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迷宮災厄戦⑱-19〜あかいゆめ

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン #悪夢獣


●あかいゆめ
 それはくらい、くらいくらいくらい、夢の中。
 薄暗い病室の中、ぼろぼろの寝台だけがぼうと光を纏うよう。
 その上でオウガ・オリジンは呻いていた。

 ああ、ああ、あああああ!!
 これはなんだ、ちからをとりもどした。
 しかし、しかし――あふれて、こぼれていく!
 これは、これは、これはこれはこれは!
 わたしの――わたしの、

 己から噴き出す――それは悪夢。
 己の内に眠っていた『無意識の悪夢』がオウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードをたどって現実へと手を伸ばした。
 オウガ・オリジンが叫ぶたびに、病院の囲いはさらに厚くなるよう。
 病院の窓には鉄格子。それがさらに増えて、日の光をさえぎって暗くしていく。
 ちかちか、病室の灯りももうとぎれそうだ。
 悪夢がオウガ・オリジンを浸していく、冒していく。
 オウガ・オリジンの手首から、いやそれ以外からも噴出するは鮮血の如き色。それは『悪夢獣』となって病院の中を走り抜けていく。
 その形は、馬に狼に兎――それらは楽しそうに病院の中を駆け巡る。
 まるでオウガ・オリジンの中から出れたことを喜ぶように、楽しそうに――駆け巡る。
 暗く陰鬱な病院の中を、我が物顔で。その身の色だけ、鮮やかさを一層増して。

●悪夢は駆ける
「オウガ・オリジンとの戦いにまた、向かってほしいんじゃ」
 そう言って、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は次は病院にと紡いだ。
 それは全ての窓に鉄格子の嵌められた、暗く陰鬱な病院。それはオウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードによって生み出された場所。
 そこでオウガ・オリジンは己の『無意識の悪夢』に苛まれているのだ。
 オウガ・オリジンから噴出するのは鮮血の如き色。それは馬や狼、兎といった獣の姿を取って病院の中を走り回っている。
 それらをすべて倒し切れば、オウガ・オリジンも姿を消すだろうと嵐吾は言葉続ける。
「その獣たちは数が多い。それに倒せば、その身は汝らに降りかかる」
 赤い、鮮血。倒せばそれらは溶けるように、その身に降りかかるだろうと嵐吾は言う。
 だからといって何か体に起こる、ということは――ないとは思うのだが。
「己の身が血に塗れて、それで高揚する者もおれば気が滅入るものもおるじゃろ」
 だから、向き不向きはあるかもしれんと言う。ゆえに、そういったことを問題ないと思うものに頼みたいと、嵐吾は手の内のグリモアを輝かせ、猟兵達をその場所へと送る。
 どこかの不思議の国――閉ざされた、何者の侵入も許さず、そして出ることを許さずの暗く陰鬱なる病院の中へ。


志羽
 御目通しありがとうございます、志羽です。
 詳細な受付期間については【マスターページ】で案内しますのでお手数ですが確認お願いいたします。
 プレイングが送れる限りは送って頂いて大丈夫ですが、すべて採用となるかどうかはわかりません。

●シナリオについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●プレイングボーナスについて
 プレイングボーナスは『鮮血にまみれながら、悪夢獣と戦う』です。
 どうぞお好きに。

 もしかしたら、何名様かまとめて書くこともあるかもしれません。

●お願い
 グループ参加などの場合は、ご一緒する方がわかるように【グループ名】や【ID】を記入していただけると助かります。また、失効日が同じになるように調整していただけると非常に助かります。
 プレイング受付についてはマスターページの【簡易連絡】にて案内いたします。
 受付期間外に送って頂いたプレイングについてはお返しします。ご協力よろしくお願いします。受付期間中であれば再送については問題ありません。

 以上です。
 ご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『『オウガ・オリジン』と悪夢のアサイラム』

POW   :    ナイトメア・パレード
【巨大な馬型悪夢獣の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【一角獣型悪夢獣】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    悪夢の群狼
【狼型悪夢獣の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    忠実なる兎は血を求む
【オウガ・オリジンに敵意】を向けた対象に、【鋭い前歯と刃の耳を持つ兎型悪夢獣】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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黒鵺・瑞樹
右手に胡、左手に黒鵺(本体)の二刀流

隠密攻撃を主とする以上、血を浴びるのは感知されやすくなるから避けたいものだけど。
鮮血は人であったという証明か。

UC月華で真の姿に。
存在感を消し目立たない様に立ち回るのを基本とするが、今回ばかりは難しいかな。
仮にも獣の姿をしてるのだから。
胡を、時に本体を振るいながらマヒ攻撃を乗せた暗殺攻撃で、まともに動ける個体を減らしていく。
…刃の耳の兎。見覚えがある姿に思うのは、自分と変わらないという事。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。



 決して明るい気配などはない。
 薄暗い病院――その中を駆ける、悪夢獣の姿がいくつもあった。
 それは馬か、狼か、それとも兎か。
 黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)はその右手に胡を、左手に己の本体たる黒鵺を持っていた。
「隠密攻撃を主とする以上、血を浴びるのは感知されやすくなるから避けたいものだけど」
 鮮血は人であったという証明か――と瑞樹は零す。
「あまり使いたくないんだがな」
 呟いて、月読尊の分霊を降ろし、真の姿となる瑞樹。
 その代償は己の寿命を削ることだ。
 存在感を消し、目立たないように立ち回ることを基本としているが、今回はそれも難しそうだ。
 ぺたん、ぺたんとゆっくりと、規則的な足音がいくつか聞こえてきた。
 それは今いる廊下の、その先から。
 そこから飛び出してきたのは鋭い前歯と刃の耳を持つ兎型悪夢獣だ。
 仮にも獣の姿をしている。そして、その動きは兎のそれ。
 だが思っているよりも素早く、そして何匹かが連携して動いてくる。
 胡をふるう。それは刃の耳でなぞらえられた。
 そしてもう一方、黒鵺でマヒを乗せて瑞樹は死角から攻撃をかけた。
「……刃の耳の兎、か」
 見覚えがある姿に思うのは、自分と変わらないという事。
 飛び込んできた兎は鋭い前歯を向ける。がちん! と刃をかむ音。瑞樹がそのまま刃振りぬけば、赤い鮮血が飛び散る。
 けれどそれはまだ一体。仲間の仇を取ろうというのか、他の兎たちもとびかかってきた。
 瑞樹はそれらにも二刀を向け、この場を切り抜けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
悪夢が形を成した赤い獣、な
さっさと片してさっさと還って貰うとしますか……

鮮血被っても視界を確保するために電脳ゴーグル装備してく
出来るだけ、立ち回りしやすそうな場所で戦闘

天地繋鎖使用
出来るだけ小さい対象を優先して出来るだけ複数を指定
大きいのは華焔刀の攻撃でも外し難いからさ
UC発動と同時に視認出来る対象へ
衝撃波と生命力吸収を乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して範囲攻撃
以降はフェイントも交えて背後にも注意しつつ戦闘

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防ぐ

血の臭いも色も熱も、嫌いじゃねぇぜ?
命の臭いで色で熱……
どう足掻いたって、戦闘は血湧き肉躍る

こんな姿、俺の刃には余り見せたかねぇなぁ……



 薄暗い、陰鬱な――病院。
 窓はすべて鉄格子で塞がれて、日の光を通そうという気がまったくない。
 こんなところに長くいれば、気が滅入るのはきっと当然のことなのだろうと思わせるような場所。
 その場所で、悪夢が獣の形をとって遊んでいる。
「悪夢が形を成した赤い獣、な」
 飛び出してきた一体を払って、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は零す。
「さっさと片してさっさと還って貰うとしますか………」
 びしゃりと跳ねた鮮血の色。
 倫太郎は鮮血を被っても視界を確保するために電脳ゴーグルを装着していた。
 戦いの場所として選んだのは階段の踊り場。
 少し開けた場所は武器の取り回しもしやすい。
 また、下からぺったんぺったんと何かがやってくる足音がした。
 それも下から。ぴたり、足音が止まったかと思えば一気に駆け上がってくる音。
「其処に天地を繋ぐ鎖を穿て」
 倫太郎は出来るだけ小さい対象を優先し複数を捉える。
 けれどその中から飛び出してきた兎。前歯をむいて潰れた鳴き声を上げながらとびかかってきたそれを華焔刀の刃でとらえた。
 体を半分に、跳ねる。その瞬間びしゃりと跳ねて赤が飛び散った。
 そしてそのまま、鎖でとらえたもの達へも、衝撃波を乗せた一閃をふるう。
 飛び散った赤い色。それから――むせかえるような。
 その香りに、は、と倫太郎は息吐いた。
「血の臭いも色も熱も、嫌いじゃねぇぜ?」
 それは命の臭いで色で熱……――そうであることを、知っているからだ。
 それに、と苦笑するように口端に笑み乗せて。
「どう足掻いたって、戦闘は血湧き肉躍る」
 ああ、でもと倫太郎は独り言ちる。
「こんな姿、俺の刃には余り見せたかねぇなぁ……」
 ここにいないことは、幸か不幸か。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネーヴェ・ノアイユ
この病院の雰囲気。まるでホラー映画のようで少々苦手ですね……。まさに悪夢のような光景です……。

