迷宮災厄戦⑱-19〜赤き悪夢の涯に
●溺れる赤
はじまりのアリスはただひたすら、あかに塗れていた。
その手首からは今も尚、止めど無きいろが噴出し零れ落ちている。
いや、オウガ・オリジンからずるりと溢れるのは、鮮血の色だけではない。
それは、はじまりの存在の中に眠っていた「無意識の悪夢」。
――ああ、あああ、ああああ!!
――本来これは、この尊いわたしの腹を満たすいろのはずなのに。
――力を、とりもどしつつあるはずなのに。
――嗚呼、嗚呼、なのに、なのになのになのに……!!
全ての窓に鉄格子の嵌められた、暗く陰鬱な閉鎖された病院で。
オウガ・オリジンがビクンッとその身体を大きく引き攣らせる度に。
噴き出す鮮血と共に解き放たれ駆けるのは、一角獣に狼に兎、あかきナイトメアたち。
そんな鮮血の獣を殺し尽くせば消滅するのだという。
此処に只在るオウガ・オリジンも、無意識の悪夢も。
けれども、それはいまだ叶わぬ夢。
はじまりのアリスは今もなお、あかに塗れ、喚き悶え、そのいろに溺れ続けている。
●悪夢のアサイラム
「迷宮災厄戦も佳境、皆にはオウガ・オリジンの元へと向かって欲しい」
筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は集まってくれた事に礼を告げた後、視た予知を語り始める。
「今回赴いて貰う不思議の国は、全ての窓に鉄格子の嵌められた、暗く陰鬱な病院だ。激戦の影響か、『オウガ・オリジン』の中に眠っていた「無意識の悪夢」が、現実改変ユーベルコードで具現化してしまったようだ」
オウガ・オリジンは己から噴出する悪夢に苦しんでおり、まともに戦えない状態のようであるが。だがかわりに、その手首から噴出する鮮血の如き色をした「悪夢獣」が降り立った猟兵達へと襲いかかってくるのだという。
そしてその悪夢獣を全て殺し尽くせば、オウガ・オリジンは消滅するというが。
「鮮血の如き色をした「悪夢獣」を倒せば、そのいろを皆も確実に浴びる事になる」
悪夢獣の各個体は戦闘力は高くないというが、その数はかなり多く。
そして倒す度に、鮮血のいろをその身に浴びる事となるという。
敵を打ち倒していくたびに、その濃さを増し降りかかる、あかのいろ。
それはただ、皆の身を塗れさせるものでしかないのであるが。
むっと鼻をつき、べとりと纏わりつくそのいろに、心が苛まれる者もいるだろうし。
濃厚なあかに甘美さを見出し、高揚する者もいるかもしれない。
けれど、どれだけあかにまみれようとも、戦に勝つ為には、成さねばならぬ事。
清史郎はもう一度皆を見回し、頭を下げて。
「あかのいろに塗れる覚悟を胸に、鮮血の色宿す獣を打ち倒し、オウガ・オリジンを消滅させるべく。陰鬱で閉鎖された不思議の国へと赴いて欲しい」
満開桜のグリモアをその掌にひらり咲かせて。
あかに塗れた無意識の悪夢溢れる国へと、猟兵達を送り導く。
志稲愛海
志稲愛海です。
よろしくお願いいたします!
こちらは、1フラグメントで完結する「迷宮災厄戦」のシナリオです。
プレイング受付は公開と同時に開始致します。
締切は状況を見つつ、MS個別ページやTwitterでお知らせします。
問題のないプレイングの皆様は全員採用したい気持ちですが。
戦争シナリオですので確約ではなく、状況次第で締め切る可能性もあります。
●プレイングボーナス
鮮血にまみれながら、悪夢獣と戦う。
●シナリオ概要等
オウガ・オリジンから噴出する鮮血の如き色の「悪夢獣」との戦闘です。
悪夢獣を殺し尽くせば、オウガ・オリジンは消滅します。
悪夢獣の各個体は戦闘力は高くありませんが、数がかなり多いです。
そして倒す度に、鮮血を浴びる事となります。
敵は強くないので、どう倒すかという事もですが。
それよりも、血に塗れ戦う覚悟、苦痛、鬱屈、高揚、興奮……など。
どのような気持ちに陥り、浸り、どう立ち回っていくか。
その様な気持ちの面においてのプレイングもかけていただければと。
●お願い
同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入お願いします。
ご記入ない場合、相手と離れてしまうかもしれませんのでお忘れなく。
プレイング内容や送信タイミング等に問題ない限り全員採用できたらいいなとは思っておりますが。
戦争故に確約ではなく、お返しする可能性もあるかもしれない事をご理解の上、ご参加ください。
是非、血塗れな皆様を書かせてください!
それでは、ご参加お待ちしております。
第1章 集団戦
『『オウガ・オリジン』と悪夢のアサイラム』
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POW : ナイトメア・パレード
【巨大な馬型悪夢獣の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【一角獣型悪夢獣】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 悪夢の群狼
【狼型悪夢獣の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 忠実なる兎は血を求む
【オウガ・オリジンに敵意】を向けた対象に、【鋭い前歯と刃の耳を持つ兎型悪夢獣】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:飴茶屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
尾守・夜野
オリジンに対する感傷は表には出さないわ
首筋の傷が疼くけれど…今は気にしてはいられないの
別の私ではあるけれど所詮同じ穴の狢だし
トリガーがトリガーである以上人の事いえないわ
なお多分自殺でも謀り、止められた生かされ続ける悪夢だと思ってるわ
えぇ止められるのは嫌よね
だから終わらせてあげる
私の服(黒纏)も私その物皆(剣)でさえも血と生命力によって強化されるの
進んで帰り血は浴びに行くわね
黒纏を細く長くワイヤートラップのように張り巡らせて馬の突進は止めるわ
他の悪夢獣もよってくるだろうから…結果的に高さはばらばら
早く突っ込んできたらそのまま賽の目に
ならないなら寄って切るだけよ
「少なくとも補給は大丈夫そうね」
――ああ、ああああ!!
また聞こえてくるその声は、噴出する悪夢に苦しんでいるオウガ・オリジンのものである。
けれど、尾守・夜野(墓守・f05352)はそんなオウガ・オリジンに対する感傷は表には出さない。
そしてそっと無意識に一瞬だけ触れたのは――傷が残る首筋。
女性人格が顕現している夜野は、艶やかにその瞳を細め、ふるりと首を振る。
――首筋の傷が疼くけれど……今は気にしてはいられないの、と。
「別の私ではあるけれど所詮同じ穴の狢だし、トリガーがトリガーである以上人の事いえないわ」
それはまた別の彼……いや彼女というべきか……ではあるのだけれど。
同じ穴の狢で、人の事は言えない。
それが、オウガ・オリジンへの感傷は出さない理由のひとつであるけれど。
オウガ・オリジンの上げる悲痛の声を耳にしながら、夜野は思考を巡らせる。
(「多分自殺でも謀り、止められ生かされ続ける悪夢だと思ってるわ」)
それが当たっているのかどうかは分からないし、確かめようはないけれど。
「えぇ止められるのは嫌よね」
――だから終わらせてあげる。
眼前に現れたあかき獣たちへと、細めた瞳を向ける夜野。
刹那、けたたましい嘶きと共に、馬型の悪魔獣が突進してくるけれど。
夜野は避ける素振りはみせない。否、その必要がないからだ。
『……グオオ!』
しゅるりと細く長くワイヤートラップのように張り巡らせていたのは、自在に形を変えられる黒纏。
それが馬の突進を止めたと思った、瞬間。
バシュッと弾けては飛び散る、数多のあかのいろ。
そのまま強引に突っ込んできた馬の悪魔獣が賽の目に刻まれたのだった。
そして飛び散った鮮血を、むしろ夜野は進んで浴びにいく。
纏う黒纏も、握る皆……怨剣村斬丸も、そして夜野自身さえも。
脈打つ血のいろとその生命力によって、強化されるのだから。
そしてまた別の悪魔獣がワイヤートラップに引っかかるけれど、賽の目になる前に踏みとどまっている。
けれど……ならば、その時は。
呪詛が滲んでいる皆がいまだ生きているその剣をもって、斬り裂くだけ。
「少なくとも補給は大丈夫そうね」
あかのいろは、充分なくらい沢山、自然と浴びられるだろうから。
大成功
🔵🔵🔵
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
指定UC発動後、「早業、2回攻撃、なぎ払い」+衝撃波で悪夢獣を片っ端から斬り刻む
敵からの攻撃は軌道を「見切り」の上で回避せず受けるが、行動不能になり得そうなもののみ黒剣で「武器受け」
斬るたび、吹き飛ばすたび
目の前を彩り、俺の身体に纏わりつくあかを見ると
徐々に強まる高揚感と吸血衝動
…このあかを思う存分吸い尽くせば
吸血鬼化の呪いに苛まれる俺自身も満足できるのか?
