迷宮災厄戦⑱-18〜さいきょうの可愛さで殴れ!
オウガ・オリジンは、猟書家が撃破されるたびに、奪われた力を徐々に取り戻した。
しかし、猟兵の大攻勢は留まるところを知らない。
オウガ・オリジンがパワーアプするたびに、猟兵達は彼女の元へ殺到してゆくのだ。
「ふざけるな、ふざけるなよ猟兵どもめ! いくらわたしがこの世界で最も強くて尊い存在だとしても、数の暴力がすぎるだろ!?」
憤る彼女は、薄っすらと残る記憶の断片を呼び覚ます。
心臓を切り離して無敵になっても、あいつらは人海戦術で心臓を見付けてくる。
腹が減ったから食事ができる国へ行けば、奴らの料理をまんまと食わされた。
他の猟書家に化けてもボコボコにされた。
踊らないと死ぬ国では、平然と踊りながら攻撃してくる。
死のサーカスに誘い込んだら、わたしが逆にハメられた。
数に対抗して増殖したら、わたし達同士でいがみ合ってしまった。
「……もう武力で奴らに勝てないのでは?」
オウガ・オリジンは、なんとなく悟りきってしまう。
その思考が、彼女を明後日の方向へ発想を捻じ曲げさせてしまった。
「そうだ、そういうことか! 想像力の国なら、わたしの現実改変ユーベルコードで壮絶な可愛さを全面に打ち出せる! 可愛いは正義というらしいし、猟兵どもをわたしの可愛さで殴り殺してやるぞ! くはははははは!」
「……ということで、みんなは存分に可愛くなった上で、オウガ・オリジンを討伐してきてほしいんだよっ! 頑張ってねっ!」
グリモアから予知の内容を投影し終えた蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)を、集まってくれた猟兵が制止した。
「え? もっと詳細がほしい? え~っとね? 今回の任務は『想像力の国』でオウガ・オリジンと戦うんだけど、そこではありとあらゆる姿の“さいきょう”に変身できるんだよねっ? つまり、オウガ・オリジンは現実改変ユーベルコードを最大限に効果を発揮できちゃう場所なんだけど、この『想像力の国』は、猟兵のみんなにも効果があるんだよっ!」
……それって、つまり?
レモンの両目が光に満ちた。
「そう! みんな自身が考えた『ぼくが考えるさいきょうのそんざい』に変身して戦ってもらうよっ! そして今回のさいきょうポイントは【可愛さ】重点っ! オウガ・オリジンに負けないくらいの“かわいいそんざい”になって、オウガ・オリジンをメロメロにした隙にキツ~い一撃をお見舞いしてねっ!」
レモン曰く、可愛いと思える存在なら、ヒト型に拘る必要はないとのこと。
ちなみに、オウガ・オリジンは考えうる限りの少女趣味全開のロリータファッションで挑んでくる。髪は縦ロールだし、姫袖だし、日傘常備でボンネット完全装備だし、真っ赤なおでこ靴だし、完全無欠のアリスでロリータな女の子に変身してる。黒く塗り潰された顔も、このときばかりは目鼻口が出現しており、きっちりと病みメイクで武装している。特にパニエで膨らませたスカートのシルエットなんて、完全に計算尽くされた芸術の域まで達しているそうだ。
「戦闘内容は随分とトンチキだけど、相手はオブリビオン・フォーミュラだってことを忘れないでねっ?」
かくして、猟兵vsオウガ・オリジンの『可愛いものバトル』が勃発したのだった。
七転 十五起
アリスラビリンス戦争シナリオ第8号です。
内容はカオスですが、難易度は【やや難】です。
油断すると火傷じゃ済まないのでご注意下さい。
なぎてんはねおきです。可愛いものはお好きですか?
●プレイングボーナス
このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。
これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……さいきょうのそんざいに変身する。
(本シナリオでは、さいきょうの『可愛い』そんざいに変身してもらいます)
●その他
コンビ、チームなど複数名様でのご参加を検討される場合は、必ずお相手の呼称と、ID若しくは【チーム名】を明記していただきますよう、お願い致します。
(大人数での場合は、チームの総勢が何名様かをプレイング内に添えていただければ、全員のプレイングが出揃うまで待つことも可能です)
なお、本シナリオは全てのプレイングを採用できない可能性があります。
予めご了承くださいませ。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『『オウガ・オリジン』とイマジンモンスター』
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POW : イマジンモンスター・ギガンティック
【現実改変ユーベルコード】を使用する事で、【全身からオウガ達の頭部】を生やした、自身の身長の3倍の【イマジンモンスター】に変身する。
SPD : イマジンモンスター・スピード
【現実改変ユーベルコードを使用する】事で【イマジンモンスター】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : イマジンモンスター・ディフェンス
対象の攻撃を軽減する【イマジンモンスター】に変身しつつ、【身体から溢れ出すトランプ】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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七那原・望
わたしの特徴を活かすのです。
衣装は白い姫袖甘ロリドレスに真っ白おでこ靴。
更に猫耳猫尻尾であざとくねこ天使。
この国の力なら一時的に封印も解けるはず。
ややたれ目のぱっちりお目々も出して後は女の子の一番可愛い表情、心からの笑顔を浮かべればメイクなんていらないくらい可愛くなれるのです。
アマービレを振って【マジックオーケストラ】。わたしを護る影の猟兵は猫のぬいぐるみのヤドリガミ。わたしの影なので、シルエットではなく本物みたいな見た目に出来るはず。
攻撃役はたくさんのねこさん。
これで可愛さ更にアップなのです。
みんなでにゃーにゃー【歌って】【多重詠唱】。油断してる内にハートいっぱい【全力魔法】で攻撃なのです。
想像力の国。
それは誰しもが『さいきょうのそんざい』へと変身できる夢のような国。
オウガ・オリジンは現実改変ユーベルコードによって、そんな不思議の国を具現化させてしまった。
「やはり、やはりわたしは可愛すぎる……!」
手鏡で自身の姿を隈無く見詰めるオウガ・オリジン。
今や彼女は、完全無欠のロリータファッションに身を包み、可愛らしさの権化と成り果てていた。黒く塗り潰されていた顔も、いまやビスクドールのような可憐な顔立ちが露わとなり、赤とピンク系のアイシャドウとリップで統一した『病みメイク』で、泣き腫らしたような幼さを演出しているという隙のなさ。
「この国では、可愛ければ可愛いほど強い! つまり、私がこの国で最も強くて可愛いのだ!」
誇らしげに高笑いを響かせているオウガ・オリジン。
そこへオラトリオの少女こと七那原・望(封印されし果実・f04836)が待ったをかけた。
「一番可愛いのはわたしなのですー」
若干8歳の彼女は、オウガ・オリジンに対抗するべく全力を尽くして参戦してきた。
「子供のわたしの特徴を活かすのです。これが本物のロリータファッションなのですー」
七那原は全身純白の姫袖甘ロリドレスに純白のおでこ靴という正統派なロリータファッションでオウガ・オリジンに挑んできた。
彼女の衣装である神果・スピリチュアルは、如何なる形状にも自在に変化するスグレモノであり、そこへ想像力が加われば、まさに相乗効果で“可愛いが作れてしまう”のだ。
更に、背中のオラトリオ特有の純白の翼を広げれば、神聖性を遺憾なく発揮するロリータエンジェルがそこにいた。
オウガ・オリジンは七那原の姿を舐めるように見据えると、何かを堪えるかのように全身を小刻みに震え始めた。
「うぐぐ……まだだ、まだ、わたしの可愛さには及ばないな! だが子供特有の愛らしさと、このわたしのロリータファッションに真っ向勝負を仕掛けてきた気概は褒めてやろう……!」
「まだ足らないのです? では、これでも喰らえーなのです!」
七那原はむむむ~っと全身に力を込めると、ボンッと小さな破裂音が響く。
その瞬間、彼女の頭上から白い猫耳が飛び出した!
オウガ・オリジンはいきなり鼻血を噴き出す!
「っふが!? 猫耳、だと!? ハァ、ハァ……! いや、不意を突かれたが、わたしには遠く及ばないぞ……」
勝ち誇った様子のオウガ・オリジンだが、七那原は容赦なく追撃を開始する。
「まだ終わってないのですー、えいっ!」
今度はおしりをぐっと力を込めると、ぴょこーんと尾てい骨から白い猫尻尾が飛び出したではないか!
「グッはァァーッ!?」
次の瞬間、オウガ・オリジンは大量の血を口から吐いて膝を付く!
「純白しろねこ甘ロリ天使、だとっ? 可愛い、可愛すぎる……!」
どうやら、この世界ではオウガ・オリジンが猟兵を“可愛い”と認めた瞬間、その身体にダメージを負うらしい。
口の端からダラダラと血を流しつつも、オウガ・オリジンはゆっくりと立ち上がってみせた。
「お美事、お見事だ、猟兵! 不覚かつ不本意だが、貴様の可愛さをわたしが認めてやろう! だが、残念、残念だな? わたしを尊死させるには至らなかったようだぞ?」
「あのー、まだ終わりではないのですー」
「なん……だと……?」
七那原の言葉に、オウガ・オリジンの表情が凍り付く。
「待て、待て待て、猟兵! これ以上の可愛さを貴様は表現できるというのか!?」
彼女の問いに、七那原は半信半疑といった口調で答えた。
「はい、なのです? 多分、この国の力なら、わたしに掛けられた封印も一時的に解けるはずなのです」
そう言いながら、恐る恐る目元の純白の布地を外した。
普段は全身に施された封印によって目元は覆われ、七那原自身は視力を奪われ、誰も七那原の瞳を見ることが出来ない。
しかし、今、七那原は金色の両眼でオウガ・オリジンを見詰める。
ややたれ目のぱっちりお目々は、8歳の幼い少女特有の可愛さを遺憾なく発揮していた。そこへ駄目押しの一撃として、女の子の一番可愛い表情――心からの笑顔をオウガ・オリジンへ浮かべた。
「あ゛ッッッッッッッッッッ
!!!!」
オウガ・オリジンは胸元を掻きむしりながら藻掻き、しかしながら恍惚の表情のまま呼吸困難に陥ってしまう!
「ヒィー! ヒィー! ……っんてことだ! メイクなんていらないくらい可愛いぃぃっ! 心臓止まるかと思った、いや厳密にいれば一度止まって、自力で今動かしたんだが!?」
「そこまで褒めてくもらえると照れてしまうのですー」
頬をほんのり桜色に染めて恥じらう七那原の仕草は、オウガ・オリジンへ思わぬ追撃となって直撃!
地面に転がってびったんびったんと暴れるオウガ・オリジン!
「ヤバい、ヤバいぞこれは……! いきなり心臓止まるほどの威力をぶつけるか普通? 正直、尊すぎるぞ……!」
うわ言をぶつぶつ口にするオウガ・オリジン。
だが、そんな彼女の雰囲気が急変する。
「……そうだ、ここで貴様を殺してしまえば、可愛いのはわたしだけだ!」
唐突な宣戦布告!
立ち上がったオウガ・オリジンの全身からトランプのカードが溢れだす!
「イマジンモンスター・ディフェンス! このロリータ服は猟兵どもの攻撃を軽減するぞ! そしてこのトランプのカードが貴様の身体を切り刻むのだ!」
トランプのカードをガトリング砲の弾のごとく立て続けに七那原へ解き放つオウガ・オリジン!
「死ね! 死んでしまえ!」
一枚一枚が鋭利な刃物当然のカードが七那原に殺到してゆく!
だが、次の瞬間、カードの弾幕は猫のぬいぐるみのヤドリガミのような影の軍勢によって弾き返されてしまった!
何が起きたか、オウガ・オリジンは理解が追い付いていない。
よくよく見れば、七那原の手元には鈴の付いた白いタクト『共達・アマービレ』が握られており、それをリズミカルに振るたびに周囲から無数の白猫の軍勢が顔を出し、それらを守るかのごとく、七那原の影から猫のぬいぐるみのヤドリガミ猟兵の姿をした軍勢が這い出ては防御に徹していた。
「さぁ、ねこさん達のマジックオーケストラ、開演なのですよ!」
七那原がタクトを振ると、白猫達が一斉にみゃーみゃー♪と歌い出し、何処からともなく音楽が鳴り響き出す。
影の猫ぬいぐるみ軍勢はオーケストラの周りで踊りだし、オウガ・オリジンのトランプを一枚とて後ろに通すことはない。
そして何より、猫たちの演奏会が可愛すぎるのだ!
「――ッ
!!!!」
尊さの許容摂取限界量を遥かに超えたオウガ・オリジンが、謎の力で後方に吹っ飛んでゆく!
「何だ、何なのだ、あの尊すぎる光景は! ここはメルヘンの国か? いやアリスラビリンスだからもともとメルヘンの国ではないか!」
あまりの尊さに錯乱し始めたオウガ・オリジン。
今が大打撃を与える絶好のチャンス!
「ねこさん達、かわいいパワーを一点集中なのですー」
「「にゃ~!」」
白猫達は七那原と一緒にフルパワーの魔力を練り上げ凝縮してゆき、空中に巨大なハート型魔法陣を描き出す。
「カワイイ・ハートビーム、発射なのですー!」
空中に描かれた魔法陣から極太のビームがオウガ・オリジンへ照射される!
光線が着弾すると、超高温の火柱が上がり、上空にキノコ雲が立ち昇った!
「あああああーっ!?」
爆風で吹き飛ばされてゆくオウガ・オリジンの表情は、何故かとても喜色に満ち溢れていた。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
敵の大将も戦場も色んな意味ですげーよな
可愛い物…うーん?
オレは忍び思考で猫が可愛いし最強(身軽で暗視可隠密向きで隠し武器有)と思うけど
グリモア猟兵の言う敵大将の姿から言えば生き物より人形とかの方が…?
生き物じゃない方が【激痛耐性】も効果ありそうだし
【テディベアみたいなの縫い目の赤い猫ぬいぐるみ】に化ける
敵UCに対応の為こっちも要代償の技で仕掛ける
UC強化代償の流血を誤魔化すのもあり毛色は地毛の赤
お腹の綿(又は背)にクナイと手裏剣を隠しトコトコ近づき至近距離で【投擲/念動力/武器受け】攻撃と被弾を弾く
妨害見越して【カウンター/串刺し/暗殺】でクナイを咥え飛び掛かり喉を掻き切るか突き刺す
アドリブ可
他の猟兵とのカワイイバトルを見物していた鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、その内容に口をあんぐりと開けて困惑していた。
「……敵の大将も戦場も色んな意味ですげーよな」
だが、鹿村は一連の流れから、この世界では腕力ではなく可愛いことが相手を死に至らしめる最善手であることを理解できた。
『それで、どんな可愛いものになるか決めた?』
相棒の白い鸚鵡の雌である黄芭旦のユキエが鹿村へ尋ねる。
これに鹿村は首を傾げながら答えた。
「可愛い物……うーん? オレは忍び思考で猫が可愛いし最強と思うけど? 身軽で夜目も利くし、隠密向きで隠し武器の爪や牙もあるからなー?」
『でも、猫はさっきの猟兵さんがやってた』
ユキエのツッコミに、鹿村は頭を抱えてしまう。
「そうなんだよな? 流石に同じネタを天丼するのも芸がねーんだよな」
しばし頭を捻らせた結果、鹿村はひとつの結論に辿り着いた。
「グリモア猟兵の言う敵大将の姿から言えば、ここは生き物より人形とかの方が……?」
可愛い人形は、いかにも女の子が好みそうな物品である。
鹿村は確信した。
「人形なら、破壊されない限り痛覚がなさそうだし、どうせならテディベアとかいう熊のぬいぐるみになってみるかな?」
早速、鹿村は想像力を働かせ、自分の体を愛くるしいテディベアに変えた。
そして苦無を縫い目から体の中へ滑り込ませると、そのままオウガ・オリジンへ忍び寄る。
その間にユーベルコード『降魔化身法』で、妖怪・悪鬼・幽鬼の3種を自身の体内に宿して超効果を果たす。
(ぬいぐるみだから流血することや中毒はねーけど、呪縛も面倒だな……)
やむなく、鹿村は自身の服と身体を縫合している赤い糸を苦無で切り裂き、わざとほつれさせて地面に垂れさせた。
どうやら流血を糸で表現して誤魔化せたようだ。
(おし、呪縛は来てないな。全身は自由に動かせる。ぬいぐるみの流血と言ったら、やっぱ糸のほつれだろ?)
ちなみに、赤い糸は鹿村の地毛の赤である。
鹿村の狙いは的中し、そのままオウガ・オリジンへゆっくり近付いてゆく。
オウガ・オリジンは先程の猟兵のダメージから回復すると、いつの間にか此方を向いてるテディベアを発見した。
「ふむ? なかなか愛らしいテディベアではないか。む? 糸が解れているではないか。なんて甘い縫合なのだろうか。せっかく可愛いのに勿体ないことを……」
「そうか、オレはちゃんと可愛いようで安心したよ」
「なっ
……!?」
テディベアが唐突に喋れば、オウガ・オリジンも驚くというもの。
「悪いが一気に決めさせてもらう――!」
オウガ・オリジンへ飛びかかり、腹の中から苦無を飛び出させて突き刺さんと試みる。
しかし、オウガ・オリジンは急に加速してこれを回避!
「イマジンモンスター・スピード! 移動速度と反応速度が爆発的にアップしたぞ! そんな攻撃、あくびが出るほど遅くいぞ!」
「そうかよ。でもこっちも超強化中だ。ちょっくら速さ比べと洒落込もうか?」
鹿村の姿が一瞬で消え、オウガ・オリジンの背後に回り込んでいた。
「なに……っ!」
驚愕するオウガ・オリジンは、とっさに回避しようと身をよじる。
しかし、鹿村がオウガ・オリジンの背中に飛び付く速度のほうが早い!
「悪りーな。可愛いのが強いっていうなら、今のオレはなかなかのもんだろ?」
鹿村はオウガ・オリジンの背中をよじ登ると、その首元に苦無を容赦なく突き刺した!
可愛いパワーによって、ただのぬいぐるみのはずの身体に鹿村本来の腕力が宿る!
急所への一撃にオウガ・オリジンは悲鳴を上げた。
「違う、違うぞ! わたしは、この世界でさいきょうでかわいいはずだ……!」
首から溢れ出す自身の血を手で抑えながら、鹿村を遠くへ放り投げて逃げ出してゆくオウガ・オリジン。
地面をボヨヨンと弾む鹿村は、本当に痛覚がないことに驚きながらも、忍者らしく上手く行動できたことに手応えを感じたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
化野・花鵺
「最強可愛いせぇふく敵と自分?!…行く行くぅ」
狐、今日も話半分だった
「水色のエプロンドレスならぎりっぎりアリスの準せぇふくかなって思うけどぉ…あれはなしかなぁ」
「最強可愛いはねぇ、こういうのをいうんだよぉ」
狐、3才の幼稚園児になった
黄色い園児帽子から覗く狐耳
ピン留め名札のついた青いスモッグタイプの園児服
下は勿論見せ用ふりふりカボチャパンツ
「カヤでしゅ。ちゃんちゃいになりまちた」
指3本出した狐、頭の中身も幼児化した
「カヤは、かーいーの。おばちゃんはぁ…くちゃくて怖くてかーいくないの」
顔に手を当てた狐、香水も化粧もアウト判定した
「おばちゃんはナイナイするのぉ」
「管狐の召喚」で全敵喰い殺しを命じた
化野・花鵺(制服フェチの妖狐・f25740)はグリモアベースで作戦概要を聞いた瞬間、その目を爛々と輝かせた。
「最強可愛いせぇふく敵と自分!? ………行く行くぅ!」
しかし化野、今日もグリモア猟兵の説明を話半分で転送を希望したものだから、さあ大変!
想像力の国へ転送された直後、化野はオウガ・オリジンのロリータ・ファッションを目の当たりにして脱力してしまった。
「こんなのせぇふくじゃない……そっちじゃなくて、水色のエプロンドレスならぎりっぎりアリスの準せぇふくかなって思うけどぉ……それはなしかなぁ」
「黙れ、黙れ猟兵め! これはいわば選ばれし乙女こそ似合う可愛さと言う名の制服だぞ! この国ではわたしはとても可愛くて強いのだ!」
オウガ・オリジンは誇らしげにスカートの裾を摘んで優雅にお辞儀する。
いかにも可愛い仕草を見せ付けることで、化野の理解を得た上で心を折るつもりらしい。
だが、この行為は化野の怒りに火を付けてしまった!
「そっちこそ何も知らないくせにうるさいのぉ! どんなに可愛くても、せぇふくがこの世で一番カッコよくて尊いんだからぁ!」
烈火のごとく怒りを撒き散らす化野。
その言葉を実証すべく、彼女もまた想像力を駆使して変身を遂げる!
「最強可愛いはねぇ、こういうのをいうんだよぉ!」
突如、ぼんっ!と爆発が起きた。
爆煙の中から、さっきより背丈が半分ほどまで縮んだ化野が現れた。
「カヤでしゅ。ちゃんちゃいになりまちた」
三本指を立ててニコニコ笑う化野。
なんと、彼女は三歳児に変身してしまった!
注目すべきはその格好である。
黄色い園児帽子から覗く狐耳。
ピン留め名札のついた青いスモッグタイプの園児服。
下は勿論見せ用ふりふりカボチャパンツ。
何処からどう見ても、これは幼稚園年少さんスタイル!
しかも、恐らく人生で初めての制服姿、着慣れていない感じと幼女特有のあどけなさが渾然一体となって、ロリータ服のオウガ・オリジンに堂々と立ち塞がっているのだ!
「みてみてぇ、おばちゃん! カヤはぁ、せぇふくでぇ、かーいーの!」
「おば……っ!?」
オウガ・オリジンの表情筋が引き攣って硬直してしまう。
確かに三歳児にとって、オウガ・オリジンの年代の少女はおねえさんとおばちゃんの境目なのかもしれないが……。
「おばちゃんはぁ……くちゃくて怖くてかーいくないの」
どうやら、決め手は濃い目の病みメイクが年上に見えた原因らしい。
香水やおしろいの香りが三歳児にはキツすぎたのだ。
その証拠に、化野は涙目で鼻を摘みながら、空いた手で顔の前をブンブンを仰いで臭いを飛ばしているのだ。
オウガ・オリジンは鼻血を流しながらも激昂していた。
「おのれ、おのれ三歳児! ちょっと可愛くなったからって、言っていい事と悪い事があるぞ!」
くわっと目を吊り上げて怒鳴ると、化野は肩を竦めて身を縮めてしまう。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ! ご~わ~い~よ~ぉ!」
恐怖でいきなり号泣してしまう化野!
どうやら思考回路や感受性までもが三歳児に戻ってしまったようだ。
ギャン泣きされたオウガ・オリジン、容赦なくトランプのカードを飛ばそうとしたが……。
「くっ! 駄目だ、駄目だ! 泣いている可愛い女の子をいじめるようなことなど、今の最高に可愛いわたしがすることではない!」
なんと、オウガ・オリジンは攻撃を躊躇っている!
化野、幼児化作戦が思わぬところで功を奏した!
「いやぁぁぁぁぁっ! おばちゃんはナイナイするのぉォ!」
だが、化野はまったくもって加減をせず、ユーベルコードで管狐を召喚させた。
83匹の管狐が、泣いている主を見て驚愕する。
主が幼くなっているし、泣いているし、原因はなんだろうと仲間同士で顔を突き合わせる。
ふと、狼狽しているオウガ・オリジンの姿が彼らの目に入った。
そして化野が彼女を指差して泣き叫んだ。
「あれ、食い殺してぇぇぇ! きらぁぁぁいっ!!」
――そうか、お前が主様を泣かした張本人か!
管狐達は主を守るべく、一斉にオウガ・オリジンへ突撃を開始!
「や、やめろ! わたしを噛むなァーッ!!」
全身をガブガブと噛まれたオウガ・オリジンは、一目散に化野から背を向けて逃げ出してしまった。
成功
🔵🔵🔴
龍ヶ崎・紅音
アドリブ・絡み歓迎
【POW】
「"かわいい"そんざいか…。わたしにとって、かわいいは"ぬいぐるみ"かな?これでオウガ・オリジンを倒せればいいけど」
"現実改変UC"を警戒しながら、巨大化した敵の攻撃を【気合い】で回避したり【怪力】でなんとか【武器受け】をするよ
その後に隙を突いて、接近して【属性攻撃】の『煉獄黒焔斬』を叩き込むよ
ちなみに、オウガ・オリジンに対抗するためにかわいいぬいぐるみの姿になっているけど、ホムラも武器もぬいぐるみのような感じになっているし
かわいいを維持するために、ぬいぐるみらしい仕草をしてみるよ
アリルティリア・アリルアノン
なるほどなかなかのKawaii力ですが、相手が悪かったですね
かわいさ勝負ならアリルは絶対に負けませんよ!
こっちも早速超絶カワイイフォームに変身です!
麦わら帽子に白いワンピースとサンダルだけのシンプルコーデ!
更に背景には青い海と砂浜!
そして波打ち際であなたにまぶしい笑顔を向ける美少女!
これがかわいくないはずがあるだろうか、いやない!
アリルちゃんはもともとスーパーかわいいですからね!
あれこれ盛っていくのも悪くはないですが、
最高の素材には余計なものは足さず、
あえてシンプルにまとめる事で素材の良さが最強に輝くのです!
あとはこの魅力的な姿をUCで全世界に配信しつつ、
全力魔法でぶっ飛ばします
龍ヶ崎・紅音(天真爛漫竜娘・f08944)とアリルティリア・アリルアノン(バーチャル魔法少女アリルちゃん・f00639)の2人は、ほぼ同時に『想像力の国』に転送されてきた。
2人は目の前で優雅に佇む……ように心懸けるも、猟兵の猛攻を受けて肩で息を切るオウガ・オリジンを見据えた。
「あれがオウガ・オリジン? その姿が現実改変ユーベルコードなのかな?」
龍ヶ崎の言葉に、オウガ・オリジンが誇らしげに答えた。
「そうだ、そうだとも! この不思議の国では可愛さこそが何よりも重視されるのだ! 故に私は最強に可愛い! 先程は猟兵どもに不覚を取ったが、貴様ら相手なら楽勝だ!」
オウガ・オリジンの不遜な態度に、アリルティリアはすぐさま反論した。
「なるほどなかなかのKawaii力ですが、相手が悪かったですね! かわいさ勝負ならアリルは絶対に負けませんよ!」
「無駄だ、無駄だ小娘め! どうせ、猫か何かに変身するつもりだろう? 同じ手は喰わんぞ!」
「そんな事、一言も言ってませんよ? アリルちゃんも早速、超絶カワイイフォームに変身です!」
ペカーッとアリルティリアの全身が発光したかと思えば、そのバーチャルレイヤーが姿形を変えてゆく。
光が収まると、気が付けば周囲は白い砂浜と碧い海に囲まれていた。
「なんだ、なんだここは!? わたしの現実改変ユーベルコードを塗り替えただとっ?」
「アリルちゃんの想像力は無限大なのです! 自分のKawaii力を引き出すためなら、これくらい簡単ですよ!」
逞しすぎる10歳児の想像力が世界に羽ばたいた結果、固有結界めいた世界構築を引き起こしてしまったのだ!
そんなアリルティリアの服装は至ってシンプルであった。
「アリルちゃんはもともとスーパーかわいいですからね! あれこれ盛っていくのも悪くはないですが、最高の素材には余計なものは足さず、あえてシンプルにまとめる事で素材の良さが最強に輝くのです!」
そう言い切った彼女の麦わら帽子に白いワンピースが海風になびく。
波打ち際でサンダルの爪先がパシャパシャと水飛沫を上げ、オウガ・オリジンに夏の太陽にも負けないほど眩しい純粋無垢な笑顔を向ければ、アリルティリアの求める可愛いシチュエーションが完成する!
「ブフォッ!?」
突然、オウガ・オリジンが鼻血を噴き出して後ろへ卒倒!
アリルティリアの可愛さが、オウガ・オリジンへのダメージに変換されたのだ!
「尊い、尊すぎるし眩しすぎる! ちっちゃい女の子が波打ち際で遊ぶだけでも打点が高いというのに、夏らしくもシンプルなコーデで清楚を強調してくる可愛さが凶悪過ぎる……!」
「え、どうしたの、オウガ・オリジン? ダメージ入りながらも凄くアリルさんを褒めてまくってるんだけど……?」
一連の流れを静観していた龍ヶ崎は、ようやくこのバトルの何たるかを理解できた。
「えぇと、“かわいいそんざい”か……わたしにとって、かわいいは“ぬいぐるみ”かな? これでオウガ・オリジンを倒せればいいけど」
龍ヶ崎は想像力をフル回転させると、自分の体をぬいぐるみに変えてみせた。
「おっとっと。ぬいぐるみの身体はフワフワしてて落ち着かないね……」
龍ヶ崎は、自分の姿をそのままSDぬいぐるみに変えた。
その形状は元の彼女の身長の三分の一まで縮まり、まるでだらーんとたれた様な、もっちりとした肌触りが特徴のビーズぬいぐるみである。
これにオウガ・オリジンは目を血走らせて彼女を見詰めていた。
「何だと……? あのモッチリ感、やる気のない垂れ具合! ぐッ! やるな竜の娘! 乙女が好みそうなツボを見事に突いてきたが、わたしを尊死させる事はできなかったようだな?」
「あ、ぬいぐるみ化は私だけじゃないよ? ホムラ、おいで!」
龍ヶ崎の呼び声に、いつもは凛々しい感じの白銀槍竜のホムラが、ちっちゃいぬいぐるみに変身して風船のようにプカプカと彼女の頭の上に浮かび始めたではないか!
「げはあぁぁぁッ!」
それを目の当たりにしたオウガ・オリジンは喀血!
「ゲホッゲホッ……! 可愛さに可愛さを掛け算してきただとっ?」
「なんか凄いダメージが入ってるね……? あ、私の黒焔竜剣もぬいぐるみになってる……!」
いつもは胸元の黒龍焔の呪印から噴き出す黒焔を具現化させて出現させる龍ヶ崎の魔剣だが、ぬいぐるみ化した魔剣は振るとキュッキュッと音を立てて鳴くのだ。どうやら、中に入っている詰め物が摩擦で擦れて音が鳴るらしい。ゆるい感じの見た目のぬいぐるみ龍ヶ崎(略してぬいヶ崎)とホムラ、そして素振りをするたびにキュッキュッと音が鳴る魔剣。緊張感の欠片もない彼女達が、オウガ・オリジンへ言い放つ。
「さあ、これで勝負だ、オウガ・オリジン!」
だがオウガ・オリジンは既に尊死寸前だった。
「待て、待ってくれ竜の娘……! もし許されるなら、少しだけ抱きしめていいか!?」
オウガ・オリジンのまさかの申し出に、龍ヶ崎は当惑しつつもこれを受け入れた。
ラスボスの黒い腕に抱かれる龍ヶ崎。
ここだけ見たらとても平和な光景であった。
だが、オウガ・オリジンのロリータ服が、徐々に怪物の顔を生やし始めると事態は一変する。
「掛かったな? 貴様はもう逃げらない!」
「まぁ、そうだと思ってたよ!」
龍ヶ崎の危険察知能力は、常に警鐘を鳴らし続けていたのだ。
おかげでオウガ・オリジンの不意打ちを予見し、魔剣から黒焔を噴き出してロケットのごとくバビューンッと吹っ飛んで緊急回避してゆく。
「この呪われた焔の斬撃を受けられるかな!!」
ユーベルコード『煉獄黒焔斬』!
ぬいぐるみ化した黒焔竜剣が、よもや本来の機能を全うに果たすとは、オウガ・オリジンは思いもしなかったのだ。
「ぎゃあああッ! 熱い、熱いッ!」
黒焔に全身を焼かれてのたうち回るオウガ・オリジン!
「だが、今の私は最強に可愛いロリータ・ファッション! こんな炎は軽減してみせるぞ!」
苦し紛れに自分の可愛さを信じることで、現実改変ユーベルコードによるダメージ軽減を試みる彼女。そのまま溢れ出るトランプのカードでアリルティリアを攻撃し始めた!
殺到するカードの弾幕を前に、アリルティリアは……なんと、エレクトロ・ルミネイト――電子の海より生み出されし、薄緑色の光を放つ魔法のステッキの一振りでそれらをなぎ払ってみせたではないか!
そんなアリルティリアの頭上には、ドローン型サポートユニット・モデルnano X2『アレリ』が滞空していた。
「ネガティブハートにスマイル配信♪ やっほ~、アリルちゃんです! 今日は緊急配信です! ゲストに、な、なんと~! アリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラことオウガ・オリジンが参戦してくれてますよ! 今からアリルちゃんがやっつけちゃいます!」
ドローンに向かって急に語りかけるアリルティリア。
今、アリルティリアは世界の壁を超え、この戦闘を自身のファンへ生配信しているのだ。これがユーベルコード『グッドナイス・ブレイヴァー』!
『アリルちゃんの今日の格好、かわよかわよ!』
『敵はすげーごてごてだなw』
『可愛さが飽和状態なんだが???』
『アリルちゃん頑張って下さい!($120)』
「みんな、応援よろしくです! あ、スパチャありがとう♪」
視聴者のコメントがARホログラムディスプレイで表示されれば、アリルティリアの持つ魔法のステッキに魔力が充填されてゆく!
アリルティリアは今、視聴者のコメントやスパチャのバックアップで武器を強化できるのだ!
「カードなんかにアリルちゃんが負けません! あ、竜のお姉さんも一緒に戦ってほしいのです!」
「すごいね! これ私も映ってるの?」
トコトコと近寄ってきたぬいヶ崎を抱き上げたアリルティリアは、ドローンへ向かって、あざといカワイイポーズ!
「アリルちゃんにみんなのパワーを分けてほしいのです!」
『ああああああ!(尊死)(¥8,000)』
『ありがてぇありがてぇ!(¥10,000)』
『ここに墓を建てよう($2,000)』
押し寄せるスパチャの嵐、つまりマネーパワー!
「ありがとう! みんなの力で、オウガ・オリジンをやっつけちゃいましょう!」
魔法のステッキをオウガ・オリジンへ突き付けたアリルティリアは、その杖の先に凄まじい魔力を一極集中させる!
「これがバーチャル魔法の真髄です! みんなの力がひとつになった、その名も!」
限界を超えた魔力がオウガ・オリジンへ解き放たれた!
同時に、ぬいヶ崎の黒焔も織り交ぜて発射!
「必殺! スパチャ・ビーム!」
「グワーッカネの力ぁ!?」
黒焔とマネーの魔力で吹っ飛ばされるオウガ・オリジン!
アリルティリアはぬいヶ崎を胸元で抱えながら、感謝の言葉をドローン越しのファンへ告げたのであった。
「みんな! ありがとうございます! メンバーシップの登録もよろしくです!」
大成功
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栗花落・澪
今の僕はかっこいいですが(自己暗示
子供時代はね…うん
自覚あるので
推定4、5歳程度に変身
膝まである茶髪は中央からオレンジのグラデーション
淡い桜色の姫ロリで☆花園を展開し演出
はい、このお花あげる
おねーさんは可愛いからきっと似合うよ
綺麗な花を一輪取って
精一杯の背伸びで差し出すよ
【オーラ防御】も準備して
警戒も怠らないけど
戦いばっかりだと疲れちゃうから
皆で一緒にあそぼ?
無邪気な笑顔で飛びつく瞬間【指定UC】
翼の生えたもふもふ兎になって抱っこされてあげよう
か弱い小動物を傷つけられます??
大人しくもふらせたら【破魔】を乗せた光魔法の【高速詠唱、属性攻撃、全力魔法】で零距離しますね
痛みは抑えるから、ごめんね♡
オウガ・オリジンは痛感する。
「嘘だ、嘘だこんな事! 猟兵どもめ……力押しでも無茶苦茶だというのに、可愛さも暴力的だと
……!?」
想像力の世界なので、傷口や衣服は瞬時に修復されるが、もはやオウガ・オリジンがこの世界を保つだけの余力は存在しない。
あと一撃、可愛いシロモノが直撃すれば、彼女は世界ごと吹き飛ばされてしまう。
「だが、そう簡単に可愛い猟兵が現れるわけ……」
ないだろう、と言いかけた矢先、オウガ・オリジンの背後から声を掛けられた。
「こんにちは、オリジンさん!」
鈴のように心地良い声色。
オウガ・オリジンは覚悟を完了させると、ゆっくりと振り返る。
「……来たか、来たか猟兵め! わたしはもう心を動かされないぞ!」
そして現れた猟兵の姿を目の当たりにした。
そこには、推定4~5歳くらいの、淡い桜色の姫ロリワンピースを纏った子供が、キラッキラに輝く笑顔を向けていた。
膝まである茶髪は中央からオレンジのグラデーション。
オラトリオ特有の背中の翼は穢れを知らない純白。
琥珀色の瞳を潤わせながら、その周囲に少女漫画めいた星やキラキラのエフェクトを想像力で発生させる徹底ぶり。
「ごッハああァァァァァッ!」
オウガ・オリジン、口から大量の血液を吐き出した!
まさにクリティカルヒット!
そのまま血溜まりに崩れ落ちるオウガ・オリジン!
「っがふッ! 最後の最後でとんでもない隠し玉が来てしまったぞ……!」
「そんなにおねーさんに見詰められちゃうと、僕、照れちゃうなぁ……?」
うつむき加減で上目遣い、もじもじと身をよじる子供の何たる愛らしさよ。
だがオウガ・オリジンははたと首を傾げた。
「待て、待て貴様? 今、“僕”と言ったか?」
「そうだよ? だって、僕、男の子だもん!」
オウガ・オリジンにとっては残酷な真実を言い放った幼男モードの栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、ぱっと笑顔を咲かせながらその場でくるりんと一回転、甘ロリ姫袖な桜色ワンピースのスカート裾をぶわっと広げてから、その両裾を摘んで丁寧にお辞儀してみせた。
「栗花落 澪、5歳! 男の子だよ!」
「男の……娘(こ)……だとぉ!?」
オウガ・オリジンの鼻の穴から、噴水のように鮮血が迸る!
「なんてこと……なんてことだ! ショタにロリータで男の娘とか、どれだけ属性を守れば猟兵どもは気が済むのだ!?」
言葉は辛辣だが、病みメイクで顕わになったオウガ・オリジンの表情はとても幸せそうだ! そんな彼女のライフポイントは既に枯渇寸前、尊死間近である!
このリアクションに栗花落は内心、ちょっと困惑していた。
(成長した僕は何処からどう見ても『カッコいい存在』ですが、子供時代はね……うん、自覚あるので。だから変身したんですけど、なんか、思っていた反応を遥かに超えてて、その、怖いなぁ……)
あくまでも現在の自分を『カッコいい』と言い聞かせつつ、5歳児の姿でクリティカルヒットを食らってるオウガ・オリジンを不憫に感じてしまう栗花落。
彼は想像力で、足元に一輪のスイートピーを咲かせる。
それを摘み取ると、自らの鼻血溜まりに沈むオウガ・オリジンへ差し出した。
「はい、このお花あげる。おねーさんは可愛いからきっと似合うよ」
オウガ・オリジンは血溜まりから起きあった。血痕はすぐに消滅し、衣服にシミのひとつもなくなる。
差し出されたスイートピーと栗花落の顔を何度も交互に見詰め、やっとの事で彼女は声を絞り出した。
「……は? 何を、何を考えている? わたしは、お前の敵だぞ?」
「でも、戦いばっかりだと疲れちゃうから、僕と一緒にあそぼ?」
「遊ぶ、だと? ふざけるな、ふざけるなよ! 自分達の優位を悟った瞬間、このわたしに慈悲を差し向けるつもりか!」
怒鳴りつけられた栗花落(5歳)は、全身をビクッと縮こませてしまう。
「ふぇ……だって……おねーさん、寂しそうだったから、ひぐ……っ!」
琥珀色の瞳に涙を溜めて、声を詰まらせる栗花落。
オウガ・オリジンは懐のトランプのカードを、そっと衣服の奥へしまいこんだ。
「……わかった、わかったから、わたしの前で泣くな! で、どうすればいい……?」
オウガ・オリジンのその言葉に、一変して目を輝かせる栗花落(5歳)。
「ちょっとまってて!」
彼は足元に大量のスイートピーを咲かせると、一心不乱に摘み取り始める。
そして茎と花を織り込み、ピンクの花冠を拵えた。
「はい、おねーさん! お帽子とって! よいしょ、っと……!」
小さな体で背伸びして、ボンネットを外したオウガ・オリジンの戴きの上に花冠を乗せた。
「ほう……。なかなか良い腕だ。わたしの可愛さが増してしまうな?」
オウガ・オリジンもまんざらではない様子。
更に、栗花落は駄目押しを試みる。
「今度は、いっぱい甘やかしてくれていいからね!」
無邪気な笑顔で飛びつく瞬間、ユーベルコード『正義のうさもふ』で、自身を桜色の垂れ耳兎へと変身させた!
兎になっても、オラトリオ特有の翼は健在で、それが却って幻想的な可愛さを演出していた。
「さあ、いっぱいもふもふしてね! まさかと思うけど、か弱い小動物を傷つけたりしないよね……?」
きゅぅん……と兎のつぶらな瞳がオウガ・オリジンを射抜く。
「あ゛ッッッ!」
突如、オウガ・オリジンは白目を剥いて全身を痙攣させている!
「こ、これ以上は、わたしが尊死してしまう……! しかし、抗えない、抗えないぞこのモフリティ! あぁあ~可愛いぃ~!」
ゆっくり優しく翼兎を撫でるたびに、オウガ・オリジンの存在が希薄になってゆくではないか!
効いてる! 確実にオウガ・オリジンを尊死させるほどのダメージが入ってる!
(それじゃ、トドメを刺しちゃおうか!)
今、栗花落はオウガ・オリジンに抱きしめられている状態だ。
つまり、密着状態である。
その状態のまま、全力の聖者特有の破魔の光を放出したらどうなるか?
「おねーさん! 痛みは抑えるから、ごめんね♡」
「ハッ! しまっ……!」
オウガ・オリジンのユーベルコード発動よりも先に、邪悪を滅する聖なる光が周囲の空間を塗り替えてゆく!
「ああ……これが……尊死……!」
想像力の国はガラスが割れたかのようなけたたましい破砕音を立てながら瓦解してゆき、オウガ・オリジンもその崩壊に巻き込まれて完全に消滅していった。
……光が収まり、元の姿に戻った栗花落。
何故か、スイートピーの花冠だけが、現実世界に取り残されていた。
栗花落はそれをなんとなく、大切に拾い上げて抱き締めた。
スイートピーの花言葉……『さようなら』を、思い浮かべながら。
大成功
🔵🔵🔵