兎様の攻撃……。的確にこちらを捉えてこようとしてきますね……。最初は氷壁の盾受けにて受け止め、瞬時に氷壁をUCへと変化。護りを重視しながら一体ずつ丁寧に倒しながら進みましょう。
攻撃を行う際には全力魔法にて鋭さをいつもより増して作り上げたicicle scissorsにて一刺しにしたり、鋏の状態で両断したり、二振りの刃状態で切り伏せたりなど行います。
その際に……。返り血にて赤く染まるごとにまるで悪夢から早く逃れようとするが如く攻撃的になっていきます。何度も何匹もの命と引き換えに。紅く激しく鮮烈に……。



 自分の足音は、していないはずなのに。
 誰かが様子を見ているような、変な不安が胸の中をじんわり満たしていく。
 ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)はぎゅう、と自分の手を胸の前で握りこむ。
「この病院の雰囲気。まるでホラー映画のようで少々苦手ですね……」
 ネーヴェは薄暗い廊下の先を見詰める。どこまでも暗くて――まるで飲み込もうとしているような暗さ。
(「まさに悪夢のような光景です……」)
 このまま進んでいいのか、戻ることはできるのか――ふるりとネーヴェは首を振る。
 今は進むことしか、できない。振り向いた後ろも、真っ暗でどちらに進んでも同じに思えるのだから。
 そして進んでいると、ぺたん、ぺたん、ぺたん、と。
 跳ねるような足音が聞こえてきた。
 ネーヴェがそちらを見詰めていると――きらりと赤い色が光った。
 そしてそれはネーヴェの方へと右へ左へ、跳ねながら向かってきた。
 それは兎――けれど、前歯は凶悪に剥きだされ、刃の耳は跳ねるたびにしゃんしゃんと重なって音を立てる。
 左右に揺さぶるように動きながら、狙いは自分だとわかる。
 ネーヴェは的確にこちらを捉えにこようとしていることを理解した。
 そして正面から大きく口を開いてとびかかってくる。
 けれどその牙は届かない。氷壁の盾で受け止めて――それは変化する。
「風花舞いて……。一つになれば全てを守る煌めきの盾」
 駆けた攻撃を、そのまま跳ね返す。
 ぱんと弾けるように兎の身は砕けて、その赤い色が落ちてくる。
 それは氷壁の盾の上を滑り落ちて、ネーヴェには届かなかった。
 己の身を護りながら進んでいくけれど――複数の兎たちが現れることもある。
 盾だけでは防ぎきれない。
 けれど、全力でネーヴェは身の丈ほどある氷の鋏を作り上げその身をちょきんと、真っ二つ。
 赤い、赤い色が――刃を満たしていく。
 それは悪夢の色。その色から逃れたくて――ぴょんと、また現れて耳の刃を慣らす兎へと二振りにして切り伏せるネーヴェ。
 早く、早く――悪夢から逃れたい。そうするにはどうすればいい。
 目の前に現れるこの兎たちを倒すしかないのだ。
 何匹も、何匹も。赤く、激しく鮮烈に――その赤い色から、悪夢からまるで自分が逃れるためというように、ネーヴェは刃をふるい続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ケルスティン・フレデリクション
あかい…これは、オウガ・オリジンの…?
これは、あのひとのかんじていたもの?

目に映る赤い獣に、痛みを感じる。…オウガ・オリジンももしかすれば助けなきゃいけないひとの、ひとりかもしれない。
血を浴びなければいけないのなら、【いのり】を持つね。
…接近戦は、苦手だけど…敵が襲ってくれば【カウンター】【二回攻撃】で切り刻み【吹き飛ばし】をするね。
その後は【ひかりのほし】できらきら流れ星を沢山流すよ。
【範囲攻撃】で、倒すね。
血は…あまり得意じゃないけれど…、きっとそうは言ってられないから…。
かなしいことが、かなしくなくなればいいな…
わたしたちも、みんなも、オウガ・オリジンも。
【アトリブ連携OK】



 びしゃりと跳ねて、散っていく。
 その色にケルスティン・フレデリクション(始まりノオト・f23272)は瞬いた。
 あかい――あかい、いろ。それはオウガ・オリジンの身から噴出し生まれた悪夢獣の持っていた色。
「あかい……これは、オウガ・オリジンの……?」
 オウガ・オリジンの身から生まれたという悪夢の形。対峙したそれは、兎の形をしていたがその耳は刃、そして前歯は凶悪なものだった。
「これは、あのひとのかんじていたもの?」
 そして倒しても――また、現れるのだ。
 目に映る赤い獣。その姿にケルスティンは瞳細める。
 胸中に感じる痛み。この痛みは何なのか――ケルスティンには、わからない。
 けれど。
「……オウガ・オリジンももしかすれば助けなきゃいけないひとの、ひとりかもしれない」
 助けられるなら、助けたいとケルスティンは思う。
 びしゃりと、また跳ねる。血を浴びてしまうと、その手にはふわふわと光の玉を纏った魔法の短刀を手に。
 どこからでも現れる兎たち。飛び込まれたら接近戦で対するしかない。それは苦手とケルスティンは思う。
 とびかかられたなら、手にしたいのりの、その刃を向けて吹き飛ばすだけ。
 そして距離ができれば――紡ぐのだ。
「きらきら、おほしさま」
 光る流れ星が、ケルスティンの周りに踊って。
 ぴょんと跳ねて刃の耳を躍らせてきた兎。その兎へと流れ星が次々と落ちていく。
 貫かれた兎は爆ぜるように消えて、その赤い色をまき散らす。
 その瞬間だけ、ケルスティンはきゅっと瞳を閉じて。
 けれどまた、瞳開くのだ。
(「血は……あまり得意じゃないけれど……、きっとそうは言ってられないから……」)
 ゆっくりと、けれどしっかりとケルスティンは歩み始める。
 かなしいことが、かなしくなくなればいいな……、とぽつりとケルスティンは呟く。
「わたしたちも、みんなも、オウガ・オリジンも」
 そのために――ケルスティンは確実に一歩ずつ、進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイ・デス
オウガオリジン。はじまりのオウガにして……はじまりの、アリス
こういうところもあったのだろうと、察しはできていました
どんな悪夢をみているのかは、わかりませんが……
終わらせましょう。オリジンさんは、もうオブリビオン、なのです

【覚悟、激痛耐性、継戦能力】敵の血に、自身の血に塗れることは慣れている
慣れないのは、守りたい命を守れず、その血に塗れること
守るためなら、いくらでも血に塗れましょう

獣の突撃を受け止めて、歯と耳に傷つけられ
気にせず【カウンター鎧無視攻撃】黒剣鎧からの刃で切り裂いて
再生し血に塗れながら進み

せめて、穏やかな死を

そうして輝き増した【生命力吸収】する光で
聖者の暖かな光で包み込み、消滅させる



 まっかないろがとびちっていく。
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)はふと、息を吐いた。
 薄暗く陰鬱なこの病院の中で、その獣をかたどった悪夢だけが色をもっているようだ。
 窓には鉄格子がはまり外からの光を通しはしない。
 そんな――くらいくらい、病院の中で戦いは続いていた。
「オウガオリジン。はじまりのオウガにして……はじまりの、アリス」
 なんとなく、察してはいたのだ。
 あのように怒りをまき散らしわめく姿もあれば――この病院のような。
 薄暗く、鉄格子が走り閉ざされたこの世界の中で呻き散らし苦しんでいるのはわかる。
「どんな悪夢をみているのかは、わかりませんが……」
 ひたひたと近づいてくる気配にナイは気付いていた。
 ぺったんぺったん、足音も聞こえてくる。
「終わらせましょう。オリジンさんは、もうオブリビオン、なのです」
 その呟きと共に見えたのは兎。
 けれど耳は刃、前歯を剥いてナイへととびかかる。
 空で回転して刃の耳でナイを切り裂く兎。痛みが走る。血が零れるその痛みを近くして覚悟は深まるのだ。
 自身の血に塗れることは慣れている。
 慣れないのは――守りたい命を守れず、その血に塗れること。
 守るためなら、いくらでも血に塗れて構わないとナイは思うのだ。
 着地した兎がまたとびかかってくる。今度はその前歯を向けての突撃だ。
 ナイが纏っているのは黒剣鎧。その攻撃を気にせず受けとめて。
 攻撃の瞬間に刃を突き出しその身を切り裂いた。噴き出すその血がナイを赤く染めていく。
 己の血も混ざりその赤はどちらの赤か。
 けれど、ナイの傷は塞がるのだ。
「私は、死なない。私は、死ねない」
 聖者の、聖なる光がその傷をいやしていくが、それで血の色は消えるわけではなく。
「せめて、穏やかな死を」
 現れる悪夢がかたどった獣を倒し、その色を浴びていく。
 輝き増していく聖者の光でその命の力をもらい受けながら、温かな光で包み込んで。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・エアレーザー
血の臭い、腐肉の臭い、鉄錆びた臭い……
かつて戦場で幾度となく嗅いだ「死の臭い」だ
傭兵として命を賭し、そして今もオブリビオンを狩り続ける俺に、今更何の躊躇いがあろう?
この胸の覚悟は決して揺らぐことはない

立ち向かおう
オウガ・オリジンが受けたであろう「底知れぬ狂気」を終わらせるために

【獄狼の軍団】を展開し、オリジンが召喚した悪夢獣にけしかけ牽制
馬型と一角獣型の連携を崩し敵攻撃による後退を防ぐ
敵からの攻撃は野生の勘で見切り回避
避けきれない時は盾受けからのカウンターで弾き返す

自らも鉄塊剣に炎の属性魔法を纏わせ薙ぎ払い
激痛にも、呪詛にも、狂気にも耐えて見せよう
この悪夢を、悲劇を、ここで断ち切るために……!



 ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)の眉間の間には深い皺が刻まれていた。
(「血の臭い、腐肉の臭い、鉄錆びた臭い……」)
 呼吸をするだけで、その香が身の内に染みてくる。
 これは――かつて戦場で幾度となく嗅いだ『死の臭い』とヴォルフガングは思うのだ。
 それが増すことに、己も死に一歩ずつ近づいていくような。そんな感覚がある。
 だが、そのような事を感じるとは、とふと口端に笑みは宿り。
「傭兵として命を賭し、そして今もオブリビオンを狩り続ける俺に、今更何の躊躇いがあろう?」
 この胸の覚悟は決して揺らぐことはないとヴォルフガングは思うのだ。
 一歩進み、どれだけ地に塗れようとも。
 そして――正面から荒い息を吐きながら姿を現した悪夢獣たちへと視線向ける。
 それは己の身よりも大きな体躯の馬たちだった。その中には一本角を宿した個体もいる。
「立ち向かおう」
 オウガ・オリジンが受けたであろう『底知れぬ狂気』を終わらせるために――ヴォルフガングは己の得物を敵へと差し向けた。
「忌まわしき魍魎共よ、己があるべき場所へと還れ! 何者も地獄の番犬の顎門から逃れる術は無いと知れ!」
 その声と共に地獄の炎を纏った狼犬の群れが現れた。
 いけ、と低い声で命じれば狼犬たちは目の前の馬たちへととびかかる。
 馬たちも、前足を踏み下ろしたり突撃したりと反撃をしてくる。
 その中を走り、ヴォルフガングは統率している一角獣の下へと向かう。
 嘶く一角獣により、他の馬たちが邪魔をしてくる。けれど鉄塊剣に炎纏わせ薙ぎ払った。
 他方から突撃してくるものへ盾を構えてカウンターではじき返す。狼犬たちも道を作れと果敢に挑む――その中で一角獣への道筋がヴォルフガングの前に生まれた。
 素早く走りこむ。
 攻撃を受けた体は激痛がある。呪詛もあるのか体は想い。
 そして血の臭いに揺らされる意識を狂気で満たさぬように絶えて。
「この悪夢を、悲劇を、ここで断ち切るために……!」
 一角獣の足を、鉄塊剣で払いのける。前足を失なったそれは前のめりに倒れ、動きが止まった。
 そして鉄塊剣を、その首へとヴォルフガングは走らせる。
 噴き出す鮮血をその身に浴び、そしてとどめと狼犬たちが一角獣へととびかかった。
 けれど、まだここには他の悪夢獣がいる。それをすべて倒すまでと、ヴォルフガングは再び前へと進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春霞・遙
このアサイラムはオウガ・オリジンと関係のある風景なんでしょうか。
ここまでアリスラビリンスを苦しめたオウガ・オリジンですけど、もし彼女の過去がわかれば、心だけでも救うことができるんでしょうか。
病院で苦しむ少女が傷つき血を流しているのを黙って見ていることはできないです。

もしもここのオウガ・オリジンに敵意がないのであれば、悪夢獣のみを相手取って戦いたいです。
彼女が許してくれるなら手の届く距離で彼女と言葉を交わしてみたい。

拳銃で一体ずつ倒していきます。
相手の攻撃は回避か銃で受けるか致命傷にならないものは素で受ける覚悟もあります。
大きな傷を負った人がいれば【生まれながらの光】で治療します。



 窓枠には鉄格子が、これでもかというほどにびっちりとは待っていた。
 それはまるで外からの光を通さぬというように塗りつぶすかのように。
 廊下を歩く――春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は周囲を見回しながら零す。
「このアサイラムはオウガ・オリジンと関係のある風景なんでしょうか」
 遙はオウガ・オリジンの姿を思い浮かべる。
「ここまでアリスラビリンスを苦しめたオウガ・オリジンですけど、もし彼女の過去がわかれば、心だけでも救うことができるんでしょうか」
 今、オウガ・オリジンは悪夢をその身より噴き出して苦しんでいる。
 その身より噴き出すのは、血のようでもある。それは戦い痕として、そこかしこに残っている。
「病院で苦しむ少女が傷つき血を流しているのを黙って見ていることはできないです」
 けれどオウガ・オリジンがどこにいるのかはわからない。
 だが敵が現れるのだからその先にいるはずだ。
(「もしもここのオウガ・オリジンに敵意がないのであれば、悪夢獣のみを相手取って戦いたい」)
 そう思いながら遙は拳銃を構えて進む。
 飛び出してくる兎の悪夢獣。刃の耳を振り回してくるそれを確実に打ち抜いた。
 その瞬間びしゃりと血が跳ねて降りかかる。
「彼女が許してくれるなら手の届く距離で彼女と言葉を交わしてみたい……」
 だがそうするには、まずたどり着かなければいけない。
 向かってくる悪夢獣の攻撃を、どうにもならないときは致命傷にならなければ素で受けるくらいの覚悟はある。
 自分の傷はまだそんなにない。進む先、大きな傷を負った人がいるなら、治すことも思いながら遙は進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

清川・シャル
エンパイア出身なので病院は見慣れないのですよね、UDCのホラー映画みたい
毎晩みる悪夢、お前さえ居なければ両親は生きていたのにと責める声
やだやだ、シャルはこの身1つで生きていくんだから、負けない
では一掃させて頂きましょう
自分はオーラ防御で血を跳ね返し、服は汚れること無く(ずるい?なんてね)
ぐーちゃん零に氷の魔弾を装填しておいて発射!血を固めてしまいましょう
撃ち終わったら修羅櫻を抜刀、二刀流で斬り裂いて行きましょうね
敵攻撃は第六感で察知、見切りで避けて武器受けで受けてカウンターで反撃です



 自分の足音だけが響いていく廊下は不気味でもある。
 薄暗いのは窓に鉄格子がはまっているからだろう。病院。血まみれの廊下――清川・シャル(無銘・f01440)は周囲を見回していた。
 こういった場所は――そう、見たことはないけれど、見たことがあるものだった。
「病院は見慣れないのですよね、UDCのホラー映画みたい」
 シャルはサムライエンパイアの出身だ。
 こんな場所は、あまりなじみのないところ。
 けれど――ふと、毎晩みる悪夢が頭をもたげた。
 お前さえ居なければ両親は生きていたのにと――責める声。
 それがこの場所で響き始めるような、そんな感覚に苛まれた。
「やだやだ、シャルはこの身1つで生きていくんだから、負けない」
 けれど、シャルはふるりと頭を振る。
 きっとこれを響かせているのはこの場にいる悪夢獣のせいに違いないと思って。
 だって――進む先から馬の嘶きが聞こえた。そこに何体かの馬がいる。
 そしてそのうちの一体には角があった。
 シャルはふと息を吐き本差と脇差の2本の刀、修羅櫻を構えた。
「では一掃させて頂きましょう」
 そして走りこむ。突撃してくる馬を、シャルは切り伏せる。
 血が跳ねた、それをオーラで跳ね返して服を汚すことはさけて。
 ずるい? なんて思うけれど汚したくないのだから仕方ない。
 そして、12連装式グレラン&30弾アサルト――ぐーちゃん零に氷の魔弾を装填し発射。
「血を固めてしまいましょう」
 弾丸放てば前に構えていた馬たちは固まって動けなくなる。
 その足元から凍り付き、動けばそれを無理やり引きちぎらねばならなくなるのだから。
「血の桜よ。咲き誇れ」
 だが動けないのならばあとは一方的だ。
 シャルは二刀流で斬り裂いて、馬たちの間を駆け抜ける。
 首を振って攻撃をどうにかしようとするなら、身をひねって避けて。
 反撃ですと、閃かせた刃はまた血飛沫をあげていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイリス・レコード
彼女を完全に討たなきゃこの世界が滅びる以上
私は、「騎士アイリス」はただ戦うだけです……!

出会う悪夢獣を片端からランスで打ち倒していきます
突進してくるなら相手の勢いを利用してランスを突き立て
多少の傷は激痛耐性で耐え、そして……

募る疲労、増える傷、高まる焦り
血の匂い、吐き気、アサイラム、閉鎖病棟
記憶のない自分にはわからないはずの心のざわめき

それが限界に達したとき、UCが発動して
「アイリス」は消えてしまい、残るのはまるで、
オウガ・オリジン自身と同じように顔のない、老若男女の「アリス達」

彼らは
何かを恐れ、何かに怯え
そしてそれを振り払おうとするかのように

ただ獣の如き殺気のまま敵を刻み、裂き、屠り続けます



 なんて場所なのだろうか。
 アイリス・レコード(記憶の国の継ぎ接ぎアリス・f26787)は一つ、呼吸を重ねた。
「彼女を完全に討たなきゃこの世界が滅びる以上――私は、『騎士アイリス』はただ戦うだけです……!」
 美しき白銀の槍を構え、アイリスは駆け抜ける。
 薄暗く陰鬱な病院。灯りが入らぬのは窓に鉄格子がはまっているからか。
 進めば進むほどに敵の数は多くなっていく。
 ほら、また――現れた。
 アイリスは槍を大きく振り払う。そこにまとわりついていた血を弾き飛ばし突き進む。
 馬の形をした悪夢獣が突進してくる。その勢い利用してランス突き立てるが、荒々しい攻撃に跳ね飛ばされたなら痛みは走るのだ。
 そしてどれだけ倒しても、また現れてくる。
 募る疲労、増える傷、高まる焦り――つぅ、と汗が額から流れ落ちた。
 血の匂い、吐き気、アサイラム、閉鎖病棟――それが心の内で何かを撫でていく。
 記憶のない自分にはわからないはずの心のざわめきがアイリスを苛んでいた。
 それが限界に達して――アイリスは膝をつく。
 そこにいたはずの『アイリス』は消えてしまい、残るのはまるで――そう、顔はない。
 オウガ・オリジンと同じように顔のない老若男女の『アリス達』が現れて、悪夢獣たちへと顔を向けていく。
 何かを恐れ、何かに怯え――そしてそれを振り払おうとするかのように、彼らは。
 獣の如き殺気のまま、悪夢獣を刻み、裂き、屠り始める。
 馬の形の悪夢獣たちは動きをそろえて踏みつけ、攻撃をかけてくる。
 だがそれを受けても、いや受ければ一層、攻撃の手は荒々しくひどくなっていくのだ。
 それは終わらない。
 目の前のそれらがいなくなるまで、殺戮は終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
っ――
降りかかるあかを拭う
視界を確保するように

この身はなるたけ大切にしたい
想ってくれる人を無下にしたくないから
せざるを得ない時を除いては

だからこんな場面も以前より少なくなった
それでも広がる景色に
呼び起されるものが確かにあって

あかく美しい千日紅の花畑や
何処かの誰かが身を投げた炎のあか

いつか自分もこの色に身を投じておわる日が来るのだろうか
――それなら、いい

死に際なんてどうでもいいと笑われるかもしれない
望んだ逝き方を、他人が認めるとは限らない
自分が感じたように

それでも今ばかりは

咎力封じで火力を弱め扇で攻撃を跳ね返したなら
あかを貪る獣のように鍵刀を振るっていこう

あいつが似合うと言ってくれた
あかに塗れて



 びしゃりと、はねる色がある。とびかかってきた悪夢獣を跳ね飛ばし空を躍るいろ。
「っ――」
 一体、悪夢獣を払っただけでこれだ。
 浮世・綾華(千日紅・f01194)は降りかかったあかを拭う。視界を確保するように。
 薄暗い病院、長く続く廊下の中で綾華はひとりだった。
 窓には鉄格子が入り、差し込む光は鈍い。それが延々と続く廊下。
 けれどその奥からぐるぐると喉奥を慣らす敵意の声が――響いてくる。
 は、と息を吐いた。足元も、あかい。あかいいろが、その身を浸していく。
 この身は――ヤドリガミであり本体さえ傷つかなければと思っていた。
 けれど今は、この身はなるたけ大切にしたいと綾華は思えるようになっていた。
 思ってくれる人を無下にはしたくないから。だからせざるを得ない時を除いては、必要以上に傷を負いはしない。
 かかるあかいいろも自分のものではなかった。
 だからこんな場面も以前より少なくなったと、綾華は思うのだ。
 それでも――広がる、あかいいろに、景色に。
 ゆらゆらと何かが揺らされて呼び起こされている感覚があった。
 それは――あかいいろが。
 あかく美しい千日紅の花畑や、何処かの誰かが身を投げた炎のあかが、瞼の裏を撫でていくような。
 ふ、と綾華は息を吐いた。
 いつか、いつかの先で。
「俺もこの色に」
 身を投じておわる日が来るのだろうか。
 もしそうなら――それなら、いい。
 一歩、ゆっくりと足を進めた。ぴしゃりと跳ねるあかいいろの中を歩んでいく。
 死に際なんてどうでもいいと笑われるかもしれない、そう思って口端が僅かに上がる。
 望んだ逝き方を、他人が認めるとは限らない――自分が感じたように。
 それを是としてくれる人がいるかもしれない、いないかもしれない。
 それでも今ばかりは、と前を向く。
 視線の先で獣がまた躍る。狼たちが踊るように挑みかかってくるのだ。
 その動きを、攻撃の力を弱めるために手枷に猿轡、拘束ロープを放ち、もう一方の手で闇夜に重なる黄金の輝きを翻す。
 向けられた牙をそれで跳ね返したならば、鍵刀を振るうだけだ。
 あかを貪る獣のように、その身を切り裂いて。あかいいろをまき散らして。
 ぼたぼたと、あかいいろが頭の上から降り注ぐ。
 あか。あかいいろばかりだ。
(「あいつが似合うと言ってくれた――」)
 そのいろに塗れ綾華が浮かべるその表情を見る者は、ここにはいない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

揺・かくり
病が蔓延る箱の中、かい。
病院とやらを訪れるのは初めてだよ。

追うか追われるならば前者が好ましいが
此度は……ああ、追われる側の様だよ
私は満足に走る事が出来ないからね
念動力にて宙を游いで往こう

左手の環指に嵌る指環に呪詛を注ぐ
君たちの力を拝借しよう
手加減は無用さ。好きにやると良い
常の君たちは利口な者たちだが
本来の姿は、此方が近しいのだろう?
獰猛なる死霊は操り手の生命を容赦なく喰らう
たんと喰らうが良いさ
私は屍人だからね。

紅い、あかい、生温い雨が降る
服を髪を頬を濡らしてゆく
ああ――

あかに塗れた指の先で血雨を絡め
色褪せた唇に添えて、紅を引こう

うっそりと笑みが溢るる
嗚呼、なんて久しいの
此の色は、とても好ましい



 その足が地に触れることはなく。
 揺・かくり(うつり・f28103)は病院の中を進む。
 くるりと見回すこの場所は、窓は鉄格子に閉ざされて淡くひかりを許すのみ。
「病が蔓延る箱の中、かい」
 病院とやらを訪れるのは初めてだよ、とこの場所の空気を感じていた。
 ここは――死の気配も近い。
 それはこの場所をつくったもののせいもあるかもしれないのだが。
 そして嫌な気配もいくつかあるのが感じられた。
「追うか追われるならば前者が好ましいが」
 その気配が近づいてくる。
「此度は……ああ、追われる側の様だよ」
 ひたひたと近づいてくる気配にかくりは小さく笑い零した。
 そして己の足を見て。
(「私は満足に走る事が出来ないからね」)
 宙を游いで往こうかと、ふわり軽やかに動き始めた。
 それと同時に近づいてくる気配も同時に動いてきた。どうやら様子を伺っていたようだ。
 かくりを囲うように、それは追いかけてくる。
 四つ足の獣が走る音、狼かとかくりは瞳細めた。
 左手の環指に嵌る指環に呪詛を注いで、目覚めを促す。
「君たちの力を拝借しよう」
 手加減は無用さ。好きにやると良いとかくりは獰猛なる死霊たちを招いた。
 そして、悪夢獣たちも追いついてその姿を晒すのだ。
 ぐるぐると唸りながらとびかかってくる。それを死霊が弾いて、襲い掛かる。
「常の君たちは利口な者たちだが――本来の姿は、此方が近しいのだろう?」
 襲い掛かる狼の悪夢獣を恐れることなどなく死霊たちも踊るのだ。
 獰猛なる死霊は操り手の生命も容赦なく喰らうものだ。
 けれどかくりは、それを気にしない。
「たんと喰らうが良いさ」
 いくらでも、と笑う。
 私は屍人だからね、と。生命はあるようでなくて、ないようであって。
 死霊たちが、悪夢獣を捕まえて引き裂いて引き裂いて、さらにまた引き裂いて。
 跳ねる赤い色が雨のように降り注ぐ。
 紅い、あかい、生温い雨が降る――ちの、におい。
 服を髪を頬を濡らしてゆく――それをうけて、かくりはうっとりと零した。
「ああ――」
 頬をなぞるその指が、あかいいろを抱いていく。
 あかに塗れた指の先でまた降り注いだ血雨を絡めて――そうっと、色あせた唇に添えて、紅を引いていく。
 唇だけ、色づいた。
 うっそりと笑みが溢るる。気持ちも楽しくなってきて、くるりと回って見せれば濁った鏡がそこにあった。
 長く使われず、くもりにくもった鏡。そんな鏡でも、そのあかだけははっきりとわかるのだ。
「嗚呼、なんて久しいの」
 此の色は、とても好ましい――赤い唇が弓引くように弧を描く。
 ぴしゃり、その姿映すその鏡にも、また血が跳ねた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
まぁ、なんて厭な場所かしら!
アリスを閉じ込めていたあの場所めいて
ひどく気が滅入ってしまいそう

えぇ、だけれど血は好きよ?
甘くて、温かいのを浴びる程
敵に血を流させるのはとっても楽しいもの!

【血塗れメアリ】で血臭まとい
暗い屋内を【暗視】活かして【聞き耳】立てて
敵を探して殺して回る
【野生の勘】で最低限致命傷だけは避けるけれど
小さな負傷は気にせずに【激痛耐性】耐えながら
今回は【逃げ足】よりも攻撃優先
【傷口をえぐる】事でより多くの血を流させて
それにメアリは返り血浴びれば浴びる程
強くなれるし生命力吸収で傷も治せる筈だもの

あら、お仲間ね?
血を求める兎さん
だけれど残念
メアリはただの兎じゃなくて
喰い殺す狼だもの



 窓には鉄格子がこれでもかとはまって、ひかりが届くのを許さない。
 病院は薄暗くあるべきと言っているような――そんな、場所。
「まぁ、なんて厭な場所かしら!」
 メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)は声あげて、その手に肉切り包丁と絶望の刃を手にくるりと回って。
「アリスを閉じ込めていたあの場所めいて、ひどく気が滅入ってしまいそう」
 なんていうけれど――この場所に広がる香りは。
 血の香りは――好ましい。
 この場所は嫌だけれども、この香には疼くものがある。
「えぇ、だけれど血は好きよ?」
 甘くて、温かいのを浴びる程――敵に血を流させるのはとっても楽しいもの!
 だから、どんどんいらっしゃいとメアリーは笑って血を纏う。
 濃厚な――血の臭い。
 薄暗いこの病院の中でも、メアリーにはどこに何がいるかお見通し。
 少しでも音をたてようものならば、その耳が音を捉えて先回りだ。
 ひたひたと、小さな足音が聞こえた。
 どこにいるのかしら、あっちかしらこっちかしら――いいえ、そこねとメアリーはぴょんと飛ぶ。
 ざっくり、首から落としたのは兎の悪夢獣だ。その耳は刃だけれど見た目は兎。
 こんにちは、お仲間さんなんて声かけるけれど容赦はなく。
 首を落とせなくともその傷えぐって血が噴き出して。それを纏えば高揚するとともにメアリーの力は高まっていくのだ。
 返り血浴びれば浴びる程、強くなれる。そしてその生命頂けば傷も治っていく。
 もっともっと、浴びれるだけ浴びたいこのあかいいろ。
「今日は逃げる事より、攻撃ね」
 そう言って、血塗れメアリーは奥へと進んでいく。
「あら、お仲間ね? 血を求める兎さん」
 ぴょんと飛び出てきた兎型のそれに、容赦なく刃を振り下ろす。
 だけれど残念――メアリはただの兎じゃなくて。
「喰い殺す狼だもの」
 ふふ、とメアリーは笑み零す。
 ここはまだまだ、獲物がいっぱい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

揺歌語・なびき
そういうのには慣れてる
吐き気がするけどね

悪夢を気取ろうが
所詮おれにしてみれば子犬の群れだ
キャンキャン喚くなよ
本当の咆哮を教えてやる

他猟兵を巻き込まぬよう
真っ向から群れの中心に突っ込む
自分の勘で避けつつも
こんな鳴き声程度、激痛も呪詛も耐えられる

目立つように棘鞭を振って呼び寄せ
充分な数を惹きつけ、最大音量で咆える
【大声、鎧無視攻撃

崩れて溢れた血飛沫の雨は払わない
棘鞭が吸えば吸うほど、更に獲物を穿って殺せる
【串刺し、傷口をえぐる

ああもう、びしょ濡れだ
体内に巣食う華が喜んでいるのがわかる
あの子の待つ家に帰る前に
きちんと匂いは落ちるだろうか、とか
そんなことを考えながら

いいさ
声が枯れるまで、咆えてやるよ



 敵を倒せば、血が降りかかってくる。
 こういうのには慣れているけれど――吐き気がする。
 慣れているのと、大丈夫なのとはまた違うのだ。
 揺歌語・なびき(春怨・f02050)は長い溜息をひとつ零して薄暗い病院の中を歩んでいく。
 なびきはひたひたと、近づいてくる気配に気づいていた。
「悪夢を気取ろうが」
 うなりながら現れたのは敵意をあらわにした狼の群れだ。
「――所詮おれにしてみれば子犬の群れだ」
 けれどそれは別に恐れるものではなかった。
 なびきはふと笑って、子犬をあやす様に笑うのだ。
「キャンキャン喚くなよ、本当の咆哮を教えてやる」
 近くに猟兵は――いない。なびきはそれを確認して、まっすぐに走り始めた。
 真っ向から群れに中心に突っ込むなびき。
 自分たちのテリトリーに入ってきたものに狼たちは容赦しない。噛みつき、鋭い爪も向けてくる。それを勘で避けつつも、なびきは笑っていた。
 鳴き声程度、激痛も呪詛も耐えられると。
 目立つように、狼たちの中心で棘鞭も振るう。それは主の血をも吸うものだ。
 払いのけて、狼の首を捉えて削り血を噴出させる。
 噛みつかれて自分も血塗れだ。けれど――たくさん、集まったならば。
 すう、と大きく吸い込んでなびきは激しい咆哮を放つ。
 とびかかろうとしていた狼は身を捩じらせながらぎゃん! と鳴いて地と転がる。
 近くにいたものはその体から血を吹き出すほどの衝撃を受けて力尽きた。
 崩れて溢れた血飛沫。その雨をなびきは払わない。
 どくどくと手で脈打つような感覚は棘鞭のものだ。
「ああもう、びしょ濡れだ」
 体内に巣食う華が喜んでいるのがわかる――腹を撫でてもそこにいるわけではないのだけれど。
 けれどこんなに血を浴びて大丈夫なのかとわずかに耳がぺたんと落ち尻尾は丸まった。
 あの子の待つ家に帰る前に、この血の香りは。
 きちんと匂いは落ちるだろうか、と不安もある。
 そんなことを考えていたけれども――ずっとそれを思っているわけにもいかないのもわかっている。
「いいさ。声が枯れるまで、咆えてやるよ」
 ここにいるものを倒して、倒して。
 浴びた血の香りが消えればいいけれど、消えなくても。
 あの子が気づいても気づかなくても――いや気づいたら。
 怒ってくれるかな、なんて思うと少し楽しくなって。抱えていた心配は、楽しみになる一歩手前で踏みとどまっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

伊能・為虎
(血の匂いにテンション上がり狗霊)
……今回ばかりは仕方ないかぁ。
という訳でー、突撃お前らばんごはん!だよ!
血で汚れても大丈夫なお洋服と、いつもの妖刀、あとは視界の確保かなー?見えやすい場所で戦えるようにしよっと
先行して散らばっているわんちゃんと協力して〈二回攻撃〉
一つの場所に留まらず、〈ダッシュ〉で動くね
妖刀での〈なぎ払い〉や、一体を〈吹き飛ばし〉て集団にぶつけたりで立ち回るよ
わんちゃんにも〈衝撃波〉を使ってもらって出来るだけ狼さんをまとめてからの、狗笛で集合の合図!
《千足狗霊》で伸びた刀身で、まとめて斬り払っちゃう!



 むせかえるほどの――血の匂いだ。
 この中にあっては、こうなるのも致し方ない事と伊能・為虎(天翼・f01479)はため息を吐いた。
 戦闘の後だろうか、血が周囲を跳ねまわっている。
 為虎は狗憑きの妖刀を見詰めていた。
 刀身は御札で覆われているが、其処に宿る狗霊達は、今日は大はしゃぎだ。
「……今回ばかりは仕方ないかぁ」
 という訳でー、と為虎は切り替えた。
「突撃お前らばんごはん! だよ!」
 今日の為虎はかわいい風ではあるけれど、血で汚れても大丈夫な洋服と、いつもの妖刀を手に。
「あとは視界の確保かなー? 見えやすい場所で戦えるようにしよっと」
 きっとこれから血に塗れる。それを考えると、と為虎は戦う場所や方法を定めて進んでいく。
 先行している妖刀に住まう狗たち。
 散らばっている彼らが狼の形をした悪夢獣を追い込んできたり。
 協力して攻撃を重ねていく。
 一つの場所に留まらず、走りこんでかき乱して。
 たまに、群れを成している狼たちに会えば妖刀で薙ぎ払ったり、一体を吹き飛ばして集団にぶつけたりと為虎は色々な戦い方で立ち回っていた。
 そして。
「わんちゃん!」
 その声に衝撃波を放った狗たちが押し寄せる狼の波をはじいてまとめていく。
 そして狗笛で集合の合図をすれば為虎の下に狗たちは集うのだ。
「わんちゃん、集まって! ドカーンとやっちゃおう!」
 掲げた妖刀に集う狗霊たち。周囲に、味方である猟兵の姿はないから遠慮することはない。
 あとは為虎が、ただ振るうだけでいい。
 集っていた狼たちを撫でるように、刃が走る。
 まとめて斬り伏せれば血は大きく跳ね飛んで。狼たちの姿が崩れるとともに派手にはねたそれが雨の様に降り注がれていく。
 それを受けて為虎は――これはちょっと、と思うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
随分と楽しそうだな

歩き回り、風による≪剥片の戯≫で複数を同時に狙っていく
切り刻むよう散らせ、広範囲へと展開

血の臭いはもう大分嗅ぎ慣れたと思っていたが
ここ迄濃いのは久し振りだな

血も、たとえ肉片が飛ぼうと恐怖感も絶望感はない
頭から血を被ったとて、所詮これは悪夢の獣でしかないなら
血を流すソレが
虐げられて尚優しくしてくれた少女でもなければ
想いを通じ合わせた相手でもないのだから
どうという事はない

多少の攻撃は魔法で結界を貼り軽減させ
抜けたものは多少なら耐えられるだろ
急所だけは武器で防ごう

痛みも、浴びる血も共にあったものだ
懐かしさこそあれ
たとえ記憶で心が軋む気がするとはいえ
今はお前達を殺し尽くす方が優先だな



 くらいくらい、病院だった。
 窓はどこも鉄格子で埋められて、ひかりなどいらぬと言っているよう。
 そしてオウガ・オリジンの心根を現しているのか――ぱっとみれば可愛いのに。
 凶悪さを孕んだ刃の耳持つ兎が尭海・有珠(殲蒼・f06286)の周囲を囲むように集っていた。
「随分と楽しそうだな」
 いくらでも相手をしよう、と笑うけれど――お前たちでは足りない気もする。
 一歩、ゆっくりと踏み出して有珠はただ歩くだけだ。
 けれど風をのせた魔法の薄羽はいくつも有珠の周囲にあった。
 だから囲んで一気にとびかかれば勝てる、とでも思っていたのだろうか。
 そんな兎たちは一気に切り刻まれて肉片となり血を撒いて崩れ落ちていく。
 そう、ただ薄刃を散らせただけだというのに。
 出来たばかりの血だまりの上を歩いていく有珠。
 血の臭いはもう大分嗅ぎ慣れたと思っていたが――息をするだけでも、鼻も喉も貫いていくようなこの臭い。
「ここ迄濃いのは久し振りだな」
 かすかに浮かべた笑み。困ったようにもみえたそれは一瞬で描き消えていく。
 まっかな世界だ。
 血も、たとえ肉片が飛ぼうと、有珠に恐怖感も絶望感もなかった。
 頭から血を被ったとて、所詮これは悪夢の獣でしかないなら――有珠にとっては、恐れるものではないのだ。
 血を流すソレが――虐げられて尚優しくしてくれた少女でもなければ。
 想いを通じ合わせた相手でもないのだから――どうという事はない。
 有珠の心は揺れ動かない。
 ここにある絶望は己の絶望ではない。
 オウガ・オリジンのものであって、それが何かを見せてくることもないのだから。
 獣の姿になって襲ってくることなんて、かわいいことだ。
 ああ、また兎たちがやってくる。
 刃の耳をしゃんしゃんと慣らして、くるくる回りながらだったり身を回転させて攻撃をかけてきたり。
 その程度であれば魔法で結界を貼り軽減させることもできる。
 もし抜け出るものがいたとしても耐えられる程度のものだろう。
 急所にだけ届かぬように、危なければ黒に程近い藍の剣を抜き放って防ぐだけだ。
 防ぐときには、きっともうその敵は血へと戻っているだろうけれど。
 痛みも、浴びる血も。有珠にとっては共にあったものだ。
 懐かしさこそあれ――たとえ記憶で心が軋む気がするとはいえ。
 それで今、己が折れて崩れ落ちることはない。
「今はお前達を殺し尽くす方が優先だな」
 再びとびかかってくる兎たちへと有珠は紡ぐ。
「来たれ、世界の滴。群れよ、奔れ――≪剥片の戯≫」
 獣の形をした悪夢たちを、切り払って前に進むために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城島・侑士
子供達が居間のテレビで遊んでいたホラーゲームのような世界だ
ゲームでは回復アイテムを温存するために無駄な戦闘を避けて進んでいたが
此処ではそういうわけにはいかないだろうな
ほらおいでなすった!
ようこそ、鉛玉を腹いっぱい食べてくれ
UCで向かってくる個体を複数纏めて拘束し
乱れ撃ちで容赦なく蜂の巣にする

返り血をまともに浴びる
ダンピールだから血の臭いも汚れも気にしないがオウガ・オリジンから生まれでたと思うと…
飲み込まないようにはしとこうか
敵の攻撃は早業で回避するか
オーラ防御で凌ぐ

割れた鏡に映る自分を見る
薄らと笑みを浮かべた血塗れの男
これじゃどっちが化け物かわからないな

弾の備蓄は十分ある
続きをしようじゃないか



 菫青色の瞳を細めて、城島・侑士(怪談文士・f18993)はふうんと周囲を見回した。
 鉄格子のはまった窓。くらい病院の中は、静かなようで――けれど何かの気配はあるような。
 こういった光景が目にしたことがあるような気がする。
 それは――そうだ、あれだと侑士は思い至った。見たのは、居間だ。
「子供達がテレビで遊んでいたホラーゲームのような世界だ」
 それはどんなふうに遊んでいたかを侑士は思い出そうとううんと唸る。
「ゲームでは回復アイテムを温存するために無駄な戦闘を避けて進んでいたが……」
 此処ではそういうわけにはいかないだろうなと進む先へと視線向けた。
 ひたひたと足音をさせて近づいてくる――悪夢獣の姿がある。
「ほらおいでなすった!」
 言葉向けた瞬間、その獣たちは走り始めた。
 やっぱりこっちにくるか、と笑って――けれど戦う準備は怠っていないから焦ることもない。
「ようこそ、鉛玉を腹いっぱい食べてくれ」
 けれどその前に――戒めるものを。手枷や猿轡、拘束ロープを放てば絡まったり足をもたつかせたりと鈍くなる。
 そうなれば、狙うことも難しくなんてない。
 乱れ撃ちで容赦なく侑士は蜂の巣にしていくのだ。
 そして弾丸打ち悪夢獣たちが倒れるたびに爆ぜてびしゃりと赤い色をまき散らしていく。
 降りかかる血の雨だ。
 返り血を浴びることは――別にk舞わない。
 ダンピールである侑士は血の臭いも汚れもきにはしないのだ。
 けれど。
(「オウガ・オリジンから生まれでたと思うと……」)
 飲み込まないようにはしとこうか、とそれだけには注意して進んでいく。
 侑士の攻撃から逃れた獣がとびかかってくるのを早業で回避して、オーラを纏い凌いでいく。
 転がって、とびかかってくる獣を真っすぐ打ち抜いて、またびしゃりと血の雨が降ってきて。
 視界だけはと侑士はそれを雑にぬぐった。
 そしてふと顔をあげると――そこに割れた鏡がある。割れて曇って見えづらい鏡ではあった。
 けれどそこで。
「……これじゃどっちが化け物かわからないな」
 薄らと笑みを浮かべた血塗れの男の姿を見て、困ったように侑士は零した。
 そして、ああとまた視線向ける。
 また、やってきたと。
 弾の備蓄は、と確認すればまだ十分ある。
 続きをしようじゃないかと、侑士は駆けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
あかいわ
赤くて紅くて明くて綺麗だわ!
これがあなたの悪夢なのね
噫、素敵なあかだこと
夕焼け空の暁のよう

うふふ、甘い朱を頂戴な
たんと食べさせて頂戴な
綺麗な桜と咲かせてあげる!!
これがあなたの絶望なのかしら

さぁ狩りをはじめましょうか!
破魔を宿した刀抜き放ち、あかをなぎはらう衝撃波をかけめぐらせて
ひふみよ、次はどの子がいいかしら
あかいあかい、獣たちを切り捨てましょ
かけてかけて、斬り裂き咲かせて
あなたの悪夢も、痛みも苦しみも
全部まとめて斬りはらってあげる
甘くて痛い悪夢を覚ませてあげる

私を彩るあかのうつくしいこと
いい?桜はまっかな愛で美しく咲くものなのよ
あかに昂り笑うけど
だけどこんな血に
私は穢されはしないわ



 あかいわ、とうっとりと零した。
「赤くて紅くて明くて綺麗だわ!」
 向かってくる悪夢がかたどった獣は果てて。血を撒いて薄暗い病院を染め上げていく。
 あかに。
 誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)は笑っていた。
「これがあなたの悪夢なのね――噫、素敵なあかだこと」
 夕焼け空の暁のようとそのいろの美しさに心をはやらせる。
 なんて素敵なあか。
 このあかを――もっと近くで感じたい。
「うふふ、甘い朱を頂戴な」
 たんと食べさせて頂戴なと櫻宵は進む。
 己に向けられる敵意を感じながら。けれどそれも心地よいのだ。
「綺麗な桜と咲かせてあげる!!」
 これがあなたの絶望なのかしらと、オウガ・オリジンのことを思って。
 そして敵意が近づいてくる。
 それは狼の形をしていた。うなりながら櫻宵への距離を詰めてくる。
 あなたたちが相手なのねと、櫻宵は笑って。
「さぁ狩りをはじめましょうか!」
 破魔を宿した刀抜き放ち、あかをなぎはらう衝撃波をかけめぐらせる。
 一閃。走ったその波に狼たちの上を走りそのその身からあかを吹き上がらせた。
 それで急所をえぐられ弾けて消えるものもいれば、堪えてまだ向かってくるものもいる。
「ひふみよ、次はどの子がいいかしら」
 次は――あなたね、ととびかかってきた狼を切り伏せる。
 手にもつ刀が、あかを得て鈍く輝いて。櫻宵は笑って一歩進む。
 あかいあかい、獣たちを切り捨てましょ――遊んで頂戴というように。
 駆け抜けながら、飛び出してくる狼たちを斬り咲き、あかいいろを咲かせて。
 あなたの悪夢も、痛みも苦しみも――全部まとめて斬りはらってあげると。
「甘くて痛い悪夢を覚ませてあげる」
 びしゃりと跳ねたあかいいろ。
 それは櫻宵の頭の先から、足の先まで――降り注ぐ。
 ふふ、と笑い零れていた。
「私を彩るあかのうつくしいこと」
 とろり、指先からあかが滴り落ちて。
「いい? 桜はまっかな愛で美しく咲くものなのよ」
 そう言ってもお前たちにはわからないかしらと、周囲を囲む悪夢がかたどる獣たちへと櫻宵は紡ぐ。
 あかがきれい、あかがここちよく、あかが――満たして。
 昂ってしまうのも、いたしかたないこと。笑ってしまうのだ。
「だけど」
 こんな血に、私は穢されはしないわと零して。
 この血の色では私の何も変わらないわと笑って、また大きくその刀を躍らせた。
 桜嵐が吹き荒れて、淡い色の暴風雨のようにくらい病院の中を駆けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
鮮血の如き色の獣、か
こういう時、ひとは鬱屈するのか、はたまた高揚するものなのか
長年箱で在った俺には、やはりまだ、ひとの感情というものがよく分かっていないのかもしれないな
何色に塗れようともやるべき事をただ成すだけ、そう思うだけだからな
では、いざ参ろうか(微笑み

桜花弁の刃で一掃するのがてっとり早いのだろうが
今の気分は、一体ずつ刀で悪夢獣を斬っていきたい
刀の斬撃を浴びせ、飛び散るあかを浴びながら、確実に仕留めていこう
表情も所作も普段と何ら変わらぬ立ち回りでな

…いや、少しは俺もひとの気持ちが分かってきたのかもしれない
手に伝わる感触と熱、そして浴びるこのいろに
どこか心躍るような気が、しないでもないからな



 ふふ、と笑みが零れていた。
「鮮血の如き色の獣、か」
 刀を振り払えば、その軌跡なぞるように血が振り払われる。突然とびかかってきた獣を反射的に切り伏せていた。
 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は、ふと息吐いて周囲を見回した、
「こういう時、ひとは鬱屈するのか、はたまた高揚するものなのか」
 はたしてどちらなのだろうと、清史郎は考えてみるがわからない。
 それは硯箱であるから――なのだろう。
 長年、硯箱として在った清史郎。
 やはりまだ、ひとの感情というものがよく分かっていないのかもしれないなと独り言ちる。
 けれども、なんであれ――何色に塗れようともやるべき事をただ成すだけ、そう思うだけなのだ。
「では、いざ参ろうか」
 緩やかに、微笑み向けた先には数体の悪夢獣たちがいる。
 微笑み浮かべて、清史郎は駆けた。
 馬の群れが眼前に。中には一角持つ獣もいるようだ。
「桜花弁の刃で一掃するのがてっとり早いのだろうが」
 くつり、と喉奥が鳴るような笑みが口端に宿る。
 今の気分は――一体ずつ刀で悪夢獣を斬っていきたい。
 その手の内で刀もそれに呼応しているように鈍く光を宿しているような気さえしつつ。
 踏み込んで、馬の首へと向かって斬撃を浴びせる。
 それと同時に飛び散るあか。あかがぱたたと自分の上に落ちてくるのを穏やかな表情で清史郎は受け止めていた。
 喉を裂いて――けれど悪夢獣は倒れない。
「少し浅かったか」
 ならば、確実に仕留めていこうと再び踏み込んで刃を躍らせた。
 桜の意匠が凝らされた蒼き刀は血を孕んで、滴らせて。
 清史郎はいつもと変わらぬ表情で。何ら変わらぬ立ち回りで悪夢獣たちの間を抜けていく。
 その後ろに血を飛び散らせ、巻き散らしていくのだ。
 目の前にも後ろにも、敵がいなくなる。そこでふと、清史郎は気付いた。
 ひとの気持ちはわからないと――思って、いたけれど。
「……いや、少しは俺もひとの気持ちが分かってきたのかもしれない」
 その手に握る刀。ぎゅうと柄を握るその感触は確かなものだ。
 そして、悪夢獣たちを斬るときにかかるその重み、感触。
 熱――そして浴びるこのあかいいろ。
 口端は知らずと笑みをたたえていた。血に塗れ、箱の男の心は疼いていた。
「どこか心躍るような気が、しないでもないからな」
 その感情には、名があった。けれどそれをそれとして知っているのか、知らずにいるのか。
 清史郎は笑みを一層深くして、新たな敵へと向かっていく。
 いつもの、柔らかで涼やかな笑みでもって。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロード・ロラン
血のように赤い……って言うより、血でできた獣って言った方がいいのかな
臭いが強いのも気になるけど……高揚感の方が強い
へっ、おもしろい!

敵は狼型の群れ、形だけならいいけれど、習性も警戒しておいた方がいいだろう
集団で連携されたら厄介だ

UC使用
高速移動で敵を撹乱しながら、群れを一ヶ所に集めていく
攻撃はジャンプやダッシュでかわし、襲いかかられたら大鋏で受け流す
そんで集めたところに炎を放って、纏めて攻撃するぜ

残念!俺の方が強かったな、狼モドキ!

返り血なんて今更怖くねえよ
受けても構わず、次の敵へと向かってく
それがオブリビオンのものなら、尚更だ
強欲なオリジンを倒すためなら、その咎を悪夢ごと灼き尽くしてやる!



 鉄格子がはまる窓。ひかりは鈍く届かない薄暗い病院の中をクロード・ロラン(黒狼の狩人・f00390)は駆けていた。
 追いかけてくるのは、狼。けれど獣ではなく、それはオウガ・オリジンの悪夢が獣の形をとったものだという。
「血のように赤い……って言うより、血でできた獣って言った方がいいのかな」
 追いかけてくる。それはまるで獲物を見つけたかというように。
 すん、と鼻を鳴らせば――血のにおい。その匂いにクロードは耳を震わせる。
 臭いが強いのも気になる。
(「けど……高揚感の方が強い」)
 クロードは口端をあげて。
「へっ、おもしろい!」
 強気な笑み浮かべて走り抜ける。
 走りながら、敵の姿を確認していた。
 狼の形をした悪夢。形だけならいいけれど、習性も警戒しておいた方がいいだろうと。
「集団で連携されたら厄介だ」
 囲まれたら、きっと一気にやられてしまう。
 並走するように駆け始めたその狼たちへとクロードは視線向け。
「お前の咎、塵も残さず燃やしてやるぜ!」
 黒い炎を纏い、思い切り地を蹴った。
 こっちだついてこいというように壁も、天井も使ってクロードは動き回る。
 翻弄される狼たちを一ヶ所に集めていくように。
 時折、その爪を向けて。そして牙剥きだして飛び出してくる狼もいる。それは逆に、足振り払って腹を蹴って吹き飛ばしたり、さらに一歩深く踏み込んで交わす。
 それでも間に合わなければ背丈ほどある大鋏でそれを受け流した。
 そして集めた所で、クロードは纏う黒い炎を躍らせた。
「残念! 俺の方が強かったな、狼モドキ!」
 その熱に狼たちは悶えて焼け焦げていく。
 だがその中から果敢に飛び出してくるものがいて。クロードは大鋏をふるいその身を裂いた。
 すると獣はその形を崩し、血となって降り注ぐ。
「うわ」
 返り血なんて今更怖いものではない。
 けれど視界を奪うほどにそそぐソレから目は守った。
 視界はクリアなほうが戦いやすい。その身にかぶっても構わず、クロードはまた新たな敵へと向かっていく。
 この病院の中には、オウガ・オリジンが生み出したそれしか、いない。
 返り血がオブリビオンのものなら、尚更だ。
 強欲なオウガ・オリジン。
 彼女を倒すためであれば――
「その咎を悪夢ごと灼き尽くしてやる!」
 黒い炎を纏って、クロードは駆け抜ける。狼の遠吠えが一つ響いて、また追ってくる気配を感じながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シュデラ・テノーフォン
やぁ、いっそ爽快だね
赤しかないね
問題ないよ、潰そうか

複製したAschenputtelと一緒に駆け抜けるよ
病院内を縦横無尽に、硝子の雨で撃ち抜いてく
あァ、うん
思い出すよ、だいぶ昔をね
こうやってずっと、戦争してたんだ
ただ国の為に

敵(的)を撃ち続け突き進んで
撃ち漏らしは剣で薙ぎ払って
赤い雨を浴びたって止まらずに
昔は只々機械的にヤり続けた日々だったけど
もう昔の俺じゃないから
自分の意思で此処に来たんだ
彼女の悪夢を血に染まらぬ硝子で晴らそう
綺麗だろう?

敵の攻撃だけは指輪の盾で弾くけど
血の雨は甘んじて受けるよ
ほら、見事な赤頭巾…じゃなかった鮮血のフードだろう
なんてね

コレで終いかな?
でもま、狩りは楽しかったよ



「やぁ、いっそ爽快だね」
 赤しかないね、とシュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)は病院の中へ視線を巡らせて笑う。
 窓には鉄格子が重なってはまり、暗く陰鬱な病院を作り上げる一因になっている。
 そして戦いが繰り広げられて、この場は血の匂いの吹き溜まり。
「問題ないよ、潰そうか」
 けれどシュデラは笑っていられた。
 純白に灰銀被る彩り、硝子細工を飾った金属製のマスケット銃たるAschenputtelを複製して、共に駆け抜ければいいだけなのだから。
 どこに行けばいいかはわからない。
 ただ気の向くまま、誘われるままに硝子の雨と共に縦横無尽に進んでいくだけ。
 硝子の雨の弾丸が、降って貫いて。目の前に邪魔をするように現れる狼の形をした悪夢たちを地へと変えて跳ねさせていく。
「あァ、うん」
 その様を目にし続けていると、自然とその声は零れていた。
 思い出すよ、だいぶ昔をねと苦笑交じりに笑ってみせる。
 そう、こうして過ごしていたことを思い出す。
 こうやってずっと、戦争してたんだ――ただ国の為に。
 でも今は、そうではないのだ。
 的たる的を撃ち続けて突き進んで。それをも絶えて超えているものがいれば剣で薙ぎ払う。
 びしゃり、その瞬間に赤い色がはねて降ってくるが止まらずに。
(「昔は只々機械的にヤり続けた日々だったけど、もう昔の俺じゃないから」)
 自分の意思で此処に来たんだ――何のために。
 オウガ・オリジンの、彼女の悪夢を血に染まらぬ硝子で晴らすために。
 襲ってくる獣の数が増えてきた、かと思えばぴたりと止まる。
 かわりに――誰かの呻く声が、聞こえてきた。
 その声のする扉を開ければぼろぼろの寝台の上でオウガ・オリジンがその身より悪夢を吹き出しながら嗚咽を零していたのだ。
 けれどシュデラの気配に気づいて、猟兵が……! と悪意の沢山詰まった声を向けてくる。
 それと同時に再び噴き出した悪夢が狼の姿を取ってシュデラに向かう。
 だがその牙届く前に、左中指に煌く透明な環に触れれば盾が現れて弾く。
 そして同じ方向を剥くAschenputtelの綺麗な、銃弾の雨が向けられ狼たちは血となり弾けた。
「綺麗だろう?」
 弾丸の雨は――と続けて。ばしゃりと降りかかった赤い色を避けることはせず、シュデラはオウガ・オリジンへと笑いかける。
「ほら、見事な赤頭巾……じゃなかった鮮血のフードだろう」
 なんてね、と笑いかけて。
 そして、気づく。もうオウガ・オリジンの身から噴き出すものがない事に。
 先ほどのが、最後のすべてだったのかもしれない。
「コレで終いかな? でもま、狩りは楽しかったよ」
 その身からすべての悪夢を吐き出したオウガ・オリジン。そしてその悪夢獣たちが倒されれば彼女は身を保てない。
 オウガ・オリジンは、怨嗟を吐きながら――この世界から消えていく。
 血の匂いのこみ上げる部屋でシュデラはただその姿を見送っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 鉄格子に阻まれてひかりなど許さぬ薄暗い病院の中――オウガ・オリジンは消えていく。
 放たれた悪夢獣たちがすべて倒されたのだ。
 猟兵達とオウガ・オリジンしかいないこの場所で巻き散らされた赤い色。
 オウガ・オリジンの奥底にあった悪夢は果たして――晴れたのか。
 それは彼女にしか、わからないのだろう。
 けれどこの場所が崩れていくということは、ひとつの悪夢の終わりを告げるものだった。

最終結果:成功

完成日:2020年08月25日


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト