されて宙に浮いた上半身がごろりと地に転がって、滅芽の口は動かなくなった。


 滅芽は倒された。しかし滅芽のわずかに残った着物の中で、何かが微かに光ったようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 冒険 『ブルーホール』

POW   :    気合いで潜る

SPD   :    潜水器具で潜る

WIZ   :    魔法を使って潜る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●自爆装置発動
 滅芽が命尽きる一瞬前に発動したもの――それはメガリスだった。
 その力は要塞の自爆。最期の言葉通り、猟兵達を道連れとするものだ。

 要塞となっていた岩の洞窟、その天井部が一気に崩れた。大穴から落ちてきたのは大量の水だった。
 滝の裏にあった要塞の入口から長く長く続いたその先は、滝から川を経て流れ込む湖――その真下だったのだ。
 要塞は遠からず水没することだろう。そうなる前に猟兵達は逃げねばならない。

 脱出口は二つ。
 一つは、来た道を戻る経路だ。滅芽との戦闘で最深部となるこの場所はかなり崩れて形を変えたようだが、滅芽と戦った猟兵の一人、ヴィクトリアがマーキングを施していた。
 マーキングを追えば迷うことはないが、それでも水が通路を満たしてしまうほうが早く、いくらかは水の中を泳ぎながら外界まで出なければならなさそうだ。
 もう一つは、上部に空いた穴から脱出する経路。滝の比ではないほどの大量の水が流れ落ちているが、猟兵達が侵入した経路を水が塞いだ後はその勢いに揺らぎが出る。
 密閉された空間に水が流れ込むにはその分だけ出るものが必要だ。空気が抜ける分だけ流速が弱まる――そのタイミングを見計らうなどして飛び込めば、勝機が見えてくるかもしれない。
 ともかく、逃げねばならぬのだ。猟兵達よ――急げ。

●補足
 この章にて描写されなかった方もなんやかんやで脱出したと思って今後の猟兵ライフをお楽しみください。
ヴィクトリア・アイニッヒ
嫌な予感はしていましたが、やはりこうなりましたか。
陽の力で水を蒸発…いいえ、閉所でそれをすれば自殺行為。
ここは覚悟を決めて、来た道を戻りましょう。

通路に記したマーキングを辿り、地上を目指す。
このマーキングを記したのは私です。最短経路も覚えています。
とは言え、やはり水が満ちる速度は中々早いですね。
…念の為にと持ち込んだこれを、使う事になるとは。

冒険鞄に入れていた、ミニスキューバタンクとマスクを取り出し装備。
専門知識はありませんから、多用と過信は出来ませんが。でもこれで、水の中での行動も少しは出来る筈。
…それにしても、アース系世界というのは。探せば何でもある物ですね。