…血が、ほしい
吸血欲求に正気を失い
手近な悪夢獣の喉笛に噛みつきかけて…思いとどまる
これはオウガ・オリジンの悪夢の結晶
吸ったら俺自身が悪夢に囚われかねない
吸血衝動を抑えたら攻撃再開
戦いの高揚感に狂いながら、ただ斬る
いつもならば、情など見せず冷酷に。
ただ敵を斬り捨てる騎士で在れているのだけれど。
館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)の脳内を蕩かすいろは、甘美な赤。
黒剣がかつて喰らった魂をまとい、斬撃による衝撃波を放つべく戦場へと握る得物をぶん回せば。
片っ端から斬り刻んでいくと同時にべちゃりと飛び散るのは、抗いがたいいろ。
次々と襲い掛かってくる悪夢獣を斬り、鮮血を浴びながらも。
敵の攻撃を見切るけれども、回避はせず受けるようにして。
逆に刃を返し、血飛沫へと変えてゆく。
そんな赤き獣たちを斬るたび、吹き飛ばすたびに。
そして、目の前を眩暈がするほどに彩り、自分の身体に纏わりつくあかを見ると。
敬輔の中でじわじわ徐々に強まるのは、高揚感と吸血衝動。
(「……このあかを思う存分吸い尽くせば、吸血鬼化の呪いに苛まれる俺自身も満足できるのか?」)
吸血鬼にとって、飛び散り浴びているこのいろは、何よりも心昂るもの。
だから吸血鬼化の呪いに苛まれているという彼自身も。
「……血が、ほしい」
冷静な騎士でなど、最早いられない。
べしゃりと鮮血を浴びるたびに、どうしようもなく膨らんでしまう吸血欲求に、正気を失って。
『ガウウゥゥッ!』
自分へと牙を剥く狼型の悪夢獣の喉笛に、がぶりと噛みつき……かけて。
ハッと、思い留まる敬輔。
そして数度、湧き出す衝動を振り払うかのように、ふるりと頭を振る。
(「これはオウガ・オリジンの悪夢の結晶。吸ったら俺自身が悪夢に囚われかねない」)
だから――敬輔はただひたすらに、握る刃で斬ってゆく。
戦いの高揚感に狂いながら。
大成功
🔵🔵🔵
ユーノ・エスメラルダ
オブリビオンである以上は倒さなければ…ですが、それでも
苦しむ姿を知れば、少しでもその時間が短くなればと願わずに居られません
助けることは出来ないでしょうが、せめてこの戦いが苦しみを縮める一助となることを【祈り】ます
●戦闘
悪夢獣相手にこれが通じるかはわかりませんが…ユーベルコードは道理を曲げます
ならばきっと、ユーベルコードを使えば効果のある間だけは悪夢に感情を与えることも出来るかもと、UCを使います
攻撃を受ける【覚悟】と【激痛耐性】のもとに、悪夢獣またはオリジンさんのいずれかへ【手をつなぐ】ことからの『聖痕』による【慰め】と癒やしを
悪魔獣さんには最後に自害をお願いしなければならないかもしれません…
不気味でうす暗い病院、駆け巡る鮮血の獣、苦しみに声を上げるオウガ・オリジン。
此処は戦場であり、相手はオブリビオン。
(「オブリビオンである以上は倒さなければ……ですが、それでも」)
ユーノ・エスメラルダ(深窓のお日様・f10751)にだって分かってはいるのだ。
眼前の鮮血のいろをした獣も、それを生み出しているオウガ・オリジンも、倒すべき敵であることは。
けれども、苦しむ姿を知れば、ユーノは願わずに居られないのだ。
……少しでも、その時間が短くなればと。
いや、分かっているのだ。助ける事などできないことも。
――でも。
(「助けることは出来ないでしょうが、せめてこの戦いが苦しみを縮める一助となることを」)
ユーノは、祈らずにはいられない。相手がたとえ、オブリビオンであったとしても。
けれど……勿論、相手はそうではない。
『グルルルゥ!』
現れたのは、兎型の悪夢獣。
けれど、忠実なる兎は血を求むけれど。
ユーノは、倒さなければいけないとは分かってはいるけれど……オウガ・オリジンに敵意を向けたりはしない。
(「悪夢獣相手にこれが通じるかはわかりませんが……ユーベルコードは道理を曲げます」)
……ならばきっと、と。
ユーベルコードの効果がある間だけは、悪夢に感情を与えることも出来るかも。
そう思い、ユーノは展開する。
――誰でも、救われても良いのです。大丈夫、変われます。
罪を許す言葉と聖痕による癒しを、『導き手の資質』を……悪夢獣へと。
「……!」
刹那、鮮血の獣の鋭い前歯と刃の耳が振るわれ、ユーノから鮮血が上がるけれど。
その心にとうに抱いている。攻撃を受ける覚悟などとっくに。
そして激痛に対する耐性のもとに、己の血に塗れたその手を伸ばす。
悪夢獣またはオウガ・オリジンのいずれかと手をつないで……『聖痕』による慰めと癒やしを、彼の存在たちにも齎さんと。
(「悪夢獣さんには最後に自害をお願いしなければならないかもしれません……」)
やはり、悪夢獣の存在はそのままにはしておけないけれど。
「……っ、!!」
噛みつかれ、引き裂かれ、己の血が鮮やかに飛沫をあげようとも。
ユーノは祈り、慰めと癒やしを与えることを、止めることはしない。
成功
🔵🔵🔴
高塔・梟示
まるでB級ホラーだな
まあ、やることは単純
忙しいのも慣れっこさ
仲間がいれば技能、UCで援護を行う
敵を視認次第、早業でドロップテーブル
敵がマヒして動けぬうちに
鎧砕く怪力を載せた標識の一撃を叩き込む
多勢なら囲まれぬよう
絞縄で足止めし
一体ずつ確実に仕留める
悪いね、今取込み中なんだ
君は鞦韆でも如何だい?
敵攻撃は残像でいなし反撃に転じよう
病院なら障害物も多かろう
常に周囲の把握に努め
身動き取れない状況に陥れば
吹き飛ばして仕切り直す
やれやれスーツが台無しだな…
溜息吐いて、顔に浴びた血を拭い
赤いシャツなんて着慣れないが
似合うものかね、と冗句めかし
…さて
一服したら、また始めようか
零れた血の一滴まで涸らしに行こう
――ああ、嗚呼……なんでなんで!!
薄暗い病院の何処かから聞こえてくるオウガ・オリジンの絶叫。
薄暗い病院は鮮血の赤に塗れ、むっとした鉄錆の如き匂いがあたりに立ち込めている。
「まるでB級ホラーだな」
高塔・梟示(カラカの街へ・f24788)がそう呟きを落とすのも、頷いてしまうような光景。
けれどかわりに、何も難しいことなどない。
「まあ、やることは単純」
……忙しいのも慣れっこさ、と。
『グルルルゥ……!』
――影踏むばかり粛々と。
宙から頸部へ垂れる絞縄が突進してきた馬型悪夢獣の首を縛り吊るし上げて。
ゆうらり揺れて身動きとれぬところを、豊穣の鎌で羊飼の杖で渡守の櫂でもあると、そう嘯く得物を梟示がぶん回せば。
べしゃり、纏う鎧をも砕く怪力乗せた一撃が叩きつけられた刹那、新たなるあかのいろが重ねられる。
けれども、オウガ・オリジンの手首から噴き出す赤は、いまだ止まる気配はなく。
『ガルルルゥ!』
数多、湧いて出て来る獣たち。
そんな鮮血のいろをした獣に囲まれぬようにと、絞縄で吊るし足止めして。
「悪いね、今取込み中なんだ」
――君は鞦韆でも如何だい?
『! ガアアアッ』
ビチャッとその度に浴びる赤にも構わず、一体ずつ確実に仕留めてゆく。
それを潜り抜けて接近する獣がいようものならば、吹き飛ばし仕切り直して。
一角獣型悪夢獣の鋭い角は、残像の彼を貫いただけ。
そんな獣も、すぐに弾け飛沫くあかへと変わって。
障害物の多い病院の中、常に周囲の把握に努め立ち回る梟示。
そしてさらにあかのいろが濃くなった姿を見遣り、溜息を吐く。
「やれやれスーツが台無しだな……」
何の変哲もないが、手入れも行き届いている仕立ての良い逸品も、あかに塗れているけれど。
「赤いシャツなんて着慣れないが、似合うものかね」
冗句めかしつつも、顔に浴びた血を、指でくいっと拭い取る。
――ああ、ああああ!!
刹那再び聞こえるは、オウガオリジンの苦し気な叫び声。
そんな叫びを聞きながら、梟示は再びあかに塗れにゆく。
「……さて。一服したら、また始めようか」
――零れた血の一滴まで涸らしに行こう、と。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
はあ、全く汚れるのは好きじゃないなあ…
ま、いいんだけどね
無双するのは好きだし
けれどまあ、無意識の悪夢…か
何か事情があるんだろうけど、まあいいや
これから倒す相手の事を考えてもしゃーなし!だね
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
悪夢獣の攻撃は『オーラ防御』で壁を作り阻みそれを抜けてきた敵は『武器受け』する事でガード
私は【雷鳴・解放】を起動
高速移動と二刀による『2回攻撃』で悪夢獣を倒していこう
数が多いし稲妻の斬撃を放射して一度の攻撃で何体も巻き込もう
酷い血の臭い
ま、とはいえこの家業をやってる限り何時もの事な訳で…
うーん、今度携帯用の簡単に血を掃除できる物開発したら商機なるかな?
薄暗い病院を無造作に染め上げるあかのいろ。
それは、猟兵達にも容赦なく浴びせられるもので。
「はあ、全く汚れるのは好きじゃないなあ……」
思わずそう深く息をついてしまうのは、月夜・玲(頂の探究者・f01605)。
けれど、それは単に好きじゃない、という程度の感情。
「ま、いいんだけどね。無双するのは好きだし」
すぐに気を取り直し、そして玲は思考を巡らせてみるけれど。
(「けれどまあ、無意識の悪夢……か。何か事情があるんだろうけど、まあいいや」)
――これから倒す相手の事を考えてもしゃーなし! だね、って。
『グルルルゥゥ!!』
スラリと同時に抜き放つは、I.S.Tを利用した黒剣と剣の二振り。
群れて襲い掛かる狼型の悪夢獣を、守りの防御で壁を作り阻んでみるも。
すり抜けて牙を剥く敵の群れ。けれどそれを握る二振り守りを固め防いで。
――雷の疑似UDC解放。我が身よ、稲妻となれ!
刹那、あかに塗れた風景に轟くのは、放射されし稲妻纏った斬撃。
起動した『雷鳴・解放』による高速移動と、『《RE》Incarnation』と『Blue Bird』の握る二刀から繰り出す連撃で。
一度に何体もの敵を巻き込み、赤を撒き散らして、獣たちを仕留めていく。
そしてさらに浴びたそのいろに、やはり微かに玲は顔をそっと顰めてしまう。
「酷い血の臭い」
けれど、とはいえ、この家業をやっている限りは何時もの事な訳で……。
いやむしろ、それを逆手に取らんとする、こんな考えを巡らせる。
――うーん、今度携帯用の簡単に血を掃除できる物を開発したら商機なるかな? なんて。
大成功
🔵🔵🔵
終夜・還
あかに塗れて、ねェ…。そういうの得意じゃねーんだけど、仕事だし頑張ろかな
襲い来る獣は獣化した腕で【見切り、なぎ払い、蹂躙】するぜ
数が多くなるなら銃を手元に喚んでくるんと回して魔力を充填。【呪殺弾を一斉発射し範囲攻撃】
…チッ、倒す度に匂いがキツくなるわ視界が赤くなるわで嫌になるなァ
俺、グールドライバーだけど吸血鬼みたいな行動したくなくてね
血に興奮するとか俺自身が腹立たしくなるわ…
だから必死にそういうの堪えるよ
それに血を貰うのはアメーラだけって決めてるからね
フフ、アメーラ以外の血に興奮したら怒られちゃう。我慢しなきゃ
脇目も振らずに敵の殲滅を
集中力切らさない様に、感情を出さないように
興奮しないように
むっと鼻につく血の匂いに、どうしても反応してしまうのは、獣の性。
けれど終夜・還(終の狼・f02594)はその腕を獣化させながらも、微かに顔を顰める。
「あかに塗れて、ねェ……。そういうの得意じゃねーんだけど、仕事だし頑張ろかな」
そして敵の動きを見切れば。
獣の腕を大きく振るい、悪夢獣らを薙ぎ払い蹂躙する。
さらに数が増え囲まれそうになれば、次に手元に喚ぶのは銃。
くるんと回して魔力を充填すれば、呪殺弾を一斉発射して、敵の群れへとぶっ放す。
その度に、ビチャ、ビチャリと鮮血が飛び散って。
「……チッ、倒す度に匂いがキツくなるわ視界が赤くなるわで嫌になるなァ」
思わず、より一層深くなる匂いやいろに、舌打ちを打つ還。
確かに、自分はグールドライバーではあるけれど。
だからといって、吸血鬼みたいな行動をしたくないと、そう思うから。
ふと再びひとつ、溜息と共に吐き捨てる。
「血に興奮するとか俺自身が腹立たしくなるわ……」
……だから。
(「必死にそういうの堪えるよ」)
いや、オウガの血など欲しくはない。
還はふふ、と笑み零し、赤い瞳を細め紡ぐ。
「それに血を貰うのはアメーラだけって決めてるからね」
――アメーラ以外の血に興奮したら怒られちゃう、って。
愛しい人の血しか欲しくなんてない。
だから……我慢しなきゃ、って。
その身に浴び続けなければならない、深く濃くなる血の匂いを振り払いながら。
脇目も振らずに敵を殲滅せんと、還は赤き戦場を駆ける。
集中力切らさない様に、感情を出さないように――興奮しないように、と。
大成功
🔵🔵🔵
シャト・フランチェスカ
声が聴こえた気がした
胸のなかのどろどろの憎悪
喉を裂かんばかりの呪詛
ぎり、と自らの左手首をきつく押さえる
憎い悔しい口惜しい
そんな怨嗟のはずなのに
たすけて、と叫ぶきみが見えるようで
《メリィ》、
軽やかな足取りの影の少女たち
彼女らもまた無貌
快楽以外を喪失した無垢なアリスの鈴なり
鬼ごっこをして遊ぼう
悪夢獣を見つけたら僕に伝えて
不幸中の幸いか、獣は脆い
能力を濫発せずとも斃せるようだね
闇に紛れて騙し討ち
メリィに誘われ只管に万年筆の鋒を
突き刺して穿って切り裂いて
ああ、
紅い色は生命の彩
腕を伝えば拍動よりも雄弁に
僕は生きている、と語る
──意識が、飛びそうなほど、鮮烈に!
血を吸って重くなった袖を振り
あはは、と嗤う
――声が聴こえた気がした。
それは、苦しさに叫ぶオウガ・オリジンのものではない。
かといって、鮮血を撒き散らす獣のものでもない。
そう……それは、シャト・フランチェスカ(侘桜のハイパーグラフィア・f24181)の胸のなかの、どろどろの憎悪。
喉を裂かんばかりに込み上げてくる呪詛。
そして心の中を渦巻くのは――憎い悔しい口惜しい。そんな怨嗟のはずなのに。
シャトはきつく押さえつける。ぎり、と自らの左手首を。
……たすけて、と。
叫ぶきみが、見えるようで。
刹那、戦場に踊るのは、軽やかな足取りの影の少女たち。
――会いに往きたい、愛に生きたい。
アカイクツをコツンと鳴らしながら……《メリィ》。
彼女らもまた無貌なる、快楽以外を喪失した無垢なアリスの鈴なりで。
僕に伝えて、と。そうシャトは彼女らへとお願いする。
「鬼ごっこをして遊ぼう」
赤を飛沫かせながら捕まえよう、悪夢獣を見つけたら。
そして――見ぃつけた、って。
鈴なりのアリスたちが囁くように教えてくれれば。
(「不幸中の幸いか、獣は脆い。能力を濫発せずとも斃せるようだね」)
折角メリィが教えてくれたのだから。だから、闇に紛れて騙し討ち。
メリィに誘われ只管に……万年筆の鋒を、突き刺して穿って切り裂いて。
漆黒の中、密やかに飛び散る獣のあかは、活字を綴る万年筆のインクがわりにすらなりやしないけれども。
(「ああ、紅い色は生命の彩」)
つうと、熱とともにそのいろが腕を伝えば、拍動よりも雄弁に語る。
「僕は生きている」
そう――意識が、飛びそうなほど、鮮烈に!
そしてあかに彩をかえた紫陽花の乙女は、あはは、と嗤う。
血を吸って重くなった、あかの袖を躍らせながら。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
己で食べて腹を満たし続けていた子が
逆に苛まれると言うのは…皮肉だな
悪夢の馬の突進は、瓜江を手繰り
羽織のすそ広げ舞わせ残像残すフェイントで、挑発と陽動
自身は一角獣を薙ぎ払いで牽制、協力阻止
狙いをぶれさせながら馬が突進をする機を見切りたい
駆ければ即座に引かせ、直撃は回避を
突進後の隙を狙い
自身の血で瓜江の封を解き、風の刃で攻撃を
浴びる赤
何度も、何度も何度も
濃くなる匂い
拭って、つい息が漏れる
慣れては、いけないのに
慣れていることに
恍惚、吐き気
どちらもない
酔うようじゃ猟兵やっていけないのは確かだが…
忘れるな
命のいろ
人のうちに廻る赤を無為に流させない為に
戦っていると
君を助ける手には、なれないが
もう、おやすみ
――それは、わたしを満たすいろのはずなのに!!
苦しみ悶え、そう叫ぶはじまりのアリス。
いや、はじまりのオウガと言った方が、今は正しい気がする。
(「己で食べて腹を満たし続けていた子が、逆に苛まれると言うのは……皮肉だな」)
冴島・類(公孫樹・f13398)はそうふるりと微かに首を横に振る。
オウガ・オリジンが噴き出すそれは、眠っていた「無意識の悪夢」。
そしてその手首から零れ落ちる鮮血とともに猛り駆ける獣たち。
『グアアアァァ!!』
刹那、馬型の悪夢獣がいななき、突進してくるけれど。
戦場にゆらり靡くのは、十指に繋いだ赤糸で操る濡羽色の髪。
羽織のすそ広げひらりとあかの中を舞わせた手繰る瓜江が、残像残すフェイントで挑発と陽動をし、獣たちを翻弄していけば。
類は鋭き角で付き上げんとしてくる一角の獣を薙ぎ払い、決して馬の協力などさせやしない。
そして闇雲に突っ込んでくる馬の狙いをぶれさせながら、機を見切って。
駆ければ即座に引かせ、直撃だけは避ける。
けれどその後こそ、隙が生じる一瞬。
類が飛沫かせるのは、己の赤。それは瓜江の封を解き、風の刃を生み出すいろ。
そして鋭利な刃が風を鳴らし、獣を切り裂くたびに飛び散る赤。
浴びるそれは、何度も、何度も何度も――重ねられ、纏わりついて。
鼻をつくほど濃くなる匂い。
びしゃりと再び飛び散ったそれを拭って、つい漏れる息。
慣れては、いけないのに――慣れていることに。
(「恍惚、吐き気……どちらもない。酔うようじゃ猟兵やっていけないのは確かだが……」)
類は赤を撒き散らしその身に浴びながらも、心に刻みつける。
――忘れるな、命のいろ。
(「人のうちに廻る赤を無為に流させない為に、戦っていると」)
そしてただひたすらに、深く濡れゆく赤い絡繰糸を手繰る。
手首から赤を滴らせ苦悶する、はらぺこな子に。
そのあかから生まれた獣を鮮やかな飛沫に変えながら。
君を助ける手には、なれないが――もう、おやすみ、って。
大成功
🔵🔵🔵
終夜・嵐吾
ああ、たくさんおるね
多数を相手するんは、昔はぜぇんぶ燃やせばええと、思とったけど
今は汝がおるからの
虚、一緒にあそぼぉか
血に塗れることへの嫌悪はなく
薙ぎ払った傍から赤く染まる
わしの鈍い毛色も赤く染まればまた違う色よな
ああ…じゃが、あまりええ気はせんね、アレの色に似てしまうしの
まぁ洗い落とせばええかと、苛立つのは僅かの間のみ
それに血の香りはいろんなもん撫でて、昂るし、笑いたくなるし
もっと酷いやりとりしてもええかと思えてくる
汝と一緒にもっと、遊んでいたいと
大きな馬の突撃も正面から受けてみるか
踏まれたら肋や内臓はいってしまうかもしれんの
痛みを負うんは生きとることじゃし、やられたらやり返すんは当然じゃろ
――ぜぇんぶ燃やせばええ、と。
昔は、そう思っていたけれど。
「ああ、たくさんおるね」
終夜・嵐吾(灰青・f05366)はぐるりと琥珀の視線を巡らせた後。
その腕の上に、美しく愛しき、黒き茨を招く。
「今は汝がおるからの」
――虚、一緒にあそぼぉか。そう笑って。
虚に借りた爪をふるうたびに、びちゃり、べちゃりとあかが纏わりつくけれど。
「わしの鈍い毛色も赤く染まればまた違う色よな」
そう呟いたものの……ふるりとすぐに首を横に振る嵐吾。
ああ……じゃが、あまりええ気はせんね、と。
だって、それはアレのようだから。アレの色に――似てしまう。
血に塗れることへの嫌悪はないのに、けれどそれには苛立ちが湧いてしまう。
でもそれも、僅かの間のみ。
まぁ洗い落とせばええかと、いつものように思考を放り投げて。
今は、むっとむせ返る様な血の匂いといろに、琥珀の瞳を爛々とさせる。
(「血の香りはいろんなもん撫でて、昂るし、笑いたくなるし」)
だから――ええか、そう思えてくる。
もっと酷いやりとりしても……汝と一緒にもっと、遊んでいたいと。
刹那、眼前に迫るのは、猛り嘶く馬の悪夢獣。
「踏まれたら肋や内臓はいってしまうかもしれんの」
そう分かっているけれど。嵐吾は大きな馬の突撃を、敢えて正面から受けてみる。
轢かれて圧し掛かられて、案の定、何本か骨もいっただろう。
でも――もっともっと、酷いことされて。
「痛みを負うんは生きとることじゃし、やられたらやり返すんは当然じゃろ」
そしてやり返し仕返して、遊戯びたいから。
刹那、雨の様に降り注ぐのは、まっかなあか。
己の身に圧し掛かっていた馬の巨体を、下から嵐吾は引き裂いてやる。
そうすれば……より沢山のあかをほら、浴びられるから。
けれど、まだこの程度じゃ遊び足りない。
捻じ伏せられ、叩きつけられ、自分のか相手のかわからない、あかに塗れて――楽しいのって、互いに血を吐きながらもっと笑いたいから。
大成功
🔵🔵🔵
歌獣・藍
ねぇさま。
どこ。どこなの。
まぁ、貴方たち
行く手を阻む気?いい度胸ね。
あら…ねぇさまが出すものと
同じ【赤】なのね。
でも…いけないわ。
その【赤】は…
私が1番嫌いな【赤】だもの。
(だってその【赤】は、私が大好きなねぇさまを刺したときの…
私がねぇさまから『希望』を奪ってしまったときのーーー)
…余計なことを
思い出してしまったわ。
あぁ、ねぇさま…
『ゆるして。ゆるさないで。』
さぁ、いくわよ。
貴方たちが私のこの重い重い罪を
受け止めきれたら勝ち。
…まぁ。無理でしょうけれど。
だって、この罪は曖昧で、
藍苺な姉妹の私たちにしか
受け止められない罪ですもの。
ーーーさようなら。
嫌な色のシャワーを浴びながら
姉を探す歩を進めた
薄暗い病院の中を彷徨い歩きながら。
――ねぇさま。どこ。どこなの。
歌獣・藍(歪んだ奇跡の白兎・f28958)はそうきょろり、藍色の瞳を巡らせるけれど。
見つけたのは、ねぇさまではなくて。
「まぁ、貴方たち。行く手を阻む気? いい度胸ね」
今にも襲い掛からんとするそれらを見遣れば。
こてんと首を傾げ、紡ぐ。
「あら……ねぇさまが出すものと同じ【赤】なのね」
けれどもすぐに、藍はふるりとその首を横に振る。
でも……いけないわ、って。
――だって。
「その【赤】は……私が1番嫌いな【赤】だもの」
眼前の赤、そう……このいろのことは、覚えているから。
……だってその【赤】は、
(「私が大好きなねぇさまを刺したときの……私がねぇさまから『希望』を奪ってしまったときの――」)
そしてふと、藍は我に返って。
「……余計なことを、思い出してしまったわ」
あの時と同じいろを瞳に映しながら、零れ落とすかのように紡ぐ。
――あぁ、ねぇさま……。
『ゆるして。ゆるさないで』
そして藍は、目の前のあかへと口を開く。
「さぁ、いくわよ。貴方たちが私のこの重い重い罪を受け止めきれたら勝ち」
けれど、そんな勝負の行方なんて、はじめから分かりきっていること。
……まぁ。無理でしょうけれど。
藍はそう瞳を細め、続ける。
「だって、この罪は曖昧で、藍苺な姉妹の私たちにしか受け止められない罪ですもの」
受け止められっこない。そう、自分達以外、誰にも。
だから――さようなら。
刹那降り注ぎ浴びるのは、嫌な色のシャワー。
そして藍は再びきょろりと視線を巡らせ、歩み始める――姉を探すために。
大成功
🔵🔵🔵
宵鍔・千鶴
昏い、寒い、
光を遮断し鉄格子に嵌められた冷たい部屋
フィルムの様に甦る記憶
喉が震える、足が鉛みたいに動かない
酷似した部屋を俺は識っている
っ、う…!
噎せ返る赫の匂いに嘔気は止まらず
自然に息が上がる
ぷつり、ぷつりと何かが千切れるおとがする
獣の気配、群成す者たちが
まるであの日の冷たい瞳で見下ろす男の様
…近づくなよ、けだもの
闇を裂くよう月で払う刃は血飛沫に濡れ
自身さえも赫を纏う
獣を数え水浴びでもするみたいに
鮮血は狂い咲く
愉しいね、お前もそうだろう、燿夜
真っ赤に染まった掌で頬を拭っても
髪から滴るあかは止めどなく
俺は結局、こんな風でしか生きられない
所詮けだものの子はけだものだ
胡乱だ眸は鉄格子を超えられぬまま
――よく似た部屋を、識っている。
それは、昏くて、寒くて。
光を遮断し鉄格子に嵌められた冷たい部屋。
今目の前に広がる風景と……そっくりな。
刹那、宵鍔・千鶴(nyx・f00683)に脳裏に甦るのは、フィルムの様に映し出される記憶。
見開いた瞳がみるそれは、喉を震わせて。足が、鉛みたいに動かなくなって。
「っ、う……!」
むっと噎せ返る赫の匂いに、こみ上げる嘔気は止まらず。
は、と自然に上がる息。
そして――ぷつり、ぷつりと。何かが千切れるおとがする。
そんな肩で何とか息をしながらも、ふと顔を上げれば。
『グルルルゥゥ!』
そこには数多の、血の匂い漂わせる獣の気配。
そんな群成す者たちが――まるで、あの男の様で。
あの日、見下ろしていた冷たい瞳。
「……近づくなよ、けだもの」
闇を裂くよう月で払うその刃も。
血飛沫を浴び、べとりと纏わりつくそのいろに濡れて。
自身さえも赫を重ね、纏ってゆく。
ひい、ふう、みぃ――鮮血は狂い咲く。獣を数え水浴びでもするみたいに。
そして……ふは、と零れ落ちるのは、笑み。
「愉しいね、お前もそうだろう、燿夜」
いくら頬を拭ってみせても。真っ赤に染まった掌では、尚も染まる一方で。
闇色の髪から滴る昏いあかは、ぽたり、ぽたりと止めどなくて。
千鶴は己を染めるいろを、ただ見つめ、ただ浴び続けながら言の葉を零す。
「俺は結局、こんな風でしか生きられない」
――所詮けだものの子はけだものだ、って。
そう胡乱だ眸は、鉄格子を超えられぬまま。
だって、今立っている此処はやっぱり――鉄格子の中なのだから。
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
綾華兄さんf01194と
元アリスなんだよな
何があったんだろ
しかしさすがにこの血の匂い…
思い出しちまう
師匠がいなくなった日
首振り
いや綾華兄さんが無事なら大丈夫
もう過去には囚われない
例えば仮に
覚えていない過去でこの拳が
…血に塗れていたとしても
覚悟決め
平気
呼ばれ手をひらひら
敵現れたら牽制で衝撃波放ち
ダッシュで近い敵と間合い詰めUC起動しグラップル
拳で殴る
お?
駆け込んできたのに気付き
斬り込みに合わせ足払いでなぎ払い
蹴り飛ばす
(…らしくねぇな)
色男は何したって似合うんだよ
水も滴るって言うじゃん
軽く気遣い
返り血だよ
見えてて聞こえてりゃ避けれる
何て事ねぇ
それに
綾華兄さんが平気なら平気
撫でられ
追いかけ並ぼうと
浮世・綾華
理玖(f22773)と
蔓延する血の香りに酔うこともない
理玖は大丈夫だろうか
――理玖
(無理はしないで欲しい
でも来ちまった以上は乗り越えなきゃいけないから
…少しでも早く終わらせようと)
咎力封じ
いつもなら補助に回るが
今回はどうにも気が進まないのは
嗚呼
あかを浴びる彼をみれば
自然と刃を握る手に力が籠るから
理玖、ひとりで男前になってんじゃねーよ
枷を放つと同時に駆けながら敵を裂く
浴びるあかに向けられた視線があったなら
似合うだろと目を細め
(彼奴が似合うって言ってくれた色だから
なんて口にはしないケド)
怪我、してねぇよな?
ならいいとくしゃり頭を撫で
(怪我させたら
理玖を大切に想う奴等に顔向けできないからな)
―行くぞ
昏く陰鬱な病院、むっとこもったような澱んだ空気。
そしてそこかしこに飛び散っている、あかのいろ。
けれどその只中にあっても、浮世・綾華(千日紅・f01194)は蔓延する血の香りに酔うこともなくて。
ふと視線を、陽向・理玖(夏疾風・f22773)へと向ける。
――理玖は大丈夫だろうか、って。
そんな綾華の心の内には気付かずに。
「元アリスなんだよな。何があったんだろ」
この悪夢を見て、この場所を具現化した元凶……オウガ・オリジンのことを考えてみる理玖だけど。
(「しかしさすがにこの血の匂い……思い出しちまう」)
――師匠がいなくなった日、と。
けれどすぐに大きく首を横に振って。
(「いや綾華兄さんが無事なら大丈夫」)
自分はひとりではない。すぐ隣には今、綾華がいるのだから……きっと、大丈夫。
そして理玖は改めて確りと心に紡ぐ。
(「例えば仮に、覚えていない過去でこの拳が……血に塗れていたとしても」)
――もう過去には囚われない。
そう覚悟を決め、胸に抱いて。
そんな彼を、綾華は見守る様に見つめて。
……無理はしないで欲しい、そう強く思うのだけれど。
(「でも来ちまった以上は乗り越えなきゃいけないから」)
……少しでも早く終わらせよう、と。密かに心に決めながら。
「――理玖」
彼の名を呼んでみる。
その声に顔を上げて、平気、って。
理玖も手をひらひら、綾華へと返せば。
『グアアァァッ!!』
現れたのは、オウガ・オリジンの零したあか――悪夢の獣たち。
そんな鮮血のいろをした獣たちに、牽制で衝撃波を放つのは、理玖。
さらに戦場を駆け、近い敵と一気に間合い詰めてから。
――見えた。
明鏡止水を展開し、握り締めた拳を悪夢の獣へと叩き込み、捻じ込む。
刹那、鮮やかなあかが弾けて理玖を染め上げる。
綾華も咎力封じを展開し、いつもの様に補助……は、今回どうにも気が進まない。
その理由は、眼前の理玖の姿。
あかを浴びる彼をみれば……自然と、刃を握る手に力が籠るから。
そして、枷を放つと同時に。
「理玖、ひとりで男前になってんじゃねーよ」
駆けながら、綾華は敵を裂いて。同じ様に、己もあかを浴びる。
そんな様子に、……お? と。
駆け込んできた綾華に気付き、斬り込みに合わせ足払いでなぎ払い、獣を蹴り飛ばす理玖。
そして浴びるあかに向けられた視線に、笑みを返してみせる。
……似合うだろ、と目を細めて。
(「彼奴が似合うって言ってくれた色だから、なんて口にはしないケド」)
理玖は、自分へと笑んでみせるその顔を見て。
(「……らしくねぇな」)
そう、すぐに思うけれども。
「色男は何したって似合うんだよ。水も滴るって言うじゃん」
軽く気を遣うように返す。
綾華はそんな理玖が纏うあかに、改めて視線を向けて。
――怪我、してねぇよな?
ぽつりとそう、紡げば。
こくりと頷いて、理玖は返す。
「返り血だよ。見えてて聞こえてりゃ避けれる。何て事ねぇ」
……それに綾華兄さんが平気なら平気、と。
そんな言葉に、ならいい、と。
綾華が手を伸ばした先は、理玖の頭の上。
そして、くしゃりと黄昏色の髪を柔く掻き混ぜ、頭撫でながらも思う。
(「怪我させたら、理玖を大切に想う奴等に顔向けできないからな」)
此処は戦場、それは十分にわかっているし。
理玖の力だって知っているのだけれど。
……それでも、やっぱり――。
けれどそんな気持ちに、鍵を掛けて。
綾華は理玖へと、声を投げる。
「――行くぞ」
そして撫でられた感触が残る頭に、理玖は一瞬だけ手を添えてから。
駆けだした綾華を追いかける――彼の隣に、追いつき並ぼうと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
橙樹・千織
悪夢の具現化に獣達
何故病院にと問いたいけれど
そんな暇は無さそうね
範囲攻撃の衝撃波とUCを使用し複数の獣を纏めて攻撃
赤
緋
紅
全てが
あかに染まる
身体に広がる紋も
思考さえも
ふふ…あはは
…あぁ、なるほど
染まるほどに獣の側面が強く
爪は常より鋭く
瞳孔は縦に裂け
虹彩に深紅が過ぎる
どちらのものかわからぬあかに濡れた己と
向かってくる獣と相対し
浮かべるは獲物を見つけた獣の笑み
…そうだ。そうしよう
愛しい者達が好いているこの世界を喰らうなら…
彼らと過ごした思い出が残るこの世界を喰らうというならば
私がお前達を喰らい尽くそう
刃を獣の首に向けて振り抜き、なぎ払う
この世界を喰らう獣がいなくなるその時まで
さァ、狩りを続けよう?
陰鬱なこの場所は、オウガ・オリジンの中に眠っていたもの。
(「悪夢の具現化に獣達」)
何故病院に――橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)はそう、問いたいところだけれど。
「そんな暇は無さそうね」
向けられる数多の殺気と鉄錆の如き匂い、そして鮮血のようないろ。
それを一掃するべく、千織は舞うように灼熱の炎咲かせる剣舞を披露する。
赤、緋、紅――全てをあかに染めながら。
そう……全てが、あかに染まる。
身体に広がる紋も、思考さえも、ぜんぶあか。
「ふふ……あはは……あぁ、なるほど」
そして思わず零れるのは、笑み。
染まれば染まるほど、そのいろが纏わりつくほどに。
爪は常より鋭く閃き、瞳孔は縦に裂け、虹彩に深紅が過ぎ――獣の側面が、強くなって。
――見ぃつけた、って。
もうどちらのものかわからぬ……もうどちらのものでも構わぬあかに濡れた己と、向かってくる獣と相対しながら。
千織に浮かぶのは、獲物を瞳に捉えた、獣の笑み。
それから飛び散るあかにも構わずに、楽し気に言の葉と笑みを落とす。
「……そうだ。そうしよう。愛しい者達が好いているこの世界を喰らうなら……彼らと過ごした思い出が残るこの世界を喰らうというならば」
――私がお前達を喰らい尽くそう、って。
閃く刃を獣の首へと向けて振り抜き、なぎ払って刎ね上げて。
この世界を喰らう獣がいなくなるその時まで……千織はあかを飛び散らせ、浴び続ける。
――さァ、狩りを続けよう? って、爛々と笑って。
大成功
🔵🔵🔵
篝・倫太郎
【華禱】
檻か……
確かに外へ出て貰っちゃ困る存在だけど
視界を常時確保出来るよう
電脳ゴーグル装備
夜彦……
流石に血塗れにする気はないんだろう
言う前に仕舞われた簪に安堵するのも束の間
拘束術使用
射程内の敵、総てを鎖で先制攻撃と同時に拘束
特に馬型、一角獣型は確実に拘束する
拘束から逃れた敵は衝撃波を乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返してフェイント混ぜつつの2回攻撃
敵の攻撃は見切りと残像で回避
呆気ない手応えとは裏腹に
噎せ返るような鉄錆の匂いと熱
戦場独特の空気と気配
気持ちが昂って歓喜してるんだろう
背中の羅刹紋が熱い
口角が上がりそうになる自分を
夜彦には余り見せたくはないんだけどな
なんてどこか遠く思いながらまた血を浴びて
月舘・夜彦
【華禱】
オリジンは始まりのオウガでもありますがアリスでもある
彼女の悪夢はアリスのものでもあるのかもしれません
戦う前に本体の簪が血を浴びないよう懐へ仕舞う
ダッシュで駆け出し、敵に接近
視力にて倫太郎殿の力で拘束された敵を確認
拘束されている敵が多い方に向かい、早業の抜刀術『陣風』
刃には破魔と浄化の力を付与
二刀流の2回攻撃で手数を増やし
なぎ払いにて広い範囲に仕掛ける
敵の攻撃は回避できるものは残像・見切りにて躱す
回避が困難であれば武器受けにて攻撃を受け止める
いずれも凌いだ後、カウンター
戦をしていれば、血は浴びるもの
刀のように接近して斬るのならば特に
今更抵抗はありませんが……気分が良いものではありませんね
昏く湿ったような空気の病院にぐるりと嵌めてある鉄格子。
それは、まるで。
「檻か……確かに外へ出て貰っちゃ困る存在だけど」
篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)の言う様に、まるで檻のようで。
それは、誰を閉じ込める為のものなのか。
オウガ・オリジンなのか、それとも――。
「オウガ・オリジンは始まりのオウガでもありますがアリスでもある。彼女の悪夢はアリスのものでもあるのかもしれません」
月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)も、この国を作り出し、悪夢を噴出させ続けている存在について思考を巡らせてみるけれど。
倫太郎は視界を常時確保出来るようにと、電脳ゴーグルを装備しながらも。
「夜彦……」
彼へと視線を向け、何かを言いかけるも。
次の瞬間、ほっと安堵する。
夜彦が本体の簪を、言う前に仕舞ったことを目にして。
けれど――それも束の間。
『ガアアアァァッ!』
現れたのは、馬型の悪夢獣。
けれど、刹那獣を縛り上げたのは。
――縛めをくれてやる。
倫太郎の繰り出した、災いを縛る見えない鎖。
馬型や一角獣型を中心に、射程内の敵総てを拘束するべく先制の術を展開して。
タッと地を蹴り、瞬時により多くの敵が拘束されている場所を見極めて。
藍の髪を躍らせ、夜禱抜き放つ夜彦が生み出すのは、鋭く巻き起こる一陣の風。
――全て、斬り捨てるのみ。
さらに蒼と銀の清流の如き刃と二刀をもって連撃を放ち、敵の群れを容赦なく薙ぎ払えば。
弾ける様に飛び散るのは、纏わりつくようなあかの色。
倫太郎も敵を逃さぬよう、衝撃波生み出す華焔刀を大きく振るった瞬間。
呆気ない手応えとは裏腹に、戦場に一瞬にして満ちるのは――噎せ返るような鉄錆の匂いと熱。
それは、戦場独特の空気と気配。
……けれども。
どうしても自然と口角が上がりそうになる自分に気付きながら、倫太郎は思う。
気持ちが昂って歓喜してるんだろう、って。背中の羅刹紋が、熱いから。
――それと同時に。
(「夜彦には余り見せたくはないんだけどな」)
……なんて、どこか遠く思いながらも。
倫太郎はまた血を浴びて、密かに昂る気持ちに琥珀の瞳を爛々とさせる。
そして。
「今更抵抗はありませんが……気分が良いものではありませんね」
戦をしていれば、血は浴びるもの。まして、刀のように接近して斬るのならば特に――と。
そう思いながらも紡がれた夜彦の言葉に、複雑な気持ちをそっと抱える倫太郎であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ディアナ・ロドクルーン
この病院は…?
陰鬱な空気、鉄格子、頭の中がチリチリする
この雰囲気は―嫌いよ。思い出したくもない事を思い出させるようで背筋が凍り付く
ああ、早くここから出たいわ
オウガ・オリジンをさっさと倒しましょう
赤く、赫く、手も、顔も、視界も全て赤く染まろうが厭わない
赤い、赫く燃える命の色。鉄錆の臭い
私の中に眠る獣が目を覚ます
は―っ、ははははっ!流せ、流し尽くせ!
散らせなさい、血も、命も
全ては躯の海に還るのだから
殺して、殺して、殺しつくすわ
敵の攻撃は第六感や見切りで回避を、近接の悪夢獣は剣で切り伏せる
血の滑りに足を取られ、血に酔いしれて、うすら笑みを浮かべながら、周りに動く者のがいなくなるまで殺戮を繰り広げる
――頭の中が、チリチリする。
陰鬱な空気、鉄格子、この病院は……?
ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)はそう問いながらも、大きく首を横に振る。
「この雰囲気は――嫌いよ」
凍り付く背筋。思い出したくもない事を、思い出させるようで。
ディアナは進むその足を速める。
「ああ、早くここから出たいわ。オウガ・オリジンをさっさと倒しましょう」
此処は嫌い。だから、一刻も早く出たいから。
『ガアアアッ!!』
襲い来る獣のいろも、あか。
そしてそれを透明なガラスの薔薇で切り裂けば――飛び散るそのいろも、あか。
それだけではない。
手も、顔も、視界さえも、全てが赤く、赫く。
でもそのいろにいくら染まろうが、ディアナは全く厭わない。
いや――むしろ、その赤い、赫く燃える命の色は。鼻につく、鉄錆の臭いは。
ディアナの中に眠る獣を、目覚めさせる。
爛々とギラつく瞳、蕩ける様な恍惚の表情、くつりと笑みに鳴る喉。
そしてディアナは昏い天を仰ぎ、声高らかに紡ぐ。
「は―っ、ははははっ! 流せ、流し尽くせ! 散らせなさい、血も、命も。全ては躯の海に還るのだから」
――殺して、殺して、殺しつくすわ、って。
鋭利なガラスの薔薇の花びらで数多のあかを飛び散らせ咲かせて。
近づいてくる獣は、剣で斬り伏せてゆく。
そして周りに動くものがなくなるまで……ディアナはその身に血を浴び続け、ひたすらに殺戮を繰り広げる。
血の滑りに足を取られ、血に酔いしれて――獣の如き、うすら笑みを浮かべながら。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
「悪夢は終わらせなくちゃいけないわ。そうでしょう?」
次々と生み出される悪夢獣を銃で射撃するわ。
数が多ければユーベルコード【マルチプルバレット】の雷の弾丸の雨で撃破する。
あかに染まるのね。
ええ、良いわ。
私の前であかく染まって命を失った人は少ない数じゃない。
私が手を下したわけじゃないけど・・・
「どうせ私はもともと血まみれよ?」
皮肉っぽく自嘲しながら敵を倒すわ。
…青に赤を足せば紫、ね。
左目だけでも閉じておきましょうか。
せめてそちらの藍色だけでもそのままにしておきたいから。
此処は、オウガ・オリジンから噴出し続ける「無意識の悪夢」。
その手首から流れ落ちるそのいろは止めどなくて。
縦横無尽に駆けまわり続ける……いつまでもいつまでも、醒める事のない悪夢の獣となって。
いや――作り出した本人が醒める事ができないのならば。
「悪夢は終わらせなくちゃいけないわ。そうでしょう?」
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は、艶のない漆黒の銃を構える。
この悪夢を、終わらせるために。
そして飛び掛かって来た兎型の悪夢獣へと、躊躇なく引き金を引いて。
次から次へと現れる赤き獣たちに、雷の弾丸の雨をお見舞いする。
刹那、沢山のあかがべちゃりと飛び散り、ヴィオレッタの身を上げ染める。
けれど、それでも構わない。
「あかに染まるのね。ええ、良いわ」
だってこのいろは、これまで沢山みてきたものだから。
――私の前であかく染まって命を失った人は少ない数じゃない。
直接自分が手を下したわけではないのだけれど。
ヴィオレッタは再び狙い澄まし、悪夢獣へと引き金を引く。
「どうせ私はもともと血まみれよ?」
そう、皮肉っぽく自嘲しながら。
そして引き金を引くたびに、あかのいろが重なり濃くなって。
金色の髪も、色白の肌も全部、あかのいろに染まってゆくのだけれど。
「……青に赤を足せば紫、ね」
ヴィオレッタは、左目だけでも閉じておくことにする。
せめてこの藍色だけでも、そのままにしておきたいと――そう、思ったから。
大成功
🔵🔵🔵
飛白・刻
鉄格子の世界は厭きる程に見慣れ
其処に蔓延る獣臭は段々と
同時に己が鼓動は凍る程に靜かに
噫、俺の刃は短いからな
眼前で抉るのみ
当の然に血も浴びる
真白はあかく、赤く、赫く
どれだけ塗れようと其処に意識が向くは無い
此れがどうと云うべきものかは解らない
血を浴びたからかは識らぬ
ただ、感覚が、感情が麻痺していく
顔色も表情も変えず
その瞳だけは氷細工の様に凍て
そうやって
根絶やしにした
そうやって
見世物にした
何が残酷なものか
やられたことをやり返しただけだ
”凡て刈り取るまで出られなかった”
己が過去をも重ねて襲ねゆく
此れは…愉しくは、ないな
刹那的に過ぎったもの
手は止まることなく確実に仕留めゆく
血の海に佇むが己のみとなるまで
昏く冷たい、陰鬱な空気。
そして、全ての窓という窓に嵌められた鉄格子。
けれど其れは、飛白・刻(if・f06028)にとって物珍しい光景ではなく。
寧ろ、厭きる程に見慣れたものであった。
そんな世界に蔓延る獣が漂わせるのは、むっと籠る様な錆び臭い鉄の匂い。
同時に刻の鼓動は凍る程に靜かで。
猛り啼きながら駆けるあかきそれらとは真逆の冷え色を帯びている。
そして手にするは無名の短刀。
朧に耀う刃をふと見遣りながら、刻は言の葉を零す。
「噫、俺の刃は短いからな」
故に――眼前で抉るのみ。
鮮血と化すそのいろを間近で浴びる事は明白。
そして、飛び掛かってくる獣どもをその刃で抉ってやれば。
あかく、赤く、赫く……染まりゆく真白。
けれども、幾重にもあかが折り重ねられようとも、べちゃりと弾け飛び散ろうとも。
どれだけ其れに塗れようとも……刻の意識が其処に向く事は無い。
だが、だからこそなのか。
――此れがどうと云うべきものかは解らない。血を浴びたからかは識らぬ。
ただ、麻痺していく。感覚が、感情が。顔色も表情も変えることさえなく其の儘に。
そしてその瞳だけは、凍てた冷え色。まるで氷細工の様に。
……そうやって根絶やしにした。
……そうやって見世物にした。
(「何が残酷なものか」)
飛び散るあかを映す凍てたいろが、微か細められる。
やられたことをやり返しただけだ、と。
――”凡て刈り取るまで出られなかった”のだから。
そして刻は、不躾にびちゃりと撒かれ真白を染めるあかに重ねて襲ねゆく……己が過去をも。
欠月に遺る記憶も握る刃に浴びた血も、朧なもののはずなのだけれども。
「此れは……愉しくは、ないな」
刹那的に過ぎったものが、そう言の葉を紡がせる。
けれどその手は止まることなく、躊躇う仕草の欠片も無く。
猛る悪夢の獣を確実に仕留めゆき、ただ只管に鉄錆のあかを刻は浴び続ける。
血の海に佇むが、己のみとなるまで。
大成功
🔵🔵🔵
アパラ・ルッサタイン
オウガ・オリジンといえどもその身から溢るるのは鮮血なのか
不思議とおかしく思ってしまうよ
血を流し悪夢に苦しむ
まるであたし達と変わらないじゃないか
血煙のようなアンデシンを嵌め込んだランプを掲げて
赤を明々と灯してやろう
さあお出で【火色】
あの獣たちを焼いてさしあげよう
多少蒸発させたとて、金錆びたぬめりが纏わりつく
これはまた、あたしのオパールより濃い赤だこと
悪くない
綺麗な色だ
帰ったらこの色のランプを作ろうか
ぬらりと煌めく命の色の石で
それに炎がゆらりと灯って……、あは、は
その為にも、ねえ
もっともっと、良く見せておくれよ
忘れぬように
お礼に安寧の夢を贈ろう
ね、おやすみよ
だって早く帰りたいんだ
忘れてしまわぬ内に
閉鎖された灰色の病院に飛び散るそのいろは、鮮やかなあか。
手首から止めど無く零れ落ちるそのいろを見つめ、アパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)は不思議と可笑しく思ってしまう。
「オウガ・オリジンといえどもその身から溢るるのは鮮血なのか」
……血を流し悪夢に苦しむ。まるであたし達と変わらないじゃないか、って。
灰色の空に掲げるのは、あかはあかでも、美しく妖しき血煙のようないろ。
赤を明々と灯してやろう――そう、アンデシンを嵌め込んだランプで照らしてあげる。
さらにそのいろを彩る様な灯火で。
いや、飛び散るあかを煌々とさせるのは、何も掲げるランプの彩だけではない。
「さあお出で『火色』」
……一緒に燃えよう?
『グルルゥゥッ!』
「あの獣たちを焼いてさしあげよう」
刹那、ねっとりとしたあかのいろを燃やすのは、ファイアオパールの輝きに煽られ燃え盛る猛炎。
そして獣のカタチを成し襲い来たそれらが焼け焦げ、ばしゃりと弾け飛び散って。
多少は焼いて蒸発させたけれど、べとりと纏わりつくのは金錆びたぬめり。
そのあかを掬い取り、アパラはまじまじと見つめてみて。
「これはまた、あたしのオパールより濃い赤だこと」
――悪くない、綺麗な色だ。
「帰ったらこの色のランプを作ろうか」
ぬらりと煌めく命の色の石で……あかく、あかく、世界をひたすら染めるような逸品を。
「それに炎がゆらりと灯って……、あは、は」
濃く深いそのいろに刺激され、心に沸き立つ衝動にアパラは笑み零す。
だから――その為にも、ねえ。
「もっともっと、良く見せておくれよ。忘れぬように」
再び猛火が牙を剥くあかを焼き、びちゃ、びちゃりと派手に弾けて。
そのいろを、アパラは一身に浴びる。忘れないように、焼き付けるかの様に。
けれど、深く濃いあかを見せてくれたから。
「お礼に安寧の夢を贈ろう」
……ね、おやすみよ。
ゆらゆらと気侭な遊色は逸るようにばしゃりと、悪夢の獣を鮮血へと変えてゆく。
あかを灯し、あかで燃やし、あかを撒き散らしながら。
そわりと、早く全て燃やし尽くさんと。
アパラは九重に折り重なり燃え盛る火色を再び獣へと灯す。
そのあかに塗れながら。
「だって早く帰りたいんだ」
――忘れてしまわぬ内に、と。
大成功
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楼・静鳳
アドリブ・連携歓迎
感情を知らず血も流れぬまだ数歳のヤドリガミ
敵を殲滅
剣と髪で敵に【範囲攻撃】の【なぎ払い】【串刺し】
敵の攻撃は【激痛耐性】で【武器受け】し【カウンター】攻撃を返す
血の向こう、オウガ・オリジンに
「俺のぶんまで流してくれるのだね」
血と命を
「苦しむ心
手に入れたなら
求めなければと後悔するかもしれない
けれど
大切なものだと俺の知る人は言った」
救いなき苦しみ
確かにその中で笑顔を遺した人
なぜ俺は心を得ようとする
わからないが
あの時こうすべきだったとわかる
血濡れた己が衣を捌きUCで敵を攻撃
俺という対象が後退しても攻撃は対象外ゆえ進む筈
叶うならオリジンをも
そう
葬るという儀式
炎よ血と涙を抱き天まで昇れ
――ああ、ああああ、嗚呼……!!
声が、聞こえる。
それは錆び臭い赤が飛び散る、向こう。
近いのに遠い――オウガ・オリジンの苦悶の叫び。
止めどなく流れ獣と化すそのあかを瞳のものと重ね、楼・静鳳(紫炎花燈・f18502)は紡ぐ。
「俺のぶんまで流してくれるのだね」
今の己では流す事の叶わぬ、血と命を。
まだ顕現して数歳の静鳳はわからない。
脈動する赤き熱も、苦悶し叫ぶその心も。
けれど、識ってはいるのだ。
「苦しむ心――手に入れたなら、求めなければと後悔するかもしれない。けれど大切なものだと、俺の知る人は言った」
分からないが、でも教えてくれた。それは大切なものなのだと。
救いなき苦しみ……確かにその中で笑顔を遺した人。
(「なぜ俺は心を得ようとする」)
……わからない。
わからないが――あの時こうすべきだったというのは、わかる。
刹那、むっと籠った鉄錆臭いそらに華が舞う。風を鳴らし、戦いに躍る様に。
同時に、びちゃりと飛び散ったあか。
けれども塗れたそのいろに何も心揺れぬまま。
血濡れた己が衣をばさりと捌き静鳳が生み出すのは、清らかなる猛き火炎。
(「俺という対象が後退しても攻撃は対象外ゆえ進む筈」)
『グアッ、ガアアアァァ!』
悪夢の獣でさえも、燃やされあかを飛び散らせる今際には、苦しむ様な断末魔を上げるというのに。
いや、苦しみ叫ぶオウガ・オリジンが零れ落とした存在故に、それはむしろ当然のものかもしれない。
獣のあかが飛び散り浴びるたびに、そのいろは濃く深く静鳳を染め上げるけれど。
(「叶うならオリジンをも」)
――清め、熱き息吹よ此処に。
静鳳は己から自在に出ずる清炎を以って燃やし、焼き尽くしてゆく。
……炎よ血と涙を抱き天まで昇れ。
全てを浄化し鍛え昇華するために。
鉄格子の嵌った灰色の病院も、鉄錆臭い赤も、悪夢の獣も……それを生み出した、オウガ・オリジンさえも。
その全てが、まるで夢だったかの様に消えてゆく。
それでも今はまだ……その心は感情というものを知らぬまま。
そう――此れはただ、葬るという儀式。
大成功
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