迷宮災厄戦⑱-15〜書架の王、再び
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「オウガ・オリジンとの戦いも、後一踏ん張りじゃぞ」
際どい状況じゃがな、とガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は、表情を厳しいものにする。それだけこの迷宮災厄戦が激しく、まだ難しい戦争であることを証明していた。
「今回はオウガ・オリジンなのじゃが……より正しくは、書架の王ブックドミネーターに変身したオウガ・オリジンとの戦いとなる」
絶対零度の凍結世界の国で、氷からオブリビオンを作る能力と時間凍結能力を生み出す猟書家ブックドミネーター――その恐るべき実力を知る者も少なくないだろう。少なくない時間と労力、戦力を持って完全に撃破した……そのはずの相手だった。
「オウガ・オリジンめ、現実改変ユーベルコードの力と無限の想像力で完全なブックドミネーターへと変身しよるのだ」
まさに、アリスラビリンスのフォーミュラ――その恐るべき力で、この脅威を再び生み出したのだ。
「時間凍結能力という強力な能力を、ブックドミネーターの記憶や人格、思考を完全に再現して使いこなしてくる。ある意味で、オウガ・オリジンと真っ向勝負するよりも厳しいことになるかもしれんぞ、これは」
書架の王、その名は伊達や酔狂ではないのだ。オブリビオンを生み出し、時間にさえ干渉する能力。それを使いこなす技術と経験。何よりも、精神性――これがいかに脅威であったか、その本物を知る猟兵こそが身にしみている。
「完全に勝利したはずの相手じゃが、その強さは折り紙付きじゃ。あの先制能力と時間凍結能力を再び攻略せんといかん……厳しい戦いになるじゃろうが、頼んだぞ」
波多野志郎
再生しても実力が衰えない稀有な例。どうも波多野志郎です。
今回は、絶対零度の凍結世界に君臨する猟書家『ブックドミネーター』に変身したオウガ・オリジンと戦っていただきます。
プレイングボーナスは、『敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する』というものになります。生み出すオブリビオンにどう対処するか? 時間さえ止める能力にどう対応するか? ユーベルコードやアイデアの勝負となります。一度は完全に倒しきった相手ではありますが、あの脅威は記憶に新しいでしょう。ソロでも団体でも、ふるってご参加ください。
それでは再び、あの凍結した戦場でお会いしましょう。
第1章 ボス戦
『『オウガ・オリジン』ブックドミネーター』
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POW : 「……あれは使わない。素手でお相手しよう」
全身を【時間凍結氷結晶】で覆い、自身の【所有する知識】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 蒼氷復活
いま戦っている対象に有効な【オブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 時間凍結
【自分以外には聞き取れない「零時間詠唱」】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
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リオン・ゲーベンアイン
「召喚されたオブリビオンもUCで起こされた現象という事でしょ?なら、このユーベルコードの敵じゃない――一切万象、食らいつくせ、魔群(ベルゼブブ)」
召喚型のユーベルコードで召喚されたオブリビオンを魔群が喰らいつくし、その魔群からブックドミネーターに最適なオブリビオンとなって放たれていく。
更に【スナイパー】の技能で精密にブックドミネーター本人を【闇に紛れる】で存在を隠匿しながら狙撃していく。
「もう終わり。そもそも、本物のブックドミネーターは討伐されたよ」
「ならばこそ、アリスラビリンスの未来を守るべくこの一矢を放つ」
そうペルソナを切り替えながら弓で狙撃していく。
卜二一・クロノ
時間操作の技がオウガ・オリジンに伝播するとは厄介な。
まあいい。我はただ、為すべきことを為すのみだ。
【騙し討ち】、軽機関銃を持っているので勘違いするかも知れぬが、主武器は糸と髪だ【罠使い】。
奴は我を害するために、奴は必ず我に近づくことになる
その一撃は【激痛耐性】【オーラ防御】【武器受け】で耐え凌ぐしかあるまい
我が糸あるいは髪より繰り出される【カウンター】および【捨て身の一撃】にユーベルコード【神罰・時間操作の代償】を載せる
ただの一撃、それだけで【神罰】は執行される
これまで当然のように使えていた、頼りとする時間操作が容易に使えなくなる中、どれほどの事ができるのか、見定めさせてもらおうぞ
水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ&アノン
ロキ
私が苦手とする相手……高速接近戦闘の剣士、ですか。身に纏っているUDCで空中浮遊をし距離を取ろうとしますが追いつかれるでしょう。ギリギリのタイミングでアノンと交代
アノン
ロキと代わったら服の下に纏ったUDCで右手を覆い、剣を受け止めて握り潰す。そのまま切り裂いて倒したらブックドミネーターとの距離を詰める。オレ用のオブリビオンが出てきたら人格の表出をやめて意識の内へ入るぜ。逃げるのは気に喰わねェけどビリビリは嫌だからな
ロキ
アノンが意識の内へ入ると同時にUC発動。表出人格を無くすと同時に身体をUDC化し、オブリビオンの広範囲電撃攻撃を反射します
トゥール・ビヨン
アドリブ歓迎
パンデュールに搭乗し操縦して戦うよ
/
これが再現された書架の王ブックドミネーター!
現実改変ユーベルコード、何てでたらめな力なんだ
それでも、いくら強大な力だろうとボク達は負けるわけには行かない
決着をつけようオウガ・オリジン
ボクとパンデュールの力を見せてやる!
/
時間凍結による零時間詠唱でダメージを与えても回復されてしまう
それなら、時間凍結を思考する隙も与えない速度で一斉に攻撃を加え続ければ良い
チャンスは敵が何度か回復を行い優位を確信し油断したタイミング
仲間のみんなに合図しドゥ・エギールを天に掲げコール・アヴニール・テクスチャーを発動し一斉攻撃
ボクもドゥ・エギールによる2回攻撃で押し切ろう
ユーノ・エスメラルダ
時間の凍結…とても厄介ですが、ユーノも『聖痕』による癒やしで治療したり『光のヴェール』の【オーラ防御】で耐えたりと耐久戦向きで【時間稼ぎ】はちょっとできます
さらに相手が攻撃の大技を出し惜しみしているのなら、【ハッキング】の知見も活かして予め作成しておいたプログラムを電脳魔術で具現化!
周辺の空間の【情報収集】をして解析し、時間さえあれば理論上は未来の予知に近いことができるもの…
デジタルによる補正やシミュレーション予測も加えて、行動の前兆となる癖や魔力の変化からパターンを割り出しましょう
UCも間に合えば敵の未来の行動は丸見えのはず
『電脳ヒヨコさん』送信する内容の通りに攻撃おねがいします!
ユヴェン・ポシェット
また厄介な相手になったものだな…
先制攻撃に対して
オブリビオンを召喚して来る、その瞬間が勝負だ。
オブリビオンが召喚され、此方の存在を認識し攻撃をしかけるその間…その一瞬の隙を狙い槍で串刺しに掛かる。
何度も召喚されようが治療されようが関係ない。何度でも倒すだけだろう?
UC「ライオンライド」使用
獅子ロワに騎乗し竜槍のミヌレを振るう。
身に付けていた腕輪を宙へ投げる。
そしてロワと共に掛け、書架の王の元へ距離を詰める。ロワが爪をたて飛びかかり、ロワからすかさず降りて死角となった位置から槍で相手を貫く。
…違う。此方じゃないぞ。
投げた腕輪tähtinenは静かに剣へと姿を変え、書架の王の頭上から刃を向け落ちる
●書架の王、再び
「来たな、猟兵」
不思議の国へと踏み入った猟兵達の気配を感じ取り、オウガ・オリジンが呟く。少なくない力が自分の元へ戻ってきている――ならばこそ取れる手段を、オウガ・オリジンは確かに持っていた。
「コソ泥の力、使わせて――」
ビキリ、とオウガ・オリジンを中心に世界が凍てついていく。塗り替えられる不思議の国は、瞬く間に永久凍土へと変貌した。
「――もらおうか。来るがいい、六番目の猟兵達よ」
そこに立っていたのは、もうオウガ・オリジンではない。書架の王ブックドミネーターその男だ。その気配、立ち振舞、存在感――それをとっても本物と寸分の違いもなかった。
「また厄介な相手になったものだな……」
ユヴェン・ポシェット(opaalikivi・f01669)は、凍てつく大地に立ってこぼす。目の前のブックドミネーターが見かけ倒しではないと、肌で感じ取っていたからだ。
「これが再現された書架の王ブックドミネーター!」
トゥール・ビヨン(時計職人見習い・f05703)は、超常機械鎧『パンデュール』の中で呟く。
(「……現実改変ユーベルコード、何てでたらめな力なんだ」)
想像を創造する、世界さえ塗り替えるユーベルコード。オウガ・オリジンという存在の強大さにトゥールは表情を引き締めた。
「それでも、いくら強大な力だろうとボク達は負けるわけには行かない。決着をつけようオウガ・オリジン、ボクとパンデュールの力を見せてやる!」
パンデュールが動いた、その刹那。まるでコマ落としのようにブックドミネーターの姿が眼前からかき消える。そして、その返答は背後からした。
「そうか、ならばこの力で始末するまで」
「後ろよ!」
リオン・ゲーベンアイン(純白と透明の二つの無垢を司る弓使い・f23867)の声に、トゥールは即座に反応する。時間凍結能力、その停止した時の中でブックドミネーターは背後に移動。振り返りざまのパンデュールの一撃と、素手の拳が激突した。
「種の割れた手品のようなものだ。使い方を考えねば通じないか」
「時間操作の技がオウガ・オリジンに伝播するとは厄介な。まあいい。我はただ、為すべきことを為すのみだ」
苦笑するブックドミネーターへ、卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)の軽機関銃が火を吹いた。永久凍土に響く銃声、それが遅れた戦いの合図として轟いた。
●改変による時間凍結
ガガガガガガガガガガガガッ! とトニーの軽機関銃の銃弾が凍土の表面を穿つ。回避など出来ないタイミングだったはずだ――だというのに、軽機関銃を抑え銃口を下へ向けさせたブックドミネーターの姿が眼前にあった。
「――――」
「させない」
水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)――ロキが、既に間合いを詰めていた。漆黒の刃でできた医療用メスが、ブックドミネーターの首筋に触れた――瞬間、その手首が摑まれていた。
「私が苦手とする相手……高速接近戦闘の剣士、ですか」
時間凍結氷結晶をまとう事による戦闘能力の増加、それと時間凍結能力の併用があるからこそ可能な超反応と超機動――書架の王の名は、伊達ではなかった。
「前蹴り、来ます!」
そして、ロキは咄嗟に警告の声に両腕で胸部をガードする。察知した時には放たれていたブックドミネーターの前蹴りが、ロキを大きく吹き飛ばした。
「ここは、ユーノがサポートします!」
警告の主、ユーノ・エスメラルダ(深窓のお日様・f10751)は電脳の妖精によって実体を電脳空間に置いた半透明な映像の姿へ変身、周囲の情報を解析する。ブックドミネーターの時間凍結能力の『速度』を得たオウガ・オリジンの動きを、電脳空間から割り出そうと言うのだ。
「上です! 四字の方角、七十二度!」
「こっちね」
ユーノの声に、リオンは無名の神弓に万能王の矢を番え、射放った。次の瞬間、ブックドミネーターが矢の前に跳躍した体勢で出現する――より正確には、そこに現れるとユーノの指摘で察して、リオンが狙撃したのだ。
「厄介だな」
紙一重で素手で矢を掴んだブックドミネーターが、再び姿を消す。凍土の上に現れ、止まらず疾走を続けた。
(「動きで撹乱する気、ですね」)
ユーノは演算しながら、電脳ゴーグル越しに目を凝らす。そのユーノを守るように、ユヴェンが動いた。
「まともにやっても削り合いだ――――できるか?」
「はい!」
ユヴェンの提案に、ユーノは即答する。そのやり取りに、オウガ・オリジンが変身したはずのブックドミネーターが笑みをこぼした。
(「『私』を倒しただけはある。六番目の猟兵達よ、オウガ・オリジンにさえその牙を届かせるか」)
その身も心もブックドミネーターに変じたからこそ、そこにあったのは敬意と呼ぶべき感情だった。
「その快進撃が、決して紛れではないという事を――証明してみせよ、六番目の猟兵達よ」
●凍てつく時さえ打ち砕き――
書架の王ブックドミネーター。侵略蔵書を持たずして、全ての書の力を扱える書を司る者。その力は絶大であり、強力であった。
「まだ、まだです」
ユーノが、一人呟く。明確な格上、強大な存在だからこそ戦況を覆す一手が必要だ。その一手を、仲間達が用意してくれている――ならば、それを最大限に活かすタイミングを読み取るのが、ユーノの役目だった。
(「何を企む?」)
ブックドミネーターは探った。猟兵達の動きには、明確な狙いがある。それは何だ……?
「……いや、違うな」
ブックドミネーターが、凍土の上に着地する。その狙いを読んで、見切って外す? それでは意味がない、ないのだ。
この六番目の猟兵達は、既に未来へ進む資格を示している。ならば――。
「それを、真っ向から確かめるべきか――!」
蒼氷復活――この戦況、硬直を覆す一手としてブックドミネーターは氷のトランプ巨人を創造した。この巨人が暴れている間隙に、ブックドミネーターが蹂躙する――そういう作戦だ。
だが、その瞬間こそが猟兵達が待ち望んだ好機だった。
「今です!」
ユーノの声に動いたのは、ユヴェンだ。ライオンライドによって召喚された獅子ロワに騎乗、竜槍のミヌレでトランプ巨人へと一撃をくり出したのだ。その一撃が、トランプ巨人の胸部を貫いた!
「何度も召喚されようが治療されようが関係ない。何度でも倒すだけだろう?」
ユヴェンの言葉に、ブックドミネーターは薄く笑う。その口から紡がれる言葉――時間凍結による零時間詠唱が、氷のトランプ巨人を瞬く間に再生させる。
再生させる、はずだった。
「召喚されたオブリビオンもUCで起こされた現象という事でしょ?なら、このユーベルコードの敵じゃない――さぁ、一切万象、食らいつくせ、魔群(ベルゼブブ)」
リオンの暴食の頂点に立つ魔の群体、異界の理を簒奪し給え(ストライク・ザ・ベルゼブブ)、UCを一瞬で喰らう暴食の魔群が本質の矢が氷のトランプ巨人を食らい尽くしたのだ。これでは再生も何もあったものではない、存在の根幹から食い荒らされたのだから――。
「なるほど、だが――」
もう一度、召喚するまで――ユヴェンの言葉を肯定するように、ブックドミネーターが動こうとした。
だが、その動きが明確に遅くなる。
「……な!?」
「時を超えその先へ! さあ、行こう!」
天上より響きわたる時を告げる鐘の音、トゥールのコール・アヴニール・テクスチャーによる効果は、戦場全体が全ての物質の動きが加速する空間と同じ環境に変化すること。
すなわち、ブックドミネーターが遅くなったのではない。他の全てが早くなり、同速になったのだ!
「押シ切リマショウ!」
パンデュールが掲げ、振るったドゥ・エギールを受けてブックドミネーターが後方へ吹き飛ばされる。速度という絶対的優位が、この瞬間に喪失した――それは、猟兵にとっては絶対的不利が解消された瞬間でもあった。
そこへ、ロワに騎乗したユヴェンが迫る。ロワの爪を紙一重で回避したブックドミネーターへ、死角からミヌレを振るった。
ギイン! とその槍の一撃を、ブックドミネーターは結晶に包まれた拳で受け止める!
「……違う。此方じゃないぞ」
ユヴェンの指摘に、ブックドミネーターは真上を見る。そこにあったのは、ユヴェンが放った腕輪tähtinenだった。その腕輪は静かに剣へと姿を変え――ブックドミネーターの頭上へと振ってきた。
「――――ッ!」
それでも、ブックドミネーターにはまだ時間凍結能力がある。優位を消されても、全力で行使すればまだ有効――そのはずだった。
「ぐ!?」
しかし、着地と同時に知られぬように手足に絡みついていたトニーの荒絹の時の糸が、それを許さない。その罠に込められていたユーベルコードは、神罰・時間操作の代償(パニッシュメント)――時間操作のユーベルコード禁止効果を持ち、それはこれまで使ってきた時間操作に応じた副作用を伴った。
「が、は!?」
落ちてきたユヴェンの剣が、かわし切れずブックドミネーターに突き刺さる。それでもなお闘志衰えぬ書架の王へ、トニーは告げた。
「これまで当然のように使えていた、頼りとする時間操作が容易に使えなくなる中、どれほどの事ができるのか、見定めさせてもらおうぞ」
「この程度、で――!」
ブックドミネーターが動く。時間に伴う『速度』はもうない。しかし、積み重ねた技術と身体能力は十分に脅威であり、その拳の一撃がロキへと放たれた。
「――そいつを待っていた」
ロキからアノンへと人格を交代し、アノンはブックドミネーターの拳を受け止める! 服の下に纏ったUDCで覆われた右手は、しっかりとブックドミネーターの拳を掴んで離さなかった。
「逃げるのは気に喰わねェけどビリビリは嫌だからな」
そのまま地面へとブックドミネーターを叩きつけ、アノンが吐き捨てる。ロキがアノンの意識の内へ入ると同時に万象解析を発動。液体金属UDC化した身体から、広範囲の電撃を撃ち放った。
「が、あ、ああああああああ、あ――ま、だ……!」
体を崩れさせながら、ブックドミネーターが立ち上がる。そのブックドミネーター、オウガ・オリジンへとリオンは告げた。
「もう終わり。そもそも、本物のブックドミネーターは討伐されたよ。ならばこそ、アリスラビリンスの未来を守るべくこの一矢を放つ」
無名の神弓によって放った万能王の矢が、ブックドミネーターの胸を射抜いた。それが止めとなる、永久凍土の世界が砕け散り、オウガ・オリジンの絶叫と共に戦いの幕が降りた……。
大成功
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