※アドリブ歓迎です



●ヴィクトリアの脱出劇
 まるでシンクの中にでも落っこちてしまったような気分だった。
 蛇口を全開にした水道の如く、水が巨大な柱となって落下し、要塞を沈めていく。
(嫌な予感はしていましたが、やはりこうなりましたか)
 ヴィクトリアは冷静だった。死なば諸共、などという自爆策は敵役にはよくあることだ。此度のコンキスタドールもまた、その類だったということだろう。
 このまま要塞と共に沈むわけにはいかない。ヴィクトリアは脱出口となり得る天井に目を向けた。
「陽の力で水を蒸発……いいえ、閉所でそれをすれば自殺行為にしかなりませんね」
 水は水蒸気となれば、その体積は爆発的に増加する。それこそ本当にこの空間が爆発し、岩の中に埋没するか、それとも木っ端微塵か。
 ともかく死は免れないだろう。
 ヴィクトリアは背後を見る。そこには自身がつけてきた発光する苔のマーキング。簡素ではあるが、確実に帰路を示している。
「迷っている暇はありません……来た道を戻りましょう」
 ヴィクトリアは覚悟を決めて駆け出した。
 岩肌の違いを正確に捉えるのは不可能に近い。故に、一度方向感覚が狂うと迷路にはまってジ・エンドだ。
 それでもヴィクトリアが正しい道を選び続けるのは、他ならぬヴィクトリア自身がつけたマーキングがあったからこそ。確実に外へ向かっている――そんな実感も湧いてくる。
 だが、メガリスの力は要塞全体に及んでいた。進行方向にある枝分かれした通路から鉄砲水が噴き出し、通路に流れ込んでくる。
「これでは……満ちるのも時間の問題。念の為にと持ち込んだこれを、使う事になるとは」
 急速に水位が上がっていく。ヴィクトリアは冒険鞄に腕を突っ込み、ダイビング装備を取り出した。
 ミニスキューバタンクを担ぎ、マスクを装着。レギュレーターを咥えたところで完全に水に呑み込まれた。
 水中での視界は良好だった。マーキングの光もよく見える。ヴィクトリアは両足を上下、交互に動かしてゆらゆらと水中を進んでいく。
 ダイビングの専門知識があるわけではないが、広大な海の中を進めというわけでもない。時に岩壁を支えにして体勢を直しながらヴィクトリアは外界を目指す。
(……それにしても)
 泳ぎも少し慣れてきて落ち着いたところで、ふと作戦前のことを思い出す。
 ダイビング装備は、水に関係する何かがあるとグリモア猟兵に忠告されて急いで集めてきた物だ。あまり時間もなかったが、それらしい店を訪ねれば目当ての物はすぐ揃い、最低限のレクチャーもしてくれて有難かった。
(アース系世界というのは、探せば何でもあるものですね)
 もしまたこれらを使うことがあるならば、今度はこんな命懸けの場面ではなく――サンゴ礁に囲まれた南国の海など、いいかもしれない。
 想像している内に、揺れる水面が見えてきた。ざぶんと飛び出して水から脱出する。滴る水滴が地面を濡らした。
 水位はまだごく僅か上昇を続けているようだが、今の状態なら歩くだけでも逃げられそうだ。
 マスクを外し、少しずれたタンクを担ぎ直して出口を目指す。やがて流れ落ちる水音が聞こえてきた。
(……そういえば、出口は滝の裏側……まあ、この状態なら関係ないですね)
 この後に待ち構える濡れた髪の手入れのことなどを思い浮かべながら、ヴィクトリアは無事、要塞からの脱出を果たしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

婀鎖路・朔梛(サポート)
【アドリブ連携歓迎】

片割れの魂を宿す多重人格者18歳女子
電脳魔術士×クレリック

頭脳担当姉「朔梛(少し高音)(あたし、君、呼び捨て、だね、だよ、だよね、なのかな? )」

時々/脳筋型妹「朔椰(無口,少し低音)(僕、あなた、呼び捨て、言い捨て)」

他の猟兵に迷惑をかける行為など公序良俗に反する行動は無し

姉妹共に(特に妹)凄くマイペース

戦闘スタイル:姉は後衛//妹は前衛

行動パターン:積極な方だか怪我には気を付ける。
また隠れて味方のサポートともあり。

UCは指定した物どれでも使用ok

入れ替わり時の姿:妹になると結んだままウェーブ/UC使用時は絵と一緒

 
※お色気NG



●朔梛・朔椰の脱出劇
「……やってくれる」
 朔椰は苦虫を噛み潰したような表情を見せる。面倒なことこの上ない、と顔にマジック書きされているかのようだ。
 ごうごう、と水は空間を満たし続ける。すでに足元はひんやり涼しかった――が、涼んでいる場合ではない。
「今度はお姉ちゃんの出番っぽいけど、何かある?」
「ちょーっと待ってね。今めっちゃ考えてるから」
 むむむむ~、と朔梛は実際に声に出して考え込む。眉間に寄った皺がぴくぴくと動いていた。
 逃げ道は――ちらりと見たが、出口までの道のりを正確に遡れる自信はなかった。袋小路に入ってしまえば一発でアウトだ。闇雲に突っ走るのはリスクが高すぎた。
 出口までの道を作れるか――。機械兵器は無数に出せるが、小型では掘削能力に限界がありそうだった。朔椰の腕力に任せてみようか、とも考えてみたが、さすがに無理かなと切り捨てた。
「……そろそろ何かしないと、まずい」
「わかってるよぅ!」
 もう腰まで水に浸かっている。濡れるのはこの際どうでもよかった。たとえずぶ濡れになろうとも、生きて帰ることに意味があるのだ。
 やがて水位は胸辺りにまで到達し、とうとう浮かざるを得なくなった。元来た道は完全に水没し、今や脱出口は水が落下してくる大穴のみ。
 ばしゃり、ばしゃりと水音に強弱が付く。早く、早くと煽られているような気がして落ち着かない。
 仰向けに浮かぶと、水が落ちてくる大穴がよく見えた。音に強弱が付き始めたのは、流入する水の量が変化しているためだ。
 水量の揺らぎ。朔梛は似たような光景をどこかで見たことがある。
「……牛乳パック」
「……何言ってるの、お姉ちゃん」
「牛乳パックってさ、急にボコッと牛乳が出てきてコップから零すこと、あるよね?」
「……そう?」
「あーるーよー! それとあの流れ落ちてる水って、同じ気がする! ……空気! そう、空気だよ!」
 閃きに思わずぱしゃんと水を叩いた。
「朔椰! あれ使って! 『護柩ノ盾』!」
「わかった」
 理由も聞かず、朔椰は翼を持つ無数の柩型の大盾を呼び出した。立ち泳ぎ状態の朔椰を大盾が囲むという珍妙な光景だ。
「盾、もっと出せるでしょ!? それで船を作る!」
「ああ、なるほど」
 朔椰は動けないながらも盾を操作し、お碗状の船を作った。朔梛はすかさずそこに乗り込み、朔椰を引き上げる。
 水に直接浮くよりは安定感があり安心できる。だが、このままではまだ脱出には至らない。
「この次は?」
「もっともーっと盾出してさ、ぺたぺた張り付けてってボール状にするんだよ。これで空気の入ったボールが浮くみたいに、あの大穴から抜けられそうじゃない?」
「よく思いつくね、そんな使い方」
 さすがの頭脳担当だった。頼りになる、と心の中で再認識しつつ、朔椰は盾をさらに増やし、一気に球状の大盾複合体を生み出した。
 あらゆる攻撃を防ぐ盾だ。砕けた岩が落下してきてもびくともしない。
 大穴は水流に削られ、少しずつだが大きくなっている。中の朔梛は球体内を移動して少しずつ球体を水の上で進めていた。
 水面の上昇と共に天井が近づく。いよいよ落下する水の中に呑まれて――。
 ぎゅっと底面に押し付けられるような感覚が二人の体を襲っていた。そして、ふっ、と圧力から解放された時。
 上部の大盾のハッチを開くと、そこには青い空が広がる。
「やった! 外だよ!」
 接岸して、ようやく朔椰は力を解除した。久方ぶりの自由を得たような、不思議な解放感だった。
「ちょっと疲れた……僕、そろそろ戻るから」
「わかった、ありがとね」
 お互い手を振り合う二人。そして光に包まれた朔椰はぽわっと浮き上がって朔梛の胸の内に吸い込まれていく。
「はー……でも、結構びしょびしょだねー……帰ったらお風呂かな」
 達成感溢れる笑顔を見せて、朔梛はうーん、と日に向かって背伸びした。

成功 🔵​🔵​🔴​

月詠・莉愛(サポート)
『あの……宜しくお願いしますね。』
 オラトリオのシンフォニア×聖者、15歳の女です。
 普段の口調は「丁寧口調(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、独り言は「普通かな(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

大人しくて口数が少ないですけど、心優しく
動物や植物などの自然が好きな少女。
争い事は苦手ですけど、依頼の成功の為なら戦う事も厭わないです。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●莉愛の脱出劇
 月詠・莉愛(銀の月を謳う・f16320)はメガリスによって崩壊していく要塞を見上げていた。
 争い事が苦手な莉愛は戦闘において終始回復支援に徹していた。故に目立った活躍とは言いにくいが、縁の下の力持ちとして戦線を支えていた。
 さて、大量に落下してくる水を前に、その流れに身を任せつつ脱出するのか、それとも逆らいつつ脱出するのか。
 莉愛はオラトリオである。翼は持つ――が、激しい水流を前にしてはさすがに力不足だった。しかし足での脱出を試みるにも、いずれ迫り来る水に呑み込まれそうな気がしていた。
(少し危険だけど、命には代えられないし……この方法に賭けるわ)
 自分の力で何ができるか、莉愛は考えていた。そして辿り着いた一つの答え。それがどれほど正しいかを精査する時間はなかった。
『月よ、私を導いて下さい。そしてその力を私に貸して下さい』
 月に祈る。ここは地下深くだが、月は応えてくれた。清楚で純粋な歌姫へと変身した莉愛は、どこかの夜空で輝く月の光の魔力を得ていた。
 この力を使えば、背の翼など遥かに凌ぐ飛翔能力を得る。莉愛は助走をつけることなく、垂直に空中へ飛び出していた。
 莉愛は水が落下してくる大穴を目指す。莉愛が選んだのは水に逆らっての脱出だった。
 だが、単に突っ込むだけでは水流を突き破ることはできない。飛翔状態の中で莉愛は更なる力を行使する。
『私に眠る不死鳥の力よ、覚醒せよ!』
 力強い叫びに、今度は不死鳥が力を貸す。
 莉愛の背に新たな翼が生えたかと思うと、そのまま全身が燃え上がり炎の鳥となった。超高速で炎の鳥が水流に突っ込んだ。
 莉愛に触れた水は一瞬にして沸騰する。莉愛の周囲に大小様々な泡が生じ、莉愛と共に水の中を上昇した。
 まさに水を切り裂いて莉愛は外界を目指した。炎を通して揺らめいて見える光は、次第に明るく映り――。
 水面から飛び出した莉愛。まるで人魚が躍るようだった。身に付けたセイレーンヴェールが靡いて空に舞った。
 炎の力を解除し着地する。そして歌姫の姿も解け、元のふんわりした莉愛に戻った。
「……なんとかうまくいって、よかったわ」
 莉愛は衣服の乱れを整えると、猟兵達の無事の帰還を願うグリモア猟兵の元を目指して歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

クラリス・シドルヴァニス(サポート)
 人間のパラディン×プリンセス、19歳の女です
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、嘘をつく時は「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 アックス&ウィザーズからやって来た女性騎士。剣と鎧で身を固め、正々堂々と勝負を挑みます。反面、主義に反する暗殺や騙し討ちは苦手。特技は剣による<武器受け>と〈重量攻撃〉。
 ユーべルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●クラリスの脱出劇
(……これもまた、試練なのね)
 瞳を閉じ、クラリス・シドルヴァニス(人間のパラディン・f27359)は己が内で自分が置かれている状況を理解した。
 猟兵となるまでも、クラリスは幾多の経験をした。苦難の道だったが、クラリスは決して歩みを止めなかった。
 そうして今、この場に立っている。たとえ要塞が水底に呑まれようと、ここで命散るクラリスではない。
 聖騎士の辞書に撤退の二文字はない。目の前の壁は何としてでも乗り越える。クラリスは躊躇わず落ちる水柱へと向かっていた。
『いでよ、我が眷属よ』
 胸元のペンダントを握り締めると、指の隙間から白い光が漏れだした。光を解き放ちユニコーンを召喚するとすかさず飛び乗り空を目指す。
 ユニコーンが駆ける道に、ぶわっと花びらが舞い散った。豪華絢爛なドレス姿となったクラリス。聖騎士であり、そして姫騎士と言うに相応しい。
 水柱の周囲を螺旋状に、空への階段を駆け上がる。突入口は水柱の根元、ただ一点。
 水流の勢いで天井が崩れ、岩が流れに乗って落ちてきた。
「はっ!!」
 馬上かつ後方に傾いた姿勢ながらもクラリスは絶妙なバランスで両手剣を操り、一太刀で斬り捨てた。断面は鏡のように美しく、クラリスの剣術技能の高さが伺えた。
「何であろうと……斬るのみよ!!」
 クラリスの声に合わせ、ユニコーンはロケットブースターが点火したかのように一気の加速を見せて水流へ一直線。
「この剣にかけて――全てを討つ!!」
 紋章が輝いた。
 ユニコーンと共にクラリスは水の中へ飛び込む――と同時に両手剣をひたすらに振り抜いた。水という『物質』を斬って斬って斬って斬って――斬りまくった。
 水を押しのけるだけの火力はユニコーンの協力を得れば足りる。後は一秒の間もなく次から次へと進路に侵入してくる水を全て『斬り飛ばす』だけの速さのみ。
 水の中に斬り開いた進路に飛沫が跳ねた。その飛沫すらも両断するほどの速さで白銀の十字架が躍った。
 要塞内部に残っていた空気も後押ししてくれた。深い水底から脱出するまで剣を振り続けなければならない。時折の酸素が有難かった。
 後は無の境地。光を求めて――。

 ざぱぁん、と噴水のような水の跳躍。ユニコーンはついに駆け抜けた。
 着地したユニコーンとその乗り手クラリスは余韻の飛沫をその身に受けて、ダイヤモンドのように輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

レイカ・ヴァンスタイン(サポート)
フェアリーの聖者×プリンセス、7歳の女です。

戦闘は苦手で援護や救助、支援など中心です。
武器は人間大の人形(銃火器持)ですので、運搬作業も可能です。
普段は悪戯(許せる範囲)で遊ぶ。

普段の口調は「マイペース(ウチ、相手の名前+ちゃん、なの、なの?)」
苦しい時は「愛想笑い(ウチ、相手の名前+ちゃん、なの、なの?)」です。

・ユーベルコードは必要に応じて、多少の怪我は厭わず積極的に行動(支援中心)します。
・他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
・あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●レイカの脱出劇
「うわ~、自爆しちゃったよ~」
 あっちへはろはろ、こっちへはろはろ。味方を癒して回っていたら、敵が倒れて要塞ボカン。全く以って難儀なものだ。
 とは言え、水は人間にもフェアリーにも等しく沈めにかかってくるのでうかうかしてもいられない。
「う~ん……ウチの力だけじゃ、ちょっとピンチかもね~……だ・か・ら、みんなでお手伝いしましょうなの」
 三フェアリー寄れば何とやら。そんな言葉もどこかの世界にはあるとか、ないとか。
 さておき、レイカ・ヴァンスタイン(銀光精・f00419)に負けず劣らずの陽気な妖精達は3体どころか65体も現れた。これなら十二分の戦力だ。
「お外までの道を、皆で作ろうね~。せーのっ……びっくりどっきりべろべろばぁ!」
 くるりん、ぽんっ! 現れたのは『小さな大きな袋』だった。
 矛と盾が争っているなどと言ってはいけない。『(人間には)小さな(フェアリーには)大きな袋』と解釈すれば、それは実に都合のいい袋だった。
 レイカは65体の妖精たちと共に袋を下からえいやぁっと担いだ。妖精手品、袋の神輿だ。
 さてさてこの袋神輿、何といってもポイントなのは、水を吸い込んでくれることである。
 水流に、人間からすればちっぽけな集団が飛び込んだ。袋にはざばざば水が吸い込まれていく。
 抵抗のない対象を吸い込む袋。水は重力に引かれるままに落下しているだけ――つまり抵抗していない、という超妖精理論だった。
 それでも通るのがユーベルコードの面白いところである。
 袋が際限なく水を吸い込んでくれるお陰で、袋の下のレイカは快適に上昇していた。袋の存在により作られた滝に目を向ける余裕もあった。
 妖精サイズのため、他の猟兵がレイカの恩恵を受けることはないが――まあ他の猟兵達も無事に脱出したことだろう。
「もう少しなの! 頑張ろ~!!」
 妖精たちを鼓舞し、レイカ自らも薄翅をパタパタパタと全力で動かしてラストスパート。

 ぽちゃん、と水面に波紋ができた。たっぷり水を呑み込んだ袋が、宙でたぷたぷと揺れている。
「出られたね~! ありがとなの~!!」
 太陽みたいな笑顔をにぱっと咲かせ、レイカは手伝ってくれた妖精達に感謝を述べた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年10月01日
宿敵 『滅芽』 を撃破!


挿絵イラスト