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迷宮災厄戦⑱-2〜嘆きの水底

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン


●涙の海
 静かに波立つ、海の底。
 静かに佇む、オウガ・オリジンの姿があった。
「泣いても、喚いても、決して許さぬ。許せない……!」
 広がる海は涙の海。
 数多の嘆きが雫となり、広がり続ける大海だ。
「嗚呼、嗚呼、怒りで腸が煮えくり返り、何故だか腹が減ってきた……!」
 それでもオウガ・オリジンは泣かない、嘆かない。
 それが彼女の在り方だから。
「さぁ来い。柔らかい肉を。熱い血を。私に捧げるのだ!」
 涙の水底で、オウガ・オリジンは機を待つのだった。

●過去を乗り越えて
「戦争もいよいよ終盤だね。みんな、ラストスパートも気合いいれていこっ!」
 フォンミィ・ナカムラ(f04428)が皆に呼びかけ、作戦の概要を説明する。
「みんなには、この世界のオブリビオン・フォーミュラ、オウガ・オリジンのところに向かってもらうよ。ただ、彼女がいる場所が、ちょっと厄介なところでね……」
 オウガ・オリジンが待つ、涙の海。
 この海こそが、猟兵たちの歩みを妨げる罠なのだ。
「涙の海の水に触れると、心の中が悲しい思い出でいっぱいになっちゃうの。そのままでは戦えないくらい、悲しくて涙がぽろぽろ零れてきちゃうんだって」
 過去の悲しみと向き合い、打ち克つこと。
 それが出来て初めて、オウガ・オリジンとまともに対峙することができるだろう。
「オウガ・オリジンは涙の海の底にいるよ。性格がすっごく悪いから、水に触れても悲しくならずに戦えるんだって。ずるいよねー」
 猟兵たちが悲しみと向き合っている間も、オウガ・オリジンは攻撃を仕掛けようとしてくるだろう。
 いかに早く立ち直り、悲しみの感情を引きずらずに戦うか。
 それが、勝利の鍵だ。
「すごく厳しい状況だけど……みんななら、きっと悲しい記憶にもオウガ・オリジンにも勝てるって信じてるよ。だから……頑張ってきてね」
 そう言って、フォンミィは猟兵たちを送り出すのだった。


椿初兎
 椿初兎です。
 よろしくお願いします。

●戦場について
『涙の海の国』。
 触れると悲しい思い出で心がいっぱいになってしまう水で満たされた海が、今回の舞台です。
 オウガ・オリジンは海の底にいるので、必然的に水に触れて悲しい思い出と向き合いながら戦うことになるでしょう。

●プレイングボーナス
 この依頼には、以下のプレイングボーナスが設定されています。
 =============================
 プレイングボーナス……過去の悲しみを克服しつつ戦う。
 =============================
 どんな出来事を思い出して、どう乗り越えるのか。
 存分にプレイングに盛り込んでいただければと思います。

 プレイングお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と嘆きの海』

POW   :    嘆きの海の魚達
命中した【魚型オウガ】の【牙】が【無数の毒針】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    満たされざる無理難題
対象への質問と共に、【砕けた鏡】から【『鏡の国の女王』】を召喚する。満足な答えを得るまで、『鏡の国の女王』は対象を【拷問具】で攻撃する。
WIZ   :    アリスのラビリンス
戦場全体に、【不思議の国】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
草野・千秋
僕は絶望するほどの悲しみをこれまでたくさん目にして、耳にしてきた
忘れようったって忘れられない色々なこと
色々と呼ぶにはたくさんのことがありすぎました

両性愛者だということをからかわれてきたこと
両親が離婚したこと
育ててくれた母さんとおじいちゃんおばあちゃんと愛する妹……千鳥が邪神とその狂信者に殺されたこと

いつ思い出したっね涙の海に溺れそうになる
悲しい事はあまり思い出さないようにって
いつもは思ってるけど、それでも涙は出ちゃいますよね
悲しんでいるばかりで前に進めませんし、悲しませた存在を許せない気持ちもわかります
……僕は前に進まなければいけないんです

UC、怪力、2回攻撃で敵を攻撃
痛みは激痛耐性で耐える



 くすくす、くすくす。
「この声、は……」
 オウガ・オリジンの元へと潜っていく草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)の耳に、笑い声が響く。
 無邪気な子供の声色。
 だが、それが決して幸福な記憶ではないことに、千秋は気付いていた。
「ホモ野郎が来たぞー!」
「こっち見んなよ、気持ち悪いだろ」
 それは、両性愛者の千秋を嘲笑うクラスメイトの声。
 ただ、性別にとらわれず人を愛する心を持って生まれただけなのに。
「ちが……っ!!」
 笑い声から逃げるように、水底へと進む。
 目の前に、ある別離の場面が映った。
「ごめんな、千秋」
「父さん……!?」
 幼い頃に経験した、両親の離婚。
 決して戻らない父親を待ち続けた日々の寂しさが、千秋の胸に蘇る。
「これだから片親の子は……」
「やあねぇ、やっぱりお父さんがいないのはねぇ」
 周囲のお節介な悪意が向けられる先は、子供の千秋だけでは決してなく。
「うるさい! 僕の母さんは……」
 母さんは、とても立派な人なのだと。
 反論した、瞬間。視界が暗転する。
「うそ……母、さん……?」
 再生されたのは、忘れもしない『あの日』の記憶。
「母さん……おじいちゃん……おばあちゃん……」
 どんなときでも千秋の味方だった家族たちが、変わり果てた姿で倒れ伏していた。
 凄惨な光景を呆然と見つめる千秋の目の前に、何かがどさりと投げ落とされる。
「千鳥……」
 愛しい妹の、最期の姿。
 昨日まで幸せに暮らしていた家族の、変わり果てた姿。
「あぁ、あぁぁ――!!」
 思い出さないようにしていた。
 努めて冷静に、過去とは距離を置くようにしていた。
 だが――海は、そんな強がりすらも洗い流してしまった。
「無様だな。そうやって何も出来ぬまま、私の餌食になればいい」
 涙を零す千秋に、オウガ・オリジンの眷属が迫る。
 凶暴な魚が毒の牙をむき、頭から一呑みにする勢いで食らいつく。
 だが。
「何……だと……!?」
 千秋の左腕が、魚の牙を食い止めていた。
 痛みに顔を歪めながらも、千秋はオウガ・オリジンの懐へと強引に近接する。
「……僕は前に進まなければいけないんです」
 過去を振り切る勢いで、右手を振り抜く。
 硬く力強い正義の拳が、オウガ・オリジンの頬を打った。
「だって、僕は――」
 誰かを悲しませる存在を討つヒーロー・ダムナーティオーなのだから。
「くっ……馬鹿な……!」
 よろめいたオウガ・オリジンに、渾身の力を込めたダムナーティオーキックを叩き込む。
 吹き飛ぶオウガ・オリジンを見据える千秋の眼に、決意の光が宿っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
酷いことをしたんだ
許せないと思ったオブリビオンに自分勝手な正義を振りかざした
もうボロボロで心も壊れた敵に、クスリを使って悪辣な追撃を仕掛けた

何が哀しいって…自分の不甲斐なさ、懐の狭さだ
未熟で、衝動的で、情け容赦なくて…そんな自分に愛想を尽かした哀しみがアタシを苛む
醜悪なアタシの顔が批難する

ごめんな
つまらん私刑はしないと誓ったんだ
なのに今、悪辣と思しきオリジンに同じことをしようとしていた

どうしてオウガになった?
大声でオリジンに問う
少し寄添ってみるよ
これが未熟が起こした哀しみへの答えだ

真威解放
迷路を飛翔突破するぜ

オリジンが分かり合えない敵ならば電撃属性攻撃を載せた電刃居合い斬りで葬る
一思いに一撃で



「彷徨うがいい、邪魔者よ。涙の海をぐるぐる回って、一生悲しみに暮れてしまえ」
 オウガ・オリジンが歌うように呪文を紡げば、きらきらと光を乱反射する海中迷路の出来上がり。
 複雑に交錯する壁が、みるみるうちに彼女の姿を隠していった。
「真威解放! 一気に突破するぜ!」
 その壁に動じることなく、四王天・燦(月夜の翼・f04448)は迷路に飛び込んだ。
 天女の羽衣を靡かせ、神速の飛翔で涙の海を進む。
「このまま速攻で距離を詰めれば……ん?」
 迷路の壁が、鏡のように燦の姿を映す。
 涙の海が顕した、記憶の中の燦の姿は。
「あぁ……これはあの時の……」
 あるオブリビオンを、執拗に攻撃していた。
 その顔貌に宿るのは、ただただ衝動的な敵意。
「そうだ。あのときアタシは……」
 身勝手な義憤の赴くままに、心も身体もボロボロになったオブリビオンを痛めつけていた。
 クスリを盛り痛めつけるその姿は、正義とは程遠いものであった。
「ごめんな」
 過去の自分の不甲斐なさ、懐の狭さが哀しくて、涙が溢れる。
 だが――これはあくまで過去の自分。未熟だった頃の自分の記憶なのだ。
「……よし」
 意を決したように、燦は迷路を進む。
 過去の自分と、決着をつけるために。

「ようやく来たか、猟兵」
 迷路の終点、涙の海の水底。
 水流にエプロンのフリルを靡かせ、オウガ・オリジンが佇んでいた。
「オウガ・オリジン……お前はどうしてオウガになった?」
 刀の柄から敢えて手を離し、燦はオウガ・オリジンに問いかける。
 分かり合える可能性を端から斬り捨てるのは、もうやめにしたいから。
「フン、敵に情けをかけるのか」
「感情任せのつまらん私刑はしないと誓ったんだ」
 対峙する相手に寄り添い、理解しようと歩み寄ること。
 それが、己の未熟さが起こした哀しみへの答えだった。
「優しいのだな、貴様は」
 差し伸べられた燦の手を、オウガ・オリジンが取ろうと手を伸ばす。
 救えるかもしれない。
 そう、燦が思ったときだった。
「その優しさ、その甘さ! 愚かにも程がある!」
 トランプの刃が、燦を襲う。
 分かり合うことなど出来ぬほどに、オウガ・オリジンの心は非情だったのだ。
「……そうか。なら仕方ないな」
 溜息をつき、燦は素早く抜刀する。
 雷光が迸り、オウガ・オリジンの身体に深い傷を刻んだ。
「くっ……!」
「せめて一思いに葬ってやりたかったんだけどな」
 けれど、必ず直ぐに葬る。
 せめて、延々と苦しませることがないように。
 強い決意を胸に、燦は再び柄に手をかけるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シホ・エーデルワイス
親しい人に罵られた事を思い出す


私はその人のお世話になり
役にも立ち
お礼も言ってもらえ
仲は良いと思う

気まずい雰囲気になった事もあったけれど
許し合えていたと思う

だから…

大事な時に何の脈絡もなく罵られた時の悲しみは深い

更にその罵りを聞いた人から誤解を受け
縁を切られそうにもなった

その人が何を考えていたのか
幾ら考えても分からない

分からなくて最悪
私はまた心を病んでしまったかもしれない


それを防いだのは親友でした
親友は忙しい中
時間を割いて私の話を聞き
私が罵られた様な人ではない事を証明してくれた

だから
私は自分を信じて立ち上れます

正直
私は今もその人を悪く思いたくない
少なくとも話をしてくれるまで信じて待とうと思います



「――!」
 シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)の脳裏に響く、罵声。
 迷路の壁が、シホのよく知っている人物のシルエットを映し出す。
「え……どうして……?」
 それは忘れもしない、親しかったあの人の影絵。
 突然の罵りを受けたあの時の記憶が、まるで昨日のことのようにシホの心を苛む。
「どうして、そんな酷いことを……」
 目の前の影は答えない。
 ただ、こちらをじっと睨み付けるよな怒気をはらんでいた。
「私が悪いことをしたなら、償わせてください。だから……話だけでも」
 時には世話になり、次の機会にはシホが手助けをして。
 そうやって互いに助け合い、許し合いながら仲を深めていた。少なくとも、シホはそう信じていたのだ。
 そんな相手だったからこそ、突然の罵りはまさに青天の霹靂だった。
「もう、分かり合えないのでしょうか……」
 影絵が分裂し、ふたつの影がシホを冷ややかに取り囲む。
 シホが悪者だと、そう決めつけているような冷たさで。
「ま、待ってください。それは誤解です」
 溢れる涙を拭うことすらせず、シホは影へと追いすがる。
 だが二つの影は、シホの手から逃れるようにスルスルと壁を流れてしまう。
「お願い、話を聞いてください……!」
 絶望的な気持ちで、それでも手を伸ばす。
 もう、すべて終わりなのだろうか――。
 そう、諦めかけたその時。
 伸ばした手が、温もりに触れた。
「あぁ、そうでした。私には、支えてくれる人がいる」
 心を病みかけたシホを救ってくれたのは、親友の献身であった。
 シホにきちんと向き合い、話を聞いてくれた人。
 謂れなき中傷を跳ねのけ、それが出鱈目だと証明してくれた大切な人。
 親友に貰った勇気を胸に、シホはしっかりと前を見据える。
「私は自分を信じて立ち上れます。親友から、前を向く勇気を貰ったから」
 気付けばシホはオウガ・オリジンの元へと辿り着いていた。
 その勇気を嘲笑うように、オウガ・オリジンはトランプの刃を舞い踊らせる。
「友情、信頼。あぁ、反吐が出る茶番だ!」
 迫る刃をオーラの壁で弾き、シホは両手に聖銃を構える。
「信じて待とうと決めたんです。だから、やられるわけにはいきません」
 きっとまだ、あの人と再び分かり合える日は来るのだと信じているから。
 そのために、無事に帰還すると心に決めているのだから。
「あなたの魂にも、救いあれ」
 聖歌隊のマーチのように、二丁ぶんの銃声が鳴り響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

かつて故郷で迫害された事。故郷の滅びに手を貸した事。その時、自身の母を手にかけた事
故郷で過ごした日々にいい思い出なんてないけれど、それでも……ああなって、ああしてしまった事はとても悲しい
自分がダンピールでなければ、あんな事にはならなかったのかと思うけれど……
【赫の激憤】を発動。否定したい吸血鬼の力だけど……この力があるから戦える

自分の罪と愚かさは受け止める。代わりに誰かを助けた所でかつての罪が許される訳じゃないけれど……それでも理不尽と戦うと決めた

吸血鬼としての力を使い、オウガ・オリジンと戦う
『オーラ防御』で攻撃を防ぎ、鎖で行動を妨害しながら接近して黒剣で攻撃



 涙の海をゆくクロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)の眼前に、懐かしくも哀しい光景が浮かぶ。
 それは、在りし日の故郷の幻。
 貧しいながらも仮初の平和を享受する、支配者なき村の姿であった。
「あぁ、そういえばあの人はお隣さんだっけ」
 もう居ないはずの人々の姿が、次々と浮かびあがる。
 そして。
「この混ざり者め!」
「出ていけ、余所者!」
 覚えている。あの人もあの人も、はっきりと記憶に残っている。
 懐かしい人々があの頃のままの姿で、心無い言葉をクロスへ浴びせかけた。
「こうして思い返すと、やっぱり悲しいな……」
 瞬間、視界が真っ赤に暗転する。
 一瞬前までクロスを罵っていた村人たちが、変わり果てた姿で倒れ伏していた。
「そうだ。俺はこの人たちのことを……」
 ヴァンパイアへの生贄に捧げた。
 生きるため、クロスは新たな支配者へと隷属していたのだ。
 悲痛な慟哭が、恐怖の悲鳴が、クロスを責め立てるように脳裏に蘇る。
「あぁ。確かにこれは、俺の罪だ」
 悼むように目を瞑るクロスを誘惑するように、不意に周囲が忌まわしく甘美な香で満たされる。
「あなたは――」
 顔を上げたクロスの前に、血を流す母親が立っていた。
「――」
 何かを語り掛けながら、母がクロスへ手を差し伸べる。
 噎せ返るような血の匂いに、吸血鬼の本能が疼く。
「あぁ、あぁぁ――っ」
 殺してしまったのだ。吸血衝動のままに、クロスは母を手にかけてしまったのだ。
 胃液がこみ上げてくる、感覚。
 膝を突いたクロスへ、オウガ・オリジンの毒牙が迫った。
「次はお前が食われる番だ!」
 巨大魚の牙が、クロスへ喰らいつく。
 その猛攻を鎖でいなしながら、クロスは真紅の瞳をひらいた。。
「自分の罪と愚かさは受け止める」
 全身が闇に覆われ、ヴァンパイアへと変貌する。
 忌むべき力だが、オウガ・オリジンを討つためなら躊躇いなく使うと決めた。
「それが贖いのつもりか。なんと愚かな」
「代わりに誰かを助けた所で、かつての罪が許される訳じゃないけれど……」
 それでも、理不尽と戦うと決めた。
 喰らうオウガと喰われるアリス。悲しい連鎖を終わらせるために。
「この血が身体を蝕もうとも……!」
 オウガ・オリジンめがけ、黒剣を振り下ろす。
 信念を込めた剣閃が、オウガ・オリジンを切り裂いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

メラニー・インレビット
この世界に迷い込まれたアリス様のお世話をさせていただく事、
それがわたくしめの歓びでございました
ですがその多くが、オウガの餌食に…
無力だったわたくしめは、
それを目の前にしながら、何も出来なかったのでございます…
ああ、あの時わたくしめに力があれば、
皆様を喪わずに済んだかもしれないのに…!


……オウガ・オリジン、お前はひとつ思い違いをしている
確かにこれは我が悲しみの記憶だが、
それ以上にお前達への怒りと憎悪の根源でもある
故にお前が悲しみを嗤い腹を満たす度に、我の九死殺戮刃は終わりの時を刻んでいくのだ
この海を満たす血と肉となるのはお前自身だと知れ



 迷えるアリスを導き、側で支えること。
 それがメラニー・インレビット(クロックストッパー・f20168)の歓びであった。
 アリスが記憶の欠片を取り戻せば、メラニーも一緒に喜んで。
 扉を探しながら、共に歩んで。
 アリス達と過ごした日々は、メラニーにとってかけがえのない思い出であった。
「あぁ、でも」
 アリスとの思い出の先には、いつも悲しみが待っている。
 ――救えなかったのだ。
 オウガに喰われるアリスを、あの頃のメラニーはただ見ていることしかできなかったのだ。
「……あぁ。あの方も。あの方も……!」
 涙の海に、記憶の鏡像が浮かぶ。
 今まで出会い、共に旅をしたアリスたちの最期の姿。
 オウガに喰われ息絶える瞬間の幻が、メラニーの前に次々と現れた。
「ああ、あの時わたくしめに力があれば」
 無力感が、メラニーを苛む。
 あの頃の彼女は、ただアリスの良き世話役となることしか出来ない無力なウサギであった。
 オウガがアリスを捕らえても、救う力など持ち合わせていなかったのだ。
「死んだアリスが恋しいか? 貴様も後を追うがいい」
 悲しみにくれるメラニーを鼻で笑いながら、オウガ・オリジンは手鏡を海底へ叩きつける。
 破片の中から仰々しい拷問具を手にした赤の女王が現れ、メラニーへと近接した。
「赤の女王よ、そのウサギを存分に痛めつけてやれ。アリス達の元へ行ける気分はどうだ?」
「……オウガ・オリジン、お前はひとつ思い違いをしている」
 拷問具の斬撃を懐中時計で受け、メラニーはオウガ・オリジンを睨み付けた。
「確かにこれは我が悲しみの記憶だが、それ以上にお前達への怒りと憎悪の根源でもある」
 涙も枯れるほどに泣いたあの日、オウガを討つための力を得た。
 無力だった小兎は、オウガの命の時計を止めるインレビットとなったのだ。
「……やれ。首を刎ねてウサギのスープにしてしまえ」
 苛立った様子で、オウガ・オリジンが赤の女王へ命令する。
 だが、その隙にメラニーが動いていた。
「終わりの刻を刻むのは、貴様のほうだ」
 瞳に殺意の光を宿し、殺戮の刃を閃かせる。
 目にも止まらぬ連撃が、オウガと女王へ降り注ぐ。
「この海を満たす血と肉となるのはお前自身だと知れ!」
 犠牲となったアリスの数だけ、何度も何度も。
 メラニーは、オウガ・オリジンへ斬撃を叩き込むのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロム・エルフェルト
アドリブ絡み◎
7歳の時、自分に妖力が無い事が判った。
妖術不能の妖狐。役立たずの侮蔑を込めて"石子"と呼ばれ、爪弾きにされても、孤児の身に慰めてくれる親は無い。
誰からも名を呼ばれず。誰からも必要とされず。
振り切った筈の過去に、押し潰される。

……で、も。今の、私は。
『また、会えますように』
初めての依頼で救った少女の笑顔を思い出して。
『お前は、道を違えるな』
剣術のお師様が残した言葉を噛み締めて。
涙に濡れる視界を拭って。
「……私は、もう"石子"じゃないよ」
小さな誇りを胸に、今度こそ過去と訣別する。

[騙し討ち]。悲しみに打ち克った事を悟られない為、幽鬼のような足取りでオリジンに接近。零距離でUCを放つ。



 ――石子。
 幼き日のクロム・エルフェルト(半熟仙狐の神刀遣い・f09031)に浴びせかけられたのは、そんな心無い言葉だった。
「……いや」
 辛い記憶から逃げるように、クロムは両手で耳を塞ぐ。
 だが、罵声はまるで頭の中から自然に湧き出るように、とめどなくクロムを責め苛んでいた。
「こんな簡単なことも出来ないのか。呆れた」
「妖術の使えない妖狐なんて、ただの役立たず」
 普通の妖狐は、齢七つにもなれば妖術を使うものなのだという。
 だがクロムは、そのための妖力を宿していなかったのだ。
「みそっかすの石子はあっち行け!」
「本当は狐じゃないんじゃないか?」
 子供たちの輪から爪弾きにされ、ぐっと唇を噛みしめたあの日のこと。
 寂しくて。悲しくて。
 慰めてくれるはずの両親は、既に遠いところへ旅立ってしまった。
「いつも、ひとりぼっち……」
 誰からも名を呼ばれずに。
 誰からも必要とされずに。
 孤独に耐えていた過去の記憶が、大波のようにクロムの心に押し寄せていた。

「あぁ。随分悲しそうな顔をしているな。そういう相手をいたぶるのは、なんと気持ちの良いことか!」
 愉快そうに笑いながら、オウガ・オリジンがクロムへ魚をけしかける。
 ふらふらと近寄ってきてはいるが、その様子では戦えまい、と。
 至近まで迫ったクロムへオウガ・オリジンの魚が毒牙を剥いた、その瞬間。
「――露と消えよ」
 素早く抜刀された刀が、オウガ・オリジンの胴を袈裟懸けに斬りつける。
 闇のようなどす黒いものが血のように溢れ出し、オウガ・オリジンが苦しそうに胸を押さえた。
「貴様。私を騙したな」
「……私は、もう"石子"じゃないから」
 確かに、クロムは寂しく悲しい子供時代を過ごしてきた。
 だが、今はもう孤独ではないのだ。
『また、会えますように』
 猟兵として初めて救った少女から、言われた言葉。
 絶望の果てに怪物になりかけていた少女を、この手で救うことができた。
『お前は、道を違えるな』
 剣術のお師様からの教え。
 妖力のない自分にも出来ることを、剣の修業の中でいくつも学んだ。
(「だから……今の、私は」)
 過去に呑まれることはないのだ。
 小さくても立派な誇りが、この胸の中にあるのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

備傘・剱
悲しみ、ねぇ…
そういや、そんな感情、あったなぁ…

この悲しみは、全部無くした時の、か?
失敗した親父が、俺以外の家族全員連れて、無理心中しやがって、残った俺は、その責を問われかけ…
遺産の中にあったレアメタルのせいで、全部不問にされ、追い出され、悲しみも怒りも憤りも、なにもかも無す前のまだ、道が続いていた時の、感情だな

ありがとうな
久しぶりに、懐かしい、まだ、路があった頃の自分を思い出せたぜ
全兵装起動、呪殺弾、衝撃波、誘導弾、行使
黒魔弾、発動、敵殲滅、開始

世の中にはよ、悲しみも、怒りも、喜びも、全部、過去においてきた人間も、いるもんだ
俺は、絶たれた路、何もない、どこにもつながらない、0(絶路)だからな



 その夜、備傘・剱(絶路・f01759)は大切なもの全てを失った。
「あぁ、そうだ。この感情は」
 帰らぬ人となった、家族たちの姿が脳裏に浮かんだ。
 もう二度と笑い合うことのできない大切な人達の顔を、まるで昨日のことのように思い出す。
 自らの失敗を悔いた父が、すべて終わらせるために家族を道連れにしたのだ。
「そして、俺だけが生き残った」
 運が良かったのだ、とはとても言えない。
 生き延びた剱に投げかけられた言葉は、慰めや労いなどでは決してなかったのだから。
「親父の代わりに責任を取れ、とかさ……」
 父の失敗を許せない者の矛先は、子の剱まで及んだ。
 責を問われ、謂れなき罰を被せられそうになったのだ。
「……悲しいな。久々に思い出した感情だ」
 その後、剱は遺産のレアメタルだけ毟られ放逐される形で故郷を追い出された。
 一夜にして、家族も居場所も無くしてしまったのだ。

「そうだ、お前に居場所などない。悲しみの中で死ぬがよい」
 一筋の涙を零す剱へ、オウガ・オリジンは魚を飛ばす。
 心弱き人間ならば、過去の悲劇に暮れるあまり隙だらけになっているはず――そう、判断したのだろう。
 だが。
「敵殲滅、開始」
 きわめて冷静に、剱は全身に纏った兵装の安全装置を解除する。
 魔の力を帯びた弾が、魚の喉を貫いた。
「世の中にはよ、悲しみも、怒りも、喜びも、全部、過去においてきた人間も、いるもんだ」
 過去の悲しみに剱は囚われない。囚われることができないのだ。
 絶路。
 剱の背には道はない。悲しみも怒りも喜びも全て過去に置いてきた、ゼロの存在。
 それが、備傘・剱という男であった。
「そんなことがあるものか! 人とは悲しみに屈する者で……」
 地団駄を踏むオウガ・オリジンの元へ剱が近接する。
 腕に埋め込んだモジュールにエネルギーを集め、漆黒の魔弾を生成する。
 熱いエネルギーの奔流を恐れることなく、剱はオウガ・オリジンをその射線に捉えた。
「おのれ……あぁ、腹立たしい! 苛立たしい!」
 怒りに叫ぶオウガ・オリジンに銃口を突き付け、魔弾を放つ。
「ありがとうな」
 悲しみという感情を、思い起こすことができた。
「まだ、路があった頃の自分を思い出せたぜ」
 絶えた路を悼むように、魔弾は黒い光となり炸裂する。
 その光が消える頃には、オウガ・オリジンも涙の海も消え失せていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月30日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト