迷宮災厄戦⑱-17〜Mirage Symphony
●今回はいきなりグリモアベースから
「順調順調、みんな頑張っていてもうこっちサイドはてんてこまいだよ」
水島・可奈(少女自由に夢幻を掴め・f01117)がねぎらいにも似た言葉をかける。
「ただ、懸念点があってね……ちょっとオウガ・オリジンの戦力がかなり膨れ上がってきている」
猟書家たちを倒してきたことでオウガ・オリジンの力は膨れ上がっている。過去に比類ない戦力にまで今達してきているのは事実だ。
「そのため、少しオウガ・オリジンの方にちょっかいだしておきたい。いうまでもなく『高難度依頼』だから注意して」
――と、ここまではいつも通りなのだが。
「実のところオウガ・オリジンは物凄く色んなパターンを持つ。私が見たパターンでは……オウガ・オリジンの姿はない」
ない、とはどういうことか。
「正確には、現実改変ユーベルコードを使って、『鏡のラビリンス』そのものに変身している」
鏡のラビリンス。つまり、オウガ・オリジンの中に入って行動するということか。
「ついでにこの鏡は無敵だから迷宮殴ればいいとかは通用しない」
――そう、直接オウガ・オリジンを殴ることはできないのだ。
ならどうすればいいかというと。
「この鏡が、君たちみんなの鏡写しを作りだす」
そう、猟兵たちのコピーを作るという、ドッペルゲンガーをしてくるのだ。
「鏡写しの姿はみんなとまったく同じようにできているし力やアビリティも同じだけど、相違点が2つ。まず――姿が左右対称。例えばサイドテールの人の鏡写しはツインテールになる感じかな。で、もう一つは性格が正反対だということ」
これを活かして、自分と正反対の自分を攻略するのが作戦だ。
「自分のことは自分が一番わかると思う。申し訳ないけど、自分を担当してほしいな」
ある程度鏡写しを倒せば鏡のラビリンスは崩壊するはずだ。
「そうすれば、鏡のラビリンスとなったオウガ・オリジンを倒せるはず。どうにか、お願いね」
――それは、果てしない攻撃の第一歩。
しかし大きな一歩となる。
希望を胸に、可奈は猟兵たちを送り出す。
結衣謙太郎
こういうの結衣好き。自分と戦うのってエモい。
結衣(戦争モード)です。最終決戦モードはまた今度。
鏡のラビリンスで自分と戦う物語。
以下詳細。
●メイン目標
「鏡写しの私」の討滅。
迷宮にはいくら攻撃しても無駄です。壊れない壁ともいう。
●章構成
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦(ラビリンス・オウガ・ウォー)」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
今回はオウガ・オリジン戦――のパターンの一つとして、自分と戦ってもらいます。
現場は鏡のラビリンス、あちこちに自分が写っています。
そんな中で猟兵一人につき1体の「鏡写しの私」が襲い掛かってきます。
自分との戦いです、何か思うこととかいろいろあるでしょう。
ぜひご自身の設定強化とか色々に使っていただけると幸いです。結衣が燃えます。
高難度依頼や超ボスシナリオはいつもより判定が一段階厳しくなります。
失敗判定やシナリオ失敗の可能性があることはご了承ください。
それでは戦争シナリオということで皆様の魂のこもったプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『「鏡写しの私」と戦う』
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POW : 「姿が左右対称」「性格が正反対」だけならば、戦闘力は同じ筈。真正面から戦う
SPD : 「姿が左右対称」である事を利用して、攻略の糸口を見つけ出す
WIZ : 「性格が正反対」である事を利用して、攻略の糸口を見つけ出す
👑11
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亞東・霧亥
【SPD】
全身黒装束の左右対称は変化無し、本来ならば・・・な。
器物に宿る7番目の姿になり、襲ってくる敵の外見を変えてから霧亥の姿に戻る。
「今までの戦場でその姿で戦った事は無い。そいつの性格を俺は知っているが、お前には解らない。探っても無駄だ。器物に宿る魂は鏡には写らない。」
百戦錬磨の竜殺しも、中身がハリボテでは新兵にも劣る。
【UC】
敵の心身がちぐはぐな内に仕止める。
屑龍にヴァルギリオスの毒血を注ぎ、封印を解く。
屑龍は、分かたれた九刃に九毒を宿す九頭竜形態になり、全てが変則的な動きで敵に喰らい付く。
「このUCを使うのも、お前が初めてだ。お前と同じ至高の存在から得た劇毒。存分に味わえ。」
●もし鏡写しも知らない姿や技を使えば
「全身黒装束の左右対称は変化無し、本来ならば……な」
早速見破ったかのような言葉を吐く亞東・霧亥(峻刻・f05789)の前にあるのは全身黒ずくめの『7番目』。あらかじめ器物に宿る7番目の姿になり、外見を変えさせたのだ。
『何が可笑しいのか?』
正反対な性格の鏡写しの『7番目』が聞いてくる。
「今までの戦場でその姿で戦った事は無い。そいつの性格を俺は知っているが、お前には解らない」
『そうか? そんなことないぞきっと』
探すようなそぶりをする無邪気な鏡写しに嘆息する。
「探っても無駄だ。器物に宿る魂は鏡には写らない」
ヤドリガミとして出てこなければ、きっと写ることはないのだろう。もしかして目の前のこれが無邪気な存在として出てきたのも、『性格が写らなかった』だけじゃないのだろうか。――嗚呼、写し元が百戦錬磨の竜殺しだとしても、中身がハリボテでは新兵にも劣る。目の前にいるのはただのそっくりさんだ。
『じゃあ……じゃあ、俺はいったい』
完全に相手は心身ともにちぐはぐだ。この隙を見逃す霧亥ではない。
霧亥は屑龍と名付けられた妖刀に自分が持つヴァルギリオスの毒血を注ぐ。――これは封印を解く鍵。『屑』を『九頭』と化させる鍵。妖刀が変化し、鋸歯状の刃に九毒を纏ったそれが禍々しく輝く。
「このUCを使うのも、お前が初めてだ。お前と同じ至高の存在から得た劇毒。存分に味わえ」
屑龍――否、九頭竜が九つの刃に分かれ、全てが変則的な動きで敵に喰らい付く。
『何だ、これ!? 俺はこんなの――』
九つの刃が鏡写しの霧亥に喰らいつき劇毒を与えていく。
『ぐあ、あ、ああ――』
身もだえながら毒に痛みに耐えていたが、やがてその膝をつき、鏡写しの霧亥は消滅した。
「造作もないな」
霧亥は元の姿に戻った九頭竜――屑龍を肩に担ぎ、その場をそそくさと後にした。
――長居して今度はちゃんと九頭竜とかを把握した自分が襲いかかって来たらたまったもんじゃない。
成功
🔵🔵🔴
フォーネリアス・スカーレット
「ドーモ、イェーガーキラー=サン。オブリビオンスレイヤーです」
私は『オブリビオンを殺す者』だ。ならば相手は『猟兵を殺す者』だろう。
「では殺す」
私は端的に殺意を突き付ける。ならば、多弁で注意を逸らしでもして来るか。
「そうか、知らん。死ね」
私はその全てを無視し、決断的に踏み込み電磁居合斬りでも仕掛けておこう。
私は武器を使い捨てながら戦う。ならば相手は一つの武器に拘る。相手の居合斬りを盾で受ける。盾は斬られる。調子に乗ってもう一発打って来る。
その刀は仕様上、一度しか使えん。技術の詰め込み過ぎでな。一度何かを斬れば二度目には刀身が耐え切れずに砕ける。
「死ね」
頭を掴み、楔打ちで破壊する。
●鏡写し死すべし慈悲はない
「ドーモ、イェーガーキラー=サン。オブリビオンスレイヤーです」
『アッ、ドーモ、オブリビオンスレイヤー=サン。イェーガーキラーです』
フォーネリアス・ラルクシアン・ドゥーム・瑠璃・スカーレットことフォーネリアス・スカーレット(復讐の殺戮者・f03411)、またの名をオブリビオンスレイヤーの目の前に殺戮者、イェーガーキラーのエントリーだ! 実際彼女の読みは正しく、彼女が『オブリビオン死すべし慈悲はない』ならば相手は『猟兵殺すべし慈悲はない』である。しかしそれでもアイサツは欠かさない。両者は手を合わせオジギをする。アイサツは実際大事だ。古事記にもそう書いてある。
「では殺す」
オジギ終了から約0.03秒、殺意を突き付けるオブリビオンスレイヤー! サツバツ!
『イエイエ、オブリビオンスレイヤー=サン、まずはお互いのユーベル=コードを見せあいながらでも』
タベン=ジツで注意を逸らしてくるイェーガーキラー。しかしオブリビオンスレイヤーはそんなの気にしない。
「そうか、知らん。死ね」
相手がオブリビオンな以上は死あるのみ! 相手の言葉全てを無視し、決断的に踏み込み、エレクトリックに加速する居合斬りを放つ!
「死ね」
『グァーッ!』
ゴウランガ! 居合斬りがイェーガーキラーに赤い線をつける! イェーガーキラーもしかし負けじと応戦の構え! だがオブリビオンスレイヤーもただ戦うだけではない! 今使った刀を捨て、その後も武器を使い捨てながら戦っている! こうすれば鏡写しの相手は正反対な正確な以上一つの武器に拘るはず! 別の刀による居合斬りを盾で受けるオブリビオンスレイヤー! 盾がしめやかに真っ二つ!
『終わりだ、オブリビオンスレイヤー=サン』
調子に乗ってもう一発打ってきたイェーガーキラー! おおブッダよ、寝ているのですか!
……しかし、その刀を振った瞬間、刀はボロボロに砕け散った。
『ワッザ!?』
「知らないのか――いや、知っててなおそうするしかなかったのだろうな」
そう、ここまで全てオブリビオンスレイヤーの筋書き通り――!
「その刀は仕様上、一度しか使えん。技術の詰め込み過ぎでな。一度何かを斬れば二度目には刀身が耐え切れずに砕ける」
アブハチトラズ! 武器を限定させるだけでなく、その武器を壊させたオブリビオンスレイヤー! そうか捨てながら戦っていたのはそのためもあるのかきっと! ワザマエ!
『なんだと……』
思わず手から壊れた刀が落ちるイェーガーキラー。ブッダ起きてた! むしろ寝ていたのイェーガーキラーの方のブッダだった!
もはやイェーガーキラーに対抗するすべはない! ショッギョ・ムッジョ!
「ハイクを詠め」
残酷なまでに告げられる死刑宣告。それにイェーガーキラーは答える。
『イェーガー……舐めていた……インガオホー』
「死ね」
オブリビオンスレイヤーがイェーガーキラーの頭を掴み、電磁加速式の小型パイルバンカーがその頭を穿つ!
『サヨナラ!』
イェーガーキラーはしめやかに爆発四散――しないで消滅した。
「ふん、オブリビオンである以上は皆殺しだ。生まれたのを恨め」
イェーガーキラーが消えたのを横目に見ながら仕事人かのようにオブリビオンスレイヤーはこの場を去り次に向かうのであった。
なおなんか文体がおかしくなっていたのは二人から放たれた謎のアトモスフィアのおかげであり、実際結衣がおかしくなったわけではない。いいね?
大成功
🔵🔵🔵
春霞・遙
私の鏡写しか、想像がつかないな。
左利きの他は……隙がなくて、自信があって、戦闘にも積極的?
って考えるとあんまり勝てる気がしませんけど。
ただ、大切なものの優先順位もきっと逆なんでしょう。
あなたは自分が傷つくことを嫌うのでしょうね。
誰かの命を救えるなら、喜んで投げ出せるくらいには私の命は軽いんですよ。
いざという時にどちらが強いか、試してみましょうか。
基本戦闘スタイルは拳銃と杖による棒術、相手の動きを見て攻撃の回避と弾ける攻撃は杖でいなします。
純粋戦闘では圧倒されると思いますけど、比較的不意打ちできそうなタイミングで捨て身で接敵し【御霊滅殺符】を使用します。
代償と被弾を避けて凌ぐことができますか。
●激突
「私の鏡写しか、想像がつかないな」
鏡の前で右手を首に当てて考える春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)。
「左利きの他は……隙がなくて、自信があって、戦闘にも積極的?」
『そうなんじゃない? 多分ね』
遙の目の前から現れた鏡写しは左手を首に当てていた。
『だから、猟兵としてどっちがいいかというのも私みたいな方が良いでしょ。あなたみたいな臆病者には荷が重いのよ』
鏡写しがすぐに遙に拳銃を放つが、紙一重でそれを避ける。
『ふうん、避けるんだ』
隙を見せず拳銃をどんどん放つ鏡写しに接近しようとする遙。
『銃が人を殺せる道具だと知って、その痛みを知ってなんで普通に近寄れるか知らないけど』
そう――捨て身の覚悟で、拳銃の銃身で銃弾を防ぎつつ肌に赤い線を走らせながら近づいていた。
『よくやるわね』
リロードしながら杖を棒術のように振り回し、それを屈んで回避すれば返すように棒術を繰り出し拳銃を弾く!
『くっ』
しかしそれでも武器の一つが失われただけ。棒を振り回す鏡写し。それにつばぜり合いするように弾かせ、いなす遙。
『あなたは傷つくことが怖くないの? 死ぬことが怖くないの?』
「怖いですよ、傷つきたくない。死ぬのは怖い」
――でも。
「弱い人を救うためなら――誰かの命を救えるなら――私はこの命を喜んで投げ出す。
何が違うか――きっとそれは何を大切とするかの優先順位」
即ち、鏡写しの方は『自分』が傷つくことを防ぎたい、と。
遙の方は『他者』が傷つくことを防ぎたい――と。
即ち、鏡写しの方はそのためなら『他者』を殺すことはためらわない――と。
遙の方はそのためなら『自分』を殺すことはためらわない――と。
その在り方の違い――鏡に映った対極の在り方なのだ。
ならそれがどちらが優れているか、比べるのは容易だ。
「誰かの命を救えるなら、喜んで投げ出せるくらいには私の命は軽いんですよ。
いざという時にどちらが強いか、試してみましょうか」
杖で鏡写しの攻撃をいなすとそのまま回し蹴りで鏡写しの頭に蹴りを加え倒す。すぐに復帰しようとする鏡写しだが、その前に広がるのは森羅万象を汚染する呪われた言霊が乗った、あらゆる霊的要素を殺害する穢れ。大いなる禍のひとかけら。
「代償と被弾を避けて凌ぐことができますか」
自分にも鏡写しにも貼られていたそれが穢れを呼び起こし、両者を襲う霊力、穢れ。その中で遙は鏡写しに銃弾を放ちながら後退すれば鏡写しが棒で弾きながら接近してくる。
刹那とも永遠とも思われたその短くも長い戦い。
互いの在り方の激突。自分の対極の存在との衝突。
しかしそれにも決着の時は訪れる。
「そこです!」
『くっ――』
一瞬の隙をつき、遙の銃弾が鏡写しに直撃する。赤い染みが服に現れる――
『こんな――こんなことあってはいけない! 私の方が優れているはずなのに――!』
「ええ、勝ち目ないと思っていました。でも」
その赤い染みを目掛け遙の杖が突き刺すように鏡写しを押し付ける!
「私にはこのアリスラビリンスの――そして全世界の皆さんの命を救うためにここに来ている――その強い意志がある!」
――嗚呼、たとえ今ここで感じてもすぐそれは心を喰らう触手に食べられるかもしれない、喪うかもしれない。記憶であり、感情であり、オブリビオンであるそれは、或いはその意志を喰らわないかもしれない。でも、それでも、どちらであれ――戦いの中それを感じたという事実は揺らぎようがない。
「これで終わりです!」
棒を振り抜き、鏡の壁に鏡写しを思いっきりぶち当てる!
『……かはっ、な、んで……』
最後まで、自分中心であるがためにその意志をわかることができなかった鏡写しが目の前で消滅するのを見て、遙は帽子を被った。
「……きっとその心も時には必要だと思う。でも……私はそれにやられて本心を見逃したくない」
遙はちらと横目に鏡を見ながら、この場を後にした。
成功
🔵🔵🔴
皆城・白露
(アドリブ歓迎)
■鏡写し
自分の身を守る事・生き延びる事しか考えていない
自棄になったように捨て身で攻撃はしてくるが
不利とみれば逃げようとするし「死にたくない」と泣き喚く
■戦闘
鏡写しの自分はあまりにも弱々しくて無様で、でも「こんな風に好き勝手に喚けたら、楽だったかもしれない」という気もしてしまって、胸糞悪い
「何故オレが死ななきゃならない」って?
…考えとくよ、先に逝って待ってろ
相手の攻撃は【激痛耐性】で受け止める
【ブラッド・ガイスト】使用、禍々しい爪状に変化させた左右一対の黒剣で
苛立ちを叩きつけるように容赦なく切り裂きとどめを刺す
●もしそのように生きられれば
皆城・白露(モノクローム・f00355)もまた、自分の幻影と戦っていた。剣を振るい、そしてつばぜり合いしながらも互角の勝負だった。
「くっ、オレの鏡写しがこんなにも面倒だなんてな」
苛立ちを隠せない白露に襲い掛かる鏡写しの白露。積極的に攻撃してくる鏡写しに白露は後退を余儀なくされていた。
「――ちっ」
背中に感じる冷たい感触。振り向けばそこには鏡の壁。追い詰められた。
『はぁ、はぁ、よし、これで……終わり、だ!』
弱弱しい声ではあるが意志のある鏡写しの声がすると剣を構えた鏡写しが突きで止めを刺しに行く!
「ぐっ――!」
それを両手で受け止める白露。手が赤くにじみ、腹から赤黒いものが出るが、それを気合で耐える。
「はぁ、はぁ――離れろ!」
そのまま剣を掴んで鏡写しを投げ飛ばす白露。
『いったっ!』
尻餅をついた鏡写しに白露は血を吐きながら剣を二つ構える。と、それを――
「ふんっ!」
腹の赤黒い部分に突っ込み、抜く。血がこびりついた二つの剣が、禍々しい爪状に変化する。
「はぁ、はぁ――全く、イラつくな」
そのまま鏡写しに襲い掛かる白露!
『やめろ、死にたくない! こっちに来るな!』
それを見た鏡写しがなんと逃げ出した! すかさず追いかける白露! 爪のような剣を振る白露とそれを逃げながらかわす鏡写し。形成逆転だ。その姿はあまりにも弱々しくて無様で、でも『もしこんな風に好き勝手に喚けたら、むしろ楽だったかもしれない』という気もしてしまって――嗚呼、胸糞悪い。苛立たしい。
だが、それでも、誰かを救えば、守れば、自分にも意味が生まれるかもしれない。そう信じて今までやってきている。自分の身を守る事や生き延びる事しか考えていない鏡写しの自分とは違う。確かにそれは時には正しいかもしれない――けど、自分はそうはなりたくない!
そして、その時は訪れる。
鏡写しの足が止まった。その目の前にあるのは鏡の壁。追い詰めたつもりが、逆に追い詰められた!
「追い詰めたぞ……!」
『ひっ』
容赦なく鏡写しの自分に襲い掛かる白露!
『何故だ、何故オレが死ななきゃならない!』
「……考えとくよ、先に逝って待ってろ」
言葉とともに深々と壁を背に胸を抉るように剣が鏡写しに刺さる!
『あ、ああ、痛い、痛い、誰か、こんなみっともない、オレを、『忘れて』――』
その言葉と共に鏡写しは血を流し消滅した。後に残った赤いそれをなめながら白露は呟く。
「……そんな風に生きられたら、どれだけ楽だったか。ああ、でも――『忘れられる』のは嫌だな」
そして剣をもとに戻すと、そそくさとこの場を後にした。
成功
🔵🔵🔴
紗我楽・万鬼
或れあっしです?
へぇ男前ですねぇ
最初は槍で殺り合うんです?互角ですかねぇ
防戦に徹しつつ
所で今な噺御存知ですかい?
ドッペルゲンガーってのはね、所謂幻覚なんだそうですよ
現実的な話をすりゃ己と似た面は其処らで2~3居るそうで
世界広けりゃ無限大ですよ
それで?うっかり見たりしたら死ぬそうですよ
誰が?どっちだって構いやしませんよ
だって似たようなもんだからね
じゃあこうしやしょうお前さん
『死神は声無き方を処刑する』
…あっしの反転なんて、解りきったもんでしたね
何て無口な男でっしょ
騙らなきゃ戦いに成らないあっしが喋らないなんて、ねぇ?
其れこそ『お話にならない』ですよ
ほらお前さんの後ろに死神が…指摘遅かったですかね
●万鬼座開演
「或れあっしです? へぇ男前ですねぇ」
チョコレートを貪りながら鏡写しの自分と向き合う紗我楽・万鬼(楽園乃鬼・f18596)。鏡写しは何もしゃべらない。代わりに槍を構えて襲いかかってくる。
「へぇ、最初は槍で殺り合うんです?」
チョコレートを飲み込めばそれに応戦する万鬼だが、実力としては互角――否、少し押し負けている。それは万鬼が防御に徹しているから。致命傷を喰らうのを避けつつ、槍を競り合わせていなしている。
「ほっ、と」
しかし足元がお留守と言うもの! 一瞬隙を作ったと思えばスライディングで鏡写しの足に攻撃、鏡写しを転ばせるとその隙に槍を奪い取る!
「所で、今な噺御存知ですかい?
ドッペルゲンガーってのはね、所謂幻覚なんだそうですよ」
さぁ、ここからが噺家・万鬼の本領発揮だ! ノーカットでお楽しみください!
「現実的な話をすりゃ己と似た面は其処らで2~3居るそうで、つまりゃ世界広けりゃ無限大ですよ。
それで? うっかり見たりしたら死ぬそうですよ。
誰が? どっちだって構いやしませんよ、だってそりゃ己と似た面だ、互いに見たところで似たようなもんだから見分けがつきませんでね、どっちが本物でどっちが幻覚だかわかりゃあせん、互いにあっちが幻覚でこっちが本物だ言いよる。じゃあこうしやしょうお前さん、『死神は声無き方を処刑する』」
――無きモノ騙れば万物(ナキモノ)に化ける。死神が鏡写しの万鬼の後ろに迫りくる。さてこの死神、黙ったものを殺すときなすった、ならば喋るしかありゃあせん。それに比べて目の前の鏡写しのドッペルゲンガーはここにきてなおも喋らず万鬼に槍を取り戻そうと迫りくると来た。
「……あっしの反転なんて、解りきったもんでしたね。何て無口な男でっしょ。
騙らなきゃ戦いに成らないあっしが喋らないなんて、ねぇ? 噺家としていかがなものかと、其れこそまさに『お話(噺)にならない』ですよ」
話せば話すほど、その怪異は強さを増していく、それが万鬼の万物語(ナキモノガタリ)。無口な存在を殺す死神が実在するのかと言われれば、そりゃあ出鱈目としか言いようがありゃあせん、しかしここは現実を改変して出鱈目を現実とするオウガ・オリジンの中、出鱈目ができたとしてもおかしくはありゃあせん。語ってコードに乗せればほら実在させられると来た、それがなきゃあ今目の前にいる或の鏡写しの男前なドッペルゲンガーなぞもはなから存在しないのです。ところでここまで言ってもなお無言なんですかねドッペルゲンガーは。ほらもうお前さんの後ろに死神が……
「……指摘遅かったですかね」
首を死神にはねられて処刑され最後まで無口なまま消滅していく自分の鏡写しを見ながら万鬼はほくそ笑んだ。
「さて、あっしも『声有る方を処刑する死神』が写されてやられる前にお暇なすりましょうかね、お後がよろしいようで」
――観客1名、後に無観客となりし万鬼座、とりあえずはこれにて終演。
成功
🔵🔵🔴
ネーヴェ・ノアイユ
❄元の性格
大人しく自分にあまり自信がない
戦闘は防御や牽制などを大切にする慎重派
自分が相手……。だからこそ今回は……。
まずは氷壁にて反転した私の攻撃を盾受けしつつUCの詠唱を時間をかけておこなっていきます。
詠唱が終わり次第に氷壁を解除。全力魔法にてUCを発動します。
恐らく……。自信家となっている反転した私は己の力のみで同じUCによる相殺を狙ってくるでしょうから……。UCがぶつかり合った瞬間に私はリボンに魔力溜めしていた魔力の全てを乗せることで勢い勝ちします。
本番はここからです。私自身が持つ氷結耐性。私はそれすらもこの技で越えてみたい。この技が切り札であると胸を張って言えるようになるために……!
●自分を超え、己が力に自信を持つために
「自分が相手……」
実のところ自分にあまり自信がないネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)は慎重に歩みを進める、そんな中突然飛んでくる氷が!
「っ!」
それを素早く目の前に展開した氷の壁で受けるネーヴェ。氷越しに覗けば、大きなリボンを揺らめかせた自分の鏡写しが迫ってくるじゃないか。
『ふふ、すごくおとなしく自身に自信のないかわいそうな私。この場で私が壊してあげる』
鏡写しのネーヴェから氷のつぶてがネーヴェにおそいかかるもそれを氷の壁で防ぐ。
「束ねるは妬み。放つは憎悪。万象奪う力となれ――」
同時に詠唱するは彼女お得意の氷魔法。
『そんなの私ができないと思った? 束ねるは妬み。放つは憎悪。万象奪う力となれ』
ネーヴェの目の前の氷の壁が薄くなっていく。そして――
「『――総て凍てつく猛吹雪!』」
お互いを猛吹雪が襲いかかる! ――否、それらがぶつかり合うところで魔力の渦が出来上がっている! 競り合いだ!
「うっ……うう、うっ……!」
『ふっ、ふふ……っ!』
お互い魔力のぶつかり合いだ。先にやられた方が、猛吹雪に飲まれて負ける――!
――しかしネーヴェには作戦があった。
「恐らく……自信家となっている反転した私は己の力のみで同じUCによる相殺を狙ってくるでしょうから……私は、これで……!」
そう、ネーヴェにはリボンに魔力を貯める技術がある! 否、相手も持っているのだが、自信故にそれをしない! 慢心、環境の違い、或いは――!
「本番はここからです。――鏡写しの私、私自身ならば氷結耐性も持っているでしょう」
『ええ……当たり前じゃない』
「……なら、私はそれすらもこの技で越えてみたい。この技が切り札であると胸を張って言えるようになるために……! 私の全身全霊全力全開、耐性とか関係なしに総てを等しく凍り付かせる力を――!」
その瞬間に、リボンに貯めた魔力を乗せて、一気に勢いをつける――!
「凍てつけ――――!!」
『ぐぅぅ……っ!!』
徐々に競り合いがネーヴェの方に傾いていく。魔力の渦が鏡写しの方に寄っていく。そして――
『ぅ、ぁああああああ!!』
――飲まれた。鏡写しのネーヴェが、勢いに押し負けて猛吹雪に飲まれていく。氷結耐性も超えて、猛吹雪が彼女の身を凍らせていく。
「まだ――!!」
そこで油断するネーヴェではない。相手が沈黙するまで、この魔力尽きるまで、止める気はない。
『いつのまに、あなたは、そんな――!』
その言葉を最後に、鏡写しのネーヴェは全身凍り付いていった。
――ふと、何か思いついたようにネーヴェは凍り付いた鏡写しの自分に歩み寄る。
――鏡写しとはいえ、自分は自分だ。
『失った記憶の中に大切な何かがある』――とは彼女の弁。せめて鏡写しとして顕現したこの個体から、過去のなくした記憶など自分の手掛かりがつかめれば――
――嗚呼、でも、運命というのは残酷だ。
他の猟兵たちも頑張ったのか、地響きとどこからともなく聞こえるうめき声と共に鏡の迷宮が崩壊していく。
目の前の凍り付いた鏡写しのネーヴェが、触れようとした手をすり抜け亜空へと落ちていく――
「待って――!」
慌てて手を伸ばすも、落ちていくそれを掴むことはできず。むしろ自分の近くの足場が崩れていく。亜空へ思わず落ちそうになった足を踏ん張るネーヴェ。
「知りたかった――私の事――世界の事――ああ、ネーヴェのせいです、私が凍らせたから――もっと対話すれば――」
――だが、状況が状況だ、仕方なかったのかもしれない。それに捕まえたとて、この存在が知らない可能性もある。
――答えにたどり着くまでにはまだ時間がかかるかもしれない。それを胸に秘めながら、崩壊から逃げるように、ネーヴェはこの場を後にした。わずかに残った魔力で氷の足場を作り、崩壊に巻き込まれるのを避けながら――
●
――嗚呼、鏡の迷宮が崩壊していく。
それはまた、オウガ・オリジンの崩壊も意味する。
また一つのオウガ・オリジンが消滅した、と考えれば――この崩壊にも、意味はあったであろう。
己と見つめ合ったもの、拳を合わせたもの――何を想うかは様々だ。
自分と向き合う――もし、オウガ・オリジンがしていたら、彼女は何を想っていたのだろうか。それを知る者は、嗚呼、誰もいない――
成功
🔵🔵🔴