4
復讐の刃が向かう先

#ダークセイヴァー #同族殺し


●『復讐鬼は彷徨い歩く』
「違う、違う、チガウチガウチガウ......コイツジャナイ。アハハハハ」

 ――――グシャリ、メチャ、グチョ。
 光の死んだ闇の中から肉を裂き、磨り潰す音が聞こえてくる。その音がふと止んだかと思うと、ポツリと言葉が零れ落ちる。口を開いたのは一人の男、闇に紛れる黒衣に幽鬼のような白い肌。手に握った銀の刃は朱に塗れ、その目にあるのはただ燃え滾る憎悪の炎。

「どこだ、どこだドコダドコダドコダ......」

 憎しみの炎に理性はとうに焼き尽くされ、狂気に飲まれた男は今日もまた、理由も忘れた復讐を求めて彷徨い歩く。

 ――――その背後に肉片となった”同族”を残して。

●『狂った刃は何処へ行く』
「さぁて諸君。新たな事件の予知ダヨ」

 いつも通りに白衣を纏って、石動・レイン(刹那的快楽主義者・f03930)は集まった猟兵たちへと語りかける。

「ダークセイヴァーでの事件、なんだけどネ。まぁオブリビオンを倒すというのはいつもと同じなんだケド、どうやらとある強力なオブリビオンが同族殺しを目論んで別のオブリビオンの館を襲撃するようデネ」

 今回の依頼では、猟兵たちは積極的に戦いを挑むのではなく、むしろ漁夫の利を狙う立場となる。オブリビオンの襲撃を利用して館の主を倒し、そして疲弊した『同族殺し』をも討ち取ってしまおうという魂胆だ。だが当然のことながらそのぶんリスクは増す。

「注意事項がいくつかあってネェ。まず館の警備は厳重デネ、『同族殺し』をうまく利用しないと入り込むのはまず無理だろうということ。そして館の主もまた強力なオブリビオンであって猟兵だけの力では撃破が困難だろうネ」

 まぁそういうことだからこの機会に乗じて倒してしまおうということなんだけどネェ......などとあくどい顔をしながらもレインは説明を続ける。

「そうして最後に疲弊した『同族殺し』を討つ。むしろここまでやって疲弊させた後じゃないと彼を討つのは不可能といってもいいくらいダヨ」

 回りくどいかもしれないが一気に強力なオブリビオンを纏めて葬り去るチャンスでもある。それだけのリスクを負うだけの価値があるということだ。

「それじゃぁ皆の武運を祈っているヨ。先ほども言った通り敵は強いから気を抜かないでネ」

 そう言ってレインはグリモアを開くと世界を超える門を作り出し、猟兵たちを見送った。


外持雨
 外持雨です。皆さん戦争お疲れさまでした。暑い日が続いていますが体調に気を付けてください。

 さて今回はダークセイヴァー。依頼は「同族殺し」を倒すことですがただ討てばよいというわけじゃないんだなこれが。

 第一章:集団戦、『溶かしすり潰す者』
 第二章:ボス戦、『彷徨える黒剣』
 第三章:ボス戦、『狂気に飲まれた復讐者』

 の流れです。
 第一章では同族殺しを利用して警備を突破してください。警備のオブリビオンを引き付けて同族殺しにぶつけるもよし、気づかれないよう後を追うのでもよし。ただし利用しない場合は警備を破ることが非常に困難になります。
 第二章ではブリビオンの領主、同族殺し、猟兵の三つ巴の戦いとなります。
 第三章で同族殺しと戦うことになります。それまでに『同族殺し』と戦おうとした場合、苦戦もしくは失敗の判定となりますのでご注意ください。

 それでは皆さんのプレイングをお待ちしております。
19




第1章 集団戦 『溶かしすり潰す者』

POW   :    すり潰す
【のしかかり】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    強酸噴出
【吹き付ける強酸の塊】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に捕食対象を溶かす酸溜まりを残し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    強酸自爆
【死に際に酸を撒き散らし破裂する為、身体】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
九石・纏
狂気に呑まれた復讐者、か。
俺もいつかああなっちまうのかねぇ…

ま、奴さんが道を作ってくれるなら後をつけさせてもらいやしょ。
『絶望の福音』で奴さん達の攻撃を見切り、情報収集、
攻撃の余波を受けないよう立ち回り、周囲の物影なんかに隠れて目立たないよう後ろを追跡。

おーっとっと、酸溜まりかい。危ねぇ危ねぇ。
ここの領主、こんな趣味悪りぃのを放し飼いにするたぁね。
であの兄ちゃんは意に介さずかい。まったく…

誰を殺したかったのか、覚えてんのかねぇ…
それともここの領主が、求める仇なのかい…?

問いかけはせず、そんな事を思いながら尾行を続けるよ


アリステル・ブルー
●POW/連携アドリブおまかせ
必要ならサポートにまわります

同族殺し…か
今度は一体どんな理由で狂ってしまったんだろうね?
まぁまずは戦闘だね
僕からは絶対に同族殺しを攻撃しないよ

ユールを呼ぶよ
連携して警備を挑発しよう
ダッシュと逃げ足、見切りと第六感、オーラを纏って対処
同族殺しの影に紛れて目立たないように『旅の記録』を手に、指定UCで敵のみ攻撃しようか
反撃は味方に飛ぶようなら挑発してかばうよ! あえて同族殺しを攻撃してもらえたらいいね


故無・屍
体良く利用して、用が済んだら終わらせる、ってか。
…珍しくもねェ。
どっちも結局はオブリビオン、生き残った方が敵になるってだけなら
せいぜい使ってやるだけだ。


UCの使用、目立たないの技能も併用し
暗殺技術を応用することで気付かれないよう同族殺しの後を追うことを選択
聞き耳、野生の勘、第六感も駆使して周囲の警戒も怠らずに

警備のオブリビオンと戦闘が発生するようなら怪力、2回攻撃、早業、暗殺にて
迅速に処理。
同族殺しには気付かれないよう立ち回る。


…野郎も『生前』は今よりは真っ当な復讐を考えたのかもしれねェがな。

過去は戻らねェ。仮に過去の復讐が今の時代で成ったとしても、
そいつはもう、『自分の復讐』じゃねェんだよ。




 件の館から程よく近い森の中。巡回するオブリビオンたちに見つからぬよう木々の陰にじっと身を潜めて『同族殺し』を待つ猟兵たち。

「狂気に呑まれた復讐者、か。俺もいつかああなっちまうのかねぇ......」
「彼は一体どんな理由で狂ってしまったんだろうね? 何か深い理由があるのかもしれない」

 ひそひそと小声で言葉を交わす九石・纏(人間の咎人殺し・f19640)とアリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)。言葉の裏にあるのは同情か、それとも憐憫か。

「なぁに、体良く利用して、用が済んだら終わらせる。珍しいことでもねェだろう」

 だが結局のところ相手はオブリビオン。ならばせいぜい利用してやるだけだと言い放つ故無・屍(ロスト・エクウェス・f29031)。どちらが生き残ろうとも猟兵とは相容れぬ仲なのだから。

「まぁそうなんだけどなぁ......と、どうやら奴さんが来たようだ」

 ふいに纏がなにかに気づいたかの様に館の方を注視する。次の瞬間、周囲に警報が鳴り響き、警備の兵が慌ただしく動き出す。門の前、篝火に照らされるのは剣を握った黒衣の男。復讐鬼のおでましだ。

「まさか真正面から仕掛けるとは。本当に狂ってしまっているようだね」

 呆れたようにため息をつくアリステル。多勢に寡兵どころか単独で真っ向から挑むなど正気の沙汰ではない。とはいえそこは『同族殺し』、とうの昔に正気など失ってしまっている。あるのはただその肉体を突き動かす復讐心のみなのだろう。

「ハッ、野郎の事情なんざどうでもいい。俺たちはただやるべきことをやるだけだ......いくぞ」

 既に戦闘は始まっている。もたもたしていては機を逃すことになるやもしれないと三人は静かに、しかし素早く動き出す。
 『同族殺し』に警備のオブリビオンども任せて、その後から便乗して忍び込もうというのが狙いだ。

 いつの間にやら辺りに溢れるは緑色をした巨大なナメクジのような怪物の死体ばかり。流れ出た体液からはツンとくる刺激臭が漂ってくる。

「こりゃ酸の血か......危ねぇ危ねぇ」

 試しにと纏が木の枝で液体に触れると、触れた端から煙を上げて炭となる。素手で触ればどうなるかなど考えたくもないが......

「で、あの兄ちゃんは意に介せずかい......」

 たとえ狂っていようともやはり強力なオブリビオンなのだろう。強酸を吹き付けられようが返り血を浴びようがお構いなしと男はただ前進する。

「もうちょっと警備を減らした方がいいかもしれないね。おいで、ユール」

 アリステルが使い魔のユールへと呼びかける。現れたのは一羽の青い鳥。

「さあ、頼んだよ」

 パサリ、と翼を一振り。一条の青い閃光となったユールは戦場を飛び回り、『同族殺し』の目に留まらぬよう、しかして敵の目を引き付ける。
 戦場に紛れこんだ異物へと気を取られた瞬間、敵の肉体へと鳥のような剣が突き刺さる。
 それと同時に、足音もなく動き出した屍が背後から近寄っては速やかにオブリビオンの警備兵どもの息の根を止めていく。
 相手がまともな思考を持ち合わせているようならばこの場に第三者が、猟兵たちがいることに気付かれてもおかしくない。だが『同族殺し』にまともな思考はできないし、警備のオブリビオンの中で気づいた者は速やかに息絶えていく。

 猟兵たちの陰からの援護もあってか、あっという間に警備は片付いた。一息つこうかとした瞬間、何か頑丈なものが破壊される音が響く。
 視線を向けるとそこには館の扉を粉々にし、中へと歩を進める『同族殺し』の姿。

「あの兄ちゃん、誰を殺したかったか覚えてんのかねぇ......」

 ――――それとも、ここの領主が彼の求める仇なのだろうか?

「さぁな。だが過去は戻らねェ。仮に過去の復讐が今の時代で成ったとしても、そいつはもう、『自分の復讐』じゃねェんだよ」

 そこにどんな経緯があろうともやらねばならないことは変わらないと、そっと復讐者の後を追って猟兵たちは館の中へと進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
かの同族殺し、以前に余が予知した者と同型のオブリビオンか。此度はまた随分と狂気に塗れているようだな…
まあ良い、我が身顧みず進むというなら存分に利用させて貰うとしよう。

黄昏大隊・歩兵部隊を発動、呼び出した兵士達と共に、同族殺しの後に続く形で館へ進入。
無論、兵達には同族殺しへの攻撃を禁じておく。

同族殺しが警備のオブリビオンと交戦を開始したら、それを援護する形で兵達に攻撃を命令。
余は義眼で周辺の熱源・生体・魔力・動体反応を探知(【情報収集】)、別経路からの敵の奇襲に警戒。敵を感知次第、兵の攻撃を其方へ向ける。
奇襲を狙う敵がいないなら余も攻撃に参加。魔導小銃で同族殺しの背後を取ろうとする敵を撃ち抜く。




「かの同族殺し、依然に余が予知したものと同型のオブリビオンか」

 復讐鬼はすでに門の中、周囲の混乱は未だ冷めることを知らず、慌ただしい空気のまま警報は鳴り続けている。そんな敵兵の跋扈する戦場を恐れることなく、ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)はしっかりとした足取りで歩んでいく。

「此度はまた随分と狂気に塗れているようだが......まあ良い、存分に利用させて貰うとしよう」

 ――――さあ、征こうか。

 その一言で呼び出される兵士たち。うっすらと透けた兵たちは隊列を組み彼女の後に続く。毅然とした歩みに続く軍靴の音は乱れることなく、たとえ敵兵の残骸を踏みつけようとも遅れることはない。

「一匹たりとも逃すな。殲滅しろ」

 ギージスレーヴの下した命令はいたって単純。『同族殺し』以外のオブリビオンを鏖殺せよ。ただそれだけだ。その命に従い、実行せんと兵士たちは銃を構え狙いをつける。

 新たにやってきた襲撃者の姿に気づいたオブリビオンもいるがもう遅い。銃弾の雨が肉を食い千切り、血に塗れた地面をさらに潤していく。反撃に強酸を浴びせてくるオブリビオンもいるが、霊体の兵士たちが盾となり司令であるギージスレーヴには一滴たりとも届かない。

「(他に周囲の敵兵の反応は......)ふむ、そこか」

 奇襲をかけようにも彼女の義眼は誤魔化せない。たとえ暗闇の中であろうとも様々な情報を知覚できる義眼を前に、門の陰に潜んでいたオブリビオンはあっけなく探知され、続く歩兵の銃撃を受けてただ蜂の巣と化していく。

 弾丸の嵐が一通り吹き抜けた後、地に伏すは肉塊となったオブリビオンの死骸ばかり。
 復讐鬼はもう扉をくぐって館の中にいるのだろう。時折中から戦闘の音が聞こえてくる。

「ではこれ以上敵が湧いてくる前に、余も続くとしようか」

 そう言って不遜な笑みを浮かべながら、ギージスレーヴも遅れるまいと『同族殺し』の後を追うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『彷徨える黒剣』

POW   :    黒剣覚醒・時間加速
自身の【外装】に覆われた【神器】が輝く間、【黒炎を纏う黒剣】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    黒剣覚醒・時間遡行
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【宿主のダンピールの寿命】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ   :    黒剣覚醒・時間転写
自身の【宿主のダンピールの寿命】を代償に、【複数の過去】から召喚した【自分自身】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【自身のユーベルコード】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

 重たい音をたてて扉が開く。向けた視線の先にいるのは椅子に腰かけ、頬杖をついた異形の人型。

「おいおい、随分騒がしいと思えば誰だお前は」

 復讐鬼は答えない。それがたとえ、関係のない相手だとしても分らないまま刃を振るう男には会話に答えるだけの知性など残されていない。

「だんまりかい。面白みもねぇ......って危ねぇなおい」

 異形が飛び上がって避けると同時に、先ほどまで座っていた椅子が木屑となる。対峙する両者の間には肌で感じるほどの殺意が溢れる。

「殺ス」
「そいつぁ意見の一致ってやつだなぁ!」

 ――――パーティーの幕は上がった。猟兵たちが来るよりも先に。
九石・纏
やってるねぇ…んじゃ、混ぜてもらうとしようか。

リボルバーでクイックドロウ、彷徨える黒剣に覇気を込めた弾丸を撃つ
うっかり当ててヘイト向けられても嫌だね。

復讐者を間に挟んで、敵を盾にする。
戦闘知識、復讐者の動きを観察して見切り、復讐者の隙を埋めるようにリボルバーで援護射撃。復讐者に当てないよう気をつける。

んでもって、奴さんが大きく避けるってこた、あんたこっちに来るってな!
復讐者の動きから黒剣の動きを読み、『銀狼の聖剣』

怪力を使って早業、背に吊った銀の大剣を素早く振り下ろし、
復讐者を抜いてこっちに姿を現した黒剣に、浄化の力を込めた光刃を放つ!


ギージスレーヴ・メーベルナッハ
やれやれ、とっくに始めているところであったか。
折角の愉しき戦よ、余も混ざらせてもらうぞ!

基本は魔導小銃での射撃にて攻撃。
連射力を活かし、【制圧射撃】を仕掛け足を止めさせてから【スナイパー】にて脚なり頭なりを撃ち抜いてくれようか。
弾丸は全て【呪殺弾】。金属質の部位を腐食させる呪詛つきだ。

敵がユーベルコードで己の分身を呼ぶならば、黄昏大隊・群隊迷宮にて分断を試みる。この際、同族殺しと敵本体を分断せぬよう注意。
奴にとって宿主の命など塵芥同然であろうから、分身の戦闘力は然程ではないと見るが、油断はせぬ。
呼び出した兵達の銃撃で分身本体双方へ攻撃を加えてゆく。




 暗い廊下を駆け抜けた先、猟兵たちは大きく開け放たれた扉から広間へと駆け込む。そこにあったのは無惨にも砕け散った椅子や机の残骸に引き千切られたカーペット。家具ばかりでなく、石造りの壁や床まで切り傷や罅が入っていることからどれほど激しい戦闘が繰り広げられていたのかが察せられる。
 だが、闘いは未だに終わっていない。剣と鉤爪が交差し、火花が散る。どうやら対峙する二体の戦力は拮抗しているようだ。

「やれやれ、とっくに始めているところであったか。せっかくの愉しき戦よ、余も混ざらせてもらうぞ!」
「やってるねぇ......んじゃ、俺も混ぜてもらうとしようか」

 凄惨な笑みを浮かべて躊躇いなく火中へとその身を躍らせるウォーモンガー、ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)に、彼女ほどではないにせよ薄ら笑いの九石・纏(人間の咎人殺し・f19640)。
 まずは挨拶に、と、目にも止まらぬ速度で抜かれた纏のリボルバーが火を噴く。放たれた弾丸は『同族殺し』の肩を掠めるかどうかという軌道を描き、『彷徨える黒剣』の頭に命中するも、纏われた外装によって弾かれる。

「あぁん?」

 傷つけたとしてもそれはほんのかすり傷。だがそれでも、今まで互いのことしか頭になかったオブリビオンの注意を引くには十二分。

「なんだなんだ、今日は随分とまた客の多い日だなぁ! 招待状なんて出した覚えもねぇんだが!」
「......殺ス」

 気が逸れた瞬間に『同族殺し』が振り抜いた剣を躱し、再度の銃撃を弾くと纏へと目を向ける『彷徨える黒剣』。幸いなことに復讐鬼の方は未だに『黒剣』のことしか頭にないようだ。

「おっと、余のことを無視とはよい度胸ではないか」

 ギージスレーヴの言葉と共に放たれる魔弾。連続して放たれるそのすべてに呪詛が込められ、金属を腐らせ喰らい尽くす。まさに『黒剣』にとっては天敵にも等しい弾丸。

「てめぇ厄介なもん持ってきやがって!」

 流石にこれはまずいと思ったか、『黒剣』は己の分身を呼び出して銃撃への盾にする。だがそれもギージスレーヴの想定の内。

「その程度、読んでいたぞ。総員集結!」

 雷鳴のごとき号令。瞬間、その場を満たすのは亡霊が作る半透明の壁からなる迷路。

「さて、各個撃破と洒落込むか」

 戦場を己の土俵へと塗り替えたギージスレーヴ。この迷路を構築する亡霊兵のすべてが己の指揮下。彼女の思い通りに攻撃できる。分断された分身体は四方からの銃撃に晒され、なすすべもなく朽ちていく。

「おいおい、なんだこれは。スゲェじゃねぇか! ってお前さんはなんか感想の一つもないのかよ」

 突如として現れた迷宮に興奮しつつ、無言のまま『同族殺し』が振るう剣を楽々と受け止める『黒剣』の本体。すると今度はそこに纏が背後から銃弾を浴びせていく。

「(動きをよぉく見て......)そこだ!」

 『同族殺し』の動きに合わせて、『黒剣』へと的確に銃弾を当てていく。それは確かな傷を負わせるには足りないかもしれないが、動きを鈍らせ劣勢へと追い込むことはできる。
 そして不利を悟った『黒剣』が次にとる行動は......

「しゃらくせぇ! まずは弱い方からってなぁ!」

 『同族殺し』を蹴り飛ばし、大きく後ろへと下がらせるとその反動を使って纏へと肉薄する。
 迫る『黒剣』から目を離さず、纏は背負った大剣へと手を伸ばすも一挙遅い。ほんのコンマ数秒、足りない。

「油断大敵ってなぁ!」
「その言葉、余がそっくりそのまま返すとしよう」

 頭上へと振りかぶられた『黒剣』の腕が纏へと振り下ろされる直前に、横から放たれた銃弾によって撃ち抜かれ、その衝撃で体勢が崩れる。

 魔導小銃を構えたままのギージスレーヴをちらりと横目で視界に収めながらも、与えられたチャンスを無駄にはしない。今度こそしっかりと大剣の柄を握り、思いを込めて吠える。

「輝け、あいつの様に!」

 銀の刃に込められた浄化の力が眩く輝き、闇を討つ光刃となって振り下ろされる。呪いに蝕まれたとはいえ、まだ頑丈さを誇る外装ごと『黒剣』を切り裂いていく。

 一歩、二歩と後ずさり、膝をつく『黒剣』。違うと分かっていながらも倒せたのかという期待が頭をよぎる。
 次の瞬間、背後から振り下ろされた『同族殺し』の剣を頭上で手で受け止めると高らかに笑いだす『黒剣』。

「ふ、ふ、ふははははは!愉しいなぁおい、闘いってのはこうじゃねぇとなぁ!」

 手応えはあった。あったはずなのに、それを些末事だと笑う。並の相手ならば致命となる一撃を受けてなお立ち上がり、立ち塞がる。

「さぁ、第二ラウンドと行こうじゃねぇか! まだ遊べるだろう?!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

故無・屍
…取り敢えずの親玉に辿り着いたか。
こいつを潰せば依頼の5割程度は達成だ。

悪ィが乱入させて貰うぞ、俺もこいつを殺るのが目的の一つなんでな。
邪魔はしねェし止めも譲ってやるから、
こいつが死ぬまではこっちにいきり立ってくれるなよ。


同族殺しに積極的に攻撃することはせず、
領主の隙を狙い怪力、限界突破、態勢を崩す、早業、2回攻撃の技能も併用して
UCを発動。
こちらが狙われる場合は第六感、野生の勘、見切り、カウンターを用いて
攻撃を回避ないし軽減して反撃を狙う


『復讐』は成ったかよ。
……なら、こっちのもう一つの目的の方も果たさせてもらうぜ。

復讐したかった奴の顔が、本当にしっかりと思い出せるか?
――そういうことだ。




「いいねぇ、実にいい......まだダンスは踊れるだろう?!」

 多少の傷など知ったことではない。むしろ戦いを彩る華だと、『彷徨える黒剣』は先ほど負ったばかりの傷跡を愛おし気に撫でる。

「今夜は素晴らしいな。退屈を紛らわす最っ高の客が大勢来てくれた......」

 嗤って、いるのだろうか。異形の風貌からはその表情を窺い知ることはできないがなんとなく嗤っているであろうことが彼の纏う空気から察せられる。

「知ったことか。お前を潰せば以来の5割は達成だ」

 ――――だから、さっさとくたばりやがれ。

 まだ何やら言いたげだった『黒剣』へと斬りかかる人影。口数少なく故無・屍(ロスト・エクウェス・f29031)は奇怪な大剣を振るう。流石にその重量は防ぎきれぬと見たか、『黒剣』は身を翻して間合いの外へと飛び退る。それと同時に、『同族殺し』もまた剣を引き抜いて真正面に構え直す。

「邪魔......スるナ......」
「そのつもりはねェが俺もこいつを殺るのが目的の一つなんでな」

 理性も言葉も殆どなくし、本能の獣となったはずの復讐鬼。だが、屍から似た何かを感じたのだろうか、放たれた言葉にかろうじて残るかつての残滓。

「まったく、人気者はつらいもんだなぁおい!」

 異形は嗤う。二人の在り様など興味のかけらもない。大事なのは今、この場で、存分に楽しめるかどうか。ただそれだけだ。

「そぉらよ!」

 『黒剣』の纏った黒炎が黒く輝く。どこか矛盾したその光景は禍々しくも目を離せない。一瞬でも気を逸らしてしまえば苛烈な攻撃が待っていると、そう理解させられる。それこそ熟練の戦士ですら踏み出すことを躊躇うほどに。

「殺ス」

 しかしそんなこと、知ったことかと『同族殺し』が踏み込んでいく。銀の剣、その切っ先を『黒剣』の喉元へと突きつけて。理由すら忘れた衝動に突き動かされるがままに。
 『黒剣』が黒炎を握る。剣の形を得た炎が何度も『同族殺し』を刺し貫く。それでも狂った男は止まらない。お返しにと振るわれた剣が今度は『黒剣』の腹を真横に引き裂く。
 わずか一瞬の攻防。その間に屍もただ突っ立っていたわけではない。続けざまに振るわれた黒剣の、後の一拍。そのわずかな隙をついた『同族殺し』の攻撃に合わせて自らも大剣を振り下ろす。『黒剣』の背中へと振り下ろされたそれは重量に任せて強引に外装を斬り砕き、石の床へとその刃を埋める。だが屍はそこで止まらない。澱みない動きでごく至近距離から放つは【暗黒剣・絶無】。いつの間にか抜き放っていた白の直剣による連撃が防ごうとした黒剣を砕き、黒炎を払い、外装を砕き、そして『黒剣』の胸を刺し貫く。
 そこへ『同族殺し』が振るう銀の剣が『黒剣』の喉を切り裂く。数回、断続的に黒い液体が噴き出し、そして止まる。

「なあ、『復讐』はなったかよ」

 屍の問いかけに、だが『同族殺し』は答えない。

「......なぁおい、勝手に死んだことにしてくれるなよ。悲しいだろうが」

 殺気と共に黒炎が噴き上がる。考えるよりも先に身体が反応し、すんでのところで飛びのいた屍だがそれでも少しばかりの火傷を負う。
 視線の先には全身の傷から炎を吹き出しながら、それでも健在な『黒剣』の姿。答えがないのも当然だろう。

 ――――まだ何も終わっていないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バスティオン・ヴェクターライン(サポート)
戦闘は盾群付右義腕による【盾受け】で敵の攻撃の受け止め+気迫と鬼気迫る眼力で【恐怖を与える】事による敵の注意の引きつけ
護りに徹し味方に攻撃が向かないように立ち回る
ボス戦では敵の大技を【ドーピング】によって引き出した【怪力】と右義腕の出力、【激痛耐性】による打たれ強さを活かした【グラップル】で受け止め、そのまま抑えて味方が大技を出す【時間稼ぎ】をしたり握りつぶして【破壊工作】したりする。
UCは【セイズ・アンド・ユーズ】によるUC封印、敢えて攻撃を受けて【ライオンズ・ハート】を発動させる、【タイガー・スープレックス】で敵の大型武器・兵器を奪って振り回す等。

その他お任せ・他猟兵との絡みやアレンジ歓迎




「まだ息があるとは、なかなかどうしてしぶとい奴だねぇ......」
「あぁん? なんだお前は?」

 まだこれからだと嗤う『彷徨える黒剣』に向けて割って入るどこか落ち着いた声。ぐるりと首を回して『黒剣』はその声の発生源へと顔を向ける。

「いい加減終わりにしたいんだよねぇ。俺面倒なの嫌いだからさぁ」

 やる気のかけらも感じられない、そんな間延びした声の主はバスティオン・ヴェクターライン(戦場の錆色城塞・f06298)。だが彼の口調とは裏腹に、『黒剣』と『同族殺し』、その両者を視界に収めたまま片時も視線を逸らさない。片や満身創痍、もう一方は猟兵たちを敵として見ていないがそれでも警戒を解くことはない。

「もうそれだけ傷を負っているんだからさ、いい加減倒れてくれない?」

 敵だというのに、『黒剣』へと語りかけるバスティオンの口調はどこか気安い。それどころか、もうお前に飽きた言わんばかりに口調から溢れる無気力さを隠そうともしない。
 だが彼がこんな態度を取るのも理由がある。

「ハハッ......なるほどなぁ。よぉくわかったぜ。お前が死にたがっているってことがなぁ!」

 案の定、というべきか。安い挑発に乗せられて『黒剣』がバスティオンへと殴りかかる。
 だがそうなることは予想通り。ただ想定と違ったのは、多くの傷を負い、血を流したというのに未だ『黒剣』の力が衰えてるようには見られないということ。

「(こりゃちょっと甘く見すぎてたかなぁ)......どうしたんだい? 随分非力な拳だねぇ」

 心の内では焦りつつも表情には出さずさらに煽りをかけるバスティオン。『黒剣』の振るう拳を自らの義腕を盾にして受け止める。だが拳の重さに義腕は耐えられても生身の身体はそうはいかない。徐々に軋みを上げる全身の骨に痛みを告げる脳信号。それを気合とドーピングで抑え込み、ただひたすらに耐え続ける。

 ――――死ネ。

 しかし、再度拳を振りかざした『黒剣』の背中を銀の刃が刺し貫く。バスティオンの挑発に乗り、『同族殺し』のことをほんの一時忘れていただけ、だがその一時が致命となる。

「あぁん?」

 『同族殺し』が放った一撃は、先ほど破壊された背中の外装の隙間を貫いて、無防備な背中から胸へと穿ち、その道中で『黒剣』の心臓を切り裂いた。
 そして振りかざされた拳は、振り下ろされることなく、ただだらりと力なく垂れさがる。

「これで終わりだよ。『黒剣』君。俺ばかりにかまけて注意を疎かにしたのが悪かったねぇ」

 少し下がってバスティオンは煙草を咥えて火をつける。自分の仕事はこれで終わりだと言わんばかりに。

「ッ......」

 呪詛か、あるいは命乞いか。最期に何を言おうとしたのか。言葉が音となり、口から零れる前に翻った刃が首を断つ。
 頭部を失った『黒剣』の身体は、あっけなく倒れ、動かない。もう立ち上がることはないのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『狂気に飲まれた復讐者』

POW   :    闇夜に濡れ血を断つ
技能名「【不意打ち、早業、暗視、暗殺、二回攻撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD   :    狩場
【罠】が命中した対象に対し、高威力高命中の【弾丸】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    飛来する銀の雨
【歴戦の感覚】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【無数の銃弾と跳弾】で攻撃する。
👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 倒れ伏す強敵の身体。だがしかし、感慨はなく感動もなく。そこに如何なる感情の発露もない。ただ無造作に血に塗れた刃を拭って、虚ろな両目が猟兵たちを捉える。狂っていながらも、眼前の存在が――猟兵が――何であるかを、何をしに来たのかを正しく認識する。

「......」

 向けられた刃が蝋燭の灯りの元で妖しく光る。言葉もなく、ただ『同族殺し』の動作のみが彼の意図を雄弁に語る。

 ――――即ち、猟兵を敵とみなしたと。
故無・屍
…フン、余力は充分だってか。

こっちもこれが仕事なんでな、
精々恨んで悪く思え。
……全部吐き出した上で滅ぶ方が、迷うことは少ねェだろうよ。


UCを発動、第六感、見切りも交え相手の不意打ちに対応、
限界突破、カウンター、怪力、2回攻撃にてより精度と威力を高めた反撃を狙う。
体勢崩しも併用し相手のペースに持ち込ませない。


どうだ、俺らの姿が手前ェにはどう見えてる。
ただの復讐の障害か、それとも復讐の対象そのものか。
そうだとして、手前ェのその相手の顔は手前ェの頭でちゃんと思い出せるか?

…お前はもう『終わった』奴だ。
本当の対象もオブリビオンとして居たとしても、
今はもう同じ穴の狢にしかならねェよ。




「......フン、余力は十分だってか」

 故無・屍(ロスト・エクウェス・f29031)の言葉に返事はない。だがそれでも、黒衣の男が突きつける刃からひしひしと伝わる殺意が答えとなる。

「こっちもこれが仕事なんでな、精々恨んで悪く思え」

 ......全部吐き出したうえで滅ぶ方が、迷うことは少なねェだろうしな、と。そう思うのはきっと自己満足なのかもしれない。
 だがたとえ、この少しばかりの憐憫が自己満足からくるようなものだとしても、今さら迷う理由になどなりえない。
 『狂気に飲まれた復讐者』が向ける剣に応じるように、屍もまた己が得物を構えて睨めつける。
 互いの挙動、その一切を逃さぬようにと、極度の集中が招く無音。時間すらも止まったかのような刹那の錯覚。そしてすべてが動き出す。

 先手を取ったのは『復讐者』の方だ。予備動作もなく繰り出された刺突。徹底的に無駄が省かれ、磨き上げられた動きが屍の心臓を射抜かんと繰り出される。
 まるで消耗も負傷も感じられない、ただ相手の命を奪うためだけの動きだが、しかしてその狙いは叶わない。
 突き出された剣は、屍の皮膚にかすり傷一つつけることもできずに終わる。これも屍が【暗黒剣・仇狩り】によって無敵状態となったため。代償として一歩も動くことができなくるとはいえそれは些末事。今この場における現状のように、相手の方からこちらに来てもらえばいいのだから。

「――打ち込んでくる以上、死ぬ覚悟はあんだろうな」

 問いではなく、ただの確認。それも相手に向けたものではない。

 ――なら次はこっちの番だ。

 一瞬の停滞を、隙を晒した相手に容赦などない。剣を突き出したままの『復讐者』、彼の伸ばしきった腕。それを掴み、捻り上げながら同時に足払いを仕掛ける屍。『復讐者』はそれを身体の重心を敢えてずらすことで逃れるも、そこへ湾曲した刃が振り抜かれる。

 力任せに振り抜かれた黒刃の大剣をかろうじて防ぐも、崩れた体勢ではその勢いまでは殺せない。
 少なくない怪我を負いながら撥ね飛ばされ、床をごろごろと転がっていく『復讐者』の姿を視界に収めながら、屍は一つため息をつく。

「なあ、俺らの姿が手前ェにはどう見えている?」

 剣を杖代わりに膝をつき、血を流しながらもまた立ち上がってくる『復讐者』は答えない。

「ただの復讐の障害か、それとも復讐の対象そのものなのか。そうだとして、手前ェのその相手の顔は手前ェの頭でちゃんと思い出せるか?」

 やはり、というべきか。返答はない。そもそも、答えなどもうないのかもしれない。その意味も意義もとっくに失って、それでもなお残った何かにただ動かされるだけの虚ろな『復讐者』。何もかもを喪って、自分すらも亡くしたがらんどうの人形。
 だから、屍は宣言する。

「......お前はもう『終わった』奴だ」

 終わってもなお動き続けて、終わったことを認められない。哀しいモノ。

「本当の対象もオブリビオンとしていたとしても、今はもう同じ穴の貉にしかならねェよ」

 だから、誰かが終わらせてやる必要があるのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
さて。ここからが本当の戦争である。
『復讐』を続けられるか否か。勝負といこうではないか。

義眼を用いて、敵の銃弾の展開範囲と弾道予測を【情報収集】、その結果から攻撃範囲を【見切り】、銃弾回避を試みる。
此方からの攻撃は魔導小銃を用いる。【制圧射撃】で足を止めさせた処に【スナイパー】で出来るだけ致命的な部位を狙って射撃。
命中次第、黄昏大隊・超境狙撃を発動。狙撃部隊に追撃を行わせ、余自身は攻撃回避と間合いの維持に専念とする。勿論好機と見たら攻撃に参加。

眠るが良い。復讐者でいられるうちにな。




 今、ここまでの数々の戦い。それを潜り抜けて、疲弊し、傷を負ってもなお立ち上がる男は、もうどうしようもないまでに狂ってしまっているのだろう。
 その『復讐』はとっくに意味もないということを忘れ。わけのわからないままただ衝動に従って突き動かされる獣。
 そんな男を前に、ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)は宣告する。

「さて、ここからが本当の戦争である。『復讐』を続けられるか否か、勝負といこうではないか」

 返礼は言葉ではなく銃声をもってして。膝をついたままの『復讐者』が後ろ手に抜き放ち、古風な銃の銃爪を引く。銃口から飛び出した弾丸は、あらぬ方向へと逸れたかと思いきや、壁で弾かれ、無作為な軌道を描きギージスレーヴへと飛来する。それもたった一発だけではなく、立て続けに放たれた弾の、そのすべてがだ。
 普通であれば躱すことはおろか、反応することですらやっとであろう。それほどの技量。だが、ギージスレーヴの義眼はそのすべての弾道を予測可能だ。そして見切られてしまえばあとはもうただの線の攻撃。いくら多くても少し動くだけで容易に躱すことができる。
 今、まさにギージスレーヴが行っているように。

「どうした? 貴様の技はその程度のものであるか?」

 最小の動きで銃弾を躱すと、魔導小銃を無造作に構えて照準を覗く。射線の向こう、銃口の先には剣を杖にして立ち上がり、急ぎ回避を試みる『復讐者』の姿。
 だが、その動きは先の戦いで見られたような精細さに欠いたもの。これではただの良い的にしかならない。

「ではお返しと行こうではないか」

 ニヤリと笑ったギージスレーヴの指が引き金をなぞるように動く。刹那、響くは連射音。流れるように放たれた弾丸はその数をもって真正面から線ではなく面の攻撃となって敵を襲う。
 当然のごとく回避は間に合わない。ならばととっさの判断で致命となる弾を見極め、剣で弾き防いでいく『復讐者』。

 ――――だが、これで終わりではない。

 むしろ、ギージスレーヴの攻撃はここからが本領だろう。先の銃撃はあくまでマーキング。印をつけただけに過ぎない。

「刻印完了。狙撃部隊、伝達した座標へ向けて狙撃を開始せよ」

 不意に『復讐者』を背後から襲う銃弾。それを身をひねって躱すと次はまた別の方角から空間を超えて現れる弾丸。
 『復讐者』もまた、狙撃の合間にギージスレーヴへと銃を向けるが、それもあくまで牽制の為の射撃に留まるものでしかない。それこそ義眼を用いずとも回避ができるほどだ。
 弾こうが、防ごうが、どこからともなく現れる魔弾を前に流石の『復讐者』といえども消耗を強いられていく。
 だがそれでも、不利な状況へと追い込まれても。男は動くのをやめない。戦いをやめない。やめる術を知らない。

 見ている方が痛ましさを覚えるその姿に、ギージスレーヴとて呟かずにはいられない。

「眠るが良い。せめて、復讐者でいられるうちにな......」

大成功 🔵​🔵​🔵​

九石・纏
(復讐を胸に秘める者同士、俺も思う所がないわけじゃねぇが…
戦場に立って戦う以上、お互い言葉はいらねぇか…)

大剣を構え、相手に集中。
ずっと追跡して動きを観察(情報収集)してきた。
動きは慣れた、罠の位置も把握した、後はどう上回る?

(…受けに回ってちゃ勝てねぇな!)
上段の構えから、怪力で大剣を振り下ろす。
後の先、相手の動きを見切り、攻撃。
敵が避けた瞬間、大剣を手放し、短刀を早業で投擲。

フェイント、投げた短刀とは別に持っていた怨親丸。短刀を手に同族殺しに光速を越えた速度で迫り、刀身の伸びた、覇気の刃を纏った短刀の一撃を見舞う。

『ムジナ』…雷獣切り。




 ――――陰りが見える。

 猟兵たちに、ではない。黒衣の男に、『復讐者』に、である。少なからぬ傷が、出血が、刻一刻と『復讐者』の力を削いでいく。

(復讐を胸に秘める者同士、俺も思う所がないわけじゃねぇが......)

 大剣を今一度握りこみ、切っ先を相手へと向けて構えをとる九石・纏(人間の咎人殺し・f19640)。

(戦場に立って戦う以上、お互い言葉はいらねぇか......)

 たとえそれが同類であったとしても、敵である以上はただ討つまで。
 先の戦いの中でもずっと動きを観察してきたのは無意味ではない。既に動きは慣れた。手の内も知れている。相手はすでに満身創痍。

 なればこちらは攻めるまで。

(......受けに回ってちゃ勝てねぇな!)

 『復讐者』がよろめいたほんの一瞬。その隙に纏は大剣を頭上へとかざし、踏み込むと同時に振り下ろす。
 馬鹿げた怪力によって軽々と振り回される大剣はその重量に見合わぬ速度をもって『復讐者』の頭を叩き斬らんと振るわれる。
 だがいくら弱っていようとも、そうやすやすとやられるような『復讐者』ではない。空気を裂いて迫る刃を、精彩を欠いた動きとはいえ危なげなく躱す。
 それが纏の狙いであるとも知らずに。

 避けられた。そう認識するや纏は即座に大剣を手放し、代わりに男の顔面へと左手で抜いた短刀を投げつける。大剣がすっ飛んでいき、壁へと突き刺さるもお構いなし。電光の如き投擲は、しかして『復讐者』の持つ剣によって辛うじて防がれる。
 しかしそれすらもフェイント。

 本命は先の短刀を抜いたタイミングに拍子をずらして抜いたもう一つの短刀・怨親丸。二重どころか三重の刃に『復讐者』も反応が遅れる。遅れてしまう。
 そしてその遅れが致命となる。纏の投擲から身体を引き戻す捻じれの動き。その動きをもって右腕を突き出す。しっかりと握られた短刀が一条の銀閃となって、無防備となった『復讐者』の胸へと吸い込まれるように突き刺さり、狙いを過つことなく心臓を射貫く。

 突き刺してから時間にしてわずか数秒。その間に刃から指先へと伝わる鼓動の感触が次第にゆったりとしていき、そしてついには停止する。
 眼前の敵に動きがないことを確かめた纏が短刀を引き抜くと同時に、『復讐者』は力なく崩れ落ちていく。
 血を拭い、鞘へと刀をしまいながら、纏は地に伏した男へと一瞥をくれると背を向けて歩き出す。
 これで終わったのだ。自ら終わることができなかった男の『復讐』は、ここで終わった。

 ――――もう二度と動くことは、ない。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月16日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#同族殺し


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリーヴァルディ・カーライルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト