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不撓不屈ファーマーズ

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●希望の芽吹き
 アポカリプスヘル、某所。
 ここは人類の寄る辺たる拠点(ベース)の外にある大規模農場だ。
 猟兵たちの活躍により、この世界の人類は希望を取り戻しつつある。
 その希望のひとつが、この農場だ。

「……おお」

 小さな赤い果実を手のひらに乗せて、男は頬を綻ばせる。
 いつかはこれが、より大きな実となって、誰かの腹を満たすだろう。
 少しでも食料事情の助けとなればいい、人々のその願いが実を成したのだ。

「なんだろう、あれ」

 近くで、誰かが声をあげた。
 農場で作業をしていた人々が、その声の主に倣って遠方へと目を凝らす。
 赤茶けた地平線が、黒く染まっていく。
 その正体が大量の大砂ネズミだとわかる頃には、農場を守るために備える時間も、命を守るために逃げる時間も、残されて居なかった。

●誰にも摘ませるな
「ペースト状のじゃなくて、ちゃんとした野菜が食べたい。合成じゃなくて、土で育てたやつ」

 猟兵たちを前に、エルヴィーラ・ヘンネルバリ(絶対零度のオートマタ・f24507)は語り始める。

「アポカリプスヘルで、農場が襲われる。拠点の外……安全じゃない場所だけど、人々が、農場を作り始めた。みんなが、オブリビオンを倒してくれているおかげ。だけど、ここを狙うオブリビオンもいる。拠点の外に出ている人たちは、襲われれば何もできずに、殺されるか、さらわれるだけ。ボクたちが、守るべき人々だ」

 己が使命を口にして、ほとんど表情の変わらないエルヴィーラの目元にわずかに力が入った。

「農場を襲うのは、大砂ネズミの群れ。ボクより大きなネズミが、たくさんやってくる」

 大砂ネズミは獰猛な性格のネズミ目で、何でも食べる。
 野菜や果物、動物はもちろん、人でもだ。
 それが、まるで洪水のようにやってくる。
 もし大砂ネズミたちが農場を通り過ぎれば、農場も、そこにいる人々も無くなってしまうだろう。
 事態は、深刻だ。

「それと、この大砂ネズミの群れを意図的に誘導か……もしくは脅かして移動の原因になっている大きなオブリビオンがいる。ネズミを凌いだらきっと直接出てくる。だから」

 そのオブリビオンも倒す必要がある、ということだ。

「終わったら、少し時間を取って農場で過ごそう。作業を手伝ってもいいし、野菜を貰って食べてもいいし」

 すっかり気分が食に向いたエルヴィーラであるが、一度大きく息を吐いて、仕切り直す。

「この農場は……オブリビオンストームが来たら、きっと簡単になくなる。それでも、平和な未来を掴むための、人類の大きな一歩。どうしようもないそのときまでは、失わせるわけにはいかない。どうか、守って欲しい」

 そう言うと、エルヴィーラは教本通りの敬礼をした。

「……健闘を」


るーで
●ご挨拶
 うわ~~~ねずみがいっぱい!
 あんまり強くない敵がすげー数で攻めてくるのが大好きなるーでです。
 オブリビオンは猟兵以外の人も攻撃するため、手を打たないと後味が悪くなります。

●概要
(一章)
 雑魚戦です。
 大砂ネズミの群れと戦っていただきます。
 150cmを越える巨大なネズミです。
 個々はあまり強くないどころか弱いくらいですが、数が尋常じゃなく多いです。
 対処に手間取ると囲まれて身動きが取れなくなったり、一般人のいる農場へ向かう可能性があります。
 判定時の🔴の数に応じて、猟兵本人か農場・一般人に被害が出ます。
 (身体を張れば猟兵に被害を寄せることができますが怪我等の描写が重くなります)

(二章)
 ボス戦です。
 大砂ネズミの群れを農場にけしかけた大型のオブリビオンと戦います。
 猟兵たちより、拠点の外に出ている一般人を優先して狙います。
 攻撃して破壊するのはもちろん、一般人を守ってください。
 判定時の🔴の数に応じて、猟兵本人か一般人に被害が出ます。
 (身体を張れば猟兵に被害を寄せることができますが怪我等の描写が重くなります)

(三章)
 日常です。
 農場で野菜や果物が採れます。
 このシーズンだとキュウリやカボチャが美味しいですかね。
 季節にあったもののほうが美味しいですが、違うシーズンの野菜や果物もあるものとします。
 農作業を手伝うもよし、採れた作物を食べるもよしです。
 一章・二章の戦いで一般人や農場に出た被害に応じて雰囲気が暗くなります。
 また、お呼びとあればエルヴィーラがご一緒します。
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第1章 集団戦 『大砂ネズミの群れ』

POW   :    踏み荒らすネズミたち
【更に大量の大砂ネズミの群れ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD   :    突進するネズミたち
【大量の大砂ネズミの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【もっと大量の群れ】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ   :    喰い荒らすネズミたち
戦闘中に食べた【物】の量と質に応じて【大砂ネズミたちの細胞が活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メアリー・ベスレム

メアリ、お野菜は嫌いよ
どうせ食べるならお肉や甘い物の方が良いわ
ネズミ達だってきっとそうじゃないかしら?

【アリス擬き】でアリスの偽物作り出し
88㎥、って数字はよくわからないけれど
その容量が許す限りは何人でも
アリス達が餌として【誘惑】しながら
【逃げ足】活かして立ち回り、農場から引き離す
各々が持つ武器で【咄嗟の一撃】払い除けながら
必要なら実際に喰われてだってあげるから
だって、アリスは元々そういうものだもの
「美味しそう」なのはオウガ達のお墨付きよ?

メアリ自身は【目立たない】よう農場の方に
共有される気が狂ってしまいそうな痛みの波は
【狂気耐性】【激痛耐性】耐えながら
ただ来たるべき復讐の時をじっと待つ



●メアリとアリスと
「メアリ、お野菜は嫌いよ。どうせ食べるならお肉や甘い物の方が良いわ」

 ネズミ達だってきっとそうじゃないかしら、と、ひとりごちる。
 ここは農場の片隅。
 脚から臀部にかけて大きく露出した格好で歩くのは、メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)だ。
 際どい黒い衣装とは対照的な白い肌が、さらに人の目を引いていた。
 農場を守るための戦いを農場で行うわけにはいかない。
 にもかかわらず、メアリーがここへやってきたのは、事前に準備をするためだ。

「ちゃんと引きつけてよね」

 メアリーと同じ姿形をした人型が、ふたり現れた。
 メアリーの作り出したアリスもどきだ。
 容姿も、声も、そして血の一滴さえも、メアリーと同じ。
 それぞれ、手にした肉切り包丁をくるりと回す。

「ふたりだけ? 思ったより少ないわ」

 メアリーの能力の高さを考えればもっと多く、ネズミたちに人海戦術を仕掛けられるのではないかと思っていたが、どうやらこのユーベルコードでは一度に複製できる体積を考えるとこれくらいが限界のようだ。
 仕方ない、と息を吐いて、ネズミたちのやってくる方を指す。

「わかってると思うけど、あなたたちは"餌"よ。じゃあ……行ってらっしゃい」

 メアリーの指示を受けて、アリスふたりは大砂ネズミたちのやってくる方へ走り出した。
 農場から出て少し走れば、すぐにその大群が目に入る。
 赤茶けた荒野を埋める、黒い波。
 ネズミ、ネズミ、ネズミ。
 無数のネズミが蠢いていた。
 それも、一匹一匹が大きなイノシシほどもある。

「お腹が空いているなら、着いてきて。わたしが美味しそうなのはオウガのお墨付きよ?」

 ネズミたちの進行方向に立ち、背を向けてお尻を軽く振って見せるアリスたち。
 アリスたちの白い肌へと、大砂ネズミの赤い目が向けられる。
 囮になったふたりが走り出すと、捕食者たちもそれに釣られて走り始めた。

(ちゃんと着いてきてくれてるわね)

 アリスがちらりと後ろを見て、黒い波の一部が追いかけて来ていることを確認する。
 このまま農場から離れる方向へ走れば、人的被害が出ることはないだろう。
 アリスの逃げ足もなかなかのものだ。
 すぐに大砂ネズミに追いつかれることはない。
 だが、アリスも常にトップスピードで走ることはできない。
 休むために速度を緩めれば、アリスと大砂ネズミの距離は縮まる。

(最後の手段は、もう少し先……)

 振り向くと同時に、すぐ後ろまで追いついた大砂ネズミの頭へ、手にした肉切り包丁を叩きつけた。
 ネズミ自身の速度の乗った重い斬撃で、先頭の大砂ネズミの頭がひしゃげる。
 甲高い声を上げて絶命したネズミを蹴飛ばし、再びアリスは走り出した。

●捕食者たち
 逃げて、叩き切って、また逃げて。
 アリスたちはひたすらにそれを繰り返した。
 だが、大砂ネズミたちの数は一向に減らない。
 農場から引き離す目的は果たしたものの、アリスたちには広範囲を殲滅する術がない。

「結局、必要になっちゃったのね」

 アリスが、脚と止めた。
 未だ数え切れないほどの大砂ネズミに追われているなかで脚を止めるのが何を意味するのか、わからないアリスではない。
 まずは先頭を走っていた大砂ネズミが、アリスの身体を跳ね飛ばす。
 ネズミとはいえ、全長150cmほどもある。
 自分より軽い少女を吹き飛ばすなど、容易いことだ。
 背中に強い衝撃を受けて、アリスは自分の骨が砕ける音を聞いた。

「か、はっ……!」

 それから、地面を転がって、止まる。
 ここに来て、アリスの体中を激痛が走った。
 だが、アリスの受難はこれで終わらない。
 顔を上げると、追いついたネズミたちが赤い瞳でアリスのことを見下ろしていた。
 すんすんと鼻を鳴らし、口元を動かす。

「あ、ああ……」

 これから食べられるんだと思うと、自然と口から声が漏れた。
 覚悟はしていたが、それでも、恐怖と忌避はあった。
 大砂ネズミの歯が、遠慮なくアリスの白い肌に突き立てられる。
 まずは大きくて柔らかいお尻から。

「ぎっ、やあぁぁぁッ!?」

 ネズミの歯が皮膚を突き破り、脚で身体を押さえて強引に肉を剥がす。
 一瞬で、アリスの脳が痛覚で埋め尽くされた。
 次のネズミが、ふとももを齧る。
 たった一口で、骨が見えるほど深く抉れる。
 ああ、これは死んだ――――。
 痛みが脳の許容量を越えたのか、アリスは却って冷静になった。
 肉が、内臓が、ネズミに食われていく。
 身体の先端に至るまで、食い尽くされていく。
 その光景を見ながら、アリスは意識を失った。
 もうひとりのアリスが大砂ネズミに食い殺されるのも、ほぼ同じ頃だった。

 一方で、農場に残ったメアリーは、小さな納屋の中で強く歯を食いしばっていた。

「う、うぅ……!」

 アリスたちは精巧にメアリーの姿を模した複製品だ。
 精巧すぎるゆえか、精巧にするためか、彼女たちはメアリーと五感と思考を共有している。
 だから、大砂ネズミに食われるその瞬間、何を感じて、何を考えていたかは、すべてメアリーに伝わっていた。
 身体中が痛い。
 大砂ネズミの歯が立てられたところが、食いちぎられたところ、爪の食い込むところが痛い。
 手も脚も、胸も背中もお尻も、目も耳も、全てがたまらなく痛い。
 そして、食われて骨だけとなった自分の肢体が、メアリーの視界に浮かぶ。
 肩を抱き、膝をついて、気の狂いそうな痛みに耐える。

(必ず……必ず復讐する……っ!)

 痛みと狂気に耐性を持つメアリーが気を失うことはない。
 同時に二度、生きたまま食われるという常人ならば耐え難い苦痛を受けながら、メアリーは復讐心を募らせ続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アコニィ・リード

敵の数は膨大
進路上に拠点
これを防ぐには……数には数よ!

地形を利用し戦場の全景を把握
わたし自身が狙撃出来るポイントへ空中移動しつつ仲間を呼ぶわ
――空間鮫騎兵隊召喚! 集団戦術で指示を出す!

背中においしい毒餌をばら撒く擲弾筒を装備した巨大な鮫部隊が突撃!
鮫の動きで敵の進路を拠点じゃない方に追い込んで
毒餌を喰らわせて弱らせる罠よ
弱らせたらそのまま鮫騎兵隊に喰らい尽くてもらうわ!

わたし自身は高所の狙撃ポイントから
無ければ空中から援護狙撃よ
一匹でも多くこっちにネズミを引き寄せるわ
空中ならば直撃は避けられるだろうけど
陽動の為には地上戦も厭わない!

伊達にこの世界でドンパチやってないんだからね
さあ……次ッ!



●喰らえ鼠波、荒々しく
「敵の数は膨大。進路上には拠点!」

 農場とネズミの群れの間、小高い丘の上でアコニィ・リード(偽神暗姫・f25062)は戦況を確認する。
 このままネズミたちが進めば、間違いなく農場を襲うだろう。
 とはいえ、この大群の進行を妨げ、殲滅しなければならないのは、少数精鋭である猟兵たちにとっても骨が折れることだ。

「これを防ぐには……数には数よ!」

 指示をするようにアコニィが手を振ると、その背後から現れたのは鮫だ。
 その一匹ずつが背中に擲弾筒を装備した巨大鮫の集団――――空間鮫騎兵隊だ。
 74匹の鮫が、空を、まるで水中のように泳ぐ。

「まずは奴ら進路を変えなさい!」

 アコニィの指示に従い、鮫たちはネズミの進行先へと泳いでいった。
 ネズミたちの鼻先にたどり着いた鮫が、大口を開けて威嚇する。
 驚いた先頭の大砂ネズミは、向きを変えて走り出す。
 鮫の威嚇バリケードによって、まずは第一目標は容易に達成した。
 続いて、鮫たちは次々に擲弾筒から弾を打ち出す。
 しかし、その着弾点はネズミたちではない。
 ネズミたちの逃げ出した先に、それは落ちた。
 爆発もなく、燃えることもないそれは、肉の塊だった。
 進路上に餌を放られた空腹のネズミは、当然それに食いついた。
 最初は勢いよく食らいついたものの、次第に苦しみ、もがき出すネズミたち。
 鮫たちの擲弾筒から打ち出されたのは、毒餌だった。
 動きの弱ったネズミたちは、鮫の格好の餌食だ。
 あるネズミは鮫の鋭い牙によって上半身を噛みちぎられた。
 あるネズミは鮫の大口によって丸呑みにされた。
 獰猛な巨大鮫たちが、次々にネズミたちを喰い殺す。
 人々を餌にしていたネズミたちが、今度は鮫の餌になる。
 因果応報と言うべきだろうか。
 だが、ネズミの数は多い。
 誘導に成功した全てのネズミが鮫の餌になるわけではなかった。
 その打ち漏らしのネズミが、大回りしてまた農場の方へと向かおうとする。

「そうはさせないわ!」

 アコニィの声、そして発砲音と同時に、先頭のネズミの頭に大穴が空いた。
 いくらかのネズミが、その音の元を、空を見上げる。
 空中には、鮫をモチーフにした銃を持つアコニィがいた。
 青い髪とスカートのフリルを揺らし、空を舞う。
 アコニィという手近な”餌”を見つけたネズミたちは、我先にとアコニィへ向けて走り出した。

「来たわね……!」

 適宜射撃しながら、少しずつ下がって誘導していくアコニィ。
 空中にいるのだから、すぐにあの波に飲み込まれることはないだろう。
 だが、徐々にアコニィの足元へと群がるネズミが数が増えていく。

(さっきより、近い……!)

 空中にいるアコニィから見ても、ネズミたちが徐々に大きく見えるようになった。
 数の多すぎるネズミたちが、折り重なっているのだ。
 アコニィも迫るネズミを打ちながら徐々に高度を上げてはいるものの、ネズミたちの登る速度の方が早い。

「なんて数!」

 ついにはネズミの一匹が、アコニィの脚に手をかけた。

「――――ッ!」

 アコニィの柔らかな脚に爪が食い込み、ブーツに赤い血が滲む。
 歯を食いしばってその痛みに耐え、脚に取り付いたネズミへ至近距離から射撃を浴びせ、それからまた空へと逃げた。
 このまま上へ上へと逃げても、いつかはネズミに追いつかれるだろう。
 ならば、と、アコニィはあえて高度を下げた。
 狙うは、折り重なるネズミの塔の中ほど。
 自由落下しながら、ほどほどに細い部分に銃口を向ける。
 フルオートに切り替えて弾丸をばらまけば、全てネズミたちの身体に当たった。
 ネズミの塔を構成していた一部が剥がれ落ちると、不安定になったそれより上のネズミたちが、崩れ落ちる。
 アコニィがそれを見て再び高度を上げれば、一時的に難を逃れることができた。
 ネズミたちはそれなりに知能はあるが知性はない。
 同じように繰り返せば、ネズミたちは何度でも食らいついてくるだろう。
 一度息を整えて、傷の様子を確かめる。
 脚の傷は痛むが、出血量はそれほど多くない。
 空で戦い続ける分には支障はないだろう。
 この世界で戦っていれば、消耗戦や遅滞戦はするのもされるのも慣れたものだ。

「さあ……次ッ!」

 未だ数の減らぬネズミの群れへと、アコニィは吠えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

笹乃葉・きなこ
◇POW/◎

うわぁー。オラよりでけぇネズミだべなぁ。

うへへ、投げがいがあるんだべぇ♪

先ずは適当にユーベルコードで一匹捕まえて(怪力利用)
ソイツを武器代わりに振り回して(なぎ払い)お掃除お掃除だべぇ。
なるべくネズミが多い所へぐーるぐーる回しながら蹴散らしてぇなぁ

ほーらぐーるぐーる♪
あ、使えなくなったべぇ。次はおまえだべぇ♥

投げ飛ばす場合は農場からお引き取りだべぇ怪力を使って農場外か向かってくるお友達(他のネズミ)に向かってぽーいっと!

守りに移動する場合は優先するのは一般人を襲おうとした奴からだべな。
狙う優先度は一般人を襲う奴>農場を襲う奴
守る場合は絶対に人を優先、目の前で死なれるのは嫌々



●野生の理
「うわぁー。オラよりでけぇネズミだべなぁ」

 波のように押し寄せる大砂ネズミの群れを前に、笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)は感嘆の声を上げた。
 元々、通常のネズミとは比べ物にならない大きさだが、背の低いきなこと比べると余計に大きく見える。
 そのオブリビオンたちが、群れをなして押し寄せるのだ。
 きなこのように肝が座っていなければ、腰を抜かすか、後退りしていたはずである。
 だが、野生で育ったきなこにとって自身より大きな獣が現れるくらい、珍しいことではないのだろう。

「うへへ、投げがいがあるんだべぇ♪」

 むしろ前へ進み、唇をぺろりと舐めた。
 大砂ネズミの群れもきなこに気付き、まっすぐに向かってくる。
 きなこは避けることもなく、その群れが眼前に来るまで待った。

「まずは……っと」

 地を揺らすほどのネズミの波に飲まれるかと思われたきなこが、先頭のネズミの頭を鷲掴みにする。
 頭を掴まれ、自身よりも小さな人間に片手で持ち上げられたネズミが、驚いたように鳴いた。

「お掃除お掃除だべぇ」

 どっしりと構えたきなこが、大砂ネズミを武器代わりに振り回す。
 子供のような身長からは想像もできない怪力だ。
 きなこの腕力に加えて、後続のネズミの速度により衝撃は相対的に強くなる。
 ネズミ同士がぶつかると、肉が裂け、骨が砕ける鈍い音が戦場に響いた。
 振り回したネズミも、当てられたネズミも、一撃で死に絶えた。
 ネズミの死骸を掴んだままのきなこは、なおもそれを振り回す。

「ほーらぐーるぐーる♪」

 大きく円を描くようにネズミを触れば、何匹ものネズミを巻き込んで跳ね飛ばした。
 だが、十数匹もネズミへ打ち付ければ、武器にしていたネズミもボロボロになる。
 きなこの掴んでいたネズミの首がもげて、胴体がどさりと落ちた。

「あ、使えなくなったべぇ」

 ネズミの死骸を、農場とは反対側に力いっぱい放り投げるきなこ。
 砲弾のように飛んだ死骸は遠くを走っていたネズミに当たり、新たな死体を作った。

「次はおまえだべぇ♥」

 すぐに、目の前のネズミを武器にして、また振り回すのだった。
 ネズミを振り回し、投げ、また振り回す。
 何度か繰り返せば、きなこの周囲にはすっかりネズミの死骸で山ができていた。
 だが、ネズミの数は多い。
 倒しても倒しても、きりなく湧いてくる。
 体力はまだまだあるが、骨が折れるなと思っていたときである。
 人の悲鳴が、聞こえた。
 すっかり農場の近くまで、ネズミの波が進行していたのだ。

「あ、そっちへ行くんじゃねぇべ!」

 かなり獣寄りの歓声を持つきなこでも、目の前で人が死ぬのは嫌だ。
 だから、手にしていたネズミを全力で、その声のする方、ネズミの先頭へと向けて投げた。
 ただ放り投げたときより、さらに強い力で。
 流星のように飛んだネズミが、他のネズミを巻き上げて蹴散らしていく。
 一般人の方へ向かっていたネズミたちが、横から攻撃されたのだ。
 赤い瞳が、一斉にきなこに向いた。
 先程よりも多くの大砂ネズミが、折り重なるようにきなこを襲う。
 またネズミを掴んで武器にして、やってきたネズミをなぎ払った。
 だが、あまりに数が多い。
 右の敵を攻撃すれば左から、前の敵を攻撃すれば後ろから。
 きなこに肉薄したネズミが歯を立てていく。
 柔らかな褐色の肌に血が滲む。

「いてぇ! いてぇべな!」

 きなこの肉付きの良い身体は、ネズミたちからすれば良い餌だろう。
 噛み付いてきたネズミの頭を掴み、骨ごと握りつぶしかねない力で強引に引き剥がしたきなこ。
 両手で一匹ずつ掴み、竜巻のように振り回した。
 きなこへ殺到していたネズミたちが、次々に薙ぎ払われて死んでいく。
 掴んでいたネズミが使い物にならなくなる頃には、きなこへ向かってきていたネズミたちの死骸で壁ができていた。

「油断ならねぇべなぁ」

 傷はそれほど深くないが、出血は多い。
 一度傷口を手で抑えると、きなこは気を引き締めて次のネズミへと向かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リカルド・マスケラス
「チャラっと参上、チャラにちは〜っす! これは大惨事っすね」
可愛い女の子達の柔肌を傷付けた罪は重いっすよ〜

「さあ、数には数っす!」
UCでたくさんの人間に擬態した炎の分身を召喚
「害獣駆除の時間っすよ〜」
分身達に武器でも握らせて炎の【属性攻撃】で攻撃
「おっと、自分らを食べてもあまり美味しくないっすよ」
食いつかれた分身は炎に戻って焼き払う。
敵が仲間の死骸を貪ってパワーアップしそうなら、【集団戦術】で連携して攻撃し、死骸ごと消し済みにする
「そんな隙は与えないっすよ」

あとは一般人に被害が及ばないよう炎や自身で【かばう】ことが出来るよう気を配っておく
「これ以上、傷付けさせないっすよ!」



●乙女のピンチとあらば
「い、いや……っ!」

 脚をもつれさせて転んだ少女が、震えて声を漏らす。
 拠点から農場へ出ていた一般人だ。
 少女の近くまで大砂ネズミたちが迫ってきている。
 もし襲われれば、瞬く間に少女は命を散らすことになるだろう。
 腰が抜けたようで動けないままの少女は、このままネズミの波に飲まれるかと思われた。
 先頭を走る大砂ネズミの頭部に、どこからともなく飛んできたダガーが突き刺さる。
 ネズミの断末魔に驚いた少女が顔をあげると、そこには炎と共に立つリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)がいた。

「チャラっと参上、チャラにちは~っす!」

 少女にひらひらと手を振って笑いかけ、少女を逃がすと、リカルドは辺りを見回す。
 逃げ惑う一般人たち、それを追いかけるネズミたち、そしてネズミたちに攻撃を仕掛ける猟兵たち。
 まだ大きな被害こそ出ていないものの、農場の入り口まで戦場は広がっていた。
 危険が迫っている一般人が近くにいないことを確認すると、リカルドは攻勢に出ることにした。

「可愛い女の子達の柔肌を傷付けた罪は重いっすよ~」

 農場へ迫るネズミたちの数は、とにかく多い。
 リカルドは、藍色の髪を揺らして不敵に笑った。

「さあ、数には数っす!」

 リカルドと共に現れた炎が、人の形を取っていく。
 ほどよく鍛えられた男の姿。
 小柄で華奢な少女の姿。
 豊満な大人の女性の姿。
 皆一様に、白い狐のお面をかぶっている。
 気付けば、何人ものリカルドが各々武器を手に、ネズミたちと対峙するように立っていた。

「害獣駆除の時間っすよ~」

 リカルド本人が武器を掲げると、それに従うように炎の分身たちがネズミの大群へと飛び込んでいく。
 群れ対群れの戦いが始まった。
 ある分身は鎖鎌を放ってネズミの首を狩る。
 またある分身は、炎でネズミを焼いていく。
 大砂ネズミの個体の戦闘力は、大したことはないのだ。
 リカルドの能力をもってすれば、一撃で倒すことができた。

「なるほど、聞いていて通りっすね」

 次々とネズミたちを狩るリカルドたち。
 しかし、ネズミたちの最大の武器はその数にある。
 どれだけ斬っても、どれだけ焼いても、際限なく湧いてくる。

「これはちょっと……骨が折れるっす」

 げんなりとした表情で、未だ押し寄せるネズミの波を見た。
 それほど強い相手ではないが、終わりが見えないことがリカルドに精神的負担を与える。
 そんなときである。

「きゃあああっ!?」

 女性の悲鳴が、農場側から聞こえた。
 リカルドが声の方へと目を向けると、そこにいたのは逃げ遅れた女性だ。
 腰を抜かしており、すぐに逃げ出せないことは、見てわかった。

「させないっすよ」

 女性とネズミの間に、リカルドの分身が割って入る。
 迫りくるネズミを、炎を纏ったダガーで斬りつけて燃やした。

「大丈夫っすか? さあ、早く逃げて」

 続いて走ってきた大砂ネズミも同じように屠って、リカルドは女性へと声をかける。

「ありがとうございます……! でも、脚が……」

 転んだときに捻ったのか、女性の脚は赤く腫れていた。
 走って逃げることはできそうにない。

「……しょうがないっすね!」

 リカルドは女性を抱き上げると、この場は分身たちに任せて拠点へと向けて走り出した。
 ネズミたちの進軍を止める分身たち。
 戦闘能力の高さからこれまでほぼ無傷で戦っていたが、戦線は徐々に押されていた。
 当初、ネズミたちは猟兵よりも一般人を狙っていたが、一般人の避難が済むにつれて標的の減ったネズミたちは猟兵たちにも積極的に攻撃を仕掛け始めたからだ。
 前だけにいたネズミたちは、気付けば四方八方にいる。
 リカルドの分身たちは、お互いの死角を補うように戦うことを余儀なくされた。
 それでも、カバーしきれないことはある。
 攻撃の際に生じた小さな隙をついて、大砂ネズミがリカルドの分身のひとりへと食いついた。

「おっと、自分らを食べてもあまり美味しくないっすよ」

 強靭な前歯がその身体に食い込んだにも関わらず、分身は余裕の表情だ。
 それもそのはずである。

「人の形をしていても炎っすからね」

 分身が人の形を崩して、燃え盛る炎へと戻る。
 噛み付いていたネズミは突然獲物を失い、その身体は炎に包まれ、焼け焦げることとなった。
 他のネズミたちは突然炎に巻かれた仲間を見て、少し怯えたように後退りする。

「あれ、案外ビビりっすね」

 女性を安全な場所まで運び、戻ってきたリカルドが笑う。
 分身たちと共に、再びネズミへと攻勢をかけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート


別に、農場を救う義理もありゃしねえよ
多少誰か死のうが、何かを失おうが…仕事を終えられれば良い
必死こいて、正義感ぶって何もかも救おうとか、馬鹿のやることさ

じゃ、俺はなんで此処──農場を守る位置に居るかって?
そりゃあお前、どうせやるならさぁ
『完璧』に勝ちたいわけよ、分かる?
損害ゼロ、一部の隙も無いリザルト…それこそ俺の美学さ

セット、『Disarmament』
ちょろちょろ動くな、行儀よくしろよ
一匹たりとも逃がさない
強引に割って入るなら衝撃波で散らす
絶対に農場に通さないことを最優先にして、毒にナイフにクロスボウでネズミを狩り続ける

ハッ、俺の損害は"無いのと同じだ"
テメェの生命と作物の心配しとけよ



●ハートに火をつけて
 ネズミたちが苦しみ、悶える。
 ここは人類の数少ない住居たる拠点の外、その農場のはずれ。
 やけに刺激的な匂いが漂うこの場所で、ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)は近くで動けなくなったネズミの頭を、クロスボウで正確に射抜いた。
 すっかり衰弱していた大砂ネズミは、すぐに息絶えた。

(別に――――別に、農場を救う義理もありゃしねえよ)

 隣で、ほとんど動かないネズミの首をナイフで裂く。
 害獣は短い悲鳴をあげて、事切れた。
 頬に飛んだ返り血を腕で拭い、次のネズミを見定める。

(多少誰が死のうが、何を失おうが……仕事を終えられれば良い)

 ヴィクティムの目は冷たい。
 戦いでは、特にこういう世界では、人の命は軽い。
 弱ければ死ぬ、それがヴィクティムにはよくわかっている。

(必死こいて、正義感ぶって何もかも救おうとか、馬鹿のやることさ)

 誰かに守られなければ死ぬだけの人々が、ここには無数にいるのだ。

「じゃ、俺はなんで此処――――農場を守る位置に居るかって?」

 心の中の言葉の続きを、声に出してネズミに告げる。
 赤い瞳がヴィクティムを見上げるが、その言葉はわかっていないようだった。

「そりゃあお前、どうせやるならさぁ」

 構わず、ヴィクティムは続ける。
 動けないネズミの頭を踏み砕き、それからバイザーの位置を直した。

「『完璧』に勝ちたいわけよ、分かる?」

 物言わぬネズミに言い放ち、また次のネズミへ。
 ヴィクティムの毒の霧により、農場の入り口に近づいてまともに動ける大砂ネズミはいない。
 瀕死の大砂ネズミたちを一方的に蹂躙していく。
 まだ体力のあるネズミや、邪魔になったネズミの死骸を、ヴィクティムは衝撃波で吹き飛ばした。
 ヴィクティムの後ろには、農場がある。
 一般人のほとんどは避難したが、脚の遅い者や隠れていて逃げ遅れた者が、まだ見える。

「もうしばらく俺と踊ってもらうぜ」

 ネズミの死骸を蹴り上げて、足場を確保したヴィクティム。
 ここまでパーフェクトの出来だ。
 自身も含めて損害ゼロ……ノーミスクリアが見えてきた。
 そう、これはゲームと同じである。
 ヴィクティムが失敗しなければ、ハッピーエンド。
 だから、心の底から込み上げる熱に身を任せて――――。

「テメェの生命と作物の心配しとけよ」

 英雄のなりそこないは不敵に笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア


…う、っわあ…
なにこの「数えきれない」って言葉がアホらしくなる無茶苦茶な数…

幸い一匹頭はそこまで強くないって話だし。とにかく片っ端からブッ殺さないと話にもなんないわねぇ。ゴールドシーン、弾幕任せるわぁ。迎撃「お願い」ねぇ?
●黙殺の魔術弾幕にグレネードの〇投擲による〇爆撃、〇早業のリロードとオブシディアンの○乱れ射ち、○結界術を応用したルート作成と攻勢防壁…出し惜しみしてる余裕なんてないし、手札ひっくり返して○範囲攻撃バラ撒いて数を減らすわぁ。

…○破壊工作も拠点防御も割と得意な部類ではあるけれど。さすがにキッツいわねぇ、これ…!



●魔と砲のアンサンブル
「……う、っわあ……」

 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は盛大に引いた。
 大砂ネズミの数があまりに果てしない。
 文字通り数えきれないほどのネズミが、この農場に押し寄せている。
 普通の人間であれば、巨大なネズミの群れに囲まれて死ぬだろう。
 猟兵であっても、単独でこの数を捌くことはできないだろう。
 やれやれと大きな溜め息を吐いて少し待てば、ネズミの群れの中に火柱が上がる。
 他の猟兵たちが攻撃を仕掛けたのだろう。
 まっすぐ農場へ向かっていたネズミの群れは散り、各々の方向へ進み始めた。
 そのうちのひとかたまりが、ティオレンシアの方へと向かってくる。

「そろそろ出番かしらぁ。ゴールドシーン、弾幕は任せるわねぇ」

 目で距離を測り、胸元から取り出したのはペンだ。
 先端の黄水晶がティオレンシアの言葉に応えるように一層強く輝いた。
 続いてティオレンシアは、焼夷グレネードをネズミの集団へと打ち出す。
 広い範囲を攻撃するなら、やはり炎だ。
 大砂ネズミの群れを飲み込んで、まとめて焼いていく。
 効果を確認したら、次の集団へまた焼夷弾を打ち出す。
 炎の爆撃だ。

(まあ……数は多いけどやっぱりそこまで強くないわよねぇ。とにかく片っ端からブッ殺さないと)

 打つ。打つ。打つ。
 ひたすらグレネードを打ち込んで、ネズミの数を減らしていく。
 とはいえ、グレネードの投擲は無数の敵に対する攻撃としてはあまりに大雑把だ。
 徐々に爆撃を逃れて前に進む大砂ネズミが現れた。
 当然、自身に近付く敵をただ待つティオレンシアではない。
 だが、それはすでに任せてあるのだ。
 ペンが自動的に動き出し、空中に幾何学模様を書き始める。
 ティオレンシア自身は、魔術を使えない。
 それ故に、補助装置としてのゴールドシーンを持っているのだ。
 ゴールドシーンの綴った魔法陣から、無数の矢と刃が打ち出された。
 魔力の矢が、刃が、ティオレンシアに向かってくるネズミへと突き刺さる。
 真っ直ぐに自ら向かってくる獲物だ。
 次々にその身体に魔力の弾丸を受けて、死に絶える。

「いい調子よぉ、ゴールドシーン」

 先頭のネズミを倒せば、死体を乗り越えてきた次のネズミを。
 次々に湧いてくるネズミへひたすらに射続けた。
 より近づいたネズミは、事前に張っておいた結界へと当たる。
 迂回を余儀なくされた大砂ネズミの進行は、また遅れた。
 さらにゴールドシーンの弾幕と結界を抜けてきたネズミは、ティオレンシア自身がリボルバーで撃ち抜く。

「……破壊工作も拠点防衛も割と得意な部類ではあるけれど――――」

 ネズミの襲撃が、途切れない。
 徐々にゴールドシーンの弾幕も薄くなっていくし、リボルバーの弾丸も減っていく。
 戦いが長く続けば続くほど、ティオレンシアは疲弊していった。

「――――さすがにキッツいわねぇ、これ……!」

 持てる手札はもう全て切った。
 それでも、ネズミたちは残っている。
 質量と速度の両方のあるものがぶつかる重苦しい音と共に、ネズミたちは農場の柵を折り、人類の領域へ押し入っていくのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『暴走する生産プラント』

POW   :    対象ヲ捕獲ホカク捕獲ホカク
【ナノマシン】を注入し、対象の【肉体】【神経】を過敏にし、改造を【肉体】【精神】に施すカプセルへ捕獲する【機械腕】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    ナノマシン注ニュウチュウ入
【機械腕】で捕獲した対象に【注入器】から【対象の体内にナノマシン】を放ち、【カプセル内で改造処置を施す事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    改造カイゾウ改ゾウカイ造カイゾウ改造
攻撃が命中した対象に【カプセル内でナノマシン】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【追加ナノマシン注入と改造機械】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はクレア・ハートローズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●プラントへようこそ
『解析、解析、解析』

 無機質な言葉が、農場に響く。
 大砂ネズミたちの去った後、やってきたのは巨大な機械だった。
 ホバリング移動する生産プラントの表面には、いくつものカプセル。
 遠目にも、その中には人間が入れられていることがわかった。
 このプラントは本来、人類の助けになるように食料となる生物を作るものだったのだろう。
 だが暴走している今は――――。

『原料ヲ発見シマシタ。捕獲シ、ナノマシンヲ注入シマス。オ望ミトアラバ、奴隷・食料・芸術品、ナンデモ作リマス』

 金属製のアームを、農場の外を逃げ惑う人間へと伸ばす。
 もし人間がこのアームに捕まれば、あのカプセルに閉じ込められ、人として扱われないなにかに改造されてしまうだろう。
 彼らを守れるのは、猟兵たちだけだ。

※>――――――――――――――――――――<※

 猟兵たちより、拠点の外に出ている一般人を優先して狙います。
 攻撃して破壊するのはもちろん、一般人を守ってください。
 判定時の🔴の数に応じて、一般人に被害が出ます。
 身体を張れば猟兵に被害を寄せることができます。
リカルド・マスケラス
「お望みっすか。こっちの望みも聞いて欲しいっすけどねー」
などと軽口を叩きながら、一般人の避難誘導を行う。

その際に
「ちょっとこのお面を付けて欲しいっす」
などと【コミュ力】でお願いしつつ、【仮面憑きの舞闘会】で一般人の能力と技能をリカルドと同等まで強化。その身体能力で逃げる
「改造とか強化とか間に合ってるっすよ!」
機械腕が襲いかかるなら、手近に武器があればそれで【なぎ払い】、なければ【属性攻撃】で炎や電撃などをだして撃ち払い、切り抜ける
「アルダワ仕込みの魔法の味はいかがっすかね!」
代償の毒や呪縛は自身に【浄化】魔法を施して軽減しつつ、平然を装う
「避難はこっちに任せて、デカブツ退治は任せたっすよー!」



●宿るお面と魔法の力
「オ望ミトアラバ、作、作リマス、ナンデモ」

 巨大なプラントが、ごうごうと音を立てて空を進む。その身体には多数の機械アームと、無数のカプセル。人々を捕まえ作り変えるためにやってきた暴走機械は、逃げ惑う人々へアームを伸ばした。

「ひっ……!?」

 逃げ遅れた女性が、短い悲鳴をあげる。恐怖で身体が強張りうまく動けないのだろうか、足をもつれさせて転んでしまった。プラントのアームが彼女の眼前に迫ったときである。鎖付きの分銅が飛来し、そのアームをへし折った。

「大丈夫っすかー? 女の子には優しくしないとっすね」

 分銅を手元に引いて回収しながら現れたのは、リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)だ。転んでいた女性に手を差し出して起こし、辺りを見回す。ネズミたちの襲撃があった時点で、多くの一般人は拠点まで逃げ込んだが、未だ農場に残っていた者も多い。農場の中までプラントのアームが伸びてきている今、これらの人々も逃さなければならない。

(まーだまだ、やることがたっぷりっすか)

 やれやれと小さく肩を落としたリカルドは、起こした女性に対してお面を差し出した。

「ちょっとこのお面を付けて欲しいっす。妖しいもんじゃないっすよー? 逃げるのに役立つっすから」

 未だ怖がっている女性にへらっと笑いかける。助けられた相手の言うことだ、女性は大人しくこくりと頷いて、お面を頭につけた。途端に、女性の身体に力が湧き上がってくる。

「すごい……! これなら動けます! ありがとうございます!」

 狐面を付けた相手に、リカルドの身体能力や技能を宿らせる力だ。猟兵の身体能力を得た女性は、拠点の方へと走って行った。その背を見送り、次の一般人の元へと向かう。プラントの相手をしながら一般人の避難誘導をするのは骨が折れる。一般人が自力で逃げてくれれば、かなり負担が減るはずだ。次々に一般人へお面を渡して、逃げる力を与えていくリカルド。しかし逃げる一般人に向けて、プラントはアームを伸ばしていく。身体能力が上がっただけでまっすぐに逃げる一般人では、逃げるにも限度があるのだ。

「仕方ないっすね!」

 先程へし折ったアームを掴み、雷を流し込むと同時に投げた。帯電した金属塊はアームに当たり、衝撃と共に雷が炸裂する。ぱりっと軽い音と共に青白い雷光がアームを遡って走り、プラント本体へと届いた。

「ナノ、ナノマシ――改造――シマス」

 雷撃のダメージでプラントのシステムボイスが乱れる。

「改造とか強化とか間に合ってるっすよ!」

 アームの動きが鈍ったのを見ると、リカルドはさらにアームに追撃を加えていく。炎を纏った鎖鎌を振り回して勢いをつけ、振り下ろした。赤熱した鎌が、比較的脆い関節部に突き刺さり、そのまま溶断する。

「アルダワ仕込みの魔法の味はいかがっすかね!」

 プラントと一般人の間に立ち、避難のサポートに徹するリカルド。プラントが伸ばしていたアームの対処に一段落ついたところで、一度だけ大きく息をする。

(結構キツいっすね……)

 一般人たちがリカルドの力を借りて逃げる限り、ユーベルコードの代償としてリカルドの身体には毒がまわり続ける。外傷こそないものの、リカルドの身体にかかる負担は大きかった。胸に手を当てて、目を閉じて力を込める。光が手に宿ると、手から胸へ、胸から身体全体へ、光が広がっていった。浄化の魔法で、身体に流れる毒を和らげたのだ。

(こういうところを見せるのは、自分のキャラじゃないっすよ)

 武器を構えて走っていく猟兵たちへ、ちらりと目を向ける。毒のダメージに気付かれる前に姿勢を起こして、いつもどおりの少し軽薄な笑顔を作った。

「避難はこっちに任せて、デカブツ退治は任せたっすよー」

 ひらひらと手を振って、プラントへと攻撃を仕掛ける猟兵たちを見送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アコニィ・リード
随分と厄介な……まあ、この世界らしいわね!
広範に人々を狙うならまずそれを止める
発動した暴水禍洪を霧状に展開
これだけデカけりゃ避けられる訳が無いでしょ
少しでも吸気したら最後
内側から凍結・変成させてユーベルコードを封じるわ

それでも間に合わない分はわたしが受けきる!
シン・デバイスでリミッター解除
限界突破した身体で前に出て継戦能力で立ち続けるわ
残念だけど改造済みよ、わたしは!
シャークシューターを分隊支援火器に組換えて
長距離(スナイパー)援護制圧射撃の乱れ撃ちよ
あの機械に捕らえられた人達に当たらない様
地形を利用して最大限配慮してね

疲労やダメージはドーピングで元気に――ええ
人造人間の戦い方を教えてあげる!



●霧雨と鉛嵐
 人類の食料や嗜好品を用意するための大切な生産プラントが暴走し、人々を襲う。あってはならないことであると同時に、よくあることだと、荒廃した世界で戦い続けるアコニィ・リード(偽神暗姫・f25062)は思った。物資不足や人員不足からこういった機械のメンテナンスも疎かになり、それで人災が起こるのは珍しくない。厄介な話だ。

(まずは戦えない人々を狙わないようにしないと)

 アコニィが胸の前に手を掲げると、その小さな手のひらに大きな水の塊が現れる。その手を振れば、手の動きに従って水の塊は霧状に広がっていった。プラントは進行方向に、霧が出ていることはすぐに認識した。ただの霧であれば、プラントの機能に大きく影響を与えることはないことは明白だ。だから、プラントはその中を気にせずに通過しようとした。

「これだけデカけりゃ避けられる訳が無いと思ったけど、まさか避けもしないとはね!」

 この生産プラントは下方向にスラスターを吹かせることでホバリングし、いくつかのバーニアで姿勢を制御しながら移動している。プラントを中心として、排気が撒き散らされている状態だ。排気があるなら当然、吸気がある。その吸気口に、アコニィの散布した霧が吸い込まれたときだった。

「凍えなさい!」

 アコニィが力強く手を握ると、霧状になっていた水がその温度を急激に下げていく。広がっていた水滴が集まって固まり、鋭く形を作っていく。

「出力低下。主機内気温上昇マデ停止シマス」

 生産プラントが、ザラザラとした合成音声で自らの状況を告げる。行動やエラーが全てメッセージとして出てしまうのは、道具としても敵としてもわかりやすいものだ。手応えを感じたアコニィの口元が、少しだけ緩む。

「次っ!」

 本体の進行は止まったが、アームは未だ自在に動いている。その先にいるのは、逃げ惑う一般人だ。サメをモチーフにした銃にバイポッドを起こし、大型弾倉に換え、その場で支援火器へと換装する。地面に二脚を立てて安定を確保すると、アコニィは金属アームに向けて射撃を開始した。

「支援するわ! 早く逃げて!」

 連続する重い発砲音。放たれた弾丸が、一般人へ伸ばされていたアームに当たり、激しく火花を散らす。重心から離れた点へ加わる衝撃の力は大きい。プラントの機械腕は、その当たるたびに大きく目標から逸れた。

「改造、改造ヲ――……」

 もちろん、ここまで邪魔をされて野放しにしておくプラントではない。次にアームを伸ばしたのは、安定して重火器を打つため、地面に降りているアコニィだ。プラントのアームは、重く、速い。大きなものが風を切る低い音が荒野を駆ける。

「残念だけど改造済みよ、わたしは!」

 そのアームがアコニィを捉えるかと思われた瞬間、アコニィは腕輪を一度触れると、跳んだ。支援火器を腰に抱え、その重量を物ともせずに。すぐ下を金属腕が通り過ぎるのを、アコニィは宙返りで見送った。

「その腕、いただくわね」

 空中で器用に姿勢を制御できるのは、飛行に慣れているからか。腰に抱えた支援火器の先端を向けたのは、伸びきって隙だらけになったアームの関節部だ。これだけ近くてデカければ、砲身を安定させる必要も、狙いを定める必要もない。トリガーを引くと、強い衝撃と共にいくつもの弾丸が放たれた。その衝撃を、アコニィは腕力だけで強引に押さえ込む。少女の細腕で常人ならざる膂力で非現実的な挙動を行ったアコニィの腕から肩にかけてが、みしりと軋んだ。

(痛く……ない!)

 人間がその筋力の全てを発揮して自壊しないための限界を、少し超えた力だった。行使にはそれなりの負担も伴うというものだ。しかし、投与された興奮剤と鎮痛剤によって、アコニィはその痛みを感じない。

「まだいける!」

 身体への負担は後で考える。瞬間最大風速で叩き込み、それで身体がおしゃかになれば、次の兵士が同じことをしてくれる。これが、この世界で戦うということだ。弾丸によってシャフトを抉られ、その先を支えられなくなってぽっきりと折れたアームを足場に着地し、アコニィは次の攻撃へと移るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム

なぁにアレ
おかしな「調味料」振りかけて
人を「瓶詰」にする調理器具?

アリス達の苦痛に耐えたのは
復讐をより甘美なものにする為だって言うのに
血も流さない、痛みも感じない相手だなんて!
これじゃ殺し甲斐がないったら

……まぁ、良いわ
オウガみたいな人喰い調理器具なんて
叩き壊してあげるから

敵と逃げる人間との間に割り込むように
【誘惑】するよう躍り出て
スピードと【逃げ足】活かして立ち回る
アレ自体には食欲なんてなくっても
活きの良い食材を無視はしないでしょう?

捕まってしまった人間がいれば
【ジャンプ】【重量攻撃】で機械腕を【部位破壊】
もしくは捕まる前に押しのけ身代わりに
【激痛耐性】耐えながら
抜け出そうともがいてみせる



●荒野の食肉用プラント

「なぁにアレ」

 猟兵たちの攻撃によって地面に墜落し、アームを伸ばして戦うプラントを見て、メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)は頬を膨らませて不満げな声を漏らした。先の大砂ネズミの襲撃において、メアリーは幾人もの分身――アリス――を作り出して、その身を食わせた。その五感はすべてメアリーに共有されており、短い時間で何度も文字通り死ぬ苦しみを味わったのだ。

 もちろんメアリーも、ただで生きたまま喰われる苦痛を受け入れたわけではない。ネズミのあとにやってくるオブリビオンに、より甘美な復讐を成すためだ。なのに、やってきたのは血も流れていなければ、痛覚もない暴走機械だ。期待の外れたメアリーは、すっかり肩を落としていた。

「これじゃ殺し甲斐がないったら」

 そう言いながら、苦痛に耐えるために力を入れすぎて固まっていた肩を、解すように大きく回す。目論見は外れたが、それはそれとしてこの機械は気に入らない。まるで調味料を振りかけて瓶詰にする調理器具だ。

「オウガみたいな人喰い調理器具なんて叩き壊してあげるから」

 メアリーの持つ聖印が淡く白い光を放つと、メアリーの身体が変異していく。鋭い爪、大きな耳、ふさふさの尻尾。半人半狼の姿になると空に向かって吠えて、毛皮に覆われた脚に力を込める。尋常ならざる脚力で地面を蹴り、プラントの方へ向けて大きく跳んだ。

「こっちへいらっしゃい」

 着地したのは、プラントが一般人へ伸ばしていたアームの上だ。踏みつけるようにしてアームの進行方向をズラし、衝撃でアームのシャフトは大きく凹みを作ることとなった。農場の近くには、隠れていて逃げ遅れた一般人が未だ残っていた。放っておけば、彼らはプラントに囚われ、ナノマシンによって改造され、出荷されることにある。それは、それだけは防がなければならなかった。アームの前に躍り出たメアリーは、囮だ。大きく丸いお尻を向けて、アームの近くを駆け回る。

(……かかった)

 目の前でこうも動かれては、アームも無視するわけにはいかない。今度のターゲットは、メアリーだった。いくつもの機械腕が、彼女に向けて伸ばされる。さっきまでいたところ、空中を跳ぶメアリーの通ったところ、着地したところ。メアリーの機敏な動きによって、アームの動きは明らかに混乱していた。

「い、いやああっっ!」

 だが、近くで女性の悲鳴が聞こえたとき、メアリーは一度脚を止めてしまった。すぐにいける場所での女性の悲鳴。行かなければ、アリスのようにしてはならないと、メアリーはすぐに向かった。

 女性がアームに捕まろうとしているところを、流星のごとく現れたのはメアリーだ。女性とアームの間に割って入る。

「早く逃げて」

 手早くそれだけ伝えた瞬間、メアリーの腹に強い衝撃が訪れた。

「ぐ、うぅっ……!」

 マシンアームが、メアリーの身体を捉えていたのだ。重さとスピードの乗った機械腕に捕まれ、メアリーの軽い身体が宙へと浮く。

「いっ!? な、なに……」

 それから、胸にちくりとなにかが刺さった。目を向ければ、アームから出てきた注射器が、メアリーの胸に刺さっている。シリンダー内には、紫色の怪しい液体。それが、メアリーの中に注入されていく。

「ぅ、あっ……!」

 電撃が走ったかのように、メアリーの全身がびくんと揺れた。それから、どくん、どくんと、自分の鼓動の音が大きく聞こえる。注入されたのは、改造用ナノマシンだ。自分の身体の中を、何かが広がっていく感覚。獣化によって血の巡りが良くなっているせいか、それはあっという間に全身に広がった。内側からメアリーの身体が作り替えられていく。手足が痙攣してうまく動かせない。痛みなら耐えれる。狂気なら我慢できる。だけどこの不快な感覚は、如何ともし難い。

「食用肉ノ原材料ニ調整用ナノマシン注入完了。培養槽ニ入レマス」

 アームの先についた小型スピーカーから声が聞こえる。メアリーがプラントへ視線を向けると、その周囲に無数のカプセルが見えた。あの培養槽に沈められてしまったら、もう動けないかもしれない。

「冗談じゃないわ……!」

 獣化によって大きくなった両手を組み、アームに力強く叩きつける。金属腕が少し歪めば、抜け出すにはそれだけで十分だった。

(ちゃんと逃げてくれたみたい)

 遠くに先ほどの女性の背中が見える。あれだけ離れれば、アームが届くことはないだろう。

「ならあとは、これを壊すだけ」

 ナノマシンの影響か、いつもよりお尻が少し重く感じる。本体を壊してしまえば、きっとナノマシンは活動を停止するだろう。落ち着かせるように一度大きく息を吐くと、姿勢を低くする。バネが反動をつけるように高く飛び上がると、メアリーは空中でくるりと縦に回った。落下速度に回転を加えて、獣化によって少し固く大きくなったかかとをアームに叩きつける。

「行き場のない復讐心、せっかくだからぶつけてあげる」

 鬱憤を晴らすような一撃で、アームは中ほどで折れた。メアリーはその調子で、次々にプラントのアームを折っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート


なるほど、アレが原因ってやつか
手ェ伸ばすのを許せば、完璧な勝利からは遠ざかっちまう
この状況で被害を出さないようにするのは、流石にしんどいぜ
ま、やるけどさ
ちょっと死ぬ気で、な

『Undead』
死人じみてる癖に、死なない
俺ァそういう存在だ
一般人に降りかかる火の粉は全て俺が受け持つ、つもりで戦う
逸らすのも避けさせるのも一手遅い。だから俺が代わりに受ける
その為に此の札を切ったのさ

死に近づくほど、負傷が増えるほどに出力は増し続ける
カプセルをぶっ壊すのをメインに、クロスボウとナイフ、仕込みショットガンで削りまくる
ついでに【ハッキング】でシステムに干渉、妨害してやる
完璧な勝利は、俺が絶対に揺らがせねぇぞ



●死神のダンス

 本来ならば、この生産プラントも人類のためにあった。食料や嗜好品を作り、生活を豊かにする役割があった。しかし暴走した今は、ただ人類に仇なすのみ。プラントは逃げ惑う少女を捕まえようと、機械腕を伸ばす。

「ひっ……!?」

 戦闘の音に紛れた少女の悲鳴は、広い荒野にかき消えたかに思えた。だが、その少女を庇うように覆い被さる影があった。

「今のうちに逃げろ!」

 その少女の身体を掴もうとしていたアームを両手で抑え、少女を逃したのはヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)だ。少女の代わりに掴まれて、サイボーグの身体が軋む。

(なるほど、コレが原因ってやつか)

 暴走したプラントには、いくつものアームがある。それで人や動物をつまみ上げて、あの身体の中に放り込んでいくのだ。今も、逃げる一般人たちを追いかけるように他のアームを伸ばしていた。

(手ェ伸ばすのを許せば、完璧な勝利からは遠ざかっちまう)

 広範囲に手を伸ばせるプラントを相手にして、一切の被害を出さないように戦うというのは、難しい。プラントに攻撃を集中すれば、倒すには倒せるだろう。だが、一般人を守りながらといえば話は別だ。一方で守ることに重きを置けば、いつまで経ってもプラントを倒せず、新しいアームが伸びてきてまた一般人を襲うだろう。人々は守るし、プラントも倒す。両方を行うというのは難しいだろう。

 (ま、やるけどさ。ちょっと死ぬ気で、な)

 ならば、やるべきことはわかりやすい。こうして身体を張れば良いのだ。ヴィクティムの身体はアームに掴まれ、身体は浮いたままだ。抵抗を感じたのか、そのアームの力も徐々に強くなっていく。サイボーグの身体が、さらに軋む。特に強い圧力の掛かった肩は、めきめきと音を立てていた。

(どうせ死なねぇのに、死が迫ってきた――――)

 その身体に血が滲むと同時に、紫電が走る。ヴィクティムの身体の出力が、上がっていく。

「いい加減その手ェ離せ!」

 仕込みショットガンをアームの中心に向け、至近距離から何度も打った。密着したこの状況なら、雑に打っても外さない。大きな金属音が何度か響くと、アームの可動部がひしゃげて、ヴィクティムの身体は解放された。

「すぐそこまで行くから逃げんなよ」

 着地すると同時に、ヴィクティムは荒野を走り出した。狙いはプラント、とりわけ、丸出しの弱点のように並んだカプセルだ。凄まじい速度で走りながら、次々にクロスボウを放っていく。矢が雷光を尾にするように飛び、ガラスのカプセルを貫いた。カプセルの内容液が漏れ出て、荒野を濡らす。

「カプセル破損、障害ヲ排除シマス」

 プラントのメッセージが響くと同時に、三本のアームが、ヴィクティムへと向いた。

「その程度でいいのか? 死物狂いで来るヤツを止めようとしたら、全部使わねぇと痛い目見るぜ」

 機械腕がヴィクティムを潰すように次々伸ばされる。ヴィクティムが躱すと、アームが地面を砕いた。もし直撃すれば、ヴィクティムの身体も砕けてしまうかもしれない。死を想起させるその破壊力がヴィクティムの力をさらに引き上げる。さらに賦活されたその身体能力で、ヴィクティムはプラント目掛けて跳んだ。密着さえしてしまえば、こちらのものだ。次々にナイフをカプセルに突き立てていく。

「被害、増大」

「今更遅ェんだよ!」

 プラントは密着したままのヴィクティムへアームを振る。ヴィクティムが他のカプセルへ飛び移ると、元いた場所をアームが通り過ぎた。大質量の金属がカプセルを砕いていく。アームの操作精度が落ちているのだ。

「おっと、お土産も効いてるみてぇだな」

 プラントへ取り付いた際に、ヴィクティムはプラントのAIへアクセスを試みていた。一瞬の出来事だったので操作を掌握することはできなかったが、余計なプログラムを流すことくらいはできた。それが、アームの操作を阻害しているのだ。

「もっと必死で踊れよ。じゃねぇと、俺の完璧な勝利が揺るがねぇぞ!」

 続くアームを避けると同時にクロスボウを放ち、ヴィクティムは吼えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティオレンシア・シーディア


あ―もーほんっとめんどくさい…!
他人に向けられた攻撃撃ち落とすの、そこまで得意なワケじゃないんだけどなあ…!

一本二本ならともかく、あたしあの数のアームぶっ壊せるほどの火力連発とかできないのよねぇ。ハッキングとかの高等技術も使えないし。
…なら、動きを止めるしかないわねぇ。
ミッドナイトレースに○騎乗、即フルスロットル。一般人優先に攻撃するなら、こっちにはそう数来ないでしょ。ついで程度の攻撃なら十分回避できるはず。敵近くで片っ端からアームに●蕭殺撃ち込むわぁ。

使うのは帝釈天印、すなわち雷神インドラの印。機械に電撃は定番でしょ?
遅延のルーン3種も適宜バラ撒いて徹底的に邪魔してやるわぁ。



●雷神のメヌエット

「改造、改造」

 壊れた生産プラントが、同じ言葉を繰り返しながらアームを一般人へ向けて伸ばす。十本か、二十本か。いくつもの機械腕が交互に伸びているためその総数は分かりづらい。数えるのをやめて、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は大きなため息を吐いた。

(あ―もーほんっとめんどくさい…!)

 ティオレンシアは幅広い技術と高い対応力を持っている。大抵のことは卒なく熟せるが、一方で高い威力の攻撃を短い時間に繰り返すような、何かに特化したことはそれほど得意ではなかった。まさに今、プラントから一般人に伸びる複数のアームを、一気に撃滅するほどの攻撃力は持っていないのだ。折ることができないなら――。

「――なら、動きを止めるしかないわねぇ」

 バイク型UFOに跨り、アクセルを全開に。ティオレンシアは空を駆け出した。ある程度スピードが乗るとハンドルから手を離し、リボルバーに弾丸を装填しながらプラントへまっすぐに飛ぶ。プラントへ攻撃を仕掛けている他の猟兵や、明らかに戦力のない一般人よりも、プラントが認識するティオレンシアの危険度は低い。それ故に、ティオレンシアへ向けてアームが伸ばされることはない。

「やっぱりこっちには来ないわぁ」

 細い目を薄っすらと開けて、口角を上げた。プラントに十分に近付いたティオレンシア。巨大なプラントを眼前に迎えれば、まるで壁のように見える。

「いやねぇ、デカブツの相手って」

 リボルバーを、プラントから生えるアームの根本に向けると、トリガーを引いた。乾いた音が連続し、弾丸が放たれる。印の刻まれた6発の弾丸は空を切り、それぞれアームの根本へと当たった。

「さぁ、踊りなさぁい」

 着弾した場所に、魔術印が現れる。雷を司る帝釈天印だ。印が強く輝くと共に、プラントの表面を激しい稲光が走った。

「ジガガガ――――……」

 生産プラントのスピーカーから、壊れたような音が漏れる。アームに流した電流はプラント全体へ流れ、プラントの機能に障害を与えたのだ。

「ゴ、ゴゴ……」

 ティオレンシアの攻撃は途絶えない。印より放たれる雷は、ひたすらにプラントを焼き続けた。十分な効果を見込むと、ティオレンシアは不敵に笑う。ようやくその驚異を認識したプラントは、ぎこちないながらもアームをティオレンシアへ向けて動かしはじめた。

「いまさら来ても遅いわぁ」

 ティオレンシアはバイクでそのアームを躱す。プラントからは離れず、一定の距離を保ったままだ。その間も、ティオレンシアの雷がプラントの内部機構を破壊していく。

「改、改、ナノマ……」

「あらぁ、もう機能不全かしらぁ」

 プラントは各所から黒煙を吹き出し、アームも徐々に動きが鈍くなっていた。大きな外的損傷こそできていないものの、帝釈天の裁きはプラントを内側から破壊したのだろう。

「このまま壊れるまであたしと遊んでなさぁい」

 暴走した機械は身体を走る雷撃のせいで操作信号が狂うのか、踊るようにアームを揺らす。ティオレンシアはその様子を嘲るように、バイクでアームの間を走り抜けて回った。

成功 🔵​🔵​🔴​

笹乃葉・きなこ


原材料?!やべぇべ!あんなに人が捕まったらぁ…
こうなれば不良品は投げて投げてぶん投げてやるべぇ

怪力とジャンプをつかって地面をおもッきり蹴って大ジャンプ!
間合いを詰めて近づいたり、怪力をつかって相手を掴んでユーベルコードで何度もぶん投げるべ

一般人に近づいて来たら一般人が逃げていく方向へ真逆にぶん投げてやる

可能なら、カプセルもなぎなたでなぎ払いしたりして部位破壊、怪力もおまけで確実にぶっこわしてやるんだべぇ

破壊できるなら部位破壊でボロボロなアームをへし折ったりもぎ取ったりしようなー
スクラップになるまで!
丁寧に壊してもらえると思うなよォ!

こわすカプセルは間に合う奴から手遅れは無理



●飛び出せ地獄車

「原材料!? やべぇべ! あんなに人が捕まったらぁ……」

 プラントの音声に驚いた笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)が大きく目を開く。それから想像したのは、プラントに捕まった人間の末路だ。暴走した生産プラントは捕まえた生き物の身体を作り変え、食料や嗜好品へと変えていく。本来ならば野生の動物などを使って人類のための必需品を作るものであろう。だが、壊れた機械には人と動物の区別もつかない。もし人が捕まってしまったら、どうなってしまうのか、どうされてしまうのか、想像もできない。

「こうなれば不良品は投げて投げてぶん投げてやるべぇ」

 きなこは力強く踏ん張ると、一気に地を蹴った。荒野の乾いた地面が反動で砕け、その勢いできなこはプラントに肉薄する。

「危険接近。排除シマス」

 プラントが、高速で近付くきなこにアームを突き出した。

「そいつは当たりたくねえべなぁ」

 空中で腕を振り、腰をひねり、身体を回してきなこはそのアームを避ける。身体のすぐ横を通り過ぎたアームは、きなこにとって格好の獲物だ。伸び切った機械腕を掴み、力を加えた。

「んじゃあいくべ!」

 生産プラントの巨大な本体が、持ち上がる。きなこの小さな身体を支点にプラントを投げたのだ。

「――!?」

 宙に浮いたままのきなこが、自身の何倍も重い金属の塊を投げるなど、常識では考えられないものだ。不可解なその力に、プラントはエラーを吐いた。言葉にならない電子音を鳴らしながら、プラントは荒野を転がった。

「よっしゃあ!」

 そのプラントの上に、きなこが着地する。足元には無数のカプセル、その中をきなこが覗いた。ガラスの中は培養液で満たされており、その中には、気を失った男が浮かんでいる。

「今助けてやるべぇ!」

 きなこは手にした薙刀を払い、そのカプセルを割った。培養液の中へ手を突っ込むと、中を漂う男を引っ張り上げた。まだカプセルに入れられたばかりだったのか、男は咽て培養液を吐き出すと、うっすらと目を開ける。

「大丈夫みてぇだな!」

 男を近くの猟兵に投げ渡すと、きなこは隣のカプセルを覗き込んだ。こちらの被害者は、女だった。だが、ひと目見て分かる。

(こいつは……手遅れだなぁ)

 女の身体はナノマシンによって、おそらく食用に作り変えられていた。蕩けたような目で笑っているところをみると、精神にも作用しているのだろう。きなこの口元が、きゅっと強く結ばれる。短い時間で助けられる命の数には、限りがあるのだ。優先すべきは、まだ無事に助かる人間だ。きなこは入れられたばかりであろうカプセルを選んで割り、中から人々を助けていく。その中で助けられない人々を見るたびに、きなこの心の中で沸々と湧き上がるものがあった。

「……絶対にぶっ壊してやるべぇ!」

 次にきなこが取り付いたのは、プラントのアームだ。両手でその根本を抱えると、力いっぱい引っ張った。きなこの怪力で、金属が軋みを上げる。

「危険、危険」

 障害を排除しようと、プラントは他のアームをきなこへと向けた。

「邪魔はさせないべさ!」

 きなこがさらに力を込めると、アームの根本の板が剥がれ、ネジが飛び、ケーブルが千切れる。つまり、アームを引っこ抜いたのだ。きなこがそのアームを振り回して、他のアームへぶつければ、同じ強度のものがぶつけられたアームは中ほどでへし折れる。プラントの攻撃手段は次第に失われていった。

「改造ヲ、ナンデモ……オ望ミ……」

「じゃあな」

 アームのシャフトをプラントの機関部に突き立てると、暴走プラントは活動を止めた。荒野に残った機械くずの中央に立つ金属の柱は、まるで誰かのための墓標のようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『アポカリプスで農業を』

POW   :    力仕事を担当する

SPD   :    丁寧な仕事を心掛ける

WIZ   :    技術指導などを行う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「どうもありがとうございます!」

 猟兵たちに助けられた人々が、頭を下げて感謝を示した。
 大砂ネズミや暴走した生産プラントの襲撃に寄って、農場は少し荒れてしまったし、人々にもわずかばかり被害が出てしまった。

「農場は、また作り直してみせますよ。だって私達はまだ生きているんですから」

 猟兵たちの活躍により、彼らの夢は守られた。
 紡ぐ人さえいれば、夢はいつか叶うのだから。
 たとえどんな困難であっても諦めないことこそ、この世界に生きる人間の最も優れた能力なのだから。

「手伝いますよ」

 猟兵の誰かがそう言うと、彼らも微笑んでもう一度頭を下げた。

※>――――――――――――――――――――<※

 オブリビオンを退けたあとの農場でのひとときです。
 農場の手伝いをしたり、農場で取れたものを食べて過ごしてください。
 雰囲気は頂いたプレイングに合わせます。
リカルド・マスケラス

自分なりに農場の手伝い

「これは豊作祈願の祈禱みたいなもんなんすけど、ちょっとやってみるっすか?」
農地に、作物の邪魔にならないように魔法陣を描き、【森羅穣霊陣】を施し、作物の育成促進を試みる
その際に、農場の人達の体を借りて行い、志願者が多ければ(負担はあるが)【仮面憑きの舞闘会】を併用して同時に多くの人に憑依してUCを使用する
ユーベルコードの習得は無理でも魔力の使い方や【破魔】、【結界術】の感覚なんてものを誰か掴めれば、これからの助けになるかもしれない
「うまくいくかはわからないっすけど、できることの選択肢は増えるのはありじゃないかと思うんすよ」

あとは手が空けばバイクで荷物や作物の運搬っすかね



●涙よりも笑顔が見たかったから

 戦いの跡というのは悲惨だ。
 元々何もなければ新しく作り出すだけだが、大切にしてきたものを壊されたあとの光景は人の心を抉る。
 拠点の近くに広がっているのは、ネズミやプラントの襲撃により荒らされた農地。
 人や施設に大きな被害は出なかったものの、農地で大切に育てられていた野菜はめちゃくちゃだ。
 幼い少女が、踏み荒らされた作物を手にとって涙を飲む。
 大切に育ててきたのに。
 少女は唇を震わせてしゃがみ込んでいると、その少女の肩に、ぽんと手が置かれた。

「これは豊作祈願の祈祷みたいなもんなんですけど、ちょっとやってみないっすか?」

 少女が顔を上げると、上調子な笑顔。
 リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)だ。
 仮面を少女付けてあげると、落ちていた木材を使って、農地に大きな魔法陣を描いていく。
 泣きそうだった少女は、興味ありげにリカルドの動きを見つめていた。

「きみたちも一緒にどうっすか」

 さらに、近くで見ていてた人々にもリカルドは面を渡す。
 リカルドにかかる負担は大きいが、できるだけ多くの人に体験してほしいのだ。
 何が起きるのかと周囲の人々が見守る中、リカルドが強く念じる。

「ここに悪しきを払い、恵みをもたらせ!」

 祝詞を読み上げると同時に、荒れた農地に横たわっていた野菜が、収穫できるほどにまで成長した。
 これがリカルドの結界術の力だ。
 近くで見ていた人々が感嘆の声を上げる。
 最初に声をかけた少女は畑に駆け寄ると、瑞々しく実った野菜をひとつ手に取る。
 まちがいなく、食べられるほどに成長しているのだ。
 リカルドは、面を渡した人々の方を見て語った。
 面をつけていれば、基本的にリカルドと同じことができる。
 ユーベルコードとまではいかずとも、ちょっとした結界術の感覚くらいは掴めるのではないかと思ったのだ。

「うまくいくかはわからないっすけど、できることの選択肢は増えるのはありじゃないかと思うんすよ」

 口を開けばどこまでも緩くてどこまでも軽いリカルドだが、リカルドなりに被害にあった人々を気遣っているのだ。
 面を受け取っていた人々は、リカルド真似をして結界術を試してみていた。
 見たところ豊穣の効果が現れたものはないが、破魔の結界としてはそれなりの効果はありそうだ。

「あ、あの!」

 リカルドに、最初の少女が声をかける。

「ありがとうございました!」

 ただ農場の修復や作業を手伝うだけでなく、先のことを見据えた支援は、少女たちの心に新たな希望の光を宿らせるには十分なものだ。
 少女は、リカルドへ深々と頭を下げた。

「礼は十分っすよ。じゃあ、自分は運搬の方を手伝ってくるっす」

 笑顔で手を振る少女たちに別れを告げて、リカルドはバイクに跨るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シアン・ナアン
『まずは自分を壊しちゃお!世界もどーせ壊れてるから!』
『自由こそ真の秩序……』
『シアン難しい話わかんなーい☆』

◆口調
コロコロ変わり、ぐちゃぐちゃである

◆行動
戦闘、遊び、調査等何をするにも分身を使って活動する
分身も意識があり区別がつかない
行動指針に一貫性がなく都度変わる

爆発物好き、派手好き

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、怪我や死ぬことも厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為は多分しません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は恐らくしません。
 つまりはだいたいおまかせ。よろしくおねがいします!!



●無軌道セプテット

「壊れちゃったねえ!」「もうぼこぼこじゃん……」「終わりだよ、全部終わり」

 すっかり踏み荒らされた農場を、シアン・ナアン(自己壊乱・f02464)たちが歩く。
 7人のシアンは、歯に衣着せずに現状を言い表した。
 実際、今回の襲撃で人々はかなり疲弊している。
 農場を立て直すこともできるかどうか、わからない状況だった。

「なんだぁ……お前」

 踏み荒らされてダメになった野菜を車に載せながら、農場の男がシアンたちを睨む。
 同じ姿の7人がかしましく話していれば、人々の注目も集まる。
 特にその内容が否定的であれば、なおさらだ。

「明日は豊作だねこりゃ」「キャベツはおやつに入りますか?」「火を通せばあるいは」

 シアンたちはめちゃくちゃに話しながら、農場の手伝いをしていた。
 あまりの一貫性のなさに、農場の男は毒気を抜かれたように、大きなため息を吐く。

「まあ、諦めたほうがいいっていうのは分かるさ。こんな土地だからな」

 男は車の荷台に腰を下ろすと、地面を見た。
 水はけが良いどころか乾燥しているし、養分も含まれているように見えない痩せた土地だ。
 ただでさえ農地に向かないのに、オブリビオンストームさえ来る。
 続けることが難しい理由ばかりが積み上がっているのだ

「やれるところまでやってみようよ!」「ダメでもいいじゃん?」「やるだけやって倒れちゃお!」

「倒れちゃおうってお前……」

 シアンは惨状に対して正直に言うが、決して悲観的ではない。
 大切なのは、とにかく挑戦すること。
 この農場自体、現地の人々のチャレンジ精神で作られたものだ。
 これまでもそうであったように、これからもそうでなければならない。

「けどまぁ……そうかもしれねぇなぁ」

 農場の男が、少し気恥ずかしそうに頭を掻く。
 シアンのなるようになれという態度が、男にその気持ちを呼び起こさせたのだ。

「じゃあド派手にやろう!」「電飾ぴっかぴかとか?」「爆破していいやつ?」

「ダメなやつだ」

 男は調子に乗るなと笑って、シアンたちに作業の指示を出すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メアリー・ベスレム

おなかすいた
未だ重く感じるお尻のお肉
切り落としてかぶりついてしまいそう
もちろん、そんな事しないけれど
それぐらいおなかがすいてるって事

(ぐぅ、とお腹の音)
……美味しいのかしら

そんな様子を見かねてか
農場の人がお野菜をくれるけれど
メアリ、お野菜は嫌いよ
だって青臭くて美味しくないもの

(そもそも野菜のイメージがダークセイヴァー準拠
昼なお暗い、やせ細った土地で
品種改良だって殆どされてない
さらにアリスラビリンスではお菓子やお茶に困る事はなかったし)

それでも空腹には勝てなくて
言われるままに齧ってみせて
少しの間、口の中でもごもごとしてしまうけれど
思っていたような酷い味ではなくて
……美味しい。思ってたより



●甘く甘く実って
(お尻……まだ重い……)

 メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)はただでさえ大きかったのに、注入されたナノマシンの影響でさらに大きくなったお尻を、ゆさっ、ゆさっと揺らして農場を歩く。
 農場の真ん中で立ち止まると、憎々しげに自分のお尻を掴んでため息を吐いた。
 バランスが崩れるほどではないが、メアリーの身体の割にはかなり大きい。
 歩けば揺れるし、止まっても重く感じて、非常に邪魔なのだ。

(切り落としてかぶりついてやろうかしら)

 一方で、メアリーはとにかくお腹が空いていた。
 邪魔なものがあって、それがお肉であれば、食べてしまおうかと考えるのも、おかしな話ではない。
 流石に自分のお尻を切り落とすなんてことは、する気がなかった。
 それでも想像してしまうほどには、メアリーはお腹が空いていたのだ。
 自分の肉以外に食べられるものといえば、農場で作られていた野菜だ。
 外側の畑はかなり荒らされてしまったが、この辺りは比較的そのまま残っていた。
 メアリーの目の前にも、瑞々しい野菜が実っているのだ。
 
(野菜……)

 だが、メアリーは手を伸ばさなかった。
 ぐぅぐぅと鳴るお腹を手で擦り、再び大きなため息を吐く。

「おねえさん、おねえさん! 赤い瞳のおねえさん!」

 メアリーのお腹の音を聞いてか、ため息を聞いてか、近くから声が聞こえた。
 農業機械の間からひょっこりと顔を出したのは、メアリーよりいくつか幼く見える少女だ。

「おねえさん、お腹が空いているのでしょ? 採れたてのお野菜、あげる!」

 そう言って少女はメアリーに、赤い野菜を差し出した。
 若い血のように赤く、幼い肌のように瑞々しい野菜だ。

「メアリ、お野菜は嫌いなのよ」

 しばらくアリスラビリンスで過ごしていたメアリーにとっての野菜というのは、ダークセイヴァーで見た物だ。
 日も当たらず、痩せた土地で育った野菜。
 農業も発展しておらず、品種改良だってろくにされていない、ただの萎びた野菜。
 つまりメアリーは、青臭くて美味しくない野菜しか食べたことがないのだ。

「そんなこと言わないで、食べてみて! きっと気に入るわ!」

 明るくて素直で、もしここがアリスラビリンスだったなら、オウガたちが好んで食べそうなタイプの子だと、メアリーは思った。
 少女の顔と、少女の差し出す野菜を交互に見ると、少女は目を輝かせて、メアリーを見上げている。
 それから、もう一度ぐぅ、とメアリーのお腹が鳴った。
 空腹には勝てない。
 しかたないと、少女から受け取った野菜を、少しだけ齧ってみるメアリー。

「……」

 始めは、少しの酸味。
 眉をひそめて、咀嚼をする。
 それから徐々に、口の中で甘みが膨らんできた。
 野菜の含んでいる水分が、ほんのりと甘いのだ。
 完璧とは言い難い。
 けれど、記憶と想像の中の野菜よりは、ずっと酷くない。

「……美味しい。思ってたより」

 メアリーの反応を見て、少女は嬉しそうに笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アコニィ・リード
それじゃあ皆、キリキリ働いちゃって!
パワードスーツめいた外骨格を纏ったイルカさん達が
人々の手助けをして畑を直したり残骸を撤去したりする

エルヴィーラ、さん?
お疲れ様。大変な戦いだったね
まだあんな機械がいっぱい残ってるのかな……?
わたしも機械から生まれた、から
全部が全部悪いとは言わないけど
やっぱり何か歪なのかな、って思う事もあるし
それでも、生まれちゃったんだから生きなきゃって
あ、何か食べ物配ってるみたいよ
そう言い果物を適当に貰ってくる

はい、食べる?
変なペーストより、やっぱり美味しいよ、こういうの
生命、か。その恵みを受けて地に遍く繁栄を――なんてね
早く元に戻るといいな
それじゃあわたしも手伝ってくる!



●生まれたモノの責務

 大砂ネズミや暴走するプラントによって荒らされた農地の上を、イルカたちが飛んでいる。
 かなり奇妙な光景だが、外骨格を着込んで人間の数倍も作業をするイルカの群れを見れば、とにかく助かる以外の言葉が浮かばないのが、現地の人々だ。

「それじゃあ皆、キリキリ働いちゃって!」

 イルカたちに指示を出し終えたアコニィ・リード(偽神暗姫・f25062)は、一息吐いて辺りを見渡す。
 目に入ったのは、農地の復興作業をする人々から少し離れた地面に、ぽつんと座っている銀髪の少女。

「エルヴィーラ、さん? お疲れ様。大変な戦いだったね」

 猟兵たちをここまで転送したグリモア猟兵だ。
 戦いは終わったとはいえ危険のある行動は取れないため、作業を手伝えずに大人しく座っているのだという。

「アコニィ。助力に、感謝を」

 座ったまま略式の敬礼をして、少女は短く告げる。
 アコニィはその隣に座ると、イルカたちに運ばれている壊れたプラントを見た。

「まだあんな機械がいっぱい残ってるのかな……?」
「まだある。きっと、たくさん」

 不安を口にするアコニィに、エルヴィーラはまた短く答えた。
 この世界では、人類は圧倒的に不利な立場にいる。
 オブリビオンに襲われなくとも、水や食料に困ることもあれば、薬がなくて病気で死ぬこともある。
 そんな人類のために作られた機械が、今は人類に牙を向いている。
 悲しいけれど、おかしな状況だ。

「守るべき人たちを傷つけるなら、見つけて、壊す。必ず」

 そう言うエルヴィーラの声色は平坦で、あまり感情を感じられない。
 それでも、アコニィには強い言葉で語っているように聞こえた。

「わたしも機械から生まれた、から、全部が全部悪いとは言わないけど……」

 ふたりは、遺伝子操作によって作られたクローン人間だ。
 優秀な能力を持つが、通常の母体ではなく、フラスコやカプセルの中で生まれた。

「やっぱり何か歪なのかな、って思う事もあるし」

 自然受胎でない生き物は、そうである生き物に比べて"おかしい"ことが多い。
 彼女たちがおかしくない保証は、どこにもないのだ。
 アコニィの損耗を恐れない戦い方や、エルヴィーラの起伏に乏しい感情も、その顕れかもしれない。

「…………」

 無言を返すエルヴィーラ。

「それでも、生まれてきちゃったんだから、生きなきゃね」

 人々を守る使命はある。
 それとは別に、生まれてきたモノの責務もある。
 死ぬまで、生き抜くことだ。
 ふたりは少しの間黙って、遠くの空を見ていた。

「あ、何か食べ物配ってるみたいよ」

 それからアコニィが、籠いっぱいの果物を持って歩き回る少女を指す。
 お尻についた土を払って、アコニィは果物を貰いにいった。
 それから、すぐに帰ってきてエルヴィーラにその一つを差し出す。

「はい、変なペーストより、やっぱり美味しいよ、こういうの」

 果物を受け取ったエルヴィーラは、さっそく一口。

「……おいしい」

 がっつくような勢いで果実を食べて、袖で口元を拭う。

「……アコニィ、あなたは……ボクよりずっと、人間らしい。だから、大丈夫」

 突然、話題が戻った。
 口下手なエルヴィーラなりに、アコニィを励まそうとしているのだ。
 エルヴィーラが黙っている間、ずっと考えていたのだと気付いたアコニィが、くすりと笑う。

「食べ物の話をしてるときのエルヴィーラさんだって、人間らしいと思うけど?」

「……?」

 自覚がないのか無言で首をかしげるエルヴィーラを見ながら、アコニィは果物を齧った。
 甘くて、少し酸っぱい。
 生命の味だ。

「その恵みを受けて遍く繁栄を──なんてね」

 早く元に戻るといいなと、後に続けて呟く。

「それじゃあわたしも手伝ってくる!」

 少しだけ表情を明るくしたアコニィは、イルカたちの方へと飛んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

笹乃葉・きなこ

お手伝いお手伝い

どうせするなら力仕事にするんだべぇ。
ユーベルコードで持てる量も増やすんだべぇ。
後は怪力を使ってじゃまな物を運んだり、壊す必要があるなら壊したり

動物達にも協力してもらえるなら【動物と話す】と【動物使い】で手伝ってもらうんだべぇ。

他には土地を耕すなら道具を借りて土壌が汚染されてるなら、浄化を使いながら耕していくんだべェ。ないよりマシ。

あとは他の面倒ごとが無いよう様に警戒とか警備とかもしようかなぁ。
後は自分が何ができるか聞いてみるかなぁ。
他に手伝えることがあればじゃんじゃん手伝うんだべェ。



●笹乃葉与力紀行
「よいっしょぉ!」

 農場に横たわっていた暴走プラントのアームが、笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)の小さな身体で持ち上げられる。
 巨大な金属の塊を普通の人間が運ぶには、随分と時間と手間がかかる。
 拠点から重機を持ち出す必要もあるし、燃料も使ってしまう。
 だがその点、ひとりで暴走プラントを投げ飛ばすことのできたきなこならばどうだろうか。
 気功術で瓦礫の重心を持ち上げ、それを運ぶ。
 うまく気功術を使えば、それくらい造作もないことだ。

「これはあっちに運ぶべぇ」
「きゅいいーっ!」

 きなこが声をかけたのは、宙に浮いたイルカたちだ。
 他の猟兵が呼び出したものだろうか、外骨格まで着込み、人間の大人さながらによく働く。
 瓦礫運びの手伝いは、一般人たちよりもイルカたちのほうが役に立つだろう。

「そんじゃ行くべェ、せーの!」

 イルカたちと力を合わせて、きなこは次々に瓦礫を撤去していく。
 学生ほどの上背しかないきなこが巨大な金属を持ち上げるたびに、周囲の男たちは感嘆の声を上げた。

「お前さんたち、結構頼りになるんだなぁ」
「いーっきゅっきゅるる!」

 イルカたちが手早く運んでくれるおかげで、きなこはそれほど疲れずに作業を続けられる。
 間に挟まる僅かな休息の時間に次の瓦礫の目安を付けて、運び出していくのだ。

「……おっ」

 また次の瓦礫を持ち上げようとしていたきなこが、瓦礫の隙間から地面を見る。
 農地はすっかりと荒れてしまったが、こんな状況でも傷一つなく誇らしげに伸びる苗が見つかったのだ。
 苗を折ってしまわないように慎重に残骸を退かして、満足げに頷く。
 これで農地の上に会ったプラントの残骸は、綺麗に退かすことができたはずだ。
 周囲の人たちから、きなことイルカたちに拍手が送られた。

「他に手伝えることはあればじゃんじゃん言ってくれよなぁ」

 両手を腰に当てて、堂々と宣言するきなこ。

「おーい、こっち手伝ってくれぇ」
「今行くべェ」

 すぐに助けを求められて、次の作業場所へ向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート


完璧、とは言い難い
僅かでも損害を出せば、勝利に曇りが出来ちまう
反省だ、大いに反省する余地がある
結果がもう覆らないことは理解している
それでも反省するし、検討をし直すし、最適解を探る
不完全が完全を求めるには、それを繰り返すしかないさ

…ま、それは帰ってからでいい
労働力を提供してやる、俺の不手際で農場が荒れちまったからな
せめてアフターケアくらいはして帰るさ

──こんだけ必死こいて守ってみても、運命の気まぐれ一つで全部ひっくり返っちまう
考えちまうと、虚しくなるだけだが…
何かを成し遂げるなら、『無駄』なんて考えちゃいけねえのかもな
考えて、行動して…それを繰り返し続けるんだ
それが、『生きる』ってことか…



●終わりなきDestruction and Creation
 荒れていた農地は、散らばった作物や道具を片付けることで、次の種を撒ける程度には整った。
 猟兵たちの助力のおかげだ。

(この辺りはこんなもんか……)

 一段落ついたところで、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は手近な箱に腰を下ろして、辺りを見渡した。

 ゴミや瓦礫は取り除き、固く踏み鳴らされた地面は耕して、崩れた水路をつなぐ。
 なかなかに骨の折れる作業だ。
 もし大砂ネズミやプラントに一切の侵入を許さなければ、ここには野菜や果実が十分に実っていたはずだった。
 それがいま、種蒔きからやり直さねばならないのは────。

(────俺の不手際だ)

 完璧で、完全な勝利を目指して、全て守りきるつもりだった。
 だが、現実はそうもいかない。
 オブリビオンは討伐できたが、軽微ながら被害が出てしまった。
 それは自分が最適解を導き出せなかったせいだと、ヴィクティムは考えていたのだ。

(……せめてアフターケアくらいはして帰るさ)

 だからヴィクティムは、ここで地道な作業の手伝いをしていた。
 ひとりでは手が足りないから、分身を使って三人で。
 農地の人も同じ顔が並んでテキパキと作業をする様子に一瞬ぎょっとしたが、すぐに気にしなくなった。
 オブリビオンの襲撃前の状態まで戻すにはやることが多すぎて、驚いている場合ではないのだ。

「またやり直しかぁ……」

 ここで必死に農地を直しても、またオブリビオンがやってくれば簡単に壊れてしまうと、誰かの言葉で脳裏をよぎる。
 農場を作っているのはオブリビオンと戦う力どころか、守る力もない一般人だ。
 今回は人的被害を抑えられたため立て直しができるが、次のオブリビオンの襲撃はいつかはわからない。
 年単位でないかもしれないし、明日かもしれない。
 必死で守ったとしても、次の瞬間には「運命の気まぐれ」で全部ひっくり返ってしまう可能性があるのだ。

(考えちまうと、虚しくなるだけだが……)

 大切に育てていた作物がだめになったというのに、人々の表情は、あまり暗くない。
 彼らは自分たちの行動が無駄だったとは思っていない。
 壊われたら、壊れることがわかったのだから、今度はもっと頑丈にして、また作ればいい。
 一度無駄になったくらいで、何だというのだ。
 無駄とも思える行為を積み重ねて結果を成せるというなら、それはもう無駄ではないのだ。
 だから人々は、また作る。
 これから先、何度オブリビオンに壊されようとも、農場は何度でも蘇るだろう。

(それが、『生きる』ってことか……)

 誰もがそうして生きていると思うと、ヴィクティムは小さく笑った。

「っし! 誰か、手が要るやつはいるか!」

 自分の頬を叩いて、気合を入れる。
 細かい反省は帰ってから行うとして、いまはマンパワーのいる作業を進めることが先だ。

「そこの兄ちゃん、こっち手伝ってくれ!」
「おっ、任せとけ」

 肩をぐるりと回してサイバネの調子を確かめると、ヴィクティムは再び作業へと向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月21日


挿絵イラスト