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迷宮災厄戦⑰~過去と現在の未来

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦


 不思議の国が連なるアリスラビリンス。
 そこに、牢獄に閉じ込められていたというオブリビオン・フォーミュラ『オウガ・オリジン』が姿を現す。
 その強大な力は、アリスラビリンスの消滅を呼び寄せようとしていて。
 そこに、猟書家と呼ばれる者達の他世界をも狙う思惑が絡み合って。
 猟兵を含めた三つ巴の大戦争……『迷宮災厄戦』が始まっていた。

「侵入者の『昨日の姿』がオブリビオンとして現れる国……闘技場の国だよ」
 九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は、集まった猟兵達を面白がるように見回しながら説明する。
 その国は、思わずローマ観光をしたくなるような国で。
 古代ローマを思わせる石造りの街並みには、神殿や広場、共同浴場に水道橋といった典型的な建築物が点在し、その中にはもちろん闘技場も多々ある。
 その国に入ると、国のどこかで必ず『自分』と……いや『昨日の自分』と遭遇する。
 それがこの不思議な国の特徴なのだという。
 遭遇する『昨日の自分』はオブリビオンだから。
 猟兵である『今日の自分』とは必然的に敵対し、攻撃してくる。
 わずか1日の差しかない、自分自身との戦い。
 ほぼ互角の強さと考えれば苦戦必須の相手ではあるが。
「勝てるだろう?」
 夏梅はにやりと不敵に笑って、猟兵達を送り出す。
「昨日と言う『過去』を乗り越えて行っとくれ」
 過去の自分を倒して現在の自分が進む先は、未来。

 貴方の未来を、見せてください。


佐和
 こんにちは。サワです。
 世の中には自分と同じ顔をした人が3人いるとか。

 昨日の自分との戦い、2本目です。
 見た目とか状況とかにこだわりの差異があればご指定下さい。
 特になければ、そっくりそのまま同じ姿で現れるのではないかと。
 闘技場の国は、古代ローマ風です。
 バシリカにヴィッラ、コロッセウムとかパンテオンなどもあるかも?
 相手と遭遇する場所、戦う場所などにも希望があればどうぞ。

 尚、当シナリオには特別なプレイングボーナスが設定されています。
 それに基づく行動をすると判定が有利になります。

 【プレイングボーナス】「昨日の自分」の攻略法を見出し、実行する。

 それでは、僅かな過去との邂逅を、どうぞ。
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第1章 冒険 『昨日の自分との戦い』

POW   :    互角の強さであるのならば負けない。真正面から迎え撃つ

SPD   :    今日の自分は昨日の自分よりも成長している筈。その成長を利用して戦う

WIZ   :    昨日の自分は自分自身であるのだから、その考えを読む事ができるはず。作戦で勝つぞ

👑7
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セシル・バーナード
やあ、こんにちは。昨日のぼく。悪いけどここを通らせてもらうよ。
プラチナちゃんを観客にして、さあ、始めよう。

相手からの攻撃を次元障壁で防ぎつつ、空間裁断で全方位攻撃。
やっぱりやることは同じだよね。
視線、手指の動き、呼吸まで観察して、昨日のぼくが生み出す空間裁断を障壁で受け止めて。
同じことを昨日のぼくもやってるはずだ。
この千日手を崩すなら、早い方が有利。
黄金魔眼で動きを封じ(とはいえ空間断裂は意識さえあれば放てるので、油断禁物)、空間転移で相手の目の前に移動して、喉笛に手刀を突き立てる。
容赦は無用。狙うは一撃必殺。

下手なオブリビオンよりよっぽど厄介だったよ。
プラチナちゃん、ぼくは格好良かったかな?



 肩口で揃えられた、金糸のようなさらりとした髪。
 穏やかに微笑む緑色の瞳と、滑らかな白い肌。
 髪と同じ色の狐耳と、ふっさりと柔らかにゆれる狐尾が妖狐の特徴を色濃く表し。
 柔らかなブラウスに良質なベスト、首元にはタイのようにひらりとスカーフを巻き、ぴったりしたズボンは短めで、その分長い白靴下が、革靴を履いた脚を覆う。
 腰に帯びたジャンビーヤの美しい装飾は儀礼用を思わせ。
 華奢ともいえる細身の身体も相まって、その見た目はどこか中性的であり。
 戦いや苦労とは無縁そうな良家の子息といった雰囲気を作り上げる。
 そんな相手と相対したセシル・バーナード(セイレーン・f01207)は、目の前にあるのと同じ顔に穏やかな微笑を浮かべた。
「やあ、こんにちは。昨日のぼく」
 アリスラビリンスにある不思議な世界の1つ、闘技場の国。
 そこに現れるオブリビオンは、侵入者の過去の姿を取る。
 すなわち『昨日の自分』と戦う国。
 説明を思い返しながら、いつものように微笑んだセシルは自身と対峙して。
 その横で、銀髪の少女がおろおろしていた。
「え? あれっ? こっちにもあっちにも……何ですかこれ!?」
 慌てる様子が可愛くて、セシルはくすりと笑いかけると。
「大丈夫、プラチナちゃん落ち着いて。
 今日のぼくはプラチナちゃんを愛しているから。
 もちろん、向こうに居る昨日のぼくも、ね」
 指し示した先で、思った通り『昨日のセシル』も妖艶な笑みを浮かべていた。
「これって私、両手に花ってやつですか!? 再びのモテ期到来!? 
 でも2人居るけど結局は1人だからでも2人で……?」
 誘うような惑わすような、艶やかな2つの笑顔の間で、少女は忙しく首を動かし双方を交互に見やりながら、尚も混乱を深めていくけれども。
 どちらか1人になれば彼女の困惑も終わるだろうと言うかのように。
 2人のセシルは戦いの火ぶたを切った。
 空間を操る術を得意とするのはどちらも同じ。
 ゆえに、その戦いは至極静かで。
 不可視の空間裁断が、無音のままに放たれ、防がれていく。
 攻撃自体が見えないゆえに、セシルが見るのは相手の挙動。
 緑瞳の僅かな動きで変わる視線を。
 手の動きだけでなく、微かな指の動きを。
 そしてその呼吸までをも観察して。
 生み出された無数の空間断裂を、同じ能力を応用した防護障壁で受け止める。
 しかしそれは相手も同じ。
(「やっぱりやることは同じだよね」)
 セシルの攻撃も見切られ、全て受け止められていた。
 となれば。
(「この千日手を崩すなら、早い方が有利」)
 セシルは、先を取るように動く。
 同じ能力を同じように使う相手とセシルとの違いは。
 この邂逅を知っているか否か、という情報のアドバンテージ。
 だからこそ、相手の出方を確かめきるまえに、いつもの自分が戦法を変える決断をするよりも早いタイミングで、セシルは動いた。
 空間を操る能力の使い方を切り替えて。
 無数の空間断裂を囮にするかのように、一気に相手との距離を縮める。
 恐らく相手は、もう少し見えない撃ち合いが続くと思っていただろう。
 そこに飛び込んで来たセシルへと、驚愕の表情を見せて。
 声を上げるより早く、セシルの手刀がその喉笛へと突き立った。
 自身と同じ姿であっても容赦のない、狙い通りの必殺の一撃。
「下手なオブリビオンよりよっぽど厄介だったよ」
 消えゆく自分の姿を見下ろしながら、セシルはふわりと微笑んで。
「プラチナちゃん、ぼくは格好良かったかな?」
 顔を上げながら、拍手を送る銀髪の少女へと振り向いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オルヒディ・アーデルハイド
最近、ボクと同じ姿をしたオブリビオンがアリスラビリンスで出現していると噂で聞いたのでその前哨戦みたいなものかな

あっちこっちと飛び回り戦いを繰り広げているから
昨日よりも能力も技術もあがってし
ユーベルコードも成長し呼べる召喚獣の数さえ違う
1日の違いとは言え戦いの年季が違いは大きいよね

『華麗なる姫騎士』に変身して飛翔能力で飛び回り距離をとる
昨日と今日では速さが足りない
昨日と今日との圧倒的違いは想像力
想像力に応じた進化を無限に行う白銀の槍
昨日までは想像出来なかったことが今日ならできる
想像力で機能を拡張する力によって、穂先を空間転移させて〔串刺し〕
別に接近しなくても攻撃は出来るんだ



 オルヒディ・アーデルハイド(アリス適合者のプリンセスナイト・f19667)も、自分と全く同じ姿の相手と対峙していた。
 ふわりと広がる銀色の長髪も、左右で髪を彩る青いリボンも。
 フリルの揺れるワンピースタイプのドレスも、長く伸びるマントも。
 透き通るような白い素肌も、もちもちしたピンク色の頬も。
 全てが同じ、鏡写しのような相手。
 けれども、オルヒディが思ったのは、鏡ではなく。
(「最近、ボクと同じ姿をしたオブリビオンが出現しているって……」)
 耳に入ってきていた、そんな噂。
 しかし、今、目の前にいる相手は『昨日の自分』だから。
 その噂のオブリビオンとは別の相手だと分かっている。
「前哨戦みたいなものかな」
 オルヒディは苦笑すると、相手と同時にユーベルコードを発動させた。
「愛と勇気と希望を抱きしめてフェアクライドゥング」
 2つのエーデルシュタインヘルツから溢れた輝きが、それぞれのオルヒディを包みこむと、その姿が華麗なる姫騎士へと変わっていく。
 落ち着いた色合いの青から、華やかで明るい青へ。
 マントを外し身軽になったドレスは丈も短く動きやすくなり。
 袖の代わりに腕は長い白手袋に覆われ、編み上げのロングブーツも白く輝き。
 長いリボンが動きを大きく見せるように揺れ重なる。
 そして、美しい白銀の槍・ホフヌングランツェを手に構えれば。
 その背に、純白の翼が1対、広がった。
 対峙する、2人の姫騎士。
 互いに見つめ合ったと思った刹那、その姿が宙を舞う。
 フワリンの加護、そして光の粒子を纏いながら、姫騎士は華麗に空を飛んだ。
 細かい彫刻が施された神殿の上を。
 バシリカや列柱廊に囲まれたフォルムの上を。
 アーチ状にかかった水道橋の上を。
 飛び回りながら戦っていく。
 それは同じ動きではあったけれども。
 僅かにオルヒディに分があった。
 昨日よりも今日。
 日々の戦いがオルヒディを着実に鍛え、能力も技術も上げていたから。
 ユーベルコードも成長すれば、呼べる召喚獣の数さえも違う。
(「1日の違いとはいえ、戦いの年季が違いは大きいよね」)
 たった1日。
 されど1日。
 積み重ねた経験の差を微かに、でも確かに感じながら。
 オルヒディは相手より速く飛び、一瞬早くホフヌングランツェを掲げた。
 それは、使い手の想像力に応じて無限に進化する、希望の槍。
 美しい白銀の姿が、昨日よりもより強い想像力を受け、その力を広げて。
(「昨日までは想像出来なかったことが今日ならできる」)
 オルヒディは、槍の穂先を空間転移させた。
 そしてその切っ先は、離れていたはずの相手を深く貫く。
 まるですぐ近くから槍を放ったかのように。
 思いもよらなかった攻撃に驚愕の表情を浮かべ、こちらを見ながら串刺しになった自分の姿を、オルヒディは静かに見つめる。
 自分と同じ、藍と青紫のオッドアイ。
 それが静かに閉じられて、消えていくのを見届けながら。
「ボクと同じ姿のオブリビオン……」
 未だ見ぬ相手を思い重ねて、オルヒディはそっと目を伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、昨日の私とアヒルさんが相手って勝ち目がないじゃないですか。
ガジェットのアヒルさんが成長する訳がありませんし
私がたった1日で強くなれるはずがありません。
どうしましょう。

そうです、昨日何か体の不調があればそこを攻めればいいんですよ。
アヒルさん、昨日何かありました?
そんな都合よく不調だったりしませんよね。
昨日は私がアヒルさんの分のアイスを買ってくるのを忘れてすごく怒られたぐらいで。
あれ?昨日のアヒルさんが昨日の私にお説教を始めましたよ。
ふええ、はたから見るといつもあんな感じなんですね。
昨日の私には申し訳ないですけど、この隙にお菓子の魔法を使ってから昨日の私達を撃破します。



 白いブラウスと水色のスカート。白い靴下と水色の靴。
 避暑地に来たお嬢さん、といった服装の少女は、大きな赤い瞳を怯えたように揺らす。
 長く広がる銀色の髪ごと、大きな水色の帽子で顔を隠して。
 ちらり、と恐る恐る伺うように、相手を見ていた。
 そんないつもと変わらぬフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)が2人、闘技場の国で相対する。
「ふええ、昨日の私とアヒルさんが相手って勝ち目がないじゃないですか」
 おどおどビクビクしたフリルは、両手でそっと持つアヒルちゃん型ガジェットを見下ろして泣きそうな声を出した。
 いつも持っているだけのガジェットが、勝手に成長するわけもなく。
 そしてフリル自身も、たった1日で強くなったりもしていないと思うから。
「どうしましょう」
 全く同じ実力と思われる相手に、フリルは対応する手段を見つけられず。
 困ったように帽子の広いつばをぎゅっと握った。
 そして、ふと、思い至る。
「そうです。昨日何か体の不調があればそこを攻めればいいんですね」
 昨日から今日へと良くなった部分がないのなら。
 今日より昨日が悪かった、昨日だけの出来事を探そうと。
「アヒルさん、昨日何かありました?」
 手にしたガジェットを覗き込むようにして聞きながら、考えるけれども。
 少し明るくなった表情は、すぐにまた困り顔に戻った。
「……そんな都合よく不調だったりしませんよね」
 昨日お腹が痛かった、とか、どこか怪我をしていた、ということもなく。
 不調という点では何も思い至らないまま。
 他には、と手掛かりを求めて、昨日の自分を思い出す。
 昨日はそう、確か、買い物に出かけて。
 特に良い事も悪い事もなく、普通にショッピングを楽しんで。
 帰って来てから、いつものようにガジェットに怒られた。
(「確か、アヒルさんの分のアイスを買ってくるのを忘れてしまって……」)
 いつも何か失敗してしまうフリルは、昨日も酷く怒られ……
「あれ?」
 ふと気づくと、目の前の相手が怯えたような顔で、ふええ、と泣き声を上げていた。
 その様子はフリル以上に困惑し、狼狽し、慌てていて。
 泣き声に重なるようにして、ガジェットのがーがーという声も聞こえる。
「昨日の私がお説教されてます……」
 ガジェットの声を唯一理解するフリルは、その状況を理解して。
 それが昨日、自身に起きた光景であると悟った。
 両手で抱えたガジェットにおどおどと謝る昨日のフリル。
「ふええ、はたから見るといつもあんな感じなんですね」
 いつも体験していることだけれども。
 初めて客観的に見たその光景に、フリルは帽子をぎゅっと引き寄せて思わず顔を隠し。
 そこに、手元のガジェットの鳴き声が、がー、と響く。
「そうですね。昨日の私には申し訳ないですけど、チャンスです」
 気を取り直したフリルは、謝り続ける昨日の自分を頑張って見据えると。
 ユーベルコードを発動させて、過去へと挑みかかった。

 がー。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
昨日のあたし、かぁ…クライング・ジェネシスが似たようなことしてきたわねぇ、そういえば。
あれは「ちょっと前のあたし」だったけど。

小細工しても早撃ち一閃、は「知ってる」し。…となれば、〇決闘スタイルでいざ尋常に、かしらぁ?じゃ、それに乗りましょうか。
お互いに●封殺一閃、たぶん刹那だけあたしのほうが早いけど…それじゃ相討ち不可避だし、もう一つ仕込み。ゴールドシーンにお願いして眉間にエオロー(結界)の防壁を展開、ラグ(幻影)で隠蔽しておくわぁ。他のところは散々色々仕込んであるって「知ってる」もの、狙うならここでしょ?
これ仕込んだのはここに来る直前だもの。「昨日のあたし」は「知らない」わよねぇ?



「昨日のあたし、かぁ……
 クライング・ジェネシスが似たようなことしてきたわねぇ、そういえば」
 口元に微笑みを浮かべたティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、目の前に立ちはだかるバーテンダーを見て、そんなことを思い出す。
 あれは『ちょっと前のあたし』だった。
 でも今ここに居るのは、その時よりも格段に自分に近い『昨日のあたし』。
 大きな1つの三つ編みに纏めた長い夜色の髪。
 常に笑っているような糸目が、一種胡散臭いとさえ評される美女。
 Bar『黒曜宮』でマスター兼バーテンダーを務めるその姿は、まるで鏡を見ているかのようにそっくりだから。
 あの時程に実力差があるとは思えない。
(「小細工しても早撃ち一閃、は『知ってる』し……」)
 ならばと思い至る戦法は、正面からの決闘スタイル。
 恐らく、昨日の自分も同じ答えに辿り着くだろうと思ったその通り。
 2人のティオレンシアは、正々堂々と相対し。
 細い目で微笑み合う。
 無言のまま、しばしの時が流れて。
 刹那、愛用のシングルアクション式6連装リボルバー『オブシディアン』が2人それぞれの手の中に現れた。
 磨き上げてきた速さ。
 その極地たる、神速の早撃ち。
 それは、昨日より今日、今日より明日、と速さを増していると自負しているし。
 昨日の自分よりも早く撃てたとティオレンシアは確信する。
 けれども、その差はほんの微かなもの。
 その程度の差では、相撃ちだとも分かっていた。
 だから。
 放たれた弾丸は、ほぼ同時に互いの眉間へと向かう。
 他の部位には散々色々仕込んであることを昨日の自分も今日の自分も『知ってる』。
 ならばティオレンシアを倒すためには眉間を狙うしかないから。
 2人は本当に鏡像のように、動きまでも揃えて。
 真っ直ぐに、狙い違わず、2つの銃弾が飛ぶ。
 そして。
 昨日の自分が眉間を撃ち抜かれた、その直後に。
 ティオレンシアの眉間で、銃弾が弾かれた。
 ゆっくりと後ろへ倒れていく自分の姿を、ティオレンシアは静かに見送る。
 無言のままそっと空いた手を添えたのは、シトリンの付いたペン。
 いや、ペンの形をした鉱物生命体『ゴールドシーン』で。
 祈りに応え、願いを叶える力を持つそれは、ティオレンシアの眉間に結界の防壁を展開していた。
 それこそが銃弾を弾いたからくりであり。
 幻影で隠蔽していた、昨日の自分にはない仕込み。
「これ仕込んだのはここに来る直前だもの」
 ティオレンシアは甘い声で囁くように告げ。
「『昨日のあたし』は『知らない』わよねぇ?」
 少し首を傾げて見せながら、細く閉じられた目から微かに赤色を覗かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真多々来・センリ
ごきげんよう、昨日の私
私は無力ですから
私だけが二人いても、精霊が増えなければ大した戦いはできません
精々叩く、引っかくとか、小鬼の悪戯くらい

それでも戦いましょう
UCで相手の動きを予測し躱しつつ、無力な戦いを始めます

もちろん、視えるのは相手も同じこと
…でもね、私は一日後の私です
私が視る未来は変えることの出来る未来
だから私は少しだけ、変わった未来を知っています
その差異から生まれる隙を狙いましょう
例えば『視ていた』から、今朝の私はカップを割らないで、指先を切っていない、とかね?

あとちょっぴり、今日の私の方が意地悪なんですよ
だってほら、強くなりたいので
青い炎が灯ったままのランタンを大きく振りかぶり
えいっ



「ごきげんよう、昨日の私」
 真多々来・センリ(手繰る者・f20118)がそっとスカートを持ち上げて礼をすると、向かい合った相手も同時に同じ仕草を返した。
 ピンク色の髪は左右それぞれで三つ編みに纏め、紫色のリボンを揺らし。
 青と金の瞳は穏やかに微笑みながら、しっかりと前を見据える。
(「私は無力ですから」)
 そう思うのは、ワンピースに包まれた身体は細身で色白で、どこからどう見ても、ごくごく普通の女の子でしかないから。
 硬い拳が打てるわけでも、鋭い剣が振れるわけでもない。
 できる事と言えば、叩いたり引っかいたり、小鬼の悪戯がせいぜいで。
 精霊術師として操る精霊が増えなければ、その実力は変わらない。
(「私だけが2人いても、大した戦いはできません」)
 センリは無力な自分を自覚して。
 それでも、目の前に敵が立つのなら、と。
 戦いへと挑んでいく。
「親愛なるもの。貴方の世界を、私に分けて」
 ユーベルコードを発動すれば、かつては青色だった金の右目に未来が映る。
 それは精霊に愛された証の『gift』。
 未来を『読める』力。
 しかし。
「あなたにも未来が視えていますね」
 その『gift』を持つのは、昨日の自分も同じで。
 同じ未来を視るならば、戦況は膠着する……はずだった。
「でもね、私は1日後の私です」
 ふわりとセンリは微笑んで見せる。
 金瞳に視える未来は、変えることのできる未来。
 視た未来がどう変わるかは、自分次第でもあり、現実とならないと分からない。
 でも、昨日の自分と今日の自分なら。
 この時間の差が、未来の変化の幅を変えていると、センリは語る。
「私は少しだけ、変わった未来を知っています」
 より現実に近い未来を視れるのだと。
 そして、相手に見えるように、片手を広げて見せ。
「例えば、今朝の私はカップを割らないで、指先を切っていない、とかね?」
 傷のない指先に気付いた相手が、はっと息を飲む。
 昨日の自分は視ただろう。
 指先を切る自身の姿を。
 けれども目の前にいるのは、それを回避した姿。
 視た未来とは違う姿。
 だから、相手は困惑し、未来視をどう判断するかを迷い。
 その迷いが動きを止める。
「あとちょっぴり、今日の私の方が意地悪なんです」
 そこにセンリは歩みより、にっこりと微笑んで。
「だってほら、強くなりたいので」
 青い炎を灯し続けるランタンを大きく振りかぶる。
 それは精霊達を導くための『隣人の灯台』。
 本来は行く先を照らすためのものだけど。
 センリは昨日の自分には予想外な、未来にも視えていないだろう使い方をして。
「えいっ」
 驚く相手にランタンを振り下ろした。

 ごんっ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マグダレナ・クールー
こんにちは、昨日のマグダレナ。わたくしは今もオウガを喰っていますから、どうかそこは安心してくださいね

あなたはオブリビオンですが、わたくしです。さて、どう動きましょうか
お互いを熟知していると厄介ですね? しかし、新たな弱点を見つけることができます

わたくしは捨て身の戦法が多く、守ることが得意ではありません。ならば、守りの戦法を取ります
じれったいと思いますが、落ち着きを持って対処するのがわたくしですね。ええ、本当に厄介です

……ねえ、アリス。あなたは、アリスにひどい目にあうことが許せませんね?
わたくしが自害の真似をすれば、あなたは決死の想いで止めにくるでしょう。そこを、狙います
……愚か、ですね、本当に



 マグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)も、今の自分と寸分変わらぬ姿の相手と対峙して、まずはと笑顔で礼を送る。
「こんにちは、昨日のマグダレナ。
 わたくしは今もオウガを喰っていますから、どうかそこは安心してくださいね」
 告げた言葉に相手も笑い、礼を返したのは分かるけれども。
 真っ直ぐに見つめるその双眸に、正しい光景は映っていない。
 さらりとした長い金色の髪も。
 女性らしくも頼りがいを感じさせる長身の身体も。
 軍服を思わせつつも華やかな、儀礼用かと思う服装も。
 理解はできるけれども、正しく見えていない。
 それは、マグダレナと共存する盲目のオウガに視覚を『食われた』から。
 マグダレナが視ている世界は、色彩やピントが狂い、構造がねじ曲がった世界。
 しかしマグダレナにはそれが通常で。
 目の前の相手は、それも含めて、誰よりもよくマグダレナを理解した、マグダレナ自身だから。
(「さて、どう動きましょうか」)
 マグダレナは考える。
 その間に、相手は旗杖『アーラ』を錆びついたパルチザンに変えて、こちらへ身体ごと突っ込むようにしてその鋭い切っ先を放ってきた。
 迎撃やカウンターなど考慮していないかのような、捨て身のような突撃。
 守ることが得意ではないマグダレナのよく取る戦法。
 マグダレナはその攻撃を落ち着いて見据え、確実に受け躱し。
 あえて攻撃に転じず、守りへと徹する構えを見せた。
 いつもとは真逆の対応に、相手に戸惑いの気配が視える。
「お互いを熟知していると厄介ですね?」
 攻撃の応酬になると思っていたであろう相手に苦笑を見せ、マグダレナは続いて放たれてくる攻撃を1つ1つ対処していった。
 躱しきれなかった傷は、すぐに聖なる光で治療して。
 相手に突破の糸口を与えないよう、丁寧に捌いていく。
「じれったいですか?」
 守りが不得手でも守ることに徹すれば、そう易々と攻めきられるものではなく。
 綻びを突かれても、慌てることなく対応し、次は通じなくしていくから。
「落ち着きを持って対処するのがわたくしですね。ええ、本当に厄介です」
 膠着する戦況。
 しかし、相手もマグダレナも焦ることなく手を重ね。
 互いにその膠着を打破する隙を与えない。
 このままでは延々と戦いは終わらないだろうと思われた。
 けれども。
(「お互いを熟知しているからこそ、新たな弱点を見つけることができます」)
 攻防の最中、マグダレナは大きく後ろに飛び退き、間を空ける。
 すぐに追従せず、慎重に様子を伺う相手の動きは、マグダレナだったらそうするだろうと思った、予想の通りだったから。
「……ねえ、アリス」
 マグダレナは、相手と同じパルチザンの持ち方を変えて。
 切っ先を自分自身へと向けて微笑んだ。
「あなたは、アリスにひどい目にあうことが許せませんね?」
 そのまま刃を引き寄せて、自分で自分を害する動きを見せれば。
 昨日の自分が慌てて飛び込んでくる。
 自害などさせないと、アリスを止めようと、決死の想いで。
 身を挺する勢いでやってきた相手のその隙へと。
 マグダレナはパルチザンの軌跡を変えた。
 その一瞬で決着はつき。
 パルチザンを旗杖にと戻したマグダレナは、倒れ伏した自分の姿を見下ろす。
 その姿を正しく視えなくても、正しく理解はして。
「……愚か、ですね、本当に」
 呟いたマグダレナの耳に、盲目オウガの笑い声が聞こえた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月24日


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト